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政府委員(
下田武三君) 国連軍のときはあの取極の裏付けとなる
国内法が前の国会に同時に提出されておりまして、国会の御承認を得れば、この
法律の裏付けもあ
つて、完全に実施できることになるのでありますが、そこで国連軍の刑事裁判権に関する取極を署名いたしますときに、
日本の代表が
留保いたしましたことは、
仰せのように国会の
留保、つまりこの協定を完全に実行しようとするならば、やはり
立法措置を要する、併しその
立法措置はまだできていないのだ、今の国会にかけてこれから御承認を得ようとする、従いまして
政府が
政府の
憲法上認められた権限内で実行できることは実行するということが、その場合の
法律的効果だろうと思うのであります。ところが
通商航海条約のほうで、若しあの場合と同じことをいたしましたとするならば、結局この
留保の
交換公文についての国会の御承認を経るまでは、日米通商
条約の全
規定が動かないということになるわけであります。つまり先に
条約だけ発効さしておいてこの
交換公文はあとの別の第二のつまり取極であるとして国会に出せる場合ならまだよか
つたのでありますが、
アメリカ政府が、
アメリカ上院の本元の
条約を批准する前に、こういう
留保の
内容について相手国
政府と
交渉して、そして相手国
政府の同意を得た上で
留保せよという、そういう助言を与えてしま
つたわけであります。そこでまあ非常に困
つたわけなのであります。若しこれがこの
条約は一旦
留保していいが、
上院の希望に
従つてもとでこの趣旨の
交換公文を相手国
政府としてせよという趣旨の
留保を
アメリカの
上院がしてくれたならば、私どもは何も苦しむことなくまさにそれではよろしい、すでにもう
日本で国会の承認を
とつくに得ておるから、早く
条約そのものを批准して発効してしまう、それからこのことは
条約の一部の
内容を変更する別の取極として
交換することにしようということで、極めて簡単に処理できたわけであります。ところがそこが
アメリカの非常に我がままな点でもありまするけれども、
上院がそういうことで大統領に批准前にやるという条件をつけましたために、我が方も巻きぞえを食
つて、こういう問題が起
つてしま
つたわけなのでありますが、
日本政府といたしましては、
アメリカにたくさんおります
日本の実業家、これが一時在留者で、いつもう追い出されるかわからんというような差迫
つておる状況に鑑みまして一日も早くこの
条約を発効さして、そして
日本の実業家に、
条約を承認して落ちついて
仕事をしてもらいたいというような、いろいろな差迫
つた事項がございましたので、止むを得ずこの
条約を早く発効させるために必要となりましたこの
交換公文の
措置を先にや
つてしまいまして、そしてもつともその事情はこの前の国会でおおむねわか
つておりましたので、はつきりその
内容と経緯を御報告申上げまして、そして議員のほうからもそういうことなら、
米国の
留保に対応して我がほうも
留保しろというような御発言を頂きまして、又その趣旨が
委員長の本会議における御報告にも述べて頂いたような状態でありまして事後承認とは申すものの、
内容経緯はもう詳細に申上げておりまして御了承を頂いた上で、この
措置に出たのであります。全然藪から棒に只今こういういうものができましたから御承認下さいと言
つて、無理をお願いしておるわけではないのでございまして、その間の事情は、誠に異例ではございまするが、何卒御承認を頂きたいと思うのであります。