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政府委員(位
野木益雄君)
只今委員長のお読上げになりました法案について、
法務省関係の事項を中心といたしまして、簡単に御
説明いたします。
法務省関係の条文といたしましては、まあ全部が
関係があるのでございますが、特に
関係の深いものは五条、六条、七条であります。これは固有の法務
関係の事項となるわけであります。そのほか二条、十条等も重要な
関係があるのでございます。
条文に従いまして申上げる前に、この
法律の概略の建前を御
説明いたしますと、一読頂きますれば直ちにわかります
ように、この法案は極く重要な事項については
法律で具体的に規定いたしておりますが、詳細なそのほかの事項につきましては、政令に委しておるということであります。これはこの法案の建前にな
つておるのでありますが、その
理由は、御承知の
ように
奄美群島の復帰はすでに去る八月八日のダレス声明によりまして、復帰のことが約束はいたされておるのでありますが、まだ復帰の時期も確定いたしておりませんし、又
アメリカ合衆国との間の
交渉も完了いたしておりませんので、詳細な
内容を規定し尽すということは困難なわけであります。他方若し
アメリカのほうで、一日から復帰をさせてやろうというふうな話合いがあつた場合には、これは我がほうといたしましては、成るべく速かにそれを受入れて行くということが必要なわけであります。そこで成るべく速かに、その受入れの措置が機動的にとられ得る
ようにということを考えまして、今度の国会に取急ぎこの法案を提出いたした次第であります。その
ような建前にな
つておりますので、法務
関係事項も、極く根幹的なこと
のみを、法文に列記したのであります。併しこれは
事柄の性質上、御覧頂きましても、ほかの条文の割合に比べまして、比較的多く入
つておるということがまあ言えるかと
思つております。これも当然のことでありますが、そういうふうな状態であります。
先ず第二条について申上げますと、この条文は大体復帰と同時に、我が国の
法律は原則として、奄美大島に直ちに
適用になる。但しいきなり
適用することに差支えあるものは、これは例外的に除外して、暫らくその事項を延期するということを規定したのであります。その第四項におきまして、但書がつけられておりまして、「但し、新たに罰則を設け、又は刑若しくは過料を加重することはできない。」という字句がありますが、これが
法律事項として目につくわけでありますが、これは現地の
法令を暫く
適用する場合に、制度が違いますので、当然必要とされる読替えの政令を設けるわけでありますが、その場合には新たに罰則を設け、又は刑、若しくは過料を加重することはできないということを、特に念のために規定したのであります。
それから第五条、これは簡易
裁判所の設立であります。これは当分の間名瀬市と徳之島の亀津という町に、簡易
裁判所を設置するということを定めたのであります。恒久的にこの
法律を
改正するという建前をとらずに、当分設置するというふうな建前をと
つたのでありますが、これは先ほど申しました
ように、この
法律自体が暫定的な建前でできておりますので、
裁判所の設置もこれになら
つて、一応差当り、この
程度のものを置くという建前にいたしたのであります。で復帰後なお研究の上、恒久的な設置について、改めて法案を提出いたしまして、御審議を仰ぐ予定であります。この簡易
裁判省の数でありますが、現地が御承知の
ように非常に交通の不便なところであります。島と島との交通も、冬になりますと、波が荒くてと絶えがちだというふうな実情もありますので、二つ
程度は是非必要であるというふうに考えております。
それから次に第六条でありますが、これはこの
裁判所の職員の定員についての特則を定めたのであります。今申上げました
ように、
裁判所の設立も暫定的なものとして置かれます
関係上、
裁判所及び支部の職員の定員につきましても、暫定的にこれを定めるというふうにいたしたのであります。
それから次に第七条であります。これは民事訴訟等に関する経過措置を定めたのであります。その趣旨は行政権分離後も、現地の
裁判所でなされました訴訟
行為、
裁判、処分、その他の
手続上の
行為は、刑事に関するものを除きまして、内地の
裁判所で、内地の
法令の相当規定によ
つてなされたものとみなすとして、その効力を認めたものであります。
ただ、例外的に、現地
裁判所の確定の
裁判でも、公序良俗に反するものは、これを除外するということを二項に規定したのであります。
なお刑事
事件につきましては、現地の
裁判所のした
手続上の
行為の効果を認めることといたしてあります。それでここには規定していないわけであります。勿論改めて内地の
法令に
従つて訴追するということは妨げないのでありまして、それは必要に応じて勿論やるわけであります。
で民事と刑事とこの
ように取扱を異にいたしました
理由は、御承知の
ように、現行の刑法第五条、民訴の第二百条なんかの建前を見ましても、大体この
外国判決については、刑事
裁判のほうはその効力を認めないという建前をと
つておりますし、民事
裁判のほうは
外国の確定
判決については、一定の条件の下にその効力を認めるという建前をと
つておるのであります。これは一方は主権の行使のことに直接非常に密接な
関係がある、そして個人の基本的人権のことにも非常に
関係があるというのに対して、一方は私人権の
権利の確定というふうな色彩が非常に強いというふうな、いろいろな
理由があることと思いますが、そういうふうな
現行法の建前にならいまして、こういうふうな取扱にするのが適当ではないかというふうに考えた次第であります。
それから次には第十条でございます。これでこの必要な経過措置がとられるということの委任政令を定めておるのであります。法務
関係のいろいろな諸法規の経過措置、経過規定というものは、これで政令によ
つて規定されるわけであります。
以上簡単でございますが、
説明を終ります。