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1953-12-02 第18回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月二日(水曜日)    午後一時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            羽生 三七君            加藤シヅエ君   政府委員    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件日本国アメリカ合衆国との間の友  好通商航海条約第八条2についての  留保に関する公文交換について承  認を求めるの件(内閣送付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約第八条2についての留保に関する公文交換について承認を求めるの件を議題といたします。本日はこれから本件について質疑に入りたいと思いまするが、質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 この留保条項に該当するようなアメリカの州というとどんなのがあるでしようか。
  4. 下田武三

    政府委員下田武三君) 該当いたしますアメリカの州といたしましては職業別によつて違います。例えて申しますと弁護士は四十八州全部制限をいたしております。それから建築士のごときは、コネチカツトケンタツキ—、メリーランドミシガンニユージヤージーサウスダコタ五つしか制限しておる州がございません。そういう職業別如何なる州で米国人のみに職業に従事することが留保されておるかという一覧表を用意しておりますので、それをお手許に差上げたいと存じます。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると例えば弁護士のように全州にこれが及ぶことになると、実質上これはまあ特殊な例外でなしに自由職業については双方これに対応して、日本も対応する場合には全面的に余り意味のないということに結果としてはなるのでしようか、どうでしようか。
  6. 下田武三

    政府委員下田武三君) 弁護士は四十八州全部、日本人のみでございませんで他のすべての外国人に従事することを許しておりません。そこでそれに対応いたしまして日本で取りあえず同じような制限を課する権利留保いたしております。法律上国家としてそういう制限をする権利留保いたしておるのであります。  そこで実際問題として然らば米国人如何なる職業日本で従事することを禁じ、或いは制限しようかという点につきましては関係各省と協議いたしております。現在までのところ日本でも米国人に対する就業制限をしたいという意思を表示して参りましたのは、法務省から弁護士につきまして制限をいたしたい、それから建設省から建築士について制限をいたしたいということを申して参つております。その他の職業につきましては今のところまだ現実制限を課そうという意思を表示して来た省はございません。
  7. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと建築士はこちらでは五つの州で禁じられているということになりますと、その五つの州以外でも日本の場合は皆禁止するのでございますか。
  8. 下田武三

    政府委員下田武三君) 今度の交換公文によりまして米本国のそういう制限をいたしております州の出身者だけ、つまり先ほど申しましたコネチカツト、ケンタツキー、メリーランドミシガンニユージヤージーサウスダコタ五つ出身米国人だけに対しまして日本建築士職業をやることを制限するという、そういうことになつております。
  9. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 米国ではどういうふうになつておるか存じませんけれども、日本では例えばどこの出身ということを戸籍で、例えば山口県の出身であるとかいうふうにして戸籍にあるわけでございますけれども、それは都合上東京都に変えるということはたやすくできるのでございますけれども、アメリカでは例えば日本建築士をやりたいけれども、その禁止されておる州に自分が所属しておる場合に何か簡単にほかの許されておる州に変えるということができるのでございますか。
  10. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御尤もな御質問でございまして、実はその問題を避けますために日本側公文につきまして附属の書簡を出しておるのでございます。それはこの当該国民が属する州という意味は、このライセンスを与えられた場合には、そのライセンスがどこで許可されたかという所をチエツクするわけでございます。そうしますと、向う建築士免状を見ますとこれはコネチカツトで発給されたライセンスということがすぐ書いてありますから、そういう場合には問題ありません。従つて今御指摘のように住所というものは簡単に移せるのだから、コネチカツト州が制限しておるから、そうでない例えばニユーヨーク州に行つて住所だと称して日本建築士をやろうというもぐりの手を禁じるために州に属するということは、ライセンスの発給されたと思う所で先ず第一に抑えるのがいいと思います。ところがアメリカではまだライセンスを受けていないのだが、日本に来て初めてその職業をやりたいと申出るアメリカ人もあるかも知れません。その場合にはまあパスポートを見れば住所が書いてございますから、第二次的のチエツクの方法としてそのパスポートなり或いは身分証明書なりによつて住所チエツクをいたそう、そういう措置附属公文日本は取つておるわけでございます。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 条約局長に伺いたいのですが、今出された資料はこれでまあ全部というわけじやないのでしようね。まあ例示的なものなのかどうか。
  12. 下田武三

    政府委員下田武三君) 全部ではございませんが、例示的と申しますよりは主要なものを網羅いたしたつもりでございます。この四十八州の法令を全部に亘つて検討いたしますと、完全なものができると思いまするが取りあえず、それはまあ大変なたくさんの法令を全部チエツクしなければなりませんので、殆んど短時日には不可能でございますので主なものを挙げたわけでございます。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 それでこのまあ英語を見ればわかるのかも知れないけれども、この第八条2は、「自由職業で、公的資格における任務遂行又は公衆の健康及び安全の利益に関する任務遂行を包含するため」云々とこう書いてあるわけですね。これはもう少し平たく言うとこの自由職業のその種類をここに制限しているわけでしよう。「公的資格における任務遂行」これが一つ、それから「公衆の健康及び安全の利益に関する任務遂行」でそういう性質のもので州の許可を要し、且つ法令又は憲法によつて専ら市民留保されておる。一つはまあ自由職業種類を或る程度ここに制限しているわけですね。それから今度それがそういうその自由職業については州で許可するという、許可するようなものになつておるということと、更に法令又は憲法によつてアメリカ市民にのみ留保されておる、こういう制限になつておるようなんですが、もう少しこれを平たく例えば「公的資格における任務」というのはどういうふうになるか。勿論まあこういうことを言い出すと自由職業というのは何だということになるのですがね。もう少しわかり易く説明してもらいたいのです。
  14. 下田武三

    政府委員下田武三君) このもとの条約の第八条二項の原則は、つまり外国人たることのみを理由としては、例えば締約国の領地内で自由職業に従事することを禁止されることはない、つまり日本人だから米国職業に従事しちやいかんというようなことを言わんというその原則が第八条二項の原則でございます。そこで今度の留保の主目的は、つまり公けの利益関係のある、わかり易く言えという御注文でございまするが、この「公的資格」と申します例えば公認会計士のような仕事というものは、或いは徴税上の意味を持つ仕事でもございますし、又「公衆の健康及び安全」という見地からは薬剤師とかお医者とかいうことは公衆の健康に関係のある仕事でございます。とにかく外国人だからという理由では制限しないけれども、何らかパブリツクなインタレストと関係があるというかどで制限したい、そういうのがアメリカの根本的の考えでございます。そこで若し図々しい国でありましたならば、これは何も留保しなくても、国際慣例として公けの利益関係のある職業に従事することを外国人に禁ずるのは当然じやないかと言つてつて済ます国も私はあるかと思います。併しアメリカは非常にその点は良心的でございまして、第八条の二項で日本人たる理由を以ては自由職業に従事することを禁じないと言つております手前上、たとえ公けの利益関係があつてもいやしくもアメリカ人であつて現実に事実がある以上ははつきり断わつておくべきだという、非常にアメリカの良心的な上院議員のお考えから、こうした留保というものが持ち出されたのではないかと推察いたしております。  そこで実は交渉過程に、我が方も誠に良心的に、我が方としては水先案内人及び公証人でございますか、これも日本公衆利益関係のある問題であります、日本現行法令水先案内人公証人外国人にはできないことになつておりますので、交渉過程においていち早くアメリカに通報いたしまして、我が方は議定書の第二項にございますから、それにちやんと留保しておつたのであります。ところがアメリカのほうの交渉者は、悪く言えばうつかりしておつたのでありましようか、結局アメリカ上院にかかりましたときに、上院のほうから先ほどの極めて正確な良心的な見地から、やはりこういう留保をすべきだという考えが出されまして、その結果上院意見を採用してこういう結果になつたという次第でございます。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 有難うございました。僕は丁度通商航海条約のときに外地におつてよく勉強しておかなかつたので、今この点わかつたのですが、そこでそういうものは法令的にはここに「法令又は憲法によつて留保されおるというのと、州で勝手にそういうことをとめることができるのですか、つまり州による許可を要するということと、「且つ、法令又は憲法によつて」と、これはダブるのですか、全部、ちよつとその点が、憲法はわかりますよ、法令と言うのはフエデラルのほうですか、もつと広いのですか。
  16. 下田武三

    政府委員下田武三君) この「州による許可ライセンスは州でございますが、「法令又は憲法」というのはフエデラルではございません、ステートのことを言つておるわけです。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 憲法……。
  18. 下田武三

    政府委員下田武三君) それも州の憲法
  19. 曾禰益

    曾祢益君 そうですか、そうすると現状ではこういう問題があつても、ほかにまだ今後変る場合もあるわけですね。そうすると合衆国、フエデラルとしては責任はないわけですね。州がその憲法又はステート法律制限して行く場合が今後あり得るわけですね。
  20. 下田武三

    政府委員下田武三君) 自由職業の規制は米国ではステートの管轄になつているそうでございまして、従いまして仰せのように、今後も米国人だけに制限するという立法を州がなすことはあり得ることだと思います。併し我が方の対応して参りました留保によりますと、米国法律が又変りましても、今度変つた変つたなりにそれに対応する権利留保してございます。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 そこでこういうことから来るアメリカ留保に関連して、こつちが対応してそういうふうに州の関係留保された特定の自由職業については、その州のライセンスを持つた者、或いはその州に住居を有する者だけは、日本では許されないという留保が出て来たわけですが、そのほかには我が方から見て先ほど言われた議定書留保されたという水先案内人公証人ですか、だからそういう向う措置に対応する日本対応措置というようなものはできるけれども、日本のほうから今は水先案内人公証人だけだが、更にそれをもつと制限して行くということはこの問題じやなくて、通商航海条約そのもの関係すると思うのです。そういうことが可能なのか、不可能なのか、又そういうことを政府としては考えておるか、現実の必要はないかという点はどうなんですか。
  22. 下田武三

    政府委員下田武三君) 我が国は新憲法の下におきまして極めて広範な職業の自由の原則を認めておりますので、従いましてアメリカの今次留保に対応して日本で具体的に如何なる措置をとるかということにつきまして関係各省意見を徴しましたときに、実は外務省としては意外に思うほど、先ほど申しました僅かに弁護士建築士だけしか制限関係省では考えていないという返事に接しておるわけでございます。  そこで仰せのように米側措置に対応するのでなくて、我が国のほうからイニシヤチブをとつて米国人或いは一般外国人制限なり禁止をしようということが現在又は将来あるかどうかという点でございますが、これは今回の問題につきまして各省意向を徴しましたのに鑑みますると、我が方からイニシヤチブをとつて更に制限なわ禁止なりをしようということは、少くも現在及び近い将来には関係当局におきまして考えていないのではないかということを申上げられると思うのであります。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 前から大体一般的にどこの外国人に対しても禁止していたと申しますか、日本人のみに留保しておつた自由職業というのは、新憲法の前の日本ではどうでしたか、水先案内人それから公証人以外まだありましたか、弁護士なんかあつたのじやなかつたですか。
  24. 下田武三

    政府委員下田武三君) 弁護士法にも外国弁護士をしておる者が、日本に来た場合にどういう条件で弁護士業に従事し得るかということを規定いたしました弁護士法七条の規定というのがございまして、その規定は私よく存じませんが、戦前からあつた規定ではないかと思います。従いまして弁護士につきましては、戦前からも外国人日本で自由に弁護士業をできるという事態では決してなかつた、前から制限があつたのではないかと存じます。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 医師はどうでしたか。医師相互主義か何か要求したのじやないですか。
  26. 下田武三

    政府委員下田武三君) 弁護士法相互主義制限するという規定は現在は勿論ございませんが、戦前にもなかつたのではないかと思います。詳しいことは又戦前の法規を調べましてからお答えしたいと思います。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 医師については。
  28. 下田武三

    政府委員下田武三君) 医師につきましてもそういう相互主義規定というものは現在も又過去にもなかつたと存じます。
  29. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の日本側で実際上権利としてだけではなく、権利の行使として実行上においてアメリカ人に対してはこういう自由職業を認めないように措置するというのですね。それについての関係各省意向内容弁護士建築士というのですね。そうするとその意味だが、それはつまり弁護士を一例にとつて言うと、弁護士弁護士たる資格要件日本国内法において持つこと自体を認めんということと、それから向う法律によつて弁護士たる資格を持つておる者をこつちにおいて弁護士と同じように法律事務を行うことを認めるということとは別個の問題であります。それで今関係各省考えておるというのは、その私の今言つた前のほうで、日本弁護士たる資格要件試験などを受けて獲得するということを認めないというのか、どつちですか。
  30. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せのようにたとえ日本弁護士試験通つても、つまり日本法弁護士たる資格を持つていてもやらせないということで、外国資格を持つておる者が日本でプラクチスできないということとは全く別のことでございまするが、法務省意見は実は今のところまだ最後的に決定いたしておりませんと聞いておりますが、ただ私の聞いておりますところでは、御承知弁護士法の七条で外国人又は外国法に関してプラクチスをやるということが認められるという規定がございます。それが外国人に関するということ、日本におるアメリカ人関係しておるケースについてアメリカ人が弁護し得るということと、又は外国法に関する、つまりアメリカ法に関する事件についてアメリカ人が弁護し得るという二つのことが「又は」で結んでおりますために、非常にアメリカ人日本でブラクチスしておる者の活動範囲が広くなつております。それが困るので、「及び」で結んでアメリカ人に関するケースであり、而もアメリカ法に関するケースというように制限したらどうかという考えが試案としてあるようでございます。これが一番制限の低いほうの案でございまして、それから一番高いところでは、もう今一人日本弁護士たる資格を持つておる者があるそうでございますが、そういう者も含めまして、一切アメリカ人弁護士業に従事することを禁止しようという、これは最も強い制限極限でございまするが、その二つ極限の間でどの程度のところで線を引くかという点につきましては、法務当局考えがまだまとまつておらないようでございます。
  31. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の説明は、前のアメリカ人に関することで、而もアメリカ法律に関する事件限つた、こういうような留保の付け方というものは非常に実際に適さんことです。そんなことは事件そのものが非常に複雑なもので、一つ事件がその実態を考えてみると必ずしもそんな事件ばかりではない。いろいろと外国法とか準拠法とかその他いろいろの関係がこみ入つて来る。そういうものは非常に実際に適せん考え方ですよ。  それからそういう留保をつける、留保というか、それは何かこの条約によつて留保しておけばそれの結果として如何ようにでも日本側で実際上の措置ができるということになるわけでありますか。
  32. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せのように、とにかく法律上は権利留保しておりますから、初め或る程度制限を加えてまだ不十分である、弊害を生ずるという場合には、又更に加重して制限を加えるという、国内立法措置の自由は私は完全に留保されておる次第であると存じます。
  33. 杉原荒太

    杉原荒太君 アメリカ側留保内容だが、これは法律それ自体で、こういうものは外国人には許さんときめてあるものだけに限るのか、その法律に基いて最後の行政上の裁量権法律では残しておいて、そうしてその行政上の措置として今度は許さない、先ず許可願を出してみて結果として許されなかつた、そういうものだけに限られるのか。或いは法律それ自体禁止されておる部面だけに限られるのか、どつちなのですか。
  34. 下田武三

    政府委員下田武三君) 法律そのもの外国人就業制限又は禁止しておるものだけに限るわけであります。
  35. 杉原荒太

    杉原荒太君 それからアメリカ留保内容日本側を比較して見ますと、アメリカでは更に、留保された自由職業については最恵国条項適用もないということを言つておるのですが、日本側ではそこまで言わないのはどういうわけですか。
  36. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは実はこの留保アメリカ上院決議で採択されました文句そのままをアリソン大使公文書の中に入れておりますが、従いましてこの条約専門家でないアメリカセネターが書かれた文章がそのまま入つておるわけであります。そこでその上院決議のそのままを尊重して書いて来たものでありますが、実は日本側といたしましては、この上院の文言は不正確ではないかということを感じたのであります。  第一点は先ほど申しました例による許可を要す云々ということだけしか論じておりませんが、アメリカには御承知のように準州もありますし属地もありますので、準州属地ということをアメリカセネターがうつかりして落したのではないかというので、我が方の留保にはそれをくつけてあります。  第二におかしいことは、最恵国待遇に関する条項について、これは何も日本人だけに就業禁止するとか制限するとかいうことではなくして、アメリカ人以外の者はすべて禁止なり制限なりをするという、そういう州の法律できまつておる事項でありますから、最恵国待遇という問題は生じないはずであると私は実は思つたわけであります。その点は米国当局も全くその通りであるということを言つておるのでありますが、ただ強いて何か意味があるかどうかという点で、例えば将来プエルト・リコという属地が独立したというような場合に、プエルト・リコ人だけは従来の経緯に鑑みて或る制限なり禁止なりの除外例作つたといたしました場合に、日本から、もうプエルト・リコは独立したから、日本に対してもそのプエルト・リコ人と同じ待遇をよこせというようなことを言つた場合に、最恵国待遇適用の問題が起りはしないかという仮定の問題が、これ又極めて不正確な問題でありますが、考えられるのではないかということでございまして、要するにセネター最恵国待遇という条項を引用したのでありまするが、実際問題としては、最恵国待遇の問題は起らないのではないか、そのように存じております。
  37. 杉原荒太

    杉原荒太君 それは併し理論上の問題、法律上の問題としては起り得るのですよ。それだからそこまで言つておいたほうが正確ですよ。それですから日本側でもそうなのです。国内法で幾ら一般的に外国人に対してはこれは許さんということをきめておいても、今度独立の条約を結んで、その例外的のことを許すということは法律上は可能ですよ、それはそういう場合もあり得る。もともと条約なんというのは一般的にいつて国内法つて条約従つて変えて行くために条約を結ぶことが多い。そういうこともあり得るのです、政策の如何によつては。それだからやはり最恵国条項のところまで入れておいたほうが正確ですよ。周密ですよ。それですから日本側留保つてそれはそこまで入れておいたほうが、法律的の条約上の措置としては僕は周到だと思う。
  38. 下田武三

    政府委員下田武三君) ただこの前記の条約中、如何なる最恵国待遇に関する条項を持とうと、アメリカ上院決議文にも書いてあるのでありますが、自由職業に関しては最恵国待遇の問題は実は起らないと申しますが、これは絶対内国民待遇の建前になつております。そこで最恵国待遇に関する条項というのは、それは自由職業関係のない点では条約中に規定がございますけれども、均霑さすべき最恵国待遇に関する条項というのは、自由職業に関しては通商航海条約中にはないのでして、その点は実は私どもおかしいと思つた点なのであります。アメリカ交渉従事者は、最恵国待遇というのは変なものであるということを向うが自白して我が方に対しておりますので、或いはそれを信用してしまつたのがいけなかつたかも知れませんが、私どもは当然これは最恵国待遇関係のない問題だと、そういうふうに考えておつたわけであります。
  39. 杉原荒太

    杉原荒太君 それから日本側留保内容ですが、向う側留保内容と比較してみると、日本側のでは非常に自主的じやない、向う側留保制限禁止する程度に応じてというようにすべて向う側本位にして、そうしてこつちが留保している。そんなことをすることはない、こつちもこの条項に関しては向うと同じように権利留保しておけばいい。あとの実際上の措置はどうしようと……、これなんかはどうしてそんな……。
  40. 下田武三

    政府委員下田武三君) 我が方のイニシアチーブでやつても差支えないのでありますが、アメリカが各州の制度でたくさんの禁止制限をしておりますのと違いまして、日本ではもう殆んどそういうことをしておりませんので、又二つの例である留保につきましては、先刻条約の調印のときに議定書留保を行なつておりますので、我が方からイニシアチーブを取つて架空のことを言つてみても、実益がないと申しますか仕方のない問題でありますので、向うのほうを受けて立つ形にいたしたのであります。そこでそれは日本に損ではないかという見方もあるかと思いまするが、それの実のところはアメリカのほうでは何も日本人だけを目標として禁止なり制限なりをしておるわけではないのでありまするが、今度は日本に来ますと、アメリカ人だけが禁止制限の対象になるという点では、日本アメリカ人が非常に不利な目に合うわけでございます。これは本国がそういうことをしておるから、自業自得ではございまするけれども、その点ではアメリカがひどい目に合つておるということも言えるのではないかと思いますので、必らずしも日本が受け身の立場に立つて損をしておるという結論には、これはまあ杉原委員はそうはおつしやつておらないのでありますけれども、そういう印象を持たれた向きもございますので、その点も合せてお答えをしておきたいと思います。
  41. 杉原荒太

    杉原荒太君 それはさつきあなたの説明にもあつたように、弁護士などについても認められる範囲なんというものは、なお研究しておつて、いろいろとそこに段階がある。それが一々向うと比較対照して見て、向うのやつているものと同じ程度でなければいかんとみずから言う必要はない、いやしくも留保する以上。それだからこの留保の仕方などは、僕は何もこうしなければならんという問題ではない。まあそうかと言つて、こつちが非常に向うよりも進んで制限を大きくしようという政策をとろうというのではないけれども、法律的に、条約的には、そこの自由を留保するのが当り前じやないかと思う。
  42. 下田武三

    政府委員下田武三君) 実は日本側留保考えまするときに、今仰せ通りの案もあつたのであります。つまりアメリカが何と言おうとも、日本の公けの見地から言つて制限する或いは禁止をする権利を、日本側イニシアチーブをとつて留保しようという考えもあつて、そういう案も作つたのでありまするが、政府部内におきまして、そういうことをまあ対外的に言うのだから差支えないというかも知れんけれども、併し日本憲法の、余りに職業の自由が、自由ということを建前にしている憲法の建前とやや反するのではないかという意見が、政府部内にございまして、結局日本外国が何をやろうと、職業の選択は自由なんであるという憲法の建前において、こういう制限はむしろ外国がやるから止むを得ず対応する限度でやるのだという態度に出たほうが、日本の建前としてはいいという意見が、政府部内で支配的になりまして、結局こういう案に落ちついたのでありますが、杉原委員のおつしやいました考えは私ども誠に御尤もだと思いますし、又事実そういう案も作成されておつたわけでございます。
  43. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう一つこれは非常に根本的な大事な問題だと思うのだが、今度のこの留保というのは非常に異例なんだ。こういうふうな留保の仕方というものは、実は普通の留保の仕方からすれば非常に異例である。そうして批准というものを、これなどは実際上批准の拒絶とも見られるぐらいなものなんだな、性質からすると。そうすると、これは一体どういうふうな基本的な考え方の下にやつたのか……。
  44. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せのように本当に珍らしい留保のやり方だと思のでありますが、つまり留保するならば、米国大統領が批准をする際に、その批准書中に留保考えて来ればいいじやないか、何も米国上院がどういう決議をしたからといつて、事前にそれを基にして又別個の考慮をするということは必ずしも必要じやない。批准権者はアメリカでも大統領でありますから、大統領が批准するに際して、そういう留保条項を批准書に附して持つて来れば、そうすれば日本もそれに対応する留保日本の批准書に考えて、そうして批准書交換と同時に、この留保付きで通商航海条約の批准を行なつた、そういう形にするのが、今までの慣例に鑑みて一番普通なやり方であると私どもも考えたわけであります。ところがこれは専らアメリカの国内事情でございますが、米国政府としては、上院意向というものを非常に尊重したい、又この留保内容は実は米国政府が言い出したことではなくて、米国上院が言い出したことであるというので、上院決議文内容に手を触れずに、そのまま米国政府の法文の中に織込んで、そうして我がほうに通知して来る、でございますから、向うの法文を見ましても、つまり誰が留保するのかという点を先方は逃げておるわけなんでございますが、そこで日本政府が合意したならば、恰も米国上院という第三者がしたものを日本が合意したならば、初めてアメリカ政府も合意すると申しますか、悪く言えば、上院に対する責任転嫁の方式なのでございまするが、米国上院が或る留保についての意思表示をした。これは米国政府意向とは実は別問題であるけれども、米国上院は、これこれの留保について、批准の前に相手国と合意をした上で批准書を交換しろ、批准をしろ、そういう決議をいたしたわけであります。そこでアメリカ政府はその通りに実はしたい、上院の助言と勧告によつて大統領は批准を行い得るのでありますが、その助言の際にこういう留保を付して、その留保内容について相手国政府の同意を取りつけた上で批准をしろ、そう米国上院米国政府に対して出て来たわけであります。そこでその通りのことを実は忠実に米国政府はやつたわけであります。先ず米国上院はこれこれの留保をして来た、そうして、ついては日本政府がこれの内容について同意してくれるかどうかということを聞きまして、そうして我がほうが同意するという返事を以て、そうしてその同意の内容について両国政府間の同意ができた。そこで大統領は上院の言う通りな方式で条約を批准できるという地位に初めて立つた。そういうわけで完全に米国上院意思を忠実に尊重して、その通りのやり方をしたいという米国政府の希望に即してやりましたために、むしろ今までの留保の例とは違つた方式で行われたわけでありますが、そこで我がほうといたしましては、米国政府の希望に副うだけの問題でなくて、日本としても対応する留保をしなくちやならんという立場から、二組の交換公文、つまり米国留保に関する交換公文日本側のこれに対応する留保に対する交換公文という、結局四つのものがこの留保内容を構成する文書として成立いたしまして、そうして批准の際は、どうしたかと申しますと、批准の際に、米国大統領の署名しました批准書には米国上院決議留保内容がそのまま載つておりまして、我がほうの批准書も従いましてこの交換公文条約のテキストの次にくつけまして、そうして批准文におきましても、留保する交換公文を付して、日米通商航海条約を批准するという形式をとつたわけであります。でございまするから、帰結するところは、結局留保の成立ということは、批准の交換におきまして、そうして両国の批准文中にその留保が掲げられまして、交換したことによつて条約の批准が行われる、つまり普通の留保付批准ということと同じ結果になつたのでありまするから、その同じ結果になるまでの過程におきまして、専ら米国上院に対する国内事情に即応しようといたしましたために、今までの例とは一部違つた手続をとられた、そういう次第でございます。
  45. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうすると、これは批准の客体をなしているものの一部になるのですかね、この交換公文というのは……。
  46. 下田武三

    政府委員下田武三君) 批准の客体の一部ではございませんで、批准の客体は通商航海条約そのもので、ございまして、その通商航海条約を批准するに当つて留保条件になるものでございます。
  47. 杉原荒太

    杉原荒太君 それではつまり批准の客体になつた通商条約とは別個の条約なんですね、これは……。
  48. 下田武三

    政府委員下田武三君) この交換公文は実質的に通商航海条約内容を変更いたしております。つまり第八条の2の実体的規定に変更を及ぼすものでございますから、これは一つの新たな合意でございます。新たな合意であると同時に、その合意は実はまだ批准書が交換前の条約に対するものでございまするから、若し先に批准が行われておりまして、そうしてあとで交換公文をやる場合には、完全にこれは新たな合意でございますけれども、本元の条約自体というものがまだ批准されておらない状態で、先にやりましたので、結局やはり留保付批准、その留保付批准の留保内容をなすものを留保前に交換したと、そういうことになると存ずるのであります。
  49. 杉原荒太

    杉原荒太君 日本側でなぜこの留保するとき留保のこの交換公文の中に、憲法上の手続に従つて、つまり日本の国会の承認を経るということをなぜここに入れなかつたのですか、向うのほうから来た書簡を見ると、非常にこれは余計なことを言つているのだ、よその国の何まで。これをお前のほうの政府で受理をすれば、それでもうすべての手続を、留保の受諾を完了すると見なされますなどと独断しているのだね、これは非常におかしな話ですよ。そうしてそういうことを日本側で又そのまま受けてやつている。これは当然日本側では、こういうときは日本憲法従つて国会の承認を経るのだから、そういうことを当然ここに書いておくべきじやないかと思いますけれども、書いておくのが当り前のことじやないか、一つもそういうことをすることによつて、何もこのことを付けることを妨げるものでも何でもないのだ。
  50. 下田武三

    政府委員下田武三君) それが、日本憲法におきまして事後承認に関する第七十三条三号但し書の規定がございませんでしたならば、まさに仰せ通りにすべきだつたと思いまするが、併しこれは前国会のときからの問題でございまするが、日本憲法が許しておる、これは必ずしも原則ではございませんで、例外の場合でございまするが許しておりまするから、ここに特に国会の承認についての留保を付する必要はないと、従来からの政府考えによつて、こういう措置をとつたわけでございます。
  51. 杉原荒太

    杉原荒太君 そのことになつて来ると、非常に意見も違つて来るから僕はこれ以上言わんけれども、それだからこそ、今私が言つたようにして一向差支えないのじやないか。そうしてそのほうが本当の憲法の趣旨にも副つているし、そうすべきですよ。そうして而もこの条約を作ることによつて何ら障害をなすものじやないのだ、そういうふうになぜ一項ここに入れておかないのだ、そういうところが、非常に無理を我々言つているのじやないのですよ。ちやんとそういう途が法律的に開かれておるのにやらんでおいて、なぜそういう不都合なことをやるのだ、そこが非常に私やり方について奇怪に感じている。ちやんと途が開かれておる、その文句を一言ここへ入れておけばいいのですよ。政府としては国会の承認を条件としてこれを受諾しますと、こう言つておけば、その文句を入れておけばいい。そうすべきですよ。その暇がなかつたなんということは何にも言えないのですよ、それは。
  52. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御尤もでございまするが、ここで日本の国会の承認を条件として受諾しますということを書きます法律的効果は、結局国会に諮られて、国会の承認を得ますまで通商航海条約の発効が遅れるという効果を来たすわけであります。それが日本政府としては、日本のために損であるという考えから、異例ではございますが、とにかく先に発効していろいろな利便を収めることを一日も早くしたいという点から、先に批准交換をいたしまして、そしてこの留保につきましてはあとで、本元の条約につきましてはすでに国会の御承認を得ておるのでございますから、このつけたりの留保につきましては、あとで事情を詳細御報告申上げまして御了承を得て、そうすることによりまして約半年ぐらい早く発効させたいと、そういう念願からこういう措置に出たわけであります。
  53. 杉原荒太

    杉原荒太君 今のはやり方によつてそういうことはちつとも障害なくできるんだ、この書き方でも。この間だつて何んではないか、国連軍との協定においてちやんと一応は効力を発生せしめておいて、あとの確定の条件を国会の承認ということにかからしめた、ああいうやり方がある。効力を発生せしめておいていいのです。確定のための条件を国会の承認にかからしめておけばいいと思うのですよ。そういう条約の作り方をすればいい。その条約の作り方は、初め作るときは何らこういう制限はない。そういう作る自由が残されておる余地があるにかかわらず、そういうことをやつていないから、私はおかしいと言うのです。それでは今度は逆にこれの国会の承認ということが法律的に殊に国際的にどういう効果を持つのです。これの法的の効果はどうなんです。
  54. 下田武三

    政府委員下田武三君) 国連軍のときはあの取極の裏付けとなる国内法が前の国会に同時に提出されておりまして、国会の御承認を得れば、この法律の裏付けもあつて、完全に実施できることになるのでありますが、そこで国連軍の刑事裁判権に関する取極を署名いたしますときに、日本の代表が留保いたしましたことは、仰せのように国会の留保、つまりこの協定を完全に実行しようとするならば、やはり立法措置を要する、併しその立法措置はまだできていないのだ、今の国会にかけてこれから御承認を得ようとする、従いまして政府政府憲法上認められた権限内で実行できることは実行するということが、その場合の法律的効果だろうと思うのであります。ところが通商航海条約のほうで、若しあの場合と同じことをいたしましたとするならば、結局この留保交換公文についての国会の御承認を経るまでは、日米通商条約の全規定が動かないということになるわけであります。つまり先に条約だけ発効さしておいてこの交換公文はあとの別の第二のつまり取極であるとして国会に出せる場合ならまだよかつたのでありますが、アメリカ政府が、アメリカ上院の本元の条約を批准する前に、こういう留保内容について相手国政府交渉して、そして相手国政府の同意を得た上で留保せよという、そういう助言を与えてしまつたわけであります。そこでまあ非常に困つたわけなのであります。若しこれがこの条約は一旦留保していいが、上院の希望に従つてもとでこの趣旨の交換公文を相手国政府としてせよという趣旨の留保アメリカ上院がしてくれたならば、私どもは何も苦しむことなくまさにそれではよろしい、すでにもう日本で国会の承認をとつくに得ておるから、早く条約そのものを批准して発効してしまう、それからこのことは条約の一部の内容を変更する別の取極として交換することにしようということで、極めて簡単に処理できたわけであります。ところがそこがアメリカの非常に我がままな点でもありまするけれども、上院がそういうことで大統領に批准前にやるという条件をつけましたために、我が方も巻きぞえを食つて、こういう問題が起つてしまつたわけなのでありますが、日本政府といたしましては、アメリカにたくさんおります日本の実業家、これが一時在留者で、いつもう追い出されるかわからんというような差迫つておる状況に鑑みまして一日も早くこの条約を発効さして、そして日本の実業家に、条約を承認して落ちついて仕事をしてもらいたいというような、いろいろな差迫つた事項がございましたので、止むを得ずこの条約を早く発効させるために必要となりましたこの交換公文措置を先にやつてしまいまして、そしてもつともその事情はこの前の国会でおおむねわかつておりましたので、はつきりその内容と経緯を御報告申上げまして、そして議員のほうからもそういうことなら、米国留保に対応して我がほうも留保しろというような御発言を頂きまして、又その趣旨が委員長の本会議における御報告にも述べて頂いたような状態でありまして事後承認とは申すものの、内容経緯はもう詳細に申上げておりまして御了承を頂いた上で、この措置に出たのであります。全然藪から棒に只今こういういうものができましたから御承認下さいと言つて、無理をお願いしておるわけではないのでございまして、その間の事情は、誠に異例ではございまするが、何卒御承認を頂きたいと思うのであります。
  55. 杉原荒太

    杉原荒太君 私はさつき質問した後段のところ、つまり然らば今度のこの国会の承認というのは一体如何なる法的の効力を持つのですか。法律的の意味を持つているのですか。
  56. 下田武三

    政府委員下田武三君) 今まで行われました先に問題となりました平和条約関係附属宣言で、一年以内の期間に加入いたしまして、そしてあとで御承認を仰ぎましたと同じような法律効果でありまして、つまり日本国の加入ということはもう法律的にいつて日本の加入通知のときに発生しております。そして若し国会が御承認にならなかつた場合には、そのときから、その点は議論のあるところでありまするが、その場合には、まあ政府の政治的責任の問題は生じまするが、日本の加入の効果は影響を受けない、そうなると思うのでありまするが、この条約の場合にも批准書はすでに九月の三十日に米国交換しておりまして、法律的にはこの条約は発効しております。ただそれにつきまして、この交換公文内容につきまして御追認を頂いておる、御追認と申しまするか、日本国としての束縛はすでに九月の三十日の批准書交換によりましてその一月後に生じておるのでありまするが、事後に国会の御承認を、御追認を仰いでおる、だから国会が承認した場合に新たに法律的効果が発生するのじやなくて、国家としての法律的効果はすでに発生しておる。そういう関係であると思います。
  57. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう私これ以上余り言いたくないのだけれども、これはつまりこういうことを留保するそれ自体について、何も異存があるのではない。ただ憲法との関係等、又本来あの憲法の根本趣旨から言つて、それに合うように対外的に確定的の効力を発生してしまつた後に国会にかける。これは僕は明らかに憲法の精神に副わないものと確信しておるのですけれども、そういうことをやらないで、この交換公文の作り方で、やれるのをやつていないから、私は文句を言つておるので、僕は途がないなら仕方がないが、作り方においてあるのだから、条約の作り方の上において、もつと工夫してもらいたいと思う。さつきあなたが言われたけれども、国連軍の刑事裁判権のやつでも、単に国内法だけでなく、それにプラスしてもう一度全体としてあれに対する効力の確定があつても国会にかける必要があるのかと言つておる。こういうことをちやんとやつておけば、今の憲法関係つて、そこはちやんと説明が付くようになる。それはこの作り方によつて幾らでも途があるのに、やらないから僕は前からなぜもつと工夫しないかということを言つておるのです。こんな場合でも同じですよ。
  58. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) この問題は度々この委員会でも繰返し論議されたところでありますが、本日の杉原委員の御質問もまさに今までの経緯を再びここで繰返されることになつたと思うのであります。条約局、つまり政府のほうでも、この点は一つ御考慮をお願いして、将来は今杉原委員の言われたような意味合において、これは単に杉原委員ばかりでなくて、羽生委員も梶原委員からも御意見がこの前の国会の会期中にもあつたのでありますから、政府のほうでもよく御検討下されるようにお願いいたしまして、今回この問題につきましては、今政府がとつております態度、それについていろいろ御意見はありましたけれども、これはこれとして一つ御審議をお願いするということにいたしたいと思います。
  59. 曾禰益

    曾祢益君 すでに御列席の杉原委員から非常に鋭く深く解明されたのですけれども、これは今の条約局長のお話では、根本精神は日本憲法において職業は自由だ、その精神を成るべく活したい、こういうので、向うから留保した部分を受けたような交換公文である。こういうお話のようだつたけれども、私はいろいろの御説明を聞いおると、その考慮よりも、やはりアメリカ上院の特殊の行為を、アメリカのあの三権分立のあれとして、又現在のアドミニストレーシヨンとして、殊に上院に気心を配つておるというのでしようか、いわば上院作つた一つの我が儘のプラン、形式をそのまつ持つて来て、それでこれを始末するのに協力したような恰好で、そちらのほうに比重があるのではないかという感じが残るのです。併しそこが非常にいけないことと思う。日本憲法職業の自由は、そういう普通の職業内国民待遇という憲法の精神が生きておる。旧憲法時代において何かといえば特定の職業は軍事的理由等によつて日本人のみに留保しよう、非常に何というか鎖国主義的なにおいが強かつた。新らしい日本はそれではいけないから、基本精神において、必ず水先案内或いは公証人以外に、内国民待遇を与えない特殊の自由職業の範囲を広くしろという意見では毛頭ない。だが併し、いやしくも、こういう問題について、アメリカとの交渉において、向うの国情から留保して来たものに対抗して、我々のほうとしてもやはり日本の自主権に立つた或る種の留保という態度をとる、その上の交換という形をとることが特に必要です。又日本における他の外国人との関係考えて、果して職業の範囲がこれでいいか、再検討を要するが、必ずしも制限するという意味じやなくて、アメリカの特定のかたに、ただそれに呼応するということによつて向うから言つて来たものを日本の自主権に立つて呼応する。併しその内容留保しない、こういう形をとることが政治的にも必要です。いわんや国会に対する事後承認という形を極力避けるという点から言つても、どうも形においてまずいものがある、これは意見になりますが、私はこういう点はやつぱり十分に考慮してもらいたい。特に政治的にアメリカからも留保をされてやつたということは、極力日本として避けなければならない日本の政治段階にあると思う。その点を条約局長だけに申上げておるわけではない、外務大臣にも私は申上げたいのであります。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどの同僚議員の御質疑の間に、ちよつと政府の御答弁で不明確な点があつたので承わります。アメリカ側留保される各種の自由職業ですね、それに対応するように日本が自動的に禁止になるのか。先ほどお話のように建設省或いは法務省から出して来たものが、今のところは二つ関係だけというお話がありましたが、それはあとから何か別にお考えになるのか、自動的に禁止になるのか、その辺のところを一つお伺いしたい。
  61. 下田武三

    政府委員下田武三君) 自動的には禁止になりませんで、向う法律禁止いたしておりますと同様に、日本でも禁止又は制限いたします場合には、その目的の国内法を制定いたしまして、その上で禁止又は制限することになるわけであります。従いまして、弁護士につきましても、或いは近い将来において弁護士法改正案として国会に上程になるかと思います。
  62. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどの御説明のあつた法務省では弁護士制限をつけたいという、或いは建設省は建築士制限をつけたいということについては、未だ研究中であつて、いつそれが出て来るかということはわからないのですか。
  63. 下田武三

    政府委員下田武三君) 関係立法をいつ制定するかという時期の点につきましては、まだ関係省意向はきまつておりません。
  64. 高良とみ

    高良とみ君 そうすると、先ほどの公けの福祉に関するというものの中に、御説明によりますと、アメリカではノータリー・パブリツクを禁止しておるのであります。すでに日本の会計士の資格を得たものとして公認会計士日本にあるわけです。アメリカ人で受けておる者が、これについてはやはりこれは一応受けたものの資格をやはり制限する御意向があるのですか。
  65. 下田武三

    政府委員下田武三君) 公認会計士につきまして、禁止又は制限することは関係省考えておりませんが、併し関係省で現に考えております弁護士及び建築士につきましても、御指摘のような問題があるのであります。実はすでにもう弁護士をやつておる者はそのままにしておいて、今後やろうとする者を禁止又は制限するか、或いは現におる者すべての者を禁止してしまうかという重大な問題があるのでございまするが、その点につきましても、未だ関係省意見はきまつておらないのであります。    〔委員長退席、理事徳川頼貞君着席〕
  66. 高良とみ

    高良とみ君 そのほかに、なおこの医師免許を受けた者が二十六名もあるようですが、これは日本の免許を受けたという意味だと了承して、これは厚生省の所管するところでしようが、これについては何らの意見は出ておらないのですか。
  67. 下田武三

    政府委員下田武三君) 医師につきまして禁止又は制限しようという意見は出ておりません。
  68. 高良とみ

    高良とみ君 併しアメリカの州によりましては、医師、歯科医師については制限をしておる州もあるように了承しておりますが、如何ですか。
  69. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せのようにございます。
  70. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、国内において公認会計士とか医師或いは弁護士建築士等を制限するということについて考慮しておられるということは、単なる国内法ではなくて、これは国際問題でありますし、これが決定を見るのにはやはり国際的に及ぼす影響もあることと思うのですが、それについて外務省としてどういうふうな方針を持つておられますか、先ほども憲法において職業の自由、殊にそれが日本における免許を受け、日本における資格を持つた者という場合に、それをなお従来資格を持つておる者までも制限して来るということになりますと、日本に来て改めて資格を得たにもかかわらず、これをアメリカとの外交関係において禁止するかも知れない、そういうことがあり得るということは、やはり報復以外に何ら考えることができないように考えますが、その点は日本日本憲法の趣旨に従つて日本国内で日本法律従つて免許を受け資格を得た者に対しては、日本国内人と同じ待遇を与えることの可能性ということについて、どうお考えになりますか。
  71. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本医師なら医師の免許を受けた者ならば、日本人と同じように開業をやらしてもいいではないかというお考えかと存ずるのでありますが、実はアメリカのほうでやつておりますことが、たといアメリカ医師免許を受けましてアメリカ人と同じような資格をとつた者でも、日本人の場合には或る州では開業できないということになつておりますので、全くそれと同じことを日本でやろうとするわけでございます。そこで外務省としては、外務省の一番大きな関心事は、国家の権利として不平等な地位に陥つてはいけないということであります。アメリカが自国人だけに留保しておるならば、少くも国家の権利として必要があれば同様の禁止制限をする権利を確保しておかなければならんということが、私どもの一番の関心事でございます。さてその権利を確保した後で、現実にどれだけの禁止又は制限をするかという問題に至りますと、これは外務省の問題よりも、それぞれ厚生省なり建設省なりの専ら国内の現実の事態からの御観点の御判断に私どもは譲らざるを得ない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  72. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、この医師免許証とか建築士又は公認会計士の免許等を受けるときの資格において、アメリカにおいては国内法で、それを外国人であるならば受けることを許可しないという法律を作つていることなら、それはわかるのでありますが、日本においてもその立法が、資格試験なり免許を受けるほうでは禁じておらないで、そこで受けた者にこの行使を禁じている場合も考えられるわけです。そうすると、そこに非常に終始一貫しないばかりか、一応免許を受けてみるとか或いは資格を得てみるというようなふうに考えられて、非常に法の権威にもかかわるものではないのですか。ですからそういう免許なり資格なりを与える試験登録等の場合に制限をするようにして行けば、何もその国際的に馬鹿に平等の権利を獲得するというようなところで、しやつちよこ張らなくてもいいように考えられるのですが、そこが憲法の精神とは違うことを平等に持つて来ようとするところに無理があるのじやないのですか。私の申上げた意味はおわかりかと思いますが、やはり平等の精神と言いましても、こういう技術的なことですから、それは国内の実情から、建築士なら建築士で、日本の建築の登録には特別な考慮があるというようなことは、考慮してあるのは適当でありまするが、そうでない理由で、向うがそうだからこちらもそうだということは、この前のあの通商航海条約のときに申上げましたが、憲法の根本精神には副わぬものじやないであろうか、こう考えておるわけですが、どうなんです。
  73. 下田武三

    政府委員下田武三君) お話の初めのほうにありました点でございまするが、これは米国でも或る職業についての資格を得るその門戸で、外国人だから駄目だという建前の法律もあると存じます。又自分の州ではそうだけれども、これが外国に、ほかの州にプラクテイスすることが認められておるのですから、とにかく試験だけは受けさせることは差支えない、併し自分の州では困るという建前で受験は別に制限しない、申請は制限しないという建前の法律もあるかと存じます。従いまして日本側で対応する措置立法の際にも、やはりいろいろな立法の仕方があると存じます。そこでお話のあとの点でございまするが、憲法職業自由の建前に反するかどうかという点は、やはりそれぞれの主管省が現実の問題を御考慮になるときに確かに考慮に入れるべき一つの問題であろうと思います。一時的には果してこの職業外国人にやらすことがいいかどうかという利便の問題でございましようが、併しその際にやはり日本の国柄といたしまして、成るべく広く、外国人といえども、日本で生業に従事することを許そうという憲法の建前であるということは関係省が政策をきめられる際にも配慮するだろうと存じます。併し外務省といたしましては、対外関係の門戸に坐つております私どもといたしましては、関係省がやはりこれは制限をしたいと思いましたときに、条約でそれを留保してなかつたからできないというようなコンブレイントを日本で聞くようなことがございましたら、これは門戸に坐つでおる外務省としての職責を怠るということになりますので、関係省がどうお考えになりまして、どういう措置をとられるといたしましても、それだけの途は少くとも付けておかなければいけないというのが私どもの考えでございます。
  74. 高良とみ

    高良とみ君 了承いたしました。
  75. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この条項我が国適用する場合に、国内法は相当面倒になるのじやないか、技術的に考えますと、そういう感じがするのですが、アメリカの人が属するアメリカの州ですね、これは何かはつきりとしたよりどころがあるわけなんでしようか、その点一つ伺いたい。
  76. 下田武三

    政府委員下田武三君) この住所の認定ということは、簡単なようでなかなかむずかしい問題であることはお仰せ通りでございますので、そこで日本側といたしまして、住所を第一のチエツクの手段といたしますことはむしろ危険と認めまして、附属公文ライセンスを受けるのでありますから、そのライセンスがどこの州で発給されておるか、これは許可免状を見ればすぐわかることなんでありまして、それで先ずチエツクすれば、大部分の場合はチエツクできる。ところが自分はまだアメリカ本国ライセンスはもらつていないのだけれども、日本に来てやりたいのだという人は、これは困りますので、その際には旅券でございますとか或いは身分証明書でございますとかいう、分けの書類で以て住所を認定する、そういう二段構えで以てチエツクいたしたいと存じておるわけであります。
  77. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますと、この公文を受ける当該国民が属する合衆国の州というのは、そこに住所があるというのを意味するわけですか。
  78. 下田武三

    政府委員下田武三君) 附属交換公文で書かつてありますように、住所を第一のポイントにいたしておらないのでございます。当該国民が属する州という字句は、その職業に従事することを許可された州というそのライセンスのほうを先に書いておりまして、若し許可されてまだいないときには、その住所を有する州とそういうように書いておるのでございます。
  79. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 わかりました。
  80. 曾禰益

    曾祢益君 このまあ日本側、これに直接関係がないのですが、先ほどの基本政策の自由職業に関する内国民待遇の件で、例えば教師なんかというものは、一体先ほどの話ですが、これはアメリカからの直接の関連では、今の文部当局は何も留保のほうは考えていないようですが、一体外務省というところから考えて、日本における外国人という問題を考えて、教師の問題なんかということは、如何職業の自由といつても、外国人の数が日本で多いような場合には、相当考えなければならない。例えば日韓会談というものは、あの段階にあるけれども、一時韓国人というものに対しては、或る種の経過的な思いやりというものは、これは必要でありますけれども、その他一般鉱業に従事するとかいろいろな特定の一般外国人に許されないものでも、内国民待遇を一時的に与える考慮が必要であろうと思う。ところが教職員の問題なんというものは、これは相当大きな政策から考えなければならない。そういう点については、直接今この交換公文にはないが、一体こういう日本が最初の外国と結ぶ通商航海条約の際に、自由職業の問題について、私は日米通商航海条約のときにおらなかつたから言う資格はないのだけれども、水先案内人公認会計士という極く一般的な、どこにも通用する、留保されておつたそれをされるときに、一体日本の今後の自由職業をどの程度外国人に許すのがいいか、又憲法の精神と同時に日本の必要から見て、こういう点は相当外務省としては、各省の発言を待つまでもなく、むしろ外務省日本における外国人という観点からイニシアチーブをとつて考えなければいけない問題だろうと思う。そういう点をあなたがたどういうふうに考えておられるか。
  81. 下田武三

    政府委員下田武三君) この第八条の点を交渉いたします際にも、関係省と常時連絡いたしておりまして、関係省意見を徴しましたのでありますが、勿論関係省としての意見でなくて、外務省独自の考えもございます。そこで当時はアメリカがこういう留保ということをしようとは実は夢にも考えておらなかつたのでありますが、むしろ日本一人がアメリカに行つて、そして何でも、いろいろなプロフエツシヨンにつけて、自由に活躍できるという事態を確保しようというのが、実はこつちの大きな狙いだつたわけなんでありますが、そういうことをアメリカに対して主張すれば、それに対応してやはり日本でも或る程度、或る程度じやございません。自由は保障しなくちやならないということになりまして、そして日本国内法チエツクいたしました結果、やはり先ほどの水先案内人公証人だけは、これは今の現行法でもちやんとできないことになつておるから、こいつははつきり断わつておかなくちやいかんということで、それだけを議定書で除外いたしたのでございます。でございますから、交渉当時は日本におけるアメリカ人の活動もさることながら、むしろ人数においては多い在米日本人の活動をできるだけ自由にさせるというところに主眼を置いておつたのが実情なのでございます。そこでまあ、こういう留保を持ち出されて、当時の希望は実は達成できなくなつたわけでございまするが、その点は誠に遺憾でございます。  それから教師の点につきましては、先ほど申し落しましたが、実はこれは文部省だけの問題ではございませんで、外務省も文化交流というものにつきましては、むしろ主管省の一部なんでございまして、その点につきましては、外務省独自といたしましても、やはり意見はあるのでありますが、今のところこの五十四人の教師がいろいろな学校で英語の先生や何かしております状態、これはまあ今のところ弊害は別に起つておりませんので、外務省といたしまして、これを制限するという考えは今のところございません。
  82. 曾禰益

    曾祢益君 ちよつと僕の言い方が悪かつたので、何もそのアメリカなり世界各国から教師、殊に招聘したような教師が来て文化交流することに反対じやなくて、結構なんだけれども、例えば日本に六十万という朝鮮人がいる。その朝鮮人には特殊の教育がある。これは或る程度事実を認めなければならい。伴しそういう教育のための外国人の教師という問題に対して、日本政府としてどう考えているかという問題もあるので、アメリカにおける日本人の活動のことにのみ気を取られているわけでもないだろうけれども、そういう嫌いもあつたようだし、それに対応する今の日本としての留保ということばかりでなく、やはり今度日本における外国人にどういうあれをやつたらいいかという点も考え、更に又自由職業日本人が一種の文化的な移民として、まあ移民と言つちや悪いけれども、東南アジア等に行く積極的な面も考え、それらの総合的な面の施策を考えるのが外務省であつて職業別にばらばらにしちやつて弁護士はどうだ、医師はどうだという、他の国内関係省意見を聞いてからきめるという態度じや駄目だということを申上げるわけなんです。
  83. 徳川頼貞

    ○理事(徳川頼貞君) ほかに御質疑はございませんか。……御質疑がなければ本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じます。  なお、本日ガツト仮加入のほうも予備付託になりましたので、明日午前十時から外務委員会を開きたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十五分散会