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鈴木参考人 全電通の
鈴木でございます。私はただいま議題とな
つております
公共企業体等労働関係法第十六条第二項の基定に基き、
国会の
議決を求めるの案件は、公労法適用百万
組合員の生活権を奪うものであり、さらに
政府みずからが法の尊厳を蹂躪するものであり、まことに一方的な、しかも反動的な案件であると考えておる次第でございます。われわれを初め日本の労働者は、あげてこの案件に対して反対し、しかも重大なる関心を寄せておる本案件の
審議にあたり、本
連合審査会が労働者側の
意見をお聞きくださる機会をお与えいただきましたことを、私は心より敬意と感謝をささげるものでございます。
私はこの機会に、
日本電信電話公社所属職員の件につきまして、十五万
組合員の総意を代表して
意見を申し述べ、賢明なる
委員各位の御理解と御賛同を得て、
仲裁裁定が完全に
実施できる御措置を決定していただくことを切にお願い申し上げたいと存じます。
さて、
仲裁裁定が提示されるまでの経緯につきましては、すでにお手元にも案件が配付されておると思いますので、十分御了承のことと存じますので、詳細の点につきましては申し上げませんが、私
ども全電通は本年三月二十日に、
日本電信電話公社職員の
昭和二十八年四月以降の
基準賃金といたしまして、平均月額一万八千五百三十二円、満十八歳男子最低保障月額八千円を主たる内容といたしまする
要求書を公社当局に提出いたしました。爾来
団体交渉を重ね、
団体交渉が決裂して中央
調停委員会へ提訴し、さらにその
調停案を不満として
仲裁委員会へ提訴し、八箇月間の長きにわたりまして、公労法の精神を守り、
要求の平和的解決のためにあらゆる努力を尽して参つたのであります。ところが十月十三日、最終的に
仲裁委員会より、
裁定第十五号といたしまして、御承知の
通り仲裁裁定が提示されたのでございます。この
裁定は二箇月有余にわたりまして
今井委員長以下
関係各位が熱心に、しかも真剣に
労使双方の
意見をお聞きになり、慎重御
審議の結果
裁定されたものだと私
どもは了承しております。われわれはこの
裁定が、当初われわれが
要求いたしました戦前
賃金復活を含む一万八千五百三十二円ベースとはほど遠いものであり、もちろん不満なものではありますが、しかしながら、私
ども全電通は、公労法の精神を尊重いたしまして、
仲裁委員会の労苦を大いに多とし、いさぎよくこの
裁定に服従する
態度を決定いたしました。それからわれわれはこれが完全
実施のための闘いを進めておるわけでございますが、法治国家の労働運動として、私たちのとつた
態度は、正しいと確認しておる次第でございます。私
どもは今日この
裁定実施のためにあらゆる努力を尽して、強力に闘いを進めておる次第でございます。われわれは
仲裁裁定が提示されまして以来、公社並びに
政府に対し、
数次にわた
つて交渉を持ち、これが実現のために努力をお願いいたした次第でございますが、特に公社当局との
交渉の中で明確になりましたことは、公社当局としても、この
裁定については慎重検討を加えて参りましたが、
結論としては
仲裁裁定に服従するということをきめ、すでに二十八
年度の補正
予算として
裁定に基く額を盛り込みまして、その
実施方の承認を
政府に求めておることは、われわれもこれを確認しておる次第でございます。しかるに
政府は、今次
国会に単に
予算上の
理由をも
つて、公労法第十六条第二項を悪用して不承認の
議決を求めるの挙に出たのでありまして、まことに私
どもとしては憤懣にたえない次第でございます。
以上の経緯からいたしましてここで私が皆様方に申し上げたい第一点は先ほど国鉄の横山
書記長からも申されておりましたが、仲裁制度というものと、その
裁定の権威というものについてでございます。われわれは国の電気通信事業に従事しておるということのゆえをも
つて、憲法に保障されたストライキ権を剥奪されておるのであります。これはもちろん、われわれとしては断じて納得のできないところであります。しかし歴史の中でこの公労法というものがつくられ、しかもこの
仲裁委員会というものが設置されたことは、ストライキ権を奪われたわれわれに対して、スト権にかわるべきものとして
労使間の
紛争に対し最終的
裁定を行い、
当事者が
裁定に服従する、こういうことを大原則としてつくられたのが公労法であり、これは明らかに公労法第三十五条の大精神であるというふうに考えておる次第でございます。
従つて公労法の中の第十六条第二項というものは、私
どもに言わせるならばまことに矛盾した
規定でありまして、これは先ほど申し上げた公労法の精神を否定するような悪条文であるというふうに私
どもは考えております。今日この条文は各方面からその矛盾が指摘されておることは、すでに皆様も御承知の
通りでございます。しかも
政府は、十六条第二項の条項をうまく利用せられて、口には
仲裁裁定を尊重する、こういうことを言
つておりますが、今日提案されております案件を見ましても、何ら公社の経理状況、あるいは経営状況というものについては触れることなく、単に
予算上できないということを
理由にして、すなわち第三十五条のこの公労法の根本精神まで蹂躪して、十六条第二項にウエートを置いて
裁定実施ができないのだということで否定しておるのでございます。このような
政府の
態度は、明らかに公労法を蹂躪するものでありまして、われわれの断じて許すことのできないところであります。ここに公労法適用下の百万
組合員と日本の全労働者が法の権威を尊重し、国の秩序を維持するためにも、断固として
政府に反省を求め、
仲裁裁定完全
実施のため組織の全力をあげて闘わなければならない
理由があるのであります。大体法を守
つているのはだれかということを私
どもは率直に考えなければなりませんが、以上申し上げた観点から申しまして、われわれは明らかに公労法を守
つておる。ところが、この公労法の精神を破
つておるのは
政府ではないかということを、私
どもは考えざるを得ないのでございます。
先般東京におきましてILOのアジア地域
会議が開催されましたが、その際私は、日本の労働者代表顧問として出席する機会を得ました。その際ビルマの労働者代表の
方々ともお話をいたしましたが、ビルマにもやはりこういう仲裁制度的なものはあるそうでございます。しかもビルマの公務員には、ストライキ権というものが許されておるそうでございます。やはりこの仲裁制度というものは十分に活用されておりまして、いろいろな
労使の
紛争がありましても、一旦この機関にかか
つて出された
裁定については、
労使が完全に服従しているということで問題が解決されておりますので、まだストライキを一回もやつたことがないということを私は聞きましたが、実際に日本の
仲裁裁定制度というものも、かようになければならないと思うのでありまして、私は他山の石ではないかというように考えておる次第でございます。
どうかこういつた基本的な公労法の精神を生かすために、
国会における皆様方の御努力をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。そしてわれわれ公労法適用の
組合が、この
仲裁裁定制度について今や信頼を失わんとしておる次第でございますが、そういつた法の適用を誤まる
政府に対しては、その非を是正していただきまして、どうかわれわれが今後とも正常なる労働
組合運動を続けるためにも、この仲裁制度について日本の労働者が信頼の置けるような制度にしていただくことを、特にお願いを申し上げる次第でございます。
次に、第二番目に申し上げたいことは、公社の経営状況といいますか、経理状況についてでございます。この点につきましては、
裁定の
理由書の中にもうたわれておりますが、
昭和二十七
年度の公社決算書をごらんにな
つてもおわかりになりますように、当初
予算に対しまして百億円の増収をあげております。いろいろ支出もございますが、そういつたものを差引きましても利益金が四十三億円あるのでございます。これは私
ども全電通の労働運動の中で、現在国民の各層から御批判をいただいております電気通信事業の再建については、労働
組合か率先して再建闘争に今日まで努力して来た次第でございます。昨
年度の事業計画の中で加入電話の増設あるいは市外回線の増設等の事柄を見ていただいてもおわかりのように、加入電話の当初予定された増設分は十二万九千でございましたが、実際には十八万二千箇、市外回線の増設予定九万キロに対しまして十二万四千キロ、こういうふうにそれぞれ私
どもは実績を収めておる次第でございます。また工事の問題につきましても、われわれはなるべく早くこの工事を完成して皆様方の御要望に沿うために、いわば突貫工事的な形態で工事を進めまして、この完成を早め、全力を尽してわれわれは事業の再建とサービスの向上のために努力して参つたわけでございます。こういつた全電通の再建闘争の成果というものが、私は直接事業の収益の面に現われて来ているということを、特にこの際申し上げておきたいのでございます。もちろん経営者諸君の努力のあつたこともここで申し上げたいわけでございますが、こういつた中で、少くも四十三億というものが利益金として残
つておる、このことは明らかであります。ただ昨年八月公社に移行いたしまして、その際公社移行に伴う政令によ
つて、そのうち約十九億が固定資産の中に繰入れられております。
従つてそれを差引きまして、現在二十四億というものが純利益金として積み立てられておるということを、ひとつはつきり申し上げておきたいと存じます。さらに本年に入れまして、第一・四半期分の決算もできたようでありますが、大体十八億円
程度の利益金を出しております。すでに電話も東京—名古屋、東京—大阪、この間につきましては即時通話ができるようにな
つております。今後私
ども全電通が先ほど申し上げました再建闘争というものをさらに強力に推し進めて参りますならば、私
ども今
年度においても五十億
程度の利益金の増収をあげ得られるということは、ほぼ確信が持てるわけでございます。
従つて、
裁定に必要な電通の
予算は、資金的に二十五億五千万円でございますが、こういつた二十五億五千万円は、今申し上げた勘定から行きましても、実際にできるということを申し上げる次第でございます。
この点につきましては、公社側としては、前
国会いろいろ御
審議いただきました例の料金
改訂の問題でございますが、二割五分が二割に修正されました。
従つて建設資金の不足が約二十五億あるわけでございまして、現在電電公社の特別会計は、収入支出が非常に片ちんばでございます。いわゆる二十五億の収入減で、実際には二十五億を入れた形の五箇年計画が
実施されるということにな
つておりますので、この点公社当局は、まだ
国会でその見通しがつかないということで、非常に危険視しておるわけでございますが、この点が
一つ。さらに水害がございまして私
どもの事業も約十四億五千万円
程度の損害を受けております。
従つてこれの復旧に要する費用も、こういつたものの中から公社当局は出して参りたいということを考えております。公社の問題については、われわれはもちろん、私
どもがあげた収入の中でやることはけつこうでございます。しかし、少くとも二十五億の前
国会からの懸案の問題につきましては、前
国会におきましても、
議決事項といたしましても、この補正はするということにな
つておりますので、どうか次の
国会におきましては、第二次補正としてこういつた二十五億の補填もお願いして、事業の五箇年計画が完全に
実施できますように、特にお願いを申し上げておく次第でございます。
第三点として申し上げたいのは、われわれの公社の定員問題でございます。御承知の
通り電気通信事業というのは、一日々々拡充強化をされて参
つておりますので、その面からいたしましても、当然事業の拡充に伴う定員増ということが考えられるわけでございますが、このことがどうも公社のやり方を見ておりますと、姑息的な手段を使
つておるようでありまして、現に十三台の交換台を十八人の交換手が二十四時間運行——オペレーシヨンしておるというような状態もございまして、現場の状態は非常に定員が少いために労働オーバーにあえいでおる次第でございます。われわれ
組合としては、こういつた定員の状態に置くならば、皆さんの御期待に沿うようなサービスの改善ということはなかなか困難であろうというふうに考えて、現在定員問題についても
交渉を進めておりますが、これは一応ここでは別にいたしまして、特にお願い申し上げたいのは、
裁定の
理由書の中にもございますように、従来公社の定員というものが、先ほ
ども申し上げましたように、非常に姑息な手段で処理して参りましたために、電気通信省時代から
賃金支弁の要員というものがあります。
従つてこういつた人たちの問題が、非常に問題にな
つておつたわけでございますが、一応身分的には本年の四月からこれらの
方々が社員に切りかえられました。そのために実際の
予算定員と現在の実際の定員との間にギヤツプが出て参りまして、結局
給与総額の中で操作しなければならないということで、非常に問題が出ております。こういつた点については、
仲裁委員会も、これを直さなければいけないということで、実際の
予算定員と現在人員との差額八千七十一名というものを、どうかひとつ今次のこの
仲裁裁定完全
実施の際に
予算定員に組み入れていただくように、このことをお願いする次第でございます。
最後に、私は横山
書記長の申されておりましたように、日本の公労法適用下の労働
組合というものが、
仲裁裁定が出てから闘いが始まる。そうしてごちやごちやごちやごちや騒いでおる。また騒がせるようなことをしておる。私はこういつたことは、きわめて遺憾に存じておるわけでございまして、このことはわれわれストライキ権を奪われた労働
組合に出された仲裁であるならば、明らかにこれを
労使双方が服従して
実施して行くという、はつきりした形で仲裁というものが
実施されるならば、こういつたことは私はゆめないことではないかというふうに考えているわけでございまして、今後の問題といたしましては、われわれ特にストライキ権を奪われました労働
組合に対する
仲裁裁定の問題については、
国会におきましても十分ひとつ御干渉いただいて、われわれが好ましくないような現在の状況の中で、どうしてもやらなければならないというところで労働
組合が闘争するということのないように、この
仲裁委員会の出します
裁定というものは厳格に
実施できるような体制を一日も早くつく
つていただくことを、特にお願いいたしまして私の
意見を終ります。どうもありがとうございました。