○
政府委員(
岡原昌男君) それでは第一条から簡単に御
説明申上げます。
第一条は、
定義規定でございまして、第一項は
議定書の点、第二項は
派遣国の
定義でございます。
派遣国につきましては先ほど
提案理由の際にもありました
通り、
国連総会の
決議に
従つて朝鮮に
軍隊を派遣した
アメリカ合衆国以外の国であ
つて、
署名国というふうなことでございます。現在これが五カ国に及んでおることは先ほど申し
通りであります。
第三項は
国際連合の
軍隊ということの
定義でございまして、これは
只今申した
決議に
従つて朝鮮に派遣した陸海空軍の
日本国内におけるものというふうなしぼりがかか
つております。
第四項は
国際連合の
軍隊の
構成員、いわゆる簡単に軍人というもの、第五項は
軍属、これらはすべて
日米行政協定の際に、第六項の家族も同様でありますが、
行政協定の際に問題になりましたのと全く同じものであります。それを踏襲してございます。
第二条は、
施設内の逮捕の
手続に関する
規定で、ございまして、これは
日米間の
行政協定に伴う
刑事特別法これの第十条と相応ずる
規定でございます。これを読んでみますと、「
国際連合の
軍隊がその権限に基いて警備している
国際連合の
軍隊の使用する
施設内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する
処分は、当該
国際連合の
軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は当該
国際連合の
軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。」第二項、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪に係る現行犯人を追跡して前項の
施設内で逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。」これが
内容でございます。要するに
国連の
軍隊がその権限に基いて警備している
施設内におきましては同意を得て行うか或いは承諾して行う、この点はこの前
行政協定に伴う
刑事特別法の一部改正
法案の際に御
説明申したのと全く同じ
趣旨でございます。二項の現行犯人を追跡して逮捕する場合、これも全く同じ書き方でございます。
第三条は逮捕された
国際連合の
軍隊の軍人
軍属を引渡す場合の
規定でございまして、読んでみますと、「検察官又は司法警察員は、逮捕された者が
国際連合の
軍隊の
構成員又は
軍属であり、且つ、その者の犯した罪が
議定書の
附属書第三項(a)に掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、
刑事訴訟法(
昭和二十三年
法律第百三十一号)の
規定にかかわらず、直ちに被疑者を当該
国際連合の
軍隊に引き渡さなければならない。」第二項は「司法警察員は、前項の
規定により被疑者を
国際連合の
軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに
事件を検察官に送致しなければならない。」これはつかまえてみたところが、向うの軍人
軍属である、而もその犯罪が第三項(a)に掲げるつまり第一次
裁判権が向うにある場合であることが明らかにな
つたという場合には、こちらで第二次
裁判権を
行使する前に、向うが第一次
裁判権を
行使するということになりますからして、身柄も直ちに向う側の当該
国際連合の
軍隊に引き渡す、かような
趣旨でございます。二項は、念のためにその引渡した場合の後の必要な捜査をして、警察官から検察官に
事件の送致をしなければならんということを明言しただけの
趣旨でございます。
只今の
規定は
行政協定に伴う
刑事特別法の第十一条に相応する
規定でございます。
次は第四条、これは向う側でつかまえられた者がこちらに来る場合、こちらで受取る場合の引渡の
規定でございます。
行政協定に伴う
刑事特別法の第十二条に相応する
規定がございます。第四条、「検察官又は司法警察員は、
国際連合の
軍隊から
日本国の
法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があ
つた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡を受けさせなければならない。」第二項は「検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が
日本国の
法令による罪を犯したことを疑うに足りる充分な
理由があ
つて、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その
理由を告げてその者の引渡を受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める
手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。」三項「前二項の場合を除く外、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取
つた後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。」四項「第一項又は第二項の
規定による引渡があ
つた場合には、
刑事訴訟法第百九十九条の
規定により被疑者が逮捕された場合に関する
規定を準用する。但し、同法第二百三条、第二百四条及び第二百五条第二項に
規定する時間は、引渡があ
つた時から起算する。」向うで
日本国法令の違反の罪で被疑者をつかまえます、こういうふうな者がつかま
つておるからという知らせがありました場合には、こちら側でこれを受取るわけでありますが、その身柄を受ける場合については、やはり人身の拘束でございますから、正式な逮捕状を持
つて行かなければならんというのが第一項でございます。若しそれが急速を要しましてすぐに逮捕状の
手続ができないという場合には、取りあえずその身柄をもら
つて来て
手続を緊急に執行するというのが第二項。三項はその他の場合の釈放でございます。四項は向う側でつかまえてこちらに引渡すまでの間に若干の時間のずれがございます。若しこれを
刑事訴訟法の
通り逮捕時間の起算を身柄を拘束されたときから起算いたしますと、四十八時間、二十四時間、七十二時間という時間がまたたく間に経
つて、結局違法の逮捕或いは逮捕ができないというふうな問題にな
つて参りますので、こちら側に身柄を受取
つてからこちら側の訴訟法に乗
つて来る。
従つてそれ以後の時間も全部訴訟法のこちらの
関係で動いて行くということを明らかにしよういう
趣旨でございます。
それから第五条は、
行政協定に伴う
刑事特別法の第十三条に相応する
規定がございます。第五条、「
国際連合の
軍隊がその権限に基いて警備している
国際連合の
軍隊の使用する
施設内における、又は
国際連合の
軍隊の財産についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押(差押状の執行を含む。)又は検証は、当該
国際連合の
軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員から当該
国際連合の
軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。但し、裁判所又は裁判官が必要とする検証の嘱託は、その裁判所又は裁判官からするものとする。」これは第十条の
関係で逮捕の問題が出ましたが、それと同じように今度は差押、捜索、検証等をなす場合の
規定でございまして、やはり同意を得て行い、又は嘱託して行うものとする、それらについての
行政協定に関する刑特法の十三条と同じような
規定をここに置いたわけでございます。
次は第六条でございまして、これは
日本国の
法令による罪にかかる
事件についての捜査の権限があることを明記した
規定でございます。
行政協定に伴う刑特法の十四条に全くこれと同じ
規定がございます。第六条、「
議定書により
派遣国の
軍事裁判所が
裁判権を
行使する
事件であ
つても、
日本国の
法令による罪に係る
事件については、検察官、検察事務官又は司法警察職員(鉄道公安職員を含む。)は、捜査をすることができる。」「前項の捜査に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他
刑事訴訟に関する
法令に定める権限を
行使することができる。」これは念のためかような
規定を置きまして捜査の権限があるということ、それからそれに関する裁判官の権限も同様訴訟法に則
つてやれる、こういうことを明らかにした
趣旨でございます。
第七条は、
行政協定に伴う刑特法の第十五条にこれと同じ
規定がございます。あちらの裁判所にこちらから証人が出頭する義務を
規定したものでございます。第七条、「
派遣国の
軍事裁判所の嘱託により、裁判官から
派遣国の
軍事裁判所に証人として出頭すべき旨を命ぜられ、又は
派遣国の
軍事裁判所において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。」二項「前項の者が、正当な
理由がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、一万円以下の過料に処する。」つまり向う側で
軍事裁判所を開く、それでその
事件の審理上、是非
日本人を証人として調べたいという場合にどういうふうなことになるかと言いますと、一応そちらにこちらの証人が
協力義務がある、向うの法廷に出て証言すべき義務がある、若し正当な
理由がなくしてこれに出頭しない、或いは宣誓若しくは証言を拒んだような場合には行政罰として過料に処する、こういう
趣旨でございます。これと応対に
日本国に来た場合にはどうなるかと申しますと、これは
刑事訴訟法にその旨の
規定がございますからそれで賄
つて行く、かような
趣旨でございます。
第八条は、今の
軍事裁判所の嘱託に基いて証人が出る場合に、どうしても言うことを聞かないという場合どうするかという勾引の
規定等でございます。で
行政協定に伴う
刑事特別法の第十六条にこれに相応する
規定がございます。第八条、「正当な
理由がないのに、前条第一項の
規定による裁判官の出頭命令に応じない証人について
派遣国の
軍事裁判所から嘱託があ
つたときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを
派遣国の
軍事裁判所に勾引することができる。」二項「前項の勾引状には、
派遣国の
軍事裁判所の嘱託の
趣旨を記載しなければならない。」三項「第一項の勾引状は、検察官の指揮により、司法警察職員が執行する。」四項「
刑事訴訟法第七十一条及び第七十三第一項前段の
規定は、第一項の
規定による勾引に準用する。」先ほど申した
通り、出頭命令がありましても嫌だと
言つて応じない場合があり得るわけであります。かような場合に、どうしてもその証人をその
事件の審理上必要であるという場合には、勾引状も出せるということも明らかにした
趣旨でございまして、二項、三項、四項はその勾引状の発付並びに執行等についての
手続規定を明記したものでございます。
第九条は、
行政協定に伴う
刑事特別法第十七条にこれに相応する
規定がございまして
協力に関する
規定でございます。第九条、「裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、
派遣国の
軍事裁判所又は
国際連合の
軍隊から、
刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があ
つたときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは引き渡すことができる。」つまり向うの取調べ
当局又は裁判所からこうこうこういう書類が是非審理上必要であるから貸してくれ、見せてくれという場合には便宜を図
つてやるという
趣旨でございまして、これは全く
行政協定の場合の十七条と同じ
趣旨でございます。
次は第十条でございます。これは
行政協定に伴う
刑事特別法の十八条にこれに相応する
規定があるのでございまして、
日本国の
法令による罪に係る
事件以外の
刑事事件へつまりこちら側では処罰できないけれども、向うで処罰するという
事件についての
協力規定でございます。第十条、「検察官又は司法警察員は、
国際連合の
軍隊から、
日本国の
法令による罪に係る
事件以外の
刑事事件につき、当該
国際連合の
軍隊の
構成員、
軍属又は当該
派遣国の軍法に服する家族の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。」二項「
国際連合の
軍隊から逮捕の要請があ
つた者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な
理由があるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索することができる。但し追跡されている者がその所に入
つたことが明らかであ
つて、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。」三項「第一項の
規定により
国際連合の
軍隊の
構成員、
軍属又は当該
派遣国の軍法に服する家族を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を当該
国際連合の
軍隊に引き渡さなければならない。」四項「司法警察員は、前項の
規定により
国際連合の
軍隊の
構成員、
軍属又は当該
派遣国の軍法に服する家族を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。」つまり逮捕の場合或いは押収、捜索をする場合、捕えた
あとの引渡しの
規定それから通報の
規定、なぜこういうふうな
規定を特に置くかと申しますと、
日本の
法令で罪を犯した
日本の
法令違反の場合は
刑事訴訟法がそのまま働いて来るわけでございます。ところが
日本の
法令でないものについての違反でございますからして、
刑事訴訟法はそのまま乗
つては来ないわけでございます。その
関係からそれと同様な
趣旨の
規定を特に必要とするので、かような
法令が出て来たわけでございます。
次は第十一条でございますが、これはやはりさような場合の任意捜査の
規定でございまして、
行政協定に伴う
刑事特別法の第十九条にこれと相応する
規定がございます。第十一条、「検察官又は司法警察員は、
派遣国の
軍事裁判所又は
国際連合の
軍隊から、
日本国の
法令による罪に係る
事件以外の
刑事事件につき、
協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。」第二項、「検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の
処分をさせることができる。」第三項、「前二項の
処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その
処分を受ける者に対して
派遣国の
軍事裁判所又は
国際連合の
軍隊の要請による旨を明らかにしなければならない。」第四項「正当な
理由がないのに、第一項又は第二項の
規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の
処分を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の過料に処する。」つまり先ほどは逮捕押収、検証、
捜索等でございますが、今度は参考人の取調べ、実況見分、書類その他のものの任意提出というようなものについての
協力でございまして、それらの点についても全く
行政協定に伴う
刑事特別法の第十九条と同じでございます。
最後は第十二条、
刑事補償に関する
規定でございます。
行政協定に伴う
刑事特別法の二十条にこれと全く同じ
規定でございます。第十二条、「
刑事補償法(
昭和二十五年
法律第一号)の
適用については、
派遣国の
軍事裁判所又は
国際連合の
軍隊による抑留又は拘禁は、
刑事訴訟法による抑留又は拘禁とみなす。」御承知の
通り、
刑事補償法の
適用につきましては、
刑事訴訟法の
規定による抑留又は拘禁の場合だけが
刑事補償の対象になります。ところが先ほど申した
通り、
派遣国の
当局でつかまえまして、その後身柄がこちらに引渡されたような場合、そしてこちらで無罪、免訴等の判決がありました場合には、向うに抑留、拘禁された場合には、この
規定がなければ、そのまま拘禁されつ放しということにな
つてしまいます。そこでその点を、若しこちらで無罪、免訴等になりました場合には、その期間を通算してすべて
刑事補償の対象にされる、かような
趣旨でございます。
附則は、公布の日から施行するということでございます。