○上條愛一君 私は
社会党第二控室を代表いたしまして、只今の緒方副
総理の
仲裁裁定の御説明に対して若干の御
質問をいたします。
御承知のごとく、
公共企業体の労務者に対しましては、
憲法第二十八条に明記されておりまするストライキその他の
争議行為を禁止いたしまして、その代償といたしまして
公労法第二十条の
調停委員会並びに第二十六条の
仲裁委員会が設置せられまして、その第三十五条にあるがごとく、
仲裁委員会の
裁定に対しては当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならないとな
つておりまするが、
政府はこの第三十五条による
裁定に服従する意思があるかどうか。そしてこれを
予算化する決意を持
つておるかどうか。お伺いいたしたいのであります。従来、
吉田内閣は
社会保障制度
審議会を設置しまして、すでにその勧告は吉田首相の手許に提出せられてあるにかかわらず、今日まで
実施の準備すら行な
つていない
実情であります。又過去において、人事院勧告もこれを
実施せず無視し来た
つたのでありまするが、これは明らかに
政府みずから
法律を蹂躪するものであ
つて、かかる
政府の
態度が、今日国民が政治に対して不信を強めつつある最大原因と思われますが、今回も又この
仲裁裁定の
完全実施を避けんとするのであるかどうか、承わりたいのであります。
次に、
労働大臣にお尋ねするのでありまするが、先般
労働委員会における今井
仲裁委員長の説明によりますると、この
仲裁裁定は大体において
調停委員会の決定と同様と
なつたと述べられております。
調停委員会の
調停案は、
労働者側と企業
当局との主張を調整したものと言われておるのであります。従来、中央
労働委員会等における
調停の実際を見ると、労使の主張を聞いて、その中間をと
つて調停案を作るのを常例としておるのでありまするが、これでは中央
労働委員会の
調停も
仲裁裁定も権威のないものと思われるのであるが、
労働大臣は、将来これらの機関の拡充を図
つて、企業の
内容をよく検討し、更に広く我が国全
労働者の
賃金の権威ある統計を準備しつつ、これを参考とし、又物価及び
労働者の
生活実情に即応した、労使双方を納得せしめ得るところの独自の
調停裁定をなし得る方途を講ずる意思があるかどうか。所管
大臣である労相の所信を承わりたいのであります。
次に、それぞれの所管
大臣にお尋ねいたしますが、
国鉄においては
裁定のベース金額は一万五千三百七十円でありまして、これに要する
予算額は概算で期末手当を含めて百四十七億でありまするが、
国鉄は他に比較して最も経理上困難を伴うことは認められているのでありまするが、今回の
国鉄水害復旧に要する経費八十九億を国又は借入金によ
つて賄うことができますならば……この点につきましては先ほど同僚大和議員が
大蔵大臣にお尋ねいたしたのでありまするが、この八十九億を国が
支出するかどうかという御
回答がなか
つたのでありまするが、若しこれを国或いは借入金で賄うことができますならば、
国鉄の
資金面は、収入純増の見込みが三十四億三千万円、動力節約が十四億三千万円、建設繰延が十九億八千万円、借入金返済延期が三十億、予備費削減が三十六億でありまして、合計百三十四億三千万円となるのでありまして、ほぼ
資金上は
支出可能であると認められるのでありまするが、これに対する
運輸大臣の
所見を承わりたいのであります。
次に、電通
裁定はべース金額が一万五千円でありましてこれに要する経費は期末手当も含めまして六十五億九千万円とな
つております。
裁定の
資金面における意見といたしましては、追加を要する経費二十四億から二十五億であ
つて、これの財源といたしましては、前年度利益金四十三億、今年度増収が三十億と見込まれているのでありまして、又或る
程度の予備費の流用も可能であり、且つ節約による剰費も
考えられるので、全く
資金面の心配はないと述べられているのであります。
当局側も、この点については、
仲裁裁定の
内容を
実施することは
資金上の十分なる可能性があると述べております。これを認めないことは、電通
当局が、
資金上、
仲裁裁定を
実施する意思を以てこの
裁定を呑むことになりますならば、これが突破口となりまして、他の
公共企業体にも波及し、一般
公務員も
給与改訂を行わなければならなくなることを恐れて、故意に
予算上の措置をなすことを避けているものと思われるのでありまするが、塚田
郵政大臣は、電々
公社当局でも認めておるこの
裁定を、何故に尊重してこれが
予算化のための努力をしないのか。御
所見を伺いたいと思います。
次に、
印刷庁においては、
裁定は一万三千五百円でありまして所要経費は僅か一億三千九百八十万円でありましてこれも経費節約、益金流用等によりまして、
資金面は
支出可能であると
裁定理由書は明記しているのであります。この点は
当局も十分
承認している点でありまして何ら困難な問題はないと信ずるのであります。
更に
専売公社においては、ベース一万四千八百五十円でありまして追加
予算は六億乃至七億
程度に過ぎません。増収、予備費の流用、労使の協力によ
つて、
資金は可能であると
裁定理由書は述べております。又
組合側においては、今年度の増収のみで
資金上は可能であるとの意見を持
つているのでありまして、これも
実施は容易なる経理状態であるのであります。
又
造幣局関係においては、べース一万四千四百五十円で、必要経費僅か三千万円でありまして、
仲裁裁定理由書によれば、
資金上可能であると述べられております。
造幣局関係は最も
実施容易なる企業であると思われますが、何故かかる容易なる
仲裁裁定すらも
予算的措置をとることをあえてしないのでありましようか。その
理由を承わりたいと存ずるのであります。
次に、アルコール関係においてはべース一万四千二百円でありまして、所要経費二千万円であります。
裁定理由書においては、従来の実績に徴して
資金は可能であると示されております。通産
大臣はアルコールの
仲裁裁定実施に関してどのような
所見を持
つておられるか、伺いたいのであります。次に、林野庁においては一万三千三百五十円べースでありまして、これの必要経費は三十三億であ
つて、自然増収二十八億が見込まれている今日、
資金上は当然容易であると認められており、
当局においても
裁定理由書と同一意見であると述べられているのであります。農林
大臣は林野庁職員の
仲裁裁定実施に関してどのような御意見であるか承わりたいのであります。
次に、
郵政現業においては、
裁定一万四千二百円でありましてこれの必要経費約四十億であり、これに関しては多少
資金上に困難な点がある模様であるとしておるのでありまして、料金値上げ等の点も
裁定理由書では述べておるのでありますが、
組合側の意見によれば、値上げをしないでも
実施は可能であると述べられておるのであります。塚田
郵政大臣は、所管の
郵政現業の
裁定に対して、どのような御意見と、今後
態度をとられるか、お伺いいたしたいのであります。
最後に、
大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありまするが、以上のごとく、今回の
裁定は、その労働
生産性も戦前に復旧し、企業
内容から見ましても、いずれも実質的にはその
実施の上に支障がなく又
資金面の障害もないと認められるのでありまするが、蔵相はこれに対する
予算措置を行う意思であるかどうか。
裁定実施を蹂躪するとすれば、これは要するに、この
裁定を
実施する場合は、当然、国家
公務員、地方
公務員に対する人事院勧告をも
実施することになるのを考慮した結果と思われるのでありまするが、我々は、この
裁定と共に、
公務員に対する人事院勧告も
実施することが当然であると
考えるのでありますが、
大蔵大臣は以上の
裁定勧告はいつ
実施せんとするのか、その
予算的措置をどうするお
考えか、具体的の御意見を承わりたいのであります。
なお
最後に、この
裁定を
実施しない場合におきましては……以上のような
資金面において当然
実施し得るものでありまして、而も
労働組合側の要望とは、非常な低い限度の
裁定であるのであります。而もこれすら
政府が
実施する意思がなく、これを
予算化する熱意がないといたしまする場合においては、不測の事態が起きないとも限らないのでありまするが、そのような場合における責任は当然
政府が負うべきものであると我々は信ずるのでありまするが、これに対する
政府当局の所信を承わ
つておきたいと存ずるのであります。
以上を以て私の
質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕