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1954-03-13 第19回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十三日(土曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    佐々木盛雄君       中山 マサ君    福井  勇君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    細迫 兼光君       河野  密君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正巳君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁局長         (保安局長)  山田  誠君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (経済局長心         得)      小田部謙一君         郵政事務官         (貯金局長)  小野 吉郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (為替局外資課         長)      森鼻 武芳君         農林事務官         (食糧庁輸入計         画課長)    羽場 光高君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十三日  委員三浦寅之助君辞任につき、その補欠として  佐々木盛雄君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の国際郵便為替  の交換に関する約定締結について承認を求め  るの件(条約第七号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  投資保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一一号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件(条約第七号)を議題といたします。質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 私は一点だけ質問しておきたいと思うのです。それはこの郵便為替利用状況について、それから為替申請に要する手続条件、それから来年度外貨予算電報為替との関係、それからアメリカ以外の国とどういうふうに為替が行われているか、将来どういう外国とさらに取引を開始して行く計画であるか、それらの点について伺いたい。
  4. 小野吉郎

    小野政府委員 アメリカとの為替交換現状でございますが、アメリカ側からは、為替利用につきまして何ら制限を設けておりません。日本側といたしましては、現在為替管理法のもとにおきまして、一定制限のもとに為替の振出しを許しておるわけでございますが、その条件といたしましては、一人三箇月に百ドルを限度といたしまして送金を許しております。しかもその送金の可能であります目的も無制限ではなく、一定制限のもとに許可をいたしておるのでありまして、これはあるいはアメリカ一定の会がありまして、その会に加入しておりますための会費の払込みとか、あるいは生活費送金図書購入のための送金、そういつた送金目的に限られております。現在その許可手続といたしましては、送金者郵便局送金申請をするわけであります。郵便局からはこれを日銀にまわしまして、日銀におきまして、為替管理法上の郵便為替利用制限に反しないかどうかを審査いたしまして、その送金目的、また先ほど申し上げました一人につき三箇月百ドルを超過しないかどうか、そういつた点をつぶさに審査いたしまして許可をいたして、初めて送金が可能になるような現状にたつております。現在の状況で申しますと、日米間の郵便為替におきましては、はなはだしい為替にたつております。これは先ほど申しました、アメリカからは大体郵便為替の一枚の証書の最高金額が百ドルと制限をされておりますが、一人につきまして何箇月間にどれだけしか為替が送れない、こういうふうな制限はないわけであります。従いまして相当な取扱い数量があるわけでありますが、日本からアメリカヘ向けて送金いたします場合には、そこにかなりきびしい制限もありますので、現在のところでは、アメリカから日本に参ります為替に対しまして、日本からアメリカに対して振り当てますものが〇・二%くらいの割合になつておまります。従つてこの面におきますと、はなはだしい受取り超過の現状相なつておるような次第であります。  外貨予算につきましては、大体年度を半分にわけまして、上半期下半期予算を立つておりますが、二十八年度におきましては上半期分が二千六百四十ドルでございます。下半期分が三千八百ドルくらいになつております。一昭和二十九年度要求額といたしましては、上半期分四千六百ドルを予定いたしております。現在の為替振出しの現状から申しますと、この予算をもちまして十分まかなえるという見通しでございます。
  5. 並木芳雄

    並木委員 下半は。
  6. 小野吉郎

    小野政府委員 下半は現在まだきまつておりません。  アメリカ以外の国とどのような為替交換を現在やつておるか、将来またさらにどのように為替交換国が増加するであろうかというお尋ねでございますが、現在単独条約為替交換いたしております国は、アメリカのほかカナダがございます。それからイギリスでございます。これはこの三月一日から日英間の為替交換を始めたのでございます。まだ取扱いの実際の件数はほとんどございません。ただ英国関係といたしましては、英属領関係につきまして、それぞれ条約に対するある種の権限を鋳つた地域が非常に多うございます。そういつた地域イギリス仲介によりまして、日本との間に為替交換が可能であるわけでございますが、イギリス当局といたしましては、日本郵政省の依頼に応じまして仲介の労をとろう、こういうことに現在相なつております。その仲介の労をとつてもらうことの可能な地域に対しましては、どのような方式で、いつから為替交換するか現在折衝中でございまして、先方都合日本側都合が合致いたしますれば、将来できるだけすみやかに、そういつた地域ともイギリス仲介をする為替交換を実施いたしたい、かように考えております。なおアメリカカナダイギリスのほかに、これは二国間の単独条約ではございませんが、国際間の多数国参加条約がございます。これは万国郵便連合という組織がございますが、その中に為替に関する約定がございまして、この約定調印いたしました国が約六十数箇国ございます。そういつた国々とは両者の都合がよければ為替交換し得るわけでございます。できるだけ広くそういう国々為替の再開をいたしたい、かように考えておりますが、現在為替交換いたしております国といたしましては、西ドイツ、デンマーク、ギリシヤ、スイス、オランダ、スウエーデン、イタリア、アイスランド、こういつたような地域がございます。もつともこれらにつきましては、それぞれ為替管理法上の一定制限のもとに取組みをいたしておるわけでありまして、無制限ではございません。従いまして将来の利用増進関係におきましては、そういつた内容をよく周知せしめまして、できるだけ予算の範囲内において最高度にこの制度が利用せられますように努めて参りたいと思います。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私も二、三点伺いたいと思いますが、日本からアメリカヘ送つた過去の実績件数でどのくらいかというのと、アメリカから日本へ来た実績、それからもう一つ、十四条に「四百分の一の手数料」と書いてありますけれども、それがどのくらいになつて日本にどのくらいドルが入つて来たか承りたいと思います。
  8. 小野吉郎

    小野政府委員 アメリカと今まで交換をいたしました為替の振出し並びに払渡しの状況でございますが、昭和二十六年に例をとつてみますと、日本からアメリカに向けて振り出しました件数が八十一口となつております。全額は邦貨にいたしましてわずかに二十五万六千円でございます。これはもちろん、昭和二十六年の相当後期にこの業務を始めておりますので、件数としても、金額としても非常にわずかでございます。片方アメリカから日本に振り当てられました口数が、同じ昭和二十六年の同期間におきまして五万八千六百九十八件になつております。金額にいたしまして五億八千四百万円でございます。次に昭和二十七年はどうなつておるかと申しますと、日本からアメリカに振り出しました口数が二百八十五件、金額が百十二万円となつております。それから払渡し、これはアメリカから日本に振り当てられた件数でございますが、八万二千九百七件、八億一千七百万円と相なつております。昭和二十八年度につきましてはまだ十二月末までの計数しかまとめておりませんが、昭和二十八年十二月末におきまして日本からアメリカに振り出しました為替件数が二百八十四件、その金額が百二十九万円となつております。アメリカから日本に振り当てて参りました件数が七万三百五十件、六億七千六百万円、かような状況相なつております。  次に条約第十四条の四首分の一の歩合金でございますが、昭和二十八年度について申し上げますと、収入、いわゆるアメリカから為替総取組み金額の四百分の一に相当する金額日本に支払うわけであります。この金額が二千二百二十四万四千九百五十三円、かように相なつております。日本からアメリカに同様の条項によりまして支払いますものは、先ほど申し上げましたように、日本からアメリカにあてて振り出します為替が非常に少うございますから、金額も非常に少く、わずかに四千三百九十円、かような状況になつております。
  9. 上塚司

    上塚委員長 他に御質疑はございませんか。――御質疑がなければ、本件についての質疑はこれにて終了いたすことといたします。  これより討論に入ります。討論の通告があります。順次にこれを許します。福田篤泰君。
  10. 福田篤泰

    福田(篤)委員 私は自由党を代表いたしまして本件賛成の意を表明せんとするものであります。もともと本約定は純然たる事務的なものであつて、かつ日米間の郵便為替交換の改善を目的とするものでありますので、われわれはこれに対し賛意を表するものであります。
  11. 上塚司

  12. 並木芳雄

    並木委員 私も改進党を代表いたしまして賛意を表します。この種小口為替というものは、小市民的には非常に便利なものであつて、大いに普及していただきたいと思います。ただそれにつきましては、政府として今までこれを周知せしむることにあるいは欠けておるところがあるのではないかと思いますから、一般にもつとよく行き渡るように、この簡便な方法を利用されるように希望を付しておきます。
  13. 上塚司

  14. 細迫兼光

    細迫委員 私は日本社会党を代表いたしまして本件について賛成の意を表明いたします。別に反対すべき理由もございません。根本的にはわれわれは交通その他国際的な利用をもつともつと伸張したい考えを持つておりますが、この程度のことも一歩前進のことだと思いますので賛成いたします。
  15. 上塚司

  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの案件日本社会党を代表いたしまして賛成いたします。  ただ先ほど並木委員のお話にもありました通り一般の人でこれを利用したくても知らない人が多うございますので、そういう点がわかるようにはつきりさせていただきたいことを条件として賛成いたします。
  17. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本件承認すべきものと決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければ本件承認すべきものと決定いたしました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたします。     ―――――――――――――
  20. 上塚司

    上塚委員長 次に、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件、農産物購入に関する日本国アメリカ合衆国との問の協定締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件及び投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。質疑を許します。
  21. 並木芳雄

    並木委員 議事進行について。この一般質問の間だけは、要求した大臣には出席してもらわなければ困ると思うのです。もつとも最初に与党の方でやられますから、出席がなくてもいいというならば別でございますが、今までのMSA審議は、まだ調印されない前でございましたから、一々大臣が出て来られなくてもわれわれはがまんをしておりましたけれども、調印をされたあとの重要な一般質問の間だけは、要求した大臣には出てもらいたいと思います。そうでないと、それこそ昨日も申しましたように審議の遅延ということが起り得ると思いますが、その点だけは十分委員長において留意されんことを望んでおきます。私の方から要求したのは外務大臣保安庁長官法制局長官審議庁長官です。
  22. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣は十一時に出席するということであります。保安庁長官は用務のため、ちよつと今時間をはつきり申し上げることはできません。
  23. 細迫兼光

    細迫委員 ただいま議題になりました案件は、まことに重要な問題でございまして、ただに一つの外交に関する案件と言うては足りないものでありまして、まことに日本の国の前途の運命を決するものだといつてもさしつかえないほど重要なものでございます。従つてこの案性審議にあたりましては、総理大臣の御出席をぜひ要求したいと思います。あるいは副総理におきまして御出席して、これにかわろうということも考えられるかもしれませんが、しかし副総理なるものの権限その他におきまして、とうてい内閣を代表し、責任を持ち得るものではないのでございますから、ぜひとも総理大臣の御出席を求めるべく、所定の手続を急速にふんでいただきたい。もしこれが実現したければ議事進行についても別個に考えなければならぬと思うのでございまして、努力すべきことを委員長は公の席において公約していただきたいと思います。
  24. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの細迫君の御要求に対しましては、できるだけ努力をいたすつもりであります。御承知通り総理大臣は昨日以来健康の関係で引きこもつておられるのでありまして、いずれ内閣に対しましても私の方から申出をいたしまして、特定の日をきめて出ていただきまして、皆さんから総括的な質問をやつていただくような機会をつくりたいと考えております。  それでは福田篤泰君。
  25. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいま野党の委員から少くとも外務大臣また総理出席要求せられましたが、われわれといたしましても非常にごもつともな要求と思いますので、委員長においてもなるべくその線に沿つて努力を願いたいと思います。  時間の都合上、今日はMSA関係から生ずる経済的な問題、特に五百五十条につきましての若干の質疑をいたしたいと思います。まずお伺いいたしたいことは、このたびMSAの五百五十条に基く協定を結んだ理由について、政府側の所見を伺いたいと思います。
  26. 小田部謙一

    小田部政府委員 アメリカ側といたしましては、実は余剰農産物であります点からしましては、アメリカ側が非常な利益があるのでございますけれども、片方わが方におきましては、凶作関係がございまして、小麦関係で申しますと、平年度は約百五十万トン程度輸入すればいい状態でありますが、ことしは凶作の年に当りましたために、約二百万トンを輸入しなければならない。しかも外貨事情は御承知通り必ずしも裕福でないわけであります。ところがこのMSAの五百五十条によりますれば、外貨を使わないで円貨でもつて積み立てればいいということで、非常に外貨の節約になりますし、他方凶作でありますから五十万トン程度小麦が必要である。こういうことが第一の利益でございます。  それから二番目は、この積み立てられました円貨は、日本におきまして、域外調達に使われるということでございます。  それからまた五千万ドルのうちの約二割に当ります一千万ドル相当分円貨積立金は、日本において日本の工業その他の目的のために贈与分として使われる。そういう三つの目的がありましたので、わが国として利益があると思つて協定を結んだ次第であります。
  27. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大体理由はわかりますが、現在MSAの五百五十条に基いて、日本以外の国がこういう協定を結んだ先例があるかどうか、これについて伺いたいと思います。
  28. 小田部謙一

    小田部政府委員 この関係も、現在どのくらい結びましたかについては、実はアメリカ側に問い合せましたところが、秘密になつて、まだ公表されていない部分があるということでございました。現在まで結ばれましたものは約一億二千万ドル程度のものにわたつておりまして、英国西独イタリアユーゴーフインランド台湾オランダ、ノールウエーの諸国と結んでおります。英国について申し上げますと、詳細な公表は差控えたいと思いますが、タバコラード、コトンシード、オイル、牛肉、ドライドプルーンであります。西独綿花タバコ、大豆、ユーゴーは小麦ラードフインランド綿花タバコ台湾小麦大麦イタリア綿花ラード、そういうふうに大体結んでおります。
  29. 福田篤泰

    福田(篤)委員 MSAの五百五十条によりまして、買付価格は、世界最高市場価格に合致しなければならぬというふうになつておりますが、どうも日本が今度買いつけました価格を見ておりますと、この世界最高市場価格より高いように思われますが、この点について御説明いただきたいと思います。
  30. 小田部謙一

    小田部政府委員 この条文には世界最高市場価格に合致しなければならないと書いてありますが、同時に実行可能な限りというのが書いてあります。最初交渉の途中におきましては、アメリカ市場相場によるということでございまして、世界市場に比べてあるいは高いのじやないかという懸念がございましたけれども、そのうち交渉して行きます上に、IWA国際市場価格――IWA国際市場価格と申しますと、世界国際市場価格に比べて少しも高くない。世界市場価格をむしろ下まわつている。その価格で買いつけていいという了解がつきました。(「IWAつて何だい」と呼ぶ者あり)国際小麦協定です。この小麦協定にきめてあります市場価格でもつて日本は百万トン買うことになつておりますが、その額まではアメリカ政府補助金を出し、それで、毎日市場における小麦値段が上つたり下つたりするにつれて補助金で調整して行く。そういう形でございますから、わが国が買いますのは小麦協定値段とほぼ同一のもので買うことができるということになります。
  31. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この五有五十条で買いつける場合におきましては、米国または友好国通常市場関係を排除し、または代替してはならないというふうになつておりますが、この点政府はどういう見解をとられているか、解釈を承りたいのであります。
  32. 小田部謙一

    小田部政府委員 友好国通常市場関係ということの解釈は、実は非常にあいまいなものでございまして、交渉の途中におきましてアメリカ側といたしましては、必ずしも過去の実績というわけでもなければ、たとえばことし外貨が少ければ、外貨が少くて輸入が減らされるということはやむを得ないというふうな、ある意味においては非常に融通性のある解釈をとつておりまして、ごく端的な言葉で申しますれば、ある国がMSA余剰農産物だけを買う、その他のものは一切買わないというようなことはないという、極端にいえばそういう程度でございまして、非常に厳格にこの問題を解釈してはいなかつたようでございます。
  33. 福田篤泰

    福田(篤)委員 現在日本カナダにおきまして通商協定交渉中でありまして、近く協定の達成を見るであろうということは、大体観測されておるところでありますが、この五百五十条の問題に刻しまして、カナダから、五百五十条によるアメリカ小麦大麦輸入につきまして、何か申入れがあつたとわれわれは聞いておりますが、はたしてそういう申入れがあつたかどうか また私どもの調査によりますと、カナダはこれに対し反対したということを聞いておりますが、事実カナダの方が価格が安いのでありますか。カナダ側申入れがあつたかどうか、あつたとすれば、具体的にどういう内容のものであるか、それについてお伺いしたいと思います。
  34. 小田部謙一

    小田部政府委員 現在カナダ日本との間には交渉進行中でありまして、ほとんど最後の段階に行つておるのでございます。おそらく間もなく調印になるのじやないかと思われますが、その際カナダといたしましては、カナダ日本との問に通商航海条約ができるその瞬間に、日本MSA協定に基きまして小麦大麦を大量に買つて、その結果カナダの方から小麦大麦を買わなくたるのじやないかというようなおそれがあつたわけです。それでそのおそれはないか、つまりこの協定を結んでも、日本カナダから買つていた通常輸入量――通常輸入量といいましても、非常に解釈に疑義が起りますが、通常輸入量は確保してくれるのだろうなというような問合せがございました。これに関しまして、わが方といたしましては、MSA法の五百五十条そのものに、友好国における通常市場関係を乱してはいけないというような規定もございますし、それからまたアメリカから輸入いたします小麦と、カナダから輸入いたしました小麦とは品質が違いまして、カナダの方はハードアメリカの方はソフトと申しまして、わが国としましては、アメリカの方のソフト小麦もある程度輸入が必要でありますが、ハードの方も必要である、従つてカナダからも通常輸入量を減らすことはないのだということを先方に納得させまして、先方もその点は了解いたしました。またカナダ側も、アメリカ側MSA法の施行にあたりましていろいろ協議したようですが、結局のところ、別にカナダ日本に対する通常輸入量に変化を来さないということで了解いたしました。
  35. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これはなぜそういうことをお伺いしたかと申しますと、御承知通り日本は今後各国との多角的な貿易の話合いをしなければならぬので、五百五十条に縛られて、アメリカ以外の国との間にいろいろ問題が起ることは、われわれとして非常に慎重に考えなければならぬ。今御答弁を承ると、カナダについては話合いがついたということですから安心いたしましたが、今まできまつているところは、大体小麦が五十万トン、大麦が十万トンで、金額にして約四千万ドルを越えている。予定が五千万ドルとすると、約一千万ドル足らずのものがまだ残つておりますが、この大麦小麦以外に、この約一千万ドル近い残余の額をどういう物資の購入日本は振り当てるか、予定があればお伺いしたいと思います。
  36. 小田部謙一

    小田部政府委員 残つている額に関しましては、そのときの市場価格で買いますのであまりはつきりしたことはわかりませんが、あるいは五、六百万ドルから七、八百万ドルくらい残るだろうと思います。この残る額に関しまして……。(福田(篤)委員「五、六百万ドルですか」と呼ぶ)五、六百万ドルか七、八百万ドルです。これは小麦価格が上つたり下つたりすることと、それから船賃の関係でもつて必ずしもまだあれがついておりませんけれども……。(「千万ドルじやないの」と呼ぶ者あり)千万ドルには上りません。(「そうじやないか、今まで言つているのは」と呼ぶ者あり)一千万ドルは残つておりません。現在の価格で計算いたしますとそんなには残りません。それで、残りのもので小麦を買おうか、タバコを買おうか、綿花を買おうか、あるいはバターを買おうか――バターは残り全部を買うと国内との問題が起りますから、バターを幾分か買うかというようなことにつきましては、実はまだ各省と交渉中でございまして、とりあえず今のところは小麦五十万トン、大麦十万トンということを決定してありますが、これを買うのには相当時間がかかりますし、その間に、何を一番買つた方が日本のためによいかということを考えて決定いたしたいと思います。
  37. 福田篤泰

    福田(篤)委員 少くとも一千万ドル近い残余の金があるのでありまして、しかも今言われたように、購入する物資によつて日本農産物輸入の各品目にも影響がありますので、この点は、一日も早く関係官庁と御連絡をして決定されて発表していただきたいと思います。  それから、この農産物購入に対しましての具体的な処置と申しますか、方法というか、それがどこまでおきまりになつているか、これについて承りたい。
  38. 小田部謙一

    小田部政府委員 実は、具体的な手続に関しましてはまだ米国と打合せ中であります。もつとも大体のところは済んでおりますが、まず、日本側の考えております案は、できるだけ通常輸入手続によりたいということを考えております。まず通常輸入手続によるということになりますと、一応日本はドルを持ち出すことになります。ただ、この条約承認せられますならば、その一度持ち出したドルをアメリカ側から返してもらうということを考えております。(「何だ、ドルを持つて行くのか」と呼ぶ者あり)一応持つて行きます。これは持つて行かない方法もございまして、アメリカの銀行から一応立てかえてもらうということもあるのでございますが、一応立てかえてもらいますと、そのアメリカの銀行に立てかえてもらつた間がたとえば数日かかるといたしますと、その間の利子もとられるという関係もあります。他方、日本の大蔵省勘定、MOF勘定のドルがまだありますから、それを使つた方が利子の点において少くはないかということを考えまして、一度は持ち出しますが、これは輸入手続をいたしますれば、すぐ元にもどつて来るということになります。
  39. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この点については実はそのことをお伺いしたかつたのですが、これは一般的な常識から申しまして、今度の五千万ドルの五百五十条に甚く輸入は、円だけの、早くいえば日本で印刷した紙で間に合うのだ、貴重な外貨を使わないで済むということが一般の常識だが、今の御説明によると、アメリカヘ一応積み立てて手持ち外貨を使わなければならない。そうすると、これは一般の国民が考えておるのと食い違う。もちろん手持ち外貨そのままをアメリカに払う必要はたい。血の出るような外貨を払うわけではないが、一応今おつしやつたように、どうしても手持ち外貨アメリカの方へ積み立てるとか使わなければならないとかいうことは、国民に対する誤解を避けるために、よほどこういう程度のわれわれとしては負担しかできないのだということをはつきりしませんと、政府の言つていることが違うのではないか、どうもドルはいらないと言いたがら実はこれだけいるという議論がすぐ起る。その点についてもう一度手持ち外貨の問題は貴重な問題でございますから、はつきりお話願いたい。
  40. 小田部謙一

    小田部政府委員 この支払いの方法に関しましては、全然日本の円だけ使う方法と、一応ドルで払うけれどもあとですぐ払いもどしてくれるという方法とございます。それでそれはアメリカの規定でA方式とR方式とがきまつているわけであります。R方式の全然円でやるという形でございますれば、わが方の手持ち外貨は全然使わなくてもいいということにたります。ところがこれでやりますと、実はアメリカ政府から金をドルで払います場合には普通の輸入手続をしまして、その輸入手続の際にアメリカの銀行が一応ドルを立てかえるという立場をとらなければたらない。その立場をとりますと、数日間でもアメリカ政府からアメリカの銀行に対するドルの立てかえに対する利子というものがそこへかさむわけであります。ところが日本のドルをそのまま使いますと、とにかく数日の間立てかえればいい。そうするとそのままドルがもどつて来る。現実の問題としては、円で買える。一応ドルは出すけれども、そのドルはそのまま数日の問題で返つて来るわけでありますので、この点は利子を節約した方がいいのじやないかというのが関係各庁の意見でござまいして、その方法によろうというわけで今交渉している次第でございます。
  41. 福田篤泰

    福田(篤)委員 どうしても手持ち外貨を使う必要があり、その方が日本に得とあれば、これは手続上やむを得ませんが、先ほど申した通り、この五百五十条の問題は円だけできまるというようなことに印象を与えておりますから、政府はよく詳しくわかりやすく国会を通じて国民の方々の御了解を得ていただきたい。  そこで外相が出られましたのでお伺いしますが、今度のMSA協定に伴う日本に対しての経済的な利益、これは本委員会におきましてもしばしば問題になり、また政府側も相当大きな期待も国民にこの委員会を通じて与えられておりますが、どうも発表したところを見ると、あまり経済的な利益を期待することは少し無理のような印象を受けましたが、これについて政府の御見解を承りたい。
  42. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは一部にはむしろ政府のやり方を攻撃するために、初め経済的な援助を非常に強く言つて、あとでそれはたいじやないかというふうに持つて来た傾きがあるのであります。私どもの方は、何べんも前から申している通り、これは元来間接的に経済に寄与するというのであつて、間接には日本の経済に寄与する。経済援助ということを言つておらないのでありまして、経済に寄与するものである、こういうことを何べんも言つている。経済に寄与するというのと、経済援助というのは、言葉からいえば同じようでありますが、経済援助と申しますと、一定の定義があつてMSAの法律の中にも書いてあるのでありますから、これと一緒にならないように努めたのでありますが、とかく誤解を生じた。そこで今度の国会においてどういう経済的の利益があるかということになりますと、いずれにしても防衛力の漸増ということはやらなければならない。もしアメリカの援助を得なければ、日本の力で漸増をしなければならたい。このときに相当の兵器等に対する費用が必要になつて来ることは当然でありますから、この面ではかなり経済的な利益があるわけであります。そのほかにどういうものがあるかというと、御承知のように完成兵器の注文といいますか、域外買付等がありまして、これは約一億ドルに上るであろう。もつともこれもわくだけでありまして、日本の兵器産業等が十分にこれに応じ得るだけの態勢がなければなりませんが、六月一ぱいまでの中に、つまりアメリカの本会計年度の中に一億ドルぐらいものを発注がある、こう期待いたしております。それから今の小麦ですが、これも結局は円において決済をいたしまして、それでもつて日本の食糧事情の緩和に役立つ、こういう点。それからなお一千万ドルアメリカ側から贈与を受ける。これに三十六億。これが日本の産業に役立つ。こういう点を考えております。
  43. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今の御答弁でMSAによる直接の経済的な寄与というものは、これは期待する方が無理なのだ、むしろ間接的な経済的利益というものだということに了解いたします。これにつきましてMSAの五百五十条に基く農産物の運搬に対しまして、アメリカ側の船を五〇%使うという話がありますが、これは義務でありますか、あるいは話合いでありますか、お伺いします。
  44. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはMSAアメリカの法律の中に書いてありますものでありまして、これはその通り私どもは考えております。
  45. 福田篤泰

    福田(篤)委員 農産物買付のために使う円貨はいつ、またどこからどこに積み立てられるか。きまつたことがありましたら御説明をいただきたい。
  46. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私の方では実は大蔵省にやり方は一任しておりまして、大蔵省で法案を起案いたしてすでに案はできております。特別勘定を設定することにつきまして、これは大蔵委員会ですか、とにかく国会に提出することになつております。詳細は政府委員から申し上げます。
  47. 小田部謙一

    小田部政府委員 ドルをアメリカからすぐ返してもらいますと、それに対応します円貨日銀アメリカ勘定の中に入れるということになります。それからその中の二〇%のいわゆる一千万ドルに相当するものがそのアメリカ勘定から、今国会に提出されるだろうと思いますが、新らしい日本政府の特別勘定を設けましてその中に入れるという仕組みになつております。
  48. 福田篤泰

    福田(篤)委員 大分問題になりました贈与の一千万ドルの問題でありますが、これはいつ日本に渡されますか。
  49. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日はまだ確定いたしておりません。これはいよくこの法案が国会の承認を得まして成立いたしますと、ただちに決定することになつております。その手続進行に基きまして一番早い機会に入れる。こういうつもりでおります。
  50. 福田篤泰

    福田(篤)委員 いわゆるグラントの贈与分につきまして私は西ドイツの例を調べて非常に反省せざるを得なかつたのでありますが、おそらく大臣も御承知通り、西ドイツでは約千五百万ドルのグラントがある。これを難民大衆の住宅資金に充てています。日本では軍需産業が資金も枯渇し困つておりますから、軍需産業方面の資金に充てる。一応これは理由がありましようが、私はこの点は政府としても考えねばならないと思つておるところであります。こういう日米間の今後の長い間の恒久的な結びつきと親善な向上するという点からいつても、やはりアメリカでやること――政策に対しましても、日本人の大衆また民衆が心からこれを支持し理解したければならないと思う。それには政府が大きな責任があると思うのであります。このような西ドイツが住宅資金に充てたという一つのやり方は、むしろドイツ人大衆のアメリカに対する感情をきわめてよくし、またドイツとアメリカとの友好関係にも大きなプラスになつておると思うのであります。日本は今度はやむを得ない。一応内定いたしておるのでありますから、私はとやかく申し上げませんが、アメリカから来るグラントに対しまして、日本の社会保障制度あるいはその他日本国民全体を対象とするような方面に使う意思はないかどうかこれについてお伺いいたします。
  51. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ドイツでやつておりますのはお話の通りと思つております。これは一般的な難民救済というよりも、むしろ東独方面から避難して来ました難民に対しまして、何と申しますかセキユリテイーの関係もあつて、政策的に東独よりの避難民に対する措置を特に考えておるわけであります。ドイッ側の希望というよりも、むしろ英米仏方面の考え方が作用いたしまして、この金をほかにも利用したいところはずいぶんあつたろうと思いますが、特に東独からの避難民の住宅に使うということにいたしたように思つております。従いまして日本の場合とは多少事情が違うかと思うのであります。アメリカの余剰小麦というものはまだすいぶん手持ちがありますし、今後もふえるように予想されますので、日本の方からいいますと、食糧事情の緩和と食生活の改善という見地から、今後ももし有利な条件であれば、小麦アメリカからよけい入れたいとも考えておりまして、この話が承認を得まして具体的になりましたならば、さらに別の意味で小麦を入れる交渉をいたしたいと考えております。その場合にその買い上げた値段をドルで払わないことができ得るならば非常にけつこうでありますし、またその円をほかの日本側で必要とする方面に使い得るような交渉ができればなおけつこうだと考えております。この点はお話のようなことも前から考えて、将来何とか努力したい、こう思つております。
  52. 福田篤泰

    福田(篤)委員 お話の通り、西ドイツの場合は東独からの避難民の住宅建設あるいは収容所の建設に充てております。これはきわめて政治性の高い問題であり、よく理解いたしますが、しかし同時に日本に対するアメリカの意向というものと、ドイツに対するアメリカの意向というものが、根本的に食い違うはずはないわけであります。こういう意味で日本政府特に外務省が対米折衝におきまして、今後こういうようなグラントがあつた場合には、やはり日本人が、直接大衆が何か利便を受ける目的に使われることが、きわめて日米間においても賢明である、たとえば引揚者などの寮を見ましても、われわれはいつも思うのであります。きわめて悲惨な状態である。このような場合でも、兵器生産の資金ももちろん必要でありますが、同時に日米間の長い間の友好の上において、やはり大衆と直結した方面に使途を探すというところに、意味があるのではないかと思いますが、もう一度この点をお伺いいたします。
  53. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 十分お考えの点を参考にいたしまして、今後善処したいと思います。
  54. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この一千万ドルの贈与分は、邦貨にしますとわずか三十六億であります。そうなりますと、日本のこれから工場を建てなければならない忙しい兵器軍需生産につきましては、なかなか足りないと思いますが、一説に伝えられているところによりますと、アメリカ側日本はこの三十六億にプラスして、日本側一つの財政支出を考えるべきだというような意見もあるかと伺つております。これについて御報告を願いたいと思います。
  55. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 米国側で特にそういうことを言つていることは、今までのところ聞いておりませんけれども、日本側としましては、この問題が出る前から、通産省の方面において域外買付の前途を見越しまして、今の産業規模では応じきれないという面が非常にありますので、開発銀行等を通じてある程度の融資等もしなければいかぬじやないかといつて研究しておられるようであります。従いまして将来そういうことが起るかもしれません。これと関連があるといえばありますが、実はこの問題が出る前からそういう点はいろいろ研究しておられるようでありますので、あるいはそういうことになるかもしれません。
  56. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この一千万ドルの使用計画並びにもし使用する場合にアメリカ側許可がいるものかどうか、これについて御説明願います。
  57. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この問題につきましては、米国から許可を得るとかいうようなことはありません。従いまして見返り資金の使用のときとは大分違つております。ただわれわれの方から申しますと、要するにこれは主として域外買付を考えてやるものでありますから、もちろん国内で必要なものもつくりますけれども、そこで将来どつちの方面に域外買付が多いかということを十分確かめないと、無益な方面に金をよけい使つてもいけませんから、アメリカ側の域外買付に対する考え方、どの方面の産業に力がよけい入るかということにつきまして、先方の意向も十分確かめた上で適当に使い方を考えたい、こう思つております。
  58. 福田篤泰

    福田(篤)委員 その域外買付の問題でありますが、これは一説によりますと、五百五十条による農産物の買付からできる円貨の使用によつてアメリカ日本におけるドルによる域外買付を逆に減らすという結果になるのではないかという心配が一部あるのでありますが、この点について政府の御見解を伺いたいと思います。
  59. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 大体においてこれはそういうことはないと私は考えておりまして、早く言えばこの四千万ドル相当分だけ域外買付はふえるであろうと思つております。と申しますのは、アメリカ予算で大体この六月までには五千五百万ドルかあるいは六千万ドル近い注文があり得ると予想しておりましたところへ、これができまして、スタツセンFOA長官等も言いますように、約一億ドルということにかわつて来ておりますので、そうするとこれは四千万ドルふえるということによつて、一億ドルという勘定が出たのではないかと思います。従いましてこれは今までの予算上の点から新しくこれだけのものがふえるとこう思つております。
  60. 福田篤泰

    福田(篤)委員 来年度MSAのこの五百五十条による買付を行うお考えを持つておりますか。
  61. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはもちろん今後の交渉にもよることでありますし、この協定案の国会における承認にもかかわるわけでありますが、この協定承認されますれば、来年度も同様のことをいたしたいと考えております。ただ先ほど申し上げましたように、もしさらに有利な条件で買い得るものであれば、必ずしも五百五十条によらなくてもいいであろう、こう思つておりますが、これはとにかくある程度条件はつきりきまつておりますから、ほかにもつと有利なものがなければこれで来年度も相当程度のものを考えてみたいと考えております。
  62. 福田篤泰

    福田(篤)委員 私どもは日本の円で相当多額の食糧が買えるということについて、非常に大きな利益を得ると考えておりますが、ただ問題は御承知通り農産物の余剰は、アメリカにおいてますます激増の傾向にある。昨日の発表によつても、約十億ドルくらいの援助を考えておるようですが、こういう場合に、だんだんアメリカの国内価格の支持によるというアメリカの農業政策というものも、われわれは考えてみる必要があると思う。すなわちわれわれの方も助かるが、アメリカもこれで非常に助かる。そうなると、これは恩恵もありましようが、単なる恩恵だけではなく、アメリカ利益でもありますので、もし来年もあなたがお考えになつておるならば、少くともこの条件につきましては、もう一歩日本側に有利に交渉されるべきだと思いますが、そういうお考えがあるかどうか。あるとすれば、どういう点で有利な条件を獲得なさるおつもりか、お考えをお聞かせ願いたい。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今からここで申し上げるほどの材料もないのでありますが、有利な条件といつても、一般的に申せば、この二〇%がもつとパーセンテージをふやして、グラントのパーセンテージがふえるということなり、あるいは国内で日本の最も必要とするものにこれを使うというような場合もございましよう、それから価格の点等もあろうかと思います。また船の輸送につきましても多少考え得べきことがあるかとも思つておりますが、しかし片一方ランドール委員会等の意見によりますと、なるべく国内の農産物価格支持政策はやめた方がいいというような意見もあるようでありますが、将来どういうふうになりますか、その辺もにらみ合せて行かなければならぬと思いますが、要するにアメリカ側としては、相当の余剰小麦がこの一、二年まだ引続きおるものとわれわれは予想しております。そうしますと、これはやはり相互援助になりまして、アメリカ側にも都合がいいし、日本側にも都合がいいのでありますから、その剛にさらに有利な条件で賢い得るということも予想されないわけじやないのであります。それは先ほど申しましたように、もしMSAの五百五十条以上にさらに有利な条件で買えるものならば、いずれ日本小麦買つて来るということが必要なのでありますから、必ずしも五百五十条によらなくてもいいわけであります。ただ今申した通り、これたらこういう条件だということがはつきりしておりますから、これ以上の条件がたければ、やはりこれで買うよりしかたがない、こう考えております。
  64. 上塚司

    上塚委員長 福田君、申合せの時間が参りましたけれども、若干の延長をお許しします。
  65. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今の大臣の御説明でわかりましたが、私は大臣のお見通しは少し甘いのじやないかと思う。これはアメリカのいろいろなデータを調べましても、今後アメリカの興産物のストックはますますふえる見込みでありますし、ここ一年や二年で片づかぬと思うのであります。これはアメリカの国内価格支持につきましても、いろいろな意見が出ておりますが、おそらく政府は必ず価格支持の点に基いて、この援助物資、あるいは五吾五十条によるところの過剰農産物のはけ口を友好国との間に話し合うと思います。そうなりますと日本にとりまして大きな問題が起つて来る。それは一つは米食率との関係であります。非常な量がだんだんふえて参りますが、一体農林省はこの年々ふえる小麦大麦輸入によつて日本の米食率、これは食生活の根本問題でありますが、どういう変化が来るという見通しを持つておられるか、また共体的な計画を立てておられるか、これを計数によつてお示し願いたいと思います。
  66. 羽場光高

    ○羽場説明員 一応私から御説明申し上げます。米食率の問題につきましては、これはただいま米の年度は十一月から十月を米穀年度と言っておりまして、従いましてただいまは二十九米穀年度という期間に入つておるわけでありますが、この二十九米穀年度におきましては、米食率は維持するという方針のもとに諸般の輸入計画を進めております。従いまして今回のMSA小麦につきましては、米食率を維持するという計画のもとに組みました小麦輸入計画の範囲内で入つて来るわけであります。今後アメリカの来麦年度でどうなりますかということは、これは三十米穀年度の米食率の問題もございますし、まだはつきりいたさないのでございますが、この点につきましては、ただいま内閣に食糧対策協議会が設けられまして、いろいろ民間からの有識者も入られまして、食糧管理制度そのものにつきましても今検討しておる最中でございます。それでこの結論をまつて将来のことに処したいという考えでございます。
  67. 福田篤泰

    福田(篤)委員 時間がありませんから、これであとの質問は留保しますが、今の問題は非常に大きな問題で、私どもの聞いておる範囲によりますと、農林省が自主的な立場に立つて日本の今後の米食率の変更なり、あるいは諸外国とのこういう年々ふえる小麦輸入についての計画がないように私は見ております。これは食生活と直接関係のある大事な問題でありまして、ここ一、二箇月のうちにすぐ入つて参りますので、本年度、来年度というようなのんきなことを言つておられないで、具体的な、国民全般につながる大きな問題でありますから、外務省とよく連絡をしていただきまして、しつかりひとつ御勉強願いたいと思います。  最後に外務大臣に御答弁願いたいことは、こういう一種のアメリカ農産物の趨向から申しまして、輸入がだんだんふえる見通しが立つ場合に、われわれ日本で特にアジア的な立場において大きな問題が提起されると思うのであります。と申しますのは、御承知通りわれわれが米を買つております相手方はアジアの地域であります。しかもこのアジアの地域は、今民族自決の立場に立つて相当苦しい経済的困難と闘つておる。私どものかつてのあやまちはアジアを敵としたことで、アジアに対する大事な駒を失つたことだと思いますが、今後の外交の基調において、地元のアジアというものが最重点でなければならぬと思いますが、こういう場合に、アメリカその他各国からの麦の輸入がだんだんふえる、買付がふえる。しかも米の買付がそれによつて減少されるという見通しがもし立つた場合には、アジアの日本に対する今後の貿易上のいろいろな問題が起つて来ると思ます。こういう点についてどういうお見通しを立てておられるか。この点について、アジア共通の問題でありますので、外務大臣の御所見を承つて、あとの貿問は今後に留保しておきます。
  68. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府の根本的な考え方は、用意が整つて可能になりましたら、できるだけ早く食糧の統制というものも撤廃いたしたい。これは根本的の考えであります。そうなりますと米食率というような問題はなくなつてしまうわけであります。しかしながら日本の人口は御承知のように百万以上も毎年ふえておるのであります。いくら転換いたしましても、米の需要というものはまだ相当ふえることを予想しなければなりません。そこでわれわれとしては、タイなりあるいはビルマなり、また将来ほかの国ともそうなるかもしれませんが、大体米を唯一の大きな輸出物資として考えておる国々に対しては、貿易をやる上からいいますと、相当量の米をこちらが買わなければ、向うも日本の物を買い得ない状況でありますから、この点は他国から麦を輸入しますにあたりましても十分考慮を加えております。さしあたりのところ東南アジア方面からの米の輸入を減らすという計画は持つておりません。あるいは場合によつてはもつとふえるのではないかとも考えておるようなわけでありますが、ただ外貨の事情がありますから、そうどんどんというわけにも参りますまい。しかしお話のような東南アジアに対する貿易の関係からいいましても、またこれらの国々の経済の自立という関係からいいましても、日本において相当量の米を買いつけるということが、この際とにかく必要なことと思います。将来別な方面にこれらの国々が転換すれば、これは別でありますが、お話の点はわれわれも同感でありまして、十分意を用いて行くつもりでございます。
  69. 上塚司

    上塚委員長 次は並木芳雄君。
  70. 並木芳雄

    並木委員 先日の本会議における大臣の提案理由の説明、またわが党の喜る議員の質問に対する答弁、それからその他の委員質問に対する答弁、あるいはこの委員会における質疑を通じて私が感じましたことは、大臣としては実に苦しそうである。お気の毒なくらい苦しい答弁をしていらつしやるということであります。これはせんじ詰めれば、最初から私どもが指摘をしておりました通り、保安隊は軍隊ではないのだ、軍隊はつくりません、憲法は改正いたしませんということを主張しておったために、その無理がここへしわ寄せして来ておると思うのであります。今までの質疑を通じましても、なお釈然としたい点がございますので、たとえば海外派兵の問題にいたしましても、あるいはMSAと防衛計画とは関係がないという点についても、あるいはまた経済援助の点についても、これは与党の委員からさえ質疑をされたくらい、かつて大臣の所説と今日の結果とはかわつて来ております。そこで私はまず大臣に、海外派兵について、なお釈然としない点をお尋ねをしたいと思うのであります。いろいろ大臣は今まで海外派兵は日本が自生的にきめるものであつて、これを協定の中に織り込むことはおかしな話だというふうに言われております。そういう点は私もわかります。またMSA協定からそういうことが生れて来るものでないということもわかるのです。わかりますけれども、協定自体の文字からは生れたくても、このバック・グラウンドというものがあるのであつて、このアメリカの対外政策というものの流れを静かに見ておりますときに、どうしてもこのMSAというものが集団安全保庫とりきめへの第一歩であり、やがては軍事同盟なり、攻守同盟なりを結び、あるいは地域同盟を結んで、その義務として日本が海外派兵へ追い込まれて行く、そういう運命の第三少ではないかという疑問が出て来るのであります。そうでないならば、なぜ大臣はこの間の調印式の日にアリソン大使との間でああいうあいさつをされたのでありますか。私は大臣のあいさつは、いかにもこちらからとりすがるような感じがしておつたと思うのです。何とかして海外派兵ということがないのだということを表現してもらいたい。ところが向うのアリソン大使の方はおちついたもので、承つておく。これは何もMSA協定の文字から出て来ないから向うはおちついております。将来の問題だからであります。そこで大臣にお尋ねしたいのですけれども、どうしてああいうあいさつをされたのです。もしああいうあいさつをすることができるくらいならば、交換公文の中に拝啓一筆啓上仕り候で、今度の協定に閣連して、将来こういうことは絶対ないのだということをおとりきめにならなかつたのでありますか。
  71. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはたびたび申しますように、今並木君もおつしやつたように、この協定からはそういうものは出て来ないのでありまして、またアメリカの法律を見ましても、兵力提供を義務づけるような点はどこにもないのであります。従つて何もないものを協定の中に入れるということは、これはどう考えても協定のかつこうからいつておかしいのであります。協定の中には入れるわけには行かない。ただ国会の論議を見ますと、並木君などはそうでもないのですが、社会党の諸零は、これでいかにも海外派遣があるかのごとくに見ておられる。いくらないと言つても、海外派遣があるのだろうというようなことを盛んに言つておられますから、そこで協定の中に入れるのは非常におかしいけれども、あいさつならばこれはその協定じやないのですから、その中にはつきりわれわれは海外派遣ということは然全考えていないのだということを入れることはさしつかえない。また国民もその点は何となく心配しておりはしないかと思いましたので入れたのでありまして、私は前から委員会等で、これは協定の中に入れるのはおかしいから、何かほかの方法たら考えてみようということも質問があるたびに言つておつたのであります。そのほかの方法として、このあいさつの中に入れた、こういうことであります。
  72. 並木芳雄

    並木委員 何となく国民の間に疑問がある、あるいはまた協定に入れるのはおかしい、だからあいさつにしたのだというけれども、そこのところが大臣としてきめだまを持つていないわけです。ほんとうに問題にならないことであるならば、大臣はわれわれ国民の前にあくまでもわかるように納得せしめるのが役目だと思う。それをこともあろうに向うの方に向いて――たとえばおつかない奥さんの前で夫が友達と二人で今度金が入つても二ばい飲みに行かないことにしておこうというあいさつをしておると同じだ。そこに証文か何かあとに残るものがなければ、どうしてあとに続く両国の政策を拘束することができるのですか。あいさつは今の大臣のお話の通りあいさつたらさしつかえなかろう。これはまつたくあとから何らの拘束力を持たないものである。しかし、まあああいうあいさつをされる以上は、現吉田内閣及び向うのアイゼンハウアー内閣が続く限りは、そういうことはないでしよう。しかし、あとに拘束力を持たない。そういう点でやはり疑いがあるということを大臣もみずから気がとがめておる。大臣つてほんとうに百パーセント自信があるかどうかは疑問だと思う。だからこそああいうあいさつに出たのだろうと思う。その点もう少し私が今疑問に思つておるところを国民の前に、今度はこつちに向いて、はつきりと言つていただきたいと思います。まだ釈然といたしません。
  73. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 委員会の論議をごらんになれば、協定の中に海外派遣はないのだということを入れるべきだという疑問が非常にあつたのであります。そのたびに私はそんなことはおかしい。自分の国のきめることをよその国に保証してもらうようなそんな不見識なことはいたしません。ただそんなに心配があるならば、何かの方法でこの点の政府の態度なりを明らかにいたしましょうと、こう申していたことは、まさか並木君もお怠れではないと思います。その一番軽い方法としてあいさつの中に入れたのです。今おつしやつた第二の点で、ここに何も書いてないから政府でもかわれば義務づけられるのではないかということですが、海外派遣のようた重大な問題は、はつきり積極的に書いてたければ、どこの政府もそういう責任を負つたりそういう義務を負つたりすることはいたしませんし、相手の国もはつきりそこに書いてない以上は、それを他国に対して義務づけるようなことはできないのが当然でありまして、将来日本の国の政策として自主的に海外派遣をやるとかやらぬとかいうことを考え、議論されることは自由でありますが、アメリカ側がここに何も書いてないから、お前は海外派遣の義務が実はあるのだ、そういう議論はとうてい立ち得るものではないと思います。また日本としても書いてないことを義務づけられるということはあり得ないことであります。これは明敏なる並木君は十分おわかりだと思います。
  74. 並木芳雄

    並木委員 言葉じりになるのですが、この協定からすぐに義務づけられるということが出て来るということはない、これは私もさつきから言つておるわけ次のです。これが将来そこへ行く人口ではないか、第一歩になるのではないかということで、大臣もほんとうにその心配があるというたら、あるようにわれわれの前に示していただきたいと思うのです。政府の方針として、集団安全保障とりきめを結んで、海外出兵をしなければいけないということを認める政府が出れば、それは何も禁止すべきことではないのですから、これが第一歩ではないでしようか。たとえば今度の協定の第八条にあげられておる義務を見ましても、「国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること」、そういうような文字が入つております。また同じく第八条の中に「自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、」と書いてあるのです。これは自国の防衛力の発展及び維持だけではございません。ここに新たに自由諸国の防衛力の発展及び維持に寄与しということまで出て来ておるので、こういう条項が抽象的であればあるほど、具体的に出て来る義務というものが、案外拡大されて来るのではないかという疑問を持つておるわけなのです。だからそういう背景というものは全然ないのかどうか。このMSAというものは、全然そういうものではないのだという説、明がつく自信がおありになるかどうかという点なのであります。特にこの際指摘したいのは、平和条約第五条(C)の一番しまいのところへ持つてつて日本は集団安全保障とりきめをすることができる、こういうことが承認されております。これはかつての六月二十四日、二十六日の岡崎・アリソン交換公文においては触れておらないのです。あの文章は、日本には固有の自衛権、集団的な自衛権があるというところで切つております。そのあとに集団安全保障とりきめができるということがついておるのです。あるいは私はあれを故意に切り捨てたのではないかとさえ今臆測しております。つまりMSAによつて第八条による義務を負い、やがては平和条約第五条(C)の一番終りに書いてあるところの集団安全保障とりきめへも進んで行く道がここに開けて来たのではないかと思う。平和条約のころは、まだ日本に自衛権があるかないかというような議論が行われておつたときですから、いわばその中から頭をもたげる権利があるのだということの確認が目的でございました。従つてそれはいわば非常に消極的な場面で、われわれむしろそういう権利があるということを獲得することに汲々たるときであつたと思うのです。今日は逆にそういう権利を認められて、その裏が來て、義務づけられて、その義務づけがMSAによつて第一渉となり第二歩となつて行くのではないか。そうすると、あらためてこの五条(C)項の末端の、集団安全保障とりきめとはつきり言つていることなどがいろいろに具体化されて来るのではないか、その点について大臣にお尋ねしておきたいのでございます。
  75. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今申しましたように、海外派兵ということは非常に重要な問題でありますから、協定中に明らかにその点が書いてなければ、義務を負うものでないことは、これは並木君もお認めになつ通りであります。そこでそういう重要な問題でありますから、抽象的に書いてあることから義務などの生ずるわけはないのであつて、海外派兵をするかしないかということは、協定とは全然離れて、一に日本政府なり日本国民なりが決定する問題でありまして、これはお話のように、将来全部の国民が海外出兵をした方がいいと言えば、政府はそういうことにするかもしれません。しかしそれはそういう場合のことであつて、いずれにしても、協定自体からそんなことは何も出て来ないし、また協定の背景からも何も出て参りません。一にこれは日本政府及び国民の定めるところであります。それ以外の何ものでもないことを明らかに申し上げておきます。
  76. 並木芳雄

    並木委員 それでしたら、ただいま私があげました第八条の「国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること」、それから「自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、」ということは、具体的にどういうことでしようか、少し説明をしていただかないとわからないのであります。
  77. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 具体的にと申しましても、初めの国際緊張緩和の措置というのは、その緊張の種類によつていろいろ違いますが、たとえば非常に卑近な例をとつてみますれば、濠州のアラフラ海の、国際紛争と言えば言えるものが一つあるわけです。これについて、日本が武装した船を持つてつて日本の漁船を保護するというような措置はとらないで、これは国際司法裁判所にかけるということによつて国際緊張を緩和したわけであります。その他にもいろいろありましょうが、いずれにいたしましても、国際連合の精神からいいますと、これはすべて平和的手段によつて緩和する。が、具体的に今度は国際緊張の種が出ないようにも努力するということであつて、それ以上のものを含むものではありません。  それから自由諸国の防衛力を発展維持するための寄与をする、これはもちろん日本の政治的、経済的の条件の許す範囲内でありますけれども、これも、たとえば日本の人聞を向うへ持つてつて、向うの防衛力の増強に寄与させようなんということは考え得ないことであります。ただいま日本の経済的、政治的に認め得る範囲内で処置する。たとえば域外買付の注文に応じまして、兵器を供給するとか、あるいはその他の技術的な提供を行うとか、こういう種類のものを出ることはできないと考えます。
  78. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 関連して。言葉のニユアンスの問題があります一れども、私は今の並木委員質問で指摘されたけれども、ちよつと惜しかつたと思うのです。第八条の「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、」――英語で言うとマン・パワー、これを外務大臣はどう解釈なさいますか。マン・パワーという言葉が人力という言葉で来ていますが、人間の力ということは、俗語でいえば海外派兵、海外出兵――人間だけを出すのは、私はマン・パワーだとは思わない。同時に大臣は、この条約協定には示さないのだと言われるが、おそらくあなたの答弁で行くと、きよう審議される防衛庁設置法案と自衛隊法案に関して、実は改進党は海外派兵せずということを要求したのみならず、そのほか二つの条件がありますが、そのことはあなたは御存じのはずだと思うが、そうすると、外務大臣は、MSA協定の方のときだけこのマン・パワーという言葉に対して、外務大臣だけしか知らないようた解釈の仕方をしておられる。私だつてあなただつて教育は違わないのだから、あるいはぼくの方が高いかもしれぬけれども、どうもあなたは並木君の指摘した通りのものを持つている。自由党の諸君の三党防衛折衝の裏をここで私は何も出そうとはしません。しませんが、このマン・パワーという言葉は表面からどう解釈するか。  もう一つは、協定の中で、根本精神にそういうことはないのだから、軽くあいさつに出したのだというけえwども、あいさつにしても、アリソン大使の、海外派兵を求めずとか、期待せずというのと、外務大臣岡崎勝男の、海外派兵せずとの間における言葉のニユアンス的ウエートというものは非常に違つている。そこで心理的な質問なのですが、言いかえれば、コナンドイルのインダクテイヴイリイに聞くわけですが、その点について並木君にもつと親切な御答弁を願います。
  79. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一に、日本の国内の法律において海外出兵をするとかしないとか書かれることは、まつたくの自由であります。日本の国内の考え方でありますから、先ほど申したのと、私の言つたのと、少しも矛盾しない。協定とは別問題であるから、これはどちらにおいてもさしつかえないわけであります。  第二に、マン・パワーという宇は、これはアメリカMSA法の中にある言葉をそのままとつたものでありますが、いずれの国でもこれだけの文章を入れておるのであります。念のため確かめて、さしつかえないと思いまして、とつたのでありますが、これは国内の、今ならば保安隊ですが、将来は自衛隊になる、これがふえるということも、もちろんこの中に含みましよう。それから工業、軍需産業等に対する人員の増加ということもありましよう。それから海外の自由諸国に対してはどうなるかと申しますと、これは政治上、経済上という点で念を押してありまして、国によつては海外派兵もできる国もあるわけであります。たとえば北大西洋同盟国などはお互いに兵隊を出すということもあり得るのであります。それはその国の政治上、経済上の関係でありまして、日本におきましてはそういうことはないし、またこれはその国々で定めることでありまして、海外出兵ということがこの文字の中に入つて来ることはたいということははつきりいたしております。
  80. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 外務大臣にお尋ねいたします。あなたは簡単に、アメリカMSA法の中にある言葉だからそのままとつたとおつしやる。それでは、これはへりくつになりますが、アメリカMSA協定のいわゆるテイピカルな――典型的な文字の中に、海外派兵とあつたらあなたはそれをおとりになりますか。
  81. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは前に提案趣旨の説明のときに申しましたように、日本においては特殊の憲法の規定があり、特殊の政治形態があるのでありますから、MSへ協定を結ぶ前にこの点はいろく確かめて、それでこの憲法その他の法規と矛盾したいで、この援助を受け得るかどうかということを確かめたわけであります。もしあなたのおつしやるように、この中に海外派兵という文句ありとしますれば、われわれの結論は、おそらく援助を受け得ないという結論になつたろうと思います。この場合はさしつかえなしという結論に達しましたので、援助を受けることになつたのであります。
  82. 中山マサ

    ○中山委員 関連して。
  83. 並木芳雄

    並木委員 私の承諮を得なければ困りますよ。そのために遠慮しているのですから……。
  84. 上塚司

    上塚委員長 関連質問ですから……。中山マサ君。
  85. 中山マサ

    ○中山委員 私はアリソン氏のごあいさつをラジオで聞いておつたのでありますが、その点で少し光を与えるのじやないかと思いますから、ここで一言述べさせていただきますが、日本に来ているいわゆるアメリカの、日本の防衛、日本の自衛のためにおるところのマン・パワーを少くするためにあるものである。いわゆる今大臣がおつしやいました海外派兵でたくて、アメリカ日本を守つていてくれるそのアメリカ軍のアメリカヘ帰るこれが第一歩となるというようなあいさつを私は聞いたのでございます。この点少しその問題に光を与えて、海外派兵なんということはないという証拠になるのではないかと私は思いますが、外務大臣どうですか。
  86. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 おつしやるようなことは確かにアリソン大使は申したのでありまして、この協定によつて日本国内におけるアメリカの軍隊が引揚げる時期が一歩近づいたと思うということを言つております。言つておりますが、今喜多君などのお疑いになつている点は、それとは少し違うのでありまして、このマン・パワーという字が、自由諸国の防衛の発展の中にも含まれて来るから、そこで自由諸国の防衛発展のために、日本のマン・パワーを供給するような約束になつていやしないかという御質問だろうと思うのであります。その点は、この文字は、その解釈はそういうふうにもたり得るかもしれないわけでありますが、われわれはその点を十分確かめまして、それでまずこの海外派兵ということはどうやつたつて、これははつきりした義務を負わない限りは、日本政府なり日本国民なりの独自にきめる問題でおつて、明確た義務条項がたい限りは、そういうことはこの文字からは出て来ないということと、それから経済的、政治的のコンデイションのもとにこれはやるのでありまして、日本の政治的の条件というものは海外派兵を認めておらないのでありますからして、これはでさたいことであります。この両方にひつかかつておりますけれども、さらに重点は、これはもちろん国内の防衛力の増強にあるのは当然でありまして、従いまして、これらの点については、海外派兵ということはこの文字からはとうてい出て来ないということをわれわれは確信を持つているわけであります。
  87. 並木芳雄

    並木委員 いろいろ大臣は今答弁されたが、質問の整理上、ああいう関連が出てしまつては困るのです。  ただいま私の方の喜多委員から関連質問がありました通り、またそれに対する答弁によつてもわれわれ釈然しないところがあるように、やはりこれ自体からは出ないにいたしましても、政治上の力の関係、また私どもがこれによつてアメリカから恩恵を受けるというような関係、そういうことから、その条約上の法的の責任は出て参らなくとも、一種の何と申しますか、よく言う義理とかなんとかいう言葉で当るかどうかしりませんが、そういう道義的というか力に押されたところの責任というものが加重されて来るのではないか、これは私は大臣も率直にお認めになるのじやないかと思うのです。たとえばアジアはアジア人同士で処理せしめよ、アジア人で戦わしめよ、こう言つてアメリカ人が血を流す手はないじやないか、税金を払つてまで戦わせる手はないじやないかという議論、これなんかもやはりわれわれの脳裡には忘れることのできない一つの背景をなすものではないかと思うのです。そういう点について、今までは日本は有効なる自衛の手段を持つておらなかつたので問題にならなかつた、それだけのことじやないかと思うのです。ところがだんだん成長して参りまして、大人になつて来たから、今度は一人前の社会人としておつき合いをしなさい、これがこのMSAではないか、こんなふうに感ずるのです。そうでなければ、先ほど申しました平利条約第五条(C)の最後の、お仲間入りをすることができるという集団安全保障とりきめという文字が死文、空文に化して来ると思うのです。この点いかがですか。
  88. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはお答えが非常にむずかしい問題でありまして、この間の本会議質問におきましては、今度は逆に、この協定では何ら日本利益にならないで、アメリカのことばかりやつているじやないかというような質問が社会党から非常に出て来たので、片一方ではアメリカから恩恵ばかり受けておるから、何か義務を感じやしたいかということと、片一方では何もこちらの恩恵はなくて、アメリカの傭兵みたいなことばかりするじやないかという意見もあつて、どつちもまるで違うので、はなはだむずかしいのでありますが、私の根本的な考え方を率直に申し上げますれば、これはやはり相互援助協定でありまして、日本の防衛力の増強ということは、つまりアメリカの安全にも大きく寄与することである、こう私は確信をいたしております。従いまして、無償で兵器等の援助を受けましても、これは同時にアメリカのためにもなることであるから、何ら卑屈になる必要はない、堂々と援助を受けてさしつかえない、小麦の問題にしても円で買えるとか贈与を受けるといえば、何かこちらばかり恩恵を受けるようでありますが、結果においてはアメリカの余剰小麦をこちらでさばきをつけるのでありますから、これもやはり相互的に利益になるわけであります。従いまして、この協定にありますもの以上の道義的な義務を負う必要は何もなくて、堂々と受けてさしつかえないものであろう、こう考えております。
  89. 並木芳雄

    並木委員 大臣の口からはそういう答弁を得なければとんだことになるので、それは当然だと思います。とにかく大版の考え方というのは、自分に御都合のいいようにとつているのじやないでしようか。これは私は率直に感ずるのです。何か事態を少し表面的に甘くおとりになつている。もつと深刻なものがあるということをべールで憾しておるというような感じがするのです。  そこでお伺いしますが、平和条約第五条(C)の集団安全保障とりきめというものは、しからばどういうものをさすものと予想されますか。なお、またそういうものを今後絶対に結ばないということを政府は断言されますか。たとえば日本が一人的になつて日米軍事同盟あるいは日米攻守同盟、あるいは他の太平洋諸国との間における集団安全保障の地域的とりきめ、そういうものに絶対に加わらないということを断言されますかどうか。この五条(C)の集団安全保障とりきめというものについての大臣の見解をお尋ねいたします。   〔委員長退席、野田委員長代理着席〕
  90. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この五条の(C)項は、もう読んではつきりいたしますように、日本国が集団安全保障とりきめを自発的に締結することができることを是認する、要するに日本がそういう権利を持つことを認めたのでありまして、これを実行に移すかどうかは日本側の自由でありまして、たとえばこの前も問題になりましたが、自衛隊とか自衛の船隊等が領海内にだけいなければならぬのか、われわれはそうは考えておりません。公海には日本の船はどこへでも行ける権利は持つておる、行くか行かないかは日本の国民がきめる問題です。従つてこの問題もまず第一に権利であつて義務ではないのであります。やるかやらないかは、自発的にという言葉もありますように、日本側で自由にきめる問題であります。そこで日本の方針はどうか、これは現内閣の考え方としましては、海外派兵などということをいたすことはしないし、またこれは憲法その他の規定から見てもできないものと考えております。従いまして集団安全保障のとりきめというものがどういうかつこうのものであるか、これにもよりましようけれども、兵隊を外に出すというようなことが規定されるものであればこれは入らないわけであります。そういうものがないならば、あるいは経済的金融的の措置とかいろいろな方法は国際連盟以来あるのでありますが、その日本のできる範囲内のことであるならば、それはそのときの情勢によつてやるかやらないか適当にきめる問題であります。要するに憲法その他の法規の範囲内においてきめる問題であつて、絶対にやらぬとも言わぬし、やるとも言わないわけであります。
  91. 並木芳雄

    並木委員 ただいま憲法の問題が出ましたが、海外派兵を伴うようなそういう軍事行動の義務を負うような安全保障とりきめというものは、現憲法ではできないと大臣は御解釈になるのでしようか、もしそうだとすればどの条項でできないのでしようか。
  92. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は海外派兵といいますか、兵隊を海外に出すということは、今の憲法の解釈からいえば行き過ぎじやないか、こう考えます。
  93. 並木芳雄

    並木委員 どの条項で……。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは憲法の九条によりますと、国際紛争の処理には武力を用いない、あるいは陸海空その他の戦力は持たないという規定があります。それではこの規定から海外派兵はいかぬということは出て来ないじやないかという議論もあるかもしれませんけれども、これは常識的に見まして、外へそういう部隊を出すということを認めていいとしては、おかしな規定であろう、こう考えております。
  95. 並木芳雄

    並木委員 大臣はつきりした見解はないようであります。私はこの問題はやはり憲法で禁止してないのじやないかと思うのです。これは思うので、もちろんむずかしい問題ですから正直のところ確信はございません。ですからこそお尋ねもしておるのですが、私は今までの政府解釈からいつても出て来ないのじやないか。一番問題になるのは例の憲法九条の交戦権を放棄した問題だろうと思うのです。交戦権は戦いをする権利ではない、こういうふうな解釈であるならば、今の大臣の御答弁も納得行かないわけではありませんけれども、政府の今までの答弁を聞いておりますと、必ずしもそう言つておらいのです。交戦権とは戦争の場合に俘虜だとか、中立国の船舶を拿捕する権利だとか、そういうものであつて、戦闘行為あるいは戦争をする権利そのものをさすものではないというのだつたと私は記憶しております。現行憲法を改正しないで海外派兵を伴うような、たとえば軍事同盟あるいは大西洋の機構のような集団安全保障機構、こういうものにやはり加盟できるのではないかと思うのです。もう一度お尋ねいたします。
  96. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はこれは非常に困難な、むずかしい解釈をしなければ、そういうことはよほど無理な解釈をしなければ出て来ないと思いますが、しかしむしろこういう問題は私がどう言つたからといつたつてそう権威のあるものではありません。最高裁判所の決定が一番必要なわけであります。あるいは新しい立法例をつくるか何かはつきりしたことがたければ、水かけ論に終るだろうと思います。そういう必要がありますれば、国会においてはつきりした解釈を何らかの方法でとられるということも一つのやり方でありましよう。私は海外派兵を認めておるというふうに解釈するのは相当無理があろう、こう思つております。
  97. 並木芳雄

    並木委員 この点は非常に大小だと思います。それで法制局の方からも、一応ここで法制局の長官としての見解を、ただいまの私の質問の点に関して述べておいていただきたいと思います。
  98. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ちよつとお断りいたしますが、法制届長官は他の委員会に出ておりますので、収でよろしければかわつてお答えいたします。
  99. 並木芳雄

    並木委員 よろしゆうございます。
  100. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 海外派兵の問題でございますが、これは御承知通りに第九条の第一項では「国際紛争を解決する手段としては、」ということがございますので、このためにできないことは申すまでもなく当然なことだろうと思います。そこで自衛のための一種の行動等につきまして問題になろうかと思いますが、それもしばしば政府から申し上げたことがあると思います。第一項では禁じられておらないけれども、第二項の交戦権にひつかかるおそれがあるであろうということもかつて申し上げたことがございます。そういうような関連から申しまして、ただいま外務大臣が仰せになつたこともその辺に関係のあることであろうと考える次第でございます。
  101. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと要点がつかみにくかつたけれども、要するに結論を出すのはむずかしいという大臣の答弁であつたのですが、それでむずかしいということはどつちかに決定するのはむずかしいが、しかしこの条文があるためにそういうとりきめをすることもまたむずかしいだろう、こういう大臣の答弁のように受取りましたが、断定的たものではないことは事実なのですか、そう了解してよろしゆうございますか。
  102. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 結局外務大臣が仰せになりましたように、この海外派兵ができるかできないかということは、国際紛争解決のためにできないことはこれは当然である。それから自衛行動のためにどこまでできるかという問題がありますが、それも交戦権の関連からいつてこれはできないであろう。ただ一つ残りますのは一種の制裁的なものについてどうであろうかという問題が残ることは残りますが、その点については学界でも両説ございますし、政府としてもそういうような場合について、いかに考えるかということについての差し迫つたこともございませんために、特にその点について政府の見解としてまとめたものはないのじやないかと私は思います。しかしいずれにしましても、ただいま並木委員が仰せになりました点の、確定的にどうであるかということをただ今申し上げるのは、むずかしかろうということにおいて外務大臣と同じでございます。
  103. 並木芳雄

    並木委員 そこで大臣にお尋ねをいたします。MSAの母法にアメリカと結ぶ二国間の条約あるいは多数国間の条約によつて負うところの軍事的義務を遂行するということが書いてあります。今度は大臣交渉がうまかつたのかどうか知りませんけれども、その通り引用しないで、この協定の八条には「自国政府日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行することの決意を再確認する」という文字にかわつて来ております。これはどうして大臣は元通りここへ引用したかつたのですか。日本国民の前に不忠実はなかつたかと思うのです。MSAの母法はこうだ、しかし何もこれは政府としては現在ある日米安全保障条約で足れりと思つておるので、これは将来アメリカとの間で別の軍事同盟が結ばれる、あるいはまた他国との問で集団安全保障とりきめが結ばれる、そのための規定である、こういう説明をして行けば入れてもよかつたわけなのです。しかしこれは国民及び政府がきめることなのだから、政府としてはそういう意思はないのだ、こういうふうにすればよかつたのですけれども、ここでうまくあの条項をかえてしまつて、あたかも安保条約で負つている軍事的義務だけでいいのだというふうに、非常に安易な気持を抱かせるようにすりかえられておるのであります。ですから私は、やはりMSAの母法にある二国間の条約あるいは多数国間の条約というものが、今後MSAというものを通じて結ばれて行く第一段階に踏み出したという意見を、どうも捨てることができないのであります。御説明を求めます。
  104. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはわれわれも交渉の経過においても確かめました。前にも確かめたのでありますが、これは現にMSA援助を受ける国が負つております軍事的義務をさしておるのであつて、従いまして今後どういう条約を結んで、どういう義務を負うかということは、この点では言つておられないのであります。従いまして現在日本が負つておる義務だけを履行すればいいので、従つてそれを明確に出しますれば、現在の日本が負つております軍事的義務というものは、安全保障条約に基くもの以外にたいのでございます。従いましてこれをはつきりするために、安全保障条約に基いて負つておる軍事的義務、こう明確にいたしたのであります。
  105. 並木芳雄

    並木委員 それもだから私はよけいなことじやなかつたかと思う。書かなくてもいいようなことじやないですか。わかり切つたことでしよう。ほかに何もない、安保条約しかないのだということになれば、ことさらこの中に入れなくても私はよかつたと思うのです。それはないのだから、ないものに対して政府はほかの条約を結ぶ意思もない、政府がきめる、国民がきめることであるのだからという見地に立てば、この条文はさつきの、大臣のアリソンあいさつのときの答弁の歩調と合わないと思う。ここはやはり原文のまま、二国間の条約あるいは云々というものを引用すべきであつたと思うのです。この点納得が行かないのであります。
  106. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは初めから申しましたように、MSA協定というのは世界の大多数の国に向つて考えた法律でありまして、それに基いた協定でありますから、世界の大多数といいますか、日本を除いたほとんど全部の国といつてもいいくらい、全部の国が軍隊を持つておるわけであります。従つて軍事的義務というのは、よその国においては非常に楽に考えられる問題であります。ところが日本の場合は、軍隊といいますか、戦力を持たないという建前でありますから、そこで軍事的義務という字が卒然と出て来ますと、それこそこれは陰に何かあるのだろうという議論が非常に多くたつて来る心配があり、そこでわれわれも交渉の初めにおいてこの点をはつきりさせなければいかぬと思つたくらいであります。日本の場合は、軍事的義務という字は法律の中に書いてあるのでありますから、これは入れることはよろしいが、その軍事的義務というものは何であるかということを特に明らかにしておかなければ、こういう委員会において、それこそお前の腹の中にほかのものがあるのだろうといつて、ぎゆうぎゆうやられる心配がありますから、これは特に明確にいたしたのであります。
  107. 並木芳雄

    並木委員 しかしそれは、さつきの大臣の海外派兵はやらないのだという説明は不要であるという見地から見れば、ただいまのことも不要ではなかつたかという感じを受けるのです。今の大臣の言葉の中に、よその国では楽だ、しかし日本では苦しいのだ――なるほどMSA援助を受けておる国が大部分軍隊を持つておるということは、本会議の答弁で大臣は言われております。だから軍隊を持つていれば楽だ、しかし日本はたいから苦しいのだ、こういうことでしよう。しかしこれは解釈の違いもありましようが、私どもは今の政府のつくつておる保安隊はすでに軍隊であるというふうにきめつけております。ましてや今度自衛隊にかわつて参りますと、これはだんだん政府としても軍隊でないと言い切れなくたる。日本は苦しいばかりじやなく、苦しいところからだんだん楽になつて来るのじやないか。つまり名前は何であろうとも、実際は軍隊というものを持つ方に近づきつつある。それを助けるのがこのMSA援助である。そうすれば今の大臣の答弁は、きようはいいかもしれないけれども、幾日がたつて来ると、もはや日本は苦しくたくなつて来た、楽にたつて来た、だから軍事的義務のとりきめにも賛成ができるのだという段階になるのじやないでしようか。
  108. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはどうも私にはおつしやることがよくわかりませんが、少くともここに書いてあります軍事的義務というのは、これから結ぶものまで含んでおるのじやないのでありまして、現にこの協定ができておるときに日本が持つておる軍事的義務で私りますから、将来どういうことが起ろうとも、それはこの中に入つて来ないのであります。限定されておる、つまり今負つておる義務、こういうことにたります。
  109. 並木芳雄

    並木委員 それはまた繰返しになつてしまうのであります。今はそうですが、これからMSA援助を受けることによつて、だんだんとそういう方向に近づいて行くのじやないでしようか、こういう疑問です。たるほど現在安保条約しかないのです。集団安全保障的なものはこれきりないけれども、アメリカの方ではそういうことを期待しておるのじやないでしようか。日本はこれが軍隊ではない、憲法違反ではないといつてつても、アメリカの方ではもう先刻これは軍隊であるとのみ込んでおるし、将来はだんだん日本が重要たる役割を果して、そうして軍事同盟的なもの、あるいは攻守同盟的なもの、軍事的義務を堂々と果すことのできるものにかわつて行く、それがとりもなおさず自由諸国の防衛力の増強並びに維持に寄与するのだ、そういうふうに貫いて行かなければ、どうしてもこのMSA援助というものは趣旨一貫して私どもは了解がつけがたい。こういう点なのであります。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 非常に御心配のようでございますが、この点につきましては私の言つたことは問違いがありません。つまり何というか、今後何か新しい義務とか、新しい協定を結んだりして、義務を受けるとか、負うとかいうことは、この協定からは何も入つて来ないのであります。今すでに負つておる義務以外にはないのであります。これは向うの法律を見ますればはつきりいたします。「ザ・ミリタリー・オブリゲーシヨンズ・ホイッチ・イツト・ハズ・アシユームド」と書いてございます。それから日本の今回の協定におきましても同様でありまして、「ザ・ミリタリー・オブリゲーションズ・ホイツチ・ザ・ガヴアメント・オブ・ジヤパン・ハズ・アシユームド」こういう字が使ってありまして、非常に文章の上に明確になつております。
  111. 並木芳雄

    並木委員 安保条約に基いて負つておる軍事的義務を負うだけだといつて次の第九条で、「この協定のいかなる規定も、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約又は同条約に基いて締結された取極をなんら改変するものと解してはならない。」と書いてあります。これも大臣にお尋ねいたしますが、これもよけいたおせつかいでなかつたかと思います。普通何か改変した場合に、法律体系としては、あるいは条約体系としては、ここをこういうふうに読みかえるとか、こういうふうに解釈するというのですけれども、「改変するものと解してはならない。」ということも、わざわざここで断る必要はないので最初に申しましたように、今度の協定は実に苦しい、大臣の説明も苦しそうだというのは、こういうところにも出て来ておると思う。ところがこれはかえておると思うのです。安保条約の自衛力漸増は期待でございました。しかし今度このMSA協定では第八条によつて義務になつて来るのでありますから、せつかく九条で安保条約のとりきめを改変するものではないといつておるけれども、実際はかわつておると思うのですが、この点はいかがですか。
  112. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ちよつと少し並木君の方がこじつけだと思うのです。安保条約でとりきめてある規定といいますのは、はつきりしたとりきめであつて、たとえば第一条から第四条までかくかくのことをするとはつきりしたとりきめを申しておるのであります。それ以外に、安保条約では期待となつておるが、今度は期待でなくて義務にしたとかなんとかいうことは、これは安保条約のとりきめを変更したということにならないのであつてはつきりした約東のある第一条、第二条、第三条というものの内容をかえればそれは変改になりましよう。それ以外のことは、これは変改にはならないと思います。
  113. 並木芳雄

    並木委員 それでは、ただいま私が申したかわつているということは、大臣はお認めになりますか。安保条約で期待であつたものが、今度ははつきり義務にかわつて来ているということはお認めになりますか。
  114. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは認めます。
  115. 並木芳雄

    並木委員 次に私はMSAと防衛計画との関係についてお尋ねをいたします。大臣最初から、MSAと防衛計画とは関係がたいとは言わなかつたけれども、防衛計画を出すことは必要条件ではないということを言い張つておりました。今日はかわられたと思つておりましたけれども、この間からの答弁ではなおかえておりません。しかしそういうことが考えられるのでしようか。防衛計画というものを出さずにMSAの援助を受けるということは、私たちには考えられない。ですから、早く長期防衛計画を立てて先方に示すべきだということを言つて来ておつたのでありますけれども、いまだに大臣はその見解をかえずにおられるのですか。私はその見解はやつぱり聞違いであつて大臣はこういうときには率直に自分の認識不足であつたということを言つた方が、かえつて国民は大臣の言を将来信用するのじやないかと思う。どうも先ほどの答弁を聞いておりますと、経済的利益ということは言つたことがあるけれども経済的援助ということとは違うのだというようなことで、われわれは大臣の言うことをどこまで信用していいかわかりません。これからの一言隻句に耳を傾けて、そうしてそれが将来どういうふうにかわつて行くのじやないかということを予想しながら説明を聞いてないと、まつたく困るような状態になつて来たわけなのです。そこで私は、大臣は今日の段階に至つても、なお長期の防衛計画あるいは防衛計面というものが条件でないとお考えになつておるのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  116. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 どうも前言を翻すように言われまして、はなはだ申訳ないのでありますが、私は前からこういうふうに言つているのです。防衛計画これは長期とも短期とも言つておりませんが、防衛計画があればそれだけ便利であろうけれども、防衛計画なるものはMSA援助を受ける必須の条件ではございません、こう申しておる。これは今でもその通りであります。アメリカ側でも、実は毎年新しい予算によりまして援助はきめるのであつて、これはもちろんそう毎年々々非常にかわることはありませんけれども、形の上からいうと一年ごとに援助はきまるものであります。日本側におきましても、りつばな計画があつて、ここでこうやるのだということがきまつておれば、さらに非常にやりいいでありましようけれども、それがなければMSA援助は受けられないというものではないのでありまして、現に本年の計画によりましてMSA援助は供与されることになつておるのであります。この点は依然として必須の条件ではない、こう考えます。
  117. 並木芳雄

    並木委員 日本で立てた防衛計画通り向うで装備、質材、役務、そういうものが供与されなかつた場合には、そこに非常なちぐはぐが生じて来ると思います。二十九年度の防衛計画についてそういうちぐはぐが生ずるおそれはありませんか。大臣の答弁を聞いておりますと、防衛計面は必要条件ではないのだというのでありますから、従つてこちらの防衛計画通り完成兵器なり、資材なり、そういうものが供与されるとは限つておらないわけなのです。もしその通り供与されないでそのに不一致に生じた場合に、政府はどういうふうにされるつもりですか。防衛計画というものを変更されるつもりですか。あるいはそれに不足するものは日本の国内で生産をして、防衛計画通り遂行するつもりでありますかどうか。
  118. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは保安庁で研究されるべき問題であつて、保安庁側でアメリカの持つてないものをよこせとか、あるいはとてもくれそうもないものをよこせと言つた場合には非常にむずかしいでありましようが、今のところではMSA援助に関する限りは、保安庁側の希望するものが、こまかいところは別としまして、大筋において何ら支障なく提供されるものと、われわれ交渉の任に当つている者の関係からいえば、信じております。問題は大きな船のことにたりましようが、これはMSAで、千五百トンですか、その程度に限られておるようでありますから、それ以上の問題になりますとちよつとMSAを離れますが、それでは実際と合わない場合にどういうふうにやるか、これは保安庁の方で研究されておると思います。
  119. 前田正男

    ○前田政府委員 ただいまの大臣の御説明に補足して申し上げますが、私たちといたしましては、二十九年度の増強計画に対しましては、昨日福田委員の御質問にお答えいたしました通り、供与に対しまして現在交渉中でありまして、大体その程度のものは供与を受け得るものと私は確信いたして交渉しております。今大臣の最後に述べられました千五百トン以上の船につきましては、MSA関係と離れますので、別に船舶協定のような形式のものを設けまして、国会の承認を受けることになると思います。昨日申し上げた通りでございます。
  120. 並木芳雄

    並木委員 なお質問を続けたいと思いましたが、時間がたいようでありますから残余の点は留保いたしまして、ごく簡単なことだけ二、三お尋ねしておきたいと思います。  この防衛計画の交渉にあたつて、特にアメリカ側から、こういう点に重点を置くべきである、あるいは地上部隊、空軍、海軍というような点について何か希望というか申出がありましたか。その内容について承りたいと思います。
  121. 前田正男

    ○前田政府委員 別にこれという強い希望のものはないと思いますが、意見程度のものはあつたと思います。私は、この防衛計画というものは、日本側でつくるものでありまして、別にアメリカの希望でつくるものではないと考えております。従いまして、アメリカの希望がどうであろうと、日本としては関係がないと考えております。
  122. 並木芳雄

    並木委員 なぜ私がお尋ねするかというと、これは大臣にお尋ねすることになりますが、安保条約がいらたくなる時期、つまり米軍が撤退する時期、そういうようなものについて、やはりアメリカとしては一応めどを立てておるのじやたいですか。つまりアメリカ日本から撤退する時期、またそうすれば安保条約もいらなくなるわけであります。ところが先日来、安保条約はいらたくなることはない、ずつと続いてあるのだというような答弁です。これはだんだんと日本の防衛力が増強されて行つて米軍と交代するのだ、米軍がいらなくなる、安保条約がいらなくなる、そういう段階をわれわれは予想しておつたが、その線と大臣の答弁は違うわけですが、いかがでしようか。
  123. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はやはり自国の防衛を自分の国だけで完全にやつてのけるということは、よほどむずかしいことだと考えております。安保条約は、実は第何条でしたか、一番しまいの方にあるのには、アメリカの軍隊が撤退すればなくなるとは書いてないのであつて、これにかわるべき集団安全保障の措置ができるとか、世界の平利がどうなるとかいうようなことによつてこれはなくなるというふうに書いてあります。すなわち「この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平利と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」こう書いてありまして、これはもちろん日本の防衛力がふえればアメリカの部隊はみな撤退してしまいます。しかしそれで日本の安全が確実に守れるかと申しますと、この安保条約でなくとも、何らかの集団的な保障措置が必要なのじやないか。アメリカの部隊がここにおりましても、よその国から侵略を受けたときにこれを守り得るだけの力かどうかということは、これはなかなか判断がむずかしいわけでありますが、アメリカのここにおる部隊の背後にアメリカの厖大な国力があるということが、侵略をあらかじめ防いでいるわけでありますから、そういう趣旨で、将来アメリカ軍隊がみないなくなつても、何らかの安全保障措置はいるのじやないか、こう考えているのが私の申し上げたことであります。
  124. 並木芳雄

    並木委員 そういう点については、ほんとうに私も同感であります。そういう場合にアメリカ日本だけの間でしようか、それとも他国も含めたようなとりきめになるのでしようか。今の安保条約からそういうふうに引続いて行くことはいいと思うのです。
  125. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはもちろんそのときの様子にもよりますし、それから例の普通の集団安全保障ですと相互的になりますから、日本も守つてもらうかわりに相手国も守るということになる。それは、日本憲法たり、あるいは日本の国内の政治上経済上の条件にただいまのところは私は合しないと思いますから、そこで、さしあたりはこの安保条約、こう考えるのであります。将来、並木委員の言われるように憲法がかわつたり、あるいはそのときの政府が集団的安全保障に参加することがいいのだというふうに考えて、国民もそう思う場合にはこれは別でありますが、現実の問題として、日本が外へ出て行かないで相手国が日本のために安全を保障するという現在の安全保障条約のようなものが、今すぐは考えられない。従つて、私の言うのは、ああいうものがすぐなくなるということはなかなかむずかしいだろう、こういうことを考えておるのであつて、今お聞きの問題は将来でわかりません。
  126. 並木芳雄

    並木委員 しかしそういうめどが立てば、割にアメリカの撤退は早く行くのじやないか。日米安全保障条約にかわるべきものができるとなれば、たとい常時日本にいなくてもいいわけです。大分日本の保安隊も強くなるのですから、その点について、米軍撤退以後、安保条約が解消して次のものに切りかえられる時期というのは、割に早く来るのじやないかと思うのです。たとえば二年なり三年なり、あるいはもつと早いかもしれない。その点の見通しはいかがでございましよう。
  127. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 論理的に言うと、ちよつとお話の点と私の考えているのは違うのであります。つまり米軍の撤退というのは、日本の防衛力が増強すれば可能になる。しかしその場合に、それじや安全保障条約はすぐ失効するかというと、そうでない場合が非常にあるであろう。それから、集団的な安全保障の協定のようなものが有効にかりにできたとしますれば、これは日本に防衛力があるなしにかかわらず、つまり十分なる防衛力があるなしにかかわらず、この安全保障条約というものはなくなる。これは第四条にはつきり書いてある通りであります。これは日本の防衛力がどうなるかということは考慮しないで規定しております。他方日本の防衛力が増強すれば、それに従つてアメリカの部隊はなくたる。しかしそれで安全保障条約がなくなるかどうかということは、これは別問題である。こういうことになろうかと思います。
  128. 並木芳雄

    並木委員 くどいようですが、その場合に、もし安全保障条約をなくすならば、それにかわるべき何らかの集団的なとりきめを必要とする、こういうのでございますね。
  129. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 集団的のとりきめが必要にたるか、あるいは国際連合において平和維持の有効なる手段がとられる場合であるか、この二つだろうと思います。つまり、国際連合で非常に大きな警察軍でも持つてつて世界中をにらんでおつて、侵略という行為を未然に防ぐほどの力ができて来れば、これは理想的なもので、日本に武力がなくても心配がないということになりましよう。これはそのどつちかということが条約では予想してあると考えます。
  130. 並木芳雄

    並木委員 時間がなくなつて参りましたが、もう一つお尋ねしたいのは、徴兵制度の問題です。これも、今度のMSA調印を契機として巷間非常に心配が出て来ております。だんだん自衛隊というものは人数もふえて参りますし、直接侵略にも当つて行くようになつて来る。そうなつて来れば、今までの保安隊員の募集のように簡単には若人を募集することもできたくなるのじやないか、そうすると、結局、このMSA協定の自国の防衛能力の強化というような点から、徴兵制度をしくようになつて行くのではないかという懸念が出ております。これは、はつきり申しますが私どもは反対でございます。それだけにこの際お尋ねしておきたいのですが、徴兵制度というものは、しこうと思つても憲法違反であってしくことができない、こんなふうに考えておりますが、その点はいかがですか、政府はどうお考えになりますか。
  131. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府も、徴兵制度というようなものは憲法を改正しなければできないと考えております。もちろん、このMSA協定等からは、徴兵制度をしくとかしかないとかいう問題は出て来ないのであります。これはむしろ日本の国内の問題として出て来ることでありまして、今のところ政府はそういう趣旨で憲法を改正しようという考えは持つておりません。
  132. 並木芳雄

    並木委員 その点はよろしゆうございます。そのかわりに、もし自衛隊の応募というものが円滑に行かなかつたような場合については、政府としてはどういう対策をお考えになつておりますか。
  133. 前田正男

    ○前田政府委員 現在の保安庁といたしましては、もちろん憲法に違反したことをするという考えは全然ありませんから、志願制度でやつて行くつもりであります。しかし、巷間でいわれておりますように、非常に募集が困難であるかというとそうではないのでありまして、最近の様子を見ておりますと、本年除隊すると考えられております数字は、われわれが初め考えておつた数字より非常に少くなつておるという状態でありまして、従つて、そう困難になつて来ないと考えております。
  134. 並木芳雄

    並木委員 予備役制度についても、私どもは、憲法違反の疑いがあるのじやないかと思いますが、この点については、政府としては何かはつきりした所信がおありになるのでしようか。それからまた、任意退職ができないようにするということも、やはり職業選択の自由を侵すものではないかと思うのですけれども、あわせてお尋ねをいたします。
  135. 前田正男

    ○前田政府委員 予備役制度につきましては志願によりまして、また任意退職のことも、そのことを明瞭にいたしまして、志願によつて、その宣誓のもとに採用するのでありますから、何ら憲法の違反行為であるとは考えておりません。
  136. 並木芳雄

    並木委員 まだ憲法違反やら何やらの問題がたくさんありますが、本会議が一時からありますから、このくらいにして次へ留保しておきます。
  137. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行政府にこの際お願いしておきますが、今までアメリカとの間にMSA法によつて結ばれました各国の条約の例がありましたら、これを全部資料としてお示しいただきたい。それから第二には、今度の日本アメリカとの間におきます協定交渉の速記録が、もし公開できるものでありましたならば、これも拝見いたしたいと思います。それから第三には保安庁にお願いいたしますが、せんだつてまで、防衛計画全体についてはまだ策定を終つておらぬということでありますが、その後きまりました分をお示しいただきたい。同時に、それに関連いたしまして、それの基礎となります作戦計画について――特に、今度の自衛隊法によつて軍の性格がかわつて参りますが、そうなりますと対外的な作戦計画というものが当然考えられますが、それの大綱。それからその次に、今度の協定従つて日本に供与されます武器の数量を、製造年月日をつけてお知らせいただきたい。それからその次にお願いしたいのは、通産省の方がお見えになるかどうか知りませんが、もしおいでにならなかつたら、委員長からお伝えいただきたいのですが、この域外買付または小麦協定によります政府側の軍需生産計画というものが、その後立てられなければならぬと思つております。この前伺いましたときには、まだ計画が立つていないということでしたが、その後交渉も妥結したわけですから、当然お立ちにならなければならないと思います。それをお願いいたしたいと思います。  最後に、委員長にお願いいたしますが、今までの理事会におきまして、この法案が重要であるので連合審査をやるという原則はおきめいただきました。ところが各委員会ともりてれぐ重要法案をかかえまして、予定もございましようから、できますならば、来週早早理事会を招集していただきまして、たとえば内閣委員会との関係、それから農林委員会、通産委員会、法務委員会、少くとも当面考えましても、それらはどうしても必要だと思いますので、これらとの連合審査の具体的な決定をしていただきたい。理事会を至急開いていただきまして、そしてそれの具体化を要望いたします。  もう一点、委員長に申し上げておきたいと思いますのは、ただいま委員部の方から御配付いただきましたMSA審議予定というのがございまして、括弧して「三月十二日理事会」とありますが、理事会で決定という意味かどうかはわかりませんが、予定表が出ております。これは予定を一応了承したのではなくて、今ここで確認しておいていただきたいと思いますのは、各委員について一般質問一時間見当、これは必ずしも拘束されない、それからそのほかに総理に対して三十分、それから連合審査をやり、あと逐条審議をするという原則が決定されたのでございまして、この日にち、時間等については、われわれはまだ責任を持つたわけではございませんから、念のためにちよつと申し添えておきたいと思います。
  138. 前田正男

    ○前田政府委員 ただいまの御要望でございますが、なるべく国会の御要望に沿うように努力いたしたいと思いますけれども、防衛計画につきましては、長官からたびたび国会において説明いたしております通り、二十九年度の増強計画はただいまお示ししておる通りであります。三十年度の概貌につきましては、まだ未決定でございますけれども、ある程度の数字を予算委員会において説明いたした程度で、それ以上のものはまだ決定しておりませんから、提出する時期でありません。ただいままでに国会でしやべつた程度ならば提出いたします。  なお作戦計画につきましても、これはわれわれといたしまして今後新しく直接侵略に対する作戦を立てるわけでありますが、しかしながらこれはもちろん御承知通り国家の機密事項でございますから、当然提出することは因難であると思います。  またMSAにおきまする兵器のおもたるものにつきましては、昨日概略の数字をお話いたしましたが、現在交渉中でございまして、今御要求になられました、どういうものをいつもらえるかということは、全然未決定でございます。提出はできません。
  139. 上塚司

    上塚委員長 外務省はよろしゆうございますか。
  140. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま御要求の資料の最初の点の各国の例、これはお手元に差上げてあると思いますが、念のために新たに差上げることはさしつかえありません。  議事録でございますが、速記録はございませんので、従つて速記録の提出はできません。
  141. 上塚司

    上塚委員長 穗積君の御要望のうちの一つ、連合審査会の件は、これは各委員会から外務委員会に対して要望があつた場合においてこれを理事会に諮り、皆さんに諮つて、そうして決定することにいたしております。まだ何らどの委員会からもこの申出がたいのであります。こちらの方から積極的に各委員会に諮つて、そうして連合審査会を求める意図はありません。  それから日程は大体理事会において決定いたしましたから、さよう御了承願います。
  142. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私も資料をなるべく早くお願いいたしたいと思います。保安庁に今度貸与されると考えられるおもな武器と装備などの評価表、それからまたたとえばジエツト機ならジエット機一台に要するガソリン代とか、そういうふうな維持費の大体の額でけつこうですから、書いていただきたいと思います。  それから外務省の方に、投資保証協定締結しておる国の一覧表、それから各国の軍事顧問団の数とその経費の一覧表、外国が実際に受けた援助額、これは判明しておる範囲でけつこうですからお知らせ願います。それから外国の域外買付の額、そういつたものの表をお出し願いたいと思います。  それから審議予定のことでございますが、この問の理事会におきましては、吉田首相にぜひとも各党の委員が最低限三十分の質疑のできる範囲内で出ていただきたいということは要望してあると思いますので、その点も委員長、ぜひ実行していただきたいことを申し添えておきます。
  143. 上塚司

    上塚委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。    午後零時五十六分散会      ――――◇―――――