○下田
政府委員 ただいま議題となりました
日本国と
アメリカ合衆国との間の
友好通商航海条約第八条2についての
留保に関する
公文の交換について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明申し上げます。
日米
友好通商航海条約の批准につきましては、さきに第十六
国会による御
承認を得た次第でありますが、あたかも同
国会における御審議中、米国上院においては、
条約第八条2の自由職業に関する規定につき
留保を付することを条件として、本年七月二十一日にこの
条約の批准に
承認を与えたことが判明いたしました。しかし、同
国会の閉会までには、米国
政府から
留保を付する旨の正式な申入れはなか
つたのでありますが、
政府といたしましては、米国
政府が同国上院の決議に従
つて留保を付するものと予想し、米国側の
留保及びわが方の対策について
研究を進めるとともに、当時衆参両院の外務
委員会において右の
事情をただちに御
報告申し上げましたところ、両院本
会議及び外務
委員会におかれましても、米国がこの第八条2の規定に
留保を付する場合には、
わが国もこれに対応する
留保を付することを希望する旨の御発言がございました。その後、米国
政府から同国上院の決議に従
つて留保を付する旨の正式な申入れがございましたので、
政府は、これに対応する
留保を付することとし、外務省と米国大使館との間で
交渉を行
つた上で、本年八月二十九日に
岡崎外務大臣とアリソン米国大使との間で右
留保に関する
公文交換を
行つたのであります。
米国側の
留保は、この
条約の第八条2の規定及び最恵国待遇の規定は、自由職業で公共の福祉のため州による許可を要し、かつ、法令または憲法によ
つてもつぱら米国市民にのみ
留保されるものには適用されない旨を定めることを趣旨とし、これに対応する
わが国の
留保は、米国のある州で
日本人がある自由職業に従事することについて禁止または制限が加えられている場合には、
わが国は、その州出身の米国人に対し、当該自由職業に従事することについて同様の禁止または綱限を加える権利を
留保する旨を定めることを趣旨としております。
これらの
留保は、
条約第八条2の規定を実質的に修正することとなるものでありますから、本来なら当然この
条約の批准前にこれについて
国会の
承認を仰ぐべき筋合いでございましたが、
政府としては、この
条約の効力を一刻も早く生ぜしめることが
わが国にと
つてきわめて重要であると判断いたし、また、他方すでに第十六
国会において本件経緯を御
説明いたしその御了承を得ている次第もございますので、この
留保を付しての批准の手続を急ぎまして、本年九月三十日に
ワシントンで新木駐米大使とダレス米国国務長官との間で批准書の交換を行
つた次第でございます。
つきましては、右の
事情を御了承くたされ、本件につきすみやかに御
承認あらんことを希望いたします。
次にただいま第二に議題となりました
関税及び
貿易に関する
一般協定のある
締約国と
日本国との
通商関係の
規制に関する
宣言につきして、提案理由を御
説明いたします。
わが国は、かねてからガツトに加入することにより、
わが国の通商を振興することを希望して参りましたが、一昨年九月ジユネーヴで開かれましたガツト
締約国団の第六回会期でガツトヘの簡易加入手続が採択されましたので、
政府は、昨年七月十八日付をも
つて、この簡易手続に基づいて、ガツトへの加入の前提たる
関税交渉開始方の申請を行いました。この申請は、種々の経緯を経て、
締約国団の特別会期において審議される運びにな
つておりましたが、米国は共和党新政権による対外
経済政策全般の再検討が終るまでは、大規模な
関税交渉を行わないとの方針を決定し、他の
締約国も米国を除いた
関税交渉は
意味がないとの態度をとるに至りましたため、この特別会期は開かれず、従
つてわが国の加入はさらに延期される形勢にな
つたのであります。
そこで、
政府におきましては、右困難を打開するため、
関税交渉なしで実質上ガツトに加入したと同様の利益に均霑する道を開くことに努めることとし、去る九月十七日からジユネーヴで開かれました第八回会期において、
会議における折衝と並行して
関係国に対し種々
交渉を行いました結果、幸いにして十月二十三日、賛成投票二十七、反対投票なし、棄権六で、
わが国の仮加入が認められ、わが方の希望を満足せしめる文書が作成されるに至
つたのであります。
わが国の仮加入に関しては、二つの文書が作成されたのであります。すなわち、ただいま議題となりました間税及び
貿易に関する
一般協定のある
締約国と
日本国との
通商関係の
規制に関する
宣言と、ガツト
締約国団の決定とがそれであります。
宣言の方は、
わが国とガツト
締約国中の希星国との共同
宣言の形をと
つておりまして、それにより、
わが国のガツトヘの正式加入まで、または明後年六月末日までの間、これらの国と
わが国との
通商関係をガツトの規定に基いて
規制し
ようとするものであります。また、決定の方は、ガツト
締約国団の決定でありまして、これにより、
宣言と同一期間中、
わが国のガツト
締約国樹及びその補助機関の会期への参加を認め
ようとするものであります。
わが国は、この
宣言によりまして、
宣言に参加するガツト
締約国から
関税事項に関する最恵国待遇を受ける権利を得、また、これと関連して採択された決定によりまして、
関税及び
貿易に関し国際的な発言権を
獲得し、
わが国の利益を保護し増進する足がかりを得ることと
なつたわけであります。
よ
つて、これらの利益を考慮しまして、また、これらの文書は、もともと
わが国の要請に基き、かつ、
わが国の署名を前提として作成されたものであるにもかんがみまして、
政府は、その責任におきまして、本件
宣言の作成されました十月二十四日にただちにこれに署名し、
国会の
承認は、憲法第七十三条三項但書の規定に従い、事後に求めることといたした次第であります。
以上の点を了察せられ、御審議の上すみやかに御
承認あらんことを希望する次第であります。