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1953-12-03 第18回国会 衆議院 通商産業委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月三日(木曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 福田  一君 理事 山手 滿男君    理事 永井勝次郎君 理事 伊藤卯四郎君       小川 平二君    小金 義照君       始関 伊平君    馬場 元治君       笹本 一雄君    長谷川四郎君       加藤 清二君    齋木 重一君       帆足  計君    中崎  敏君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    塩崎  潤君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     福井 正男君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         通商産業事務官         (通商局通商調         査課長)    宮城 恭一君         通商産業事務官         (企業局長)  記内 角一君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      齋藤 正年君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (繊維局長)  吉岡千代三君         通商産業事務官         (繊維局繊政課         長)      杉村正一朗君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  佐久  洋君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      森  誓夫君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      中島 征帆君         特許庁長官   石原 武夫君         中小企業庁長官 岡田 秀男君         工業技術院長  駒形 作次君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  通商産業政策基本方針に関する説明聴取  貿易に関する件  繊維に関する件     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず貿易に関する件及び繊維に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますから順次これを許します。加藤清二君。
  3. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は近ごろの繊維状況をどう打開するかということについて新しい繊維局長さんにお尋ねしたいと存じます。  前の徳永繊維局長さんもずいぶん御苦労して勉強をしておられたようでございますけれども、このたび新しく迎えました繊維局長さんは、昔からその道の権威でいらつしやる方でございますから、私どもは心からたいへん喜んで歓迎しているわけでございます。何とぞ輸出不振、倒産商社続出のこの繊維業界を、新しい腕のある繊維局長さんによつて何とか打開の方策を講じていただき1ますならば、私のみならず繊維業に携わる者のほんとうに心から喜びとするところではないかと存ずるわけでございます。従いましてまず第一番に、この不振な繊維業界をどう打開したならばいいのか。将来、かつて繊維と同じように輸出の花形にするにはどのような手だてを講じたならよいのか、新しい繊維局長さんの信念と見通しを簡単に承りたいと存じます。
  4. 吉岡千代三

    吉岡説明員 ただいま加藤先生から過分なお言葉をいただいたのでございますが、私も長い間繊維局を離れておりましたし、ことにただいまお話しのように非常にむずかしい案件の山積しておる折から、はたしてこの重責にたえうるやいなやということを非常におそれておる次第でございます。なお発令になりまして実はまだ十日そこそこしかなりませんので、一応問題点を聞いたという程度でございまして、数字等十分頭に入つておりませんし、はなはだ不十分なことしか申し上げられないかと存じます。ただいまお話の問題は非常に大きな問題でございまして、ここで、来たばかりの私がすぐそういう名案を持てる性質のものでもないと思いますが、私の感じを申し上げますと、ただいま全般的に非常に不況というお話があつたわけでありますが全体として見ますると、たとえて申しますと、紡績関係であるとか、また全体の原料事情等も、現状におきましては、現在の日本外貨事情、国全体の力等から申しまして、人によつてはいわゆる消費景気といいますか、ある程度十分な原料も現在持つておるわけでありますが、ただ今後の問題といたしましては、御承知のような外貨事情で、将来についてはこれは十分考えなければならぬと思いますが、全体として非常に不況にあるということが言えるかどうかについては、私はただいまのところそういう認識を持つておらないわけであります。ただ御承知のように、以前からある問題でございますが、機屋さんの関係でありますとか、あるいは卸商社関係におきましては、いろいろな関係からなかなか困難な問題が多いかと存じますが、生産者を含めまして、全体が不況にあるというふうには私は考えておらないということを申し上げておきます。それから御承知のように、昨年一時ポンド過剰というような関係もございまして、羊毛等におきましても、輸入外貨手当をいたしまして、相当原料が現在現物として入りつつあるわけであります。それから綿花等につきましても、一時非常に値上りをいたしました関係で、いろいろ御配慮いただきまして、相当外貨資金手当をいたし、ここ当分の間は、生産量としては相当のものが維持できるという関係にあるかと思います。なおまた輸出振興につきましては、本年の初め以来、綿につきましては三月以降、また毛につきましては七月以降、化繊につきましては十月以降、それぞれリンク制措置を講じまして、その後の状況を見ますると、全体として、輸出に対する報償制度等の採用によりまして、非常にと申しますか、きわめて堅実な形において輸出は伸びつつあるわけでございます。たとえて申しますと、毛について申しますと、大体御承知のように、羊毛製品輸出というようなことは、従来きわめて微々たる金額であつたわけでございますが、最近におきましては、大体月三百万ドル・ペースで輸出が行われております。これは毛と申しましても、大体スフとの混紡製品が多いわけでございまして、それで大体現在羊毛の全体としての消費のベースは、まず年間一億五千万ドルないし一億七千万ドルとい程度ではなかろうかと思いますが、これを逐次――最近におきましては非常に輸出が伸びて参りましたので、今年度は年間として約三千万ドル程度輸出の目標にしております。それから来年度は四千万ドル、再来年度は五千万ドル、従つて毛についてはまつたく食いつぶし一方というような、従来一般の常識であつたかと思いますが、少くともこの原料代の三分の一程度はある程度的確に輸出を推進し得るというような見通しと決意を持つているような次第であります。なおまた化繊につきましては、これは特に人絹は現在生産高の約半額を輸出しておりますが、これはどうも値段の関係イタリア製品等相当圧迫されつつあるような現状でございます。従つてこれにつきましては、輸出用に関して、低廉にしてかつ良質な輸入パルプリンク制にして結びつけるという措置によりまして、今後相当伸張期待できるのではなかろうか、こう考えておる次第であります。なおまた綿につきましては、これはどうも現状は大体輸出が三割程度でございまして、はなはだ不十分でございますが、いろいろ世界的な綿製品輸出の総量は今後あまり増加が期待できないというようなことが常識的に、言われておるわけでございますが、しかしこの点はやはり後進国消費水準も逐次向上して行くしさいうような関係もあると思います。なかなか将来の、もうこれ以上上伸びないというような予測をこの際立てるということもいかがかと思いますので、これにつきましては、現在の綿につきましては、コストの点でも決して国際的に劣らないわけでございますので、その力を弱めるというようなことのないように、またリンク制度のさらに一層の改善等によりまして、一層の推進をはかつて参りたい。きわめて不十分でございますが、大体そういうことを一応考えておることを申し上げます。
  5. 加藤清二

    加藤(清)委員 御説ごもつともでございまして、私も繊維業界一般不況であるとは考えておりません。御承知通り紡績業界はもうかつたもうかつた連続でございまして、特に下期におけるところの利益率、ことに輸出不振といわれております毛の場合は、上期の二倍半強もうかつているという実態でございます。株価の配当も二割五分以上の配当を軒並にやろうとしている現状でございますのに、この業界が悪いということは決して申し上げません。しかしその同じ糸へんに携わつておりながら、紡績がそのようにもうかつた連続をしておる折柄、この中小企業倒産続出という内訳をながめてみますると、これはなるほど関西中京地区では九割以上が糸へんでございます。ことに商社のぶつ倒れている数が月に四十五、六商社から五十商社ございまするが、そのほとんどが糸へんであるということは、新しい局長さんもよく御存じのはずでございます。私が心配いたしておりまするのは、この点でございます。同じ糸へんに従事しながらも、一部分の方、大企業の方だけがたいへんもうかつておりながら、その下請の仕事をしている方々が、今日の状況では、自分にその材料を買つてこれを加工することもできない状態、つまり工賃かせぎの立場に追いやられてしまつて、これを商う商社はまたぞろ倒産続出という状況にかんがみまして、この際これらを救うということが新しい繊維局長さんの背負わされた重大な責務であり、新しい繊維局長さんのこれに対して打つ手が試金石になるではないか、かように思うわけでございます。ことに未経験者ならば別でございまするが、さきの近藤繊維局長にも増して経験を持つていらつしやる方を迎えましたことでございますから、まさに倒産一歩手前の業界は、あなたのいらつしやつたこにとを心から歓迎しているわけです。歓迎しているゆえんは、しろうとではない、くろうとだから、何とかこの際手が打つてもらえるだろうという、心からなろ期待があればこそでございます。これに対して一体どういうお考えでございまするか。あとで数項目にわけて、私もその具体的な方法について御指導をいただきたいと思うものでございます。  次に輸出振興の問題でございます。なるほど仰せ通り輸出報償用リンク制度が、先般の国会で論議されまして、徳永さんもいやいやながらもこれに賛成していただきました結果、ただいま仰せ通り大分輸出伸張いたしました。まことにけつこうなことでございます。特に毛織物においてその実績が顕著であることは業界もまたひとしく喜んでおるところでございます。しかしながらこれを戦前に比較いたしてみますると、輸出総体の大体五〇%から、少くとも六〇%以上、終戦直後でもなお五〇%の余を糸へんで占めておりましたものが、去年度の実績は三六%に下つておる。毎年々々下る一方なんです。これを、外国が自給自足をするようになつたからである、だからもう日本産業機構重工業にかわつた方がいいじやないかというふうな議論を立てるつ向きもありつまするけれども糸へんというものはそういうものじやない。事実買つてくれないだろらと思つておりましたインドだつて織物なら買います。つい最近入りましたパキスタンの契約のごときは、これは如実にあちらの国もずいぶんと日本のものを買つてくれるという証拠を見せつけたものです。ところが、これがやれ組合でやらなければいけない、やれ江商日綿だけでけつこうだというようなことで、てんやわんやの大騒ぎをやつているようでございますが、幸いにして通商局の方でいい手を打たれて、治まつたようでございまするけれども輸出の面におきましてはまだまだ改善を要すべき点が多々横たわつているようでございます。これを毛に例をおとりになりましたから、私も毛に例をとつてみたいと思いまするが、イギリスのごときは、濠州で買いつけるところの羊毛日本と比較いたしましてそれほど多いとは思いません。日本の食いつぶす六十万俵から七十万俵のものと大体同じ程度のもの、やや上まわつているよう、でございますが、大体同じ程度のものをランカシアでもつぶしているようでございます。さてイギリス輸出実績はとながめてみますると、六年の実績でも三億四千万ドル以上上まわつているようでございます。月に三百万ドルくらいのことではとうていイギリスの十分の一にも追いつきません。六十万俵も七十万俵も買いつけて、輸出がこれほど少いということは、世界糸へん業界の七ふしぎの一つに数えられているということをあなたはよく御存じのことと存じます。そこで、これは方法いかんによつてはまだまだ輸出伸張できて、やがてドル、ポンドをかせいで、為替の帳じりの相違を少しでも縮めて行くという功績が十分に認められるときが来る、ではないか、かように考えておるものでございまするが、まずその先の一点と、あと貿易伸張に関する点をもう度お答え願いたいと存じます。
  6. 吉岡千代三

    吉岡説明員 先ほども申しましたように、きわめてむずかしい問題を、あまり確信のない形において申し上げることもいかがと思いますが、現状をどういうふうに認識しておるかという私の気持を申し上げまして、もし間違つておる点がございましだら、さらに御指示を受けつたいと思います。  先ほどお話のように、特に商社並びに機屋さん等の関係、あるいは零細な中小企業に属する繊維関億の生産者に、何と申しましようか、不況の兆候が相当見えておるということは仰せ通りでございます。これは商社関係につきましては、やはり繊維製品価格が非常に浮動したということが大きな原因じやなかろうかとつ思います。これはもちろん基本的には日本経済の底が浅いということによるものと思うのでありますが、この点につきましては、原料手当関係、また私どもの手の及ぶ限りの、手段を尽しまして、やはり繊維原料並びに製品価格の安定をまずはかつて行き、その後においてこれらの業界相互間ができ得ればなるべく均等にその利益を受けるという方向こ持つて参りたいと思います。それから機屋さんでありますとか、あるいは零細な中小企業に属する生産者関係におきましては、これは御承知のように、やはり設備が非常に過剰である、もちろん全体の生産量が非常にふえた場合は別でありますけれども一般的にながめれば、設備が過剰であるということが大きな原因であろうと思います。従いまして、これをどういうふうに解決して行くかということは、これまた非常にむずかしい問題であるかと思いますつが、問題のポイントは主としてそこに大きくあり、さらに先ほど申しましたような原料価格の浮動ということがそれに拍車をかけているのではなかろうか、こういうふうに考えまして、そういう気持のもとにこの問題を考えて参りたいと思つております。  次に、輸出振興でございますが、これはもちろん繊維局だけの手では参りませんので、たとえばスターリング地域に対する非常な買い越しの問題がございます。これは御承知のように、現在日英会談通商局長、前玉置次官等も参つて交渉していただいているのでございまして、その成果につきましては多大の期待をかけている次第でございます。なおまたこのスターリング地域につきましても、御承知のように、英本国との関係は必ずしも買い越しということになつておらぬようでございまして、特に濠州その他の地域によつて非常な買越しになつており、濠州につきましても、通商局において通商協定中入れを現にされているそうでございます。またカナダにつきましては、近く通商協定についていろいろなお話も伺つております。なおまたパキスタンにつきましては、先ほど指摘のように、極端に申しますと、先方が日パ協定を忠実に履行せず、本年の初めから日本からの輸出に対するライセンスをとめておりましたので、この関係相当の買い越しになつてつた関係がございます。これも先ほど指摘のような問題がございますが、とにかくライセンスは一応おろしてくれた、従つてそういう関係において相当改善を見るであろう、こういうふうに、繊維関係自体解決して参ります問題と、今申しましたような通商協定の今後の促進ということにも、通商局その他関係部局の協力を得まして、そういう方向に持つて参りたいと考えております。ただこの際私として注意したいと思います点は、輸出をドライヴいたしますために国内消費を制限するというような、結果的には多少そういう傾向は免れないと思いますが、これを急激にやりますと、物価に対するはね返り、その他かえつて逆インフレ促進というような点も懸念されますので、この点はそういう点とにらみ合せて慎重を期して参りたい、かように考えている次第であります。
  7. 加藤清二

    加藤(清)委員 もう一点、同じ仕事に携わりながら、紡績だけもうかつて、他の仕事に携わつている者がぶつ倒れて行くという原因を、原料変動ということで仰せられました。それからまた設備過剰であるという点がその原因の大なろものとおつしやいましたが、その点は私もその通りだと思います。しかし変動ということでありましたが、これは紡績業者のつくりました糸を買つてこれを加工しなければならない側に言わせますと、この変動原料高製品安ということでございます。それから売る側の方に言わせますと、自分都合のいいときに値を下げて、都合の悪いときに値を上げる、こういうことでございます。この事実が綿の十大紡糸の六大紡に行われ、これをまねて新紡、新々紡までが同じ径路をたどつて、このたどり方が結局より糸屋機場整理屋も、これを商う商社も、みんないためつけているようでございます。この点につきましては今までも再三私申し上げたことでございますけれども、このままの状態で放置しておくならば一体どういうことになるかといえば、よりかけ屋以降は全部紡績の系列に入らざるを得ないことになります。つまりカルテルどころの臓ぎじやございません、コンツェルンからシンジケートに至る状況になつておるのでございます。なぜならば、よりかけ屋以降はもう自分に糸を買うだけの資力を持ちません。全部紡績出機と同じ状況に相なつておるのでございます。この場合設備が過剰であると仰せられましたけれども設備過剰は紡績の場合が多いのでございます。いやそうじやない、機場が多いだろう、こうおつしやるでございましようが、機場の数も戦前に比較いたしますと、復元されたものはわずかでございまして、実際は紡績自家用機というものがどんどんふえておるのでございます。どこがふやしたかといえば、結局紡績が錘をふやし機をふやした、だから過剰だ、こういうことになつて、それのおこぼれをちようだいした新紡、新々紡が少しふやして行つたというだけのことで、末端のよりかけ屋とか機場とか仕上げ工場というものは、別にそう増設されたわけでもなければ、ふえたわけでもございません。なぜそうなつたかといえば、結局これは紡績がもうかつたから、そのもうかつた分を増設の分に向けた、こういうことでございます。大臣が来られましたから、ここで打切つておきます。
  8. 大西禎夫

    大西委員長 通産大臣が出席されましたので、この際一応大臣説明を聴取いたしたいと存じますから、さよう御了承願います。  通商産業政策基本方針に関し、通商産業大臣より説明を聴取いたします。通商産業大臣岡野清豪君。
  9. 岡野清豪

    岡野国務大臣 最近の通商産業省の施策について御説明申し上げます。  最近におけるわが国経済の動向において、その注目すべき傾向としては、正常貿易において金額的、地域的に著して輸出入のアンバランスがあることと、輸出が増大しないにもかかわらず、鉱工業生産は活況を呈し、国内需要また旺盛で、高物価を維持しているということであります。すなわち輸出貿易は、不振であつた昨年下期より幾分回復いたしましたが、三月以降毎月一億ドル程度で横、ばいを続けております。また輸入は本年当初以来昨年の月平均を上まわり、四月以降は毎月二億ドル前後の額に達し、正常貿易においては九月までで八億四千万ドルの輸入超過を示しておつたのであります。これは戦後最高数字でありまして、その結果特需その他の貿易外収支を含めても為替収支は一億一千万ドルの赤字に転じております。地域的に見ますと、スターリング地域向け輸出が相牛国輸入制限が漸次緩和されているにもかかわらず、きわめて不振で、昨年上期と比較してその半ばにも達せず、輸入は逆に昨年上期の西側も増大し、著しい輸入超過となつており、昨年大部分が貸越しであつたオープン・アカウント地域においても、大部分逆調となつております。  次に国内生産状況を見ますと、鉱工業生産指数輸出の伸び悩みにもかかわらず、上昇の一途をたどり、十月には一七四・三と、これは通産省指数でございますが、――戦後最高指数を示しました。しかも物価卸売物価指数消費者物価指数ともにほとんど横ばいまたは若干の上昇を示し、朝鮮動乱勃発後五割上昇し、さらに六割に達する高物価を維持しており、欧米各国物価朝鮮休戦安定期に入り、勃発前を基準とする指数によりますれば、最近は英、独、仏が一三〇、米国が一一〇に下り、各国とも今後なお下落の傾向にあるのに対比いたしますれば、わが国経済世界経済から遊離しておるのでありまして、米国を初めとし世界的にデフレの傾向にある今日、わが国のみひとりインフレ的様相を続けていることは、特に注目しなければならないのであります。この原因の主要なものは、動乱景気以来の国内の活溌な消費需要によるもので、輸出国内消費に食われている形で、この傾向は今後も当分続くものと思われ、これらの点に日本経済の当面する問題点があるのでございます。これに対し通産省は、その施策の重点を、第一に輸出振興により国際収支の均衡をはかり、第二にこれがため産業合理化近代化の徹底を期するとともに、工業技術振興することにより、生産費の切下げ、品質の向上をはかり、第三に国内資源の開発、新規産業育成による自給度向上を推進し、第四にはわが国産業中重要な地位を占める中小企業助長育成をはかることに置いておる次第であります。  まず第一の輸出振興につきましては、従来ややもすると、特需という貿易外収入により、国際収支がバランスしていたため、努力の足りない点がありましたが、特需はあくまで一時的なものであり、かつ漸減する性質のものでありますので、わが国経済の自立を達成するためには、強力に輸出振興をはかる必要があります。そのため目下新たに輸出振興対策を検討中であり、賠償問題の解決通商航海条約締結促進等国外的要因の打破、是正について経済外交を推進するとともに、輸出品価格引下げ国際競争強化が要請されております。  経済外交については十一月にガット仮加入に成功し、投票権を得たほか、十四箇国との間にガツト関税の適用をすることとなり、東南アジア地域との賠償問題も進展し、当該地域との貿易に曙光を与えております。このほか各国通商協定も次第に締結の数を増しておりますが、問題の日英支払い協定については、十一月末代表をロンドンに派遣し、この解決に努力いたしております。これと並行して市場の維持開拓を推進し、商品の国際的信用を高めるため、貿易商社強化万策をとるほか、輸出検査強化し、また本年度予算によつて承認されました貿易斡旋所、軍機械相談室も近く発足することになつており、来年度予算においてもこれらのほか旅商隊の派遣、広告宣伝の拡充等を要求し、その成果を期待しております。  その他国内態勢に一ついてはさきに十六国会において改正されました諸法令を実施いたしますほか、輸出組合についてはその数も増加しており、その機能も逐次強化されつつあるのであります。  貿易収支の均衡のとれない今日の状況下にあつては、輸出振興とともに、外貨の節約が強く要請されるわけで、今年下期の外貨予算においては民生必需物資、輸出原材料等の重要基礎物資の輸入は、極力これを確保するが、不要不急物資については極力輸入を抑制することにし、輸入品目を大幅に整理いたしました。  輸出振興するためにわが国産業に要請されることは、産業合理化近代化の徹底並びに工業技術振興であり、当省としてもこれがため諸種の施策をとつて来ましたが、これをさらに強く推推したいと考えております。  御承知のようにわが国企業は、戦後資本の蓄積を喪失し、老朽機械をかかえて、はなはだ非能率的な生産を行つており、企業内容がはなはだ不健全であるため、とかく政府、金融機関への依存度が増し、企業自体の自立態勢を弱めている実情にあります。従つて企業内容を健全化し、その自主態勢を強化するとともに、産業内部並びに産業間の均衡ある発達を促進することが当面の急務と考えられます。これがための施策として、産業近代化促進については、開発銀行その他の財政資金を投入し、また外資の優先的導入を行う等の措置をとつており、すでに鉄鋼合理化第一次計画も本年で完成することになつております。わが国の機械設備は著しく老朽化しており、これが国際的に見て性能上、能率上署しく遅れていることが、生産費割高の要因となつているので、早急に新式設備との更新をはかるべく、その方策を鋭意研究中であります。  次に税制等の問題については、すでに資本蓄積を促進するため、諸般の措置がとられて来ましたが、先日発表された税制調査会の答申にも、なお一層この方針を強化する趣旨がうたわれており、通産省としてはあらかじめ輸出振興、資本蓄積、合理化の推進、中小企業育成等の見地から、租税負担の軽減についての意見を提出していたところ、法人税の軽減、輸出所得控除の引上げ、青色申告制度における専従者控除の拡大等の通産省の意見が答申にも取入れられており、今後もこれらの点並びに未解決の点について、その実現に努力したいと思います。合理化近代化に関連する問題として、最近再び企業の新規投資がきわめて活溌に行われており、このままの傾向で進むと、一部業種では設備過剰になるのではないかと懸念されておりますが、通産省としては主要業種について種々の角度からその実態について検討を進めております。ただ設備過剰かどうかの認定にはその設備能力、適正稼働率の決定、将来の国内、海外の需要量の見通し等困難な諸問題があるので、容易に決定できません。特に国際競争強化のための設備近代化は、今後とも大いに促進しなければならないところでありますが、この近代化設備能力の増加とをいかに調整するかは、慎重に考えなければなりません。もつとも綿紡、毛紡には一部設備過剰の傾向が明らかであろので、行政指導により抑制をはかつておりますが、他の業種にあつて設備過剰と認められる場合は、さしあたり財政投資は行わず、その輸入機械に対する外貨割当を停止する等、行政措置として許される範囲内で抑制して行く方針であります。  なお企業合理化促進法に基く企業合理化審議会は、相当の成果を上げて来ましたが、十一月一日その機構を改組し、今後はさらに産業構造、産業間の組織についても検討を加えることになつております。  次に工業技術振興については、戦時、戦後の空白期間における技術の国際的後進性を回復することが急務であり、当省の各試験研究機関においても鋭意努力しており、民間施設に対しては外国技術の導入、合理化に必要な機械設備輸入に対する外貨貸付、企業の研究費に対する税法上の優遇措置を講じておりますが、研究助成金としては、昭和二十五年以来鉱工業技術研究補助金、工業化試験補助金を交付し、あるいは開銀に対し新技術の工業化の融資あつせんを行い、優秀な試験研究の促進をはかり、技術水準の向上に努めているほか、鉱工業品の標準化についても着々その数を増し、国際水準に近づきつつあるのであります。  以上申し述べたような輸出振興産業合理化の諸対策も、財政、金融等、国全体の施策を離れては有効的確な効果を期し得ません。特に朝鮮動乱後の慢性的インフレ状況が、わが国物価の国際的割高をもたらし、これが輸出不振の最大原因の一つとなつていることから見ても、インフレ抑制対策が産業経済政策の重要な支柱とならねばならないのは当然であります。これがため当省としても、たとえば九月以来の繊維関係の異常な値上りを抑制するため、下期外貨予算にも綿花の輸入量を相当大幅に計上する等の処置を講じ、相当の効果を収めたつもりであります。  次に国内資源の開発及び新規産業の開発による自給度向上でありますが、電源の開発はつとに重要政策の一つとして取上けられ、昭和三十二年度までに、今後五百十二万キロワットの出力増加をはかることになつており、着々工事が進行しまして、すでに完成したものについては電力需給の緩和に貢献しております。この計画は三十二年度までの各産業の需用の伸び方を推定し、その需用に見合うよう計画されている関係上、需給は各年出水を平水として、本年度以降順次緩和され、三十二年度においてようやく、過不足なしということになつており、電力不足は漸次好転いたしますが、各年若干の不足は免れない状況であります。今年はすでに水力不足から制限を始めましたが、下期の需給計画では新規発電所の活用等、極力供給力の増加をはかつても、なお全国平均で約六・五%の不足を来すものと思われます。特に一部の地区においては相当程度の電力制限が必要で、これについては地域間の電力融通の円滑化をはかり、極力電用の充足に努めますが、やむを得ない場合は、法的規正を行うのやむなき場合もあると予想されるのであります。  次に高炭価がわが国産業のコスト高の大きな原因となつているので、炭鉱の若返りをはかり、炭価を引下げるため、本年以降五箇年計画をもつて縦坑七十九本を開鑿し、これにより対象炭鉱について生産費を三五%引下げるべく、できるかぎり財政的にも援助を与えたいと考えているのであります。  石油資源の開発については、その輸入量が尨大に上り、さらに将来その需要増加を見込まれるので、五年後に年産百万トンの採油(昭和二十八年度生産見込み三十四万トン、このままでは五年後に二十万トンになる見込み)を目標として採鉱を促進する案を検討しております。  新規産業育成としては、合成繊維工業育成対策を立て、本年を初年度とする五箇年計画により最終年、三十二年において生産約一億ポンド、それに伴う綿花、羊毛等繊維原料輸入節約額一億三千万ドを目標としております。これに要する設備拡充資金の確保のほか、官庁需要等における率先使用、一般需要の積極的喚起について今後も努力する方針であります。その他、チタン、マグネシウム、硅素樹脂等についても、これが育成について努力しております。   なお昨年から生産が再開された航空機工業、武器工業について一言いたしますと、いずれも特定機械の破壊、企業再建整備法による分割等により壊滅的打撃を受けましたが、航空機工業は最高度の技術を要求される総合工業であり、一国の技術水準向上に役立つとともに、航空機の車要性は戦後ますます高まつておりますので、これの育成を強く推進する方針であり、すでに各社は生産態勢を整え、技術提携、試作機製作も進んでいるので、来年度からは官民協同してジェット・エンジンの早急な国産化をはかりたいと考えております。武器工業については、昨年四月以降駐留軍の発注を契機に生産は急に活況を呈し、安値受注等の弊害も生じましたが、第十六国会において成立した武器等製造法により、企業の濫立を防止して需給に適当な調整を加え、その健全な発達をはかる考えであります。  最後に中小企業関係でありますが、申し上げるまでもなく、中小企業輸出産業として、主要産業の関連部門として、また生活必需品供給部門としてきわめて重要なものであり、わが国産業中重要かつ特殊な地位を占めるので、中小企業助長育成については従来にも増して強力に施策を推進して行きたいと存じます。ただ中小企業はその規模、業種において複雑多岐にわたる関係上、金融対策、安定対策、組織化対策、合理化対策等各種の施策をそれぞれの規模、業種の実態に即して推進する必要があります。特に金融対策としては、懸案中の中小企業金融公庫が九月から業務を開始し、発足当初百六十九であつた代理店の数も現在三百八十余を数えるに至るなど、急速な融資体制の整備を見、従来とかく不足がちであつた設備資金、長期運転資金の融資面で順調な業績を収めつつありますが、さらに今後運用面で遺憾のないようその使命の達成を助けたいと存じます。なお、公庫の資金源については、今般開発銀行からの買取り債権約四十億円のうち、約十九億の支払い期日を来年四月以降に繰延べる等の措置を講じて、これが充実に努め、年末金融の緩和に資することにいたした次第であります。また最近の金融動向にかんがみ、年末の資金繰りは相当苦しくなるものも出ると思われますので、ただいま申し上げた通り中小企業金融公庫に対し資金源の充実をはかるほか、商工組合中央金庫、相互銀行、信用金庫等に対し総額五十五億に上る政府の指定預金を新規に預託する等の措置を講じて金融の円滑化に努めるとともに、下請企業に対する大企業の支払いを促進する等、極力実効ある施策を実施することにしております。  次に、先般台風十三号による中小企業の被害に対する復旧対策につきましては、すでに、一、中小企業金融公庫による災害復旧特別融資、二、商工中金によろ災害復旧特別融資、三、国民金融公庫による災害復旧特別融資、四、政府指定預金の引揚げ延期及び新規預託等の金融措置を講ずるとともに、災害地に対する中小企業信用保険の特例措置及び被害小企業者への融資に対する利子補給措置に関する法律のすみやかな適用をはかるため、適用地域の政令指定その他の準備を進めております。なお、来年度においては、中小企業金融公庫に対する政府出資、中小企業設備近代化促進、協同組合中央会の設立等に要する経費、並びに既往の協同組合共同施設、府県及び中小企業相談所に対する国庫補助の大幅増額等につき折衝中であります。
  10. 大西禎夫

    大西委員長 以上をもつて政府の説明は終了いたしました。  この際議事進行に関し永井委員より発言を求められておりますので、これを許します。永井勝次郎君。
  11. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣がたまさかの出席でありますが、このたまさかの出席に対して耳ざわりになるかもしれませんが、ひとつしつかりと委員会の意向を聞いて特段の勉強をしていただきたいと思います。大臣の本委員会に対する出席は非常に悪い。要求してもなかなか出て来ない。議会が開かれましても、議会に出席して主管業務についての施策を積極的に述べようとはしない。前国会においても一回も出なかつた。一回も出なかつたというのではなしに、施政方針について少くとも主管業務についての委員会に対する説明とか、報告とか、そういうことは一回も行われなかつた。今回においても、これを本日大臣行つたのでありますが、これは委員会が特に強く要求して初めてここへ出て来た。国会が開かれても、委員会に積極的に出て、通産大臣としての主管について委員会に説明をしたいといつて、積極的に大臣から委員会に申し出、あるいはそういうような動きをしたことは一回もないのであります。しかも委員会に出て来ていろいろ質疑応答いたすにいたしましても、非常にチャランポランで、いいかげんな答弁だけしておる。そうして新聞発表では、委員会で全然言われないような重要な事柄をどんどん発表しておる。委員会を何と心得ておるのか。われわれは通産大臣に対し非常に心外に考えておるのでありますが、大臣のこの点についての答弁を求めるとともに、委員会をどういうふうに考えておるのか。少くも八月十日の国会が終つてから後における風水害、冷害等における中小企業その他一般大臣の主管業務については、大きな緊急な条件が整つておるはでずある。それに対する対処の態度というものは、少くとも前国会においては積極的に委員会に出て述べなければならないはずだと考えますが、そういうことは全然ない。今回においてもそういうことを積極的にしようとはしない。しかも年末で中小企業倒産一歩手前にあるというような騒然とした状況である。しかも国際的の情勢においても、国内的の情勢においても、日本経済自立の上においてその中核をになつて立つ通産行政がほんとうに立ち上るためには、積極的に各般の問題について大臣はこの委員会において述べなければならないし、また委員会の意見を聞かなければならない。そういうことを全然しようとしない態度というものは、われわれは心外にたえないのであります。どういう考えであなたはこの委員会に対する態度をとつておられるか。われわれはもちろん予算委員会があり、参議院の会議がある、そういうことはわかつておりますが、大臣がいろいろな党の会合や何か、自分のからだを都合して積極的に出ようとするならば、それだけの時間は十分あるはずであります。この点について大臣の答弁を求め、今後の出席を要請するとともに、委員会においてはもつとまじめに積極的に、いろいろ重要なる問題の要点に触れて答弁する態度を望むのでありますが、これに対する答弁をお願いしたい。  それから委員長に対しては、どうもこの委員会はこちら側の委員ばかり顔をそろえて、向い側は、小平委員の出席は熱心でありますが、ほかの連中はほとんどここへ出て来ない。非常に自由党側の出席が少くて不熱心であるということは、私は委員会の権威のためにはなはだ遺憾である。また委員長委員会運営の上において遺憾であると考えるので、この点今後向う側に対し、委員長から出席を要請するとともに、委員長の今後における考え方を伺いたい。
  12. 岡野清豪

    岡野国務大臣 不熱心であり、またふまじめで、チヤランポランな答弁をするということでありますが、私は至らない点はあるかもしれませんが、ふまじめに考えておるとか、ふまじめな答弁をしておるということは自分で自覚しておりませんが、もし今後答弁の最中においてそれはふまじめだという点がございましたら、そのときにひとつ私をしかつていただきまして、反省を促していただきたいと思います。それから委員会によう出ておらぬではないかということでありますが、しかし御承知通りに、できるだけの努力はして出ておる次第でありまして、私は故意に委員会を避けたという覚えはございません。それから私は通産行政にタツチしましてから、今日の経済自立に対しては、非常な苦労をいたしておりまして、もし私の行動を朝から晩までついてまわつてくだされば、いかに私が通産行政のために、他の時間がないかということがおわかりになると思います。就任直後におきましても、十分きざみでいろいろなお説を伺つたり、また陳情を受けたり、また局内のいろいろの報告を受けたり、研究したりしております。ただいまは陳情あたりは一分でもいいからというので、一分きざみの陳情でやつております。また昼食なんかも、普通に食つたことはございません。必ず昼飯を食べながらお会いしていい人にその時間を割当てまして、そしてうどんを食べながら相対して相談するというようなことをする。これは一に通産行政に対して私がいかに熱心に、勉強しておるか、この点にお誉ましては、私は通産大臣といたしまして、最も国家の行政に忠実に勉強しておる一員であるということを自分で自負しておるわけであります。ただそういう忙しい時間でありますので、委員会の御希望通りよう出なかつた点がありますれば、これは一に私が国会というものを、あなたのお言葉から申し上げますれば、国会を軽視しておる、こうおとりになるかもしれませんが、一生懸命に通産行政に努力しておるということだけはお認め願いたいと思うのであります。なお今後できるだけ皆様方の御協力を得るためにお話を伺い、また私の考えておることを申し上げたいと思いますがしかし先ほど私の耳に一番痛かつたふまじめであるというお言葉は御返上申し上げたいと思うのであります。私は落ち度のある、また行届かぬ人間であることは認めまするけれども、ふまじめに皆様方に対しておるということは絶対ありまんから、この点は御了承願いたいと思います。
  13. 大西禎夫

    大西委員長 永井委員にお答え申し上げます。ごらんの通り自由党の方がはなはだ出席の悪いことを遺憾に存じます。今後でき得る限りさようなことのないように私よりあらためて申したいと思います。  質疑の通告がありますから、これを許します。山手滿男君。
  14. 山手滿男

    ○山手委員 大臣から通産行政の全般にわたつて一応のお話を承りましたが、私は今の日本にとつて大臣お話のように経済の自立ということが優先されなければ何にもできない。これは根本問題であるとこう考えておるのでありますが、非常に御苦労されておるそうで、私どもけつこうに思つておりますが、二、三そういう基本的な今の御説明に対して、質問を申し上げておこうと思います。  経済自立のためにいろいろやつておられるのにもかかわらず、輸出入が非常なアンバランスになつてつて、予期せざる非常な入超になつておる。こういうことを続けておつたならば、現在の手持ち外貨なんというものは、一ぺんに吹つ飛んでしまう。こういう情勢でありまして、あなたの通産行政というものは、非常な危機に来ておることは今御説明なつ通りであります。しかしこれを切り抜けますためには、今一分も惜しんで陳情を聞いておるというお話でありましたが、そういうような意味で、再三にわたつて通産行政に対するこまかい陳情をお聞きになるばかりでは解決できないと私は思う。と申しますのは、今お話のあつた石炭とか、石油とか、合成繊維とか、電源開発とかには莫大な経費がいるはずであります。私どもはここ二、三年のうちに、一兆円、あるいはさらにそれ以上のものをつぎ込まなければ、とうていこれを達成することはできないと思つておる。あなたは経済審議庁の長官も兼ねておられて、国の経済政策を万般大所高所より指導し、見て行かれる責任を持つておられます。そういう立場の方がただ単にこまかい通産行政にだけとらわれていると、いよいよ大きなどろ沼の中に入つて参ります。私は経済閣僚の奮起を促したいといつだつたか言つたことがありますが、その点を言つたのでありまして、この際私は閣内における経済閣僚が揮身の勇を振つて、職を賭してインフレを阻止するということでなければならぬと考えております。そういうことについて今度の補正予算につきましても、片一方では郵便料金を上げる、鉄道運賃を上げるということがすぐ輸出にもひつかかつて参り、輸出産業には大きな負担になつて参ります。今政府がのもうとしているところのベース・アップをのむならば、来年四月からは七百億以上の国費の散布超過になつてインフレの大きな要因になることも当然であります。これは今一分のすきもなく、産業自立計画をおやりになろうとする大臣としては、見のがすことのできない重大事態である。こうとう問題に対して大臣はどういうお考えであるか、まずその点からお伺いいたしたいと思います。
  15. 岡野清豪

    岡野国務大臣 あまり陳情ばかり聞いておつてはいかぬではないか、経済審議庁の長官もしているのだから、大所高所から国の経済政策を研究したらいいではないかという仰せであります。これは陳情があまり俗事に入りやすいものでありますから、印象として陳情ということが頭にお残りになつたかと思いますが、私は経済審議庁長官として国策を検討するために、審議庁の役人からほとんど毎日講義と申しますか、話を聞きながら、いろいろな情勢を判断して相当に指示もいたしている次第でありまして、そういうようなことに時間をとられますのと、それからやはり陳情も一般の業態も聞きわける意味におきましてそういう事情に通じなければなりませんから、できるだけお話を伺つておりますが、今世の中に言われているような陳情政治というものに陥つて、陳情ばかり聞いているというふうにおとり下さらないように願いたいと思います。  それからお説の通りただいまはほんとうに日本経済の危機に面している次第でございまして、これを何とか切抜けなければならない。しかもあまり余裕を残さないで、経済自立をやつて行かなければならない。これはお説の通りでありまして、それがために今おしかりをこうむつたことく、委員会に出る時間もないほどに勉強している次第であります。そこで私が考えますのは、事ここに至りましたのは、何もここ半年や一年ばかりのことではございませんので、朝鮮特需というものが出ました以後、自然に醸成せられた過去三年間の集積した日本経済の苦難が今大きく目に見えるようになつて来ている次第でございます。これを克服して行くのには、なかなか一朝一夕には行かぬと思いますけれども、しかし少くとも半年やせめて一年間の間には経済も安定し、同時に自立の計画も見込みが立つということでなくてはならぬと思います。私自身といたしましては、今当面の問題に沒頭すると同時に、ある五箇年なり、三箇年間の先の計画にいろいろ沒頭しまして、この研究並びに施策に終始している次第であります。そこで間頭は、もしこれが独裁者の政治でございましたら私は皆様の御期待に沿うような計画もでき、同時に強行し得ると思いますけれども、しかしそれには非常な弊害があつて、決して独裁の政治というものがいいとは私は申しません。しかしただいまのような情勢におきまして物事を直して行くのにつきましては、相当骨の折れることであります。これをたとえて申しますならば、外科手術でやるならば盲腸でも一週間でなおるかもしれませんけれども、しかしこれを外科手術にせずに、そうして事前に自分自身の力によつてなおして行こうというのには相当の手間がかかる。同時に非常な苦難があるということだけは御承知おき願つて、われわれが一生懸命に経審並びに通産省で勉強しておることを御了察願いたいと存ずる次第であります。
  16. 山手滿男

    ○山手委員 大臣の苦衷はよくわかりますが、しかし私はそれはいかぬと思うのであります。今言いましたように、朝鮮特需なんかでかせいだ少々の外貨があつてほつとしておるところにこういうふうな状態一が来ておるわけであつて、抜本的な手を打つて大臣が非常な決意をもつてやる腹でなければ、私はとうていこの難局は乗り切れない。外科手術云々というふうな言葉がありましたが、そういうふうなことをやるということになると、私はこの大臣は勤まらぬという結論になつて行くように聞えるのであります。  そこで、私はこれが半年や一年で根本的に解決するなどとはもちろん申しておりません。三年なり五年なりでけつこうでありますが、三年なり五年なりで十分現在のようなでたらめな事態を解消をいたして、国民に明るい希望を持たすためには、日本産業に徹底的なメスを加えて、産業を自立させるということを政府の施策を第一順位に持つて来るように、大臣が主動性を発揮されることが第一だと思う。そのためには、とりあえず昭和二十九年度の予算からあなたが出発されることがきわめて重大であります。今お話を聞いただけでもそれだけおやりになつて、実際に実行に移していただけるならば私はそれだけがプラスになるであろうと思いますが、今のお話を聞いておると、どうも私どもには抽象論としてしか受取れないのですが、来年度は幾らの資金をもつて、これだけの決意で三年後にはこれだけにするということをここで具体的に御説明を願いたい。
  17. 岡野清豪

    岡野国務大臣 おそらく山手さんの言われることは計画を立てて、それに財政資金も、市中の金融とかいうものも、またいろいろな施策とかいうものも、きつちりと設計図をつくつて、そうしてこれを強力に推進しろ、こういうような御趣旨に私は考えます。しかし私の考えるところによりますと、ただいまのところではいわゆる国家経営とか、もしくは戦時中に起りましたような、まるで個人の創意くふうも、個人の意思も、個人の欲望も全部抑圧しまして、国がある目的のために、産業界をその方に、設計図の通りに率いて行く、こういうふうにやることがいいか悪いかにつきましては、私はそうすべきものではなくて、やはり八千五百万の国民が――八千五百万のうちには老人もございましようし、子供もございますが、国民全体がみな自分の意思並びに欲望を持つて、そうして創意くふうをしてこの経済をやつて行くというような、大きな原則のもとにそれをいかに指導して、全体の国民がほんとうの幸福な経済生活を送れるようにやつて行く、こういうのですから、非常にむずかしい問題であります。むずかしいからといつて政府がこれをおろそかにするわけではございませんが、これに対して私は、今まで一般に解せられたような、自由党は自由放任主義だとかいうことをよく言われますが、しかしそういう考えは私は持つておりません。やはり之しい国力、すなわち領土が減つて、原材料がない、また国民が労働の機会を失つておるというような、この乏しきをお互いにわけあつて、そしておのおのその働くところを得て、しかもその集合したところの力が日本経済の全体の発展になつて行くというような、大きな構想に立ちもどつて計画しなければならぬ。そこで私は就任以来、ことに経審長官に就任以来、五箇年くらいの間に少くとも日本経済が安定し、同時に自立し、そうして正常貿易によつてわれわれが食つて行ける、こういうふうにやろうと思いましていろいろな企画を立てておる次第でございます。ただいま仰せの来年度の予算につきましても、先般経済審議庁で経済審議会の答申をつくらせまして、それにつきまして三目標四原則というものが確定いたしたわけでございます。これはただ経済審議会の答申でございますが、私は二十九年度以降の予算にはこれを根本原理として行きたい、こう考えまして、小笠原大蔵大臣とも相談し、小笠原大蔵大臣もたいへん賛成しまして、それを基礎にして今後の予算を組んで行こう、こういうふうに話合いがついておるわけでございまして、今後予算の上にそういうような意向が現われて来るものと考えております。ただいま詳しい、財政措置をどうするとか、予算をどうするとかいうことは、ただいまの段階では申し上げるところまで参つておらぬ次第であります。
  18. 山手滿男

    ○山手委員 ただいま大臣の御答弁がありましたが、どうもお前は昔の軍がやつてつたようなことを考えているのではないかというお話でありましたが、とんでもない話であります。しかし私は現在の日本経済、しかも現内閣のとつて参りましたことを一々情勢分析をいたしましても、たとえて言えば、私ども最近のことを考えてみましても、過去五箇年間の吉田内閣の治世が、正確に言えば第四国会、第五国会当時から今日十八国会まで五箇年の間に、政府の予算は約三倍強になつております。一兆億円を越えておる。そうしてインフレはますます高進をして、さつき大臣からお話がありました通り世界各国はデフレの傾向に行つておる。日本だけがインフレの方向に独走をいたしております。こういう事態である。大臣は国民の声を聞いてというようなこともありましようが、奢侈品や何かも相当輸入をさせて、国民の間には奢侈の風潮を一層助長しようとしておる。料理屋なんかばかりが繁昌をいたしております。私は大臣にそんなむちやくちやなことをやれと言つておるのではない。こういう世間の風潮に処して日本経済自立の当の責任者であるところの大臣がどういう方向に向つて突進をしておられるのか、その具体的な現われが今度の予算です。今度の補正予算でも私はさつきお聞きをしたベース・アップだけとつてみましても、来年度からは毎年七百億以上の尨大支出をそれだけのことで出すようになる。運賃を上げてごらんなさい。貨物の輸送なんかで、あるいは旅費なんかですぐ輸出価格にはね返つて参ります。郵便料金を上げてごらんなさい。今日の経済界にどんな影響を与えるか、私は経審長官として、産業経済自立を念願される通産大臣として、こういう事態について閣内において国務大臣としてリーダー・シツプをとつてどういう戦いをしておられるのか、この委員会はむしろ大臣を怒るのではない。鞭撻をする委員会なんだ。こまかい話も陳情を聞くこともけつこうでありましようが、大臣に筋金が入つておらなければ今の日本世界に遊離して、一人インフレに独走するような生産力を拡充し、そして輸出振興物価を安定さすという基盤ができない。それに対してどういうふうにやつて行くのだ、来年度の予算についてはどういう構想で、どういう交渉をしておるのだという、その決意の表明を具体的にこまかくしておやりになれば――私ども政局を安定さすということには賛成です。何も好んで政局を不安定にはしたくない。しかし今大臣の御答弁のようなことでは、そういう内閣を長く続かすのでは、何か国会だけが、多数の頭数をそろえても、経済界はいよいよ不安定になる。だから経済界を安定さすような、産業を安定さすような具体策をお述べなさい、それならば私ども協力しましようということを申し上げておるのであつて、臣はどういう腹なのか、もう一ぺん国務大臣としてお答えを願いたい。
  19. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。過去五箇年間の吉田内閣の施策に対して御指弾がございましたが、これはいろいろ議論もございましよう。インフレを高進させておいてけしからぬではないかという仰せでございますが、しかし吉田内閣はおそらくその点においては逆ではないかと思つております。と申しますことは、御承知通り私いつも言うことでございますが、第一次大戦後に私はドイツにおつたことがあるのであります。そのときに私は、戦争の勝負は対外的の武力戦争と対内的の経済戦争と二つあると感じました。すなわちドイツは、第一次大戦のときには、対外的には完全に武力で負けてしまつて降伏した。同時に、国内施策、戦後の計画を誤つて、あの悪性のインフレーシヨンを高進させて、まつた経済的にも参つてしまつたのです。第一次大戦のドイツは、対外的の勝負にも負け、対内的の経済戦争にも負けたと私は感じて来ておる。ところで日本が一体どういう形に置かれたかと申しますと、私は戦後の日本のありさまを見まして、つくづくあれはドイツの第一次大戦の二の舞をするのではないか。対外戦争で負けたのはいたし方ない。しかしドイツのごとく、対内的にも経済戦争で負けて、国民が元も子もなくした悪性のインフレーシヨンの結果というものは、皆さん御存じないかもしれませんが、私は第一次大戦後のドイツにおいて、いかに国民が苦しんだかということは、身をもつて体験しておる次第であります。こういうことが今度の日本の戦争にあつてはならぬということを非常に痛感しておつた次第であります。それは結局二十三年の春から二十三年中におけるところの情勢をごらんになれば、敗戦後のいろいろの施策の点から――むろんこれはその当時は日本が自立して、すなわち独自の政治をしておつた時代ではございませんが、しかしながらちようどドイツの亜心性のインフレーシヨンに向うと同じような形勢が、日本に現われておつたのです。それを二十四年以来食いとめて悪性のインフレーシヨンにしなかつたということは、ほかにいろいろ失政等のおあげになるようなことがありましても、日本経済というものを累卵の危うきから救つたということは、少くとも吉田内閣の非常な功績だと思つております。その点におきまして、私はただいまのお言葉に言葉を返すようでありますが、またそのインフレが独立後になつて起きんとしつつあるような様相が、朝鮮事変以降現われておりますので、これをどうしても食いとめなければならぬというので非常な努力をしておる次第であります。しかしその点におきまして、私はむろん経済審議庁の長官として、非常な日本の危機を、心配しながら勉強はしておりますが、何を申しましても、ただ一人の力によつてこの大勢をどうするというわけにも参りませんが、私はできるだけの努力をしたく考えております。
  20. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 大臣お話は承りました。もつと簡潔に御答弁を願います。あなたが昼食を食う間もなく懸命に努力しておることはよくわかります。であるからその努力を二十九年度に向つていかに払われ、どういうような施策をあなたはお持ちでございますか、こういう意味でございます。先ほど一応のお話があつたようでございますが、あの程度のものではないでしよう。昼食も食わずにあなたが勉強をして施策を持つというなら、その程度のものではないだろうと思う。従つて自由というものには計画がないのだというようなお考えを述べておられますが、自由というものがどうして計画性を持たないのか。しからば二十九年度の予算というものは何からできて来るのですか。計画的とかあるいは設計図的には行かないというお言葉がありますし、独裁者の政治であれば皆さんの御希望に沿えるかもしれないというようなことを、あなたはおつしやつておるのですか、われわれはそんなことを聞くのではない。過去五箇年間どうであつたか、吉田自由党内閣がいいとか悪いとか言つているのじやないのです。二十九年度の現実の日本をどういうふうに指導して行くのか、この腹をあなたははつきり聞かせてください。それによつてわれわれは努力をしなければならない、こういうことなんです。たとえば自立経済をやる上においては、日本国内資源をどういうふうに活用してそれに持つて行くとか、たとえばここに出ているような貿易じりをどういうふうに解決して行くつもりであるとか、こういうことについて具体的にあなたの抱負を述べてください。それによつてわれわれは大いに努力をする、従つて大臣のそういうようなはつきりしたお気持があるならば、われわれは党派だとかそういうようなことを言うのじやない。この委員会はなすべき使命を全からしめなければならない大きな義務があるから、それを話してください、こういう意味なんです。ですから大臣は、第一次大戦云々だとか、自由党内閣がえらく国民にいいことをやつたと言うが、そんなことを聞くのじやないのです。過去は過去で今まではこうであつたとしても、こういうふうになつて来た現実を、あなたはどういうふうに持つて行く考えかということを、もつと具体的にはつきり示してもらいたい、こういうことなんです。だれがいいとか悪いとかいうことじやない。大臣の抱負をはつきりとお答えください、こういう意味なんです。ですから御答弁をお願いします。
  21. 岡野清豪

    岡野国務大臣 言葉が多過ぎてまたおしかりを受けました。国務大臣としてどういう考えであるかというお言葉でございましたから、私申し上げた次第であります。通産行政につきましては、先ほどるる申し述べたのが私の考えでございます。なお詳しい予算の細目につきましては、政府委員から御説明申し上げると思います。(「それはおかしい」「根本方針を聞いているのじやないか」と呼ぶ者あり)根本方針は最近の通産行政の施策について申し上げた通りでございます。
  22. 山手滿男

    ○山手委員 今日は大臣が出席されておるのですから、私ども大臣を大いに鞭撻したいと思つているので、官房長あたりからはあとからゆつくりお聞きをしたいのですが、こつち側に伝わつておるところでは、各党の間でもいろいろ話も出ておりますが、意見の相違もあります。しかし私はここではつきり申し上げたいことは、私の方の党では経済自立の問題を政党の政策の中心に持つて来る、そのためには、今のような政治をやつてつたのじやいかぬ、今の政治はいわゆる自由ということの名に隠れて国民のごきげんをとつている政治であるという考え方で、まあ従来私どもの方の政党も過誤を犯しておりますが、大転換を行う決意をしております。実は今度の二十九年度の予算についても、私どもの方の方策は先ごろから新聞に出ているので御承知だろうと思いますが、砂をかぶろ決意で相当思い切つた態度に出て参つておるのでありますが、これは要は、全部が通商産業大臣あるいは経済審議庁長官所官の事項について全力をあげるというその目的のために、こういう施策を打出して参つて、砂をかぶろ決意をいたしておる。ところが当の責任者である通産大臣が今のようなお話では、われわれはまことに心細くて、何をか言わんやでありますが、その点について私は大臣に総括的に十二分の警告を発しておきたいと思います。これは予算委員会でも今日一つ二つ言うという話であつたのでありますが、特にこれは通産委員会においてやるべき問題であつて、これは関係大臣ばかりでなく、そこにおられる各局長以下全部大臣を助けて、日本産業の自立のために、もつといろいろな角度から推進してもらわなければならぬという決意を持つております。こういう総括的な問題について各党から質問をしたいというお話があるそうでありますから、今日はこの程度にして、あとから各論的なものを順次御質問申し上げることにいたします。
  23. 大西禎夫

    大西委員長 次に加藤清二君。
  24. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の党も、日本産業が復興して日本経済に寄与する、やがて祖国が復興するということであれば、決して党利党略を言うものではございません。その立場に立ちまして、二点だけ質問をしたいと存じます。  まず私は具体的に二点お尋ねいたしまするから、具体的にお答えを願いたいと存じます。  第一点は、近ごろ大臣の耳にも入つております通り倒産商社続出に対しまする手だてでございまするが、一万田さんは過ぐる日、関西へ行かれまして、名古屋ではつきりと高率適用の強化を強行するということを言つておられます。投売りが始まろうが、逆ざやになろうが、平気でやるということを言つておられます。そうしてきのう大蔵省の意見をただしましたところ、やはり大蔵省も日銀の意見と同じであるという意味のことが答えられました。ところでこれが行われているおかげで、この高率適用のしわ寄せが中小企業にどんどんと寄せられたために、あなたの地元と東海とだけでも、二日に一軒の倒産商社が出ております。十一月中のトータルを見ましても、四十六軒出ております。すると、日に一軒以上出ておる、こういう勘定になる。こうやつてしやべつておるきようも、どこかで倒れておるということです。東京の手形交換所の率を見ますると、日に千二百枚以上も出ている、こういうことになつておる。通産省の方では倒産が続出して、首をつつて先んじやかわいそうだというので、いろいろの手だてをしていらつしやるようでございますけれども、結局はそれは右手で病人に重湯を飲ましたけれども、左手で病人のせんべいぶとんをはぎとつてしまうということで、どんどんと首をつつて死ななければならない、病気になれば死ななければならない人が出ておるわけでございますが、これに対して大蔵省や日銀との間に立つて、どのような具体的措置をとつて、この死んで行かなければならない者を助けようとなさるのか、その点を具体的にお願いいたします。
  25. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。なるほどインフレの高進を防ぐという意味にき奉まして、金融を強化するということは一応理論的には私は是認しておる次第でございます。ただ通産省の所管といたしまして、今お説のごとく中小企業者が非常な苦難にあつて、しわ寄せがその方に寄せられておるのではないか、これも御説の通りやはり私は承認いたします。そこでわれわれといたしましては、中小企業というものは、先ほども申し上げましたように、輸出産業並びに日本の内地の必要物資の供給者としまして、非常に日本経済に重い地位を占めておるところの業者でございます。これがばたばたと倒れて行くということは、経済上におきましても許すべからざることであると同時に、また社会問題としましても相当考慮しなければならない問題でございます。その点におきまして、この前の国会にも申し上げました通りでございますが、かりに一例をあげますれば、指定預金を一般に引揚げるというような方法がありますにかかわらず、中小企業に対しては必要あればこれを延期する、もしくはもつと必要があればこれを新規に増加するというようなことをしまして、そうしてわれわれとしましては中小企業の救済――救済と申しますと語弊がありますが、倒れないように金融措置をしておる次第でございます。これは詳しく政府委員から御説明申し上げる次第でございますが、私がちよつと感じましたことで、この前に申し上げましたことがすでに実現しておるという証拠として申し上げられることは、まず第一に、国民金融公庫が昨年十一月には十五億貸し出し、十二月には四十五憾貸し出して、六十億の貸出しになつておりますが、本年の貸出し予定は十一月には二十億出し、また十二月には四十六億出して七十四億円の貸出しをしようという予定をしておりますから、昨年度に比べますれば十四億の増加になる。また商工中金におきましても、昨年度十一月、十二月、これは十月も入つておりますが、八十億くらいの貸出しになりますが、今年は九十億以上、約百億くらいの貸出しをさせたいと、こう思つてちやんと予定をしております。それからまた皆様方のお力によりましてできました中小企業金融公庫は、これは昨年はなかつたものでございますが、本年はこれが活動をしておりまして、ことにこれはおそらく皆様方の御説から仰せになれば、歯がゆいような活動状況とも見られますけれども、しかしできて一箇所か二箇月くらいにしかならない公庫としましては、全国約三百八十以上の代理店を持ちまして、そうしてこれに投ずる資金は約百億になつておる次第でございます。これは余分でございますけれども、そういうふうなわけでございますから、昨年度に比べましても相当に多額の資金手当をしておりまして、もしこれでも足りなければまだ預金部資金を融通する話合いができておるのでございまして、できるだけそういうことのないように万全の策を講じておる次第でございます。
  26. 加藤清二

    加藤(清)委員 先ほど大臣輸出振興をはかるには商社の資本増大強化が必要であろということを方針に述べられたようでございます。これはまことにけつこうで、私も大賛成でございます。ところがそういう商社がいの一番にばたばたと倒れておる状況であります。ところがただいま大臣さんがおつしやいましたような具体的な問題については、もつと事こまかに、丁重に中小企業庁長官から承つております。ところがそれがどういう状況になつておるかというと、窓口まで行きますとこれが系列化されちやつておる。銀行に縁の薄いものや、あるいは大企業に縁の遠いものはなかなか貸してもらえない。そこで系列からはずれたものがどんどん倒れて行つておるという状況なんです。倒れたものを見ますと。要はすでにコンツエルン化しておるところの系列からはずれたものがほとんど倒れておるという状況なんです。そこでそのおかげで問題を公取委に訴えて処理をしてもらわなければならないとうケースがたくさんできて来ておる。そのことをあなたもよく御存じでございましよう。こういう状況下になつており、なお大蔵、日銀関係は投売りが始まろうが市銀の金利が逆ざやになろうが、徹底的にこれを強化するということを平気で中京で述べておる。この間に立つてあなたは一体どのような措置に出られようとするかということが聞きたいわけなんです。
  27. 岡野清豪

    岡野国務大臣 そういうふうなことがございますので、一般の金融の引締めに対しては何と申しますか異端者のごとき立場をもちまして、大蔵大臣並びに日銀の方にも当りまして、そうして日銀の方では市中銀行に対してある程度の指令を出しまして、中小企業に対しては相当優遇するというようなことも言つておるように私は伺つております。その点は中小企業金融公庫あたりは出発早々でございますので、あるいはその手続に遺憾の点がないとも限りませんが、しかし事情をよく皆様方から伺いまして、それをできるだけ中小企業育成並びに保護という方面に施策を施して行きたいと思いますので、事情はよく事務当局からも調べさせますが、お気づきの点がございましたらこれをお教え願いたい、こう存ずる次第でございます。
  28. 加藤清二

    加藤(清)委員 もうあと一点でございます。あくまで中小企業を指導育成強化する、こういう立場に大臣さんが立つていらつしやるということならば何をか言わんやでございますが、その精神を毎日ぶつ倒れているこの年末に具体的にもつと強化していただきたいものだ、こう思うわけでございます。中小企業金融公庫につきましてもそうでございまするが、なかなか窓口は言うことを聞きません。あなたの銀行へ借りに行つても、なかなか大臣さんの言うようには窓口は言うことを聞いてくれません。  そこで次にお尋ねしたいことは、近ごろ盛んに世に喧伝されておりまする織物消費税のことでございまするが、先般の施設方針演説と申しましようか、それによりますと、大臣輸出振興、資本蓄積の立場に立つて、あくまでこの産業振興をはかる、こういうことでございましたが、今度行われようとしているというのか、準備がされているというのか、織物消費税については、これはおよそ経済振興とは逆行するものであるという意味において、業界からはどちらからもこちらからも、絹、毛、麻を問わず、反対の意見が出ているようでございます。また一般消費者の立場に立つても、かような大衆課税はごめんだという声がみなぎつているようでございまするが、所管の通産大臣としてはこれに対してどのような基本的な考え方を持つていらつしやいますのか。詳細はあとで担当官に承りたいと存じまするので、基本的な考え方をまず承りたいと存じます。
  29. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。織物消費税につきましては、ただいま仰せのように業者としては絶対反対、また業者の品をかりましても一般消費者に負担をかけるというようなことを言われて、これこそ陳情を受けております。ただ問題は今後日本の財政をいかにして行くかという点につきまして、いわゆる税収の点におきましていろいろ考えられる点があるんでございまして、この織物消費税あたりもあるいは問題になることになるかと思いますけれども、私どもといたしましては、とにかく大きな立場から見まして、税収という方面がいかに扱われるかということによつて判断をしたいと思つて、ただいま政府部内におきましてはまだ研究中の域を脱しておりません。
  30. 加藤清二

    加藤(清)委員 研究はよろしゆうございますが、大臣さんの根本的な考え方としてこれをやるというお考え方ですか、やらないというお考え方ですか。やるとかやらないとか、それだけでけつこうです。
  31. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私の考えといたしましては、大衆課税になるようなものはいけない。しかしながら少くともぜいたくに類するようなものは、あるいはやむを得ぬかとも考えております。これが私の心境でございます。しかし要は国税の収入、すなわち財政に対していかに税源をとるかということにまず第一の問題があることになりますから、その点においてなおいろいろ大蔵大臣にも意見を聞いてみなければならぬ、こう考えております。
  32. 山手滿男

    ○山手委員 ちよつと私用事がありますので、各論的なものはこの次にやる予定にしておりますが、これだけはぜひ今日聞いてみたいと思つてつたことでありますから、失礼ですけれどもちよつと時間を借りてお尋ねをしておきます。  問題はちよつととつぴようしもない横道でありますが、イランの内閣総理大臣のザヘデイ氏より、日本商社を通じて吉田内閣総理大臣に対するメツセージが来ているそうです。そのメツセージの内容は、農業、地下資源、工業、金融等のイランにおける開発投資に対して日本側の協力を依頼し、その保証に関してはイラン政府が責任を負うてこれを行う。特に希望するものは塩とか、鉄鋼とか、銅とか、ジュート、コバルト、アルミニウム、クロマイト、硫黄、漁具、農機具の輸入、ダムの建設、茶の栽培、こういうものを特に希望いたしておりまして、これがために専門家をもつてする調査団を至急イランに送られたいという、イラン内閣総理大臣から吉田総理大臣に対するメツセージが来ているそうでありますが、これは日本産業にとつても、ある意味では朗報である。これはイランの新聞にも出ておつて、私は一作品イランの関係者から――日本人でありませんが、それはどうなつているのだという催促をするような言葉を聞いたのでありますが、これについては当然通産大臣はすでに関知しておられるはずであると思いますが、その件についてどういうことになつているか、大臣から御答弁をお願いいたしたい。
  33. 岡野清豪

    岡野国務大臣 吉田総理に対して向うの総理大臣から、そういうような調査団をよこしてくれないかというようなメツセージが来ていることは事実でございます。私もその相談を受けまして、またほかの閣僚も相談を受けまして、それにつきましていかなる調査団を組織し、いかにするかということについて目下検討中でございます。
  34. 山手滿男

    ○山手委員 この問題は、今日英交渉をいたしておりますし、いろいろデリケートな問題があろうと私は思います。しかしこれは英国は十二分に承知をしておるそうです。向うの新聞には、そういうメツセージを日本側に送つておるというふうなこともでかでかと出ておつて、知らないのは日本人だけだということに相なつているようでございます。そこでこれはザヘデイ総理大臣から吉田総理大臣にわざわざそういうメツセージが来ておる現状でございますから、日英会談なんかに対して御遠慮されるばかりが能でもないので、これについては早急に対策を立てて善処されたい。私は東南アジア各地をまわつてみても、イランの諸地方における総領事、大使、そういう人にもいろとろ会つたりいたしましたが、イランの在外公館にも二、三箇月も給料が渡らないというふうな実情であつて日本に対する期待も非常なものでありますので、私は日本の新しい市場を開拓する建前からも、これはきわめて重要なことであると考えております。このことについては、この場ですぐどうこうということを言明していただかなくてもよろしゆうございますが、今大臣から承知をしている、対策を協議中であるというお話でありますから、あとからこまかい話は承りたいと思いますが、お忘れなく十二分に準備を早くしておやりにならないと、向うの方で待ちかねているそう、でありますから、それを付言して申し上げておきます。
  35. 大西禎夫

  36. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 先ほど大臣から、通産大臣としての今後の生産者としての政策というか、その抱負をお述べになつたのでありますが、これについては、いずれわれわれは通常国会に入つて具体的に論議をして行きたい、こう考えております。私は、先ほど大臣がお述べになつたものは、これは通産省の悩みであると思つております。通産省の名局長、外局長官などがまつたく頭をかかえた悩みをまとめたものをお述べになつた以外の何ものでもないと思つておる。また経済審議庁長官としても、やはりそういう悩みの事業行画をわれわれに訴えられたにすぎないと思つて今私は聞いたのであります。きようは時間の関係で私は内容にわたつて質問しようとは考えておりませんが、ぜひ聞いておかなければならぬと思うのは、大臣は少し手前みそを並べ過ぎておられる。そういう点を明らかにしておかぬと、われわれはまたぞろずるずるとした状態で国を滅ぼすような状態に陥らしめてしまうと憂えるからでございます。大臣先ほどお述べになつたのは、小笠原通産大臣当時から、それからあなたが通産大臣を引受けられたときからお述べになつたことを述べておられるのでございます。あなたは大いに成績が上つたと手前みそを並べておられましたが、あなたが大臣になられてから、日本産業経済貿易関係は伸展をしておりますか。いかにジリ貧に陥つておるかということはあなたもお認めになるでしよう。日本産業に老朽設備が過剰して能率が上らず、つくる品物は、海外市場においても平均して三割か四割高い。どこの市場においても日本商品が競争して打勝てる市場はないではございませんか。こういうまつたくのジリ貧状態に落ち込んでしまつてつて、外科手術をしないで、あるいは薬や治療でなおすのだというようなことをおつしやつておられたが、病人はなおらないうちにジリ貧で死んでしまうような状態に今来ておると私は思うが、どうです。そこであなたに伺うのは、今あなたがお述べになつたような問題をあなたが行われろとするなら、二十九年度の予算あるいは資金の上において、それらの問題を一体あなたはどのように解決しながら、さきにお述べになつたようなことを実現させようとお考えになつているのか。これには多大なるところの政治力と信念がいります。これは大臣を前に置いてはなはだ言い過ぎるかもしれませんが、われわれはあなたに政治力と信念のないことに、はなはだ失望しておる。あなたが飛びまわつておられろことは、われわれよく知つております。しかしメツセンジヤーではございません。やはり日本の一番大事な通産大臣としてのあなたにわれわれが期待するのは、政治力と信念を持つてどこまで貫いて行くのか、閣議においてもどこまでがんばつてやり通して行くのか、これがなくては、あなたが今お述べになつたようなことは実」現できません。あなたの省の局長、外局長官などが憂えておる問題を総合的に解決することはできません。私はまず今申し上げたような関係において、あなたがお述べになつたようなものを、政治力と信念をもつてどのようにして予算上資金上において解決しようとされるのか、これを先に一点御答弁願います。
  37. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私も自覚しております。私の微力をお責めになつてまことに恐縮でございますが、しかし私としましては信念がないわけではございません。その信念を通しますにも、世の中にはいろいろ事情があるのでございまして、昔から赤手空拳何事もできぬということもございますので、やはり一般の情勢がそれに向うようにすることが一番大事なことだと思います。そういたしますと、やはり目に見えない苦心がいつて、しかも外面にあまり結果がはなばなしく現われないというのが事実だろうと思います。しかし私がいかに努力しておるかということは、この一点だけごらんくださいましてもわかると思いますが、この前の国会のときに、指定預金は金融強化のために全部引揚げるのだ、こういう方針をきめてしまつたにかかわらず、私が申し上げました通りに、中小企業に関する限りは、これは延期もするし、新規投資もするのだということを前国会で申し上げましたが、ただいまの結果といたしましては、少くとも私の信念並びにその実行は、実行に移されておる次第でございます。ただ御希望通りに十分なることができない点は私も自覚しますけれども、信念を持つて努力しております。その努力も目には見えませんが、おいおいと結果を現わして来ておるのではないかと、私は自分で自任しておる次第でございます。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 議事進行。私の質問はこま切れになつちやつて、それで譲つたらとたんによそにかわつたわけですが、きようは総花的にやるというのならそれでけつこうですが、ただあした大臣さんがいらつしやるかいらつしやらないか、ちよつと聞いておきたい。
  39. 大西禎夫

    大西委員長 明日も大臣に出ていただくつもりでおります。それで今後そういうふうに進めて行きたいと思つておりますが、時間もございませんからどうぞ御了承を願います。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじやきようは委員長仰せ従つてあすに譲ります。
  41. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 信念の問題は、どうも禪問答みたいなものですから、実績が出て来なければこれはわからぬのです。私は何でそれを伺うかというと、あなたが通産大臣をお引受けになつてからそれぞれ事業計画を出されたものが幾つもございます。ところがそれは具体的に成功しつつありません。私は一々例をあげてもよろしゆうございますが、これはいずれあとであげますけれども、ここに私がこう言えば、局長、長官らもおれれるからおわかりになると思う。これはあとで言いますが、私はそれをはなはだ遺憾に思つておる。だからあなたがきようお述べになつたことを、われわれはうのみにしたりすることのできないのは、過去の実績の上から、私はそれを言うのでございます。そのことは後日に譲るとして、私がいま一点伺つておきたいのは、あなたは経済審議庁長官とし、通産大臣としておられるのでありますから、日本産業経済全般をお考えにならなければならぬと思う。あなたは先ほど自由党の吉田内閣の政策の手前みそをさんざんおつしやいましたが、実は今日本の老朽老廃した設備がなぜ過剰しておるのか、なぜこれを近代化し、国際水準に持つて行けないのかということは、資金上の問題です。ところがあなたは、ごらんになつたかどうか、お気づきになつておるかどうか知らないが、しばしば問題になつておる。あなたが出された経済白書にもある。いわゆる非生産的なビルディングであるとか、観光ホテルとか、高級料理屋であるとかその他遊び場であるとか、こういうものに対して七千億以上の金を投入しておると言つております。こういうものにべらぼうな投入を放任しておいて、そうして老廃老朽設備をそのままにかかえて、これを近代化、国際水準に持つて行くことにその金を振り向けない、これを放任しておいて、一体どうするつもりですか。この問題を根本的に解決をされなければ、敗戦日本の新たなる再建、あるいは西ドイツなり欧州諸国との間において、東南アジアの市場に場おいて競争し、対処することができないのですが、問題はそういう資金上の問題を、これを設備近代化と国際水準へ高めて行くということが一番先決問題であろうと思う。これらの点を従来のままに放任しておかれるつもりであるか、これらに対するところの産業経済の新たなる態勢をどうされようとするのか、この点をひとつお聞かせ願いたい。
  42. 岡野清豪

    岡野国務大臣 御説しごくごもつともでございますが、私どもといたしましてはもう大分前からそういうような不要不急の建築物などというようなものに対しては、資金の統制上はある程度これを行つておるのでございますが、しかしただいまビルディングなんかできますのにつきまして、これは銀行資金とか政府資金を統制いたしましてもまだ建ちます。これは実情を申し上げますれば、大きなビルディングを建てる。なぜあんな十五億とか二十億という金ができるかと申しますと、まず何年間かの部屋の権利金を納めまして、その権利金だけを集めれば建物は建つ、こういうふうになつております。しかもその権利金を出すのは数多くの会社が自分の経営採算上何ら負担にならない、また打撃にもならない、こういうような企業家のふところから出るものでございまして、こうなりますと全日本経済というものを国営にしてしまうか、もしくは強力な統制をもつて自由の活動をさせないという方向へ持つて行かなければそういうことはできないと思います。しかしながらお説の通りにいろいろ輸出貿易第一主義で私はおりますので、その輸出振興のためには機械の近代化とか何とかいうようなことは必要でございます。しかるにもかかわらず、その機械が非常に老朽施設になつてつて、これを近代化しなければ、対外競争力がなくなるというような情勢に追い詰められておる次第でございますから、私は何かくふうによりまして、そういう方面に少くとも多くの資金が行くような方策は考えなければならぬと思いますが、これはある程度の規制をもう少し強く業界に出すか出さぬかという根本問題にもちろん触れることでございますので、私自身としましては諸般の情勢を考えて結論を出さなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  43. 中崎敏

    ○中崎委員 関連して。ただいまの岡野さんの説明によりますと、この近代的な尨大な資金が投ぜられてつくられておるビルディングですが、これは権利金を何年もとつてやるのもなるほどあると思います。しかし一番われわれに目立つて考えられるのは、金融機関、ことに銀行があらゆるところにどんどん相当尨大な資金を使つてつておる。一面において中小企業者の資金繰りの問題は非常に大きな問題となつておる。国の産業全体としてもその資金の問題は一番大きな問題だから、大衆の金を使つておる銀行が率先して、ほとんどりつぱなビルディングと思われるものがどんどんぶちこわされる。そうしてより尨大な金を使つて銀行が建物をつくるというこの現実をわれわれはこの目で見ておる。その金は決して権利金ではない。こういうようなものが非常に多いという事実もまた岡野さんは率直に認められなければならぬと思うのであります。そうしてまた一面において資金の問題を解決するためには、どうしても強力なるところの資金の統制というものも必要であるし、計画経済を強力に推進しなければ日本経済の自立ということもできなければ、この行き詰まつた産業の打開ができぬということも明らかであります。それを諸般の情勢を考慮するとか、いたずらにイデオロギーにとらわれておる。イデオロギーにとらわれておるのはむしろ岡野さんの方だと思う。われわれはイデオロギーを無視して、ほんとうに国家社会を大局的に見て、いかにあるべきかということを考えて、そうしてやむを得ない場合には計画経済を推進して行くんだ。この面においては最低限度における計画経済が必要であろということになればぜひともやつて行かなければならぬと思う。それをいつでも自由主義で、この看板を捨てるわけに行かぬとか、あるいはまた諸般の事情を考慮するとかということで逃げられる。そういうような弱い考え方、八方美人的な考え方においては、この重要な日本の現在の経済を乗り切ろことができぬと私は考えておる。そこで岡野さんにもう一度聞きたいが、そうしたところをもう少し白紙に返して、こだわらないで、ほんとうに国の産業大臣としての職責を、一身を賭してでもやつて行くという心構えをもつて、そして思い切つて荒療治をやらなければならぬ場合にはやるのだ、こういう心構えがあるかどうか。そして金融機関に対しては大蔵省としても相当のにらみがきくわけだから、たとえばこういう範囲において建物を建ててはならないのだということを命令通達一本で行けると思う。協力を求めればできると思う。そういうふうな問題を放任しておいて、そしていたずらに金融資本のみを跋扈させておる。国の重要な資金というものを、いたずらに死ぬるような形において使われることは好ましくないと思うのであります。これについて一体どういうように考えられるか、具体的にひとつはつきり御答弁をお願いしたいと思います。
  44. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はむろんただいまの経済を建て直しますのには相当な規制をして行かなければならぬと思います。それに対して規制の方法もだんだんと考慮しております。  銀行の問題について、私は元金融業者でございましたが、一言申し上げておきたいと思いますが、御承知通りに今日本で一番――一番でもございますまいが、困つておりますことは市中銀行に金がないことであります。これを物価指数で割りますと、ちようど戦前に比べまして約四〇%くらいな預金しか集まつておらぬのでございます。元、昭和九、十、十一年あたりは平穏無事でありまして、一生懸命経済活動をしておればいい時期でありまして、あらゆる事業が大体安定しまして、設備等の更新とか何とかということはそう心配しなくてもやつて行ける、つまり普通に水が流れている川にさおさして行くような船のときには一〇〇%の預金があつたにかかわらず、戦後すべてのものが破壊されて、全部手直しや修繕をしなければならぬ、また古くなつたものをとりかえなければならぬ、そこへ持つて来て凶作とか風水害とかというふうなとつぴな資金の需要がありまして、資金といたしましては市中銀行としまして非常に枯渇しておるわけでございます。それが枯渇しておるにもかかわらず、今仰せのごとく銀行ばかりが目につくような大きな建物をつくるということは、これは私も自粛しなければならぬと思いますが、これは所管が違いますが、大蔵省としては許可しております。その建物と申しますか、これはひとつよくお考えを願いたい。これは御承服で送るかできぬか別問題といたしまして、昔から預金を集めようとしますと、どうしてもやはり玄関を張らなければ集まらないのでございます。と申しますことは、資金を預ける人の心理というものは、なかなか普通のところに預けることをしない。焼けたらすぐなくなつてしまうなら、むしろ自分のそばのたんすの中へ入れておいてもその資金を大事にしたいというほど、金が大事か命が大事かというほどに大事がるものであります。これを西洋の言葉で申しますと、資金というのはチミドの動物だ、非常に気の弱い動物だ、だから非常にりつぱな建物であれば内容がいかにあろうとも、あるいは経営者が変なことをしていることがわからなければ、やはり建物のいいところにそつと入り込もうということで資金が入つて来る。だから一概に銀行の店舗がりつぱになるということはけしからぬじやないかということは、むろんそうでございましようけれども、その中に、あろ部分は預金を吸収する意味において、私の銀行は安全確実でございますというデモンストレーシヨンのために、やはり銀行の建物はりつぱにしなければならぬ、こういうことを金融業者は頭に含んでおると思います。その点は御説ごもつともでございますから、今後は大蔵大臣あたりともよく話しまして、ほかのものがつぶれて行くような時代に、金融業者ばかりが過度の地面をとつて堂堂と大きな門戸を張るということも、社会的に見ておもしろくないことと思いますので、むろんよく御趣旨は尊重しまして今後の処置をとりたいと思います。
  45. 中崎敏

    ○中崎委員 この問題は非常に重要だと思うのです。と申しますのは、たとえばある銀行のごときは坪当り百万円の金を出して、そうして何千坪というふうに地所を買つておる事実があるのです。現在地所が非常に上るのは、いろいろ事情はあるでしようが、銀行がこういうふうにあさりまわつて値段をつり上げておるということも大きな原因になつておるわけなのです。そうしてあなたが、言われるように、銀行が預金を集めるためには外観がりつぱでなければならぬということ、これはわからぬことはない。しかし現在あの九大銀行といい、十大銀行といい、銀行に信用が置けぬから預金を持つて行かぬという人は国民の中に一人もない。最近において雨後のたけのこのごとく尨大な資金が投ぜられてビルが建てられておるにもかかわらず、それによつて一体どれくらい預金が増加しておるかということを検討してみられておるかどうか。私はそんなものではないと思う。だからそういうふうなただこじつけ的な一時のがれのようなことを言わないで、今後においてはこうしたところに尨大な金を使うよりは、むしろ国の産業のために、中小企業者のために有効に使うということを政府の方針として決定されて、各銀行に通達して協力を求められるように要望するものでありますが、もう一度こういうふうにやるのだという岡野さんの御意向をひとつ示してもらいたい。
  46. 岡野清豪

    岡野国務大臣 支店の設置とか銀行の設立とかいうことは――非常に統制された事業でございまして、そうやすやすと支店がふえるわけでもございませんし、それからまた銀行を設立するわけにも参りませんので、そこでやはり銀行が場所のいいところをねらつて、そうして先ほど申しました心理からデモンストレーシヨンの意味におきましてりつぱなものをつくる。むろんこれはただいまの日本の国情から行きますと、見方によれば銀行が多過ぎるという点もございましようから、今後はやはりそういう点について注意をしなければならぬことと考えます。
  47. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま一点だけお伺いしておきますが、きようは後日の質問の迎え水のつもりでお尋ねをしておるのでございますから、内容にわたつてはあまり申し上げません。  先ほど大臣は、従来の自由放任的なやり方はいかぬということをお認めになつた。そして何とかこの調整をしなければならぬということをおつしやつた。私はそれを非常に期待いたしております。いずれ近日のうちに、今私が質問したことについて具体的な案をつくられて多分われわれに提示されるでありましよう。私もさらにその点追究してお尋ねいたしますから、ひとつ具体的にお答えできるように準備をしておいていただきたい。私がさつき言つたことに対するあなたの信念が信用できるかできないかそこできめたいと思いますから、ひとつ特にだめを押しておきます。  いま一点、これも重大な問題でありますからお尋ねしておくのですが、それは、御承知のように、今日本経済はアメリカなしには生きて行けなくなつております。まつたくおぼれる者は命ほしさにわらでもつかむというように、アメリカにたよろうとしております。たとえば、私は長くなりますからりくつは言いませんが、MSAの問題について、池田君が吉田総理大臣の特使として行つたのも、問題はこれにある。朝鮮の特需が怪しくなつた。そこで今度何によつて生き長らえようかというところからたまたまこの問題が出て来た。それつとばかりこれに飛びついて行こうとしております。今吉田政府による日本の日々生きて行く道は、アメリカに依存しよう、アメリカがなくては生きて行けないということになつております。何でも安易な方法でそれに道を求めようとしております。おそらく今後、あなたの責任であろ審議庁の長官としても通産大臣としても、そういうことにずるずるとひつぱられて行く気がします。そういうところから、たとえば貿易上の国際的解決、あるいは東南アジア、中共等近い距離にあるところとの貿易上の問題に対して、制限物資の解除の問題、これらについてアメリカの押えているのを打破して対等の資格で取組んで行こうという道が一つもあきません。これは結局アメリカにのど首を握られており、アメリカなしには生きて行けないということで、アメリカにたてをつけないからであります。これでは独立した日本の自立経済の道はあいて行きません。そこであなたはこのアメリカ依存、一辺倒の考え方を一体どのようにお考えになつておるか。これをはつきりさしてもらわなければ、あなたがさつきからお述べになつた政治力、信念をもつて堂々と闘つて行くということを見るわけに行きません。アメリカとの間をこうして行くということをはつきりおつしやることによつて、われわれはあなたの信念がいずれにあるかを知ることができます。そこでこの問題についてどのようにお考えになつておるかをぜひ聞いておかなければなりません。
  48. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。われわれといたしましては、独立して、とにかくできるだけ国際親善の関係を深めて行きたい、こう考えますので、友好国としてアメリカと非常に仲よくして行くということはこれは当然だと思いますが、私自身といたしましては、アメリカ依存によつてわれわれの経済を立てて行こうとは毛頭考えておりません。かつて就任後幾たびも申し上げました通りに、経審におきまして自立経済計画を立てます建前の上におきましては、特需というものはまつたく抜きにしまして、特需を考えに入れないで、日本自力でどうしたら自立経済ができて行くかということで、五箇年先の計画を検討して今日まで来ておる次第であります。その意味におきまして、友好国と親善関係を保つて行くということは当然でございますが、あげてアメリカに依存して日本経済を立てて行こうという考えは、経審長官としては持つておりません。
  49. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 率直に申しますが、今のあなたの御答弁は答弁になつておりません。あなたは先ほど五年後に云云ということを言われておりますが、一体今特需なしに生きて行けますか。二十億ドル以上のものが日本になければ、国際的な関係を保ちながらこの日本国民の生活ができない。しかるに貿易は十一億ドル何千万ではありませんか、ここに八億ドル以上のものが足らない。これがアメリカ関係等のいろいろな形で出されて、これによつて生きながらえておることは、あなたも認めざるを得ないでしよう。今これなくして日本国民は一日も生きて行けない、そこへあなたは五年後にこの自主経済が保てるようにするとおつしやつておるが、さつきから私が言つた、一年前から聞いておる計画というものが、私は前進しておるのを見ろことができない。前進しておらないから、貿易がだんだん不振になつて帳じりが合わなくなつて、赤字がだんだん累積して大きくなつているではありませんか。これをどうするのです。あなたのただそういう五年後の夢物語のようなことだけではこれを過すわけには行きません。そこで私はあなたにいずれあとで聞きますけれども、明らかにしておいてもらいたいと思うのは、どのようにしてそれを推し進めて行こうとされるのか、アメリカ依存じやない、特需にたよらぬ、五年後に解決する、そういうことは今までの過去の実績から見て信用ができません。だから私が先ほど来聞いておるのは、対アメリカとの関係で、独立国家の対等の資格において、どのようにこの問題を解決しようとするのか、国際的にどのように解決しようとするのか、たとえばガツト加入のような問題にも、もつともつとこれは早く前進的でなければならない。同時に東南アジア等におけるところの制限物資等の問題においても、これらの問題の解除をさせなければならぬ、従つてこれらの問題は、あなたはどのような対アメリカ、対国際関係等の間に取組んで行こうとする信念を持つておるかということを私は聞いておる。この問題が明らかにならぬ限りにおいては、あなたのさつきからの机上ペーパーのそれを信頼できません。だからどのような信念を持つて自分は今後これと取組んで、日本通産大臣として妥結をするか、この点をお聞かせ願いたい。
  50. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。日本経済の自立ということは、結局外国に依存して、そうしてそのおかげによつてわれわれが生活して行く、生活を安定して行くということではならない。これは原則でございます。それでございますから、われわれ審議庁におきまして、いろいろ研究しておることは、特需がある間に早くこの特需がなくても済んで行くように、それには手間がかかりますから、五年くらい先を見なければいけないと思います。そういう計画を立てておるわけであります。しかしアメリカ依存ということにつきましては、いろいろ見方もございましようが、しかし私どもといたしましては、そういう自立経済は立てておりますけれども、外国から注文が来て、そうして物を売るということはこれはりつぱなわれわれの経済の自立でございますから、これは拒否する必要はないと思います。たとえて申しますれば、朝鮮の復興が進められる、その買付を日本でしてもらつた方が商売になる、これは商売として望むべきことである。これをこの近い日本と朝鮮との間でありながら、イギリスとかドイツとかいう方面から品物を持つて来て、朝鮮の方に売られるということは、私は貿易の原理から申しましても、不利なことであると思います。でございますから、特需というものがなくても、これは臨時的なものであるから、これをあてにして経済の自立をしてはいかぬということだけは事実でございます。しかしその特需は、もしあるならばわれわれとしては望んでもいいことではないか。たとえて申しますれば、よく外国の例でもあることでございますが、観光ホテルをつくるとか、観光地に外人をたくさん呼んで、ドルを、外貨を落してもろうとか、これも一つの国の経済を生かして行くところの一つの策でございますが、そういうこともやつておる次第でございますから、私はできるだけコマーシヤル・ベースにおいて、よその注文は幾らでも日本でとるということには異論はございません。しかしただいまの、朝鮮事変が起きましたその結果によつて出て来た、特需によつてささえられたる今日の経済というものは、これはアブ・ノーマルなものである。これはどうしても、特需というものを度外視して、まず一応自立し、そうしてその余分にいろいろ日本に注文があるものなら、どんどん注文を受けて、ますます輸出をプラスするという方向に進まなければならぬ、こう考えております。
  51. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は、あと帆足君が質問されますから、本日はこの程度にしておきます。私は最後に申しておきますが、今大臣が御答弁になつたような答弁ではまつたく納得もできないし、はなはだ遺憾失望しております。そこで後日漸次これを具体的に質問をして行きますから、本日のところは帆足君に譲ることにして、この程度にしておきます。
  52. 大西禎夫

    大西委員長 帆足計君。――ちよつと帆足君に申し上げておきますが、部屋の都合がありますので、時間的な余裕があまりありませんから、そのおつもりで御発言願いたいと存じます。
  53. 帆足計

    ○帆足委員 時間がありませんので、また残りは明日にでもしていただきまして、急ぎのことだけを申し上げます。今まで外務委員会におりまして、こちらに初めて参りましたので、皆様にちよつとごあいさつ申し上げます。よろしくお願い申し上げます。  私は長らく二十数年も経済界におりましたので、そういう点では勤労者の党におりますが、経済界の実情には多少通じておるつもりでございまして、岡野大臣とも旧知の間柄でございます。岡野さんは金融界出身の方でございますが、しかし銀行屋さんの中では一番輸出貿易並びに産業事情に通じておられる方のお一人であつて、かたがた大阪出身の方でもありますから、われわれの申すことも特に理解していただけると思うのでございますが、先ほど来同僚の皆様からきわめて建設的な批判のお声がありまして、私もそれらのことの大部分には同感でございます。なかんずく貿易の問題につきましては、先ほど自立経済という言葉がたびたび出ましたが、日本の自立経済ということは自給自足ということではないのでありまして、自給度を増すことも自立経済の一端でございますけれども、どうしても原料、食糧等、物理的にどのように開発しても国内でできないものが圧倒的多数でございます。(「その通り」)従いまして輸出することによつて輸入をせねばならぬ。輸出は吐く息、輸入は吸う息、呼吸のような重要性を持つた役割を、この国の貿易は演じておるのでございます。その貿易が何分にも、最近の国際連合の統計を見ましても、世界戦前に比べて一三六、廃墟となりました西ドイツが一三五、イタリアが一五、イギリスが一六五、アメリカが一七〇といいますのに、日本輸出貿易はわずか戦前の三〇%前後である。私はこのことを全国民に知らして、今や貿易のための非常時態勢を宣言してもよいくらいの重要なときであろうと思います。国内的には再軍備の問題などが起りまして、また災害も起りまして、財政は破綻に瀕するような状況にあります。国際収支はまたかくのごとくでありまして、国際収支と財政とが二つのインフレーシヨンの関門でございますので、私は、戦争は終りましたけれども敗戦の痛手はまだ続いておつて、終戦後数箇年はアメリカの援助によつて今日まで息をつないで参りましたけれども、今や真に自立せねばならぬとするならば、これは終戦来初めての重大難関に今ぶつつかつておる。そこに持つて来てまた洪水があり、悪天候があり、労使の問題も解決せず、まことに憂慮すべき事態であると存じます。こういう状況のもとで、急ぎの問題は、国内の開発、外には正常貿易の増大でございますが、きようは時間がございませんので、そのうちの一点だけを申し上げますると、私どもは東南アジア並びに北アジアとの貿易をもつと何とかせねばならぬということを常に唱えております。今日アメリカとの関係日本の五〇%の運命を支配するものになつておるのでございますが、それでもなおかつ五〇%でございます。立地条件から申しまして、アメリカに百パーセント依存するということは遺憾ながら不可能でございまして、戦時経済の点から見ましても、補給基地、前線基地、中継ぎ基地という限界を出ることはあえて不可能でございます。従いまして、私どもは東南アジアと中国の貿易だけですべてが解決する、そういう観念論は断じて申しませんけれども、まずあり得べき姿から言えば、アメリカとの関係が三〇%、北アジアとの関係が三〇%、東南アジアとの関係が三〇%、その他が一〇%くらいのことがまず平常の一つの立地条件でございます。しかるに、吉田首相はよく中国との関係は昔五%であつた。近ごろは六%説にかわつたようですが、しかし統計を見ますると、最少のときに二〇%、多いときには四〇%、北アジア全体を合せますと、最少のときでも四〇%になつております。従いまして、私どもは中国との貿易を今日ただちに三〇%にするとは申しませんけれども、せめて一〇%くらいでも確保しておかなければ、これをゼロにして自立経済を語ることは私は不可能なことであると思います。従いまして、せめて一〇%でも確保したい。昨年結び、ことしわれわれ自由党、改進党の同僚諸君とともに超党派的に努力して結びましたものが、わずか往復二億ドル、日本貿易総額のわずか八%でございまして、きわめて控え目の数字でございます。これをしも実現ができないようなことでは、私は前途まことに暗澹たるものがあると思うのであります。今日西ヨーロツパ諸国は、大部分昨年の十倍から二十倍の貿易をソ連なり中国に対していたしておりまして、人口わずか三百万のスイツツルが、今年の上半期に八百万ドルからの貿易を中共に対していたしております。東京の人口の半分くらいの国が海波万里のかなたから一千万ドル近くの貿易をしておるとき、われわれは、百万ドルの貿易すらもむずかしいような状況でございます。その他ヨーロツパ諸国は全部大同小異でございます。それのみか、驚くべきことには、アメリカは中共から実に八千万ドルの重要資材、ちようど日本の開炭や大豆に当るようなものを買つておるのでありまして、その代金はドルで払つておるのでございます。このことはすでに英国の議会において公表されまして、西ヨーロツパの新聞はこのように書いております。アメリカは中国から一億ドル近くのものを昨年買つている、そうして戦略物資中の戦略物資であるところのドル、地獄のさたも金次第というそのドル、これは最高の戦略物資でございますが、そのドルを中共に輸出している、そうしてバトル法を最も破つているものはアメリカであり、バトル法をまるで教育勅語のように拳々服膺しているのは哀れな日本であつて日本はすでに萎縮腎にかかつておる、こういうことを西ヨーロツパの新聞で論ぜられておるようですが、このことをどのようにお考えでありましようか。もちろん今日保守政党の立場として、国際情勢から見まして、アメリカに相当の気がねをいたさねばならぬという事情があることは、当否は別として、われわれも事実問題としてよく理解するものであります。しかしこれに対して、同じく貿易に生きねばならぬ国の英国はどうしているか。時間をとりますので、この次にそれらのことを申し上げまして御参考に供したいと思いますが、英国がいかに弾力性のある政策をとつているかということは、もうすでに十分御存じ通りでございます。アメリカにいたしましても最近水爆がふえ、二つの世界に水爆と原爆は千発を越えるようになり、また超音速航空機は音の速度の二倍にもなりましたので、大統領府におきましては最近チヤーチルにやや接近いたしまして、平和を確保しなければならぬということで、元の国際連合創立の精神にもどらねばならぬという主張も最近非常に強くなつております。アメリカの政策は、大統領府の政策や国務省、参謀本部等の政策と出先関係の政策との間に大体二箇月ずつのずれがございます。出先だけを見ておりますと、いかにも硝煙のにおいたけなわのように見えますけれども、大統領府の方においては、もはや英国とよほど接近して参りました。ダレス長官はその間に立ちましてあつせんに努めており、最近ニクソン副大統領のお坊ちやん的な言い方に対して大分衝突しているような一面もございます。そこで中庸の道を歩むということは、常に保守政治家の皆さんが拳々服膺されるところであろうと思うのでありますが、ある面においてはそれせ真理であります。私はもう少し中庸の道を心がけられて、保守政党としても、せめてアメリカ五〇%見当、あとはその他の世界に五〇%目を注がれることが、島国、貿易国の日本として必要なことではないかと思うのでありまして、われわれも中国との関係を調整し、多少なりとも貿易促進をせねばならぬというので努力して参つたわけでございます。何も中共貿易だけで日本のすべての問題が解決するなどという、よく新聞にありますようなことを私どもはあえて育つているのではないのでございまして、そういう観点から、七百億円の貿易協定を結んで参りました。そのうち今年の三月までに約八十億円の仮契約を結んで参りました。この中で大きな品目は硫安、苛性ソーダの輸出、その見返りとして石炭並びに塩の輸入となつております。その他自転車は四万台、光学機械等は政府の許可が出ましたので一億円、それから工具、自動車部分品、こんぶ、人絹糸等非常に厖大なものが輸出できるようになつて参りました。そこで大臣にぜひともお願い申したいのは、今日中国の市場がまだやわらかなうちに日本品が出ておりませんと、機械工業品や化学工業品は、使いなれたもののみを使うという習慣と必要がございますので、日本の品物は過去において、鉄道にしても、車両にしても使いなれておりましたし、また医療機械、薬なども非常にほしがつておりますが、すでに英国や西ドイツのものが洪水のように入り始めております。この市場がコンクリートのように固まつては、もうはすの実も育たないじやないかと思う。そこでわれわれはここ一、二年を非常にあせつている事情も御了察願いたいのであります。日本商品が行かなければどこの商品も行かぬというのであればいいのですが、西ヨーロッパの商品並びに経済極節団が洪水のごとく今押しかけているときに、ひとり日本のみが安閑としておれないと存じます。こういう点におきまして、急いで御考慮願いたいことがあります。それは来年の三月までに硫安五万四千トン、この値段は大体国内値段でございまして、中国としては日本の商品がヨーロツパのものより二、三割割高であるのも目をつぶつて買おう、何となれば、自分の方の塩や開炭を買つてもらえるのだから、こういうことで、朝鮮、台湾の入札値段よりちよつと高いぐらいのさし値を言うているのであります。もしこれを断わりますと、ただちに西ドイツの硫安が入ることは火を見るよりも明らかでございます。それで通産省にもたびたび参りまして御説明いたしましたけれども、事務官諸君たちは非常に頭脳明晰でよく理解くださつておりますが、何分にもどこかまだ政治力の不十分なところがあつて、ぜひともこれは大胆のお耳に入れてくれということであります。実は私どもこういう大旅行で、しかも超党派的な、公用旅券までいただいていたしましたならば、当然岡野国務大臣から一夕ぐらいはごちそうでもしてくださつて、ゆつくり懇談しようというお言葉でもあろうかと期待しているくらいのことで――まあごちそうはどうでもけつこうですが、とにかくこういうこともゆつくり大臣のお耳に入れて、国家のため、日本の国民のために詳しい事情をもう少し政府当局の責任ある皆さんのお耳にも入れねばならぬことがたくさんあると私は存じております。先般は六十日参りましたし、今度は四十日も滞在いたして参りましたので、相当詳細に調べて参つたつもりでございます。この硫安につきましては、御承知のように、朝鮮の入札はうまく行きませんでございまして、十二月分の二万五千トンだけを急いで出すことになりました。それにいたしましても、一応一、二、三月は渇水期でございますし、肥料の国内における需要の最盛期でございますから、もちろん農林委員会とも御相談し、また農民団体、購買組合連合会、その他関係筋とよく御相談をしまして、真に農民諸君に何の心配もないような措置を十分とりました上で、何とかしてこの五万四千トンくらいのものは輸出できないものであろうか、値段におきましては異存はほとんどないのでございます。従いまして通産当局におきまして、これが国策的に必要なものであるというお考えをおきめ願いまして、ぜひとも農林省と相談され、われわれとしてはまた議員連盟を通じまして、農林各委員と十分御相談いたしますから、ぜひともこれについて大臣の一段の御協力、御指導をお願いいたしたい。  さらにそれと並んで開炭の輸入問題、この前のときに品質が悪かつたのは、山元貯炭などを入れましたせいもありましたが、今では、御承知のように、きようの新聞を見ますると、東南洋に十万トン、二十万トン船積みが起つております。これは選炭設備改善されまして、船積み設備もよほどよくなつております。先日冨士、八幡に送りましたものの品質も、前と見違えるほどよくなつて参りました。従いまして何とかして両方もう少し相談し合いますならば、日本の溶鉱炉に適する炭が流れて来るようになることは、もうほぼ見当がつきました。多少値段の点と海運の点で問題がありますが、これも折衝で解決つく段階になりました。今年はアメリカ炭を使うようになつておりますので、そのすえぜんの方が業界では楽でございましようけれども、あすあさつての、国家百年の計を考えますと、やはりこれに死命を制せられるということは困るでしようけれども、この炭を何割か使うということは非常に不可避的なことでございますし、またそのために莫大な外貨為替を節約して、その為替でわれわれは食糧を買い、綿花を買うことができる。それによつて国民にサービスすることができるわけでありますから、政府もこれを何とかして、先方からは硫安見返りで約二十万トン、薄板鉄板まで出せば、四十万トンを三月まで出そうという仮契約ができておりますので、薄板鉄板の解除はまた御相談申し上げますが、これはアメリカとの相談もいることですから、すぐ間に合わないとすれば、硫安の方を先に手当しておくということで二十万トンの開炭の輸入について、これも為替の見地から格段の御措置をお願いいたしたい。  苛性ソーダと塩の問題につきましては、大豆に驚くべきことをお耳に入れなければなりません。ロンドンにおける苛性ソーダの相場が今日は二十二ポンドが、日本国内においては四十三ポンドもするのでございます。国民の皆様はそれが塩が高いためだとお考えであつて、近い塩さえ入つて来れば解決つくだろうと考えておりましたが、塩の値段をただにしましても、苛性ソーダの国内相場は三十三ポンドというような状態、一体通産当局においては日本の化学工業に対する指導をどういうふうになされておるのか、実は驚いた次第でございます。もちろんそれには多くの理由がありまして、聞きますと、石炭の値段とか品質とか、あるいは金利の問題とか労使の問題とか多々ございますけれども、これではあまり程度が低過ぎる。こういうことだからその基礎の上に乗つておる日本の人絹糸がだんだんイタリアから駆逐されつつある。今度は光のある方の人絹を輸出いたしました。それも多少お情で買つてもらつたような節があるのでありまして、まことに寒心にたえない状況でございます。従いまして塩を入れまして苛性ソーダにして中国に出す、何とかこの方式はないかということを今専売局と当局の軽工業局の方に御相談しておるわけでありますが、どうか大臣もこの問題の、重要性にお目をとめられまして、苛性ソーダの輸出が何としてもできるように、一万トン中国は三、四月ごろまでにほしい。塩は自転車と苛性ソーダの見返りで三十万トンとりあえず出そう、これを成立させるようにお願いしたいと思います。  さらに自動車の部分品並びにラジオの部分品等につきましては、ラジオや小型自動車は、これは英国ではもう七人乗りの自動車も許可されております。しかるに部分品だけを出さないということは、ちよつと小細工の度が過ぎやしないかということをあちらこちらで言われました。と申しますのは、中国は貧乏しておる国でありますから、むしろ今のところは車両、自動車、ラジオの部分品の輸入を第一に欲しておる。それを修理してから後に新しいものを買いたいという気持があるのでありますが、いまだに許可されておりません。こういう例は枚挙にいとまないほどありまして、戦略物資と非戦略物資のボーダー・ラインでありますけれども、西ヨーロツパ諸国では多少ゆるやかに取扱われておるものが、わが国ではまだあがつておるものがございます。これは別な機会に資料をもつて申し上げます。ココム・リストは秘密になつてつて発表されておりませんが、西ヨーロツパのある実業家が私に漏らしたところによりますと、君らの知らぬ品目がまだ二十幾つかあると言つておりました。黄田君は八品目か数品目と言つておりましたが、どうも広いようであります。この点は政府当局よりわれわれの方が詳細な資料を持つておるようでありますから、場合によりましては資料は提供いたします。  さらにお願い申したいことは、これは今度私どもの方の自己反省にもなるのでございますが、中国から大豆が来ればとうふの値段が三割安くなつて来るとか、塩が来れば苛性ソーダが安くなるとかいう演説をいたしまして、実は万雷の拍手を浴びて参りましたけれども、これも多少はわれわれ貿易というものにきびしさを思わざるを得なくなつて参りました世の中に、そういうぬれ手であわをつかむということはわれわれは考えなければなりませんし、かつての中国と違つて今の中国は国際値段を始終見ておりまして、国際値段ぎりぎりのところでぱつと発注して参つておりますので、中国との商売も必すしも楽ではないのでございます。従いまして回炭の輸入などにつきましても、事務官の諸君に非常に御苦労をかけると思いますが、中国の貿易もまた他国の貿易と同じように非常に困難な諸問題があることもわれわれは今度初めて経験しました。  それから最後に、先ほど伊藤さんから言われましたように、輸出値段がほかの国よりみんな二、三割高い。従いましてこの問題についてひとつ抜本策を今のうち講じなければ、いかに大蔵大臣ががんばつて為替がこわれるということになるのじやないかと思います。私はあの為替がきまりましたときには、実は減価償却してはおらず、また地代家賃もあのときはただのような状態でありまして、インフレのいろいろな悪要因が内包されておりましたから、よはどの合理化と労使が協力しなければ為替相場を維持することはむずかしいと申しましたが、何ら努力することなしに為替相場はずるずると来て今日の事態を生みました。従いまして今日経済同友会あたりで自粛生活を申し合せておりますが、実は相当重要な問題がそこにあるのであります。とにかく輸出がわずか前年度の三〇%、そうして国土は四割もなくなつて、人口は二千万もふえて、人の命だけはどうやら女性は六十七、八才ですか、男性は心がけが悪いのでそれより三つ下だそうでございますが、年は二十年も延びてしまつた。こういうことで絶対絶命の道は、国交の調整と貿易以外にない。貿易をよくしようと思えば国交の調整をはかり、平和の裏づけがなければならない。再軍備だ、無軍備だといろいろ論議はございましようけれども、しかしとにかく平和の国交の調整のためには力を合せるというお気持通産大臣はわれわれ野党の言うこと聞いていただきたい。中国貿易使節団が、君たちは社会党左派なのにどうして自由党の諸君と仲よく行けたかなとよく言われますけれども、私は国を思う心はある意味でこういう非常事態には一つでありまして、平和と国交調整、正常貿易の増大というこの国民的課題については相当一致し得る面もあるのではないかということを痛感いたしまして、あえて申し上げる次第でございます。  差迫つた問題は、硫安にしましても苛性ソーダにしましても、あと二週間くらいの間に中国に最終的返答をいたして商談をまとめなけばなりません。実は一箇月という約束でありまして、去る三十日に期限が過ぎましたのでもう少し延ばしてくれと言つて、一箇月延ばしてもらいましたが、年末の関係もありますので十二月の中旬までにこの仮契約をまとめてしまわねば、キヤンセルになりまして、全部西ヨーロッパ市場にとられます。と申しますのは、西ヨーロツパ市場のものが二、三割安いものですから、今のところ太刀打ちがむずかしい。ただ非常に有利なのは、ミシン、自転車、光学機械などはさすがに多少有利でございまして、その他のものはほとんど不利でございます。特に硫安については差迫つた問題で、硫安が不可能になれば塩の方も回炭も不可能になります。硫安に対しては農林委員会の皆さんともわれわれよく御懇談して態勢を整えますが、しかし御当局においては細目割当が今後きまることですから、電力の割当を多少なりとも増加していただくとか、その他貿易振興が国としては最高の死活に関する問題であるという認識に到達されるならば、おめおめ五万四千トンのこの有利な発注を失つて水に流してしまうなんということはあり得ないことでございますから、どうか通産大臣においては格段の御措置をお願い申したいと思います。委員長からの御注意もありましたので、その他のことは次の機会に申さしていただくことにしまして、岡野大臣から、これに対して一段と推進するという政治性のある、そして希望を抱かせるような御答弁を切にお願いしたいのでございます。
  54. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。中共貿易は、御承知通りに私就任以来いろいろ戦略物資の禁輸品目を解除して、相当広範囲になりまして――われわれが無知であるかどうか知りませんけれども、私どもといたしましては大体西欧並になつた、こういう考えを持つております。  それから一言申し上げたいことは、アメリカが八千万ドルの輸入をしたというようなことを、イギリスの国会で議員が話された、すぐそれに引続いて――これは新聞で見たことでございますが、アメリカは、そうでなくて二千七百八十万ドルぐらいしか輸入してないという反駁書を出しております。その真偽は別といたしまして、日本がいわゆる今の中共地区に対して元どういう輸出状況であつたかと申しますと、これは戦前の九――十一年ごろと思いますが、しかし数字ははつきりいたしませんから間違つておりましたら取消しますが、日本に九億二千八百ドルほど輸出がありましたときに、中国、今の中共地区に対して一億八千万ドルの輸出になつております。これが最高じやないかと私は考えております。その後ただいまのような情勢になりまして、経済情勢もかわつて来ましたし、むろんこちらの割高の点もございますけれども、向うでほしがる品物と、日本でできる品物もしくはできても価格の点の折り合いで大分制約を受けますし、同時に戦略物資になりますから、そう多くを望むわけには参りませんが、しかしいろいろ御努力の点については私どもとしても大いに共鳴し、同時に今後とも中共貿易を進展させて行かなければならぬということは私の持論でございますので、御協力願いたいと存じます。なお事情は池田正之輔君に詳しく拝聴したいという申入れをしておりますけれども、池田君も忙しいし私も忙しいので、まだ機会を得ておりませんけれども、いずれまた機会を見まして、私を御指導願うように詳しく事情を拝聴さしていただきたいと思います。  それから硫安の問題でございますが、硫安は通産省だけでは行けないことはむろん帆足さんも御承知通りで、農林省ともよく調整をとらなければならないのであります。昨肥料年度におきましては、われわれの予想といたしましては、内需は百五十万トンぐらいと思つてつたのでありますが、それがどういうわけでございますか百七十六万トンぐらいな内需がありまして、本年度は繰越高が十万トンぐらいしかありません。それから今度肥料に対する法案を国会に出して御審議を願つておりますが、もしそれが実現いたしますれば、やはり十五、六万トンというものは手持ちをしておかなければならないような法制上の建前になつておりますので、ただいまのところでは需給関係から申しまして、なかなか困難なことじやないかと考えておりますが、その問題は十分農林省とも打合せしまして、商権を失わないようにしなければならぬと思つております。  それから塩のことでございますが、これは私はつきり覚えておりませんけれども、今度仮契約をしていらつしやつたのが八ドル四十セントとかいうことでありますが、今まで入れておりますのはハドル二十三セントくらいになります。同時に中共塩は純分が八八、九パーセントの品位でございまして、それがハドル四十セント、それから今まで八ドル二十三セントで入つておりますものは品位が九二、三パーセントになりしますから、四、五パーセントくらい品位がよくて値段が安い。この点がやはり幾らか問題になるのじやないかと思いますが、よくそういう点も研究いたしまして善処いたしたいと存じます。いずれにいたしましても、お説の通りに背のごとき大きな期待を中共地区にかけることは危険でございます。しかしそれかと申しまして、この近い、ことに同じ東洋に籍を持つておるわれわれが仲よく貿易をして行つて両方とも経済的に進展して行くということにはむろん賛成でございまして、できるだけ御趣旨に沿うような方向にわれわれは善処して行きたい、こう考えております。
  55. 帆足計

    ○帆足委員 われわれの方も商社のいかんを問わず、その契約全般に関します問題を逐次一覧表にでもしまして、大臣、次官のもとにもお届けいたしまして御参考に供しますから、商機を逸しないようにひとつ大臣から強力な御指導をお願い申し上げたいと想います。なお値段、品質等のことにつきましては大臣仰せのこともわれわれ十分了承しおりまして、いろいろ困難な問題がありますから、それは事務的に逐次解決に努力いたします。私もこの使節団の副団長として責任を持たされて参りましたのに感じまして、どうかこの実現のためによろしくお願いする次第であります。
  56. 大西禎夫

    大西委員長 この際お諮りいたします。中小企業金融に関し日本銀行副総裁二見貴知雄君、商工中金理事長村瀬直養君を参考人といたし、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 大西禎夫

    大西委員長 御異議なければさよう決定いたします。なお意見聴取は来る十二月七日月曜日午前九時三十分より行いたいと存じますから、さよう御了承願います。  本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十八分散会