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1953-11-06 第17回国会 衆議院 労働委員会人事委員会大蔵委員会農林委員会通商産業委員会運輸委員会郵政委員会電気通信委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月六日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員  労働委員会    委員長 赤松  勇君    理事 鈴木 正文君 理事 持永 義夫君    理事 高橋 禎一君 理事 山花 秀雄君    理事 矢尾喜三郎君       池田  清君    倉石 忠雄君       黒澤 幸一君    多賀谷真稔君       井堀 繁雄君    竹谷源太郎君       長  正路君    中原 健次君  人事委員会    委員長 川島正次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 田中  好君    理事 永田 亮一君 理事 加賀田 進君    理事 受田 新吉君 理事 山口 好一君       田子 一民君    池田 清志君       竹山祐太郎君    石山 權作者       櫻井 奎夫君    森 三樹二君       池田 禎治君  大蔵委員会    委員長 千葉 三郎君    理事 大上  司君 理事 春日 一幸君       大平 正芳君    苫米地英俊君       藤枝 泉介君    本名  武君       小川 豊明君    久保田鶴松君       柴田 義男君    井上 良二君       平岡忠次郎君    福田 赳夫君  農林委員会    委員長 井出一太郎君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君    理事 川俣 清音君 理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松野 頼三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       中澤 茂一君    日野 吉夫君  通商産業委員会    委員長 大西 禎夫君    理事 福田  一君 理事 長谷川四郎君    理事 永井勝次郎君 理事 伊藤卯四郎君       小川 平二君    土倉 宗明君       山手 滿男君    柳原 三郎君       加藤 清二君    齋木 重一君       中崎  敏君    山口シヅエ君  運輸委員会    理事 松井 豊吉君 理事 原   彪君    理事 楯 兼次郎君 理事 川島 金次君       徳安 實藏君    南條 徳男君       山崎 岩男君    岡野 傳三君       正木  清君    松原喜之次君       山口丈太郎君    熊本 虎三君       館  俊三君  郵政委員会    委員長 田中織之進君    理事 船越  弘君 理事 大高  康君    理事 片島  港君       小林 絹治君    坂田 英一君       武知 勇記君    三池  信君       伊東 岩男君    松浦周太郎君       櫻内 義雄君    井手 以誠君       佐々木更三君  電気通信委員会    委員長 成田 知巳君    理事 岩川 與助君 理事 塩原時三郎君   理事 橋本登美三郎君 理事 小泉 純也君    理事 原   茂君       庄司 一郎君    玉置 信一君       齋藤 憲三君    上林與市郎君       甲斐 政治君    松井 政吉君       松前 重義君    三輪 壽壯君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         郵 政 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         林野庁長官   柴田  栄君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君         労働政務次官  安井  謙君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外出席者         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         日本国有鉄道参         与         (職員局長)  吾孫子 豊君         参  考  人         (公共企業体等         仲裁委員会委員         長)      今井 一男君         参  考  人         (全印刷労働組         合中央執行委員         長)      島田和三郎君         参  考  人         (全印刷労働組         合中央執行副委         員長)     河村 勝治君         参  考  人         (全印刷労働組         合給与対策部         長)      杉山 秀雄君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行副委         員長)     齋藤 一雄君         参  考  人         (全専売労働組         合調査部長)  佐藤 維恭君         参  考  人         (全造幣労働組         合中央執行委員         長)      原田 正夫君         参  考  人         (全造幣労働組         合中央執行副委         員長)     竹田 豊彦君         参  考  人         (全造幣労働組         合中央執行副委         員長)     大森 忠晴君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行委員         長)      妹尾 敏雄君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行副委         員長)     中村喜己則君         参  考  人         (全林野労働組         合書記長)   岩村 幸雄君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合中央         執行委員長)  藏野  晴君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合中央         執行委員長) 乗松 義雄君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合書記         長兼賃金対策部         長)      青木金治郎君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合中央執         委員長)    柴谷  要君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合書記         長)      横山 利秋君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合給与対         策部長)    鎌倉 繁光君         参  考  人         (日本機関車労         働組合中央執行         委員長代理)  中村 順造君         参  考  人         (全逓信従業員         組合中央執行委         員長)     横川 正市君         参  考  人         (全逓信従業員         組合書記長)         書記長)    宝樹 文彦君         参  考  人         (全逓信従業員         組合中央執行委         員)      武田  勇君         参  考  人         (全国電気通信         労働組合中央執         行委員長)   鈴木  強君         参  考  人         (全国電気通信         労働組合書記         長)      大木 正吾君         参  考  人         (全国電気通信         労働組合給与対         策部長)    八巻 壽男君         労働委員会専門         員       濱口金一郎君         人事委員会専門         員       安倍 三郎君         人事委員会専門         員       遠山信一郎君         大蔵委員会専門         員       椎木 文也君         大蔵委員会専門         員       黒田 久太君         農林委員会専門         員       難波 理平君         農林委員会専門         員       岩隈  博君         農林委員会専門         員       藤井  信君         通商産業委員会         専門員     谷崎  明君         通商産業委員会         専門員     越田 清七君         運輸委員会専門         員       岩村  勝君         郵政委員会専門         員       稻田  穰君         郵政委員会専門         員       山戸 利生君         電気通信委員会         専門員     吉田 弘苗君         電気通信委員会         専門員     中村 寅市君     ————————————— 本日の会議に付した事件  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(アルコール  専売事業に関する件)内閣提出議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(国有鉄通に  関する件)内閣提出議決第六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(郵政事業に  関する件)内閣提出議決第七号)  公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(電信電話公社  に関する件)(内閣提出議決第八号)     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより労働委員会人事委員会大蔵委員会農林委員会通商産業委員会運輸委員会郵政委員会電気通信委員会連合審査会を開会いたします。  なお本日は私が連合審査会委員長の職務を行いますから御了承願います。  それでは公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件(アルコール専売事業に関する件)内閣提出議決第五号)外議決第六号、第七号、第八号各件を一括議題として、政府より順次説明を求めます。塚田国務大臣
  3. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 去る十月二十七日に、公共企業体等仲裁委員会が、郵政職員賃金改訂に関する紛争について下しました裁定を、国会に上程いたし、御審議をお願いすることとなりました事由につきまして、簡単に御説明申し上げます。  本年五月十二日に全逓信従業員組合は、郵政職員基準賃金改訂に関する要求郵政省に対し提出し、両当事者間におきまして団体交渉を重ねましたが、郵政省はこれを拒否いたしましたので、調停段階に入り、七月二十五日に公共企業体等中央調停委員会調停案を提示いたしました。これに対しまして組合は、八月十二日に受諾しかたい旨を回答いたしましたために、同委員会調停が成立しなかつたので、公共企業体等仲裁委員会仲裁手続に移行し、同委員会は十月二十七日に仲裁裁定第十七号に行つたのであります。  この裁定によりますと、その第一項及び第二項の実施並びにこれらに関連する追加経費といたしまして、昭和二十八年度予算に対しまして、さらに約四十億円を必要とするのであります。これらの経費は、昭和二十八年度特別会計予算歳入歳出予算に含まれておりませんので、給与総額につきましては、予算総則第八条の金額を超過いたしますことは明らかでありますから、これを支出することは予算上不可能であります。  以上の事由によりまして、本裁定公共企業体等労働関係法第十六条に該当するものと認められますので、所定手続をもちまして、裁定国会に上程いたした次第でございます。  次に去る十月十三日に、公共企業体等仲裁委員会が、日本電信電話公社職員賃金改訂に関する紛争について下しました裁定を、国会に上程いたし、御審議をお願いすることになりました事由につきまして、簡単に御説明申し上げます。  本年三月二十日に全国電気通信労働組合は、本年四月以降の賃金改訂に関する要求日本電信電話公社に対し提出し、両当事者間におきまして団体交渉を重ねましたが、日本電信電話公社はこれを拒否いたしましたので調停段階に入り、公共企業体等中央調停委員会は、七月十五日に調停案を提示いたしました。これに対しまして、双方とも受諾しがたい旨を回答いたしましたために、同委員会の請求により、八月十日に公共企業体等仲裁委員会仲裁手続に移行いたし、同委員会は、十月十三日に仲裁裁定第十五号を行つたのであります。  この裁定によりますと、その第一項及び第三項の実施並びにこれに関連する追加経費といたしまして、昭和二十八年度予算に対しまして、さらに、約二十七億二千万円を必要とするのであります。これらの経費は、昭和二十八年度政府関係機関収入支出予算に含まれておりませんので、給与総額につきましては、予算総則第二十三条の金額を超過することは、明らかでありますから、これを支出することは、予算上不可能であります。  以上の事由によりまして、本裁定公共企業体等労働関係法第十六条に該当するものと認められますので、所定手続をもちまして、裁定国会に上程いたした次第でございます。  何とぞ慎重御審議の上、国会の御意志表明いただきますようお願い申し上げます。
  4. 赤松勇

  5. 岡野清豪

    岡野国務大臣 昭和二十八年九月二十九日に、公共企業体等仲裁委員会が、アルコール専売事業職員昭和二十八年四月以降における賃金改訂に関する紛争について行いました仲裁裁定第十二号を国会に上程いたし御審議願う次第につきまして御説明申し上げます。  本年四月三十日にアルコール専売事業職員代表は、四月以降の賃金改訂要求書通商産業省当局に対し提出いたしまして、両当事者におきまして数次団体交渉が行われましたが、当局側がこれを拒否いたしましたので、職員側は五月十一日交渉を打切る旨を宣言し、同月二十日公共企業体等中央調停委員会に対し調停申請をいたしました。同委員会は、七月十七日調停案を提出いたしましたが、両当事者とも八月五日それぞれ受諾困難の旨、同委員会に対しまして回答いたしましたので、八月六日調停が打切られ、同日職員側は、公共企業体等労働関係法規定によりまして、仲裁申請行つたのでございます。よつて公共企業体等仲裁委員会は、これが審議を重ねました結果、九月二十九日これから御審議をいただきます仲裁裁定行つた次第でございます。  同裁定の第一項の実施及びこれに関連いたす経費といたしまして、本年度さらに二千余万円を必要とすると推定されますが、この追加経費は、昭和二十八年度特別会計予算に含まれておらず、給与総額につきましては、予算総則第八条の金額を超過するものでございますので、公共企業体等労働関係法第十六条所定手続をもちまして、裁定国会に上程いたし御審議を願う次第でございます。  何とぞ慎重御審議の上、国会の御意思の表明を願いたいと存ずる次第でございます。
  6. 赤松勇

  7. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまから昭和二十八年十月十三日に、公共企業体等仲裁委員会が、日本国有鉄道職員昭和二十八年四月以降における賃金改訂に関する紛争について行いました仲裁裁定第十四号を国会に上程いたし御審議願う次第につきまして御説明申し上げます。  本年三月十八日に、日本国有鉄道職員代表は、四月以降の賃金改訂要求書を、日本国有鉄道当局に対し提出いたしまして、両当事者間におきまして、数次団体交渉が行われましたが、当局側がこれを拒否いたしましたので、職員側は五月十五日団体交渉を打切る旨当局側に通告し、同日公共企業体等中央調停委員会に対し調停申請をいたしました。同委員会は七月十五日調停案を提示いたしましたが、当局側は同月二十五日、職員側は同月二十八日、それぞれ受諾困難の旨、同委員会に対しまして回答いたしましたので、八月五日調停が打切られ、翌八月六日職員側は、公共企業体等労働関係法規定によりまして仲裁申請行つたのでございます。よつて公共企業体等仲裁委員会は、これが審議を重ねました結果、十月十三日、これから御審議をいただきます仲裁裁定行つた次第でございます。  同裁定の第一項の実施及びこれに関連いたす経費といたしまして、本年度八十数億円を必要とすると推定されますが、この追加経費は、昭和二十八年度政府関係機関予算に含まれておらず、給与総額につきましては、予算総則第十五条の金額を超過することは明らかでございますので、公共企業体等労働関係法第十六条所定手続をもちまして、裁定国会に上程いたし御審議を願う次第でございます。  何とぞ慎重御審議の上、国会の御意志表明を願いたいと存ずる次第でございます。
  8. 赤松勇

    赤松委員長 なお大蔵大臣農林大臣は明日午前十前より提案理由説明を行わせることにいたします。  この際申し上げますが、ただいまお手許に配付してあります参考人名簿によつておわかりのことと存じますが、以上の方々参考人として御出席くださつております。  この際参考人各位にごあいさつを申し上げますが、本日は御多忙中にもかかわらず御出席くださいましてありがとうございました。  なお、参考人方々が御意見を発表なさる際は、時間の都合も考慮いたしまして、お一人約十五分程度とし、質疑に入りましてからさらに詳しく御意見をお述べになつていただきたいと存じます。  最初公共企業体等仲裁委員会委員長今井一男君よりお願いいたします。今井一男君。
  9. 今井一男

    今井参考人 私どもの今回の八つ裁定につきましては、それぞれ相当詳細に理由を書いておきましたから、これを御通覧願えば、われわれの考え方はおおむね御了解願えることと存ずるのでありますが、せつかくの機会でございますので、全体を通観いたしまして、二、三所見を申し上げて御審議の御参考に供したいと思います。  ただお断りしておきたいことは、私ども委員会の性質上、常に三人の委員会議によつて行われております。もちろん裁定そのもの並びに理由につきましては、三人の委員の一致した意見によりまして、共同して責任が持てるのでありますが、本日ここで申し上げます所見の中には、あるいは私一人の部分も若干入るかもしれませんが、その点だけあらかじめ申し上げておきたいと思います。  仲裁委員会立場といたしまして、世間の一部にやや誤解と受取れるように感ぜられます点がございますことは、仲裁委員会というものは賃金委員会でないという関係であります。すなわち私どもは、一つ企業体におきましての労使紛争を解決するのが任務でございます。労使から紛争問題を持ち込まれない範囲におきまして、また労使間において完全に意見の一致しました範囲におきましては、私どもが容喙すべき点は何らないのでございます。従いまして、権衡上から申しますれば、勢いどうしてもそこに問題点が発生し得ると思います。たとえば、私どもがかりにこの企業におきましては一万五千円が大体相当であろう、かような判断を腹の底に下しました場合におきましても、もし経営者側が一万六千円まで出す、こう言つた場合に、われわれの方が一万六千円を拒む理由は何らないのでございます。そういうことから、どうしてもそこに普通の賃金委員会のようなところでおやりになつている場合とは違つた結論が出やすい。また出ても、これは仲裁手続上当然の結果であろうということを、最初に一言申し上げておきたいのであります。  ただ公労法の精神からいたしまして、問題を力によつて解決することなしに、両者の主張の合理性をつき合せたところで解決する、こういつたところにまた一つの特徴があるのではなかろうかと考えるのであります。すなわち、両者言い分をよく聞いておりまして、そのうちから理由のあるもの、根拠のあるものをつき合して参りまして、そして譲るべきは譲つてもらい、ただすべきはただしまして、なるべく両者意見を中心とした結論を出す。すなわち委員会独自の見解は極力少くする。両者がどういうことを言おうと、とにかくわれわれの結論はこうである、こういつた態度は、仲裁委員会としてとるべき態度ではなかろう。すなわち労使双方の、一つ企業体におきましての紛争の解決であります以上は、両者言い分というものがあくまで根拠である。それをできるだけ説得なり論戦なりを重ねまして、そうして歩み寄り願つて、どうしても歩み寄りのできない部分についてだけ、委員会の独自の見解を加える、こういつた形でわれわれはやつてつておりますので、その点もおのずから権衡問題には影響が起つて参る点でございます。  今回の八つの案件は、こまかい具体的な問題もございますが、大部分はこれはべース・アツプに属します。昨年以来の民間の賃金増高を考えますと、政府発表資料によりましても、およそ一年間に一三ないし一五%程度は増しておるようであります。またいわゆるCPIにおきましても一〇%程度増高は見られるようであります。元来私ども立場が前に申し上げましたような関係から、労使がこれに対しまして積極的に意見をはき、さらにまたこれについて歩み寄るところは歩み寄つてくださるのが一番望ましいのでありますが、遺憾ながら組合側にはおおむね大会決議というわくが入つてつたようであります。なかなかそういつたよう意味で、私どもの好ましいと思つた歩み寄りはわずかにとどまつたのでございますが、さらに片一方当局側におきましても、積極的にどれだけの賃金が正しいか、どれだけの賃金を妥当と考えるか、こういつた点につきましては、仲裁段階に入りますまでにはつきり意見を申したところは一、二にとどまつたのであります。それではわれわれ手続を進める関係上不都合でございますので、当局側に対しても、この点再三再四再考をお願いいたしましたところ、全部の当局側から、おおむね調停案金額は正しい、妥当であるという御見解をいただいたのであります。もちろん、これは私どもの方のある程度の話合いが入つておりますけれども、しかし当局側から責任のある公式の文書で意見をいただいておりますので、何も私どもが特別の力を加えたようなことでないことだけは、はつきり申し上げられると思うのであります。従つて、結果的に申しますと、今回の私ども裁定金額が、調停案額通りというようなことになつております関係上、ある意味におきましては全面的に当局側言い分は一〇〇%通り組合言い分はゼロというふうに、見得るかと思うのであります。よく言われます、足して二で割るという方式とは、この点違つた結果に相なつたわけであります。その意味から、理由のいかんにかかわらず、組合諸君の御不満も考えられないではないと思うのであります。  私ども結論が、偶然とは申せ調停案の額に全部一致したことにつきましては、一言御説明申し上げる必要があろうかと存じます。もともと仲裁委員会といたしましては、こういつた労使紛争は、調停段階で片づくことか一番望ましいということは、ずつととつて参つた態度でございます。と申しますのは、調停手続におきましては、労使の利益代表が直接これに参加されます。しかも、その結論に対しましては、諾否がはつきり述べ得られるのであります。そういつた形における紛争解決こそ、最も実勢に近いものでありまして、労使間の円満な秩序維持のために、一番望ましいと考えるものでありまして、仲裁のように法の力によりまして拘束するという建前は、最小限度にとどめなければならぬ。現に公労法自身も、仲裁の手続は常に受身で、法律によりましてこちらへ持ち込まれたもの以外は、絶対手を出すことは相ならぬという建前がとられておるところからも、今申し上げた点は、われわれとして守るべき態度ではなかろうかと考えて参つたものであります。  一方、今回の労使言い分を見ますと、もちろん企業によりまして、相当見解は違います。組合側といたしましても、あるいは戦前の労働生産性を基礎にして主張されておる。それとの対照から、労働生産性がすでに戦前水準を越えておる、従つてわれわれの実質賃金もまた戦前に帰すべしといつた主張から言われておる向きもあります。また自分たちの家族構成から、生活費がこれだけかかる、この生活費をカバーするところの賃金を出せといつた主張もございました。また民間賃金等にある程度の比重を置いたものもありました。また一方、当局側の方もそれぞれ考え方は区々でございました。すなわち生産性と賃金との結びつきは絶対困る、こういつた強い主張のところもございましたし、またこれを簡単に結びつけて、話合いに応ずるというところもございました。また民間賃金との権衡というようなことも、しきりに考えるところもございました。その点はそれぞれ区々でございましたが、いずれにいたしましても、両者の話の幅は非常に広かつたのであります。私どもの力の至らないところもございましたでしようし、また時間的に非常に切り詰められた間に、八つの案件を片づけなければならなかつたという事情もありまして、相当話の幅の広い間に、われわれとして結論を出さなければならないことに相なりました。私どもが私どもだけの考え方だけでやりますと、調停案の額にぴつたり来たわけではございません。ございませんが、これがもしも生活費の上昇だけを基礎にして一つのものさしに対する見方が違つておるというような、そういう議論としては、つばぜり合いのような段階になりましたならば、私ども百円、二百円というところまで、慎重に丁寧に両者歩み寄り願つて話をきめて行くことが妥当かと考えたのでありましたけれども、今回のような相当離れておるところから議論をなさつておる場合におきましては、少々の違いは結局調停案の額を尊重することが、従来の建前からいつても妥当だ、こういつた結論から結局全部そろいまして、たまたまと申し上げたいのでありますけれども、こういつたような結果に相なつた次第でございます。  なお、これが国会で上程されまして御審議いただきまする機会におきまして、私ども立場から一、二お願いと申しますか、申し上げておきたいことがございます。公労法によりますと、裁定そのもの国会にかかることに相なつております。しかし、これは私だけの意見というだけでなく、昨年でありましたか、国会でもどなたからか伺つた意見でございますが、われわれの裁定を出します心構え自身が、決して賃金だけを考えたものではございませんで、もしこれが民間企業でありました場合におきまして、民間企業の支払い能力というような立場から考えまして、はたして妥当であるかどうか。こういつた見地を加味いたしまして結論を出すように心がけておる次第でございますが、そういつた立場、すなわち、もしこれが民間の場合でありましたならば、仲裁裁定はただちに法律上の拘束力を生じまして、組合側はそれに基くいわゆる財産権を得るわけであります。この裁定は末弘前委員長の言を借りますならば、憲法上保障されますところの何人といえども奪うべからざる権利に相なるわけでございますけれども、そこがたまたま国営企業であり、また公社であるという関係から、予算上の問題に相なりました場合には、その予算を御審議願う意味におきまして、国会のお世話にならなければならないことは、これははつきりいたしておりますけれども、しかし、それはやはり予算立場、すなわち国民経済なり、あるいは国家財政という立場からの御判断であるべきではなかろうかと考えるものであります。すなわち、賃金のようなものは、これは見方によりまして、幾らも結論の違いを生ずる問題でございます。仲裁裁定をもう一度練り直しまして、裁定金額自身が妥当であるかどうか、こういつたことを御審議願う場ではないのではないか。現に過去の裁定におきましても、二つばかりの問題は賃金問題でございますが、給与総額のわく内で片づきます問題でありましたために、そのまま実施になつておる例もございます。すなわちこれが予算上のわくにかかります場合にだけ国会のお世話になる法律の建前になつておりますがゆえに、予算的な見地におきまして御審議を願うのが、この公労法上の裁定審議されます基本的な問題ではなかろうかと存ずるのであります。もちろん国権の最高機関として、仲裁裁定のあり方につきまていろいろと御批判を賜わりますことは、当然でございましようけれども、公労法第十六条によりまして国会のお世話になる場合におきましては、やはり予算上の見地から生じたことを御審議いただくのが順序ではなかろうか。現在の公社並びに現業庁は、いわゆる給与総額のわくがございます。これは年度当初に一応の給与の全体を見積りまして、それ以上使うことは相ならない、こう予算総則にきめてございますから、仲裁裁定は普通の場合でありますと、大体そのわくに触れますから、国会のお世話になるわけでございます。その点は、もちろん私どもとして別にかれこれ申し上げる筋のものでございませんけれども、しかし、ただその点が、従前単なる特別会計であつた時代、すなわち公労法の適用のなかつた時代におきましては、こういつたわくはなかつたように伺つております。すなわちある一定の予算の全体のわく、つまり二百億なら二百億、八百億なら八百億という国会議決になりました全体のわくを越えません範囲内におきましては、行政官庁におきまして一切の流用は可能であつたと記憶するものであります。ところが、公労法が適用になりますと、こういつたものに全部、予算のわくが、人件費としてこれ以上のものを使うときは、すべて国会で御審議を願う。むろん御審議願うことに異議は私どもございませんが、全体の予算のわく二百億なら二百億、千億なら千億というわくを越えない範囲のものまでも、国会の御審議を願つた場合に、それが特に公労法の適用の結果生れた事実と思い合せますと、そこに少しふに落ちない感じを持つものであります。すなわち以前でありますならば、そういつたことが、国会のお世話にならずにできる建前であつた。公労法の建前は、労使団体交渉によりまして、問題を一切処理いたしました。労使の協力によりまして、国営企業なり公社なりの企業の能率をますます上げさせようというのが、おそらく趣旨ではなかろうかと思います。そういたします範囲内におきましては、あるいは人数を減らして物件費を多く使うような必要の場合もございましようし、また反対に人をふやして物件費を節約するような場合もあろうかと思うのであります。そういつた仕組みこそ、むしろ経営能率を上げるために一番必要な方法ではなかろうか。従来の国営企業の、ややもすれば非能率といわれる点は、あまりにこまかにわくをはめ過ぎた関係ではなかろうか。それが公労法が適用になりまして、従前よりももつと狭い、もつときゆうくつなわくがはめられるということにつきましては、私ども相当疑問を感ぜざるを得ないものであります。特に国会でおきめになりましたところの事業計画の遂行が、与えられたところの二百億なり千億なりという予算のわく内でやれます範囲内におきましては、これはあらゆる角度から申しまして問題のないところではなかろうかと考えたいのであります。  前から申し上げましたように、公労法の関係によりまして賃金をきめますと、どうしてもバランスを失するという——もちろんそのバランスを失する程度は大したものではございませんけれども、それにいたしましても、若干のバランスを失するという問題が起り得る仕組みになつております。もしそれをあくまで潔癖に守るためには、やはり一つの機関、すなわち人事院とか大蔵省というような一つの機関でおきめになる方が、より適当なのでありまして、今の仲裁手続のように、わずかに三人の委員が十人ばかりの職員を使いまして、法定の三十日間で両者言い分を中心といたしまして話をきめて行く行き方では、どうしてもその点のバランスを失しやすいのであります。しかしながら、公労法はそういつたことがありましても、なおかつ賃金というものの決定に対しまして、労働者の意見が直接それに反映する、それが労働関係としてより望ましい姿であるという立場からできておるものであるように、私ども拝察いたしておるものであります。  そういつた見地からいたしますと、今回の裁定につきましては、大部分のところは国会でおきめになりました全体の予算のわくを越えないでできる範囲のもののように判断をしたのであります。もちろん一切の労働者の賃金というものに対しまして国会の御配慮をいただくことは、これは当然のことでございますけれども、しかしまた、公労法という特に法律によりましてこういつた制度をきめました趣旨は、ひとつぜひ十分おくみとりいただきまして、慎重御審議の上御承認をいただきますように、関係者の一人としてお願い申し上げておく次第であります。  一言説明をいたしました。
  10. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。今井仲裁委員長は午後公式の会合を招集されているそうでございます。従つて仲裁委員長に対する質疑は明日午前十時より行いたいと思いますから御了承願います。  それでは一旦休憩をいたしまして午後二時より参考人意見を聞き、さらに質疑を続行したいと思いますから御了承願います。  暫時休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  11. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  なおこの際委員の諸君に御了解を願つておきたいのは、本会議におきまして採決があるかもしれませんので、もし本会議で採決のある場合は、当連合審査会は暫時休憩をいたしまして、採決直後当連合審査会を再び開会いたしますから、さよう御了承願います。  それではアルコール専売労働組合賃金対策部長の青木参考人の発言を許します。青木参考人
  12. 青木金治郎

    ○青木参考人 ただいた御紹介にあずかりました、アルコール専売労働組合書記長賃金対策部長をやつておる青木でございます。今日この席で御審議願わなければならなくなつたその経過につきましては、先ほど通産大臣が申された経過そのままでございまして、あらためて私から申すまでもございませんが、この際組合の主張をいたす前に、その前提となる基本的事項を二つ申し上げておきたいと思う次第であります。  まず第一に、当局側仲裁裁定委員会で言明したその内容についてでございます。すなわち、うちの当局側交渉委員会の代表であります中村軽工業局長が、こういうことを仲裁委員会の席上で言つておられます。すなわち、職員の福祉、労働意欲の向上の面と、販売価格への影響との両方の面を勘案して、調停案の一万四千二百円は企業者としては穏当なものと考える、こう明言しておられる事実で、これは明らかに裁定書の本文に載つているような次第でございます。  また、次に申し上げなければならないことは、仲裁裁定に対する組合態度でございます。当組合といたしましては、この数字に対して、はなはだ不満でありまして、特に実施期日が、調停案では四月となつていたのに、「諸般の事情を考慮した結果」というそれだけの理由によりまして、これが八月に延ばされたこのことについては、まことに納得できないと存じている次第であります。しかしながら、裁定が公労法に定めまする最終的決定であるということを尊重いたしまして、はたまた当局側に対し、この際裁定をいま少し権威あるもののごとく認識させるために、この際は裁定を早期かつ完全に実施せしめるという組合としての態度をとつているわけでございます。  現在政府は、現行予算の支出総額を変更する必要もなく、アルコールの場合、単に項目の流用のみで予算上資金上明らかに支出可能であることが明白であるにもかかわらず、実施の引延ばしを行わんとしている実情でございます。こういうことは、公労法の立法精神からいたしまして、はなはだ不都合きわまることでございまして、ここに当組合は、この裁定予算上資金上明らかに支出可能であるという数字的根拠を指摘いたしまして、国会の早急なる善処方を要望いたす次第でございます。  アルコールとしての仲裁裁定実施に伴う原資計算は、以下述べるような実情にございます。すなわち裁定完全実施に要する金額は、わが組合側の計算によりますと二千四百六十八万円程度でございます。これは詳細は専門員室の方で資料をお配り願うことになつておりますから、その資料によつてごらんいただきたいと思います。これによつてわれわれの待遇は現行一人一月当り一万二千九百八十九円程度の平均賃金が一〇・九%アツプいたしまして、一万四千二百円となるわけでございます。その他諸手当類におきまして、若干のはね返りがございます。なお、ただいま申し上げました原資として必要な二千四百六十八万の中には、期末手当が大蔵大臣の言明を尊重いたしまして一・二五組んでございます。  なお、この際仲裁委員会並びに当局側が計算いたしました大体の所要額を申し上げますと、仲裁委員会で概算いたしましたものは、二千二百万円程度、これは裁定書の理由に明示されております。その算出は明らかではございませんが、大体現員の場合千七百万円から千八百万、それから予算定員で申し上げれば、約二千三百万、この中間位として二千二百万円程度というものをお組みになつたと、こちらでは推定しておるわけでございます。なお当局側の算定によりますと、大体二千百万円程度ということであります。これと組合側の二千四百六十八万との差は、これは計数を照合してみないと、はつきりした数字はわかりませんけれども、その大部分は年末手当を一・二五組合側の方は組んであるということで、大体御納得をしていただけるものと思つております。  これを要するに、アルコール専売事業職員に対する裁定を完全に実施するためには、わずか二千四百六十八万程度の原資があれば、完全に実施できるという、公労法関係組合の最も僅少な額になつているわけでございます。  次に、この原資は現行予算の支出わく内のうち、予備費からその五四%を給与総額に流用するだけで、アルコールの場合完全に裁定実施できるということを申し上げます。このうちの予備費は、当初十六特別国会に提出されました予算案によりますと、三千万円ということになつていたわけであります。ところが調停委員会から途中調停案が提示されたために、改進党修正ということが行われまして、予備費が千五百三万七千円追加いたされまして、会計現在の予備費といたしましては、四千五百三万七千円というように組まれておるのでございます。この四千五百万のうち、一部修正額の支出予定分を除きますと、そのほとんどが給与総額に流用し得る性質のものでありまして、また支出上でもべース・アツプを予定して計上されたもののごとくであると組合では思つているわけでございます。従いまして、裁定実施のためには、単にこの予備費を五四%給与総額に項目流用をしていただければ、完全に実施できるわけでございまして、当局側が言つております予算上資金不可能ということは、アルコールの場合まつたく根拠のないものであると判断いたしている次第でございます。この場合、給与総額の変更を要することはもちろんのことであります。  なお、この予備費以外にも、各項目について詳細に説明しますと、相当の余裕金が指摘できるわけでございますが、ただいま出されました裁定程度であつてみれば、これはもはや指摘するまでもなく、この予備費の説明だけで十分と思つておる次第であります。  なお、懸念されるアルコールの売渡し価格の値上げということは、ベース・アツプしても、絶対にそういうことにはならないということを、ほぼ断言できると思うのであります。その理由としまして、現行価格にもこの程度のものは織り込んでありますし、また法令によつて近く価格改訂がされると思つておるわけでございますが、この中にもおそらくこの一万四千二百円程度のものはすでに織り込んで計算していただいているというように、こちらでは了解している次第であります。  以上のように、アルコールの場合は政府予算上資金上実施不可能ということは、明らかに事実を糊塗したものでありまして、組合としては、その予算的なものも十分にあるとここに申し上げられる次第でございます。  なおこの際、組合の諸手当類についての要求を、かねてからいたしておるわけでございますが、この組合の諸手当類の要求をもととしまして、基本給については裁定案を使いまして、組合要求を満たしていただけるためには、どの程度金額が必要かと申しますと、四千六百八十五万円あれば、アルコールとしては当面要求いたしておる諸問題は解決するわけでございます。その要求の内容を申し上げますと、宿直手当が現行三百六十円の打切り計算になつておりますのを八百円に増額させていただく。それから石炭手当を北海道の地方調停委員会の勧告によりまして、世帯主三・五トン、その他一・二トンに支給率を上げていただく。それから特殊勤務手当については、今年初めて実施されたものでございますが、予算額がはるかに実情に沿わない疑義がありますので、とりあえず総額を五割増しとしていただく。それから職員特別手当、すなわち年末手当は二箇月分にしていただきたい。こういう要求を織り込みますと、先ほど申しましたように、四千六百八十五万円あれば完全に実施できるわけでございます。この原資につきましても、予備費とそれから現在アルコールの会計といたしまして、その運営上日銀から十六億の借入れが認められておりますが、これに対する金利が日歩八厘でございまして、年額三千五百四万円余が予算上その関係予算として見込まれておるわけでございますが、本年二十八年度予算におきましては十億を借入れにしまして、さらに四月以降残余の六億を借り入れることになつておりまつりところ、借入れが延びましたために、利子として浮いた金がすでに五月二十五日までに百九十万という金額になつております。これと予備費と勘案いたしますれば、明らかに組合要求を網羅したものでさえも支出できるのではないかと、組合では思つておるわけでございます。ましてや、これほどの低い裁定額であれば、完全に実施することは、その誠意さえあればやつていただけるというふうに思つておるわけであります。  なおこの際、団体交渉の過程におきまして、官側が組合要求実施できないという回答をいたしました三項目について一言触れますと、その官側の回答は、予算上非常に不可能であるということであります。これは今申しましたように、給与総額上は明らかに問題がございますけれども予算のわく内操作で完全にやれるということをここで表明すれば十分だと思います。  それから二の売渡し価格の問題でございますが、これも先ほど触れましたように、すでにこの程度のものは織りんであるから、かえつて企業努力によつて値下げする場合にも、この程度のものは見込むのが当然であるし、すでにまた見込まれているということでございます。  それから三番目といたしまして、一般職との関係から、これを実施するのは穏当でないということでございます。この問題は、本質的な問題になりまして、あらためてアルコールとしてだけ触れないでも、後刻論議されるところだと存じますが、少くとも組合としては、一般職との関係で論ぜられますならば、何のための公労法であるかと申さざるを得ないのでありまして、この点十分の御審議を煩わしたいと思つておるわけでございます。  以上申し上げましたように、結論といたしまして、仲裁裁定を完全に実施できる予算的原資は、予備費に十分あるのでございまして、そればかりか、組合の諸手当類の要求をすべて網羅したものでさえも受入れるだけの予算的財源はあり余つているという事実をここで指摘できるわけでございます。こういうように、当局側も先ほど申しましたように、仲裁段階におきまして一万四千二百円は妥当だと言つております。また組合もこれを尊重すると申しております。しかもただいま説明しましたように、予算財源も十分あり余つている。こういうときにおきましてちよつとした政治情勢からわれわれの生活がまつたく顧みられないというようなことは、合法的活動をモツトーとしておりますアルコール専売労働組合の、あげて遺憾といたすところでございます。  以上アルコールの主として原資的な問題につきまして説明を終ります。
  13. 赤松勇

    赤松委員長 この際委員の諸君にお諮りいたします。参考人及び政府、公社等に対する質問は、参考人の公述が終りましてから一括これを行いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 赤松勇

    赤松委員長 ではさよう決定いたします。  次に国鉄労働組合書記長横山利秋参考人の発言を許します。横山利秋君。
  15. 横山利秋

    ○横山参考人 国鉄の横山でございます。私ども国鉄並びにタバコの専売労働組合は、公労法の適用を受けてから、すでに四年以上になるわけであります。最初公労法を適用されましたときに私どもが考えましたのは、これで裁定が出れば、一応争議は終るのだというふうな感じを受けて、そういう運動を進めるように努力をいたしたのでありますが、最近では、裁定が出た、さあこれから闘争だというふうな状況になつておることを、まことに心から遺憾とするわけでございます。ことしの国鉄の賃金は一万五千三百七十円でございます。この一万五千三百七十円は、過去の経歴を引いておりますので、非常に安いのであります。まつたく私どもとしては不満にたえないのでありますが、しかし諸般の情勢からこれを了承し、これを実行してもらうことに腹をきめました。  ただ、今度の八つ裁定の中で、国鉄が資金上予算上不可能だというところに一番問題の焦点があるようであります。私はこの点に主として集中をいたしまして皆さんの御理解を願いた、と思うのであります。  まず私ども金額を不満だと言い、あるいはまたこの資金上予算上の問題について、それを凌駕してぜひ皆さんに御理解を願いたいのは、一体それでは国鉄は働いていないのか、国鉄四十万の労働者は遊んでおるのかということであります。これはすでに仲裁の累次の理由書の中に明らかにされておりますが、旅客にいたしましても、戦前の二・七倍であります。電車はまた一・四倍に輸送量は達しております。貨物につきましては、戦後の最高記録も東北線等につきましては出ておるわけであります。これらの問題は、一体どういう従事員の労働量でなされているかといいますと、戦後六十万を越した職員数は、現在では四十四万、約十八万の減によつてささえられておるわけであります。一方この労働強化のために、国鉄労働者が職場で倒れて行く数字を概略申し上げますと、三箇年平均をいたしますと一年に二万二千七百九十一人、一日平均六十二人、一時間当り二・五人という数字があります。皆さんは列車にお乗りになりまして、車掌さんや、あるいは駅長さんの健全のからだをごらんになつているのでありますが、そのうしろには、手を切られ、足を切られ、あるいは死んで行く労働者が一時間に二人半あることをぜひとも御記憶願いたいと思うわけであります。労働時間にいたしましても、この裁定にかかります多くの労働者の中でも一番長い八・二八時間ということになつております。これらのことに例を徴しましても、今日国鉄労働者が受けております労働過重というものが、その負担量において、あるいは労働の質において著しく強いことをまず御理解願いたいと思うのであります。  では、一体国鉄の財政はどうして悪いのかという点を、組合立場から一応分析してみたいと思うのあります。簡単に言いますと、一応最近運賃が安いということをいわれております。仲裁裁定理由書にも、それを言つているのであります。問題は、この運賃の問題について、これでよいのだ、これが皆さんが国会でおきめになり、社会政策的に、あるいはまた低物価政策のもとにきめられたこの運賃はそれでよろしいのであります。また皆さんが国会で新しい建設線をおきめになり、今年は二十八線が着工いたしております。これは常識で考えても、工事費ないしは営業を開始いたしましても十五年やそこらは採算がとれないのがあたりまえのことであります。そういう状況の中で国鉄の独立採算制が行われておる。例を昨年の下半期にとつてみましても、国鉄三十四線の中で一応算術上採算がとれるというのは、わずか十四線にしかすぎません。こういうことは一体どういうことであるかという点を根本的に、先ほど申しました労働者の負担過重とも相比較してお考え願いたいと思うのであります。安い運賃はよろしいのだ。問題は、それに対して補償しない、そうして公共性を追求する。経理面できびしい独算制が追求される。その結果は言わずと知れたことでありまして、どうしても労働条件におおいかぶさつて来るのはあたりまえであります。そういう点につてい、今回の資金上予算上不可能だという議論が現実的にそこから発生していることを、御理解を願いたいと思うのであります。もちろん私は、今回皆さんが決算委員会なり運輸委員会で大きな討議をなさいました鉄道会館を初め、一連の国鉄の問題について、限りなき義憤を国鉄当局に持つておるのであります。     〔委員長退席、山花委員長代理着席〕 またわれわれといたしましても、今日国鉄当局が考えております増収の見込みとか、あるいはまたいろいろな雑収入というような点につきましても、はるかにわれわれとしては別な考え方を持つておるわけでありますが、しかし問題は、根本的な問題にさかのぼらないと、国鉄の資金上予算上の問題については御理解が願えないかと思うのであります。例を今年にとつてみましよう。今年は、もし水害がなかつたならば、裁定は完全実施できるのであります。これは仲裁裁定理由書の中にも明らかにされているところであります。水害が九十億、これがもしなかつたならば、収入の増収の見込みが、当局の言つておりますものを見ましても、五十七億でございます。それから今回決算委員会の中でいろいろ議論がございました点を取上げ、あるいは国鉄労働組合が、昨年のベース改訂の際にも、一昨年のベース改訂の際にも、いろいろ申し上げておりましたことをも取上げるならば、水害のことさえなかつたならば、これはできるのであります。水害は一体どういうふうに国鉄としては理解すべきでありましようか。国鉄の企業というのは、公共企業でありますから、すべてを国鉄の負担とすることについては、問題があろうかと考えるのであります。そこでもう一歩進みまして、資金上予算上不可能だということの歴史的な問題について少し考えてみたいのであります。  この前に、きのう労働大臣が国会でおつしやつたそうでありますが、この公労法のストライキの禁止と、それから仲裁裁定の制度というものは、とつかえつこじやない、ストライキ禁止のかわりに仲裁制度をやつたのではない。こういう議論をなさいました。この点は一つの議論であろうかと思いますけれども、歴史的な現実をつかまえてみるならば、マツカーサー司令官がマツカーサー書簡をもつて出しましたその歴史を考えるならば、これはストライキを禁止するかわりに仲裁制度をやるのだ、まつたく何人も疑うべからざる問題であろうかと思うのでありまして、円満な常識家の労働大臣にしては、少しこの点はお間違えになつたのではないか。  そこで問題は、十六条の予算上質金上不可能という問題であります。この点につきまして、私ども仲裁を受けました組合役員はもとより、きようの毎日新聞でも、三百代言的だという言い方をいたしております。資金上予算上不可能だということは、一体どういうことであるかについて、政府がおつしやつたことを特にとらえまして、私は皆さんに御理解を願いたいと思うのであります。二十五年第八臨時国会において運輸大臣は、公労法上の資金上予算上不可能な資金の支出とはどういうものだという質問に対しまして大臣は、国会所定行為がされなければ資金の支出が不可能な場合のことである。国会所定の行為をまたずして、行政措置さえ行われるならば支出可能となる場合は、予算上資金上不可能な資金の支出に含まないと解釈するべきだということを答弁をせられておるのであります。もちろんこの答弁は、私ども多少の議論の余地はありますけれども、大臣の答弁として理解をいたしましたところが、今回の裁定に関する国会に対する提案というものは、給与総額に金がないから、ないしは年度予算にそういうことは含んでいないからこれは不可能である、こういう議論をされておるのは、この前のこの運輸大臣の答弁にまつたく矛盾することもはなはだしいと考えられるわけであります。さらに二十五年、保利労働大臣は国会において、こういう答弁をされました。十六条の規定によりまして、仲裁裁定がありましても、予算上資金上不可能な分については政府を拘束することはない、あの規定は決して仲裁裁定の権威を私は没するものではないと思います。従つてまつたくあの場合のみ仲裁裁定の拘束と申しますか、制約を受けるわけでございまして、その他の面につきましては、私は厳粛にこの裁定に服すべきものである、かように考えております。こういう答弁をされておるわけであります。つまり行政措置で移流用できるならば、これは政府をも拘束するということを、労働大臣並びに運輸大臣のみならず国会で証言をされておるのに、今回だけは、給与総額にはない、年度予算には考えてない、だからこれはもう不可能だ、こういう議論にすぐ飛躍しておりますのは、どう考えても納得ができないことだということを、多年公労法に関係いたしておりまわれわれとしては、痛感をせざるを得ないのであります。さればこそ、昨年の参議院の裁定に関する議決におきましても、裁定に基く国会の承認を求める場合は、予算上質金上不可能なる場合に限定すべきであるという附帯決議がされておるわけであります。かような点に立ちまして、ぜひ今回の裁定の御審議に際しましては、十六条の公正妥当な歴史的な立場をも十分にお考えくださいまして審議をされることを、まず第一に要望をいたしておきたいと思うのであります。  国鉄の財源につきましても、ないというふうにいろいろいわれておりますが、ないとは言わせません。また一文もないということはあり得ないことであります、多くの議論を重ねて追求をいたしていただきますならば、これは私は皆さんの御協力次第によつては、十分に可能なことであろうというふうにも考えられるわけであります。ただ先ほど申しましたように、自前ですべてを補うという点につきましては、いろいろ当面の国鉄に関する残念なことがかりにあり、かりにその問題を解決したといたしましても、なおかつ根本的な問題から出発をぜひお願いをいたしたい、こう思います。  この際皆さんにぜひお願いをいたしたい最後の問題といたしましては、労働組合というものは、常に生活の安定、経済闘争を重視をいたして闘争するのでありますが、このように四箇年、私ども裁定に関する歴史をたどつて見ましても、賃金ベースに関する限りは、一回も完全実施されたことがないのであります。こういうふうになりますと、どうしてもこの国会を重視し、そうしてその議論のあり方という点についても、政治的な問題に触れざるを得ません。この公労法みずからがその方向へ労働者をひつぱつてつておるという事実に、御注目を願わなければならないと思います。すでに東京では米が三百円の声を聞いておりますし、本年以来家賃も地代も新聞も、あるいはお砂糖も値上りをいたしておるのは、皆さん御承知の通りであります。経済審議庁の発表を見ましても、物価が上つておることは政府も言つておることでありますし、内閣統計局の調査においてもまた生計費が上つておることは、皆さん御理解の通りであります。これで一文も上げない、これでベース改訂をしないということでは、労働者は決して黙つておるわけには参りません。どうかこの点を十分にお考えくださいまして、本年度仲裁裁定につきまして、格段の御努力と御協力をお願いをいたしまして、私の陳述を終る次第であります。(拍手)
  16. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 次は、日本機関車労組合執行委員長代理中村参考人より御意見の開陳をお願いします。
  17. 中村順造

    中村(順)参考人 私はただいま御紹介にあずかりました国鉄の機関車関係の職員でもつて結成いたしております日本国有鉄道機関車労働組合委員長代理をいたしております中村であります。本日ここに連合審査会が開かれまして、仲裁裁定に関する私の意見を申し述べる機会を与えられたことに対しまして、私心から感謝申し上げる次第であります。     〔山花委員長代理退席、委員長着席〕  先ほど、同じ企業体の中にある国鉄労働組合の横山書記長から、いろいろ内容については説明がありましたので、私はつとめて重複を避ける意味で、仲裁裁定に関する組合としての考え方、あるいは私としての考え方について申し述べたいと存ずるものであります。  仲裁裁定がいかなるものであり、どのように政府及び国会においてこれが措置されなければならないかという点に関しましては、いまさら私が申し述べるまでもないことと存じますが、私はこの機会に、ただ仲裁裁定は公労法適用によりまして、われわれ労働者の基本的権利にかわるものであるということを確信しておるということを申し述べたいと思うのであります。従いまして、仲裁裁定労使双方を拘束し、一旦裁定がなされた上は、それは完全に実施されなければならないことは当然であると存ずるものであります。ただ予算上資金上、政府または国鉄公社によつて実施不可能な場合は、国会に付議されましてこれが決定されるように、法律上は相なつておるのでありますが、この場合といえども仲裁裁定は労働者の基本権にかわるものとしての認識の上に立つて、完全実施をする前提で審議がなさるべきが当然であると信じておるものであります。  しかるに、従来の仲裁裁定に対する政府並びに国会のとられた措置を見まするに、遺憾ながらその当然のことが当然として行われなかつたのであります。今これを昨年の例にとりますなら、昨年、国鉄職員に対する仲裁裁定は一万三千四百円、八月以降実施なされたのであります。これに対しまして、われわれは不満ではありましたが、仲裁制度の趣旨を尊重いたしまして、八月完全実施政府及び国会に要請いたしまして、参議院裏のあの伊藤公の銅像の下にテントを張りまして、寒夜身をすり寄せての野外すわり込みを決行いたしまして、正当な仲裁裁定に対する措置を期待いたしたのであります。しかしながら、遂に裁定金額とともに不可分の関係にあるところの実施期日を三箇月もすえ置かれまして、十一月実施とようやく決定されたのであります。また本年の裁定に至りましては、政府予算上不可能を口実に、年度内には実施する意向がないとのことでありますが、年度当初に組まれる予算に、年度中間におけるところの賃金値上げに対する予算の計上のないのは当然でありまして、それらのものを含め補正予算の措置がなされるものであろうと私は存ずるのであります。もし政府仲裁裁定の真意をわきまえ、裁定の正当性を認めるなら、当然補正予算に計上して、われわれの要望しておるところの仲裁裁定は完全に実施さるべきものであると存ずるのであります。またこのような予算上のことを口実に裁定無視の態度が許されるといたしましたら、仲裁制度そのもの自体が大きな矛盾を生じまして、公労法もまたいたずらにわれわれ労働者の基本的権利を剥奪するためのものとなりまして、とうていわれわれの納得できない無用な法律であると断ぜざるを得ない結果になると考えるものであります。  また政府は、意識してことさらにこの裁定措置に関しまして、資金上の問題に言及することを避けておるようでありますが、資金上不可能を言われておる国鉄の現状につきましては、先ほど国鉄の横山書記長からもお話がございましたが、われわれが国鉄公社より受けた説明によつて考えましても、決して不可能とは思われないのであります。すなわち国鉄の仲裁裁定実施に必要な本年度金額は九十二億七千二百九十四万円、国鉄の災害復旧費は八十八億九千三百二十二万円、また国鉄の生産性の向上、職員の努力による増収が、必要経費を差引きまして三十三億四千百五十六万五千円、またわれわれ機関車関係職員が直接みずからの努力によりまして石炭の節約をいたしました額が十四億二千六百十三万六千円、これらの数字を考慮いたしますとき、もし災害がなかつたといたしましたら、あるいは災害の復旧費を国が補償する、このようにいたしますなら、当然、今回の仲裁裁定は完全に実施されるはずでありまして、ただ災害があつたので、職員の増収に対する努力も、職員の生活も、一切が水泡に帰せられまして処置されるということは、まことに不合理であり、私どもといたしましては納得の行かない点であります。従いまして、今次の未曽有の風水害に対しましては、これを職員の賃金の犠牲によりまして復旧せしむるのでなく、当然国がこの費用を負担して、職員は災害復旧のための努力を傾注すべきであると考えております。またわれわれもその努力をいたしたのであります。このことは、私先日国鉄の天坊副総裁にも申し上げ、副総裁も災害復旧費を国が負担するなら裁定の完全実施は十分約束できるということを言明されたのであります。  以上今次の仲裁裁定に対しましては、われわれは政府の機関によつて設けられた公正な第三者の権威ある仲裁裁定であることを信じております。従いまして、決してわれわれは実施不可能な、いたずらに厖大な額を要求いたしておるものではなく、きわめて謙虚な気持に立つて完全実施を望んでおるのであります。私はこの問題の解決を政治闘争と結びつけて解決する意図は毛頭ございません。私の所属する機関車労働組合は、結成の精神といたしまして、一党一派に偏した政治権力闘争重点主義を排除することを掲げたものであります。また組合の性格も、きわめて民主的な性格を有し、日本唯一ともいうべき職能組合として今日に及んでおります。国鉄輸送のきわめて樞要な部門を担当しておるわれわれ職員で結成した組合でございます。  最後に申し上げますが、このような組合ではございますが、われわれはたび重なる政府の不法な措置に対しまして、言い知れぬ不満を持つものであります。さきの第十六国会におきましては、われわれの職務が不健康業務として長い間の既得権であつたところの恩給法の加算を、旧軍人恩給の復活とともに剥奪いたしたのであります。今また四たび仲裁裁定を蹂躪せんといたしておるのであります。しかも私考えますに、純然たる組合の経済的な要求を、政府はみずから政治問題化さんとして組合を挑発しております。このような困難な情勢の中で、われわれ労働組合があくまで事態を平和的に解決するということもまたきわめて困難でございましよう。しかし私は権威ある国会の最終的結論に絶対的希望を有しておるものであります。また心からこの事態は平和的に解決されなければならないと考えております。反面私は組合の最高の責任者といたしまして、組合の機関の決定は忠実に執行しなければならない責任もまた有しております。何とぞわれわれの意のあるところをおくみとり願いまして、慎重審議を賜わり、私どもの期待する裁定完全実施結論に達せられるよう切にお願いいたしまして、私の意見の陳述を終ります。
  18. 赤松勇

  19. 鈴木強

    鈴木参考人 全電通の鈴木でございます。私はただいま議題となつております公共企業体等労働関係法第十六条第二項の基定に基き、国会議決を求めるの案件は、公労法適用百万組合員の生活権を奪うものであり、さらに政府みずからが法の尊厳を蹂躪するものであり、まことに一方的な、しかも反動的な案件であると考えておる次第でございます。われわれを初め日本の労働者は、あげてこの案件に対して反対し、しかも重大なる関心を寄せておる本案件の審議にあたり、本連合審査会が労働者側の意見をお聞きくださる機会をお与えいただきましたことを、私は心より敬意と感謝をささげるものでございます。  私はこの機会に、日本電信電話公社所属職員の件につきまして、十五万組合員の総意を代表して意見を申し述べ、賢明なる委員各位の御理解と御賛同を得て、仲裁裁定が完全に実施できる御措置を決定していただくことを切にお願い申し上げたいと存じます。  さて、仲裁裁定が提示されるまでの経緯につきましては、すでにお手元にも案件が配付されておると思いますので、十分御了承のことと存じますので、詳細の点につきましては申し上げませんが、私ども全電通は本年三月二十日に、日本電信電話公社職員昭和二十八年四月以降の基準賃金といたしまして、平均月額一万八千五百三十二円、満十八歳男子最低保障月額八千円を主たる内容といたしまする要求書を公社当局に提出いたしました。爾来団体交渉を重ね、団体交渉が決裂して中央調停委員会へ提訴し、さらにその調停案を不満として仲裁委員会へ提訴し、八箇月間の長きにわたりまして、公労法の精神を守り、要求の平和的解決のためにあらゆる努力を尽して参つたのであります。ところが十月十三日、最終的に仲裁委員会より、裁定第十五号といたしまして、御承知の通り仲裁裁定が提示されたのでございます。この裁定は二箇月有余にわたりまして今井委員長以下関係各位が熱心に、しかも真剣に労使双方意見をお聞きになり、慎重御審議の結果裁定されたものだと私どもは了承しております。われわれはこの裁定が、当初われわれが要求いたしました戦前賃金復活を含む一万八千五百三十二円ベースとはほど遠いものであり、もちろん不満なものではありますが、しかしながら、私ども全電通は、公労法の精神を尊重いたしまして、仲裁委員会の労苦を大いに多とし、いさぎよくこの裁定に服従する態度を決定いたしました。それからわれわれはこれが完全実施のための闘いを進めておるわけでございますが、法治国家の労働運動として、私たちのとつた態度は、正しいと確認しておる次第でございます。私どもは今日この裁定実施のためにあらゆる努力を尽して、強力に闘いを進めておる次第でございます。われわれは仲裁裁定が提示されまして以来、公社並びに政府に対し、数次にわたつて交渉を持ち、これが実現のために努力をお願いいたした次第でございますが、特に公社当局との交渉の中で明確になりましたことは、公社当局としても、この裁定については慎重検討を加えて参りましたが、結論としては仲裁裁定に服従するということをきめ、すでに二十八年度の補正予算として裁定に基く額を盛り込みまして、その実施方の承認を政府に求めておることは、われわれもこれを確認しておる次第でございます。しかるに政府は、今次国会に単に予算上の理由をもつて、公労法第十六条第二項を悪用して不承認の議決を求めるの挙に出たのでありまして、まことに私どもとしては憤懣にたえない次第でございます。  以上の経緯からいたしましてここで私が皆様方に申し上げたい第一点は先ほど国鉄の横山書記長からも申されておりましたが、仲裁制度というものと、その裁定の権威というものについてでございます。われわれは国の電気通信事業に従事しておるということのゆえをもつて、憲法に保障されたストライキ権を剥奪されておるのであります。これはもちろん、われわれとしては断じて納得のできないところであります。しかし歴史の中でこの公労法というものがつくられ、しかもこの仲裁委員会というものが設置されたことは、ストライキ権を奪われたわれわれに対して、スト権にかわるべきものとして労使間の紛争に対し最終的裁定を行い、当事者裁定に服従する、こういうことを大原則としてつくられたのが公労法であり、これは明らかに公労法第三十五条の大精神であるというふうに考えておる次第でございます。従つて公労法の中の第十六条第二項というものは、私どもに言わせるならばまことに矛盾した規定でありまして、これは先ほど申し上げた公労法の精神を否定するような悪条文であるというふうに私どもは考えております。今日この条文は各方面からその矛盾が指摘されておることは、すでに皆様も御承知の通りでございます。しかも政府は、十六条第二項の条項をうまく利用せられて、口には仲裁裁定を尊重する、こういうことを言つておりますが、今日提案されております案件を見ましても、何ら公社の経理状況、あるいは経営状況というものについては触れることなく、単に予算上できないということを理由にして、すなわち第三十五条のこの公労法の根本精神まで蹂躪して、十六条第二項にウエートを置いて裁定実施ができないのだということで否定しておるのでございます。このような政府態度は、明らかに公労法を蹂躪するものでありまして、われわれの断じて許すことのできないところであります。ここに公労法適用下の百万組合員と日本の全労働者が法の権威を尊重し、国の秩序を維持するためにも、断固として政府に反省を求め、仲裁裁定完全実施のため組織の全力をあげて闘わなければならない理由があるのであります。大体法を守つているのはだれかということを私どもは率直に考えなければなりませんが、以上申し上げた観点から申しまして、われわれは明らかに公労法を守つておる。ところが、この公労法の精神を破つておるのは政府ではないかということを、私どもは考えざるを得ないのでございます。  先般東京におきましてILOのアジア地域会議が開催されましたが、その際私は、日本の労働者代表顧問として出席する機会を得ました。その際ビルマの労働者代表の方々ともお話をいたしましたが、ビルマにもやはりこういう仲裁制度的なものはあるそうでございます。しかもビルマの公務員には、ストライキ権というものが許されておるそうでございます。やはりこの仲裁制度というものは十分に活用されておりまして、いろいろな労使紛争がありましても、一旦この機関にかかつて出された裁定については、労使が完全に服従しているということで問題が解決されておりますので、まだストライキを一回もやつたことがないということを私は聞きましたが、実際に日本の仲裁裁定制度というものも、かようになければならないと思うのでありまして、私は他山の石ではないかというように考えておる次第でございます。  どうかこういつた基本的な公労法の精神を生かすために、国会における皆様方の御努力をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。そしてわれわれ公労法適用の組合が、この仲裁裁定制度について今や信頼を失わんとしておる次第でございますが、そういつた法の適用を誤まる政府に対しては、その非を是正していただきまして、どうかわれわれが今後とも正常なる労働組合運動を続けるためにも、この仲裁制度について日本の労働者が信頼の置けるような制度にしていただくことを、特にお願いを申し上げる次第でございます。  次に、第二番目に申し上げたいことは、公社の経営状況といいますか、経理状況についてでございます。この点につきましては、裁定理由書の中にもうたわれておりますが、昭和二十七年度の公社決算書をごらんになつてもおわかりになりますように、当初予算に対しまして百億円の増収をあげております。いろいろ支出もございますが、そういつたものを差引きましても利益金が四十三億円あるのでございます。これは私ども全電通の労働運動の中で、現在国民の各層から御批判をいただいております電気通信事業の再建については、労働組合か率先して再建闘争に今日まで努力して来た次第でございます。昨年度の事業計画の中で加入電話の増設あるいは市外回線の増設等の事柄を見ていただいてもおわかりのように、加入電話の当初予定された増設分は十二万九千でございましたが、実際には十八万二千箇、市外回線の増設予定九万キロに対しまして十二万四千キロ、こういうふうにそれぞれ私どもは実績を収めておる次第でございます。また工事の問題につきましても、われわれはなるべく早くこの工事を完成して皆様方の御要望に沿うために、いわば突貫工事的な形態で工事を進めまして、この完成を早め、全力を尽してわれわれは事業の再建とサービスの向上のために努力して参つたわけでございます。こういつた全電通の再建闘争の成果というものが、私は直接事業の収益の面に現われて来ているということを、特にこの際申し上げておきたいのでございます。もちろん経営者諸君の努力のあつたこともここで申し上げたいわけでございますが、こういつた中で、少くも四十三億というものが利益金として残つておる、このことは明らかであります。ただ昨年八月公社に移行いたしまして、その際公社移行に伴う政令によつて、そのうち約十九億が固定資産の中に繰入れられております。従つてそれを差引きまして、現在二十四億というものが純利益金として積み立てられておるということを、ひとつはつきり申し上げておきたいと存じます。さらに本年に入れまして、第一・四半期分の決算もできたようでありますが、大体十八億円程度の利益金を出しております。すでに電話も東京—名古屋、東京—大阪、この間につきましては即時通話ができるようになつております。今後私ども全電通が先ほど申し上げました再建闘争というものをさらに強力に推し進めて参りますならば、私ども年度においても五十億程度の利益金の増収をあげ得られるということは、ほぼ確信が持てるわけでございます。従つて裁定に必要な電通の予算は、資金的に二十五億五千万円でございますが、こういつた二十五億五千万円は、今申し上げた勘定から行きましても、実際にできるということを申し上げる次第でございます。  この点につきましては、公社側としては、前国会いろいろ御審議いただきました例の料金改訂の問題でございますが、二割五分が二割に修正されました。従つて建設資金の不足が約二十五億あるわけでございまして、現在電電公社の特別会計は、収入支出が非常に片ちんばでございます。いわゆる二十五億の収入減で、実際には二十五億を入れた形の五箇年計画が実施されるということになつておりますので、この点公社当局は、まだ国会でその見通しがつかないということで、非常に危険視しておるわけでございますが、この点が一つ。さらに水害がございまして私どもの事業も約十四億五千万円程度の損害を受けております。従つてこれの復旧に要する費用も、こういつたものの中から公社当局は出して参りたいということを考えております。公社の問題については、われわれはもちろん、私どもがあげた収入の中でやることはけつこうでございます。しかし、少くとも二十五億の前国会からの懸案の問題につきましては、前国会におきましても、議決事項といたしましても、この補正はするということになつておりますので、どうか次の国会におきましては、第二次補正としてこういつた二十五億の補填もお願いして、事業の五箇年計画が完全に実施できますように、特にお願いを申し上げておく次第でございます。  第三点として申し上げたいのは、われわれの公社の定員問題でございます。御承知の通り電気通信事業というのは、一日々々拡充強化をされて参つておりますので、その面からいたしましても、当然事業の拡充に伴う定員増ということが考えられるわけでございますが、このことがどうも公社のやり方を見ておりますと、姑息的な手段を使つておるようでありまして、現に十三台の交換台を十八人の交換手が二十四時間運行——オペレーシヨンしておるというような状態もございまして、現場の状態は非常に定員が少いために労働オーバーにあえいでおる次第でございます。われわれ組合としては、こういつた定員の状態に置くならば、皆さんの御期待に沿うようなサービスの改善ということはなかなか困難であろうというふうに考えて、現在定員問題についても交渉を進めておりますが、これは一応ここでは別にいたしまして、特にお願い申し上げたいのは、裁定理由書の中にもございますように、従来公社の定員というものが、先ほども申し上げましたように、非常に姑息な手段で処理して参りましたために、電気通信省時代から賃金支弁の要員というものがあります。従つてこういつた人たちの問題が、非常に問題になつておつたわけでございますが、一応身分的には本年の四月からこれらの方々が社員に切りかえられました。そのために実際の予算定員と現在の実際の定員との間にギヤツプが出て参りまして、結局給与総額の中で操作しなければならないということで、非常に問題が出ております。こういつた点については、仲裁委員会も、これを直さなければいけないということで、実際の予算定員と現在人員との差額八千七十一名というものを、どうかひとつ今次のこの仲裁裁定完全実施の際に予算定員に組み入れていただくように、このことをお願いする次第でございます。  最後に、私は横山書記長の申されておりましたように、日本の公労法適用下の労働組合というものが、仲裁裁定が出てから闘いが始まる。そうしてごちやごちやごちやごちや騒いでおる。また騒がせるようなことをしておる。私はこういつたことは、きわめて遺憾に存じておるわけでございまして、このことはわれわれストライキ権を奪われた労働組合に出された仲裁であるならば、明らかにこれを労使双方が服従して実施して行くという、はつきりした形で仲裁というものが実施されるならば、こういつたことは私はゆめないことではないかというふうに考えているわけでございまして、今後の問題といたしましては、われわれ特にストライキ権を奪われました労働組合に対する仲裁裁定の問題については、国会におきましても十分ひとつ御干渉いただいて、われわれが好ましくないような現在の状況の中で、どうしてもやらなければならないというところで労働組合が闘争するということのないように、この仲裁委員会の出します裁定というものは厳格に実施できるような体制を一日も早くつくつていただくことを、特にお願いいたしまして私の意見を終ります。どうもありがとうございました。
  20. 赤松勇

  21. 横川正市

    ○横川参考人 全逓の横川でございます。非常にお忙しい中、私ども関係八社の仲裁裁定実施のためのこの連合審査の会を開いていただいたことについて、心からお礼を申し上げたいと思います。  私ども郵便労働者は、これは貧富の差であるとか、あるいは思想の相違であるとか、あるいは国籍の相違であるとか、こういつたものは全然度外視いたしまして、雨が降れば雨に下着をずぶぬれにぬらして、そして皆さんとともにあることを唯一の労働として、これを天職としておるわけでございます。またもう一つは、国家財政の面では、資金運用部のこの大きな泉の中に、一滴々々つぎ込んでいるのも、同じく郵政従業員の一人々々がつぎ込んでいるわけであります。私はこういう労働者の賃金がどうあらねばならないかということを、理論的にどうこうというのでなしに、これは一般に他産業に働いている人たちの賃金、あるいはほかの官庁に働いておられる人たちの賃金、これと同じ賃金がほしいというのはこれはあたりまえのことであつて、非常に欲ばつた要求であるというふうには考えておりません。その建前から、今度の仲裁裁定は、私どもの方から要求いたしました金額とは、非常に違つた低いものではありますけれども、これも国鉄や専売や全電通の前例にならつて、もう数多くの経験をなめておりますので、これが不合理だとか合理だとかということを抜きにして、みんながそういうところで押えられるならばしかたがないじやないかということで、まずこの仲裁裁定金額実施していただきたいということを私どもは申し上げます。  これに対して郵政省側の態度でありますが、省側の態度は、仲裁裁定書の中で今井委員長が四項にあげておりますように「調停案の額は必ずしも不適当ではないとの意向を表明するに至り、電信電話公社に対する本委員会裁定後においては、調停案の額の確保は必要であるとの極めて明確な意思表示を行うようになつた。」ということが出されておりますが、私どもはこの団体交渉の席上にあつても、この金額の妥当だという点を認めているわけであります。ただ、これを資金上で申し上げますと、郵政の会計というのは非常に複雑でございまして、郵便会計、保険会計、貯金会計、委託会計その他の繰入れ会計が、小さなのを合せますと十六会計ぐらいにわたつております。その会計の中で、非常に大きな予算支出をいたします郵便会計は、これは細々ながらためた金が、大体本年度は二十億程度出て来るのではないかというように考えております。これを支出いたしますと、他の会計からの繰入金を考えて、この裁定というものは完全に実施できるという結論なつたわけであります。  ただその他の一点で、どうしてもこれは困難だと言われておりますのは、貯金会計でございます。貯金会計は、御案内のように三千億の、国民から預かつた金は、大蔵省の預金部にそのまま預けているわけであります。その預けた金額の、いわゆる運転資金として総額の六分四厘が、人件費や需品費等で郵政省へ返つて来ております。しかし足や手で歩いてそして零細な金を集めている私どものこの貯金の事業内容というものは、これは確かにコストそのものは高くなることは、もういなめないと思います。しかしその点でも、大体六分四厘程度のコストを、これを維持しながら、この零細な金を集めているわけであります。これは市中銀行の、あるいは相互銀行等のコストと比較いたしましても、決して並はずれた高いものでありませんで、〇・〇七%というのが大体このコストの比較であります。その貯金会計は、どうしても一般会計から繰入れてもらわない限り、今度の仲裁裁定実施する財源がありませんので、この点は政府に対してぜひ繰入れていただきたい、こういうことを申し上げておるわけであります。  先ほども申し上げましたように、私どもは他との比較において、必ずしも並はずれたものを要求しておりませんし、またそれを実施する内容においても、決して無理のある内容を持つておりません。ことに郵便料金の問題では、三種いわゆる新聞等においては、今一円で配達いたしております。これはどこへ配達するのにも一円で配達するわけであります。それが原価計算いたしますと、約十七円程度になつております。それがどうしてそういうふうになるかと申しますと、いなかの郵便局へ行きますと、郵便配達ということよりか、新聞配達といつた方が適当なくらい軒並に新聞が配達されておるわけであります。こういうような状態というものは、これは文化財保護とか、あるいは公共奉仕のための仕事であるとか、こういつたことだけでは、ちよつと理由にならない理由のもとに、こういう低廉な料金でやつておるわけでありまして、こういう低廉な料金でやりながら、なおかつ郵便の場合には非常に節約をし、あるいは人の足りないところを何とかみんなの手で補いながら、ささやかな利益を上げているというのが現在の郵便事業の実態であります。こういう状態から、私どもは、今度の裁定実施できるかできないか、それを法律論でどうこう解釈するとかしないとか、こういつたことは、まつたく実際からはそんなことは理由にならない。実際上は、こんな中で働いて、こんな賃金しかもらつておらないのだから、これは法律できめられたものは実施してくれというのが、りくつなしに郵便労働者が声を大きくして皆さんに訴えている内容なんであります。  私は先ほどから立つておるいろいろな人たちが申し上げている内容の中で、一つやはり申し添えておかなければならないことは、この前の新聞の記事の中で、公共の福祉の問題と、それからそれに関連しての政府答弁の中で、争議と仲裁裁定は別だということが出ておりました。別か別でないかということは、これはもう今までの長い歴史の中で、皆さんが国会で討論して来た中で明白でありまして、私どもは、これは単に思想や世界観の相違だけで、それぞれの認識の相違は片づけられる問題だというふうには考えておりません。確かに公共の福祉という問題は、これは公益の事業に携わつておるものにとつては、非常に大切なものであるということは、これは言をまたないと思うのであります。しかし、全逓という組合は、かつては労働烽火の中でストライキを打つた組合でありまして、皆さんも御案内のように二十四年の三月には全国にわたつて一週間以上のストライキを行つておるわけであります。このストライキを行つたときに、なぜこれが禁止されたかということは、占領軍が占領目的を遂行するのに有害であるということから全逓だけがやり玉に上つて、そして政令二百一号と公務員法の中に押し込められて行つたわけでありまして、占領が解けたあとでは、これはおのずとその国の良識の中で労働関係法というものは新しく生れて来るのがほんとうだろうと思います。それの肩がわりになつ仲裁裁定に最後の責任を負わせたこの公企労法というのは、これは単に予算上質金上といつた問題でほご紙のようにしてしまう、そういうなまやさしい内容のものでないというふうに理解いたしておるわけであります。このために私どもは今、年末を控えて、皆さんのはがきや小包やその他のものを普通にいたしまして千億——これは厖大な数であります。年賀はがきは五億以上おそらく出るでありましようし、小包は一億五千以上出るでありましよう。その他の書状なども決して少いものでもありません。しかし、これらをまかなうには、定員をもつてしては、どうしてもまかなえません。そういたしますと、必然的にオーバー労働するか、あるいは個人の非常に大きな犠牲においてさばかない限りは、さばき切れないわけであります。しかし、今度もしも仲裁裁定が大衆の意思に沿わない形で国会できめられるというようなことになれば、全逓従業員二十三万が、職場の中でもつて、こんなオーバー労働はいやだということを言い出すことは、火を見るよりも明らかであります。法律はお互いに守らなければいけない、国会はこれを尊重してもらわなければならない。そうして大衆はほんとうに国会を信頼することによつて、秩序を守つて行きたい。この簡単なことを、私どもにも実施させていただきたいと思うのであります。  簡単でありますが、私の公述を終りたいと思います。(拍手)
  22. 赤松勇

  23. 妹尾敏雄

    ○妹尾参考人 林野庁関係職員に下されました仲裁裁定に関しまして、その経過の概要並びに全林野労働組合の意見表明いたします。  本年の初め公労法の適用に伴いまして、林野庁関係職員は、定員内職員はもちろんのこと、現場に働いておるいわゆる労務職員を含めまして、一切の職員はその法の適用下に入つたわけであります。われわれは今年の二月に至りまして、二万一千円ベースを本年の一月一日以降実施すべきであるという要求を提出いたしまして、数次の団交を重ねたのでありますが、当局は、その額において、その大綱におきまして、なお基本的な考え方におきまして、全面的に組合要求を拒否いたし、四月の二日に至りまして、双方団体交渉の決裂を確認したわけであります。われわれは公労法の第二十四条二号の規定によりまして、中央調停委員会に対し調停の申請をいたしました。六月の二十六日に調停案が提示されたのでありますが、基本的にわれわれの要求とあまりにもかけ離れるがゆえに、われわれはこれを拒否いたしまして、九月十四日公労法第三十四条第二号の規定によりまして、仲裁の申請をいたし、十月二十七日仲裁裁定が出たというのがその経過の概要でございます。  私たちは公労法第三十五条によりまして、この仲裁裁定に服したのでありますが、しかるに政府は法の精神を踏みにじりまして、みずからこの仲裁裁定を拒否するがごとき態度に今日ありますことは、われわれの最も遺憾とする点でありまして、先ほど来各参考人が述べられておりますように、最終的な紛争解決の場として示されました仲裁裁定政府みずからが否定するとするならば、一体いかなる手段をもつて紛争の解決をはからんとするのか、われわれはここに法の権威が地に落ち、仲裁裁定が一片のほごと化するならば、民主主義のルールに基くところの姿は憂慮すべき事態を生ずるのではないかということをすこぶる懸念する次第であります。従いまして、私どもあえて議員各位にお願い申し上げたいことは、この法の精神に基くところの仲裁裁定は完全に実施すべきであり、実施していただきたいということを前言として申し上げます。  それならば、一体林野関係職員に示されましたこの仲裁裁定は、はたして予算上資金上不可能であるかという点でございますが、冒頭に今井仲裁委員長が申し述べられました通り、問題は予算関係にのみあり得る姿にあるということをあえて申し上げたい。そのことは、二十八年度の業務収入といたしまして、木竹売払代約五十七億及び林野加工品売払代二百二十四億、合計二百八十一億が予定収入額でありますが、価格の上昇に伴うところの自然増収分を約一割見込みますときに、二十八億という増収分が明らかに上り得るわけであります。もちろん現在の市場価格の状態を見まする際に、林野の場合におきましては、低価格政策をもととするところの他の国営事業と異なりまして、その市場価格を基礎とするがゆえに、現在すでに申し述べるまでもなく、二、三割の上昇率を示しておるということは自明の理であります。われわれといたしましては、この自然増収分に対します考え方といたしまして、安全度をとりまして約一割の増収分を見ましても、二十八億という剰余金が浮ぶということを判断するわけでございます。従いまして、仲裁裁定実施に伴う所要経費といたしまして八億七千万の微々たる額は、この二十八億の中から当然出し得るものである、かように判断いたすわけであり、かつまた仲裁裁定理由書にも明言せられておる事実でございます。  このような立場におきまして、われわれはこの仲裁裁定が、法の理念に基きましても実施すべきであり、かつまたその財源の面において明らかに実施し得るという判断を持つがゆえに、政府が拒否するところの姿はあり得ない、かように考えるわけであります。  最後に、林野関係の職員の中には、いわゆる定員内職員と定員外職員があることを十分に御認識願いたい。そのことは、御承知のように定員内職員の場合におきましては、あるいは政府のいうところの給与総額云々の問題がありましようが、定員外職員におきましては、しかもこの定員外職員は最盛期におきましては十五万、平均いたしまして十万ないし十五万の間を往復する厖大な職員でありますが、この定員外職員に対するところの給与は、いわゆる事業費の中の賃金支弁でございまして、何ら給与総額を云々するところの問題とは関連がないということを、はつきりと申し上げたいと思うわけであります。従いましてわれわれはこの仲裁裁定実施するために、政府がいうところの姿は、前々参考人各位から申し上げました通り、当面を糊塗するところの状態にすぎない、かように断ぜざるを得ません。  以上でもつて、簡単でありますが一応参考意見を終ります。
  24. 赤松勇

  25. 原田正夫

    ○原田参考人 全造幣労働組合の原田であります。  本年四月以降の賃金改訂に関しまして、当組合は去る五月の十八日に造幣局長に対して要求書を提出いたしまして、以後両当事者間において再三にわたつて団体交渉行つたのでありますが、残念ながら妥結に至りませんで、その定めるところに従いまして、六月一日中央調停委員会に対して調停申請行つたのであります。越えて七月の十六日に調停委員会より四月以降一万四千四百五十円という調停案の提示を見たのでありますが、組合は、この提示をあらゆる角度から検討いたしまして、慎重審議の結果、はなはだ遺憾ではありましたが、これは受諾できないという結論に達しまして回答いたしたのでありますが、さらに事態を進展させるために、八月の二十日に仲裁委員会に対して仲裁申請を行いました。これに対して仲裁委員会からは十月の二十七日に裁定を下したのでありますが、その内容は八月の一日以降一万四千四百五十円となつております。そのことはすでに各位のお手元にある資料で御承知のことと思いますが、これらのことにつきましては、金額は一応ともかくといたしましても、実施の期日等について調停案の四月に対して八月以降となつているというようなことは、われわれとしてはまことに遺憾とするところで納得できないのでありますが、このことについても、先ほどから各組合が申し述べております通り、公労法の精神にのつとつて、これは組合としても尊重いたさねばならないであろうということで、組合としては仲裁案を尊重いたす考えであります。  ところが、官側及び政府側がこの裁定について誠意を示さないことは、はなはだ残念でございますが、この裁定実施いたしますと、一体どのくらいの財源がいるかという問題であります。このことは裁定書の末尾にも明記されてございますが、造幣の場合には約三千万円程度経費を必要といたすわけでございます。この程度の財源は、組合といたしましては、まつたく仲裁委員会と同じ意見でありまして、その末尾に書かれております通り、造幣局に対して二十八年度既配賦予算の予備費が一億何がしございますが、この約一億円の中から三分の一程度を流用することによつて実施が可能であるというように考えております。  そこで仲裁裁定提示後、造幣局との間に再三団体交渉を行いましたが、当局はこの仲裁案で示された数字については妥当であろう、この程度の数字が現在造幣局の職員にとつて給与としては妥当であることは認める。これは認めるけれども、それを実施するためには、予算上の裏づけがないからできないのだということで、いまだに対立を続けておりますし、なお当局といたしましては、これらにつきまして組合に、組合の主張する通り、予備費の流用ということも確かに実施するための一つの方法ではあると思うが、現在造幣局長にはその権限もないし、予備費というものは人件費のためにだけあるのではない。第一予備費の流用によつてまかなえるということは、仲裁裁定の主文に書かれていないではないか、これは理由書の中に言われていることにすぎない。主文と違つて理由書の中に書かれていることについては、政府に対する拘束力がないのだ。主文だけは政府に対する拘束力はあるであろうが、理由書の中に書かれているものにはない。このようなことを申しているわけでございますが、その後再三団体交渉を行いました結果、これらの問題を突き詰めて参りますと、結局流用の権限ということがこの問題の最重要点となつて来たのであります。従いまして、造幣当局の考えといたしましては、つまるところ政府並びに国会がこの予備費からの流用を認めるということにしてくれるならば、造幣局の場合には、さらに予算上の増額の要求を行わなくても、裁定実施は可能であろうというように言つております。これが最終的な結論でございます。  それでは、一体造幣局においては、従来予備費はどのように使われておつたろうか、どのようになつておつたろうかというような点でございます。昭和二十六年度には約九千三百万円程度の予備費がございましたが、この予備費はジエーン台風と退職金等のために約八千万円程度使つております。それから昨二十七年度におきましても、総額九千万円のうち、人件費その他を合せまして約六千万円程度の予備費の流用を行つております。このように、毎年予備費を使つておるのですから、何も本年に限つて予備費を流用することができないのだというように断定つけることは、われわれとしてははなはだ不可能でありますし、この仲裁裁定実施するといたしましても、すでに配賦されております造幣局の予算でまかなえるのならば、これは実施すべきものではないかと考えております。このように相なつて参りますと、結果的にはすでに予算の問題でなくして、ただ単に給与総額をどうするか、あるいは手続をどうするか、やれ大蔵大臣の承認が必要であるとか、あるいは閣議決定が必要であるとかというような単なる手続上の問題になつて来るのではないかと考えられるのでございます。財源的にまつたく可能でありさえすれば、政府並びに造幣局は、実施のためにあらゆる努力を払つてこそ、しかるべきでありましよう。そのこと自体が、政府自身がつくつた公労法の精神であるのではないかと思うのであります。しかるに何ら誠意も尽さず、自分からつくつた法律を、一方にはこれを守りなさい、私はこれを蹂躙しますというような態度は、われわれとしてはまことに残念である。第三者から見ても、こんな態度はおそらく言語道断といわなければならないのじやないかと思います。ほかにいろいろございますけれども、計数上の問題につきましては、後刻御質問並びにその他必要に応じて、私以外の参考人も出ておりますから、お答えを申し上げることといたします。以上申しましたことを議員各位はよく御賢察くださいまして、仲裁裁定実施のために適切なる処置をなされるよう組合として深く要望いたす次第であります。(拍手)
  26. 赤松勇

    赤松委員長 委員の皆さんにお願いいたしますが、明日は午前十時より始めまして、先ほど申し上げましたように、大蔵大臣農林大臣提案理由説明がございます。なお今井仲裁委員長は、重ねて申し上げますが、午前中ということになつておりますが、それぞれ政府及び仲裁委員長に対して質問があろうかと思いますので、その際御質問なさいます委員の皆さんは、御手数ながら本日中に発言の通告をしておいていただきたい、かように思います。  なお、あとは全印刷と全専売の二つの組合でございますが、全印刷労働組合の方から、給与対策部長の杉山秀雄君に補足説明をさしていただきたいという希望があります。これは了承いたしました。しかしながら、時間がございませんし、実は本日の発言の通告も、私のところに相当たくさん参つておりますので、ひとつ参考人の発言も時間の点を御考慮くださいまして、御協力をお願いしたい、かように思います。  それで全印刷労働組合中央執行委員島田和三郎君。
  27. 島田和三郎

    ○島田参考人 御指名をいただきました全印刷労働組執行委員長の島田でございます。このたび国会に付議されました印刷局職員の給与改訂に関する仲裁裁定につきまして、簡単に述べさしていただきたいと思います。  私ども印刷局の職員は、銀行券を中心といたし、国会関係、郵政関係等の印刷物を製造いたしておりまして、生活に追われながらも製造能率向上のために、作業上の悪条件と克服いたしまして、現在増産の実をあげております。しかしながら、貧しい職員の生活は、去る四月印刷局当局に提出いたしました給与ベース引上げの要求となつて参つたのでございます。不幸にいたしまして交渉は不調に終りまして、調停及び仲裁委員会の手を煩わすことになつたのでございますが、裁定をいただきまして以来数回の交渉の席上におきまして、印刷局当局は大要次のごとき言明を行つておるのでございます。すなわち、仲裁裁定実施のための資金上の問題について、印刷局だけで考えるならば困難はないと思うが、いずれ国会において資金上の措置について説明いたすことになるのでありましよう、予算上の問題については、大蔵大臣の権限の問題であり、かつ政府の一般的政策の問題となるのでお答えの限りではない。局長といたしましては、印刷局独自の問題であるならば実施いたしたい、このように答弁なされておるのであります。  それから十月九日の小笠原大蔵大臣との会見の席上におきまして、大臣はこのように述べておられるのであります。すなわち、君たちのところは問題はない、政府としては裁定実施できないところをあわせて考えておるので、全般的な問題として現在考慮いたしておるのである、このように答弁されておつたのでございます。  以上申し上げました大蔵大臣、印刷局長の答弁にもあります通り、資金上問題のないことは、各委員に御了解いただけると思うのであります。また予算上の問題であります。現業庁に公労法の適用を受けない職員のおりますのは、公労法の定めるところでございます。両者の給与上の均衡につきましては、公労法の改正に際して当然予想されるところであります。この均衡を理由といたしまして、仲裁裁定実施を回避しようとすることは、公労法の無視であると考えるのであります。当初予算におきましても、給与改訂を見込む場合以外はすべて予算上不可能とするならば、給与改訂に関する仲裁制度の意義は、大半失われるのではなかろうかと考えられます、また印刷局当局といたしましても、売上高の増加は種種の条件が積み重なつてなし得られるのでございますが、重要なることは、職員の積極的な努力と協力であります。職員の協力と努力なくしては実現できないのでございます。しかるに、増産によつて出たところの益金を認めながら、仲裁裁定実施してもらえず、職員に何ら報いられるところもないとするならば、職員の協力が失われるおそれさえ生ずるのでございます。わが国の印刷産業労働者の賃金と比較いたしましても、私ども賃金は低いのでございまして、公務員でありますがゆえに、労働の態様を同じくしながら、同種企業並の賃金を保障していただけない現状であります。従つて、優秀なる技術者を印刷局にとどめておくことにも不安があるのでございまして、かかる状態は、ひいては企業の円滑なる運営に支障を来すのではないかとさえ思われるのでございます。  以上申し上げましたように、印刷局の職員並びに家族は、真剣に裁定に対しまする結論を見守り、かつ裁定実施を切望いたしておるのであります。  以上裁定が完全に実施せられますよう心からお願い申し上げまして、私の陳述を終らしていただきたいと思います。  なお、委員長の方から申し上げましたように、資金上の数字につきましては、賃金対策部長の方から御説明申し上げたいと思います。
  28. 赤松勇

  29. 杉山秀雄

    ○杉山参考人 ただいま申し述べました印刷局職員の仲裁裁定につきまして、主として資金上の問題を申し述べさしていただきたいと思います。  印刷局特別会計におきまする二十八年度の予定純益金は約五億円でございます。この五億円のうち、資本増加の分といたしまして、約二億一千万円が予定されております。そして一般会計に納付いたすべき益金は約二億九千万円の予定でございます。そこでこの純益金が本年度においてどのような見通しになるかと考えますと、すでに印刷局当局におきましても、製造数量の増加を見込みまして、製造計画の変更をいたしております。従いまして、この製造計画の変更による増産、これによりまして生ずるところの収益増、売上高の増加というものは六億円以上になるのでございます。この売上高の増加に伴いまして、純益金も当然増して参ります。そしてさらにこの製造数量の増加の中に占めるところの労務費に相当する分は、これがまた益金になるのでございます。超過勤務手当は、製造数量の増加に伴いまして若干増加いたすのは当然でございますけれども、超過勤務手当を除きましたところの労務費につきましては、これは益金となり得るものでございます。従いまして、私どもの印刷局職員の仲裁裁定実施に必要なる資金は、この製造数量の増加に伴いまするところの労務費相当分によりまして、実施できるのでございます。しかも、これは製造数量の増加予定量が百パーセント達成され得れば、もちろん問題ございませんが、これが必ずしも百パーセント達成いたされないといたしましても、この五割が達成されますならば、この製造数量の増加に伴いますところの益金並びに労務費相当分の益金によりまして、仲裁裁定実施できるわけでございます。もちろん現在印刷局職員の賃金が民間に比べまして非常に低くされておりますところの原因は、単価の問題にございます。従いまして、この単価の改正をいたしますならば、問題はないことはもちろんでございます。そして印刷局の特別会計で予定いたしておりますところの二億九千万円の一般会計への納付益金には何ら手をつけずして、この私ども仲裁裁定は完全に実施できると考えます。もちろん民間の印刷産業労働者の賃金水準に印刷局職員の賃金水準を引上げるということによりまして、印刷局事業に重大な支障を及ぼすというようなことはあろうはずがありません。従いまして、印刷局事業におきましては、資金上は完全にこの印刷局職員の仲裁裁定実施できるのでございます。  なお、仲裁裁定の中には、印刷局職員の仲裁裁定実施に関する資金として八千万円、それからこのたび提出されましたところの政府の議案の中には九千万円と予定されております。しかしながら、この政府の九千万円という数字の中には、非常勤職員の手当並びに常勤労務者の賃金の増額は全然見込んでおりません。また給与総額の中におきまするところの、特殊勤務手当の増額も見込んでおりません。それから年末手当は〇・二五箇月分といたしまして見込んでございます。しかしながら、政府もたびたび言明いたされておりますように、年末手当としては〇・七五箇月分出したい、こういうふうに言われておりますので、これらをすべて計上いたしますならば、政府の九千万円でなくて、一億三千万円の資金が必要でございます。印刷局職員は、日夜国の印刷物の製造のために積極的な協力と努力をいたしておりまするが、これらの仲裁裁定も、しかも益金の増しになり増収によつた労務費相当分によつて実施できる賃金さえも、これを政府実施しないということになりますれば、職員の協力も努力も失われて行くであろうと存じます。ましてや、民間賃金水準に比べましてきわめて低い額で押えておりますならば、優秀な技術者を長くこの事業の内にとどめておくことは、また不可能でございます。生活に追われておりまするところの職員に対しまして、何らの報いるところがございませんでしたならば、職員は賃金に対する不満が絶えず爆発いたしまして、労使間の円満な関係の樹立というものは維持できないと存ずるのでございます。  どうかよろしく御審議賜わりまして、仲裁裁定完全実施をくださいまするよう、お願いいたす次第でございます。
  30. 赤松勇

  31. 平林剛

    ○平林参考人 私は全専売労働組合の平林剛でございます。このたび国会に付議されました専売裁定第十三号の件につきまして、その概要を申し上げ、組合側としての考え方を明らかにいたしたいと思います。  今回の仲裁裁定の内容は、専売職員の基準賃金を、八月以降月額平均一万四千八百五十円に改訂するということを中心にしたものであります。仲裁委員会は、組合側の主張の中心でありました労働生産性の回復を、どう賃金に結びつけるかという問題と、組合要求いたしました賃金一万八千円を裏づけにいたしましたマーケツト・バスケツト方式による資料、並びに仲裁作業の途中において公社側が提示した四つの数字を、総合勘案いたしまして、結局調停案において示された一万四千八百五十円の額をとることが相当であると判断した模様でありますが、この額に達するまでの説明は十分でなく、何となく諸般の事情を考慮して、最低の賃金に押えた印象があります。これはきようの今井仲裁委員長の証言でも明らかでありまして、当事者たる公社側の言い分の百パーセント取上げて、組合側の主張がこのために消されてしまつた形であります。  私ども裁定に対する不満はこれだけではなく、特に仲裁委員会が、組合が今回要求した一万八千円の賃金で、一体どれだけの生活を営み得るかということの具体的資料を提出いたしました態度は認めましたけれども、現実的には基準賃金だけで標準生活費をまかなうことはまずい、こういう否定の仕方をしたのであります。言いかえれば、今回の仲裁委員会裁定額は、たとえば、超過労働であるとか、内職であるとか、副業であるとか、家族の収入であるとか、そういうすべての収入を合せて生活を維持すべきである、こういう考え方で裁定を提出したわけでありまして、一万四千八百五十円という数字は、言いかえればそういう裁定賃金額であります。  また裁定賃金一万四千八百五十円の実施月にいたしましても、今日の今井仲裁委員長説明によりますと、労使双方当事者間の意見の相違のない点は、これを裁定の中に組み入れる態度で仲裁の審議を進めたと言いながらも、実は調停案では四月実施になつておつたのを八月実施に組みかえておるのであります。これは多分全般的な国家財政上の考慮を払つたものと思われますが、切実な生活困窮の中で苦しんでおる労働者にとりましては、まことに大きな不満であります。  もう一つ、公労法の建前による仲裁裁定は、これで四回目でありますが、今度の裁定による賃金のアツプ率は、従来の中で最も少率であります。つまり昭和二十六年八月以降の賃金に関する裁定七千九百円と翌年四月以降の賃金裁定一万四百円と比較をいたしますと、約三一・六%のアツプ率になつておりましたが、昭和二十七年十月以降の賃金裁定一万三千百円と比較いたしますと、これまた約二五・九%になつております。ところが今回の裁定によりますアツプ率は、実質的に見まして一〇%にすぎないのであります。これを具体的に申し上げますと、組合員の中で一番低い給料を受けておる労働者は、この裁定によりまして、昨年に比較をして本俸において約五百十円よけいちようだいするだけであります。生活の中心になつてつて最も苦しんでおる組合員を例にとりますと、現在二十号俸の労働者が、本俸において約八百三十五円アツプする。三十三号俸の者でありましても約千二百七十円上る。これだけでこれから一年間の生活を維持して行けというのが今回の裁定であります。組合は、この仲裁裁定につきまして、いろいろのことを考えました。しかし公労法の建前から、この裁定には服従しようという考えで、仲裁委員会ですべてのことを主張して来たのでありますから、今回はこの裁定をもつて紛争を解決する以外にはないという見解に立つたのであります。この真情につきましては皆さんの御了察をお願いしたいのであります。  政府はこの仲裁裁定に対しまして、予算上不可能であるという理由で、この国会に付議をいたしております。しかし私どもはこの理由に対しまして納得することができません。仲裁裁定実施するために必要な予算は、昭和こ十八年度予算からながめまして、約六億三百八十九万六千四百九十六円必要でありますが、組合側見解は、次の理由裁定予算上不可能であると主張いたしたいのであります。  第一には、昭和二十八年度予算中にある予備費から流用措置をとることができるからであります。昭和二十八年度予算をながめますと、予備費として十四億六千万円組んであります。このうち約四億五千万円は、昨年の裁定実施のために使用いたしました。昨年の裁定にありました業績賞与を履行するために使いました。西日本を含む災害復旧費として現在要求をされておるのが三億円程度でありまするが、この予定された、あるいは既使用分を除きましても、約七億一千万円の残額があるわけでありますから、今回の裁定実施に必要な六億三百八十九万円は、予備費の流用によりまして実施可能であるわけであります。本日はまだ政府側並びに専売公社側から具体的な説明がありませんが、おそらく公社側は、この予備費は葉タバコ購入価格を引下げることに使うから、予備費の利用は困難であるという説明をすると思うのであります、しかし今回の葉タバコ購入価格の引上げについての処置は、昭和二十八年度の補正予算の中で約三十三億円を補正しておりますから、専売公社はこれでもなお不足であるというかもしれませんが、これは私は本来誤つた主張である、誤つた理由であると思います。葉タバコ購入価格の引上げは、葉タバコ耕作者にとりましては、その生産費の引上げで、労働関係でいえば賃金のアツプと同じような性質のものであります。従つてこれは当然補正予算の中で十分考慮すべきものでありまして、不足分を予備費で補うというような不確定なものにすべきものではないはずであります。もしこれを理由にして不可能であるというようなことになりましたならば、葉タバコ耕作者のためにも十分究明していただきたいと思うのであります。  裁定予算上可能であるという主張は、専売公社の今後の運営面からながめてみても、予定歳入超過額が期待し得るという点でも言い得るのであります。製造タバコの売行きは、昨年と同様良好な成績を示しておりまして、これは二十八年四月から九月までの六箇月間におけるタバコ売上げ成績を見ましても、予定額に対しまして約四・四%、金額にして四四億円増の実績をあげております。これを年度平均に見ますと、今後少くとも八十八億円の売上げ超過額は確保できると思いますから、今回補正予算で五十億円の専売益金増を繰入れましても、なお三十三億円の売上増が見込まれるわけであります。この角度から見ましても、専売公社側と労働者側が互いに今後の運営に協力いたしますならば、今回の裁定を履行いたしましても、十分おつりが来るという勘定になるのであります。私は、為政者である政府当局が、すみやかに法律の建前通り裁定を履行に付し、専売公社側の労働者の働きに期待をいたして裁定を完全に実施するという態度こそ、筋が通つた政治であり、賢明な経営者としての態度であると考えるのであります。  特に重視すべきことは、昭和二十八年度の補正予算の編成に際しまして、専売公社側が調停案の一万四千八百五十円の予算化を要求しておるという事実であります。これは専売公社当局におきましても、二十八年度予算においては、少くとも一万四千八百五十円は必要であるという見解に立つていたことを証明するものであります。言いかえれば、今回の裁定による賃金額の履行を渋つているのは、当事者である専売公社ではなくて、政府であるといえるのであります。裁定実施がないために、再び拡大しようとしている紛争に油を注いでいるのも、私に言わせれば政府当局である。本日は公共企業体関係のある八単産それぞれが、その裁定実施予算上可能である、また法律の趣旨から、実施のために大いに努力をするのは当然であるということを主張いたしております。もちろん三つの公社と五つの現業庁の中では、それぞれ特質がありますけれども、少くとも今回政府がこの国会に対してとつたよう八つ裁定を、十ぱ一からげにして不可能であるというふうに済ましておりますのは、裁定に対するまじめな態度とはいえないと私は思います。国会における慎重な御審議によりまして、裁定問題の取扱いを正道に返してもらうことを心からお願いいたしまして、私の主張を終ることにいたします。
  32. 赤松勇

    赤松委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終了いたしました。  これより質疑を許します。山花秀雄君。
  33. 山花秀雄

    ○山花委員 一言だけ参考人にお尋ねをいたしたいと思います。それは、去る本会議におきまして、私が緒方国務大臣に、従来十回にわたる国鉄と専売の仲裁裁定に対して、完全履行をしておるかどうか。私の記憶によりますと、第四回国鉄裁定の北海道の石炭関係、第七回国鉄裁定の夜勤手当、第十回国鉄裁定の退職手当、これは実施したように考え、三回しか実施していない。こういう質問に対して緒方国務大臣から、完全に五回実施しておる、こういう答弁がなされました。このように国会の本会議の答弁でずいぶん食い違いを来しておりますことは、今後の審議の過程においても、非常に重要に考えられますので、当事者である組合側、特に従来の裁定は国鉄と専売でございましたから、国鉄、専売の方から、従来の十回にわたる裁定につき、何回これが完全に実行されたかということを明らかにされたいと思うのであります。
  34. 柴谷要

    ○柴谷参考人 ただいまのお尋ねにつきまして御回答を申し上げます。  国鉄労働組合関係でありますが、国鉄労働組合仲裁申請をいたしましたのは、今回を通じまして前後七回であります。特に御質問の中にありました第四号、第七号、第十号の国鉄の問題についての裁定につきましては、実施をされておりますが、ベース・アツプの問題につきまして、裁定第一号、第三号、第八号、今回は第十四号でありますが、この点につきましては、実施をされておらないということをお答え申し上げます。特に裁定第一号につきましては、四十五億の支給ということで裁定が下されましたが、十五億五百万円の実施しかなされておりません。第三号のべース改訂につきましては、八千二百円という裁定が行われました。これは期日は四月一日から実施であります。この問題につきましては、八月から実施ということで、いわゆる四、五、六、七の実施がなされておらないということを申し上げます。次に第八号、一万三千四百円べース改訂につきましては、期日は八月以降の実施でありましたが、これまた十一月からの実施で、八、九、十の三箇月は実施されておらないということをお答え申し上げます。
  35. 佐藤維恭

    ○佐藤参考人 ただいまの御質問に対しまして、専売関係仲裁裁定第五号、第六号並びに第九号につきましてお答え申し上げます。  仲裁裁定の第五号は昭和二十六年三月二日なされたものでありまして、これは私どもが当初要求いたしました八千七百四円ベースに対しまして、当事者間においても団体交渉の過程を繰返しましたが、決裂いたしまして、調停委員会に移行いたしました。しかし、この問題は当事者同士で非常に紛糾いたしました関係上、調停委員会におきましては、調停の中においては結論はなかなか得られないではなかろうか、このような考え方をもちまして、調停委員会の決議をもつて仲裁請求の手続を行いました。これに対しまして仲裁委員会は、昭和二十六年度におきます基準賃金は七千九百円に改訂する、かような裁定を提示いたしました。しかしこれに対しまして仲裁委員会は、さらに当事者双方に対しまして、いわゆる号俸表の問題につきまして一つの指示を与えました。それは、その当時一号から六十号俸までの号俸表に対しまして最低と最高を与えました。そしてその問題を等比級数で結ぶような一つの示唆を行いました。これに対しまして、当事者双方におきまして協定を行いまして、公社は既定予算内において若干の流用を行い裁定実施いたしました。このような経緯をもちまして、この仲裁裁定第五号は国会における問題は生じませんでした。従いまして、今回の本会議の答弁の際におきます緒方副総理が言われたというふうな点には、本件は該当いたさないと考えております。  さらに仲裁裁定の第六号でございますが、これは昭和二十六年十月十二日に提示されました。私どもは同じく一万三千八百円べースの要求を行いまして仲裁委員会に移行いたしましたが、仲裁裁定の第六号は、昭和二十六年度における公社職員の基準賃金は、八月以降の分を平均月額一万四百円に改訂する、かような裁定が提示されました。しかし、これは公社の既定予算の中におきます給与総額規定する人件費よりも約十一億程度上まわるものでありましたため、その当時政府は、一般公務員の給与引上げに伴いまして専売職員の給与も同様に引上げを実施することが考慮されておりました。そして専売職員の給与を引上げるための補正予算国会に上程されておりましたために、政府といたしましても、仲裁裁定実施に関してその補正予算実施されることを考慮して、予算の検討を行つておつたのでございますが、補正予算実施されたといたしましても、さらに約四億円程度不足いたしますために、仲裁裁定予算上資金上実施不可能であるといたしまして、国会は付議されることになつたのでございます。しかし、この国会において審議中、政府はさらに予算措置を検討いたしました結果、年末手当と超過勤務手当を仲裁裁定の示しました基本給に繰り入れることによりまして裁定実施可能である、このような見解をとりまして、政府みずからその実施を衆議院労働委員会に報告いたしましたためは、労働委員会国会審議の対象が消滅したことを確認いたしまして、国会における議決はございませんでした。これは補正予算で約四億円の足りない分に対しまして、結局積極的に年末手当あるいは超過勤務手当あたりから充当いたしましたために、完全には仲裁裁定の第六号は実施されておりません。いわば今回の裁定では一部実施、一部不実施というような形であろうと思います。 さらに、昨二十七年の十一月に提示されました仲裁裁定第九号は、一万三千百円に改訂するような今回のわれわれの賃金でございますが、しかしこの問題につきましても、国会に付議されることなく、当事者間の行政措置によりまして、それぞれ一部を除きまして実施されておるような関係になつております。従いまして、仲裁裁定が過去五回にわたつて完全に実施されたということを申しておりますが、しかし国会にかかりまして、一部実施されたように見られるのは、わずか仲裁裁定の第六号だけでございまして、これもいわゆる年末手当あるいは超過勤務手当をこの中に織り込みまして実施いたしたものでありまして、完全には実施されていないとわれわれは考えております。
  36. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまの説明によりまして、過去の一号から十号までのうちの二号を除く点だけは明らかになりました。そこで二号の点をお尋ねしたいと思いますが、これはやはり専売裁定でございます。国会審議の途中で一応承認された形になつておりますが、但し、報償金制度については未解決のままでこの問題が解決したというふうに聞いておるのでございますが、この点専売の方からひとつ御回答を願いたいと思います。
  37. 佐藤維恭

    ○佐藤参考人 報償金制度の問題でございますが、これはその当時完全なる賞与制度をつくるまで、その一応の経過措置といたしまして、生産報償金制度なるものが、当時の仲裁裁定二号で出されておつたのでございますが、しかし、その後これも完全なる賞与制度ができておりません。従いまして、これにつきましても、仲裁裁定はやはり完全に実施されていないと、私ども考えておるのでございます。しかしながら、これにつきまして仲裁裁定の第九号によりまして、業績賞与というようなものが出されて参りました。さらにその業績賞与自体も、完全な賞与制度ではございません。しかしその代償といたしまして、仲裁裁定の二号に経過措置として出されました生産報償金制度を、今回の二十八年度予算中から政府は抹殺いたしておるのでございます。そのような過程を考えてみますと、やはり仲裁裁定の第二号も実施されていないと、われわれは考えておる次第であります。
  38. 山花秀雄

    ○山花委員 緒方国務大臣の私の質問に対する答弁の食い違いは、組合側説明によつて明らかにされました。きようは政府側も来ておりませんので、明日この問題について引続き質問をしたいと思います。他の委員からも質問があるそうでございますから、私はこれでやめます。
  39. 赤松勇

    赤松委員長 労働省の政府委員、それでいいですね。——松前重義君。
  40. 松前重義

    ○松前委員 簡単に御質問を申し上げます。この問題は各組合に共通な問題であると思うのでありますが、さしむき私の属しております電通委員会、あるいはかつての経験を持つた立場におきまして、全電通と全逓の方々に御答弁を願いたいと思のであります。  団体交渉をやられましたときにおきまして、全電通に対して公社側はどのような態度をとつたのであるか。その間におきましてどのような相互の応酬があり、いかなる態度をとつたのであるか、この問題につきまして伺いたいと思うのであります。これが第一点であります。  第二は、仲裁裁定委員会におきまして、公社側はいかなる態度をとつて来たか、どのような発言をやつたか、これらの内容について伺いたいと思うのであります。  第三点は、この仲裁を実施するといたしますならば、いかなる財源によつて、いかなる資金によつてこれを実施しようとするのであるか、これらに対して組合としての具体的なる成案を持つておられるかどうか、これらの問題について伺いたいと思います。この三つの問題につきましては、全電通と全逓と、公社を郵政省に切りかえまして、同じような意味においてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。  次に問題は、全電通だけでありますが、聞くところによりますと、非常な苛酷なる定員の減ではありませんが、定員があるのにもかかわらず、なかなかそれを補充しないで、そうして少数の人員をもつて事業の経営に当る方針を公社側はとつておるようであります。しからば、そのことによりまして相当の——われわれがやつておるころは累月残といつておりましたが、その給与の余分が出るはずでありまして、これらの内容はどのような状況に現在の経理はなつておるか。これらの点についておわかりの点がありましたら伺いたいと思うのであります。  もう一つは、工事を早くしますれば収入が多くなるということは、電話事業の特徴であります。労働組合が努力をして早く工事をしたために、どのくらいの増収が得られたのであるか、これらの問題がおわかりでありますれば伺いたいと思うのであります。  最初の三点は両組合からお願いし、あとの二点は全電通からお伺いをしたいと思います。
  41. 大木正吾

    ○大木参考人 松前委員の御質問の第一点と第二点についてお答えいたします。  団体交渉は、三月の二十日から五月二十六日まで約二箇月間、八回にわたりまして継続しておりますが、公社は昨年の十一月に一万三千四百円の調停案実施してべース・アツプをした、その後の経済情勢の変化もないから、たとい一円のベース・アツプでも応じられないというような答えをしております。しかしながら、実際問題としまして、組合の出しておるところの要求、これは一万八千五百三十二円、いわゆる戦前賃金水準の回復、さらに最低保障月額八千円の問題でありますが、当時の情勢からしまして、あるいは今回の仲裁裁定書の中にも明らかでございますが、民間賃金の水準が最近一箇年間に一五ないし一六%上つておるというような点からしましても、この回答はきわめて現実を無視した態度であることは明らかでございます。しかも公社は、二言目には組合要求は政治的な要求であるというようなことを言つておりますが、組合といたしましては、別に政治的な問題としてこれを考えておるわけではありません。  それから第二点の仲裁委員会等についての問題でありますが、実はけさほども今井仲裁委員長の陳述にもございましたけれども、まず第一に、七月の十五日に調停案が提示されまして、そして公社としての基本的な態度は、各公社とも同じように、調停案は受諾をしたいというような態度をとつておつたと言つております。この団体交渉の際には、公社の方では、たとい一円でもべース・アツプはまかりならぬという態度に終始しましたけれども調停案が提示されましたときには、公社としましては、大体調停案の線は受諾をしたいというような様子にかわつたよう組合としては考えております。特にその間の内容について具体的に申し上げますと、まず第一点としまして、九月の三日の第三回の仲裁委員会でございますが、この際に公社としましては、調停案の一万五千円の線は、おおむね妥当であるということを認めたように聞いております。このときの仲裁委員会は、公社側だけ呼ばれておりますが、その後の記録等から明らかでございます。  それから第二点としましては、仲裁が出ましてから——梶井総裁は十月の十七日にアメリカに渡つておりますが、その直前の十月の十五日に仲裁の問題につきまして団体交渉を行つております。この際の梶井総裁の答弁ですと、資金的な面については大体問題がないから、仲裁は実施をしたいということを明らかに答えております。ただ問題は、このことに関連して十月の二十九日、全電通の組合としまして塚田郵政大臣と団体交渉を行つております。ところが塚田郵政大臣に対して公社の総裁、副総裁がこういつたことを言つているけれどもどうかということを申したところが、塚田郵政大臣は、そのような資金的な余裕は公社にはないはずだということを言つております。さらにその後たしか十一月の二日と記憶しておりますが、衆議院の電通委員会におきまして、公社の靱副総裁の答弁ですと、十月の十五日の団体交渉の際の梶井総裁の答弁よりも、内容が非常にぼけた答えをしておる。このことは、組合としましては絶対に了承はできません。  特に最後に申し上げたいことは、先ほども鈴木参考人の方から申し上げましたけれども、現在公社が政府に出しておりますところの補正予算の内容に至りましては、一万五千円の仲裁裁定実施をしたいというような考えに立ちまして予算を組んで出してございますから、公社の考え方は、そのような経過からしましても明らかでございます。ただ問題は、政府がこの間にあつてひもをつけ、そのひもによつてあるいは弱くなり、あるいは強くなつて浮草のように動揺しておるというのが、現在の電電公社当局の態度ではないかと考えております。  以上をもちまして一点と二点のお答えといたします。
  42. 八巻壽男

    ○八巻参考人 全電通の給与対策部長の八巻でございます。松前委員の御質問の第三点、第四点、第五点について御回答を申し上げます。  まず資金関係でございますが、今回の仲裁裁定第十五号は、日本電信電話公社職員十六万六千人に対して、八月から一人平均月額一万五千円ベースを実施することを裁定されたわけでございます。ところが二十八年度の現在の予算書は十五万八千人に対して一万三千四百三十円というように、現在の人員よりも八千名少い給与総額を見込まれておるわけであります。従つて今回の裁定書は、所要額として二十四億ないし五億というようになつておりますが、われわれが試算しましたところでは、そういうように実際のベースが現在の電信電話公社の職員に対して出されておる観点から申し上げますと、約四十一億四千万円というようになるわけでございます。さらにわれわれがもう一つ年末手当の二箇月分を要求しておりますが、それまで全部試算しますと六十五億九千万円というのがわれわれの総体の額でございます。従つて裁定自体では四十一億ということになるわけでございます。  これに対する財源でございますが、先ほど、うちの中央闘争委員長から申し上げましたように、昨年度の決算状況によつて、すでに新聞等でも発表しておりますが、これが四十三億ございます。ただこの際問題になるのは、電電公社になつたのがちようど八月一日であります関係上からいつて、八月までの四箇月の予算が、一度もうかつただけを全部固定資産に繰入れる、この繰入金が十九億、従つて年度の電気通信特別会計時代の四月から七月までの四箇月の予算でもうかつたものは一度決算をいたしまして、決算でもうかつた十九億はそれを固定資産の方に繰入れておるわけであります。それからさらに発足いたしまして八月一日から今年度の末までのものが二十四億、こういうようにわかれております。ただ労働組合としましては、こういうようにわれわれが真剣に努力したものがわかれて、われわれが知らない間に固定資産に入つてしまうという点については、ちよつと納得できませんので、そういう点から申し上げますと、四十三億自体がわれわれとしては今回のベース改訂の対象になるのではないかというように解釈しております。  さらに、もう一つの問題は、第一・四半期の決算状況を見ますと、約十八億ということも先ほど鈴木参考人から申し上げましたが、これを想定しますと、二十四年当時からのわれわれの事業の状況、さらに現在の工事計画等から見ますと、約五十億については公社側自体でもやはり認めざるを得ないのではないか。従つて五十億の収入目標額増ということは考えられるというように考えております。ただ社側自体が、この前副総裁が電気通信委員会だと思いましたが、そこで三億ないし六億、あるいは塚田郵政大臣あたりもそういうことを申されておるようでありますが、財源がないというように申されておるのは、先ほど参考人が申し上げましたように、この前の第十六特別国会において料金改訂の際に二割五分の原案が二割になつた、その差がそのまま予算修正として収入目標額がかわつていない、これは今度の次の国会において、その差二十五億については資金運用部資金あるいは一般会計からの繰入れ、あるいは電信電話の債券でそこは埋めるのであるというような附帯決議がその当時なされておつたと思いますが、そういう点を懸念しまして、特に公社当局ではその点が払えるようになりますと、おそらく政府から、そういう余裕があるならば、一般会計の金がないのだから、二割五分の値上げのものを二割にしたけれども、その差は電電公社自体の実績においてやれというようにやられるような懸念があるので、おそらくそういう点は言わないのではないかというようにわれわれは解釈しております。従つて労働組合としては、そういう点自体について、せつかく国会において約束された分からの努力分についてはすべて認めてもらいたい。それからさらに、先ほど申し上げました災害による十四億五千万円という点もありますが、これを除いても四十三億、さらに今度の収入の五十億のうちの十四億五千万円を、たとえばわれわれの収入から見込んだとしても、十分財源自体についてはあり得るというように確信いたしております。  それからこれと関係しますが、第四点の定員の少数についての問題でございます。これによつて財源が浮くかどうかという問題でございますが、現在われわれの公社では物件費自体約二三%節約しております。さらにこの定員増については、昨年度の皆さんの御努力によつて、私の方は仲裁裁定ではなくて、調停案で昨年度のベース・アツプを行つたわけでありますが、その際に所要額が予算改訂せずして実行でやつた結果、ベース自体が予算ベースと実行ペースが違います。さらに大きな問題でかわつて来ているのは、定員自体が給与総額の中の十五万八千人の人間で現在十六万六千人をまかなつている、こういうようになるために、実は期末手当の〇・五は全部食つているわけであります。そういう関係で社側は、現在どんどん電話局が特にふえておりますが、それに対しては消耗品を見込んで、そういうようにふえる事態に対しては、全部欠員を補充しない、さらに新定員を全然出さないという方針をとつております。従つて東京を例にとると、青山電話局のようなものが一つできる、そうすると各職場から強権発動みたいにして、全部配置転換をして、強制してそれを穴埋めして行く。そういうことによつて、この十五万八千と十六万六千との差を今浮かせようとしておるわけであります。実は人員が足りないのに、そういうようにして今の給与総額の赤を埋めているのが実情であるということを、率直に申し上げておきます。  さらに第五点の工事収入の問題でございますが、これは裁定書にも書いてありますし、さらに鈴木参考人からも申し上げました。特にこれは仲裁裁定でも私たちが申し上げておりますが、昨年度から今年度の、電電公社職員一人当りの生産者の増加を指数で申し上げますと、約一〇%から一三%一人当り生産指数を上げております。これをさらに予算上から申し上げますと、昨年度のべース改訂に要した経費、さらに補正で取扱い通信に応じた物件費の歳出、そういうものを総体合せますと、昨年度の補正予算で、料金を改訂しないで五十八億自体を収入目標額としてあげております。さらにその目標額から四十三億を決算であげている。従つていわゆる個人一人当りの一〇%ないし一三%の努力が百億になつているというふうに見ていただけばけつこうじやないか。従つてわれわれとしては、こういうように年々突貫工事に次ぐ突貫工事、さらに年間十何万個というような電話の増設にかかわらず、人間をふやさないで、一人々々のいわゆる労働強化によつて収益を上げている。さらに辛うじて電話のサービスを一日々々よくしている。こういうふうに努力をいたしておりますので、そういう点を御勘案の上、資金自体の点については、われわれとしてはそういう点からいつてすべてやり得ると確信いたしておりますので、何とぞその点から仲裁裁定の完全な実施をお願いしたい、こうお願いする次第であります。
  43. 武田勇

    ○武田参考人 全逓の武田でございます。松前委員の御質問に対しまして簡単にお答えいたします。  まず団体交渉の場所における当局の態度でございますが、これにつきましては、一万八千五百円は、物価の上昇並びに民間給与の実態からして高過ぎるという態度でございます。高過ぎるならば、しからばどの程度かということは当局は一言も触れておりません。次にマーケツト・バスケツト方式は、単なる理想追求でありまして、これは現実にマツチしないという、方式上の面についても、同様当局の方としては反駁いたしております。次に予算上、資金上の問題については、明らかに相当額が必要となりますので、この面からも全然実施は不可能であるという態度でございます。これが団体交渉の場所における当局の態度でございます。  次に、仲裁委員会における当局の態度でございます。これは仲裁申請書の中にも明示されておりますように、電信電話公社その他現業公務員との均衡を見て、調停案の額が妥当であるという態度当局側は示しているようでございます。  次に第三点の、どのような形をもつて財源を捻出するかということでございます。この問題につきましても、資料を皆様のお手元に配付してございますので、見ていただけると十分御理解願えると思いますが、簡単に申し上げますと、今度の仲裁案は一万四千二百円でございますから、その増額分といたしまして大体三十九億一千二百万円ばかり必要となるわけであります。この捻出の方法といたしましては、大体郵政特別会計といたしまして十六億四千三百六十万円必要になつて来るわけでございますけれども、これは八月一日現在でもつて郵政の増収が大体十一億ございますので、年度末でもつて大体二十四億程度が確実に見込まれるという予想が立つているのでございます。そういう面から申しますと、大体郵政事業特別会計は、その点でもつて十分まかなえるという確信があるわけであります。  次に簡易保険特別会計でございますが、これは本年度の剰余金といたしまして二十九億が見込まれているのでございます。これに必要な原資は八億五千七百万円でございますから、この面からも十分今度の裁定実施は可能であるというふうに、われわれとしては考えているわけであります。  次に電信電話公社の繰入金でございますが、これは当然コストが上りますと、その分は電信電話公社の方から繰入れるという建前になつておりますので、この問題については全然問題がないというふうに考えているわけであります。  最後に貯金の会計でございますが、これは御承知のように現在大蔵省から六分四厘の繰入れを行つておりますけれども、実際にかかつておるのは七分四厘六毛でございます。その一分が実際赤字となつて、年間三十一億の赤字を繰入れているのであります。従いまして、これを実施するとするならば、当然その赤字分については一般会計から繰入れなければならぬという建前になつているのであります。それに要する原資が大体七億五千二百万円でございまして、この分については、企業努力ではどうしてもできない。少くともこのような低い人件費を大蔵省から繰入れているのでありますから、ベースが上れば、当然この面も一般会計から貯金会計に繰入れるべきである。そういう建前に立ちますと、郵政もこの一万四千二百円の仲裁裁定は完全に実施できるという考え方を持つているのであります。  簡単でございますが、お答えいたします。
  44. 赤松勇

    赤松委員長 関連質問の要求がございますので、これを許します。原茂君。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 ただいま松前委員から質問申し上げたことで、電通委員会としての大要の質問は尽きているわけでありますが、明日以後の参考といたしまして、電通の組合を中心に、他の七組合からも一点だけお伺いしておきたいと思うわけです。  一昨日だと思いましたが、電気通信委員会における質問の際に、公社側の答弁の中に、今公社が計画いたしております五箇年計画の中には、職員に対する定期昇給をはつきり予定いたしておるという答弁があつたわけであります。そこでお伺いいたしたいのは、電通の組合といたしましては、この五箇年計画の中にどの程度の定期昇給額が予定されているのか。五箇年計画は、すべて金額を基礎にした計算の上に、はつきりと策定されておりますので、この中にあるという定期昇給というものの総額あるいは大体のわくなどは、組合に示されておるものかどうかを、まず電通に対してお伺いしたいと思います。その他の七組合に対しましては、かかる定期昇給という制度が必ずあると存じますが、年何回昇給するということが約束されておるのかを、全部からお伺いしておきたい、かように思うわけです。
  46. 大木正吾

    ○大木参考人 原委員の御質問にお答えいたしますが、電電公社当局の五箇年計画の中には、残念ながら、職員の給与問題につきましては触れておりません。  それから昇給問題につきまして申し上げておきますが、年四回の昇給期がございまして、これを完全実施しますと、大体三百円の原資が年間を通じまして必要であります。しかしながら、昨年の十一月の調停実施の残額がわずか二百円程度しかありませんでして、現在電通の場合ですと、三箇月間の昇給期間をやむなく延伸をしておるというような内容でありますから、残念ながら、定期昇給に対する公社の誠意は見当らないということでございます。
  47. 鎌倉繁光

    ○鎌倉参考人 国鉄の鎌倉でございますが、今の昇給の問題についてお答えいたしたいと思います。私どもの方では、一月期と七月期の二回の昇給であります。この昇給の実施の問題につきましても、一般問題とも関連をいたしまして、今度の賃金要求の中に入れた戦前復帰の中にも、この思想が大きく織り込まれて、戦前の均衡論との対比等をも考慮して、現在昇給の増額、パーセンテージ等についても交渉を進めておるような状態であります。
  48. 青木金治郎

    ○青木参考人 アルコール専売の青木でございます。アルコール専売の場合はまだ公労法が適用になりまして日が浅うございまして、とりあえず一月一日に暫定協定を結びまして、当面は一般職並の基準でやつております。従いまして、昇給期日も一月一日、四月一日、七月一日、九月一日というふうに人事院の一般職と同様に出しておりまして、また昇給の所要期間も六箇月、九箇月、十二箇月というふうに所定の上り方をいたしております。今後どうするかの問題は、この裁定の問題が片づきませんと給与準則の考えも浮んで来ないということでございます。その点お答え申しておきます。
  49. 杉山秀雄

    ○杉山参考人 印刷局におきましては、一般の公務員と同様年四回、六百円以下の昇給の方は六箇月、それ以上の方は九箇月、こういうことになつております。原資は昇給の原資といたしまして組んでございません。定員減がありました場合に、定員の自然減の剰余金をもつて昇給の原資に充てることになつております。
  50. 中村喜己則

    中村(喜)参考人 私全林野の中村でございます。全林野におきましても、林野庁職員の実態からいたしまして、先ほど委員長からも話がありましたように、定員内の昇給につきましては、先ほどから申し述べられております他単産とほぼ同様四回でありますけれども、実態につきましては、やはりその限られた中で二回または四回という、それぞれ職員によつて差別があります。  また全林野におきまして他単産と特に違う点は、御承知のように、いわゆる山林労務者として定員外が全国に十万ないし十五万という幅をもつて、われわれのいわゆる林野庁職員の構成をなしております。この定員外のいわゆる定期昇給というようなものは、一ぺんもやつておりません。この裁定または過去のアンバランス是正、そういうものにおきまして、年に一ぺんなり二年に一ぺんしかない。ひどいときになりますと、四年に一ぺんの定期昇給という形も、過去においてはとられて参つたのであります。こういう林野庁職員のいわゆる定員外の実態というものを御賢察いただきまして御論議願いたいと思います。現在十万の場合に、定員内が二万しかおりませんで、八〇%が定員外、こういうふうに御了解願いたいと思います。数自適にはいろいろ違つて参りますかもしれませんが、一応平均してそのくらいになります。
  51. 佐藤維恭

    ○佐藤参考人 専売でございます。昇給の問題につきましてお答えいたします。専売も他官庁と同様、年四回の定期昇給でございます。そうしてその期間も六箇月、九箇月、十二箇月でございます。しかし今回裁定実施されますと、この定期昇給の面につきましても、今後の団体交渉によつて若干変更を余儀なくされるのではないかと考えております。それは昨年仲裁裁定第九号によります切りかえに際しまして、職種別号俸制度という新しい制度が出されておりますが、これがいまだに実施されていません。従いまして、この問題が解決いたしますと同時に、この定期昇給に関しましても、相当大きく変化するのではないか、このように考えております。
  52. 武田勇

    ○武田参考人 全逓の武田でございます。全逓は公務員法が適用されておりますが、昇給の面につきましては、昇給間差並びに昇給期間等については、何ら手をつけておらず、現在の給与法をそのまま実施しております。年四回、一月、四月、七月、十月でございます。大体平均の昇給額は三百円程度というように記憶しております。
  53. 大森忠晴

    ○大森参考人 造幣の大森でございます。造幣におきましては、一月以降公労法が適用になつておりますが、従前通り一般職の職員に与えられておる昇給制度をそのまま踏襲しております。年四回であります。現在予算上の基本給関係におきましては、定員定額その他の方法をもちまして基本給を押えておりますので、昇給財源としては、すでに十月の昇給期におきまして非常に欠乏するような状態になつておりますが、予算総則の第八条に基きまして、当然給与準則の規定を動かすものでありませんので、その増額については、現在団体交渉にあげ、基本給予算の増額を要求して交渉しておるような状態であります。
  54. 赤松勇

    赤松委員長 原さん、よろしゆうございますね。——松前重義君。
  55. 松前重義

    ○松前委員 ほかにたくさん質問者も出ているようでありますが、私は大体において、ただいま原君からも関連質問されましたので、私の疑問といたしておりました問題は伺つたのであります。ただ伺つておる中から、最後の問題として、私ども理解されましたものは、すなわちこの問題の裁定案をいかにして実施するかという問題については、あるいは電電公社、あるいは専売、印刷、その他の公社的な性格の経営体においては、その当事者は、大体これは実施し得るという考え方を持つておられるというふうに承つたのであります。全逓においては、政府の直営事業でありますので、そのように伺わなかつたのでありますが、しかしこれもまた、資金の面からも必ずしも不可能ではないと考えられるのであります。こういう意味からいたしまして、私は、明日各公社当局あるいは政府当局に対して質問をいたすことにいたしまして、本日はこの程度でやめたいと思う次第であります。
  56. 赤松勇

  57. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は全林野の参考人林野庁長官、それからアルコール参考人中村局長に、一つの問題について、二つの面からお答えを願いたいと思うのであります。  先ほど来の参考人のお話及び同僚委員の質問によりまして、二、三の単産は別としまして、全体的には当局は実施をしたい、この裁定をのんで実行に移したい、しかもその原資は確実にある、こういうふうに了解されるのであります。従つてこれを阻止しているものは、一にかかつて政府であり、また政府の陰でこれを動かしているところの経団連とか日経連ではないかと思うのでありますが、それはこれからの追究によつて真実の究明をして行きたいと考えておるわけであります。  ここで全林野についてお伺いいたしたいことば、今回の水害及び冷害等によりまして、全林野における仕事は激増して来るのではないか。従つて、現在の定員において、今後起り得べきいろいろな仕事を消化することになれば、非常な労働強化になるのではないか。そう考えますと、現在のこの裁定賃金でも、一般の賃金から比べると非常に不当に安いというような、実情に合わない賃金になるのではないか。従つて、現在の仲裁裁定はすみやかにのまなければならない、これを実施しなければ、今後の仕事にも支障を来すという実情にあるのではないか。これに対するお答えを願いたいと思うのであります。  またこれを実行する場合の原資の問題でありますが、これは自然増によつて十分にまかない得る。しかも年次の実績によると、大体二十億あるいは四、五十億の自然増が期待できる状況であるということでありますが、この自然増に対する原資の確率は本年度どのくらい見込まれるかという点、これを伺いたい。  その次は、給与総額のわく外職員が相当にある。現在の裁定をのまないでこれをこのまま実行することになれば、事実において仕事の執行に影響するのではないか。一般の労賃と合せて事業費の中でやり繰りして、実際にはこの政府の案とは別個に昇給の実行をしなければ、事業の執行ができないのではないか、こういう点についてお尋ねをいたします。  それからアルコール関係につきましては、予備費の半額ぐらいの二千何百万円というわずかな、つめのあかほどの原資で昇給が可能でありますが、予備費をさしあたつて特別に使わなければならないという何か目標があるのかどうか、この点を中村局長にお尋ねいたします。  それからアルコールの方では、賃金を値上げすることによつて、国際競争力を非常に失うのではないかということをしきりに心配しているようでありますが、この賃上げによるコストヘの影響は一%内外よりない。しかも国際的な競争力に影響するというようなものは、ほとんど見当らないではないか。セルロイドであるとか、火薬であるとか、塗料であるとか、溶剤であるとか、医薬であるとか、こういうものにどんな形で影響するのか。コストの問題はそういう賃金の問題にあるのではなくて、官営工場としての作業度の引上げというところに問題の重点があるのです。一%内外の賃上げなんか問題にならないのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、参考人当局側のお答えを願いたい。
  58. 柴田栄

    柴田政府委員 お答えいたします。林野庁の国有林野特別会計におきましては、春以来の水害によりまして相当大きな痛手をこうむつておりますが、大体被害の総額は三十一億程度といたしております。特に二十八年度の事業を減退させないで極力実施するためには、どうしても十五億程度の費用を新しく増さなければならないという状況になつております。これらは既定の事業を一時停止いたさなければならないので、それらの仕事と振りかえにおいて、特に目立つて人員の不足と苛酷な労働条件を招来するというほどには考えておりません。  さらに国有林野の地帯は、御承知の通り今回の冷害、凶作において最も被害の多い地域でございますので、これらに対します事業といたしましても、救済を兼ねて計画をいたさなければならないという実情にございますが、これらの総量も、全体といたしますと季節的な関係等もありまして、それほど大きな額にはならないと思われますので、この点に関して特別に苛酷になるというほどには私どもは考えておらぬのであります。一応冷害凶作対策としては、薪炭林の増加払下げを三百五十万石程度計画いたしておりますが、これらは主として、製炭資材として売り払うという仕事になりますので、このために私どもの担当いたしまする直接の仕事に関係するのは、それほど大きな分野ではないと考えております。もちろん特殊の地帯には多少無理を願わなければならないのでありますが、そのために特に労働条件が目立つて苛酷になるというほどには考えておりません。しかしながら、私どもの職場の関係からいたしまして、さなきだになかなか容易な労働環境ではないと存じておりますが、それに対しまする現在の給与も、率直に申し上げまして、必ずしも満足すべきものであるとも申し上げかねるのであります。この点に関しましては、私どもも非常に苦慮いたしておる次第でございます。  次に自然増収に対する見通しでございますが、御承知の通りどもの会計では、主たる財源は林産物の売払いにあるのでございます。木材価格は御承知の通り続騰をいたしておりまして、さらに災害を契機といたしまして相当の値上りをいたしておりますが、国有林といたしましては、特に目立つて値上りをいたしておりまする小径材が比較的に少いのであります。総額千四百数十万石の生産予定に対しまして、小径材は三百万石程度でございます。これらのものは、予算予定単価に比較いたしまして約三割余の値上りをいたしておりますが、御承知の通り災害地に対しましては、国家企業といたしまして応急復旧用材の供給のために、不当な値上りを防止することを考えなければならないという要請によりまして、災害前の価格をもつて緊急復旧の差迫つた需要にこたえる措置をとつておりますので、市場価格の騰貴をそのまま収入に反映させるわけには参つておりません。また広葉樹が約二百万石ございますが、これらは木材価格が騰貴しておるといいながら、必ずしも平均して上つておるわけではないのでありまして、これらは主として南洋材の影響を受けて非常に価格が押えられておる状態でありますので、現在まで、本年度に入りましてから約四%程度の値上りにとどまつております。その他は民間材に比較いたしますと、大径材あるいは貴重材と申しますか、有用材が非常に多いのでありますが、これらの高騰の状況は非常に微々たるものでありまして、強もち合いという程度でありますので、木材価格が非常に上つておるように見えます影響が、そのままの比率において国有林の収入には影響して来ないというのが現状でございます。  私どもが現在まで検討いたしておりますところでは、災害の復旧を急ぎまして多少の減産はございます。たとえば災害によりまして、ただいままで、本年度内の生産対象とならないものは、製品におきまして約四十二万石、立木売りの予定をいたしておりますものに対しまして約六十八万石、これらを勘案いたしますると、値上りによる増収とこれらの減産によりまする減収等とを勘案いたしまして、計算の結果は約二十数億の自然増収が期待できるのではないかと思われるのでありますが、それに対しまする水害復旧の適宜の措置を講じなければならない、これにまた経費を要するというような点で、ただいまこれが検討を急がしておるという状況にある次第でございまして、的確に今収支を精算いたしまして、どれだけ見通しが立つということには、今ただちにはつきり申し上げられないのを非常に遺憾に思います。  なお、給与総額外の人員が非常に多い。これは組合側からも申し上げました通り、定員内が一万九千数百人、それから常勤労務者が九千数百人、そのほかに労務関係の提供者が、時期によつてこれは非常に相違があるのでありまして、最低は五、六万から最高は十二万程度まで動くのでございますが、これらの関係は、総体の事業を計画いたしまして、その事業に応じまする賃金の総額によつて計画いたしておりまして、非常に仕事がふえると申しましても、その仕事を計画いたしまする賃金総額、これに対応いたしまする地方労務の利用によつて執行は可能であると私どもは考えております。
  59. 妹尾敏雄

    ○妹尾参考人 私から三点につきましてお答えいたします。まず当局の仲裁裁定に対する態度でありますが、林野当局におきましては、裁定の額そのもの、それは妥当である、このように考えられております。ただ懸念せられておるのは、一般社会情勢の問題、あるいは他の公務員関係の問題、これらの点が懸念せられるということを述べられておるにおきましては、もしも林野自体に許されるならば、この仲裁裁定実施し得るというように、私たちは林野当局の態度を判断しておるわけでございます。  次に、自然増収の点に対する確率の問題でありますが、ただいま林野庁長官からも二十数億と述べられましたが、先ほど私が申し上げました通り、二十八年度予算におきまして収入増と見込まれる形態をこの価格の高騰せる状態から推察いたしまして、なおかつ今後における風水害等による木材需給の問題を勘案いたします際に、安全度として一割の線で押えましても、二十八億という収入増が予定せられるわけであります。しかるに風水害等によるところのいわゆる対策といたしまして、相当額の費用の支出が考えられるということを長官も述べておりますけれども仲裁裁定の完全実施にあたりましても、わずか八億七千万の不用経費をもつてまかない得るわけでありますので、この点に対しましては、われわれとして何らの心配がない、このように考えております。  最後に、定員外職員の問題でございますが、先ほど来述べております通り、林野関係職員の中には、定員外と称しまして、定員内職員に準ずる取扱いをされておる常勤職員のほかに、期間職員並びに日雇い職員、及びその間に立ちまして出来高払い制をとつておるところの出来高給職員、これらの者がございます。常勤職員につきましては、われわれ定員内職員に適用せられておるところの一般職の職員の給与に関する法律を準用しておりますが、それ以下の職員につきましては、現在まで何らの賃金体系の確立もなく、きわめて原始的な産業に従事するところの昔ながらの姿におきまして賃金が支払われておるという現況でございます。従いまして、御承知のように山間僻地の最も困難な地域におきまして、立木の飛来、あるいはまた立地条件等により、異常に辛酸をなめておるこれら職員に対しまして、このたびの仲裁裁定は、賃金の一割程度を引上げるということを裁定されておりますが、もしそれ定員外職員のうち、特に賃金体系の確立もないところの職員がそのままにすえ置かれるということになりますならば、おおむねこれら職員の出身箇所というのがいわゆる農山村であり、かつまたこのたびの風水害等により、困窮の度合いを深刻化しつつあるところの場所からの職員でありますがゆえに、賃金収入の面における唯一のこの問題を大いに期待しておるのが現実でございまして、この面におきましても、でき得ることが判然しております以上、政府の威圧に屈することなく、林野庁長官があえて部下職員のためにやるという態度表明願うならば、そしてまたその点が許されるならば、完全にこの点は実施することができるということを申し上げましてお答えにかえたいと思います。
  60. 中村辰五郎

    中村説明員 御答弁申し上げます。第一点の予備費の使途の問題でございます。予備費につきましては、現在期の中途でございまして、今後の予期せざる支出というものはどういうものが起り得るか、あらかじめ想定はできませんが、われわれの最もおそれますことは、原料費につきましての値上り等について考慮しなければならぬじやないか、こういうふうに考えます。なお仲裁裁定のほかに年末手当等の問題もございますので、これらを総合的に判断いたしますと、予備費の使途につきましては最終的の結論は出し得ないのでございます。  第二の裁定実施に関連します他産業その他の影響の問題でございますが、私はこの国際競争力という問題に関連しまして、アルコール工業の最も重要な問題といたしまして、二つの点を強調いたしたいのであります。一つは、醗酵アルコールが戦時中いわゆる自動車燃料に使う目的をもちまして計画されましたが、終戦後におきましては、特に化学工業の原料として使われるということを主たる目的として今日成長しつつあるのでございまして、従いましてこれが関係部門に対する影響ももちろん重要でございますが、この醗酵アルコールに対しまして最も競争関係に立つと申しますか、今日最大のこれが競争原料は、石油系のアルコール並びに石油化学製品でございます。その石油化学製品、特に工業アルコールの国際価格と申しますか、アメリカにおきましては大体一キロリツトル当り五万円以下でございます。先般非常に安くなりまして四万円程度でございましたが、最近ちよつと値上りの傾向でございます。この価格に対しまして、わが国の醗酵アルコール価格は八万三千円程度でございます。大体二倍程度に相なつておりまするが、これが関係につきましては、もちろんできるだけ引下げて参らなければならないという関係があるのであります。先般無煙火薬の特需の場合に、このアルコール価格が非常に批判の対象になりまして、わが方といたしましてはアメリカのアルコールに比較いたしまして四割程度の値下げはできないかどうかというような問題が起つたのでございます。しかしながら、もちろん原料関係あるいは生産コストの関係から判定いたしますと、このようなことはとうていできませんので、できるだけこれが無煙火薬製造用のアルコールを受入れることによりまして、操業度の上昇ということを考慮いたすことが必要でありますので、これらの輸出工業と申しますか、そのもののために特別価格制度を設けまして、一応輸出をいたしたような次第でございます。  第二の問題といたしましては、もちろん国内のアルコール製造に関連いたしまして、最近石油からのアルコール製品の企業化ということが顕著に現われつつあるのであります。これは結局におきましてアルコールの需要量に相当影響して来る関係もございますので、私たちといたしましては、今後の醗酵アルコール工業の将来性ということを考え、これらの石油系製品の非常に割安にできるという関係を考慮の中に入れまして、アルコール工業の現在並びに今後に続くこういつた石油系製品との競争ということを重要視いたしまして、国際競争力ないしは醗酵アルコール工業の経営の安定ということを中心に考慮をいたしたのであります。  それからアルコール工業の人件費の要因と申しますか、構造におけるウエートの問題でありますが、もちろん原料価格の推移いかんによりまして、労務費の占める割合は違つて参りますが、仲裁裁定の文言の中に一割程度というようなことがございましたが、二十七年度の実績によりますと、二四・九%に相なつております。もちろんこれは原料価格の推移によつておのずからパーセントがかわるのでありまして、必ずして一〇%というのが正常ではございません。なおこれらのいわゆる醗酵アルコールというものの事業の性格、特にこれに関係いたします競争工業というものの今後の発展というものから考えまして、特にアルコール工業の今日の経済の安定のみならず、それらの関係工業の発展のその後における重要な変革に対しまして対処して行きたいと考えております。
  61. 青木金治郎

    ○青木参考人 今の御質問並びに今の局長の御意見に対して、さらに組合側意見を述べさしていただきます。  まず御質問の第一点である、当局側は内面ではこの裁定実施したいという気持があるのではないかということでございますが、これは先般組合といたしまして岡野通産大臣に会見をいたしましたときに、もうきまつたようなものだから、そう心配せぬでもいいよというようなことをおつしやいました。これは団交ではございませんから、私ども決して深くこだわるわけでございませんが、こういう情深い大臣のもとに、また局長さんも、いろいろお答えになりましたようなことは、一応の理由でありまして、お気持は、人数的にも非常に家族的な事業でございますので、十分やつてやりたいという気持はあると、日ごろの顔色をうかがいまして、ここで申し述べることができるというように思つておるわけであります。ただ障害は、先ほどからいろいろ問題になつておりますちよつとした政治情勢で、こういうふうにアルコールは巻添えを食つておるという状態でございます。われわれもむしろ当局側に対して非常にお気の毒だという気持に存じておる次第でございます。  それから予備費の件でございます。これは局長も申されたかと思いますが、端的に今使用するという当てもございません。ということはほぼ明らかであります。ただ、いもの値上り等を理由におつしやいましたけれども、現在購入いたしております価格は、原価計算上予定しております範囲内で購入されておるというふうに、こちらとしては推測しておりますので、そう問題ではない、むしろ割安に上るのではないかというふうに、これは憶測でございますけれどもいたしておるようなわけであります。  それから第三番のコストの問題でありますが、基本的に国際価格にさや寄せをするという企業努力は、十分組合も努力しております。現に新賃金団体交渉を開始して以来、すでに二回にわたつて二〇%の値下げをやつております。また近く大幡の値下げを恒例によつてつてもらえるというふうにこちらは推測しておるわけでございますが、これらにもすでにわれわれが要求いたしております裁定を完全に実施してくれという程度の内容は、すでに織り込んであるというふうに期待しておるわけでありまして、人件費がコスト中に占める割合はわずか一割でございます。すなわち一〇%といたしまして、今度のアツプ率はさらに一割でございますから、影響率はわずかに一%であります。百分の一であるということを認識願つて、まして近く改訂もできるような情勢でございますので、そう影響というふうな影響はないというふうに考えておる次第でございます。財源的な問題は先ほど詳しく申し上げましたので、ここでは申し上げませんが、こういう事情におりまして、当局側の苦労をここで察しますとともに、なるべく一番根本をついていただいて、政治情勢を排除していただきたいというのがわれわれの念願でございます。
  62. 赤松勇

    赤松委員長 加藤清二君から関連質問が要求されておりますから許します。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 大分時間も過ぎまして、皆さんお疲れのようでございますけれども、きようのこの結果いかんと思つて、手をこまねいて待つていらつしやる幾万の政府関係労働者のことを思い、そのうしろに控える家族のことを考えれば、このくらいの疲れくらいはしんぼう願つて、もうしばらくの間御努力願いたいと思うわけであります。  ただいま参考人から巻添えを食つたというお話があつたのですが、これは賃金が上りますと、他の産業に及ぼすことを懸念されて、経団連あたりから相当のはつぱをかけられておる。こういう点からみますと、巻添えを食つておるのは、ただにアルコールだけではなくて、ほとんどの官業労働者はみんな巻添えを食つておるという状態なんです。そこで特に私は通産委員といたしまして、アルコールの問題と木材の問題についてお尋ねしたいと思います。  アルコールの、今の材料が値上りしたといつて、収入が減つたかのごとき印象を与えられておりますが、私が見たところによりますと、アルコールの材料は、いもの値下りだけでも、どえらいことだ。従つて、いもが値下りしてはかなわないというので、農産物価格安定法というのができたのですから、これは大したことなんです。ところで、私が特にお尋ねしたいのは、この収入の道がどうなつたかということなんです。実は世に喧伝されました黄変米であります。この黄変米は、決算委員会でもすでに問題になつて調査されておることは存じますが、せつかく血の出るような外貨によつて買われた飯米が、飯米にならずにアルコールの原料になつてしまつた。私はこれはアルコールの原料になつたと思つておりまするが、一体それはアルコールの原料になつたのかならないのか。もしなつたとするならば、それは微量はどの程度でどのくらいの価格で払下げが行われたのか。その間に生ずるところの買付け価格と払下げ価格との差額において、政府は一体どの程度の損害をこうむつたのか、それを過当に安く払下げた、トンネルがあつたとか、なかつたとかいうことでございますが、そのあるなしよりも、受けたその材料によつてどの程度の収入が上げられておるか、こういう点について詳細に承りたいのでございます。  それからこの賃金裁定を実行するにあたつて要する財源が、大体二千万円だと聞いておりますが、予備費だけでも四千万円の余あるはずです。これは大臣がもう心配せぬでもいいと言われたというならば、何をか言わんやでありますが、中村さんが国際価格まで出して、えらい心配なことを言うておられますので、一体アルコールの労働者に対して四千万円ある予備費から二千万円出すことができるのかできないのか。何も巻添えを食つたからといつて、犠牲者をふやす必要はないと思いますので、その点ひとつはつきりした御答弁が承りたいと存じます。
  64. 中村辰五郎

    中村説明員 黄変米の問題でございますが、これは食糧にならない品質のかわつたものを、アルコール原料として買うということになつたのでございます。数量は約五千トンで、価格は約一万六千円でございます。これがアルコールの価格を決定いたすのでございますが、目下アルコールの賠償価格あるいはこれに基きまして販売価格を検討いたしております。これらの黄変米の利用によります価格上に対する影響等は、その際に織り込む予定でございます。  なお原料費の値上り、値下りの問題でございますが、生いもにつきましては、御承知の通り相当安定した価格でございますが、一方糖密の輸入をいたしておりますが、この糖密につきましては、今後値上りをするのではないかと考えられる点があるので、先ほど申し上げた通りであります。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうすると、今の中村局長の最初の決定したというのは、今後の問題ですね。過去に決定したということではないのですね。
  66. 中村辰五郎

    中村説明員 糖密の将来の値上りということであります。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 糖密の将来を見越して値上りするかもしれぬ、こういうことですね。わかりました。それならば何も過去のことには関係ないのであります。  それから先ほど黄変米の払下げ価格が石あたり一万六千円とかおつしやいましたが、それはそれで正しいのですか。
  68. 中村辰五郎

    中村説明員 トンであります。
  69. 加藤清二

    加藤(清)委員 トンでしよう。石当りどうなつています。石当り二万四千円くらいで買つたものを——こつちから答えてもいいんですよ。
  70. 中村辰五郎

    中村説明員 どうも専門家でないので、間違うかもしれませんか、石三千円程度であります。
  71. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうでしよう。石当り一万四千円を上まわつてつておいて、そうしてこれを一万円をちよん切つて売た。従つて石当り一万円くらいの出血が政府としてはあつたはずなんですけれども、これは別にアルコールを製造している方が悪いわけでもなんでもないので、それがアルコールの価格に影響を及ぼすということは、これは当然考えられないことなんです。ただ問題は、三千円から四千円の間の米の材料を買つて、それから一体アルコール協会としては、収入がどれだけ余分に出て来たか、こういうことを私は尋ねたかつたのでございます。それは専門家がいらつしやらないということであるならば、あとでけつこうです。とにかく自然に収入が増したことは事実なんです。  次にお尋ねしたいことは、国鉄の運賃値上げによりまして、木材の値が上つた。ところが、今度の九州、紀州の水害で、ずいぶん木材が値上りして来た。私の調査した範囲によりますると、大体三割から五割、そこで予定しておりました住宅金融公庫でも借りて家をつくろうと思つておりました零細な国民が、せつかく当り得た住宅金融公庫の特権をも、遂に放棄しなければならぬという状態が出て来た。ところで、政府側は、住宅金融公庫の金が余つたからというので、それを七十億も今度もぎ取つてしまつて、まるで病人からふとんをはいで水害に贈つた、こういうことをやつておられますが、きようの問題は、この三割余の値上りによつて林野庁の収入は、先ほど二十億とちよつとだというお答えでございました。そうなりますと、これは総体の一割にも当らない程度でございます。市販価格が五割から三割の値上りをしているにもかかわりませず、払下げ価格というものは一割弱しか見込んでいない、こう解釈してよろしゆうございますか。もしそうなつたとすれば、これは政府側としては少し怠慢ではないか。ないしは、一割程度に押えようとなさつたとするならばよろしゆうございますけれども、それをそのまま三割、五割の値上げを放任して置いたということになりますと、値上りを政府は見のがして、これを国内のいわゆる木材の大きな業者にのみもうけさせてしまつた、こういうことになりますが、これは一体いずれでございましようか。
  72. 柴田栄

    柴田政府委員 その点に関しまして、先ほど申し上げた次第でございますが、私どもの売払いの基準は、平常時におきましては市場価格を基礎として売つておりますので、値上りをいたした場合には、値上りが基礎になつているのでございます。ただ先刻も申し上げました通り、本年度木材で当初に予定いたしておりましたのは、千四百七十万石、それが水害のために本年度は生産が遅れまして、ただいま判明いたしておりますのは、非常に価値高い地方、たとえば大阪館内の高野付近、あるいは木曽川の周辺等におきまして四十数万石の減産を来しております。なお立木で売り払いますものにつきましても、約六十八万石程度減少いたす余儀ない事情になつておりますので、総体を通じて減産の影響が一つあるということを御了承いたすわけであります。  さらに、特に高騰いたしましたのは、水害を契機としての高騰が非常に多いのであります。水害を契機として特に九州地区を中心といたします西日本水害の当時は、あくる日すでに一割五分上り、さらにその後漸騰いたしまして、三割というような声が出て参りまして、緊急復興が木材の値上りで遅れるということで、私どもは緊急復興にこたえるために、値上り前の価格で売払いをいたしているということになつておりますので、値上り率は、約二十一万石程度九州で売り払つておりますし、さらに和歌山その他の水害当時に緊急復旧用材として六万石程度出ておりますが、これは値上り前の価格で放出をして、需要者に的確に災害前の価格で入手していただくという方法を講じて売り払つているという因子も入つております。  それから先刻申し上げましたように、最もこの値上り率の高かつた三割ないし三割以上つておりますのは、小径材であります。これは特に近畿地方の水害の際に、あの付近は非常に小径材の産地でございます。この水害によります影響を受けまして、非常な高騰を見たわけでございますが、これにかわる私どもの生産内容から申し上げますと、全部で三百万石程度しかないわけでありまして、全体の値上り率ということになつて参りますと、それほど大きな影響を生じ得ない。さらに広葉樹では、主としてぶなでございますが、ぶなのごときはほとんど値上りはいたしておりません。約四%程度の値上りはございますが、これは南洋産ラワンの影響を受けまして、ラワン材が比較的安く入るので、これに押えられまして、非常に低いところにある。それから、たとえば秋田杉であるとか、木曽ひのきであるとか、あるいは四国、九州方面におきまするもみ、つが等の大径材は、すでに年度初めにおいてほとんど最大に参つておりまして木材価格が非常に高いということで需要面が非常に押えられて参つておつたという関係上、これらの値上り率は非常に低い、ほとんど横ばいの状態で参つております。最近におきましても、特に上つているという傾向はないのでございまして、平均いたしますと、二十数億程度しか出ないということを申し上げたわけでありまして、値上りは物によつて当然市場価格に応じて収入をいたしておるという実情を御了承願いたいと思います。
  73. 加藤清二

    加藤(清)委員 ただいまの答弁によりまして、林野庁関係も収入は減つていない、ふえてはおるけれどもつていないということが確認されたわけですね。もちろん、ただいまおつしやいました林道がやられた、あるいは製材工場がやられて一時生産がストツプしているということは、私も被害地を視察して、よく見て参つたわけでございますが、これはやがて出て行くものであります、消えてなくなつたわけのものではありません。そうなりますと、二十数億が多いか少いかは、また別の機会に論議するといたしまして、とにもかくにも、災害はあつたけれども、林野庁関係はその災害を契機として収入がふえる傾向にある、こういうわけですね。幸か不幸か知りませんが、とにかく収入がふえた。そうなりました場合に、一体財源がない、裁定を実行するにあたつて財源がないということは、ちよつと言えないことになつて来た、当然これも巻添えの仲間じやないかと思われるわけであります。従いまして、これもぜひ早急に裁定を忠実に実行されんことを希望条件として述べまして、私の質問を終ります。
  74. 赤松勇

    赤松委員長 楯兼次郎君。
  75. 楯兼次郎

    ○楯委員 国鉄労働組合の方にお伺いしたいのでありますが、時間が非常におそいので、私五点にわけてお伺いをいたしたいと思いますから、ひとつそこで筆記をしておいて御答弁を願いたいと思います。  私、先ほどから八単産の方の説明を聞いておりましたが、政府の政治的考慮といいますか、圧力によつて、一応予算上資金上云々という議決が出て参つておりますが、実態は国鉄を除く七単産は財源はある、こういうふうに私説明を受取つたわけでございます。そこで国鉄に、一体同じ公共企業体でありながら、なぜ国鉄のみ経理面がこのように逼迫をしておるかというその根本の原因についてお伺いをいたしたいと思います。  次に、組合側といたしましては、この窮迫した国鉄の経理面において、今度の裁定実施するために、いかなる具体的な財源措置を考えておるか、この点においてもお伺いをいたしたいと、思います。あわせて財源の問題につきましてお伺いいたしたい。  われわれ最近新聞等におきまして、また運賃の値上げをする、こういうようなうわさを聞いております。仲裁裁定が出る、これを実施するために運賃の値上げをやる、こういうふうに国民は受取つておるわけであります。私は、国鉄の運賃というものは、社会政策上原価を割るような運賃が設定されているので、この赤字については、当然政府がめんどうを見て行くべきであるというふうに考えておるわけであります。労働組合といたしましては、もし運賃の値上げというような問題が起きて参りました場合には、いかなる考え方でこの問題に対処して行くか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。  第二番目に、先ほど今井仲裁委員長から、ベース改訂に対する主張の根本となる方式について、組合側はいろいろな方式をとつているというふうにお伺いいたしたのであります。私が漏れ聞くところによりますと、国鉄は労働生産性を強調いたしまして、賃金の戦前復帰ということを主張いたしておるということでありますが、なぜこういうような方式をとつたかという点と、それから常に国鉄は人が多い、ベース改訂だ、まあ人員を減らせ、こういうようなことがよく言われておるのでございますが、現在国鉄の職員は、戦前と比較してはたしてどのくらいの比率にあるか、組織はどういうふうに考えているかという点をお伺いいたしたいと思います。  第三番目に、四回ベース・アツプの仲裁裁定が出た。ところが緒方副総理は四日の本会議において、ひつくるめまして十回出たのであるけれども、五回は実施をした、こう説明をされましたが、先ほど同僚山花委員の質問によつて、ほとんど一回も実施されておらない、完全実施をされておらないということが判明したわけであります。そういたしますと、四回仲裁の裁定が出て、それが完全に実施をされないということになれば、もう裁定の制度は必要がないのではないかというふうにも考えるわけでありますが、一体四回のベース・アツプ以外に、いかなる仲裁裁定実施をされたかという点をお聞きいたしたいのでございます。なお財源の伴う問題につきまして、給与問題の仲裁裁定が、行政措置によつて解決したことがあるかどうかという点をお伺いいたしたいと思います。  第四番目に、仲裁裁定が出ましてから今日まで、労働組合はおそらく当局と団体交渉をされたと思いますが、今日までの団体交渉の経過における当局の態度について、簡単に御説明を願いたいと思います。  最後に、私ども新聞等で、すでに仲裁が行われておる過程において、政府は、今度は実施をしない、来年度から実施する考えであるというような、宣伝といいますか、ことが伝えられておるわけであります。もし今度仲裁裁定が完全に不実施というようなことになつたならば、一体国鉄四十万の労働者は、いかなる心構えでこの問題に対処する考えであるか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  76. 横山利秋

    ○横山参考人 国鉄の横山でございます。第一点の国鉄のみどうして経理面かこれほど悪いと言われているのかという点についてであります。先ほど私は、若干根本問題をぜひ考えていただきたい、こういうふうに申し上げておいたわけでありますが、先ほど申し上げましたように、問題の焦点として、たとえば建設線にしても、あるいは社会政策的、あるいは低物価政策の意味からしかれておる運賃にしても、それがそのままになつておりますから、どうしても経理面が悪化するのはあたりまえのことである。鉄道会館をはじめとする一連の不正腐敗が国鉄にある、この点については、国鉄労働組合としても大いに国会審議を求め、その公正なる判断をお願いしたわけでありますが、それが今日国鉄の経理面が悪いといわれる少くとも根本原因ではないか。問題はもつと深いところから御判断を願わなくてはなるまい、こういうふうに考えるわけであります。経理面の問題については、累次の仲裁裁定理由書にも明らかにされております。昨年の仲裁裁定理由書におきましても、支払い能力の中におきまして、仲裁委員長はいろいろ例をあげております。たとえば、第一に、国鉄において、戦後公社となるまでは、少くとも建設改良に属する工事経費は、原則として、財政資金によつてまかなわれて来た、すなわち昭和二十年から二十四年までの工事経費五百億円のうち、国鉄の自己資金によつたものは、わずかに十八億円にすぎなかつた。けれども昭和二十五年度からこれを極力自己資金でまかなう建前がとられ、本年度、すなわち昨年度においては、工事経費全体の七四%に当る三百億円、運輸収入をさいてこれに充てられることになつている、こう言つております。また第二番目には、戦前では自己資金をもつて支弁する償却、取りかえと修繕の合計は、運輸収入に対しおおむね一〇%から一二%程度であつたが、戦後は、先ほど述べた修繕費の関係で激増し、昭和二十五年度以降は運輸収入に対し三六%を越え、二十七年度は実に四二%に達している。類似産業である私鉄では、これは三〇%程度にしかすぎないと言つております。  御質問の、もう一つ関連をして、人が多いという問題についても、あわせてこの際御説明をいたしておきたいと思うのであります。確かに昭和十一年くらいにおいては二十二万人ぐらいでございます。現在は四十四万人であります。数字としてはまさに二倍でございます。けれども、これは業務量と比較して判断を要しますし、またそのほかの問題がございます。業務量は先ほど申しましたが、列車キロ当りでは戦前に比して約五割、車両キロ当りでは約三割、人トンキロも約三割でございます。これに機械化の割合の少いことを考慮に入れますと、生産性の回復は鉱業の七〇%、それから工業の約一〇〇%に比してごうも遜色はない、こういうふうに認めておるわけであります。ことに戦後は労働基準法の実施に伴い約七万、連合軍関係一万、鉄道公安官が三千、自動車運送の増加に伴うものが九千、志免の鉱業所が五千等、鉄道の業務量に直接関係のない要員が、戦後の国鉄の社会的要請によつて大幅に含まれましたから、仲裁委員会理由書は、これをしんしやくすればもはや職員の数を過大と断ずることは困難であり、その生産性の回復率は一層高く評価さるべきであろう、と結んであるわけであります。従いまして、この国鉄の経営の困難といわれる直接の問題としては、今日国鉄の独立採算制につきましての検討なり、あるいは過般の国会で行つていただきました日鉄法の改正なりを百尺竿頭一歩を進めて、根本的な立場から御判断を願わなくては、今日の実情では、どうしても労働条件にこれがしわ寄せされて参つて来るわけでありまして、この御判断を願いたいと思うわけであります。  それから運賃の問題についても御質問がございました。先ほども申しましたように、運賃は確かに安いのであります。けれども、私どもは、今日の日本としてこれでいいのだ、国会で皆さんがおきめ願いました低物価政策、社会政策的な立場からおきめになりましたこの運賃はいいのだ、というふうに理解をいたし、その意味において、われわれとしては常に運賃の値上げに反対をいたしておるわけであります。それから問題になりますのは、この安い運賃のままで放置せられると、どうしても、重ねて申し上げますように、労働条件の中へそれがだんだんしわ寄せされて行く、これを別な形においての何らかの補償ということが必要ではなかろうかと考えられるわけであります。  それからベース改訂要求に際しまして、労働生産性の立場をとりました。これはどういうわけかと申しますと、例年確かに物価が上つた、生計費が上つたから、こういうふうな理由をもちまして、賃金の値上げを要求して来たものであります。ところが、われわれとしてはこの際考えたのであります。それは戦後、政府もあるいは政党も、学者も新聞もあらゆる人々が日本の生産の戦前回復を要求し、ことに国鉄においては、戦後早く戦前の安全、正確、迅速というあの言われた通りの国鉄を復旧してもらいたい、こういう強い要請がございました。特に公共企業体になりましてから、国鉄当局は上は総裁から現場長に至るまでが、とにかく国鉄の復旧を呼号をいたしまして、労働条件の面につきましても、この線に沿つてきびしくなつて参つたわけであります。われわれとしては、かりに立場は違いましても、国鉄が戦前に一時も早く復旧することについては、議論の余地のないところでありますから、大いに努力をいたしました。これがすでに本年に入りましてから、戦前に、国鉄の労働生産性なりあらゆる点において回復をいたした。これは国鉄公社も過般白書を発表いたしました中に、これは公表いたしておるわけであります。従いまして、そういうふうにわれわれに対しても要請をいたして参つたならば、公労法の制定されて以来、努力をしたら必ずそれに対して労働者に報いるところがあると、政府も言い、公社も言つたならば、その約束をひとつこの際果してもらおうではないかというところに、私どもの本然の立場があつたわけであります。公約をひとつ履行してもらいたい、こういう立場をとつたわけであります。もちろん戦前の賃金というものは、あのソーシヤル・ダンピングの当時の賃金でありますから、それを回復すること自体は、憲法でいうところの人たるに値する生活を営む賃金ではないと考えますが、少くともこの今日の状態としては、最低の要求として、これは天下に公表し、天下に御賛成を願つても何らさしつかえないものではないか、こういうふうに考えたのであります。  それから次の御質問で、裁定がベースにつきましては四回はあつた。それ以外の問題についてどの裁定ができたかという御質問であります。国鉄におきましては、北海道の石炭代、それから夜勤加給が裁定が一応できたことになつております。ただ問題になりますのは、石炭代と夜勤加給は、なるほど裁定が実現された。ところがそのかわりに、ほかの方の手当が上らなかつたのであります。一つのなべの中で、あちらへやつたり、こちらへやつたりしたにとどまつただけでありまして、この点はよく御判断を願いたいと思います。それからもう一つ退職金の問題が裁定が出ました。これが一応労働者のお考えでは、裁定が実現になつたという勘定の中に入つている模様であります。けれども、過般の国会におきまして、いろいろ国会にお願いをいたしましたけれども、あの裁定が究極に示すところの、国鉄並びに専売等の関係の退職金については、一般から切り離して労働協約を結べ、こういうふうな意味裁定でございましたが、これが国会の御審議でできませんでしたから、究極としても、これは裁定は履行されなかつたわけであります。  それから次は財源の問題でございます。概略を申しますと、私どもは、機関車労働組合の副委員長も申しましたように、水害さえなかつたら、今年はまさにりつぱに皆さんに、もう問題はないと、すぐにいわれる国鉄の収入面でございました。ところが、水害が九十億内外にわたりまして、甚大な被害がございましたので、仲裁裁定理由書の中におきましても、これさえなかつたらということを書いておるわけであります。それを別にいたしましても、本年度の輸送量の増加というものは、実に予想外のものがございます。最近の貨物の滞貨も上るばかりでございまして、国鉄当局が、公労法に基いて運輸大臣に、裁定の完全実施という立場予算書を出しましたものを見ましても、輸送量の増加に伴う収入の増加は五十七億に達するというておるのであります。ただこの五十七億というのは、その五十七億をもうけるためには、臨時列車を動かさなければならぬという意味において、これに伴う経費が二十三億六千万円と数字が出ております。けれども、われわれとして考えますのは、今日の貨車の激増ぶりから考えましても、年度末までには、まだこれは数字が上るものだというふうに理解がされます。また石炭の消費節約につきましては、歴年われわれとしてはいろいろ努力をいたして参つたわけでありまして、本年につきましても、いろいろな関係から十四億くらいの節約量がございます。そのほか、いわゆる行政措置によつて、運輸大臣あるいは大蔵大臣の協議を願つて御了解ができるならば、借入金の本年返す三十億を一年延期してもらいたいとか、あるいは予備費がこの前の国会が五十六億に定められましたが、その五十六億を流用するとか、あるいは建設費の本年できない分をこの際こちらへまわしてもらうとかいうような算段をいたしますれば、資金面はかなり国鉄においてもできるのであります、またそれをもつてしましても、率直に申しまして、私は国鉄だけの自前で裁定実施ができるとは、残念ながら言い切るわけには参りません。この点は、先ほどからくどくど申し上げておりますように、根本的な問題が横たわつておるからであります。その点につきましては、借入金の投入ということがどうしても必要になつて参ろうかと思います。しかし、この借入金の投入ということは、今日の国鉄の事情をよく御判断を願い、不正なり腐敗なりは断固追求していただいて、なおかつ御判断を願うならば、これは公正にしてかつ妥当なる問題だ、こういうふうに私は理解をいたすものであります。  それから当局との交渉経過についてであります。当局はこの戦前復帰の要求につきまして、長崎総裁は、議論としてはまさにあり得るというような意味のことを申しました。ただ、一概にそれに国鉄当局が賛成をするわけに行かぬのは、やはり輿論の動向ということも見なければならぬ、こういうことを言つておりましたが、仲裁委員会に参りまして、審議をいたす過程並びに調停案に対する回答等を通じまして、国鉄当局も、資金は別として、雇用している立場から言うならば、この一万五千三百七十円という数字は、国鉄当局としても妥当だと思う、こういうふうな発言をいたし、その意味におきましては、本日今井仲裁委員長がここで皆さんにお話をされました各公社の当局の、ほとんど金額については異論はないという中に、国鉄といたしましても入つておるわけであります。  最後の問題につきましては、これは委員長が参つておりますから、委員長からお答えを願うことにいたしまして、私の答弁はこれにて終りたいと思います。
  77. 柴谷要

    ○柴谷参考人 最後の問題につきまして、お答えいたしたいと存じます。もし仲裁裁定が完全に踏みにじられたならば、国鉄労働組合はどういう態度をとるか、こういう重大な御質問でありますので、はつきりお答えを申し上げたいと存じます。  私どもは、仲裁裁定を終了いたしましてから、万が一これが実施されないというような考え方は持つたことがございません。法治国家におけるところのわれわれといたしましては、完全に実施されるであろう、こういう観点に立ちまして問題を処理し、かつ関係方面に当りまして努力をして参りました。その間における国鉄労働組合態度といたしましては、大会なり中央委員会では、最悪の事態には実力行使をもつて臨むという決定をいたしておりますが、その実力行使の表現にいたしましても、組合員の怒りを盛り上げること、これ自体実力行使であるとまで私どもは答えておる次第であります。しかしながら、この仲裁裁定が完全に踏みにじられるという場合には、予測しない事態が発生すると私は考えます。但し、私どもは今日の段階におきましては、国会における審議の過程を見ましても、また皆さん方の真摯なる御質問に対し私どもがお答えするにつきましても、裁定実施されるという確信をまだ持つておりますために最後的な御回答はいたしかねますが、大会なり中央委員会で決定をいたしております実力行使というものがどの程度まで発展しておるかということにつきましては、御想像におまかせいたしたいと思います。但し、私どもといたしましては、不測の事態の発生するという懸念を多分に含んでおるという実力行使が生れるのではないかということについて、お答えを申し上げておきたいと存じます。
  78. 楯兼次郎

    ○楯委員 時間もおそくなりましたので、政府並びに運輸当局に対します質問は保留をいたし、あす十時からやつていただくことにいたしまして、これで終ります。
  79. 赤松勇

    赤松委員長 本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より本連合審査会を開会いたしまして、審査を続行いたしたいと存じますので、本日御出席の参考人各位には、はなはだ御足労ながら明日の本連合審査会にも再び御出席願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時十六分散会