運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-02-11 第19回国会 衆議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十一日(木曜日)     午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 關内 正一君    理事 鈴木 仙八君 理事 關谷 勝利君    理事 松井 豊吉君 理事 山崎 岩男君    理事 山口丈太郎君       尾関 義一君    岡本 忠雄君       高橋圓三郎君    徳安 實藏君       南條 徳男君    伊東 岩男君       臼井 莊一君    松浦周太郎君       青野 武一君    楯 兼次郎君       正木  清君    中居英太郎君       吉川 兼光君    館  俊三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         運輸政務次官  西村 英一君         運輸事務次官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道副         総裁      天坊 裕彦君         日本国有鉄道参         与         (経理局長)  石井 昭正君         日本国有鉄道理         事         (営業局長)  唐沢  勲君         日本国有鉄道参         与         (施設局長)  佐藤 輝雄君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ————————————— 本日の会議に付した事件  運輸行政に関する件     —————————————
  2. 關内正一

    關内委員長 これより開会いたします。  運輸行政に関する質疑を続けます。青野武一君。
  3. 青野武一

    青野委員 私は当局に御質問をいたす前に、あらかじめ委員長にお断りしておきたいのは、石井運輸大臣予算委員会関係で遅れて来られるというお話でございますから、大臣に直接御質問申し上げる点は、出て来るまで保留いたすことにいたします。
  4. 關内正一

    關内委員長 了承いたしました。
  5. 青野武一

    青野委員 その他の関係で私は正確な資料をほしいと思いますので、あるいは冒頭は月並な質問になるかもわかりませんが、この三十線の新設計画の変更の理由等については、明日か来週、大臣に、この委員会から新線計画に対する利子補給国家が負担するといつたような決議案が出ると思いますから、これにあまり詳しく触れませんが、今度の国鉄運賃値上げ一等と二等に限られ、特に二等の定期券に関する問題も含んでおります。私は行政監察とそのほかの委員会とのかけ持ちをやつておりますので、大事なときに出席しておりませんので、おそらく質問に対する御答弁があつたと思いますが、一等と二等を値上げした場合に、この関係資料に基いて、一年間にどれだけの金額が増額されるのか、これをひとつ先にお尋ねしておきたいと思います。
  6. 植田純一

    植田政府委員 一等、二等の運賃料金合せまして、一年間の増収を約二十億と見ております。
  7. 青野武一

    青野委員 去年の十二月の三日に、私は予算委員会で主として国鉄の問題について一時間四十分、関係大臣に御質問を申し上げましたが、時間に制約をせられて実は詳しく御答弁を受けることができなかつた。そこで念のために当局側お尋ねをいたしますが、私が持つておりまする資料では、戦前昭和十一年ごろに比較して、終戦後今日の物価騰貴率は大体三百二十一倍と記憶しておるのです。そうすると、物価騰貴は三百二十一倍にふえておるが、国鉄一般旅客運賃は、昨年八月ごろの統計では大体百三十五倍になつておる。私は九州の八幡ですが、私が市会議員当時十円札一枚出すと、たしか片道で八銭くらいのつりが来た。それから計算をしまして、国鉄旅客運賃というものが大体百三十五倍になつておる。物価騰貴率は三百二十一倍、それから貨物運賃はこの率よりも少し上つて百六十二倍に上つている。こういう数字が出ておるのですが、運輸省としてはこの点お認めになりますか。
  8. 植田純一

    植田政府委員 正確な資料に基きます数字は今調べておりますが、大体それに間違いございません。
  9. 青野武一

    青野委員 私は順次大切な点だけや御質問いたしますが、今の物価指数に応じて、日本国有鉄道の全資産は一体幾らになるか。
  10. 石井昭正

    石井説明員 ただいま国鉄は再評価を実施いたしておりませんので、正確な数字はつかんでおりませんが、現存の新品価格にいたしまして大体一兆五千億程度、それからいわゆる償却資産として償却の対象になりますものは、大体八千億程度かと存じております。
  11. 青野武一

    青野委員 これは今度の国鉄運賃値上げに重大な関係がありますので、順を追うてお尋ねしておるのでありますが、この新線の三十線の計画が今実施せられておるところもありますが、大体日本全国——朝鮮はああいうかつこうになり、満州、樺太あたりも別にして、事実上戦争によつていろいろなところを失いましたが、北海道、本州、四国、九州軌道日本内地の総延長は、新線を除いてどれくらいありますか。
  12. 植田純一

    植田政府委員 営業キロ約二万キロちよつと切れる程度でございます。
  13. 青野武一

    青野委員 重ねてお尋ねいたしますが、国鉄資産は私の資料でも大体一兆五千億ということになつておりすす。軌道日本内地の総延長は、正確な資料に基くと三四千キロ、国鉄営業キロは二十七年の八月現在で鉄道自動車、船舶の三つを合せて二万八千七十六キロ、これは私は正確な数字と信じておる。あなたの方は二万キロ弱と言つておりますが、少しふえておる。問題になりますのは、昭和十一年当時に比較して、この客車に乗る人員が大体三・三倍にふえているということがいわれている。これは事実であるかどうか。
  14. 植田純一

    植田政府委員 乗客の数はただいす仰せ通りでございます。なおただいま営業キロと申しましたのは、鉄道営業キロのみでございまして、これが一万九千九百キロでございます。線路延長が三万三千キロということになつております。
  15. 青野武一

    青野委員 石井運輸大臣が見えておりませんが、運輸大臣に私が予算委員会質問したときには、世界各国日本旅客運賃くらい安い国はありませんと、大分自慢そうに御答弁になつております。ところがお客戦前に比較して三倍以上ふえておる。これは買出しなんかは別です。日本全体の幹線の鉄道は非常に乗客が多いので、座席のない人も多い。始発の東京の駅からもう三等なんか腰かけられない。かんじんな点は独立採算制なつたためかもかりませんが、今国鉄運輸省大蔵省から予算関係でいじめられて、非常に削減を受けておる。今度も均衡予算とか緊縮予算とかいつて新線計画を変更しなければならないような予算を押しつけられておる。問題になりますのは、戦前に比較して戦後は非常に設備がいたんでおることです。私の持つております資料では、新しい鉄道つけようとすると、まくら木の取替等で大体千八百億はいる。それでありますから九州に行くにも、まだ二時間半や三時間は短縮されるはずだ。将来そういう大きな負担がかかつておるにもかかわらず、いつも大蔵省から予算の面で非常に削減をされるのです。施設の面では大体二割五分程度復旧しておるということを聞いておりますが、これは事実ですか。
  16. 西村英一

    西村(英)政府委員 ただいまの復旧二割五分というお話は、どういう基準で言つておられるのかちよつとわかりませんが、さいぜん申された料金が世界一安いということは確かでございます。そのかわりただいまあなたも申されましたように、お客は非常に込んでいてサービスは非常に悪い。これもまたわれわれの認めるところであります。それで運輸省といたしましても国有鉄道といたしましても、年々このサービス改善のために大蔵省といろいろ折衝をいたしておるのでありますが、急激に改善に至らない状態であります。というのは、戦争による被害が非常にひどかつたからであります。しかし終戦当時のことを考えますと、それでもよほど改善されたのではないかと考えておる。これは何も手柄話ではありませんが、終戦時に比べれば非常に回復しているように感ぜられる。二割五分といろのはどういう基準によるかわかりませんからお答えができません。
  17. 青野武一

    青野委員 料金は確かに物価騰貴率からいうと半分程度しか上つていないが、お客は三倍も乗せておる。鉄道延長その他で大体二割五分程度しか増加していない。設備の方は二割五分でお客の方は三倍乗せるところに無理があるから料金は安くてよいはずなんだ。サービスの点からいつたら、日本鉄道運賃は世界一高い。そういう点で、施設の面で線路延長その他で二割五分程度復旧できておることはお認めなつたわけですね。
  18. 植田純一

    植田政府委員 どうも二割五分という数字につきましてはその意味がわかりかねますが、大本御指摘になりましたように輸送数量はふえておる。これに対しましてこれに対応する輸送施設も、当然改良を加えなければならぬと思いますが、その輸送数量のふえております分に対しまして追つつくだけの改善が、とうていなされていないということは事実でございます。従いまして改良ということにつきましては、鉄道当局といたしましても鋭意努力しておりますし、そのほかに、ただいま国鉄資産は現在の時価においてどのくらいになるかというような御質問もございましたが、現在の時価に直しますならば厖大な価格になるこの施設を、現状のまま維持するというだけでも実は相当の額がいるわけであります。いわゆる減価償却に充てます金額にしましても、実はもつともつとたくさんいるわけであります。その上にもまして輸送数量増加に伴うところの、いわゆる改善改良ということが相当必要なわけなんでありましてそういうような意味も加えまして、国鉄当局としましては、昨年もまた今回もかなりの運賃値上げを実は要求して来ておる。実はそういう面にも十分充当したいという意味におきまして、運賃値上げをして来ておるわけでありますが、実際はそういう面におきましては、はなはだ改善し足りない、輸送数量増加にも追つつかないというのが現状でございます。
  19. 青野武一

    青野委員 私は今の御答弁では納得が行きかねるのでありますが、いずれまた適当な機会にお尋ねを重ねてしたいと思います。私どもは福岡県ですが、炭鉱地帯に演説に行くと、牛や馬が入つておる車に腰かけをつくつてほうり込まれ、あたりまえの料金をとられて牛や馬並に扱われたのは五、六年前であります。そういう車、それから古くなつた客車が、昭和二十七年度に五千百七十両あるはずです。ところが新しく車両会社に注文をしてつくつた車は、昨年度では二千二百五十両、差引二千九百二十両というものが廃車になつている。差引二千九百両ばかりが足りない。こういう面でお客が三三倍にふえており、設備は二割五分程度しかできない。そうして終戦旅客運賃の引上げを、労働者ベースアツプを口実にして次から次へとやられる。国鉄幹部諸君は、国鉄に関する限りはもう少し真剣に取組んで、運輸省と十分の事前折衝をしなければならない。独立採算制であるから、四十六万従業員諸君に、たとえば二割なら二割程度給料値上げするためには、どうしてもこの次は三等の運賃値上げに手をつけざるを得ない。今度の一等、二等で一年間の増収見込み二十億という御答弁をいただきましたが、大体国有鉄道幹部、特に長崎総裁などは、責任観念の乏しい人でありまして、日本人かアメリカ人かわからない頭をしている人でありますが、そういろ人たち質問をしても十分の答弁を得たことは私はありません。そこで今私が申しました二十七年度廃車、もう使えないからこれをつぶしてしまう、スクラップにしてしまうのが五千百七十両、新しくできたのが二千二百五十両、この数字はお認めになりますか。
  20. 關内正一

    關内委員長 青野君に対する質問答弁は、副総裁なり営業局長がお見えになつておりますから、その方からの方が適切でないかと思います。
  21. 唐沢勲

    唐沢説明員 先ほどからのお話お客は三倍にふえておるが、それに伴う施設が十分行つていないから込んで来るというお話はその通りでございまして、客車についていいますと、昭和二十年から二十八年までの間に新しくつくりましたのが二千四百三十七両でありますが、廃車がそれより少し上まわつた数になつておりまして、これだけを見ますと少し減つております。ただこれには車が大きくなつたりいろいろしますので、この数だけで輸送力がその程度に落ちるということは言えませんが、確かに十分な車ができていないということは事実でございます。但し自動車とか電車とかいう面では若干ふえております。とにかく全体として、ふえるお客の数に対しまして車が十分に行つてないということは事実でございまして、要するに戦争中に非常に酷使して、その間の償却が十分にできていなかつたのを、その後になつて一生懸命取返しておる。そのためにこういつたことになつておるというわけでございます。
  22. 青野武一

    青野委員 私はもう一ぺん関連してお尋ねいたしますが、大体国鉄独立採算制を実行する前までは、国家がまかなつてつたことは事実ですが、独立採算制になつてから経理が非常に弱体であるにもかかわらず、政府側国有鉄道に対して非常にまま子扱いをしておる。去年の六月から始まりました全国的な水害九州などは六十一年ぶりというのですが、この水害でやられた各府県市町村関係者は陸続として東京参つて各党議員あるいは政府に陳情した。特に水害対策委員会という特別委員会を設けて、各党議員委員に送つて非常に努力したことは私も認める。そうして関係府県及び市町村に対しては、乏しい財政の中からある程度水害復旧のために金を出した。ところが国鉄だけは、独立採算制であるからというので、八十億から風水害でやられておるのを、四十六万の関係労働者が働いてもうけた金をその復旧工事に充てろという。こういうばかげた話はない。そうして石井運輸大臣は当時私たち答弁した言葉の中で、政府から借りておりました三十倍の金をことしもどさなければならぬが、それを先に送つて、八十億円ほどことし一ぱいにいるけれども、三十億円は支払わないように大体話がまとまりましたという話でしたが、こういう八十億円という大きな水害による打撃、施設の荒廃、それを復旧再建するときには、当然運輸省国鉄幹部諸君大蔵省折衝して、府県市町村並に特別に補助金としてもらう、復旧費としてもらうのが当然なんだ。ひとり国鉄のみ自己資本でまかなえとやりつぱなしておる。だから争議権を奪つて仲裁裁定仲裁委員会から下りながら、国鉄関係者はどうしてもベースアップすることができないと言わざるを得ない。八月から実施するのをことし一月から実施するのでは年末がやつて行けないというので、遵奉闘争あるいは賜暇戦術を通して労働組合諸君が闘つて来ると、これは公労法違反であるというので首脳者を十八名解雇した。自分たちが、吉田内閣の手ででき上つた公共企業体労働関係法を無視しておる。争議権を奪つたかわりに、この委員会で最終決定したときは、公労法によつて当事者双方がこれを承認しなければならぬということになっておるのに、それは承認しない、経理が薄弱である、政府が言うことを聞きません、資金上予算上支出不可能でありますということで、予算総則給与総額をたてにとるけれども国鉄の第一回仲裁裁定のときには私も衆議院労働委員を勤めておりました。これは予算総則給与総額などは全然なかったときなのであります。当時の労働大臣鈴木正文氏は、私に個人的に予算委員会で話をしている。予算総則給与総額というものが国鉄仲裁裁定のじゃまになって、それを口実裁定実施ができないようにされるとは、ぼく自身が思いもよらなかつた、夢にも思っていなかった。こういうものにひっかけまして、将来物価騰貴によつて四十六万の国鉄職員諸君労働者諸君ベースアップの問題ができると、新らしい線路まくら木をとりかえるには、将来千八百億円の金がいります。やっていけませんということになれば、国鉄ベース・アツプ、仲裁裁定の判定がどう下ろうとも、いつも犠牲が出るか、全国的に列車がとまるような事件が将来約束されておる。こういう点について昨年の八十億の風水害費用のごときは、大省蔵と献身的な努力をされて、こういう三十億の金は待ってもらって、一時支弁しましたが、そういうことでなしに、特別に関係府県市町村並にもらって、跡仕末をつけるのが当然である。アメリカのB29のために爆弾や焼失弾でやられたものは、ほかはそれぞれ復興再建のために政府が金を出しているけれども国鉄だけは出さない。働いてそれを弁償をし、復旧をして来ている。大体こんなばかげたことはありませんよ。今度の新線計画もそうだ。予算がないからやられない。ところによっては中止する。これが問題になって、やがて運輸委員会としては各党一致決議案が近いうちに出ると思いますが、借入金の三十億の支払いの繰延べはいつごろ払うか。八十億円というものはこれは四十六万の従業員が働いてもうけた金で、自己資本でこれを復興費に充てて行くということは、あなたたちはどういうお考えを持っておるか。こういうことでもしかたがないというような行き方では、おそらく私は国鉄経営者側としてはやはり大きな問題が残るのじやないか、こう考えますが、この点はどうです。
  23. 植田純一

    植田政府委員 昨年の水害復旧財源でございますが、確かに水害という性質から考えまして、できるだけ国からめんどうをみるべき必要がある、実はかように考えたわけであります。もちろん国鉄全体の会計上、必ずしも全部が全部ということにはあるいはならぬかとも思いますが、実際処理いたしました方法としましては、ただいま御指摘借入金返還すべきものを繰延べていただいて、これは消極的に国から借入れをしたと同じような効果になるかと思いますが、この三十億円の借入金返還延期したということ、それからもちろん予備費を持っておりましたので、予備費から三十億充当いたしました。さらに新線建設関係でございますが、実は本年度当初、九十億の新線建設予算であったのでありますが、二十億近くのものを繰延べた。そうしてそれだけの財源のゆとりをつけておる、かようないろいろの方法を講じたわけでございまして、もちろん災害に要する費用はつきりとそのまま国がめんどうを見たことにはあるいはならぬかもしれませんが、それに相当する金額の部分につきましては、いろいろの方法で実質的に国の財政におきまして、めんどうを見たというような結果になつておりますので、その点御了承を願いたいと思います。なお三十億の借入金をそれではいつ返すかというお尋ねでございますが、当然来年度、二十九年度におきまして返還するようになつてつたのであります。実は来年度予算編成におきましても、運賃の一般的な値上げをとりやめたというような関係もありまして、非常に国鉄予算がきゆうくつ状態にありましたので、この二十九年度返還を予定されておりますところのこの三十億も、さらに返還の繰延べということを要請いたしまして、この三十億の借入金も繰延べを結局認められたような状況になつておるわけでございます。
  24. 青野武一

    青野委員 そうすると三十億という金は、二十九年度に払うということになつておるのですか。
  25. 植田純一

    植田政府委員 二十九年度に払うべきものでございましたが、さつき申しましたように二十九年度予算編成上、非常にきゆうくつになりましたので、二十九年度返還すべきものでありますが、二十九年度におきましても支払い延期してもらう、二十九年度におきましても支払わなくてもいいことにしていただいたということになつておるわけであります。
  26. 青野武一

    青野委員 そうすると支払い期日というものは、まだ話し合つておらない、二十九年度に払わないでもいい、では三十年度に払うのかどうか。これは新線計画とか国鉄内部経理の内容を強化するために、非常に関連性があると思うのです。だから私は小笠原大蔵大臣かあるいは大蔵当局が、この三十億の借入金は一年延期なつた、だが二十九年度に払うのか、三十年度に払うのか、これによつてこの新線計画を実行される場合もある。それから一等、二等の運賃が上る、上つてみたところが一年向わずかに二十億程度、これは今の御答弁通り。だからいつ払うのか、私は必要があれば、また予算委員会に出て大蔵大臣と個人的に会つてもいいと思つておるのです。こういうことは将来に大きな問題が残ると思う。  それともう一つが御答弁が残つておりますのは、八十億円という金の中に、予備費が三十億、政府借入金が三十億円流用されておる。大体毎年四月から九月、十月ころにかけて、日本は桜の国、災害の国と外国人からいわれておる。必ず風水害、台風でやられる。そうすると毎年相当金額風水害のために日本国有鉄道はやられるものと覚悟しておかなければならない。その際にぎりぎり一ぱいでやつておると、働いておる労働者給料値上げの問題が起つたときには、がんじがらめにされて、不動の金縛りで手のつけようがない。最後は生活権防衛のために闘争従業員諸君がやる。そうすると無理解な当局からいきなり首を切られる、この前は三役が首を切られた、今度は十八名が切られた、こういうことが将来起つて来る。だから三十億の金ははつきり何年度に払う。それから八十億という、こういう不当な金は大体政府が出すべきであると私どもは思つておる。これは政党政派を超越して、自由党、改進党の諸君もそう思つておると私は考える。そういう無理なことをするから問題がいつでも起る。この八十億はどう思います。
  27. 植田純一

    植田政府委員 三十億の返還延期は、先に申しましたように、二十九年度におきましては払わなくてもいいことになつております。従いまして三十年度以降の問題になるわけでございます。それから災害の八十億の関係でございますが、実は予期し得ない必要のために予備費という制度がございまして、本年度は当初二十億の予備費を計上しておつたのであります。この予算の規律によりまして、たまたま五十六億の予備費というものがございまして、この予備費は当然災害その他予期し得ない事由のためにございますので、このうちから三十億実はこの災害のために出したということでございまして、これは当然の措置であろうかと思うのであります。そのほかさつきも申しましたように、借金の支払い延期であるとか、あるいは建設費の繰延べ、これは政府が完全にめんどうを見たということはあるいは言い得ないかと思いますが、必ずしも御指摘のように従事員が非常に働いて上げた収入から災害費をまかなつたのだということにはならないかと思つております。
  28. 青野武一

    青野委員 これに関連して、これは大体石井運輸大臣が来てから私は御質問をする予定でありましたが、幸いに監督局長、それから国鉄公社代表者の方も見えておりますのでお尋ねをいたします。  大体国鉄労組が、ベースアップ仲裁裁定完全実施を叫んで闘争をするときに、遵法闘争、たとえば一斉賜暇戦術といつたような闘争方針をとつて来るのは公労法違反である、こういう建前をとつて、この前のときは三役が三人やられた。今度は十八人やられた。もちろん経理が弱体化しておれば、ベースアップはとうてい望み薄である。そらしてそのたびに、ほかの民間の労組国家公務員諸君と比較して、三公社五現業の諸君が、国鉄労働組合が先頭に立つてこういう運動をやつて自分たち生活権防衛のために闘うときに、それは公共企業体労働関係法違反であるからといつて、これらの諸君をとにかく解雇してしまう。そういう例がある。この前三人やりましたときには、たしか第十二委員室であつたと思いますが、私ども各党代表者と話し合つて、今回の賜暇闘争に関しては一名も犠牲者を出さないようにしてもらいたいという各党各派労働委員二十五名が決議をして、——ちようど夜明け方に年末手当の問題が解決をして調印の運びになつておるときに、ここにおります楯兼次郎君と一緒に私は行つたことを記憶しております。ところが国有鉄道公社の方は、その労働委員会の、衆議院会議に準ずる各党一致決議に対してすらも、大和執行委員長以下三人の馘首をやつた。議会の意思に反する行為をとつておる。しかもアメリカ日本の占領政策のために——アメリカ人というのは大体日本人とは違つて、頭の持ち方も風俗も習慣も違います。平気で日本に七百三十六箇所の軍事基地をつくる。そうして四国全地に相当する軍事基地を日本全体に持つて、風紀を乱す。そうして百年男女に向つては、麻薬の密輸入に直接間接に関係があるかないかは知りませんが、立川の例をとつても三千人の夜の女の半分が半身不随である。麻薬が切れかかるとめちやくちやに暴れる。そうしてアメリカの軍人のおもちやになりながら、近くの教育に甚大なる悪影響を与えている。一グラム一万五千円、それが立川の付近に行くと三万円、北海道の千歳飛行場あたりに行くと四万五千円で売れる。そういうものが飛行機で羽田の空港から入つて来たり、あるいは横浜の税関から入つて来る。そらして将来の日本を背負うて立つ若い諸君が、次から次に麻薬患者になつて毒されて行く。そのアメリカの軍事基地に対して六百二十億の厖大なる防衛分担金を負担し、あらゆる便宜をはかつて、再軍備のために狂奔しておる。一方においては将来の日本を背負う青年諸君が、こういう大きな犠牲になつておる。こういうことを考えてみますと、国鉄関係での十人名の各馘首は何のために、どういう理由でやつたか。あなたたち国鉄経営者側公労法を無視して、今申しましたこういうアメリカの占領政策による八年の間、労働組合、特に国鉄などはこれをへびにたとえればまむしだ、こういうものは公共企業体等労働関係法で押えつけて、ストライキはやらせない。そのかわり仲裁委員会というものをつくつて、ここで決定したものは、たとえば国鉄公社労働組合もこれを承認するようにするからというのでつくつた。そうして政府公労法を無視して実行しない。実行しないから食つて行かれない。生活が守れない。そこで合法的な遵法闘争賜暇戦術等をとつてやると、この前のように、また今度の十八人にやつたように首を切られる。こういうことを毎年毎年、物価騰貴に基いて繰返しておりますれば、優秀な国鉄従業員諸君は、今の国鉄公社幹部諸君がみずから労働意欲を高揚してくれとかなんとか言つたつて、そんなことをまじめに聞き入れるはずがございません。これは明らかに連合国軍、その主体勢力であるアメリカ日本占領政策の遺物が公共企業体労働関係法であつて、これが今日では拡大せられて三公社五現業まで及んでおる。少くとも一昨年の四月二十人目に形だけでも独立国になつた以上は、こんなべらぼうな公共企業体等労働関係法なんというものは廃案にして、憲法で保障せられておる労働三法を堂々と適用すべきだ。そうすれば国鉄経理の内容も将来、働らく諸君の協力を得て強化することもでき、新線取替もでき、犠牲者も毎年出さなくても済む。一体運輸省当局なり国有鉄道公社幹部諸君は、公共企業体等労働関係法というものをどのような角度からお考えになつておるか。これは非常に重大な問題でございますので、石井運輸大臣から直接承りたいと思つておりまするけれども、特にこの点をあなた方としてはどういうお考えを持つておるか、お尋ねしておきたいと思います。
  29. 西村英一

    西村(英)政府委員 御意見は御意見として承りまするが、この問題につきましては従来もたびたび政府からもお話があつたかと思われるのであります。やはり先般の争議は正常な運行を阻害したものと認めて、はなはだ遺憾でありまするが、あのような措置をとつたわけであります。しかし今あなたも申しましたように、一方では、これは政府公労法を犯しておる、また政府から言いますと労働者公労法の違反だというふうな、互い互いの、シーソー・ゲームみたようなことになつたことははなはだ遺憾でございまして、この点につきましては政府といたしましても何とか公労法の改正とかあるいはその他、今までの例にかんがみましていい方法はないかということを、お互いに研究し会つて行くということには留意いたしておるのでありますが、過去のことにつきましては、私たちは正常であると思つておるわけであります。
  30. 青野武一

    青野委員 政務次官の御答弁で大分わかつて参りましたが、先ほどから私が順を追つて質問しておりますのを土台にして三公社五現業を、——特に国鉄の場合は専売公社とは違います。専売公社は三万八千人の従業員で一年間に二千億程度を一般会計に繰入れており、予備費が十八億円残つておる。それから一般の売上げの予想が八十億を上まわる。そのうち七十億を政府に、今度臨時国会のときに繰入れておる。これで二千億を越した。もちろんタバコの値がべらぼうに高いのですから、収益の上るのは当然かもわからぬが、こういう専売公社裁定ですらもほかの関係とにらみ合して実施しようとしなかつたのが、ああいう問題に共同戦線を敷くようになつた。国鉄経理が今のように貧弱で、緊縮予算関係新線計画は途中で挫折をせなければならないような運命に逢着し、将来にもやはり多くの金がいる。そして公共企業体等労働関係法は今のままに置いておいて、予算総則給与総額等をたてにとつて仲裁裁定が下されるたびにベース・アツプの闘争が全国的に展開せられ、不幸にして列車が遅延する、全面的に汽車がとまる。そのときに迷惑をする国民のことのみを理由にされるが、そういうところに追い込んだのはこの法律であります。これはアメリカの命令でつくつたのだ。アメリカと無関係で、やせても枯れも独立国になつた以上は、こういう紛争の種になる法律は廃案にするのが当然だ。私は四年間衆議院労働委員会でそれを叫び続けて参りました。これをもつと自由にされるように改正すればとにかく、こういうものがほとんど活用せられておらぬ。公労法の三十五条に当事者双方はこれに服従すべしと書いてあるのを無視して、十六条を適用して、予算上資金上支出不可能だ、こういうことのみで、国鉄に関する限りは毎年々々今西村政務次官が言われたように、堂々まわりをせなければならぬ。そのたびに経営者側には一人の犠牲者も出ない。やつた者が出る。こういうものは私は改正よりもむしろ廃案にすべきだと思う。あなたたちはこういうがんを残しておいて、そして国鉄公社なり運輸省の最高幹部として、こういうものがありながら、もうやむを得ませんという態度をとられることは、これは国鉄諸君に対する大きな背徳行為の一つに数えられる。この点について、十八名の諸君を解雇したことは、列車遅延その他で国民に迷惑をかけたから、やはり一万両断にせざるを得なかつたというなら、仲裁裁定公労法を無視し、これを蹂躪した当局側、問題を引起す原因をつくつた諸君は、一体一人でもやめましたか。むしろ交通公社政府に納入する金をほかの方面に流用して、焦げつきになつてみたあるいは鉄道会館事件を引起してみたり、そうして最高責任者は莫大な株を所有しておる。一介の月給取りがどうしてあれだけの株を持つことができるのか。私はきようは陸運関係に限定せられておりまするので、海運関係には相当質問要綱を持つておりまするが、きようは触れません。同じ運輸省の管轄下にあるところの海運関係は、船をつくる金はほとんど全額国民の血税でまかなわれる。しかもそれは当事者の造船関係、船主関係諸君が届けを出す書類の中に、一年間に一割以内の利益と書いて来た場合は、その損失を補償する、利子を補給する、建造に必要な金は政府が出してやる、政府の金は日本国民全体の税金であります。海運関係ではこういう大きな疑獄事件を起して、そうして幹部の身辺には次から次に司法当局の目が光り、内査を進められておるというときに、陸運関係だけをどうしてこういうまま子扱いをするのか。陸運も海運も車で言つたら両輪のごときものである。外国と競争するのに船の大切なことは私はだれよりも認めます。だからといつて、列車の中に戦前に比べて三・三倍からの人を詰め込み、殺人列車で運行して、設備の点はそれの何分の一か程度のことしかしていない。そうしておいて、新線計画予算関係で挫折しました、水害の金の八十億円は何とかやりくりをいたしますが、これは府県並にもらつておるわけではありません。そういう答弁をしておられたのでは、国鉄経理を強化して、そして将来に問題を起さないような態勢を整えるのは、非常にむずかしいことじやないかと思いますが、今のままで行つて、この仲裁裁定完全実施ということができるかどうか、私はできぬと思います。あなた方はできるとお考えになるか。できなければ将来に大きな問題が残る。人の首を切るということは、相当大物の政治家が政治的生命を奪われるよりももつとひどいのです。だから軽々しく人の首を切るなら、そういう国鉄幹部諸君みずから詰め腹を切るのが当然だ。問題を起したのは一体だれか、何者だ。こういうところに私は重点がある。公労法をこのままに置いておいていいか。将来考えて一仲裁裁定が下つたときに、完全にそれを裁定通り実施する大体の見通しがありますか。私はかつて一ぺんも国鉄に関する限りは完全実施をしておらないことを記憶しております。この点は石井運輸大臣が出席されたときにも、大臣の意見としても聞きますが、あなた方としてもどのようなお考えを持つておるか、この点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  31. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 青野先生から、根本的には国鉄に対して非常に御同情ある立場から、いろいろと示唆に富むお話を承りまして、私ども非常にお教えを受けたことをありがたくお礼申し上げます。根本的に私は、先ほど先生がおつしやいましたように、お客さんが三倍にふえて、片方で運賃は一倍半、つまり半分しか上つていないのでありますから、ただいま二千五百億程度の収入をあげておるのでありますが、これがもし先ほどお話の、普通の一般物価指数並に倍に上つて、五千億の収入があるといつても、必ずしも不当ではないのであります。ところがこれは公共的な仕事でありますから、一般物価水準並ということも無理であろうと思いますが、やはり二千五百億が三千億なり三千五百億あつても、私はそうおかしくないのではないかと思うのであります。そしてもしその程度の収入がありとすれば、片方で経営の問題あるいは改良費の問題、すべてにある程度まで資金のやりくりもできて、やりたい工事もでき、いろいろサービスの向上もできるのではないか。私は根本的にはそこに問題があろうと思うのであります。しかしいろいろな意味で政策的にそういうところで押えられ、ことに戦後インフレの始まりのころ、鉄道運賃というものが非常に政策的に押えられて参つておりましたのが致命的なかつこうになりまして、その後一応安定した姿のままで、いろいろ物の上るどんじり役を受けて参つておるわけであります。ことに先ほども指摘がございましたように、来年度予算というものは非常に弾力性が乏しい予算でありまして、そういう意味において、二十九年度の弾力性の不足から来るいろいろな問題については、私ども非常に心配いたしておるわけであります。  仲裁裁定に関しましての御意見も、立法的な立場からは、私ども今のお話もよくわかるのでありますが、ただいまの公労法の建前から見ますと、一つのルールをきめたわくの中でのやり方という点を考えますと、まことに残念ではありますが、一応ああいう措置をいたさなければならなかつた点も御了承願いたいと思うわけであります。
  32. 青野武一

    青野委員 幸い長崎国鉄総裁が御出席になりましたのでお尋ねをいたします。途中からおいでになつたので、私の質問をしておりまする内容が十分お聞取り願えなかつたかと思いますが、今の公労法を修正しようとすれば、どの点をどうすることが一番いいか。それと、先ほど私が質問の中で申しましたように、自由党の当時労働大臣を勤めた人が、予算総則給与総額裁定問題にひつかかつて来るとは、私自身が夢にも想像しなかつたということ非公式ではありますが、この前の予算委員会の部室で私に言われたのであります。第一回の国鉄仲裁裁定の出たときには、予算総則給与総額も全然出てなかつた。だから十六条と三十五条でわれわれは火花の散る論議を労働委員会でした。ところが今月では給与総額で縛つてしまう。公労法よりもこつちの方に重点を置いてそうして予算上資金上支出不可能である、そういう方面へ持つて行つてこれの実施をしないように持つて行く。公労法というものは、これは長崎総裁お尋ねしておるのですが、これも先ほど申しましたように、マッカーサー元帥が日本人の急進的と目される団体を、占領政策の一環として縛ろうとした法律なんです。アメリカ日本から事実上撤退はしておりませんが、占領政策を解いた以上、独立した以上は、こういうものはアメリカがかつて日本の占領政策でつくらした法律なんだから、これを一ペん廃案にして、憲法で保障せられておる労働三法を適用するのが当然だ。国鉄だけじやない。三公社五現業みなその通りである。あまりに占領政策の遺物を尊重し過ぎるきらいが当局に多いのではないかと私は思う。このままにしておけば、必ず好むと好まざるとにかかわらずベースアップの問題、仲裁裁定の下つたときには、何十人かの人が犠牲者になることを覚悟せなければならぬ。経理が弱体して行けばまた相当大きな問題が将来に残されて来る。このままで長崎総裁はいいとお考えになるか。修正をしようとすればどの点をどう修正したら将来に問題が残らないか、これは非常に重大な問題ですから、石井運輸大臣にも尋ねたいと思つておりますが、国鉄総裁であり、最高の責任者でございます長崎さんに、この点を明確にしておいてもらいたい。私どもは十八名の解雇は不当であると思います。あなた自身が責任者として詰腹を切るか、国民に列車遅延などで迷惑をかけた点は私の不徳のいたすところである、公労法に欠点がある、仲裁裁定が完全に実施できなかつたためにこういう問題が起つておるのだ、一にかかつて私の責任でございましたという態度を表明してから、犠牲者を出すなら出すべきですけれども、それをお留守にして、そうしてアメリカの残して行つた何万というあいのこと同じように、こんなばかげた法律を後生大事に抱いて、そうしてそれによつて幾多の問題が起るたびに、その責任者、指導者を解雇して行くなどということは、将来にもこの問題は残るから、この際長崎総裁お尋ねをしておきます。
  33. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 青野先生にお答え申し上げます。公労法がいろいろな欠点を持つておることは、御指摘通りかと私は考えます。決して完全無欠な、何らの欠点のない法律だとは思つておりませんが、現在の法律のある以上、いかなる欠点がありましても、できるだけそれを是正していい方向に持つて行ように努力すること、これがまず私どもの考えなければならない点でございますので、今先生のおつしやいましたように、どういうところをどう改正したらいいのかという点は、私たちばかりでなしに、あらゆる方面の知能を動員しまして、考えていただきたいと私は思います。私どもも一、二こんなことをしたらどうかというようなことをいろいろ考えておりますが、しかしいずれの考えをとりましても、結局やはり残されるものはそこにあるのでございまして、私は途中から入つて参りましたのでよくわかりませんけれども、先生のおつしやることは、根本の問題は結局日本国有鉄道財政上の自主性とでも申しますか、そういうものをまず考えなければならぬのではないかという御意見のように私は拝聴しております。あるいは間違つておるかもしれません。これはやはり根本的な問題でありまして、法律がいかに改正されましても、日本国有鉄道財政状態がよくならない限り、従業員諸君の福祉の増進はむろんのこと、もつと根本的な国民各位に対するサービスの面においても、非常に遺憾な点が残されると思うのであります。これは最も根本の問題じやないかと思います。少し余談になりますが、御参考までに申し上げておきますけれども、先ほど副総裁からも申しましたが、私も過日来欧米各国をちよつとまわつて参りました。主として欧州の鉄道を見て参りましたけれども、ヨーロッパの鉄道はほとんど全部が国有であります。経営の形態はいろいろかわつておりますけれども、国有であることは間違いない。従いまして、物価運賃との間には、国の経済政策の見地あるいは財政上の見地からいたしまして、運賃物価に比して押えられておることも事実であります。しかしながらその押え方が、物価に対して、私の見たところでは三割ないし四割程度の押え方であります。しかるにわが日本国有鉄道におきましては、物価が三三〇に対して運賃は二二〇ないし一四〇というふうに、半分以下に押えられておる。私は国有である以上、公共企業体である以上、物価と同じように運賃を上げていただきたいとは申しません。しかしこれではあまりに押え過ぎておるのではないかと思う次第であります。そういう面において、われわれはむろん経営の合理化もいたします、近代化も大いに努力したいと思つておりますが、根本の財政上の面において、いかにも運賃が押えられ過ぎておるのではないかというふうな感じがどうしても抜け切れないのであります。こういう面で運賃法を改正していただきまして、そうして国鉄財政上の自主性をまず与えていただく。それと並行してさらに法律の改正も考えていただくということが、問題を解決するまず第一歩ではないかと思う次第でございます。
  34. 青野武一

    青野委員 これは先ほども運輸省関係幹部の方に御質問をしたのでありますが、長崎総裁はそのときにはまだおいでておりません。今の物価騰貴率とか、一般国鉄旅客運賃の値上り率等は、私が御質問を一番先にしたのでございまして、大体了承をしておるのでございますが、確かに物価騰貴率に比べて半分程度国鉄料金を押えておるのは事実であります。しかし終戦後たしか八回か九回やつぎばやに料金を上げたことも事実である。サービスも、従業員諸君サービスが悪いというのではなく、乗客は多くなつたが、列車に乗れようと、腰かけようと腰かけるところがなかろうと、すし詰めに詰め込みまして、設備の面では二割五分程度鉄道延長その他をやつておる。そうして働く従業員諸君の協力を求めて、国鉄経理の内容を充実強化せなければならないのを、事あるごとに問題の原因をつくつて、指導者、組合の幹部の首を毎年々々切つてつたのでは、協力のしようが労働組合側にはないのじやないか。私は人事関係を一新して、ほんとうの国鉄の前線に立つて日本国有鉄道の債券と強化のためにやるには、あまりに今の幹部諸君では私は大きな期待が持てません。そこで私が長崎総裁お尋ねしたのは、そういう横道にそれた御答弁ではありません。今の公労法のどこを直せというより、私は廃案にしろと主張しているのです。これがある限り、そうしてあなた方は仲裁裁定を、八月から完全に実施せよという裁定が下つても、今年の一月に延ばし、言うことを聞かない者は首を切る、公労法違反だと言う。あなたたちの違反は大体だれが首を切るのです。国民の代表である国会以外にないでしよう。運輸委員会予算委員会労働委員会等でこれら働く諸君の意思を代表し、利害を代表しなければ、だれが代表するのですか。あなた方自身は切捨てごめんである。新聞記事は誤報であるという考え方で、二面においては鉄道会館事件を引起して国民の疑惑の中心になり、人の首はどんどん切つて行つて、責任の所在を明らかにしないようでは、大きな日本国有鉄道の最高幹部としては適任ではない、私はこう考えておるのです。このために仲裁裁定は、物価の変動によつて必ずまた起ります。国鉄だけではありませんよ。それは専売公社だけは可能性がある。これでもほかとのバランスをとるために、いつでも同じ歩調で持つて来て押えつけられる。国鉄に関する限りは、確かに物価騰貴率に比べて半分程度で、旅客運賃貨物運賃が押えられておることが、この経理の弱体化を招いた一大原因である。もつと意地を持つて、もつとまじめに大蔵省折衝すれば、風水害の八十億円ぐらいは一ぺんにとれないことはありません。政府借入金を三十億流用するというような姑息な手段でなしに、日本国有鉄道を外国並に、料金もある程度上げなければ経理がやつて行けなければ、国民の納得の上で上げなければならぬ場合がありましよう。けれども自分たちの努力が足らないで、ほかの諸君にのみ犠牲をしいるという今の国鉄幹部諸君の行き方については、これは私は逆に園長から疑惑を持たれ、また信用を得る道ではないと思う。これは毎年起ります。私も労働組合に非常に関係の厚い者ですが、遵法闘争賜暇戦術等によつて、私は九州で、東京で過去何回かあつた仲裁裁定については、その先頭に立つて、あるいは裏面にあつて相談を受けている。そうして最後はこれらの諸君が、全部の諸君のために働いて無残にも失業の街頭に投げ出される、そういうことが毎年毎年繰返されるというのは、こんなばかげた公労法があるからなんです。今の経営者がずらりと最高の地位、重要な地位に腰をかけておるから、こういう問題が起つて来る。あなたたちは自己の責任ということを考えなければいけない。桜木町で電車の焼けた事件で、何とかいう惜しい総裁がみずから責めを負うてやめた。私はこれを見習えとは申しません。人間は人に強制せられてやめることは、一生を通じていやなことぐらいはわかつております。けれども日本国有鉄道を大きく再建して、国民の信頼にこたえ、経理の内容を充実しようとするならば、相当の出血は免れません。四十六万の従業員諸君だけにその犠牲をしいるような行き方は、私どもは断じて賛成することはできません。仲裁裁定完全実施は将来ともにできない、できないということになれば犠牲者が出る、そういうことを毎年毎年繰返して行くということは、私どもにとつては承服しかねる点でございます。十八名の指導者の解雇は公労法によつてつたと言うが、一人々々について私も調べておるのでありますが、ではほかの者は首を切らないでもよかつたのか、同じ行き方をした諸君相当ある。たくさんの人をこの十八人と一緒に首を切れと言つておるのではありません。こんなに大量に首を切らなければならなかつた理由はどこにあるか、そういう人たち長崎総裁は首を切る権利がありますか。あなた自身が原因をつくり、種をまいておいて人を罰する。日本の民主裁判は疑わしきはこれを罰せず。双方から証人が出る、物的証拠が出る、疑わしきはこれを罰せず、これが基本方針になつている。みずから公労法を破り、完全実施を怠つておきながら、生活権防衛自分たちのために、組合のために闘つた者を無残にも首を切つて行く。そこのがんをそのままにしておいて、それでさしつかえございませんというような考え方でございますならば、私はすみやかに退陣を要求するものであります。この点についてもう一ぺん明確に御答弁願います。
  35. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほど申し上げましたように、公労法自体が非常に完全なものであつて、何らの欠点もないというふうには、私も考えておりません。しかしながら法律がございます以上、やはりそれに従つて行かなければならぬのは私どもの責任でございます。仲裁裁定の完全な実施ができなかつたということは、私も非常に遺憾に考えるものであります。しかしながら事実その通り実行できなかつた、だから会度は法律に反した行為をしてもいい、よつてつて国民各位に非常な迷惑をかけてもよろしいということには相なりません。法の命ずるところに従つてやむを得ず処分せざるを得ないということは、遺憾でございますけれども、これは日本が法治国である以上、従わねばならぬことであろうと私は考えております。
  36. 青野武一

    青野委員 私はきようは海運関係は十数通りばかり質問要綱を持つておりますが、本日は陸運関係を主としてやつてもらいたいという委員長からのお話もございましたので、私はそういう方針でやりますし、あとで楯君から関連質問があるそうでございますから、ただ私は最後に二、三点お尋ねしたいと思いますことは、今の長崎総裁のような答弁を私は求めたのではございません。公労法の改正どころか、適用範囲を三公社五現業まで広げて来た。まだまだ広げる予定である。国家公務員に対しても、もつと強いわくをはめようとしている。五十万の教職員諸君には、政治活動を禁止する法案を、十二日の閣議決定後ただちにこれを出そうという大体の態度とも、きのうの議運で私は聞いているのでありますが、次から次にこういう反動立法が生れて来る。そして依然アメリカ一辺倒の外交方針をやつている。私は国民に迷惑をかけたことは、確かにそれは認めます。しかし原因をつくつたのはだれかということを私はお尋ねしているのです。私は、運輸委員は今度が初めてで、今まで予算委員でありましたから、念のために一つの例を申し上げる。八十日を越した電産の争議、六十三日を通り越した炭労の争議、これは日本国民に非常に迷惑をかけたということになつている。それは国鉄闘争と同じだといわれるが、八十何日争議をやつた電気産業労働組合の組合員の諸君が、ただの一ぺんでも、日本全国の電燈をつけ、動力をとつているところの諸君に、スイッチを握つて送電を停止したり制限をしたことがありますか。八十何日のうちに一ペんもなかつたのです。これは九つの電力会社の経営者が、かつてにスイッチを握つて操作した。それを労働組合がストライキをやつているから、ネオン・サインが消えたり、朝晩の大切なときに電燈が消えるのです。こういう宣伝をしたが、たとえば炭鉱や造船所であるとか、製鉄会社といつたような、大きいところにアメリカの命令通り七割の送電をしているから国民が迷惑をしたのです。経営者がかつてにスイツチ操作をやつたのです。そこで電産労働組合は、みずから職場を占領してスイツチを握つて、朝鮮戦争に必要な軍需兵器をつくるところの大工場の送電を制限した。そのために、ごらんなさい、新宿でも、渋谷でも、浅草でも、きのうまで消えておつたネオン・サインが赤々とついて、電産がスイツチを握つた瞬間から、日本の需用者に一分間たりとも電燈を消すことがなかつたじやありませんか。それを新聞を通じ、ラジオを通じ、当時の電力会社の幹部を通じて、電産が八十何日間ストライキをしているから、日本の国民諸君は電燈を制限せられ、消燈をされるのだと宣伝したが、裏は全然逆なんです。炭労の争議を見てごらんなさい。何のため六十三日続いたか。昭和二十七年度下半期の統計をとつても、大手十八社が半年の間に七十五億円の厖大な金をもうけているので、われわれはバスケツト方式によつて賃金を上げてもらいたいという賃上げ闘争に入ると、一割七分の賃下げで対抗して来た。おのれたちは半年で七十五億の金をもうけている。三井も、三菱も、住友も、古河もみなもうけている。私の控室の机の前には統計が張つてある。そういう金をもうけておいて、労働組合諸君がやつて行けないから給料をもう少し上げてもらいたいということを要求すると、一割七分の賃下げで対抗して来た。それが結局、石炭産業が何百万トンという石炭が掘れずに、六十三日続いた争議の実態であります。あなた方は国鉄労働組合諸君が列車を遅延さした、あるいは東京あるいけ新橋、横浜で何千人の人が列車が動かないために迷惑を受けた。迷惑を受けたことは事実ですけれども、だれがそういうことをさしたかと言うのです。これをはつきりしておかない以上は、いつまでもこういう問題を繰返して運輸委員会なり労働委員会等で、同じ問題が毎年々々むし返されて行く。この点について真相が国民に発表せられるときは、いつでも曲げられて報道せられておる。こういうような情勢をあなたたち仲裁裁定の場合に——もう一ぺん私はお尋ねしている。このままで、やはり今まで通り不完全な実施犠牲者をつくる意思があるのか。このままでは当然そこへ入つて行く。正面衝突でそこへ行かざるを得ない状態になつておるのですが、この点についてあなたたちは具体的な改正案であるとか、あるいは遵法闘争賜暇闘争をしなくても労働組合諸君が納得して、欣然としてみずから進んで労働意欲を高揚して、国鉄諸君と手を握つて鉄道の再建のために努力するのにはどういう具体的な方針がいるかということについて、相当御研究になつておると思いますので、この点を最後に明確にしておいてもらいたいと思います。
  37. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 お話通りでございまして、毎年繰返されそうである前途を、何とか少しなりともかえて参るということには努力するつもりで、着々そういう方向には向つておりますけれども、なかなか具体的に、これをやれば起死回生である、一ぺんに片づくというような方法は、発見に非常に困難をいたしております。しかしどうかして事態をもう少しかわつた方向に持つて行きたいという心持は、これももうお話したかと思いますけれども、私どもが持つておると同じように、組合の諸君も持つておるのじやないかということを、ひそかに私は感じておるわけであります。従いまして今後におきまして、組合の諸君ともほんとうに腹を打割つて話合いをし、どういう方向に持つてつたならばいいかというようなことについての具体的な道を、次々と発見して参りたいというふうにほんとうに私は考えております。決してこれは国会的答弁のつもりではございません。何とかして行きたいものだ。お話通りどもだけで国鉄は動くものではございません。組合の諸君の大きな力、大きな協力なしには、国鉄は運営はできないのであります。そういう意味合いにおきまして、何か平和な手段でもつて解決ができる道はないかというふうなことを、今後において私は組合の諸君とつくり話し合つて、その道の発見に努力して参りたい、かように考えております。
  38. 青野武一

    青野委員 最後にもう一点だけお尋ねしておきます。それは私が冒頭に御質問いたしましたときにちようど来ておりませんので、重複するおそれがあるかもしれませんが、責任者としてお尋ねしておきます。委員会の空気を申し上げるわけではありませんが、三十線の新線計画が挫折して、予算関係がおもな原因になつてこれが中止するところが出て来る。これは地方の諸君にとつてはたいへん大きな問題であり、党派を問わずその地方から出ている議員諸君も非常に窮地に立つことであろうと思いますが、これは明日かあるいはその後か、海運関係質問が行われるので、私はきようは海運関係のことは一口も申しておりません。けれども陸運と海運を比較いたしますると、あまりに陸運関係の方がまま子扱いにせられておる。そこで予定の三十線が完成したあかつきには、三十三億円程度の赤字が出る、私が予算委員会でこういう質問をしたときに、長崎総裁は、いや三十三億どころではございません。四十億から五十億くらいの赤字が——三十線の新しい線路が完成すると、そこだけで四十億から五十億の赤字が出ます、こういう御答弁をなさつた。私はここにその記録を持つております。それはあるいは事実でしよう。しかし国有鉄道は損をするところも赤字の出るところもありましよう。国全体からバランスをとつて行けばさしつかえのないことでございますが、この点について海運関係は、私のここに持つておる資料によりますると、今の大臣関係しておる船会社があり、前の大臣関係しておる船会社もある。それから国務大臣のある人が直接関係しておる船会社もある、そういうものは実績のいかんにかかわらず、五次、六次、七次、八次、九次の全期まで、いろいろな融資を受けて、あの三党で決定いたしました線に沿うてみなそういうような恩典に浴しておる。しかも利子の補給融資については、私はここに資料を持つているが、大臣が三人関係をしておる。そうして先頭に立つて運動をして、国民の税金をそつもの方に持つて行つて国鉄の方は三十の新しい線をつくろうとするのを、一部とめなければならない。片一方は国民全体の税金でどんどん船をつくらせる。そういう片手落もなことを長崎総裁は、じつと腕を組んで横から見ておられるから、こういう結果になる。経理の内容が充実しないのは、あなた方があまりに熱意がないからである。私は先ほども申しましたが、水害で八十億やられたものを、どうして大蔵省から全額もらえないのか。こういうものを四十六万の諸君を酷使して、朝から晩まで働いて、危険な仕事に従事さしておいて、上つて来る利益で、これを自己資本でまかなえなんて、そんなべらぼうな話はありません。これは結局あなた方が手腕を疑われる結果になる。そういうものを次から次へと背負うて行くから、仲裁裁定実施されない。だからその点について三十線を計画通り実行するについては、海運関係と同じように、疑獄事件を起せというのではございません。これを実行するために、せめて国家がその経費に対する利子ぐらいはやはりめんどうを見るのが私は当然だと考える。長崎総裁は、その点についてどのようなお考えを持つておられるか。  あわせてもう一つ伺いますが、あやまちを改むるにはばかることなかれでございます。十八名の諸君を、あなた方は何らかの形で復職を認めるか、解雇を取消す御意忌があるか。この前あなたは、何日であつたか忘れましたが、年末手当の問題で夜明け方に妥結したとき、私があなた方のところに労働委員会決議を、楯君と一緒に持つて行きました。そうするとあなたは、衆議院の先生方は、私の権利をどうして、そう押えるのですかということをおつしやつた。私の目の前で、委員長の大和与一君と手を握つたところをあなたは新聞の写真にとられておつた。そのときに、労働委員会では自由党、改進党、社会党右、左、労農党に至るまで、全員二十五名が満場一致で、今度の特別にやつた賜暇戦術については、一人の犠牲者も出さないでほしい、これを本会議の縮図である最も権威ある衆議院労働委員会が、各党一致で決定した決議文を、私はあなたにお渡ししている。そのときに大和君を初め三役をあなたは首切つた労働委員会衆議院の意思を蹂躪してあなたは切つたのだ。あの決議が出れば首を切らなくてもいいのです。切らなくていいものをあなたは冷酷無情にこれを解雇してしまつた。今度はまた十八名という大量を、得たりかしこしと切つた。あなたたちがそういうことをすれば、私の方からあなたの首を切りますよ。自分の責任というものを考えなければいかぬ。十八名の解雇者を復職するか、何らかの方法によつてこれを取消すか、取消すには口実がいるでしよう。口実がいるのなら、運輸委員会労働委員会がそういう形の決議をするかもしれません。この点についてあなたはどう考えるか。この二点を最後に御質問をしておいて、あとの方に譲りたいと思います。
  39. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 新線建設につきましては、私どもも別に新線の建設には反対ではございません。国家的見地に立ちまして、眠つておる水あるいは眠つておる資源が開発されて、国家相当な利益を受けるということは、これは日本現状から申しまして、私は適切な施策の一つであろうと思います。あるいは電源開発、あるいは国土の開発ということは、非常に必要であろうと思います。しかしながらこの新線の建設によりまして、日本国有鉄道だけが損をするということは、何といつてもおつしやる通り片手落ちの処置ではないかと思います。従いまして、私は就任いたしまして建設審議会等に出られるようになりましてからは、少くともこの資金は政府の出資によるべきものではないか、国の財産がふえるのでありますから、国が投資をするのがほんとうじやないか、もしそれができないならば、せめて利子だけでも償つてもらえる、補給してもらえるというのがほんとうじやないかということを、口をきわめて論じて来ておるのであります、しかしながら私の力足らずして、今日までまだ実現の運びには至つておりませんが、私の見るところでは、当時においては一顧だにされなかつたものが、今日では相当同意の方ができて参りまして、やがてこれは実現ができるものじやないかというふうに考えてなお一層の努力をいたすつもりでおります。国鉄財政現状あるいは国鉄の前途等につきまして私どもの説明が足らず、国民各位の納得が得られない、あるいは国会の皆様の御理解がなかなか得られないという点につきましては、非常に私は残念に思つておりますが、今後においてもでき得る限りの努力を尽しまして、国鉄財政の状況あるいは国鉄の前途がどういうふうになつて行くかということについての御説明は、私は力を尽して御理解を得るためにやつて行きたいと思つております。ただいま例に出されました船舶のことでございますが、この運送というものは非常におもしろいのでありまして、船舶業者は船を持つているだけでありまして、港湾についても、燈台についても、すべてそういうものは国ないし府県というような公共団体がこれを建造しております。飛行機においても同様であります。バス、トラックにおいても同様でございます。ただ鉄道だけは全部が全部これを負担しなければならないというのが従来のやり方でありますけれども、これは鉄道が陸運の王者として、いわゆる独占的な権威を持つてつた時代においてはその通りでよかつたかもしれませんが、今日においてはその独占の王座はゆるぎりつありますから、その点から見ましても、これは何らかの措置を講じなければ、非常に不公正なものになるのではないか、不公正だけならいいけれども鉄道というものはやがて破滅のふちに瀕することになるのではないかと思つておる次第でありまして、その憂いにつきましては、青野先生と私は同じ憂いを持つておるのでございまして、せつかく深い御理解がございます先生の今後の御協力にまちまして、及ばずながら努力を続けて参りたいと思いいます。  今回の十八名の問題につきましては、今日のところこの処分を取消す、あるいは撤回するというような考えは持つておりません。
  40. 楯兼次郎

    ○楯委員 関連して……。
  41. 關内正一

    關内委員長 中居君の御発言の順序になつておりますが、楯君より関連質問がありますからこれを許します。楯君に御注意しますが、関連でありますから、二、三回で終りを願いたいと思いいます。
  42. 楯兼次郎

    ○楯委員 そのかわり中居さんが済んだら、私は前日質問を保留しておりまして、たくさん質問がありますから、あとでひとつお願いします。今は関連をいたしまして二、三点質問をいたします。今わが党の青野委員質問に対する総裁答弁を聞いておりますると、非常にふまじめである。一体あなたは公労法仲裁裁定実施を何回経験をされたか、まずそれからひとつ承りたい。
  43. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私は就任いたしましてから二年になりますから、たしか二回だと思います。
  44. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、総裁は今回が初めてなら、今のあなたの答弁をもつともだと思つて聞いておきます。しかしすでに二箇年間国鉄を経験しておりますし、あなたは公労法の欠陥を、答弁によれば十分認めておられる。その欠陥によつて毎年々々一年二回の組合との争議が起きておるものであるというふうに私どもは了解をしております。この欠陥を直すのは、あるいは改悪にたるか、あるいは改正になるか知りませんけれども、一体この欠陥を直す責任はだれにあるか、あなたはだれにあると思つておりまするか、御回答を願います。
  45. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 公労法の主管大臣は労働大臣だと私は思います。
  46. 楯兼次郎

    ○楯委員 なるほど主管大臣は労働大臣です。しかし争議をやるごとに国鉄が中心になつて、大きな問題を投げかけておると私は思つておるわけであります。従つて、これが改正ということは、当然あなたなりあるいは運輸省が中心になつて改正をしなければ、私はだれも中心となつて改正はしてくれないと思う。しかもあなたは、ああいう争議が起るということは、この公労法の欠陥によつて出て来たものであるということを繰り返し繰り返し述べ、なおただいまこの席上でもこれを改正したい、何とかしたい、こういうことを言つておられるわけであります。これは私は当然総裁もその責任の大半を負うべきものである、こういうふうに考えまするが、もう一回ひとつその責任についての回答を願いたいと思う。
  47. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 公労法の改正につきましては何かしていただきたい。それはもうどういうところに欠陥があるか、どういうところに毎年争議が繰返されることがあるかということは、はつきりしておるのではないかと私は思う。ただその方法がなかなかむずかしいということで、いろいろ考えられておると私は心得ております。従つて、私は改正について決して等閑に付しておるわけではないのでありまして、しばしば大臣ともお話し、またいろいろとお話合いをしたこともあります。が、なかなかその方法手段が困難な点が多々あるので、今日まで考究されておるという形であると私は心得えております。
  48. 楯兼次郎

    ○楯委員 質問が制限されておりますので、私はまだ言いたいのでありますが、次に二つばかり質問いたします。あなたはよく考えていただきたいと思う。人ごとのような答弁をしておいでになりますが、あなたが先頭に立つてこの公労法の欠陥を是正しなければならぬ。これは労働組合が直すのでもないと思う。もしあなたがこの欠陥を改正できないとするならば、私はあなたの手腕を疑わざるを得ない。その責任をひとつ十分考えていただきたい。それから先ほど答弁を聞いておりますと、この改正については組合の方とも相談をしてやつて行くというような答弁をしておりまするが、十人名の首を切つておいて、この席上であなたは相談をして今後やつて行くというようなことがよく言えたものである、こういうふうに考えますが、あなたはどういう意味でそういうことを言われたのか。十八名を解雇しておいて、そして労働組合と今後よくなるように相談をして行く、そんなばかなことは通らぬと私は思う。どういう意味でそういうことを言われたのか、ひとつ御回答を願いたいと思う。
  49. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私は何も公労法の改正だけに限つて相談をして行くということではないので、もつと広い意味で、平和な方法国鉄の運営がうまく行くように、またああいうようなことを繰返さなくても済むような道がないかどうかということを、今後話し合つてみたいという心持を持つのでありまして、それと処分を切り離して別個に考えても、考えられないことはないのじやないかというふうに考えております。
  50. 楯兼次郎

    ○楯委員 いま一つ、これは私繰返す必要はないと思いますが、先ほど青野委員も言いましたように、あなたが処分をされたなら、何らか改革をしておらなくてはならない。それが全然ないじやないですか。先日委員会で私が申し上げましたように、具体的にあげましてもたくさんな問題がある。たとえばあなたは運賃が安いから困る、こういうことを言うておいでになりますが、昨年起きた水害復旧費用でさえ、従業員のかせぎ出した金によつて埋め合せるという方法をとつておるではありませんか。しかもこの水害復旧費用を全然政府が出さないといえば別であります。各省は水害復旧についての費用をとつております。あなたはどういうふうに努力をされましたか、私聞いておらないのですが、こういう問題を解決せずして、ただちに運賃値上げというところに来るのは、私は一つの言いのがれである、こういうふうに考えておるわけであります。それからいま二、三申し上げますと、先日も申し上げましたように、あなたは片方で首を切つておきながら、すでに年末手当、あるいは期末手当、あるいは勤勉手当で、公務員と〇・二五の差をつけておる。こんなささいな問題でさえ、あなたは解決しておらぬではありませんか。さらに各委員が盛んに言つております新線建設利子補給のわずか五億か六億の金さえ解決しておらない。しかも公労法の欠陥については、その案すら政府にまだ提示をしておらない、そういう点々私どもは追求しておるわけです。一方あなたが首を切つたなら、当然あなたのやるべき責任も私は果さなくちやならぬと思う。それが果せないとするならば、残念ながらあなたの手腕を私どもは疑わざるを得ない。こういう点についてどういうふうにお考えになるか、御回答を願います。
  51. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 いかにもごもつともでありまして、そういう問題を一々拾い上げられますと、そういうことが言えるかもしれません。しかしやはりそういう問題が困難であればあるほど時間がかかります。なるほど二年の時間は経過いたしました。しかし最初の一年は、私の就任したのが八月でございますから、当時はすでに予算ができておりました。そういうような次第であると同時に、さらに何と申しましてもこれだけの大きな企業体でございまして、それにアメリカ軍のいろいろな意思というものが非常にまじつて来ておる。それらの是正もしなくちやならない。あるいはまた国鉄の内容等について、国会の皆様を初め国民各位の御理解を得るということについての努力というようなものは、そう容易なものではないと考えております。従いまして、今後においてもますます努力はいたしますが、今日過去を顧みますと、国鉄に対する関心と申しますか、御留意と申しますか、そういうものが非常に深くなつたという意味におきまして、私は今後を期待しておるわけであります。なるほど〇・二五の問題などにつきましても、それは解決されておりません。しかしこれはひとり日本国有鉄道だけではございません。三公社についてもやはり同様でございます。そういう面についての努力は、やはり三公社足並をそろえて行かなければならぬ。今年におきましてもむろん足並をそろえてやつたのでありますが、遺憾ながらまだ問題が残つておるというふうな状況でございます。また新線利子補給の問題につきましても、ずいぶん運輸省を通じまして御努力を願つたのでありますが、われわれも事あるごとにそれを主張して参つております。しかしながら、それはむしろ金が小さ過ぎて認められないのかもしれません。どうも理論が一貫しないという点において、私は非常に遺憾に思つております。現に、これは余談でございまして、おしやべり過ぎるかもしれませんけれども、ヨーロッパの鉄道等におきましては、国鉄というものの財政的地位が相当認識されまして、政府その他においていろいろな面で補給、援助という手段が講ぜられつつあります。そういうような実例等も今後においてごひろういたしまして、十分なお考えを願わなければ、国鉄自身が十年、二十年の後において破滅に瀕するのじやないかということを、私はほんとうに心から心配いたしております。とにかく、それでは鉄道というものはいらないかと申しますと、どうもそうでもないようであります。やはりラッシユアワー、あるいは旅客輸送というものは、バスではとうてい十分に果せない。あるいは石炭、木材、砂利というようなものの輸送は、やはり鉄道でなければならないということになると思います。でありますから、今日において十分皆さんにお考えを願い、御協力を願つて国鉄の建直しをやらねばならぬと考えております。
  52. 楯兼次郎

    ○楯委員 総裁はいろく言われますが、私たちはそういうことを言つているのじやないのです。あなたが今各委員が、要請することは非常に困難であるということは、十分認めております。それからあなたは〇・二五についてはよその三公社、五現業も同じであると、非常に安易なことをおつしやつておりますが、やがてまたことしこの問題を中心にして労働攻勢が起るから、私は注意をいたしているわけであります。そこで私どもの言いたいのは、あなたが非常に困難であつて、努力をしているということは認めます。ただ自分たちの責任を果さずして、しかも自分たちの責任を果すという曙光がわれわれには見えません。そうしておいて、片方では十八名を処分するという片手落ちのことをなぜやるか、そういうことを私どもは追究しているのです。この点をひとつ十分考えていただきたいと思います。質問を抑制されておりますので、私の関連質問はこれでやめて、あとでまた質問をいたします。
  53. 臼井莊一

    ○臼井委員 青野先生の質問に関連して一点お伺いしたいのですが、国鉄の事業報告の貸借対照表によると、固定資産が二十七年度末において約一千億でございます。それに対して、実際は約一兆五千億くらいの資産があろう。これは全部が固定資産であるかどうかわかりませんが、そこに非常な違いがある。実は前回の運賃値上げの問題のときにもこれが出たのですが、これをなぜ再評価しないかということをお伺いしたいのです。この再評価の問題はひとり国鉄ばかりでなくて、日本のすべての事業が再評価をなしていない面があるために、そこに非常に余剰の利益を出して、これが浪費される。従つてこれを場合によつては強制的にでも、事業会社においても再評価さして、日本の事業の健全化をはかることが必要でなかろうかということが論議されているのです。国鉄は再評価したくても、これは赤字が出ているわけです。しかしその見返りとして、取替補充等においてある程度再評価したような形で相当に手入れはしておられるようでありますが、いずれにしてもはつきりと再評価をすれば、たとえば土地や建物、場所等を貸している料全等においても、一般の世上における料金と同じように値上げということも当然はつきり出て来ると思うのですが、その理由でございますわ。これは普通の会社ですと前回は税金をとられたのですが、私は国鉄ですからその税金をとられたいと思うのですけれども、何か御関係があるのでしようか、その点をちよつとお伺いしたい。
  54. 石井昭正

    石井説明員 国有鉄道で再評価をいたしませんのは、実は主として事務的の問題でございまして、全国各地にばらまかれておりますところのたくさんの資産につきまして、取得年次その他の実態、それらを全部調査いたしますと、今までの考えでは、まずどうしても二年ぐらいの日数と、相当の人手を要する。しかしながらこれは適当な機会にやらなければ、健全な財政の姿がつかめませんから、ぜひやりたいとは存じておりまするが、それすでに対応いたします暫定手段といたしまして、先ほどお話がございましたように、昭和二十二年でございましたか、概略調査した資料に基きまして、それから以後経年の物価の値上り、資産の投入等を差引いたしまして、減価償却費といたしましては、一応それに見合うものを計上いたしたいと考えておるわけでございます。ただその減価消却費が、ただいまのところでは第一次再評価の線で押えられておりますが、私どもはぜひこれを第三次再評価の線まで引上げたいということで、本年も予算上の折衝をいたしたのでございまするが、御承知のような財政方針で、運賃値上げも不可能になしましたので、二十九年度も第一次再評価の線で押えられております。これはお説のように特別補充取替費という名目で、結局再評価を十分いたしておりませんが、ある程度いたしたものに見合う償却費を立てておる、こういうことであります。
  55. 臼井莊一

    ○臼井委員 再評価はしたいけれども、非常に費用と人手と人数がかかるというお話です。全部一ぺんに正確にやろうということになれば、これはなかなか容易でないと思うのですが、やりいい方面から逐次計画を立ててやつて行つて、二年かかるなら二、三年のうちには大体全部完了する、こういうようなことによつてやらないと、もともと安くできている鉄道だから、安いのはあたりまえだ、われわれしろうとから考えると、ついそういう考えが出がちになるので、こういうことを十分お考え願いたいということを申し上げておきます。
  56. 關内正一

  57. 中居英太郎

    ○中居委員 実は私運輸大臣に陸運行政についてお尋ねしたかつたのでございますが、予算委員会に出席の模様でありますから、政務次官に質問いたします。先般来当委員会におきまして、陸運行政全般につきましての当局の説明がありました。これに対する質疑応答を私開いておつたのでございまして、それによりまして陸運行政の微に入り、細に入り私了承できるように思われるのでありますが、二、三私の了解に苦しむ点があるのでございまして、重複する点があるかもしれませんがお尋ねしたいと思うのでございます。最初に政務次官を通じまして、今日の政府国鉄に対する方針をお尋ねしたい、こう考えておるわけでございます。具体的に申し上げますと、国有国営の鉄道が、二十四年六月から公共企業体として発足いたしたのであります。その性質も、公共性とともに企業性ということも明文化せられて、今日まで約六箇年間運営されて参つたのでありますが、過去六箇年間の公共企業体としての国鉄の運営を通じまして国鉄当局におきましてもあるいは運輸当局、ないしは政府といたしましても、相当に考えられるところがあつたのじやないかと私思つてつたのであります。先刻青野君からも、この根本的な問題について質問があつたのでありますが、公共企業体としての国鉄の、過去の経験から見まして、あくまでも公共企業体としての企業性、あるいは公共性、この二つのものや持つた国鉄経営を続けて行くことが妥当と思われておるかどうか。ないしは昔の国有国営という方式に改めて行くことが、国鉄全般の運営のためによろしいか。この二つの点について、今日までの経験に徴して御意見を承りたい、こう考えておるわけであります。
  58. 西村英一

    西村(英)政府委員 これは大臣からお答えした方がいいかと思われますが、私個人の意見を申し述べますと、二十四年に国有鉄道が公共企業体になつたのであります。これは当然必ずしも公共企業体を望んだからそうなつたのではなくて、ある程度押しつけられたということも、これは確かでございます。しかし今日まで経過いたしまして、公共企業体になつたために、どれだけの実績が上つたかということをいろいろな面から考えましても、数学的にもなかなか出ません。但し日本の官業は一般に能率が悪かつた。それを民間企業に近づけた方がいいのじやないかという気持から、一時に民間企業に近づけるわけに行きませんので、ある程度その中間をとつて、公共企業体という組織でやつてみるという意味もありまして、今まで経過して参つたのであります。しかし皆様方から論じられるように、いろいろな弊害があるわけでありまして、現在公共企業体は前のようにガヴアメントにした方がいいのじやないかという御議論の方もあります。しかし政府といたしまして、これをどうするということはきまつておらないのでございまして、前国会でございましたか、本会議でどなたかの質問に対して総理は、国有鉄道は民営に近づけるようにするのだ、これは総理のお考えであつたと思うのですが、こういうこともあの席で言われたわけです。しかし全般的にこれをどうした方がいいという結論は得ていないのであります。しかしどうも非常にあいまいな組織で、あいまいな機構であるから、これは何とかしなければならぬというふうにみな思つておることは事実であります。先般も内閣に、公共企業体に対する合理化促進機構を何とか考えて行きたいというような組織もつくられておつて、ここで研究することにもなつておるのであります。今後研究すると申しますと、今ごろそういうことかと申しますけれども、やはりこの大きい組織を変更するのでございますから、これは十分日にちをかけてやられないといけないと思うのであります。御質問の要点に触れておらないかもしれませんが、政府といたしまして、ただいま国有鉄道の組織をどうするという考えはないのであります。ないと申しますか、端的に申しますならば、今の公共企業体のままでもう少しこれを育成して行きたい、私自身はそう思つておりますが、今後研究が続けられて行くことと思われるのであります。従いまして、それに一番御関係を持ちます当運輸委員会の方々に御協力していただいて、はたして現在の組織でいいのか、あるいは前のようなガヴアメントの組織がいいのか、あるいはもつと民間に近づけた方がいいのかということは、皆様方の御意見を聞いて、今後の問題として行きたいというふうに私自身は考えておるわけでございます。
  59. 中居英太郎

    ○中居委員 大臣が参りましたから、この点につきまして大臣からも後ほど御答弁願いたいと思うのであります。私は元来運輸事業というものは、利潤を追求しないところのあくまでも公共的な性格で行くべきものだ、従いまして国有国営ということは、私自身は常に信念として考えておるわけでございます。しかしながら今日の国鉄の公共性と企業性と両方兼ね備えました現実のこの国鉄公社というものに対しまして、現在あるものを必ずしも私は否認しようとは考えていないわけであります。ただ公共性と企業性とを兼ね備えました今日の国鉄に対しまして、政府はあまりにも便宜的な考えでやつておるのじやないか、こういうふうに私考えておるのでございまして、今日昔のような国有国営の方式に返つたらどうだというような意見の出ること自体が、すでに政府国鉄に対する考え方というものに間違いがあるのではないか、こうも私考えられてならないのでございます。具体的に申し上げますと、企業性を持つておるところの国鉄が企業性を生かそうといたしまして、バランスのとれた予算を編成しようとすれば、政府では国鉄に対して公共性のみを主張して、国鉄の企業性というものを抹殺しようとしておる、こういうぐあいに、現在の国鉄の持つておる企業性、公共性というものを政府は便宜的に使いわけしておる、こういうふうに私には感ぜられてならないのであります。私は運輸委員会に昨年の、二十八年度予算審議と、昭和二十九年度予算審議と、この二回出席いたして今日まで審議の状況を見ておるのでありまするが、どうしても政府がそのような考え方に立つて、この国鉄の企業性、公共性というものを、ただ国家的な財政の負担をのがれるためにうまく利用しておるのじやないか、こういう見解が私には政府当局に見られてしようがない、こういうふうに感ぜられるのでありますが、この点につきまして、先刻の質問とあわせて大臣から御答弁願いたいと思うのであります。
  60. 石井光次郎

    石井国務大臣 国鉄の経営形態をどういうふうにするか、今のままでいいかという問題は、この前の議会のときからも皆さん方とここでお話合いした問題でございます。せつかくの今のような体制ができたのでありまするから、私どもはこれを何とかしてりつぱにもり立てることができないかということが、第一番に頭に出て来る問題でございますが、これがなかなか思うように、これで一応いいのだという形になつてない証拠は、ほとんど毎度々々法規を改めなくちやならないというような問題が出ておる。このくらい法律をかえているものはあまりほかに例がないかもわからぬというくらいに、毎議会これの改正が行われておるということは、どうもまだ物足りないというところの現われだと私は思うのでございます。しかしそれでは今のままで行くにはどうしたらいいかという問題になりますと、今のままで私どももどうもそこにぴつたりしないものがあるのは、公共性と独立採算制という、今おつしやつた点でございまして、経営の面から考えますると、どうしても独立採算制を許しておるならば、もう少し自由な形で国鉄そのものの経理をやつて行くようにできないかということが一方から考えられる。公共性の問題からしますと、運賃値上げをかりにしようとしても物価に及ぼす影響でありますとか、あるいは民生に及ぼす影響であるとかというようなことで、思うように上げることができないというような悩みがあるのでございまして、そこをうまく責任を転嫁し合つてといえば何でありますが、何とかしてこれをうまく融合してやつて行く妥協点と申しますか、一つの線を出て来させなくちやならないというのが、今までずつとみな考え、皆さん方と相談して、少しずつでも能率を改めて来たゆえんだと思うのでございますが、このごろになりますと、また今までやつたところではうまく行かないじやないか、あるいは国有国営に行くべきではないか、あるいはいつそのこと改革するには民有にしたらどらだろう、国有民営、いずれにしても民営にしたらどうだろうというふうな声も出ておるわけでございます。これらにつきまして、私ども予算のときにがらがらと話し合うとか、法律を出すときにガチヤガチヤ話し合うということではなしに、根本的にこの問題と取組んで一応検討すべきときに来たのじやないか、今のままならばどうやつらよいか、もしこれを改めるならばどこへ持つて行くのだという問題等を考えなくちやならないと思つておるのでございます。それには今度御承知の公共企業体の合理化審議会と申しますか、それをこしらえまして、近く発足することになつておるのですが、そこで私は根本問題をも考え、相談すべきではないか、こう思つております。
  61. 中居英太郎

    ○中居委員 少くとも今日まで政府がとつて参りました国鉄に対する態度から推測しますと、私どもは考えてみまするに、今大臣が言われましたように、公共企業体としての国鉄の制度そのものを根本的に検討すべき時期に来ておる、私もそう考えておるわけであります。しかしこの問題はこれ以上触れないことにいたしまして、そこで私は次の質問に移りたいと思うのであります。大臣お尋ねする前に、まず国鉄総裁お尋ねしたいと思うのであります。お尋ねしたい点は、今年も国鉄計画といたしまして、全国に新線建設の決定いたしておるのが三十路線ございまして、その総延長が八八一・三キロ、この総工費四百八億円、これは鉄道建設審議会で決定を見た建設線であるのでありますが、このうちすでに二十四路線は本格的に工事を開始しておるのであります。この何百とあるところの鉄道建設の予定線の中から、建設審議会がこの路線を今年度は建設するのだという決定をするに当りましての基本となるものは何であるか、こういうことについて私はまず第一点として伺いたい。この決定にあたり国鉄が原案をつくるに際しまして、何を基準にして原案をつくるか、建設資金の見通しについてどういう考え方によつてつくられるのであるか、あるいはまたこの建設資金というものは二義的なものに考えまして、必要やむを得ざるものであるという考え方で決定しておるものであるか、この比重について総裁から承りたいと思うのであります。
  62. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私どもには経済的な調査とかいろいろな調査がございます。しかし大体運輸大臣が建設審議会に御諮問になるのでございますが、その諮問の際にどういうことに重点を置くべきかと、重点を置くべきポイントを羅列したものがございますので、これは鉄監局長からお答えした方がよいかと思います。
  63. 植田純一

    植田政府委員 御承知の通り鉄道の新線建設は、戦時中からずつと中断しておつたわけでありますが、戦後この新線建設を始めますにあたりまして、運輸大臣の諮問機関としまして、御承知の鉄道建設審議会というのがございます。日時その他は今記憶にございませんが、発足にあたりまして、どういう新線建設基準によつて今後新線建設をやつて行くべきであるかという、いわゆる基本方針につきまして御審議を願つたのであります。それによりまして、まず線路を選ぶ選定の基準を審議会において検討していただきまして、その基準に適合いたしておるものを取上げる、かような方針になつております。この基準につきましては、正確な文書はただいま持ち合せておりませんが、資源の開発等に非常に大きな役割を持つておるものをももろん優先にやる。また輸送経路から見て、輸送の効率を非常に発揮するものを考える。また工事が簡単で成果を発揮しやすいもの、またできたあとの営業の状態を見まして、これを営業係数といつておりますが、それの良好なもの、かような基準を御審議いただきまして、そしてそういうふうな各条項に照し合せまして、そういう条件に最もかなつておるもの、そういうものを選び出そうというふうに、一応最初に選定の基準を審議してつくつてつておるような次第でございます。
  64. 關内正一

    關内委員長 答弁はなるべく要点だけを簡略に願います。
  65. 中居英太郎

    ○中居委員 そうしますと審議会の審議を煩わし、あるいは審議の結果決定する基準というものは、あくまでも資金計画を度外視して決定なさるわけですか。私が考えますに、大体国鉄の新線建設というものは、他の公共事業にたとえて申しますならば継続事業であります。二箇年ないし三箇年、四箇年という継続事業でありまして、他の公共事業であるならば、公共事業あるいは継続事業といたしまして、年度割の予算もあらかじめ承認を得て、財政的な見通しが確立してからこういつた公共事業、あるいは年次計画は決定されておる。私はしろうとでございますから、国鉄の新線建設がどういう考えでなされるのかよくわかりませんが、少くとも国鉄自体の建設も、そのように数年度にわたるものである限り、政府としてもあるいは運輸省としても、将来に対するところの予算の見通し、あるいは大蔵省とのある程度の了解を得て決定してしかるべきものである、そういうものであろうと私は考えておつたのでありますが、この点については全然話合いはないのですか。
  66. 植田純一

    植田政府委員 実は国鉄予算におきましては、制度的には昨年の国会で継続費という制度を初めてつくつたわけでございまして、従来は継続費という制度はございません。ただ予算につきましては、実は二十八年度、本年度におきまして、御承知の通り当初予算九十億であつたのでありますが、前年度は補正予算を合せまして二十五億であつたというような状況で、二十八年度から本格的に発足したようなわけでございます。年々大体その程度金額がいるということは、私どももしばしば資料その他において強調しておるわけであります。また委員も、政党あるいは官庁方面、いろいろの方面から出ていただいておりますが、大体そういう見通しのもとにやつたわけでございますが、今申しましたように、予算的にはつきりとそれだけの確約といいますか、あつたというわけではないのであります。
  67. 中居英太郎

    ○中居委員 その点についてはこれ以上申し上げませんが、ただ大臣お尋ねしたいことは、本年度国家予算というのは、総理大臣の言葉をかりて言えば、緊縮予算だそうでございまして、このような緊縮予算の方式によりまして、経済の再建自立ができるかできないか私にはわかりませんが、ともかく、運輸省予算に限らず、国鉄予算に限らず、各省とも事業費は大幅に削減せられております。しかしながら、大臣としましてこのような財政のもとにおきまして、詰まりました運輸省予算なり、ないしは国鉄に対して与えた予算というものは、与えられた条件のもとにおける最も賢明な最善の予算であると考えておられますか。
  68. 石井光次郎

    石井国務大臣 新線予算のことでございますが、私は今の金額には非常に不満なのでございます。どうしても私どもは最初において、経済的に線路をつないで仕事をやつて行くには、本年度は百億をちよつと越すくらいな金がいるというつもりでおるし、これも国家の出資ということにしてもらえないかということが、私どもの第一番目の考え方であつたのであります。というのは、ことしの国鉄予算では、これから先の新線の利子を払つて行くには、非常にきゆうくつ状態にある。だからこれは政府の出資にしてもらえないか。それができないならば、利子補給をして百十億から百二十億の財政資金をまわしてもらえぬかということが、私どもの初めからの考えでありましたが、新しい行き方はみんなやめだという線のもとに、利子補給の問題はこれには出ておらない。それから出資もできない。それでは財政資金をどれたけ出すかという問題になりますと、財政資金そのものが非常に詰まつておるのだから、もう少しあとでというようなことで、財政資金の面でずいぶん遅れまして、国鉄に対する貸付金と国鉄の債券がきまりましたころには、十五億しか新線にまわせないというような話が出て参りました。十五億なんというものは一体しないのと同じことなんだというような声がありまして、それをやがて二十億ということにして参つたのでありますが、これも困るというので、それでは債券をせめて三十億くらい出せるように増額してもらえぬかということも話したのでありますか、それも全般的な問題から困るというようなことで、それでは何かないかといろいろ探しまわして、政府の方へ国鉄から二十九年度に返さなくてはたりぬ金が四億幾らありましたので、少ともこれはひとつ残してくれ、来年払うのを待つてくれと言うて、それに国鉄の方でも多少やりくりをして、五億を増して二十五億というところまでは財源を捻出したのでございます。二十五億の金でそれではどういうふうにやつて行けるかということを実際に当つてくれということで、いろいろ当つてみますと、これではものの運びはなかなか困難でございます。それでただいまのところでは、予算増加——この間ここで改進党の伊東君からこういうこともある、ああいうこともある、こういうことはどうだというお尋ねを受けた最後のものとして、三十年度を目標といたしまして、予算外の契約をするという問題について何とかやるということで、今寄り寄り話を進めておるところでございます。そういうことではたして実際的に仕事がつなげるか、来年は細々ながらつないで行くくらいでやむを得ないことだとあきらめておりましたが、つなげないような状態では困るので、何とか予算をいじらないでつないで行く方法を、いまなお相談中でございます。
  69. 中居英太郎

    ○中居委員 私のお尋ねしております点は、何も国鉄政府の原則的な予算編成の問題ではないのでありまして、今日の九千九百九十五億の緊縮予算のわくの中で、一応お話を申し上げておるわけでございます。起債の点もその通りでございます。この与えられた条件のもとにおきまして、今回政府がとつておる国鉄に対する予算のあり方ないしは運輸省の考え方というものが、最善の方法であるかどうかを、私はあなたにお伺いしているわけであります。具体的に申し上げますならば、営利的な企業をやつております船船会社に対しては、本年も三十八億も補給金を出しておる、あるいは地方鉄道に対しましても、二千五百万補助金を出しておる、あるいは交通公社等に対しても助成金を出しておる。もちろん政府といたしましては、あるいは運輸省といたしましては、国鉄に限らず、国内の海運あるいは陸運、すべてのものの円滑なる運営をはかることが目的でありましよう。またそのために経営が脆弱化しておる民間企業に対するところの助成も、考えられないわけではないでありましよう。しかしながらまず第一番に、自分のおひざ元の国鉄経理というものを、あなたはよく御存じだと思いますが、本年度も二千五百億円の予算を組むのに、二百億円の起債を仰いでいる、あるいは債券を擬しておるということは、現実に八%の企業赤字であるということになるのでありまして、経営が貧弱でわが国の運輸行政に大きな損害を与えるものは、何も民間の船舶会社や地方鉄道、こういつたものだけではないと私は考えるのであります。しかも一方国家財政というものは、政府の方針で均衡予算を堅持して参らなければならないという方針をとつておるのでありますが、このような条件のもとにおきまして、同一の条件にある国鉄あるいは地方の企業団体、こういうものに対しまして、少い財政をどちらにまずまわさなければならないか、どもらを優先せしめるか、こういうことについて、あなたの所見を私は承つておるのであります。
  70. 石井光次郎

    石井国務大臣 交通行政の立場から考えますと、私どもは国内の空、陸、海、それからまた国際関係のこれらのものというどちらに——もちろん一致した歩調でものが運ばれなければ、全体的な交通というものは完全にはでき上らないのでございます。国内だけ大事にして、国際間のものを無視するわけにはできず、国際間のものばかり考えて国内のものを無視しては、これはもちろんできないわけでございますが、今度の予算におきまして、私どもがとりました措置で、今海運の助成のま問題が問題になつておるのでございす。この海運の利子補給は、昨年の春ころから初めて一部実施され、昨年の八月から政府資金が三分五厘、市中銀行の利子が五分という線まで補助することになつたのでございます。今度は平年並の計算になりましたから、三十数億の金額が計上されることになつたのでございます。私どもは緊縮の際でございまするし、政府の支出がなるべく一方に偏しないように願うのは当然でございます。それで今度の利子補給にいたしましても、政府は昨年八月始めたばかりでございまして、まだ利子の手渡してないところもあるくらいな状態でございますが、これの財政資金の開発銀行に対しまする政府の補助は、市中銀行の五分と同じ程度までの金利に上げることにいたしております。その残りの一分五厘は開発銀行自身が利子を安くするというようなことにして、政府の負担面を五分の線まで返して来るということになるような状態でございます。船の方には非常に厚いように見えますが、私は日本の海運が戦争前までは行かないでも、私どもが昨年からしきりに言つておりまする百二十万トンをどうしても四箇年の間につくりたい、これによりまして戦争前の七〇%の外航船舶を持つことができる、そこまで行かなければ、世界の海運界において発言権がないとさえ思えるくらい、ひ弱な状態だと思うのでございます。日本戦争前に非常に強かつたというのは、国力の強さもありますが、その中に伸びて行きました船に対しましても、利子補給もすれば、航路の補助もいたすということで、海運の発展ということには非常に大きな援助をやつたからでありまして、世界の海運界にあれだけの地歩を占めることができたのでございましたが、残念なるかな、戦争中めちやくちやに船がなくなりまして、そして船会社は戦時補償もとれないのでありますから、自己資本というものを持たす、借金ばかりでやらなくちやならぬというわけで、やつておるうちに今度は昨年からだんだん市況が悪くなりまして、昨年あたりはどうにも元金はおろか、利子も払えないという状態になつたのでございます。それで世界的に競争するには、どうしても利子の補給をしなくちやならないということが今日に及んで来ておるわけでございまして、それによりまして外貨の画にもようやく貿易外収入としての外貨の収入も、少しずつかつこうがついて参りまして、今年度は約二億ドルの収入を上げることができるだろうと思います。これは私ども貿易外の収入として非常に喜んでおるわけでございますが、それでは国内はどうかといいますと、いろいろ災害を受けまして、それの復旧ということを国鉄などにおいては第一歩の問題として取上げておるのでございます。港湾その他交通関係のものすべてそうでございます。幸いにいたしまして、国鉄も昨年から本年あたりにかけて、戦争前に比べて鉄とかその他の資材、すなわちレールその他の購入がようやく予算面においてかつこうをなすようになり、それを実施することができるようになつておるわけでございます。そこで鉄道といたしまして一番の悩みは、そろばんが合わないということの大もとは、御承知のように物価騰貴に比例いたしまして、運賃収入が半分にしかならないというところに悩みがあるのでございまして、これを多少でも増加する。また中の経営の方も、今も相当つてくれているように私どもは思うのでありますが、さらに客車とか貨車、線路その他のものが増強されまして、収入の面もそれによつて上つて来る、合理化もできるということになることを期待しておるわけでございますが、今申しまするように来年度予算の乏しい中でも、この修復の面だけは初めからわれわれが聞いておりました通り予算を一つも削減せずにやつておりまして、だんだんとこれで改善されて行くと思うのでございます。ただ客車とか貨車の数を増すことがどうも今度の予算でできないのが、一つの悩みでございます。そのほかの国内の私鉄につきましても、いろいろ国策的な意味から、また民生の立場から、経営者からいえばやめたいというようなこともあるものの、どうしてもやめられない線等がありますので、それらに対しまして今後できるだけの援助を与えて、乏しいけれども予算を組んでやつて行くというようにしておるわけでございます。私ども全体がバランスを得るような政府をとることを頭に入れて考えながら、今のような方法をとつておるわけであります。
  71. 中居英太郎

    ○中居委員 大臣答弁ではどうも納得行きませんが、問題は海運行政と関連して参りますから、私のこの点についての質問はこの程度で打切りたいと思います。ただ大臣に申し上げておきたいことは、こういつた予算の編成方針は、おそらく今後数年間継続して参らなければならない運命を持つておるであろうと私は考えておるのでありまするが、二十九年度運輸省予算をながめてみますならば、人件費を差引くと、極端な言葉で申し上げますならば、残るものは補給金と補助金だけである、こういうふうに私は申し上げたいのでありますが、このような財政方針か続くといたしまして、しかも今日の国鉄の経営状態、あるいは国鉄施設の現況というものをながめてみまして、さらに与えられた条件のもとにおける適当な調節というものを御考慮願いたいと考えておるわけでございます。さらに私は続きまして長崎国鉄総裁お尋ねしたいのでございますが、公共性というものをもつて運営しております国鉄の運営につきまして、今日まで各議員からいろいろな意見があつたのでありますが、私どもといたしましても、何とかして対政府との問題について打開点を見つけて参りたいというふうに考えておるのであります。それにいたしましても、まず第一番に国鉄自体といたしまして、さらにこの経営というものについて検討を加えなければならぬ点があるのじやないか、こういうふうに私考えておるわけでありまして、この点につきましては先般私どもの竹谷議員から質問があつたのでありまするが、この質問に対しまして総裁答弁は、簡単な言葉で申し上げますならば、今日までやつて来た以上の方法はない、こういうような結論であつたと私考えておるのであります。そこで私は今日までの国鉄の経営の方法を見まして、はたしてこの経営にロスがないか、あるいは改善すべき点がないかということについて、二、三私自身の考え方で思いついた点がありますから、その点について総裁お尋ねしておきたいと思うのであります。その第一番は、国鉄の工事請負についてでございます。予算をめぐつて計算してみますと、昭和二十九年度におきましては約二十五億円新線建設費がございます。さらに改良費として五百三十九億円計上されておるのでありますが、この五百三十九億円の改良費のうちから、民間の請負工事に付すべき工事の量が大体二百四、五十億に達するのではないか。建設費を加えると二日六十億から二百七十億になる、こういうふうに私計算しておるのでございますが、この数字について誤りはないかどうか、お答え願いたいと思います。
  72. 佐藤輝雄

    ○佐藤説明員 私施設関係でございますが、私もはつきりした数字を今ここでちよつと申し上げかねるのであります。二十七年度のそちらの方に関係いたしております請負工事額は、大体百二十億くらいだつたと思つております。ですからそういうものを考えあわせますと、おそらく今おつしやつたような数字ではないかというふうに考えております。
  73. 中居英太郎

    ○中居委員 今日国鉄は、民間の請負に付すべき工事は、どのような方法で請負されておりますか。
  74. 佐藤輝雄

    ○佐藤説明員 原則といたしましては、日本国有鉄道法四十九条でございますが、これに一般公開競争入札によるということになつております。実際の問題といたしましては、これには非常な弊害が伴います。国鉄の仕事と申しますものは、非常に大きな列車荷重が乗りまして、たとえばコンクリートを打つときでも、普通に打つておりますコンクリートではあぶない。あるいはその工事の施行中において、高速度の列車が付近を通つておるので建築限界がございまして、ある一定の限界以上に何か出せば列車にぶつかります。あるいは軌道の上に金物を置けば、信号機の色がかわるというような点がございまして、なかなか施工がむずかしいのでございます。その点特殊な技能を持つた者が必要とされております。そういうような意味から、一般公開入札ということに最初なつていたのでございますが、その後かわりまして、一定の資格のある者を登録いたしまして、その中から指名競争入札あるいは一般競争入札あるいは随意契約によるというふうに今やつております。
  75. 中居英太郎

    ○中居委員 もちろんただいまの御答弁のように、契約の原則は競争入札であろうと思うのでございます。しかし私どもが現地で見ておりますと、その大半の工事が随意契約の請負になつておるようでございます。それにはいろいろ今あなたが申されたような理由もあると思うのでございますが、契約にあたりまして、あまりにもそういつた特殊の条件というものに便乗し過ぎて随意契約の数が多過ぎるのではないか、こういうふうに私考えておるわけでございます。ことに戦争国鉄の要請によつてでき上りました、九局単位ごとにできております鉄道工業株式会社の幹部の大半は国鉄の出身者でございますが、この鉄道工業株式会社あるいは地方の鉄道局あるいは、工事事務所、こういつたところの随意契約の回数あるいは随意契約の条件が、あなた方が考えておられるようなそういつた特殊な場合だけではないという事情を私どもよく知つておるのでございます。しかもその契約される金額の二割が天引きせられて口銭をとられておる。さらにその会社から下請業者に請負わされて、はなはだしきに至りましては、第三、第四というぐあいに下請せられまして、そのたびごとに一割ないし二割という工事費がそのトンネル会社の口銭として差引されておる。これが今日の国鉄の工事施行の現況であります。これは競争入札あるいは指名競争入札を行いました工事についても同断でございます。しかも明年度施行せらるべき国鉄の工事というものが二百五、六十億、おそらく毎年この程度の工事費は計上せられると思うのでありますが、この二百数十億という金の二割ないし三罰というものが、そういうぐあいに中間トンネルのピンはねとして搾取されておる。こういうことは、それだけの金がなくても工事ができるということで、もつと国鉄が工事施行にあたりまして改善に努めたならば、百億ないし百五十億という工事費が浮かんで来るのではないか、こういうふうに私考えておるのであります。国鉄経理は、長崎総裁からもたびたびこの苦しい状況というものを私ども拝承しておるのでありまして、国民もまたこの点についてはよく知つておるところであろうと思うのでありますが、そのような経理の苦しい状況を知りながら、なおかつ国鉄に対しまして国民の指弾が強いところの原因の一つは、こういう点にあるのではないかと私考えておるのでありまして、こういう点を率先国鉄はこの苦しい今日の現況に思いをいたしまして、大いに改善これ努めて、少くともそういう指弾を国民の間からなくしてもらいたい。これも国鉄の経営の合理化の大きな問題であろうと私考えておるのでありまして、何もこの点について私は答弁を求めようとは思わないのでありますが、改善についての今後の努力を要請する次第でございます。  さらに総裁お尋ねしたいことは、今日の国鉄が発行しております無料乗車券の枚数と、それから発行する対象、あるいは条件、こういうものについてちよつと数字をお知らせ願いたいと思うのでございます。
  76. 唐沢勲

    唐沢説明員 ただいまその資料は持つておりませんので、あとからお手元までお届けいたします。
  77. 中居英太郎

    ○中居委員 あとで資料をお届け願います。昭和二十七年度の決算書によつて私調べてみたのでございますが、一箇年間に国家公務員あるいはこれに準ずる者の旅費といたしまして、予算に計上されておる金額が百八十三億ございます。地方公務員、これは都道府県あるいは市町村でございますが、都道府県が百二十九億円、市町村が七十二億円、合計いたしますと三百八十四億円というものが、一箇年間国家公務員あるいは地方公務員の旅費といたしまして、予算に計上せられておるのでありまして、これはもちろん直接、間接地方に対しましては平衡交付金の形で交付せられておる金額でありまするが、この旅費の中には、もちろん宿泊料と交通費というものが含まれておるごと当然でございます。しこういたしましてその占めておるところの率はどういう対比になつておるか、私正確には知りませんが、私どもの今日までの経験から推して考えてみまするに、大体宿泊料が六、交通費が四、こういう割合であろうと考えられるのが常識であります。この率で先ほどの三百八十四億円という全国の公務員の交通費を考えてみますと、百五十三億余万円に相なつておるのでございます。もちろん旅費の支給は、支給規程に基いて支給されておると思いますが、この旅費の支給を受けている大半は、一等旅費ないしは二等旅費を支給せられておりますが、支給を受けて現実に乗つておるのを見ますと、二等ないし三等に乗つておるというのが現状でありまして、私どもも地方の議会におりましたときには、その路線上の最高の旅費をもらいまして、上京するにあたつては二等車に乗つてつたのでありますが、その差額は大体個人的な収入となりまして、生活の補給金として使われておるというのが現状でございます。そこで私は計算したのでありますが、大体百五十三億のうち二割ないし三割というものは、そのように正式に使用した経費以外に個人の所得になつておる。こういう現況から考え合せまして、公務員が公務のために出張する場合には、公務乗車証というものを国鉄ないし政府が発行して、その乗車証の数によりましてあとで国鉄がその官庁に対して旅費を請求してとる、こういう方法を講じましたならば、少くとも今日全国で旅費として使用されておる百五十三億という金額は、百億程度で済むのではないか、こう私は考えるのであります。しこういたしましてこの件につきまして数年間統計をとつてみて、現在予算に百五十三億計上して、実際に百億しか使用されていないということが明らかになつたならば、今日の国家財政あるいは地方財政に何ら傷を負わせないで、四十億ないし五十億というものは政府の一般会計の中から、あるいは地方交付金のわくの中から国鉄に対して繰入れする、こういう方法も当然考えられてしかるべきではないか、こういうことをしろうと考えから考えついたのでございますが、この点につきまして運輸大臣あるいは長崎総裁の意見をお開きしたいと思います。
  78. 石井光次郎

    石井国務大臣 そうなりましたら実際上はどうでしよう。今おつしやつたように、一等の汽車賃をもらつても二等車に乗る場合もある、三等に乗る場合もある。今度は乗車証で、直接に自分のふところというか、ほかの方にまわすことができないとすると、一等の者は一等に乗る、二等の者はみな二等に乗つて、そろばんは出て来ぬのじやないでしようか。
  79. 中居英太郎

    ○中居委員 そう言われてみればそうでありますが、これは私がひよつと考えついた国鉄経営についての一つの意見でありますが、いずれにいたしましても今日の国鉄自体は、政府に対しましてその根本的な苦境をさらに誠意をもつて訴えるべきであろうと思いますし、また政府といたしましても、この国鉄の現況を見まして、今日の予算の中におきましてよりよき育成をはかることによりまして、国家の動脈である国鉄の健全な発展ひいてはわが国の陸運の発展ということを期していただきたいと思うのであります。私は、以上申し上げまして陸運関係質問を終りたいと思います。
  80. 關内正一

    關内委員長 松井豊吉君。
  81. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員 二、三の点をお伺いして終りたいと思います。  まず最初に一点大臣にお伺いしたいのでありますが、委員会再会以来今日まで各委員から各般の質疑がございまして、ほとんど質問も尽きておりますが、ただ今に至るまで、有力なる産業地帯を持つておりながら、別表へ入らない箇所があるのであります。これらの点については前にも運動が国会へ反映されないという関係で、地元多数の人たちが非常に迷惑をし、また産業の開発が遅れておるというような関係があるのです。これらの点について、将来大臣はどういうお考えを持つておりますか、お伺いしたいのであります。
  82. 石井光次郎

    石井国務大臣 日本鉄道は、まだまだ敷設すべき箇所が非常に多く残つておると私どもも考えております。敷設表に載つております数でも百数十あるのでありまして、その中から、ようやく一昨年から三十線の新線が始めて全部着工されておるという状況であります。その敷設表に載つていないところでも、これは話を承ると、ぜひここはやりたいものだ。そうすれば、そこいらの経済の発達にも非常に大きな影響を与えるというようなものがありますので、私どもといたしましては、来年度のような予算を組んでおる際に大きなことを言えないのでございますが、鉄道でなければ、ただ道路だけでは開発できないというような場所が多くあるのでございまして、そういうふうな場所につきましては、いろいろ何とかして実現するときの早く来るような方法を少しずつでも進めて行きたい、こう考えております。
  83. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員 群馬県、埼玉を結ぶ桐生、太田、熊谷、人口約三十万を擁しておりますが、桐生市のごときは内地織物専業地帯で、年間数十億円の生産を上げております。外貨の獲得等についても、輸出関係には大きな貢献をしております。それらの産業地帯で上武鉄道と称して、二十箇年運動されておつたのでありますが、この線は中央に直線がないという関係で、輸出織物盛りの当時にも非常に迷惑をしておつた事実がある。御承知のごとく西が高崎、東が小山でございます。あの間は大体二十里内外と称しております。その間に十万都市を北に、また熊谷が十万近いのです。太田がすでに十一万都市計画を立てております。それから小泉とかあるいは毛里田町とかそれぞれありまして、今でも人口約三十万を擁しておる大産業地帯であります。この間に直線がないということ、私全国を大体調査させていただいておりますが、かつてないことだと思います。一体これらにどうして国鉄が実現されなかつたのか。運動を二十箇年しております今日、まだ国会に反映しておりません。これらはどうしても桐生を中心に、産業開発、外貨の獲得の関係から、中央あるいは直接その集荷地帯へ一時間でもあるいは三十分でも早くそれを輸送するという必要を要する。どうかこれらの重大産業地帯には特段の御研究をくださいまして、実現させていただきたい、こうお願いする次第であります。  なお総裁ちよつとお伺いしますが、これらに対する緊急調査を願つて、そうしてそう遠からずして別表に入れていただく御意思はないか、その点をお伺いします。
  84. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 調査はすみやかにいたしたいと思いますが、あそこには東武その他の鉄道関係もありますので、それらとも話し合わなければならないと思います。なお松井委員もよく御承知と思いますが、桐生、足利の今の織物は、実は昔は私どものところで運ばせていただいておつたのですが、最近はトラツクに全部とられてしまつたというような状況でございます。しかし今先生のおつしやつたような線路ができますれば、またこつちにちようだいするということになると思います。とく調査いたしたいと思います。別表のことは別箇の問題でございまして、法律の問題でございますから、総裁だけでどうということもできませんが、調査だけはよくいたします。
  85. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員 今総裁からあまり鉄道関係には御用のないような御答弁がありましたけれども、ともかくも輸出織物、内地織物にいたしましても、その日に送つてその晩にでも集荷地へ到着させる。少くとも桐生及び熊谷へ連絡ができるならば、おそらく二時間以内で到着できると思います。これらは大きな問題であります。その点も御了承願つておきたい。なおまた東武の関係というお話もございましたが、東武がいたずらに遷延策を講じて太田までの免許、これにとらわれると、ただいま申し上げた産業の開発ということは遅れると思います。東武はおそらくやる意思がないと私は断定いたします。でありますから免許を取上げて、そしてある程度まで実現化をしていただきたいことを希望する次第でございます。  それから鉄道路線というものは、何回もそれぞれ専門担当者から聞かされておりますが、全日本の路線を見ましても赤字が多い。黒字の線というものは少い。この熊谷・桐生間というものが完成すれば、完全に黒字になるということを申し上げて過言でないと思います。たとえば工事費にしても、今残つておる重要な三十線にいたしましfも、あるいはその他別表に入つた線にいたしましても、大きなトンネルをつくる、大きな橋をつくる、たいへんなことです。そこで一キロ大体一億円も、八千万円もかかるという事実を聞いておるのですが、あの線はおそらく妻沼の橋から桐生市までレールを通してみても、大体千分の十に行かないと思う。五以内です。おそらくこの鉄道線の勾配を見ても、東北線の一番勾配の強いとこは千分の二十五と聞いておりますが、その線は桐生・熊谷間のいわゆる上武鉄道、これはもう土地のごときも一部は、県道の沿線など無条件買収も済んでおると聞いておる。非常に勾配がない。でありますからわれわれは予算が許すならば——会社でやつてももうかると信じております。こういう線でありますから、国鉄総裁におかれましても緊急調査を願つて、一日も早く別表に入れることを私は希望申し上げますが、この点について総裁の御意見を承りたいと思います。長崎説明員 私はその線路は必要がないと申し上げたのではなくて、ただ沿革的に申しますと、実は桐生、足利辺の織物等は、昔は鉄道で運ばせていただいておつたのでありますが、近来はほとんど全部トラツクにとられてしまいまして、実に哀れな状況になつております。従いまして今お話のような線路を敷きましたら、あるいはまた私どもの方に返つて来るという可能性があるのではないかというふうにも思われますし、またお話の点から推測いたしまして重要な路線のように思われますから、調査はすみやかにいたしたい、かように思います。
  86. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員 なお本線のごときは、太田を中心に小泉というところにはたくさんなアメリカ軍が駐留しておりまして、今大体四十億円の予算をもつて、沿線の小泉というところに鉄筋コンクリート建築をやつております。でありますから、私人口三十万と申し上げましたけれども、これはそう遠からず四、五万の人口がふえるだろうと信じております。これらは輸送がたいへんなものであります。その点も御了承くださいまして、どうか三十線が建設審議会を通つてすでに二十四線も工事に着手しておりますので、これらも御同様に取扱うことを希望するものであります。さらに一点お伺いして結論にいたしますが、本日は青野委員を中心に、また楯委員が関連質問をされて、大体陸運問題を初め今日までの仲裁裁定の問題、公労法の問題、違反とかやり過ぎとか、十八人首を切つたという問題等で、時間にして大体三割内外を費しておりまして、いずれも結論が出ておりません。遺憾にたえない。そこで全国民の中には、あの問題は非常に行き過ぎだという人も多数あります。われわれのところにもそれらのことに対したくさんの質問が来ておりますが、一体当時の損害はどの程度のものであるのか。また国民の中には計画を立てて旅行をする人、公職を持つた人で会議に参加することなどができなかつた者もずいぶんあつて、遺憾の点を表されておりましたが、それらの本数はどことどこが当時何本とまつてつたか、これを明らかに御答弁願いたいと思います。
  87. 唐沢勲

    唐沢説明員 昨年組合との関係からもつれが生じまして、旅客列車、貨物列車の運行に相当支障を来したのでありますが、その概要を申し上げますと、十一月二十五日から二十九日までのいわゆる運転保安規整運動が起りましたときには遅延が若干ありましたし、それから運休したのが電車が十六本、貨物列車が五十本ほどございます。その後十一月二十五日から二十九日まで小荷物などの愛護運動ということで、従来と違つたような扱いをいたしましたために、荷物の積みおろしに時間がかかつて若干列車が遅れたものもございます。それから一番大きかつたのはやはり十二月一日から三日間の、いわゆる三割休暇のときでございます。このときは駅とか車掌区、機関区などで相当出勤ができなかつたために、列車が動かせなかつたというような事態も起りまして、休みましたものは旅客列車が九十八本、これは電車も含んでおります。貨物列車で四百三十四本ございます。そのほか遅延したのが相当たくさんありますが、これは省略いたします。それからその次に十二月八日から貨車区、貨車区というようなところを対象にしまして、十割休暇というようなことがなされまして、これもやはり出勤が相当とまりましたので、このときの影響が、運転を休止した列車が、貨物で七十八本、遅延は旅客、貨物とも相当ございますが、これは省略さしていただきます。それから損害全額につきましては、これはなかなか計算の仕方がむずかしいのでございますが、たとえば旅客につきましては、急行料金を払いもどしたというような数字はつきりわかりすが、貨物につきましては、もし所定通り動いたとすればどのぐらいの荷物の輸送ができて、それによればどれだけ運賃が上つただろうというような、応算定をいたしますと、今ここにはつきりした書類を持つておりませんが、全部で七億前後であつたかと記憶しております。
  88. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員 今局長の報告によると、たいへんな損害の数字であります。これらは、もしこういうことがなければ、しろうと考えでございますが、一応人件費の財源にもなるであろうし、収入もふえるのじやなかろうかと思つております。これらの問題を起すと——法律によつてつておるものはやむを得ませんけれども、どうも争議を起すと、当局も組合の方もあまりプラスになつておりません。だからこれらの大きな問題については、相当研究を要すると信ずる。それから今日日本は独立国になりましたが、二十八年から九年の間には失業者がたくさんできております。失業対策の予算は本年は幸いにそう減つてはおりませんが、失対事業のわくを見ると、最高働く人で二百五十円、最低百六十円ぐらい、ベースは大体二百二、三十円であります。それも場所によつては一箇月入ることができない、うまく行く人で半月であります。それらの人の生活の実情は実にさんたんたるもので、それらのわずかな仕事によつて得たもので、生計を営んでおる人たちがたくさんあるのであります。一方、国鉄は一万五千二百七十円のべース——これはわれわれも十分だとは言いませんけれども、今申したように全国に失対事業に血と汗を流して働いているたくさんの人があるという実情を御研究願つて、争議よりも仕事の能率を上げて、たとえば請負制度か何か知りませんけれども、そういう一つの方法もあるでしよう。また全国民の声は、決してこの国鉄の争議をよく思つておりません。われわれの選挙区内からも青年が中央に乗り出して、旗を立てて議会を取り巻いて、それぞれ当局といろいろ交渉をした結果が、いつでも若干の待遇改善になる。騒いでとれるなら騒ぎたいという。またこれに反対する運動を起すという声もございます。国家が立つて行かぬのだろうというような声もございます。なおまた国鉄約五十万の人々は、法律のもとに一応請求ができるのでございますけれども、どう狂つても請求のできない国民が多数あります。私は一方的に言いたくないのだけれども、一体請求ができないものはどうするか、また個人的に事業家が人をたくさん使つておるものはどうするか。私も会社で五百人内外使つておりますけれども、ほとんど相談的に行つております。
  89. 關内正一

    關内委員長 松井君、質問の要点だけを述べてください。
  90. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員 簡潔にいたします。今そういうように社会情勢が緊迫しておりまして、緊縮予算を立てられて、その中から、請求があればどの程度でも予算が増額される、いわゆる待遇改善ができるという、その法律のもとにやつておる人々は——私は時間がなくて残念でありますが、実際われわれ国民代表とすると、社会情勢から、また国の法律とにらみ合せて、すべて代表としてやつておるのです。今日日雇い労働者が最高五百円、最低二百円でありますが、二十日くらいしか仕事しておりません。どの角度からいろいろ研究いたしましても、ベースにしてもなかなか思うような待遇改善はできません。こういう関係になつておりますから、どうか国鉄総裁初め、また大臣におかれましても、これらの社会態勢から見た実情を御研究願つて、少くともこうした声をなるべく国会に起させないような方法をとつていただきたいと思います。今日その問題を、取上げられたことに対する答弁は、はつきりしません。でありますから国民に疑惑を与える。きようも多数の傍聴人が来ておりましたけれども、片手落ちにあれを聞いた人はどう思つたでしよう。私は時間がなくて、あのとき関連質問もできなかつたのであります。でありすから、ただ委員会でしやべつたことを新聞紙上に載せる、ラジオに発表するだけでなく、ほんとうに社会情勢からあらゆる経済情勢を御研究願つてベースの改訂についても、物の上昇、あらゆる関係から調査をもちろんやつておりましようけれども、非常に重大であります。これらについて国鉄総裁はどういうふうな考えをお持ちになつておりますか、はつきり御答弁を願いたいと思います。
  91. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 二十九年度におきますところの日本財政経済状態というものが、どういうふうになつて行くかという点につきましては、私も重大な関心を持つておる次第であります。これは企業といたしましても、また国民の一人といたしましても、非常に重大な関心を持つております。従いまして、これに関連しての労働問題のあり方というような点についても、私は相当慎重に考えなければならぬと思つておる次第であります。先ほど来申し上げましたように、国鉄の労働問題をめぐる紛争がありまして、その結果国民各位に非常な御迷惑をかけるということは、これは極力避けなければならぬことであると深く信じておる次第であります。従いまして今後の労働問題につきましても、これは何とかわれわれと組合の諸君とが話合いをして、再びああいうことが起らないような方向、平和なうちに話合いでものがきまつて行くというような方向に持つて行きたいものだと考えております。またこれを実行に移して行くつもりであります。しかしながら相手がございますから、私はそう申しましても、向うの方がそんなことはできぬということであれば、いたし方がございませんが、私は、そういうものじやない。やはり組合の方々もああいうことを繰返すことは、決していいことじやないというふうに考えておるのじやないかと見るのであります。そこで何とかしてああいう事態を引起さないように、何かの道を発見して行きたいと思つております。
  92. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員 御意見はわかりましたが、法律上十八人の首を切つて、その問題が大きな論議の中心になつておるようでありますが、首切る必要があれば切つてもいい。それくらいの決意がほしい。いいのはいい、悪いのは悪い。そうしてあの当時の争議の実情を見ても、たとえば休暇のことで先刻報告がございましたが、機関士が休暇をとれば絶対に汽車は動きません。われわれは箱根峠まで行つて、あそこの人たちがここに特別なる法律を設けて、何とか待遇の道を講じていただきたいと言うので、そこを通つてみたのでありますが、なるほど石炭の煙でたいへんなものです。あの重要たる仕事を担当される者ははかにかけがえがない。機関士には予備員がございましようが、そこでその人たちがやめれば汽車がとまつてしまう。どうしてそういうようなことをしたかということを調査いたしたのでありますが、弁当を持つてそれぞれ部署に行く途中、妨害があつて、そうして帰れと言われ、しかも暴力を加えたという事実も聞いたのであります。当局のそれぞれ関係の方々も御承知と信じておりますが、かりにこのような妨害としてやつたとするならば、まず法律行為をもつてそれを制限する必要があると思う。きようの答弁は少し弱いような感もあつたけれどもはつきりただして、あまりごちよちよしないで、この筋だからこうやつたという態度が必要だと思う。なおまた、そういうような妨害をして、多数の国民に迷惑をかけた事実があるならば、ほんとうに国民の輿論をもつても、これを根本から解決しなければならぬと信じております。どうぞこれらの問題についても今後十分御研究くださいまして、再びこらした事件のないような措置を講じていただきたい。これで質問を終ります。
  93. 關内正一

    關内委員長 次会は公報をもつてお知らせすることにいたし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会