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小田部説明員 このたび
日本が
ガットに入りまして、お
手元に配付しております
関税及び
貿易に関する
一般協定のある
締約国と
日本国との
通商関係の
規制に関する
宣言というのによりまして、すでに
賛成いたしましたその国が、この
宣言に
署名いたしますれば
日本とその国との間にいわゆる
ガットの
規定というものが適用されるわけでございます。それでいわゆる
ガットと言われておりますし、
ガットが適用になると申しますが、
ガットというものはどういうものであるかということを簡単に御
説明いたしたいと思います。
それはこの第二次戦争が済みました後に、一九四五年の末でございますが、
アメリカは
世界貿易というものを自由にすることが必要であめるということを主張いたしまして、その結果
貿易及び
雇用に関する
国際会議というものをやろうということを提案いたしました。そして
国際連合の
経済社会理事会に対しまして
準備委員会をや
つてもらいたいということを要請したのであります。それに基きまして、
国際連合の
経済社会理事会が主宰いたしまして、
ロンドンとジュネーヴにおきましていわゆる
準備会議というものができまして、その結果最後にハヴアナにおきまして
世界のほとんど全部の国が集まりまして、
国際貿易憲章、ITOと略して呼んでおりますが、それができたのでございます。ところが第一回の
ロンドン会議のころから、
国際貿易憲章の
目的としておることは非常に広汎であり、かつ
理想主義に過ぎて、はたしてこれが
世界各国に採択さ回るかどうかということが疑問でございましたので、次に行われるジュネーブの
準備会議におきましては、この大きい
国際貿易憲章というものと並行いたしまして、
関税引下げ——これは
自由貿易を阻止している重要な要素であるというので
関税引下げ交渉を行う、それから同時に
貿易及び
雇用に関するいわゆる
貿易憲章のうちの一部の、おもに
貿易政策に関する
部分と
一つにまとめて、
木式のものができるまでの間、それを実行しようじやないかというようなことが採択されたのであります。それに基きまして
ジユネーヴにおきまして
関税引下げ交渉が行われまして、かつ当時の
草案でありますいわゆる
国際貿易憲章のうちの一部をとりましてそれをこの中に入れられたのでございます。それから
関税引下げ交渉といたしましては、第二回目にはアヌンーであります、第三回は一九五一年にトーケーで行われたのでありますが、
ジユネーヴにおける
関税引下げと、そのときいわゆる
国際貿易憲章の
草案のうちから一部とりましたのが、お
手元に配付してございます
関税及び
貿易に関する
一般協定と
なつて現われたのでございます。この
関税及び
貿易に関する
一般協定は大体一部と二部と三部とにわけているのでございます。その後いろいろ各種の
修正を加えられましたが、お
手元に配付してございますものは
修正及び訂正を施したものでございます。そのうちでも第一部の
部分が現在ほんとうに実行されているのでございまして、第一部の中にはた
つた二条しかありません。そのうちの第一はいわゆる商品に関する
無条件最恵国待遇というものを約しております。但し特恵をや
つている国の特恵というものについて若干の了解がついておりますが、大体において加盟国における最恵国待遇ということが
規定されております。第二条にはお
手元に配付してございますが、厖大なる
関税譲許表、これは前に申した
通りジユネーヴ、アヌシー、トーケーを経ました
関税引下げ及びすえ置きという表がございます。それをお互いに与え合うということが書いてございます。それが一部でございまして、第二部の
規定は前にも申しました
通り国際貿易憲章のうちから
貿易政策に関する分を入れたものでございます。それから第三部は適用地域とか、脱退とか、加盟とかいろいろな手続
規定でございまして、それでいわゆる
関税及び
貿易に関する
一般協定ができましたときに、これと同じ日に、このページの一番最後に書いてございますが、
関税及び
貿易に関する
一般協定の暫定的適用に関する
議定書というものができました。これによりまして第一部のいわゆる最恵国待遇と
関税引下げの
部分及び手続
規定部分はこれを適用するが、第二部の
貿易政策に関する
部分はそのころから
理想主義が強いというのでまだこのころは、最後のハヴアナにおける
貿易憲章ができる前でございましたので、それまでの聞ということで第二部の
部分は
国内で
現行法の法令に合致する最大限度において実行するということに
なつてお
つたのでございます。もちろんこの三部の
部分もあとで述べましたバヴアナにおける
国際貿易憲章が有効になりましたなら、ば、加盟国の間には有効になるのでございますが、いわゆるハヅァナ・チャーターといわれている
国際貿易憲章に
署名いたしましたが批准をした国がございませんので、現在まで有効と
なつておりません。それで現在まで
関税及び
貿易に関する
一般協定は、第一部の最恵国待遇と譲許表の
部分、第三部の手続
規定が有効である。第二部の
部分は現行の法令と合致する最大限度においてやろうじやないかという申合せがございます。現行の法令は
日本にとりましてはことしの十月二十四日に調印いたしましたから、そのときの
国内法が優先するというふうに解されます。
それからつ大体
ガットというものはそうついうものでございますが、はたして
日本がこれに入りました
利益はどこにあるか、何のために急いで仮加入のようなことまでして急いだかということの
理由を今御
説明いたします。それは第一番にわれわれが考ましたのは、われわれは
現実に実質的に儀て来ませんけれ
ども、いわゆる
ガットの
会議を通じまして、
日本は国際
貿易政策の形成に参加できるということでございます。これは
ガット加入の国は現在では三二十三箇国でございますが、
日本から申しますれば、この三十一一箇国と
日本との
貿易は約八〇%を占めております。それらの多くの国と一緒に
世界経済政策を討議し、かつ形成できるという
利益がございます。ことに来年は
世界貿易政策が
一つの転換期を持つのではないかとそう
考えらつれる次第でございます。その
理由は、共和党になりまして
アメリカが現在のところ民主党の
貿易政策を大体踏襲して一歩もほとんどかわ
つていない。それに対しまして大統領はいわゆるランドール
委員会と申しておりますが、対外
経済政策を審議する
委員会を任命いたしまして、その報告は来年の三月六日ということに
なつております。
現実の事態といたしましては、あるいは今年中にこの報告が一応ででき上がるのではないかかと予想されております。この
アメリカ共和党の長期対外政策というものができますれば、現在のつ
ガットにおきましてもいろいろ行き悩みがございまして、前に申しました
通り単に最恵国待遇と譲許表の
部分だけが有効じやないか、その他の
部分をどうするとか、その他の重大なるものが来年の
ガットの総会では議論されることだろうと思います。現に今度の
ガットの総会におきましても、各加盟国は来年の七月一日までに、
ガットをどういうふうに改定するかというような問題の
意見を肥すということを決議されたくらいでございますから、来年の
ガットは非常な転換期にある、その転換期におきまして、
日本も国際
貿易政策の討議及び形成に参加したい、これはこういう意向でございます。
それから第二番目の
ガットの
利益と申しますものは、第二部の
部分はなるほど
国内法か優先いたしますが、しかし相当こまかい
規定がございまして、各国もいろいろ問題があるのであります。たとえば今までですと、
日本の商品に対しまして、ある国が不当の差別待遇をしたといたしましても、その不平はその国にだけしか申し述べられない。ところが
ガットになりますと、その不平をこの
締約国団の
会議において持ち出し得られる。そうすれば
日本のことも
日本だけの力ではなくして、その他の国の輿論に訴えまして、ある国が
日本の商品に対して不当な待遇をしているということが、言われるのでございます。それでございますから、この前も述べました
世界経済政策の討議にあずかれるということと、
日本品が輸入
制限とかその他のことに関しまして、不当な待遇を受けないということに関しまして、
利益があると
考えたからであります。
それから第三番目の
利益は、
日本は現在ある国からは
条約上の
権利として最恵国待遇を受けておりますが、その他の国、たとえば英国のような国からは、
条約上の
権利じやなくして、事実上最恵国待遇というものを受けております。これが
ガットに入りまして、事実上の
権利というものが
条約上の
権利になるということを期待したわけであります。もつとも英国は
日本に対して棄権いたしましたから、その
目的は到達いたしませんでしたが、その他また
日本の加盟に
賛成し、かつ
宣言に
署名すると思われる国で、現在の段階で今まで
ガットに入りますまではわが国に最恵国待遇を与えてくれない国が、約九箇国あると思います。そのうちでも特にカナダとかブラジルとかインドネシアほ重要な国であると思います。このわが国
貿易総額に占めますものは、去年の統計によりますれば一〇%以下で、この点はまだ少うございますが、たとえばカナダのような国から最恵国待遇というものをもらいますれば、少くとも現在の
日本の商品の進出というものは、倍くらいにはなるのじやないか。この計というものはなかなかむずかしゆうございますが、相当進出すると思
つております。この
ガットに急いで入りましたのは、この三つの
理由に基いたものでございます。
それから加入の経緯を大体述べますと、わが国は昭和二十六年の第六回会期のときに、簡易手続というものができましたので、その簡易手続に基きまして、昭和二十七年に
関税交渉開始の申請を行いました。ところがこれはわが国のような
貿易上重要な地位を持
つている国を簡易手続では入れがたいという英国とか濠州とかニユージーテンドの
反対がございまして、結局去年の総会において、わが国の加入ということが
議題になりました。そして去年の総会では結論がきまらずして、これを会期間
委員会というものに移されまして、そして今年の初めに会期間
委員会を行
つたのであります。その結果わが国を入れる加入の
条件、
関税交渉の時期というようなものに関して、ある
一つの
報告書ができたのでございます。ところがそのときの予定によりますれば、
アメリカも
関税交渉をするという
建前に
なつておりまた。もともと
ガットに正式加入いたしますのには、
関税交渉をした上で総会で三分の二をとるということに
なつております。それでわが国も
アメリカも
関税交渉をするということでも
つて、わが国は
アメリカその他の国と
関税交渉をするということを覚悟していたのでございますが、その後互恵通商法が
アメリカでことしできましたときに、一箇年しか有効期間がない。しかもこの一箇年の有効期間においては、大規模な
関税交渉はしないということを
アメリカの行
政府が立法府にコミツトしておる
関係がありまして、
アメリカは
関税交渉に加わらないということに
なつたのであります。
アメリカが
関税交渉に加わらなければ、ほかの国はもう
日本と
関税交渉に加わらない。と申しますのは、ほかの国は
日本との
関税交渉よりも、むしろ
アメリカとの
関税交渉に重大な期待をかけていたものでございますが、
アメリカの
関税交渉ができない以上はしないということに
なつて、結局ことしは
関税交渉はできないことに
なつたのであります。そこで
関税交渉なしに入るということを
考えまして、わが国は
関税品目中の相当
部分をすえ置くという
条件でもちまして、仮加入ということに
なつたのでございますり。
それから実はお
手元に配付してあるだろうと思いますが、
関税及び
貿易に関する
一般協定の譲許表の適用の継続に関する千九百五十三年十月二十四日の
宣言というのがございます。それは実はこの
ガットの加盟国の
関税譲許というものは、ことしの十二月三十一日をも
つて切れるということに
なつていたのでございます。それをとりあえず十八箇月だけ延長しようということを、
ガットの
規定の二十八条に基きましてや
つたのがこれでございます。すなわち
ガットの加盟国は十八箇月
関税譲許を延ばす、それに対応しましてわが国の
関税すえ置きも、十八箇月だけということに
なつておる次第でございます。大体そのような次第でございます。