○市川参考人 全
駐留軍労働組合の中央執行
委員長の市川誠でございます。駐留軍の労働者が現在直面いたしておりますところの人員整理問題の概況につきまして、またそれに関連する労働者の
要求等に関しまして御
説明申し上げまして、御配慮を願いたいと存ずる次第でございます。
本年の八月ころから極東空軍
関係に、
予算削減を理由としまして首切りが発生いたしました。空軍
関係におきましては、最初に時間制の短縮から打出されて参
つたのでありますが、従来週四十八時間制の勤務であつたものを、これを四十時間制に削減いたしました。そのために労働者は月収におきまして約二割
程度の減収を来して、非常に生活に困難を感じてお
つたのですが、その上に首切りが加わ
つて参つたわけてあります。八月、九月、十月の期間におきまして、一次、二次、三次と三回ほどにわたりまして、東京、千葉、山口、福岡という空軍
関係のうちでも、特に補給輸送
関係の部隊に、約千九百名ほどの首切りが行われたのであります。この
ような首切りに対しまして、フインカムの支部等では、ストライキをも
つてこれに対する反対闘争をしたしたのでありますか、具体的に首切りを撤回せしむることもできなか
つたのであります。ただ山口県の岩国におきましては、たまたま第三次の首切りが出ました際に、第二次の際の約束に、今後は首切りを行わないという
ような約束がなされておりましたので、その約束の
履行を迫つた結果、第三次の首切りが撤回されたという
ような事例はあ
つたのでありますが、具体的な首切り反対闘争に対する成果というものを、手にすることができなかつたわけであります。
こういう
ような状況で、空軍の首切りが一段落を画す十月の初旬におきまして、陸軍
関係に首切りが起
つて参りました。陸軍
関係は、
駐留軍労働者十八万五千の中で、主体的な数でありますが、私どもの推定では、十万ないし十二万ぐらいまで陸軍
関係と推定いたしております。陸軍
関係においては、従来から一週の勤務時間が四十四時間を下らないという
ように軍側のサーキユラーで
決定をされておりましたので、いきなり
予算削減の具体的な影響で、いきなり
予算削減の具体的な影響というものが首切りに現われて参つたわけであります。北海道の千歳あるいは福岡、大阪という
ような地点に、最初点在的に現われて参りました。そういう
ような状況で、私どもは当時朝鮮戦争の具体的な休戦成立によりまして、何らかの現われが来るのではないかというふうに予期してお
つたのでありますが、その後相次いで全国的に起
つて参りました。現在までに陸軍
関係において起
つております首切りの概要を申し上げますと、北海道におきましては、数といたしまして約三百三十名、これは千歳の基地とそれから室蘭の石油
関係の補給所でございます。それから次は、宮城におきまして約二百七十二名、これは船岡の弾薬庫
関係でございます。群馬におきましては約百名であります。小泉キヤンプと前橋の二箇所であります。埼玉におきましては約三百七十八名で、熊谷、朝霞、それから大宮、所沢という
ような四基地にわかれております。神奈川が約千三百十名ほどでございます。これは追浜兵器廠、池子弾薬庫、JPA、陸軍部隊司令部、陸軍病院、八〇一〇部隊、横浜兵器廠という
ような基地であります。大阪におきまして約三百三十七名、これは大阪府内にあります各基地、金岡キヤンプあるいは日赤病院等であります。次は広島、これは江田島のキヤンプでありますが、九十六名ほどであります。九州に参りまして福岡で約百四十三名、小倉と福岡であります。大分は、別府のキヤンプにおきまして五十一名、それから東京はTOD、その他新丸子、府中の兵器廠、この三箇所で約千百名ほどの首切りが出ております。さらにこの
ような基地の陸上労務者以外に、最近におきまして、朝鮮に派遣されて長らく働いておりました船員が、今度韓国人あるいはフイリピン人をも
つて交代せしめるという
ような事由によりまして、約四百七十八名ほどか日本に帰還せしめられて、そして解雇されるという
ような状況にな
つております。大体陸軍
関係の今申し上げた
ような数をまとめてみますと、約四千三百名くらいに達するわけであります。
こういう
ような人員整理の理由は、総括的には
予算の削減という理由で出されております。一、二の部隊におきましては、労働調査団等が調査の結果、人員が過剰であるという
ような事由で出されておるところもあります。あるいはまた
事業所の閉鎖、部隊の移動という
ような理由も幾つかございます。要するにこれらの整理は、現行におきましては、軍側が現地部隊におきまして、日本
政府の渉外管
理事務所に解雇の請求をいたしまして、そしてその上で労務者に対して個々に解雇の予告が発せられる、こういう
ような
手続にな
つております。たまたま今申し上げた
ような解雇の状況を見てみますと、いずれも解雇の予告を行う者につきましては、解雇の発生が十二月十五日、いわゆる年末手当を支給する期日の直前に解雇が発効する
ようにな
つております。特に神奈川県の追浜、あるいはYOD、大阪の金岡、日赤等におきましては、今度は普通に予告をして参りますと、その予告の発出の期日の
関係から、十二月の十五日を過ぎる日に解雇が
効力を発生する
ようになりますので、逆に今度は解雇予告を行わないで、予告手当だけを支給して即日解雇を行う、いずれにいたしましても、予告制をとるものは十二月十五日前に解雇の
効力が発生する
ようにし、また予告を採用いたしますれば十二月の十五日後になる
ような解雇については、即時解雇等を行
つて年末手当の支給を意図的に避けておる
ような点が、私どもの
立場から見ますとうかがえるのであります。
こういう
ような状況につきまして、
組合側といたしましては、今度の大量の人員整理につきましては、大体次の
ような見解を持
つておるのであります。
朝鮮の戦争の休戦が成立した結果から、アメリカといたしましては、ある種の軍事経済的な政策の変更を
考えておるのではないか。またたまたま私どもの
立場から見ますと、池田特使がアメリカに行
つておりましてMSAに関する
交渉をいたしました際に、外電として報道されておりましたところの五年以内に日本に駐留するアメリカ軍を引揚げるという
ような報道――この報道はその後打消されておりますが、私どもといたしましては休戦の成立、それから日本の再軍備、それから駐留軍の漸減的な撤退、こういう
ようなコースを
考えてみますと、今度の整理といたしましては、直接兵員の減員はしないにいたしましても、
財政部面における漸減というふうな政策から来るところの労務者に対するなしくずし的な整理ではないか。
従つて今までたびたび若干の整理はあ
つたのでありますが、その
ような局地的に現われた整理とは違いまして、解雇された者は再び駐留軍の職場で、たとい優先雇用等の条件を解雇に関する妥結の条件といたしましても、その実施を期待することのできない
ような性格の首切りではないかという
ように
考えられるのであります。そういう
ような
考え方からいたしまして、もしこの
予算削減という
措置がやむを得ないものといたしますれば、われわれといたしましても、十分解雇の理由等について詳細な
説明を受けて、何らかの解決の方法も協議し得るのではないかという
ように
考えておりますが、現地部隊におきましては、それらの理由等についての
交渉さえも拒否しておるという
ような
事情から、各地方的にいろいろな紛争が起
つておるのであります。
中央本部の具体的な
要求といたしましては、ともかくも年末年始を控えてのこの種の大量の首切りは、日本の風俗慣習から行きましても、避けるべきである。
従つて、年末年始を控えの首切りは絶対に行わない
ようにする。
それから第二点といたしましては、この夏以来の
交渉によ
つて、新しい基本契約に対する基本協定が合意調印をされておるのでありますが、この中の人事管理のうちで、人員整理の条項につきましては、解雇する数等を
決定する場合には、軍側といえども、あらかじめ日本
政府側と事前に十分に調整をする
ように合意されておりますので、この協定の部分発効をすみやかに
措置いたしまして、この種の人員整理にあた
つては、日本
政府といたしまして
法律上の雇用主という
立場において十分な調整がはかられなければならない、はかるべきであるというので
要求の第二点であります。
第三の
要求点といたしましては、先ほどもちよつと触れました
ように、今回の整理が、労務者の漸減的をなしくずし首切りという
ような点から
考えまして、長い間駐留軍の苦しい職場において働いて来ておつた労働者に対しまして、今回の整理等に対しましては、解雇者に対して現行退職手当規程によるところの退職手当のへ割増しの手当を支給せよ、これが
要求の第三点であります。これは一般職の公務員におきましても、特殊な
行政整理などの場合におきましては、退職手当の割増しの支給の制度も
適用されておりますし、また待命制度等も行われておる現況であります。また一般的な
民間産業等におきましても、企業整備等の解雇にあたりましては、特殊な慰労金あるいは手当金等を出しておる事例から、今回の整理等にあた
つては、ぜひともこの八割増し退職手当の支給をしてもらいたいという
要求であります。
第四点といたしましては、具体的に解雇者が出て参りました場合の失業対策問題といたしまして、現在中央に失業対策連絡
会議というものが一応存在いたしますので、これを強化し活用する。こういう
ような
要求点を出しておるのであります。この
要求につきましては、十月の二十日に調達庁の福島長官に
要求をいたしましてさらにまた二十八日には所管
大臣であります
小坂労働大臣にも
要求を提出いたしまして、
政府型におきましてもいろいろと対軍折衝をいたしておりますが、まだ実体的な結果というものは出て参らないのであります。
現在各地方における争議の状況でありますが、北海道の千歳におきましては、昨日の午前六時から四十八時間のストライキに入
つて、いまなおストライキ継続中であります。今朝までくらいの現地情報によりますと、三百二十二名の首切りに対しまして、その後いろいろと知事あるいは
組合等から軍に対して折衝し結果、いろいろ配置転換等の
措置がされまして、大体二百七十一名くらいの整理人員までに圧縮できておるのでありますが、まだ残
つておる問題については、年末手当の支給とかいう
ような時期まで延期することができない状況にな
つております。千歳の場合には、すでに明十一日には解雇の
効力を発生するという
ような状況におきましてストライキが行われておるのであります。その他の支部といたしましては、東京のTODが十一月の十二日、十三日と、大体四十八時間ストライキを決行する予定にな
つております。他の支部としては、神奈川の追浜の支部あるいは埼玉の大宮、宮城の船岡等でストライキ権を確立いたしまして、
交渉の進展の
いかんによ
つては、実力行使をあえて辞さないという
ような態勢にな
つておりまして、全国的に年末手当の支給
措置さえもとられていない
ような状態にありますので、内部の予告が発出されて、だんだんと
交渉が進んで参りました際に、全国的な実力行使という
ような情勢に高ま
つて来るのではないかというふうに推察をされております。私どもの案は、これはきわめて率直な
要求にな
つておるのでありますが、いろいろ各地方的に折衝をした
経過においては、たとえば東京におきましても、本日TODにおいては、ち
ようど十一月十三日、年末手当の支給の二日前に解雇の
効力が発効する
ようにな
つてお
つたのでありますが、この予告を数日延期して、解雇を十二月十五日に発効せしめる
ようにする。また下丸子におきましても、十一月三十日に解雇が発効する
ようにな
つておりますが、これまた十五日間延期するという
ような一、二の再考慮をした
ような向きが、ただいま出て参
つておりますが、他の大部分のところにおいては、まだ具体的に進んでおらないという
ような状況であります。
一般的な整理の状況につきましても、
政府の方でいろいろと
努力をされております。私どもも、
政府代表とともに向うの首脳者に会つた際にも、今後の整理の規模等についても、若干の
説明を聞いたのでありますが、軍の
関係等においては、なお来年の六月までに八%ないし一〇%
程度の整理を行わなければならない
ような
事情も
説明をされております。いずれにいたしましても、今回の整理の中におきまして、朝鮮から帰還せしめられる船員を、二十四時間の予告によ
つて年末手当の支給もさせない。あるいは現地で長く勤務しておりますれば、からだにいろいろな故障が出て参ります。現地では十分な医療あるいは療養の機会を得ることもできないので、内地に引揚げて参りまして、一、二週間あるいは一箇月ぐらいしますと予測していなかつた発病等も出て参りますが、そういう
ようなものにも医療、療養の機会を与えることなく、二十四時間の予告をも
つて解雇してしまう、こういう
ような
処置や、先ほど申し上げた
ように意図的に年末手当を支給せずして、その支給日直前に解雇する、あるいはまた即時解雇の方法によ
つて年末手当の
支出を避けて行くという
ような、あまりにも労働者を人間扱いしない
ような取扱い方については、私どもは非常な不満を感ずるのであります。船員の場合においては、必要なときは朝鮮でいくら苦しんでも使うだけ使
つて、いよいよ用が済んだならばさつとほうり出して内地へ帰して、二十四時間の予告だけで、もうあとはかまわない、こういう
ようなやり方――これは本年六月にも具体的にあつた例でありますが、それを再び今度繰返して行こうといつた
ような状況にな
つておるのであります。こういう点については、労働者といたしましては、非常に大きな憤懣と抗議を持
つておる次第であります。この種の
事情につきましては、過日参議院の労働
委員会におきましても、
政府に対して、いろいろ善処する
ように決議等も願
つて、申入れをすでにしていただいておるのでありますが、労働
組合側といたしましても、軍という大きな権力に対する折衝でありますし、特に今回の陸軍の
予算削減に対する調整の
措置が、本年十二月までに終る
ようにワシントンから指令をされており、そのために来年下期までその調整を延期いたしまして、自然減耗等によ
つてこれを
措置することができないという
ような
事情もありますので、昨晩アメリカ本国の陸軍長官と両院の軍事
委員長に対しまして、この
予算調整
措置を来年の下期まで延期してもらうということと、やむを得ず解雇する場合においても、必ず年末手当は支給する
ような
措置をと
つてくれということを、電報で要請をした
ような次第であります。そういう
ような
事情にありますので、私どもも具体的に職場に仕事がなく
なつたり、働く職場が閉鎖をされたりした場合に、手伝いとしてなおかつそのまま失業対策的に労働者を残せという
ような
要求をいたしておるものではないのでありますが、
予算が削減されたという理由だけで、現実にはまだそうそう休戦よ
つての作業量の減少等もわれわれの目に映じておらない場合に、人数だけを減らしますと、勢いあとに残る者に労働強化という形でおおいかぶさ
つて来る点がありますので、そういう
ような点については反対をいたしておるのであります。
以上の
ような状況でありますが、この整理の問題につきましても、きわめて地方的な争議の問題としていろいろ危惧される点もあるので、努めて、中央におきまして統一的な
交渉によ
つて、解決の道を見出したいと
考えておるのでありますが、具体的に進展をいたさないという状況で、それらの点について、
組合側といたしましても、かなりの不満を持
つておるのであります。もちろん軍との折衝の問題が、かなりむずかしいということも、長い経験で了解できるのでありますが、すでに新しい労務基本契約の基本協定も合意署名をされておる。その中において、その間隙を縫
つてこの種の整理が行われていることについても、きわめて遺憾であると
考えておるのであります。
労使関係が、特に外国軍隊を相手とする場合におましては、いろいろの問題も考慮しなければならないのでありまして、私どもも努めて高い見地に立
つて問題の解決をはかりたいと
考えておりますが、何分にも年末、正月を控えて労務者が職を失うという問題につきましては、相当の解雇の理由というものが、労務者自身にかなり納得行く
ように親切、詳細に説要れない限り、労務者自体は解雇を納得しないのであります。そういう点について、
政府にかなり強い態度をも
つて折衝をお願いしておるのであります。
国会方面におきましても、長い聞苦しい条件のもとで働いて参りました駐留軍の労働者に対しまして、十分な御配慮をぜひお願い申し上げたいと
考えておる次第であります。
以上で私の
説明を終ります。