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1953-11-24 第17回国会 衆議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月二十四日(火曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君    理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君    理事 山村新治郎君       池田  清君    黒澤 幸一君       多賀谷真稔君    井堀 繁雄君       竹谷源太郎君    山下 榮二君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      桃沢 全司君         農林事務官         (食糧庁業務第         一部需給課長) 大口 駿一君         労働政務次官  安井  謙君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    和田 勝美君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 十一月十六日  委員長正路辞任につき、その補欠として平野  力三君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員平野力三辞任につき、その補欠として山  下榮二君が議長指名委員に選任された。 本日の会議に付した事件  失業対策労使関係及び労働基準に関する件  公述人選定に関する件  連合審査会開会に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたしますが、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(印刷事業に関する件)外七件の議決第一号より第八号につきまして、ただいままでに人事運輸郵政電気通信の各委員会より、本委員会に対し連合審査会開会の申入れがございましたので、本委員会といたしましては、これらの各委員会と各件の審査のため連合審査会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさように決定いたします。  なお連合審査会は、明二十五日及び二十六日、いずれも午前十時より開会いたしますから、御了承願います。     —————————————
  4. 赤松勇

    赤松委員長 この際私より申し上げますが、さきに委員諸君より一任せられました公聴会開会の日町につきましては、来る二十七、二十八の両日、いずれも午前十時よりといたしますから、御了承ください。  次に公述人選定に関する件についてお諮りいたしますが、公聴会公述人の員数並びにその氏名につきましては、この際委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさように決定いたし、委員長において諸般の手続をとり行いますから、御了承ください。  なお公聴会労働人事運輸郵政電気通信の各委員会連合審査会公聴会といたし、五委員会連合の上公述人より意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさようとりはからいます。     —————————————
  7. 赤松勇

    赤松委員長 それでは、これより失業対策労使関係及び労働基準に関する件を議題として調査を進めます。  この際持永委員山花委員井堀委員よりそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。山花秀雄君。
  8. 山花秀雄

    山花委員 国政調査のため、去る九月十一日より神戸港及び大阪港における港湾労働事業につき現地を視察いたしました結果につき、その概略を簡単に御報告申し上げます。  まず神戸港について申し上げますと、県当局労働基準局神戸海運局等より、港湾荷役業者状況労務供給に関する査察状況安定所紹介取扱い状況日雇い事業別就労状況神戸港湾就労状況日雇い組織港湾労働者組織状況日雇い登録数、失対事業人員数神戸港運業務状況等につき、概況を聴取いたし、特に港湾における労働関係が、船舶出入港の予定の立たないこと、及び出入港が時間的に急を要するものであること、同時に、雇用が大部分日雇いの形であつて労務供給のボス的なものが存在しやすいこと、かつ作業形態も二、三十年前とほとんどかわらず、危険作業を多く含んでいること、日雇い的雇用からは封建的労務管理の行われる可能性を持つていること等、港湾作業特徴的性格検討いたしたのであります。  港湾労働組合及び港湾運送事業者との懇談会を持ちまして、種々意見を聴取いたしたのでありますが、労働組合側の述べるところによりますと、下請業者は、形式的にはともかく、実質的には人夫供給業であり、労働ボス労務管理を左右していると主張しており、日雇い労働者取扱いについては、これを常傭化すべきであるという意見と、現状はやむを得ないという意見等がわかれて出ており、また組合結成の妨害事実、港湾作業災害の多い点等指摘されておるのであります。港湾運送事業者側の述べるところを見ますと、労働ボスの問題については、作業性質上、ボス発生の余地があつたし、業者側として見れば、やむを得なかつたものであり、現在は影をひそめていると主張され、組合結成を奨励していること、災害防止については、作業場が他人のところであり、ある程度まで不可避的な宿命であるが、官民一体安全運動を行つておる努力は認めてほしいと述べておるのであります。なお、今回制定されました日雇労働者健康保険法より、三十年の歴史を有する労働保険の方が有利であり、特例を設けられたいとの意見も見られたのであります。  次いで、船内及び沿岸におけるスクラツプ、小麦、綿花等荷役現場を視察し、あわせて弁大浜自由労働組合組合員等の話を聞いたのでありますが、賃金にはなはだしい不合理があり、従つて重労働の割に低賃金で、就労を希望しない職場もあるが、これに希望者がないと、失対事業にも紹介してくれない等の声が出ていたのであります。またこの機会に、通称三十円下宿を視察したのでありますが、これにかわる労務者住宅の建設は早急に必要であり、関係方面に要望及び連絡をとつた次第であります。  大阪港につきましても、ただいま申し上げました神戸港とほぼ両様の調査を実施したのでありますが、大阪港においては、船内荷役業の五社が共同荷受けを実施いたしており——、元来この方法は金融を目的として行われたのでありますが、次第にいわゆる波動性に対応する作用を果して来ている特色が説明されており、また港湾労働法制定を提唱する全港湾労働組合は、長い伝統的な港の封建性を幾分でも近代産業に近づけるためにこの立法必要性を強調し、さらに船内居住に伴う問題を提起しており、業者側からは、前述の五社協定の問題、災害防止問題、日雇い問題、船内居住問題等につき、種々説明がなされておつたのであります。  以上は神戸大阪両港における調査において見られたところの概要でありますが、この調査によりまして、港湾労働事情、特に港湾産業における労働関係の、他産業に見られぬ特異の実情につき、あるいは港湾労働に関する単独立法制定をめぐる諸問題につき、各方面より貴重な意見を聴取することができ、同時に、解決すべき幾多の問題が山積いたしていることを知つたのでありまして、従前より続けておる港湾労働に関する小委員会検討にこれらの成果を加え、今後の港湾産業の発展と、日本経済の興隆のための不断の調査研究を続け、立法上の指針と参考に供したいと考える次第であります。  以上、はなはだ簡単でございますが、経過の概要を御報告いたした次第でございます。
  9. 赤松勇

  10. 井堀繁雄

    井堀委員 国政調査のため、去る九月十五日、滋賀県下の労働事情につき、現地を視察し調査を実施いたしたのでありますが、そのうち特に先般来問題となつておりました近江絹糸彦根工場労働関係につき、その概況を御報告申し上げます。  滋賀県は、その地理的環境から見て、繊維産業に適しており、古くからこの業の盛んなところであります。その従業員の多くは県外から求められ、主として東北及び九州から充足されており、出身地がおおむね農家でありまするために、その生活はもつばら農業に依存している関係から、労働組合関心がきわめて薄い。従つて労働運動が特に盛んだとは認められなかつたのであります。近江絹糸紡績株式会社は、大正六年の創立でありまして、三十六年を経ております。九月の末には増資の上、羊毛部門を開始しようとしているように、事業内容はきわめて充実しておるように見受けられました。寄宿舎ども、この会社終戦後急速に膨脹いたしました関係から、その施設が新しいものによつて満たされておるようであります。従いましてこれらの設備は、やや外見完備したように見受けられました。約三千人の従業員を擁し、外見上はおおむね問題をかもすようなものは見受けられなかつたのであります。国政調査の実施に伴いまして、明らかになりました点を次に申し上げます。  第一は、労働組合が、個々調査に対しまして、意見を開陳しようとしたい消極的な態度であります。面会いたしました工員個々につきましても、不満の点について全然黙して語らない。しかも職安法違反労働基準法違反などを訴える風評や投書は非常に多く、現に私ども調査に対しましても、宿舎の畳数の問題、通学の問題、外出の問題、宗教問題等を取上げて、調査方を要望する要請が、投書その他で寄せられて来ている点等から見まして、労働組合性格につきましては、ただちに御用組合と断定することは困難でありましたけれども労働組合といたしましては、非常に不徹底な暗い感じを持たざるを得なかつたのであります。同時に、組合運動に対する会社態度の一端を推定し得るいろいろな事項がございました。  この点につきましては、以下順次述べまするが、次に労働条件を見ますると、その賃金額において、初任給につきましては、他の同種会社と大差がないようであります。昇給率においては低位であり、勤続三年のものが他社と比較いたしますと、近江絹糸紡績平均七千七百六十円の他会社に比較いたしまして、平均は五千六十三円と、相当に下まわつておる数字を見ることができるのであります。かような低賃金が、きわめて露骨に表明されております。  第三に、労働法規違反でありますが、すでに労働基準監督機関として是正勧告しておるもの、あるいは書類を送検したもの、あるいは検察庁からすでに起訴になつておるもの、また三重県地方労働委員会によりまして不当労働行為に該当するものとして命令の出ておるもの等が見えられるのであります。  さらに第四の宗教問題についてでありますが、通称仏間と称する大講堂で、真宗西本願寺系の仏壇をまつりまして集会を持つております。この集会にあわせて、会社側業務連絡事項を通達いたしております。このように特定の宗教の信奉を強制しておるということについては、多少疑いがありまするが、寄宿労働者が、どうしても以上申し上げるような会社業務連絡といつたようなものに参加をせざるを得ない条件を加味し、かつは心理的に非常な圧迫を感ずることは十分に推測し得るところであります。ことに、私どもの視察をいたしました際に、仏間に、単に西本願寺の指定いたしまする仏像だけではなくて、社長先祖位牌として祭壇に飾つておるという事実等が明らかになつております。こういう点から想像いたしまして、この問題につきましては、十分に検討をいたさなければならない事態であると推測して参りました。  第五に、会社学校経営でありますが、半分学生で半分が工員というあいまいな性格を持つており、教育奉仕技能養成のいずれかがきわめてあいまいである。このようなケースがあつて、その真の意図するところがいずれにあるか、きわめて不明確なものであります。  これらの諸点を中心といたしまして、会社実情調査し、いろいろ勘考いたしたのでありますが、会社側労務管理のあり方が、労働者側に少くとも精神的な圧迫を加えておることは疑いを入れないところあります。ことにこの会社が設立されましてから、急に終戦後膨脹いたしました関係から、労務管理等に対する熟練者が、他社に比べて比較的に少いのであります。そういうような関係からいたしまして、労務管理に対しても、はなはだしく欠くるものがあるように推測されます。寄宿舎生活の自治に関する一点についてだけ見ても、明らかでありまして、これが労使関係全体に及ぼして参りまする場合には、日本繊維産業性質からかんがみまして、国際的にも大きな悪影響を及ぼすことは必定であります。近江絹糸紡績一社の問題として限定することはできないと思うのであります。労使及び関係機関が一致いたしまして、これらの欠陥を是正し、公正なる労働慣行を樹立して行くためには、一段と努力を払わなければならない問題をたくさん含んでおることと考えるのであります。  はなはだ簡単でありまするが、以上概況を御報告申し上げます。
  11. 赤松勇

    赤松委員長 労働省側に申し上げますが、きようは失業問題は午後に質疑をしようということになつておりますから、相当広汎にいろいろな問題が出て来ると思いますので、準備をしておいていただきたいと思います。  なお持永委員の御報告は午後にまわしまして、それでは山花井堀両君報告に対する質疑を許します。
  12. 山花秀雄

    山花委員 労働省の方にちよつとお尋ねしたいのですが、神戸港湾関係調査しておりますときに、ただいまの説明でもちよつと申し上げたのでありますけれども、今回制定されました日雇労働者健康保険法より、神戸地方に行われておる三十年の歴史を有する労働保険の方が非常に有利であるから、特例を認められたい、こういう意見がございまして、このことにつきまして、神戸杉田職安所長より特例申請中である、こういう発言がなされましたが、労働省といたしましては、そういう申請を受取つておるかどうか、またその申請に対してどうお考えになるか、ひとつ見解を話していただきたいと思います。
  13. 江下孝

    江下説明員 お答えいたします。具体的に杉田所長の方からそういう申請書は実はまだ受取つておりません。日雇い健康保険の問題でありますので、あるいは厚生省に書面が申請されておるのではないかと思います。厚生省方面とも相談いたしまして、方針をきめまして指示したいと考えております。
  14. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいま御報告申し上げました通り近江絹糸実情でありますが、これに関連いたしまして、労働省のその後の労働行政に対する行動について、お尋ねをいたしたいと思います。  第一にお尋ねいたさなければなりませんのは、ただいまも報告の具体的な箇条に明らかでありますように、第一は設備の問題であります。一応外見基準法その他の規定にそむかないようにはいたしておるようであります。しかし基準法寄宿舎に関する問題は、ただ単に形式的な事柄規定しておるのではなくして、年の若い女子労働者を、正しい労働環境生活環境の中に保護しようとする法の目的からいたしますと、その取締り監督というものは、従来たびたび監督署から勧告を受け、勧告のみではなくて、違反の事実が顯著なりとして起訴され、有罪の判決を受けたような、いわば前科のある労務管理を行つております会社については、よほど慎重な監督を続けなければならないと思う。そういう点から、たとえば、寄宿舎に参りましても、一応畳数などは数を合せておるようでありますが、それを一方職安関係から数字を照し合せますと、必ずしも法律の規定する数とは一致しない、そこにはなはだしく無理が出て来るという事実が上つておるのであります。こういうような点から行きますと、言うまでもなく、これは労働者の異動がはげしい現状でやむを得ないという、一般の善良な労務管理をしておる場合においては、ある程度の目こぼしをするような事柄であるかもしれない。しかし、こういうように違反が顕著で、しかも安定所にいたしましても、監督署現場監督しておる者からいたしましても、取締り上非常に困難を来しているという訴えをしておるわけであります。こういうのは、労働行政の中で盛んにいろいろ言われておりますように、基準行政労働大臣の直轄の監督指導を行い、その他の労働行政は県に半ば移管されるような扱いをしておる、これを統一したらどうかという声も起つておるのであります。言うまでもなく基準監督というのは、地方庁にまかせることは弊害がある。きびしく正しく法を施行して行こうとすれば、監督中央になければならぬというところに、基準行政特徴があると思う。ところが、地方でその監督の困難を訴えておりますのに、この前の委員会でも報告を求めたのでありますが、労働省当局報告は、地方庁報告以下の報告であります。現地に行きまして、そのことがきわめて明らかになつた。こういつた点について、地方における基準監督署基準監督に対する困難なものを、どういうふうに中央補つて監督を続けておられるか、その監督の結果どういう治績をあげておられるか。私は何も具体的に聞こうとはしません、今報告をいたしましたように、私は善意に解釈をして申し上げておるのでありますが、近江絹糸労務管理をやつておるのは工場長であります。工場長の上にはすぐ社長であります。おおむね繊維産業労務管理を見ますと、戦前戦後、その善意悪意は別といたしまして、かなり熟練をいたしました労務担当重役というものがありまして、その下にはかなり多くの専門家を採用して、労務管理については万遺憾なきを期するかのごとき陣容を整えております。この会社は、繊維といたしましては、終戦後急速に膨脹をしたために、そういう専門家がいないことが明らかになつて、こういう点からも起つて来る弊害ではないかと思うのであります。ことに、会社労務管理中心が、仏教中心にする指導にある。私は必ずしも仏教を誹謗するものではありません、宗教を用いることはいけないというのではありませんけれども、たとえば、先ほど報告いたしましたように、仏間が単なる精神修養の道場のようなものでありますならば格別問題はないのでありますが、労務管理の最も重要な寄宿舎生活、あるいは工員規律統制に関する会社連絡事務を伝える場所になつておる。私どもから見ますれば、いわば仏の前に誓わして、仏の威力を借りて会社労務管理に対する命令伝達事項を行うというふうにとられてもやむを得ないような形式が依然としてとられておることは事実であります。こういうようなものについて 一体基準法精神から言うと、違反をかもし出すような大きな要因をなすものというふうに、少くとも現地監督官疑いを持つておることは明らかである。しかし、こういうことに対しては、地方庁あるいは地方監督行政では、十分の監督ができない事柄である。これこそ労働省が直接こういう問題の解決のために処置を講じなくてはならないケースであると私は考えるのでありますが、この点に対する労働省見解はどうでありますか。まずこの二つについて明確なお答えを願いたいと思います。
  15. 安井謙

    安井説明員 労働基準監督実態でございますが、これはお話の通りに、地方々々でかつて手かげんをするような性質のものではなかろうと存じております。これはあくまでも全国的に統一された管理指導があるようになければいかぬと思いまして、そのように指導もいたしておる次第でございます。さらに近江絹糸の問題につきましては、従来からも御指摘がありました通り、いろいろ問題を含んでおることは事実でございます。この点につきましても、労働省本省といたしましては重要な関心を持ちまして、これらの調査及び指導をやつておる次第でございまして、その実態につきましては、事務当局から御説明申し上げたいと思います。
  16. 和田勝美

    和田説明員 ただいま井堀委員から御指摘のありました点でございますが、その大筋は政務次官からお答え申し上げた通りでありまして、私どもといたしましては、近江絹糸長浜工場につきましては、いろいろ問題があることを、かねて聞いておりますので、本年の七月の下旬に、私どもの方の近畿地区担当監察官をば現地に派遣いたしまして、当時問題になつておりました寄宿舎の自治問題を重点として監督を実施させますと同時に、これに関連する問題についても監督をいたさせました。その結果、違反のありましたものについては、ただちに近畿担当監察官から、請書をとりまして是正をさせる。そのときには、もちろん現地滋賀基準局監督官も参つておりますし、それから彦根監督署の者も参つておりまして、私ども監察官監督の仕方について見習いをしておつたのであります。さらにその後、先ほど井堀委員から報告がございましたが、滋賀基準局におきましてもさらに監督の要ありといたしまして、九月の二十四日、二十五日、十月の十四日、十月の十九日、滋賀基準局指導の下に監督を実施いたしました。その結果につきましては、問題があると認定いたしました学校関係のものについて、十一月六日に責任者に出頭してもらいまして、具体的に問題点を示して是正を強力に勧告いたしまして、その是正のない限り司法処分に付する覚悟であることを明示いたしました。その結果は、まだ報告が参つておりませんが、内々で聞いておるところによりますと、是正の方向に向つて進められておると聞いております。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 学校の問題は、あとでお尋ねしようと思つていたのを、先にお答えをいただいたわけでありますが、信教の自由ということは、きわめてデリケートな、労働行政にとりましては、今後きわめて重大な事柄だと思うのです。監督行政としても、この種のきわめて弱い女子労働のための労務管理が、こういう宗教の運用といつたような形でもし許されるということになりまして、各社がこぞつて、ある会社キリスト教を、ある会社は天理教をといつたように、宗教労務管理の中に持ち込まれるようなことがもし起りますと、これは収拾がつかなくなると、私はきわめて重大視しているわけであります。こういうものに対する取締り当局見解を明らかにしてもらいたいと思います。
  18. 和田勝美

    和田説明員 七月当時、私どもの方から担当監察官を向うへ向けまして実態監督いたしました当時におきましては、宗教問題については、強制的に行われているということが認定できなかつたのであります。ただ状況としては、いろいろの事実関係から、その仏間に入つて鑑と申しますか、そういうものを読むような状況が一応うかがえるのでありますが、それを物的に証拠立てるものは、実は労働者からも聴取することができなかつたわけであります。そういたしますと、基準法の九十四条は、具体的な事例が別に書いてないのと、御指摘のように、宗教問題は非常に微妙でございますので、なかなか困難であります。特に反対の者でキリスト教の教会に通つておる者も現にありますので、なかなか仏教一本でまとめられておるということを立証することは当時困難でございまして、その問題についてはなお今後実態をさらにきわめる以外に方法がないということで一応本省から参りました者の報告を私ども聞いております。
  19. 井堀繁雄

    井堀委員 宗教の問題につきましては仰せの通り非常に捕捉しがたい事案であると思うのです。それだけに強調いたしておるわけでありますが、たとえば、仏間にお釈迦様や阿弥陀様の像を飾つておくということは、これは宗教的に一応常識としてあり得ることです。しかし先祖位牌工員に拝ませるという態度は、私は重大だと思います。こういうようなものについての御判断は、どういうものでございますか。
  20. 和田勝美

    和田説明員 仏間阿弥陀さんがありまして、それとともに先祖位牌があるというだけで、もしそれに強制的に礼拝をさせることかなんとかいう事実がない場合に、ただちに私生活の自由の侵害ということで取上げられるかどうかについては、私どもなお結論を得ておりません。
  21. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねしておるのは、信教の自由を拘束するということよりは、むしろ労務管理中心がどこにあるかということです。私どもの言おうとするところは——これは後に新聞記者会見の際にごたくさがありまして、その際、地方新聞の、きわめて会社の内容に深くタツチした発言をたびたびしておりまして、他の新聞記者とはまつたく立場を異にして会社の擁護を表明しておりました記者でありました、名前はあずかりますが、その人の説明が大胆になされております。それは、社長は自分のうちに仏壇を持つていなかつた、自分のうちに仏壇がないので、自分のうちの仏壇をあそこに持つて来て置いたのだ、こういうことを、私どもが聞いたのではなくて、説明をいたしておる。それは善意に解釈して、社長が自分のうちに仏間を持つていないために、あそこに置いた、一時宿借りをしていたという意味かもしれません。しかし、少くとも厳粛な形式によつて仏間においてみな拝礼をして、鑑という一つの誓いのようなものをさせ、それから会社側の訓示が行われているわけです。いわば社長の前に厳然たる誓いを立てるという行き方は、かなりきびしい労務管理の行き方だと思う。これらのものが法律のどの条章にかかるかということは、むずかしいかもしれませんが、私は何も違反の事実を摘発して起訴するという処分が目的でなく、そういうことはとかく労務管理の上にきわめて大きな悪影響を与えるものだから是正せしめるということは、私は可能だと思う。そういう処置が今までとられていないことは明らかであるが、とろうとする御意思であるかどうかを聞いておるのです。
  22. 和田勝美

    和田説明員 監督官の立場から申しますと、監督官は御存じのように法律違反があるかないかをやるのでございまして、ただちに労務管理の問題に入り得るかどうかについては、疑問があると思いますが、一般に労働条件の向上と労働者の私生活の自由を守るという見地から労務管理の合理化については、私ども関心を持つております。しかし、この近江絹糸社長さんは、井堀委員すでに御承知の通り労務管理について一つの考え方を持つておられるようであります。それだけに、私どもの方といたしまして、労務管理について社長さんとお話合いをするについては、なおこれ以外の角度からも問題を検討してやらなければならない面が多々あるのじやないかと存じておりまして、いまただちに、労務管理について云々することはいかがかと存じます。
  23. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題は非常にデリケートな問題でございますので、十分当局の御検討を煩わしたいと思います。  次にお尋ねしておきたいことは職安関係でありますが、これは会社の一番痛いところで、従来のいろいろな事例を調査いたしましたところ、この会社に限つて見込み募集をいたしておる。定数に倍まわる者、三倍まわる者を募集して、応募して来た者をそれぞれ非常に長い間検討している。それで一定の期間が過ぎてからそれを断るというやり方をしておる。ところがその募集に応じた人々は、せつかく入社できるものとして応募して来たにもかかわらず、これが最初から百人でよいところを三百人もとつておるのでありますから、二百人は最初からいらないのだ、そういう人々は就職の機会が失われてしまう。こういうような事柄は、会社側の便宜をはかることは、ある意味においてサービスはやむを得ぬと思うのでありますが、それからよつて起る求職者の被害はきわめて甚大であるという事実が、今度の国政調査でも明らかになつておるのであります。これはおそらく本省にも報告があつたことと思います。こういうものに対していかなる処置をおとりになるかについて、お尋ねいたします。
  24. 江下孝

    江下説明員 私もその話を実は地方の課長の方から聞きました。それはおもしろくないので、今後こういう水増し雇用ということは、厳に会社を戒めて、とらないようにということで私は指示をいたしました。今後そういう事態はもう起らぬと思います。
  25. 井堀繁雄

    井堀委員 今後はもちろんそういうことにならないように御注意になると思うのでありますが、こういう事実がずつと重なり合つて来て、それが違法にならないまでも、大体の労務管理の傾向がわかると思うのです。今後、従業員のあつせんをする場合に、これは非常に重要な問題だと思います。基準監督署職安との関係は、非常に出先になりますと、まつたく別なケースなつて——もちろん連絡はあるようでありますが、労働省の同じ指揮下にあるそういう労働行政でありながらも、こういうものに対する協力態勢については、きわめて私どもは不合理があるというふうに見て来たのであります。こういうものは、ここだけに限つたわけでありませんが、今後のばらばらになつておりまする労働行政に対する一つの指針を与えるものと思います。こういうものに対して、労働省はどういうふうに出先を調整される御意思かを承りたい。
  26. 安井謙

    安井説明員 お話の通り基準行政職安行政というものは、非常に密接な関係があると存じます。機能上、それぞれ別の機関現地に持つておる次第でございますが、これは両者有機的な関連を十分持たしめるように運営をして行きたいと存じておる次第であります。
  27. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと安井さんに、今の井堀委員の質問に関連しまして……。御意見のように、基準監督行政というものをその府県にまかせるということは、われわれはいろいろな資料に基いて判断しまするに、事実上監督できないということになるわけですね。ですから、今井堀委員の御意見のように、どうしても強力なる中央監督機構というものが末端まで確立され、これに対しては予算、人員その他において十分な裏づけをされなくちやならぬ。しかるに、私はあとで資料を提示しますが、三年に一回くらいしか工場監督ができないというのが実態なんです。これは監督官が不足しておるということと同時に、鳥取県のごときは、もうぼろぼろの自動車一台しかないという状態で、ほとんど監督行政はできない。それから職安の問題ですけれども、これにつきましても、まるでこれは地方にまかせつきりのようなかつこうになつておりますけれども、これはしかし、午後取扱いますこの前の労働省の発表しました白書のうち、失業問題と関連しまして非常に重大な問題だ。むしろこの失業対策こそ、政府は全力をあげてやらなくちやならぬ問題である。しかるに、最近内閣総理大臣が諮問しました地方制度調査会の答申案の中には、これは例示事項としてあげられておるのですけれども職安及び基準監督行政等については、地方機関、都道府県等に委譲するというような答申案が出ておるわけなんです。これは非常に私は重大な問題だと思うのです。そして地方自治確立議員連盟の方では、これを研究しておりますが、ただいま政府でおやりになつておる行政機構の改革の問題と関連して、労働省としてはどういう御意見を持ち、また閣議等においてどういうふうな発言をなされるか、そういう根本的な方針につきまして、この際明らかにしていただきたいと思います。
  28. 安井謙

    安井説明員 お答え申し上げます。労政問題、それから職安の問題、基準の問題、それぞれ非常に具体的な処置としましては、機能が違つておりますために、現地で三つの機関が分立したような形で運営されておることは御説の通りであろうと思うのでありますが、しかし、この三つのものが、結局終局においては有機的に関連しなければいかぬことは申すまでもないのであります。ただ基準行政につきましては、事の性質が、直截に国の意思が全般的に統一されて反映するというふうになつております。それから職安につきましては、これはやはり地方のいろいろな失業状態、就職の状態といつたような地方の問題と非常に関連があるものでございますから、これは一種の共管のような形になつております。しかしこれにも、同時にいろいろな財政面、あるいは基本的な線につきましては、やはり政府が統一した線をもつてこれをやつておる次第でございます。それで、なおこの地方制度調査会からの答申がありましたことも存じておりますが、これは今お話の通りに、単なる答申でありまして、私どもはそういつた仕事を地方それぞれにかつてに委任したような形で運営されることは、これは好ましくないと考えております。そういつたことのないように十分気をつけた運営なり機構ができ上ることを希望もいたし、また措置するように考えておる次第でございます。
  29. 赤松勇

    赤松委員長 そうすると、答申案のあの条項に関する限りは、労働省は反対だと、はつきり言えるわすですね。
  30. 安井謙

    安井説明員 労働省といたしましては、ああいつた精神地方に分立されてばらばらに運営されるというやり方については、これは反対しておる次第でございます。
  31. 赤松勇

    赤松委員長 わかりました。  ちよつとお諮りしたいと思うのですけれども、先般来、例の旭硝子の問題で調査をお願いしておきました農林省の大口需給課長と法務省の桃沢公安課長がお見えになつておりますので、ちよつとこの質問をはさんでいただきたいと思いますが、御異議ございませんか。
  32. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは後日にまわすといたしまして、この機会に労働省に要求いたしたいと思いますが、その後監督の結果についての御報告をひとついただきたい。それから職安関係につきましては、過去とその後の変化がどうなつておるか、資料を提出願いたい。
  33. 赤松勇

  34. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 食糧庁需給課長から、この前お願いしておきました調査を御報告願いたい。
  35. 大口駿一

    ○大口説明員 旭硝子株式会社牧山工場の争議による米穀の配給について、先般調査をいたしました結果、福岡県知事から食糧庁長官あてに報告書が参りましたので、一応報告書を朗読いたしまして御報告いたしたいと思います。    旭ガラス株式会社牧山工場の争議に対する米穀の配給経過報告  一、争議の時期    九月十日正午から全従業員が、四十八時間ストを実施し、引続き十二日から無期限ストに突入した。然るに、十月七日に至り、ストに反対する労務者が第二組合結成(約一、〇〇〇名、其の後約一、二〇〇名に増加)、事態は更に悪化したが、十月二十五日深更に至り妥結を見たのである。  二、米穀の配給方法   1、動機     九月十六日、会社側から市に対し、「労資の対立が激化しつつあるので、何等不測の非常事態に突入するかもしれないため、警備員は帰宅することも出来ないので、警備員等に対する米穀の補給に困つているので、同工場に対する労務加配米等の事後の配給量から返済することとして米穀を供給してほしい」との申し出でがあつた。   2、八幡市役所の措置  市においては、万一そのような事態となり食糧の補給の道を断たれることとなれば、人道上捨て難い重大問題と判断し、同工場に対する事後の労務加配米から差し引くか、応急米として取扱うかについては、後日決定することとして、九月十六日八幡食糧協同組合に配給の承認を口頭であたえたのである。   3、配給数量     市としては、八幡食糧協同組合に対し、一応米五〇俵の承認をあたえたといつているが、この承認が口頭であつたため、八幡食糧協同組合は市の承認は引続き配給出来るものと解し、工場側の要請により、その後引続き米一四七俵を出庫し、合計一九七俵を配給したのである。   4、その後の処置     市においては、すでに出庫済の一九七俵のうち消費残米の二七、五俵の現品を八幡食糧協同組合に返戻させ、不足分(一六九、五俵)については、九、十、十一月各月の同工場に対する労務加配用米穀から差し引き返還するよう、同工場に指令している。  三、現在未決定事項   1、市が非常事態として認めたことの良否の問題   2、米穀配給手続上、食糧管理法第八条ノ四の規定に基く、購入券なしの売買の問題   前二項の問題は目下司直の手によつて調査究明中である。  以上が、福岡県知事から食糧庁長官に、こちらから調査を依頼をいたしましたに基きまして参りました報告書でございます。
  36. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では食糧庁にお尋ねいたしますが、九月十六日といいますと、まだ争議が始まつて一週間しかなりません。そこで、事実ストライキですから、休んでおるわけであります。まだピケも張つておりません状態でございまして、むしろピケが張られるようになりましたのは、第二組合ができてから後でございます。デモも行われませんでした。ただ工場は休まれておる、こういう状態の中にあつたのであります。そうしますと、一体警備員として、はたして不測な事態が起るとして警備員にそういう状態の中に応急米を出される、これが食糧庁として妥当であるかどうか、これをお尋ねいたします。
  37. 大口駿一

    ○大口説明員 先般の委員会で、応急米としてこういう用途に米を出すことが妥当かどうかというお尋ねでございまして、ただいままたお尋ねでございますが、食糧庁といたしましては、応急米として米を出す場合に、かような事態が人道上急迫した状態であればともかく、さようでない状態においては、応急米としてかような用途に出すことは妥当でないと考えております。しかし、今回の事件におきましては、応急米として出したのではなくして、労務加配米の先渡しという形式を一応とつておりますが、配給計画にないものを先渡しをいたします場合には、ほとんど例外なしに、食糧庁に伺いを立てて、その承認を得てから先渡しをする。これは法律にも根拠がございますので、承認を得ないものは先渡しをできない。災害の場合、特別急迫な場合以外はできないということになつておりますので、労務加配米の先渡しとして物は返つて参りますが、手続上としては、配給の手続を誤つて運用したというふうに、食糧庁としては考えておる次第であります。
  38. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 さつき労務加配米の先渡しとしても手続上違法である、こういうように言われましたが、そのことについて再度確認したいと存じます。
  39. 大口駿一

    ○大口説明員 違法であります。労務加配のみならず、配給数量の先渡しをなし得る場合は、法律に、災害の場合というふうに書いてありまして、それ以外の場合は必らず食糧庁の事前承認を要するということにいたしてありますので、手続は誤つておると思います。
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 よろしゆうございます。
  41. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの食糧の関係について、関連してひとつ質問をしたいと思います。一応先渡しをしたから、事後は労務加配米を差引く、こういう先方からの話があつたという御報告でございましたが、その通りでございますか。
  42. 大口駿一

    ○大口説明員 その通りでございますし、現に、九、十、十一の労務加配数量から差引いて渡すように、県当局に指令をいたしております。
  43. 山花秀雄

    山花委員 労務加配米は、私どもの理解によりますと、生産奨励とか、あるいは労働の差異によつて一応の加配米を認めておる、こういうふうに理解しておるのでございますが、私はあまり詳しく知りませんので、食糧庁の方から、労務加配米についての、なぜ加配をしておるかという意義をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  44. 大口駿一

    ○大口説明員 労務加配米の意義につきましては、現在食糧の配給制度のもとにおきましては、通常の配給は年齢別に基準量を定めて配給をいたしておりますが、経済安定本部が存在をいたしておりましたころから、各産業の労務者に対しまして、労働量の多寡に応じ、基準量を産業別に定めまして、労務加配米の制度をとつておるわけであります。この意義は、産業に従事する労務者に、一般の消費者配給べースの米であれば、若干不足をする、その補いという意味で、産業別に数量を定めて、労務加配米の制度を実施をいたしておるわけであります。その後、経済安定本部が解体をいたしまして、労務加配の業務は食糧庁に移管をせられて、同本部が存在いたしておりました当時とつておりました制度をそのまま踏襲をして、現在に至つております。
  45. 山花秀雄

    山花委員 私もただいま説明された通りに、この労務加配米については、理解しておるのでございます。そこで問題になりますのは、せんだつての争議のどさくさまぎれに、一応会社側はこの労務加配米を先取りをした、それで現品は少量しか残つていない、そこで相当不足をした。これを将来差引くということになりますと、当然この恩典に浴すべき労働者に、現実問題として私は食糧が渡らないと思うのでありますが、そういう場合に、食糧の一つの監督行政として、どういう処置をとられるかという点をひとつお伺いしたいと思います。
  46. 大口駿一

    ○大口説明員 労務加配米から差引く措置につきましては、現実に争議の当時配給をされました米穀を、実際に消費をいたしました対象人員の労務加配から差引かれるように、工場側と八幡市側とで話合いがされるものと了解をいたしておりますが、私どもの方で計算をいたしましても、三箇月間に差引く場合におきましては、工場全員の労務加配米の数量からいたしまして、ごく一部の数量でありますので、現実に争議の当時配給を受けなかつた労務者の労務加配米が差引かれるおそれはないものと判断いたしております。
  47. 山花秀雄

    山花委員 私は何も文句を言うわけじやございませんけれども、争議のどさくさまぎれに、会社当局としては、この加配米は会社側に御用を勤めた労務者にあてがつておると思うのであります。もつと真剣に調査いたしますと、受配の資格のない、突発的に会社に雇い入れられた者が、この恩典に浴しておるとも一応考えられるのであります。これからの配給を差引くということになりますと、当然受配の資格のある者が受けないか、あるいはそれがもし受けたとすると、どこからかやみで持つて来てつじつまを合せたといつた結果しか出ないと私は思うのであります。こういう問題につきましては、ひとつはつきりした食糧行政を立てていただいて、そうして万遺漏のないように、当然受配すべき権利のある人々に渡るような方策がとられるかどうかという点を、ひとつ確信あるところをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  48. 大口駿一

    ○大口説明員 差引の問題につきましては、ただいまの御注意もございますので、私どもの方で、なお現在差引中でございますから、福岡県当局を通じまして、実際に労務加配を受け得る権利者が不当に差引かれることのないように十分監督をいたしまして、不合理のないように処置いたしたいと思います。
  49. 山花秀雄

    山花委員 それはなかなか私はむずかしいと思うのでございます。権利のある者が受配を全うするということになりますと、これは現実問題として、どこか会社がやみで買つて来てやるより以外に、ちよつとむずがしかろうと思うのでありますが、そういうことのないように、そうして権利ある者が当然受配できますように、なお一層監督を厳重にしてやつていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 続いて一、二点質問しておきたいと思います。今の労務加配米の差引でありますが、事実労務者から差引いておる、こういう事実がありますと、食糧庁はどういう処置をとられるかお尋ねいたしたい。
  51. 大口駿一

    ○大口説明員 県当局からの報告によりますれば、労務加配から差引く場合においては、九月、十月、十一月から差引くということになつておりますので、私どもの方では、九月、十月につきましては、差引が行われておるものと一応了解をいたしておりますが、なお差引方法その他については、再度十分に調査をいたしまして、遺漏のないように措置をいたしたいと思います。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在福岡県では、たとえば嘉穂郡とか直方周辺の農家とかに、この問題が相当大きく影響しておるわけです。供米問題にかなり影響を見ているわけですが、食糧庁としては、この問題に対して、供米に影響のないようなどういう処置をとられんとしておるか、またとられたか、お尋ねいたしたい。
  53. 大口駿一

    ○大口説明員 この問題については、先ほども申し上げました通り、食糧配給上やや手続を誤つた面がございますので、爾後かかる事態を起しませんように、十分県当局を通じまして警告を発するようにいたしております。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この問題で、ちよつと労働省にお尋ねいたしたいと思うのです。この九月十六日に、警備員がいて、そして今後不測の事態が起るかもしれない、こういうことを判断して市が米を出した、こういうわけであります。そうすると、争議をいたしまして、そうしてあるいは不測の事態が起るかもしれない、こういうことを経営者の方が考え、市及び県にそういう申請をし、県及び市が米を出すということは、争議に対する国または市町村の中立性に対する違反であると思いますが、一体労働省ではどういうふうにお考えであるか、お尋ねいたします。
  55. 安井謙

    安井説明員 大分デリケートな御質問でございますが、加配米の申請地方機関が受付けることが中立性の侵害にならないかどうかというお話につきましては、その場その場の状況によつても相当違つて来るかと思うのであります。旭硝子におきましては、これは食管法から見ましても明らかに妥当な措置でなかつたといつた結果を生んでおります。こういつた状況を十分考慮しないで、簡単に受付け、取次ぎをいたしておつたという点については、地方官庁としても、いいささか思慮の足りなかつた点がある、このように存じております。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法務省にこれについてお尋ねいたしたいと思いますが、この事件はその後どうなつておるか、お尋ねいたします。
  57. 桃沢全司

    桃沢説明員 その後福岡地方検察庁小倉支部におきまして、警察からの書類の送致を受けて現在鋭意捜査中でございまして、法律問題その他情状問題等検討中でございますが、まだこの委員会に御報告できるだけに全貌が固まつておりませんので、今しばらく時日をおかし願いたいと思います。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、この問題はいずれその他の委員会でも取上げられると思いますので、私としてはこれでおきたいと思いますが、続いて牧山工場にありました例の暴力団が第一組合に入つたという問題です。これは私は現地に参りまして再度調査をいたしました。ところが、どうしても過失傷害という事態ではないのでございます。暴力団が侵入をして来て、そうして器物を破損しております。それから傷害も起しておる。第一、不法侵入でもある。暴力行為の取締法にもかかる、こういうような状態になつておりますが、これを単に過失傷害——過失傷害なんという事件はなかなかないのでございまして、それを過失傷害であるとしてこれを不問に付せられておるが、検察庁としてはどういうようにお考えであるか。もう一度お尋ねをしておきます。
  59. 桃沢全司

    桃沢説明員 前回もお答えを申し上げましたように、市警の方の捜査の報告は、過失傷害ということになつております。しかしながらその間にいろいろ問題もあろうと思いますので、私の方からも十分その点を取調べてもらうようにひとつ通告いたしたいと思います。  なお前会希望申し上げましたように、それらについての状況あるいは証拠関係等を付して、もし告訴状でも出していただければ、捜査の上に非常に便宜であろうとも考えられますので、この点ぜひお願いいたしたいと存ずる次第であります。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 告訴状を出すということならば、出してもよろしいのですが、検察庁当局の取扱いがきわめて不平等である。たとえば、会社のトラツクの前にすわつたというので、道路交通取締法で検挙して、そして長い間勾留しておる。ところが、一方、今申しましたように、だれが見てもはつきりした事案を、告訴がなくては取調べができないという、こういうことでは、私ははなはだ不均等であると思う、むしろ事件は公になつておるのです。検察当局も知つておる、全然知らないのではない。何回も各人が検察当局に行きましたときに、必ずその話をしておる。ですから、当然これは検察当局が取上げるべき性格のものであろうと思う。現在問題になるのは、私服の警察官が現地にいて不問に付しておつた、こういう点が確かに問題になろうと思います。そこで警察としては、なかなかみずから取上げにくい問題であつたと思うのであります。そういう点は、やはり検察当局が十分考慮して、みずから捜査に乗り出すべきであろうと思いますが、あなたの方は、今から取上げるように注意をされるのか、もうすでにされておるのか、どういう御処置をとられるのか、ひとつはつきりお尋ねいたしたい。
  61. 桃沢全司

    桃沢説明員 私の方といたしましては、現地報告を信用する以外にないのでございまして、現地の検察当局としては、警察の報告によつて過失がきわめて明白であるというふうに一応判断をいたしておる次第でございます。しかしながら、多賀谷委員のお話も先般来ございますし、それについてもう一度検討するようにただちにとりはからいたい、こういう趣旨でございます。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 牧山工場の問題は今後に残すことにいたしまして、一言お聞きしておきたい。三井砂川で、事務所を急襲されて組合長以下続々検挙されておる、こういうことでございますが、どういう事情になつておるか、お尋ねいたしたい。
  63. 桃沢全司

    桃沢説明員 ただいま書類を持つてつておりませんので、こまかい点はまた機会をあらためてお答えいたしたいと存じますが、これまでに検挙したという報告は、すべて暴力事犯のみを検挙いたしておるというように聞いておる次第でございまして、身柄の処置その他についても、十分慎重にいたしておるという報告を受けておる次第でございます。次会にでもとりまとめて御報告申し上げたいと思います。
  64. 赤松勇

    赤松委員長 そうすると、三井砂川の件は、いつごろ報告していただけるようになりますか、委員会の都合もありますから……。
  65. 桃沢全司

    桃沢説明員 来ておるだけなら、あすでもけつこうですが、詳しいことでしたら、現地に問い合せまして……。
  66. 赤松勇

    赤松委員長 それでは現地に問い合せていただいて、詳しく報告してもらつた方がよいでしよう。
  67. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 詳しい方がよろしい。
  68. 赤松勇

    赤松委員長 それではさつそく問い合せて、臨時国会の開かれるまでに……。  それでは桃沢公安課長に対する質問は一応これで保留していただいて、午後には持永委員報告もありますので、あわせて質疑を続行することにいたしまして、一時半まで休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  69. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。持永委員
  70. 持永義夫

    持永委員 私は国政調査に関する御報告を代表して申し上げたいと思います。  私ども第一班調査は、本年の八月二十一日から同月二十七日までの七日間、荒木、多賀谷そして私の三名で、福岡、熊本及び佐賀県下におきまする水害地労働対策、その他労働行政一般にわたつて調査を実施いたしたのでありますが、その概要について御報告申し上げます。  まず福岡県におきましては、福岡県庁において、県の労働行政の職員、福岡地方労働委員会委員、福岡地方公共企業体等調停委員会委員、福岡労働金庫の職員、福岡県議会労働常任委員会委員、それらの方々と懇談をいたしました。また福岡県地方総評議会労働組合幹部の方々との懇談会、さらに炭鉱の労働者、使用者代表との懇談会のほか、福岡労働基準局の業務状況調査いたしました後、飯塚市、久留米市、大牟田市の三市の労働行政現地の官署、並びに三井山野鉱業所、三井産業医学研究所、有吉鉱業井之浦鉱業所、それから日華ゴム会社久留米工場、三井三池鉱業所、九州電力の港発電所等の会社、工場を視察いたしまして、随時労使との懇談会を開催し、事情を調査いたしました次第でありますが、特に御報告を要すべきものと感じましたことについて、ごく簡単に申し上げたいと存じます。  第一は、労働金庫に対する水害救援資金の貸付につきましては、政府の預金部融資の処置が、私どもが福岡に参りましたときには、正式通知が届いておりません。これはその後九月十一日大蔵省理財局から北九州財務局に通牒が発せられたのでありますが、七月中旬に申請いたしまして後、ようやく二箇月を経て初めて通牒が発せられたということにつきましては、たいへん遺憾に考えている次第であります。また労働金庫につきましての要望は、この資金について、融資はできるだけ低率にしてもらいたい。現行は日歩一銭八厘、年利六歩五厘であります。それから融資の期間はできるだけ長期にしてもらいたい。現在のものは、年度内に返す短期融資であります。それから融資額の三割程度は国家が補償してもらいたい。こげつき補償につきましては、単行法が必要と思うのでありますが、現在の労働金庫にはそれがございません。そういうような希望がございました。なお労働金庫につきましては、福岡県労働常任委員から、厚生年金保険等の積立金を労働金庫に預託し得る道を開いてもらいたいというような希望がございました。これも考究を要する問題だと思うのであります。  第二といたしまして、水害による工場、事業場の休廃業について、解雇手当、休業手当支給の不備を補うための失業保険の特別に関する実況を見たのでありますが、現地ではなお左記の点について問題にいたしております。  その一は、水害等の場合、事業場の休廃止に伴う解雇——、これは労基報準法第二十条第一項但書に該当するものと労働基準監督署が認定したものでありますが、この解雇につきましては失業保険金の給付に加味して、そのほかに解雇手当をほしい、これを職業安定所から支払つてほしい。すなわち、具体的に申しますと、六箇月の失業保険金にプラス一箇月の解雇手当がほしいということであります。  二には水害に便乗いたしまして、企業の整備あるいは人員の整理が行われる傾向にあるのに対しまして、何か解雇制限等の法的措置を研究する必要があるのではないかという意見がございました。  三といたしまして、飯塚市の労政事務所で聞いたところでありますが、これはほかの地方にも大同小異の傾向があるようでありまするが、最近労働教育の計画に対しまして、大手筋その他の事業主が、労働者権利擁護偏重のきらいがあるとして、協力的でないということであります。なお、これについて経営者間に何か申合せでもしておるというような状況であるということでありまして、これは労働省とされまして今後研究を要する問題であると考えるのであります。  四は、地方公共企業体等調停委員会の業務についてでありますが、どうもこの企業体の権限が中央集権的になつておつて地方の活動が十分にできないということと、もう一つは活動に要する旅費がほとんどないために、思い切つた活動ができない。従つて現地におきましては、ただあつせん程度にすぎないという状況であります。この点につきましても、中央とされまして検討の余地があると思います。  五は、失業対策事業について、賃金が低いために、当時は月収四千六百円程度、この金は生活保護法の扶助額にも及ばないという意見がございました。もつとも、これにつきましては、九月十六日から全国平均約一割程度引上げが実施されましたが、この点につきましては、今後この生活保護法の扶助額を常に頭に置かれまして、これとの権衡調整を労働省ではかられる必要があるように考えるのであります。すなわち、生活保護法の扶助額以下に失業対策事業の金額がなるということは、これはどうも働く者のためにおもしろくないと感ずるのであります。  六には、飯塚市及び大牟田市付近の失業問題について、やや特色がありますから、その点について触れておきます。すなわち、飯塚職業安定所では、当時失業保険を受けておる人たちが、六千四百九十六名ありました。それからその後炭鉱の整備によつて解雇される予定の者が四千名、合計いたしまして約一万名以上の人が予想されるのでありまするが、どうも失業対策事業の活動が十分でない。これに反しまして、大牟田市付近では、当時失業対策事業の適格者が千九百三十三名、そうして割当人員は千三百九十名でありまして、比較的に大牟田市の方は失業対策事業が進んでおる。もつとも、これは両市の状況にもよるでありましようが、飯塚市の方の実情は、市当局が失業対策事業に対する関心及び熱意が足らない。これに対して大牟田市の方は非常にこれに対する熱意が強かつた。そのために、こういう特色を現わしておるということは、これはわれわれ非常に関心を持つて見た次第であります。石炭の企業整備に伴いまして、当然失業者がふえるのでありますから、それに伴つて失業対策事業を漸増するということは当然でありますが、これらの点につきましても、中央とされまして、各市当局を適当なる方法で御指導願いたいと考える次第であります。  第七は、福岡県は、石炭山のほか黒崎窯業、八幡製鉄所、東洋陶器、旭硝子牧山工場等、珪肺患者数は、当時補償を受けておる者で四十五名に及んでおりまして、全国的に見ましても比較的多い方であります。ただこの珪肺病の判定について、措置要綱のいずれに該当するかということについて、中央労働省の珪肺対策審議会に諮つて決定されることとなつておりますが、これははなはだ不便である。つきましては、北九州に一箇所判定のできる機関を考えてもらいたいという意見がありましたことを御報告いたしておきます。  次は熊本県に関する報告でありますが、第一は労働金庫に関するものであります。私どもが参りました際には、熊本県におきましては、労働金庫がまだ設立をされておりません。しかし県当局は、この設立がぜひほしい、ことに水害に関連いたしまして、被害者に融資をするには、どうしてもこういう金庫がほしいということを非常に主張しておりました。当時はこの金庫がないために、地元の肥後相互銀行にこの資金の融資を代行せしめるということをやつておりました。最近の情勢ではまだ熊本県の方では、労働金庫設立の申請が来ていないようでありますが、関係者の話では非常に希望をしておりました。  それから第二は、熊本市付近の失業問題についてであります。御承知のように熊本市付近は大きな事業所はございません。紡績、製糸、専売公社工場、電通公社関係、九州産業——、これはバス事業でありますが、これらのものでありまして、比較的に大きな工場、事業場がございませんから、従つて労働雇用量は少いのであります。今回の災害にあたりましては、職業安定行政の活動によりまして、一時の日雇い労働者雇用量の増大をはかりまして、また賃金収入を希望する付近農村出身の間をあつせんいたしまして非常なる成績を収めたのであります。また必要に応じまして失業対策事業のわくの拡大をはかつたために、一般民間賃金値上りの抑制をいたしました。そうして民生の安定、被害地の復興に寄与し、相当な成績を示しております。これが熊本市の状況でありますが、要するに、この失業問題について、市の職業安定行政が非常に活動をいたしたということを感じた次第であります。  なお、最後に佐賀県の報告につきましては、多賀谷委員から御報告申し上げます。
  71. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 佐賀県につきまして、佐賀県庁、労働基準局、高倉鉱業岩屋鉱業所、唐津基準監督署、唐津港務所に行き国政調査を行いました。その結果について御報告いたします。  今次水害に伴う第二十条第一項但書の認定を得、事業場の継続が不可能となりました炭鉱は、相知鉱業所北波多水洗炭、岸山炭鉱、町切炭鉱、岩屋鉱業所であります。そのうち町切炭鉱及び岩屋鉱業所は、当時なお紛争を続けておつたのでございます。町切炭鉱は退職金支給につきまして、経営者協定の半分しか支給しないということから労働組合は反対をいたしまして、途中で県地労委のあつせんもありましたけれども、遂に妥結を見ず、組合会社を相手取りまして債権の確定について訴訟をいたしておりました。  次に岩屋鉱業所につきましては、唐津監督署は、七月二十二日付をもつて事業継続不可能と認定いたしましたが、その事業再開をめぐつて労使のはげしい対立があつたのでございます。すなわち千三百名の従業員中千百十八名を解雇いたしておるのでありまして、この基準監督署の認定は、労使の了解があつたからということが主たる理由のようでありますけれども、労組の方はむしろ休業中何ら賃金補償がされておらず、日々非常に生活が困窮しておる関係から、失業保険の受給するための方法において了解しておつたようでございます。そこで根本的な事業再開の問題が全然解決をされておりませんでした。この調査に参りました際に、県労働部、地方労働委員会並びに労働組合もみな述べておりましたが、もし議員立法でわれわれが可決いたしました今次水害における休業中の労働者に対する失業保険の適用が事前にわかつておつたならば、こういう紛糾を見なかつたであろうということが述べられたのであります。この点、せつかく可決されました法律が十分活用されなかつたことは、非常に遺憾に感じたのでございます。  次に監督署の処置でございますが、再開につきまして労使意見の対立があつたにかかわらず、監督署といたしましては、使用者のみに会いまして、労働組合の正式な意見を何ら聞いておりません。またきわめて残念に思いますことは、唐津監督署から福岡通産局石炭部にあてまして、岩屋鉱業所の水害状況につきまして照会を出しておりますけれども、その石炭部長名の回答なるものは、水害直後に一係員が派遣されてそれを調査したのみで、その後全然調査をしておらず、軽卒に水害の報告をしておるのでございます。こういう点がきわめて不親切ではなかつたろうかと感じたのでございます。  さらに十九条によります解雇制限の問題につきまして、労災にかかり休業しております者までも解雇せられておる事実がありました。すなわち基準監督署は十九条第一項但書の認定も、二十条第一項但書の認定と同様に扱つておるのでございます。そこでこれらの人々は、過去六箇月間失業保険を払つておりません関係で、失業保険の項も全然適用されない、こういうことになりまして、首を切られてから全然生活方法がないような状態でございます。そこで二十条但書の問題と十九条但書の認定を同じように扱うべきかどうか、ここにも問題があつたと思います。ことに事業場は全然再開をされていないのでなくて、やはり二百数十名の者が働いておりますし、将来において再開の見込みがあるわけでございます。でありますから、この認定につきましては、今後十分なる検討を要すべきであると考えたのでございます。  唐津港務所に参りましたけれども、特別述べるようなことはございません。  佐賀県におきましては、今申しましたように、今次の水害によりまして、これだけの炭鉱が閉鎖のうき目を見ており、ことに岩屋炭鉱におきましては、その町村が全然人がいなくなる、こういうような状態を呈しておりまして、佐賀県としては大きな問題でございまた。その後いろいろ紛糾を見ておりましたけれども、われわれとしてはこういう重大なる問題はやはり慎重に調査せらるべきであつたと考えております。
  72. 赤松勇

    赤松委員長 持永、多賀谷両委員に対する質疑を許します。質疑はございませんか。
  73. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 ただいま報告を伺つたので、労働省当局にちよつと伺いたいと思うのでありますが、ただいま持永委員の御報告によりますと、失業対策労働賃金がきわめて低賃金であつて生活保護法による生活保護費よりも少額の賃金である、こういう報告があつて、まことにその通りであります。こういうようなことでは、労働意欲を増強するどころか、労働意欲を阻害する結果となるのではなかろうかということも懸念されるのであります。労働省は、労働政策の面から考えても、当然生活保護費よりも上まわる賃金を与え、国民をして労働意欲を起さしめるような方策をとることが、当然過ぎるほど当然な労働省としての方策ではなかろうか、こう思うのでありますが、こういうことに対していかなるお考えを持つておられるか、幸い安定局長も見えておるようでありますから、御意見を伺つておきたいと思うのであります。
  74. 江下孝

    江下説明員 失業対策事業に働いております労働者に対する賃金が、生活保護法の適用を受けます人より基準として低い、こういうことは非常に不都合であるという御意見であります。もちろん、生活保護法というものと失業対策事業というものは、その本来の趣旨は、失業対策事業の方は、失業者として一時的にその仕事に働いて新たに定職を得るまで食いつなぐというのが失業対策事業の趣旨であります。生活保護法の方は、働こうにも働けなくて、どうしても食えないという貧困者に対する最低生活の保障というのが建前になつております。働いた方が働かないより給料が安いということはおかしいじやないかということで、実は先国会で当委員会等でも御意見がありましたので、私どもは大蔵省とも十分この点について話合いましたが、この間九月十六日からテン・パーセントの引上げをやりまして、大体あれで——まだまだとは思いますけれども、大体あれで均衡はとれた、しかし今後なおわれわれとしては努力をいたしたいと考えております。
  75. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 失業対策事業というものと生活保護法というものの建前は、お説の通りでありまして、よくわかるのでありますが、今申されますように、働く者が働けない者よりも収入が少いということでは、ほかに及ぼす影響から考えても、これはきわめて重要な事柄でなければならぬと考えられるのであります。生活保護法は、御承知の通り働けない者の生活を保護するという建前でありますから、最低の生活に値する保障が行われるということは、当然過ぎるほど当然な事柄でなければならぬのでおります。しかるに、今申されましたように、今年の九月一割の値上げをいたされましても、就労日数がわずか二十日か二十一日という就労日数でありまして、そのほかはいわゆる俗に申しますところのあぶれというようなかつこうになつて参りまして、その賃金ではとうてい生活をささえることはでき得ないのであります。従つて、今ただちに賃金を上げるということが、予算上困難であるといたしますならば、せめて就労日数をふやすとか、もう少し働く者か働けば生活の安定が得られる、たとえばそれが次の仕事を見つけるまでの暫定的な期間としての失業対策事業といえども、働く者が生活のできないような環境に置かしめるということそれ自身が、働く者を不安の中に追い込むことになつて参るのでありまして、この点については、労働省当局としては当然もつと真剣に考えて取上げていただかなければならぬ問題ではなかろうか。ひいては失業対策事業のみならず、その他一般の労働に及ぼす影響等から考えましても、そういうことをよく御配慮願わなければならぬ、こう考えるのであります。こういうことに対しまして、どうお考えになつているか、私はもう少しつつ込んだところをひとつお聞かせ願いたい、こう思うのであります。
  76. 江下孝

    江下説明員 御承知の通り失業対策事業の予算といたしましては、本予算は九十七億でありまして、最近例の水害、冷害の関係で三億を追加いたして、百億に達した次第であります。昨年度に比べまして、就労日数にして一日増加、賃金にいたしましても、資材費の補助率ないし事務費の補助額、これも相当ふやしております。結局私どもとしては、もちろん失業対策事業に従事せられる方々の苦しい立場というものは、実は十分認識はしておるつもりでございますけれども、全体としましての国の予算の獲得ということにもなるので、今後できるだけ努力を払つて、さらにこの予算の獲得に努めたい、こう申し上げるよりほかに方法はないと思います。
  77. 赤松勇

    赤松委員長 山下君、実はあと失業問題に関する議題があるのです。それで、どうでしよう。その方へ移つて、そのときに失業問題を、今の関連質問で、ずつと継続してやつていただこうと思いますが、よろしゆうございますか。
  78. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 それはそう願えたらけつこうです。それで、委員長に申し上げておきますけれども、こういう失業問題とか、基本的な労働政策等については、できますならば、ひとつ大臣に御出席を願つて、大臣の御意見等も伺いたい、こう思つておりますから、そのようにとりはからいを願いたいと思います。
  79. 赤松勇

    赤松委員長 国政調査に関する各委員報告に対する質疑をこれで打切りたいと思いますが、よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 赤松勇

    赤松委員長 それでは質疑を打切ります。
  81. 山花秀雄

    山花委員 各委員から、国政調査につきましていろいろ報告がございましたが、この報告を承りますと、当労働委員会としても、いろいろ報告に基いて対策を立てて行きたいと思われる節もたくさんございます。特に失業問題なんかは、当面のいろいろな問題にもなつておりますので、一応労働委員会として、この問題に関して対策を立てるために、決議を要請したいと思うのですが、いかがなものでしようか。
  82. 赤松勇

    赤松委員長 そうしますと、今の国政調査に行きました各委員報告に基いて、一応みなの総意を決議というような形でまとめておきたい、こういう御意見でございますね。
  83. 山花秀雄

    山花委員 そうです。
  84. 赤松勇

    赤松委員長 何か腹案を持つておられますか。
  85. 山花秀雄

    山花委員 ちよつと腹案がありますが……。
  86. 赤松勇

    赤松委員長 それでは暫時休憩しまして、一応理事会を開いて、理事会で相談したいと思います。     午後二時三十五分休憩      ————◇—————     午後二時四十八分開議
  87. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  ただいまより失業問題を議題に供します。
  88. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 労働大臣にお尋ねしたいのでありますが、まだ見えておりませんので、安井政務次官にお尋ねしたいと思うのであります。現在わが国は三百万を数える失業者が農村に都市に充満しているのであります。しかもこの厖大な失業者は、減少するどころか、かえつて増加の傾向をたどつておるのであります。十六国会におきましてスト規制法が施行せられまするや、炭鉱におきましては、たくさんの解雇者を出して来ておるのであります。あるいはまた、政府におきましては行政機構の改革、あるいは人員の整理ということが、今日伝えられておるのでありますが、新聞の報道によりますならば、政府は公務員に対して一割の整理をするということを、われわれは承知しているのであります。かような失業者の増大は、日本にとりまして最も大きな社会不安の根源となると思うのでありますが、こうした失業者の存在することはいわゆる産業予備軍的なものが存在するのでありますから、低賃金をもつて労働者雇用することができるという面から、使用者側にとりましてはたいへん利益をもたらす結果にもなるのであります。政治の立場から見ますならば、かような厖大な失業者が存在し、また増加することは、これは何と言いましても、私は政治の貧困に原因するのではないかと思うのであります。申し上げるまでもなく、政治の要諦は一人の失業者、一人の飢えたる人をもなくすることであると思うのであります。私は当局にお伺いしたいのでありますが、政府はこの失業対策に対して、いかなる根本的な方針をお持ちになつておりますか。すなわち、いかにしてこの失業問題の解決をはからんとするか。いかにして失業者を解消することができるか、そういう点に対してどういう具体的な方針をおとりになつておるか。これは非常にむずかしい、一朝一夕にできる問題ではないと思うのでありますが、しかしながら、政治の建前からいたしまして、政府の責任といたしまして、ただ単に失業者を対象としての失対事業あるいは生活保護法適用ということだけでは、抜本的な解決はできないのでありまして、この失業者を解消するいかなる具体的な方針をお持ちになつておるか、この点をお伺いしたいと思います。
  89. 安井謙

    安井説明員 政府の失業対策問題はどうかという御質問でございます。また大臣からも、あらためていろいろな御答弁を申し上げるかと存じますが、政府といたしましては、国民経済全体の立場から、今日の勤労者の就業状況をよりよく維持して行くということが、何をもちましても中心でございます。ただいまの潜在失業者の数につきましては、いろいろな推定がございますが、政府としてもこれに対してはつきりとした数字を確認することができないことを、たいへん遺憾に存じておる次第であります。大体失業問題と申しますか、雇用問題について指数の標準になりますのは、工業生産量、雇用指数、就労者の数、完全失業者の数あるいは失業保険の給付状況、こういつたものであろうかと存ずるのでありますが、この点につきましては、昨年の同期に比べますと、いずれも本年九月ごろまでの実績につきましては、大体において好転をいたしておるような実情なつております。さらに、これの裏づけになります輸出貿易なり特需の見通し、あるいは政府資金の放出状況ということになりますと、これは見通しでございますから、見通しにつきましては、今具体的な御答弁も困難かと思いますが、特需なんかの実績に徴しましても、これは本年までの実績については、必ずしも前年までよりも非常に悪くなつておるといつた傾向はないのでございます。さらに来年度の具体的な方針といつたものにつきましては、予算の編成と相まちましていろいろと御答弁もできるのじやなかろうかと存じております。試みに、ごく簡単に指数を一、二申し上げましても、工業生産指数から申しますと、今年のの八月は一五二・八%、昨年が一三〇%に相なつております。それから雇用指数もこの八月から九月の傾向は若干ながら好転をいたしておるというような事情でございます。さらに失業対策部面の人員でございますが、これも八月は四十三万、九月に入りまして四十万というような実数が出ております。これを前年に比べますと、前年の八月四十三万、九月四十二万といつたように、わずかながらではございますが、これも好転しておる次第でございます。さらにPWその他の物価の傾向等を考えましても、そういつたものに対する単価についても、でき得る限りの措置を講じて参つておるつもりでございます。
  90. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいまの政務次官の御答弁は、いろいろ数字をあげまして失業者が漸減しておるというように説明されたのでありますが、私は今日の情勢から見ましてそうした漸減の道とは逆の、かえつて失業者が増大する傾向に入つておると考えるのであります。しかも、私がただいま質問いたしましたのは、この失業者の対策、失業者を解消する方法として、もつと政府が政府自身において具体的な方針を立てる必要があるのではないか。そういう点につきましては、私は現在の答弁には満足することができないのであります。もつと根本的な、いかにしたならば失業者を漸次減しまして、一人の失業者も国内になくしてしまうかという、そした具体的な方針を立てられて、この方針に基いて政府が努力すべきではないか、そういう方針を政府において今日お持ちになつておるかどうか、その点をお聞きしたいのであります。
  91. 安井謙

    安井説明員 ごもつともなお話でございまして、ただいま申しましたのは、最近までのいろいろな傾向、指数からの実績について御説明申し上げたわけであります。将来一体どうするのか、具体策を持つておるかということになりますと、抽象的には輸出入貿易のバランスをとつて国民経済の自立をはかるということになろうかと考えております。これにつきましては、さらに来年度の予算とも関連いたして来る問題でありますので、具体的な見通しあるいは説明につきましては、ひとつしばらく御猶予を願いたいと思います。
  92. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 具体的な方針はまだお持ちになつていないようでありますから、その点につきましては、これ以上私質問いたすことを差控えたいと思います。今後そうした方向の具体的な方針を一日も早く政府が確立されることを希望しまして、次の質問に移りたいと思います。  ただいま政務次官の御答弁によりますならば、政府は失業者を漸減するためにいろいろな措置をとられておる。ところが、今日行政機構の改革を政府は断行しようとしております。また一面においては、今申し上げましたように、つまり人員整理さえしようとしておるようでありますが、これは政府においては矛盾しているやり方ではないかと思うのであります。それで労働省といたしましては、この行政機構の改革にあたりまして、どうした機構の改革をなされようとしているのであるか、また人員整理については、労働省関係におきましてどのような整理をしようとしておるのでありますか、具体的なお考え、方針がありましたなら、お伺いしたいと思います。
  93. 安井謙

    安井説明員 行政機構の改革と人員整理の問題につきまして、いろいろ巷間伝えられておるようでございますが、政府といたしまして、まだこの線で行くというはつきりとした具体的な対策は立つていない次第でございます。これはおいおい計画を立てまして、通常国会なり何なりで御審議を願うことに相なろうかと思うのでありますが、何と申しましても、政府機構といつたようなものは、そのまま置いておけば、だんだんと日を経るに従つて複雑になり、人員も自然に膨脹して行くという傾向はいなめないと思うのであります。これは政府財政を健全化するという意味からも、さらにほんとうに行政機構を能率化するというような意味からも、でき得る限り給与の面には心配をいたしまして、同時に、最も簡素な組織で効率的な運営をはかりたいと考えておる次第でございます。さらに人員整理の問題につきましても、これを一割削るとかなんとかいつたようなことは、まだ確定しておるわけでも、具体案ができておるわけでもないのでありますが、このまま自然に放置いたしましても相当数の自然減員といつたものもある事情でありますので、極力切り詰めた人員で、しかも失業者と申しますか、馘首に対して大きな社会的な影響を及ぼさないような方法をもつて、できる限り能率を上げたいと考えておる次第でございます。
  94. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私は端的にお伺いしたいのでありますが、労働省といたしましては、労働省の機構の改革をおやりになるかどうか、それから人員の整理をおやりになるのかどうか、そういうお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  95. 安井謙

    安井説明員 労働省といたしましての人員整理あるいは機構改革の問題も、これは政府全般の方針と関連をして来る問題でございますので、この点につきまして、具体的に今どうこうという御返事ができないわけであります。しかし、労働省といたしましても、機構はでき得る限り簡素化して、能率の上るいい方法があれば、これを採用いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  96. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 どうもはつきりした御答弁が願えないのであります。私ほかの方面からお聞きしたいと思うのでありますが、地方制度調査会の答申の中に、地方労働委員会の事務局職員を知事直轄の部局の職員の兼任制にするということがあると思うのであります。これは先ごろの全国労働委員会協議会におきましても、政府の方に強い要望がなされていると思うのでありますが、労働委員会の自主性、独立性、責任性から見ましても、かような行き方は、労働委員会のそうした外局的な立場をなくしてしまうのではないか。そういうことになりますならば、労働委員会の公正な立場というものを侵すことになるのでありまして、それでは労働委員会のほんとうの機能の発揮はできないことになるのではないかと思うのであります。私たちが長い間の経験から考えましても、労働委員会としてもつと外局的な、何ものにも拘束されない自主独立の立場をとることが必要ではないかと私は考えて来たのであります。それと反対な方向に進むということになりますならば、労働委員会の公正な立場というものはなくなつてしまうのでありまして、結果は政府の御用機関化するような心配さえ生れて来るのでありますが、そういう点につきまして、いかにお考えになつているか、お尋ねしたいと思います。
  97. 安井謙

    安井説明員 ごもつともな御質問でございまして、地方労働委員会の事務局を地方の知事の直属に移してしまうという考えは、これはお説の通り、はなはだ当を得ていないものであろうと思います。そういつた考えは、労働省といたしまして持つておらない次第でございます。
  98. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 次に、失対事業就労者の問題についてお伺いしたいと思うのであります。過ぐる十六国会におきまして、労働大臣は、失対事業就労者に対して、でき得る限り賃金の引上げ、あるいは就労日数をふやすように努力すると仰せられたのでありますが、その結果はどういうふうな処置がとられたか、お伺いいたします。
  99. 江下孝

    江下説明員 お答えいたします。就労日数につきましては、先ほども申し上げましたけれども、昨年度は平均一月のうち二十日稼働という建前をとつておりましたが、本年度予算におきましては二十一日稼働、一日増加をいたした次第でございます。賃金の引上げにつきましては、九月の十六日以降、全国平均いたしまして一割のアツプを行つた次第でございます。
  100. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 労働大臣ができ得る限りの考慮の結果が、昨年より就労日数が一日ふえ、賃金が一割引上げられたという程度にとどまつたことを遺憾に考えるのであります。御承知のように、現在物価は上昇の一途をたどつておりまして、また民間事業における労働者賃金も上つて来ておる。また政府におきましても、人事院の勧告あるいは仲裁裁定に対しまして、ある程度の履行をするようにお考えになつているようであります。かような状態の中におきまして、この失業対策事業労働者に対しまして、なお一層賃金を引上げるお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  101. 安井謙

    安井説明員 先ほど職安局長から申し上げました通りでございまして、九月十六日に一割程度のアツプをやつた次第でございます。さらに個々の問題につきまして、はなはだ不合理だと思われるようなものがございますれば、これはこれとして、さらに若干の修正は研究の結果いたしたいと考えて準備をしている次第でございます。
  102. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私先ほど席をはずしまして、さような御答弁があつたことがわかりませんので、繰返して失礼したのでありますが、私はこの程度で失対事業労働者賃金をくぎづけにするということは、非常に遺憾に考えているのであります。先ほどの国政調査の御報告にもありましたように、この失対事業に働いている労働者賃金が、生活保護法を適用されている者より下まわつているというようなことは、いろいろ法律が違うとか、そういうことはあるにいたしましても、私はこれは非常な矛盾があると思います。働いている人が働かない人よりも低い賃金というようなことは、何といつても大きな矛盾でありまして、このまま放置することは絶対に許されない問題だと思うのであります。こうした矛盾の中に置かれておる。しかも働く意思を持ち、働くからだを持ち、しかも今日の失対事業労働者の諸君の中には、非常な技術を持ち、経験を持ち、知能を持つている人があるにもかかわらず、こういうみじめな生活に立つておるということは、政府といたしましても、真剣に考えて、最低の生活だけは保障できるところの賃金を給与すべきではないか。そういう点につきまして、私はなお一層政府の考慮を願いたいと思うのであります。それでこの失対事業就労者に対しましての年末手当に対して、どういうお考えを持つておるか、この点をお聞きしたいと思うのでありますが、かような低賃金で働いております労働者の諸君は、正月を迎えるにいたしましても、一銭も私はたくわえはないと考えておるのであります。正月くらいは幾日か安心してあたりまえの生活をさせるだけの、あたたかい政府の考慮を煩わしたいと思うのでありますが、その点につきまして御質問したいと思います。
  103. 安井謙

    安井説明員 ただいまの、失業者の扶助料の方が、対策費より上まわるような場合がある、これは政策としておかしいという御質問はごもつともでございまして、先ほど職安局長からも御答弁申し上げた次第でありますが、あれは御存じの通り生活保護法による場合は、最高の限度をきめておりまして、さらに別途収入があります場合には、それを差引くのでありまして、必ずしもその金額を支給するといつたようなものではないわけでございます。さらに日雇いの方になりますと、これはその日当、賃金以外にも収入の道がないでもなかろう、そういつたような点で運営上のバランスは極力とつてつておる次第でございます。一割アツプによりまして、あまり極端なそういつた矛盾はなくなつておろうかと存じておる次第でございます。  就労日数にいたしましても、政府の方は努力いたしました結果、今度一日ふえたというわけでございますが、これは民間の方とつき合せて考えましたならば二十四、五日分の就労日数は、最近の情勢では確保しておると思つております。  年末手当につきましては、いろいろ御同情すべき問題でございまして、これについては政府も深甚な考慮をいたしておる次第でございますが、財政方面のこととか、いろいろな事情もございまして、はたして御期待に沿えるかどうかという点につきましては、まだ決定を見ておりませんのを遺憾に思う次第であります。
  104. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 年末手当につきましては、考慮しておるようでありますが、本年度の失対事業の当初予算が九十七億、過ぐる十六国会の補正予算で三億、合計百億が計上されておると思うのでありますが、この百億の中から年末手当を支給することができるかどうか。昨年の予算を見ますと、年末対策として四億円ほどあつたと聞いておるのでありますが、政府は現在の予算の中から、年末手当の支給をなさるおつもりであるのかどうか、あるいは来るべき臨時国会に予算として御提出になるのであるかどうか、その点お聞きしたいと思います。  なお、続けてもう一点お伺いしておきたいと思うのでありますが、最近失対事業におきまして格付、いわゆる能率給が出されまして、非常に労働の強化がされておるということを、これに関係しております労働者の諸君から私は聞いておるのであります。しかもこの格付に対して、監督官が非常に不公平なやり方をしておるということを聞いております。しかもこの労働強化のために、各地に死傷者を出しておるという問題であります。福島県の湯本町の失対事業におきまして、その施設の不備のために死亡者を出しておる。しかもこの死亡者が出ました問題に対しまして、監督官はこれを二日間も警察に知らせないで、そうして責任回避のいろいろな処置がとられたということも、私は聞いております。あるいは茨城県の高萩町における失対事業におきましても、非常に重傷者を出しておるというようなことも聞いております。かように労働強化のために死傷者を出しておるということに対して、政府はその設備あるいは労働強化というようなことに対して、いかにお考えになつておるか、以上二点をお伺いしておきたいと思います。
  105. 安井謙

    安井説明員 歳末手当につきましては、これは御存じの通り、原則として年度予算をもつてまかなう意図で、鋭意努力をいたしております。どうしてもいかぬというようなことにぶち当りますですかどうですか、これについては多少考慮の余地も残しながら、十分の誠意を尽したいと存じております。  それから、ただいま失業対策労働強化になつておるというような点、これは後ほど職安局長から、具体的な事例については御説明申し上げるかと存じますが、大体失業対策事業が、最初はほんとうの失業対策であり、いわば遊んで手当だけ出すというようなものから、かなり実質的な内容を持つた傾向になつて、これはむしろ失業対策の政策としては好ましいことじやなかろうかと存じておる次第であります。ただ具体的にそれが非常に不当な労働強化になる、そういつたことにならないように、今後とも十分なる配慮をいたしたいと存じております。さらに具体的にひとつ職安局長の方からお聞き取りを願いたいと思います。
  106. 江下孝

    江下説明員 格付を厳正にやつたために、労働強化になつたんじやないかという御質問でありますが、実は失業対策事業を始めましたときは、黒澤委員もよく御存じの通り、比較的規律がよくないために、相当世間から非難されたわけでございます。仕事の内容自体、普通の土木事業よりは若干軽いということで、おまけに失業対策でもあるからということで、われわれとしましても、そう厳格なことは申しておらなかつたわけでございます。最近だんだん失業対策事業の範囲が広くなりまして、相当な事業もやるようになつている。そこで賃金もそれに伴いまして、若干ずつではございますが、上つて参りまして、どうしても失業対策事業に働いておる人たちに、一律に一本の賃金で行くというわけには行かなくなつたわけでございます。従つて、私どもとしましては、これを応能制賃金と申しまして、やはり技能があり、労働力のある人は、それだけよけいにもらうのが、りくつではないだろうかというので、ある程度の応能制の賃金制度を考えるようにということで、地方事業主体にも指示をいたしたわけでございます。現実の問題といたしまして、言われますように、個々の格付において、あるいはたくさんのことでございますから、不公平がないとは申し上げられないのでございますので、この点は御指摘のような点があるということを前提にいたしまして、私どもも絶えず事業主体等との会合には、その点を厳正にやるように、実は指示をいたしておるわけであります。まだ十分至らぬ点もあるかと思いますが、この点は今後さらに厳重に指示をいたしたいと思つております。  それから労働強化になつたために、けがが多いというお話でございましたが、この点は、私どもが今まで全国から集めております情報では、組合の方からそういう意見がございましたけれども事業主体側からは、実はまだそういう意見を聞いておりません。函館でトラツクがひつくり返りまして、大分死傷者が出ましたことも承知しておりますし、高萩でもけが人が出たということも聞いてはおりますけれども、直接労働強化が原因でそういう事故を引起したというふうには、必ずしもとれないのではないかと考えておりますが、なおこの点については、この上ともよく事情を調べました上で、適切な指示をいたしたいと考えております。     〔委員長退席、矢尾委員長代理着席〕
  107. 山花秀雄

    山花委員 先ほど同僚の黒澤委員が、賃金の問題その他について質問をしておりましたが、政府の答弁を聞きますと、私は非常に誠意のない、責任のない答弁をしておるように聞えますので、この際はつきりしたことをお伺いしたいと思うのであります。  第十六国会のちようど終りごろでありました、全国の失対事業に働く登録労働者中心とする組合賃金引上げの要求に関して、当委員会でも若干の質疑がございましたときに、これは他の産業賃金との振合い、ことに国家公務員との給与の振合いの関係もあるので、登録労働者は非常に低賃金でお気の毒と思うけれども、今すぐ予算的措置を講ずることができない。そこで、とりあえず労働省の責任において、新しく予算を組むというわけには行かないけれども、当面九月十六日から一割引上げの便法的措置を講ずる、こういうお話でございましたので、一応われわれはそれを了承して参つたのであります。了承したということは、二百五十円が二百七十五円になることを了承したわけではないのであります。国会も閉会になりますので、予算的措置をとるひまがない。ですから、これは誠意がございましたならば、当然次の国会において予算を組む努力労働省として払わなくてはならぬと考えていたのであります。せんだつての国会は、俗に救農国会、災害の跡始末の国会として、われわれは見送つていたのでございますが、来る三十日から開会される臨時国会におきましては、当然労働階級の給与の問題が中心に論議される国会であるということは、労働省当局も十分御承知のはずでございます。しからば、懸案になつておりました登録労働者に対する賃金補正に関する一応の予算を検討して、国会の審議を願い、あるいは大蔵省に要求をするというのが、労働省としてとるべき態度であろうと思うのであります。先ほどの答弁を聞いておりますと、生活保護法に若干見合うところの賃金をきめたから、これでいいというふうにわれわれには聞えるのでございますけれども労働省といたしましては、登録労働者賃金問題に関して、どういうお考えを持つてなさつていらつしやるか、この際一応はつきりお聞きしたいと思います。
  108. 安井謙

    安井説明員 ごもつともな御質問かと思いますが、さしあたり九月十六日を期しまして、一割程度の予算の増額をいたしました。大体において大綱的にあまりアンバランスにならないような措置をとつたつもりでございます。しかし、さらに個々の問題を十分精査しまして、今の公務員のべースその他から著しくかけ離れている部分につきましては、これは若干の修正をやるつもりで今検討を進めております。
  109. 山花秀雄

    山花委員 登録労働者の二百五十円べースというのは、国家公務員の一万六十円べース当時から変更されていないと思います。去る七月十八日に人事院は一万五千四百八十円ベースを勧告されておるのであります。これは大体の人事院の考えといたしましては、七月十八日当時の物価並びに生活環境から、さような勧告がなされておると思うのであります。そして政府は一月からこれを実施するということが、新聞紙上に一応は伝えられておるのでございます。しかしながら、一月からかりにこれを実施するということになりますと、八月から一月までの間にまた物価の上昇もございますので、おおむね一万六千円ベースという計算に一応なるのでございます。そういたしますと、一万六十円ベースのときに二百五十円ということになりますと、おおむね五割を増せば一応の基準が出て来ると思うのであります。二百五十円の五割増しということになりますと、三百七十五円が一応妥当なる賃金の線として考えられるのでございますが、労働省当局といたしましては、登録労働者の今後の賃金問題に関して、どの程度の線をお考えになり、またそれを予算化することに努力される一つの金額のめどというのは、やはり労働行政の立場からお考えになつておると思うのでありますが、一応その辺のところをひとつこの際明確にお示しを願いたいと思うのであります。
  110. 江下孝

    江下説明員 一万円ベースのときに見合う日雇い労働者賃金は二百五十円だという山花委員のお話でございましたが、私どもの方ではそうは考えておりませんので、今回のベース・アツプをやると伝えられております前の一万三千円ベース、この国家公務員のべースと二百五十円のベースが見合つておるというふうに実は考えておるわけであります。そこでとにかく九月から上げましたということは、私どもといたしましては、国家公務員より早めに上げたというくらいに実は考えておるわけでございますが、今後といたしましても、決して賃上げをやらぬというようなことを申し上げておるわけではございませんので、今後物価の上昇、消費生活のきゆうくつというような点がだんだん出て参りますれば、さらにこれを検討して上げることにやぶさかではないつもりでおりますので、御了承願いたいと思います。
  111. 山花秀雄

    山花委員 重ねてお尋ねいたしたいと思います。一応二百五十円べースの登録労働者賃金が決定されましたのは、いつごろでございましたでしようか、お尋ねいたしたいと思います。
  112. 江下孝

    江下説明員 どうもうつかり忘れましたが、多分昨年の十月か十一月じやないかと思います。
  113. 山花秀雄

    山花委員 私の記憶によりますと、これはもうすでに早くから計算されて、言いかえれば、国家公務員の一万六十円ベースに関連して二百五十円ベースか規定された、こういうふうに理解しておりますが、政府当局はその中間である一万三千円ベースに見合う賃金としてこれを決定した、こういう御答弁がございました。これはあとでよく調べまして問題の点を明らかにしたいと思うのであります。これは先ほど黒澤委員からもお話がございましたように、去年の暮れ初めてもち代という形で約三日分の賃金を、これらの登録労働者に支給されました。本年のお盆も一応お盆手当として、最初は二日でございましたが、これもまた三日分支給されました。この問題は、去年の暮れ、今年のお盆というように、当然これからずつと一つの慣例として——金額は別でありますが、制度としては、一つの慣例になると思うのでございますが、こういう慣例をおきめになるお考えを持つておられるかどうか。その都度その都度というような形でこれをお考えになつておられるのかどうか、この点政府のお考えをはつきりさせていただきたいと思います。
  114. 江下孝

    江下説明員 昨年の暮れ、今年の夏というふうに、僅少ではございますが、賃金増給の措置を講じたわけでございますが、今後もこの情勢に変化がない限りは、できるだけ予算面にもそういう点を計上いたすようにいたしまして、努力して参りたいというふうに考えております。
  115. 山花秀雄

    山花委員 私の記憶によりますと、今年のお盆は、ちよつと私もうかつではつきりわかりませんが、去年の暮れは予算に計上して出したのではなくして、ざつくばらんに申し上げますと、運営の妙というような形でお出しになつたと思うのでございます。運営の妙というので、はたして実質的にこれらの登録労働者が潤つたかどうか。この点は、私は潤つたとはつきり言い得るかどうか、なお疑問の余地があるのであります。そこで私がただいまお尋ねいたしましたことは、やはり一つの制度としておきめを願つて、それに対する予算を計上する意思があるかどうか、こういう点でございます。
  116. 江下孝

    江下説明員 日雇い労働者でございますので、本来なら毎日々々が賃金の支払いということになりまして、理論的には年末手当というようなものを出すということは、予算的にむずかしい問題なのでございます。特に年末年始等につきましては、労働者の方々も相当経費がいるだろうから、できるだけその機会に賃金を増給するという方法で、生活を幾らかでも見てやる、こういうことに措置をいたしたのでございます。今後制度にするかどうかという点につきましては、まだそこまでは考えておりません。
  117. 山花秀雄

    山花委員 ただいまのお話でございますと、今後制度にするかどうかについては、今のところあまり深く考えていない、しかし実情に即するように処して行きたい、こういうことでございます。りくつの上から申しますと、たしかこの種の問題は、緊急失対事業というような形ででき上つた問題でございますが、ただいまでは一つの恒久的な仕事としておおむね扱われておるのでございます。名目的には毎日日雇い、毎日賃金支払いということになつておりますが、性格的には一つの恒久性を持つておると思います。当然これは恒久性のある一つの仕事として、それに見合うところの制度をつくつて行くというのが、この問題に対して親切なやり方だろうと私どもは考えておるのでございます。そこで将来いろいろ複雑な問題の起きないように、当然失業問題がすぐ解消するというような日本の経済の実情でもございませんので、一応これを制度化するのが、当面対策としても心要ではなかろうかと考えておるのでございますが、重ねて労働省見解をお尋ねしたいと思います。
  118. 江下孝

    江下説明員 お話の通り失業対策事業で働きます人たちは、最近相当固定化の傾向にあるわけでございます。この固定化の傾向は、できるだけ排除して、定職につけるようにわれわれとしては努力をしているわけでございますが、現在のところ、一般の産業情勢がまたなかなか好転いたしませんので、一日でこれをすぐ配置転換というわけにも参らぬわけであります。しかし私どもとしては将来の目標はそこに置いて仕事を進めているわけでございます。従いまして、制度化するかせぬかということよりは、現実の事態を直視して、これに必要な年末の賃金増給ということがあれば、考えて行くということの方が適当ではなかろうかというふうに、現在のところは考えております。
  119. 山花秀雄

    山花委員 最後に一点だけお尋ねしたいと思うのであります。年末が近づいて参りますと、当然再びもち代のことが論議されると思うのであります。平素は非常に低賃金で働いております関係上、日本の習慣といたしまして、年末年始につきましては、これらの労働者諸君も、やはりある程度のもち代を、現実問題として必要とすると思うのでありますが、本年はどの程度のことをお考えになつているか。大体私どもの聞き得る範囲におきましては、これらの労働者諸君は十五日分をいただきたい。——これはまだまとまつて具体的には現われておりませんが、全国的に大体の意向はそういう意向と承つているのでございますが、労働省としては運営の妙を発揮してどの程度出されるお考えを持つておられるか、もしめどがついておりましたならば、ひとつおつしやつていただきたいと思うのであります。
  120. 江下孝

    江下説明員 先ほども政務次官から申し上げましたように、全般の予算の現在、将来の見通しというものを目下考えておりますので、実はまだ今日までどのくらいということは決定いたしておりません。正直に申しまして、そうでございます。われわれとしては、日雇い労働者生活実態実態でございますので、もちろん予算の許す限りできるだけの努力はしたいと思つておりますが、十五日というような線はなかなか出て参らぬのではないかというふうに考えております。
  121. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 関連して一言だけ伺つておきたいと思うのであります。先ほど失対事業のことについて、いろいろ伺つたのでありますが、今山花委員から伺いましたいわゆる年末手当の問題、御承知の通り昨年は三日分でありまして、その三日分も、年末手当として予算が計上されずに、従来の失対事業費のうちからそれだけ食い込んで年末手当を出された、こういう結果に相なつておるのであります。言いかえて申しますると、自分らが当然就労日数で受け得られる賃金の中から年末手当としてそれだけもらつた、こういうかつこうになつたように思うのであります。ところが、今局長から、いろいろ失対事業というものの性質から行きましてというお話があつて、一応りくつはもつともらしく聞えるのでありますけれども、今山花委員も申し上げましたように、すでにこの失対事業というものは、臨時的なものから恒久的なものに移行して参り、しかも労働省の方でもそういうことは暗に認められて、あるいは健康保険も設置されるとかいろいろなことで、恒久的なものとしての考え方の上に切りかえられて参つて来ておる、こう申し上げましても決して過言でなかろう、こう思うのであります。従つて、一般のものと同じように年末あるいは夏の期末手当というものは、予算の上に正式に計上して、常平生の自分らの給料のうちを年末手当としてとるということではなくして、手当以外に年末手当という予算を計上して渡していただく、こういうふうなことにひとつお考えを願いたい、こう私は思うのであります。さらに、今山花委員は、大体十五日分、こう言つておりましたが、阪神間その他の地方では、すでに一箇月分を要求するということを決定しておる自由労働者組合もたくさんあるのであります。非常に控え目に、しかも現実に即して行かなければならぬからということで考えるのが、今山花委員の言われるように、十五日分ということを打出して参つて来ておるような実情でありまして、それが去年のように、あるいは三日分とか五日分とか非常に下まわるものであるといたしますと、地方では相当問題が起きるのじやなかろうかということも懸念されるのであります。ことに山花委員との問答の間にもございましたように、すでに今年の五、六月ごろを中心として人事院が勧告いたしました時分よりは、うんと物価がはね上つて来ておるのであります。ことに正月から先になりますと、米の消費者価格も上るし、その他の物価も追随して上つて参るということになりますと、生活苦のことが目の前に現われて参りますので、その辺のところも御勘案願つて、これにはよほど思い切つた対策を樹立していただかなければならぬのではなかろうか、こう思うのであります。ことに行政整理等を予想し、あるいはその他の産業実情等から考えまして、おそらく明年度に至りますと、さらに失業者が増大して参る、そういうことになりますと、この失対事業というものの中に流れ込んで来る人たちが数多くあることを、われわれは予想しなければならぬのであります。実態はわれわれがきわめて憂慮せざるを得ないことに相なりまして、ことにこういう事業等については、労働省当局はよほど関心を深く持つて対処していただかなければならぬのじやなかろうか、こう考えられるのであります。重ねてお願いを申し上げますけれども、年末手当というのは、できるだけ今後予算化して、大蔵省に要求すべきものは要求して支給する、こういう方法を確立していただきたい。去年も同じようなことを申し上げたのでありますけれども、去年のときには、今までなかつたのをここで初めて出すという一つの前例を開くことになつたのであるから、今われわれが申し上げるようなことは、明年度からひとつ何とか考慮するということにして、今年はこのままで了承願いたい、こういうことを労働省の方からしばしば話がありましたので、本年度は私は正式に予算化して出されるものだ、こう信じておつたのでありますけれども、一体その辺が今の話を聞いてみますと、どうもまだ納得行きがたい、答弁が承知できがたい点が多いと思うのであります。実際労働省として、これに対してどうするというその腹構えでもいいですから、ひとつお聞かせが願えたら非常に幸いだ、こう思つておるのであります。
  122. 安井謙

    安井説明員 再度の御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、日雇い労働者に対しましては、毎日の雇用でございますので、本来は年末手当という名前のものは支給する筋合いのものでないということになるわけでございますが、現実の問題といたしましては、お話の通り相当の固定化をいたしておりますし、それから現実に生活も苦しいであろうということからいたしまして、昨年初めて賃金増給という形をもちまして年末の手当を支給いたしたわけでございます。本年度におきましても、もちろん本年度予算編成の際には、日雇い労働者でございますから、これは年末手当という形のものは計上できませんわけでございますが、しかし予算としての全体の総額の回数計算等におきましては、実はわれわれもできるだけそういう点にゆとりのあるように大蔵省と交渉をしてきめた予算でございますので、決してこれによりまして一般の方をどんどん削つて就労人員なり就労日数をうんと削つてやるという実際の結果にはならないというふうに私どもは考えております。
  123. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 もう一つ伺つておきたいと思うのでありますが、私は阪神間でありますから阪神間の自由労働者組合の先般の大会の決議等によりますと、年末、年始の休暇も返上をして、われわれは生活苦のために働かしてもらいたい、こういう要望も、先ほど労働省に提出いたしました要望書の中にも書いてあるのでありますが、そこまで失対事業に従事しておる諸君が生活苦にあえいでいる。こういう実情を直視されて、年末、年始の休暇返上ということ等にも思いをいたされて、できるだけ就労日数のふえるように御配慮を願いたい、こう最後にお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  幸い今労働大臣が見えましたから、私は労働大臣に二、三お伺いをいたしたいと思うのであります。  先ほど大臣の見えない間に、いろいろ伺つたのでありますが、最近の新聞を見ますと、行政整理が行われて、何万人かのいわゆる公務員の失業者が予想されるのであります。あるいは公務員だけではなくとも、中小企業は、ことに年末を控えて賃金を支払うことができずに、工場をやむなく閉鎖しなければならぬという例も、阪神間等には少くないのでありまして、こういうことからいたしまして、おそらく明年度は失業者が数多くふえるのではなかろうかという予想がされるのであります。一般私企業の人は別といたしまして、今政府が意図いたしておりますところの行政整理によるいわゆる公務員の失業者というものに対するところの受入れ態勢というのですか、その配置転換といつていいのですか、それらの人たちをどう就職せしめるか、どこに就職せしめるか、どういうめどを持つておられるのであるか。ただ行政整理によつてやめさすのもやむを得ないという態度でおられるのであるか。私はきわめてこれは労働省にとつても、あるいは国家の上から考えても重要な問題ではなかろうか、こう思うのであります。いずれの国にいたしましても、今の政治というものは、国民全部を完全雇用なさしむるということが政治の中心でありまして、まつたくそういうことと相反する方向に向つておるような感じがいたすのであります。もし今新聞等で報道されるように行政整理が行われて、あるいは七万とか八万とかいう多量の整理が行われたといたしますならば、それらの人たちをどうどこに就職せしめるという一定の目安を持つておられるのか、その辺のところを大臣に伺いたいと思うのであります。
  124. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私こちらへ参ります前に、すでに政府委員その他からもお答えがあつたかと思いますが、この行政整理の問題に関しましては、まだ政府といたしまして、具体的にこうするという決定的な案は、実は持つていないわけであります。ただ全体といたしまして言い得ることは、どうも官業にしろ民業にしろ、あるいは政府機構そのものの運営にしろ、非常に人が多過ぎて、しかも能率的でない運営があるのではないか、これをもう少し能率的にしないと、やはり日本の非常な生命であるところのコストを低くして、良質の品物をつくり、外国貿易において、優勢なる地位を回復して、そうして日本経済の発展興隆に寄与することができぬのじやないか、そういう面から、どうしても能率をよく仕事をするということを、まず政府自身が始めなければならぬのじやないか。政府自身の機構において、いたずらに人が厖大であり、またその所要するところの経費も厖大であれば、これまた国民の税金の負担にもなる。そこで、こういう機構をできるだけ簡素化して、いわゆる安い政府といいますか、国民の負担のかからない政府というものをつくる必要があるのじやないか。そのことによつて出た金は、できるだけ国土の開発に向つて投入すべきだろう。大いに公共事業を興し、あるいは電源開発等をやつて、そしてその面に積極的に生産に寄与するところの労働力の吸収をやつたらどうか、こんなような全体の考え方の筋道であるわけであります。ただ、山下さん御承知のように、日本の場合には、非常に人口が——最近におきましては、若干増加の趨勢をゆるめてはおりますけれども、昨年あたりにいたしましても、約九十万人の労働力人口がふえるわけであります。これをとにかく何とか吸収をしておるので、完全失業の人員も特別な変化はなく、五十数万人台というところにおりますわけで、全体の労働力人口そのものから見ますると、まあそれほどの摩擦的な状況ではないのであります。ビヴアリツジ等に言わせれば、要するに三%以下は摩擦的失業でないということを言つておる、その範疇に入るわけで——しかし、実際問題として今お話のように、十万人近くの人が職を失つた場合にどうするか。これは非常に大きな問題でありまして、これは十万人であるかあるいは幾らであるかということにつきましては、政府は何ら具体的な施策をきめておりませんのですが、いずれにいたしましても、今申し上げたような筋道で、あるいは出るかもしれないそういう人口を吸収する——しかし、そうした筋肉労働に向かない人も出るわけでございますから、その面につきましては、統計というものがもう少し拡充強化される必要があろうかと思つて、その統計的な面から問題を正確に把握する機構を充実するというようなことも一案ではないかと考えております。いずれにいたしましても、本案そのものがまだ決定しておりませんので、私どもの方としては、そういうことをにらみ合せながら対策をいろいろ考えて行こう、こう考えておる段階でございます。
  125. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 まだ政府の方でも、はつきりどうしようということは決定されていないからと、こう申されるのでありますが、大体はそういうふうに方向づけられておるのであるから、労働省としては、それに対処する方策を持つておられなければならぬのではなかろうか、こう思うのであります。冒頭に大臣は、人があまり多過ぎては、あるいはコストが高くつく、いわゆる貿易市場で勝つためには、コストを下げなければならぬというようなお説を述べられたと思うのでありますが、私は自由党の中で一番革進的な考え方を持つておられる労働大臣として、その言葉をまことに遺憾に思つて聞いたのであります。人が多いからコストが高い。これはきわめて資本主義的な考え方で、よく今までいわれている言葉だと思うのであります。私はコストを下げるということは、もちろん人にもあるかもわかりませんけれども、人以外に、やはり生産に対するところのコストを引下げるという大きなポイントがなければならぬ、こう思つておるのであります。そのポイントをはずして、人のみにこれを限定して考えるということは、日本の将来の産業をとんでもないことにならしめる結果になる、こうおそれるのであります。私は、しかも日本労働行政の長におられる大臣がそういうお考えであるといたしますならば、ゆゆしき問題ではなかろうかと考えるのであります。もう少しその辺をひとつお考えをかえていただきたい、こう思うのであります。  さらに今申し上げましたように、政府が正式に決定をしてからあわを食うようなことがあつてはならぬのであります。労働省としては今から万般の準備とその方策を樹立してやつてつていただきたい。これが私は今回話題に上つておるところの行政整理等に対する社会上きわめて大きな関心を持つておる重大な問題じやなかろうか、こう考えるのであります。できるだけ政治は国民に不安なからしめるような方策を毎々手を打つて行く、こういうことがなければ——壁に打ち当つてから、物にぶち当つてから方策を立てようということは手遅れでありまして、それは今の新しい時代の要請に沿わないのであります。私は自由党の中の一番進歩的考えを持つておられると世間からいわれておる大臣でありますから、ひとつそういうことについて、今のことをお考えを願いたいということをひとつ御希望申し上げておきたいと思うのであります。そういうことについて、一体大臣はどうお考えになつておるか、ひとつお聞かせを願つておきたいと思うのであります。
  126. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の言葉があるいは足りなかつたかもしれませんが、仕事がないのに非常に人をかかえて困つているという場合には、他にもう少しその人を十分吸収し得るような仕事を興す必要があろうか、こういうような意味合いで申し上げたのでございます。なお、失業者の数につきまして、私は五十数万人と申し上げましたが、しかしながら三月六十一万人がピークでございまして、その後四月になりまして、新卒が吸収されて五十三万人になりまして、現在は四十万人程度に下つて来ております。従いまして、今申し上げましたような非常な労働力人口が労働力としてふえて来ておるわけでございますが、これも何とか吸収をされておるというような数が統計的には出ておるわけでございます。これらとにらみ合せまして、ただいまのような問題につきましては、十分万遺憾なく研究して参りたいと、こう考えております。
  127. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員長代理 中原健次君。
  128. 中原健次

    ○中原委員 最初に、先ほどから日雇い労務者の賃金のことについて、いろいろ政府の見解説明がありましたが、しかし私は先ほどの局長の御答弁の中に、二百五十円の日当の場合に、一般公務員が一万三千円のベースにおる、こういう比較で説明ができておりました。そのことは別といたしましても、とにかく日雇い労務者の場合には、この稼動日数というものが常に対象となつて計算をされなければいけないのであります。そうだとすると、この二百五十円がかりにこの際一〇%の引上げをなし得たといたしましても、月の平均手取りは一体幾らになるか。この問題をまず前提にして、日雇い労務者の賃金の問題を考えられなければ、妥当な結論が出て来ないのじやないか、このように思うわけであります。従いまして、現在全国平均日雇い労働者諸君の平均手取り賃金はどれだけになつているだろうか、これについての御答弁を求めたいと思います。
  129. 江下孝

    江下説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、日雇い労働者平均就労日数は、一昨年より昨年、昨年より今年というふうにふえております。ごく最近の統計で参りますと、八月が全国平均で二十二日の就労日数になつております。九月は二一・四というふうに相なつております。現在平均賃金が二百七十五円でございますので、これをかけまして——そのうちから例の失業保険料の三円が差引かれますので、それを差引いた額になりますが、その額は後ほど計算いたしまして御報告申し上げます。
  130. 中原健次

    ○中原委員 かりに計算の便宜上二十日といたしますと、五千円という数字が出て来るかと思います。そうなりますと、一月に五千円の賃金を得たといたしまして、はたしてどのくらいの生活ができるであろうか。これくらいのことは簡単に答えが出るように思うのであります。そうであつてみれば、かりに十九日を現在二十二日までに十九、二十、二十一、二十二とだんだんふやして来たとはいうものの、手取りの賃金といたしましては、きわめて微細なものでしかないということが考えられるわけであります。ことに今日の物価の実情から考えますと、とうていこれでは生きることさえむずかしいのじやないか。私、今ここに六大都市の平均賃金を持つておりますが、六大都市のごく最近の平均賃金を見ましても、六千百三十八円というふうに、労働省自身が発表しておいでになるのであります。そうであつてみれば、これはもう説明の余地も何もなくて、これじや食えない。まさに文字通り飢餓線上におると言うことができるわけでありまして、だからこそ、最近相次いで非常にのろうべき悲劇も続出いたしておりますが、それらのこともわからぬわけじやない。こういう原因があつて、こういう状況であつてみれば、こうした事件のできることもまたふかしぎではない、こういうふうに理解することができるわけであります。しかも、これは現在就労しておる人たちの場合でありますが、就労からはずされておる人たちの場合は一体どうなるだろうかということを考えますと、全体としての当面の失業問題というものは、政府が文字通り全力を傾けてこの対策を講ぜぬことには、これはとんでもないことにならざるを得ないということが言えるように思うのであります。ところで、先ほど労働大臣失業対策について一端を述べておいでになられましたが、ほんとうにそれはこのような状況のもとにおける失業者を救済することができる対策なのだろうかどうか、こういうことについては、大きな疑問があるように思うわけであります。従いまして、私はもう一つつつ込んだ労働政策についての大臣の確信と、現在政府がこれに対処して行こうとしておいでになる具体的な対策案をこの際お示しが願いたい、このように思うわけでありまして、この点に関しましては、根本的な問題でありますから、まず大臣からもう一応の御答弁を求めておきます。
  131. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 失業という非常にお気の毒な事態に直面しておられる方々に対しましては、私どもとしても財政の許す限り考慮いたしておるつもりでございます。ただ失業を完全になくする、いわゆる完全雇用の方向に向うということで努力はいたしますが、その方法としてはやはり公共事業を興すということが一点、それから民間の企業をできるだけ活発にする、その企業が盛んになることによつてそこに就労する人の機会をつくるというこの二つがおもな柱であつて、その二つによつていかんともいたしがたい谷間を埋めるものが緊急失業対策であろうかと考えておるのでございます。本年は非常に大風水害に見舞われたのでございますが、この非常な災害を一つの教訓と考えまして、今後はひとつ徹底的に公共事業に重点を置いて、荒れた国土の回復ということを、政府として根本的な対策を立ててやろうじやないか、こういうことも考えておるのであります。ここにおきまして就労の機会は当然できまするし、一方におきましてその有効需要が喚起せられることによりまして、他の民間産業も活発になつ就労の機会が与えられる。一方そこにおいてできるだけ高能率の運営を考えてもらいまして、輸出の振興をして行くという三つの柱を立てて、失業問題について大きな構想をもつて進みたい、こういうふうに今考えておる次第でございます。
  132. 江下孝

    江下説明員 先ほどお話がございました六大都市平均賃金が六千百何十円というお話でございましたが、私どもの方で計算いたしましたところによりますと、六大都市の平均といたしまして、二十日の場合に、日雇いの失業保険を五日もらえるという計算で参りますと、七千二百三十六円になるわけでございます。二十一日稼働の場合にいたしまして、日雇いの保険が四日ということになりますと、七千四百十四円、二十二日で計算いたしますと、日雇いの保険が三日になりまして、七千五百九十二円、こういう私ども数字なつております。
  133. 中原健次

    ○中原委員 賃金問題はあとにいたしまして、ただいま大臣から、今日の災害を一つの教訓として公共事業にできるだけ力を入れて行きたい。またその方面に失業者を動員して行くことの重要性は、御指摘なつ通りでありまして、もちろんそういうことも一面であると思います。しかし、今日の政府の施策をもつてして、ほんとうに公共事業にこの巨大な失業人口を吸収するような政策が行われ得るかどうか、この点については相当疑問があると思います。ただ、ここで観念的に、言葉だけで扱うことは可能でありましようが、実際の政策としてそのようなことができるかどうか。たとえば、さきの臨時国会における災害復旧の予算の計数から考えましても、あのようなテンポで、ほんとうに公共事業に大きな期待を寄せ、あるいは災害復旧に対して大きな期待を寄せて、失業問題解決のかぎを見出すことを強調することが、ほんとうに良識ある答弁として受取ることができるかどうか、私はそういう疑問を持つのであります。もちろん今日のこの大災害を全面的に対象として、これに災害復旧の施策を具体的に行うて行くということをなし得るならば、これは当面の失業問題解決の重要なかぎにもなるかと考えますが、今の政府のやり方をもつてしては、とうてい不可能に近いものではないか、こういうふうに私どもは残念ながら見ておるわけであります。これについて、願わくばもつと具体的に、できれば計数的に御説明を願いたいと思うのであります。
  134. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 二十九年度の予算の編成方針等も、まだ確定しておりません。従つて、計数的に申し上げるということは不可能と思いますが、ただ言い得ますることは、公共事業を大いに活発化しようと思いましても、やはりその財源の問題になろうということなのであります。今建設公債等を出してやるということにつきましては、これはインフレーンヨンの問題というものが非常に神経質に考えられておりますし、また実際そのおそれも決してないとはいえない状態でありますので、建設公債を大きく取上げてやつてつて、公共事業を興して行くということも、現状から見ますと、あまり期待ができないのではないかと思うのであります。私どもとしては、今方向を申し上げたのでありますが、その第一着手としては、やはり行政整理ではないか。行財政の整理を徹底的にやつてそうして中間において国民の税金が何となく行政費に使われてしまうということよりも、実際にその金を投入して、建設的な方面に向けたい、そうしてそこに労働力の吸収源をつくりたいという気持を持つておるのでございます。その点、国内がデフレーシヨンになつて、有効需要の喚起が非常に望ましいというような事情でございますと、建設公債を出して、大々的に公共事業をやるということも非常に可能になると思いますけれども現状ではどうもその逆のような状態でございますので、この点は少し困難かと考えております。
  135. 中原健次

    ○中原委員 財源の問題は、もちろん政治方針の立て方で、根本的に対立することでありますから、軍事政策に相当大きな力をいたしておる今の政府としては、これはとうていむずかしいだろうとは初めからわかり切つたことであります。しかしながら、たとえば民間企業等について考えましても、最近民間企業がしきりと人員の整理を行うておる。その人員整理を行うにあたつて、政府はその人員整理に対して、むしろ相当積極的に協力を与えておる、こういう面が多々現象として出ておるわけであります。     〔矢尾委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば、最近の炭労を初めとする各重要企業の合理化等の名による大量馘首等は、まつたく政府の方針そのものにのつとつて行われておることを見出すことができるわけであります。従つて、ああいうような政策を推進することに政府が協力して行くというのであつてみれば、いやおうなしにこの面から大量の失業者が出ざるを得ないのです。従つて、この行政整理の問題とからみ合せまして、民間企業の面もそういつた一つの企業整備の方針を、しかも露骨に出して来ておる。であつてみますと、実際は失業者救済のための、あるいは失業者をなくするための、より少くするための施策を行うと言いながらも、どうも実はまつたくその反対の方向にどんどん進んで行かざるを得ないということが、否定することのできない現状なつておるとわれわれは見ておるわけです。この点につきまして、ことに民間企業等に関して、おそらく政府としても、このままで失業者が吸収され、あるいは漸減して行くというふうには見ておいでにならぬであろうと思うのでありますが、この現在の民間企業、特に重要産業のこのような人員整理の方向に対して、労働大臣としてはどういうふうにこれを見ておいでになるのか、この点をこの際承つておけばと思うのであります。
  136. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お話でございまするが、政府といたしましては、民間産業のいわゆる首切りというものを、何か勧奨するといいますか、助成するような態度をとつたことは実はないのでございます。私どもは、企業は企業自身の立場において、労使それぞれ話し合つて問題を解決することが望ましいという態度を堅持しております。政府としましては、むしろそのあとの問題、かりに失業者が出た場合にどうするかということにつきまして考慮いたしておるわけであります。私どもの省といたしまても、関係各省といろいろ連絡をとりまして、連絡協議会等も設けておりますし、あるいはまた会社等において非常に大量の首切りをするというような場合が出ますれば、その会社に対しまして、事情を聞き、そういう整理された連中は、あとどういうふうになつて行くと思うかという程度まで聞いて、十分相談に乗つてやるように進んでいるつもりでございます。数字の上から見ますると、お話ではございましたけれども、最近完全失業者の数は減つて来ております。御承知のように、最近予算がやや遅れて成立した関係もございまして、下半期において財政投資は相当活発になつて来ております。私ども方々の職安をまわつて見ておりますが、一番手近な飯田橋の職安あたりでも、最近土建関係の要人員の希望が非常に多うございまして、その方の需要が非常に活発のようでございます。数字で見ましても、六月に四十四万、七月に四十三万、八月に四十三万、九月は四十万と減つておりまして、前年の同期に比べましても、二万人から三万人くらい失業者の数は減つている状態でございます。しかし、私どもとしては、常にその間の情勢を見て、適当なる手を打つて参りたい、こう考えております。
  137. 中原健次

    ○中原委員 完全失業者の数は減つているという大臣の御説明でございましたが、はたしてそうでしようか。これは労働省の統計がそういうふうになつているとすれば、われわれ疑問があるのであります。そうじやなしに、漸減という方向よりも、むしろやはり漸増の方向に進んでいるように見るのであります。完全失業者の——これは政府統計なんですが、私の持つている統計によりますと、たとえば二十六年の平均が三十七万、二十七年が四十七万、二十八年の一月から九月の平均が四十八万、こういうふうな統計が出ているわけであります。これはもちろん政府御自身の統計であります。そうすると、ただいまのお話とまつたく食い違つて来るわけなのであります。しかも、この場合完全失業者数とは、一週三十分以上の就労者以外というのですから、完全という名前にも実は当てはまらぬように思うのであります。一週間に三十分以上の就労者を除いた者というのであつてみれば、三十分や一時間の就労ではどうにもならないということは明らかなことであります。数字の統計の出し方が非常におかしいことになつていると思いますが、しかし厳密に言えば、完全な失業者という中には一週間に三十分働いても入らぬかもしれない。しかし、それは生きるに足る労働時間ではないということになると思うのであります。いずれにいたしましても、私どもは最近政府の統計自身に信を置くことができない、これははつきり言えるわけです。政府の統計は、どうも最初に方針をきめて、その方針に合せて統計の数字が出て来る、こういう点があるのです。しかし政府は、それはそんなことはないと、一言に取消されるであろうと思うのであります。また取消さなければならない。けれども、実際はもうよくわかつている。従いまして、私どもは現実にちまたの状況の中から——こういうことを言うと、それは統計で言えと言われるかもしれませんが、私どもは不幸にして自分で統計を実は持つておらない。だから、われわれの議論が非常に非科学的なように聞えますが、問題はそういうことじやなしに、ちまたの実態の中からつかんで参りますと、失業者は漸減どころか漸増しておるのです。また漸増しておる一裏づけといたしましては、たとえば、最近各企業関係がどんどん大量の馘首を敢行しておる。遠慮容赦なしにこれを行うておるという実態から考えられましても、これはやはり失業人口はふえつつある、その方向に一遂に進んでおる、こういうことは否定できないと思うのです。しかし、今私がみずから自分の信頼する数字を持たないでものを言つておるというのでは、意味がないかもしれませんが、これはやはり現実に実態の中からつかんで参りますと、実はそういうことが言えるわけです。しかも、私どもが一番不愉快に感じますことは、民間の、ことにそういう基幹産業中心とする重要産業がどんどん首を切りながらも、その産業自身の中身をのぞいてみますと、相当部分資、本の蓄積がなされておる。しかも、その資本の蓄積に対しては、政府が政策をもつてこれをむしろどんどん奨励しておる。資本蓄積を、われわれはいたずらに排撃するのではありませんけれども、それらの大量の失業者をしり目にかげながら、そういう方針をとらせるということは、やはりうなずけない。まず人間が生きるということ、正当に業を保障されるということ、やはりこれが一番の眼目になつて、その上に政策が立てられなければ意味がないのであります。しかるに、そういうことじやなしに、むしろ資本蓄積に対しては、国のあらゆる政策がこれに協力しながら、そうして片方失業者に対しては、先ほどいろいろ局長から失業保険金まで計算に入れられた月収を御発表になつておられましたけれども、それだけから見ましても、あのようにいわゆる飢餓賃金の水準でしかない。いや、それ以下の水準である。失業者は無遠慮、大量につくられながら、そうしてこれに対して政府がむしろ積極的にその政策を支持しておる。こういうようなことであつてみれば、労働政策なんていうものは、まつたく労働者の側から納得できないわけであります。しかも、さきにスト規制法のあのような強引な成立がなされたその前後から、だんだん労働者に与えられた、労働者自身を防衛するための基本権が法律によつてはばまれ、あるいは阻止されて行く、こういう形を政府は積極的にとりながら、しかも一面にはそのような大量の失業者を出して、言葉ではいろいろに説明づけられるものの、実態としてはその失業者をむしろしり目にかけておる、こういう現実の実態があるのであります。従つてわれわれは、こういうことではどのような言い訳にもかかわりませず、国民も納得しようがない、こういう結果になるわけであります。従つて、むしろこれは具体的な労働政策を打立てて、そうして失業対策もなるほどと得心の行くような、失業者を解消するための政策がどんどん打出されて行くという体勢になるだけの構想をまず発表されて、これを実行に移すためのあらゆる努力が払われて行くということにならぬことには、これはとうてい納得の行くものでない、このように思うわけであります。これらの諸点について、大臣はどのようにお考えになられますか。ほんとうに確信を持つて、みずから良心に問うて恥じない御見解をこの際御発表願いたいと思います。
  138. 赤松勇

    赤松委員長 関連質問の要求がございますから、これを許します。井堀繁雄君。
  139. 井堀繁雄

    井堀委員 関連いたしまして、ただいま失業者の統計について、かなり楽観したとり方をしておるようでありますが、労働省の統計によりましても、完全失業者については昭和二十四年以後急ピツチで増加しておることを示しております。たとえば二十四年の三十八万から、五年には四十四万人に上つて、六年にはちよつと減つて三十九万、二十七年には四十七万で、しかも二十八年の一月には四十九万にはね上つて来る。三月には五十三万になつておる。その数字の基礎については先ほど中原委員からも意見がありましたが、私どもはその統計の根拠がどこにあるにいたしましても、この数字だけからいつても完全失業者は決して漸減を見込むということは許されないのではないかと思うのです。それで、もちろん失業問題を統計の上で論議する場合には、完全失業者を対象にするということは、きわめて粗悪な議論であると思う。失業問題で一番重要なことは、一般には潜在失業者と言つておりますが、労働省の発表いたしておりまする統計資料の表現は、不完全就業者ということで表現をなされております。この不完全労働者の統計を見ますと、十分この統計を裏打するに足る数字が現われておるのであります。たとえば二十四年の不完全労働者七百八十七万が次の五年には八百三十七万、次には七百八十万にちよつと落ちまして、二十七年にはさらにはね上つて八百四十四万になつておる。もちろんこれは農林関係を含んでおるのでありますが、この失業問題を論議する場合の統計資料としては、農林関係労働者を含むことが妥当か、あるいは含まない、すなわち非農林関係だけの不完全労働を対象にするかということには議論があると思うのであります。そこで非農林関係だけの不完全労働者の統計を見ましても、二十四年には二百五十九万からだんだん増加いたして参りまして、二十七年の一月にはすでに四百一万という数字を発表いたしておるのであります。従いまして、完全失業者がなくなりましても、不完全就業者がふえて来る、潜在失業者がふえて来るということが、私は失業対策の対象としては、むしろ重要な統計資料になるのではないかと思うのでありますが、労働大臣はそういう資料に信を置かれないで、完全失業者だけの統計を対象にして失業対策をお考えになつておるかどうかについて、お尋ねをいたしたい。
  140. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最初にお答え申し上げますが、私が先ほど申しました資料は、労働省ではございません、内閣統計局の資料でございます。なお、それに関連いたしまして考えますことは、失業保険金の受給者の数でございますが、これも大体これと歩調を合せておりまして、昨年の八月三十四万八千、本年の八月に三十三万五千というふうに、これまた減つております。しかし、今お話のように、不完全就業者というものが、労働問題の対象として非常に重要なものであるということについては、私もまことに御同感でございます。ただ、今失業という問題が出まして、一応私はその完全失業者の場合を言うたのでございますが、わが国の国情からいたしまして、非常に厖大な人口とわずかな土地と、しかも貿易も非常に困難なこの段階におきまして、年々九十万人からの新しい労働力が出て来る。そういう問題をさばいて行くにしては、この程度に行つておるということでいい材料を申し上げておるのであります。その根底に人口問題から来る労働問題の非常なむずかしさがあるということを、私も十分承知いたしておるつもりでございますから、それにつきましてできるだけ努力をいたしておるわけでございます。
  141. 井堀繁雄

    井堀委員 次に、もう一つちよつとお尋ねをしておきたいと思いますことは、もちろんこの不完全就業者の中で、私どもの問題にいたさなければなりませんのは、前回も資料を要求いたしておりましてまだいただいておりませんが、中小企業に属する労働の問題であります。これもやはり内閣統計によりますと、二十七年十月現在で、作業場で九八%、でありますから、中小企業で、事業場はほとんど飽和点に達しているといつていいわけであります。これは世界の中で珍しい一つの傾向だと思うのです。終戦後の財閥解体という大きな政治的な処置もありましたけれども、実際の姿としては日本産業、ことに貿易産業というものは、中小企業に依存せざるを得ないということが、だんだんと数字的に裏づけされて来ているように私どもは見ております。たとえば、雇用される労働者も六一%を占めますから、労働省労働対策の対象になる労働人口は、中小企業にウエートがぐつとふえて来ると思う。ところが、今度出されております労働省の二十七年度の労働経済の分析によりますと、おおむね三十人未満の、すなわち六一%を占める労働者の問題が統計の上に現われていないのであります。このことは、私は労働行政ことに失業対策を立てる場合に、重大ではないかと思う。というのは、私どもが失業問題を強く政府にも要求し、またわれわれも責任を痛感いたしますのは、日本現状から判断いたしまして、いろいろな問題を取上げてみましても、民生の安定、国内の生活の安定——生活の安定といつても、私どもは憲法が保障するような高い理想を言うのではありません。がまんのできる範囲内の生活というものの中で一番おそるべきものは、一定の生活安定を不満足ながらも得ておる者が、それがくずれて来るということであります。むしろ失業してしまつてルンペンの域に落ちておる者、こじきを三日すればやめられないといつたような、こういう者をわれわれは対象にするのではない、中小企業のもとにある六一%を占めるこれらの人々は、その雇用のうちに不安定であり、賃金が非常に動揺しております。そこへ持つて来まして、政府は、失業者に対して比較的楽観されておるような口吻を漏らしておりますが、私どもはこういう統計をすなおに判断して行きますと、中小企業のもとにおける失業の問題は、かなり深刻な形に出て来ると思うのであります。ことに政府は、行政整理について——私は行政整理をまつこうから否定するものではないのですが、行政整理の方法と時期というものは非常に重要であります。ことに今日、仲裁裁定の問題なり、あるいは人事院の勧告が行われて、その実施が議会の中心課題になつておるときに、政府が相手方の労働者の首を切るといつたような感じを与える行政整理の発表のやり方というものは、労働大臣として、今日の失業の深刻な様相を前にして、適当な処置であるというふうには考えていないと私は思うのであります。何かのあやまちではないかと思うのでありますが、閣議決定であるようでありますから、こういう点についても、大臣の見解をただしておきたいと思うのであります。  そこで話があつちこつちになりましたが、前の失業者の統計の中で、中小企業の三十人未満の事業場、すなわち九八%を占める事業場における不完全労働の姿が、この統計の中にどういうように組み込まれておるか。私のこの調査によりますとどうも把握されていないのじやないか。この不完全雇用の中のごく一部分しか入つてなくて、要するに潜在失業、半失業、失業不安を調査する原動勢力になるものは、三十人未満の作業場に雇用されておる労働者で、一箇月せいぜい二十日か二十五、六日が最高で、少いところでは十二、二日というような傾向があります。この傾向は中小企業の雇用の一つの特徴ともいうべき傾向でありますが、そういうものをこの統計の中で把握されていないと私は見ておりますが、そういうものを把握しておいでになるかどうかについてお尋ねいたしたい。把握しておるとすれば、どういうぐあいにこの統計の中に織り込んでおられるかを伺いたい。
  142. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 いろいろお話がございましたが、その中で仲裁裁定の実施と行政整理と関連があるようなお話でございました。そういうことではないのであります。これは、そういうふうに発表した覚えは私は毛頭ございません。要するに、政府が従来から言つております行政整理、しかも行政機構改革本部というものを設けて機構の整理をするということをやつております。それに伴うてどのくらいを目途としてやるのか、それに比して人員にしてどのくらい整理されるべき対象が出るであろうか、こういうことについて意見を交換したことはあるようでございますが、私はそれに深く介入しておりませんし、この問題は、一方に与える、一方に切る、そんなような話は、私どもとして考えておりません。  それから今お話のございました労働調査でございますが、これは農家の家族労働を含む全労働力についての統計でございます。失業保険業務統計は、原則として五人以上を雇用する工場、事業場における雇用労働者のみについての統計であるのであります。おつしやるように、中小企業の未組織の労働者の問題は、非常に重要な問題でございます。そうかといつて、三十人以下の事業場に勤めておる者の大部分が失業者と同様な者であるのだという御判定も、少し酷ではないかと思います。先ほども申し上げているように、私どもとしましては、国が立たなければいかぬのです。日本が敗戦以来置かれておる立場というものは、非常に困難なものであります。その困難なものの中に、これもいかぬ、あれもいかぬという言い方よりも、先ほど申し上げましたように、九十万人も一箇年に労働力がふえて、しかも不完全労働者はむしろ漸減している、この明るい面を実は申し上げた。しかし、非常に楽観しておるということは申しておらないのでありますから、その点も御了解を願いたいと思います。
  143. 井堀繁雄

    井堀委員 その点、失業対策について深刻な御対策が出て来ると思うのであります。私は中小企業の労働実態というものを、この統計の中でどう扱つておるかということを今お尋ねしたのですが、失業保険の点で出て来る結論と、この経済白書にいう不完全労働の統計との間に食い違いが出て来ております。この議論は、ここでしますとたいへん時間を要すると思いますが、失業保険のいうように、五人以上の事業場から出て来るトータルと、この不完全労働から出て来るトータルとは、非常な違いが出て来る。その違いを整理して来なければ、不完全労働失業対策の資料としての統計としては、私は価値が非常に薄いと思う。こういう点を実は資料として提供を迫つておるわけでありますが、大臣がそういうような問題まで掘り下げて御検討なされて、失業対策の基礎にされておるかどうかを聞きたかつたわけであります。というのは、私は決して責める意味で言つておるのではない。私の考え方を申し上げますと、私は非常に悲観的な見方をするような前提も、あるいは楽観的な見方をするような前提もありません。ただ実際問題として、すでに駐留軍労組の問題も表に出ておる、大量解雇が出て来ておる。まあ政府の行政整理の方針のいい悪いは別といたしまして、少くとも一割程度の整理をするということになると、七万以上の失業者が出て来る。そのほかに、炭鉱の整理はもうすでに大量解雇によつて市場に失業者が出ておる。こういうように、新しい意味での失業者がどんどん出て来ておるわけであります。そのほかに人口の自然増や、あるいは労働人口の急カーブを切つて出て来る数というものは、時期を同じゆうして出て来るのではないかと私は思う。一方には企業の合理化を進めようとし、あるいは自立経済達成のためのいろいろな悪条件の中に、どんなにひいき目に見ても、やはり相当数の失業者が出て来ることは、そう将来先でないと思う。近い時期に、社会不安を誘導する原動力になるものが出て来るという姿だけは、これは否定できぬのじやないか。というのは、失業者の数がたくさん出て来て、職を与えろという日雇い労働者のところにばかりしわ寄せて来るとは限らない。日雇い労働の中でも一つの問題となつておりますものの、解決は困難であつても、これはそう大きな問題にはならぬ。発火点にはなるかも、しれません。そこでお尋ねをしなければなりませんのは、そういう問題にどういうお考えをしておるかということを聞きたかつたのですが、これは資料の提供でだんだん明らかにしていただきたいと思います。  そこで一つ伺つておきたいのは、日雇い労働者の、今給与の問題やあるいは年末手当の何がしかの増額、その他作業衣等の給与が要求されて出つつありますが、そこで私ども考えますのに、従来の失対事業よりは、先ほども他の委員からも指摘されておりますように、やや恒常的な作業場になりつつある。ここには一つの労使関係というものがやはり一つの形をつくつて来ると思う。従来のような臨時的な失対事業でありますならば、そう心配はないのであります。人は多少かわつて来ましても、労働条件については、雇い主側の立場をとるということにはならぬかもしれませんが、雇い主側の立場を代表するような職安の立場というものが、だんだん実際問題として出て来るのではないか。労働者側の方は、労働法によつて、自由労働者といえども労働組合をつくることができますし、団体交渉を要求するということにもなつて来ると思います。作業場はかわります。雇い主は違つて来ますが、窓口は安定所だということになりますと、一体こういう労働者の団体行動ないしは団体交渉の上に訴えて来る労働条件の改善を、どこで処理したらよいかという問題は、実際問題として労働省は考えなければならぬ事態にあるのじやないかと思う。こういう労働者側の要求を、われわれ議員がこういうところで代弁するかのごとき方法は、変則なものになると思う。やはり失業労働者が一つの団体をつくつたら、その団体と相手になるポストというものが、私はどうしても問題になつて来ると思う。それが労働省というふうに考えてよいのか、すなわち職業安定所の窓口、ないし窓口を通じて総元締めである労働省を対象にするようにしてよいのか。こういう問題は、だんだん私は実際問題になつて来ると思いますが、その辺のお考え方を伺つておきたいと思います。
  144. 江下孝

    江下説明員 お話の通り、最近失業対策事業に従事します労働者がだんだん固定化しつつある。それで組合をつくりまして、この両三年来、なかなか熾烈な攻勢を見せておるわけであります。これによりまして、現実の問題といたしましては、第一線におきましては事業主体、市なり町村が当るわけでありますが、なかなかこれだけではうまくないので、結局安定所が相当その間に立つてつておる。私ども中央におきましては、労働大臣賃金その他を定めます。もし陳情に参りましたときには、これは会わぬというわけには行かないわけで、私ども年中会つておるわけでございますが、ただ、成規の労働組合ではございますけれども、いわゆる団体交渉としてやるかどうかという点については、われわれは現在のところは、そこまで考えておりませんで、そういう陳情がありますれば、一応よく意見を聞いた上で私どもの対策を考える、こういう方針で実は今日まで参つたような次第であります。
  145. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどから失業問題についていろいろ御意見がありましたが、私どもは失業問題それ自身について、決して楽観もしておりませんし、また悲観もいたしておりません。日本の置かれておる困難な経済状態というものがあるのでありまして、極力これを改善することが、やはり問題の解決の中心点であろうかと考えて、できるだけ適切な対策をとつて参りたい、こういうふうに思つているわけであります。その現象面に現われた一つとして、先ほどから申し上げているようなわけであります。  なお、ただいまの局長の話にもあつたのでございますが、日雇い労働者が私に対しての陳情といいますか、話合いというものは、いわゆる団体交渉の対象ではなくて、私としては賃金をきめる立場から、国家財政とのにらみ合せにおいて考えるというだけのことであります。しかし、日雇い労働者諸君の生活というものも、十分はかつて参らなければならないことでありますので、できるだけその声も聞く、こういう態度で会うわけであります。
  146. 中原健次

    ○中原委員 重複するようですが、先ほどからいろいろ御質疑があつたのですが、潜在失業者あるいは不完全失業者という表現でいわれております失業者一般についても、たとえば一週間で三十五時間なら三十五時間に満たない就労者が、やはり追加労働の要求といいますか、もつと完全に就業できるようにという要求を持つている、あるいは定職を希望している、こういう労働者もあるわけです。その他、現状労働事情のもとで非常に不満であるという意思表示をし、従つて一層の完全就業へいろいろな要求を持ち出している姿もあるわけです。そういうことも含めまして、現在の労働省のとつておいでになる労働行政それ自身が、はなはだ不満足なものであるということが裏書きされるわけです。従つて、これらに対してどのように今後は対処しておいでになるのか、あるいは現状のままでよろしいとお思いになつているのか、こういうことも含めまして、先ほどから申し上げましたいわば失業労働者に対する一般的な労働政策としてのもつと掘り下げた御答弁が当然あるべきものと期待しておつたわけです。それに対して、何らこれ以上答弁する限りでないということであれば、そういうふうに伺つてもよろしゆうございます。一応このことも含めて両者に対する御答弁を求めまして、さらにまた日をかえまして失業問題一般に対する質問はさせていただくことにいたしまして、とりあえず本日のところはこの問題についての御答弁をお願いしておきたいと思います。
  147. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどの御質問に、実は御一緒にお答えしたつもりでおつたのですが、先ほど中原さんの御質問は、完全失業者の数についての統計は信が置けぬというお話がありましたが、これは内閣統計局の調査でありまして、私どもとしてはこれ以上の調査はないと思う。また政府自身が政府の統計を否認するということも、もちろんできぬことでありますので、そうお答え申し上げたわけであります。なお不完全失業者とか定職希望労働者、そうしたような表現でいろいろ問題を御提起になつたわけでありますが、私も先ほどから申し上げておりますように、根本は日本の経済状態の改善以外にはないということなんだと思います。これは要求があるからそれだけ出してというだけでは、根本的な解決にはならぬのであります。その方向といたしましては、やはり公共事業を一方においてできるだけ興す、なお企業自身の能率をできるだけよくして、輸出貿易市場の進出が十分できるようにいたし、そうして雇用面において、企業の活発化に伴つて、活発な雇用状況を招来するように努力する、これ以外に私は方法はないと思います。一々その場その場で、場当りと言われるかもしれませんが、そういう基本方針のもとに、できるだけそのときどきの適切な手を打つて行くということ以外には、労働保障として考えることは私はちよつと困難かと思うのであります。  なお年末の金融等につきましても、私どもとしましては、やはり預託の引揚げというものに対して、中小企業には特に考慮するように、あるいは中小企業の間にできました信用保証協会等に対しての融資というようなものについても、財政当局とできるだけめんどうを見るように話し合つてもおりますし、そういうことをして、結局企業自身が賃金を支払い得る態勢をつくつて行くということで、国家が直接労働者に金を出すというのは原則でございませんし、結局はそういうことをやつて行くより方法はなかろうと考えておるわけであります。  なお先ほど駐留軍労務者の雇用の問題も出ましたが、これなどにつきましても、予算減少ということに伴つて、やはり米軍当局としましても人員整理を考えたようでございますが、私どもとしましては、現在の雇用状況等からにらみ合せまして、これをできるだけ最小限度に、先般の委員会でも申し上げましたように、切り詰めることに同意を得まして、年末年始の首切りということにつきましては、これを行わざるような措置を先方と交渉いたしました結果、とつた次第であります。その場でできるだけ摩擦を少くするということをやりつつ、根本には日本経済の再建をする、これ以外に大きな方法としては、どなたかなさつても私はちよつとないのではないかというふうに考えております。いろいろ御鞭撻示唆をいただきまして、できるだけ御要望に沿うようにしたいと思つております。
  148. 赤松勇

    赤松委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。  明二十五日午前十時より労働人事運輸郵政電気通信の各委員会連合審査会を開会いたします。     午後四時五十五分散会