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1954-10-01 第19回国会 衆議院 運輸委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月一日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 關内 正一君    理事 岡田 五郎君 理事 鈴木 仙八君    理事 關谷 勝利君 理事 山崎 岩男君    理事 山口丈太郎君 理事 竹谷源太郎君       天野 公義君    大久保武雄君       南條 徳男君    西村 英一君       臼井 莊一君    岡田 勢一君       青野 武一君    柴田 義雄君       楯 兼次郎君    中居英太郎君       吉川 兼光君    館  俊三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         海上保安庁次長 島居辰次郎君         運 輸 技 官         (中央気象台予         報部長)    肥沼 寛一君         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道副         総裁      天坊 裕彦君         日本国有鉄道参         事         (営業局船舶課         長)      篠田寅太郎君         専  門  員 堤  正威君     ————————————— 九月三十日  委員大久保武雄辞任につき、その補欠として  西村直己君が議長指名委員に選任された。 十月一日  委員石橋湛山君、正木清君及び辻文雄辞任に  つき、その補欠として大久保武雄君、柴田義男  君及び吉川兼光君が議長指名委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  台風第十五号による洞爺丸等遭難事件に関する  件     —————————————
  2. 關内正一

    關内委員長 これより開会いたします。  台風第十五号による洞爺丸遭難事件に関し調査を進めます。  この際石井運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 議事進行について……。新聞の報道するところによりますると、議院運営委員会から派遣せられた衆議院洞爺丸遭難事件慰問団——といいますか、調査団といいますか、その点明確でありませんが、その団長がそれぞれ帰つてみえまして、そうして調査報告書議長に提出し、そしてまたその内容についても、これは当局の過失というよりも不可抗力であるというような、内容に関しましてまでも新聞に漏らしているようでございます。一体この議院運営委員会の派遣した議員団は、慰問のためのみであつたのか、また真相調査して議長報告する任務を帯びておつたのやら、この点に関して委員長がいかように聞いておつたか、まずそれをお尋ねしたいのであります。と同時に、議院運営委員会において派遣した議員団が、事件真相調査して衆議院報告をし、これが国会としての権威ある調査というようなことになりますならば、運輸関係を所管しておる運輸委員会が本日その調査団を派遣するのでございますが、この正式の権限を待つた運輸委員会調査団がもたらした調査報告の結果と矛盾するような場合には、衆議院の意思が二つにわかれるということになりまして、これは重大な問題を起すのでございます。しかも事件早々、まだ真相政府並ひに当局からも十分発表されておらないのに、調査団が早急に参りまして唐突の間に——何日間調べたかわかりませんが、その結果に基いて調査の結果を発表するというふうなことになりますと、これまたいろいろ重大な問題が起きると思うのでございます。これに関しまして、委員長は今までいかような措置をとつて来られたか、これに関して議院運営委員長あるいは篠田団長等に対して注意をし、あるいはいかなる警告を発し、あるいは抗議をなさんとするか、委員長の御所見を承つておきたいと思うのでございます。
  4. 關内正一

    關内委員長 お答えいたします。あの一行は、委員長といたしましてはあくまで慰問一行であると承知いたしております。この問題につきましては、当委員会より調査団派遣に関しまして、昨日議院運営委員会理事会に私が出席いたまして、その際に申しましたことは、あの一行はあくまで慰問団であるということを私は強調して参つたのであります。それ以上のことはいまだ申しておりません。ただいま竹谷君からお申出のような性格がありますといたしますならば、こちらから厳重抗議をいたすつもりであります。さよう御了承願います。
  5. 石井光次郎

    石井国務大臣 このたびの洞爺丸事件は、またそのほか数隻の連絡船が沈没した問題は、まことに残念千万のことでございます。政府といたしましても遺憾この上なく、遭難者方々に深甚の敬意と弔意を表しておる次第でございます。私は政府から派遣せられまして、二十七日に東京を出まして、二十八日の朝函館の現地に参りまして、弔問、慰問現地の視察、事情の聴取というようなことをやりまして、二十九日にこちらに帰つて参りました。死亡者方々、またその御遺族負傷者人たちを見まするにつけましても、こういう災害が再び起らないように、政府といたしましても、国鉄当局と力を合せまして、万全の策を講じなければならないということを切に感じて帰つて来たのでございます。原因につきましては、できるだけ早く調査ができまするように、そうしてこの間の連絡船の今後の伏態は、どういうふうにしてやればよろしいかというようなことにつきましても研究をし、そうして早急に安全なる状態によつて運航ができるようにするということが第一の問題でございます。さらに北海道内地を結ぶ運送関係におきまして、ここしばらくの間、北海道また内地方々にも非常な御迷惑を及ぼす問題が多いのでございます。これにつきましては、これも目下至急にその対応策を講じておるのでございますが、もう十一月になりますと、貨物の特に雑穀、種じやがいも等の移出という問題に、北海道は非常な輸送力を要求する際でございます。これをどうするかということにつきまして、一日も早くこの案を練り上げて、それに応ずるようにいたしたいと思つております。旅客の方は割合は早く輸送力回復し得るのではないか、完全とは行きませんでも、大体の回復割合に早くやり得るのじやないか、こういうふうに思つておりますが、貨物の面におきましては、よほどいろいろな策を講じなければ、需要に応ずることができないだろうと思うております。これに力を入れるつもりでございます。  また根本的な問題といたしまして、一体こういうふうな海峡を船で送るという問題は、北海道開発ということをみんなが大きく念頭に置いております際に、いつまでもこのままでいいかという根本問題につきましては、当委員会におきましても、すでに新線の一つとして海峡トンネル問題等も前に取上げられております。こういう問題がどういうふうに実際に運ばれるのかというようなこと等につきましても、私どもこの際特にそれに力を入れて考えなければならないということ等も考えながら、私は帰つて参りました。  またなくなりました方々に対する問題でありまするが、生存者が少くして、なくなつた方、行方不明の方が非常に多いのであります。今日の段階におきましては、せめて死体なりともというお気持が、残された遭難家族方々に強いのは、私どももそう思うのでございます。北海道におきまして私はこのことにつきまして一番考えまして、死体をできるだけ早く探し出すことに力を入れる、これが一番の今の問題であるということで、海上捜査は、御承知のように、海上保安庁、漁船、海上防衛隊、またアメリカの飛行機もそれに参加してくれておりまして、これらによつて海上の操作をいたしております。またこれを続けておるのでございますが、一番私どもの願つておりまするのは、これは遭難家族の方方もそう思うておられますが、洞爺丸にある限りの死体を、早く出していただきたいということなんでございます。これにつきましては、初め遭難の翌日からサルベージ手配をいたしたのでありますが、何分にも人間の数が北海道等に出まわりかねておつたような状態でございます。ようやく相当数の人が入り、昨日あたりから胴中を破つて、中に入ることができるようになりました。昨日は死体相当数運び出すことができましたようで、本日も続いてやつておるはずでございます。私どもは一日も早く全般捜査を終つていただきたいということを念願いたしておるわけでございます。  また避難されました家族方々、また救助されて負傷されております方々等に対するお見舞方法、またこれに対する弔意方法ということが、非常に大事な問題だと思いまするし、これは銭金でかえられる問題ではもちろんないのでありますけれども、微意をいたす意味におきましても、また生活の非常にお困りの方も中にはおありと思うのでございますが、そういう方々のために、できるだけ早く何らかの処置をとつてもらいたいということを国鉄に要望いたしております。  昨日も私帰りまして閣僚懇談会臨時閣議等を開いてもらいまして、これらの報告をし、これらのことについての話合いもいたしました。政府といたしましては一日も早く、そうして一体でも多く死体を探し出すことに、一層の努力国鉄に要望する。第二には、お見舞方法等について、迅速にそうして誠意をもつて実現をはかつてもらいたいということを、国鉄に要望することになりました。私から国鉄の方にもその旨を伝えまして、国鉄においてもそれぞれ相談もいたしまして、それで大体のところ——天坊君が昨夕帰つて参りまして、一緒になつて話をいたしまして、今朝までいろいろ話が続いておつたわけでございますが、昨日のことでございますので、まだ最後的な決定には至つておりませんが、およそきまりました大体のところは、大人に大体五十万円をこの際弔慰金としてお贈りする。これは内外人を問わないということでございます。それから小児はおのずから差が出て来ると思います。まだこの原因がどこにあつて、だれが責任をとるべきものか、不可抗力であるか、あるいは国鉄従業員責任であるか、あるいはその他の方面責任であるかということは、いろいろ巷間の話もあるし、またいろいろな情報はあるのでございますけれども、これは何もまだ私どもにはわかりません。それぞれの機関によつて調べていただいて決定するよりほかないと思うのでございますが、この責任が明らかになつた後初めて補償をするとか、あるいは見舞を出すとかいうことでは、さつき申しますようなことで手遅れになつて相済まない。できるだけの誠意を尽すという意味は、幾らかでも早くこういう処置を中間的にでもとるべきものであるだろうというので、今のようなことを国鉄とともに考えておるわけでございます。これは政府といたしましても、ぜひこうやつてもらいたいという心持があるのでありますから、まだほんとうの成案ができて政府の方へ持ち出すというところには至つておりませんが、大体の方向として話し合つておりますのは、そういう線でございますから、一番先にこの運輸委員会に大体の方向だけでも申し上げておくべきだと思つて申し上げる次第でございます。まだ詳細はきまつておりませんから、その点御了承をお願いいたします。  とにかくこういう問題を起しまして、まことに残念と申しますか、同時に申訳ない次第だと思つております。私どもといたしましては、国鉄当局と力を合せまして、今後の交通問題、これを心といたしまして、こういう問題の再び起らぬようにあらゆる努力をいたしたいと思つております。右御報告申し上げます。
  6. 關内正一

    關内委員長 これより質疑に入ります。天野公義君。
  7. 天野公義

    天野委員 ただいま大臣から非常に誠意のあふれた御報告を承つたのでありますが、この際もう少し具体的に数点お伺いしておきたいと思うのであります。  その第一点は、ただいま大臣も申されておりましたけれども、この洞爺丸に残つておる遺体をすみやかに出すということが、遺族全般ほんとうに熱願しておるところだと思うのであります。今までサルベージ等も間に合わないでたいへん遅れておつた面もあると思うのでありますが、一体今日どれくらいのサルベージ遺体の救出に当り、そしてあと何日くらいたてばサルべージで遺体を出す作業が全部終了することができるか、大体のお見通しがあればこの際承つておきたいと思います。
  8. 天坊裕彦

    天坊説明員 お答え申し上げます。私も実は二十七日に現地に参りまして、昨日帰つて参つたのでございますが、参りまして第一番に感じましたことは、沈没いたしております船内から引揚げ作業が非常に緩慢でありまして、浜辺の方にこの急報を聞いてお集まりになつた遺族方々が二千数百人のたくさんに上つておりまして、この方々が非常にもどかしい気持で、いろいろとこのサルベージの強化ということについて、非難の声も出ておるというような状態でございましたので、これの急速な整備増強方ということが、第一に私参りまして考えなければならぬ問題だというふうに考えまして、大よそのスケジユールを組みまして、増強方策一つのプランを立てて参つたのであります。それで大体北海道にありますこの潜水夫の能力は、ことに救難船等関係もございまして、それほど大きな力でないのでありまして、内地方面にも手配をいたしておつたのでありますが、その船の回航等に日数を要するようなことでございまして、今日まで非常に遅れておりましたが、大体きのう、きようぐらいには十六、七組のものが出動いたしておるようなかつこうでございまして、ここ三、四日のうちには六十組というところまで力がついて参るはずになつております。大体運輸省の関係方面とも御連絡をいたしまして、その御援助を得まして、日本のほとんどサルベージ界の総動員というような態勢をとつて、強化するような措置を講じて参りました。従いまして逐日増強されまして、この六十組ないし七十組くらいの態勢がつきますれば相当本格的に船内からの遺体搬出できると考えられるわけであります。なおこの搬出作業は、船体の破壊をすることが便利でもあり必要でもありますので、その作業にもとりかかつておるわけであります。
  9. 天野公義

    天野委員 遺体搬出作業につきましては、一日も早くその仕事が終了いたしますように、なお一層の御努力をされますように、この際要望を申し上げた次第であります。  第二の問題といたしまして、遺族補償の問題についてお伺いしたいと思います。ただいまのお話でありますと、大体おとなについて見舞金が五十万円、内外人を問わぬ。内外人を問わぬということにつきましてはまことに同感であります。子供に差ができるということについても、一応了承できる次第であります。しかしながら現在の段階において、これらの見舞金国鉄でまかなうというように受取れたのでありますが、国鉄責任においてこの見舞金を出すのかどうかという点が一点。それから見舞金については、現在政府融資その他これについての何らかの措置をしないのかどうかという点。それからなおこの原因国鉄側が有責であるかないか、もし有責であつたならば、政府としてはどういう措置が考えられるか、こういう点をあわせて御答弁願いたいと思います。
  10. 石井光次郎

    石井国務大臣 今度、名前はどういたしまするか、弔慰金見舞金の形で金を出します問題は、これは国鉄が当面の運航責任の地位にありますので、国鉄がやるのでございます。政府はこの問題だけでなく、全般的に協力をしなければならぬ問題がたくさんございます。たとえば今の問題につきましても、国鉄が金融上において困るということになりますれば、その問題も考えて行かなければならぬと思うております。また船が御承知のようにたくさん沈没いたしました。これをどうするかというような問題等が、今後の問題としてすぐに起つて来るわけであります。これらにつきまして、政府はできるだけの強力なるバツクをしてこの解決をはかるようにいたしたい、こういうふうに思うております。
  11. 天野公義

    天野委員 国鉄が有責であるという判定が下された場合には、やはり政府としては、国鉄だけにその責任、財政的な措置をもおまかせになるのでありますか。
  12. 石井光次郎

    石井国務大臣 これはまだどうなるかわかりませんので、その問題についてその場合はどうするというようなことを考えておりませんが、国鉄そのものがかり責任がありというようなことになりまして、金の上において困る、やつて行けないというようなことがありますれば、政府はこれについて金の上の考慮は、何とかしてあげればならないだろうと思うております。
  13. 中居英太郎

    中居委員 関連して一言お伺いします。今の運輸大臣の答弁は、もしも国鉄資金的に困つた場合に、金繰りの面で融資をするという意味ですか。それとも国鉄会計政府資金を繰入れて援助するという意味ですか。その点がはつきりわかりませんので、その点をお伺いいたします。
  14. 石井光次郎

    石井国務大臣 私はただいまのところは融資金繰りの点だけを申し上げたつもりでございましたが、そのときの情勢いかんによつては、あるいは別な方法がとられるかもしれないのであります。今のところ別に考えておりません。実際の支払いに困らないようにしなければならないということだけを考えております。
  15. 中居英太郎

    中居委員 総裁にお伺いします。大体一人五十万円で、千数百名の死亡者に対して弔慰金を支給するといたしますと、その面だけでも五億円以上の金になると思います。さらに沈没しました輸送船のこれにかわるべきところの新造であるとか、あるいは破損した船舶の改造であるとか修理であるとか、こういうもので伝えられるところによると百億になんなんとするところの国鉄の支出が予想せらておるのであります。このように大体国鉄損害が計数的に明らかになつております。そこで先ほど運輸大臣から、もしもそういう事態になつたら、政府資金を繰入れるような考慮をしてもよいというような説明がありましたが、現在の国鉄会計はどういう見通しを立てておりますか。一時的な金繰りだけの融資を願えば事足りると考えておられますか。それともどうしても国家会計から国鉄会計に繰入れてもらわなければやつて行けないと考えておられますか。その点はつきりこの際答弁していただきたいと思います。
  16. 長崎惣之助

    長崎説明員 お答えをいたします。目下のところ補償とかいうものを除きまして、十五号による物的な損害は約五十億越しております。これは概数であります。それをいかように回復するかということにつきましては、今中居委員からお話がありましたように、沈船引揚げてこれを修理し得るかどうかというような問題もございます。私はおそらく全部が全部修理できる見込はないのではないかと予想しておりますが、それは調査してみなければわかりません。なお今年度は、御承知のように非常に予算よりは減少しておりますので、そういう面におきまして金繰りの面が第一に苦しいということは申し上げるまでもないことでございます。今の物的だけの五十億の回復——復元とでも申しますか、そういうことについて今後もう少し綿密な調査が遂げられ、その方策が立つた場合に、国鉄だけでこれをまかなつて行けるかどうかという問題は当然起ります。それはどういう方法であるか、債券によつて民間から資金を調達するか、あるいは資金運用部の金を借りなければならぬことになるか、あるいは財政投資になるか、これらの点について十分な研究をして行かなければならぬ。いずれにいたしましても、自力だけではとうてい背負つて行けない、かように考えております。
  17. 館俊三

    館委員 関連して……。今国鉄のこれからの状態についての話が出ましたが、私は少くとも連絡船五はいについては、その当時の洞爺丸が二億五千八百万円で二十二年に竣工した。私考えますと、当時のベースが千五百円くらいのものである。今概算して一万五千円と十倍と見ると、これだけで二十五億八千万円の金がかかる。あとの四そうについては調べておりませんが、これだけで損害がほとんど六十億から七十億になると思う。今度こしらえることを勘定しますとこうなる。それから貨車が百七十一両沈んでおる。この貨車損害を計算しなければならない。さらに今度は、この沈船引揚げるとか、いろいろの応急の処理費というものが非常にたくさんかかる。さらに弔慰金の問題、その他今発表のあつたのでは私は安いと思いますが、そういう問題を換算しますと、私は善後措置として完全に今の態勢を建直すために、は、三百億くらいが必要ではないかと見込んでおる。これはとうてい国鉄として背負い切れるものではございません。しかも国有鉄道には開発の使命がある。それを現在の独立採算制でまかされておるのでありますから、この問題については原因を究明した結果、責任所在いかんにかかわらず、これは国の政治として政府が十分なる投資をなすべきであると考える。今総裁の言われたように、これを公債を発行するとか、あるいは予備金を支出するとか、あるいは財政投融資をするとか、政府資金を銀行から融資する、あらゆる方法を講じてこれを完成しなければならない責任政府にあると思うのであります。ところがきのうの臨時閣議状態を聞いておりますと、遺族のさしあたつての問題として、一人五十万円、こういうことをきめておりますがそのあとでもし責任所在国鉄当局にあつたということが判明する場合には、さらにその遺族補償を要求することができるのということが記述されておる。こう考えてみますと、五十万円と暫定的に出した政府自身が、五十万円では足りないということを感じておられるのではないかと私は思う。五十万円はぎりぎり一ぱいのところであるか、この点についてもお聞きしたいし、今申しましたことについて石井運輸大臣臨時閣議に列席されておるのでありますから、その閣議財政資金についての話があつたのか、ないのか。それから遺族のさしあたつての五十万円、千五百人として七億五千万円くらいの金はただちに融資をして、それだけの金で遺族補償が満足されておるのかどうか、こうい点について臨時閣議出席された石井大臣の御意向をお聞きしたいと思う。
  18. 石井光次郎

    石井国務大臣 国鉄の今度の損害回復、これはすなわち北海道内地の交通の回復でございますが、これには今お話のように船が使えないものもできて参るでありましようし、あるいは修復するだけでいいものも出て参るでありましよう。はつきりしたところがまだ船のサーベーが全部終つていないのでわかりませんが、この回復を急ぐために要する資金というものについて、これは特に政府の方で考慮してもらわなければならぬものが出て来るので、その際にはぜひ協力をしてこれの回復はやつてもらわなければならないということを申し出まして、大体閣議全体の空気といたしましては、もつともだというふうにみな了承しておるように思つております。どの程度になるかということがわかりませんので、その点は金額がこのくらいであろうとか、何ばいだめであろうとかいうようなこと等は申してございません。ただもしその中で一ぱい——今のところこれもほんとうにはつきりわからないのでありますが、国鉄当局からの話で北見丸でありますか、一ぱいはおそらく全然だめじやないかというような話もございます。ほかの問題もあわせて考えますと、今までの通りに十ぱいの航送船が完全に動いておりましても、北海道貨物輸送には少し力が弱いのでございます。かたがたこういう問題も考えまして、もし一ぱいの航送船が完全に使えない、修復もできないというようなことがあつて、その一ぱい新造ということだけに、今後の北海道の大きな発展を期待されておる際においては、一ぱいでは無理であろう、もし一ぱいの破損があつたならば、二はいをつくるくらいの程度にお願いしなければならぬではないかというようなこと等も雑談でございましたが、そんな話をしてみんなに聞いてもらつたわけでございます。
  19. 天野公義

    天野委員 法律的に考えますと、律海難審判庁判定がきまつておらないので、責任であるかどうかという点は現在はわからないわけです。この段階見舞金国鉄の許す範囲において、また政府の了解のもとに五十万円、子供には聞くところによると三十万円という話でありますが、この見舞金をすみやかに出される措置は了解できるのでございます。しかしながらこの海難審庁判の判定が下つて、そうしてもし万一不可抗力によつた事件であつて国鉄側責任はないという判定がもし下つた場合には、この補償の問題についてはこれが消えてしまつて国鉄見舞金だけで打切りになるのでありましようか。それとも判定が下つても、もう一ぺん根本的に補償の問題を政府が考え直して、そうしてその後において、また何らかの措置をとられるような含みをもつておられるのでありましようか、その点をお伺いいたします。
  20. 石井光次郎

    石井国務大臣 国鉄責任がないということになりました場合におきましては、今回出しまする弔慰金がおしまいでございます。それで国鉄といたしましては、さつきだれかのお話に、それでも十分ではないというお声もありましたが、これはいろいろな国鉄自体のこういう場合に処しておる例からすると、額においては相当多い方に私ども承知いたしておりまするが、一般の方々の考え方としては、あれほどの問題に少いというお声もあると思うのでありますが、十分考えた結果、この辺でごしんぼう願いたいという心持で、国鉄においては大体の決定をいたしたのであります。政府においてもこれを承知しておるのでございます。そういう次第であります。
  21. 天野公義

    天野委員 今度のこの災害の問題で、物的に損害を受けたものがあるのであります。この物的な損害に対してはどうするか。もう一つ生存者といえども非常な損害を受けておりますが、この生存者に対する補償といいますか、見舞といいますか、これをどういうふうにしようとお考えになつておりましようか。
  22. 石井光次郎

    石井国務大臣 生存した方で負傷された方もたくさんあるのでございます。これらの方には見舞をいたすということで、今それぞれ——まだそこまで案が行つておりませんが、今やつております。
  23. 天野公義

    天野委員 今度の事故がどういう性質でどうなつたかということについては、本委員会調査団が行つて現地でよく調査をされるところだと思うのであります、しかしながらこの際根本的な問題について、国鉄側に若干お伺いしたいのでおります。今度のこの災害の根本的な問題は、先般本委員会委員方々も指摘されたところでありまするが、青函連絡船を何か川を渡るような連絡船である、動く陸橋であるというような考え方のもとにこの運航に当つてつたということに、最大の欠陥があるのではないかと思うのであります。従いましてこの船の出航、また客を下船させるというようなことも問題になるわけでありますが、それでは一体ふだんはどの程度の風で欠航になり、そしてどの程度の場合には乗客をおろすというような慣例もしくは内規になつてつたのでありましようか。ふだんの場合の標準をひとつこの際お伺いしたいと思います。
  24. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの御質問でございますが、御承知の通り青函連絡船北海道と本州とを結びまするのど首でおります。北海道がだんだん重要性を加えますとともに、あそこののど首の青函連絡船の動きというものは、非常に重大な関係を持つているのでございます。従いましてできるだけこれを欠航させないように努力をいたしておるわけでありますが、もちろんこれは輸送の安全ということを前提としていることは申すまでもありません。ことに今のお話の、あそこが大きな海峡であるのに、その海峡を無視したというような意味お話がございましたが、そういうことではございませんで、あそこの海峡日本海と太平洋とをつないでおつて、それ相当な潮流を持つている大きな海峡であること、並びに冬季におきましては、特に吹雪その他の関係で相当荒れることも前提といたしまして、船体の構造等も十分勘案されておるわけであります。しかしながらやはり安全の関係から、暴風警報が出ますとか、そういう気象の前もつてわかりましたときには、十分勘案いたしまして、出帆については相当な風がある場合には欠航もいたしております。船体の構造上、貨物船の方が旅客船に比べまして少し抵抗が弱いようでありますので、貨物船の欠航はときどきあるわけであります。しかしながら沖ではときによりますと、三十メートルの風に出会うこともございますが、今までのところはそうした事故はなかつたのであります。
  25. 天野公義

    天野委員 そうすると大体どの程度の風で欠航するとか、どの程度の場合には乗客を下船させるとか、そういう一般的な大体の標準というものは、今までなかつたのでありますか。
  26. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 船の動けるか動けないかという問題になりますと、風の条件、性質、そのときの海上の波の模様、あるいは潮流、気圧配置がどういうふうになつておるか、非常に多種多様の要素を含んでおりまして、これを一つの規程で動けるとか動けないとかいうことは、とうていできない相談なのであります。われわれ現在の人間の力で、一つの法規で船を動ける動けないというものを書こうとしても、相当の科学者が日本にはたくさんいるのでございますが、おそらくそういうことは不可能に近いことではないかと私は思うのでございます。もちろん長年の経験によりまして、各船長は十分な経験を積んでおります。そういう場合に対する判断は非常に持つておるわけでございます。それがゆえに国で定めた船長の免状を与えておるわけなのでございまして、こういう優秀な船長の経験によりまして、この問題は決定しておる次第でございます。
  27. 天野公義

    天野委員 そういたしますと標準は一応船長の判断にまかせる、こういうような結論になると思うのでおりますが、あの海峡は相当荒天の場合が多いわけであります。でありますから荒天に対する訓練というものも積んでおらないと、安全性を保つことはできないわけでありまして、一体あの連絡船ではどの程度の荒天訓練をやつておられたでありましようか。荒天訓練ということは、船の保安にとつては一番重大なものであると考えております。従つてこの荒天訓練についてはどの程度の熱意を持ち、どの程度の訓練を積み、どの程度の練度に達しておるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  28. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 青函航路は御承知のように気象の関係以外に、現在機雷の危険にもさらされておりますので、船員の訓練に対しましては徹底を期する方針で進めております。それでもちろん荒天時の場合に最も必要なのは防水訓練等でございますが、そのほかに防火、避難、そういうような訓練を毎週一週間に一回は実施しておる。なお私の方は戦後に米軍の輸送をいたしておりましたので、この点については終戦以来訓練は非常に強化されておる次第でございます。
  29. 天野公義

    天野委員 先ほど天坊さんから、船体の構造については非常な配慮を払つておるというようなお話でありましたし、ただいまは相当訓練をやつて、特に防水訓練をやつておる、こういうお話であつたのであります。ところが今度の事件を見ました場合に、資料によりましても、船尾より追波が浸入しておるというのが第一であります。第二に貨車甲板から浸水をしておる、その浸水によつて発電機が使用不能となつて消燈、通信不能になり、機関部にこれまた浸水をして運転不能になつた。このエンジンがとまつたというところに、今度の惨事の根本原因があるわけであります。もしエンジンがとまらないで船が動いておつたとしたならば、相当の風があつても船はそう簡単にひつり返つたり、遭難するものではありません。これはもう船乗りの常識であります。それにもかかわらず五隻の遭難船のうちにはつきりわかつているので二隻、貨車甲板から浸水しておる。そしてほかの三隻はその状況も全然わからないまま沈没しておる。五隻のうち二隻は貨車甲板からの浸水によつてエンジンがとまつた。これによつて風に流されて、そしてひつくり返つた。従つて私はこのエンジンがとまつたということに、最大の原因があると思う。それをさかのぼれば貨車甲板から浸水したということが、これまた一番の大きな原因だと思うのであります。そうすると、貨車甲板から水が入るという状態を考えてみますと、一つは船の構造上、水が何か下に漏るような構造であつたのかどうかという点が一つ。そういうようなすき間のあるような船はおそらく使わないでありましよう。またつくるわけはございません。そうすると、どこか水の漏るようなところを締め忘れたということが考えられるのではないか、そこからどんどん水が入つたのではないか、この二つに一つでありますが、船体の構造上、こういう点は一体どういうふうにお考えでありましようか。
  30. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 もちろん船は、現在の船の構造規定その他で、そういう重要部分に水が入るということは許されませんし、そういう構造にはなつておりません。しかしながら実際にものすごい荒天時になりまして、どういう現象が起つたか、それによつてどういうふうな結果になつたかということは、現在までの情報ではわかりませんで、なお今後こういつた問題は専門の技術の方々がおそらく御調査になると思いますので、現在のところ今その点のはつきりした原因を究明いたされましても、ちよつと御回答を申しかねる次第でございます。
  31. 天野公義

    天野委員 この問題はきわめて重要な問題でありまするから、今後調査をされるときに十分御留意願つて調査をお願いしたいと思うのであります。  それから当日は台風が来るということがはつきりわかつてつたのでありまするが、それでは連絡、人員配置等に一体どういう措置をしておつたかということが、きわめて重大な問題だろうと思うのであります。参議院の調査団が向うへ行つて調べたところによると、二十六日は日曜日で、台風通過が予想されているにもかかわらず、当局は平常通りの人員配置をしておつた。中沢運輸部長、川上海務課長は登庁しておつたが、浅井総支配人らの応接にかかり切りであつた。そして午後六時ごろに高見局長は帰宅しておつた事件の発生直前、出航するときに帰宅しておつた。そして午後十時ごろ洞爺丸からのエンジン元機械使用不能という連絡を受けながら、局員は局長に連絡せず、適切な処置をとることができなかつた、こういうようなことが報道せられておるわけであります。国鉄側といたしましては、こういうような台風時で、そして青森側の船も欠航しておる、日航機も欠航しておるという場合に、函館側だけの船が出て行こう、こういうときに一体人員配置や責任者等はどういうぐあいになつてつたのでありましようか、これをお伺いしたいのであります。
  32. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの御質問に対しまして、私も現地に参りまして相当その間の事情等についても調査いたしたのでありますが、まだ十分な答えを私もつかまえておるというまでには参つていないのであります。大体におきまして当日は午後二時ごろに、局長は札幌から帰つておるのであります。二時ごろに帰りまして、局長室もしくは自宅におきまして、その晩東京へ参りますために、東京の会議に持ち出す資料について検討をいたしておつたわけであります。御承知の通り青函管理局というものの使命は、第一船舶運航関係しておるのでありまして、こうした局の幹部は函館の市内に社宅を持ちまして、その家に住んでおりまして、鉄道電話その他一般公衆電話もつけ加わりまして、自宅においてもほとんど二十四時間勤務と同じような態勢になつておりますので、当日家において運輸部長並びに海務課長等を出勤させておつたということは、一応態勢としてその日の体をなしておると私は考えるのでありますが、その間総支配人が札幌から参りまして船に乗つてつたことは、その二時の汽車で参りましてそれから船に乗つてつた。応接にいとまがなかつたというような言い方で表現なさいましたが、当日やはりいろいろ総支配人に対する業務連絡等をいたしておつたわけであります。それで当日は気象台からも公式な放送というようなものも十分受けておりますし、当日の台風の進みぐあいというものについても、船長等は十分承知いたしておつたと思うのでありますが、問題の直接責任者であります船長がなくなつておりますので、あとからの想像になるというような感じもいたすのでありますが、私は当時の気象台の通報等によりまして、台風もある程度通過して行つて見通しとしてこの程度ならば大丈夫だというような判断をしておつたのではないかというふうに考えるわけであります。
  33. 大久保武雄

    ○大久保委員 私は今の天坊さんの御発言に関連いたしまして、一言申し上げてみたいと思います。船長が何分死んでおるから、こういうことを発言されるのでありますが、私は船乗りの責任というものについて、これはよほど考えていただかなければならぬと思います。それは死人に口なしでありますから、船長がいろいろ抗弁しようと思つてもできない場合もございましよう。しかし一船を預かり、千数百人の乗客を預かつて運航しておる船長というものは、船の運航についてはほんとうに身を投げ出して挺進しておると私は考えております。この点は国鉄当局においても十分お考え願わなければならぬと思つております。私はこの船長が運航する運航判断におきましても、今回の事故を見ておりますと、いろいろ解せぬ点があるのであります。どうしてかと申しますと、一体出航のときに、この間の現地からの状況報告によりますと、総支配人がブリツジに行つて、あるいは船長室で出航会議の相談にあずかつてつた。これはなぜ総支配人は出航決断の相談にあずからなければならぬか。この点は私は総支配人がいかなることを発言されたか知りませんが、若干船長の判断を牽制したのではないかという疑いを持つておるのでありますが、はたして事実であるかどうかという点をひとつお答え願いたいと思います。
  34. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいま船長の責任について理解のあるお話をいただいたので、まことに心強く思うのでありますが、当日の洞爺丸の船長ももとよりそうしたことに責任を感じて、十分の判断をとつてつたと思うのであります。ただいま淺井総支配人が船に乗つておりまして、船長に会つて会議をやつたとか、これを牽制したとかいうお話がございましたが、そういう事実は全然ないように聞いております。現地に参つて私聞いたのでありますが、総支配人は別に船長にどうこうという話をしたということは私は聞いておりません。
  35. 大久保武雄

    ○大久保委員 国鉄はもちろん国鉄家族主義で、一視同仁に従業員を考えておられると私は考えておりますけれども、どうも従来の慣例からいたしまして、船乗りに対する理解というものが国鉄には少いのではないか、船に対する関心というものが、陸上を走つておる鉄道ほどないのではないか、どうもこういう心配があるのであります。これはかつて昔も船員に対する処遇は若干悪かつたのでありますけれども、船員法の成立等によりまして最近は相当向上をいたされております、しかしながら運航等の責任者として、一体船員はどのランクまで昇進することができるか。たとえば運航責任に当る人で、青函局長は船員出身であるか、この点をお尋ねしたい。
  36. 天坊裕彦

    天坊説明員 国鉄が鉄道のことばかりやつて、船のことについて認識が少いのではないかというお話でございますが、御承知のように関釜連絡船を昔は持つておりましたし、現在も青函にあれだけの船を持つております。そのほか方々に船を持つておりまして、船に対する関心につきましては——大部分の仕事は鉄道の関係が多いのでございますから、そちらの方に関係する人間の数が多いことはもちろんでありますが、船の方を等閑視いたしておるということはございません。ただ船員の特別な技術というものもございますので、その点を考慮いたしまして、船員の関係は普通のものと比べて三階級くらい違うような給与制度を持つて、船員に関しては特別の給与体系を持つておるわけであります。決して船員の進路をはばむようなことはいたしておりません。ただ現在青函の局長は船員出身ではございません。
  37. 大久保武雄

    ○大久保委員 国鉄の最も重要なる生命である幹線、すなわち青函の連航を預かつておる総責任者が船員出身ではない。しかもその人があの台風時に家に帰つてつた。このセンスであります。船乗りは台風が来るとなりましたならば、全部出て参ります。全部役所に登庁して、その台風の通過を監視します。台風が来るという警告をしたならば、エンジンを始動して、船はいつでも戦闘準備に入る。これは船乗りの常識であります。局長が役所に出勤せぬで、家におつたということは、エンジンをストツプしておつた、機関長が乗船しておらぬということと同じであり、エンジニアがおらぬということと同じであります。こういつた点に青函の運航を預かつておる責任者の心構えの問題があると思います。先ほど同僚天野君が質問しましたように、勤務体制がはつきりしておらぬ。台風が来るときには当然二十四時間勤務体制で、総員現場の役所に出勤して、台風に向う船の運航を監視すべきじやなかつたか。この点についていかにお考えであるか。また船員出身者は船員部長にもなつておらぬ。船員部長も現在は配置されていない。船員出身者は船の運航をやるか、あるいは海務課長かその辺の下積みで、営々として船の運航に、吹雪の日もあらしの日も従事しておる。そうして今回はいろいろの非難を浴びつつ、みずからは妻子を残して船とともに沈没して死んでおる。こういう点に対して国鉄当局として、天野君の質問された勤務体制の問題をもう少しつつ込んで、真剣になつて御答弁願いたいと思うのであります。これは乗客はもちろんのこと、全犠牲船員にかわつて国鉄当局のはつきりとしたお考えを承りたいと思います。
  38. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいま申し上げました通り、当日青函局長はあの次の船で自分も上京するつもりで、その準備も一緒にいたしておつたわけであります。さらに運輸部長それから海務課長等は出勤いたしまして、そのほか船舶部長というものもありますが、これも出ておりまして、ただいま結果から見ますとああいう事故になつたのでありますが、暴風については十分関心を持つて、いろいろ気象連絡その他に当つてつたというふうに承つて参りました。
  39. 天野公義

    天野委員 どうも承つておると、逃げ口上ばかり言つておるように承れるわけであります。あれだけの台風が来ようとしており、青森の方では欠航をしておる。日航機も欠航をしておる。こういう事態になつておるのに、平常の勤務体制になつてつて、局長が出ておらぬ、こういうことはまことに遺憾千万であるといわなければならないと思う次第であります。今後この責任所在をひとつはつきりしていただきたいと思うのであります。  それから次にお伺いしたい点は、大臣にお伺いしたいのであります。それはこれだけの大事件が起きた。すなわち世界第二の海難事故といわれる大事件が突発的に起きたわけであります。これだけの大事件が起きたにもかかわらず、伝えられるところによりますと、大臣はその情報を新聞社から最初聞いた。そうして次には緒方副総理かごどうだというような情報を得て、大臣は非常にびつくりされたというお話でありますが、一体大臣はどういう人から報告を受けたのでありましようか。その点をお伺いしたいと思います。
  40. 石井光次郎

    石井国務大臣 お話のように夜中新聞社の人に起されまして、たいへんな問題だということを聞きました。そこでまだ報告が参つていないということを申しました。私はそのときにまだ半信半疑の状態でおつたのであります。それから早朝、何時ごろでありましたか、秘書官の方から電話がかかりまして、今函館の事件についての情報がどんどん集まつておりまするが、もう少しまとまつてから御報告を申し上げますということであつて、それで私は何時ごろでありましたか、自分は役所に行つていろいろな報告を聞いたというような状態でございます。
  41. 天野公義

    天野委員 そうすると大臣国鉄側からこの事故についての報告を受けられたのは、一体いつでありましようか。そうしてだれからこの報告を受けられたのでありましようか。
  42. 石井光次郎

    石井国務大臣 私は鉄道監督局長から、八時ごろでありましたか、ちよつと電話で話を聞きました。九時ごろでありましたか、役所に総裁そのほかどういう方がおられたかちよつとわかりませんが、総裁もおられまして、報告を受けました。
  43. 天野公義

    天野委員 今の大臣お話でありますと、新聞社では夜中に情報がわかつてつたわけであります。そうして八時に監督局長からこの報告を受けておられる。そうして九時になつてやつと総裁から報告を受けるというわけでありますが、それでは総裁は一体何時ごろこの情報を受けておるのでありますか。そうしてこれだけの大事件でありますから、総裁はまつ先に所管大臣である運輸大臣に、この報告をみずからしなければならない重大な責任があると思う。これは総裁として非常な失態ではなかつたかと私は思うのでありますが、その点はいかがでございましようか。
  44. 長崎惣之助

    長崎説明員 私が国鉄当局から電話によつて報告を受けましたのは、午前二時前だつたと思います。それからすぐ自動車の手配をいたしまして、本庁に参りましたのは三時ちよつと前だつたかと思います。それからこれはたいへんなことだというので、いろいろなこまかな情報もとろうと思いましても、なかなか思うよう参りませんで、電話もなかなか函館の方にかからぬという状況でございまして、非常に困難をいたしたのでありますが、あまり不正確なことを大臣に申し上げるわけにも行かない。いずれにしましてもとにかく確実な情報をつかもうということで、そのうちに夜が明けて参りました。続々私の方の幹部の者も出て参りまして、いろいろな方面から情報を収集し、結局夜が明けてからたしか運輸省の方に連絡をしたと思います。
  45. 天野公義

    天野委員 これだけの大事件が起つてつて、船がひつくり返つたということがわかつておりながら、二時間前にその情報を聞きながら、第一報すらも大臣総裁報告しておらなかつたということは、総裁としてはこれは大失態ではないかと私は思う。こんなことは大醜態ですよ。これはあなたの重大な責任だと私は思う。それでしかもこれだけの大事故が起り、千何百人の人がその安否を気づかわれる、おそらくほとんど絶望である、こういう情報がその後ただちに入つたので、そうした場合には国鉄総裁たる方は最高責任者として、まず現地にまつ先に万難を排して行く、これが私は総裁としてとるべき立場でないかと思う。それを副総裁な向うにやつておいて、総裁は東京ででんとすわつておる。東京ですわつておることは事務的な処理なんだ、総裁としてまつ先にしなければならないことは、遭難された遺族方々やその他の人々に誠心誠意おわびを申し上げるということが、総裁としてやるべき第一の仕事ではなかつたかと思う。あとの事務的な処理というのは、たくさんの関係の人がおるのだから、これは十分やるでありましよう。それよりもまつ先におわびを申し上げる、現地でいろいろと指揮監督をする、これが私は総裁としてとるべき態度ではなかつたかと思うのであります。大臣はまつ先に現地に行つて、この処理に当つておられる、総裁は東京にいて副総裁が向うにおる、こういう考え方がこういう事件を起した私は最大原因ではないかと思う。これは先ほど申し上げようなあれだけの事故が——事故というか、台風が来ておるときに局長は自分の家にいて、ほかの者を現場にやつておる、こういうような、これは総裁のやられたことと高見局長のやられたことは、同じようなぐあいになつておる、こういうような考えがあつたのでは、いつまでたつて国鉄というものは立ち直ることができません。こういう点について総裁のお考えはいかがでございましよう。
  46. 長崎惣之助

    長崎説明員 私はこの事件を決して軽視いたしたわけではございません。なるほど天野さんのお考えのような考え方もございますが、東京においてなすべきこと、それは必ずしも全部が事務ではございませんので、いろいろのことがございます。やはりこつちで采配を振る者がなくては、うまく行かないというのが現実の姿でございございす。  なお私は鉄道監督局長に報告をいたしましたのは、たしか五時ごろであつたと思います。それがなかなか電話が通じませんで、御承知のように北海道の鉄道電話は大分やられまして、それで連絡がとれなかつた。十分な情報が入つて来ないというので、急遽とにかく、まずだれか人をやつてみるということが必要だというので、最初営業局長をやつて、続いて天坊総裁に、ぜひ行つて現地でやつてくれ、自分は東京においてあらゆる采配を振うということで、手わけをいたしましたようなかつこうでございます。御説のようなお考えも一つの考え方だと思います。
  47. 天野公義

    天野委員 どうも総裁の話を聞いていると、逃げ口上ばかり言つておるように感じるのであります。どうしても納得行かない。もし私があなたの立場であつたとしたならば、その翌日には、もう相当の情報が入つておるのでありますから、石井運輸大臣のところに辞表を頂けて現地に行つて、総指揮に当るのが当然じやないかと思うし、私ならそうしていたと思う。それが当然の措置じやないか。どうも長崎総裁のとつた措置というものは、これは自分が直接関係しないのだからいいのじやないかというようなお考えが、どこかにあるような気がする。これはどうしても納得行かない。この最大の責任というものは、やはり最高の責任者であるあなたがみずから背負つて、この解決に当らなくてはならないし、その責任所在をみずから明らかにしなくてはならないと思う。これなくしてこの責任所在全般にわたつて明らかにするということはとうてい不可能である、これらについて総裁のお考えを承りたい。
  48. 長崎惣之助

    長崎説明員 この事故の処置は、むろんこの委員会においてしばしば申し上げましたように、やはり何といつても羅災者の収容、救護ということ、これは一番大事なことであります。なるほど御説のように事務であるようにも見える点がございますが、たとえば先ほど例に出ましたところの、これはまああとで起つたことなのですから、別に大した——たいしたことではあるのですが、あとで起つたことですけれども、そういうような事故の処理をこれからうまく進めて行く、その救護と収容にぐんぐん力を注いで行くということについては、いろいろな点でやはり必要な事項がございます。ことに私は御承知のように相当長い間鉄道におりました関係上、海の方の事故なども、こういう大きな事故はいまだかつてございませんが、やはりちよいちよいあつた。また処理ということになると、鉄道の事故と同じような面がございますので、そういう点で過去の経験と申しますか、そういうものを生かして迅速に処理しなければならぬという面が、現地にもございますが、中央にも相当あるものなのであります。そんな観点から、私は自分が残つて、そうして副総裁現地に行つていただいたわけでありますが、これは逆に行つたらどこが悪いのだ、こう言われればそれはそれまでであります。天野委員のおつしやるような考え方も私は考え方だと思います。決してこの事故を私自身が軽視しているとかいうようなことではありません。非常に重大な事故である、この処理というものは迅速にしなければならないということは、今日においてもちつともかわつておりません。今後もあらゆる力を傾けまして処理して行きたい、かように思つております。
  49. 天野公義

    天野委員 どうも総裁の御答弁を伺つていると、体験だとか経験だとかそんなことばから言つていて、誠心誠意この処理に当る、また遺族方々におわびを申し上げるという、謙虚な気持一つも見られない。私はこれ以上総裁を責めてもしようがないので、今後は総裁の御良心と石井運輸大臣の良識にまつほかないと思います。私はこれで質問をやめます。
  50. 大久保武雄

    ○大久保委員 関連して……。ただいま同僚天野君が責任問題に触れられましたが、私も一言触れてみたいと思います。海上の事故に関しましては、法制上船乗りに対しましてはいろいろな責任が負荷してある。すなわち船乗りに対しましては船員法上の責任がある。さらにそれに加えまして過失がありました場合におきましては、刑事上の責任があります。船乗りは船の運航に心魂を傾けて、しかも一旦災害が起りますと、自分の生命までも投げ捨てる、こういう覚悟をしておる。その上に法律上二重、三重の責任が加えられてくります。今回もおそらく死んだ人は別といたしましても、生存者に対しましては厳重なる責任の追究があるでありましよう。しからば一体これらの船員を監督しておる人の責任、この人たちの監督責任というものは、無過失責任の方に入つて行く法律上の可能性が非常に多いのであります。一体この辺の過失責任の限界というものと——今回は無過失責任もあり得る、こういうふうに運輸大臣はお考えになつておるかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  51. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。法律上の責任ありやいなやということは別問題として、職務の立場上この問題について責任を感ずるということがあり得るかというお尋ねかと思いますが、これは仕事に関係しております者といたしましては、法律上の責任の問題を離れましても、これだけの犠牲者を出したということについて、心持の上の責任を感ずることは当然だと思つております。私ども政府におる者の立場からいたしまして申し上げますれば、政府といたしまして、これだけの問題が起つたということについて、先ほどから申しますように深甚の同情を持ち、と同時に、その跡始末というような問題につきまして、物心両面からできるだけのことをし、そうしてまた仕事の上におきましても、北海道内地との連絡というようなものを、一刻も早く再開するという責任を考えて、努力いたすということを考えておるわけであります。国鉄当局におきましても、ただいま長崎総裁の言うたような運航回復というようなこと、弔慰をするということ等のほかに、さらにこういう仕事に対しては重大な責任を考え、そしてこういうことのまた起らぬように努力すべき道義的な責任を感じながら、仕事をやつて行かなければならぬと思つております。
  52. 大久保武雄

    ○大久保委員 私は責任問題に関連いたしまして、国鉄労組のあり方、この点について長崎総裁並びに石井運輸大臣——これは主として石井運輸大臣のお考えをお聞きしたいと思うのであります。国鉄労組が、あの大災害の起りました翌日の新聞紙の報ずるところによりますと、組合員殉職者に対する弔慰金の支出の決議をされた。それからきのうの新聞を拝見しますと、国鉄労組は、ベース・アツプの決議をされた。すなわち賃金の値上げ並びに年末手当の決議をされた。これに対して社会党の右派と左派から、秋季闘争に関しての申入れをされておる。しかし私はきようは何かのあいさつがあるか、あすは国鉄労組から何かの声明があるだろうかと、毎日心待ちにいたしておりましたけれども、一片の今回の事故に対する犠牲者に対して弔意を表する、こういう決議もないのであります。私はこれは、国鉄の長崎総裁が就任以来営営として努力されたことはわかりますけれども、先般の委員会におきましても綱紀の弛緩があつてはいかぬと言われましたけれども、私はどこかにやはり綱紀の弛緩があるのではないかと思う。たとえば労組はベース・アツブさえすればいいのだ、今回の事故に対しては無関係である。
  53. 關内正一

    關内委員長 大久保君に注意しますが、離れた質問をしないで関連した質問をしてください。
  54. 大久保武雄

    ○大久保委員 これは労組とは無関係であつて責任は別だ、それは一応わかります。しかし労組としては、一週間もたつておるのだから、弔意を表するくらいのことは決議されてもよいのじやないか、私は国民の一人としてそう思う。この点は、労組はべース・アツプすればよいのだ、経営者は運賃の値上げをすればよいのだ、こういうことになれば、これは国鉄が自分さえよければよい、国民はどうでもよい、一千数百人の国民の犠牲は知らぬ——そういうことでもありますまいけれども、私は、労組から一片のそういう決議も出て来ないで、ベース・アツプの決議と殉職労働組合員の弔慰金の決議しかやつてないということに対しては、国民の一人としてきわめて憤慨しておる。この点、国鉄全体を監督しておられる石井運輸大臣としては、いかにお考えになつておるか。鉄道会館が八重洲口に厳としてでき、国鉄の労働会館が峨峨としてそびえる。一体国民は何であるか。鉄道会館ができ労働会館ができるのは、国民の血税を利用して国家の偉大なる財産を国鉄が運営してこそできるのじやないか。鉄道職員というものは現在の労働状態からいえば、厚遇されておると私は思う。待遇は悪くはないと思うのです。その労組が、国民に対して一片の弔意の決議をされてよいのじやないか、私はかように考えるのですが、この点、石井運輸大臣の見解を承りたい。
  55. 石井光次郎

    石井国務大臣 大久保君の御意見、承つておきまして、ただ参考にいたしたいと思います。
  56. 關内正一

    關内委員長 山口君が今度発言の順位でありますが、竹谷源太郎君が現地視察に参りますので、この一時の汽車で先発するそうですから、五分ほど関連質問をしたいというお申出でありますが、御了解願えますか。——竹谷源太郎君。
  57. 竹谷源太郎

    竹谷委員 時間がありませんので、私は五分間だけ簡単に要点を質問いたしますから、簡単にお答えを願いたい。先ほど遺体捜査処理に関しての措置につきまして、天坊総裁から御答弁がありましたが、新聞の伝うるところでも、非常にこれが緩慢であるという非難の声が囂々たるものがあります。そこで数日中には六十組以上の潜水夫を入れてやるということでありますが、いつまでにこれは完了できるか、それを第一に伺いたい。  第二は従業員に対しては公務死傷として、いろいろな恩給法上その他の待遇が与えられることと思うのでありますが、今回の事件に関して特にそのほかに従業員に対して何らかの措置を考えられるかどうか、この点を伺いたい、  第三に、青函局輸送司令室の係員の西岡という人が海洋気象台に照会をして、舞風雨に関する情報を得て、これを函館さん橋事務室に注意したということである。ところが函館さん橋助役の山本という人は、そういうことを聞いておらない、従つて船長には伝えられておらないということを毎日新聞が伝えておるのでございますが、この真相がわかつておればこれに関する御答弁をいただきたい。  第四点は、政府はとかく科学技術を非常に視軽いたしまして、南方定点及び北方定点等に対して、廃止したりあるいは弱体化させたり、その他気象観測上に十分なる措置を講じてない、これが今回の事件勃発の基礎的な原因ではないかということがうかがわれるのでございますが、これに関しまして、定点観測の復活、強化、あるいは気象観測の充実等について、将来いかなるお考えを持つておるか。これが第四点。  次に北海道の総合開発の見地からも、また日本の重要な原料資源の生産地としての北海道からの貨物輸送上、今後も非常に重大である。こうしたことに、一々連絡が杜絶するようなことでは、まことに日本の経済、産業上も重大な問題でありまして、青函海底トンネルは四百億ないし六百億ぐらいかかるといわれておりますが、これを現実に計画して実施せられる意向を有するやいなや。以上五点について、簡単に御答弁を願いたい。
  58. 天坊裕彦

    天坊説明員 御質問の五点のうち、三点ないし四点についてお答え申し上げます。  第一の、いつまでに完了するかという問題でございます。この点はいつまでということもはつきり言えないと思うのでございますが、ただいまのところ、二日には二十二組、三日には三十六組、四日には五十五組、六日には七十一組と、こういう強化のスケジユールを持つておるのでございます。こういう態勢で、まずおよそ十日間、これであの船の中は全部一応調べたというところまで持つて行きたいという考え方で、現地を督励いたしております。  第二に、国鉄の殉職した船員等について、定められた船員法あるいは共済組合法等の関連以外に、何らかの見舞金というものを出すかどうかというお話でございますが、この問題は、一般の乗客等について有責、無責にかかわらず、一広見舞金として五十万円程度を支出するという大体の方針がきめられつつあるわけでございますが、そうした場合には、船員につきましても片方の給与の関係等を勘案いたしまして、十万円程度は出したいというふうに考えております。  第三の、きようの新聞に出ておりました西岡氏の話につきましては、私はその内容あるいは事実について、全然承知いたしておりません。  それから観測の問題は私の関係ではございません。  第五の問題、青函隧道の点につきましては、私どもといたしましては、ぜひこういうものに手をつけるようにいたしたいという希望を持つておりますが、現実に来年度の予算にどう組めるかという点につきましては、なお検討中でございます。
  59. 石井光次郎

    石井国務大臣 台風が起るたびに気象台の問題が起るのでございますが、今度の問題に定点観測の有無がどれだけ影響したかということにつきましては、広い意味におきましてはそういうものがあつた方が、より正確なものを得るのに役立つだろうということは、言えると思うのでございます。南方の方は現在は動いておるのでございますから、実際上あるのでございますが、北方の定点がいつも問題になるのでございます。私どもは、この定点観測を何とかして復活するようにいたしたいという考えをもちまして、予算にも今度は組んでおりまして、皆さん方のお力添えを得て、これをぜひ実現させるようにいたしたいと思つております。  それから北海道のトンネルの問題、これは先ほどもちよつと触れましたが、今度船が五隻も沈没いたしたというような事態から考えまして、あれよりももつと強いような風が吹かぬとも限らないことでありますから、たとい人命に損傷はなくても、船がひつくり返つてしまつて、あの間の輸送が杜絶するというようなことになりましては、北海道開発という問題か大きく取上げられております今日において、どうしても最安全の方法とは言えないと私ども思います。そういたしますると、せんじ詰めて行くところはあそこのトンネルの開鑿よりほかないと思います。これは先ごろから予定線の一つとして取上げられておりまして、国鉄そのものとしてのいろいろな予備的な調査をいろいろやつております。大体今日のところの話では、今日の技術におきましては仕事にかかりましても、十年を要するだろうということでございます。そういたしますると、かりに五百億かかるといたしまして、年に平均いたしまして五十億という金か必要だ、これは経済速力で進んでございますが、これらのことをただ全体の新線建設という面からだけでなく、北海道開発という大きな面、あの海峡輸送の安全性という問題とあわせまして考えまするとき、これをほかの面よりも先行してやつてもよいではないかということを私ども考えておりまして、これにつきましてもう少しいろいろ練つて相談を進めたいと思つております。
  60. 竹谷源太郎

    竹谷委員 最後に私は長崎国鉄総裁に、今回の事件の惹起につきましての心境を承つておきたい。この未曽有の悲しむべき大事件がいかなる原因で起きたか、責任の法律上の形式的な所在はどこにあろうとも、国鉄総裁として、この事件を惹起した最高の責任監督者といたしまして、弔慰、救難、あるいは善後措置に対して心身を賭してやらなければならぬのは当然でございまするが、と同時に、この重大なる責任をみずから准んでいさぎよくとるという態度が望ましい、これは天下の輿論であらうと思う。この委員会の席上における答弁あるいは新聞社等に対する発表等を聞きましても、のらりくらりと責任を回避しまして、まことにわれわれ同じ日本人として残念にたえない。もう少し真剣な態度で、真に責任を痛感して、そうしてこの事件に対処し、また事故の責任は、法律上の形式的な責任はどこにあろうとも、政治的な道義的な責任を十分に感じて事に当つてもらいたい。先ほど天野君から辞表を出して現地に飛ぶべきであつたというきわめて適切なる御忠告がございました。私はそれ以上の態度をもつて臨まなければならないと思う。ところが責任を回避して、のらりくらりと法律上の責任一点張りでのがれておることは、もつてのほかでございまして、私は責任をとるという意味はくどく申し上げるまでもないと思うのでございますが、そういう気持で今後やるかどうか、もし今までそういう気持がなかつたとしたならば、ここで明らかにそれを表明して、国民並びに遺族に対して深くおわびをして、全国鉄の力を尽しまして対策を講じ、そうして事故の責任をそのあとではつきりするという心境のあることを表明していただきたいと私は思うのでございます。
  61. 長崎惣之助

    長崎説明員 先ほど来申しましたように、私といたしましてはこれがいわゆる法律上の責任云々ということはともかくとしまして、難にあわれました方々並びに残されました御家族の方方、及び殉職されました船員各方面に対し、陳謝の気持をもつて、現在当面せる仕事に没頭するということをいたさなければならぬと考えております。お説の心持はよくわかるのてございますが、それについても深甚なる考慮を私は払いつつあるところであります。
  62. 竹谷源太郎

    竹谷委員 どうも最後の語尾が不明確ではつきりしません。あなたははつきり責任をとつておわびをするという御心境でおられるかどうか、それを私はお尋ねしたいのであります。
  63. 長崎惣之助

    長崎説明員 ただいま申し上げた通りでございまして、陳謝の気持で誠心誠意、当面をまず処理しなければならぬ、しかる後に御意のあるような点につきましても、十分に考慮を払うつもりであります。
  64. 關内正一

  65. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は今回の洞爺丸ほか沈没いたしましたこの台風による被害についての今まで行われました質問応容のうち、さらに納得の行かない点について質問を試みたいと思うのでございます。  まず私は最初に、この国鉄に限らずすべて交通機関の特徴といたしましては、その現場の従事員に対しまする業務命令を管理するいわゆる業務命令管理者と、その業務命令を受命いたしましてそれを実行に移す責任者と、この二つが密接に行動をいたされなければ、私は運輸行政の完璧を期することはできないと思うのであります。ところが今まで聞いておりました質問の応答を見ますると、この中におきましてもすでに業務命令管理者と受命実行責任者との間における意思疏通は、きわめて不円滑なものがあると思います。そこで私はまずその第一点としてお伺いいたします点は、業務命令の管理者である青函管理局長は、その部下である船舶運行に関する司令があるはずでありますが、その司令者に対してどのような管理を平生なされているか、それを私はまず第一点としてお伺いしておきたい。
  66. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 新聞等に書かれております司令室と申すものはあるのでございますが、それはもちろん管理局長の下部組織ではございまするが、これはそういう名称をつけてあるので、仕事の内容は、船が運航いたします場合に天候障害などで遅れたり、あるいは出航を見合せたりいたしますと、陸上の輸送をそれに関連いたしまして調整いたしませんと、鉄道の輸送がスムースに行かないという状態になりますので、この司令室の中にそういう調整のために——陸上の方の関係と船の関係と違うのですか、船の関係の司令者は、そういう陸上の方の輸送に対する援助をする意味で、ここに海務課の人員を常時当直配置しておるというのが実情であります。
  67. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 これが明らかになれば、私はその責任所在が明らかになると思うのです。今の答弁によりますと、青函連絡船についてのダイヤその他一切の業務命令か、本庁から発せられる。そしてそれを受取りました青函の局長は、その命令を管理いたしまして、さらに船長にその実行方を命令するわけであります。ですから船長はいわゆる受命実行責任者であります。命令を受けて、そしてその業務を実行する責任者であります。ところがその実行、たとえば船を運航する、これは船長の責任でありますが、その運航以前の責任は当然業務命令管理者にあるのであります。これが責任がないと言われれば、偉い人は給料どろぼうということになる。一体何のために毎日登庁して部下に敬礼をさしておるのかわからない。ですから私はまずその点をお尋ねしておるのであつて、単に司令といわれる点が、いわゆる調整の役目だけであるという考えには立てないのであります。そして司令者がただ単に業務実行のための調整であるとするならば、一体この船舶部長は何を仕事としておるのかということになると私は思う。この点で、業務管理者として平生どのように青函連絡船についての業務管理をしておられるか、そしてその業務管理の責任はどの程度に及んでおるのか、これを受命者に対しての立場からお答えをいただきたい。これは重要でありますから、ひとつ総裁なり副総裁からお答えをいただきたいと思います。
  68. 天坊裕彦

    天坊説明員 御質問の趣旨をちよつと私つかみかねておるのでございますが、青函管理局長はあそこに配属されました連絡船十数隻を持ちまして、さらに陸上においては区域を定めまして、札幌鉄道管理局との境目までの鉄道線路を持ちまして、その間に従事員を五千人ばかり使つて、列車、船舶の安全な運航について責任を持つてつておるわけであります。ただ問題は、船長さんは今のお話のように毎日定められましたダイヤによつて、時間が来ればそのときには荷物の積込み、人間の乗組みを完全にして出て行くというふうに、スケジユールによつてきめられておるわけであります。その場合、船長さんがその当日天候その他を勘案して出て行けないという場合には、出帆がでぎないということが出て来るのであります。
  69. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そこが大切なんでありまして、今総裁が言われますように、この船に何時何十分に函館を出港して、何時何十分に青森に着けというのは平常の業務命令であります。これは中央からダイヤを渡し、青函の局長がそれを管理して、そしてやるわけであります。ですから平常のときには船長はその時間が来れば船自体についての安全性、言いかえますと荷物が積み終つておるかどうか、乗船者が乗船し終つておるかどうか、そして船自体の運航上の危険があるかないか、こういう点を十分に実行責任者としての立場から見定めて、そしてさしつかえなしということになつて初めて出港するわけです。そこまではその船を運航するにあたつての船長自体の責任なんです。ところが異常の状態にある場合、たとえば今度の暴風のような非常な異常事態に陥つた場合には、何時何十分に出せといつたその命令を管理する者がなければならぬ。危険であろうとなかろうと、船長は命ぜられた通りをやつて、そうしてさん橋を出る。出たところがどうしても台風がきつくて航行が不能であるとすれば、初めてそこでその船の運航を継続するか、あるいは退避するかをきめることは、船長としての責任になる。ところが、そのさん橋を出ろということを言うか言わないかということは、これは業務命令で、管理者の責任だと私は思うのです。ただ船長々々といつて、そのことまでも船長に責任をおつかぶせられておるのであるならば、いわゆる管理局長は何をしておられるのかということになるわけです。こういう点で、管理局はその業務命令を管理する責任を持つているものと思うのでありますが、それについて平常どういうふうに考えておられるか、この場合にも一体どういう管理をされたか、その管理ということが一番重要点だと私は思いますが、これについてひとつお答えを願いたい。
  70. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの管理者としての局長の船舶に対する考え方について、私は大体においてお説の通りだと思うのでございますが、ただああした場合には、天候の判断だけが問題になつている。ほかの荷物は積み込んだ、お客さんも乗つておる。あとは天候に対して出るか出ないかという問題になる。そうした場合におきましては、船長の判断が一番大事なんである。その船長の判断以上に、管理局長が出るなとか出ろということは言えないのだと私は考えます。
  71. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そこが私は納得が行かないところであります。それでは一体、いわゆる善良なる業務の管理者とはどういうものをさすのかということになると私は思うのです。今の副総裁の御答弁で行きますと、これは前から天野委員もお尋ねになつて、それに答弁された通りでありまして、聞く必要はない。それでは私は釈然としない。このようなたくさんの犠牲者を出しても全然管理局側に責任がないのであつて、現場の船長にのみ責任があるのだということになりますが、そういうようなことはできないと私は思うのです。これは刑法上の問題としても問題になろうかと思いますけれども、私は刑法上の問題が今後展開されて行く場合に、有利になるか不利になるかというようなことでなくて、私どもは、なくなられた方々に対する政治責任上、この所在については明らかにしてもらわなければならぬのであります。その場合に今言われるようなことであるならば、これは先ほど天野さんからも、ひいては総裁の進退、責任にまでも及ぶのではないかというような御質問もあつたわけでありますが、それらは一切総裁はもちろんのこと、管理局長にも責任がないというお考え、そうして死んだ船長だけが、この重大なる責任を全部負つているということ、それでは現場で忠実に命令を実行することだけを責任として負わされておりまする現業員が、あまりにもかわいそうではないか。そうして、それでは死んだこの五隻の船長だけではない。今後どれだけの犠牲を払うかわかりませんが、それらの従業員に対しても、それでは相済まないと私は思います。いかがでしようか。その点は、あなた方の方で今後刑事上の責任とか、いろいろの責任が追究されるに違いないが、そういう場合を含みとして、今日答えられないとおつしやるのであろうかどうか。それならば私はまた別の角度からお尋ねしなければならない。そうして私は政治責任上追究をしなければならぬと思いますが、いかかでしようか。お答えを願いたいと思います。
  72. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの初めの御質問は、結局船を出すときの受命者の関係と命令者の関係をおつしやつた意味で、私に抽象的に船長と局長との関係を申し上げたわけであります。船が出て行つて、ああいう不幸な事態を起して、政治的その他の問題で局長に責任があるかどうかの問題は、別個の問題と考えます。
  73. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 別個の問題とお考えになるならば、この業務命令について適切であつたかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  74. 天坊裕彦

    天坊説明員 ですから当面の洞爺丸の場合に、あの船を出すか出さぬかにつきましては、私は気象の観測というか、前途の安全という点——これは非常に専門的な問題でありますので、問題は船長さんの判断によつた、私はそう言えると思います。
  75. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そういう重大な問題になりますと、死人に口なしで、あなたは船長々々とこういうようにおつしやるが、それならば何も責任を追究する必要はありません。またそれならば管理局そのものが不必要なんです。毎日の運航ダイヤさへ船長にまかしておけばそれでいいわけで、何も管理局長などという高級者を置いて、業務をここのターミナルで管理さす必要はないと私は思います。いわゆるダイヤの運航について十分なる管理を行うことこそが、この管理局の仕事でなければならないのです。もしそれを無視されておるとすれば、管理局の存在は不要必である、こういうふうにも考えるわけです。一体国鉄は平常から管理局の業務について、どういうふうな措置をとられておるのか。今のようなお考えでいらつしやるとすれば、私どもは安心をしてこの貴重な人命、財産をあなた方の業務に託して旅行することはできない、こういうことになると思うのです。そしてまた一時に千数百名の生命を奪つたこの大事故の犠牲者の霊は浮ばれないと思う。一体あなた方はこれについての業務責任というものを、どういうぐあいに考えられておるのか、これは総裁からひとつはつきりした答弁を承りたいと思います。
  76. 長崎惣之助

    長崎説明員 先ほど来から申し上げておりますように、私どもといたしましては、いわゆる原因から見まして、法律論的に責任があるとかないとかいうことを超越しまして、こういう大きな事故を起したことについて、えらいことをやつたという点で、難にあわれました方並びにその遺家族あるいは殉職しました職員、その他世のいろいろな方面に心からおわびを申し上げる、そういう厳粛な気持で向つて行かなくてはならぬということは、先ほど来から申し上げておるところであります。   〔「関連々々」と呼ぶ者あり〕
  77. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はこの点につきましては、今の総裁の御答弁をもつていたしましては、関連質問も要求されておる通り、私としても納得ができません。この私が納得できないということは、結局において犠牲者の遺族もそれでは納得できないことだと思います。同時に今後の国鉄の業務運営上からも、重大なる欠陥をそこに見出さなければならぬと同時に、国鉄の業務管理に当つておられる責任者全部の心情についても私は疑わざるを得ません。こういうことでは私は納得できないので、その点についてはまだどんどん質問をいたしたいと思いますが、関連質問者が二名ありますから、委員長の方でひとつ関連質問をお許し願いたいと思います。
  78. 關内正一

    關内委員長 それでは中居英太郎君。
  79. 中居英太郎

    中居委員 山口君の質問に関連いたしまして、簡単にお伺いいたします。天坊総裁責任問題に対する回答は、あげて船長の気象の判断のいかんにあるということを答弁せられておるようでございます。いかにもあの青函連絡船の出航の判断に対するところの意思を決定する大きな要素は、船長の意思であるということは私ども承知しております。しかしながら今回の事件の核心は、あの暴風雨の中を出帆を決定したという、この意思の決定の所在がどこにあるか、こういうことがポイントだと思うわけでございます。この点について昨日からの質疑応答の内容を静かに見ておりますと、先ほど申し上げましたように、あくまでも船長の責任であつて、船長の気象の判断が間違いを生じた結果がこういう事態を惹起した、こういうふうな答弁であるようでございます。しかしながら実質的には、出帆の意思決定をする場合の要素に、船長の判断ということが重要な要素をなすということは知つておりますが、形式的には航海司令というものがありまして、これが形式的な許可を与えておる、こういうふうに私ども聞いております。さらにその上にただいま山口君が言いましたような管理局長というものも、大きな責任を持つておるわわけでございます。それで今回の場合、あのような台風が来るということが事前に予報せられておつた。平常の場合であつたならば、船長の意思決定によつて航海司令が許可してもさしつかえないでありましよう。しかしながら非常の場合であります。従いまして船長の気象に対するところの判断を百パーセントうのみにして、航海司令というものが出航の決定に承諾を与えた、こういうことは大きな責任問題だと私は思うわけでございます。しかも気象台からは五時五十分に、ただいま台風の目が函館を通過中であつて、三十分後にはさらに強い風が襲うであろうということが、国鉄に対して通報せられております。にもかかわらず六時三十九分には出航を決定しておりまる。あるいは船長はこの台風の目を、台風が通過したという判断で自分の意思を申したかもしれませんが、国鉄に対しましては気象台からただいま台風の目が通過中である、後刻さらに強いものが来るという警報が出されております。その場合には形式的にであろうが、出航の意思を決定する最後の決定権を持つておるところの航海司令というものが、船長の意思に対して異議を申し出て、これを拒否すべきが当然ではないか。にもかかわらずあえて平常のごとく船長の意思を尊重して、まるのみにこれをしたということは、大きな責任があると思うわけでございます。今日までの所在について、あげて死んだ船長の気象判断云々ということで言葉を濁して参つたのでありますが、ここに私は責任所在があると思うわけでございまして、この点について明確な御答弁を願いたいと思うわけでございます。
  80. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの御質問の中で、時間が来て船長かいよいよ出るというときに、司令の許可を得るというふうな話でございましたが、そういう司令の許可を得るという手続をとるようにはいたしておりません。時間が参りますれば、その時間に準備が終つたかどうかという点を確認して、船長が船を出せるということになつておるわけであります。
  81. 中居英太郎

    中居委員 航海司令の許可を得るか得ないかということに、私は問題はない、別であろうと思うのでありまして、船長が判断に基いて出航するということを通知しましたならば、そのとき当然航海司令は異議を申し出るべきだ。こういう警報が出ておるのだから出航は待つたらどうだ、こういうことは当然航海司令の責任として果すべきではないか、その辺に今回の出帆を決定した意思の所在を曖昧模糊にしようとしておるところの当局の態度があるのではないか。私は臆測であるかもしれませんが、これらの問題についての最後の結論に海難審判庁でやると思いますが、この海難審判庁の所長というものも、聞くところによれば国鉄一家であります。しかも先ほど来この弔慰金の問題につきましても、災害の原因不可抗力であるという場合には一人平均五十万円を持つて打切るが、これが国鉄責任であるとするならば、さらに追つて弔慰の方法を考えるということでありました。不可抗力原因であつたか、あるいは過失が原因であつたかということは財政的な面にまで非常に大きな影響を及ぼす次第でありまして、そういう場合に、国鉄当局が海難審判庁の審判に対して、何かしら威圧を加えるのではないかという危惧も私どもは持つておるわけでありまして、この出帆の責任所在というものを曖昧模糊にしているということは、おそらく後刻海難審判庁の判決に対して圧力をかけて何とかしようという考えではないか。政府は、あの汚職問題に対して指揮権まで発動するような蛮勇を持つている政府でありますから、こういう危険もないとは言えないと私ども考えるわけでおります。そうして人のうわさも七十五日、時をかせいて国民輿論が大体鎮静になつた場合に、責任不可抗力であつた、天災であつた、こういう結論を出して、今回のこの事件に終止符を打とうとしているのではないか。こういうことが遺憾ながら私どもには想像せられてならないわけでありまして、これらの点について、さらにもう一歩進んだ見通しと申しますか、決意を伺いたいと思うわけであります。
  82. 天坊裕彦

    天坊説明員 私ども今回の事件は、非常に残念に、また申訳ないと思つております。ただこれに関係せられた船長さん初めその他の方々におきまして、警報も出ている際でございますし、おそらく今までの経験を十分働かせて、できるだけの注意をしてやつたのだということは信じて疑わないのでございます。しかしながら沖に出てみましたら、経験以上の大きな五十数メートルというような風によつて、その自然の力に負けたというか、ただあとから私どもとして考えなければならぬ問題も多々あることと思います。将来そうしたことを二度と繰返さないためには、そういうことはすなおにできるだけ取上げて考えて行かなければならぬということは当然だと考えております。ただいまお話のように、何だか海難審判庁に対してどうとかいうことは、私ども毛頭考えているわけではありませんで、明らかになるべきものはできるだけ明らかにしたい。私どものわかつているところは十分皆さんに聞いていただきたい。その原因究明については、責任を回避しようというような方向でものを考えているわけではございません。
  83. 石井光次郎

    石井国務大臣 海難審判庁の問題が出ましたので申し上げます。海難審判庁は運輸省の所管になつておりますが、今度の問題についての審判のあり方につきましては、私どもは、海難審判庁がこの問題を取上げ、そうしてそのままそこの仕事としてすなおにものを運んでいただくつもりでおりまして、また私どもがこれに対して特別な指令を出すとか、圧迫をするというようなことは、絶対にやらないということをお約束申し上げておきます。
  84. 柴田義男

    柴田委員 関連して……、石井運輸大臣天坊総裁現地の御調査をなされたはずでありますし、私どもも二十八日、二十九日、三十日にわたり調査をして、けさこちらに帰つて参つたのであります。そういう観点から一つ二つ疑問の点を承りたいと思います。今一番議論になつております責任の問題、もう一つは船長の主観一つだけであの船を出航させたか、こういう問題に対しまして、われわれは非常なる疑問を持たざるを得ません。今度調査に参りまして、各党から一名ずつ派遣されたのでありますが、たとえば高見局長あるいは総務部長あるいは海務課長からいろいろその当時の事情を伺つた。そういたしますとお三人がお三人とも何かしら責任所在をだれかに転嫁しようという考え方で終始しておつた、こういう非常に悲しい現状をわれわれは目のあたり見て参つたのであります。こういうことから判断いたしますと、当初国鉄当局からいろいろ事情を聞きましたが、あげて気象台にその責任があるがごとき言辞が多かつたのであります。それであくる朝ただちに海洋気象台へまわりまして、気象の状況あるいは警戒警報の出し方等を詳細、台長自身にわれわれは聞いたのでございます。そういたしますと警戒警報を発して、しかも解除はあくる日でなければ解除になつておらぬ。その間、時間の関係もございましようが、数回にわたつて国鉄当局から暴風雨の様子というものを電話連絡されておる。五時半か五時四十分か、ちよつと記憶がはつきりしておりませんが、六時まぎわにも電話で明らかに海洋気象台に照会されたという事実があるのであります。そして五時ごろにはなるほど非常に晴れ渡つたそうであります。青空も多少見えた。けれどもこれはわれわれはしろうとでわかりませんが、台風というものは一時非常におとなしくなる。おとなしくなつた。その次に来るものが非常に強風が襲うというのが常識だそうであります。こういうふうに現実にそういう事態が明らかにわかつてつた。それをあえて出航しなければならないというものが、何かそこに存在したのではないかという疑いを全般に持つておるのであります。たとえば直接の命令はやらないといたしましても、あの船には、二十八日午前九時半から国鉄本庁で行われる局長会議を控えておつた札幌鉄道管内の総支配人以下幹部が数名乗つておられた。しかも総支配人が午後三時ごろから船をおりられないで乗つておられた。そしてこの船は何時に出れば、何時に青森へ行くのだ、何時の場合には特二券をとれ、何時の場合には寝台券をとれ、その時間が間に合わなければ札幌に逆行して、飛行機で飛んで行かなければならないというようなことで、総支配人は一等船客となつて一々指示をされておつた。その指示をされておるさ中に、海務課長でもあるいは部長でも、その総支配人のところに数回往復しておるのであります。そうして気象というものに対する観念を札幌鉄道局の幹部全部が忘れておる。単に総支配人一人が国鉄本庁のその局長会議に間に合せるために、どうしてやろうということにだけ終始しておるがごとき印象が非常に強いのであります。こうした点を天坊総裁あるいは石井運輸大臣も御調査になられたと思いますが、真相をはつきりとお知らせ願いたい。われわれの調査ではそういう状態なのです。ここに命令はしないと仮定いたしましても、何らかの圧力を加えて、総支配人あるいは局長を本庁の会議に出席させなければならない、こういう圧力を船長が感じはしないか。あるいは長年の国鉄の様子をわれわれ見ておりますと、どうもそういう封建的な、上の人に対しましては何人も目に入らない。しかも当日の局長の態度をわれわれ詳細伺いすると、この間北海道を御巡幸になられた際、天皇陛下から何かお書き物をいただいておつた。その箱書を総支配人から書いていただいたということを、現実にわれわれに答えておるのであります。なるほどありがたい書をいただいたのでありましようから、箱書も大切でありましよう。けれどもあの暴風のさ中に、千数百名のお客を乗せたあの船を預かる局長に、そういう態度が許されるかどうか、こういう点もわれわれは非常な疑問を持たざるを得ません。あのさ中でなくとも、総支配人がお帰りになつてからでもけつこうなはずではなかつたか、こういうことを考えました場合に、あらゆる角度から見ましても、気象台の警戒警報、あるいは海上保安部も調査いたしましたが、この方の警戒の方法、あるいは伝達の方法、これらを全部総合いたしまして、あげて管理局の当局者に大きな責任があると、われわれは判断せざるを得ないのであります。死んでしまつた船長にだけ一切の責任を転嫁して、てんとして恥じざるような態度であつたならば、これは許されません。これに対しまして、天坊総裁もわれわれ以上に詳細に御調査になつたはずでありますから、何も隠し立てなしに、ほんとうにこれはもう国民大衆に済まなかつた、実際の責任というものはここにあつたのだと、はつきりお答えになつてしかるべきだと私は思うのであります。どうか天坊総裁並びに石井運輸大臣の御調査の状況から、御答弁を承りたいと思います。
  85. 天坊裕彦

    天坊説明員 私も現地に参りまして、いろいろ聞いて参つたのであります。まだ不十分な点もあろうかと存じますが、ただいまの御質問は、当日午後管理局長以下天候の問題について、全然無関心であつたのではないかというふうな言い方でおつしやられたのでありますが、私はそうではないと考えております。当日午後二時過ぎに管理局長は札幌から帰つて参つたのでありますが、その後東京の会議に出席するために、資料の検討をいたしておりました。それから今のお話でちよつと違つておるのじやないかと思うのでありますが、その当時天皇の行幸があつた記念写真帖をこしらえまして、それを部内者に差上げたいと、これは青函管理局長がそういう気持でその写真帖をこしらえておつたのですが、その表に何という題をつけようかということを、総務部長ではきめられなくて、管理局長が帰つて来るのを待つて書いてもらつたという話でございます。そういうものをこしらえておつたのでありますが、それはそう大した時間を要するとは思われません。しかも当日十四時から十九時ごろまで、いろいろ警報は出ておりますが、その間大雪丸を初め、石狩、日高、第八青函、十勝、こういう船は続々函館の港に入つて、十勝が済んだあとでありますが、大体において定時少し遅れるぐらいで船は着いておつて、平生の作業をやつておるわけであります。もちろん警報は出ておりますから、天候に対するいろいろ周到な準備、対策というものは練つておりますが、そうした船は着いておるわけであります。たとえば第八青函丸は午後六時ごろ函館に着いておる。十勝丸は七時ごろに函館の沖におつたわけであります。従いまして前後の問題としては、台風がすでに過ぎ去つたかどうかという判断の問題が、洞爺丸の出帆に際しての大きな問題であつたのであります。当日は御承知の通り気象台から三時現在の情報といたしまして、当時青森の西方百キロの地点に台風の中心がおつて、時速百十キロの速度をもつて北東に動いておる。あの地方は午後五時ごろに一番中心になつて、風がはげしくなるだろう、こういう情報が出されておりまして、その情報はおそらく船長ももちろん聞いておるだろうと思うのであります。と申しますことは、遭難を免れました船が第十二青函丸、第八青函丸と二隻あるのでありますが、こういう船はすべて当日受取りました気象の情報を記録いたしておるのであります。従いまして当時さん橋におりました洞爺丸も同じような情報を受取つておるに違いないと思うのであります。それと同時に、船にももちろんございますし、さん橋にもございますが、気圧計、風速計というものをもつて台風の進路について、それぞれの乗組の専門家が、十分検討いたしておつたことは間違いないと思うのであります。それで五時ごろになりまして、そのときは御承知のように気圧が非常に下つております。それから一時間半たつたあとであります。気象台の通報は午後三時現在の位置を言つておりまして、時速百十キロという動きについては、その後かわつた情報がないのでございますので、台風の目が来て気圧が非常に下つて、それから一時間半たつて風速が少し出て来たけれども、二十メートルないし二十五メートル程度なら出られるのではないか、こういう判断も加えて出て行つたのではないかというふうに私は考えるわけでございまして、私どもはなくなられた船長さんにすべての責任を押しつけようなどという考え方は毛頭ございません。ただ船長の判断は、その当時そういうかつこうで出て行つても、支障はないと考えたのではないかというふうに想像するわけでございます。
  86. 石井光次郎

    石井国務大臣 国鉄の方の関係の問題は、天坊総裁初め国鉄関係方々で十分明らかにしていただくというつもりで、私はそのとき大体のその当日の様子だけを承つて、それ以上は、部内のことは聞かなかつたのでありまして、海洋気象台の関係、これは私の直接の所管でありますので、札幌の気象台長並びに函館の海洋気象台長その他を呼びまして、いろいろ当日の様子、報道等の様子等も聞きました。大体今柴田さんのおつしやつたような意味報告を受けております。
  87. 柴田義男

    柴田委員 もう一点承りたいと思います。気象の問題は非常に重要なポイントだと思うのであります。それで暗号で書いてありますので、私どもちよつと翻訳はいたしておりまするが、よくわかりませんけれども、鉄道警報というものは昭和二十五年八月七日に、国鉄総裁と気象台長の間に何かの申合せが結ばれておる、こういうことでございますが、この鉄道警報を午前十一時にも発しておるのであります。そういたしますと、この場合発しました警報は、青函管内全域にわたつて風速十五メートルから二十メートル以上の風があるのだ、これは陸上十五メートルから二十メートルという警報なんであります、これは常識だそうでありますが、陸上十五メートルから二十メートルの風という場合には、海上においてはこれを相当オーバーした強風が吹いておる、こういうことがいえるのであります。陸の場合を考えますると、国鉄は二十メートル以上の風が吹きました場合には、鉄道の陸の運行すらも中止されておる、こうわれわれは聞いておるのであります。そういたしまして、この陸上の二十メートルから、海上は七割ないし八割のオーバーをやつて吹く場合がたまたまある、これは気象台長の話であります。かりに二十メートルの場合は五割風が強かつたといたしますと、海上に三十メートルの風が吹くのだ、こういう警報を発しておるのであります。そうしてこの警報を発しましたのは最終が十一時半、その後に今度は情報として十六時、四時でございます。それから十八時、六時でございます。こういうふうに刻々と情報を通報しておる。またこの通報以外に国鉄から電話で連絡がじやんじやん来ておる、そういうことがはつきりと気象台の調査によると明らかになつておるわけなのであります。こういう場合に何を好んで六時三十九分かにあれを出帆しなければならなかつたのか、こういうことで今度は海上保安部からの意見を十分聞いて参りましたが、大きな船ほどかえつて港外に出て仮泊をする、こういうことはまた常識だそうでございますが、港外に出てこれを仮泊するといたしましたならば、何で乗客を陸上に上げて仮泊しなかつたのか。やはり仮泊を目的として出航したものにあらずして、青森に向げて出航したとか判断がつかない、こういう条件なんです。ただ今度は当時の風の吹き方にもございましようが、吹き方とあの当時の状態を聞きますと、七重浜に向けてしかも風の方向に向いて、船をあそこにいかりをおろして、エンヂンはとめないで置いておつた。しかるにその場合に今度はあの貨車を入れて行くしつぽのとびらをあけ放しにして、何であそこに碇泊したのか、こういう疑問が起きて来るのであります。とびらを締めまするには、表からでなければ締められないという構造らしいです。こういう船の構造自体にも検討の余地があると思いますが、そうした場合に岸べに吹いて行つた風が逆になつて参りまして、そうして逆になつて参りました波が、あのいわゆる貨車を満載しておつたどつ腹へじやんじやん入つた、それが原因なのであります。あの貨車のところに水がじやんじやん入つたとしましても、今度は下のエンジンにまでは水が入らぬ装置になつているのだが、エンジンに水が入つてエンジンがとまつた。こういう状態を全部調査いたしますと、あまりにも無責任方法によつて出航せしめたということは、どうしても否定のできない事実なんであります。これにつきまして天坊総裁も御調査でありましようが、この点いかがでしよう。
  88. 天坊裕彦

    天坊説明員 第一点の気象の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、船といたしましては中央気象台の報告はもちろんのこと、海洋気象台の報告、それからあすこにございます龍飛崎と大間崎の燈台から出る気象の放送、それからラジオその他のこともいろいろ聞いているわけでございまして、ただいまお話のございました十六時の放送というものは、もちろん聞いているだろうと思います。しかもその十六時の放送は先ほど申しましたように、午後三時現在の状況を示したもので、それが午後五時ごろには渡島、檜山地方が一番はげしくなるだろう、こういうニユースが出ておつたわけであります。それからその後一時間おきのラジオのニユースでもそれが繰返されておりまして、十八時の放送では十七時現在の状況として江差沖に大体台風の目がある、それから十九時には十八時現在として室津沖の方にある、こういうようなニユースが出ておつたということは、私も調べて聞いて参つておるのであります。その間の状況で先ほど申しましたように、午後六時ごろには第八青函丸が青森から、おそらくその台風の跡を追いかけたと申しますか、一緒にと申しますか、函館に入つておるのであります。さらに六時半ごろには十勝丸は沖に沖がかりしておつたわけであります。そうしたことを考えますと、いろいろその台風のことについては慎重に検討いたしましたが、出て出られないことはないというふうな判断をしたのではないかというふうに私は考えるのでございますが、これが先ほどお話がございましたように出港の目的——青森へ向けて行くのではなくて、ほんの沖に出て仮泊するために出て行つたのかどうかという点については、よく事情がわかりません。  さらに船体の構造についてのお話でございますが、これにもいろいろ私ども検討しなければならぬ問題があろうかと思いますが、ただいままでの構造で、まあ青函海峡を通過するのに普通の台風程度に出会つても、何とか切り抜けられるという構造になつているというふうに聞いております。ただいまお話がございました貨車を積むためのうしろの方の穴は、あれはふたをしない、初めからふたがないのでありまして、あそこは吹き抜けになつておりまして、あそこの貨車が載る台の上までは波が洗いましても、すぐおりてしまうというしかけになつております。それから下の機関部分に水が入つているということでございますが、あそこから下の、石炭を入れるところに穴があるのでございまして、そこから普段でも水が入るということはあるわけであります。それに対して自動的に中の水を排水する装着もあるわけでありますが、想像ができなかつたような大きな波をひつきりなしにかぶつたために、入つて来る水の量が多かつたということもあるのではないかと思います。そのせんをふたすることについて、忘れたかどうかという問題もあるわけでございますが、当時あの五はいの船が沈んでおるのでありまして、その五はいの船がそれぞれ全部ふたを忘れてしまつたということはあり得ないと私は考えますので、それらの点は船が揚つてからでないと何とも言えないのであります。
  89. 關内正一

    關内委員長 正二時から再開いたすことといたしまして、それまで休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時二十二分開議
  90. 關内正一

    關内委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続けます。山口丈太郎君。
  91. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は午前中の各委員の質問、それに対する答弁につきしましても、なお当初に申しました業務自体を管理する命令者に対する責任、及びその命令を実行に移す受命実行責任者との間における、いえば運輸の命令系統に対する責任につきましては、最初に申しましたようにこれはもしその命令系統の中にある種の過失等が存在しておつて、それによつていろいろの責任が、糾明せられるということがあり得るとするならば、それは当然刑法上あるいは海難審判庁の諾問題として追究されて行くものと考えるわけでありますが、しかし私はここで非常に遺憾に思いますことは、総裁以下この業務管理者が、その命令を発しまして日常業務を遂行しておる。その日常業務の業務命令を発するその責任者たる首脳部の方々が、今次の災害に際していち早く新聞その他に発表せられました言葉は、いわゆる気象情報の誤りであるとか、あるいは運航の全責任が船長にあるのだということで、いまなお国民に対しても、あるいはその犠牲者に対しましても、いわゆる業務を管理する管理者としての責任上の遺憾の意を表されず、かえつてそれらの責任の一切が実際に受命をして行う者にあるかのごとき言動に絡始せられておるという点につきまして、非常に遺憾に思うわけでございます。  私はここでさらに申し上げたい点は、この問題の焦点は二つにわけて考えます場合に、出航するということそれ自体をきめられたその責任、さらにそのきめた責任に基いて船を出航せしめて後にとつた船長の責任、この二つが重大な責任である。しかもその船を出航するという裁決をいたしました責任者が、気象通報その他によりまして異常な状態にあることが判然としておるにもかかわらず、船の出航にあたつては貴重な人命、財産も平常のままの姿に託して、これを出航せしめたということにつきましては、何と申しても重大な責任を負わなければならぬと私は思うのでありまして、これらの点につきましてはせつかく同僚議員が現地に参りまして、つぶさに専門的な立場から調査されまして、その責任所在が明らかにされることであろうと思うのでございます。従つてこれ以上今日この責任所在について追究することは適当ではないかとも考えるわけであります。しかし私はここで今まで追究いたしました結論として、今責任者である総裁、副総裁及び国鉄の直接の管理者ではありませんが、しかしながら最高責任を有せらるる運輸大臣において、この諸命令の遂行、国鉄業務の遂行途上においてかかる事態を起した、その事態そのものについてのお考え、そして遺族等に対する措置について、さらに本委員会を通して私はその所信をもう一度明確にしていただきたい。今まで御答弁をいただきましたけれども、その所信につきましては、一向に私は納得の行く御言明はいただいておらないと考えますので、おのおのもう一度その所信について明らかにしていただくようお願いしたいと思います。
  92. 天坊裕彦

    天坊説明員 総裁が五分か十分ばかり遅れて参りますので、あるいはこの問題に対するお答えは総裁がなすべきであると思いますが、お許しを得まして私から申し上げさしていただきます。  先ほど御疑問の点として御指摘がございまして、私のお答えといたしましては、かんじんの船長さんがどう判断したかという点については、正確にはわきまえておらないので想像でありますが、その後の状況を幸い無事に助かつております他の船の受けておるいろいろな気象の状況報告の記録等から考えまして、六時三十九分に出て行きますときには、この調子ならやつて行けるのじやないかというような判断で、出て行つたのだろうと私ども考えておるのであります。しかし沖に出てみますれば、想像以上と申しますか今までの経験にはない五十数メートルの早さを持つた風に見舞われて、単にこの洞爺丸一隻のみならず、その付近におりました他の四隻の貨物船も一緒に沈没してしまつたわけでありまして、出て行くときの船長の判断としては、全然想像もつかなかつたというようなことで、その当時としては、そうした思いがけない自然の力に屈したとすなおに考えるのでありますが、いずれにいたしましても、ああした多くの遭難者を出しまして、多数の人命をなくすことになりましたことは、まことに残念しごくに存じますと同時に、その船を預かつております国有鉄道の立場といたしましては、まことに申訳ない次第と存ずるのであります。先ほどから大臣からも繰返してお話がございましたように、将来こうした事故が、またと繰返されないように、いろいろあとから考えられます、ああもしておけばよかつた、こういう設備もなつておればよかつたというような問題も、もちろんあつたと思うのでございまして、そうした問題を一つ一つ取上げまして、今後の対策には、万遺漏なきを期したとい思つておるのでございます。さらに不幸遭難されました方々につきましては、先ほどもお話がございましたが、今まで国鉄といたしましては、とりあえず総裁の香奠といたしまして、六万円程度の御香奠を差上げてあるのでございますが、けさほどお話がございましたように、この問題が有責、無責にかかわらず、とりあえず死亡確認された方々に対しましては、五十万円程度弔慰金をお贈りいたしまして、さらに今後その過失であるかどうかの判定が出ましたときには、定められました算式によりまして、さらにそれ以上の弔慰の方法をはかりたいというわけでありますが、そういたしましても、結局は銭金にかえられない人命の問題でございまして、かえすがえすも遺憾しごくに存じておる次第でございます。
  93. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 大臣にも御答弁をいだきたいと思うのですが、さらに大臣にお伺いをいたします。午前中の委員会でも質問がありましたが、公社としての国鉄でございますが、しかしこのような事故は、これは世界でもまず初めての事故である。いわゆる連絡船がこういう事故を起したというのは、私の記憶では世界で初めてだと考えます。こういうような大事故、大惨事を引き起しておるのでありますから、従つてたとい国鉄の経営形態が従来とはかわつて公社の形態をとつたといたしましても、たびたび申しておりますようにまだ国民は、あくまでも国鉄といえば国の責任、こういうふうに考え、国が経営しておるようにもいまなお受取つておる者が多いのであります。こういう場合に、さらに私ども政治的責任から考えましても、この際このような大悲惨事に対しましては、その補償あるいはその他弔慰の方法についても、ただ国鉄当局のみにその責任を転嫁しておくということでは、許されない問題であろうと考えます。その意味において、私は所管大臣である運輸大臣は、この悲惨事に対して、政府として、国家的にどういう補償を行わんとされるか、補償を行わんとされるならば、どういう方法をもつて、その補償をなす考えであるかについてお伺いをいたしたいと思います。
  94. 石井光次郎

    石井国務大臣 今度の事件につきましてその責任を明らかにし、またどういう原因によつたかというようなことにつきまして、設備の上などにつきましても探求をいたしまして、今後それ以上の問題が起らないように、こういうことの起ることを絶無ならしめることについて、われわれはあらゆる研究をこれからして行かなければならぬ。そしてそれを実施に移さなければならないということは、私ども責任だと思つております。  補償の問題、見舞の問題についてのお尋ねでございますが、これは今おつしやたように、一般には国有鉄道は公社になつておるけれども政府のものと思つておる人もあるかと思うのでございますが、御承知のような形態になつていることは明らかなのでございます。それで青函連絡運航をつかさどつておりますのは、公社である国有鉄道でございますから、国有鉄道がまず第一番にそこに浮んで出て来るのは当然なのでございます。それで国家といたしましては、先ほどからもるる申し上げます通り、この問題につきましてはまことに遺憾なできごとであり、将来これを絶無ならしめるということについて、かたい決意を持つて国有鉄道とともにいろいろやつて行くつもりでございます。弔慰の問題はその責任を持つております国有鉄道というものがやるべきものであるということで、それにつきましては国有鉄道が今まで交通事故の場合にとりました方法に比べまして、それに劣らず、はるかにできるだけ多く希望するのでありますが、いろいろ研究されました結果、先ほど申したような金額におちついて、これをまず出すということになつたのでございまして、これで私ども遭難者に対する微意も、これによつていたし得たというふうに思つておるのでございます。金は先ほどからもだんだん申しますように、幾ら上げても人命を買えるものではないのでありますが、おのずから力の限度がございますので、こういうところでごしんぼう願うということで、私どもも了承いたしておるわけでございます。そして国鉄をしてこの解決に当らしめまするが、すみやかに誠意をもつて事の措置に当ることを要望し、政府といたしましては、国鉄がこれを行うについて、金の上におきまして困難な場合も、ほかの災害もいろいろ遺あるのでありますから生じ得るのであります。これらにつきまして政府は必ずこのバツクをいたしまして、遺漏なきを期してやつて行きたいと考えて、異体同心というような心持で国鉄をしてこの解決に当らしめよう、こういうふうに思つておるわけであります。
  95. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ただいま大臣から御答弁を承つたのでありますが、承つたところでは、いわゆる国鉄の力の限度においてこれに当らせる、そうして政府はそれをただバツク・アツプするだけだ、こういうように承るのであります。しかし私は、この世界でも初めてという——聞くところによりますと、英国あたりの新聞は、かんじんの英国の国内において行われております最も英国民の重大関心を引く諸行事をも二面にまわして、そうしてこの洞爺丸の今回の事件を、トツプ記事として報道しておるということを聞いております。外国の国民ですらそれだけ大きな関心を持つておるのであります。海運国である英国も、日本と同じ事情にあるのであります。こういうような世界的な大悲惨事に際しまして、ひとり国鉄の力の限度に求めて、そうして国鉄だけにその補償その他の一切の責任を遂行させるというだけでは、政府に対する国民の信頼、政治力に対する国民の信頼というものは、非常に稀薄にならざるを得ないと私は思うのであります。いわんや私ども国鉄に対しても、たといそれが独立採算制をとつております公社でありましても、その監督は当然運輸大臣の所管として、その権限内に置かれておるのであります。そうしてその国鉄運営の全般的な問題につきましては、当院におきましても当然その監視、督励の責任を有しているわけであります。そうしますと、この前古未曽有とも称すべき大悲惨事に対して、今運輸大臣が申されましたように、ひとり国鉄だけの責任においてこれが補償の万全を期せしめることが困難であることは、火を見るよりも明らかであります。そこに何らかの国家的ないわゆる補償を、この際国民の前に明らかにするということが、一つは政治責任でもありまするし、一つはやはり国民に対しまして、この交通運輸機関の運営に対する信頼を深めさせることであり、私ども責任を果す非常に重要な問題であろうと考えるのでざいまして、今のような考えだけをもつていたしましては不十分だと考えますが、何らかそれについてお考えを有しておられるか、閣議等においてもこれらの諸点について、どういうふうに考えて協議をされておるか、また運輸大臣としてあなたはどういうお考えを持つておられるか、これについてさらに私は明確にしていただきたいと思います。
  96. 石井光次郎

    石井国務大臣 国と国有鉄道は、ただいま申し上げましたように、またあなたのさつきから言われたのもそこにあると思うのでありますが、ほとんど異体同心と申しますか、相通ずるものでございます。それでこの事件はお説の通りに非常な大事件でございます。未曽有のことであります。これの善後処置というものが国民の関心を有するところでもありますから、できるだけみんながもつともだというような解決の方法をとらなければならないと私どもも思うのでございます。それで国鉄ともいろいろ話合いをいたしまして、また閣僚間でも話合いをいたしまして、先ほど大体の筋を申し上げましたようなことに話合いがおちついたわけでございまして、この金を国家が出すか、あるいは公社が出すか、あるいは公社と国家が半々に出すかというような点も、いろいろ考え方はあるだろうと思いますが、私どもといたしまして政府の部内で話合いをいたしました結果は、国の出城みたいになつておりますこの国有鉄道が、当面の責任のあるところでありますから、ここで一本になつてこのお見舞の点に、できるだけのことをいたすというのがよかろうということになりました。それにはさつき申しますように、国鉄の力だけで出せないというような金融上の措置等につきましては、もちろん政府がこれをバツク・アツプして行くというようなこともありますが、これだけではありません、船の回復問題、その他相当今後の跡片づけと申しますか、事業を遂行して行く上の回復策といたしましても、相当大きな金を要する問題でございまするが、これらはもちろんのことといたしまして、公社自身でやれないものは政府がバツク・アツプいたしまして、そうしてすべての今度の問題から得ました経験を生かして、さらにいい状態に持つて行くようにするために、金銭的に必要な問題等につきましては、政府は万全の措置をとるということをもつて政府責任と思つておるわけでございます。
  97. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は今の御答弁によりまして、政府国鉄だけにまかして、この点を策のすべてと考えておるものではないという点についてのお答えを得たものと思うのでありますが、しかしもう一つこの大事件に際しまして、いわゆる青函連絡船の復旧、あるいは遺族補償等、すべての付随いたしまする万般の問題についても、もう少し積極性のあるところを国民の前に明らかにしていただきますことが、政府の当然の責任ではないかと思うわけであります。こういう点について私は政府当局に対しましては、もう少し積極性を望むわけであります。聞くところによりますと、この遺体の収容その他当面のなさなければならない諸点につきまして、現地においては遺族等が非常な不満を持つておる。そうしてこの遺体の収容等についても、国鉄は非常に冷淡であるとか、あるいは積極性がないとかいうようなことで、集まりました遺族方々が代表を選んで、これらの当然なさなければならない点について、交渉を始めておるということも聞いておるわけであります。このようなことでは、私はまことにこのような悲惨事を起した上になお相済まぬことであると考えるのでありますが、それについて一体どういう精神で当られておるのか、一体どういう考えでこういう措置をとろうとしておられるのか、これについて私は当局からお伺をいたしたいと思います。  次に、今日先ほどから話も出たのでありますが、国鉄労働組合では中央委員会を開きまして、いち早くこれらの犠牲者、遺家族等に対しまして、国鉄労働組合としてはでき得る限りの力を尽して、その慰藉を実行いたしたいということで、街頭にまで進出をいたしまして募金運動を始めているようであります。そしてこれは全国にわたつておるわけであります。このような労働組合の措置そのものを当局としては認めて、これに対してもさらに私は組合の誠意当局は十分にくんで、支援をしてやるべきではないかと考えるわけであります。またこれの復旧に関しましても、私は昨年のあの水害に際しまして視察をして参りましたときにも、いわゆる労働組合は積極的にあの水害の復旧のために努力をいたしまして、それこそ寝食を忘れて復旧に努力をいたしましたために、予期以上の成績を上げたということを、現地のいわゆる指導者、監督者は全部ほめたたえておつたのでありまして、そのことは長崎総裁みずからも本院においてお認めになつて、非常な讃辞を贈られたのであります。従つて今回のこの悲惨事に際しましても、労働組合はいち早く今申したような、いわゆる慰藉のための資金カンパを行い、あるいは現地に対しても復旧のための努力を相当いたしておるものと考えられるのでありますが、これらの点について副総裁はどういうようにながめておられるか、この二点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  98. 天坊裕彦

    天坊説明員 お答え申し上げます。初めの点で、現地に多数の遺族の方、その他生存者の御家族の方等がお見えになつているのですが、その方々に対するいろいろなごあつせんが、非常に不行届であるというお話であります。私参りましても確かにそういう点も感ぜられまして、その点秩序と申しますか、組織的にうまく行くようにという、いろいろなさしずをして参つたのでございますが、何分にも先ほど申しましたように、二千五百人以上にも及ぶ方々が船が着くたび、汽車が着くたびにおいでになる。その方々の宿舎の問題もございますし、御案内その他についていろいろ勝手が違うと申しますか、不行届な点があつたことも事実でございます。しかし何とかこれを秩序立て、組織的に御案内をし、御説明をし、わかつていただける点はわかつていただくようにするということで、だんだん軌道に乗つてつたというふうに考えております。一時は確かにお話の通り大分混乱がございましたし、また心配されておる家族の方としては、船の方の作業とりかかりのまどろこしさということのもどかしさがいろいろございますが、全体の方たちと話合いをするということも困難でありますので、世話人会のようなものをこしらえていただいて、定期に連絡をして状況を御説明する、こういうような仕組みに考えておるわけであります。主としてこういう方々がおいでになつて宿屋にお連れをして、おとめをしているわけであります。そうした案内のあつせんを現地の労働組合の諸君がやつてつてくれるのでありますが、——今のあとの問題に移つて行くのでありますが、中央の労働組合のゼスチュア的な態度というものはどうかよく知りませんが、現地における組合の諸君は、組合とかどうとかいうことを離れて、申訳ない事態を起した国鉄側の職員という気持で、専念御案内に当つておるわけでありまして、私非常に感激して参つたわけであります。特に船員労働組合関係の諸君は、御承知の通り千五、六百人の犠牲者の中で、四百余人ばかりが鉄道の職員なんでございます。しかも洞爺丸のほかの四つの船については、まだ全然潜水夫も入つていないのであります。そうした点で残された船員の遺族の方からも問題はあるのでありますが、その点まずお客さんの方が第一というつもりで、全体の措置の方に協力してくれておるというので、非常に感激して大いに今後の協力をお願いし、激励して参つたのであります。そうした状況でありまして、だんだん軌道に乗つて御不満も少くなるのではないかと考えておりますが、何分二千五百人、三千人の方々がおられるので、相当な混乱と申しますか、そういうことのあるのも事実であると思わざるを得ないのであります。
  99. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 いろいろまだ質問はありますが、この問題につきましては調査団調査報告その他ついて参るに従いまして、逐次判明する諸点について、なお明らかにすべき点があろうと思います。そこで私は特にお願いをいたしたい点は、私ども調査して明らかにすべき点は、もちろん今後十分に調査の上明らかにいたすわけでありますが、しかし当面の問題として、聞き及ぶところによりますと、今申した遺体の収容及び遺体の取扱い等について、あまり厚意あるといいますか、同情のある取扱いがされていないというようなことの風説を承ります。こういうことはなお一層この事故の処理等について、困難性を増すことでありますると同時に、いわゆるこれら犠牲になりました人々に対して、非常に相済まないことであろうと思いまするから、この措置につきましても万全を期せられるよう希望いたしたいと思う次第でございます。さらに運輸省及び国鉄当局に望みたい点は、このような悲惨事を二度と起さないようにするということは、これは言わなくとも当然のわれわれの義務であります。従つてそのことにつきましてはわれわれも一半の責任を当然負つて、今後そのようなことのないようにいたすべきであります。しかしながらさしあたりの問題といたしまして、私の質問をいたしました答弁の中にもありましたが、なおこの当面の措置について、運輸大臣の積極的な解決策についての御答弁がなかつたように考えます。またあつたといたしましても、積極性があると国民全般、特に遺族方々に、これによつてそういう誠意をおくみとりいただくということは困難であろうかと思います。従つてこれらの措置につきましては、さらに積極的な措置を講じていただきたい。そしてこの大悲惨事をひとつ二度と起さないようにするだけではなくて、いわゆる現在の遺族補償等についても、もう少し国家的な補償ができ得るような措置を考究されると同時に、国鉄自体もこれに万全の対策を立てて、ただ機械的に従来からの慣習がこうである、あるいは規定がこうであるというような措置によつては、このような惨事を解決するわけには参らぬのでありますから、その点十分に心せられて対処せられるよう希望いたしまして、私は質問を終りたいと思います。
  100. 關内正一

    關内委員長 岡田五郎君。
  101. 岡田五郎

    岡田(五)委員 本日午前中から同僚議員が各方面から適切な諸項目につきまして御質問になりましたので、私はできるだけ重複しない程度においてまず御質問を申し上げ、先ほど山口同僚委員からも言われましたように、同僚調査団が帰られた後における報告、また国鉄、運輸省からの資料の提供、そういうものをまちまして、徹底的に私といたしましては質問さしていただきたい。かような意味で質問を二、三項目に限りたいと思います。  まず運輸大臣にお尋ね申し上げたいのでありますが、先ほど運輸大臣が函館方面においでになりましてお帰りになりましての御報告中、今後の輸送対策、今後の北海道との輸送についてどうあるべきかというような所見を御発表になりまして、御構想もまことにけつこうであり、またかようなことが財政的に、また時期的に許されるならば、一日も早く実現していただきたいという熱望にたえないのであります。ただ大臣にお尋ね申し上げたいことは、先ほど大臣死体に対しまして、非常に丁重なる弔意を表せられた。また遺族のお見舞もされ、またけが人の方々も訪れになつたというようなこともお聞き申し上げ、また私自身もニユースで、大臣が敬虔な姿で黙祷を捧げておられる姿も拝見いたしたのであります。また大臣は、あまり口もお上手でございませんで、さだめし胸にあることを口に表わすこともできなかつただろうと思いますが、大臣があの累々たる死体を前にされて、また非常な負傷をされた負傷者の方、またわが愛する夫、子供の死体を渡される二千人の遺族の方方の姿を浜べに見舞つたときの感じはどういう感じであつたか。私は、大臣の長い人生のうち、戦争中の惨事は別といたしまして、平和のときにおいてかような悲惨な状態を目前にされたことは、おそらく初めてだろうと私は思うのであります。そのときに感ぜられたことは、いかに交通機関が重要であるか、いかに交通機関が安全に輸送しなければならぬかというようなことを、特に深く胸に感ぜられたと私は考えるのであります。その所感の一端を——こう言つては先礼でございますが、お言葉はあまりお上手じやございませんが、その感じの一端をひとつ聞かしていただかないと、私たちは愚鈍でございますから、とかく表現をもつて、相手の心がこの程度と感ずるしかない。言葉は下手でもけつこうでございますが、胸中にあるお気持の一端を披瀝していただきたい。この披瀝の模様によつて、私は運輸大臣のこの問題に対する決意、覚悟の一端がうかがい知れると思いますので、非常に無理な質問でございますが、率直にひとつお話をいただきたい、かように思うのであります。
  102. 石井光次郎

    石井国務大臣 まことに言葉が下手で申訳ありませんが、私の思うことが表現できない節もあるかと思うのであります。先ごろ現場において、戦時中は別でありますが、私ども関東大震災以来見たことのないような悲惨な姿を見まして、私の心に一番先に浮んだ問題は、哀悼の念とともに、この交通事故中、かつてその例を見ないような大きな災害を越したこの青函連絡船の不祥事、これが今後またあり得ないようにするにはどうしたらよいかということなのでございます。あれだけの暴風雨あるいは大きな波というものが、今後もないかどうかといえば、私はないとは言えない。もつとひどいのが来るかもわからないと思わなくちやならぬと思うのでございます。その場合にああいう悲惨事がまた起るようなことがあつてはもちろんならないのでございます。かりにそういう場合のために、人は乗らないといたしましても、多くの船か沈没をし、それに乗つております乗組員に悲惨な結果を招くということであれば、それだけでもたいへんなことであります。それからそれに伴いまして、北海道内地との連絡も絶えるというようなことを起してはならないのでございますから、私どもといたしましては、まずあの間をどうやつたら安全に輸送することができるかという問題が、この際ぜひ考えられなければならない問題だと思うのでございます。とりあえずの問題といたしまして、旅客の輸送であるとか、貨物輸送の対策は立てますが、同時に今までのような船のあり方でいいかということを考えますと、結局は私どもの考えは、だれでもそこへ行くようでありますが、トンネルによる連絡ということが、一番安全な方法ではないかということが考えられるのでございます。そのために五百億という金がいる、あるいはもつといるかもわかりません。そして時は、約十年間を今の時節では要するということでございますか、はたしてこれだけのことを今やれるかやれないか、私がこれだけあげて、そしてそれだけで終つてしまつてはならないのでございますが、これはいろいろの関係もございますので、よく政府部内でも相談をいたして、皆さん方ともお諮り申しまして、一日も早くこの仕事に着手し得るような状態に持つて行かなければならないのではないかということが考えられるのでございます。しかしそれができ上るにいたしましても、すぐとりかかつても十年間という時を要するというのでございますから、その間どうするかという問題でございます。それには今までのような航送船ではたして安全なりやいなや、航迭を続けながらその改良策も考えて行かなければならない。次に破壊いたしました船の代船をつくるにつきましても、十分な研究を遂げて行かなくてはならない。そしてその間におきましては、今までも用心深くやられて、今日までは何らの災害もなかつたのでございますから、今残つておる船でも、これが災害を起さないように、一層の注意をして運航を続けて行かなければならない。これらにつきましては運輸省も国鉄も一体となつて、これらの問題をその関係者だけでなく、そのほかの方面の経験者、学者の声も聞きまして、いろいろ研究を進めて行くようにいたしたいと考えておるわけであります。
  103. 岡田五郎

    岡田(五)委員 私の言葉がまずかつたせいかしれませんが、私の聞かんとするところと多少違つたところへ御答弁をいただいたようでございます。私のお聞きいたした本旨は、この死体を前にして、負傷者を前にして、また遺族を前にして、どういうお感じをお持ちになつたか。私はおそらく大臣は、これらの遺族方々、これらの死体といいますか、乗客の親戚、知人、あるいは負傷者の療養後の安否、あるいは死体の問題というようなことがまず頭に浮び、またその先にえらいことをしでかしたという感じがぴりつと来ただろうと思う。次に起つたのが、この死体を前にされて、これらに対しては最大級の弔意を表し、これらの遺族に対しては最大級の慰安を捧げたい、こういう気持が起つたと私は御推察申し上げておるのであります。と申しますのは、実は私個人のことを申し上げてはなはだ僣越で申訳ないのでございますが、私は長く鉄道に勤めておりまして、札幌に勤務いたしておりました。その間、終戦直前におきましては、私の責任下におきまして連絡船が何隻空襲によつて沈められたか。また暴風雪のために青森港外で沈没いたした船から、死体を百数名収容いたしたこともございます。また空襲下で沈没いたしました連絡船から、死体を数百収容した経験もある。かような経験からいたしまして、その当時私が感じました感じを、同じく大臣が感ぜられたのではないか。こういう個人的な、幸か不幸か、私の経験からいたしましてお聞きいたしたのでございます。かようなことは大臣といえども、私以上にこういう問題につきましてはお感じになつたことだろうと思いますし、あえてこれ以上追究はいたしません。ただ私はちよつと遺憾に思いますといえば少し言い過ぎかもしれませんが、これまた新聞報道でございまして、あるいは正確であるか、大臣の真意であるかどうかわかりませんが、今度の問題について中央において対策委員会というようなものは設ける必要はないだろうというようなことを、これはもう東京へお帰りになる前にすでに新聞で発表なすつたのか、新聞記事がかつてといつては報道機関に申訳ありませんが、推察して書いたのかどうか知りませんが、どうしてそういう気持が起つたか、私はむしろ今度の事件は国内的な、一国鉄の事故だと見るところに非常にこの感覚が狭いと思う。先ほど山口丈太郎君が言つておりましたが、青函連絡船でおそらくこんな事故を起した例はないと思う。ことに一時間数十分のうちに、その出帆した港内において沈んでしまつた。なるほどタイタニツクの事件がありましたが、私はもう昔のことで忘れましたが、氷山にぶつかつて沈んだということであります。連絡船でこんな大きな事故を起したということはない。この四つの島はわれわれの生活の根拠なんです。四つの島それぞれがわれわれの、経済の最も重要な部分である。これをつなぐものはみんな連絡船で、関門間だけが隧道でつながれておる。こういうような島国で、連絡船の最も重要なこの国柄からいたしまして、あの事故を起し、しかも世界に第二の事故であつたというようなことから考えまして、また世界の海難史上から見ましても、おそらく私は例がないと思う、おそらく世界の海運国——英国にいたしましても、アメリカにいたしましても、その他の国々にいたしましても、この海難の事故の原因はいずこにあつたりや、この旅客の扱いはどうであつたかということは、世界海運国の注視の的であると考える。これの結果の判明、結果の処置というようなものは、おそらく永久に不幸たる歴史として、石井運輸大臣の名前も残りましようし、長崎総裁の名前も残されると私は考える。かように国内的に国際的に重要な問題を——なるほど国鉄の事故でございますので、国鉄が対策について主体性を持つということは理の当然でございまするが、もつともつと大きな視野で、この事故の重大性と意義のあることを考えられて、もつと真剣にといつては失礼でございまするが、もつともつとお考えにならないかということです。なるほどトンネルもけつこうですが、北海道との間にトンネルをするならば、四国との間もまたトンネルをしなければならぬ。これはどの島島をとつつかまえましても重要な問題であると私は考える。かような意味から行きましても、国鉄が主体性を持つにいたしましても、政府協力的な態勢をとらなければならないと考える。なるほど中央対策委員会というようなものを設けられても、国鉄が中心になつてやられるということは当然だと思うのでありますが、この機構の点において、関係各省の協力の点において、やはり組織を考え、そういう意気込みでこの事故を考えられるのが当然じやないか、かように私は考える。ことに北海道と本州との間は、これから風浪の高くなる時節である。乗客にして一片の不安を持つて、あの連絡船に乗るような状態に置くことはできません。日航の飛行機が一日や二日あるいは一箇月欠航いたしましても問題ない。もしあの連絡船の乗客にして不安を持つて一人も乗らないならば、あるいは乗る人が非常に少いということになつたならば、私は有形、無形に日本の経済に及ぼすことが非常に大きいと考える。かようなことを考え及びますと、もつともつと政府全体がこの問題の重大性を認識されまして、対策を講ぜられることが必要だと、個人的な意見ではあるかもしれませんが、考える。かような前提をなす私は、現場視察をされた運輸大臣が、この死体その他のものを見られて、同様に感ぜられたかということを聞き合せたのでございます。昨日いろいろと閣議をお開きになりまして、数時間にわたつて熟議をこらされたようでありますが、補償金の問題とか、死体安置の問題とか、いろいろな問題もありましようが、これに向う体勢について話題に上つたのかどうか。また運輸大臣は敏腕なる運輸大臣でありますので、おれにまかせておけ、あるいは国鉄総裁は非常に手腕のある人でありますから、これは国鉄にまかせておけば大丈夫だということで、個人の力を信頼してそうなさいましたのかどうか。その辺の事情をお漏らし願えるものならば、お漏らし願いたい。なるほど閣議内容の話でございますので、ときにより手柄によつては、こういう席上ではお漏らしできないこともあろうかと思いますが、お漏らしできるものならその辺の状況をお漏らしいただきたいと考えます。
  104. 石井光次郎

    石井国務大臣 現場におきまして遺体の収容場にお参りをし、負傷者方々に会いまして、一番まず胸打たれるものは、まことにこういう悲惨事を起して申訳ないということと、何とかして今後そういうことのないように、こういう人たちのためにも、こういう犠牲になつた人たちの犠牲をむだにしないように、青函輸送の安全策を立てなければならないということでございます。おそらくほかの方々も、そういうふうな感じを持つて弔問されたと思うのでございますが、北海道におきまして、ある新聞の人が、北海道視察より帰つたら、北海道の災害対策委員会を設けるかというような意味お話があつたのは事実でございます。そのとき私はこういう答えをしたと思つております。その遜り載つてつただろうと思いますが、北海道全体の災害はいろいろな方面にわたつておるだろう。よくわからないが、北海道の災害対策委員会というものを、去年九州その他に起つた場合と同じような意味で内閣に設けられるということについては、これは一々各方面報告が集積されて、内閣できめられる問題である。それから函館のこの連絡船の災害の問題だけであれば、これは運輸省と国鉄と一体となつて、この対策をすることがまず考えられる問題である。それでこの全般的な対策委員会という問題はここでは申し上げられない。内閣の問題であるから、帰つてからいろいろな御報告を集合されてきめられる問題だという話をいたしました。昨日の閣議で私は、運輸省がこういう問題に対してどのように考えているかといういろいろな点を持出しました中に、まだ決定案ではないが、運輸省内のこの特別な対策委員会を設けるという案も説明をいたしました、そのとき、内閣でという話もあるかもしれぬが、私ども運輸省ではまずこういうものを考えておるが、それに対してどうであろうかというような話等もいたしたのでございましたが、とりあえず運輸省のその委員会でいろいろ話を進めてもらつて、必要に応じて各省その他各方面から、その委員会に応援をし、また協力をするということで始めようじやないかということで、とりあえずそのつもりでおるのであります。これがさらに話の准行ぐあいによりまして、大きな組織に移行するかどうかということと、移行しないで運輸省だけでやるのだということも考えておりますし、実態に即するように進めて行きたいと考えております。
  105. 岡田五郎

    岡田(五)委員 天坊さんにちよつとお尋ね申し上げたいのですが、これは昔のことから推測いたしまして、あるいは現状と違つておるかもしれないと思うのでありますが、五隻の連絡船が沈みまして、船員の大部分、おそらく八、九割、これに乗り込んでおつた船員は死亡しておる。一方船員には予備船員というものがあるようでございますが、これらの船員の余裕がありまして、人手の不足というものが補えるだろうと御推察申し上げるのであります。ところが遺体の収容あるいは遺族の慰安、連絡、病院あるいはその他いろいろと、これには私たちがここで想像できない雑務があります。この雑務の一つも、遺族にとつてみればおろそかにされては、感情上そぐわない点が出て来る。ところが私はよく知りませんが、最近の青函局はこれらの船員を除きますと、陸上勤務者は函館有川操車場、いろいろなところに陸上職員もたくさんおられましようが、これも現在の国鉄の健全経営の上からいたしまして、おそらく定員の余裕もないでございましよう。従いましておそらく管理局の庶務の人が、主として応接、接待というようなことを中心になつて当るというのが実情じやないかと私は考えます。しかもまた輸送確保の面ということからいたしまして、すでに二十八日から最大限度の持てる力で、輸送力を発揮しなければならないということになりますと、いわゆる輸送の平常業務に奔走しなければならないという人手不足の面が、現地管理局長の非常な悩みの種であり、またその悩みが現実の姿となつて遺族の方に不満を与え、また取扱いに疎漏を来しておるのが実情じやないかと御推察申し上げるのであります。かような実情からいたしまして、現地における地方各団体という言葉で表現いたしたいと思うのでありますが、いろいろ団体がございましよう。それらの方々の御協力を得ておられる実情がどうであるかということをひとつお聞きいたしたい。新聞などを見ますと二十九日か三十日ごろになつて、函館市民の方々も平静に返られて、えらいことができたというようなことで、今度の事故につきましても、もともと関心はお持ちになつておられたのでありましようが、個人の家屋あるいはその他の被害を受けられまして、助けてあげたいが手が延びないというような実情であつたと思うのであります、かような地方団体の協力を受けておられる実情は、天坊さんも現地にしばらくおいでになつたことでありましようから、見聞され、またお立場上受けられただろうと思うのであります。時間の関係もございますので、ごく簡単でけつこうでありますが、大いに受けておるとか、まだ十分にお願いにまわる時間もないので、実はまだ手不足で悩んでおるという程度でけつこうでありますから、実情を伺わせていただきたいと思います。
  106. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいま当然のことでございますが、こうした事故の現場に対して非常に御理解のあるお話を承つて、お礼を申し上げるわけでありますが、私参りまして、第一に報告を受け、感激いたしたのでございますが、今回の事故に際しましては、他の、たとえば海上自衛隊、陸上自衛隊、保安本部、それから市警察、こういうところから非常な協力を得ておつたようなわけでございます。特に陸上自衛隊の方では、沿岸沿いに山の中等までジープを飛ばして、死体が波打ちぎわに揚げられて、それをとりに行く道がないというようなところを、いろいろ捜査してもらつたというような話を聞いております。さらにまた海上自衛隊の方でも、連日にわたつてヘリコプターの捜査、あるいは船を出して、繰返し繰返し海上に浮かび上つて来る死体を収拾、捜査協力していただいたという話でございます。また市当局の方でも、いろいろと便宜を受けているお話を承りました。ただ、だんだんそうした御協力を得ている面と、片方で地方からたくさん遺族の方がおいでになり、この方々の案内、そして御説明、こういうふうな問題になつて参りますと、他の方々にごめんどうを煩わすわけにも参りませんので、だんだん鉄道自身の手でやらなければならぬ面がふえて参るというふうに考えております。その点で先ほどもお話がございましたか、函館の局としては、比較的人数の少い局でございますので、相当本来の仕事の面にも問題もないわけではございませんが、局全体の職員はこの問題の重要性に大いに責任を感じまして、それぞれ居残り、その他のことをして、また職員、ことに船員の諸君等におきましては、身内に遭難者を出しているという人々までも非常に張り切つた気持で、いろいろそうしたむずかしい事態の処理に一生懸命やつている次第であります。ただその点で相当な専門家と申しますか、一応規則にも通じ、またいろいろなお客さんを応接するのにも向いた人という面もございますので、札幌の方でも札幌の総支配人付、あるいは札幌の管理局からも相当応援を出してやつているわけであります。その他町の旅館組合、弘済会等の方面からも、できるだけ協力は現在得ておりますが、なお今後もそれぞれ御依頼申し上げるべき点については御依頼申し上げて、万遺漏のなきようにしたいと思つております。
  107. 岡田五郎

    岡田(五)委員 それではあと簡単に一、二お尋ね申し上げます。補償または賠償といつたような言葉を現在においては少し使い過ぎますが、桜木町事件、これに天坊さんもその当時総支配人付でしたか何でしたかでありまして、その当時の処遇についてよく御存じだつたと思うのです。また桜木町事件は御承知のように鉄道に責任があるということで、その当時——今度はまだ目下調査中で、責任があるかないか、現在の段階においては末確定である。従つて弔慰金五十万円ということで大体御内意がきまつたようでございますが、桜木町事件のときに、これは加賀山君も当時委員会におきましてもいろいろ発言しておられましたが、これら受難の方々に御協力申し上げるというような単なる金銭補償のほかに、生業についても協力するというような、あたたかき処置を講ずるように発言されたのであります。その生業についての協力ということが、その後どの程度まで実績を現わし、また効果を現わしたか、その後聞く機会もありませんが、おそらく相当の協力といいますか、実積を得た、かように私は考えているのであります。また桜木町事件事件処理後における被害者の方々の、それぞれの立場上からいたします不足感というものもあつたようでございますが、全体的に見ますと、まあよくやつたという感じを事故は事故といたしまして、持たれたのが、あの当時の空気ではなかつたか、こういうように思うのであります。このたびの事故は原因がまだわかりませんから、そこまで考えるのは無理だとしか考えられない、こういうようなこともございましようが、私は今度の事件は、法律上船長に責任があるかないか、そういう純法律的にこの問題を考えるべきでなくて、むしろ人情的に人間愛をもつてこの問題を考えなければ、この世の中は法律ばかりでは生活できない。法律もまた現状を離れた法律もございますので、かようなあたたかき気持から、この被害者に対する処置というものにつきまして、これらの補償金、弔慰金をきめられると同時に、かような生業についても全面的に——全面的と言つては非常に国鉄もつらいことだろうと思いますが、とにかく全面的にこの生業の確保といいますか、遺族が生業を持たれることについて協力するという心構えと態勢を、やはり何か形において表現せられるということが必要じやないか、かように私は思うのであります。先ほど来いろいろと各委員から御質問があります。その委員の発言の模様を聞きますと、いろいろと違いますが、通ずるところは、私はこう言つてははなはだ失礼でございますが、一番最初の委員会に長崎総裁に、やはり純法律的にあるいは純理論的にこれを考えないで、もう少し情味を持つてこの問題に対処するということがほしい、こういうことを、言葉は多少違つておりますが、申し上げたのであります。天坊さんもお留守でございましたので、よく速記録でひとつ読んでいただきまして、言葉の足りないところはあつても、片言隻句を味わつていただきたいのでありますが、かような情味が、非常に言いにくいことでありますが、事故の処理につきまして全体的にまだ足りないのではないか、こういうように私は考える。私は遺族の立場になり過ぎておるかもしれません。あまりに情にほだされているかもしれませんが、どうかこの点につきまして十二分にひとつお考えおきを願いたい。その一例といたしまして、これはもうゆうべお聞きになりましたかもしれませんが、社会からいろいろと批判を受けております。ゆうべのNHKのおか目八目の座談会をお聞きになつたかもしれません。二十九日の新聞に大きなわくをとりまして、国鉄総裁のおわびの言葉——おわびの言葉というお題目ではございませんが、謹告ということで、内容はおわびの言葉が満ち満ちてはおるようでございまするが、これにつきましても非常に冷徹なる批判かございます。これは要するに情味の表わし方がまずいのか、あるいは足りないのか、それはよくわかりませんが、そういうところに、この遺族あるいは親戚、知人、国民の間の不満と不平というものが起つて来ることを、釈迦に説法ではございませんが、十分お心がけを私は切望してやまない。なるほどお役人として公共企業体の最高運営官として、法律的あるいは理論的にそのことを解釈し、分析されることは必要だと思うのでありますが、先ほど来申し上げますように、人類といたしまして一大不幸事でございます。りくつばかりにこの問題をとらわれることも私はどうかと思うのでありまするが、そういうような点につきましてひとつ今後とも最善の御努力を願いますとともに、弔慰、補慣につきましても、かような積極的の面まで覚悟をきめ、腹を締め、手を伸ばされるということが、責任の有無をはつきりするをまたず、私はやられることが当然だと思う。私はかように考えるのであますが、これについての実際のと言つては言葉がどうかと思いまするが、実際本庁においでになりまして業務を運営されておる天坊さんのお考えを承りたいと思う。これはあるいは総裁に聞くべき言葉かもしれませんが、お尋ね申し上げる次第でございます。
  108. 天坊裕彦

    天坊説明員 私ども一々伺つて非常に考え直さなければならぬと思いますが、その点心構えにおきましても、あるいはそれを現わす現わし方におきましても一番足りなかつたところではないか、またその点につい考え直さなければならない問題も多いと思うので、しみじみとお話を伺いまして、大いに考えを新たにするものがあるわけでございます。お言葉の趣旨は十分わかるのでございまして、そうした点も十分考えまして、そうした事態に善処して参りたいと考えます。
  109. 岡田五郎

    岡田(五)委員 私は希望をいたしておきまして、できるだけ資料をお集めいただきたいのでございますが、まず第一にお願い申し上げたいことは、過去におきまして連絡船が四回暴風雪のために沈んだようでございます。この当時の原因はいろいろございましようが、大部分は暴風雪が原因であつたと思うのであります。そのときの風雪その他いろいろこまかいことは言いませんけれども、ひとつ資料を提供していただきたい、かよう考えるのであります。  それからまたこれは調査員が帰られましてから、いろいろお尋ねいたしたいを思うのでありますが、また総裁にも申し上げたのでありますけれども、何と言いましても交通機関は安全、迅速にお客を運ばなければならないという義務を持つておるのであります。洞爺丸のときには第十一青函丸のお客を乗せた、自分の便のお客も乗せた、遅れ六便のお客も乗せた。また聞くところによれば、これは私はよく知りませんが、二日間も欠航しておつたとかしなかつたとかいうことが、まだ調査の余裕もございませんが、あつたというよりなことで、できれば早く輸送したい。いわゆる迅速にと言えば言葉は悪いのでありますが、交通機関本来の使命である運ばなければならぬという気持と、またあの狭いさん橋の混雑この上ない状況下におきまして、相当旅客の影響というものを受けられたのではないかということが一つ。これは交通人としして鉄道輸送業務に御経験の深い長崎総裁たり、天坊さんの自己の経験によつての、また御意見でもけつこうでありますが、きようでなくても伺いたい。  またお尋ね申し上げたいのは、十二号、十四号台風——これはいろいろと説もあるようでございます。私はこれの是非を批判いたしませんが、要するに肩すかし旋風であつた、こういうことからいしたまして、またこれに対応いたしまして非常に心構えを大げさに準備した、それがすつぽかされたということからいたしまして、十五号台風も相かわらず当るも八卦、当らぬも八卦式の気象予報というものを考えたと一つの安心感があつたのではないかということが一つ。これが現場職員の間にどういう気分が察せられたか。もちろん天坊さんが行かれたときには、てんやわんやの騒ぎで、そういうことはおわかりにならなかつたでしようが、そういう情勢が察知されたかどうかという点であります。  それからもう一つ、こういうことを言つては失礼でありますが、洞爺丸が最近の連絡船としては最も優秀な連絡船である。ことに過般陛下の御乗船も願つたというようなことからいたしまして、船長近藤君個人、個人の名前を言うのもまことに申訳ないのですが、船員全体として洞爺丸は優秀船であり、風速三十五メートルでも四十メートルでも十分航行するだけの施設なり能力があり、自分にも技倆が出るという自信があつたのではないか、こういうことも実は私いろいろ想像いたします。これは臆測に過ぎるかもしれませんが、考えられるのである。一方先ほど来どなたかからお話がありまして、過般来私も調査をお願いいたしておるので、ありますが、こういう暴風雨の際にお客を乗せるということにつきまして、もし反対の意見を出すような合議体制になつてつたならば、お客を乗せなかつたのではなかろうかと想像するのであります。遺族の立場になりますと、ああしなかつたらこれがなかつたろうということは考えられがちなのです。こういう点につきまして、日曜日であり、また管理局長その他もおいでにならず、また今までの、出港の責任は船長にありという純法律的、純事務的な考え方からいたしまして、かようなこともなさずして出港されたのではないかと考えられるのであります。これは現在の人の責任をどうのこうのという問題ではございません。今後ああいう場合に、陸上の責任を持つておる、さん橋までお客を扱う責任を持つておる駅長が——とにかく無理やり船長が出港するからといつて、駅長の意思に反してお客を乗せなければならない、といつては言葉がおかしいのでありますが、むしろ駅長か不安を持つているにもかかわらず、船長の力量と手腕を信頼して、心ならずもお客を船長に託さなければならないという組織それ自身がいいかどうかということを、十分御反省になる必要があるのではないか。もちろん国鉄内部におきましても、こういうことを申し上げるのは失礼ございますが、それぞれの立場々々、極端な一現をすればセクシヨナリズムというものが、小さなうずを巻いておることは承知いたしておりますが、こういう面を大局的に御研究なさる必要もあるし、またあの場合陸上においても暴風警報が出ておるし、また海上においても出ておるし、その場合にそういう考慮がもし払われておつたならばと思うのでありますが、その辺のところはどういう状況であつたか、もしおわかりでございましたら本日御回答をいただきますし、また早急に御返答くださいまして、またいろいろとごちやごちやあとの尾をひつぱつても困るという御不安がございましたら、十一日なり十五日でもけつこうでございますから、十分お調べをしていただきまして、御返答をお願い申し上げる次第でございます。先ほど申しましたように、御返答のほどは天坊さんの御準備次第ということで、私の質問をこれで終りたいと思います。
  110. 關内正一

    關内委員長 關谷勝利君。
  111. 關谷勝利

    ○關谷委員 すでに各委員からつつ込んだ御質問がありましたので、あまり多くはお尋ねと申し上げませんが、二、三点だけお尋ねを申し上げたいと存じます。新聞紙上で拝見をいたしますると、これが弔慰金、慰藉の方法を講じます上において、とりあえず五十万円程度を出すのだ、そうしてこれが不可抗力である場合にはこれで打切るのだ、なおまたこれが過失であつた場合には追つて補償の点を考える、こういうふうなことになつて新聞には報せ道られておるようでありますが、これに間違いがないのかどうか、ちよつとお伺いをいたしておきます。
  112. 長崎惣之助

    長崎説明員 大体においてそういうことになつております。細部についてはまだきまつてないところもございますが、今お延べになつた点はその通りでございます。
  113. 關谷勝利

    ○關谷委員 今度の事件でありまするが、これは桜木町事件のときのような簡単な、単純なものではないのでありまして、これが不可抗力であるか、あるいは過失であるかというふうなことは、非常にむずかしい問題であろうと思います。海難審判庁の結論をまつてということになりましたならば、おそらく一年あるいは二年というふうな長い月日がかかるのではないかと思うのでありますが、この問題につきましてはこの際いかようとも判定できる事柄であろうと思います。過失というふうにしようと思えばあるいはできないこともないし、また不可抗力というふうに判断しようとすればできるのではないか、微妙な紙一重というようなところを行く事件である。こういうふうに考えておるのでありまするが、こういう場合におきまして、これが不可抗力であるからこれで打切るのだ、もしこれが過失であつたならば、また補償方法を考えるのだ。しかし今回のこの事柄に対しましては、これが不可抗力であろうと、あるいはこれが過失であろうと、あまり大差のない。いろいろ結論を得ましても、その説くところは両様説かれると思いますし、大差ないというふうに考えるのでありますが、今回の場合におきましては、補償というふうな考え方で算定をいたしましたその金が、もしこれが過失であつたならば出し得るというのであつたならば、そういうふうな慰藉の方法——もちろん金でこれが償えるものではないのでありますが、そうすることが誠意を示す一端であろうと存じますし、これは非常に悲しんでおられる遺族の方方あたりをせめて慰める一つ方法ではないか、このように考えるのであります。大体これが不可抗力であつた場合がこうとか、あるいはこれが過失であつた場合がどうというような考え方をするがために、あるいは責任のがれをするのではないかという意見も出て来ると思うのであります。この際思い切つて補償すべき場合に出し得る全額を出すべきが当然ではなかろうか、このように考えるのでありますが、大臣並びに国鉄総裁がどういうようにお考えになつておりますか、御答弁を伺いたいと思います。
  114. 石井光次郎

    石井国務大臣 このたび死亡された方々に対しまして、弔慰金をなるべく早くお贈りした方がいいではないかということを、私どもも考えまするし、世間でもそれを期待しておるように思うのでございますが、しからばどういうふうにするかという問題になりますと、なかなかむずかしいのでございまして、一応国鉄総裁から見舞金としてなくなつた方に贈られておるのでありまするが、この事件がはつきりして、補償をしなければならないということまでは、ただいまお話のようにあるいは長くかかるかもわかならいのであります。どんなに早くてもやはり数箇月は要するのでありましようし、それでは中には生活にお困りになる方もあるのではないかというようなこと等も勘案いたしまして、どうしたらよろしかろうかといろいろ考えたのでございますが、結局ただいま発表するまでには至つておりませんけれども、大体の方針としてきまつております弔慰の方法、すなわちなくなられた方に対して五十万円贈つて、これが無責であるということでありましたならば、そのままでございます。有責の場合にはさらに計算されまして、それに加わるものがあれば加えてお贈りすればいいのではないか、ただいまのお話では有責の場合と同じような金額を出すのが、誠意を見せるのではないかというお話でございますが、そうなると要するに今の金額より多くなるか、少くなる人もあるいはあるかもわかりません。どうかわからないのでございますが、国鉄のいろいろな例の場合も聞きますと、有責の場合もこれより少い場合が非常に多いようでございますが、私どもは桜木町の例その他等も勘案いたしまして、この際このぐらいのところで弔慰金を出し、さらに問題が有責となりましたときには、それに加えて皆さん方に責任を果すということが、一番モデレートな方法ではないかということで、これに賛成をいたしておるわけでございます。
  115. 關谷勝利

    ○關谷委員 将来そういうふうに区別をして考えるのだ、こういうふうなことをいたしておりますと、このように非常に判断のむずかしい事柄は、そのためにこれが不可抗力であるというふうに、ことさら持つて行かれたというふうに誤解を受けるおそれも非常にありますので、できることなら次の閣僚懇談会あたりで、そういうふうな補償の場合にはどういうふうにすべきものか、それに乗つた場合にはこれだけだ、それもこの際どうすべきかというような御相談を願いたい。これは私の希望でありますので、この点はこの程度にとどめます。先ほどからいろいろ政府国鉄と同時に責任を持て、こういうような御質問があつたようでありますけれども、今度の場合に、この慰藉と申しますか、弔慰金等に対しましては、これは国鉄から直接出すということは当然の形であろうと存じまして、この形はそれでいいと思うのでありますが、その財源は国鉄に対しましてどういうふうに政府から出されるか、その出され方なのであります。これが国鉄に財源がないから貸してやるのだ、そうして将来国鉄から逐次払えというふうな性格のものか、あるいはこれはこの問題解決のために出し切りのものだから、国鉄は受入れてそれで出せばよろしいので、将来政府国鉄関係はなくなるのだ、こういうことになるのか、この点を伺つておきたいと思います。大体出し方によりますと、それなら政府は何を責任を持つたのか、こういうことにもなつて来るのでありまして、この際そうでなくてさえ赤字を見ております国鉄でありますので、独立採算でやつて行け、その中から出せ、今の場合は間に合わぬから金は出してやるのだ、こういうことになつた場合には、国鉄の運営というものはおいおい苦しくなつて来ますので、この弔慰に対して必要な経費というものは、今の国鉄では負担し切れないのだ、それで政府が負担してやるのだ、但し形は当然国鉄から出すべきものだから、出す形式だけは国鉄になるのだ、こういうふうなことになるのか、あるいは将来これが国鉄の債務として残るのかということだけを、はつきりと伺つておきたいと思います。
  116. 石井光次郎

    石井国務大臣 政府といたしまして、この弔慰金国鉄が出す場合に、それのバツクをしてやるという場合、どの程度まで投じなければ国鉄はこれを払えないか、これだけの問題ではなく、連絡船の沈没したものの始末や何かもずいぶんたくさんあるのでありますから、ただバツクをするということをきのう話し合つただけで、それをどういう方法でというところまではまだ話は進んでおりませんが、今お話の趣旨は含んで進んで参りたいと思います。
  117. 關谷勝利

    ○關谷委員 まことに上手な御答弁で、口の下手な運輸大臣としてはまことにねこ一代にねずみ一匹くらいなところで、上手にバツクと言つておられますが、そのバツクはどのように解釈したらいいのですか、それをちよつと承つておきたい。
  118. 石井光次郎

    石井国務大臣 今金がなければ出すというような程度でございますが、今すぐにこの金がどうなるか、一日を争う問題でございませんので、政府の貸付にするか、あるいは貸付にすることは今お話のように国鉄でいろいろな問題があつて、とてもこれはやつて行けるものではない。政府がどんな形でやるか。それならばそれで出してもらえるかという問題について、まだ十分相談いたしておりませんので、これはよく相談をし合つてみたいと思います。
  119. 關谷勝利

    ○關谷委員 これ以上お尋ねはいたしませんが、私がはつきりと申し上げておきたいのは、これを政府が今の国鉄に財源がないから貸してやろうというのなら、政府はこの事件の弔慰に対して、別に責任を分担したということにはならないのでありまして、これは政府国鉄へやり切りでやつて、そうしてこれで出させて行くということにならなければ、政府責任を負うたということにはならないと私は思うのでありますが、この点これからの御相談だということでありますので、今回のこの事件に関する処理費といいますものは、国鉄にやり切りのものである、そうでなければ政府は何にも責任は負わないのだということを、よくお考えの上で御処理を願いたいと存じます。  それから次にお尋ねをいたしたいのは、これは妙なことを聞くかと思われるかもわかりませんが、あの函館の港湾の能力といいますか、能力と言つたので言葉が足らぬような気もいたすのでありますが、船をかりに洞爺丸とし、この間のあの状況におきまして、あの函館の防波堤の内部へつないでおいて安全だというのはどの程度までか、もしかりに二十メートルなら二十メートルまであの防波堤の中では耐えられるのだ、もしそれ以上になつた場合には、沖の深いところへ持つてつて、波の反動の少い、波の立たない方へ持つてつて、風の方向へ向けてエンジンをかけておくだろうと思いますが、そういうふうにするのは何メートル以上か、しかもあの沖合いにかかつた場合に、あの船で何メートルまで耐えられるのか、これは非常にむずかしい問題だと思います。なぜこれを聞くかというふうに疑問を持たれるかもわかりませんが、これは私将来の判定の上に大きな基礎になると思います。私ども多少そういうような方面がわかりますので、お尋ねをいたすのでありますが、これは船舶局長がよく専門的に御研究をなさつて、きよう御答弁はいりません。また答弁せいというのが無理でありますので、きようの即答はお願いいたしませんけれども、あの函館の港の場合に、この間の状態で、いろいろ船の大きさによつても違いますが、洞爺丸ということに限定をいたしまして、状況もこの間のしけの状態でどうなるか、こういうことが私将来いろいろ判定する上に必要がありますので、あの函館の防波堤の中は何メートルまであの船は繋留ができるか、もし何メートルを越した場合には外へ出すか、その外へ出した場合に何メートルまであの船で耐えられるのかという、あの地形におきまして耐えられる限度というものをお示し願いたいと思います。これは将来二度とこういうようなことを繰返さないようにするという点からお伺いしたい。なおこの青函のトンネルという問題が出ておりますが、長い日時を要します。莫大な経費を要するこのトンネルでありますが、早急にこれにとりかからなければならぬか、あるいはこれはそう無理をしてまでやらずに済むかというふうな、トンネルをやるやらぬの分岐点にもなりますので、精密なる資料の御提出を願いたいと存じます。  それから次にお尋ねをいたしたいのは、あの洞爺丸その他のこの間沈没いたしました船を、今度復旧するというふうなことにつきまして、新聞で拝見をいたしますと、長崎総裁は今の船をそのまま復旧すればそれでよろしい、こういうふうな意見であるし、大臣はこれは改造しなければならぬ、その構造の上に研究を加えなければならぬのだ、こういうふうなことを言われて、双方の意見が食い違つておる、こういうふうにけさの新聞で私ちよつと見かけたように思うのでありますが、意見が食い違つておるのかどうか、その点両方から伺つておきたいと思います。
  120. 石井光次郎

    石井国務大臣 今度の災害であれだけたくさんの連絡船が沈んだのであります。これをもつと風に対抗し得るような船の構造というか、改造が考えられるならば、それはできるだけ適用すすべきものだと思います。ただ現在もうすでに使つておる際でございます。それをあるいは根本的な改造等ができ、またするとしまして、非常な時を要しあるいは今の間に合わないというような、現実の輸送の面に大きな影響を乃ぼすということになりますと、そこに多少の妥協点を見つけなければならぬと思います。そうすれば今のままのもので、きわめて波風の強いような場合には、出港をどの程度か今までよりさらに厳格にして、安全を期するというふうなことを考えなくちやならぬものと思うのでありますが、できれば修繕、改造、新船建造等の場合に、新規な安全措置がとれるならば、これはぜひそれをしていただきたい、こういう希望でございます。
  121. 長崎惣之助

    長崎説明員 私は実は新聞を見まして驚いたのですが、一方の極端な面だけをとらえまして——私もこれを絶対に改造はせずに今のままで行くということを申し上げておるのではないのであります。ただ、いろいろな面で根本的に考え直して行かなければならぬ点もあるだろうが、しかし大体沈船引揚げまして、そうして修理するというようなことは、まあいまだサルベージもやつておりませんからわかりませんが、相当時間がかかるそうであります。どうも来年の就航繁忙期に間に合うか間に合わぬかわからぬ状態でございますので、それではたいへんであるから、今から新船を二はいなり三ばいなり注文しまして、来年の就航繁忙期に間に合わせる。そうなると大きな改造はできないであろう、そうして、改善すべきものは、至急にできるものがあればやる、そういう意味のことを申し上げたので、絶対に今のままでやるのだというようなことは申し上げていないのであります。大体において大臣お話と同じようなことを申し上げたのであります。
  122. 關谷勝利

    ○關谷委員 大体それでわかつたのでありますが、私はあの新聞を見まして、長崎総裁があの構造を変更する必要はない、こう言われるということになりますと、総裁が今考えておられるのは、今度の遭難事件は、これは不可抗力だ、こういうことが頭にあつて言われておる。大臣はあれは改造しなければならぬということになると、これは過失であるということを認めておられるというふうな感じ方をいたしたものですから、お尋ねをいたしたのでありますが、大体あの洞爺丸を対象といたしまして考えた場合に、何メートルまでの風にあれが耐え得られるのか、これもひとつ船舶課長にあとで資料を提出願いたいと存じます。これが非常に弱い、二十メートルか三十メートルの風ならばもう耐えられぬということになると、これがもし突発的に風が強くなつて来るというふうなことを考えますと、ちよつとした風でも欠航するというふうな結果も出て参りますし、またあそこは長い距離の連絡区間でありますので、突風が来ないとも限らないのでありまするが、あれをやる場合には、大体どのくらいの風に耐えられるということを基礎として船をつくつておられるのか、その点もひとつあとでいろいろ研究せられた結果を、資料で御提出を願いたいと思います。  次にお尋ねをいたしたいのは、これは私が現実にぶつつかつて聞いた話でありますが、今度の場合に、乗船名簿にあつてしかも死体がわからぬという場合には、死亡ということが確認できるわけでありますが、一等船客あたりは、何でも乗船名簿は中に入つてからというようなことでありますし、その前に出るはずだつた第十一青函丸か何かが出なかつた。そしてそのために洞爺丸へ積みかえをした、移乗せしめた。その場合におきまして、名前もまだ乗船名簿に記載せられておらない。しかもいまだに死体が上らないという例があるのでありますが、こういう場合にはどういう処理方法をせられるのか、ちよつてつておきたいと思います。
  123. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいま御例示としてお示しのございましたように、現実に乗船名簿にありながら、実は乗つてなかつたという方も相当出ておるわけであります。また乗船名簿になくて、現実に死体が現われたという方もあるわけであります。その間、ただ今お話のございました乗りかえを現実にいたしました第十一青函丸のお客さんの乗船名簿は、そのまま洞爺丸に移しておりますから、それは一緒になつております。ただそうした場合に、現実の処理として、死体が出てきて、乗船名簿にはないが、引取りの方がたまたまうまく見つかつたというようなのは、事実上の引取者があるわけでありますから、これは処理としてはできるのでありますが、そうでなくて、死体はあるけれども名簿にはなくて、従つて遺族の方もよくわからんということで、死体が残るということも事実上としてあり得ることだろうと思います。それから、名簿にはあつたが、事実は陸に上つてつたという方については、これは事実上の損害はないのでありますから、そのままで処理できる、こういうふうに考えます。
  124. 關谷勝利

    ○關谷委員 私のお尋ねしておりますのはそれと違うのでありまして、乗船名簿にもない、しかもその船に乗つたということだけは、運転手が送つてつたのでよくわかつておるが、しかし死体も上つて来ない、名簿にもないし死体も上つて来ないというふうな例が——これは宝酒造の石川良平という方がそういうかつこうになつておるのでありますが、乗船名簿にもない。しかも死体はいまだに揚らぬというようなことで、家族が非常に心配しておるという例があるのでありますけれども、こういうのは、もし死体が発見せられない場合にはどういう処置をせられるのか、伺つておきたいと思います。
  125. 天坊裕彦

    天坊説明員 具体的な例でお示しでございましたが、私すぐにお答えができない、研究いたします。
  126. 關谷勝利

    ○關谷委員 大体これでもう私質問を打切りたいと思いますが、こういうふうな場合におきましては、うわさがうわさを生むといいますか、いろいろな話が錯綜をいたしまして、事実のつかめないようなことがあるのでありますので、今度の調査団の諸君が現地を見て帰られてから、すべて論議するということにいたしたいと思います。いろいろこれに対しまして総裁責任、あるいは大臣責任というふうなことを、早急に要望するような御質問もあつたようでありますが、私はとるべき責任というふうなことがあれば、もちろんこれはとらなければならぬと思いますが、もしここでただちに責任をとつてやめて済むということなら、役人ほど楽なものはない、仕合せなものはないのでありまして、今度の善後措置を完璧を期して、しかる上で責任をとるということならば、私はそれが当然だというふうに考えます。先ほどから責任問題を早急に追究するというような声がいろいろありましたが、この際はただ簡単にやめて済むものではない。善後措置を完全にして、そしてとるべき程度責任はとらなければならぬ、私はこういうふうに考えておりますので、意見を申し上げておきます。
  127. 關内正一

    關内委員長 鈴木仙八君。
  128. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 先輩各位から綿密な御質問がございまして、あるいは重複、蛇足を加えるようなものかもしれませんが、一、二点お伺いしておきたいと思います。  洞爺丸は現在船底を海面上に見せているが、事件の直後、万一奇蹟的にもまだ生存者もいるかもわからないその当時、ただちに潜水夫を舷側の窓から入らせるよう、船底を焼き切つて中に入らせるという処置を、なぜもつと早くとらなかつたのか。これは実に遺憾に思うのでございます。かつて第四艦隊事件で、二つに割れた駆逐艦春雨の頭部が漂流して、生存者がいたのでありましたが、これを撃沈してしまつたということがあつたそうでございますが船底を焼き切つて穴を明けても修理はできるから、迅速に死体を収容すべきではないかと思います。多くの家族の人々の心配を考えましても、なぜ早く処置をしなかつたのかという非難もありますが、その点をひとつお伺いしたいと思います。もしまた事件直後、何日何時何分まで生存をしていたというようなことが、奇跡的に船内に遺書でも現われた場合は、この責任は一体どういうふうにおとりになるか、これもお尋ねしておきたいと思います。
  129. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの御質問でございますが、私二十八日に現地へ着いたのでございますが、二十七日は一日、海面に浮かんでおる遺体の引取り、その他岸べに打上げられておる避難された生存者の病院への手続、その他の問題で相当現地——ことにまた通信その他も完全に回復いたしておりませんので、いろいろ骨折りましたがサルベージも十分な効果を発揮していなかつたようであります。私が参りました二十八日も、四人の潜水夫が入つてつたのでありますが、十一時ごろから入つてつたというふうで、潜水夫に関する限りは、就業の時間も相当緩慢であつたという感じを私は持ちましたので、先ほどもその御報告をいたしおいたのでございます。今お話の船体を破るという問題も、もちろん現地で十分検討いたしたのでありますが、裏の方から破るよりも、まん中の方から破つた方がいいという話がございまして、それには船体を水中で切る機械がない。その機械をかり出すというのに手間取つたわけでありまして、やつと昨日その機械とそれを使います水夫とか酸素等を使つて、切る仕事にかかつたという状況になつておりまして、若干遅れたかと思いますが、現地の当時の状況としては、ある程度やむを得なかつた面もあろうかと存じておるわけでございます。なおこれは今の設例として、船体の中に何時間かいられたという方がおられて、それが遅れたためになくなられということがあれば、まことに申訳ないわけでございますが、一応当時の実情としては、手配はやむを得ないものがあつたというふうに考えるわけでございます。
  130. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 これはうわさですが、その船体を切断、焼き切るというようなことに対しても、あとで使うのにそれでは困るといつて総裁からお話があつて、それを決行しなかつたというふうに聞いておるのですが、私はそんなことはないと思いますが、その点もお伺いしておきたいと思います。  次に洞爺丸が出港する前に不安を感じて、下船を希望した乗客が多数いたことが生存者の申立てでわかりましたが、それを船員が禁止したというのは一体どういうわけでありますか。また総支配人や管理局長、名が乗り込んでいたので、一般乗客の問題を考えなかつたのではないかと思います。なぜ階段をおろしてやらなかつたのか、さん橋長はそのとき何をしていたのか、それをお伺いしたいと思います。
  131. 天坊裕彦

    天坊説明員 初めの船体破壊の問題につきましては、決して人命を救助するために船体をそこなうことを恐れるというような考えは毛頭持つておりません。  それから当日その船から風がきついために、自分は船酔いをするくせがあるからおりたいという方で、従つて名簿には載つておりますが、現実におりられた方も相当あるわけであります。たとえば函館市の大島さんと申します中央でも名の知れている方だそうですが、この人は三べんぐらい船に乗つたりおりたりされまして、三べん目におりて結局乗船されなかつたという方もおられるわけでありまして、あそこにタラツプがかかつております限りは、船からおりたいという方についてはおりられたはずでございまして、新聞記事で拒否されたという記事がございましたが、何か船がタラツプをとりはずしてからあとの問題、つまり動き出しかけてからの話ではないかと考えられるのでありまして、事実上おりられる方を阻止したということは、考えられないように思うのでございます。
  132. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 洞爺丸では、当日の午後二時から六時ごろまで船を出せと船長に迫る者や、危険だから出せぬという船長と長い会議があつたことは、生存をしておる者によつて次第に明るみに出ておる。それから総支配人や管理局長が船長へ出港を迫つたようだが、いかに国鉄の高官でも、列車へ乗つたら機関士、船へ乗つたら船長に服従すべき乗客ではないかと思います。国鉄の規律が乱れておるのも、今度のこの大きな惨事を起した原因一つになつておるのではないかと思いますが、この点もお伺いしておきたいと思います。
  133. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの御質問と先ほどの御質問にも総支配人のお話がございましたが、答えを忘れて申訳ありません。二十八日の十時から本庁で全国の管理局長の会議を開くことになつておりましたために、その洞爺丸に札幌の総支配人、それから札幌の管理局の次長、釧路の局長、旭川の局長、この四人がおつたのは事実でございます。その四人が大体函館着二時過ぎの汽車で参りまして、大体二時四十分ごろの船に乗るつもりで参つたようでありますが、函館へ参りまして、船に乗つてつてつたのでございます。その日二時四十分に出るはずの船が大体三時ごろに、その日はとりやめにするということにきめまして、五時半の便として出ることになつて、それまで待機しておつたわけであります。その間乗りました四人の総支配人等はふろへ入つたりなんかして、船の中でじつと待つてつたわけでありまして、出港に対して強要するとかなんとかといううわさはございますが、事実上そういうことはございませんで、総支配人は、もしその船が出なければ、逆に札幌に帰つて札幌から飛行機に乗るというようなことも手配して考えておつたようであります。ただいまお話のごとく、汽車に乗りますれば機関士まかせで、船に乗つて船長さんに無理じいをするというようなことは、なかつたように確信をもつて言えると思います。
  134. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 洞爺丸の出港に際して、さん橋長は函館測候所の気象通報、暴風雨警報を確実に伝えていないというが、その間の実情はどうか。ラジオは一体聞いたのかどうか。さん橋長は、その次の連絡船をさらに出したいが、台風はどうかといつて函館測候所に問い合せたことが気象台側の新聞談話に出ておりますが、これは洞爺丸が岸壁を離れて、やみの海上へ乗り出した午後六時三十九分から沈没時刻の午後十時三十九分まで、ちようど四時間の間のことであります、洞爺丸がその四時間の間どんな状況になつていたのか。何も連絡通信をしないで、さん橋長はさらに次の船のことで函館側候所に問合せたのか、一体陸上では何をしていたのか、これをお聞きしたいと思います。
  135. 天坊裕彦

    天坊説明員 けさほども船の方で当日の気象等について、どういうふうに把握しておつたかということを申し上げたのでありますが、大体青函におります船は、とまつております船も、動いております船も、それぞれ陸上から気象の通報を受けておるわけであります。その気象の通報の種類といたしましては、第一に中央気象台からの定時あるいは臨時の通報がございます。さらにあの区間では海洋気象台から通報がございます。さらにまた海上保安庁海岸局から放送される警報も受けることになつておりますし、さらに一般のラジオによります天気予報というものも出ております。さらにもう一つ、この海上におきまして大間崎と龍飛崎に燈台がございますが、その燈台から気象の通信を受けることになつております。これらのところから当日出しました通信は、当日遭難しないで無事に残つております第十二青函丸並びに第六青函丸の船内に備えつけております当日受付けた報告があるわけでありまして、おそらくは洞爺丸そのほかの貨物船におきましても、同様の通報、気象情報というものは、確実に受けておつたと考えるのでございます。  そこで一番問題になる点でございままか、当日の重大と考えられます気象の情報は二つあるのでございまして、一つは二十六日の十一時半であります。暴風雨警報といたしまして、台風十五号は九百六十八ミリバールを示し、能登半島西方面海上を北東に進んでいるので、きよう夕刻ごろ道南地方に接近する見込み、このため渡島、槍山地方では東後北西の風が強くなり、最大風速は陸上二十ないし二十五メートル、海上二十五ないし三十メートルに達し、総降雨量は三十ないし五十ミリで、明朝から回復して来る見込み、こういう十一時半の警報が出ておるわけであります。これはもちろんどの船でも受けております。その後十六時に気象情報といたしまして、これも重要だと思うのでありまして、台風十五号は午後三時現在青森県の西方約百キロメートル、北緯四十一度、東経百三十九・五度東付近にあつて、中心示度九百六十八ミリバールを示し、依然として北東に毎時百十キロトートルぐらいの速さで進行中、このままの速さで進めば午後五時ごろ渡島半島を通り今夜北海道を通過するものと思われる。このため渡島、檜山地方では午後五時ごろ最も風が強く、最大風速二十五メートルぐらいに達する。その後風向きは北西にかわり、夜半ごろから弱まつて来る見込である、こういう情報を受けておるわけでございます。そのほか同様の情報を十六時ごろ受けておるわけであります。そのほか、もちろん船でもあるいはさん橋におきましても、風速並びに気圧の記録をとつております。船内におきましてはもちろんそれ以上の機械をもつてそれをはかつております。いよいよ出帆を前にいたしましては、慎重検討いたしておると思うのであります。船の中のものはわかりませんので、さん橋にあります風速並びに気圧計についてはその記録がここにございますが、これはめんどうでございますので省略いたしますが、午後五時ごろになりまして非常に気圧が下つております。その後、これはその当時の船員の話でございますが、函館地方でもやや明るくなつて来て、風が減つております。五時過ぎの情報は、従つてそのころが一番台風の目が来ておるのではないかということが、常識的には言えるのではないかと考えるのでございますが、これを裏書きするがごとく、十八時のラジオでは、十七時現在台風の中心は江差沖辺にあるということを放送しております。従つてこのラジオ放送は聞いたろうと思うのでございます。ところでこれは十八時ごろでございますが、洞爺丸は当日二時四十分ごろに出るはずであつたのでありますが、午後二時四十八分から三時ごろまでの間は先ほどの放送その他を聞きまして、この便は欠航のするということに三時にきめたわけであります。その後、二時四十分の便が三時半とか四時にいつでも出られるというものではございませんので、大体五時四十分の便として出る。従つて二時四十分の便は三時で打切りになつてなくなつてしまつたので、そのままの形で五時四十分の便で出る態勢になつてつたのでございますが、その後になりまして、先ほど申しました五時のニユースが入りましたので、相当出られないという気持でおつたのではないかと思いますが、六時三十九分になつて出ておりまして、その点で、先ほどの風速百十キロメートルぐらいの速さで動いておるというようなこと、それから函館よりもさらに北西にあります江差地方に中心が五時に移つておるというようなこと、それから気圧が一番低いところから少しずつ上つて来たというようなこと、そういうようなものの判断で、大体二十メートル前後の風速がある記録があるのでございますが、そのときに出帆を決意して、それで乗り切れるというような判断で出たのではないかというふうに考えるのであります。ただ沖へ出てみますと、やはり風がきつい。特に最後のお話にございましたように、十時前後は五十メートル以上の風速の突風になつた洞爺丸のみならず四つの貨物船が、同じように沖で従来の慣例上の避難の方法で港外に碇泊しておつたものが、その五十メートルというような想像もできなかつた突風によつて沈没したというふうに、若干私の想像も入つておりますが、そういうように考えます。
  136. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 そこで、さつきのやみの海上へ出た六時三十九分から沈没時刻の十時三十九分まで、ちようで四時間の間、一体連絡をしなかつたのかどうか、こういうことをお尋ねしたい、さらにさん橋長は次の船のことで測候所へ問い合せたかどうか。
  137. 天坊裕彦

    天坊説明員 洞爺丸が六時三十九分にさん橋を離れまして以降、すぐ無電その他でほかの船もしくはさん橋の方面に電報を打つております、それらの情報を総合いたしますと、大体七時一分すぎに沖でいかりを投げてとまつたということになつておるわけであります。そしてその後二十一時三十六分ごろ、左舷発電機が故障をしたというようなこと、あるいは左舷の主機が悪くなつて来たというようなこと、それから船のビルヂの排水が困難になつて来たというようなことを打電しております。さらに二十二時一分ごろには船位を保つているのが非常に困難になつて来た、詳細はあとからというような電報をよこしております。二十二時八分には主機が使えなくなつたというようなこと、二十二時十二分には両舷の主機不良のため漂流中、二十二時二十六分には、第三防砂堤青灯竿より二百六十七度〇・八海里の地域に座礁、二十二時三十九分、SOSを出すというようなことで、そこまでがわかつておるのでございます。その後は呼び出したが応答はないということであります。このSOSを開く前後に、さん橋の方ではこの状況を危険と考えまして、追分丸、第五鉄栄丸、第六鉄栄丸、江差丸を順次救助に出動させたのでありますが、風浪のため現地に十分近づき得なかつたというのが実情でございます。  一方、さん橋の方では天気予想に関しまして、気象台とどういう連絡をしたかという点でありますが、当日気象台に三回ばかり鉄道の者だという名前で、気象の情報を聞いておる記録があるわけであります。だれがどうして聞いたかという点が、ただいまのところはつきりいたしませんので、気象台の方ではわからない。鉄道の方でも出て行つた船といいますか、沖にとまつている船について、心配はしておつたのであろうと思うのでありますが、その後気象台と連絡をとつて、特別の措置を講ずるということはしていなかつたというぐあいであります。
  138. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 船長の権限がはつきりしていませんが、苦しいときや困つたときだけ船長へ責任を押しつけて、実際は管理局長会議へ早く来たいし、青森からの寝台をとつてあるから出航せよというようなことで、みんなで船長へつ迫たのではないか、この点もはつきりお伺いしておきたいと思います。  貨物船日高丸の沈没は、当月午後十一時半で、洞爺丸の沈没から一時間くらい遅れておりますが、陸上で連絡通信がよくとられていたら、早くから洞爺丸の舷側へ貨物船を横づけして、転覆を防止できたはずだと思いますが、陸上勤務者は何もしていないようでありますが、これは一体どうしたことか、この大事故は、個々の船の船長よりも、船のことも海のことも台風のことも少しも知らない法文科系統の専務役人が、船長へ命令をする間違つた制度に、根本の原因があるのじやないかと思います。駅長や車掌が、かんじんの機関士よりも上位で、さん橋長や駅長が船長より上位にいる点を、外国に比べて間違つているとはお考えにならないかどうとか、この点をお伺いしたい思います。
  139. 天坊裕彦

    天坊説明員 総支配人その他が繰返して船を督促して、青森からの汽車に間に合せようとしたかどうかという点でございますが、この点は、私はつきりそうしたことはないと思うのでございます。現に青函の管理局長は、同じく東京の会議に出席することになつておりました。この青函の局長は一便遅らして出かけて来て、十分間に合うし、また当日の東京の会議の議題というものは、すでに配付してございまして、前の日に来なければどうにもならないということではなかつたわけでありますから、どうしてもそれを強要したとも考えられませんし、また強要というか、かりにそういうことを言いましても、船長自身の判断として危険があれば、それを冒して出ることはあり得ないと考えるのであります。  それから当日の日高丸でございますが、日高丸は当日八十一便として十一時二十分青森を定時に出港、途中荒天のため四十五海里の地点にて函館に五十分遅着の旨連絡し、十六時三十一分函館港内第二浮標から六百メートルの地点に投錨仮泊したところから二十二時十七分から十八分の間に、本船より現在十度傾斜し、汽罐二罐使用中——二つしか使えなくなつた旨第十二青函丸に無線連絡を行つた。ついで二十三時二十分本船救助手配を請う旨打電し、さらに二十三時三十二分SOSを発しまして、函館港防波堤燈台から西〇・九海里の地点で遭難したのであります。なお再び二十三時四十分SOSを発信中消息を絶つたということになつておりますが、ただいまのお話で、こういうSOSを受けながら陸上の方がどうしておつたかということでありますが、当日函館の陸上の方ももちろん相当な風が吹いておつたわけでありまして、その風のために市内全体を通じて電燈が消えておりました。それから通信が全部きかなくなつてつた。その点でいろいろな陸上の手配を講じ、陸上の連絡をするにも非常な不便を感じておりますし、また避難の方方が岸に漂流されたときにも浜べにあかりが全然なかつたというようなことも、非常に被宮を大きくしているのじやないかと考えらるれのであります。
  140. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 近藤船長は連絡船の船長であつて、普通の商船の船長と事は違い、ちようど乗客千二百人を乗せた旅客列車をひつぱる機関士に相当しております。いかに近藤船長が五十四歳で津軽海峡に三十年なれているといつても、陸上勤務の海務課長から出港せよと言われ、さん橋長から出ろ出ろと言われれば、これをとうてい拒絶できないから、結局岸壁を離れることは離れるが、危険な台風を避けるために、わずか十五分申訳だけ走つてすぐにいかりを打つております。午後六時三十九分に岸壁を離れて十五分くらいというと、せいぜい午後七時前後で、海面が静かで風が吹いていなかつたことは、生き残つた船員の申立てでも明らかであります。そこで船長は西南方へ向いてエンジンを少しかけ、やがて出て来るはずと船長が信じている風や波をよけようとしたのだから、近藤船長の処置は申分がないというふうに一般にいわれております。出港を迫つた陸上勤務者はだれとだれか、これが問題だと思いますが、この点を重ねてお伺いしておきたいと思います。
  141. 天坊裕彦

    天坊説明員 ただいまの御質問に関連して、またその前の御質問にお答えを一つ忘れておつて申訳ないと思いますが、現在船長さんの就航技術に関しましては、私ども鉄道の中でもその特殊的な技術というものについては大いに敬意を表しておりまして、必ずしも格の点では駅長さんとかいうものより、船長さんの方が下であるということは絶対にございません。またそうした特殊の技術の人たちに十分よく働いていただくために、機械、設計等に通じた人たちも、船舶部長というような地位にすえまして、その全体の管理に当らせておるわけでありまして、決して高文偏重というようなことは私はないと考えております。なお当日管理局方面から船長さんに出帆を強要したということは、私ども考えられないのでありまして、荷物がまだ積み終らないとか、お客さんがまだ乗り切らないから時間をもう少し遅らせろ、こういうふうな連絡はもちろんその調整をやつておるところで合図はいたしますが、お客さんが乗り終り、荷物も載せ終つたということになつてあとは天気待ちだけだというような状態になつておりますれば、それを動かすには一に船長さんの天候に対する判断、これが唯一のものであります。それを強要して出ろというようなことはあり得ないと考えております。当時連絡に行つておりましたのは、運輸部長あるいは海務課長というような者がさん橋まで行つておりますけれども、これは一般の業務上の連絡でありまして、決して出帆を強要しに行つたとは考えられません。
  142. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 とほうに暮れてさまよつている家族や国民の注視、世界の関心、こうした中に何とか大きな力を加えて、洞爺丸を急速に引き起すことはできないでしようか。ロープをつけて沖合いの方から引くなり、米国海軍の大型軍艦に来てもらうなり、いろいろな手段方法を講じて、まず七百人から八百人に上る死体を迅速に収容すべきだと思いますが、この点お伺いをしておきたいと思います。
  143. 天坊裕彦

    天坊説明員 お説の通り何とかして、いかなる方法をもつてでも、急速にこの船の中にあります遺体を取出さなければならぬと思うのでありますが、何分にも今のお話のように、船を引揚げるとか、あるいはひつくり返すとかいうふうなことにいたしましても、相当準備とか期間もいるわけであります。アメリカ側のいろいろ機械的な援助を借りる話も実はいたしておるのでありますが、本国との連絡がいるとかいう話と、こうした仏様に対すろ考え方がアメリカさんは若干違うところもありますし、向うは軍でございますから、全面的に向うの指揮下にあつて取出すことがいいかどうかという点に疑問もございますので、とりあえず国内のサルベージの動員できる範囲のものを全部動員いたしまして、ここ二、三日のうちに六十組くらいのサルベージが入ることになるわけでございますが、これでできるだけのことをやつてみたいというふうに考えております。
  144. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 当面の対策に連絡船新造すると国鉄総裁が発表しているようですが、現在津軽線という汽車が青森から二十七キロ延びて蟹田まで達しております。また北海道側は江差線が函館から江差まで八十三キロ余、その途中から木古内・大沢間四十五キロ余が延びております。そこで蟹田と渡島福島までそれぞれ本州と北海道連絡する列車を延長運転し、その間をヘリコプターで連結してはどうかと思います。日本航空以外の民間航空も発展させるべきであると思います。必ずしも青森と函館にこだわつて、青函連絡と称する必要はない。トンネル計画も津軽海峡トンネルというべきであると思います。この点もお伺いしてみたいと思います。
  145. 天坊裕彦

    天坊説明員 こういう事故の起りましたあとの青函と申しますよりも、ただいまもお話がありましたように、北海道と本土との連絡ということは必要欠くべからざるものでございますので、すぐ残つております船を総動員いたしまして、現在大体十三運航程度確保いたしております。それによりまして、現存のところ青森と函館とに残しているお客様はほとんどございません。貨物につきましては、北海道が秋冬繁忙期でいろいろ種いもその他が出まわりますので、これらの輸送に対してある程度の抑制になつておりますが、大体五千トン近くは運べるのではないか。さらにこの十日ごろには、六千五百トン程度のものは運べるような態勢に持つて行きたいと考えております。ただいま津軽半島その他の先の方から向うの方に渡すというようなお話がございましたが、何分にもそうした程度連絡は、量として大きな量が期待できない。飛行機ももちろんいろいろ臨時便を出してこのごろ動かしていただいておりますが、それでもはき切れない。やはり青函連絡船としては一つの使命があるのではないかと考えておりますので、沈んだ船の引あげあるいは新造というような問題についても考えて、来年の春冬繁忙期に間に合せるという対策をとるべきではないかと考えております。
  146. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 国鉄職員の死者は何人ですか。殉職として労災保険をとるべきだが、労働省側とただちに交渉しているかどうか、この点もお伺いしておきたいと思います。
  147. 天坊裕彦

    天坊説明員 ちよつと私正確に何いたしておりませんが、大体鉄道の職員は四百五十名くらいでございます。その中には、船員法の適用を受ける者とそうでない者とございます。それぞれ死亡確認と同時に、いろいろ災害救助法その他共済組合決算できまつております手続によつて処理したいと思います。
  148. 鈴木仙八

    ○鈴木(仙)委員 もう一点伺おいしておきます。これは長崎総裁から御答弁願いたいと思います。先ほど關谷先輩からこの責任の問題についてお話がありまして、私もその点同感でございます。ただちに責任ばかりとつてしまつてあと処置がううく行かないというようなことでは、ほんとう責任をとる道ではないと思います。ただ先日この大事件が起きた直後、あわただしく行き通う人の中で、加賀山前総裁は、新聞記者諸氏の前とかで、桜木町の事件は今度の事件と事柄が建つて自分は責任をとつたけれども台風不可抗力である。ゆえにこれはやむを得ない。だから長崎総裁はこの問題に対して責任をとる必要はない、かようにおつしやつたそうでございます。これはうわさですから真か偽かわかりませんが、もし加賀山さんがそういうようなことをおつしやつたということを聞いたときの総裁のお心持、また風のたよりにでもそういう風説があるとしたならば、その風説に対しての長崎総裁のお覚悟だけを、ちよつとお伺いしておきたいと思います。
  149. 長崎惣之助

    長崎説明員 私は加賀山前総裁がどういうことをおつしやつたか実は存じませんが、私は私なりにやはりこの問題を考えるべきであろうと思います。むろん世間の人の意見も当然に参考にすべきものではありますが、この問題につきましては、私が先ほど来申し上げておりますように、何分にも非常に大きな事件であります。この事件の性質上、遭難されました方々はむろんのこと、その御家族、友人、国民全体の皆様に深甚な、しかも敬虔な気持で臨んで行くと同時に、この遭難方々の御遺体を一日も早く収容するということに、まず思いをいたさなければならぬと思います。その遺家族に慰藉、弔意を表するということ、これは迅速にやらなければならない。その次にと申しますよりも、むしろこれと並行して、今度の事故によつて妨げられました津軽海峡北海道と本州の間の輸送力というものをどこまで回復するか、どういう方法でやるかということを迅速に考えなければならぬ。もしそれが通らないとすれば、どういう方法でこれを補充しなければならないかということが、まず私の果さなければならぬ任務だと思います。その上で、自己一身上の問題につきましては、みずからその後にとくと考えてみたいと思います。
  150. 關内正一

    關内委員長 臼井君。
  151. 臼井莊一

    ○臼井委員 昨日からの質問で、浅井さんが別にこちらに急ぐ必要ないというように伺つていたのですが、もし五時半の便で間に合わなければ、日航機を用意してそれで行こう、こういうことにされたように今お話が出たのですが、日航機を用意されたのですかどうですか。シートをとつたかどうかということ、その点を天坊さんにお伺いします。なおまた、こちらの会議の内容がどういう内容であるか、おさしつかえなければその点をちよつとお伺いしたい。
  152. 天坊裕彦

    天坊説明員 私ただいまお話がございましたような話が現地でありましたので、ちようど先ほどおいでになりました柴田委員など調査団方々がお越しになつたときにもその話が出まして、私も同席してその話は聞いておつたのでありますが、確かに当日逆まわりで札幌に帰つて、次の日の日航機がとれるかどうかということを聞き合せておりますが、そのときには座席がとれない。都合で臨特便を出すかもしれない、その臨時便が出ればとれるかもしれない、その点はもう一回次の朝か何かに聞いてもらわなければきめられない、こういう返事だつたそうであります。それから二十八日から招集いたしました局長会議の議題は、来年度の予算編成を前にいたしまして、いろいろな状況の意見交換というのが主題目でございました。ことにその次の便でも十分間に合うわけでございますから、前の日に東京に来て打合せをしなければ答えが出ないというものではないわけであります。
  153. 臼井莊一

    ○臼井委員 もり一点、今度の出航に際して、気象の判断を誤つたというのがどうも出航の理由のようでありますが、その誤つたのは気象通報の材料を集めることが不備であつたのか、あるいは材料を提供する気象台や何かの方のあれが不備であつたのか、そのいずれであるかという点でありますが、今伺うと、各方面から気象の通報が出ております。それからまた、いろいろの材料が不足だとは思えないのですが、そうするとはたして洞爺丸で気象の材料を十分集めていたかどうかという点が問題だというふうに思うのでありますが、その点現地で何かお考えになつた点、お心当りはありませんでしようか。
  154. 天坊裕彦

    天坊説明員 先ほども申しました通り、問題の洞爺丸の情報の記録というものが実は手に入らないのでありまして、洞爺丸自身がどういう判断をし、どういう情報を聞いておつたかという点については、材料がないのであります。しかしながら先ほど申しましたように、同じく港外あるいは港内におりまして無事でありました第十二青函丸、第八青函丸というのがございました。これらの気象を受付けました船の日記には、ちやんと何時何分にどういう報告を受けた、どういうことを聞いたということが記録にあるのであります。従いましておそらく出帆まぎわには洞爺丸としては、しかも暴風警報が昼から出ておるのでありまして、当然そういう情報には耳をかしておつたに違いない。ただいよいよ出かける判断のときに、もう台風の目が相当通過しておる。従つて普通の台風であるならば、その台風あとの風速の強さもおそらくこの程度といいますか、目が通つたときが一番弱いのでありますから、その弱いときから二十メートル程度のものが吹いて、それで海上に出て二十五メートルか、せいぜいその辺だという判断をしたことが問題なんであろうと思うのでありますが、結局あとから見ますと、台風の速度というようなものも、あの辺で停滞しておつたということもあるようであります。その点は私は気象台等をいろいろ調査になつてもやむを得なかつたのではないか、台風の特異性というものについて、結果から見て判断が誤つた。沖に行つたら五十メートル以上の風速があつたということでありますから、どうもその辺は私の想像になりますか……。
  155. 臼井莊一

    ○臼井委員 最後に一つお伺いしたいのは、船がいよいよ助からぬ、新聞等によると座礁して人命を助けようというように船長が決心したというような最初の通報がありましたが、その場合には、その後の報告によると、必ずしもそうでなくて、結局流されて自然に座礁した。その座礁したときに転覆するということは当然考えられるのではないかと思うのですが、船の専門家に聞くと、たとえば船が座礁する、そうするとまつすぐへさきが座礁すれば、必ずともは風によつてあおられてうしろにまわる。そうすると横から風や波を食つて転覆するのだというふうに、ことに洞爺丸の構造からいつてトツプ・ヘビーになつているから当然ひつくり返る。そういうふうになつたら、できるだけすみやかに乗客を外に出しておれば、ブイをつけておるのだし、ある程度は少くとも現在以上に岸に吹きつけられて助かつたのじやないか。船内にああいうふうにとじ込められるというようなことがなかつたのではないかと思うのですが、ふだんからあの船に関して何かもし座礁したらこうなる、こういう研究でございますか、そういうものをしていたのでございましようか、その点ちよつとお伺いいたします。
  156. 天坊裕彦

    天坊説明員 私も必ずしも専門家でございませんので、詳細わからないのでございますが、ある程度新聞で助かつた機関士の方の話によると、座礁させるつもりであつたかのようなことが書いてあつと思うのであります。私はその機関士に会いたかつたのでありますが、会えなかつたであります。ただ大雪丸、これは助かつた船でありますが、この大雪丸の船長さんに会つて当時の話を聞きました。いろいろ話を伺つておりましたが、その大雪丸の船長さんもかんじんなところに来ると、私の船は運がよかつた、こういう言い方になりまして、どうも詳細がわからない。ただおそらくこの機関士の話なんか聞きまして、非常に危険だから、できるだけ岸近くに持つて行きたいというような気持ももちろん起るだろうと思うのでありますが、そのころにはエンジンがおそらくきかなくなつていたのじやないかというふうに考えます。もう一つ、これも私は向うでカナダかどつかの宣教師でありますが、この人が助かつております。この人の話では、これはお見舞に行つたわけでありますが、非常に災難であつた、自分は幸いにしてけがも何もなしに助かつたが、そういうお見舞はいらないので、なくなつた方に差上げてください、船長は十分よく指導をしてくれて——その宣教師は二等に乗つておられたのですがその中で何らパニツクはなかつた、こういうことを言つております。これは一人々々の体験者の話がございますので、必ずしもその一例だけで言うことはできませんが、救命具はみなつけておつたように思われます。
  157. 臼井莊一

    ○臼井委員 もう一つお伺いしますが、浅井総支配人の葬儀はすでに終つたようですが、総支配人そのほか鉄道の局長さんたちの遺骸は発見されたのでありましようか。
  158. 天坊裕彦

    天坊説明員 浅井総支配人、栗林次長、この二人の遺体は発見されました。釧路の管理局長と旭川の管理局長の死体はまだわかりません。そういうところであります。
  159. 臼井莊一

    ○臼井委員 櫻木町事件でも、災害が大きくなつた一番の原因は、車外に出られなかつたことである。その後電車の構造等は出られるようにしましたが、今度の問題は、岸は近いのでありますし、客をデツキの上にでも早く出せば、これほど犠牲は大きくならなかつたと思います。これらの点について将来よく御研究いただきたいと思うのであります。以上でございます。
  160. 岡田五郎

    岡田(五)委員 委員長委員会運営の面で、お手数をかけまして申訳ありませんが、ひとつ要望しておきます。  人事を尽されまして、死体の収容につきましていろいろやられておるようでございまして、御苦労は御想像申し上げるのであります。大体死体を収容するまで十日以上を要する、こういうことになりますと、おそらくこの時期でございますので、とうとき犠牲者の死体は相当何と申しますか、見るにたえないような状態になるのではないかと思うのでありますが、ただ遺族の立場からいたしますと、さような死体を目の前に見せられるということは、これは耐えられないことだろうと思うのであります。従いまして死体の様相というものにつきまして、どうか近代医学といいますか、医術といいますか、科学といいますか知りませんが、これを尽してりつぱなと言つてはどうかと思いまするが、りつぱな仏の姿のようにひとつ親切な処置を講ぜられんことを私は切望いたします。  それからもう一つこの機会に——委員会が十五、六日まで開かれませんので、資料をお願いいたしたいと思いますが、今度連絡船が沈んだのは、大体貨車が横倒しになつたとかなんとかいうのが主たる原因ではないか。というのは、函館港内にあつた一般の船の沈没は比較的少い。またブイにつながつて助かつたという船がある。大体貨車航送であるというところに原因があるのでありまして、沈んだ原因はあれをつないでおられる緊締具、つなぐロープでございますが、これの張力というか、これが相当問題ではなかつたか。また青函航送の事故のうちでも、あの緊締具がはずれて、車艙というか、その中で貨車が走つて事故を起したというようなことが、今まで三十数年の貨車航送の間にあつたと思うのでありますが、これに対してどういうような張力を持つた緊締具をお使いになつてつたか。またこれの改善についてどういう努力をされたかというようなこと、また貨車の構造から、どの程度までの張力を用いた緊締具を使い得るか、また使い得ないとするとどういうようにするのかというようなことにつきまして、御研究なさることも必要でございますが、さしあたり現在使つておられる緊締具の張力というものにつきましてできるだけの——私たちしろうとにも判断できる資料を御提供願いたい、こういうふうに思うのであります。  結論的に申し上げますと、このたびの運輸省なり国鉄のおやりになつておることを私たち国民の立場から、また遺族の立場になつて見ますると、非常にシユアーでありまするが、平たく申し上げますとスローであるというと少し言い過ぎかもしれませんが、まつたくスローの感を抱かざるを得ないということが一般の感じであります。このシュァーは非常にけつこうでございますが、こういう突発事件にはある程度スピーデイということを濃族の立場から切願しておりますということが、私は国民の一人としての偽らざる声であるということだけは、ひとつのみ込んでおいていただきまして、今後の処置につきましても、シユアーはけつこうだが、スローであつてはいかぬということだけをくれぐれも申し上げまして、私の質問を終りたいと思います。
  161. 關内正一

    關内委員長 次会は、大体今晩一週間の予定で現地調査に参りますから、七、八日に帰えられると思います。帰られましてから資料の整理等もあり、また参考人の選定等もありますので、十五日前は大体において開かれないということを御承知おきを願います。  なお日取りが決定いたしましたら、公報はもちろんでありますが、書面等によりましてお知らせをいたすことにいたします。
  162. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ちよつと委員長に要望しておきますが、この委員会が開かれました直前に、議院運営委員会の方で調査に行かれて報告書をまとめられておる、これは私どもは所管争いをするわけではありません、しかし専門員があるのであります。議院運営委員会が国会を代表して現地慰問に行かれたのならば別でありますけれども、そうでなくて調査に行かれるということそれ自体が私は不満でありますし、また私ども専門家の立場から調査をいたしますものと、そうでない委員会との報告の食い違いがあるということは、非常に不幸を招くことであり、混乱を起すわけでありますから、従つて私は議院運営委員会調査は適切でないと思います。なぜかといえば、あの混乱のときに調査に行きましても、責任者はそんなものを構つていられないのでありまして、当面緊急の始末をするということが主たるもので、どさくさに行つて調査をされても、ほんとうに公正妥当な調査はできないと思いますから、この運営委員会の名において、その調査報告は中止をしてもらうよう、委員長より適切なとりはからいを願います。
  163. 關内正一

    關内委員長 それは中止でなく、向うは向うなりにせつかく貴重な資料をつくつたのでありますから、それはこちらの方に頂戴をいたしたい、かように考えております。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会