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1953-11-19 第17回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月十九日(木曜日)    午前十時三十六分開会   —————————————   委員の異動 十一月十日委員加藤武徳辞任につ き、その補欠として愛知揆一君議長 において指名した。 十一月十三日委員赤松常子辞任につ き、その補欠として小林亦治君を議長 において指名した。 十一月十六日委員愛知揆一君及び小林 亦治君辞任につき、その補欠として加 藤武徳君及び赤松常子君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            加藤 武徳君            楠見 義男君            中山 福藏君            赤松 常子君            一松 定吉君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   説明員    法務省民事局長 村上 朝一君    法務省刑事局長 井本 台吉君    大蔵省銀行局特    殊金融課長   有吉  正君   参考人    東京衛生局長 與謝野 光君    東京衛生局予    防部性病課長  小原 菊夫君    警視庁防犯部長 養老 絢雄君    警視庁防犯部保    安課長     上村 貞一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (売春対策に関する件)  (保全経済会等特殊金融機関に関す  る件)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは只今から本日の委員会を開会いたします。  一応本日、明日の予定を申上げますと、本日売春対策に関する事項と、保全経済会に関する事項との説明の聴取、質疑を行いたいと思います。明日は司法制度に関する件、主として最高裁判所の機構、運営に関しまする件、並びに最近の治安状況について、それぞれ最高裁判所並びに公安調査庁から事情を聴取したいと思います。本日売春対策に関する件で出席されておりますのは、東京都の衛生局長與謝野君、性病課長小原君、警視庁防犯部長養老君、保安課長上村君、以上の諸君が出席しております。先ず東京都並びに警視庁側から説明を聴取することにいたしたいと思います。
  3. 與謝野光

    参考人與謝野光君) お許しを願いまして、東京都の衛生局の行なつております売春関係性病対策につきまして御説明申上げます。  お手許資料を差上げてございますから、それにつきまして申上げたいと思います。東京都の衛生局におきましては、性病予病の諸対策を実施いたしているのでございますが、その中で本日はお申起しによります売春取締関連のありまする面を申上げてみたいと存じます。最初に、売春関係性病対策を実施いたしまする法的根拠といたしましては、性病予病法という法律が御承知のようにございますので、これに基きまして、現在におきましては関連仕事をやつておるのでございますが、最初強制検診の問題でございます。これは性病予防法の十一条に、常習売淫の疑ある者につきまして、都道府県知事が、強制検診をすることができることに相成つておりますので、この条項を用いまして現在のところでは性病予防対策を実施いたしているわけでございます。御承知のように、あとから警視庁からお話がございますと思いますが、都内各所にいわゆる売淫行為常習する者が相当あるわけでございまして、その業態もいろいろございます。その中で第一にいわゆる街娼というものが相当多数おります。特に都内駐留軍の基地の周辺地区等に多数見られるわけでございますが、これらのいわゆる常習売淫者に対しましては、現在のところ次のようなことをいたしております。第一には、性病課職員が現場に赴きまして問答その他によりまして常習売淫疑いありと判定いたしました者に対しまして、法の十一条に基きまして検診命令を出すことをいたすわけでございます。実は今年の春の、つまり昭和二十八年度までは同時に車を持つて参りまして、これらの街頭で発見されました街娼と申しますか、これらに対しまして、即日即刻車に強制連行をいたしまして、病院に連れて参りまして、健康診断を実施するという方式をとつて参つたのであります。これにつきましては、法制意見局から意見が出まして、法の十一条というものは検診命令であつて強制連行して検診する権限を与えてないというものがありましたものですから、私どもといたしまして非常に困りまして、その以後におきましては、現状においてはこれらの街娼に対しまして、その場で検診命令書を出すことはかわりはございませんが、翌日乃至或いは翌々日病院に来て検診を受けるようにということで命令を出すことにいたしてあります。これは占領下においても、たびたび当時の法務局の人に私も呼ばれて怒られたのでありますが、法律上の常識として、四十八時間くらいの余裕というものは与える必要がある。強制連行即刻検診するということは人権蹂躙であるということでございましたので、今年の四月からは即刻検診することを取やめた次第でございます。これによりまして、従前と違いまして、翌日本人が進んで病院、或いは診療施設検診を受けに来る率が非常に下つて参りました。私どもの卑見といたしましては、やはりこういう手ぬるいやり方では殆んど実効が期せられない実情に現在のところございます。何らか私ども立場といたしましても、これらのいわゆる散娼と申しますか、街娼と申しますか、これらの人たちに対して性病から彼女たちを守り、又客と申しますか、買淫行為をいたします者に伝播することを防ぐには、今の法の十一条では十分のその意味における取締りができかねておりますという実情でございます。  次に、東京都においては、あと警視庁からお話があると思いますが、売春等取締条例によりまして、警察常習売淫疑いを以て挙げられて参りました婦人に対しまして、やはり法の十一条で検診をいたします。この場合も大体人権蹂躙にならないように、本人の同意を得まして検診をする建前をとつておるのでございますが、各警察署を私どものほうの職員が廻りまして、警視庁と、或いは三多摩におきましては三多摩警察署でございますが、国警、或いは市の警察署と連携のもとに検診を行なつておるわけでございます。  それから、その次には東京都におきまして、占領後に起つた新らしい仕事は、進駐軍との場合に特に多いのでございますが、駐留軍関係の兵隊さんに性病をうつした疑いのあるという報告駐留軍から参りましたものがありまして、それは数にしますと、月に百、百五十くらいのこともあつたかと思うのでございますが。コンタクト・トレーシングと申しまして、接触者調査と申しますか、駐留軍担当部局から私の局に通知書が参りまして、それによつてその相手とおぼしい女を探しまして、これに検診をいたすわけでございます。これは非常に、これもむづかしい仕事であつて、厚生省のほうではこれを認めておりませんです。併し実際には環境上やるざるを得ないので、私としてはいたしております。これは性病予防法の十条には、医者の届出があつて接触した疑いのある者については検診をすることができるわけになつておりますが、駐留軍報告書というのは診断書でありませんので、性病予防法の十条に基く検診は法的にはできない。従つてどもといたしましては非常に苦しいのでございますが、これは駐留軍の非常な要望でもあるし、又接触者といわれるくらいで、相手性病をうつしておりますので、非常に罹病率も高いグループでございますから、これについては非常に困難な事情でございますが、納得づくで今日まで本人検診を続けております。これについては私どもといたしましてはやはり駐留軍がおります間は法の十条でなく、やはり性病予防法なり、関係洪律を改正して頂いて、私どもとしてやはり強制的に検診ができる道を開いてもらいたいというのが私たちの希望でございます。併し現状におきましては、毎月相当数接触者調査によります街娼検診をいたしております。これは非常にむづかしいことでございまして、その報告書には目の色が黒い、髪の毛がちぢれて、背丈はどれくらい、ニツク・ネームはこういうことらしいということで来ますので、相手を探すのに困難でございますが、この仕事は続けております。  次に都内にありまする日本人相手のいろいろな売春常習グループでございますが、これはいろいろあると思います。第一には上野の山その他都内各所におりまして、日本人相手とするいわゆる街娼、或いは昔の言葉で言えば密娼というグループでございます。これらは従前はやはり駐留軍のMPの手で警視庁に挙げて来られて、それをこちらが検診するという恰好をとつてつたのでございますが、今日におきましては、これらのグループは大部分婆を消しまして、何と申しますか、しもた屋であるとか、或いは家を借りたりしまして、つまり街頭から家の中へかくれておりまして、余り銀座街頭とか、昔のように日劇の廻りとかいうようなところに多数の街娼が出ておつたということはなくなり、ポン引が連れて行くとかいろいろなことで家の中に入つたグループがございます。これについてはなかなか私どもとして現在私ども直接性病予防法に基いて検診するということが現実には非常に困難でございます。街頭におらないし、私ども職員が少のうございますし、とてもなかなか困難ではございますが、警察署の協力を得まして、なおまだ浅草公園周辺とか、或いは池袋附近盛り場とか、或いは新宿区の一部とか、明らかに常習売淫人たちが多少集団的に多数おりますような地区につきましては、やはり法の十一条を以ちまして検診命令を発して強制検診をやつて参りましたのでございます。これもこの年の四月以降におきましてはやはり即刻連行ということをいたしませんで、検診命令書をやはり手交りるという行き方に変つております。この場合には殊に翌日、翌々日病院へ出て来る人が非常に少いのでございまして、この方法では我々の与えられた責任を果しにくいという現状でございます。  次にいわゆる指定地と申しますか、まあこの頃俗に赤線地域といいますか、これらの地域があるわけでございまして、都内には十七ケ所になると思いますが、三多摩を含めましてこのくらいの数の地区がございます。これらにつきましては、現状におきましては、いわゆる風俗営業法に基きまするカフエー業という仕事をいたしておるわけでございます。同時にまあ東京では軽飲食店という免許も持つておるところであります。そこに働く婦人が自発的に売淫行為を営むという格好に今なつておるわけでございまして、我々といたしましては別にこれらの許認可関係衛生局ではないわけでございますが、実情においてはこれらの地域が確かにあるわけでございます。これらの地域性病蔓延のもとにならないようにするべく、対策といたしましては従前とも御承知のようにやはりいわゆる法に基きまする健康診断、俗に検黴という仕事があつたわけで、明治六年から長く続きましたのでございます。技術的にはやはり官憲の手を以ちまして定期的に健康診断をし、治療することが最も効果的であるとは思いますけれども性病予防法ができまする際に、私どもはよくわかりませんが、性病予防法強制検診を謳うこと自体が、これらの業態を国家が存在をはつきり認めたことになる虞れありということで落したということでございますが、まあ落す落さないは別といたしまして、やはりそこにおきまして売笑行為が行われておるわけでございますので、性病予防立場から放つて置くわけには行かない。併し法的には何もない、而も定期検診をやることは認めたことになるからいけない、法の十一条を毎週出して検診することは理論上できないわけではないわけでありますけれども、そういうふうにして行くことは相成らんということでございますから、現情ではこれらの地区にそれぞれの診療所を設けさしまして、自発的に一週間に一回乃至二回、所によつては三回のところもあるようでありますが、これらの経営する診療所の医師の手によつそ健康診断治療をやらしております。で、私どもといたしましても、その診療、或いは検診技術の低下を恐れますので、年に二回、或いは三回になるときもあると思いますが、法の十一条を適用いたしまして健康診断をやつておる。我々が指導検診と言つているわけでありますが、私ども職員の手で、春秋大体二回ぐらいは健康診断をやるということで現在のところ及んでおるわけであります。  次に、まあ売春の虞れのあるものといたしましては芸者地区、或いはダンスホールといつたようなものもあるかと思います。これらについてはその業態の第一義的の仕事は別に売春でもないのでございまして、現情の性病予防法ではこれまで責任を負うわけに行きませんので、東京都の実情といたしましては、芸者地区につきましては年に、これも能力の関係もありまして一回だけ、いわゆる指導検診というものをいたしておりまして、あとはやはりいわゆる特飲街と同様に診療所を設けさして健康診断治療をやはり週一回乃至二回いたしております。ダンスホールにつきましては、これは終戦直後花柳病予防法特例にはダンサーはあつたのでございますが、その後の性病予防法にはダンサーという字が消えております関係もあり、今のところ私どもといたしましては特別にダンサーであるからという検診はいたしておりませんです。  そのようなわけでございまして、性病予防の観点からいたしますときには、現状性病予防法のみを以ちましては万全の対策は非常に第一線としては講じにくいという実情にございます。以上簡単でございますが御説明申上げます。何か御質問ございましたら喜んでお答えいたします。
  4. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 引続きまして警視庁側から説明を聴取いたしたいと思います。衛生課長から何か補足の御説明ございますか、性病課長から……。
  5. 小原菊夫

    参考人小原菊夫君) 特別に御説明申上げることはないのでございますが、罹病率について局長説明を補足したいと思います。  最近一般国民性病罹病率が低下するに並行しまして、売淫婦たち罹病率も非常に低下しております。先ず街娼について申上げますと、二十五年あたりは一六%ぐらいであつたものが、最近では一一%に下つております。リツセルマン、黴毒のほうの血液検査のほうの成績から見ましてもこれは明らかでございまして、最も高かつた二十三年あたりは四〇%ぐらいだつたのでございますが、最近では一七%ぐらいに低下しております。又いわゆる赤線地区におきましても、最も高かつた二十三年、四年あたり罹病率一七%を上廻つたのでございますが、最近ではそれが五%ぐらいに下つております。又黴毒のほうの血液検査による成績を見ますと、二十三年には五七%でございましたのが、最近では二十七年二五%強、こういうふうに下つておるような状況でございます。罹病率についてのみ御説明申上げます。
  6. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 委員長、一応説明を聞いてからですか。
  7. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 一応関連しておりますから、警視庁側を聞きましてから御質疑願いたいと思います。
  8. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 売春取締を通じまして、警視庁管内売春状況につきまして知り得た状況等を御説明いたしたいと思います。要点は謄写版にいたしましてお手許にお配りいたしたと思いますが、その順序を逐いまして私から若干売春につきまして敷衍しつつ申上げたいと思います。  警視庁管内赤線区域青線区域と言いましても、いわゆるそういう所でございまして、公式にそうした区域を設定したとか、乃至はそれを公式に認めて特殊な措置をとつておるということはございません。通常さように申されておりますので、それに準じましてその状況を申上げたいと思うのでございますが、旧公私娼地域につきましては、公娼廃止等占領軍の指令によつたのでございますが、なお且つそうした場所の特殊な従来の沿革等に鑑みまして、終戦直後二十一年の十一月に次官会議の決定があつたのでございますが、その線に沿つて特殊飲食店カフエーという名前で転換いたしまして、そういう名前普通特殊飲食店と申されておりますが、十三カ所管内地域が残つておるのであります。そうした場所におきまして、営業者従業婦との収支の配分状況等につきまして明確にするということを申上げる資料を持たないのでございますが、我々が取締り等を通じまして承知したところでは、おおむね収入の五分々々乃至は従業婦が四分で営業者が六分というふうな割合いで配分しておるようであります。その従業婦の食費とか住居費厚生費その他一切は営業者負担ということにいたしておるようであります。こうした地域業態は非常に定着いたしておりまして、その点いわば警察といたしましても比確約よく知り得る場所なのでございますが、そうした場所以外に非常に終戦後の特殊の社会問題といたしまして売春状況がたくさん行われておるのであります。勿論その売春行為に伴いまして、そうした売春場所を提供するもの、或いはそうした売春婦を自己の支配下におきましてこれを管理するというふうないろいろな悪質な行為が行われておるのでありますが、そうした状況は大体都内の新橋、有楽町、新宿、渋谷、池袋、王子、上野、坂本、浅草木所等盛り場に当然行われております。非常にそうした場所におきまして、我々が取締り上最近承知したところでは、そうした記録を読みましても、我々として痛憤おくあたわざるような悪辣な婦女管理、搾取というものが行われている事態承知したしておるのであります。  それから警視庁取締り方針でございますが、これは限られた人員を持ちまして我々としては取締法規の執行につきましては、日々鋭意努力をいたしておる所存でございます。終戦直後以来の社会経済事情、或いは一般道義感等の変化によりまして、勿論こうしたものがだんだんとよくなつたと思つておるのでありますが、我々といたしましても取締りについては相当寄与し得たという点を自負いたしております。警察取締りを以てして非常に社会の顰蹙を買う、人権の尊重に欠くるような事態を一挙になくし得るものとはなかなか考えられないのでありますけれども、我々としては少くともそうした事態が拡まつて行くということを防ぎとめることにまあ専心しているというふうな状況になつております。警視庁本庁係官及び警察署保安係というのがございまして、本庁衛生係保安係等人員は勿論限られております。それでも大体最近月に数百件、年間八千件、九千件程度売春関係事件を検挙いたしたのでありまして、係官としてはもつぱらこれに専心して奔命に疲れる程度努力をいたしております。その大体取締方針でございますが、売春関係取締法規はいろいろございまして、法律では少年者売春といいますか淫行を禁止する児童福祉法がございます。それから同じく婦女子等を売買することを周旋することを禁止しております職業安定法、それから刑法の常利勧誘淫行勧誘というふうな刑法法規、それから風俗常業取締法及びそれに基きまする東京都の条例がございまして、これによつて表顯的なものを取締る。それから直接には、昭和二十四年に制定せられたのでございますが、東京都に売春等取締条例というのがございまして、これに基いて取締を実施いたしているのであります。それぞれ取組りの状況、結果等につきましては、お手許にお配りいたしました資料に書き上げたのでありますが、こうした諸法規を活用いたしまして、風俗営業等に対しましては、時間外営業取締り、それから店舗外におきまして悪質な客引きをすることの取締り、及び従業者名簿等をよく整理させておきまして、確実にその状況を知るようにいたしている、さようにいたしております。  それから先ほど言い落しましたが、勅令第九号、婦女売淫をさせる者等の処罰に関する勅令というのがございます。これは法律に準じた一つの法親でございますが、これによりまして従業婦の雇い入れに際して前借をさせ従業婦身体拘束するというもの、それから従業婦のこれは身体拘束になるのでございますが、衣料、家具、調度等購入斡旋をいたしまして、それで束縛する、外出等について監督をつけるとか見張りをする等の行為、こうした点、拘束をするものと認められるもの及び従業婦の雇い入れに際しまして周旋人を介在させる等のものに対して、取締りの重点を置きまして取締つてあります。ただ先ほどもちよつと触れたのでございますが、一般的に取締るというのみでは到底効果のある結果が得られませんので、我々としては非常に重点的に一定の地域に対して継続的な取締りを実施するとか、或いは特定の態様を持つた売春関係犯罪に対してこれを取締るという方途によりまして、年間を通じて、毎年そうした取締りを以ていたしているのであります。それから売春行為関連しまして、麻薬、或いは覚醒剤等犯罪関連して多く発見せられるのでございますが、こうした点も併せまして、取締りを強力に進めているのでございます。  性病等の問題につきましては、先ほど都の衛生局長からお話がございましたので、私から改めて申上げることはいたしませんけれども、特に青少年問題に関連いたしまして、年少者売春を行わせるというふうな事態がときどき発見せられまして、そうした意味からして、この点については我々も十分関心を以て取締りをいたしている状況でございます。  非常に雑駁でございますけれども、お手許にお配りいたしました資料によりまして、概要警視庁といたしましての取締り状況及びそれを通じて知り得た状況等お話申上げた次第であります。
  9. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 保安課長から何か御説明がありますか。……最近の事例等について上村警視庁保安課長
  10. 上村貞一

    参考人上村貞一君) 保安課長でございます。  非常に売春が潜在的に行われるようになつて参りました。特にこの春頃から非常に得意な管理形態が出ているのじやないか、暫くこれを見ておりますと、浅草国際マーケットの中に非常に売春婦がたくさん朝鮮人によつて管理されておるというような事実が発見されまして、あそこは特異な思想状況を打つた所なので、警備実施の上からあそこへ手を入れてみたのであります。非常に情報を察知されまして、大よそ三百名くらいの売春婦があのマーケットの中に五人、七人というふうに分けられて管理され、これが各所の旅館に出て売春をやつておる、情報が洩れた関係大分売春婦には逃げられましたのですが、その当時逮捕状を持つておりましたので、そこで管理した人たちを漸く逮捕ができたのでございます。ところがそれを更に売春婦について追及してみますと、殆んどこの中に非常な悪質な営利誘拐が出ておるのであります。これはそこの管理者の一人である朝鮮人を調べてみたのですが、宮城県下から曾つて自分がその辺でどぶろくを売つたという顔を利用いたしまして、そこで近所の女を、東京へ行くといい所があるからというので誘い出しまして、自分で汽車へ乗せて連れて来て更に自分がこれと関係いたしまして、あと自分売春婦として使つてつた。たまたまその一人が脅迫に堪えかねて家に逃げ帰つた、逃げ帰ると更に自分の弟をその実家へつかわして更に脅迫をして金を取つておる。こういう典型的な営利誘拐事件が出て参りました。非常にこういうのが多いのじやないかというので、その後非常に営利誘拐を中心に只今追及中であります。つい最近の事例といたしましても、これは立川から先日連れて参りましたのですが、これは十六才未満の婦女ばかり五人を営利誘拐いたしまして、いずれも立川のパンパン・ハウスに管理してこれを従事さしておる、一番の年少者には十四才というのがある。つい最近の事例といたしましてはこれは埼玉県で管理しておつた実例でありますが、これなんかを見ますと、非常に顔のよい男を揃えて女を先ず釣り上げる、釣り上げた後に更に関係をつけて自分の所へ持つてつてしまう。そうして監禁をし、場合によつては暴行も加えてこれを売春婦として管理しておる、これから搾取を継続してやつている。こういうようなのが続々出まして、本年になりましてから大体七、八件起訴になつております。只今着手中の事件が三、四件ございます。引続きこうしたような悪質な婦女営利誘拐、而もそのあと暴行、脅迫、監禁というような事実が密娼のうちから大分発見されております。これの追及に只今専念中であります。簡単ですが以上であります。
  11. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これで都側並びに警視庁から一応の御説明を聴取しましたので、これから順次御質疑を願います。
  12. 赤松常子

    赤松常子君 私最初與謝野課長にお伺いいたしますが、先ほどいろいろ御説明がございまして、今の十一条の取締はどうしても手ぬるいということを言われましたのですが、特に私どもいろいろな場合につきましてそうだと存じております。こういうことに対しましては、今散娼が街でつかまるのでございますけれども、集娼地区に対しましては絶対に手が届かないという実情でございましようか、その辺をもう少しお聞きいたしたいと思います。
  13. 與謝野光

    参考人與謝野光君) 手が届かないという御質問はどういう意味かわかりませんのですが、例えば検診ができないかということでございますか。
  14. 赤松常子

    赤松常子君 そうです。
  15. 與謝野光

    参考人與謝野光君) これは私どもの能力の点から、重点的に現在散娼にはほかの方法で検診できません。で、そちらのほうへ力を注いでおりますが、それでも私どもの今の能力では人件費については国の補助金もございませんので、全額地方費でございます関係もありまして、まあ夜中の徹夜仕事でありますから、週に一回やるというようなことにして月に四回から五回、それに追われておりますので、いわゆる集団私娼のほう、或いは芸妓のほうにつきましては私どものマキシマムの能力で先ほど申上げましたように年に十七回やつとというところでございます。それから又四十八カ所くらいでございますか、いわゆる集団の芸妓のほう、これなどもやはりこれは一回やつとでございます。それでも週にやはり平均して一回が二回やりて、ですから今のお話のように二回やつているわけでございますが、それ以上殖やすには人を殖やさないとできない。別に抵抗があるがらできないということは全然ございません。能力の問題でございます。
  16. 赤松常子

    赤松常子君 だんだんよくわかつて参りましたけれども、いつも言われますことは、末端で働くほうの人数が少い、予算が不足しているということでございますが、それのみと解釈していいのでございましようか。私の恐れておりますのは、集娼地区にそういう手を延ばすということに対して何か暴力的な圧迫とか、或いはいわゆる業者の組織、そういうことが実際あるんじやないか。それに対して権力が及ばないという実情があるのではないか、そのところをお伺いいたしたいと思います。
  17. 與謝野光

    参考人與謝野光君) その点でございますが、御承知のように昭和二十三年でございますかまでに、全部こちらの手で毎週一回集団私娼につきましても検診をいたしておりましたわけでございます。これが性病予防法ができましたときになくなりましたので、いわゆる検黴という制度がなくなりましたわけでございます。その後大部分の県におきましては、やはり実情から法の十一条というものを毎週適用いたしまして、そうして従前通りいわゆる役人の手で検診をやつてつた所が少くないのでございますが、これについては先ほど申上げましたように、厚生省から公文書を以ちまして毎週一回定期的に役人の手で検診すること自体がこれらの業態を黙認することになるので、やつてはならないという公文書が来ておるわけでございますから、国の方針従つてつておるだけのことでございまして、いつでもやることは少しも支障はございません。その意味においてこれらの業界から我々が制肘を受けて検診しないということは全然ございません。いつでもやります。それから問題が起りました場合、例えばいろいろ都下でも問題があつた所が二、三あります。そうしますと即日でも翌日でも集団私娼に対しましていつでも検診をいたしておりますから、その点は少しも問題がありません。国の方針がそういうことになつておるわけでございます。
  18. 赤松常子

    赤松常子君 その次にお伺いいたしたいのでございますが、本当に検診を受けなさいという命令だけで、非常にそれから先には強制力がないということがございますが、命令書を出して実際来る人は非常に少いということでございますが、それはおよそどのくらいでございましようか、又命令書を出す人も随分少いと思うのでございます。ですから実際どのくらいの人が検診を受ける率になつておりますか。
  19. 與謝野光

    参考人與謝野光君) 只今申上げました指導検診と申しますか、集団私娼に対します検診は一〇〇%近く受けます。というのは氏名がわかつておりますのですから、受けない場合には法の二十六条の処罰規定がありますので、処罰されることになりますが、ところが検診命令書を出しましても、街娼だけは本当の名前も何もわかりませんのですから、向うが逃げてしまえば処罰すると言つてみましても、どんな者であつたか、覚えもありませんから実際には処罰もできない。そして何の何兵衛だかわからないということで逃げてしまうということで、現状におきましては残念でございますが、二%か三%しか受けに来ない。百枚の検診命書令を、例えば立川なら立川で出しましても、まあ吉原まで来るのは三人か、四人ということでございます。
  20. 赤松常子

    赤松常子君 こういう罹病した人の収容施設のその収容能力と、実際収容していらつしやる数の割合は……。
  21. 與謝野光

    参考人與謝野光君) お答えいたします。従前東京には四カ所の性病病院がございました。吉原、洲崎、新宿、八王子、その後新宿は戦災で焼けたわけでございますが、洲崎も転換いたしました。ところが終戦後は進駐軍の狩込みというものがあつたときには、在院の患者数が千人を突破するときもあつたわけでございます。従つて伝染病院の一部を転用するということもやつたのでございますが、現状は先ほど申上げましたように、いわゆる強制狩込みをその後日本拠の手でやつておりまして、この四月までというものは狩込んだときには百人というようなこともあつたのでございますが、現状は先ほど申上げましたように、この四月から法務省の意見もありまして、命令盡を渡して出頭してもらう形に変えてからは、検診を受ける人が非常に少くて、吉原病院の平均の在院者数は収容施設能力の二百名に対しまして先ず十名内外ということでございまして、殆んどがら空きになつておるような次第でございます。
  22. 赤松常子

    赤松常子君 次に防犯課長にお伺いしたいのでございますが、先ほどいつも警察当局が取締りに際しては人手が足りない、予算が少いということで非常に検挙がむずかしいとおつしやつているのでございますが、それのみではないように私思うのでございます。というのは、少しうがち過ぎたことかも知れませんけれども、従来の長い歴史から見まして、集団的に業者がおりますそういう地域のいわゆるボスと警察当局とがどうもいろいろな関係から、そういう問題に対してはつきりした態度がとれないというような忌わしい関係があつたことはいろいろ知つているわけでございますが、そういう何か経済的に、例えばそこの警察庁舎を作る場合にその地区の有力者の寄附を仰ぐから、警察の権力というものがはつきりとさせ得ないという場合が随分あるのでございますが、先達つても私静岡県下に参りましたときにも、何か警察当局がやはりそういう業者の組合の設立に或いは助力したとか、或いはその顔役になつているとか、顧問になつているとかいうことがあつて、非常にそういう点ににぶる場合が随分あるのでございます。そういう点はあるとお思いでございましようか。その点はどうでございましようか。
  23. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 先ほど私の申上げましたのは言葉が足りませんで、取締りに当る人員が少い、予算がないために十分効果は期し得ないというようなふうな御印象を頂いたとすれば、私の意図したことではないのでございまして、我々は人員としては多いほど勿論仕事は伸びるのでございますけれども、現在の人員を以て最善を尽して相当の効果を挙げているのじやないか、まあ自分たちの考えている状況を申上げたつもりであつたのでございます。  それから取締りをいたします上に、特殊の地域に対しまして何らかの制約を受けるといいますか、社会的な圧力乃至は個人的な圧力等がありはせんかという御懸念でございますが、警視庁におきましては絶対にその点はございません。又警察取締対象にするようなこの業態といいますか、そうした業態となんかこう特殊のつながりが生ずるような事態というものは、極力この点は警戒いたしておりますから、さような事態が生じていないということははつきり申上げ得られると思います。
  24. 赤松常子

    赤松常子君 大変御活躍頂いているということもよくわかるのでございますが、実際数字を調べて見たところによりますと、ほかの犯罪は検挙件数が殖えているのでございます。なお最近売春取締については昭和二十五年、二十六年、二十七年とだんだん数字が減つている事実が上つているのでございます。二十五年は七千五百人、二十六年は七千百人、二十七年は六千八百人というふうに売春関係した問題が非常に減つているということはどういう原因か。むしろこういう売春区域がだんだん殖えている、そういうところに巣食つている人が殖えているにもかかわらず、取締件数は減つているということは何を意味するのでございましようか。
  25. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 今取締の件数の数字によりまして、むしろ売春行為が多いにもかかわらず、むしろ警察の手が鈍つているのじやないかというような御意見でございますが、これは一つのまあなんと申しますか、取締上のいろいろ技術がございまして、二、三年前はいろいろまあ占領軍等の共同行動等もあつたのでありますが、一斉の狩込をするということをいたしておつたのであります。それか今日はいささかそうしたまあやり方が果して警察権のまあ行使として安当かどうかというふうな問題がございまして、今日はそうした一斉に全部網羅的に検挙して行くというふうな方法を講じておらないのであります。性病予防法十一条に基きまして従来いたしておりましたそうした狩込がどうも適当じやないという解釈がございまして、そうしたことをやめております。そうしたまあ技術上の問題等が結果いたしまして、事実御指摘のように若干検挙件数が滅つて来ているということは我々としても認めるのでございますが、そのためにまあ非常に警察の手が及ばずして一層蔓延しているということはなかろうかと思うのでございます。  それから今一つはその取締りました事件の内容でございますが、内容からいたしますと、単純に街頭売春婦を一人検挙いたしましても、これ又売春関係犯罪者として一件の検挙になりますが、我々はむしろ先ほど申しましたように、そうした売春婦管理するといいますか、自分支配下におきまして、そうしたものを搾取しているような、そうしたより高度の悪質な売春関係をいたしました犯罪というものに主眼を置きまして、そうしたものを重点的に取締るようにいたしているのでございまして、そうした点を内容的にお考え頂きましたならば、むしろそういう意味の悪質なもののむしろ検挙数が殖えているのじやないか、かように我々としては考えております。
  26. 赤松常子

    赤松常子君 検挙数が殖えているとおつしやつておりますけれども、今日来ました資料の中での事件の統計では却つてつているのじやありませんか。昭和二十七年と三十八年と比較いたしまして、人員数は百五十三人から二十八年は百二十一名に減つておりますし、件数も百四十六件から百四件に減つているじやありませんか。この矛盾はどうしたものですか。
  27. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 今御指摘の表はいわゆる赤線区域でございます。我々は赤線区域というふうなあれを設けておりませんけれども、いわゆる先ほど申しました特殊飲食店街に対します取締り状況を書きました表でございますが、これは二十七年と二十八年を比較いたしまして計上しておりますが、この数は二十八年の九月末までの数字でございまして、年間を出しておりません。従いまして二十七年と比べて少くなつておるのでございますが、勿論そうした犯罪が事実少くなつて警察取締件数が減るということも勿論あるのでございますけれども、今年度の取締りを終了せねばこの数字はわかりませんけれども、少くともこれでは中途になつておりますので少くなつております。
  28. 赤松常子

    赤松常子君 その点わかりました。もう一回、今回はここ二、三年の検挙数の資料を頂きたいと思つております。  それから防犯部長にもう一つお尋ねしたいのでございますが、いつも言われますことは、取締りの際どうも人手が少いから取締ることがむずかしいとおつしやつております。そういう点で考えるならば、このばらばらで働いている敵娼を追つかけるよりも、一カ所に固まつている集娼区域のほうに取締りの対象をおくことが、取締るほうからやさしいと思うわけでございますが、併し実際の取締りは散娼ばかりに重点を置かれて、集娼窟には余りに手入れはしていないという事実がございますが、そういう点はそういう取締りの手が少いとおつしやるのと少し矛盾はしないでしようか。
  29. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 事実この集娼、散娼いずれにいたしましても我々としていずれかに取締上手心を加えるというふうなことはいたしておりませんけれども、我々としてもそうした地域売春が行われておることは決してこれを目をつむるということはいたしておりません。ただ非常にこれが放置すればどんどんと拡がつて行くものでございまして、そうした集娼地域が、従来沿革のある地域がこれが更に殖んて行くというふうなことは、極力警察としましてもこれはまあ防止するように努力いたしておりますが、一般にそれがまあ拡がつて行く。これをむしろ何と言いますか、抑えるのに今のところ精一ぱいだ。むしろ社会的に見ましてもそうした散娼といいますか、特定の地域以外にどんどんと拡がつて行くもののほうに非常に悪質なものがあるように、むしろ非常に、先ほど保安課長が申しましたように潜在、潜行的な、表面を隠れて非常に悪質な行為関連して行われておるというような状況がございまして、どうしてもまだそのほうに重点が行くというふうな状況になつておることは事実でございます。併しと言つて集娼地域に対しましてもこのお配りしました資料にもございますように、司法処分、行政処分併せまして年間相当、勅令九号違反、児童福祉法違反、職業安定法違反、或いは刑法淫行勧誘、営利勧誘等の犯罪に対しまして仮借なき取締を実施している所存でございます。
  30. 赤松常子

    赤松常子君 実は昭和二十四年に東京都の都条例ができた当時に、都会議員の我が党の元島議員が質問いたしましたことに関連いたしまして、その当時田中警視総監がこういう答弁を書面で回答しておられるのであります。つまり元島議員はこの条例の作成に際しまして警視総監はどういう態度で行くつもりであるか。つまり公娼制度及び集娼窟に対してこれを徹底的に絶滅するという強い意思をもつておられるかどうかということに対しまして、警視総監の答弁は、これは国が売春取締法を作るまでの暫定的処置であつて、空白時の取締条例であるから、先ず緊急の処置としてこの露骨な街頭の売場を取締り、そうして順次公娼制度の根本の巣をついて行くというような答弁をしておられるのであります。けれどもこの答弁がございまして以後も、ずつと取締り状況をいろいろ見ていますと、一方の集娼窟には手を入れていらつしやらなくて、今申上げましたような散娼ばかりを追つておいでになるという結果を私耳にする次第でございますが、今十七カ所ございます集娼窟は昔の公娼制度と全く変らない遊廓に等しい現実になつているのでございますが、これは却つて逆に公娼制度を認めてそこに追い込んで行くというような結果になつていると思うのでございます。私は警視庁当局が警視総監が答えられたこの趣旨に副つて今なおやつていられるとは思はない。こういう点に対して、集娼窟に対してのもつと徹底した取締りを願いたいのでございますが、何かそこにどういう隘路があるのか、せつかく声明しておいでになることと現実とがどうしてもマッチしていない。その辺のところをもつと詳しくお聞かせ願いたい。
  31. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 集娼地域に対しましては、警視庁といたしましてこの取締りの基準というものを、暫定基準でございますが、御覧頂くような基準を立てまして、営業の外に出て客を取る等のことは勿論時間外営業、そうしたものをいたしておりますほか、前借或いは身体拘束或いは周旋人による介在、それから搾取、虐待、年少者の接客行為等に対しまして方針を立てて取締りをいたしておりまして、この点我々としては売春関連いたします悪質なものを取締るという方針には何ら手心を加えるということはいたしておらないつもりでございますが、ただこの地域に対しましては次官会議の、先ほども申上げましたが、昭和二十一年の十一月に方針が立てられまして、こうした地域が今日のような形で残されるということについての方針が立てられているのでございます。従いましてその程度の国の方針に準じて取締りはいたしているつもりでございます。ただ今申しましたような法令違反に対します行為について、これをそうした地域のみに手心を加えるというようなことは全然いたしていないということははつきり申上げられることだと思います。
  32. 赤松常子

    赤松常子君 せんだつて私北海道の札幌へ参りまして、札幌の市で非常に厳しく市条例が発令された。そうすると業者及びそういうところに働いている女の人々がゆるやかな都市へどんどん出てしまいます。そういうことと、それからもう一つは、こういう問題に対していつも反対されることは、その業者及びその町のいわゆる当局が町の繁栄上、非常にそういうものがあるから繁栄するのだというようなことで、いつもこういう問題には反対なのです。私は東京都の取締りをしていられる立場のかたが、こういう問題を厳しくすると、そういう業者が、いわゆる今申しましたように町のため、経済的に非常に町がさびれるからというような立場で非常に圧迫を加える場合も随分ございます。最近の江田畠の例もそうでございます。先だつてもちよつと聞きましたら、立川では二十億、月に銀行の預金があつて、そのうち十五億が業者の手から預金されて、あとの五億がそこに働いている人々からの預金だというふうに、町の繁栄と非常に結び付いているこれは業なんでございますが、そういうことを考えて、東京都が厳しくすればそういう方面からの圧迫があるというふうなことがありはしないか、それで取締りに手心を加えていらつしやるのじやないでしようか。ちよつとよその例を知りまして、東京都の立場をちよつと伺いたいと思います。
  33. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 先ほども申しましたのでございますが、警察売春関係の諸法規取締法規を執行します上におきまして、外部から何らの制約を受けるような事実はございません。我々としてその点極めて何といいますか、自由な立場取締りができるということをはつきり申上げられると思います。
  34. 赤松常子

    赤松常子君 私長後にもう一つお尋ねしておきますが、それでは今度早急に私ども全国的にこういう問題を取締法律を作りたい、まあこれは非常に難航するでございましよう、容易ならんことではございますけれども、そういう法を結実させたいと努力しておるのでございますが、そういう場合には、まあ東京都を初めといたしまして、府県の警察当局と協力し、こういう法律を実際に推し進めて行くという御決意をお持ちでいらつしやいましようか。私ども東京都が率先してそういうことをお示し願いたいと思うからでございますが、決意をちよつとお伺いしたいと思います。
  35. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 我々といたしまして、この売春関係取締りをいたしておりますが、警察取締りのみを以てこうしたものが一挙に解決できるとは必ずしも考えておりません。併しこうした行為社会的に必要なものとも、或いはいいものとも勿論考えておりません。そうした法令が若しできるならば、十分そうした法令の趣旨に上りまして、警察として取締るべき点について取締つて行くということは、はつきり申上げられると思います。
  36. 楠見義男

    ○楠見義男君 今防犯部長がおつしやつたその点に関連してお伺いしたいのですが、取締りだけでは必ずしも万全を期し得ないというその点なのですが、実は本日お見え頂いていろいろお話を承わるに当つて、ほかの委員のかたもいろいろ御期待しておられただろうと思いますが、私は実は本日の会で一番期待をしておつた問題は今おつしやつた点なのです。売春関係でこれは悪い、併し必要な止むを得ざる悪だというような見方をする人も相当ございます。例えば良家の子女が云々だとか、或いはそれ以外のいろいろの理由をつけて、止むを得ざる悪だと、こういう見方をせられるかたがあり、それに対して、それはそうではないんだと、どうしてもこれはやめなければならないんだということを強く主張せられるかたもあります。私は全く白紙の立場でお伺いしたいのですが、私個人的に考えれば、売春関係のこういうものは是非やめたい、なくしたいということを、個人的には非常に念願をしております。ただ、今おつしやつた言葉に関連して、従来からいろいろのことを言われており、厚生関係が伴わなければならんとか、或いは福祉関係がどうなければならんと、いろいろなことを言われておりますが、そこでお伺いしたいこと、又お答え頂きたいことは、形式張つたことではなしに、いわば研究会的な気持で、軽い気持で率直な御意見を伺いたいんですが、防犯関係に携わつておられるあなたがたが、これをなくするのには勿論取締りということも必要でしようが、それ以外にどういうことをやる必要があるのか。防犯の立場に携われて、そうしてそれに関連してお考えになつておられること、又強く感ぜられておること等ございますれば、この機会に今申上げたような肩張らない気持で率直に御意見を伺いたいと思います。
  37. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 楽な気持で話せという御趣旨でございますから、あえて私から申させて頂くんでございますが、非常に問題が大きい問題でございまして、我々一属僚として、こうした点に決して御参考になるような意見を出せないと思うのでございますが、我々がこれまで取締りました売春婦等の転落といいますか、そうした行為に入つた動機を調べますと、やはりこれはもう御案内の通りでございますが、生活苦というのが圧倒的に多いのでございます。その他若干好奇心とか自暴自棄というようなものがあるのでございますが、生活苦というのが殆んど圧倒的な動機になつておりまして、そうした、何といいますか、生活苦によつて婦女がこうした業態に入らなければならないという実態が、先ずこれが払拭されなければ、如何に警察として取締りで追いかけましても、これはもうしようがないことではないかということを先ず第一に考えております。それから、これはまあそうした事態を容認する一般の空気といいますか、如何にこれをやめようといたしましても、一般の空気がそれを受入れないというものでありまするならば、これはもう容易にそれを防げるものではないということを私は考えております。先ずそうした点で、経済上の問題と、今一つこの道義といいますか、一般の国民がこうしたものをやめようという気持になり切らなければ、これはもう防ぎ得ないのではないか。そういう容認する気持がある上に、一方では経済的に窮迫して来るとするならば、どうしてもそこにこれが出て来るのでありまして、ただ警察の強権等によりまして防ごうということでは、我々として限りのある問題だということにならざるを得ないと思う。従いまして現実私が率直に申したのでございますが、我々としてはせいぜい悪質なものをとめる。事態がこれ以上に拡がつて行く、全然そうしたことのない地域にまで、場所にまで、乃至は人にまでこうした行為がどんどん拡まつて行く、そうした風教上の問題その他から見まして、せいぜいそれを食いとめるということに警察として努力が払われておるという状態でございまして、どうしてもその根源が絶たれるという方途がなければ、決して我々が取締に絶望しているというような意味ではないのでありますが、これはもう専心いたしておりますけれども、絶えずそうした矛盾は根本におきまして頭に浮んでおるのでございます
  38. 楠見義男

    ○楠見義男君 生活苦の問題はおつしやる通りだと思うのですが、そこでその問題とも多少関連をするのですが、この道に入つた人間を補導して行く、いわゆる足を洗わせるといいますか、補導して行くという観点から見まして、これはもういろいろ仕事に携つておられて、そうしてそれに関連してこういうような行き方をすればいいのじやなかろうかというような若しお気付きの御意見がありますれば、この機会に伺つておきたいと思います。
  39. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 現在警視庁としましては、警察関係いたしましたこの売春婦等に対しまして、これを更生させる、或いは補導するというふうな方途は何ら警察として講じておりません。おりませんけれども、実際に再犯者といいますか、勿論絶えずこれは新らしいのは注ぎ込まれて行きますけれども、二回、三回、数回、しよつちゆう警察取締られて又釈放されて又取締られるという再犯者が非常に多いのでございまして、それを考えますと、どうしてもこれを他に新らしい職業を持つなり何らか別にこの世に処して行くという途を講じさせようということがなければ、結局新しくどんどんとこうした道に入つて行くほかに、一旦入つた以上もうそれから出ない。何回でも、警察が適度取締りましても繰返すという結果が続きますから、事態が解決せられない。おつしやるような意味で非常に困難ではないかと思いますけれども、何らかそうした方途が講ぜられない限り、非常に問題はいつまで経つても解決せられないことになるのじやないかと考えております。
  40. 楠見義男

    ○楠見義男君 私が実は今お伺いしておる意味は、その道に入つておる人はもう山へ登つちやつてなかなかいい智慧が出ないのですね。そこで例えば補導の問題にしても、それが厚生省の仕事であるとか、或いは法務省の仕事であるとか、そういうようなことで、警察のほうはなかなか権限がそこへ入らない。従つて手が入らないということも言えるのですが、同時に厚生省とか或いは法務省は、今申上げたように山へ登つちやつてもう目が見えない。それをむしろ第三者的に防犯でやつておられるその立場から、こういうことをやつたらよくなるのじやないかというようないろいろのお気付きが、全くの第三者よりもむしろ近い第三者として御意見があるのじやないかと思つたのですが、若しそれがあれば後ほどでもお伺いしたい。それから今の生活苦の問題にも関連するのですが、或いは私が中座している問に話が出たかもわかりませんが、最近の凶作関係で相当地方では身売りの問題があるように新聞その他で承知しておるのですが、勿論これはそれぞれの当該県でいろいろ取締をやつておられると思いますが、同時にそれらの連中が来るのは、東京或いは大阪というような大都会だろうと思うのですが、そこで警視庁の防犯のはうの立場から、そういうようなことについての最近の状況等が若しおわかりであれば、参考のためにお伺いしておきたい。
  41. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 売春を防ぐような方策はいろいろあるだろうと思うのでございます。併し我々としましては取締を通じていろいろ調べた資料等は、これは精細に、何といいますか、この頃白書と言いますが、そういうものに全部まとめまして、関係あると思われる官庁等に対しましては絶えずこれを通報いたしております。勿論我々として全然そうした点について意見がないのではございませんが、ここで私からまとめたものとして申上げるには私として更によく考えて見たいと思うのでございまして、十分御指摘の点について、更に今後そうした点に気付く点がありましたならば、決して警察仕事じやないというような立場でなしに、十分そうした点を示唆し得るような資料を揃えまして、更に今後関係方面にも呼びかけるようにいたしたいと思つております。それから新聞等で非常に最近凶作等によります農村の不況、それに伴う子女の身売り等の問題が取上げられておりまして、我々としましても十分これについては関心を払つておりまするけれども、最近取締つて参りました調べ等から見まして、端的にそうした事態を反映した事件だと思われるようなものはまだ承知いたしておりません。恐らくこれは一概に今のところ申上げられませんけれども、むしろそうしたふうによく問題が取上げられてやかましくされておるだけに、むしろそれがそうした事態を防ぎとめておるのではないかというふうに、これは非常に私としては推定のみのことになりまするけれども、実際はそうしたことによつてむしろ非常に防がれておるのではないかと思うのでございまして、何か顕著にそうした取締上の結果から見まして出て来ておるという事態はございません。
  42. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと今のに関連して與謝野衛生局長から……。
  43. 與謝野光

    参考人與謝野光君) 楠見さんの御質問に関連してお答えさして画きたいと思います。私のほうの立場から売淫の問題を解決する点につきまして一、二思いつきました点を申上げたいと惑います。第一に、この売淫問題というものは売りもの、買いものというわけであつて、買いものがなければもう仕事はなくなるわけでございます。従つてやはり青年なり何なりの教育ということが大事なのではないだろうかと考えます。同時にこれは青年の、男のほうだけでなく、女のほうにこういつた仕事に就くことはやはり好ましいことではないということを教育することが必要なのではないかと思つております。この頃の女の人のこういつた仕事に新らしく就く人が減つて来ておるということは、やはり婦人の自覚に基くのではないかと思います。それからいま一つは、先ほどお話にもありましたように、一歩この業界へ入つた人の更生というものは、理論で割つたように簡単に私ども医学者としてはできないのではないかと思います。例えば吉原病院に何回も入つた女の人がありまして、この人は三回も四回も救世軍の更生施設に入つて出て来る。四カ所都の委託しておる更生施設があるわけでございますが、そこへ入つた人が皆出る。成るとき私は聞いてみたのでありますが、私が出るのは、非常に立川の救世軍の寮など深切にして、寮長さん以下非常に面倒をよく見てくれる。併しながら夕方になるとどうしても淋しくてそこにおられない気持になつて出て来てしまう、非常に私は寮の人たちに感謝しておるのだということを言つたのですが、それは本当のことだと思います。曾つて大阪府の御生部で試験的に、献身的な女医さんがあつて、そうした更生したいという女の人を引取りまして、自宅に置いて、いろいろ交際をさせて、結婚を媒介した例があるのですが、やはりこれらは家庭を持たせることが一番の解決策のようでございます。勿論職業を与えるということも必要であつて、食つて行けないためにいつまでも続けて行くことが本当でございますが、一面にはやはり本能の問題もありますので、やはりもう少し今までの、今楠見さんのお説にもあつたように、いわゆる形式的な更生施設だけでなく、何かその婦人が一人前の女の人として、普通の一般の女の人と同じような生きる道ができるようにするとか、或いは働く遠境も更生寮とかは女の人ばかりいて、いわゆる修道院みたいになる、それが非常に淋しいらしいのです。そういうふうなことも考慮して施設を考えて行くことがいいのじやないか、こう考えております。  それからいま一つは、やはり一つの病気みたいなものであつて、病気にかかつたものは治療する、第二は予防医学ですね。新らしくこういう方面へ入つて来る女の人を防ぐということが要るのであつて、その意味においては児童福祉法というのが相当役立つているのでははいかと私は思つております。併しながらこれでもなお且つあるのは今の児童福祉法では罰則が非常に軽いのであつて、罰金刑くらいである関係もあつて、これはやはり売春禁止法そのものについては私は意見があるのですが、むしろ児童福祉法を全面的に御研究願つて、やはり普通の女中さんに使うとか或いは農林に使うための人身売買の場合のあれは罰金でもいいかも知れませんが、売春関係のほうへ使つた場合にはやはり重い体刑にするということになれば、よほど新らしく来る人を減らすことができるのではないか、これは新らしく来る人を防ぐほうが今おる人を更生させるということよりも非常にやさしいのじやないかと思つております。以上簡間でございますが……。
  44. 楠見義男

    ○楠見義男君 今衛生局長からいろいろ有益なお話を承わつたのですが、一つ防犯部長のほうでも、白書とか何とか言いますとさつき申上げましたように所管事項だけになつてしまうので、それだけじやなしに関連して今の衛生局長がお述べ頂いたようなお気付きの点を是非一つ別の機会でも結構ですから出して頂きたい。と申しますことは、これはみんな悪いということを知りながらさつき申上げたように止むを得ざる悪だとかいうような声が非常に過大評価されている向きもあるので、従つて売春取締法をやろうという場合には、どうしてもそれらの過大評価された障害というものを突き破つて行かなければならない。それにはいろいろの調査もし、それから又それを突き破るだけの対策を講じて行かなければならん。観点からしても是非あなたがたその仕事に近い関連を持つておられるのですから、どうぞ御意見を、別の機会で結構ですからお述べ噴きたいと思います。これだけお願いしておきます。
  45. 一松定吉

    ○一松定吉君 この売春の悪であるということは恐らく何人もこれに反対するものはないと思います。然らばこれを一体どうすればいいのかということが問題になるので、御婦人の議員諸君はいろいろお話を承わつて見ると、売春というものを一切禁じてしまう、そうして性病予防というような方面に寄与して国民の健康を立派にし、女性の素行を優良ならしめるという方面に導かなければならないというお考えのように思うのでございます。私どももそういう点については何ら反対はございませんが、ただ私がいつも考えておりますることは、生きとし生けるものが生殖ということに向つて、これはもう生き物の当然のこれは行いだ。それを何とかしていわゆるはけ口をこしらえて、やらなければ、ただ取締取締るということだけでこの目的を達するものではないと私は考えております。如何に取締つても、男女の関係取締りによつて取締られるものではない。取締れば取締るほど地下にもぐつてその瀰漫するところはむしろ危険が多くなるというように私は考えておる。そこでこれは必要であるんだが、どうすればいいのかということが研究しなければならん問題である。それをただ我々がいろいろ考えを持つておるものがこの委員会で話合つてみたところが、甲の立場と乙の立場と丙の立場とそれぞれ違うということになり、考えが異つておれば幾らしても結論にはこれは到達しません。そこで問題は売春ということは絶対に我が国では禁じてしまうのであるのか、いや条件を付けて禁ずるのであるのか、或いは放任するのであるのか、そういう点を先ず先にきめて、絶対に禁じてしまうということは私の考えではこれは不可能だと思う。そしてこれを放任するかというと、それは甚だ不都合であつてそれは絶対にできない。然らばどういうようにこれをして、これを禁ずるところは禁じて、許すところは許すかという点が一番必要なことであつて、恐らく御婦人の代議士諸君の御懸念に相成つておるところもこの点だと私は思う。それならば私は広く公聴会を開いて、そうして御婦人意見も聞き、医者の意見も聞き、取締方面の人の意見も聞き、業者方面の意見も聞き、男のほうの意見も聞き、女のほうの意見も聞いて、然らばどうすればいいか、こういうふうな結論を得なければならないのではないかと私は思つておる。過般犬養法相が当委員会において、取締ることはどうしてもこれは取締らなければならんが、それの取締りについては一体どういう程度から取締らなければならんか、屋外において見苦しい行動をし、人目を慮らないような醜行をやつておるものは、これは言うまでもなく取締らなければならんが、屋内においてそういうことをやつておるものは取締る必要もあろうが、それを極端に話をすればいよいよ婚約のできた男女が一室においてこそこそ話合つておるところを、お前は売春だというようなことで、ちよつと来いで警察に連れて行つてそうしてこれを調べ、或いは局部を検査するということは、これは不都合千万だ、こういうようなことについて実は自分も非常に苦心しておるんだというようなことを犬養法相が当委員会において述べられたのは私は御尤もだと思うのでございますから、今赤松委員は、政府が提案しないということであれば、我々婦人議員で一つ提案をして立法の任に当つてかくのごとき悪を芟除したいという考えを持つておるがという御意見があつた、私は御尤もだと思う。それをするについてはやはり各方面から、いわゆる公聴会を開いて各方面からの意見を聞いて、なんぼ取締ろうといつたつて絶対にこれを取締ることはできやしませんよ。それならばどうすればいいか、昔のように公娼なんというものを認めるということについてこれは弊害がございます。公娼はいけない、それならばどういう程度にすればいいかということを各方面の人々の意見を聞き、諸外国の立法を参照し、そうして我が国に最も適して、これならばまあまあ結構だというようなことを我々が検討して、そうしてこれで決を採るということでなければ私はならんと思う。私は先般もここで言うたか知れませんが、イギリスのバッキンガム宮殿の隣りのハイド・パーク、イギリスは御承知の通りこういう方面についてはいろいろ文化が進んで取締りも相当できおるところであるが、夜になつて日が暮れると、夜の十二時まで、門を閉めるまでの間はもう至る所にこれは売春でもありますまいが、男女の醜行が見るに見られないような状態にあります。現に私どもは現場を見て驚いた。それでそのときの英国の議会で、内務大臣に一議員が、英国の品位に対してこういうようなことを内務大臣が放任しておくということは不都合千万だと言うて、丁度我が国の御婦人が非常に御心配になつてこれをやかましくおつしやると同じように、国会で意見を述べた。そうして内務大臣に、あなた一遍御覧なさいと……。それに対して私は見たことがないから我が国でそういうように醜行が行われているということはわからんが、君たちが言うならば見よう、近いうち見なさい、近いうちに見ようということで、暫くしたあとに内務大臣は見た、行つて見たよ、見たけれども、イギリスのゼントルマンの眼にはああいうものは見えないのだよというようなことを言うて、そのままになつて今でもハイード・パークではそういうことが行われている。これはどうして取締つたらいいか。これはこの議場でお互いが取締当局を呼んで一問一答したからといつていい結論は得られんと思うから、私はここで動議を提出しまして、一つ広く人々の意見を聞き、そうして我々の考えをこれに織込んで比較的完全な……、完全な取締法とか、完全な売春禁止ということはできませんが、比較的いい取締法を一つ案出してやるのはどうだろうか。政府が出さなければ、御婦人に限りません、我々も御協力申上げて出すことにやぶさかではありませんので、そういうようにしたらいいじやないかと思つております。こういう考えにおきまして、一つ急速に広く公聽会を開いてその意見を聞いて、外国の法規を参照してそうして我々の意見をまとめる。こういうことに一つ委員長において御進行あらんことを特に私は動議として提出いたします。
  46. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 承わりました。犬養法務大臣が通常国会において立案いたしたいと、今も一松委員のおつしやるように、この当委員会でも申しておりました。併し、その場合にも一松委員の御指摘になつたような点を非常に法務大臣苦心をしておるように見受けました。それで政府の予定も通常国会であるといたしますと、私どももその法案の審議に関逝いたしまして、当然おつしやるような公聴会等を設けることを是非いたしたいと思います。で、おつしやるように、各国の立法例並びに実情等の研究という意味合いで本日も関係者の意見の聴取をいたしております。おつしやるような意味合いでもつと広く完全な、参考人なり公述人なりの意見を聴取するということは、是非皆さんの御同意を得ていたしたいと思つております。その時期等については改めて又委員の皆さんにお諮りいたします。
  47. 赤松常子

    赤松常子君 ちよつと今一松先生に誤解がおありのようでございますから、その訂正と速記の訂正をいたしたいと思いますので、私は飽くまで政府が出して頂くという建前でございますから、婦人議員の提出ということは今考えておりませんし、先ほども申さなかつた……。政府が出した場合というのであります。その点を訂正して頂きたいと思います。
  48. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記とめて下さい。    〔速記中止〕
  49. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記始めて下さい。
  50. 一松定吉

    ○一松定吉君 私はお話のようなことに反対でも何でもない。各方面から我々知識を得てその豊富な知識によつてこういうような重大な問題を一つ立法しなければならないこと、これは言うまでもありません。けれどもその取締に重きを置くということではなくて、どういうようにしてこれをやればこういう弊風が改まるか、そうして而も性病という問題はそれで解決できるのか、風儀はそれで是正できるか、病毒というものの感染はこれで予防することができるのかということをよく研究しなければならん。今の問題は、もう取締られるのは性病予防法というただ一本で取締られておる。あとは各地方においての条例とかいうようなものでやつておる。こういうようなことでは本当の根本の悪弊の芟除というものはできないわけですね。御婦人方の非常に御心配になつておるお気持は私にはよくわかつておる。殊に我々が街を歩いて、新橋、渋谷、或いはその他の池袋新宿という所を歩いてみると至る所におる、もう妙なものが横行濶歩しておるようなこと、これはもう甚だ不都合千万である。それは日本の婦人の品位という方面からこれは見なければならない。それから性病予防という方面については接触という方面から見なければならない。で性病を予防するについて、一々局部の検査をするということはこれは本当は止むを得んことで、そういうことであろうけれども、これは血液検査、或いは尿の検査ということで局部の検査を省略する方法もある。いろいろの方面に接触があるのだからそういうことを本当に我々は十分に知つて、そうしてなかなかこの程度ならばよかろうというような、比較的いい法案を作るなら作ろうじやないか。政府がお出しになるなら我々は検討をして、これに賛成をするか、反対をするか、修正をするかの態度に出ようじやないかということで、これについては我々はそれだけの含蓄のある抱負なり知識を持つていなければならないというのが私の前提なんですから、今のお話のようなことはその道程に達するについてはそれは大変いいことであるから私は賛成する。併し手取り早く私の言うような方法で考えてやろうじやないかと、こういうことを申上げておるのです。
  51. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は與謝野局長と防犯のほうのかたに二、三お伺いしたいのですが、與謝野局長には、性病予防法の第十一条の発動の検診なり、それから一斉検診の結果を見ますると、だんだん罹病率が下つておりますのでございますが、これはその原因はどこにございますか、御説明を願います。
  52. 與謝野光

    参考人與謝野光君) お答え申上げます。性病の発見率と申しますか、罹患率がこの表にございますように、例えば芸妓にいたしましても、或いはいわゆる指定地域のいわゆる赤線区域ですかの婦人にいたしましても、或いは街娼にいたしましても、この数年来もう顕著に滅つて来ておるというわけでございます。これは御指摘の通りでございます。これは何が故かと申しますと、一つには終戦治療薬の大革新、革命的発見がございまして、完全治療ができるようになりました。第二には健康診断の様式が非常に進歩したと言えるのではないかと思つております。でそれによりましてこういつた売春常習する人の躍患率が減つて来る。客のうつる率が減つて来る、客から又その何と申しますか、婦人がうつる率が減つて来るという循環がだんだんとめぐりめぐりまして減つて来ておるのでございまして、今日では一般の若い人の間の性病の罹患率も並行して非常に下つて来ております。御承知のように各県で今のところは終戦性病につきましても医師の届出制を布いておりますけれども、この届出はまあ五分の一か、或いは極端なところでは十分の一くらいしか届けて来ないと思いますので、その数そのものには信頼できませんけれども、指数として考えます場合にやはり年々下つてつております。又十年ほど前には皆さんも御承知のように新聞の裏の三行のところにはたくさん性病病院診療所の広告がございましたけれども、今は殆んどない。言い換えれば性病だけでは医者が立つて行かなくなつてしまつた、言い換えればそれだけ確かに性病は滅つて来ておるわけです。その原因は一つには薬の進歩、それから医術の進歩であろうということであろうと思います。
  53. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 よくわかりました。次にはこの性病予防につきましてはやはり警察の協力が要ることは勿論でございますが、その協力は十分できておりましようか。或いはその点につきまして何か御意見がございましたら伺いたいと思います。
  54. 與謝野光

    参考人與謝野光君) お答えいたします。東京都におきましては警察といたしますと警視庁国警、市警察とあるわけでございますが、大体関係のありますのは、この三者とはときどき会議を開きまして密に連絡を取つておりますので、その点私のほうから見ますと警察の協力は非常にうまく行つておるのではないか。又警察に対しましての協力といたしましても、例えば警察で挙げて参りますと、いろいろな売春の容疑のありまするものに対しまする先ほど申上げましたような警察署へ出向いての検診もいたしておりまして、まあよそに比べて東京都が一番連絡がいいところじやないかと恩つております。
  55. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 次に性病対策につきましての予算は都にはどのくらいございますか。
  56. 小原菊夫

    参考人小原菊夫君) 都の性病予防費は総額四千四百十六万円でございます。でこれが我々性病課で使いますものと、性病病院で使いますものと、それから保健所で併設診療所として性病予防注射をやつておりますが、その方面に使いますものと三つに分れるわけでございます。で街娼、主として売淫常習者のものに使われますものだけを見ますと二百万円くらいでございます。これについて国庫補助が半分の百万円、こういう程度でございます。で少し細かいことを先に言いましたが、性病課として使いますものがこの四千万円のうち約一千万円、性病病院で使いますものが一千七百万円、それから保健所で使いますものが一千三百万円、こんな状態でございます。
  57. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この採決数というところが今大部分ございますが、これは非常に時間もかかるし費用もかかるものじやございませんですか。今の予算で十分でございましようか。
  58. 小原菊夫

    参考人小原菊夫君) 性病予防法にも規定してございますように、検査を受けます者から費用を徴収する建前になつております。で費用が支払えない者については、減額若しくは免除の規定がございますので、一応現在はこの程度の数を検査いたしますのに特別に不自由は感じておりません。
  59. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 防犯部長にちよつとお伺いいたします。この条例の第二条は売春をした者又はその和洋方となつたものは五千円以下の罰金若しくは拘留に処するということになつておりますが、これで以て処罰された者はまあ大体年にどのくらいございましようか。つまり私の伺いたいのは、この条文は本当にどのくらい活用されておるかという点でございます。
  60. 上村貞一

    参考人上村貞一君) お答えいたします。今はつきりした統計を持つておりませんのでありますが、送致したうち罰金に処せられる者はおおむね一割前後でございます。その以下という数字になつております。
  61. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この売春それ自体を処罰するということについて非常に困難な点が多いと思つておりますが、その点もう少し詳しく御説明、数よりもその取締りについてお答えを願いたいと思います。
  62. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 取締り上の困難という点になりますと、これは非常に抽象的なことを申上げるのでございますけれども、何と申しますか、これは理窟に落ちるのでございますが、この売春は目的罪と言いますか、そういう目的によつてこれを取締るという必要があるのでございます。そういう点について非常に何と言いますか、その行為を見て直ちにこれを取締るということについて、その目的をよく立証しなければならん。そういう点について、これは何と言いますか、被害者があるというふうなものじやないのでございまして、すぐにまあこの売春等の現行をこちらが押えましても、そういう点に非常に立証上困難があるわけでございます。相手方がそういうことを隠しまして、言わないというような事態が非常に多いのでございます。勿論この外見上に非常に明らかなものは、これはもう売春ということじやなしに、公然猥褻というようなことで、勿論取締りできるのでございますけれども、屋内の極めて隠れた場所で行われる場合に、警察が単純にこれに踏込んで行くということは今日ではございません。当然にそういう場合には令状等も要求いたしまして、そうして屋内の捜索等をしなければならんのであります。又そうした人を逮捕する等の必要があります場合にもこれは令状が必要でございますけれども、そうした場合にこうした事態に対して相当はつきりした基礎がなければそうした令状の許可を受けるということもできません。併しそうしたものの立証が極めて……。これは立証といいますか、屋内に立入る、乃至はそうした容疑者としてこちらが予定した大剛を逮捕するという必要性を疏明するだけの事実を確める上に非常に困難を来たしておるのでございまして、非常に常習的なものと思いましても、それがただそのときだけのものとしてしか事件を立てられない。或いは又非常に悪質な周旋等を行なつていたと思われるものであつても、常習的なほかのものが立証できない。或いは婦女支配下に多数置いておるというものでありましても、極く少数の者のみが立証し得て、そのほか朗らかに我々から見ましてそのほかにも恐らく多数の子女等を支配して、非常に婦女管理の悪質な行為があると思われましても、それが完全に立証できないというような点がございまして、どうしてもそういう意味で非常に困難を来しておることは事実でございます。
  63. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 警視庁にはこの取締に対します予算はないように伺つたのですが、そんなことばございませんでしようか、どのくらい予算がございますでしようか。
  64. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 予算があると申しましても、これと言つてはつきり何がしと言つて申上げられるような予算という費目はございません、と言つて、全然ないかというと、ないこともないのでございまして、この警察の活動は何と言いますか、本当に事業というものじやございませんものですから、ただ警察官が動くその活動費だけで仕事をしているのでございます。その人件費だけでいたしておりますから、格別この売春取締等をします上に捜査上の若干の予算というものはこれは何も売春取締というだけに限らないで、勿論予算は計上されておるのでございますけれども、勿論主として夜間に捜査官が動くのでありますから、夜間のみが殆んど仕事と言つてもいいぐらいなのでございますが、勿論そういう困難はございますけれども、若干出張したり何かする旅費等の費用はございますけれども、これと言つてはつきり申上げられるようなものはないのであります。併し予算がないからと言つて、何と言いますか、何も仕事に支障を来しておるというようなことはございません。結局問題はこういう主として売春取締に専従する人員を更に増加するかどうかというふうな、むしろ内部的な問題でございまして、直接に予算上の制約によつて警察活動がこうした点について不自由だとか或いは十分だとかいう事情はございません。
  65. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今予算も人員も不自由はないと仰せになつたのでございますが、丁度この犯罪捜査に対しまして特別少年係というようなものがございますために、この少年の犯罪捜査は専門的になつて、効果が多いと思いますと同様に、私は売春行為自体を取締るというような点から申しましても、専門家がもう少し作られまして、質的にも、それから予算の面にもその措置をとりましたら、非常にこの取締に効果があるのでないかと思つております。そこで私が予算はどうなつているかということを伺いたかつたわけでございますが、如何でございましようか、もう少し専門家を置くというようなことをすれば、非常に非難の多い、この都条例がちつとも実行されていないというようなことも緩和されるのではないでしようか。その点如何でございましようか。
  66. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 現在警視庁の本部に主として専従すると言つていい人員が三十名ばかりおります。これが売春取締に主として専従していると言つてもよろしいのでございます。それから各警察署保安係、これはほかの仕事も勿論所掌しておりますけれども、併せまして売春関係仕事をしておるのでございまして、盛り場等そうした事態の非常に多く予想せられる警察署、予想されるところを所轄しております警察署におきましては、むしろこうした方面の専従と言つてもいいような警察官も一名、二名置かれておるのでございます。そのほか又警邏隊でございます。外勤の警察官にいたしましても勿論併せまして、余り突込んだような仕事はできませんけれども、十分防犯的な任務を兼ねましてこの仕事をいたしておるのでございまして、今非常に都条例売春取締条例がよく執行せられてないという御非難でございまするけれども、我々としてはまあそれだけの人員で以てこれに従事しておりまするし、内容的には悪質な者に対して相当の検挙成績は上げておるように考えておるのでございます。
  67. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 いま一つ最後に、この昭和二十一年の十一月にございましたあの次官会議でございますね、これを見てみましたら、止を得ざる悪なんというような言葉で、結局はこの公娼を認めたつまり特飲街を認めたことになりますのでございますが、先だつての法務大臣のお話では、内閣でももうこの次官会議でなされたことについては撤回するような方向に向いているんだ、日ならず撤回するというような意向をお漏らしになつたのです。そういたしますと、この取締の方面から申しましたら、根本が覆つたこことになつて、非常に取締りやすいんじやないかと思つておりますが、如何でございますか、この点。
  68. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 我々といたしましては、この法規なり国の方針なりに準拠いたしまして取締をただ誠実に実施するだけでございます。御趣旨のようにそうした特殊な扱い上の方針等がなくなれば、勿論それに従つて取締をいたすということでございます。
  69. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはそれでございましようが、あれがございますために、あの取締のほうでは今まで非常に苦労なさつておるというふうな点はございませんですか。
  70. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) この次官会議の内容に亘りまして、これはもう十分御承知と思うのでございますが、特殊飲食店等は風教上支障のない地域に限定して集団的に認めるように処置すること。これは警察の特別の取締に服させるということが書いてございます。大体まあそうした趣旨をそのままというわけでもないのでございますが、勿論我々としましてもこの時代の変遷に従いまして、十分取締方針等を立てて置く必要があるのでございますが、こうした沿革からしまして、そういう趣旨に基きまして、お手許にお配りしております資料にも書き上げましたような取締の基準、暫定基準というものを立てまして、この外部……外に出た娼婦とか或いは契約……売淫の契約或いはこの周旋人の介在、年少者の問題ということについての取締をいたしておるのでございまするけれども、そうした方針がはつきり撤回せられまして、一般的にこうした何らの考慮をする必要がない方針が立てられれば、勿論それでやつていいと思うのでございます。現在別に非常に取締の上にそうした特定の地域に対して困難だというふうな点はございません。
  71. 中山福藏

    ○中山福藏君 ちよつとお伺いいたしたい。この売春行為自体が悪いということは、これはもう誰でもわかることでございますが、この売春行為をしなければならんといういわゆるよつて来るゆえん、原因というものを考えてみますると、相当の数に上ると思うのです。例えば教育上の欠陥ということから、或は理性の鈍さから、まあこういう関係もあるだろうし、又他の方面におきましては、宗教上の立場から、宗教家の努力が足らんということも考えられる、又或いは道徳的な社会指導の任に当る人間の努力が足りないということも感ぜられる。即ち宗教家、道徳家、教育家の努力不足というような、いろいろ原因があると思うのですが、殊に一審ひどいのが経済上の逼辿から来る原因によつて売春行為が行われる。第五には、やり手婆だとか、誘拐者の営利的な目的のために、犠牲に供される。いわばこれらの屠所の羊のような、この憐れな立場にある婦女子が、結局兎追いに、追いつめられたように網にかかつて止むを得ずこの行為をやるということになるのが多々あると私は考える。勿論先天的な、病的な人間もあります。而してこういう原因から考えまするというと、これに対処する方策というものは、おのずからそこに区別が生まれて来なければならんと思う。その原因の如何によつて対策というものが、おのずから異なつた手段方法というものによつて、現われて来なければならないと思いますが、そういう種類別にされた研究というものは、警視庁でできておりますかどうか。それを先づお尋ねしておきたい。
  72. 上村貞一

    参考人上村貞一君) 或いはお話の趣旨と少の違うかも知れませんが、今御承知の通り、只今資料にもあります通り、大体旧公娼地区で、いわゆる赤線地区と言われる場所、それ以外の場所と二つに分れて、大体ここに書いてありますような取締方針を立てております。赤線と言われるところでは、取りあえず人権保護、それから搾取、そういう面から取締基準が設けられると同時に、それ以外の場所については、現在のところでは、結局女を置いて、売春を常時やらせているもの或いは女を吸い上げていわゆる呼出しをかけて、売春をやらせておる。或いはポン引を介在させて売春をさせておる。更に非常に露骨にやつておる。こういうものが非常に世間の非難になつてあるというようなのを中心に取締をやつておるのであります。今言いましたように、管理乃至は吸上げ、こういうようなところ、非常なここでは単なる搾取だけでなく、併せて人身売買或いは婦女誘拐、こういうようなもので、私たちの想像以上のような実態があります。取りあえず赤線のほうでは暫定基準によつて取締只今一生懸命やつておると同時に、それ以外の場所では、今言つたようなものを中心に、取締が進められております。或いはお答え不十分であつたかと思いますが、以上のような方法でやつております。
  73. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は何回この委員会に出ても、同じことを承わつておる。耳にたこができております。それくらいの程度であろうと私は予期して、この委員会に出ておる。だから少しもこの委員会の審議に新機軸が現われていない。だから先ほど私が申しましたように、私どもは道徳家よ恥じよ、教育家よ恥じよ、宗教家も恥じよ、先ず売春行為をやる人間を責める前に、社会全体の連帯的な立場において反省を求めなければならないと私自身は考えておる。例えば子供が売春行為をやる、これは児童福祉法に関する違反がある、又職業安定に関する違反がある、或いは刑法上の誘拐いうことについての違反がある、これは勿論これで以て取締ることができるのです。併し私どもはその遠因、動機、由来というものを根本的に詮索してみる必要がある。これが政治なんだ。大局的にものを判断して、そのよつて来るゆえんがいずこにあるかということをお互いに究明して行かなければ、単に末梢的のことばかり言つたつてそれではしようがない。こういう立場から私は大局的な対策を立てる必要があると思う。だから私どもは病的は人間、或いは正常な人間がどうしてそこに陥いるかという経路というものを一応詮議してみて、そうして種類別にわけて、統計的に数字の上からどういうようにこれをふるい分けて行くとかいうことを考えてみる必要がある。その対策について一応政府当局としては、当然措置を講ずべき覚悟と準備がなければならん、こう考えるわけです。だから私がこの委員会に出て、そういう点を実は承わりたいと思つてつた只今のお答えでは不十分です。単なる取締りしかお述べになつていない。そのくらいのことでは社会政策上善良な政策はできないと思う。もう少し掘り下げた御研究が必要だと思うのですが、如何なものでしようか。
  74. 養老絢雄

    参考人養老絢雄君) 売春関連いたしまして、警察特に警視庁の収締りを通じまして、いろいろな事実を統計的に作つたものを用意しております。それは二十八年度も二十七年度と同様なものを作つておるのでございますが、参議院の厚生委員会委員のかたがたには二十七年度のほうをたしかお届けしたと思うのでありますが、当委員会委員のかたがたにもこれはお届けいたしまして、十分御覧頂いて宜しいものでございます。早速私資料を帰りましたら用意いたしましてお届けするように手配いたしたいと思います。が、それに今おつしやいましたような統計的なことにつきまして一々ここで申上げますことはあれでございますけれども売春婦の年齢とか或いは転落の動機とか。或いは何回も繰返すというふうな状況とか、それからそれが売春婦がみずからのその売春によつて得ました収入によつて家族を扶養している状況だとか、学歴とか職業乃至は売春に対して場所を提供する者或いはこの場所管理する者の業態売春婦の出生地、性病の罹患状況等々のことにつきまして統計を持つているのであります。そうしたものはどうしても時日が遅れてまとまるようになりますけれどもつておりますので、これは十分累計いたしまして御参考に供したいと思つておりますけれども、何と言いますか、我々としてなし得る点はその取締を通じて出た事実に基きましてそうした状況をまとめ得る程度でありまして、何と言いますかそうした実態というものを当然に警察の権限に基きまして調べるということはこれは不可能であります。ただ取締によりまして出た結果をまとめるということ以上に、路傍の人その他出かけまして一々売春に関達した事態について調べるということは警察としてはできません。従いましてそうした点についてのそういつた安全なものを作り上げるということは到底なし得ないのでございますけれども、能う限りにおいてそうした調査をいたしておりますので、これも御承知頂きたいと思います。
  75. 中山福藏

    ○中山福藏君 どうか一つ私の言つたことは徹底せぬかも知れませんが、若しおわかりでございましたら、次回に出して頂きたいと思います。
  76. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 売春対策に関する問題で他に……。
  77. 赤松常子

    赤松常子君 先ほど一松議員のおつしやいましたように、広く意見を聞く、公聴会みたいな機会を是非お持ち頂くことをもう一度お願いいたします。
  78. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 先ほど私が申しましたように、今の中山委員の御意見も、根本の問題に触れなければいかんとおつしやる点、一松委員意見と相通じておると思います。それでいずれ政府の態度如何では、法案の審議を相当根本的に掘下げて考えなければいかんと思いますから、適当な機会があると思いますから、その点は先ほど申上げましたように扱うことにいたします。他に売春問題についてございませんか。なければ午後は保全経済会についての法務省並びに大蔵省の意見を聴取し、質疑に入りたいと思います。一時半まで休憩いたします。    午後零時五十一分体感    —————・—————    午後二時一分開会
  79. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 午前に引続き委員会を開きます。速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  80. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。保全経済会の休業につきましては、庶民の零細資金を吸収しておりました状況から考えましても、社会的にも影響するところが多大であるように存じまするし、同種類の団体等についても憂慮すべきものが相当多いように思いますので、先ず法務省の刑事、民事両局長から経過並びに御所見を伺いたいと思います。
  81. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 保全経済会は、会長伊藤斗福が商法第五百三十五条乃至第五百四十二条の匿名組合の規定に基きまして、出資者を募りその出資金を以て株式及び不動産投資の事業を営み、これより生ずる利益を出資者に分配するのであると称しまして、昭和二十四年の中頃からその営業を開始したのでございますが、その後同種形態のものが各地に現われるようになつたのであります。保全経済会をはじめ、この種のものはいずれも契約期間が極く短期賜であるばかりでなく、その出資者が広範囲の不特定多数人に亘りまして、更に利益の有無にかかわらず確定利率の配当を約していると思われる点もあつたために、当初よりその出資金の受入れと称するものは銀行法、或いは信託業法、その他の金融法規に触れるのではないかということが問題になつてつたのであります。よりまして、私ども法務省並びに最高検察庁におきましては全国の次席検事会議、或いは賦政経済関係検事会議等、いろいろな機会におきまして、全国の検察庁に対して、これら匿名組合形式による業者などにつきまして、関係官庁などと密接な連絡の下に厳重な内偵査察を行いまして、背任、詐欺、横領などの実質犯の場合は勿論、いやしくも法規に触れる点があれば、断乎これを取締るよう指示して来たのでございます。併しながらこの種の業者の実態は非常に複雑多岐に亘りまして、遺憾ながら今日まで若干の検挙を見たにとどまりまして、問題の保全経済会につきましては容易にその全貌を把握しがたく、又同会を以て商法上の匿名組合でないと言い切るだけの資料も十分得られなかつたのでございます。今回保全経済会が営業を停止するに当りまして、現在までのところは幸い各地の出資者はおおむね平静の模様でございますが、今後は告訴、告発も続出するものと考えられるのであります。場合によつては背任、詐欺、横領、その他の違反事実が明らかになる場合もあると考えられるのであります。  最高検察庁におきましては、保全経済会の営業停止の声明と同時に全国の検察庁に対しまして、同会及び同種事業の動静を厳重に監視するように指令いたしましたのであります。今日まで検察庁側といたしましては、高知において同会会長伊藤斗福に対しまして告訴が一件ございました。この告訴状の写しは最高検察庁まで参つておりますが、これらの書類、その他を十分検討いたしまして、合せて保全経済会に対する今後の検察態度を検討する予定であります。以上であります。
  82. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 保全経済会につきまして、取締り当局の立場からの所見につきましては、只今刑事局長からお答え申上げたのでございますが、私からこれを法律上いわゆる匿名組合と称するものをどう見るべきであるかにつきましての所見を簡単に申述べたいと存じます。  保全経済界と出資者の関係は一般に匿名組合であると言われておりますし、又営業案内書には商法の規定による匿名組合組織であるということが書いてあるのでありますが、その実態は果してこれを商法の匿名組合契約と見るべきものかどうか甚だ疑問だと思うのであります。御承知のように匿名組合は投資者の、即ち匿名組合員が相手方即ち営業者のために出資をしてその営業から住ずる利益を分配することを約する契約でありまして、出資の対象となります事業は法律的には営業者の事業でありますが、経済的には匿名組合員即ち出資をする者と営業者との間の共同事業でありまして、賞業者は営業年度ごとに損益を計算いたしまして利益があれば、これを匿名組合に分配するということを本質的な要素としておるのであります。故に若し営業者と各出資者との間に経済的共同事業と見るべきものがなく又営業者は営業年度ごとに営業から生ずる利益を分配するのではなくして、利益の有無と無関係に毎月一定の率による配当なり、利息の支払いをするということであれば匿名組合ではないのではないかと考えるのであります。  保全経済会の場合には、私どもその実態を詳細調査したわけではございませんけれども、世上伝えるところによつて考えますと、匿名組合に名をかりているに過ぎないもので、いわゆる出資若と保全経済会の伊藤斗福との間の契約全体の趣旨は、出資者が利殖の方法として一定の出資金、即ち元本を一定期間、通常三カ月のようでありますが、保全経済会に運用させる。確定の利率による利息の支払いを受けるというべきであろうかと思うのであります。若しそうであるといたしますならば、匿名組合と申しますよりも、むしろ消費寄託或いは消費貸借と見るべきではないか、かように考えるのであります。潤費貸借或いは消費寄託のいずれに該当するかということは、銀行法違反となるかどうかの問題と関連するのでありますが、申すまでもなく消費貸借は借主をして元本を利用させることが主眼であります。消費寄託は元本の保管を託することが主眼でありますので、その目的の差から考えますならば、消費貸借と申しますよりは消費寄託、即ち預金と見るのが相当ではないか。即ち保全経済会のやつております大衆から資金を受入れ行為は銀行法違反の疑いがあるとも私どもは考えるものであります。ただ先ほども申しましたように、その実態について直接は詳細に調査をしたわけではございませんので、世間に伝えられております事実だけから判断いたしましたわけでございます。この保全経済会の休業に関連いたしまして、匿名組合というものが、こういうふうに多数の者から資金を吸収して、而もそれが返せなくなるというようなことでは社会に害毒を流す。これは商法の匿名組合の規定が不備なのではないか、商法の改正を考える必要がないかという意見か一部にあつたのでございますけれども保全経済会のやつておりますことが、銀行法なり信託業法なりの違反となるかどうかは別といたしまして、法外に有利な条件で以て巧みな宣伝を行なつて、大衆の資金を受入れるということを業とする者に対して、大衆保護のために何らかの取締が必要であることは無論であります。ただ、この保全経済会のやつておりますことに関連して、果して商法の規定の不備というべきかどうか。これは先ほど申上げましたように、商法上の匿名組合と認むべきでないと考えますのみならず、これを悪用したのは、この商法の匿名組合に関する規定の不備によるものではないと思うのであります。どういう形式を選びましようとも、経済的基礎の確実でない、国家機関の監督に服しない者が法外に有利な条件で大衆を釣り、そうして巧みな宣伝を用いて、経済知識の乏しい大衆から資金を吸収するというようなことが害毒を流すのでありまして、若しこの点において取締法規に不備がございましたならば、取締の規定を考えることは格別といたしまして、商法の匿名組合に関する規定の改正ということは、私どもとしては考えていない次第でございます。
  83. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 大蔵省からは特殊金融課長が出席いたしておりますが、特殊金融課長から何か特に説明されることございませんか。
  84. 有吉正

    説明員(有吉正君) 保全経済会を中心といたしまして、いわゆる匿名組合契約によりますところの、大衆から出資を求めるという形につきましては、これが金融関係法規に如何なる関係を持つかということにつきまして、大蔵省といたしましてもここ一、二年間研究をいたして参つた次第でございます。その間におきまして大蔵省のみならず、法務省或いは法制局とも打合せを遂げまして、先般三月に一応の結論を出した次第でございます。これにつきましては、匿名組合という契約それ自身には、今いろいろ疑義がございます。匿名組合というものではないと言い切るだけの根拠はないというために、一般の金融関係法規の違反とは断じがたいという線を出した次第でございます。勿論当時大蔵省といたしましても、かかる匿名組合契約によりますところの、大衆から出資を集めるものに対して検査権、調査権を持つておりませんので、もつぱら営業案内等を見ましてこれが判断をいたして行く以外に方法はなかつたわけでございます。当時におきましても、保全経済会の営業案内等を見まして、これが判断の材料としたわけでございます。保全経済会につきまして営業案内等を見ました際におきまして、いろいろ疑義はございましたが、匿名組合の契約が商法の各条を引用しております関係上、これが出資でない、匿名組合出資でないと言い切るだけの根拠を持ち得なかつたわけでございます。かかる観点から出資でないと言い切る根拠が出ませんでしたために、我々といたしましても直ちにこれが銀行法なり或いは信託業法違反であると断ずるわけに参らなかつたわけでございます。勿論これが調査なり検査と申すものは、大蔵省の権限としてなし得なかつたわけでございまして、詳細なる検査或いは調査というものに基いたわけではございません。かかる不特定多数の者から出資の形によつて金を集めるという形のものについて如何なるように大蔵省が考えるかということにつきましては、大蔵省といたしましては金融法に、つまり不特定多数の者から消費寄託の形で金を集めるというものにつきまして、当然これが銀行法或いは相互銀行法という法に基きまして大蔵大臣の免許を得たものでなければこれを行うことが得ないのは当然でございます。これに違反するものはそれぞれの法規のいわゆる対象になるわけでございます。併しその内容的に申しまして、これが預金行為であるということが判断がされませんと、大蔵省といたしましてかかる法規の違反ということの断定の対象外に存在するわけでございます。ただ不特定多数の者からいわゆる金融業法違反ということの形でなくして行われたところの出資の形というようなものを今後立法措置として如何に考えるかということに相成りますと、これは金融法規の埓内から外れておりますので、私の個人の意見になるかとも思いますが、或いは立法的に制限し、禁止するというような措置が必要になつて参ろうかとも存じておるわけでございます。この点につきましてよく政府一人の立場といたしまして法務省とも連絡して研究して参りたい、かように考えている次第でございます。
  85. 中山福藏

    ○中山福藏君 ちよつとその前に一つお尋ねしておきたいのです。只今お三人の御説明を承わりまするというと、法律上の的確な性格というものがこの匿名組合問題につきまして誠にあいまいで、はつきりしない。むしろこれは脱法的な処置を講じてこの挙に出でたものじやないかというふうに結論として承わる次第でございますが、すでにこれができましてから、これは二十四年といいますから、もう五年ぐらい経つておるわけですね。そこでこういう大きな四十四、五億円というようなものを取扱つておるというような、いわゆる一種の金融業について法務省もそれから裁判所も大蔵省も何らこれについて手を下すことなく、又傍観しておつたというふうにも受け取れるのですが、そういう立場で役所というものはあつていいんでしようか。その点についての御責任はお感じになりませんですか。これは一般大衆、国民は非常に迷惑しているのです。それでこういう問題が起きてから、どうも法律に触れるんじやないと、極めてあいまいな御説明では、国民の代表という立場からこれは納得が行かないのですが、今日まで一体どういう研究をしておられたんでしようか。非常に私ども不満です。
  86. 一松定吉

    ○一松定吉君 今中山委員の言うように、今までの保全経済会の規則は見たことはありませんが、新聞等の記事により、それからいろいろ今世間に行われておる何々金庫というようなものの営業の仕方を見ると商法の匿名組合の規定そのものによつて彼らはやつておるように見えるが、つまり或る一人のAというものが営業すればB、C、D、E、F、G、Hというような多数のものはAの営業に関して出資をする。彼らの間には、あなたの営業するについては我々は匿名組合員として出資をいたしますという書付けによつて出資しておる。但し私どもの出資は三カ月でお返しを願います。三カ月でお返しいたします。あなたがたの出資に対しては月二分の利益配当をいたします。よろしうございます。こういうような書面を取交わして、そうして金をどんどんいわゆる寄託じやない、出資しておる。この出資を受けた営業者は、それによつて人に金を貸す、或いは不動産、動産を買う或いは株を買う、それで儲ける、儲けた金を月二分づつ返すということであれば、これはこの商法の規定の匿名組合の規定にちやんと当てはまる。但し商法の百五十三条、即も帳簿の閲覧権とか或いは財産の状況調査とか検査とかいうことを、俺は帳簿を閲覧するのだ、俺は検査するのだということを申入れて、その匿名組合の営業主が拒んだという事実があれば不都合だ。そういうようなことを法律を知らない者が調査や検査を申入れたということはないでしよう、今までは……。そうして月々二分の配当を、利益をやつておるということであれば、これは不特定多数の人が相手であろうと何であろうが、商法の匿名組合の規定には当てはまるように思うのだが、それを彼らが伊藤何がしというような者が俺は俄かに損をしたのだから云々と言つて営業の停止をしたといつて驚いてかれこれと言うことになつて来ると、丁度中山委員が今言うように長い間政府は放つたらかしておいて、そうして全国の人間から集めた金を払うことができないようになつたから俄かにうろたえて、これは銀行法に反するとかこれは何とか言つても、これは今までそういうことを放任して監督しなかつた責任は政府にあるのであつて、その点今俄かにこじ付けて、これは銀行法違反だとか、これは不特定多数の人で以て何億という金を集めるのだから匿名組合ではないのだ、匿名組合の出資者というものは多くても二、三十名以上ではいけないということは、これはあとからつけた理窟であつて、商法の匿名組合という規定には今やつておることはちやんと当てはまる、又損をしても支払う義務はない、出資したものは、つまり営業者のものになるのだ、それで、損をすればその補填をした後でなければ、組合員に利益の配当はせんでもよろしい。又組合員は利益の配当を請求することはできんということは、これは五百三十八条で規定してあれば、もう少しこれは早く、匿名組合の規定をかくのごとく悪用することはよくないが、それじや何とかしようということで立法を着手することにならないと、こういうような大きな問題になつて来たときに、初めてあとに理窟を付けて、これは匿名組合の仕事ではないのだ、取締らなければならんのだということは、全く私は中山委員と同じような考えを持つておるのだが、それはどうなんですか。そこを一つ本当に、どうも法の欠陥、盲点に乗じてこういうことをやつたので、これは悪かつたというのであれば、早く取締り法規をここに制定するように手続をとればいいのだ。このままこれを置くとして、ほかに何か刑法上の処罰を受けるような行為が彼らにあれば、これはこの方面で罰せられるけれども、今、表向きに出ておるようなことだとすれば、匿名組合じやないのだということは言えないのじやないかと私は思うのだが、その点を一つ我々専門家の、納得の行くように説明して下さい。
  87. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 誠に御尤もな御疑問だと思いますが、この伊藤斗福のやつております保全経済会は、従来事故が殆んどございませんで、最近急に店を閉めたというようなことで、常識の相当ある、知能の高い人は、相当危い業務だと感じておつたのでありますけれども、被害のない者に対しまして、いきなり検察当局がこれに手を付けますと、そのためにこの業務が潰れたということで、却つてほかのかたがたに迷惑をかけるということも一つ心配しておつたのでございます。現に伊藤斗福は、休業をたしか三月と発表しておりますが、この間に何らか官憲が、手を入れれば、官憲の手が入つたということで、自分たちの業務再開の義務とか或いは返済の義務ということを延ばす口実にしようというような傾向も見受けられるようであります。これを金融関係の業務違反として処罰いたしまするのには、余りに罰条が軽い。銀行法違反にいたしますると、免許を受けずに銀行業務を富んだ者は五千円以下の罰金でございます。さような事案ではちよつと当らないのじやないかという考えもしておるのでございます。本質は取込詐欺であるとか、或いは横領、背任というような問題でありますけれども、これに手を付けまするきつかけが従来はなかつたのでございます。類似の匿名組合方式による、かような業者も多々あるのでございますが、それに対しましては、すでに名古屋、大阪で各一件ずつございまして、名古屋では詐欺罪で起訴いたじまして、第一審が無尽業法違反で判決があつたようでございます。株主相互金融の形の事案も大体同種の問題になつておりまするが、そのほうはかなり手を付けまして、約二十件ほど起訴して、すでに有罪の判決のあつたものもございます。以上のような事情で、詐欺その他の罰条にこの事実が当るかどうかということが、従来何ら事故がなかつたということで、研究はして来たのでございますけれども、そこまで手が届かなかつたという実情を御了承頂きたいと考える次第であります。
  88. 一松定吉

    ○一松定吉君 詐欺とか横領とか背任とかいうことになると、刑法上もそれだけの条件を具備しなければならんが、横領ということになつて来ると、匿名組合であるとすれば、出資者の金は全部営業主の自由に帰するからして、その金を自分の金として使うということは横領罪が成立しませんね。それから又自分がそういうことをちやんと標榜して、それを納得して出資している、そうして月二分の利益を受けるということで金を出したら、これは詐欺罪にならん。相手方を欺罔したのではない、相手方も欺罔されていないから詐欺罪にならん。背任ということになると、自己若しくは第三者のために業務をしておるものが、自己若しくは第三者の利益を図つて本人に損害を加える目的で任務に背いた行為をなし、そうして本人が損害したのでなければ背任にならん。そうして目分が本当に行詰つてしまつて営業もしないのであるのに、するようなふうを装つて出資名義で金を取つたということならば、それは詐欺になりましよう。ただ刑罰法令は御承知の通り厳格に解釈しなければならん。牽強附会してこれを詐欺になる、横領になる、背任になるというようなことは、これは刑罰上の不当の成立を許さんわけです。その点私は納得が行かない。これは何も保全経済会だけじやない、全国に何々相互、何何金融、何々金庫というものがたくさんある。これは皆そういうような匿名組合の規則を以てやつておる。銀行法ということになつて来ると、預金を預かる、そうして人に貸付けるというような金銭の貸付業だけをするならば、銀行業に入るでしようが、高利貸なんかというものは銀行法でなくてやつておる。預かつてそうしてそれを人に貸付けるというならば銀行法でやるほかにないが、これは銀行法にも当てはまらないのみならず、自分の営業のために金を預かつて、預かつた金で不動産を買う、或いはその他の動産を買うて儲けるというようなことで儲けた金を出資者に配当するということになると、銀行法にも違反しないじやないですか。要するにこういうようなことはもう少し、これは立法者も悪い、我々も責任があるでしよう、何とか取締らなければいかんじやないかということで、そういう点は手落ちであつた。だからしてその手落ちを弥縫するために何に当る、かんに当るというようなことで世間を騒がしてこれを検挙するというようなことになつて来ると、大変な問題になる。早くこれを救済する方法を講じて、そういうような人心を非常に動揺せしめておるようなことを防ぐ方法をとらなければならんと私どもは考えておるのだが、本当に一つ打明けて率互いこういうことを救済する方法を考えなければならんと私は思うのだが、どうですか、そういう点、これは中山君も私と同じ意見だと思うのですが……。
  89. 中山福藏

    ○中山福藏君 それに関連して一緒に答弁をして頂きたい。私はものを処理するには性格を明確にしておかなければならんと思う。ただ性格が不鮮明なのをあれやこれやと批評して、議論倒れになつてもこれは仕方ないのです。だから法律上の性格を明確にして、詐欺とか横領とかそれから背任とかいう問題に当てはまるかどうか。或いは信託業法とか或いは消費寄託とかいろいろな法律上の性格というものを根本的に一つ掘下げて、新らしい立法の措置に出なければならないのであります。それで私がお尋ねしたいのは、五年の間何にもなかつたから研究が足らなかつたのだということでは、私は非常な手落ちだと思うのでありますが、併し事ここに至つては、今日になつては仕方がない。ですから先ず第一に御明示を願いたいのは、法律上の性格を政府のほうできちつときめて、そうしてそれをどうするかということにならなければこれはいかん。それからやはり只今一松正委員がおつしやいましたように、何分にも相手方の多い仕事をしている伊藤斗福のことでありますから、これは社会的にどういう影響を及ぼすか、金融界にどういう形勢を及ぼすかということも一応考慮の中に入れる必要があるわけでありますから、そういう点も併せてよく御考慮になつて、そうしてはつきりした筋の通つた割切れる答弁をして預きたいというのが私の念願なんです。
  90. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今の両委員の趣旨日をよく呑込んで御答弁願いたいと思います。
  91. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 研究が不十分で誠に申訳ない次第でございますが、何分にも材料の収集が十分でありませんでしたので、今日まで遅れた次第でございます。先ほども申上げましたように告訴、告発も少し出ておりまするし、多少の材料も集まり始めておりますので、中田先生のおつしやいました点、一松先生のおつしやいました点なども十分拝聴いたしまして最も妥当適切な処置をいたしたいと考えておる次第でございます。
  92. 一松定吉

    ○一松定吉君 それでは只今中山委員の言うように政府の意見というものはまだまとまつていないわけですね。そういう業態に対する法律上の本体というものはこれはどういうものだということがきまつておらんで、ただむやみやたらに手をつけてやると、財界を撹乱するだけで人心が非常に動揺するからその辺も注点せんと、本体がきまらん、これは何に当るのだということがきまらんのだから……。
  93. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は中山さんの御意見識に御尤もだと思うのですが、そこでさつきからの御説明を伺つてつても、民事局長の御意見、それから大蔵省のほうの御意見、そこにすでに食い違いがあるのですが、政府で仮にきめても、結局どういうことなんでしようか。裁判所で最後は決定する以外は、公権的なといいますか、解釈がつかないということになりましようか。それともどこかできまつたことがそれは公権的な解釈ということになるのでしようか、その点はどうなんでしようか。
  94. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 刑事事件といたしましては最後は裁判所にきめて頂くよりほかいたし方がござせいまん。
  95. 一松定吉

    ○一松定吉君 刑事局としても今これがすぐに犯罪を構成するということの断定はできんのでしよう、如何です。
  96. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) その通りでございます。
  97. 一松定吉

    ○一松定吉君 その通りでしよう。だからこれは詐欺になり横領になり、背任になり、銀行法違反になるのだということは、今中山委員のおつしやるようにきまつた上でそれを物差にして、そうして各事実に当てはめて、これは犯罪が成立する、これは成立しないというて裁判を求める。求めた結果、犯罪が成立するかせんかということ、この点は裁判所の判決に任さなければならん。検察庁が起訴するかせんかをきめる前に、本質がきまらなければそれによつていろんなことができないので、今刑事局長が言われたように、今犯罪だということが認められないのだから、こういう点はやはり慎重におやりにならんと、これは非常な動揺を今現に来たしつつあるのだから、その点に対しまして大蔵省の政府委員のかたの御意見を承わりたいと思います。
  98. 有吉正

    説明員(有吉正君) 先ほども申上げました通り、匿名組合契約によりますところの、大衆から出資を受入れるこの形を中心といたしまして、大蔵省のみならず、私どもといたしましては法務省なり或いは法制局、従来法律を取扱つておられる官庁側の御意見も十分に取入れまして、これが態度をきめて参らなければならん、かように存じまして従来しばしばお打合せをしたのでございます。先ほども申上げました通り、大蔵省がその材料を提供するにいたしましても、我々といたしまして検査権なり調査権はございませんが、もつぱら営業案内等手に入りますものを中心といたしまして討議をいたしたわけでございます。その結果現在の匿名組合契約による出資の受入れというものは、匿名組合契約でないと言い切るだけの根拠がございませんために、これが直ちには金融関係法規の違反とは断じがたいという一応の結論を出した次第でございます。かかる結論を出したといいますことは、我々行政官といたしまして金融関係法規に若しも違反している事実がごさいましたならば、これが告発をせねばならんということに相成るわけでございます。最後に窮極的には、先ほど刑事局長の御答弁の通り、判決によつてきまるべき問題だと考えておる次第でございます。それだけに我々といたしましては慎重なる態度を以てこれに当らなければならん。と申しますのは、若しもこれが判決によりまして行政行為というものが違法であるというような解釈が下されるということになりますと、今後の問題にも非常に大きな影響を及ぼすのではなかろうか、かように考えた次第でございます。その間かかる事情入れまして法務省とも十分打合せをし、大蔵省の一応の態度をきめた、かような関係になつておる次第でございます。
  99. 中山福藏

    ○中山福藏君 私、大蔵省のかたにちよつとお尋ねしたいのですが、これは匿名組合と仮に伊藤斗福が育つてつて、これを登記所に登録する。そういうことから出発して金融というものに相当はでな手を使つておるわけですが、そういう場合には銀行局のほうでは、事いやしくも金融という面においての活動が行われておるのですから、それが法律に触れようが触れまいが、これは五年の長年月に亘つてこういうことをやつておるのですから、相当これは御調査にならなければならんと思うのです。それが事業の営業妨害とか何とかという問題は別にして、これは研究だけはおやりにならんと、今日大蔵省の銀行局というものは何をしているかわからんということになるのじやないですか。これは非常な怠慢だと考えられるのですが、その点について御意見を承わりたいのです。
  100. 有吉正

    説明員(有吉正君) 先ほどお話しした点と重複するかも存じませんが、この匿名組合契約によりますところの出資ということが直ちに金融関係法規に違反しないといたしましても、これにつきましては金融関係の秩序の擾乱というような要素も出て参るということに対して、我々としては非常に恐れておるのでございます。もつぱらかかる観点から我々といたしましても、調査権、検査権はございませんが、各種の資料を集めまして研究は続けて参つておる次第でございます。又政府の一員といたしまして今後の対策はどうするかということにつきまして、法務省に御意見も提出しているような次第でございます。決してこれを等閖に付しているというようなことではございません。ただ我々といたしまして及ぶところの力が足りない、或いは権限がないというような制約もございますが、できるだけ研究努力いたして参りたい、かように考える次第でございます。
  101. 一松定吉

    ○一松定吉君 政府当局の御意見はよくわかりましたが、こういうような財界に重大な影響を及ぼすようなことについては、一つ急速に政府のほうでこの措置を講ずるような立法処置をおとりになるか、そうでなければ委員でも出してやらなければならんと思うのであり、あなたががたのほうで疑問のあるものであれば、法律の専門家でない素人あたりが、これは刑法の罪に触れるのだというてやつておるものはない。やはりこれは正しいやり方だと思つてやはりこれは正しいやり方だと忠つているからやつておる。正しいやり方だと思つてつておる結果がこういうことになつたということになると、刑罰法令において処置すべき問題じやなくて、これは他の方面で一つ急速に救済しなければならん問題だと思うから、早く私はこれは何らかの手を打つたらいいと思う。ただ幾ら材料を集めて研究したからつて、匿名組合の範囲を出なかつた。それをあとで屁理屈をつけて、これは財政上影響するところが多いから、これは取締らなければならんとか言つてあとから取締つたつて罪にならんものを取締ることはできないのじやないですか。そういう点について、何か今政府当局でお考えになつておるようなことがあれば、この際一つ承わつておきたいと思います。これは全国に保全経済会だけじやなくて、随分たくさんあるでしよう。今二百なんぼとかくらいあるように新聞記事にあつた。やはりみんな今のように匿名組合で出資して、営業主が金を集めて、その集めた金でいろんな商売をしておつて、そうして月二分とか三分とか何かそういうようなものをやる、一面には銀行の利息は定期でも年に六分とか七分とか四分五厘とかいうふうに安い。だからして金を持つているものが銀行の安い利息よりも月に二分、三分のほうがよろしいというて、結局利益に目がくれて、これはやつておるものもたくさんおるのだから、こういうものが蹉跌するということになると、それは国民の生活に非常に重大な影響を及ぼす、だからこれは放つたらかしてはおけませんね。今までのことは直接刑罰法令に違反しないから手がつけられんとあれば、何か行政処置でもとつて、国民が被害に陥らないような方法を講じなければならんと思うのだが、そういう点について今政府は何か急に考えておりますか、おるならば如何なる方法を考えておりますか、それをお尋ねしておるのです。
  102. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 取締対策につきましては直接私どもの所管でございますが、目下如何ようにするか、至急に対策をきめるべく検討中でございます。救済法規等につきましては、只今のところこれも検討中でございます。
  103. 楠見義男

    ○楠見義男君 大蔵省のかたにお伺いしたいのですが、さつきの御説明で匿名組合出資でないという判断はつかないとこういうお話でしたね。そこでその逆の匿名組合だという判定を大蔵省はしておられるのですか。それともそれも断定はできない、こういうことなんですか。その点だけをお伺いしておきたいのです。
  104. 有吉正

    説明員(有吉正君) 私の先ほどの言葉が足りないために失礼をいたしたと思いますが、現在の保全経済会だけをつかまえて考えてみました場合におきまして、これは一応斗福が営業案内におきまして匿名組合契約という商法の条文を引きまして営業をいたしておる、出資を募つておる次第でございます。これに対しまして匿名組合であるかないかという点は別問題になろうと思います。いずれにいたしましても、出資ということによりまして、金融関係法規には断じて違反の対象にならんとかように考える次第でございます。
  105. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると匿名組合だとも断定はしてないわけですね。
  106. 有吉正

    説明員(有吉正君) 匿名組合でないと言い切るだけの根拠はございません。伊藤斗福自身が匿名組合であると言つておる建前からとりますれば、匿名組合であろうということに相成るかと思います。但し匿名組合自身につきましても或いはこれに準じたものというようなことにもなろうかと思います。
  107. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、さつきの民事局長お話の匿名組合でなしに、消費寄託或いは消費貸借どちらかじやないかというようなお話があつたのですが、そうなると、今度の問題は一体どうなんでしようか、消費寄託か或いは消費貸借か、匿名組合か三つのどれかに必ず入るのか、それ以外のものとして考えられるのか。法律構成の上から見るとどういうことになるのでしようか。
  108. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 契約の実態を詳細正確につかんでおりませんので、正確なお答えはできないのでございますが、先に伝えられております事実だけから考えますと、先ほど一松委員から仰せになりましたお考えとやや違うのでありますが、私どもは商法の匿名組合契約の条文に「常事者ノ一方方相手方ノ營業ノ爲メニ出資ヲ爲シ其營業ヨリ生スル利益ヲ分配スヘキコトヲ約スル」契約である。これを普通学者は法律的には営業者の営業であるが、経済的に見ると営業者と匿名組合員両当事者が共同して事業を営む関係にある場合である。従つてその営業から生じた利益も損失も分ち合うというのが匿名組合である。かように考えますので、この保全経済会の場合は営業案内にもありますように、匿名で資金の利殖を図るのだということを言つている。そして月二分の確定の利息を払う。又三カ月過ぎれば返すということになつておりますので、これを商法の匿名組合と見るよりは、利殖のために一定の金を預けるのだというふうに見るのが当事者の意思に合うのではないか、そのほうが契約の解釈として本当ではないかと、これは法律的な意見に過ぎないのでございますが、さように考えるわけでございます。
  109. 楠見義男

    ○楠見義男君 そういうふうになつて来ますと、これはかたばらずにお聞き願いたいし、又お話して頂きたいのですが、結局さつき中山さんからの、今まで政府は何をやつていたのかということにも関連するのですが、一方では匿名組合だとは断定はできないが、併し匿名組合ではいとも断定できないという意見があり、それから実態に即してみれば今民事局長お話のような意見も出て来る。そういう意見は今度の問題が起つたので初めてそういう意見が明らかになつたのか、これは私別に今までの態度を詮策するということでなしに、ただ事実だけをお伺いしたいのですが、従来からもそういう意見が法務省、大蔵省の間にあつて、それが結論がつかずに今日になつたのか、その間の事情をお伺いしたいのです。
  110. 上村貞一

    説明員上村貞一君) その点につきまして私の関係しております点だけを申上げますと、本年の一月頃でしたか、大蔵省のほうから保全経済会、いわゆる匿名組合であるかどうみるべきであろうかという意見を求められまして、その際二、三日私どもで研究いたしました上、これは匿名組合と考えられないという回答をしたことがございます。その後大蔵省は金融行政の立場から、又検察庁なり刑事局は検察の立場からそれぞれ御研究になつたことと思うのでございますけれども、私ども直接これを取締る……、その他の行政を担当する立場にございませんので、そういう法律上の意見を申上げたきりになつてつたのでございます。
  111. 楠見義男

    ○楠見義男君 そういう場合に政府部内における最終的な公権的な解釈は従来法制意見局がやつておるわけですね。そこで大蔵省にお伺いしたいのですが、そういうことを照会せられて法務省のほうからそういう回答があつて、而も大蔵省としてはそれは法務省の意見が、民事局の意見が間違いであるというふうにお考えになつたのか。或いはそのほうが尤もかもわからんが、金融関係その他から秩序が急に乱れるとかいろいろそういうことを懸念されて手を付けずに拱ねかれておつたのか、その間の事情を、事実だけを伺えば結構です。
  112. 有吉正

    説明員(有吉正君) 政府部内の意見につきましてのことでございます。いささか私の申上げたことに疑問をお持ちになつたようでございますが、こだわりなく話をしろということでございますので、あえてお話申上げたいと存じます。この点につきまして先ほどから申上げておる通り、法務省なり、或いは法務省の部内におきましても刑事局、行政訟務局それぞれ別個の形におきまして私どものほうは連絡をいたしたわけでございます。特に民事局におきましても本日ここに御列席になつておりますが、吉田参事官にも御連絡いたしたわけでございます。その際におきましていろいろ議論がありました。議論の過程におきましては或いはこの保安経済会が匿名組合ではないというような御意見もございました。併し最終的に私ども衆議院の大蔵委員会に答弁を求められておりましたので、それに対する答弁といたしまして極く慎重にこれはやつて参らなければならん、大蔵部内だけの意見にとどまつてはならん、法務省と打合せの上政府の統一的な見解として申上げなければならん、かように考えたために、特に文章につきましては下書までも草しまして法務省のほうにお見せしたわけであります。法務省につきましては私どものほうは特に刑事局関係につきまして連絡を密にしたわけでございます。刑事局からの御返事もございまして、法務省の意見といたしまして……、私どもは現在のところ匿名組合契約でないと言い切るだけの根拠はないから、金融関係法規違反とは断じがたいという線を打出したわけでございます。当時勿論保全経済会自身が我々の研究の主たる対象になつてつたとは言い切れません。これはすべて匿名組合契約によるもの全体の問題を討論したわけでございます。保全経済会だけに限つて問題を述べておつたわけでございません。この点はいささか違つたと想いますが、併しその当時におきましても保全経済会というようはものが中心となりましていわゆる匿名組合契約によるところの出資ということが世間でも取沙汰されており、これについての問題の解決ということが進められておつたことは事実だろうと思います。そこで我々といたしましてはこの保全経済会の営業案内その他を三十分資料に供しましてこの問題を討論したわけでございます。そこで結論としましては先ほど申上げた過りの結論が出たわけでございます。併し法務省といたしましては或いはこの結論につきまして保全経済会それ自身が匿名組合であるかどうかということにつきましては、更に調査を要するというような点が含みとして或いは残されておる、かような御答弁であろうかと思います。私どもといたしましては一応法務省、特に刑事局を窓口として御意見を伺つたところによりましては、はつきりとこの保全経済会が匿名組合契約ではないというようにおつしやつたことを聞いた覚えは私はないのでございます。
  113. 一松定吉

    ○一松定吉君 今民事局長お話の匿名組合の第五百三十五条の、「当時者ノ一方カ相手方ノ営業ノ為メニ出資ヲ為シ其営業ヨリ生スル利益ヲ分配スヘキコトヲ約スル」とあるが故に、これは匿名組合員と営業主とが共同営業であるというふうにあなたは御解釈なさつたようでありますが、どうですか。
  114. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 一般に学者の説くところによりますと、匿名組合は法律的に営業者の営業、であるけれども、経済的には組合員と営業者との共同事業と見るべき場合である。つまり一種の共同企業形態であるというふうに言つておるのであります。それから利益の分配の点でございますが、営業から生じた利益を分配するというためには、営業年度、これは一年と限りません。その分配をする基準になる期間でございますが、営業年度ごとにその営業から生じた損益を計算いたしまして、そして特に分配の割合がきめられていない限りは、営業の総資本に対する各出資者の出資の額の占める割合を算出することができなければならんわけであります。こういう多数の者とそれぞれ匿名組合契約を結んだといたしましても、この種の業種におきましてはこういう利益の分配なり損失の分担の基礎となる計算をすることが事実上殆んど不可能と言つてもいいかと思います。利益の分配なり損失分担というような意思は当事者は真意はなかつたのじやないか、匿名組合であるとこの出資申込書の趣意には書いてあります。又営業案内にも書いてありますが、ただ匿名組合であると言つておるだけで、当事者の意思では匿名組合契約を締結する真意はなかつたのではないか、かように考えるものであります。
  115. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると何ですか、営業者が匿名組合ということを知らないで金を出したんだから、匿名組合ではないというように聞えるのですが、そうすると国民は法律を知らんでいろいろなことをやつた、例えば結婚というようなものも当然届出がなければ結婚ではない。ところがもう届出が出んでも一緒になつたら夫婦だと思つている。法律では届出ても結婚しなかつたら夫婦ではないというふうに解釈できんでしよう。法律解釈は法律を基にして解釈しなければならない。そうすると匿名組合ということで、当事者の一方が相手方の営業のために出資をする、そうしてその営業より生ずる利益というものを分配するということを契約しているのが保全経済会その他の金融金庫のやり方はんでしよう。だからこれは法律上は営業主の商売であるけれども、経済上は共同経営である、故にこれは匿名組合ではないという議論はどうですかね。五百三十六条のつまり「匿名組合員ノ出資ハ営業者ノ財産ニ帰ス、」財産に帰してしまうのです。そうするとその財産に帰したその財産で営業主は営業をやるでしよう。そのときは共同営業ではないのです。それを経済上のみから見て、商法の匿名組合ではないということは、その御解釈はどうですか。やつぱりこれは商法の匿名組合の規定を真正面から解釈して、そうしてこれはいわゆる匿名組合であると認められるのだから、これについては匿名組合ではないというようなことを明らかに言うだけの資料はないという大蔵省の解釈のほうが私はいいと思うのです。あなたが経済上から見れば共同の営業みたいな意味だから、従つてこれは相手方の損害があるような時分にには相手方のそういう損害の調査をしなかつたとか、そういうような報告をするということは煩瑣であるから、今日やつていはいのだから、故に匿名組合ではないというようなことはどうですかね。この法文は真正面に解釈して見れば、今営業者がここにある、それに出資をする、営業者はその出資をされたものを自分の金にしておいて、自分はそれで商売をする、利益があるから配当する、利益がなければ利益があるまで、補慎するまでは利益の配当をする必要はない。出資者は何時でもその百五十三条の規定によつて営業の内容を調査検討ができるのだ。それをやらなかつたからというので、お前がやらんからして匿名組合ではないということは言えないでしよう。やつぱり我々は大蔵当局の解釈するようなふうに、今までのようなやり方はこれは匿名組合と認めなければならんという、匿名組合ではないという反対の事実が今日まで挙つていないのだ、我々はそういうことであるならば、それを前提として早く国民が安心するようなふうな手を打つということが今日の急務ではありませんか。これを一つ善後処置を早くとるということが政治の要諦ではないかとこう私は申上げるのですが、そういう意味からそれを無理にあなたが匿名組合ではないから云々と、これはほかのほうで云々というならば、これはそういうことを匿名組合を常業する人間も知らなければ理事者も知らんで、ただ民事局がそういう解釈をするから、それが犯罪になつたりならなかつたりするのじやないのじやないですか。
  116. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 私或いは言葉が足りなかつたと思いますが、只今楠見委員から意見のお尋ねがあつたと思いまして意見を申上げたのであります。法律上の議論になりますので、これ以上申上げませんが、現行法上どういう形でやりましようとも、例えば株式会社の社債という商法で認められた適法な形を使いまして一般の大衆の資金を集めましても、非常に法外な有利な条件で、而も誇大な巧みな宣伝を用いて大衆の資金をかき集めるというようなことが行われますと、そのために騙されて被害を受ける人が出て来るのであります。むしろこれは匿名組合であるからどうだ、ないからどうだというよりも、立派な経済的な基礎を持つた、そうして政府の監督に服しておる正規の金融期間等でないものが大衆の資金をいろいろな好餌を以てかき集めるということを取締法規に不備はないかどうか、その点について検討の必要がある。これも私案は所管外でございますので余計なことかも知れませんが、さように考えておる次第でございます。
  117. 一松定吉

    ○一松定吉君 今民事局長の御答弁によると、それは成るほど匿名組合にやつた人間の認識不足はあつたでしよう。政府の保護を受けておる金融機関に預金すればそういうことはなかつた。政府の保護を受けない匿名組合のようなものに、信用されないようなものに自分が金を預けた、それがためにその金の取戻しができなかつた、回収ができなかつたというようなことはあるけれども、それがあるがために匿名組合でないということは言えないのじやないですか、それをこういうものの代りに政府の保護を受けておる銀行に預金した、その銀行ががいろいろなことをしてその職域を逸脱したがために俄かに破産して預金者が預金を全部もらえんということはある。その時分にその銀行は銀行でなかつたというわけにはいかんじやないですか、それと同じようにつまりそういうようなことが法律によつて盲点があるなら、その盲点を政治家としては、政府としては早くよくして国民の安心するような措置をとらなければならんじやないですか。それを今まで放つたらかして置いて、中山君も言うように五年も経つた今日に至つて騒ぎ立てて、財界が混乱に陥るということはよろしくないじやないですか。それについては何か政府は手を急に打たなければならんじやないかというのが我々の心配しておるところなんです。それをあなたのようにそういうものに金を出してやつたのだから何とかしなければばいかんということは、そういうところがあるから早くこれらの盲点を埋めて、国民が安んじて今日預金できるように持つて行かなければならん、そういうことを私は申上げたのであります。
  118. 楠見義男

    ○楠見義男君 民事局長の匿名組合でないということをおつしやた趣旨は、私はこういうふうに了解したのですが、それは商法の五百三十五条ですか、匿名組合員が出資をしてそれから営業者に利益があれば利益を配分する、こういう契約が匿名組合の契約だ、ところが利益のあるなしにかかわらず確定配分をするということをしておるから五百三十五条自体が狙つておる契約とは違つた契約なんだから、従つてそれは匿名組合契約ではない、こういうふうに言われたと私は了解しておるのですが、その点そうかどうか一つお伺いしたいのですが、それからもう一つは、これは刑事局長にお伺いしたいのですが、新聞で見ますと高知かどこかで保全経済会の問題について取込詐欺か何かということで告訴が何かがあつたように承知しておるのですが、その際に法務省といいますか検察庁側で、契約自体について態度といいますか、解釈が明瞭でない、こういうことになつて来ると、その告訴を取上げるすべもないのじやないか、こういうふうにも思うのですが、それはどういうふうにお考えになつておるのか、その点を御画人にお伺いしたい。
  119. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 楠見委員のおつしやる通り商法五百三十五条に当る当事者にそういう契約をする意思がないというふうに考えるほうが実情に合うのじやないかと、かように考えております。
  120. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 大体この告訴の主たる点は取込訪欺であつたということなので、この点であればこの取調べには別に差支えないのじないか。先ほどの金融業法違反の点は仮に積極であるといたしましても、先ほど申上げたように非常に軽い罰則で、告訴人がそういう点については問題にしていない、こういう実情でございます。
  121. 亀田得治

    ○亀田得治君 民事局長からさつきこの保全経済会法律的な見解を言われたのですが、私も大体八、九分過りまでそういうふうにこの問題に考えておるのです。これは見解ですから見方の相違はあろうと思いますが、やはりこの商法の匿名組合というものが保全経済会がやつておるようなものを意図しておるものではない、これは明確だと思うのです。やはり法律解釈はあくまでもその実態とマッチしたような解釈が正しいかと思います。私実はあなたがそういう明確な考え方を持つておりながら、なぜそれが大蔵省のほうに通じていないのか、大蔵省のほうは何かお話によりますと刑事局長を通じて法務省の見解を聞いておる、こういうようなことのようですが、そのために民事局のほうで出しておる結論というものがうまく通じていなかつたのかどうか、丁度三人おられますから、それは一体どういうふうになつておるのですか。
  122. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) その点は先ほど申上げましたように、今年の一月頃でしたか、大蔵省の事務官のかたが二、三人見えまして、どうであろうかというお話もございまして、そのとき私もお会いしたのですが、二、三日研究して見るということで内部で相談しておりまして、係の者にこれは匿名組合とは考えられないという返事をしてもらいたいというふうに申してありますので、その返事は向うに伝わつておると私は考えております。
  123. 亀田得治

    ○亀田得治君 あなたが直接大蔵省のほうに二、三日してそのことをおつしやつたのですか。
  124. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 私のほうの係の者を通じて大蔵省のほうに申しております。
  125. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると係のかたが、これは細かい話になりますが、その係のかたというのは、そういう保全経済会に対する見解を下すときに、何か相談されたとすれば、その相談に参加しておつた人が伝えたのですか、それとも全然そういう研究の何か相談に与らないほかの人が、あなたの見解を、あちらから来たらこういうふうに言うてくれ、そういう形だつたんでしようか、どうなんでしようか。
  126. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 私のほうで商法関係の事務をやつておる者でありまして、無論相談に参画いたしまして、そのものと相談した結果を伝えるように申したのであります。
  127. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、会議に参加し、商法関係を担当しておられる専門家であるとすれば、これはもう民事局長が言われたことがはつきり外部に出ていると私考えるのであります。更に念のためにお聞きしますが、それが一月のことですか。
  128. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) それは時期ははつきりした記憶はございませんが、多分今年の一月頃じやなかつたかと存じます。
  129. 亀田得治

    ○亀田得治君 金融課長にお尋ねしますが、あなたは何か刑事局のほうから聞いておるというふうに言われているんですが、民事局長の話だと、あなたの係官のかたが直接民事局のほうに行つておられるよう区ですが、それはどういうふうに……、何かの間違いでしようか。
  130. 有吉正

    説明員(有吉正君) 先ほどもお答えいたしました通り、これが研究に際しましては、大蔵省のみならず法務省にも御連絡いたしたわけでございます。法務省におきましても民事局、刑事局、行政訟務局それぞれ別個に御相談したこともございます。最後に三月に至りまして最終的に衆議院の大蔵委員会でこの答弁を求められておりました関係上、これを大蔵部内だけの見解の表明ではいかんのだ、慎重にやらなくちやいかんのだ、こういうことでございましたので、法務省とも最後的にお打合せをいたしたわけでございます。その際におきましては刑事局を一つの窓口といたしまして、法務省と御連絡したわけでございます。最終的に法務省から御連絡を受けたのは、先ほど私のほうが御答弁申上げた通りでございます。その前にそれぞれ民事局なり刑事局と御連給いたしましたときにおきましては、議論の途中におきまして、或いは保全経済会等は港名組合出資によるものか或いは匿名組合出資じやないという議論もございました。そのような議論も私どもは承わつたことがございます。私どものほうもそれに対しまして意見を申上げたことがございます。それは議論の過程の問題でございまして、我々としましては三月におきましてこの問題の最終的な見解を述べるという際におきましては民事局のほうからかかる見解につきまして正式に私どもは聞いた覚えはございません。
  131. 亀田得治

    ○亀田得治君 最終的なそういう見解をお聞きになつたのは三月なんですね。そうするとその三月の最終見解を大蔵省に法務省から出す場合には、これは民事局は参加していなかつたのですか。これは民事局長に……。
  132. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 或いは参加しておつたかも知れません、よく記憶がございませんが、私ども先ほど申上げましたように、これを取締るという行政面には直接関係しておりませんので、まあ民事に関する法律問題をいろいろやつております関係上各省から相談を受けます、意見を求められますと意見を申述べることがございます。この問題につきましてもそういう意見は申述べましたけれども、それを取締責任の局に当る方面でどういう最終的な御意見をお持ちになるか、それに対して私のほうでどこまでもそれはこちらの意見を通してもらわなければならんということを主張する立場にはございませんので、参考までに私ども意見を申上げておる程度に過ぎないのであります。
  133. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこが大事だと思うのですが、これは決して私参考までにただ述べるというような問題じやなかろうと思います。基本的にこれを匿名組合と見るのか見ないのか、こういう点がやはり大蔵省としても又刑事局としても決定的な問題だと思うのですね。だからあなたのほうのそういう明確な結論を無視して刑事局が動きようがないと思うのです。私はそういう意味で、刑事局長がおかわりになつておりますが、こういう問題が起きているから、恐らく局長もその当時のことをお調べになつていると思うのですが、その三月頃最終の見解をどうも刑事局が主体になつて大蔵省に出しておるようですが、その際に民事局のそういうはつきりとした結論を何か全く無視しているような回答を大蔵省に出しているような感じを今受けるのですが、その点はどうなんでしよう。
  134. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 私この十一月九日に辞令をもらいまして新らしく刑事局長になりましたので、また聞きで甚だ恐縮ですが、三月頃の会議におきましては、民事局長も大蔵省の関係官も参集されていろいろ討議した結果、匿名組合ではないというその当時の材料だけでははつきりした断定はできないのではないか、いろいろ疑問の点もあるというところが結論だつたように私は聞いておるのでありますが、その材料が全部揃つて断定的な点が申上げかねたのが、当時の実情ではなかつたかというように聞いております。
  135. 亀田得治

    ○亀田得治君 併しこれは大蔵省としても刑事局としても性格の問題は何と言つても民事局の意見を尊重してやられるはずなんです。民事局自身の意見が先ほどのお話でありますと一月には極めて明確に出ておる。それが出ておるのですから、どうもそのあとの三月頃の結論の出方がおかしいと思うのです。三月頃には民事局長がそれにどうも参加しておらなかたのじやないかと私は思うのです。行違いというのはどつかその辺にあるのじやないですか。民事局長も参加されたようにほかのかたおつしやいますが、民事局長の先ほどのお話だと、どうもその辺がおれのほうはもう一つにぴちつと結論を出しておるので、あとのことはどうも余り記憶しておらんような感じを私受けたのですが、手落ちはどこかその辺にあるのと違いますか。
  136. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 三月頃の会議というのに私自身は出ておりません。私のほうから或いは係りの君が出たかも知れませんけれども最初申述べた意見をその会議で強く固執したかどうか、その会議の模様は聞いておりませんけれども、とにかく最初にも申上げましたように、十分な資料を得ての上の判断ではなくて、或る程度の営業案内等を見ての判断でございます。最終的に断定するにはまだ十分でないという、政府部内の何といいますか統一した意見としては、そういうところに落ちつかざるを得なかつたのじやないかと思うのであります。
  137. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは統一も不統一もないので、あなたのほうの見解を基礎にして刑事局更に大蔵省、こうなつて行くわけなんですから、その同じ段階の人達が三人寄つて討論をやるもんだからどうもぼけて来る、そういう性質のものじやない。基本的にこの性格というものを相当の民事局でもう聞いて、来ておるやつだから、どうも納得が行かない。併しこれはどうなんです。大蔵省に対するそういう回答なりそういうものは文書になつておるのですか。
  138. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 文書になつておりません。それと、いわゆる匿名組合組織でやつております事業の実体を法律上どう見るかという点につきましては、これは民事局が担当の局であるというわけではないのでありまして、裁判所に参りますれば裁判官が判断いたすのは勿論でありますが、検察官がそれを起訴するかしないか、或る法律に触れるものとして起訴するかしないかということを考える際におきましては、検察官独自の判断でこの実体を判断するわけであります。又刑事局が検察庁に対してどういう指示をするかという肚をきめるにつきましても、刑事局独自の考え方というものがあろうかと思うのであります。又大蔵省が金融行政の面からこれをどういうように児るかということにつきましても、これは大蔵省の責任において独自の判断をされると思いますが、ただ私のほうは民事の行政を担当しております関係上、私の立場としての意見を申述べたに過ぎないのでありまして、これが刑事局なり大蔵省なりを拘束する意見であるとは私も考えておりません。
  139. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、それは勿論そう言われれば、大蔵省が対外的に動く場合には大蔵省の責任でやる。刑事局が起訴する場合には勿論その責任でやる。独自の判断でやる。併しそういうふうに処理した場合に、それでは民事局の意見を一遍聞いて見よう、最終の争いに裁判所でね。その際にそれと違つた判断が出て来たら問題にならんでしよう。だからそれはそういう形式的なことじやなしに、実質的にはやはり民事的な或いは商法的な性格というものはどう判断するのが正しいのか、これが何と言つたつてきめ手なんです。だからあなたの立場というのは非常に重要なんです。併しまあ過去のことはもう少し刑事局長も直接その当時の人に聞いてもらつて、又別の機会にして、今後の問題ですよ。今後の問題にしても、結局はやはりあなたの見解というものが決定的ですよ。こんなことは私は刑事局でも大蔵省でも認められると思います。そればどうですか。そういう立場ですかね。民事局はどう言おうとあれはおれの見解だ、そういうことで行けるものでしようか、こういう問題について。
  140. 有吉正

    説明員(有吉正君) お話のように金融関係法規につきましては大蔵省が主管しております。これが金融関係法規の違反であるかどうかという判断、つまり匿名組合の出資であるかどうかという判断につきましては、大蔵省のみで見解を打ち出すわけには参りません。従いまして我々といたしましては法務省特に刑事局、民事局、訴務局及び法制局のそれぞれの御意見を十分に聞きながら我々の態度として判断して参らなければならん、かように考えて今まで折衝し、又御意見を承わつて来た次第であります。
  141. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあこのくらいにしておきましよう。
  142. 赤松常子

    赤松常子君 私大変素人なんでございまして、新聞の上で読んだだけのことをちよつとお尋ねしたいのでございますが、あの問題が起きましてすぐに大蔵当局の見解が発表されましたときに、何か非常につつぱねた感じを受けたのですね。お前たちの自業自得であつて……、まあそれは私の感じでございますが、政府は関知しないというような非常に冷淡な受取り方を私したのでございますが、事実まあいろいろ伺つてみますと、大蔵省の直接の監督下になかつたものなんで、そうおつしやる立場もわかるような気がいたしますけれども、それでよろしいものじやないと思うのでございますね。で、伊藤理事長が今政府に五億円ですか、金融を頼んでそれが融資がつけばまあ当座乗り切れるというようなことを発表いたしております。まあそれは一時気休めかも存じませんが、そういうことは大蔵当局に伊藤理事長から融資のことやなんかが持ち込まれているのでございましようか。どうなさるおつもりですか。
  143. 有吉正

    説明員(有吉正君) 只今お話の伊藤理事長が大蔵省へ融資の申入れをしたという事実は、私は聞いておりません。
  144. 赤松常子

    赤松常子君 今たくさん全国にございますが、これたまたま一つ問題の起きた保全経済会の問題でございますけれども、その他の多くのこういう街の金融機構に対してあれでございましようか、今後どうなさりたい、どういうふうに扱うと申しましようか、見て行くと申しましようか、指導して行くと申しましようか、どういうふうにお考えでございますか。これからばたばたこういうことが起きたらどういうお考えでございましようか。
  145. 有吉正

    説明員(有吉正君) 世間におきましていわゆる類似の金融機関と申されております中にもいろいろな形態があるわけでございます。その一つは先ほどから問題になつておりますところの匿名組合出資によるところの形態でございます。これは出資のみを募りまして、中には貸金業をやつているものもございますが、多くは土地或いは有価証券に投資している形でございます。そのほかに貸金業という形におきまして金を貸すということを業としている株式会社の制度がございます。この株式会社の制度によりまして株を一般に売却いたしましてそれによつて入れた資金によりまして貸金業を経営しておる。これが主たるものが株主相互金融という形になつておるわけでございます。これらのものについて大蔵省はどう考えるかという御貸間だろうと思います。この株式会社の形態によりますところの貸金業につきまして、これも本年の三月四日に大蔵省としまして一応結論を出しまして発表したところでございます。つまり株式会社の制度によるところの貸金業、これは一般大衆から資金を受入れるということになりますが、飽くまでも株の売却によりまして資金を受入れておるという形になつておるわけでございます。これは普通の事業会社の株の売却と何らその間に性質を異にするものではないということでございます。直ちに金融関係法律には違反と断じがたいということに相成るわけでございます。ただその中におきましては或いは金融関係法規の違反を犯しているのもあるかも知れません。従いましてこれにつきましては厳重なる検査をして参りたい、かように言つたわけでございます。と申しますのは、貸金業につきましては貸金業の取締に関する法律というのがございまして、これに届出の義務を課しております。又大蔵省は検査をすることができるようにもなつておるわけでございます。そこでその声明と同時に大蔵省といたしましては貸金業者の検査をいたしまして、その大部分につきまして違反の事実がございましたので、直ちに厳重なる警告を発すると共にその改善措置を命じたわけでございます。なお併せまして一般大衆に対しましては預金者保護という立場から、金融機関というものは厳重なる大蔵省の監督に服しておる、併しそれは飽くまでも預金者保護の立場でありますので、預金を受入れておる金融機関というものに限られるのだ。つまり銀行なり相互銀行なり或いは信用金庫、こういつたものに限られるのでありまして、それ以外の預金を受入れないような貸金業者なり或いは匿名組合形態による保全経済会のごときもの、これらのものに対しまして若しお金をお出しになるならば、これは決して預金という考えを以てお出しになつてはなりません。預金という考えを以てお出しになるならば、正規の預金を受入れる金融機関に持つていらつしやい。若し貸金業者或いは保全経済会のごとき匿名組合の形態によるものに金をお出しになるならば、これは事業会社に対するところの株の投資と全く同じ気持でお出しになる、それだけの危険の負担があるんだということも併せて周知した次第でございます。我々の考えといたしましても、今後預金を預かる金融機関に対するところの預金者の保護には飽くまでも徹して考えて参らなければならん、他方におきまして貸金業者或いは匿名組合形態によるところのこういつた事業者に対しまして金を持つて行くというものとの間に、はつきりとした区別をつけて参りたい、かように考えるわけでございます。そこで先ほども問題がございましたが、各地にいわゆる何々金庫と称しまして株式会社の貸金業者が存在しておるわけでございます。この金庫という文字を使いますと、如何にもそこが正規の金融機関、例えて申しますならば信用金庫と何らけじめが付かないということも考えられますので、先般の国会におきまして法律の改正をお願いいたしまして、今後貸金業者なり或いは有価証券へ投資する業者というものは金庫という名称を使つてはならないという法律の改正をお願いいたして、これが通過したわけでございます。猶予期間六カ月ございます。その後におきましては金庫という文字は彼らは使えなくなるというふうになるわけでございます。大蔵省といたしまして預金者の保護という観点から、預金であるもの或いはそうでないもののけじめをはつきりと付けて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  146. 亀田得治

    ○亀田得治君 大体実体はわかりましたので、要望をしておきたいと思うのです。これはまあ衆議院でも問題にされまして、政府でもおそらく処理の仕方について相談をされていると思うのです。ただ処理をする基本的な立場ですね。これは私先ほどから民事局長なりその他の方の御瀬見をお伺いして、まあこの点については衆議院でも恐らく異論があり、参議院でもおのおの委員によつて見解の違いがあるのじやないかと思いますが、明確な結論を出しておられるのは民事局長だけなんですよ。だからそれを否定できるような、別に我々が聞いていて納得の行く議論もたんにもない。だからやはりどこかに足場を求めて出発しませんと、いつまで経つてもああでもこうでもないで処理がつかないと思うのですね。おそらく民事局長の先ほどの御意見は、これはもう私典型的な脱法行為だと思うのです。形さえ合つていればなんでもいいということになつちまう。こんなものが通つて行けば……、そうじやないのです。だから実体に目を付けてそういう結論を出される、それがたとえ裁判で争いになつても、ちつともその点の性格的な規定付けというものは破れることないと思うのですね。だからその辺をもう少し積極的に検討されて処理の方法を考えてもらいたいと思うのです。まあ処理の方法二つあると思うのですね。そういう考え方に立つて処理する場合と、これはもう何も違法なことはないのだという立場でやる場合、この点を至急にやはり考え方をきめてそうしてどんどん進めてほしいと思うのですね。それは大体どういう方向になつているのでしようか。その処理の仕方の細かい点は決まつておらんでしようが、それじや大体この方向で行こうとか、そういうことはきまつているのでしようか、三者間で……。
  147. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 誠に恐縮ですが、はつきりきまつておりません。先ほども申上げましたように銀行業法違反と仮にいたしましても、非常にこれは軽い罰金、五千円以下の罪でございますから、軽い罰でございまして、それから刑法犯といたしましてどう扱うかということも慎垂に研究討議しておるという程度で、はつきりきまつておりません。
  148. 亀田得治

    ○亀田得治君 要望をしておきます。先ほどのように……。
  149. 赤松常子

    赤松常子君 ちよつと問題違いますけれども、今度新らしく井本刑事局長御担当頂いております問題の売春問題でございますが、どうぞよろしくお願いいたしたいと思いますし、御熱意をお持ちになつて頂きたいと存じます。
  150. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次回は明日午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。    午後三時三十九分散会