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1953-11-05 第17回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月五日(木曜日)    午後四時十九分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            梶原 茂嘉君            羽生 三七君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君            杉原 荒太君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○国際情勢等に関する調査の件  (一般外交問題に関する件)   ―――――――――――――
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では只今より外務委員会を開きます。  本日の議題は国際情勢等に関する調査であります。質疑のあるかたは順次御発言をお願いいたします。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 国際情勢に関する皆さんの御質問に入る前に、ちよつと簡単なことでお尋ねしたいことがあるのですが。
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) どうぞ。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 それはもう非常に簡単なことで恐縮なんですが、ちよつと今日の新聞を見ましたら、近く日本開催を予定されているレスリング、スケート世界選手権大会に参加するソ連選手団入国査証が与えられるかどうかで非常に大会開催が危ぶまれているということですが、私は誰から要請を受けているわけでもない、自分一人の見解ですが、いろいろデリケートな国際情勢のある際ではありますが、こういうスポーツとか芸術なんかについてはカーテンを開いて自由にされたらどうかと、こう思うのでありますが、一つ見解を伺いたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も、スポーツであつて殊に大勢の国の代表者の来る中にソ連の人も入つているというのは、特にソ連の人を呼ぶとか何とかいうこととは意味が違いますから、そして前に国連のECAFEのときも、国連の職員でありますソ連人たちも来たことがあります。これもよく調べてみなければ今はつきりしたお答えはできませんが、特に支障か何か差支えがあるような理由があれば格別ですが、原則としては入国はよろしいんじやないかと考えております。はつきりしたことはもう少し事務的に調べをしてみないとわかりません。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 了解しました。
  8. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私も今の一般的な御質問に入る前に、外務大臣にお尋ねをしてなお要求をしておきたいと思いますが、それは戦犯釈放の問題です。A級の問題は参加国全部多数でなければならないでございましようが、各国地方別現地裁判された方は巣鴨に大分大勢残つておられて、もう戦争が済んでから八甲になりますから非常な困難をしておられる。御本人や家族も実にお気の毒だと私は思いますが、この人数は九百名足らずですが、一般国民に与える影響は非常に大きいと思います。和解信頼条約ができたと言つたあとでこの人々がまだ繋がれておる。今度初めてのこういう戦争裁判というもの自身についてもいろいろな感じを、受けた日本人のみならず世界中で持つておると思いますが、殊にこれからますます和解信頼条約を本当に国民的な感情の広い基礎の上に置く場合には、誠に僅かな千人足らずの人人が残つておるということが政治的に大変大きな影響を持つと思うので、この問題を解決することがそれらの国々日本との関係をよくする上に非常に大切である。日本側におきましても列国に対してやるべきことはいろいろやらなければならん。それで大臣も先日東南アジア三カ国を御訪問になつたと思いますが、我々のほうもやる代りに外交のほうでもやつて頂きたいことがある。そのうちの一つはこのB、C阪戦犯釈放の問題だと思うのであります。殊に日本アメリカとの間にこの数が一番多いのでありますが、いろいろこれからMSAの問題とか話があると思いますが、その一つ国民心理に与える影響として、アメリカに対して殊に一つ政治的な含みを以てこの問題に努力して頂きたいと思う。それについて外務大臣としてどういうお考えであるか、又どういうふうにやつて頂けるかを伺つてみたいのであります。これは外国現地裁判があつたためにいろいろ個人的な事情を調べてみますと人違いの人も大分ありますし、身代りで犯罪を言渡された人もありますしそれから罪を強いられている人がある。又責任上やむを得ないと思つて自分が引受けて犯人となつておられる人もありますし、殊に裁判官が捕虜であつたような場合には、どうも感情も入つておるような疑いもございます。弁護人を付けてない人もいるというようなことで、個人々々に調べてみますると実にお気の毒な人が多いのでありますから、これを釈放されましてもそれが別に悪い結果を及ぼすこともないのであるから、戦後殊に八年もたつて講和条約もできて二年になんなんとする今日ですから、私は大乗的な立場から各国BC級戦犯人々を釈放するというようにして参りたい。丁度フイリピンの問題、今行われんとするソヴイエトの問題も国民的に非常な影響を及ぼしますから、私はこの際外務大臣にお尋ねしたいのですがこれを政府として一つ十分に努力をお願いしたい。又国民としても我々の間においても国民を代表してこれをもつと真剣に努力しなければならぬ。かように思うのですが、それについて外務大臣のお考えを伺い、又どういうふうに処置しておられるか伺つておきたい。
  9. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私もこれは非常に心を悩ましておるので、実はそのためにこの前有田八郎氏がジユネーヴに行かれたあと各国廻つて話もして頂いたわけです。今更生保護委員長をしている土田豊君にアメリカ行つてもらつておりますが、これもアメリカの話がすみますとイギリスオランダ等を廻つて来るはずでありまして、又アメリカ新木大使ほか関係国日本大使にも訓令を出しまして、B、C級を特に、そうしてA級についても話をするように、而も細かく言うとこれを例えば個人仮釈放の資格はあるけれども未だ仮釈放になつておらない、仮出所になつておらない者とか、或いは無期のために仮出所の恩典に浴せない。これは無期有期刑にしてもらえばできるわけですが、その他刑の誤りであるとか判決の誤りであるとか、或いは裁判所の手続の不備であるとか等の一例を挙げまして話をいたしております。又これをやるのに一番いいのは、これはこちらの考えだけですが、本国の委員会等で取上げるのでなくて日本にある各国大使館で決定できるようになれば、一番少くとも仮出所なんかは早くそのほうが運ぶと思います。そういうことも各国で話合つておりますがまだ目鼻が付くとこうまではなかなか行つておりません。フイリピンにつきましてもこの間参りましたのでいろいろ事情を話して来ました。或いは多少ずつそういう方面が動くかもわからんと思いますが、今これと言つて具体的に申上げるだけの結果は持つておりませんけれども、アメリカなどでも最近非常に考え方が前と変つて実情をよく認識しておるような向きもあるようです。ただ一方におきましては皇太子殿下のおいでになつたときにイギリスのニユーキヤツスルの退役者の人とか或いはオランダとか蘭領インドにおいて、生活の道があそこでとられてしまつて養老院にいるとかいうような状態人たちは、自分たちの問題を解決せんで日本のほうの戦犯問題だけ解決するのは、けしからんというような意見も場合によつてはありまして、なかなかこちらで考えるようにはテキパキ行かない、非常に心を悩ましております。巣鴨状況等も私も比較的よく知つておりまして、こう長引くということも非常に心外なんですが、できるだけのことはやつておるつもりですが、結果においてどうもはかばかしくないというのが実情です。併し私はそう遠くないうちにこれは解決できる、実は今年中ぐらいには何とかなりはせんかと思つておりましたが、今のところ今年中というのはちよつと無理かと思いますが、併しそう長くかからずしてこれは解決できる道が開けるのじやないかという希望も持たないわけではない。できるだけ努力をいたしますし、又何かそのほかにいいお考えがあれば更に努力を続けたいと思つておりますが、今さような状況にあります。
  10. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 それから二言付加えておきたいのは、その国々に対してこれが日本国民全体に与える影響が非常に大きいということを、殊にアメリカに対して大臣からお話をして頂きたいのが私の一つ希望なんであります。ですからさつき申上げましたように日本としてやるべきことは十分やるということを一方においてしなければならんと思います。同時に向う側でもこれが国民心理の上に及ぼす影響が大きいということを特に力説して頂きたいということを私は申上げておきます。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 昨日同僚佐多委員から朝鮮の問題に触れまして非常に重要な御意見の開陳もあり、又それに関連しての外務大臣の御意見の発表もあつたのですが、私は非常に重要な問題だと思いますので、昨日は我々の討論の対象が局限されておりましたから発言しなかつたのでありますが、この問題に触れまして外務大臣の御所見を伺いたいと思います。申すまでもなく朝鮮の問題というものは勿論朝鮮停戦終つてもその平和の将来というものがまだ不安定である。即ち世界におけるまだ最大の潜在的な緊張の地域であることは当然でありますが、同時に又我が国から見ましても朝鮮の安定の有無ということはもう言うまでもなく我が国の安全に至大なる関係があるわけであります。従つて我々日本としては勿論国連朝鮮に対する出兵その他の軍事的な行動に参加すべきものではありませんが、併し停戦協定後の朝鮮の平和の問題はいわば日本の安全の一つのキイ・ポイトンであるわけでありまして、従つて朝鮮の将来に対しては日本としては何を考え又何を要求すべきか、これはもう日本外交の最も焦点でなければならない、又非常に緊急な問題であろうと思うわけでございます。非常に前置が長くて恐縮でありますが、そこで昨日朝鮮の将来についての佐多君の御意見もありましたが、まあそのことは別といたしまして、我々としては、少くとも朝鮮に対する日本外交方針というものがあつて、そうしてその外交方針をいろいろな機会をとらえていろいろな方法を通じてその実現のために外交上の努力をしなければならない、かように考えるわけであります。朝鮮の問題に関する日本主張は、従つて朝鮮の将来に関する国際会議或いはそれが政治会談であろうと或いは国際連合で取上げる場合もありましようし、いろいろな形があろうと思うが、そういう国際会議には日本主張を当然に発言する地位を要求すべきだと思いますが、その方法論に入る前に日本の意向を何とか反映させる必要は昨日外務大臣も認めておられたと思います。従つて政府としてどういうことを日本として要求するのか、朝鮮の平和に関して政府のお考え国民は是非とも知らなければならない。これについてまだ明確な基本線を示しておられないと思うので、今日の機会外務大臣からそれについての政府のお考えを御披瀝願えれば結構だと思います。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは事が外国の問題でありますからよほど慎重にしなければならないと思いますが従つて政府としてこういうことをきめておるのだということはまだ実はないのであります。併し私が外交問題を担当しておりますので、私の考え方だけを申せば、私はいろいろなああやつたらいい、こうやつたらいいというやり方がいろいろありましようから、私のはその一部分になるでありましようが、結局南地統一ということが一番の問題になるのじやないか。その方法としてはやはり国連側の公平なる監視、これは国連側といいましても今国連軍として兵を出しておるような国だけでは治まりますまい。そうでなくて一般国連全体から見ての公平な人たちによつて監視され、そうして南北同時に公平な選挙を行なつて、そうしてその多数の投票を得た政党なり団体なり、どうなりますか、それが政権を担当して南北を統一する。これが私は一番理想的なやり方じやないかと思います。それはほかに言い廻し方はいろいろありましようが。そういうふうに考えまして、我々はこういう考え方については、関係国にも日本側意見としてはこれが一番いいと思うということは言つておりますみ、一部は他国内政になることであるし、殊に朝鮮だと純然たる外国といつても今まで一緒になつてつたような関係がありますからとかく誤解を起し易いので、日本側では朝鮮にこうすべきだ、ああすべきだというようなことは申したくありません。私見としてはそういうふうに考えております。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 まあ政府としては現在の韓国政府の非常に神経過敏な状態等から考え、いわゆる他国に対する内政干渉に亘らないような考慮から、従来基本方針といいますか、或いは外務大臣としての気持すらあまりはつきりしておられなかつた点はわからないではございませんが、只今基本的な方法において言われたことは私は全然賛成でありまして、どうしても朝鮮の民族のためにも日本の安全のためにも又世界の平和のためにも、我々は三十八度線にいわゆる金日成のような暴力政権、それから李承晩のような暴力政権、この二つ政権武装対峙して、而もそのうしろにはお互いに世界の両極の厖大な勢力というものを軍事的にそのうしろに控えておるというようなこの状態を放置することは決して正しい平和ではない。かような見地から朝鮮の望ましい形としては、どうしても南北両鮮を通ずる自由選挙、そうして自由選挙というものは最も公平な国際機関として、いわゆる国連の監督の下における自由選挙、それを通じての統一朝鮮実現、こういう方向にあるべきであるということは、只今基本的な考えにおいて外務大臣と一致したように思うのでありますが、この点は本日いい機会でありましたが、そういう正しい主張は決してあまり斟酌されることなく堂堂と出して頂きたいと私たち考えるわけです。申上げるまでもなく、こういうような基本的な方向はすでにいろいろな公平な国際的な機関において、例えば社会主義インターナシヨナルの第三回の大会においても、アジア社会党会議の第二回の幹事会においても全然同じ方向を出しておる。これは決して日本が思い上つた言い方ではなく、真に平和を好む者としては基本方針として是非出して頂きたい、さように考えます。  そこでそれに関連いたしまして、然らばそういうことができたあと朝鮮はどうあるべきか、この点はますます外務大臣としては答弁がしにくいと言われるかも知れませんが、若し差支えなければ一つ統一後の朝鮮あり方、これについてもお話を願いたいわけであります。で、これについては言うまでもなく朝鮮がいわゆる中立化するがいい、こういうような意見もあるようであります。私たちはまあその中立化という言葉は非常に誤解を招きやすいから使わないのでありまするが、そういつた統一された民主的な朝鮮というものは、いわゆる一種緩衝国バツフアー・ステート)として存在するのがいいのではないか。即ちいずれの陣営にもつかない朝鮮、それは決してその非武装という意味ではなくて、いずれの陣営にもつかない朝鮮、そうしてその朝鮮領土の保全というものは主なる関係国がこれを保障する、その関係国一つには勿論日本も入つておる。つまり言い換えるならば日本と中国、ソ連アメリカ、そのほかに更にまあ公平な一つ立場としてインド等が加わつたらなおいいと思いますが、そういつた主なる関係国保障による一つバツフアー・ステートを作る、こういうような構想が真に日本のためにも世界のためにも正しいのではないか。かように考えますが、その問題についての外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そういう意見も各方面で唱えられておることは私も承知しておりますが、私の考えを率直に申しますと、今普通の状況ならば国連が手助けをしなくても、南北朝鮮に公平な選挙を行なつて民意のあるところで政府ができるということは当然なことでありますが、実際上放つて置いてはなかなかできない状況だと私は思うので、これは国連が手助けしたらいいだろう、こう考えるのですが、これも随分国連としては或る意味では行過ぎなことだと思うのです。或いは朝鮮国民がそういうことを好まないかも知れないということもあり得ると思いますが、それはどうしてもそういうふうにやらなければ理想的な選挙等も行われないと思うから、私はそれはまあ最善の策ではないにしても、現在においてはまあ適当なことだろうと思つておりますが、さてそういう統一した政権が仮にできたとしまして、一体朝鮮人たちがそういう中立国になるとか、或いは中立的な立場をとるということを好むかどうかがわからないうちから、お前は中立的な政策をとるんだとか、お前はどこの国とどこの国が保障してハツフアー・ステートになるのだということは、これは私は日本としては行過ぎじやないかと思う。若し朝鮮国民がそういうことを希望するということがはつきりわかりますれば、我々もそういうことに向つて、それは結構でありますからできる限りそれの実現努力するということは結構だろうと思います。先ずその民意がどこにあるかということを確めないうちはそういう想定をするのはどうかと思いますので、それについては意見を慎みたいと思います。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 御尤もな点もあると思うのです。即ち私自身バツフアー・ステートというのは、これは一つの実質的な機能として申上げたので、私自身統一朝鮮はいずれの陣営とも軍事同盟を結んじやいけないとか、安全保障あり方についてああであつてはいけない、こうしろということは外国から押しつけるべきではない、そこにやはり自由選択というものがなければいけないのだ。従つて私の申上げるバツフアー・ステートというのはその結果であつて、つまりいわゆる中立化というような固定化したものを押しつけるものではない、その選択の自由を与えるのだ。併し、だから我々としては領土保障するのだ、関係国領土保障すべきである、そうしてそれを特定のいわゆる中立化というような、かせをはめるということはいけない。併し我我希望するところは、それじややはり朝鮮が実際上二つ陣営のまあパワー・ポリテイツクス、或いは勢力範囲の争いになつている状態が続く限りは朝鮮の安定はあり得ない、朝鮮の安定がなければ日本の平和に非常に支障を来たす。だから望ましいところは、いわゆるいずれの陣営にもつかない方向で、而も領土保障はする、その国の安全の措置についてはその国の国民の選ぶところに任せるのであつて、非武装化を押しつけるとか、外国との集団保障をやつちやいけないというような禁止条項を設けるのではない。気持は全朝鮮が一丸としてその領土関係諸国によつて保障される、これが一番いいではないか。まあこういうことを申上げたわけなんでして、多少誤解があつたかと思いまするが、私の言わんとするところはそういうことであります。併しそれについてはこれ以上あなたから具体的な方向についての賛否を聞くのがむずかしければ強いて御返答を求めなくてもいいのですが、若し更にそれの上に立つて意見があればお洩し願いたいと思います。
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 曾祢君のおつしやることはよくわかります。又それが結果において一番いいかも知れんと思いますが、今のところは私から余り先き走つた意見政府としては述べないほうがいいだろうと思います。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 私はそういうことを申上げるのは、一つは勿論朝鮮に関する問題であるわけでありまするが、いま一つは、日本としてはどうしても大陸の強大な国であるソ連中共との関係においても何とかこれを正常化するように努力をしなければならない。これは日本外交の国策のこれ又優先順位が非常に高いものであろうと思うのであります。ただその場合に私たち日本がその日本の基本的な利害、日本安全等の問題、こういうものを犠牲にしてまで大陸の、まあたまたま共産主義諸国ですが、大陸の強大なソ連中共との国交にあせることは誤りである。そうなつて来るとどこかにそのきつかけを求めなければいけない、ただ放つて置くわけには行かないというふうに考えるわけです。従つて一連考え方としては、このきつかけを只今朝鮮問題に求めることはできないのか。これは勿論当局でありませんから自由なる外交放談としてお聞き願つてもいいんですが、まじめな意味でその問題に我我取つ組まなければいけない。逃げるわけに行かない。そうなつて来ると只今朝鮮についてここに真の平和の招来する、又私自身只今申上げたように、或る意味ソ連中共朝鮮に対する彼らの安全感上の一つ要求を持つておる、これは我々は無視することはできない。あえてチャーチルやアデナウワーの構想を引くまでもなくソ連中共に対しても一種安全感を与えるということはいわゆる我々が努めなければならない。交渉による平和を一つ一つ積上げて行くという線に沿うておると思う。従つて若し只今申上げたような朝鮮の半分が日本とかアメリカのような現在も又将来も軍事力の強いような国の勢力範囲にならないというような形における朝鮮問題の解決ということに日本みずからが誠意を披瀝して、それに努力することによつて、そうして若しソ連中共がその方式に賛成してくれるならば、そこにいわば朝鮮問題をきつかけとして日本ソ連中共の間に打開の道ができるんじやないか。これは勿論容易な道ではないけれども、そういう意味からいつて朝鮮平和的統一というものの日本基本的考えというものは、決してただ韓国に対するいろいろな顧慮だけでなくて、一つ日本の大きな外交の道としてもつと進めて行つていいんではないか。そうして例えば中共の承認の問題にしても、我々は中共国連世界的、いわゆる何といいますか普遍性を保持し拡大する意味からいつも当然に賛成すべきであるが、同時にただ単なる無条件の賛成ではなくて、そういつたような意味におけるソ連中共朝鮮平和解決に対する一つ方向を見きわめることによつて、そこに中共問題も解決し、又中共ソ連日本国との間のこの戦争状態の終結に対する努力をやるべきではないか。まあかように考えるわけですか、外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 非常にむずかしい今の朝鮮の問題について、ソ連中共が脅威を感じないような措置、これができれば一番好ましい。これはまあ当然考えられるべきことであり、又そうなるように考えなければいかんと思いますが、まあ御承知のように中共ソ連がそれだけでほかの問題がないというわけにも行きましせんからして、なかなかむずかしい点はあるだろうと思います。又ソ連との間はこれはいろいろなプリンシプルとか何とかいう問題は別として、そういうことが解決されれば平和関係に入るということも、形の上からは比較的むずかしくないような形になると思いますが、中共のほうになるといい悪いの議論は別として現に国民政府を承認しておるという形からいいまして、又そこに一つの障害もあろうかと思います。で、いろいろこれはむずかしい問題でありますが、ただ私の言い得ることは、朝鮮のことについては成るほどこれはいずれにも心配にならないような国として立つことができれば一番よいのでございます。又実質的問題としては、朝鮮の再建と言いますか仮に統一した政府ができたとしても、なかなかこれは困難なことであろうと思います。そういう方面について日本として援助と言つては大げさですが、協力して朝鮮が安定するということは、政治上のみならず経済上の点でも非常に大きな問題でありますから、そういう点については我我もできるだけ努力したいと考えております。いずれにしても朝鮮の安定ということは日本の安定については非常な欠くべからざる関係にありますから、そういう面からいろいろ思いを廻らしておりますが、さて具体的にそれではこうすればいいのだということはいろいろな関係があるので、ちよつと簡単にはいかないのじやないかという気がしております。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 今度は少し観点を変えまして、もう少し切実な問題に触れてみたいと思いますが、まあ李承晩ラインの問題についていろいろ同僚委員から御質問があろうと思うので極く一面だけを触れたいと思うのですが、まあいわゆる外交交渉によつて飽くまで現状の打開に努めなければならないことは、これはもうお互いに異論のないところだと思いますが、実際考えてみると例えば国際司法裁判所に提訴するといつても、これはちよつと間に合わないきらいが多いのではないか。然らば日韓会談再開についても政府として更にもつとハイ・レベルにおける努力がなされて然るべきだと思いますけれども、これもなかなか現在のところむずかしい。まあこれらについてなお御報告的な御説明があれば結構だと思いまするが、私がお伺いしたいポイントは、政府が或いは何らかの報復的な措置というようなことを考えておられるかどうか。例えば朝鮮に或る種の品物を送らないというような方法、或いは在日朝鮮人に対する指揮、これらのことを真にお考えになつているかどうか、果してそういうことが又いいかどうかということについて私は多大の疑があるのですが、先ずそういう報復措置をお考えになつているかどうかを伺いたいと思います。
  20. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 報復措置という点も研究はいたしております。報復措置なんということは勿論これは普通やるべきことじやないことは当り前のことでありますし、又やり得ることというのは非常に少いだろうと思います。思いまするが、一応政府としては勿論平和的に解決するために努力はしております。報復措置についても研究はしております。やるかやらないかということは別問題であります。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 一応続けてもう二、三点ばかり伺いたいと思いますけれども、どうぞ各委員から関連質問があつたらやつて下さい。  これは機微ですから余りそれ以上研究の内容或いはその結果等はお伺いしませんが、併し大体において常識的に考えて報復を呼びがちであるし、甚だ遺憾ながら日本側のほうが弱い点が多くはなかろうかと考えますし、又そういう方法は適当でないというふうに私は考えております。  いま一点それに関連して伺いたいのは、政府として非常に苦しい立場のことはわかりますが、いわゆる強硬出漁というような場合に、これを法的にとめることはできないのであるかどうか。併しとめられないとしてただ放つておくわけには行かないとすれば、それではそれに対する保護をやるということが起つて来る。ところが保護をやるということは、却つて向うの出方の如何によつては一層の危険、公船と公船との間の武器を使うようなトラブルが起る心配はないか。そういう点を考えていわゆる強硬出漁ということと、それに対する保護ということは政府としては、外務大臣としてはどういうふうに考えておられるか、この点を伺いたい。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは政府としては飽くまでも公海の自由ということはもう捨てるわけには参らない主張であります。従いまして公海へ出て行つて漁をしてはいけないということはどうも言えないのであります。そこでそれでは無理やりに出て行くというときには、力の及ぶ範囲では保護しなければなりませんが、それが一体例えばフリゲート艦のようなものを使つて保護すべきものであるかどうかということは、いろいろ考えなければならん問題が多々ありますので、少くとも政府の公船で力はないかも知れんけれども、海上保安庁或いは水産庁にも船があるわけであります。若しそういう強硬出漁というようなことに事態がなりますれば、今までもやつておるような程度の保護は当然やらなければならん。それ以上のことにつきましてはまだ決定をいたしかねております。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると今までのような普通の、何といいますか、危くなつたら教えて逃げろというような、そういうような警戒的な保護ならこれは話はわかる。そうでなくていわゆる海上警備隊といいますか、そういう実力部隊をくり出してやるということは政府はどう考えておるか、研究中なのか、それはもうそういう危険なことはやめるんだというのか、この点はどうなんですか。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 必ずしもやめるとまで決定はいたしておりません。研究中であります。研究中でありますが私の考え方をここで申しますると、いずれにしても韓国は独立したてであるし、又実際戦争が行われておつて非常に政府も手不足であろうし、又新らしく独立した国としては国民に対して特に大きな面子を維持するということも必要であろうし、まあいろいろなことがありますから、随分日本側にとつては無理なこともあろうけれども、話ができるものならば下でに出て話をするなり、韓国と同じように肩を張合つた主張をしなくても、こちらはずつと昔からの、大人といつちやおかしいのですけれども、長い間こういうふうに国を成しておるのですから、できるだけの譲歩は、こちらでし得るものはすべきであつて韓国側としてはなかなかむずかしい点もあろうと思いますので、先ずそういうできるだけの譲歩をして話合をつける途を講ずべきだと考えておりまして、そのほうにもつばら力を尽したい、こう考えております。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 結論としてやはり外交交渉によつて大体打開しなければならんということになると思います。そこで李ラインというような不法な主張は、どうしてもそれ自身として受入れるわけにはゆきませんが、これに関連していわゆる両方の請求権の問題があるようですが、これについてもやはり立場等の問題としてなかなか譲れない点もあろうと思いまするが、大体私は過去のことを言つても仕方がないことですけれども、いよいよ平和条約ができたときに、どうも最後になつて挿入された、ここに条文は持つておりませんが、要するにアメリカ軍司令官が占領中にやつてしまつたことの効果はこれを承認するというような項は、非常にやはりこの財産請求権問題に累を及ぼすのではないか。当時の政府の責任者に伺つたのですが、いやそれは大丈夫だ、あれは法的の秩序を今さら乱さないというだけで、日本の公けの財産権、殊に個人財産権については勿論請求権は残つておるのだ、こういう解釈を当時言つておられた。そういう解釈で果してゆくものかどうか。これは条約の当事国自身アメリカ等が一体どう考えておるか、非常に不安を持つてつたのですが、果せるかな韓国にしてみればそんなことは承知できん、とるものはとる、更に請求するものは請求する、やらずぶつたくり主義というようなむちやな主張をしておるようですが、その点に関する外務省の主張は、然らばその点については一体折合の可能性があるのかないのか。その点だけを伺つて日韓問題についての質問は打切り、最後にもう一問だけ御質問申上げたいと思います。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この司令官のやつた処分を承認するということは私は当然のことだと思うのですが、ただ国際法上の慣習からみましても、或いは国際法学者の多数の意見からみましても、司令官か財産の最終的処分をやるという権能は認められていないと思うのです。つまり或る財産があつてこれは腐るから売つちまえとか、或いはこれは放つておいては経済が回復しないからこの工場を民間に払下げて運転させる、そこまではいいと思う。ただこの工場は日本のものであるが日本の所有権から取上げてほかへやつてしまうという、そこまでのことは私はできないだろうと思うのです。従つて日本としては、国際法に認められておる司令官の処分権については認める、その後の問題はやはり平和条約にありますが、日韓間で協議をするということになつております。そこでそれじや請求権の問題を両方で突つ張つたらどうなるかというと、これはなかなか解決はできない問題でありますから、権利はあるにしても権利を放棄することはできるのだし、いろいろ解決方法はあるのであります。我々はこの点についてもでき得る限りの譲歩をして円満に解決いたしたいと考えております。その点につきましても平和的に今度の問題を解決する一つの大きなターニング・ポイントになると思いますから、いろいろ考慮をめぐらしております。でき得るならばこういう点は日本のみならず韓国側も両方が満足するようなほうにやる。こちらも譲歩するが韓国側も譲歩するようにやりたいと思つております。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 最後に、梶は昨日一つ外務大臣に伺いたい事件が起つたわけなんですが、昨日全国農民組合、農民総同盟等の主催で我が党もこれに共催的な関係を持つてつたのですが、農民決起大会というのが開かれましてそのあとで、これは警視庁と十分に順路を打合せまして秩序整然たるデモ隊がこの近辺を練り歩いたわけです。そのデモ隊が丁度合同庁舎、今の農林省ですが、あそこの前から衆議院第二、第三会館の所の坂にかかつて、つまりファイナンス・ビルデングの前に来た時に、ファイナンス・ビルデイングの上のほうの階からアメリカの兵隊がかんしやく玉か何かはじめ投げたらしいのです。これはどうも証拠がないからわかりませんが、更に極めて特殊なる用途のゴム袋に汚水を詰めたものを数個投げたのであります。それでそのこと自体は別に人畜に被害を与えるものではなかつたのでありますが、デモ隊の十数名がその汚水を浴びるという事態が起つた。昨日二時五十分くらいですが、そこでこれは当然非常な侮辱でもあるし、或いはびんでも投げたかという誤解もしたでしようし、デモ隊の一部の人はいきり立つて営門といいますか門の所まで押しかけて日本人のガードと少し小ぜり合いをした、幸いに我が党の責任ある引率者、代議士のかたが二人ばかりおりまして、向うの営兵隊長か何か知りませんが、そのうちMPも出て来る、日本の警察官も来るというようなわけで、取りあえず証拠物件を持つてそうして警視庁にその証拠物件を預けて、犯人の捜査等を頼んで、無事、無事というのはそれ以上ことが大きくならないでデモ隊は帰つた、こういう事件が起つたのです。  申すまでもなく、そのデモ隊は極めて秩序整然とした、勿論農林省の前じや大いに気勢を挙げたでしようが、何一ついわゆるアメ公帰れ的なデモをやつたのでは毛頭ない。又そういう性質のものじやない、我が党関係のことですから。併しそれにもかかわらず心なき一部の兵士がそういうことをやつて、若しこれが他のもつと極端な団体のデモであつたとするならば、そのこと自体がどれほど大きな事端を起したかわからないというようなことであつたと思います。そこでこういう事件に対して先ずこの犯人の捜査及び逮捕処分については、今度の裁判管轄権のあれからいえば、若しこれが刑法上の問題ならば、これは公務上の問題じやありませんからどう考えても日本側が勿論これを裁判にかけるという問題だと思いますが、一体こういう事件が起つたことは、日米関係上甚だ面白くないことだと思いまするが、この問題について政府は一体どういうふうにお考えになるか。この際こういう心なきアメリカの一部の兵士の行動に対して甚だ遺憾であるといつてアメリカの責任ある当局にその事態について注意を喚起するお考えがあるかないかお尋ねいたします。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私もまたこれは詳細なことは存じませんが、新聞以外に報告も受けております。で実はそう言うと叱られるかも知れませんが、法律上の罪としては余り厳罰にも処せられないような性質のものだと思うのです。併し実質的には今曾祢君の言われたように場合によつたら非常に大きな影響を及ぼすようなことなんです。これはよほどアメリカ側は、兵隊が冗談にやつたとか何とか言つても冗談ですまないような事件になる場合がある。よほど注意してそういうことのないようにしなければいけない。法律上これが何年の懲役になるという事件じやないかも知れんけれども、実質的には非常に重い問題であろうと思います。幸い今日も大宮御所の園遊会で駐留軍の首脳部も見えておりましたから、私自身もこの話をいたしました。併しそれは正式の話じやないのですからして、合同委員会等を通じまして先方の注意を強く喚起したい。いやしくも日本側のそういういろんなことに対して、何かからかつたり邪魔をしたりするようなことはとんでもないことであるという点を、強く反省を促したわけであります。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 これは政府として、適当な注意喚起の措置はおとり願つたほうがいい。いわゆる被害者の立場というのでなくて是非おとり願いたいと思います。又我々自身としては、被害者側としては被害者自身が適当な将来の保障とか或いは遺憾の意を表させるくらいのことは当然やるベきだというふうに考えております。  そこでその点に関連いたしまして、大体政府のほうでは、アメリカのそういつたような軍事施設がどうもとかくああいう街の中にあることが望ましくない。今までもこれはすでに郊外への移転問題、郊外に移転したから済むという問題じやありませんが、少くとも現状よりも事端が少くなるという点もありまするから、こういうことをいい反省の機会として、速かにこういう目抜の場所からそういつたような制服の軍人の集団がいないように是非進めて頂きたい。かように考えまするが、それに関する政府のお考えを御披瀝願いたいと思います。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今都内で、そういう目立つ場所は大蔵省と、それから比較的目立ちませんが麻布の三連隊といいますか、一連隊といいますか、あそこの部分と、それから市ケ谷の司令部のある所、そのほかには単にオフイスなり住宅なりに使つて、余り目立たないかも知れませんが、海上ビルデング、明治ビルデング、そうしてあと小さいものが二、三ありますが、これはできるだけ早く移すということは両方とも了解済みで、実はファイナンス・ビルと称するものなどは今年の四月に移る予定でやつてつたのです。で移りましたならば外務省もあそこへ三分の一とつて移るという計画でやつていたくらいでありましたが、郊外のほうの建物の進捗状況がうまく行かなかつた。というのは、あつちへ持つて行こう、こつちへ持つて行こうとしてもなかなか地元でも反対がありましてむずかしい。それで従つて延び延びになつておりますが、今の予定では年度末までにこれらを移したいと準備を進めております。ファイナンス・ビルは移り得るだろうと思います。  一番むずかしいのは空軍関係です。これは空軍のほうに予算がないものですから、安全保障諸費の中で賄う部分では全部賄い得ない。つまり我々のほうで負担して移すというのは、例えば建物その他は移しますが、移転するといろいろなものに非常に経費が要るらしくて、その経費は先方持の分が大変あるので遅くなつておりますが、こちらの方針は、今でも非常に遅いので困つておりますので、遅くとも年度末までには移したい、こういうことで今進めております。
  31. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今日は外務大臣に防衛問題についてお尋ねしたいと思つてつたのですけれども、同僚の議員のかたの御質問もありますし、問題は極めて多岐に亘つてお尋ねいたすことがあります。  先ず第一MSA問題の中で大体私二つばかりお尋ねしておきたいと思います。  第一は私が八月七日の参議院の本会議外務大臣質問したことに関連することであります。その際私は外務大臣に対して今度MSAの協定によつて日本側は防衛力を増強するという義務を負担することになることは明瞭であるが、併しこの防衛力増強の負担の義務の中からは、単文は戦力の保持ということはこれを除外するのだというこの日米間の合意をつくる、そういう条約作成の方針を以て政府は当つているかどうか。こういう質問に対して然り、そういう方針を持つているのだという御答弁があつた。そうしてその際更に私は、それではその当時において、それまでにすでにそういう日米間の合意についての了解がついておるかどうかという第二の質問に対して、外務大臣は、今後話合いを進めるにつきまして漸次はつきり具体的にいたす考えであります、こういう御答弁があつたのです。そこで私今お尋ねしておきたいのは、そのことがその後どうなつているか、現在どうなつているか、その点を先ずお尋ねいたしたいと思います。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の御質問の要点が、一番初めのところがちよつと聞きとれなかつたのです。もう一遍ちよつとおつしやつて下さい。
  33. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 初めは去る八月七日の本会議であなたに質問した、あの次第を私申上げたのです。それがあの質問をした時あなたはこれはそういう方針でやるのだということを第一番に答えられた。第二段にそれじやすでにそういう日米間の合意をつくるということについて、すでに了解が実際上できておるのかどうかというその事実の質問をしたのに対して、今後話合を進めるにつきまして漸次はつきりと具体的にいたす考えであります。つまりその時はまだできていなかつた、それだからその点がどうなつたかということをお尋ねしたい。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その後もずつと話しておりますが、勿論アメリカ側としては御承知のように防衛力増強はしてもらうが、この時期と態様は日本側に任せる、こういうことになつております。我々のほうとしては憲法に違反するようなものは作らないという方針ですからして、この点は先方も十分了解しております。従いまして具体的に話をいたしておりまするけれども、この点は例えば軍というようなことが非常に誤解がありまして、この間も問答がありましたが、我々としてはまあはつきり申せば憲法に違反しないと信ずる範囲の防衛力の増強を考えておりますが、この点については先方も了解をいたしております。
  35. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私がこの間本会議質問したのは、特に軍並びに戦力はこれを除外するという日米間の合意を作る方針をもつてつておるのかどうかというそれを聞いた、ところがそうだとあなたはおつしやつておるのです。そうしてそれでもう了解がすでにできておるかと言つたら今後の話合ではつきりさせるとこうおつしやつておるのです。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りでありまして了解はついております。
  37. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ついている。それは何ですか。どういうふうな形式で今後明らかにされるわけなんですか。議事録とかその他或いはその形式等、その点今後の話合かも知れんけれども、或いは協定の形式でその中にそれを明記する、或いは議事録でそれを明記するか、その辺のところはどうお考えですか、
  38. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは協定の中に、元来日本の防衛力の増強の態様といいますか形は日本政府がきめるということが方針でありますから、協定の中には書くつもりはありません。併し若し今後防衛力増強というものを政府できめますれば、その中ではつきりするだろうと思つております。
  39. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私の質問しているのはそうじやなくて、日米間の合意の話合はすでについておるとおつしやつておるのです。その話合のついておるのをどういうふうな方法で明らかにされるのか。
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまり日本政府がまあ軍なり戦力なりを作ると言えばアメリカはそれに対して文句を言うことがないが、併し軍や戦力というものを作らなくてもアメリカは文句を言わないという了解になつておるということであります。だから協定の中にそういうことを謳う必要はないと思つております。
  41. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それだから私今質問するように、協定の形で明らかにしない、そういう併し事実を例えば議事録とかそういう方法で明らかにされるのかどうかということを聞いておるのです。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私どもはそれも必要はないだろうと思つております。今のところはそういうことは考えておりません。
  43. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうすると全然合意というものの形式は口頭の約束というわけですね。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 要するに日本政府がきめるものを向うは何と言いますかアクセプトするこういうことでありますから、日本政府が決定すればそれでいいのであつて、先方の了解を得る必要がないということが明らかになつた。こう申上げておきます。
  45. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 非常に何か問題をあなたのほうは先方の了解が必要がないと、初めからまるで問題それ自体が違つて来ているように思うのですが。
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも私は違つているように思わないのですが、どこが違つているのですか。
  47. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それじやこういうことで又時間を取つてもどうかと思いますから、外務大臣ももう一度あの本会議の議事録を御覧になつて、もう少し私の質問の趣旨をもう一遍一つ議事録で見てもらつた上で別の機会にこの点したいと思います。  それではその次にお尋ねしたいと思いますが、MSAの交渉は大体のところいつ頃でき上るようなお見込でございますか。
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この交渉は申すまでもなく二つの形になつて出て来るわけであつて一つは協定と言いますか私はよく水の流れる土管と言つておるのですが、水の流れる枠を作るのと、それにどれだけの水が流れて来るかという実質の問題と二つありますが、枠のほうは一、二まだ完全に話合が成立したとは言えませんけれども、殆んどでき上つたというに近いところまで来ております。  それからその中にどれだけの実際上の援助が来るかということは、これは日本政府がどれだけの防衛力を持つかということによるわけであつて、仮に今の保安隊以上のものは何にも持たないとこう決定すれば、保安隊なり今の海上警備隊なりに必要の程度の援助をよこすわけでありましようし、又これを幾分でも来年度において増強するという計画が成立しますれば、それに応じた援助をよこすでありましようが、只今保安庁でいろいろ警備計画を研究しておつて、できれば来年度の予算にそれを計上したいと考えております。従つて我々としてはもう来年度の予算を作るのは一月余り後にでき上らなければならんわけですから、而もその中で最後にでき上るのではなくて、警備計画は大蔵省と話がつけば途中ででき上るかも知れません。国会の審議は別として政府としては一応計画ができたということになりますから、それを待つて実質的な援助の額等をきめたいと思つております。そう長いことはかからん、こう思います。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつと今のに関連して伺いたいのですが、池田特使の帰つて来られるという場合は何か影響はあるんでしようか。そういうことは何にも関係なく外務省は従来の基本方針で大体今杉原さんのお尋ねになつた前の本会議の答弁と変りないという線でずつと終りまで行くか、どうなるお見込みですか、
  50. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大筋にはちつとも差支えないと思いますが、池田君も向うの相当の人たちといろいろ意見を山交換して来たと思いますから、これはもう帰つて来たらさつそく意見も聞いて、向うの模様も聞きたいとは思つております。
  51. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の外務大臣お話よくわかりますが、そこでそれに又即して質問しますけれども、いわゆる外務大臣の言われた土管の役割をなすような協定それ自体、それからそこを流れるというか、もう少し具体的にいえばつまり日本側の少くとも初年度の防衛計画といいますか、これは予算的にまで具体化した一つの計画というものが出て来て、それから更に少くとも初年度の向うの援助というものが具体的内容がきまつて来る。そこで実質的にはこれが実際的には大事ですね。そこであとのほうの三つがきまるのとそれから前のほうの土管のほうの枠がきまるのと、これは時の前後の関係ですが、どういうふうにこれを取扱われるおつもりであるか、つまり私の言うのは、あとのほうの実質的なことがきまつて然る後、前のほうの形式的なほうのあれを調印する、こういうふうな取扱方をする方針であるかどうか。
  52. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は利害関係についてすつきりした判断はまだできないのですが、今の私の考えを率直に申しますれば、形、協定だけを作つてどんなものが来るかわからないというのもおかしなものだと思います。中味の一緒に中味がはつきりわかつた上で調印するのが適当じやないかと思つております。
  53. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それでは大体その時期がもう極めて近いうちを予想されるわけですね。それをもう一遍言うとどれくらいの時期と大体見通されるのですか。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大体私の考えでは予算は本当にできますのは来年の一月の十五日から二十日の間だろうと思います。印刷までできてしまうのは。併し大綱をきめてそれから編成にかかるのは、もう各省から要求額が出ておるのですから十二月の初旬までに見通しが付いて、それからあと細かい折衝はいろいろありましようけれども、大体の大綱というものは十二月の初旬までにでき上らなければ予算書が間に合わないのが常識ですから、そのくらいまでにはこちらの計画というものもきまるべきものだろうと思います。それから交渉に当つてどれくらいかかりますかこれはまあちよつと今から的確には言えませんが、そう長いことはかからないのじやないか。従つて大体の模様を言つてあとで違うと叱られますから言いたくないのですが、(「それはかまわないです」と呼ぶ者あり)年末なり年初なりというところぐらいじやないかと思つております。
  55. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それからもう一つ今の時期はMSA関係の問題を見てみますと、アメリカ側からするともう次年度の予算編成、つまり新らしいMSA援助を受ける予備交渉をしなければならん実は段階なんですね、そうだろうと思う。それでその辺のところをいわゆる経済援助とか何とか、これは初年度はすでにきまつておる分ではむずかしいとしてこの次の年度を受けたいというならば、その予備的の折衝を今からもうしておかなければならん段階だろうと思います。恐らく私が丁度去年今頃ワシントンに行つてつたがあの頃もうすでに各国から盛んにやられておつたように耳にしておる。日本側についてももう次の年度を今からいろいろとお話をされなくちや事実確保がむずかしい時期だろう、そういうようなことをすでにやつておられるわけですか。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いわゆる経済援助というのは非常にむずかしい問題ではありますが、今もうすでに、例えば我々のほうから言えば今年度からも欲しいんだという、先方は今年度は駄目だ、それなら来年度はというので話はしております。
  57. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それからもう一つ。これは少し今言つたのと性質が違うのですが、私は今後日本外交政策のやり方に非常に重要な問題として実は思つているのですが、どういうふうに表現したらいいか、つまりMSAにすぐ関連することですが、アメリカ軍がだんたん退いて日本側で防衛力を作りあげて行くということ、まあ大体そういう考え方でずつとMSAができておると思うのですが、その際これは外務大臣とアリソンとの第一回の会合のときも、アリソンはそういう趣旨のことを、あなたのほうでも言つておるし、これはむしろアメリカの既定の方針にもなつている、その際我々は非常に大事だと思うのは、それが大体大よそ今後何年くらい、例えばはつきり三年とか三年、一九五五、六年、或いはそれ以後、その辺の大体の期間的にそこをどうみるかということは非常に大事な点だろうと思います。それは単に防衛だけの関係でなく、日本の今後の全般の外交政策を考えて行くときも基本になる非常な大事なことだろうと思うのですが、そこで今まですでにいろいろこの問題を中心にして先方側と話合の際に、今の期間的の見通し、大体三年説とか、ざつと言えば大体一九五五、六年の頃、或いは五年だとかその辺のところについて特に重点をおいて情勢の判断とか、それから今後の問題をこういうふうに持つて行かなければならんとかいうふうなことについての日米双方の話合があつておることかと思うのですが、その期間の見通し、その辺どういうふうになつているものですか。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは実はなかなかいろいろな要素がありまして、我々もはつきりしたことは想像もつかないのですが、一つ朝鮮の休戦会談の動向も非常に影響するだろうと思います。それから大きな国際間の勢力関係ということもありましようけれども、日本自体の問題からいいましても奄美大島に次いで沖繩の返還という問題もありましようが、返還が仮に実現した場合も軍事的な施設や区域というものは沖縄においても残るだろうと思います。これは実現するかどうかもまだわかりませんが、そこで国内のそういうアメリカの駐留軍が退いた場合にも、時期的には幾分かずれて沖繩等には残るという可能性もなきにしもあらず、安保条約からいうと日本とその附近、何と申しますか周辺と申しますか附近と申しますか、必ずしも日本領土だけをカバーしていないので、日本領土といえば領土かも知れませんが、いわゆる本土だけをカバーしていないので、沖繩等の問題もありますから、そこが今の近代的な戦闘状況考えれば空軍、海軍が一番重要なものであります。地上部隊というものの役割は比較的減るわけであります。空軍、海軍ということになりますと仮に日本の本土からいなくなつた場合でも沖縄に相当の部隊がまだいるとすれば、安保条約に関する限りは或る程度の日本の安全に対して寄与はそこからも行われ得るものだと思います。従つて時期についてはなかなかむずかしいのであつて、私には今のところどうも何年説ということについてはちよつと申上げられませんし、又それは国内の警備計画と申しますか、防衛計画と申しますか、それも国内の予算その他の状況によりますからそのほうのことを見て行かなければならない。ちよつと時期的にはどうも何年というような漠然たることも私には言いにくいような気がします。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 実は丁度今杉原さんのお尋ねになつたことを、やはり杉原さんがお尋ねになつた目に私も参議院の本会議でお尋ねしたところが、緒方国務大臣が代つて答えられて、まああなたの質問は仮定の問題だから何年後にということは言えないと言われたのですが、今の杉原さんに対するお答えでよくわかる点もありますが、ただ私は不思議に思うことは、安保条約日本の行うべき軍事的義務ではないけれども、何と申しますか防衛をアメリカのほうが担当しておる、どつちが頼んだか知りませんが、担当しておる。そうするとそのアメリカ軍がやがては退かなければならん、その退いて行つた場合に、例えば半分退けば半分だけ、全部退けば全部だけ日本の保安隊なり名前は何としても防衛軍というものはできて来るわけです。それだから丁度それが丸々変つた場合にはそれは完全な戦力だと思うのですが、今のアメリカ日本におる駐留軍は完全な戦力です。誰が見ても戦力である。それが引ける程度に成長した軍というか保安隊は完全な戦力に違いないのです。だからこの間から衆議院でも参議院でも戦力の言葉の定義がいろいろ言われておりますが、言葉の定義なんかを私は詮索する興味はないのですが、実際問題で丸々引けば、日本におるアメリカの駐留軍が戦力ならそれに代つたのですから戦力にきまつている。そこまで行くように成長しなければアメリカも引かないと思うのです。頼んでおつてもらうという場合は別ですけれども、そういうことになつてくるとやはり今お話の杉原さんのおつしやる、例えば予定すべからざる期限かも知れないけれども、三年とか五年とかという政府に目安がないとこれはどうも何かいろいろなことを議会で論議しておつても誠に意味のないことであつて、我々の反対にもかかわらず実質的には成長して行くのですから、政府もそこに何かの目安を作るべきだと考えられるのですが、これは如何ですか。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはおつしやる点も実質的にはその通りだと思いますが、へ理窟をいいますと安全保障条約のあれは四条ですか、撤退するのはどういうときに撤退するかということがあるのですが、それにはそういう意味日本の戦力ができたから撤退するというふうにはなつていないので、主として国際情勢からみて「国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと」認めるときにこれを撤退する。こういうふうに書いてありまして、何かそういうわけにも行きますまいが、安全保障条約考え方は、日本の兵力ができて代れば引くのだということではなくて、東亜の平和が維持されて要らなくなつたら引くのだと、こういうことになつておりますから、理論的に必ずしも日本の戦力が完全になつたときに引くのだということにもならない場合もありますし、なる場合もあります。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 私質問じやないのですが、そういう意味大臣にお尋ねしたいのですが、先ほど私が申しましたのは極めて常識的に言つておる。これはもう先ほど曾根さん、杉原さんがおつしやつたように、これは朝鮮問題の今後の帰趨と不可分の関係がありますから、極東の平和が一応維持されれば、これは今の安保条約の規定にあつたところで、アメリカ軍の引揚ということは起るかも知れないけれども、極めて常識的にみて先ほど私が言つたようなことのほうが何か近いのではないか。そういう気がしたものですから伺つたのですが、人の御質問の最中ですから……。
  62. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私はよろしうございます。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 それではもう一つ注文を入れておきたいのですが、曾根さんの朝鮮問題に関する御質問があつて大臣からお答えがあつたのですが、これは放談になるのですけれども昨日あるところで討論会があつた。そうすると自由党の幹部の相当のお方が竹島問題を見よ、李ラインの問題を見よ、だから日本としては再軍備しなければならん、国力がないからこういうばかげた外交なんだから国力を持たねば適当の解決はできないというようなお話があつた。これは曾根さんの御質問に関連があるのですが、その結果私が考えることは、何か朝鮮の今のやりかたを見ておると裸になつてあお向けにひつくり返つて何か理窟を言つておるような、泣く子と地頭には勝てんとか言いますけれどもそんなような感じがするのですが、それを相手に本気になつて自由党の某代議士が言われたようなことをされては困りますが、国論としてはそういう方向に持つて行かなければならんが、勿論そういう場合に報復手段というものは取るべきではないが、必要な外交交渉を通じて問題の速かなる解決を図ることが必要ではないか。そうでないとどこへ行つても実力がないからこういうことが起るのではないかという、とんでもない議論が出て来ておる。だから私は先ほどのお答えを聞いておおむね賛成なんですが、そういう意味で必要な平和的外交を繰返されることを、これは質問じやありませんが希望としてお願いいたします。
  64. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 朝鮮の問題に関連して、二、三外務大臣にお伺いしたいのであります。その前に一つ、これは或いは外務大臣からお答えを望むことは無理かと思いますけれども、しばしば吉田総理がアメリカ及びヨーロツパ、インドを訪問をするということが縷々といいますか伝わつているわけであります。現在の世界情勢と日本の地位立場から見て外交上相当の意味があるのじやないかと私は感ぜられるのですけれども、果して近く実行されるのかどうか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは実は正直なこと申しますと、いろいろ伝えられておりますがきまつたことは一度もないので、例えばいつ行こうとしたけれども何かの事情で取りやめたとか延ばしたとかいうことはなくて、若し機会が許すならば行きたいがなかなかその機会はない。国内の情勢もはつきりしなければ、或いは総理大臣としては国内のことが重要なんで、災害対策なり予算編成いろいろありますので、そう皆放り出して外国へ行くというわけには行かんもんですから、まあうまく機会があれば非常に役に立つことであるから成るべく行くように考えてみたいが、今ではどちらともきめ得ないというのが実情であります。
  66. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 朝鮮の問題が今後日本外交の大きな中心課題であると私は思うのでありますが、朝鮮の今度の政治会議について最も関心と利害関係のあるのは私は世界中で日本であろうと思います。ところがその日本が構成のメンバーに仮にならないとしても適当な発言のチャンスがないということは非常に残念だと思う。こういう点については、私どうもアメリカの当局の東洋に対する認識、殊に朝鮮に対する認識、日本朝鮮との関係についての認識にどうも不十分の点がありはしないかという点を懸念するのであります。先ほど曾祢委員の御質問に対して外務大臣が前段に見解をお述べになつたんでありますが、私も非常に感銘を実は感ずるのであります。お伺いしたい点は、いつでしたか、朝鮮会談に関連して中立国の参加の問題が議題になつたときに、会談に引続いてか或いは適当の機会に、極東といいますか東亜の各種の問題について一つ政治会議を開くやのことが伝わつたのであります。その会議日本初めいわゆる交戦国以外も参加するのだというようなことが合せて伝えられたのであります。それについての何らかの情報なり、又大臣見解をお伺いしたいと思います。
  67. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは朝鮮政治会議というものがまとまりませんと、朝鮮の問題がまあ曲りなりにも解決することが非常にむずかしい。そこで政治会議について初めのうちは朝鮮以外の東亜の平和ということがなければ朝鮮の平和ということも確保できないということで、共産陣営朝鮮政治会議に広く議題をたくさん持つて来ていろいろな問題を討議するという意見のようであります。ところが国連軍側はそんなことをしていたらいつまでたつてもきりがないし解決のめどがないので、できるだけ朝鮮政治会談では問題を限局して本当の朝鮮自体の問題だけにいたそう。こういう主張になりまして、従つてその代りに東亜の問題の討議が必要であるとすれば別の機会においてやろう。こういう意見じやないかと思いますが、そこで只今はまだ朝鮮政治会議がもう九十日たつておりますのに、期日もいつやるということも、どこでやるということも、どういう構成員でやるということも話がまとまつていないような状況でありますので、先ず朝鮮政治会議の中味はともかくとして、形だけでもとにかく解決することができるように全力を尽しておりますが、そのほかの別の会議というようなことは、暫くたな上げと言うのはおかしいのですけれどもちよつとわきにどけられているような状況であります。そこで日本としましては朝鮮についての将来は非常に日本の安全或いは繁栄に影響のあることは当然でありますから、我々の気持もできるだけ反映させたいと思つておりますが、今申したような関係でできるだけ構成メンバーも限局して、世界中から利害関係のないような者が出て来てはかなわんというような気持もありますから、そこで日本がそういうところに入るということは今のところちよつと考えられません。又朝鮮の将来の問題については国民感情と言いますか、今まで朝鮮を併合しておつた日本が又出て来たということで、朝鮮自体の将来について論議することは日本としては理窟のあることとしましても、朝鮮国民から言うと何だか自分の運命を又日本が左右するような形になるというような、特に今まで併合していた惰性がありますので非常にその点は問題もあろうかと思うので、従つて別の会議で将来東亜の問題を討議するというようなことになれば、名実ともに日本が参加して大いにこれに寄与することは当然のことだと思いまするが、今の朝鮮の問題の非常に限局された政治会議としては、我々は適当な方法、これはいろいろありましようが、日本に関連のある部分について日本意見をできるだけ反映するように努力いたしたいと、こう思つております。
  68. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 日韓会談の問題についてお尋ねしますが、まあ政治会談がどういうふうになりますか、今お話のように前述にわかには見通しがつかない。併しながらその会談の結果と日韓会談というものは相当関連を持つて来ると思うのであります。李承晩ラインの問題は申すまでもなくできる限り早い機会解決をしなければならない問題と思いますけれども、その他の問題については早く解決ができれば結構でありますけれども、必ずしもその一日を争うわけのものでもあるまいと思う。殊に急ぐことによつて適正でない治まり方になれば、それは将来に災いを残すわけであります。朝鮮政治会談の結果を待つというわけではありませんけれども、それと見合つて日韓会談の今後の持つて行き方を考えるということも一つ考え方ではないかと思うのであります。日韓会談と政治会談との関連について大臣のお考えを承りたいと思います。
  69. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そういうお考え方も確かにあろうかと思いますが、日本としてはおつしやるように漁業問題を先ず急いで解決しなければならん。この主張でこの間日韓会談を再開しようと言つたときに漁業問題だけやろうじやないかと言つて話をしたのですが、先方ではほかの四つの問題と一緒でなければ困るということで、向うが強いて言うものをこちらが断ることもありませんし、又漁業というものについては、これはほかのものもそうですが、特殊の知識が要りますから、そのほかの問題を討議しているために、漁業の問題が人が足りなくて遅れるというようなことはなくてすみますので、一緒に話をすることに承知したのであります。今後もそういうことになるかどうか別として、なる場合に漁業だけ早く解決すればいいと、いいとは言いませんが漁業だけは是非早く解決したいという気持は我々強く持つておりますが、先方でほかの問題もやろうと言えば、これを強いて政治会議の見通しがつくまで待てということも余り角がつきますから、向うの要求があれば一緒にやつて、その代り漁業のほうが遅れないだけの人の手配その他準備はいたしますが、要するに先方の希望によりましては一緒にやつても差支えない、こう考えております。
  70. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 朝鮮にこちらの在外公館と言いますか、在外事務所を置く要求韓国に出されたように承知しておるのでありますが、もともと日本韓国の事務所を設けたときにこちらとしても私は設けるべきではなかつたかと思うのであります。その後事務所設置についての折衝をしているのかどうか、若し何らかの方法があればお知らせ願いたいと思います。
  71. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは御承知のことと思いますが、昨年平和条約が批准されたときに、各国から新らしい大使なり公使なり派遣されたわけで、そのとき朝鮮も代表部を日本に置きたいということでありましたから、相互主義で日本の代表部を向うに置くならば朝鮮の代表もこちらへ置いてよろしいということに承知して手紙を交換したわけです。従つてそのときから韓国側も日本の代表部を朝鮮に置くという原則については認めておつたわけです。ところが独立前から朝鮮の代表部というものは、スキヤツプと言いますか、連合軍最高司令官に対して派遣されて東京におりましたから、そういう相互主義で開くということになると、その今まであつた代表部が、すぐ今度は日本政府に対する代表部として開かれたわけであります。ところが日本のほうの代表部は開こうと思つて交渉いたしましたところが、勿論先方は戦争中でもありましたし、非常に多くの避難民が釜山にたくさん来ておる。政府も釜山にある。家も殆んどないし治安状態もよくないというような状況で、まだその当時、今も多少あるかも知れませんが日本人に対する反感もなきにしもあらず、そうかといつて保護をするにも手かまわりかねるという状況、これは実情つたと思います。そこでとにかくそれは原則はその通りだか、実際には日本の代表部を置くことは暫く待つてくれということことでありまして、私も実情はその通りだと思いましたから待つたわけであります。そうして今では釜山から政府は京城に移つております。京城本今移転早々で家もなく随分混乱はいたしておりましようが、釜山ほどには混んではいないだろうと思う。家も見つければないことはなかろうし、又仮に建てたところで建てられないことはなかろうと思いますが、そういうわけで休戦交渉ができましたときに、この日韓交渉とは関係なく、又漁業問題の前に、もうそろそろいいから代表部を日本は持ちたいのだということを申入れたのですが、まあ暫く待つてくれということで、そのうちに今度の問題になつて来た。そこで今度は今までのような普通の意味の代表部の設置も必要だけれども、日本の漁夫、漁船等がたくさん抑えられておるのだから、然らばその保護その他の方法も急に要るからというので、更に公文を出して至急代表部を設置したいということを申入れて、又代表部は京城ばかりでなくて釜山にも支部を置きたいということを申入れておりましたが、まあ日韓交渉もこんなふうになりましたものですからまだ向うから返事が参つておりません。催促をいたしておる最中でございます。
  72. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 日本に在留しておる朝鮮人の問題でありますが、六十万人を越える多数の朝鮮の人、北鮮系、南鮮系まああるわけです。これに対する日本の行政上のいろいろの施策というものは極めて重要だと私思うのであります。どうも何と言いますか所管の関係も極めて不明確で、どこでこの問題を主として取扱つているのかはつきりしないのであります。これも或いは外務大臣の或る程度の観点から所管されておるに違いないと思う。何とかこれを取りまとめたような一つ機関でこの問題に当つて行く必要がありはしないか。あまりに今のところは何と申しますかばらばらであつて、つかまえどころが行政的にないような感じがする。朝鮮の問題を今後いろいろ外交的に折衝をして行く上においても、在日朝鮮人の問題をいま少しく掘下げて処理して行くことが緊要じやないかということを痛感するのであります。それらについても大臣の御所見を伺いたい。
  73. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私もその点は御同感でありまして、実は日韓会談が成立して基本条約ができると、大体朝鮮人は外国人になりますけれども或る一定の期間は日本人同様に取扱う。つまり例えば外国じやできない鉱山を持つているとか何とかいうこと、それを一定期間を猶予して売るなりして処分させる。その間はやはり直ぐに取上げるというわけに行きませんから過渡的の取扱が必要になつて来る。又日本で罪を犯した朝鮮人等に対する送還の問題も出て来ます。それやこれやでいろいろの問題がありますが、日韓会談が成立しまするとその取扱がはつきりするわけですから、そのときは何かの過渡的にでも、普通なら外国人ですからその限り一般のどの外国人も同じように取扱えばいいのですから、特に朝鮮人に対する取扱機関というのは必要ないのですが、数が多いのとそれに特殊な取扱を必要としますから、何か特殊な機関が必要だと思つて、日韓会談をやりますときには国内の準備としてはそういうことも考えておりました。ところがのびのびになつおるのでまだそういうものを作つておりませんが、今でもその取扱がまちまちであることは事実であります。みんな悪い人ばかりではない、いい人もありますが中には悪い人もある。国内でも警察の取締などもとかく緩みがちな点もあるようであります。これらを一括して考えなければならん点もあろうかと思つております。従いまして、お考えのような点は同感でありますが、それをいつ作るか、又どういう方法で作るか、例えば各省の関係官が集つて一つの協議機関を作つてやるということもありますし、或いは特別の新らしい機関を作つてそこでやるという方法もありましようが、実はいろいろなものがまたがつておりまして、外務省との関係については勿論であります。法務省の入国管理局の関係もありますが、厚生省の生活保護の関係もありますし、それから警察の問題も随分あります。従いまして今のところは必要に応じまして関係者の係官に集まつてもらつていろいろ討議する、そういう非公式の機関はあるわけです。更にこれをもつと連絡を密にする必要はあるのじやないか、こう考えております。
  74. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ちよつと簡単に一言だけ伺いたいのですが、中共からの帰還の問題につきまして一通り一応済みましたので感謝の意を表したく、紅十字会の会長の李徳全女史を日本に御招待いたしたいというようなことを、日赤及び他の二団体の方々が考えているというようなことを聞いておりますが、これにつきまして外務当局としてはどういうようにお考えになつていらつしやいますか。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは実は私初めて伺うので今直ぐどうということも御返事できませんが、まあその何と言いますか、理屈から言えば帰還させるのは当り前だということになりましようけれども、併しいろいろ骨を折つてもらつたことも事実だろうと思います。実は政府としてその問題に対して責任をもつてやろうと思いましたが、政府は拒否されてしまつて相手にされなかつたわけであります。従つて政府としては若し何か日赤なりその他の団体が礼をしたいというならば礼をする方法はいろいろありましようが、こちらに呼ばれるとか何とかということになりますと、これはいろいろ考えてみなければならない問題があると思います。礼をする方法についてはまあ何か品物を送るとか何とかということもありましようし、そういうことについて別に異議はありません。今初めてそういうこちらに呼ぶとか何とかというお話を伺つたのでちよつと考え中で、今直ぐ御返事ができないわけであります。
  76. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに外務大臣に対して御質問はございませんか。
  77. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 MSAの関係で、大臣のおられるときでありますから、あれは大体一本になるのですか。或いは今後経済的援助等を考えて行くと又別箇の一つの協定の方式ができ上るのですか。その点を一つ伺いたいと思います。
  78. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私も余りはつきりした自信がないのですが、イギリスとかフランスとかいわゆる経済援助を受けている国は、初めはマーシヤル計画と言いますか、ECAと言いますか。経済的援助がありましてそれがMSAに入つてしまつた従つてその形から言えば一本のようになつているのです。一本のMSAの中に軍事援助とか経済援助とかある。ところが最近経済援助は、今までやつたものは別として今後はやらないということになつて来まして、主として軍事援助になつて来た。スペインの例を見ると、スペインはあとからやつたのでありますが、そのときは別に経済援助の協定を作つて援助を受けたようでありますが、或いは日本の場合もそういうふうに別の協定が要るのじやないかと思いますが、ほかの国は一本になつていますから一本でもできないことはないんじやないかと思つている。これは今後の交渉によると思いますが、どうも私の考えでは別な協定が必要なようにちよつと感じはいたしております。
  79. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 東南アジアに対するアメリカのMSA援助のまあ実施と言いますか、それに関連して日本が協力をする、片棒をかつぐと言いますか参画をするというような、そういう事柄が言われているわけであります。日本の東南アジア開発の問題、並びに賠償の問題に関連して相当意味合のあるごとと思うのでありますが、これまでの折衝の過程において何らか具体的にその協力の見通しがついておりますか、どうですか。その点をお伺いいたします。
  80. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカのいわゆるポイント・フオアと称するものは、私は行つて見ましても、まあ報告も受けておりますが、非常に進んでいるものではないのでありまして、東南アジアの気持から言うと恐らく余り外国資本をたくさん入れて又その外国勢力に圧迫されるというようなことは心配の点もあるんじやないかと思います。従つてそうえらくはなばなしくやつておるというところまでは行つておらないようでありますし、まあビルマなどは援助を断わつたりしておるような状況でありますが、今後いろいろな具体的な方法が講じられますれば、例えば日本の技術者を雇つてやるとか、日本からのプラントを注文してそれに充てるとかいうようなことはあり得ることであります。又開発した結果例えば鉄ができる、石炭ができる、油ができるという場合に、これも日本にとつて非常にインテレストがあることで去りますから、そういうものを日本に輸入するとかいうようなことで関連ができることもあろうかと思います。ただちよつと私どもよく聞かれるのですが、賠償の契約を結んで、その賠償というのは内容は例えば水力発電の開発とか何とかいうことで、日本は金がないから、それをポイント・フオアの今でやる、賠償の肩替りをポイント・フオアでしてもらうということはできないかどうか。向うとしては日本からの賠償は話合があれば日本からとるんだ、それはアメリカからとるというような形にはしないものだと考えておりますので、二つは別の形でありますが、いずれも日本に関連は勿論ある。殊に賠償が関連があるのは勿論ですが、ポイント・フオアのほうも関連は生ずると考えております。今までもそういう点では話をいたしておりますが、まだ具体的にこれがきまつたというものはございません。
  81. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 奄美群島復帰の問題ですが、昨日予算委員会で一体いつ頃復帰するんだということをお尋ねした際に、今政府は十二月一日を予定しておる、併しいろいろな準備上或いは少し遅れるかも知れないが、今年中には復帰させるというようなお答えだつたように思うのですが、ダレスが三カ月前に声明をしたときには、日本政府で引受の措置手続完了次第日本に復帰させるというような声明だつたように記憶するのですが、そうすると、だからそれを予定して今までは十月の一日であるとか或いは十一月の一日であるとかいうようなことでずうつとのびのびになつて来たんじやないかと思うのですが、そうだとすれば今までのびのびになつて来たのは、日本側が受入の態勢なり受入の手続準備ができないためにこういうふうに遅れて来ているのか。或いはそでうなくて向う側に何か特別な理由があつてこういうふうに遅れて来ているのか、その辺の経緯を詳しく御説明願いたい。
  82. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは実は今朝も地方行政委員会で説明を求められて同じことを申上げたのですが、ダレスさんが話をしてああいうことを言つた。そこで我々はすぐそれじや奄美群島というのはどれだけの範囲を指すものであるかということを話合つたところが、なかなかはつきりしないのであります。最後には結局旧鹿児島県に属する島は皆入るのだということになりましたが、これがはつきりするまでには、ちよつとはつきり覚えておりませんが一月以上かかつたと思います。それからその次には二、三の施設をアメリカ軍が持つているわけであります。この施設をそのままつまり行政協定でやると同じような形に残してもらいたいというので、これは我々は差支えないという二とを言つたのですが、その場合にでは拡張しようと今ま思えばいつでも拡張できると思つたから、特に拡張しなくてもいいと思つて拡張計画もしなかつたが、実はいよいよ奄美大島返還ということになれば、拡張計画の或る部分については拡張も承認してもらいたいというような話もありまして、これは本当に必要なことならば、それは結構な話だけれども、将来要るかも知らんというので今から返すについては拡張しておくというのはおもしろくないので、これらの点もいろいろ話合いましてこれにも大分時間がかかつた。そうしていよいよそういう問題も大体話合がついて、さらに今度引継の事項を打合せることになつた。引継の事項というのは私どもは素人で比較的簡単に考えておつたのですが、例えばあそこにある通貨をどういうふうに処分するか、今度日本一が入るわけですが、今までの通貨を全都それは無効とするわけに行きませんから、代えてやるとしてもいつの期間に代えてやるか、又それ以後持つている者は一体為替法違反になるのか、或いは無効にされるのか、没収されるのかというような問題も出て来ますし、その通貨で金を借りた者に対しては一体どういうことになるのか、或いは営農資金等をアメリカ側が前貸した場合には、それは一体あとで返さない場合には日本側が引受けるのか引受けないのか、細かいことを言うと滞納した者をどういうふうにするか、今まではアメリカの法律で滞納した、今度は日本の法律で滞納ということにならなければ、又取扱上どうするか、或いは沖縄にいる奄美大島の人で、今までは同じ一つの行政区画になつているが、今度は全然別個のものになるとすればその取扱はどうするか、殊にアメリカ側の法律だと子供が生まれると、属地主義といいますか、日本の子供でもアメリカで生まれれば二世になるように、アメリカの市民権を得る。ところが日本の法律だと属人主義的になるのですが、二重国籍みたいなことになるのではないか。失業した奄美大島の人間が沖縄で働いているのは一体今度外国人のような者が働いていることになるのか、今までと同様に沖縄も奄美大島も同じ管轄にあつたときと同じような取扱になるのか、というようないろいろな法律上、実際上の問題が、たくさん出て来ておるようであります。これを全部解決しなければ引継ぎができないというものじやありますまいけれども、或る程度のものははつきりしておかないというと、引継ぎできた、奄美大島は完全に復帰したと言つても、そこにいろいろな混乱が起る場合もありますので、いろいろな点をとに角駄目を押して、間違いのないようにして置く必要はあると思うのですが、そういう問題はこちらでも、いろいろ研究しなきやならん、向うでもいろいろ研究しなきやならん。又あらかじめ研究しておつても、いよいよ具体的にやつてみると、ああでもない、こうでもないということも起るものですから、時間がとれておる。それで遅れておるようなわけであります。
  83. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと、それらのいろいろな問題はもう一応殆んど解決をしたのですか。また今お挙げになつたようなことは、懸案の事項になつて、今後折衝を要するのかどうなのか。
  84. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 一部は見通しがついておりますし、一部はまだ今後折衝を要する部分があるのであります。
  85. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、更に未解決で、今後折衝を要するという点は、今お挙げになつたうちのどれでどれぐらいの間には解決するというようなお見込みなんですか。
  86. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それを、私のこれは目標であり、希望でありますから、又狂うと叱られますが、今はそれを十二月一日を目途としてやつておるわけであります。さつき十月一日とか、十一月一日とかいうお話もありましたが、それはいろいろそう考えた人もあり、早いほうがいいのですから、努力した人もありましようけれども、私がアメリカ側とはつきり話をして、日本の目標はこうだと言つたのは十月一日だけであります。ほかの日を言つたことはないのであります。
  87. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あとつている問題というのは……。
  88. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 十二月一日であります。
  89. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あとつている問題というのはどういう問題ですか。
  90. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あそこの通貨の問題、それから沖縄におる人々の待遇のこと、それから刑を受けた人の取扱いなどが、まあ主な点じやないかと思いますが、実質的には今度、向うは十一月に、十月以後の富農資金を出さんとか、市町村の税をどうするとか、実質的には随分問題があると思います。これは引継ぎ後においても解決できることでもあろうかと思います。必ずしもそれをすつかりやらなければ、引継ぎが引受けられないのだということでもないだろうと思います。
  91. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから以上の奄美大島の諸君がいろいろ御説明をするところによると、アメリカから従来出ていた財政支出ですが、平衡交付金に類するものであろうと思いますが、そういう財政支出はすでに十月だかで、九月ですか、で打切られていて、その支出は殆んど出て来ない。にもかかわらず、税のほうは今に至るまで徴収をしきりとかけられているというようなギヤツプもあつて、そういう点でも非常に困つているというような実情を訴えておるようでありますが、それらの点は政府ではどういうふうに御覧になつているか。
  92. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私もそういう点も聞いております。それ以外に営農資金のようなものとかもなかなか出ない。或いは銀行が金融をやつてくれない。そのために大島紬なんかの原料の仕人れも現金でやらなければならない。非常に困つた状態だということも聞いております。まあ銀行なんかの措置については、好意的に、向うが行政をやつている範囲では好意的にやつてもらうのですから、法律的にこうやれということはできますまいが、少くとも行政費なんかは向うが行政をやつている間は向うが出すのが当然だと思う。その点は十分交渉もしようと、今までもやつておりますが、更にやろうと思います。
  93. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その実情がどうなつているのか、その向うの人たちの非常に不十分な報告しか私たちは受けておりませんので、政府のほうではそれを正確に調査もしておられるだろうし、それに対しては、今言つたような、誠にこれはもの向うが持つておりながら、出さんというようなことは誠に以て言語道斯なんで、そういうことには具体的な手もつけられているだろうと思う。その辺の具体的実情はどうなつているのか、交渉の結果はどうなつているのか、もう少し具体的に御説明願いたい。
  94. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それも交渉して、要するに出すものは出すという交渉をいたしておるわけでありますが、まだ埓はあいてはいないようであります。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いつまでアメリカが出しているのですか、財政については。
  96. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 要するに私の考えでは、奄美大高が復帰する日までは先方が責任を持つてやるのは当然だとこう思つて交渉しております。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 現に出しているのはいつまで出していて、あといつからの分が懸案になつているか。或いは租税の、今言つたような取立てというようなことは、どういう実情になつているか。
  98. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは奄美大島につきましては、終戦以来離れておりましたから、日本のほうでは国内に、例えば平衡交付金の法律だとか、いろいろなものがあります。併し、奄美大島についてはそういうものは戦前のものしかないわけです。従つて、今出しておるのは、法律上の根拠でこういうものは出さなければならんから出しているというのじやなくして、アメリカの行政の便宜の上から、補助しなければならんものは補助しておるというような恰好になつておるようにどうも思える。従つて、こういう法律があるからお前はこれだけ出さなければいかんじやないかというのでないものですから、交渉は比較的むずかしいように思いますが、私も実は一々、何から何まで知つているわけじやなくて、大体のことしか実は知らないのであります。それぞれ係で、詳しい人がおりますので、そういう点をずつと交渉しておるというのが今の状態であります。
  99. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 政府は特別に人を派して、各省から人を派して特別な調査をこの間なさつたはずなんで、それらの調査の結果、今申上げた、特にその財政支出がいつまで出て、いつからそういう渋滞になつているのか、租税の徴収のほうだけがどういう面で非常にきつくやられているのか、それらを外務大臣は御存じやないかも知れません。それは無理もないと思いますが、担当のどなたかからもう少し詳しく御説明を願つて、その実情を御説明願いたい。
  100. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも私が聞いたところでは、例えば十月一日からぴたつとそういうものが止まつちやつたのじやなくして、或る所には出ており、或る所には出ないとか、出ても金が今までよりも少いとか、いろいろごたごたのようでりますが、今担当の者がおらないよりですから……。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 他の議会でも結構ですから、その点を少し詳しく御説明を願いたい。
  102. 曾禰益

    曾祢益君 ちよつとそれに関連して。これはまあ質問じやございませんが、お願いですが、恐らく今日地方行政委員会でお聞きになつたと思いますが、同僚の田畑議員、それから衆議院じや山下議員なんかも最近行つて来まして、いろいろ実情を詳しく聞いておりまして、要するに一つは早くやつてくれということです。つまり延び延びになつて、いつになるかわからないということが非常に不安でもあるし、又財政的措置、金融措置その他商業一般等に、非常な不安状態を醸しておることは御承知の通りなんですから、まあ、先ず急ぐということが第一だけれども、仮に十二月一日が非常に困難であるというなら、むしろ達成可能なこの実現の日をきめて、そして安心を与える、その間の繋ぎの状態には、まあ万遺憾なきを期するように、アメリカ当局を督励してもらう、これがもう結論としては要点だと思います。是非そういうふうにお願いしたい。
  103. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私もその点は同感で、そういうふうに思つておる。で、今度国会で予算が通りますと、とにかく十億という金が出ます。今までは実はその点で以て、金は出して必らず引継ぎを心配なくやるといつても、実際予算がなかつたものですから、ちよつと交渉にも弱つた点があるのですが、今度は金も国会が通れば出ますから、あれについては、この次補正の機会があれは、更に十億を考えておりますので、こういう裏付がありますし、法律もいよいよ出ますから、更に今度は強くはつきりした日取等もきめたいと思つております。
  104. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その繋ぎの措置は、今おつしやつたように、予算も二、三日中にはきまるでしようし、仮に予算がきまらなくても、災害対策その他には事前にいろいろな繋ぎの措置をとつているのですから、ああいうものに準じて、やはり日本側からの繋ぎの措置を遅滞なくやるような一つ御手配を願いたいと思います。さつきの話は、アメリカ側にそういうことを要求してもらうのみならず、国内の措置としても、それをやつて頂きたい。それからあそこはまだ占領中というか、どういう位置になつていたのか詳しいことを私よく知りませんが、例えばさつき曾祢君のお話もあつた朝鮮にある日本財産に対して、アメリカの占領軍が国際法に違反したような措置をやつていたというような問題が、あるのないのというお話がありますが、何か奄美大島の諸君から聞くと、これは国際法というものに違反しているかどうかは別問題として、非常にいろいろなむごい措置がたくさんなされていると思う。それらのものが若し国際法に違反している等等の場合には、そういう場合に損害賠償なり、補償なりというようなものを、アメリカその他に要求するというようなことは、お考えになつておるのか、それからそういうことができるのかどうか、その辺はどういうふうになつておりますか。
  105. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは理屈の上から言えば、当然できるわけであります。又或るものについては、実際上調べてみなければわかりませんが、やる場合もあろうかと考えております。が同時に我々の考えておりますことは、これは奄美大島は一つのテスト・ケースであつて、まだほかにも小笠原もあれば、沖縄もあり、いろいろな島があります。そこで奄美大島の引継ぎをできるだけ双方満足の行くように円滑にやりまして、後味を悪くしないということが、今後のほかの島の問題にも影響があるだろうと思います。その辺を考えて適当にやりたいと思つております。
  106. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 奄美大島の問題は大体それくらいにして、池田、ロバートソン会談の問題について二、三お尋ねしたいのですが、先ほどのお話によりますと、経済援助に関しては今年は駄目なんだ、併し来年度はどうだということを交渉中だというようなお話でしたが、初めMSAの援助を受けてもいいのじやないかというようなことをおきめになつたときには、経済援助その他のプラスの面もあるんだから、単に軍事援助じやないのだから、これを受けるという決意をしたのだというようなお話つたのですが、それに対して私はそうじやないのだ、MSAの性格からいつて軍事援助が主だし、殆んど軍事援助に限定されるような状態に現在ではもうなつているのじやないか、のみならず、今年度は予算その他がきまつてしまつているので、殆んど不可能だと思うが、それでもなお望みがあるかということを繰返し繰返し聞いたときに、いや必ずしも軍事援助に限定されるものではないであろうというようなことで御答弁になつたのです。その点は少くとも今年度に関する限りは、御答弁の希望なり、あれは通らなかつたというようなことは、はつきりして来た、こう了解していいのですか。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは言訳をするわけじやありませんが、MSAの問題を私が一番初め公式に国会で申上げたのは、先般の国会の冒頭に外交方針演説をしたときであります。そのときはまだMSAの交渉を始めておらないときですが、そのときの私の演説の中には、MSAが若し日本の防衛力増強に役立ち、且つ経済面に寄与するものであれば――こういうふうに言つておりまして、経済援助という字は使つておらないのであります。その後も経済面にプラスするものであるということは信じておりますが、経済援助という一種一つの提議があつて、MSAの中にあるのですが、それを受けられるかどうかということは、常に、私は何と言いますか、はつきりしないことを申しておるのです。ただ経済面にプラスになることは事実だ、こう言つているのであります。尤もそれは今度もいわゆるMSAの経済援助もほしいという交渉をいたしたのですから、それができなければ、交渉がうまく行かなかつたということになりますが、併し今年経済援助というものを受けることの困難さは我々も承知しておつた……。
  108. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 失礼な言い分ですが、非常に三百代言的な御見解で、ちよつとあのときのいろいろな質疑応答をもう一遍繰返して御覧願えば、もつとその辺ははつきりするのではないかと思いますが、そんな言葉尻のことを捉えて、いろいろ言つてみてもしようがありませんので、その問題は今日はやめておきますが、そうすると、今年度は駄目なことがはつきりしたのですが、来年度以降は見込があるのだというふうにお考えになるのかどうか。そうして我々がこの間発表された共同声明な読むと、厳密な意味における経済援助するものは何ら問題にも出ていないし、従つて約束もできていないようにしか読めないのですが、この共同声明文を通じてどういうふうに観察しておるのですか。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは共同声明の初めのほうにあります通り、今回の会談は相互の意見を交換するのが目的であつて、何ら協定等に到達するものでないということを言つておりますから、話合ができたとか、了解が成立したということは、ほかの問題についても実はないのであります。ただ或る種の問題については会議に臨んだ双方のものがやはり同じ意見つたということは出ておりますけれども、それは何もアメリカ日本との間に話合がついたとか何とかいう問題ではないのであります。いろいろな問題を検討しておつたようでありますし、又行つた人の顔ぶれからみましても、これは目的は違つても一緒に会議をしておつたのは、池田君以外に愛知大蔵政務次官、それから大蔵省に長くおりました宮沢参議院議員というような顔ぶれでありまして、経済問題には、一般問題以外にも、経済援助というようなことについては、勿論いろいろ意見の交換はいたしたことと考えております。
  110. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 別段の取極は結はなかつたことは今お話の通りですが、それが両方から意見を述べあつて一般的な了解に達したという個条は、以下のことしとして相当挙げてある。その中に今言つた経済援助の問題はどういうふうに了解しあつたのか。これらはどういうふうに読みとられているのか、或いはこれまで報告その他で外務大臣はどういうふうに判断されておられるか
  111. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはいろいろ報告もあり、私の考えでは、やはり今佐多君のおつしやつたように、今年はまあむずかしいとしても、来年度については交渉の余地十分あり、併しできない場合もありましようが、できる場合も勿論あるという程度のものじやないかと思います。
  112. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この共同声明の中には、その経済援助の問題が殆んど題目としてすら触れられていないのじやないかと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 恐らく了解せんというか、両方の意見が一致したところでないから、余りその中には現われて来ないのじやないかと思います。
  114. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと、まだ今後交渉の余地があるというだけで、少くとも今の段階においては了解はとられていないというふうに考えてよろしうございますか。
  115. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りだと思います。
  116. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと、これと相互安全保障法の第五百五十条の規定に基くいわゆる過剰物資の、過剰農産物の処置としての五十万ドルの問題、これはどういうふうに関係があるとお考えになりますか。
  117. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは別個の問題ですから、関連はないと思います。
  118. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、経済的な問題は、軍事援助以外の経済的な問題は、これが取上げているだけで、題目すら経済援助に関しては触れられていないというふうに了解しておいていいのですね。
  119. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはどうも、共同声明にそう書いてあれば、その通りです。
  120. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その辺、そういうほかのところは非常に詳しく了解したことが書いてあるのですが、了解を得られなかつたいきさつなり、事情はどういうことになつておりますか。
  121. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはどの程度に池田君が話をしたかを私はよく知らないのです。いずれそのうち帰つて来ましようから、そうしたらそのときよく聞いてから御報告いたします。
  122. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、MSA援助を受ける最も重要な、外務大臣その他がこれは受けなければならないのだということを力説されたのは、あの最初の交換公文の中にもはつきりしているように、何よりも経済援助を先ず、或いは経済援助による経済力の増強が必要なんだということを力説されていたと思うのですね。これがむしろ重点であり、主点であつたと思うのです。その参最も重要な問題が抜けている。それは一体どういう理由で、どういういきさつなんですか。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは、あの私とアリソン大使との手紙を御覧になれば、実はよくわかると思うのですが、一番私が力説しているは、あの中でしているのは経済援助を寄こせということじやないのです。一番重要視しておるのは、経済的の要素を無視した防衛力の増強ということはいけないのだということなんです。つまり経済状況を無視して防衛力ばかり増強すればいいというのじやないのだ、この点は一番よく言つておるのでありまして、それを経済援助かなければ、MSAは意味ないのだというのではなくして、我々はMSAの本来の目的は、ただ経済援助もありましようけれども、実際ほかの国でやつているのだつて、MSAの軍事的な援助に比べれば、非常に額の少いものです。で、軍事援助で防衛力を増強するというのは、これはMSAの本来の目的であるし、我々もそうとつて話をしている。ただその間に経済的に寄与するような、プラスする面が非常にたくさんあり得るということと、あの中には経済支持援助というものもあるのだから、その点も受けたいのだという考えを持つておる。
  124. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそのMSA援助が正確に言つて、軍事援助に殆んど限定的なもので、それ以外は殆んど言うに足りないのだ、問題にならないのじやないか、本質から言つて、ということを、今外務大臣は非常に力説しておられますが、そのことこそ、我々が最初に力説をして、だからこれを受けるか受けないかという問題のときには、よほどお考えを願わなければ困るのだということを言つたときには、いやそうじやなくして、経済援助なり或いは経済援助と言われなかつたというさつきのいろいろな言葉の弁解もありましたが、少くとも経済的にプラスになり経済力が大きくなるのだ、或いは日本の場合には経済力を増大することが何にもまして先決問題なのですし、その点も考慮してくれということは力説していられると思う。それで今になつてそうじやなかつたんだというようなことを言われると、どうも僕らが言つたことを今度は逆にあなたが一生懸命主張しておられるようなことになつて、どうも気分が非常にやりにくくなるのですが、その辺は交渉をしてみて、考え方を変えて行かれたのかどうか。
  125. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いや、私は正直なところ変えておりません。何遍も言う通り、今でもMSA援助を受けた結果が、域外買付けで経済的にプラスする面は非常に多いだろうと思つている。そうしてMSAに関する資料等は前以て我々も研究しておりましたから、予備交渉をしたかしないかという議論は随分ありましたが、研究は随分しておりましたから、予算も知つておれば、どういうふうにそれが分けられておるかということも知つておるんで、それを知りながら経済援助も欲しいのだと、そういうようなことを言うわけもないし、又我々としてはMSAの援助を受けるということは、これは防衛力の増強に役立つのだという意味で受けておる。それと同時に、間接的ではあるけれども、域外買付等で経済的にもプラスする面が非常に多い。こういうことを始終申上げておる。
  126. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、そういうことになりそうだつたから、あのときに正確なMSAの援助については、こういう条文になつており、こうなつておる。而もそれを正確に解説した、正確に説明をした外務省の事務当局の見解はこうなんだが、にもかかわらず、大臣が御答弁になるときは、政治的な粉飾をされて、さもそうでないものがたくさんあるように言われたが、それではMSAの本質を間違うのではないかということを、あのとき繰返し述べて議論をした点だと思うのですね。まあ併しそんなこと今から言つていてもしようがないので、まあそれだけはつきりお認めにならなければお認めにならなかつたで、それを前提にして話は進めなければならないのでして、それならば、今域外買付されて相当プラスになるのだから、又そういう方向に持つて行くのだというお話をしておられますが、これは事実、而も御説明によると、東南アジア等々に対するMSAの援助、それからの域外買付というようなものも、相当お考えになつているように我々は説明を聞いているのですが、東南アジアは、すでに大臣自身つて歩かれたんで、実情も御存じだと思う。私もその少し前に行つて、いろいろそういう意見も聞いて参りましたが、一体外務大臣がそういう方面からの域外買付というものは、具体的にはどういう種類のものを、どういう金額のものを、どこの国からあるというふうにお考えになつておりますかという点を、もつと具体的にして頂きたいと思います。と申しますのは、さつきもちよつと外務大臣お話もありましたが、私がインド或いはビルマ或いはインドネシア等々の諸君と話をしたときには、日本は、或いはアメリカもそのようだか、東南アジアにMSAの援助その他を与えて、その力によつて東南アジアを開発するとか、東南アジアの開発を手伝うのだというようなことを考えているようだが、これは真つ平御免なんだ、我々は今漸くイギリスからの或いはオランダからのそういう資本主義的な植民主義から脱却して来ようとしておる。ところがこれに対してそれに代るものとして、アメリカが出て来る場合も考えられるのだが、そういう場合に、あの地におけるナシヨナリズムというような傾向に会うために、それを抑えるというような形で日本の手を迂回して来るというような結果になりかねないので、こういう点については、もうまつぴら御免なんだということを力説をいたしておつたのです。これはアジア社会党会議に集つた諸君が特にそうですから、これは社会主義者の連中ですから当然でしようが、併しこの考え方は単に東南アジアでは社会主義者だけでなくして、むしろコングレスその他においても、或いはインドネシアの社会党以外の連中においても、ビルマは社会党政権ですから、それがそのまま政府意見にもなると思いますが、そういう気持でいたと思うのです。そうすると、残る問題は台湾とフイリピン、それからタイ或いはインドシナ、そういうところ、或いは朝鮮関係もあるでしようが、そういうところだけだと思うのですが、それらの諸国における域外買付というような問題を具体的にはどういうふうにお考えになつておるのか、外務大臣はそれらの現地においてどういうふうに見て来られたのか、そして又アメリカはそれをどういうふうに考えているのか、その辺の話合いはどういうふうになつているのか、そこいらをもう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  127. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはさつきの土管と水の流れになりますが、水の流れのほうでも実質的の問題になります。そしてこれは東南アジアに対する軍事援助としては十億何がしというものを予算に出しておつて、その中で日本の分もありましようが、相当部分は各国に行くわけであります。その中の一部が域外買付として日本に発注される可能性は十分あるわけですが、これもあらかじめ例えば今月、一年分の全部の計画を立てるというわけにも行きますまいから、漸次、域外買付というのは、その模様によつて初めから計画をやつてある部分と、そのときそれに注文が来る部分とがありましようが、まだ実質的の問題については、これからいろいろ話をしてみなければならない。
  128. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点で十億あると、それからそれじや今後そういう金は長期に亘つては、或いはここニ、三年の間にはどういうふうになるとお見通しになり、アメリカ側とは話合いになつておるのかという総括の問題が一つ。もう一つは、十億と言われますが、それがどういう国の配分になつておるのか、例えばその大部分はインドネシアに四億とか、五億とかが行くんじやないかと思いますが、それ以外にフイリピンに行き、或いは台湾に行き等々だろうと思いますが、少くともフイリピンや、殊に台湾あたりで、私が見て来た点から言えば、あそこに、台湾なんかにすら五百人くらいの技術援助団がやつて来て、いろいろな技術建設計画等々は全部アメリカのプランで計画をやつている。殆んど、従つてそのプランを承認する場合には、アメリカのどつかから買うということを条件付きのような形で許可をしているというような状況で、そんなに甘く域外買付がこちらへ来るというようなことは考えられないのじやないか。実際上考えられないのじやないか。問題はインドネシアの武器、その他の問題でしようが、これとても例えば朝鮮動乱のときみたいに非常に急ぐようなときには、或いは若干日本からも買うというような問題もあるかも知れませんが、今後それほど急を要するというような問題でもないようだし、殊に特殊な通信器等々の問題になれば、ここでもいつでもよく問題になるコマーシャル・ベースによるというようなことを言つているとすれば、なかなかそう政府が宣伝しておられるようなプラスも考えられないのじやないか。その辺を一体どう具体的に、もつとどういうふうにちやんと目途を置いて、そういうことを言われるのか、その辺をもう少し詳しく御説明願いたい。
  129. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 非常に佐多君は悲観的に考えておられますが、私はそんなに悲観的に、何も駄目だ、彼にも駄目だと言われる必要もないと思います。これは将来やはり我々も努力して、できるだけそういう注文を日本のほうに持つて来るようにいたさなければならないわけであつてアメリカ側の援助というものは、要するにアメリカ側でどういうふうにするかということが決定すれば、例えば完成兵器をアメリカ国内から持つて来るか、どこの国に注文してやるかということは、アメリカ側できめる問題です。相手国は完成兵器をもらう立場にあるわけです。それをでき石だけ日本側の注文を取ろうというわけでありますが、例えば日本の軍需工業の状況から言うと、仰つしやるように、えらい、そうたくさん来ても、工場の施設が間に合わないで、そんなに注文が受け切れないという実情にあるわけです。工場が精一ぱいに受け切れるくらいの注文は来るものと私は信じております。
  130. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、完成兵器に関して域外買付か来るというようなお見込なんですか。
  131. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 元来MSAの援助は、完成兵器を引渡すということが目的ですから、勿論その大部分のものは完成兵器の注文であろうと、こう思つております。
  132. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その域外買付は日本に対する援助からも、日本だけでなく、今のインドシナその他でも完成兵器の形で大部分来るというふうにお考えですか。
  133. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そう考えております。
  134. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この共同声明の中には、少くとも日本に対する援助は、「これに対し米国は米国議会の承認を条件として日本の陸海空の部隊の装備に要する主要品目を提供しその編成を援助すべきことを米国側会議出席者は申出た」ということになつて、軍事援助は殆んど向うの完成兵器、日本に関する限りは向うの完成兵器というふうにしかとれないのですが、その点はどういうふうになりましようか。
  135. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 提供するというのは、何もアメリカだけで作つて渡すということでなくて、アメリカ側の金でどこからか買つて来て、それを買つて来るのは東亜では日本しかありませんが、日本の国内に発注してアメリカの金で買つてそれを提供しても、それはアメリカから提供することになる。それはアメリカから作つて渡すということだけを意味してはおりません。
  136. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは完成兵器での形でなくて、ドルで来る余地を相当考えておるのだということですか。
  137. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そうではありません。アメリカが国内の事業家に発注をして、従つて政府にはドルが入りましようが、保安隊なり警備隊なりが受取るものは完成兵器です。
  138. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 併し今アメリカ側が日本に軍事援助をする場合は、特に装備その他についてやる場合には、日本でできないような、日本の軍を近代化するというか、そういう新らしい武器、装備によつて近代化するというような形での援助を考えておるのじやないですか。そうだとすると、日本から供給し得る余地は殆んどないのじやないかと思いますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  139. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それでもあるのです。とにかく全部アメリカから来ても保安隊の増強になりますが、併しそう悲観的に御覧になる必要はないので、日本にも注文は来ます。
  140. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはもつと問題が具体的になつてからもう少しお尋ねしますが、それではもう一つさつきお話なつた点ですが、アメリカ軍が撤退する、或いは米国側の負担を制限するというようなことを日本考えなければならないので、それに対応して防衛力を増強するのだという御説明が、昨日あたりは予算委員会ではしきりになされていたのですが、ところが今外務大臣の御説明によると、仮にアメリカ軍が撤退しても、必ずしもそれを補充するという意味で必然的に防衛力の増強という問題が出て来るという筋合じやないのだ、或いはアメリカ軍の、何と言いますか、極東の平和気運その他で、日本がそういう脅威がないというようなことになれば、アメリカ軍も撤退をするし、従つてその場合にはそれを補充するというような意味での日本の防衛力の増強なんというものは必要ないのだという結論にもなると思うのですが、それならば、外務大臣はそういう方向への極東の平和情勢をもつと具体的に作り上げる意味でのいろいろな具体的な措置なり努力はやつておられるのかどうか。MSAの援助その他をもらうことには、非常に一生懸命に努力をしておられると思いますが、併し平和を保持するとか、日本の安全を維持するということは、その一本の通じやなくて、さつきおつしやつたように別な道がある。それも少くともMSAの援助に努力されるのと並行して、或いは私たちに言わせれば、むしろそつちでなくして、後者の方向を積極的に推進をしなければならんというふうに考えているのですが、そつちの方面努力はどういうふうに具体的にはなされているんですか。
  141. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは第一番になすべきことは国連加入だと思つております。で、このほうは大いにやつておりまして、安全保障理事会においても、殆んど全部といつていいくらいに賛成されたんですが、ソ連の拒否権によつて入れなかつた従つてまあ仮加入というか或いは準加入というか、そういう問題も起つておりますが、先ず同時に、日本としては国連憲章にできるだけ副つて行動するということを、国連加入の前から政策の根幹としてやつております。これは一番重要なことだと思つております。
  142. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その国連加入の問題は今もお話なつたように、ソ連の拒否権その他の問題があり、ソ連の拒否権その他の発動ということから、いろいろな外交交渉なり折衝が更に進められなければならないと思いますが、そうすると、ソ連との国交調整の問題、或いはもう一つ中国との国交調整の問題等々が具体的に手を打たれなければならない問題として登場して来るんじやないかと思いますが、その点についてはどういうふうにお考えになるのですか。
  143. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これもいろいろ御意見はありましよう。私も原則として他の国との平和関係を設定することに異存があるわけはないんです。ないんですが、今の冷い戦争といわれるような状況がまだ不幸にして続いておる現在、いずれの陣営にも事よかれしとやるという手もありましようが、場合によつたら、それは二兎を追つて一兎をも得ずというようなことになるかも知れません。私は少くとも私個人考えとしては、民主主義義をモットーとする日本の国是からいつても、自由主義諸国との提携を最も緊密化して行く、これによつて世界平和にも寄与する、こういう方針で行つております。
  144. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今のところは中共との国交調整その他の問題は殆んど考えないということですか。
  145. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 民主主義諸国の中にも中共と国交を開いておる国もあります。ありますが、我々としましては現に国民政府との間に条約関係を結んでおる。これは先ほど曾祢君に言いましたように、いい悪いは別としまして、中共の問題は、普通の何も条約関係のない国に条約を結ぶということよりも、更に一段の困難があることは事実だと思います。
  146. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 国民政府の話をお出しになりましたが、併し国民政府とのあの条約ができるときには、そういう制約にはならんのだ、国民政府の問題と大陸中国の問題とは別に切離して考えられるのだというような御審弁だつたと記憶するのですが、そのときの答弁はもう反古になつて、やはりあの場合に結んだときにはそういうものが障害になることも考えながら、而もなお且つそれをあえてやつたのだし、従つて今それが障害になつているのだから、こつちの打開の点は考えられないのだ、又考えるべきでもないのだというふうなお気持なんですか。
  147. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは御意見の相違になりますから、幾ら議論しても結論が出ませんが、我々の気持としては、勿論実際上今力を及ぼしていない地域に対してまで、国民政府の権利を認めるということは、実際上これはできないわけであります。従つてあの条約においては、国民政府が現に力を及ぼしているところ、又は将来力を及ぼすところということに限つておるわけです。併し、同時に国民政府国際連合にもとにかく加入して、代表者を出しているというのが実情であります。この実情は私は無視することはできないと思います。
  148. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これ以上は議論になるようですし、時間も相当たちましたので、一応これで私は質問を打切ります。
  149. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私質問ではなく、私の外務大臣に対する率直な希望一つ申上げておきたいと思うのです。私らがここで特に外務大臣からお聞きしたいといつも思つておることは、国際政治とか或いは国際経済とか、特に日本がそれと離れて行き得ないわけですが、そういうものに対して外務大臣はどういうふうな情勢判断をして、そうしてそれに即応してどういう方策をとらんとしておられるかということが中心なんです。その角度からいろいろ個々の問題も質問しているわけなんです。そこで今日実は私非常に失望したのですが、私質問の最後において、大体時間的にみて、例のアメリカの駐留軍の地上部隊の大体の撤退時期、或いはそれに関連しての日本の防衛体制の増強計画というような、これらに対して大体の時期的の目標というか、これが当然なくちやならんことだと思います。これがなくちや政策には私はならんと思う。これは併しいろいろなことを総合してみてこれはひとり防衛力の問題だけでなく、内外政策のいろいろ複雑なものが、そこに総合されて来ることと関連を持つて来るのだ。それだけに大よその時期的の目標というものがそこに予想されていなければ、これは私は政策の名に値いする政策にならんと思う。ところが特にその点を私お尋ねしたのですけれども、今まで日米間の話合いでも、その点が特に重点となつて話合いがされているような模様もないし、何もその点は私は聞くことができなかつた。併しどうかそういう点について、例えば何年とかいうことでなく、私は一つの観測は持つておりますけれども、何も私が考えておるからどうという意味じやないのですが、一つその辺のところをもう少し、恐らく僕は政府でもいろいろ考えておられると思うが、そういう点は非常に大事なことなんだから、一ついろいろ研究しておられるところ、考えておられるところなどは、率直にこういう委員会でも話されてゆかれることが、本当の外交なり或いは政治、政策をやつてゆく上からして必要なことだと思うのです。この点だけを私自分の率直な気持を、大変失礼ですが、外務大臣に申上げておきたいと思います。
  150. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやそのお話はよくわかるのです。わかるのですが、私の考えでは、今単純に、例えばアメリカの駐留軍が撤退してその穴を埋めればそれで済むというような議論もありまするし、又そうすれば戦力になるとかならんとかいう議論もありますけれども、実はアメリカの駐留軍がここにおるのは、相当のこれは武力は持つておりまするが、併し何といつても、この背後にアメリカという国が、大きな武力を持つたものがあるので、そのいわば前衛隊といいますか、トークンみたいなものがここにあるので、そのアメリカの武力がこれだけあれば、日本への侵略は必ず防ぎ得るのだということよりも、安保条約がある現在において、そうしてアメリカの駐留軍がある現在において、日本を侵略して来るということは、アメリカに対して戦争を挑むことであるという意味のことが、ダレスさんのいわゆるデイタレント・パワーになつて日本の安全を非常に守つておるのだと私は思つておる。従いましてアメリカの駐留軍が、ここにどれだけあつて、それの穴埋めを日本ができて、駐留軍がみな撤退してしまう、そこで安保条約が解除されて、日本かどれだけ完全に守れるかということになりますと、それはいろんなその時の政治情勢にもよりましようが、考慮すべき点が多々あると思うのです。従いまして仮にアメリカの駐留軍を目標として、これだけの部隊をいつまでに作るか、いつまでにできるかという予想は、無理にすればできないこともないかも知れませんが、私はこのデイタレント・パワーという点を考えますと、なかなかそれだけの問題でないと思うのです。従つてそれがなければ政策にならんとおつしやるが、併し政策としましても、今の政府が正直にいつて、これから十年計画を立てて、十年の間にこういうふうに武力を増強してゆくのだといつたところで、政府は何遍、どういう違う政府ができるかも知れませんし、これはなかなか実際上いえないことじやないかと思うのです。従つて折角のお話でありますが、今のところそういうことはなかなかいえないような実情にあると考えておるわけであります。
  151. 曾禰益

    曾祢益君 こういう論議は相当、今杉原君から言われたように、かなり徹底して、そうして胸襟を開いてやらないと、とかく中途半端な議論になりがちでいかんと思うのです。例えば今あなたはちよつと防衛問題の一部の基本の問題に触れられたけれども、成るほど確かにこの日本におけるアメリカ軍というものは、一つのいわば見せ金的な作用がかなり多くて、その背後のアメリカ全体の力、軍事力及びこれを外交に現わして、安全保障条約とか、そのよき悪しきは別として、そういうものに乗つておるのだ。これは確かに一つの戦略的な見方だと思うのです。ただそういう議論だけでやると、それじやそのデイタレント・パワーというものがアメリカにあるのなら、日本は完全に真空であつてもいいのだと、こういう論者もあるわけです。そうかといつてあなたが心配しておられるのは、はつきりは言われなかつたけれども、さりとて日本におるアメリカ部隊というものを完全に追つ払つて、そうしてアメリカのデイタレント・パワーというものを利用しないで、丁度日本における現在のアメリカ軍総合兵力に相当するものを仮に日本が持つたとして、それだけでいわゆる自衛中立だ、そういうものだけで果してゆけるかどうかということも、自信を持てない議論ではなかろうかと思うのです。だからこれは実に重要な問題なんです。だからそれに関連して、これは杉原委員の言われた趣旨とは違うかも知れませんけれども、撤退、それから今日本政府考えておるいわゆるなし崩し再軍備、そこでその防衛の基本方針は何か、実はこれは外務大臣だけにお願いしたつてしようがないのだけれども、一体政府はどういう基本方針を立てておられるか、昨日も私は予算委員会で時間がなかつたからできなかつたけれども総理はアメリカから仰せつかつてやるのじやない、大いに自主性のある防衛方針を立てられると、一応そのままに簡単に議論は済む。いずくんぞ知らん、そのいわゆる日本の防衛というものは、或る種の日本のつまりアメリカのデイタレント・パワーというものの一つのコンビネーシヨンの上に立つているのじやないか、これはいい悪いはその議論は人によつて違いますけれども、そういつた相互的な防衛問題に関連して、勿論軍事力だけではいけませんが、外交もなければいけない、そういう防衛の問題についても、政府は一体何を考えて、どういう基本計画で行くのか、成るべく論争には触れまいとして行くのじやなく、日本基本方針はこうだということを示して、外務委員会等でやはりそれを示して頂くのが本当ではないかと、私もそういう気持が充満しているから、その上に立つた議論をしなければ、全く国民に対して、もうまるで三百代言のやり取りみたいな議論をしていたのでは済まないと思う。そういう点は十分にお考え願いたいということを最後に希望を申上げておきます。
  152. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では外務大臣がこの委員会に来られてから丁度三時間になりますから、随分今日は大臣の勉強されましたように、皆様がたも御勉強になつたことを感謝いたします。それで総括質問と申しまするか、国際情勢に関する総括質問は大体これで尽きたように思いますので、外務大臣にはこれで帰つて頂いてもいいかと思います。但し我々の委員会に付せられておりまする案件、つまり国際連合の軍隊に対しまする刑事裁判権の問題に関しての議定書問題がまだ残つておるわけです。これはこの会期中に勿論上げなければならない問題だと思うのでありますが、これに関しましても外務大臣に対する御質問はすでに昨日で終了したものと私は心得えております。本日は若しできるならばこの議定書関係での詳細の質問を事務当局に対して本日は質問して頂こうかと思つたのでありますけれども、もう時間が随分たつてしまいましたので、本日はこれで散会いたしまして、明朝十時から再びお集りを願つて、今度はその議定書に関する質問外務大臣に対する質問でなくして、事務当局に対する詳細な質問がまだおありになるならば、質問をして頂いて、そうして引続いて質問が終つたときに採決をして頂くと、こういうことにいたしたいと思います。そういうことで本日はこれで散会……。
  153. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 明日でも明後日でもいいのですが、駐留軍に従事している労務者の人員整理の問題が非常に重要な問題になつておりますので、これを、一つ調達庁長官あたりの専管かと思いますが、長官にでも御出席願つてこれらの点について質疑をお願いしたいと思います。
  154. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 明朝の委員会ですか。
  155. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 明日でも明後日でも……。
  156. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 明後日ではとてもやつておる暇はないと思いますが……。
  157. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは明日……。
  158. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは明日これを先に審議して頂いて、そのあとで今のレートの問題の質疑ができるように調達庁長官を……。
  159. 曾禰益

    曾祢益君 外務省も来てもらわなければいけません。外務省と調達庁とそれから労働省……。
  160. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 労働省……。それではそういうことに取計います。どうも有難うございました。  それでは外務委員会はこれで散会いたします。    午後七時十九分散会