○菊川忠雄君 私は、
日本社会党を代表して
政府の
施政方針について
総理大臣初め
関係大臣に
質問せんとするものであります。
本年春以来米ソの対立
関係は著しく調和に向
つて動き、国際情勢は、つゆ空に太陽を見るごとく、久しぶりに平和の光を認めることができたのであります。特に朝鮮における停戦協定の成立は、第三次世界大戦の防止と世界恒久平和の確立を念願とするわれわれ平和愛好
国民の上に大きなる希望を投げ与えておるのであります。しかしながら、われわれは手放しの楽観をも
つて平和を待望することはできません。国際共産主義勢力は、民主主義諸国に対し、いわゆる平和恐慌による
経済混乱と社会不安の起ることを期待いたしまして、暴力革命と間接侵略の機会をねらつおるのあります。われわれは国内における平和態勢の確立こそが今日緊要であることを痛感いたすのであります。今日、西欧民主主義諸国は、かかる国際情勢に対応して、それぞれ国際
関係の平和的な
処理、
国民生活の安定、
産業平和の確保並びに
自立経済の確立に努め、も
つて貿易の改善振興に全力を傾倒し、着々成果をあげつつあることは御
承知の
通りであります。この時にあたり、
日本もまた内外一貫した施策を断行し独立達成の基礎を築くことに立ち遅れることをいたしますならば、永遠の禍根を残すものと言わなければなりません。(
拍手)
〔
議長退席、副
議長着席〕
しかるに、
政府の
施政方針の中には、かかる積極的施策の片鱗だに見ることができないのであります。相もかわらぬその都度
政策に終始しておることは、はなはだ遺憾と
考える次第であります。
そこで、私は、まず
総理大臣からその
所信のほどを承りたいのでありまするが、か
つて朝鮮事変は天恵であると申した
総理大臣を持つところのわが
日本は、その間八億七千万ドルの特需外貨収入に依存してその日を過しましたが、一旦朝鮮停戦成立後の今日は、これにかわる何らの備えもなく、
政府の
経済自立はから念仏に化し、国際
水準を上まわる高
物価は解決されず、貿易は赤字続きで、
日本経済は底知れぬ不況の入口に立
つておるのが
現状であります。完全失業者は表面五十万人でありまするが、これに不完全就労者を加えれば、
政府統計によ
つても約一千万近いものと推定をされるのであります。
国民消費生活の面では、エンゲル係数のごときは五〇%の高きに固定をしたままでありまするが、これに加えて
消費者米価の
引上げ、運賃、
郵便料金などの
引上げが行われんとし、しかも
社会保障制度の確立のごときは今日なお見るべくもないのであります。春には春季闘争、夏の夏季手当要求、秋季闘争に年末手当要求、今日
吉田内閣のもとにおきましては、労働紛争は年中行事の
一つと化しておるかのごとき観を呈しておるのであります。しかも、訴うるに道なきところの
中小企業者は金詰まりと重税に悩み、農村は低
米価のために悩んでおるのであります。かかる現実をみずからの手によ
つてつくり出したものは
吉田内閣であることは言うまでもございません。(
拍手)しかるに、政権担当五箇年、
政策にして正しければ、この期間は
実績を上げるには十分の年月であるはずであります。
吉田内閣の今日は、まさに枇政、悪政の堆積の上に気息えんえんとして横たわ
つておるところの姿ではありませんか。(
拍手)しかるに、最近
政府は、みずからが
政策行き詰まりの結果政界の不安定を来しておることに対して反省せずして、
国会切り抜けのために多数派工作に狂奔いたしまして、他党の抱き込みと切りくずしにうき身をやつすがごときは、民主選挙における
国民の信託にそむき、
日本民主政治の歴史に汚点を残すものであります。(
拍手)
総理大臣は、かくまでして、なおそれをも
つてして、はたしてこの行き詰まりを打開するところの確信を今日お持ちであるかどうか、まずこの
所信を伺いたいのであります。
なお、この機会に、それぞれの
関係大臣に対しまして、この底知れざるところの不況打開の
対策、また
物価引下げの実現の方策いかん、さらに、失業の解決と
産業平和の確保についての
政府の
対策いかん——。ことに今日青年を失望と卑屈に導いているものは就職難と失業の不安であります。かような状態が続きますならば、今日の独立
日本の将来は危険であると言わなければなりません。(
拍手)もし、かかる青年が一歩誤るならば、矯激なる思想に走るところの原因ともな
つておるのであります。
一体、
政府は、かかる重大なる失業問題の解決に対しまして、現実に、たとえばここ一年間にいかなる雇用の増大についての具体的な案を持
つておられるか、お示しを願いたいのであります。(
拍手)
社会保障制度のごときは、今日までいわゆる後進国といわれた諸国においても、この
実施が急がれておるのでありまするが、何ゆえこれが今日声ばかり大にして
実施ができないのでありましようか。先ほど、勤労大衆の減税につきましては、
大蔵大臣からも御
答弁がございましたが、
税制調査会の
答申案、四人家族月収二万円以下の免税につきましては、容易ならぬ問題があるので研究をしなければならぬという御
答弁であるのでありまするが、はたしていかなる点に容易ならぬところの研究すべき問題があるのか、特に御
答弁を煩わしたいのであります。(
拍手)
MSA協定に関する日米交渉でございまするが、すでにこれは基本的な妥結に到達して、
日本政府は、MSAの援助の
内容についても、これが軍事援助以外の何ものでもないこと、ほとんどその大部分が期待に反して完成兵器の供与であること、及び域外買付のごときも予期する
程度ではなかつたということにつきましては、これを確認をしておることは周知の事実でございます。さらに、池田・ロバートソン会談においては、これに幾分の
経済的な援助の粉飾を施すために意図されたものと見るのでありますが、小麦援助の引きかえに厖大なる
防衛計画遂行のある種の話合いを持ち帰
つておることは、これまた隠すことのできない事実であると言わなければなりません(
拍手)しかも、この小麦援助は、結果におきましては、
日本国民の収奪によるところの防衛
資金の蓄積でありまして、さらにその
資金の運営はアメリカ顧問団の手に握られるのでありますからして、
日本独立の将来に対しまして、永久に内政干渉の拠点を築かれるところのおそれなしといたさないのであります。(
拍手)これらの重大なる事柄が現実に進行しつつあるにかかわらず、これが
国会に報告されない理由はどこにあるのでありましようか。この点をまず
お尋ねいたしたいのであります。
今日、保安庁
当局の構想する
防衛計画の
一つの案によりますれば、陸軍十七万ないし二十二万、海軍十四万トンないし十六万トン、空軍一千機ないし一千五百機、これが所要
経費は、陸軍兵一人
当り初
年度百万円で、次
年度から三十万円、フリゲート艦一隻千六百トン級で二十四億円、ジエツト戦闘機一機
当り二億円
程度と見ておりまして、最低案におきましても総額一兆億を優に越えるところの巨額であるのであります。池田・ロバートソン協定の
防衛計画なるものは、おそらくこれに倍するものであることは推察にかたくないのであります。このように、
国民の犠牲において、しかも国力の限界を越えるがごとき再軍備を前提とするMSA交渉が現実に進行いたしておりますのに、これを
国民と
国会の前に報告しないのは、秘密外交、
国会無視もきわまれりと言わなければならないのであります。(
拍手)
外務大臣は、昨日の報告におきまして、MSA交渉は目下
防衛計画との調整をはかる途中にあると言われたのでありまするが、しからば、
政府は、いかなる
防衛計画をも
つてアメリカとの調整をはか
つておるのであるか。言わずして事実を暴露いたしておるのであります。あるいは、いかなる
防衛計画をも
つて調整に当らんとい
たしておるのであるか、責任ある
答弁を要求いたすのであります。
さらに、MSAは、今後の国際情勢の推移いかんによ
つては、これがアメリカにおける
予算の削減あるいは部分的打切りにかわることも予想されるのであります。米ソ
関係の対立激化の途上においてできたところのMSAであります。従いまして、米ソ
関係の緊張緩和の将来におきましては、このまま続くという保障はどこにもないはずであります。しかも、軍事
負担の
軽減は各国
国民の要望でありまして、アメリカ
国民またこの例外ではございません。しかるに、
日本は、MSA援助を今から当て込んで厖大なる
防衛計画を構想し、防衛生産の拡充を進めようとするのでありまするが、一朝国際情勢のかかる急転に直面いたしますならば、官本
経済は恐るべき破綻に乗り上げることを覚悟しなければならないのであります。(
拍手)わが党は、今日こそは再軍備よりは
経済の自立と
国民生活の安定を進めるべきところの好個の条件を備える段階であると
考えるのであります。
従つてMSA受入れのごときも反対いたすのでありまするが、
政府は、かかるMSAの受入れをなし、これを取組もうという場合におきましん、はたしてこの将来につきまして、いかなる確信と見通しをお持ちであるのか。このことは特に官本の運命のわかれるところと
考えますので、何とぞ
総理大臣の明快なる見解を伺いたいのであります。(
拍手)
なお、
総理大臣に対しては、この機会に、MSAの受入れと再軍備の関通について二、三の点を
お尋ねいたしたいと存じます。
吉田総理大臣の再軍備問題に関する発言の記録を一覧いたしたのでありまするが、
昭和二十一年六月、本院における帝国憲沫
改正案の説明に当られた際には、憲法第九条は
改正案の大角な眼目であると言い、また憲法の規定は、一切の軍備と交戦権を認めないから、自衛権の発動としての戦争も放棄しておると述べておられるのであります。しかし、
昭和二十六年十月、本院本
会議において、今ただちに再軍備せよと言
つても国力が許さない、また再軍備をするがためには完全なる再軍備をせねばならないと述べておられるのであります。さらに、越えて
昭和二十七年三月、参議院
予算委員“会において、たとい自衛のためでも戦力を持つことは再軍備であ
つて、その場合には憲法の
改正を要する旨を断言しておられるのであります。このように見ますると、
吉田内閣は、
吉田総理大臣は、一方には憲法の擁護者として再軍備に反対し、他方においては再軍備の待望者として戦力なき軍隊の育成をや
つておることは、何人も認めざるを得ないところの事実であるのであります。(
拍手)
そこで
お尋ねをしたいのでありまするが、第一に、MSA受入れに伴う
防衛計画の拡充は、
日本の現在の
経済力で許される範囲とお
考えであるかどうか。第二に、先ほどの御
答弁からすれば、この
程度の防衛力はまだ戦力でないという御見解であることが想像されるのでございますが、しからば保安庁法の
改正案は、
総理大臣がか
つて帝国憲法
改正案の説明に当られた際に言明された憲法第九条の規定と矛盾しないというお
考えは今日お持ちであるかどうか。この点をお伺いいたしたいのであります。さらに第三に、かかるとき、あたかも先般ニクソン副大統領の来朝があり、
日本の非武装憲法についての発言が行われておるのでありますが、
吉田総理大臣のこれに対する見解を、この本院において正式に御発表願いたいのであります。われわれは、
日本の憲法が占領中につくられたものであるにしろ、そごに盛られた
内容は、恒久平和を念願する
日本国民の総意の結晶であると信じておるのであります。
従つて、断じてこれを擁護すべきところの立場に立
つておるのでありまするが、先ほど
総理大臣もまた憲法擁護を力強く叫ばれておりますけれ
ども、今までの
総理の二つの面における言動からいたしますならば、はたしていかなる
程度の憲法擁護であるかを、もう一ぺんお伺いいたしたいのであります。
今次の
補正予算案は、先ほど細迫議員からも御指摘がございましたように、
公務員給与改訂及び年末手当、
公共企業体の
仲裁裁定実施、
消費者米価の値上げなどに大きな問題を持つものでありますが、これらにつきましてはすでに今まで
質疑応答がかわされておりますので、なおかつ私が
考えるところの
政府の
措置についての不合理であると認める点につきまして、二、三の
質問をいたしたいと思うのであります。
公務員の
給与改訂その他の財源を諸
物価の
引上げとからみ合せているのでありますが、これは明らかに
財政膨脹の原因が
公務員などの人件費の
引上げにあるかのごとく、これを
国民に印象づけようとするところの謀略であります。(
拍手)これは明らかに来るべき行政整理、首切りの伏線とわれわれは警戒いたすのでありますが、はたしてかような意図なしということを明らかにされるかどうか、もしかような意図がないとするならば、保安隊並びに防衛
関係の諸
経費のごときは多くの未使用分を残しておるのであるし、またおそらく昨
年度の、ことく本年も繰越分が出るのでございましようが、これになぜ手をつけないのであるか、今日この防衛
関係の諸
経費ははたして本
年度中に使い切るというところの見通しをお持ちであるかどうか、このことをあわせて
大蔵大臣に
質問いたしたいのであります。
人事院勧告につきましては、今日まで
勧告は数次発せられましたけれ
ども、常に
吉田内閣のもとにおきましてはこれが骨抜きにされ、完全
実施を見たことはないのであります。かような点からいたしますならば、
公務員法はその福利増進を目的とするところの立法本来の存在意義を失いつつあるとわれわれは断定せざるを得ないのであります。のみならず、いたずらに
公務員の労働基本権を剥奪して、そうして封建的な雇用従属の
関係を強制するところの弾圧法規として変質しつつあるということをわれわれは
考えるのでありますが、これについて、
労働大臣あるいは人事院総裁は、このような感じをお持ちに
なつたことがないかどうかにつきましてお伺いをいたしたいのであります。お持ちにな
つておるとすれば、これに対する責任、あるいはこの法案に対する何らかの
措置、かようなことを研究しておられるかどうか。このことをお伺いいたしたいのであります。
特に今回の
給与ベースの
改訂の
実施にあた
つては、先ほ
ども細迫議員からの御指摘がありましたが、表面一
通り人事院勧告の増額を通しておりますけれ
ども、見のがすべからざるところの欺瞞的なからくりがひそんでおることは、われわれがこれを指摘するだけでなくして、すでに大新聞において早くからこれが問題として取上げられて参
つておるのであります。
政府は、第一に、何がゆえに
ベース改訂と
関係のない、明らかな定期昇給であるものや、差引増減のない地域給の本俸切りかえ分を、今回の
ベース・
アップ分とみなすのであるか。これにはいかなる根拠があ
つてしておるのであるか。もしこのようなことが行われるといたしますならば、上の行うところ下これにならう。今日民間一切の雇用契約におきましては、もはや雇用契約における定期昇給の規定はあれどなきがごとく、使用者の意のままになるという恐るべき
影響をわれわれは感じなければならないのであります。
第二に、これらのからくりの結果、実際に
ベース・
アップの結果は、
勧告における一三・九%に対しまして、弘ずかに四ないし五%にすぎないのであります。本来、
人事院勧告の所要の財源は一—三月分だけを見ましても百五十億円であるのでございますが、今次の
補正予算におけるところの
改訂費は八十二億でありまして、その間に百倍円以上の大差が生じておることは明暗でございます。この問題について、
大蔵大臣及び
労働大臣並びに人事院総裁は、それぞれの立場において、その見解を明らかにするところの責任があろうかと思うのであります。ことに人事院総裁に対しましては、一三・九%の増額
勧告が現実には四ないし五%にな
つておるというこの事実に対して調査をじておられるかどうか、その結果いかなる認識をお持ちであるか、このことをあわせて明瞭にされたいことを望むのであります。
次に、
仲裁裁定の
実施につきましては、先ほど来いろいろの御議論があつたのでありまするが、先ほど
労働大臣は、この
裁定の
実施については
国会の審議権を拘束することができないと言われまして、これとの調整について見解を述べられたのであります。しかしながら、
仲裁裁定におきましては、いかに
公企労法を見直しましても、この
仲裁裁定を
政府が取扱う場合において、これを完全
実施の立場から
予算に盛り込んで
国会の審議を求めるか、さもなくば、この完全
実施が不可能の場合におきましては、不可能なる理由を付して
裁定案を
国会に送るか、この二つの道しかないのであります。一部
実施を
予算化するがごときことは、この法案のどこにも許されるところではございません。(
拍手)従いまして、
国会の審議を尊重するといたしますならば、この二つの道のいずれかをとればよろしいのであります。あえて一部
実施を
予算化いたしまして、これを
国会の審議にゆだねるが、ごときことは、法を蹂躙し、さらに憲法の精神を蹂躪し、さらに
国会の審議をも曲げようとするところの恐るべき反動
傾向であるのであります。(
拍手)われわれは、かような点からいたしまして、これらの問題につきましては、この重大なる問題、全
公務員と全
公共企業体の
労働者が関心を持
つておるこの問題に対しまして、何とぞいま一度納得の行くところの責任ある
答弁を望みまして、私の
質問を終る次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕