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1953-12-08 第18回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月八日(火曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之助君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            伊能 芳雄君            小野 義夫君            鹿島守之助君            小林 英三君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高野 一夫君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            吉田 萬次岩            井野 碩哉君            岸  良一君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            村上 義一君            亀田 得治君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            高田なほ子君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            天田 勝正君            加藤シヅエ君            棚橋 小虎君            永井純一郎君            寺本 広作君            武藤 常介君            平林 太一君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原九郎君    文 部 大 臣 大達 茂雄君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  岡野 清豪君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 大野 伴睦君   国 務 大 臣 大野木秀次郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安政務次官  前田 正男君    経済審議政務次    官       深水 六郎君    大蔵政務次官  愛知 揆一君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       正示啓次郎君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    農林大臣官房長 渡部 伍良君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和二十八年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出衆議院  送付) ○昭和二十八年度予算執行状況に関  する調査の件  (報告書に関する件)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。政府に対する質疑を継続いたします。永井君。
  3. 永井純一郎

    永井純一郎君 だんだんと質疑が重ねられておりまするので、大体物事がわかつて参りましたが、私は簡単に、主として農林大臣大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。  先ず農林大臣にお伺いをいたしますが、私がお伺いするのは、米働、米の生産者価格消費者価格についてでありますが、私の考えまするのには、米はどうしても日本では非常に少いわけで、需給均衡がとれておりませんが、それでどうしても増産をして行かなければならないことは、これはもう当然です。そこで増産を刺戟しまするのには、やはり国家の資本を投資して、土地改良等に金を注ぎ込む、それからそれらに伴う補助政策をやるのと同時に、私は農産物価格中核である米の値段のきめ方、この価格政策が一番重要な、やはり増産対策一つだと思います。そこで農林大臣に私は、二十九年度以降も農業パリティ価格中心に、完遂奨励金その他の奨励金をやはり十分に考え合して行つて、供米を確保し、増産を期するというこの方針は、私は変えられないと思うのですが、この点を先ず農林大臣伺いたい。
  4. 保利茂

    国務大臣保利茂君) お答え申しますが、今年の米作は、これは平常の米作じやありませんから、これを基として米価の問題を論議するのはこれは慎重を要すると思います。併し只今供出制度の沿革から申しましても、今日よで米価をきめて来ております沿革かりいたしましても、これを変更するということは非常に大きな問題でございますから、軽々にはこれはいたしがたいとは存じますけれども、かなり価格問題が混乱を生じておつた基本価格にしましても、いや七千二百円だ、八千二百円だ、九千円だ、一万三百三十五円だというようなことで、結局はこれはまあ集荷対策上付けられて来ております奨励金一つ米価として扱う人もあるし、単なる行政費として扱う者もありますけれども、いずれにいたしましても農家手取からいたしますれば、それは価格であろうと奨励金であろうと同じわけでございます。私はこういうやり方一つの方法であり、又供出制度現行のままでこの集荷を期して参ります上には、やはり経験の上に立つて、こういう結果になつておりますから、このこと自体を変更するということは容易ではないとは存じますけれども、同時に生産者にいたしましても、消費者側にいたしましても、こういう立て方についてはかなり今日懐疑的になつております。併せて二十九年産米からこの制度を継続するか、改善を図るか、一つ慎重にこれは検討をいたして結論を生み出したい。私は現行制度をそのまま二十九年産米につきましても続けますということは、ここで断言することを御遠慮申上げておきます。かように考えております。
  5. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは史に農林大臣伺いたいのですが、まあ今のお答えで大体手取を減らすということはないという農林省の考えを持たれることはわかります。ただ手取総額の内訳と、基本米価をきめ、更にその上にいろいろな加算額、或いは奨励金といつたような建て方については、今の方針そのままであるかどうかは検討する余地がある、こういうふうに私は今の答弁をとります。そこで手取額を今日以下に減らすことは、これは私は増産対策上できないことだと思いますが、その点をもう一度はつきり伺いたい、こう思います。
  6. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これはいろいろ基本的には議論があろうかと思いますが、実際問題といたしましては、仮に今のような分け方で米を買入れするか、或いはこれを一まとめにして買入れをするかという場合に、残りますものは今年の凶作加算額只今構成しておりますのは五百円の概算になつておりますが、その分につきましては、大いにこれは意見が出て来ると考えております。
  7. 永井純一郎

    永井純一郎君 特別の加算額と、私は今の農林大臣のお考え方をとりたいと思います。それらについては勿論論議があるかと思います。  そこで私は今度は大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、それは、大蔵大臣同僚木村君の健全財政に対する答弁におきまして答えられております、それは均衡予算であり、且つ又均衡緊急健全財政予算という原則を大体お答えになりました。そこで私はここでお伺いいたしたいのは、この総合均衡予算ということを言われましたが、これは一般会計特別会計政府関係機関予算を通じて均衡をとる、こういう意味であると思いまするが、その点をお伺いします。
  8. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) そういう点を含めましてお説の通りそれで総合という文字を使つたわけであります。
  9. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういたしますると、食管特別会計で常に大蔵大臣は、或いは大蔵省は、コスト価格主義ということを貫いて行くんだということをいつも言われております。これは健全財政ということを今おつしやつた総合均衡予算健全財政という建前から、これはまあ大蔵大臣が言われるのは当然だろうと思いますが、御承知のように大蔵省から提出した書類を見ましすると、この消費者価格が一応コスト価格主義で行けば八百九十円になるものを六百七十五円で、一応今度の補正予算にはとどめた。これを二十九年度の一月から十月まで計算いたしましても、二十九年度に財政負担は四百四十億円要る、こういうことの資料大蔵省提出をいたしております。で、この四百四十億というものは、これは二十九年度以降この程度で行かれるつもりかどうか、この点をお伺いしたい。
  10. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 御承知のように、米価の問題はいろいろな観点から見なければならんものですから、それでまあ一応只今のところは食管特別会計にある三百四億円の関係を考慮して、それで家庭米価に織込んだものがこの間の七百六十五円になつておる次第でありまするが、併し例えば国民負担の模様とか、減税その他の措置がとられるような場合、これらの点等も併せ考えて、或いはその米価が若干引上げられることがそのときにおいて妥当だと、これはまだその点考えておりませんが、そういう線が出て来れば、そのときは又考えてみたいと思うのでありますが、私どもは今年のごとき異常なる年については、まあ俗な言葉で言うと、一年の間に全部これを盛り込んでしまうということは余り均衡という意味から言つても厳格に過ぎるであろう。従つて数年間に、これも俗な言葉で言えば、割賦的に考えてよいのじやなかろうか、こういう考え方から、今の食管会計等の三百四億円というものを一応十億ばかり残すことでああいう措置とつた次第でございます。
  11. 永井純一郎

    永井純一郎君 大蔵大臣も御承知通り、今まで蓄積しました食管特別会計の資産を今年食つてしまつたわけです。そして僅かに十億を残した。これは純粋に経理的な立場から言えば、とんとんであればいいということも言えるかも知れませんが、数千億に余る金を使つて売つたり買つたりするのであるし、而もこれは普通の企業体と違うと思うのです。従つて、一切のそういう余裕のある利益金のようなものを食つてしまつて、ぎりぎりになつてしまつて、もうあと十億しかないというようなことは、私はこれは実際の食生活を預つて食管特別会計を運用する上からは、私は非常に危険なむしろ状態ではないかと思うのです。が併し、政府は第二次補正において殆んどこれを食い潰してしまつております。そういたしますると、今後政府方針が、生産者米価を上げないという建前をとつて、そうしてこれを低物価政策基本にして行くのだという方針をあなたがここで打ち出すならば、私は話は又別だと思う。併しながら資料を見ると、七百六十五円で抑えても四百億円から四百四十億円の金が二十九年度には要るのですから、二十九年度の予算の編成に当つて困難を来して、これを抑えようとして生産者米価を抑える、抑えなければ消費者価格を上げて行くということに私はなると思うのですが、その辺の政府方針を私はお伺いしたいと思います。
  12. 保利茂

    国務大臣保利茂君) この国会で衆議院におきましても参議院におきましても、この食糧政策の確立ということが強く要請せられて来ておるわけでございます。従つて、この米の扱い方を一体どうするかということが基本的でございます。米の扱い方扱い方とて、仇しそれの扱い方では食生活の安定、従つて国民生活の安定ということは期しがたいから、その安全作用として麦に重点を置いた政策をとつて行くべきであるということは、ほぼこれは大よその方向としては一致しておる議論ではないかと思うのであります。そういう上からいたしまして、これはもう今日ここで軽々には私は申上げがたいと存しますけれども、そういう観点は取りもなおさず米はやはり生産消費、米本来の今日の事情からあるべきところにおくと、それでは併し国民生活の安定は保障せられないから、それに対して麦の扱いを勘案して取扱つて行くべきではないかというような方向で、一つ各方面の御意見十分伺つた上で方針をきめて行きたいと、かように考えておるわけでございます。
  13. 永井純一郎

    永井純一郎君 今の農林大臣の話は、私は大蔵大臣にお伺いしていたので、ちよつと私はそれは別問題だと思うのですがね。私は政府の米の価格が、何と言つても、これは農業者立場から言えば、農産物中核なんです。それをどうするかということによつて農家経済はもう全面的にやはり左右される、農産物価格も自然とそれに即応して常にやはり動いております。そこで私は大蔵大臣政府方針をお伺いしておる、生産者価格並びに消費者価格について基本的にはどういう態度で二十九年度から臨んで行くかということをお伺いしておるわけです。
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この数字の中に、ちよつとあなたのほうに差上げました資料の中に、これをお読み下さつてわかるように、これは八百九十円の場合の云々ということが書いてあつて、実は食糧価格差調整金の八十六億円と八十三億円、これはこういうふうにやつたものですから、やる必要はないので、二十九年度分については四百四十四億円から百六十九億円ですか、これは減らされてもいいのです。けれどもこれは方針には関係ありませんから、方針について申上げますが、そういうような次第でございますが、私ども大体としては米については飽くまで生産者価格を維持すべきであると思つております。又それに基いて総合的均衡財政ということを申しておるのでございますが、ただ異常なる年にそのままを適用するかどうか、つまりそれを私の言ういわゆるなし崩し的に生産面を見るのがよいのではなかろうかと、こういう考え方も出て来る。と申しますのは、今年のような極端な凶作というものは、これは過去においても殆んどないと言つてよいほどの凶作でございまするので、そういつた年のやつを全部コストに織り込んで、家庭米価に盛り込んで販売することになると、これは国民生活に及ぼす影響が大き過ぎますから、これはやはり考慮しなければいかん。米の問題は、財政の問題を考慮しなければいけません。コストの問題も考慮しなければなりませんが、同時に国民生活の問題、家庭米価に及ぼす影響等も考慮しなければなりませんので、それのみで、その年のみで均衡を合すということは絶対の要件ではないのではないか。つまりさつきの言葉で言えば、なし崩し的に物を見る、例えば三カ年に見る、五カ年に見るというやり方もあろうと思いますが、そういうふうに見てもよいのではなかろうかと、こういう考え方を持つております。
  15. 永井純一郎

    永井純一郎君 大蔵大臣に私は更に申上げますが、食管特別会計はいずれにいたしましても繰越剰余金というものを食つてしまつております。而も来年度は、二十九年度まあ一月から上げますが、幾分上げて、七百六十五円を据え置くとしても、四百億も幾らも財政負担が必要になつて来ますね。そこまで来ておりまするから、今の非常に抽象的な含みのあるあなたの答弁は、もうここでは通用しなくなつておるのです。例えば、あなたが今言われることを、今年は特別の不作であるから手取額を減らすかも知れない、農家手取額は減らすのだ、そして又農業パリティ計算は、これは中心で、動かさないかも知れんが、その他の奨励金についても考慮してそうして、手取額というものは減らして行つて生産者米価というものは一面においては引上げて行く、そして消費者価格も何がしかは上げるかも知れないということによつて一切の剰余金をなくした特別会計を賄つて行くのだというならば、これは又話は別で、それならそれでわかる。あなたが今言われたような抽象的な議論では、今日は食管特別会計数字を見れば了解ができない段階に来ておりまするから、生産者価格消費者価格について二十九年度の予算を編成するに当つてこれは私は物価の基礎、中核なんですから、政府方針はどういうふうにして行くか、これは食糧増産については農民が最も関心を持つておる点なんです。その方針を私は伺いたい。
  16. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) コスト主義ということで、私は原則としては来年はコスト主義でやりたいと思つております。ただ幾らかそういう点を考えなければいかんということを申上げただけでありまして、これは大蔵省立場としては、今の日本財政立場としてはコスト主義で行くべきである。この点は私は固く信じておるのです。
  17. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういたしますると、あなたが一昨日木村君に答えられました総合均衡予算緊縮健全予算、そうして二十九年度からは今財政は転換期に立つておる、画期的に転換して行くのだということを言われたのは、その都度その都度いろいろな答えを適当にされておると、我々としては政府方針がさつぱりわからないわけです。私はここでお伺いしますが、それまでは私はどうしても全体の物価を引下げて行くという政策をとるよりほかにやりようがないと思う。貿易からいたしましてもすべてですね、物価政策基本は、二十九年度の予算を編成するに当つてそれではどういう態度で臨まれるのかを伺いたい。
  18. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは過日も申上げましたごとく、日本物価世界的にも高く、そうして国際競争力を持たない現状でありますので、物価に対しては十分できるだけ国際水準に近付け、更に今の言葉で申せば低物価対策をとつて行く。こういうことで根本の方針はそれに向つてすべての施策をやつておるのでございます。
  19. 永井純一郎

    永井純一郎君 それは勿論わかるのですが、昨日か一昨日かの答弁の中に、日本の米の値段はもう世界最高水準になつてしまつた、こういうことを大蔵大臣は答えられました。一万三百三十五円というものは非常に高い。これ以上もう米価というものは上げることはできませんという意味のことを答えられておるのです。そこで今言われるような国際水準より割高でありますから、これを割安のほうに持つて行く、こういうような考え方もわかる。一面又食管特別会計コスト主義をとられるということもわかる。が併し特に米価については、米は非常に需給がアンバランスになつておりまして増産する必要があり得るのでありまするから、米価についてはその原則を一様に適用するわけには当分は行かない。従つて相当第二次補正でやつたような程度のやはり二重価格制度をとつて行かなければならんのだ、それで調整して行くのだという方針なのかどうかということに私はなつて来ると思う。この点を伺つておるわけです。
  20. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは私は昨年申しましたのは、一石一万三百三十五円ということは世界のどこにもない、即ち最高水準だ、世界のどこにもそんな高い米はありません。輸出価格では二百ドル見当が最高でございましよう。七千五百円くらいが現地における最高でございまして、それ以上高い米はどこにもないと思います。日本に入つて来る場合は運賃その他いろいろの関係で高くなつておりますけれども、そういうわけだから、その点については米価というものは高過ぎるということを申したのでありまして、今お話のごとくそれならばだんだんとこれは食生活を変えて、米の値段は、米のみでやつて行くと、日本国内産米のみによつて行く、又外米で補つて行くということになれば高くなるので、私どもはその点でも今度入れますものも小麦、大麦で追加したのが三千六百万ドルほどドルで追加したと思つておりますが、そういう措置をとつておるのであります。永井さん御承知と思いますが、大体一日が米に代えて小麦配給するということになると、極く大雑把に考えて二十億くらい今の配給分にして金が違うのじやないかと思います。そういう点等もありますので、いろいろそういう措置について考えたい。全体として申すときにはやはり食糧全体としての考え方で行きますと、まあそう食管会計赤字に持つて行かんように持つて行く、これはさつき申した通り十億くらいしか残つておりません。そういう工合でございますので、さつき申した通りどもとしてはできるだけ年賦償却のような考え方で非常に米の収穫が殖えたようなときには価格の操作も多少下げても又やつて行けますから、そういうときに食管会計のほうに補いをして行きたい、こういうふうにして仰せになつたような食管会計を窮屈極まるままにおいておこうというような考えは持つておりません。けれどもそれでは一気にそういうふうにここでやろうとすると、これは直ちに消費者に及ぼす以外にございませんので、それは現在のままでいいかどうか、もう一つ考え方は、やはり個々物価が上るほうが、これに対する全体の赤字へ持つて行つてインフレーシヨンを高進させるよりは、個々物価を上げるほうがいい、私どもこういう考え方を持つておりますので、そういつたいろいろの点を勘案して措置しておるのが今年出しておる予算でございます。
  21. 永井純一郎

    永井純一郎君 大体今の大蔵大臣お答えを拝聴いたしますと、まあ当分は二重価格をやはりとる、生産者価格は抑えるわけには行かない、かと言つて消費者価格もそうそう引上げるわけにもいかん、併し或る程度はやはり消費者負担してもらつて、そうして今度やつたようなやはり二重価格制度的なものでその食糧管理関係はやつて行こう、こういうことだと解してよろしうございますか。
  22. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) まあ私どもは今申した通りコスト主義を飽くまで貫きたいとは思いますが、現状から見ればそういうふうに御解釈下つても止むを得んと思います。
  23. 永井純一郎

    永井純一郎君 まあそうだろうと私も思うのです。そうするとこれはやはり食糧価格がすべての物価中心になつておるのです。先ほど来大蔵大臣が言われるように、国際物価に比べて我が国は二割以上も割高になつておる。そうするとどうしても方向としては物価はあなたは微落の横這いということを言われましたが、逆に私は少し高め高めむしろ横這いということに自然なつて行く、そうすると総合均衡予算緊縮健全財政ということはなかなか私はそういうことを言われますけれども、それはできないことだと思う。その点の調和が私はどうも大蔵大臣予算委員会における審議に当つての各委員質疑総合して聞いておりますと、はつきりした方針というものは一つもないというふうにしかとれないわけなんです。私はここで物価を引下げるための方策というものをもう少し具体的にこうこうこういうことでやつて行こうということを御説明願いたい。
  24. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 先ず最初の米価について申しますると、私ども米価の引下げについては何と言つて麦類によつてこれを調整して行くほかはない。麦類配給を増加すればさつき申した通り二十億も違うのでありますから、而も麦類は本年は非常に世界的に豊作であつて、十分に入つて来るのであります。今度MSA物資についても五億ドルくらい入つて来るというようなことにもなつておりますので、これにだんだん置換えるということによつて一つ米価をだんだん下げて参りたい、特に本年のごとくこれはいろいろな見方がありますが、当然千八百万石の供出が見込まれた分がその後一千四百万石になつておる、これが一番米価を高めておる原因でありまして、こういうことは今後やりたくない、現に今供出されておる状況は恐らく二千百万石にとうに達しております。更に相当殖えるでございましよう。而も出て来るものはみんな超過供出の二千数百円を加算したような高いものでありますから、そこでそういう高い米になつて参るので、このことについての今年の苦心は、当時の事情からいろいろこれ集荷上の苦心もありまするから、これについては申しませんが、普通の状態であればこれは米価というものはもつと下ることは当然だと私は考える。  それからもう一つは、永井さんの議論は米の価格がそういうふうに上つているんだからすべて物価は当然上つて行くんじやないかというお話でありますが、実は米の価格は従来ほど大きな作用を及ぼしません。と申しまするのは、現在米が配給されておる量、米が又食物のうちに占めておる量、こういうものから見まして米は十年前の米とは全然違つて来ております。今日は麦類その他多くのものを相当たくさんとつておりまして、米の働きがすべての物価の標準になつた時代とは大分違つておることは、これは永井さんもよく御承知だと思う。現に同じ食糧であつても米が日本でそう高くなつておるのにそれじや麦は高くなつたか、差は一向高くなつておらないという等の事情から見てもよくわかるのであります。若しほかの物価を下げることなら、これについては石炭その他を初めとして基礎物資の値下をやつており、更にそういつた方面に今いろいろな手段を尽して行つておるのでありますから、それとやはり日本経済世界経済からかけ離れての日本経済というものはございませんから、世界経済木村君の言われるように来年恐慌が来るなんとは思つておりませんけれども、やはり横這いであるが、その同じ横這いでも下を向いた横這いであるというふうに見ておりますので、この影響はやはり日本も受けざるを得ない。又日本もそれに向かつて進めておるのであるから、相当効果がある。私は通商産業大臣をし出たときに石炭を一割以上必ず引下げる、こう言つたときに、当時非常に皆そんなことを言つたつてできんじやないかということを委員会でも言われたのでありますが、私は一年、今年の十二月になればそれ以上下りますよということを確言しておいた。その通りになつております。私は自分の頭では総合的に施策を進めておる考えでありまして、これは来年のことを言うとどうか知りませんが、物価は私は漸次国際水準に近付けて参る、こういう所存で進めておりまするから、これは総合的な施策をそれでやつて行きまするから、これは仰せのようになかなか行かない、やはり国際水準に漸次近付いて行く、こういう確信を持つて政策を進めておる次第でございます。
  25. 永井純一郎

    永井純一郎君 物価引下げの具体的な、まあ食糧について幾らか具体的に述べられましたが、全部具体的な対策というものをお聞きできないのは大変残念ですが、時間がないというお話でありまするから私は簡単に申上げますが、これは米の値が大して影響しないというようなことを言われますが、そうじやないのです。配給米が上ることによつて闇米はずつと又上る。而も闇米は何百万石、一千万石に近いと言われておる、それらのことを見逃して私は物価を論しておるのはおかしいと思う。それはもう一般の普通の家庭においては重大な影響を生活に及ぼしておる。それをあなたは御承知ないからそういうことに言われるのだと思いまするが、まあこの低物価政策に対する質問は一応これで終りまして、次に一点お伺いをいたしますが、それは国民所得との関係で、この前の国会のときに私は時間がなくて簡単に関連質問でお伺いしたままになつておるのです。それは私がお伺いをしたい点は、二十八年度はここに出して来た当初予算では五兆六千七百四十億円と言つておる。四、五日前に大蔵省が出して来た資料には五兆八千億円になつておりますが、どうして変つたのか知りませんが、一応それはよろしいとして、二十七年度の経済審議庁が調べました、一年遅れて実績を発表して来るわけです。それは当初は予算では五兆三千八百五十億円ということで、対国民所得との比を〇・一七三と出して来ておつた。ところがこれが二十七年度の国民所得の実績は一千百億ほど減つております。推定数字よりも減つて来ております。これは私は貿易から考え或いは滞貨の状態から考え当然そういうことになつて来ると思います。国民所得が特別に殖えるところの要因というものは発見できない。そこで二十八年度の五兆六千億というものは私は更に実績は減ると思うのです、ところが一面予算の規模は一兆七百億円というようなことを一昨日来から大蔵大臣言つておられまするが、これは私は実質を換算いたしましたら、それは二割以上の二十四年度頃に私は逆行してしまうと思います。そこで一体国民所得が二十八年度、二十九年度に亘つて殖える要因というものがあるのかどうか。それから先ず一番先に私は農林大臣お答え頂きたいが、第一次国民産業別国民所得、農林水産業は私は非常に減るだろうと思う、それだけでも。その点を第一次の産業である農林水産業でどのくらい減る。それから又大蔵大臣は二十八年度ではこの予想通りに五兆八千億とかいう所得が果してあるか、二十七年度の実績から見てですね、という点をお答え願いたいと思います。
  26. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 国民所得の問題につきましては、当初予算には五兆八千二百億円と見込んだのでありますが、その後だんだんと最近の調べによりますと、経済審議庁の調べによると、先ず大体五兆九千五百億円と推定されるのでありまして、第二補正予算を加えましても大体一七%そこそこでありまして、これはむしろ当初予算の五兆八千二百億円の当時と比べればパーセンテージは低くなつております。来年度の国民所得を見ますると、これは私どもはもう少し殖えるのじやないかと実は思つておるのですが、仮に六%殖えると見ても六兆二千億と、こういうふうに相反るのでありまして、仮に本年の割合で行くならば一兆二千億円くらいの予算を出してパーセンテージだけは合うわけであります。然らばどうしてそういうものが殖えておるかと申しますと、これは経済審議庁のほかの細かい説明もございましようが、これは極く大雑把にお考え下されば、なるほど農業所得は私どもの調では三百五十六億ばかりいろいろなもので減つておりますが、これは殖えておる部分は、米など高くなつて八千二百円の石の米が一万三百三十五円にもなつておるので、収入増加の面が相当著しいのでありまして、これらの点も併せお考え下さると、なるほどそう減つていないのだなということがおわかり願えると思うのであります。更に一般の事業会社等の私どもは租税その他の面から調べましても、利益は大体相当増加いたしております。ただ低くなつておるのは利益率であります。利益の率は減つております。個々の会社について見ましても、例えば今まで三割の利益率があつたものが二割になつているのはあります。けれども、それは払込資本金その他が増額いたしました結果でありまして、これは自己資金の増加の結果がそうなつておるので、利益総額は相当増加いたしておるのであります。従つて税収等の面からも過年の九月等の実績から見て相当多くなつておるのはその関係であります。そのほかにつきましてもこれは相当国民所得は増加して、鉱工業生産等も相当活発になつておることも御承知通りであります。ただこの情勢はどこまで続くかということについての見方はいろいろございましよう。ございましようが、私どもは二十八年度予算は今お話の著しく減つたのでなくて、むしろその言葉を逆に一応五兆八千二百億と見たものが今日のところでは五兆九千五百億円と見込まれておる。これは経審の調であります。更に来年度を六兆二千億と見るのはこれはまあいろいろの何を見れば当然の数字だと私は考えておるのであります。従つてお話のごとくに私どもは率が殖えておるとは考えてりません。
  27. 永井純一郎

    永井純一郎君 名目的な所得は大体言われるようなことになると思うのです。併しこれは物価政策並びに国民生活から言えば、実質換算指数というようなものを調べてみると、そうならないのです。なつておらないのです。又豊凶係数等について政府が十分考えるならば、或る程度農林水産業の国民所得の減少を補うことができるのですけれども、それが不十分なんですね。従つて農林一部門においては、これはもう国民所得は減つて来ることは明らかです。補いをしておらないのですから、政府政策を以て。それから大蔵大臣は国内消費が、通産大臣でありましたか、余計あり過ぎるのだ、これが又低物価政束に逆行しておる、これを抑えたいということを経審長官、通産大臣は言つておる。ところがそれを抑えて且つ貿易が今のような政府の外交方針で不振であるならば、どこに一体我が国の国民所得が殖える要因というものがありますか。それはないはずなんです。その証拠には、二十六年度あたりまでは大体あなたの言われるような数字を辿つて来て、推定数字と実績はほぼ同じくらい、或いは実績のほうが少しくらい上廻つてつたこともあります。ところが二十七年度からそれが逆転しておるのは、取りも直さず私が今申上げることを実証しておるのです。その見通しが誤りならば、二十九年度の予算編成は、今のような考え方で編成をされるならば非常に私は勤労者に対する生活の圧迫は加わつて来る工と思うのです。で、その見通しが非常に甘過ぎて、二十六年度末、それから二十七年度末の実績というものを一つ大蔵省が検討しないで、ただ甘い都合のいい推定数字だけでやられるということは、あなたが何遍も従来言つておられるところの対国民所得に対する漸減方針というものは、これは嘘だつたということになる。私は小笠原さんはそう嘘をおつしやる人ではないと思うのです。これは数字を検討されないからじやないかと思います。今のような見通しで果してやれるかどうか、私は非常な疑問を持つのですが、やはり二十九年度の方針は、それでは六兆二千億円ぐらいの国民所得を目標にして予算を編成するという方針かどうかこの点を伺つておきます。
  28. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 経済審議庁でのこれは数字の出し方は、従来から一貫しておるのでありまして、それに基いて出ておる数字でございまして、大蔵省のものを利用しているのではないんです。経済審議庁の出しておる統計を利用しておる次第であるから、これはどうも御了承願うよりほかにないと思います。それから更に今実績の、何かドルか何かできちんと割出してやつたらどういうふうになるか、そういうものはまだ私は見ておりませんからよく存じませんが、これについては又別に調査を一つすることにいたしましよう。ただ今までのところのすべての立て方が経済審議庁で出しておる国民所得というものが、これはあそこが一番よく調べておりますので、それに基いて予算の切り盛りをしておる。そうして今申した通り、今年の当初四月頃考えたよりも今考えておるときにはもう実質が殖えておる。五兆九千二百億にもなつておる。こういう事実、それから私がいわゆる自然増収という分等で法人税等の税をみておりますが、それらの増加等の面から見れば、これは明らかに増加いたしておるのでありまして、私どもも来年の予算については六兆二千億というものは一応の見方として、在来の見方としては正しいものと見ておりますから、それでそれを基礎としておりますが、併しよく申上げる通り、これを基礎として歳出予算を盛るということではないので、それに基いての歳入が大体一兆六、七百億になるから、この歳入をめどとして一つ来年はいわゆる総合均衡予算をやると、こういう趣旨で申しておるのであります。従つてその歳出の面をパーセンテージで低くなるからとか高くなるからとかという考え方ではございません。ただ国民所得に基いて納税等があるから、それに基いた税収等から割出しての計算をしたのが、過日来申上げておる二十九年度予算のいわゆる骨格予算、こういうものなんであります。
  29. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 関連して。実は今永井君の御質問に対する大蔵大臣の御答弁で、私は、非常な私と大蔵大臣との見解の相違というものを発見いたしました。それに関連して一応一言だけ御質問を許して頂きたい。或るほど大蔵大臣が従来のそういう国民所得なり、それから上つて参ります税収を基礎として、従来の考え方を延長されておるのですが、率直に言つて、今の国民所得がなぜ上つて来るかという点は、輸入を二十一億ドルもなすつて、そうして輸出が、特需を八億以上を入れても逆調に転じて参つた。一億数千万の逆調になつてつた。そうすると結局考えて見ますことは、ここに日本経済全体としましては輸入の増加で殖えて来ておる。生産が上つて参りましたのは事実経審の統計の通りで、一四五ぐらいまでは上つて来ておる。それも結局国内で食つている。だから輸入物資も国内で食い、生産の上つたものも国内で食い、そうして外国には、だんだん輸出が減退しておる。ドイツその他の例のように、生産が上がればそれに応じた比率で貿易が伸張して行つているのじやないのが日本経済です。だから私に言わせれば、お互いが食い合つて、そうしてお互いの数字だけを名目的に膨らして行つた、そのパーセントを表わして行つておる。そういうことで国際的な価格との差がだんだん開きが大きくなつて、実質は減退しておる。現に日本経済にタッチしておる者は非常にむずかしい。輸入をしていればインフレの含みで儲かる、楽に輸出しておる者はどうだ、輸出しておる者は二重価格になつて、出血輸出出血輸出と言うけれども、その差額は国民消費需要或いは投資経済、設備投資にやはり投じておる。皆国内で日本人同士で食い合つておるのが経済現状です。あなたの言うような今までの方策で行けばその点はちつとも直りつこない。石炭だけ例を挙げれば、現に今年の六月から上つておる、その他いろいろな消費物資を中心にして。そういう経済現象をお考えにならなければ、私はその点が一つも重点に入らないで、今までの通りの形でおやりになるならば、今までの予算の組み方であり、今までの通り物価が上るよりほかない。一つも国際的な経済から来る危機に関してどのフアクターもお入れになつていない。それじや私は非常に……どうも大蔵大臣は精神はいいのだが、やることはインフレ方向をとつておるという感じを持つて非常に疑問に思つておりましたが、私とあなたの見解の相違のポイントはそこだ。こういうふうに考えるのですが、その国際経済に転落して行く状況に対してあなたはどういうふうな見解、お含みを持つて政策をされるかということが、私は、この吉田内閣の中心点でなければならん。その中心点をおつぼらかして、今まで通りの統計でおやりになつたらどうにもならないと私は思いますが、一遍その点をはつきりお聞きをしたいと思うのです。
  30. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これはどうも掘木さんのおつしやる通り私も実は考えておるのであります、この点については。けれども二十八年度予算というものは、あの当初、できたときからずつとこういうふうに来ておつて、そこで私は膨脹を最小限度にとどめたというのが、前の人の予算を引継いで行なつたのでそういうふうにやつて来た、こういうのが実情でありますが、二十九年度予算は、それだからよく言うように、日本経済の興亡の分れるところですから、二十九年度予算というものは徹底的に緊縮方針をとつて行くのだということを言つておるのはその点を意味しておるのであります。従つてどもも常に申しておるのは、永井さんの質問に対してお答えした中にはそれはあるが、何といつても輸出の増加を図る以外にない。それにはいろいろな点もありますが、やはり根本としては日本物価を下げて行くより以外にないのだから、それで私はいわゆる、永井さん、上向きだと言われるが、私は下へ向けて低物価政策をとつて行く、そうして輸出の増加策を立てて行く、こう言うのであつて、例えば昨日生糸の是非についてもそういうことをちよつと申したのであるが、私どもは輸出増進の観点からものをやりたいと言つておるのはその点であります。これは国際収支を、私も長い間実はそういうことに携わつて来ており、その面から見れば、これはあなたのおつしやる通りであります。併し一応来年度の予算規模はどうだと言われるから、予算規模を問われるときには、それはやはり国民所得はこうなつておるから、税収はこういうふうにある、こういうお話を申上げて、併しそれ以上に持つて行かないということを言つておるのは、これは自然に殖えて行くものさえ非常に多いときに、こういうことを言つておる、これは堀木さんも細承知のごとく、異常なる決意が要るのです。又異常なる措置が要るのです。さもなければやつて行けません。それで過日来御説明申上げている次第でありまして、今仰せの点については、私も全く同感でありままして、そういう趣旨の下に二十九年度予算を編成いたしたい、かように考えておるのであります。
  31. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう御答弁を要求しませんが、併し今おつしやることは、来年度の規模を考えてどうするのだとおつしやるときに、今永井君に対しては、今まで通り考え方一つ予算規模というものをお考えになつていることは明らかであります。これは衆議院でもあなたがおつしやつている。ここでもおつしやつている。私はその認識じや駄目なんだという考え方に立つておる。実はもうよくおわかりになつて、私より無論財政経済通だと私は大蔵大臣を信用していますが、知識とやられることと違うのです。だから今おつしやるように、ずつと知識で延長されちや困る。今までの統計でただされておつては、片方の現実はすつかり違つたほうに向きますから、だからすでに来年度予算に当つては、今までの数字の引延しにならないで、新らしい経済現象をお考えにならなければならない。と同時に、私は率直に言えば、経済というものは今日から変るものじやありません。一日も速かに切替えて行くのが日本人を救うゆえんである。これはもう外国が皆毎日々々努力いたして、少くとも三年前から努力して、営々として築き上げて来た経済の上に立つて、而も物価低落に耐えられるような経済の上に立つて国際経済に進出して来ている。日本だけが今まで安易な気分でやつて来たのですから、だから今までの数字を基礎になさつて、その延長で予算をお組みにならないだろうと思いますし、今のお話なれば、今のお話を本当になさるなら私は今のような数字の延長はなさらないだろうと思いますし、どういう立派な予算ができますか、二十九年度予算でもう一度大蔵大臣と私は対決したいと思いますから、これだけ申上げます。
  32. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 只今大蔵大臣がお話なさつたことは、誠に日本経済の前途に対して重要なことだと思います。二十九年度予算については非常な決意を持つてこれを圧縮するということは誠に御尤もなことなのであります。併し二十八年度予算が、災害ということがあつたということは別にしまして、だんだん大蔵大臣の持つていらつしやる決意が崩れて来たということは、これは否定できないと思う。そこで二十九年度には、将来我が国の貿易を有利にし、大いに物価を引下げるという点に御努力あることは誠に結構だと思いますが、これは二十九年度予算というものだけを考えて、私は日本経済の自立ということは非常に困難じやないかと思う。そこで私どもは或るやはり一定の年次計画を立てるなり、自立経済の基礎を築いて行くという方策を立てることが必要だと思うので、その都度財政ということではやはりこれはどうしたつて日本経済が復興しない。再建しない。ここ二、三年間にどうするという貿易の振興なら振興、この対策の確固たるものを樹立しなければなりませんし、財政経済、金融その他の面についてこの計画に則つて政府の施策を実施するということが必要ではないか、こう思うのですが、こういう計画性ある経済自立の振興方策について、どういうふうにお考えになつていらつしやるか、御説明願いたいと思います。
  33. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私は二十八年度の予算編成に当りましても、これは私が大蔵大臣就任前の予算も相当ありますが、その後の補正その他をやるに当てましても、常に日本の現段階では財政均衡をいたすことは必要である。他方にはこれを緊縮する、つまり、圧縮することが必要だ、こういうふうに考えておつたのであります。従いまして私どもも普通の年であれば、御協賛を求めたすべての予算案というものは、そういうふうに圧縮されておるのであります。ただ災害というものが、五百億にも上る大きなものがここに不時に起つて参りましたがために、不幸にして予算数字的膨脹を示した。然らばそれで何かほかに削るものがあるかと言えば、皆さんがすでに御協賛下さつたように削るものがない。削るものがないので止むを得ずそういう措置がとられたのであります。尤も松澤さんあたりは、いや、それは保安庁費を削ればいいぞ、こうおつしやるけれども、そういうようなことができればこれはその通りなんでありますが、これは立場が違うので、私どもは防衛費を削つて、そちらに向けるという考えになりませんので、従つてどもとしては削るものがない、こういうことになるのであります。然らば何らかの計画を持つてつておるか。これは勿論私ども計画を持つてつておるのでありまして、先に私が経済審議庁長官を兼ねておりますときにも、やはりそこで一応五カ年間の先のめどを立てまして、そのときそれの数字を出せと言われたけれども、これはいろいろな関係でお出ししませんでしたが、内部的には一応めどを立てております。更に又最近におきましてはいわゆる三方針原則というものを立てまして、この下にやつておるのであります。私どもが決してその都度のものをやつているのではなくて、一つの線の下に私どもとしてはやつておるのであります。ただ私どもの線の外へそれるものは災害といつたような不時な出来事ですよ。これは何とも力及ばず、ここに力が及ぶようになれば大したものだと思うが、これは不幸にして力及びません。併し私ども最善を尽しておるのでありますから、今後とも十分三方針原則、これはすでに発表いたしておりますから、この線に基いて少くともやつて参りたい、かように考えております。
  34. 平林太一

    ○平林太一君 外務大臣の岡崎君に御答弁を求めておくのであります。現在行われておりまするバーミューダ会談に対する一昨日来の報道によりますれば、英仏は対ソ緩和政策をとるためにチャーチル英首相、ラニエル仏首相がアイゼンハワー米国大統領を説得したと伝えて来ております。その結果は四国外相会議が近くベルリンにおいて開催せられることが確定せられた。これに対して、これ又アデナウアー西ドイツ首相は、昨日の外電によりますと、誠に結構なことだ、喜ぶべきことだと称して、欣然これに賛意を表した。ベルリン会議が、四国外相会議が近く開催せられますると、その結果は当然英国首相チャーチルがモスクワを訪問する。これに対してはソ連の外相は、これに対する用意あり、こう伝えて来ております。この事実というものは、今日西欧の団結を希望する米国といたしましては、相当程度英仏に同調して、対ソ方針を修正するのではないかということを観測せられます。又そうであつたからアイゼンハワー大統領が今回の会談においてこれを承諾せられたものと承知して差支えないわけであります。かかる場合におきまして、吉田内閣の外交政策もこの際、我が国家将来のこの一大転機を、この際この機会に遭遇せりと私は思うのでありまするが、即ち対共産圏外交方針の緩和というものを岡崎君はお考えにならないか。而も時あたかもソ連、中共に対しては、すでに邦人の送還、貿易問題等を通じまして接触を自然にいわゆるこの国際道義の上におきましていたさなければならないという現在、これら内外の国際情勢に徴しましても、なお引続き対ソ、中共両国に対して岡崎君が今日までしばしばの機会に述べられておるところの方針というものをお変えになる、この意思、又この際、従来は外務大臣としてはこの苦衷というものを私は察するのであります。そういう苦衷が今日の機会におきまして、広く全世界の国際外交に対処する、我が岡崎君のお考えとして、何らかをこの際お考えになつておられるのではないかということ思わざるを得ない。右に対する御答弁を求めるのであります。
  35. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) バーミューダ会談の模様は私は直接知らないのでありますが、大体四国外相会議の方面に行くものとは考えておりますが、併しその後例えば巨頭会談というようなものが行われるか、チャーチルがモスクワへ行くかというようなことは今後のことになるのでありましようが、その結果、一体対ソ態度が変るかどうか、これはまだ変ると必ずしも断言するような材料もないように思います。が、併し我々としては、十分これらの成り行きをよく観察して、日本の外交政策一つの考慮にすべきものとは考えて注意をいたしております。併し日本の外交政策はやはりこれは日本の外交政策として立てられて来ておりまするし、今後もそのつもりでありまして、勿論その諸外国の動向というものは大きな参考にもなりますれば、又影響も与えるものでありまするが、根本的には、よその国がこうしたからすぐ日本もこうというふうにもすぐにも参らないのでありまして、ただおつしやるような非常な重要な時期でありまするから、できるだけこれに対して注意をいたしまして、将来の政策の基礎に役立たせるように考えております。
  36. 平林太一

    ○平林太一君 岡崎君只今バーミユーダ会談を知らないとおつしやつたが、どういう意味伺いたいのであります。
  37. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は別に参加いたしておるわけでは勿論ないし、今まで知つておりまするところは、コミュニケ等の発表だけであります。今までの発表によれば、まだ四国会談をやるかどうかということさえきまつておらないのであります。大体そつちのほうに向うだろうというのは新聞等の観測であります。従いまして直接に私はそのいきさつは知らないわけであります。
  38. 平林太一

    ○平林太一君 どうもその直接知らないと言うのであれば、全然発言できないはずであります。併し知らないと称しておつて、知つたような只今お話をしておられる、御答弁を、誠にあなた御態度というものは甚だ遺憾に堪えないのであります。ことごとくあなたが外交をなさるのに、只今のは、出席しておつた場合にのみ知つておる、出席しない場合は知らないのだ、こういうふうにも受取れるのですが、これは新聞が堂々と外国電報として伝えて来ておるということをあなたは信用なさらないのか。そうしてあなたの外交方策、方針、経綸、施策というものをお考えにならないのか。この点一つ伺いたいと思います。
  39. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の経験によりますれば、新聞の報道というものは、大体の方向は示しておるように思いますが、中にはかなり間違つた記事もなきにしもあらずです。これは観測でありますから、先のことはいろいろ見方もありましようから、新聞の言うことを全部見まして、これを信用しようとしても、或る新聞と他の新聞とでは報道の仕方が違つておりますから、どつちを信用するかという問題も出て参ります。従つて新聞は参考にいたしておりますが、又こういう問題につきましては、友交国である関係国からいずれ又その内容等についても通達があるものと期待しておりますが、只今のところは新聞報道以外には私は知らないのであります。
  40. 平林太一

    ○平林太一君 どうも今のお話が、新聞を信用するがごとく信用せざるがごとく誠にあいまい模糊といたしておる。これはこの程度にしておきますが、今後は新聞というものは信用なさい。殊に国際的外国電報というものに対しては、あなたは一段と新聞に対する信頼を払つて、そうしてそれに対しては速かに間髪を入れず対応、対処策というものをお考えにならなければならない。若しそうであるならば、本日只今の御答弁はいわゆる、すでにこれこれの方向に我が外交は行くべきだという御答弁があつて然るべきである。不幸にいたしましてそれを岡崎君開陳のできないことは、無為無能の外務大臣であるということを露呈したものである。この際大いに反省を求めておきます。(「その通り」と呼ぶ者あり)この問題に対しては当然我が国といたしましては、対ソ、対中共外交というものに対して、この際根本的な方向の建て直しをしなければならない。これに対して米国の了解を求むるということに対しては勇敢におやりなさい。我々も大いにこれに相呼応して我が国家の将来を誤らざる方向に進みたい。  その次にお尋ねしたいことは、駐米大使の新木君が近く帰国するのだということを新聞で承知いたすが、これは事実かどうか。
  41. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 事実であります。
  42. 平林太一

    ○平林太一君 その理由を承わりたい。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 賜暇帰朝ということでありますから、これを許しました。
  44. 平林太一

    ○平林太一君 米国の官辺筋が伝えておるところによると、来たる二十日に新木君は任地を立つて、年末には日本に帰国するのだというふうに伝えておるのでありますから、賜暇帰朝ということは、いわゆる彼が任を離れるということとは違うのであるが、我々の観測では、新木君はこの際米国大使をやめるのだと、かように考えておる。従つて、それを前提として賜暇休暇の許可を与えたものかどうか。それを伺いたい。
  45. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 我々は今のところは、賜暇帰朝ということでありますから、その許可を与えたのであります。
  46. 平林太一

    ○平林太一君 賜暇帰朝というものの範囲、内容を承わりたい。
  47. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 賜暇帰朝というのは、一時任務を離れて帰朝して来ることであります。
  48. 平林太一

    ○平林太一君 今日の日米関係の極めて重大な際に、いやしくも只今岡崎君の御答弁の範囲にあるような賜暇は、許すべきものではないのだ。それをなさるということは、すでに新木君はみずから期するところにあつてこつちへ帰られるのだ。それを認めておるのだ。これは新聞にはすでに後任の問題に対して、何か岡崎君が後任になるというようなことも伝えられておる。そのくらいこれは具体的であります。そこで私はお尋ねするのだが、先般の池田ロバートソン会談のいわゆる池田特使であります。彼と、それからこれは愛知君も行かれたのですが、先日来しばしば本議場の質疑の対象となつておるが、そこでなぜあのような重大な問題を、出先機関、いわゆる在外公館たる米国の新木大使をしてなぜ行わしめなかつたか。これを承わりたい。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 池田君は、単にアメリカへ行つただけではなくして、ほかの国にも参つたのであります。日本の事情を各国に対して直接によく説明し、又各国の事情を直接に日本の事情に鑑みて考慮して帰つて来ると、こういう任務でありまして、かかるやり方は何も今始まつたことではなくして、古くは有名なハリー・ホプキンスがルーズヴェルト大統領の個人的特使として行つたこともありますし、又日本でも第一次上海事件の勃発当時、松岡代議士が上海に総理大臣及び外務大臣の個人的特使として活躍したこともあるのであります。それはやり方、その事情、又その時の状況によりまして、そういうことが便宜であれば、そういう処置をとるわけであります。
  50. 平林太一

    ○平林太一君 只今の岡崎君の答弁は、詭弁も甚だしい。今回の帰朝に徴しては、在外公館の新木大使というものが米国朝野からその信望、信頼を失つたということは、争うべからざる事実である。彼はそのために遂に米国大使としてとどまることができないという事情に立ち至つたので、今回帰つて来るのであるということを、岡崎君はお考えにならなければいけない。将来の在外公館に対する性格、取扱に対する一大示唆をこれは与えた問題である。まさに大なる失敗である。そこで私はこの際申すのであるが、先日来の特使の選任に当つて、これはロバートソン・池田会談が行われたことが失敗であるということは、我々が承知するのみでない。世界周知の事実として、潮笑をされておる次第である。そこでこの会談に対して、なぜその練達堪能とも言うべきいわゆる在外公館中の最大地位を占める米国大使をして行わしめなかつたか。而も、事もあろうにこの特使として選んだ者が、我が政界において粗忽者の最大の評のある池田勇人君である(笑声)粗忽者でしよう。いわゆる貧乏人は麦を食えという、商人の五人や六人くらいなくなればよろしいのだと、天誅忽ちに彼は不信任案で職を去つたのである。そういう粗忽者を選んだ。又愛知大蔵政務次官に至つては、私は愛知君の顔を見ていつも微笑を禁じ得ないが、彼は少年である。まだ彼は紅顔の美少年である。その美少年の子供の愛知君と粗忽者の池田君をやつてロバートソン会談が行われ、その結果は世界の笑いものになるということは、これは当然なことである。而もそこには新木君という大使がおる。そうして彼は事ある際に、派遣大使としてそのことをなさんがために孜々として日常これに当つておる。今回のような重大会議に彼をして行わしめたならば、その成功期して待つべきものがあつたのである。だから私は、岡崎君という人はどうも自分の個人感情の憎悪というものが非常に強い。好きな者であればどんな者でもそれにやるのだ。好まない者であつたならばどういう重要な職であつてもこれに当らせない。こういうようなことでは、我が国の国際外交というものが、将来国際的に優位な地位を占めるということは、これは到底望みがたいことである。私といたしましては……。
  51. 青木一男

    委員長青木一男君) 平林君に申上げますが、成るべく簡単に、時間が過ぎておりますから、要旨を述べて下さい。
  52. 平林太一

    ○平林太一君 こういうことを深く今日岡崎君にその反省を求めておきます。併しまあこういうような段階になれば、私としては岡崎君に外務大臣にとどまつてもらうことが実は困るのだ。今日この我が国の国際外交というものはマイナス、マイナスである。そうして、今日我が国の国際外交というものを日々に弱体にし、無能にしてしまうのである。どうか私は、今日のこの機会において岡崎君がおやめになること、辞表を御提出になることを望むものである。それに対して岡崎君はこの際率直にお答えを頂きたい。国家のためにこの際勇敢に、やめますと、そうして米国大使にでも行つて、暫らく外地で大いに見識を高めてみましよと、こういうような御答弁を頂ければ、至極結構だと思う。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の進退につきましては、総理大臣その他内閣で以て適当な考慮をいたすことでありましようが、只今のところは御希望に副う段階にはまだ行つておりません。(笑声)
  54. 平林太一

    ○平林太一君 岡崎君は、進退は総理大臣がやるんでとおつしやる。これは卑怯未練の態度である。辞職するということは、自分が総理大臣に辞表を提出すればそれで事が済むのでありますから、それを総理大臣がやるのだということは、職に恋々として、そうして我が日本外交をして非常な困難な、破局に陥らしめるものだということをこの際警告いたしまして……。今岡崎君のお答えは非常に食い違いがある。総理大臣によつてやめるのだということはない。辞職ということは自分でできるのです。総理の下に辞表を出せばよいのだ。そういう見解をもう一遍承わりたい。
  55. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は少し論理的に申上げたので、辞職の場合は、総理大臣が罷免する場合と、そうして自分から辞表を出す場合とがある、そこを二段に分けまして、首相なり内閣で以てやめろと言われればやめるのである。又そうでない場合も、あとのほうで附加えましたが、今御希望に副うような段階になつていない、私の意思としてはまだそこまで行つていない、両方の場合があるので、その両方を申上げたのであります。
  56. 平林太一

    ○平林太一君 両方の場合ですが、後段に御答弁なつた自分自身でできるということをおやりになればよろしいのですから、その点を私から反撥しておきます。私の質問はこれを以て終ります。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 木村長官はお見えになりますか。
  58. 青木一男

    委員長青木一男君) 長官は差し支えのために政務次官が代つて出席しておりますが、それでよろしうございますか。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 政務次官では仕様がない、私は事務的なことを伺うわけではない。
  60. 青木一男

    委員長青木一男君) 改めて要求しますから、ほかの閣僚の質問を先にやつて下さい。
  61. 高田なほ子

    高田なほ子君 犬養法務大臣にお尋ねをいたします。李ラインの問題がやかましくなりましてから、最近吉田首相の身辺にテロ行為の計画があるやの報道がございます。このために吉田首相の身辺に対する警護陣営が強化されたと聞きますが、このテロ計画の事実の有無について御答弁を願います。
  62. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。約一カ月前くらいそういうような情報を手にいたしました。よく調べてみましたら、どうも根拠が薄かつたんでございます。併し一方私の政治判断と責任に基きまして、総理大臣の警護の人員を若干殖やしました。それは私の責任でいたしたわけでございます。
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 少くとも基本的人権を守らなければならない吉田首相の身辺にも、そういう問題がかすかにでも起つているということは、極めて重要な問題だと思うわけであります。而もこの背後にあるところの団体は、いうところの再軍備促進を主張する右翼団体であるというふうに考えられますが、当局においては右翼団体の全貌についてよりより調査を進めておられるやに聞き及んでおりますが、この際右翼団体の活動状況の全貌を詳しくお示し願いたいと思うのでございます。
  64. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えをいたします。先ず前段の御質問についてもう一度申上げますが、私のこれは個人判断もまじつておるので御了解願いたいと思います。大体内閣が非常に長く政治力を持ち、殊に首班者が強い性格を持つておるときには、私の体験、私も被害者の一人でありますが、右翼的なテロ行為というものが発生しやすいのでございます。これは吉田首相がいいとか悪いとかということは別といたしまして、強過ぎますと、そして長い内閣のときには大体統計的にそういうことが起りやすい状況になるのが常でございますから、従つて私の体験と政治判断で警護の人員を殖やしたわけでございます。むしろ総理大臣には御迷惑であつたと思います。恐らく総理大臣自身はまだ警護人員の殖えたのは御存じないのではないかと思つております。  第二段のことは、お尋ねの通り私のほうでも大分これは関心を持つて調べております。大体の概略を申上げますならば、右翼団体の動向について特に御報告申上げる点が四点あると思います。  一つは、右翼団体が大同団結のような機運に向いておるということ、そのわけは、いずれの形にせよ政治革新とか社会革新ということは、やはり組織活動によらなければならないというような考え方から起つておるもののように私は見てとつておる次第であります。そこでそういう動向にある右翼団体の活動内容、物の考え方が大ざつぱに申上げますと二種類あると思います。一種類は右翼運動の戦前から、或いは戦時中からのいわゆる先輩たちがやつておる運動でありまして、この人たちの運動目標は、やはり戦前に見られましたように広い範囲を目標にしておりまして、例えば経済における社会正義の実現とか、或いは世界的土地開放、それを内容とした独立道義外交の確立、独立憲法の制定とか、政界、官界の粛正とか、自衛組織の確立とか、こういうふうな全般に亘つた運動目標が見られるのでございます。もう一つは、戦後に新らしく勃興した主に若い人が組織しておる右翼運動でありまして、これはもう主として反共一点張り、この思想に基く労働組合対策というようなところに重点が限定されておるように思われます。  それからもう一つちよつとお話が出ましたから申上げるのでありますが、李承晩ラインとか竹島問題について右翼方面が動きまして、今年の九月に対韓問題国民同盟というようなものができたのでありますが、その後最近に至りまして日本と韓国との対立ということを強力に主張すると、却つて共産陣営に利用されるというので、この頃では外交交渉によつて円満に解決を図れというような自重論的なスローガンのほうが殖えて来たように思つております。  なお何と言いますか、侠客肌の団体によるお互いの縄張り争いから起る一種の刃傷沙汰、むずかしくいえばテロ行為というものはありますけれども、政治的テロ行為というものは今ないように思われます。御指摘の噂もその後緻密に詳細に調べて見ましたが、どうも根拠が薄いという最終判断を下しております。
  65. 高田なほ子

    高田なほ子君 右翼団体の向う方向については極めて重要な問題でございます。これは御指摘の通りでありますが、今の御説明によりますと、この右翼団体がいわゆるテロの方向に向わないであろうというような示唆に富んだ御答弁でございましたが、この右翼団体の今後向うであろう方向、即ち今後の政界の安定並びに国際情勢の変化を勘案されて向う方向についてあなたの御所信を承わりたい。
  66. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 右翼団体についての何と申しますか、長期に亘る一貫した動き、主義に基く動きというものの分析は極めてむずかしいのでございまして、例えば国際共産主義の運動でありますと、モスコーで千九百何年に綱領が発表されたら、それに基いて各地におけるローカル・カラーを帯びたいろいろな運動がありますが、根本の世界革命によする綱領というものは一貫している、そういう一貫性を見られるのでありますが、右翼団体の一貫性は、やはり日本民族の優秀性に対する確固たる自信とか、それに伴う政治の貧困を矯正させるとかいうこと以外には、そのときどきの時局に対して発奮していろいろ思想を発表するということが主な傾向のように思われますが、概して私の個人意見も混ぜて申上げますと、右翼団体の行動が爆発します一番の要因は、やはり政界に腐敗が行われるということが非常に刺激になると思いまして、右翼団体に対する善処としては、政治家がきれいな政治行動をとるということが非常に大切である。過去の例を見ましても、それが事実無根であるにしろ、政界腐敗であるとかいうことの噂が立ちましたときに、必ず活溌な動きが行われているように思われます。従つてこういうことを根拠に取締当局は善処いたしている次第でございます。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 政界をきれいにするということは御尤もなお話でありますが、果して今日の政界、官界というものはきれいになり得るか。このどぶ泥のような、国民の血税を搾り上げている税金が政界、官界の腐敗によつて非常に厖大に費消されていることは、すでに検察庁あなた自体も御存じのことである。これをただ単に政界、官界の粛正だけで、この右翼の向うにいわゆるテロ計画の方向を阻止するということは困難であろうと思うのでありますが、これに対する取締りの具体策並びに破防法が、私は破防法に賛成いたしませんのですが、破防法のようなものがこれに適用されたという例があるかどうか。
  68. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えを申上げます。この右翼の行動は、今申上げましたように、例えば、例を引いては右翼が憤激するかも知れませんが、全く対照的な、国際共産主義のように千九百何年から何年までは一貫した主義綱領がある、千九百何年に至つてそれが国際的に綱領が変化を来たした、そういう長期に亘る一貫性というものが見られないのでありまして、若し強いて申せば日本民族に対する自信、日本国というものに対する誇りというものが根幹になつているように思いまして、今のところ急速にテロ行為に向う傾向が多分にあるというふうにはどうも調査の結果見ておりませんけれども、併し取締当局の責任といたしまして、無論一度そう見たから、あとは寝ころんでいるというような態度はとらないようにいたしておる次第であります。破防法に基いて公安調査庁の調査が行われているのでございますが、破防法に基くのはみんな罪名がきまつておるのでありまして、例えば騒擾、放火或いは激発物破裂、汽車、電車の往来妨害、殺人、強盗、爆発物使用、特殊公務執行妨害、警察等に対する特殊公務執行妨害、罪名がこれは国会の御意思でもありまして、はつきりきまつておるのでありまして、これ以外のは普通刑法の対象物といたしておるようなわけでございます。従つて何でもかんでも破防法に引つかけるということは、当時の世論に鑑みましても特に私は慎重にいたしておるわけでございます。
  69. 高田なほ子

    高田なほ子君 いわゆる言うところの左翼陣営に対する圧力というものは、極めて政府は強いのでありますが、かかる右翼団体に対して割合に私は緩慢な態度をとつておられるのじやないかと思う。それを裏付けするように「釈放戦犯ぞろぞろ抬頭、金ずるは緒方氏」こういうふうに現在の緒方氏の名前が疑問符を打つて出ておるのでありますが、この問題は緒方氏御当人に私は伺いたいと思うのであります。現在の右翼団体の恐ろしい方向を厳重に監視するという対策をお持ちになることなしには、私は日本の平和、又平和憲法を守つて行くことはできないと思う。即ちこれらの団体の掲げるスローガンは明らかに再軍備促進である、憲法の主張とは真向から対立する考え方を持つているようでありますが、犬養総裁はこの憲法と対立する再軍備促進の団体或いは個人が憲法第九十九条にあるような憲法を守らなければならないという全般の国民の義務と、どういう抵触がされるか、御見解を表明して頂きたいと思うのであります。
  70. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えを申上げます。政府といたしましては、殊に或いは総理大臣の個人的な気分も御承知と思いますが、左翼と右翼、つまり暴力行為で以て社会に政治的変革を来たすというようなことはもう差別を付けておらず、絶対反対でございまして、これは吉田首相の個人的な気質からも御推察願えると思うのでございます。それから成るほど昨今昨年ぐらいから殊に目立つて再軍備の研究などほうぼうでやつております。併しそれが憲法などどうでもいいから憲法なんか踏みにじつてつてしまえということになりますと、それは憲法尊重の民主国家の基本的な問題からしてこれは由々しいことでございますが、再軍備をどういうスピードで促進するかどうか、それには憲法を改正しなければならんとか、或いは憲法を改正しないでもいい、即ち言い換えれば尊重の枠の中で再軍備ができるとかいろいろ御議論がありますが、憲法を尊重しての、憲法というものを立ててのいろいろな再軍備の御議論というものは、これは言論の自由、思想の自由でございまして、私ども取締当局のまだ対象物にはならん、こういうふうに考えておるわけでございます。
  71. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういたしますと、再軍備促進論はどのようにしてもこれは一向かまわんとおつしやるわけでございますね。それと反対に平和を守れという言論はなぜ抑圧されるのか、あなたの御見解を聞きたい。
  72. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 再軍備促進がそれが研究である限り、或いは社会破壊を伴わない限り、私のほうの捜査取締の対象にいたしておりません。これに対して平和を守れと言うと当局が非常に神経質になるじやないか、(「その通りですよ」と呼ぶ者あり)こういう御疑問でしようが、この前の前の国会でしたか、高田さんからでしたか御質問がありまして、思想調査をやつちやいないか。思想調査ということは全然私の方針にないことでございますから、当時厳重にそういうことの有無を調べたことがございます。若し平和を守れということだけで第一線の数の多い中の取締当局の職員が思想調査をやるということならば、私の全く方針と違うことでございますから、厳重に取締るつもりでございます。
  73. 高田なほ子

    高田なほ子君 緒方官房長官に…。
  74. 青木一男

    委員長青木一男君) あなたの要求があとから出たから、今連絡をとつておりますが、まだ連絡がつかないのです。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 それじや後刻お願いいたします。じや続いて犬養法務総裁にお尋ねをいたします。教職員の思想調査の問題については、只今犬養総裁の御答弁通りでございます。併しながら折角のあなたの御主張、御信念にもかかわらず、最近頻々として全国的に亘る教職員の思想調査が現実に行われておるわけであります。なかんずく七月の中旬より八月にかけまして国警が教職員に対しまして、いろいろの角度からこういうことを調査しておりますが、これは教職員の基本的な人権を蹂躙し、又民主主義教育を破壊する誠に重大な問題だと思うわけであります。PTAや又学校に関係する家族、それらのものはこういう調査を受けた教職員に対してどういう態度をとつているか。私の息子はまだ嫁取り前だが、たびたびお巡りが何て調べられるので肩身が狭い、とてもこれじやいい嫁さんは来ないだろうと、調べられたお母さんが泣きの涙にくれているという事実もあるが、併しこれは派生的な問題である。問題は教育の民主化に対する飽くなき弾圧をどうするかという問題、これで私は先般文部大臣ともお話をし合いましたが、事実があれば善処するのだという御答弁でありました。私はそれを信頼いたしておりますが、文相とあなたとの間にこの問題についてどのようなお話合いがされておりますか、お伺いいたします。
  76. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。文部大臣とは種々こういう問題も打合せておる次第でございます。今いろいろ頻々と起つておるというお話でございまして、若し真実だとすると、これは私の責任に関することでございます。私もこういう問題は気を付けておりますが、八月頃に起つた問題といいますと、私の承知しておるのは、新潟県で作文の友の会とかいう会の動向を国警が動向調査的に調べたことがございます。それに対して新潟県の県教組が抗議を申込んで来られましたので、払のほうでも具体的な事実があればいつでもお知らせ下さい、今のところでは思想そのものを個別的に調べた知らせばない、こういうふうにお答えしたことがあるのでございます。なおこれに関しては、個人的な思想調査に亘ることのないように国警長官から注意しております。ですから、ほかの県でいろいろ起りましたら、どうか御面倒でも是非お知らせを願いたいと思います。
  77. 高田なほ子

    高田なほ子君 国警長官からいつどういう通牒をお出しになりましたでしようか。これが徹底していないから新潟県にも……ちやんと私は資料を持つておりますが、又東京都でも茨城県でも、群馬県でも、それぞれの形で行われておるわけであります。いつどういうふうになさいましたか。
  78. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私の手許ではいつ回答したということは書いてありませんが、県教組から八月十一日に警察隊長、つまり新潟県の警察隊長に抗議の申入れがありまして、それに折返し答えておる、こういう報告でございますが、若し御必要でありましたならば、いつどういう程度の厳重な注意をしたか、後刻調べましてお知らせいたしたいと思います。
  79. 高田なほ子

    高田なほ子君 失礼でありますが、あなたは大変私は善良なかただと思うのですが、善良なるがゆえに新潟県ばかりだと思つて、その新潟県に出した通牒を全般だと心得ていらつしやるように私はお見受けいたしますが、全国的な問題として私ここで御質問申上げておるのでありますが、その全国的なものに対する警察官越権行為に対するあなたの責任を私はここで問うているわけであります。
  80. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 今までの態度としましては、御承知のようにそういう事件の起つた県の隊長に注意をするというようなことでございましたが、どうもそれで不十分だという御意見が少しでも国会におありでございましたならば、今日即刻全国に通知をいたします。
  81. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連いたしまして、文部大臣はこれに対する具体的な措置をどうなさるか、一応お伺いいたします。
  82. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 私は前に文部委員会で高田さんからお尋ねがありましたときにお答えを申上げておいたのでありますが、私といたしましては特に計画的に教職員の思想、行動についての調査が全般的に行われているということは考えられない。若しさような事実があるとすれば、これは私どもとしても甚だ遺憾であると思うから、その点事実を確めて善処したいというふうに申上げたと覚えております。只今法務大臣からのお答えもありましたが、法務大臣のほうにも当時その模様を聞きまして、私としては各地域において警察官が何か教員の人にものを聞いたとかということは、これは普通の警察行動として私は当然あり得ることであると思つているのでありますが、ただ、一般的な指令の下に計画的に教職員の思想調査が行われているということは、さような事実がないということは、法務大臣の当時お話しで私はさように信じているのでありまして、その点法務大臣の御方針なり御言明を信じているわけであります。現状は私はさような心配はない、かように考えております。
  83. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育の中立性を主張される大達文相は、教職員の政治活動の問題に対して極めて熱心に御研究であるということでございます。この問額についての大臣がいつどんなような機会に教職員の政治活動というものを抑えて行こうとするのか、ざつくばらんにここらで御見解を表明して頂きたい。
  84. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) これは昨日の当委員会におきましてもお答えを申上げたのでありますが、私は必ずしも教職員の政治活動ということを対象として今研究している、検討しているというわけではないのでありまして、よく日教組対策という言葉が使われているのでありますが、私は日教組という特定の団体を対象としてこの問題を考えているものではない。只今御指摘になりましたように、学校における教育の中立性、これを維持するにはどうしたらいいかということを中心考えているのであります。現状において教育の中立性が侵されている、若しくは侵犯される危険に瀕しているということであるならば、その原因がどこから来るか、その原因に遡つてできるならば抜本塞源的な方法を講じて教育の中立性を今日において守ることをはつきり確保しておきたい、かように考えて研究しているのであります。結論には到達しておりませんが、何らかの結論に若し到達することがあれば、議会に提案する必要があれば通常国会に提出したい、かように考えております。
  85. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して文部大臣にお尋ねいたしますが、私は文部大臣の行動を、日本の運命と関連しまして多くの憂慮を持つて見ているものであります。大臣の前歴を調べて見ますると、満洲国総務長官、内務次官、昭南市長、内務大臣等と日本の侵略主義の遂行の中心的な大きな役割を果されております。その結果、大臣は長きに亘つて追放されたことは御案内の通りである。(笑声)個人におきましても、民族におきましても過ちというものはあるものであります。聰明な人というものは同じ過ちを二度と犯さないことが大切であり、偉大な民族というものはやはり同じような誤謬を再び犯さないということが大切だと思います。私は文部大臣が中立性に名をかりましてとられようとする文教政策というものは、再び日本を過ちに導く多くの要因を含むものではないかと思うものであります。全国五十万の教職員の諸君は、大東亜戦争の前に勝つためにといつてたくさんの師弟を戦場に送つて、どうしても諦めることのできない過失を犯したわけであります。そういう観点からいたしまして、再び教え子を戦場に送るな、平和憲法を守れというスローガンの下に五十万の教職員は困難な闘いを、思想を固く守つているわけであります。大臣の中立性云々ということと、この平和憲法を守るということと、教え子を再び戦場に送るなということとはどういう関連があるか、文部大臣が曾て追放されましたことについて再び過ちを犯されないためにどのようなお考えを持たれるか、この五十万の教職員のとつている立場と中立性との関連はどういうものであるか、実に日本の文教の根本に触れる問題でありますので、はつきりした信念をお伺いしたいと思うわけであります。
  86. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 教育の中立性ということは、何も私が改めてこと新らしく言い出したことではありません。これは理念においても当然のことであり、又戦後において制定せられた教育基本法第八条において我が国の学校教育はこれを厳守せられなければならないとはつきり書いてある原則であります。私は文部大臣を務めております限り、この教育基本法に言うておるところの教育の中立性を飽くまでも厳守すべきことは、当然のことであると思つておる。私の過去の経歴を以ていろいろ御議論の基礎にされておるのでありますが、私は国家の興亡の関頭において、国のために働くことが悪いことは思つておりません。ただ経歴だけでおつしやつても、私が過去の公生活において又その当時いわめる侵略主義という考え方で行動したのかどうか、具体的に指摘して頂かなければ、あなたの議論は成り立たんと私は思う。私は只今申上げましたように、現状教育の中立性というものが犯されておるかどうか、或いはその危険にさらされておるかどうかということを些細に検討いたしまして、果して然る事情があるならば十分善処したい。教育基本法の精神に基いてこれを守るために適当な、適切な方策を講じたい、こういうことを言うておるというだけであります。
  87. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 文部大臣が善意を以てやられたことと固く信じて疑いません。併し客観的な事態といたしましては、やはり日本の過ちと大きな関連があつたわけなんです。このたびの教育の中立性についても、恐らく私は極めて善意に解したいと思うわけですが、そのことがやはり同じように、結果として客観的に私は再び日本民族を誤らせるようなことがないかということを特に心配いたしまして、御答弁は要りませんが、一つその点をお考えつて文教政策をとつて頂きたいと思うのです。私は個人的な誹謗をいたそうとはいたしません。私自身近衛総理の下におつてみずからもそういう過ちを犯しておるだから再びそういうことをしてはなならいという考えに立つて左派社会党に属しておる。こういう考え方から言つておるのです。その点御了承を願いたい。
  88. 永井純一郎

    永井純一郎君 文部大臣にお伺いしますが、あなたは昨日当委員会で武藤君に対する答弁の中で、教育の中立性の問題の質問に対して、今日は思想の混乱期であるということを前提にしてあなたは答弁されておる。民主主義の下における政治の中で、思想の混乱というものはない。犬養さんが言わた通り、思想は自由である。憲法においてそれは保障されておる。あなたの感覚は非常に古いと思う。間違つておる。あなたの常識は今日の常識ではなくなつておるということにあなたは気付いておらないと私は考える。あなたが当委員会で言われた思想の混乱ということは、一体どういうことを意味しておるのか、一点お伺いしたい。  もう一つは、教育基本法にある基本的な理念を十分に尊重して文教政策を今後とられる、これはあなたの信念であろうと思いますが、念のために伺つておきたい。
  89. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 私が昨日申上げましたのは、一体この思想の自由ということと、思想が混乱しておるかどうかという、いわば観察でありますが、それは自由ということは私は別問題であろうと思います。思想は自由であるから、思想の混通は社会的にない、こういう論理は成り立たないと思います。私は今日の日本の社会が思想的に混乱しておる、そういうふうに私自身は考えております。昨日申上げましたのは、この社会的な思想の混乱から来る影響が純真な児童生徒に波及することのないようにいたしたい、子供は白糸のようなものであるから、いろいろな色に染めずにすなおに育てて行きたい、こういうことを申したのであります。教育基本法に基いてその精神を活して行かなければならんということは、これは当然のことで、只今も申上げました通りであります。この点改めて今御質問がありましたから申上げる次第であります。教育基本法の精神、趣旨を徹底したい、かように考えておるのであります。(「関連質問」と呼ぶ者あり)
  90. 青木一男

    委員長青木一男君) とにかく関連質問を無制限にやることは……。高田君やつて下さい。(「答弁が中途半端なんだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  91. 青木一男

    委員長青木一男君) それじや永井君極く簡単に……。
  92. 永井純一郎

    永井純一郎君 文部大臣あなたはそれでは考えが間違つておる。あなたは自分に一定の考え方、思想があつてそれ以外のものはいけないという言え方に立つておるから混乱だと思うのです。併し一つの思想を以て教育者が徹底的に自分の教え子にそれを叩き込むという一つ考え方をするということ、それは又別問題です。あなたの思想混乱ということ自体はそういうことを意味しないで、あなたの意識の中には一つの物の考え方があつて、それ以外のものは混乱するのだという考え方があるのではないか、そういう前提で文教政策をおあずかりになるならば、今日の文部大臣としての職責を果すことができない。こう私は考えるから、思想の混乱ということをあなたはどのように考えておるのか、どういうつもりで言うておるのか伺いたい。
  93. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 私は自分の考え以外の考え方が皆混乱であるというようなことは毛頭考えておりません。私は私の考えを、世の中或いは学校に押付けようなどということは毛頭考えておりません。これは先ほども申上げましたように教育の中立性にまともにぶつかるわけであります。私個人の持つておる考え方を誰かに押付けようというようなことは毛頭考えておりません。
  94. 湯山勇

    ○湯山勇君 文部大臣に御確認願いたいと思います。大臣は教育基本法の第八条による教育の中立性ということをおつしやつておらられるのですが、教育基本法の中にはもつとそれよりも根本的な理念といたしまして、日本の国は永久に戦争を放棄し、平和国家、文化国家という崇高なる理想を打建てられ、教育は飽くまでるこの線に沿つて進められなければならない。こういうことが一点と、更に教育は如何なる不当な権力にも支配されないという二つの根本的な条件があるわけでございます。大臣が言われる教育基本法の教育の中立性ということは、この二つの基本線の上に立つていなければならないと思うのですが、この点ははつきり御確認願えますのでしようか、如何でしようか。
  95. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) お話の通り教育基本法に掲げてあるその線に沿つて参りたい、こう思つております。それからこの不当の支配に属しないというか、属しないというか、これは教育委員会法にあると思つておりますが、これは現状教育行政の運営において、文部大臣或いは又府県知事或いは又市町村長、そういうふうな強制的な、若しくは一般の政治的な支配が学校教育の運営の上に及ばない制度意味しておるものと私は考えております。
  96. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育基本法の精神を守ると、平和憲法を守つて教育基本法の精神を実践して行くという御答弁である。併しながらあなたは非常な矛盾を冒しておられるんじやないか。即ち教育基本法第八条の教育の中立性の項目は、教員の市民としての政治活動を絶対に制限しているものでないことは、あなたが御研究の末おわかりのはずである。然るにそれを歪曲し、あなたの古い感覚を以て教員の市民としての政治活動を剥奪しようと若しするような意図があるとするならば、これは全く法を蹂躙する精神と言わなければならないと思うわけであります。これは十分注意して頂かなければなりません。御見解をお願いします。
  97. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 教育基本法の八条が学校の教職員の政治活動を制限しているものでないことは、これは言うまでもないところであります。私が申上げるのは必ずしも政治活動の制限とか何とかいうことでありませんが、教育基本法の第八条の精神が現実十分に確保されて守られておるならば、これは問題はないのであります。これが果して法律が期待しておる通りに守られておるかどうか、先ずこの点を明らかにして、若し守られておらんというのであれば、これは極めて重大なことでありますから、どういう理窟で、又どういう原因でこれが守られていないかという点を十分検討を加えて、必要なる措置をとりたい、かように考えておるのであります。
  98. 高田なほ子

    高田なほ子君 非常に重要な御発言でありますが、時間の関係上私はこれを次に譲らして頂きまして、続いて木村長官に御質問申上げます。自衛力の漸増、この問題については寄り寄り御答弁があつたのでありますが、経済審議庁或いは大蔵省案、保安庁案など実に水も漏らさぬ計画が、五カ年計画の内容として盛られておるわけであります。そこでお伺いしたいことは、自衛力の漸増について近代戦にふさわしいかふさわしくないか私はわかりませんが、第一番に地上軍の増強をこの三案において掲げられておるようでありますが、近代戦において果される地上軍の性格というものはどういうものですか、あとの質問もありますから明確に指摘して頂きたい。
  99. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。只今防衛計画については折角慎重に検討中でありまして、まだ成案を得ておりませんが、ただ地上軍のみを増強しようというわけではありません。勿論地上部隊を或る程度増強しなくちやならんかと考えておりますが、日本の自衛力の全きを期するためにはやはり海上の防衛力も増加しなくちやならんと考えております。従いましてどちらに重きを置き、どちらを軽んずるというようなことはないのでありまして、日本財政計画を十分検討いたしまして財政の許す範囲内において自衛力の全きを期したいと、こう考えておる次第であります。
  100. 高田なほ子

    高田なほ子君 地上軍の増設について一部軍事専門家の意見によりますと、二十万作ろうが三十万作ろうが、あんなものは近代戦に大して役に立つもんじやない、いわゆる経済的な軍事潜在力としての意味はあるけれども、実際近代戦において役に立たないと、それよりはもつと大事な問題は、この地上軍の機動力と国民総動員態勢ではないだろうかということが強く指摘されておるのでありますが、このことに関してのあなたの御所見を伺いたい。
  101. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。ただ人数を殖やしていいという考えは持つておりません。十分これは科学的に考えて善処いたしたいと思います。そこで今おつしやる総動員とかというようなことでありますが、これは曾つての時代における総動員そういうようなものは考えておりません。我々といたしましては、経済力の許す限りにおいて、これは十分科学的に研究いたしまして、日本財政にマツチしたような自衛力の増強をやりたいと、こう考えております。
  102. 高田なほ子

    高田なほ子君 保安隊の精神力の支柱はどこに置いておるのですか。
  103. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は常にそのことを申しておるのであります。我が国の自由と平和を守る、(笑声)これが根本の問題であると、こう考えております。(「名答弁だ」と呼ぶ者あり)
  104. 高田なほ子

    高田なほ子君 大変嬉しそうなお顔付でありますが、(笑声)自由と平和を守るためには、先ずバズーカ砲も一切武器を捨てなければ、これは平和なんというものはあり得ないのでございますが、あなたはそうではなくて徹底的にやつける上に立つての平和を主張しておられるので、ただそういう御答弁では満足できません。どうぞもう一回御答弁下さい。
  105. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は日本の平和と自由を守り抜くためにはやはり或る程度の自衛力を持たなくちやならんと、こう考えております。素手の中立論ということは夢物語と、私はこう考えております。やはり中立を守るためには、それだけの日本の自衛力を持たなければならん。いわゆる平和と自由を守るためには或る程度の自衛力を持つべきであると、こう私は考えております。
  106. 高田なほ子

    高田なほ子君 いやいやちよつとあなたのは質問と違いますよ。そういうことを伺つておるのじやありません。そんなことを聞いておるのじやないですよ。あなた鉄砲やバズーカ砲を持つたつて、そこに突立つてつたつて何の役に立ちますか。あなたは威風堂々という言葉を使つて非常に勇しい兵隊さんを讃美しておられる。その勇しいという精神の内容は何かということを聞いておるのです。
  107. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。今申上げます通り日本の自由と平和を守り抜く、要するに日本の国を我々の手によつてつて行こうじやないか、この気持を我々ほ隊員に持つてもらいたい、こう考えております。
  108. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間がないので甚だ不満であります。そういう鯰問答のようなことはやめてもらいたいと思う。はつきりと攻撃精神とおつしやつて頂きたい。大臣にお尋ねいたします。これと裏腹を合せるように、池田・ロバートソン会談においては、教育の問題が極めて大きく取上げられておるようでありますが、占領後八カ年間の平和教育の欠陥を指摘して直接防衛の任に当る青少年の精神力の不足が指摘され、而もその不足を補うために広報又は教育による防衛戦力の精神的支柱を深めることが池田・ロバートソン会談の結論になつている模様でありますが、このことについては前文部委員会において文部大臣に御質問いたしましたところ、私は一向関与しておらん、知らん、こういう御答弁でありました。余りに問題が重大でございますから、池田特使がお帰りになりましてからのあなたの特使とのお話合いというものの内容があれば聞かして頂きたいと思います。
  109. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 池田特使とロバートソン氏との間にどういう話合いがあつたか、私は全然知りません。無論いろいろ重要な問題についての話合いであろうと思いますが、池田さんが帰られてからその点について私から特にお伺いをしたという事実はありません。日本の教育のことにつきましては、私どもが責任を持つておるのであります。無論教育、防衛各般のことについてお話合いはあつたかも知れませんが、これは私の直接お伺いした上で、そうしてそれによつて日本の教育方針をどうきめよとか、こうきめよという問題はないのでありますから、私から池田さんとそういう点について話合つたことはありません。
  110. 高田なほ子

    高田なほ子君 民族の将来を託す重要な分岐点にあるこの青少年の教育問題が、国際的に大きく取上げられておるのに、あなたはこれに対して何らの関心を持つておらない。文相としての熱意は一体どこにあるのか。私はあなたの熱意を疑わざるを得ない。日本の民族の将来のためにあなたはこの池田・ロバートソン会談における内容をとくと池田特使とお話合いをなされ、而して日本の民族の将来のために、子供のためにもつと熱意を披瀝して、この国際的に日本の教育が論ぜられているというこのことに対して対処すべきではないかと思うが、あなたの御見解を伺いたい。
  111. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 私は日本の青少年の教育の問題について無関心では無論ありません。又職務上あり得ないのであります。私はロバートソン氏の意向に基いて、或いはその意向を参考にして日本の文教政策を立てるものとは思つておりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)ロバートソンの話を聞かなければ日本の文教政策が立たん、こういうふうに何かお考えのようでありますが、これは私とは意見が違います。
  112. 高田なほ子

    高田なほ子君 誤謬も甚だしいと思う。日本の教育を守るのであればこそ、国際的な動向に対しても当然眼を向けられなければならないと思う。日本経済問題に対して、我々は日本経済だからこれだけでいいと、そういうことをいつもあなたがたお考えになつておりますか。日本経済自立のためには国際的な関連というものを深く研究しなければ、日本経済自立はできない。そういう観念においても、日本の民族の独立のための教育方針は、広い世界的な視野の上から考えなければならないと思うが、大臣の御所信を伺いたい。
  113. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 私は今高田さんのおつしやつたことに別に異議はありませんが、さようであるとしてもロバートソンの話を聞かなければ、それがわからんということはないのです。
  114. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういうことを言つているのじやない。(「会談の内容の問題知らないのじやないか」と呼ぶ者あり)航空兵力の増強の問題について、巷簡軍事専門家の意見をいろいろ載せている雑誌や何かを見てみますと、これについて航空技術或いは生産力並びに予備兵力を増強しなければならないというような批判が出ておるのでありますが、木村長官はこういう軍事専門家の批判をどういうふうにお考えになりますか。
  115. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。只今保安庁では僅かの飛行機を持つております。つまり通信連絡その他海上の偵察、そういう面についての力を持つております。今後これをどういう方面から検討して増強すべきかということについては、慎重に検討を要する問題で、今盛んに検討いたしております。民間の伝えるところのいろいろな議論がありますが、一つの参考に過ぎないのであつて、我々はそれを全面的に受入れるという気持は持つておりません。
  116. 高田なほ子

    高田なほ子君 これを符節を合せたごとくに科学技術庁設置が非常に多くの政界人の間、或いは経済界の人々の間から支持されてお話が出ておるようでありますが、この航空技術の研究、いわゆる航空兵力の増強と、この技術庁設置とは何らかの関連を持つているのではないか、文相にお尋ねをいたします。
  117. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 科学技術庁の事柄につきましては、私詳細には存じません。航空技術の点につきましては、これは関係の方面におきまして過般学術会議等の関係によりまして、視察団を出したような事実は私承知しております。無論これは科学技術の一環として研究されるものでありまして、これが何も再軍備であるとか、何とかいうことには関係のないものと承知しております。
  118. 高田なほ子

    高田なほ子君 あと簡単に質問いたしますから、郵政大臣にお願いいたします。言論報道機関の自由の問題でありますが、報道文化の自由は、明確に法の規定しているところでございますが、MSAの受入体制が非常に強化されて参りますが、恐らくこの強化の一環として、再び又研究中であると言われている、この放送法の改正、こういうような問題が出ておるようでありますが、これについての経緯並びに今後の動向についてお示しを願いたいと思うわけであります。
  119. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 御承知のように放送法の改正は、先般一度国会に技術的事務的な部分を主として、部分的な改正案を出しましたのでありますが、審議の経過を通じまして感じましたことは、この面においてはなお十分本質的に検討しなければならないものがたくさんあるのではないかということで、この法案は審議未了になつたままになつておるのでありますが、その後国会からの御意向を体して、これは本質的に検討し直そうということで内々検討を進めております。どういう点が本質的に検討しなければならないかということでありますが、やはり放送の面で新らしく出て参りました民間放送というものが、今の放送法には十分頭に入つた規定になつておらない、それから新らしく民間のテレビも出て参りました。それともう一つの点は、一般の、或る程度政府関係の機関とも称すべき性格のもの、他の公社、そういうものも含めて政府との関連というものを、なおこれも他の公社をも含めたものとして検討し直す必要があるのではないかというようなことも問題になりますので、そういう面を総括的に本質的な検討を遂げた上で、全面的な改正案として、国会の御審議を願いたい、こういうふうに考えておりますので、まだそこまで検討は進んでおりません。目下研究中でございます。
  120. 高田なほ子

    高田なほ子君 問題は政府機関との関連の問題でありますが、これこそ実に重要な問題でなければなりません。これは又大本営発表ということになりかねまじき危険性をここにはらんでおるのでありますが、この提出の時期はいつでありましようか、ほぼ御見当がついたら御明示願います。
  121. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 今申上げましたように、非常に重要な問題点がたくさんありますので、今のところまだ時期を申上げられる段階まで参つておりません。
  122. 高田なほ子

    高田なほ子君 政界の動き如何にかかつてこの問題が動いて来るのではないでしようか。率直に政界との関係をお知らせ下さい。
  123. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 若しそのようなお気持からの御質問でおりますならば、全然そのようなことはございません。そういうような動きを私が他の人たちから意見を聞いたことも申したことも全くございません。
  124. 青木一男

    委員長青木一男君) 高田君簡単にどうぞ。
  125. 高田なほ子

    高田なほ子君 緒方副総理はいつお見えでございますか。
  126. 青木一男

    委員長青木一男君) あなたの時間もなくなりましたから……。
  127. 高田なほ子

    高田なほ子君 なくなつたのですが、お見えにならないからなくなつたのです。それでは後刻に譲りますけれども……、もう一つ簡単に大蔵大臣に一点だけお伺いいたします。
  128. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単に願います。
  129. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは実は文部大臣に今日の非常な頽廃文化の問題を御質問申上げるはずでございましたが、時間がなくなりましたからこれを省きまして、これとの関連において大蔵大臣に御質問申上げます。先ほど大蔵大臣は、来年の国民所得は六兆二千億というような御答弁があつたと思う。これに対しまして、同僚永井議員或いは松浦議員等等からいろいろな御質問並びに建設的な御意見がございました。勿論この厖大な国民所得の前提をなすものは、やはり特需という内容が含まつておる。更に私の立場から言えば、パンパンの収入による国民所得がこの中にかなりの比率を占めているということは争えないことだと思う。こういう不安定な経済基礎の中に立つて、たびたび大蔵大臣は緊縮財政を主張しておられるようでございますか、私の問題の焦点は、この国民所得をどのような生産方向に使つて行くかというところの問題でありますが、なかんずく今日の頽廃文化は、経済的な軍需機構というものが強化されるに従いまして、非常に上下の懸隔があらゆるものに出て来ているわけです、つまり奢侈物資であります、贅沢物資であります、こういうものが非常に最近氾濫して多くなつて来ておる。一方においては物価は上つて、それを買うことができない。今日の婦人たちは買うことができないから、少くとも目で見るくらい見せてもらいたいというような悲しい心境に陥つておる。でこういうような心境は、特に犯罪の温床になり得る危険性を持つておる。そこであなたにこういう面から尋ねたいことは、今後消費統制を如何なる方向に向けて行くのか、その具体的な方策について詳細にお伺いをしたいと思うのでございます。
  130. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 現在のところ消費統制についての特別な方法がないことは、御承知通りであります。従いまして、政府が強権を持つて消費を統制することはできません。併しながら、私どもがやり得るものに外貨というものがありまして、外国から入れて来るもの、輸入については、これはやり得るのでありまして、外貨の割当において昨今、例えば高級自動車を輸入することをとめるとか、或いは各種の奢侈的な物資の輸入について全然割当をやめておる。或いは又外国人が日用物資などについて入れておりましたが、これについてももう今度は一切外貨の割当をやめました。そういうようなこと等て、私どもは外貨の面から、輸入につきましては……、ただ物によつて仕方がないものがあるのですが、例えて見れば、台湾からバナナを入れるというようなものになりますと、考え方によつては奢侈品的なものに見られますが、物がないのであります、こういうような貿易の関係から向うから受取る物がなくて止むを得ずやつているものは若干あります。そのほかはそういう方針で、現に奢侈品は入れないことにいたしております。国内につきましては、今度税をやるときに、奢侈税的な考え方をしたいと、こういうふうに考えておるのでありまして、そのほかには只今のところ遺憾ながら、これはどうも賛沢だからよせといつた実は法的根拠を持つておりません。併し、税の面から行くということと、それからやはり国民が今日の日本の実情を知つて、私はよく耐乏生活ということを演説ごとに言つておるのですが、耐乏生活に徹底してもらうと、こういう考え方が非常に必要なのではないか。なお又税の面でもう一つよく言われるのは、社用族なんということが言われますが、こういつたことについては、これもやはり税の措置をとり得ると考えております。それから又よく公用族と言われておりますが、これも又行政費の節約等によつて、行財政の整理をやれば、これもやり得るのではないか。まあいろいろな点からやりたいと思つておりますが、ただ総合的に国民の自覚に待つという点が一番大きいと存じます。併し政府のほうでも、只今許されておる範囲ではそういう措置をとることにいたしております。
  131. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一点……。
  132. 青木一男

    委員長青木一男君) 大分時間が過ぎましたから、極く簡単に願います。
  133. 高田なほ子

    高田なほ子君 耐乏生活については、私どもも全くその通りだと思うのでありますが、やはり経済機構、社会の姿というものを変えて行かなければ、国民の自覚に持つといつても、私は無理だと思うのです。とにかく貧乏な日本世界の水準を行くものは、日本のネオンサインなんです。私の今度歩いて来て呆れたのですが、それから又華美な服装であります。こういうようなことは、これは決して耐乏生活を基調とする場合の経済政策の具体体面ではないと思う。どうか国民に耐乏生活を要記されるのであれば、全般的な消費面における不用なる物のきつい統制を私はあなたに強く希望するわけであります。
  134. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) まあネオンサイン等につきましては、私どもで勧め得る点、例えば金融業者に対しては、金融業者がネオンサインなどよしたらよかろうと言いまして、この頃なくなりました。併しそのほかの方面について申しますると、私どもも、まあ電力の割当その他の関係から出て来る面はございますが、併し余分な余りがあるときには、ちよつとそこまで行くというまだ法的根拠を持つておりません。併しまあそういうことについて将来配慮すべしという御意見ならば、これはよく承わつておきます。
  135. 天田勝正

    ○天田勝正君 保安庁長官に伺いますが、過般来戦力回答が各委員によつて行われておりますけれども、私は仮に旧警察予備隊にいたしましても、名称がどうであろうとも、問題はその内容だと思う。侵略的になるかどうかはその内容でありまして、その内容を分析いたしますれば、要するに装備と理念の問題だと思う。そこで、装備の問題でいつも議論がなされて来たのでありますけれども、これは今議論いたしましても、いわゆるひようたんなまずの問答に終ると思うのです。私どもの見るところでは、現に保安隊の幹部それ自体が、旧日本軍隊の十倍の火力を持つておるというこの事実と、それからすべてがアメリカから借りておる兵器であるということは、長官がお認めになつておるところであつて、それをアメリカ人が持つた場合には戦力であつて日本人が持つた場合には戦力にならない、こういうことは理解はできません。ただここでは時間がございませんから、その問答を繰返すつもりはございませんが、理念の問題についてお伺いいたしますると、一体今の警備隊にいたしましても、保安隊にいたしましても、どういう構成になつておるかというと、これはもう殊に現地部隊は圧倒的に旧軍人の支配であります。ここに極めて危険な点が内包されておるのであつて、こうした構成をいたしておりますれば、もうすでに質的転換が私は行われて来ておると思う。ここに私は非常にいわゆる侵略理念が拡大しつつあるやに心配するのでありまするが、これらについて、長官はどう考えられるか、先ず伺いたいのです。
  136. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。我々は保安隊、警備隊の運営にについて細心の、注意を払つておるわけであります。いわゆる昔の旧軍閥の轍を踏むようなことがあつてはならない。かるが故にいわゆる文官優位の体制を整えておる次第であります。そこで今お話の旧軍人がたくさん保安隊に入つておるじやないかという議論でありますが、多少入つております。即ち我々といたしましては部隊の運営上、或る種の人格、識見が豊かであれば、旧軍人であつてもこれは採用してよろしいという観点からいたしまして、厳重な選抜をいたしてこれを採用いたしておることは事実であります。併しその数は天田さんが今お考えになつているほどさような多数ではありません。殊に御承知通り隊員はすべて新らしく適性な人たちを採用しておるのでありまして、これを運営するところの幹部にいたしましても、これは約二六%の旧軍人が入つておる次第でありまして、その人たちによつて支配されるというような危険は私は毛頭ない、こう考えております。
  137. 天田勝正

    ○天田勝正君 主要なる指導のポストか旧軍人によつて握られておる、この旧軍人に対しまして私どもは信頼いたしておりません。私は旧軍の部隊の近くにおりましたから、その日常を見ておりまして、とてもこれは信頼できない。仮に警察予備隊の幹部にするのでさえ私は反対だ、こういう意見を持つております。けれども先を急ぎますからこの点は一応やめまして、MSAの問題がしよつちゆう議論されておりますが、アメリカはMSA法それ自体を一九五五年に廃止する、こう私どもは伺つておるのであります。そういたしますると政府はまだ決定はいたさないというても、MSAの受入ということはもう近い将来こういうふうに、又それを望んでおるということは外務大臣の答弁でも明らかでありますから、その方向であろうと思うのでありますが、若し今私が指摘したように、途中までは政府のいう漸増で援助を受けつやるけれども、すでに二年後に迫つておりまするこの廃止ということに立至つたら、一体長官はどうされるお考えでございましようか。
  138. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。保安庁としては日本の自衛体制をどう整えるべきかということに独自の見解を持つてつているのであります。いろいろMSAの関係もありましようが、これは外交交渉によつてきまると思うのであります。我々といたしましては、日本の情勢判断からしてどの程度に我々は自衛力を漸増すべきであるかという御点からひたすら慎重審議をして今研究中であるのであります。
  139. 天田勝正

    ○天田勝正君 NATOの諸国が御承知通りアメリカの援助を受けておりますけれども、アメリカ政府の報告によりますれば、これらの諸国は一九五 ○年の軍事費が四十億ドル、五一年が九十億ドル、昨今は百四十億ドル、こういうふうに殖えておるということが報告されておりますのは御承知であろうと思うのです。ところがそれに対して、アメリカの援助は引続いて六十三億七千万ドルというのが一向殖えていない、そこで初めにいわゆる六十三億七千万ドルを援助することによつて、今あなたが考えておるような軍備漸増をこれらの諸国は行なつて来た、そこで実際は自分のほうの持分の軍事費だけが殖えるという結果になつて、非常に困るという事態が到来しておるわけでありますが、こうした危険について、長官はどうお考えでございましようか。
  140. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々といたしましてはMSA援助は無論受入れることになろうとは考えておりまするが、それに関係なく常に私が申しまする通り日本の国にふさわしい自衛力を漸増いたしたい、こう考えておる次第であります。そこで問題は日本財政と如何にマツチして行くか、これが一番重要な点であります。日本経済力から見てどの程度がふさわしいかという観点に立つて、すべてその下に我々は計画を立てておるわけであります。
  141. 天田勝正

    ○天田勝正君 不満足でありますが、先へ進みます。私どもの心配は、MSAの援助を受けることによつて日本の産業構造がいびつになつて来はしないか、こういうことを甚だ憂えておるのであります。仮に軍需産業といたしますると、火薬とか弾薬のような極く単純な兵器を作る場合でも、その設備資金は五百五十億円要るということであります。軽飛行機などを作る場合には、商業ベースは月産二百五十台だそうでありますが、これで行きましてもその設備資金は二百五十億円はどうしても要る、こういうことが専門家によつて指摘されておるわけです。このように多大な投資を行いまして、あとが如何ように相成るかわからないようなことをいたしますると、これは大変なことになるのでありまして、産業構造全般のことでありまするから、或いは保安庁長官はお知りにならないとこうお答えかも知れませんけれども、これらのことも含めまして、日本のMSA援助並びに軍需産業というものについては、これは十分お考え頂かなければならんと思うのでありますが、それらについてのお考え方を伺つておきます。
  142. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の御議論は至極御尤もであろうと思います。MSA援助を受けたために日本の産業構造が根本的に変化を来たし、それがために日本財政力を圧迫して、国民の生活を不安に陥れるようなことがあつてはならんと考えております。そこが一番重点であると我々は考えておるのでおります。保安庁において防衛計画を樹立いたしまするにしましても、その点については十分考慮を払つてつておるつもりでございます。
  143. 天田勝正

    ○天田勝正君 議事進行について、ちよつと速記をとめて頂きたい。
  144. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  145. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記を始めて。
  146. 天田勝正

    ○天田勝正君 一点だけお伺いしますから農林大臣一つ丁寧にお答え願いたいと思います。それは今回の予算供出完遂奨励金予算も入つておりますけれども、これは義務供出だけしか入つておらないのは御承知通り、ところが東北地方や何かはすでにその線を突破いたしまして確保数量もすでに上廻つておる。従つて超過供出の線から上へ出て国の政策に協力をしておる今日の農民、これらの超過供出に対しても、これは私どもが言うのでなしに三党協定、あなたがた与党三派の協定によつてそれらの完遂奨励金を出すということになつてつたわけです。私どもはそれだけでは不満足ということもあつたのでありますけれども、とにかく十六国会できまつたことでありますから、私どもはそれをどうしてお守りにならないか、これが私どもには理解の行かんところでありますけれども、この点について一つ丁寧にお答え願いたいと存じます。
  147. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 当時その点につきましては衆議院で修正折衝せられた各党の折衝委員のかたもここにお見えになつていろいろデリケートな御議論がありましたのですが、結論は義務供出の分につきまして石八百円の完遂奨励金を付けます。ただ義務供出を完遂しなかつた場合にどうなるか、そこが非常にデリケートな議論であつたわけです。さようなことのないように行政措置をとりたい。こう申しておりましたところが、農林大臣はそういうために義務供出の割当を甘くしておるという御非難も昨日ですか受けたわけでございます。従つてこれは当時の議論を見ましても、あのとき金額として百四億ということを言つてつたわけです。百四億というのは、二千五百五十万石の義務割当をするという前提の上に御議論が出ておつたことも御承知通りでございます。従つてどもとしましては三党協定の趣旨は義務供出について完遂奨励金を付ける、あとは超過奨励金で行く、こういう趣旨であつたことは間違いない、この点においては余り疑いはなかろうと私は思つております。
  148. 天田勝正

    ○天田勝正君 時間が終りましたから……。
  149. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたします。    午後一時二十四分休憩    —————・—————    午後二時二十五分開会
  150. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。  それでは田村文吉君。
  151. 田村文吉

    ○田村文吉君 今回御提出になりました予算案に引続きまして二十九年度の予算が間もなく出て来るはずであります。さような意味におきまして多分に関連性がございまするので、私はこの際に今後の予算の編成について大蔵大臣、又関係して農林大臣はどういうふうの心がまえを持つて行かれるか、そういう点について二、三のお伺いをいたしたいのであります。  先ず農林大臣にお伺いいたしたいのでありますが、お断り申上げておきますが、私は二重米価というものには賛成しておるわけではありません、むしろ不賛成であります。でありまするが、米の生産者価格を二十七年度八千六百四十五円から今年度分は一万三百三十五円に、大よそ二割方の値上げをするということは、たとえそれが消費者に対しては一升九十六円のものが百七円になつて一割一分の値上げにとどまるということでありましても、その差額は結局におきまして二十九年度の予算におきまして或いは如何なる形においても国民負担となるのでありまするので、生産者米価の二割値上をすることは、結局消費者価格も究極には二割上げたも同然なことになる、こういうふうに私は考えております。  そこで戦前まあ一石二十五円の米価であつたとしますると、一万三百三十五円という米価は四百倍以上に相成るのであります。これはどうも今日の物価指数の点から考えましても穏当を欠くのではないか。第二に、米価というものがあらゆる政府物価政策の根本をなすのでありますから、物価影響するところが非常に大きいのであります。一般の経済常識から申しまして米が上るということは賃金が上る、賃金が上るということはすべての物価が上る、こういうふうに考えやすいのでありまして、この点につきまして非常に、米価一万三百三十五円というような高額にきめられるということについて危険があるのではないか、こういう心配をいたしておるのであります。  第三番目には近い将来において為替レートでも変更になるようなことでもあるなら特別でございまするが、そうでないといたしました場合に国際食糧価格に比べましてすこぶる割高と相成つております。これは無論日本の米食偏向の嗜好から申しまして決して小麦とか大麦とかと比較すべきものではありませんけれども、カロリー計算にいたしまするとおおよそ二倍に相成つておるのでありまするから、やがていつの日にか世界食糧物価水準から非常に離れた食糧価格になりまして、これがために農家を破壊するような恐慌が起るやの虞れはないか、かような点を心配いたしておるのであります。この米価二割お上げになつたということについて、私はいろいろ政治上のやむを得なかつた御事情もあつたか知りませんけれども、これが物価の安定或いは又経済目立ということを大きく唱えておられます現内閣として、非常に困つた問題ではないかと私は考えるのでありますが、先ずその点につきまして農林大臣の御答弁を願います。
  152. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 米価問題に関しまする御心配の筋は私どもも同じような線において心配をいたしておる点でございます。まあ極めて事務的なことになりますけれども、一応基本的な米価算定としましてはパリテイ計算によつて算定することにいたしております。その面からいたしますと、パリテイ指数は昨年と余り動いていない、ほんの僅か上昇している程度でございます。それに今年の生産に要しまする投下資本財の増力等を加算いたしまして、昨年七千五百円という基本米価に相当する米価としては今年は七千七百円である。然るところ今年の凶作が平年作に比べましてかなりの度合に達しておる。そこで一応米価審議会の非常に強い意見がございまして、この凶作の加算概算として五百円を加算いたしまして八千二百円という、これは一応の事務的に申します基本米価になつておるわけでございますが、併し供出の今年の状況はいろいろ御批判の余地があると存じますけれども超過供出に非常に多くの部分を占めておるというようなことから、実際政府が一石当り買入に支払うものといたしましては、一万三百三十五円ということに相伐つておるわけでございます。そこで将来の問題としまして非常な高米価論を唱えて要請せられている向きもあります。お話のようにだんだん今の世界的な食糧事情が緩和して来る、或いは食糧の過剰時代が起きて来る、その場合に果して今日高い生産者米価をきめておつて、いわゆる食糧世界的に過剰時代に入つたときに、日本の農村が一体そういう高米価で支え得るかどうかという点は、これは将来を見通して極めて慎重を要すると存ずるわけであります。併しその点には十分の配慮をいたして参るつもりであります。いずれにいたしましても、今年の米の買入値段というものはお話のように高くなつておる。これを消費者に全部持つて頂くということになれば会計上は問題ございませんけれども、或る程度消費者に持つて頂いても、それが実質家計費に、或いは生活水準の切下げであるとか、或いは直ちにそれが物価賃金に影響するとかいうようなことのない範囲内において消費者に御負担を願つて、あとは臨時の措置をとつて行くということが、今年の苦しいやりくりになつておるわけでございますが、それでは米価を今年のように上げてすぐ物価に及んで来るか、私はこの点は多少問題があろうかと思います。昨年も同様に給与ベースの引上げもあり、或いは又消費者米価も一割見当上つておるわけであります。今年の一月の消費価格改訂が一割弱でございますか行われておりますが、それがそれじやすぐ物価影響して来ておるかというと必ずしもそうではなしに、消費物価の指数を見ましてもそれは何も影響は受けていないということは数字の示しておるところでございます。この辺がぎりぎりのところとして妥当ではないか。ただ私は米価問題と食糧政策と申しますか多くの研究検討を要すべき問題を残しておるということは痛感いたしておりますから、大体御心配のような筋において私も検討を加えて参りたいと思います。
  153. 田村文吉

    ○田村文吉君 政府は家計米価という言葉をお使いになりまして、家計費に及ぼす影響が一%そこそこであるというようなことで、これが影響が少いというように仰せになるのでありまするが、これは心理的にも米が上るということは、昔のように無論全部を配給米で賄つておるわけでありませんが、一般に米二升とか三升というようなもので賃金はきまつて来ておる。そういうような標準になつておる、たとい消費米価はこの際は一時緩和して一割一分しか上げなかつたと言うても、この一割かた米価をお上げになるということは非常に不穏当でないかと私は考えましたので、これはのちに大蔵大臣にお伺いするのでありまするが、果して日本物価政策というものが立つて行くか、こういうことを私は非常に心配するのであります。  先ず一応その点を申上げまして、次に今お話のございました点についてお伺いいたしたいのでありまするが、先ほどの御説明に米価の原価の中に減収加算金が五百円入つておる。これは冷害などで困つておる人がその金をもらえるというならよろしいのでありまするけれども、むしろ義務供出もできるし超過供出も十分にできる、こういうような人がもらう金なんです。そういうような所へやつて冷害に苦しんで収穫皆無である不幸な人には何らの恩恵も及ぼさないようなものを、原価の中に繰入れるというようなことが果していいか悪いか。これは自由経済の時代でございますればそれが悪ればこの値段が上るのは当然なんです。ところが今日では政府がこれを管理しておるので、いつでも米が足りなければ外国から麦でも何でも持つて来られる。そういう時代において計算なさるということが果して穏当であるか。こういう点から考えまして、一体政府は今後米価というものに対しては原価主義で行くのか、それとも国際食糧価格というものとの均衡をとつて行こうとするのか、或いはその都度の御都合によつておきめになつて行こうというのか、この点が私はつきりしないのです。なお今度も超過供出に対しては予定された数量よりは遥かに殖えたのであります。そういうようなことをなさつて何とかして米の値段を上げて農家手取りを殖やすことだけをお考えになつているとしか考えられない。米価が上りまして、今後農家食糧増産が行われる、経済自立のために役に立たせるのだ、こういうお心うちはわからんではない。けれどもこういうようなただヒロポンを注射するようなやり方で農業政策をとつてつたら、私は農業政策に素人ではあるが、こういうやり方をして行けば、必ず日本の農業というものは一大恐慌に見舞われるか、非常な破滅に陥る時代が来る、こういうふうに心配するのであります。この点につきまして農林大臣は御自信があるか、どういう点で行くのか、今の原価主義で行くか、原価主義にそういうものを加え行くことが正当なりや否や、こういう点につきまして、農林大臣の御答弁をお願いいたしたい。
  154. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 本来申上げますれば、私は米の値段農家で再生産を確保して行く妥当な価格が必要であると思つております。そういう関係から只今パリティ方式は一つの有力な算定方式だと考えておるわけであります。併し実際問題としまして、必ずしも事務的に申しております基本価格が今日の米価にはなつていない、各種の奨励金総合して一つ米価が構成せられているという形になつておるわけであります。私といたしましては、こういう今日までの立て方というものが、まあ集荷対策というところに重点を置かれて立てて来られておることはもう申すまでもないわけでございますが、これで生産者も必ずしも納得しているというわけでもない。消費者においては更にそういう基本米価でない米にかかつている金は、そんなものは消費者負担すべき筋合のものじやないというような議論も成り立つて来るわけですから、この供出制度と勘案をして米価の問額は検討を要すると思います。  ただこの本年の凶作加算額は御承知のように、今日の制度米価審議会の答申、意見を聞いて米価を決定することになつておるわけでございます。お話のように凶作地はこの凶作加算をしたことによつて少しも恵まれない、むしろ豊作地帯と申しますか米のとれた所がこれによつてつて来るという非常な矛盾があるわけなんであります。併し今の制度から申しますと、こういう場合にはこの凶作の度合によつて凶作加算を考えるということになつておる関係もございまして、一応概算の五百円を決定をいたして、只今最終的にはどうするかということは米価審議会で算定方式をきめて頂くように求めておるわけでございます。従つてこの凶作地に対しましては、別途の方策を以て救済措置を図るというのが前国会の趣意であつたわけでございます。凶作加算を加えたことによつて凶作対策になるということには私ども毛頭考えていないわけでございます。而もそれには私も矛盾を自分としては感じておるわけでございます。  ただ将来米の消費者価格をどうするかという問題、生産者価格との関連においてどうやつて行くか。私は率直に申しますと、やはり米を不当に安いところにおいておつて、それで国民生活が安定だというようなやり方は実際不自然じやないか。むしろやはり米麦総合した食糧関係において民生安定を考えて行くということからいたしますと、米を本来の値段から不当に下に置いて米の消費を奨励するという行き方は、これはもう決してそうではございませんけれども結果においてはそうなるわけであります。こういうとり方が果していいかどうか。これらを二十九年産米の処置につきましては含めまして十分検討をいたしてみたいと考えておる次第でございます。
  155. 田村文吉

    ○田村文吉君 米価審議会の意見を尊重なさることは結構でありますが、尊重なさる場合もあり尊重なさらん場合も過去においては随分多かつた。私は都合のいいときには尊重する、都合の悪いときには尊重しないじや困る。この今の米価が二割も上るというようなことは内閣としても非常な大きな方針影響する問題なんです。でありまするから、私はこういう点について農林大臣は確たる農産物増産についての御自信をお持ちになると同時に、従つて米価はかくあるべきだ、こういう点について所信に邁進されるようでないといかんと、こう私は考えますので、米価があらゆる物価影響することの重大なことを指摘いたしまして、私は農林大臣に対する質問をこれで終ります。  引続きまして大蔵大臣、経本長官にお尋ねいたしたい。なお必要によりましては総理から御答願えれば結構でございまするが、私の御質問申上げますことは緑風会の代表的の意見でございまして、実は今度の予算に対しては非常に疑義を持つております。たくさんの疑義を持つておるのでありますが、これについてはどういう態度を以て臨むべきか、私の総括質問で一つよく聞いてみようと、こういうことであるのでありまするので、恐縮でございまするが、それらの点につきまして十分に誠意のある御答弁を頂きたい、かように考えます。  申上げますまでもないことでありますけれども、輸出品の値段が国際的に二割高い或いは三割高い、或いはものによつては五割も高い。ために貿易がだんだんこう賑わなくなつて参りました。又今までは特需があつたのでありまするけれども、特需もだんだん減る恰好に今日は相成つておる。それで仰せまでもなく国民の上下を通じまして貿易がどうなるだろうか。従つて自分の食糧が得られるかどうかというようなことまで実はみんな心配しておるような状況にあるのでありますが、どうして輸出を振興するために国内の物価を輸出の値段にマツチするまで引下げることができるかということが先ず第一の問題になるのであります。然るに日本現状は、物によつては若干の値下りをしたものもあるのでありますが、今も農林大臣から申されたように、米価は二割も上つたというようなことであり、賃金は来る年も来る年も国会の周囲に赤い旗を立てた労働組合が来て賃金の値上げを要求する、こういうようなことで知らず知らず毎年実は賃金も上れば物価も上つて来ておる。こういう様相で生産をして参つておりましては、今後日本の輸出を増進なさるというようなことをお考えになりましても木によつて魚を求めるの類いでありまして、到底そういうことはできなくなる、かように考えるのであります。無論合理化運動によつて原価を下げるというようなこともお考えになつておる。又或る程度までさようなことはもとよりできないではありませんが、合理化でやるというようなことを申しましても限度がある、たいてい五分下げるとか或いは一割切り下げるということがマージンだ。そういう著しい破天荒のことができるものじやない。そうすると、どうして物価を引下げて輸出を振興するような途が立つだろうか。もう一つは仮に輸出ができないにしても、国外からの輸入を防遏してそうして自給自足のできる貿易状態にできるか。こういう点について先ずこの二十九年度の予算をお作りになりますに当つてどういう根本的のお考えをお持ちになつておるか、御所信を私はお伺いいたしたいのであります。
  156. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 日本の現在の国際貸借については丁度お話の通りでございまして、私ども何とかしてこの国際貸借関係を改善するように努力しなければならんということを考えておるのでございます。そのうち仮に二十八年度で申しますと、十三億三千万ドルか五千万ドル特需その他のものがございます。その特需と言いますものは約八億ドルでございまして、あとは船舶の収入とか各種の収入がございますので多くなつておりますが、まあ差向きのところ特需についても今の大体八億ドル、七億八千数百万ドル、この特需というのは外国の兵隊さんが朝鮮から帰つて来て使うのも一切含めての話であります。そういうものは大した異動はないといたしましても、これはなくなる時期が来るのであるから、どうしてもここに根本的の貿易対策を立てなければならんと思う。ところが田村さんも御承知のように右から左にすぐ転掲する方法がございませんので、私どもも先ず着実な途を歩んでいわゆる基幹産業の方面からできるだけコストの低下を図るように努めて、そうして一方では輸出入銀行法等を改正して、南方その他にはプラント輸出等が相当出るのでありますが、これは資金関係等で特に期限等の問題で困つてつたので、これが十年も十五年も投資できるというふうに法律も改めて、或いは又この間輸出入の取引法なども変えまして、今までのように輸入品に対する無用の競争をしない。又輸出品に対してもそういうような競争のないような措置をとるという一面、何と言いましても元になるのは物価の問題でございますので、できるだけ基幹産業の方面から物価を漸次切下げて持つて行くように持つて参りたい。但しそれはすべて経済問題は急激にやつてはそこにいろいろなけがが出て、財界にも混乱等を起す虞れがありますので、これは極くいわゆるスローリーだが併しステツデイな方法でやつて参りたい。そうやつて日本を正常貿易でやるように持つて行きたい。併しこれを半年間でやる、一年でやるといいましても実際むずかしい問題で、又或いは徹底することは不可能だという言葉を以てしてもいいのじやないかと思われるくらいでございますので、やはりここ三年、五年という計画の下にやつておる。今経審で五カ年等の計画でそういうことをやつておりますが、いずれにいたしましても日本物価国際競争力を付ける、つまり国際水準までものを持つて参るということは是非とも必要であると考え、又その品物が出やすくするように、或いは金融或いは商社に対する改善、各般の外交上の問題はもとよりであります。又今日はたいていのことが双方の支払協定等から成立つておりますから、輸出入貿易について成るべく日本が有利なように協定をとる。まあそういうあらゆる措置をとりまして、是非とも輸出貿易の刷新を図りたいと考えますが、国時に輸出貿易の増加だけではなく日本の国際貸借を直すわけには参らないので、やはり輸入品に対する或る程度制限が必要であると思います。従いまして奢侈品或いはなくて済むもの、或いは国産を以て代え得るもの、たとえて申しますれば綿花をそれだけ入れる代りに化学製品等で代え得ものはこれで代えて行く。食糧品等についても増産計画の下にできるだけ輸入を少くしたい。勿論いやしくも奢侈に亘るような品物は輸入を制限する。一方では輸出の増振を図り他方では輸入の阻止を考えて行く。そうやることによつて、同時に輸入阻止を考えるときには、国内での自給度を向上さすことに政策の重点をおかなければなりませんので、国内自給度の向上を図る。まあこの三つを対外貿易関係一つの、まあいわばかなえの三本の足として進めて行きたい。言い換えれば輸出の増振、又これに対する諸対策、又輸入の制限、これに対する諸対策、更に国内自給度の向上、それに対する諸対策、こういうことをかなえの三つの足として進めて参つて日本の国際貸借を改善して行きたい、かように考えておる次第でございます。
  157. 田村文吉

    ○田村文吉君 抽象的のお言葉は承わつたのですが、具体的にもう少し承わりたいのですが、先ず第一にお伺いしたいことは、一体明年度は物価をお下げになるおつもりか、或いは現状維持を、昔ディスインフレとかいう言葉でよく言われたのでありますが、現状維持を以ていらつしやろうというのか、下げようというのか。上るがままに自然のままにこれは物価に手を触れてもしようがない、こうお考えになつておるのか、これを先ず第一にお伺いしたい。
  158. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 物価つきましては大体世界的の傾向も来年は下向きにもなつておりまするから、私がよく申す下向き横ばいという傾向でもありますので、そういつた線で持つて参りたい。つまり日本国際競争力ということが一番中心の課題になりますので、そういつた方面に持つて参りたい。勿論物価を上げるという政策は全然とらない、かような考えでございます。  然らば私ども物価低落の激しい政策をとるか……そうできるだけ物価は漸次的に下げて行きたい、こういうふうに考えておるのであります。
  159. 田村文吉

    ○田村文吉君 私そこに根本的な考え方が違うと思うのですが、今までのやり方は横ばいの状況で継続して行くと、こういうお言葉であつたのですが、ずつと過去の昭和二十四年ドツジさんが来てから一時下りましたが、それから朝鮮事変があつて以後の趨勢というものは毎年上つておる。これは横ばい横ばいとおつしやるけれども、実は横ばいじやないのです。横ばいでいるなら何も労働賃金の値上げというようなきつかけを作る必要はなかつた。私はそれを大きくしてこの際賃金の値上げはやめる、物価を下げる、物価を下げる運動に国民が全部全精力を集中して行かなければならん、そうして国を助けなければならん。こういうふうに私は考えておるのでありますが、これはあなたの今まで横ばいで行くというようなことはもうお座なりの長い間のお題目です。これじや決して助からん、こういう点について大蔵大臣が是非考えを変えて頂かんといかんのじやないか。物価を下げるという運動を一つこの際断然やるべきである。但し金融を詰めてむやみなことをするとこれはもう生産が破壊されるだけでありまして、ちつとも消費水準が楽にはならん。こういう危険な途を歩んで下さいとは言かない。金融というものは今日は非常な重大な時期にぶつかつております。殊に年末にたとえそれは高利を取る人間で自業自得であると言つてもああいういろいろの金融会社が破産に瀕しておる。こういうようなことが誠に社会の不安を招いておるのであります。私はただむやみに金融を引締めて物価を下げろということじやないのですが、先ず皆の国民の目の向け方を賃金を上げるよりも物価を下げろというようなところに行かなければならんと、こう思うのですが、重ねて大蔵大臣の所見を承わりたい。
  160. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) その点は全く私も田村さんと感を同じうしておるのでありますが、私が申す意味は、それはまあ物価を二割下げるか三割下げるか、例えば二割下げるということを責任ある私が言いますと、当然経済界に混乱が起きるので漸次的に物価を下げるのだと申しておるのであります。その前提として、国際的にやはり日本物価が割高であるから、国際競争力を持つように努めて行かなければならないと申しておるのでありますから、言葉の中の意味はあなたのおつしやるように私ども物価を下げる政策をとつて参る、そのために財政的にも金融的にも諸般の法律にもそういう措置をとつて参らなければならない、かように考えておる次第でございます。
  161. 田村文吉

    ○田村文吉君 御説明はさようなふうに伺うのですが、そうおつしやる一方からやはり鉄道運賃を上げるとか郵便料金を上げるとか、こういうような矛盾した事柄が次から次へと起つて来ると、一体大蔵大臣はああ言つておるけれども、一体何をやつているかということになりますので、私はそういう点について十分に大蔵大臣はお考えになつておるかどうか、これを一つ最後にお聞きしたい。
  162. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは先般、いや、昨日でしたか、堀木委員の質問に私がお答えいたしましたときにお答え申上げました通り、実は現在の法制下では裁定等を呑まなければならんことに、まあ一口で言えばなつておる。併しその呑む限度をできるだけ財政上の措置の範囲にとどめる、こういう意味で実は私は詳しく申上げた次第であります。予算化して、資金化し得るということはそれぞれ言つておるから、その点についてのお話は申上げたのでありまして、而も鉄道等には最初の予想で大体出しましたときには、百六十八億くらいの赤字が出ることになつておりましたが、それではいかんから百億くらい切詰めてくれということを要求いたしまして、最近の数字では八十六億というところまで向うがいわゆる資金の合理化その他をやるようになつておる。最初は一割の鉄道値上が見込まれたものも大体今のところは六分以内ということになつております。なおそれでも足りませんから私どもは十分な一つ今の内部の経費の節約、収入の増加等に努めてもらうように話をしておる次第であります。この間も申した通り、今の裁定に関する法制がいいかどうか、これは別でありますが、法制のある限りはどうも止むを得ませんので、とつた。これは実は止むを得ざる措置であります。本当を言えば物価を下げなければならないのでやりたくなかつたのでありますが、法制の前にはいたし方ないということでとつ措置であります。
  163. 田村文吉

    ○田村文吉君 時間がないので恐縮ですが、一分ばかり一つお許しを願いたい。  今法人税の問題でありますが、昭和十年におきます法人の自己資金は九割で、社債とか借入金は一割、現在は二十七年の場合は自己資金が三割でございまして社債その他の借入金が七割なんです。これは事業会社まあ殊に紡績会社のごときものは戦争前には皆銀行へ莫大な預金をしておつたものだ。そういうことで日本経済というものは持つてつたのですが、如何にも終戦後における税が高い、税が高いからもう資本も蓄積する暇がないのであります。そういうようなことで資本の蓄積というものは、漸く自己資金は三割しかない、こういうような状況に陥つておるのでありまして、シヤウプ氏が勧告しました三割五分以上に一体上げたということは間違いであります。当時私は非常に反対したのであります。やはり三割五分以上に上げなくちやならん、かように考えるのでありまするが、これに対するお考えと、もう一つは私は奢侈品、ぜいたく品及びそういう行為等については相当高率の税金をおかけになつてもいいのじやないか、こういうことを考えるのでありまするが、来年度の構想についてそういうお考えをお持ちになつておるのかどうか、それをちよつと伺いたい。
  164. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは先般二十九年度の骨格予算を申上げたときにも申上げておきましたが、私どもは過日の税制調査会の答申は最も筋の通つたよい案であると思つております。だがあのまま現在の段階ではやりにくいと思つておりまするが、併し一方少額所得者等が重税に苦しんでおることも事実でありまするから、これを何とかして直すこと。過日法人税についても申しましたが、法人税の四十二というのは高くて資本の蓄積について欠くるところがあるように思うからでき得ればこれも四十ぐらいに直したい、こういうふうに考えておること。又一方何としてもそのほかにもなすべき点があると存じまするが、いわゆる奢侈品については相当課税をして参る、こういうことによつて全体の租税収入について大きな開きを来たさんようにしたい。こういうことを実は私は考えておるのでありまして、仰せの奢侈品等については相当な課税をいたしたい。又新税についても多少……、イギリスなんか自分のところの全部の毛織物について国内で使わせないとか、或いは各種の処置をとつておりまするようなことは日本でもこれをやりたい、かように考えておる次第であります。
  165. 田村文吉

    ○田村文吉君 時間が終りましたから……。
  166. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 委員長ちよつと、愛知次官はどうなつたんでしよう。池田・ロバートソン会談について尋ねたいと思うのですけれども
  167. 青木一男

    委員長青木一男君) 愛知政務次官は本会議に出席しておるそうです。
  168. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 大分かかりますか、どうなんですか。
  169. 青木一男

    委員長青木一男君) 他の質問をやつておられればその間は要求しておきますが……、それでは質疑の順序を変更して永井一君。
  170. 永井純一郎

    永井純一郎君 第二次補正予算審議をやつて参りました。締めくくりの質問を総理大臣にいたしたいと思います。この会期中いろいろ質疑をいたして参りましたが、物価問題につきましても大体どういう方向を今後政府はとらんとするものであるか、こういう点も明らかになりません。又一番重大な今後の日本の政治外交等について関係を持とうと考えられる、その日米の池田君なりロバートソンなりの間で話されたお互いの立場の主張さえも明らかでありません。誠に遺憾と言わなければなりません。で、私は新聞外電等を通じて池田・ロバートソン会談においても見られるごとく、日本は私は米国の少くとも影響なくして政治、外交或いは財政経済政策というものをなし得ない現状に今日政府はあると思うが、この点総理はどう考えておられるか伺いたいと思います。
  171. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。日本の置かれた地位は単にアメリカの影響ばかしでなく、国際の関係ますます緊密になろうとするならば、各国の状態、各国の政治経済その他の影響を自然こうむらなければならん立場にあるのでありまして、単にアメリカだけの影響ということはないと私は思います。
  172. 永井純一郎

    永井純一郎君 それば当然のことでありまするが、特に米国の意向によつて影響するところが私は多いだろうと思います。こう考えて来るならば、あなたは米国の影響というものを別に否定されているわけではないと思います。そこでこのように考えまするならば、私は特にその影響があると思うから申上げるのでありますが、個人的使節としてあなたがおやりになつた池田君なりが話したその我が国の立場の主張、少くともこれが明らかにならなければ、アメリカの意向は別として、我が国の立場だけでも国会で明らかにならなければ私ども国会は審議をすることに差支えがあると思う。あなたはそれを差支えないと思われるかどうか承わりたいと思います。あなたはこの前私が質問したのに対して答えられておりません。
  173. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 池田・ロバートソン氏との間の会談は両氏の共同コミニュケにおいて明らかになつておるのであります。これ以上は政府としてはお答えができません。何となれば両方の間で話合つてコミュニケを出しておるのであつて、それ以上のことを自由に日本政府若しくは私としてここに発表することは差控えたいと思います。
  174. 永井純一郎

    永井純一郎君 共同コミュニケは総理も言われた通り、何ら決定した線を出しておるものではないということなんです。そこで私が聞かんとするところは、共同コミユニケを出す以前において会談をして日本立場をどういうふうに説明したかということを国会は知りたいと言つている。アメリカが言つたアメリカの意見はそれは差支えがあるかも知れません。それが国際信義上反するというならばそれは譲つてもいい。国会はそれを知らなくとも今後政府が提案する予算案なり法律案の審議に差支えないというふうに総理がお考えであれば、私はそれで了承します。その点を伺つているのです。差支えがあるのかないのか伺いたいと思います。
  175. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府としては差支えないと考えてあのコミュニケを出しておるのであります。それ以上のしとは仮に日本側だけのことに関しても私は発表する自由を持つておりません。
  176. 永井純一郎

    永井純一郎君 どうも総理は自由を持つておらないとかアメリカに対する批判は避けたいとか、非常に遠慮をして言われております。それを私は一つの礼儀としてはわかると思います。併しそういうことで終始されて国会の審議が十分にできないようなことになるとすれば、あなたは差支えないということを言われるが、併しこれから東京会談が始まり、二十九年度予算が出て来て差支えがあつたときに又私は申上げたいと思いますが、その点はもう少しいつも総理が言われるように独立国らしく話す道が私はあると思うのです。国会で話さないという態度は私は了解できない。そこでどうしても総理がお話にならない、日本は米国との会談においてどういう立場を要請し或いは説明をしたかということを話さないとするならば、日本の総理大臣が日本国民に語ろうとしない、併しながら一面においてはそれ以外の人が日本国民に私は語つておると思う。甚だ私ほその点を遺憾だと思うのです。それは先きに申しましたところのニクソンという副大統領がお見えになつて、そうして新聞によりますると日米協会というところで、副総理も外務大臣もその席に出席されておつたようでありまするが、昼飯を食いながらのんびりと、併し至極率直に私は日本国民にニクソンという副大統領が語つておると思います。これは総理も大体御承知のところであると思う。あなたが語らなくとも外国の副大統領というような人が来て国民に語つておる。内容は私は池田・ロバートソン会談と基本線は同じたと思うのです。それはどういうことを言つておるかというと、時間がありませんから要点だけを申上げるならば、ニクソン氏は日本は再軍備をすべきだというようなことを言つております、演説をしております、国民に。そうして米国が一九四四年に日本政府に陸海軍の廃止をやつたことは誤りであつた。そうして日本は再軍備すべきであるというようなことを言つておる。その次には日本は現在どういう地位にあるかと言えば、それはアジアの戦略上の非常な重要な鍵をなしておる。日本はアジア防衛の要であり万一日本が倒れれば全アジアも倒れるというようなことを堂々と演説でやつております。ただそのときに言うべくして言わなかつたことは、その防衛線はとりもなおさず米国の国防第一線であつてこれが崩れると困るということは言つておりませんが、併しこれは日本及び米国の用事専門家の一斉に認めておるところです。  三番目に重要だと思われまするニクソン氏の要旨は日本の保安隊が士気訓練等あらゆる点で優秀であるということはハル極東軍司令官の言葉に賛意を表するものである。併し日本の防衛軍は十分でない。日本の防衛軍は増強しなければならない。諸君は我々の援助に信頼できる。米国はその目的に向つて努力するものであるということを言つております。この三点が根本的に重要な問題である。又この三点について共同コミュニケを見てもわかりまするように池田・ロバートソン会談が行われたことも明らかである。私は何もアメリカの意見まで言うことをあなたに要求するのではない。国会が審議権を十分に行使するために日本立場を個人の特使といえどもどういうふうに話したかということを国民に語らないということは、私は悪いということを申上げておる。そこで私はこのニクソン演説について総理は初めの総括質問のときにどなたかが質問されたのに対して、ニクソン氏と自分は会つたけれどもそれは親善のために主として来られたので演説のような内容の印象は総理とニクソン氏との間の会談では受けなかつた答弁をされております。私は先ず第一に総理にお尋ねいたしまするのは、ニクソン氏は若い政治家です、我々の同じくらいの年輩の若い人で私はその点率直に米政府意見を吐露したと思います。その点は大変結構だと思うのです。同じような趣旨の話が総理にあつたのかどうか、私は承りたい。
  177. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の答弁の要旨は、お話のようにかくのごとき話がなかつたとかあつたとかということは申されなかつたはずであります。ニクソン氏は日本に来られて日本親善のいい関係を残したいという気持で来訪されたことと私は確信するのであります。併しながらそれ以上のことは私としては言うべきでない、こう申したのであります。
  178. 永井純一郎

    永井純一郎君 あなたの癖がだんだんと質疑をしているうちに出て来て誠に遺憾です。それでは私は総理にお伺いをしたいのですが、あなたにああいうような内容のことを話したか話さないかが私にはわからないが、十分に話もしない、一国の総理に話もしないでおいて、ニクソンという副大統領が昼食会で日本国民に向つて我が国の憲法、基本法を根本から動かすような演説をやつておきながら、これをあらかじめ一国の総理にも話さないでおいてああいう演説をやつたとしたならば、私はこれこそ国際信義に反するものである。日本を独立国として扱わないものであると私は思います。あなたにあらかじめそれを話しておつたというならば了承しましよう。話していなかつたとするならば私はこれは米国の副大統領のとつ態度は大変不遜であると思う。許すことはできないと思います。総理はこの点どうお考えになりますか。
  179. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はニクソン氏の演説等に対して批評等は差控えます。
  180. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は初めから申上げているように、ニクソン演説なり或いは池田・ロバートソン会談において米国が言つたことを言えということはあなたに要求してはいない。又そのニクソン演説に対してあなたに批判して下さいということも私は言つておらない。あなたに同じような内容のことをあらかじめ話して、その上であの演説はやつたものかどうかということを私は知りたい。国民が知りたがつている。なぜかというならばそのことで私はアメリカの日本国民に対する態度がわかると思う。私は少くとも吉田さんにあのことを一応話しておいてそうしてあの演説をやつたならば、これは内容は別として私はやむを得ないと思う。あなたはすぐ国際信義上米国の意見は言えないとか、すぐお逃げになるが、アメリカはちつとも国際信義を重んじていないということになると思う。ですからああいう内容に亘つてあなたはニクソン氏と話合をされたかどうか、その批判は別でいいのです。そのことを確めたいのです。
  181. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私がニクソン副大統領と何を話したか、話の内容についてここにお答えすることはお断りいたします。
  182. 永井純一郎

    永井純一郎君 顧みて他を言われておるようでありまするから、これ以上追求しなくとも私は国民にはよくわかると思います。国民はアメリカの副大統領によつて最も重要な問題を知らしめられておる、この点は遺憾であります。先ほど来申しげましたように、ニクソン副大統領が来て話しました重要な点はやはり日本が戦略上のアジアの重要な鍵をなしているという点と、それからああいう憲法を作つたのは間違いである、再軍備をせよという要求である。これははつきりいたしております。又アメリカが作らしめた今日の日本の憲法が警察以外の武力或いは軍隊をこの我が国の憲法の上で考えていなかつたことも明らかです。ニクソン氏自身がそれを証明したと言えると思います。そこで考えてみますと占領後半期から初めはマッカーサーという元帥が、東洋のスイスたれなどと日本人に尤もらしい告示などを正月に出した。だんだん占領後半期から変つてきて日本人は勇敢であるというようなおだて方を始めました当時から警察予備隊、保安隊というものがだんだんできて来たことは国民はよく知つております。こうして今日まさに吉田・重光会談によつて自衛軍というものが我が国に生まれようとしている。この自衛軍によつて財政経済一切が左右されることもよくわかります。そこで、ところが国民は憲法改正を許さないと思う。あなたも又そう判断をされておると私は見ておる。そこで既成事実を順次々々作つて行つて実質的にアメリカの意向に副わんとしているのではないか、政府は。ということを国民は今判断をいたしておりまするが、そういうことでアメリカはよろしいというような考え方を持つておるかどうか。
  183. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あなたの御推察は御推察に任せます。アメリカがそう考えているかどうかは私は存じません。
  184. 永井純一郎

    永井純一郎君 あなたのお答えを聞かない前から大体において想像ができるのでございまするが、国民は併しそれを知りたがつているというために私はあなたに質問をいたしておるのであります。若しそうであるとするならば国民考えまするには、これは明らかに実質的に再び米国によつて日本の憲法を廃止するにひとしいことになる。前にはアメリカの政府によつて憲法を無理やりに作らされ、内容は別です、私は形を言つているのだが、今度又再び実質的に米国によつて日本の憲法が改正され、廃止されると同様な結果を来たすということに私はなると思う。又国民もそれを非常に心配しております。こういうことを私は総理に申上げておきたいと思います時間がだんだんなくなつたようでありまするから、最後にお尋ねをもう一ついたします。それは午前中も質問がありました。それは今バーミユーダ会談が行われております。これは私ども考えによりますれば、非常に日本に重大な影響を持つものと考えまするが、外務大臣はこれについて、何ら私は知りませんという答弁をしている。バーミユーダ会談の帰趨というものは日本にどういう影響を持つものであるか、その内容がどういうことを言われておるかということを別に私はお伺いしませんが、その帰趨というものは日本にどういう影響を持つものであるか、こういう点、こういう点が影響を持つということをお答え願いたいと思います。
  185. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) バーミユーダ会談の結論がわかつたのちでなければ、何とも私にもしようがありません。
  186. 永井純一郎

    永井純一郎君 勿論結論が出ればなおいいのでありまするが、結論が出なくても私は大体日本関係する事柄、こういうことが議せられれば、こういうふうに関係をする、その結論はどうなるか、帰趨は別なんです。ということを私はお伺いしているのですが、どういうことが日本関係するか。外務大臣が私は何も知らないなどと言うことは全く不適当な外務大臣だと思う。アメリカにくつ付いていさえすりやいいというような考えが頭にこびり付いているから、私はそういう不見識なことになつて来ると思う。どういうことが関係をして来るかということ、総理も何もお答えにならんということは私は国会としては了承できません、そういうことは。結論は別なんです。どういう事柄が関係するかということをお伺いしている。
  187. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 前言以上に附加えることはありません。
  188. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは私のほうからもう少し突き進んでお尋ねしたいと思います。東西の陣営の中に、勢力の中にある日本立場というものは非常に今日ではむずかしい。殊にその点総理が苦心されておることもわからないのではない、よくわかる。従つてバーミユーダ会談等の帰結は非常に国民が重大な関心を持つ。それでどのようにあの会談が、それでは進むことを総理は希望されておるのか、これは国民が非常に知りたがつている。新聞の伝うるところによれば、英仏は懸命になつて米国を説得して、ソ連と話合いをするようにしたいということを言明もしておるし、新聞の伝うるところでは一生懸命になつて米国を説得して、アイゼンハウアーを説得しているということを報じております。誠に望ましいことであると思うのです。結果がどうなるか非常に注目を要するところでありまするが、ソ連との話合ができるように極力あの会談が進むことを総理は望んでおられるかどうかということの所見を承わりたいと思います。
  189. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) このために世界の平和情勢が進むならば誠に結構だと思います。
  190. 永井純一郎

    永井純一郎君 それまでお答えになれば、これは私は当然結構だということをお考えになるからには、日本にこういう関係で問題が関係して来るからということを私は突き進んでお伺いしたいところです。ところが、これは恐らく十分な答えも得られないだろうと思いますから、もう一つほかのことを聞きたいのですが、私は外務大臣がこれだけの日本にとつては重大な問題、それがどちらに向いて行くか何も答えられないという外務大臣は全く不見識極まるものだと思います。殆んどそういうことに関心がない、米国のほうだけを向いていればという気持だから、そういうことになると私は思うのですが、そこでここでお聞きしたいのは、在外公館はああいう重大な問題について直ちに電報なり何なりでこうなつている、こうなつていると即刻公電で外務省に来るべきはずだと思う。それが外務大臣と総理大臣に入らなければならないと思うのですが、外務、大臣が何も知らないということになると、在外公館からこの日本にとつて重大な問題について何らの報告も来ておらないのかどうか。在外公館というものは一体何をしているのかということを聞きたくなるのですが、これは総理でなければ外務大臣からでも結構です。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は第一に何も知らないと申したのではなくて、ただ正式な通報とか正式な結論がまだ出ていないので、我々はコミュニケその他の発表を注意して今その成行を見守つておるということを申上げたのです。在外公館からも必要な報道は来ておりますが、常にこの問題に限らずいろいろな問題について必要な報道は来ておりますが、只今のところは場所がワシントンではないし、正式な発表以外にはまだ情報の入手がないようでありますから、結局発表外の電報が到着しおりません。併しだんだんと論説も参りましようし、観測も参ろうと思いますが、只今のところはまだその程度であります。
  192. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで外務大臣、どうも合点がいかないのですが、在外公館からは意見を附して私は来るのだと思うのです。そうしてこういう内容でこうこうこうだから日本でこの点は非常に重要だと思うということが、大使、公使だろうと思うが、ただ向うに出た新聞をそのまま翻訳したようなものを電報で打つて来る程度じやないはずだと思う、従つてこれらは重大な問題です、日本にとりましては。朝鮮の問題、インドシナの問題、日本の問題が議せられることは大体誰でも知つておるのです。それを在外公館からの報告というものは、じやどの程度で来ておるのですか。私はそれだけ伺いたいのです。どんな報告をよこしておるのか、在外公館は一体……。詳しい内容はいいのですが、どんな程度に来ておるか。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 在外公館は専ら正確な報告をよこすのであつて、ただ新聞に出たからすぐ取り継ぐというようなことはいたしておりません。従いまして新聞に出たものは各方面の意見を聞いてこれを確認するものは確認し、又間違いであるものは間違いであるということを確めてよこすのが通例であります。従いまして大体においてこういう正式な重要な会談の報道というものはすぐ右から左へと来るものは少いのであります。併し私が先ほど申した通りだんだんにいろいろな情報を総合判断して報告は参つたものと考えております。
  194. 永井純一郎

    永井純一郎君 時間が過ぎておるようでありますから一つこの程度で。
  195. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 第二次補正予算審議を通じましてはつきりいたしましたことは、大砲かバターか二者そのいずれかをとらなくてはならないということがはつきりいたしたように思います。吉田内閣におかれましては、院外の勤労大衆の血の出るような叫びにもかかわりませず自衛力の漸増をはつきりとられたわけであります。そこで我々といたしましては、ここで静かにアメリカの封じ込め政策或いは捲返し政策の一環として再軍備いたしまして、中ソ両国に敵対するような現在の施策が果して我が国の安全に役立つものであるか、又国民経済の破壊をもたらすものではないかということを四つに組んで考えねばならん重要な段階に来たと思うわけであります。私はアメリカの要請に従つて本格的な再軍備をいたして参りまするならば、遂に我が国は再び拭うことのできない過失をおかすのではないかと思うわけであります。この運命の転機に立ちまして、どのように日本の運命を開くかということにつきまして、吉田総理は極めて重要な役割を果されるわけであります。高齢にもかかわりませず日夜心胆を砕かれている点につきましては、真向から対立しますところの我が党ではありますが、深く敬意を表するものであります。アイゼンハウワー大統領はオペレーシヨン・キヤンダー(率直作戦)ということをアメリカ国民に訴えております。アメリカの当面したところの危機を率直に語つて国民の協力を求めることを言つているわけであります。いろいろな事情がありましようが、吉田総理も範をその点におとり頂きまして、懇切なる御答弁を頂きますなら大変仕合せに思う次第であります。  そこで先ず私たちがどうしても知らねばなりませんことは、この日本立場を誤りなく行くには、国際政局をどう判断するか、正しい情勢の判断なしには適切なる方策は出て来ないと思うわけであります。私は七月二十七日の停戦協定をきつかけにいたしまして、世界に顕著な二つの変化が起つたと思います。それは昭和二十五年の六月二十五日に朝鮮事変が起きまして、平和から冷戦へ、単一世界市場が東西二つに分れたということが大きな動向でありましたが、それとは全く逆に、冷戦から平和へ、東西貿易の打開ということが国際情勢の動かすことのできん動向ではないかと思うわけである。併しつぶさに吉田内閣が国会にお諮りになる諸案件を見ますると、これらの情勢に全く逆行しておるのではないかと思うわけでありますが、総理は国際政局をどう御判断でございますか。又最近ノーランド議員やニクソン副大統領がおいでになりましたが、どのようにアメリカの指導者は東西両陣営の関係を評価したのでございましようか。その点についてお伺いいたしたいと思います。
  196. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  バターか大砲かということでありますが両方とも必要なんであります。バターも必要であり大砲も必要である。その今お話のようにバターか大砲かどちらが必要かと言えば両方とも必要だと答えざるを得ない。又世界の情勢と言われますが、これも誰も普通に考えることでありますが、現在においてますます世界の情勢が緊迫する。緊迫の度は年々ゆるみつつあるということは誰も言うことでありますが、チャーチル総理大臣も言い又アイゼンハウワー大統領もそう言われ、各国の政治家はそう考えておる。これは当然のことであります。何となれば人類として、人として戦争がいいと考えておるものはないはずであります。故に世界の人類として殊に二度まで世界大戦の済んだ今日において、平和を求めるという考えはこれは人類普通の希望であります。その希望が即ち平和の気運をもたらしつつあるのであつて、本年は昨年より、昨年は一昨年よりも平和情勢はだんだん進展しつつあるものと考えるのはこれは常識と私は思うのであります。私はそう考えます。従つて只今朝鮮の戦争がやんだ。これだけでも一つの平和に重大なる貢献と申しますか影響を持ち来たしたろうと思います。又インドシナにおける情勢についても、これに対してはいろいろ見ようもありますが、結局ナバル将軍が相当の尽力をなして、近くインドシナの問題もいくさも解決ができる。或いは治まるだろうと見ておるのがこれはフランス人の確信であろうと思います。故に一事々々だんだん平和に近づく情勢にあると考えて、戦争になる危険性、いろいろなことを判断せず、むしろ平和がだんだん増進するという観点からものを考えて頂くほうが情勢判断を誤らないゆえんと私は確信いたします。
  197. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 総理の情勢判断を聞いて大変結構に思うわけですが、然らばそういう判断が具体的にどう出ておるかということを見ることが必要ですが、愛知政務次官にお伺いいたしたいと思います。アメリカに行かれまして一体どういうふうに中国をアメリカは了解しておる、極東の平和のためには中国政策について過りなきを期することが絶対必要であります。中共政権を認めないという立場に立つ限り朝鮮事変の解決はないと思います。アジヤ問題は中国問題、新知識を仕入れて来られました愛知次官にお伺いしますが、一体アメリカはどう中国を処理しようとするのか、蒋介石政権をもう一遍中国に返そうとするのか、或いはそれとも毛沢東政権が事実上中国を支配しておるという現実の上に立つてアジヤ政策を展開するのか、これこそ我が国のの今後誤りなき外交政策をきめるのに一番大切と思うが、どういうふうに御理解して来られたか、その点をお伺いしたい。
  198. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) お答いたします。私が今回アメリカ或いは欧州に出張いたして参りました、そのことにつきましては、昨日の当委員会におきましても申上げた通りでございまして、例えばいわゆる池田・ロバートソン会談につきましても、これは十月三十日に双方合意いたしまして、新聞に発表いたしたものに、我々の話合というものは尽きておるわけでございまして、それによつて承知を願いたいと思います。従いまして只今いろいろお話がございましたが、そういう点については、私どもといたしましては申上げることができないわけでございます。
  199. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 貴重なドルを使つて大蔵政務次官ともあろう者が行つて、よもや子供の使いではないでしよう。数十名のアメリカの軍事専門家等と会談されて、この理解を持つて帰らんというようなことで、一体何をしに行くのですか。およそ片言隻句の間からでも、対日政策を決定する際には、中国の理解なくしてできると思うか。私はアメリカが今とつておるような政策をとりますならば、丁度私がその下にありました近衛さんが、蒋介石は相手にせずと言つて、遂に我が国の運命をこのような悲境に陥れたと同様な結果になることを非常に心配するものであります。甚だ遺憾ですが、そういうことでしたら話を次に移します。  第二番目に、お伺いいたしたいことは、去る十二月三日の衆議院の外務委員会におきまして、自由党の福田氏の質問に対しまして、ナツシユ国防次官補ですか、三十二万の再軍備の要請があつたということであります。又ニクソン副大統領は十一月十九日の日米協会の会合において、日本は戦略的にアジアの鍵であるということを言つているわけであります。私の党の国会議員の人が奄美大島に視察に行きましてびつくりしたことは、すべての軍事施設が攻撃的にできておつて、全部防衛的にできていないということを指摘して、アメリカのアジア政策がどのようなものであるかということを、我々はそれからサゼッシヨンを得ることができるわけであります。とにかくどういうふうに三十二万の軍隊を要請し、そうして戦略的な要だといえば、アメリカは極東の全体の戦略の一環として日本にどういう任務を負荷しようとするりか、そういうことについてどういう印象を受けられましたか、お伺いしたいと思いす。
  200. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 去る三日の衆議院の外務委員会で如何なる応答がございましたか、実はつまびらかでございません。なぜなれば、その大部分は、私の承知しておりまするところでは、速記にも載つていないわけでございます。只今三十二万五千云々というお話がございましたが、私は一昨日の当委員会でも申上げましたように、会談の内容について、誰がどう言い、これがこう言いということは、相手との信義上の関係もございますから、これは申上げることは差控えたいということを申上げましたが、同時に私が一人の視察者としてのいろいろな観点から見受けたところでは、或る米国側としても、一部の国防ということに非常に関心の深い人たちの間におきましては、新聞等にもちらほら見受けられるような数字を挙げて、日本の防衛というものは、こうあつて欲しいというような意見を強く持つている人があるよりに見受けたというような趣旨を申上げましたが、只今のお尋ねに対しましても、これを繰返すだけでございます。
  201. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私たちはアメリカといずれ東京会談によりまして、まとまつ川日本の施策が打出されると思うわけであります。それが我が国の誤りなき将来を決定するものであるかどうかということを知りますためには、何と言つても、先に申上げましたような中国をどう理解しているか、アメリカの極東戦略はどういうものであるかということを知らずして、その成否を判定することができないわけでありますが、これについて適切な回答がないことは、誠に残念に思うわけであります。更に国防次官補は三十二万を要請し、池田氏はこれを十八万、三カ年計画で達成するということに了解がついたというようなことも言われている。併し一方においては、それは池田さん一人の理解であつて、十八万というものは二カ年であつて、実際は期限をつけずに三十二万五千が了承されている。而も東京会談においては、漸増の全体の計画を示さずして、ただ来年度だけの計画をちよつぴり出すような形において、あたかもアメリカの支持なしで、日本の国独自でやつたような形で打出すというふうに話がついたということを聞いておるのですが、その点はどうですか。
  202. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 中田君の御質疑を伺つておりますと、何か日本のこれからの自衛力の漸増計画は、アメリカが作つたり、アメリカが何か日本に強要するかのような前提に立つてお問いのように私は思いまして、誠にこの点は残念に思います。我々といたしましては、世界の諸般の情勢を見ることは、勿論必要でございますし、殊に援助というような問題を中心にして、関係国が相互の理解を深めて、その基礎の上に立つて計画を作ることは勿論必要でございますが、飽くまで我々の計画は我々自身が作るものである、こういう私どもは確信を持つております、従つてアメリカ側から何か強要されたというような馬鹿なこともなければ、いわんや池田氏が十八万云々というようなことを、そういう席でコミットするというようなことは絶対にございません。又信じられもいたしません。
  203. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうあることを私も希うのですが、愛知さんの弁明にもかかわりませず、国民に与えている印象は必ずしもそうでないことは、誠に遺憾と言わなくてはなりません。  それは別にいたしまして、次に愛知さんにお伺いたしますが、池田氏は十一月二十一日の自由党の総務会で、対米の折衝の結果、経済援助は事実上不可能である、こういうような印負を受けたということを申されていますが、それは一体どういうような意味で、そうなつたというふうに御理解されますか。
  204. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) この点につきましては、私の見解を申上げまするならば、御承知のように、現在アメリカの新政権下におきましても、今後の財政計画を如何に作るかということについては、相当困難な条件をもつておるようでございます。従いまして純粋な、例えば政府財政的な対外援助というような面につきましては、今後のアメリカがどうするかということにつきましては、一つの見方として、こういう点を歳出の削減を一項目にしなければなるまいというような意見があることは事実でございます。又アメリカの歳入計画を見ましても、新政権が御承知のように減税の公約をいたしておる関係で、この歳計を如何にもつて行くかということについては、恐らく非常に当局者は頭を悩ましているだろうと思います。そういつた関係を通観いたしますると、私は一般論として、いわゆる経済援助というようなものが、他国に対して今後多きを期待し得るかどうかというと、私はむしろ否定的になりはしないかと考えるわけでございます。併しながら、私は日本に対する関係におきましては、そう悲観する必要はなかろうと、私一個の見解では、これからのこちら側のやり方如何にかかつておるものであると、こういうふうに考えます。
  205. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私はその考えはアイクの選挙のときの公約その他で一面の真理を御指摘になつておると思いますが、重要な点が閑却されておるではないかと思うわけであります。これは今後我が国がアメリカとの関係を保つために極めて重要だと思いますので、私の見解を申上げてみたいと思います。  それは日本に対するアメリカの戦略価値というものが非常に変化したということが、私は大きな原因ではないかと思うわけであります。それは朝鮮事変中とか、或いはアメリカだけが原爆を独占しているとか、或いはB四七のジエツト型の中型の爆撃機で大陸作戦を遂行するというような段階においては、前進基地としての日本は極めて高価なものである。併しながら原爆についてソヴイエトとの差がだんだん縮まつて来る、更に水爆をソヴィエトが持つて来る。而もソ連がTU型のジェット超重爆撃機を以てアメリカの無着陸の往復爆撃ができるというような、重大なるこの変化というもので、非常にアメリカの対日軍事評価というものが変つて来ている。そしてむしろ前進基地としての日本から、アメリカ本土でB型の五二の超重爆撃機に大きく転換するアメリカの軍事指導者が、今世界各国を見廻つてアメリカの戦略的な再編成をしておるという、そういう事実が私は大きく対日援助に影響していると思う。同じようなこういう情勢においても、なぜスペインは最近厖大な基地を貸与して軍事援助を受けたか。これは中ソ両国に接近したところから、非常に後退した遠距離に、そういう基地を持つという大きなこの戦争兵器の変化のためであると思うわけであります。私は池田さんが非常に頑張られて三十二万五千を押し付けられたときに、ナッシユは日本佐藤賢了だといつて非常に憤激されて反撃されたということを聞きましたが、こういうような情勢の変化の中で、アメリカのロール・バツク政策というものは、アメリカだけが原爆を持つている、アメリカだけが水爆を持つているとき初めて可能なわけなんです。そういうものを両勢力が持つておる際に、日本のような価値というものが変化することは明らかなんです。私はこの点こそ、日米会談における今後の折衝においても十分お考え願いたいと思いますが、とにかく愛知さんが折角アメリカに行かれたら、アメリカは中国をどう見ておるか。極東戦略はどんなものであるか。兵器の発展段階はどうであるかというようなことを、十分見られなかつたことは誠に遺憾ですが、時間がありませんので答弁はそれでは求めません。    〔委員長退席、理事西郷吉之助君着席〕  次にニクソン副大統領が先般来まして、陸海軍を一九四六年に廃止したのは誤りであつたという言明をしたのですが、これは日本の外務省が、アメリカ大使館を通じてそういうふうに言つてくれというところの交渉をして、それが実を結んだということが言われておるのであります。これは極めて日本が平和憲法にどういう立場をとつているかということを判断するのに重要である。朝日新聞ははつきりこのことを伝えております。更に又ニクソン副大統領が来たのは、池田さんが、日本に来て再軍備の発破をかけてくれという懇請に応じて来たということですが、そういうことがあつたのですか、外務大臣にこの点お尋ねいたします。
  206. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 初めの質問は事実に反します。朝日新聞にありますれば、それは朝日新聞の間違いであります。  第二に、ニクソン副大統領の旅程等は、池田君がアメリカへ行かれるずつと前にできており、その中には日本に立寄るということも書いてありまして、これはずつと前の計画であります。
  207. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それでは吉田総理にお伺いいたしますが、このニクソン副大統領の声明は、外務省筋の観測によりますと、憲法改正への初の公式発言であるというふうに言つておるわけであります。アメリカの官辺筋では、明年が日本の憲法改正の準備完了の年である。明後年は改正の年である、こういうふうに伝えておるわけであります。来るべき参議院の改選期がその時に当るということが言われていますが、それとあたかも符合を一にするように思うわけであります。平和憲法こそ、自主性のない我が国がアメリカの要請を防ぎ得るただ一つの砦であり、これが若し改正されますならば、堰を切つたように我が国が一定の方向行つて、再び過ちを犯すのでないかと思うわけですが、吉田総理におかれては、この点十分お考えだと思いますが、そういう通信すらあるわけでありますから、一つこの点についての所信をお伺いいたしたいと思います。  更に又、吉田総理とお会いになられた鳩山さんの今日の新聞記事によると、それと同じように知事の公選制廃止という問題が言われていますが、吉田総理はこれに対して、どういうお考えをお持ちでありますか。  更に自治庁長官にお尋ねいたしますが、長官は憲法を改正せずでも、憲法九十三条による都道府県を、その長が直接に公選するを要するような自治団体でないという自治法の改正によつて、例えば保安隊は戦力でない、都道府県は憲法九十三条による自治体でないというような形によつて、違法性を阻却して、私は来るべき知事の改選期の前に公選制廃止が重要な日程に上るではないかと思いますが、それについてどういうお考えですか。我々としては地方自治の本旨からいたしまして、憲法改正なしにはできないという考えを持つものですが、憲法改正せずでも、知事の公選制は廃止できるとお思いでありますか、この点についてお伺いいたします。
  208. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。しばしば申す通り憲法改正の考え只今のところありません。知事公選制度については、政府は研究はいたしますが、未だ改正はいたしたき考えを持つておりません。
  209. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 憲法の法理論的な解釈といたしましては、今までしばしばお答え申上げましたように、自治法の改正によつて府県の性格を変更することによつて、憲法改正することなしにできるという考え方を私もとつております。ただ実際問題として、これを今御指摘のような時期にするかしないかということは、先般の地方制度調査会の答申にもございますように、当面今のところは、そういう時期でないではないかというような意見であり、従つてどもも当面そういう時期じやないじやないか、こういうふうに考えております。なお併し、この問題は本質的に十分検討しなければならない問題がありますので、引続いて地方制度調査会に本質的な議論というものを御検討願う、こういうふうに今検討いたしておるわけではあります。
  210. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 吉田総理にお伺いいたしますが、私は今の段階におきまして、財界の政治支配をどうして排除して行くかということは、非常に重要ではないかと思うわけですが、それについてお伺いしたいと思うわけであります。御存じのように、今日ほど財界がこの政治を強く支配している時期はございません。それは政治資金規制法によつてもわかりますように、各政党に対して厖大な選挙資金が献金されている。いわば財界は有力な政党のスポンサーであります。保守政党はいわば財界の扶養家族と言つてもいいくらいである。そこで国会の上に、そういう団体の集合体である経団連というものが乗つかつて来て、これが私は日本の再軍備を促進する重要な役割をしていると思うわけであります。特需で儲けました兵器生産業者が、朝鮮事変の終熄と共に、それを日本の再軍備をいたすことによつて特需に肩替りしようということが、大きく政治に力を加えて来ていると思うわけであります。この点がまだ絶対過半数をとられない吉田内閣でも、改進党、日本自由党、その他から搦手で大きく圧力を加えて、吉田総理の信念に動揺を与えるような措置を加えないとも言えないと思うわけであります。これは私は重要な意味を持つものであると思うわけであります。例えばラスキーのデモクラシイ・イン・クライシスを見ても、財界が政治を支配し出したときに政治が重大な危機に立ち至る。実業家というものは、公衆の便益よりかも、金儲けの専門家であつて、そういう者が政治を支配するときには国の運命を誤ると言つておりますが、吉田総理について、この辺のお考えをお伺いしたいと思うわけであります。
  211. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。再軍備を財界から迫られたことはございません。又再軍備はいたしません。
  212. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 政界の再編成についてお伺いしたいと思うのですが、政界の再編成は私は解散を通じて国民の民意を問うてやるべきではないかと思うわけですが、最近保守三党の合同であるとか、連立であるとかいうことが言われまして、そういう障碍になる総理を……大変恐縮ですが、棚上げさしてでも、この強力な保守三党の内閣を作ろう、解散をやらずに政権にありつこうという、こういう考えは憲政の常道にもとるものと思いますが、私は政界の再編成は、解散を通じ、民意に問うてやるべきだと思います。吉田総理は志を同じゆうする人に協力を求めると言われますが、政界再編成の基本原理をお伺いいたしたいと思うわけであります。
  213. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。今日国民の要望は、政界の安定であります。故に政策を同じうしているものが行動を共にするということは当然のことであります。若し私を棚上げにして、而して三派の合同ができれば、私において毛頭異存はございません。(笑声)
  214. 西郷吉之助

    ○理事(西郷吉之助君) 中田君、大分時間が経過しましたから……。
  215. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう一問です、小坂労働大臣にお尋ねして。時間がありませんので、お伺いいたしますが、私は日本の置かれました現状というものは、丁度明治維新のときと同じではないかと思うわけではないかと思うわけであります。ペルリが来ますし、ロシアが東漸し、イギリスが北上して来て、日本がいつ植民地になるかも知れないというので、日本は急いで富国強兵の国是を立てて、そうして強力な軍隊を作る。そうして又資本蓄積を強行いたしますために低賃金と低米価基本にして日本がやつて来ましたところが、成るほど資本主義は発達したが、その生産したものが売ることができないというので、遂に日本は軍事力によつてこの問題を解決する、こういうふうに来たと思うわけであります。そこで低質金と戦争との関係を、日本資本主義の発達史との関連でお伺いしたいと思うのですが、私今日労働大臣が裁定と勧告の問題で非常に努力されていることはよくわかるわけですが、日本が今自衛力を漸増なり、急増するために、かなり多くの費用を割く、そうして資本蓄積を強行するために裁定の完全実施もできないというようなことは、私は丁度日本の資本主義が出発した明治維新の当初と同じでないかと思うわけであります。こういうことは、日本の国内市場を狭隘にして、そうして必要以上に外国貿易に依存せざるを得ないようになつた。こういうことが又再び同じような過ちを犯すではないかと思うわけであります。例えば戦前におきまして、日本は総生産に対して、貿易に一二%も依存している。フランスは一〇%、イギリスは一八%、ドイツは七%、そうしてアメリカはたつた四%で、国内市場が非常に豊かである。こういうことが平和的な経済構造になるわけですが、私は今とられている政府の低賃金政策というものは、そういう過ちを犯すものではないかということを非常に憂慮するものである。できるだけ国民生活の水準を高めて、国内市場を啓開するというような観点に立たなければならないのでございまして、私は是非とも現在の官公労なり、公共企業体の諸君の要請をしているような問題は、実はそういう日本の平和経済の構造と深い関連を持つという観点で、是非温かい関心を持つて日本経済構造が不在みのないような形で発展して行くような処置をおとりになることを希望して、低賃金政策がどのような結果になるものであるかというようなこととの関連で、是非小坂労働大臣の御所見をお伺いしたいと思うわけであります。
  216. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。低賃金と仰せられまするが、私どもはそういうことはできるだけ避けるように、できるだけ実質賃金の向上を図りたいと考えております。即ち統計的に見ましても、昨年即ち昭和二十七年の上半期には、戦前に比べまして実質賃金は一〇二、三%と増加いたしております。又本年の九月におきましての実質賃金を見ましても、前年度の同期に比べまして、    〔理事西郷吉之助君退席、委員長着席〕  一二・三%と上昇しております。これに比べまして、CPIは七、七%程度しか上つておりませんので、ここにややその前後においての実質的な賃金の上昇というものは曙光を見ておるのであります。で、なお国民総所得から見ましての賃金の割合を見ましても、戦前にはこの賃金の占むる割合は三九%程度でございましたが、昨年は四七%になり、又二十八年度は推計でございまするが、四九%程度になつております。これを欧米の諸国の国民所得におけるその比重を比較してみましても、日本は割合に高いのでございます。併し私はここに今御指摘になつた以外の大きな問題があると思うのは、人口の推移でございます。年々百二十万にも上りまして殖えておりまする人口の推移というものを、これを一つ何とかもつと本腰を入れて考えてみにやならんのじやないか、こう思つております。ただその推移状況も現在殖えてはおるんでありますが、昭和二十五年頃から見れば、二十八年度は著しく減つております。昭和五年に三二%であつた出生率が昭和二十五年になりますると二八%、又昭和二十六年でございますると二五%、それが二十八年には二一%と出生率はやや低下の傾向を示して、全体的に合理的な、何と申しますか、出生と国の全体の関係考えるというような傾向がここにいささか見えつあるように思うのであります。併し言われるまでもなく、日本の特殊な地位、特殊な地理的な経済的な構造と関連いたしまして、我が国の産業をできるだけ振興して、働く者の実質賃金の向上に努めるということは言うまでもないことと思つて、折角その方向で努力したいと考えております。
  217. 武藤常介

    ○武藤常介君 私は簡単に総理大臣にお伺いいたしたいと存じます。我が国の現状は、自衛軍の問題、又これにまして財政の問題等で極めて重要な場面に際会いたしております。このときに当りまして、総理大臣は党員の獲得ということが最も大切である、即ちこれが政局の安定であると思召しになつたんでありまするか、現実的に種々なる方策を講じて党員の獲得に努力をいたしております。私も政界の安定ということにつきましては考えを同じくするものでありまするけれどもが、又総理が非常に御熱心にこうしたことをおやりになつておることを、側から見ておりまして、実は涙ぐましく感ずるところもあるのであります。併しながら民主政治の根本は、多数の獲得ではありません。勿論民主制は結論といたしましては多数でございまするけれどもが、その根本をなすところのいわゆる民主的な主義、政策、これがお互いに理解と納得によりまして、初めてそこに多数というものが、力あるところの多数ができるのであろうと思うのであります。ところが側から見ておりまするというと、現在の状態は非常な努力にもかかわらず、決してそう力のあるものではないと私は考えられるのであります。こういう点から考えてみまして、この総理のおやりになつておられますることは、丁度昔のあの草蘆の三顧、諸葛孔明を引出すときのあの熱意、あの方法と相似よつたような方法でありまして、或る意味からは成るほど相当効果は上るかもわかりませんが、而も現在の世の中においては、この方法は極めて非民主的であると私は考えるのであります。即ち総理が本当の救国の誠意を以て、そして自分を抛つてでも真の政策をここに掲げて、国民に訴え議員に訴えるならば、決してそう反対するものではないと私は信ずるのであります。この点から考えてみまして、総理が余り見苦しいような方法をとらないで、公明正大に本当に腹の底から出たところの政策を掲げて国民を救うべく御努力なさるならば、効果において非常な私は効果があると信ずるのでありまするが、この間の御答弁、続いての御答弁によりまして、来たる二十九年度の予算においては、全く緊縮政策を根本的に変えてやつて行こう、こういうふうな御意見でありまして、私もそうなりますると、何をか言わんやでありまするが、併しながら今日までの情勢から申しますると、往々にしてそのとき限りの答弁でありまして、暫く過ぎるというと、一向それが実が上らないという過去の経験から見まして、本当に総理がそれを心の底から考えて信念として進んでいるのかどうかということを最後にお伺いいたしたいのであります。
  218. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。私は政局安定の努力はいたしておりまするが、党員獲得に憂身をやつしてはおりません。又政府政策なるものは予算において明瞭である通り、又明瞭にならしむべきはずでありまして、二十九年度の予算においては極力緊縮均衡の線を堅持するつもりでおります。
  219. 武藤常介

    ○武藤常介君 只今総理の御答弁でいろいろその間の経緯もありますが、最後の二十九年度予算には極力緊縮政策をやるというお話でありました。この緊縮ということもいろいろありまするが、ただ予算を詰めるというばかりではありません。丁度先般災害に当りまして予算が膨脹いたしました。この政策は或る党から強いられたところの膨脹であつて、これは決して緊縮でない。これはやはりインフレになるのではないか、こういうふうな話も聞き、何か新聞などでも見ておりまするがそれは私は糞も味噌も一緒というような話もありまするが、ほら、人が大病であるとか、或いは非常に危険な場合には、相当の経費を投じても、これは救わねばならんが、それとこれとはおのずから別でありまするから、根本はしつかり抑えて、そうして進む。そうでないならば、日本経済危機は救われないということを私は申上げているのであります。これに関しまして昨日も大蔵大臣からも御答弁がありました。又予算になり又議会になりますと、それぞれ各方面からの陳情等がありまして、予算の要求等もあるでありましようが、その根本を失わないようにがつちり捉まえて、そうしてこの緊縮予算方向をたがわないように、特に私はこの機会に念を押しておく次第でございます。これに関しまして最後に大蔵大臣の所見を伺つておきたいと思います。
  220. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 仰せのごとく日本の現在のところにおいて予算均衡を得ること、而も又圧縮されること、併しそれは効果的に圧縮される、このことが必要なのは申すまでもございません。二十九年度の予算におきましては、これはたびたび申す通り日本の将来の運命を左右すると言つてもいいほど重大でございまするので、よく仰せの点等を十分考慮において、私も絶対に日本をインフレに持つて行かざるよう緊縮均衡予算を編成する考えでございます。
  221. 武藤常介

    ○武藤常介君 次に災害並びに冷害の対策といたしまして、救農の土木事業等が只今実施されつあるようでありますが、農村の非常に困難なのは、冷害地におきましては殆ど収入の途がない。これに対しまして救農土木等を施しまして、そして収入の途を講ぜしめる、こういうふうな策をとつていることは結構なんでありますが、非常に農村の困つておりますことは、村役場では、さなきだに滞納が多いのでありまするが、ここに至りまして全く役場の納税は杜絶いたしまして、今町村から盛んに叫んで参りますことは、特別交付金を何とかしてくれ、こういうことか参つておりますが、私は均衡予算ということを申しながら、無茶にそういりものを要求するものでもありませんか、この救農土木事業の実際は、これは救農土木ばかりではありません、本当の平素の災害復旧の土木事業等でも、町村の工事になりますというと、地元負担が非常に多いのであります。この地元負担に悩みまして、現在各方面に種々なる問題が生じておりますか、これはやはり施策の欠陥であると私は思うのであります。つまり貧困な長村に地元負担なんというものをさせるという、そのことがすでに誤つているのであります。殊にこの冷害等によりまして収入の途がなく、非常に困難をしているどころに、地元負担をせいと申しましても、これはできない。けれども一方には借款の方法によりまして五カ年の年賦で貸付るのではないか、こういうこともありましようが、そうした面倒なことはどうも農村の役場ではなかなかやり得ない状態なんでありますので、今俄かというわけでもありませんけれども、まあこの問題につきましては、根本的に私は計画を変える必要があるのではないかと考えるのであります。これにつきまして、本日は建設大臣はお出でにならないそうでありますが、農林大臣がお見えになつているそうですが、一言御意見をお伺いしたいと思うのでございます。
  222. 保利茂

    国務大臣保利茂君) お答えいたします。前回の国会で決定いたしておりますところの救農土木事業の関係は、そういう事情もございますので、地元の負担を直接増さないように、地元負担分につきましては、団体営につきましては農林漁業金融公庫から融資をいたしますように、金庫の出資増額を二十五億円いたしておるわけであります。町村営につきましては、これは起債措置をとるようにして、この救農土木事業を行うことによつて、直接の負担がかからないようにという配慮は、十分とつてあるわけでございますから、お話のような事態は実際問題としては私は避け得ているように思います。ただ町村の税収等には、確かにこれは困難を感じておられる村々が相当あるだろうということは、よく想像できるわけであります。
  223. 武藤常介

    ○武藤常介君 只今農林大臣の答えたのは、その通りでありますけれどもが、実際に当りましては、なかなかそうスムーズに参りませんので、殊にこういう場合でありますので、どうか今後親切に特別の御指導をお願いしたい、こういうふうにお願いしてやまない次第であります。  私の時間が参りましたので質問はこれで打切ります。
  224. 平林太一

    ○平林太一君 総理大臣吉田君の答弁を求めるのである。  吉田君は当議場においてしばしばの機会において、言明され又明らかにして来られ、なお、先刻もそのように言われておるが、再軍備はせずということは本気で言つておられるのかどうか伺いたい。
  225. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 本気で言つておるのであります。
  226. 平林太一

    ○平林太一君 その次に尋ねたい。憲法の改正はいたさない、これ又本気で言つているのか伺いたい。
  227. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その通りです。
  228. 平林太一

    ○平林太一君 よろしい。保安庁長官木村君に質す。保安隊は戦力にあらずということを木村君はしばしば言われているが、本気でやはりさように言つておられるのか。
  229. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まさに本気でさよう申しております。
  230. 平林太一

    ○平林太一君 よろしい。次には自衛軍は、これは将来できた場合に戦力にあらず、先日来の論議で、木村君は、やはり戦力にあらずとおつしやつておられるが、これ又本気でさように今日も思われているか伺いたい。
  231. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) さようであります。本気で申しております。
  232. 平林太一

    ○平林太一君 正直の点を了承する。そこで保安庁長官木村君にお尋ねをいたすが、保安隊は戦力にあらずというこの定義、又現在の保安隊の性格、全貌、今日いたしておる行動、こういうものをよく勘案せられて、それで戦力でないという理由を、この一際詳細に全国民の納得の行くように説明をいたすことを要求する。
  233. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は平林君に申上げておきたいのであります。戦力にあらず、あらずかどうかということは、憲法第九条第二項の解釈であります。それで憲法では戦力を持つては相成らんということになつておる。そこで我々といたしましては、戦力の程度に至らざるものを以てこれから行こう、こういうのであります。勿論これは将来自衛軍であろうが何であろうが、これは戦力に至るようなことであれば、当然憲法を改正しなければならん、この戦力に至らざる程度において、我々は保安隊を増強して行こう、又増強する必要ありと、こう見ているのであります。
  234. 平林太一

    ○平林太一君 こちらから尋ねていることをよく消化することのできない低能な頭である。だから只今のような答弁である。戦力でないということを言つているのだから、保安隊が戦力でないということはこれこれの理由で戦力でないという断定を下し得るのである。こういうことを天下万民が了承できるところの理由を説明しなければいけない。
  235. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはしばしば私が申上げている。速記録を御覧下されば極めて明瞭である。もう皆様の耳にたこができるほど私は言つておるのであります。いわゆる近代戦を有効的確に遂行し得るような能力は持つていないのだ、これを持つようになれば、憲法を改正しなければいかん。この程度に至らざる範囲において、我々は自衛力の増強ということを考えているのだ、こういうことであります。
  236. 平林太一

    ○平林太一君 しばしばの機会において述べている、それで了承してもらいたい、こういう非常に悲しい願いらしい。併しながら本日只今私が国会の審議権を通じて、ここでその答弁を求めるゆえんのものは、ここで従来のことは何ら関係のないことである。この際、改めて只今速記録を見てもらいたいと言われたが、それは今日私のそういうことによつて了承はできがたいことである。だから速記録によつてしばしばそういうことをお述べになつたのであれば、誠に結構である。その点を今日重複して、木村君としては重複ということに相成ろうが、私からいたしますれば、この際、その理由を説明することを要求する。
  237. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今申上げた通り、いわゆる近代戦を有効的確に遂行し得る能力に至つていない。
  238. 平林太一

    ○平林太一君 近代戦を遂行する上に有効的確なものに至つていないと、こういうお話だつた。そうすると、近代戦を有効的確に行い得るという、そのものはどういうものを挙げ、どういうものを対象とし、どういう理由であるかということを承わりたい。
  239. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。それもしばしば私が申上げたように、具体的にそういうことは申上げることはできないのであります。その我々の与えられたる環境、時間的関係その他を総合して判断されるのであります。
  240. 平林太一

    ○平林太一君 今の答弁で同君は心だになきことを言わざるを得ない。(拍手)いわゆる心内にあれば、色おのずから外に現れるということを、事実の上に立証したもので、これ以上同君を質すことは、武士の情として許さざるを得ない。併し只今の同君の説明によりまして、保安隊は戦力であるということは、この質疑を通じても、全国民が戦力を持つておるものであるということを了承されたのであります。そこで第二には自衛軍である。自衛軍ということになると、軍という字は、木村さん御存じの通り、「いくさ」ということににごりがついて、明治天皇の御製だと思うが、「国をおもう道に二つはなかりけり、軍の庭に立つも立たぬも」、これには軍という字を使つておる。併しこれは戦力になることははつきりしておるが、自衛軍ということでも戦力でないということは、どうして言えるか承わりたい。
  241. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは平林君が御勝手に自衛軍と言うのであります。私は自衛軍とは言つておりません。今は保安隊、これはいわゆる保安庁法を改正して直接侵略に対応し得るようになつた場合にも、自衛軍と言うかどうかは疑問であります。今は盛んに自衛隊という文字を使つておるようであります。これは直接侵略に対応し得るようになつても、いわゆる戦力に至らざる程度においては、憲法を改正する必要なしと、こう考えております。
  242. 平林太一

    ○平林太一君 心やましき者ほど苦衷を述べざるを得ないということは、今木村君その者によつて立証された。一国の国務大臣になつても、やはりこの真実というものを失つた行為というものは、どこかに露呈をするものであるということを、強くこの際申上げてこれ以上追及をとどめておく。  ここで木村君の答弁によつて戦力問題は、これは極めてはつきりしておる。そこで吉田君にお尋ねをいたす。再軍備をいたしません、こう非常に我我の所属から申しますれば啖呵を切つておられる。その理由を詳細に承わりたい。過去において同君が答弁をいたしたからというようなことでは許されない。今日この私の質疑対してその理由を十分に闡明せられたい。以つて会議録を通じて全国民に周知徹底せられたい。又私から同情の言葉を以ていたすならば、理由という範囲をやや緩和して懐抱せる所懐、丁寧な言葉で言えば、その理由について吉田君の懐抱する御所懐というものを今日承わりたい。
  243. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 再軍備は国力に伴わないからいたさないのであります。
  244. 平林太一

    ○平林太一君 声が小さくてわかりにくい、もう少し大きい声で言つてもらいたい。
  245. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国力、これに伴わないからいたさないのであります。(笑声)
  246. 平林太一

    ○平林太一君 吉田君は国力が伴わないからいたさない、こういう理由である。これは三歳の童児といえども、こういうものに対してそれだけのことは言える。いやしくも一国の総理大臣として、この重大問題に処するときの答弁としては、それで了承して許すことはできない。もう少し詳細に答弁を求むる。
  247. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 前言の通りです。(笑声)
  248. 平林太一

    ○平林太一君 前言の通りということでは、国会の審議権の権威においてこれを許せない。詳細に答弁してもらいたい。(「その通り」と呼ぶ者あり)時間的にいえば、少くとも五分間を最低として(笑声)五分間以上の説明をし給え。(「委員長の責任において答弁させなさい」と呼ぶ者あり)
  249. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長はそういう責任は持つておりません。
  250. 平林太一

    ○平林太一君 総理の答弁をさせなさい。なぜ委員長は指示命令をしないのか。
  251. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長答弁を強要することはできません。(「強要はできなくても要求しなさい」と呼ぶ者あり)
  252. 平林太一

    ○平林太一君 今強要することはできないとおつしやるが、国会法の第何条によつて、そういうことを委員長は適用して言われるのか伺いたい。
  253. 青木一男

    委員長青木一男君) それは常識であります。(笑声)
  254. 平林太一

    ○平林太一君 常識ということは、この場合においては許しがたいことである。いわゆる国会の審議というものは、国会法によつてこれは運営せられておるのである。そのための委員長である。常識でやるならば、委員長というものをきめておく必要はない。交互に委員長を出せばいい。委員長というものは、国会法の定むるところによつて院議を統制するために、委員長を出してある。今私が委員長とやりとりした時間は私の質疑の時間でないから、これから除いてもらいたい。
  255. 青木一男

    委員長青木一男君) 国会法にも参員長は政府答弁を強要するということは書いてありません。(「強要でなく要求だ」と呼ぶ者あり)
  256. 平林太一

    ○平林太一君 そういうことは許されません。こういう場合に総理大臣の答弁を、委員長の自由によつて活殺でき、調整ができるということであれば、委員会の運営というものはできない。同時に又委員会の権威、委員会の構成というものを根本的に破壊するものである。だから今日委員長は独善的にさようなことを言つてはいけない。直ちに休憩して、理事会を開催して、これに対する態度を明らかにせられたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  257. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長はその必要を認めません。平林君に質疑の続行を求めます。(「答弁が残つておる」と呼ぶ者あり)
  258. 平林太一

    ○平林太一君 委員長がさように続行せよと言われるならば、私の発言の所定の時間はまだ十分残つておるから、そういうことをおつしやるなら、私は時間をまだ持つておるのであるから、このままお待ち申上げる以外にありません。
  259. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長は休憩する考えはありません。質問の続行を希望します。(「答弁から先だと」呼ぶ者あり)
  260. 平林太一

    ○平林太一君 なぜさような……、委員長は、国会に対する答弁吉田君に求めておるのだから、発言を吉田君をして促せばよろしい。吉田君は政府のいわゆる総理大臣として、委員長の指示によつて、それを五分間と私のほうで言つておるから、五分間以上の説明をしなければならんのである。なぜさようなことを言つておるか。(笑声)
  261. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長は、(「答弁々々」と呼ぶ者あり)内閣総理大臣委員長の催促を受けずとも答弁すべきものは答弁しておると考えております。(「そんな委員長があるか」、「そんなことをしたら議事進行せんですよ。」と呼ぶ者あり)
  262. 平林太一

    ○平林太一君 なぜ答弁をさせないのだ、極めて簡単なことではないか。君は実に驚くべきことだ、委員長として。世界の議会史上に一大汚点を印しますぞ、かようなことになりますと。(笑声)民主政治いずこにありやというものである。吉田君も良心的に反省してやりたまえ。
  263. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国力に伴わない再軍備はいたしません。(笑声、「理事会をやれ」、「進行々々」と呼ぶ者あり)
  264. 平林太一

    ○平林太一君 そういう国力のない再軍備はいたしませんと、これは吉田君が今日まで国会を軽視し、国会を嘗められた、そういう性格から、そういうことで濁そうと思うが、私においてはいやしくも国会のこの権威、いわゆる国権の最高機関たる権威において、そういうことは許さない。さようなことで理由になるということには、常識上誰が判断してもできない。詳細な答弁をしたまえ。併せてこの際、憲法改正に対する問題についての、いわゆるしないという理由、それだけは一つ別々に聞こうと思つたが、それは私のほうで譲歩して、二つを一括してそれならば答弁を求める。
  265. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 再軍備はいたしませんから、従つて憲法改正の必要がないと、これだけであります。(「理由」と呼ぶ者あり)
  266. 平林太一

    ○平林太一君 それは理由にはならんです。そういうことは、詳細な理由ということには……。それは今言つておることは一つの見出しなのであります。いわゆる憲法改正に対しては、国力が伴わんからしない、従つて再軍備はしない、そこで再軍備しないから憲法改正はしない、これは当り前のことである。併しその理由というものは、それが見出しであるから、見出しに対する解説、いわゆる理由、(笑声)これは全国民にこの際知らせなければならん。今期国会にかけられた重大なるこれは国民の関心事である。憲法改正をしないということならば、それでもよろしかろう。だから、これこれこういう理由で以て改正しない、以て了承してくれとか、忍んでくれとか、これは必ず言い得るではないか、なぜそれをしないか。
  267. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 再軍備をいたさないから━━これは理由であります。故に憲法は改正しない。
  268. 平林太一

    ○平林太一君 どうも私は、吉田君もはや、やはり政治的生命の最後の段階に入つたのである。いうことことを言つておられるのは、いわゆる余命いよいよいくばくもない最後の墓穴にお近付きになつたのである。誠に同情禁じ得ない、そういう答弁言つておられるのは……。が併しそういうことであるので、正に本日のこの質疑というものは、吉田君が全面的にこれは敗北したわけだ。(笑声)それで私が全国民を代表して、全国民のために勝利の旗をここに上げたわけであるということをここに申上げる。(笑声)従いまして、この問題に対しては、今後憲法を改正する、しないの問題については、今同君のお話を聞くにつけても、聞くまでもなく、この際、憲法を改正すべきかすべからざるかということを、全国民のいわゆる意思、輿論をこの際問うべき必要が最後の段階として迫つて来たのである。だからこの際に、衆議院を解散するということが、軍備の問題、憲法改正の問題を血の革命なくして、平和裡にこれを解決するということに相成るのである。この点に対して、若し吉田君が強いてこのままそういう処置をとらずに……、これは最後のいわゆる知慧を我輩が吉田君に教えたのである。而もその知慧を採用することなく。襟度狭少、雅量頑固にして、そういうことができなければ、これは非常なる事態が起るのだということを予言して憚らない。併しそれは国家のため不祥事であるので、避けたい。だからこの際、衆議院を速かに解散するか、然らざれば同君はこのたび職を引いて、憲法改正は、曾つてつて考えてみれば、吉田君によつて吉田君の内閣総理大臣によつて、これは制定した現在の憲法である。そのきめたときの事情、いきさつから言つても、今更当事者である同君がこれを変えるというようなことは、さぞかしつらいことだろう。だからこれはできない。できなければ、後継者を速かに求めて━━この間は鳩山一郎君を誘拐してあなたの手へ持つてつたのである。(笑声)鳩山君という後継者ができたのである。これによつて憲法改正をやらせるということができるのです。そういうことをおとりになるかどうか、この点を私はこの際吉田君からはつきりと伺いたい。衆議院は解散をするかしないか。それからこの際穏当に、穏かにこの辺でお引きになつて、そうして後継者よつて憲法改正を進めるという態度にお出になるか、その二つを一つ、いずれ共伺いたい。
  269. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 何分余命いくばくもないのでありますから、両方ともいたしません。(笑声)
  270. 平林太一

    ○平林太一君 吉田君、余命いくばくもないからどちらもいたさないと、こうおつしやるのですが、そうすると、生命がおありになるまで内閣総理大臣をお続けになると、それまで憲法とこの再軍備の問題は、一方ではどしどしといわゆる保安隊又自衛隊を戦力化して、そうして、どんどんと行つて、それで、最後のあなたの命のあるまでおやりになるというんだが、それでは同君、如何にも全国民というものを侮辱し、翻弄し、愚弄する態度である。まさに専制政治家として吉田茂以上の人物は我が憲法史上、明治憲法及び今日の憲法にもないということを、私はこの際会議録にとどめて顧迷なる同君に対する質疑をこれを以て打切ります。(笑声)
  271. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行について。今般政府が公共企業体職員に対する仲裁裁定に関する国会の決議を求める件を提案されたのでありますが、これに関しまして重大なる疑義が生じました。本日の参議院における関係委員会におきましても、この疑義のため参議院の委員会における議決ができないという事態に立ち至つたのであります。併しながら、本来ならば、この疑義を明らかにしてから、この議決に入るのでありまするけれども、諸般の事情を考慮しまして、一応議決をいたしまして、この委員会において更にその疑義を明らかにし、政府の所信を質すということにいたしましたので、この際、政府の所信をお伺いいたしたいと思います。(「そういう質問をしたいという動議だ」と呼ぶ者あり)
  272. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  273. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないと認めます。
  274. 小林孝平

    小林孝平君 私は本日ここで細かい法律論をやろうとは思いませんけれども、この問題は、今申上げたように非常に重大なる疑義を本日生じまして、参議院の委員会において議決ができないというような事態になつたのでありますから、一応順を追つて政府考え方をお尋ねいたしたいと思います。先般政府がお出しになりましたこの三公社、五現業に関する仲裁裁定の国会の議決を求める件という、この件は、これはいわゆる不承認の承認を求めたのであるか、或いはこういうことができないから、新たな国会の意思を、この裁定を完全に実施したらいいのか、一部分を実施したらいいのか、或いはこれを拒否すべきであるかという点を我々に聞かれたのであるか、そのいずれであるかをお伺いいたします。
  275. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げますが、何か重大な疑義のために委員会が進行を停止しているようなお話がございましたが、そうではないのであります。何か委員会で議決が終了したように聞いております。
  276. 小林孝平

    小林孝平君 その点は、今申し上げましたように、疑義を生じ、それを明らかにするためには三時間も四時間もかかるから、そうすれば、これはいろいろ政府のほうでもお困りになるだろうというので、我々も政府に協力いたしまして、取りあえず議決をした。それでこの際、これを明らかにしておくということなんであります。
  277. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 裁定の実施につきまして、御承知のように、十六条で予算上、資金上不可能な場合は政府は事由を附して国会の承認を求めなければならない。国会上において所定の手続が終りましたならば、その部分について支払うということになつておりますので、今回の場合は補正予算に明示してございます金額の範囲内において政府は支払う。そこで国会の承認議決を求める。そういうことでございますから、一部御承認願う、こういうことでございます。
  278. 小林孝平

    小林孝平君 労働大臣は従来の考え方をそのまま言われるから、いつまでたつても疑義が解消しないのです。私の聞いたことに答弁してもらいたい。この国会の議決を求める件というこれは、不承認の承認を求めたものであるか、或いはこれによつて国会の新たな仲裁裁定に対する意思を求めたのであるか、このいずれであるかということをお尋ねいたしたい。それがはつきりしなければ明確にならない。
  279. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 経緯を申上げますと、こういうことでございます。十六条にございますのでありまするが、国会が開会されておりませんときには開会後、仲裁裁定が出てから十日日に国会開会中には出すのでありまするが、そのときたまたま国会が開会されておりませんときには、開会後五日以内に国会に政府は案を提出しなければならんということになつておるわけであります。ところが今回は御承知のように救農国会が急に開かれることになりまして、裁定の一番最終のものが出たのは、たしか三日前だつたと思うのであります。その当時は政府予算上の給与総額もきまつておりますし、これに対して急遽補正予算を組むといういとまもございません。併し今申上げましたように、五日以内には国会に提出しなければならんのであります。そこで国会に、十六条一項に該当するものと考えまして、十六条二項の規定に従つて提出をして審議を求めたわけであります。従つて国会において議決をして頂きたい、或いは又これを否決して頂きたいというわけでありません。即ち承認を求めたわけでもございません。不承認を求めたわけでもない。即ち国権の最高機関たる国会において御審議つて御議決を頂きたいというのです。その後鋭意検討いたしました結果、ここまでは予算上可能であるということになりましたので、補正予算提出いたし、その点まで政府ができるということを表明しつ国会の御意思の表明を願つておるということであります。
  280. 小林孝平

    小林孝平君 時間の関係がありますから、お尋ねしたことをお答え願いたいのです。要らないことは時間が無駄になりますから、これは不承認の承認を求めたのではないというわけでございますね。
  281. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 不承認の承認を求めたわけではございません。
  282. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、これによつて国会において適当にどの程度がいいか、完全実施をしたらいいか、或いは一月から実施したらいいか、或いはこれを全面的に拒否したらいいかというようなことを、具体的に国会の議決を待つたわけですか、そういう意味ですか。
  283. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府がこの程度まで予算ができるということを示して、国会に御議決を待つていたわけです。
  284. 小林孝平

    小林孝平君 そういうことじやないのです。この理由には給与総額を上廻るからできないという理由が付いておる。だから給与総額を上廻るからできないというなら、これはいつまでたつてもできない。その点はどうなんでしよう。従つて私は今お尋ねいたいたいのは、給与総額を上廻るということが、あらゆる場合に起るのです。仲裁というものがある限り現員現給をもとにして給与総額ができておりますから、仲裁を守ろうという意思があれば、この給与総額というものを除かなければならんです。そこでお尋ねしたいのは、こういう紛争の原因になる給与総額というものを今後除かれる意思があるかないかということを、先ずお尋ねいたします。
  285. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点は先般もお答しましたが、給与総額というものがありませんと非常に紛議を生ずる種になりますから、給与総額というものは除く意思はありません。
  286. 小林孝平

    小林孝平君 それなら次に、先に戻りまくて、我々の意思をどうしたらいいかということを尋ねておきながら、先ず第一番目にはこれができない、できないから国会はどういう判定を下すかといつて我々にその議決を求めておりながら、我々が議決しないでまだ意思の決定も見せないうちに、政府は勝手に今度はこれだけできますというやり方は、非常に不合理であり、そういうことはどういう根拠に基いておやりになるのですか。
  287. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 仲裁裁定が出ます時期が、予算の成立後でございまれば、これは当然給与総額を上廻ることになる。併しそれが出ますれば、政府は資金上、予算上可能なる限度においてこれを予算化すべく努力するわけであります。それでここまではできるということを示して御議決の参考にする、ここまでできるなら、それなら議決してやろうということで、衆議院においては国会議決が行われ、参議院においては只今のところ委員会に御議決を賜る、こういうような状態になつております。
  288. 青木一男

    委員長青木一男君) 小林一君、簡単に……。
  289. 小林孝平

    小林孝平君 これはもう来年もこの問題がありますから、はつきり今さしておきたいと思うのです。そういうことをあなたはおつしやいますけれども、先ほども申上げたように、国会の我々の審議を求めておりながら、そうして一方ではそういうことをやるというのは矛盾しておるのじやないですか。そんなら、できないものなら我々に議決を求める必要はないじやないですか、初めから。
  290. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) でございますから、先ほど余分なことをとおつしやいましたが、従来からの経緯を申上げたわけであります。従来の経緯に従いますれば、そうならざるを得ないのであります。
  291. 小林孝平

    小林孝平君 私の尋ねておることをお答え下さればいいのです。従来の経緯をお話し下さいましても、給与総額で抑えておるなら、政府予算を提案するのはできないのであるから、それなら我々は幾ら政府が我々の議決を求めても、初めからできないことはわかつているのだから、そういうことをやるのは無駄じやありませんか。そういうあなたのような考え方であるから、本日我々がここに議決をしようと思つても、疑義があつて議決ができないということになつておる。
  292. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はこういう考えを持つておりますのですが……。いわゆる仲裁裁定というものは特殊の機関であるわけです。これは国民の意思も何も代表していない。併しその裁定は法律によつて尊重さるべきものなんです。併し政府は、これは国民の意思の信託を受けて即ち国民大多数の意思によつて政府というものは構成されておる。ですから政府が作ります予算も、こうした特殊機関の決定が予算編成権に優先するということは考えられないと思います。裁定があつたら尊重するが、政府予算の編成権の範囲内においてここまではできるということを考えるべきなのであります。それに対して、これは政府だけの独断ではいけないので、国権の最高機関又は民主的に選ばれた国会に出して、そうしてそうした機関の御承認を得る、こうしたことは当然必要であると思うのです。
  293. 小林孝平

    小林孝平君 時間がありませんから、労働大臣は従来の行きがかりに捉われないで、その従来の行きがかりはあなたが明らかに誤りであるということは皆が指摘しているのです。ですから新たなる問題として、あなたは回答さるべきだと思う。国会の議決を求めると言つても、給与総額がきまつておれば我々が議決をすることはできないのです。だからあなたは途中で今度はここまでできるようになつたから、それではそこまで、できるようになるまで我々の議決を求めてはいけないことなんです。そこでこれは幾らやつても、労働大臣は今頃になつてちよつと耳打ちされて勉強したつて駄目なんです。(笑声)これは明らかにあなたは間違いなんだから、私が言う次期国会に提案される、この公労法を整備される意思があるかないかということをお尋ねしておきます。
  294. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちよつと失礼ですが、私は耳打ちをされて別に勉強したわけでもありませんので、(笑声)あなたのお考えを、こういうことを聞きたいのじやないかということを今聞きましたので、成るほどそういう点もあるなと思つたので、その点をお答えいたします。仮に国会においてここまで実施しようという御議決があれば、これは政府を拘束するのです。併し政府ができるのは、ここまでだと言つて予算を出しておりますけれども、この予算では足りんからここまでやれという御議決があれば、これは政府を拘束するのです。今回はそれがないから政府の出ているものについて議決すると、こういうことなんです。
  295. 青木一男

    国務大臣青木一男君) 小林君、簡単に。
  296. 小林孝平

    小林孝平君 これは先ほども申上げたように、ここで法律論をやろうと思いませんけれども、現に同じ閣僚である塚田さんは、私は常識上これはおかしいと思います。併し政府の部内の意見が大体そういうふうになつたらしいから、そういうふうに解釈していますと、塚田さんも初めはこれは不承認の承認を求めるという説明をされておつたのです。そのうちだんだん変つて来ております。あなたが今そういうことを従来の行きがかりに捉われてやられておりますけれども、私はここでいつまでやつてもきりがありませんから、そういう閣内においても、常識上おかしいという良心的な大臣がおられるのです、だからこの公労法の十六条並びに三十五条の規定は非常に不明確であるから、これを明確にするように次期国会に整備して、法案を提案される準備があるかないかということをお尋ねしておるのです。
  297. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 公労法全体につきまして、それは占領下という特殊の時代の産物でありますし、国情から見ていろいろ検討すべき点もあります。又法律関係自身についても検討すべきものがあろうと思います。これについては、今労働省として非常に鋭意検討いたしておる次第でございます。ただ労働法規を動かすということは、法自体を非常に完全なものにしましても、摩擦が多いのが通例なんでありまして、仮に法律自身に欠陥があつても、そこによき労働慣行ができれば、それでやつて行けるというようなこともございまするので、彼此勘案しまして、目下慎重に検討中でございます。
  298. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行について。これから恐らく質疑を打切つて討論に入ると思うのですが、この討論をするに際して、一つ明確にしておかなければ討論できない点がございますから、この点お諮り願いたいと思うのです。それは昨日大蔵大臣に対して義務教育国庫負担法の特別法が通らない、実は昨日殆んど通らないことは明らかであつたのですけれども、通らない場合には第三次補正を出すのか出さないのかということを聞いたんですが、大蔵大臣は自分はもう確信があると、通ることは確信があると言われた。そこで第三次補正が出るか出ないかが、この予算審議する上において又討論をやる場合に非常に我々は関係があるのであります。従つて大蔵大臣に、もう法案が通らないことは確実です、はつきりしましたから、これに対する予算措置をどういうふうにするのが、その点について最後に私は大蔵大臣の御答を求めたいと思うのですが、委員長、緊急質問でこの点をお諮り願いたいと思います。
  299. 青木一男

    委員長青木一男君) 今木村君の動議の緊急質問を許すことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないと認めます。  速記を止めて。    〔速記中上〕
  301. 青木一男

    委員長青木一男君)速記を始めて。木村君。
  302. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、昨日義務教育国庫負担法の特例法案が通らない場合、第三次補正を出されるのかどうか、大蔵大臣はこれはもう通るのを確信しているから、第三次補正は出さないと、そう言われたんです。併し昨日はつきりきまつたんですけれども、大臣の立場としては、大蔵大臣としてそう言わなければならなかつたのです。これは了承します、昨日の……。併しもうすでに通らないことが明らかになつてしまつた以上は、この予算措置について大蔵大臣ははつきりして頂きませんと、我々討論するに際しても、やはり相当影響があるのですから考えなければならんと思うのです。この点御答弁を煩したいと思うのです。
  303. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この問題は実はまだ継続審議に多分なるだろうという見通しでありまして、従つて継続審議等でも通らん場合は、あれは三月三十一日まで措置するる問題でありますので、通らん場合については善処することにいたします。
  304. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 善処とは具体的にどういうわけですか、通らん場合は補正を出さないで善処できるかどうか、若しできるといつたらどういう方法をとられるか、その点お答えを願いたいと思います。
  305. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 継続審議において通るだろうと我々は見通しますかから、若し通らん場合は文字通り善処いたします。(「明瞭々々」と呼ぶ者あり)
  306. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君、簡単に。
  307. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう少し具体的に、文字通り善処ということは、第三次補正大蔵大臣は出されないと言つたんですが、やはり出さざるを得ないじやないのですか、その点、予算との関係を聞いているのです。その場合予算については、二十八年度の予算は一体どういうことになつて来るか、この負担法との関係で……。文字通り善処と言つても、我々わからないのです。素人ですからわかりません。素人にわかるようにお願いいたします。
  308. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) まだ継続審議になるその途中のことですから私どもは善処する。善処するというのは、いろいろなふうに解釈されますが、これこそ私は文字通り善処するということを以て、あとはそのときに起つた場合に、政治上の情勢でそのとき改めて御判断を願います。
  309. 湯山勇

    ○湯山勇君 衆議院の理事会も継続審議をしないことに決定しておるはずなんです。併し今のように善処する、しないということは政治的な含みがある質問じやなくて、通らなかつた場合には機械的、事務的に、法律的に第三次補正をするとか、しないとか、こういう問題だと思うのですが、端的にお答え願いたいと思います。
  310. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) それは重ねて法案を出す場合もありますから、善処するというふうに答弁申上げたのであります。
  311. 湯山勇

    ○湯山勇君 大体あの法律は年度の所要額の半分を持つということになつておるのです。年度途中でそのようなことをやる。今回のように一度出してだめ、二度出してだめ、これを更に継続審議に持ち込んでだめだつたら、又出そう、こういうことだと、これは全く立法の精神に反すると思うのですが、そういうことをやられたのでは……。文部大臣はいらつしやいませんか。これは今の点について文部大臣の御見解を伺いたいのですが、今いらつしやると思つて聞き始めたのですが……。
  312. 青木一男

    委員長青木一男君) 大蔵大臣政府を代表してお答えを願います。
  313. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) それは衆議院で否決されたものと違いますから、私どもはよいと信ずる法律は何回でも出します。
  314. 永井純一郎

    永井純一郎君 これははつきりさせないと……。極く事務的な話として我々は話しているのです。何でもない。それで例えば継続審議に入つても、廃案になつた場合は尚更のこと、今現行法があるのですから、年度中みるというやつが……。その法律はまだ生きているのですから、これに対する予算措置はどうしてもしなければならんのですよ。どちらにしたつて、廃案になつた場合も経続審査になつた場合も……。そのあとで又新たに法律をもう一遍出して作り変えるということは、これはいいのですが、あなたのやられるのは……。併し今日で委員会が終ります、或いは討論に入るのに、その点がはつきりしないと困るのですから、第三次補正か国としては出さざるるを得ないのですが、その点はつきりされたら、それで明白だと思うのですが。
  315. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) どうも私は必らずしもそうでないと思いますので、繰返しその点は申上げることはございません。
  316. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵大臣は今度継続審議でできなければ、又出すとおつしやつたのですが、又出すと、否決された場合は補正を出さなければならないということは機械的だと思うのですが、如何ですか。
  317. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) どうも否決されるものとしてお話で、仮定の場合ですから、今、今日ここでお答えはできません。
  318. 青木一男

    委員長青木一男君) これで大体政府方針は、御批判はありましようが、政府の意図はわかると思います。とにかく意見がありましても、政府方針は、伺つた程度で私はいいと思います。
  319. 永井純一郎

    永井純一郎君 それははつきりしませんよ、もう一点……。
  320. 青木一男

    委員長青木一男君) それでは簡単に。
  321. 永井純一郎

    永井純一郎君 現行法はあるのですよ。これに対して半額国庫補助をしているということを書いている、それを執行しないことは、如何なる場合でもできませんよ。それは次の法律が新らしくできるまでの間というものは、必ず予算化しなければなりませんよ。だから第三次補正は又あとで修正されるかも知れませんよ、その予算は……。が、併し法律がある期間はどうしたつて出さなければなりませんよ。それを第三次補正をしないというわけに行きませんよ。これは我々が野党、与党でなしに、事実そうしないことには納まらんということを言つているのです
  322. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) どうも仮定の問題ですから、私はお答えできない。若しそのときは、そういうことになれば、又そのときに出します。
  323. 青木一男

    委員長青木一男君) これにて質疑は終了しました。六時より討論、採決に入ります。暫時休憩いたします。    午後五時十六分休憩    —————・—————    午後六時二十八分開会
  324. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員会を再開いたします。  只今総理大臣より使いを以て、所労のため暫く休憩しておるから、成るべく早く出席するけれども、というおことわりがございました。副総理及び大蔵大臣はおりますから、このまま会議を進行いたします。  これより昭和二十八年度一般会計予算補正(第2号)、同特別会計予算補正(特第2号)及び同政府関係機関予算補正(機第1号)を、一括して討論に入ります。御発言されるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。亀田君。
  325. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は日本社会党を代表して、昭和二十八年度第二次補正予算に対して反対するものであります。以下その理由の大綱について述べたいと存じます。  補正予算中心課題は、公務員並びに公共企業体職員の給与の問題であります。元来公務員並びに職員に対しては法律で争議行為を禁止したのでありますが、その代り彼らの給与については人事院の勧告、仲裁委員会の裁定の制度が設けられ、これによつて公務員や職員の給与が不当に圧迫されないようにできておることは、今更改めて申すまでもございません。そのような次第で、すでに一般職の国家公務員については民間の賃金や生計費等の事情を考慮して昭和二十八年七月十八日、人事院の国会及び内閣に対する勧告が出されており、三公社五現業の職員につきましては、昭和二十八年九月より十月にかけてそれぞれ仲裁委員会の裁定が出されたのであります。従つて政府はこの勧告並びに裁定を誠意を以て実施すれば何ら問題が起らんのでありますが、補正予算を通じて示した政府態度は、甚しくこれらの勧告並びに裁定を無視しておるのであります。  即ち第一に、政府は勧告裁定が出されてもこれを審議する時期を故意に延ばして来たのであります。元来公務員並びに職員としては人事院や仲裁委員会が勧告裁定をできるだけ速かに出すことを望んでおるのであります。これが延びればその間に物価等の変動があり、実情に副わん結果になるからであります。その遅れ勝ちな勧告、裁定の実施の段階になつて再び政府がその審議を遅延させることによつて、いよいよ勧告、裁定の精神に反する結果となつておるのであります。  第二に、政府は勧告、裁定について検討した結果、その実施を昭和二十九年一月一日からとする方針補正予算を作成したのでありますが、これは本年三月を基準にして作られた勧告の内容に副わんばかりでなく、八月より実施すべきことを明記しておる裁定の条項に真向から違反するものであります。で、公務員や職員が政府の余りにも法律無視の態度に憤慨して、政府の反省を求めるためすれすれの合法的闘争に出ると、これに対して政府は声を大にして違法呼ばわりをしたのでありますが、そのような威圧的態度を以てしては断じて収まるものではございません。先ず政府において十分反省しなければならないのでございます。  このように、今回の政府措置は公務員や職員にとつて甚だ不完全な勧告、裁定の実施であるにもかかわらず、その実施に関連して、政府が取ろうとしておる政策を見まする場合に、いよいよ今回の勧告並びに裁定が骨抜きになる虞れがあるのでございます。即ち第一に、政府消費者の反対を押し切つて昭和二十九年一月一日より消費者米価を十キロ現在六百八十円であるのを七六百十五円に値上げすることを決定し、第二に、国鉄運賃、郵便料金、たばこ等についても値上げを考慮中であり、第三にそれでもなお足らねば人員整理、首切りをすら考慮するというのであります。で、本年三月から、十月までの間を取つて見ても、すでに物価は八%上昇しておるのでありますが、更にそれに拍車をかけるごとく米価や運賃等の値上げに手を付けるならば、ますます今回のべース・アツプは無意味となるのであります。ごまかしも甚しいと言わなければなりません。而もそれでもなお足らないとして、失業者の溢れておる今日、人員整理、首切りまで考慮するに至つては、与えて取る欺瞞政策通り起して、饅頭と見せかけて毒を盛る政策にも等しいと言わねばなりません。勤労大衆は決してべース・アツプの名目を求めておるのではありません。実質を、生活の中身を求めておるのであります。妻子に与える着物と食物を求めておるにもかかわらず、却つて政府は彼らから衣を奪い食をも絶とうとしておると言わねばなりません。  今回の補正予算について、一部の反動的資本家及びその代弁者は、勧告、裁定を無視して通れ、公務員、職員の給与を上げるな。そうして米価も運賃も一切上げるなと主張しております。勿論この点については現在資本家及びその代弁者たちの間では意見がわかれておるようであります。併し我々勤労大衆の立場から見れば、彼らの議論の差異は大同小異であり、本質的には少しも変つておらんのであります。政府が今回とつた方法は、政府みずからが法律を無視しておることをぼやかすためにとつた偽装に過ぎんのであります。勧告並びに裁定を頭から蹴飛ばしたならば、誰でも政府の違法に憤慨するから、カムフラージしたにすぎないのであります。併しそのような政府の偽装にもかかわらず、国民大衆はすでに国会の論議を通じて、その真相を十分見抜いておると我々は考えるのであります。  最後に、申し添えたいことは、政府もこの委員会を通じて説明されたごとく、この補正予算案は来年度の予算に大きく関連しておるのでありますが、この関係について一言触れておきたいのであります。政府の説明によりますと来年度の予算においては、当然に本年度より増額すべき費目として恩給関係費、災害対策費、防衛関係費、平和回復善後処理費、ベース・アツプ等を考えると、それだけでもその額は一千億以上に達するのでありますが、予算の規模は大体において本年度程度にする方針のようであります。若しこのような案が実行されるならば、各種の財政上の投融資、公共事業費、災害対策費、食糧増産費、平衡交付金、教育関係費、社会保障関係費等が一層圧迫されるであろうことは明らかに予想できるのであります。勿論予算規模の拡大を防止し、均衡予算を堅持する必要性は私どもも認めるのでありますが、只今述べたように、不生産的費用を膨脹させつ、而も生産的費用を削減して、予算規模を圧縮するところに種々の問題をはらんでおるのであります。若しこのような方針が強行された場合には、第一に現われる現象は大衆の生活が一層抑圧されることであります。大衆はそれに堪え得られるものではございません。一部少数の者のために犠牲になるような、目的のない生活の切下げ、これには必ず反抗が起るに違いないのであります。如何に弾圧立法を以てしても限界のあることは歴史の示す通りであります。第二に、そのような方針で果してインフレを避けつ、国内資源の開発、平和産業の発達、平常貿易の拡大が順調に進み得るかどうか、甚だ疑問と言わなければなりません。私は資源が少く、資本の蓄積も乏しく、而も厖大な人口と大きな失業群を抱いておる日本経済の諸々の要素をつぶさに検討するならば、従来の政府のごときやり方を以てしては、日本経済はますます悪化するばかりであつて、今や我々は不生産的支出であり、インフレの最大の要因である防衛関係費を思い切り削減しなければ、どうにもならない段階に来ておることを確信するものであります。これらの問題の本格的論議は、来るべき通常国会において十分尽すこととしたいと思うのでありますが、只今我々が手にしておるこのささやかな三百五億余りの補正予算案を検討して見ても、僅かのベース・アツプでさえも、防衛関係費に手を付けないでやろうとすれば、どうにもならない大きな矛盾にぶつかることを如実に証明してくれておるのであります。政府が院外における厖大な労働大衆及びその家族の要請、それは法律が認める最小限の要求でございますが、その案をすら政府がいろいろな口実を設けて拒否しなければならない根源は、世界の情勢の現状を無視し、日本経済現状を無視した再軍備計画にあることは明白であると言わなければなりません。この補正予算案は、反動的吉田内閣の政権の下に、予想される日本の大きな誤謬の先ぶれ予算であると言わなければなりません。  以上申上げました理由に基きまして、私は本案に絶対反対をするものであります。(拍手)
  326. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 私は自由党を代表いたしまして、第二次補正予算政府原案に賛成の意を表するものであります。本補正予算案は、刻下置かれておる日本財政経済の制約下において、誠に緊急止むを得ざるもののみを計上し、その編成に当つては如何に政府が苦心せられたかは、予算審議の過程において十分窺うことができるのであります。併し、本補正予算案には相当の問題を含んでおると考えられるのであります。即ち米価改訂に伴う予算措置については、本年度の凶作その他の特殊事情等により止むを得ざる措置であるとは考えまするが、問題は国民食生活の根本的改善、供米制度の再検討等、食糧政策基本を再検討いたしまして、悪循環を排除し、又給与ベースの引上げ、公労法による待遇改善等につきましても、単に名目的な給与の引上げのみが公務員の待遇改善ではなく、極力実質的給与待遇の改善に努むると共に、一方国民一般のその食生活との均衡を考慮すべきものであると考えるものであります。この観点より、生産力増強を図り且つインフレ要因を排除すると共に、極力行政事務の合理化且つ簡易化によつて、徹底的に行財政の改革を行なつて、本質的にこれらの問題の解決に努むべきであると信ずるものであります。  以上の趣旨を付しまして、本予算案に賛成するものであります。(拍手)
  327. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、本予算に反対の意思を表明せんとするものであります。  今日常識として、一兆円を予算が超える場合があるなならば、それはインフレーシヨンを避けようとして避けることができないということが、殆んどすべての人々の常識となつているのであります。大蔵大臣は最初いわゆる均衡健全財政方針を堅持して、職を賭してもインフレーシヨンは抑圧しなければならないということを言つて来られたのであります。作しこの第二次補正を加えまして、大きく二百七十億余りも、一兆円の枠からはみ出してしまつたのであります。これを以てしますならば、いわゆる健全財政を職を賭しても守るという大蔵大臣の自信というものは、全くなくなつてしまつていることを考えなければならないのであります。更はインフレ財政一つの突破口を与えようとするこの予算案は、而もそのしわを労働者、農民、中小企業者に寄せようとしているのでありまして、一般国民大衆の犠牲の上に、その辻棲が合せられようとしているのであります。成るほど給与改訂という名目は打出しておりますけれども、併し一方においては消費米価の値上げがあり、或いは各種運賃料金の値上げが次次として今後予想されるときにおきましては、結局実質的に給与改訂というものは、意味をなさないことになることは明瞭であると考えるのであります。吉田内閣が本予算を作り、第一次第二次の補正予算を出すという、誠に予算編成におきましては無定見であつて、その場その場の都合によつて、今日厖大なる一兆円を超える予算となつて来ているのであります。私ども日本財政を、日本経済を自立させるということには、はつきりとした見通しを持つた計画を持たなければならんということを常に申上げているのでありますが、この二十八年度予算考えてみますときに、いわゆる月々予算があり、本予算ができ、第一次、第二次の補正予算ができるという、一言にしてこれを申しまするならば、無定見或いはその都度予算と評されても、これは全く止むを得ないことであると考えるのであります。  野党三派の要請によりまして開かれました今回の臨時国会の目的は、公務員給与に関する人事院勧告、公共企業体職員に対する仲裁裁定の実施の問題、米価及び中小企業者に対する年末金融の問題が、その中心の議題であると考えるのであります。然るに実際において、人事院勧告の問題にいたしましても、我々はそこに欺瞞性を考えざるを得ないのであります。人事院勧告には、罷業権を奪われている公務員にとつて、この罷業権に代る一つの救済手段でありまして、公務員はこの勧告を一日千秋の思いで待ち、そうしてそれが実施せられることを待つているのであります。公務員生活権の擁護のためのただ一つの途である勧告が政府によつて蹂躙せられるということは、公務員にとつては誠に忍びがたきものがあるのであります。政府は輿論の圧力に堪えかねて、今回補正予算編成に当つて公務員のベース・アツプを一月から実施することにしておりまして、一応はこの勧告を尊重しているかのごとき感を与えているのでありますが、併しその内容をつぶさに検討しますならば、必ずしも人事院勧告の尊重ではなくして、先ほども申しましたように、極めて欺瞞的なものであるということが明瞭となるのであります。即ちベース改訂とは何ら関係のない昇給や、或いは地域給の本俸切替えなどをベース・アツプの財源とし、若しくはこれを以てベース・アツプと考えているのであります。  第二には、勧告の一三九%のベース・アツプをしているにかかわらず、実際には四、五%しか上つていないという実情であります。  第三には、地域給の切捨て分五%の地方公務員に対する平衡交付金負担の打切りは、地方財政現状から不可能を強いる結果となり、地方公務員のベース・アツプは恐らくこれは国家公務員並みに行われないであろうということが考えられるのであります。  仲裁裁定に関する問題にいたしましても、公労法第三十五条は、罷業権を禁止されている公企労下の労働者に与えられているただ一つの救済手段であるから、政府はこれを尊重しなければならないにもかかわらず、御承知のような予算上、資金上不可能であるということを理由として、今日これを実施することを歪めているのであります。併しながら、仲裁裁定の理由書を我々が見ましても、決して資金上不可能ということはあり得ないと理由書の中においては述べているのであります。  即ち、五企業は仲裁裁定が出た直後これを承認しておるのでありまして、その企業の枠の中において資金上可能であることを両当事者とも認めておるのであります。実施が困難であるところは国鉄、郵政のみでありまして、政府はこれに対して三公社五現業及び国家公務員が平行してベース・アツプが行われなければ不公平であるという名目で、これを抑えようとしておるのでありまして、資金上余裕のある所においてもこの実施が来年一月に延期せられるということは、これは我々には了解しがたいところであります。政府は第十六条の実施不可能ということに理由を設けて、いわゆる国家公務員及び三公社五現業の線を揃えようとしておるのであります。  申すまでもなく公労法第一条では「この法律が定める手続に関与する関係者は、経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を尽さなければならない。」と規定しておるのでありますが、政府は果してこの仲裁裁定及び職員の要求に対して友好的に最大限の努力をしたかどうかということは極めて疑わしいのであります。  次に、米価の問題につきまして、政府は、消費者米価の値上りは僅かに ○、八%であるから、生活費に与える影響というものは大した問題でないと言つておるのであります。併し、この消費者米価の値上げはやがて闇米の大幅値上げとなり、或いはすべての物価がこれに関連して引上げられるということは、従来の例を見ても明らかであります。更に一月から三月までは大体の見通しがついておるのでありますが、明年の四月から先の米価の問題については、何ら政府としてはその所信を明らかにしていないのであります。生産者米価は一応一万三百五十五円程度になつております。併しながら、最低一万二千円を要求しておる農業団体或いは耕作農民の要求に対しては、まだまだ前途遼遠と言わなければならないのであります。かかる低米価で抑えようとするならば、来年度の食糧増産の遂行というものは、極めて困難であると言わなければなりません。  更に中小企業の年末金融の問題につきましては、政府は年末金融対策として、中小企業金融機関に対し五十五億円の指定預金を行い、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金等の融資を合せて二百三十億が年末までに融資ができると発表しておりますけれども、併し二千億の政府資金の散布超過から来るインフレ要因、これを調整するために、日銀が金融引締を行うことは必至であり、又中小企業がそのしわ寄せをこうむるということも間違いのないことであります。結局、政府の取つております中小企業に対する年末金融は、焼石に水というところよりはむ、しろ資金難のために倒産続出の結果になりはしないかということを憂慮するのであります。中小企業に対して、防衛関係費等の非生産的な経費をできるだけ圧縮して、中小企業の救済のためにこれを融資すべきであるというのが私ども立場であります。  この補正予算に対して、私ども衆議院におきまして両派社会党が共同の修正案を提出いたしました。  第一には、人事院勧告、仲裁裁定の完全実施及び年末手当一・五カ月分を支給して、国家公務員、地方公務員その他の勤労大衆の生活を安定せしめなければならない。  第二に、崩壊寸前にある中小企業者の年末金融として、少くとも国民金融公庫五十億、中小企業金融公庫百五十億、計二百億程度を増額して、中小企業の救済と中小企業傘下の労働者の窮乏と失業問題を解決しなければならない。  第三に、米価、国鉄運賃等の値上げを行う高物価政策に反対し、米価の二重価格制を実施する。  以上の建前に立つたいわゆる国民生活安定のための緊急支出を必要とすると考えておるのであります。これを行うために不急不要の経費を削減し、或いは防衛関係費の大幅削減をその財源として、徹底したインフレ対策を実施すべきであると主張したのであります。たとえ本予算が成立いたしましたといたしましても、この本予算の中に含まれております疑問点が解決されないで、これがこのままに残るという心配が又あるのであります。例えば、義務教育費国庫負担法の臨時特例に関する法律案が審議未了になりました場合における国庫負担打切り措置が一体どうなるものであるかということが第一に明らかにされておりません。これは勿論更に第三次補正によつてこの穴埋めをしなければならないことが、当然政府に課せられて来ると考えるのでありますが、これについて何らの措置が講ぜられていないのであります。国家公務員の期末手当は一応一・二五の措置が取られているのでありますが、三公社五現業の仲裁裁定が若しも一・二五プラス・アルフアーという線で妥結を見た場合におきましては、国家公務員との均衡が取れないという点が起つて参ります。若しこれが国家公務員に対して一・二五だけで抑えるということであるならば、その不均衡の是正を如何にするかということが問題となろうと考えるのであります。更に若し三公社五現業が一・二五プラス・アルフアーとなり、又国家公務員に対して何らかの措置を講ずることになれば、更に地方公務員の期末手当は国家公務員に準ずる措置が取られておりますが、これらに対しましても当然そういう措置が取られなければならないのであります。而も地方公務員の期末手当の財源二十一億は、税の見積り増加ということを財源としているのでありますが、この二十一億の見積り増というものが、果して確実に徴収されるかどうか。よしんば徴収されるにいたしましても、すでに窮乏の極にありますところの地方財政は、何かの財源にこれを充てているという心配も起つて来るのであります。これらの点を考えてみますと、地方公務員の期末手当の問題につきましても、政府は適当なる措置が十分に講ぜられていないという心配を私どもは持つのであります。  要するに、私どもはこの第二次補正予算を通じて、相当厖大となることが予想される二十九年度の予算の枠というものが明らかにされていないのでありまして、この第二次補正は直ちに二十九年度予算に直結するものでありますから、我々といたしまして、この二十九年度予算の見通しについていろいろと聞き質したのでありますが、これが十分明らかにされていないのであります。来年度予算におきましては、再軍備的な経費、或いは災害対策費の国庫負担分の増額などが、いわゆる財政を圧迫して来るということは明瞭でありまして、若しそうであるとするならば、民生の安定、国土の保全を期待するということが極めて困難となるのであります。更に、再軍備的予算均衡健全財政を破綻せしめるインフレ的な要因を持つているのでありまして、若しもこれを増大するということになれば、結局来年度から続くところの国家財政というものが非常に困難な状態になるのでありましよう。すでに政府が申しておりますように、国際収支は一億ドル近くの赤字を出しておるのであります。こういう状態において、貿易の振興を政府が如何に言いましたところで、インフレ的な要因は物価高を引き起して、国際価格に比較して割高である日本物価を下げるというようなことは、思いもよらない結果になりはしないか。かくては日本経済を自立せしめることは極めて困難であると言わなければならないのであります。以上の点をここに申上げまして、私どもはこの予算案に反対をしようと思うのであります。  更に、私どもはこの予算審議を通じて、池田・ロバートソン会談、或いはこれに続く東京会談、MSAの受入れ等についても、いわゆる今後の日本のあるべき姿等について、はつきりとした理解を持たなければ予算審議が行われないということを申したのでありますけれども吉田内閣総理大臣その他の閣僚がこれを明らかにしないで、ついにこの予算が成立しようとしているのであります。この点に対し深く遺憾ま意を表したいと思うのでありのす。(拍手)
  328. 森八三一

    ○森八三一君 私は只今議題となつておりまする昭和二十八年度の第二次補正予算に対しまして、衆議院から送付せられました即ち政府提出の原案に賛成をするものであります。  ただ、この際一言申添えたいのは、提案せられました原案が、これで十分であつて、その中に織込まれておるいろいろの施策が非常に結構なものだというような意味で賛成をいたしておるのではございません。置かれておる現実のいろいろな情勢等を勘案いたしまして賛成を申上げておるのでありまして、以下申上げます諸点につきまして、今後政府の格別の御留意と善処を強く希望いたすものであります。  その第一は、吉田総理を初め、閣僚各位がこの議場を通じてしばしば強く説明されておりまするいわゆる通貨価値の安定、インフレの防止という問題は、これは当然なことでありまして、日本経済自立のためにこの一点が破れて行くということがありましては、これはもう非常に大きな問題がまき起りますることは申上げまするまでもございません。そういうようなことを私どもも前々から強く主張をして参つたのであります。現に、昭和二十七年度の当初予算の議決に当りましても、又昭和二十八年度の当初予算審議に際しましても、このことだけは是が非でも一つ成し遂げて頂きたい、これなくしては、今後の日本を再建し、立派なものにして行くわけには参りかねるということを強く要請して参つたのでありまして、まさにこういう点につきましては政府考えと揆を一にすると思うのであります。ところが、今回審議を求められました第二次補正予算について見まするのに、すでにその総額は一兆二百数億円ということでありまして、勿論、私ども財政規模が大きくなつたから、それで直ぐインフレになるのだというように申すものではございません。数字が大きいだけでとやかく論議をするわけではございませんが、盛られておる内容について一々検討をして参りますれば、この国家的な命題とも申すべき通貨価値の安定、インフレの回避ということにはそぐわないいろいろの問題を包蔵しておるように窺われるのであります。食糧問題に関連をいたしまして、三百億円余りの食糧証券が増発をせられるというような問題も、極めて小さな問題であるかのごとくでありますが、これは又インフレに繋がつて来るということに考えられないわけではございません。こういうような問題を一々拾い上げて参りますると、今後日本経済がどうなつて行くであろうかということは、非常にこれは心配に堪えない問題があるのであります。ただ口先だけで通貨価値の安定を図るとか、インフレを防止するとかいうことでは相成らんのでありまして、正に言行一致、本当にこのことが力強く推進されなければならんと考えるのでありまして、近く昭和二十九年度の予算を編成し、国会に審議を求められるというような手続が取進められる段階に処しておるのでありますが、この二十九年度の予算編成に当りましては、恐らく今回の補正予算を通じて察知せられますことは、すでに七百六十五円という消費者米価は決定を見ましたが、まだ生産者米価について豊凶係数等の計算上今後附加せられるものがないとは言えません。そういうような未解決の問題を残しておりまするし、或いは鉄道運賃の値上げとか、郵便料金の改訂というような問題もまだ未定の問題ではありまするが、これ又相当の値上げを余儀なくせられるというような結果に相成るのではないかということが予測せられます。こういうことを考えて参りますると、昭和二十九年度の予算が一体どうなるであろうか。心配されるインフレというものにもう必然的に追込められて行くのではないかという心配、憂慮を強くいたすのであります。ここには本当に勇猛心を振い起して一大英断を以て対処せられなければ、今までのような安易な気持で臨まれるということでありますると、本当に日本経済を破局に導き、祖国再建の大業が完成されないという本当に憂慮すべき事態が生まれると考えられまするのでありまして、このことについては大蔵大臣も明年度予算については、本当に真剣に取組んで行くということをしばしば申されてはおりまするが、ただ、今までの経過を振返つて見ますると、インフレの回避回避ということはしばしば言われておりましても、出て来るものは次から次へとインフレ要因を多分に盛込まれたものが出て来るという事実を考えますとき、ただ明年度は真剣にやるということだけでは、我々は安心できないのでありまして、このことは本当におつしやる通り、明年度予算の編成につきましては、このことを強く打出して頂きまするように切望するのであります。  第二に、給与の問題でありまするが、私どもは公務員諸君や公共企業体の職員の諸君が、その職に安んじて職務に精励をして頂くということは心からの念願でありまして、その人々の給与が改善されて行くということは絶えざる念願であり、それが社会的に妥当性を持つ限度において改善をいたしたいということは心からの念願であります。今回の勧告なり裁定なりによつて一応そういう措置が明年一月から講ぜられるということに相成つたのでありまするが、その結果を振返つて見ますると、成るほど形の上では明年一月からそういうことになるのではありまするが、それによつて生ずる税の増加なり、或いは消費者米価の値上りなり、先刻も申上げましたように、そういうことが一つの起因となつて生ずるであろうその他の物価の値上り等々を考えて参りますると、実質的にこれらの人々の給与、待遇を改善したという結果には相成らんのではないかというように思われるのであります。私どもは形式を論じておるのではなく、本当に実質的に待遇が改善せられることを念願をいたしておるのであります。このためにはまだまだ真剣に取組んで参りますれば、考えられるいろいろの問題があるのではないか、税の問題を一つ考えましても取組んで行く対策もあるのではないか、今回のような措置が講ぜられるといたしますると、その結果は申上げまするように実質的な賃金の改訂、待遇の改善にはならなくて、あとにただインフレ要因を残したという場合と結果だけが残るという危険が考えられないわけでもないと思います。こういうことでは非常に遺憾なことでありまして、問題の解決にはならないと思いまする次第であります。こういう問題につきましても、今後賃金、待遇の改善という問題はしばしばまき起つて来ようとは思いまするが、そういう場合に、こういう点につきましては最善を期せられたいことを強く希望をいたしまするのであります。場次に、食糧問題でございまするが、これも各国会の冒頭におきまして総理の施政方針満説を拝見いたしますると、殆んど毎回述べられておりまするように、日本経済自立達成のために輸出の振興を図りますることと同時に、食糧の国内自給度を向上することが非常に大切だということを述べられており、我々は全く国内食糧自給度の向上という問題が、刻下必須の命題であるということについて同感の意を表しておるのであります。これがためにはいろいろの対策を取進めなければならんとは存じまするが、何と申しましても、生産者がその生産、再生産に意を安んじて働き得るような情勢を完備してやらなければならんと思います。即ち、再生産確保に必要な米価というものは、どうしてもこれは決定をしてやらなければ、如何に口先だけで食糧確保、増産、自給度向上と申しましても、その実を期待するわけには参りかねると思うのでありまして、万般の増産の施策を講ぜられますと同時に、生産者が最も注意を払つておりまする再生産確保にふさわしい米価というものを決定して頂きたい。併し、そのことが及んで消費者米価に関連を持つて参りますわけであります。そこに米価問題の非常に困難な一面があろうと思います。が併し、基礎は食糧の確保にあるわけでありますので、私はこの機会に国内食糧自給態勢の確保に対しましては、いろいろの重要な施策に先んじて十分やつて頂きたい。更にそれに関連してまき起るであろう消費者米価の問題につきましては、これは必ずしも私ここで二重米価制度を強く実行すべしと主張するものではございませんが、そういうような考えもあることを考えられまして、消費者に転嫁することなしに取り得る対策なしとは考えられませんのでありまして、そういうような点を考えつ善処を願いたい。  特にこの際、最後に申上げたいことは、明年度予算の編成に当りまして、こういうような一連の関係等からいたしまして、少くともインフレを誘発する危険の考えられますような運賃の値上げであるとか、郵便料金の改訂であるとか、更にこの上消費者米価の改定等につきましては、政府は強く回避をすることに最善の御配慮を頂きたいと思うのであります。我々は過去においても、しばしば予算審議に当りましてこういうようないろいろの要請なり希望を付して讃成をして参つておるのでありまするが、そういうような希望なり意見というものが、その場限り聞き捨てになつてつたというような感じを持たないわけには参りかねる実情にあつたのではないかと思います。いろいろの情勢からして、必ずしもそれが十二分に取入れられるということは困難な問題もありましようが、ややともいたしますと、その易限りのものとして聞き捨てになつているというような虞れがどうも感ぜられないわけには参りません。そこで、只今申上げましたような、本当にインフレを回避して行くというような問題は、どうしても明年度は強く堅持をして実行して頂きたい、このことが若し今後取上げられないということでありますならば、我々は次に登場して来るであろう予算の問題に取組んだ場合においては、重大な決意をしなければならんことを申添えまして、特にこのことは強く希望を付して賛成の討論にいたしまする次第であります。(拍手)
  329. 武藤常介

    ○武藤常介君 私は改進党を代表いたしまして、昭和二十八年度第二補正予算衆議院送付の原案に反対するものであります。極めて簡単にその理由を申述べたいと存じます。  我が国の最も重大問題でありますことは経済の安定であります。御承知のように、貿易の状態はすでに非常な困難の場面に際会いたしまして、特需その他の八億を加えましても二億ドルの入超、赤字というような結果になつておるのでありまして、このままに推移いたしますならば、如何に工夫をいたしましても我が国の経済は遂に破綻に導かれるであろう。従つて、この財政もこの機会に大英断を以て安定の方向に導かねばならんのではないかと思うのであります。然るに本予算を見まするというと、主なるものは裁定の採用、裁定案をこれを予算に計上する、又ベース・アツプの予算計上であります。一体我が改進党は今月までどういうふうな途を取り来つたと年しまするならば、我が改進党は農民又労働者又は公務員等に最も力を寄せておりまして、ふだんの場合ならば当然この案には賛成すべきものであります。然しながら現在の状況は決してかような安易を許す場合ではありません。即ち、この機会において一大転機をここに求めまして、そしてこの経済の安定に導かんとするのであります。それで我が党はこれを如何にいたしまして安定の方面に導くか、こういうことでありまするが、第一に我が党の主張でありますところの米価消費者価格を上げないこと、減税をすることであります。これによりましてこの賃金ベースのベース・アツプに対応するより以上の効果を発すると思うのであります。これをここに例を以て申しますならば、現在の給与ベースは一万三千五百八十七円であります。勧告のベースは一万五千四百八十円であります。その差額は千八百九十三円であります。然るにこのベースの内容を検討いたしますならば、地域給によりまして織込まれたものが三百円、それから税のはね返りが三〇%と見まして六百三十一円、米価の値上りが三十キロと見まして二百五十五円、この合計は千百八十六円であります。これを差引きまするというと七百七円の増にしかならないわけであります。この七百七円を加えまするというと一万四千二百九十四円になります。我が改進党の案は一万三千五百八十七円に税制調査会の直接税の軽減を見まするというと六百二十円であります。これを加えまするというと一万四千二百七円になります。そうするとその差額は僅かに八十七円であります。このベース・アツプを実施した暁には経済界はどうなるかと申しますならば、前々のかたが非常に御心配になられましたように、これは必らず私はインフレを来たすものと信ずるのであります。そのために諸物価の高騰は勿論であります。又政府の大体想像しておりまするところの鉄道運賃の値上げ、郵便料金の値上げ、電気料金の値上げ等を加えまするならば、優にこの八十七円を超過いたします。のみならず経済原則といたしまして、物価の上昇を見まするというと、その惰性において必ずそれ以上に高騰することは明らかであります。  かような理由から我が党は本当に労働者或いは公務員の実際生活を考えまして実質賃金を豊かにする、而して将来長く安心して経済生活のできるように導こうというのが我が党の政策であります。現在のような経済状態でありまするのに、このインフレ政策に終始いたします。ならば、忽ちにして暴騰し、我々が今どうしてもなさねばならんところの或いは産業上の再建、或いは国土資源の開発、或いは今当面なさねばならんところの災害の復旧工事、或いは治山治水工事、これらは到底完遂することができないと私は信ずるのであります。又中小企業者は物価の高騰と資金のバランスが取れませんで、ここに中小企業者の破綻、非常な困難を感ずることは火を見るよりも明らかであります。  かように数えて来りまするというと、この予算軽々しく賛成すべきものではありません。我々は労働者並びに公務員に対しまして給与を潤沢にするというその精神においては決して他意に劣らない、或いはそれ以上の考えを持つておるのであります。かような意味におきまして我が党はこの案には賛成しかねる。即ち我が党の欲するところは、これを機会といたしまして、大英断を以て将来我が国物価の安定、経済の刷新、この重大目標の下に本案に反対したのであります。  以上甚だ簡単でありまするが、これを以て反対の理由を申述べた次第であります。
  330. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は昭和二十八年度予算補正第二号に反対いたすものであります。  この第二号補正予算の第一の特徴は、予算説明書にも明記してあります。通り、第一号の補正予算と同様に来年度予算を考慮し、極力財政規模の膨脹を避けて編成したという点にあります。当初予算のときは説明書において予算の圧縮という言葉を用いながらこの第二補正の場合には極力膨脹を避けるという言葉を使つておりますがこれはどう弁解いたしましても緊縮予算から膨脹予算転換を示していることを示すものであります。これは主観的にどう意図しようとも、客観的に緊縮予算から膨脹していると認めざるを得ないのであります。更に来年度予算に対する考慮とは、言うまでもなくMSA援助受入による軍備費の増加膨脹に対する考慮であるということは言うまでもありません。勿論来年度予算においては、災害対策費、或いは恩給費その他の経費の膨脹もありますが、何と言つても一番重大な問題はMSA援助の受入れによる不生産的な再軍備費の増大であります。この来年度の再軍備費の増大に備えるため、国土の保全を犠牲にしたのが第一次補正予算であり、民生安定を犠牲にしたのがこの第二次補正予算の特徴であると思うのであります。アメリカの立場からではなく、日本国民立場からして明年度MSA援助を受け入れて、再軍備を強化する必要が一体どこにあるのでありましようか。国際情勢は朝鮮戦争が済み、第三次戦争の危機は遠のいて来て、平和の力が増大しておる、このことは総理自身も明確に認めておるのであります。そうしてむしろ戦争に代るに経済恐慌の危機の可能性のほうが大きいのであります。今こそ不生産的な軍備費を削減して、経済自立と民生安定に専心すべき絶好の機会であると信じます。中国やソ連が日本を侵略するという説は、日本国民に対して恐怖心を起させ、日本国民の税金負担によつてアメリカの防衛を、アジア人をアジア人と戦わせることによつて、このアメリカ防衛を行わせようと、そのためにダレス氏によつて発明された幻相に過ぎません。中国の姿をこの眼で見る機会を得たのでありますが、勿論人により、立場により意見は異なるかも知れませんが、少くとも私は中国が日本を侵略するなどと恐怖して再軍備するということの、如何にナンセンスであるかをはつきりと知ることができたのであります。こんな愚かな再軍備のために国土の保全や、民生の安定を犠牲に供する予算には絶対賛成できないのであります。日本を亡ぼす危険は、中国やソ連の外からの侵略ではありません。むしろ国内にあると私は信じております。全く自主性のない吉田政府の対米追従の再軍備政策中心とする政界、官界、財界の腐敗にあると私は信じております。清潔な政治の下に、経済再建に邁進している新らしい中国の姿、又西ドイツや東南アジア諸国の民族のたくましく立上る姿を視察して帰つて参りました国会議員の心ある人たちは、皆日本に帰つて来て祖国の現状を眺めて心を寒くしておる状態であります。このような愚かなる再軍備費を賄うために、この第二次補正予算に当りましては、すでに他の議員が指摘しましたように、第一に人事院勧告、仲裁裁定を歪めて実施しそうして公務員の生活を犠牲にし、第二に消費者米価引上げて、一般市民に生活の犠牲を強いております。更に生産者米価引上げについては、富農に有利に貧農に不利な、非常に跛行的な米価政策をとつておるわけです。  今度の補正予算の第二の特徴は、民生安定を犠牲にし編成されているにもかかわらず、非生産的な巨額の軍備費をそのままとして、その上に新たなる支出が積重ねられておりますために、財政規模は圧縮されるどころか、逆に拡大されて、その不健全性を一層大きくしていることであります。即ち、政府資料によりましても、この第二次補正を含めた二十八年度予算は、国民所得五兆八千二百億円に対して、予算規模一兆二百七十二億円が一七・七%になります。二十五年度の予算規模は一八%、二十六年度は一六・四%、二十七年度は一七・四%であります。それに対して今度の補正を含めた予算は一七・七%、これに対して主計局から……、二十七年度については経済審議庁において国民所得の変更があつたので、実は二十七年度の予算規模は前に政府が発表したより実は膨脹しているのだが、二十七年度に比べてこの補正を含めた二十八年度予算は、財政規模は膨脹していないと、今頃になつてそんなことを言つておりますけれども、我々はこれを信用することができません。あとになつてそういういつも操作をするのが政府の常道である。その証拠には税金を見ましても、本年度の第二次補正を含めた税収入は九千七十一億円でありまして、そうして国民所得に対する税負担は一五・六%で、二十七年度の一五・二%より税負担が殖えております。又地方税を含めた税負担も、第二次補正を含めた税負担は二〇・九%で、二十七年度の二十七年度の二〇・七%より殖えております。財政規模については昭和九—十一年の平均は一五%であります。従つて、仮に戦前の昭和九—十一年程度予算を組むとすれば、大体八千七百三十億程度予算が大体この国民所得にふさわしい予算である。勿論機械的には言えませんが、そうしますと、大体防衛費分だけ余計であります。そういう実情になつております。更に又負担から見ましても、昭和九年—十一年の平均の国税負担は九%であります。今度の場合は一五・六%、如何に税金が重いか。又地方税を合計しましても、昭和九年一十一年は一三・八%、本年度は補正を含めて二〇・九%、而も生活水準は未だに戦前に達しておらない。そういう状態でこのような重い税金負担であるわけです。而も税金徴収の内容を見ますと、勤労者に著しくしわ寄つておりまして、第一次補正の時に二千七百八十六億の所得税に対し、源泉所得税は大体二千百億円、申告納税は大体七百億円、申告納税者及び勤労所得者の所得が余り変りないのにかかわらず、申告納税者の七百億円に対して勤労者の税金が二千百億という三倍にも達するこのような非常な不均衡な税の徴収であります。これについてはいろいろ理由はありましよう。この前に大蔵大臣は説明しましたが、併し余りにこの税負担は不均衡過ぎるのだ。通常財政規模の増大は、必ずしも不健全とは言えませんけれども、不生産的支出が巨額に存在する時に財政規模を増大すれば、必ずそこに経費間の競合関係が起りまして、そうして物価を高くし、インフレ的に作用することは明白であります。従つて如何に名目的に均衡を取つて見たところで、厖大な生産的支出を放任しておいて、その上にいろいろな支出を積み上げる場合には、その予算の執行において競合関係が起つて、どうしてもここにインフレ的作用を及ぼさざるを得ない。従つて、この予算は本質的にインフレを高進させる予算といわざるを得ないのであります。財政規模を圧縮することこそが、現在の段階においてはあらゆる意味において私は健全であると思う。又如何なる名目をつけても再軍備費をそのままにしておいて、形だけ均衡を取つて見たところで、決してそれはインフレを回避できる健全なるものではないと思うのであります。而も本質的にインフレ的要素を含む予算の上に、そのほかに物価騰貴を促進させる大きな要因がありますが、それは政府は放任しております。それは国内物価が上がるために、出血輸出をせざるを得なくなつて輸出価格が下る。その輸出価格の損失を、又国内価格引上げにおいて償うという二重価格の悪循環が現われておるのです。この悪循環を断たずして、どうしてこのインフレを克服することができるでありましよう。これは前に独占禁止法を緩和した結果、独占価格が形成されているわけでありまして、如何に大蔵大臣や通産大臣が合理化によつて生産費を下げたと言つても、生産費は下つても独占価格が下らない。むしろ出血輸出による輸出価格の損失を、国内価格によつてこれをカバーしようとしまして、そこに二重価格の悪循環が続いているのであります。こういう状態で、かくのごとき基本的に不生産的な防衛費を孕んだところの予算を組めば、このインフレは留まるところはないと思うんです。要するにこの予算は緊縮予算から明らかに膨脹予算、インフレ予算、一層の不健全予算への転換を示すものでありまして、これは内外の政治経済情勢と睨み合わして、全く逆の方向を進んでおり、且つ第三国の直接間接の干渉の下に編成されておりまして、そうして、政府は口では自主的々々々と言つておりますが、客観的に全く自主性のない予算であると思う。このような予算に対して我々は賛成することはできないわけでありまして、以上を以て反対の討論とする次第であります。(拍手)
  331. 青木一男

    委員長青木一男君) 討論の通告は全部終了いたしました。これを以て討論を終局し、直ちに採決に入ります。  昭和二十八年度一般会計予算補正(第二号)、昭和二十八年度特別会計予算補正(特第二号)、昭和二十八年度政府関係予算補正(機第一号)を一括して採決いたします。三案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  332. 青木一男

    委員長青木一男君) 起立多数と認めます。よつて三案は可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容は、先例によつて委員長に御一任願います。  次に、賛成のかたは順次御署を願います。  多数意見者署名     西郷吉之助  高橋準太郎     小林 武治  森  八三一     三浦 義男  石坂 豊一     泉山 三六  伊能 芳雄     小野 義夫  鹿島守之助     小林 英三  佐藤清一郎     白波瀬米吉  高野 一夫     高橋  衛  瀧井治三郎     中田 孝平  宮本 邦彦     吉田 萬次  井野 碩哉     岸  良一  新谷寅三郎     田村 文吉  高木 正夫     中山 福藏  村上 義一   —————————————
  333. 青木一男

    委員長青木一男君) 次に昭和二十八年度予算執行状況に関する調査報告についてお諮りいたします。  本件は本国会において調査を終えることができませんので、未了報告書提出いたしたいと思いますが、これは先例により、この内容等を委員長に御一任願います。なお、この報告に賛成のかたは御署名を願います。  多数意見者署名     西郷吉之助  高橋進太郎     小林 武治  森 八三一     中田 吉雄  松澤 兼人     堀木 鎌三  木村禧八郎     三浦 義男  泉山 三六     伊能 芳雄  小野 義夫     鹿島守之助  小林 英三     佐藤清三郎  白波瀬米吉     高野 一夫  高橋  衛     吉田 萬次  岸  良一     村上 義一  亀田 得治     小林 孝平  佐多 忠隆     藤原 道子  三橋八次郎     湯山  勇  新谷寅三郎     田村 文吉  高木 正夫     中山 福藏  中川 孝平     宮本 邦彦  高田なお子     天田 勝正  加藤シヅエ     棚橋 小虎  永井純一郎     武蔵 常介  平林 太一   —————————————
  334. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後七時四十四分散会