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1953-10-30 第17回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月三十日(金曜日)    午前十時九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二号   昭和二十八年十月三十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。江田三郎君。    〔江田三郎登壇拍手
  4. 江田三郎

    江田三郎君 私は日本社会党代表いたしまして、この際、政府に若干お尋ねをいたすものであります。  政府は昨日補正予算案を提出されました。ところが他方において、政府と与党とは改進党及び分自党と予算の修正を協議しており、昨日も夜通し交渉を始めたと新聞が伝えているのであります。予算案に対しまして国会審議も始まらないのに、すでに国会の外において他党と取引をするということは誠にあきれたことでありまして、(拍手政府醜態は言うまでもございませんが、国会審議を軽視し、国会を冒涜するも甚だしいと言わざるを得ないのであります。(拍手)昨日私ども野党吉田総理施政演説を求めたのに対しまして、政府の同意が得られなかつたのでありますが、恐らく総理六日は、この醜態をみずから顧みて面目なく、演説ができなかつたものと(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)我々は解釈するものであります。大蔵大臣はまじめくさつて財政演説をされましたか、予算案自分の手でもう一度修正して、どんな顔でこの次の演説をなさるのか、その心がまえをあらかじめ承わつておきたいと思うのであります。  今国会の中心は災害対策でありますが、多数の罹災者が待ちこがれておるのは、大蔵大臣のお見舞の言葉ではなくして、早急に復旧を実施することであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)我々はこのために、去る九月、臨時国会召集を求めたのでありますが、政府の怠慢によつて今日まで開会に至らず、今回の召集にいたしましても、野党各派繰返し繰返し要求に、政府はしぶく応じたのであります。一体何がためにこのように召集が遅れたのか。すでに十六国会で決定された災害関係特例法の政令が今なおでき上らないのは誰の責任なのか、明らかにして頂きたいと思うものであります。  我々が疑問とすることは、政府災害復旧というものを本気でやる気があるのかないのかということであります。やる気があるというのならば、何年間で如何なる比率で完了して行くのかお聞きしたいのであります。政府は今回の打ち続く災害に鑑みてと称して、先般、治山治水対策要綱なるものを決定し、十カ年間に一兆七千億円を投じて根本対策を確立すると発表したのでありますが、この一兆七千億円の数字に、過年度災害の千七百億円、本年災害の残りの千五百億円を加えますと、今後新たに起る災害計算外にしても、年々二千億円以上を計上しなければならんのであります。その勇気が本当にあるのか。一方で厖大な再軍備費を使おうとし、他方にこうした資金を生み出ずことが果してできるのか。若しやる気もないのにかようなことを発表するのであれば、誠に罪の深い話であります。この際、来年度以降、災害復旧治山治水経費を大体年々どのくらい見込んで行こうとしているのか。基本的な考え方緒方総理に伺つておきたいのであります。  政府やり方を見ますと、何もかもインチキではないかと言わざるを得ないのであります。第一に、本年災害の額にいたしましても、緒方総理は千八百億円と言明されたことがございます。これがいつの間にか千五百六十五億円になつておりますことは、復旧率見せかけを大きくするために、現地も見ない大蔵省で勝手に数字をいじくつているのであります。農業共済につきましても、政府のやつていることは機械的な一律天引査定であります。又三百億円の経費を計上はしているが、その一方で、関連性のある公共事業費食糧増産対策費を五十九億も削つているのであります。実にインチキも甚だしい。これが若し関連がないと言うのならば、これはとんでもないでたらめと言わざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうインチキ見せかけだけの三百億円でありますので、例えば愛知県、三重県のごとき大災害地は、まるで手の着けようのない状態でございまして、大蔵大臣自分の郷土の罹災家屋を今後何年間水浸しにして置こうとなさるのか。このような大災害地に対しましては別途考慮するということを副総理及び大蔵大臣言明されたことがございますが、本当に別途考慮するのか。若しそうであるならば具体的にどこから幾らの金を出すのか、はつきりとして頂きたいのであります。又今日まですでに出されておるところの百八億の繋ぎ資金は、今回の三百億の予算執行に当つて引揚げないと言われたことは間違いのないことなのかどうか。これもはつきりとして頂きたいと思うのであります。  災害と並んで、我々の心痛に堪えませんことは、冷害地凶作農家の問題であります。昨日大蔵大臣は、これに対しまして各般の臨時救済措置をとると言われましたが、僅か七十億円で以て罹災農家の再生産が可能であると考えておられるのであります。この凶作地農家の問題について特に考慮すべきことは、営農資金だけではなくして、飯米確保を図つてやらなければならんということであり、すでに水害地に対しましては、米麦の貸付、払下げを行なつたのでありますが、冷害地に対しては、この飯米確保について具体的に如何なる処置をとろうとしておられるのか。農林大臣にお聞きしたいのであります。昨日犬養法務大臣は、全国公安労働係検事会同で、凶作による不穏な行動を警戒すべきことを訓示されたということであります。併し、警察や軍備の前に必要なのは、国民の生活の安定であり、凶作農民救済でありまして、政府考え方は実に本末顛倒しておるのではないかと申したいのであります。(拍手)なお、凶作の実態は、当初の政府収穫予想を遙かに下廻るものとなつて参りました。従つて、当然、米の生産者価格について再改訂が必要となつて参りますが、政府はいつこれを実行されるのか。この米価改訂に当つては、単に豊凶指数に基くところの改訂にとどめないで、すでに米価審議会が満場一致で不適当と断定した現行方式を一擲いたしまして、全国農民労働組合婦人団体等が挙つて要望しておるところの二重価格制をとつて生産者米価を一石一万二千円に定めて、供出と食糧増産に対する農民の心からの協力を求めて、この食糧の危機を突破すべきものと考えるのでございますが、(拍手農林大臣の見解を承わつておきたいのであります。若しも只今申しましたことに反対だと言われるならば、米価審議会が不適当と断定した方式に代するに如何なる方式を似て当らうとせらるるのか、お答えを願いたい。最近、政府やり方外国食糧にばかり寄りかかろうとしておるようでありまして、甚だ危険なことであります。(「日本農民をどうするんだ」と呼ぶ者あり)而もこれは一体果して入つて来るのか来ないのか。この際、どこから幾ら食糧を輸入する計画なのか。全体として食糧需給計画はどうなるのか。具体的に示されんことをお願いいたすものでございます。(「それを聞かなければ二十九年度予算は組めないぞ」と呼ぶ者あり)  かような災害対策と並んで、この際、当然実施さるべきことは、人事院勧告公共企業体仲裁裁定地域給の是正、期末手当等の公務員の給与の改善でございます。これにつきましては、政府は第二次補正予算を提出するかのごとく伝えられておりますが、その内容、及び第二次補正予算を組むとすれば、その時期はいつであるか。急を要するものと我々は考えておるのでございます。補正予算に対するこのような我々の要求に対しまして、政府財源のないことを答えとされるでございましよう。併し財源はないはずはございません。(「ある」と呼ぶ者あり)緒方総理小笠原大蔵大臣は、補正予算財源として、前年度剰余金の二百億円、安全保障諸費の未使用分四百七十億円について考慮することを、水害対策特別委員会において言明をされておるはずであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)なぜこれが実行できないのか。或いはMSA交渉を通じてアメリカから牽制でも受けたというのでありますか。(「その通り」「はつきりしろ」と呼ぶ者あり、拍手大蔵大臣健全財政の堅持を説かれております。我々は再軍備に使う金を民生の安定に使えというのであり、何ら健全財政を崩そうとするものでは、ございません。それとも大蔵大臣は、只今指摘しましたような金は今後再軍備にも何にも一切使わないと約束をされるのでありますか。現実に起きておるところの災害を捨てておいて、未来の架空な災害のために再軍備に憂き身をやつす政府態度こそ、恐るべき破壊活動であります。(拍手)国土を荒れ果てるに任せ、国民を痩せ衰えさせて、何の再軍備かとお尋ねしたいのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)アメリカ利益のための健全財政でなく、日本の民生安定のための健全財政に一たび政府が頭を切替えをなさるならば、大きな財源は転んでおることを、あえて指摘したいのであります。(拍手)一兆億円の枠を死守する大蔵大臣の悲壮な宣言も、これが他の国の利益に奉仕する操り人形のしぐさとなれば、見る価値もない田舎芝居に過ぎないのであります。(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)  最近、政府のなすところは、一体この日本をどこに持つて行こうとしておるのか。自由と平和を愛する文化国家という憲法の精神は一片の空文に化そうとしておるのではないのかという不安を抱かざるを得ないのであります。我々がこうした不安に落ち込む根本は、サンフランシスコの対日講和条約日米安全保障条約であり、これらの条約出発点として、日本平和国家として独立する道を踏み外して、傭兵国として他国に隷属する道に迷い込んだのであり、更に今回のMSA交渉によつて独立憲法も惜しげもなく捨て去つてサンフランシスコ街道を踏みかためた一本道にしようとしておるのではないのか。或いはそうさされようとしておるのではないかと思われるのであります。  岡崎外務大臣は、八月七日、本院におけるMSA交渉中間報告で、日本が引受けるべき軍事的義務について、アリソン大使言葉として次のように述べられました。即ち、「日本がその経済能力を超えて直ちに治安維持の部隊を増強することを意味するものではなく、防衛力増強速度態様日本政府によつてのみ決定されるべきものである」というのであります。又同僚議員の質問に対し、防衛計画日本政府が決定するのであつてMSA交渉においては必ずしも条件とはならないと答えられたのであります。然るにMSA交渉のその後の経過を見ますと、この説明とは逆に、防衛計画こそMSA交渉の第一の条件であり、而も防衛力増強速度態様とは、日本政府の自由な意思できめられるのではかくして、アメリカ政府の考えを押付けられるのであつて日本政府が自由か意思によつてなし得ることは、少々ばかり高く売り付けるための、力なきレジスタンスではないかとの印象を受けるのでございます。又、外務省情報文化局発行の「MSAとは何か」というパンフレットがございますが、これによると、MSAによつて長期の安定した域外買付が行われ、それも軍需物資だけでなく、アジア諸国開発に必要な機械設備工業製品までも買付けられて、日本経済はこれにより安定するという効能が並べられてありますが、交渉経過を見ると、これ又田舎廻りの売薬の効能書のような空疎なものではないかと受取れるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)アメリカは、すでにECA援助というものを全面的に打切つておるのであり、防衛支持援助にいたしましても、これを直ちに日本に与えようとはしていないはずであつて、仮に今後のMSA交渉の結果、防衛支持援助が与えられるといたしましても、それは日本防衛計画日本能力如何を無視してアメリカのお気に召す速度態様に合致した暁のことでございまして、まるで馬の鼻先ににんじんをぶら下げたように、にんじんをめがけて、やみくもに走つている間に、こちらが息切れをしてしまうのが落ちということになるでございましよう。(拍手アメリカ政府言明しておるごとく、MSA慈善事業ではないのであつて、若しにんじんをめがけて走り続ける馬が自由意思でございますなら、日本政府防衛計画自由意思ということになるのでございましよう。(拍手)  政府宣伝をされるMSA御利益には、いま一つ外資導入がございますが、先般、池田ロバートソン会談議事録草案というものが発表されましたが、これによりますと、日本法規外資に有利なように改めるならばアメリカ外資導入支持を与えるとい、のでございます。すでに先般、日本の石炭で使いものになるのかならないのかわかりもしない発電機の輸入に、日本の国を一般担保に差出すような国辱的な火力借款をやつてのけた政府が、(「大蔵大臣どうした」と呼ぶ者あり)これ以上外資に有利な条件を整えるということになれば、一体何が出て来るのか。まさに身ぶるいを禁じ得ないのであります。アメリカからの外資導入には、少くとも長期のものについては、いずれも一般担保要求され、そのうちに日本の全部がアメリカ資本担保とされる慮れありと申しましても過言ではないと思うのでありますが、政府は今後どのような方法によつて外資を入れるのか。アメリカ要求している外資に有利な法規改正とは具体的にどういうことなのか、大蔵大臣に伺いたいのであります。  池田ロバートソン会談によつて生み出ざれる経済的な御利益は、結局のところ、第二ドツジ・ラインを設けて緊縮政策を強行し、災害復旧も捨てて顧みない、民生安定の費用も削り取り、痩せ衰えて浮かせた金をガリオアの返済に充て、それだけの部分を何とか名目を付けて、新らしい援助としてお返しを願うということになるのではないかと考えられるのであります。  それの具体的な現われが今回の補正予算案であります。災害復旧ができないだけでなしに、例えば住宅金融公庫の出資金二十二億円を削つてございます。大蔵大臣は、この金を削つて住宅建設には何の支障もないと昨日説明をされましたが、それなら、使う気のない予算を計上して、住宅不足に悩む全国勤労大衆をだまして来たのかということになるのでありまして、馬鹿も休み休みにして頂きたいと思うのであります。(「自分の家があるからいいと思つているのか」と呼ぶ者あり)  すでに自主性失つた政府は、ただ言われるがままにMSA効能書チンドン屋のように太鼓を叩いている間に、先方は遠慮なしに打つべき手を強引に打つておるのでありまして、例えば小松製作所その他に見るように、特需発注を一方的にキャンセルし、中断をいたしまして、MSAがまとまれば発注を再開すると言つているがごとき、交渉に大きな圧力を加えておるのであります。(「怪しからん」と呼ぶ者あり)一体特需生産というものは、かような暴力的、一方的な行為に対して何らの損害賠償も請求できないほど、乞食のような条件に縛られておるのかどうか。将来の防衛支持援助のこともございますので、参考のために関係大臣お答えを承わつておきたいと思います。  我々は、MSA交渉につきまして以上のような印象を受けるのでございますが、若しそうでないということならば、交渉経過を具体的に明らかにして頂きたいのであります。MSA交渉の結果こそ、我が国の運命に決定的な影響を与えるものであるので、ございまして、国民ひとしくその真相を知らんとしておるのであります。政府に、日本政府に、独立国としての自主性が残されておるのでありますならば、この重大な外交交渉に臨む事前に、政府自身基本方針国民に明確に示すべきであります。アメリカ司令官に会うのさえ報道陣から逃げ隠れしたり、他党の代表内容も明らかに発表できないような会見をしてみたり、MSAについて、ただただ国民の目に蓋をしようとされては、誰しも不安を濃くせざるを得ないのであります。外務大臣は、この交渉はおおむね意見一致を見ておると報告をされましたが、岡崎外務大臣のおおむね意見一致の放送は、何も今に始まつたことではないのでございまして、(拍手)当初、(「やらないから一致している」と呼ぶ者あり)交渉は八月中旬にまとまるかのごとく伝えられておつたのが、何が故に今までまとまらないのか。アリソン大使が与えた約束間違つてつたのか。外務大臣が受取り方を間違えたのか。そもそも一体池田特使なるものはなぜ渡米したのか。池田ロバートソン会談とは如何なる性格のものなのか。(「大事なことだ」と呼ぶ者あり)外務大臣は、池田特使MSAとは関係なく、日本経済自立のために、財政経済全般の問題についてアメリカ基礎的考え方を認識させるために行つたと、衆議院の外務委員会説明をされておるようでございますが、子供だましもいい加減にして頂きたいと思うのであります。(拍手選挙違反を空とぼけたあの戦術はもうこの辺でやめて頂きたいのでございます。(拍手池田特使は如何なる性格を持たれているのかを明確にされることを、私は吉田総理要求いた、ものでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手池田ロバートソン会談が、議事録として残すことに対して、政府は全面的に縛られるのかどうか。およそ身分もわからない者が、MSAを初め、日本金融財政、更に外交全般にまで亘るところの交渉に当ることは、誠に不可解千万でございます。なぜ吉田総理みずからこれに当られないのか。或いはこれから出かけようとするのか。若し総理に故障があれば副総理が置かれておるのであります。外務大臣とか大蔵大臣とかという名前の者もあるのでございまして、(拍手)わけのわからない特使をなぜ派遣しなければならないのか。この際はつきりされることを国民の名において要求するものでございます。(拍手)  この交渉のポイントは防衛計画にあることが明白になつて来たのでありますが、これには、たとえ身売り金稼ぎにいたしましても、政府自身計画があるはずでありまして、池田特使の思い付きでやつているわけではございますまい。一体政府は、防衛計画は如何なるものを持つておるのか、更に吉田総理憲法改正意思なきことを繰返し言明されて参りましたが、この言明は今なお変更はないのか。ないといたしますならば、一体、軍とか戦力とかは何を指すのか。ただ軍或いは戦力という言葉を用いない限りは、陸海空何万のものが如何なる装備を持つたところで該当しないと考えておられるのか。保安隊を自衛隊と言うがごとき、隊の字である限りは憲法守つたと言えるのか。或いはどの程度のものから軍或いは戦力となるのか。この際、政府の明確なるお答えを求めるものでございます。  一国の所信を中外に堂々と発表で露ないようなことであればこそ、李承晩韓国大統領のごときにしてやられるのであります。この日韓会談の決裂にいたしましても、外務省は、会談が不調に終つたのは、韓国側予定計画であると発表いたしましたが、それでは一体何故のんべんだらりと予定計画引掛つたのか、引掛るまでそれに気が付かなかつたのか。外交というものがあるのかないのかと聞かざるを得ないのであります。而もこのきつかけに左りましたのは久保田代表発言でございますが、すでに李承晩大統領が、独裁政権を維持するために、日本帝国主義を懲らしめよというスローガンを用いておることは、世界の周知のことでございます。その相手に対して、最も逆手に取られやすいところの帝国主業者流発言をすることは、呆れ果ててものが言えないと言わざるを得ないのであります。(「その通り」「時間々々」と呼ぶ者あり)その後の政府態度を見ましても、保安庁法第六十五条の発動であるとか、代表部の閉鎖であるとか、経済断交であるとか、勇ましい言葉が伝わつておりますが、若しそうならば、李承晩大統領吉田総理は完全に同格同列でありまして、世界の嘲りを買うところの二人の男となることでございましよう。(拍手)我々はこの際、世界の輿論を相手にする気持を持つて弾力性のある合理的な主張を持つて、今後の交渉を執拗に続けなければならんと思うのでございますが、更に我々はこの際、眼を広く持つべきことを政府要求したいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)李承晩大統領漁業問題を一つの手段に使つておるならば、これを無効ならしめるた払に、北洋漁業について、ソヴイエト、東支那海漁業について、中国との漁業協定を結ぶところの意思はないのもということを政府に伺いたいのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)我々は、政府が眼を広く持つて頂きたい、とを要求するものでございまして、対中国貿易にいたしましても、制限をよく守つたと褒められるばかりが能うはないはずでありまして、(拍手)今になつて条件の緩和がされたところで、すでに西欧諸国の後塵を拝するのみでございます。政府中国貿易を過小に宣伝をされておりますが、その内容片今回の中国通商視察議員団によつて明らかにされるわけでございます。この議員団は、すでに本日の新聞によりますと、三千万ポンドの貿易協定の調印を終つた報告をされておりますが、政府はこの協定をどう扱う気なのか。取引を円滑にするために、今後中国通商代表部のごとき機関の交換をなす意思ありや否やということをお尋ねしたいのでございます。我々はなお多くの問題をお伺いしたいのでございますが、およそ猿廻しの猿にとつては、関心のあることは親方の顔色と当面の腹の加減だけでございまして、(拍手)明日の運命までは考えられないことでございます。仕込まれた芸当を仕込まれた通りにやつて、ときどき間違えて叱られるだけのことでございます。独立とか自由とか考える必要もないし考える力もないことでございます。我々は日本の政治がこのような猿廻しに使われる猿の芸当になり終らないことを望むものでございます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  この国会災害復旧のために召集せられた国会でございますから、一般施政方針は省くことにいたしたのであります。  又、このたびの災害は近来未曾有と言つていいような稀有の災害であります。従つて、この実害は、その災害の範囲は、実情はどうであるか、これの正確なる調査をいたすためには相当の期日を要するのであります。又現在政府が持つております財源というものは甚だ僅少であるのであります。この僅少なる予算を以て大災害復旧に当るのでありますから、その財源を求めることについては相当政府としては苦心いたしておるのであります。なお又一方においては、インフレの要因をなすがごとき予算を組めば、これ又日本経済に及ぼすところの影響大でありますから、そのために、一方においては財源を求め、一方においては災害実情をつかむために、相当の時日を要することは止むを得なかつたのであります。即ち、政府としては、この国会或いは災害復旧のためにする国会召集を怠つてつたのでないということの事情については御承知を願いたいと思います。  又池田特使は、これは日本事情説明し、又アメリカ実情をつかむために参つたのであつて交渉のためにいたしておるのではないのであります。即ち私の個人の特使という資格で以て出したのであります。  又その次に憲法改正の問題をお出しになりましたが、これは、しばしば説明いたす通り、我が政府といたしては、保安隊増強ということは考えておりますが、増強して遂には戦力に至れば、憲法改正の必要ということは当然であります。併しながら、未だ憲法改正をする必要を認めないのであります。(「そんな答弁あるか」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  6. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私が水害対策委員会におきまして、今回の災害に対しまする国庫の負担額の計数を一千八百億と申上げたことがあるのは事実でございます。これは当時私、はつきり申上げておると思いまするが、大蔵省におきまして査定いたしました一応の数字であります。その後いろいろに変化して参つておることも事実であります。その理由は、例えば初め百億と予定いたしておりました災害関係費、文部省所管或いは厚生省所管等の災害関係費が、調査の結果四十二億で済んだというようなこともあるのでありまして、結局先ほど御指摘になりました千五百六十四億何がしということになつたのでございます。  それから治山治水対策協議会が夢のような計画を立てて国民を愚弄しておるんじやないかというお話でありまするが、今回の災害が前例のない極めて異常なものでありましただけに、こういう災害を繰返さないようにするために抜体的に治山治水を研究しようということは、これは当然のことでありまして、その観点から一応理想的な計画を立てたのでありまするが、併しながら、これは国家財政とも睨み合せて、実際に実施し得るものを考えなければならん、その予算面との関係を今調査中でありまして、まだ結論に達しておりませんが、決して、そういうこけおどしをやるつもりも、ごまかすつもりもなかつたのであります。  以上お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  7. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今回の台風十三号によりまする海岸堤防等の被害について、愛知、三重両県下に特に著るしく、又この種の災害としては未だ曾てなかつたような規模のものでありますが、これが復旧には政府といたしましても特に重点的にこれを取上げたい意向でございます、今度の予算でも、大体、災害復旧費、土木助成費等で二十余億円が計上されておるのでございまするが、併しこれでは十分とも考えられませんので、工事の進捗如何により、又実情に基きまして、工事費に不足を生ずる虞れがありまするような場合等につきましては、別途融資等の方法も考慮いたしたいと考えております。  それからその次の問題でありまするが、政府は被害農家が減収によつて受けました損失をこれはできるだけ早く救済いたしたいと考えておるのであります。そのために、第一に農業保険金を、今度損害の評価が終り次第、もつとも米の収穫が終らぬとはつきりしたいのでありまするが、これで百三十億円を計上し、更に又基金の二十五億円、今度法律を出しておる五億円の積立金の取消し等で百六十億円を見込んでおるので、これを早急お払いして円滑な措置をとりたいと考えておるのであります。なお第二のお話であつた営農資金の問題につきましては、これがために今回所要の法律を準備いたしておりまして、被害農家が大体六分五厘とか或いは三分五厘の低利利息で金勘機関から資金の融通を受けられるように用意をいたしまして、損失補償等の措置をとることによつてこの貸付を円滑ならしめたいと考えておるのであります。なお融資額は大体百五十億円か予定して、一戸当り北海道二十万円乃至十五万円を予定いたしており、これの利子補給助成金としては、補助金としては、補正予算に二億四千八百万円を計上しております。その次は被害豊家の飯米、いわゆる飯用米麦でありすすが、これに対処するために政府の手持のものを払下げる、価格の引下げ及び代金の延納措置を講ずることとし、これ又予算措置をとつておりまして一億六千万円を計上しております。第四は、農家の現金収入の減少によつてこうむつた打撃を緩和するために、救農土木事業として農林漁業金融公庫の出資金四百五十億円を計上して、これで以て被害農家等が現金収入を得る機会をお与えしたいと考えておる次第であります。  人事院の勧告、仲裁裁定の実施についてお話がございましたが、十分これは尊重する考えでございまするが、一般財政の見地からも、又各企業体の経理の上からもいろいろ困難な点もありますので、目下慎重検討いたしております。  今度の補正予算以後に第二次の補正予算等を出すかというお話でございますが、これは補正予算は、財源等の関係上、真にやむを得ざるものに限定をいたしたいと考えておるのでございますが、併し、又その提出時期も大体十二月早々に召集される通常国会の劈頭に出したいと、かように考えておる次第でございます。  それから補正予算財源として、前年度剰余金安全保障諸費等云々というお話がございましたが、これにつきましては、そういうものを使用する、とはインフレ防止の見地から健全を欠くと認めましたので、避けた次第であります。なおそういうことに対してアメリカから何か牽制を受けたかとい二お話でありましたが、さようなことは全然ございません。なお私どもは、飽くまで健全財政、健全経済、健全通貨の方針を貫こうとするのは、一に民生安定のためであるということをはつきりと申上げておきます。  なお外資関係についてお話でありましたが、火力借款は、御承知のごとくいわゆる世界銀行は五十五国からできておつて日本も一人の理事を出しておるというような工合でありまして、どの国に厚く、どの国に薄くするということはないのでありまして、一視平等、公平なる取扱をしておるのであります。何かお話の点についての御懸念は、これは各国と主それなら同じ立場にあるということをはつきり申上げておきます。なお又外資導入についての話でありましたが、何も法律をどうこうするという要請を受けておりませんが、日本といたしましては外資導入の極めて必要であることは皆さんの御承知の通りであるので、受入体制を整備いたしたいと、かように考えておるのであります。  なお住宅金融公庫出資金の問題でありまして、この点は私どももなるべくこういうことにしたくないと考えたこともありましたけれども、一方、実情を見ますると、規定通りの建設計画に基きまする貸付契約を見ましても、現実に年度内に支払われる金がそれだけに行かないで、それで又必要が起ればですが、年度内にはさようなことはございません。数十億余るのでありまするから、それでその余裕があるので、この余裕金を使つて、目下の問題である災害対策にこれを振り向けて民生安定に資したい次第であります。(「めちやくちやじやないか」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  8. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) MSAの問題であり手が、これはいろいろの形ではありまするが、すでに世界の五十三カ国がこれを受けておるのでありまして、何ら差支えないものと考えておりまするし、又これを受けた場合、日本だけが隷属国になつたり屈辱的になつたりするわけはないと考えておるのであります。政府自身の基本的な方針は、前国会におきまして日米往復文書に基いて発表いたしております。これを信じられなければ別でありまするが、政府といたしましては飽くまでもこの方針で進んでおるのであります。(「経済援助はどうした」と呼ぶ者あり)従いまして、防衛計画速度とか態様日本政府がきめることにいたしておりまするし、又このMSA援助関連いたしまして、域外買付として武器その他のものも注文があることと信じております。  日韓会談におきましては、久保田代表は普通のことを普通に言つたまでであります、尤も政府としては飽くまでも平和的にこれを解決しようといたして努力いたしておりまするが、併し必要な保護は与えることがどうしてもある場合も生じようと考えております。又世界の輿論をバツクとすべしという御議論は、これは同感でありまして、昨日も私は自分報告でその通り申上げておるのであります。  ソ連や中共との間の漁業の問題は、国交が回復いたしておりませんからなかなか困難ではありまするが、若し漁業ができるというならばこれは結構な話であります。  中共貿易につきましては、議員の帰還報告もありましようから、これを聞いて考慮いたすことにいたしております。    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  9. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。  冷害地の農家に対する営農資金の処置、或いは飯米に対する処置につきましては、只今大蔵大臣からその輪郭を申上げられておりますので、ここでは重複いたしません。ただ私は、激甚なる収穫減を受けられた地方に対しては食糧確保の要が最も緊切であるということで、すでにこれらの地方につきましては、当該県の県庁並びに食糧事務所を督励いたしまして、十分の手配を講ずるように、すでに手を打つてつておることを御了承願いたいと存じます。  今年の作況が近年にない不幸な作況を呈しまして、八月十五日の統計調査の定期調査によりまする作況調査の示したところでは、御承知のように六千百万石ということが予想せられておつたのでございます。然るところ最も大事な開花発熟の時期に御承知のような低温が続きましたために、九月十五日の調査に至りましては五千八百万石というように低下の数字を示しておつたのであります。更に又十月五日の中間調査によりますれば、その後の天候の状況が好転いたさなかつたために決定的な凶作の様相を呈しまして、五千四百四十万石というような近年にない不作の数字を示しておるのであります。これによりまして、今年の作況がそうであるから、従つて生産者の基本価格をもう一遍考え直せということが江田さんの御主張であつたように存じますが、すでに米価審議会におきまして、米価の基本的な価格はパリテイ方式による従来の算定方式をとり、それに投下財の増嵩によりまする加算を加えまして七千七百円といたし、更に凶作系数を加えるべしとする米価審議会意見に基きまして、八千二百円の基本価格を決定いたして来ておるのであります。併しながらこの凶作系数は相当その後動いて参つております。その算定方式は未だ今日まで決定いたしたものはないわけであります。その算定方式米価審議会意見を聞いて政府は決定をする、一応五百円の凶作系数を加算すべしというのが米価審議会意見でもあつたわけであります。従いまして只今米価審議会の議長におきまして算定方式の研究を願つております。その算定方式が決定いたしますれば又所要の処置を講ずるつもりでございますが、従いまして生産者の価格は今日決定いたしておるところを動かす考えは持ちません。更に又消費者価格につきましては、米価審議会に対しまして私どもといたしましては改訂方式と時期について諮問をいたしたのでございますけれども、これは米価審議会におきましては、御承知のようにいろいろ意見もありました。私どもといたしましては、この国会で決定いたしておられますところの完遂奨励金を除きまする米の買入についての所要の経費を織り込んだ消費者価格を決定することが妥当であるという考え方は、今日も依然として持つておるのでございますけれども、今日の食糧事情の特殊な様相に鑑みまして、只今慎重に検討をいたしておる次第でございます。  そこで、今年の作況がこういう状態であつて、来米穀年度の食糧に不安なきや否や。これは全消費者大衆の今日の最も大きい関心事であると存ずるのであります。私どもといたしましては、九月十五日以前の作況を待つまでもなく今日の予想せられる減収を見越しまして、八月頃から相当外地米に対する調査、手配等も進めて参つております。当初計画百万トンの輸入計画を少くとも最低百六十万トンを確保する必要がある、かような考えを以て只今着着手を打つておるわけでございます。更に又、五千四百万石というような凶作ではございますけれども、農家の方方に対しましても、或いは精麦等の特別価格による払下等によりまして、農家におかれましても、特に単作地帯方面の農家に対しましても、この際、麦の消費を増大せしめて頂いて、幾らかでも米の供出をやつて頂けるような措置をとつてつております。そうしてそのことは相当効果を挙げておると思います。私どもといたしましては、とにかく内地米の確保が第一である、そうして又足らざるところは止むを得ず外地食糧確保して参るということによりまして、少くとも一般家庭の消費配給基準量を確保して参るということに決心をいたして努力をいたしている次第であります。(拍手
  10. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 北勝太郎君。    〔北勝太郎君登壇拍手
  11. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 私は緑風会として極めて簡単に関係大臣に質疑を試みたいと存じます。  先ず第一に大蔵大臣に対しまして冷害対策予算について質したいのであります。昨日大臣がお述べになつたことく本年は実に異常な冷害であります。未だ曾つて冷害などということを経験したことのない暖地においてさえ、この頃になつて今更のようにこの冷害に驚いておる状態でありまして、古老たちも曾つて知らないという惨害をこうむつておるという状態であります。収穫期に近付くにつれまして、この被害地域は更に拡大されるものと予想されるのであります。この冷害を余ほど控え目に見ておられると思うところの農林当局も、未だ調査中で確定的数字とは言えないかという前提の下に、被害農家の総戸数が四十万戸、被害金額の総額は約千二百億見当と委員会で答えておるのであります。仮にこの数字を基礎といたしまして考えてみましても、これだけの大きな冷害の被害額に対しまして、今回提出された予算額は何と少額であることよと驚いた次第であります。一体どういう計数に基いて、どういう方法でこれを救おうとされるのであるか。先ほども大蔵大臣が答弁をしておられた中に、このほかに農業保険の金が百数十億あるとお答えになつておるのでありますが、併しこれは大蔵大臣すでに御承知のはずでありますが一農業保険の金は、これは全部農業手形の担保になつておるのであります。おおよそ凶作農家とは縁のない金なんだ。(「その通り」と呼ぶ者あり)凶作農家に返つて来ない金であります。又営農資金の貸付も、四十万戸の罹災農家に割付けてみましたならば、府県農家は二戸十五万円、北海道農家は二十万円、この基準からすれば全然辻褄が合わん数字なのです。又救農土木費のごときも、既定予算公共事業費、この節約額を差引きますと何ほども増額にならない。これは単なる名称の変更に過ぎないことになるのであります。具体的の一例で申上げてみまするならば、北海道の例でありますが、開発局の土木費の既定予算の節約額が一億七千万円、そうすると、今度の救農土木費で一億九千万円くれますから、差引くとあの大きな北海道に僅か二千万円しか来ない。こういう計算をしておる人があるのでありますが、とにかく既定経費の節約を差引きますと全くお話にならない数字である。結局これは形があつて実質のないものと言わなければならない。御承知のように、昔は、たとえ政府の救助の金額が少くあつても、こうした場合に農家みずからが備荒貯穀の制度があつたのでありますが、米の供出制度以来、備荒倉庫というものは全く空つぽなんです。又貧しいところの凶作農家には貯金の蓄積もありません。こういうときには昔は地主が助けてくれたのでありりすが、今は縋るところはただ政府あるのみ。かかるが故に、凶作農家は毎日のように町村役場や或いは地方事務所に押しかけて陳情をしておるのが今日の実相であります。農家の言い分を聞きますと、一年中一家総動員で政府に供出ずる米を作らされて、僅か一カ月分にも足らんような極めて僅少な金しか来んとするならば、農家は一年分の丁度賃金不払である。労働者が一年分の賃金不払を受けたのと同じ苦しみを受けるのでありまして、これでは農家に死を求めよと言われるのと同じ残酷さであるとも言つております。これに引替えまして、伝えられるところの官公吏のボーナスの増額問題、こういう問題とは実は桁が違う問題であるのであります。何はともあれ、農家のこの窮状を救つて、来年の営農を遺憾なく仕遂げさせるところの予算措置を講ずべきであると存じます。聞くところによれば、外米を非常に大きな額を輸入されるそうでありますが、或いは二千余万石とも新聞が報じておりましたが、これに支払う外貨は別として、輸入食糧補給金の増額だけでも恐らく百億円近く増加して支払わなければならないのでありまして、ここで農家の営農に支障を来たさすようなことがあるならば、来年も又これと同じことを繰返さなければならないということは火を見るよりも明らかである。これとかれとを思い合せますならば、営農に支障を来たすということは実に実に重大な問題であると思うのであります。大蔵大臣は農村救済について大いに考え直して頂かなければならんと思うのでありますが、果して如何でありますか。  次に、戸塚建設大臣に確かめておきたいことでありますが、先にも申上げました通り公共事業費の節減は凶作地方にも一律同様に行われるのでありま下るならば、救農土木に折角金を出ししもらつても、プラス・マイナス・ゼロに等しいことになると思うのでありますが、凶作地の公共事業費は果して削減をしないというように確約ができるのであるかどうか。これを一つ承わつてみたい。  次に保利農林大臣に伺いたい。私は農林委員として、関東、東北、北海道等、各地を視察したのでありますが、本年は春以来の気象異変による連続的の低温に災いされたものと思うのでありますが、その証左として、常温の低い、即ち常の温度の低い北方ほど災害が甚だしい。次に標高の高いところも又甚だしい。そうして又次には、太平洋の寒流が西に延びたために、その海洋的気象に支配されたところほど凶作の度合いが甚だしいのであります。これは誰が考えても同じように明らかに天災であります。併しながら、一方、見方によつては、これは天災じやない、人災だという人があるのであります。それは化学肥料の過用、化学肥料をやり過ぎる、或いは晩稲に偏した栽培、これらの災いであつて、早稲や温床苗代による中生などはとれておるところを見ますると、確かに人災である。さてその人災のよつて来たるところをよく探究してみますると、これは低米価のために農家経済が成り立たぬから少しでも多くとらなければならんということ、無理な供出の割当にも応じ、且つその上に超過供出をしなきやならん。そうしなければ自分の家計が成り立たん。これは国策にも副うし、自分のためにもいいというので、それが原因で肥料過用となり、収量の多いところの晩稲を作らざるを得なくなつたことは争えない事実であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)かく考えてみますると、この人災の元は政府の政策がそうさせたのであり、罪の張本人は政府である。ちよつと春風が吹くと桶屋が儲かるというような理屈になつたのでありますが、考えてみれば、政府の施策は食糧政策のみにとらわれ過ぎて、真の意味における農業指導も農業政策も欠けておる。これがために農民は常に食糧政策の犠牲の具に供せられておることは、日本農業のために誠に遺憾に堪えない。(「そこが一番大事なところだ」と呼ぶ者あり)農相は今回の凶作を教訓として、これを機会に従来の誤まれる農政に一大改革を加えるところの注意をなされておるかどうか。この点を質したい。  次に、北海道、東北の一部には、数年に一度は必ず凶作に見舞われるところの宿命的な所がある。これらの地帯の農家は、しばしば遭遇するところの凶作のために、その生活は実にみじめなもので、同じく農民の貧困ということはありますけれども、その程度に雲泥の差があるのであります、凶作によつて、農家経済の破綻は勿論、数年来営々努力して作り上げて来ましたところの農業協同組合のごときも一朝にして潰滅し去る恐ろしきであります。かかる常習的の冷害地帯に対しましては、米のみに偏せず、耕作反別の一部に、冷害の憂いの絶対にない作物、即ち牧草等を取入れさせて、これを集約的に耕作させ、そうして冷害に備えさすというようなことは、これを是非許してやるべきである。現に、東北の冷害の最只中において、最も集約的な方法で、本年反当五千貫のラデノウクロバーという飼料があるのでありますが、それを収穫した農家がある。これは反当七千貫までは大丈夫できるという自信があるという朗報さえあるのであります。こうなると反当りの収穫のカロリーは米の二倍にも達するそうでありますが、これによつて酪農を加味させるならば、主体である米が仮りに凶作に会つても、農家の経済弾力性が強くなつて凶作だといつて外部に憐れみを乞うがごときことがなくなることと固く私は信ずるのでありますけれども、酪農だけでなくて、そういうような地方の附近には国有林がたくさんあるところがある。現在も貸付けてあるそうでありますが、現在以上にもつと範囲を拡げて貸付けて、凶作のない林業との混同経営をさせて、悪気候によつて殆んど片輪にたりかけているところのこの地方の農業を矯正して、安定性のある農業に切換えさせる等の英断を以てこれを救わなければならんと思うのでありますが、農相にその意思ありやということであります。この項を繰返しますならば、一部田畑を切換えさせて冷害のない牧草等の耕作を許さるべきじやないか。勿論こんなものは禁止してないと言うに違いないのでありますが、供出制度の非常にやかましい今日においては、農家同士が決して牧草を作ることを許さない。米の反別が減れば自分のところが多くなるからであります。これは一つそういうことがないように許してやるべきであると思ます。それから国有林を払下げて林業との混同経営をさす考えはないか、この二項であります。御親切な御答弁を願いたいと思います。  最後に、米価の減収加算は一応尤もでありますが、冷害地の減収は更に深刻化するの傾向にあります。他面、一部の地帯では作況の良好なところもあり、凶作地の犠牲において一部の作況良好地帯が益するような結果になる。この不均衡を是正する点からも、冷害対策というものは一層努力すべきものと思うが、農相のお考えは如何であるか。この点であります。  次に、政府の冷害対策費は不十分であり、加吊るに、農林委員会の最近の実態調査によつて見ましても、十月五日現在の五千四百四十一万石の生産見込量というものは更に相当下廻るかと思うのでありますが、この場合には当然第二次補正をされるかと思うのでありますが、その時期はいつ頃であるか。そういうことをされる意思があるかどうか。これを一つ伺いたいと存ずるのであります。  以上でありますが御答弁を願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  12. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 北議員にお答え申上げます。政府は激甚なる災害地実情に鑑みまして、被害農家の救済のためには財政事情の許す限りできるだけの措置を講じて参つているのであります。即ち第一に、被害を受けられました農家にとつては何よりも先ず現金収入の機会をお与えすることが必要だと、こう考えますので、救農土木事業のために総計五十億円を計上いたしました。第二に、農業共済再保険金の概算払を迅速に行う措置をとる必要があると存じますので、この支払を円滑にするために、再保険金の不足金に充てるために一般会計から百三十億円を今度計上いたしました。第三に、営農資金百五十億円に対しまする利子補給の問題でありますが、この補助といたしまして約二億五千万円を計上いたします。その他、困窮農家に対しましては生活保護費として七億円を計上いたしまする等、冷害等の対策に必要な経費として今度の補正予算に七十億円を計上いたしている次第であります。  救農土木事業につきましては、冷害地実情に鑑みまして、すでに土地改良工事に着手しておりまする地域にはこれを促進いたしまして、道路工事の推進が適当だ、こう思われるところには道路工事費を支出し、その状況に応じて適当な土木事業費を計上させますると共に、適宜補助率の引上げを行いまして、なおそれでもカバーし得ざる地域に対しましては、極めて小規模で補助率の割合に高い臨時救農施設費を計上いたしまして、これですべての冷害地に十分とは申されませんが、あまねく現金収入の機会を与えて被害農家の救済措置を講じたいと、かようにまあ考えておる次第でございます。なお本年度産米の著しい不作によつて産米の減収量が一千万石を越えておりまするので、政府食糧政策の見地から、農林省のほうの御意向もあつて、明年度外米の輸入を相当増加しなければなりませんが、併し幸いに諸外国の豊作によりまして輸入価格は値下りの傾向にあり、補給金は必ずしも増加するとは考えておりません。又他面、災害復旧を促進し、再び災害を繰返さないために、財政の許す限り、災害復旧費、救農土木費等を計上いたしまして、今後の災害に備えることにいたし、これについては極力重点的に且つ効率的に工事を施行して参るよう措置いたしたいと考えておる次第でございます。(拍手、「答弁にならぬ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇拍手
  13. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げますが、既定経費の節約を冷害地にも均霑さした、誠に遺憾の点、御尤もでございますが、既定経費の節約は、すでに大蔵大臣からも説明がありましたように、万止むを得ざる財源の捻出のためにいたしたのでありまして、他の災害地も同様にいたしておるのでございます、ただこの節約の割当又は救農土木費の割当等につきましては、現地の実情に応じて、道内にもそれぞれの実情がありますから、そういう点を十分考慮いたしたいと、かように考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  14. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。  今年の冷害はお話のように誠に広汎に而も深刻な様相を呈しておりますわけでございますが、先ほども申しますように、八月十五日の作況調査によります手相収穫六千百万石が十月五日の五千四百四十万石というように激しい低下を示しておりますのは、冷害によります減収予想がおおよそ四百万石、それに十三号台風によりまする減収予想が百九十万石というような、この冷害と十三号台風によりまする減収が津定的なこういうふうな数字を予想せしめるようになつたわけであります。そこで、この冷害による減収の原因につきましては、北さん御承知のように、昭和九年の冷害のあと、各地の試験場におきまして、耐冷耐寒の品種を作り出すために非常な苦心を払つて来られた。今日におきましては、例えば青森の場長の作られております藤坂五号でありますとか或いは八甲田でありますとかいうような優秀な耐冷耐寒の而も早生多収の品種が作り出されておる。青森等におきましては相当に普及をいたし、今回の冷害に対しても相当の届力を発揮いたしておるわけであります。従いまして、一方におきましてはそういう品種の改良が行われ、又今日までいわゆる保温折衷苗代等の宣伝普及によりまして、そういうところが行届いております所は激甚ながらも相当助かつておることは、これはもう御承知の通りであるわけであります。従いまして、そういうことが万遍なく普及せられまして、そうしてやつておつたならば、幾らか今回の予想よりも軽減せられたであろうということは、もう何人も異存のないところであり、即ち現状におきましても、品種の改良或いほ経営の技術のやり方によつては相当軽減せられたであろうということは、何人もこれは認めるところであるわけであります。従いまして、今後といたしましても、今回の冷害を貴重な資料といたしまして、この研究を更に強力に推し進めて頂く。それから又営農技術につきましても、農家の強い理解を得てこれを普及して参るという特段の措置を講じて参りたい。そういうことで今回の予算にも所要の経費を計上いたしておるわけであります。なお東北地方の実際の農家経済の安定、周期的に見舞われるところの冷害に対して、むしろ作物転換等を図るという措置も必要ではないかという御意見でありますが、これは酪農の振興と併せまして睨みつつ十分御意見のような線に私どもも研究を進めて参りたいと考えておるわけでございます。  国有林の利用によりまする冷害対比につきましては、これはもう十分こういう際に国有林を最高度に利用いたしまして、そうして関係町村農家のためにこれを活用いたして参りたいということで研究を進めております。(拍手、「早くしなきや駄目だよ。」と呼ぶ者あり)    〔永井純一郎君登壇拍手
  15. 永井純一郎

    ○永井純一郎君 私は日本社会党の第二控室を代表いたしまして、総理大臣以下各関係大臣に質問をいたします。只今同僚の北さんから冷害関係につきまして御熱心なる御質疑がございました。私は先ず治山治水、風水害の対策についてお尋ねをして行きたい。かように存じます。  今日文字通り災害国となりました我が国におきましては、昔はよく災害は忘れた頃にやつて来るというふうに言つておりましたが、我が国では災害は毎年必ずやつて来るものとなつてしまつております。曾つては天災国という言葉中国の代名詞のようになつておりましたが、今日では逆転して日本がその代りを勤めるようなことになつたような次第であります。特に本年の九州、近畿一帯の大水害、それから東北、北陸方面の冷害の惨状は誠に目を蔽うものがありましたが、その応急の跡片付けも終らないうちに、特に風水害につきましては、台風期に入りましたため、再び恐ろしい風水禍が来ることを災害府県の住民はすべて予想をして、おちおち眠ることもできない実情でありましたが、その予想通り十三号台風はやつて参りまして、十分にそのように予測ができましても、御承知のごとく各河川は全く無防備の状態で、そのままに放置しておくよりほか仕方がなかつたという事実は、私は誠に重大であつて、私ども国会としては見逃すことのできないところであつたと考えます。而してこの十三号は再び国土を強襲して、各河川が再び非常な氾濫をしまして災害を倍加いたしたのは、皆さん方の御承知のところでございます。今次の風水害を意外の出来事のごとくに閣僚諸君の中でも特別委員会お答えなつた方がたくさんありましたが、併しこれは専門家が言つております通り、決して意外の出来事ではなく、科学的、専門的に見て、来たるべきものが当然来たに過ぎないと言つていることは、非常に注意を私は要するところであると考えます。考えてみますると、戦争中から終戦後の今日までの戦争経済軍備政策による治山治水に対する施策の不行届きの結果が、この結果をもたらしたことにほかならないと私は考えます。即ち昭和二十二年のカザリン台風からアイオン台風を初めといたしまして、大小の風水害は年々きまつて我が国土を襲つており、やがて本年のような重大な災害が来ることは専門家には十分にわかつていたところであります。然るに政府はその都度全く応急的な弥縫策をやつて来てそれで足れりとして、これを日本の重要な政治問題として取上げたことは一度もなかつたのであります。私は、国民から言うならば、この悪政の結果は次のごとく、二十三年度の災害復旧さえも未だ完了しておらず、二割以上も残つております。以来二十七年度までの分で、原形復旧災害復旧工事は約五割が過年度災害分として残つており、金額にして一千百億円にも達する厖大な過年度分がございます。而も年を追つてこの過年度分は急速に増加して行くことが十分に予想される今日の実情であります。ここにおいて、若し吉田内閣が、この食糧生産を初め、あらゆる産業経済の基盤をなす国土の保全を放置して、予算措置をも大蔵の事務当局等に任せきりにしておくというような無関心さを続けて行きまするならば、次の出水、その次の又出水と、災害が起るごとに、復旧よりも新たなる災害のほうが拡大して参りまして、遂に国土の荒廃は手の着けようのないところまで行くことは今日必定であります。同時に、その損害額は厖大となつて国民生活の窮乏がその極に達するに至ることも又火を見るよりも私は明らかであると考えます。例えば政府の発表した数字によつて見ても、全国直轄河川を初め中小河川の流域で、十分に河川の氾濫の被害を受ける虞れのある都市及び農村の総面積は実に三百万町歩に近いと発表をしており、その人口は優に二千万人以上の人がその危険の対象になると言つております。又終戦後今日まで、毎年平均して、水害の状況は、面積が五十万町歩、被害戸数が六十万戸、人口が約三百万人、被害額が三千億円と言われております。特に本年度の被害は厖大で、総被害額は七千億に達し、公共施設関係だけでも三千五百億円に達する厖大なる国家的損失を来たしている実情であります。ここにおきまして私は、今日、災害日本においては、治山治水の政策は、我が国今日の政治の中では最も基本的に最重要な政治問題であると考えます。端的に言つて、年年新らし起くりまする災害復旧工事が追い付けない、ごとき政治であつてよいのかということを私は総理大臣に言いたいのであります。このことは、具体的には、国家財政の中に占める応急復旧対策と、恒久災害防止対策とを併せた公共事業費がどの程度の割合を今後占めて行くかということになると思うのであります。ここにおきまして、私は先ず総理にお伺いをいたしまするが、総理は、私が今、以上大略の数字で示してもおわかりのごとく、災害対策治山治水対策というものは今日重大な段階に立ち至つておりますが、総理は、我が国政治の中でどのような比重を以てこれらのことを考えておるのか。即ち、今日の段階こそ、全く国民生活の安定か再軍備への方向かを文字通り決すべき政治的段階に到達していると私ども国民は考えております。財政の数字の上でも、もはやそのことが明らかに言える段階に来ておりまするが、総理の所信を私は聞きたい。国民は、総理は曾つて去年でありましたか、一昨年でありましたか、メニユーヒンとかいうヴアイオリン弾きの人が来て、それを夜聴きに行かれたようでありまして、新聞にそのことが出ましたが、丁度その時に街は共同募金の赤い羽が売られておつた時であります。ところが総理は、共同募金の赤い羽がなぜ市民の胸間に飾られるかを御存じなかつだ。ところが逆に農山村の人々は、メニユーヒンという言葉新聞の上で見て、台風が又やつて来ると思つたのです。総理国民との間には、このくらいの開きがございます。従つて私は、今日、国民は今日のこの大災害を、今日のこの困窮せる農山村の人々の生活を、吉田内閣が本当に日本の国の不幸として受取つておるかどうか、日本国民の不幸として受取つておるかどうかについて疑いを持つております。従つてここに私は、具体的に、一定の財政の規模の中において、軍事的経費治山治水災害対策等の経費との割合を如何なる程度に措置せんとするお考えであるか。二十九年度以降の予算についてで結構でございまするが、その割合をどういうふうにする考えであるかを明かにして頂きたい。若し総理みずからがその割合が頭にないようでありまするならば、その割合をも考えることができないようであるならば、今日の日本総理大臣としては勤まらない、かように私ども国民は考えます。  二番目に私は大蔵大臣にお伺いをいたしまするが、僅かに災害復旧費を三百億円に補正予算においてとどめたことは、断じて承服することはできません。あれだけ特別委員会で副総理大蔵大臣を呼んで(「討論じやないよ」と呼ぶ者あり)熱心にまじめに審議を重ねたにかかわらず、三百億円に災害復旧費をとどめたという不誠意に対して、断じて私は承服することができないことを申上げます。(拍手と而も原形復旧費のこれは一割五分そこそこであつて、真にただ驚くのほかはないが、今後それでは如何にこの今次の大風水害を措置せんとするのでありまするか。  そこで私は、先ず二十九年度以降災害復旧対策と防災対策としての積極的災害対策について、如何なる計画を有するかということを、先ず私は、建設、農林の両大臣に承わりたい。又その総計画に基く総所要経費はどのくらいを要するか。これも農林建設両大臣に承わりたい。特にその中で建設大臣は、過年度災害分を一体二十九年度からどう措置しようとするか、特にこの計画も併せて承わりたい。その中で特に私は砂防計画は誠に今日重大だと思います。砂防に対する行政機構等の強化等についても触れて頂きたいと考えます。而して、両大臣の回答を承わつてから、私はその財政的措置を、それでは政府は如何にせんとするのであるか、これを大蔵大臣に承わりたい。同時に二十九年度予算の規模はどのくらいであるかということを併せて伺う次第であります。  次には更に大蔵大臣に伺いますが、あなたは災害対策に金を出すとインフレになるということを盛んに言い触らしておる。これを理由として災害対策費削減の基礎とし、そうして財政演説の中でもそれらしきことを盛んに強調をいたされております。が、こんな肯けないインフレ論はないと考えるのであります。(拍手)今日すでにインフレの傾向があり、今後更にこれが顕著になろうとしておりまするが、これが第一の理由は、何と政府が強弁しようとも政府の独占資本擁護の政策から来ていることを知らなければなりません。(拍手)即ち政府は財界の要望に応えて独禁法の緩和等の法的措置を強行したが、この結果、これが貿易の不振と相待つて、繊維、肥料、鉄鋼等を初め、国内価格と輸出価格との間に大きな二重価格の傾向をますます深めて、国内価格を吊り上げたのであります。そうして又他面は、財政規模の中に大きな枠を占めるところの不生産経費の無謀な放出が、心理的にも非常に大きな影響を与えているのが現状であります。又、今次の風水害による食糧、木材、木炭等を初めとする物資の供給減少がその原因であると考えます。そこで災害対策費をインフレ促進の要因であるかのごとき説明は以てのほかと言うべきで、災害対策費は、これによつて食糧を初め農産物の生産を増大し、且つ道路橋梁の速急なる復興によつて食糧、木材、木炭等を初め諸物資の流通を円滑にすることによつて、インフレをむしろ防ぎこそすれ、決してその要因をなすものではありません。むしろ直ちに手を着けねばならないインフレ抑制策は、独占資本の独占価格維持のための人為的価格吊り上げと、二十七年度から繰越した約一千一百億に及ぶ防衛費、安全保障諸費、保安庁費等と、本年度のこれらの予算との合計約言千億に近い不生産経費の放出こそがインフレ論の対象にならなければならない。特にMSA受入れによつてますますこの傾向は著増するものと考えられるが、この点をこそ一体どう考え、どうこの点から考えてインフレ抑制のために措置せんとするか。この点を明確に伺わなければなりません。次には、なぜこの三千億にも近いところの軍事的経費に、この災害によつて困窮しているときに一切手を着けなかつたか。これは同僚江田君からもお尋ねがありましたが、はつきりしたお答えが得られておりません。防衛費、安全保障諸費、保安庁費、連合国財産補償費等、費目ごとにその理由を詳細に私は承わりたい。特に大蔵大臣は水害特別委員会で、安全保障費等から相当の額を捻出ずるというようなことを言つたことさえあるはずだ。私は費目ごとにそれに手を着けなかつた理由を承わりたい。而して又一面、これらの経費は、本年度繰越したものと二十八年度と合せて、本年度中に全部支出するつもりかどうかということを承わりたいのであります。それから又、国民が困窮しておる今日、災害対策費捻出に必要であるとして、その削減方を米政府当局に折衝したかどうか、折衝したとすればこれに対して米側は何と答えたかを明らかにされたいと思います。  次に農林大臣に伺います。十一月から始まる来米穀年度は、大風水害並びに東北、北陸地方の冷害によりまして、その供米確保見込は二千万石を割る危険性は十分にある。我が国の食糧事情は急激に悪化して来て、殆んど自信ある需給計画は立たない実情にあると考えられます。先ほどの答弁を伺つても実に抽象的でございまして、あの答弁でそうかと言つて満足するわけには行きません。そこで、外米の輸入のごときは今まで百万トンそこそこ、うつかりすると計画を下廻りておつたのに、一挙に百六十万トンのものが果して入荷できるのか。これを具体的に、こういう事情で、ビルマはこういう生産量で幾らの国内消費があつて幾らの輸出余力がある、タイはどうだと言つて具体的に承わりたい。又入荷の時期は、中間端境期、端境期等を考えて、どのように時期別に入荷するのか。而して又、価格、これは私は一挙に百六十万トンにもなれば、アジアの米産国に皆米価は政策的価格をとつておりますから、当然引上げらる危険が非常にあると私は思います。これらに対する対策、外貨手当、船腹等に亘つて、詳細に私は説明を承わらなければ、食生活について国民が安心をするというわけには行かぬと思います。あなたの抽象的な先ほどの御説明では今日の不安の状態を解消するわけには参りません。なお一面、今日のごとき政府災害対策であれば、過年度災害が次々に蚕なつて行くというような実情であれば、今後例年風水害等の災害は必ずやつて参りまして、食糧生産は常に危機にさらされると見なければなりません。従つて今日政府がやつているがごとき中途半端な食糧管理政策では、常に国民は食生活に不安を感じなければなりません。この際、政府は従来の政策を改めて、生産費を十分に償う適正な価格政策と共に、米麦澱粉等を通ずる計画的な食糧管理政策をとることに改めて、国民の食生活に安心感を持たせるべきだと私は考えまするが、保利農林大臣のお考えを、これは非常に今日重大だと思いまするから、考え方を承わりたいと考えます。或いは従来のように順次々々なし崩し的に自由販売の方向にやはり持つて行こうとされるのか、この分れ道であると私は考えすす。  次に通産大臣に、年末も近付いた瀞でもありまするので、中小企業対策についてお伺いをいたします。今日中小企業者は、大企業との下請関係或いけ取引関係におきまして、非常な圧迫か受けておりまするが、その上、政府のインフレ抑制策として、先ほど来、大蔵大臣が言われたような意味のインフレ抑制策が講ぜられますると、資金の回収なり或いは日銀金融の引締めなりが強行され、そのしわ寄せが結局一番下の中小企業者に加えられて来ることは、これはもう通産大臣よく御承知の通り必定でございます。その不況は仁末を控えてその極に達して来る。その営業休止、倒産というものが更に今日以上に私は増大して参ると考える。そこで中小企業者の問題は、もはや、私は今日単なる金融行政なり或いは金融措置なりだけの対象として済まさるべき段階をすでに越えて、まさに直接予算措置を伴うところの国の積極的対策が必要となつて来ておると考えますが、政府は何ら補正予算にもこれらの対策はございませんが、年末を控えての中小企業対策は如何に考えておられるか。詳細にこれは承りたいと考えます。  次に、先ほども江田君のほうから御質問があつたようでございまするが、明らかでないので、ダブるところを全部省きまして質問したいと思いまするが、人事院勧告仲裁裁定に伴う給与改訂、期末手当についてであります。昨今の家計費支出におけるエンゲル計数は、御難の通りぐんぐん日増しに上昇をし、著しい借入金増加の一途を辿つておる実情であります。年末を控えて、この際、政府は、これらの勧告、裁定に伴う給与改訂、期末手当をどうするかということについてお尋ねに対して、慎重に考慮をするというような答え方しか大蔵大臣ほしておりませんが、私どもが言うのは、更に突つ込んで、時期はいつやるのか。年末も差迫つておるわけでありまするから、いつやるのか。このことを改めてお尋ねをいたします。特にこれは自治庁長官にもこの点についてはお尋ねをいたします。  次に総理並びに外相にお伺いをい、しまするが、アジアにおける重要な問題でありまするところの、朝鮮の平曲的解決を目途とする朝鮮の政治会議又は四カ国外相会議等の開催等、今日平常に微妙にして重大な時期に際会をいたしまして、政府は先ほど来、同僚江田君から尋ねましたように、衆議院議員の池田という人を米国に特使と称して派遣をいたしました。それで国民はこれを新聞でただ聞いておるだけでございます。これは一体どういう資格で、どういう目的のために、どういう用務を帯びて行つたかということを、江田君からお尋ねになりましたのに対しまして、少しも要領を得ない総理お答えでありましたが、私は、総理の私的な特使として行かれたとしても、相当滞米期間が長い。そうしてその経費等も恐らく私は国費を使つてつておることと考えます。そうして滞米期間も今日相当長くなつてつて新聞ではいろいろなことを報道いたしておりまするので、私はここで、今日まで、米当局とこの池田君との間に折衝した問題、それから経過を、外務大臣からでよろしいから、中間報告をここにして頂きたいと考えます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これは当然国民要求するところであると考えます。それがたとえ私的な特使であろうと、総理の命を帯び、(「公的だ」と呼ぶ者あり)且つ国費を以て行つておる以上、私はこの国会において、今日までの問題点と経過外務大臣より報告されることを要求いたします。  なお、さきに、これに先立ちまして、ダレス国務長官、ノーランドという米国の上院議員等が来日をして、総理並びに外務大臣会談をして行つたということであるが、如何なる事項について話合いをしたかを、ここに併せて伺います。  次に、外相にお伺いを申しますが、漁業問題を中心に、日韓会談、日濠会談等、いずれも非常な不調であつて、誠に遺憾であります。これらの会談の様子を見ていると、非常に事務的に失しているのではないかという危惧の念を国民が抱いております。日韓会談の決裂の模様のごときは、まるで子供の喧嘩のようなものであります。アジアの諸国と日本との間にいざこざの絶えないことを却つて喜んでおる国もあるといろ風説さえあるときでありまするし、又特に反動独裁の感の深い李承晩政府との折衝のごときは、この政府の取扱のごときは、もつとずつと政治的な、或いはもつと高度な態度交渉の仕方があると私は考えます。あげ足とりの事務折衝で決裂したからといつて、直ぐ実力行使などと天声を発するのは、愚の骨頂と言わなければなりません。実力行使、報復等の強硬手段を考慮中と伝えられておるが、政府の真意を重ねてここに質したいと思います。なお、この船員と船舶の拿捕抑留の問題並びに朝鮮近海に対する漁業者の出漁の問題は、これは外務大臣が御承知の通り、一日もゆるがせにできない漁業者にとつては重大な生活の問題であります。従つてこの際は、外相なり総理なりと李会談とによつて、政治的解決を図らんとすることも一つの方法であると考えますが、そういう考えはないかということを私は伺いたい。そのようなことによつて一日も早く私はこれを解決しなければならん、このように考えるのであります。  又アラフラ海における真珠貝採取にからむ日濠間の紛争も、およそ過失一年間にわたつて話合いを焼けて来たのに、去る八月でありましたか、遂に不調に終つておりまするが、両者の主張の相違点並びに今後の対策を示して頂きたいと思います。  なお最後に、濠洲にしても、韓国にしても、その主張の中で、日米加漁業条約で、漁族の保存の名目で、公海自由の原則の制限を日本はすでに認めてます。この点は当時すでに私どもが心配をして指摘して来たところでございますが、私どもは先ずこの日米加漁業条約改訂を加える必要がありはしないかと考えるが、政府態度を伺いたいと思います。  最後に一言聞きたいと思いますが、吉田首相は、重光改進党総裁との会談において、保安庁法改正して外敵にも当る自衛隊とすること、並びにアメリカ駐留軍の漸減に対してこの自衛隊を増強する方針をきめて発表いたしました。これは完全な国会軽視ではないか。又これは明らかに憲法無視であるとも考えられますが、如何に考えておられるか。又MSA第五百十一条(a)項の六項目の協定を締結すれば、義務として防衛増強約束されることは明らかではないか。一体、防衛問題のごとき、国民にとつての基本問題にして、而も憲法に直接関連する重大な事項を、政府が一定の所信と計画について、先ず国会を通じて国民に明らかにすることもなく、却つて外国政府と相談をいたしまして……
  16. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 永井君、時間が来ました。
  17. 永井純一郎

    ○永井純一郎君(続)その結果を国民に押付けようとしているとしか考えられない。我々はかかる我が国の死的問題をいやしくも外国から押し付けられることには絶対反対をいたすものであります。(拍手従つてMSAによつて初めて日本の防衛問題が起つて来たというごとき態度をとつて、再軍備の……
  18. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 永井君。
  19. 永井純一郎

    ○永井純一郎君(続)責任を外国に……
  20. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 永井君。
  21. 永井純一郎

    ○永井純一郎君(続)転嫁しようとしていると見なければなりません。吉田隷属外交の真骨頂と言わねばならん。
  22. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 発言を停止いたします。永井君、発言を停止いたします。    〔永井純一郎君「若しそれ、総理が今まで国会で言い通して来た再軍備はやらないという主張を飜えして、新らしい防衛問題に対する基本方針が生れたのであれば、先ずその方針と計画とを国会にこそ堂堂と示すべきである。総理の所信を伺いたいと思います。」と述ぶ〕    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  今年度の災害は誠に近年稀な災害で、その原因は、結局多年にわたる治山治水を怠つておつたというか、或いは治山治水に力を注ぐだけ余裕がなかつたために、国土が荒廃し、遂にかく毎年災害を受くるいうことになつたことは、御指摘の通りであります。故に政府としては、その年々の災害に対する応急対策以外に、恒久的対策を講ずる必要を考えまして、治山治水対策協議会なるものを内閣に置きまして、恒久対策を今現に研究いたしております。その成案ができましたならば、結局予算措置を講じて議会の協賛を経る考えでおりますが、決して政府としては恒久的施策を怠つているわけではなく、特にこの問題に重点を置いて対策協議会を作つているような次第であります。  又、池田特使についてのお尋ねがありましたが、これは先ほど私が説明いたしました通り、私の特使として、日本事情説明し、アメリカ事情も研究して、そうして将来の日本の国策に資したいという考えから派遣いたしたのであります。これは私の個人代表というような資格で出したのでありまして、従つて国費は使つておりません。又、如何なる話があつたかということは、これは私的特使でありますから、私はここに発表することはいたしません。  その他は外務大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  24. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 永井議員の御質問、われわれの点に亘つてつたのでありますので、或いは順序が多少違つているかも知れませんが、一応お答え申上げます。  二十九年度の予算はどういうふうな方針で編成するかというようなお話でございましだが、これは実はいろいろ困難な問題も横たわつているので、実は率直に申上げて相当苦慮いたしている次第であります。  なお、今度の災害の激甚である点等に鑑みまして、復旧対策等に関連して、根本的な治山治水対策が入用だということはお示しの通りでございますので、政府にも先に治山治水対策協議会ができておりまして、各省で立案しました素案がそれぞれ出そろつておりますから、目下総合的な見地から検量を加えております。それをどう予算化するか等につきまして今後の問題に相成つているのでございますが、災害対策費につきましては、一応只今のところ、今後多少数字の異同を生ずるかとも考えまするが、只今のところ、政府で補助すべき額千五百六十五億と査定いたしているのであります、従いまして、これを本年度そのうち三百億を計上したような次第でございまするが、あと引続きできるだけ財政措置の許す範囲で、できるだけ早くこれを処理いたしたいと考えております。お話の点では、災害対策費を出すのは何らインフレにならんというお話でございましたが、私どもは、財源のないものを無理に出しますことは、延いてインフレ要因をなすものである。それで物価騰貴その他を来たして、それで却つてこの災害対策の効果を失わすようなことがあつては相成らんので、財政の関連を強く考えている次第でございます。  それから更に、財源としまして安全保障諸費云々というお話がありましたが、これは私は、安全保障諸費等についても検討するということを申述べたように記憶いたしておりますが、実は安全保障諸費は、これをその後調査いたしましたところ、五百六十億円二十七年度から繰越しまして、それが本年九月末までに三百四十三億円を支出し、更に残額中百三十六億円は使用が決定いたしておりますので、八十一億円だけが残つております。それで、この点につきましては、或いは追加の移転計画などがあるかとも考えられますので、目下米軍側と折衝いたしております。若しそういうことがなくて、これが使用し得るということがはつきりとなりますれば、これは一つ財源といたしまして使用いたしたい所存でございます。  それから本年度の防衛支出金、或いは安全保障……そういうような同じような意味のお話がございましたが、実はこの安全保障費も、保障条約に基く関係でございますので、これは日本が分担することについては私が申上げるまでもないことと存ずるのであります。それから保安庁の経費で繰越されておる分もございますけれども、これはどうも日本の平和と秩序を維持して、人命財産を保護する、こういうことのためには必要な点ではないかと考えておるのであります。  それからさつきお答え申上げたと存じまするが、人事院の勧告及びその裁定等の問題につきましてお話がございました。この点は、私どもこれを尊重することは十分尊重いたしたいと考えておりますが。目下これらにつきましては、財源その他の問題もございまするので、検討中であるということをお答え申上げておきます。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  25. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えをいたしますが、外米輸入の百六十万トンの計画の内訳を発表したらどうかということでございますけれども、これは取引関係もございますし、微妙な影響を与えますから、一応の計画は無論持つて、着々と手を打つておりますわけでございます。決して架空の計画でないということだけを御了承願いたいと思つています。但し一言申上げますのは、今年は朝鮮、韓国等も相当豊作である、韓国等の余裕米も入れる計画をしておるのではないかという、計画の中に入つておるのではないかという或いは御想像があろうかと存じますけれども、百六十万トンの計画の中には韓国の米は一つも入つていない、そういう計画を立てておることを御了承願いたい。  この災害復旧につきましての農林省関係の分につきましては、過年度災害として残つておりますのは、農地で二百六十億、その他合せまして約三百億弱になつております。これは二十八年度の災害復旧予算が百五十八億計上せられて、今施行いたしておるわけです。こういう点も考え合せまして、できるだけ速かにやつて行くようにいたしたいと考えております。今年度の相次ぎます災害中、やはり農林省所管といたしましては、農地の復旧が何と申しましても第一でございます。無論これは一遍にできますれば申すことはございませんけれども、私といたしましては、どうしても、例外は無論ございましようけれども、農家の経済を保つて行く上からいたしましても、又我が国の食糧事情から鑑みましても、来年の植付に何とか応急的に間に合うような工事は、これはどうしてもやらなければならん。従つてそういう点に重点的に使つて参りたい。こういう考えを持つておるのであります。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇拍手
  26. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答えを申上げます。  過去の治水対策等が不十分であつた結果、災害が相次ぐということ、従つてそれがために政府は、特に恒久策を講ずる必要を感じて、今、治山治水協議会を設けておるということは、先ほど総理から御答弁のあつた通りであります。私も誠に財政上遺憾なことではあつたけれども、過去のやり方が不十分であつたということは、これは認めざるを得ないと考えております。  それから当年度の災害のことでありますが、これは私どもに、建設省に受付けた報告では、事業分量として千三百億に達しておりまするが、これはまだ査定が十分進んでもおりませす、従つて今明確にこの金額を申上げるわけには参りません。なお恒久策を講ずる上に、過年度の災害費をどういうふうに扱う考えであるかというお尋ねでございました。私は、これは極端に言うといけませんが、過年度災害というものをだんだん残しておつたということが、災害対策の大きな癌ではなかつたかというふうに考えております。従つて、勿論この金額も或いは相当の査定をすると申しますか、再調査をすると言いますか、そういうふうな必要も一面に感じますけれども、とにかくこの過年度災害というものを早く処理してしまうということが最も大切ではないかというふうに考えておる次第でありすす。(「まだできていないじやないか」と呼ぶ者あり)従つて、来年度以降の恒久対策にも自然相当の金を要しまするし、又本年度の災害復旧ということにも大きな金額を要しまするし、ここに又過年度災害も本年度に行う復旧のほかに来年度に残るものが事業分量として約七、八百億ほどもあるのでありまして、これらを総合すれば、先ほど江田さんからもお話がありましたが、相当に大きな額になるのでありまするから、これを按配することはなかなか困難なことであると思いまするが、これはとくと研究をいたしまして、殊に先ほどもお話がありましたように、この治水の対策ということは政府としても最も重点をおいて考えておるところでありまするので、何とかこの辺をうまく処理して参りたいと、かように考えます。(「できてなければ吉田内閣はやめて下さい」と呼ぶ者あり)  なお、砂防計画でありまするが、これが私は、過去において不十分な点があつたと言えば、そのうちの最も大きなものであつたのではないかというふうにも考えます。従つて、今後の恒久対策には砂防計画に最も重点をおいて参りたい。植林と共に砂防計画に最も重点をおいて行くことが治山治水の恒久策として極めて重要なことではないかと、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣岡野清豪君登壇拍手
  27. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。  在来の中小企業界の状態から判断いたしますと、経済界の変化によりまして中小企業がその経営上或る程度の影響を受けるのは、これはどうも今までの情勢上否定し得ないところであります。政府といたしましては、このために中小企業協同組合法及び中小企業安定法の適切な運用と、有効な中小企業金融対策の実施によりまして、極力これが軽減に努力をしておる次第でございます。特に金融対策といたしまして、前国会で成立いたしました中小企業金融公庫は、九月中旬に発足いたしましてからすでにその融資体制の整備を完了いたしました。目下その機能の全幅的活用に努力中でございます。従来融資面が設備費融資だけに限定されておりましたのを、今回は改めまして、特定の長期運転資金の融資にまで拡大することも準備いたしております。(「それは雀の涙ほどだ」と呼ぶ者あり)それから商工中金につきましても、九月末その自己資本の強化充実を行いましたので、一層の活動が期待せられておりますわけでございます。今後政府預託金の引揚げにつきましても、日銀の高率適用の強化などの措置の影響も十分注意しながら、これが緩和に努め、できるだけ必要な資金重の確保を図りたいと存じておる次第でございます。なお、先般成立いたしました信用保険制度の強化拡充施策も漸くその実効を上げて来ておりますし、将来ますますその効果を発揮してもらいたいと存じております。又、先国会で議員提案によりまして成立しました水害対策としての融資促進立法についても、その実効のある運用を期し、なお併せて今回国会に、法律改正によりまして十三号台風被害への適用の拡大も提案してございますので、資金量の確保と相待つて、年末金融をも含め金融難の緩和に資するものと私えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎君登壇拍手
  28. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げます。  地方公務員の給与につきましては、どこまでも国の公務員の給与との権衡をとつて絶えず処置をいたしたいと考えております。地方公務員法の趣旨もそのようになつておると存じますので、従つて国の措置が決定いたしまして、それに伴つて措置を必要とする場合には、そのような措置を地方財政計画の上にもとつて参りたいと、こういうように考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  29. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 日韓会談につきまして、子供の喧嘩のようじやないかというお話でありますが、我々は決裂させるつもりはなかつたのでありまして、韓国側態度は或いは子供のようだつたかも知れません。併し我々は飽くまでも平和的に解決するつもりでおりますが、今お話のような抑留漁夫だとか或いは今後の出漁ということは、非常に日本にとつても重要な問題でありますから、これにとつての必要な措置は講じなければならん場合もあろうかと私えております。  濠州と日本との間の交渉のおきましては、濠州側は、極く概略を申しますと、海を二つに分けて、これが濠州の海、こちらが日本の海というような考え方でいるようでありまして、我々のほうは飽くまでも公海は自由にしなければならんという主張であるのであります。  日米加漁業協定につきましては、これは魚族の保護のためには適当な措置だと考えておりますので、これを変更する意向はないのであります。  池田特使のことにつきましては総理からお答え通りであります。(拍手)     —————————————
  30. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 寺本広作君。    〔寺本広作君登壇拍手
  31. 寺本廣作

    ○寺本広作君 私は改進党を代表いたしまして、只今議題となつております昭和二十八年度補正予算関連し、二、三の点につきまして政府の所見を質したいと思います。  去る六月、西日本を襲いました大水害が発生して以来、すでに四カ月の日子を経過いたしております。災害を受けました現地では、もはや政府から放出されたつなぎ融資を使い果し、復旧工事の進捗度合は漸く停頓し、被災者一同は補正予算の成立が一日も早からんことを望んでいる状況でございます。それにもかかわりませず、臨時国会の開会が今日まで延引して来ましたことは、一面相次ぐ風水害によつて政府が忙殺されていた結果によるものとは申しながら、他面又これらの風水害に対処するために制定されました二十四の議員立法の施行について、内閣が必ずしも積極的でなかつたためではないかということを私は懸念するのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)憲法の規定に待つまでもなく、内閣は行政権の行使について国会に対して責任を負うものであります。たとえ実施上の困難があるにいたしましても、一旦超党派的立場に立つて法律として制定せられました以上、行政府におかれましては、今後かような法律の実施について、更に一層の積極性を発揮されるよう希望すると共に、終始この問題に関連して来られました緒方総理の御所信を改めてお伺いしたいと思います。  次に、本年度災害の被害総額を政府がどういうふうな方法で把握されて来られたかについてお伺いしたいと思います。西日本水害が起りました当時は、政府はこれを関東大震災にも比すべき稀有の大災害であると言われました。その被害報告は総額一千四百億と言われ、委員会において大蔵当局はこれを大略一千億と踏んで、水害特別立法を適用した国庫の負担額を八百七十億という見当をつけていると言明されたのであります。その後、八月水害があり、十三号台風に会い、被害報告は累計二千七百億に達すると言われ、委員会において大蔵当局はこれを二千十億と踏んで、同じく特別立法適用の国庫負担額を千七百九十九億と見込んでいると言明されたのであります。然るにこの補正予算においては、右の千七百九十九億が千五百六十五億に圧縮されているのでございます。これにつきましては然るべき理由の説明がそれぞれの委員会において行われることと思いますが、今次の災害に当つて被害総額の把握方法は各省まちまちであり、而も把握された被害額について各省と大蔵省との間には大きな開きがあつたのでございます。極端な事例としては、大蔵省の把握された被害額が各省の把握されたものの半額といろ事例すらあるのであります、もとより短期間の間に多くの場所について行われる被害査定のことでありますので、多大なくないのでありまするが、一旦査定が済みますれば、それが何省の査定であるとを問わず、現地の被災者はこれを国の権威ある査定と思い込みやすいのでございます。これが最終的な査定によつて更に半減されるということになれば、事が客観的にきまる事実に関係するものでありますだけに、国の行政機関に対する国民の信頼感の問題ともなろうかと思うのでございます。大蔵大臣は今年度災害の総額を最終的にはどのような方法で把握されたか。将来被害総額の把握について国の行政各部の間における食い違いの是正について、何らかの具体案をお持ちになつているかどうかお伺いしたいと思うのでございます。  次に、災害復旧工事の年度別事業量についてお伺いしたいと思います。只今ここに提案されております風水害復旧費三百余億の予算を以て、政府は被害の何割を本年度において復旧しようとされるのでありますか。前にも申しました通り、西日本水害発生当時、政府はその被害は関東大震災のそれにも比すべきものであり、かかる被害を再び繰り返さぬためにも、これが復旧工事は従来のごとく長年月に亘ることを避けるべきであるという意見を表明されております。その後、風水害等による被害金額の累積に伴い、政府態度は漸次変化し、財政の面から従来の三・五・二の割合による復旧率を動かすことは不可能であるとの説明が行われましたが、今ここに提案されている補正予算によれば、初年度工事量は平常の場合における従来の事例より更に下廻つて二割になつているようであります。もとより水害特別立法が復旧工事の年度別事業量について何ら触れるところがなかつたのは、法律の盲点であつたことを認めなければなりません。併しながら異常災害による異常被害の回復を促進したいという趣旨の下に制定されました特別立法に対し、初年度三割という平常の場合における工事量すら達成できぬ予算が提案されましたことは、法の盲点を突くことによつて、まさにパンを求める者に対し石を与えるものであると申さざるを得ないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)委員会における政府当局の説明によれば、過年度災害で現在なお復旧していない工事の事業量は総額千七百億に達するということであります。本年度発生災害に対する国庫負担の総額が、政府説明通り千五百六十五億にとどまるものといたしましても、初年度僅かに三百億、残りの一千二百六十五億が過年度災害として、今日まで累積しているものに更に累加されて行くものといたしますれば、明年度以降におきまする過年度災害は実に厖大な金額に上り、少量少額の工事が多年に亘り多数の箇所に分けて分散して継続されることになりますれば、資金の効率的な使用が妨げられることは申すまでもありません。他面又、災害の体験の生々しい間に集中的に復旧工事をやつてこそ、関係地方の自主的な復興意欲を盛り上げることもできようかと思われるのであります。政府は本年度の異常災害復旧予算を飴のごとく引延ばして明年度以降に持込む代りに、たとえ当初の意気込みほどのごとく、二カ年完成乃至は四・四・二の割合には達せずとも、せめて三・五・二と言いならわされた従来の率による初年度三割まで工事量を増加するため、何らかの措置をとられる用意はないかどうか。この点について小笠原大蔵大臣の御所見を承おりたいと存じます。  最後に、我が国の経済慎勢がインフレ的な傾向を示し、我が国の商品が割高であるため輸出が減退し、自立経済の達成が著るしく困難となりつつある現状については、私どもも大蔵大臣と認識を同じうし、インフレ的な傾向を抑制し、通貨価値の維持に努力することの必要性を痛感するものでございます。併しながら、我が国の商品価格が国際的に割高であるのは、朝鮮動乱ブーム以来、国民経済計画性が放棄せられ、自由放任となり、企業の近代化が立ち遅れ、生産コストが割高であるためにもたらされた結果にほかならんと私どもは信ずるのであります。(拍手)自立経済達成のために必要な経済計画に手を染めることなくして、ただ今次のごとき異常災害に当つて、なお財政規模の圧縮にこれ努めるがごときは、最も救援を必要とする弱き者の犠牲において、(拍手)更にその犠牲を強うることによつて我が国通貨価値の安定を図らんとする政策にほかならんのではないかと思うのであります。(拍手)本年度は米の供出量の減少に伴つて、撒布される資金もそれだけ減少するはずであります。災害復旧のため本年度支出される財政支出に対しては、やがて来年度以降米麦生産となつて物の裏付ができるはずであります。異常の事態に対しては異常の決意が必要であります。私は、政府が、自立経済達成のためには、それに必要な本然の施策を打立てられると共に、本年度災害が近世稀に見る異常な災害であることの認識を新たにせられまして、これに応ずる財政施策を講ぜられんことを希望して、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  32. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。政府臨時国会召集を遅らしたのは災害の対策についての熱意を失つたためではないかという御質問でありまするが、それは事実でございません。政府といたしましては、相次ぐ災害に対しまして、如何にこの災害復旧を早く国民の満足するようにやりとげようかということについて終始苦慮して参つたのであります。この予算編成の基礎をなしまする議員立法に基く政令の公布が遅れましたことは只今御指摘の通りでありまするが、(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)これも怠慢或いは熱意を欠いたためではなくて、実は(「無能のせいだ」と呼ぶ者あり)議員立法の趣旨をできるだけ尊重いたしまして政令を作りたいと考えまして、国会との間に意見の交換を行なつたのでありまするが、その間に多少の考え方の違いがありまして、その調整に時間をとつたことも事実でありまするけれども、これも国会政府共にこの災害対策に熱意があつた結果でありまして、決して冷淡であつたためではないのであります。(拍手)その結果といたしまして、臨時国会は成るほど遅れました。その間におきまして政府としては、乏しい財源の中から、甚だ不十分ではありまするが、つなぎ融資を以て多少とも工事の進捗に支障を少くするように努めて参つたのでありまして、昨日十三府県に亘りまして九億五千万円の融資を出したような次第であります。  以上御了承をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  33. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。  この災害対策費の査定につきましては、各省からの報告を基礎といたしまして、過去三カ年間の工種別、つまり工事の種類別平均査定率によつておる次第であります。なお千八百億円の差はどういうことであるかというお話でありまするが、この千八百億円と申しましたのは、当時の概数を申上げましたので、その後、公共事業以外の文教厚生関係の物的設備の災害等を調べましたところが、そういうことで約百五十億円を、これは実地調査の結果減少いたしました。公共事業につきましては、只今申しました工種別の査定をいたしましたところ、査定額が約七十三億円の減少を来たしました。それから高率補助の適用地域の検討が、その後御承知の例の政令の関係等で、あれは全部適用されるべきものと見ておりましたのが減少いたしましたのが約二十四億、こういう次第でありまして、只今申上げました通り千七百九十九億が千五百余億になつた次第であります。なお復旧の問題につきましては、政府財源の許す限りできるだけのことはいたしたいと考えて、ああいうふうに計上しておるのでございますが、併し重点的にいろいろなものをやつて頂く。特に河川とか海岸のいわゆる堤防破壊等で、次の再び災害が起るというような懸念のあるもの等につきましては、これは又別途いろいろ措置をすることについてのことも個々について考えておる次第であります。  なお日本経済の自立達成のために只今通貨価値維持についてのお話がございまして、私どもも全く感を同じうする次第でございます。お説の通りに、これは産業の合理化、近代化等を行なつて、コストの引下で貿易の伸長等を図る、このことの必要なことは申すまでもございませんが、何と申しましても、今日多少ともインフレ的傾向にあり、それが懸念される際に、経済の基調をなす財政の方面の健全化、これが何よりも必要でありますので、私どもはその見地からすべての資金の配分をいたしておる次第でありまするので、この点御了承を願いたいと存じます。(拍手)     —————————————
  34. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  35. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 本日の質問の最後に、無所属クラブを代表して政府意見を伺いたいと思うのでありますが、現在災害対策の問題と、そうしてインフレの問題とは、実に深刻なジレンマをなしております。これは一昨日の毎日新聞の社説でそのことを指摘していますが、災害に悩んでおられる民衆の悲惨な状況というものは、一刻も放置することは許されない。それは中には多少の水増しとか、或いは新聞が指摘されるような議員の選挙対策とか、或いはそれぞれの党派の立場というものもありましよう。ありましようが、併し実際住むに家なく、食べるに食なく、明日の生活をどうするかという国民を放つておくということはできない。ですから、本日も各党の代表演説を伺つても、実際この災害対策というものをどうするのだ。放つておくことはできないじやないか。ところが、それをやればまさに日本経済の破滅を来たそうとしておるようなインフレの怒濤が一遍に押寄せて来るだろう。ですから議席におつて農林大臣は退席をされたようですが、顔を拝見していても、東北で葬式行列は今日で終るかと思つたところを又ぞろ立ち枯れておる畑を見せられた、彼の顔には、それが今でも目に浮ぶでしようし、大蔵大臣としては実際日本経済根本的に破壊してしまうようなインフレが起つたならばどうするのか。これは私は、言論機関も挙げてこのジレンマを指摘しておるし、我々の国会自体もこのジレンマを一体どう解決するのか。これは一番大きな問題じやないかと思うのです。私は現在、政府に向つて第一に伺いたいことは、実際、大蔵大臣は果して今のようなやり方でインフレを阻止するという確信がおありになるだろうかどうだろうか。これは他面においては、現在のようなやり方をやつて、そうしてインフレが起つてしまうということになれば、あらゆる今の政府の対策というものは効力を失してしまうだろう。けれども、実際その確信がおありになるのか。事実、国民の罹災の現状というものを放つておくということはできない。併しインフレは防がなければならない。私はこのジレンマというものの根源を政府に十分考えて頂く必要があるのではないか。私はこの根源は、言うまでもなく日本が現在国力に相応しないところの防衛というものを強制されておることにあると断定せざるを得ないと思います。これは総理大臣も、前から、日本は国力に相応しないような防衛力というものは持つべきでないということをしばしば議会を通じて内外に表明せられていたのですが、ところが最近の情勢になつて来ますと、個人としての特使とおつしやるのですが、併しこれは総理大臣の特使であるのか。或いはそれに大蔵政務次官が国費を以てついて行つておられるのではないか。この点も、日本に向つてよりもアメリカに向つて、あれは私の個人の使いに過ぎないのだということをおつしやつて頂くことが必要だと思いますが、それにしても、総理大臣御自身が日本の国力には無理ではないかと思われるような防衛をして行くのではないか。これが私はインフレの根本原因であろうと思う。そうして何と言つたつて、防衛費のような不生産的な支出、それが而も国民の血税の過大の部分を占めて来るということで、インフレを防ぐことは、大蔵大臣として確信を以てそういうことはないとお考えになれるのかどうか。私はその点について、大蔵大臣が、どうか国民の前にはつきり、これは全く国民を守る立場において、そうして又アメリカに向つて日本の立場を守る上から、大蔵大臣はつきりここで言つて頂きたい。そうして又総理大臣としても、この災害対策とインフレとのジレンマというものを総理大臣はどういうふうに政治的に解決をなさるおつもりであるのか。私はこれが第一の伺いたい問題です。  第二に伺いたいのは、アメリカが現在ヨーロッパにおいても東洋においても孤立しておるという問題です。これは昨晩の朝日新聞の夕刊でしたかも、ロイテル電報によつて、ロンドンのタイムズが、ノーランドという人は国際連合に対する裏切者であるということを言つておるのです。これはほかでもない、タイムスが、而もノーランドに向つてこういうことを言うというのは、ヨーロッパにおいてアメリカが全く孤立して来たということを示しておる。西ドイツにおいてアデナウアーが選挙に勝たれたということを、ヨーロッパの政治家は、藁をつかむ者は溺れようとしている者だという言葉で批評しております。アメリカがヨーロッパでつかむべき政治家はアデナウアーではないのです。チャーチルでしよう。或いはフランスのマンデル・フランスというような人でしよう。ところが、そういう人をキヤツチすることができないで、アデナウアーという人をキヤツチしておる。パラドキシカルに言えば、藁をつかむ者は溺れようとしている人だ。東洋においても、アメリカは御承知のように、隣邦の政治家を侮辱することはできませんから、お名前は申上げませんが、今までなさつて来たアメリカのアジア政策というものは、失敗に次ぐに失敗を以て来ております。そうして、その最後につかもうとしているものは、国民の大多数がその貴重な投票を以て全生命と財産との信頼を置いている吉田首相であります。私はヨーロツパにおりましたときに、ブラジルの平和運動の指導者のゼネラル・パツクスバウムという人と親しくなつた。このかたが寝るときにも靴を穿いて寝られるのです。今日は見えませんが、犬養法相が、二、三日前に検事を集められて、日本は明日にも革命が起るようなお話をなすつた。で、あのかたも、犬養法相も、又、夜は靴を穿いておやすみになるのでしよう。この木村さんも、恐らく、夜、靴を穿いておやすみになることだろうと思うのですが、このバツクスバウムという人は、私は夜一緒に寝て驚いたのですが、靴を穿いて寝る。つまり現役の陸軍大将、このかたがブラジルの平和運動の最高指導者となつて活動をしておられる。私は、「どういうわけであなたのようなかたが平和運動に献身しておられるか。日本人では、なかなか吉田首相が平和運動の先頭に立たれるというわけに行かないのだが、ブラジルではどういうわけでそういうふうに行つておるか」と伺つたところが、「いや、実はブラジルの現役の陸軍大将としてブラジルの青年の生命を預かつている。ところが最近アメリカとブラジルとの軍事協定の結果、ブラジルの最高の陸軍大将である自分が、アメリカから見れば大尉か中尉くらいになつてしまう。そうして制限された発言権を以て、どうしてブラジルの青年の生命を守り、又ブラジルの国民を守ることができようか。従つて自分は今日となつては、このアメリカとブラジルとの軍事協定には絶対反対だ。又そういうものを必要とするような国際間の緊張の激化にはあくまで反対しなければならない。」……官本でも、すでにこの七百幾つかの軍事基地を合せれば四国一国に当るというのです。四国は自由党の名誉ある先輩であるところの板垣退助の発祥の地である。吉田首相の選挙区も四国にある。これを殆んどアメリカに任せて顧みないということを自覚せられるならば、私は吉田首相も、この際におのずから新たな見地に立たれた日本独立の政策というものをお持ちになるべきはないか。  現在の災害対策とインフレとのジレンマというものは、要するに、日本に、日本経済再建の独立の政策がないからです。日本の防衛の問題についてさえも日本の判断によつてこれを決定することはできない。今日の読売新聞にも書いてありますように、MSA援助というものは在日米軍調達本部がそれを使うのであつて日本政府の自由にはならない。これは何も日本政府の自由にならないような国を吉田首相がお作りになつて行くということは、御本旨でもないだろうと思う。  第三に伺つておかなければならないことは、これは外相及び総理から是非親切なお答えを頂きたいのですが、最近、日本国民の一部が、中国或いはソヴイエト同盟の好意によつて日本に帰つて来られようとしておられる。この方々に対して、今まで日本の民間の関係は好転しつつあるのですが、政府が、外務省が、或いは外務大臣、或いは総理大臣が、これらに対して全く知らん顔をしておられるということは、私は国際的に恥かしいことではないかと思うのです。城府、或いは殊に総理大臣は、こういう問題について、自分は知らんことだというふうに総理大臣としてはおつしやれまい。而も今回外相は旅行して苦労をなすつたそうですが、日本の国策の根本が樹立していないで外交上効果を挙げることはむずかしい。私は、サンフランシスコ条約以後、各国とそれぞれ単独条約を結ぶべきものは、政府が当然結ばるべきものだと思う。ビルマその他の国々との単独講和の問題というものは、いつまでも放つておかるべき問題ではないと思う。殊に総理大臣は、未だ日本と正常なる外交関係を回復していない国々との間に、速かに外交関係を回復して、従つて日本貿易事情をも好転するというお考えがおありにならないのかどうか。その点をも伺わして頂きたい。  最後に、特に総理大臣に伺つておきたいのは、今申上げたように、実際この災害対策とインフレとのジレンマ、こういうジレンマの根本をなすものは、国力に相応しないところの防衛の強制を受けるということ、そういう国力に相応しない防衛の強制を受けるということの原因はどこにあるかと言えば、国際間の緊張が激化しているということです。ですから、この災害対策根本日本インフレの危険の根本というものを除去するためには、どうしても日本をめぐる国際関係の緊張を緩和するということが、総理大臣の任務であろうと思う。(拍手)国際間の緊張が激化して行く限りは、日本は過大な防衛を負わなければならない。そうすれば災害、天災、人災は年を逐うて甚だしくなるでしよう。国土は全く破壊されると言つても過言でない。他面、インフレは国民生活を根抵から崩してしまう。全く肺病やみに鉄砲を背負わせるようなことをアメリカ日本に向つてやろうとしておるじやないか。而も自分自身は、ヨーロツパにおいても、アジアにおいても、全く孤立しておる。チヤーチルも、「アメリカ援助は要らない。それよりも東西貿易の自由だ」ということを言つている。ネールも、「アメリカ政府自体、深く反省すべきじやないか」ということを言つている。こういう世界に孤立したアメリカ日本運命を共にするということを考えるときに、私は、吉田首相が当時非常な苦労をなされたでありましよう枢軸外交という名の下に日本を亡ぼした曾ての罪悪を思い起さざるを得ないのです。(拍手)私は、この点を、特にあの時代に苦労された吉田首相が、今十分にお考え下すつて、国際緊張を緩和するために、世界の五大国が速かに会つて話をして、現在、日本を含めで多くの紛糾を続けている問題を平和的に解決する方向を発見すべきことを、日本国民が深く希望しているものではないかという点についての、首相の高邁なる識見を伺わして頂きたいと、こう思うのです。  吉田総理は、日本の民主憲法をみずからの手で制定せられた光栄ある政治的な経歴を持つておられる。今、吉田総理は、日本の平和を保障し、従つて災害、インフレ、あらゆるそうした問題解決の根本を固めるという決意をなさるべきではないか。イギリスのチヤーチルは、「自分の政治的生涯の最後をピース・メーカーとして飾りたい。みずから、アメリカが賛成しないならば、自分自身モスクワに行つてソヴイエトの最高責任者と話をしたい。」こういうふうに言われている。どうか日本の首相吉田総理も、独立日本国民の最高の責任者として、全国民の生命と財産との信頼を託されておるかたとして、この際、日本国民に向い、且つ又アメリカに向つて、独自の見解を披瀝して頂きたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  今日災害復旧の問題と、又インフレ防止という、この二つのジレンマに立つておるが、その原因は、日本が防衛費という……、不必要と言われるが、防衛費という、身分不相応な防衛費がその原因をなしておるというように言われておりますが、私は、今日の日本の防衛費というものは、最も切りつめた防衛費であり、必要止むを得ざる程度のものであると私は確信いたします。併しこれを全然なくなしていいか。いやしくも一国の国をなしている以上は、その国の防衛を看過するわけには行かないのであります。必要なる費用としてそれは計上いたさなければならないのであります。これがなくなれば結構でありますが、必要止むを得ざる費用として計上する以上は、たとえそれが如何なる影響があつても、これは政府としては予算の中に、計画の中に入れなければならないことは、甚だ遺憾でありますが、そう言わざるを得ないのであります。然らばこのジレンマをどうして直すか、これは結局インフレにならない程度において災害対策費を生み出ず以外に方法はない。又その線に向つて政府は努力いたしておるのであります。今お話のように、日本の対外環境として最も国際の関係が緊張の状態にある。この緊張を和らげることを考えるべきではないかと、それはその通りであります。併しながら如何にして和らげるか。これは第二大戦のあとに未だ世界の国情は安定いたしておりませんから、この不安の状態が多少の間、事実抵抗すること、これ又止むを得ざることであります。この止むを得ざる事情をどう見るか、誠に残念であるが、直ちにこれに対して解決の方法は、イギリス、アメリカその他の強国といえども、できておらないのであります。併し時の経過を徒らに待つということはいたしませんが、日本としてはできるだけのことを、この国際の緊張の程度を和らげることについて極力力を尽すべきでありますが、併しながら直ちにどうこうと言われても、これはできないものはできないのであります。併しながらそれがために日本は国際の関係の緊張を和らげることに努力をしないか。これは飽くまでも努力する決心でありますが、然らば直ちにどうするかと言われても、これはできないものはできないとお答えをいたすよりほかにいたし方がないのであります。  又ソ連に対し、或いは又中共引揚その他の問題は、これはたとえ政府がいたさなくとも、国民の力によつて、或いは民間の団体によつてなし得るならば、これは帰還者のためには幸福なことであり、利益なことであり、政府は喜んでその努力に対して敬意を表し、又その成功を祈るものであります。故に直ちに政府がみずからいたさなくとも、その結果が日本に帰還者の多くなることが大事であつて、帰還者が多くなればなるほど結構なことであります。政府みずからやらなくとも、民間の団体で以てその目的が達せられるならば結構なことであると思いますから、私は民間団体がその尽力によつて帰還者の一人でも余計になられんことを希望いたすのであります。  その他は外務大臣お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  37. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) MSAのことについていろいろ御意見がありましたが、これは従来から、又先ほどもここで申上げた通りでありますので、そのようにお聞きとりを願いたいと思います。  国際緊張緩和に関連しまして、羽仁さんのお話だと何かアメリカだけが世界中で一番悪者のように言われておりますが、私はそうは決して考えておりません。アメリカが誠意を以て世界経済を回復し、且つ平和を維持しようという努力については、私どもこれを深く認めるものでありまして、日米間においても、将来ともそういう緊密な関係が維持されることを希望いたしております。  引揚につきましては、只今総理からお話の通りでありまして、政府が努力しないのじやなくして、政府代表を出したいという気持もあり、これも申入れたのでありますが、先方はややもすれば何と申しますか、人民管理方式のようなものを押付けて、わざと政府を拒否しておるような態度も見えましたけれども、併し一人でも多く引揚げられるのは結構でありまするから、あえてこれを承知いたして、民間に依頼をいたしておるのであります。なお引揚後の措置につきましても、我々としてはあらゆる努力を払つております。又正式外交関係をどこの国とも回復したらいいじやないかと、これはその通りでありまして、主義としては御意見に賛成であります。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  38. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 日本の置かれた経済事情等について縷々お話があり、誠に御同感を禁じ得ない点が少くないのでありまするが、併し私どもとしては、何といたしましても先ずインフレを克服することが大切であると考えておるのであります。又さようなことに至らざるよう、あらゆる措置を講ずることが肝腎であると考えております。従いまして私どもは、財政面からインフレが起る虞れがあるものについては、厳にこれを断つことをしなければならんのでありまして、従つて少い予算であるが、これを重点的に使用することによつて財政規模の膨脹を戒しめまして、そうしていわゆる政府資金の撒布超過、こういうことをなからしむることが第一に肝要であると考えております。  第二には、資金の効率的使用等をもつとやることによつて、金融面から起つて参りまするところのインフレ要因を断たなければならんと考えておるのであります。この点については各般の政策を進めなければならんと存じております。更に又企業の合理化、近代化等を促進することによりまして、この生産コストを引下げて、日本の輸出貿易の伸長に資することにする。こういうことによつて、いわゆる国際収支の均衡を図るように持つて参るということも是非とも必要な対策であります。更に食糧を初めといたしまして、国内自給度の増加を図る。そうしてこの国際的にも日本の貸借関係を良好ならしめることが是非必要であると考えておるのであります。まあこれを非常に簡単に申しますれば、いわゆる健全財政、健全経済、健全通貨、この三つを一つ貫くことによりまして、日本のインフレというものを阻止して参りたいという考えを以て、ただこれは一挙にできがたいことであり、又国民全部の力によらなければならないことでございますので、皆様がたの御協力を切にお願いいたす次第でございます。(拍手
  39. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣に対する質疑は終了したものと認めます。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時八分散会      ─────・───── ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)