○
持永委員 私は
国政調査に関する御
報告を代表して申し上げたいと思います。
私
ども第一班
調査は、本年の八月二十一日から同月二十七日までの七日間、荒木、多賀谷そして私の三名で、福岡、熊本及び佐賀県下におきまする水害地
労働対策、その他
労働行政一般にわた
つて調査を実施いたしたのでありますが、その
概要について御
報告申し上げます。
まず福岡県におきましては、福岡県庁において、県の
労働行政の職員、福岡
地方労働委員会の
委員、福岡
地方公共企業体等調停
委員会の
委員、福岡
労働金庫の職員、福岡県議会
労働常任
委員会委員、それらの方々と懇談をいたしました。また福岡県
地方総評議会
労働組合幹部の方々との
懇談会、さらに炭鉱の
労働者、使用者代表との
懇談会のほか、福岡
労働基準局の業務
状況を
調査いたしました後、飯塚市、久留米市、大牟田市の三市の
労働行政、
現地の官署、並びに三井山野鉱業所、三井
産業医学研究所、有吉鉱業井之浦鉱業所、それから日華ゴム
会社久留米工場、三井三池鉱業所、九州電力の港発電所等の
会社、工場を視察いたしまして、随時
労使との
懇談会を開催し、事情を
調査いたしました次第でありますが、特に御
報告を要すべきものと感じましたことについて、ごく簡単に申し上げたいと存じます。
第一は、
労働金庫に対する水害救援資金の貸付につきましては、政府の預金部融資の処置が、私
どもが福岡に参りましたときには、正式通知が届いておりません。これはその後九月十一日大蔵省理財局から北九州財務局に通牒が発せられたのでありますが、七月中旬に
申請いたしまして後、ようやく二箇月を経て初めて通牒が発せられたということにつきましては、たいへん遺憾に考えている次第であります。また
労働金庫につきましての要望は、この資金について、融資はできるだけ低率にしてもらいたい。現行は日歩一銭八厘、年利六歩五厘であります。それから融資の期間はできるだけ長期にしてもらいたい。現在のものは、年度内に返す短期融資であります。それから融資額の三割程度は国家が補償してもらいたい。こげつき補償につきましては、単行法が必要と思うのでありますが、現在の
労働金庫にはそれがございません。そういうような希望がございました。なお
労働金庫につきましては、福岡県
労働常任
委員から、厚生年金保険等の積立金を
労働金庫に預託し得る道を開いてもらいたいというような希望がございました。これも考究を要する問題だと思うのであります。
第二といたしまして、水害による工場、
事業場の休廃業について、解雇手当、休業手当支給の不備を補うための失業保険の特別に関する実況を見たのでありますが、
現地ではなお左記の点について問題にいたしております。
その一は、水害等の場合、
事業場の休廃止に伴う解雇——、これは労基報準法第二十条第一項但書に該当するものと
労働基準監督署が認定したものでありますが、この解雇につきましては失業保険金の給付に加味して、そのほかに解雇手当をほしい、これを職業
安定所から支払
つてほしい。すなわち、具体的に申しますと、六箇月の失業保険金にプラス一箇月の解雇手当がほしいということであります。
二には水害に便乗いたしまして、企業の整備あるいは人員の整理が行われる傾向にあるのに対しまして、何か解雇制限等の法的措置を研究する必要があるのではないかという
意見がございました。
三といたしまして、飯塚市の労政事務所で聞いたところでありますが、これはほかの
地方にも大同小異の傾向があるようでありまするが、最近
労働教育の計画に対しまして、大手筋その他の
事業主が、
労働者権利擁護偏重のきらいがあるとして、協力的でないということであります。なお、これについて経営者間に何か申合せでもしておるというような
状況であるということでありまして、これは
労働省とされまして今後研究を要する問題であると考えるのであります。
四は、
地方公共企業体等調停
委員会の業務についてでありますが、どうもこの企業体の権限が
中央集権的に
なつてお
つて、
地方の活動が十分にできないということと、もう一つは活動に要する旅費がほとんどないために、思い切つた活動ができない。従
つて、
現地におきましては、ただあつせん程度にすぎないという
状況であります。この点につきましても、
中央とされまして
検討の余地があると思います。
五は、
失業対策事業について、
賃金が低いために、当時は月収四千六百円程度、この金は
生活保護法の扶助額にも及ばないという
意見がございました。もつとも、これにつきましては、九月十六日から全国
平均約一割程度引上げが実施されましたが、この点につきましては、今後この
生活保護法の扶助額を常に頭に置かれまして、これとの権衡調整を
労働省ではかられる必要があるように考えるのであります。すなわち、
生活保護法の扶助額以下に
失業対策事業の金額がなるということは、これはどうも働く者のためにおもしろくないと感ずるのであります。
六には、飯塚市及び大牟田市付近の失業問題について、やや特色がありますから、その点について触れておきます。すなわち、飯塚職業
安定所では、当時失業保険を受けておる人たちが、六千四百九十六名ありました。それからその後炭鉱の整備によ
つて解雇される予定の者が四千名、合計いたしまして約一万名以上の人が予想されるのでありまするが、どうも
失業対策事業の活動が十分でない。これに反しまして、大牟田市付近では、当時
失業対策事業の適格者が千九百三十三名、そうして割当人員は千三百九十名でありまして、比較的に大牟田市の方は
失業対策事業が進んでおる。もつとも、これは両市の
状況にもよるでありましようが、飯塚市の方の
実情は、市当局が
失業対策事業に対する
関心及び熱意が足らない。これに対して大牟田市の方は非常にこれに対する熱意が強かつた。そのために、こういう特色を現わしておるということは、これはわれわれ非常に
関心を持
つて見た次第であります。石炭の企業整備に伴いまして、当然失業者がふえるのでありますから、それに伴
つて失業対策事業を漸増するということは当然でありますが、これらの点につきましても、
中央とされまして、各市当局を適当なる
方法で御
指導願いたいと考える次第であります。
第七は、福岡県は、石炭山のほか黒崎窯業、八幡製鉄所、東洋陶器、旭硝子牧山工場等、珪肺患者数は、当時補償を受けておる者で四十五名に及んでおりまして、全国的に見ましても比較的多い方であります。ただこの珪肺病の判定について、措置要綱のいずれに該当するかということについて、
中央の
労働省の珪肺対策審議会に諮
つて決定されることと
なつておりますが、これははなはだ不便である。つきましては、北九州に一箇所判定のできる
機関を考えてもらいたいという
意見がありましたことを御
報告いたしておきます。
次は熊本県に関する
報告でありますが、第一は
労働金庫に関するものであります。私
どもが参りました際には、熊本県におきましては、
労働金庫がまだ設立をされておりません。しかし
県当局は、この設立がぜひほしい、ことに水害に関連いたしまして、被害者に融資をするには、どうしてもこういう金庫がほしいということを非常に主張しておりました。当時はこの金庫がないために、地元の肥後相互銀行にこの資金の融資を代行せしめるということをや
つておりました。最近の情勢ではまだ熊本県の方では、
労働金庫設立の
申請が来ていないようでありますが、
関係者の話では非常に希望をしておりました。
それから第二は、熊本市付近の失業問題についてであります。御承知のように熊本市付近は大きな
事業所はございません。紡績、製糸、専売公社工場、電通公社
関係、九州
産業——、これはバス
事業でありますが、これらのものでありまして、比較的に大きな工場、
事業場がございませんから、従
つて労働雇用量は少いのであります。今回の
災害にあたりましては、職業安定行政の活動によりまして、一時の
日雇い労働者雇用量の増大をはかりまして、また
賃金収入を希望する付近農村出身の間をあつせんいたしまして非常なる成績を収めたのであります。また必要に応じまして
失業対策事業のわくの拡大をはかつたために、一般民間
賃金値上りの抑制をいたしました。そうして民生の安定、被害地の復興に寄与し、相当な成績を示しております。これが熊本市の
状況でありますが、要するに、この失業問題について、市の職業安定行政が非常に活動をいたしたということを感じた次第であります。
なお、最後に佐賀県の
報告につきましては、多賀谷
委員から御
報告申し上げます。