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参考人(
横山利秋君)
国鉄の
横山でございます。何はともあれ、先般本
委員会におきまして
国鉄裁定につきまして深甚の御考慮を煩わしまして、私
どもに非常に好結果を与えました
決議を頂きましたことを心から
お礼を申上げます。
国鉄労働者はあの
決議によりましてどれだけ鼓舞され、或いは又私
どもの
主張が
国会において認められたということを
痛感をいたした者で、心から
お礼を申上げたいと思います。
本日は
新聞で御
承知の
通りに、非常に私
どもにとりましても重大な段階に立至
つておるわけでありまして、国事御多忙の
折柄時間をお割き下さいまして、我々の
意見を聞いて頂くこういう機会をお与え下さいましたことを、併せて
お礼を申上げる次第であります。
前置きは抜きにいたしまして、どうして私
どもがこれほど言葉によりましては執拗に、何と申しますか頑強に
我我の
主張をいたし
行動をいたしておるかという点を端的に一つ申上げまして御
理解を願いたいと思うわけであります。先ほどお
手許へ配付をいたしました
印刷物に要旨は申上げておるわけであります。
第一は八月からと一月からとの
相違であります。これはこの私
どもの
行動がここまで来ておるということは、やはり何と言いましても歴史的なものがございまして、四回に亘る
仲裁乃至は
調停案というものが、ただの一回も満足に履行されたことがない、こういうことがおのずから
国鉄労働者に非常に根強い
不満となり反擾とな
つていることは疑いを容れないところでありまして、今回
風水害があり、いろいろと国費の使用につきましてもおのずからなる限界があるということは万々
承知をいたしましても、やはりこれではならん、こういうふうな
考えがいたすわけであります。
第二番目は実際の
銭勘定をいたして見まして、
政府案なるものと私
どもの
考え方は
銭勘定いたして見たところ第二番目に書いてございますように、余りにも昨年と比べて
手取り額が少うございます。昨年は十一月、十二月の
裁定の
はね返りを見ますと
平均二万円でございました。本年は一カ月分でございますから大体一万四千円にしかなりません。
政府としても一割以上の
物価の高騰があることを昨年以来認めておりますから、二万二十円支給されて初めて昨年と同額になります。そういたしますと、まさに八千円の
相違が
実質上昨年と今年とあるわけでありまして、この
物価がいろいろ上
つております今日、八千円の
相違が昨年とあるということにはどうにも
生活の年末年始のやりくりができないということを口口に
国鉄労働者は訴えておるわけであります。
第三番目には
公務員と
公共企業体との間に
手当について
予算の
相違があるということであります。この点も
各位御存じの
通りに歴史的な
因縁がございます。最初は
一緒だ
つた、二十五年から違うように
なつた、それで非常にこれはおかしい話だということで
各位の御
協力を頂きまして、本年二十八
年度より
手当の額については
公務員と
公共企業体が
一緒に
予算が組まれたわけであります。ところが今回の
補正予算編成に際しまして〇・二五の
相違でありますが、この私は〇・二五云々を申すのではなく、本質的に歴史的な
因縁があ
つて、本
年度より
同一に
なつたものをなぜここに変えるのか、まさにそれは朝令暮改ではないかということを
痛感いたすわけでありまして、この点が第一番目に
国鉄労働者の最も
不満とするところであります。
四番目と五番目につきましては直接本
裁定の問題とは関連はございませんが、併し
生活苦の
立場から申しますると、
物価の引上げが不可避のような
状況に
政府の
補正予算としはな
つておるわけでありまして、
政府の
発表によりますと、
生計費への
はね返りは〇・八七%、約二百円くらいと言
つておられる模様でありますが、これは主として
マル公の米の問題が主であるようでありまして、どなたの家庭におきましても
闇米の若干の
購入或いは
うどん等の
購入につきましてはあり得ることであります。それを平たく
計算いたしますと、五百円、大きい
家族につきましては千円の圧迫になります。
平均今回千円の
ベース・
アップに比しましてはこれは
ベース・
アップは無意味になろう、こういうように
痛感されるのであります。
第五番目はすでに
政府として二十九
年度の
予算でやると、こういうふうに
新聞で伝わ
つておりますが、首切りの話がございます。これらのことを
考えまして
国鉄労働者としては
政府が先月の終り頃に、中旬でありましたか、一月から一カ月分ということにおき
め願つたことについて、なお且つ歴史的な
立場から申しましても、
手取りから申しましても、これではや
つて行けない、
仲裁裁定の
完全履行ということを
是非ともこの際再度
政府にお
考えを願う、こういうようなことを
痛感いたしました。さりとて私
どもは
政府に対し或いは
国会に対し闘争いたしておるわけでは毛頭ございません。常に
団体交渉を通じ、公労法の示すところに従いまして、
国鉄総裁に対しまして
団体交渉をいたしておるわけであります。併しながらその
団体交渉は少しも進展をいたしません。
国鉄当局はこれが今
予算の
審議中であるということに籍口いたしておりまして、
団体交渉の当事者たる
能力を逃れようというふうな形にな
つておるわけであります。とにかく我々としてはやはり
団体交渉の相手方は
当局側でございますから、何回も何回も
団体交渉で
当局側が誠意のある具体的な
数字を出すことを迫
つておるわけでありますが、この際申上げたいことは、
国鉄労働者の
賃金の問題でございます。
只今一万三千四百円
ベースとな
つておりますが、これが率直に申しまして
国鉄労働者の
労働の質と量に見合う
賃金とは
考えられないのであります。なぜならば端的に例を引きますと、
仲裁裁定が
理由書においてそのことを示しておるわけであります。本来
国鉄労働者にはこれだけの
賃金をやるべきではあるが、という前提を常につけておるわけでありまして、試みに昨年の
裁定を繙いて見ますと、本来ならば八千五百円以上を妥当と認めながら、
国鉄の
支払能力を考慮してあえて八千二百円と
裁定した、これが昨
年度調停案の
基礎と
なつたものである。而も今次
裁定は、昨年の
裁定は単に昨
年度の
賃金をそのまま本
年度に引直したものに過ぎない、更に四月から
実施するのであるけれ
ども、これを
財政上時期を遅らす、こういうふうに
国鉄の
賃金というものは
財政的見地から、
労働の質と量に見合わない
賃金が常にきめられております。遡りますと二千九百二十九円、あの当時、重大問題となりました当時
国鉄労働者の
賃金は三千二百円でございました。
一般と三百円
相違があ
つたのでありまして、本来ならばこれが
只今の
賃金四倍とみなしましても一千二百円の
賃金格差が
労働の質と量に見合う
賃金だと、当時の
状況から見れば科学的に言い得られるのでありますが、今回の
賃金は
国鉄が一万三千四百円、電通の
諸君が一万三千五百円、専売の
諸君が一万三千一百円という
実情にあります。而も
勤続年数、
家族構成或いは学歴或いは
平均年齢ことごとく
国鉄労働者が一番率が高いのでありまして、これを以てするならば、現在
国鉄労働者の
賃金は一番低い、こういうことが言い得られるかと思うのであります。
昇給につきましても又同じであります。
公務員諸君は年四回の大体において一〇〇%の
昇給、
国鉄労働者は年二回の約七〇%の
昇給率にな
つておるわけであります。
旅費について又然り、
定額は
公務員の
定額旅費よりも
国鉄労働者の
旅費の
定額は低いのであります。ことほどさように
国鉄労働者の
賃金というものは極めて低きに失しておると
痛感せざるを得ません。然りとするならばなぜこのようになるのか、問題は
仲裁理由書にもありますように、
財政的見地、
財源がない、こういうことに一言に尽きるのであります。この
財源のあるないという点につきましてこれから私が
お話をいたしますと、先輩の
権威者の
皆さんに対しましてはまさに釈迦に説法の嫌いを免れません。併しながらそれにおいてなお且つ
国鉄労働者がこの問題に関してどう
考えておるかという点につきましては、
是非暫らく時間を頂きたいと思うのであります。
国鉄労働者は例えば新線の
開発につきましては非常に熱意を持ちまして地方のおかたと
協力をしてこれを
実施いたしております。
御存じのように、二十八
線区の
新線開発が行われまして、本年
建設公債を以て、一部
他人資本を以て賄うにいたしましても、多くの
費用を
国鉄の
自己資本から投入しなければなりませんし、且つは又営業、開業いたしまして十年乃至は二十年の間というものは
赤字を伴うことは火を見るよりも明らかなところでございます。こういうふうな問題はことごとく
国鉄のいわゆる
独立採算制の範疇の中で
犠牲を与え、
国鉄の資金に更に
赤字を加えるのは言うまでもないところであるわけであります。又
飜つて本年度仲裁裁定で申しておりまするように、非
採算線と申しますか、現在二百三十余の
線区の中で
採算のとれるものは一割に満たない、こう言
つておるわけであります。過般
国会を通過いたしました
私鉄補助法を仮に
国鉄に当てはめて見ると、百五十億くらいの
補助が
国鉄にされて然るべきだと、こういうことも
理由書で申しておるところであります。又
運賃の問題がございましよう。
運賃は確かに安いことはこれは誰しも認めるところであります。問題は併しその
運賃というものが
国会で
皆さんがおきめ下さいまして、妥当なるものとして今日社会政策的に或いは
物価政策的にこれがきめられており、このことは新
線開発等をも含んで
公共企業としての、
国家企業とし、ての骨格をなす本来のものとして認められておるところであろうと思うのであります。ただ問題は、この
新線開発なり
運賃というものは正しいという観点に
国鉄労働者も立
つておるわけでありますが、その正しいことが一体そのままに放置せられておりまするから、所詮その
犠牲、しわ寄せというものは
賃金の面にはね返
つて来ることは論を待たないところであろうかに思うのであります。この点につきましては、我々としては当然
西ドイツ等において行われておりますと聞いております
公益命令制度というふうなものにおいて
国家保障をさるべきではないか。ここのところが
根本が
解決をいたしませんと、毎年々々
財源問題に
国鉄は直面をいたし、問題の
解決というものは毫も
前進をしないということを
痛感をいたすものであります。本
年度は
国鉄にも
風水害が甚大な
犠牲を与えまして、
国鉄労働者が営々として働きましたこの
予定収入目標を遥かに突破した額、或いは節約した額、こういうものも相当多額に亘
つておるにもかかわらず、
仲裁の
理由書で言
つておりまするような
水害さえなか
つたならば、
国鉄の
裁定はとにもかくにも曲りなりにもできた、こういうことを
理由書で言
つておるわけであります。一体
水害という問題というものは、我々の
努力の結果をまるつきり取
つてしまう、こういう性格のものでありましようか。
曾つて熊ノ平で事故が起りまして、
山崩れで
鉄道が不通になりました際に聞き及びましたところによりますと、
山崩れの
修理費用は
一般の
予算で、
鉄道の被害は
鉄道の
費用で、こういうことにな
つてお
つたのでありますが、こういうことも我々としては
理解し
がたいところであろうかと思われるのであります。問はよく
国会におきましても
皆さんから御
質問が出ることは、お前
がたは働いておるのか、お前
たちは働かずに当然の
権利として
主張すべきときばかり
主張するのではないか、こういうふうな疑問でございます。この点につきましても、
先生がたの御
意見を十分に本
年度は
理解をいたしまして、一体
自分たちがどういう働きを示したのかという点について科学的な分析を
国鉄労働者として
行なつたわけであります。これがいわゆる
戦前復帰賃金要求という形にな
つて現われて参りました。私
どもの推算いたしますところでは、
戦前に比べて
労働生産性が一二七に達した、で仮に
基準法による
労働時間、この緩和を
計算に入れて一一〇と推算し、更に一一〇の
実質賃金の
要求はいろいろな
事情もある、
人口の増加もあろうから、せめて
戦前と同様の一〇〇の
賃金を
要求する、これが私
どもの
要求の根幹と
なつたものであります。
仲裁委員会におきましてはこれに判定をいたしまして、
当局の
主張をも併せ抽象的ではありますか、
調停案の金額と
同一にいたしました。終戦後私
ども国鉄労働者に対しましては、社会的に或いは
当局から或いは
政府から或いは各政党から一時も早く
国鉄の安全に、正確に、迅速に、という
戦前の
国鉄の
状況を再現するようにという熾烈なる
要望がございました。その点に鑑みまして我々もいろいろな御批判はございましようとも、多くの
努力を自主的にいたしたつもりであります。それが今日私
どもは
戦前に復帰した。そうして
公共企業体になりまして以来、働いたもりは必ず
諸君のためになる、こういう
公社当局の
主張に対しまして、諒としし必ずや報いられるところあると
確信をして今日まで来たものでありまするが、遺憾ながら
賃金の
実績は最も低く、常に
財政問題について我々の
主張は容れられない、こういう
実情にな
つておるわけであります。もとより今回
国会におきまして波瀾を起しました
鉄道会館の問題を初め多くの問題につきまして、
国鉄内部においているく考うべき
経営上の問題があろうかと思います。この点につきましては我々としても多くの
主張をいたすべき点を明らかにいたしておりまするが、併しそれが今日の
国鉄の
経営の
財政的問題の
根本的解決には、やはり私率直に申しまして
根本的解決にはならないのではないかという点を
考えるわけであります。こういう点から
国鉄労働者としては今日極めて熾烈なる闘争を展開をいたしました。昨日の晩も
国鉄当局といろいろ
団体交渉をいたしておるわけでありますが、どうにも
前進をいたしません。我々としては更にこの問題につきましては
仲裁裁定の
完全実施なり或いは一・五カ月分の年末
要求のために全
努力を挙げたいと思
つておるわけであります。本
委員会におきまして冒頭申上げました御
決議はもとより、衆議院の
公聴会におきまして各
学識経験者が口を揃えて
政府に
裁定の
実施を迫るべきだ、やるべきだと迫られたという点につきましても、私
どもとしては心強き限りであると
考えております。事態は極めて困難ではございますが、今日
只今におきましても私は円満な
解決というものが必ずや
国会の
皆さんがたの御
努力によりましてあり得べきものと
確信をいたします。又それでなくてはならんと
確信をいたしておるわけであります。どうか御
審議を願いまして、私
どもの
要望が達成せられるように格段の御配慮をお願いいたしまして、私の御報告を終る次第であります。