○青野
委員 私の
お尋ねについては大体御答弁ができたように思いますが、今交渉の過程にありましても、これは原爆の実験をしたことによ
つての損害、あるいは一つの現象として出て来た問題でございますので、これはむろんアメリカ側の
日本国内におけるいろいろなあやまちによ
つて日本人を死亡させたとか、けがをさせたとかいう補償は、終戦
処理費とかあるいは防衛分担金とかいうので今まで支払われて参りましたけれ
ども、今度の問題は、
日本政府が一時便宜上これらの被害者に対して生活上の
関係から立てかえるということは認められるかもしれませんが、私は今入院しておる人とか、あるいは放射能をかぶ
つて治療しなければならないといつたような人々の病院における医療費、休業手当、あるいは魚が売れなかつたとか、魚の価格が非常に下つたとか、そういうものについての補償、その次に第二段階として、もし被害者が不幸にして死亡するような場合があれば、あとの家族の生活費をどうするかといつたようなことから、船の買上げ価格というようなものは、アメリカ
政府がこれら一切のものを負担すべきであるという
立場をと
つて、
日本政府がしつかりした態度で交渉すべきであると私は思うのであります。私は専門家でもなく、
学者でもございませんからわかりませんが、常識的に
日本の国民が心配しておることは、世界で初めて広島と長崎に原子爆弾を落されて、一番悲惨な目にあつたのは
日本民族であります。今度のは被害者の数が少くても、第三番目のものである。アメリカの原爆が生れてその実験台に上つたのも、この前の運輸
委員会でも申しましたが、
日本人だけである。ところで今度は新聞の報ずるところによれば、大体原子雲と申しますか、二十マイル程度の上空に上つたとい
つておりますが、広島の場合は非常に天気がよかつたので、成層圏に飛び込んで行
つて被害がある程度食いとめられたという
学説もあります。これがかりに天気の悪いところで三里か五里の上空の、たとえば五百メートルくらいの雲の中に放射能が飛び込んで、そのまま南方から
日本に向
つて風速五十メートルないしは二十メートルの風にな
つて、
日本の上空に飛んで来る場合には、一体
日本民族は――その被害の程度はわかりませんが、どうなるのか。これが巷間至るところでうわさに
なつている中心であります。こういうものは、きようの議運でも大体話が出ると思いますが、衆議院の議院運営
委員会では、すでに数日前からこの原爆実験に対する緊急質問ということが言われておるが、これは各
委員会で言われておるから一応たな上げして、そのかわり自由党、改進党、社会党両派、その他の小会派も入れて、適当な代表者を立てて、原子力の国際
管理に関する決議案を出して、
日本の衆議院も参議院も一切含めて、国民の利益を守るために、そういう原子力は国際
管理によるべきである。アメリカが自分か
つてに南方方面で原爆の実験をすることによ
つて、よその国の国民に被害を与える。与えればわずかでも補償すればいい。幾らでも実験はするが、もし人に被害を与えたときには、適当な被害に対する補償をすればそれでいいのだという考え方では、原子爆弾などの実験はそう軽々にやるべきではないと思う。幸いに私
どもは国際的にも主張し得る
立場に立
つておるのですから、こういう点についても将来のことを考え、これに対するはつきりした
政府の基本的対策を立てて、その上に立
つて強硬にアメリカ側と交渉していただかないと、国民の不安は決して一掃されないと思います。そういうような重要な問題を含んで、近く衆議院の本会議では各党の代表者によ
つて、その決議案がおそらく満場一致で決定せられる見通しでございます、そういうときにあた
つて、
政府が弱腰でアメリカのごきげんを伺う程度で御無理ごもつともでは、この問題は片づいても将来に大きなしこりが残る。その点についてもう少し具体的に、補償の範囲は、これとこれとこれは当然アメリカ側が補償すべきものであるという
立場に立
つて政府は交渉しようと思いますという、もつと突き進んだ具体的なところをひ
とつお示しを願いたい。それからアメリカの将来における原爆の実験によ
つて、絶対に
日本人に迷惑を及ぼさないというような確約を、この機会にとる必要があるのではないかと思いますが、これらの点についての
政府側の御
見解を承
つておきたいと思います。