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1953-11-02 第17回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月二日(月曜日)    午後二時三十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            小野 義夫君            亀田 得治君    委員            加藤 武徳君            楠見 義男君            三橋八次郎君            赤松 常子君            一松 定吉君   政府委員    法務政務次官  三浦寅之助君    法務省刑事局長 岡原 昌男君    法務省刑事局総    務課長     津田  実君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    外務省条約局参    事官      三宅喜二郎君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局総務課長)  磯崎 良誉君   —————————————   本日の会議に付した事件日本国における国際連合軍隊に対  する刑事裁判権行使に関する議定  書の実施に伴う刑事特別法案内閣  送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約第三条に基く行政協定に  伴う刑事特別法の一部を改正する法  律案内閣送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から本日の委員会を開きます。  先ず日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書実施に伴う刑事特別法案右法案につき政府説明を求めます。
  3. 三浦寅之助

    政府委員三浦寅之助君) 只今議題となりました日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書実施に伴う刑事特別法案につき提案理由を御説明申上げます。  日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書発効に伴いまして、一九五〇年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決議並びに一九五一年二月一日の国際連合総会決議従つて朝鮮軍隊を派遣したアメリカ合衆国以外の国で日本国との間に右議定書効力が発生した国が右の諸決議従つて朝鮮に派遣した陸軍、海軍及び空軍の日本国にある間におけるものに関しまして右議定書趣旨に則り、刑事上の手続法につきまして若干の特別規定を設ける必要が生じましたため、この法律案を提出することといたしたものであります。  申すまでもなく、これらの軍隊構成員軍属又は家族に対しましても、我が国既存法令は、原則としてその適用をみるのでありますが、右議定書附属書条項により刑事手続関係法令について若干の特別措置を必要といたしますので、その必要最小限度規定をこの法律案に取入れた次第であります。従いましてこの法律案に特別に規定していない事項につきましては、原則として既存の各法令適用されることと相成るわけであります。  この法律案は、第一章総則、第二章刑事手続の二章十二カ条と附則から成つておるのでありますが、ここにこの法律案の主要点を申上げます。  先ず第一章総則の章は、一カ条でありまして、この法律において使用する語の定義を定めたのであります。この定義は、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第一条に定められている定義に準じたものであります。  次に第二章刑事手続の章は十一カ条よりなり、国際連合軍隊構成員又は軍属国際連合軍当局において裁判権行使する第一次の権利を有する罪を犯した場合における同軍隊への身柄の引渡、国際連合軍隊がその権限に基いて警備している国際連合の使用する施設内における逮捕その他人身を拘束する処分及び差押、捜索等処分の執行、同施設内等において逮捕された者に対する日本側受領手続派遣国軍事裁判所又は国際連合軍隊当局刑事手続に対するわが国側協力及び派遣国軍事裁判所又は国際連合軍隊による抑留又は拘禁についての刑事補償法適用等いずれも刑事手続に関する現行の法令を以てしては処置し得ない問題を取上げて特別の規定を置いたものであります。これを要するに、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の場合と殆んど同趣旨刑事手続規定したものであります。  以上この法律案につきまして概略御説明申上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  4. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に本法案につきまして只今提案説明に補足いたした説明刑事局長からしてもらいたいと思います。
  5. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 只今提案理由説明がございましたが、本法案につきましてやや敷衍いたしまして御説明いたしたいと存じます。御幕議の便宜にと思いまして別途法案解説書をお配りいたしてございますので、それを御覧になりながらお聞き取りを願いたいと存じます。  先ずかような法案を出すに至つた経緯でございますが、日本におります国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関しましては、去る十月二十六日東京で署名の上、同月二十八日にこれに関する議定書が公布されております。翌二十九日からその効力を生じたのでございます。この議定書には、日本国における合衆国軍隊刑事裁判権行使に関する行政協定十七条の改正議定書、これはこの前例行政協定第十七粂の改訂の問題として御説明申したものでございますが、それが十月二十九日に効力を生ずるのと歩調を合わして参つたのでございます。  この今回の議定書は、その附属書に掲げる規定において日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権懲双裁判権を含めましてその刑事裁判権行使についての規律がしてございます。なおこの議定書によりましてこの附属書に掲げる規定は、日本国における国際連合軍隊地位に関する一般的な協定が締結されると、その協定に自然統合されて来るとかような建前になつております。  この議定書は、日本国政府統一司令部として行動するアメリカ合衆国政府並びに一九五〇年六月二十五日、六月二十七日、七月七日の国連総会決議従つて朝鮮軍隊を派遣した国の政府によつて署名されることになるのでございますが、現実に署名いたしましたのは、右アメリカ合衆国政府のほかには、オーストラリア、カナダ、ニユージーランド及びイギリスの四カ国でございます。でこれらの署名国の間について本議定書は十月二十九日に効力を生じたのでございます。  併しこの議定書は、その効力発生後、更に前記の諸決議従つて朝鮮軍隊を派遣するいずれの国の政府に対しましても、日本国政府が同意すれば、これに署名、加入することができることになつております。それらの派遣国につきまして別段の合意がない限り、その署名の日に効力を生ずる建前になつております。これに従いまして十月二十九日正午南アフリカ連邦政府署名いたしましたので、別段の合意をしていないから即時同国についても本議定書がその効力を発生したのであります。その他現在朝鮮軍隊を派遣しておる国といたしましてはフランス、ギリシヤ等十数カ国がございますが、いずれもそう大したたくさんの軍隊が行つておるわけではございませんけれども、まだこれに署名をしておりません。従つて条約的にはその議定書は従来の署名国だけというふうな形になつております。  今回御審議を仰ぎます法案は、この議定書実施伴つてその国内手続を定めたものでございますが、その内容は、前に申しました安全保障条約に基く行政協定に伴う刑事特別法、これと実質的には全く同一でございますので、今回の法案内容も又従来の刑事特別法と全く同一である、かように御了承願いたいのでございます。  それでは従来の行政協定に伴う刑事特別法とどういう点が違うかと申上げますと、第一は、第一条の定義規定でございます。第一条は、その性質アメリカ日本国との間の行政協定と全然違いまして国連軍隊との関係でございますので、新たなるそれに伴う定義規定を必要としたわけでございます。  それから行政協定に伴う刑事特別法の第二章即ち第二条乃至第九条に実体規定、罪に関する規定がございますが、これは今回の国連協定関係では全然触れておりませんので、今回の国連との関係刑事特別法におきましては罪に関する実体規定は全然ないわけでございます。従つて行政協定に伴う第三章、十条以下の規定が、今回の法案の第二条以下として、条文順序内容そつくりそのまま採入れてある。かような建前になつております。  以下逐条的に若干御説明申したいと思います。
  6. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  7. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて下さい。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 只今上程されました法案基礎になつております議定書の点につきまして一、二点だけ基本的な問題についてお伺いしておきたいと思います。それはアメリカ軍の場合と違いまして、国連軍の場合には今回初めて正式にはこういう条約ができる、こういう関係になるわけであります。そこで日本憲法建前から言いますと、日本相手方とが約束をしてそうしてできるならば正式の約束をする前に国会に諮る、承認を求める。併しそういう時間的な余裕がないという場合には事後承認を求める。こういうことに憲法はなつておるわけです。ところがその場合におきましても、憲法事後承認を求めるという場合であつても、効力がすでに発効されてしまう、こういうようなことは非常に希望しておらんのじやないか、こういうふうに私どもは考えておるのです。ところがこの基礎になつておる議定書は、すでに十月に効力発効して日本で実行されておる。こういうわけなんですね。そういうふうにお膳立てもすつかりでき上つてしまつて国会にこれが出て来ておる。これは普通の順序とは少し違うように思いますので、こういう必要があつたのかどうか、そういう点だけを先ず最初にお伺いしたい。
  9. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) 憲法七十三条三項に、条約事前国会承認を経ることが原則になつておりまするけれども、同時に時宜によつて事後承認を求めることができると規定いたしております。今回の場合は御承知のように日米行政協定が二十九日に発効いたしますので、若しこれと同時に国連軍のほうにつきまして、同様の規定適用しなければ、米軍取扱い国連軍取扱いとの間に不均衡が生じまして、米軍のほうが不利で国連軍のほうが有利な取扱いを受けることになるのでございます。そこでこういうことは好ましくありませんので、同日から同じ規定を同様の規定適用したいというふうに政府考えまして、国会承認を得る前に効力を発生せしめてこれを実施することが時宜に適すると認めまして、先にこの条約署名し、そして日米行政協定と同日から発効せしめ実施するということにいたした次第でございます。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 若し国会がこの議定書並びにこれに関連する法案承認しない、こういうふうになつた場合には、これは一つの仮定でございますが、併し事柄としては極めて重要な国際間の問題でありますので、こういう事態めつたに起るものじやないと思いますが、この機会に実は御見解をお聞きしておきたいのですが、そういう事態になつた場合には先ず効力の点ですね。日本相手国の国との間の効力が一体どういう関係になるのか、影響があるのかないのか、こういう点についての法律的な一つ見解を承わつておきたい。
  11. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) 万一国会の御承認が得られませんような場合、即ち国会が不承認の御決定をなさつた場合におきましても、条約自体効力には影響はございませんで、政府政治的責任が残る、こういうことになるのでございます。そういう場合は政府国会の御意思なり御希望を体しまして交渉のやり直しをする。できた協定を改正するための交渉を始める政治的責任を負うことになるのであります。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 一応法律的な関係なり必要性は私只今お答えで納得いたしますが、但し今後こういうことがたびたび行われるということでは大変だと実は考えるのです。例えば今回の場合でも、効力まで事前に発生させるそういう無理なことをしなくても、どうしても十月二十九日に発効させなければならないということであれば、例えば臨時国会を四、五日早く開く、そうして最初の二日なら二日間に、特にこういう条約性質、そういう点を国会説明をして、そうして了解を求める。こういうふうなことも私の考えられる手段だと思うのです。又これが政府が各政党に、こういう条約の問題だから、こうなつておるのだからという説明をされれば、これは恐らく各党とも了解をされるだろうと思う。勿論一方では、予算の問題がまだきまらないから、そういうわけに行かなかつたのだ。こういうふうな、何といいますか、私のそういう考え方に対する反駁もあろうかと思いますが、予算は若しきまらなければ、大体のめどはついているのですから、最初条約を二日なら二日でやつて、そうして四、五日の自然休会にしておいて、更に再開して行く、こういうことでもやれるわけですね。私はそういう意味で、これはもうすでに両条約はきまつていることだし、行政協定内容的にはよくすることなんだから、それに準じて国連軍のほうもやるやつなんだから、これはもうそんなむずかしいことを考えんでも、当然国会のほうで承認を願えることなんだ。こういうふうなやつぱり軽い気持で、こういうものは取扱つてはならんだろうと思う。こういうのが一つ前例ができますと、やはりこういう関係にない新らしい事案についても、こういうふうなことが行われることが、私はままあろうと思う。そういうことが行われた場合に、前例はどうだつたというようなことが絶えず国会じや調べられ、前例としては実は昭和二十八年の十一月二日にこういうふうなことがあつた。こういうことがいろいろな事情というものを抜きにして、一つ前例としてやはり出されて行く。私はやはりこれは憲法の精神から言つても、非常に問題であろうと思う。だからそういう意味でこれはまあ外務大臣総理大臣に実はお聞きすべき問題だと思うのですが、この臨時国会を開くについて、そういう条約承認という関係について、そういうところまで一つ考えに一体なつたものかどうか。ただ漠然とここへ出て来て、どうもそういう議論があとから出て来たということなのか、これは一つ、次官からちよつとその間の事情なりお考え方を承わつておきたいと思います。
  13. 三浦寅之助

    政府委員三浦寅之助君) いろいろ政治情勢からそういう工合に行かなかつたのだろうと思うのでございますが、その間のいきさつについては三宅参事官のほうから御答弁いたさせたいと思いますので御了承願いたいと存じます。
  14. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 私も三宅参事官からお答え願います際に、一応結論を今お話になつておられたようでありますけれども、条約批准承認の効果について、只今お述べになりましたような、公権的解釈に到達いたします法律的な構成並びに国際法上の判断等をお話頂き、又我が国条約について、只今亀田委員の述べられましたような先例の有無等について併せてお答えを頂きたいと思います。
  15. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) 国会承認を得るまでは効力を発生せしめないでいいような条約の場合には、批准条項というものをつけるのでございます。批准条項がついております条約につきましては、政府はたとえ署名しても、批准の前に国会承認を得、そうしてその批准書関係国の間で交換するという、多数国の場合には寄託するということにおいて、初めて効力が発生することになるのであります。今回の場合は先ほど申しましたように、どうしても二十九日に日米行政協定と同時に発効せしめたいということでございましたので、批准条項をつけなかつた次第でございます。批准条項をつけない条約、つまり署名によつて効力を発生せしめる条約におきましては、国内法がどうなつておろうと署名と同時に効力を発生せしめる。そうして承認が得られなくとも効力はそのまま続くということでございませんというと、ほかの国が非常に迷惑をすることになるのでございまして、従いまして、そういう条約については、効力はたとえ国内的に国会承認が得られなくとも効力は続き、その政府政治的責任を負う。そうして国会意思希望従つてもう一遍交渉をやり直す、その交渉ができたときに新らしい協定効力を生ずるということになるのが国際間の慣例でもあるのでございます。今回の場合、日米行政協定議定書交渉に一カ月余りかかりまして、それが調印されますと、翌日から国連軍協定のほうの交渉も始めたのであります。何分今度の国連軍のほうは関係国が多数ございますので、同様な協定にすると申しましても、いろいろ交渉相手が多いのでございます。それから軍隊も数カ国の軍隊がいるわけでございまして、そのまま条文に書くわけには参りませんので、そういつたことがございまして、相手方でもいろいろ一々本国政府に訓令を仰ぐということでございます。それを待つということでございまして、協定が本当にまとまつたのは、もうぎりぎりまでかかつたわけでございまして、二十九日前に国会の御承認を得る措置が技術的にとれなかつた次第でございます、そうして二十九日から発効せしめるというようなことを話合つておりました際には、まだ国会が二十九日から召集されるというようなことはきまつておりませんでございました。従いまして国会召集ということがきまつてから又その発効の日を変えるということはできなかつた次第でございます。どうかその間の事情を悪しからず御了承願いたいと存じます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 それからもう一つお尋ねしておきますが、この議定書は、日本国における国際連合軍隊地位に関する一般的協定、これが締結された場合には、その協定に吸収されてこういう関係になると書かれておるのですが、この一般協定というものは、この議定書交渉に当つても何らかの折衝がなされたかどうか。なされたとしたら、どのような状況になつておるか、そういう点について一つ関連してお尋ねしておきたいと思います。
  17. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) その他の問題につきましては、もう昨年の七月以来ずつと交渉を続けて参りました。続けて参りましたと申しましても、双方主張がなかなか一致いたしませんので、断続的に行われて来た次第でございます。その刑事裁判権以外の問題と申しますのは、主として財政、経済関係の問題でございまして、施設使用料を取るか取らないかの問題、又関税消費税の免税の範囲をどの程度にするかという問題、それから国連軍が公用で消費します電気ガスの料金に対する電気ガス税を取るかどうかというような問題、こういう問題につきまして双方主張が合わなかつたのでございます。先方行政協定の下における米軍取扱と全く同様にしてもらいたい。又我がほうは国連軍日本承認の下に吉田・アチソン交換公文に基いて駐屯する軍隊であるけれども、その間若干性格や日本との条約上の関係が違うから、多少違つた取扱をしたいということを主張して参りましたが、どうしても先方も譲らないものでございますから、それらの問題について交渉が妥結しなかつた次第でございます。一方先ほど申しますように、刑事裁判権のほうは日米間にNATO方式協定ができましたので、このほうを先にやりたいということを強く申しまして、先方もそれに応諾した次第でございます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 経済的な問題について米軍と少し違つた扱いをしたい、こういうことで話がそういう点についてはまとまつておらないということですが、そういう一般的な問題が出ないうちに、こういう刑事裁判権の問題、これは何といつて外国にいる人にとつては非常に重要なことですが、そういう重要な問題について米軍と同等の取扱をする。こういうことになれば必然的にあとの経済的な問題についても同じようにしなければならないというふうな結果に追い込まれて行くのじやないか思うのですが、その辺はどういうふうにお考えでしようか。
  19. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) 外国軍隊承認の下に駐屯いたします場合には、均等待遇を与えるのが大体の国際間の慣例になつておるのでございます。待遇の問題と申しますれば、こういつた刑事裁判権の問題とか、出入国の手続の問題とか、税金免除の問題とか、そういつた点で均等待遇をするのが普通になつておるのでございます。併し財政経済問題は何も関税免除税金免除問題等だけではございませんで、費用の負担の問題というのもございます。これにつきましては全項目に亘つて同じ取扱いをする必要が必ずしもない、こう考えるのでございます。従いまして例えば防衛分担金のようなものは国連軍については負担することはこちらはできないということで、先方もそれは日本に負担せしめようとは思つておらないのでございます。大分両方主張の間隔は縮まつて来た次第でございます。今申しましたような問題についてなお若干意見の相違がございまして、併し日本といたしましては国連協力の必要、殊に日本が加盟を希望しておりまする国連に対する協力はできるだけやりたい、又平和条約でも、できるだけの協力をすることを約しておりまするし、又明治以来日本といたしましても、外国均等待遇を受けたいということは主張して参りましたので、現在では成るべく防衛分担金のような問題は別だけれども、ほかの財政経済問題については、成るべく先方希望も容れて早く妥結したいという方針で進んでおります。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 それはいつ頃に妥結する見込みですか。
  21. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) その点につきましては、他の国内官庁との意見の調整もございますので、それがすみ次第先方交渉を再開したいと存じております。期間につきましては、まだ確定的な見通しはつかない状態でございます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 例えば来年の三月までとか、漠然としたことで結構なんですが、そういう点の見通しです。
  23. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) 時期につきましてはできるだけ本年中には、遅くとも本年中にはまとめたいという方針で進んでおります。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 私の質疑はこれくらいにしておきます。
  25. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の亀田さんの質問に関連してお伺いするのですが、今まで国連軍に対する刑事裁判権というものは一体どうなつておるのですか。
  26. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) この問題につきましては特別の協定がございませんから、一般国際法原則及び慣例従つて処置しております。
  27. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、具体的に申しますと属人主義属地主義か、どつちになつておるのですか。
  28. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) 属人主義属地主義というのは通常使われておりますが、その字句自体いろいろ問題がございます。国際法慣例原則と申しますのは、いわゆる今まで言われております属地主義に相当するものと存じます。
  29. 楠見義男

    ○楠見義男君 私の伺う意味は、例えば今度のアメリカとの改訂によつてアメリカ側としては実は従来よりは不利になつたわけですね。ところで従来国連軍軍隊についてアメリカと同じ待遇を仮にやつてつたとすれば、若しやつておらなければこれは別ですが、やつてつたとした場合に、その国連軍の中で四カ国だけが署名をして、その四カ国には今回のこの特別刑事法適用されるが、それ以外のものには適用されない。そうなつて来れば、署名した国のほうが実は不利であつて署名しない国は従来通り裁判管轄権に従うと、こういうような関係になるのだが、その辺はどうなんでしよう。
  30. 津田実

    政府委員津田実君) その点でございますが、従来の国際法原則従つて、従来の国連軍に対しては臨んでおつた次第でございます。今回この議定書署名いたしたのは只今まで五カ国でございますが、その五カ国以外に朝鮮軍隊を派遣し、又は派遣したことのある国は約十五カ国くらいでございます。それらの国につきましては、当然日本の同意を得次第これに署名し得るわけでございますが、署名しないうちに事件が起つた場合に如何なる処置をとるかという問題になるわけでございますが、その点につきましては、いわゆるNATO方式協定と申すのは、NATO十四カ国によつて署名されておりますと同時に、今回日米間においても同様の方式で署名されました。又今申上げました議定書によります五カ国についても同様の方式がとられたわけでございます。従いましてもはやこれは今日に至りましては、国際法に当るとも言い得べき程度に普遍化されて参つた方式でございますのみならず、今回のこの署名に際しまして、つまり調印式におきましてはこれらの未署名関係諸国も異議なく出席しておるというような状況でございますので、将来といたしましては未署名国に対しましてもこの議定書と同様の線で、つまりでき得る限りこの議定書の線に従つて処置をするのが相当だと考え、さような方針で参りたいと存じておる次第でございます。
  31. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこで問題を二つお伺いしたいのですが、一つはそういうふうに非署名国における軍隊、或いは軍属等の犯罪があつた場合に、今おつしやつたような大体国際法的なウエイトを以て非署名国に対してやつた場合に、それはそれでもう別に紛議を起さずしてやつて行けるのかどうか、それが一つ。正当な権限に基いた裁判管轄権と同様に、実は条約があればそれは正当な権限に基くのですが、条約なくして正当な権限に基いてそれは国際法の慣行に従うのだということで問題なくやつて行けるのかどうかその点が一つ。  それからもう一つは、従来の国連軍軍隊についての裁判管轄権が仮に今までの対アメリカとの関係と同じであつたとすれば今まではそれが国際慣行、或いは国際法原則であつたのか、その二つの点をお伺いしたいのです。
  32. 津田実

    政府委員津田実君) 第一の点でございますが、これらの諸国の調印の経緯並びにNATO方式のウエイトに鑑みまして、NATO方式従つて処理することについては紛議は起らないというふうに考えております。と言いますのは、従来日本におりました国連軍諸国の昨年以来の主張は、NATO、つまり日米と同待遇主張するということでございまして、日米と同待遇である限りは如何なる待遇、と申しますれば大げさでございますが、どのような待遇であつても受諾するという主張でずつと進めて参つております。その経緯から申しましてもこの日米と同待遇、即ち新らしいNATO方式でやりましても、論議をされる余地はないというふうに存じております。それから従来国連軍に対しましては従来のアメリカ軍に対する場合と異りまして、アメリカ側にあつた専属裁判権国連側にないわけであります。従来の国際法線のつまり公務執行中の犯罪及び施設内の犯罪については軍隊派遣国において裁判権を有しその他の場合は受入国において裁判権を有するという国際法原則従つて処理しておつた次第でございます。
  33. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからついでですが、三宅さんにお伺いしたいのですが、今の亀田君の質問に関連しておるのですが、一般取極めの問題ですね。この問題は財政経済関係の問題については丁度刑事裁判権におけると同じように、国連軍としてはアメリカと同待遇を要望しておる。そこでこちらのほうでそれに同意しない限りは、結局実情はどういう方向で行くのか。現にアメリカと同じ方式をとつておられるのか、或いは取るべき債権というものは残つてつて、ずるずるに行つておるのか、その辺はどうなんでしようか。
  34. 三宅喜二郎

    説明員三宅喜二郎君) 現在までの無協定の期間は、それらの問題は、それまでは懸案のままにしておくということで進んでおります。従いまして国有財産の使用料等はまだ取ることを猶予して参つております。併し私有財産のほうはそんなことも言つておられませんから、私有財産の使用料国連軍に払わせております。
  35. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは先ほどの説明の続きをお願いします。
  36. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それでは第一条から簡単に御説明申上げます。  第一条は、定義規定でございまして、第一項は議定書の点、第二項は派遣国定義でございます。派遣国につきましては先ほど提案理由の際にもありました通り国連総会決議従つて朝鮮軍隊を派遣したアメリカ合衆国以外の国であつて署名国というふうなことでございます。現在これが五カ国に及んでおることは先ほど申し通りであります。  第三項は国際連合軍隊ということの定義でございまして、これは只今申した決議従つて朝鮮に派遣した陸海空軍の日本国内におけるものというふうなしぼりがかかつております。  第四項は国際連合軍隊構成員、いわゆる簡単に軍人というもの、第五項は軍属、これらはすべて日米行政協定の際に、第六項の家族も同様でありますが、行政協定の際に問題になりましたのと全く同じものであります。それを踏襲してございます。  第二条は、施設内の逮捕の手続に関する規定で、ございまして、これは日米間の行政協定に伴う刑事特別法これの第十条と相応ずる規定でございます。これを読んでみますと、「国際連合軍隊がその権限に基いて警備している国際連合軍隊の使用する施設内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、当該国際連合軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は当該国際連合軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。」第二項、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪に係る現行犯人を追跡して前項の施設内で逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。」これが内容でございます。要するに国連軍隊がその権限に基いて警備している施設内におきましては同意を得て行うか或いは承諾して行う、この点はこの前行政協定に伴う刑事特別法の一部改正法案の際に御説明申したのと全く同じ趣旨でございます。二項の現行犯人を追跡して逮捕する場合、これも全く同じ書き方でございます。  第三条は逮捕された国際連合軍隊の軍人軍属を引渡す場合の規定でございまして、読んでみますと、「検察官又は司法警察員は、逮捕された者が国際連合軍隊構成員又は軍属であり、且つ、その者の犯した罪が議定書附属書第三項(a)に掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を当該国際連合軍隊に引き渡さなければならない。」第二項は「司法警察員は、前項の規定により被疑者を国際連合軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」これはつかまえてみたところが、向うの軍人軍属である、而もその犯罪が第三項(a)に掲げるつまり第一次裁判権が向うにある場合であることが明らかになつたという場合には、こちらで第二次裁判権行使する前に、向うが第一次裁判権行使するということになりますからして、身柄も直ちに向う側の当該国際連合軍隊に引き渡す、かような趣旨でございます。二項は、念のためにその引渡した場合の後の必要な捜査をして、警察官から検察官に事件の送致をしなければならんということを明言しただけの趣旨でございます。只今規定行政協定に伴う刑事特別法の第十一条に相応する規定でございます。  次は第四条、これは向う側でつかまえられた者がこちらに来る場合、こちらで受取る場合の引渡の規定でございます。行政協定に伴う刑事特別法の第十二条に相応する規定がございます。第四条、「検察官又は司法警察員は、国際連合軍隊から日本国法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡を受けさせなければならない。」第二項は「検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が日本国法令による罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があつて、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡を受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。」三項「前二項の場合を除く外、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取つた後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。」四項「第一項又は第二項の規定による引渡があつた場合には、刑事訴訟法第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。但し、同法第二百三条、第二百四条及び第二百五条第二項に規定する時間は、引渡があつた時から起算する。」向うで日本国法令の違反の罪で被疑者をつかまえます、こういうふうな者がつかまつておるからという知らせがありました場合には、こちら側でこれを受取るわけでありますが、その身柄を受ける場合については、やはり人身の拘束でございますから、正式な逮捕状を持つて行かなければならんというのが第一項でございます。若しそれが急速を要しましてすぐに逮捕状の手続ができないという場合には、取りあえずその身柄をもらつて来て手続を緊急に執行するというのが第二項。三項はその他の場合の釈放でございます。四項は向う側でつかまえてこちらに引渡すまでの間に若干の時間のずれがございます。若しこれを刑事訴訟法の通り逮捕時間の起算を身柄を拘束されたときから起算いたしますと、四十八時間、二十四時間、七十二時間という時間がまたたく間に経つて、結局違法の逮捕或いは逮捕ができないというふうな問題になつて参りますので、こちら側に身柄を受取つてからこちら側の訴訟法に乗つて来る。従つてそれ以後の時間も全部訴訟法のこちらの関係で動いて行くということを明らかにしよういう趣旨でございます。  それから第五条は、行政協定に伴う刑事特別法の第十三条に相応する規定がございます。第五条、「国際連合軍隊がその権限に基いて警備している国際連合軍隊の使用する施設内における、又は国際連合軍隊の財産についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押(差押状の執行を含む。)又は検証は、当該国際連合軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員から当該国際連合軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。但し、裁判所又は裁判官が必要とする検証の嘱託は、その裁判所又は裁判官からするものとする。」これは第十条の関係で逮捕の問題が出ましたが、それと同じように今度は差押、捜索、検証等をなす場合の規定でございまして、やはり同意を得て行い、又は嘱託して行うものとする、それらについての行政協定に関する刑特法の十三条と同じような規定をここに置いたわけでございます。  次は第六条でございまして、これは日本国法令による罪にかかる事件についての捜査の権限があることを明記した規定でございます。行政協定に伴う刑特法の十四条に全くこれと同じ規定がございます。第六条、「議定書により派遣国軍事裁判所裁判権行使する事件であつても、日本国法令による罪に係る事件については、検察官、検察事務官又は司法警察職員(鉄道公安職員を含む。)は、捜査をすることができる。」「前項の捜査に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他刑事訴訟に関する法令に定める権限を行使することができる。」これは念のためかような規定を置きまして捜査の権限があるということ、それからそれに関する裁判官の権限も同様訴訟法に則つてやれる、こういうことを明らかにした趣旨でございます。  第七条は、行政協定に伴う刑特法の第十五条にこれと同じ規定がございます。あちらの裁判所にこちらから証人が出頭する義務を規定したものでございます。第七条、「派遣国軍事裁判所の嘱託により、裁判官から派遣国軍事裁判所に証人として出頭すべき旨を命ぜられ、又は派遣国軍事裁判所において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。」二項「前項の者が、正当な理由がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、一万円以下の過料に処する。」つまり向う側で軍事裁判所を開く、それでその事件の審理上、是非日本人を証人として調べたいという場合にどういうふうなことになるかと言いますと、一応そちらにこちらの証人が協力義務がある、向うの法廷に出て証言すべき義務がある、若し正当な理由がなくしてこれに出頭しない、或いは宣誓若しくは証言を拒んだような場合には行政罰として過料に処する、こういう趣旨でございます。これと応対に日本国に来た場合にはどうなるかと申しますと、これは刑事訴訟法にその旨の規定がございますからそれで賄つて行く、かような趣旨でございます。  第八条は、今の軍事裁判所の嘱託に基いて証人が出る場合に、どうしても言うことを聞かないという場合どうするかという勾引の規定等でございます。で行政協定に伴う刑事特別法の第十六条にこれに相応する規定がございます。第八条、「正当な理由がないのに、前条第一項の規定による裁判官の出頭命令に応じない証人について派遣国軍事裁判所から嘱託があつたときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを派遣国軍事裁判所に勾引することができる。」二項「前項の勾引状には、派遣国軍事裁判所の嘱託の趣旨を記載しなければならない。」三項「第一項の勾引状は、検察官の指揮により、司法警察職員が執行する。」四項「刑事訴訟法第七十一条及び第七十三第一項前段の規定は、第一項の規定による勾引に準用する。」先ほど申した通り、出頭命令がありましても嫌だと言つて応じない場合があり得るわけであります。かような場合に、どうしてもその証人をその事件の審理上必要であるという場合には、勾引状も出せるということも明らかにした趣旨でございまして、二項、三項、四項はその勾引状の発付並びに執行等についての手続規定を明記したものでございます。  第九条は、行政協定に伴う刑事特別法第十七条にこれに相応する規定がございまして協力に関する規定でございます。第九条、「裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、派遣国軍事裁判所又は国際連合軍隊から、刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があつたときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは引き渡すことができる。」つまり向うの取調べ当局又は裁判所からこうこうこういう書類が是非審理上必要であるから貸してくれ、見せてくれという場合には便宜を図つてやるという趣旨でございまして、これは全く行政協定の場合の十七条と同じ趣旨でございます。  次は第十条でございます。これは行政協定に伴う刑事特別法の十八条にこれに相応する規定があるのでございまして、日本国法令による罪に係る事件以外の刑事事件へつまりこちら側では処罰できないけれども、向うで処罰するという事件についての協力規定でございます。第十条、「検察官又は司法警察員は、国際連合軍隊から、日本国法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、当該国際連合軍隊構成員軍属又は当該派遣国の軍法に服する家族の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。」二項「国際連合軍隊から逮捕の要請があつた者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索することができる。但し追跡されている者がその所に入つたことが明らかであつて、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。」三項「第一項の規定により国際連合軍隊構成員軍属又は当該派遣国の軍法に服する家族を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を当該国際連合軍隊に引き渡さなければならない。」四項「司法警察員は、前項の規定により国際連合軍隊構成員軍属又は当該派遣国の軍法に服する家族を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。」つまり逮捕の場合或いは押収、捜索をする場合、捕えたあとの引渡しの規定それから通報の規定、なぜこういうふうな規定を特に置くかと申しますと、日本法令で罪を犯した日本法令違反の場合は刑事訴訟法がそのまま働いて来るわけでございます。ところが日本法令でないものについての違反でございますからして、刑事訴訟法はそのまま乗つては来ないわけでございます。その関係からそれと同様な趣旨規定を特に必要とするので、かような法令が出て来たわけでございます。  次は第十一条でございますが、これはやはりさような場合の任意捜査の規定でございまして、行政協定に伴う刑事特別法の第十九条にこれと相応する規定がございます。第十一条、「検察官又は司法警察員は、派遣国軍事裁判所又は国際連合軍隊から、日本国法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。」第二項、「検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさせることができる。」第三項、「前二項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して派遣国軍事裁判所又は国際連合軍隊の要請による旨を明らかにしなければならない。」第四項「正当な理由がないのに、第一項又は第二項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の処分を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の過料に処する。」つまり先ほどは逮捕押収、検証、捜索等でございますが、今度は参考人の取調べ、実況見分、書類その他のものの任意提出というようなものについての協力でございまして、それらの点についても全く行政協定に伴う刑事特別法の第十九条と同じでございます。  最後は第十二条、刑事補償に関する規定でございます。行政協定に伴う刑事特別法の二十条にこれと全く同じ規定でございます。第十二条、「刑事補償法昭和二十五年法律第一号)の適用については、派遣国軍事裁判所又は国際連合軍隊による抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留又は拘禁とみなす。」御承知の通り刑事補償法適用につきましては、刑事訴訟法の規定による抑留又は拘禁の場合だけが刑事補償の対象になります。ところが先ほど申した通り派遣国当局でつかまえまして、その後身柄がこちらに引渡されたような場合、そしてこちらで無罪、免訴等の判決がありました場合には、向うに抑留、拘禁された場合には、この規定がなければ、そのまま拘禁されつ放しということになつてしまいます。そこでその点を、若しこちらで無罪、免訴等になりました場合には、その期間を通算してすべて刑事補償の対象にされる、かような趣旨でございます。  附則は、公布の日から施行するということでございます。
  37. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 刑事局長ちよつと他の委員会に呼ばれておりますが、早く戻つて来られると思います。津田務課長がおりますから……。それでは刑事特別法案につきましては前回にも御質疑があり、引続いて刑事特別法案についての御質疑をお願いいたしまするが、只今説明のありました国連軍についての刑事特別法案も、内容においては同様の法案でございますので、関連して御質疑して頂いて結構でございまするから、御質疑のあるかたは順次御発言を願います。
  38. 楠見義男

    ○楠見義男君 細かい点ですが二、三お伺いたしいと思います。それは国連軍との刑事特別法案においても、或いは又現在のアメリカ合衆国との間の刑事特別法においても同様なんですが、それと、それからNATO協定と比較してみて、例えば軍属定義、或いは家族の定義等において若干相違しておるのですが、これは何か特別の理由があるのでしようか。と申しますのは、例えば軍属の場合には、シビリアンで、そうして国連軍に雇用され、或いはこれに勤務し、というふうにNATO協定ではそういうふうになつておりますが、こちらのほうは又これに随伴するものというようなのが入つておる。それから家族の場合には、子供の定義には二十一才未満というのが一つと、それからNATO協定には父、母というようなものは特別に規定しておりません。又二十一才以上のものであつても生計費の半額以上というふうな制限がされておるが、NATO協定ではそういう制限がないのですが、これは何か特別の事情があつて別々にしておるのか、或いは実際問題としては変更がないというのでこうなつておるのか、その辺の事情をお伺いしたいと思います。
  39. 津田実

    政府委員津田実君) その点でございますが、今回の日米行政協定改訂刑事裁判権即ち十七条の改訂によつておるわけでございます。そこで御承知のように、日米行政協定定義規定は第一条にございます。現在の刑事特別法日米行政協定の第一条に従つて定義されておる。第一条の定義が当然第十七条に被つて参りますので、第一条を変更しない限りは、第十七条はその限りにおいては動かし得ないと、こういうことになるわけであります。国連との関係におきましての議定書日米と同じにいたしたわけでございますが、その点につきましては未だ正確には、何と申しまするか、第一条のような定義国連との間に結ばれておるわけではないのでありまするが、大体において妥結しておるところと申しまするのは、即ち日米の場合と同じになるわけでございます。その点に従つて国連刑事特別法の第一条を規定したわけでございます。
  40. 楠見義男

    ○楠見義男君 もう一つ内容に入つてなんですが、今回は従来の「使用する」という言葉が「警備」というふうに変つているのですが、その警備とは如何なる場合を警備というのか、特にこれは施設及び区域だつて、区域の場合にそういう問題が相当重要な問題になるじやないかと思うのですが、警備というものの内容ですね。これはどういうふうに予定しておられるのですか。
  41. 津田実

    政府委員津田実君) 警備しておると申しますのは、概念的に申しまするならば、軍がその規律に従つて実力によつて妨害排除並びに秩序の維持に任じ得る態勢を整えておるということでございます。従いまして、施設につきましても、区域につきましても、そういう態勢下にある施設又は区域はこれに含まれる、こういうことになるわけです。現実の場合申上げますと、例えば演習場などの広い地域、如何ようにしてこれを判定するかという問題があるわけでございまするが、大体におきまして、演習場等を現実に使用いたしまする場合は、事前に当該関係の市町村当局、並びに関係の捜査機関、つまり警察署長等にいついつかから現実に使用するというふうに通告して参ることに、従来合同委員会とも話合いができておりますので、従来はそれは実行されております。従いましてその際に具体的にこの範囲はいついつかから警備をするというふうに通告があることが予定されますので、それによつて一応判断をするということになりますが、それは一応の判断でございまして、現実には何人が見ても、そのような、先ほど申上げましたような態勢にあるかどうかという事実問題の判断ということになろうかと存ずる次第でございます。
  42. 楠見義男

    ○楠見義男君 その通告して来た場合に、例えば射撃場ですか、そういう演習場で特別にそう演習の用に供しない期間或いは時間は、これは一般の例えば農耕だとか、そのほかの出入は認めると、こういうふうなことになつている場合がございますね。そういう場合における犯罪は、これは一般に開放しておる期間なり或いは時間中は開放しているとも言えるのですが、そういう場合に警備と、こういう言葉が当るのか当らないのか、どちらですか。
  43. 津田実

    政府委員津田実君) その点でございますが、演習場、射撃場等におきまして現実に歩哨等を立てて射撃をし、或いは演習しておる場合は当然警備しておるというふうになるわけでございますが、但しそれも午前八時から午後四時というふうに定められまして、それから引上げました場合におきましては、これはもはや警備態勢を解いておるわけでありますが、当然自由に日本側の逮捕権が働く、こういうことに相成るわけでございます。
  44. 楠見義男

    ○楠見義男君 わかりました。
  45. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  46. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。本日はこの程度を以て質疑を一応終了いたし、予備審査の段階におきましては、御質疑は大体尽きたように考えまするが、更に次回は明後四日の午前十時より開会することにいたしまして、衆議院の審査の状況を勘案し、質疑が終了いたしましたものについては順次採決に入つて参りたいと思いまするから、さようお含みおきを願いたいと思います。  本日はこれを以て散会いたします。    午後三時五十一分散会