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1954-10-25 第19回国会 衆議院 運輸委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十五日(月曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 關内 正一君    理事 岡田 五郎君 理事 關谷 勝利君       天野 公義君    岡本 忠雄君       有田 喜一君    伊東 岩男君       臼井 莊一君    並木 芳雄君       青野 武一君    楯 兼次郎君       正木  清君    田中幾三郎君       館  俊三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道副         総裁      天坊 裕彦君         日本国有鉄道参         事         (総裁室文書課         長)      広瀬 真一君         日本国有鉄道理         事         (営業局長)  唐沢  勳君         専  門  員 堤  正威君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 十月二十三日  委員並木芳雄君辞任につき、その補欠として岡  部得三君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員岡部得三君、本名武君及び中居英太郎君辞  任につき、その補欠として並木芳雄君、伊東岩  男君及び田中幾三郎君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  台風第十五号による洞爺丸等遭難事件に関する  件     —————————————
  2. 關内正一

    ○關内委員長 これより会議を開きます。  台風第十五号による洞爺丸等遭難事件に関する調査を進めます。質疑を続けます。青野武一君。
  3. 青野武一

    青野委員 九月十六日の台風十五号による洞爺丸以下四隻の沈没船によつて、世界的な大惨事を引起しましたことは、私どもにとりましてもまことに遺憾なことでありますが、それによつて九月二十七日在京運輸委員懇談会を皮切りにいたしまして、翌日の二十八日、二十九日、三十日と、前後四日間運輸委員会懇談会が開かれました。そして各党から、運輸委員会からも現地調査団を派遣いたしまして、十月十九日、山崎団長からの報告がございました。引続いて十月二十日、二十一日、二十二日と四日間運輸委員会を開いて、調査団報告委員会から引続き本日まで、大体五日間でありますが、明日も運輸委員会がございますけれども、すでに調査団報告書も出ておりまして、委員会といたしましては、すでに態度をはつきり決議によつて表明をしております。私は九月二十七日の在京運輸委員懇談会の翌日の九月二十八日に発言の許可をいただきまして、かなり詳細に御質問を申し上げました。そのときに、必要があれば現地から関係者運輸委員会に招請をして、証言をしてもらうかもわからぬ、同時に運輸省としても国鉄としても、九月二十八日の私の質問で、こういう重大な問題はただ口頭による答弁では、資料ないし証拠が残りませんから、調査の結果を印刷物によつて二十五名の各委員に御配付願いたい、印刷物による報告書の提出を希望しておつたのでございますが、十月十九日には山崎団長報告があり、その翌日の二十日のだれかの質問に対しまして、不幸にして運輸当局はいまだ中間報告ができる段階ではございませんという御答弁があつた。すでに一箇月近くなつておるにもかかわらず、中間報告もできないということで、私はそのときにもう一ぺん発言を求めて、この問題に関して私として前回の発言に続いて結論をつけなければならぬ義務ができましたので、私はあらためてここに質問を申し上げたいと思います。海難審判庁結論とは別個に、私が順序を追うて御質問申し上げたいことは、新聞の報ずるところによりますと、四、五日前の新聞では身元不明者遺体が三十三体ある、きよう新聞によると大体二十八死体は身元不明であるということを報じておるが、そこで項目をあげて、行方不明者の数は一体幾らあるのか、揚げた遺体は大体どれだけあるのか。それから身元不明者新聞の報ずるところでは三十三名と二十八名で、そこに数字上の開きがございますが、これはどちらがほんとうか、そうして身元不明者というものは乗客名簿の中にそれは偽名によつて乗られたのであるか、大体どういう理由身元不明者のそんな数ができたか、あるいはまた衣服とか所持品とかの証拠品を残して将来身元不明者の判明する人もできるでありましようが、そういう点をこの際ひとつ明らかにしてもらいたい。それともう一つ順序を追つて申し上げたいと思いますが、この洞爺丸に関してはどういう原因で転覆したのか、瞬間風速五十七メーターと言つておりますが、平均にして台風の速度は大体三十五メーターと私ども推定をしているのですが、その台風によつて船体の構造のためにひつくり返つたのか、それとも座礁したためにひつくり返つたのか、この点をずつと項目別に御質問いたしますから、まず第一にこれを一つお尋ねをしておきたい。
  4. 唐沢勳

    唐沢説明員 この数字あとで続いて申し上げますが、この乗船名簿にありましても、その名簿にあつた方の中で照会いたしましてもどうしてもわからない、そういう者はこの辺にいないというような者もありますし、あるいはまたそこへ行きましても、自分は乗つていないというような者もございます。また逆に乗船名簿へ書いて乗るつもりであつたがおりたというような者もございまして、そういう点が実際はなかなか複雑しておりますので、それをだんだん生存しておる者がはつきりしたものもございますし、また名簿になかつたが実際乗つたというのではつきり証拠を持つて来られまして、そうしてその辺がはつきりしたものは引取つてもらうという者もございます。また今身元不明の者もありますが、それらにつきましては完全に警察の方とも協力しまして、証拠になるもの、遺留品を確保しておりまして、今後そういう方の関係者が出て来るのを待つておるような次第であります。そういうようなことでいろいろケースがございますが、それらにつきましてのただいままでわかつておる分につきましては、今文書課長から申し上げます。
  5. 広瀬真一

    広瀬説明員 十月二十二日現在の現地から受けました数字を申し上げますが、死亡者を申し上げますと、乗船名簿にございまして、死亡の確定しております者が八百九十八人、乗船名簿にございませんで死亡はつきりしております者が七十一人、合計九百六十九人。次は生存者を申し上げますが、乗船名簿にございまして生存はつきりいたしております者が百七十一人、乗船名簿に記載しなくて生存が確定しております者が六人、なおここでちよつと申し上げたいのは、百七十一人のうち六十七人は、実際は乗船しないで下船したお客さんでございます。この六十七人は現在までこちらが八方手を尽し、新聞広告等で申出のあつた分でございます。次はいまだに行方不明になつておる者の数字でございますが、乗船名簿にありまして行方不明になつております者が七十三人、この内訳ちよつとこまかく申し上げますが、警察その他の協力を得まして、この七十三人のうち死亡がほぼ確実であるという認定のできております者が五十人、それから乗船は大体確実にしておつたが、ただ手続未了の者が三人、従いまして、この七十三人のうちから五十三人は、現在の段階においてはほぼ確実に乗船しておつてまだ行方不明である。あと差引二十人ございますが、これは目下警察等協力を得まして、八方手を尽して調査しておるのでありますが、乗船名簿の不備その他によつてほぼ乗船していなかつたのではないかという推定をしております。これはまだ目下調査中でございます。その次は不明者のうちで乗船名簿になかつたものが八人ございます。この内訳死亡認定手続が終了した者が二人ございます。それから手続はまだ終了しておりませんが、乗船とほぼ確定される者が三人、あと遺族その他の申出によつて乗船しなかつた推定される者が三人。なお先ほどお尋ねがございました遺骨遺体等引取り手のないものは、二十二日現在では遺骨が二十四体、遺体が三体ございます。遺体内訳を申し上げますと、一体は小さい子供で、これは砂の中から発見されましてやや原形をとどめております。遺体あとの二は職員ではないかと推定されますが、まだはつきりわかりません。大体死亡者生存者行方不明、それから遺体現状で、現在まで私の方でほぼ確実につかんだ数字を申しあげました。
  6. 唐沢勳

    唐沢説明員 次に御質問の転覆の原因でございますが、これは各方面の十分なる御調査をまたなければ、なかなか判明しないと思うので、ございます。私どもといたしましても当時の模様その他をいろいろ考え、またある程度生存者からの供述なども聞きまして想像はしておるのでございますが、当時の模様も非常に複雑でございまして、気象関係、海象の関係が複雑で、なかなか簡単に結論を下すことは困難ではないかと思うのでございます。この点は先般この委員会におきまして山崎団長からの御報告もございましたが、それに関しまして私どもの一応こういうことも考えられるというような点も申し上げたのでございますけれども、そういうこまかいといいますか、ほんとうのことは、もう少し今後の調査をまたなければ、なかなかわからないのじやないかと思います。私どもとしましては一応洞爺丸があそこへいかりをおろしたので、このいかりはきいておつたと思うのでございます。それに対して風に向つて船を立てて碇泊しておつたのが、猛烈な風と波のうねりとのためにだんだん流されて行つたのではないか、そして一方三角波といいますか、複雑な波の現象でうしろからの水も相当入り、その圧力が非常に強いので、締めておつたハッチもゆるんだり、あるいはこわれたりしたこともあつたのじやないかとも思われます。ともかく水が相当つて、そのためにだんだん機関の方にも故障を起して来る。一方風や波のために流されてだんだんと岸の方へ行き、そして最後は結局安全に砂地に坐礁しよう思つたと思われるのでございますが、海底に非常な変化が起つたのではないか。あの場所の水深と船の吃水というようなことから考えまして、むしろあそこに大きな海底変化が起つて、そして砂山と申しますか、盛り上つた砂に乗り上げたのではないか。もし普通の状態における海岸に乗り上げたならば安全であつたろうと思うのでございますが、そういう異常な海底変化のあつたところへ乗り上げて、その乗り上げた砂がまたくずれたために、転覆したのではないかというようなふうにも考えておるのでございますが、その辺はもう少し詳しく調べてみないと、なかなかにわかに断定できないのじやないか、かように考えております。
  7. 青野武一

    青野委員 行方不明者の数が七十三名、身元不明者の数が三十三名になるわけでございます。これは新聞紙報道は三十三名の方が正確のように思いますが、この遺体引揚げ洞爺丸現状では不可能であるかどうか、そこでこれは転覆しておるのを正常な位置に直すか、あるいはいろいろな方法引揚げるということになると思いますが、その引揚げ準備完了新聞紙の報ずるところによると来年の二月ごろになる。そうするとこれも同じく新聞報道でございますが、大体行方不明者遺族とみなされる諸君が、いまだに函館で二十名ばかり滞在しておる。遺族の身になつてみると、ニュース映画も見て御存じと思いますが、それはたまらないのです。相当遺体が揚つているけれども、不幸にして自分たちの主人や子供は結局揚らない。しかもその転覆しておる洞爺丸を正常な位置に引直して、死体引揚げがいつできるか。準備だけで来年の二月ごろまでかかるということを新聞報道せられると、遺族の身になつたら、立つてもいてもおられぬほどの気持だろうと思います。そういうことで、しかもいまだに二十名からの関係者函館に滞在しておるということは、運輸当局なり国鉄当局がまだそれらの諸君納得の行くよう方法を講じてない証拠だと思う。そういう人たちに対して、何のために、残つておる行方不明者遺体が揚らぬのか。今日の日本沈船引揚げ技術からいつてみて、どうしてもこれ以上のことはできない。従つてこれを引揚げるためには、相当の時日と準備がいるのだということがはつきりわかれば、泣く泣くこの遺族諸君納得をしてくれるのじやないか。そういう手が打たれておらないために、——遺体引揚げてもらつた人遺骨にしたり、遺体のままでそれぞれ郷里に連れて帰つておりますが、そのためにやはり残つているのだろうと思う。それで運輸委員会としてはつきりしてもらいたいのは、遺体引掛げ現状のところはどうしてできないのか。私も何ぼか経験があるのですが、そのできないという理由潜水夫がもうこれ以上洞爺丸船内に入つて作業をすることがどういう意味でできないのか、危険であるのか、水圧の関係からか、五十ひろも六十ひろもあるところで作業する場合は、入つたかと思うとすぐに一分か二分で交代して揚らなければ生命に危険を感ずるわけですが、ここはそういう場所ではないはずであります。私はこの間アメリカ行つて帰つたばかりでありますが、この前の運輸委員会でも言つておきましたけれども日本小型潜水艦が真珠湾に入つて、そうして戦艦アリゾナを撃沈した。そのとき現場を撃沈したかしないかを一ぺん浮揚してから見定めて引下つたけれども、結局防潜網をくぐつて出ることができなくて、不幸にして全員死んでしまつたが、しかしそこは岸壁のそばだが非常に深い所なんです。それで戦艦アリゾナに乗つていた二千数百名の兵隊の遺体が、一人も出せないという状態つた。そのために、甲板に大勢の潜水夫を入れてつないだのだろうと思うのですが、これを記念するためにアメリカの旗を一本立てて、この下に戦艦アリゾナが沈んでおるのだということを表示した。そういうことはアメリカ技術をもつてしても、一人の遺体をも引揚げることができないので、こういう記念のためにアメリカの国旗を立てているという説明を、私は在外公館諸君から承つた。しかし洞爺丸の場合は港外であつても、ずつと浜べに近いわけです。坐礁したために転覆した、そういう所の船内死体捜査というものは、そんなに困難なものであるのか。これはわれわれもしろうとでございますが、遺族の身になつたら、行方不明者の家族の身になつたら、私は納得できないと思うのです。そういう点についてどういうよう理由と、どういうよう原因によつてあとに残つておる行方不明者遺体捜査ができないのか。これが実際に揚げられぬということは、弔慰金の問題とは別個だ。どこに責任があるとかないとかいう問題とは別個に、当然全力を上げて誠意をもつて終始一貫、その遺家族の諸君納得の行くよう方法を立てるのが、私は国鉄なり運輸当局の当然とるべき道だと思いますが、その点についてこの委員会を通じて関係者納得の行くような御答弁を私は求めたいと思います。
  8. 唐沢勳

    唐沢説明員 遺体引揚げにつきましては、当初から潜水夫を動員しましていろいろ作業をして参りましたが、結局切れるところは切るようにして、最も優秀な潜水夫を入れてくまなく探しておるのでありまして、あとはもう——ほかのいろいろな障害物を取除いたりしてできるだけのことをしたのであります。そうして相当もぐつておりますので、その中の砂もある程度はかきわけたりして探したのですが、あとはもう浮揚作業によつて浮き揚らせてみなければ、どうしてもこれ以上は探せないというところまで参つたのでございます。そこで遺族方々にも集まつていただいてその事情を御説明いたしましたし、また実際の作業に当つている潜水夫の方にも出てもらつて、ここはこう切つた、ここはこういうふうに探したというようによく話をしてもらいまして、遺族方々も御納得行つたと聞いております。そこでいよいよどうしてもきようは出ない、あすも出ないということになりましたので、結局浮揚作業をすることになりまして、その仕事にかかることになつたのでございます。そうして浮揚しながらも、その都度遺体を探すこともあわせてやつたわけであります。そこである程度深いところまでもぐつて行つて、中をすつかり調べたり、その死んだ附近調べるというようなことをいたしておるのでございます。そこで遺族方々もその点を御了承くださいまして、その作業進捗模様はその都度お宅の方へお知らせする、また遺体が揚つた場合はその様子を逐一御報告するということで、お引取りを願うという段階に一応なつておるのでございます。
  9. 青野武一

    青野委員 その点は遺族納得すれば私はとやかく申しませんから、一応聞きおく程度にいたしておきます。  数項目をあげて質問を申し上げました最後に、今後の台風によつて仮碇泊をしておるときに、当時は大きないかりのチェーンが切れたからとか、何のためにとかいうよう新聞記事も出ておりました。それは何の調査もしないで、学識経験者人たちが個々思い思いにいろいろな意見を発表しておりましたのが、多少問題を紛糾に導いたのではないかとも思いまして、はなはだ遺憾に思つて、私も二十八日の委員会ではそれに対して一矢を報いておいたのでございますが、私が二十八日に質問をしたときには、大体風速二十五メーターぐらいのものが吹きますと、たとえば平行になつておる甲板が三十度ぐらいの傾斜になれば、人間はロープにすがらなければ甲板を歩けません。そういうときには、青函連絡船としての責任を果す場合に、過去においては多少危険であるけれども、そこを出て結局無事に航行を終えて、大きな事故は起りませんでしたから、それになれてしまつたのではないか、といつたようなことを申し上げた。当時は、大体国鉄当局の失態である、必ずしもこれは不可抗力ではないのだという話の持つて行き方で御質問を申し上げたのでありますが、最後調査団報告を聞きましても、四十度ないし四十五度の傾斜で船が転覆したという報告文がございました。そうすると普通の船とは違いまして、洞爺丸の場合はまん中貨車郵便車客車が十二両入つてつた。それが右舷と左舷とに入つておれば別だが、まん中レールを二本引いてそれにひつぱり込んでおる。そうすると三十度の傾斜になれば、貨車レールがくつついておりましても、貨車が転覆しますと、その方向に向つて船が転覆するのは当然なんです。その証拠には外国船貨物船でない船があの暴風の中で、附近に仮泊しておつて沈没を免れておる。貨物船であるから風速二十五メーターも吹く場合はやむを得ぬ。これはあと岡田先生から御質問がありますから、私はそれを省略いたしますけれども、最近ではちよつと風が吹いたら青函連絡船をとめておるという新聞記事も見ますが、そういうことで幸いに事故がなかつたからいいようなものだけれども、大体この程度では出てよかろうというような調子で出たのが、ついこういうよう惨事を引起す原因になつたのではないかとも私は思います。調査団報告団長意見も私は非公式に聞いてみたのですが、洞爺丸青森向けに出港する目的で、さん橋を離れたということになれば、それはうなづけます。風速三十五メートル、三十二メートルといつたよう台風の場合にはいかりを入れて、スローのエンジンをかけ、風の方向に向けてかじをとり、台風通過後に青森に向けて再び出港するということは、だれが見ても船員の常識であり、船長がそうすることは当然です。けれどもそういう目的がなく、この風の中でさん橋に船をつけておつたのでは船体がこわれるから、一応防波堤の附近いかりをおろしたということになれば、これは当然万難を排してもお客をおろさなければならぬ。それをおろさずに、青森向けに仮泊して台風通過を待つておるうちに、吹き流されて坐礁して、それが直接の原因になり、転覆してあれだけの惨事を引起した。甲板におる人も相当死骸になつて浜に打上げられたのはニュース映画で見ております。しかし助かつた人はほとんど甲板におつた人なんです。船内におる人は非常に多数であつて、出たくも出られないよう緊急処置がとられたということも聞いておるが、それでああいう大量の犠牲者を出したと思います。この点は調査団報告もあり、私の質問とあわせてはつきりしてもらいたい。きようは私の質問とその他二、三の質問で、一応洞爺丸事件運輸委員会としては結論を出す必要がありますから、青森向けに出港して、仮泊しておつて吹き流され、坐礁して転覆したのか。最後的な海難審判庁の判定はございませんけれども国鉄当局はまず当事者としてどの程度に御答弁ができるか、はつきりしておいてもらいたいと思います。
  10. 唐沢勳

    唐沢説明員 船長は私ども推定では青森へ向けて出港をした。つまり初めから仮泊する気持でなく、青森へ向けて運航が可能であるという確信を持つて出発したと考えるのでございます。この点は過日にもこの委員会で申し上げたのでございますが、要するにあのときの気象予報を、当時船長としてはくまなく入手しておつた推定されます。それらの判断からいたしまして、今相当風は吹いているけれども、この程度の風なら従来も航行したことがあるし、また気象予報を今まで入手した経過をたどつてみると、北海道の中心部の方へ行つているころであるから、この風もやがて治まるというよう判断し、また海上も最初の一時間ぐらいのところを乗り切れば、あとはそう大したことはないというふうな判断もつく状況にあつたので、そこで青森へ向けて大丈夫乗り切れるという確信を持つて出港したと考えております。
  11. 青野武一

    青野委員 それで国鉄側のこの点についてのはつきりしたお答えを願つたわけですが、それと同時に青森さん橋を動かなかつた羊蹄丸のとつた処置——これは国鉄側質問するまでもないのでありますが、結局避難者を出さなかつた。風向きも違つております。函館から出るのと青森から函館に出て行くのとでは違いますが、私たちはこの点についてはおおむね妥当であると思います。国鉄のこの点についての意見、それからもう一つ洞爺丸青森向けに出港する目的でさん橋を離れたことは御確認を願つたのですが、このときには南風三十二メートルの台風が吹いておつたときなんです。二十五メートルじやないのです。三十二メートルの風が吹いておるときにも出たということは、過去においてもこの程度台風の際にはいつも青森向けあるいは函館向けに出港しておつたということなんです。ここに今回の避難原因がひそんでおつた台風をなめておる。もちろんそれについてのりつぱな態勢が立つておればいいけれども台風に対する防衛対策というものが一つも立つておらない。ある人はちよつと顔を出してひつ込んだ。ある人はその大事なときに現場に居合せなかつたというよう責任者報告も、私は調査団諸君から聞いておりますが、こちいり大きな惨事を引起した台風に対して、大体十分の防衛態勢というものがなされておらないところに、青森は安全であつたが、函館は非常な惨事を引起した。  それからもう一つお尋ねしたいと思うことは、その付近に貨物船ではない普通の客船の場合、貨車やあるいは郵便車あるいは客車等洞爺丸その他の貨物船ように入れてない船で仮泊しておつたのは、全部助かつたという新聞報道でございますが、それはあなた方の方で何という船、あるいはトン数はどれくらい、それは何隻であるかということはもうお調べになつておる。これは二十八日の運輸委員会で私が文書によつて印刷物をもつて二十五名の委員諸君経過調査の御報告を求めたが、きようでほとんど一箇月ですが、今日まで私どもの手元に来ておりません。お聞き流しになつた思つて私は悪意は持つておりませんが、それは調査団諸君委員会報告書を出すように、国鉄国鉄運輸省運輸省として独自の立場からお調べになつた点は、当然運輸委員会に対して、そういう要求があつた場合は進んでその調査の内容について、たとえば行方不明者が何ぼ、あるいはこの船はもうスクラップにしなければ結局将来貨物船として運航ができない、あるいは沈没箇所が深いからこれを浮揚させるには相当の日数がかかり、引揚者の数が大体幾らくらいであるというようなことは、委員質問をまつまでもなく文書によつて、当然それぞれ委員の手元に御配付になつておらなければならぬと私は思います。いまさら怠慢を責めるという意味ではございませんが、そういう意味で羊蹄丸が青森のさん橋を離れなかつたために事故を起さなかつたという点は、私どもはこれは妥当な処置を船長がとつたと思う。一方においては南風三十二メートルの台風が吹いておるときに、青森向けにさん橋を離れてこういうような惨害を引起した。私はなくなつた近藤船長責任をとやかく言つているのではありません。死屍にむち打つような言辞は極力差控えたいと思います。それはあらゆる万全の対策をおとりになつて、なおかつこういうような悲惨事を引起したという点については、個人的には私は同情を禁じ得ないものがありますが、こういう国際的な大惨害というものは将来再び繰返してはなりません。そういう点から再び惨害を繰返さないために、やはり事件原因を掘り下げて探究して、運輸委員会としては遺族及び関係者はもとより全国民に——島国の日本人がちよつと出れば瀬戸内海を渡るとか日本海を渡るとか、いろいろなことで船にやはり関係が深い。その日本人全体に今回の洞爺丸の遭難事件というものは、こういう理由によつてこういうことになつておる、非常に申訳ない惨事を引起したけれども、将来は断じてそういうことは起さないという研究材料を提供すると同時に、被害を未然に防止して行く意味から、私たちは言いにくいことを御質問の形式をとつてつておるわけでございます。それに基いて今の洞爺丸青森向けの出港というものが結局はつきりしましたから、これについては重ねて御質問はいたしませんが、問題は船体の構造をどう改良するかという点にかかつておる。今のままで行つて、今までもやつたのだからというので出ておりますと、こういうことをいつも繰返すことになる。今までは幸いにそういう事故はなかつたけれども、今回を考えてみると、やはり将来はそういうむちやはやれないはずなんだ。現にそういうことが続けられておるということを聞いております。青函連絡船の欠航また欠航、ちよつと風が吹いたらもらすぐ欠航するというように、非常に恐怖心を抱いて青函の運搬事務に携わつておるということを聞いております。大体今の船体の構造では、どの程度台風が吹いても行けるのか、それから船体の構造が今のままでは、今まで通りに行くのは危険だからどう改造するか、あるいは乗客のみを乗せて青函連絡をとるか。貨物専門の船に切りかえるか、そういう点についても、将来はこういう惨事を引起きないという態度をとろうとすれば、当然私はその点を国民に発表しておく必要があると思いますが、これはできれば長崎総裁か石井運輸大臣に御答弁を願いたいと思います。
  12. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 船体の構造をこの際あらためて調査研究いたしまして、この次の船をつくる場合にどうするか、また今やつておりまする船をどう改造するかというような問題は、一番国民に、またあそこを通る人たちに安心感を与え、私どもも安心できる問題でございますので、先ほど申し上げましたように、運輸省内におきまして、この事件調査委員会と別に、各方面のオーソリテイを集めまして、船体構造について、特に青函連絡船でございますが、それの研究をしてもらうということで、大体人選も終りまして、そこに今まで私どもの集めました情報を全部提供いたしまして、また現在のものを調べていただきまして、そうしてそこで次の問題について私どもの安心のできるよう結論を出していただきたいと思つております。
  13. 青野武一

    青野委員 それから、大体私の質問に対する御答弁はつきりして参りましたので、もう一ぺん具体的にお尋ねをいたしますが、これは長崎総裁が二、三日前の委員会で、同僚委員質問に御答弁を願つたときにはつきりいたしました。国鉄経営の佐賀県の嬉野のバス転覆事件は、確かにこれは運転士の責任でございます。それによつてできる限り犠牲者、負傷者及び遺族に対しては手を打つておるということでございましたから、私はこの問題については触れません。けれども今回の問題については、いろいろの角度からかなり気象台あるいは国鉄側当局の手落ち、十分なるざる点があることも、まん私どもは指摘しなければならぬ。  そこで問題になるのは弔慰金贈呈に関することでございます。子供が一定の年齢以下、新聞で見ると三十万円、それから一般人が国鉄責任でない場合は、大体五十万円投げ出しの弔慰金で解決をつけたいというのが、当局側の真意かどうか知りませんが、これは一般的に報道せられております。国鉄の職員は一人について十万円の見舞金か弔慰金か知りませんが、別にこれに手当がつく。あるいは弔慰金その他別に入る規定がございますので、それを合せて一定の額までになれば、一般の遭難者と同じ程度になるからという御意見も承つておりますが、この際一般の人が五十万円で応急的に一応弔慰金か見舞金かを出されましたが、大体これは基準をどこに置いて五十万円というここになつたか。これは大地を打つつちははずれても絶対に間違いない。遺族の立場に立つたら五十万円投げ出しでもつて、はい、よろしゆうございますと言つて、引下つて喜ぶ遺族はないと私は思います。たとえばこの中には前代議士も、二名の現職の代議士もおられて、まことに心からお悔みを申し上げたのございましたが、そういう人たちは、たとえば衆議院の規則から見て、私の関係しております議運を通して決定すれば、九十三万六千円という弔慰金か見舞金か、あるいは香奠か知りませんが、それが決定されて、別に支給される。職員の場合は十万円、規定はどうなつておるか知りませんが、はたして年数の浅い諸君は一年あるいは半年、あるいは二年くらい勤務しておる職員は、一般人と同じように五十万円になるかどうか、あるいはならない人もあるかもわからない。そういう点についてはどうバランスをとつて行くかということも、この際明らかにされておりません。それから子供の場合三十万円、それも一定の年齢があるのですが、その三十万円、五十万円、十万円、こういう基準をどうしておつくりになつたか、どこにその根拠があつたか。たとえばもく星号で遭難をされた場合に——あれは私が北海道の地震災害を視察に参りますときに、福岡から東京に着いた飛行機が、ほかの飛行機が故障で調整がつかない。急いでおりますから、私ども自分の金を飛行機賃に出した。政府からもらつた国家の費用でない、自分の金を出し合つて飛行機に乗つて、千歳の飛行場に飛んだのです。そのときに福岡から飛んで来た飛行機の座席を掃除して、権田節子というエア・ガールが乗つておりましたが、この人たちのお世話になつて無事に北海道に着いて、一週間の日程で全北海道の震災地を親しく慰問をし、同時に調査をして帰りました。あの権田節子というエア・ガールの乗つてつた、われわれが世話になつて北海道に飛んだその人たちが乗つてつた飛行機が、不幸にしてもく星号で、その人たちを含めて全員死亡した。そのときはたしか十万円が見舞金で、二十万円が香奠で、それから別に百万円という金が出たはずです。国家の財政でまかない得るものがそれより少いという点については、これは遺族は常識的にものを判断いたしますから、多少の不服があると思う。それからアメリカの軍用自動車とかトラックの転覆、あるいはB29の墜落によつて家を焼かれて、その結果死んで行つた。そういう者が終戦後相当の数に上つて、私どももそれに関係したことがたびたびございますが、最初は六万円、八万円程度弔慰金で、日本人が犬かねこのように片づけられておりましたが、最近ではそれが百万円ぐらいに上げられておる。事実上これは厚生委員会にかけて、厚生委員会で有識者を集めて結論を出して、たしか最高が百万円くらいにはなつたはずだ。そういうときに、こういう洞爺丸の転覆によつて遭難をせられた諸君が、ある程度国鉄側責任を持たなければならない事件でなくなつたということになると、かつてに五十万円、三十万円、十万円というような内容の金額をきめられても、私はそれで納得しないと思う。その点はどういう基準になるのか。また国鉄側責任であつたという結論が出れば、当然これに対してやはり相当のことをしなければならぬ。これだけで打切るということは、それは問題を将来に残しますが、この点について国鉄総裁はどういうような対策を講ぜられ、どういう基準でこの金額が出て参りましたのか、一応これははつきりしておく必要がございますからお尋ねを申し上げます。
  14. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 国鉄の従来の事故に対しましての処置は、大体責任の所在がはつきりしてから、いろいろ賠償なり慰藉なりの方法を構ずるということが先例でございます。しかしながら今回の洞爺丸の場合におきましては、そういう責任というようなことがはつきりしますまで待つておるということは、非常に時間もかかりまするし、現在の社会情勢からいいまして妥当ではないと考えましたので、とりあえず責任のあるなしを問わず、大体の常識的な見当から五十万円の慰藉金を出す。そして爾後におきまして国鉄責任はつきりして参りますれば、むろん成規の手続によりまして賠償額を算定いたしまして交付いたします。その慰藉の問題につきましては、なおそのほかに過日来当委員会においても御意見がございましたが、国鉄としまして単に金銭だけで解決がつく問題でないのでありますので、あらゆる意味におきまして御遺族方々の将来についてのいろいろな問題につきましても、今後十分御相談に乗り、御協力申し上げて行きたい、かように考えております。大体そういうような心持で処理をいたしたのでございます。
  15. 青野武一

    青野委員 それに関連いたしまして、遺族の中において両親を失つた。たとえば親子二人の生活で、まだ子供が学校に行つておる人も、新聞の報ずるところでは掲載されております。あるいは自分子供を失つたために、老人が将来一人さびしく生活をして行く。一応これは弔慰金をもらつて当分の間はいいとしてみても、やはりそれらの老人なりあるいは遺児あたりが将来生活をするには、どの程度の年齢になつたときまでは国鉄がそれを見てやるとか、あるいは何らかの方法で、こういうものは援護の対策を一ぺんきり、投げ出しきり、弔慰金、見舞金の打切りでなくして、そういうことは当然社会保障の一環として、やはりこういう惨事を引起されたあとでございますから、そういう点については老人遺族の救済であるとか、遺児に対する援護方法であるとかいうようなものが、当然講ぜられなければならない。そのためには、国鉄内部にこの問題についての恒久的対策部といつたようなものが、常時相談役として置かれてもいいと私は思うのです。そういう点について長崎総裁はどういうお考えを持つておられるか。  それからもう一つ、御答弁がございませんが、約四百名ばかりの遭難者を出した国鉄職員、いわゆる労働組合員の諸君に対しては、とりあえず普通の人とは違つて十万円出すと言う。これは規定によつて五十万、八十万になる人もおりますが、あるいは四十万、三十五万くらいにしかならない場合は、やはり一般人の遭難者と同じように、適当な弔慰金の額に達するようにするお考えを持つておられるのかどうか。法律によつて規定せられておるそれを合せても五十万円にならないようなものは、はたしてその点をどうするか。この五十万円が最後的な弔慰金の金額でないということは、ただいまの御答弁で承知をいたしましたが、やはり最後に決定されるときまでは、何らかの便宜上の考慮をなされておるのかどうか。それから遺児、老人あたりの今回の遭難者を失つたために、将来孤立して生活をするよう人たちに対しては、恒久的な対策部といつたようなものを設けて、援護救済の道を国鉄自身がお講じになるのか、その点についてここでひとつ明白にしてもらいたいと思います。
  16. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 従業員の殉職に対する以後の手当というものにつきましては、今お説のように一般の方々との間の権衡も十分考えなければならぬと思つております。もつと端的に申し上げますれば、計算上出て来ましたものが四十万になる場合もなきにしもあらずであろうと思います。そのような場合にそれでいいのかということになりますと、これはやはり一般人の方々との権衡の問題も生ずるのでございますから、それについては一般の方々との権衡ということを十分に考慮いたしまして、今後処置して参りたい、こう考えております。  なお遺児あるいは孤独な年寄りの方方のお世話ということにつきましても、また場合々々によりましていろいろの相違があろうと思いますが、心持といたしましては先ほど申しましたようにあくまでも援護の方法を講ずるようにしたい、かように考えております。しかしながら国鉄だけでこれをはたしてうまくやれるかどうか、やはり一般の社会事業団体というふうな方々の御協力も得なくちやならぬではないかと考えております。しかし気持といたしまして援護の手を差延べるために、青野先生のおつしやるような対策本部とでも申しますか、そういうふうな恒久的な施設も十分に考究しまして万全を期して参りたい、かように私は考えております。
  17. 青野武一

    青野委員 この点について石井運輸大臣にお導ねを申し上げたいと思いますのは、これは福永官房長官からちよつと政府の片鱗が新聞記事に載つて出ておりました。これは事件があつた直後のことでございますが、こういうような大きな惨事は、国鉄の財政だけにまかせておいても解決がつかないから、やはり今回は非常措置として国家補償を原則として、一つの例をつくる必要はないかという質問を私もいたしました。福永官房長官もちよつとそういう内容の新聞記事を出しておりました。そこで石井運輸大臣にお尋ねしたいのですが、これが今の五十万円で片づかずに、あるいは老人の救済であるとか、遺児の援護方法であるとか、あるいは弔慰金の金額が将来結論が出て、もう少し増額をせねばならぬといつたようなときには、もう勢い国鉄労働組合にしわ寄せの起つて来ることは、国鉄に無理をすれば当然そうなる。そこでやはりこういう非常事態に対する弁償金といいますか、弔慰金というか、見舞金というか、そういうものは一応政府の支出、政府の補償というものも筋の立たないことではないと私は思う。直接監督しておる独立採算制の国鉄であるから、借金をしても当然国鉄の内部でまかなえと言つてつつぱなすべき性質のものではないと思いますから、吉田総理の留守中のことでもあるが、石井運輸大臣の御努力で、やはりもう少し手厚い慰藉方法を講ずるということになれば、国家が当然その補償をするように金を出さなければ解決がつきにくいと私は思う。その点について石井運輸大臣はどのようにお考えになつておられるか、またその点について御努力をしてもらわなければならぬと私は思つておるのですが、どういうようなお考えを持つておるか。  それともう一つ便宜上あわせて御質問申しますが、大体十九国会でいろいろ重大な問題が起りました。はつきり申しますと、疑獄事件でいろいろ各党の代表者から、運輸委員会において御質問がありました節に私も申し上げたのですが、大体南方定点観測と北方定点観測について、船はアメリカから費用を四分の三負担してもらつてつたが、今回ある事情でそれが中止になつた。そこで南方、北方ともに一隻大体六億円程度で三十億の金をもつて定点観測船をつくらなければ、たとえば東北方面の冷害であるとか台風であるとか降雨であるとか、あるいは雪の降つたことを知らせて、農産物の関係から言つてみて、漁業関係から言つてみて非常な手薄を将来覚えて、思わぬ惨害を引起すことがあるかもわからぬから、この際政府と話し合つて大蔵省を何とか説きつけて、南方の方は今十分でないが二隻の定点観測船がある。北方の観測という点については、日本が孤立して手も足も出ない状態に追い込まれて来るのだから、一隻六億円としても、三−六、十八億円でこの観測船を至急おつくりにならないと、東北六県から北海道の周囲の漁船の安全をはかつて台風時に災害を未然に防ぐことに非常に困難を覚え、思わぬ災害を引起すということを考えるから、この点について政府はひとつ善処してもらいたい、こういう質問をしたことを私は覚えております。ところが、遂にそれが政府のいれるところにならずに、予算がございませんということでそのままになつておる。それが結局、北方観測船がなかつたために、十八億の金を惜しんだところに、やはり気象台の発表が十分でない、あるいは十分の人員をそろえてない、あるいは設備の点で遺憾があつたといつたようなことが、令回の事件を引起した一つ原因にもなります。この際大体十八億円要求しておるといつたよう質問に対する御答弁も先日の委員会でございましたが、これはひとつ至急に具体的に閣議で御努力を願つて、来年度の予算にお組み入れくださるように、この点も私は御努力を求めたい。その点についての石井運輸大臣のお考えを聞いておきたい。  それと同時に、私も個人的に日中友好協会の一人でございます。今月の二十八日の午後七時、御承知のお隣の中国の紅十字会、いわゆる赤十字社の責任者である馮玉祥の未亡人ですが、李徳全女子が日本に十五日間おいでになる。ここでできれば、相当発言力を持つており、孫逸仙の未亡人である宗慶齢のお気に入りでもあるし、あの大きな中共地域に、はえが一匹もおらぬように努力した中心人物が李徳全女史である。それが二十八日午後七時に羽田にお着きになる。及ばずながら、私も個人的には関係があるのでありますから、努力はいたしますが、中共のこれらの方が紅十字会を代表して、日本赤十字社の招聘によつて来られる機会をつかまえて、京都、大阪までおまわりになるというそうですから、適当な機会に政府の諸君がこの人と会つて、将来こういうよう惨事を起さないためにも、日本と中共との国際的ないわば気象協定といつたような、向うからの気象関係を次々に時間的に御報告を受けるような協定をする下話をしておいたらどうかと思う。まあこういう点については、明二十六日の午後七時、各党の代表者二十五名の、お隣に一箇月の日程で行つておりました諸君が帰りますけれども、おそらくこういう点についてお話があつたかもわかりませんが、李徳全女史の日本滞在中に適当な御相談をしておいた方が、私は将来非常によろしいのではないかと思いますが、この点についても私は石井運輸大臣の御所見を承つておきたい。この二点をひとつお尋ねしたい。
  18. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 弔慰金またはそれに加えての支出が国鉄に多くなるのじやないか、そういう場合において政府はどういう心持で対処するかという第一点にお答えいたしますが、国鉄といたしましてはこの洞爺丸事件弔慰金だけの問題ではなく、本年中に起りました災害等においてもいろいろ被害を受けておりまして、その問題もたくさん解決すべき問題があるのであります。いずれにいたしましても、国鉄が金がなく、そしてやれないということであつて、そのために国鉄の安全性を害するようなことがあつてはならないのでございますから、これらの問題につきまして、この洞爺丸問題も中心になるのでございますが、そのほかの問題もあわせまして、どういうふうに金が使われるか、どういうふうに足りなくなるか、それにつきましては政府はどんな方法でこれを助けて行くかというような問題につきまして、このごろずつと話合いを進めております。  それから北方定点の問題は、私この前も今おつしやつた通りに申し上げているのでございますが、ことしもまた北海道の冷害というような問題等があり、ふだんの問題としても、これは一年間通してぜひやらなくてはならない問題であります。私どもしろうとで初めに考えておつたのは、もし船をつくることが予算上できないならば、南方の観測が半年しかやらないのだから、あとの半年をこれにして、何かほかで補うというよう方法でやれぬかということをいろいろ聞いてみました。それもなかなか困難なようであります。どうしても北方定点は一年通しての船を別にこしらえるより手がないようであります。今度は、いつかここで申し上げたか、あるいは参議院だつたかと思いますが、この北方定点観測船の予算も組んでおりまして、これの折衝もできるだけ力を入れてやりたいと思つておりまして、皆様方のこれに対する御協力をお願い申し上げておつたようなわけでございます。この北方定点だけでなく、国内の観測したものの通報関係というものが、まだまだ不完全だと私どもは思います。これで完全に行つているとは、どうしても思えないのでございますが、昨年の九州その他の災害によりまして、こういう点が通報関係で足りないというようなことをいろいろ出しまして、昨年の補正並びに本年度の予算において、いつもよりはいろいろな方面の設備をしてもらうことができたのでございますが、まだまだこれも足りないのでございますから、これらの問題をあわせてぜひ実現させたいと思つております。  李徳全女史の話でございますが、中共関係気象観測の結果が日本に流れないということは、台風問題につきまして非常な大きな問題でございますことは、御承知の通りでございます。何とかして中共から、これは国と国との交わりとか何とかいう以上の大きな人類の問題として考えてもらうべきものであるし、そういう設備があるならば必ず無線で出してもらいたいのだということは、私どものかねての熱望でございます。先ごろから和達気象台長を、文化関係の人を招待する際に中共から招待を受けましたので、イタリアの学術会議に行つてつたのでありますが、いい機会でありますから参加してもらうようにして、中共へ出張してもらつております。まだ帰つて参りませんので会いませんが、この場合に私どもの念願した問題は、今申しますような立場から、中共からの気象通報が得られますように、できるだけ折衝して来いということでやつたのでございますが、なお李徳全女史に対しまして、私どもがそういう問題で話をすることが適当でありますれば、もちろん、中共の方へ人をやつているから、こちらへ来たときはほつておいたらいいというわけでございませんから、話を進めたいと思います。御御協力をお願いいたします。
  19. 青野武一

    青野委員 私は結論として最後質問を申し上げて、他の委員諸君にお譲り申し上げたいと思います。なお石井運輸大臣の御答弁に対しましては、できるだけ御努力をより一層続けていただきたいことを熱望してやみません。結局今国鉄側からの御答弁を伺つておりますと、洞爺丸は明らかに青森に向けて、青森に行く目的で出た。出てみたけれども、やはり台風関係でこういう遭難をしたということになれば、その点を御承認していただくということになれば、やはり国鉄責任がそこにあつたということになります。私は大体台風による事故防衛態勢というものが、結論から言えば調査団と同意見で十分でなかつた。それから、今申しました青森行きの目的で出航したことははつきりいたしました。これは確かにあやまちである。いくら経験の深い船長であつても、青函局長でありましても、この点については、やはり見通しを誤つたという点は、これを否定することはできません。そうなつたときに乗客を下船せしめなかつたということは、そういう目的で出港した場合はやむを得ないかもわかりませんが、大体坐礁して船が転覆をしてからも、この救済処置というものが十分に講じられておらない。あれが船内におる人を自由に——あれだけの犠牲を出す結果になれば、当然これを開放して、極力生命の安全をはかつてもらうような処置を講ずればよいが、転覆をする直前からこれを船内にとじ込めたといつたような、いわゆる臨時措置が十分でなかつたために、一割の犠牲で済んだらとにかくも、九割近くの犠牲者を出したという点についても、私は国鉄当局側がやはりその措置に対して十分でなかつたと考える。第一、過去において風速二十五メートル、三十メートルの場合でも、また南風三十二メートルの台風が吹いておるのに、大丈夫であるという認識のもとに船を出した。それが普通の船体であれば別ですが、これは貨車を積んでおるから、普通の船とは違いまして、転覆をする可能性が非常に大きい。危険性があることを十分知つておりながら、常にそういうように出港をしておつたという点等を考慮いたしますと、どうしても、申し上げにくいことではあつても、これは国鉄当局責任がそこに所在するのではないか、気象台の業務の欠陥ももとよりであります。結局、問題は不可抗力と思つておるのは、これは海難審判庁結論が出る前でございますから、私ははつきりとは言いにくいかもしれないが、不可抗力ではない。佐賀の嬉野のバスの転覆の場合、長崎総裁みずから立つて委員質問答弁したように、明らかに運転士の責任でございましたと言い得るかどうか。国鉄責任か、あるいは台風による不可抗力で、できるだけの、人事を尽したけれどもだめであつたというような考えでおられるのか、その点について最後に私は当局の御意見を聞いておきたい。  それからもら一つ重ねて申し上げますが、十月二十二日に第十委員室で運輸委員会が開かれておりました。ちようどその日の毎日新聞に記載されておつたのですが、「洞爺丸事件結論」、これはあるいは中間的な結論かもしれません。「船長、青函局に重過失、気象台にも業務上の欠陥」という見出しのもとに、第一、「死亡した近藤船長の重過失はもちろんだが、青函局幹部の業務上の重過失も見逃せない」、第二に、「気象台の天気予報も不備なもので重大な業務上の欠陥がある」。当時南風三十二メートルの風が吹いておることは——なくなつてお気の毒でございますが近藤船長は、もとよりそれを承知の上で船を出したはずであります。以上四点と二十二日の毎日新聞函館海難審判理事所が一応出した結論と照し合せてみましても、これは国鉄当局責任のある問題であるということは、私はこれはいなむことができないと思う。そうすると今の応急的な五十万円は、増額訂正されなければなりません。  こういうことは今回の事件だけではございません。昭和二十四年六月二十一日に、四国の高松から今治を経由して九州の門司に行く青葉丸の事件、これなどははつきりしております。今治を出て、豊後水道を抜けて来るあの二十五メートルの台風に、どうしてさからつて行けましようか。門司に向けて行くのだから当然中国に流されて行くと思つたが、二十五メートルの台風にさからつて行つて、東国東半島の姫島まで行つて沈没したというよう海難審判庁結論が出ておる。しかも全員死亡しておる。そういう問題でもだれが責任を持つて調査したのか。潜水夫を入れて調べてみてもわかるが、それは当然宇部の沖に沈んでおるものを、死体を乗せたまま、死体を収容しないままに沈んでおる船を、死体捜査もせずにダイナマイトで爆発させて、死体もろともこつぱみじんに破壊し、二束三文にその船を払い下げておるというような問題が、民間の会社間に公々然とやられておるという事実を私は知つております。私は行政監察委員会に正式に取上げて、その真相と今回の事件とを一緒に掘り下げてみるつもりでおるのでございますが、こういうことは今後の運輸委員会に正式に持ち出して御意見を聞きますが、こういうように常識的に考えても、風速二十五メートルの台風にさからつては行かれない。ずつと流されておるのに、方角違いの姫島の沖に沈没した船がたくさんございました。これは軍部が船を操作をしたものが沈んだもので、結局それを青葉丸であると言わしたというようなことも聞いております。ここにはその当時の毎日新聞の記事がございますが、この一番下の船が青葉丸です。こういうように、いろいろな事情があつて死体を出さないのはやむを得ないけれども、努力をせずに九十何名の死体を乗せたまま、一部のインチキな潜水関係の事業者と手を握つて死体もろとも爆発してしまつて、金もうけのためには人道を無視してもいいというようなことが、過去においてたびたび行われた。台風によるところの沈没船の問題には、いつも何か暗い影がつきまとつておると私は考えておる。だからこれはまた別に扱いますが、今回の事件につきましても、これは明らかに青森向け目的でさん橋から洞爺丸は離れた、乗客を下船せしめなかつた、坐礁して転覆してからの善後措置が十分でなかつた台風に対する事故防衛態勢が十分でなかつた気象台の業務上の欠陥も相当ある、ここに函館海難審判理事所が出しておるものと私の意見とを照し合せてみますと、当然私は国鉄責任であると断定せざるを得ない、あらゆる資料を中心にしてそう思います。  そこで先ほど石井運輸大臣にもお願いしておいた。これが国鉄でまかなわれない場合は、国家が補償の形式をとつて財政的の措置をとる、弔慰金が出るようにする、あるいは遺家族の、貧窮な諸君に対しては、恒久的援護対策部というようなものを設けて、これにあたたかい救済の手を差延べるといつたようなことにつきまして、当然そういう機関を設置すべきであるということを申し上げたのでございますが、最後国鉄当局が、私ども責任でございます、嬉野のように運転士の過失、業務上の失態、責任はつきりいたしますということを、私は言つてくれとは申しませんが、あなた方がお考えになつて、高等海難審判庁の最終判決、判定が下る前に、被告は被告の立場で調査をした内容を中心にして御言明が願いたい。その前に、われわれ二十五名の委員調査報告書を出してくれという要求を、今日まで実行されないから、私はやむを得ずにこれだけの御質問を申し上げたわけです。書類になつて来ておれば、非公式に尋ねてもよかつたのですが、そういうことを実行されておらないから、勢い私の質問に対してきよう結論をつけるために、以上の質問を申し上げたわけでございますが、こういう点について、国鉄側の態度を明瞭にしておいてもらいたい。その発言模様によつてはもう一ぺん御質問するかわかりませんが、これは長崎国鉄総裁からひとつ態度を表明してもらいたいと思います。
  20. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 今度の海難の問題は、非常に大きな、しかも範囲が広汎でございます。洞爺丸外四隻が函館の湾内において遭難したというふうなことでございまして、私どもも私どもなりにいろいろな調査も進め、また私どもなりのいろいろな想像と申しますか、そういうことをいたしており、先ほど営業局長も申し上げましたように、その想定の結果からいたしますと、やはり青森出港というふうな決意をした。しかも爾後の情勢の変化に応じて、いかりを入れているというふうな模様でございます。これには洞爺だけでなしに、そのほかの船舶の模様、あるいは海底の状況とか、いろいろなむずかしい問題がまだまだ調べなければならないように私どもは考えております。過般私が申し上げました嬉野線の自動車事故ような、比較的はつきりしたものとはよほど事情が異なつているようであります。関係する範囲も非常に広いように考えられますので、今日におきましては新聞等には識者の御意見というようなものが載つておりますが、あれがはたしてあの通りであるかどうかということについても、いろいろ考えさせられるような点もございますので、はなはだ残念でございますが、自動車線の場合に起きた事象とはたいへんに違う。私どもとして慎重に考慮して行かなくちやならぬ問題だと思います。でありますから、先ほど申し上げましたように、この有責、無責ということについては相当長い時間がかかるであろうということで、有責、無責にかかわらず、弔慰金をこの際社会常識的に考えて、この程度のものは出すのが至当ではないかということで、とりあえず現在差上げてありますよう弔慰金を出したような次第でもございます。結論がきわめて明瞭につくものでございますれば、有責の場合あるいは無責の場合ということに、もうはつきりなりますので、今度とりましたような処置でなしに、もつと明白な処置がとれる。過日もこの席上で御報告申し上げたと思いますが、嬉野線の分につきましては、すでに死傷者に対する弔意あるいは賠償という方法も、完了済みというふうなことにもなつているような次第でございます。その点今日において明白にし得ないのはきわめて遺憾でございますが、事件の性質、問題の範囲、大きさ、いろいろな点からかんがみまして、私どもは慎重に調べなければならぬのではないかと思つております。
  21. 青野武一

    青野委員 私は質問ではございませんが、石井運輸大臣は、目の中に入れても痛くない一人のむすこを今度の洞爺丸で遭難させた、長崎国鉄総裁は、自分のかわいい一人娘を死なせた、そういうような親の立場、いかに苦しいか、いかに悲しいか、そういう気持でこの問題を最後まで私は扱つてもらいたい。遺族はおそらくあきらめられないのじやないか。いろいろな誤解を生むよう意見は私は差控えますけれども、とにかくあたたかい手を最後まで差延べて、できるだけのことをして、国家と国鉄当局がよくもこれだけやれたものだ、ほんとうに心底からわれわれに対して同情と親切をもつて終始したといわれるような態度をとつていただきたい。こういう点で、あたたかい気持でこの負傷者あるいは遺家族、あるいは職員その他の諸手に対して、終始かわりなき援護の手を差延べていただくように、最後に私は希望して質問を終らしていただきます。この点はお願いいたしておきます。
  22. 關内正一

    ○關内委員長 正木清君。
  23. 正木清

    ○正木委員 私はまず第一に総裁に一言お尋ねしておきたいと思うのですが、前回の委員会でこの洞爺丸等の事件に対して満場一致で決議がされましたが、その決議がされたあと、あなたは新聞記者と会見なさつたように聞いておりますが、そういう事実がございましたかどうか。
  24. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 新聞記者に会つております。
  25. 正木清

    ○正木委員 私はあなたがこれについて発表されたところの意見新聞記事を見たのでございますが、私の受けた感じでは、わが意を得たりというような感じでございます。簡潔にその内容を申し上げますと、いろいろ議論はされておるけれども、決して船長責任ではないのだ、青函局の幹部と国鉄従つて総裁たる私の責任であるというような談話の内容であつたと思いますが、あなたはその当時新聞記者に対して、あなたとしてどういう談話を発表されたか、当委員会で一応明確にしておいてもらいたい。
  26. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 そのときの話の模様は、この決議になりました一つ一つにつきまして、どういう考え方をしているかというお話でございました。それについて、一の遭難の御遺族に対する援護措置というようなことについては、これは御決議のあるなしにかかわらず、運輸委員会の席上においてもすでに諸先生からこういう意見が出ているので、国鉄としてはできるだけこれが措置を講じなければならぬだろうと思う。ただその場合に、国鉄だけでやれるかどうかわからぬので、やはり社会事業団体という方面とも十分に緊密な連絡をとらなければならぬだろうというようなことを申し上げました。第二の気象の問題につきましては、予報の迅速云々、いろいろなことがございますが、国鉄としてはまず第一に関係機関として連絡施設、つまり気象の通報を迅速に受けられるよう方法を考えている。三の海上保安庁の問題は、これは私のところにも重要な関係がありますので、これについてはいろいろ考えられるが、青函両方の港にはぜひ救難船とでも申しますか、名前は私はわかりませんが、そういう強力な船舶をやはり増備していただかなければならぬ。これは季節にもよることと存じますが、そういう態勢を整えてもらいたいと思つている。それから四番目の問題につきましては、これは主として海陸の間における連絡の改善というようなこと、その他いろいろあるが、これもぜひ迅速に進めて行きたいと思つている。五番目の輸送力の増強について緊急対策は、非常に急がなければならないと思つている。順次その対策を立てているが、今後の要請によつてはまた新しい方法を考えなくちやならぬと思つている。連絡施設の改善の問題についても十分な考究をし、すみやかなる実現をはかりたい。船の構造あるいは客貨船の分離ということについても、これは非常に技術上の問題が多いように私は思うので、こういう研究をまず早く進めなければならぬのではないかと思つている。港湾のことにつきましてもすでにいろいろ問題になつている部分があるので、そういう実現方について進めて行きたい。最後の青函間の海底隧道というふうなものの実現についても、特別法がいるかどうかということは、これはいろいろ研究を要するだろうが、北海道総合開発の一環としてこれは実現したいものだ。要するに委員会の御決議の趣旨は、この御決議のところにも書いてありますが、結局今回のごとき不祥事件を再び繰返さないためにというところに重点があるのであろう、だからそれを中心に考えなくちやならぬと思つておりますということでございまして、何か責任問題について云々したようなお話をただいま承りましたが、それは非常な誤解であり、私の言葉が足りなかつたのか、あるいは聞く方が足りなかつたのか、その問題にも新聞記者諸君は当然触れて参りました。しかしその点につきましては、ちようど嬉野線の問題があつたときでありますが、嬉野線のように運転士の過失がはつきりしている場合においても、これを運転士になすりつけるというような意味のことは、われわれは考えていないのです。その場合には、はつきり国鉄責任になるのです。今回の海難の問題にしましても、何か船長になすりつけるというふうな印象を持つておるようだが、そういうふうなことはわれわれは考えていないという趣旨のことを申したのであります。
  27. 正木清

    ○正木委員 洞爺丸のほかに北見、日高、第十一青函、十勝丸、この四はいの貨物船が遭難をしたわけですが、今日までいまだこの遭難箇所すらわからないよう船体があるのか、どうなのか。現在のこの四はいの貨物船引揚げ作業状況をここで御説明願いたい。
  28. 唐沢勳

    唐沢説明員 位置は全部わかつております。状態も大体わかつております。大体と申しますのは、特に北見丸のことでございますが、北見丸は最初海上保安部や海上自衛隊の方で見当をつけていただいたところを探しましてもなかなかなかつたのですが、ようやく大分遅れて確認することができました。これも位置はつきりわかつております。そこで貨物船の方につきましても、もちろん潜水夫を入れまして極力遺体の捜査をしておりますが、目下のところその手段ではもうほとんど行くところまで行つたという形でございまして、どうしても次の手段に移らなければならぬと思います。それで十勝丸と日高丸は、遺体の捜査をしながら揚げるということにいたしました。それから十一青函丸の方は船体相当複雑にこわれておりまして、また砂の中にも相当埋まつておる部分もございます。これはどういうふうにしたら最も早く引揚げられるか、あるいは死体の捜索なり、あるいは調査の参考資料なりにするのに、どういう方法にしたらいいかということを目下技術的に研究しておるのでございますが、できるだけ早く結論をつけて、その作業にもすぐかかるようにいたしたいと思つております。北見丸につきましては、何分にも水深が相当深いところでございまして、これをこのままで潜水夫を入れて、中まで入つて作業するということは非常に危険だそうでございまして、このままではもうちよつと処置がない。しからば浮揚するかということでございますが、これも相当深いところにございますので、これがはたしてうまく行くかどうかという点につきましても相当問題がございます。これはその方面の権威のある学者なり、経験のある会社などの技術者に今研究してもらつておりますが、これもできるだけ早く次善の手段をきめて手を打ちたい。かように考えております。
  29. 正木清

    ○正木委員 この洞爺丸引揚げ作業でございますが、国鉄当局からは当委員会には具体的な報告がございません。そこで私ども新聞でしか知るよしもないのですが、新聞報道するところによると、何か岡田組との契約が成立して、来年の二月までには国鉄に引渡すのだ、そこで洞爺丸は浮揚させるのだ、こういう記事が出ておりますが、これらの今日までの経過をここで報告を願いたい。
  30. 唐沢勳

    唐沢説明員 この沈没した船を引揚げるということは、いずれどうしても原則的にしなければならぬ、さよう初めから考えたのであります。これにはいろいろの方法その他もあろうと思いますが、いずれにいたしましても、日本の権威者に集まつていただいて、客観的にこれを見て、なるほどというところで処理するということが最も妥当であると考えます。そこで国鉄としましては、技師長以下の権威の人を派遣し、また運輸省にもお願い申し上げまして、運輸省の権威の方、船舶課長、その他の方に来ていただきまして、現地でよく実情を調査いたし、また当時は日本のサルベージ界の権威ある会社、そこの一流の技術者がほとんど全部集まつておりまして、それらの人の意見をよく聞きまして、最後に有数の会社に対しましてその工事の方法、時期、金額というようなものにつきまして見積りをさせて、入札させたのであります。その結果、その方法、時期、金額等をにらみ合せまして、そうしてその仕事を担当するものを決定するというわけでございます。洞爺丸につきましては岡田組がこれを担当することになりまして、これは三月三十一日までに遺体を捜査しながら浮揚作業をして、国鉄に引渡すということになつております。その他の船につきましても、日高、十勝の引揚げも確定いたしております。
  31. 正木清

    ○正木委員 そういたしますと、予定の通り進みますと、この洞爺丸は三月三十一日に国鉄に引渡される。引渡されてから、あなた方は当委員会等で問題になりました船体の構造等を研究されて、その船の大幅な改造をするお考えなのか。すでにもうこの洞爺丸が引渡される前に、専門的な立場から、この洞爺丸等の貨物を載せる事柄等に対しても、何か結論を出そうとしておられるのか。その点について御説明を願いたいと思います。
  32. 唐沢勳

    唐沢説明員 洞爺丸引揚げてから実態調査をしますと、いろいろと貴重なる参考の資料が得られると思いますが、船体の全般の改造その他の問題につきましては、もちろんそれを待たずに、いろいろな角度から、あらゆる資料を集めて検討して行くつもりであります。
  33. 正木清

    ○正木委員 これは私は運輸省国鉄のそれぞれの責任者から答弁を願いたいのでありますが、御承知のようにもうすでに函館青森の間は、荒天時期に入つて来ております。そこでまず第一にお尋ねいたしたい点は、従来の長年の統計等から見て、第三・四半期の当期間において、一体どれくらいの欠航率があつたのか。その点をまずお尋ねしておきます。
  34. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 ただいま御質問の趣旨にぴつたり合つていないのでございますが、大体夏季四月から九月までと、それから冬季十月から三月までとわけまして、二十六年、二十七年、二十八年、二十九年と実際欠航いたしました回数の資料がございますから、これをもつて報告にかえます。  二十六年は夏場におきまして、客船は零回であります。一回も休んでおりません。冬季は二十八回休んでおります。貨物船は夏場で十九回、冬場で八十回休んでおります。二十七年の客船は、夏場で三回、冬場で四回休んでおります。貨物船は夏場で十五回、冬場で四十七回休んでおります。それから二十八年の客船は夏場で三回、冬場で四回、貨物船は夏場で三十回、冬場で六十二回、二十九年の夏場は客船が八回休んでおります。貨物船が六十六回となつておりまして、冬場の分はまだでございます。
  35. 正木清

    ○正木委員 そうしますと、ただいまの欠航回数は、あなたの方で立てておりまする国鉄の輸送計画の、毎半期ごとの輸送計画に対して、何パーセントくらいの欠航率になるか、それを御説明願いたい。
  36. 唐沢勳

    唐沢説明員 この計画を立てますときには、ある程度の欠航を考えまして、そして何運航で何両というような計画を立てておりますから、その実際の全体の運航数と今の欠航数の比較は出ますが、計画に対してはちよつと出にくいのではないかと思います。
  37. 正木清

    ○正木委員 私の質問の要点があなたに理解できなかつたかもしれませんが、私の申し上げているのは、今天坊副総裁が年度別に、夏季と冬季にわけて欠航回数をお話くださつたのですが、当然あなたの方では本州と北海道との、この青函を土台としての輸送計画が立つておると思うのです。従つてたとえば十八運航であるとか、十五運航であるとか、月従つて幾らであるとかというものと、この欠航とを比較すれば、あなたの方の輸送計画に対する全体としての一体比率はどうかという数字は、当然出ると思います。しかしそれはあとで書類でいただいてもけつこうですから、あとでこの点出してもらいたいと思います。  そこで私国鉄運輸省から御答弁を願いたいと思いますことは、現在はこういう大惨事のあつたあと関係もあろうかとは存じますが、新聞等で見ておりますと、十五メートルくらいの風でも欠航しているよう新聞報道いたしております。従来は二十五メートルくらいまでは運航しておつたと、私ども調査の中で出て来ておるのですが、今は十五メートルくらいでも欠航しておる。これは船長の立場からすれば、私はわかるような気もするのです。とうとい人命を預かり、貴重な財産を預かつている船の責任者としては、私はその気持がわからぬわけではないのですが、そこで委員会で明確にしておかなければならない点があるように私は感ずるので質問をするのですが、当委員会での質疑応答の中でどうも明確になつておらないのが、出港の一体権限が船長にあるのかないのかという、この点でございます。もちろんさん橋を離れて、一たび沖に出てからの責任船長にあることは明確になりましたが、一体出港の全権限が船長にあるのかないのか。もしかりに船長にあるとすれば、船長の意思一つでもつて青森から本州各地、函館から北海道各地のあなた方の輸送計画のダイヤの変更等というものは、船長の意思一つできまるし、これを逆に、そうではないのだ、輸送計画という大きな面から見て、ダイヤその他の変更等をし、これに準じて船長がその指揮に従うのだということになるのかどうか、この点が明確にさえなれば、私はこの決議の中で盛られた四番目の、「国鉄当局は、その責任の重大性に思いを致し、益々志気を昂揚し、」云々という点が明確になつて来ると思うのです。そうしませんと、船長の立場からすれば、航海の安全第一ということだけを重点にものを考えて来ますと、従来は運航したけれども、こうしたときであるし、事故責任の所在が明確でない、陸上との関係が明確でない、こういう点を思い合わせると、航海安全第一主義をとる、こういうことになつて来るのではないか。これは人間の気持として当然そうあるべきだと考えられるのですが、この点はやはり当委員会で明確にし、そうして国鉄当局は当然出先の局長なり船長に向つて明確な指示をこの際すべきだと思うが、この点どう考えるか。
  38. 唐沢勳

    唐沢説明員 出港につきましては、もちろん管理局長が輸送計画に基きまして、ダイヤなり配船計画を立てておるわけでございまして、できるだけ輸送をするということのために、そういつた計画も立てておるわけでございますが、先般来この委員会でもいろいろお話もございましたが、航海の安全ということに対しては船長が権限を待つておるわけでございまして、かりに今お話のように、このくらいの風ならば出てもいいじやないか、従来も出ておるといたしましても、これを管理局長が積極的に出ろと言えるかどうか、船長といたしまして、これはあぶないから出ないということになれば、もうそれだけということでございますので、そういう点につきましては船長に権限があると考えております。実際問題といたしまして、ただいまにおきましては、従来ならば出たであろうがと思われるような状況でも、休むような傾向がなきにしもあらずとも思われますが、これも気象台の予報なり、実際の船長判断をよく検討してみないと軽々しくは言えないと思いますが、いずれにしましてもそういう傾向が予想されますので、そういう点につきましては、十分船長の中の検討なり、あるいは局とのこういう問題に対する考え方なりを十分検討し合いまして、常識ある判断のもとに行動して行くように進めなければならぬ、かように考えております。
  39. 正木清

    ○正木委員 この問題で重ねてですが、あなたの今の答弁では、陸上のダイヤの変更、従つて配船等については局長に当然あるのであるが、出港の権限はやはり船長にあるのだ、こういう答弁であつたように思われるのですが、そうしますと、船長が局の首脳部に一々相談をしなくて、すなわち指揮を受けなくて、船を出す出さないということは、船長一存で今後決定することができるのだというように私が承知してよろしゆうございますか。
  40. 唐沢勳

    唐沢説明員 船長は航海安全という意味におきましては、一存で出港を見合せる、あるいはきようは出られないという判断をいたしております。それで今後それを一応は理由を付して、こういう状況だから休もうと思うがどうかというようなことを相談をする、あるいは管理局長がこの場合はどうだというような相談を受けるとか、あるいはアドヴアイスするということなら、今後の問題としましてはそういう点については私どもも研究したいと思つておりますが、その場合に管理局長として、いや君そう言つたつて大丈夫だから出ろといつたような命令は、やはり船長には下せない。これは法律上にきめられてある船長の航海安全の権利義務からそういうことになる、かように考えております。
  41. 正木清

    ○正木委員 私は国鉄なり運輸省が、この問題は法律上は法律上としても、実際の行政運用の面で明確にしない限り、このことは現実の問題として、青函の運航にあたつては種々今後問題となるところじやないか、そういうように考えます。そこで私はこの問題等については、急速に監督の立場にある政府機関である運輸省国鉄は十分協議して、明確にすべき必要があると思います。  その次にお尋ねしたいのは、復旧のことなんですが、十五号台風ばかりではございません。その以前にも台風が来ておりますが、これらによつて受けた国鉄としての損害の総額、特に今度の十五号によつて受けた洞爺丸その他四はいの貨物船の遭難等による損害の総額は、どれぐらいになるか。
  42. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 概算で申し上げますが、十五号台風の以前にこうむりました風水害、主として十二号、十四号、そのほかことしのつゆ時期におきまする災害を含めまして、大体五十億程度の損害を受けております。さらに十五号台風におきましては、今回の洞爺丸以下の船舶の沈没、そのほか陸上あるいは連絡設備、建屋等の損害を含めまして、十五号台風関係では大体八十五億の損害であります。概算でありますが、一応申し上げておきます。
  43. 正木清

    ○正木委員 そうすると、十五号以前の損害で概算五十億、十五号台風による陸上及び船舶の損害概算八十五億、これは国鉄としては非常に大きな損害でございますが、この損害を基礎にして、これらの復旧の財源的処置について、国鉄当局としては、監督政府機関である運輸省と具体的に事務的折衝をすでに開始しているのかどうか、開始しているとすれば、その内容はどうなつているのか、説明を求めます。
  44. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 すでにこの問題を含めまして、そのほか御承知の通り、建設線の問題等もあるわけでございますが、そうしたものを含めて運輸省の御意向も伺つて、目下寄り寄り協議中でございます。ただ御承知の通り、本年度は損益勘定におきましても、あるいは工事勘定におきましても、節約というようかつこうで相当額押えられて参つております。それからまた収入関係も、年度初めの予想に反しまして、デフレの影響を受けて、やや収入減という現象もあるわけであります。そうしたものを含めまして、この際政府のふところ勘定というようなものも考えながら、どうして処置をして行くかという問題について、今運輸省に御相談願つておる最中でございます。いずれこの問題につきましては、資料を添えまして、いろいろ御指示、御協力をお願いしなければならぬと考えております。ただいまのところそういうことになつおります。
  45. 正木清

    ○正木委員 いずれ資料を添えて当委員会報告をされると天坊副総裁はただいまおつしやつたのですが、寄り寄り協議中のその内容の性格、たとえば国鉄としてはこれだけは政府から特別の融資の道が講ぜられればやつて行けるが、これ以外はどうしても政府の援助をもらわなければならないというような性格の交渉を展開しておるのか、それとも国鉄が全部融資さえつけてくれればやつて行けるのだというような性格の交渉をやつておるのか、その寄り寄り協議中の内容を御説明願いたい。
  46. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 その間いろいろ予算面といたしまして、補正予算というような考え方に形式的になつて、この問題がきまらなければどうにもならぬというような問題も含まれておるわけでございますが、さしあたつて当面の一番先にきめていただきたいと考えております問題は、御承知の通り先ほどもお話がございましたが、沈没の貨客船を引揚げましても、これが全部来年の秋冬繁忙期に間に合つて直るかどうかという点も問題がございます。一方あの船が沈没しなくても、北海道との関係においては、連絡船の力がまだ弱いと考えられておつた際でございますので、この際私どもとしては三隻貨物船を新造したい、これを来年度の秋冬繁忙期に間に合せたいと考えておるわけでございまして、その一部分の資金を何とか出せるようなことを考えていただきたい。さらにもう一つは、この事故関係と別でございますが、新線の問題というようなものも、あわせて当面の措置を願いたい。これは工事費として、私ども財源を何とか考えていただきたい問題でございます。そのほか損益勘定等で相当現実に不足が出て参るのでございますが、この点はやはり一部分を負担いたしましても、今年中に全部支払いができるというわけでもございませんので、来年度にまわし得るものもあるのでございます。従つてその問題は、来年度の見通しの問題ともからんで参るわけでございます。私どもといたしましては、ある程度の国家的と申しますか、政府の御援助もいただきたいのであります。まずさしあたつて、船の新造に着手できるような措置というようなものをきめていただきたい。だんだんと様子を見ながら、全体について、これは来年度に繰延べて行くもの、あるいはこれだけはどうしても一時運用部の資金で公債のかわりに貸してやるというようなものも、だんだん整理をして行きたいというふうに考えております。
  47. 正木清

    ○正木委員 それでは具体的な問題に入りますが、青函の惨害後の国鉄としての第三・四半期の輸送計画、たとえば十月、十一月、十二月の輸送計画はどのように計画が立つておるのかどうか。そしてすでに配船その他の準備はどの程度まで一体進んでおるのか。従つてこの災害後の輸送計画、配船順序等は、昨年のこの第三・四半期の実際の輸送計画量とどれくらいの開きがあるのか、これを説明を願いたい。
  48. 唐沢勳

    唐沢説明員 詳しく今の御質問に対するようにまとまつておりませんが、大体を申し上げますと、ことし計画をいたしましたのは、繁忙期の一番最高の計画が十八運航で、貨車にしまして大体六百四十車くらいを目途とし、トン数にしまして大よそ一万トン程度のものも運ぶというような計画を立てたのでございますが、その後こういう事件が起りましたので、一応十月十一日以降は十五運航で、大体五百車くらいを輸送したいというような計画を立てたのでございます。しかしその後いろいろ事情を勘案してみますと、この十五運航を確保するということもなかなか困難でございます。従いまして十五運航あるいはときには十四運航というようなことにもせなくちやならぬではないかというふうに考えまして、今のところではやはりどうしても平均五百両というのは少し困難ではないか、四百四、五十両がところになりはしないかというような見当になつております。従いまして、それらのこまかい順別のはつきりした配船とか、それから輸送量とかいうものにつきましては、こまかい計画は目下調整中でございますが、大体の見当はそういうような状況でございまして、少くとも当初計画したものよりは相当下まわらざるを得ない実情でございます。昨年の状況を申しますと、大体昨年は平均いたしまして十月で五百七十六両行つておりますが、十一月には五百八十両、十二月が五百五十両という程度、これらは上りでございますが、この程度貨車が運ばれておるのでございます。これに対しまして、やはり今のところ五百両を目途としておりますが、実際は四百五十両くらいになりはしないかというような見当でございます。詳しく目下それについては検討しておるような次第でございます。
  49. 正木清

    ○正木委員 これは局長、非常にあなたのところで御心配になつて、非常輸送の努力をされておりますことは私百も承知をし、非常に感謝はいたしておりますが、現実の問題として、特に運輸大臣によく聞いておいていただかなければならぬことは、私ども調査によりますと、十月十日現在で、函館さん橋の滞貨数量は、あなた方が非常に努力されておるにもかかわらず、すでに十三万六千五百トンでございますよ。しかも私ども国鉄営業課でお聞きしたところによると、輸送力の減退による滞貨推定トン数は、十六万トンになるのではないかということすらも聞いておるのですよ。そういたしますと北海道から出ます各種の産物を無視して、本州の経済は現状においてはあり得ないということです。また本州から北海道に入ります各種の産物がこのよう状態で推移いたしますことは、北海道の経済に大きな混乱が来るということも予想にかたくないことなのです。そこであなた方の非常な努力は私どもは認めますけれども、あなた方としてはこの災害後の現状に照し合して輸送計画を第三・四半期として一体どのように机上プランをされたのか。この机上プランに基いてどのような非常配船をされたのか。具体的に申し上げますと、この滞貨を緊急輸送する処置として、たとえば国鉄としては宗谷丸を配船した、たとえば道南海運機帆船を総動員した、この二つを総動員したけれども、なおかつ実際に輸送することのできないところの滞貨はこれくらいあるのだ、あるとすればこの滞貨は、別の内航定期船等を動員してこれを処理しなければならないという具体案が、当然あなたのところでできているはずなのです。できているのです。それを当委員会で具体的に明瞭にしていただかなければならないではないかというのが、私の質問の趣旨なのです。
  50. 唐沢勳

    唐沢説明員 まことにお話の通りでございます。私どもは先ほど申し上げましたように、十八運航によつて六百両余りの貨車を出すという計画でおりましたが、遺憾ながら挫折したわけでございまして、その後といたしましては残存の船舶を総動員して、これを輸送するということで計画いたして来ておるのでございますが、これも船の修理の問題とか、あるいは人繰りの問題等もありまして、そう無理をすることもできませんので、最大の能力を上げるということで、先ほど申しましたように、今のところどうも四百五、六十両というのが、一応の目安でないかというふうに考えておるのでございます。そのほかといたしましては、今お話のございましたように宗谷丸をとりあえず持つて行きまして、一日平均いたしまして五百トンくらいの荷物を出すということで、その方は十四日からいたしましたが、幸いにして大体当初の計画通り欠航なく、仕事の方も順調に行きまして、大体予定程度の数量が運ばれておるわけでございます。そのほか道南海運につきましては、これもやはり五百トンあるいは六百トンというような、大体その辺の数量の輸送ができる。これに伴う貨車の方の輸送はうまく行つておるのでございます。私どもといたしましては、今のところこういうような輸送方法で最高の能率を上げてやるということ以外に、方法がないような状況でございます。滞貨にいたしましても今申し上げましたよう数字で、これは去年の十月よりも少しまだ落ちてはいないかと思いますが、大体同じような滞貨が今来ておるようなわけでございまして、あとはどうしても船便をほかの方で考えてもらわなければならないというので、この点につきましては、運輸省の方にもいろいろお願いもし、御相談も願つておるようなわけでございますが、最近の状況によりますと、室蘭とか釧路とか小樽とかいう方面から内地への輸送も、去年よりも相当活発に船による量があるというように聞いておりまして、それらの点につきましては、現地の方におきましても多種の出荷団体とも相談をしたり打合せもしておりますし、だんだんその辺の趣旨も徹底しまして、いろいろなほかの方の海運への乗換というものも、着々実現しつつあるのではないかというふうにも思われるのであります。いずれにしましても、私どもとしましてこの輸送力というものの実情をよく運輸省にお話しまして、他の機関による輸送ということにつてひとつ考えていただきたいということを、十分運輸省の方にはお願いしているわけでございます。
  51. 正木清

    ○正木委員 この問題について監督の立場にある運輸省の方でも、当然十分具体的な案が現につくられつつあるように思いますから、ひとつ運輸省からこれら諸問題について御説明を願います。
  52. 植田純一

    ○植田説明員 青函間の貨物輸送につきましては御指摘の通り、ことに秋冬繁忙期を控えておりますので、どうするかということが緊急な重要な問題でございましたので、運輸省といたしましては、国鉄あるいは陸上輸送、海運輸送関係者が集まりまして、この緊急輸送をどうするかということを検討したわけでございます。大体の考え方を申しますと、ただいま国鉄の方からお話がございましたように、今年の秋冬繁忙期の最高計画十八運航、貨車トンにしまして一日約一万トンを輸送しますのに比べまして、国鉄の残有連絡船をフルに稼動いたしまして、なおかつ一日約二千トンくらいの輸送力不足になる、かような前提のもとに対策を考えたわけであります。それでまずただいまもお話がございましたが、国鉄の持つております宗谷丸というのを回航いたしまして、もちろんこれは積みかえを要するのではございますが、国鉄の負担におきましてこの積みかえを実施いたしまして、これで約一日五百トンくらいの能力がある。さらにまたこの函館青森間におきまして、これは社線でございますが、道南海運というのがございまして、国鉄と連絡運輸を実施いたしております。例年繁忙期におきましては相当の活動をするわけでございますが、これの輸送力を一日約五百トン、かように見まして、ただいま申しました二千トンの不足を宗谷丸と道南海運とで約一千トンをカバーいたしますと、差引一千トンというものがなお不足するわけでございます。これはどうしても海運に転移しなければならないということになりますので、海運の輸送力はどうかと申しますと、これはもちろん船腹は余裕がございます。それでこの一千トンにつきまして極力海運転移をはかるということにいたしまして、運輸省といたしましては、海運関係者に海上の輸送運賃につきましても、この際できるだけ勉強していただくというような点を要望いたしまして、海運転移をはかつておるようなわけでございます。ただ問題は、海上の輸送力はあるのでございますが、どういうふうな品物を海運に転移するかということでございます。これはもちろん命令で、これこれを海運に転移しろということのできる性質のものではございませんので、できるだけその性質等から見まして、海運に転移しやすいというものを、陸上の鉄道の計画とにらみ合せまして、関係者現地でよく相談いたしまして、できるだけ貨物の性質その他から見まして、転移しやすいものを海運に転移するという考え方で進んでおります。輸送量から申しまして、当然問題になりますのが時期物でありますばれいしよでございますが、ばれいしよにつきましては比較的海運に転移しやすいのではないか。ことにばれいしよの中でも種ばれいしよは、着地が各地に分散いたしておりますので、まとめての輸送はかなり困難でございますが、食糧用のばれいしよにつきましては大体大都市、内地の京浜であるとか大阪であるとか、そういう着地がまとまつておりますので、このばれいしよにつきましては、ある程度計画的に海運に転移できないものであろうかというようなことで、これは一例でございますが、そういうことで貨物の種類等によりまして、できるだけ無理のないように海運転移できる方策というものを打合せてやつておる、かような状況でございます。
  53. 正木清

    ○正木委員 これから私は具体的問題に入りたいと思うのですが、委員長にこの席から要求をいたしておきますが、災害後の青函航送力を土台としての、運輸省並びに国鉄の第三・四半期の輸送計画及びそれの具体的な内容等については、書類をもつて次回の委員会までに出していただきたい。このごろ悪いくせで、われわれ書類なり口頭で要求してもなかなか出しません。これだけは必ず実行してもらいたいということを委員長に要求しておきます。  そこで問題になります点は、私はあなたの方の大体の輸送計画というものを承知しておるつもりです。つもりですが、現実に問題になるのは、あなた方の机上計画というものは、先ほど私が具体的に二十六、二十七、二十八、二十九年、要するに災害がなかつた以前の冬季、夏季の欠航状況を勘案してみても、現在の青函の状態を勘案しても、なかなか思うようには行かないじやないかというところに現実に非常に心配があるわけです。それからもう一点、すでに私ども調査したところでは、先ほど申し上げたように十月十日現在で、十三万六千五百トンの滞貨があるのです。あなた方が予定通り行つたとしても、一体この十三万六千五百トンの滞貨をどうするのだという具体的な問題がここに出て来ます。これと合せてあなたの方では宗谷丸を動員する。従つて当然これは積みかえ料を必要とする。あなた方の方ではこれに要する経費七千八百万円、約一億は、国鉄がこれを負担するという決意を固めていると聞いておる。聞いてはおりますが、では道南海運の機帆船を動員しまするあなたの方の計画ですが、一日五百トンとして一箇月一万五千トン、これは一日も休まない計算ですよ。しかしこれは私どもの方の調査によると、この積みかえ料金は一トン平均五百九十円かかるのだというのです。そうすると、あなたの方のこの一万五千トンを、五百九十円で行きますと、約五千五、六百万円になる。これは荷主が負担しなくちやならない、こういうことになりますと、北海道の道内の諸物資に及ぼす価格の影響、本州の諸物資に及ぼします価格の影響、これは当然敏感に響いて参りますね。この問題を一体どう処理しなければならないのか。政府が唱えておるデフレ政策の価格維持とどういう関係を持たなければならないのか、この問題が当然出て来るではありませんか。さらにこの宗谷丸及び道南海運の機帆船を動員して、なおかつ運び切れないものは、定期船を動員して運ぶのだと今局長はおつしやいましたが、それでけつこうなんです。船がないのではない。あるのですから、まことにそれはけつこうですが、それから来る荷主負担、一切のものに加算されて来るこれの負担を、だれが一体負担しなければならないか。この点について当然私は国鉄当局としては運輸省の事務当局との間に、これらの取扱いについて十分研究が進められていると思うのです。そういう国鉄としては、宗谷丸でもつて約一億の負担をしているのだから、あとの荷主にかかるものは物価さえ上れば、それで問題は解決つくじやないか、それが経済の自然現象ではないか、こういう考え方で運輸省の事務当局の間には話が進められているのかいないのか。これらの問題は大きな政治問題なんだから、すでに大臣にこのことは書類なり口頭をもつて報告なり申請がされているのかどうか、この問題を私は明確に承つておきたい。
  54. 唐沢勳

    唐沢説明員 国有鉄道といたしましては、こういうことで輸送計画に大きな変化を来さざるを得なくなつたので、現有勢力をもつて最大の能率を上げるということでやつておるわけでありまして、宗谷丸につきましても、大体あそこは輸送をするというのが建前でございまして、宗谷丸のような船をもつてやるという設備にもなつておりませんし、あるいは料金の建前においても、そういうことは全然予想しておりませんが、たまたま宗谷丸が少しでも輸送強化に役立てばということで、持つている船だけは動員して輸送しているわけでございまして、計算から言いますと、今お話のございましたように出血輸送ということになるわけでございますが、貨車航送の場合と同じ料金をもつてつておるわけであります。道南の方は連帯はしておりますが、やはり料金は従来と同じやり方でございますから、若干高くなるということはやむを得ないと思うのでございます。そこでほかの輸送につきましても同様に、値段につきましては国鉄貨車航送と同じというわけには行かないと思いますが、先ほどお話もございましたように、料金等についてもできるだけ勉強するように、運輸省の方からお話していただいていると聞いております。いずれにいたしましても私どもの方といたしましては、一応計画は立てましたけれども、これは幾ら幾らで送りますという——りくつを言いますと、計画をしたというかつこうではないのでございます。従つて計画は一応これだけ運びたいということで対策は立てて来たのが、挫折したのであつて、それをもとにしていろいろと出荷計画を立てられた方には非常にお気の毒でございますけれども、私どもといたしましては、今の力をフルに働かせること以外にどうにもやりようがないと存じますので、この実情を運輸省にもお話いたしまして、ほかの輸送機関によつてどういう方法があるか、その料金につきましてはどの程度の差があるか、そういう点について何とかもつと安くして、国鉄貨車輸送の場合とこの場合とできるだけ差を少くする方法はないかということにつきましても、運輸省の方にお願いをいたしておる次第であります。
  55. 正木清

    ○正木委員 今の質問について運輸当局の見解を承りたい。
  56. 植田純一

    ○植田説明員 この宗谷丸につきましては、ただいま御指摘がございましたような積みかえの負担がよけいに国鉄にかかるわけでございますが、国鉄といたしましては青函航路をできるだけ少しでも輸送力をつけるという意味におきまして、別の船で国鉄の負担をもつてつていただくというつもりでおるわけでございます。それから民船を利用する場合におきましては、道南海運あるいは定期船の場合につきましても、鉄道で運びます場合との運賃差——道南海運の場合には積みかえの手数料でございますが、定期船の場合におきましても、諸掛りを入れましても運賃差がございます。この点につきましてもいろいろと検討いたしました。たとえばばれいしよを室蘭または釧路から京浜あるいは大阪に運ぶ場合に、鉄道で運んだ場合とどの程度の差があるものであろうかという点につきましても検討はいたしました。道南海運の場合に一トン当り五百九十円とおつしやいましたが、定期船の場合におきましても、その発地、着地によりまして若干違いますが、ばれいしよにおきまして一トン当り約三百円から五百円くらいの差があるということは検討いたしております。ただこういう差をどうするかということでございますが、少くともこの輸送機関におきまして、これを何らかの方法でカバーすることは、技術的にも非常に困難な点がございます。たとえば道南海運の場合におきましても、従来から繁忙期におきましては、これだけの積みかえ料をとつて輸送されておつた品物もあるわけであります。また定期船の場合におきましても、従来から船で運ばれておる品物もあるわけでございます。そういう点、非常に困難な点が多いのでございまして、かつこの災害によりまして輸送力が減つた場合におきまして、ある程度の運賃差——これが消費者であるか、あるいは生産者であるかにしろ、ある程度のことはしんぼうしてもらわなければならぬのじやないかという考え方等をにらみ合せまして、また輸送機関に対しましての方策ということは、先ほど申しましたよう技術的にも非常に困難な点もございますので、この程度の差は少くとも輸送機関といたしましては、どうにもやむを得ないのではないかというふうな考え方になつておるわけでございます。
  57. 正木清

    ○正木委員 今の局長のものの考え方は、こうした突発的な非常時の出血輸送のものの考え方ではなくて、平常時におけるものを基礎にした考え方の上に立つから、そういうような御議論になるのではないか、こういうように考える。私は繰返し言うように、十月十日現在ですでに十三万トン以上の滞貨があるのだ。しかもあなたの方で立てているこの災害後の輸送計画というものは、決して机上で立てた通り実際には運行できないであろう。大体そういう想像することが間違いないのではないか。そうしますると、本州から北海道に入る滞貨も非常に大きなものになるであろうし、ましてや北海道から本州に行く滞貨も、ここであなた方が立てた計画、われわれ自体が調査して立てている計画よりか、さらに大きなものになるのではないか。そのものを平時と同じように、たとえば道南海運も従来もこの荷扱い料は荷主が負担しておつたから、すべて荷主が負担するのだ。消費者と生産者が負担すればそれで事が済むのじやないか。そのほかに定期船の場合も、やはり消費者と生産者が負担すれば事が済むのじやないかという考え方に立つてものを処理されようとするならば、政治というものはいらないのじやないか。やはり非常には非常に処するところの、具体的なこういう問題に対する対策を立てるところに、政治の必要さがあるのじやないか、こういうように考えるのです。たとえばその品目によりましよう。従来道南海運が取扱つたものでどういう品目を重点的に扱つた、たとえば定期船でどういう品目を重点的に取扱つたという従来の資料もございましようから、先ほど私が委員長を通じて要求いたしました資料と合せて、その点も次回の委員会までに御提出を願いたいと思います。  そこで私は大臣にお尋ねしたいと思うのでございますが、大臣はこれらの問題について一体どうお考えになるか。私は大臣に率直に申し上げますが、こういう道があるのじやないかという気がするのです。たとえば北海道から本州向けで出ます諸物資は、大体農林省関係と通産省関係のものが多いのじやないか。それから本州から北海道に入りますものは、これは各般のものに関係します。特に北海道の道民として非常に関心を持ち、非常な不安を抱いておりますことは、すでに雪が来ました。本年は北海道開道以来の十五号台風による災害でございます。これは大臣みずから親しく御視察になつて、十分御承知である。もし今の運輸大臣のものの考え方、事務当局のものの考え方からいつて、私どもは厖大な滞貨ができると思う。これは定期船なり機帆船によらなければならない。それらから来る積みかえ料は、生産者と消費者で負担しなければならないというように断定づけられた結果は、諸物価に影響するところ非常に大きい。このことは無視できないと思う。ですから農林省なり通産省が、非常時災害に処する方法として、政府から船会社なりに補助金か何らかの形で支出する道を講ずれば、おのずからこの問題は解決つくのではないか。しかも金額は大きいのじやないのです。国鉄は、宗谷丸によるところの国鉄の負担は一億と、たいへんに自慢らしく宣伝しておりますが、大体が七千八百万円くらいです。従つてこの道南海運のトン当り五百九十円と見ても、それから定期船に依存しなければならないものを推定しても、国鉄の計画がずれてこの一般定期船に依存する度合いが非常に大きくなると想像していますが、それらを勘案してみたところで、補助すべき金額はさほど大きいものにならないのではないかと想像いたします。従つてここで大臣に努力されて出していただけば、この問題は解決つくのではないかと想像をいたしておりますが、この際大臣の所見を承つておきたいと思います。
  58. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この秋の輸送問題が、この災害の起つたとき一番先に心配した問題でありまして、この問題は一国鉄、一運輸省というだけの問題ではなく、通産省等にも関係がある問題でありますが、特に農林省に関係が深いと思いますので、そういう意味からも、今度の対策委員会を中央に置くという問題に賛成をし、それを願つたわけでございます。冬が来れば、今までより輸送問題が困難になるということは起り得る問題でありますから、これを一体どうしたらよいか。運輸省国鉄との間の輸送問題については、私北海道から帰つてすぐ相談をさせまして、今説明のあつたような点まで話は済んだのであります。しかしこれから先の船を私の方でお世話をするという問題については、運賃の問題であるからというような簡単な問題ではないということで、ああいう洞爺丸ような問題が起つたから、国鉄でどこまでもやれということは言えないと思います。宗谷丸の負担だけでも国鉄としては相当大きいが、自分の持つている船でありますから、これを輸送するのは当然だと思います。これは対策委員会の方に、すぐ私のところからいろいろな数字をもつて相談をやらせた。ところが植田局長が触れましたように、これがなかなか計算的にむずかしいとか、いろいろなことがありましたのか、いまだにはつきりしたものを私どもは聞いておりません。しかしそういうことの必要度がどういう程度であるかということは、農林省、通産省、特に農林省が一番よけい関係のあるところでありますから、われわれの方は一日も早くたくさんのものを輸送するという手順だけしようということでやりましたが、まだその方の返事が来ておりませんので、どういうふうに農林省でやつてくれておるか、私は承知いたしませんが、そこらのことは局長が知つておると思いますから、局長から申し上げることにいたします。
  59. 正木清

    ○正木委員 私は先ほどから局長の答弁を聞いていて、非常に遺憾だなと直感したのです。これはまつたく私の試案ですが、これだけの大きな災害ですから、農林省が政府に要求するわくは非常に大きなものです。また通産省にも非常に大きな関係がある。しかもその金額が、たとえば十億であるとか二十億であるとかいう筋合いのものではないのです。洞爺丸国鉄の負担はなるほど一億近くであつて国鉄としては大きいが、国全体としてかりに負担しようと思えば大きなものではないのです。しかも非常時の災害によるこの緊急輸送に対する対策なんですから、そういう点に重点を置いて、私は運輸省の事務当局が対策本部に折衝し、通産省なり農林省に強力に折衝すれば、これらの問題は解決つくのではないか。その事務的折衝の過程を通じて大臣にお骨折りをいただけば、これらの問題は解決がつく。ただ単に消費者に転嫁すればいいじやないか、生産者が負担すれば事が済むのではないかという単純な考え方で事務当局がおられることに、私は大きな不満を持つのです。これに対してひとつ運輸省の事務当局がどうお考えになるか、それをお聞きします。
  60. 植田純一

    ○植田説明員 ただいま輸送機関といたしましては、いろいろ技術的にも困難な点もあり、どうにも方策がないというふうに申し上げたわけであります。それは申し上げるまでもないのでありますが、ただいま十三万トンの滞貸があるというお話がございました。輸送機関としまして要請を満たし得ないということは非常に遺憾ではございますが、例年繁忙期におきましては先ほど国鉄から御説明がありましたように、この程度の滞貨は遺憾ながら従来ともあるわけであります。ことし限りのものではないのであります。これはもちろん輸送機関といたしまして遺憾なことでございまして、何とかこれを解消しなければならぬことはもちろんでございますが、そういうふうなことで道南海運につきましても、また船につきましても、ある程度は繁忙期におきましては、従来から輸送しておつたような実情もございますし、またこの輸送機関の運賃におきましていろいろそういう点を考えますことは、技術的に困難な点があるというようなことで、輸送機関としましてはどうも適当な方策がない。ただいま御指摘の通り、この生産者の面もいろいろそのほかの災害も受けておることでもありますし、この運賃の面の被害もあわせて、生産官庁でありますところの農林省であるとかあるいはまた通産省であるとか、そういう面におきまして考慮してもらうのが適当ではないかというようなことで、農林省にもその趣旨を十分お伝えいたしましたし、また内閣の災害対策本部を通じましても、運輸省の意向を表明したわけでございます。農林省におきましてもいろいろと検討されておるようでございますが、ただばれいしよにいたしましても、雑穀にいたしましても、いわゆる価格の統制といいますか、そういうものもございますので、損失というものを非常にはじき出すのはむずかしい点がある。先ほど申し上げました輸送上の実情もございますし、また実際の損失をはじき出すのに非常にむずかしい点もありますので、おそらく今日まで非常にその点については難色を示しておるというのが実情ではないかと考えております。御指摘のよう運輸省の考え方につきましては、農林省当局に対しましては連絡は十分いたしておるつもりでございます。
  61. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいまの正木委員の御質問に関連して、一点だけお伺いしたいのです。この青函の滞貨の問題は大きな問題です。十五メートルの風が吹いても船長は欠航しておるというよう状態で、この点は船長とすると全責任自分にあるのだ、こういうことになれば、大事をとるということは当然だと思うのですが、もう一つは何といいますか、自信をも失つておる点があるのではないかという点も考えられる。そこで台風と季節的な低気圧といいますか、季節風等に関して気象上の差があると思うのです。洞爺丸気象判断の誤りと私たちは見ておるのですが、それらについて青函局の船舶関係者、特に船長とか気象台長とか海上保安庁とか、こういう関係者で研究的な会議を催して、さらに今後の気象等について研究いたされたことがありますかどうか。その点今跡始末でたいへんな際ですから、そういうことはあるいはないかと思うのですが、ちよつと伺いたいと思います。
  62. 唐沢勳

    唐沢説明員 特に今後の海上の気象観測等につきまして、どういう標準で行くか、どういうときに悪いというようなことをきめるかという趣旨のもとに、そういう関係の者が集まつて、いろいろ議論したり、標準を立てる相談をしたりするということは、今のところございません。
  63. 臼井莊一

    ○臼井委員 先般の洞爺丸の災害のときには、これは台風に対する調査研究が足りなかつたのではないか、こういう点もこの間の質問で私は指摘したのであります。たとえば十九年前の昭和九年の十勝沖の台風は、今回の台風と非常に似ております。このときは海軍の駆逐艦が二隻も鑑体が折れた。これは当時秘密になつてつたのですが、それが戦後解除になつて、二十八年の三月に海上保安庁の水路部で発行した航海参考資料その二の台風篇という中に、このことがよく解説されております。これは図誌課長の松崎という人が書いておるのですが、こういうものは当然運輸省国鉄あたりの船舶方面では研究してしかるべきである。ところがどうも青函方面では研究されておらなかつたように見受けられるのですが、同じ月に同じよう台風が来た。この前は災害の方でしたが、今度は自信を持つという点において、今後の季節風等について、海上保安庁とか、できれば海上自衛隊のあの方面におるエキスパート、それに気象台の人も加わつて研究して、従来の経験からばかりでなく、学理的にも研究して、船長がある程度自身を持てば、ちよつと風が吹いたらやめてしまうということにならないで、船も出るのではないかと思います。そこで私はむしろそういう会議をできるだけ開いて、船長に自信の持てるよう方向にやることがいいのじやないかと思うのです。非常に差出がましいようなわけですが、非常に混乱している際なので、とにかく私の見たところではどうも気象に対する研究が——先ほどの青葉丸ですか、あの瀬戸内海のも台風であつた。もく星号の際も台風の来た際であつた。私はしろうと考えにも、大島のあれにぶつつかつたのではないかと、千葉県でしたから、こういうふうに思つていたのですが、ちようどそれが偶然一致した。低気圧で台風が来ると思つておりて行つてぶつつかつたのではないかと、しろうとらしいばかげた想像をしていたのですが、それが偶然一致してしまつた。今度の場合も台風を軽視していて研究が足りなかつた、こういう点で今度は逆に自信を持つ点で研究される方がいいと思いますが、その点どうお考えになつておりますか。
  64. 唐沢勳

    唐沢説明員 ただいまのお話まことにごもつともと思います。先ほど正木委員からもそういつた、趣旨は若干違らかもしれませんけれども、あまり欠航ばかり多いのはどうかというようなことに関連しましてお話もございましたが、そういうような研究会といいますか、いろいろな情報、実情を話し合うということは、今後の問題に非常に役に立つと思うのでございまして、どこへもまだ御相談をしたわけではございませんが、私どもとしましてもそういうことはけつこうなことだ、ぜひしたいと実は思つているわけでございます。ただ問題は、今のよう状態のままでそういうことを話し合つて、それですぐ船長が自身をとりもどすようなことになるかどうかということについては、まだいろいろ問題もあると思います。たとえば気象台の方ではこういう施設をする、あるいはこういうことをやる、あるいは海象についてもこういうような点まではわかるからそれは知らせよう、あるいは突風といつても、八割増しのこともあるけれども、大体この海上ならば今までの統計を見ればせいぜい五割増し、それ以上の場合はこういうときで、そういうときには知らせようということで、ある程度までのものができて来れば非常に有効だと思いますが、今のままですぐそれができるかどうか、まだ私どもはつきりした確信もございませんが、いずれにしましてもそういうようなことを話し合い、研究会を持ち、またそれに伴つてできるだけ施設なりもして行く、連絡もよくして行くという点につきましては、私どもとしましてもぜひやるべきだ、かように考えております。
  65. 臼井莊一

    ○臼井委員 大臣がお帰りになりましたから何ですが、こういう点はやはり運輸省である程度指導して、同じ傘下にある海上保安庁とか国鉄の青函局あたり、あるいは気象台とお互いに密接な連絡をして、そうして助け合つて行く、こういうふうに指導すべきだと私は思いますが、以上をもちまして私の質問を終ります。
  66. 館俊三

    ○館委員 関連して……。正木委員の荷物に対する運賃の加重が、北海道に非常に負担をかけるという問題、これは非常に重大な問題なんでありまして、私二十六日の惨害が起きた翌日の二十七日の夜の十時に、営業局長さんに現地でこの点について、こまかくというほどではないが、大綱についてお願いしておいたはずなんです。それは要するに十八運航をやろうとする直前にこの問題が起きた。そこで十八運航をやる際に、一日何トンの貨物を輸送する計画になつておるかということも、管理局の各所に聞いてまわつてつたのですが、聞き違いでなければ一日八千五百トン、上り下りの荷物を輸送することになつてつたが、こういう状態になつて来ると、おそらく五千トンしか動けなくなるじやないか、こういう話です。そこで一日三千トンの上り下りで差が出るのをどうするかという問題については、私は社外船を用船する、手取り早いところは道南海運を用船するなり、それ以外に私はわかりませんけれども、いろいろな社船を用船して、これで徹底的に急場をしのぐべきであるということを営業局長にお話をすると同時に、その海峡運賃についても、こういう積みおろしについての負担は国なり国鉄でやらなければならない。そこで両端における積みおろしの負担をも入れて、連絡船並の海峡運賃をこしらえて、荷主の負担を緩和しなければならないということを、応急対策として懇々頼んでおいた。三十日にここへ急遽やつて来たときも長崎総裁にその話をしたのですけれども、今の正木委員に対する御説明を聞くと、そうなつておらない。長崎さんなり営業局長は、そういう点について運輸省とどういうふうに御交渉になつたか。私はその点についての自分のあの場合の言つたことについて、今こういうよう状態に現われているのを、非常に残念だと思うのであります。一日三千トンの滞貨ができるということは、最初からわかり切つた話なんです。その辺のことが非常にルーズに流れておるのではないかと考えますが、営業局長はどういうふうに御交渉になつたか、経緯がありましたらお話を願いたい。
  67. 唐沢勳

    唐沢説明員 現地におきましてあのすぐ直後に館委員からそういう点についてのお話がございましたことは、私もはつきり承知しております。国鉄の輸送力は相当逼迫といいますか、非常に落ちましたので、他の方法によらなければならぬ、またそういつた場合の運賃問題ということのお話もございまして、傾聴すべき御議論と思つてつたのであります。そのときにちようど副総裁も見えたので、その点を報告いたしまして、館さんもこういうことを言つておられた、輸送について非常な問題が起るし、それに伴う運賃の問題が起るというようなことは、副総裁にも報告いたしました。たしかちようどそのときに、国会の運輸委員会ではございませんが、他の衆議院の方の視察団といいますか、調査団方々も見えておられまして、そのときたしかそのお話も出たのでございます。そのときの話は私の記憶では、たしかそういう点も問題であるが、国鉄として今まで一応計画していた輸送力に見合うような船を雇うとかいうようなことをして運ぶ、またあるいはその運賃差を負担するというようなことはなかなか困難な問題ではないかと思うので、これは運輸省ともよく相談して見るというようなことでなかつたかと思つたのでございます。私どもといたしましても、せつかく意気込んで輸送拡充をはかつてつたのが、こういうことになつたのは残念でたまりませんし、またいわんやそういう輸送力を期待されておりました荷主の方々には非常にお気の毒でありますが、私どもといたしましては、さきに申しましたように今のところこれだけの輸送力しか出せないということを残念に思つております。その方面に対する当時から私の関係いたしました経過はさようなことでございます。
  68. 館俊三

    ○館委員 私は三十日に長崎総裁に対して、このたびの惨害というものは国鉄当局責任もあるだろうし、あるいはまた気象台の責任もあるだろうし、いろいろあるでしようが、全体的には国政の立場からこの問題を処理しなければならないということを、私は三十日に懇々と長崎総裁とお話をしておる。そのような立場で、今の運賃問題も鉄道の海上運賃並にやるべきである、そういうふうにして北海道の経済に負担をかけない、こういうやり方をやらねばならぬということも別室で申し上げておつたのでありますが、長崎さんからそのとき聞いたところでは、相当の被害を国鉄としては背負わなければならぬから、どうせ国鉄も赤字になつて、この際に荷物の運賃軽減をするための費用というものは、今宗谷丸はその通りにやつておられるのですが、ごくささいな負担で済んでおるらしい。この際社外線の場合においても、これを用船する形式でやつたならば、宗谷丸を動かすと同じ程度の用船に一応はなるのですから、その形で運賃の軽減化をはかつて行く方法はどうだろうかと思つておるのですが、そういう点について運輸省と御交渉なさつたことがあるのかどうか、総裁にお聞きしたい。
  69. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 この問題に対する考え方というのは、いろいろあるだろうと思います。あそこの輸送力を補強するという点につきましても、青森函館間だけを補強するのがいいか、あるいはどうせ船を使うなら横浜なり塩竈なりを考えるのがいいのか、あるいは酒田を考えるのがいいのか、新潟を考えるのがいいのか、いろいろあるだろうと思います。それにはことに青森函館の荷役力などという点も大いに考えなければならぬのでありまして、あそこだけをちよちよんやりましても、荷役の関係などでつかえるようなことがあつてはいけないというような点も、十分考えられたようであります。だから運賃の問題につきましても、やはりそういういろいろな込み入つた問題は、あとから考えれば出て来ることなのでありますが、しかしいずれにしても輸送力はこれだけ足らないのでありますから、先ほど来運輸省の植田説明員、あるいはうちの唐沢局長も申し上げましたように、かなりいろいろつつ込んで考えられております。大ざつぱなことを言うと、五十数億の損害を起しておいて、いまさら一億や二億の運賃をといいますか、積込料のことなど問題にするのはおかしいじやないかというようなお話もいろいろあつたのでございますが、やはりこれは私どもの方としては、荷役の点について、それを今度は貨車から船へ、船から貨車へ移すときの力の問題というようなことも、十分考えなければならぬ問題でございまして、それらを考えた結果、どうもチヤーターをしてもぐあいが悪いのではないか。結局近間の室蘭なり釧路なりから直航で行けるものは、直航で船で運んでもらつた方がいいのではないかというようなことも、いろいろ研究されておると私は聞いております。その点についてこちらの事務当局といいますか、営業当局と運輸省の方のそういう行政を取扱つておるところとの間に、十分研究も遂げられておりまして、それらの関係の向きにも、こういう方法ではどうだ、こういう方法ではどうだというような案はできておると思います。これは先ほど来の私の方、運輸当局説明はつきりしておると思いまする。
  70. 關内正一

    ○關内委員長 次会は明二十六日午前十時から開会いたします。明日の議題は昭和三十年度運輸省基本政策要綱についての、陸運に関する当局の説明を聞いて質疑に入りたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。   午後二時五分散会