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1953-12-08 第18回国会 衆議院 農林委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月八日(火曜日)     午前十一時三十五分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君    理事 佐竹 新市君 理事 安藤  覺君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐々木盛雄君    佐藤善一郎君       佐藤洋之助君    庄司 一郎君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松山 義雄君    吉川 久衛君       加藤 高藏君    井谷 正吉君       芳賀  貢君    川俣 清音君       中澤 茂一君    河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         食糧庁長官   前谷 重夫君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局局長官         房総務課長)  熊谷 典文君         大蔵事務官         (主計官)   柏木 雄介君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農 林 技 官 鈴木 繁男君         特許庁長官   石原 武夫君         通商産業技官         (特許庁審査第         二部長)    大野  晋君         通商産業技官         (特許庁審判部         長)      山本  茂君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君         建 設 技 官         (河川局治水課         長)      山本 三郎君         参  考  人 中川 常吉君         参  考  人 松浦喜一朗君         参  考  人         (松浦化学工業         株式会社取締         役)      谷岡 美雄君         参  考  人         (埼玉澱粉工業         株式会社取締役         社長日本人造米         協会会長)  籠島 誠治君         参  考  人         (葛原工業株式         会社社長)   竹内 寿恵君         参  考  人         (全国合成米協         会会長)    倉地友次郎君         参  考  人         (財団法人人造         米協会会長)  小浜 八弥君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 十二月七日  委員平野三郎君及び松野頼三君辞任につき、そ  の補欠として秋山利恭君及び田子一民君が議長  の指名委員に選任された。 同月八日  委員田子一民辞任につき、その補欠として庄  司一郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月四日  消費者米価すえ置きに関する請願片山哲君外  一名紹介)(第八〇号)  同外一件(西村力弥紹介)(第一三一号)  同(松原喜之次紹介)(第一三二号)  二重米価制度確立等に関する請願西村力弥君  紹介)(第一二九号)  生産者米価引上げに関する請願松原喜之次君  紹介)(第一三三号)  同(西村力弥紹介)(第一三四号) 同月五日  消費者米価すえ置きに関する請願鈴木茂三郎  君紹介)(第一五九号)  同外二件(中村高一君紹介)(第一六〇号)  同外一件(淺沼稻次郎者紹介)(第一六一号)  同(加藤勘十君紹介)(第一六二号)  同(菊川忠雄紹介)(第一六三号)  同(三輪壽壯紹介)(第一六四号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第一六五号)  同外二件(神近市子紹介)(第一六六号)  同(山口シヅエ紹介)(第一六七号)  同(河野密紹介)(第一六八号)  同(熊本虎三紹介)(第一六九号)  同(帆足計紹介)(第一七〇号)  同(島上善五郎紹介)(第一七一号)  同(上林與市郎紹介)(第一七二号)  同(西村力弥紹介)(第一七三号)  同(花村四郎紹介)(第一七四号)  同(菊池義郎紹介)(第一七五号)  生産者米価引上げ等に関する請願松原喜之次  君紹介)(第三六三号) 同月七日  消費者米価すえ置きに関する請願西村力弥君  紹介)(第四五三号)  同外一件(神近市子紹介)(第五〇八号)  同(淺沼稻次郎紹介)(第五〇九号)  同(山花秀雄紹介)(第五一〇号)  同外一件(中村高一君紹介)(第五一一号)  同(日野吉夫紹介)(第五九九号)  消費者米価すえ置き等に関する請願三浦一雄  君紹介)(第四五四号)  同(西村力弥紹介)(第四五五号)  同(西村力弥紹介)(第四五六号)  昭和二十八年産米に関する請願外七件(只野直  三郎紹介)(第五〇七号) の審査を本委員会に付託された。 同月五日  昭和二十八年産米価に関する陳情書  (第六五号)  本年産米価に関する陳情書  (第六六号)  本年産米価等に関する陳情書  (第六七号)  昭和二十八年産米価値上げに関する陳情書  (第六八号)  昭和二十八年産米価等に関する陳情書  (第六九号)  同  (第七〇号)  同  (第七一号) 同月七日  米の消費者価格値上げ反対等に関する陳情書  (第七八号)  消費者米価値上げ反対陳情書  (第七九号)  米の消費者価格値上げ反対等に関する陳情書  (第八  七号)  消費者米価値上げ反対陳情書  (第八八号)  同  (第八九号)  同  (第九〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任の作  閉会審査申出に関する件  農業災害補償制度に関する小委員長より中間報  告聴取の件  林業に関する小委員長より中間報告聴取の件  人造米に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  農業災害補償制度に関する小委員長より、小委員会調査経過について中間報告をいたしたいとの申出があります。これを許します。足鹿小委員長
  3. 足鹿覺

    足鹿委員 小委員会経過中間に御報告申し上げたいと存じます。  昭和二十一年農業災害補償制度発足以来、今日までおよそ六年の歳月を経過し、累次の農業災害発生に対処して、本制度が相当の効果を発揮して参りましたことは、何人もこれを信じて疑わないのであります。国はその間において、実に数百億円の財政資金を投下し、また制度自体につきましても、ほとんど毎国会ごと改正の手続をとり、農家掛金負担の軽減をはかる等、その改善方向を求めて来たのでありまするが、翻つて顧みまするに、本制度が終戦後早々のうちに発足しましたことに端を発し、戦後における経済事情の激変、大災害累年的発生等事態に即応し得ない内部構造面における弱点、あるいは運営上の不手ぎわがあることを否定できず、国並びに連合会における赤字の累積、損害評価、あるいは掛金の掛捨て等に基因する農家不満となつて、現制度に対する批判的空気は逐次拡大的に表面化いたし、もばや今日におきましては、単なる弥縫的手段をもつてしましては、とうてい当面を切り抜け得ない事態に立ち至つておるのであります。そもそも農業共済制度根本改正の問題は、第十三国会当時すでにその必要性が痛感され、その審議のために小委員会が設置せられたのでありますが、その改正事業たるや各方面に及ぼす影響も甚大であり、本質的に複雑な問題を含んでおります関係もあつて、その審議ははかばかしくは進捗せず、第十六国会に持ち越されておつたのであります。同国会において引続き小委員会が設置され、私がその小委員長指名を受けたのでありますが、当時たまたま関東を中心として発生しました凍霜害対策を講ずるにあたり、二十八年度麦、水稲共済掛金国庫負担増額蚕繭共済蚕期別共済については完全に意見の合致を見たにもかかわらず、行政庁監督権強化問題等に関連するところの農業災害補償法の一部改正点をめぐり、衆参両院決定内容が異なり、その調整のため、七月二十四日両院協議会を開催する事態に立ち至りましたことは、各位の御承知のごとくであります。その際、各党を網羅するわが衆議院側協議委員が、参議院側修正点を承認するにあたり、その同調を得て作成した申合せ事項は、一、農業災害補償制度については、その抜本的改正の必要であることを確認する、二、政府は二十九年度水稲を目途として制度根本的改廃を行い、農業災害補償に対し完全なる施策を講ずること、三、衆参両院は、制度の完璧を期するため、閉会中もなおその調査を継続し検討することという内容のものであり、同申合せをただちに農林委員会に御報告いたしまして、各位の御了承を得ましたことは、いまなお私の記憶に新たなるところでありまするが、かくして農業共済制度は、これを抜本的に改正すべしとなす両院の意思は示され、爾来われわれは全力をあげてその改正に着手することとなつたのであります。  そこでまずわが小委員会としましては、そこに至る準備段階として、現制度の仕組みを細部にわたつて的確に把握しまする必要を認め、農林省に対しまして資料並びに説明を要求することとし、その第一着手としまして、七月二十一日農業災害補償制度に関する基本問題につき、経済局長小倉武一君より一般的な説明を聴取したのであります。     〔委員長退席金子委員長代理着席〕  次いで両院の小委員は、さき両院協議会申合せの線に沿い、八月中旬第一回の打合せ会を開き、二、三の方針を決定いたしました。その内容は、一、農林省は八月中に問題点を整理して、九月の第一回合同小委員会において説明すること、二、改正の基本的な方向について二、三の案を準備し提示すること、三、両院合同小委情勢に応じ今後合同して審議に当り、最終段階においてさらに合同小委を開くこと、四、学界の意見を聴くことという趣旨でありました。しかして右の申合せの線に沿い、その後一箇月間の調査研究期間を置きまして、九月一日第一回の合同小委員会を開きまして、農林省より農作物共済中心とする農業共済制度に関する諸問題とその対策検討資料につきまして説明を聞いたのであります。同資料は、引受け単位共済対象損害評価掛金、掛捨て、補償の範囲と時期、防災施設事業主体等制度上の基本事項に関する現状、難点対策とその可否につきまして、農林省の率直なる見解を披擬したものでありますが、しかし遺憾ながら、多数の項目を平板に羅列したにとどまり、改正方向を体系的に打出すための資料としては、はなはだ不満足のものといわざるを得なかつたのであります。そこでわれわれとしましても、行政当局の微妙なる立場をも勘案し、われわれ自身において改正基本方針を起草する要を認めましたので、まず広く学識経験者意見を徴することといたし、委員会の御承認を得まして、九月三日、農林省農業綜合研究所研究員山内豊二、三重県食糧農政課長奥井亮三郎大阪市立大学商学部長近藤文二全国農業共済協会顧問松村眞一郎太陽生命参与南正樹の五氏を招き、それぞれの立場に立脚した意見ないしは主張を聞くこととしたのであります。ぐの陳述内容は、さき農林省説明を補足する意味からいつても、また問題を体系的に述べられた点からいつても、裨益するところ多かつたのであります。ここに一々その内容紹介することはいたしませんが、奥井氏が第一線行政官としての豊富な体験から、末端組合欠陥統計数字に基いてきわめて客観的に発言された点、また山内氏が大災害に対しては社会保障見地から救済する必要があるとともに、不安定地区安定地区とを区分して保険内容を異にする必要があるとせられた点、また近藤教授一般損害保険としてやれる部分を除いて、大災害については現行農作物保険農業所得保険とし、農業保険社会保障化を提唱せられた点は、委員各位注意を喚起した点と思われるのであります。  なお蛇足ながらこのさい特に一言付言しておきますれば、そのときおいでを願つた方々以外に、一般学界におきまして、農業保険ないしは農業災害補償制度研究に従事される学者がきわめて少いことを痛感したのでありまして、本制度進歩のため、一段と研究の深められますことを農村の立場を代表し、衷心より希望いたすものでございます。  さて小委員会といたしましては、この後九州の大水害に引続き、近畿方面の風水害が起り、また東北方面における冷害の様相がようやく深刻化し、閉会中にもかかわらず本委員会がその対策に忙殺された関係もあり、またこれまでの調査結果を整理検討する必要もあり、かれこれの理由からしばらく会議の開催を休むことといたしましたが、公聴会後約半月を統た第十七臨時救農国会の末期に近く、農林省より農業災害補償制度改正についての考え方が提示されましたので、引続き本案を中心検討を進めることといたしました。この考え方はきわめて集約された形で四つの試案を示しております。  その概要を申上げますならば、まず第一の案は、現行制度強制加入に伴う種々の難点を改めたらどうかということであります。その改め方につきましては、さらに二案があり、その一は、共済事業を実施するかいなかについて町村にある程度の自主性を与えようというのであり、その二は、町村共済事業が実施されることになつた場合には、共済金額等について自由選択制を取入れて行こうとするものであります。  第二の案と申しますのは、もつと補償内容を充実したらどうかということであります。しかしここで農林省が考えておりまする中身は、現行一筆単位では財政上からも補償内容引上げることは困難であるから、むしろ思い切つて現に実験中の農家単位共済に多少修正を加え、これを全面的に採用することにしてはどうかということのようであります。  第三の案としましては、損害評価を厳正的確に行うことにより、一方では財政上のむだを省き、他方では農家不満を解消して参ろうというのでありまして、その方法としましては、町村単位引受けを考えておるのであります。国の行政の及ぶ限界町村に置き、それ以下については、町村内部の操作にゆだねようというのでありますが、しかし町村農家との結びつき方についてのきわめて重要な、しかし困難な点には触れておらないのであります。  第四の考え方は、前三案と異なり、現行制度が、農業経営資金補償する建前となつておりまするものをまつたくひつくり返しまして、農家生活費、言葉をかえれば、労働の再生産の費用を補償する行き方に改めたらどうかというのでありまして、いわば都市勤労者に対する社会保障制度に近づくものでありまするが、しかし、一般営農対策との関係、あるいは損害評価上の難点等については何らその対策を用意しておらないのであります。  しかし以上のごとくこの農林省案は、きわめて抽象的ではありますが、従来の立場から一歩を進めたものでありまして、基本問題、対策資料、並びに考え方の三つの段階を通覧すれば、逐次問題をしぼりつつ改革の方向を模索しようとする努力のあとには見るべき進歩があり、またこれと併行して、農業団体においてもそれぞれの利益を代表する立場研究がなされ、われわれに対しても一、二の意見書が提出され、またむろん委員各位より口頭または文書をもちまして、構想なり、意見なりが開陳され、いずれも参考資料として重要なものでありました。  かくして逐次改正案の輪郭を描く域に近づきましたので、小委員長としましては、小委員各位に対しまして、小委員会原則的意見をとりまとめる時期が来たことを表明いたし、なるべく早い機会に各委員より原案を御提示あらんことを願つたのであります。  なほ冷害対策善後処理を兼ね、農業共済保険特別会計並びに県連合会及び基金財政上の処理に関する説明及び栃木県共済連合会不正事件の概貌を政府より聴取しましたが、この際足立委員より、改正案とりまとめ最終段階において、一段と慎重を期するため、共済団体第一線において働く方々の具体的意見を開くべきであるとの申出があり、ごもつともなる御要求でありまするので、委員会の御諒承を得まして、去る十二月四日、宮城県共済連合会長小野寺誠毅島根県連参事高橋政吉群馬県連参事黒沢豊作、長野県伊那町組合長松崎親助、静岡県小笠郡大阪村組合長山崎昇二郎の五氏を招き、御意見を拝聴するようとりはからうこととしたのであります。あらかじめおおよそ二十項目にわたる意見を求める要点を示し、またいたずらなる弁護論に終始せず、現制度に関する長所並びに欠陥を忌憚なく吐露せられたいことを強調しまして、意見の開陳を願つたのであります。公述内容を一々申し上げる煩は避けまするが、われわれの理解を深めました数点について特に申上げますと低被害地においては、掛捨てに関連する農民の不満は、意外に深刻であつて、単に掛金率の全体的引下げのみをもつてしては解決出来ない部面があり、これを放任すれば損害過大評価の誘因となり、やがて制度自体は崩壊のおそれがあること。従つて掛金総額の一割程度を目標とする無事もどし制度を確立するとともに、町村段階において備荒貯蓄制度を考え、町村内部の真の共済体制をとることが必要であること。なお農作物共済加入方式は強制以外には考えられず、保険を担当する機構自主的団体とし、その経営規模は一層拡大して経営合理化に努めねばならぬこと。また防災事業共済団体主体とすべきであつて、きわめて有効な活動を示しておる地方のあること。引受けは数段階災害なかりせば石数で行い、無事もどしを取入れること。任意共済はいかなる団体であるとを問わず、要は実費保険料でやれる団体に行わせること。  以上の諸点でありまして、体験より湧き出まする真摯かつ有益なる意見に接し、大いに傾聴いたしたのであります。  以上、小委員会としましては、ありとあらゆる方策を尽しまして審議に万全を期して参り、私が小委員長に就任後、会議を開くこと実に十四回、また公聴会三回、現地調査一回を行い、委員各位にも熱心な御勉強を願い、かつ小委員会運営方針としましても、最も民主的に、最も協調的な方針を堅持したつもりでありますことを、特に申し添えたいと存ずるのであります。  翌十二月五日、引続きまして小委員の参集を煩わし、数次の申合せ趣旨に基き、非公開で改正案立案の取扱いを協議しました結果、各委員より、この際諸般の情勢にかんがみ、今日までの審議の結果明らかとなつ問題点を取入れ、小委員長試案ともいうものを作成して小委員会に提示し、これを中心に討議し、最終結論に達しようとの方針が決定されたのであります。よつて小委員長としましては、この方針を体しまして、十二月七日、小委員長試案をとりまとめまして、小委員会席上において発表することにしたのであります。その内容は前文及びあと書きを除き、十原則の形にとりまとめたものであります。  以下、これを読み上げつつ、多少の註釈を加えることといたします。   農業災害補償制度改正に関する件   農業災害補償制度に関しては、おおむね次の基本的構想のもとに改正検討するものとする。  一、農作物、薬葉の災害について、保険により対処する面と、補償により対処する面とを保険数理的設計のもとに次の如く分離するものとする。   (一)団体はおおむね通常被害に相当する部分保険する。   (二)通常被害を超える災害については、関庫の負担において、政府基金特別会計から団体を通じ、「農作物減収による実損額の七割までを填補する」ことを目途として補償する。  前二号間の限界については、近年における災害多発的傾向不足額累増等の事情と関連し、団体保険収支が短期的にも均衡を維持しうる合理的線を新に計測して決定するものとし、且つ両者を通ずる災害補償制度全体の規模については、すくなくも現在の財政支出額を下廻らないことを条件としてこれを画定する。この一は、委員会でもしばしば各委員からも御議論があり、また一般学者の間にも、この点については、ただいま御報告申し上げましたように、国家補償の面と保険の面とを区別したらどうか。この間にはつきりとした線を引きまして新たなる発足をしたら、最も合理的に現在の農家の真に期待しておる意に沿い得るのではないか、こういう点でこの一項を取上げたわけであります。     〔金子委員長代理退席委員長着席〕  ただこの問題は、農作物減収による実損額の七割までを補填するということについて、よほど数字的な検討を経なければ、容易にこの問題を明らかにすることは困難ではないかと考えられます。  いま一つこの点での難点は、現在は、国が再保険をし、当然損害の実情に応じて自動的に国の財政支出を要することになつておるのでありますが、これを国家補償の面に切りかえた際に、国の予算上の制約によつて、ある制約が加えられる面もあるのではないか。そういつた点について、もしこの方針を貫くとするならば、そういつた危惧を解消し得る立法技術上における慎重なる研究が、もちろん必要であろうと思われます。それと同時に、もし改正の結果、現在通常国財政支出しておる額が下まわるようなことがあつてはたいへんである。あくまでも現在国が通常支出しておる財政支出額を下まわらないための周到な注意を払いまして、これを法文化して行くことが考えられることを、申し添えておきたいと存じます。  二、なたね、だいず等の農作物に対する任意共済については再保険措置を考慮するとともに、家畜については、畜産行政との協調にいんなきを期したる上、おおむね従来の方式を踏襲するものとする。  問題は、菜種大豆その他特殊農作物に対して、現在若干の地域において任意共済が行われ、先般の災害によつて九州任意共済行つた菜種等は、法的に見殺しになるような事態なつたことは、皆さんの御存じの通りであります。このように一応法律によつて任意共済を認めておきながら、一旦災害が来れば、法の上から何ら救済ができないという点については、現在の法そのもの欠陥があるのではないか。従つてもし地域特殊性から、菜種大豆に限りませんが、農作物に対して任意共済を行つたときには再保険を考慮して行くことが必要ではないか。そういう点をここに取上げられておるわけでございます。家畜につきましては、先般一部改正案が実施になりまして、きわめてスムースに進行しておるように聞いておりますので、新たに今後畜産行政との面をさらに協調して、この運営に遺憾なきを期して行くという点を留意して、おおむね現在の方式を踏製すればよいのではないか、こういう考え方でございます。  三、団体事業機構等改善は左による。   (一)中央全国を区域とする再保険団体を新設し、共済基金はこれに吸収する。   (二)都道府県段階以上における常勤の理事者原則として業務に専従しうるよう内部機構を整備するとともに、各級団体役職員の身分、責任等公的色彩を強化する。   (三)貧末端組合事業区域は、必ずしも行政単位にかかわらず、経費の節約、事務能率の向上及び職員等待遇改善身分安定等を目的とし、経営安定の見地から定める。  この三の事項については、現在共済事業機構を見ますのに、町村組合があり、郡に支部があり、県に連合会中央共済協会という法的には何ら根拠のない団体があります。なお先般設置されました共済基金があり、また農林省の内部には特別会計が設けられる等、末端におきましてはさほどではございませんが、中央における機構のきわめて複雑であることは、各位の御存じの通りでございます。こういう点をもつと簡素化し、そしてむだな経費を節約し、能率を向上して行くためには、どういう対策とがらるべきか。そういうような点からここに取上げております。問題は、中央全国を区域とする再保険団体を新設し、共済基金はこれに吸収するという点につきましては、小委員会としてもまだ保留し、検討を今後にゆだねておるのでございますが、以上私が述べましたような趣旨を御了解願えれば、幸いだと存ずる次第でございます。ただ新たにできる中央全国を区域とする再保険団体の性格、その事業構成というような点につきましては、まだまだ十分検討の余地があることを申し添えておきます。  (二)の都道府県段階以上における常勤の理事者原則として他の兼務を認めない、一意専心保険事業に邁進をする、そういう建前をここに新たに取上げて責任を明かにし、しかもその身分等については公的な色彩をも強化して最も公正にして経営能率を上げたらどうか。はなはだしきに至つては十数種の、しかも重要な公職を持ちながらやつておる、そういう人が現在理事者の中にはたくさんあるように見受けられますが、現在のような困難な保険事業を今後前進させるためには、そのようなことをなるべく避けまして、少くとも常勤理事者はその業務に一意専心打ち込むような方に持つて行くべきではないか。  (三)の末端組合事業区域でありますが、現在百町歩余りの町村にも一つの組合でありますから、そこに組合長以下の一切の機構が必要となる、あるいは何千町歩の北海道、東北におけるような大きな町村にも一組合、こういうような点から来る必要な賦課金が勢い増高し、また農民の負担従つてかさむ、こういうような点は従来しばしば公聴会等においても指摘をされておりました。そこで最近の市町村合併促進法の実施等をもあわせ考えまして、少くとも行政単位にかかわらず適正規模の策定を行い、これを実施いたしますことによつて事務能率が向上し、また職員もおのおの専門的立場から指導が行われる長所もあろうかと考えられるのであります。そういう点をここに取上げ、そして組合の適正規模の上に職員の待遇の改善、身分の安定等を企図いたした点であります。この身分の安定問題につきましては、県連合会に籍を置かしめ、市町村駐在制のごとき事例をあげて優秀な成果を収めておる県連もあるようであります。そういつた点等をも待遇改善の具体的方法、身分の安定の方法としてはいろいろな方法が今後十分検討されてよろしかろうと考えられるのであります。  四、事業とこれに対する指導監督との関係を厳正且つ明確化するよう措置するものとする。  これはあえて説明を要しない点であろうと存じます。  五、農業協同組合の行う共済事業と競合する建物等の任意共済は、一定期間後、農協に一元化し、事業内容に法的基礎を与えるものとする。  現在任意共済を二つの団体が行つております、すなわち共済と農協との二つにわかれておるのでありますが、その対象は農家一つである。またこの問題が各地において摩擦を起し、いたずらなるところの競合の形態を出しておる点もわれわれは見聞いたしておるのでありますが、この際防災事業との関連をも考えまして——あとで申し上げますが、防災事業はこれを共済組合に一元化し、任意共済は協同組合に一元化をし、あわせおのおのがその十分なる機能を発揮して行くことが、将来の農村の金融的な面あるいは資金的な面、そういつた面からきわめて適切な措置ではないか、そういうためには現在これを断行するといたしますならば、そこに若干の難点はございますが、将来を見越して行くことが必要ではないか。但し現在両者の行う掛金料率の点で必ずしも一致いたしておりません。また風水害等によつて赤字を出した組合との引継ぎの問題等に対する措置、そういつた点については委員会としてもなお今後十分検討しなければなりません。現在農業協同組合連合会が行つておる任意共済事業の掛金料率がややもすれば高いという声もありますが、今後これを大きく一元化して行くことによつてこの事業が充実し、従つて掛金料率も相当額引下げの可能性はありますし、将来大きな資金の農村還流、そういつた面からも営業保険等の進出を食いとめて行くことが成果の上から見ましても必要ではないか、こういう考え方でありますが、この点につきましては記載しておりますがごとく、慎重なる対策検討をすることが必要であることになりまして、一応保留というかつこうになつておることを付言いたしておきます。  六、組合の事業面等についてはすくなくも次の諸点を取り入れて改善を図るものとする。   (一)加入については当然加入乃至は義務加入の建前を崩さない。   (二)引受は一筆毎の俵建とし、又共済金瀬等に関しては地方等級に応じて四段階を設けこれに対する農家自由選択制を織り込むよう検討する。   (三)農家負担する掛金額は一、の(一)に対応してこれを低減するものとし、且つ危険の大小に応じ個々の耕地に対する料率上の調整措置(無事戻を含む)を講ずる。   尚、政府はその適切な取扱方針を決定するため、すみやかに常習災害地に関する全国調査を行うこと。   (四)掛金の徴収を町村に委任し、若しくは物納を認める等その容易確実化を図る。でございます。(一)の問題につきましては、これを任意加入にいたしまするならば、おそらく現行制度は崩壊をすることは何人もこれを認めるところでありまして、少くとも今後農民から最大の支持を受ける運営を行うということを企図し、現在とつておりまする当然加入、すなわち義務加入の建前を堅持するということであります。  (二)の問題でございますが、現在は一応画一的な共済金額あるいはまたそれに対応いたしましたところの掛金率等が若干改正されまして、実情に即するがごとく漸次進んではおりますが、なおこの際農家個々の自由選択制を取入れた一筆ごとの俵建あるいは石建という形において今後農民の自主性を尊重した形を打出すべきではないか、こういう考え方でございます。しかしこの点につきましてはまだよほど検討を要することもあろうかと存ずる以第でございます。  (三)の農家負担する掛金額は一、の(一)に対応してこれを低減することはもちろんでございますが、無事もどしをも合めた危険の大小に応じまして、掛金料率を調整をして行くことも一つの無事もどしの形になるのでありますが、そういつた点も含めまして何らかのここに無事もどしの制度を法の上に明らかにして行く、そういう考え方でございます。なお現在この災害補償制度を運営する面におきまして、低被害地と高被害地との問題が常につきまとつておりますので、この際全国的に政府はすみやかに常習災害地の調査を行い、またこれと相関連して国家補償の画をも今後十分に対策を樹立すべきではないか、そういつた意味から常習災害地の全国調査を行うことをここに取上げておるような次第であります。(四)の掛金の面におきまして物納を認める、あるいはその他容易な方法を考えるとともに、現在組合が徴収をして、組合が共済保険金の支払いをする、その間には相殺行為が行われ、必ずしも農村によい感じを与えておりません。幾らの掛金をかけ、幾らの共済保険金をもらつたのか、まつたく当の農民はこれを知ることができないという事能もあるようでございます。そういう相殺行為等の問題も解消いたしまして、掛金の徴収は、すべて町村に委任する、そうして物納を認める、そういつた掛金に対するところの農民の憤懣、また掛金徴収の困難に対する対策として、これを取上げておるわけでございます。  七、本制度による保険事業を補完するため、農業協同組合との連繋のもとに行う備荒貯蓄の制度を新設して、団体の事業に金融的要素を加味するものとする。これがため掛金率の算定に当り、特例を設け、かつ国庫助成等の奨励措置を、講ずる。とうたつておりますが、これは(二)の問題に合せて一応考え方を御説明申し上げますと、自由選択制段階をかりに四段階にいたしまして、一段階を十とし、二段階を七とし、三段階を五とし、四段階を三とかりにとろたといたします。その場合に、ほかの段階は三段階までを段階として四段階の三に二を加えて三段階に達するわけでありますが、その二の分を備荒貯蓄として、新しく積立の制度を起し、協同組合との関連においてこれを運用したらどうか。これはまつたく新たなる構想でありまして、こういつた面が町村に行われて行きますならば、また無事もどしの制度の問題ともあわせ考えて、完璧を期することができるのではないか、そういう考え方のもとに、新たに備荒貯蓄倒産の問題をここに取上げておるような次第でございます。なおその掛金率の算定等は、今一例を申し上げましたが、これに対しましては、無事もどし的な意味からも考えまして、助成等の奨励措置を講じて、近来備荒貯蓄問題がなおざりになつておる点を強く取上げてこの制度を普及し、農村の不時の災害に一層完璧を期したいと考えるのでございます。  八、町村段階以上における損害評価の基礎として、農林統計調査機構の作業により、作物統計から作成する一定の幅をもつた減収率を使用できるよう同機構を急速に整備するとともに、末端組合においては同調査との有機的関連を保持し得るよう現行保険者評価に伴う運営上の難点を改めるものとする。過日の公聴会におきましても、一番の難点損害評価のきめ手がないということを、各参考人は一様にその苦しい立場を申しておられました。またせつかくつくつて出した損害評価が、郡でチエツクをされ、県でまた削られ、国においてさらに財政規模に適応するように圧縮をされる。さなきだに少い共済保険金がさらに少くなるという、きわめて重大な問題が未解決になつておるのであります。そこで八の考え方は、現在統計調査機構でつくりますところの減収率を町村以上に適用したらどうか。そうして、たとえばある一つの村で減収率をつくり出します。しかしこれはあくまでも実収額をりかむことがなされておりませんから、そこにある一定の上下の振れを認めて最終的に調整することにいたしまして、そこに出たものに合うごとく農家各個の被害を積み上げて、それに合致せしめて行きますならば、それを郡に積み上げ、県に積み上げ、中央に突き抜けて、その点においては何ら圧縮削減等のない、権威ある評価が実施でき得るのではないか。そういつた点におきまして、現行制度の一器難点であり、また一番重要な点を、ここに具体的な考え方を明らかにいたしたつもりでございます。  九、防災事業原則として団体をして実施せしめ、政府はこれにつき積極的な奨励措置を講ずるものとする。但し、薬剤、防除機具等に関する経済行為は農協の事業とする。  九の防災事業の点でございますが、これは先ほど農業協同組合への建物共済の一元化の問題を申し上げましたが、現在防災事業は、農業協同組合が行う場合、市町村が行う場合、共済組合が行う場合と、全国てんでんばらばらになつておるようでございます。しかもその基本は、植物防疫法に発しておるのでございますが、植物防疫法の末端での運営の仕方につきましては、必ずしも体系が整つておりません。ここに植物防疫法との関係を取上げまして、共済事業を行う組合にその防災事業を一元化いたしまして、災害に対する防除を専心行わせるようにいたしたらどうか、そうしてこれに要する薬剤やあるいは防除機具等の取扱いにつきましては、経済行為を伴いますので、これは農協に専管させて行つたらどうか、こういう考え方でございます。そうして防災事業は共済に一元化し、任意共済等は農協に一元化して行く、そういうことにおいて二つの大きな農村団体が相提携して、農村の福祉のために進むことができるのではないか、こういう考え方でございます。  十、連合会の不足金累計額は、この際全国を総合した整理計画を樹立実行せしめ、必要に応じ国はこれを援助するものとする。組合組合員との間の債権債務の相殺関係等についても、この機会に徹底的に清算しうるよう措置するものとする。  最後の十でございますが、現在連合会の不足金は本年においても十億を越えるであろうという農林当局のお話であります。これをこの制度の改廃によつて新たな再出発をいたした場合に、当然この不足金、赤字は残つて参ります。これに対して国が全国を総合した整理計画を立てまして、必要によつて国がこれを援助をして始末をする。なお組合組合員との間に、先ほど申し述べましたことく、債権債務の相殺行為が行われ、せつかくもらつた共済保険金が、未納掛金との間に相殺をきれるというようなことは、従来しばしばあり、このことは公聴会においても、末端行政を担当しておる人々はそのことを言つておりました。いわんや本年は、相当多額の共済保険金が支払われますので、それと従来の掛金との相殺等が行われますならば、この制度に対する農民の不信はさらに激発して参ります。それらのことをまつたくやらせないように、相殺行為等を行わなくても、今後組合のそうした未払い掛金等を清算し得るような特別な措置を講じまして、今後本制度の再出発にあたつて、あと腐れのないように、全部これを合理的に農民の負担にかからないように清算をして、新たなる出発をすることが妥当ではないかというので、十の問題は大体前後措置の重点を二つ取上げておるような次第でございます。  最後の   政府は、右の諸点を体系づけ、その細目を定めるため、農林省農業災害補償制度審議会をすみやかに設置し、第十九通常国会を目途関係法令の整備を図るべく最善の方途を講ずるものとする。 でございますが、この点は以上述べました十原則にとりまとめておりますが、若干の保留点もあるとは申せ、この趣旨には小委員会としても大体御賛成でございますので、さらに検討して保留点を結論に達せしめた後において、これを立法上あるいは計数的な、具体的な見地から実施するにあたりましては、われわれの手にはとうてい負えません。そこでこの原則従つて農業災害補償制度政府に設けてもらい、衆参両院のこの小委員も参加をいたし、斯界の権威者、学者、経験者というような人々に参画をしていただきまして、この原則の具体化、関係法令の整備のために御尽力をいただいて、そこででき上つたものをさらに小委員会にもどしまして、そして最後の仕上げをして第十九通常国会に、必要な関係法令は法令とし、あるいはその財政的な措置を措置としまして提出をし、今後速急に再出発を行おうという、最後の仕上げの方向をこういう方法でやろうということを明らかにいたしておる次第ございます。  以上、非常に急ぎまして、きわめて税期が不十分でございましたが、お手元に配付してございますので、委員各位においても十分御検討をいただき、小委員会に皆様の貴重な御意見をお知らせいただきますならば幸いとするところでございます。  この試案は、当初の予定といたしましては、昨日中に内容の調整を行いまして、小委員会の案といたし、本委員会に報告する運びにとりはからいたいと存じましたが、事の重大性にかんがみ、意外に審議に手間どり、二、三の点について最終結論に達しなかつたことは、まことに遺憾とするところであります。  御手元に配付いたさせました案文中、欄外に「留保」と記載してありますものが、未決定部分であります。すなわち、留保事項の一は、国家補償の限度であり、その二は再保険団体設置の問題であり、その三ば、建物等任意共済一元化の問題であります。これらはこの改正試案のいわば骨子ともいうべき点でありまするし、また、案自体の技術的検討に足らざるところもありまするので、われわれ小委員としましては、通常国会開会後できるだけ早い機会に、さらに数回の小委員会を持ちまして、最終結論に達するよう努めたいと存ずるものであります。従いまして、本日は、小委員会の中開報告を申し述べるにとどまらざるを得なかつた事情について御報告申し上げ、委員各位の御了承を得たいのであります。なお、参議院側に対しましては、適当なる機会を見まして折衝を試み、すみやかに最終目標に到達しまするよう努める所存であります。  以上をもちまして、御報告を終ります。
  4. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの小委員長の報告に関しまして御質疑等があれば、発言を許します。——別に御発言もなようでありますから……。     —————————————
  5. 井出一太郎

    井出委員長 次に林業に関する小委長より、小委員会経過報告をいたしたいその申出があります。これを許します。川俣小委員長
  6. 川俣清音

    ○川俣委員 私は林業に関する小委員会審議経過を報告し、本委員会において適当に善処されんことを要望するものでございます。  去る三日、林業に関する小委員会を開会いたし、治山治水対策、国有林野整備臨時措置法に基く国有林野払下げ問題、並びに全林野労働組合の林野庁職員の昭和二十八年一月以降の賃金改訂及び増額する要求について仲裁裁定に関し、柴田林野庁長官及び丹羽職員課長から説明聴取の上審議を行いましたので、ここにその概要を御報告いたします。  御承知のごとく、去る第十六国会におきまして福田委員より、本農林委員会を代表して、治山治水恒久対策確立に関する決議を上程して可決を見ましたのでありますが、その後、数次にわたり大風水害による大災害を惹起いたしておりまして、治山治水に関し確固とした恒久対策確立の必要はいよいよ緊切なものがございますので、本小委員会におきまして、この決議に基き政府はいかなる対策を講じつつあるかについて説明を求めました。  これに対しまして柴田林野庁長官から、政府としてはこの決議にこたえ、内閣に治山治水対策協議会を設置いたし、十一月末には治山治水基本対策要綱の確立を見、重要河川水系及び上流水源地域等において総合的に治山治水基本対策を樹立し、河川事業、治山及び砂防事業の推進、保安林の整備拡充と林野施業の合理化をはかり、また治山治水の基本的事項に関し、広汎な科学的調査を計画的かつ継続的に実施するとともに、特に公益上緊要な河川流域及び重要水源地域については、継続費制度によつて事業の早期完成を期することを内容としたものである旨の説明がありました。  なお保安林の整備拡充の問題につきましては、現在森林法にその規定はありますものの、その内容は保安林を指定するだけのものでありまして、これが整備拡充については積極的措置を欠いておりますので、これらの欠陥をいかにして是正するかとの問題については、現行森林法の改正を行うことも考えられるが、むしろ保安林緊急整備臨時措置法とも称すべき単行法の立法を行い、緊急に保安林の適正配備を行い、その管理を強化して、保安林の保全、機能の充実を急速にはかりたいと考え、目下検討中である旨の説明がありました。  次に国有林野整備臨時措置法につきましては、本法による売払い予定西横は十五万二百七十八町で、このうち本年九月末までに売り払つた実績は、四万八百七十五町であること残余のものについては今後売払いの手続を速急に促進する予定であることが明らかにされました。本法につきましても各委員から御発言があり、国有林野払下げの実情を見ると、市町村の基本財産として山林所有面積の増加をはかるということに力点が置かれ、林野と農業の経営的連繋がネグレクトされ、ために山村農家経済の安定向上に資する点が少いので、国有林野を営農上活用できるよう本法を改正する必要があるとの御意見が御出席の名委員から開陳せられました。政府側もこの指摘した点につき同感の意を表し、本法は明年六月までの期限になつておりますので、必要により、これが期限の延長をはかるとともに、御指摘のごとき改正検討したい旨の答弁がありました。なおこの臨時措置法につきましては、林野行政の上に十分な考慮を払われて、この延期を考慮さるべきであろうと思われします。  最後に林野庁職員の昭和二十八年一月以降の賃金改訂及び増額に関する仲裁裁定について申し上げます。林野庁職員の給与問題につきましては、去る第十六国会におきましても、本小委員会賦において審議をいたし、その結果、国有林野事業に従事する職員の給与改訂に関する件の委員会決議を行い、六月二十六日公共企業体等中央調停委員会指示の調停案中、給与ベース改訂の部分を除外し、国有林野事業に従事する職員中、定員内職員及び常勤労務者約三万人の現行給与の不合理是正を行うことが妥当であり、これに要する経費約四億六千万円は、木材の売払い価格の騰貴もしくは売払い方法の改善等により生ずる特別会計内部の財源を充当すべきである旨を政府へ申入れ、これが実現を見たのでありますが、その後この給与べース改訂に関する調停案は不調に終りましたので、仲裁裁定委員会の裁定にゆだねられることとなり、去る十月二十七日、裁定を行つたのであります。その裁定は六項目から成つておりますが、その内容は  一、定員内職員の基本給(本俸、扶養手当、勤務地手当)は、八月以降月額平均一三、三五〇円に改訂する。  二、前項の配分は、両当事者の団体交渉によつて決める。但し扶養手当の支給額及び範囲は、一般公務員の例により、勤務地手当の制度現行を維持する。  三、常勤労務者の基本給は定員内職員の例による。  四、(1)北海道在勤手当及びへき地平当の拡充は、更に両当事者の団体交渉において検討する。(2)別居手当、役付手当及び道具代補償給は、理由に示す趣旨に従い、両当事者の団体交渉によつて決める。(3)住宅補償給、交通費及び結婚手当の要求は認められない。  五、常用出来高給、期間及び日雇労務者の賃金は、八月以降平均一割程度引上げる。その配分は理由に示す趣旨に従い、両当事者の団体交渉によつて決める。  六、本裁定の解釈につき疑義を生じ、もしくはその実施に当り、両当事者の意見が一致しないときは、本委員会の指示によつて決める。というのであります。  本件に関しましては、去る十一月二十八日の休会中におきまする治山治水小委員会におきまましてすでに調査審議をいたしておりましたので、先日はその後の経過について説明を聴取いたしました。その問題となる点は、一、政府は明年一月から実施することを予定しているが、組合側は仲裁裁定の完全実施を要求していること、二、年未手当については、予算上一箇月分となつているのに対し、組合側は仲裁べースによる二箇月分を要求し、現在団体交渉が続けられている。ことであります。  以上につき種々懇談的に検討をいたしましたが、その際、三公社五企業を画一的に取扱うことなく、それぞれの業績を勘案して、給与の支給を考慮してもよいのではないか、特に国有林野事業は業績が向上いたしておりますので、業績向上に尽粋した職員の労苦に酬ゆる意味合いから、業績賞与の大幅外上げを行う必要があろうとの御発言が御出席の各委員からございました。  次いで足鹿委員から次の四点につき御発言があり、これが取扱いを本委員会において決定してほしいとの申出がありました。  すなわち一、林野庁職員に関する仲裁裁定は完全に実施すべきである。その理由は、今日の林野庁職員に関する仲裁裁定の額は、他の三公社、五企業に比し最低である。二、年末手当については一般公務員並に一・二五月分以上を支給すべきである。その理由は、一般公務員といい政府企業職員といい、ひとしく公共のために働いているのである。まして国有林野事業は、本年すでに二十二億繰入れを行い、国家財政に大いに貢献しておるのに、これについての年末手当を一般公務員より低くすることは片手落であり、少くとも一・二五月分は支給すべきである。三、現在団交中の業績賞与については、国有林野事業の業務成績が本年は向上しておるのであるから、印本手当にプラス・アルフアーとして大幅にこれを支給すべきであり、少くとも全林野労組の要求している二月分を目途とされたい。四、国有林野事業に従事する職員中、仲裁裁定の効果に浴さない職員(公労法四条但書の職員)についても、農林大臣が給与準則を定めて一般組合員と同様に国有林野事業に適合した給与体系を確立できるよう措置すべきである。なお足鹿委員は、これら四項目は必ずしも形式にとらわれることなく、実質的に実現せられるよう特に考慮してほしい旨を出し述べられたのであります。  以上をもつて御報告を終ります。
  7. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの小委員長の報告に関しまして、御質疑等があれば発言を許します。
  8. 足鹿覺

    足鹿委員 幸い林野庁長官がおいでになつておりますから、今一番問題になつております団体交渉の現状、それに関連しての状況を聞きたいと思います。
  9. 柴田栄

    ○柴田政府委員 御存じの通り、現在におきます団体交渉の主たる問題は、すでに衆議院におきまして予算の審議を終りました関係等もありまして、ベース・アツプの実施の時期の問題はそれほど論議の対象にはなつておりませんが、主たる問題は、期末手当の問題でございます。一応期末手当といたしましては、予算に盛られておりまする従来の期末手当予算額に〇・二五をプラスするというもののほかに、さらに〇・二五分を加えまして、一般公務員と同額を下らない範囲内において団体交渉によつてきめる、こういうような指令がございまするが、個々の間におきまして、政府の以上の方針組合側の主張とが一致しない面があるので、私どもその間に処しまして、財源の問題あるいはその支出の方法等に関しましていろいろ検討を加えておるというのが現状でございますが、まだ妥決には至つておりません。しかし少くも私どもは、他の三公社五現業と比較いたしまして、私どもの特別会計の現状並びに職員の協力、努力の効果の表われに対しまして、できるだけ相談をして、妥当な線を見出したいということで交渉を続けておるというのが現段階でございます。
  10. 井出一太郎

    井出委員長 他に御発言もないようでありますが、林野庁長官におかれましては、ただいまの小委員長の報告を十分参照せられて御処置願いたいと思います。
  11. 柴田栄

    ○柴田政府委員 承知いたしました。     —————————————
  12. 井出一太郎

    井出委員長 次に食糧問題に議事を進めます。  まず人造米の問題について調査を進めたいと思いますが、その前にお諮りいたしたいことがあります。本件につきましては、委員会における調査経過にかんがみまして、人造米の製法発明者、人造米の製造業者及びその関係団体の代表者等を本日の午後の委員会において参考人として出席を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  なお参考人の選定につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  それでは、人造米の問題は午後にまわしまして、食糧問題についての質疑の申出がありまするから、逐次これを許します。金子與重朗君。
  15. 金子與重郎

    ○金子委員 食糧庁長官にお伺いします。  本年度の米の不作にあたりまして、政府は米の供出督助促進のために、米単作地帯に対して代替地の麦を送つて、できるだけ米を供出してもらおう、こういう意図を持つたようでありますが、現在そうした米産地に対して米供出の代替の意味において麦をどのくらいの数量送つておりますか、それを伺いたいと思います。
  16. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。米単作地帯に対しまして大体五万二千トンのものを送る予定にしておりまして、そのうち大部分は発送済みだと思います。
  17. 金子與重郎

    ○金子委員 今大麦、裸、小麦の政府の手持ちはどのくらいありますか。
  18. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 最近の資料を持つておりませんが、十月末におきまして、外麦を人れまして大体七万トン余りでございます。
  19. 金子與重郎

    ○金子委員 そのうち小麦は幾らで、大麦、裸は幾らですか。
  20. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 大麦、裸が七十万トンでありまして、これは外麦の大麦も入れております。
  21. 金子與重郎

    ○金子委員 先ほどお尋ねした米単作地帯に対する五万トンの手当というのは、大体米産地で貯蔵させる目的で現地配給しておりますか。
  22. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 米単作地帯に対しよして、各府県——東北、北陸の各県でありますが、府県の希望を聞きまして、府県の希望に応じて、府県の指定するものをして配給せしめるという形で、中央から政府手持ちを輸送しておるわけでございまして、これは貯蔵用のものではなくて、逐次配給して参るという形になつております。
  23. 金子與重郎

    ○金子委員 この問題は、大、小麦ともに麦の加工の施設、設備という問題がありますので、米のように単純には参りませんけれども、これは今年の米の状態から言いますと、この点をもう少し積極的におやりになつて、ただ申入れがあつたから、それから送つたという形でなくて、当然これは食われるものでありますから、もう少し積極的に、東北、北陸等米産地の現地に政府の手当した麦を置きまして、そうして品物を見せておいて、できるだけそれを代替をするような形をとつた方が効率が高い、こう私は考えますが、それに対してどういう意見を持つておりますか。
  24. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。東北、北陸地帯におきましては、御承知のように、大体表の消費は、ございませんので、われわれといたしましてはできるだけ製品として送りたいというふうに考えておりますが、これは大麦のみならず、一般に凶作地帯に対します一つの食糖手当として、小麦粉もある部分は委託製粉をいたしまして送つているわけでございます。ただ向うへ原麦を持つて参りますことは、各地域におきまする能力等の関係がございまして、加工の点ばあまり能力がございませんから、一ぺん送つてまた逆送するというようなこともありますので、そういう点を調整いたしてやつているようなわけでありますが、御存じのように、この際といたしまして、単作地帯の各県が実施しております麦食い運動と関連いたしまして、できるだけ供給の面で協力するという形で、その趣旨を各県とも話し合いまして、各県におきましては制限的ではなくて、希望に応じてだんだんそれを供給するという建前をとつておりますが、お話のように、さらにそれを強力に進めるということは適当でないと思つております。
  25. 金子與重郎

    ○金子委員 お話のように、米単作地帯にありましては麦の加工施設が比較的発達しておりませんから、そこに貯蔵したものを逆送するようになることは好ましいことではありませんけれども、やはり地方長官あるいはその他の機関の要望によりまして、原麦で行くならば、それだけその地帯における飼料の問題も一緒に解決がつきますので、これはそうした希望があつたならば、できるだけその希望を満たしてあげるようにしていただきたい、こういうことをお願いしておきます。  それから最近輸入小麦が——もちろん内地の小麦はごくわずかでありまして、本年度の小麦の輸人というものは相当大量に上ると思うのでありますが、そうした場合にでも、とかく海の工場あるいは海の倉庫だけが有利な立場になつて、そして余つたならば陸の方の工場へ持つて来るというような傾向になりやすいのでありますが、これは食糖庁は自分で管理しているのでありますから、この点に対して、全国的に不公平のないように、一方の工場あるいは倉庫に小麦があふれており、一方の工場には一向に入らない、そして落し立てにかろうじてやるというようなことは非常に不公平であり、それがひいては価格なり、需給の面にスムーズな結果をもたらさない原因になりますので、その点を特に留意していただきたいと思いますが、それに対してどういうお考えを持つておられますか。
  26. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。従来われわれといたしましては、昨年度の麦の統制を撤廃いたしまする際におきましても、やはり地域的な需給及び地域的な加工の状態というふうな、従来の事情を慎重に考えなければならないという考え方をもちまして、大体その地域におきまする需要とそれから工場能力というものを見合せまして、さらに従来の統制時代におきまする実績をも考えに入れまして、一種の割当的な方法をとつてつてつたのでございます。そして計画的に麦を消化して参るという方法をとつておつたわけでございますが、本年の下作に対しましては、そういう画一的な方法ではなくて、その地域の需要がございます場合におきましては、制限的でなく実態を申しますと、無制限に麦を放出することによりまして製品価格の安定を期したい、こういう方法を加味いたしたわけでございます。従いまして大消費地等の近辺におきまして需要が増加いたしました場合には、従来の割当のやり方のほかに、そういう需要の増加に対しまして価格を抑えるという意味において、ある程度無制限に持つて行くという考え方を加味いたしたわけでございますが、もちろんその需要増加の面のみならず、各地方におきます需要と工場能力とのバランスの問題についての均衡というものは従来ともとつておつたわけです。従来はどちらかと申しますと、均衡を中心にしておつたということも言えるのでありますが、ことしのような事情の場合におきましては、一方におきます需要の増加も考えなければなりませんから、その点を加味してやつて参りたい。ある程度売れるならば、市価の安定のためには、数量を限らないで出して行こうということを考えておるわけでございます。
  27. 金子與重郎

    ○金子委員 そういう点から行きますと、払下げはそういう形になるが、政府の手持ちの保管の場合も、やはりできるだけ全国的に需要に応ずる均等なやり方によつて配分して売つてもらいたい。特定な倉庫、いわゆる浜に近い、あるいは大都市の倉庫だけに行かないで、全国的にその需要なりあるいは工場能率というものに応ずる貯蔵、配分も一緒に考えてもらいたい、こういうことをこの際申し添えておきます。  それからこれは大したことでないのでありますが、食管法による配給所の登録が之を一時やめておつた、多分一度延期したと思つておりますが、これば次はいつおやりになるお考えですか。
  28. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。小売業者と消費者との結びつきにつきましての登録がえの問題は、昨年これを延期したわけでございます。本年度につきましてこれをどうするかということを今検討いたしておりますが、御承知のように、本年度の供給の事情から申しますと、配給面におきます在庫を締めて相当効率的に運営しなければならない、こういう問題がございます。もちろん消費者の面おきましてのサービスということについても考えなければならない。この両面をどう調整するか。現在われわれの気持といたしましては、こういう食糧事情の際におきまして、いたずらに全面的な登録がえをするということは、やみ米のサービス競争にもなる、やみ米のルートの拡大ということにもなりますから、その点は相当慎重に考えなければいかぬじやないか、ただそれをくぎづけにすることによつて消費者に対する利便が少くなつてしまうということのないように、何らかのくふうをこらして参りたいというふうな考え方検討いたしておる次第でございます。
  29. 金子與重郎

    ○金子委員 この登録の問題は、一応統制の解除でなくて、統制の末端配給の方式としてああいつた形をとつておるのでありますが、これはたくさんの登録をやりまして、あとの監督なり指導の行き届かないような形にすることは、やみの助長になるということも、あるいはまたいろいろの弊害が出て来ることもわかるのでありますが、さればと言つて、これは消費者の希望によつて自分の希望する所へ登録することが建前でありますので、あまり固定しておりますと、最近問題になりました配給所自体がやみの米を扱うというふうな不正行為も相当行われておりますので、そういうものの一つの制裁と申しましようか、そういうようなことも考えたときに、これはある程度まで更新されるということでないとこの趣旨にもとる、こう思うのであります。そこで現実の問題として当分の間登録がえをしないつもりですか、いつごろやるつもりですか。
  30. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。現在いろいろ検討いたしておりますが、全面登録は一種の選挙みたいな形でありまして、これの競争ということは、おのずからやみ米を供給することによつて競争するという可能性が非常に多いわけであります。そこで全面登録という点は、これは慎重に考えなければならない。ただ、ただいま金子委員のお話のように、消費者が移り得る方法を考えなければならない。これはある程度時期を限りまして、年に数回とか、自由にかわれる形を考えて行かなければならぬと思つております。ただわれわれの事務的な面あるいは末端の事務的な両から言うと、常時いつでもということになりますと、配給所の売却量の調整ということができません。年に数回にして、日をきめてそこで自由に移らすということも一つの考え方でなかろうかというふうな点を検討いたしておる次第であります。
  31. 金子與重郎

    ○金子委員 配給所は、要するに配給所としての若干公的な立場にあるわけですが、自由商業でありながら、一つは規制された登録により、規制された価格によつて、規制された量を配給するのでありますから、その趣旨にもとつたような行動をとつたときには、その配給所にやめてもらうとかいうような制裁はやつたことはあるのですか。
  32. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げますが、たとえば食糧管理法その他の経済法令に違反しまして、これが判決を受けたという場合におきましては、次の登録の場合における登録の資格を失うというふうな形で処理をいたしておる次第であります。
  33. 金子與重郎

    ○金子委員 次の登録のチヤンスと言つてみたところで、次の登録がえをしなければ、いつでも実際上それが続いて行くということになるのじやないですか。
  34. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 従来の形におきますと、全面登録の場合におきましてその点を調整しておつたと思いますが、今度はある程度消費者の自由意思によつて、時期を限りましてやつて参る、そういう場合におきます登録資格というものを限定することが一つの考え方じやなかろうかということで、検討いたしておるわけであります。
  35. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと委員長から関連して伺いたいのは、東京都の、たとえば新市街といいますか、人口が急激に膨脹したような地帯に対しては、配給所の綱が今までは粗に過ぎた、これをもう少し密にするという意味で、そういう地帯に限つてふやすということはお考えになつておりませんか。
  36. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 その点につきましても、われわれといたしまして、相当人口が増加いたしました地域に対しましての配給所の増設、新設と申しますか、そういうことは考えて参りたい。ただその場合におきます人口増加の割合等につきまして、やはりこれはある程度の適正規模を持ちませんと、自然に消費者価格のマージンがふえるというふうなこともございますので、そういう限度を考えて、そういう地域に対しては特別の取扱いをする必要があると考えております。
  37. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して——今金子委員からいろいろ質問が行われたようでありますが、今の末端の配給所に対する監督は、都道府県がこれを行つておるようでありますが、食糧庁は大体どの程度の責任を持たれるのであるか。この点は非常に重大だと私は思うのです。小売店の登録がえが行われる場合には、いろいろ連動が行われて、相当の経費が使われる。この経費がいつ埋められるかというと、おそらくその期間中に埋められるようなことになるだろう。だれが一体この運動をした費用を負担するかというと、これは業者ではないと思うのです。結局消費者である。私ときどき配給所の配給米を見ますと、準内地米に外米のありますことはこれはもちろんでありますが、内地米の中にもときどき外米が入つております。われわれ専門家から見ると、これが外米であるかどうかということは一目瞭然わかる。ときどき配給所あたりに注意をしますけれども、私のところは外米を入れてない——大体一升ますではかつてどれくらい入つておるかというと、百二十何粒入つておつた。これは都道府県が監督をやつておることももちろんいなむものではありませんけれども、全体の食糧行政を預かつておる食糧庁としては、一体どの程度監督を行おうとしておるのであるかという点が一点。  それから、最近やみ米の価格が大分下つては来ておるものの、末端へ参りますと、高級飲食店等においては、外食券なしで公然と米が供給されておるという状態がまだ相当続いておると思うのです。これがやみ米でありますことはもちろん明瞭でありますので、単にやみ米を運ぶ人を取締るということでなくして、こういう末端の需要の面を取締る必要があるのではないかと思いますが、この二点についての御答弁を願いたい。
  38. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。食糧配給所に対する監督の問題につきましては、川俣委員御承知のように、第一次的には県内における配給の責任は知事にあるわけでありまして、第一次的監督を府県知事にお願いいたしておるわけでありますが、二次的監督としては食糧庁が監督いたしまするし、また最終的な責任は食糧庁にあるわけでございます。ただ具体的な問題といたしましては、いろいろの基本的な問題について食糧庁で方針をきめまして、その方針を各府県に通達いたしまして、その方針に基いて府県に直接的な監督をしていただく、こういうことになつておるわけでございます。  第二の、やみ米取細りの問題は、御承知の通りわれわれといたしましても取締り当局と常時連絡をいたしまして、定期的な会合を持つて取締りをやつておるわけであります。われわれ、供給の面からいたしますと、直接産地におきまする取締りの面がありまするし、同時に消費地に対しまする監督におきましても、警視庁といろいろ連絡をいたしております。第一段階といたしまして警視庁、と申しますか、取締り当局から厳重な通達を出しまして、そして部分的な取締りをやつておりますが、全画的に取締りが行きわたつていないことも事実でありまして、われわれといたしましては、取締り当局に対しまして、こういう食糧事情のもとにおいては、ひとつ強力にやつてもらいたいということをいろいろ連絡いたしておるわけであります。
  39. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点、これは午後の人造米の問題に関連することですが、ここで聞いておきたいと思います。配給所において人造米の販売を認容しておられるようですが、これは将来配給の上に非常な誤解を生ずるようなことがあるのじやないか。またはこれを混合するようなおそれもあるのじやないかと思いますが、これらに対する取締りについてはどのような考え方をしておられますか。
  40. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。人造米の配給は、形といたしましては、できるだけ一般家庭に配給いたしたいと考えております。ただこれの検査は農林規格法によりまする任意検査でございますが、この検査と並行いたしまして、その検査を受けたものが明瞭になるように、たとえば包装につきましても、一キロでございますとか、あるいは二キロというような、小さい袋のまま消費者がただちに買い得るような形でこれを販売せしめることによりまして、一般の米との紛淆を避けて行きたいというふうに考えておりますが、さらにこれをときほぐしてその中に入れるというふうなことは、これは府県当局とも十分連絡いたしまして、そういうことのないように取締りを徹底いたしたいと思います。
  41. 井出一太郎

    井出委員長 中澤茂一君。
  42. 中澤茂一

    ○中澤委員 食糧庁長官にお尋ねいたします。奄美大島復帰に伴うところの食糧政策ですが、御承知のように、この戦争後八年たつて、われわれ同胞の一人である二十二万島民がいよいよ復帰するという段階に至つたのでありますが、これに対して食糧庁長官として、食糧政策をどういうふうにやろうというお考えを持つておるか、まず具体的に伺いたい。
  43. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。奄美大島に対する食糧の取扱いといたしましては、われわれといたしましては、これは長い間の願望がかないまして、日本に復帰いたしたのですが、日本内地と同様な方法でやつて行きたいというふうに考えております。ただ御承知のように、奄美大島につきましては従来は配給統制と申しますか、そういう制度がまだ施行されておらない、一種の自主的な配給という形でクーポンによる取引とか、また価格につきましても公定価格というようなものがないように承知いたしております。これをただちに内地と同様に持つて行くには、そこに多少の準備期間がいるのではないか。われわれの方としては、内地というか、日本と同様の方法で行くわけでありますが、その間、向うの現在の制度と、それから日本が現在食糧管理法のもとにおきまして施行いたしております配給制度との間に隔りがあるわけであります。この隔りを一致せしめるのには一定の準備期間が必要ではないかというふうに考えております。
  44. 中澤茂一

    ○中澤委員 今まで食糧庁自体が、これに対して配給も統制もやつたことがないのであるから、この実態はやはりつかまなければできないと思うのです。現地からの陳情によりますと、大体同島におけるところの主食の米の生産高は五万三千石、これに対して米の年間必要量は、六万六千石がどうしても必要で、鹿児島県の一郡として約一万三千石のの消費郡であるのであります。復帰と同時に何らかの方策を講じてもらわなければ、今までの配給制度というものは非常にルーズのものであつて、復帰後ただちにこれを行つてもらわなければ食糧問題で重大な問題が起きるかもしれない、こういう見地からの陳情があるのであります。これに対して、もちろん準備期も必要でありましようが、食管法を復帰後ただちに実施する腹構えがはたしてできておるか、またその準備ができておりますか。
  45. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。ただいまのお話のように、奄美大島は全体といたしまして消費地でありまして、これに対する補給はわれわれも十分考えております。これは鹿児島県の一部といたしまして、鹿児島と同じ食率によります補給ということを考えております。ただ食管法の施行につきましては、つまり配給統制としてクーポンの引きかえをやり、配給券を整備するというようないろいろな準備が必第であろうと思います。われわれといたしましては、十一月の初めから調査団と一緒に課長を現地に派遣いたしまして、現地の実情を調査いたしたわけでございます。しかしながら、配給店の整備にしましても、いろいろな点についての措置というものが、復帰後でなければとり得ないわけであります。そういう準備を整えつつ食糖管理法の施行をやつて行きたい。量の供給につきましては、もちろんわれわれとしては、不足分はただちに補給する考えでおりまして、内地と同様の配給制度を、復帰後ただちに食管法を施行するだけではできないわけでございますから、その施行の前提になりまする配給店の整備の問題等について、準備を整えてからやつて行きたいというふうに考えております。
  46. 中澤茂一

    ○中澤委員 準備々々と申しておりますが、御承知のように、復帰すればただちに日本の領土としての法の発動が当然あるわけで、準備々々とあなたは準備のことばかり言いますが、もちろん私は準備を無視するものではないけれども、一体いつから完全に内地のわれわれと同様の食糧配給を行える確信をお持ちですか。その時期はいつからですか。
  47. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 その点につきましては、現地の鹿児島県当局ともいろいろ打合せをいたしております。われわれの出先でありまする県の出張所長も今呼んでおるわけであります。できるだけ早くということを今考えております。根本的には、復帰後の行政機関の設置は、現在あるものを吸収するという形になつております。食糧関係の事務所というものは、向うにそういう機関が現在ないわけでございます。そこでこの点についても、鹿児島県当局とも、どういう措置をとるか、たとえばどこで物を売るかというような点について、具体的にいろいろ相談をいたしておるわけでありまして、準備といつてもそう長い何年というような期間ではなく、できるだけ早く数箇月の間に準備を整えたいと考えております。
  48. 中澤茂一

    ○中澤委員 特にこういう消費郡であり、しかも八年間苦しんだ同胞ですから、準備も必要ですが、その準備を一日も早くやつて、復帰したら同時に内地のわれわれと同じ待遇をしてやれるように、ひとつ真剣に考慮していただきたい。県事務当局ということをともすると食型庁は言つておるけれども、鹿児島県の事務当局の考えも必要ですが、しかし復帰すればただちにこれは日本の領土として日本の法律が適用されることは御承知の通り。だから二十二万島民に対して、ひとつ全力をあげてさつきゆうに準備をしてもらいたいということを、最後につけ加えお願いいたしておきます。     —————————————
  49. 井出一太郎

    井出委員長 食糧問題に関する残余の質疑は午後にまわしまして、この際川俣委員に申し上げます。河川局長、治水課長が待つておられますので、簡潔に質問を願いまして午前中の議事を終りたいと思います。川俣清音君。
  50. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がございませんので簡略にお尋ねをして、あと意見を開陳いたしたいと存じます。  秋田県の雄物川の流域は穀倉地帯であります。水害等によつてたびたびこの穀倉地帯の耕地が流失いたしましたために、堤防計画をいたしまして、その防水に奮闘せられておりますことについては敬意を表しますけれども、平鹿郡の福地村にわかりました堤防の敷地の問題についてお尋ねをいたしたい。ことしの春から着手いたしまして深井まで完成したようでありますが、こういう堤防の敷地になる美田に対する補償は的確に行われなければならぬと思うのです。御承知のように、早場米奨励金は、政府の側から見ますると、早く供給ルートに乗せたいというところから出されておりますが、農民の側からいうと、一毛作地帯におきましては、一年のうち一回の収入でありますので、早く収入を得たいということも加わりまして早場米がつくられておるのであります。ところが早場米の収穫期あるいは晩稲の収穫期が過ぎましても、ことしの春の植付前後に着工いたしましたところの田地に対する補償金がいまだに払われていないのですが、こういうことは前例があるのでありますか。河川局では大体そういう方針をとつておられるのでしようか。私はあまり前例がないのではないかと思います。もしもあるといたしますれば、どのような基礎に基いて、公益のためとはいいながら、人の所有地に堤防を築いて、収穫をあげることができなくなりましたことに対する補償を早くされないのか、その点をお尋ねいたします。
  51. 米田正文

    ○米田説明員 私どもの方で実施をしております治水工事のために必要になる用地の問題は、原則として計画がきまつて工事に着手することになりますと、その工事着手前に買収をいたしまして、買収金の支払いも了することになつております。ただいまお話の件については、実は詳細な資料をきよう用意いたしておりませんが、おそらく地元との間に買収価格について、あるいはその他の事情があつてその決定が遅れたのではないかと想像されるのであります。今までも例があるのでございまして、そういう場合には、早急に買収価格を決定して支払いを了とする建前でございまして、それがもし今お話のようでございましたならば、これは地元に非常に御迷惑をおかけいたしておることでありますので、さつそく調査の上善処させることにいたしたいと思います。
  52. 川俣清音

    ○川俣委員 基本の原則はわかりましたが、問題になつておりますところは、実は価格のことでいきさつができて遅れているのではない。ごく最近になりまして買収価格が明示されたような状態であります。今後も紛争が起るかもわかりませんが、今までどのくらいの価格で買収するかということについて、内示もなければ具体的な折衝にも入つていない。これはおそらく怠慢であろうと思うのです。最近私どもの調査に行きましてから、あわてて仙台から課長がおいでになつて、つい二、三日前価格の指示なり協議に入られたようであります。このように怠慢なことが建設省の中において公然と行われておるということになると、ゆゆしい問題だと思います。基本方針が立てられておりませんければ別問題ですが、方針が立てられたことが末端に徹底しないようなことでありましたならば、どんなにりつぱな計画でも、その計画が末端に施行されておるかどうかというようなことも怪しまれざるを得ないと思う。これについての御見解を伺いたいと思います。
  53. 米田正文

    ○米田説明員 現地の状況をよく調査してみたいと思いますが、ただいまのお話のようでありますと、私が先ほど申し上げました方針が現地に徹底しておらぬというただいまのおしかりの通りでございますが、私ども今想像いたしまするに、何か事情があつたのではなかろうかというような感じがいたすので、さよう申し上げたのですが、そういう点につきましては、至急調査の上、善処いたしたいと思います。
  54. 川俣清音

    ○川俣委員 河川局長が善処されると言われるのでありますから、私はそれにおまかせしますが、こういうことが行われた場合に、何か責任を明らかにしていただかなければならぬと思う。責任者がどういう人であるかということは、私は十分調査いたしておりませんが、しかしながら今まで折衝にも入つておられないということでありますならば、これは怠慢だと思うのです。最近村長が出て参りまして、あなた方の方に具体的に折衝に入つたようにも聞いておりますので、この責任を明らかにしていただけると思いますが、どうですか。あなた方の施策が徹底しなかつた場合に、この責任を明らかにする必要があると思いますが、どのようにこの責任を明らかにしていただけますか、この点を伺いたいと思います。
  55. 米田正文

    ○米田説明員 もちろん政府方針が現地に徹底をしておらぬという点については、どこかに欠陥があるやにも存じられます。ただただいまお話のように、怠慢のために処置を誤まつたことであるならば、私はそれは当然その怠慢の者が責任を負うべきであると思う。私どもとしてもその責任は追究をいたします。ひとつよく事情調査の上、お答えを申し上げたいと思います。
  56. 川俣清音

    ○川俣委員 われわれ農地を守ろうとする者にとりましては、こういうことはときどき起るところの重大な問題だと思うのです。もちろん河川局は水害についてのいろいろな経験をもつておられますので、いろいろな方途は考えられますし、あるいは計画をなさることもあり得ると思うのですが、農地は農民にとりまして生命にもかえがたいほどの重要なものでありますので、この取扱いにつきましては、将来さらに慎重な態度を望みたいと思うのであります。これらの点について、農地局と打合せせられておりますかどうか。買収価格等につきまして農地局と打合せをなさるのでありますか、あるいは建設省だけで独自に価格等を査定されますか。この点について、建設省の意見並びに農地局の意見を承りたいと思います。
  57. 米田正文

    ○米田説明員 農地の買収価格については、農林省方針もありますけれども、建設省としては建設省の買収基準というものを一応持つておるのでございます。その基準によつて買収をいたしておるのでございますが、その基準をきめますときには、もちろん農林省の農地価格というものを参酌して決定をいたしておりますので、農林省との開きは原則としては私大した開きはないものと存じます。
  58. 平川守

    ○平川説明員 ただいまのお話のようにその都度農林省に相談はございません、ただわれわれとしまては、駐留軍の接収でありますとか、あるいは電源開発のために水没するとか、いろいろのケースがございます。これらに対しましては、農民がそういう自分の責任でなくして、ほかの国家的な目的のために農地を失うということについては、その後の生活が従来同様に継続されるようにするということを原則に考えまして、従つて従来の金で賠償をするという考え方は、これはやむを得ない場合はいたし方ありませんけれども、原則としては現物で賠償をするのが筋である、こういうことに考えまして、電源開発の場合の水没等におきましては、そういう原則にのつとつてつております。
  59. 川俣清音

    ○川俣委員 農地局の態度まことに明らかでありまして、私どもと同様な見解を持つておられますし、また土地収用法が改正せられましたのも、そのような趣旨に基いて行われましたことも建設省十分御承知だと思う。農地局は農地の保全、育成について十分な責任を持つておられるはずであります。この保全、育成について十分な責任を持つておられながら、建設省がたとい築堤工事のために土地を収用るす場合におきましても、これに関与せられないということは、やはり無責任だというふうに平川局長お考えになりませんか。建設省独自でいろいろな基本方針をきめられて、それについて農地保全、育成の上からあなた方の意見を述べておられないような状態であるようでありますが、そのようなことでは無責任だというふうにお考えになりませんか。もし無責任だとお考えになりますならば、将来どのような方針をおとりになるお考えでありますか、その点を平川局長にお尋ねいたします。
  60. 平川守

    ○平川説明員 農地の保全を任務といたします農林省といたしましては、お話のように、こういう場合においてある程度のタツチをすべきことは当然であると思うのであります。ただ従来そういう制度になつておりませんので、ただいま経済審議庁の方で総合開発審議会の中に水制度都会という部会を設けまして、関係の権威者が集まつて水の利用及び治水等に関する制度研究をいたしております。建設省の方でも河川法そのものについて改正のことをいろいろ考えておられるようでございます。私どもといたしましては、そういう機会にただいまのような問題を制度的に完備するようにいたしたいということで、ただいまの水制度部会あるいは建設省方面に対しましても、いろいろ意見を申し上げているような状況でありまして、そういう法律改正等の機会がございますれば、ぜひそういうことに改正いたしたい、かように希望いたしているわけであります。
  61. 川俣清音

    ○川俣委員 さらに河川局長にお尋ねいたします。本問題の下流地域に堤防計画がまだ続行されておりますが、これは右岸の方をまわつて流れておつたのが、だんだん左岸が侵されて来ました。右岸の方は大きな川筋になつておりまして、右岸にこれをまわすことによりまして、将来かなりの耕地が育成せられるようなことが考慮されるのであります。川の流れから見ましても、かつて左岸の方に新川を築いて流水しようとしたのでありますが、工事が不完全でできなかつたようなことも聞いております。この耕地は相当の美田でございまして、これらの耕地を将来残して、失いました堤防敷地になりました代償として十分考慮できるようなことも考えられるのであります。いわゆる築堤の変更によりまして相当の耕地を生み出すことができることになると思うのですけれども、これらについて建設省に地元から陳情が行つておりますので、これらの点を農地局においても十分考慮せられまして、単に建設省だけの築堤工事よりも、農地保全の上から十分農地局がこれに関与せられまして、農地保全のために善処を望みたいと思うのです。  さらに建設省にお尋ねいたします。この築堤のために六十八戸が移転いたしております。これは一昨年か買収せられたのでありますので、移転費用だけは払われておるようです。従いまして、一昨年くらいの、物価のまた値上りの率の低いときに移転費用をもらいまして、最近移転いたしておるのでありますから、その後物価の高騰によりまして、また相当損耗いたしておりました家屋は、移転いたしますると意外な出費を要しますので、増額を要望いたしておりますから、これについて適当な御配慮が願えるかどうかということが一点。  さらに今申し上げた下流の築堤工事については熱烈な地元の陳情がございますので、また秋田県当局もこれらの陳情をもつともなりといたしておるようでありますから、築堤工事の変更についても将来考慮する余地があるんじやないかと思いますが、これらについて御意見をお伺いしたい。
  62. 米田正文

    ○米田説明員 ただいまのお話、第一点の、一昨年移転費用の支払いを了したもので、今日移転をしておるというものについては、今日の会計法方の問題としては非常に困難な問題だと思いますが、しかし実情はまた困つておるということでありますれば、会計法上の問題としては解決できぬかもしれませんが、何らかの方途があるかどうかを研究いたしたいと思います。  あとの堤防法線の問題については、これは現地の問題でございますので、これも治水計画に支障のない限りにおいては地元の要望をいれたいと思いますが、これもひとつ現地問題として研究いたしたいと思います。     —————————————
  63. 井出一太郎

    井出委員長 この際お諮りいたします。現在本委員会に付託になつております臨時硫安需給安定法案の取扱いについてでありますが、先ほどの理事会の協議に基きまして、本案は閉会中も特に審査することができますように議長に申し出ることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  65. 井出一太郎

    井出委員長 次に、農業災害補償制度に関する小委員佐藤洋之助君より小委員辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  次に、ただいまの補欠につきましては、委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、秋山利恭君を小委員指名いたします。  午前の会議はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。     午後一時三十四分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  68. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  食糧問題に関連して人造米の件について調査を進めます。本件に関しましては、お手元にお配りいたしております通り、関係方々の御出席を煩わしまして種々御意見を承るわけでありますが。参考人各位におかれましては、非常に御多忙のところ、また御遠路のところ、わざわざ本委員会へお繰合せ御出席をいただきまして、この点委員長から御礼を申し上げます。  審議の方法でございますが、まず最初に参考人各位から、およそ五分くらいを目途といたしまして、自己紹介のような意味もかねて、それぞれのお立場で、たとえば特許権者の方は特許の方法でありますとか、あるいは実施権者として製造されていらつしやる方は、現在の製造の規模でございますとか、今後の目標でありますとか、そういうふうなものをお漏らしをいただきたいと思いますし、さらに協会関係のお立場とされましては、協会の目的なり今後の運営方向というような点にお触れになつて、それぞれお述べいただきたいと思います。それから委員側で逐次質疑をいたしましてお答えを願いたいと考えます。  なおあわせて申し上げますが、食糧研究所の鈴木技官、それから特許庁からは石原長官、大野審査第二部長山本審判部長がそれぞれ見えております。それから食糧庁の関係は、ただいま呼んでおりますから、後刻見えるはずでございます。  それではお配りをしております刷りものの順序に従いまして、まず中川参考人から最初にお述べをいただきます。中川常吉君。
  69. 中川常吉

    ○中川参考人 中川常吉でございます。  ごあいさつを申し上げます。本日崇高厳粛なる農林委員会におかれまして、多年研究と製造に努力して参りました人造米のことについて御下問をいただきまして、それについてお答えする機会をお与えくださいましたことをまことに無上の光栄と感謝し、つつしんで御礼申します。  私は住所は芦屋市津知町五十九番地であります。日東食糧株式会社を経営しております。大体終戦までは、日東航空機器株式会社と申しまして、陸海軍航空機の冷却器をつくつてつたのでありますが、軍需会社の転換事業に何をしたらいいかということから、当時非常に国内の食糧事情が逼迫しておりました関係上、食糧加工を目的として進んだのであります。たまたま人造米ということについて、その当時私の方の大体協力工場的な御援助をいただいておりました松浦さんと知合いになりまして、人造米というものを製造することに努めまして、そうして終戦以来その人造米研究と製造に日夜努力して参りまして、そうして昭和二十一年には、食糧庁からかんしよ人造米の製造を命ぜられ、昭和二十二年には、同じく食糧庁から、当時長官は片柳真吉先生でありましたが、当時かんしよ人造米の工場を国内に三百工場つくるから、それに要する機械を製造してくれという御指示をいただきました。ところが、それは途中において、食糧事情の好転とでも申しましようか、あるいは客観情勢の変化とでも申しましようか、せつかくつくりました人造米製造機百数十工場分をそのまま御採用にならず、私は莫大な損害をこうむり、スクラツプに落とすうな状態になりましたが、しかし私は最初から、この日本の貧困な食糧事情に何としても努めさしていただきたいと、最初の初一念を貫くべく、人造米研究に日夜努力しておつたのでありますが、何分数千万の損害をこうむり、それに対する痛手のために、なかなか思うように研究も製造も進まないでおつたのでありますが、しかし必ずいつかは私の研究している人造米は国家のお役に立つ時期があるだろうと思いまして、細々ながら、一家離散しておりながら、私はその研究に没頭しておつたのであり、現在もしておるわけでございます。たまたま今年度の水害、冷害のために、非常なる食糧不足を来し、やみ米は一升三百円もするというような状態を現わしておりますので、このときこそ、いい人造米をしかも安くみんなにおわけするような方向に行かなければいかぬということを念頭に置きまして、現在もその問題について研究と製造について非常に私は努力をいたしておる次第でありまして、終戦以来今日まで、何ら他を顧みず、この人造米研究に没頭しておるのでございます。今後も何とかしてよりよき人造米を、しかも多量に生産して、国家のために御奉公したいと現在も考えておる次第でございます。
  70. 井出一太郎

  71. 松浦喜一朗

    ○松浦参考人 今中川さんのお言葉ですが、私は麦がきらいなために、この人造米昭和六年から研究しまして、今日まで、それだけじやなくして、食糧についてずつと研究しておつたのであります。これが完成したのが昭和十年で、それから十三年から機械にかかりまして、十六年に米粒状にできたのです。米粒状にしたのは、日本で私よりほかにないと思います。三年かかつてつくつたのです。それから私の研究所のために会社の方は近沢という人を社長にして来たところが、汽車の中で中川さんにお会いして、初めて見本を見せて、これはいいものだ、やらしてくれというので、中川さんはりつぱな紳士と思うて、私はおまかせしたわけであります。ところが研究しておるわれわれを捨てて、中川さんは別の特許を受け、私らには一度の報告も今日までない。私はどんどん研究をいたしておつたのであります。そうして十九年に一応動員されて、この人造米というものは政府に上つておるわけであります。そして二十年ごろに中川さんと話ができて、私のうちの社長に話しますと、そういう紳士の人ならいいだろう、国家のためにやつていただくのもいい、こういうことであつたのです。その後は何らの報告もなく、今日では私が特許を得たものとよく似たものをつくつておる。そうして松浦というものをまつたくふみにじつております。ここにおります。私はこの人を攻撃したくはない。だが二十五年に返しなさいといくら言つても、報告もしなければ、またやつた。こういう発表をしている。中川さんが昭和二十一年に書いて発表した機械は、あれは私が手で三年かかつてほつた機械です。今日に至るもまだ一生懸命にこういうふうに松浦を攻撃をされておるのですが、私は人を攻撃したくないけれども、ほんとうのことを言います。そうして水でたけるようになつたのは今年から三年前くらいのことです。それでたけて、中川さんが農林省から千百トンおもらいになつたのも、私がみな見本をつくつたのです。それで松浦はみなふみつぶされておつたのであります。私は無学で何の教育もないけれども、これを金にしよう、どうしようと思つてつているのではなくて、皆さんよく聞いておいてください。私は決して人を攻撃したくない。協力してやるのならば徹底的にやればいい。松浦を今日までどこまでばかにするか。私は一銭の銭も受けておらぬのです。だから今日まで来て、何も中川さんは、この前も話をしたのですが、あなたと一緒に協力しますと言つて中川さんは来られたのです。にもかかわらずこういうぐあいに、顔を見ぬから皆さんお知りにならぬけれども、新聞ではずいぶん攻撃されておるのです。それでも私は今日までがまんしておつた。何でもいい、国家のためになればいいのだ。また私よりもえらい。私はえらいとは言いません。好きでなさることであつていいものができたら、なおさら国家のためになると思つて、私は今日までがまんしておつたのです。権利問題とか何とかいうことは問題ではないのです。私に言わせると、ただ、今日まで研究というものは、中川さんはなぜ松浦と書かなかつたか。最初から松浦がやつてつたのだから、もう少し中川さんは、松浦を使つて、松浦を援助したと言えば、私はりつぱな人だとほめたいのであります。中川さんも私らと一緒に研究したのだから、何とかして助けてあげたいということは、私もこの人と話をしておるのです。それさえ裏切る人です。攻撃するのじやありませんけれども、第一われわれとしては、今のように申されると、一応皆さんのお耳に入れたいと思うので申すのであります。私には何も言うことはありません。権利についても政府の方におまかせしてあるのです。どうなろうとも私はいいのだが、実施権者は今日までみな金をかけてやつておりますから、かりそめにも機械が二百七、八十も出ておりますから、その人たちが、いろいろなややこしいものができたら、迷惑をするのではないか、ただそれだけ私は心配しておるのであります。別にほかには何もございません。
  72. 井出一太郎

    井出委員長 籠島誠治君。
  73. 籠島誠治

    ○籠島参考人 籠島であります。厳粛なる農林委員会に、人造米の製造業者の一人といたしまして呼んでいただきましたことは、まことにありがたく光栄に存ずる次第であります。  私は、父親が明治二十七年から小麦澱粉を製造しておりましたので、その後いろいろの加工澱粉を製造して今日に至つたのであります。第二次戦争後繊維工業が、昔の繊維と違いまして、のりを使う繊維がだんだん少なくなりました。それで日本中の小麦澱粉業者は、澱粉のはけ口について非常に心配しておりました。たまたま私のところに全国小麦澱粉連合会がありましたものですから、はからずも人造米の問題が出て来まして、北陸の業者の方が参りまして、人造米をやりたいのだが、どうも門戸が狭められ、なかなかいろいろな条件が付せられまして、会にも入れないし、つくることもできない。これじや困つたことだというようなことから相談を受けまして、たまたま私の友人であります平野力三氏が、前に農林大臣の時代に、人造米のことを中川さんにやらされたということをちよつと聞いたものですから、それで中川さんに私会わしてもらいました。ところが長年いろいろ苦心して、莫大な損害をした。と同時に自分でも特許があるのだからさしつかえないというようなことを聞かされまして、それから業者の皆さんと相談してみましたが、これなら別に松浦さんの方のあれでなくてもできるのだというようなことから、さつそく皆さんが寄つて、日本人造米協会というものをつくりました。地元でございます関係上、私が小使役を引受けて今日に至つたわけであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  74. 井出一太郎

    井出委員長 竹内参考人。
  75. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 私は葛原工業の責任者で竹内寿恵と申します。葛原工業は、戦争中海軍の管理工場でございまして、おもな製造は現在で申しますると栄養強化、その当時の称号で申しますと、特殊栄養食というものを専門につくつておりました工場でございます。終戦後はそれを厚生省の栄養剤に切りかえて今日に至つておりますが、昨年その栄養剤の関係から人造米をエンリツヂしたら非常にいいのではないかということを考え、それともう一つ、一升飯食いといいますけれども、一升お米を食べたからといつてそれが栄養になるものじやない。むしろ食糧の非常なる逼迫をしておる際、七〇%、八〇%で百パーセントの栄養効果を上げることがいいのではないかと思いまして、それで人造米に栄養強化することを企図いたしまして研究を続けておりましたが、たまたま松浦さんの特許と抵触するものがございまして、松浦さんとひざを交えてお話してみると、ともかくも人造米をつくるということに終身をささげている松浦さんの人格に非常に打たれまして、この人を立ててやらなければいけないというような気持を起しまして、自分のところでも戦争中も自分の専売特許あるいは実用新案等によりまして、パテントものを製造しておりまして、非常に特許に関しては知識もあるわけでありますが、私は自分の持つておりました幾つかの特許をこの場合伏せまして、松浦さんの特許を表面にあげました。なぜそうしたかというのに、私は自分の考えました特許は、それをつくる機械までも製造するということは考えなかつたのでございますが、松浦さんはよく米をつくる機械までも考えたということに私は敬意を払つたわけであります。ですから老人の松浦さんを立てることは私どもの務めじやないか。ことに特許庁が許可をおろした特許に対して、いわゆるその特許をくぐつてやるというように考える向きもあるかもしれませんが、私はその発明を企図した方に敬意を払う方がいいのではないかと思いまして、私どもの方のパテントは一切伏せまして、現在松浦さんの特許を私の方へ分権させていただきまして、そして松浦さんの機械によつて製造して、しかも私は自分の主義である栄養強化ということをあわせてこの人造米に加味して製造して、今日に至つておるのであります。現在約百トンの製造計画を十二月までに完了する予定でありますが、現在のところいろいろ隘路がございまして、すでに百トン製造の予定でございましたけれども、日産三十トンしかつくれないのは非常に慚愧にたえない次第であります。これは新しいものの創作の悩みではないかと思いまして、いろいろくふうしながら日夜研究を続けておるわけであります。おそらく十二月一ぱいお待ちいただきますれば、百トンの生産ができる。私の計画しておりますのは、私のところ一社だけでなく、各県に分散して、分権をいたしまして、私の方の関係だけで三日までに日産五百トンの線に生産をこぎつけたいという計画でございまして、すでに工場の大部分は設備してございますが、現在松浦さんの機械がまだ徐々に入りつつあります。だんだん製造の能率が上つて来ましたから、近くこれを設置できるのではないかと思います。おそらく私は三月を限つて、私の方の関係だけで五百トンに行くのではないかというふうに思つております。大体、今日までの人造米経過と申しましたら、この程度のことであります。
  76. 井出一太郎

  77. 倉地友次郎

    ○倉地参考人 まことに本日のこの壮厳なる席上にお招きいただきましたことを厚く感謝いたします。この人造米に対しましては、昭和十八年の年でございました。戦争のただ中におきまして日本澱粉統制会社というものがございまして、私の切なる要請によりまして、他の地域のことは知らないのでありますが、東海地域といたしましては、私と名古燈の渡辺製菓と岐阜の坂本弥三という人と、この三人で着手いたしまして、昭和十八年から日夜終戦に至るまで一生懸命にやつたのでありますが、いかんせん完全なものができずして終つたのであります。そこで昭和二十一、二年ごろであつたと思いますが、ここにお見えになります中川さんが大いに研究を続けておるということを私は聞いたのであります。神戸の西宮でやつておいでになることを聞きましたので、公団の方を誘いまして参りました。そして中川さんも一生懸命にこの製造の研究をやつておいでになつていることを私はよく確認いたしました。そこで両者相提携して研究に進もうという誓いを立て、爾来私は日夜これに携わつて参りました。しかし、たれも彼もが社会に受けられるというものができずに終つてしまつたのでございます。政府は澱粉買上げを昭和二十六年に御決定くださいましたが、私は親の代から澱粉の製造をやつておりますので、昭和二十六年、当時政府買上げをお願いしようというので全国の業者が私を押し上げまして、忘れもしないこの議員会館におきまして、私に提案者になつてくれと皆さんから言われまして、政府にお願いをした結果、昭和二十六年、まことに喜ばしいかな澱粉の買上げの糸口が開かれましたので、私の感激は名状しがたい気持でございました。しかるにその後もまた澱粉が余つて、農村の振興が阻害されておるということから、また昨年もお買上げになつたのでございます。そこで食糧庁へ私は始終ごやつかいになつております関係上参りますと、食糧庁の係官の方々が、お前が澱粉を政府に背負わしてしまつたのではないか、これを何とか片づけるということに努力しないで、ただ業者は政府におんぶすればいいという考えでおるんじやないか、お前はそのときの提案看たる責任者ではないか、私はこういう言葉を何度も受けましたので、まことに私もごもつともだ、かように思つて、なおその後一そうこの八造米を研究することに勇気を振つてつたのでございます。そこで本年の二月、私は意を決しまして、まだできるという自信はなかつたのでございますが、どうかしてこれをやりたい。その間には雷門の前に榊産業という機械屋がございますが、そこへ行きまして、食研の各先生方にもお願いをしてやつていただいて、昭和二十三年から五年まででございます、あらゆる機械をつくらせまして、千葉の県庁の裏に榊産業の鉄工所がございますが、そこへ食研の先生たちも行つていただきまして、とまり込みで研究を営んだ。そうしたような機械が現在何台もスクラツプになつたまま在庫しておりますが、私一へではございません。私と意思を同じうした人が今日までずいぶん犠牲になつてつております。そこでどうかしてこれを完成いたしたい。幾ら費用をつぎ込んでも、ここでどうぞして澱粉の在庫を片づけたい、日本の外米の輸入を食いとめたい。野人の私らがそういう希望を持つても、なかなか及ぶことではないと思いまするが、何とかしてこの米をつくり上げれば、畑でいもができさえすれば米はできるんだ、一反で五百貫いもがとれればお米五俵にかわるのだ、こういう考えを強く持ちましたので、食研へ行つて技術者を貸していただきたいとお願いしたら、なかなか食研でも言うことを聞いていただけなかつたのでありますが、あまり私が再々参りましたので、最後に所長さんが、それでは失敗をすることを覚悟でやるなら技術者を貸してやると言われました。それは二月でございました。食研からそういう激励を受けたので、非常に意を強くいたしまして、どうぞして米の形になる機械を何台も求めたいと思いましたところ、どこにあるのかわかりませなんだのであります。そこで中川さんが昔やつたことを私も行つて見ておりましたから、中川さんも失敗してしまつたのであるけれども、どこぞにその機械がないだろうか、みんなスクラツプになつてしまつたのであろうか——私は中川さんに頼んだのでございます。ところがその機械はどこにもなくて、昔京都で中川さんがつくつたことがあるということを耳にしましたので、それですぐに二月に京都へ飛びまして、京都で鉄工所を片端から聞いてみたらわかるだろうと思つて探しました。それで七軒目に山田という鉄工所がつくつたことがあることを聞きまして、そこへさつそく飛び込んで行つたのでございます。そうしたら、これは松浦という人が発明をし、その人の注文がなければ、あなたがいくらおつしやつてもつくることはできませんと断られましたので、それでさつそく松浦という人に、山田さんに頼んで会わしていただきまして、松浦さんと初めて山田鉄工所で合つたのが、私が松浦という人を知つた初まりでございます。私は常に、発明とインチキはつきものだ、こう聞いておりましたので、松浦さんという人の人柄が知りたいと思つて、お昼の十二時から夜の九時まで話合いましたところ、なるほどこの人は——私も苦労しておりますから、この人のおつしやることが実によく私には信用ができましたので、そこですぐさま機械を注文しよう、こう思つた。ところが松浦さんは非常に貧困になつておりまして松浦に金を渡したのでは私はつくりません、私に金を直接くださるならばつくりましようと、こういう話が山田鉄工所の主人公から出たのでございます。そこで発明者というものはそうした難儀をしているものだということが痛烈に私の胸を打ちましたので、それではお二方のいらつしやる前でお金をお渡ししたらつくつてくださるか、と頼みまして、それならばよいということで、山田鉄工所の二階で、お二人をそろえておいて私が金を出して貿つたのがそもそも初まりでございます。三月十九日に食研の先生方や松浦さん親子みんな私の工場へおいでくだすつて、そこでみんなの力でこれが初めてでき上つた。それ以後自信ができまして、どうぞしてこれを社会に早く広めたい、かように思うて、元の食糧営団の米屋さんへあつちへもこつちへも持つて行つたところが、昔私らのつくつた人造米が悪かつたためにたれも信用してくださらないので、どこも相手にしてくださらなかつたのであります。農林省の総務課へ参りましても、また人造米か、平野さんのときの大失敗を繰返したくはない、こういうお言葉がございまして、非常に失望いたしました。ところがやみ米は上る一方であると思うと、何とかして、と心やたけにはやりまして、いなか者の私は、いろいろ土地の人にも相談しまして考えたところ、これを社会に広げるにはどうしても東京へ持つて行くべきだ、東京というところは日本中の人がおいでになるところであり、官庁のお役人さんがたくさんおいでになるのだ、実際にいくら安くても、とにかく値段のことを言わずにこれを東京の人たちに食べてもらつて批判を受けて、だめだということならまた数年間あくまで研究を続けよう、かように思つて、四月の末つ方でございました、三河島へ十五トン着けました。ところが八日間でそれが売れまして、そのときの私のうれしさは、名状しがたいものでありました。以後ヤマ平という店が売つてくれまして、どんどんと売れるようになりまして、十五トン車七車私が出しましたとき農林省の方から非常にお認めいただくようになり、消費者の方々から次ぎから次へと送れと言うて参つたのであります。  話がちよつと落ちましたが、三月十九日に、農林省の農政課の方も、改良局も、食研も、みんなほんとうにできるのかと思うておいでになつて、とまり込みで、原料を入れるところからできるところまでその場を離れずごらんになつて、その場でおたきくだすつて、各担当官の方々からお認めをいただきましたけれども、なかなか世の中に出すことはえらかつたのでありますが、先ほど申し上げましたように、初めて東京都民の方々が知つてくだすつそ今日のような結果になつたと思います。松浦さんの特許に対して世の中でいろいろとりさたされておりますが、きようまつたく厳粛なこの席でお話をさしていただくことは民主主義で民の私らの声を皆様に聞いていただける機会を得ましたことは、何と言おうか、喜ばしさにたえません。中川氏も苦労をいたしました。松浦氏もいたしまして、五月十七日、中川さんが佐藤という人と私の会社へおいでになつて、まつたく喜んでくれました。中川氏は昔からの知合いであり、まさか倉地さんがここで成功して企業化してくれるとはおれは夢にも思わなかつたと、昔の苦労同士が手を握つて喜んで、実は二月の月に倉地さんがぼくに機械を探してくれと言うたが、再び倉地さんに、ぼくのようにしんしようをつぶしてこんなあわれな目に会うような商売をさせたくはないから、私は機械をあつせんしなかつたが、あなたがここまで企業化してくれたことについて、ぼくは敬意を払い、きようは京都の松浦氏にも敬意を払いに行つたもどりだ。どうかぼくと松浦氏と提携させてくれと頼まれまして、そこで私は引受けまして、そのお二人のお方のまん中に入つて何度も何度もあつせんしましたが、お二人の意見がなかなか一致せずして今日に至つておりますので、まことに嘆かわしいと思います。しかし国民お互い同士が血で血を洗うような考え方は捨てていただいて、みんな米をやりたい人は、まつたく国家のためでありますから、みんながやらしていただけるように、政府が政策をしていただきたい。特許の問題についても、政府がなぜもつと適切に私らに御下問がないのか。私は民の声として、まつたく昔で言えば、お殿さんに訴願ができるきようであると喜んでおります。どうか先生方のお考えで、日本人の喜ぶこの米を、大量にだれもかれもできるようにしていただきたいということを、お願いをいたします。
  78. 井出一太郎

    井出委員長 次に小浜八弥君。
  79. 小浜八弥

    ○小浜参考人 私は財団法人人造協会会長をいたしておりますので、今日参考人としてお呼び出しにあずかりました次第であります。皆さんも御承知のように、人造米は最近急速に取上げられたのでありまして、私の承知いたしております限りにおきましては三月ごろに大体これならば米と同じような取扱いができるのではないかという確信が持たれた。そして五月ごろからこれを量産をするような工場の組織が急速に出て来た。しかもそれが本年の不幸なる凶作に結びついて、最近人造米の製造が急速に方々で計画をされ、また実施をされておるという状態になつておると思つております。最近のことでございますので、いまだ工場において改良せらるべきものは多々ありますし、製造技術についても急速にこれを徹底せしめなければならないことはもちろんでありまして、優秀な品質のものを多量に生産するという方向に持つて行かなければならない状態に置かれておると思つております。ところが人間がつくる米でありますから、そのできましたものについては、必ずしも均一ではなく、ふぞろいでありますのみならず、中には、たいた場合にそれが溶けるというような、悪評を買つておるものもあるようでございます。それで人造米の品質を保証いたしまして、消費者に選択の基準をはつきり与えることが必要でありはしないか。そのためには、製品を検査いたしまして、これならば安心して召し上れるものだという区別をはつきりつけることが、必要でありはしないか。さらに、何と申しましても新規の品物でありますだけに、消費者の人造米に対する観念がまちまちであるようであります。品質の悪いものを使いました消費者は、人造米というのはもうだめだと申しますし、いい品質の人造米を食べました者は、人造米はけつこうだ、外米よりもむしろ人造米を食べた方がいいと申しておるような状態でありますから、消費者に対して人造米の正しい認識を与え、人造米とはこういうものでございますということを、世間に広く普及することが必要でありはしないか。かような意味におきまして、十月二十七日の閣議決定によりまして——人造米を急速に普及せしむるがために、人造米の検査を行い、また人造米の思想を普及宣伝する機関をつくつて、これをしてそういう公益事業を行わしめるのだという閣議決定に基きまして、生れ出ましたものが人造米協会でございます。人造米協会発足いたしましたけれども、まだ生れたばかりの赤ん坊でございまして、まだ活動その緒についておりません。一日も早く全国に検査綱を持ちまして、適正なる検査をいたし、なお工場の製造の指導を十分に徹底いたしまして、良質の人造米を多量に生産する方向に一日も早く進みたいというので、その整備をいたしておるような次第であります。過般、農林物資規格法に基いて農林規格というものが定められたのでございます、さらに今農林省の農林検査課において、食糧検査所と協議してそれの細則をつくつておられるような次第でございまして、一日も早く整備いたしたいと考えております。なお人造米協会は、先ほど申しましたように、寄付行為によつてできた財団法人でございます。寄付行為は七つの団体から二百万の寄付がございまして、それでできておる財団法人でございます。財団法人人造協会のほかに人造米の製造をしておられる業者の団体として、全国合成米協会、日本人造米協会、栄養徳米協会等の団体がございます。しかしこれは業者が集まつて経済行為をするという目的をもつておつくりになつ団体でありまして、財団法人人造協会とはその性格を異にしておりますし、またその目的を全然異にいたしておりますが、ただそういうふうな団体がございますので、しばしばそれを混同をせられておることが現在の状態でございます。その辺は少しはつきりと区別をしていただきたいと考えております。  なお一日も早く人造米が普及いたしまして、良質の人造米が多量に出まわりますことを、われわれは念願いたしておりますが、今日は毎日々々工場が計画されてふえつつあるように思います。私たちの調べたところによりますと、十月二十日現在におきまして、製造可能の状態にある工場が二十二、一日八時間の稼働で一月二十五日間操業するものとして、われわれが試みに計算いたしてみますと、月産二千九百七十五トンということになると思つておりますが、十二月末になりますと、稼働し得る状態に進む工場の数は四十七くらいになり、それの月産八千四百二十五トンという計算が一応推定的に出て参ります。なお各地において製造が予定されつつありますので、三月末においては大体月産二万五千トンくらいの生産は可能でありはしないかと考えております。これが大ざつぱに申しました人造米製造の現在の状態でございます。一応御参考までに申し上げました。
  80. 井出一太郎

    井出委員長 この際委員長から、食糧研究所の鈴木枝宮を煩わしまして、人造米の製法といいますか、あるいは特許がどういうところに適用されているのか、あるいは食糧研究所においても一つの特許を持つていらしやるというふうにも伺いますが、そういう点などもあわせ関連せしめてごく大ざつぱにお述べを願い、同時にいわゆる松浦式、中川式というもののほかにも製造法があるやに聞き及んでおるのでございます。こういう点などをひとつ解説的に御説明いただきたいと思います。
  81. 鈴木繁男

    鈴木説明員 食糧研究所の鈴木でございます。私藷類研究室と申しまして、いも類の利用加工をつかさどる分野に担当しておりまする関係上、澱粉の利用、あるいは新規用途の開発ということをいろいろと研究して参つたわけであります。研究所の尾時所長とも長年話し合つておるわけでございますが、現在のいも作農家の安定は、澱粉の新規用途の開拓よりほかはない。また澱粉を恒久的に、かつ大量に消化するには、これを主食の形にして消化することが最も望ましいのではないかというふうな考え方から、人造米に対しては以前から関心を持つて研究を進めて参つたわけであります。たまたま最近強化米の問題が諸外国で論議されて参りまして、たとえば南方のパーボイルド・ライスとかあるいはアメリカではプレミツクス・ライスとか、日本では京都大学の近藤教授の方法によりますところのビタ・ライスとか、いろいろ優秀な強化米ができて参りまして、現在の日本人の食構成その他の関係から、今後の食糧構成は、将来は当然強化米に行かなければならねという観点から、人造米の今までの普通の研究と、基礎的な強化米の研究と結びつけまして、人道強化米の研究に着手したわけであります。  人造強化米をねらいました理由といたしまして、今まで申し上げましたパーボイルド・ライス、プレミツクス・ライス、ビタ・ライス等は、これは天然の米にいろいろな方法で加工してつくる強化米でごいざます。それでございますので、天然の米にビタミンあるいはカルシウム等のものをつけ加えますには、非常に特殊の製造工程が必要でございまして、その分だけコストが高くなり、従つて末端価格が高くなるわけでありまして、もしも人造米形式で強化米をつくりますれば、人造米の原料の各種の粉末を混合する際に、ビタミンとかカルシウムとか、そういうものを添加すればよろしいのでありまして、いわば原料代だけが普通の人造米生産費より高くつくだけでございますので、強化米をつくるには最も有望な方法であろうというふうな考え方で、人造米を強化するという方法を検討いたしたわけでございます。  強化米でございますが、これは当然栄養面がいろいろ関連がありますので、厚生省の栄養研究所と密接に御連絡いたしまして、食糧研究所と栄養研究所で栄養食料連絡会いうふうなものをつくりまして、ときどき集まつて検討をして参つたのであります。人造強化米をつくりまするにつきましても、従来のような人造米でございますと、たとえばたけば全部姿が消えてしまうとか、あるいは浮び上つて分離してしまうというふうなものでは、たといいかに強化いたしましても、主食としての食品価値と申しますか、そういうものが非常に少いわけでございますので、まず人造強化米をつくる前提といたしまして、普通の米と同じに取扱い得る人造米をつくろう。この人造米をつくる技術さえ完成すれば、これに普通の方法でビタミン、カルシウム等を加えれば強化米ができますので、そのような見方から人造米のいろいろな製法を研究したわけであります。二度ほどいろいろいじりまして、大体昨年の九月ごろ、これで行けば大体米と一緒にたいても溶けないものができるというふうな確信を実験室的に得ましたので、一応これを特許の形にしまして申請をいたしまして、その後またいろいろ研究いたしまして、改良を考えておつたのでありますが、たまたま倉地さんのお話がありましたように、今年の三月十九日——正確に申し上げますと三月十八日の夜に、私所長の命令で一色の倉地さんの工場に参りまして、いろいろな試作品を拝見いたしまして、御苦心のほどはよくわかつたのでありますが、また十九日に倉地さんの工場を実際にお借りいたしまして、工場規模で運転して大体実験室と同じものができるというふうなことから、私どもで考えました実験室的な方法は工業化できるという確信を持つたわけでございます。皆様御承知のように、実験室でできた製法というものは必ずしも工業化、企業化して成功するとういものでございませんで、必ず中間工業試験と申しますか、そういうふうな試験をすることが必要でございますが、昨年の九月ごろ一応実験室でできたものを、どこかの工場で中間的にやつてみたいという希望を持つておりましたが、なかなか適当な所もありませず、三月に倉地さんの工場をお借りいたしましてそういうふうな試験ができたということは、私研究者といたしまして非常に喜んでおる次第でございます。  それでただいま委員長から御下間のありましたいろいろな製造法の問題でございますが、これはむしろ特許の問題がいろいろ関連すると思いますので、その辺の御見解を主管官庁の特許庁にいろいろ御下間いただいた方がよろしいのではないかと考えております。と申しますのは、巷間いろいろな製造法があるやに聞いておりますが、私の承知しております限りでは、従来の各種の特許公報を見ておるだけでございまして、この特許公報以外に最近いろいろな方法でつくつておるということも聞いておりますが、その製造しておられる現場に立ち会つたこともございませんし、またそれによつてできた製品をそうたくさんは見ておりません。少数でございますと、試験的に私の研究室に持つて来られたのがございまして、非常に品質のよいものから非常に悪いものまでかなりいろいろな幅があるようでありますが、少数なものは試験しております。それだけの結果で各種の製造法の優劣をきめるということはいささか早計のような気がいたしますので、現在幾つかの方法があるということを聞いておるが、詳しい試験をしておらないので、現在の種々の製品の比較は差控えたいと思います。その後かなり新しい研究がなされておるというふうに開いておりますが、大体研究と申しますのは、一つの成果を得て発表するまでは、やはりそれぞれの利害関係がございまして、なかなか詳細なことは第三者には伝えてくれないものでございます。また聞き程度のもので判断いたしますのも、これもまた早計かと思いますので、現在までにある製造法といたしましては、特許公報に現れたものを特許庁の御担当の方にお開き願えれば幸いだと考えます。
  82. 井出一太郎

    井出委員長 それではこれより質疑に入ります。芳賀貢君。
  83. 芳賀貢

    ○芳賀委員 人造米の問題につきましては、当委員会においても数次にわたつて審議をいたしたわけでございます。問題の主眼点は、本年のごとき異例の農業災害によりまして、平年時に比べると米収だけでも千二百万石も不足するという、これは国の食糧需給の面からいつても実に重大なる問題であるわけであります。かかる段階において、国内において天然米に依存できなくて、それに類似した性質を持つた米ができるような場合においては、これは当然国の食糧政策の面にも大いなる寄与をなすということは論をまたぬのであります。そういう場合におきましても、これはあくまでも国内における食糧の絶対量が、この人造米の製作によつてふえるということが第一の要件である。同時にその次には、市場に提供せられる場合においては、天然米に比べて同額あるいは低廉であるということも、これは無視してはならぬと思うのであります。またこれらの人造米等の製法に今後ますます高度の製法が採用されまして、最終の段階においては、質においても天然米とまつたく異ならぬというところまでこれらの研究が行われる場合においては、今後においても毎年のごとく三百万トン以上も輸入せられるというようなこの国内の食糧事情の中においては、非宿に問題が大きいのではないかというふうにうかがわれるわけであります。かかる観点の上に立つて、当委員会におきましては、現在取上げられておる人造米の問題に対してしばしば審議を行うと同時に、十一月の二十五日には実際に人造米を製造しておる工場を観察いたしまして、在間流布われておるところの人造米というものが、どういうような製造の工程を経てこれが市民に提供されておるかということを、一応委員会といたしましても確認する意味において、委員長の配慮によつてわれわれは調査に参つたわけであります。当日は自由党の綱島委員、並びに足鹿委員と私とが参つたわけでありますが、できるだけ機会を均等にして工場の視察を行いたいというような考えのもとに、第一は中川式の製法によつて行われておる埼玉澱粉の工場を視察いたしまして、次には松浦式の製法に依存しておる千葉の葛原工業の工場を視察したわけであります。われわれの想像をもつて言いますと、人造米の製法というものは、まだまだ複雑な工程と近代的な設備が必要であるのではないかという一応の考えを持つたわけであります。実際工場を見た場合においては、めん類を製造するがごとき機械が、ただ製粒機という名前のもとに、米の粒形をしたものをそこでつくり出して行くというようなところに、人造米を製造する機械の第一の工程があるのであつて、そういう点に対してはいささか意外の感に打たれたわけでありますが、とにもかくにもこの問題はまず特許権の問題をめぐつて一つの問題があるわけであります。第二点は、現在においてどういうような原料を用いてこの人造米をつくつておるか。しかもそのことによつて国内における食糧の絶対量がはたしてふえて行くのかどうかという問題、もう一つは、これを現在の米の配給価格よりもでき得るだけ低廉な線において市場に提供することが可能であるかどうかというこの三点に対して、われわれは調査を進めたわけでありますけれども、われわれの確認した範囲におきましては、いまだに政府当局が考えておるように、この人造米をつくる一つの要件として、まず小麦粉あるいは砕け米のほかに、現在国内においても生産過剰のような形をとつておる澱粉を処理するという点に、現在の工場における製造は欠けた点があるのではないかというふうにわれわれは見て帰つたのであります。たとえば葛原工業におきましては、主としてニュー・ライスと称する、これは栄養素を幾分これに加えまして人造米をつくつておるわけでありますが、この原料の配合の場合におきましては、小麦粉を六五%、くず米の粉を二〇%、澱粉を五%というような配合によつてつくられておるということになりますと、小麦粉にいたしましても、砕け米にいたしましても、これらは当然すでに国内においての相当の供給力はあるわけでありますが、それ以外に問題になるところの澱粉がほとんどこれに混入されておらない。その理由の主たるものは、澱粉の価格が小麦粉等に比べて非常に割高であるから、これは現在つくる場合においては コストの上から言つても用いることができないというのが一つの理由となつておるわけでありますが、これらの澱粉を用いない場合においても、たとえばニュー・ライスの市価は一キロが百円ということになつておるわけであります。現在の米の配給の価格は一キロにいたしますと六十八円であります。そういう天然米の六十八円という価格に比べまして、この人造米が百円であるということは、天然米に比べて実に五割以上高いということであります。こういうことであるならば、むしろ現在のごとく米価を非常に低い線に抑圧していることが一つの因をなして、あるいは今年のごとき冷害凶作の場合においては、冷害地において適応すべき品種を選択するよりも、いかにしてよけいとれる品種を選ぶかという選択の誤りからも非常に災害を受けた農家が多いという原因は、一に低米価ということにも原因しておることは、これを見のがすことができないのであります。かくのごとく、人造米というものが、米の五割以上も高い値段で市場に出されるという場合においては、むしろ現在の政府が行つておる米の統制等を撤廃して、自由なる価格において市場に出した方がいいのではないかというような極論さえも出ないとは限らないのであります。しかもこの原料というものは小麦の粉にいたしましても一キロ四十数円ぐらいであります。澱粉にいたしましても五十三、四円でこれは購入できるのであります。そういたしますと、原料が製品の四割ないし五割の範囲内において入手できるのにもかかわらず、非常に製品が高過ぎるんじやないか、それらの矛盾をいかにして今後解決するかというような点に対しても、自分たちは大きな関心を持つわけでありますが、これらの問題等についてば、後の委員会においてもう少し具体的なとりまとめをして詳細御報告をいたしたいと思いますので、次に各参考人の諸君に問題点に対してお尋ねをいたしたいと思うのであります。  問題の第一点は特許権の問題であります。この特許権については、現在政府が松浦さんの特許権を国が借り上げまして、特許権者に対しましては一年二千五百万円、実施権者の諸君に対しましては一年一千二百五十万円、合せて三千七百五十万円を一応借上料という形で特許権を眠らして、そうしてこの製法によつて人造米の普及をはかるという意図が政府の一つの方針であります。これらの問題につきまして、現在中川さんの方から、この特許権の無効審判が十月二十一日に提起されているわけであります。それから特許権の範囲確認のために、埼玉澱粉の籠島さんから、十月十九日にこの審判の要求が提起されているわけでありますが、これらは結局、現在の松浦式の特許というものはあるいは無効である、あるいは松浦式の特許の範囲外においても優秀なる人造米ができる、こういう主張がこの二つの審判の要求の中に現われておるわけでありますが、これらの実体につきましては、先ほど松浦、中川両氏からも、現在の段階まで人造米の製法が成長した、その間における歴史的な御苦心のほども聞かしてもらつたわけでありますが、かつては両氏が相協力して、苦難の道を経ながらも人造米をものにするため努力をされたような事実があるわけでありますけれども、今の段階になつて、国内の食糧情勢のもとにおいて、できるだけすみやかに人造米というものが一般消費国民の声として喜んで迎えられるという段階に立つ場合においては、こうした感情的な対立あるいはこれをめぐる業界のいろいろな対立抗争等は、一日も早く払拭さるべきであるということをわれわれは期待いたしておるわけでありますが、この際まず松浦さんから、現在松浦さんがお持ちになつておる人造米の特許権、たとえばどのような点が特許の範囲になつておるかという点を、ごく簡単でよろしゆうございますが、御説明を願いたいと思うのであります。
  84. 井出一太郎

    井出委員長 芳賀委員に申し上げますが、竹内参考人は四時二十分ごろまでで退席されたいというお申し出がありますから御承知願います。それから松浦参考人は少し耳が御不自由であります。どうされますか。松浦さん、御答弁になりますか——ちよつと申し上げますが、松浦さんはお耳の関係で、松浦化学工業の取締役である谷岡さんがかわつてお答えになります。
  85. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 ただいま御質問のありました人造米の製法について、特許がどの範囲にかかつておるかということでございますが、松浦といたしましては、現在特許権を大体代用米とか人造米とかいう名義をもちまして四つ持つております。そうしてそれが今のところでは、一応個々の特許として独立しております。ところがこれを詳細に私の方で、もうずいぶん長くやつておりますが、見ておるところで行きますと、粉を固めて粒状にして行く。それにスチームを当てていろいろな形にするというような点で、非常に広範囲になるのじやないかというふうに思つているのでありまして、その点公報の内容を詳しく御検討願いして、もちろんこういうふうな画については特許庁の方の審判部できめるこでもありますし、その点四つのものをお比べ願いまして御判断願つたらいいじやないかと思います。四つもありまして、この特許がこう、この特許がこうということを、それ自体全部覚えているというわけでもありませんので、その点の内容は手元に公報を持つておりませんので、詳しい点御説明申し上げかねると思うのですが……。
  86. 井出一太郎

    井出委員長 やはりそこが一番かんじんの点ですから、ごく要領だけ、どうですか、松浦さんから御説明願えませんか。
  87. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 それでは一応大体うろ覚えでございますけれども申し上げますと、議員各位はごらんになつたと思いますが、穀粉または澱粉に水を入れて練るわけであります。ここで接着というふうな意味、強度を上げるとか、または栄養剤強化というふうな効果のために、大豆乳を入れて練り合せたものを成形機によつて米粒形に成形するわけでありますが、米粒形になつたものに蒸気を当てまして、皮膜処理をする。皮膜処理したものは、そのままではアルフア化の状態になつておりますので冷却してべータ化する。つまり天然の米と同じように水からたけるようになつております。今のどの点が特許権の範囲かといいますと、大体これだけのことを要旨に書いてありますが、さらに内容の点では、大豆によつて接着の力があるという点があります。それと小麦粉の中にも接着の力がある。これらの点を考え合せまして現在実施されております製法というものは、米の粉または澱粉、それらのいろいろなもの、また中にはカゼインですか何か入つている点もあるかと思いますが、こういうような点から申し上げまして、一八七九〇三号の請求範囲になつております。  それからあと三件ありますが、それは詳しい点十分覚えておりませんものですから……。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 竹内さんにちよつと伺いますが、葛原工業は多分、特許権者である松浦さんに対しては、実施権者というような関係に置かれておると思いますけれども、そういう場合において、松浦式なる人造米製造機、現在の場合においては、ほとんど国内においては、松浦式の製粒機を中心としたごとき機械が一番生産も数的に出ておるように考えるわけでありますが、この価格が、一トン機で大体五十五万程度というふうに聞いておるわけであります。しろうとであるわれわれが考えても、非常に高価に失するのじやないかというような考えも持つわけであります。今日のように食糧庁として、一応特許権あるいは実施権に関する限り、これを借り上げるという方針になつている場合においては、おそらくこの機械の価格というものは、それらの特許権等を加味した価格ではないというふうに私たちは理解したいのでありますが、それらの価格の点に対しての御説明を順いたいのと、実施権者であるあなたは、特許権者からどの範囲の権限をまかされておるか、そういう問題があれば、これも合せてお伺いしたいのであります。なぜこういうことを聞くかというと、たまたま松浦式以外の製法によつてつくられた人造米に対しましては、特許権を侵害したというがごとき理由のもとに、あるいはそれを没収するとか、あるいは侵害の提訴をするということが、たまたま葛原工業の方からも伝えられておるということが伺われるわけでありますが、それらの事実がはたしてあるかないかということと、もしかかる事実があるとする場合においては、特許権者と実施権者の間における権限の委任された事項というのは、どの程度の範囲であるかということを一応お伺いしたいので、以上二点についてまず御説明を願いたいのであります。
  89. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 お答えいたします。松浦式の人造米機械の価格でございますが、特許というものは、やはりその研究の過程において、非常に経費がかかるものでありますから、その償却を一応機械にも加えるというのは当然じやないかと認めますので、発明に対する経費と研究費を加えた価格ということにしまして、現在五十五万円で頒布しております。この点特許料には関係ないわけであります。特許料は別にこれを一箇年幾らということで、私どもは代行しておりますが、私の考えはそこに一つありまして、実はここにおります中川さんと松浦さんが対峙するように、私も松浦さんと一応特許の問題で対峙する形で、松浦さんとひざを交えたわけなんですが、しかし特許でどう試合して、油揚げはとんでもないところにさらわれるというような、およそばかげたことをしたくないと思いましたのと、松浦さんは御老人ですから、私は敬意を払つて、両方の特許を一緒にして、これを松浦式の特許ということにしようじやないかということで、松浦さんの特許料は七万五千円、私の特許料は七万五千円としまして、十五万円の特許料とすることで、松浦さんの御了解を得たわけなんです。しかしここで松浦、葛原と複雑な名前を連ねることもない。私は実をとればいいと思いましたので、松浦式一点ばりで松浦さんのお名前を奉つて今日まで参つたのでございまして、特許というものは、ここに特許庁の方がおいでになりますので、私が説明するまでもありませんけれども、ささいなことで無効審判をするとか、仮処分をするとか、ともかくも営業とはおよそ離れたけんかのできるものなんでございますけれども、けんかしていたのでは何にもなりませんし、ことにこの逼迫している食糧事情のときに、業者がそんなどろ試合をすべきものじやないと思いましたので、私は先輩の松浦さんに一歩譲りまして、特許の点については、そういうことで妥協したわけなんでございます。  それからもう一つ、私が松浦さんの特許を実施して行きます件に対して、松浦さんの特許に関しては、いろいろ批判的な目で見ていられる向きもあると思います。特許庁の方もおいでになつておりますので、私が説明するまでもありませんが、特許というものは、ことごとく掘れば何かのあるもので、およそ一つのものが成功すれば、それに類似した特許が幾つも出て来ることは当然でありますけれども、私は最初にこういう発明をされた方がほんとうの発明者じやないかと思いますので、その点松浦さんに全面的敬意を払つておる次第でございまして、私はあえて実施権者としての立場で仕事をさせていただくことでけつこうだと思つて、現在そういう立場で仕事をしております。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大分お急ぎのようですから、お答えは簡単でけつこうです。ただいまの御意見を聞くと、借上料を一応政府は考えておるわけでありますが、あなたのお話によると、そのほかに五十五万円の機械代の中に、あなたの方から松浦さんに差上げる分も含まれておるというような見解でありますけれども、政府が今考えておる点は、一年間に二千五百万円を、発明者であるところの松浦さんに、特許権の借上料としてお上げするということは、明確になつておるわけであります。なぜそういうことをするかというと、この特許権の問題とからんで、これがつくられる人造米の価格の中に非常に多額にコストとして織り込まれる場合においては、消費者であるところの国民が非常に迷惑をするということにもなるわけであります。それで特許の借上料というものは別に国が出して、人造米のコストの中にはそういうものを一切含まないようにしたいというのが、現在政府当局の考え方でありますが、あなたの御説明によると、五十五万円の機械代の中にも松浦さんに上げる分が入つておるということになると、それはどの程度入つておるかということと、もう一つは七万五千円ずつ十五万円の分もそれに入つておるように聞えるわけでありますが、そういうことになると、五十万円で売つても別に損はないということになります。  それから第二点は、ただ実施権者としての仕事さえすれは満足であるということであれば、今後、たとえば特許権問題にからんで、いろいろな訴訟とか審判が提起された場合においては、あなたの今のお言葉によると、特許権者であるところの松浦さんにかわつてかかる行為をするがごとき約束は、今の段階では全然しておらぬということがこれで明白になつたように思いますが、念のためにもう一度お伺いしたい。
  91. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 特許によらず、ある程度原価計算にその研究費を償却させるということは、現在の営業の当然の原価計算の元じやないかと思います。たまたま研究費がたくさんかかつたならば、それを償却するために原価に入れることは当然のことで、これは何ら特許料とは関係しないことじやないかと思いますが、それを特許料というふうに考えられますればやむを得ませんけれども、私も機械屋じやございませんので、機械の原価計算はよくわからないのです。ただ一般の人が高いというならば、あるいは高いかもしれないというふうには感じるけれども、機械屋じやございませんので、原価計算の点はわかりませんけれども、高くてもこれは研究費の減価償却がそこに入つておるのじやないかという想像のもとに申し上げましたので、機械屋じやありませんので原価計算の点ははつきりわかりません。  それから葛原が特許を侵害したら云云ということは、私は口外したことはございません。但し特許というものは、商業道徳の上からいつても、敬意を払うべきものであり、商売上からいつても、特許を侵害したら、特許を侵害した以上の損害をこうむるものであるということは、私ども商売上心得ておりますので、特許侵害ということは、今までの商業道徳から行くと、一流のメーカーは特許侵害はしないことを原則としていたように思われますので、私もその例にならつただけでございます。別に松浦さんの代理として私の方で特許権を云々するという考えもございませず、権利もございません。松浦さんが特許権を維持し、実施権を私に譲つた以上は、松浦さんがその権利の擁護には責任を持つべきものじやないかと思います。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお伺いしたい点は、松浦さんの特許権というものは、機械にあるのではなくて、製造法そのものにあるのだ。人造米をつくるという製造法が特許権を持つておるのであつて、機械にはないのであります。その点は葛原さんも御承知と思います。そういう場合においては、松浦式であつても、それ以外の機械であつても、これらは何ら特許権との直接の関係はないという、この明白な判断はどうしてもされておかなければならぬと考えるわけでございますが、こういうふうな観点の上に立ちますと、人造米の特許権が松浦さんに四つあるというふうに開いておりますが、それはあるとしても、人造米をつくるためにいろいろな機械が出ても、現在の松浦式の製粒機よりももつと優秀なものが安く出ても、それは決して特許の侵害ということにはならないのであります。あの製粒機を見ましても、製粒機そのものには特許を得るがごときそういう新発見はないのでありまして、これはたとえばドロップ等にいたしましても、米の粒は小さいしドロツプは大きいくらいの程度で、おそらくああいう着想のもとにつくられておることは、これは常識でも考えられるのであつて、そういう場合において、何か人造米の特許権は松浦式であるからして、松浦式と名のついた製造機一切を用いなければ特許権侵害になるというがごとき間違つた考えを、世間一般に流布するようなことがあつてはならぬと思う。こういう点は今あなたが言われたように、おのおのの立場に立つてその権限の範囲を尊重し合うという謙虚な気持はあくまでも必要じやないかというように思うので、そういうことになると、松浦式の機械の発明者だけにお礼というか、研究費を多分に加味するという考え方は、まつたく妥当性を欠いておるように私は考えるわけでありますが、いまだにあなたは、いやそれは正しいのだというふうに考えておられるかどうか。  また、かかる研究費であるとか、償却費とかいうものを機械にたくさん加えて、しかも一日二トンしかできないような小さい機械を、五十五万も出して買わなければならぬ。しかも現在の情勢においては、いつまで人造米というものが一般市場に受入れられる将来性があるかということは、あなた方もまだ心配が多いと思うのです。食糧が実際足らぬ、そういうものでも高くても買わなければならぬという場合においては、来年の秋ごろまでは続くとしても、正常な状態にもどつた場合においては、あくまでも米とまつたく同じようなものであるということと、それよりも高くないというこの二つの原則に立たなければ、将来性というものはないのです。そういう場合には一年以内にこれはだめになるかもしれないということになると、無法に高い値段で、しかも米が足らぬという弱点に乗じて一般消費大衆に人造米を押しつけるような状態にもなるので、ここに問題がある。だから機械そのものの中にはやはりそういういろいろなものを含まないのが建前でないかというふうに御指摘したいわけでありますが、その点をもう一度お伺いしておきます。
  93. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 私が申し上げましたのは、米をつくるという発明の研究費というのじやなくて、機械そのものをつくる、機械の方の研究費といいますか、何回も失敗を重ねますので、原価が高くつくということでございます。松浦さんは、自分の意に満たないものはできないというので、最近鋳物を百台ばかり全部スクラップにしてしまいました。われわれもそれを使いまして、この点は改良しなければいけないということを指摘しましたので、それによつて全部直したわけでありますが、そのために製造が遅れて私も非常に迷惑したのでありますけれども、そういうものも多少は原価に含まれるのじやないかということを申し上げたので、米をつくるという製造の方の特許料がそこへ入つて行くというわけではございません。その点、お考えをかえていただきたいと思います。
  94. 金子與重郎

    ○金子委員 竹内さんはお忙しいそうでありますので簡潔に御質問申し上げますが、ただいまの芳賀委員に対する答弁の、機械に対する研究費を加算しておるというふうなお話は、道義的には一応わかりますけれども、そういうことを研究しても、その後において成果があがつたときにほかのメーカーに利益を食われる、こういうことを擁護するために特許権を持つのでありまして、道義としては別ですが、そういう必要があるならば特許をとればいいので、そうすれば、だれがその問題を特許料として請求しても問題ないのであます。従つてその問題は、今のあなたの気持としては正しいかもしれませんが、そういうものを機械の上に加算して行くということは、非常にわれわれとしては困つたことだ。そうあるべきではない。なぜかと申しますと、商業とか、協会というようなお言葉がときどき出て参りますけれども、協会がもうけずくでやるなら、政府はそんな金は出さない。かつてにもうけるなら、政府が国営として取上げる必要はない。ただここに協会だけでは解決つかない問題があるので、こうして皆様に御苦労願うわけであります。そこで実施権の問題につきましては、この実施権というものが相当高くついておりますことは、あるいはこれは一つの例でありますが、今後また新しいパテントが出て、もつと高い実施権になりますと、せつかくのパテントが国民のためにならぬという結果が出て参りますので、この実施権の獲得に対してはいつごろ、どういう契約によつて、どういう金額でこの権利を獲得されて、今後この権利が分布される過程においてどういうふうにして代償をとるのですか、その経緯をひとつお話願いたい。
  95. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 特許の実施契約につきましては、期限は普通の二箇年契約ということになりますけれども、常にそれは更新することになります。ですから特許権の有効期間内は実施権は契約されておるものと私は信じております。  実施権料の金額の十五万円ということは、私が妥当であると考えましたのは、たいていの場合一%とか、あるいは安くて〇、五%とかいうような数字になるのでありますが、この場合にある程度——私ちよつと計算があれですが、〇、二五%くらいのものではないかと思いましたので、非常に安い実施権料だと思いましたので、それでは松浦さんの権利を値切るということは悪いと思いまして、松浦さんの権利は権利とし、私の方の権利を加えまして一台十五万円というものをきめたわけなのであります。
  96. 金子與重郎

    ○金子委員 この十五万円は、これからあなたのシステムをもつてやろうとする人が、一台に対して十五万円の基準でおとりになることになつておりますか、それが一つと、それから〇、二五%くらいになるとおつしやるが、どの金に対して、そうなるのですか。
  97. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 これは一個について十五万円としますと、一キロ百円としまして二十五銭になります。
  98. 中澤茂一

    ○中澤委員 竹内さんはお帰りのようですから、この際はつきりしておきたいのですが、ちようど特許庁の大野部長が来ておりますから、はつきりしておいていただきたいのです。機械の特許権というものがあるのかないのか、この点をはつきりしておいていただきたい。
  99. 大野晋

    ○大野説明員 機械につきましては、この人造米の特許問題がいろいろ出て来ましたときに一応私の調査した結果は、機械については特許権はございません。
  100. 綱島正興

    ○綱島委員 先ほどから特許権の内容が少しもわからないのですが、これは特許された内容は既成のものに対してですか、新たにプロダクトされたものに対してですか。その方法ですか、何でございますか。
  101. 石原武夫

    ○石原説明員 今問題になつております人造米の特許権につきましては、方法の特許でございます。これは先ほどもお尋ねがあつて、御説明申し上げてあつたかと思いますが、ちよつと技術的に私も十分御説明できませんが、書類に出ておりますところによりますと、穀粉または澱粉を水で湿潤いたしまして、別に清水で膨脹させてこれを粉砕して、乳状またはバター状にした大臣の粘稠液を混和いたしまして、さらにこれを小麦にまぜ合せました上、人造米の成形機で米状に圧縮成形をいたしまして、これをカンの中に入れて加熱をいたしまして、短時間加熱した後に、加熱によりまして表面にのり状の皮膜を形成させまして、後にこれから加熱蒸気を発散せしめまして、水分を除去いたしまして急に冷却する。そうして人造米をつくるというのが特許の内容になつております。
  102. 井出一太郎

    井出委員長 それでは特許の内容についてはあとまわしといたしまして、竹内参考人に対する質疑を願います。
  103. 足鹿覺

    足鹿委員 竹内さんに一点だけお伺いいたしますが、先ほどのお話によりますと、一台について十五万円、七万五千円は葛原工業、あとの七万五千円を松浦さんに支払つて、その労に報いておる、こういうことでございますが、今の金子委員の質問に対しましてはお答えにならなかつた。この七万五千円というものを割り出されて、労に報いられ、しかも一つのコストをもつてある年限に松浦氏の労に報いる一つの金額があるはずであります。それは幾らでありますか、このことです。これは政府は二千五百万円で松浦式の権利について一応これを補償するということになつておる。しかるにさらにまた松浦氏に対してあなたは七万五千円を一台ずつに支払われるということになると、これは何台を目標として、その総金額は幾らになるのであるか。またそれは一応算定の年限はどこに求めて算定されておるのですか。ただ労に報いるという抽象的なことではわかりません。国もある程度の補償をする。あなたもまたこれを補償する。そこに非常に重複があると思うのです。一応国が財政支出をする以上は、発明した人に対するところの一極の補償的な考え方もあると思う。現在この増産と普及の障害となつておるのは、私はそこに問題があると思うから、特にこの点を明らかにしていただきたい。
  104. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 私どもは常識として特許料は、特許権のある間十五年間はこれを支払うものだというふうに考えておりますので、それを実行することは、あえてふしぎはないと思つております。それから特許が切れたときには自由にできるけれども、特許の権利のある間は、特許を発明した方に使用料を払うのは当然であると思います。それからもう一つ、先ほどお答え漏れしましたが、松浦式の機械に特許はございませんが、私は実施権の譲渡を受けるときに、機械は松浦式のものを使うということが条件になつておりますので、私に対しての関係だけにおいて、松浦式の機械を使わなければならない責任があるのでございます。
  105. 足鹿覺

    足鹿委員 話に聞きますと、あなたの御関係しておいでになります全国合成米協会、これは業者の機関であると先ほど食糧研究所の鈴木技官も言つておられましたが、この合成米協会を通じて一つの権利金に該当するものが徴収されておると伝えられております。その金額は入会する金額が三十万円と称せられておりますが、そういうものをおとりになつておるのでありますか、その点を明確にしていただきたい。
  106. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 これは会長をさしおいて私が御返事する事柄ではありませんので、合成米協会の件に関しては、会長からお聞き願いたいと思います。
  107. 足鹿覺

    足鹿委員 そうではない。私が聞いておるのは、七万五千円プラス七万五千円の十五万円というものを特許権者に対する一つの補償として、あなた方は道義の上からやつておられる。そのことのよしあしは別といたしまして、あなたとしては美徳を発揮したとお考えになつておるでしよう。しかし、その一つの権利というものを背景に、現在全国合成米協会なるものができて、この入会金なるものを相当高額の三十万円徴収されておると伝えられておる。これは今私の申したものと全然別な関係において見ることはできない。その点からあなたに伺つておるわけです。
  108. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 それでは会長をさしおきまして、これはやはり会のことでありますから、私から御返事申し上げます。入会金を以前は三万円とつておりましたけれども、微々たる数の会員では、三万円の入会金とわずかな会費だけでは運営ができませんので、ことしの九月から五万円の入会金に決定いたしました。これは会の入会金でございます。それ以外には会としては何も徴収しておりません。
  109. 足鹿覺

    足鹿委員 それはあなた方のおつくりになつておる葛原工業が中心となつておやりになつておる。全国合成米協会の会長は、なるほど倉地さんになつておるようでありますが、実際においてはあなたの会社が中心になつておられる。すなわち、これは実施権をあなた方はわけてもらつておられますから、そのものを背景にしてつくられた全国合成米協会なんであります。でありますから、いわゆる機械についても、十五万円のいわゆる特許料を徴収し、さらにまた澱粉米の工業を志すものは入会金を五万円徴収されるということは、現在非常に人造米の増産を期待しておると政府は言つておりますが、その増産の大きな障害になつておる。現在いろいろな人に、何が一番大きな増産普及を妨げておるか、またコストの引下げを阻害しておる隘路は何であるかとただしてみますと、そこに問題があるように異口同音に申しまするので、あなた方のその合理的な根拠は一体何であるのか、すなわち七万五千円を松浦氏に差上げられるそのこと自体を私はとやかく言うのではありません。その七万五千円をさらに拡大して、ある年限——十五年ということを今申されましたが、十五箇年間に幾らを松浦さんに支払われる考えでありますか。いわゆる特許料七万五千円と割出されたものを十五箇年間に永続しておやりになるということになりますと、一台について七万五千円でありますから、厖大な金額でしよう。これはおそらく日産二トンの機械を中心として御計画になつておられると想像いたしまするが、日産能力の相当高いものについてもやはりこの金額でおやりになるのでありますか。おそらく金額は上まわるのではないかとも思われますしこれは平均の七万五千円とも解釈できますが、いずれにいたしましても、十五箇年間に一台について七万五千円というのは相当な金額であります。松浦さんに対しても相当な金額でありますが、葛原工業の実施権科としてとられるものとしても相当多額な金額になる。ですから、あなたが松浦さんと御契約になりましたもとの金額は幾らでありましたか。そこから合理的な特許料が出て来るはずなんです。常識的に言つて、社会の通念上妥当な金額がどの程度であるかということの判断がつくと思うので、私はしつこく聞いておるのです。その点を明確にしていただきたい。答弁をはぐらかさないように。
  110. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 一台が二トンの生産のもので一台について七万五千円を十五箇年間支払う、これはその通りでございます。だからそれを合計すれば——今私はそろばんがすぐできませんので、金額を申し上げるわけに行きませんけれども、それは権利金として発明者に対して払う義務があると考えておりますので、別にふしぎに思つておりません。これを一括して払うのでしたら、たいへんですけれども、年々それからあげる利潤によつて支払うという場合には、そんなに多額の金額ではないと思います。
  111. 井出一太郎

    井出委員長 川俣清音君。
  112. 川俣清音

    ○川俣委員 私この際葛原工業の竹内君にお尋ねしておきますが、米穀統制法に基いてくす米が統制の中にあるということを御存じであるかどうか一点。それから今まで正式にくず米の配給をどの程度受けられ、また将来どのくらい受けられるという見込みで計画を立てておられるのか。第三点は、これらの配給と見合つて、権利というものが高くなつたり、安くなつたり評価されるのではないか。もしもくず米の配給が停止されても、なおこういう特許権というものが非常に価値があると御判断になつているか伺いたいと思います。
  113. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 くず米が配給統制を受けていることはよく存じております。これをつくる際には白ぬかを使つておりましたが、夏場になりましてなくなつて農林省に払下げをお願いしましたところ、ちよつとストップということで二箇月ばかり払下げを受けませんでしたので、やむを得ずくふうをいたしまして、くず米のかわりに澱粉と小麦粉だけでできますので、くず米の必要はありません。  それから第二点については、くず米は政府がお持ちになつていて、なるべく使つた方がいいというので、配給を受けました。これは約五十トンでございます。  それから第三点は、人造米はくず米を使わなくても、松浦式の特許を使いますれば、完全にできることを証明申し上げます。
  114. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますと、松浦特許についてはくず米の配給は必要としない、停止されても特許権の価値には影響ないというお考えのようにお聞きいたしましたが、それでよろしゆうございますか。
  115. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 結局高い原価のものを使えば高くなることは必定で、これを安くするためには、原料の方を政府の方でお考えいただいて、それを原価計算にタツチして初めて安くなるのでございまして、価格の面を問題にしませんければ、これはくず米の配給を停止されましても、人造米はできます。但し原価が高くつきますから、高くなるかもしれません。それはくず米よりも澱粉の方が現在価格が高いからでございます。
  116. 川俣清音

    ○川俣委員 参考人は少し農林委員会に対する答弁の誠実を欠いています。あなたは人造米が高くなつても売れるとお考えになつていないでしよう。安くなければ売れないでしよう。
  117. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 今質問の範囲だけについて答えているのです。
  118. 川俣清音

    ○川俣委員 結局人造米が売れなければ特許権の値打も出て来ない。あなたはこれは売れても売れなくても、何でも特許権の価値があるんだ、くず米が入らないために価格が高くなつて人造米が売れるんだというような御見解であるならば、そのように御答弁願いたいしくず米が入らずに価格が安くできなければ、この特許権の値打がだんだん低下するのだというふうにお考えであるかどうかということを伺いたい。
  119. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 特許権というものは使えば当然それに対して特許を持つている方の要求するところを支払つてやらなければならないのは、人の特許を使う場合の常識だと思つておりますので、売れる、売れないは、自分が使うか使わないかということで、安い、高いということにはならない。どうしてもこれを使いたいという場合には特許料を払つて使わなければならないのではないかと思います。
  120. 井出一太郎

    井出委員長 網鳥君。
  121. 綱島正興

    ○綱島委員 農林省から昭和二十九年三月三十一日までに特許権の侵害に対して三千七百五十万円を松浦特許権者に特許料として支払う。そのうちで千二百五十万円は実施権の損失補償額として計上されておると聞いておりますが、さような事実がありますか。
  122. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 そういうことは松浦さんから一応伺つておりますが、その件に関しては、私どもの方でまだ御返事してございません。
  123. 綱島正興

    ○綱島委員 実施権の損失補償の千二百五十万円はいかがでございますか。
  124. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 千二百五十万円の損失補償金で、私の現在の犠牲はあがない切れません。
  125. 綱島正興

    ○綱島委員 昭和二十九年三月三十一日までに、政府があなたの実施権の損失補償として千二百五十万円支払うということになつておる事実がありますかどうか。
  126. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 仄聞しております。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題を元にもどしまして、竹内さんにお伺いしますが、あなたは松浦さんの特許権の実施権者なのです。先ほど松浦さんの代理の方に聞いても、自分の特許権はどういうものだかよくわからないというようなお話ですけれども、あなたはまさかどういう特許の内容であるかわからぬ形で実施権者になつてはおらないと思う。それで、製法の中において、いかなる過程が松浦式の特許権の内容であるか、特許の内容についてあなたの知つている範囲をお話し願いたい。
  128. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 それは、先ほどから谷岡さんあるいは特許庁の方から御説明があつた、その範囲だけしか私も存じておりません。しかし特許というものは、無効審判とか訴訟を起すとかいうことになると、われわれの経験から言いますと、商売にならないほどの犠牲を払つて、結局両方が討死にしてしまうというようなあれなものですから、私は争うより、そういうことは手を握つて提携してやつた方がいいと思いましたので、提携してやりました。
  129. 井出一太郎

    井出委員長 竹内参考人に申し上げますが、あなたが時間をお急ぎの関係もございますから、御答弁は質問にまともに、簡潔に願います。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなた方の御答弁を聞いていると、問題をはぐらかすことを意識的に言つているというようにもとれるわけです。全然わからぬで言つているならばやむを得ぬわけでありますが、参考人として実際の特許権者であるとか、あるいは実施権者が出席をされて、自分の持つておる固有の権利であるところの特許権の内容を知らない。知らないと、その特許権を侵害された場合においても、侵害されたことがわからぬということになる。全部侵害されておつても、自分の特許権の実体はこの範囲であるということがわからぬければ、侵害の審判の提起もできませんので、それを私たちは御注意したいのです。そうでないと、せつかく苦心して物を発明して特許権をもらつても、どこに特許権がついたかわからぬようなことでは、発明者の苦労が水泡に帰するような場合があるわけです。私からお尋ねしますが、あなたの工場で実際にやつている人造米製造の工程は、第一は原料の調合です。あなたのところは六五%の小麦粉と二〇%のくず米の粉と、五%の澱粉を配合して、かきまぜてやつておるわけですね。それからこの松浦式の製法によりますと、そういう原料を調合されたはかに、大豆の粘稠液という特殊な液を入れるということになつているわけですけれども、われわれ農林委員があなたの工場に行つた場合に、この原料の粉のほかに何を入れているかと工員の娘さんに聞いたわけですが、いや、そのほかに水しか入れておりません。それが実際なんです一部塩分も入つているように思つたわけですが、おそらく水なんです。そういうことになると、第一の工程においては、松浦式特許権の中に示されている大豆の粘稠液を用いておらぬという事実が一つ出て来るわけです。第二の工程として、いわゆる製粒機という機械の中を通る工程が一つあるわけです。この製粒機そのものには特許権がないわけであります。どのような製粒機を使つても、ああいう米つぶ型のものが出て来るということは常識でもわかるわけです。その次は、一つの熱処理の工程があるわけです。あの長い管の中を米の形をしたものが通つて処理を受けるという段階と、最後にはそれを冷却するという、大別すると四つの工程になるわけですけれども、あなたはこの四つのおもなる製法の流れのうち、どこが特許権であるとお認めですか。
  131. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 特許料を払つていれば特許権者が文句を言わないので、その範囲において自分の会社の工場で適当にアレンジして製造するということ、くふうによつて製遙することは、これはよいものさえできればよろしいじやないかと思つております。一つの過程なんですから、過程の中の一部分が抜けているだけでして、一番重要なところは熱処理をするところにございます。熱処理をして冷却をするところが一番大事で、私はそこに一歩中心を置いております。
  132. 芳賀貢

    ○芳賀委員 なおお伺いしますが、私の聞いているのは、どの点に特許権があるかということです。あなたは熱処理が特許権だと言われますが、あの熱処理をやる機械は特許品ですか。
  133. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 それは製造の工程でございますから、その製造方法というものに特許権がありますので、全体の製造方法が触れて来るというように思つて、私は松浦さんの特許を実施しております。
  134. 芳賀貢

    ○芳賀委員 竹内さんにお伺いしますが、この人造米の特許権というものは、わが国において松浦式が初めてではないのです。すでに十数件人造米に関する特許が下りておるのです。あるものはもう公知公用の域になつて公開されて、だれがその製法によつてつてもさしつかえないということになつている。だから人造米をつくること自体が全部松浦式の特許権であるというようなお考えをもし持つておられると、これは重大なる錯覚であります。それで第一の工程において著しい問題は、やはりその原料を調合して、一種の薬品であるとかあるいは液体を入れるということをあなたは全然やつておらぬわけです。ところが松浦式の特許の中には、そういうことが第一の項目としてはつきり出ておる。その著しい一つの特性をあなたが全然用いておらぬということは、現在の段階では、松浦式の製法によらなくても人造米はつくれるということをあなた自身が証明しておることになる。だからそれ以外の業者がどのような人造米をつくろうとも、これは松浦式の権利の侵害であるという根拠はないのです。あなた自身が、松浦式の特許権によつてこの部分をつくつておるということの確信がないのであります。世間においてあれ以上優秀な製法が生じた場合においても、これはこの特許権あるいは実施権の侵害であるということには全然ならないことになるのであつて、あなた自身が松浦さんの発明の功績に対して、今後も二トンの機械一台に対して十五万ずつの感謝のしるしを差上げるということはまことにけつこうであるけれども、実際つくつておるところの人造米そのものは、松浦式の特許権によつておるのではない。その製法によらなくても十分りつぱな人造米ができるというところまで、もう段階が飛躍しておるということを証明されておると思いますが、その点に間違いありませんか。
  135. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 その過程にあるので、私は特許に触れていると思つておりますから、それで特許料を払つております。これは見解の違いであり、そういう点は特許庁において御審査いただくべきことで、これはおのおのの考えの違いじやないかと思いますから、それで初めて特許庁において審査さるべきものだと思います。そのときに特許侵犯とか云々というものは出て来るものじやないかと思いますので、われわれはただその仕事をする上だけに考えを及ぼしておりますので、これ以上は見解の相違でお答えすることはできません。
  136. 松岡俊三

    ○松岡委員 議事進行で……。私、先ほどから質問応答をよく承つておりますと、なんとなく世の中にはよくおどらされるものもあり、一等、二等、三等社長があるというようなぐあいのこともありがちなのです。本問題を先ほどから承りますると、竹内さん、なかなかよくおわかりになつていらつしやるようでもあるけれども、どうも質問と応答がぬかにくぎのようなところがちよいちよい私どもには感じられる。この点少しく無理なところがあるようにも解される。それですから、竹内さんがすべてこの交渉に当られて、腹の中に十分に入つていらつしやつてつていらつしやることならば、これはそうもならないかとも思うのです。これは失礼でございますが、私の推測ですから、もし過言であつたならばお許しを願いたい。先ほど来の質問応答がなかなか容易に尽きない。それですから、竹内さんのほんとうのところを、そこまではまだというようなところがございましたならば、そうおつしやつていただいた方があるいはいいんじやないか、こう思うのであります。私はたいへん失礼ですけれども、これだけを申し上げて、そこまでは知らなかつたのだというようなところがございましたらば、そうおつしやつていただいた方がいいのじやないかと思うのです。
  137. 井出一太郎

    井出委員長 この際委員長から申し上げますが、ただいま松岡委員の議事進行に関する御発言もあり、かたがた先ほど来の質疑応答を承つておりまして、竹内参考人に関する限りは、一つの結論的な線まで来ておるように思いますから、芳賀委員におかれまして、その辺をお含みで、一応竹内参考人に対する締めくくりをしていただいて、残余は特許庁もいらつしやるし、そのほかの参考人もおられますから、さようお含みの上、お進めをいただきます。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま松岡委員からのお話がありましたけれども、私たちは少くとも竹内さんに関しては、これはもう業界においても有名な人であるということをほのかに承つておるのであつて、こういう席に出てわからぬというような人ではないと思う。むしろ委員会のこの一つのまじめな方針に対して、真剣に協力されておる態度であるかどうかというところに疑点を持つておる程度であります。なお委員長の御注意もあるので、結論的に申し上げますが、そういたしますと、結局竹内さんは、松浦式の特許権の実施権者ではあるけれども、ほんとうは松浦式の特許権の内容というものはよく熟知しておらぬということと、もう一つは、もう松浦式の製法というものは過去のものになつてつて、現在の段階においては、そういうものに依存した場合においては優秀なものもできないし、また量産等も不可能であるというような認識のもとに、かかる否定的な態度をとつておられるというふうに私は確認したいわけでありますが、そういうように考えてさしつかえありませんか。
  139. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 たいへん何べんも申し上げて失礼でございます。お言葉を返しましてたいへん失礼でございますが、私は松浦の特許を大体解釈しまして、その一部々々全部を松浦の特許によらなくても、部分々々は松浦の特許によつているのでこれは特許料を払わなければならぬと思つておりますので、松浦の特許を実施しているという観念でつくつております。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、あの工程の中の一部は、松浦さんの製法に依存しておるし、あとは公知のものを使つておるということになると思いますが、その場合の、松浦式の製法の一部を使つておるというその一部はどの点でありますか。
  141. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 穀粉を混合するというところ、それから蒸気処理をするところ、それからそれを冷却して乾燥に入れるというところ、そういうところが一つ一つ触れて来るんじやないかと懸念するわけなんでございます。これは訴訟を起して白黒をきめなければはつきりしませんけれども、大体そういう懸念があるので、そういう危険なことはしない方がいいと考えるわけです。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、全部が松浦式だということにまたもどるわけですね。御注意までに申し上げますが小麦粉であるとか米の粉であるとか、澱粉をまぜるということは、これは世界いずれの国にもそういう特許というものはないので、一人々々の家庭において、主婦の方がこういう粉を集めてこうまぜるということは、これが松浦式の特許権の侵害だなんということには全然ならぬわけです。それに水を加えても、これも特許権の侵害にはなりません。そうするとあなたの言われた第一の段階の原料をまぜてそれに水を加えるということは、これは全然特許権がないということに過ぎないのであります。それから製粒機という機械の中から出て来るあの工程というものは、別に何も著しい特色というものはないのであつて、これは過去の人造米の公知になつた機械の中においても、ああいう作業というものはできるわけです。熱処理段階においても、ああいう筒型の流れ作業をするような設備は、量産をやる場合においては、あるいは筒型のものであつても、あるいはせいろ状のものであつても、一定の加熱をするという場合においては、これは何ら製法の中において異なつた点はない。それから冷却させるということは、これは当然、熱いままで市場へ出すということはできぬので、冷却するということは、だれがやつても、かつての要法によつても、そういうことは行われておるのであつて、私の繰返し繰返ししてお伺いしておる点は、この一点だけでも、松浦式でなければやれぬのだという点が、自信をもつて、おありになる場合においては、その御表明を願いたいのです。
  143. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 何べんも申し上げますので、今の通りなんでございますけれども、これはみな見解の相違で、あなた様は抵触しないとお思いになり、私は抵触する可能性があるかもしれぬから、危険だから、特許を使用した方がいいと考えるのでありまして、これは見解の相違というもので、私はここであなたに圧迫的に、あなたのおつしやることを肯定するわけにいきませんので、委員長さん、この辺でごかんべんいただけませんでございましようか。
  144. 井出一太郎

    井出委員長 川俣清音君。
  145. 川俣清音

    ○川俣委員 ちよつと一点だけ……。今までお聞きしておると、一審問題点は、どこを特許だということを強調されるのかという点があいまいです。この際この点を明らかにしていただきたい。これは速記録にとどめますから、どうぞ、どこを特許としてあなたが尊重しておらるるかという点だけを明瞭にしていただきたい。
  146. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 これは審判を起してみなければはつきりしませんので、私は審判官ではございませんので、そういうことをはつきり申し上げることはできません。
  147. 川俣清音

    ○川俣委員 どこを特許として主張されるかということをお聞きしておるのです。特許権の争いを聞いておるのじやない。実施権者はどこを特許権の主眼点として主張されるか。主張がなければ別です。なければないなりに、特許権の主帳があれば、その主張を明らかにしていただきたい。
  148. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと委員長からお聞きしたい。竹内参考人に申し上げますが、ただいまの川俣委員の御質問に対して、もう一ぺん明確にお答え願えませんか。
  149. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 全体として、製造工程全体を特許の範囲にしておりますので、その部分々々に多少とも触れておるのじやないかと私は考えるので、この特許に対しては、争つてまで特許を破つてやることはいやだから、この特許を採用したいというわけでございまして、その点必ず触れている触れていないと、私は明確に申し上げられません。
  150. 井出一太郎

    井出委員長 この際、委員長からお尋ねいたします。あるいはあなたはこの委員会の空気におなれにならないので、御答弁が明確を欠くやとも実はお察しをしておるのでございます。そこで私が一点念を押したいのは、松浦式の製法特許のおもなる点が四点ある。これを大体あなたは尊重せられて、その範囲内で行動をされておる。こういうことを先ほど来おつしやつておられますが、これは間違いございませんね。
  151. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 その通りでございます。
  152. 井出一太郎

    井出委員長 そしてその特許方法の中で、大豆粘稠液を使うというのも一つの重要なポイントであるように伺いましたが、現在あなたの製造工程の中では、必ずしもこれを全部の製品に用いておるというわけではないように伺いました。これはそう理解してよろしゆうございますね。
  153. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 はあ、価格の点で高くつきますので、使つておりません。
  154. 井出一太郎

    井出委員長 大豆粘稠液を使つておりますか。理由はいいです。
  155. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 使つておりません。
  156. 井出一太郎

    井出委員長 それではもう一つ、製法特許の中でどの点にあなたが一番重点を置いておつくりになつていらつしやるか、それを明らかにしていただきたい。
  157. 竹内寿恵

    ○竹内参考人 工程から申しますと、粉を混合して固めてということになりますけれども、私どもが今特許に触れていると思いますところは、蒸気処理をしまして表面を糊化しまして、それを冷却してベーターにして——アルフアーの場合には、水に入れるとやわらかくなつてしまいますので、べーターにしまして乾燥機に入れますが、そうした場合に、米と同じ固さになるというところが、触れる可能性があると思います。それで松浦式の特許を使つております。
  158. 綱島正興

    ○綱島委員 食糧庁長官にお尋ねします。この松浦式特許権の代償として、昭和二十九年三月三十一日までに三千七百五十万円を支払われるお約束があると、これこそ仄聞しておりますが、さような事実がございますか。
  159. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。特許権を借り上げるために、特許権者にその借上料を支払うという問題と、特許権者が実施権者に対しまして実施権を与えておりますが、この部分に対する契約解除をしなければなりませんので、この実施料の損害賠償として補償金というものを考えまして、一年間に三千七百万円ということで交渉をいたしておるということは事実でございます。しかしまだ契約は成立しておりません。
  160. 綱島正興

    ○綱島委員 そういたしますと、実施権者の損害補償料というものを含めて、特許権の一年間の借上料三千七百万円を払うという予定で交渉をしておられる、但しまだそれは成立していない、こういう御答弁だと伺つたわけであります。そういたしますと、御承知の通り食糧に対する支出は最も慎まなければならぬものでありまして、この特許によらざれは、絶対に他の方法では人造米ができないということが一つなければならぬし、それからこの特許によることが、それだけの代償を払つても、なおかつ補うに足るだけの利益が得られるということが少くともなければならぬ。それからいま一つは、それだけの国家負担をいたしましても、なおかつ国家においては人造米を奨励して参らねばならぬような食糧事情にあるという、他のいろいろの澱粉や小麦粉、砕米等で製造される食糧に対比して、なおかつそれだけの金額を支払うことが妥当と思われる根拠があることが必要だと思うのであります。そこで、それが何千万円であるというお示しでなくてもよろしいのですが、おおよその総当りの、これくらいに思つているのだ、そういうつもりで自分は交渉しているのだ、便益をこういうふうに見ているのだ、それについてはこういう事情があるということを、ざつくばらんにお答え願いたいと思います。
  161. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。先ほど来いろいろな御議論もございましたように、特許権についてのいろいろな問題がございまするが、現在特許権として成立いたしておりますものの中で、松浦式の特許が、われわれが今後奨励して参りたいという食糧研究所でも研究した方法に触れもおそれがあるということが考えられます。もう一つの点は、この場合におきまして、特許権を使用しないでこれを経営するという面におきましては、非常な不安があるということが第一点。それからもう一点は、こういう工業生産でございますから、機械につきましては今後相当の進歩発達があろうと思います。そういう意味におきまして、人造米の機械、製法が進歩発達をするためには、既存の特許権につきまして、ある程度これが処置をすることが必要であろうと考えておるわけであります。それから第三点は特許の金額の問題でございます。これは現在の特許権者が七万五千円というものを機械一台についてとつているわけでございますが、この金額を目安にいたしまして、それ以下の金額で交渉を考えたわけでございます。もちろんこの中には、実施権者に対しましては契約補償金がございますので、これは一年限りでございますが、特許権の使用量につきましては毎年支払う。ただ現在の状態が不安定でございますので、われわれといたしましては、これを月別に支払つて行き、ある場合においては、この契約を解除し得るということを考えて行きたいということを、考えておるわけであります。
  162. 綱島正興

    ○綱島委員 特許権の原権者と総括的実施権者——地域指定もしくは範囲に局限があれば格別、全部の実施権を永続までなし得るものと仮定される契約の内容を持つている実施権者ということになりますと、実は経済的価値というものの全部を収得いたしておりますので、実施権者にその損失料を払つたほかに、原権者に別に払うということは、どうも何だかおかしいように私には考えられます。しかしおかしいというのは、不正という意味じやない、お手落ちじやないかと考えられる。そこでその点は、まだ幸いに契約をしておられないならば、よくお考えをいただくことがよろしいと存じまするし、特に委員の皆さんがお力を尽してお尋ねになりました今日の応答を通じましても、特許権の内容がまことに判然といたしていない。権限は、どういう人かわからぬが、何か特許権に関係した人が政府委員の中に見えているようですけれども、どうもいろいろなことを聞いてみますと、製法の特許はちよつとでもかわればいいのだ、ちよつとでも別な製法でやればいいのだということになれば、今の特許権というものは非常に値打ちのある特許権のようでもないようです。ところが、実は特許によつて製造される品物は、これが嫁入り道具であるとか、花見遊山のものなら格別、ことには下層民の人たちがおもに利用するであろうと思われる人造米の問題でございますから、この点については、特に深甚なる考慮がなければならない。その経済価値についても、従つてその原権の法規的根拠についても、価格の計上についても、深甚なる御考慮がなければならぬと思うのです。幸いに今まで御契約がないとすれば、これから非常に慎重に御考慮になることが、食糧政策の今後から見て非常に妥当なやり方じやないか、こういうふうに考えられるのであります。実はそういうことを申し上げるのも、これが何かくずの根からりつぱな米ができるとか、あるいは大豆の葉からとうふができるとかいうことなら格別、日常盛んに食糧といたしておる小麦粉でありますとか、特には外米にまじつて来る三割を占める砕米、これは二百二十ドルという価格の中に入つておる非常に高価な砕米でございますので、食糧政策の上からいつてこれをいかように処理するかということは、食糧庁長官としては重責を帯びておられる問題であります。そこで、この点については、簡単に思いつきのようにしていただくことは、実は日本国民が好まないと思うのでありますから、これはよほどお考えを賜わりたい、こういうふうに考えるのですが、それに対する御所見をあらためて伺います。
  163. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。この人造米につきましての全体的な、根本的な考え方という点にもお触れになつたわけでございますが、もちろんわれわれといたしましては、粉食の方向ということを根本的に考えておるわけでございます。同時に、わが国におきまする粒食に対する主食の傾向、これを無視するわけに参らないのであります。従いまして、現在わが国におきまして、海外からの輸入も容易であります小麦の消化ということも、粉食の方向が本筋でございますけれども、粒食の形において小麦の消化をいたして参るということも一つの方法かと思います。またこの場合におきまして、澱粉を利用することによりまして、澱粉の消化ということも考えられるわけでございます。ただいまお話のございました問題につきましては、実はわれわれそういう意味からいたしまして、人造米につきましては、これが消費者に喜ばれるようないいものができる、そういうふうにしまして、さらにこれが相当普及されるということは非常に好ましいことだと考えるわけです。その場合におきまする現在の特許権の処理といたしまして、特許料の関係等におきましても、これは見方の問題で言いまするが、われわれといたしましては、政府が買い上げることによつて非常に安くなるという点も考えられるのではないかというふうなことを考えております。それからまた砕米の問題につきましては、従来これはみそ用として配給いたしておつたわけでございますが、御承知のように、タイ米につきましては、一定の輸入量に対しまして一定割合の砕米が当然入つて来るわけであります。従いまして、本年度の状態におきまして、外米の輸入が増加いたしますにつれまして砕米の輸入も増加いたすわけでございまして、これの利用方法といたしましても、主食として利用されることは非常にいいことだというふうに考えているわけであります。ただただいま綱島委員のいろいろの御意見に対しましては、われわれも十分検討いたし、また考究いたしたいというふうに考えております。
  164. 綱島正興

    ○綱島委員 参考人もおいでになりますから、食糧庁長官にはなるべく簡単に質問をしまえることにいたしますが、最後に一点お伺いをいたしておきます。  先ほど竹内参考人に尋ねましたところが、実施権損害補填のための支払金があるのじやないかという質問に対して、あるとかなんとか仄聞をいたしておりますというような話でありましたが、食糧庁は直接御交渉になつたことがございますかどうか、伺います。
  165. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。われわれといたしましては、特許権者から全国的な実施権を取得いたしたい、こういうことで交渉したわけでございまして、現在直接実施権を得ている人から、その実施権をわけてもらうという考え方ではございませんので、直接現在持つております実施権者とは交渉いたしておりません。
  166. 綱島正興

    ○綱島委員 これは御注意するまでもないことですけれども、実は全般的の実施権を持つている人が実際の効果についての発明権を持つている、値があるとすればその方にあるので、原権者にはもう値はない。その点も誤解のないように——期限が切れれば別ですが、先ほどの説明では永久継続する実施権だ、こういうことですが、そうすると、その点はちよつと的はずれになりはせぬかと思いますので、お伺いします。
  167. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 われわれが特許権者と交渉いたします場合におきましては、従来与えられております実施権は解消するということの前提で考えているわけであります。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に中川参考人にお尋ねいたします。先はどもちよつと触れました通り、十月二十一日と思いますが、中川さんから松浦氏の特許権に対して無効審判が提起されているわけであります。もちろんこれは現在の松浦式の特許権を否定する立場に立つた審判の要求であると思いますが、これをお出しになつた基礎的な根拠を、これは御注意するまでもありませんが、この委員会における委員の質問に対してはごく簡明にお答え願いたいと思います。
  169. 中川常吉

    ○中川参考人 お答え申し上げます。人造米の特許に関しまして、昭和二十一年に松浦さんの一七三、七六八号の特許権の実施権を実は契約したのであります。それは特許がまだ許可されない、出願中の昭和二十年十二月二十五日に、それは特許が許可されるものと仮定しまして契約したのであります。ところがその特許が昭和二十一年六月におりましたので、私は松浦さんの指導によつて、その製法によつて製造したのであります。  その当時の特許の内容を簡単に申し上げますと、粒に固めたものを熱湯の中に入れて、水の中で急冷する、こういう方法でありまして、そのときの特許の内容も、その後受けられた特許と同じように、「生甘藷又ハ馬鈴薯を擂砕シ、食塩水又は稀薄酸ニテ浸漬シ洗滌シテ脱水シ、之ニ清水中ニ浸漬シタル大豆ヲ擂砕シ、乳状(若クハ「バター」状)トナシテ混和シ、更ニ小麦粉(又ハ粗澱粉及「アミノ」酸「ソーダ」、並ニ海草ノ「アルカリ」液)ヲ混合シテ後米粒状」にしてこれを熱湯の中に入れて、そうして冷水で冷やす製造法、これでやつたのでありますが、御承知の通りいも粉と、それにこの大臣の粘稠液を加えて固めたものを、沸騰する熱湯の中に入れると、御想像がつくと思うのですが、これはばらばらになつて溶けて量産できなかつた。私はそれがために当時数百万貫のいもを食糧庁から払い下げてもらいましたから、大損害をこうむりました。また一方先ほど松浦さんから三年もかけて製粒機をつくつたとおつしやいましたが、なるほどその御努力には敬意を表しますが、その製粒機たるや径二寸ばかりのローラーに穴を掘つてありましたので、それを大企業化するには、もつと多量生産できるような方法にこれを改装しなければいかぬ、こう思いましたので、私の会社では先ほど申しましたように、航空関係の軍需会社をやつておりましたから、軍需関係の技術者もたくさんおりました関係上、いろいろ設計、研究しまして、現在使われておるところの製粒機の基礎を私の会社でつくつたのであります。そういうわけで、松浦さんの製法によつたら大失敗しまして、それではいけないというわけで、当時二百数十人おりました全従業員が非常に一致団結しまして、とにかくいわゆる澱粉質を凝結させる薬品を深せ。それはあまり高いものであつてはいけない。有害であつてはいけない。特に安くて高価的なものを探せということで、たまたまその専門の技術者がおりまして、その薬品を探し出しました。その薬品を使つて固めて、そうしてお湯の中に人れればやはり溶ける可能性がありますので、私はその製造工程中において回転ぶるいを使つておりましたから、回転ぶるいの外から百度以上の生蒸気を吹つかけて、その米粒表面にいわゆる塗装する、皮膜を生ずるということを考えまして、それで製造しましたところ、りつぱなものができました。ところが先ほど申しましたように、昭和二十二年食糧庁におきましては、三百くらいの機械をつくれと言われましてやりましたが、不幸にして中止になりましたので、大損害をこうむつたのであります。その後昭和二十四年、皆さんも御承知と思いますが、輸入のコンミール、あれで人造米をつくれという御指示がありました。あの当時非常に食糧難とはいいながら、あの食べにくいコンミールではみんな困つておりましたので、何とか科学的にりつぱな人造米をつくらなければならぬと思いまして、独特の製造方法で、コンミールのみでりつぱな人造米をつくつて、黄金米という名前で、食糧庁の指示に従つて、大阪府の指示のもとに試験配給し、非常に好評を博しました。それも昭和二十四年限りで打切られ、またまたこれが中止になつて大損得をこうむり、さかのぼつて昭和二十四年八月二日付で——ここにもそのときの公文書がございますが、食糧庁長官から内地澱粉、かんしよ澱粉並びにばれいしよ澱粉及び内地産の小麦粉によつて人造米をつくつてくれという御指示がありまして、それをつくりました。それもやはり御指示に従つて大阪府の食糧研究所において試食会をいたしました。ところがこれは非常にけつこうだということで、初めて現在私がつくつておる方法の人造米の製造法、いわゆるアイデアというものを編み出したのであります。  その方法は、先ほどからるるお話がありましたが、小麦粉と澱粉とを微温湯で練りまして、そうして微温湯で練るときに澱粉質を凝結させるために特殊薬品を入れまして、これを製粒機へ投じ、製粒機から出たものを今のような蒸気の処理方法でつくりあげたのが現在使用されておる製造法でございます。  その後私は一八〇、四八七号と八号の、二つの製造方法の特許を得ました。ところが松浦さんは、これに対して先ほども少し御意見があつたようでしたが、これは私の特許侵害であるというようなお話で、特許無効審判を提起されました。ところが特許庁におかれて公正なる御審判の結果、一八〇、四八七号は不幸にして失格しました。一八〇、四八八号は何ら松浦さんの特許を侵害するものでないということで残りました。これは本年の八月四日失効したものであります。先ほどから松浦さんの特許についていろいろ御質問がありましたが、この方法をもつてすれば、私の方は松浦さんの大豆の粘稠液も全然使つておりませんし、もちろん原料に対する特許はないということをお伺いしております。原料に対する特許は、先ほどもお話がありましたように、私どもはおとぎ話でも聞いておりますが、昔桃太郎さんが鬼ヶ島征伐のときに、きびの粉を水で練つて、凝結した表面に皮摸を附加してきびだんごをつくつてつて行つたと聞いておりますが、そういうところからいつて、原料については、松浦さんが昭和二十五年三月二十三日に特許を出願される前に、昭和二十四年八月二日に、私はその小麦粉、澱粉を払い受けて、大阪府赤間文三知事の証明もとつて、すでに食糧庁に提出しております。ですから私はそういう原料の小麦粉あるいは澱粉を水に練つてつくるのが特許侵害に触れておるとは思いません。熱処理についても竹内参考人から話がありましたが、先ほど申しましたように、工程中において回転ぶるいを通す過程において蒸気を吹つかける、これも私の方は先願でありまして、八月四日に失効しております。現在におきましてはその工程も公知公用となつて、どなたがお使いになつてもさしつかえないと思うのであります。  こういうぐあいにせんじ詰めて参りますと、松浦さんが特許々々とおつしやるのは、大豆の粘稠液を使うのが特許ではなかろうか、私はさように存ずるのであります。ところがその前の、生いもないしばれいしよをもつてつくるときも、はつきり大豆の粘稠液を使つております。ですから原料が穀粉、澱粉となつて、前は生かんしよ、ばれいしよという原料が違つてつて、前の特許と同じ大豆の粘稠液を入れる、これはダブつておるような気がいたしますので、私はこれはどうもふしぎだ。ところが本年のこの食糧下足のとき、人造米の問題が御当局において取上げられ、この増産によつて現在の食糧危機を緩和されるという御当局の非常な御努力に対して、これは大いに人造米をつくらなければならぬというので、私は現在さらに二つの特許を出願しております。さらに四つも今完成しておりまして、もう出願の直前にあります。それは天然米にひとしい人造米、または人造米はいいけれども、どうも小麦粉臭いとかなんとか、あの粉臭の問題があります。そのにおいを吹き消す方法も完成して今出願しております。かように、いい品物をたくさんつくるためには、また製粒機等におきましても、もつと量産のできるりつぱなものを安くつくらなければいかぬ。そうして国民生活一般、国民大衆の負担を緩和しなければいかぬ。戦時中に航空関係の御奉公をした私が、終戦後食糧をもつて御奉公しようと思いました初一念を、これで貫くのだというところで、現在やつておりまする人造米の製造機も三トン、五トンを完成しつつあります。一日五トン、それから一日十トンのもこの十五日ごろには完成の予定であります。それでどうしてそういうぐあいに製粒機が違うかと申しますと、先ほども申しましたように、現在松浦さんのお使いになつている製粒機の基礎は、昭和二十一年に私どもがまだ食糧確保に未経験な時代に設計しましたために、荷重の計算、負荷の計算、周速の計算等に非常にふなれでありまして、専門的に申しまして遺憾な点がありまして、実はこれはまことに松浦さんの方に対して申訳ないのでありますが、非常にあの機械は能率が悪くて、こわれるこわれるといううわさを聞いたのであります。これはほんとうかどうか知りませんが……。しかし私は前の機械のそういう基礎的欠点をよく存じておりますので、今回は根本的に改良を加えまして、そういうことのない能率的な、しかも量産できる製粒機を現在つくつております。人造米の製造法は、さつきからたびたび先生方のお問いがありましたが、私の特徴と申しますのは、松浦さんは大豆の粘稠液をお使いになつておりますが、私は天然米に近い硬度を持つておるような化学薬品を使い、また蛋白や脂肪をこれに加えたりして、栄養においても天然米以上にいい人造米をつくつて、そして従来のような人造米はたけば溶けるんだ、のりになるんだ、だんごになるんだというような、そういう好ましからざる人造米は今後一切つくらないようにして、どなたがおつくりになつても、りつぱな平均した品物ができるように、ひいて今後御当局の食糧政策には優秀な人造米をお取上げになつて、天候に左右される天然米は副として御計画になるように持つて行かれるように私は念願して、今でも孜々として研究しておるのであります。
  170. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、さつきあなたが松浦氏の特許権が無効であるという審判を提起された根拠はどこにあるかということをお尋ねしたわけです。ただいまお伺いしますと、かつて中川さんは人造米の製造に対して二つの特許権を得ておつた、その二つの特許権に対して松浦さんの方から無効審判が提起された結果、一つはそれによつて無効になつて、一つだけが生きておつた、それもことしの八月に無効になつたというようなお言葉があつたわけです。その無効になつた理由を一応御説明つて、その次は松浦氏の特許権が無効であるという基礎条件は、結局八月に失効した中川式の特許権とまつたく類似しているから、これは無効であるという考えで無効審判を提起されたかどうか、この二点を簡明にお答え願いたい。
  171. 中川常吉

    ○中川参考人 特許無効審判を提訴されまして失効しました一八〇四八七号の特許は、薬品を三分の一使つて別の三分の二にまぜて、製粒機を通し蒸気を通してつくるという製造方法でありましたが、これは松浦さんの申請通り無効になつたのであります。次の一八〇四八八号は、私の代理弁理士の方が不用意に特許料を納めてなかつたために失格したのであります。それから、もう一つ松浦さんに対する特許無効審判を出しました根拠は、もちろん先ほど申しましたように、私の特許に対する無効審判を起されたあとに特許されたものでありまして、松浦さんのその出願は昭和二十五年三月二十三日になつておりますが、私はすでに昭和二十四年八月二日においては、食糧庁長官から澱粉、小麦粉を払い下げてもらつて、その人造米は大阪において試食して、そして大阪府知事の証明をもつて食糧庁に出しております。その製造方法は大豆を使わないでおりますが、小麦粉、澱粉を微温湯で練つて、薬品を入れて、製粒機を出たものを熱気をかけて表面に皮膜を生ぜしめるのであります。これとまつたく同様な方法でありまして、ただ大豆粘稠液を入れただけであります、大豆粘稠液は前の特許に出してある、そうすると前に出してあるから新性は一つもないじやないかという疑いがありまして、松浦さんのあとの特許の一八七九〇三号の特許はそういうところでありますので、非常に疑問を抱きまして、特許無効の審判を出しております。もう一つ特許無効審判を出したのには重大なる原因があります。何となれば、政府御当局の今年度の不作を人造米によつてカバーされようという御意図のもとに人造米をつくる希望者がどんどん出て来ますし、またそうせねばならぬと思つておりますときに、私どもが協会をつくりまたは人造米を製造する希望者に対して工場等を設置してもらいつつありましたところが、松浦さんの方におきましては、各地の新聞において、人造米を製造するには松浦に特許があります、御迷惑がかかつてはいけないということを絶えずお書きになるし、たまたま名前は忘れましたが、大阪の堺米とかいう方もまた特許侵害の謝罪広告が出ておりました。こうなれは私の製造方法は先ほど申しましたように、松浦さんの製法と全然違うのでありますから、つくつていいにかかわらず、そういうことがとうかという——私の方の会員は当時百人ばかりの申込みがあつたのでありますが、だんだんそういう公告あるいはまたいろいろな話を役所方面で聞いたりして、恐れをなしましてだんだん減つて行く、これではいけない、私はせつかく終戦以来数千万円時価数億円に値する私財を投じて、ほんとうに家族を分散して住むような状態にありながら、初志を貫くためにこういう妨害があつてはいけない、こういう観点から、これはあくまでも松浦さんの特許と雌雄を決しなければいかぬ、私としては松浦さんがそういう方法で出られるならば、この特許を粉砕しなければならぬというような観点から、私は十月二十一日に無効審判を出し、さらに二十二日にはこれを妨害してはならないという仮処分の決定を東京地裁に対してお願いした次第であります。
  172. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体の経緯はわかりましたけれども、私のお尋ねしたい点は、その松浦氏の特許権が無効であるという根拠としては、今もちよつと述べられたわけですが、松浦さんの特許権の中には、前の分とその次の分が大体類似しておつて、事新しい点がない、そういう点が一つと、もう一つは今年の八月に弁理士が忘れておつたと言われましたが、それで失効になつた中川式の製法と類似しておるので、これは特許の価値はない、そういうふうな意味と私は解釈しております。もう一つは、現在人造米の問題が非常に重要視される場合において疑問に思う点は、そういう価のある特許権を、たとい弁理士が忘れたとしても、その特許料を払う期限を忘れて、それが失効になつたということに対しては、これは一つの疑問が出て来るわけであります。中川さんを前にして失礼ではあるけれども、特許料というものの支払いに対して、これは経済的な理由等があるものであつたか、あるいはまたこういうものの重要性はないという観点から失念されて、特許権がなくなつてもどうでもかまわぬという軽い気持で、これを弁理士だけにまかせ切りで失効したものですか。そういう点を参考までにちよつとお尋ねしたいと思います。
  173. 中川常吉

    ○中川参考人 別に特許権を軽視したわけではございませんが、私はほかにまだ特許が六件ありまして、本年の五月二十日ごろ特許庁の方へ行つて、その六件分の特許料を払いますとき、その弁理士に、人造米の特許料はまだいいでしようか。いや、あれはまだ大丈夫ですから、この分だけお預かりしておきます。それは追つてまた通知しますからということで、安心してそれを弁理士のおつしやる通りに私は預けた。その後人造米の製造希望者が協会をつくつたり、いろいろ計画して忙しかつたものですから、ついその方は弁理士の言を過信してまかしておつたわけです。そういうわけで不幸にして特許を失効したわけでございます。それから松浦さんの特許に対する無効審判は、むろん私の製造方法に対して、ただ大豆の粘稠液を使つただけでありまして、だんだん調べてみますと、大正五年に栗田貞治郎という人の特許を得た、公知公用のものがありますので、そうすれば、松浦さんの方でああいうようにでかでかと新聞に広告されては、業者に恐れをなさしめ、そしてひいては人造米の増産に阻害を来すようになつてはいかぬという観点から、私はこれに無効審判を起したわけであります。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 なお参考までにお聞きしますが、失念したという特許料は一体どれぐらいの額だつたのですか。
  175. 中川常吉

    ○中川参考人 その特許料は、二千円もないんじやないかと思います。それは御承知の通り、特許料は特許を許可されて三年分を前に納めるのであります。次の三年か四年分をまとめて納めるのであります。その三年経過した後の特許料を忘れたわけであります。金額にいたしまして二千円内外で、微々たるものです。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に籠島さんにお伺いしますが、あなたはやはり十月の十九日に特許範囲の確認審判を出しておるわけですが、これはおそらく松浦式の特許権の範囲外であなたは人造米をつくつておるという意味だと私は考えるわけですが、そういう場合においては、松浦式の製法によらぬで、どういうふうな製法によつて範囲が違うのだというお考えですか。その点を明確にお答え願います。
  177. 籠島誠治

    ○籠島参考人 ただいまのお尋ねのことですが、これはただいま中川さんが御説明申し上げました通りに、八月の四日に失効になりまして、公知公用でありまする中川式の人造米製法によりましてつくること、それからなお中川さんが現在二つ特許を出願しておりますその方法を採用しております。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に松浦さんにお伺いしますが、実は松浦さんに対しましては、当初にお尋ねしたのでありますけれども、おからだが不自由で十分な御発言が願えなかつたわけでありますが、問題の中心点でありますから、そういう場合においては、代理者の方にもう少し具体的にお答えを願いたいと思うのであります。  先ほどあなたのお話によると、松浦式の製法に対しては現在四つの特許権があるということを言われましたけれども、ただいま使つている特許権の主たるものは、そのうちの幾つであるかということをお尋ねしたいわけであります。最近の製造等を見ますと、当初に掲げてあるところの大豆の粘稠液というようなものは用いなくてもできるようなところまで進んで行つているわけでありますが、そういう場合において、現在四つの特許権の中に用いている分はどれであるかということをお答え願いたい。
  179. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 四つの主たるものは、大豆の粘稠液ということを非常にやかましく言われておりますが、私の方の明細書の中に、大豆の粘稠液というものは固結剤、固める一つのものとして用いております。私の方の見解といたしましては、この固める作用は、大豆の中に持つております蛋白質が持つているわけです。その点から行きまして、小麦の中に入つております蛋白質、つまりグルテン、大豆の中にはグルーがありますが、グルテンとグルーの相違であるという点が一つ。それからカゼインというものを使いますが、これも一つの蛋白質の粘稠液である。こういう粘結剤というものから行きまして、大豆の粘稠液というものをあえて使わなくても、同じような蛋白質の粘稠液を使うことは、私どもの一八七、九〇三号の範囲内ではないかということを私どもは信じておりまして、その点から行つて、私の方としては、現在使われております製法そのものは、一八七、九〇三号の中に入るのだというふうに信じております。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、松浦式の特許の中で現在最も重要視されるのは、今言われた通り一八七、九〇三号ですか、これによるところの製法が一番根拠をなしているということになつていると思いますが、この特許の範囲によりますと、やはりこれには、当初に大豆粘稠液を混和しということがはつきりうたわれているわけでありますが、今あなたの言われた、原料が持つている、たとえば小麦自体の独自の性質の中に保有しているその作用というものは、特許権の範囲内にはならないんじやないかというふうに私は考えている。そういう場合において、やはり特性を表わすためには、この原料を調合する場合において、こういう大豆の粘稠液等を加えるというところに一つの特性があるんじやないかというふうに考えられますが、これらをまつたく取去つて、ただ単に小麦粉とか、くず米とか、あるいは澱粉だけを配合してそれに熱処理を与えるというような場合も、これは当然最初の実験によつてそういうことが現われて来ると思うわけでありますが、昔の小麦粉にはそういう特性がなくて、現在の小麦粉の中にだけあるということでなく、これは原始的なものであるから、そういう特性というものは同有なものである。その場合においてなぜ大豆の粘稠液というものをことごとに特許権の中に明示しなければならぬかというところに一つの疑点があるわけですが、その点に対するお考えはどうですか。
  181. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 今の点ですが粘稠液のことばかり言いましたけれども、特許権の請求の範囲というものは、もちろん審判の方で決定されるのですけれども、内容の詳細な説明の方と、内容の性格というものと、請求範囲に書かれているものと、両方にらみ合せて審判の方で決定していただくものだと思つております。そういう意味合いから行きまして、もう一つ、ただいま小麦粉というものはその中に蛋白質があるというふうにおつしやつておりますが、小麦粉というものは非常に差のあるものでありまして、蛋白質の多いか少いか、つまり力があるものと、ないものとあります。たとえばカステラに使うものは全然力がありません。ところがうどんに使うものには非常に力がございます。ということは、結局小麦粉の中に入つておりますグルテンという、物を固めるところの作用に非常に大きな影響があるということになつて来るわけでありまして、何でもかまわないから小麦粉を使えばいい、同じではないかというただいまの御質問につきましては、小麦粉というものはたくさんありまして、小麦粉の中に持つております蛋白質というものが非常な要素になつているということをお答えいたしておきます。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 小麦の種類というものは、もちろん国内的にも世界的にも何百種類かあるわけです。しからばそういう場合において、どの種類の小麦を選んでおるかということが一つ問題になるわけであります。独得の小麦でなければならぬという場合においては、これは特許権の中に明示されておらなければならぬと思いますけれども、小麦のように、こういう自然に成長する植物というものは、小麦そのものの固有の性格というものが特許権になるということは私は考えられませんので、この点をお伺いいたします。
  183. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 今お話になりました小麦そのものの性質ということでなくて、先ほどお話のあつた大豆のグルーというものに対する小麦のグルテンというものの性格を申し上げましたので、はたしてこの小麦のグルテンと大豆のグルーの性格というものについて、それが請求の範囲の中に入るか入らぬかという問題になつて来ると思うのでありますから、この点につきましては、これは結局審判をまたなければならぬ。つまり今中川氏がおつしやつたように、無効だという考え方はそこにあるのではないかと思います。ですから、これが松浦式にかかるか、かからないかというふうな問題は、私の方はその特許にかかるということを一応信じております。この点申しておきます。
  184. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は発明者そのものの偉大なる努力に対しては、絶えず大きな社会的な尊敬を払う必要はあると考えております。このことに関する限り、今後といえども、発明者に対する国家的な待遇あるいは社会的な待遇というものはよくする必要があると思うのでありますが、(「必要なし」と呼ぶ者あり)たまたまこれらの発見とか発明というものを、一部の利益追求のために悪用する例が非常に多いのであります。問題はかかる食糧危機の段階の中において、これが平常のときであればまつたく等閑視されるがごとき一つの発見とか製法の事例を、誇大に宣伝し、あたかもこの製法によらなければ人造米はできないのだというような印象を与える。しかもすでに十何件の人造米の製法というものは公知公用になつてつて、だれがこれを用いてもかまわない、社会的に貢献できるという段階にまでなつておるという、この現実の上に立つた場合において、かかる両者の間においても、こういう対立あるいは紛争が行われるというようなことは、これはまつたく望ましくないことなんです。この無効審判であるとか、あるいは確認審判の結論というものは、当然特許庁等において最も公正なる結論を出されるということをわれわれは十分期待しておるのであつて、この点に対して、さらに両者の見解を闘わせたいということは考えておらぬわけであります。  なおこの際お伺いしたい点は、松浦さんの側におかれましても、かつては中川式の特許権に対して無効審判を提起されたような事実もありますので、もちろんことしの八月に失効した中川氏の製法というものはどういうものであるかということもお考えの上になされたことなんで、そうした場合において、現在の製法の中においては、人造米をつくるまでの主たる製法の流れの中において、類似した点、それからすでに公知になつておる点も必ずしもないということは言えないと思う。それでこの面者のものを比べ、あるいはすでにその公知のものになつておる製法等を比べて、どの点がすでに公知のものであり、この点だけが松浦式の独得の権利の範囲であるということを、これは自信を持つておられると思いますので、その点を明確にお答え願いたいのであります。
  185. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 この点が公知であり、この点が公知でないというようなことは、それはどういうふうにお答えしていいか非常にわからないのでございますけれども、私の方では特許は請求の範囲というものでもつて特許の内容としておりまして、(「それは特許ではないのじやないか」と呼ぶ者あり)ちようどきようは何も手元に持ち合せておりませんのでこれを読み上げるということもできませんのです。それから中川氏の方の特許が、ことしの八月に失効しておるというふうなお話もありますが……。     〔発言する者あり〕
  186. 井出一太郎

    井出委員長 私語を禁じます。
  187. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 そういうふうな、どの点が公知になつておるかというふうな点は、結局文献とか、今の失効しておる特許の特許請求範囲というものをお読みになつた方がいいのじやないかと思います。
  188. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題は、松浦さんも御承知と思いますけれども、政府が国民の血税の中から、しかも三千七百五十万円という多額の金を出して、しかも一年間だけの分として、これだけ出すという方針までも立てておるわけです。その場合において、政府当局は、松浦式の製法でなければ現在人造米ができないから、これを借り上げなければならぬというようなところまで行つているわけです。しかるに御本尊のあなた方は、自分の製法はどこに特色があり、特許権の核心があるかということを、松浦さん自身もよくわかつておらぬし、先ほど帰られた竹内さんも知つておらぬということになると、むしろその疑問というものは、政府が根拠のない実体を何かここにでつち上げて、これに巨大な権限と力を与えて、これを中心にして人造米の製造をやり、それ以外のものは押えるというような形になる弊害が非常に多いのであります。それで私たちは、この特許権者並びに実施権者に対して、どこにこの発明の特許権の中心があるかということを、繰返し繰返してお尋ねしておるのはこういうところにある。国の政策としてこれを取上げようとする問題に対して、実際発明した人自身、あるいは実施権を持つておる人たちが、まつたくその中心点がわからぬということは、これは不可解きわまることなんです。(「その通り」)そういうことになると、すでにもう公知に属しておるものにおいて、現在の国内においては十分良質なる人造米が製造できるというところまで飛躍しておるというふうにわれわれは判断せざるを得ないのであります。この断定に対して、もしさらにお考えがあれば、お答えを願いたいのであります。これは別に追究するわけではありませんから、お答えがなければ、それでもいいわけであります。
  189. 井出一太郎

    井出委員長 お答えがありますか。
  190. 谷岡美雄

    ○谷岡参考人 ただいまおつしやいました公知の工程によつて、だれでもできるというふうなお話がございましたけれども、なるほど公知の工程によつておやりになる場合においては、特許侵害の問題は起らないと思います。しかし私の方の特許の請求範囲の中を検討しまして、請求範囲にひつかかるというふうな場合が出たときは、これはやはり侵害を排除をしなければならぬというふうな問題になるのであります。これは個々のその後の事態を見なければわかりません。(「松浦式のどの点だ」と呼ぶ者あり)松浦式のどこにあるかとおつしやいますが、松浦式は、先ほど申しました一七二、七六八号、一八七、九〇三号……。(「申請者自身わからぬじやないか」と呼ぶ者あり)申請書を、きよう私手元に持つておりませんので、わかりません。
  191. 松浦喜一朗

    ○松浦参考人 一応ちよつと申し上げます。これについても、非常にいかい何だか争うておりますが、われわれは無学で研究しておるのですが、大豆も穀粉なら小麦も穀粉なんです。そういう意味で研究しておるのであつて、もし私の特許が弱いと仮定すれば、政府の特許というものは、私の工程そのままで、中川のあれは、それに明礬を少し入れたからつて、必要のないものを入れてなぜ特許にするのですか、それがして行く以上は、私のはいも米じやないのですよ。ここから澱粉を固めるということについては、私は何十トンという澱粉の粉を買うておるのですよ。あなた方がちよつとのことで、特許にかからぬようにとか、抜けようとか、日本の人間に限つてこういう攻撃をする。私はドイツ人と長いこと仕事したけれども、みな一つのことをこうやつて守り立てて行く。中川の特許は、私の工程でも同じで、そうでしよう。米またはうどんでしよう。この特許はそれがなぜ特許をとつておるか。だから日本の特許が弱いということは、われわれが一々大豆を取上げるよりも、何も明礬を入れて何の効力があるのです。それをあなた方は三十万円の金を積んで、確認審判をとつてみたり、なぜその前に、松浦、こうだと相談してくれないのか。そこですよ。だれも知らないとは言わないのですよ。ぼくはあなた方が早う来られたと仮定すれば、私は喜んであなた方に相談します。私はきようまでみんながやつてくれたから、それに迷惑をかけたらいかぬというので、ただ保護しているのみなんです。これだけの人造米がなぜ特許が弱いか、いも米じやないということをはつきり言つておきます。世界で澱粉を固めた国はまだ一つもないのです。その澱粉を固めるのに、私は十〇%まで固めることを研究したからとつたのです。そこに学者もたくさんおいでですからわかりますが、日本にはないと思います。
  192. 井出一太郎

    井出委員長 特許権者である中川、松浦町参考人からの意見聴取は、お聞き及びの通りでございます。つきましては、芳賀委員に申し上げますが、きようは特許庁からも見えておりますし、参考人の御意向はほぼわかりましたので、それらを基調にいたしまして、特許庁あるいは食糧庁その他に向つての御質問に切りかえていただきたいと思います。
  193. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長の御注意もありますから、次に参考人として御出席を願つておる倉地さんに簡単に伺いたいと思います。  あなたの先ほどのお言葉を開くと、非常に公平といつては何でありますけれども、やはり人造米の製造を通じて寄与しなければならぬというような熱意のほどはわかります。特に過去において中川さんとも松浦さんとも、人造米の問題を通じて協力された時代があるということも聞いておるわけです。きよう来られていろいろな問題を聞かれたと思いますけれども、現在の国内における人造米の製造の段階においては、ただいま発明者の方々、あるいは実施権者の方が言われた言葉のように、どうしてもこの製法によらなければ、現在人造米の製造はできないのだというように判断しておるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。なぜそういうことをお伺いするかというと、松浦式の製造の行われておりますその反対に、権利範囲の確認審判を提起しておるのです。たとえば、参考人に来ておるところの籠島さんの方でも、現在人造米を、まだ量産の域には行つておらぬけれども、自信をもつてつくつておるというような場合においては、異なつた製法によつて人造米ができて来る場合において、これらを比較して、品質においても、価格の点においても、消費者大衆がこれの方がいいという判断は当然出て来るわけです。そういうところまですでに来ておるのですから、それらの製法業界といいますか、実際につくつておる人々の中から判断をされて、あえて松浦式によらなければ今はできないのだというお考えであるのか、それ以外の製法においても優秀なものがあるというお考えであるか、この点をお伺いしたい。
  194. 倉地友次郎

    ○倉地参考人 私は先ほどのごあいさつの中に、政府のお力でこれをみんながつくつて、国家のためになり得るようにお願いしたい、直訴の今日であると申し上げました。松浦氏の製造法も中川氏の製造法も大同小異であると考えます。そこで松浦氏の製造法でなければやらさないということは、先ほど来の御討論の中にもありましたように、見解の相違であつて、この相違は、しろうとがいくら論駁してもはてしがございませんので、農林委員会でもし疑義があるといたしますならば、われわれを除いた特許庁と政府と先生方でこれを御審判願えばいいことではないかと思います。いたずらにここでおろおろしておるような業者をおどしつけるようなあなた方の御質問は、民主主義に反すると思います。     〔「何を言うか」「民主主義に反するとは何だ」「国会を侮辱するか」「取消せ」「どこに根拠があるのか」と呼び、その他発言する者多し〕
  195. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。静粛に願います。  この際倉地参考人に申し上げますが、あるいはあなた方は委員会の空気におなれにならないので、ときに興奮をされる傾きがあろうかと思いますが、ただいまの御発言は、委員長においてもいささか不穏当であると考えます。特に民主主義に反する云々は、この際お取消しになりませんか。
  196. 倉地友次郎

    ○倉地参考人 私は、私が失言であるということならばお取消しいたします。そこで聞いていただきたい。私は松浦さんの特許でなければ行かないということは、必ずしも言うてもおりませんし、考えてもおりません。そこで、これは先生方によく聞いていただきたいのでございます。このお米ができるようになつたということは、中川さんも、松浦さんも、みんな非常に苦心をしたことは事実であります。それで先ほどの御説明に対して御質問がされたようでございますが、これはまつたく大同小異の製造法である。小異することによつて違反であるかないかということは、これは私らでは申し上げられません。わかりません。そこでです。特許庁の方々に御審判を願いたい、かように申し上げる次第であります。
  197. 松岡俊三

    ○松岡委員 ただいまの参考人のお話によれば、これは食糧庁が三千七百万円という特許料を払うという問題に帰着するのです。あなたの発言の内容によつては、何も葛原工業でやつておるもののみによる必要はなくなるという結論にもなるのじやないかと思う。この直間の起つておる趣旨はそこにあると思うのです。あなたは民主主義云々と言うけれども、われわれは外米を外貨によつて買わなければならぬ。この非常に難儀な場合において、この発明を心から喜んでおることは、あなた方と少しもかわりはない。そういう趣旨から、できるだけ安くいいものを供給してもらいたいために、われわれはこうしてやつておるのです。ところが、ただいまこういうあんばいにわからないようなきようの質問応答を、あなたはよくお聞きになつたでしよう。先ほどの竹内君の答弁などは、何だか私らにはわからないところがたくさんある。わかつたようなふりをして——と言つていいかどうか知りませんけれども、はなはだ不徹底なところもある。こういうようなあんばいでありますから、私はただいまのようなあなたのお考えと決してかわつてはおらない。それでどうかしてこの両発明者が、じつくり手を握つて行ける方法はありはせぬか。ところが一方において三千七百万円出すという特許がある。またくず米を払い下げるという問題も出て来るわけです。質問の趣旨をさような点から考えると、あなたの発言はよほど慎重になさらぬと、これは容易ならぬことができるのです。  私はこの際小浜君に伺いますが、これはこういう規格に合うから合格であるという最後の判定を下すところは、財団法人人造米協会会長の小浜君のところだろうと思う。ですから小浜君の方では、政府の保護を受けたような葛原工業の方面、三千七百万円の特許料を払つておるようなもののみを規格に合するものとなさるか、あるいは中川君の方面でつくられたところのものも少しもさしつかえないということになるか、最後のかぎはあなたが握つておられると思うのです。この点について先ほど倉地君が申されたように、どこでつくろうともよろしい。そうしていつときも早く安い、いいものを国民に供給して、そして外貨獲得の一助を得たいということになるには、今のように三千七百万円という大きなものをやるようになつているからこんな問題になつている。これがなければ、まるきりみんな自由につくらせるようにして、りつぱなものをつくつたならば、小浜君のところの規格に合致するものだ、こういうことになれば問題ない。また中川君のようなぐあいに、特許料を払えないものだからとうとうその期限がなくなつた。ところがそのあとひよつこり出て来て特許をとつた。特許をとつたところが大同小異で、あなたが言うようなぐあいになつている。何が何だかわからないようなことになつている。ですから最後に私は小浜君のところで、これはどこでつくろうと、この規格に合致するものならば一向にさしつかえないのだという、あなたの考えをしつかりとここで承つておきたいと思う。
  198. 小浜八弥

    ○小浜参考人 財団法人人造協会の性格につきましては、一番最初に申し上げた通りでございます。従つてこれは、つくられるところの人造米が一定の規格に合うかどうか——一定の規格に合つたといつて証明いたしましたものは、消費者はこれを安んじて消費してもらいたい、それの基準をはつきりするという検査をいたします。その検査の対象となりまするものは、私は特許の内容は知りませんが、いわゆる松浦式の製法によろうと、いわゆる中川式の製法によろうと、いかなる製法によろうと、できましたものすべてが対象となるのでございます。この財団法人人造協会については、ほかのところでもよく誤解があつたようですが、人造米を製造するようになると財団法人人造協会に入れるかというふうな質問をよく受けます。しかしこれは財団法人でございまして、社団法人じやございませんから、その組織に入る、入らぬは問題じやないのでございまして、検査の対象となるものは、今松岡さんがおつしやいました通り、すべての人造米というものが対象になるのであります。そして農林規格の方には、「この規格において、人造米とは、でん粉及び穀類粉又は穀類粉を原料として米粒状に整形し、精米とほぼ同様に使用できる性状を備えたものをいう。」というふうに人造米の定義をいたしております。そしてこれについては、こういう規格に当てはまるものということでございますから、われわれはすべてのものを検査の対象と考えております。
  199. 松岡俊三

    ○松岡委員 小浜君のその御答弁できわめて明瞭になりました。これは食糧庁の方で三千七百万円出して、こうこうというぐあいにしてつくらせようと、あるいは別の方面でつくらせようと、りつぱなものさえできればこれを合格としてちやんと認めるというぐあいに、ほとんどあなたのところの財団法人人造協会が最後のかぎを握つているように私は思うのです。これは私の見解が間違つているかどうかわかりませんが、私はあなたのところを非常に重視している。あなたのところでそういう考えでやつているというならば、少しも心配ないものと私は思うのです。これで特許権の問題について云々という中川君と、それから松浦さんとの問題などもだんだん釈然とするようなぐあいになるものと思うのでございます。あなたのところでかぎ一つの用いようによつて、これがうまく行つて、いつときも早く国民に人造米を与えるようになるものと私は思うのです。私はあと食糧庁長官に対してお尋ねいたしたいと思いますので、これだけで終ります。
  200. 小浜八弥

    ○小浜参考人 お説の通りと思いますが、私が申しましたのは、できました人造米はすべて協会の検査の対象として考えておりますので、それを製造する行程において特許権に触れるとか、触れぬとかいう問題は、これは別個の問題として論議さるべきだということであります。
  201. 井出一太郎

    井出委員長 この際お諮りをいたします。参考人諸君に対しまする質疑はこの程度にいたしまして、残余は主として政府当局にただすことにいたしたいと考えます。この際参考人諸君には御退席願つてよろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 井出一太郎

    井出委員長 参考人各位におかれましては、非常に御多忙なところ、しかも夕刻おそくまで御熱心に公述をいただきまして、その労を多といたします。本委員会の語気が強くして、ときに異様に感じられた点もあろうかと思いますが、これは事非常に重大でございまして、審議に熱心なるあまりと、かようにおぼしめしを願いたいと存じます。——芳賀君。
  203. 芳賀貢

    ○芳賀委員 食糧庁長官にお尋ねしますが、人造米の問題は、当委員会においてしばしば審議されましたので、食糧庁長官がすでに御意見を表明された点については重複を避けたいと思います。ただ本日の参考人等の意見を徴した場合において、一つの新事実として、長官の言をかりると、借上料の問題に対して三千七百五十万を予定しておるけれども、これはまだ支給する段階まで行つておらぬという点に対して、本日の参考人においてもそのことを是認しておるわけであります。それでお尋ねしたいのでありますが、この人造米の特許権に対する借上料を払うということは、すでに十月二十七日の閣議において人造米に関する所見を決定して、これは支出することになつておるというふうに私たちは承知しておりますし、すでに大蔵省においては三千七百五十万を支出するところまで行つているというふうにも承知しておるわけでありますが、その点に対して長官はどのような点まで確認しておられるのですか。
  204. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。先般の人造米の閣議決定におきましては、人造米の製法を広く普及せしめるために適当なる措置をとるということで、これを借り上げる、あるいは買い上げる措置を決定いたしたわけでございます。しかしその趣旨といたしましては、広くこれを行使せしめるためにはどういう方法がいいかという点になろうかと思います。特許権の問題につきましては、今までいろいろ特許権の内容については御議論がございました。現実にわれわれが考えて参ります場合に、現にやはり特許権の侵害というようなことで、仮執行のために金を積まなければならないとか、あるいはまたそのために特許料を相当多額に払わなければならないというふうな点があるわけでございます。従いまして、そういう点が広くこれを実施せしめる方法として、現状のままに置いておくことが適当であるかどうかという点をわれわれ研究をいたしおる次第でございます。大蔵省とは、具体的金頭につきまして、この程度ならば話がつき得るだろうという程度の話はいたしております。
  205. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点に対しましては、すでに大蔵省は金を出そうとしておる。長官においては、まだその段階まで行つておらぬというお話でございますが、ここに問題が一つある。今も聞かれたように、国が借り上げをしようとする松浦式の特許権に対しては、無効審判の訴訟が提起されておる。これは将来のことは、無効になるか有効であるかということは予言することはできないけれども、必ずしも無効にならぬということもここで断定することはできないのであります。もしかりにも松浦式の特許権というものが特許庁の判断によつて、これが無効であるという結論が出た場合においては、このことは長官も御承知と思いますけれども、無効審判によるところの結論というものは、今日審判が出たから明日から無効であるというのでなくて、特許権が生じた既住にさかのぼつて、これは無効であるというところまで行くわけであります。この確認がされない場合において、三千七百五十万の金をすでに出した。そしてこれはもう最初から無効であるという確認が生じたような場合においては、あなたはもし支払つた場合においては、それをどうなさる考えでありますか。
  206. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。先般の人造米の閣議決定の場合におきましては、ただいま芳賀委員がお述べになつたような、そういう問題は提起されておらなかつたのであります。その後におきましてそういう問題が提起されましたので、われわれとしてもそれを検討いたしておるわけでありますが、無効になりました場合におきましては、民法の規定に従いまして、不当利得の返還なり何なりの形において、その返還を求める範囲というものを確定できるのではないか、こういうふうに考えております。
  207. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは長官ちよつと軽卒だと思います。すでに金を支払つて、また返還を要求するとしても、必ずしも特許権者並びに実施権者は、その金をいつまでも保留しているわけではない。いつ返さなければならぬかもしれぬということで、それを特定のところへ保管しておいて、そうなつたら返すという用意はおそらくしておらないと思います。その場合になつて返還する能力がないという場合もあり得るわけであります。そういう場合において、大きな国の無用なる支出によつて生じたところの損害というものは、どこにそれを持つて行くのかということが問題になるわけであります。だからこの問題に対しては、軽々しく今何千万円出して、これを借り上げるかどうか、特に松浦式でなければできないのだという印象を全国的に与えるということは、正しい政治を行う為政者の立場に立つてものを考える場合においては、先ほども綱島委員から御注意のあつた通り、この点は十分に慎重を期さなければならない。この審判の結論は、この一回の判定だけで、それで最終になるわけではない。それで異議があればさらに抗告して審判をやるとか、それがなお不服の場合においては、あるいは訴訟を提起をする、そういうことになると相当の日月がかかるわけであります。このことだけにこだわつておる場合においては、いつまでたつても、現在政府が考えておるところの人造米の製造を普及しようという考え、しかもこの国内の食糧の危機の中において国内の食糧の需給度を高める建前の上に立つて、少くとも四〇%くらいの澱粉をこれに活用するという一つの目的、それを市場に出す場合においては良質であり、しかも配給米よりは安価であるというこのねらいが実現しなければならないのであります。しかも現在つくられておるのは、ほとんど澱粉を使用しない。ただ小麦粉であるとかあるいは輸入砕米等を使つて、しかもその原価よりも二倍以上も高い価格で、配給米よりも五割以上も高い値段で市場に出しておるという形は、決してとるべき策ではないと思う。この点長官においても、当然当面の責任者の立場に立たれておつて、これは最終的には農林大臣であるか、政府当局というところに責任の帰趨はあると思いますが、かかる段階の上に立つて、もう少し明決にこの人造米問題を処理ずるという——常に長官が言われておる通り、これに対しては特定の利権であるとか、特定の利益を提供し、あるいは利益を追求することは絶対にさせないという正しい信念を貫くためにも、もう少し長官としての御態度の中にも表現のしようが、現在の段階においてはあるのではないかと私は考えて、そのことを期待しておるわけです。特に長官の人格を通じてわれわれは信頼をしておるわけでありますが、今日のこの段階において、長官はあくまでも既定の方針通り閣議決定の線に基いて、松浦式の特許権に対し三千七百五十万払わなければならないというお考えで進むおつもりであるかどうか、この点をお伺いしたいのであります。
  208. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 先般も申し上げましたようにわれわれといたしましては、そういう無効あるいは確認、あるいは食糧研究所におきまして、従来から特許を出願いたしておられますから、それとの確認決定という点がありますので、かりに契約をいたしましても、代金の支払いは月別に支払つて行くということが妥当であろうということを申し上げたわけであります。ただ、ただいまもいろいろ御指摘のように、われわれがこれを進めて参ります場合におきまして、実は確認の審判なり、あるいは無効の審判なりというものが早急に出て、それが明確になることが望しいのでありますが、しかし、芳賀委員のお話のように、これは相当時間がかかることになりますれば、現に特許権侵害とかあるいは製造の機械と結びつけて、そのために人造米の機械の進歩が進まないということが特許権の実施状態においてあると思うのであります。そうしますと、これを進めるために何らかの措置をとることが必要ではなかろうかというふうに考えておるわけでありますが、ただいまのお話のように、大蔵省との関係におきましては、いろいろと話はいたしております。しかし、これは借り上げると決定いたしました場合に、この程度の金がいるだろうということになつておるわけであります。
  209. 川俣清音

    ○川俣委員 食糧庁長官は、たびたびこの委員会において、われわれが警告しておるにかかわらず、依然として態度を改めない。農民がつくつております土地に対しては、全体の公益のためには、やむなく土地収用法をかけておる場合がある。たとえこれに特許権がありましても、これは特許法の原則に基きまして、これを公用に供する場合においては収用することができるはずです。そういう収用する方面になぜあなたは努力しないで、金を払うことにばかり努力するのですか。もしそれだけの余裕があるならば、もう少し二重価格なり米の価格について真剣に検討されたその上でなら別です。それは別だが、特許権だけを非常に重大に考えておられることは、食糧政策の上に私は有効な措置ではないと思う。これは収用できないものなら別です。日本の国民の食糧問題に寄与するこれほど重大なことはない。これほど公益に関することはない。こういう公益のためには特許権が収用できるはずです。なぜ収用について折衝されないのか、今までにかつて折衝されたことがあるのですか、折衝されてできなかつたのですか、その点明瞭にしていただきたい。
  210. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 全般的な食糧政策の問題は別といたしまして、特許法によりまして特許の収用ができるということは御指摘の通りでありまして、われわれも検討いたしました。しかし、この場合におきましても、やはり特許収用によります補償が必要なのです。その補償の規定を申しますると、まず第一に、当事者間に協議がととのえば、その協議のととのつた額によつて特許料の補償がされる、こういう形になつております。従来特許を収用した実例を調べましたが、現在まで収用した実例がないわけでございます。特許料の補償の基準につきましては、今後補償審査会がございまして、この補償審査会において基準をつくり、その補償金額を決定する、こういう形になつております。第一段としては当事者間の協議によるということになつておるわけで、そうすると収用における支払いの関係は話合いということになると、具体的に出しますると結果は同じじやなかろうかというふうにも考えたわけでございます。
  211. 川俣清音

    ○川俣委員 同じじやないでしよう公益のために収用するという観念と、一つの権利を認めて、しかもその権利に幾らかやみ権利をつけてこれを買い上げようとする場合とでは、根本的に違います。たとい金額は同じであろうとも、精神において非常に違つて来る。私はそれが将来の食糧政策に大きな影響を及ぼすと思う。たとえばくず米にいたしましても、もしもどんどんどんず米を買い上げて行くというようなことになつたり、あるいはくず米がやみに流れるというようなことになりますと、全体の供出の上に非常な影響が来るということもたびたび申しておるはずです。従いまして、こういう問題は特許権を買い上げるというような考え方をせずに、公益上の立場からこれを収用するという考え方に立ち至らなければならぬと思うのです。公益のために犠牲を払わなければならないというならば、適正な犠牲を払うこともやむを得ないかもしれません。しかしながら、公知公用の限界を保つ行為でないという問題については、私は収用する場合においても当然そこにあるものが決定されるであろうということが期待できると思う。その意味において、もつと真剣に取組んでもらいたい。委員会委員会独自の見解をあとで表明するはずでありますから、私の質問はこの程度にして終ります。
  212. 綱島正興

    ○綱島委員 関連して食糧庁長官にお尋ねをいたしますが、権利金を払つたりその他をしてこの人造米が大体幾らにつき、どのくらい売れるというお見込みでございますか。
  213. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 この特許権の買収でございますが、これによりまして現在実施権者がとつております七万五千円を加えますと、大体トン当り五百円くらいになると思います。これをわれわれはもう少し安くできぬかということが第一の点であります。  それから第二は特許権が侵害されるかどうかということで、先ほどもお話がございましたように、権利侵害の訴えが起されたり、いろいろな事例があるわけであります。そういう場合におきまして今後人造米を製造される人の不安なり、損失なりを払拭いたしたいということが第二点でございます。  第三点は、人造米の特許使用というものを機械と結びつけられるということが、どうもわれわれとしては今後の機械の発達を阻害し、それがひいては人造米の発達にならないのではないか。もう少し広く機械がつくられて、そうしてその機械が広く使われるということがほんとうの発達ではなかろうか。それが特許権との関係において、この機械を使わなければ特許権の侵害になるおそれがあるということになるのはいかがかという点が一つ。もう一つは、それに基き販売等に関しまする制約があつては困るという点で考えたわけでございます。これにつきましては特許料を支払う——政府が特許料を貸し付けます場合におきましても、特許料を徴収するという問題もあるわけでございます。そういう形でできるだけコストを安くいたしたいということで、まずわれわれといたしましては百円前後、配給価格程度にはやれるのではなかろうか。もちろんこれによつてエンリッチにするとか、そういう特殊の操作を施す場合には別でございますが、普通の場合におきまして、ビタミン類を入れない場合には、その程度でやり得るのではなかろうかというふうに考えております。
  214. 綱島正興

    ○綱島委員 ただいま伺いますと、大体配給米と同じくらいの価格だということでございますが、その配給米は内地米の意味でございましようね。——そういたしますと、農村に及ぼす影響も非常に重大であると思います。御承知の通り生産米価に対する格上げについては、農村の希望が非常に強いのでありますけれども、それをただいまのようにいたして参つてつて、そうしていわば米とは似ても似つかぬほど違うものを同額で配給して行くようなことになることは、なるほどその工程においていろいろなことがございましようけれども、一面政府は何をやつているのかというような疑いを農民から受けるおそれもこれは非常にあるのであります。農民の生産意欲というものについても、相当の影響を及ぼすのではなかろうかということが懸念される。そこで私どもといたしましては、これが非常に原価が安くできるとか、何か特別な事情があり、あるいはただいま多少倉積みになりつつあるところのかんしよ澱粉等の消費に非常に役立つとか、いろいろな問題が出て来れば格別、そういう基本的な政策に何ら触れなくて、しかも原価は大体同じようなものだということになれば、委員会としては生産農民に対する責任の重大なることを考えるがゆえに、委員会としては格別な意思を決定しなければならぬと思うわけであります。この点はよく長宮においてもお考え願いたい。
  215. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げますが、配給米の価格と同程度におちつくだろう、あるいはそれ以下におちつくだろうと申し上げたので、これは政府が買い上げまして配給制度に乗せるということでないことは御了承願いたいと思います。
  216. 井出一太郎

    井出委員長 松岡俊三君。
  217. 松岡俊三

    ○松岡委員 これは綱島君が最後に中されたことと関連するのですが、今の食糧庁長官の御説明で、特許権侵害のおそれがあるという点に相当に関心を持つておる、これはわかりました。それ以外に、このことについての委員会の空気もおよそ御判断ができるだろうと思うが、それでもしいてやらなければならぬということについては、普及する上にこれだけの困難があるという何か見通しがおありならば、すつかり腹を打明けて、こうこうこういう状態であるからといううことを、われわれにある程度納得のできるようなところまでお話になつてはいかがと私は思うのです。こういう困難がある、こういうあんばいをしなければ製造することができないということになつているかどうか、そこまでお調べになつているかどうか、お尋ねします。
  218. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの松岡さんのお話は、特許権の問題に関連した問題だと思います。先ほども申し上げましたように、われわれとしましては、人造米が安くでき、普及いたしますために、現在の特許権の使用方法が限定的になつては困る、優秀な人が優秀なものをつくる機会を広く与えることが必要じやなかろうかと考えておるわけでございます。しかも先ほど申し上げましたように、特許権と機械が結びつくということは、人造米の製造の発達をとどめるおそれもあるのじやなかろうか、だれもが優秀な機械をつくつて、そうしてそれによつて製造されるということが特許権使用の障害になれば、これをはずして眠らせると申しますか、はずして参るということも考えなければならないのではないかということも考えております。
  219. 小枝一雄

    ○小枝委員 前谷長官に、先ほどの芳賀委員の質問に関連して一点だけお尋ねいたしたい。  人造米の問題は重要問題でありますから、いずれ委員会においても相当の論議がなされるものと思いますが、とりあえず現在の段階において、食糧庁長官は、人造米は松浦式のものが最高のものとお考えになつておるので、それについて、ただいま芳賀委員への御答弁によると、特許料を月割で支払いをする、また食糧研究所でありますか、そこも特許を出願しておるというふうなお話でありましたが、そうすると、松浦式より、あるいはその食糧研究所でやつておりまするものより優秀な特許が次から次へ出て来るとすれば、それによつて次から次へ転々として特許料をお払いになつて、その方法を採用するのであるかどうか。現在の段階における長官の御意思を伺いたい。
  220. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。われわれといたしましては、新しくいろいろな発明ができました場合に、それが普及することによつて人造米がつくられることは非常にけつこうなことでありますが、同時にこれを買い上げるという必要もないのではないかと思つております。ただ現在これを進める場合におきまして、各メーカーが特許料の点におきまして、特許侵害になるとかあるいは特許料として多額のものを支払わなければならないということが、普及の上において相当の支障になつておるという点を認識しておるわけでございます。
  221. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの小枝委員に対する長官のお答えは筋が通らぬように思います。松浦式にだけ借上料を払い、爾後に生ずる優秀な製法に基いた特許権に対して、これを借り上げる意思がない。意思がないということはけつこうでありますが、そういう優秀な製法によつて今より高度な人造米ができるということになれば、やはり国内における人造米の製造は、新しい製法に依存するという形に移行して行くわけです。せつかく金を出しても、これは何も価値がないのではないかということになると、次の段階になると、また多額の借上料を出して、眠らせるということになるので、人造米の特許権を眠らすことに終始多額の国費が投じられるという弊害が生じて来るということは、ぜひお考え願いたいと思う。特にわれわれ委員会として注意しているのは、長官は、忠実にこの問題に取組んで——大臣ならばいつでも短命で引下つてもらつてもいいわけですけれども、長官はあまり深入りさせたくない、やはり長行の人格を通じてある段階で明確な態度をとつてもらいたいという気分を好意的に持つているからです。  もう一つは、さつき言つたように、この特許権の問題に対して無効審判等が提起されるということになると——特許庁は司法権と同じような一つの侵すことのできない権威を保つてやらなければならぬ。そういうような特許庁の立場を知りながら、一方においては、閣議でこういうものに対して三千数百万の金を出すと、大蔵省はすでにきめている。食糧庁はそういうことを知りながら契約を進めて行きつつあるというような事態は——現在新しくなられた特許庁長官は、そういうことに脅かされるようなことはないとわれわれ信ずるが、たまたま客観的に見ると、そういうような既成事実を一方において進めていると、この審判の決定に対してほんとうに純粋なる権威があつたかどうか、無用の疑義が生ずる場合も出て来るわけです。だからこの点に対しては、政府の内部においても、司法権と同一の立場に置かれている特許庁において、審判が提起されているこの段階においては、十分慎重なる配慮が必要であるというふうに自分たちは考えるわけです。  次に申し上げたいことは、十一月二十四日付農林省告示で人造米の日本農林規格というものが示されております。これを見ると、人造米というものは澱粉及び穀類、または穀類粉を原料としてということになつております。これによりますと澱粉と穀類を混合してつくるという製法が一つと、穀類だけでつくる製法と二つの規格が明示されている。そういうことになると、製法なるものはいずれによつてもさしつかえないということになるわけであります。そうすると、今はほとんど小麦粉並びに砕米だけによつて人造米がつくられている。しかもこれが高価であるという状態がいつまでも持続されるということは、この規格によつてつくつたということによつて継承されるわけです。なぜこういうような規格を長官はつくらなければならぬか。他方において農林委員会においては、人造米をつくる場合においては、大前提として、国の食糧不足の絶対量を少しでも増す意図のもとに、これに澱粉を少くとも四十パーセントくらい活用したい。そういうような意図のもとにやる御意思であるならば、この二の穀類粉だけを原料にして人造米をつくらせるというようなことはまつたく意味をなさないと思うわけでありますが、これらの点に対しては、どういうようなお考えでかかる規格をつくつたか、お尋ねしたいと思います。
  222. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。われわれといたしましても、この人造米が普及することによりまして、従来主食として取扱われておりませんでした澱粉が主食の形態の中に上り得ることを、非常に重く考えているわけであります。ただ現在の状態のもとにおきましては、かんしよ澱粉につきましては、これに対する砂の混入をいかにして除くか、かんしよ澱粉の持つております色の脱色と申しますか、色の黒くなるのをどういうふうに除いて行くかという工程が、まだ完成しておらないのであります。つまり澱粉工場の面からそういう砂を除いたものをつくつて行くか、あるいは中間においてそういう精製装置をつくつて行くかというふうな点につきまして、まだ検討する点があるわけでございます。従いまして、行政指導としてはそういう方面を進めて参りまして、そうしそそういう人造米に使い得るようなかんしよ澱粉ができます場合においては、われわれは当然この規格をかえて行きたい。ただ現在の段階におきましては、まだ澱粉を精製する工場もできておりませんし、また澱粉工場におきます精製過程も進んでおりませんので、今ただちにこれを行政的に規格でもつて定めるということには時期的なずれがあるというふうに考えたわけであります。
  223. 芳賀貢

    ○芳賀委員 柏木事務官に伺います。これは簡単な質問でありますが、大蔵省当局においては、松浦式の人造米の特許権を借り上げるために、一年の期限でありますけれども、特許権者の松浦氏に対して二千五百万円、実施権者に対して一千二百五十万円、合せて三千七百五十万円の借上料を支出するこう決定になつておるというふうに承知しておるわけでありますが、その事実に相違ありませんか。
  224. 柏木雄介

    ○柏木説明員 お答えいたします。大蔵省といたしましては、農林省からいろいろお話を同つておりますが、この問題につきましてばまだ決定いたしておりません。
  225. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  226. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めてください。ただいまに至るまでの御熱心な御審議の結果を集約いたしまして、ここに委員長から発議をいたしまして、最後のとりまとめをしたいと考えます。つきましては、次のような決議をしたいと考えます。  人造米特許権借上料並びにその実施権者に対する補償金支払いに関する件政府は、人造米の製造方法に関する特許発明を適当と認める者に、広く実施せしめるような措置を講ずる方針を決定し、これがため特許権借上料二千五百万円並びにその実施権者に対する補償金千二百五十万円を支払うよう財政上の措置を講じつつあると伝えられるも、本委員会において、本日政府並びに参考人を招致し、慎重検討の結果、特許権請求の範囲は既に公知公用の事項に属し、且つ食糖問題重大な折柄、かかる不明確なる権利に対して前記の如き国費を支出することは不適当と認める。ただいま朗読いたしました案に関しまして、御意見はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者ありつ〕
  227. 井出一太郎

    井出委員長 別に御意見もなければ、この際お諮りいたします。ただいまの人造米特許権借上料並びにその実施権者に対する補償金支払いに関する件を、本委員会の決議とするに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  228. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  なお本件の議長に対する報告並びに政府に対する参考送付方につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  230. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこの際委員長にお願いをいたして、そのおとりはからいを願いたいと存じます。それは今回政府が税制調査会の答申に基いて生糸に対する課税を計画いたしておるようであります。徴税の方法等につきましてはまだ承知をいたしておりませんけれども、これはわが国蚕糸業の重要性を無視した非常な暴挙であるとも考えられるのであります。従つてこういうことになりますと、農村経済に重大な影響を及ぼしますとともに、重要輸出産業としての蚕糸業の衰退もまた考えられるわけであります。従いまして、われわれといたしましては、ただいまのところ反対の見解を持つておるのでありますが、事きわめて重大な問題でございますから、この次の委員会におきまして、農林省、大蔵省初め関係者の出席を求めまして、この問題につきまして慎重に審議をいたしたい。委員長におきまして、そのようなとりはからいをいたしていただきたい。そのことをお願いを申し上げる次第であります。
  231. 井出一太郎

    井出委員長 佐々木君にお答えいたします。本日の理事会におきましても、さような話題が出ました。本日をもつて第十八臨時国会は終りますが、明後日から通常国会に入ります。そこで通常国会召集日であります十日は、本委員会理事会並びに本委員会を開く予定になつておりますので、その際ただいまの御趣旨を取上げまして、蚕糸問題特に生糸課税問題等を取上げる日取りを決定して審議を進めたい、かように考えます。
  232. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は公取委に、時間がありませんから簡単にお尋ねをし、簡明にお答えを求めます。  本日の毎日新聞を見ますと、群馬県の交水製糸株式会社に対して群馬の大同銀行が行過ぎをやつたということで、公取委に提訴したと書いてございますが、さような事実はございますか。
  233. 熊谷典文

    ○熊谷説明員 事実はございます。
  234. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 なお長野県の飯田市にあります丸万味噌醤油株式会社の株式を五〇%以上取上げて、社長仲田という人を追い出して、銀行の管理に移しているうちに、とうとうその会社がつぶれてしまつたという事実があると開いております。なおまた同じく長野県下伊那郡の鼎村というところに日本紡毛株式会社という緬毛加工の工場がございますが、これに対して地方の独占銀行が非常な圧力を加えているということがローカル紙に報導されておりますが、さような事実もございますか。
  235. 熊谷典文

    ○熊谷説明員 御指摘の前者丸万味噌醤油株式会付の件は、私の方はまだ聞いておりません。後者日本紡毛株式会社の件につきましては、日本紡毛株式会社の代理人の方から申告がございましたので、その事実は承知いたしております。
  236. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 飯田市のこの丸万味噌醤油株式会社については、過半数の株式を取上げて、社長を進出して銀行から社長を入れてやるうちに、とうとうこの会社をつぶしてしまつたのです。金融業を営むところの機関が一〇%以上の株を持つてはならないということになつているので、これは独禁法に違背するであろうと思いますが、この点についてはどういうようにお考えになりますか。  それから今の後者の場合でございますが、この種の事業は、銀行を経営しているような人々では、おそらくこの事業の経営についての経験を持つていないと思います。そういう経験のない銀行業者がこまかい干渉をしては、事業等は成り立たないのです。その銀行の貸金のみを取上げて、あとはもうかまわないというような干渉のやり方をもつてつておりますと、地方産業は一たまりもなく次から次へとつぶれて行くのでありますが、こういう問題について公取は、提訴がなければ全然ごらんにならないのでございますか。それから提訴のあつた場合にはどういうようなお調べと御措置をおとりになるのか。少くとも今の後者については申出があつたの調査をなさつたようでありますが、その調査の結果はどうでございましようか。この農産物、畜産物の加工等の地方産業に及ぼす影響はきわめて甚大であると思うのでありますが、こういう問題にもし独禁法違背のかどがあるとするならば、緊急さしとめの方法があるであろうと思いますが、その点についてはどういうようにお考えでございますか。
  237. 熊谷典文

    ○熊谷説明員 お答えいたします。独禁法違背事件についてどういう措置をとるかという御質問かと思いますが、先ほど申し上げましたように、申告がありました場合に、それを取上げることはもとよりでございますが、それのみでなく、人数の関係もございますが、公取としましては、地方産業につきましても、独禁法上違反事件のないようにできるだけの配慮はしているつもりでございますし、努力もいたしているつもりでございます。なお日本紡毛の件につきましては、その後の事実はどうかというお話でございますが、現在ちようど行つている最中でございまして、来週帰つて来る予定になつておりますので、帰つて来ないうちははつきりいたしません。その点で、御了承願いたいと思います。なお丸萬醤油の件につきましても、どうも事件内容は同一銀行ではなかろうかというようにも考えられますが、担当官が行つておりますので、そのときにその件につきましても詳しい事情がわかるかと思つております。なお措置の問題でございますが、もし日本紡毛等の件につきまして申告のような事実がありといたしますならば、独禁法上の疑いは相当濃くなつて来ますので、その場合はわれわれの方といたしましては、さらにつつ込んだ調査をいたしますとともに、審判開始決定をいたしまして、審判の過程に入る、こういうことになろうかと思つております。
  238. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 日本紡毛につきましては調査中だそうでありますから、調査の結果を次の農林委員会の機会に御報告をお願いいたします。なお群馬の交水製糸株式会社でも公取に提訴したそうでありますから、それもお取調べの結果をあわせて御報告をお願いいたします。次の機会は私の方から電話で連絡をいたしますから、その機会に、調査の結果に基いての措置あるいは取調べの経過内容等について、つぶさに御報告くださるようにお願いいたしておきます。
  239. 井出一太郎

    井出委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後七時十五分散会