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1954-03-06 第19回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月六日(土曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 山下 春江君    理事 青柳 一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 柳田 秀一君 理事 受田 新吉君       田中 龍夫君    中川源一郎君       福田 喜東君    吉川 久衛君       村瀬 宣親君    上林與市郎君       福田 昌子君    中井徳次郎君  出席政府委員         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田辺 繁雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      上田 克郎君         大蔵事務官         (管財局閉鎖機         関課長)    岩動 道行君         大蔵事務官   森本 則雄君         大蔵事務官         (銀行局銀行課         長)      谷村  裕君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局引揚課長) 木村 又雄君     ————————————— 本日の会議に付した事件  在外資産に関する件  留守家族援護に関する件     —————————————
  2. 山下春江

    山下委員長 これより会議を開きます。  初めに在外資産に関する件について議事を進めます。現在、引揚者が帰国に際して携帯した旧日本銀行券の引きかえについて、日本銀行券預入令等を廃止する法律案国会に提出されておりますので、これについての概要説明、及び未払い送金小切手並びに在外預金処理の問題について政府金融機関再建整備法閉鎖機関令等改正予定しているようでありますが、これについての概要説明を聴取いたしたいと思います。上田説明員
  3. 上田克郎

    上田説明員 去年十二月在外財産問題調査会が発足いたしまして、すでに数回議事が進められたのでありますが、去る二月二十二日にまず第一回の答申といたしまして、引揚者の持ち帰つた日銀券処理並びに未払い送金為替及び在外預金処理、この二つの問題について意見が出たのであります。これは新聞等にもすでに発表されましたところでございますが、この意見に従いまして、政府といたしましては、すでに旧日銀券処理につきましては法案国会に提出し、御審議をお願いしているところでありまして、残りの送金小切手在外預金につきましては、関係する法令が、主要なものといたしまして三つございます。金融機関再建整備法、それから閉鎖機関令及びいわゆる在外会社令と呼ばれておりますその三つ法律改正案として、調査会答申趣旨を実行しよう、そう考えているわけであります。この三つ改正案進行状況につきましては、現在のところ、大体本月の中旬までには一応部内の手続を終りまして、閣議決定の上御審議をお願いするというふうな段取りになつております。なお、答申書内容につきましては、もしお許しを得られれば大体のことをお話ししたいと考えます。
  4. 山下春江

    山下委員長 お願いします。
  5. 上田克郎

    上田説明員 では答申書の大体の概要をお話し申し上げたいと思います。  旧日銀券処理につきましては、すでに法律案が出ておりますので、簡単にいたしますが、骨子は、税関から現在返しております、その税関の返還したという証明書をもちまして、その金額までの旧日銀券日本銀行に持つて参りますと、等価で新円と交換する、但し、五万円を越える部分につきましてはその七割の金額、それで、その七割の金額を五万円に加算いたしまして二十万円を越える場合には支払わない、交換に応じないというのが骨子でございます。  それから、未払い送金為替在外預金処理でございますが、きようこちらにそれぞれ金融機関再建整備法関係担当課長閉鎖機関関係担当課長並びに在外預金関係担当課長としての私が参つておりますので、詳細についてはさらにそれぞれの担当課長から申し上げたいと思いますが、概要を申し上げますと、原則は、あくまでも、現益すでに確立しております金融秩序と申しますか、そういうものになるべく悪い影響を与えない限度でこれらのものの支払いを実現する方向に法律改正を持つて行く、そういうところに、要点があるのでありまして、たとえば金融機関再建整備法で整備されました現に日本活動中の金融機関につきましては、金融機関再建整備法改正で新しく在外資産負債勘定というものを設けまして、それによつて支払えるだけ支払つて行く。しかし、もしその勘定に不足する場合には、調整勘定から一定金額を支出することをやつてまでこれを実現して行きたい。それも、まず未払い送金為替を優先して行つて、その少額のもののある一定金額までは調整勘定からの借入金ででも払つて行きたい、そういうような方針をとつております。閉鎖機関並びに在外会社につきましては、閉鎖機関原則として内地にございます財産をなるべく公平に旧権利者に配分し、そして、新しく出発すると申しますか、そういうことをなるべく早い機会にやりたい、あるいは整理を早くしたいというようなところに重点がございますので、こちらのコントロール、いわゆる統制の及びます範囲内にある財産につきましては、極力これを整理して行きたい、そういう建前で事を運んでおります。従いまして、閉鎖機関では、まず優先順位としては未払い送金為替支払い優先順位を与えますが、なお資金の余裕がある場合には在外預金支払つて行く、そういうことにいたしております。これは在外会社についても同様でございまして、現在までのところ、見通しといたしましては、未払い送金為替については全部、金額のいかんにかかわらず払うことができる予定でございます。また在外預金につきましても、レートの問題はございますが、大体払える予定をいたしております。これは、もちろん、閉鎖機関の中にもいろいろ事情のある金融機関もございまして、全部が全部そういうふうには参らないのでありますが、おもな活動機関であつた朝鮮銀行台湾銀行については十分資金がございます。ただ正金銀行につきましては、御承知のように在外資産の帰属がまだ判明いたしておりませんものも相当ございますので、現在の資産としては少額でありますため、必ずしも十分にお払いできないことは、在外債権者に対しても五五%しか払つていないという点からもお察し願えるところでございます。  なお、未払い送金為替原則として円為替で組まれておりますので、その円為替をそのままの金額でお払いすることは一応当然のことと言えるのでありますが、問題は、外貨表示送金為替を現在円で払う場合にどうするかという点にございます。これは、当時公式に、たとえば円元パーであるとか、あるいは儲備券百元が日本円十八円であるということが声明されましたが、実際上は為替管理法でいろいろの操作をやつておりましたことは御承知の通りでありまして、われわれはこれを当時の為替管理法令上の実行レートというふうに考えておりますが、その実行換算率従つてこれらの未払い外貨表示送金為替支払う、そういうことに意見書も出ておるわけでございますので、そういうふうにわれわれも考えております。  なお、在外預金につきましては、これは考え方はこういう点に基礎を置いておるのであります。たとえば預金というものは、原則としてその預金した店舗あるいはその地域で、預金した通貨支払つてもらう、その通貨が無制限に片一方とかわるというときは別でありますが、原則として現地通貨現地店舗に預入した場合には、その現地通貨現地支払いをするというのが預金を預かりますときの一応の建前であつたと思います。従いまして、純粋に理論的に申し上げると、債務者としての金融機関は、外貨建在外預金は、その預入地で、外貨支払えば足りるという冷酷な議論も出て参るわけであります。従いまして、これを便宜上内地支払います場合には、いろいろな疑点が出て参ります。それを幾らのレートでこちらの円で払うか、これも考え方によりましては、現地通貨現地における現在までの変遷のあとをずつとたどつて、それを現在のたとえばドルならドル基準に裁定して円で払うという方法も純粋理論的には考えられるのであります。しかしながら、中支那と申しますか、中国の中部、上海地区等におきます儲備券あるいは北中国、北京における聯銀券等は、そのような形で裁定いたしますと、ほとんどゼロに近いような数字しか出て参らないのであります。これは実際問題として常識に反することでありますので、問題は、その極端と、送金為替を組んだときの考え方との中間になければならないと考えられるわけであります。従いまして、どこの点にそれをとるかということについて、調査会の御意見としては、できるだけ債権者と申しますか引揚者の方の利益になるように、結局、その中間の段階としてありますレートは、在外公館等借入金返済の際に一応のレートを算定いたしました、その基準レートに準じたものをとつたらどうか、そういう御意見が出ておるわけであります。私たちも、現在このレートをどうするかという具体的なものは、案はできておりますが、まだ確定までは至つておりませんので、答申書意見に従いまして、この在外公館等借入金返済の際に用いられましたレートに準じたレート在外預金支払いの際のレートとして法律案に盛つて行く、そういうことを現在考えております。  なお、在外公館等借入金返済の際も考えられたのでございますが、長い間受取れなかつたという事情を勘案いたしますと、何らか、元の債権額だけではなくて、それに利息程度のものを加算したらどうかという考え方がございます。これは、金融機関資産状況に応じまして、そういうことで加算したいという特殊清算人または特殊整理人等の要望があり妥当と思われる場合には、政府としてはもちろんそれを受入れて、そういう清算方法を許可するという形で行きたいと思います。答申書の中にも、何らかそこを考慮したらどうかということがうたわれておる次第であります。なお、全般にわたりまして、金融機関再建整備法閉鎖機関令並びに在外会社令では、それぞれ従来の秩序というものが少しずつ特殊性がございますので、今申し上げましたこの大原則をくずさない程度で、それぞれ幾分か違つたような法令になることも答申案は予想しておりまして、これはこまかい点でありますが、必ずしも全部同じになるということはないというふうに予想されますが、根本においてはこの答申書趣旨で新しい改正法案が提出される予定であります。  以上大体概要を申し上げました。
  6. 山下春江

    山下委員長 この際本件について質疑を許します。村瀬委員
  7. 村瀬宣親

    村瀬委員 在外資産補償の問題はその影響するところきわめて広範囲にわたるのでございまして、戦後処理重大課題でこれだけが未解決のままに今日に至つたのでありますから、ようやくここに日本銀行券預入令等を廃止する法律案として、氷山の一角のごとく、この問題の処理が頭をもたげて来たということは、一面から申しますならば非常に喜ばしいことでありますけれども、あまりにおそきに失した感を押えることができないのであります。そこで、私は、きよう大蔵大臣にお伺いしたいと思つてつたのでありますが、宮中へ行つておられるそうでありますが、根本方針伺つてからでないと、最初の隔たりはわずかであつても、在外資産処理の将来に予測しない非常に大きな隔たりを生ずると思うので、どなたか答弁ができればしていただきたいのでありますが、在外資産補償憲法第二十九条第三項との関係は一体どう考えておられるか。国はこれを支払わねばならないという観点に立つてこの在外資産に取組んでおられるのであるか、支払う必要はないのだけれども一つの社会保障政策的な意味からこれを何とか片づけるのだという基本方針に立つておられるのであるか。この日本銀行券預入令等を廃止する法律案は、これは直接それとは関係をいたしませんけれども、これは一つ在外資産処理としてお考えになつたのか、単に日本銀行券の未処理の分の処理という観点に立つて出されたのか、まずその基本からお伺いしてみたいと思います。
  8. 上田克郎

    上田説明員 まず、在外財産問題調査会をつくりましたときの政府考え方は、何か一つ既成観念を持つてこの調査会に働きかけるというようなことではなくて、今村瀬先生のおつしやいましたように、事はきわめて重大でございます。たとえば憲法二十条との関係をどう考えて行くか、そういうようなことにつきまして忌憚のない討議をこの調査会でやつていただいて、その答申書を得た上で政府としてはその考え方をはつきりと確定したい、そういう建前でこの調査会というものを委嘱した次第でございます。現にこの在外財産問題の一番大事な問題として、憲法二十九条との関係ということが論議対象になつております。すでに、この憲法問題に関する論議だけでも、七回聞いたうち三回くらい使われておりまして、まだもちろん結論が出ておりません。そういうようようなかつこうで、今先生のおつしやいましたような何か既定の観念を持つてこの調査会に臨んでいるということはございません。  それから、旧円の問題につきましては、これは調査会答申に至りますまでの経過として、私から申し上げたいと思いますが、いわゆる在外財産というものは必ずしもある確定した概念というものではないようでございます。従いまして、外地から持つて帰つて内地税関が預かつている旧円——日銀券は、日本銀行の発行したものであるというよう意味で、外地か引揚げられた方がお持ちになつたという意味では大いに在外財産関係はありますけれども、いわゆる在外財産処理としてこれを行つたというのではなくして、従来在外財産在内財産との中間にあつたようなものとして、できるものから整理して行きたい、あるいはできるものから解決して行きたいという趣旨でやられたものでございまして、在外財産であるからこうしたというようなものではないように心得ております。
  9. 村瀬宣親

    村瀬委員 在外資産基本的な問題、憲法第二十九条第三項との関係はまだ未解決だという外債課長の御答弁でございますが、この点を外債課長に突き詰めてお聞きすることは無理と思いますので、大蔵大臣または緒方総理等にこの点についてはつきりお尋ねしてみる機会を留保いたします。  ただ、一点伺つておきたいことは、在外財産問題調査会は、むろんこれは法律によつて定めるということを大蔵大臣は私にもたびたび御答弁つてつたのでありまして、第十九回国会の当初に法律を出すと言つて、まだ出して来ないのでありますが、当然約束したのでありますから、これは出すであろうと思うのであります。もう素案はできておると思いますから伺うのでありますが、単なる諮問機関になるのか、議決機関のような性格になるのでありますか。と申しますのは、憲法在外資産との関係はあげて在外財産問題調査会にまかしたのであるか、もし在外財産問題調査会があるいは審議会法律によつてかわつて——これは約束であるから当然かわると思うのでありますが、法律によつて調査会審議会なつたときに、その審議会のきめたことは政府を拘束するのかどうか、そういう性格のものに法律をおつくりになつておるのか、伺つておきたいのであります。
  10. 上田克郎

    上田説明員 お答えいたします。審議会法律案はすでに準備を完了いたしまして、事務当局としての措置は終つておりますので、近々のうちに提案されることと考えております。審議会性格は、現在考えられております性格としては諮問機関でございます。従いまして、法律的にはそれの決定が同時に政府決定であるというふうにはならないものと考えております。しかし、政府総理大臣の名前で審議会にお諮り申し上げて、その審議会答申を得ました以上、政府はこれを大いに尊重をするということは当然であろうかと思います。
  11. 村瀬宣親

    村瀬委員 そういたしますと、最後は憲法との関係政府がおきめになるようでありますから、この在外資産に対し政府はいかなる責任を持つものであるかということを明らかにしないで、次々と枝葉末節のみを議論してみても、これは始まらぬことでありますが、何といつて在外資産日本賠償として役立つたのである。在外資産がもしなければ、あるいは七百万の引揚者がこれは自分のものだから一円も離さないという方針で進むならば、サンフランシスコ会議における内容ははなはだしく異なつたものができた。こういうことでありますならば、これは当然政府支払い義務があるのでありまして、私有財産尊重建前から申しましても、これを明らかにしてから出発しなければならないのであります。社会保障的な、引揚者は困つているから恵んでやるのだという思想で出発するか、これは当然賠償金のかわりとして国全体が負うべきものを、たまたま外地にあつた引揚者のみに負わした犠牲であるから、これを国民が平等にその犠牲は負担すべきであるという観点に立つて進むのか、この基本をきめないで、ちびりちびりと、政府関係のないこういう銀行券処理とか、あるいはいろいろ第二会社等をつくつて閉鎖機関にそれだけの金が残つている分だけを支払わすというようなことをしても、それは決して根本的な解決にはなりません。これはしかし外債課長に申し上げても始まらぬことでありますから、この基本問題については、適当な機会に、必ず委員長におかせられては大蔵大臣または緒方総理をお呼びになりまして、ただす機会を与えていただきたいと思うのであります。  そこで、私は少し詳しく内容についてお伺いしたいのですが、その前に、先ほど外債課長から、閉鎖機関令在外会社令等予定なさつておるものの内容の御説明がありましたが、金融機関再建整備法についてはあまり詳しく御説明がなかつたと思うのでありますが、その第二封鎖等についてはどういうふうになることになつておりますか、伺つてから質問を進めたいと思います。
  12. 谷村裕

    谷村説明員 大蔵省銀行局銀行課長でございます。金融機関再建整備法を担当しておりますので、ただいま私どものところで考えております、そして近くこちらに御審議をお願いする金融機関再建整備法の一部改正の大体の内容、それが特に送金小切手関係あるいは在外預金についてどういう考え方になつておるかということについて御説明申し上げます。  御承知のように、金融機関再建整備法は、金融緊急措置令によりまして預金封鎖などが行われました昭和二十一年三月のあとを受けまして、その年の八月に戦時補償の打切りなどがありましたために、金融機関勘定新旧勘定に分離いたしました。これらの措置に際しましては、当時外地関係の問題、特にその在外支店が持つておりました債権債務資産負債関係というものは当時これを切り離しまして、内地だけの問題として新旧勘定の分離をいたしたわけでございます。その後、御承知のように、内地では、預金は第一封鎖、第二封鎖という形になりまして、第一封鎖一定限度は必ず国が補償までして確保するという形をとりました。第二封鎖につきましては、これも御承知のように、どのような損失を金融機関がこうむつたかということを計算いたしまして、ある銀行においてはたとえば五割、ある銀行においてはたとえば七割というような切り方をいたしまして、残つた分は復活いたしまして、やがて第一封鎖と同じように自由預金になり、残つた分は切り捨てられたまま今日に至つておるのでございますが、たまたま在外関係のない金融機関につきましては、昨年中間分配をいたしました。中間分配と申しますのは、そういつた勘定に元属しておりました資産負債をだんだん整理いたします、あるいはそういつた資産負債についてその後生じました損益を特別に経理するためにつくつております調整勘定というものがございます。その調整勘定利益が出て参りましたその利益分配ということで、平俗な言葉では第二封鎖の復活というふうにとれますが、切り捨てられた預金に対して、その割合に応じてたまつた利益金分配する、こういう形でやつて参つたのであります。在外支店を有しておりました金融機関につきましては、この中間分配をさしとめて今日まで至つております。在外支店にかかわる負債あるいは資産、こういつたものは、今申し上げましたように、当時金融機関経理応急措置法という法律をつくりました際に、その法律対象の外にいたしまして、これをいかように処理するかは、その後に在外関係の問題がどう全体として処理されるかという問題とあわせて考えるべきではないかということで今日まで至つたのでございますが、昨年あたりからこの問題をいつになつて解決するともまだわからないような状況のままにしておくことは決してよろしいことではない、この際在外関係の問題も、まあ外交交渉その他の問題もございましようが、一応国内的にはこういう形で処理して行くのがよろしかろうじやないかというので、ここでひとつ処理する形で取上げてみようという考え方になりました。そこで、昨年夏以来どういうような考え方でこの問題を取上げたらいいかという研究をいたしたわけであります。その結果、先ほど御説明もございましたように、在外財産問題調査会などでいろいろとやはり御検討もいただきましたが、この際、今まで金融機関経理の外に置いてございました在外支店資産負債を取込んで来る。但しこれはやはり在外支店に属していた資産負債というものをもつて構成する一つ勘定として取入れに来る。金融機関には、かつて勘定と旧勘定というものがございました。私の申しております金融機関というのは、御承知のように現に活動しております金融機関でございまして、すでに閉鎖されたりあるいは外地に本店を持つておりました金融機関ではございません。今生きておる金融機関でございますが、それが旧秩序の問題について整理をする関係のものが旧勘定でございましたし、また新しく金融秩序に乗るために勘定を設けて、そこで動き出して来たのが新勘定つたわけでございますが、この新旧いずれの勘定にも属しなかつた在外財産問題につきましては、この際、まあ平俗な言葉で言えば、在外勘定といつたような意味での別の勘定を設けて、その勘定処理をして行きたい、こういう考え方になるわけでございます。これはやはり、金融機関が当時国内関係では新旧にわかれ、それから外地関係では別扱いにしておつた。その問題をこの際そういう在外勘定という形で取上げて、その在外勘定という形でこれを処理して行くという考え方にいたしましたのは、一つのそこに秩序というものを立てて行きたいと考えたからでございます。ただいま考えております気持は、在外負債在外資産をもつて支払う、こういう原則になるわけでございますが、具体的には金融機関によつていろいろ違いますので、たとえば、在外勘定資産の方には、かりに在外資産が返つて参りませんでも、内地調整勘定に余りがあればそれを繰入れ、また新旧勘定に分離いたしましたときに外地の盾に内地の店が借りを持つておるとすれば、その借りの金額そつちの方に渡す、そういつたようなことで在外勘定の方の資産をためます。そうして送金小切手なり預金なりはそれを見合いにして払う、こういう考え方にしておるわけでございます。しかしながら、特に送金小切手につきましては、それが発行されました当時の事情、また送金小切手そのものが、当事者の意思が何とかしてこれだけの金は内地に持つて行きたい、こう考えていたいきさつ、また法理的に考えましても、いわば海を渡つて宙にいて、日本国内にうまく届くか届かないかといつたような形の関係そのものを考えまして、送金小切手は、私どもの方の考え方としましては、かりに在外勘定の方に資産がなくても、調整勘定の一部をさいてその一定部分については支払うようにしたい、こう考えております。調整勘定と申しますのは、先ほどちよつと簡単に申し上げましたように、国内の旧勘定に属しておりました資産負債処理いたしました際に生じた損益経理いたします勘定でございまして、その利益国内の旧預金者、第二封鎖を切り捨てられてしまつたそういう方々にわける建前のものでございます。それをこの際さきまして、調整勘定から送金小切手一定金額部分については、とにかくお支払いするだけの金を渡そう、こういう考え方にいたしたわけでございます。金融機関によつていろいろ差がございますが、大体今の調整勘定利益金をもつて送金小切手一定金額部分は必ず支払える仕組みになつております。また、金融機関によりましては、たまたま持ち帰りました在外資産もあり、調整勘定利益も余つており、当時在外支店に対する借りが多かつたというような関係もありまして、外地預金が全部支払えるように見込まれておる銀行もございます。しかし、遺憾ながら、他の銀行につきましては、今申し上げました送金小切手一定部分支払う金を調整勘定から借りて来るということをもつて、それ以上のことはなし得ない金融機関もございます。  大体そういうような考え方で、この際、銀行在外店舗債務として背負つておりまして、今までいわば懸案になつておりました送金小切手の未払い部分及び在外預金について処理方法というものを考えております。大ざつぱでございますが、そのようなことであります。
  13. 村瀬宣親

    村瀬委員 一通り御説明があつたようでありますから、これから順を追うて、引揚者たちがどのようにして幾らの金が自分たちに渡されるものかということを待望しておりますので、具体的なお尋ねを始めたいと思います。  まず、現に大蔵委員会に付託されておりまする日本銀行券預入令等を廃止する法律案の、実際の取扱いについてお尋ねをいたすのであります。先ほどの外債課長の御答弁によりますると、これは単に在外資産日本銀行券処理との中間に立つものであつて在外資産処理として扱つたと必ずしも全部言い切ることができるかどうかわからないが、そういう性質のものであるという御答弁であつたと思いまするが、そうであるといたしまするならば、何も今日まで放置される理由はなかつたわけであります。別に政府の予算を必要とするものでもなければ、その他の弊害もないのでありまして、どこの国からも何とも言われる理由はなかつたにもかかわらず、これほど困つておる引揚者に対し、八年間も九年間もこの処理を放任しておつたということは、はなはだ私たちには受取りがたいのであります。在外資産の一部としてお考えになつてつたためにこの問題が遅れたというのでなければ、こうおそくこの処理を放任しておつた理由にはならないと思うのであります。これにつきまして、私たちがこの問題に対する政府基本方針を明かに聞きたいとたびたび申しますのは、五万円までは全額であるが、あとは七割まで二十万円で打切るという根拠は、私有財産を認めておる国として、どこから出て参るのでありましようか。何ゆえに五万円以上を七割とおきめになつたのか。八割とどうしてしなかつたのか。二十万円で打切るというのは、三十万円となぜなさらなかつたか。これは、そういう制限を置くこと自体、私有財産を認めておる日本憲法との関連はどうなるか。これからお伺いしてみたいのであります。
  14. 森本則雄

    ○森本説明員 お答え申し上げます。どうして七割にしたか、あるいは五万円で切つたか、あるいは二十万円で切つたか、こういう点でございますが、その前に、一応今までの大体の日銀券の現状を申し上げてみたいと思います。  日本銀行券昭和二十一年の三月三日以後強制通用力を失わせる、これは現在の日本銀行券預入令の規定によつてそういうことになつたわけでありますが、その規定によりまして強制通用力を失つて現在までにまだ引きかえておりませんものが、二十八億八千三百万円ございます。その中で全然行方がわからないと申しますのが十二億四千八百万円、差額の十六億何がしというものは、あるいはすでに現物を処分しておりましたり、あるいは税関が保管しておりましたり、そういつたものでございます。その差引の十二億四千八百万円という行方不明のものの中には、あるいは外地に流通しておつてまだそのまま滞つているものもございましようし、あるいはソ連に接収されたものもございますし、あるいは内地で戦災その他で焼けて現物がなくなつておるものもあるかと思います。しかし、いずれにいたしましても、行方のわからないのが十二億四千八百万円、これだけあるわけでございます。  それでは、現在の税関引揚者の方々からお預かりしたものはどのくらいあるかと申しますと、今まで税関で預かつて参りましたのは、件数にいたしまして一万九千四百八十八件、金額にいたしまして二千四百四十三万円何がしでございます。それでは、どうして五万円で切るようにしたか、あるいはその上を七割で切つたか、こういう点でございますが、日本銀行券整理につきましては、今外債課長から申し上げましたように、旧日本銀行券整理の一環として考えておつたわけでございます。つまり、強制通用力を失わせられました旧券につきまして、その後税関に保管しておつたために交換の機会が与えられなかつた。——当初の予定と申しますか、預入令を制定いたしました当時の考え方といたしましては、少くとも引揚者の持つてつて税関に寄託保管しておりましたものにつきましては、交換の道を別に法令的には開いておらなかつたわけでございます。どうして今までほうつておいたかということでございますが、昭和二十年の九月二十四日以後、当時占領下のせいもございましたが、引傷者の持ち帰りましたものは、すべて税関でとどめておいて、中へ入れるな、こういう指令に基いてその後の処理がずつとなされておつたわけでございます。従つて、預入令を制定いたしました当時には、全然、引揚者の持つて帰りましたもので税関にとどめておりましたものについては、預入令自体として、そのとどめました部分につきまして交換のことを実は考えておらなかたわつけでございます。去年の九月以降、引揚者の持ち帰りましたものを税関から返しますに伴いまして、その処理を始めることにいたしたわけでございます。そういつた関係で、今まで実は法案が出なかつた、こういうかつこうになつておるわけでございます。  それから、五万円の問題につきましては、従いまして、旧日本銀行券が当時それでは国内に入りましたならばどう処理されたかというものとの権衡をとつて考える、これが基本考え方でございます。従いまして、当時旧券はすべて金融機関に対する預金としなければいかぬ、こういうことになつておりました。旧券そのままでは流通しなかつたわけでございます。それではどのくらいが自由に流通することになつたかと申しますと、これも今銀行課長から申し上げましたように、一定限度は第一封鎖預金とし、それを越えるものは第二封鎖にいたしたわけでございます。第一封鎖になりましたのは一入当り四千円、一世帯当り三万二千円を最高限度にする、それから人数の少い場合には、一万五千円を下ることはなかつたわけでございますが、一万五千円ないし三万二千円という制限が一応つけられておつたわけでございます。従いまして、三万二千円を越えます分は、少くとも何がしか第二封鎖になることによつて打切りの措置が講じられておつた。それから、そのほかにもいろいろ権衝をとるべき問題はあるかと存じます。たとえば、戦時補償特別税の非課税の限度でありますとか、あるいは十万円を越えますものにつきましては、なおそのほかに財産税がかかりますとかいつたような点もございまして、一応そういつたいろいろな点を考えまして、今までの限度とそのまま機械的に権衡をとるといたしますれば、三万二千円という数字が最高になるわけでございますが、いろいろこまかい数字をその辺で切りますのもいかがかというように考えまして、五万円というラインを一応引いたわけでございます。結果といたしましては、旧券を携帯して帰りました引揚者の九九・九%以上が、まるまる金額の引きかえを受けられることになるわけでございまして、先ほど申し上げました一万九千件あまりのうち、五万円を越えますものはわずか九件でございます。それから、五万円を越えます分につきましては、今申し上げましたようなことで、大体第二封鎖、これは郵便貯金に対する第二封鎖の切捨率がちようど三〇%になつておりますので、それを一番近い参考にいたしたわけでございますが、二十万円で切りましたと申しますのは、今までの持帰り金の最高実例が十七万五千円でございます。引揚げもあるいは今後ともなお続くわけでございましようが、今までの実績で考えますと、かなり最初のころの引揚者であつたと思いますが、十七万五千円が一番最高である。しかも、外地の流通その他の事情から考えまして、それ以上に持つておることは通常考えられないのじやないだろうか、それから、今申しましたように、十二億何がしという今まで引きかえられないで行方不明の旧円がございますが、その中では何がしか——何がしかと申しますよりも、かなりのものが外地に残つておることも考えられるわけでございます。従いまして、この措置が切らかになりますと、将来の引揚者が不当に旧円をかき集めて持つて帰る、そういうケースも実は考えられるわけでございます。従来の実例から申しまして、二十万円と一応の限度を切れば、大体今までの引揚者の方々と権衡もとれ、また十分な限度と考えられるのじやないだろうかということで、一応二十万円という限度を出したわけであります。それでは具体的に幾ら持つて帰るだろうかという問題もあるかと存じますが、現に私ども耳にいたしました報道では、かなりまだ大陸方面には残つておるようでありまして、そういつたものがかなり香港あたりからほかに流れて行つておるというニュースも実は聞いておるわけでございます。そういう考え方で、一応五万円を切り、五万円を越えるものは三〇%を切り、それから二十万円を打切つた、こういうことでございます。
  15. 村瀬宣親

    村瀬委員 一応御答弁はそれだけを開きますと筋道が通るのでありまするけれども、私は、もつと根本的に、私有財産在外資産というものについての政府の基、本的な考えはこういうところにあるのじやないかという点について、はなはだ疑問を特つておるものであります。しかし、これは課長にお尋ねをしてもきりのない話でありまするから、これ以上この点には触れませんが、一つ伺つておきたいのは、この十二億四千八百万円行方がわからぬと言われるのでありまするが、この中にはこういうものもあるのであります。まれな例ではありまするが、外地におきまして引揚げの船に乗ろうとするときに、日本の円を幾ら持つておるか調べられまして、目の前で焼けと言われて焼却をされました。むろんその場合焼却したという証明書は持つて帰りまして、そうしてその証明書によつて千円だけは上陸港でもらつたのでありまするが、その残りは日銀の方では記入済みと聞いておるのでありますが、こういう場合にはこの法律でどのような扱いをなさつておりますか。残りの十二億四千八百万円行方がわからぬと申しますけれども、これは全額姿を現わしましても別に日銀は損をしたというわけのものではございません。また政府の予算措置をどうしなければならぬという性質のものではないのであります。従つてこういう焼却証明書をちやんと持つて帰つたという者に対しましては、内地で戦災にあつて焼けたというのとは大分違うのでありまするが、どういう御処理をなさるお考えでありますか。
  16. 森本則雄

    ○森本説明員 今の、外地で乗船いたします場合に焼いた例があるというようなことでございますが、実は、今までのところでは、現物通貨がなくなつた場合に、それをどう処理するかという問題につきましては、まだこの預入令を廃止する法律の附則で考えております予想の中には実は入れておらないのでございます。旧券を持つて参りました者について交換をする、こういう考え方で全部を貫いておりまして、証明書の問題につきましてどう処理するかということは、ちよつと今御即答申し上げかねますが、この法律では実は予想しておらないところであるということでございます。
  17. 村瀬宣親

    村瀬委員 まだ私は詳しく聞きたいことがあるのですが、それならば、ドル、ポンド等は二十四年分末に無制限に解除になつておることは御承知の通りであります。送金の場合は三百六十円レートで本人にちやんと支払つておりまするし、その紙幣は銀行で公定レートで本人にちやんと支払つておりまするし、その紙幣は銀行で公定レートで換算をして支払つたのであります。当時外地から引揚げて参りますとぎに、必ずしも円でなくても、ドル、ポンド紙幣等はどこででも交換が市中でできたのであります。正規のルートとは言えないが、方法はあつたのであります。そうして、ドルやポンドはそうやつて無制限に解除をなさつておきながら、日本の円であるからといつて、別にだれも損を——全額払つても損をするものではない。それであるにもかかわらず、かような制限を設けられたというところにも、私たちは一応政府の御方針をただしておきたいと思うのであります。と申しますのは、もともと在外公館借入金を五万円で打切つて、今裁判になつております。この五万円以上は七割とか二十万円で打切る、しかし実際の例は十七万五千円を持つて帰つた者が最高というのでありますから、これで全部まかなえるという御答弁でありますけれども、これがやがて次々に在外資産の問題の解決の先例となつて政府基本理念に融れますから、この点を私はしつこくお尋ねをいたすのでありますが、これは、私有財産尊重建前からは、当然こういう制限をつける必要はないし私は思うのであります。ところが、在外公館等借入金処理に比べるならば、五万円以上七割、二十万円までは認めるというのですから、これは一歩前進しておりまして、在外公館等借入金処理と比べて非常に上できだ、こう言えるわけであります。しかし、ここで問題になりますのは、在外公館等借入金は五万円で打切つたことに対して、政府は何らかの反省をなさつておるか。従つて、こういう法律をお出しになる以上は、在外公館の借入金についでも、もう一度考え直されて、あの私有財産を無視した、しかも公の外務大臣の命令をちやんと見せて在外公館で必要なんだからといつて一般の民間から金を借りておきながら、それを踏み倒しておるというようなあの態度に対しまして、これは裁判の結果もあるでありましようが、もう一度考え直してみる必要がある、あるいはそれに対してこれは終始一貫しない法律案だ、こう考えられるのでありますが、ドル、ポンド等の問題は無制限に解除したが、これだけは制限をつけるという問題や、さらに在外公館等借入金との関連において、どういうお考えであつたかを伺つておきたいのであります。
  18. 森本則雄

    ○森本説明員 ドルとか。ポンドとか、外国通貨を額面通りにかえたことと、日銀券の場合との権衡の問題を御指摘のようでございますが、この法律考え方は、先ほど申し上げましたように、日本銀行券がもと通貨であつて日本銀行券預入令によつて強制通用力を失わせられた、その跡始末としてこれを考えておるのだ、その考え方から実は答えが出て来るのだろうと思います。つまり、さきに外国通貨の交換を認めておきながら、どうして旧日銀券引揚者に返さなかつたかという点につきましては、当時の占領下の特殊事情でやむを得なかつたものだろうと考えられます。従いまして、日本銀行券と外国通貨との扱いが異なるということは、この法律の底に流れております、つまり日本銀行券通貨としての立場、本質と申しますが、強制通用力を失つた日本銀行券処理だという考え方から、その区別が出て来ることはやむを得ないのではないかというふうに考えます。あと在外公館等借入金との権衡の問題につきましては、外債課長からお答え申し上げます。
  19. 上田克郎

    上田説明員 在外公館等借入金返済の実施に関する法律で五万円までとするということを書いてございますことと、今回の預入令の改正で五万円、七割、二十万円というふうな数字が出ておりますこととは、その債務の性質上、面接の関係はないと私たちは考えております。従いまして、加入令の関係では、先ほど森本君から御説明申し上げしました通り、日本銀行の発行した旧日本銀行券処理をどうするかという立場から考えられたものでございまして、在外公館等借入金の場合の五万円と申しますのは、御承知のように、在外公館等借入金という概念で処理されます特殊借入金、そういうものに対して政府が最も妥当だと信じた金額を提案したものでございますので、この預入令の改正によつてそれをかえるという意図はないと私は承知しております。なお、裁判の結果がどうなりますかにもよりますが、在外公館等借入金という概念で取上げられる借入金の問題としては、あの法律で妥当だと思いますし、御指摘になりましたように何か特殊な形で、債権債務関係在外公館等借入金という概念でない債権債務でございますような判決がありました場合には、別に考えなければならないと考えます。
  20. 村瀬宣親

    村瀬委員 それならばお尋ねいたしますが、七割というのはどういうところから出たのでありますか。ただ漠然とでたらめな数字なのでございますか。やはりこれは在外資産として処理しようという考えがあるところにこういういろいろな問題出て来ると思うのであります。単純に日本銀行券処理とするならば、これはきわめて単純に処理のできるものであります。従つて在外公館の借入金とは何の縁もないとおつしやるが、なるほど借入金通貨でありますから、何の縁もないはずでありますけれども一つ在外資産一の処理という観点において非常な関連が出て参るのできありますが、まず私は、七割といつのはどういうわけでおきめになつたか、それを伺いましよう。
  21. 森本則雄

    ○森本説明員 この七割の問題は、先ほど申し上げましたように、第一封鎖になりました部分につきましては、これは全額自由預金となつて、そのまま支払いが受けられたわけでありますが、第二封鎖になりました部分につきましては何がしかの負担を受けているわけであります。それから、郵便貯金の場合につきましては、第二封鎖につきましては三割の切捨て、つまり七割の支払いということになつているわけであります。それとの権衡を実はとつたわけでございます。それでは、どうして郵便局の率を適用したかということでございます。それでは、どうして郵便局の率を適用したかということでございますが、これは、この引揚者の持帰り旧券だけでなくて、そのほかの旧日本銀行券につきましても、と申しまと、法律に書いてございますような刑事事件で押収されて解除になつたものがございますが、そういつたものにつきましては郵便貯金に預け入れる場合だけは道を開いておつたわけでありますが、郵便貯金に預け入れてその結果三割切られて本人の手にもどつている。これが旧日本銀行券昭和二十一年以後今までの方法基準になつているわけであります。その方法を具体的にそのまま適用いたしますと三万二千円、あるいは家族の数によつてそれ以下になると思いますが、結果として第一封鎖限度を五万円まで上げて、その上の分については、郵便貯金の今の切捨率、なおそのほかにも、先ほど申し上げましたように、財産税その他の関係ももちろん考慮しなければいかぬと思いますが、直接的にはそういつた三〇という数字を参考にいたしましてこの数字が出ているのであります。
  22. 村瀬宣親

    村瀬委員 私はまだその点承服はいたしかねるのでありますが、時間がありませんから次に進みますが、この法案の提案理由の説明によりますと、「国内におりました者との負担の権衡をも考慮いたしまして」云々とあるわけであります。国内におつた者との負担の権衡を考慮してこういういうような五万円とか七割というものをきめたというのでありますが、負担の均衡というものは単に名目だけではきまるものではございません。これはむろん占領治下でやむを得なかつたといたしましても、独立国となつて後も強制的に兌換をとめておつたものであります。でありますから、当然実質的な負掛の均衡を考えますならば、物価指数ということが考えに入つて来なければならない問題なのでありますが、当時と今日とでは、物価指数は十数倍になつておると思いますが、実際にこれを受ける引揚者の生活の状態から考えまして、恩典に浴する意味から考えまして、この物価指数を何ゆえにお考えにならなかつたか。きわめて冷酷な処置であると思いますが、内地におつた者との負担の均衡と銘打たれる以上は、物価指数を当然考慮に入れるべきであると思いますが、これはどういう考えでございましたか。
  23. 森本則雄

    ○森本説明員 物価指数を考慮に入れて、通貨価値の下落を考慮に入れてやるべきではないかという御意見でございますが、今度の日本銀行券措置は、今の在外財産処理という問題よりは、旧通貨処理という観点から処置いたしておるわけでございまして、もう少し徹底的に言えば、通貨の本質から出て来た措置であるということでございます。従つてそれに対する補償とかなんとかいうような意味からではなくて、通貨というものを一体どう考えるかという考え方でいたしております。従つて、額面の実際価値と申しますか、当時の購買力がかなり違つてつたということを考慮いたし、ますれば、少し議論めいたことになりますが、通貨の本貫から離れて来るわけでございます。そういう意味で、物価指数というものは実は考えておらないわけでございます。今までどうして強制的に兌換を停止しておつたかということでございますが、それは、実は当時の日本銀行券預入令の考え方が不届きであつたかどうかという議論もまた別にあるかと思いますが、預入令の考え方としては、一応一律に全部強制通用力を失わせ、通貨としての効用をなくしてしまう、ただある一定の条件を満たした場合だけは実質的に交換を認めてやろう、こういうことで措置されておつたわけでございますが、それに対する延長だというように考えておるわけであります。
  24. 村瀬宣親

    村瀬委員 それはそれでよいのであります。何も私は引揚者のみに特別に購買力の内容をふやしてくれと言うのではありません。従つて、五万円で打切るのを三万二千円にされてもけつこうであります。あの当時の三万二千円の購買力を与えていただけば、それでけつこうなのであります。問題は、なるほど二十一年の三月三日でそういう処置をおとりになりましたから、引揚者であろうが何であろうが従うのは当然でありますけれども、そのときには従うにも従えない状態に置かれておつたのであります。従つて、法の公平という意味から申しまするならば、当時の三万、一千円相当の金額一応四人家族まで二万二千円として、それに物価指数をかけられたのでもけつこうなのであります。法律としてはそういう公平な立法措置が必要なのであつて、ただ簡単であるから名目の数字だけあげたらそれで責任が終るというものではないと思う。これは堂々めぐりになるのでありますけれども、この処置はあくまでも単なる銀行券の処置なのか、あるいは在外財産処理の一角として、氷山の一角を現わしたものであるかという、一番最初に私がお伺いした点にもどつて来るのでありまして、これは一課長にいくらお伺いしても無理でありますから、この程度にいたしておきます。  そこで、もう時間がありませんから、きわめて簡単に、引揚者が聞きたい点を二、三点お尋ねをしたいのでありますが、最初いろいろ御説明になりました閉鎖機関令在外会社令金融機関再建整備法これだけのものが出るわけでありますが、この閉鎖機関令改正によつて支払いを受け得るものは朝鮮銀行台湾銀行正金銀行であろうと思います。私が昨年お尋ねしたのに対しまして、昨年の九月三十日現在で、台湾銀行関係で二十八億円金があり、朝鮮銀行関係で七十七億円金があるということでありました。その後利子等多少ふえておると思いまするが、この閉鎖機関令改正によつて一体引揚者に何十億の金を支払うおつもりでありますか。あなたが支払うわけではありませんが、朝鮮銀行台湾銀行は第二会社または清算人をつくつて支払うのでありましようが、一体引揚者支払つてもらえるのは何千億であるか。それから、朝鮮銀行台湾銀行については数字を御発表になりましたが、正金銀行はどういう数字になりますか。
  25. 岩動道行

    岩動説明員 ただいまお尋ねになりました朝鮮銀行台湾銀行につきましては、その後多少利子収入などもふえて参りましたので、最近の数字によりますと、朝鮮銀行が約八十億、台湾銀行が二十九億の国内資金を保有いたしております。朝鮮銀行台湾銀行送金為替あるいは外地拠金の支払いにつきましては、為替レートの適用、あるいは外地黄金に関する在外財産問題調査会決定いたしましたような換算率の適用をいたしますと、鮮銀、台銀の支払い送金為替の所有者あるいは外地黄金の所有者は、大体百パーセント支払いを受け得る状態になつております。  それから、横浜正金銀行につきましては、現在でも国内資金は、国内債務支払つてつたく、不足をいたして破産状態でございます。現在国内債務支払いは約五五%になつております。従いまして、今後新しく支払いをしなければならない未払いの送金為替あるいは外地預金等には当然には及び得ないというような状況になつております。しかしながら、この点につきましては、何らかの方法で多少のものでも払えるようにしたらどうかと、ただいま研究をいたしておりますが、これも、ただいま申しましたように、国内債務すら完全に払えない状態でありますので、いろいろ問題があろうかと思うのであります。
  26. 村瀬宣親

    村瀬委員 いま少し詳しい数字を伺いたいのであります。朝鮮銀行は八十億あつて送金為替預金は全額払う、台湾銀行は二十九億あつて同様だというのでありますが、一体その金額は幾らでありますか。私は八十億もあるわけはないと思うのでありますし、またいわゆる第二会社をつくろうというようなお考えも持つておるようで、ありますから、その数字をお知らせ願いたい。  それから、正金銀行については幾らか支払うというのでありますが、大体どれくらいのお見込みでありますか。また正金銀行に対する送金手形、小切手等の金額は、判明している分が幾らになつておりますか、そうして黄金は幾らになつておりますか。
  27. 岩動道行

    岩動説明員 朝鮮銀行につき、ましては、現在届出のありましたもの——これは大分前に申告を受けた当時の資料でありますので、その後さらにふえておりましたりして、正確な数字ではございませんが、一応予想されるところの数字で申しますと、朝鮮銀行は大体十二、三億から十五億くらいの金額になるかと思うのであります。台湾銀行はそれよりやや少く、十億前後になるかと思つておりますが、これは正確な申告あるいは税関の返還がまだ十分進んでおりませんので、的確にこれを申し上げることはできませんが、いずれにいたしましても、十五億を前後するような数字でそれぞれが解決されるだろう。  それから、横満正金銀行につきましては五五%を支払いますと、現在の予想では約二、三億程度国内債務としてなお残るということになります。従いまして、もし国内債務を五五%で打ちどめにしまして、残つております金で未支い送金為替等を払うということになりますと、おそらく数パーセントくらいしが払えないのではないかというふりに予想いたしております。
  28. 村瀬宣親

    村瀬委員 朝鮮銀行は八十億の金がともかくもできた、正金銀行は五五%しか払わなくても一億くらいしか残らない——。その間の事情をもう少し詳しく御発表願いたいのであります。引揚者はそういうことを聞くと相当に心細いわけでありますし、困るわけであります。主として正金銀行を通じて内地送金をいたすのでありますから、朝鮮や台湾のものは百パーセント支払われるが、正金銀行はわずかに四、五パーセントかもしれぬというようなことを聞きますと、せつかく閉鎖機関令改正して、待ちに待つたこれら送金小切手支払いを受けるのに、まつたく失望を感ぜざるを得ない。なぜそのようになつておるのであるか、詳しく伺いたい。
  29. 岩動道行

    岩動説明員 横浜正金銀行資産関係は非常に複雑でございまして、戦争中は為替の統制機関としていろいろな操作をやつております。従いまして、その関係での損失も相当に出て来ておりますが、これは政府の損失補償の打切り等によりまして相当の損失をこうむつた点もございます。しかし、一方におきまして、横浜正金銀行は海外に相当の資産を持つております。スイス等にも相当の資産を持つておるわけでありますがこれらがすべて凍結をされております。その凍結された資産が返つて来れば、これは国内資産としまして十分な支払いをやつて行けるようなことになると思います。正金銀行は特に海外資産が非常にたくさんありまして、しかもそれがほとんど全部凍結されておるような状況で、ありますので、特に鮮銀、台銀と比べましで、そういう意味におきまして正金銀行資産が非常に少いというような状況になつております。
  30. 村瀬宣親

    村瀬委員 非常に重大な点に触れて参りますが、私は大臣等のいらつしやらないのを非常に遺憾に思うのであります。これは非常に大事なことである。すなわち、今の御答弁によりますと、スイス等には建物その他資産も相当あるとおつしやる。その通りであります。正金銀行の海外の資産というものは厖大なものと思うのであります。ところが、平和条約によりますと、中立国の資産までもこれを取上げるという。これではアメリカもずいぶん寝ざめの悪いことでありまして、今共産国と対立しておるアメリカとしては、少くとも私有財産だけは貧乏ゆるぎもしないという点、——ただ一つ人類の伝統の私有財産の思想が共産国と対立しておる一つの武器なのであります。これをアメリカは取上げて、日本に対してはああいうような条約になつておる。これは日本政府の腰も弱かつたわけであります。ところが、今の御答弁によりますと、そういう資産を当てになさつておるような御答弁であります。当てになりよすか。これに対しては、平和条約第十六条との関係において、これは私はもつと根本てきな問題に触れて参ると思うのです。第十六条によりますと、もし政府が選択をするならばその資産に相当するものを赤十字社に出してもよいということになつておる。いわゆる日本は金を出してもよし、また中立国の資産を出してもよいが、どつちでもよいというような選択にまかしておるような状況でありますから、私は、そこに憲法第二十九条との関連が出て来て、当然政府は海外資産については支払うべき憲法上の義務があるのだと言つておるのでありますが、どうも大臣は逃げて、そういう急所になりますとおいでにならぬのであります。基本的な問題に触れて参るのでありますが、あなたの方で、今の御答弁との関連がありますが、それはどういうふうにお考えになつておりますか。
  31. 岩動道行

    岩動説明員 横浜正金銀行在外資産につきましては、ただスイスのことだけを例として申し上げましたが、そのほかに、インドあるいはブラジル等にもございます。これらはすべて平和条約によれば取上げられてもしかたがないような資産でございますが、先方の好悪によつてつて来る見込みのものもございます。従いまして、かりにスイスのことを除きましても、そういうものが返つて来たあかつきにおきましては国内資産がふえますので、国内債務の弁済あるいは今後の未払い送金為替等の支払いも相当のものが可能になることと思つております。そこで、スイスにあります資産につきまして、これは私は、閉鎖機関の監督をいたしております立場、ことに横浜正金銀行の立場、債務者としての立場から申し上げますならば、これは返つて来ることを期待するのは当然でございます。そして、その場合、政府がどういうふうにこれを解決するか、今後の問題でありますが、いずれにいたしましても、もしその資産がかりにそのまま返つて来るといたしますれば、政府はそれにかわる等価のものを平和条約の規定に従つて払うことになりますので、正金銀行としては全額返つて来るということを一応予想することも間違いではないかと思います。またもし正金銀行資産そのものを国際赤十字社に帯付をするということになりますれば、これは正金銀行の立場におきましては当然私有財産の問題に触れて参りますので、政府に対する何らかの補償要求をする立場にあると思います。その場合に政府がこれをどのように扱うか、これは今後の問題でありまして、私どもまだその点まで触れておりませんが、いずれにいたしましても、何らからの形で正金銀行はその資産の返つて来ることを期待して、またそれを希望するという立場で、まず債務者の立場を立てて行きたい、かように考えておるわけであります。
  32. 村瀬宣親

    村瀬委員 非常によい御答弁であります。今まで政府からそういう答弁を何度私が追究してもお答えにならなかつたが、あなたは一課長であつても非常に良心的な役人である。これは重大な発言でありますから、また世界に通ずる御答弁でありますから、これを聞いて引揚者は非常に満足をすると思います。そうでなくてはならぬのであります。ところが、政府はどうもその態度を明らかにしない。おつしやる通り、正金銀行財産をもし国際赤十字社にとられてしまうならば、当然正金銀行はそれに対して政府補償を要求する権利があります。明らかに権利があります。しかし、これはただに正金銀行だけではありません。引揚者の個人個人みな同様の権利があるのであります。正金銀行以上に権利があります。われわれの財産とられ、それを賠償のかてとして裸一貫で引揚げて来たのでありますから、正金銀行に権利があるように引揚者の個人々々に必ず権利がある。その思想の上にこの在外資産の問題は解決して行かなければならないのであります。今まで他の課長の御答弁は、この基礎に立たないから、いろいろとまわりくどい堂々めぐりの御答弁をなさらなければならな。ただいまのような御答弁で進まれるならば、在外資産処理はきわめて明確に進んで行くのでありますから、このことをほかの列席の方々にも十分腹に入れておつてもらいたい。そこで、正金銀行の分については多少時期が遅れるかもわかりませんが、もしこれを国際赤十字社にとられるなら、は政府からその補償をもらい、あるいはそのまま返してもらうかして、正金銀行で取組んだ送金為替や預貯金も何ぼか五五%くらいは支払つてもらえるだろうという希望の持てる御答弁でありますから、閉鎖機関の係の方は、そのような処置のできますように、引揚者の方の心情を十分御理解いただいて、処置をなさつていただきたいと思うのであります。そこで、次は在外会社令に及びますが、その前に、ちよつと閉鎖機関課長に伺います。この朝鮮銀行八十億円、台湾銀行二十九億円、これに対し、送金為替その他預金を、朝鮮銀行で十五億円支払い台湾銀行で十億円、これは百。パーセントの予想でございますが、支払つたといたしましても、朝鮮銀行で六十五億余り、台湾銀行で十九億円余りますが、これに対しましてはどういう御処置をなさるおつもりでありますか。
  33. 岩動道行

    岩動説明員 残りました国内資産につきましては、これは純粋に株主に帰属すべきものであるかどうかという点については、いろいろな問題がございます。特に朝鮮銀行台湾銀行につきましては、発券銀行であつたというような特質もありまして、いろいろな問題がございます。従つて政府といたしましては、今この残つたものがただちに株主に帰属すべきものとして第二会社をつくる、あるいは株主にこれを分配する、その全額についてそういう処理をするということにつきましては、まだ十分に検討を要する問題が多々あると思つております。ただいまのところは、ただちにこれで第二会社ができるというふりには考えておりません。
  34. 村瀬宣親

    村瀬委員 これはまた御答弁がちよつとあいまいになつたのでありますが、そうすると、政府が何か少しわけ前でもとろうとたつしやるので、ありますか。これは預金者と株主とのものであります。その他のものは断じてございません。あるいは値上りによるといいまするならば、それはその換算レートの問題にもなつて参るのでありまして、朝鮮銀行が八十億もできたというのは、きつとこれはいろいろな建物その他の不動産の値上りが主であろうと思います。そうしますと、先ほどからたびたび申しております通り、いわゆる物価指数を考慮に入れて、これら預貯金あるいは送金為替等も支払う必要があるのではないか。先ほど外債課長答弁によると、利息程度のものはその清算人等がよいと言えば加えてもよいような法律にしようかというようなお話でありましたが、利息という観念を加えられるならば、もう一層公平な物価指数というものもここに当然お考えになるべきだと思います。全額支払つてもなお六十五億も余るのであります。そしてこれは、株主の株券が一体幾らであつたのか知りませんが、朝鮮銀行の株主にもむろん相当の値上りを考えてもよいのでありますけれども、少くとも朝鮮銀行を例にとりまするならば、この八十億は株主と預金者以外のものではございません。従つて、これは預金者にわけてやらない以上は株主のものであります。株主にあり余るほど渡すのが不公平であるならば、送金小切手なり何なりした預金者にちやんと歩増しをして当然支払うべぎなのであります。その点、もう少しはつきりした答弁を伺いたいと思います。
  35. 岩動道行

    岩動説明員 先ほど外債課長から、在外財産問題調査会答申意見といたしまして、ある程度割増金をつけてやることを考慮したらどうかという意見があつたことを御紹介申し上げたわけでありますが、私どもも、それぞれの清算人がそういう意思でもつておやりになるのであれば、これはあえて拒むべきではない、かように考えております。つまり、これは完全に私的な債権債務のやり方でありますので、債務者がそれだけのことをしたいということであれば、それがはなはだしく世の常識に反したり、また不当な結果を生むということでない限りは、私どもとしてはこれを認めてもしつかえない、かように考えております。
  36. 村瀬宣親

    村瀬委員 もう一つ、ちよつと伺つておきますが、この百億に余る金は、あなたのところであるいは食糧証券その他を買うて利用なさつておる。しかし、これはやはり朝鮮銀行関係者の当然所有権のある金であります。そこで、第二会社の問題でありますが御答弁によりますと、大体朝鮮銀行、これはもう簡単にするために朝鮮銀行だけの例をとりますが、台湾銀行正金銀行も同様であります。朝鮮銀行で十二億ないし十五億であろうという。そういたしますと、せいぜい二十億くらい充てておけば確実に全額払えるわけでありますから、二十億ないし三十億とつておけばもう十分であります。そのあとはいつまでもあなたの方で抑えておく権利はないはずであります。従つて、十分の金を残して、そうしてそのあとは第二会社その他朝鮮銀行関係者にこれを返してやるのが当然だと思いますが、いつごろお返しになる御方針でありますか。金額は全額でなくてよろしい。あなたの方で預金者保護の意味で十分にとつておいてよろしい。しかし、十分にとつておけば、そのあとの金は朝鮮銀行の株主のものであります。いつごろあなたの手から離すおつもりでありますか、いつまであなたがじつと握つておるつもりでありますか。
  37. 岩動道行

    岩動説明員 先ほどの御質問に対するお答えを少し落しておりましたので、その点をまず申し上げたいと思います。それは、先ほど朝鮮銀行台湾銀行資産が主として建物等の値上りによつてできただろうというようなお話がありましたが、これは、いわば閉鎖をされました後の利益と申しますか、そういつたような処分益によるものはあまり大きくはございません。また閉鎖後の利益のおもなものは、むしろ国債等の利息の配当によるものが非常に大きな割合を占めておるわけであります。そうして、朝鮮銀行台湾銀行につきましては、なぜこのような大きな国内資産が残つたかと申しますと、結局は発券銀行性格から生れて来たものである、かように私どもは考えておるわけであります。しかもその国内資産の大部分は登録国債となつて日本銀行に入つておるわけでありまして、これは当時朝鮮銀行券、台湾銀行券を発行した見合いとしてそこにできたものが大部分であるというふうに考えられるわけであります。  それから、第二会社の問題でございますが、これはもちろん、仰せの通り、株主に帰属すべきものは当然すみやかにこれを返すと申しますか、株主の自由な処分にまかせるのが当然でございまして、私どももできるだけ早くその機会が来ることを希望いたしております。今いつごろと申されましても、ちよつとお答えができかねるわけであります。
  38. 村瀬宣親

    村瀬委員 次へ進みたいのでありますが、御答弁を聞くとまた明らかにしておきたいことが生ずるのであります。建物その他の値上りではなくて利子等が多くふえたのだと言いますが、私はそうじやないと思う。たとえば、この金はしばらくの間あなた方は無利子でじつとしておつたのであります。利子のつきかけたのは昭和二十三年ですかに食糧証券を買つて三分か何かの利子をとつたのが最初です。何で無利子でほつておくかということをわれわれはたびたび追究しておつた。そこで、伺いますが、一体利子としてふえたものはどのくらいありますか。私は八十億の中のせいぜい十億もないと思うのですが、それを一応明らかにしていただきたい。
  39. 岩動道行

    岩動説明員 あいにく手元に資料を持つて来ておりませんので、正確な数字を申し上げかねますが、利息収入が閉鎖後も入りましたのは、これは閉鎖のそのときから利子収入は相当入つております。つもり、先ほど申し上げましたように、日本銀行に登録されておりますところの公債は、当然そのときから、閉鎖後の利息として、朝鮮銀行台湾銀行に入つておるわけであります。その国債の利子のほかに、いろいろな処分益あるいは利息の配当による運用金が、食糧証券なりあるいは定期預金になつて、その他金融債等を買入れまして、その利息収入があるわけであります。しかも、その利息の収入の大部分は、朝鮮銀行で申しますと、五十数億の国債から生れて来ておるわけであります。閉鎖後の利息が幾らになるか、私記憶いたしておりません。ただいまお話のありましたように十億はあると思いますが、正確に今記憶しておりませんので、御質問があれば、また後ほど調べましてお知らせ申し上げたいと思います。
  40. 受田新吉

    ○受田委員 関連して。今利息の問題が出たので伺いますが、先ほど課長からお話になつた、今度出す法律に利息も考えてみたいということでありました。それは利率は幾らにして出すつもりであるか、この機会にお伺いいたします。
  41. 上田克郎

    上田説明員 先ほど申し上げましたように、各金融機関特殊性資産状況、そういうものもございますので、その資産の許す限り、また債務者である金融機関清算人または特殊整理人が希望しますところ——これはおそらく預金者なんかの希望もいれてやると思いますが、そういうものでいろいろとかわり得るかと思います。しかし、大体考えております基準と申しますか、そういうものは、普通の法定利息である五分という程度のものを、これは年間を何年と切るかにもよりますが、毎年五分くらいの程度のものなら妥当なものではなかろうかと考えております。しかし、運用の仕方によりますと、国債で運用しておりますものについては三分五厘が当時の国債の利率でございますので、手取りはもう少し減るかと思いますけれども、そういうことで、五分程度はやれないという金融機関もあるかとも思います。
  42. 受田新吉

    ○受田委員 今の利率の問題で、前の在外公館の借入金返済に関する法律について、国家として、債務確定額を基準にして、そうして大体あれは六年くらいたつていましたかね。本邦の通貨表示価格一〇〇に対する三一〇くらいの割合でお返しになつたと私は思つている。これは法定の五分に基いておると思いますが、これがまだ不安定だというお言葉があつたのですが、五分になるかならぬかわからぬ、諸般の情勢を考慮してということですが、在外資産か、国内資産か、どちらでもないような正体の外国からの送金小切手のごときものを十年間近くもすえ…置いて、そうして昔の値打ちのないお金で返すなどということは、これはもつてのほかのことなんです。少くとも今村瀬さんがおつしやつたような意味で、当時の通価表示価格がどのくらいの購買能力を持つてつたかということも考慮して、少くとも利息をつけるということになれば、はつきりここへ複利による計算をしてでも有利にして、長いこと苦痛をした人々に報いなければならぬと思いますが、こういう小さいところへもよく心を配つて対策を立てるよう要望しておきます。
  43. 村瀬宣親

    村瀬委員 利子が非常に大きくて八十億にもなつたとおつしやる以上は、今受田委員のおつしやつた通りの御処置を願いたい。従つて、五分程度の利息ということでありますが、五分とか七分とか区切る必要はありません。計算をしてみたら利子によつて八十億にふえたのである。この利子の方は、当然もつと前に支払うべき送金小切手やその他預金の利子なのであります。それが生んだ利子なのであります。全額それら預金者や送金小切手を送つた者に返してやつても、理論上何ら無理はないのでありますから、その点、ただいまの受田委員の御意見の通り、実際の引揚者の身になつて処理願いたいと思います。  それから、資料はあとで送つていただきまして、在外会社令に移りますが、時間がたちましたから、かけ足で参ります。これは、台湾関係で三銀行、朝鮮関係で三銀行、これが在外会社令処理をされております。ここにもともと無理があつたのであります。在外会社令というのは、一つの設備を主しにた在外会社のいろいろな規定であるのでありまして、それに対して預金者をかかえておる銀行をこの在外会社令でいろいろ規制をしたというところに置く運用の無理があつたのでありますが、それをいまさら言つてもしかたないのでありまして、この在外会社令改正によつて、台湾、朝鮮における六つの銀行の現在の清算が十億円になつておるのでありますが、これは全額預金者あるいは送金者は支払いを受けられますか。
  44. 上田克郎

    上田説明員 仰せの通り、在外会社である金融機関銀行そのほか含めまして十一行ございまして、資産はお話の通り約十億ございます。これらの金融機関外地で本社を持つて活躍しておりまして、内地には支店というものを持つておりません。従いまして、未払い送金為替というものも、現在調査中ではございますが、現在までのところ、きわめてわずかであるということになつておりまして、大部分預金でございます。現在判明しております預金は九億八千九百万円ということになつております。数字を二つ比べますとわかりますように、この在外預金に対して大体全額払えるだけの資金はあるわけでございまして、これは金融機関によつて少しの異同はございますが、大体払えるということになつております。
  45. 村瀬宣親

    村瀬委員 そういたしますと、この在外会社令による金融機関は第二会社をつくる余地はないのでございますか。つまり、清算の結果十億円しかなくて、預金、送金等が九億八千九百万円あるといたしますと、残りはないわけで、第二会社をつくる余地はないということになりますか。
  46. 上田克郎

    上田説明員 実は、預金に対しまして——これは法人預金も含むのでございますが、預金に対して貸付金も見合つておるものが法人の中に特に多いということがございまして、その貸付金が預金に対応するものは、一応払うと同時にこつちにもらうということが、ほかの預金者を保護する意味からも大事なことでございます。しかし、そういうような取扱いをいたすとしますと、この九億八千九百万円のうちの相当部分が残る可能性があると思われます。従いまして、あの金融機関のあるものについては、ある程度金額が、そうやつて株主のものと申しますか、株主が分配にあずかる権利を主張し得るような財産が出て来る金融機関もあろうかと思います。これは、この法令改正と同時にあらためてまた申告をとりまして、貸付金やら預金やらの債権者債務者を調べまして、はつきり確定することになろうかと思います。
  47. 村瀬宣親

    村瀬委員 閉鎖機関令在外会社令改正案の案分を見ておりませんからお尋ねをするのでありますが、この両改正法律案が通過いたしますると、ただちに第二会社は大蔵大臣の判一つでつくれるような内容でありますか。この改正案は、第二会社に対してはいわゆる預貯金あるいは送金為替支払いができるような改正と思うのでありますが、同時に、第二会社をつくる、つくらないという点にこの改正は触れておりますか、どうでありますか。
  48. 岩動道行

    岩動説明員 今度の法律におきましては、第二会社、閉鎖機関令で申しますと新会社の設立でございますが、この点につきましては全然関係ございません。これは昨年の夏の国会におきましてすでにそういう新会社を設立する場合のいろいろな条件等が法律によつて規定されておりますので、その規定に従つて今後新会社の問題は処理されて行くと思います。  なお、この機会に、先ほど私の説明が足りなかつたかと思うのでありますが、朝鮮銀行台湾銀行資産が八十億あるいは二十九億残つておりますが、それは利息収入等、閉鎖後の利益によつて出て来たものが大部分であるようにお聞き取りをいただいたように思いますが、それはそうではありませんので、当初申しましたように、閉鎖をされた当時において、すでに朝鮮銀行におきましては五十数億の国債、あるいは台湾銀行におきましても二十何億かの国債というものを国内資産として持つてつたわけであります。それが閉鎖後その利息を生んでふえて来た、あるいは国内にある建物等を処分した利益、こういつたようなもので、さらに朝鮮銀行におきましては五十数億にプラスするところの後の利息収入等が出て来る、それから台湾銀行におきましても十数億の国債プラスその後の利息、こういうような内訳になつております。誤解のないようにお願いいたします。
  49. 村瀬宣親

    村瀬委員 昨年の九月の閉鎖機関令改正で新会社ができることになつておるのは承知しておるのでありますが、一つもおつくりにならぬでございましよう。だから、私は、こういう閉鎖機関令在外会社令等改正して、そうして預金者に心配のないようになるならば、昨年改正したあの閉鎖機関令改正をおきかしになるのかどうか。あの改正を昨年の九月にいたしましたが、それによつて何々ができましたか。
  50. 岩動道行

    岩動説明員 昨年の改正によりまして、遺憾ながらまだ新会社は一つもできておりません。しかしながら、これは、新会社をつくり、あるいはその法律によりまして閉鎖機関の指定を解除いたしまして、その結果自主的な清算に移つた上で、元の会社を復活継続をする道も開いたわけでありまして、その場合に、新会社あるいは復活・継続をする場合の税法上の取扱いにつきまして、いろいろ問題がございます。できるだけ税の取扱い上これを軽減して新会社あるいは復活会社が残つた財産を有効に活用してやつて行くようにということで、私どもの方で国税当局といろいろその折衝をいたして来ております。最近に至りまして、ようやくいろいろの取扱いをやつてもらえる見通しがついて参りましたので、今後はそのような税法上の問題も解決いたしますれば、新会社あるいは復活・継続といつたようなものも相当出て来ると思います。そういう計画を持つております会社は相当に現在出ております。
  51. 村瀬宣親

    村瀬委員 せつかく法律改正しても、その実効があがらなければ国民はありがたくないのでありますから、年年の九月にその意味閉鎖機関令改正したのでありますから、着々新会社ができますように、ひとつ処理を願いたいのであります。  最後に残りましたのは、金融機関再建整備法改正によつてどういう恩典を受けるかという問題であります。第二封鎖について、三井、三菱、帝国、安田、住友、三和等でありますが、外地、外国に支店を持つてつた銀行関係となるでありましようが、これは、この金融機関再建整備法改正によつて引揚者たちはどのような恩典を受けるわけでありますか。金額等をひとつ御発表願いたいのであります。
  52. 谷村裕

    谷村説明員 金額そのものは、たとえば未払い送金小切手が総額で幾らあり、また件数が幾らであるかということの概数しかわかつておりません。正確な数字は今後の申出その他によつて判明するわけでございますから、概数と御承知願いたいと思います。また、ただいま残つております調整勘定利益金も九月末のものでございますから、これは今期末におきましてはまた若干異動すると御承知願いたいと思います。  それで、ただいまおあげになりました旧帝国、三菱、富士、住友、三和、大和、北拓、鹿児島銀行、安田信託、勧銀、以上十行がこれに関連いたしましておりますが、この中で未払い送金小切手関係がございますのは、旧帝国、三菱、富士、住友、三和、勧銀の六行でございます。金額は、概数でございますが、大体円貨建の方だけで六億三千万ないし六億七千万くらいかと思つております。この中で見合い資産がどの程度あるかという点になりますと、先ほど申し上げましたような状況で、ほとんど在外勘定に充てるべき見合い資産はございません。しかしながら、当時の事情等を勘案いたしまして、また銀行としましても、在外支店がとにかく国内に向つてつたということでございますし、また引揚者の方方もまさしくそのつもりで当時引揚げに際して出先官憲の指示等によりましていろいろ送金為替を組まれたというようなこともございますので、大体ただいま考えておりますところでは、一件の金額五万円までは他の勘定から金を借りて来てもお支払いをする、それを越える分については、見合い資産の充実をまつて、そういう機会がありましたならば払えるようにする、こういう建前になつております。それで行きますと、大体総件数が送金小切手の円貨建の分——儲備券建の分は少うございますから省略いたしまして、概数で申し上げますと、ほぼ三万六千八十七件ほどございます。そのうち五万円以下の件数というものは三万四千九百五十四件ほどございますので、大体九七%はこれによつて——当時引揚げに際し三万円送金とかいろいろな言葉がございますがその分は確保されると考えております。五万円以上の送金小切手のものにつきましても、五万円までの部分支払うつもりでおりますので、それで金額を計算いたしますと、かりに総額六億七千八百万円であつたといたしますならば、五万円以下の部分は全額、五万円を越える小切手についての五万円までの部分と、これを合せた金額が四億一千百万円ほどになろうかと思います。パーセンテージで申しますと大体六割くらいになります。預金につきましては、先ほど触れましたように、見合い資産がございませんので、まず送金小切手にはたただいまのような措置をとるといたしましても、外地預金まで支払い得る銀行は遺憾ながら一行、あるいはうまく行つて二行というふうに考えられます。これは全額支払えるのではないかと思います。具体的に申し上げれば、北海道拓殖銀行は樺太に約二億円の預金を残して参つております。送金小切手はございません。この二億の預金に対しまして、北海道拓殖銀行は当時樺太から持つて帰りました国債が約五千万ほどございます。それからは若干九月末で調整勘定の残が約八千万ほどございます。これは在外勘定の方に繰入れますから、これではまだちよつと足りないのでございますけれども、この三月期までの間には若干調整勘定にも利益が出るかと存じますので、この二億の樺太に残して参りました預金は、ほぼ払えることになろうかと存じます。もう一つ、大和銀行は上海で信託業務を営んでおりまして、わずかではございますが金銭信託がございます。これは全額横浜正金銀行を通じて内地送金ということにいたしておりますが、横浜正金銀行の方がどの程度その送金小切手支払いをしてくださるかによつて、大和銀行という銀行に見合いの資産を獲得できるかということになるわけでございます。もつとも、それが少うございましても、大和銀行内地への分配をしてもまだ若干調整勘定利益が出る見込みもございますので、それを使いましても払うことができると思います。なお、勧業銀行につきましては、送金小切手で約二百万ほどのものがございます。これはたまたま沖縄の土地を処分いたしましたものがこちらに送金されてもどつて来ておりまして、これが在外勘定資産の部に立ちますので、それが、ちようど二百万ほどございますから、それでもつてその送金小切手の分はともかく支払えると思いますが、預金までは及ばない、こういうかつこうになつております。銀行によつていろいろと形は違いますが、ある銀行におきましては、今申し上げましたように、調整勘定からかりに五万円分だけ借りて来て払いましても、なおかつ調整勘定内地預金支払つて残が出るという状況も見込まれるのがございます。そういうところでありますと、その調整勘定の残りの部分在外勘定の中に繰込みまして、もう少し状況を見た上でまた再分配する。こういう形になるかと思います。
  53. 村瀬宣親

    村瀬委員 非常に時間がおそくなりましたので、もうこれで打切りますが、なお、郵便貯金、外地の保険等の問題についても、引揚者は聞きいことがたくさんあるのであります。それは後日に譲りまして、最後に特にお伺いをしておきたいと思いますのは、政府在外財産問題調査会——やがて法律によつて審議会になるでありましようが、これに何もかも転嫁いたしておるような傾向が見受けられるのであります。従つて引揚者といたしましては、これに対し非常な期待を持つておるのでありますが、この運営はどのようになつておるか、月何回開いておるとか、あるいは定例はどうであるとか、簡単にお答えが願いたい。そうして、在外資産根本問題の解決はいつごろになるでありましようか。今までいろいろと御説明になりましたけれども、まつた政府は人のことでいろいろ世話をしたという程度であつて、一厘の金も出そうとなさつておらないのでありまして、在外資産処理根本に触れておらない。従つて、これら九年間も捨てて顧みられなかつた引揚者に対し政府は一体どのようなことをなそうとするかという政府の誠意をみんな監視しておるのであります。ただ、かような、自分の腹はちよつとも痛めないで、あごで人に指示して、これも出してやる、あれも出してやる、しかもちびちびと出してやるというような方法だけでは、政府の誠意は見られません。従つて在外資産補償に関する法律はどういう建前で素案をつくつておるとか、あるいは、本国会はまだ五月の初旬まであるのでありますから、それまでにはそういう法律の素案が在外財産問題審議会を通じて出されるであろうとか、そういうふうに、政府はどの程度の誠意を示すつもりだというお見通しについて、私はここでお答えを願いたいと思うのであります。  なお、次の機会には、緒方総理や小笠原大蔵大臣に、私は基本的な問題についてお伺いをいたしたいと思います。在外資産処理が一歩々々順を追うて解決せられなければ、この問題を放任して正しい日本の国の建設は不可能である。戦後処理の最も重大な一角が何もなされないで、そして国を新たにつくろうとかかつておるのでありますが、それではとうていよい国はできません。従つて、この問題解決のために、当委員会におきましても早い機会政府の責任者を呼んでいただくように委員長にお願いいたしまして、私の質問を終ります。御答弁を願います。
  54. 上田克郎

    上田説明員 在外財産問題調査会は昨年の十二月十二日に第一回の会を開かれまして、その後今日まで七回開かれております。次の会は今月の十八日となつておりまして、回数の頻度は、途中で冬の休暇が入りましたから、平均すると幾らが少くなるかもしれませんが、大体十日ないし二週間に一回の割合で開かれております。それから、引揚者の方々がこの調査会に大きな期待を持たれておるということは、投書等によりましても十分委員の方々も承知されております。幹事並びに幹事補佐といたしましても、委員の方々になるべく生の引揚者のお声をお耳に入れて、全体の問題を考える際の大きな一つの基礎にしていただきたいという気持で、委員各位もそういうお考えでございますので、なるべく早い機会にそういつた生のお声を聞く機会をつくる予定でございます。現在の予算上の措置といたしましては、委員会は来年の三月までの予算を大体要求してございますが、私たちとしましては、できるだけ早い機会に、最終的な結論が出て、早い機会に、先生のおつしやる在外財産の問題——政府の腹を痛める問題、それに対する法案が提案できることを期待しております。
  55. 受田新吉

    ○受田委員 もう時間が過ぎたので、私、質問を次会に保留しますが、次会までの間に研究を願つておきたい政府に対する要望点があります。それは、今度法案を出されるにあたりましてなされた政府側の努力は認めますが、この法律の適用を受ける債権者たちが十分保護を受けられるようにならなければならぬ。昭和二十七年の例の在外公館の借入金返済に関する法律の適用にしても、確認申請の申立期間を二回ぐらい延長してそれを救済するように努めましたけれども、現に私のところへも、あれはどうなつているのですかというような、まだ請求しない人がたくさん来るのです。こうなつて来ると、あの法律改正しなければ救済の道がなくなつていると私は思うのですが、こういう点でも、政府は親切に、周知徹底させるように、そういう該当者には通知を出すとか、該当とおぼしき人にはあらゆる手を尽してこの法律の恩恵に浴するように措置しなければならない。この点については、局長としても、また課長としても、また直接銀行関係を通じても、衆知を動員して、適用者が漏れないようにやつていただきたい。しかし今度は非常に短期間にこれを処理しようという意思もあるようでありますから、よけいこの点においては周知徹底させなければならぬ。同時に、救済規定を十分設けておいて、そうした確認申請期間あるいは請求期間というものが相当幅を持つように法案を考えてもらいたいと私は思うのです。この点をひとつ要望申し上げておきます。  もう一つは、この法案趣旨説明の中に書いてありまするように、制限額を設けたことは今までの引揚者の場合と今後の引揚者の場合も含むのだということですが、今後の引揚者の場合とはいかなる場合であるか。これは今後ソ連、中共等から帰つて来られる人の場合も含んでおるのかどうか。大蔵省首脳部並びに田辺次長の御答弁をあわせて願いたいと思うのであります。  以上二点、これはきようの私の質問の終りです。あとは次会に質問続行をお約束して、きようは私はこれで質問を終ります。
  56. 森本則雄

    ○森本説明員 旧日本銀行券の問題だけについてお答えを申し上げておきます。今後の引揚者の旧日本銀行券を持ち帰りました分につきましても、この法律の附則の規定によつて同じような扱いをすることになつております。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 これは持帰り金の制限があるわけですね。
  58. 森本則雄

    ○森本説明員 そうでございます。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 それに対する対策はどうなつておりますか。
  60. 森本則雄

    ○森本説明員 持帰り金の制限というよりも、交換の制限をこの法律を適用して処理して行きたい、こう考えております。
  61. 山下春江

    山下委員長 この問題は非常に重大でございますし、村瀬委員の御要望その他の委員の御要望もごもつともと思いますので、次会は緒方総理大蔵大臣等の出席を求めまして解明いたすこととして、本日はこの問題はこの程度といたします。     —————————————
  62. 山下春江

    山下委員長 次に、留守家族援護に関する件について議事を進めます。時間がたいへん遅れておりますので、お気の毒とは思いますが、本件については未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案国会に提出になつておりますので、これについての概要説明を聴取いたすことといたします。引揚援護庁田辺次長。
  63. 田辺繁雄

    ○田辺政府委員 未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案の大要について御説明申し上げます。第一に、従来の遺骨埋葬経費は、未復員者、ソビエト社会主義共和国連邦の地域内の未復員者と同様の実情にある一般の邦人または戦争裁判官の方々の死亡の事実が判明した場合にのみ支給されていたのでありますが、これらの方方以外の一般邦人である未帰還者の死亡の事実が判明した場合におきましても、その遺族に対してこの遺骨埋葬経費を支給することが遺族の心情にも、また国民の方々の気持にもかなうものであると考えられますので、この際、その名称を葬祭料と改め、右の一般邦人未帰還者をも含め、未帰還者戦犯の方々に対してその死亡の事実が判明した場合には、この経費をその遺族等に支給することとした次第であります。  第二に、遺骨引取り経費は、遺族がない場合におきましても、葬祭を行う者があれば、その者に支給することができるようにいたしました。すなわち、この経費は政府が遺族に対し遺骨の引渡しを行う場合において、その引取りを行う場合の経費でありますので、遺族がない場合においてもその近親者等が葬祭を行うために遺骨を引取る場合には、この経費を支給することが適当であると考えられますので、このように措置する次第であります。  第三に、この法律は沖縄地域にも適用されているわけでありますが、同地域の置かれている特殊の状態からして現在実際上は運用されておりません。近くこの法律を沖縄に実施いたします場合に、それが最初から適用されていたと同様の効果を生ぜしめるよう特別の措置を講ずることが適当と考えまして、現地の実情に即するよう、政令で適当な措置をとり得るように改正をいたした次第であります。  第四に、従来外務省において実施いたしておりました一般邦人未帰還者の調査業務は、明年度から厚生省に移管されることになりましたので、これを機会に厚生省の付属機関として、従来の留守業務部を改編いたしまして、これを未帰還調査部と改め、旧軍人軍属の未帰還者等の調査業務等と、あわせて、一般邦人をも含めて未帰還者全部の調査究明を一元的に実施する措置を講ずることが適当であると考えられますので、厚生省設置法の事に必要な改正を行うことといたしました。  第五に、未帰還留守家族等援護法の施行に伴い一般職の職員の給与に関する法律の一部が改正されまして、未帰還の国家公務員は未帰還中の俸給を支給されないことになりました。従つて、国家公務員共済組合法の組合員たる資格を失うこととなり、また、未帰還の地方公務員についても同様の事情になりますので、従来の実績を保障する意味におきまして、これらの未帰還者につきましても引続き組合員たるの資格を保持せしめるようにするために、国家公務員共済組合法の中に所要の改正を行うことといたしたのでございます。  以上がこの法律改正内容の概略でございます。
  64. 山下春江

  65. 村瀬宣親

    村瀬委員 ただいまの御説明と直接の関連はないかもわかりませんが、いい機会でありますから、一言お尋ねしておきます。  自殺その他責任を感じて、終戦直前あるいは直後に命を絶ちました軍人に対しましての問題は、当委員会におきましても高橋等委員等から大分御意見があつたわけでありますが、その後何か一律に五万円を支給することにきまつたということを大分前に新聞で見たのですが、どのように御決定になつておりますか。
  66. 田辺繁雄

    ○田辺政府委員 問題は二点あると思います。一つは、恩給法なり援護法上、ただいま御指摘になりましたようなケースが公務死亡となるかならぬかという問題でございます。これは主として恩給局の方でお考えをいただくべき問題であると考えております。現在厚生省の方と恩給局と十分連絡をとつて検討中でございます。  それから、後ほどお述べになりました件は、恩給法上公務死亡と認定されない場合におきましても、軍人につきましては内外地を問わず国として何らかの弔慰の意を表するために特別の措置を講ずる必要があるのではないか、こういうところからも五万円というような弔慰金を差上げ得る措置ができておるわけでございます。これも今財務当局と私の方と十分協議をいたしておりますが、特別の弔慰金を差上げることについては、方針はきまつております。金額等につきまして目下十分慎重に協議をいたしておりますが、近く決定を見ることと思つております。
  67. 山下春江

    山下委員長 本日は時間がたいへんおそくなりましたのでこの程度といたし、本件につきましての質疑及び他の案件は次会に延期いたしたいと思います。  次会は公報をもつてお知らせいたします。これにて散会いたします。     午後一時十分散会