○松澤兼人君 私は
日本社会党第二控室を代表いたしまして、
只今大蔵大臣より
説明のありました
補正予算修正に対し、
総理大臣並びに
大蔵大臣に対し二、三
質問をいたしたいと
考えております。
只今同僚矢嶋議員から詳細に亘
つて質問があ
つたのでございますが、元来、今回の臨時
国会は、最初第十六
国会が終了いたしました直後、我々臨時
国会の速かなる
要求をいたしたのであります。その理由は、第十六回
国会において成立いたしました
災害関係の二十四の
法律の財政的裏付けをなし、速かに
災害対策を講じ、
国土の
復旧と
国民生活の安定を期することにあ
つたのであります。その後の
台風第十三号の襲来と
冷害によりまして、
我が国は非常なる
災害を受けたのみならず、
災害と
冷害は農作物に著しい影響を与え、
我が国食糧
事情を不安と危惧の状態に追い込んだのであります。その対策は緊急且つ迅速を要し、早期
国会の開会は
国民の熾烈なる要望とな
つたのであります。加うるに、ワシントンにおける池田・ロバートソン会談は着々と進捗し、何か
日本の将来に重大なる義務と負担を押しつける結果を生じつつあり、
国民は、池田特使の渡米の意味、会談の
内容等につき、詳細なる
説明を聞かんと欲していたのであります。更に、公務員給与に関する人事院勧告は、すでに八月、
国会及び内閣に提出せられ、全国公務員は一日も早くこれが実施を要望し、続いて国鉄、電通、専売、その他の公共企業体仲裁裁定があり、
法律の建前上、
政府は裁定に拘束され、これが実施をしなければならん義務を負わされて来たのであります。これらの緊急実施を要する諸案件及び
国民の運命に重大なる関係を持つMSA援助、防衛隊、李承晩ライン等の問題につき、
国会を通じ
我が国民が聞かんとしていることの緊急性に鑑み、早期
国会の開会を
要求したのでありますが、遂に十月二十九日に至るまで召集を見ることができなか
つたのであります。我々は
国民と共に、
政府がかかる痛切なる
要求を無視し、漫然と
国会の召集を遅延せしめた
責任を追及すると共に、その怠慢に対し深き憤激を感ぜざるを得ないのであります。
漸くにして臨時
国会が召集され、
補正予算が提出されたと思うと、一両日を出でずして昨日
予算修正が提案され、
只今大蔵大臣の
説明を聞いたのであります。我々
日本社会党といたしましては、
政府のこの取扱について唖然たらざるを得ないのであります。
政府及び
大蔵大臣に一片の信念があるならば、かかる醜態は避け得たのでありまし
よう。
政府与党たる自由党が、
政府自身の作成した
予算に対して
修正することは何を意味するのでありまし
ようか。
政府は
政府、党は党であるならば、
責任内閣制はどうなるのでありまし
よう。我々の常識を以てしては全く不可解であり奇々怪々と言わなければなりません。(
拍手)前
国会においても
政府原案について三党共同
修正が行われ、本院に
修正された
予算が廻
つて来たときは、最初原案の部分については
政府が
責任を負い、
修正部分については
責任を負わないという
説明であ
つたのでありますが、我々の追及に会
つて、後には
修正部分についても
政府は
責任を負うと訂正したのであります。今回は一度提案したものを
政府の意図によ
つて修正し、再提出するという形をと
つているのであります。手続については、種々議論もありまし
ようが、
政府の
責任と面子を別にすれば、当然今回のごとき措置をとることが正しいと思うのであります。私は
政府の
責任と面子を別にしてと申しましたが、これが問題であります。面子の点では、現に吉田内閣は保つべき面子は何ものもないのでありまして、再軍備をしないと言
つて再軍備をし、憲法を改正しないと言いながら、重光・吉田会談においては、何かそれらしいことをすでに約束しているらしいのであります。独立にふさわしい自主外交と言いながら、米国一辺倒の外交を行い、アジアの各国から、
日本の外務大臣すら相手にされないという
事態を生じているのであります。(
拍手)面子を潰してもよろしいというのであれば、それもよろしい。併し
政府の
責任は断じて免れることができないのであります。一国の
政府の作成した
予算が、その
政府の基盤たる与
党自由党をも含めた三党によ
つて修正され、これを何らの
抵抗もなく漫然として呑むという……、これは、
政府、否、
責任ある政治家のとるべき途ではないと信ずるのであります。(
拍手)一度ならず二度、三度と、かかる不体裁なる
修正を受けながら、而も政権に恋々たる理由は、
一体どこにあるのでありまし
よう。吉田内閣
総理大臣に伺いたい。
第一に
総理大臣が総裁である自由党から、
閣議で決定し、すでに
国会に提案せられた
政府の原案が、総裁の統率する与
党自由党によ
つて修正されたという事実について、憲政の常道から見て果して何と
考えられるのか。何人が
考えても、自由党内閣の提案された
予算が、自由党によ
つて支持推進されず、逆にこれを
修正することに加わ
つて、
政府の威信を地に落すがごとき状態をもたらすことは、果して好ましいことであるか、好ましからざることであるか。この点について御所見を伺いたい。
第二に、
政府が
予算案を
閣議で決定し、
国会に提案する以上、これを以て最善の案としてこれの成立を期待し、これを実施せんとする意図に出たものであることは、容易に理解できるのであります。然るにこれが、
国会の内外いずれかのところにおいて
修正され、
政府はこれに欣然として同意し、ここに
修正案として提案することにな
つたのでありますが、果してかかる醜態に対する
政府の
責任は如何にお
考えになるでありまし
ようか。
政府みずからの手による
修正は、原案作成当時に比して、その後、著しい
事情の変動を生じたとか、字句又は
数字に誤謬があつたということならばいざ知らず、今回の
修正は全く
事情が異なり、
政府が
国会の超党派的な意向を無視し、一方的に杜撰な
予算を
編成したことに基くものでありまして、
責任は重大であると言わなければなりません。(
拍手)みずから最善と信ずる案を放棄し与党の手によ
つて加減せられ、野党によ
つて更に是正された
予算修正に対して、如何なる
責任をおとりになるか。その心境を承わりたいのであります。
第三に、今回の補正においてもすでに明らかにされたごとく、
我が国財政の
財源は枯渇し尽しているのであります。これは
災害、
冷害が甚大であつたことにもよりまし
ようが、原因はまだほかにあるのであります。申すまでもなく、すでに始ま
つている再軍備的支出が、
国民生活の安定を阻み、
災害復旧を遅延せしめ、今回の
災害、
冷害の
財源を枯渇せしめているのであります。再軍備と
国民生活の安定、又は再軍備と
国土保全は、決して両立するものではなく、
政府及び
国民は、二者のうちその
一つを選ばなければならないのであります。来
年度は再軍備的
予算は更に増嵩するでありまし
よう。果して
年度割を二・五・三とするか、三・五・二とするか、いずれにいたしましても、
政府査定の千五百六十五億の五割を明
年度において計上しなければならないのであります。保安隊の増強が民生安定を圧迫していることは明瞭であるのでありますが、果して如何なる限度を
考えているのか。来年不幸にして再び本年のごとき
災害を受けたならば、
国家財政は破産すると思うのでありますが、なほ保安隊の増強を強行される意思であるかどうか、承わりたい。
次に
大蔵大臣にお尋ねいたしたいのであります。信念を以て
編成され、
国会に提出された
予算が、一日を経ずして脆くもその根底から崩壊せざるを得なかつた
事情に対しては、深く御同情申さなければなりません。それでも職を退くこともせず、通貨の価値維持と一兆円の枠だけを保持せんとしておられる心境は察するに余りがあるものであります。併し我々は将来のことを
考えて誠に危惧に堪えないのでありますが、
大蔵大臣にお伺いいたしたい第一点は、続いて来たるべき第二次補正の見通し及び二十九
年度予算の見通しについてであります。先にも申しましたごとく、来
年度は相当
編成難に陥るであろうことは想像にかたくないのであります。如何なる
予算の規模においてこれを乗切る信念をお持ちであるか、その点を承わりたいのであります。
第二に、今回の
予算は救農
予算とも言われるものであります。この点はもとより結構なことであります。併し一方においては人事院の勧告あり、公共企業体の仲裁裁定あり、これを実施することも
政府の義務でなければならないのであります。
補正予算の原案にも計上されず、
修正にもこれが加えられていないのは、
一体如何なる理由に基くものでありまし
ようか。世上これを称して労農分断
予算と言う者があります。果して
政府にかかる意図があるかどうか。公務員の給与改善はいつ如何なる
程度に考慮されるのか、伺いたいのであります。
第三に、
修正は、前回もそうであ
つたのでありますが、
数字の辻棲を合せたに過ぎず、最終の締め括りはいつの場合においてもついていないのであります。例えば前回の
修正においては、供米完遂奨励金の百億にしても、電話料金の値上げの二十五億にいたしましても、高校教員の三本建にいたしましても、その結末はいずれも後日に残されているのであります。今回の
修正においても総枠五百十億には異同がないのでありますが、
了解事項として伝えられているところによりますと、
災害復旧費百四十四億三千万円及び農業
災害保険繰入れ四十五億の不足分は、今後の状況に応じて預金部資金等より
融資されることにな
つておるということでありますが、預金部資金はすでに
運用計画ができていて、無理をすれば産業資金等に重大な影響を与えることは必定であります。かかる問題を後日に残すがごとき
修正に応じた理由は果して奈辺にあるか、承わりたいのであります。産業資金よりの
融資が困難であるばかりでなく、
協定はこれに対する利子を国が補給するか若しくは免除すると言われているのでありますが、果して
大蔵大臣ほこれらの
協定についてそれをそのまま承認するのであるか、或いは
利子補給の
予算はいつ如何なる形で
国会に提案するのであるか、伺いたいのであります。
以上を以ちまして、私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手〕