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1953-11-02 第17回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月二日(月曜日)    午後零時四十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三号   昭和二十八年十一月二日    午前十時開議  第一 商品取引所審議会会長及び同審議会委員任命に関する件  第二 社会保険審査会委員長及び同審査会委員任命に関する件  第三 中央更生保護審査会委員任命に関する件  第四 公正取引委員会委員任命に関する件  第五 文化財保護委員会委員任命に関する件     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  大蔵大臣から昭和二十八年度補正予算修正について発言を求められました。この際発言を許します。小笠原大蔵大臣。    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  4. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 政府は、先に昭和二十八年度補正予算国会に提出いたし、目下御審議をお願いいたしておるのでございますが、諸般事情を考慮し、これに修正を行うことにいたしたのであります。ここにその概要を御説明いたしますると、第一は、冷害等対策費を四十五億円増額したことであります。即ち、そのうち十五億円は農林漁業金融公庫出資の増加に充て、三十億円は災害対策予備費を増額することといたしました。第二は、右に関連し、農業保険費追加額を四十五億円減額したことであります。  以上が修正の要点でありますが、これにより昭和二十八年度一般会計補正予算歳入歳出総額には何ら異同を生ずるものではないのであります。本件は昨日衆議院においてすでに御承諾を得ましたが、何とぞよろしくお願いをいたします。(拍手
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 只今国務大臣発言に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。矢嶋三義君。    〔矢嶋三義登壇拍手
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 六月二十五日、六日、九州、次に山口、南近畿東近畿最後に九月二十五日の台風第十三号によつて我が国土が大災害を受け、国民諸君前古未曾有の大災害に見舞われたことにつきまして、非常に国民の一人として痛惜に堪えないと共に、ここに災害地の各位に対しまして心からお見舞を申上げる次第でございます。  私は只今大蔵大臣修正案に対する提案に対しまして若干質疑をいたします。  先ず、吉田総理がお見えになつておりませんが、吉田総理に伺いたいことは、吉田総理災害地を親しく視察したことがあるかどうか。それから、これからの予算、特に来年度予算において、治山治水災害予算重点を置くのか、防衛予算重点を置くのか、いずれをとろうとしているのか。私の察するところでは、吉田総理防衛力漸増については具体的な計画を持つておられるように察するのでございまするが、我が国国土を保全するという立場から、治山治水に、今ここで述べられるだけの具体的な策を持つておられるかどうか。更に、吉田総理はよく、我が国経済力、国力の伸張と相待つて自衛力漸増を図ると申されるのでございますが、先ほど申上げましたように、何十年に一回もないような本年のごとき大災害を受けた国民経済力というものは実に低下いたしております。こういうときこそ、吉田総理の平素の発言からするならば、自衛力漸増計画を中止すべきであると考えまするが、そういうお考えはないのかどうかということをお伺いいたします。  なお、このたび二十九日に予算原案が提出されまして、本日その修正説明があつたわけでございまするが、これは二十九日予算案を提出する場合に本日あることを期しておられたのか。それとも、伝えられるように、改進、鳩自両党との交渉の結果において止むを得ずこういう修正案をここに提案するに至つたのかどうか。この点、総理並びに大蔵大臣答弁を求めます。と同時に、大蔵大臣からは、このいわゆる三派協定内容は如何なるものであるかということを先ずつぶさに報告を聴取いたしたいと思います。その答弁によつて、私の以下の質問を続けたいと思います。    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  7. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  第一に、吉田総理は今回の災害に際して災害地視察をやつたかどうかという御質問でありまするが、これは吉田総理が特に災害地視察に赴いたことはございません。でありまするが、私が災害対策本部長といたしまして、西日本又は近畿地方視察いたし、更に保利農林大臣大野木国務大臣が、東北、北海道等冷害地方視察いたしまして、逐一総理大臣報告いたしたのでありまして、総理大臣印象といたしましたら、総理自身視察をしたと同様の印象を受けておられると考えます。  それから、現内閣に防衛計画はあるようだが、治山治水計画はないようだがどうかという御質問でありますが、これはむしろ逆に近いのでありまして、防衛計画というものの長期計画と申しまするか、年次に亘る計画は今のところまだでき上つておりません。保安庁におきまして鋭意研究中でありまするが、まだでき上つておりません。治山治水につきましては、今回の災害が殆ど前例のない異常なものでありましただけに、政府といたしましても、こういう災害を再び繰返さないようにするために、政府部内に治山治水対策協議会というものを設けまして、先般来、この災害の主たる原因をなします治山治水につきまして、閣内及び各界の権威者の参加を求めまして研究いたしまして、十カ年に亘る相当大きな根本的な計画を一応立てたのでありまするが、これは申上げますれば理想的な案でありまして、これをこのまま今日の国家財政において実施することは困難でありますので、(「やらんきや何にもならんじやないか」と呼ぶ者あり)これを如何にして予算化するかということにつきまして只今研究中であります。  第三に、総理経済力の充実に伴い防衛力を増強すると言つておるが、今年のごとく災害の多い場合には、防衛力はむしろ差控えて、アメリカ側要求に向つても緩和を要請すべく努力すべきではないか。この点につきましては、必ずしも日本防衛力増強計画というものはアメリカ要求によつてつておるのではないのであります。でありまするが、MSAとの関連もありまして、そういう点につきましては、総理大臣は機会あるごとに日本の現在の経済状況或いは国家財政等につきまして、先方の了解を求めるように努めております。  次に、今度の予算は初めから修正するつもりで提出したものであるか、それとも三党の話合いにおいて修正したものであるかという御質問であります。これは勿論、政府といたしましては、修正を予期して出したものではございません。で、その後、改進党或いは分党自由党から修正要求が出て参りまして、政府といたしましては、今度の予算案の性質、即ち災害地復旧を成るべく早くいたしたいという考えから、事前に両党との間の意見を調整することがむしろ便宜であると考えまして、両党との間の話合い修正をやつておるような次第でございます。初めから予期してあの予算案を提出したものではございません。  それから五番目に、冷害水害対策費はバランスがとれていないじやないか、……失礼いたしました。これはまだ御質問になつておりません。(笑声)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  8. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。  内容につきましては、只今説明申上げた通りでありますが、冷害等対策費を四十五億増額いたしますると、先の七十億に加えて合計百十五億となる次第であります。更に十五億円を先ほど申しました農林漁業金融公庫出資の増加といたしまするので、先に十億でありまするから、農林漁業金融公庫出資十五億を加えて二十五億と相成るわけであります。更に三十億円は災害対策予備費を増額いたしましたので、先の予備費十五億を加えて四十五億になるわけであります。更に農業保険費追加額は四十五億円減額いたします。従つてこの点は、そうすると八十五億円を農業保険費に繰入れることに相成るのであります。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私の質問に答えていないから、もう一遍答弁さして下さい。そういう活字に出ているのは聞く必要はないのです。三党協定内容を聞かしてほしいというのです。それでなければ次の質問ができません。重ねて答弁を求めます。
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 矢鳩君、演壇に登つて発言を請います。    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  11. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 三党協定内容は大体今申上げたことで尽きておるように思いまするが、一口に申しますと、冷害等対策費農業共済保険費のうちより出して四十五億円増加すること、それから更に現在の災害等対策費を初年度三百億とこの昭和二十八年はすること、及び出す比率を三・五・二を基準とすること、それから、若しその基準に基いて不足する分等がある場合については、資金運用部その他などより融資方について、個々の実情を審査して、その必要に基いてこれを出すこと、これが大要であります。    〔矢嶋三義登壇拍手
  12. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今吉田総理に代つて緒方総理答弁でございまするが、これほどの大災害であり、在外同胞諸君まで心配しているこの母国の災害を、総理みずから一カ所も視察されなかつたということは、私は災害地国民に代つて遺憾の意を表明するものであります。(拍手従つて吉田総理は、災害後一カ月たつてもなお海水に我が家が浸つている災害地の方々のその苦しみというものはわからないと思います。そういうわからないかたが、閣内においても、或いは建設省側農林省側と対立した予算を裁断するそのことが、私は無謀であり、実情に副わないものと、誠に遺憾に存ずる次第でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊にこの補正予算編成過程において、緒方総理水害地緊急対策委員会における財源に関するところの発言とい、ものは変つて参りました。即ち、当初補正予算主要財源として二百一億の剰余金をこれに向けるということを申しておつたのでございまするが、アメリカにおける池田ロバートソンの会談の進捗と時を同じうして、この財源が消え去つたということは、私は自主的にこの補正予算案が組まれたものと認定することはできないのでございます。大蔵大臣アメリカに行かれたのではございまするが、日本災害地の十六ミリぐらいは持つて行つて、そうしてアメリカ側に、本年の日本におけるところの災害はこういう事情だということを説明して、そうしてこの災害予算の適切なる編成ができるように努力すべきであつたと思うのでございまするが、小笠原大蔵大臣アメリカ当局に対して、日本災害実情をつぶさに話し、説明をしたかどうかという点を、私は重ねて伺いたいと思うのでございます。  なお、先はどの三派協定の問題について、第四項として、不足する部分については資金運用部資金等より融資をする、而もそれは事情を審査してということを申しておりまするが、これは結局出さないということと同じだと思うのです。私はお伺いいたしますが、融資するものは資金運用部資金から幾ら出そうとするのか。私は資金運用部運用計画では、そういう財源はないと思うのでございまするが、どこから幾ら資金融資するのか、その枠、而もその枠を、農林建設、何々と、各省にその計画配分をやるのかやらないのか。その配分をやることによつて各都道府県に各省配分するわけですから、それによつて初めて復旧事業計画というものが立つわけです。それがなければ、今あなたが説明したようなことでは、これは空文に帰するわけであつて災害地国民をごまかすことも甚だしいと思いますので、その点、更に伺う次第であります。  特にこれは総理大臣に伺いたいのでございますが、第十六国会において二十八年度当初予算は御承知通り修正を受けた。再びこのたびの補正予算国会に提出されて、二、三日のうちに、更に政府みずから修正案を出さなければならない事態に追い込まれた。この責任如何よう考えられておるのか。特にこういう事態になりまするならば、恐らく私は大蔵事務当局諸君は熱心に仕事ができなくなると思う。ばかばかしくなつて来るだろうと思う。而も小笠原大蔵大臣は、自分の職務を賭してこの補正予算を守る、こういうふうに大言壮語されたわけでありまするが、その信念は吹き飛んで行かれたのか。恐らくは小笠原大蔵大臣のポケツトの中には、この災害予算成立ののちに出すところの辞表が入れられておるのじやないかと考えるのでありますが、改めて大蔵大臣責任とその決意をお伺いする次第であります。  次に、この災害予算についての基本的な方針でございますが、緒方総理にお伺いいたします。第十六国会において二十四の法律が成立した。その法律の裏付けとなるところの政令の検討が行われた。そうしてこのたび三百億円ばかりの災害予算が組まれたわけでございますが、この過程をつぶさに回顧するときに、総花的になつて異常災害を急速に復旧するというところの所期の目的というものはぼけて来たのじやないか。そういう反省を持たれていないかということを私は伺いたいのであります。殊に我々立法府においては、二十四の法律を作ることによつてこの災害地災害民を救済しようとしたのでありますが、政府はこの立法の精神を蹂躙したと私は考えます。と申しますことは、例えばこのたびの災害においては、農地関係では十万以下の小災害が非常に多い、従つてこの小災害を救うべく立法したのでございますが、この小災害査定知事に任した。それでは知事査定したものはそのまま農林省或いは大蔵省は認めるかというと、そうでないらしい。或るときには一割五分を認めると発表しながら、現段階予算を見ますというと八分程度しか認めておりません。更に公共事業費ように政治的な抵抗の強いのは何とか予算化しておりますが、そうい、抵抗のない、例えば文化財関係とか、或いは国立公園関係とか、或いは二百五十一億の大被害を受けたところの中小企業、こういう抵抗の弱いところは見るも哀れな予算内容でございます。一言にして尽すならば、その政令といい、或いは予算編成内容といい、全く政治色に濃厚でありまして、我が国治山治水の根本的な方針から打出されてこの大災害を急速に復旧ようという角度からの予算案でないという点を、私は非常に遺憾に考える次第でございまするが、災害対策中央本部長としての緒方総理責任は極めて私は重大であると考えます。御所見を承わりたいのでございます。  次に伺いたい点は、十月二十一日四時から始まつた閣議決定の場合には、その基礎となつたの災害復旧国費所要額は千八百億円だつた。そうして現在小笠原大蔵大臣は、衆参委員会或いは本会議においてはその基礎数字を千五百六十五億と言つております。そうして基本方針は変らないと言つている。これはごまかしじやございませんか。あなた方が二十一日閣議できめたときの三百億円は、そのときのベースは千八百億であつたはずであります。緒方総理は、その翌日十月二十七日、私に対して、再検討した結果、国費所要額は千七百億で済むということも私に言明されております。然るに保守三派が話合いをすることになつて、十月二十八日突如として災害復旧所要額は千五百六十五億、その三割云々と出して来ているわけでありまして、誠に非科学的な点については呆れるほかないのであります。これらの点について明確に一つ答弁をして頂きたいと思います。  更にこの点について附加して申上げておきまするが、十月十三日、災害対策中央本部久田参事官公共事業費報告として、台風十三号だけで千四十八億というものを報告いたしております。千四十八億。あなた方が閣議できめるときに採つたときのベース千八百億、この千八百億の中には台風十三号の公共事業費査定見込額は僅か五百九十三億しか見ていない。五百九十三億見て、而も千八百億と出ている。それが十月十三日に責任ある災害中央本部からの我々への説明は千四十八億と殖えている。然るに本日のこの段階になつて千五百六十五億、こういうふうに次々と数字が変る点を災害地国民が聞いたときに、実に私は歎かわしく、恐らく涙を出しているだろうと思うのであります。三派協定が三・五・二と出ております。その三が、ベースになるところの数字が明確でなかつたならば、三・五・二が四・五・一になつても価値はないのでございまして、これらの点について明確に答弁を求めます。  次に伺いたい点は、財源の点でございまするが、改めて小笠原大蔵大臣に伺います。補正予算編成主要財源として速記を付けて答弁しておられました二百億を来年度予算編成に備えてこれを留保した。更に四百七十八億の剰余金のあるところの安全保障諸費、この中には明細書がありますが、一年半前編成したところの予算、この安全保障諸費の中には八十一億という金がまだ何に使うかわからない折衝中のものでございます。この八十一億は何とかなるから一つ努力しようということを委員会で言明されました。小笠原大蔵大臣は、如何様に努力して、如何様に交渉して、そうしてそれが使えなくなつたのか。それを明確にここで答弁して頂きます。  私は、財源の点については、防衛支出金安全保障諸費保安庁経費平和回復善後処理費連合国財産補償費、これだけ合せて現在千八百九十五億の剰余金があるわけでございます。果してこれだけの金額は本会計年度中に全部使用されるものか。私は相当の剰余金が出て来ると思うのでございますが、一体大蔵大臣はどの程度剰余金が出ると考えておるのか。更にこれと関連して参りますが、来年度防衛費如何様に組もうとしているのか。この点も答えて頂きたいのでございます。  木村保安庁長官に伺いたい点は、保安庁経費は七百七十億現在残つております。これが本会計年度末においては少くとも四、五百億の剰余金が出ると思うのでございまするが、この大災害に見舞われた日本において、取りあえずこれを災害復旧費に向けて、現在海水の入つている防波堤を修理し、橋をかけ、道をこしらえて、然る後に木村保安庁長官考えているところの自衛力漸増を、あなたが好きならばやつたらどうかと思うのでございます。(笑声一体あなたが現在保管されておるところの剰余金は、本会計年度幾ら剰余金が出ると考えられているか。更にこれを足場として来年度防衛費如何様に組もうとしておられるのか、その点も答えて頂きたいと思うのでございます。というわけは、緒方総理委員会において、本年度は三百億であるが、来年度は九百億の予算を組むというようなことを言明されております。たくさん組むということを言明されております。御承知のごとく、過年度災害は、実に千七百億の予算化してないところの過年度災害があるわけでございまして、これらの問題を併せ考えるときに、実に寒心に堪えない次第でございまして、明確にして頂かなければならないと考える次第でございます。  次に伺いたい点は、三派の話合いによつて修正案ができたけれども、これは科学性に乏しい闇取引の修正案であるということを私はここに申上げたいのでございます。このたびの冷水害につきましては、衆参共超党派的委員会を運営し、政府を督励し、みずから努力して参つた次第でございまするが、最後段階において保守三派の方方がお話合いなつた。併しそれが的確な資料に基いて科学的な納得のできるところの結論が得られたのならまだしも、ただその当座の政治情勢を乗り切るために、非科学的な合理性に乏しいところの結論を出したということは、誠に遺憾に堪えないのでございます。  具体的に申述べて答弁を求めます。それは冷害水害も、いずれもこの復旧は大事でございます。而してこの冷害水害のその災害内容というものは、はつきりどうとは言えません。併しながらこういう事実があるのでございます。冷害については、十月二十三日農林省最後改訂要求として出されたのでは九十億円であつたのでございます。そうして衆参農林委員が超党派的に冷害対策として政府に要望したのは百十億でございます。これは三派の話合いでは百十五億と結論が出たのでございます。即ち、農林省最低要求の線より、国会衆参農林委員会要求した線よりも上廻つたものが出ているわけでございます。ところが昭和二十八年発生の水害公共事業費については、十月十九日私どもに出した説明書によりまするというと、建設農林だけで最低四百四十五億は絶対に必要であるということを申述べております。これに対してこのたび予算化されたのは二百四十億でございます。なお又衆参水害地緊急対策特別委員会は超党派的に五百四十億円に、それに十月十九日現在出されておりました繋ぎ融資百八億を本年度引揚げないでおいて欲しいという点に意見が一致して政府に申入れたわけでございます。然るにこれに対して予算化されたのは僅かに三百億でございます。これを見ますると、水害冷害とのこの均衡というものは完全に破れているわけでございます。何が故にこういりような結果が出て来るか。私は、このたびの補正予算国会に提出される前に、政府与党幹部諸君改進党の幹部諸君が話合つたときに、一応了解点に達したやに承わつておりました。その後、話合いが続けられて、出て参りました修正案はこういうものでございます。この結論から断定されることは、政府与党並びに改進党は、冷害には関心を払うが水害に対しては大した関心がないと、こういうふうにこの数字から断定されてもいたし方ないと思うのでございまするが、(「その通り」と呼ぶ者あり)果してそういうお考えかどうか。この私の所論に対して反駁できるならば反駁して頂きたいと思います。  次に、自治庁長官に伺いまするが、このたびの大災害において地方財政は枯渇いたしております。従つてこの困窮したところの地方公共団体を救済するために、国会においては起債に関する特例の法律も立法したことは御承知通りでございます。長官委員会において、単独事業は百パーセント起債を許可すると言明されました。果してさように現在の財政計画は進められておられるのかどうか。その実情と、改めて長官決意を伺います。これと関連いたしまして、一体長官は、このたびの予算の執行に伴つて地方公共団体の負担は幾らになるか、財政計画如何様になつているかという点について、ここに明確に答弁して頂きたいのでございます。  最後に、大蔵大臣並びに緒方災害対策本部長に伺いますが、それは未だに政令が出されません。一体いつ政令は出されるのでございますか。更にこの政令は、六、七月と八、九月の災害と別個に出されるのですか。それとも同時に出されるのでございますか。これも遅れております営農資金を早く出して欲しい。これは火の出るよう叫びでございます。この営農資金がなかなか出ない。更には農業共済保険金概算払、前払を早くやつて欲しいということも火のよう叫びでございますが、なかなかこれが届かない。この点について農林大臣答弁も求めたいと思います。  更にもう一つ大きいことを伺いますが、それは愛知、三重の海岸堤防はずたずたに破壊されております。この復旧には、建設当局の言明では二百十億を要すると言われております。このたびの予算は三百億でございまするから、三百から二百十を引けば幾ら残るかは算術の問題でございます。これに対する緒方本部長或いは大蔵大臣は、この大災害を受けた海岸堤防復旧については何とか別途考えると言つておりますが、この席上から、別途の方法とは如何なるものか、起債ならばこの起債はどこからその財源を求めるのか、その枠は幾らなのか、更にこれに対しては利子補給をすると言つておりまするが、その計画はあるのかどうか。これを明確にこの席上から災害地国民に対して答弁して頂きたいと思います。  答弁次第によつて再々質問を行います。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  13. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  今回の補正予算修正したことについて政府責任を負わないかという御質問でありまするが、私は、少数単独内閣でありまする限り、国会関係の修正もいたし方ないと考えております。何故に少数単独内閣で政権を担当しているかということにつきましては、遡つて首班指名の際のいきさつを申上げる必要があろうかと思いまするが、くどくどしいのでそれは申上げません。(笑声拍手)ただ、この予算修正はありましたけれども、補正予算編成に際しての政府基本方針は少しも動かしていないつもりでありますので、その点御了承を願います。  それから今度の補正予算は、災害対策に関する議員立法諸法律の立法精神を無視しているではないか。徒らに総花的になつてつて、これは最初の精神に反しておるという意味の御質問でありましたが、この点につきましてはいろいろ国会にも御意見があり、衆議院と参議院の水害対策委員会の御意見も必ずしも一様でなかつた。この災害の事の性質から、又議員立法が二十四件に亘つて災害復旧方針を示されましたので、政府といたしましても、変則ではありまするが、政令の立案につきまして、又その地域指定につきまして、特に国会の御意見を尊重いたして政令の起草にかかつたのでありまするが、その際に政府としましては、できるだけ重点的にやることがよくないかと考えたのでありまするけれども、国会の意思のうちに、重点的よりも、普遍的と申しまするか、言葉を換えれば総花的にやつたほうが災害地の感情に合うというような御意見もありまして、現に御承知よう政令を起草しつつあるような次第であります。(「政令はいつ出すんだ、いつまで遅れるのだ」と呼ぶ者あり)  それから三派の妥協案は甚だ科学的でないということについて御非難がありましたが、科学的でないという点はあるかも知れませんが、併しながら政治は現実でありまするし、妥協でありまするし、今日の少数単独内閣といたしましては止むを得なかつた事情はおわかりになると考えます。(「科学的でないことを認めるのか」と呼ぶ者あり)  次に、政令が非常に遅れておる。これは遅れておりまするが、もう最近に完了いたすと考えます。  それから愛知、三重両県の海岸堤防の決壊につきましては、私よりも大蔵大臣から御説明申上げるほうが適切であろうと考えまして、大蔵大臣説明に譲ります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答え申上げます。  アメリカへ行つたときに水害の話をして了解を求めたかというお話がありましたが、日本の特殊な今の災害等の事情については、日本の財政経済の実情を話したいと思つて話をしましたが、勿論かようなことで了解を求むべき性質のものではありませんから、実情を話してあるにとどまつております。  それから資金運用部よりの融資をどうするかというお話でございますが、これは、はつきり申上げました通りに、工事の進捗状況に応じまして、その必要に応じてこれを誠意を以て出す、こう申上げておる次第でありまして、一文も出さんではないかというようなお話は、今後の実績を御覧下さればよくわかることでございます。  更に、修正を受けてどう考えておるかということでございましたが、この点につきましては緒方総理よりお答え申上げました通りに、私も、五百十億の枠の中で行われたものであり、且つ又、今日、国民は一日も速かにこの対策が国会を通つて十分実施されることを希望しておるのでありますから、国会の迅速なる通過を希う一念から、かよう考えておる次第であります。(「なぜ国会を早く開かないのか」と呼ぶ者あり、拍手)  更に、公共事業費等、抵抗の弱い所は継子扱いされているのではないかというようなお話でございましたが、公共事業費等に対しての査定は公平にいたしておりますので、決して弱い所を継子扱いをしておるというような事実はございません。  更に、国費所要額を最初千八百億円と言いながら、この頃千五百六十五億円としたのは非科学的ではないかという仰せでございましたが、科学的の意味がよくわかりませんが、若し私ども科学的に検討した結果を申上げますれば、千五百六十五億のほうが正しいのでありますから、これはよく誤解がありますので、少しく数字を申上げておきます。当初公共事業関係として報告されたのは二千六百十九億円でありまして、十月五日現在においても二千六百二十億円、この数字には誤まりございません。ところが査定見込額につきましては、当初千八百四十八億と査定されておるのでございますが、その後三カ年間の実績及び業種別の標準によりまして査定した結果、千七百七十五億円となつたのであります。更にこれに対する国費の関係、現行法によりまする分には、最初のときは千三百六十八億が千三百七億となり、更に特別措置法による増加分が二百八十一億円が二百五十七億円となつたので、合計して千五百六十四億数千万、即ち千五百六十五億円と相成つておるのであります。ただ最初におきましては千六百四十九億円に、ちよつと別途に置かれておる文教 厚生等の分が百五十億円ありまして、合計千七百九十九億円即ち千八百億円になつたのでありますが、文教、厚生等の分は別途に予算措置がとつてあります。そのことは予算書にありますので……只今申上げました通り公共事業に関係する分は千五百六十五億であるのであります。(拍手)  防衛費の残額は来年度幾ら繰越すか。——これはちよつと只今のところ……又来年度予算はどう組むか。——これは来年度予算をどう組むか等は、はつきり申上げる時期に達しておりませんが、防衛費の残額中防衛支出金の残額は大体ない見込であります。又安全保障諸費等まだ折衝中のものが現在八十一億円ありまして、或いはこれは折衝の工合では残されるかと考えております。保安庁費の点につきましては、これは契約にそれぞれ当てがあるのでありまして、余り残らない見込をいたしております。  その次に冷害水害とのバランスが取れていないではないか。——これはそれぞれ見方がありまして、ただ冷害は一年のものであり、水害はまだ今後にも予算措置等を講ずるようになつておりますので、この点についてはそれぞれの立場から多少違うのではないかと考えるのであります。  更に起債の特例法ができたのにそれはどういう具体案かというお話でありましたが、今回資金運用部から地方債引受手定額を百八億円増加しておるのでありまして、そのうちの災害関係の分は八十三億円あります。従いまして、そのうちには起債の特例法に基く起債が含まれておるのであります。  愛知、三重に対してどうするかというお話でありましたが、只今二百何億というお話がありましたが、私どもはさよう数字には接しておりません。現在まだ厳重調査中であります。今日までに、愛知県、三重県にそれぞれ六億一千万円のつなぎ融資を実行済でありますが、この補正予算通りますと、約二十億か或いは二十億ちよつと以上のものがこれに使われるかと思うのでありますが、若しこれが足らず、緊急やむを得ない場合につきましては、資金の追加等を融資等で考慮いたしておる次第でございます。  更に又利子補給についてはどうか。——今後の状況に応じまして考慮いたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  15. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 矢嶋君にお答えいたします。  保安庁の二十九年度予算編成はどういうふうに考えるか、こういうお尋ねのようでございますが、只今保安庁法の改正を折角計画いたしております。のみならず、二十九年度においては増員もしたいと考えておるのであります。かような重要問題があるのでありまして、予算編成方針、構想等については、目下研究中でありまして、確定いたしておりません。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎君登壇拍手
  16. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げます。  最初に地方負担の増加に伴う財政計画について申上げたいと存じます。このたびの災害に伴いまして地方に負担の増加いたしますもの、及び地方に租税の減免、減収に伴う収入の減少のありますもの、そういうものを考慮いたしました結果、国から新たに財政措置をしてやらなければならないと一応結論を出しております金額は百八十六億であります。その内訳を簡単に申上げますと、公共事業費の増加に伴う分が三十五億、そのうちの冷害に伴う分が十三億となつております。これは併し予算修正前の数字でございまするので、修正後にこれに若干増加が出ますので今試算をいたしておるわけでありますが、大体これに二、三億の増加になると御了解願えばよいと思います。昨日はこの数字は約五億と考えておりましたので、この百八十六億を、衆議院の本会議では百九十一億と申上げたのでありますが、精算の結果二億乃至三億に減る予定であります。それから単独事業費の増加は百十八億今年度はみております。災害に伴う税の減免、減収の分が三十五億、災害関係の短期融資の利子の分が四億、その他の災害対策費といたしましては十五億、これを合計いたしますと二百八億になるのでありますが、国の公共事業費の減少に伴つて当然地方の縮減がありますので、それを二十二億差引きまして百八十六億と、こういうことになつておるわけであります。その百八十六億をどういう工合に財源の措置をするかということでありますが、大体現在の平衡交付金のうちの特別平衡交付金の中に災害の分がありますので、その分が十八億程度はこれに向けられるのではないかと考えまして、それを十八億、それから単独事業も、当初の予定に組んでおつたのを、国の公共事業費の縮減に伴つて四十億程度一般の単独事業が縮減できるのじやないか、又すべきじやないかと、こう考えまして、その四十億を災害単独事業に振替える、これで五十八億、それから政府資金の裏付けを持ちました起債が八十三億、その他で四十五億、この四十五億は公募債ということに一応なつておるのでありまするが、災害地に対してこの公募債を割当てましても、これは起債の消化が困難であるという事情考えられますので、公募その他のものを、今年の地方財政計画約二百億ありますので、その二百億の中で操作をして、災害地には公募債を成るべく振向けない、政府資金の裏付けのあるものを成るべく向けると、こういうことにいたしておるわけであります。それから単独事業の金額を成るべく起債を許可いたしたい、こういうことを申上げた通りでありますが、何にいたしましても、非常に個所数の多いものであり、而も小さいものでありますから、いちいち調査はできかねておりますし、又各府県からもそのよう報告は参つておらんわけであります。そこでいろいろな方法を考えまして、今年は今度の災害に伴う地方負担の単独事業として見なければならない分は二百七十億程度あるのではないかという試算を一応いたしているわけであります。その試算をいたしました方法は、いずれ委員会などでゆつくり申上げたいと存ずるわけでありますが、一応二百七十億、その中からして、普通でありますと、二割五分程度年度内施工ということになると思うのでありますが、非常に小規模のものでありますからして、年度内の施工部分が二割五分程度ではとても間に合わないだろう。そこで、早く起きました六月災害というものに対しましてはその六割、それから逐次遅くなりましたものにつれて六割、五割、四割、平均して年度内施工五割四分ということを考えまして、大体この百十八億という年度単独事業起債と、こういうことを考えたわけであります。若干足らない分もあるかも知れませんが、そう大きな実情との食い違いはないのじやないかと、こういうふうに考えておりますので、大体先般申上げました一〇〇%許可をしたいという方針は今も変つておりません。  以上簡単に御報告申上げます。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  17. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 農業共済再保険の分につきましては、大水害から風水害に至ります分は、十一月中には概算払を完了いたしたいと思つております。更に冷害等によります分につきましては、東日本の分は十二月中には是非損害評価を確定いたしまして支払を終りたい。西日本の分につきましても、遅くも旧正月前には支払を完了いたしたいということで努力いたしております。(拍手)    〔矢嶋三義発言の許可を求む〕
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 矢嶋三義君、時間がごく少し残つております。    〔矢嶋三義登壇拍手
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大蔵大臣最後にお伺いいたします。大蔵大臣は、五百十億の枠が守れたので、補正予算の基本的な構想というものは崩れていないと言いますが、これは間違いです。農業共済の百三十億、これから四十五億をとつて、これを冷害対策のほうに補助金として持つて行つたわけですから、だから現在農業共済は、保険金は八十五億になつておりますが、これは法律によつて出すわけですから、これから検査が済んで保険金を払わなければならん。追加しなければならない。幾ら追加しなければならんかというと、これは農林省の計算では、あと百億追加しなければならんという大体見通しを立てております。従つて実質的には五百十億の枠は破れる。従つてあなたの当初考えたところの予算編成の構想というものはつぶれておる。これは改進党からあなたがやつつけられた、屈服したということであつて、あなたは大蔵省の役人諸君に対して、何のかんばせあつてまみえることができるか。あなたのポケツトの中には辞表が入つているべきだということを私はお伺いしておるので、重ねて答弁を求めます。  最後に、戸塚建設大臣でありますが、先ほど冷害並びに水害について、私は副総理並びに大蔵大臣にお伺いいたしましたところが、政治は妥協である、こういうよう答弁でございます。あなたは妥協なさつておるのでありますか。既定経費の中から河川改修費は約五億減額されているでしよう。五億円ほど節約させられておる。治山治水協議会を設けて、これから治山治水対策を熱心にやろうというときに、五億を減額されて、その上あなたの省で、最低三百四億必要であると、ねばりにねばつたにもかかわらず、僅か百四十九億円しか予算の確保ができなかつたではございませんか。これで海岸堤防の破壊によつて海水に浸されておるところの住民、家屋、道路、更に百ミリ、二百ミリの雨が降つた程度で堤防が漏水によつて破壊されはしないかというて、おちおち眠られないところの地方の方々に対して、あなたは建設大臣として責任がとれるかどうか。あなたの決意と、あなたの責任あるところの答弁を求めまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  20. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。  五百十億の枠が守れる云々ということは申しましたが、今内容について申上げますると、農業保険のほうが果して幾らで足りるかということは、まだ査定を終りませんからよくわかりませんが、若干そこに別の資金融通等を要することは、私どもも承知いたしております。併し大きい目から見ておるときに、これは僅少なものであつて、今日何が必要かといえば、災害対策費、或いは冷害対策費等が一日も早く国民の手に入つて行くことが何よりも必要なんです。その点から私は考えてやつておる次第であつて、自分のことを考えておるわけではありません。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇拍手
  21. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申上げます。  節約のうちに河川費が六億何がしある、本来ならば、これは節約しないはずであつたではないかというお話でありました。私どもも、治水の建前から参りましても、この災害復旧という点から参りましても、河川費におきまして節約することは不穏当であると考えまして、極力河川費の節約は除外いたしたいと思つたのでありますけれども、結局、財源の捻出の上で止むを得ず六億、これは率にいたしまして二%ばかりであります。河川費の中にも直接水害に関するものばかりでもありませず、又止むを得ずそのくらいを延ばすことも仕方がないのではないかということに考えたのであります。なお補正予算について、災害対策費、殊に建設省の関係が極めて少いというお話でありました。この点は私も誠に遺憾に存じます。併し従来の例から参りますれば、初年度においては随分率の少かつたこともあるのでありまして、本年度が必ずしも非常に少いというわけには考えられません。勿論私は災害復旧は二年間でやりたいというような希望を持つておるのでありますので、その考えから行きますれば、非常な隔たりがあるのでありますけれども、今年のような財政の状況の場合において誠に止むを得ないと思つたのであります。但し、これは使い方において重点的に参りまして、努めて地方の迷惑の少いように、又来年の出水期までには、重要な個所については、それだけの処置をいたしたい、それがためにはつなぎ融資その他の方法を講じて参りたい、かよう考えて、この点については十分善処して参りたいと思う次第であります。先般、愛知、三重の海岸堤防の件について、この席から申上げたのも、その趣旨にほかなりません。(拍手)     —————————————
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) 松澤兼人君。    〔松澤兼人君登壇拍手
  23. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今大蔵大臣より説明のありました補正予算修正に対し、総理大臣並びに大蔵大臣に対し二、三質問をいたしたいと考えております。  只今同僚矢嶋議員から詳細に亘つて質問があつたのでございますが、元来、今回の臨時国会は、最初第十六国会が終了いたしました直後、我々臨時国会の速かなる要求をいたしたのであります。その理由は、第十六回国会において成立いたしました災害関係の二十四の法律の財政的裏付けをなし、速かに災害対策を講じ、国土復旧国民生活の安定を期することにあつたのであります。その後の台風第十三号の襲来と冷害によりまして、我が国は非常なる災害を受けたのみならず、災害冷害は農作物に著しい影響を与え、我が国食糧事情を不安と危惧の状態に追い込んだのであります。その対策は緊急且つ迅速を要し、早期国会の開会は国民の熾烈なる要望となつたのであります。加うるに、ワシントンにおける池田・ロバートソン会談は着々と進捗し、何か日本の将来に重大なる義務と負担を押しつける結果を生じつつあり、国民は、池田特使の渡米の意味、会談の内容等につき、詳細なる説明を聞かんと欲していたのであります。更に、公務員給与に関する人事院勧告は、すでに八月、国会及び内閣に提出せられ、全国公務員は一日も早くこれが実施を要望し、続いて国鉄、電通、専売、その他の公共企業体仲裁裁定があり、法律の建前上、政府は裁定に拘束され、これが実施をしなければならん義務を負わされて来たのであります。これらの緊急実施を要する諸案件及び国民の運命に重大なる関係を持つMSA援助、防衛隊、李承晩ライン等の問題につき、国会を通じ我が国民が聞かんとしていることの緊急性に鑑み、早期国会の開会を要求したのでありますが、遂に十月二十九日に至るまで召集を見ることができなかつたのであります。我々は国民と共に、政府がかかる痛切なる要求を無視し、漫然と国会の召集を遅延せしめた責任を追及すると共に、その怠慢に対し深き憤激を感ぜざるを得ないのであります。  漸くにして臨時国会が召集され、補正予算が提出されたと思うと、一両日を出でずして昨日予算修正が提案され、只今大蔵大臣説明を聞いたのであります。我々日本社会党といたしましては、政府のこの取扱について唖然たらざるを得ないのであります。政府及び大蔵大臣に一片の信念があるならば、かかる醜態は避け得たのでありましよう政府与党たる自由党が、政府自身の作成した予算に対して修正することは何を意味するのでありましようか。政府政府、党は党であるならば、責任内閣制はどうなるのでありましよう。我々の常識を以てしては全く不可解であり奇々怪々と言わなければなりません。(拍手)前国会においても政府原案について三党共同修正が行われ、本院に修正された予算が廻つて来たときは、最初原案の部分については政府責任を負い、修正部分については責任を負わないという説明であつたのでありますが、我々の追及に会つて、後には修正部分についても政府責任を負うと訂正したのであります。今回は一度提案したものを政府の意図によつて修正し、再提出するという形をとつているのであります。手続については、種々議論もありましようが、政府責任と面子を別にすれば、当然今回のごとき措置をとることが正しいと思うのであります。私は政府責任と面子を別にしてと申しましたが、これが問題であります。面子の点では、現に吉田内閣は保つべき面子は何ものもないのでありまして、再軍備をしないと言つて再軍備をし、憲法を改正しないと言いながら、重光・吉田会談においては、何かそれらしいことをすでに約束しているらしいのであります。独立にふさわしい自主外交と言いながら、米国一辺倒の外交を行い、アジアの各国から、日本の外務大臣すら相手にされないという事態を生じているのであります。(拍手)面子を潰してもよろしいというのであれば、それもよろしい。併し政府責任は断じて免れることができないのであります。一国の政府の作成した予算が、その政府の基盤たる与党自由党をも含めた三党によつて修正され、これを何らの抵抗もなく漫然として呑むという……、これは、政府、否、責任ある政治家のとるべき途ではないと信ずるのであります。(拍手)一度ならず二度、三度と、かかる不体裁なる修正を受けながら、而も政権に恋々たる理由は、一体どこにあるのでありましよう。吉田内閣総理大臣に伺いたい。  第一に総理大臣が総裁である自由党から、閣議で決定し、すでに国会に提案せられた政府の原案が、総裁の統率する与党自由党によつて修正されたという事実について、憲政の常道から見て果して何と考えられるのか。何人が考えても、自由党内閣の提案された予算が、自由党によつて支持推進されず、逆にこれを修正することに加わつて政府の威信を地に落すがごとき状態をもたらすことは、果して好ましいことであるか、好ましからざることであるか。この点について御所見を伺いたい。  第二に、政府予算案閣議で決定し、国会に提案する以上、これを以て最善の案としてこれの成立を期待し、これを実施せんとする意図に出たものであることは、容易に理解できるのであります。然るにこれが、国会の内外いずれかのところにおいて修正され、政府はこれに欣然として同意し、ここに修正案として提案することになつたのでありますが、果してかかる醜態に対する政府責任は如何にお考えになるでありましようか。政府みずからの手による修正は、原案作成当時に比して、その後、著しい事情の変動を生じたとか、字句又は数字に誤謬があつたということならばいざ知らず、今回の修正は全く事情が異なり、政府国会の超党派的な意向を無視し、一方的に杜撰な予算編成したことに基くものでありまして、責任は重大であると言わなければなりません。(拍手)みずから最善と信ずる案を放棄し与党の手によつて加減せられ、野党によつて更に是正された予算修正に対して、如何なる責任をおとりになるか。その心境を承わりたいのであります。  第三に、今回の補正においてもすでに明らかにされたごとく、我が国財政の財源は枯渇し尽しているのであります。これは災害冷害が甚大であつたことにもよりましようが、原因はまだほかにあるのであります。申すまでもなく、すでに始まつている再軍備的支出が、国民生活の安定を阻み、災害復旧を遅延せしめ、今回の災害冷害財源を枯渇せしめているのであります。再軍備と国民生活の安定、又は再軍備と国土保全は、決して両立するものではなく、政府及び国民は、二者のうちその一つを選ばなければならないのであります。来年度は再軍備的予算は更に増嵩するでありましよう。果して年度割を二・五・三とするか、三・五・二とするか、いずれにいたしましても、政府査定の千五百六十五億の五割を明年度において計上しなければならないのであります。保安隊の増強が民生安定を圧迫していることは明瞭であるのでありますが、果して如何なる限度を考えているのか。来年不幸にして再び本年のごとき災害を受けたならば、国家財政は破産すると思うのでありますが、なほ保安隊の増強を強行される意思であるかどうか、承わりたい。  次に大蔵大臣にお尋ねいたしたいのであります。信念を以て編成され、国会に提出された予算が、一日を経ずして脆くもその根底から崩壊せざるを得なかつた事情に対しては、深く御同情申さなければなりません。それでも職を退くこともせず、通貨の価値維持と一兆円の枠だけを保持せんとしておられる心境は察するに余りがあるものであります。併し我々は将来のことを考えて誠に危惧に堪えないのでありますが、  大蔵大臣にお伺いいたしたい第一点は、続いて来たるべき第二次補正の見通し及び二十九年度予算の見通しについてであります。先にも申しましたごとく、来年度は相当編成難に陥るであろうことは想像にかたくないのであります。如何なる予算の規模においてこれを乗切る信念をお持ちであるか、その点を承わりたいのであります。  第二に、今回の予算は救農予算とも言われるものであります。この点はもとより結構なことであります。併し一方においては人事院の勧告あり、公共企業体の仲裁裁定あり、これを実施することも政府の義務でなければならないのであります。補正予算の原案にも計上されず、修正にもこれが加えられていないのは、一体如何なる理由に基くものでありましようか。世上これを称して労農分断予算と言う者があります。果して政府にかかる意図があるかどうか。公務員の給与改善はいつ如何なる程度に考慮されるのか、伺いたいのであります。  第三に、修正は、前回もそうであつたのでありますが、数字の辻棲を合せたに過ぎず、最終の締め括りはいつの場合においてもついていないのであります。例えば前回の修正においては、供米完遂奨励金の百億にしても、電話料金の値上げの二十五億にいたしましても、高校教員の三本建にいたしましても、その結末はいずれも後日に残されているのであります。今回の修正においても総枠五百十億には異同がないのでありますが、了解事項として伝えられているところによりますと、災害復旧費百四十四億三千万円及び農業災害保険繰入れ四十五億の不足分は、今後の状況に応じて預金部資金等より融資されることになつておるということでありますが、預金部資金はすでに運用計画ができていて、無理をすれば産業資金等に重大な影響を与えることは必定であります。かかる問題を後日に残すがごとき修正に応じた理由は果して奈辺にあるか、承わりたいのであります。産業資金よりの融資が困難であるばかりでなく、協定はこれに対する利子を国が補給するか若しくは免除すると言われているのでありますが、果して大蔵大臣ほこれらの協定についてそれをそのまま承認するのであるか、或いは利子補給予算はいつ如何なる形で国会に提案するのであるか、伺いたいのであります。  以上を以ちまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  24. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 予算案修正について与党である自由党が加わつたのは憲政の常道に反しはしないかという御質問でありまするが、勿論一度提出いたしました予算案を中途で修正することは好ましくないのであります。併しながら先ほども申上げましたように少数単独内閣でありまする限り、これもいたし方ない場合があることは御了承できると考えます。与党はその場合どこまでも受身でありまして、政府と在野党との間に居中斡旋いたすことも政治上よくあることでありまするが、従つて拒否の自由は持つてつたのであります。ただ野党の意見政府補正予算編成に関する基本方針を覆すものでないので、与党がこれを呑んで修正なつた次第でありまして、憲政の常道に反するとは考えません。  それから予算案修正に関する総理大臣の政治的責任を問うという御質問でありますが、これは今申上げたことで尽きると考えまするが、勿論この予算案、又その修正につきましては、総理大臣として責任を負うわけであります。併しながら実際政治の運営上には止むを得なかつたと考えます。  それから再軍備予算我が国の財政を圧迫しておると思う。——これは何がしか圧迫しておることは事実であると思います。併し、今の政府の建前、方針といたしましては、今お話のありましたような二者択一というようなわけに参らんので、両方の費用を按配して二十九年度予算におきましても適当にやつて参りたいと考えております。    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  25. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 松澤さんにお答えしますが、この修正に関しての今の説明緒方総理通りでございまして、与党たる自由党が少数であり、国会通過の見地から見ますると、三党協定で行くことが、一派早くこれが国会を通過し、一日も早く国民の手に災害対策費等が渡るゆえんであり、且つ又基本的な考えを覆すものでないから、私どもも同意をいたしておる、こういう次第であります。  なお勿論政府としては原案をよいと考えますが、政府のみで仕事をしておるわけでないので、かようになるのは、今副総理が話しました通り、少数党たる与党としての現状では止むを得ぬことと考えるのであります。  なお防衛諸費が来年は殖えるのではないかというお話につきましては、若干殖えるのではないかと思つておりますが、併し飽くまで私どもは防衛諸費も民生安定の諸費と共に釣合をとるものでなければならん。この点については松澤議員と私は感じを全く同じくいたしておるものでございます。従いまして、民生安定に関するその問の資金のいわば国費の配分方等については、十分注意をする考えであります。  第二次補正予算にはどういうものを考えておるか。——これは御承知のごとくに、第二次の補正予算には、財源等の関係もございまするが、例えば先に米の超過供出に対しては八百円中四百円は一般会計より出すというようなことがきまつておりますので、仮に手八百万石と見れば七十二億円を出すと、そういつたいろいろきまつたようなものでございまするが、又多少年末の〇・五等のことも、いわゆる公務員のことも考えなきやいかんと思つておりますので、まあそれらのことについて今検討中でございまするが、大体において必要最小限度の予算を組むべきものであるという考えをいたしております。これは財源の関係上止むを得ぬことと思つておるのであります。  なお、二十九年度予算についてどうこうというお話がございましたが、実はこれは率直に申上げて、さつきお話のごとくに、私ども二十九年度予算編成には相当苦慮いたしておるのでございます。例えば恩給のようなものにいたしましても、平年度化する関係上、二百億円くらい殖えましよう。又本年の災害が、さつき申した千五百六十五億となりまして、その大部分が来年度になりますと、これ又相当大きな、いわゆる巨額の数字に上つて参りますし、そのほかにもいろいろ殖えるほうの部分がある。現に各省から提出いたしておりまするものは、保安庁費とか、ああいつたものを加えますると、実に二兆円に上つておることは、新聞で御承知通りであります。さような工合で、いろいろ苦慮いたしておりまするが、この編成には飽くまで健全な通貨、健全な財政、健全な経済の思想を以て貫きたいと考えております。  なお、補正予算には公務員のべース・アツプ云々等を見ていないかと……、これは私どもも、人事院の勧告とか裁定は尊重いたすのでございまするが、併しこの今回の補正予算災害対策諸費に限られておりまするので、その次のときに十分検討いたしたいと考えておる次第でございます。  なお、資金運用部のことについてお尋ねがございましたが、これは一定の計画を立てておるのでございまして、私は昨日衆議院でも申しましたが、例えば百五十七億というようなものが現在のところすぐに資金運用部の資金計画には立つておりません。従いまして、資金運用部などよりでき得るだけの措置をとると、これは「などより」というところに含みがある次第であることを御了承願いたいと存じます。(拍手
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  議事の都合により、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十三分散会      ─────・───── ○本日の会議に付した事件  一、昭和二十八年度補正予算修正の趣旨説明