○
足鹿委員 小
委員会の
経過を
中間に御報告申し上げたいと存じます。
昭和二十一年
農業災害補償制度の
発足以来、今日までおよそ六年の歳月を
経過し、累次の
農業災害の
発生に対処して、本
制度が相当の効果を発揮して参りましたことは、何人もこれを信じて疑わないのであります。国はその間において、実に数百億円の
財政資金を投下し、また
制度自体につきましても、ほとんど毎
国会ごとに
改正の手続をとり、
農家の
掛金負担の軽減をはかる等、その
改善の
方向を求めて来たのでありまするが、翻
つて顧みまするに、本
制度が終戦後早々のうちに
発足しましたことに端を発し、戦後における
経済事情の激変、大
災害の
累年的発生等の
事態に即応し得ない
内部構造面における弱点、あるいは運営上の不手ぎわがあることを否定できず、国並びに
連合会における赤字の累積、
損害評価、あるいは
掛金の掛捨て等に基因する
農家の
不満とな
つて、現
制度に対する
批判的空気は逐次拡大的に表面化いたし、もばや今日におきましては、単なる
弥縫的手段をも
つてしましては、とうてい当面を切り抜け得ない
事態に立ち至
つておるのであります。そもそも
農業共済制度の
根本改正の問題は、第十三
国会当時すでにその
必要性が痛感され、その
審議のために小
委員会が設置せられたのでありますが、その
改正の
事業たるや各
方面に及ぼす影響も甚大であり、本質的に複雑な問題を含んでおります
関係もあ
つて、その
審議ははかばかしくは進捗せず、第十六
国会に持ち越されてお
つたのであります。同
国会において引続き小
委員会が設置され、私がその小
委員長の
指名を受けたのでありますが、当時たまたま関東を
中心として
発生しました凍
霜害対策を講ずるにあたり、二十八年度麦、
水稲共済掛金の
国庫負担の
増額蚕繭共済の
蚕期別共済については完全に
意見の合致を見たにもかかわらず、
行政庁の
監督権強化の
問題等に関連するところの
農業災害補償法の一部
改正点をめぐり、
衆参両院の
決定内容が異なり、その調整のため、七月二十四日
両院協議会を開催する
事態に立ち至りましたことは、
各位の御承知のごとくであります。その際、各党を網羅するわが
衆議院側協議委員が、
参議院側の
修正点を承認するにあたり、その同調を得て作成した
申合せ事項は、一、
農業災害補償制度については、その
抜本的改正の必要であることを確認する、二、
政府は二十九年度水稲を
目途として
制度の
根本的改廃を行い、
農業災害補償に対し完全なる施策を講ずること、三、
衆参両院は、
制度の完璧を期するため、
閉会中もなおその
調査を継続し
検討することという
内容のものであり、同
申合せをただちに
農林委員会に御報告いたしまして、
各位の御了承を得ましたことは、いまなお私の記憶に新たなるところでありまするが、かくして
農業共済制度は、これを抜本的に
改正すべしとなす
両院の意思は示され、爾来われわれは全力をあげてその
改正に着手することとな
つたのであります。
そこでまずわが小
委員会としましては、そこに至る
準備段階として、現
制度の仕組みを細部にわた
つて的確に把握しまする必要を認め、
農林省に対しまして
資料並びに
説明を要求することとし、その第一着手としまして、七月二十一日
農業災害補償制度に関する基本問題につき、
経済局長小倉武一君より
一般的な
説明を聴取したのであります。
〔
委員長退席、
金子委員長代理着席〕
次いで
両院の小
委員は、
さきの
両院協議会の
申合せの線に沿い、八月中旬第一回の
打合せ会を開き、二、三の
方針を決定いたしました。その
内容は、一、
農林省は八月中に
問題点を整理して、九月の第一回
合同小委員会において
説明すること、二、
改正の基本的な
方向について二、三の案を準備し提示すること、三、
両院合同小委は
情勢に応じ今後合同して
審議に当り、
最終段階においてさらに
合同小委を開くこと、四、学界の
意見を聴くことという
趣旨でありました。しかして右の
申合せの線に沿い、その後一箇月間の
調査研究期間を置きまして、九月一日第一回の
合同小委員会を開きまして、
農林省より
農作物共済を
中心とする
農業共済制度に関する諸問題とその
対策の
検討資料につきまして
説明を聞いたのであります。同
資料は、
引受けの
単位、
共済対象、
損害評価、
掛金、掛捨て、
補償の範囲と時期、
防災施設、
事業主体等制度上の
基本事項に関する現状、
難点、
対策とその可否につきまして、
農林省の率直なる見解を披擬したものでありますが、しかし遺憾ながら、多数の
項目を平板に羅列したにとどまり、
改正方向を体系的に打出すための
資料としては、はなはだ
不満足のものといわざるを得なか
つたのであります。そこでわれわれとしましても、
行政当局の微妙なる
立場をも勘案し、われわれ自身において
改正の
基本方針を起草する要を認めましたので、まず広く
学識経験者の
意見を徴することといたし、
委員会の御承認を得まして、九月三日、
農林省農業綜合研究所研究員山内豊二、三重県
食糧農政課長奥井亮三郎、
大阪市立大学商学部長近藤文二、
全国農業共済協会顧問松村眞一郎、
太陽生命参与南正樹の五氏を招き、それぞれの
立場に立脚した
意見ないしは主張を聞くこととしたのであります。
ぐの陳述の
内容は、
さきの
農林省の
説明を補足する意味からい
つても、また問題を体系的に述べられた点からい
つても、裨益するところ多か
つたのであります。ここに一々その
内容を
紹介することはいたしませんが、
奥井氏が
第一線行政官としての豊富な
体験から、
末端組合の
欠陥を
統計数字に基いてきわめて客観的に発言された点、また
山内氏が大
災害に対しては
社会保障の
見地から救済する必要があるとともに、
不安定地区と
安定地区とを区分して
保険内容を異にする必要があるとせられた点、また
近藤教授が
一般損害保険としてやれる
部分を除いて、大
災害については
現行の
農作物保険を
農業所得の
保険とし、
農業保険の
社会保障化を提唱せられた点は、
委員各位の
注意を喚起した点と思われるのであります。
なお蛇足ながらこのさい特に一言付言しておきますれば、そのときおいでを
願つた方々以外に、
一般学界におきまして、
農業保険ないしは
農業災害補償制度の
研究に従事される
学者がきわめて少いことを痛感したのでありまして、本
制度の
進歩のため、一段と
研究の深められますことを農村の
立場を代表し、衷心より希望いたすものでございます。
さて小
委員会といたしましては、この後
九州の大水害に引続き、
近畿方面の風水害が起り、また
東北方面における
冷害の様相がようやく深刻化し、
閉会中にもかかわらず本
委員会がその
対策に忙殺された
関係もあり、またこれまでの
調査結果を整理
検討する必要もあり、かれこれの理由からしばらく
会議の開催を休むことといたしましたが、
公聴会後約半月を統た第十七
臨時救農国会の末期に近く、
農林省より
農業災害補償制度の
改正についての
考え方が提示されましたので、引続き本案を
中心に
検討を進めることといたしました。この
考え方はきわめて集約された形で四つの
試案を示しております。
その概要を申上げますならば、まず第一の案は、
現行制度の
強制加入に伴う種々の
難点を改めたらどうかということであります。その改め方につきましては、さらに二案があり、その一は、
共済事業を実施するかいなかについて
町村にある程度の
自主性を与えようというのであり、その二は、
町村に
共済事業が実施されることに
なつた場合には、
共済金額等について
自由選択制を取入れて行こうとするものであります。
第二の案と申しますのは、もつと
補償の
内容を充実したらどうかということであります。しかしここで
農林省が考えておりまする中身は、
現行の
一筆単位では
財政上からも
補償内容を
引上げることは困難であるから、むしろ思い切
つて現に実験中の
農家単位共済に多少修正を加え、これを全面的に採用することにしてはどうかということのようであります。
第三の案としましては、
損害評価を厳正的確に行うことにより、一方では
財政上のむだを省き、他方では
農家の
不満を解消して参ろうというのでありまして、その方法としましては、
町村単位引受けを考えておるのであります。国の
行政の及ぶ
限界を
町村に置き、それ以下については、
町村内部の操作にゆだねようというのでありますが、しかし
町村と
農家との結びつき方についてのきわめて重要な、しかし困難な点には触れておらないのであります。
第四の
考え方は、前三案と異なり、
現行の
制度が、
農業経営資金を
補償する建前とな
つておりまするものをまつたくひつくり返しまして、
農家の
生活費、言葉をかえれば、労働の再
生産の費用を
補償する行き方に改めたらどうかというのでありまして、いわば
都市勤労者に対する
社会保障制度に近づくものでありまするが、しかし、
一般営農対策との
関係、あるいは
損害評価上の
難点等については何らその
対策を用意しておらないのであります。
しかし以上のごとくこの
農林省案は、きわめて抽象的ではありますが、従来の
立場から一歩を進めたものでありまして、基本問題、
対策資料、並びに
考え方の三つの
段階を通覧すれば、逐次問題をしぼりつつ改革の
方向を模索しようとする努力のあとには見るべき
進歩があり、またこれと併行して、
農業団体においてもそれぞれの利益を代表する
立場で
研究がなされ、われわれに対しても一、二の
意見書が提出され、またむろん
委員各位より口頭または文書をもちまして、構想なり、
意見なりが開陳され、いずれも
参考資料として重要なものでありました。
かくして逐次
改正案の輪郭を描く域に近づきましたので、小
委員長としましては、小
委員各位に対しまして、小
委員会の
原則的意見をとりまとめる時期が来たことを表明いたし、なるべく早い機会に各
委員より原案を御提示あらんことを
願つたのであります。
なほ冷害対策の
善後処理を兼ね、
農業共済再
保険特別会計並びに
県連合会及び
基金の
財政上の処理に関する
説明及び栃木県
共済連合会の
不正事件の概貌を
政府より聴取しましたが、この際
足立委員より、
改正案とりまとめの
最終段階において、一段と慎重を期するため、
共済団体の
第一線において働く方々の
具体的意見を開くべきであるとの申出があり、ごもつともなる御要求でありまするので、
委員会の御諒承を得まして、去る十二月四日、宮城県
共済連合会長小野寺誠毅、
島根県連参事高橋政吉、
群馬県連参事黒沢豊作、長野県伊那町
組合長松崎親助、静岡県小笠郡大阪村
組合長山崎昇二郎の五氏を招き、御
意見を拝聴するようとりはからうこととしたのであります。あらかじめおおよそ二十
項目にわたる
意見を求める要点を示し、またいたずらなる
弁護論に終始せず、現
制度に関する長所並びに
欠陥を忌憚なく吐露せられたいことを強調しまして、
意見の開陳を
願つたのであります。
公述内容を一々申し上げる煩は避けまするが、われわれの理解を深めました数点について特に申上げますと低
被害地においては、掛捨てに関連する農民の
不満は、意外に深刻であ
つて、単に
掛金率の全体的引下げのみをも
つてしては解決出来ない部面があり、これを放任すれば
損害の
過大評価の誘因となり、やがて
制度自体は崩壊のおそれがあること。
従つて、
掛金総額の一割程度を目標とする無事もどし
制度を確立するとともに、
町村の
段階において
備荒貯蓄制度を考え、
町村内部の真の
共済体制をとることが必要であること。なお
農作物共済の
加入方式は強制以外には考えられず、
保険を担当する
機構は
自主的団体とし、その
経営規模は一層拡大して
経営合理化に努めねばならぬこと。また
防災事業は
共済団体を
主体とすべきであ
つて、きわめて有効な活動を示しておる地方のあること。
引受けは数
段階の
災害なかりせば石数で行い、無事もどしを取入れること。
任意共済はいかなる
団体であるとを問わず、要は
実費保険料でやれる
団体に行わせること。
以上の諸点でありまして、
体験より湧き出まする真摯かつ有益なる
意見に接し、大いに傾聴いたしたのであります。
以上、小
委員会としましては、ありとあらゆる方策を尽しまして
審議に万全を期して参り、私が小
委員長に就任後、
会議を開くこと実に十四回、また
公聴会三回、
現地調査一回を行い、
委員各位にも熱心な御勉強を願い、かつ小
委員会の
運営方針としましても、最も民主的に、最も協調的な
方針を堅持したつもりでありますことを、特に申し添えたいと存ずるのであります。
翌十二月五日、引続きまして小
委員の参集を煩わし、数次の
申合せの
趣旨に基き、非公開で
改正案立案の取扱いを協議しました結果、各
委員より、この際諸般の
情勢にかんがみ、今日までの
審議の結果明らかと
なつた
問題点を取入れ、小
委員長試案ともいうものを作成して小
委員会に提示し、これを
中心に討議し、
最終結論に達しようとの
方針が決定されたのであります。よ
つて小委員長としましては、この
方針を体しまして、十二月七日、小
委員長試案をとりまとめまして、小
委員会席上において発表することにしたのであります。その
内容は前文及び
あと書きを除き、十
原則の形にとりまとめたものであります。
以下、これを読み上げつつ、多少の註釈を加えることといたします。
農業災害補償制度改正に関する件
農業災害補償制度に関しては、おおむね次の
基本的構想のもとに
改正を
検討するものとする。
一、
農作物、薬葉の
災害について、
保険により対処する面と、
補償により対処する面とを
保険数理的設計のもとに次の如く分離するものとする。
(一)
団体はおおむね
通常の
被害に相当する
部分を
保険する。
(二)
通常の
被害を超える
災害については、関庫の
負担において、
政府の
基金特別会計から
団体を通じ、「
農作物の
減収による実
損額の七割までを填補する」ことを
目途として
補償する。
前二号間の
限界については、近年における
災害の
多発的傾向、
不足額累増等の事情と関連し、
団体の
保険収支が短期的にも均衡を維持しうる
合理的線を新に計測して決定するものとし、且つ両者を通ずる
災害補償制度全体の規模については、すくなくも現在の
財政支出額を下廻らないことを条件としてこれを画定する。この一は、
委員会でもしばしば各
委員からも御議論があり、また
一般に
学者の間にも、この点については、ただいま御報告申し上げましたように、
国家補償の面と
保険の面とを区別したらどうか。この間にはつきりとした線を引きまして新たなる
発足をしたら、最も合理的に現在の
農家の真に期待しておる意に沿い得るのではないか、こういう点でこの一項を取上げたわけであります。
〔
金子委員長代理退席、
委員長着席〕
ただこの問題は、
農作物の
減収による実
損額の七割までを補填するということについて、よほど数字的な
検討を経なければ、容易にこの問題を明らかにすることは困難ではないかと考えられます。
いま一つこの点での
難点は、現在は、国が再
保険をし、当然
損害の実情に応じて自動的に国の
財政支出を要することにな
つておるのでありますが、これを
国家補償の面に切りかえた際に、国の予算上の
制約によ
つて、ある
制約が加えられる面もあるのではないか。そういつた点について、もしこの
方針を貫くとするならば、そういつた危惧を解消し得る
立法技術上における慎重なる
研究が、もちろん必要であろうと思われます。それと同時に、もし
改正の結果、現在
通常国の
財政支出しておる額が下まわるようなことがあ
つてはたいへんである。あくまでも現在国が
通常支出しておる
財政支出額を下まわらないための周到な
注意を払いまして、これを法文化して行くことが考えられることを、申し添えておきたいと存じます。
二、なたね、だいず等の
農作物に対する
任意共済については再
保険措置を考慮するとともに、
家畜については、
畜産行政との協調にいんなきを期したる上、おおむね従来の
方式を踏襲するものとする。
問題は、
菜種、
大豆その他
特殊農作物に対して、現在若干の
地域において
任意共済が行われ、先般の
災害によ
つて、
九州の
任意共済を
行つた菜種等は、法的に見殺しになるような
事態に
なつたことは、皆さんの御存じの通りであります。このように一応法律によ
つて任意共済を認めておきながら、一旦
災害が来れば、法の上から何ら救済ができないという点については、現在の
法そのものに
欠陥があるのではないか。
従つてもし
地域の
特殊性から、
菜種、
大豆に限りませんが、
農作物に対して
任意共済を行つたときには再
保険を考慮して行くことが必要ではないか。そういう点をここに取上げられておるわけでございます。
家畜につきましては、先般一部
改正案が実施になりまして、きわめてスムースに進行しておるように聞いておりますので、新たに今後
畜産行政との面をさらに協調して、この運営に遺憾なきを期して行くという点を留意して、おおむね現在の
方式を踏製すればよいのではないか、こういう
考え方でございます。
三、
団体の
事業機構等の
改善は左による。
(一)
中央に
全国を区域とする再
保険団体を新設し、
共済基金はこれに吸収する。
(二)
都道府県段階以上における常勤の
理事者は
原則として業務に専従しうるよう
内部機構を整備するとともに、各
級団体の
役職員の身分、
責任等に
公的色彩を強化する。
(三)
貧末端組合の
事業区域は、必ずしも
行政単位にかかわらず、経費の節約、
事務能率の向上及び
職員等の
待遇改善、
身分安定等を目的とし、経営安定の
見地から定める。
この三の
事項については、現在
共済事業の
機構を見ますのに、
町村に
組合があり、郡に支部があり、県に
連合会、
中央に
共済協会という法的には何ら根拠のない
団体があります。なお先般設置されました
共済基金があり、また
農林省の内部には特別会計が設けられる等、末端におきましてはさほどではございませんが、
中央における
機構のきわめて複雑であることは、
各位の御存じの通りでございます。こういう点をもつと簡素化し、そしてむだな経費を節約し、能率を向上して行くためには、どういう
対策とがらるべきか。そういうような点からここに取上げております。問題は、
中央に
全国を区域とする再
保険団体を新設し、
共済基金はこれに吸収するという点につきましては、小
委員会としてもまだ保留し、
検討を今後にゆだねておるのでございますが、以上私が述べましたような
趣旨を御了解願えれば、幸いだと存ずる次第でございます。ただ新たにできる
中央の
全国を区域とする再
保険団体の性格、その事業構成というような点につきましては、まだまだ十分
検討の余地があることを申し添えておきます。
(二)の
都道府県段階以上における常勤の
理事者は
原則として他の兼務を認めない、一意専心
保険事業に邁進をする、そういう建前をここに新たに取上げて責任を明かにし、しかもその身分等については公的な色彩をも強化して最も公正にして経営能率を上げたらどうか。はなはだしきに至
つては十数種の、しかも重要な公職を持ちながらや
つておる、そういう人が現在
理事者の中にはたくさんあるように見受けられますが、現在のような困難な
保険事業を今後前進させるためには、そのようなことをなるべく避けまして、少くとも常勤
理事者はその業務に一意専心打ち込むような方に持
つて行くべきではないか。
(三)の
末端組合の
事業区域でありますが、現在百町歩余りの
町村にも一つの
組合でありますから、そこに
組合長以下の一切の
機構が必要となる、あるいは何千町歩の北海道、東北におけるような大きな
町村にも一
組合、こういうような点から来る必要な賦課金が勢い増高し、また農民の
負担が
従つてかさむ、こういうような点は従来しばしば
公聴会等においても指摘をされておりました。そこで最近の市
町村合併促進法の実施等をもあわせ考えまして、少くとも
行政単位にかかわらず適正規模の策定を行い、これを実施いたしますことによ
つて事務能率が向上し、また職員もおのおの専門的
立場から指導が行われる長所もあろうかと考えられるのであります。そういう点をここに取上げ、そして
組合の適正規模の上に職員の待遇の
改善、身分の安定等を企図いたした点であります。この身分の安定問題につきましては、
県連合会に籍を置かしめ、市
町村駐在制のごとき事例をあげて優秀な成果を収めておる県連もあるようであります。そういつた点等をも
待遇改善の具体的方法、身分の安定の方法としてはいろいろな方法が今後十分
検討されてよろしかろうと考えられるのであります。
四、事業とこれに対する指導監督との
関係を厳正且つ明確化するよう措置するものとする。
これはあえて
説明を要しない点であろうと存じます。
五、農業協同
組合の行う
共済事業と競合する建物等の
任意共済は、一定期間後、農協に一元化し、事業
内容に法的基礎を与えるものとする。
現在
任意共済を二つの
団体が行
つております、すなわち共済と農協との二つにわかれておるのでありますが、その対象は
農家一つである。またこの問題が各地において摩擦を起し、いたずらなるところの競合の形態を出しておる点もわれわれは見聞いたしておるのでありますが、この際
防災事業との関連をも考えまして——あとで申し上げますが、
防災事業はこれを共済
組合に一元化し、
任意共済は協同
組合に一元化をし、あわせおのおのがその十分なる機能を発揮して行くことが、将来の農村の金融的な面あるいは資金的な面、そういつた面からきわめて適切な措置ではないか、そういうためには現在これを断行するといたしますならば、そこに若干の
難点はございますが、将来を見越して行くことが必要ではないか。但し現在両者の行う
掛金料率の点で必ずしも一致いたしておりません。また風水害等によ
つて赤字を出した
組合との引継ぎの
問題等に対する措置、そういつた点については
委員会としてもなお今後十分
検討しなければなりません。現在農業協同
組合連合会が行
つておる
任意共済事業の
掛金料率がややもすれば高いという声もありますが、今後これを大きく一元化して行くことによ
つてこの事業が充実し、
従つて掛金料率も相当額引下げの可能性はありますし、将来大きな資金の農村還流、そういつた面からも営業
保険等の進出を食いとめて行くことが成果の上から見ましても必要ではないか、こういう
考え方でありますが、この点につきましては記載しておりますがごとく、慎重なる
対策を
検討をすることが必要であることになりまして、一応保留というかつこうにな
つておることを付言いたしておきます。
六、
組合の事業面等についてはすくなくも次の諸点を取り入れて
改善を図るものとする。
(一)加入については当然加入乃至は義務加入の建前を崩さない。
(二)引受は一筆毎の俵建とし、又共済金瀬等に関しては地方等級に応じて四
段階を設けこれに対する
農家の
自由選択制を織り込むよう
検討する。
(三)
農家の
負担する
掛金額は一、の(一)に対応してこれを低減するものとし、且つ危険の大小に応じ個々の耕地に対する料率上の調整措置(無事戻を含む)を講ずる。
尚、
政府はその適切な取扱
方針を決定するため、すみやかに常習
災害地に関する
全国的
調査を行うこと。
(四)
掛金の徴収を
町村に委任し、若しくは物納を認める等その容易確実化を図る。でございます。(一)の問題につきましては、これを任意加入にいたしまするならば、おそらく
現行制度は崩壊をすることは何人もこれを認めるところでありまして、少くとも今後農民から最大の支持を受ける運営を行うということを企図し、現在と
つておりまする当然加入、すなわち義務加入の建前を堅持するということであります。
(二)の問題でございますが、現在は一応画一的な共済金額あるいはまたそれに対応いたしましたところの
掛金率等が若干
改正されまして、実情に即するがごとく漸次進んではおりますが、なおこの際
農家個々の
自由選択制を取入れた一筆ごとの俵建あるいは石建という形において今後農民の
自主性を尊重した形を打出すべきではないか、こういう
考え方でございます。しかしこの点につきましてはまだよほど
検討を要することもあろうかと存ずる以第でございます。
(三)の
農家の
負担する
掛金額は一、の(一)に対応してこれを低減することはもちろんでございますが、無事もどしをも合めた危険の大小に応じまして、
掛金料率を調整をして行くことも一つの無事もどしの形になるのでありますが、そういつた点も含めまして何らかのここに無事もどしの
制度を法の上に明らかにして行く、そういう
考え方でございます。なお現在この
災害補償制度を運営する面におきまして、低
被害地と高
被害地との問題が常につきまと
つておりますので、この際
全国的に
政府はすみやかに常習
災害地の
調査を行い、またこれと相関連して
国家補償の画をも今後十分に
対策を樹立すべきではないか、そういつた意味から常習
災害地の
全国的
調査を行うことをここに取上げておるような次第であります。(四)の
掛金の面におきまして物納を認める、あるいはその他容易な方法を考えるとともに、現在
組合が徴収をして、
組合が共済
保険金の支払いをする、その間には相殺行為が行われ、必ずしも農村によい感じを与えておりません。幾らの
掛金をかけ、幾らの共済
保険金をもら
つたのか、まつたく当の農民はこれを知ることができないという事能もあるようでございます。そういう相殺行為等の問題も解消いたしまして、
掛金の徴収は、すべて
町村に委任する、そうして物納を認める、そういつた
掛金に対するところの農民の憤懣、また
掛金徴収の困難に対する
対策として、これを取上げておるわけでございます。
七、本
制度による
保険事業を補完するため、農業協同
組合との連繋のもとに行う備荒貯蓄の
制度を新設して、
団体の事業に金融的要素を加味するものとする。これがため
掛金率の算定に当り、特例を設け、かつ国庫助成等の奨励措置を、講ずる。とうた
つておりますが、これは(二)の問題に合せて一応
考え方を御
説明申し上げますと、
自由選択制の
段階をかりに四
段階にいたしまして、一
段階を十とし、二
段階を七とし、三
段階を五とし、四
段階を三とかりにとろたといたします。その場合に、ほかの
段階は三
段階までを
段階として四
段階の三に二を加えて三
段階に達するわけでありますが、その二の分を備荒貯蓄として、新しく積立の
制度を起し、協同
組合との関連においてこれを運用したらどうか。これはまつたく新たなる構想でありまして、こういつた面が
町村に行われて行きますならば、また無事もどしの
制度の問題ともあわせ考えて、完璧を期することができるのではないか、そういう
考え方のもとに、新たに備荒貯蓄倒産の問題をここに取上げておるような次第でございます。なおその
掛金率の算定等は、今一例を申し上げましたが、これに対しましては、無事もどし的な意味からも考えまして、助成等の奨励措置を講じて、近来備荒貯蓄問題がなおざりにな
つておる点を強く取上げてこの
制度を普及し、農村の不時の
災害に一層完璧を期したいと考えるのでございます。
八、
町村段階以上における
損害評価の基礎として、農林統計
調査機構の作業により、作物統計から作成する一定の幅をもつた
減収率を使用できるよう同
機構を急速に整備するとともに、
末端組合においては同
調査との有機的関連を保持し得るよう
現行被
保険者評価に伴う運営上の
難点を改めるものとする。過日の
公聴会におきましても、一番の
難点は
損害評価のきめ手がないということを、各参考人は一様にその苦しい
立場を申しておられました。またせつかくつく
つて出した
損害評価が、郡でチエツクをされ、県でまた削られ、国においてさらに
財政規模に適応するように圧縮をされる。さなきだに少い共済
保険金がさらに少くなるという、きわめて重大な問題が未解決にな
つておるのであります。そこで八の
考え方は、現在統計
調査機構でつくりますところの
減収率を
町村以上に適用したらどうか。そうして、たとえばある一つの村で
減収率をつくり出します。しかしこれはあくまでも実収額をりかむことがなされておりませんから、そこにある一定の上下の振れを認めて最終的に調整することにいたしまして、そこに出たものに合うごとく
農家各個の
被害を積み上げて、それに合致せしめて行きますならば、それを郡に積み上げ、県に積み上げ、
中央に突き抜けて、その点においては何ら圧縮削減等のない、権威ある評価が実施でき得るのではないか。そういつた点におきまして、
現行制度の一器
難点であり、また一番重要な点を、ここに具体的な
考え方を明らかにいたしたつもりでございます。
九、
防災事業は
原則として
団体をして実施せしめ、
政府はこれにつき積極的な奨励措置を講ずるものとする。但し、薬剤、防除機具等に関する経済行為は農協の事業とする。
九の
防災事業の点でございますが、これは先ほど農業協同
組合への建物共済の一元化の問題を申し上げましたが、現在
防災事業は、農業協同
組合が行う場合、市
町村が行う場合、共済
組合が行う場合と、
全国てんでんばらばらにな
つておるようでございます。しかもその基本は、植物防疫法に発しておるのでございますが、植物防疫法の末端での運営の仕方につきましては、必ずしも体系が整
つておりません。ここに植物防疫法との
関係を取上げまして、
共済事業を行う
組合にその
防災事業を一元化いたしまして、
災害に対する防除を専心行わせるようにいたしたらどうか、そうしてこれに要する薬剤やあるいは防除機具等の取扱いにつきましては、経済行為を伴いますので、これは農協に専管させて行つたらどうか、こういう
考え方でございます。そうして
防災事業は共済に一元化し、
任意共済等は農協に一元化して行く、そういうことにおいて二つの大きな農村
団体が相提携して、農村の福祉のために進むことができるのではないか、こういう
考え方でございます。
十、
連合会の不足金累計額は、この際
全国を総合した整理計画を樹立実行せしめ、必要に応じ国はこれを援助するものとする。
組合と
組合員との間の債権債務の相殺
関係等についても、この機会に徹底的に清算しうるよう措置するものとする。
最後の十でございますが、現在
連合会の不足金は本年においても十億を越えるであろうという農林当局のお話であります。これをこの
制度の改廃によ
つて新たな再出発をいたした場合に、当然この不足金、赤字は残
つて参ります。これに対して国が
全国を総合した整理計画を立てまして、必要によ
つて国がこれを援助をして始末をする。なお
組合と
組合員との間に、先ほど申し述べましたことく、債権債務の相殺行為が行われ、せつかくもらつた共済
保険金が、未納
掛金との間に相殺をきれるというようなことは、従来しばしばあり、このことは
公聴会においても、末端
行政を担当しておる人々はそのことを言
つておりました。いわんや本年は、相当多額の共済
保険金が支払われますので、それと従来の
掛金との相殺等が行われますならば、この
制度に対する農民の不信はさらに激発して参ります。それらのことをまつたくやらせないように、相殺行為等を行わなくても、今後
組合のそうした未払い
掛金等を清算し得るような特別な措置を講じまして、今後本
制度の再出発にあた
つて、あと腐れのないように、全部これを合理的に農民の
負担にかからないように清算をして、新たなる出発をすることが妥当ではないかというので、十の問題は大体前後措置の重点を二つ取上げておるような次第でございます。
最後の
政府は、右の諸点を体系づけ、その細目を定めるため、
農林省に
農業災害補償制度審議会をすみやかに設置し、第十九
通常国会を
目途に
関係法令の整備を図るべく最善の方途を講ずるものとする。
でございますが、この点は以上述べました十
原則にとりまとめておりますが、若干の保留点もあるとは申せ、この
趣旨には小
委員会としても大体御賛成でございますので、さらに
検討して保留点を結論に達せしめた後において、これを立法上あるいは計数的な、具体的な
見地から実施するにあたりましては、われわれの手にはとうてい負えません。そこでこの
原則に
従つて、
農業災害補償制度を
政府に設けてもらい、
衆参両院のこの小
委員も参加をいたし、斯界の権威者、
学者、経験者というような人々に参画をしていただきまして、この
原則の具体化、
関係法令の整備のために御尽力をいただいて、そこででき上つたものをさらに小
委員会にもどしまして、そして最後の仕上げをして第十九
通常国会に、必要な
関係法令は法令とし、あるいはその
財政的な措置を措置としまして提出をし、今後速急に再出発を行おうという、最後の仕上げの
方向をこういう方法でやろうということを明らかにいたしておる次第ございます。
以上、非常に急ぎまして、きわめて税期が不十分でございましたが、お手元に配付してございますので、
委員各位においても十分御
検討をいただき、小
委員会に皆様の貴重な御
意見をお知らせいただきますならば幸いとするところでございます。
この
試案は、当初の予定といたしましては、昨日中に
内容の調整を行いまして、小
委員会の案といたし、本
委員会に報告する運びにとりはからいたいと存じましたが、事の重大性にかんがみ、意外に
審議に手間どり、二、三の点について
最終結論に達しなかつたことは、まことに遺憾とするところであります。
御手元に配付いたさせました案文中、欄外に「留保」と記載してありますものが、未決定
部分であります。すなわち、留保
事項の一は、
国家補償の限度であり、その二は再
保険団体設置の問題であり、その三ば、建物等
任意共済一元化の問題であります。これらはこの
改正試案のいわば骨子ともいうべき点でありまするし、また、案自体の技術的
検討に足らざるところもありまするので、われわれ小
委員としましては、
通常国会開会後できるだけ早い機会に、さらに数回の小
委員会を持ちまして、
最終結論に達するよう努めたいと存ずるものであります。従いまして、本日は、小
委員会の中開報告を申し述べるにとどまらざるを得なかつた事情について御報告申し上げ、
委員各位の御了承を得たいのであります。なお、
参議院側に対しましては、適当なる機会を見まして折衝を試み、すみやかに最終目標に到達しまするよう努める所存であります。
以上をもちまして、御報告を終ります。