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1953-11-07 第17回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月七日(土曜日)    午前十時二十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員戸叶武君、菊川孝夫君、高木 正夫君、永岡光治君及び一松定吉君辞 任につき、その補欠として、曾祢益 君、藤原道子君、井野碩哉君佐多忠 隆君及び武藤常介君を議長において指 名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之肋君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            伊能 芳雄君            小野 義夫君            鹿島守之助君            小林 英三君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高野 一夫君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            藤野 繁雄君            宮本 邦彦君            吉田 萬次君            井野 碩哉君            梶原 茂嘉君            岸  良一君            北 勝太郎君            河野 謙三君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            江田 三郎君            亀田 得治君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            棚橋 小虎君            加藤シヅエ君            曾祢  益君            永井純一郎君            武藤 常介君            松浦 定義君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    文 部 大 臣 大達 茂雄君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  岡野 清豪君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 安藤 正純君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   国 務 大 臣 大野木秀次郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安庁次長   増原 恵古君    大蔵事務次官  河野 一之君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    農林大臣官房長 渡部 伍良君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十八年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十八年度予算執行状況にす  る調査の件  (予算の不正、不当支出防止に関す  る件)  (報告書に関する件) ○継続調査要求の件   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。只今より内閣総理大臣に対する質疑を行います。田村君。
  3. 田村文吉

    田村文吉君 私はこの際、総理大臣に対しまして、以下三つの問題につきまして、総理大臣の所信をお伺いいたしたいと存ずるのであります。  第一の問題は、結論から申上げまするならば、国防のための軍備の必要と、これに伴いまして憲法第九条の改正は、国のあらゆる政策に対して筋金を入れろという点からして、今日はつきりとして行かれろ時節が到達しているのではないか、総理はこれに対して表明されるときが来ているのではないかと、かように私は考えるのであります。細かく申しまするならば、総理独立後の過去二年の間、若干その表現方法は違つておりましても、日米安全保障条約によりまして、自衛力の漸増の一事を以て貫いて来られました。又、再軍備の問題になると、日本経済力がこれを許さないということを主な理由として、これをいたしませんと、こう申して来られたのであります。自衛力経済の回復に伴つて漸増するというように申されて参つたのでありましたが、近来に至りまして、保安隊自衛隊と改めてもよいとか、通俗的の呼び方ならば、これを軍備と呼ばれても仕方がない、但しそれは戦力ではないというようなことを、総理及び他の閣僚からちよいちよい承わつて、少々複雑な表現方法になつて参つておるのでありまするが、憲法改正につきましては、総理は依然として未だに時期でないと表明されておるのであります。私は国の経済自立の問題、或いは道義の高揚国民精神振起作興等の問題、いろいろの問題について各閣僚にお伺いもいたして参つてつたのでありまするが、要するに問題が、どうもそういう点について、国民の進むべき途と申しますか、思い切つたはつきりした生き方の途がきまつて来ないというようなことを感じておるのでありまするので、もう少しこの際は、総理としては、思い切つてそういう点についてはつきりとした旗をお立てになりまして、進まれることが、もう必要な時代でないかと、こう私は考えておるのであります。勿論それを私は即時に実行しなさいというようなことを申すのではありませんけれども、いわゆる政治の理想、目標というものは、やはり国としては相当軍備というものは持つて行かなければならん、又あいまいな言葉でいつまでも軍備というものをしておくべきものでないのでありまして、憲法改正が必要ならば、憲法改正も近いうちにはしなければならんということをはつきりとして、同民にこれを指導して参るということが、いわゆる為政者として必要なことになつているのではなかろうか、かように考えろのであります。勿論終戦後、総理政局を御担当になりまして、極めてこういう問題については慎重に大事をとつて国際情勢及び国内情勢に対応されて参りました点については、深甚な敬意を表するものではありまするが、今日独立以来、すでに二年に相成つておるのでありまするけれども、国民は一体どう向いて行つたらいいか、どう進んで行つたらいいかというような点について非常に迷つている。又殊に若い人たらはいわゆる甘い言葉を投けかけられまして、そういう言葉につられて、軍備を持つなんということはもつてのほかであるというような考え方、又憲法というのは平和憲法で、我我が至上な憲法作つたのであるから、これに従つて行くのが当り前だというような、いわゆるそういう社会党の諸君等が、言つている言葉に乗じまして、或いはそういうふうに考えている人も、相当に多いのでないかと思うのでありますが、こういう場合に、一体もつとはつきりとそういう点についての、世界のいずれの国も今日軍備を持たない国は殆んどないのでありまするし、又国連の一員として将来働いて行く点から申しましても、当然軍備は持つて行かなければならん。従つて憲法が、当時の事情によつてできた改正憲法が、これを改正する必要があれば、これも改正しなければならんというようなこと、はつきり仰せになつて、我々を指導する、国民を指導するということが必要になつてくるのではないか。ただ明日から憲法改正する、明日から軍備するということをいうのでなくてよろしいのでありますが、その目標に向つて我々は進んでおるということを、はつきりさせて国民を導いて参るべきではなかろうか、かように考えているのであります。殊に昨今はいわゆる保守政権、保守党と称する、政党の大体の意見というものは、同じような方向に向つて来ているのでありまするからこういうときにはなお以てそういう点についての、便宜もあるのでありまするから、政局の安定を志すと同時に、そうして国民の今まで失心といつちや悪いが、いわゆる生ける屍のような気持でいるこの状態を振起するお考えがあるか、このことを第一に総理にお伺いしたいのであります。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。私の表現の仕方が種々変つて従つて国民をして、何と申しますか、迷わしめているというお話でありますが、私の今日まで少くとも考え方は少しも変つておらないのであります。国として独立した以上は、その独立をみずからの手によつて守る、これは当然なことであり、併しながら今日直ちに軍備を持つということ或いは武力を持つて国の独立を守る或いは安全を守るということは国力が許さないから、安全保障条約によつて一応外敵に当るという建前を取る、併しながら国力が増加する、国力がみずからの手によつて独立を守り得るというときになれば、無論当然国民の手において守るべきでありますが、併しながら今日はこれを許さないのである。敗戦後の日本としては、未だ国力十分でないから、ゆえに安全保障条約或いは米国駐留軍によつて守るという考えをいたしたのでありますが、併しながらいつまでもかくのごとき状態において置く、或いは外国駐留を許すというようなことは、これは希望しないところであります。ゆえに日本国力が加わるに従つて日本防衛力も漸増せしむる、又日本国力が漸増すると共にと申しますか、或いは外国軍の、米国軍の撤去と共に日本防衛力を漸増して行く、増強して行くということが我々の考え方であります。而うしてその名前が何であろうが、自衛隊と言おうが、保安隊と言おうが、名前はともかくとして、いやしくも増強して行つて防御力を増強して行つて、遂に戦力になるという場合には、無論憲法改正しなければできないことであるから改正する。併しながら今日直ちに戦力を持つような防衛力を持つということは、国力がまだ許しませんから当分はいたさない。戦力に至るというふうな防衛力を備えるに至つて憲法改正する、それまでは改正することは考えないということが、私の考え方であります。ゆえに私としては自分考え方としては、或いは自分表現としては、少くも国民を迷わしむるようなことは申しておらないつもりでありますが、ともかく私の考え方はそういうような考え方をいたしております。
  5. 田村文吉

    田村文吉君 仰せになつておることを私は否認しようと考えているわけではありません。ありませんが、今お言葉の中にもございましたいわゆる戦力という言葉を使われたのでありまして、憲法にも戦力という文字が入つておる。そこでどれまでの戦備を持つた場合には戦力であるか、どれだけの自衛隊とか自衛力というものを持つた場合において戦力であろかという点は、これはもう誰しもはつきりときめることはできない。例えば今の水素爆弾を持つた場合において、初めて戦力と言い得るのだというようなことも、それは定義にならんのであります。でありまするから、そういう小乗的な問題にこだわつておらないで、かりそめにも自分の国に若し攻めて来るものがあつたらば、これを守るのだ、自分の国は必ず武器を持つて守るのだというところまで行くならば、私は進んで憲法改正までなさる、併し今すぐそこ凌では行かないから、追つて憲法改正をやつても、それはするというところまでは、何とか総理として私はおつしやつてもよろしいのじやないか。そういうことがどうもこの戦力というような言葉自衛力というような言葉の、言葉使い方が非常ににあいまいになりますので、国民としては非常に迷うのであります。私はもうそんな小乗的な小さな問題で、例えば航空兵力をどのくらい持つた場合とか、或いは原子爆弾をどのくらい持つた場合は戦力であつて、それでない場合は戦力でないのだというような、小乗的な話で問題は持つて行つたのでは若い人たちはついて来ない。もつとはつきりと、いやしくも一寸の虫にも充分の魂があるのだから、やはり自分の国を守るためには軍隊世界のいずれの国もやつているように、やはり相当のことはするのだと、こういうことにやつて行けばいいのでありまして、終戦後はたまたま占領軍のために、占領軍のアドバイスによつて、ああいう憲法はできたけれども、これは直すものは直して行くべきは行く、こういうふうにおつしやるべきじやないか、こう私は考えますので、その点について再度の御答弁を願います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の言い方にないて御不満なようでありますが、結論においては或いは同じであるかも知れませんが、只今も申すように戦力が何かというようなことは、これはお話通り誰も定義が下されないでありましよう。これはただ常識の問題であつて、いわゆるこれは何を戦力と言うかというようなことは、どの教科書にも書いてありますまいが、併しながら国の防衛をし、又外敵を防ぐというために、若し防衛力常識から考えてみて戦力と言うへきものであるというようなときになれば、これは無論憲法改正いたすべきでありますが、そういう戦力を直ちに持とうと言つても、持ち得ないという現状においては、憲法改正できるということを言うことは、これはお話のような、いいところもありましようが、又逆に悪い不利な点もあります。又日本の過去における戦力と言いますか、海陸軍の行動が隣国をして非常な脅威を与えた、その脅威を与えた記憶は、なお外国において、或いは隣国においてはまだ記憶に新らたなるものがあります。にもかかわらず日本が再び戦力を持つと、直ちにこれは外国をして日本に対する猜疑心を生ずることは当然であります。そうでなくとも日本が軍艦一艘持つても、飛行機一機持つても、これは警戒すべきものであるというようなことは、すでに外国政治家なども言つておるような時代でありますから、日本戦力を備えるとしても、これは漸進的に行き、又日本戦力を持つても、再び過去のような乱暴なことはすら気遣いはないという安心を外国に与えろことによつて日本の将来が自然開拓せらるのであつて、今日徒らに外国をして、隣国をして日本に対する警戒心若しくは猜疑心を起さしむるような、言い方はいたしたくないというのが私の一つ考え方であります。又それでは若い日本の青年をして、遂に国を守るという愛国心し言いますか、守るだけの精神高揚ができないということは、それはそういうこともありましようが、併しながら私は日本青少年として、日本国を愛し、若しくは日本国防御についてさほど、今お話のように平和憲法であり、従つて戦争はすべきものでないということは誰も考えますが、そのために日本防衛を捨ててもいいというような考え方を、日本青少年がしておらないと、私は少くとも確信いたしたいと思うのであります。同じようなことを幾度も繰返し事が、私の考え方はしばしば私が議会において申すところにおいて、大概おわかりになつているだろうと思います。
  7. 田村文吉

    田村文吉君 時間がありませんのでなお簡単に、今の問題について総理に参考に聞きたいと思うのでありまするが、私は一寸の虫にも五分の魂ということを申したのは、たとえ、五分の魂がある限りは、それが軍備であるならば、大きかろうが小さかろうが軍備であろから、やはりこれは憲法改正するものはする、こういうふうに行くべきであり、又過去において総理各国思惑等をお考えなつたことは、非常に私は賢明な、総明なお考えであつたであろうと思いますが、今アメリカにいたしましても、又東亜の各国にいたしましても、自分の国を自分が守るために軍隊を持つのは当り前のことである、こういうふうになつている。この時期こそ、私は総理として一歩前進なさるべきではないか、こういうふうに考えたのでありますが、これは私の意見でありまするから、あえてこれに対して答弁は要求いたしません。それから次に私お伺いいたしたいのは、今年の風水害、これに引続きまして異常の冷害、誠に不幸なことであつたのでありまするが、併し災害は御承知のように今年だけあつ、たわけではないのでございまして、昨日頂いた資料で計算いたして参りますると、昭和二十三年から二十七年までの間に三千四百億の災害が起つておる、こう報告されています。ところがこれを、貨幣価値を直して見まするというと、恐らくは七千億のお金だけ起こつている。今年は千五百何十億というものが新たにまた起こつているのでありまするから、毎年千四百何十億というものが、今の貨幣価値にいたしまして災害が起こつている、こういうことでありまするから、これを今のような状態のままで、毎年毎年現在の方法で、これを復旧して参ろうというようなことを考えて参りまするというと、終いには日本というものは破産しなければならない、こういうような状況に私は陥る、こういうことを憂えておるのであります。そこで私はもう少しこういう、終戦後においてすべてが他力本願のような精神にぶち込んで参りまして、個人は市町村に頼む、市町村は県に頼む、県は又国に出て来て国の救助を頼む、こういうようなことで、すべてが他力本願他力本願で参りますような、この心構えであつたのでは、私は日本の国は、これは救われないと思う。又このままにして参れば、必ず財政というのは破綻を来たす、こういうように私は考えておるのでございまして、そこで私はもつと、これはやはり或る程度の制度がいい点もあつたのでございますので、余り中央集権的な現在の制度を改め、財政の半分くらいは、これを地方の税として地方でとろようにいたしまして、地方地方の人みずからの手によつて目分たち災害を防ぐ、こういうような方法考えることがく今日必要になつて来ているのじやないか。そうでないというと、いろいろの各種の運動であるとか何とかで経費は使う、金は使われるが実効は挙がらないで、金が極めて非効率的に使われて行く、こういうようなことでは、いくら金があつても足りない、こういうふうに考えるのであります。でございますから、そういう点について総理としては、今の地方財政状況は非常に困難たのでございます、今度、事業の大部分はこれを地方に還元して、地方にやらせるというようなことになりまするならば、当然地方としては新たに財源が要るのでございますから、国の財政の中から半分くらいは、これを地方に移譲して、地方はみずからの手で立上る、こういうことはできないものかどうか。殊にいわんや日本は働く人が多くて困つている今日であり、失業の問顯で困つている。人がこんなに余つていながら、災害があつても手を出す人がない。こういうような制度を、政治をやつてつたのでは、私は日本というものは救われないと思う。こういう意味から行きまて、皆お互いの力において立上るような一つ制度に改めろということふ考えられないか、こういうふうに考えます。これにつきまして総理の御答弁を願いたい。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。お考え方については、私も誠に御尤もと思います。又現在の制度がいいか、幾多の欠陥があることを私は認めます。又従来の地方制度といいますか、地方中央との間の関係中央集権的であつたというので以て、中央政府地方財政監外について、成るべく監督を少くしよう、今日内閣或いは政府として、地方財政或いは行政等に対して、干渉する力が、或いは監督する力が、殆んどないというのが現状であります。これがいいか悪いか、又今財政はことごとく中央に集めるからいけないのだというお話がありますが、集めた結果がどうであろかと申すというと、随分地方財政濫費され、又放浪な財政の仕方をいたしておる点もあります。で、全体として日本の現在の行政組織、或いは地方中央との関係がどうかということは、全般的に更に検討する必要があろと考えますので、現在行政構成或いは財政機構等関係等について、慎重にそれぞれ審議会を設けて検討いたしております。で、一概に中央に税をすつかり集めるからいけないという考え方もありますし、同ときに現在の地方財政に対する監督が十分でないとか、或いは又中央との関係において税の分配等においてどうであろうかというような点もありますので、一概に中央集権的になつたからいけないという考えはありません。又した結果変却つて地方財政が放漫になつた、放漫になつた結果濫費が多くなり、又交通費その他においての使い方において、中央から見てどうかと考えられろところもあります。故に一応地方中央行政分配、或いは悦の分配等については、再検計いたしたいと考えて、政府審議会その他の意見も徴しつつ、只今研究いたしております。何か成案を得たならば、議会の御審議を仰ぐというつもりでおります。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 今の、中央監督が届かないために、地方が却つて紊乱するということはないかというようなお話でありますが、この点だけは私は総理の御注意を喚起したいのでございまするが、今日府県会があり、市町村会もあり、これが自分の出したところの金を、身近な金を使つている場合において、その使い方というものは違います。殆んど全額国庫に近いような金が中央から持つて来るのでありますから、これに対する濫費が起つて来ても、市町村というものは余り関係がない、この点を私は深くお考えにならないと、監察官をつけなければならんような、ただ制度作つたのではいけない。無論中央からの監督もできるようにはいたしますけれど、大体金はお前たちが出してやるのだ、お前たちが税金を取つてやるのだ、こういうところにおのずから監督が行われて参りまして、濫費というようなことを起さない、こういうふうに考えますので、これは私の所見総理に申上げまして、次の質問に移りたいと存じます。  次は時間もございませんから簡単に申上げます。幾たびか同僚議員諸君から申されたことでございまするが、今度の予算の提示の方法でございまするが、いろいろ止むを得ない三党協定等事情もございまして、こういうふうなことになつ政府のお立場に対しては、深く御理解を申上げておるつもりでございまするが、ただ何分予算というようなものを出して、大蔵大臣説明をされまして、本会議説明をされて、その翌日になつてそれを引込めて別の予算を出すというようなことは、これは如何たる事情があるにせよ、誠に悪い例をお作りになつたのではないかと私は考えるのであります。いろいろお困りになつ事情もあり、いわゆる政局の安定のために忍びがたきを忍んだというようなこともあるかも知れませんけれども、私はこういうふうに予算の数字を、簡単に一夜のうちに変えてしまうようなことをなさるということは、非常に私は困つたことだと思う、こういうふうに実は考えておる。もう一つ更に三党の協定によりまして百五十七億円というものの支出を決めておるけれども、その収入の途を融資によるというようなことを三党協定でお決めになつておるのでございますが、これは無論財政法等から十分御調査になりました上で、差支えないとしての御措置ではございましようけれども、かようなことも国民に非常に信頼度をなくする、政治に対する信用を失墜するという点を非常に心配をいたすのであります。第一の、予算を一日足らずして変更した問題については、総理から御所見を承わり、第二の、資金を勝手にいつでも幾らでも出せるような三党協定みたいなやりかたというものについて、この問題については大蔵大臣の御所見を伺いたいと、かように考えます。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話の点、即ち予算提出後間もなくこれを修正するというのはよくない、これは御尤であります。政府としても決してこれを喜んでおるわけではありませんが、政府としては、その大体の計画、財政の方針について変更のない限りは、成るべく他党の考え方も入れて、そして災害復旧等に対する実施を早くいたしたいという考えから、三党の修正に同意して、修正案を出したわけであります。詳しいことは大蔵大臣から御答弁いたさせます。
  11. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 修正案も数日経たんうちに出すというのはというお話につきましては、誠に御尤に存ずるのでありますが、御承知の通り災害冷害等の対策費は、一日も早くこれらの被害を受けておる方々の手に渡るようにしなければならん、こういうようなところから、三党協定の内容を調べてみましたところが、これはいずれも基本の線に触れるものでもございませんので、而も政府もこれを研究の結果認めまして、それに基いて修正案を出す、そうして速やかにこれが罹災者の手に渡るようにいたしたいという考え方から提案いたしたような次第でございます。更に今お話になりました三党協定の結果として、年度割の三・五・三を大体規準といたしまする結果、初年度分の、予算として三百億円の措置をとつておるので、残余が百五十七億に相成るのでありますが、その残余の分につきましては、これは当時の協定にあります通り、復旧事業の進行に伴いまして、その必要に応じて実情を調査して、資金運用部資金より融資する、こういう建前になつております。仕事の上には支障ないよう措置して参りたいという考えでございます。
  12. 田村文吉

    田村文吉君 時間がありませんから残念ながら打切ります。
  13. 江田三郎

    ○江田三郎君 私は昨日委員会におきまして外務大臣並びに総理にお尋ねしましたが、それは新木駐米大使がロバートソン国務次官補に、池田・ロバートソンの共同声明に日本政府は全面的に同意するという旨を伝えた、こういう外電が新聞にございましたので、その点についてお尋ねいたしましたが、私どもが了解できるような答弁がございませんので、改めて総理に御答弁をお願いするわけでございます。  その前にちよつと申上げておきたいのは、最近成る新聞に、国会の憲法論議というのはうそクラブの傑作集だというような皮肉がございましたが、誠に戦力でない軍隊、こういう言葉を聞いておりますというと、この予算委員会もまるで青木先生のおられるとんち教室というような感じもないわけではないのでありまして、こういうことでは全く国会の権威が保たれない。憲法というものがただ一部の文明人の玩具になつてしまう。国民の気持の中に知らず知らずの間にやはり国会を軽視し、再び独裁政治の芽生えというものが出て育つて行くという、誠に憂慮に堪えん事態が出て来るわけでありまして、政府としても本当に民主政治を守つて行く、こういうお気持で一つ、妙に知らぬ、存ぜぬ、或いはとんち教室的な答弁でなしに国会会を通じて国民政府の所信を堂々と知らしめるという気持を以つてお答えを頂きたいとたいと思うのであります。  そこでそういう点から、私前提といたしまして、まず第一にお尋ねいたしますのは、新木駐米大使が池田・ロバートソン会談の共同コミュニケに、日本政府は全面的に同意である、こう伝えたというのは事実であるのか、若し事実であるとすれば、これは一体どういう意味を持つているのかということであります。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 仔細は外務大臣がお答えしたと承知しておりますが、新木大使をして同意の旨を伝えましたことは、共同声明そのものを認めるとか、認めないとか、同意するとか、同意しないとかいうことではなくて、共同コミユニケの中にある、又話合つたガリオアとか、防備の問題とかいうような問題について、東京において将来、今後更に話をしたい、正式の話をしたいという向うの希望に対して同意なりと答えただけの話であります。新聞にどう伝えられているかは責任を取りませんが、政府考えておつて米国政府に答えをしろと申したことの内容は、今申したようなことであります。
  15. 江田三郎

    ○江田三郎君 どうもただ東京で会談をすることを用意したというように言われますが、それでは新聞に出ているところの、共同声明に日本政府が全面的に用意した旨を伝えたというのは、これは誤報なんでございますか。これは共同声明に日本政府が全面的に用意したということは、その中に共同声明は、勿論東京で会談をするということだけでなしに、どういう問題について一般的了解に達して、そうしてそれについて或るものは東京で会談をすると書いてあり、又或るものは更に協議を続けると書いてあり、必要な手続を取ると、こういうように発表されているわけであります。その点は新聞の全面的同意ということが間違いなのでございますか。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 新聞に全面的に同意とかいうようなことがあつても、政府はそれに対して責任を取りません。今政府の申したこと及び私が申したこと、及び外務大臣の申したことが新木大使に対する訓令の内容であります。
  17. 江田三郎

    ○江田三郎君 私は、総理はどうかすると、直ぐ怒つてしまわれるのでありますが、これは先ほども申しましたように、本当に総理が或いは現在の吉田内閣というものが、民主政治を守つて行かれるというのならば、妙に怒られたり、知らん存せぬということでなしに、もつと国民の前に十分政府考えていることを知らしむべきだと思いますが、少くとも共同声明に日本政府が同意したということになると、ただ単に、誰が常識考えましたところで、これが東京で会議するということだけでなしに、共同声明に書いてあるところのいろいろな問題について同意されたとか思えないわけです。又仮に東京で会談をするといつたところで、それでは総理にお尋ねいたしますが、その会談の前提になる池田・ロバートソン会談の共同コミュニケに書いてある一般的了解に達した、そういう条件を基礎にして東京の会談をなさるのか、その点はどうでございますか。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) しばしば申すようでありますが、池田特使は日本の立場を説明し、米国の立場を聞き、互いに両方の間の立場がわかつたというだけの話でありまして、これが即ち了解に達したということでありましようが、日本政府として新木大使に、米国政府に申入れよといつた趣意は、今私が申上げた通りであります。
  19. 江田三郎

    ○江田三郎君 政府が新木大使に訓令をしたのは東京で会談をするということだけであつた、こういうことだと言われますが、その会談をせられる場合には、共同声明で書いてあろ一般的了解に達したということが、そういうことが条件になつての会談なのではないのでありますか。その点昨日岡崎外務大臣にお尋ねした場合には、岡崎外務大臣は、この共同コミュニケに書いてあることは、いずれも政府として日頃考えてあることなので、別に異存がないことであるから、閣僚の間で相談をして新木大使に訓令をしたのだと、こう言われまして、岡崎外務大臣の言葉で行きまするというと、少くとも昨日の本委員会での私との質問応答の限りにおいては、この内容をお認めになつた立場であつたと思います。その点岡崎外務大臣のおつしやつたことが違うのか、或いは吉田総理のほうで言われていることが、言葉が、なお私が聞き違えているのか、その点どうでございましようか。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が岡崎大臣からして今朝聞いたところの説明では、私の申すところと少しも違つておらないと思います。併しながら岡崎大臣の言つたことが、どこが違つているのか、これは岡崎大臣の気持がありましようから、岡崎大臣からお答えいたします。
  21. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私が昨日申したのは、あの共同コミュニケに現われている池田特使の考え方は、従来の政府考え方と殆んど違つておらない。併しながら共同コミュニケの内容について、あれは両方の意見を開陳したものが出ているのだから、同意するとか、同意しないとかという問題ではないのであつて、要するに政府が取上げようとするのは、あの中で東京で会談をやるか、やらないかということであるからして、政府としては東京で会談をやるという意向を示したということでありまして、共同コミユニケの中身は同意するとか、しないとかということと違うのであります。併しそれは決してあの池田さんの意見に反対であるとか賛成であるとかというものではないのですけれども、そういう取上げるべき問題ではないと私は思つております。
  22. 江田三郎

    ○江田三郎君 これは昨日の委員会での質問応答を外務大臣はもう一遍思い起して頂きたいと思うのです。成るほど外務大臣はこの共同コミュニケというものは何ら協定に達したものではないのだとおつしやいました。併し協定に達したものではないけれども、少くとも防衛力の増強の問題について、或いはMSAの五百五十条の農産物の供給の問題について、或いはガリオアの問題について、中共貿易の問題について、又更に外資の導入について、そういうことについては相方の一般的了解に達したということが、この内容にははつきり書いてあるわけです。この一般的了解に達したということが基になるのかということの質問に対しまして、外務大臣のお答えは、ここに書いてある一般的了解は、これは、取極ではない。その通りです。併し一般的了解というものは日頃政府言つていることであつて、何ら政府の方針に反するものでないから、閣僚の間で相談をして、これなら差支えないということで訓令を発したと、こうはつきりおつしやつたわけであります。今の御答弁とは違うと思います。
  23. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は言葉尻をああ言つたこう言つたとは、時間がありませんので深く明しませんが、要するに私の申したことは、関係閣僚と相談した、これは申しました。そうして東京会談を開くことに異存はないということを言つておる。なぜかと言えば、例えばガリオアの問題ならば大蔵大臣の所管の事項があります。又小麦の買入れなら農林大臣の所管の事項がある。又防衛力の漸増ということになれば保安庁長官の所管の事項もありまするから、こういう問題について、東京会談することに差支えなきや否やということについては、当然関係閣僚の意向を徴しますけれども、併し例えば、この一般的な意見の交換の結果、お前のところはそう言え、俺のところはこう言うということがありましても、これは追認するとかしないという問題には私はならないと思う。要するに政府として取上げるのは、東京会談を開くか開かないかということなんです。それは今話を進める、こういうことを申したのであります。
  24. 江田三郎

    ○江田三郎君 もう一遍総理にお尋ねいたしますが、総理はただ東京で会談を開くということだけを訓令したんだ、こうおつしやいますが、それでは一つ問題を変えて、あなたの特使である池田さんが、ロバートソン国務次官補と会談をなさつて、そうして共同コミュニケとして発表されたことについては、これは吉田総理としては同意をなさるわけでございますが。この共同コミュニケの内容については、総理としては別に御異存なしに同意をなさるということでございますか。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 池田特使に対しての私の希望は、日本の立場を説明しろ、アメリカの立場を聞いてこいと、お互いに両方の立場について了解に達し得るように話して来てもらいたい、これが私が池田特使に頼んだところであります。而うして新木大使に申したのは、今岡崎外務大臣から言われた通り、その話題に上つた問題、ガリオアその他の問題を東京において米国政府と更に公式に交渉をし、若しくは協議をすることに異存がない、こういうことを申したのであります。
  26. 江田三郎

    ○江田三郎君 私がお尋ねしていることをお答え願いたいと思うのでありますが、あなたは池田特使に先方と話合をすることを命じられた。そうして池田特使はあなたの命を受けて、こういう会談をされて、そうしてこの一般的了解に達した事項について共同コミュニケを出しているわけです。その共同コミュニケの内容というものについては、吉田総理は、或いは吉田個人かも知れませんが、あなたとしてはこの共同コミュニケとして発表された内容については御異存はなかつたのでございますか。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 吉田の特使として池田君が話された内容については異存はないと私は申しておるのであります。
  28. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して。そうしますと、自衛力の増強につきましては、なかなか重大な一般的協定に達していると思いますが、吉田総理が曽つてのように二百八十数名をお持ちの際には、吉田総理のお持ちの立場を貫くことができたかも知れませんが、二百一名の少数党内閣では、実際このコミュニケに出ましたものを実現されるには、他党との協力の何らかの方式なしには、議会運営ができないと思いますが、それは一体総理は他党との協力の方式をとられて、従来のお持ちの立場を大転換されても、ああいう声明を実現されるのか、連立方式をとつて行かれるのか。或いは主張を貫くために、もう一遍信を国民に問うと、こういう形で解散方式をとつて、これまでずつと内閣を組織されて以来とられた一貫した立場をとつて行かれるのか。節操を曲げても、従来の御主張を転換されて、それはもう不問に附して、自改連携というような形で、共同コミュニケの線を実現されようとするのか。従来の線を固くお守りになるために、国民に意思を訴えるという形をとつて、ああいう問題を具体化されるか、その点。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今後は今後のことでありますが、池田特使が申したことは、即ち私の意見変つておらないのであります。今後これをどうするか、いよいよ正式交渉が始まつて、東京京においてできた結果をどうするかということは、或いはお話のように解散によつていたす場合もあるかも知れません。併しそんな突き進んだ考えは、今持つておりません。
  30. 江田三郎

    ○江田三郎君 この内容について、総理としては異存がない、池田特使は自分の気持に副うてこの会談をし、正式コミュニケを発表したのだということになりますと、それなら私たちお尋ねしなければならんのでありますが、先ず第一に、この会談では自衛力の増強を認めておられる。併し先ほどの田村氏の質問に対しまして総理お答えのように、自衛力の増強については、国力の充実に応じて自衛力の増強をするのだ、ところが来年度の予算を組むに当りまして、災害復旧だけでも二千億円かかるということが本委員会はつきりしておるわけです。そういうときに、果して自衛力を増強するところの、日本に余力があるかないか、そういうことを無視して自衛力を増強をするのだということを、この共同コミュニケでは認めておられる。或いは中共貿易につきましても、中共貿易については緩和するということを政府のほうでは言つておられる。そうして今回各党の代表が中国へ渡つて五千万ドルの協定を結んで来た。そういうときに、今後高度の中共貿易の統制をするということは、これは逆行する行き方であります。或いはガリオアの問題につきましても、少くとも最初会談のコミュニケ草案に書いておつたところでは、この日本側草案によりますと、日本側代表団は、この問題はこれだけを取り上げて早く解決することのできないものであることを強調した。そうなつておりますのが、今度はこれを早期に解決するというように逆な方向ヘ行つて、少くとも日本の希望とは反したと、我々は考えなければならんわけであります。或いは又外資の導入につきましても、すでに火力借款そのものが国辱的なものと言われておりますが、それを、更にこの外資に好ましいように防衛その他を改めて行かなければならんということは、今の政府のとつている方針或いはこの国会で各議員もが要望している線とは相当つたものでありまして、この内容にあなたが同意だということは、少くとも只今私が申しましたような二、三の点を取り上げましても、重大な結果を持ち来たすことになるわけであります。日本の運命にとつて非常に大きな影響があるのでありますが、そういう新らしい方針を総理はこれからお認めになり、やろうとなさるのでありますか。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 質問の御趣意がよくわからないが、まあ第一に、池田氏にしても或いはロバートソンにしても、成る草案を持つて話をいたしたのではないのであります。両方とも双方の立場を話し合い、そうして双方の、例えば日本国力について、或いはガリオアの問題その他につきましても、日本国力として直ちにどうすることができないとか何とかいうことを話し合つたのであります。今後どういうふうに解決するかは、東京会談において初めてきまることであります。  又今お話のように、来年度の予算をどうするか、予算において増強する余地がないんじやないかと言われますが、先ほども申した通り財政計画はそのときの必要の緩急に応じて財政計画を立てべきものである。何々はできない、或いはどうしなければならんということは、これは来年の予算ができたときに御相談或いは御意見を承りますが、今日まだ財政計画が、来年の予算計画がまだ立つておりませんから、故に、できないとかできるとかということは財政計画全体からでなければ決定のできないことであると御承知を願いたい。
  32. 江田三郎

    ○江田三郎君 我々の見るところでは、この正式コミュニケの一般的了解の内容は、ただアメリカにおいて余つて始末に困つておる小麦をこちらは供給を受けるだけでありまして、ほかは全部日本が新しい義務を負うようなことばかりだと思うのです。更に私お尋ねいたしたいのは、最初日本側のコミュニケの草案に書かれてあつて、あとの正式コミュニケにはないのでありますが、日本側としては経済援助を要請しておる、そうして日本での買付けの増大と買付額の明示を要請しておる。ところがあの正式コミュニケにはそういうことがないということは、それらの日本側の要請というものは、この会談によつてアメリカ政府の意向として拒絶されたのでありますか、どうでありますか。
  33. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 我々は、この前も申上げました通り、MSAの交渉におきましても、防衛支持援助を欲しいものだという話をいたしておりましたが、今年は、予算関係上まだこれは実質的なところまで行つておりませんが、困難ではないかと思つております。その点では我々の要望は今年に限つては或いはできないかも知れません。又池田君の共同コミュニケにありますごときものは、恐らくMSAの五百五十条の小麦の買付けをした場合の売上金をどういうふうに使うか、こういう問題でありましようが、それがやはり一種の防衛支持援助のような形になるのかも知れませんが、これは東京でよく会談してみないとわからないと考えております。
  34. 江田三郎

    ○江田三郎君 結局今の御答弁を聞きましても、これは今経済援助を、MSAの五百五十条と同じだと言つておりますけれども、そうじやございません。少くともこの準案を読んでみると、そういうことでなしにはつきりとした経済援助です。そういうこちら側の要請というものは殆んど拒否されて、ただ余つている小麦だけをもらつて、そうして大きな義務だけを負うというような、こういう内容になつておると思うのでありますが、そういうようなことについて吉田総理はどういうお考えでありますか。
  35. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この問題も詳細は東京できめなきや、あれだけのことではわからないと思います。それがどういう形のものになるのやら、恐らく売上金の使途、例えば軍需品を買う金はこれだけ、或いはその工場に対する資金の融通というような、いわゆる防衛支持援助じやないとおつしやればないかも知れませんが、要するにそういうような種類のものが幾らというようなことになるんじやないかと思います。あの共同コミュニケを見ますと。併し詳細は勿論東京で話してみなければわからないと思います。
  36. 江田三郎

    ○江田三郎君 アメリカ側からこの会談の中において、三十二万五千とか或いは三十五万という日本防衛力について、具体的な要請があつたのかどうか。
  37. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) そういうことはないと確信いたしております。
  38. 江田三郎

    ○江田三郎君 私どもこの会談の正式コミュニケに政府が同意されたということは、只今の質問に対する政府お答えでだんだんはつきりして参りましたが、ただ単にこれは東京において会議をするということだけではございません。そうじやなしに、この内容というものについて全面的に同意されているんだということがはつきりして来ておるわけです。そこで、こういうようなこの日本の運命に大きく影響するような交渉というものを、どう考えましたところで、吉田個人の特使池田というような形でやられるというのが納得が行かないわけです。恐らくそうじやないのでしよう。政府は初めからこの池田特使というものを一つの、実質的には、形式的にはともかくとして、実質的には日本政府の代表とされて、そうして先方の国務次官補と会談をされて、ただ手続上国民をごまかすために、あとからこの内容の全面的同意というようなことをやつておられるだけでありまして、最初から政府がやつておるのは日米の正式交渉じやないのでありますか、実質的にはそうなんじやないのでございますか。現に外電の多くは、会談を日米会談、そう受取つている。更にこの正式のコミュニケに、或いはその交渉の過程において外国の反響を見ますというと、はつきりとこれは日米会談ということを言つているじやありませんか。それは政府のほうでごまかしているのではありませんか。そうして一方においては、この国会において、そういうものは個人的なものであつて、発表の限りでないと言つておきながら、それと殆んど同じ時刻に新木大使に訓令を発して、正式代表としての実質を名実ともに備えるような訓令を発するということは、全く国会を軽視したやり方だと思うのでありますが、それについて吉田総理は一体どうお考えでありましようか。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申しておる説明を、真正面におとりになれば、政府はごまかしても何ともしておるのではないのであります。それをごまかしとお考えになれば、お考えは、あなたの解釈は自由であるが、政府としてはなすべきことをなし、正直に言うべきことを言い、又この会談正式の交渉でないということはしばしば申しておるのであります。私の特使として、互いに立場々々を話合うだけ以上の性質はないのであります。これはしばしば申した通りであります。私の説明をとるかとらないか――ごまかしとおつしやるならばごまかしでよろしうございますが、併し政府としてはこれ以上申すことはありません。
  40. 江田三郎

    ○江田三郎君 我々はこういう会談について、ただ政府のほうからは何の内容の発表もない。経過の報告もない。ただ外電だけを頼りに、日本の運命に大きく影響することを、外電だけを頼りにものを考えなければならんということは、非常に悲しまなければならんわけであります。本当に吉田さんが国会を尊重なさつて、そして民主政治を尊重なさるならば、この会談の経過、或いは先方の要求、或いはこちら側の考え方、こういうものを、或いは正式コミュニケに対しての政府の正式な意思表示、こういうものをはつきりと国会でお述べになる御意思はございませんか。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 彼我の間の話合いの内容についてはコミュニケに書いてあります。又そのためにコミュニケを出しております。これをごまかしとおつしやるならばとにかく、政府としてはこのコミュニケは、両方の問の話合いの煎じつめたところを書いておるのが、即ちコミュニケであります。国民或いは諸外国の、この会談に対する内容について承知いたしたいという考えもあろうから、それで池田、ロバートソン会談の内容をはつきり共同コミュニケとして発表いたしたわけであります。
  42. 江田三郎

    ○江田三郎君 会談の結果は、正式コミュニケだ、こうおつしる。その通りでありましよう。併し途中で、会談の日本側車案というものは出ているわけであります。日本側の要請として出ておることが、この正式コミュニケには抜けている。少くともその問題については……。我々はこれだけを読むというと、日本側が要請したことは、アメリカ側から拒否されたのではないかという印象を受けるわけであります。その他外電等を通じて、そういうことしか考えられないわけであります。若しそうであるならば、これは非常に重大なことなんでありますが、一体この会談の経過について、ただ総理はこの正式のコミュニケだけが、これが発表だ、こうおつしやいますけれども、我我としてはその過程において、非常に多くの問題について憂慮し、或いは更に事態の明白を求めざるを得ない気持になるのは当然じやありませんか、これは私は個人として申上げるのでなしに、国民のすべてがそうだと思います。そういうことをなぜ政府はもつと詳細に国会で御報告なさろうとなさらないのでありますか。国会の委員会なり或いは本会議におきまして、政府のこの会談の経過について十分な御説明をなさる御意思はございませんか。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) よく外電にこうであるとか、草案があるとかおつしやいますが、草案なるものは全然ないのであります。又コミュニケは、両国の間の、ロバートソンと池田特使との間の話合いを発表することが、只今申した通り、内外の誤解を防ぐに必要と考えて、煎じつめたところをこれに盛つているのであります。これ以上に政府としては発表いたす考えは持つておりません。
  44. 青木一男

    委員長青木一男君) その程度に……。
  45. 江田三郎

    ○江田三郎君 最後に一つ
  46. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単にして。
  47. 江田三郎

    ○江田三郎君 簡単に申します。そういうようなことをおつしやいますというと、一体日本におつて日本のことがわからない。日本の国会において日本の国政のことがわからない。アメリカに行かなければわからない、外電を見なければわからない、外電もどこまで本当かわからない、これでは一体主権は誰にあるかということです。主権は日本にあるのか、主権は在民なのか、主権は在米なのかということを言わざるを得ないのでありまして、もつと政府として、吉田さんが本当に民主政治を愛するならば、なぜ主権在民でなしに、主権在米のような行動ばかりとられるのか。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主権市民であるからして経過を発表いたしたのであります。又米国政府としても、コミュニケ以上には発表いたしておりません。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理は、政府は共同押明を発表したという御答弁をなさいましたが、ところが先ほどからのいろいろな話によると、この声明の内容自体についても、政府考え方等々ではないのだ、これはただ池田特使が一般的了解に達したことを述べているだけなんだというのが、これまでの御報告なんです。従つてこの共同声明なるものは、ロバートソンと吉田総理個人の使節である池田氏との共同声明ではあるかも知れないけれども、政府の共同声明ではないのじやないか。その点をどういうふうにお考えになつているか。従つて若し政府の共同声明でないのなら、政府はこの声明を正式に国会に、どういう性質のものとしてでもいいが、正式に国会に御提示をなさらなければならないはずなんです。而もそれに基いて、正式にここで、或いは本会議において御説明があつて然るべきだと思う。その点を御質問すると同時に要求をいたしたいのですが、どういうふうにお考えですか。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば申しました通り、ロバートソン氏と池田特使との間に話合つた結果を煎じつめて、要領を煎じつめて取上げたのがコミュニケであります。これ以上発表するということは、米国政府としてもロバートソンは個人ではないのであつて、ロバートソンとしては日本政府の質問に答えて、そして言われたのであります。で、今お話のように、例えば草案があるとか何とか疑問を生ずる。又生ずるようなことがあつてはいけないのであつて、声明を発表いたしたのであります。故に、日本政府としてはこれ以上に発表をする意思はないということを繰返して申しております。これで尽きているという考えであります。
  51. 曾禰益

    ○曾祢益君 関連。
  52. 青木一男

    委員長青木一男君) 曾祢君、関連でなく、自分の持ち時間でやつて下さい。(「関連が先」と呼ぶ者あり)それは認めません。
  53. 曾禰益

    ○曾祢益君 先達てもこの委員会におきまする総理に対する御質問の中で、私は池田特使のやつて来られたことについては、これは内閣として責任を負うべき拘束力はないのか。こういうことをお尋ねしたのに対しまして、吉田総理は、それは吉田個人だけを拘束するものである。こういうお話でありました。ところが昨日の電報によりすれば、これはあなたの大使がアメリカにおいて正式の新聞記者会見におきまして、これは政府訓令によりまして、コミュニケの内容に全面的に同意をする、こう言つて来たわけです。そういたしますると、改めて、私たちに対しては飽くまで個人的な使いであると言つておかれて、その半面におきましては、今度は政府を拘束するような約束をした、こういうことになると思いまするが、それは一体国会に対する、国会尊重の趣旨にもとるのではないかということを考えるのでありますが、吉田総理大臣の御答弁をお願いいたします。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 新木大使のやりましたことですから、私からお答えいたします。これは新木大使が……(「総理大臣だ」「総理大臣答弁しろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  55. 青木一男

    委員長青木一男君) 静粛に願います。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 新木大使のやりましたことですから、私からお答えいたします。(「国会に対して……」と呼ぶ者あり)新木大使が申しましたことは(「総理大臣」「総理大臣」と呼ぶ者あり)要するに東京で会談するということについて新聞に出したものと考えております。従つてこの点については何ら国会とは関係ないのであります。(「総理大臣なぜ答弁しないのか」「委員長注意を与えて下さい」と呼ぶ者あり)
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 新木大使が如何なることを新聞会見において言明せられたかということは、私は実は承知いたしておりませんから、外務大臣からお答えをいたさしたのであります。(「話が違う」「前の話と違います」と呼ぶ者あり)
  58. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の伺いたいのは、新木大使のやりました行動と、あなたの国会における答弁との食い違いを、総理大臣はどう考えられるかを伺つておるのであります。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は実は一昨日以来、休んでおつたものですから新聞を見ておりません。どういうことを新木大使が言われたか、私は承知いたしておりませんから、外務大臣からして、その事情説明するために説明を依頼したのであります。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 要するに今まで池田、ロバートソン会談をやつておりましたが、共同コミュニケが出まして、池田特使は総理の個人的代表でありますから、直接には政府に干与、政府には関係ないのでありますが、その中の東京会談をするということについては、政府としても適当であろうと考えましたから、今般新木大使に対し東京で会談することに異存なし、こういうことを申入れさしたのであります。それに対して新聞等の会見で何らか誤解のあるような表現を用いられたかも知れませんが、政府の意図はその通りであります。なお新木大使にもその事情を問い合わしておりますが、恐らくその通りのことだろうと思つております。(「いい加減にごまかすな」「はつきりしろ」と呼ぶ者あり)
  61. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういたしますと、外務大臣の御答弁では、新木大使は訓令に違反した或いは訓令以上のことを大使が新聞会見において喋つた、その食い違いに対して一体総理大臣は如何に考えられるか。外務大臣のおつしやるところによれば、これは東京会談に引継ぐということだけが政府の正式訓令であつて、コミュニケの内容について政府がこれを裏書するとか、何とかという拘束はないのだ、こういうことを言つておられるのです、その点について総理は如何にお考えであるか、具体的に御答弁を願いたいのであります。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今外務大臣から説明せられた通り、若しも食い違いがあれば、どういう事情であるかということを問合せ中でありますから、その返事が参つてから答弁をいたします。
  63. 曾禰益

    ○曾祢益君 仮に外務大臣及び総理大臣言つておられることと大使の行動とが違つた場合には、これは如何なる措置をとられるか、総理大臣に伺います。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 違つたことの事実が明らかである場合には考えます。善処いたします。(笑声)
  65. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣は、内容的には政府が同意を与えたものではない、併し実質的には政府考えと共同コミュニケの中で池田君が、言つたこととは同じである、こういうふうに言つておられるのでありますが、そうしますと、実質的にはこの共同コミュニケの内容は政府の方針である、従つて政府みずからの方針であるから、この共同コミュニケの内容は今後の東京会談における政府の態度を拘束するものだ、かように考えてよろしいかどうかを総理に伺いたいと思います。
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) しばしば申しておる通り、同意を与えたということは、東京会談についての同意を与えたのであります。併しながらコミュニケにおける池田特使とロバートソン氏との話は、池田氏が私の特使として話しておるのであります。政府の特使ではなく、代表者としてではなく、吉田個人の特使として話しておるのであります。而してその話したことについては、私は同意をすると申しておるのであります。政府として同意をいたしておることは、東京において会談する今後の懸案について協議することについて同意を与えたのであります。(「明瞭」と呼ぶ者あり)
  67. 曾禰益

    ○曾祢益君 その点は、仮に東京会談で継続してやるということだけが政府の辞令であるといたしましても、吉田総理としては、あなたの使いがやつて来られたことはあなたの意見なんでありまするから、即ち共同コミュニケの内容はあなたを拘束する、この点を私は伺つておる。そういたしますと、これは非常に重要な事項が閣議にも諮られない、国会に対してはあれは個人的な意見であるから説明の要はない、而も実際はあなたの使いとして政府の意図を酌んだ一つの大きな政府の立場を内外に示した。対外的関係から言えば、これは約束であります。対内的関係から言えば、これは我々国民を拘束する正式な力は国会でなければないでしよう。政府としてはそういう拘束力を持つた一つの約束をしたも同然である、こういうことになるのです。果して然るならば、何故に少くとも政府が東京会談を正式にやるということを訓令でやつて、大使をしてそのことを言わしめた以上は、あなたみずからがこれだけ重大なるあなたの方針、即ち内閣の方針であろうと思います。仮に閣議に諮られなくても、総理大臣個人の政治的見解というものはあり得ない。内閣の方針がこういうような防衛問題、或いはガリオア問題、或いは中共貿易問題、外資導入問題等々の重要な問題については、政府の方針を何故に先ず国会を通じてあなたはこれを国民に発表されようとしないのか、この点が私たちにはわからない。あなたのお考えはつきり伺いたいのであります。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 池田特使が話されておりますことは、即ち私の特使として話しておりますことは、従来私がしばしば申しておることとを、ただアメリカにおいてロバートソンに対して日本の立場として話しただけであります。何ら約束をいたしておりません。お互いに立場を話合つた程度で、こういう約束をした、ああいう約束をした――その約束は今後東京会談においてなさるべきものであります。
  69. 曾禰益

    ○曾祢益君 この共同コミュニケの内容が国際的な約束、いわゆる条約的の効果を生じようとは、これは我々でもさような法律論をしておるわけではありません。対外的に正式な約束でないことは、これは当然であります。併しこれは国民に対してあなたは、これが政府の方針であるということを未だ曽つてかかる方針を明示されたことがありますか。例えばガリオアの問題を東京でやる場合でも、或いは中共の問題につきましても、なかんずくこの防衛問題について政府の今までの方針は、何といつてもこれはアメリカ軍が駐留しておるのだから、日本防御というものは、いわゆる保安隊程度でやつて行くのだ、間接侵略に対抗するものを持つておればよいのだ、こういう方針でやつて行く、アメリカ軍の撤退に呼応して防衛計画を増強するということは、未だ曽つて国民に対してお示しになつたことはございません。従つて今までの、国民に対して示した政府の方針と同じであるというようなことは、これは全くの詭弁に過ぎないということは、これは明瞭だろうと思います。従いまして私はやはりこれだけの重要な政府の方針というものは、外国との話合いをするのもよいでしよう。併しその前に国会にこれをなぜお示にならないか、国会の末期になりまして、それまでは池田、ロバートソン会談は、これは個人的な使いのやつたことであるから、これは説明の限りにあらず、たまたま新木大使が、いわば失言したようなことで以て、それをきつかけとして、国会に、あなたはこの際むしろ進んでこれらの重要問題についての政府の見解を、この交渉の経過と共に、これを御披瀝になるほうが正しいとお考えにならないのか、少くとも先ほど同僚江田君から言われたように、決してコミュニケの内容について更に発表しろなんということを江田君は言つておられない。衆議院において、或いは私は知りませんが、政府は進んで本会議において説明されるというふうに聞いております。それならばなぜ本院において同様な措置をとられないのか、制限されたこの終末期になつ予算委員会におきまして、私たちはこれ以上ほかのかたにも御迷惑をかけて論議することはできませんが、内容一つ一つについて当然に国会が続く限り、或いはこれを延長しても、十分に質疑応答するのが正しい憲政の行き方ではございませんか。もう一遍総理大臣の御答弁を願いたい。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のしばしば申す通り、例えば防衛計画の保安隊の増強とか漸増ということは、常に議会においてはしばしば申しております。又常に日本の実力が、日本国力が許すならば、国みずからが、日本国みずからが国の防衛に当るというようなことも申しております。又ガリオアの問題は、これは債務と心得ていると申して他の機会においてはしばしば申したことを池田君が日本の立場として説明をしたのであります。そのほかに何らの変つたことがないのであるから、池田君の申したことは私には異存がないと申すのであります。又特にこの際、このコミュニケに関連して、そうして議会において説明するだけの必要を私は認めないのであります。国会を軽視しておるのではないのであります。併しながら国会において、その他において、日本政府とし若しくは私として考えておることを、防衛問題についても、ガリオアの問題についても、その他の問題についても述べておることを池田特使が述べたというだけであります。而してその述べた内容はコミュニケに書いてあるのである。そうして同意したというのは、東京において懸案について協議するということを同意したのであつて、私は特にこの際、議会において発表すべき何ものもないと考えるのであります。
  71. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今総理からいろいろお話がありましたが、これは何度言つても、今まで的確な政府の方針を示したことがない、外国に対しては、これだけ明確な線において方針的なものをこれにはつきり示されたわけでありまして、今までの殆んど何と言いますか、片言一隻句的なものと、ここにはつきりした方針というものとの間に、私は食い違いがある。従つて私は総理の御答弁では満足できません。併し時間がございませんので、これは本会議におきましても是非ともこの質疑を継続すべきだということの意見を申上げまして、私の質問を終ります。
  72. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は与えられました時間が十分間でございますので、非常に簡単にお聞きをしなければならんことがあるのであります。実は、私今回幸いに外国を見て廻る機会を得ましたわけでございますが、私が各国を歩いて参呈して、そしていろいろと自分で調べてみますると、まあ大ざつぱに申しますと、各国事情でいろいろの点がございますが、併し自由主義国家群は、大体マーシャル・プランその他MSAの継続した援助によりまして、経済はやや好転して参つておる。場合によれば戦後最良の時期の状態になつておる。そうして国防問題も努力して参りまして、これは予算の立て方、財政状況が違いますが、ともかくも、一般予算におきまして三〇%以上の国防費を使いつつ、鋭意努力して参りました。成るほどイギリスにおいては三カ年計画を労働党のときに立てました。三カ年計画が四カ年計になり、今日の新聞報道によりますと、フランスも又一ヵ年延期というふうな状態でございますが、先ず各国考えておるところは、一応国防計画も樹立して、国家もやや全体主義国家群の脅威から免れ得るような安心感を持つておるようであります。と同時に、どこの国も一国で一国の防衛をいたそうという考えはない、集団安全保障態勢というものによつて、この国の国防を維持しようとしてはおりますが、これらにつきましてもやや完成の域に近づいておると申しますか、無論まだNATOその他を批准いたしておりません状態の国もあります。その度合いも違いますが、併しややそういう点が、そう行き得る基盤的なものが完成した。又社会的にも社会保障制度相当財政上占むる地位が大きいのでありまして、社会的安定にやや到達しておる。これと日本との状態考えますと、実はよほど違つておるのじやなかろうか。政治的に見ましても、安定しておるとは言えない。又経済的に見ましても、最近の日本経済は消費面が非常に多くなつて、そうして実際に生産面に参つておる点は少い。又その点から来る社会的な不均衡というふうなものが、決して社会自体にいい影響を与えてない。而も、今後総理大臣の言われるように、国力に応じて漸増的に防衛力を増して参る。そうして幾分でも国力に応じて自由主義国家群と協力しようというような点を見ますると、どうも甚しく懸隔があることを考えざるを得ないのであります。私は実はこの問題を今度改めて総理大臣に申上げるわけでございません。実は平和条約、安保条約ができましたときに総理大臣に……、今後独立国家としてその実質を備えて行かなければならない、又その実質が備わらなければ、日本世界的な信用と信頼、尊敬とを勝ち得ることは、到底困難だと思うのであります。その点につきましても、私過般丁度ドイツの政変後、ドイツにおりましたが、ドイツの位置と比較いたして見まするときには、相当国際的に懸隔がある。無論ドイツ自身の国民の努力、その上に立つところの政治というものであるということは十分考えられるのでありますが、丁度私は帰りまして、この天災によるところの水害、冷害の甚しい社会を見まして、特にむしろこの際に我々自身は、これを契機としてもう一ぺん考え直して見るときでないかというふうに考えますから、今の政治経済、社会の状態はよほど懸隔があるように考えられるのであります。こういう際に総理大臣は構想を新たにして、諸政を一新する方針の下に、新らしい計画を樹立せられまして、そうして国民に訴えるという御決心をなさるときでなかろうか、こういうふうに考えますが、その点に関しての総理大臣の御所見を伺いたい。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答をいたします。私もお話の点については御同感であります。ヨーロッパ或いはその他の国が、マーシャル・プランその他によつて機械が近代化するとか、或いはすべての社会の設備がよくなつたとか、或いはいろいろなことを聞きますが、日本の場合においては終戦後或いは敗戦後のときを受けて、或いは国土の保全についても十分になつておらん。又人心その他にも安定をしたるがごときせざるがごとき、これは誠に困つたことだと思つております。故に諸政の改革と言いますか、一新ということは、これは是非ともいたしたいと思います。殊に独立後の日本としていたさなければならんこと、又法制その他においても改めなければならんこと、或いは経済力等においても、生産が増加したようでありますが、一面に退化した方面もあり、諸問題について真に真剣に考えるべきときだと私は考えておるのみならず、政府としてもそういう考えから、この次の予算においては相当考え直した考えで以て予算を組みたいと、こう考えております。
  74. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は総理大臣のおつしやいました言葉そのものについては、全然同感の意を表するので、結局ここまでは私はみんなが同感だと思うのであります。要するにどこまでそれを本当に実を上げるかという問題であると思うのであります。一例を挙げれば、私は日本の物価の上ることに非常な警告を大蔵大臣等に発して参りましたが、その後決して直つて来ない。大蔵大臣はこれを是正するんだと言われるが、実際においてはもうすでに輸出価格と国内価格とは変つて参つておる。為替相場は堅持するんだ、物価は下がる、決して上るほうに向わないで、下るほうに行つて、国際的な物価のさや寄せをして行く方向に行かなければならない、誰もこれは知つているわけでありますが、実際の施策は伴わない。今度の災害予算に当りましても、その所要財源を実に楽なほうに求められている。むしろこういう災害のときには本来既定経費について厳重な比較検討をして、そうして民政の安定に寄与さるべきものだと私は痛感いたしますが、併し総理大臣、時間もございませんし、総理大臣が今日本は転換期に立つているんだ、この際諸政を一新したい、次の予算において見てくれというお話でございますので、一応その程度に留めたいと思います。  第二の問題で特に総理大臣の御考慮を煩わしたいということを申上げたいのであります。先ほど緑風会の田村君から憲法改正に関する御意見があつたのであります。これに対する総理大臣の御答弁も私ども従来しばしば拝聴して参つた程度であるのでありますが、私は殊に憲法九条の改正につきましては、法律論としては実は政府考え方と違つたものを持つております。併し今度度の国会で大体私は政府が従来答弁して来たところでは行きつくところまで行つたと、大体政府のとつている立場としては行くところまで行つたと、こう考えるのであります。併しここまで参ります道程で、従来の御答弁のうちには、それは質問するものによつて成る程度政治的にお答えになることもある、場合によれば法律的な見解が政府の一部から述べられることもある、実は私はそういうふうな点から見ましていろいろ考えておにりますると、どうも国民はそのときそのときの御説明によつて正確に把握することは困難であろう。私のは田村君の言う憲法改正の一歩手前でございます。それについては別な機会に申上げたいと思いますから、今日申上げませんが、私はこの際に、政府が親切ならば、今まで永い間殊に独立後この問題については論議が多かつたのですから、この際、法律論を政府として統一したものを御発表になつたらいいと同時に、法律論をそのまま政治に持つて行くのがいいかどうかという問題は別に考えられます。法律論としてはこう考えられるが、政治論としては、更に法律論で許されろという考え方よりも、こうしたほうがいいんだというような意見も、政治論としては出て参ると思いますが、それらについて統一した見解をこの際御発表を是非願いたい。これをお願いしたいのでありますが、総理大臣の御所見は如何でございましようか。
  75. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お店の点は十分考慮いたします。政府として今日までとつて来た法律論の上においても矛盾した点があるようにも考えられないのでありますが、若しこの点は矛盾しているじやないか、この点はもう少しはつきりしたらよかろうというようなお考えがあつたら、お承りいたしたい。
  76. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう持時間がありませんそうですから、極く簡単に……。実はそれを言うと長くなるのですが、総理大臣がここで従来どう言つた政府がどう言つたといいますと長くなるのですが、少くともその点は別にいたしましても、時と場合によつて、質問する人の表現の仕方、それに対する応答の仕方がその場合にある。それにいろいろな色が出て参る。ですからむしろそういう点だけでもこの際払拭して、重大な問題ですから、統一した見解をお出しになるほうが私は遙かに政治としてはいい、こう考えますので、特に御考慮を煩す次第であります。
  77. 江田三郎

    ○江田三郎君 議事進行……。先ほど池田、ロバートソン会談の問題につきまして私質問いたしましたが、私としましては非常に不満足でありますし、又同僚曾祢君も同じように不満足である意思を表明しておるわけであります。この問題はこれは新らしく発生した問題なのでありまして、当然この問題をもう少し十分に審議するために別な時間を与えられるべきだと思うのでありまして、こういう問題を考慮しないで、理事会のほうであらかじめおきめになつておりました各党の持時間というものを、更にこの池田、ロバートソン会談の内容をはつきりさせるために、もう少し新たな時間を与えて頂きたいのです。そのために一応休憩されまして、理事会を開いて協議されるよう動議を提出いたします。
  78. 青木一男

    委員長青木一男君) 堀木君に対する答弁を求めます。
  79. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お言葉は誠にありがたいお言葉だと存じます。ただ私どもの態度といたしましては、できる限り国会を通じて国民のほうに訴えようという建前でやつておりますので、その関係から申しますというと、いずれ又例えば戦力がないのに軍隊があるというのはおかしいというのは、この次の保安庁法改正というような際に十分御説明申上げ、意のあるところを尽す機会もあると存じております。その他の方法によつても、ということについても又考慮すべきこととは思つておりまするから、十分考えたいと思つております。
  80. 永井純一郎

    永井純一郎君 議事進行について。私も只今江田君から動議がありまして、これに賛成をしたいと思いまするが、先ほど来の質疑応答、特に総理答弁を聞いておりまして、日米の交渉についての事態は少しも明らかになりません、私どもが聞いておつて……。そこでこの交渉を基礎にして私は将来これから先の日本の外交が展開されて行くと思いまするし、丁度今参議院では予算審議をやつておるのでありますから、これに対する特別の時間の枠をとつて予算は早く私どもは通過さしたいと思つております。正直に申上げて、そう思つておるが、この問題について特にはつきりした質疑応答をもう少しやるべきだ、こう考えます。そこで江田君が今申しましたような理事会を開いて硬、いて、そうしてこのことを相談をして頂きたい、こう思います。
  81. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 あとの時間も、一応堀木さん以下二人ほどあるのですが、これも僅かの時間でございますから、このまま継続して、やはりこれはこれとして予定通りつて、そうして一応終つたあとで、今の動議の問題は御相談する、理事会において御相談するということにして、このまま継続させて頂きたいと思います。
  82. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長といたしましては、今高橋君から言われたように一応予定の通りすませまして、但しこれを以て質疑の打ち切りにせずに、理事会を開きたいと思います。さよういたしたいと思います。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでの質疑を通じまして、災害予算をめぐる問題の焦点は極めて明らかになつたと思うのです。即ち非常な未曽有な災害を受けて、そうしてこれに対する予算措置が不十分である、このことは質問する者の意見もそうですし、政府のほうの答弁も、やはり十分ではない、こういうことは認められておるわけです。この不十分な点がどこから来たかと言えば、結局これまでの論議を通じて防衛費と民生費との競合関係から来ていることは明らかになつたわけです。政府災害や算をここで多く組むと、結局こホは又インフレになつて来る、そこで非常にこの不十分な災害予算を組むに当つて、インフレにならないような措置を講ずるために民生費を先ず削減しておる、公共事業費或いは又食糧増産費等を五十九億も削つておる、又住宅金融公庫の出資二十二億も削つておる、民生費を削つておる、又税金の自然増収、これは殆んど勤労者の自然増収を求めている、百七十億の自然増収を求めておる、この結果として所得税の徴収の仕方は非常に不均衡になりました。第一次補正のときには、所得税のうち勤労者の所得税は七割であつた、申告納税者が三割であつたのを、今度この補正措置によると、勤労者所得税が八〇%になつておる、そうして申告納税者が二〇%、非常に勤労者ニ税金のしわが寄つて来ているような財政措置になつておる、こういうように結局インフレを回避する、そのための予算措置でみんな民生費が犠牲になつておる、これは結局防衛費にくわれる、再軍備費にくわれるということであつて、問題の焦点はここにあると思うのです。ですからどうしても民生安定のため、国土の荒廃を防ぐため、災害予算を十分に計上するためには防衛費を削減いたさなければならん、こういう結論に到達することははつきりしている。それだのに防衛費がなぜ削減できないか、私はこの前総理に質問いたしますと、総理防衛費は削減できない。むしろ緒方副総理防衛費はだんだん殖えて行く、防衛力を漸増しなければならんから、殖やさなければならんと言つている。一体どうして防衛費を殖やさなければならんか、これは結局国際情勢から来ている。ですから国際問題、外交的な問題を解決せずして民生の安定はできない。外交を調整して国際的問題を処理することによつて防衛費を削り、そうして民生安定、国土の荒廃を防ぐよりほかにない、はつきり結論は出ているのです。従つて私は総理にお伺いいたしたい。池田、ロバートソン会談の内容を見ても、日本を侵略の危険から守るために日本防衛しなければならん、侵略の危険が今どこにございますか。この点私はお伺いしたい。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 侵略の危険がないとあなたは断言せられるのでありますか。ないとならばあなたはどこでないと思うのか。それを伺いたい。(笑声)
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が質問しているのですから、総理は先ずお答えになつて、それに対して私は又答えます。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あなたのお等えがあれば、即ちそれが私のお答えになるであろうと思いますからして、あなたのお答えを聞きたい。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実は総理、私は十分しか質問時間がないのです。ですから一応総理の御見解を承つて……。我々子の予算を見て、いろいろやはり考えてみたのでありますが、どうしてこの災害予算を十分に計上し、そうして国土の荒廃を防ぎ、民生を安定するにはどうしたらいいか、いろいろ考えた末、結局防衛費を削らなければならん。併し侵略の危険があつたら削ることはできないでしよう。併し侵略の危険がないなら、これは削れるのです。また積極的な努力によつて、イギリスその他はソ連その他の国交を調整することによつて戦争の危険を防ぎ、そうして防衛費を削減しているじやありませんか。それによつてそれを民生費にあてる、これよりほかに方法はない。ですから侵略の危険があるかないかということが重大な問題であつて、侵略の危険がないということがはつきりすれば、財政経済政策もはつきりここで性格が平和的予算に純粋えることができるのであります。従つてこれが一番私は重要な焦点だと思いますので、ここで侵略の危険があるかないかということを明確にすべきだ。ないとなつたら思い切つて防衛費をここで削減すべきである。そうして災害費にあて、民生費にあてなければならん、こういう意味でお伺いしているのであります。総理の御見解を承つて、それに同意できれば、それでよろしいのであります。同意できなければ、私も理由を述べまして、それで総理から御批判を願いたいと思つているのであります。
  88. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 防衛の必要はないという御意見を伺つて、自然政府としては考えられましようが、今お話のようなことを私が申上げたところが、ただ議論になるだけであります。政府としては防衛は必要である、こう確信して疑いません。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこがやはり非常に重要であります。防衛は、日本が侵略の危険から防ぐための防衛は私も必要と思います。併し今日本で問題になつている防衛は、果して日本を侵略から防ぐための防衛でありましようか。よその国がどこで今侵略して来るでありましよう。結局今日本で現在問題になつている、池田・ロバートソン会談で問題になつている防衛ということは、アメリカとのいわゆる日米安全保障条約に来いて、アメリカの対ソ防衛の一環としての防衛である。日本民族の防衛ではないのです。従つてこの点ははつきりしなければならんと思う。私も今度中国へ行く機会を得まして非常にいい勉強になりました。中ソ友好同盟条約の実体というものを私は見て参りました。ソ連は実質的に中国に建設資材をどんどん供給しております。軍事資材じやありません。官庁ダムの建設にトラックも援助し或いは動力も援助し、また家畜も援助しております。新疆省の開拓にはたくさんのトラックが援助されております。決して軍事的援助ではないのです。そのために中国の建設が進んでいるのです。そうして中国に行つてみると、中国は小学校から平和教育をやつているのです。総理が行かれる、そういう立場にあるならば、ぜひ中国に行つて見て来て頂きたい。中国は絶対に日本と戦争するような状態にはありません。私はこの目で見、この耳で聞いて来たのであります。従つて中国は侵略することはありません。日本防衛費を今ここで削つても決して日本が今侵略されることはない。私は確信するのです。そういう意味で総理はここで一つ、先ほど堀木委員も言われましたが、外交の調整について、やはり根本的に考え直さなければならん段階に来ているのであります。そうでなければ日本財政経済は破綻に頻します。貿易上もそうであります。どうかこの点総理は十分侵略の危険がないのであるから、日本防衛については、今アメリカの影響下において防衛する問題と、日本が別に日本の民族を防衛する問題とは、これははつきり私は、区別すべきであると思う。そこで総理に伺つた。で、私は総理に更に最後に伺いたいのは、総理はこの中日関係の将来については、一体どういうように考えられるか、このままの状態で一体いいのか、この点についてお伺いいたしたいと思うのであります。
  90. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答をいたします。中国との関係は成るべく善隣の意味合いから申しても、又同文民族の関係から申しても、友好な関係におきたいと思います。併しながら、現在例えば同胞引揚の問題にしても、日本政府との交渉は困る。こういう工合であります。手のつけようはないのであります。希望はいたしております。親善なることは希望はいたしておりますが、現在は手のつけようがない、こうお答えするよりほかはない。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは総理の御努力が足りないのであつて、やはり総理は成るべく友好関係を進めたいとお考えになつている、これは私は総理からそういう御答弁を聞いて非常に満足いたします。併しそれにはやはり努力が必要でありまして、中国は日本との親善を非常に望んでおります。決してもう日本と戦争するなんということは、本当に秋毫も考えておらないと思う。それにはアメリカと池田・ロバートソン交渉みたいな、こういうことをして、それでどうして中国との友好が前進できるでありましようか。従つてその点は私は非常に矛店していると思うのです。  そこでもう一つお伺いいたしたいのは、我々この日中貿易促進議員連盟は、今度中国に参りまして新らしい貿易協定を結んだのであります。我々は是非これを具体的に、ただ名目的な協定でなく、実質質的に進めたいと思つております。国民又要望しております。これ又是非実現したいと思う。それにはどうしてもやはり政府において日中貿易についての、十分な理解がなければなりませんので、総理はこの日中貿易協定をどういうふうにお考えになつておるか。又我々は互和平等の立場から中国の人民政治協商会議代表をどうしてもお迎えしなければならないと思つております。今度は実に至れり尽せりの国賓待遇、皆受けたのであります。そうういう意味でも迎えなければならんと思うのであります。この点については、昨日、岡崎外務大臣場、副総理にもお伺いしたのであります。重ねて総理の御答弁を煩わしたいのであります。
  92. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申す通り、中国との間の関係をよくすることについては全然異論はないのであります。努力せよと言われるのですが、我我は努力はいたしております。今後も努力は進めます。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 貿易協定を結んで参つたのです。我々議員連盟が、もう一遍、重要な問題ですから……。
  94. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その点は所管大臣からお答えいたします。
  95. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 私の意見総理意見とおぼしめしてお聞き取り願います。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと待つて下さい。通産大臣の御意見総理の御意見と確認してよろしいわけですね。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 結構です。
  98. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 昨日も申上げましたように我々といたしましては、国連の協力の範囲内におきまして、できるだけの日支貿易を進展さして行きたいという考えでやつておりますので、先般の協定は実現できるように推定いたす、こういう考えでおります。
  99. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 予算問題につきまして、予算に対する基本的な態度は木村氏と同じ考えを持つておるのですが、お伺いいたしたいのは、予算効果を大ならしめるために、この際中央地方を通じまして税財政の根本的な改正をやりまして、補助金を大幅に整理いたしまして、地方に自主的な財源を与える措置をとることが何よりも必要ではないかという点について、お尋ねいたしたいと思います。国家予算は一兆億、地方財政規模は九千億、合計一兆九千億で、国民所得に対する割合からしましても、国民負担の割合からしましても限界に来ておると思う。そこで我々としましては、何とか国民負担を増大せずに、予算効果を大ならしめる措置を考えることが必要ではないかと考えるわけであります。そこで私は予算を分析してみますると、昭和二十八年度の予算の九千六百五十四億に対して補助金が三千八百九十一億で、殆んど四〇%近い額であります。地方財政九千億に対して地方税は三千億で、六千億というものは何らかの形で中央に依存しておるわけであります。こういう状態でありましたならば、特に地方財政としては中央からもらつた金だからというので濫費されることは、これはもう現実に見逃しがたい事実なのであります。私のいろいろな調査でも、小さい公共事業では大体四割のロスがあるわけであります。そこでこういう制度を根本的に改めまするためには、私が先に申しましたように、補助金制度を大幅に整理して、その代りに地方に対して強力な税源を与えることが必要ではないか。そうしなくては私はどうにもならんと思うわけであります。例えば私が全国の各県知事の交際費を調べてみても大体昭和二十六年度に四十六都道府県の知事は二億三千万の交際費を持つています。今年は三億からの交際費を使つて、一県の知事で一千万円以上の交際費を持つているのが六人おります。衆議院に出ています山口から出ている田中龍夫君は千五百万円の交際費を持つているのです。こういうことは中央から補助金を取るための一種の徴税費なんだ。どうしてもこういうことを改めるためには、そういうふうな措置が必要だと思いますが、来年度の予算編成において、そういう措置が必要だと思われませんか、それについてお伺いいたしたい。
  100. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。政府もその点については十分注意をいたしておりまして、又気がついておりまして、この是正に努めております。どういうふうにして実はこれを是正するか、地方制度調査会でありますか、或いは税制審議会でありますか等においても、すでに取上げられてこの問題は研究いたしております。いずれ結論が出ましたならば、これは次の予算に実現するようにいたしたいと思つております。
  101. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 地方予算が年々膨脹しておる事実は御指摘の通りであります。又地方予算の中に御指摘のような相当節減し得るものと見られる費用が多額にあることも御指摘の通りであると思います。但し財源等の問題もございまするので、中央からの交付金についての問題が、いろいろ中田さんのお言葉で言えば濫費的傾向を持ちやすいものであるから、従つて先に地方制度調査会でどういうふうにそれらの塩梅をすべきかということを調査して、これは一応の答申が出ております。更に今度租税制度調査会を、これは内閣に作りまして、昨日でしたか、一昨日でしたかの新聞にちよつと結論が出ておりましたが、あれはまだ正式のものではない、一委員が書いたものだそうであります。両三日中に正式な答申が出て来ることに相成つております。それに基きまして私どもよく税源等につきましても考えてみたい、かように考えており、大体今のところいろいろ弊害もありまするので、これらの点についてはこの際根本的に考えてみたい。特に御指摘になつた補助金、各種の補助金ですね、これには相当ロスのあることは私ども事実相当耳にしておりまするので、これらについては今、過日来も申しておるのですが、根本的に一つまあ何と言いますか、鉈を振つてみたいとでも申しまするか、検討した上で十分な措置を講じてみたい、かように考えておる次第であります。
  102. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 時間がありませんので、次に治山治水の根本対策として砂防と林道との均衡の問題についてどうお考えであるか。一松委員の質問に対しまして、砂防工事が災害防除の点から根本的である、このためには思切つた一つ予算的な措置をしてみたいということを大蔵大臣が申されましたのですが、そのこと自身は私は結構ですが、併しそれには非常に条件があると思うわけであります。それは戸塚大臣は、このたびの災害が非常に大きくなつたのは降つた雨が一度に土砂を伴つて或いは木材をすら含んで急に一遍に流れるからだ、だから砂防が必要なんだ、堰堤を作ることが必要なんだ、こういうことになつたわけであります。そこでそれは現象形態の一部でありまして、それも必要ですが、併しそれ以上に問題なのは、なぜ降つた雨が一度に土砂と木材を含んで流れるかというと、私は林道施設が足らないからと思う。それは、私の調査によりますと、民有林のすでに開発した地帯におきましては、現在の過伐度は昭和二十八年で成長量に対して二八五%です。木材の成長する蓄積に対して二八五%の、二倍半の過度の伐採をやつているのです。これが根本なんです。そこで植林が大事なんですが、併し植林はすぐ間に合いませんから、植林と同じ効果のある奥地林道と一般林道の林道網を完成することによつて、計画伐採をやつて、過度な便利のいい所を集中的に伐らないような措置をするということが、私は砂防と堰堤を作つたりすると同じような比率において大事だと思うのです。この点がところが従来我々が総司令部に折衝し、大蔵省と折衝しましても、それは林道を付けろと木材の価値が高まるのだから受益者負担でいいんだという原則によつて、この点が、砂防上或いは災害防除の価値が十分評価されない点が私は問題があると思うのです。例えば現在民有林の利用可能の未開発林でも、奥地が百二十万町歩、一般林が三百万町歩もあつて、現在二十億しか林道の予算がありませんが、それをもう少し割いて廻しまして、そうして林道網を完成し、計画伐採をできるようにすれば、私は予算効果は災害防除上の価値は非常に高いと思うわけですが、その点是非来年度予算の編成については、私は考慮し、研究の課題として頂きたいと思うのですが、大蔵大臣と農林大臣のこれに対する所見をお伺いしたいと思います。  更に時間がありませんので、二点。百五十七億の融資につきましてはいろいろ議論されましたが、手心一つで実際は出さないようにできるかも知れないと思います。併し大蔵大臣にお願いしたいことは、これが実際現実に必要であり、且つ不当でないということを十分お認めになつた際には、国会の意思を尊重するように、できるだけそういうような運用の方法を是非お願いしたいという点と、もう一つ、これはこのたび我々としましては給与べースの問題、裁定の問題、或いは駐留軍労務者の年末を控えての整理等の問題に対して、併せて一括してお願いしたいと思つたのですが、いろいろな関係からできなかつたので、速かに次期国会を召集して頂いて、これらの問題について国民の意思をはつきりする必要があると思いますが、政府は次期国会に対してどういうお考えをお持ちでありますか。その点お伺いしておきたいと思います。
  103. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 最初に、林道につきましては大体御意見私も御同感でございます。特に私は昨日申しました通り、本年から非常に巨額に上る災害復旧その他をやりまするというと、木材だけでも非常な多量を要するのであります。従つて林道の開発をいたしませんと、濫伐に陥りやすいことは御指摘の通りであると思います。従いまして特に来年度等一層この災害対策費は嵩んで参りまするから、そういうような工合で、その点は砂防と、砂防はまあ元でありまするから、砂防に重点を置くことは、これは当然でございまするが、林道もこれ又今のような、例えば一つのインフレ対策としても非常に必要だ、又日本の治山治水対策として、これは濫伐に陥らざるようにするために極めて必要だ、かように考えておるのでございます。まあ今度の例えば冷害対策などについても林道の費用が相当農業土木のほうで計上されておりますが、これなどはその一端でございまするが、これは十分今後とも農林当局と打合せの上に、こういつた案を具体化して行きたいと、かように考えております。  その次に百五十七億の今のいわゆる資金運用部などより融資する分でございます。この分につきましては、私が先に御答弁いたしました通り、これは私どもも誠意をもつてやります。ただ私はよく申しまするのは、必ず百五十七億出すかと、こう言われまするので、それはあの条件に一〇〇%はまるものであるまいということを申したのが、少し誤解を招いておるようでございまするが、これにつきましては誠意をもつてつて参るというように御了承して頂きたいと思います。  べース・アップ等の問題は、昨日も申上げましたが、人事院の勧告、それから又仲裁裁定につきましては、これは私どももそれぞれ人事院の勧告なり裁定なりを尊重することは勿論でありまするが、ただ今の裁定を実施するとなりますると、公務員の関係とか、或いはそれ自身の経理内容とか、或いは又運賃の値上げとか、或いは料金の引上げを伴うもの等もありまするので、彼此いろいろ検討いたしておる次第でございます。ベース・アップの問題は、全般としては七百三十億にも及ぶ大きな問題にもなりまするので、どの程度で予算措置をとり得るかということで各般の事情を検討いたしておる次第でございます。従いまして、例えば〇・五期末の手当の問題につきましては、私は過日も申しました通り、これは大体十二月上旬に開かれる通常国会の劈頭出し得ると思うのでありますが、その他の問題はまだそれまでに十分な検討を終るや否やということは、はつきりと御答弁を申上げかねる次第であります。
  104. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 林道の問題につきましては、お話のように治山治水協議会でも治山治水対策の重要な一環として林道網の整備は是非やりたいということで採上げております。大蔵大臣も御説明申上げておりますように努力をいたします。
  105. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 次期国会をいつ頃お持ちでございましようか、その点お尋ねしたのですが、大体の見通しでもありましたらお願いしたいと思います。  それからもう一つは、先般有力な一松委員の発言があり、特に参議院議長の河井さんは砂防のほうの非常な熱心な方で、水害の問題で砂防フアーストというようなことで、均衡のとれないようになつては悪いと思いますので、是非その点だけは釣合のとれた総合的な一環として林道の価値を是非見て頂きたい。  国会はいつ頃。その点。
  106. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 大体は例えば今の期末手当等の問題にしましても或いは一般会計から繰入れるという例の完遂奨励金四百円の問題にしましても、大体これは来月初旬に開かるべき通常国会に付議すれば、で、御審議を願えばそれで間に合うことなんでございますので、只今のところは来月の初旬に、十二月初旬に開かれる通常国会の劈頭に第二次補正予算というものを出したい、かように考えている次第でございます。
  107. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 総理大臣にお伺いしたいのでありますが、最近国際政局が非常に変つて参りまして、特に先ほど来問題となつておりました池田・ロバートソン会談の協同コミユニケが発表されたり、又その全部でありますか、一部でありますか、とにもかくにも新木大使に対して東京会談を開くことを訓令したというようなことがありまして、国内的にも我々が心配しておりますことが徐々に具体的な形をとりつつあるのであります。すでにこの国会におきましても、保安隊軍隊と呼べば呼べないこともないというような話もあつたほどでありまして、これに処する政局安定の途というものが大きく議題となつて来ていると考えるのであります。そこで現在のような自由党が少数内閣であり、又改進党及び分自党との関係がつかず離れずと申しますか、敵であるか味方であるかわからないという状態では、この国際的及び国内的な問題を切り抜ける上からいつて、極めて、不安定な状態であると考えるのであります。この政局を安定する途というものは果して那辺にあるのであるか、吉田総理大臣が或いは自由党総裁としてこの難局なり或いは重要な時期に国政を担当し、政局を安定して行く方途というものは、どういうものであるか、その御構想を承わりたいと存じます。
  108. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。今日政局の安定はお話通り国民もこれを要望し、我々も要望いたして、どうかして政局の安定を得たいと考えておりますが、これには結局主義主張の或いはでき得るだけの同調し得るような点を発見して、我々と主義政見を同じうするような他党の協力を得て、そうして参りたいと思うのであります。併し他党にも又その行きがかりがあり、又主張もあるので、その調整はまだ結果は現われておりませんが、政府としてはできるだけ主義主張を同じうする、又同じうして、そして政局の安定を図りたいと考えております。
  109. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 重光・吉田会談におきましても、憲法改正の問題が議題に上つたというようなことを承わつているのであります。これは、実際にお二人以外にははつきりしたことがわかつていないわけでありますが、いずれにいたしましても、現在ではすでに保安隊軍隊と呼んでも差支えのない段階に達つしているということは、閣僚の言明によつても明らかになつていると思うのであります。ただ併し説明によれば、現在の保安隊戦力を持つていない、だから軍隊ではないのだ、こういうような御説明でもあるのであります。併し池田・ロバートソン会談におきましても、或る程度まで保安隊の増強なり或いは保安庁法の改正なりというようなことが議題になり、着々として計画は進行しつつあると存ずるのであります。結局保安隊戦力持つような段階、若しくは直接戦力に対抗する部隊としての組織を持つようになつた段階においては、憲法改正ということが当然議題となつて参ると存ずるのであります。それで国民は折角我々が持つているところの平和憲法なり或いは民主憲法なりというものを守りたいという熱意を持つているのであります。併しこれは国民の意思によつて改正されることになるのでありますが、政府が現在考えておられる憲法改正の程度なり、時期と申しますか、或いは又は先ほど申しました政局安定で憲法改正しても、或いは改正できるという自信のできる時期、そういう時期は一体いつ頃でございますか。これは勿論将来のことでございますから、はつきりとしたことは言えないと思います。併し保安隊を漸次増強して参りまして相当数の組織を持ち、又それ自身が外敵に対抗し得るような力を持つようになつた場合におきましては、当然憲法改正をしなければならないと考えるのでございますが、その保安隊増強の計画が進行する状態によつて憲法改正の時期が定まつて来ると思うのでありますが、現在吉田総理大臣がその憲法改正ということをやらないと言つておられる。併し保安隊の証が進行するに従つて、これは当然議題となつて来ると考えるのであります。その時期は大体の見通しとして、計画の進行に応じていつ頃になりますお見通しでありますか、これを承りたい。
  110. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この点はしばしば私が説明いたしておつたつもりであります。即ち保安隊を、日本防衛力を増強するいうことは、国際情勢と申しますか、例えばアメリカ軍が引揚げたい、或いはアメリカ軍が引揚げれば、従つて外に対するだけの処置は考えなければならない。保安隊の増強を考えなければならんという立場になりますので、これを増強し増強して遂に戦力に至らしむるというような場合になれば、当然これは憲法改正いたさなければならないのであります。併しながら憲法という国の基本法を改めるということは、これは容易ならざることであつて、最も慎重に考えなきやならんことである。又今日日本国力を以てして仮に保安隊を増強いたすといたしましても、直ちに戦力を有せしむるような大きな費用を出すということは到底考えられないのでありますから、先ず差当りのところ憲法改正はない、できないとこういうのが正しい見解であり、又政府としてはその確信を持つて進みたいと思つております。
  111. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して。
  112. 青木一男

    委員長青木一男君) 極く簡単に。
  113. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 自由党の自衛力の問題に関する案を見ましたら、来るべき参議院選挙、昭和三十一年を目途として大体憲法改正の準備をしておるということを聞くのですが、それはどういうことでしようか。
  114. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと聞えませんでしたので……。
  115. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 昭和三十一年、今度の参議院選挙のときに、大体憲法改正国民投票に持つて行くという……。
  116. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) という政府考えを持つておるそういう考えは持つておりません。
  117. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 自由党がです。
  118. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 自由党はどうか知りませんが、政府としては持つておりません。(笑声)
  119. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 吉田内閣総理大臣は現在のところ憲法改正をしない。差当りのところ憲法改正しない。こういうふうに言つておられるのであります。併し一方では保安隊を漸次増強して行くという政策をとつておられるのであります。そこでお伺いいたしたいのは、吉田内閣総理大臣自分憲法改正は反対であるから、自分が政権を持つている限りにおいては、自分としてはどこまでも憲法改正をしないというお考えでありますのか。或いは自分が、その時期はいつかわかりませんが、相当まあ遠い将来でも、同じく総理大臣として内閣を組織しておられる、併し一方では保安隊の増強がだんだんと進捗して行きまして、そこで戦力を持つようになつた。その場合には、そのときの吉田総理大臣は、すでに実質的に保安隊が成長して行つて、この段階になつのであるから、憲法改正しなければならない、そのときには吉田さんが内閣総理大臣になつている、その古田さんが憲法改正やられるというふうになりますか。吉田茂生きている限りにおいては、どこまでも憲法改正をやらないというお考えでございますか。そのところをちよつと御心境のほどを一つ
  120. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が生きている限りは憲法改正しないというような暴言、断言はいたすことはできませんが、併しこれは私の信念として考えておるのでありますが、憲法改正のごときものは、たやすくなすべきことではないと思います。政府としましては慎重に考うべきことであり、又憲法改正するとすれば、単に戦力の問題でなく、その他にも問題がいろいろあるでありましよう。それにもかかわらず、或る一部のものを改正して、又忽ち憲法改正しなければならないというようなことがあれば、これは誠に由々しき大事であろうと思います。故に慎重に考えますが、これは一に今後の内外の情勢によることでありまして、私の生命と関係ないことと御承知を願います。(笑声)
  121. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これ以上御質問はいたしません。次に官公労の現在の要求は、期末手当及びベース・アツプの問題であります。一昨日、昨日でございましたか、私総理大臣がおいでにならないときに、副総理にお伺いしたのであります。漸次官公労の要求は非常に強烈となつて参りまして、今に正面衝突をしなければならないという段階が避け得られないのではないかと思つております。これは予算的な関係もございましようが、若し現在官公労が計画していることをそのまま実施するということになれば、一斉賜暇、或いは遵法闘争というようなことから、郵便、電信、電話、或いは国鉄さえも、非常にその業務に支障を来たすのではないかというふうに考えられますが、これは一つ政府の親心として、この苛烈なる闘争に突入しないように、何とかしてそこで開催ができるような方途がないかということを考えておりますが、この点について総理大臣は如何ようにお考えでございますか。
  122. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。この問題につきましては、政府も慎重に考慮をいたしておりまするのでありまするが、御承知のように、現在の公労法の建前から申しますると、予算上、資金上不可能、即ち現在の給与総額を上廻ることはできぬことになつておりますが、(松澤兼人君「そんなことはわかつている。」と述ぶ。)そういう建前からいたしまして、国会の御審議を煩わしておるわけであります。その間に処しまして、私どもとしましても、国会の御意見も承わり、我々としても慎重に考究したい、かように考えております。
  123. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう一つの問題は、駐留軍関係の労務者において、最近非常に大掛りな首切りが行われているのであります。これは特需工場などにおいても同様に現われている現象でありますが、最近約六千名くらいの駐留軍労務者が首切りをされ、若しくは十二月の十二、三日くらいを目途として、すでに言い渡しを受けている、こういう事態があります。これは誠に大きな問題でございまして、いずれはこういう事態が来るであろうかということは、私どももうすうす想像していたのでありますが、年末を控えて、かかる大量の首切りが行われるということは、果してどういうところにその原因があるのか。少なくとも私どもはこの寒空に、年末手当をもらえないで首を切られるという労務者の方々には、御同情を申上げなければならないのであります。そこで私どもは、一般公務員に対しては、特別退職金というような制度があるのでございまして、或いはこの防衛分担金の中からでも、これらの人人に年末手当を与え、若しくは特別退職金を与えるというようなことができないものであろうかということを考えているのでありますが、そういう可能性がありますか、どうですか、承わりたい。
  124. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お話駐留軍労務者と、只今の話の中にはございませんでしたが、いわゆる特需工場の……(松澤兼人君「それは、言つたではないか特需工場と。君が聞いていないのだよ」と述ぶ)二つあると思うのでありますが、駐留軍労務者は十八万五千人おるのでございますが、このうち約五千名退職の問題が起つております。なお特需工場につきましても、三万名おりますが、そのうち六千五百名程度解雇の問題が起きております。これはいずれもアメリカにおきまする予算上の問題ということでございまするが、少くとも駐留軍労務者につきましては、調達庁が雇用主となつておりますので、只今お話のありましたような、できるだけ年末は避けてもらいたい、日本の慣習から言いましても、年末にばつさりいかれるというようなことでは、甚だ面白くないのでございますから、予算上どうしても不可能であれば、最終的な問題はいたしかたないとしても、その間のやりくりをうまくしてもらいたいということ、先方に申し入れておるのであります。ただ特需方面のものは、政府が直接でないので、御承知のように、民間の会社と連合国の間の私契約に基くものでありますので、政府としてはその間の問題につきましては、外務省、調達庁、労働省或いは通産省との間に連絡協議会を設けまして、その間の摩擦をできるだけ少なくいたしたい、かように考えておるのであります。
  125. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほどお伺いいたしました、一般公務員が自分の意思によらず、行政整理等の結果、退職せしめられるというような場合には、特別退職金と申しまして、八割程度加算になる制度があるのであります。これは防衛分担金、その他アメリカ関係の経費によつて、一般公務員の特別退職制度を準用した計らいができないものか、この点につきまして伺いたい。
  126. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今お話の問題につきましては、いわゆる全駐労からも、要望書が出ておりまして、私もこの点につきまして、先方に掛合つてみましたのでありますが、アメリカにはそういう退職金制度はないので、非常に気持はわかるが、困難だろうという先方のことでありました。今申しました連絡協議会ということについては、今のような問題も含めて、いろいろ善後措置を講じてみたいと、かように考えておるのであります。
  127. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたします。    午後零時四十九分休憩    ―――――・―――――    午後二時四十六分開会
  128. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。  内閣総理大臣に対する質疑を継続いたします。江田君。
  129. 江田三郎

    ○江田三郎君 先ほど新木大使の通告に関しまして質問いたし、又お答えを願つたわけでありますが、その際の政府お答えでありまするところの、新木大使への訓令は、ただ単に会議を東京でやろということを訓令しただけである。かような答弁は、誰がどう考えましたところで、全く答弁になつていないものでありまして、国会を軽視し国民を侮辱しているものと私たち考えます。併しながら、この手続問題においてあれこれ言つたところで、結局押問答になると思いますので、私どもはこれを了解はし得ないが、問題を一ところに停滞さしてもいけないと思いますので、次に移して行きたいと思いますが、とにもかくにもこの正式コミユニケに対して、政府としてどういう意思であろうと、先ほどの総理答弁を通じまして、この内容については、総理は異存がないということを申されたわけであります。この点は、吉田総理であるか或いは個人であるかの池田氏は特使でございますから、当然そうなるわけでございまして、更に総理自身もこの内容については異存がないということを言われましたから、私はこの内容についてお尋ねいたしますが、この内容の中の一般的了解に達した事項が四つ五つございます。  その先ず第一の自衛力の増強につきまして、この正式コミユニケによりますというと、日本現状においては憲法上の問題、経済上及び予算上その他の制約があり、従つて直ちに日本防衛に十分な自衛力の増強を図ることは許されんことが認められた。日本側においては、これらの制約を十分に考慮しつつ今後とも自衛力の増強を促進するための努力を続けると、こうあるわけでございまして、従つてこの内容からいたしますというと、来年度の予算におきまして、少くとも災害復旧だけで、新らしい災害復旧に一千億円からの金が要る。而もそういうような経済上の制約かあつてもなお来年度において自衛力の増強を図ると、こういうことになると思うのでございますが、その点どうでございますか。
  130. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 増強に努力すると、この努力は続けるつもりであります。ただ来年度においてどのくらい計算するか、或いは直ちに増強費を入れるか入れないかということは、財政の全般の均衡を図つて、或いは緩急を図つて大蔵大臣において適当に按配するはずであります。
  131. 江田三郎

    ○江田三郎君 これは今私が読みましたように、これらの制約を十分に考慮しつつなお自衛力を漸増するということがはつきり出ているわけでありますからして、そういうお答えではお答えにならんと思うのであります。一体この会談において日本側の防衛計画の案というものを示されたことがあるのかどうか。この会談のコミユニケの日本側草案によりますというと、日本側代表は提示した計画の基本的前提を変えることなしに云々ということがあるわけでありまして、これから行きますと、当然日本側代表は計画を提示したものと我々は受取るわけでありますが、どういう内容を提示されたのか。総理はどういう内容を提示することを池田特使にあらかじめ命じておられるのか。
  132. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 池田特使は日本側の気持を申したのでありましよう。併しながら日本防衛計画は未だきまつておらないのでありますから、こういう計画を持つておるといつて提示いたしたことはありません。
  133. 江田三郎

    ○江田三郎君 新木大使の訓令は間違つた行動をとつているかも知れんということを言われましたが、そうしますと池田特使も、このコミュニケの草案から行きますというと、あなたの意思を越えた行動を勝手にやつていることになるのでありますか。
  134. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の意思を越えて話をいたしておるとは私は承知いたしません。
  135. 江田三郎

    ○江田三郎君 そうすると、ここに書いてあるところの、日本側代表が提示した計画云々ということはどうでありますか、これから行きますと、当然計画を提示されたことになるじやありませんか。而も外電は、日本側は二十万の提案をしたというようなことも報じているじやありませんか。
  136. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと御質問の趣旨がわかりかねますが、提示した計画というのは、コミュニケのどこにありますか、ちよつとお示し願いたいと思います。
  137. 江田三郎

    ○江田三郎君 重ねて申しますが、これはコミユニケの草案にこういう工合にはつきりと書いてあることを私は言つているわけです。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これ以外に文書等はございません。これだけの文書でございます。
  139. 江田三郎

    ○江田三郎君 コミユニケに対するところの日本側の草案というものを発表されておるじやありませんか。はつきりと新聞に出たじやありませんか。もう少しそれについて……。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) そういうものは発表しておりません。
  141. 江田三郎

    ○江田三郎君 あなたは発表しないと言つたところで、そういうような発表が、エチケツトに反するとか何とかというトラブルがありますけれども、発表したということははつきりしているじやありませんか。発表しなかつたということでありますか、それじや全部嘘じやありませんか。
  142. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それは間違いであります。
  143. 江田三郎

    ○江田三郎君 何でもかんでも間違いで片付くということになるというと、我々も論議したところで仕方がないわけなんで、新木大使への訓令にしたところで、これはもうどこから見てもはつきりしていると思う。例えば今日の新聞にいたしましたところで、総理答弁は詭弁であるということを書いておる。詭弁であると言われても、国会を無視すると言われても、国民を侮辱するものだと言われても、何と言われても、とにかく間違いだとか知らんとか、こういうことだけで済まされるのでは、国会の論議というものはできないじやありませんか。少くともこういうものが日本の代表的な新聞に出て、その後の経過を見ても、外電においてこれを発表したことがかれこれ問題を起しておる。発表したことは間違いないじやありませんか。あなたはこの国会ではそういう答弁で済むかもわかりませんけれども、世界の輿論というものをただ一片のそういう詭弁でごまかそうとするのでありますか。
  144. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 政府は前から、昨日から、でき得る限り丁寧にこの文書以外には秘密の文書等はありませんということと、そしてこの文書に対しては、政府は東京で会談をするということに同意したということ、そうして池田特使は政府の代表でなくして、総理の個人的代表として相互に意向の打診を目的として行つたのであるということを、言葉を尽して申上げているのであります。それをお信じにならないで、信用されないで、ほかの文書を持つて来てこれの陰に何かあるだろうということをおつしやつても、私どもには説明のしようがない。本当に、これだけが本当の問題なんでありますから、どうぞ我々の申すことを御信用下さる以外に説明のしようはありません。
  145. 江田三郎

    ○江田三郎君 そうすると外務大臣なり吉田総理としては、日本の代表的な新聞にこういうものが出て、そうしてその後も外電を通じてこれを発表したことがかれこれ言われて、知らんはずがありません。あなたも外務大臣をやつておればそのくらいのことはわかつておりましよう。そういうようなことが数々あつても、そういうことは一切架空の問題に終つているのだ、事実がないのだ、世界の輿論が騒ぐのも、日本の新聞に出すのも全部嘘だ、こう断定なさるのですか。
  146. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は昨日も言つた通り、池田君は何回も先方と会つておりますから、この問題以上にいろいろの話はいたしたことがあろうと、当然これは考えられるのであります。併しながら正確に現われたのはこの以外にない。そうしてこれが本当の共同声明の趣旨であつて、これ以外には何ら信憑すべきものはないということを確言いたします。
  147. 江田三郎

    ○江田三郎君 共同声明の正式成文はこれであるということは知つております。併しその前に共同声明の日本側草案というものが作られたという、それがどういう径路か知らんけれども、とにかく新聞へ発表されたということ、そうしてその発表の仕方がよかつた悪かつたということで論議を起したということ、その草案を対象にして、世界各国でこれが批判の対象になつたということ、厳然たる事実じやありませんか。これを抹殺すると言つても抹殺しようがないじやありませんか。そういう詭弁だけでこの国会を進められようというから、我々はあなた方の態度は、国会を無視し国民を侮辱するものだと言わざるを得んじやありませんか。本当に吉田総理が民主政治を愛しておられるなら、民主政治を育成しようと考えておられるなら、もつと違つた答弁を頂きたいと思います。
  148. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府は事実を事実なりとして発表いたしておるのであります。これを詭弁と言われれば、詭弁であることを証明して頂くより方法がないと思います。又新聞に如何に発表せられても、これに対して政府は責任をとるわけには参りません。
  149. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと関連して。それじや別な角度から聞きますが、あなた方がお認めになろという共同声明、その中に、日本自衛力を強化する必要があることについて意見の一致を見た、この点は意見が一致していると思いますので、その日本自衛力の強化ということは具体的にはどういうことをお考えになつているのか、その点の御説明を、或いは池田特使にどういう気持をお伝えになつたのか、その点を総理に御説明をお願いしたい。
  150. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 保安隊増強という考えは、絶えず私は議会においても説明をいたしております。どの程度まで増強するかということは、財政その他の観点からも考えなければなりませんから、これほど増強するということを今日ここに申すことはできない。又増強案に対しては専ら今当局において研究しております。
  151. 江田三郎

    ○江田三郎君 増強案については今研究なさつておる、こう言われましたが、併し少くとも、私先ほど申しましたように、経済上の制約その他の制約があつても、これをそういう制約を十分に考慮しつつ今後とも自衛力の増強を促進する、こう言つているわけです。そういたしますと先ほど総理は、諸般の事情考えて、均衡をとつた予算を作ると言われましたが、少くとも来年度は本年度よりも災害復旧の費用というものは一千億円以上たくさん要るということがはつきりしているわけです。若し三・五・二の原則を認めるのだ、そうして本年度融資分の百五十七億を来年度組むのだ、こうなると一千億円以上、平年度四百億円の災害復旧費に一千億円以上プラスした災害復旧費が要るのでありまして、これを、認め、而も自衛力を漸増するということになると、予算の組みようがない。そこでこの予算におきましても、災害復旧か或いは自衛力の増強か、二者択一ということを永井委員がおつしやいましたが、この点ははつきりしているじやありませんか。そういうような災害復旧というような制約も考慮しながらなお自衛力の漸増を図るということを言つておるのでありますが、どういう一体予算を組むのでありますか。
  152. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 来年度の予算が提出されましたならば、提出された予算について十分御研究を願いたいと思います。
  153. 江田三郎

    ○江田三郎君 我々はこの正式コミユニケによりまして、日本の来年度の予算なり今後の日本財政というものは大きな枠をはめられたと考えざるを得ないのでありますが、今首相がそれに対して直ちにお答えできなければこれも止むを得ませんが、それならばその次に、一般的了解のその次の問題、MSAの、五百五十条によつて、五千万ドルを目途とするところの農産物の供給を受けるという問題でございますが、一体これは我々が今日まで伝え聞くところによりますというと、この五百五十条によるところの農産物の供給というものは、国際小麦協定等の価格よりもずつと上廻つたものであるということがいわれておるわけであります。五百五十条を見るというとその点もはつきりしているわけなんです。そういうような国際小麦協定の価格よりずつと上廻つたこの小麦を入れることが、今吾六十万トンを輸入しなければならん日本にとつて、今後の対外買付けにどういう影響を及ぼしますか、或いはそういう高い物を入れたときに、一体国内配給についてどういう傑作をなさるのか、そういう点についてもちやんと一般的了解に達しているのだからして、総理はつきりとした方針があると思うのであります。その方針を述べて頂きたい。
  154. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは五百五十条のB項に、御覧の通り、「大統領は友好国との問に前記の余剰農産物をそれらの友好国と交渉した条件に従つて売却し輸出する」、こうなつております。従いまして高いかも知れん、或いは高くないかも知れませんが、そういう条件は今後交渉してきまるのであります。従いまして東京でこの問題についても交渉をいたそうと、こういうことを同意しておるのであります。
  155. 江田三郎

    ○江田三郎君 それはあなたの答弁は私は違うと思いますが、それではあなた方は、この値段というものはさまつていないのだ、国際小麦協定という価格があれば、それに準じたところの取引もでき得るのだと、こうおつしやるわけでありますか。
  156. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私はそうは申しておりません。何となれば、この小麦はドル貨を用いずして購入し得るものであります。従いましてその点において国際小麦協定より多少高くても、ドル貨を用いずして円で買えるとなれば、或いはそのほうが有利であるかも知れません。併し余り高ければ、これは有利でないということもありましよう。併しながらその条件等は今後相談してみて、向うの出す条件でこちらが有利であるかどうかを判断して、買うか買わないかをきめなければなりません。又それを買うにいたしましても、一体五千万ドル買うか何千万ドル買うか、これはすべて東京で交渉してきまる問題であります。
  157. 江田三郎

    ○江田三郎君 只今答弁からいたしますというと、国際小麦協定等の価格を著しく上廻つた値段であれば、これは買わない、こう解釈してよろしいか。
  158. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の申すのは、国際小麦協定は一定の枠がきまつております。百万トンなら百万トンときまつております。日本はそれ以上必要な場合がある。併しその場合にはまだほかのフリ一・マーケットで買い得るものがあるわけであります。そのフリー・マーケットで買い得るものとこれとが余りに条件が隔つておるならば、たとえ円で払うにしても困難な場合もありましよう。従いまして国際小麦協定よりは、むしろそれ以外のフリー・マーケットで買う小麦と比べればどうなるかということによつて、買うか買わないかもきまります。
  159. 江田三郎

    ○江田三郎君 時間の制約がありますから、私納得の行かんままに次々問題を出しますが、その次のガリオア援助の早期解決を図るということでございますが、一体ガリオアの援助を債務ということはいつきまつたのでありますか。こういう交渉をなさるということになると、はつきり日本側としては債務と認めていると思うのでありますが、これを債務と認めろということを日本の国会はいつきめておるのでありますか。
  160. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 債務と心得ておるということは申しておりますが、債務とはまだなつておりません。つまり額もきまつておりませんし、支払方法もきまつておりません。又それに対する国会の承認は無論だから得ておりません。従いましてそういう問題について合意に到達することを目的として今後東京で話をしようと、話がきまりまして、額や支払方法がきまつて、それが国会の御承認を行ましたときに、これが債務として確定するものであります。
  161. 江田三郎

    ○江田三郎君 これもあなた方が否定されるところのこの日本側の草案によりますというと、日本側代表団は、このガリオアの問題についてはこれだけを取上げ、早く解決することのできないものである、できないものであるということを強調したと、こうあるわけです。できないものであるということを強調しておつたのが、結論においてはこういうふうに早期に解決するということに意見の一致を見た。向うで余つた小麦を高く売り付けられる代償に、今すぐに手の著けられないようなガリオアの借金の返済まで引受けているのが日本政府じやありませんか、或いは池田特使じやありませんか、それに同意しておるのが吉田さんじやありませんか。何たることだと我々は聞きたいのです。
  162. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ガリオアは、私はやはり債務であろうと考えております。ただその額や何かがきまつておりませんから、債務ということにはなつておりませんけれども、これはできるものならば、借りたものは返したいというのが政府考え方であります。併しこれにも財政上の制約等がありますから、一体いつ払うのか、又どういう条件で払うのか、又総額はどういうことになるのか、こういう点は将来相談して、両方で合意に達しなければ、そうして合意に達したものを国会の承認を得なければ、債務ということにはできないのであります。これは当然のことだと考えます。
  163. 江田三郎

    ○江田三郎君 然らば一体日本側としてはどの程度ならば払おうとする御意思を持つておられるのか。
  164. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはまだ決定いたしておりません。今後大蔵当局、その他関係当局と相談してきめるわけであります。
  165. 江田三郎

    ○江田三郎君 外電の伝えるところによりますというと、日本側は三分の一を認めるのだということでございますが……、それも時間がありませんからして私は次に急ぎますが、更にあと残つておる二つの問題は、もう一つは外資の導入について、外資に好ましいところの条件を作るということで、関係法令を緩和するということをあなた方はこの成文からお読みになると思うのであります。すでに最近の外資導入について、例えば例の火力借款の問題にいたしましても、まさに国辱的なものだというのが一般の定評であります。あれでは足らないで、まだもつと外資に有利な条件を整えるために関係法令の改正をするということは、具体的にはどういうことになるのでありますか。
  166. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ほどの火力発電の借款の条件は、大蔵大臣からもしばしば申しました通り、外の国に対する条件とは変つておらないのでありますから、これについて日本側だけが屈辱的だとおつしやるのは了解に苦しむのであります。併しいずれにしましても、政府は昨日も申しました通り、国会においてしばしば、委員会においてもでありますが、外資導入外資導入といつても一向外資が入つて来ないじやないか、こういう攻撃をしばしば受けておつたのであります。我々も外資をもつと入れたいと考えております。従いまして具体的にはこれから研究するのでありまするが、できるだけ外資が楽に入つて来るように、そうして日本経済に特に支障のないようなふうに法令を考えて行きたい。これは前から考えておることであります。
  167. 江田三郎

    ○江田三郎君 だから具体的にどういう改正考えておられるのか、どういう要求があつたのか、それに対して日本政府としてはどういう改正をしようとしているのか、それをはつきりして頂きたいというのです。
  168. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは共同コミニユケの性質から見ても、御覧になります通り日本政府は何らそういう点について約束をいたしておりません。池田特使は意見の交換をいたしただけであります。従いまして、具体的にこの共同コミニユケの結果何ら拘束を受けたということはありません。日本側が今後自発的に考えて、一番有利と思われることやるだけの話であります。
  169. 江田三郎

    ○江田三郎君 私は前提条件に言つておるじやありませんが、池田特使がやつたことについては、吉田総理は、この内容は異存がないということを言つておられるわけなんです。又池田特使は、吉田個人であるか吉田総理であるか、とにかく吉田さんの特使なんであります。その人がなさつたことについては総理は責任を負うということを言つておるわけです。その日本出席者がそういう発言をして、ここに正式コミユニケとして残つておる以上は、これはやはり大きな拘束力を持つわけです。今のようなあなたの答弁では筋が違つておると思うのです。
  170. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) このコミユニケにありますのは、外資の受入れを一層円滑にするために、外資導入に関する関係法令を緩和しようということであります。どういうふうに緩和しようということは、ここには、何も約束しておりません。従いまして内容については、この外資の受入れにいいような条件を作るということは、我々も前から、言つておりまして、総理のみならず、政府一体のこれは考えであります。併しどういうふうにするかということは、この共同コミニユケで何ら約束しておらないのですから、今後政府が研究してきめることになります。
  171. 江田三郎

    ○江田三郎君 あなたたちは、この池田・ロバートソン会談のコミユニケに対しては、只今答弁、先ほどからの答弁を見ましても、万事口を緘して語らない。世界の新聞がどう伝えようと、外電が何を伝えようと、一切日本政府国民の前に率直にこの交渉の結果を発表なさろうとはせられないわけであります。これが我々は、国会軽視であり国民を侮辱しておると、こう言うのであります。  更にお聞きしたいのは、ここに書いてあるところの中共貿易について、高度の対中共貿易の統制を維持する、これは一体具体的に何をなさるのでありますか。現在、この午前中の国会におきましても通産大臣は、中共貿易がもつと円滑に行くように十分考慮するということを言つておるわけです。先だつてこの国会から各党の議員が向うへ渡りまして、三千万ポンドの協定を結んだわけであります。今中共貿易が漸くスムーズになろうとしている。あなたが関係しているところの日米自転車の諸君まで行つて恐らく中共貿易を促進するということは、国民の大きな世論でございましよう。然るにもかかわらず、一方におきましてこの高度の対中共貿易の統制を維持するということは、通産大臣が言われること、或いは国民の世論とは全く反対の方向に行きおる。こう解釈せざるを得ないのでありますが、これは一体どう考えられますか。
  172. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは高度という意味の考え方であろうと思いますが、我々は今非常に高度の中共貿易の統制をやつておると考えております。そして又これを多少緩和しましても、依然として高度の買切統制をやつておる考えであります。従いまして今後も緩和することもありましよう。併しながらやはりそれでも高度の買切統制をやつておると考えております。
  173. 江田三郎

    ○江田三郎君 全く詭弁じやないですか。現在この高度のやつをやつているのだ、そしてその高度のものを維持して行くのだということになると、条件の緩和でも何でもないじやありませんか。子供が考えてもわかるじやありませんか。そうして片方においては中共貿易を緩和すると言うのは一体どういうことになるのでありましようか。三歳の子供でもかような詭弁は通さないと思うのであります。
  174. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これについてはこういうふうに申上げたら或いはおわかりになりますかもわかりません。今現に高度の中共貿易の統制をやつておりますから、これ以上の強い統制は勿論やりませんし、今後これを緩和しても、政府はなお高度の統制をやつていると考えております。
  175. 江田三郎

    ○江田三郎君 世界の大きな動きというものが、この東西貿易をむしろ積極化そうとするときに、日本だけが更に高度の統制を続けるということは、全く時代に逆行したものと思うが、私は私の持時間が終りますからして、残念ながら質問を打切りますが、只今政府からお答えを得たところによりますというと、少くとも吉田総理が内容において異存がないと言われるところのこの共同コミニユケから我々が受取りますことは、日本としては更にアメリカに対して新らしい義務だけを背負うのであります。ただ売れ残りの小麦を、而もこれは国際相場よりも非常に高値で買わなければならない危険性のあるものを、これだけを得る代償に、経済的な条件その他の条件を考慮しつつも来年度から自衛力の増強を始めなければならない。外資に対しては有利な条件を整えなければならない。中共貿易は世論の反対を押切つてなお高度の統制を続けて行くのだ。或いはまだ借金とも国会が認めていないところの、池田特使自身がこの問題の早急解決は困ると言つているガリオア資金の返済の話を、これから始めなければならない。得たものは全部新しい義務だけじやございませんか。我々はサンフランシスコの平和条約、安全保障条約によりまして日本を大きく身売りしたものと考えますが、今ここに第二の日本の大きな身売りが始まつている。こうとしか解釈できないということを私は申上げて置きます。
  176. 曾禰益

    ○曾祢益君 私も同僚江田委員と同様に、昨日外務大臣との質疑応答並びに今朝の総理との質疑応答におきましての、新木大使のとりました行動と、政府の今まで説明された、いわゆる池田使節のやつたこと、従つてこの共同コミユニケの内容との関連についての釈明は、全然これはなつておらないのでありまするが、その問題の形式論をやつている閑もございませんから、一つ内容に入りまして、非常に重大なことでありまするので、若干の点につきまして総理に御質問申上げたいと思うのであります。  先ずこの共同コミユニケの内容は、すでに昨日及び今朝ほどからの総理及び外務大臣との質疑応答によりまして、少くとも現在政府がとつている方針、防衛等に関する重天な問題でありまするが、これらと実質的に変つておらないということを前提に御質問申上げるのであります。先ず防衛問題について御質問申上げたい点は、この共同コミユニケによりますると、日本を侵略の危険から護り、且つ日本防御についての米国側の負担を軽減するため日本自衛力を強化する必要があることについて意見の一致を見た。併し日本現状においては憲法上の問題、経済上及び予算上その他の制約があり、従つて直ちに日本防衛に十分な自衛力のの増強を図ることは許されぬことが認められた。こういうふうになつているわけであります。そういたしますると総理に伺いたい点は、日本防衛に十分な自衛力を持つためには、勿論予算の問題もあるし経済の問題もありますが、憲法上の制約があつてそれができない。従つて憲法上の制約がある限りは、吉田さんの特使である池田さんは、これは十分なる自衛力は持てないということを認めたことになると思うのであります。従つてあなたの御意見を伺いたい点は、十分な自衛力を持つためには憲法上の制約から、束縛から離れなければならない。このことがコミユニケの内容になつている。果してそれが吉田首相のお考えであるかどうか、先ず第一点として伺いたい。
  177. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 防衛力日本独立を守るに相当する、或いは十分の防衛力がどうなるかということは、今日まだ十分に計画を立てておりませんが、併しながらいずれにしても現在の状態において予算をこの上殖やして、そうして外国並みに大きな防衛力を持つ、或いは軍備をなすということは、財政これ許さないからこれはできないと申しているのであります。今直ちにそれを日本が仮に考えたとしたところが、そういうような大きな防備はできない。できないということを強調いたしている点に御注意を願いたいと思うのであります。
  178. 曾禰益

    ○曾祢益君 質問の要点が外れたお答えなんですが、私は勿論経済予算上の制約が現在あることは、これは何人もわかつているのです。問題は、憲法上の制約があつて、これがある限りは日本防衛に十分な自衛力が持てないのだということを言つておる。従つて裏を返して言うならば、十分なる自衛力、それをあなたは外国並みとか近代的兵器とかいうことを例に言われるでしようけれども、日本としての十分なる自衛力を持つためには、憲法の枠を越えなければならないということをこれは言つておるのと同じやございませんか。その点を憲法論について伺つておるわけです。
  179. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 憲法論においても同じようなことであります。つまり日本としては憲法の上からいつてみても、戦力、陸海空の三者の戦力は持つことを禁じられておるから、如何に日本防衛の上からいつてみて、国防の上からいつてみてこれだけの戦力を必要とする、これだけの軍隊を必要とすると言つてみたところが、これは日本憲法の上からいつて持つことがでないということの説明をいたしたのであります。
  180. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも結局においては同じことに帰着するでしようが、私の言いたいところは、この池田さんのやられたことによると、十分なる自衛力を持つためには憲法を変えなければならないということがはつきりしているのじやないか。その点をあなたはお認めになるかどうかという点をもう一遍伺いたい。
  181. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは勿論のことであります。どれだけの戦力を持てばいいかと言つても、とにかく戦力というようなものを持つことは憲法が禁じておるのでありますから、戦力以上のものを日本軍隊は持つことができない、日本は持つことができない。又その戦力を持たない軍隊であつて日本独立防衛しようといたしましても、これは望むべからざるところであります。併しながら憲法がある以上は戦力を持つような防備は持つことができません。これは憲法の制約であります。この制約は飽くまでも我々は憲法のある限り守らんと欲するのであります。
  182. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に、同じく防衛問題につきまして、共同コミユニケによりますると、更に又、日本の部隊が自己防衛の能力を増進するに従つて在日米軍が撤退して行くことについても意見の一致を見た。私はこれは、総理はしばしばいつまでもアメリカはいるものじやないということを言つたと言われまするが、これは一つ日本防衛問題に関する新たな一つの発展段階に達しておると思うのであります。そこでこの文章の意味は、勿論日本部隊が自己防衛の能力を増進するに従つて米軍が撤退する、こういう関係を示したという当り前のことのようでありますが、逆に日本防衛力が充実するまで米軍は撤退しない、こういうような意味にも取れるのでありますが、その点は一体どういうふうにこれを読むべきかということについてはつきりおつしやつて頂きたいわけであります。
  183. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米国政府側との了解は、日本がみずから自己の独立安全を守るのが当然であるが、今日国力が許さないから、安全保障条約によつて直接間接の防衛に当る。併しながらアメリカとしては、いつまでも軍隊駐留せしむる考えはないから、この軍隊は漸減する。漸減すればそれだけの空間を日本のみずからの手で以て漸増して行くという建前でずつと来ておるのであります。でありますからして、今日において変つたというのではなくして、これは安全保障条約にちやんと書いてあるのであります。米国軍隊兵力を漸減する、日本はそれに従つて漸増するということを書いてあるので、安全保障条約精神はまさにここにあるのであります。アメリカが今日成るべく政費を節減したい、軍費も節減したい、従つて日本における駐屯軍も引揚げたい。引揚げろということになれば、日本防衛の必要上、防衛力を漸増して行かなければならないのであります。その事実を言い現わしただけのことであります。
  184. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういういわば通り一遍の理窟のほかに、これはやはり新聞に出たことで、アメリカ側も取消したようでありまするが、例えばアメリカ策が五カ年間には撤退する、だから早く日本防衛力を持て、こういつたような話があつたとかないとかであります。従つて私がお聞きしたい点は、日本側が、先ほど言つたように、憲法の制約があつて十分なる防衛力は持てないということは、憲法だけから言つてもそうです、経済的にもそうです、財政的に言つてもそうですが、そういつたときに、アメリカ側が日本軍備整わずして撤退するものではないという意味もこの文章に含んでいるかどうか。その点については安保条約の精神からいつて、両方の意見が合致したときということでありましようが、この共同コミユニケに照して、最近の両政府当局の気持はぴつたり合つておるのかどうか、この点を伺つておるわけです。
  185. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米国政府は、只今申した通り兵力を漸減したいという考えがあることは、これは明瞭でありますが、同時に日本事情がどうであろうが、兵隊を引揚げてしまうというような気持は、これはないと私は確信いたします。何となれば、常に米国政府言つておることは、日本防衛とか日本経済自立とかということについて非常な関心を持つておるのでありますから、その点から考えてみても、日本防衛力が足りる足りないにかかわらず米国軍隊を引揚げてしまう、あとはどうでもかまわないというような、そういうような無責任と申すか、乱暴な考えは持つはずがないと、これは私は常識的に考えられます。
  186. 曾禰益

    ○曾祢益君 コミユニケの初めのほうに書いてあることを見ましても、防衛問題についての基本的な話合い及びアメリカからの援助については話合いが、折合いが付かなかつた従つてこれが東京会談に残された最も大きな点であると思うわけでありまするが、そこで一体東京会談はいつ頃お開きになるか、或いはもう開かれてあるのかも知れません、私たち常につんぼ桟敷におるわけでありますから……。若しあなたがおつしやるように、昨日ですか一昨日だか、大使に訓令して、これから東京会談に同意したということを一応信ずるならば、東京会談はこれから開かれるはずです。そうするといつ頃開かれるのか、この点を伺いたいわけです。
  187. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 東京会談にも題目によつて違いますが、今おつしやつた防衛とかという問題は、これは私はMSAの交渉の中に含まれるものだと考えております。従いまして実は今でも断続的に開かれておるのでありますが、これは新たに開くというのじやなくて、今までやつたものをこの問題については継続して行う。併し同時に防衛の計画等をよく説明したりなんかする必要はありましようけれども、これはまだできておりませんから、ちよつと時間がかかるんじやないかと思います。
  188. 曾禰益

    ○曾祢益君 MSAの協定との面接の関係ではなくて、これは外務大臣に伺うわけですが、あなたがよく言われる、MSAというのは一つの枠である。内容が防衛計画であり、これに見合うところの援助計画ということになるわけです。この東京会談の、私の言つておるそういう防衛計画とそれから援助計画との話合いですね、これはもうすでに行われているんですか。
  189. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) まだこちらの計画ができておりませんものですから行われておりません。
  190. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはいつ頃までに完了するおつもりですか。相手方もありましようが……、総理に伺いたいわけです。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと私が代つて……。  これは保安庁長官の代りに言うのは恐縮でありますが、いずれこれは仮に何がしかにしても予算が伴うものである。従いまして来年度の予算に、私は少くとも保安庁で計画して、来年度の予算にこれが現われるようになつてもらえば一番いいと考えておりますが、その予算は、恐らくはつきりしたものは来年早々でなければできますまいが、大綱は十二月中あたりに見当が付くんじやないかと予想しております。そうしますと大体その時期が防衛の計画についても大綱のきまるときじやないか、こう予想しております。
  192. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういたしますると、東京会談のまあ一等中心である日本防衛計画それ自身がまだできておらない。そうしてそれができるのはいわゆる予算という恰好ができたときに初めてできる。それまでは日米会談は基本的な問題である防衛計画については行われない、こういうことになるのですか。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) どうもいろいろ下話をしてもいい場合もありましようけれども、肝腎なものは、やはりこちらの計画ができないとちよつと無理じやないかと考えます。
  194. 曾禰益

    ○曾祢益君 予算に勿論関連して来ることは当然でありまするが、今アメリカとの話合いの中心というものは、ただ来年度の予算がこうだとかいう問題じやなくて、日本全体が、いわゆる自衛力といいますか、増強という名において許される限りにおいてのいわゆる長期防衛計画というものがあつて、それに基いて向うも援助の計画を立てる。これが話の中心であることはわかり切つておるわけです。だからその一部を来年度予算にどのくらい計画するかということとは離れて、防衛基本計画というものは、これはなければならないはずである。それをただあなた方は、国会関係において、国民に対する関係において、来年度の予算という分ができたときにその一部だけを示そうと、そうしてアメリカとの間には一体そういうこととは全然別に防衛計画を立てて話合いをしているのではないか。これはすべての国民が持つている疑問であり、現にそれがすでにワシントンにおいて行われているのではないかというのが事実であろうと思う。併しあなた方はそれをお認めにならない。併しいやしくも正式会談が行われるときには、政府防衛計画、防衛方針というものは国会を通じて、ただ単に来年度の予算という点でなくて、基本的な計画、その理念、これらのものの構想を先ず国民に、示してからアメリカと交渉するのが本当じやありませんか。それに対する総理のお考えを伺いたい。
  195. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府としては、只今お話のような長期計画、短期計画、その両方を今勘案研究いたしておるわけであります。これは相当に研究に時間を要し、又財政関係等もありますから、慎重に計画いたしておりますが、同時にその計画がきまれば、無論国民及び国会の批評を受けて、協賛を経るなり何なりして計画を確定いたします。確定いたしますが、今日のところではなかなか口で申すように簡単に行かないのであります。何となれば、いろいろと制約があつて、又殊に財政上の制約もありますししますからして、簡単に長期計画と言つても、長期計画を直ちに立てる、その計画が杜撰のものであれば何もならない話であり、又米国側に示す場合にも、杜撰な計画を以て交渉に当るわけに行きませんから、各方面の、申せば陸、海、空三軍の権威者の話も聞いて計画を立てたいので、今慎重に保安庁において計画を立てております。ただ計画はまだた非常に高度な統制措置ということはまあなくなるわけだと予想しております。
  196. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと関連して。これは外務大臣も御承知と思うのですが、前に禁輸措置はいわゆるケム修正案によつて行われたのですが、それが強化されてバトル法になつて来ておりますね。ケム修正案の場合は、朝鮮との戦争が起つている間は禁輸をやる。ところがバトル法になると、朝鮮との戦争が済んでもバトル法は共産圏に対して輸出の制限をするというふうに強化されておるのです。これはMSAの交渉と重天な関係があると思う。MSAの援助を受ければこのバトル法適用の問題が起つて来るのですよ。従つてこの了解では、高度の統制はやれぬかも知らんが、MSAの援助を受ければバトル法の適用を受けて、やはり今よりは少いが、制約は受けるということになると思う。従つてMSAの援助を受けるときにこのバトル法の問題が起つて来る。この問題についてはどういうふうにお考えになつておりますか。今のお話では、朝鮮戦争が済んだときに禁輸が全体的になくなるというような解釈ではないのですね。やはり岡崎外務大臣は……。そうなるとバトル法とMSAの関係が起つて来る。この点についてお伺いします。
  197. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今申しましたように、中共に対する決議がなくなりますれば、中共もほかの共産圏の国と同様に扱われますから、それに基いた禁輸措置が国際的に行われればやはりそれに入ります。MSAの問題としましては、バトル法ということをはつきり謳うかどうか、これは今後の話合いになつておりますが、仮に、バトル法に基く禁輸を条件付きでやるのだということになりますければ、やはりこれは国会において一体MSAを受けるべきか、それともMSAを受けないでバトル法の適用を受けないほうがいいのか、これは国会の審議によつて決定されるよりいたし方ない。政府はそのときに先方となお話合いをしまして、適当な措置等のことをきめて、それを国会に提出するつもりであります。
  198. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと簡単に伺いますが、政府はやはりMSA援助とバトル法というものを切離さないで、密接な関係があるとして考えておられるような御答弁です。そうするとますます重大なんです。MSA援助を受けるというときに切離して考えるということではないのです。やはり密接な関係がある。MSA援助を受けると、どうしてもバトル法の制約を受けることになる。今のお話ですと、二者択一ということはできないようなお話ですが、二者択一でなければならん。MSA援助を受ければバトル法が付く。併しバトル法の適用が嫌ならばMSA援助に反対すればいい。こういうようなお話ですが、そうするとそれを含んで交渉されているわけですか。
  199. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) まだ交渉は終局に至つておりませんから、私はここで確言申上げることはできませんが、私はやはりアメリカの援助を受けますれば、バトル法を適用するということは必要となるものと考えております。
  200. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ木村君が僕の質問を或る程度までして下さつたのですが、要するにここに私は、池田会談についてはそれらの点について触れているのか触れていないのかということを伺つているわけです。つまりこれは当然にMSAを受入れればバトル法内な適用を受ける。これは条理的にそういうことになろうと思います。それは困るからと言つて相当彼はやつて来たのか来ないのか。それから岡崎外務大臣のお話では、MSAのほうとは別に、バトル法とは別に、ココムということを言つておりましたけれども、MSAに関連してどうしてもバトル法の問題が切離し得るのか得ないのか。又方針はどうなのかということをもう一遍伺いたいのです。
  201. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 池田君のことにつきましては、その点については何ら報告を得ておりませんから、私は申上げられません。いずれ帰りましたらわかるでありましよう。それからパリーのココムで話合いをいたしている、一般共産圏の国々との統制の問題、これは主として私はバトル法を根拠にしていると考えます。なおMSAとバトル法は、これは今最終的なことは申上げられませんが、今考えているところでは、アメリカの援助を受ける以上はバトル決を適用すべきである。こういうことになろうと思います。
  202. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に外資の受入れに関して伺いますが、先ほど江田委員からもいろいろ質問があつたのですが、関係法令緩和にやぶさかでないというようなことを言つて、そうしてその内容は東京で話をするのだから、これは何も約束にならないということは言えないのじやないか。これはどうしても外資導入のために緩和するという方向だけははつきり約束して、だからこれはどの程度どういうものをやるかということは別にいたしましても、外資導入に関しては確かに法令を緩和するという方向だけはこれはもう確かに約束したものだと思いますが、その点は如何でございますか。
  203. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これば先ほども申しました通り、外資導入には未だ私どもから考えまして、一、二妨げになつているのじやないかと思われるような点もあるのであります。ただ日本経済の弱体性に鑑みて、現在ではこれ以上に緩和することはできないと言つて従来来ておつたわけであります。経済が回復しますればだんだん外資が自由に入つて来るようにいたすのが一番いいと思つておりますが、これはアメリカだけの関係ではないので、主として外資と言えばアメリカ方面から来るでありましようけれども、併し東南アジアにも華僑の財産もあり、その他いろいろありますから、これは各方面を見て、外資の入りやすいようなことにいたしたいと考えているのは従来からの政府の方針であります。ただどういうふうにするかということは、これは関係各省でよく相談をいたしまして、日本経済に特に衝撃を与えられない方向でやらなければいけませんから、具体的にどうするかということはまだ決定しておりません。
  204. 曾禰益

    ○曾祢益君 先だつての、予算委員会におきまして、私は総理にも又保安庁長官にも御質問申し上げたのですが、結局この間の衆議院の予算委員会における総理及び保安庁長官の答えによりますると、軍隊であつてもこれは仕方がない、併し戦力ではないという、非常な誠に奇妙きてれつな解釈を下されたと思うのです。そこで私は、さような解釈は成立たないのではないか。やはり憲法を厳格に解釈するならば、陸海空軍その他の戦力は保持しない、勿論そのほかに交戦権の禁止の問題もございまするが、こういうふうに書いてある以上は、はつきりと陸海空軍は勿論戦力である。従つて陸海空軍、即ち軍隊であつてもいいけれども、戦力にならなければいいのだ、こういう解釈は成り立たないのではないか、こういうふうに伺いまして、結局保安庁長官は法律的解釈としては、やはり今の自衛隊といいますか、今度作る自衛隊でありますか、これは軍隊ではないのだと、こういうふうに言われたと思うのです。で総理大臣は、この間の保安庁長官のその答弁、今申上げたように、自衛隊というものは軍隊と法律的には認めるべきものでない、この点に対しては総理大臣は保安庁長官の説明をそのまま承認されるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  205. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 保安庁長官の説明をそのまま私の意見といたします。
  206. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういたしますると、吉田・重光会談におきまして約束されたいわゆる自衛隊というものは、これは軍隊ではない。改進党の方々の御解釈だとこれは軍隊と認めたのだと、即ち改進党の御主張に吉田さん及び吉田政府は賛成したのだと、こういうふうにとつておられたようでありまするが、その点ははつきり否定されて、自衛隊というものは軍隊にあらず、こういうふうにあなたは断言されるかどうかということをもう一遍おつしやつて頂きたい……。いや、総理の会談の内容を聞いているのです。あなたは会談に立ち会つておるのですか。
  207. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 内容はわかつております。そこでこの前に曾祢君に申上げました通り、一体軍隊とは何ぞやという定義なんです。それから発足して行かなければならない。軍隊ということについての定義は私は確立していない、こう考えております。そこで保安庁法を仮に改正いたしまして、外敵の侵略に対して対処し得るような実力部隊、これを以て軍隊とするならば、これはいわゆる自衛隊軍隊と称してよろしいと、こう申上げたのです。併しながらこれはいろいろ定義によつて変つて来ますが、大体において軍隊とは交戦権を持つております。これは交戦権のない軍隊というものは先ず私は普通じやないと考えております。そこで自衛隊は、これは交戦権は日本憲法で否定されておるのでありますから、これは厳格な意味における軍隊ではない。併しながら毎回申上げますように、これを軍隊と称したところでこれはかまわないのじやないか、こうなのであります。ここにおいて軍隊定義如何ということに結局結論が落着くだろうと考えております。それで吉田・重光会談においていわゆる自衛隊を持つということになりまして、この自衛隊軍隊と称するならばそれでもよろしい。併し厳格な意味において軍隊というならば、これは交戦権がないのだから、それだからこの意味から言えば真の意味の軍隊でないとも言える、こういう説明であります。
  208. 青木一男

    委員長青木一男君) 曾祢君に申上げますが、理事会におきまして池田・ロバートソン会談について質疑を延長したわけですから、その関連において質問をして頂きたい。
  209. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは必要な関連事項です。只今の御答弁ではわからないのでありますが、然らば戦力というものについての一体国際的な通念からいつてはつきりした解釈があるのかどうか、これは全く憲法を勝手にひねくり廻して、いわゆる潜在戦力軍隊は勿論戦力であるけれども、その他の戦力という、つまり軍隊よりも非常に程度の低いものを憲法は予想しているわけでしよう。それをあなたは、戦力というものは、軍隊とはもつと強いものであるかのごとき勝手な解釈を下しておるので、勿論軍隊に関して、いわゆる国際的にはつきりした軍隊定義というものはないでしよう。併しいわゆる軍隊という名が付かなくても、これは警察隊であつて保安隊的なものであつて軍隊だというのが、これは国際法の通念である。ところが国際法にも国内法にも戦力というものは、あなたみたいな勝手な解釈に基いてそれを主張しているところなんか一つもない。その論争はやめますけれども、とにかく戦力論というものは全然これはなつていない議論であつて、やはり憲法論に即して言うならば、保安隊軍隊であるか、或いは軍隊でないとするならばその他の戦力であるか、こういうことになると思う。自衛隊も又同様である。その意味から行きますと、自衛隊軍隊でない、法律的には……。従つて吉重会談におけるいわゆる軍隊である、軍隊でないという論争は、法律的にはこれははつきりした、こういうふうに解釈してよろしいかどうか、その点をもう一遍確認しておきたい。
  210. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは繰返して申すようでありますが、軍隊定義如何によるのであります。ソヴイエトにおきましても、これは三段階あると思います。いわゆる国際戦争を任務とする軍隊と、それから警察隊と、もう一つ保安隊というのがあります。これは戦車も持ち、あらゆる武器を持つて内地の擾乱、叛乱、に備える一つの実力部隊なんであります。いわゆる国際戦争を任務とする軍隊、そうして保安隊、警察隊と三段階に分れているのであります。そこで日本においても、自衛隊というものは外敵の侵略に対して対処し得るということを任務とこれから仮になるなるならば、その意味においては定義如何によつて軍隊と言えるであろう。併し交戦権は否認しているのでありますから、交戦権の否認されている部隊は軍隊にあらずということになれば、これは軍隊ではない。だから定義如何によつてこれは軍隊といい、軍でないということも言える、そういう説明であります。
  211. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は総理に伺つているのでありまして、今木村長官に伺つておりませんが、最後に、私は短い時間でありますから、勿論要点を尽すわけには参りますんが、総括的に申しまして、今度の政府の態度は甚だけしからんと思うのであります。議会の当初におきましては、吉田さんの特使として池田特使の行動というものは、これはプライベートのものである、従つて政府はこれに対して説明をしない、こういう態度で来られた。そうしてたまたま新木大使のいわば失言的な新聞会見の結果、これがいよいよ共同コミユニケを政府としては実質的にこれを同意して、これを公けのものにした。ここにはつきりと切り換えをやられたわけです。而もなお、その内容的には政府考え方とこの共同コミユニケの中に盛られている池田君の言つたこととは一致する。でありますから形式的にこれを追認するもしないも、これは政府の政策として公認したわけです。然るにこの問題について政府みずからが進んでこれを国民の前に解明しようとされない。かような態度は言うまでもなく甚だしい国会軽視である。我々としては断じてかような態度を容認するわけには参りません。よろしく政府としては本会議においても進んでこの問題に関して説明をして頂きたい。我々としては政府の今のやり方のように、日本に対しては、国会及び国民に対しては何らその方針を示されない、そうして私的会談をやつている。あとでこれを国会の追及を受けてからこれを実質的に追認をする。そのときはもう国会は、緊急な国会でありますし、救農国会でありますから、もう会期を延長するというようなことは非常に実質的に困難であるという段階までこれを頬被りをして来るというやり方に対しては、我々はこれを断固として反対するということを申上げまして、私は時間がございませんから質問を終りたいと思います。
  212. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私も只今曾祢さんが言われましたように、日本国民に、即ち国会との間に了解のないうちに、又国会に対して事態を明らかにしないうちに、アメリカとの了解のほうが先にできておる。そうしてこの事態を進んで明らかにしないことに対して、我我極めて国会軽視の態度であるという立場から質問をいたしいと思うのです。この共同コミユニケのうち、日本財政経済に関する部分について質問いたしたいのであります。この了解を得たコミユニケによりますと、今後日本財政経済相当な枠がはめられる、制約があると、こう思うのであります。そこで第一に伺いたいことは、コミユニケの最後に、日本出席者日本経済的立場を強化し、且つ日米経済協力を更に増進するためインフレーシヨン抑制につき日本としても一層の努力を強化することが肝要と信ずる旨を述べたと、こうなつておるのです。この意味を具体的に伺いたいのです。インフレーシヨン抑制につき日本としても一層の努力を強化する、これは具体的に一体何を意味するか。これを愛知君も行つておるのでございまして、当然大蔵省側とも打合せて行つていると思うのであります。従つて大蔵省側としては相当やはりこれに対して具体的な意見があるはずであると思う。まあ具体的にアメリカ側には説明されたと思うのです。従つてこれは、このインフレーシヨン抑制の対策如何によつて日本経済にとつては非常に重大な影響が出て来ると思うのであります。その方法如何がです。従つてこの点に明らかに頂きたいと思うのです。
  213. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) インフレを抑制しなければならんことはしばしば申上げた通りでありまして、その方法は幾つかあろうけれども、短く申せば、先ず第一に財政政府資金の撒布超過なからしむること、これが第一であります。第二、金融上からインフレ存来さざるよう処置すること。第三、国際収支の面からインフレを来さざるよう処置すること。その他生産の増加等によつて一般にインフレ要因となるべきことを打切るべきこと等でありまして、これは多方面に亘つて総合的にこれを施策する必要があります。
  214. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのうちの財政の撒布超過をなからしむろということは、これは大変な問題です。本年度でも一応約千三百億の撒布超過になるのですね、特別会計投融資の……来年度そういうことをやらんとしたら、一体産業資金はどうして賄うのですか。
  215. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 本年の一応の計算は千三百億になるが、財政金融の一体化によつてそうならんということは、過日来ここで説明を申上げましたから、繰返してここに申上げません。ただ二十九年度の問題は相当金融措置だけでは困難になつて来ると、こういう点をいつもここで申上げた通りでありまして、従つて来年度の予算編成に当つて相当資金の按配が考慮を要する。或いはいつそ今までのようなことでなくて、思い切つた措置をとらなければなるまいというふうに考えております。
  216. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その思い切つた措置ということはどういうことですか。どうも我々の了解するところでは、今後増税ふするか或いは公債発行をするか、この二つの方法をとらなければ二十九年度予算は私組めないと思うのです。そうしますと、公債発行をしないとすれば、このコミユニケによつて、公債発行をしないと、そういう了解かどうか、それをしないとすれば、やはり増税の問題になつて来ると思うのです。やはり増税するということを意味しているのか。
  217. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 現在の段階で果して増税に持つて行くべき時かどうか、これは相当考慮を要することと思います。即ち既定経費等でも思い切つた削減等を行う必要も生じて参りましよう。従つてい、ずれにしましても、私どもはこれは来年度のことでまだ……、一応この間お尋ねがあつたから、二十九年度はこんなふうになるということはここで申上げましたが、併しそれは一応の私の構想にとどまるのでありまして、全体としての内閣の方針としてまだ二十九年度予算は確定いたしておりません。併しその節も申上げましたごとく、これは日本財政資金の撒布超過でインフレに持つて行つてはならんから、来年はすべての政策を重点にとり行う考えであるということを申上げたのであります。
  218. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 少しわかつて来ました。そうしますと公債政策はとらん、増税もやらない。そうすれば財政政策を重点的に持つて行くために、不急のものを切つて行くと、そうですね。どういう面を削減して行くか、そうしますと結局民生費或いは国土計画費、そういうものの大きな削減が起つて来ると思うのです。そうしますとこれは非常な大きな問題になる。そういう意味だろうと思うのですが、そうでありますか。
  219. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私どもは昨日もここでどなたかの御質疑に対してお答えいたしました通り日本のいわゆる災害予算等については、これは相当効率的にものを按配する必要があろうし、併し同時に災害が起らんように、即ち治山治水対策等については、これはやはり重点的に持つて行く必要があろう。併しそのときには今までの各種の補助金等を相当……、これは先に番葉がちよつと悪いかも知れんがと申しておいたのでありますが、いわゆる大難を振う必要があるだろう、こういうことを申上げております。  なお民生安定についての諸費については、これは大体日本の民生安定に関しては事実そう削るべきものはございません、現在のところで見まして……。ただ今年それではなげ住宅などを削つたか、これは昨日も申上げたかと存じますが、これは現実において金が余ることになつたので、それを本年度に流用したような次第であります。  なお私どもは公債についてはまだ一言も申上げておりませんが、いわゆる赤字公債というものは如何なることありとも発行しない、このことははつきり申上げますが、併し消化し得る限度において、而もそれが日銀の背負い込みとならん程度において、市場を見て或る程度の公社債発行ということは、これは私どもはインフレ要因になるとは考えておらんので、この程度の処置は実際問題として或いはとることもあろうと、まだ今申上げておる通り、全体の規模がきまつておりませんから、これは今公債は全然やらんと申したように仰せなつたが、やりたくないが、併しその程度で日本銀行に持込みになることなく、市中で完全に消化し切れるものであれば、その程度の公債については考えてもよいと、こういうふうに考えております。
  220. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今大蔵大臣が非常にこの財政方面について二十九年度には苦しくなると、御苦心されておることはわかります。それがなぜそうなつて来るかということは、これは共同コミユニケから来ておるのでありまして、結局これはやはり防衛費、これを増強する、殖やすという、こういう了解を得て来た結果、結局そのしわが最後においてインフレーシヨンお起さないようにすると、このインフレーシヨンを起さないようにするためには、今大蔵大臣が御答弁なつたように、結局この民生費を削減する方向に行かざる声得ない。又給与ベースを上げなければならんのにこれを抑える。裁定も無視し或いは人事院勧告も無視しなければならん。もうすでにこの災害予算にもこれが現われて来ておると思うのです。そこが問題になるのであつて大蔵大臣が苦しまれるのは、こういう協定をされるために、アメリカの政策によつて日本財政経済が苦しくされておると、制約をされて来るというところに問題があるのです。  そこで更に進んで、日本側が議事録草案を発表しておるようでありますが、それによると、日本の国内政策として、米国側は日本経済がインフレ的傾向を辿つており、或いは辿ろうとしていると見えるとの懸念を表明した。日本側代表団は国家財政においてはこれは事実でないことを説明したが、それにもかかわらず金融制度には危険の存在することを認めた。この点に関し日本側代表団は金融機構及び貸出政策を正常化するため具体的な提案を行つた、こう書いてある。これは大蔵省側から相談して持つて行かれたに違いないと思います。これはどういうものでありますか。具体的な提案というものはどういうものであるか、その点を伺います。
  221. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは御承知のごとく、丁度私がアメリカに行つておる最中に行違いに池田特使が立たれたので、池田君がどういうものを持つて行かれたかについては一切承知しておりません。従つて私どもが今の大蔵省の考え方について申せば、或いはそれと少し距離があるかも知れません。又全然合致しておるかも知れません。併しながら私どもとしては今申上げた通り、金融上からもインフレが起ることがあつては困る。ところが日本の金融情勢はどうかといいますと、これは御承知の、この頃は少し引締めをやつておりますから金額に移動があるかと思いますが、一時は三千五百億にも上つたこのオーバローンがある。こういつた問題等もあるし、又これはむしろ財政資金のほうではあるが、いろいろ指定預金等によつて金融を賄つておるような部分もある。そういうような問題と併せて考えて、金融面から来る要因を絶とうということが主たるものになつておるのであろうと思います。従つて私どもも、昨日どなたかが尋ねになつて、今池田構想と称するオーバローン解消についてはどういうふうに考えているかということでございましたが、これは実は私どもはよく承知しておりませんが、一応のことは知つておりますけれども、直接まだ話を聞いておりません。又どういう話合いをしたか、議事録も何もないので、その電報以外に何も私どもは承知しておらない。これは今後よく相談した上で処置いたしたいと考えております。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私、これは愛知君も行つているんですよ、大蔵省側から行つているんです。大蔵大臣は行かれませんでも。ですから事務当局でもいいんです。これは具体的な提案を行なつているんです。具体的な提案というのは、大蔵省においてこれは検討して行かなければそういう案が出せるはずがないんです。それは大蔵大臣でなくてもいいのですが、それは事務当局でもいいですから、どういう案ですか、具体的な案を……オーバローン解消策であるとすると、これについてはいろいろ問題があるわけです。意見を申上げれば、一方で財政の撒布超過をやめて、そうしてオーバローンもやめる。こういうことになつたら一体どういうことになるんですか。ですからその具体的な提案というものは一体どういうものであるかということを、これを我々国会に示して、国会の了解、アンダースタンデイングを求める必要があると思います。
  223. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私が承知しているのは、オーバローン解消についての一案を、いわゆる池田構想というものを向うへ持つてつたことは、これはよく承知しております。併しこれはこの間どなたかの御質疑にお答えしましたが、それは一応いわゆる外貨を売つて、それによつて得たものによつて或いは開発銀行なり、これは資金の性質によつて、或いは輸出入銀行なりにいわば肩替りをするといつたような恰好になるのでありまして、根本的解決にそれがなつておるわけではない。併しそういういわゆる恰好をつけることも又将来のためによいんではないかという考え方もありますが、原因の元が絶たれていないと同じようなことが日本銀行に起つて来ないとも限らない。つまり一方に今までのオーバローンは或いは開発銀行なり輸出入銀行なり一応成る程度整理したが、又元が絶たれないと同じようなことが日本銀行に起つて来ないとも限らないので、そういう点について私どもは今検討しておるのであります。もう少し根本的な案がないかということを検討しておるのでありまして、いわゆる池田構想といわれているものについてはその程度しか私は承知しておりません。  従つて私どもは、大蔵省としてはその案に基いて、案に基いてというと語弊がありますが、一応そういう案があつたのであるが、それは今の愛知君などが持つて行つているのはそれでありますが、それについてこれは根本的な解決案にならん点があるから、もう少しこれを根本的解決案になろようにして、金融面から来るインフレ要因を絶ちたい、こう考えている次第で、それはまだ結論に達しておりません。このことは過日来二、三御答弁申上げております。
  224. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは相互安全保障法第五百五十条によつて、アメリカ側から物資の供給を受けて、そうしてこれを売つた代金を積上げる、積立つて、それを日本防衛生産及び工業力増強に使うと、こういうような問題と関連があるのではないかと思うのですが、あるかないか。それからこれによつて積立てた資金が、これはやはりアメリカの債権になるのかどうか。これを使うときには、日本防衛生産に対して或いは工業力増強に対して、やはり何らかの干渉といいますか、こういう方面にどのくらい増強しなければならんとか、防衛生産、いわゆる軍需生産をこのくらい増強しなければならん、こういうように向うからそういう指示があるのかどうか。そういうことは全然なく、この援助を受けたとき積立つた金は、占領中の対日援助見返資金のように、アメリカ側にしよつちゆうOKをもらつてあれは使つたのですが、そういうようなことなく自由にこれは横えるのかどうか。この使途について、日本防衛生産、工業力増強に使用すると、これが又限定されているのです。そういうことでいいかどうか、この点が一つ。それからもう時間がありませんから、もう一つ伺いたいことは、この日本防衛力が増進すると共に在日米軍支持のための日本側負担を軽減することを随時考慮することに意見の一致をみた。そうしますと今の防衛分担金は、日本側においてこの保安隊を増強すれば軽減してやる、保安隊を増強しなければ軽減しない、こういう意味でありますかどうか。そうすれば防衛分担金というものは軽減されたが、その軽減された防衛分担金は結局保安隊の増強費に当てられる。そうなるといつまでたつて日本財政的余裕はそこに出て来ない。こういうことになるのですが、この了解事項はどういう関係なのですか、この二点について伺いたい。
  225. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ずMSAの五百五十条の小麦の買入れでありますが、これは先ほども申しましたように、本来ならばアメリカの小麦を買う場合もこれはドルが要るわけであります。併しこの際はドルを払わないで円を払つて買入れろということになります。従いましてこれは性質上からいいますと見返資金とは多少違いまして、むしろアメリカの資金でやる。ただ日本はドルを払わないで円を国内で払つてやる、こういう関係になるのであります。併しながらそれにつきましては、これをむやみにどこへでも使われろというのじやなくて、これはMSA関係防衛力の漸増ということに使うし、又国内でいろいろなものを発注する場合と、そうして何といいますか、国内の産業の、その種の産業のために使う、こういうことになりましようし、又それについで、原則的にはやはりアメリカが勝手に使うのじやなくて、日本と相談して使うということになりましようが、併しそれは原則でありまして、それをどういう程度にどういうふうにやるかということについては、今後東京で交渉してそれで決定するものでありまして、今的確にこうなるということは申上げられないのであります。従いまして先ほど申したように、それが非常に不利益の場合にはそれをやめて、ドル貨を払つても、アルゼンチンの小麦かどつかの小麦を買わなければならん場合もありましようかと思つております。  それから第二の点につきましては、これは前から、行政協定の締結当時から、私どももラスク代表に話した通り、原則的にはアメリカの駐留軍はここにいるけれども長くいたいというわけじやなくて、成るべく早く引きたい、引きたいが、日本防衛力が適当に増強しなければなかなか引かれない。こういう事態であり復すから、従つて日本防衛力が増強してき得る場合には、それだけ今度日本のほうに金が余計かかりますから、日本防衛分担金の一部を減らして、それを日本のほうに使う、こういう原則でありますが、これもどれだけをいつ減らすかというようなことは、今後話合いをしなければきまらないことでありまして、いわばこの原則は行政協定締結当時にすでに議事録に載つているような次第であります。
  226. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと結局このMSA五百五十条に上る援助は、東京においてその条件は具体的にこれから相談する、それによつて、そのときにいろいろな条件が明らかになつて来るわけですね。その使途、どういうところにどのくらい使うか、それからどういう産業のほうにこれを振り向けるかということは、その協定の内容として細かくきまつて来るわけですか。そうなるとこれは非常な問題になつて来ると思う。相当の多額の資金がここに積立てられて、そして日本側の経済の建設に自由に使われない。日本経済を軍事的に再編成するために使われて行く、そういう一つの枠がそこにはまつて来ろと思うのです。対日見返資金については、いわゆろ独立後はそうでなくなつたわけですが、前の占領下におけるような対日援助の使い方みたいになつて来ると思うのです。それがただ今度は協定の条項によつてそれが指示される。占領中においてはアメリカに一々OKをもらう、OKをもらうのと、条約によつて示すのと違うだけで、何か占領下におけるような資金の使い方になると思うのです。この点は非常に重要だと思うのですが、これは五百五十条の防衛支持援助の諸行為に関する取極、これと関連して来ると思うのですが、この点をもう少し具体的に御説明願いたいと思うのです。
  227. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) どうも少し木村君は悲観的のほうにお考えのようでありますが、これはすらつと考えて頂きたいのであります。若し、これは高い安いは別としまして、アメリカから小麦を買う場合にはアメリカにドルを払つて買うのであります。そのドルはアメリカのものになるわけであります。それをドルを払わないで円を払つて買おう、こういうのがこの趣旨でありますから、その払つた金はアメリカのものであります。そこでアメリカとしては国内でそれは何に使つたつて勝手だという理窟にもなるわけでありますが、それを特にこういうMSAに関連して資金を出すのだから、これで一つ日本防衛力を増強するなり或いは域外買付をやるなり、或いは軍需工場等の援助にこれを使う、こういうことにして、むしろアメリカの金に対してこちらで以て協議をいたさなければなりませんが、協議をした結課、或る使途について制限をし、文それについて一遍にぱつとどつかへ出されろということでも困りまし上うから、こういうことについては日本と協議をして使う。こういう条件でアメリカの小麦を円で買おう、こういう意味でありますから、そういう御心配のことは私はないと思いますが、併しその具体的条件は更に東京で話してみないと、果して日本に有利であるか、日本に困ることか、わかりませんから、原則的にはこれは結構だと思いますが、実際話してみた結果どうなるかということは、これから後のことになるわけであります。
  228. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その外務大臣のようにすらつと考えますと迷うと思うのです。すらつと考えれば一種のクレジツトを与えられたようなものですね。日本がドル債務を負うという形です。そこでアメリカは日本経済をそんな心配してくれるならば、今ドルで払わないで現物で貸してくれるわけです。それを日本国民に花つて、その溜つた資金をどう使おうが、これは日本の円を使おうが、これは日本の自由にして、アメリカに単にドル債務ができたという形のほうがすらすらしていると思うのです。それを、積立てた金を或る一定の使用方向に使わなければならんという紐が付くわけです。これはやはり五百五十条の防衛支持援助の規定だと思う。そうやつてアメリカは防衛支持援助、デフエンス・サツポート・エイドを通じて防衛を強化さして行こう、こういうふうな糾が付いて、単なる食糧援助ではない、その食糧援助の条件としてその裏には、食糧を援助してやるが、他の日本の物資、セメントだとか木材とかそういう物を以て再軍備せよ、これと交換条件なんです。ですからすらつとしていない。その点は非常に重要だと思うのです。日本が今予算を組む上においてどうしても民生費を或いは平和産業を復興しなければならん、そういうときにこういう援助を受けますと、どうしてもこれが日本経済を軍需に再編成して行く、軍需産業のほうに発展しなければならない。こういうことになつて、この資金の投資の関係が非常に制約を受ける、こういう意味なんです。ですからこの点はこれは非常に重要なんです。今後の又折衝になると思うのですが、私はそう解釈しているのです。
  229. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 極く簡単に申しますが、日本がアメリカからドルで以て仮に小麦を買うとする、そのドルは日本関係なくアルゼンチンに使つてもヨーロツパに使つても何も文句を言う理由はないわけであります。それを日本の国内の産業機構が動くように日本の国内で使う、又それをドルは使わないで円で払うのだ、こういう意味で、私は日本の産業にとりましても、又日本の外貨のポジシヨンからいいましても利益だと思いますけれども、具体的な問題は今後相談してみなければわからないわけであります。
  230. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に簡単に……。それは岡崎外務大臣はMSAの五百五十条というものをもう知つておられるはずですよ。五百五十条はそんな簡単なものではないのです。ですからここにはつきりしなければならん了解事項として、日本防衛生産及び工業力増強に用いる。即も軍需産業及びその軍需産業を維持育成するところの某幹産業、いわゆる日本経済を軍事的に再編成するほうに向けるということなら、そんなそのすらつとは考えられないのであります。私はもう時間がありません、非常に超過しましたからここでとめますが、従つて最後に私が意見として簡単に述べたいことは、この池田、ロバートソン会談ということは、これはもう日本の今後の上にとつて非常に重大なものだと思うのです。こんなに徹底的に市大なろ一般的了解をやつている。それを政府は遊んで国民に明らかにしないということはです、国民みずから自己の運命について民主的に判断する自由が与えられないのです。これでは材料が与えられない。重大な問題だと思うのです。で、これは極めて、政府が秘密的に今までこういうことを進めていることについて我々非常なろ不満の意を表するわけですが、時間がございませんからこれで私の質問を終ります。
  231. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 共同市明に対しまする我が党の基本的な態度につきましては、同僚の江田君が質問しましたので、二、三お尋ねしておきたいと思います。  自衛力漸増に対する抽象的な規定がされていますが、実際は防衛五カ年計画というものを持つていたが、アメリカの大統領のアイクの任期があと三年だから、それにマツチするように三カ年間に十八万の自衛力を増強する、併し実際は期限を切つていないが、三十二万五千も了承したというような外電の報告がありますが、それは実際でございますか、それについてお伺いいたします。
  232. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) そういうことについてはいろいろ新聞等に報道はいたしていることは承知しておりますが、私政府としてはそういうことは正式にはないと、こう考えております。
  233. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それでは時間がありませんので、次にアメリカが日本に対して三十二万五千なり三十五万の地上軍を要請していることは御案内の通りであります。そこで私の聞きたいのは、一体アメリカは極東の平和についてどういう考えを池田に吐露したか。特に中国をどう見たか。成るほど三十二万五千という地上軍の増強というものは、原子爆弾のない、水素爆弾をソヴイエトが持つていない、アメリカだけが独占した場合にはそういう日本に対する要請に基く極東戦略というものも成り立つかも知れん。併しハンソン、ボールドウインの報告でも、アメリカが千個の原子爆弾、ソ連が三百個の原爆なり、更に水素爆弾を持つたというようなときに、一体十八万や三十二万の自衛力を増強して何の日本の安全になるか。昭和二十年八月六日に広島に落ちたときには、日本の陸軍の十万の精鋭が広島におつたではないか。八月七日の長崎に落ちたときにも三万の陸軍の精鋭がおつて、たつた二発の原子爆弾日本の十三万の軍隊が吹き飛んでいる。そういうことを考えてみますと、日本の安全と平和にとるべき立場は、イデオロギーが違うとも隣国に敵を作らない。こういう我々の行動こそが、最大の平和と安全の方策だと思いますが、一体せつかちに数十万の地上軍を養成して、アメリカは中国をどう理解しておるか。極東の平和のためのアメリカの戦略は一体どんなものであつたか。それについてお伺いしておきたいと思う。
  234. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 池田・ロバートソン会談において、どうそういう点でアメリカの戦略の話がありましたか、これはまだ報告がありませんから、池田君が帰つて来ませんとお答えができません。
  235. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それではこれはとくとお考え願いたいのは、アメリカは最近ソヴイエトが水素爆弾を持つて、アメリカの世界戦略というものは根本的に変えなければならん、そうして又アメリカは自国の安全を保つためには、アメリカとソ連の間にある中間の地帯は、例えば日本のようなものは、アメリカの平和を保つために、原燃や水爆の衝撃を吸収するクツシヨンだということを、自国の安全を保つためのクツシヨンだということを言つておるわけであります。私はこれに対する回答は要求しませんが、是非そういう問題についてはとくと御検討の上東京会談をされろことを望んでおきます。  最後に、吉田総理にお伺いいたしますが、例えば昨晩赤坂の中川で、料亭でございますが、政界再編成が知名な士によつて行われようと下相談がなされております。私は困難な中で吉田総理政局を担当されておる点につきましては、党は反対でございますが、相当理解を持つて見ておるものであります。併し吉田総理憲法改正しない、自衛力漸増の範囲を出ないというこの立場を貫かれて、政治家としての晩節を飾られるためには、誤りなきを期せられるためにはよほど固い決心が要ると思うのであります。特に例えばアメリカのウエアリングという参事官は、日本の経団連と連繋いたしまして、そうして共同で三十万という日本自衛力漸増の防衛計画をとつております。そうして吉田総理の属せられる自由党以外の改進党、分自党に働きかけて、その案で吉田さんの自衛力漸増案をずつと締めて来ております。更に又アメリカに行かれた芦田さんは、三十万の経団連のほうがよろしいということをロバートソンに申出ております。池田さんは、日本経済の底は浅いからとてもそんなことはできないと言つておる際に、ロバートソンやダレスは、ミスター池田君はそんなことを善うが、大臣をやつたことのあろ芦田君は三十万の案ができるというが、どうじやと言うて、遂に早案よりかも悪いところの、共同コミユニケの線を受けざるを得ないように、ずつと搦手から締め上げられて来ておるわけであります。そのようなときに吉田総理がどういう態度をとられるかということは、日本の運命に関する問題です。ところが吉田総理の属せられる自由党は、昭和二十三年から内閣を取つて実にやすきについて、政策が容れられん場合は、野党になつてもそれを守ろうという決心はありません。もう野党恐怖症です。そこで吉田総理すら棚上げして……。
  236. 青木一男

    委員長青木一男君) 中田君、簡単に。
  237. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 改進党とでも提携してそういう案を作るということが行なわれるわけであります。従つてこの共同コミユニケの線から日本の将来に対して重大な結果が来ると思いますので、そういう難局に処しての吉田総理の心境をお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、昨日も外務大臣にお尋ねしたのですが、池田さんは三十日に共同声明をして寛いで、三十一日にアメリカ大使館の諸君の労を謝するために晩餐会存開いて、吉田総理政局を安定するために引退することを望んでおるということ声その席上で言つたということが外電で伝えられていますが、そういう御心境ですか。非常に信頼されろ特使でありますから、或いはそういうことをお漏らしになつたかも知れませんが、政局の動向に対しても重大な影響があると思いますのでお伺いしておきます。
  238. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申します。私の憲法防衛等に対する信念は変つておりません。私の将来の進退についてはここで以て言明いたす限りではないと考えます。
  239. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう時間がありませんので、我々としては、池田さんはアメリカからこの声明を発して、非常に自画自讃されていますが、それほどいいものであるなら、衆議院で予算が通過するまでに国会に訴えられて然るべきだと思います。和解と信頼の非常にいいづくめの講和がどんなものであつたかということは、我々は身を以て体験しているわけであります。我が日本社会党としては祖国の運命のために、断固この共同声明の実現に闘うことを表明いたします。質問を終ります。
  240. 青木一男

    委員長青木一男君) 以上を以て質疑の通告は全部終了いたしました。これにて質疑を終了いたします。  これより昭和二十八印度一般会計予算補正(第一号)及び同特別会計予算補正(特第一号)について討論に入ります。御発言の方は賛否を明らかにしてお述べを願います。三橋君。
  241. 三橋八次郎

    ○三橋八次郎君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、昭和二十八年度一般会計予算補正昭和二十八年度特別会計予算補正案に次の理由によつて反対を表明するものでございます。  終戦後八年間、風水害は或いは例年の行事のように毎年々々我が国土と国民の生活を破壊して来たのであります。そのために災害に対して根本的な対策を講じなければならないということが多数の人によつて警告されながら、而も常に時の政府によつて無視せられ続けて来たのでございます。だが今年の風水害は例年にその規模を見ないほど大きなものでございまして、実に未曽有の大損害を与えているのでございます。その被害額、つまり復旧に要する費用は、政府は千八百億円、又は千五百六十五億円と称しておりますが、実際におきましては二千億円を優に上廻ることは明らかであります。  戦後の各年度における風水害に際しまして、若しも政府が真剣にこれに対する対策を講じていたならば、たとえ大風や大雨がありましたとしても、これほどの損害を及ぼすことはなかつたでありましよう。又今年はこの風水害と同時に農作物、特に稲作に対しましての冷害が起りまして、二重の大打撃となつて、その被害農家は勿論のこと、国民生活に不安を与えておる結果となつたのであります。この冷害が農作物に与えました被害もまた明らかに一千億円を越すものがあるのでございます。現在政府の農家に対する政策は、即も重税と生産又は生活資材の高価格、それに反しまして低米価政策でありましたので、多収穫者のみに有利な奨励金等々の政策の下で、農業経営が破壊され、殊に零細農家は没落の危機にさらされておると申しましても過言ではございません。その上に農家は盲目的に増産を追求し、その結果が今次冷害を更に深刻にしたことも明らかな事実でございます。  以上の理由によりまして、我々は今年の風水害及び冷害は、単に自然的理由だけでなくて、むしろ政治的理由、吉田内閣及び自由党の政策に起因するものであると信ずるのであり耕して、その責任を徹底的に追及するものであります。今回の災害を人呼んでこれを政災と言つておるのも尤もなことであると言わなければなりません。救農国会と銘打つて召集されました今国会において、果して吉田内閣はその重大なる責任の幾分かでも償つたでございましようか。果して農家が救われることができるであろうか。これは今回の補正予算を見ますれば一目瞭然でございます。政府原案における風水害対策費は三百億円、冷害等対策費七十億円、農業保険費不足補填百三十億円であつて、これが救農国会の内容でございます。これが自由党、改進党、分自党の保守三派の閥取引の結果、資金運用部資金等から災害復旧費に百五十七億円の融資、農業保険費不足補填費から冷害等対策に四十五億を追加いたしました結果、風水害対策費は三百億円、冷害等対策費百十五億円、農業保険費不足補填八十五億円であつて、前国会に成立した災害特別立法も空証文、又は空証文に終らんとしておるのであります。そればかりでなく、今申上げました融資の財源なども、先日からの質疑応答によりますと、その財源も甚だ明確を欠いておるものがあるのでございます。これは最も遺憾に堪えんところであり、被害農民と共に深く悲しむものであります。  更に補正予算の歳入面を見ますときにおきましては、税収入の自然増、専売益金増収等、大衆課税の増額や、住宅公庫出資金の削減、殊に食糧増産対策費、公共事業費の削減等々を財源としておりますが、これらは国民生活の破壊を国民生活の負担において償おうとしているものであつて、それ自体が矛盾した論理であります。殊に土地改良費、開拓事業費、農業機械整備費等の削減は裏作、殊に麦の作付拡大に支障を来たすことは当然のことでありまして、凶作対策としての殊に裸麦、大麦の増産に対しまして見るべき政策がないことは、食糧危機突破のため誠に憂慮に堪えんところでございます。麦の播種期に直面いたしまして急速にその対策を樹立すべきであると思うのであります。これらを放任しておきますときにおきましては、吉田内閣及び自由党はその責任を免がれることはできないと考えるのであります。又改進党や分自党がみずからの手柄を誇ることができろと考えましたならば、これは非常な間違いでありまして、本予算案は表面から糊塗しておりまして、国民に対しまして誠に誠意を欠いているものと言わなければなりません。  これに対しまして我が党は衆議院において補正予算組替案を提出したのであります。今年の風水害、冷害の被害額は今までに先例を見ないほどに君大なものであり、この厖大な損等を救済するには、衆議院における我が党の提出した組換案を以てしてもなお不十分なものがあることは我々も知つているのであります。併し元来我々は、二十八年度当初予算審議に際しまして、一切の再軍備費を削除して、それを国民生活の安定と過去の災害復旧に充てるべきことを主張して、当初予算の組替案を提出したのであつたが、これが自由党、改進党、分自党の諸党によりまして否決され、現在施行されているごと費三派共同修正の再軍備予算が成立したのであります。この再軍備予算がく今日まで実施されて来た結課といたしまして、国民生活は無視され、治山治水や災害の復旧が放任せられたがために本年のごとき大災害を惹起し、国民生活が破壊に瀕したものであります。それは挙げて保守三派と吉田内閣の負うべき責任であるのであります。  衆議院における我が党の組替案は、今まで実施された予算を前提といたしまして、これを我が党の立場から補正しようとする限り、一定の限界があることは当然のことでありまして、この限界内にあつて最大の努力により、災害復旧費として八百億円、冷害対策費として百六十億円、農業保険賢不足補填費として百四十億円の支出を要求し、更に同じ組替案において、国家地方公務員、公共企業体職員の給与改訂、年度末手出のための支出、生産米価一万二千円、消費者米据置の二重米価のための食管特別会計への繰入金等を同時に計上しているのであります。以上が衆議院における我が党の補正組替案の概要でありますが、そのための財源として再軍備費の削除を主なる財源に充てておるのであります。我が党は単にこの補正予算のみならず、二十九年度予算においてもかねてより一貫しておる主張、即ち再軍備費を削除して国民生活の安定と国土の復旧に努力することを誓うものであります。  そもそも敗戦の打撃からなお立ち直ることができず、限られた経済力より持たないところの日本におきまして、再軍備国民生活の安定とが全く両立し得ないことはわかり切つた道理であります。然るに吉田内閣は、過去において国民生活に大きな犠牲を負担させながら再軍備を押し進めて来たばかりでなく、今後においては更に大きな犠牲を国民に背負わせて、再軍備の道を進もうとしておるのであります。池田自由党政調会長を吉田首相の特使と称してワシントンに派遣し、やれ二十万である、やれ三十五万であるとか、日本軍再建の交渉をアメリカの政府とやつておる。一方国内におきましては国民生活の破裂はますます甚だしく、農家はその耕地ばかりでなく、その最愛の子女をも売らなければならないというような事例が増加しておるのであります。  而もこれほどに国民生活を破壊しつつ押し進めている再軍備は、一体誰のための再軍備でありましようか。吉田内閣は誰のために火中の栗を拾おうとしておるのでありますか。それが決して日本防衛のためでたく、アメリカの防衛のためであることは、今日では誰一人として知らない者はないのであります。我々が多額の防衛支出金を支払つて駐留さしておるアメリカ軍は、日本のためには無駄な存在であるのであります。例えば韓国の李承晩ラインの紛争、竹島の占有をめぐる紛争に際しまして、日本の安全を守ると称するアメリカは一体何をしたでありましようか。アメリカが日本国内に七百有余の軍事基地を占有して、日本国民の生活を脅かしておることは何のためであるか。これでは日本国民の間に反米感情が起るのも当然のことでありまして、誠に遺憾に堪えないところでございます。労働者、農家を中心とする一般国民は、その生活が誰によつて破壊されているかをすでにはつきりと知つておるのであります。  救農国会における保守三派の騒々しい空騒ぎが、国民生活に何をもたらすかは国民は心得ているでありましよう。この空騒ぎの煙幕に隠れまして池田特使がワシントンでは何を交渉しているかを、決して見逃してはいけないのであります。皆田首相は本年六月、我が党の松本治一郎氏の質問に答えて、保安隊軍隊ではないと言明したのであります。然るに今国会においては、それは戦力を持たない軍隊であると言つておるのであります。吉田首相は国民及び国会に対しまして一片の誠意をも持とうともしていないのであります。吉田内閣は今では日本国民の利益を代表する政府というよりは、むしろ或る国の利益を代表する政府であろかのごとき印象を一般国民に与えておるのであります。我々の要求にもかかわらず、吉田総理大臣が第十七国会における一般施政方針演説を行うことを拒否したのは、日本国民に対する責任を恐れたがためでありましよう。チヤーチル首相にいたしましてもネール首相にいたしましても、自分の国の国民を代表する国会に対しまして、自分の施政方針を明らかにし、誠意を示しているのであります。自分の施政方針を国民の前に明らかにすることのできない総理大臣は、一体どの国にあるのでありましよう。誠に珍らしい総理大臣として長く日本国民の記憶に残ることでありましよう。  我々は今ここで吉田内閣に向つて心から要求するものでございます。今からでも決して遅くはございません。速かに再軍備をやめて国民生活の安定と国土の復旧にあらゆる努力を傾け、速かに日米安全保障条約、行政協定を破棄いたしまして、アメリカ駐留軍を撤退せしめ、一切の軍事基地を撤去し、直ちにMSA協定のための交渉を中止せしめられたいのであります。吉田内閣及び保守三派の諸君は、現国会の議席数においては、我々の主張を排除して、再軍備予算を成立せしめることはできるでありましよう。併し諸君は我我の要求を無視してその道を進むならば、必ずや日本国民は正しい道を進むために諸君に報いるところがあろでありましよう。農村を救うに足らん、名実相反する本予算補正原案に対しまして私どもは反対の意を表するものでございます。(拍手)
  242. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 私は自由党を代表いたしまして、只今審議中の衆議院送付の政府提出にかかる。補正算案に対し賛成の意を表するものであります。  今回の補正予算の内容につきましては、連日に亘りまして慎重審議を重ねたるろものでございますが、本案は現下置かれておる我が国の経済財政上、一方においては極力インフレーシヨンの要因たることを排しつつ、一方においては未曽有の深刻なる災害、冷等等の事態に即応して、迅速にその対策の万全を期さんことを念願しつつ編成せられたる政府の苦心の跡が顕著なるものがあることを知るものでございまして、誠に災害予算といたしましては適当なるものと言わなければなりません。  なお、本予算審議中、しばしば編成過程上三党協定に基いて若干の費目が変革せられたることについて批判めいた議論がありましたが、これは政局担当の関係上止むを得ざる措置であり、且つ一日も放置し得ざる災害、冷害の実態より、迅速に予算案の成立を念願した政府といたしましては、修正再提出いたしたのは誠に止むを得ざるものと考えられるのであります。  ただ本手算の内容は、災害地、冷害地におきましては旱天の慈雨として速かにその実施を待ち望んでおるものでございます。従つてその実施につきましては政府は極力これを急ぐと共に、その実施に当りましては煩瑣なる行政手続を極力簡易化して、最も災害、冷害予算としてふさわしい実効を挙げられることを希望いたしまして賛意を表するものであり上ます。
  243. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、政府の提出いたしました予算年案に対しまして反対の意思表示をいたします。  と申しますことは、我々は衆議院におきまして左右両社会党が共同で政府に対し組替を要求して案を出したのであります。衆議院におきましてはこれが否決をされまして、政府の案が通過いたしまして、参議院において連日審議をして参つたのであります。従いまして我々の基本的な態度は、社会党の共同組替案を基本といたしました反対でありまして、この点を先ず第一に明らかにいたしたいと存じております。  今回の政府提出の予算案は、相次ぐ暫定予算を経まして、七月末漸く二十八年度本予算案が成立いたしましたのでありますが、今回はその本予算に対する補正ということであり、且つ又参議院で受取りましたものは、この政府提出の補正予算案に対しまして、三党の共同の修正が加えられているものであります。この点は十六国会におきまして我々が生のままの三党修正を受取りましたとへに、その政治上の責任というものがどこにあるかということを鋭く追及いたしました。最初のうちは、修正された部分に対しては政府は責任を負わない、こういうことを言明していたのでありますが、遂に修正部分に対しても政府が責任を負うということに相成つたのであります。今回は三党で共同修正いたしましたものを、政府が受取りまして、改めて政府の修正として提案され、衆議院において可決されて本院に廻つてつたのであります。前回もそうでありましたが、今回におきましても、その修正の最終の締め括りというものはなされていないのであります。これは誠に予算審議する場合におきまして、我々が迷惑至極の予算案でありまして、最後の一円一銭に至るまではつきりとした予算上の形を整えていることが、国会審議の上の必要な要件であると考えるのであります。前回三党修正を同意いたしました政府としましては、当然その締め括りがこの臨時国会に提案されなければならなかつたにもかかわらず、この部分は今回の補正予算には計上されておらず、次回の補正に廻されているのであります。今回の修正におきましても百五十七億といういわゆる予算の枠外のものが存在しておりまして、これをどういうふうに解決するかということはなお未解決の状態に置かれているのであります。工事が百パーセント進捗し、その必要があつた場合に率いては資金運用部資金その他から融資するという形になつておりますが、すでにこの席上論議されましたように、この資金運用部資金が十分の原資を持つておらないということは事実でありまして、百五十七億が一度に早急に必要でないということは認めるにいたしましても、併し原資がすでに十分でないということは、この百五十七億を無理をすれば産業資金その他にしわ寄せをされまして、当然どこかが犠牲を受けなければならない形になる。こういう未解決であり、不安定であり、将来問題を起すべきものが予算の枠外に残されており、このことが後に尾を引いて恐らくは政治上の問題になる。こういつたような杜撰の修正をあとからなして来ているということは、誠に政府としては不親切なやり方であり、若しくは不穏当のやり方であるということを申上げなければならないのであります。で、政府のやり方は、国民をして予算そのものに対する正確な理解を不可能ならしめているのでありまして、細切れ的な、而も最終の問題の解決を後に残すようなやり方を続けてやつている限りにおきましては、国民財政的にも協力をなす気持を失わせるであろうということを我々は強く指摘しなければならないのであります。若し現存の段階において国民財政への大きな協力を期待するとするならば、或る程度までその規模を明らかにし、一切後に尾を引くような変な解決の仕方をやめて、一目瞭然たる予算の内容を明らかにすべきことが当然であろうと思うのであります。予算の一体性ということは極めて必要でありますが、単にそれはその年度の中だけにとどまらず、相当長期に亘る財政経済の見通しというその基盤の上に予算というものが考えられなければならないものであります。第二補正の問題にいたしましても、二十九年度予算案の輪郭の問題につきましてむ、この委員会における論議でなお明確にならないものが極めて多かつたのでありまして、これは予算審議上恐らくは予算委員の人々の痛感されたことと考えるのであります。  第二に申上げたいことは、災等、冷害の予算であり、この予算を早期に成立せしめ、早急にこれを実施するということはもとより国民の強い要望でありますから、我々といたしましても、この審議に当りましては十分に委員会におきまして協力し、努力して参つたのであります。併しこの審議の上に明らかになりましたことは、国の財政余力というものはすでに底をついて、衆参両院の超党派的な決議をも大蔵大臣はこれを躊躇して五百十億という枠の中に抑えているのであります。これは恐らく国会が代長ずるところの国民、特に罹災国民の要望が予算の中に十分に反映していないということを意味するのでありまして、私は誠に今回の災害予算というものが、冷酷なる予算であるということを考えなければならないのであります。一千五百六十五億の災害交定に対しまして国会が要望していることを入れず、これを具体化せず、次々にその最終の決定を延ばしているといことは、誠にこの予算が十分に検討された予算でないということを明らかに示しているものであります。  更に申上げたいことは、この予算審議中明確になつたのでありますが、再軍備的な予算国民生活の安定、国土の保全を圧迫しつつあろということは、すでに疑いのないところであります。緒方副総理もそれを明らかに認めているのであります。これが我が国の財政の限度であるということを政府は知らなければならないのであります。若しこれ以上の再軍術的な予算が更に追加して第二補正或いは二十九年度予算に計上されるならば、恐らくそれは国民生活を破綻せしめ、我が国の経済自立を危険な状態に陥らしめるであろうということも想像できるのであります。国内治安を確保するということは現在の段階において最も大切なことであり、何よりも我が国の経済自立を願うということが最も大切なことであろうと考えるのでありす。併しこの底をついた日本財政現状の上に、更に多くの付軍備的な予算を計上することになれば、国内の経済及び国民生活を圧迫し、これを危険ならしめるということは容易に想像されるのでありまして、これをあえて更に再軍備的な予算を計上されようとする政府の意図に対しまして我々は反対せざるを得ないのであります。  更に公務員の生活の安定は、人事院の勧告及び仲裁裁定ですら我々は必ずしも十分であるとは考えておりません。併し一応は人事院の勧告も出たことでありますし、次々に八仲裁も出たのでありますから、我々としては、政府に一日も早くこれらの勧告なり、或いは仲裁裁定なりを実施することを要望して参つたのであります。政府はこれら公務員の労働基本権を制限し、基本的な労働三権というものを奪つている代償として、法律は人事院の勧告なり、或いは仲裁裁定なりというものを考えているのであります。従つて政府はこれらの公務員の生活を安定するという法律上の責任を負つているわけであります。若し政府が法律で規定されているその責任を果さず、公務員をして窮乏の生活に縛りつけておこうとする意思でありますならば、公務員それ自身も、自己の生活の防衛のためにやはり人間的な要求をし、人間の生存権を守ろために闘うということは当然であります。私どもはこういう見地から考えてみますならば、成るほど財政は苦しいかも知らない、併し法律で規定されているこの政府の責任というものを果さなければ、果して政府が公務員に対して指揮命令をすることはできるでありましようか。これらの現業なり、或いは公社なりの職員が、せめて仲裁裁定なり実施して欲しいということを、冷酷にもこれを拒絶することになるとするならば、その結果は誠に想像するに難くないのであります。恐らくは実力闘争という形が展開されるでありましよう。その責任は政府にあるのでありまして、政府が法律を守らないその結果誠に予期できないような結果が起つて参りましたその場合におきましては、誠にこれは政府の責任であると言わなければならないのであります。  こういう点からも、我々は予算の一体として災の対策及び公務員法その他の法律で規定しておりますところの権利を十分に政府考えて頂きたい、こういうことを申上げて参つたのであります。併しながら政府はこれを取上げようとなすつておらないのであります。政府は、大蔵大臣説明によりますというと、この災害予算というものはインフレの危険性を抑圧し、通貨の安定ということを第一義としなければならない。こういうことで、災害予算も極度に圧縮されているのであります。而も災害復旧であるとか、或いは救農予算ということは名ばかりでありまして、而もこの財源の一部にはすでに計画されておりましたところの公共事業費、或いは食糧増産費等を削減して、その一部をその財源としているのであります。かかることを繰返しておりますならば、治山治水の根本的な解決ができないばかりでなく、明年の災害も又想像ができるのであります。災害以外の重要な問題につきましては、先ほども申述べましたベース改訂の問題、或いは年末手当の問題、中小企業に対する年末金融等の問題、それらの政治的な解決をしなければならない問題を逃げて災害予算のみに限定した。こういうことは、全体を見るという政府の立場をとらないで、政府はこまぎれ的だ予算をしたということであつて、我々としましては誠に残念に思うのであります。  我が党の組換案は、その詳細は速記録に譲りたいと思いますが、衆参両院の水害特別委員会が超党派的に決定した結論を尊重したものでありまして、我々はこの線に従つて予算の組替えを要求しているのであります。冷害対策も又同様でありまして、農林委員会の決定に副いました百三十億計上して、真に冷害で困つておられるところの国民に対して十分な対策を講じたいと考えているのであります。なお農業共済保険繰入百五十億を計上いたしまして、政府の補正予算が救農費僅かに五百億円であるというのに対しまして、組替案は八百八十億を計上いたしまして災害に悩む農民を救うという立場をとつているのであります。現在低米価で苦しんでいる農民を救い、消費者価格を据え置くために、二重米価制度を実施するために、食管特別会計に繰入れるために、三百億円を計上し、生産者には一万二千円の米価を保障し、そして消費者米価は、これを値上げしないという方針をとつているのであります。なお人事院勧告による公務員のベース・アツプ及び公共企業体の職員に対する仲裁裁定を完全に実施し、期末手当一カ月半を計上いたしたいと思つているのであります。なお不況と税金と金融難に押し潰されようとしている中小企業者を救うために、年末融資として国民金融公庫出資を三十億増額し、中小企業金融公庫出資を七十億増額いたしたいと考えているのであります。その財源は、防衛関係費七月現在残一千八百四十億に上るものを充て、財政規模を極力圧縮すると共に、再軍備より生活の安定、再軍備よりも国土保全という基本的な線を貫いて行きたいと考えているのであります。  これを要するに、私どもは現在吉田内閣がとつておりますところの再軍備的な経費というものが漸次国民生活を圧迫し、且つ又国土を破壊しつつあろという点に鑑みまして、政府予算案に対し反対し、我々の共同組替案を主張する次第であります。(拍手)
  244. 森八三一

    ○森八三一君 私は緑風会の議員総会の決定に基きまして、只今議題となつておりまする昭和二十八年度補正予算案に対しまして、政府の提出原案に賛成をいたすものであります。  私どもが原案に賛成いたしまするゆえんは、去る六月、西日本を襲いました大水害を初めといたしまして、近畿地方災害、更に今次の十三号台風などによりまして、多数の被災者はその日の生活にも難儀をしている、本当に未曽有の大災害と申すべきであります。その上に北海道や東北地方を中心といたしまして巻き起つておりまする冷害の惨状も又これ言語に絶するものがあると存ずるのであります。かような状態で、正に国土は荒廃の中に放置せられているというような状況でありまして、誠に遺憾の次第であります。こういうような状況は、何と申しましても速かに復旧、復興を図らなければならんのであります。私どもは、これに対処いたしまするために、去る十六国会におきましては二十有余の特別立法を行いましたし、本国会におきましても、更にこれが補完的ないろいろの立法をいたして参つているのでありますが、これが実施に必要な予算的措置が講ぜられておりませんために、未だ計画的な復旧の作業が進行を見ておらんというような状態に置かれているのであります。このためにいろいろの問題が巻き起つているという実情でございます。被災者は勿論、国民つて予算の早期成立を熱望いたしていることであろうと存じます。提案せられておりまする補正予算の具体的な個々の内容に亘りますれば、勿論これで十分というように申すわけに参りません節がないわけでもございませんが、災害対策を速かに実施しなければならんという国民的要請に応えるの趣旨による次第であります。  私はこの際以下申述べまする諸点について、特に政府の深い反省と注意を喚起いたしたい次第であります。  その第一は、予算審議を通じてもしばしば論議せられたところでありまするが、本予算案が国会に提出せられましてまだ実質上の審議に入りませんうちに修正を見たことであります。勿論各政党、各会派が政策上の協議をやつたり、その間に調整を図りますることについて、何ら異存を持つものではございませんが、政府が確信を持つて提案せられましたものが、議会の外で協議せられ、いろいろな含みを持ちつつ修正を施されるということは、見方によりましては、まさに議会審議を軽視するということに相成るものでありまして、今回のような取運びが慣例となりますることは、悪例と申さなければなりません。将来かようなことが前例となりませんことを強く望むものであります。例えば予算に具体化されておらない事業が、融資というような方法で国会の審議を待たずして推進され、それが次の年度における予算を拘束するというような結果が生れますることであります。即ち災害復旧の年次計画を三・五・二というような比率に了解をせられたという結果、百五十七億円の融資を以て処置するというがごとき問題であります。  第二に申し上げたいことは、政府もしばしば説明されておりまするごとく、我が国最近の経済実情は、インフレの傾向を否定するわけには参りかねるというのであり、これがために財政規模の圧縮など、万全の措置を講ずるという、この基本的な態度につきましては全く同感でありまして、国の財政が宏足し、日本経済が自立いたしまするように全力を挙げられなければならんことは申すまでもございません。と言つて、それがために緊急に対処しなければなりません災害の善後処理が制約を受けて放置されますることも、又許さるべきことではないと存じます。極めてむずかしいことではございますが、この両面は決して対立するものではなく、両立し得るものと存じまする次第であります。このためには、ただ単に財政規模の圧縮を以て臨むというだけではいかんので、産業の伸展に必要な生産増強の経費などは、これは十分に盛り込むべきであると思います。ただ問題は不生産的な経費の節減にこそ全力が指向せられなければならんと存じまするのでありまして、こういう意味からいたしますると、今回の補正予算において公共事業費、特に食糧増産経費を節減したごときは、私どものとらざるところでありまして、甚だ遺憾に存ずる次第であります。第二次補正予算や明年度予算の編成に当つてはこういう点に格段の留意と考慮を望んでやみません。  第三に、今回の補正予算に示されました五百億と、別途融資で措置をしようとされまする百五十七億円など、七百億円前後では、災害の復旧や冷害対策に十分であるとは申しかねるのでありまして、勿論資材や労力や時間などの関係もありますが、国民の復旧意欲と関係者の努力によりまして、事業の進捗が図られますような場合におきましては、成立予算に限定されることなく、第二次補正を行うなどの決意を以て対処せられたいのであります。大蔵大臣も私の質問に対し、こういうような場合におきましては、財源を勘案しつつ善処したいと述べられておりますが、すでに昨日公表せられました十月十五日の作況によりましても実に食糧生産見込量は約千万石の減収と相成つておるのであります。なお海岸堤防や除塩などの新規立法がございまして、今回の補正十算にはこういうことに充足せられるものも計上されてはおらないように思われるのであります。こういうことからいたしますれば、第二次補正は必至の状況にあると存じますので、必要に応じ第二次補正が行われますることを申添えたいと存じます。  次に、百五十七億円の融資を初め、四十五億円の農災融資等、具体的に予算に計上されておりません部分を融資の措置に求められており、資金運用部資金等がその原資として挙げられておるのでありますが、資金運用部資金の実情は、殆んど新規の需要に応える余裕を持つておらないのでありまして、ただ単に気休め的に融資措置を講ずるということだけでは事態の解決にはなりません。いやしくも議場を通じて約束せられました融資が円滑を欠くがごとき事態のございませんように格段の留意を望みますと共に、これが金利の補給に対する予算化を望む次第であります。  更に営農資金は主として農林中央金庫の余裕金を以てするというのでありますが年末から年初にかけての供米時期ににおける農林中央金庫の余裕金の増加は、農林金融の特異性と申しまするか、季節性によるものでありまして、これに依存をいたしますることは甚だ危険と中さなければなりません。当面余裕金を運用することは止むを得ないことと存じまするが、農林金融に支障が巻き起りませんように十分な対策を樹立せられたいのであります。  最後に、会計検査院の報告に見ましても、災害関係におきましては、県によつては九〇%以上の不正不当が指摘されておりますごとく、大なり小なり批難がなされておる次第でありまして、誠に遺憾の極みであります。本年の異常災が害を受けて行われます災害復旧事業が従来のようなことで進められるといたしますならば、恐らく数百億円に上る不正不当支出が行われるだろうと思われるのでありまして、これが防止のためには万全の措置がとられなければなりません。いやしくも不正が行われたような県に対しましては、或いはそういうようなものに対しましては、一切の助成を打ち切るとか、監察制度の確立とか、入札制度の改善とか、或いは助成に非常に多くの関係を持つ官吏の立候補の制限など、いろいろと対策は考えられましようが、この際政府におきましては、異常の決意を以て不正の絶滅を期せられますと共に次の国会で本委員会にその対策を報告せられたいと希望をいたすのであります。  以上を以ちまして私の賛成討論といたします。(拍手)
  245. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの災害予算案に反対いたすものであります。  この未曽有の災害を我々が体験し、又その災害対策予算審議するにつけて痛感させられますのは、このたび私新中国に参りまして非常に大きな建設事業を視察して参つたのであります。で、我々一行の視察いたしましたのは、永定河の官庁ダムの建設でありましたが、長さ二百九十メートル、幅三百六十メートルの大きな水湖でありました。水の容水量は二十二億七千万立方メーターでありまして、これは一九五一年十月に着工して、二カ年で完成しております。そうしてこのダムは、これまでの、歴史上一番大きな洪水であつた一九三九年の大洪水の倍の洪水が起つても、それに堪え得るほどの大きなダムでありまして、そうして二カ年の歳月を費し、冬零下二十度の非常な寒い中を一日四万人の労働者が働いて、そうして二カ年においてこのダムを作り上げ、そのために本年度非常に大きな洪水がありましたが、その洪水を食いとめてそうして災害を防いだのであります。更に又その他にも例えば淮河の治水工事等至る所にたくさんあります。そういう治水工事が着々と成功いたしまして、本年多少洪水がございましたのに、中国の食糧生産は、昨年度一億五千万トンに対して、本年度大体一億六千万トンくらいの生産があると言われておるのであります。こういう実情を我々は視察して参りまして、そうして帰つて来てこの災対策費を我々が検討したときに、実際我々は感慨無量なるものがある。只今録風会の森さんから、今度の災害の悲惨なることについて、被害の甚大なることについて數々御説明がございましたが、日本の国土は荒廃しておるのであります。一体この原因はどこにあるのか。結局これまでの慎重なる審議の過程において、それは日本の国土建設費或いは民生安定費が再軍備費、防御費に食われておるということが根本であるということがわかつたのであります。而もその再軍備費は、日米安全保障条約によつて、アメリカの要請によつて軍備費が殖えつつあるのでありまして、日本国民みずからの自主性においてこれを削減できない、客観的にはそういう状態にあることを我々は悲しむものであります。その結果として、この災害予算案は次のような特徴を持つに至つております。  第一に、各議員から指摘されましたようにこの災害対策費は不十分であります。そうしてその物動的裏付けにおいてもこれ又不十分であるということは、審議の過程において明らかになつております。このような貧弱な災害対策費では国土の荒廃を食いとめることは私は絶対にできないと思います。今後将来起るであろう災害を我々は予想しましてもこれは非常な心配に堪えないのであります。  更に又この予算の財源対策がインフレ防止を名といたしまして、一般勤労大衆の犠牲においてその財源が賄われておるということであります。例えば政府は自然増収を百七十億見積つておりますがその結果として本年度の勤労者の税金は、実に補正前の千九百十八億に更に百七十億加わりまして、二千八十八億に勤労者の税金はなるのであります。これに対して個人業種、申告納税者の税金は、むしろ四十億自然減収を見越しておりますが、七百十三億でありまして、この補だ前の勤労者と申告納税者との税金負担の不均衡が、庭に今度の補正によつて不均衡が拡大されておる。こういう形において、この災害予算の財源が求められておるのであります。更に人事院の勧告は無視され、仲裁裁定も実質的に無視されております。又民生費も削減されておりまして、森委員も指摘されましたように、食糧増産対策閥、公共事業費、戎いは特定道路の費用、戎いは又作七金融公庫の出資金作、民生費が約九十億、百億近く削減されておるのであります。これは先ほど質疑がありました池田・ロバートソン共同声明を見ても明らかである通り、もうすでに二十九年度の軍事費を捻出する前提として、この災害予算がこのような組み方をされているということは、もう明らかになつたのであります。即ちアメリカの要請によつて、アメリカ国民の負担を軽減する、アメリカ国民防衛費を軽減して、その防衛費を日本国民の税金負担、或いは国民生活の低下の犠牲に求める。併しながらその場合、日本防御費が殖えるために、インフレが起るといけないから、あの共同声明の最後にありましたように、インフレを抑制するために大衆の犠牲を強いる。即ち民生費を削減する。勤労所得税は軽減しない。むしろ自然増収によつて勤労者の税金は多くする。こういう国民生活の犠牲において、この予算が賄われるようなことになつているわけでして、結局防衛費を削らない限り、日本経済、民生安定はあり得ませんし、又日本の国土建設は重大な危機に直面することは明らかであります。現在世界は平和の方向に向つておる。朝鮮休戦が行われまして、そうして世界国際情勢、大勢は平和の方向に向つております。特に又繰返して申述べますが、私中国に参りまして、中国は日本を侵略するなんということは、もう寸毫も認められないのであります。こういう国際情勢の下において、どうして防衛費を殖やすのか。どうして防衛費を殖やすために民生費を削り、災害費を十分計上しないで、そうして国土の荒廃をここで防ぎ得ないのであるか。全く国際情勢と逆行する予算であつて、全く私はナンセンスに近いと思います。こういう状態になつているのは、結局日本独立がない。自主的な予算が組めない。そこに私は結局あるのだ。もう誰もがこの事態ははつきりしておると思います。防衛費を削らなければ民生費にも食い込むし、国土建設にも食い込む。今後の日本災害対策も十分できないことは明々白々であります。それがなぜできないか。それは日本独立がない。真の独立がないのです。日本に自主性がない。従つてこういう運命に陥つていることは明白であります。勿論災害対策はこれは緊急を要します。従つて緊急を要するというので、我々もこの予算が早く通ることを熱望するのでありますけれども、併し緊急の名によつた日本経済が今重天な危機に立つている。この危機に対して根本の対策を立て直さなければなりませんし、その根本対策との関連においてのみこの災害予算というものは組まれなければならないのです。これと切離して彌縫的に五百億程度のここで予算を組んで一体何になりましようか。従つて私は緊急の名によつて日本財政経済が根本的に建直されなければならない。それこそ緊急の段階に立ち至つているのであつて、私はそういう意味で今の国際情勢、平和情勢に適応したところの平和予算にこれを組替えなければ、日本災害も防止できませんし、今後の国民生活安定もできないのであります。そういう意味でこの予算を平和的観点に立つて根本的に組替え、そうして十分に災害対策費をこれは捻出すべきである。更に又民生安定費も捻出すべきだと思う。  こういう観点から私はこの予算案に反対しまして、そうして政府に早く平和的基礎に立つて、平和予算を組んで、災害予算を十分に織込んで、そうして提出することを求める次第であります。
  246. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は改進党を代表いたしまして、本予算案に賛成をいたします。  理由といたしますところは、過ぐる六月の西日本の水害を初めといたしまして、今年度は数次に亘る風水害が広範且つ大規模に起つておるのでありまして、これに加えまして、東北、北海道等に異常な冷害を受けたのであります。その被害は非常に甚大を極めておるのでありまして、むしろ私は全国民がその実情について見究め方が足りないのではなかろうかと思うのであります。昨日の農林省発表によりますと、稲作の収穫予想は五千三百四十万石を予想され、平年作を下廻ること一千百六十九万石と言われておるのであります。こういうふうな状況では供出も或いは二千万石を下廻るのではないかということすら憂慮せられておるのであります。かてて加えまして、今度の被害は七千億と唱えられ、実際の葉計は困難でありますが、実際の資産的な国民が受けました損失を計算いたしますると、これは大変だつたろうと思うのであります。或いは一兆を超えるのではないかということが考えられるのであります。実際の農民から見ますると、過去一年間の労作を全く失つてしまつたのみならず、多くの資産を喪失し、そうして今なお水びたしの状況にあり、又東北単作地帯を初めといたしまして、これらの地帯はすでに人身売買の悲惨な状況すら起つておると伝えられて、この点については政府みずからもこの現象を認めておるのであります。私は政府が速かに適切なる処置を講ぜられ、一日もゆるがせにすべきものではないと考えておるのであります。  本案につきましては、細かいところになりますると、各委員が指摘されましたように、災害対策費の中の百七十億円の融資の問題といい、冷害対策費の問題といい、農業再保険に対しますところの繰入金の四十五億の問題といい、又地方財政の負担増加に伴いますもの等、財政上の処置を今後なお明確にすべきものが残つておることを認めざるを得ません。これは災害費の性質上、又今度の災害が広範に亘つておりますことを考慮するときは止むを得ざる分もあると考えられますが、本経費は、本質的には過般の特別立法をなしますと同時に政府にこれに伴う支出許容額の限度を緊急応急の処置として国会としてはこれを認め、そうして政府のなすところを監督するのが私は国会の本来のとるべき処置と考えますので、殊に今度の国会がこれに代りまして、臨時の国会としてこれら対策のみに専念するという性質から考えますと、本案を承認いたしまして一日も速かに実施が適切に行われることを切実に希望いたす次第であります。これが本案に対する賛成の理由であります。  ただ、この際この本予算案の成立の経緯に鑑みまして、政府はこれが実施に誠意を傾け、適切なる処置をとるべきことの注意を喚起いたしたい。と同時に審議の経過を通じまして、二、三の重要な点につきまして党の態度と、そうして希望を申述べたいと思います。第一に、本予算案に関しまして、一番一般に議論されたことはインフレ論であります。政府自身もこの予算案に関連して、主張いたしましたところはインフレ論であります。併し私に言わせれば、インフレ防止は口で説明するとか、或いは災害予算を最小限度にとどめるとかいうことだけでできるものではないという考えを持つております。かかる国民の民生安定に異常な問題が起りましたときには、それ相当に既定経費との按配を更に検討すべきものであるということは論を待たないと思うのであります。この点に関連しまして、各方面より自衛力漸増の問題に関しまして論議が向けられることも一つの方向じやないかと思いますが、私は率直に申しまして、自衛力漸増の問題につきましては、今各国の趨勢は、過去数年間各国とも苦しい中において、国際民主主義を守るために自衛力を漸増して参つておるのであります。民生の安定か自衛力の漸増か、どつちかを捨てて問題を解決することは楽であります。併しながら世界中この問題を、二つを如何に按配しつつやるかということに各国政治があることは当然であります。イギリスにおきましても、現在の軍備計画は、最初は労働党によつて計画され、その後保守党によつて実際の問題として一年繰延べられたのであります。又敗戦ドイツが多額の、一般予算中に占めますところの占領費は実に三七%余に及んでおりますのに、これらを引受けつつ、今日の繁栄に持つて参つておるのであります。私どもはこういう国際情勢から考えますと、厳密に先ずはかの経費について、本当に我々が日本経済の上から検討してメスを入れるところのないかを真剣に私は取り組むのが日本国家のとるべき態度であるべきだと思うのであります。実はそのことがなかつたことは非常に不幸でございます。無論僅かの既定予算についての削減は行われておりますが、多くは自然増収によつておられる。実は本予算成立のときにも、私は大蔵大臣にいろいろな経費を指摘して、これはお考えになるべきだということで、成る程度肯かれたものもあるのでありますが、それらについては、何らのメスが今度は揮われていない。今時間の制限上これらについては論議することを避けますが、既定経費中もつと真剣に検討をなすつて然るべきものであり、殊に今後米価の問題といい、給与その他のいろいろな問題から第二補正を必要とすることは明らかでありますときに、政府自身がこの問題についてもつと真剣にお取り組みになることを希望いたします。  なお第二といたしましては、今回の災害の結果、すでに主食を中心として物価は更に上らんとしておるのであります。すでに消費者大衆はその苦しみ、しわ寄せを受けておる状況であります。この際政府は価格維持について、やはり輸入食糧の確保、その増加、或いは供出に対するところの協力をいたしまして、或いは業者に対するところの反省について実効の上る特段の御処置をとらるべきだと思うのであります。なお予算の実施に当りましては、先ほどど緑食会の森委員から言われますように、既定の過去の過年度災害及び今回の災害対策費が各省に亘りまするので、これらについては総合的な施策をなされますと回持に、その効率的運用に特段の御処置がなければならんと思うのであります。又災害地自身の要請及び住民自身についても特段の注意を喚起され、その協力を得られることが必要かと考えるのであります。  以上の意見を申添えまして、改進党といたしましての本案に対する賛成意見といたします。(拍手)
  247. 三浦義男

    ○三浦義男君 私は純無所属クラブを代表いたしまして、只今議題となつております昭和二十八年度一般会計補正ほか一件について、提出原案に賛成の意を表するものでございます。以下その理由と希望を極く簡単に申上げます。  その理由は、六月以来相次いで起りました風水害、冷害等に悩んでおりました災害地、冷害地帯におきましては、国民お互いの努力によりまして、又予備金の支出、繋ぎ資金等に頼つて一時を過ごして参つたのであります。併しこれは繋ぎでございまして、本補正予算の国会の通過を一日千秋の思いで待つてつたのであります。こういう理由からいたしまして、私はこの予算案が一日も早く施行されることを希望するものであります。  次に希望として二、三の点を申上げたいのであります。本予算財政関係で満足する額には達せず、融資の額も又然りであります。これは誠に遺憾なことであります。この際当局はこれを補う意味におきましても、徒らに在来の轍或いは慣例にとらわれろことなく、迅速に且つ綿密周到な調査を基といたされまして、適正な配分を行い、出先関係も又有効適切な計画、設計をいたしまして、予算の節約に努めると同時に、不当の支出の絶無を期して頂きまして、鋭意事業の遂行に当つて下さるならば、この足らざる予算も又民生の安定、明日の再生産に役立つようにして頂きたいのであります。又この予算の大部分を占めております事業費の消化は、技術、労務、物資に大いなる関係を持つておることは明らかなことでございますが、このうちの労務につきましては多少の自信があるかも知れませんが、技術、物資、殊に食糧を含めました物資につきましては、我が国の現状は非常に困難なる状態であると思うのであります。これらの供給につきましては、当局は格段の努力を払われたいのであります。  次に希望いたしたいことは、この国会が召集されましても、予算の本格的の決定がございませんでした。で、その意味におきましてこの審査に従らに日を空費するようなことがございましたのは、これはいろいろの事情があつたとは思いますが、今後かかることのないように是非処理して頂きたいと思うのであります。  又国家公務員の年末手当の問題、ベースアツプの問題が人事院から勧告され、又公共企業体の仲裁裁定が今国会に提出されながら、来国会まで継続審議となつておる状態でございます。その他緊急を要しまする防衛体制の問題、米価の問題その他が残つておりまするので、次の国会をできるだけ早期に開会して頂きまして、その解決に当つて頂きたいのであります。  以上述べましたことを以ちまして私の賛成の意見、又希望といたしたいのであります。(拍手)
  248. 青木一男

    委員長青木一男君) これを以て討論を終局し、直ちに採択に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないと認めます。これより昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)について採決をいたします。二案に賛成の方の御起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  250. 青木一男

    委員長青木一男君) 起立者多数であります。よつて二案は可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容は、先例により委員長に御一任を願います。次に賛成の方は順次御署名を願います。   多数意見者署名    瀧井治三郎  高橋  衛    高野 一夫  鹿島守之助    宮本 邦彦  白波瀬米吉    小林 英三  小野 義夫    佐藤清一郎  井野 碩哉    伊能 芳雄  藤野 繁雄    武藤 常介  松浦 定義    西郷吉之助  小林 武治    高橋進太郎  森 八三一    中川 幸平  吉田 萬次    三浦 義男  岸  良一    堀木 鎌三  新谷寅三郎    北 勝太郎  田村 文吉    梶原 茂嘉  石坂 豊一   ―――――――――――――
  251. 森八三一

    ○森八三一君 私はこの際予算の不正、不当支出防止に関する決議案を緊急上程されんことの動議を提出いたします。
  252. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 只今の森委員の動議に賛成いたします。
  253. 青木一男

    委員長青木一男君) 只今の森君の動議を議題といたします。森君の説明を求めます。
  254. 森八三一

    ○森八三一君 先ず決議案の全文を朗読いたします。   予算の不正、不当支出防止に関する決議案国民の血税を以て編成される予算は、厘毛たりと云えども、これが不正、不出に支出されるが如きは、許すべからざる所であるにも拘らず、会計検査院の年次報告に見れば、年年その件数を累加しつつあるは誠に遺憾の極である。未曽有の大災害に際し之が復旧に関し、荷も斯くの如き事態の発生せざる様、政府は速に具体的な措置を講じ、万全を期すべきである。   右決議する。  趣旨はすでに皆様の御承知のことでありまして、(「了解」と呼ぶ者あり)今更ここにくどくどしく説明申上げる必要はないと思います。私も討論で申上げましたように、検査院の報告によりますれば、年々その数は累加をしておるし、県によりますると、災害復旧関係等におきましては、その全体の九〇%以上が不正、不当の類に該当しておるというような批難を見ておるような次第であります。殊に今年の災害対策につきましては、特別高率補助等の立法も行われておるのでありまして、ややともいたしますると故意に便乗をする、それが又予算を不当に使うというような慮れなしとは考えられませんのでありまして、そういうようなことにつきましても、この際厳密に行われなければならないと存じまするのであります。極めて当然なことであり、こういうことを今更決議をしなければならんことを心から残念に以うのでありまするが、事態はこの決議を必要とするときであると思いますので、満場の御賛成を得たいと思います。
  255. 青木一男

    委員長青木一男君) 只今森君より提出されました決議案に賛成の方の御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  256. 青木一男

    委員長青木一男君) 全員起立。よつて本決誌案は全会一致を以て決定いたしました。本決議案に対し、政府を代表して大蔵大臣より御所見を伺いたいと思います。
  257. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 只今の御決議につき、政府においては御趣旨を体し、法令の制定等、具体的な方法を講ずることとし、仰せのごとく国民の血税を以て編成される歳出予算は、最も効率的な運用を図ると共に、かりそめにも不正不当に支出せられざるよう、厳に措置することといたします。   ―――――――――――――
  258. 青木一男

    委員長青木一男君) 次にお諮りいたす件があります。昭和二十八年度予算執行状況に関する調査について、本国会中は調査することができなかつたので、未了報告書の提出並びに閉会中の継続調査承認要求書の提出については、その手続等を委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないと認めます。  なお、調査報告書に賛成の方は御署名を願います。   多数意見者署名    湯山  勇  藤原 道子    堀木 鎌三  武藤 常介    西郷吉之助  小林 武治    中川 幸平  高橋  衛    森 八三一  楳原 茂嘉    北 勝太郎  田村 文吉    小林 孝平  河野 鎌三    井野 碩哉  江田 三郎    龜田 得治  三橋八次郎    中田 吉雄  三浦 義男    千田  正  木村禧八郎    棚橋 小虎  曾祢  益    松津 兼人  加藤シヅエ    石坂 豊一  清井治三郎    宮本 邦彦  鹿島守之助
  260. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後六時八分散会