○
菊川孝夫君 私は仲裁裁定一月から実施をするという原案に対しまして反対をいたします。
その
理由はもう
質疑応答を通じまして申上げましたので、簡単に
結論だけを申上げでおきたいと思いますが、仲裁裁定は我々はもう特に強調いたしておりまするように、争議権の制限を加えるその代替、代りとして設けられたものでありまするからして、仲裁の裁定は丁度スポーツの審判の判定、このように受取
つて私は実施しなければならんと思います。で、十六条の解釈も、我々が解釈
通りすなおに何回読み返してみましても、これは政府を拘束するものではないという条項は文面はありますが、これは飽くまでも
国会において
議決されなか
つた場合、即ち
予算を出したけれ
ども、その
予算が削減されたり、更に否決を食
つたというような場合にのみ、このときに政府を拘束しないのである。だから政府が解釈してこれを
予算上資金上不可能だと言
つて、給与総額を仮に一旦きめておく、年度当初において給与総額をきめておくということになりますと、給与
関係につきましては、少くとも少しでも動かそうとしたら、必ずこれに引つかか
つてしまうのです。もう必ず給与総額に引つかか
つてしまいますから、政府のほうで以てこれを以て口実に、
予算上資金上不可能だから政府を拘束しないのだと言
つて蹴ろうと思えば、これは公社なり或いは企業体において幾ら団体
交渉をや
つて、そうして
協定を結ぼうと、仲裁の裁定ができようが、或いは調停案が出て双方が受諾しようと、何も政府の
方針如何によりましては、どのようにでもこれはやれる。言いがかりを付けられてしま
つて何もできないという
結論になると思います。極論でありますけれ
ども。そういうところから
考えましても、私は政府を拘束しないというのは、
予算を
国会に出したけれ
ども、その
予算が
ちよつとひど過ぎるというところで、
国会において審議の過程において何らかの制限を加えられたときにのみ拘束しないのだと、こういう解釈を一貫して今日までと
つておりまするし、又今後もそれをそうと
つて行かなければならないと思うのでありますが、従いまして、今仲裁裁定の一部実施ということを、こういう悪例を付けておきますると、今度は一方にと
つて不利益な場合、納得できないような場合でもこれを受諾してこれに従わせなければならない、双方従わなければならんときに、いつも政府の都合の悪いときだけは一部実施だと言
つて、この裁定の実施
関係を先例を付けておきまするというと、今後仮に組合側にと
つて受諾をできないような条件の裁定が、裁定は何も賃金の値上げばかりが裁定にかかるわけじやありません。いろいろの問題、労使間の紛争すべて最後は裁定にかかるのでありますが、その裁定にいたしましても、一方のほうで不服がある場合には、これはもう政府でも一部実施なら俺のほうも一部実施だということをこれは強弁し得ることにな
つてしまうのです。そういうことではこれは労使間の紛争というものは、そう文章で書いてしま
つてきち
つて行くものじやない。大衆
行動というものはそんなに簡単に行くものでは私はないと思うのです。そこでルールというものを長い間こう打立てて
行つて、
一つの軌道に乗せて解釈をして行こう、こういうふうにして行く以外にはこれは解決の方法はない。平和的な解決の方法はないと思うのでありますが、それが特にこの三件につきましては、ただ
予算総則における給与総額のみが
一つの政府の言いがかりの根拠にな
つているわけであります。そこでほかに何も抗弁の余地がないわけでありますが、従いまして、それによ
つてこのように一部実施をしよう、一月から実施ということにつきましては、飽くまでも我々は納得できないのでありまして、従いましてこの少くとも四、五、六の三件につきましては、これはよそとの
関係ということになりましたならば、同じそれでは仲裁
委員会で皆や
つているのでありますから、その
関係も考慮されてや
つているのだが、併しできない場合にはできないところはそれは止むを得ないと思うのです。従いまして、この四、五、六だけはどうしてもやれるのでありますから、ここは八月から裁定の
通りにこれは実施すべきである。我々は資金繰りその他についても、若干
質疑応答を通じて、或いは
提出された
資料を通じて検討いたしましても、誰がこれを検討してもできる。それからこれは仲裁
委員会もこれを指摘しておりますし、又財政法に通じました、財政経理
関係に通じました学者、専門家の
意見を徴しましても、簡単にできると言
つている。それから労働法学者もこれはやれると言
つている。だからして輿論的にもこれをやらないのは無理である、横車を押している、こういうふうに言わざるを得ないと思います。従いまして、一月からの実施については反対いたしまして、そうして八月から仲裁裁定
通りに実施すべきことを
主張いたしまして、本案には反対をいたします。