運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-11-05 第17回国会 参議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月五日(木曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     内村 清次君    理事            石村 幸作君            堀  末治君            館  哲二君    委員            伊能 芳雄君            西郷吉之助君            高橋進太郎君            長谷山行毅君            小林 武治君            島村 軍次君            秋山 長造君            若木 勝藏君            田畑 金光君            苫米地義三君            加瀬  完君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君   政府委員    法制局次長   林  修三君    南方連絡事務局    長       石井 通則君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君    常任委員会専門    員       伊藤  清君   説明員    自治庁行政部長 小林与三次君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○奄美群島復帰に伴う法令適用の  暫定措置等に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今から地方行政委員会を開会いたします。  奄美群島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案を議題に供します。
  3. 島村軍次

    島村軍次君 第四条の当分の間、政令で定めるものを除く外という、その政令範囲についてどういう事務を予定しておられるか、具体的に一つ説明をお願いしたいと思います。
  4. 若木勝藏

    若木勝藏君 議事進行について……。これはもう法案のそういう審議に入りますか、或いはその前にこの法案関係ある一般的な事項と混ぜてやりますか。
  5. 内村清次

    委員長内村清次君) 実はこの前逐条の大体概括説明がなされております。そこでまあ資料の提出を求めまして、只今島村君から御質疑がありました政令要点あたりも、資料として出してもらいたいということを要求しておきましたが、大体日にちも相当切迫いたして参りましたから、逐条説明に入る前に総括的な一般関連質疑をやつて行こうと存じておりましたが、何分外務大臣その他の出席も見られませんから、それでもう日にちも切迫いたしておりますから、混同しましてやつて行こう、こういう考えであります。
  6. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 島村委員のお尋ねにお答え申上げるわけでありますが、まだ実は最終的には意見がまとまつておらないのでありますけれども、大体考えておりますことは、原則としては当分の間は全部一本にまとめて、国の現在の各省の出先というものとの繋がりをつけないと、こういう考え方をいたしております。裁判事務は勿論事務の性質からして当然これは分離せなくちやならんのでありますが、問題になりますのは裁判と非常に関連のあります検察をどうするかということでありますが、まあ今の考え方では、検察庁の関係だけはやはり別にしなくてはならないのじやないか。その他は一応全部取りあえずまとめて、鹿児島県の出先大島支庁というようなものができると思われますので、その大島支庁にやつてもらうということにしたらばいいのじやないかという構想で以て、法律的及び事実上の大きな支障がないだろうかということをいろいろ検討いたしておるような状態でございます。
  7. 島村軍次

    島村軍次君 そうしますと、政令で定むる範囲については、司法関係以外は全部鹿児島県知事出先に任す、こういうことに解していいですか。
  8. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) その通りに大体今は考えておる状態でございます。
  9. 島村軍次

    島村軍次君 そうしますと、現に直轄でやつておる事務等については、各法令中、国が直接やつておる仕事が相当あると思うのでありますが、そういう問題についてもやはり一部分は、他の地方直轄でやり、奄美群島限つて出先でやらせるということになりますと、島政の問題について矛盾が出て来るのじやないかということが一つ……。
  10. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 先ほども申上げましたように、大体の考え方はそのようにやつておりますので、そういう構想で法律的にそれではいけないという面、それからして事実上非常にそれでは不都合が起きるという面があれば、まあそういうものだけは原則として分離して行こう、こういう考え方でおりますが、只今御指摘のお考えからいたしましても、やはり例えば国が直接認可許可をいたしておりますような仕事というものは、そういう行政事務というものはやはり国に直接やつてもらわなくちやならない、そういうものも考えられますから、そういうものは成るべく検討いたしまして、但し最小限にこれを分離する、こういう考え方でおるわけであります。
  11. 島村軍次

    島村軍次君 先般朝日新聞でしたか、行政簡素化モデルケースを作るというような考え方吉田首相から塚田長官へ指示があつたやの記事が出ておりましたが、果してそういうふうなことがあつたのかどうか。或いは又その構想一つモデルケースというような考え方でこの際出先の整理と合せて、出先にやらしてみるというような考え方の下にやろうということでありますか、その点も合せて一つ付いたいと思います。
  12. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) この新聞の報道が少し考え方がズレておるものでありますから、誤解を起しておる面もあると思うのでありますが、モデルケースという考え方では実はないのでありまして、モデルケースという考え方であれば、あそこの行政機構というものを或る理想の形によつてきめまして、そうしてその考え方でやつてみて、他の内地の分もそれに及ぼすということになると思うのでありますが、今考えておりますのはそうではありませんで、今新らしく帰つて来ますものですからしてこれを内地の現在の状態に合せて行政機構をすぐに作つてしまう、きめてしまうということになりますと、今折角内地で企図しておる行政機構改革のときに、又改革されたものと併せて奄美のものも直すということになつて二重手間になるからしてどうせ国が今行政機構改革考えておるのだから、それがいずれ近くまとまるであろうし、それがまとまるまで取りあえず今のままで最小限に手をかけないという構想でもつて行つてそうして国のほうがまとまつた場合にそこのところの奄美のものも同じように新らしい国の線でもつてきめるようにと、こういうことに実は考えておるわけでありまして、あそこの所に標準の形のものを作つてという考え方では実はないのであります。但し、それにもう一つ考えられますことは、実はこれからの関内のいろいろな行政機構考えます場合にも、ああいう離れております島などの場合に何か特殊の形が考えられれば、それはただ奄美だけではなしに、他の離島の場合についてもああいう狭い、小さい、而も離れておる所に国の内地と同じような行政機構のあり方を必ずしもとらなければならないというほどのこともないのじやないかという考え方一つまあいたしておりますので、そういう考え方からすれば、或る程度まあモデル機構ということにもなる、こういう考え方でおるわけであります。
  13. 島村軍次

    島村軍次君 具体的な問題に入りますが、現に直轄でやつておる仕事のうちで、農林行政関係のある米の統計とか、或いは麦作統計とかいうような関係のものは国の食糧政策関係がある同一の形でやるので、この統計事務所の問題を将来どうするかということは別問題として、現にやつておるのとちぐはぐなような感じになると思うのでありまして、むしろこの際は具体的の例としては鹿児島県内にある出先の、即ち直轄事務所に調査をやらせるということのほうが実情に合つているんじやないか、又さようなことが現在の農林行政遂行上適当だと考えるのですが、そういう問題については是非政令中に規定すべきものだという我々は考えを持つているんですが、その点についてはどうお考えになつておりますか。
  14. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 実はそこまで行きますと各地方行政事務で同じような考え方をせなければならんものが非常に多く出て参りますので、例えば郵政省所管のものにいたしましても同じように考えられるわけでありますけれども、まあそういう点をいろいろ考えてみまして、結局まあ長い期間ではないのであるからして、取りあえず現在までやつて来た形をそのままにしておいて、内地から余計に行つたり来たりする必要を起さないようにして行きたい。こういう考え方で多少の不便、それから工合の悪い点が起きましても、暫くの間そういうものを、忍んで行く、こういう実は考え方でおるわけであります。
  15. 島村軍次

    島村軍次君 それに関連して、現に奄美群島直轄仕事として、いわゆる官吏というか、国の現に行われておる行政範囲における職責の引継ぎ等については、そのまま取りあえず引継がれる予定ですか、或いはその点はどうお考えになつておりますか。予算の十億の内容についてはそれらの費用が計上されておるのかどうか。
  16. 石井通則

    政府委員石井通則君) 現在それぞれの機関に勤めておりまする職員は、或いは裁判所のごときは、只今塚田長官のおつしやつたようなことになりますれば裁判所職員、その他それぞれ引継がれる機関職員、若し支庁のほうに統合されれば、そのものはその支庁職員に引継ぐ、こういうような構想でおります。なお、予算につきましては、その職員費は、現在の職員に対する俸給その他の経費は十億の中に計上されております。
  17. 島村軍次

    島村軍次君 一応打切りまして、あとまだありますけれども、外務大臣がおいでになつたようですから……。
  18. 内村清次

    委員長内村清次君) そうして頂きます。それでは苫米地君。
  19. 苫米地義三

    苫米地義三君 外務大臣にもちよつと簡単なことでありますけれども、どうしても外務大臣から伺わなければならん点がございますので御迷惑をかけたのであります。その前にこの間外務政務次官等からお話がありましたが、ダレス声明のあつた後すでに三カ月、地元の方々のお話でも御心配があり、又国民待望のこの件がどうしてそんなに遅れておるかという点について明瞭に御説明はなかつたんですが、外務大臣からその点を一つ詳しく御説明願いたい。
  20. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは一番初めは奄美大島群島というものの範囲ダレスさんにもはつきりわからなかつたし、アメリカ政府はつきりした観念がたかつたものですから、この点で大分時間がかかつたわけです。それで向うでは、ただそういうふうに緯度とか経度とかいう考えでやつておりましたが、こちら側はもとの鹿児島県の行政区画に入るものという工合で、そこがでこぼこする場合があるものですから、それをいろいろ説明しましてかなり時間がかかつたのであります。  それからその次には、これはそう時間がかかりませんでしたが、今持つておるアメリカの軍事的な施設が二、三あるのでありますが、これは留保したい。これは我々も異存はないのですが、それについてはもう日本側行つてしまうのならば、今まではいつでも拡張できると思つてつて置いたのだが、今すぐに要るというわけじやないのだが、将来要る場合に拡張しなければならん場合のことも考えて、今からそういう拡張をしたいというような話もありました。それは我々のほうとしては、いずれ行政協定趣旨によつてきめられるのだから、決して意地悪をするわけでも何でもないのですが、今要らないものをあらかじめそういうふうにやつておいても、時間がかかるばかりで仕方がないからという話で、だんだん話をして、今これは大体わかつたように思いますが、まだその点は実は話を一部続けておるような次第でございます。つまり将来例えばほかの、今使つておるものを拡張する、これはわかるけれども、そうでない別なものが要るときにはどうするか。これも我々は現に内地といいますか、今の領土内においても、要るものは喜んで差出しておるのだから、もつとも心配は要らないのだという説明をしておるわけです。先方としてはそれはわかるけれども、将来こういうものが要るかも知らんということだけはあらかじめ日本側も知つておいてもらいたい、今は要らんかも知らんけれども、というので、それは聞いておこうと言つたところが、今度はそれをアメリカの国内では、やはり海軍側はこれが要ると言うし、陸軍側はこれは要らん、こつちが要るのだとかいうような議論がございまして、まだどういうものが将来要るかも知らんということについても、余り話はつきりしたことはありませんが、これはそう大したことはないと思います。我々は喜んで必要なものなら、殊に安保条約によつて日本を守るために必要ということならば、これは喜んで要るものは出すということで、これはほかの点が片付けば大したことはないだろうと思います。そういうふうなことがありましたのと、それから日本側としてはいろいろな、将来移つたあとで問題となつて、そのときにこれは知らなかつたが、そんなことがあつたのかということではいかんというので、非常な注意を以てそういうあり得べき問題を考えて、それは一体アメリカ側で実際そういうケースがあるのかどうかといういろいろなことがあるのです。例えばあそこの通貨をどうするか、それから沖縄に現におる奄美大島の出身の人をどうするか、これは法律的の問題もあり、それから解雇されたりなんかしたときに、一体沖縄でそれを世話してくれるのか。奄美大島へ連れて来られてしまうのかというような実際上の問題もあります。それから例えばアメリカ当局から刑の判決を受けた者の取扱をどうするか。要するに引継事項としてのいろいろな、それに準じた細かいものがたくさんありますが、そういうものを一つ一つ想定しが、実際こういうケースがあるかないて。なければ問題はないのですが、あればこれをどう取扱うかというようなことが九月頃からの研究課題になつておりました。それを今いろいろ話をいたしておるわけでございます。それであれやこれやでもつて、はじめは簡単に行くだろうと思つておりましたところが、案外時間がかかつて延び延びになつてしまつたのであります
  21. 苫米地義三

    苫米地義三君 そういたしますと、重大な支障が起つたわけじやなくて、ただ事務的なそういう折衝に時を費やしておると、こういうことに伺いますが、そのうちで返還した地域の変更があるかも知らんというふうに伺いますが、その点は奄美群島のうちのどの部分ということになるんですか。或いは行政協定によつて今使つておるもののほかに、奄美大島のうちの土地を借りたいというようなことがありますか。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 奄美群島と一般的に称せられるものの範囲は問題ないと思います。旧鹿児島県に属する行政区画に入つておる島でありまして、その中で一部の土地を要るとか要らんとかという問題は、今のところは現に使つておるもの、それだけは引続き使わせるということで多分いいだろうと思います。併し将来特に必要だという理由を認めれば、それは行政協定趣旨話合いをすることもありましようけれども、今のところは特にあらかじめ取るというようなものはないようでございます。
  23. 苫米地義三

    苫米地義三君 そういうことでありますというと、その手続はいつ完了して、引継ぎがいつ頃になるという予想がありましようが、いつ頃になりますか。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私どもは今のところはこれは余りはつきり申上げる立場にはないのですが、十二月一日を目標として是非話をつけてしまいたい。多少無理でもほかの懸案は引継ぎ終つてから、話合いができるものは引継ぎ終つてからでもいいじやないかと思つてとにかく十二月一日という目標で今努力をいたしております。併しこういうものですから、多少ずれるということも、予想したくありませんが、ないこともないだろうと思いますので、場合によつたらそれは少しずれる場合もあろうかと思います。思いますが、幾ら遅くても年内にはこれは解決できる、こう思つてつております。
  25. 苫米地義三

    苫米地義三君 その点は私はそれでいいのですが、この返還後の奄美群島と、それから沖縄地帯との今後の交通とか或いは通商とかいうようなものに対しての関係はどうなりますか。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは原則としては、今までの日本本土沖縄との関係に、奄美大島本土の中に入りましてそういう関係になろうかと思われるのですが、併し距離は同じようなことではあるけれども、奄美大島沖縄というものは特殊の関係にありますから、特殊のものについてはやはり特別な扱いが必要であろう、こう思いますけれども、それまで今全部はつきりさせてしまおうとすると、返還の期時がずれはしないかと思いますので、これらはさつき申したような引継ぎ完了後も話はつくから、今どうしても返還の前に、貿易とか交通とかいうものをはつきり書きもので両方が満足の行くようなところまできめてしまうということは、ちよつと無理じやないかと思つておりますが、原則としては、我々の考えでは、奄美大島特殊性に基いて、人の往復だとか、物資の交換だとかいうことについては、特別の考慮が必要であろうと思つて、その趣旨で話をいたそうと思つております。
  27. 苫米地義三

    苫米地義三君 特にそれを伺つたのは、この群島の集団的な生活というものは、お互いに関連性が密接なものでありますから、恐らく奄美大島沖縄の本島とその附近の島、その間が相互依存になつているのだろうと思います。それが非常に窮屈になつて、外国に一々査証をもらつて行かなければならんというようなことになりますと、奄美大島のかたがたが非常に不便になる。その点を考えに入れて一つ折衝をして頂いたら結構だと思います。  それから私の伺いたい点は、平和条約の第三条にありますところの「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は……これこれの土地及び住民に対して、「行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する。」とこうあるのですが、そのうちの一部が返還になります。そうしますと、その可決されるまで持つておる権利放棄したことになる。このことは合衆国が国連に信託統治提案をするということの放棄考えていいのですがどうですか。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 奄美大島に関する限りは、これは実際上放棄であります。ですから、そういう提案はないわけであります。従つて法律的に一言えば、平和条約の一部を修正するということが適当であろうかとも思えるくらいなんですが、そうしますと、これは平和条約というものは関係法規というものがたくさんありまして、非常に厄介なのでありますが、私はこれはアメリカの持つておる一種の権利ですから、その権利を使わないとかいうようなことがはつきりすれば、それで実際上の問題は片付くのじやないかと思いますので、実際上奄美大島に関しては、平和条約の規定はアメリカとしては放棄するわけでありますから、その点がはつきりすればそれでよかろうじやないか、こう思つております。
  29. 苫米地義三

    苫米地義三君 提案された結果、可決されるまでこういうものを全部保留する、その一部を放棄した。そのことはこの全文から見ますというと少しおかしいのですが、私の今特に注意して伺いたいことは、一体アメリカがこの提案権利を何年間保留するのか。もう平和条約調印後二年有半になつております。こういう提案がいつまで一体これは保留されるのか、この機会にもう放棄しているのじやないか、放棄しておると解釈するのが妥当じやないかというふうに思いますから伺つたのですが……。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) こういうことにつきましては、常識から言うと今までの慣習はかなり長い間そういう権利の保留をいたすのであつて、二年経てばもうそんなものは放棄したのだということは、ちよつと今までの国際慣習からいうと無理じやないかと思いますが、我々としても成るべくそういうふうな話合に向けて行きたいとは考えております。実際上はもう恐らくそういう提案をする考え余りないのじやないかと思いますが、これは非常にデリケートな問題でありますから、余り私からはつきりそういうことを申上げることは慎みたいと思いますけれども、実際上はお話のようなことじやないかと思います。
  31. 苫米地義三

    苫米地義三君 これは一番基本的な問題でありまして、やはりアメリカの持つておる権利が保留されておりますのですから、これを提案されないようにすることが、我が国としては非常に重大なことだと思います。で外務省ではそれぞれ御心配になつていると思いますが、この大きな留保権が解除されるような声明が同時に出されることが、日本国民が非常に待望することだと思うのです。それですからこれに対して丁度いい一部の放棄ですから、この機会をとらえて全面的な信託統治提案をしないという声明でもしてもらうようになれば、非常に仕合せだと思うのです。これに対して外交当局は今まで考えて来られたのか、今後もどういうふうな努力をなさるのか、そういうお気持一つ伺いたい。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今までいろいろのことで話合いはいたしておりまして、私の感じでは今おつしやるようなことは望ましいのですが、只今すぐにというのはちよつと困難です。今までのいきさつから言いますとちよつと困難じやないかと思いますが、今後ともこれは努力を続けるのが当然でありまして、できるだけそういうふうにいたしたいと考えております。
  33. 苫米地義三

    苫米地義三君 それを裏書きするのは、ダレス声明のうちに奄美大島群島は返すのだが、その他に残つておるものに対しても日米安全保障条約に基いて平和と安全を図る、こういうふうに言われておりますから、沖縄本土その他についても当然これは日本のものであつて、それを日米安全保障の下に自分らはやつて行くのだという気持がここに現れているのです。ですから全面的にこの提案放棄してもいい時期になつているのじやないかというふうに感じられるのです。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の日米安全保障条約に基いてというのはどれでございますか。
  35. 苫米地義三

    苫米地義三君 その談話の一番末のほうに、「アンダー、ザ、セキユリテイ、トリーテイ、ビトウイーン、ザ、ユナイテツド、ステーツ、エンド、ジヤパン、ツー、コントリビユート、ツー、ザ、メインテイナンス、オヴ、ピース、エンドセキユリテイ、イン、ザ、エアリア」というのは……。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) わかりました。
  37. 苫米地義三

    苫米地義三君 丁度日本国アメリカとの問に行われた日米安全保障、そうしてそのもとにおける行政協定というものを含めながら言つている言葉なんですね。
  38. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはこの点は日米安全保障条約の中に、ちよつと言葉は忘れましたが、日本領土及び周辺という字があるのであります。これは周辺のほうに当るのでありまして、安保条約の当時も、日本領土と確定したものと、日本主権はあるけれども、こういうふうな一部アメリカ信託統治にするかも知れんし、その間は行政等を行うということがありましたものですから、それで周辺という字を使つた、たしかそういう字が使つてあると思います。附近という字、附近というのは非常にあいまいですが、主としてこういう所を指しておつたのでありまして、従つて安保条約で言うのは、つまり法律的な言葉ではありませんが、いわゆる日本本土というものと、それ以外の、日本主権があるけれども、必ずしも純然たる本土と現在はなつておらない所及びその海面、区というようなものを含んでおりまして従つてこの奄美大島以外の所も、やはり沖縄等安全保障条約にカバーされておるわけであります。ですから、ここに申しておるのは、安全保障条約というのは日本本土だけということではないのであります。いわゆる本土だけというのでは……。
  39. 苫米地義三

    苫米地義三君 併し、それはポツダム宣言にあるいわゆる四つの島、その周辺の島と、こういうので限定されておつた。それ以外にこれがあるわけですね。だから、この特に平和条約別項にこれは書いてある、その別項に書いてある島の処理に今なつて来ているのです。
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は平和条約で四つの大きな島とその周辺の島という中には、この沖繩なんかは原則としては入つて来ておると思うのです。
  41. 苫米地義三

    苫米地義三君 入つておる……。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) はあ。ただそれが変態的に入つておりまして、ただ主権だけはとにかく日本にあるのだ、将来は日本に帰るのだということになつておりますが、離れ島は別に書いてあります。それ以外のものは日本領土と、とにかく原則的にはなるわけであります。
  43. 苫米地義三

    苫米地義三君 まあそういうふうな御説明で結構です。これはアメリカが必要な土地としてこういう権益を持つておると思うのですが、すでにダレス声明にもありますように、日本領土たることをはつきり認めて、そうしてこういうふうな意思表示をされているのですから、一そのこと信託統治提案放棄されて、それで日本に全面的に返してしまつて、そうして必要がある部分は租借をして、年限付きの、例えば十年とか二十年とか、年限付きの租借をされると、こういうことが国として、は非常に恰好がいい形だと思うのです。そういう点について一つ考えが今までなかつたでしようか。これは返してしまつて租借をするのだ……。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々は租借ということは今まで言つておりませんが、返してくれてそれでその必要なものは本土にあるものと同じように行政協定によつて施設及び区域として提供することにやぶさかでない。租借というと少し本土と変つた取扱いになりますので、本土と全然同じようなことにして、いつでもそれは必要なものは提供するのにやぶさかでないのだから、そこで全部こちらに戻してもらいたい、こういう趣旨で従来は話しておりました。
  45. 苫米地義三

    苫米地義三君 そういう租借というような言葉を使わずに、返してもらつて行政協定でやるということは非常に結構だと私は思うのです。ただいつまでも保留されるということになりますと不安です。主権は認められたけれども実質上の領土としては残る、そういう点を一つ今後外務当局としては十分考慮して頂きたい、こう思います。  で、私の質問は大体それでいいんですが、ついでですからちよつと伺います。北海道の歯舞というのは、あれは北海道ですか。
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 北海道でございます。
  47. 苫米地義三

    苫米地義三君 北海道に間違いありませんか。……そうすると、地方自治庁では北海道に入つておるのでしようか。自治庁としてはどういう扱いをしておるか。
  48. 小林与三次

    説明員小林与三次君) 歯舞、色丹につきましては、現在地方自治庁といたしましては、行政権限を行使しておらない扱いにしております。北海道の地域に入つておる入つておらんは、まあいろいろ議論がありましようが、事実上の行政上の扱いは行使しておりません。
  49. 苫米地義三

    苫米地義三君 日本領土である限りそれを明確にするということが一つ。それからしてそれがほかから実力行使で今占領されておる。それが侵略であるかどうか。こういう認定をはつきりしておくことが必要だと思いますが、その点に対して外務大臣はどうお考えになりますか。
  50. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 歯舞、色丹が北海道の根室の支庁に属するものであるということは私は常に申しております。で、実際上のまあ扱いとしては別ですが、趣旨としては当然北海道に属するものである。これは外国に向つてはつきりしております。これが侵略であるかどうかということは、これは実は非常に公平に申しますとちよつと疑点があるのです。というのは、終戦当時に、これは誤解で、間違いであつたと私は思いますけれども、とにかく連合軍最高司令官も承知の上であすこはソ連軍が進駐して来たわけです。そうして平和条約ができますと、日本領土から離れる部分は別として、離れない部分については条約に書いてある沖縄とか何とかいうのは別なステータスになります。それにもない歯舞、色丹というのは当然外国軍隊は撤退すべきものであると信じますけれども、ソ連側については講和条約がまだできておりませんからして、そこのところが多少ソ連側ではまだ戦争状態の継続だ、こういう主張をしておるのです。従つて終戦当時と同様な状態において我々はいるのだ、こういう主張のようであります。従つて厳格に言いますと、そこのところは、侵略であるとかないとかいうところは、両方の言い分があるだろうと思います。国際司法裁判所か何かではつきりさせれば別ですが、必ずしも全然ソ連側の言うことは理由がないのだと言つて、こちら側で頑張つておりますけれども、それだけ向う側には向う側の言い分があると必ずしも言えないことはないと思います。併し領土であることは、これは間違いないし、従つて我々としてはあれをとにかく、今は実際上できなくても、とにかく行政区画の中へ入れて、いつでもこちらに戻し得るような形にしておくことは当然必要なことであるとこう考えております。
  51. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連をするというよりも、まあ、同じケースで一層ま新らしい問題ですが、竹島の問題ですね。竹島は恐らく島根県の隠岐郡に属しておる無人島だと思いますが、自治庁の御見解を先ず承わりたい。
  52. 小林与三次

    説明員小林与三次君) 我々もそういうふうに考えております。
  53. 秋山長造

    ○秋山長造君 それでは外務大臣にお伺いいたしますが、竹島の問題はこの春先から起りまして非常にま新らしい問題である。最近は李承晩ラインの問題に押されて、やや影が薄くなつているような問題ですけれども、あの竹島の問題についてのその後の外交交渉の経過、或いはこの領土権についての外務大臣の御見解を先ず承わりたいと思います。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは外務省としても歴史的にも又、文化的その他のいろいろなことでかなり資料を集めてはつきりさせつつありますが、私の結論を申せば、これはやはり今自治庁が申したように、日本領土であることは疑いないと思つております。従いまして韓国側に対しては、これが日本領土であるという種々の資料を添えて先方に通報しておりますし、又韓国側がこれに対して船を出したり勝手なことをすることは不法であるということについて強く抗議をいたしております。
  55. 秋山長造

    ○秋山長造君 まあ竹島の問題は、そもそも竹島問題が起つた動機は、あれは去る五月でしたか、こちらの巡視船が行つて見たら、こちらの標柱を引抜いて、向うの標柱が立つてつたというようなことからだつたと思いますが、あの竹島の問題は李承晩ラインとは別に竹島の領有を向うが主張しておるということなんですか。それとも地図の上に線を引いている李承晩ラインの内側にたまたま竹島が位置を占めておるために、やはり李承晩ライン問題の一環として、竹島もその他の水域と同じように韓国の領土であるということを主張しておるのですか。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも非常にはつきりはいたしませんが、先方がこちらの抗議に対する回答のようなものを二、三よこしております。それから見ますると、先方は先方で又朝鮮の文献等を引用して、これはずつと昔から朝鮮の領土であつたという主張をとにかくいたしておりますので、恐らく李承晩ラインとは関係なく、これはそんなものができるずつと前、つまり何百年も前から朝鮮の領土であつた、こういう主張のようであります。
  57. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、日本の政府としては、この竹島は飽くまで日本領だという見解はもうはつきりしているわけですね。にもかかわらず韓国がそれを向うの領土だということを言つているわけですから、当然これは李承晩ラインより前に大きく政府として公式に取上げられなければならないわけなんですが、どうも我々間接に承わつているところによりますと、日韓会談等でも李承晩ラインの問題は当面の大きな問題として取上げられておりますけれども、竹島の問題については余り交渉が継続して行われているような印象を受けないのですが、その点は如何ですか。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日韓会談というものは、或る特殊の問題を協議するために議題等がきまつておるのであります。竹島の問題はそれと別個になつておりますので別に扱つて、これにも十分委曲を尽した抗議もすればこちらの資料も提出して何遍か公文を往復してやつております。が、日韓会談としては、議題が双方の合意の下にきまつておりますから、その議題だけを今別個に取扱つております。
  59. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、竹島の問題を日韓会談の議題に当然加えるという提案日本側としてはなさつたに違いないと思うのですが、結局これは正式に提案してもが向う同意しなかつたというのですか。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは日韓会談には、たださえむずかしい問題ばかりあるのですから、これに竹島を加えますとますます日韓会談は困難になる。元来日韓会談については友好的に物を解決しようということでやつてつたので、若し日韓会談がうまく成立すれば、竹島の問題も友好的に解決する一つの土台ができたとも言えるかと思います。日韓会談は元来五つの問題があるのですが、この五つが全部一緒に解決するというのが先方の主張であり、これはいろいろ関連しておりますので、理由もあることだと思います。そこで、若しそれに竹島を入れますと、竹島も一緒に解決するのだということになれば、日韓会談は非常に延びる可能性もありますから、我々としては日韓会談の中に竹島を入れるという提案はいたしておりません。これは別に解決したい、こう考えております。
  61. 秋山長造

    ○秋山長造君 これはどうも奄美の問題からそれて恐縮なんですが重要な問題ですから……。
  62. 内村清次

    委員長内村清次君) 成るべく一つその点は簡単に……。
  63. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、政府の御見解としては、竹島の問題もあるけれども、これは無人島でもあるし、まあ暫くあと廻しにして、それ以外の問題に当面全力を上げて行くという御方針なんですか。
  64. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いや、そういう意味じやなくして、竹島の問題は別個に、これはいい加減にやつておくわけに行きませんから、別個ではありますが、極力解決しようと思つております。
  65. 秋山長造

    ○秋山長造君 この竹島が日本領であるにもかかわらず、向うの領有だと言つて、いろいろ行つたり来たりしているということは、我々の常識上からこれは韓国の日本領に対する侵略だと考えるのですが、そう考えてよろしうございますか。
  66. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも非常に常識的な問題になりまして、領土の紛争というものはどこでもあるわけでありまして、日本でも、過去においては例えば西沙島、東沙島というのが海南島の向う側にありますが、これに対する領有権は、中国と日本との間に長い間、何十年の間争つて来たことがあります。又新らしくは新南群島の領有権について長い間争つて来たということもあります。これは実は戦争の結果解消したという結果になりましたが、若し戦争がなければ未だに争つていたと思います。それだから竹島も長くかかるというわけじやありませんが、領土問題は由来なかなか時間がかかりますので、これは例えばフランスと日本との間には非常に友好的な関係があつて、貿易にしましても、その他の問題にしましても随分手を携えてやつてつたにもかかわらず、或る領土、島の問題になりますと随分争つておる。この争いと友好関係というのは非常にぶつかる場合もありまして例えばチヤコの領有という、南米では二カ国間で戦争にまでなろうとしたくらいの問題もありますが、同時に南氷洋だとか、多くの島についてはそれほどに非常に緊張せずして、而も長い間争うということもあり得るわけであります。この竹島の問題は、日本としては非常に本土に近いのですし、たとえ無人島といえども、これは飽くまでも領有は主張しなければいけないし、そんなに長くかかるなんて暢気なことも言つておられませんし、而も日韓会談の中で解決しなければできないという性質のものでないので、別個に取扱おう、これは方法の問題だけになります。そのつもりで只今つております。
  67. 秋山長造

    ○秋山長造君 竹島の問題についてはまだいろいろお伺いしたいのですけれども、本日の議題からちよつとそれておりますので、又他日もう一度この問題について突つ込んでお伺いしたいと思つておりますが、その程度で一応質問を留保いたします。
  68. 若木勝藏

    若木勝藏君 関連して、今の問題……。竹島の、それから歯舞の問題も、これはとにかく日本領土の上から更に又地方行政の上からも重要な問題だと思う。今の外相の答弁をずつと伺つておりますると、私の伺いたい点は、歯舞、色丹のほうはこれはソ連との関係で別個として、竹島或いは李ラインの問題が同じような一つの傾向にあると思うのですが、韓国は何のために一体そういうことを言い出して来たのか、それらについて政府はどういうように思つておるか。
  69. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も実は何のために言い出して来ておるのか、意を捕捉するに苦しんでいるのです。実際向うの言うことはいろいろなことを言いますが、いずれが本当なのか、つまり一貫性のないような主張をしておるように私は見ております。要するに、李承晩ラインについては、日本の漁業が非常に発達して、韓国の漁業が微々たるものであるものだから、何となく自分の領土の前で魚を皆日本側に取られてしまうというような、漠然たる気持が相当支配しておるじやないかと思います。竹島の問題については、これは実は先方にもいろいろな文献があるようでありまして、先方は先方でこれは韓国の領有だという主張をいたしておるのは、その文献によつているように思いますが、私の考えでは、日本側が実際上竹島を日本領土として取扱つて来た期間が非常に長いのであつて、その間に韓国側で例えば何回か知らん韓国の領土だと言つたことがあるかも知れませんが、領土というものは、平穏のうちに支配者が及ぼしている期間が長ければ、自然それは領土になつてしまうわけであつて、この点私は日本の主張が間違いないと思つております。そこで今後はそういうことをはつきり言つて、先方の反省を強く促すということ以外にないだろう、こう思つております。
  70. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうしますというと、今のお言葉で反省を促す以外に方法がないということになれば、これはいつ解決するかわからんということになる。政府はこの問題を最終的にどういうふうに解決しようとしておるか。これは歯舞の問題も含めましてどういう御方針を持つておられるか、それを伺いたい。
  71. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 歯舞、色丹につきましては、これはソ連側の実力で以て抑えておるのであつて、これを実力で排除しなければ日本主権というものは確立しない現状であります。そこでこれはなかなか私はむずかしいと思う。むずかしいと思うけれども、日本領土であることは間違いないのですからこの主張は続け、且つ国際的な与論等を動かして、そちらのほうにどんどん導いて行くより仕方がないと思います。それから竹島の問題については、これは平和条約との関係もあるわけであります。平和条約では、私の解釈では、日本から離れる領土というものははつきり書いてある。書いてないもので従来日本領土であつたものはそのまま日本領土に残る、こう私は解釈しております。従つて竹島等も勿論日本領土である。併しこれには連合国側の条約に対する解釈上の問題もあると思う。で、こういう点も動かして、やはり一種の国際与論にはなりましようけれども、日本の領有をはつきりさせるということが必要であろうと思います。
  72. 若木勝藏

    若木勝藏君 そこで最終的に両方の会談で以てなかなか始末がおえんというような場合には、国際司法裁判所にも提訴して解決しよう、こういうふうな肚でもおありですか。
  73. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それも私は一つの方法だと思います。方法だと思いますが、まあこれは、例えば国際司法裁判所の取扱いから言いますと、国連に加入してない国については、国際司法裁判所に提訴した場合には、相手の国が応訴しなければ裁判は取上げられないわけであります。従つて、韓国側が仮に応訴しなければ、国際司法裁判所としては取上げるわけには行かない規定になつております。併し提訴して相手が応訴しないということになれば、勢い相手が何か弱みがあるから応訴しないのだというような判断を下せる場合もあろうと思いますので、国際司法裁判所に関しては我々も時期を見て考慮すべきものだと思つております。すでに国際司法裁判所に、国連加盟国ではないけれども、加盟するという手続について今話を進めております。これは主として豪州のアラフラ海の問題についてではありますけれども、今後そういう点も十分考慮すべきものだと思つております。
  74. 若木勝藏

    若木勝藏君 今の方法までとらなければ、日韓の会談では解決付かないと御認定されておられますか。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは将来の問題ですから、必ずしも付かないとも私は思いませんけれども、なかなかむずかしい問題ですから、或いはそこまで行くかも知れないという気持もあります。
  76. 田畑金光

    ○田畑金光君 ちよつと話が元に戻りますが、奄美大島の問題で……。私実は今回党代表で奄美大島を一週間くらい視察して昨夜戻つて来たわけでありますが、現地に参りまして見ました実情というものは、想像以上のものがあるわけで、あります。教育施設の荒廃、或いは行財政の混乱、生活の困窮、そして又非常に民心が動揺しております。これらを通じて私の感じましたことは、ダレス声明が出されまして、十一月一日には復帰になるのだ、こういう前提の下に琉球政府も予算措置をやる、又その前提の下に鹿児島県を中心として奄美大島の復興計画を推進する、こうして進められていたわけであります。ところが十一月の一日が延びて、更に十二月の一日になるとか、或いは二十六日の夜のラジオ放送によつたニユースによると、或いは政府筋からの話によると、来年に持越すかも知れん、こういうようなことで、非常にまあ現地の島民の人心の動揺はその極に達しておる。おまけに金融機関は金融を引き緊めて経済が混乱をしておる。こういうふうな実情にあるわけで、問題の解決というものは振出しに戻つて奄美大島復帰が早く実現することが先決である、こういうことを痛切に感じて参つたわけであります。そこでお伺いいたしたいことは、いろいろ政府筋からまあこういうような情報が伝わつて、現地の人心の動揺を招いておるわけでありますが、奄美大島返還に関する外交交渉と申しまするか、これはどこで……、当然外務省でありまするが、どういう段階で現在取扱つておられるのか、これを先ず一つお尋ねしたいと思います。
  77. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは先ほども申しましたように、我々としては十二月一日を目途として交渉を進めております。
  78. 田畑金光

    ○田畑金光君 十二月一日を目途として交渉を進めておられることはよくわかりまするが、今その話合は正式のこれは外交交渉という形でやつておられるのか、或いは外務省の事務当局とアメリカの大使館の関係者との間の事務折衝と申しまするか、或いは下交渉という段階なのか、どういう段階の交渉を進めておられるか。その点についてお尋ねしたいと思います。
  79. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもうお話のように、復帰ということの原則はきまつておるので、政治折衝というようなものは必要ないので、あとは引継ぎをどうやるかという問題だけでありますから、これは事務的の折衝になります。
  80. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、先ほどのお話によると、奄美群島のいわゆる領域の問題とか、或いは軍事基地の将来の貸与の問題とか、こういうような問題こそ大きな政治折衝の域に入ると思うのでありまするが、こういうような問題は一応話合いがまとまつて、あとは純然たる事務引継の段階に来ておるというわけでありますか。
  81. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りです。
  82. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、それがなお先ほどのお話によると、十二月の一日目標というのが、或いは状況によつて延びるかも知れん、こういうようなお話がある一わけであります。それは一体この十一月いつぱい交渉してもなお延びなければならんというような問題というものが、事務折衝の段階においてなおそのような問題があるのかどうか、この点について一つ
  83. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは例えば今の通貨をどういうふうに処理するかという問題とか、或いは今まで刑罰を受けた、アメリカの軍当局から刑罰を受けた者、これの取扱いをどうするか、それも奄美大島におる者だけでなくて仮に沖繩に連れて行かれた者があれば、これをどういうふうに取扱うか、或いは奄美大島沖縄との間に直ぐ問題が起きますのは、交通だとか、戸籍だとか、奄美大島の人で沖縄におる人、今までは奄美大島沖縄も同じ行政圏の中におつたから区別はないわけですが、今度はそれはどういう取扱いにするか、財産の相続等は一体どういうふうに取扱うか、いろいろ事務的の問題があるわけでありまして、これらを一つ一つ片付けて行くということであります。
  84. 田畑金光

    ○田畑金光君 そういうような事務的な話合いでありまするとすれば、まあ多くはこの十一月一ぱいで処理できましようし、又その中でも問題の軽重というものが考えられようと思うのです。そうなりますると、これは十二月の一日には当然に返還のめどとして立て得ると思うのですが、ただそういうような事務的な問題を残しながら、なお且つ十一月一日から十二月一日に延びる。それが又十二月一日より遅れるかも知れん、こういうようなことになつて参りますると、一応我々が心配しておることは、アメリカの現地側の各機関の統一あるものがなされておるのかどうか、意見がまとまつておるのかどうか、こういうようなことが一応心配として残るわけでありますが、こういうような点はどうなつておるか。
  85. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側のほうには非常にむずかしい問題はなくて、むしろこちらが今度引受けますと日本の法律を直ちに、向うの今まで使つておりました法律は効力をなくなすわけですから、そこに日本の法律が行かなくちやならない、そのいろいろの適用問題がなかなかむずかしいことがあるように当然これは想像されるのですが、アメリカ側引継ぎですから、どうせアメリカ側と話はきめて行かなければなりませんが、今後の日本側の取扱いぶりということが非常にこれはなかなか研究を要する問題があると思います。これはまあ普通の我々のように素人から言えば、引継ぎを受けたあとでやつちやつてもいいじやないか、こう簡単に考えますが、なかなか実際法を施行するほうから言うと、すぐさま明日からでも施行しなくちやならんというときに、国の法律をどういうふうに使うかわからんということでは甚だ困るというようなことは事実でございます。
  86. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうなつて参りますると、結局渋滞しておることはアメリカ側においてはむしろ簡単だが、受入れる側の日本において諸準備のために遅れておるのだ、こうなつて参りますと、一に日本側自体に、或いは日本政府自体にこれを受けるだけの準備ができたかどうかということが返還の期日を左右する結果になつて来ると思うのですが、そういうふうに解釈してよろしいかどうか。  更にそういうことになつて参りますならば、当然にまあ今回一つの暫定措置法案というものができておりますけれども、更に詳細に各般の受入れを進めて行くといたしますると、それに伴う立法措置等が必要になつて来ると思いますが、そうなつて来ると又これは次の国会においてそのような受入れ立法を作らなければならんのかどうか。現在のこの暫定措置で以て一応受入れるだけの法的な態勢というものはできたことになつて、従つて日本政府のいわゆる事務的な受入れ準備ができるならば、いつでも奄美大島返還は受け得るのかどうか、この点について一つ……。
  87. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは引継ぎでありますから、日本政府のほうが遅くなつてそれだけで遅れておるというわけじやありません。アメリカ側と話をして双方で以てやはりこの引継ぎを円滑にしなければなりませんから、これは必ずしも日本だけが遅いのだというわけには行きません。法律につきましては今度のもので大体全部がカバーできると思います。まあ将来必要な法律を新たに制定するということは、これはありましようけれども、法律関係については今度のやつで大体カバーできるだろうとこう思つております。
  88. 田畑金光

    ○田畑金光君 今のお話で大体引継ぎ問題は日米両国側に一致した意見がなければ引継ぐわけには参らん、こういう御説明でありますが、これは尤もだと思います。その点はよくわかるわけですが、先ほど外務大臣は十二月一日ということを目標に置かれておる、こうお話になりましたが、この点についてはアメリカ側も同意を示しておるのかどうか。或いはいろんな引継ぎの名にかくれて、これを遷延させるようなことであつては、これは一大事と思うのでありますが、十二月一日を目標に置いたということは、相手方も一応了承の上において、相互に努力を払つておるのかどうか、この点につきまして一つつておきます。
  89. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはアメリカ側も承知し了承しております。
  90. 田畑金光

    ○田畑金光君 これはまさかそういうようなことはあるまいと思うわけでありますけれども、十一月一日が延びて十二月になり、更にそれが来年に持越されるというような情報というものが現地に伝わつて参りますと、先ほども申上げたように、いろんな民心の動揺が起きて来る。殊にこれが現在政府の一番頭痛の種である。MSA交渉と奄美大島返還とが秤にかけられているのではないか、こういうようなことが至るところで我々も質問として受けたわけであります。こういうような点については、よもやそういうことはないと我々も考えておりますが、今までこの問題に関しましては、引継ぎに関する事務折衝であるが故に、事務当局相互の間で話合いをされておる。こういうわけでありますけれども、併し遅延して参りますると、どうしても私は事務当局だけの話合いではなくして、更に大きな政治折衝の段階に来ておるように見受けられるわけであります。殊に十一月一日ということが一応琉球政府の予算措置のめどにもなつておりました関係上、例えば一九五三年度予算の七月から九月までの人件費が来ておるに過ぎない、事業費などは殆んど来ていないという始末であります。そうして又私が向うを視察して痛切に感じたことは、例えば一例を道路行政に見ますと、北部の道路と南部の道路は非常に違つておる。北部は悪路であり、南部は整うておる。だんだん聞いてみますと、北部は野党側を支持したので、従つてそういう町村には道路行政においても、政党政治であるから考慮するのは当然だ、こういうような低級な政治が行われておる。この十一月という空白期間を一月間置いたということは、現地の行政にとつては大変な問題を起しておる。一カ月も遅延しては、経済活動にも影響することは甚大である。こういうことを見ましたときに、日本政府といたしましては、当然にこの一カ月間の空白という問題についても、十分に対策を考慮して然るべきだとこう考えておるのでありますが、こういうような点については日本政府としては現在考慮しておるかどうか、或いはこういうふうな混乱が現地において起きておるということを御存じであるかどうか、この点について承わつておきたいと思います。
  91. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も現地でそういうことがあるということは聞いておりますが、又それで実際仕事をするほうで十一月一日を目標としていたかも知れませんけれども、私の知る限りでは十一月一日を目標として引継ぎを行うということはアメリカ側に話したことは一度もありません。正式に申したのは十二月一日を目標としておるのであります。これは私自身がアメリカ大使に申したのであります。
  92. 田畑金光

    ○田畑金光君 併しまあ外務大臣お話から承わりますと、十一月の一日ということを話した覚えはない、十二月の一日ということはアメリカ側に申入れた、こういうお話でありますが、我我この話こそ初めて承わるわけで、新聞報道等においては、十一月一日返還しますということはあまねく新聞報道を通じ知られていたわけであります。現に十月五日の参議院の議院運営委員会におきましても、私この問題を取上げて緒方副総理並びに福永官房長官にお尋ねいたしましたところが、当初は十一月一日の目標であつたけれども、若干十一月一日から延びるような情勢だ、こういうようなことは副総理並びに福永官房長官から我々は承わつておるわけであります。現地におきましても、又沖縄の軍政府等から、やはり十一月一日という報道がなされておる、現地においても同様な考え方をやつていたわけであります。この十一月一日を目途にいたしまして、鹿児島県においても受入態勢を作つておる。琉球政府においてもそのような予算措置を講じておる。客観的な情勢から申しますると、今外務大臣お話なさつた十二月一日説こそ私たち今初めて承わるわけでありまするが、これは非常に遺憾だと存じます。ただ問題は現実に十一月一日がすでに遅延した以上、この十一月一カ月間の空白期間をどう処理するかという問題、この地方行政の混乱、金融の逼迫、経済活動の混乱をどう処理するかという問題、この点は当然に日本政府としても考慮せねばならんことだと思います。まして十二月の一日ということが、先ほどお話のように、延びるということであつては大変な問題だと思いますので、この際外務大臣といたしましては、政治折衝の段階じやなくして、事務折衝の段階だと、こうお話なさいましたが、我々の見るところ、十二月一日返還させるかどうかという問題は、大きな政治折衝の中心課題であると考えるわけでありまするが、一つ飽くまでもこの目途が実現されるように、外務大臣としてはそういう御方針で、今後とも努力願えるかどうか、改めて一つ所信のほどを承わつておきたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は十二月一日を目途としてやつており、今後もやるつもりでおりますが、これは仮に十二月一日に、では返還するとアメリカ政府も言い、日本政府もそれでよかろうと言つて、実際上引継ぎ事項話合いがついてなければ、これはいたずらに混乱を来すばかりでございまして、これは私の管轄ではありませんが、引継ぎのほうの仕事をちやんとやることが、やはりこれはどうしても条件になるのであります。
  94. 秋山長造

    ○秋山長造君 只今田畑委員からお話があつたんですが、我々もこの間この委員会で現地の、代表を呼んで、情報を聞きましたところによりますと、やはりもう予算も何も十月一杯で打切られてしまつている。そうして琉球政府へ行つて見ても又軍へ行つて見ても、もうお前ら日本へ帰つたんだからということで、剣もほろろの挨拶で受付けてもらえなかつた従つてこれが更に今後一カ月乃至それ以上延びるというようなことになれば、第一政府の行政機能というものが一切とまつてしまうということを切々たる血の叫びを以て聞いたんですが、今後延びることに対して、その間相当期間の行政上のブランクができる、そういう点については外務省としてはどういう手をお打ちになるのか。
  95. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまあ原則としては、アメリカ側行政権の及んでおる期間は、アメリカ側が実施するのは当然でありますから、その趣旨アメリカ側に話をいたします。
  96. 秋山長造

    ○秋山長造君 その当然だとおつしやつたところで、すでにもう向うは一切突つぱねて現地では受付けないということになつておる、従つて先ほど来の話を聞けば、もう大体大まかな話は終つてしまつて、もう現地の受渡しの細かい事務的な話だけが残つておるという段階だとすれば、当然最もこの受渡しの問題に直接関係の深い琉球政府なり或いは琉球におるアメリカ軍の当局なりというものが、その事務的な受渡しの当事者になるのが我々の常識なんですけれども、にもかかわらず、現地ではそうやつて突つぱねられてしまつて、もうすでに事実問題としてはアメリカの手を離れて、琉球政府の手を離れて、日本に帰つてしまつておるような形になつておる。ところがこちらでは、そういうはずはないので、当然アメリカの責任だというようなことでは、そういう交渉をしておるうちに、早やもう一月や二月はたつてしまうというような懸念を持つのですが、そういう点については、もうすでに向う側は十月、もうこの暫定予算を今日まで組んで来て、十月一ぱいでそれを突つぱねてしまうということはすでに外務省なんかずつと前からわかつてつたはずと思いますけれども、今までそういう点について折衝なさつたことはないのですか。
  97. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この間、私は南方へ行きますときに、沖繩へちよつと二時間ばかりとまつたのですが、そのときに沖繩の司令官が飛行場へ訪ねて来まして、いろいろと話をいたしてみましたところが、下のほうの人はどうか知りませんけれども、司令官はそんな気持はないようです。何かこれは誤解があるのじやないかと思います。
  98. 秋山長造

    ○秋山長造君 それは誤解があるのだろうというくらいのことで突つぱなされたのでは、現地の連中は立つ瀬がないのです。現地の連中の代表の話によりましても、全然相手にしてもらえない。で、従来でさえもあの琉球政府の中で奄美群島だけは非常に差別的な待遇を受けて、そうして経済的にも何的にも、もう実に惨憺たる状態でありまして、こういう点は、アメリカのほうでも当然あの連合憲章の信託統治制度なんかのところに謳つてあるように、信託統治はないかも知らんけれども、それに近いような形で来た以上は、やはり住民の政治的、文化的、経済的、社会的、あらゆる向上のために、良心的に努力をしなければいかんという、これは国際法上の義務を負つておるはずなんですけれども、にもかかわらず、話を聞けば聞くほど、実に哀れ無残な状態で今日まで来て、そして更にもう十月一ぱいで突つぱなされてしまつて、何を言つても受けつけてもらえないという状態になつておるのは事実なんで、現地の司令官が外務大臣にどういう御挨拶をなすつたか知りませんけれども、事実はそういうことになつておる。我々現地の人たちの話を真実と解釈するより仕様がないのですが、そういう点について早急に、これは現地の人たちは延びたということだけで、すでに非常に失望をしておるわけなんですが、更にその上に予算措置も何にも講ぜられずして突つぱなされてしまうという宙ぶらりんの生殺しのような恰好になつておる。そういう現地の人たちに対してどういう手を政府としてお打ちになるのですか、その点をお述べ願いたい。
  99. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私は今申した通り、若しそういう金が出ないとすれば、何かの誤解であつて、必ず出ると思います。
  100. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点は、どうも外務大臣のお言葉としては、ちよつと受取れんので、出るだろうぐらいで済ましてもらつてはいかん。まあ法律的な手続きではまだ日本に帰つてないにしても、まあ大体半分日本に帰つたような恰好になつておると思うので、何か政府のほうとして、そういう点についてもう少し積極的な意欲を持つて頂いて、そして一刻も速かに何か手を打つて頂かなければ、現地民も非常に失望の上に更に失望をして、殆ど絶望的な状態に突落されておるわけなんですから、もう少し積極的な手を早急に打つて頂きたい。
  101. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私のほうはこれは内閣としてきめる問題は別としまして、外務大臣としては、アメリカ側に交渉して、アメリカ側行政権のある間はアメリカ側政府で負担する、こういう交渉をするのは当然であります。それ以外のことについては、自治庁の管轄であります。
  102. 秋山長造

    ○秋山長造君 それはちよつと筋が違うのじやないかと思うのですが、この前塚田自治庁長官にこれらの点についていろいろお伺いしたそのときに、自治庁長官は、そういう問題については、我々としてはこういう法律を作つたり何かする受入態勢というものまでは自治庁の責任であるけれども、もともと外交交渉が根本であり、外交交渉からすべてが出発するのでありますから、そういう問題については、やはり外務大臣に尋ねて頂かなければ、自治庁長官としては何ともお答えできないというお話であつたのです。で、外務大臣に聞けば、それは自治庁の関係だ、こうおつしやると、いよいよ以て奄美大島の二十万の住民は、どこに行つても突つぱなされて中途半端の生殺しで、どつちつかずの泣きの涙で泣寝入りしなければならないという結論になるのでありますが、それではやはり余りにも日本にあれだけ喜んで復帰して来るあの二十万の同胞に対して、又日本が今後、先ほどの歯舞、色丹の問題にいたしましても、又小笠原等の問題にいたしましても、いずれ遠からず将来我々のほうに、やはり早く復帰しなければいけないという一つのテスト・ケースになるような、非常に重大な大きな影響を持つものだと思いますから、そういう問題にもかかわらず、極めて只今の御答弁のような事務的な、通り一遍の御方針を以て臨まれるのでは、我々としては甚だ納得行かない。もう少し積極的に真実味を以て、そういう点についてのはつきりした御交渉をして頂かなければ到底納得できない。
  103. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だから私は外交交渉のほうは私がやる、併し地方の自治庁のやることは、これは別だ、外交交渉のことは私がやるというのです。
  104. 秋山長造

    ○秋山長造君 それはわかつておる。わかつておるのですが、今私が聞いておるのは、外交交渉の中に当然含まれなければならない問題だということを聞いておる。現地では予算を打切つて突つぱなされるし、琉球政府に行けば、お前らは日本だといつて突つぱなされるし、それは自治庁の問題ではなくして、やはり外交交渉の問題だと思うのですから、その点を聞いておるのです。
  105. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だから私は外務大臣としては、アメリカ側行政権のある間はアメリカ側が支出すべきが当然でありますから、アメリカ側に交渉をするということです。
  106. 秋山長造

    ○秋山長造君 それはすでにやつておられますか。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) やつております。
  108. 加瀬完

    ○加瀬完君 今、前のかたから御質問があつたのですけれども、我々が地方行政で、これを問題にしておりますのは、行政混乱のために非常に経済困難を来たして、その経済困難のために生活が不安であるという、我々の同胞二十万の身の振り方ということについて真劍に取上げなければならない。又その原因がどこにあるかということを考えるときに、今外務大臣からいろいろ御説明がありましたように、復帰の見通しが甚だはつきりしないというところにあるので、外務大臣にお尋ねするのであります。そこで前のかたからいろいろたくさん出ておるのでありますが、どうも外務大臣は現地かどんなに生活不安或いは経済困難のために困つておるかということの認識が薄いようでありますので、先般我々が現地のかたを参考人としてお呼びして承わりました点を、くどいようでありますが、もう一度果してこういう御認識をお持ちかどうか、申上げたいと思います。  八月八日にダレス声明がありましてから、十月末日に日本復帰させるので、予算を一切打切るという軍命令が出まして、それ以後は地方自治体では七、八、九の三カ月の間の土地税、家屋税だけで賄うという予算を立てましたが、復帰がその日にしませんでした。そこで非常に困りまして、いろいろ琉球政府にも掛合いましたけれども、交付金がきましたが、それは全自治体の費用の三六%にも及ばないようなもので、これだけでは人件費を賄うのもやつとである。又一般金融は銀行等が整理期に入りまして民間金融も個人金融も整理期に入つておりますので、極度の逼塞状態である。特に農業資金などはその度合が強い、商取引は信用状を銀行が取扱つてくれないので、年末を控えて生活必需物資を取引することにおいても取引契約ができない。本島の基本産業の運転資金も、こういう関係で途を絶たれておりますので、紬業者等は逼塞状態である。又その原料である生糸は内地から買うのであるけれども、これは現金で買わなければならない。而も紬の勘定は後勘定ということで、どうにも生活が立たない。この生活不振のために沖縄等に娘たちは身売りをするというような状態さえも生じておる。ガリオア復旧資金も事実においては不動産抵当を必要とするので、手数料等の入費が非常にかかつて 一、二割という高額なものになつて、とても住民は手が出ない。ガリオア決算が半年もかかる始末で、ますます経済が逼迫の度を強めるだけで、農家の肥料などはガリオアで決算するが、農民は現金でないと肥料が渡らない。生活貧困のために僅かの賃金で労働を売つておるという始末で、又学校その他の公共施設は、写真などで見せられたのでありますが、想像に絶するものがございます。こういうような状態でありますので、地元のほうは、分離のときにはスピーデイに行つたのに、復帰のときにはなぜスピーデイに行かないかということが、一つの大きな疑問になつておる。そこで問題は復帰問題を解決しなければ、どうにもならないじやないかというところにまで、もう一回舞戻つた、こういうふうに切実に我々に訴えておるのであります。今までの外務大臣の御答弁を承つておりますると、私たちはどうしても外務大臣としてのこれが祖国の失地を回復するという情熱に燃えた答弁であるというふうに受取れない。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)例えばもう残されておるものは事務折衝だけである、こういうふうに言われるが、併し事務折衝だけであるならば、十二月一日なら十二月一日を目途として、この目途が遠のくようなことがない、必ずできるということも確言できるはずだと思う。それで衝いて行くと、今度はアメリカの出方でどうかわからないというということを言つておる。又生活が非常に困つて、これをどうするのだと聞くと、それは我々は外交交渉が建前だから、自治庁の問題である。併し自治庁の問題であれ、政府の問題であれ、生活の貧困或いは祖国復帰の可能性がかなえられ、経済困難の解決は、外務省の折衝如何にかかつておる。そこで大臣に尋ねたいのであります。  第一に、率直に申上げますが、十一月一日を目途としておるというが、この目途は必ず遠く去るということがなく、十二月一日という近くの日に必ず実現できるかどうか。アメリカのほうは大した問題がない、日本の法的な取扱が問題だけだというのです、それならば住民の希望である復帰というものを早くかなえるという法的な措置を二日本側だけで早急にできないかという点。それから十月末で米国政府が実質的に行政放棄しておる、このような行政及び生活困難について外務大臣はどう考えておられるか、先ずこの三点。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私もその奄美大島の実情については、直接見たわけではありませんが、今おつしやつたようなことはよく承知しております。それで住民たちは非常に気の毒だと思つて、いろいろこれは考えております。決して冷淡なわけじやない。ただ私はここで呼出されて質問を受けておるのは外務大臣としての質問だと考えますから、外交交渉のことをいつておるのであります。又閣議等において国務大臣としての発言も当然するのであります。ただ外交交渉の模様をここではお答えしておるわけでありますから、勢い冷淡なように見えるかも知れませんが、決してそんなわけじやない。奄美大島の人たちと私自身もしばしば会いまして、善後措置等について相談をしておる。ただ今御質問の中の、その困難の一つの理由は、金が思うようにならないということなんであります。これはアメリカ側に話をして、アメリカ側行政権を維持している間は、アメリカ側がこれは先ず原則として面倒を見なければならんわけであります。この交渉をいたすのが我々の仕事であります。十二月一日を目途としているのですが、これは引継ぎの問題ですから、その話ができてもできなくても、十二月にやつてしまうんだというわけには行きませんからして、場合によつたら延びることもあるでありましよう。併し我々としてはそういうことを考えたくないので、現に補正予算にも、法律も出せば予算措置も講じておる、それは十二月一日を目途としておるから、十二月一日以後に予算措置が講じられても間に合わないと思うから、今出しておるようなわけであつて、できるだけのことはいたす考えであります。併し延びる場合もあるということは、これは今ここで十二月一日に必ずやるといつて、実際延びた日には必ず混乱を起すのですから、あらかじめそういう点を申上げておかなければならん。先ほど申したように、十一月一日ということは私自身としては全然承知しておらないし、アメリカ側に話してもおりません。十二月一日ということを話しておるのであります。その間のいろいろな実際住民の困難については、これは私は実際上は引継ぎが終つたあとで、救済措置も講じなければならん場合が出て来ると思います。いずれにしても、これは日本の国民であり、日本領土であるのですからして、アメリカ側がぐずぐずしておれば、住民の窮乏に対しては、これは日本側として措置しなければならん場合があるだろうと思うけれども、それは外交交渉じやなくして、これは政府として全体の問題でありますから、この点は自治庁その他鹿児島県とか、いろいろ関係の向きと相談して、できるだけ善処しなければならんと思つております。いずれにしても、今おつしやるように引継ぎの早いことが問題解決の、要点ですから、できるだけこれを急いでやらなければならんというつもりで今やつております。
  110. 加瀬完

    ○加瀬完君 外務大臣並びに国務大臣としての岡崎さんに伺います。(笑声)事務折衝だけだと、こう言う。それで今アメリカと問題になつている、あり得べき問題として考えられるものは、例えば通貨の問題でありますとか、沖縄在留の大島の人たちの処置、軽犯罪人の処置、こういつたようなことが問題になつておる、こういうお話でございました。或いは又奄美大島の区域について明白な確定があつたというようなことでありましたが、いずれにいたしましても、平和条約第三条の地域は当然日本に帰つて来なければならない土地でありまするし、返さなければならない区域であるはずであります。従いましてこれを返すべく努力するのは当然でありまするし、先方が返す意思表示があつた場合には、早急にこれを短時日のうちに返させるような受入態勢というものが、事前に十二分に研究されておらなければならないはずだと私どもは考えます。そこで今一番最初に申しましたような例というものは、十二分にこれは政府のほうで考慮されておつてよかつたはずである。それで十一月一日ということは外務大臣としてはどこへも言つたことはない、外務省としては初めから十二月一日ということを目途としておつたというけれども、一体これだけの事務折衝というものは、十二月一日という目途を立てなければ、取運びができないほどのものか、一体こういう悠長なものの考え方をしておることが、この住民の本土復帰という熱望に応える政府のやり方か、或いは祖先の墳墓の地を失地回復しなければならんという国民の要望に応える一体やり方か、こういうふうな疑問を持たせられるわけであります。で、この交渉前の受入態勢として事前に解決すべきことは何であるか、事後に処理すべきことは何であるか、こういつたような区分というものをどういうふうにお考えになつておられたか、外務大臣として範囲を越える点は、国務大臣としての立場でお答を頂きたい。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そういう問題は内閣にある南西諸島に関する連絡事務局、ここで研究をいたしておるわけであります。併し先ほど申しましたように、その引継事項だけで長くかかつているのではなくて、初めは奄美大島群島範囲等の問題があつて長くかかつたわけであつて、どうもこれは実際上止むを得なかつたと思います。
  112. 加瀬完

    ○加瀬完君 外務大臣としては止むを得ないかも知れませんけれども、国民にとつては止むを得ないというふうに締めが切れない。ダレス声明がありましてからどれだけ日にちが経つておりますか、少くも八年間一日も忘れることなく、本土復帰というものを考えておりました住民の気持、或いはいわれもなく国土の一部を占領されております国民の気持というものは、外務省なり大臣なりが、或いは政府なりがもつと積極的に熱意を以て、先方がそういう意思表示をしたならば、一日も早くその実現を見るような取運びをすることを願つておる、それを止むを得ない止むを得ないで十二月一日になりまして、できない場合も止むを得ないということになりましては、我々は大臣の誠意というものを疑わざるを得ない。そこで私一人ばかりが質問するのもいけないことでありますので、十二月一日というものはそう大して狂わないかどうかということだけをもう一応伺います。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は十二月一日を目途としてやつておりますから、そうえらく狂うことはないだろうと思います。
  114. 田畑金光

    ○田畑金光君 外務大臣の答弁も、大分最後のほうになつて来ると、一応真剣味というか、現われて来たので心強く思つておりまするが、一つ私もう少し若干関連してお尋ねしたいと思います。加瀬君からも質問がありましたが、平和条約第三条の領土というものは、当然我が国旧来の領土であると考えております。奄美大島返還されて如何にこれが復興するかということは、今後の沖縄の占領下政に対しても大きな私は示唆になるし、反響を呼ぶものだと考えております。現に一昨年の十二月でしたか、大島の北部七島が返還されて、あそこに鹿児島、勿論政府の補助金によつて鹿児島県が学校を建てた、この学校の復興振りというものが非常に大島並びに沖縄に深刻な反響を呼んだ、併しできるだけこれはその影響力を阻止しようとする一部の動きがあつたことも事実です。従つてこの奄美大島の問題の解決如何が、今後の沖縄の問題、小笠原の問題、更には北の千島の問題全体の問題に私は繋がつて行く問題だと考えております。一波万波を呼ぶということになろうと存じております。そこで、併し私は復興の問題はとにかくとして、今当面問題にしなければならんことは、先ず帰属の問題ですが、先ほど大臣は東南アジアに行く途中に沖繩に降りたところ、民政官に会い、軍司令官に会つてみたところ、そういうふうな心配がなかつた、そこであります。私が先ほど奄美大島返還の問題はどこで交渉しておるかというと、今アジア局の第五課の鶴見課長が主としてやつておられます。これは有能な課長さんでありますから、勿論我々は信頼しておりまするが、併し十二月一日に返還させるかどうかという問題は、事務手続の問題を超えて、これは政治折衝に私はなると思うのであります。この重大なる問題に関して軍司令官が下僚に任し、外務大臣が下僚に任していたのでは、いつまでも大綱の決定ができん。(「その通り」と呼ぶ者あり)ここに私は問題があろうと思つております。従つて私は、外務大臣が本当に奄美大島を十二月一日に返還させるのだという決意があるならば、むしろアメリカ側にいろいろな難点があつたにしろ、これを引きずるくらいの誠意を以て当るならば、私はできないことはないと、こう考えております。今十二月一日は外務大臣としては当初からの目途であつて、政府としては十一月一日と言明した云々ということはないとおつしやいましたが、先ほど申上げましたように、緒方副総理も福永官房長官も、この間の参議院の議院運営委員会において政府もそう考えたけれども、若干は遅れる見通しだ、こういうような答弁をなさつて食違つておるのであります。そこで私はこの際、外務大臣として、外交折衝において、アメリカ側から日本領土引継ぎを受けるのだから、日本外務大臣一つ誠意を以て当るなら、十二月一日の返還必ず成るものだと考えております。MSAに払う努力の万分の一でもいいから、奄美大島返還の問題について、池田前大蔵大臣がアメリカに渡る場合においては、この問題をひつ下げて交渉してもらうのが、当然日本政府のとるべき態度ではないかと、私はこう考えております。こういうふうな点において、十二月一日に外務大臣として、もう少し積極的な意欲をもつて返還せしむるのだという、一つ所信のほどを先ず再度お伺いすることと、第二の問題は、十一月一日として、琉球政府の予算措置をとつた沖縄軍司令官からも十月末までで予算を打切れという指令が出ておる。こうして現地に混乱が起きて来ておる。併しこれはいずれ日本に返つて来る領土でありまするから、この空白期間の問題について、更に十二月一日からお話のように若干遅れるかも知れんとするならば、とにかく十一月一日から、返還になるまでの期間の財政上の措置とか、或いは経済的な波乱の防止とかいうことは、当然日本政府においてもやるべきが至当だと考えております。政治は生き物だと思つております。現在アメリカ行政下にあるからというのでなくして、政治は生き物だと思つております。日本領土が返つて来るわけであります。従つてこの間の問題をどう処理するかということは、これは国務大臣としての岡崎さんになるかも知れませんが、政府としてはどういう措置をやつてゆかれるか、どういう話合を進めてゆくか、どういう方針をとろうとするか、この点について明確に御答弁を願つておきたいと思います。
  115. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 十二月一日ということは私も目途としておるし、アメリカ政府もこれを了承しております。併しながら繰返して言うように、無理やりにその時に返還したと、そうだけいつても、実際上の引継ぎ仕事ができていなければ、徒らに混乱を招くばかりでありますから、引継ぎ仕事が実際上は必要だ、もう政治折衝ととかなんとかいうことでなくして、向うも十二月一日ということを了承しておるのです。ただ引継の問題で遅れるかも知れないということですから、これはどうも私としてはこれ以上のやりようはないので、あとはいろいろな引継ぎ関係者を督励して、それを早くやらせるよりほか仕方がないと思います。それから外務大臣というか……私も国務大臣かも知れませんが、そう何もかにも全部知つておるわけにはゆかないのでありまして、奄美大島の将来については、できるだけ政府としても努力をして、奄美大島の住民の生活の安定ということを図るのは勿論当り前のことでありますが、その具体的措置等については、自治庁を中心として研究しておるのですから、自治庁側にお聞きを願います。
  116. 田畑金光

    ○田畑金光君 外務大臣にもう一つ私お尋ねしたいのですが、どうもあなたの御答弁を聞いておると、芯が抜けているのですよ。外務大臣としていやしくも一国の外務大臣として、それくらいの政治力とか或いは指導力とかいうことは当然あつて然るべきだと思うのですが、事務手続が遅れるために十二月一日から若干遅れるかも知らん、この受継ぎの事務であります。これこそ私は閣僚として、大臣として当然に部下を督励して、そのような事務の引継技術に属するという問題であるならば、当然できると思うのです。そういうような点こそ、積極的な大臣の意思表示において、我々は十二月一日必ず返還せしむるのだと、こういう意欲こそ大臣の政治力じやないかと思うのです。この点そのようなことを明言されることが至当と思うのでありますが、この点大臣はそのように今後指導なさる決意がおありかどうかというこの問題。  第二の問題は、自治庁、自治庁とおつしやるけれども、これは私は政府全体の問題だと考えております。この空白期間をどうするかという問題、外交折衝に直接繋がる問題でありますから、この空白期間の問題についても、外務大臣といたしましても、閣僚の一員として十分に内閣にその意見の反映を図る熱意があるかどうか、この点について改めてお伺いいたします。
  117. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは外務省たけで引継ぎをやるものじやないのです。法務省の法律関係もあれば……。
  118. 田畑金光

    ○田畑金光君 それはわかつております。
  119. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いろんなものがあります。部下を督励してと言うが、私の部下でないものもたくさんあるのです。これはどうもいたし方ないのです。行政組織がそうなつておるのですから、又政府全体としては勿論考えておりますけれども、この政府の組織というものは、やはり地方自治の問題ならば地方自活庁でやり、農林の問題ならば農林省でやり、これらの人々が、若し農林の資金を斡旋するなら農林省がやるのだろうし、地方行政の問題なら自治庁がやるのだろうし、従つて外務省、外務大臣が一手で、私も国務大臣ではありますけれども、そう何もかも答えられるわけにはゆかないのです。だからできるだけ努力をするという以外には仕方がないのです。
  120. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連質問ですが、只今岡崎さんは、国務大臣としてそう何もかもは知らんというお答えがあつたのでありますが、無人島の竹島一つだけでも世論は沸騰しておるのです。二十万の同胞のいるこの群島復帰ということについて、その受入というものに対しては、閣議には相当の受入準備や受入態勢というものの検討があつたと思うのです。一体閣議においては、この奄美大島の受入態勢というものは十二分に検討されておらなかつたのかどうか、その点を伺いたい。
  121. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは恐らく人智を尽しての検討はいたしておるだろうと思いますが、併し実際にやつてみるとすれば、なかなか思わないことも出て来るだろうと思います。これは実際の仕事の問題ですから、そう抽象的におつしやつても、閣議で一体あらゆる……、例えばそこに判決を受けた罪人をどういうふうに取扱うとか、そういうところまで閣議できめ得るわけのものではありません。大方針はきめておりますが、それらは各省におのおの担当の部門があるのですから、そこできめる以外に方法はないのであります。
  122. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは勿論そういうことになりまするが、而もその大方針というものでも、中心をなすものは、この場合外交交渉ということになると思うのです。そこで一番の中心をなす外交交渉の外務大臣が、その全体のアウト・ラインということについて十二分に知つておらなければ、外交交渉の進み方も中心を失うと思うのです。そういう意味で少くもこの問題については、外務大臣が一番知つておらなければならないはずであるし、又一番熱意もあるはずだという前提の下に、私どもは伺つておるわけであります。そこで例えば閣議において、外交交渉は勿論外務大臣下ありまするが、あとの受入態勢については一体どういう担当なり、どういう分担なりというものが話合に出されたのでありましようか、この点を伺います。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この奄美大島返還の一番大きな問題は、要するに奄美大島範囲をどこにするかという問題、それからその中にアメリカの軍事施設があるか、それをどういう取扱にするか、又今後そういうものが必要になつた場合にはどういうことにするか、そうしてこれが外交交渉として一番大きな問題であります。それでいつを目途として返還するかということになれば、それに応ずるようにいろいろな引継の問題も考えて行かなければならない、その引継の内容については、漁業資金、営農資金というような問題もありましようし、市町村の起債とか学校の建設とか教員の待遇とか、いろいろな問題がありましよう。これはおのおの担当の省がやりまして、そうしてただ行政機構の簡素化という意味で、でき得る限りこれは現地の問題としては鹿児島県にやらせる、こういう方針で進んでおります。
  124. 秋山長造

    ○秋山長造君  先ほど私が予算等のブランクのある期間をどうするかという御質問をしたのに対しては、それはまう日本に正式に返還されるまでの期間は、当然琉球政府なりアメリカのほう  でその責任をとるのが当然だからその交渉をする、こういうお話つたのですが、後ほどそれではその返還されるまでの期間が延びた、いろいろ住民が因つておることに対して手当をどうするかとかいう向うからの質問に対しては、それは自治庁その他でできるだけのことはやらなければならん、こういうお話つたのですが、そうなりますと、返還されるまで、今後正式に日本復帰するまでの期間の行政上、立法上、司法上その他いろいろな面の責任というものはどちらにあるのですか。
  125. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 復帰するまでは当然アメリカにあります。
  126. 秋山長造

    ○秋山長造君 アメリカだから、それまでの問は、これから延びたところで自治庁或いはその他日本側としては別に手は出せないわけでしよう。
  127. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 併しそれが実際上の問題としては、それは理屈ですが、金がなくて困つておる、復帰したときにも、もう金がなくて非常に因つておる、それは今後の問題ではなくて、過去のことで困つておるような場合に、できるだけの援助をやるのは、これは当然でしよう。
  128. 秋山長造

    ○秋山長造君 復帰した後でなしに、さつき加瀬君なりの御質問は、十二月一日に復帰するとしても、すでに今まで現地民が考えておつた間、或いは予算を打切られたときから一月延びておるわけでしよう。更にそれが十二月一日よりもつと延びるというようなことになるわけですが、その期間非常に現地がブランクになつて困る。それに対しても政府としては放つておけんじやないかという向うからの質問に対して外務大臣の御答え弁は、それは当然日本側として外務省はやらんにしても、自治庁なりその他政府としてやらなければいかんということを御答弁なさつたと思うのです。
  129. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の意味はそうじやなくて、先ほどつまりブランクで金がなくて困つておるような場合が生ずれば、復帰したときに日本行政権の下にあつて、それで食えないで困つておる人があるということになれば、それは今後の問題でなくして過去の問題であつてもできるだけのことはしなければなりますまい。こういう意味です。
  130. 秋山長造

    ○秋山長造君 それならもう改めて質問せんでもわかりきつたことで、日本復帰したのちに、たとえ問題が過去にあろうと、後にあろうと、やるのは当然ですけれども、さつきのつまり御質問になつたのは、そういう意味じやないのでしよう。
  131. 田畑金光

    ○田畑金光君 そういう意味ではないけれども。
  132. 秋山長造

    ○秋山長造君 やはりはつきり……。
  133. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私のお答えはそういう意味です。
  134. 加瀬完

    ○加瀬完君 議事進行で。外務大臣お話を承わつておりましても、どうも閣議の決定線というものははつきりしないように思われるのです。田畑君のお話では、先般副総理は委員会の席上ではつきり表明もしているそうですから、午前中はこれで打切り、午後副総理に出てもらつて、副総理にこの問題をもう一度聞いたほうがいいのじやないかと思います。そういうお取計いを願いたいと思います。
  135. 内村清次

    委員長内村清次君) 実は今日の午後は大臣所用のためにみんなおられないのです。それで、これで午前中は打切りまして散会して、明日の午前十時からやろうというふうに考えておるのです。
  136. 田畑金光

    ○田畑金光君 同時に一つ副総理と外務大臣と一緒に来てもらつたほうが都合がいいと思いますので、一つ同席されるようにお取計いを願いたいと思います。
  137. 内村清次

    委員長内村清次君) 今日はこれで一応質疑を打切つてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 内村清次

    委員長内村清次君) それではそういうふうにいたしまして今日はこれで散会いたします。    午後零時二十五分散会