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1953-11-10 第17回国会 衆議院 労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月十日(火曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君    理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君    理事 山村新治郎君       池田  清君    黒澤 幸一君       多賀谷真稔君    井堀 繁雄君       竹谷源太郎君    長  正路君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  委員外出席者         調達庁長官   福島愼太郎君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      百田 正弘君         検     事         (刑事局公安課         長)      桃澤 全司君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      岸本  晋君         大蔵事務官         (造幣局長)  村岡 信勝君         農林事務官         (食糧庁業務第         一部需給課長) 大口 駿一君         労働政務次官  安井  謙君         労働事務次官  齋藤 邦吉君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      龜井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         参  考  人         (公共企業体等         仲裁委員会委員         長)      今井 一男君         参  考  人         (旭硝子牧山工         場労働組合執行         委員)     吉村  稔君         参  考  人         (関東金属労働         組合日本製鋼赤         羽支部執行委         員長)     前田 信義君         参  考  人         (関東金属労働         組合日本製鋼赤         羽支部執行委         員)      高山昌之助君         参  考  人         (全駐留軍労働         組合中央執行委         員長)     市川  誠君         専  門  員 浜口金一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公聴会開会承認要求に関する件  労使関係に関する件     ―――――――――――――
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたしますが、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件(印刷事業に関する件)、内閣提出議決第一号より第八号に至る八件につきまして、国会議決いかんによりましては、その与える影響が勤労者のみでなく一般国民にも非常に重大なものがあると考えられますので、この際当委員会といたしましては、議決第一号より議決第八号に至る八件につきまして公聴会を開会いたしまして、広く各界の意見を求めたいと存じます。  つきまして公聴会を開こうとする場合には、衆議院規則第七十七条によりまして、あらかじめ議長承認を得なければなりません。よつて公聴会を開こうとする議案は、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、内閣提出議決第一号より第八号までの八件とし、意見を聞こうとする問題については、これら八件についてといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければ、さよう決定いたしまして、後刻委員長より文書をもつて議長に申し出ることといたします。  なおまた、この際皆様の御了承を得ておきたいことは、公聴会開会承認要求議長承認を得ましたならば、委員会において公聴会を開くことを正式に議決いたすことになつておりますか、公聴会日時につきましては委員長に御一任願います。また公聴会開会日時決定いたしましたる上は、衆議院規則第七十九条によりまして、公聴会開会報告書を提出いたさねばなりませんが、これもまた諸般の手続とともに委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければ、さようにとりはからうことといたします。     ―――――――――――――
  5. 赤松勇

    赤松委員長 次に、労使関係に関する件について調査を進めます。まず仲裁裁定について質疑を許します。本日は造幣局長村岡さんが御出席願つておりますので、村岡造幣局長に対しまして多賀谷真稔君より質問の通告がありますから、質問を許します。多賀谷真稔君。
  6. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 簡単に質問をいたしたいと思います。造幣局組合では、団体交渉でどういう協議がなされ、どういう経過になつておるか。団体交渉の面、要するに調停委員会にかける前の状態を、少しく報告していただきたいと思います。
  7. 村岡信勝

    村岡説明員 御承知通り造幣局も、その他の国営企業と同じように、平年の一月一日よりいわゆる公企労法適用を受けることに相なりまして、団体交渉手続によつて給与準則その他の給与関係いたします問題の決定をいたすことに相なつたのであります。本年の当初より職員基準賃金一万五千二百円ということの要求を、組合側より当局側に対して提出されました。当局側といたしましては交渉委員を出しまして、数回にわたり組合との間に交渉を重ねて参つたのであります。当局側といたしましては、主として財政上の事情により組合側要求に応じかねるということで、双方の主張が一致するに至らず、今年の五月十八日組合側より実質賃金戦前復帰ということを目標といたして、正式に造幣局長あて要求書を出しました。今申しまたように、いろいろ折衝いたしましたが、妥結に至らず、当局は五月二十五日、戦前とはいろいろな点において事情を異にする現在、また昨年の十一月の給与水準改訂後、物価その他の経済情勢給与水準を引上げる必要のある程度まで変動していない、また財政上の事情もあるということで回答いたしまして、交渉は決裂いたしました。組合は、その結果法の定めるところによりまして、調停委員会に対し調停申請を行い、六月一日に調停委員会によつて受理されました。これが調停委員会申請を行うに至る間におきます簡単な経過であります。
  8. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 造幣局団体交渉の場合の当事者、ことに仲裁裁定のあつた場合の拘束する当事者というのは、官側ではどういう関係になつておりますか。
  9. 村岡信勝

    村岡説明員 仲裁裁定拘束を受けます相手方は、官側では造幣局長であります。
  10. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 仲裁裁定を受ける場合に、官側では造幣局長ですか。私は大蔵省の場合は、当然大蔵大臣拘束になると思うのですが、造幣局長であるという根拠をお示し願いたい。
  11. 村岡信勝

    村岡説明員 造幣局事業は、現在造幣局特別会計と申します特別会計の形において運営されております。特別会計主管者大蔵大臣でございますが、大蔵大臣委任と申しますか、命令を受けまして、造幣局長特別会計運営して参つておるというのが現状でございます。
  12. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 委任という場合は、やはり権限大蔵大臣にあると思う。大蔵大臣権限委任されておる、こう考えるわけですが、やはり大蔵大臣拘束を受けるわけではありませんか。
  13. 村岡信勝

    村岡説明員 今申し上げましたように、造幣局特別会計主管者大蔵大臣でございますので、その意味におきましては、最終の相手方大蔵大臣と申せますが、このたびの仲裁裁定の際にも、交渉当事者として出て参りましたのは、官側では造幣局長であり、組合側では全造幣労働組合の形に相なつております。官側としては、当事者造幣局長であります。
  14. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私の質問が若干矛盾があつたと思うわけですが、交渉相手方はだれかということに対しては、なるほど交渉は、実際問題としては局長がやられていると思う。しかし仲裁裁定拘束力ということになりますと、これはやはり権限の所在するものが当然拘束力を受けるのではなかろうか、かよう考えるわけであります。交渉につきましても、具体的な交渉は、なるほど局長でありましようけれども、その権限はやはり大蔵大臣にある。その委任を受けている。委任であるということになりますと、法的な最終的な問題といたしましては、その権限の所在は大蔵大臣であると考えますが、さらに質問いたしたいと思います。
  15. 村岡信勝

    村岡説明員 実は法律専門家でありませんので、私の申し上げることが、専門的に見て間違つているというようなことがあれば、あとで訂正させていただくということを留保して申し上げたいと思いますが、仲裁裁定当事者としては、今申し上げたように、片方は造幣局長であるということになつております。交渉と申しますか、この前の段階において組合側と盛んに交渉があつたわけですが、その際の交渉当事者と申しますか、交渉委員というような形には造幣局長は実はなつておらないので、別に組合側官側双方それぞれ五名の交渉委員なるものを選出して、交渉委員によつて問題の交渉をいたしたことは事実でございますが、お尋ねの点は、それとは別に、この裁定の結果拘束を受けるものはだれであるかということでありますが、法律的には、裁定当事者であります造幣局長がやはり裁定拘束を受けるのではないか。ただその裁定拘束を受けて実施いたします場合には、先ほど申しました通り特別会計の中における操作でございますので、しかも特別会計主管者大蔵大臣で、大蔵大臣委任を受けて造幣局長がその運営をいたしておるのでありますから、結果的に、大蔵大臣において最終的には拘束を受けるということになるのではないか、かよう考え方でございます。
  16. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 公労法関係裁定効力の及び当事者は、国有鉄道ように、総裁で別個の法人格を持つている場合には、私は政府関係なく、一応その法人格を有している法人拘束を受けると思う。しかし印刷あるいは造幣その他の政府事業である場合は、やはり政府といいますか、あるいは主管大臣といいますか、大臣拘束を受ける、こういうよう考えるわけであります。今、局長答弁は、私が考えたと同じよう考え方であるように受取るわけでありますが、それでよろしゆうございますか、お尋ねしたい。
  17. 村岡信勝

    村岡説明員 どうも御質問者のお気持が私の申し上げていることと同一考え方であるかどうか。私としては、先ほど申し上げましたよう考えているわけでありますが、要するに政府と申します際に、仲裁裁定当事者であります際の造幣局長の意味すると申しますか、代表しておりますところの性格というものと、うしろにあるところの政府特別会計主管者たる大蔵大臣との間には、やはり同一のものの裏表というよう関係であるかもしれませんけれども、法律の一応の表面の解釈としては、やはり別のような見方ができるのではないか、かよう考えます。
  18. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも初めの答弁とまた少しかわつて来ているようですが、やはり造幣の仕事は政府事業である、これにはかわりないと思う。ですから、最終的には、はつきり申しますと政府である、かように解していいと思うのですが、どうですか。
  19. 村岡信勝

    村岡説明員 最終的には御指摘の通り造幣局長大蔵大臣委任を受けて特別会計運営に当つているのでありますから、裁定効果は直接的には造幣局長拘束いたしますけれども、その法律効果が、結局委任をいたしておりますところの大蔵大臣に及ぶことは、これは仰せの通りだと思います。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 よくわかりましたが、次のようなことをお聞きして、さらに裏づけたいと思う。具体的な例がありますかどうかわかりませんが、造幣事業の場合に、あるいは民間の人に損害賠償を与えたという場合に、民間の人が訴訟をするのは、やはり法務大臣を相手取つて訴訟すると思うのですが、具体的にどういうことになつておりますか。政府訴訟を受ける側は、全部法務大臣であると思う。その場合にはどうですか。
  21. 村岡信勝

    村岡説明員 御質問ような場合における当事者政府でございますが、その際の政府を代表して法廷に出入するのは、法務大臣であります。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 よくわかりました。国に対する訴訟という場合には、ことに造幣あるいは印刷等で起つた事件にいたしましても、全部国の訴訟をあずかるのは、法務大臣が代表してあずかる、こういうことになつておりますので、この公労法関係でも、政府事業の場合は裁判的なものについては、法務大臣特別法のない限りは受けると思うのであります。そういうことになりますと、当然この裁判的効力と同じよう仲裁裁定当事者というのは、やはり政府機関であると私は考えていいと思う。  この質問に対しましてはこれで打切りまして、さらに予備費支出でありますが、従来予備費はどういう場合に使われたか、最近の例がございましたら、御答弁願いたいと思います。
  23. 村岡信勝

    村岡説明員 最近、昭和二十六年度及び昨二十七年度の実情を申し上げます。昭和二十六年度予算上の予備費金額は九千三百六十五万九千円ございましたが、そのうち予備費使用いたしました金額が三千六百五十八万円でございます。この内訳は、一つルース台風災害復旧のために支出した金額が二千二百五十万であります。他の一つは、行政整理による退官者資金としまして約四百八万円、これが二十六年の予備費使用の実績でございます。昨二十七年度におきましては、予備費総額が九千万円ありましたが、そのうち予備費として使用いたしました金額はございません。二十六年度においては、先ほど申し上げたよう予備費使用をいたしております。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、今度の裁定に要する経費は、一応裁定によりますと三千万円程度である。しかも経費節約予備費の流用によつて処理できるであろう、こういうことを裁定はうたつておりますが、この予備費の流用によつて当然可能になり得ると考えるわけです。これは法律的な問題は別といたしまして、一応可能になり得ると考えるわけであります。それに対して御見解をお尋ねいたしたい。
  25. 村岡信勝

    村岡説明員 裁定文書の中に、確かに造幣局事業においては節約ないし予備費使用によつて必要金額支出は可能であるということがございます。そのうちで、節約につきましては、現在の造幣事業段階から見ましては、非常に困難かと思います。対象は従つて予備費に相なるわけでありますが、必要金額約三千万円に対して、予備費金額は御承知通り一億六百余万円ございますので、金額的にはこれはこの中に含まれて参りますが、もちろん予備費使用は、性質人件費のみに充てるわけではございません、ほかの費目に予期すべからざるものがありました場合には、この予備費から充てられる。かつまた予備費につきましては、金額のわくとしてはございますけれども、これはもちろん造幣局長立場においてこれを云々し得る段階のものではございませんので、これを使うということにつきましての意見は、この席では申し上げかねるわけであります。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 よくわかりました。大蔵大臣承認がなくてはできない、こういうことであり、また法律的な予算上の問題もあるかと思うのであります。しかし、今局長説明であります。と、そういう処置がなされるならば可能である、かように承つて私の質問を終ります。
  27. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 ちよつと関連して局長にお尋ねしますが、もし間違つておれば取消していただいていいんですから、大胆にお話願いたいと思うのです。  先ほど多賀谷委員質問によつて、ほぼ明瞭になつたと思いますが、この公労法の第三十五条のいわゆる当事者というのは、政府企業の場合には国である、こういうふうに見るべきだと思うのです。大体先ほどの御答弁も、そういう趣旨であつたと思うのですが、その点確かめるわけであります。国であると考えてさしつかえないかどうか、もう一言はつきりと伺いたい。
  28. 村岡信勝

    村岡説明員 先ほど申した通り、きわめて自信のない申し上げ方であります。なおこの問題につきましては、最終的の私の返事といたしましては、慎重にひとつ研究さしていただきたいと思います。
  29. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 研究はともかく、今の局長のお考えでは、国であるというふうにお思いになつておるんだと思うのです。将来はまた研究されて、間違つておられれば訂正されてもけつこうなんですが、現在のお考えでは国であるというふうに思つていらつしやると思うのですが、そういうふうに理解してよろしゆうございますでしようか。
  30. 村岡信勝

    村岡説明員 今、私の考え方としては、さよう考えております。
  31. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は局長の御答弁は、正しいと思うものであります。将来いろいろ御研究なさればなさるほど、そうであるという確信を強められるのであろうと考えます。  そこで、今度は公労法第十六条の関係でありますが、この本文の規定によりますと「公共企業体等予算上又は資金上、不可能な資金支出内容とするいかなる協定も、政府拘束するものではない。」ここの「拘束」ということなんです。政府企業の場合には、公労法第三十五条によつて仲裁裁定当事者双方、すなわち国が拘束を受ける。これに服従しなければならない。こう規定しておるところと対照して考えますと政府拘束するものではないというのは、政府国会所定行為があるまでは、その仲裁裁定に現われておる内容について履行する責任がまだないのである、しかしながら、全然無関係のものであるというふうなものではないのである、政府はこの仲裁裁定を尊重し、これを履行するよう措置を講じなければならぬという、私の昨日小坂労働大臣に対する質問で申し上げました言葉を利用しますと、政府は信義誠実の原則従つて仲裁裁定履行のためは、最善努力をしなければならぬという、そういう責任はあるのだ、こういうふうに考えますが、ただ拘束されないというのは、今すぐ履行する責任はないんだけれども、国会所定行為を経て、そうしてこれを履行するように、最善努力を払わなければならぬ、それはどこまでも信義誠実の原則に照して、その線に沿うて努力しなければならぬのだ、こういう責任があることは明瞭であると思うのでありますが、それについて、どのようにお考えでございましようか。
  32. 村岡信勝

    村岡説明員 公労法の第三十五条なり、第十六条の規定解釈運用について、すでにたびたび労働大臣からお話があつて、これに対して皆さんの方で必ずしも満足しておられない際に、私からさらに、大臣ですら十分な御説明をいたしかねるよう性質のものを申し上げて、御満足の行くはずはないと思いますけれども、造幣局事業におきましても、第十六条の規定の結果、今度の新しい追加金の額は、造幣局給与総額を現実にオーバーしておりまして、現在の特別会計予算総則第八条の給与総額を越えることが明らかでございますので、この限りについて、これは公労法第十六条の規定に該当することは明らかであります。そうである限り、造幣局長といたしましても、国会の御審議によつて国会の御決定がなされ、その上において政府において予算措置行為がなされ、その上において、造幣局においても裁定の線に沿つて処置ができる、こういうことであります。
  33. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 大臣答弁がわれわれを満足させないから、造幣局長答弁ではとても満足するようなものにはならぬであろうというようにお考えになることは、実際は私は間違いだと思う。大臣等というものは、いろいろ政治的に考えて、実際自分の思つていることでも、なかなか率直に言わないというずるさを持つていると思うのです。しかし、その問題はやはり法律解釈の問題なのでして、どこまでも良心従つて、しかも公労法の正しい解釈と正しい運用によつて問題を解決して行こうという誠意、良心を持つ者は、私は率直に自分の所信を述べ、そうして互いに検討して行くことこそ、関係者責任でもあり、また国会における審議に忠実なゆえんである、こう思うのでありまして、実はこの法律解釈運用については、いわゆる官僚であられる方々は十分御研究になつておると思うのでありまして、そこにいろいろの政治的意図を加味しない率直な良心的な判断の結果を、ひとつ吐露していただくことが、非常に必要なことであると思うのであります。そこで、私の先ほど質問いたしました内容が、あるいは徹底しなかつたのではないかと、先ほどの答弁から考えるわけでありますが、公労法三十五条によつて仲裁裁定当事者、すなわち政府企業の場合には、国はこれに服従しなければならないという大原則公労法が打出しているわけであります。しかしながら、予算資金上それの支出が不可能な場合には、これは国会議決を経なければならない。だから、国会議決を経るまでは、この仲裁裁定の持つている内容を実現するための義務の履行ということは、これはしばらく差控えるべきである。しかしながら政府としては、どこまでも公労法の大原則、すなわち仲裁裁定に服従しなければならない、これを尊重しなければならないというのが、これが公労法上の責任なのでありますから、従つて政府としてはその仲裁裁定を実施し得るように、予算上あるいは資金上可能なように配慮しなければならない責任があるんだということは、ほとんど私どもの解釈をもつてすれば、争う余地のない明瞭なことであると思うのであります。それを局長は、私の考え間違つているという解釈であれば、その点を理由をあげてはつきり御説明を願いたいし、私の説が正しいというお考えであれば、その点をこの席において明らかにしていただきたい。かよう考えるわけであります。
  34. 村岡信勝

    村岡説明員 公労法第三十五条の規定によつて仲裁裁定は、これは尊重すべきはもとよりでございますが、あくまでその但書に規定しております通り予算資金上不可能な支出につきましては、これは国会議決いかんにかかる問題になりますので、特別会計履行にあたりましても、予算上の措置がとられるまでの段階におきましては、これは造幣局といたしましても、いかんともしがたいのであります。ただお話ように、実質的に見まして、仲裁裁定によつて造幣局で言いますと一万四千四百五十円の線が出ました以上は、これを尊重いたすということはもちろんであり、予算上の措置がとられました上においては、もちろんそれが決定従つて履行すべきことは当然でございますが、同時に、造幣局公労法適用を受けまする職員が約千七百数十名ありますが、その他になお一般公務員の資格を持つておりますものも若干ございます。財源上の問題もさることながら、造幣局長立場において、やはり一般公務員との関連等の問題もございまして、その辺の考慮もはかるべきであろうと考えまして、仲裁裁定の線を尊重すべきはもとよりでありますけれども、これが実行に際しましての今申しましたような難関が排除されて、円滑にこれが実施ができますときが来ますことを、実は造幣局といたしましても期待いたしておるわけであります。
  35. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 やはり局長も思つていらつしやることを大胆にお述べになることは、今の場合私非常にお苦しいように拝察いたしますので、関連質問ではありまするし、これ以上質問を続けることは避けたいと思いますが、私はこういうことを希望いたしておきます。政府仲裁裁定を尊重しなければならぬ。尊重ということは、ただ口で言うだけの問題ではないのでありまして関係当事者すべて、あるいは国民全体に、政府仲裁裁定を尊重したという理解を持たせる。すなわち信義誠実の原則従つて、その結果が尊重したと思わせる程度に現われることを、私は法律上必要とするものであると考えるのであります。従つて、単に予算上あるいは資金上不可能である、だから国会は何とかこれに対して議決をしろというような、そういう無責任なものであるべきものではないのであります。実質的にしつかりとした内容を示して、政府仲裁裁定を尊重する、ゆえにこれだけのことをこうしようと思うという内容を示して、それを国会を通じて国民の前に明らかにされる必要がある。こういうふうに考えるのでありまして、何ら内容を持たないで、尊重する。尊重するというようなことは、まつたく意味をなさないと思うのであります。だから、今のような趣旨に従つて造幣局長は、関係される問題については尊重したと思えるような具体的な実績をあげるように御努力相なつてしかるべきである。このことを希望いたしまして、私の質問を打切りたいと思います。
  36. 赤松勇

    赤松委員長 公労法の三十五条のあれからいえば、予算資金上不可能だというので十六条に来ているのですけれども、とにかく国会議決があるまでは、裁定当事者はそれを完全実施するよう努力する義務がある、努力しなければならぬという点においては、認められるんでしよう
  37. 村岡信勝

    村岡説明員 やはり十六条に該当いたします限りは、国会の御決定にまつという態度であります。
  38. 赤松勇

    赤松委員長 その点は質問者の方は非常に不満のようでございますけれども、よろしゆうございますね。
  39. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 きようはこの程度にいたしておきます。     ―――――――――――――
  40. 赤松勇

    赤松委員長 次に日本製鋼赤羽支部の争議問題について、高山昌之助君、前田信義君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 赤松勇

    赤松委員長 御異議がなければさように決します。  それではまず前田参考人に発言を許します。
  42. 前田信義

    ○前田参考人 今回日本製鋼の赤羽におきまして、二千三百人以上の首切りが出たわけでございます。これにつきましては、十月の二十六日に、たまたま大量馘首があるということの情報を得たわけでございます。これにつきまして、この真偽をただちに会社に確かめたのでございますが、会社の方としては、まだわかつていないということであつたわけでございます。そういたしまして、一日おきました二十八日に、午後の十時から緊急に協議会を持ちたいという会社の申入れがあつたわけでございます。このときにおきまして、米軍の予算削減に伴つて、定員を三千六百九十名にしなければならない、この処置は十二月五日までに終るというふうに指令されたということの発表を受けたわけでございます。現在人員といたしましては、約六千五百人近くおります。そのうち三千六百九十名だけ残す、それ以外のものは馘首するということであります。軍の方からの告示といたしましては、十二月五日までにこれを終るようにするべきだということであつたわけであります。そのときにおきまして直接作業員は今回ただちに首を切る、しかしながら間接作業員は、今回は対象にならないということであつたわけでございます。で、この協議会の席上におきまして十一月の五日予告する。そうして十二月五日をもつて解雇するというふうになつたわけでございます。このときに、同時に九項目の解雇基準というものを明示いたしまして、これによつてただちに実施する。で、これは軍の特需に対する予算削減ということであるので、会社の方としてはどうともなりませんということであつたわけであります。  その後におきまして、一回二回三回、再々会社と交渉を持ちまして、三十日の交渉におきましては、十一月の五日に予告をして十二月の五日で解雇をするというのを十一月五日即日解雇するというように改められて来たわけであります。これには規定の退職金並びに一箇月分の予告手当、それから一時金として五千円を支払う、そうして十一月五日即日解雇をするというふうに言われて参りました。現在すでに、本日十日でございますので、五日の日には二千四百人以上に上る者の氏名が発表されたわけであります。この発表の過程におきまして、いろいろ細部的には納得の行きかねる面が次々と起つて来たということでございます、それを一々申し上げますならば、たとえばあそこは米軍の基地であるために、通門証を軍からもらわなければ入門できないというふうになつております。これが解雇通知とそれから入門証と両方もらつたという者、あるいは入門証も来なければ解雇通知も来ないという者、交渉中でありながら交渉後わずか二日しかたつていないのに首切りの通告を受けたという、あるいは間接雇いでありながらこれを切られたというふうなことのいろいろなでたらめぶりが起つて来たわけでございます。これに対しまして、ただちに八日の日に団交を申し入れまして、会社との話合いをしたわけでございますが、会社の方としては、今のところ調査してみるということで、まだ具体的にはこれに対する回答は得ておりません。  この間におきまして、この人員整理に対しまして部隊長に会見を申し入れたわけでございます。部隊の方といたしましても、これは十二月五日までにこの処置を完了せよということの本国からの指令であるので、ここで何と言われても困ります、ただこのこまかい面については、会社と組合と話し合うべき問題で、根本的なこの首切りということについては、部隊としても何ともいたしかねるということが、大体部隊長と会見いたしましたときの部隊側の要旨であります。大体状態といたしましては、そういつたようなことでございます。
  43. 山花秀雄

    ○山花委員 ちよつと委員長にお尋ねしたいと思います。ただいま日鋼赤羽工場の解雇問題について、組合側の参考意見を述べるために組合代表者をお呼びになつたのであります。この問題に関係いたしまして、会社側を参考人としてお呼びになる意思があるのかどうか。あるいはありましたならば、いつごろお呼びになるかという点をお聞きしたいと思います。
  44. 赤松勇

    赤松委員長 委員の諸君の御希望がございますならば、一応理事会にかけまして、理事会で御相談申し上げまして呼びたいと思います。私としましては、当然当事者双方意見を聞くことが、本委員会としては公正なるやり方である、こう考えまするので、委員長といたしましては、ぜひ会社側を召喚したいと考えております。
  45. 山花秀雄

    ○山花委員 これは非常に重要な問題で、将来この種の問題が日本の各地の特需工場で起ると思うのであります。特に大量首切りということになりますと、失業問題にも重大な関連性がございますので、一応一つのケースとして、日鋼の赤羽の問題は、労使双方を呼んで意見を聞いて、そうしてわれわれとしてはこの問題に関して具体的に今後善処するようにして行きたいと思いますので、委員長の方においては、使用者側もお呼びになるように、適当なる処置をまず第一にお願いをいたしておきたいと思います。
  46. 赤松勇

    赤松委員長 そこで山花君、どうでございましようか。もしそういうことが理事会で了承されましたならば、明日会社の方も呼びまして、同時に双方の参考人を呼んでおいて、そうして質疑等を行つた方がいいように思うのでございますが、どうでございますか。――それではただいまから理事会を開きたいと思います。   暫時休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――     午後零時五分休憩     午後零時六分開議
  47. 赤松勇

    赤松委員長 それでは休憩一前に引続き会議を続行いたします。  理事会の決定によりまして、会社側からも参考人を呼ぶ二とにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう決定いたします。  それでは、本件につきましては明日の労働委員会においてこれを審議したいと思いますので、さよう御了承を願います。その氏名は委員長に御一任を願います。     ―――――――――――――
  49. 赤松勇

    赤松委員長 次に旭硝子牧山工場の争議問題について、吉村稔君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 赤松勇

    赤松委員長 異議なければさよう決定いたします。  吉村参考人より意見を聴取いたすのでありますが、ちよつと待つてください。     ―――――――――――――
  51. 赤松勇

    赤松委員長 その前に参考人の意見聴取を要求されました多賀谷君に御相談申し上げますが、ただいま食糧庁の需給課長が、八幡の食糧問題に関係しておる係官を帯同して農林省を出たそうでございます。これは係官を出席させて、そこで参考人の意見を述べさせた方が適当ではないかと思いますので、どうでございましよう、ただいまから三十分休憩いたしまして、そして続行したいと思いますが、いかがでございますか。   暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  52. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。吉村参考人より意見を聴取いたします。吉村参考人。
  53. 吉村稔

    ○吉村参考人 ただいまの旭硝子牧山工場における定員制の問題を引続いて御説明いたします。  旭硝子牧山工場労働組合は、旭硝子株式会社との間に、昭和二十五年の四月ごろから、定員制の問題をめぐり団体交渉を重ねて来たのであります。この問題は、三箇年間会社が一般作業員の雇用を全然停止して、しかも増産を強化せしめ、各職場においての人員不足の切実な組合員の要求が起つたわけであります。  この定員制の問題について一応御説明いたしますと、職場においては、労働基準法できめられた一時間の昼飯の休息時間もないというような、一日中八時間ぶつ通しで働いている。そうして足がはれて、帰るときには靴もはけないというような職場の問題とか、あるいは非常に人員が縮減して、生産品に対する非常な粗製濫造が行われるので、これでは生産人として非常に耐えがたいというので要求したものであります。組合のこの要求は二千八百七十名の組合員の中から五十九名の増員要求の微々たるものであります。会社はこのような妥当な要求にもかかわらず、九月十日のストライキに突入するまでに数次の団体交渉をしたわけでございますがそれにもかかわらず会社は一歩も譲つて来ません、われわれは平和的交渉の道が絶たれたので、遂に九月十日よりストライキに突入したわけであります。  その間、組合は地労委にあつせんを申請し、問題を平和的に早期に解決するために努力して来たのでありますが、十月十四日地労委の第一次あつせん案が提示されたわけであります。その提示された内容は、わずか五名の増員と、その他は共同調査をする、そうして就業資金として家族数に応じ四千円から一万二千円を貸し付けるというような、組合にとつては最も不利なあつせん案であつたわけでありますが、これも会社は拒否したわけであります。もちろんこのあつせん案に対しては、地労委の公益委員はもちろん、資本家側の委員及び商業新聞も、会社側に非常に有利なために、これは組合が拒否するだろうというようなことを一般的に新聞紙上に書き立てたのでありますけれども、組合としましても、諸般の事情考えまして、これも涙をのんで受入れる態度に出たわけであります。しかるに、会社はこれを一蹴して、かえつて組合を弾圧、あるいは正常な民主的組合を破壊する挙に出たもりであります。こうして争議は四十六日間になんなんとしておりましたが、北九州における社会問題と化し、洞海湾の三市の市長、県知事、地労委のあつせんによつて再び第二次あつせん案が出たわけであります。このあつせん案はさらに第一次案よりも下まわるわずか三名の増員を認めて、その他は共同調査、就業資金は第一次案通りというように、組合にとつて最も不利な案でありますが、社会的な問題も考えまして、これを組合は涙をのんで妥結をするようになつたのであります。  この円満解決にあたつて、なお今日組合の争議期間中に起つた問題において、いろいろと事件が出て来たのでありますが、これに対する争議期間中の事件内容を申し上げます。  十月三日ごろより会社は牧労同志連合会という名目で第二組合の結成を準備して、戸畑市の牧山電停前のキヤンデー屋の二階から、工場内に直接電話線を架設して、十月七日、会社は海陸より一斉にこれらの第二組合員とか、あるいは請負業者の率いる暴力団をもつて工場内に侵入せしめて、強制就業をさせたわけであります。これは「会社が保全協定が誠実に履行される限り、罷業の実体を阻害する目的をもつて他の労働者を就業させない」という、労働協約第百十条に違反する不当なる行為であります。  この際海上より暴力団の警衛する約二百名の第二組合員が工場に侵入し、それと同時に、保全要員が中におりましたが、約四百名の保全要員をそのままカン詰にして、これら暴力団が警衛の中でカン詰式な就業をさせたわけでございます。また十月八日に暴力団によつて組合事務所になぐり込みをかけたりしたわけであります。その間に、第一組合員に拉致されるというよう事件が頻繁に起つて来たわけであります。たとえば妊娠しておる奥さんのうちに電報を打つて、電報で呼び出して、これを強制的に暴力団がそのまま車に乗せて、一定地に運んでから、そこから会社の中に入場させて就業さすというよう事件とか、いろいろな社会問題が起きて来たわけであります。会社は十月十二日に、組合がデモをやつて――そういうような不正な労働争議の弾圧に出て来たから、組合が自然発生的にその門内に入つたわけであります。これに対して会社は十月十二日に、右の行為を口実として、百万円の供託金を積んでから、福岡地裁小倉支局に仮処分を申請し、同支部は口頭弁論も聞かずに、一方的にただちに申請通りその仮処分決定をおろして来たのであります。この仮処分の内容は「被申請人等(闘争委員等二十名――註)は別紙目録記載(添付図面赤線にて囲みたる範囲の通り)の申請人の工場内に入つてはならない。但し申請人の許諾あるときは此の限りでない。被申請人等は組合員又は第三者をして前項の出域内に入らしめてはならない。」とか、こういうような問題であります。  この間十月十三日に、陳情のためのデモを行つたわけであります。ところが会社の内部からこのデモ隊に目がけて、かわらとか、れんがをぶつけて、組合員に約一週間の治療を要するようま重傷を負わして来たりしたわけであります。あるいは径二インチ、長さ十八インチのこん棒の先に刃物をつけた兇器を工場内のさくの間からつき出して、おとして来たりしたわけであります。十月十七日には組合デモ隊約百名が、第二組合事務所及び会社幹部の居住せる中野社宅に陳情デモを行つたのであります。そのはずみで、へいとか門、街燈を若干破損したわけであります。これは第二組合並びに暴力団の第一組合員強制拉致とか、あるいは会社のあつせん案拒否の不誠意に対する怒りが、組合員の自然発生的なやむを得ない行為になつて現われたものであり、しかもこのへいとか門は腐蝕して、わずかの摩擦で約三十センチ平方ぐらいの穴が明いたとか、あるいは門のちようつがいがはずれた程度の僅少なる破損であつたにもかかわらず、戸畑市警察の武装警官の約百名余りが、このデモ隊の帰りに、牧山峠付近においてデモ隊員六名を逮捕し、その上、井上闘争委員を逮捕状もなくして逮捕して、十九日小倉地検に送検したわけであります。十月二十九日には戸畑市警察署は十月二十五日争議解決後、さらに宮原闘争委員外五名を、既検束者の言や、あるいは写真に似ておるという理由でもつてまた捕逮して行つたというような問題であります。  十月三十一日、同署は二十九名の組合員をさらに逮捕し、この中には前述のデモに全然参加していない者も含まれるという不当逮捕ぶりであります。そのうち七名だけは当日午後九時に釈放され、十一月一日には、さらに二名が釈放されたのでありますが、また十一月一日にさらに追討ち的不当検束を行つたわけであります。これは八幡市警察署が、十月九日組合員の正門入場という、相当以前にあつたことを口実として、矢原統制部班長を逮捕して、同時に矢原氏自宅を家宅捜索をするとか、あるいは闘争委員大隅、大野両名を任意出頭で呼び出し、二日、闘争委員長金子、あるいは副闘争委員長宮川氏を呼び出した。この正門入場というのは、大体組合員が十月九日、前述の会社側の協約違反をあえて犯した不当なるスト破り行為に対し、みずから職場を守るために、自然発生的に正門に入りただちに引揚げたものであつてこれは組合員が会社の従業員である限り、工場、職場に出入りする権利を持つており、しかもスト破りの不当行然により自己の職場を奪われたことに対する緊急避難の正当行為であると思うのであります。しかも二十日以上も経過した十一月一日に至り、これらの検挙を行つたことは、会社あるいは警察の悪意ある共謀と組合員はみな考えておるわけであります。  次に会社が、木島厚生課長、富松庶務課長をして、八幡市食糧協同組合より、九月三十日より十月十日までの間、合計百九十七俵の国家保有米たる応急米を保全委員用として八幡市桑原農林課長に単に口頭によつて申し入れて放出せしめたということもあつたわけであります。これは当時保全委員組合が認めておつて、しかも自宅より通勤させていた事実に徴して、すでに会社がスト破りを計画していたことの証左であるとともに、市当局を欺瞞し市民の応急米を、不当に利得せしめたものであります。さきの水害時においても、八幡市民四万の罹災者に対しては、わずか百七十俵しか放出していない。これは明らかに食管法違反をしておると組合考えておるわけであります。以上スト破りの暴行事件とか、あるいは組合の事務所なぐり込み事件とか、投石傷害事件とか、食管法違反事件等は、まつたく調査がされてなくして、一方的に組合のいわゆる不当弾圧が行われてから検束されておるような状態であります。このような状態が北九州にもし長く続いたとしたら、民主的労働組合の破壊はもちろん、暴力革命への懸念も生れて来るような状態になる思うので、――われわれとしては国家的な問題として何も取扱つていただくということではないのですが、このような状態の中で、市当局あるいは警察当局あるいは検察当局が非常に一方的に行われることは、社会的な不安を招くので、ここに陳情並びに報告に上つたわけでございます。     〔山花委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 赤松勇

  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まずこの事件に関連をして、法務省並びに食糧庁にお尋ねいたします。第一、法務省に対しましては、かよう組合がやつた行為、あるいは組合員の行つた行為に対してはただちに検挙をしておる。しかるに、会社側の暴力団がやつた行為、すなわち今吉村参考人から話がありました第一組合事務所に暴力団が来て、当時吉田法晴参議院議員もその場におりましたけれども、ある者には顔を傷つけておる。さらに事務所の机並びに黒板、応接用のいす等を破損し、窓ガラスまでこわしている、こういう暴力団の事実に対しましては、何らその後捜査していない。しかも奇異に感じますことは、八幡並びに戸畑の警察署員が、それから三十メートル前方に大体十数名いたということであります。しかも向う側にすわつて、みな話をしていたということで、目撃しながら、全然これに触れておらない。こういう事実に対してどういうようにお考えであるか。さらに、その後、今報告がありましたように、十月十三日並びに十五日のデモに際しましては、工場内から暴力団が凶器をつきつけておる。さらにデモ隊に対して石を投げて、一週間のけがを負わしておる。こういう事実に対しても、何らその後調査されておるように聞いていないのであるが、一体どういうよう事情になつておるか、お伺いしたいと思います。
  56. 桃澤全司

    桃澤説明員 さきの委員会多賀谷委員からお話もございましたので、さつそく現地の方にも問い合せたのであります。その結果、判明したところによりますと、第一の十月八日の件でありますが、午後三時ごろ、第一組合闘争本部に下請人夫が参つて、ピケ隊を排除、屋内に入ろうとした。そのときに、警備中の八幡市警察署員に注意されて、中に入つた一人がおりようとした際に、本部の窓ガラスが数枚がこわれて、それから黒板が一枚落下した。それが第一組合員の阿部という人にけがをさせたという事件が起きて、市の警察署の調べによりますと、結局これは過失だということになつた由であります。市警の方では、この被害者の阿部氏に対して、再三診断書の提出を要請したけれども、診断書の提出がないし、さらに告訴もないので、実はそのままにしている、こういうことでございます。あるいは行き違いがあるかも存じませんので、もしそれらについて告発なり告訴の手続を福岡検察庁の小倉支部あてに出していただけば、非常にけつこうだと思います。  それから二番目の、石を投げてけがをさせたということは、これは早くから報告が参つてつたのでありますが、だれが犯人であるかということについて、現在も捜査を続けている、しかし今までのところ、まだその犯人を確定するに至つていないという報告になつているのであります。まずそれだけ最初に申し上げておきます。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さらにデモ隊が中野社宅で行動した場合における破損の問題について勾留されております。この問題について、当局へはどういうふうに報告が来ておるか。さらに十月八日の、正門を突破したデモ、これに対してその後検挙になつておると聞いておるのですが、それに対してどういう処置がとられておるか、お尋ねいたしたい。
  58. 桃澤全司

    桃澤説明員 旭硝子の牧山工場関係で争議に付随して起つた事犯につき、相当多数の人々が検挙されたということについては、非常に遺憾に存じている次第であります。私どもといたしましては、なるべく範囲を限定して、真にやむを得ざるものにとどめたいという考えを持つておるのでありますが、四分非常に多数の人々が関係していること、あるいはその証拠散逸を防止する関係その他から、ある程度多数に上つたことも、現場の捜査官としてはやむを得ざるところがあつたのではなかろうかとも存じております。しかし、これらの者に対しては、至急取調べを了して、すみやかに釈放するように現地の警察官は考えておりまして、早いものは即日、遅くとも本月の六日までに、ほとんど大部分を釈放しているのであります。  一番問題になりましたのは、十月十七日のデモに付随する行動でございますが、私どもの聞いておりますところによりますと、夜十一時ごろ、第二組合事務所の前の路上で蛇行進をした。そこで気勢をあげてそこに宿泊している第二組合に対して、いろいろ罵声を浴びせかけた。そして出入口を足げりにしたり、あるいは腰板、表らんかん、ガラス、屋根がわらなどをこわしたり、事務所の看板をとりはずしたり、こういうことが行われた。その日そこから中野社宅の方にデモ隊が参りまして、工場長、庶務課長、工作部長、試験部長等の付近の社宅内通路に行きまして、前の事務所と同じような方法で気勢をあげて、表木戸を足でけつたり、棒様のものでつき破る等の方法で、いろいろの器物をこわし、その中の数名は社宅の表門及び木戸などの破壊箇所から邸内に侵入した。それから戸畑市金原町の方の社宅内の通路に来まして、やはり同じようなことをしたというような容疑のもとに、最初六名でありましたか、最後には十月三十一日でしたか、二十数名を検挙するということになつたのであります。この関係につきましては、先ほど申し上げましたように、十一月六日までにすべて釈放済みでございます。この処理につきましては、真にやむを得ざる者のほかは不起訴にしたいという意向で、十分しぼりをかける予定であります。  なお十一月に入りまして、二名でありましたか、住居侵入及び暴力行為取締法によつて新たに検挙者を見ているのでありますが、この詳細はまだ報告が参つておりません。これも身柄関係につきましては、すみやかに捜査を終了して帰す予定でございます。  以上御報告申し上げます。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 暴力団が組合事務所を襲つた事件でありますが、過失傷害は告訴をもつてこれを処罰することになつておりますが、あれは一人や二人ではないわけでありまし、ただ過失によつていすが一箇こわれたり、あるいは黒板がこわれたり、窓ガラスがこわれたり、けがをしたり、こういうことはだれが常識的に見ましても、過失傷害ではないと思う。しかもこれは、私も戸畑の警察に行きましたし、吉田法晴氏も行つてこれは当然やつてくれということを話したにもかかわらず、これは告訴がなくては過失傷害であるとしてこういうような取扱いを今までされていない。逆に第一組合の方から言えば、検挙をして、長い間勾留をして取調べが行われておる。こういう点は非常に不平等であると考えるのでありますが、この点について再度お尋ねいたしたい。
  60. 桃澤全司

    桃澤説明員 第一段階では市警が取扱つておりますので、市警からの報告が十分ございませんと、そのときの模様が検察庁としてはわかりにくいかと存じます。それで、もし種々のその当時の状況を御存じの方の証言を集めて、検察庁あてに告訴状でも出していただけば、今後の捜査の上にも非常に役立つて検察庁が中心になつて第一組合に対する事件の捜査に当らせることができるかと存じますので、その点御協力をお願いしたいと思います。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 小倉検察庁の次席検事に会つてこの話をいたしましたけれども、今お話になるように、いまだ告訴が出ていないということで、形式的な理論のもとにこれが全然取上げられていないことは、非常に私は遺憾に思うのであります。  さらにきわめて重大なことは、同じよう事件が佐賀県の岩屋炭鉱に行われておる場合には、その事件によつて会社、組合事務所を襲つて捜査をしている。こういうことについて、今度の場合は何らそれがされていない、こういう点を指摘いたしたいと思います。それは、今吉村参考人から話がありましたが、暴力団が一軒々々組合員のところをまわつて、そうして第二組合の連中が第一組合員を外に呼び出して、有無を言わさずそれを五、六人で囲んで連れて行つて、ある箇所まで行つて、そうして会社の船に乗せて工場内に入れておる、こういうことが再三言われておるのであります。これと同じようなことが岩屋炭鉱にある。第一組合の連中が第二組合の連中を第一組合に入れるために――これは暴力団ではなく、組合員同士でありますが、たまたまその中に入つて呼び出して、そうして判を押さしたということで、組合事務所にその脱退届の印刷したものがあるかないかという一つのことで捜査がなされ、そうして未明に五十名からの武装警察官が行つて組合事務所を急襲しておる。そういうことから考えれば、この事実は組合員がお互いにやつたのではなくて、暴力団がやつておるのである。これが全然不問に付され、岩屋炭鉱の場合は、五、六十名からなる武装警察官が、そのビラとか書類を押収するだけで事務所が捜査されておる。こういうことは、私は、今後の組合弾圧のきざしがここにあると思うわけです。非常に遺憾に考えますが、一体どうしてこれほど非常に差異があるのか、お尋ねいたしたい。
  62. 桃澤全司

    桃澤説明員 岩屋炭鉱の問題は、ただいま初めて伺つた問題でありますが、私ども検察に職を奉ずる者は、その点十分厳戒して、決して不公正にならないように、労働争議に介入することの結果を生じないように、厳に戒めておる次第であります。ただ、捜査に着手いたします場合に、やはり証拠関係と申しますか、そういう事犯があつたということを知る面において、あるいは検察庁が知らない場合も相当あるかと存ずるのであります。将来組合の方におかれても、検察庁に対して十分意のあるところをお伝え願つて、われわれとしては間違いない検察を遂行したいと考えておる次第であります。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それではお尋ねいたしますが、第二組合の連中が第一組合の連中を呼び出して、そうして暴力団が家の外におつて、手をひつぱつてスクラムを組んである個所に連れて行つて、舟に乗せて工場に入れた、こういうような場合には、当然犯罪が構成すると思うのですが、抽象論でよろしゆうございますから、検察庁としての御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  64. 桃澤全司

    桃澤説明員 その場合暴力をもつて連行するということになれば、何らかの犯罪が成立すると思います。ただその連れて行つた者の真意をよく究明する必要があろうかとも存ずる次第であります。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それから正門を突破してデモが入つた場合は、わずか十分ぐらいだつたという話であります。すぐ引返して来た。この事実によつて調査が進められておるようでありますが、一体その後会社は仮処分の申請をしておるわけです。仮処分の対象になる人が入る場合に、不法侵入の犯罪が構成するかどうか、私はきわゆて疑問に思うのであります。不法侵入が構成するということになりますれば、何も仮処分の対象にはならない。対象になるということは、入つてもいいということを条件にしておる。であるから、当然入つてはいけないという場合には、仮処分をして入らさないようにする、こういう処置であろうと思うわけです。この場合仮処分の対象になる工場の組合員が、デモで工場の中に入つた場合、はたして不法侵入になるかどうか、お尋ねいたします
  66. 桃澤全司

    桃澤説明員 仮処分の内容を実は承知いたしませんが、仮処分の有無にかかわらず、住居侵入の成立し得る場合もあろうかと存じます。特に仮処分によつてつてはならないという処分がなされたといたしますと、住居侵入の成立を認むべき場合が多くなるかと存じます。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 質問と答えが違うのですが、仮処分がなされてから入つたのじやなくて、実は正門を突破して従業員のデモが入つたので、会社は、これでは困ると言つて立入り禁止の仮処分をしたわけであります。そこで私がお尋ねいたしますのは、立入り禁止の仮処分をするということは、本来入つてもいいのだけれども、今罷業をやつておるから、工場に入る必要がないからといつて仮処分の申請をするわけであります。その人間が前の日にデモで正門に入つたということで不法侵入になるというならば、何も仮処分の必要はない。仮処分の対象になるということは、入つてもいい人間だ、こういうことになると思うのですが、一体どういう見解ですか。
  68. 桃澤全司

    桃澤説明員 正確には仮処分と住居侵入とは、法的には関係がないと存じます。ですから、仮処分がなくても住居侵入の成立する場合もありますし、また仮処分のあつた場合は別ですが、仮処分の有無にかかわらず、最初に申し上げましたように住居侵入の成立する場合もある。まあ抽象的にはこの程度のお答えになるかと存じます。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さらにお尋ねいたしたいと思うのですが、組合がこういう事件を起して、警察なり検察庁が取調べをなさる場合に通知があり、本人に通知があれば、組合は黒板に書いて、そしてだれだれがきよう行くことになつておるということで、必ず出頭させるようにしおる。これはいろいろな組合がいろいろな事件を起しておるが、みな出頭して、証拠隠滅をしたり、あるいは逃げ隠れしたという例は、全国にわれわれほとんど聞かない。正常な組合で、民主的な組合であれば、ほとんど聞かない。ところが、今度の岩屋炭鉱の場合でもそうでありますが、長い間勾留しておる。こういうことがことに争議中に行われる場合は、組合員に与える影響も多いし、また会社側に有利に展開するような錯覚を与えておることも事実である。検察当局では、こういう事件を取扱われる場合に、一体どういう態度で臨まれるのか、お尋ねいたしたい。
  70. 桃澤全司

    桃澤説明員 検挙者が非常にふえた点は、先ほど申し上げた通りでありますが、本件争議の解決するまでに検挙いたしましたものは、先ほど申し上げました十月十七日の夜のデモに伴う不法越規の暴力事犯のみでありまして、解決後相当多数の者が検挙されたのであります。これは一つには、なるべく争議には介入しないようにという気持が働いた結果と存ずるのであります。なお多数の検挙数に上つており、そのためにある程度勾留日数もかかつたかと存じますが、これに対しては人不足ではありますが、小倉支部から五人の検事と四人の副検事を選任いたしまして、鋭意捜査を進めて、不備なものはどんどん釈放しておる、こういう関係になつているのであります。将来とも、私どもは十分戒心して、争議に不当に介入するのではなかろうかというような疑いを受けることのないようにいたしたいと存じておる次第であります。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 食糧庁にお尋ねするわけですが、その前に、続いて法務省にお尋ねしておきたいと思います。食管法違反の事件が起つておるわけですが、この問題についてどういうように捜査が進められておるか、お尋ねいたします。
  72. 桃澤全司

    桃澤説明員 この問題は、前回もお答え申した通り、現に小倉の支部において捜査中でございまして、それがどう固まりつつあるかということについては、まだ御報告を申し上げる段階に至つておりません。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どこですか。
  74. 桃澤全司

    桃澤説明員 小倉の検察庁です。
  75. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君、議事の進行に御協力願いたいと思うのですが、労働大臣はのつぴきならぬ用もありまするし、他の委員の諸君からの質問もありますので、桃澤公安課長、大口需給課長にちよつと待つてもらつて大臣に対する質問を先にやつていただきたいと思います。  それでは黒澤幸一君。
  76. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 公労法の改正につきまして、労働大臣にお尋ねしたいと思いますが、十一月六日の読売新聞に、公労法が改正されるという非常に具体的な相当詳細な報道がされておるのであります。ことに現在本委員会において問題になつておりまする裁定、この仲裁裁定の問題につきましても、仲裁委員会の自主性、独立性をなくして、政府の御用機関とするような仲裁委員の任命の方法が考えられておるというようなことが報道されておるのであります。このことが社会において、ことに公共企業体関係の労働者の諸君には、非常な刺激を与えておるように聞いております。かようなことが実現いたしますならば、公共企業体の労働者の諸君は、公労法の制定によりまして憲法に保障されております争議権を剥奪されまして、その代償といたしまして仲裁制度が設けられておるのでありますが、この唯一の仲裁制度さえも、自主性、独立性のないよう政府の御用機関化するということになりますれば、公共企業体関係の労働者はどうすればよいのであるか。みずからの生活を守るために、その憲法に保障されておる権利さえも剥奪されてしまう。また合法的な問題解決の仲裁制度も曲げられてしまうということになりますと、公共企業体の労働者の諸君が、いかに自分の身を守り、生活を守つて行くかということに対して、非常な不安を抱くことになるのではないかと思うのであります。読売新聞の記事は、私は単に新聞記者の六感だけで書いた記事とは思われないのであります。あまり具体的に詳細に報道せられておるのでありまして、こうした考え方が今日の労働省にあるのではないか。本件につきまして、参議院におきまして十一月七日でありましたか、永岡光治議員の質問に対しまして、安井政務次官が答えられておるのでありますが、その答えによりますと、公労法の改正を検討しておる、しかし、まだ具体的に発表する時期にはなつていないということをお答えになつておるよう承知しておるのであります。また一面労働大臣は、十一月七日の仲裁裁定の連合審査の場合には、現在公労法の改正をするとかしないとかいうべきではないということを、館俊三議員の質問に対して答えておるように聞いております。また昨日の本委員会におきましても、井堀委員質問に対しまして、労働大臣公労法を改正するかしないかを考えるべき時期ではない、ただ関係当局としては研究をしておるというようなお答えがあつたと思うのでありますが、参議院における安井政務次官のお答えによりますると、公労法を改正するということが、このお答えから私はとり得るのであります。公労法改正の検討はしておるのです、しかしまだ具体的に発表する段階には行つていないという意味のことがお答えされておるのであります。労働大臣公労法を改正する時期ではないというお答えをしておるのでありまして、この労働大臣と安井政務次官のお答えには、私は食い違いがあるのではないか、この点を明確にお答え願いたいと思います。
  77. 安井謙

    ○安井説明員 お答え申し上げます。私せんだつて参議院の予算委員会でお答えいたしましたのは、労働省はその職責といたしまして労働関係法規の運用適用については、常々研究を続けておると、こう申し上げたのであります。従つて広い意味にはむろん公労法も入ることは事実でありますが、特に公労法に関しまして、何ら具体的にこうかえようといつた成案は、全然今のところ労働省としては持つておりません、こういう御返事を申し上げた次第であります。この点は、もし何でありましたら速記を見ていただきますれば、はつきりいたすかと存じます。
  78. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいま政務次官からお答えがありました通りでございまして、労働省といたしましては、その所管する法規全般にわたりまして、常に研究検討しておるわけであります。ただ昨日もこの問題につきましてはお答え申し上げました通り、私どもこの公労法につきましても始終研究もし、種々の方面からの御意見等も拝聴いたしておりますけれども、現在仲裁裁定が議に上つておる際でもありますので、この際に公労法をどうするというようなことは、いやしくも口にすべきものではないと、こういうふうに考えております。その通り御了承いただきたいと思います。
  79. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 ただいま政務次官のお答えによりますと、労働関係については検討はしている、研究はしているということでありましたが、参議院における政務次官の御答弁は、公労法の改正について検討している、しかしまだ具体的に発表するまでには行つていない、そういうふうご私は聞いているのですが、それは今政務次官は速記録を調べてもらいたいということでありますから、私も速記録を調べまして、なおはつきり確かめたいと思うのであります。いずれにいたしましても、こういう時期に公労法の改正、特に仲裁制度に対して改正の意思があるがごとくに新聞紙上に伝えられることは、私は偶然ではないのではないかと考えるのであります。これは新聞の間違いである、あるいは記者の方的な考えであるといつて済まされない、私は非常な影響性を持つておるものではないかと考えるのであります。  それで、ただいま労働省におきましては、公労法改正の意思があるかどうか。そういう態勢のもとに検討、研究されているのであるかどうか。ことにこの仲裁制度に対してどういうふうにお考えになつているか、労働大臣からなお重ねてお聞きしたいと思のであります。
  80. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいま申し上げましたように、公労法のみならず諸般の法律制度その他について研究はいたしておりますが、改正するとかしないとかというふうな、そうした具体的なことは何も考えとしてまとめて持つておりません。ただ仲裁委員会の中立性というものを侵す意思があるかどうかということに対しましては、私ははつきりお答えができると思います。すなわち労使間に立ちましてその主張を仲裁するというものでありまする以上、やはりそこに中立性というものは堅持されなければならぬものである、そういうふうに思うのであります。
  81. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 御承知ように十六国会におきまして、われわれは議員提出として公労法の一部改正法律案を提出いたしまして、過ぐる第十七国会、なお今日におきましても継続審議となつておるのであります。われわれは現在の公労法が公共企業体労働関係の労働者に対して、憲法で保障せられておりまする争議権を剥奪をしておる。これに対してわれわれは強い改正の意思を持つておるのでありますが、そういう議員立法が現在継続審議になつておるときに、しかも面本委員会におきまして裁定の問題が毎日審議せられておるときに、一方においてそういうことが伝えられて来ておる。これは一面率直にわれわれの立場から申し上げますならば、現在の議員提出として公労法改正が継続審議せられておる。それに対してそういうことが流布される。それがもし政府の意思であるとしますれば、それはわれわれ議員立法の提案に対する挑戦的な私は回答のようにも考えられるのであります。あるいは裁定審議中にかようなことが流布されるということは、これに対する一つの牽制的な意味が含まれておるのじやないか。含まれていないにしたしましても、そういうことにこれは想像せられるということも、私は考えられるのではないかと思うのであります。そういう議員立法の審議中、あるいは裁定審議が続けられておる重大なる今日におきましては、政府におきましてかような刺激を与えるようなことは、私は慎んでもらいたい。ことに、私は今申し上げましたように、この読売新聞に報道されておりまする具体的な詳細な記事というものは、労働省関係かどこからかそれが漏れたのではないか。そういう意思表示があつたのではないか。そういうことに対しまして、なお労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  82. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私もあなたのお考えようなことを、実は昨日申しておるのでして、また先ほども申しましたが、少くとも仲裁裁定が出ておつて、これが議に上つておる際に、その大体であるところの法律がいいとか悪いとかいうことは、これはいやしくも口にすべきものではない、こういう考えを持つておるのであります。新聞記事にどうあつたかといつても、これは私も新聞に対してはその記事の内容その他に責任を持つわけには参りませんので、その点は御了承願いたいと思います。
  83. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私はその新聞記事に対して、労働大臣責任があるかどうか、それをお聞きしているのではないのでありまして、繰返すようでありますが、あの記事はお読みになればわかるのでありますが、私は新聞記者の六感的な想像的な記事にはとれないのであります。あまりにもそれが具体的であり詳細である。政府の意図がそれに含まれているように私はとるのであります。そのことは、将来において、それがそういう意向があるかないかということは、政府の今後の出方によつて証明されることでありまして、これ以上申し上げようとは思わないのでありますが、いずれにいたしましても、そういう今日の重大な時期にかような記事が新聞に載つたということ、そこには何か労働省とのどういう形かの因果関係があるのではないか。それが事実であるかどうかということを私は知るわけには行きませんけれども、今後そういう非常に刺激的なことは、できる限り慎んでいただきたいということを御参考までに申し上げます。
  84. 赤松勇

    赤松委員長 労働大臣、黒澤君が心配していることは、今労働大臣は中立性を確保して行きたいというお話なんでしよう。現行の仲裁制度というものは、中立性が守られているとわれわれは考えている。従つて現行の仲裁制度をそのまま維持して行くお考えであるかどうか、こういう点だろうと思うのですが、どうですか。
  85. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは今申し上げたように、労使の間の紛争の仲裁なんですから、そのいずれにも色のついたものでは仲裁機関の意味はない、こういうよう考えております。
  86. 赤松勇

    赤松委員長 そのことについては、別に今かえるとかなんとかいう意思はありませんか。
  87. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 意思もないし、いやしくもそのことは問題にすべきものでないと私は思うのです。これは仲裁裁定というものが別に出ているのですから、出た大本の法律がいいとか悪いとかいうことを言つてしまつたのでは、問題の解決がいつまでたつてもできないというふうに思つております。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 関連して。今の公労法の改正についてですが、ことに仲裁の問題について、今仲裁が云々されているときにそういうものを出すということは考えていない、こういうことですが、政府考えで行きますと、通常国会にまたこれが当然審議される、そうすると通常国会では改正問題はまず出ないとわれわれは了解してよろしいでしようか。
  89. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 通常国会は五月まで続くわけでありますが、私はそういつまでも仲裁の結末はひつぱるわけには行かぬと思つて、できるだけ早期に、国民の良識によつて納得せられ、組合側もある程度満足の願える、国家全般から見たところの解決案が出されなければならないというふうに考えております。それから先の問題としましては、現に公労法の改正は、社会党の御提示のものを御審議つておる際でございます。それ関していろいろな意見が出るということは、これは私どもの方から出さないとは申し上げにくい、御質問があればこれに対する意見が出るかもしれません。その先の問題は別の問題として、切り離してお考え願いたい。
  90. 赤松勇

    赤松委員長 中原健次君。
  91. 中原健次

    ○中原委員 大臣がお見えですから一点だけお尋ねします。例の夏方いろいろごあつせんになりました日米労務基本契約、もちろんこれは労働大臣一人の責任というふうに考えておるわけではありませんが、この基本契約の主文の調印ができてから、まだ今日までこの効力が発生しておらない。この効力が発生しておらぬということは、どういういきさつでそうなつておりますか、一応承つておきたい。
  92. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 主文の調印をいたしますと同時に、効力を実は発生しておるのでございます。ただ御承知ように、アネツクス――附属書が非常に浩瀚なものでございまして、これにつきまして種々意見の交換をしておるのでありますが、これがなかなか手間取つております。そこで全部一括してということになりますと、これはなかなか先になりますので、話のついたものだけ部分発効しようということで、部分的にこの効力を発効させておるのでございます。現にきようも労務部長、外務省の関協力次長が、まだ帰つて来ないのでありますが、先方に行つて、アネツクス・スリーについて話合いをしております。主要な点は、解雇の場合日米共同管理の原則を貫く、話し合つてつて行くという点が主要なものでございます。そういう原則については、これはもうその通りに話合いをしております。  なお補足しておきますが、私どもは市ケ谷の司令部と話合いをしておるわけでありますが、御承知ように陸海空の三軍がおるわけでありまして、予算関係は実は三軍が持つておる。一々三軍と司令部との間の意見の調整をはかつて行く、さらにそれがワシントンに照会されまして、ワシントンの意向を確かめてきめるというよう関係で、非常に手続が複雑でございますために一層問題を困難にしておりますけれども、今申し上げましたように、実際問題として困難な点は部分発効でやつて行くということに、話がついておるわけであります。
  93. 中原健次

    ○中原委員 そうなりますと、主文の各部分については、すでに効力を発生しておる、こういうふうに了承してよろしいですか。
  94. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 主文は確定しておるのですから、これは動かないものであります。アネツクスの話合いのついたものだけ、部分的についたことにその都度効力を発生して行く、こういうことでございます。
  95. 中原健次

    ○中原委員 たとえば労働者の身分の保障の問題ですが、その事項については、どういうことになつておりますか。
  96. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 こまかい話は調達庁長官が申し上げた方が、あるいは正確を期すると思いますけれども、身分の保障とおつしやいますと、解雇の場合については大体事前調整をやるということになつております。ただあの話合いでも、予算関係がございまして、軍の予算によつて雇用して行くものでありますから、最終的には予算を握つておる米軍が員数を確定する、こういうことに協約でなつておりますので、事前に調整をして、配置転換のできるものは配置転換をする、こういう話合いになつてその通りにやつておるわけであります。
  97. 中原健次

    ○中原委員 それでは、今日相当大量の解雇通告がすでになされておるわけであります。このことのなされる前に、日本の政府と事前調整の経過でもお持ちになられたか。
  98. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、数字を申し上げることがどういうことかよく存じません、大ざつぱな数字ですからいいかと思いますけれども、もしさしつかえがあれば、あとで記録を抹消していただくことがあるかもしれませんが、その点あらかじめ御了承願いたい。大体アメリカの予算が三割四分くらい減るという話でありまして、予算がそれだけ減るのだから、現在駐留軍労務者、LSOが十四万五千人おりますけれども、その三割として五万人からの削減に伴う人員整理があるというふうに、機械的には考えられるわけであります。そこで調達庁としても種々骨を折りまして、ただいまのところでは、海軍の方は予算が減つても日本人労務者よりは軍属等を減らすことによつて予算は非常に違うけれども、そういう方面でやつてくれということを、いろいろ話合いをいたしまして、海軍の方は減らさない。空軍の方は経済班が行つて調査しましたが、人員過剰なりという判定を得たのでありまして、これは少しはやむを得ない。そこで陸軍の方もなるべくやめてくれということを折衝いたしまして、大体五千人ということに話がつきました。五千人といいますと全体の三%程度で、三割以上の予算の削減の中から三%におちつき得たということは、相当事前調整が効果を上げ得たものであるというふうに私どもは考えております。なお先方の申しますのには、大体自然減耗が三%ぐらいあるのだ、だからその程度だからいいじやないか、こういうようなことを申しております。
  99. 中原健次

    ○中原委員 それでは、今回問題になつておる五千二百数十名の馘首通告の問題は、大体政府が了承しておいでになる、こういうふうなことでありますか。
  100. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その五千名程度のものは、政府としても、話合いもございまして、結局予算を握つているアメリカ軍側において最終的に人員の点は決定するということはいたし方がございません。組合の方にも御了解を願うよう考えておる次第でございます。ただ、やめる方法につきましては、これは時あたかも年末年始を控えまして、私どもとしましては年末手当を上げることにしたいと考えておりますし、またこの時期も、いわゆる年末年始を避けてもらうというふうに話合いをしております。
  101. 中原健次

    ○中原委員 ただいま五千名程度のものにつきましては、政府の方ですでに御了承になられて、要するに両政府間の事前調整をなされてそういう結果になつた、従つてその犠牲になる方たちの少くとも年末の手当等については、これを確保できるよう努力しておる、こういうふうな御答弁がございましたが、予告の時期を見ますと、大体十一月の初めごろに予告がされておることになつておりますから、そうすると十月の終りから十一月の初めでありますと、大体の慣習上から見ると、十二月中旬というものははずれて、その以前に馘首が確定する、こういうことになると思うのであります。これについては大体どういうふうな政府の御見解をお持ちになつておられますか。
  102. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知ように労管で十五日、解雇予告期間というものが三十日、四十五日ございますから、それを年末手当をもらえる時期ということにいたしますことは、実はなかなか苦心を要するところなのでございます。また年末手当は十五日という慣習でございます。十五日過ぎますと、いわゆる年末に入ります。ですから、その間の話合いというものは非常に微妙でありまして、私はこの委員会で申し上げるよりも、その点は私どもをして特に折衝させていただいた方がよろしいのではないかというふうに考えておるのでございます。
  103. 赤松勇

    赤松委員長 中原君、どうでございましようか。明日福島調達庁長官と伊関国際協力局長と呼ぶことになつております。きようはなおあと質問がありまして、仲裁裁定委員長も来ておられますから、その辺でどうですか。
  104. 中原健次

    ○中原委員 その問題に関しましては、その他の関係当局にも御質問してみたいと思いますし、要望もしてみたいと考えておりますから、明日にさせていただきまして、ただ一点だけお尋ねいたします。  労務契約の問題については、なるほどそういうようなわけで、相当部分効力を発生しておるというふうに理解しておりますが、さらに重要なことは、この附属文書のそれぞれの決定の時期であります。これは相当お急ぎになれる御決意だろうとは思いますが、やはりこれがだらだらと延びますと、今後さらに複雑な問題が伴つて来るかと気づかわれるのであります。その関係から、急がれて協定の成り立つようにお運びを願いたい。ついては、大体お見通しがおありだろうと思いますが、そのお見通しなどわかりますれば、承つておきたいと思います。
  105. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お話のごとく、これは主文もきまつておることでありますし、附属文書は技術的な問題が多いのでございますから、できるだけこれを早くとりきめたいと思つて努力はいたしております。ただ、ただいま申し上げましたような司令部並びに三軍並びにワシントンというよう関係もございますので、技術的な問題になればなるほど、非常に時間がかかりますので、せいぜい督促はいたしておりますけれども、その見込みの点は、私からちよつと申しにくいのであります。明日長官でも参りましたら、なおその方からお聞き取り願う方が正確かと思います。ただ、駐留軍労務者というものの性格上、米軍がいつまでもおるという問題ではございませんので、当然人員減少という問題が起るわけであります。そこで私どもの方としては、その間いかに円滑に持つて行くかということであります。ある人々によつては、一刻も早く帰れ、アメリカ軍に帰つてもらいたいということを言つておられますけれども、私どもの立場からすると、安全保障の建前から、なるたけその辺は円滑に持つて行きたいと考えております。そうした建前から、その間の摩擦を少く持つて行くよう努力したいと考えております。
  106. 赤松勇

    赤松委員長 この際労働大臣に伺います。これは駐留軍労務者及び特需労務者の人員整理に関連いたしまして、本委員会におきましても、案件としてかかつておるわけでありますが、本日は参考人も呼んでおるわけであります。委員会運営上お聞きしておきたいのは、去る十一月七日参議院労働委員会で決議をされ、政府に対して申入れをされました九点の事項がございますが、これにつきまして、政府の方ではどのようなお考えを持つておられるか、この際お伺いをしておきたいと思います。
  107. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題はただいま委員長お話ように、参議院において要望がありました。極力御趣旨に沿うよう努力はいたすようにいたしております。ただ第一項に、今後は絶対行わないようにということがございますが、アメリカ軍が帰れば、こういう仕事はまつたくなくなるわけでありますから、人員がだんだん減つて行くのに絶対行うなということも、なかなかむずかしいことと思いますが、その間できるだけのことはいたしたい、かよう考えておるわけであります。     ―――――――――――――
  108. 赤松勇

    赤松委員長 この際お諮りいたします。仲裁裁定の問題につきまして、今井仲裁委員長を参考人として、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なければさよう決定いたします。山花秀雄君。
  110. 山花秀雄

    ○山花委員 せんだつての本会議において、過去国鉄、専売十回の仲裁裁定に関して、完全に実施しておるのは三回しかない、あとの七回は一度も仲裁裁定通り実施したことはない、裁定通り何回完全実施されたか、政府の御答弁を願いたい、こういう私の質問に対して、緒方国務大臣は、そのうち五回は完全に実施しております、こういうように明確に答えられたのでございます。私といたしましては、やはり政治家の言動として、この問題は、本会議の論議になりました関係上、明らかにしておきたいと思うのであります。たびたび緒方国務大臣に、本委員会に出席要求いたしましたが、いまだにこちらには参りません。この五回実施ということに関しましては、労働大臣も、他の席上において緒方国務大臣と同じようなことを言つておられるということを聞いておるのでございます。そこで私は労働大臣に、この問題について、自信をもつて、完全に五回仲裁裁定委員会裁定通り実施したと言い切れるかどうかという点を、この際明らかにしていただきたいと思います。
  111. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 緒方国務大臣をまつまでもなく、私も国務大臣立場でお答え申し上げます。十回裁定がありましたわけでございますが、一回は退職金の団体交渉の問題でございまして、金額に触れておりません。他の九回のうち第二号でございますが、昭和二十四年十二月二十八日――これは専売職員の賃金改訂及び越年資金の支給でございますが、これは一億二千八百万円実施いたしております。それから第四号でございますが、昭和二十五年十二月二十七日、国鉄職員昭和二十五年度石炭手当の増額に関する問題、これは四千四百五十万円でございます。さらに第五号、昭和二十六年三月二日、これも専売職員の二十六年度賃金改訂に関するものでございまして、金額は一億二千七百五十万円であります。さらに第六号、昭和二十六年十二月十二日専売職員昭和二十六年度七月以降賃金改訂、金額は十億七千万円、第七号、昭和二十七年五月二日国鉄職員の夜勤手当の増額、金額は二億五千万円でございまして、この五件を完全に実施しております。
  112. 山花秀雄

    ○山花委員 私の調査したところによりますと、完全実施されたのは、第四回の石炭手当――国鉄、第七回の夜勤手当――国鉄、第十回の退職手当――国鉄、この三回が一応仲裁裁定通り実施されたとなつておるのであります。ただいま労働大臣から回答されました昭和二十四年十二月二十八日第二回専売裁定、これは国会審議の途中承認という形になつておりますが、生産報償金制度につきましては、仲裁委員会裁定通りには解決されていないのであります。それから昭和二十六年十二月十二日第六回専売裁定、ただいま労働大臣はこれを承認したと言われますが、完全実施に関しては四億円の金額の不足を来しておるのであります。それから二十六年三月二日、これも実施されたと言われておりますが、これはやはり懸案の生産報償金制度というものは未解決のままになつておるのであります。この点もう少し明らかにされたいと思うのであります。
  113. 中西實

    ○中西説明員 第二号の問題につきまして、報償制度を設けるということについて実行されておらないという話でございますが、これは将来適当な措置を考慮すること、こうありまして、仲裁裁定では額を示されておるわけでもなし、あとあとの話合いの問題になつておるのであります。従つてわれわれは、仲裁裁定によりまして金額が明らかに示されて、そうしてそれを実行したものにつきましては、一応完全に実行したというふうに考えておるのであります。従つて第二号は、今言いましたように、その後話合いがされまして、具体的になりますればまたそれを実行する、金額につきまして論争がありますれば、さらにそれが仲裁の対象になる、こういう問題かと思うのであります。それから五号でございますが、五号は給与総額の中で諸手当の流用によつて、やはり裁定に現われました金額は完全に実施いたしておるのでございます。若干そのためにほかの手当に減額があつたかも存じませんが、とにかく仲裁といたしましては、完全に実行しておるというふうに考えております。六号も同じく補正予算によりまして、流用によつて完全に金額は実行しておるという完全実施の方に勘定いたしております。
  114. 山花秀雄

    ○山花委員 第六号の専売の件につきましては、完全実施するのには、大体四億円ほど私の調査によりますと金額が不足しておるというふうになつておるのでございますが、この点はいかがでございましようか。
  115. 中西實

    ○中西説明員 補正予算が実施されましても、おつしやるように四億の不足があつた、従つてこれが一応国会予算資金上不可能ということで提出されました。その後年末手当、超勤手当を基本給に繰入れますことによりまして、完全に実施をいたしました。従つて予算上可能になつたということで、国会議決を経ずして自然消滅で終つております。
  116. 山花秀雄

    ○山花委員 これ以上の論議は水かけ論になりますから、私はやめます。  続いて齋藤事務次官にお尋ねしたいと思うのでございますが、斎藤事務次官はせんだつて工業クラブにおける自由人クラブ主催の最近の労働問題という講演会に、講師として呼ばれまして、そこでいろいろ最近の労働事情について講演をなすつておられますが、その講演内容につきまして、若干質問をしたいと思うのであります。いろいろ講演の中で、特に国内労働関係におきまして、最近賃上げ闘争、首切り反対闘争は、年末を控えて当然越年資金獲得闘争に移行し、来春に持ち越されるであろうという前提のもとに、今ここで問題になつております仲裁裁定もしくは国家公務員の給与に言及されておるのであります。昨年十一月から賃上げ率は、公務員は平均六%、民間の平均は七%、五百人以上の民間企業は公務員を十二月%上まわる、百人以下の民間企業は公務員を一〇%下まわる、百人以上四百人までのところは公務員を一〇%上まわる。百人以下ということになりますと、これはきわめて零細企業であります。従つて常識的には百人以上ということになりますと、平均して公務員をさらに上まわること一%という数字を明らかにして、講演をなさつておられるのであります。この賃金ベースの上昇率について、齋藤事務次官はこの講演の内容責任を持たれるやいなやということを、まず第一にお尋ねしたいのであります。
  117. 齋藤邦吉

    ○齋藤説明員 実はそのとき速記もありませんでしたし、どういう点をどう述べたか、今はつきり一言一句申し上げることは、私ども記憶ございませんが、最近における賃金の上昇の状況については、大体申し上げたつもりでおります。あるいは今お述べになりました数字の通りに言つたかどうかはつきり聞き取れない点もありますが、昨年の十一月から最近までに公務員は六%程度まで上つて来ておる。定期昇給その他の関係でございますが、そういうことで上つておる。それから労働者の方も、五百人以上のいわゆる労働者も大体七%か、あるいは八%程度つておるというふうなことは申し上げたつもりでございます。しかしただいまお述べになりました数字かどうか、そのときの刷りものも実はないのでありまして、はつきりわかりませんが、昨年の十一月から比べてみますれば、昨年の十一月ごろからは、それぞれ六%なり七%なりは上つておるということを私申し上げたいと思います。
  118. 山花秀雄

    ○山花委員 この会議は有力なる経営者の代表あるいは若干の労組の代表者、それから言論機関の代表者もお集まりの会場でございますから、言いかえれば有識者の会合でございます。その会合で御講演をするのでありますから、相当統計資料を調査の上で講演をなすつておられると思うのであります。民間の平均七%というのは、先ほど申し上げましたように百人以下の零細企業も含めてでございまして、百人以上ということになりますと一一%ぐらい賃金が上昇したという講演をなすつておられるのでございます。  そこで、その次の講演内容になりますと、公務員のベース・アツプは各所で論議されておるが、これは定員法の改正を待つて初めて即座に行われるのである、それまでは財政的に不可能である、こういう内容の演説をなすつておるのでございます。そこでお尋ねしたいことは、公務員のベース・アツプに関しては、これは国家公務員法による人事院の勧告を基礎にこれが論議されておるのでございます。定員法の改正を待たなければこれが実施できないという講演内容について、どういう考えで、ただいまのような講演をなすつたかという点、また公務員のベース・アツプについては、定員法を改正しなければ上昇が可能でないかというようなことについての事務次官の見解をこの際お述べ願いたいと思うのであります。
  119. 齋藤邦吉

    ○齋藤説明員 ただいまのお尋ねでございますが、定員法の改正をしなければベース・アツプはできないと言うたではないか、こういう趣旨並びにそれについての事務次官の考えはどうか、こういうお尋ねと了承いたしますが、私はその講演のときには、定員法の改正をしなければベース・アツプは不可能であるということを申し上げたことは全然ございません。その点はつきり申し上げておきたいと思います。すなわち、ざつくばらんに、今よその講演のことでございますから――この秋の労働問題でどういう問題が大きい問題であろうかというお尋ねであつたのでございます。それを中心として何かお話をしろということでございましたので、今年の下半期の大きな問題は、いわゆる仲裁裁定をどう取扱うかということが非常に大きな問題だということを申し上げ、それをどういうふうにさばいて行くかということが非常に大きな問題でありまして、その問題を取扱うについて、いろいろ考えなければならぬ問題としては、たとえば仲裁制度というものをどういうふうに尊重するかといつたようないわゆる労使慣行の確立という問題もありましようし、あるいは一般公務員のベース・アツプに関するいわゆる人事院の勧告という問題をどういうふうに調整して取扱つて行くかというふうな問題もありましよう、というようなことで、これを取扱うについてのそういつたふうな問題点を一、二申し上げただけでございまして、こうしたがいい、ああしたがいいということは、この講演で全然言つておりません。言うべき筋合いでもございませんし、言うてもおりません。ただその際に私が申し上げておりますのは、そういうことを申し上げたのでありまして、定員法云々、これは全然筋違いでございまして、これは言うた記憶もありませんし、どういうふうなことで山花委員が仰せになるかわかりませんけれども、私といたしましては、さようなことを申し上げた記憶もありませんし、なお定員法の問題とこの問題とは関係がない問題だと考えております。
  120. 山花秀雄

    ○山花委員 自由人クラブの講演には、私も二、三年前にはちよいちよい出かけておりました。いつも相当熟練した速記をつけて、これを速記録として会員に配つているのでございます。自由人クラブの新聞紙にも――ここにもございますように、明白に当夜の写真も掲載されて、齋藤氏の講演の内容印刷になつておるのでございます。まあ言つた、言わないということは、これは水かけ論でございますが、一応相当熟達した速記者をつけていつも講演をやつておるのが慣例になつておるということを、私は申し上げておきたいと思います。  さらに話を続けまして、たとえば、公務員ベースを一割アツプすると、民間の労組を扇動することになりますので、政府としてはそのような先鞭をつけることは当然避けるべきである、こういう講演をなさつていらつしやるのでございます。これは私は齋藤事務次官の御答弁を聞きたいし、こういう講演内容は、労働省全般の意向であるかどうかということに関して、小坂労働大臣の御意見もこの際お聞きしたいと思うのであります。
  121. 齋藤邦吉

    ○齋藤説明員 その際速記をつけておつたであろうという仰せでございますが、このときは間違いなく速記はありませんでした。私も念のために後に承つております。速記はつけてないと私は了承いたしております。それから民間の賃金を刺激、扇動するなどという、私はそういう言葉を使つたことは一切ございません。私ははつきり申し上げるのでありますが、扇動などということは、私は考えておりません。ただ公務員の問題というものは、民間の賃金というものとは、やはり相当な関連を持つて動いて行くものであるということも、頭に入れなくてはならぬだろうということを申し上げたのであります。私ども事務屋といたしましては、こうあるべきものである、こうなければならぬということを言える筋でもございませんし、さようなことは申しておりません。
  122. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 自由人クラブの講演につきましては、実は私に責任があるので、当初私に依頼されておつたのでありますが、何かの急用で、突然次官に代理に行つてくれと頼みまして、非非に齋藤次官に迷惑をかけました。従つて速記の点も、本物が行かなかつたのですから、おそらくつけなかつただろうと思います。  なおそうあるべきだというような積極的な話があつたのではないかということでありますが、平素非常に齋藤次官と懇親に願つておりまして、同君の性格からいたしましても、きわめて事務的な、範囲を逸脱しない、線をはつきり守つた人でありますから、そういうことはないと信じます。
  123. 赤松勇

    赤松委員長 山花委員に申し上げますが、特調の長官も来ておられまして、仲裁委員長に対する質問も通告がありますので……。
  124. 山花秀雄

    ○山花委員 もう一問だけです。  さらに話が続きますが、最近の民労連の動きを見ると、日本の労働組織は、大変革の時期に達していることは明らかであつて、それと同時に、労働行政また再編成のときである。かかる見地から、政府は今回労働審議会を設置し、広く識者の意見を求めて、労働問題全般に関して専門的に云々ということを言われているのでございます。民労連の最近の動きを見ると、日本の労働組織が大変革の時期に達している、これはどういうことを意味しておるものであるか。私ども労働委員会といたしましては、労働組織全般の動きを明確に察知して、いろいろ労働問題を検討して行きたいと思うのであります。特に一般の労働組合組織と密接な関係を持つておられる労働行政として、今度は再編成をする、そういう意味で労働審議会を設置したというような意味の内容が持たれているのであります。労働審議会につきましては、これは小坂労政の眼目であるともいわれておあのでございますが、この点に関しましても、一応齋藤事務次官並びに小坂労働大臣の所見をひとつ承りたいのであります。
  125. 齋藤邦吉

    ○齋藤説明員 その本物を実は私見ておりませんが、この会合でこういう話はありました。私の記憶にして誤りなかりせば、近ごろ民労連の動きがあるが、これをどう思うかという質問がたしかあつたと思います。それで私は、組合の組織の問題については、役所としては批判する限りでないということをはつきり申し上げて、これについての批判はいたしませんけれども、こういう動きがあるということは、これは注目して見守つて行くべきことであるというようなことはお答え申し上げたつもりであります。私はいつも組合の組織の問題については、批判はいたすべきものではないと思つております。さようにひとつ御承諾を願つておきたいと思います。  それから労働問題協議会等で、労働行政の再検討になるかということでありますが、これについては、そんなつもりではございません。後ほど大臣からもお話がありますように、先般の閣議決定の労働問題協議会は、いわゆる国民経済の現状に即して労働問題をお互いに話し合う場をということになつておるものと私は了承いたしております。  私がこう言つたじやないかと一言一句言われましても、そのときは速記もなかつたことでありますし、またはつきり原稿で私言つたわすでもありませんので、あるいは今お読みになりましたその記事には、多少さつき申し上げました扇動とかいつたような、ちよつと過ぎた言葉もあるのではないか、かように私は存じております。私の真意は今申し上げた通りであります。
  126. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 役所としまして、組合に対して、その内部事情あるいはその活動等についての批判は、一切いたさないように、これは厳に戒めております。そうあるべきものであると存じます。  なお、労働問題協議会につきましても、今次官からお答えがあつた通りでありまして、大体労働問題審議会とか、労働審議会というようなことを記事に書いてあつたとすれば名前からして違うのでありまして、労働問題協議会であります。従つてその内容も相当早のみ込みといいますか、一つの事実にあまり正確でない感じをもつて書かれたような印象も受けるのでございますが、どうぞその点は今次官から御答弁申し上げた通り、御了承を願いたいと思います。
  127. 山花秀雄

    ○山花委員 私も、いやしくも齋藤事務次官が、こんなばかな講演をするとは考えておりませんが、とにかくりつぱに活字になつて広く世間に配布されておりましたから、ちよつと心配になりましてお尋ねしたのであります。そういたしますと、この自由人クラブ発行の印刷物は、齋藤事務次官のお話と全然違う内容が記載されておる、こういうふうに理解してよろしゆうございますか。この一点だけお尋ねしておけばたくさんでございます。
  128. 齋藤邦吉

    ○齋藤説明員 実はその印刷物を私まだ読んでおりませんので、一言一句どこがどうのということは申せませんが、先ほど来お尋ねのような点については、私の真意と違つておる点が大分述べられておる、こういうふうに私は存じております。
  129. 赤松勇

    赤松委員長 高橋禎一君。
  130. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今井仲裁委員長にお尋ねいたします。公労法の生命と申しますか眼目は、職員の争議行為の禁止、いま一つは企業主体とその職員との間に生じた給与その他労働条件に関する争いの解決方法に関する規定、すなわち団体交渉あるいは調停、仲裁に関する規定であり、しかも仲裁制度というのが、この両者の争いの最終的な決定に関する規定でありますから、いわば争議行為の禁止と仲裁裁定をどう取扱うかということに関する規定というのが、公労法の生命であるよう考えておるわけであります。そこで仲裁委員長は、その仲裁の衝に当られる最高責任者でありまして、公労法解釈運用につき、わけても仲裁裁定の取扱いについて深い関心を持ち、熱意を持つて、これが生きて行くということを望んでおられる方であるに相違ないと考えるのでありまして、こういうふうな意味において、公労法解釈なり運用なりについては、深く御研究になり、また高い御見識をお持ちである、こういうふうに信頼をいたしまして、お尋ねを申し上げる次第でございます。  そこで第一にお尋ねいたしたいと思いますことは、この公労法の第十六条第二項の規定によりますと「前項の協定をしたときは、政府は、その締結後十日以内に、事由を附しこれを国会に付議し」。云々と規定しておりますが、その「事由を附し」ということであります。このたび政府国会議決を求められておるこの八仲裁裁定についてのこの事由を、その書面により拝見し、また関係者説明を伺いますと、要するに、この裁定によるとこれこれの追加の経費が必要である、ところが二十八年度の予算の上から見るとそれが含まれておらない、また予算総則第八条の金額を超過することが明らかである、だから国会に付議するのだ。すなわち、事由というのはそれだけのことで、裁定によればこれだけ金がいる、それは予算上不可能であるというのでありますが、公労法第十六条第二項の事由を附して国会に付議すべしというこの法律の精神は、政府がこのたび提出しておるこの事由、この程度のもので足りるのであるかいなか、この点をお伺いしたいのであります。  私の見解をもつていたしますと、こういう形式的な、もうこれは事由として掲げなくても、私どもには明らかなことなのであります。公労法がよもやこのような形式的なわかり切つたことを事由として掲げて、そうして国会に付議すべきものであるとしているというふうには、考えられないのであります。その点についての御意見を承りたいと思います。
  131. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと申し上げますが、先ほど理事会の御了解を得てあります通り、三時になりますと、大臣は宮中に行かなければならないので、その点御了承願います。
  132. 今井一男

    ○今井参考人 御承知通り公労法運用は――文字は運用だつたかどうか忘れましたが、そういつた意味の点は、労働大臣がこれを扱うという規定がございます。従いまして、私どもの公労法に対する解釈等につきましては、法律的にはほとんど何らの権威もないことに相なるのでありますが、しかし私どもといたしまして、とにかく自分たちの行つた裁定がどういうふうな経過をたどるかということに対して関心を払うのは、人情上から申しても当然なことであります。なおかつ、第一次裁定以来たびたび国会におきまして、私どもに法律上の解釈のことをお尋ねになつて来ておりますので、私どもそれに対しまして、忌憚のない私どもの意見を申し上げて参つたのでありますが、大体十六条の一項におきまして、予算資金上不可能な場合云々という規定そのものは、少くとも立法当初におきましては、予算のきめられたわくを越えたもの、すなわちたとえば国鉄で申せば二千億なら二千億、郵政で申せば千億なら千億というわくを越える支出については、これは国会のお許しがなければできない、こういつた趣旨で設けられたものに違いない、こういつをとをわれわれ仲間でも議論いたしましたし、仲裁委員会の――当時は三人の委員が出席しておりましたが、三人の委員ともに、そういうふうな御答弁を申し上げたと記憶しております。しかし、その後給与総額という規定が入りまして、この意味がかなりかわつたように感ずるのであります。すなわち予算総則給与総額で縛られております関係から、かりに全体のわくを越えませんでも、給与総額のわくを越えますと、国会の御承認のない限り予算的にどうにも身動きがつかない、そういつた意味におきまして、二十五年度から予算総則にも書いてございますが、今のよう解釈ではつじつまが合わなくなりまして、要するに、国会の御承認がなければ動かないような式のものは、予算上不可能という言葉に該当する、こういつた経過に相なりました。  その後、昨年の春から夏にかけましてのやかましかつた公労法の改正におきまして、いろいろ御議論がかわされました。結局承りますところによりますと、衆参両院の意見が一致しなくて、最終的に両院協議会で御相談の結果、ただいま御指摘になりました「事由を附し」さという文句がついておるのであります。私ども、実は公労法の改正につきましては、一言半句も意見を求められておりません。この「事由を附し」という意味がどういう意味かは、むしろ私どもの方からお伺いしたいくらいなのであります。それで、なぜ理由を付しという言葉を使わないで「事由を附し」というふうな言葉を使つているのかという点も、私どもとしてはよくわからないのでありますが、ただそういうままで感想だけを申し上げれば、給与総額のわく外であるから予算処理上できないということを書いただけでは、これは私ども読んでみましても、もの足らぬという感じは確かにいたします。いたしますが、「事由を附し」という法律の精神がどこにあるかとお尋ねをいただきましても、これはむしろ私どもとしては、衆参両院の当時の両院協議会の方々にお話を伺いたいと思います。これは私どもとしてちよつと解釈のしようがないと思うのであります。
  133. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 解釈ができない、こうおつしやるのでは、どうもお尋ねしても得るところはないと思いますから、次の質問をいたしたいと思います。  公労法の三十五条によりますと、「仲裁委員会裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」というのでありますから、公社の場合は公社が当事者である、政府企業の場合には、これは国が当事者であり、国ということを政府と言いかえてもいいと思いますが、国すなわち政府、これが当事者であると思うのであります。従つて仲裁裁定がありましたならば、企業体の側といたしましては、これは政府企業の場合は国が、すなわち政府がこれに服従をしなければならないことは明瞭であると考えます。ところが、ただ例外的に、第十六条に当る場合には政府拘束するものでない、国を拘束するものでない、こう規定してございますから、国はその仲裁裁定内容である給付をなす責任がただちに起るものでないということは明らかであります。しかしながら、これをそのままほうつておくべきでなくて、公労法の精神からいいますと、国会議決を求めて、国会がどういう議決をするか、それまでの間は手放しで何らの法律上の責任がないというものではないと私は考えますが、今井委員長はその点についていかようにお考えになるか。すなわち当事者である国、政府責任があるとお考えになるかいなか。責任があるとすれば、どういう責任があるか、この点についてお伺いいたします。
  134. 今井一男

    ○今井参考人 公労法が昨年からかわりました関係から、若干そこがかわりまして、五現業が入つて参りました関係から、非常に法律論の解釈上の影響を受ける部分があるような感じは持つものでありますが、しかし、少くとも立法の趣旨に沿つて考えますと、三十五条というものは仲裁の性質上、規定がなくてもあれは当然なくらい明々白々なところだろうと考えるのでありまして、仲裁というのは、要するに両当事者の契約のかわりでありまして従つて当然両当事者拘束されるということに相なります。従いまして、もしも賃金問題がきまつたならば、それに基いて適法の執行力を得て、その要求権が組合側に発生する、そういつた仕組みのもののように、すなわち特殊な例外を除く限りにおきまして、一切民間と同じよう考え方をするのが、法の順序だろうと私ども考えるのです。たとえば、具体的に申しますと、かりに予算がないのに、ある省で機械なら機械を買う約束をする、そうして事実機械を買つてしまつた。それで予算がないからお払いしません、こういつたことは、民間に対してはやれないはずであります。そういつたのと同じような意味に、もし他の規定がなかつたならば、解釈すべき性質のものが三十五条だろうと私ども考えます。しかし、それではこういつた場合に困りますので、それで特に国会予算上のお許しをいただかなければ効力を生じない。この効力を生じないという意味は、私どもは、従いましてそれを払うことを拒むという合理的な抗弁権を得る、こういつたよう解釈をする方が、より仲裁の本質には合うのじやないか、かように存じて参つたものでありますが、特に今お読みになりました政府拘束しないという文句は、公社だけが公労法の対象となつておる場合には、特にこれはぐあいよいよ調子を合せて読めたのでございますが、国営企業が入りましてから、政府というものが第三十五条にかかつて来る場合と、十六条にかかつて来る場合と二つの立場が出て参ります。しかし、交渉委員会あるいは交渉単位という観念からいたしますと、十六条の政府と三十五条の政府は、むしろ使いわけをして読む方が、私は順序ではなかろうかというふうに考えます。それは非常にデリケートなことになりますけれども、立法の沿革上から、そういう感じもいたすのであります。従いまして法律の趣旨からいたしますれば、債務的なものはむしろ事前に発生する。要するにただ予算上払うことは、これは予算が認められないと政府としては手を縛られるから、手を縛られた範囲内において、法律の特殊な規定があるから、その法律規定によりまして支払いを拒むことができる。民間の普通の民法上の契約の場合と同じように 労働法上のこういう賃金というものは、むしろそれに準じて考える方が順序であります。しかし、この場合は特に影響も大きいから、ああいつたような十六条の例外が入つて、十六条の国会承認という趣旨に解する方が、より立法精神に合うのではないか、そういう法律論の方が私どもは順序だと思うのでありますが、ただ条文が間違いではなかろうかと思うのでありますけれども、裁定そのもの、協定そのものを国会へ出すような仕組みに書かれておるのであります。そこに非常に矛盾した法律論が生れる余地を残しております。そこに問題点があるのでありますが、私どもは、立法の趣旨は三十五条に重点を置きまして、普通の民法上の、私法上のいろいろな契約をした場合と同じように、特殊な例外を設けた規定は法理論の原則からいたしまして、極力狭く解するという方が趣旨に合うのであろう。そういう、基本的な考え方、これは従来から仲裁委員なつた諸君は、いろいろ大物がなられましたけれども、そういつた方々の考えは、多少話の幅はございますけれども、方向は大体そういつたところに一致しております。
  135. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 大体考え方としては私の考え方と一致いたしておるわけであります。すなわち仲裁委員長は、三十五条の本文が原則である、これは何とかして守らなければならない、こういう立場に立つておる。ただ例外的に十六条の規定がある。しかも十六条の規定するところは、三十五条によつて生じたところのいわば私法上の債権債務の関係、しかも債務の履行に関する正当なる抗弁権とでもいう程度のものをここに認めているにすぎないという御見解。そこで私が最初にお尋ねいたしました事由を附してということは、いわゆる抗弁権ともいうべきものの説明がなされなければならない。ところが、政府の今度出しておる事由あるいは説明しておるところの事由によりますと、そういうことは申すまでもなく、明瞭なわかり切つた形式的のものであつて、実質には何ら触れておらない。すなわちいわゆる抗弁として価値なきものを述べておる、こういうふうな感じがいたすものですから、先ほど事由ということについてお尋ねをしたわけでありまして、事由ということに対する解釈も、ただいまお答えにありましたような趣旨で私は決定すべきものではないかと考えるわけでありますが、その点はいかがでございましようか。
  136. 今井一男

    ○今井参考人 事由を附しての解釈の方は、どうもごかんべんを願いたいと存じます。先ほど申し上げた通りであります。どうも私ども、なぜああいうところが昨年の改正の際に入つたのか、またあれを入れることによつてどれだけの実効があるかということは、率直に申して実は不可解なんです。
  137. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それではお尋ねいたしますが、仲裁裁定について国会議決を求めた場合、公労法の精神からいたしまして、国会はその裁定を全面的に承認するか、全面的に不承認を与えるか、あるいはそれ以外に仲裁裁定内容の一部を承認することが許されておるかどうか。これはこれまですでに出た問題であると思いますが、一応この点について御意見を伺つておきたいと思います。
  138. 今井一男

    ○今井参考人 先ほど申しましたように、私どもの解釈としますと、裁定そのものが国会へかかるという形式は、どうも理論的におかしいというふうにならざるを得ないのであります。せんだつて連合審査会でも申し上げましたように、裁定を再審する、そういう立場で国家へおかけするのではなかろうというのが、われわれの今まで、ほかの仲裁委員も一致した見解でございまして、結局におきまして、要するに予算というものが、最終的に国会のお許しがなければ承認もつかないという意味におきまして、予算問題として国会がこれをお取上げになる。こういつた特殊の事業について、事業の見通し、その他について、これだけの予算を追加することが、いろいろの立場から見て適当かどうか、こういつた意味合いにおいて御判定いただくのが順序であろうと、われわれは理解しておるものであります。そういう立場に立ちますと、裁定の一部承認とかなんとかいうことは、おかしいことになるわけですが、結局、結果的に予算全体として認めるものはこれだけであるという結果論から、抽象論になるという妙な形のものが出て参ることはやむを得ない。しかし、考え方は、あくまでその企業の経営その他からごらんになるところの予算的なお立場での御判断が順序ではなかろうかと、われわれは解しておるものであります。
  139. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、委員長のお考えでは、政府がほんとうに仲裁裁定を尊重し、これに関する問題を誠意を持つて解決しなければなりませんし、しようという態度に出るのであれば、予算の点について、これこれのものは支払いが可能であるというふうに、具体的な内容を示して国会に付議すべきものである、こういうようなお考えと承つてよいと思うのですが、いかがですか。
  140. 今井一男

    ○今井参考人 公労法の組立ての理論から申せば、お言葉の通りでなければ、むしろつじつまが合わない、こう申し上げられるのではないかと思うのですが、ただ、そうは申しながらも、具体的に十六条の二項には、協定そのもの、裁定そのものを国会に出すように、はつきり文字の上に現われておるのであります。そこで今おつしやつたような問題か出て参るのであります。これは第一次国鉄裁定以来、国会でもいろいろ御議論をいただいたところですが、法の建前から申せば、やはり今おつしやつたような形の方が望ましいのではないか。少くともそういうようにやるのが順序であるべきであると考えまするけれども、しかし現行法には、はつきりと裁定というものをそのまま国会に出すように書いてございますので、その意味におきまして、そういつたことをお出しになることそのものが、これが立法的法律的にいつて、誤りでないとは言えますけれども、そこに公労法のいつも問題になる原因があると思うのであります。
  141. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこで、この公労法解釈は、公労法の精神を生かすという意味において解釈し、運用されなければならぬこともちろんでありますから、今の十六条の仲裁裁定そのものを国会に出すということと、それから先ほど来委員長お話のございました予算内容そのものを示して出すのが本筋のようにも思えるという御意見の真意は、その間にあるのではないかというふうに考えられるわけでございます。すなわち仲裁裁定を出して、政府はそれを実施するについては、これこれの予算経費というものは支払いが可能であるということを、具体的に内容を示して国会に付議する。すなわち、それは全面的に承認を求める場合もあるし、あるいはまた不承認を求める場合もあるし、あるいはまた経費関係から、支出可能な範囲において一部ということになりますが、この程度のものま支払い可能であるからそれについて議決を求める。こういうふうに実のある実質的な事由を付して国会に付議すべきものではなかろうか、それが公労法の精神のよう考えられるわけであります。重ね重ね恐縮ですけれども、その点について御意見を承りたいと思います。
  142. 今井一男

    ○今井参考人 今まで私の申し上げて参りました線を引延ばして参りますと、ただいま高橋委員の仰せになりましたと同じような線におちつくのであります。ただ、それに、もう一つの別の見方があるということだけを申し上げておきたいと思いますのは、この公労法ができました立法の沿革でございます。この沿革ももちろん人によつて解釈が違うのでありますが、これは申すまでもなく、二十三年の七月にマ書簡が出まして、マ書簡に基きまして、そつくりそのまま司令部の指導といいますか、翻訳ででき上つたのが現在の法律の基礎であります。     〔委員長退席、山花委員長代理着席〕 あの二十三年の七月当時まで、公務員の労働運動というものは、まつたく政府団体交渉をします関係から、いろ、いろ政治的な摩擦が多かつた。特に官公労の労働運動が、おおむね政府打倒運動に展開いたしまして、そうしてそのために事実内閣の生命にまでかなりの影響を及ぼした。こういつたことを非常によろしくないというふうに解したのが、マ書簡の精神でございました。それに基きまして公労法ができて来たと解釈するのでありますが、それと結びあわせて考えますと、要するに政府というものと官公労組合というものが、正面から対立関係になることはおもしろくない。そういうことをやりますと、結局におきまして、これは最終的に政治運動に走つてはいかぬといつても政治運動に走つてしまう。そこで国鉄、専売につきましては、特に公社という違つた別個の法人格をこしらえまして、その法人格において両者が団体交渉をする。最終の場合には仲裁に持つて来る。それをそのまま国会で御審議をいただく、そういう形に持つて行きますと、政府はまつたく第三者のような頭をして、俗に悪く申せば澄ましていられる。そうなりますと、そういう運動が政治運動化することを防ぐであろう、こういう立法趣旨がどうも入つておつたように解せられるのであります。その意味から申しますと、先ほど申し上げました線と矛盾をいたしますけれども、政府は積極的にこれはこの程度のむとか、のまないとかいう意見を言うのは、むしろその趣旨からいえばぐあいが悪い、一切を国会におまかせする。具体的に妙な表現をいたしますれば、何々内閣打倒運動というものがあつても、国会打倒運動はないというような意味におきまして、そういつたような形に織り込んだというのが、どうもマ書簡と結びついての公労法の沿革のよう考えられるのであります。しかしながら、その解釈は、昨年の公労法の改正によりまして、またこれと話がかわつてつて、公社以外に直接国営企業当事者となりまして、先ほど申し上げました政府との関係も妙なことになりますから、その意味がまたかわつて参るかと思われるのでありますけれども、少くとも立法の当初におきましては、政府になるべく意思表示をさせないようにというような仕組みが、あの十六条二項の立法の沿革上は入つてつたのではないか、こういつたことだけはうかがい得られると思うのであります。それだけを前のお話とは矛盾をいたしますけれども、申し上げておきます。
  143. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今度は別の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、この仲裁裁定をなされる場合に、この線がいいだろうという一つの標準がなければならぬと考えるのであります。調停の場合でありましたならば、結局両方が治まればいいわけですから、その調停の成立する内容について、はたの者がかれこれものさしを当てがつて批評すべき限りではないと思うのでありまして、争いが治まりさえすればいいのです。ところが、それが調停が成立しないで、仲裁裁定をするということになりますと、仲裁委員の方々は、もう争いが治まらないのですから、これに対してこういう裁定を下そうとお考えになる場合には、一つのものさしがあるであろうと考えますが、今本委員会において審議中の八仲裁裁定について、その裁定をなさる場合に、今申し上げた裁定を下される標準、またその内容について御説明を願  いたいと思います。
  144. 今井一男

    ○今井参考人 今までいろいろ入れかわりましたほかの仲裁委員の方々の御意見をそつくり代表して申し上げると  いうことは、デリケートでいたしかねますが、私は成り立ちと同時に関係しておりますので、比較的に従来からの沿革は心得ているのでございますが、私なりの心境の変化と申しますか、あるいはいろいろほかの仲裁委員からのお話を伺つて頭がかわつて来たと申しますか、そういつたような点を申し上げますと、最初のうちは、今仰せのよう考え方が、率直に申してある程度強かつたのでございます。しかし、だんだんやつて参りますうちに、やはり仲裁と調停というものにそういう開きをつけることは、むしろおかしいのではないか。仲裁といえども、両当事者の言い分を基礎に基くところの労働紛争解決の方法であり、それに対してイエス、ノーを許さない問題であります。従いまして、独自の意見を入れる範囲はなるべく少い方が望ましいのではないか。もちろん、われわれの手にわたつて参りました場合に、両者の意見というものは、かなり幅広く対立をしているのです。それを説得により、討論により、中には相当に悪口を申しまして、極力歩み寄りをはかり、歩み寄りのどうしてもできない部分につきまして私どもが独自の見解を加える。従いまして、たとえば賃金を出す方式といたしましても、五つも六つもの意見もございます。ものさしをとりましても、いろいろのものさしがございます。しかし、そのものさしは、われわれが、かりに現在このような場合にはCというものさしが適当であると考えましても、両当事者がDというものさしがよろしいということになりましたら、そのDというものさしを使う、こういつた考え方、つまりあくまで団体交渉の延長であるという考え方が正しいのではないかというように、ある程度私個人として、一人の仲裁委員としては、考え方がかわりまして、特に今回はそういつたことにつきましてかなりの努力を払つたつもりでございます。従つて、かりにわれわれとしてこういう形が望ましい、こういう体系が望ましいと考えましても、もし両者が別の体系が望ましいと、こうおつしやいます場合には、それはいけないからこういうふうに直しなさいというふうに言うことは、賃金委員会でない、われわれのように単なる一つの企業体におきましての労使紛争を解決するあれとしては出過ぎておる、かよう立場でやりましたので、特に今回の八つの裁定は、ほとんど全部そういつたラインで結論を出したつもりでございます。ただそれにいたしましても、相当話の幅が広かつたために、われわれが独自の見解を入れる部分もかなりございます。その部分に関しましては、今お言葉にありましたように、自分たちのあるべき姿と申しますか、考えておる賃金理論と申しますか、そういうものが中心となりまして結論を導き出す方向になつておりますが、しかしわれわれとしては、もう少し両方の幅が狭くなつてわれわれの意見の極力少い姿、それが仲裁委員会としても、やはり一番望ましい姿ではないか、そういう考え方にただいまではなつております。
  145. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この問題は非常にむずかしい問題であるとは思いますが、しかし仲裁裁定の客観的な価値判断ということに、大きな影響があるわけでありまして、先ほどお言葉にありました賃金委員会とは性質が違うのだから、それで結局団交調停の段階から一つの方向が示されておる。その両当事者のその間に示した方向に従つて、この辺がいいだろうと、こういうふうなところで仲裁裁定が下るのがいいのか、あるいは調停が成立しないということは、両者歩み寄りができない。そこで委員会一つのあるものさしによつて決定をしなければならないのだから、賃金委員会ではないけれども、しかし客観的な仲裁の正当性を維持するためには、やはり給与がこの線ならば正しいであろうという、いわゆる賃金委員会的な性質がそこに大いに働くべきものではないかと思いますが、そういう考え方間違いですか。仲裁をなさる場合に、そこにどの程度そういう賃金の客観的な正当性というようなものが加味されておるか、また全然それを加味していないのか。基本的な給与に関する点について裁定をされる場合の御方針というものを、はなはだむずかしいことかもしれませんが、もう一度ひとつ御説明願いたいと思います。
  146. 今井一男

    ○今井参考人 実はこういつた問題になると、三人が三人、少しずつずれておりますので、その点も御容赦の上お聞き取りを願いたいと思うのであります。  お話ように、調停委員会段階におきまして話が決裂いたしまして、そのまま私どもの方へ流れ込んで参つて来るわけでありますが、しかし、私どもが特にそういつたことに力を入れて両者に話してみますと、案外調停の段階では言わなかつた点にまで、こういう考え方もあり得る、この主張のこの部分は確かに自分たちの方の言い分が無理であつた、しかしながらこういう考え方もあり得る。かような見解が案外に述べられるという事実を体験したのであります。その場合に、率直に申しまして、組合当局それぞれ主張の根拠が少しずつずれております。もちろん、そんなに大きな開きではございませんが、いずれにいたしましても、いわゆる強さ弱さという点も多少違いはございます。われわれの方が労使紛争という立場に立ちますと、もちろん結果的に申しますと、労使の主張の間に立つわけでございまして、従つて片一方は一万五千円といい、片一方は二万円というような場合、われわれの方が一万四千五百円とかいうような数字にはなし得ない建前でもあるわけであります。それにいたしますと非常にアンバランスな妙なものができるという結果にも相なるかと思いますけれども、しかしながら、そういう御心配は比較的ないと申しますか、いずれにいたしましても、組合同士もある程度横の連絡をとつている現状でございますし、また当局側においてもさようでございます。しかも、その扱つておりますいろいろな資料なり、物の考え方なり、沿革その他からあわせまして、そんなに開きはございません。従いまして、私どもが賃金委員会でなく、あくまで労使紛争の両方の言い分だけを根拠に置いた裁定を下すのだと申しましても、やはりそこにおのずから規制されて来る面がありまして、その規制されて来る面というのは、むしろ非常に根強いものであります。従いまして、かりに個別的な色彩が出ましても、その色彩はきわめてわずかでありまして、民間の同種産業における差と比べますれば、ほとんど問題にするのに当らない程度のものが出て来るのが現実の姿だと思います。もちろん問題によりますと、さかさまに両当事者の方から問題をゆだねられて来るような形もございますので、今おつしやいましたよう一つのあるべき姿というものを、われわれも決して持つておらないわけでもございませんし、またそういつた部分も入れた面が相当あることも、裁定の理由書をお読みいただけば御了解願えると思うのであります。しかし、形式的かもしれませんけれども、建前はやはり労使紛争の言い分の上に立つというのが順序であろう。労使そのものがどうしても横の権衡をはかりますから、そこでおのずから権衡というものがとれて参る、こういつた結果に相なる、さように御了承いただくのが、大体われわれの考え方を一番率直にお伝えするではなかろうか、かよう考えます。
  147. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 いま一点お尋ねをしまして私の質問を終りたいと思います。  今井委員長は、現業と非現業の給与に関する問題について、どのようにお考えか、その点を一口お答えいただきたいと思います。
  148. 今井一男

    ○今井参考人 どういう趣旨でございましようか。もう少し具体的におつしやつていただけませんか。
  149. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 現業に関する賃金の問題と、非現業の給与に関する問題について、何ら両者を区別して考えるべきものでないというお考えであるか、あるいはそれは給与制度の上から、仕事の内容が異なるから、区別すべきものであるか、そういつたことについてのお考えを承わりたい。
  150. 今井一男

    ○今井参考人 大にして申せば、国家公務員ないしは国家公務員に準ずべき立場にある職員でありますから、そういつたも一ののいわゆるアンバランスは、極力ない方が望ましいことは申し上げるまでもないと思うのですが、ただきわめて大ざつぱに申しますと、基本的にそういう場合の考え方も、現業と非現業とでは少しく違うのではないか。すなわち、非現業の職員は、たとえば警察官、税務官吏、こういつたような職種が代表的なものであろうと思うのでありますが、こういつた諸君は、かりにどろぼうをたくさんつかまえるとか、あるいは税金をよけいとるとかいうことによりまして、特別な奨励が加わるような、そういつた仕組みのものであつてはなりません。またいわゆる事業の繁栄あるいは反対に不景気というようなことが反映するのも適当であるまいと思います。しかし、独立採算制という立場に立ちまして、企業体の職員として行動しておる諸君にとりましては、これはそれぞれその事業の発達に具体的に寄与してもらいまして、その具体的な寄与を奨励することがむしろ望ましい。国民経済から申しましても、望ましい建前にございまするし、またその事業というものの栄枯盛衰と申しますか、あまり大きく言つては少し語弊がありますけれども、そういつたものがある程度賃金に反映する方が、むしろ企業そのものの能率運営上もよろしいのではないか。今までの国営企業ないしは公社といつたものの非能率というものは、現業と非現業というものを同じよう考えたところに、むしろ一番のマイナス面があつたのではないか。民間企業と比べますと、民間企業ではどうしてもそういつた開きが出て参ります。これは今の賃金機構、経済機構を維持する限りにおきましては当然やむを得ないことでございまして、そういつたものが民間そのものの姿で現業に反映して来るのは、これは特殊な立場として、公共性として適当でないでありましようけれども、ある程度の反映はむしろ必要だ、そういつたことにつきまして、現業と非現業の賃金の考え方には、若干の開きを設けるべきだ、こういうような個人的な意見を持つております。
  151. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 中原健次君。
  152. 中原健次

    ○中原委員 今井委員長に、大体今までいろいろ質疑の中で、論議が尽きておつたと思いますが、ただいまのお話を承つておりました中で、私もう一点補足してお尋ねしてみたいと思います。と申しますのは、公労法のできるもう一つ前から考えまして、戦後の労働関係法律というものは、言うまでもなく、これは労使間の対等の立場というものを保障しながら団体交渉の慣行を確立させて行くというところに、ねらいがあつたと思いますし、それだけに、労働関係法規というものは、本来からいえば、全労働者階級にとつて善意に解釈されるのが建前ではないか、かように理解いたしておるわけであります。ところが、最近の傾向を見ますと、せつかく御苦心の結果の裁定が出ましても、その他の場合も同様だといえるのでありますが、この場合一応裁定だけを中心にいたしたいと思いますが、そのせつかくの御苦心の裁定に対しまして、政府の取扱い方というものは、必ずしもその苦心にこたえるだけの、あるいは労働関係法規を善意に解釈する当然の建前をとるのではなしに、かえつて逆にそういう善意であるべきはずのものを押し下げて行く、あるいはこれを無視し、その逆の方に持つて行くというような感じが――まあ感じよりもそういうようなことが最近しばしばあるわけであります。その一つの現われとしてか、今度の国会議決を求めるの件の事由書を見ますと、ただいま高橋委員のお指摘のように、どうもきわめて不親切であり、従つて不十分である。一体どこをとらえていいのか、見当もつかないようなきらいさえあると思うのであります。そういうようなことでこれが片づけられて参りますとすれば、仲裁委員会の設定されたその機関の権威というものが、だんだん薄められて行くのではないかというように私は気づかうのであります。こういう質問は、はなはだ適当でないかとも思うのでありますけれども、率直なところで、そういう観察に対して、それはどうも私のまつたくの独断であり、思い違いであるのか、そういうふうに見受けられる部分もあるとお思いになられるか、ちよつとこの点をこの際伺つておきたいと思います。
  153. 今井一男

    ○今井参考人 先ほどもちよつと触れましたように、われわれ裁定関係いたしました者といたしまして、それが文字通り一字一句実現いたしますこと、これに関心を持ち、またそれを熱望しておることについては、これは御想像におまかせしてもおわかりのことだろうと思つております。ただそれにいたしましても、私どもも、決して裁定内容そのものがさほど権威のある、また科学的に、何々的に百パーセントのもの、そういううぬぼれは決して持つておりません。しかしこれは私としては、どなたがおやりになりましても、今のような機構で、また労働問題の性質上とにかく短期間に結論を出す。裁判所のように、好きなだけ調べて心証を得た上で初めて出すという問題でございません。やはり拙速をとうとぶという建前をとります以上、また公労法にも五日以内ないし十日以内という、いわば内閣総理大臣の指名の次くらいに緊急的に処理しろ、こういう規定から申しましても、私ども拙速が第一だと、かように了解して行動をしておる次第でございますので、従つてこれが批判を受けまして、実質的に出直しされる結果になることは、特にそれが、国会で行われます限りにおいて、やむを得ないとは思うのでありますが、従つて望みますものの常に百パーセントを期待することも出過ぎておるとも考えるのでありますが、ただその場合に、ぜひお心にとめていただきたいことは、こういう理由で、かくかくの立場において、やむを得ずこういつたものが認められない、こういつた形になつて参りませんと、少くとも労組の諸君は納得してくれないと思うのであります。やみからやみにわけのわからない形で不実行ということでは、今後公労法というこの制度をお続けになるとすれば、いろいろ悪い影響がある。従つて、やむを得ぬ場合にこれが不実施になりましてもいたし方ございませんから、その場合には、そういうことにつきまして十分な心配りを願いたい。少くとも労組の諸君を納得させるだけの御説明は十分していただきたい、これだけはぜひお願いしておきたい、かような心境でございます。
  154. 中原健次

    ○中原委員 実は労働者の側から申しますと、特に公企労法適用を受ける範囲のすべての労働者は、何と申しましても仲裁裁定を最後の頼みとして、いわば最高裁の判決を待つような気持で実は受取るわけであります。そうなつてみますると、仲裁裁定そのものに対する期待と信頼が大きいだけ、万一これが不履行に終つたり、あるいはきわめて不十分に履行されたりいたしました場合に、労働者としましては、実は自分の失望の持つて行き場所がないのであります。従つてそれだけに、私どもは仲裁委員会の各位に非常な期待と尊敬を寄せておるわけでありますが、そうであつてみますれば、私はやはりこれを受取る側としての当事者、すなわち公社あるいは政府というものは、そのことを十分、何といいますか、滞りなくそういう期待を受取りながら、これに対して答えを出して行くのでなくちやならぬと思いまするし、むしろ原則的には三十五条の当然拘束を受けるというこの厳粛な立場に立つてこれに対処するのでなくちやならぬと思います。ところが、ただいまの御議論の中でもうかがえるし、また政府もその点を申しておりますが、いわゆる第十六条によつてそこに例外的な措置をとろうとしておるわけでありますけれども、これはあくまで従属的な条文として受取らなければ、どうも適当ではないように思うのであります。従つて、私は労働者のそういう賃金、給与の問題を、あるいはその他の労働待遇諸条件の決定を期待いたしまする場合に、労働者の人間としての基本的な権利として当然これを保護されたいと期待しておるわけであります。そうであつてみますると、国民に与えた基本的人権のいわゆる不可侵性と申しますか、そういうような見地から考えますと、この不可侵性を十分守つて行く、いわゆる不断の努力を払うてこれを保持するのだ、憲法の保障しましたそういう基本的人権を、やはり政府も協力してこれを守るために努力するということは、当然のことのように思うのであります。そうであつてみれば、どうも今回だけではなくて、やはり前回もそうでありましたが、国会議決を求めるのこの態度は、しばしばきわめて投げやりな立場をとられる。そうして、特に今回の仲裁裁定を見てもわかりますように、相当資金的な措置についても、念入りの御詮議ができておるようにうかがえるわけであります。念入りの詮議の結果としてこれだけの財源措置は可能であるということを、理由書に付しておいでになるのであつてみれば、やはりこれが基礎になつて少くともこれを相当大きい部分として資金措置の中に考慮されなければ、政府として妥当じやないと私どもは思うのであります。従つて、この資金的な措置が可能であるということがいえるような状況のもとになされた裁定であるならば、当然これを財源とするいわゆる予算措置というものが講ぜられるのでなければならぬと思うのであります。従いまして、この予算措置が当然かような意味で講ぜられなければならぬとすれば、ただ投げやりにこういう国会へ提出する態度をとるのではなしに、どこまでもこれを具現せしめるよう努力して行くということがうかがわれるような、そういう事由書が付されなければ、これはうなずけないと思うのであります。その点では、高橋委員の御指摘と私はまつたく同感なんであります。従つて、もしそのことを政府が怠るとすれば、これは法律に対して政府は怠慢だ、こういうふうにいえるように思います。しかし、この政府の怠慢な態度に対する批判を新たにすることは、少し無理な願いかとも思いますが、いやしくも権威ある委員長とされて、そういうことに対する御不満も当然おありではなかろうかと思うのでありますが、その点はどんなものでありましようか、一応伺つておきたい。
  155. 今井一男

    ○今井参考人 この点は先ほど高橋委員から相当詳しく御指摘いただきました。私も率直は私の感想を申し上げたつもりでございますので、ひとつそれで御了承願います。
  156. 中原健次

    ○中原委員 それではひとつ関連してお伺いいたしますが、政府は絶えずよき労働慣行を確立したい、こういうふうに始終言われるわけです。公企労法の第一条を見ますと「平和的調整を図るよう団体交渉の慣行と手続とを確立する」云々ということがうたわれておるわけであります。その第一条の期待にこたえるような労働慣行を確立して行こうとすれば、政府の今とつておられるような態度では、どんなに期待いたしましても、よき労働慣行の確立などということは、私は無理だということさえ言えるのじやないかと思う。労働組合側が法にたよつてつても、実は労働階級の基本的なものの、しかもきわめて客観的に妥当だと考えられる立場の機関の御決定までが蹂躪されるということになつたのでは、労働組合としてはどのようにがまんしようとしても、とうていがまんしきれるものではない、こういうことを私は感ずるに至るのではないかと思うのです。従つて、そういうことになつて参りますれば、やはり公企労法の第一条が所期しておりますようなそういう期待も遂にほごになつてしまう。そうなつて来ると、やはり憲法の一番もとにもどつて参りまして、当然労働者に与えられた三権を十分に行使する、こういうところに立ちもどる。だから、言いかえれば、憲法の精神に背反するよう法律だ、こういう解釈になつて来るのではないか。このことは、やがて労働者側に対して政府の好ましく思われておらないようなことを、かえつて促すような、そういうことになりはしないかと私は思うのです。もし万一そうなつて来たときに、それなら責任の所在はどちらにあるのだ、こういうことがいえばしないかと思います。そういうふうに考えて参りますと、この責任の所在という問題についても、単純にこういう法律があるから、こういう法律を破つたものが悪いんだとは言えない。やはり最高法規である憲法の精神にもどつて来なければ、議論が解決しないのじやないかと思われるのですが、いかがでしようか。これも私のやはり一方に偏した思い過しなんでしようか、委員長の御意見をひとつ……。
  157. 今井一男

    ○今井参考人 どうも私からお答えするのは適当な問題かどうか、若干疑問がありますが、お言葉のままに感想を申しますと、私ども二・一ストのころから、特に官公労の組合の指導者諸君に比較的おつき合いを申し上げておる立場から申し上げますと、以前に比べまして、今のこういつた運動の幹部諸君は、簡単に申せば、よほど昔と違つて物わかりがよろしく、むしろわかり過ぎるくらいに感ぜられる向きが多いのでありまして、私ども仲裁手続をやつておりましても、時と場合によりますと、当局の方が物わかりが悪いような例も少くないのであります。しかし、こういつた諸君は、かりにそういうふうなことが起りましても、とにかく労働運動の特徴は大衆運動であるという点にあるのでございます。従いまして、法律だけで簡単に縛れるものでないことは、これは中原先生のような方に申し上げるまでもないことと思います。そういつた意味合いから、ああいう幹部諸君がまとめようとしてもまとまらないような事態がもし起りましたならば、せつかくの公労法の精神から申しましても非常に遺憾であることは、私ども関係者の一人として考えられるのでございまして、そういつた意味合いから、先ほど申し上げましたように、もしいろいろの御都合で実施できない場合には、できない理由を組合の諸君にわかるように、ぜひ国会なり政府なりから十分納得さしてほしい、こういつたことを重ねてお願いしておきたいわけなのであります。
  158. 中原健次

    ○中原委員 ちよつと関連しますから、いずれまた他の機会もあるのでありますけれども、大蔵省の給与課長さんに簡単に伺いたい。今回の三公社五現業の仲裁裁定書を拝見いたしますと、大体予算措置が可能であるというふうにお示しが出ておるわけであります。私どもも、この財源関係についていろいろ検討もし、調査もし、いろいろな方面からの意見も聞いてみたかつたのでありますが、やはりこのことは、この限りにおいても、これはきわめて妥当な結論のように思えるわけであります。しかるに政府の方では、必ずしもそうではなさそうに感じられるような御態度があるのでありまして、その一番もとをきめられる大蔵省当局として、この財源の御指摘に対する一応の事務処理をなさいました課長さんの立場で、これをどのようにお考えに一なられるか、この際一つだけ伺つておきたいと思います。
  159. 岸本晋

    ○岸本説明員 今回の三公社五現業の、具体的に申しますと、支払い能力が十分であるかどうかという問題に帰着するものと思うのでありますが、裁定書にございますように、国鉄、郵政というようなところはなかなか苦しい。特に給与の問題でございますから、将来に尾を引く問題でございますので、先のことを考えますと、なかなかむずかしいということは御承知のことと思いますが、その他の企業体につきましても、なるほど当面といたしましては、若干無理をすればあるいは余裕も出て参ろうかと考えられるのでありますが、この公社あるはる公共企業体というものの性格からいたしまして、現在どの程度しぼり出せるかということは、まだ検討いたしておる段階であります。公社あるいは公共企業体の性格と申しましても、経理の面から見ますと、二つほど問題があるわけでございます。たとえば専売とかあるいはその他の給与会計で、一般会計と密接不可分のよう関係に立つている会計もございます。また国鉄とか電電、郵政というように、国民に対するサービスを主眼としている企業体もございます。これらの企業の今後の予算考えます場合に、やはり前者につきましては、一般会計との関連ということも、ある程度考えて参らなければならないわけでございます。あとの面につきましても、この国民に対する国民の財産によるサービス、これをどの程度今後の予算で具体化して行くか、そうした面にもやはりあわせて参らなければならないのでございます。現在の段階におきましては、裁定がそのまま実施できるかどうかということは、にわかにここでお答え申し上げかねる段階でございまして、今後の二次補正なり、あるいは来年度予算の編成に際して検討して参りたい、その上で国会の御意見を伺うという運びにいたしたいと存じております。     ―――――――――――――
  160. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 次に駐留軍労務者の争議問題について、市川誠君を参考人として意見を聴取いたしたいと思うのでありますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 御異議なければさよう決します。  市川参考人より意見の聴取をいたします。市川参考人。
  162. 市川誠

    ○市川参考人 全駐留軍労働組合の中央執行委員長の市川誠でございます。駐留軍の労働者が現在直面いたしておりますところの人員整理問題の概況につきまして、またそれに関連する労働者の要求等に関しまして御説明申し上げまして、御配慮を願いたいと存ずる次第でございます。  本年の八月ころから極東空軍関係に、予算削減を理由としまして首切りが発生いたしました。空軍関係におきましては、最初に時間制の短縮から打出されて参つたのでありますが、従来週四十八時間制の勤務であつたものを、これを四十時間制に削減いたしました。そのために労働者は月収におきまして約二割程度の減収を来して、非常に生活に困難を感じておつたのですが、その上に首切りが加わつて参つたわけてあります。八月、九月、十月の期間におきまして、一次、二次、三次と三回ほどにわたりまして、東京、千葉、山口、福岡という空軍関係のうちでも、特に補給輸送関係の部隊に、約千九百名ほどの首切りが行われたのであります。このような首切りに対しまして、フインカムの支部等では、ストライキをもつてこれに対する反対闘争をしたしたのでありますか、具体的に首切りを撤回せしむることもできなかつたのであります。ただ山口県の岩国におきましては、たまたま第三次の首切りが出ました際に、第二次の際の約束に、今後は首切りを行わないというような約束がなされておりましたので、その約束の履行を迫つた結果、第三次の首切りが撤回されたというような事例はあつたのでありますが、具体的な首切り反対闘争に対する成果というものを、手にすることができなかつたわけであります。  こういうような状況で、空軍の首切りが一段落を画す十月の初旬におきまして、陸軍関係に首切りが起つて参りました。陸軍関係は、駐留軍労働者十八万五千の中で、主体的な数でありますが、私どもの推定では、十万ないし十二万ぐらいまで陸軍関係と推定いたしております。陸軍関係においては、従来から一週の勤務時間が四十四時間を下らないというように軍側のサーキユラーで決定をされておりましたので、いきなり予算削減の具体的な影響で、いきなり予算削減の具体的な影響というものが首切りに現われて参つたわけであります。北海道の千歳あるいは福岡、大阪というような地点に、最初点在的に現われて参りました。そういうような状況で、私どもは当時朝鮮戦争の具体的な休戦成立によりまして、何らかの現われが来るのではないかというふうに予期しておつたのでありますが、その後相次いで全国的に起つて参りました。現在までに陸軍関係において起つております首切りの概要を申し上げますと、北海道におきましては、数といたしまして約三百三十名、これは千歳の基地とそれから室蘭の石油関係の補給所でございます。それから次は、宮城におきまして約二百七十二名、これは船岡の弾薬庫関係でございます。群馬におきましては約百名であります。小泉キヤンプと前橋の二箇所であります。埼玉におきましては約三百七十八名で、熊谷、朝霞、それから大宮、所沢というような四基地にわかれております。神奈川が約千三百十名ほどでございます。これは追浜兵器廠、池子弾薬庫、JPA、陸軍部隊司令部、陸軍病院、八〇一〇部隊、横浜兵器廠というような基地であります。大阪におきまして約三百三十七名、これは大阪府内にあります各基地、金岡キヤンプあるいは日赤病院等であります。次は広島、これは江田島のキヤンプでありますが、九十六名ほどであります。九州に参りまして福岡で約百四十三名、小倉と福岡であります。大分は、別府のキヤンプにおきまして五十一名、それから東京はTOD、その他新丸子、府中の兵器廠、この三箇所で約千百名ほどの首切りが出ております。さらにこのような基地の陸上労務者以外に、最近におきまして、朝鮮に派遣されて長らく働いておりました船員が、今度韓国人あるいはフイリピン人をもつて交代せしめるというような事由によりまして、約四百七十八名ほどか日本に帰還せしめられて、そして解雇されるというような状況になつております。大体陸軍関係の今申し上げたような数をまとめてみますと、約四千三百名くらいに達するわけであります。  こういうような人員整理の理由は、総括的には予算の削減という理由で出されております。一、二の部隊におきましては、労働調査団等が調査の結果、人員が過剰であるというような事由で出されておるところもあります。あるいはまた事業所の閉鎖、部隊の移動というような理由も幾つかございます。要するにこれらの整理は、現行におきましては、軍側が現地部隊におきまして、日本政府の渉外管理事務所に解雇の請求をいたしまして、そしてその上で労務者に対して個々に解雇の予告が発せられる、こういうよう手続になつております。たまたま今申し上げたような解雇の状況を見てみますと、いずれも解雇の予告を行う者につきましては、解雇の発生が十二月十五日、いわゆる年末手当を支給する期日の直前に解雇が発効するようになつております。特に神奈川県の追浜、あるいはYOD、大阪の金岡、日赤等におきましては、今度は普通に予告をして参りますと、その予告の発出の期日の関係から、十二月の十五日を過ぎる日に解雇が効力を発生するようになりますので、逆に今度は解雇予告を行わないで、予告手当だけを支給して即日解雇を行う、いずれにいたしましても、予告制をとるものは十二月十五日前に解雇の効力が発生するようにし、また予告を採用いたしますれば十二月の十五日後になるような解雇については、即時解雇等を行つて年末手当の支給を意図的に避けておるような点が、私どもの立場から見ますとうかがえるのであります。  こういうような状況につきまして、組合側といたしましては、今度の大量の人員整理につきましては、大体次のような見解を持つておるのであります。  朝鮮の戦争の休戦が成立した結果から、アメリカといたしましては、ある種の軍事経済的な政策の変更を考えておるのではないか。またたまたま私どもの立場から見ますと、池田特使がアメリカに行つておりましてMSAに関する交渉をいたしました際に、外電として報道されておりましたところの五年以内に日本に駐留するアメリカ軍を引揚げるというような報道――この報道はその後打消されておりますが、私どもといたしましては休戦の成立、それから日本の再軍備、それから駐留軍の漸減的な撤退、こういうようなコースを考えてみますと、今度の整理といたしましては、直接兵員の減員はしないにいたしましても、財政部面における漸減というふうな政策から来るところの労務者に対するなしくずし的な整理ではないか。従つて今までたびたび若干の整理はあつたのでありますが、そのような局地的に現われた整理とは違いまして、解雇された者は再び駐留軍の職場で、たとい優先雇用等の条件を解雇に関する妥結の条件といたしましても、その実施を期待することのできないような性格の首切りではないかというよう考えられるのであります。そういうよう考え方からいたしまして、もしこの予算削減という措置がやむを得ないものといたしますれば、われわれといたしましても、十分解雇の理由等について詳細な説明を受けて、何らかの解決の方法も協議し得るのではないかというよう考えておりますが、現地部隊におきましては、それらの理由等についての交渉さえも拒否しておるというよう事情から、各地方的にいろいろな紛争が起つておるのであります。  中央本部の具体的な要求といたしましては、ともかくも年末年始を控えてのこの種の大量の首切りは、日本の風俗慣習から行きましても、避けるべきである。従つて、年末年始を控えの首切りは絶対に行わないようにする。  それから第二点といたしましては、この夏以来の交渉によつて、新しい基本契約に対する基本協定が合意調印をされておるのでありますが、この中の人事管理のうちで、人員整理の条項につきましては、解雇する数等を決定する場合には、軍側といえども、あらかじめ日本政府側と事前に十分に調整をするように合意されておりますので、この協定の部分発効をすみやかに措置いたしまして、この種の人員整理にあたつては、日本政府といたしまして法律上の雇用主という立場において十分な調整がはかられなければならない、はかるべきであるというので要求の第二点であります。  第三の要求点といたしましては、先ほどもちよつと触れましたように、今回の整理が、労務者の漸減的をなしくずし首切りというような点から考えまして、長い間駐留軍の苦しい職場において働いて来ておつた労働者に対しまして、今回の整理等に対しましては、解雇者に対して現行退職手当規程によるところの退職手当のへ割増しの手当を支給せよ、これが要求の第三点であります。これは一般職の公務員におきましても、特殊な行政整理などの場合におきましては、退職手当の割増しの支給の制度も適用されておりますし、また待命制度等も行われておる現況であります。また一般的な民間産業等におきましても、企業整備等の解雇にあたりましては、特殊な慰労金あるいは手当金等を出しておる事例から、今回の整理等にあたつては、ぜひともこの八割増し退職手当の支給をしてもらいたいという要求であります。  第四点といたしましては、具体的に解雇者が出て参りました場合の失業対策問題といたしまして、現在中央に失業対策連絡会議というものが一応存在いたしますので、これを強化し活用する。こういうよう要求点を出しておるのであります。この要求につきましては、十月の二十日に調達庁の福島長官に要求をいたしましてさらにまた二十八日には所管大臣であります小坂労働大臣にも要求を提出いたしまして、政府型におきましてもいろいろと対軍折衝をいたしておりますが、まだ実体的な結果というものは出て参らないのであります。  現在各地方における争議の状況でありますが、北海道の千歳におきましては、昨日の午前六時から四十八時間のストライキに入つて、いまなおストライキ継続中であります。今朝までくらいの現地情報によりますと、三百二十二名の首切りに対しまして、その後いろいろと知事あるいは組合等から軍に対して折衝し結果、いろいろ配置転換等の措置がされまして、大体二百七十一名くらいの整理人員までに圧縮できておるのでありますが、まだ残つておる問題については、年末手当の支給とかいうような時期まで延期することができない状況になつております。千歳の場合には、すでに明十一日には解雇の効力を発生するというような状況におきましてストライキが行われておるのであります。その他の支部といたしましては、東京のTODが十一月の十二日、十三日と、大体四十八時間ストライキを決行する予定になつております。他の支部としては、神奈川の追浜の支部あるいは埼玉の大宮、宮城の船岡等でストライキ権を確立いたしまして、交渉の進展のいかんによつては、実力行使をあえて辞さないというような態勢になつておりまして、全国的に年末手当の支給措置さえもとられていないような状態にありますので、内部の予告が発出されて、だんだんと交渉が進んで参りました際に、全国的な実力行使というような情勢に高まつて来るのではないかというふうに推察をされております。私どもの案は、これはきわめて率直な要求になつておるのでありますが、いろいろ各地方的に折衝をした経過においては、たとえば東京におきましても、本日TODにおいては、ちようど十一月十三日、年末手当の支給の二日前に解雇の効力が発効するようになつてつたのでありますが、この予告を数日延期して、解雇を十二月十五日に発効せしめるようにする。また下丸子におきましても、十一月三十日に解雇が発効するようになつておりますが、これまた十五日間延期するというような一、二の再考慮をしたような向きが、ただいま出て参つておりますが、他の大部分のところにおいては、まだ具体的に進んでおらないというような状況であります。  一般的な整理の状況につきましても、政府の方でいろいろと努力をされております。私どもも、政府代表とともに向うの首脳者に会つた際にも、今後の整理の規模等についても、若干の説明を聞いたのでありますが、軍の関係等においては、なお来年の六月までに八%ないし一〇%程度の整理を行わなければならないよう事情説明をされております。いずれにいたしましても、今回の整理の中におきまして、朝鮮から帰還せしめられる船員を、二十四時間の予告によつて年末手当の支給もさせない。あるいは現地で長く勤務しておりますれば、からだにいろいろな故障が出て参ります。現地では十分な医療あるいは療養の機会を得ることもできないので、内地に引揚げて参りまして、一、二週間あるいは一箇月ぐらいしますと予測していなかつた発病等も出て参りますが、そういうようなものにも医療、療養の機会を与えることなく、二十四時間の予告をもつて解雇してしまう、こういうよう処置や、先ほど申し上げたように意図的に年末手当を支給せずして、その支給日直前に解雇する、あるいはまた即時解雇の方法によつて年末手当の支出を避けて行くというような、あまりにも労働者を人間扱いしないような取扱い方については、私どもは非常な不満を感ずるのであります。船員の場合においては、必要なときは朝鮮でいくら苦しんでも使うだけ使つて、いよいよ用が済んだならばさつとほうり出して内地へ帰して、二十四時間の予告だけで、もうあとはかまわない、こういうようなやり方――これは本年六月にも具体的にあつた例でありますが、それを再び今度繰返して行こうといつたような状況になつておるのであります。こういう点については、労働者といたしましては、非常に大きな憤懣と抗議を持つておる次第であります。この種の事情につきましては、過日参議院の労働委員会におきましても、政府に対して、いろいろ善処するように決議等も願つて、申入れをすでにしていただいておるのでありますが、労働組合側といたしましても、軍という大きな権力に対する折衝でありますし、特に今回の陸軍の予算削減に対する調整の措置が、本年十二月までに終るようにワシントンから指令をされており、そのために来年下期までその調整を延期いたしまして、自然減耗等によつてこれを措置することができないというよう事情もありますので、昨晩アメリカ本国の陸軍長官と両院の軍事委員長に対しまして、この予算調整措置を来年の下期まで延期してもらうということと、やむを得ず解雇する場合においても、必ず年末手当は支給するよう措置をとつてくれということを、電報で要請をしたような次第であります。そういうよう事情にありますので、私どもも具体的に職場に仕事がなくなつたり、働く職場が閉鎖をされたりした場合に、手伝いとしてなおかつそのまま失業対策的に労働者を残せというよう要求をいたしておるものではないのでありますが、予算が削減されたという理由だけで、現実にはまだそうそう休戦よつての作業量の減少等もわれわれの目に映じておらない場合に、人数だけを減らしますと、勢いあとに残る者に労働強化という形でおおいかぶさつて来る点がありますので、そういうような点については反対をいたしておるのであります。  以上のような状況でありますが、この整理の問題につきましても、きわめて地方的な争議の問題としていろいろ危惧される点もあるので、努めて、中央におきまして統一的な交渉によつて、解決の道を見出したいと考えておるのでありますが、具体的に進展をいたさないという状況で、それらの点について、組合側といたしましても、かなりの不満を持つておるのであります。もちろん軍との折衝の問題が、かなりむずかしいということも、長い経験で了解できるのでありますが、すでに新しい労務基本契約の基本協定も合意署名をされておる。その中において、その間隙を縫つてこの種の整理が行われていることについても、きわめて遺憾であると考えておるのであります。労使関係が、特に外国軍隊を相手とする場合におましては、いろいろの問題も考慮しなければならないのでありまして、私どもも努めて高い見地に立つて問題の解決をはかりたいと考えておりますが、何分にも年末、正月を控えて労務者が職を失うという問題につきましては、相当の解雇の理由というものが、労務者自身にかなり納得行くように親切、詳細に説要れない限り、労務者自体は解雇を納得しないのであります。そういう点について、政府にかなり強い態度をもつて折衝をお願いしておるのであります。国会方面におきましても、長い聞苦しい条件のもとで働いて参りました駐留軍の労働者に対しまして、十分な御配慮をぜひお願い申し上げたいと考えておる次第であります。  以上で私の説明を終ります。
  163. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 これより質疑を許します。井堀繁雄君。
  164. 井堀繁雄

    ○井堀委員 たいへん時間もおそいことでありますから、ごく簡潔に一、二お尋ねをいたしたいと思います。  駐留軍労務契約につきましては、その使用主が極東軍、労務の供給者が政府でありますので、雇い主は当然政府立場を具備すると思うのでありますが、こういう特殊の労務を供給する契約の場合にあたりましては、当然長期にわたる労務契約とは考えられませんので、作戦用兵その他予算関係等で、不時の契約解除もしくは短期の労務供給の契約といつたようなことは、ある程度予測ができると思うのであります。そういう予測のもとに政府と極東軍の間に契約が結ばれたものと、われわれは想像しておるのであります。従つて、そういう契約に当然付随して来る条件は、長期の労務契約でありますと、労働条件にいたしましても、比較的安定した雇用のもとにおける条件でありますが、いつ解雇されるかわからないといつたような臨時的なごく短期の、あるいは不安定な雇用条件のもとにおきましては、おおむねその賃金を初め労働条件は高率なものが予定されます。あるいは解雇された場合には、やはり特別の手当が給与できるような契約というものが普通なされるのが常識であります。従いまして、雇い主である政府は、米軍との間に今日のような事態をあらかじめ予測されて、何か特殊の契約でもなさつておいでになるかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  165. 福島愼太郎

    ○福島説明員 駐留軍労務に関します現行の基本契約は、御承知通り、占領時代以来のものでありまして、これを新しいものに直すという交渉が、目下進行しているわけであります。過去の契約の面におきましては、特に短期の労務であるからという面に基きます特別な条文というものはなかつたかと思いますけれども、一般的に給与その他の基本の決定にあたりまして、初めは公務員と同じ資格で出発したものでありますけれども、その後契約に直りまして以後、給与そのものは公務員の平均よりも相当上まわつておるということが実情であります。なお退職その他に関連いたします制度につきましても、今日までのところは、公務員より若干有利であるという制度が存在するのも、事実であるわけであります。将来の問題といたしまして、今日までは、いつ打切るかという時期について、それほど深刻な計画が立てられなかつたということは、事実でありましよう。今日におきまして、たとえば私ども新しい基本契約を交渉するのにあたりまして、今後どのくらい安定して続くのかということを、当然の問題として取上げたのは事実でありまして、この問題にからんで、最も根本的なことが考えられなければならない。たとえば、新契約に移ります際に、今日の基本契約交渉の最も難点となりますのは、新しい契約に計画せられておりますところの新職務給でありますか、そういつたペイ・スクールというものの考えか、一番大きなことになるのであります。古い現行の職階から新しい職階に移りますのに、給与の切下げが行われてはならないということが、当然組合なり、もしくは政府なりの主張になるのでありまして、アメリカ側といたしましては新しい職務制というものは、でき得る限り合理的なものにする。従つて過去の経験の集積であるところの現行の制度よりは、場合によつては下るものがあり得る。その場合には補給をする補償条項をもうけるということで、実害が起らないようにする、こういうことを言つておる。はたしてそれが現給を保障するかどうかというところが、今日私どもの当面しておる一番大きな問題でありますが、そういう問題が最も困難な問題になりますときに、私どもとしてアメリカ側に指摘いたしましたことは、もしアメリカ側がいずれ、しかも比較的早い機会に帰るとか減るとかいうような問題を内蔵しておるならば、ここで新しい職階制を設けても何にもならないではないか。新しい職階制を設けて、古いものからそれに移して、下つた場合には補償をする、上つた場合にはまさか下げはせぬだろう。そうすれば、下るものがなくて上るものがあるというだけになる。それが新職階によつて多年運転して行くものならば、それがノーマルに運転する時代において初めてアメリカの意図するよう経費節約なり何なりの効果が出て来るかもしれぬが、アメリカがさしあたり帰る腹でもあるのであれば、あらためて新職階制をしくということは意味をなさないではないか、アメリカの提案は撤回したらどうかという話を、実は極東軍の参謀総長にまで申し入れたこともある。その際極東軍の意向としては、当面人員が急激に減つて行く、もしくはアメリカ軍が引揚げるという問題の考慮をせずやつてもらいたい。将来その準備の必要な時期には相談するけれども、当面の問題として、アメリカ軍の引揚げもしくは極端な人員減少という問題は考慮に入れないでやつて行けるという成算があるからという公式の返事もございましたので、当面の計画には、アメリカ軍が帰つてしまうからという考慮は、必ずしもそのままの形では入つておらないというのが事実でありますが、いろいろな面において、給与の基準なりその他の面において、臨時の性質のものであるからという考慮は、各所に払われていると考えております。
  166. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ただいまの御答弁によりますと、相当長期に雇用できるのではないかというような予想も一部ではあつたような口吻でございますが、それはそれといたしまして、こういう種類の労働は、そう安定した雇用を期待することは、政府考えていなかつたと思うし、当然そうだと思う。やはり何か条件の上でそういうものを満たすことが、こういう雇用契約の通例だと思う。ただ、今長官の御説明によりますと、一般公務員よりは、給与の点で多少上まわる待遇をしているかの御報告でありましたが、それにいたしましても、ことに私のお尋ねしなければなりませんことは、極東軍と日本政府の間にそういう特殊の契約ができなかつたとすれば、そういう被害をこうむる労働者に対して政府が何らかの補償をしなければならぬことになるわけであります。政府が補償するよりは、米軍が当然この雇用契約の中にそういう条件を盛り込むのが正しいと思つてお尋ねしたわけであります。それができていないということになりますと、こういうように不測の大量の解雇が行われますと、労務者の方では多小給与が公務員よりいいという程度でありましても、だしぬけに解雇されることになりますと、その生活ははなはだ危機に直面するわけであります。民間でも、日本の労働契約の慣例にもありますように、そういう場合には特殊の手当を出す、たとえば規定の退職手当がありましても、そういう場合には相当高率な解雇手当を加算するのが慣例であります。政府でも行政整理の場合等においては、通常定められた退職手当もしくは退職金のほかに、相当額の加算をして相手方を納得させるというやり方をしておるわけであります。こういう点から考えましても、こういう労務者の大量解雇のためには、何がしかのそういう条件が用意されていたのではないかと思つて、お尋ねをしたわけであります。不幸にしてそれがないとするならば、この契約は一般の契約と違つて団体交渉が相当制約を受けておる、すなわち日本政府と極東軍の間に、あらかじめ基本契約が結ばれて、そのわくの中で労働条件の団体交渉の自由が認められておるわけでありますから、そういう立場からいたしましても、通常の雇い主よりは、一段とこういう場合においては、その雇い主である政府は、高い責任を問われるわけであります。こういう点から、何か特別の手当をこの際考慮されておるのかどうか、この点をお尋ねいたしたい。  それから、次にお尋ねをいたしておきたいと思いますのは、時期の問題であります。今、市川参考人からも、ある主張されておりますように、日本の年末というのは、労働者にとつては入費その他生活の上で非常な負担のかさむ月であります。ことに正月、二月、三月については、就職に最も困難な季節でもあります。こういう時期の解雇は、労働者にとつては致命的な打撃を受けることは、精神的にも物質的にも同様でありますが、こういうものを避けるために、いろいろ陳情や交渉が行われておるのであります。よしんば一箇月延期いたしましても、正月の月末でありますから、最も悪い時期であります。二月、三月というふうに、長期の延期ができれば別でありますが、こういう時期にぶつかるし、重ねて私どもは、今度の解雇問題については、日本の失業問題に非常に大きな影響を与えるものと考えております。この十八万ないし十九万といわれております労働者は、おおむね海外の引揚者、もしくは内地で就職の非常に困難であつた失業者が吸収されておる労務の姿であります。こういう労務者が、一挙に大量に失業者として街頭にほうり出されるときには、その人たちの就職が困難であるだけではなくて、政府が今とりつつあります財政、金融、産業政策を一瞥いたしましても、企業合理化のもとに相当の首切り、事業の縮小が行われ、多数の労働者が失業いたしておる。しかし期間といたしましては今日失業保険が六箇月の間、その生活の全部を保障するに足らぬにいたしましても、その手当によつてある程度の失業者の次の就職の機会まで生活する余裕がありますし、そういう時期でありますから、いきなりその失業者は従来就職市場に現われて来たようなはげしい社会問題とはなつて来ないかもしれませんが、それが四箇月たち、あるいは六箇月になりますと、大量のやはり生活不安から来る社会問題を誘発して来ることは、多少でも政治に関心を持つ者としては留意しなければならぬ事柄であると思うのであります。あたかもこういう時期の悪いのが折り重なつて出て来るのでありまして、そういう場合に、先ほどもちよつと労働大臣からお答えがありましたが、相当大量の解雇が今後も引続いて起るのではないかという予測ができるわけであります。こういつたよう関係を考慮いたします場合には、こういう種類の特殊の職場にある労働者については、やはり特殊の就職あつせん、ないしはそういう人々の生活を保障するに足る政府の労務政策があるべきだとわれわれは思うのであります。その点をこの際明らかに伺つておきたいと思うのであります。  なお具体的に聞きたいのは、そういうものに対する何か特殊の就職あつせんの方法でもお考えかどうか。今、市川参考人のお話によりますと、失業対策連絡協議会といつたような機関を活用するように要望しておるようでありますが、こういう機関が、はたして今言つたような問題を処理するに値する機関であるかどうかも伺つておきたいと思います。いろいろ具体的にお尋ねをいたしたいのでありますが、お答えによりまして二、三またあとでつけ加えたいと思います。
  167. 福島愼太郎

    ○福島説明員 初めにお尋ねのございましたこういう一種の行政整理と申しますか、予算削減による整理、希望退職にあらざるいわゆる軍命令の解雇である以上、特別退職手当が考慮されなければならない、一般の公務員等の例に徹してもそういう制度が考えられなければならないという点でございますが、駐留軍労務の関係については、日本政府としては、アメリカ側から管理費と名づけまして、一定の金額を積み立てさせまして、これを退職資金に充てるという措置は別途とつてあるわけでありますが、これは普通の制度による退職金に充てることになつておりまして、こういうような場合の特別加算をした退職制度というものはないのであります。これにつきましては、新しい基本契約の附則の交渉の際に、日本政府側としてはアメリカ側に提案し、アメリカ側としても若干は考えつつあるという状況ではありますけれども、目下交渉中でありまして、苦慮しておりますのは、当面の今年の年末の解雇には間に合わないという事実なのであります。将来のことは、交渉上いかように相なりますかわかりませんけれども、正直に申しまして、組合要求せられておりますような八割というようなものが実現するかどうかということについては、私もまつたく見通しが立ちませんけれども、そういつたものについて、現在交渉が行われておるということは事実であります。ただ重大な問題は、申し上げましたように、当面の解雇には間に合わないという点にあるわけでありまして、当面の解雇は、従来の方式に従いまして積み立てました退職資金によるということになるわけであります。それがこの年末の解雇という問題に関連いたしまして、状況を非常にむずかしくしておるということになるわけでありますが、当初この計画が出て参りまして以来、年末、年始の解雇は困るという申入れは、かなり強くいたしまして、先方も年末、年始の解雇は避けるという軍命令は出したわけなのであります。ところが、上半期決算に備えての整理であるという意味で、来年に持ち越すわけに参らぬ、年末はいかぬということになりますと、早く整理をやるということになる、早くやれば年末年始はもらえないということになる。年末手当は与えてもらいたい、年末の解雇は困るという一見矛盾した二つの要求をしなければならないということになりまして、非常に交渉は難渋をきわめておるわけでありますが、先ほど来申し上げましたこの当面の解雇、かれこれ四千五百になる軍関係当面の解雇のうち、当初の情報では約二千が年末手当をもらう直前に解雇するか、もしくは予告にかえて三十日分の金を払つて年末手当を逃げるとかいうくふうのもとにされておるというのは事実でありますので、これに対して折衝を重ねておりまして、これまたでき上つてみませんと何とも申し上げられぬのでありますけれども、年末手当をもらわずにこの年末に解雇せられるというケースは相当に減少させることができるであろう、少しよく申しますれば、年末手当のことは何とか解決できるのではないかというような見通しを持つておるわけであります。年末手当なしの解雇を受けるというケースは、関西方面の先ほど市川委員長からお話のありました部分は、ちよつとわれわれの方は情報が遅れておりまして、私の一昨日あたり持つておりました数字には入つておらなかつたのでありますが、東京関係の、先ほどお話がありましたTODの赤羽の兵器廠関係の八百人が十三日に首切られる、キヤンプ横浜、横浜関係の千二百三十名のうち二十六名だけが、年末手当をもらつて、あとは全部もらわずに首切られる、もしくは金だけもらつて即日解雇になるというような事例に対しては、再調査を依頼し、再考も要求し、逐次直りつつあるというのが実情でありまして、最も困難であろうかと思われました東京兵器廠関係の八百人ばかりの分が好転したそうでありまして、横浜関係の分は再検討中でありますので、これも逐次好転して行くのじやないかと考えております。年末に際会いたしました解雇を、来年の六月までの繰延べた間に実行できれば、自然減員が相当ありますだけに――十八万五千と申しますか、十九万と申しますか、その三%ぐらいに該当します五千人にならない解雇の問題が、月別の量が相当になりまして、自然減員によつて処理されないということが、非常に不可能な事態でもあり残念であるのでありますが、これはいかんとしても十二月までにやらなければならない。これまたいたし方がないとすれば、せめて年末手当の問題を解決しなければならないということに、当面の重点が置かれておるわけでありまして、少くとも年末手当の問題については、ある程度の見通しを持つに至つたというふうに考えております。  それに関連いたします失業対策の問題にいたしまして、調達庁に失業対策連絡協議会でございますか、そういうものがあるのだそうであります。これははなはだ何とも申訳ないのでありますが、私今回役人になりまして三箇月にしかなりませんので、当初から基本契約の交渉その他で熱中しておりまして、その連絡協議会なるものの存在を知りません。そのくらいですから、あまり従来は働いていないのではないかと思いますけれども、事ここに至りましては、さようなことを申してはおられないのでありまして、もし欠陥がございますならばこれから拡充いたしまして、どこまで参りますか、ちよつとどうもこの場で何とも申し上げかねますけれども、役に立つような組織に直しまして、力を入れてやつて参りたい、また労働省その他の向きにもお助けを願つて、でき得る限りの実績を上げて行きたいと考えております。
  168. 井堀繁雄

    ○井堀委員 たいへん時間が遅いので、ごく簡潔に終りたいと思います。  今のお話で大体要領を得たのですが、今交渉中の事柄のようでありますので、せつかく御努力をお願いするという希望を申し上げ、交渉の過程において、できるだけ年末年始を避けて妥結ができればという御努力を期待いたすわけであります。そこで、万一にもごく少数でも、その事前に解雇を承認しなければならぬという事態が発生した場合には、交渉内容になることでありますが、さかのぼつて次の条件を満たすよう措置をとるべきではないかと考えておりますが、約束をここでこれるということはもちろん許されぬにいたしましても、そういう御意思で交渉をなさることをお考えであるかどうかを伺つておきたいと思います。それから職業紹介に関することであります。あまり先を急いで質問をするでありますけれども、これは交渉で今調達庁長官の御協力が実を結び、進駐労の諸君の要求が努たされたと仮定いたしましても、解雇の取消しということにはならぬのじやないかという委員長の報告なり調達庁のお見通しのようであります。そうすると、結果は二月延びるか、三月先に行くか、悪くすれば二月ぐらいじやないかという、きわめて見通しについては芳ばしからざるもののようであります。それにいたしましても、二月、三月は一番求人者の少い時期です。民間の場合には、こういう駐留軍の労務の中にはいろいろあるようでありますけれども、おおむね未熟練の労働者である。こういう人たちの就職が日雇い労働の方に向けられるということになりますと、今日の日雇い労働は、そういうものを吸収する余力はないのではないか。そういうところに余力があると思つていられるかどうか。ないとすれば、どういう方向にそういう人々をあつせんされるという御計画をお立てになつておるかを伺つておきたいと思います。
  169. 福島愼太郎

    ○福島説明員 万が一にも――全般的に年末手当を獲得するように全力を上げて交渉をいたしておりますし、実は今朝もその交渉をいたしたのでありますが、市ケ谷の司令部も相当にきようは気を改めてさらにやり直すの努力をするようにもなりましたので、正直のところを申し上げますと、大した悲観はしておらないのでありますが、万一にも、数はあるいは少くなるかもしれませんけれども、もらえないものが出たらどうする、こういうことになるのだと思いますか、そういうことになりますと、何とも申し上げかねるのでありますが、これは一般会計の方で何とか救済を願うという方式があるかないかということになります。一般会計まで話を持つて行きますと、御承知通りこれは非常にむずかしい問題になるのであります。しかしながら、調達庁が所管しておる、いわゆる管理費としてアメリカ側から手数料をとつておるのにから、その中から何とかならぬかという問題も考え得るのじやないか。これは一人につき、御承知通り四千六百二十九円というものを、政府は、忌憚なく申せば手数料をとつておる。頭をはねておるということにもならぬことはないのでありますが、実際はねておるのでも何でもなく、これは退職手当の対象になり、あるいは調達庁の人件費にもなつておる、保険その他にもなつておる、また調達庁並びに駐留軍労務者関係の事務費にもなつておる、こういうことになるわけであります。そういう面から出て来るか来ないか、その他の方法がアメリカとの関係においてあるか。アメリカは各部隊の予算をしぼられておるわけでありますから、しぼられていないような金がどこかにアメリカ側にありはしないか。現在の問題では二千――横浜関係の千二百人は、もう先般座間まで交渉に参りましたのですが、これは逐次考える方向へ動いておるであろう。TODの八百は解決したということになりますと、数としてそう大した数ではなかろう。その場合に何かしらの用意がなければならぬということは、御指摘の通りでありますので、簡単なことを申しますれば、その場合に日本政府において何かするように、大蔵省とも談判をすると申せば簡単でございましようが、簡単であるようで簡単でないような問題で困難なことがありますので、それ以外のくふうも極力いたしてみたいと思います。漏れる人のないようにということには、くふうして参りたいと考えます。
  170. 江下孝

    ○江下説明員 お話通り今回の整理に予定されているのは、相当な数で、これが一度に失業者といたしまして求職者として参りますと、安定所としては、先ほど申し上げました職業あつせんには困難な問題に逢着するのであります。とりあえず、お話のごとく失業保険ということになると思います。失業保険になりまして六箇月間、その間に、私どもとしましては安定所を督励いたしまして就職あつせんをさせる、こういうことになると思います。特に今回のものは、一時にあつちこつちに大量に出ますが、従来私どもこういうものに対処いたします安定所としての経験を積んでおる点もあります。引揚者等が大分入つて参りましたときも、相当重点施策といたしましてこれを促進しました結果、ほかの職業あつせん部門に比べまして、非常にいい成績を上げていることも御承知通りであります。なお急に五千人なり一万人なりというものが出ます場合にも、どうしてもやはり従来の技能では配置転換ができない人もあります。こういう人は、これも十分とは申し上げられませんけれども、全国に一応三万五千人収容できる補導所がございますので、失業保険をもらいながら職業補導機関に入りまして、技能の訓練を受けてやる  というようなことも、できるだけ優先的に扱つて行くというやり方をとりますれば、まあ今回の措置といたしましては、私は何とかやつて行けるのじやないかという気持を持つております。しかし、いずれにいたしましても、なかなか困難な問題だと考えおります。なお、こういう事態が今後発生するということにつきましては、先ほど調達庁長官お話もございましたように、協議会を少し強化、活用するという面も目下考えております。
  171. 井堀繁雄

    ○井堀委員 他の委員の方も関連質問があるそうでございますから、これでやめたいと思いますが、ぜひこの機会に調達庁長官にもお願いしておきたいと思いますが、元来この種の問題は、私は多分に極東軍、アメリカに責任のある問題だろうと思うのです。ことに関係が軍の直用労務でありまして、軍の作戦に直接つながる労働問題でありますから、本末を転倒されないように強い交渉が望ましいと思うのです。何ぼ極東における治安を守るための一貫した政策であるといたしましても、直接その労務の関係の処理を誤りますと、今日の国際関係におけるきわめてデリケートな傾向というものは、私は科学、武力によるだけの、実力によるだけの攻防戦じやないと思う。こういう問題の処置を誤りますと、国内の思想問題に与える影響が甚大であることは、申すまでもありません。今日の国内的なかかる問題は、単なる日本国内の問題だけにとどまらずして、国際的につながる最も敏感な内容を持つ事柄でありますから、こういう点については、やはり正々堂々と日本の主張を振りかざして、限られた失業の問題、限られた労働者の生活保障といつたような限界にとどまることなく、このよつて起る結果が、軍の作戦がいかに巧みでありましても、結果において水泡に帰するおそれを来す内容のものであるということをぜひ強調して、解決についても万遺憾のない結論が出るように、私は御努力をお願いしておきたいと思います。また一方には、こういう種類の労務でありますから、長期の雇用安定を期待することはもともと許されぬことでありますから、これによつて起る国内の失業問題に対するしかるべき処置も、考慮のうちに入れられて、労務行政の中の最も重要な一つの動きであることを銘記されまして、予算措置その他については十分強調されて、こういう問題が十分消化できるように、失業対策なり労務行政として重視されることを希望いたしまして、私の質問を打切りたいと思います。
  172. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 多賀谷真稔君。
  173. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 市川参考人にお尋ねいたしますが、大体今度の被解雇者で、退職手当はどれくらいもらえるのか。段階別でもよろしゆうございますし、勤続年数側でもよろしゆうございますが、お伺いいたしたいと思います。
  174. 市川誠

    ○市川参考人 駐留軍の労働者の退職手当の規定は、次のようになつております。一年間完全に勤務いたしまして、そして軍の都合によつて解雇される場合には、まず基礎といたしまして、その者の基本給一箇月分が支給をされることになつております。その上に勤続年数一年について一箇月分の率でありますので、満一年勤務した後に解雇される場合には、二箇月分の退職手当が支給される、こういう計算になつております。この基礎の一箇月は、いかなる年数を経ましても一箇月にとどまつております。あと勤続年数に応ずるところの逓増率は、満二年以上勤続した場合には一・二倍されることになつております。満五年以上勤続した場合には、一・五倍されることになつております。しかし大部分のものは昨年のいわゆる条約発効時におきまして、占領時代の退職手当については高率補償の措置がとられまして、今年国会でいろいろ御審議いただきました清算方式によりまして、昨年の四月までの分は、それ以前の勤務者であります者は、すべて清算支給されておりますので、大部分の者は昨年の四月二十九日が勤続年数の起算点になつております。従つて勤続年数は、十二月といたしましても一年と八箇月ぐらいということになりますので、端数の月数につきましては一箇月の十二分の一という率で計算をすることになつております。大体ベース賃金といたしましては、技能工と事務系では、平均賃金にも差があるのでありますが、私どもの調査では昨年のベース改訂後の平均賃金といたしまして、事務系統も技能系統も、平均いたしまして一万七千三百八十七円というような数字を計算いたしておるのであります。なお若干の昇給等の異動はありますので、百円台においては若干の増減はあると思いますが、そのようなベース賃金になつております。
  175. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 特別調達庁の長官から、一般の公務員についてよりも、給与においても、また退職制度においても若干有利である、こういうようお話がありましたけれども、一般公務員は、入りましてから一生涯をその仕事にささげる、こういう意味の雇用契約であります。ところが駐留軍関係の労務者は、先ほど井堀委員から御指摘がありましたごとく、非常に短期間の雇用契約であり、いつ首を切られるかわからない不安のうちにあるわけで、あまり前途ある仕事ではないようであります。そこでこういつた問題は、カーブにいたしましても、普通の会社とかあるいは公務員にいたしますと、一年から五年、五年から十年というのは、比較的ゆるいカーブであります。さらに十年二十年に行きますと、カーブが上昇するという傾向をとつておりますけれども、こういつた業種の労働者は、初めからカーブが、かなりげたをはかせておかなければいけないものだ、そのよう考えておるわけであります。そうしますと、今度退職する労務者は、ほとんど二万円少しくらいしかもらえない、こういう状態であります。これではとうてい今後いろいろ他の職業に転ずるにいたしましても、なかなか困難であろうと思うわけであります。そこで私お尋ねいたしたいのですが、私は退職金制度を何らか確立をして、もしもどうしても軍と交渉してうまく行かない場合は、安全保障費の中からこういう金が出されはしないか。考え方によりますと、たとえば、日本の住民が軍の仕事によつて損害を受けた、こういう場合には当然使われる金ですから、私はそういう制度が、アメリカにどうしても認められない、こういうことならば、一般の民間企業におきましても、現在企業整備あるいはその他で解雇される場合は、三箇月や四箇月のげたをはかしておるわけであります。でありますから、当然こういつた制度を政府としては考えるべきではなかろうか。ことに公務員の場合は、政府はかなりの金額を支給するように、特別にそういう措置を講ぜられておるのでありますから、当然こういつた労務者にも、私は考え方として、理念の問題としてはでき得る、かよう考えるのですが、一体調達庁長官はどういうお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  176. 福島愼太郎

    ○福島説明員 こういう問題に対しまして、特別退職金の制度が必要であるということは、私どもも感じておりまして、そのゆえに現在アメリカとも話し合つておる次第でございますが、申し上げましたように、当面の問題には、いかんとしても間に合わないという事態に当面しておるわけであります。それから大体二万円程度の退職金にしかならぬという仰せでございましたけれども、駐留軍労務の関係の退職、これは私もほんとうのことは詳しく御説明できかねるのですが、非常にめんどうな関係がございまして、簡単に申しますと、講和条約の発効のときに、公務員の資格から契約に切りかえまして、そのときに一ぺん退職金をとつたわけです。ですから、もし退職金というものがプラス・アルフアーということできまつて行くものであるなら、その一をとつて、そうしてもう一ぺん一プラス・アルフアーで始まつて、基礎になる一を二回とるということになるわけでございますが、その点がほかの一をとるものとかなり違うわけです。現在の諸君はほとんど全部が一年半になる。一ぺん清算してしまつた形になつております。今一年半ということになりますと、一と一・五で二・五で、もし一万七千円ぐらいのベースであるといたしますと、だれもが大体四万五千円ぐらいになるわけであります。それだからと申して、特別退職手当制度を考える必要はないのだということを申しておるわけではございません。交渉上難行はいたしておりますが、なお今後努力して行きないと考えております。
  177. 中原健次

    ○中原委員 いろいろ御指摘があつたわけですが、一番最初に、今度の整理によりまして実際の仕事の量は減少しない、こういうふうに聞き及んでおるのであります。そうなりますと、アメリカ側が予算は削減したけれども、仕事の量は依然として現状のまま、あるいは場合によつてはふえるかもしれぬ。そういうようなことが事実としてあるとすれば、これは当然労働強化といいますか、そういうことにならざるを得ないと思うのでございます。このことは、初めにもよく聞き及んだところでありますが、アメリカ側の使い方としては、かなり過大な仕事量を押しつけて、それを果し得ない者は、お前の力が足りないのであるからやめてくれ、こういうことをかつて言つたこともあるわけです。従つて、そういうようなことがまた今後起つて来るおそれも予想されるわけであります。従つて、かれこれ考えますと、仕事量の問題について、調達庁としてはどういうふうにお考えになつておるか、あるいは実情はどうであるか。これは調達庁並びに市川委員長と両者の御意見を伺いたいと思います。
  178. 福島愼太郎

    ○福島説明員 整理によりまして、その後の労働強化という問題が考えられることは当然でございまして、基本契約にも、整理は整理として軍の権利は認めるが、その後の労働強化は困るという趣旨の条文も用意しておるわけでありました、今後労働強化になるということがはつきりいたしますれば、十分な交渉をして匡正をしなければならぬと考えております。ただ全般的には、むやみに労働強化状態は出て来ないのではないか。今回の整理にあたりましても、仕事量が全般的に全然同じであつて、なおかつそこに整理を出すということではないのではないか。たとえば千歳における整理の場合には、検閲によりまして過剰人員を指摘されたのが三百二十二名整理の発端になり、もしくはTODの八百人の整理というのは、特にあそこは戦車の修理工場であり、朝鮮の戦闘がとにもかくにも終つて、修理が来なくなつたというのが、八百人整理の原因であるということもありますので、全般的に一率に三%の整理を考えられたのではないので、部分々々にまとまつて出るところに、別の難問題が出て来るのであります。出て来ておるという意味は、やはり一応仕事その他の関係で、整理し得るところを整理するという考え方一つの現われであろうかと思いますが一応今後労働強化という問題はない建前というふうに了承はしております。しかも今度の整理による労働強化はさせないという方針はとつておりますので、もしそういう事態が起れば、もちろん強力に交渉して事態を匡正しなければならないと考えております。
  179. 市川誠

    ○市川参考人 仕事量の問題が、いつも整理のときの問題になるのであります。労働強化という点をわれわれが主張をして行く場合に、軍側といたしましては、要するに作業をさせないということを言うのであります。たとえばどういう作業形式になつているかというと、職場における作業は、ワーク・オーダーとして作業命令が出るわけであります。ところがその作業命令は、他のセクシヨンから要求が来まして、たまつておりまして、首を切るというときには、仕事をホールドしておいて、仕事のない状態にして首を切る。首を切つたあとは、たまつた仕事を残つた人がやらなければならぬという状況を、たびたび経験しているわけであります。たとえば、千歳の場合においても、厳冬期を迎える北海道におきまして、たとえばボイラーを三人で一基担当しておつたところで、一人減らしますと、かなりの労働強化になるわけであります。それらも、軍側で機械的に人員整理をやるということに対して、組合側がそれでは仕事ができぬじやないか、ボイラーの首を切つたら、だめじやないかということで、それならほかを切つて、ボイラーの首を切るのをやめるというようなこともあるのであります。今までわれわれの支部から聞いております範囲では、その後作業量が減つたというようなことは、あまり報告を受けておらないのであります。いよいよ現地の交渉になりますと、かなり労働強化の問題があると思います。今までも、いろいろ調査したのでありますが、各職種においては、適正な労働量に関するいろいろな権威資料がないものでありますから、この問題はいつも水かけ論になつて、軍側としては仕事を出さない。もし具体的に労働強化を伴うようであつたならば、あるところについては減員の問題を考慮しようというようなことで進んで来たのでありますが、そういう動、きは、今度は予算削減が、ワシントン司令部からの至上命令でかなり強く出て来ておりますので、若干は首を切るためにある期間は仕事をホールドして、職場には仕事がない状態にして切られるということは、予想できるのであります。
  180. 中原健次

    ○中原委員 それで考えられますことは、おそらく仕事の絶対量は依然として続くはずだと思いますし、そうであるならば、今後一層この問題は注目を要すると思うわけであります。それだけに、特に調達庁長官にお聞きしておきたいことは、さきに調印されました基本契約のことであります。この基本契約がある程度まで、労組側の要請を不十分ながらもいれた点があつたというふうに聞き及んでおるのでありますが、さらにこういうふうな労働強化等等の問題に関して、あるいは定員の適正の問題等について、かなり日本側のいわゆる労務供給側として、相当これに介入をして行くことのできるよう措置を十二分に確保しておいていただかなくてはならぬのではないか。すでにそういうふうにでき上つているだろうと期待しておりますが、こういう点について、基本契約並びにいまだ決定していないと聞いております附属協定の問題について、一応これとの関連における御説明を伺いたい。
  181. 福島愼太郎

    ○福島説明員 基本協定は、御指摘の通りに十月一日付をもつて調印せられまして、その後のこれに伴います附属書の交渉に移つているわけでありますが、これかアメリカ側の陸海空三軍の内部的な打合せに手間取りまして――もつとも分量も非常に多いのでありますが、今日まで完結を見ないのであります。そのうちの最も重要な管理手続に関します第三附属書も、アメリカ側の案を昨日手に入れたような時期になりまして、場合によりましては、本日  の午後は組合諸君にも参加してもらつて、三者会議というふうなこともちよつと考えたのでありますが、一応その辺のところまで参つたわけでございまして、今後四つの附属書全部の完了を押し進めて参りたいと思つておるのであります。  人員整理に関します部分につきましては、この本協定と申しますか、主文の方に、人員整理の際は、あとに労働強化を残さないように日本側と協議するという趣旨の規定を盛つておるわけでありますが、協定全体というものが、附属書全部の完了を待つて効力を発生させよということになつておりますために、お預けを食つておる、その間にこういう問題が起つた、こういう事態にあるわけであります。そこで、附属書の進行がある程度進みますれば、これを促進して参ることが大事なことになつて参りますが、これがまだまだ手間取るということになりますと、せつかくできた基本協定がお預けを食つたのでは助からないわけでありますので、これの全部ができ上るまで、部分的にも逐次効力を発生させて行くという措置が必要にもなり、その交渉が必要になるということになります。ただいまの人員整理の点はもとよりであります、なおさきに非常に問題になりました保安解雇、そういつたものについての部分発効の問題を目下交渉をいたしまして、全体ができ上らなくても、大事なところだけでも効力を発生させようという努力をしている次第でございます。
  182. 中原健次

    ○中原委員 この付属書の協定の問題は、ただいまの御説明でもわかりますように、やはり早急にとりまとめていただかぬことには、いろいろまたトラブルを起す場合もあるかと思うのです。従つて、これは向うさんの三軍間の話合いの中にいろいろのこともあるように想像されますが、しかしながら、基本協定をした以上は、当然この基本協定が満足に実施できるようにやつていただかぬことには、これは意義がないと思います。それから、これは申し上げるまでもないと思いますが、今度の経験を通してもわかりますように、よほど馬力をかけて、大急ぎでやつていただきたいということを希望申し上げておきます。  なお、それと関連いたしまして、これは先ほど労働大臣が答えられた点なんですが、今回の人員整理に関連しては、もちろんこの基本協定に基いて事前の調整ははかつたのである、こういうふうに大臣は答えております。もちろんそうであろうと思いますが、そうでありますと、事前調整に日本政府が応じてこれを承認したとすれば、当然今度の人員整理については、日本国政府の同意に基く整理ということになると思います。そうであればそれだけに、政府承認を与えて了承して、これだけはやむを得ないという結果として起つた整理ならば、当然この整理に対する対策というものが相当はつきりと確立していなければ、責任を果したことにならぬ、こういうふうに私は思うのです。これについて長官の御見解を伺いたいと思います。
  183. 福島愼太郎

    ○福島説明員 大臣が御答弁になりましたときに、私不行届きでここにおりませんでしたので、伺つておりませんですが、そういう趣旨のお話がありましたといたしますれば、今回の整理の員数というものに日本政府が同意したというのではなくて、現在の約束によりまして、十五日以前に本人に通告する、十五日以前に日本政府に申し込んで来なければならないというとりきめに違反したケースはない。十五日間の余裕をもつて日本政府に通告があり、日本政府は十五日後に、それぞれ本人に三十日の余裕を与えて解雇通告をした、その日本政府に対する規定の予告期間に違反したものはない、そういう趣旨であろうかと思うのであります。私どもといたしましては、きまりは十五日でありますけれども、これほどの整理があるならば、できるだけ早く、いくら早くてもさしつかえないから、半年でも、三箇月でも早く相談をしてほしい。いわゆる約束によります通告とか、ノーテイスというものではなくて、とにかく相談として持つて来てもらいたい、その上で日本政府もいろいろ考えてみようというようなことをやかましく言つておるのでありますが、今回の整理にあたりましては、そういう意味の前びろうの相談というものが十分でなかつたということは、確かに事実でありまして、アメリカ側を私ども責めておるわけでございますが、日本政府に予告があつたということは、十五日の予告は全部あつた、こういうことであろうかと思います。これは通告があれば、それによつてこれらも検討を始めるのであります。そういう意味で、異議は申し立てなかつたでありましようが、日本政府が同意をしたということではないと私は考えております。従いまして、五千人とかいうふうな報道に接しまして以来、数についても、私どもも文句を言い、時期についても文句を言い、年末年始をやめさせるとか、あらゆる交渉をしている次第でありまして、事前に調整をしたと大臣がかりに御説明なつたとすれば、おそらくはこれはさような意味であろうかと考えます。今回の整理が、ワシントンの最終的な命令という形で・三〇%近い予算削減というものが来た、それが三%だけ日本人労務者にしわが寄つて来たという意味において、いたし方ないとは、正直のところ私も考えておりますが、決して同意を与えたというふうには考えておらない次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  184. 中原健次

    ○中原委員 その点につきましては、大臣の表現は実はちよつと違つておつたわけです。むしろこれくらいはやむを得まいというふうな、ある意味で言うと妥当性を肯定したような表現をしているのでありますが、そこにあなたがいらつしやいませんでしたから、さらに追究することをやめたわけです。  そうなると、あなたの言葉でもわかりますように、いずれにいたしましても五千人の人たち、組合側が最大限に譲歩に譲歩をいたしまして、せめても八〇%の割増しをつけてほしいということと、それから年末手当は当然つけるようにしてもらいたいというこの最小限度の要請に対しては、やはりある意味では、一種の絶対性というくらいの心構えで――いや、絶対性としてこれをお取上げ願わぬことには、適当な結果にはなりがたいのじやないか、こういうふうに思います。何といいましても、職場を失います者の心境というものは、実にたいへんなものでありまして、飯びつをとられるわけでありますから、飯びつを失うであろうという不安がある。そういう不安定な状況下で、こういう仕事、職種についていらつしやる方たちに対しては、政府としても、初めから事前にそれだけの構えばあるべきものだと思うのであります。それで失業対策連絡会議などというものもあり、あるいは退職積立金のこともお考えになられたでしようが、しかしそれらのことがせつかく対策として持たれたとしても、その対策が生きるように持たれぬことには、やはり空文に終りますし、ただ単にそういうものを考えたし、そういうものがあるということだけでは意味はございません。従つて、これはどうしてもただちに強化して行く、その要請にこたえられるだけの機能を発揮できるようにしていただきたい。これらのことにつきましても、申し上げるまでもなく、すでにそれぞれ着々努力を払つておいでいただけるだろうとは思いますけれども、やはりこれが、ただ努力はしてみたけれどもという結果になつたのでは、はなはだ困るわけであります。これについては、もつと積極的な態勢をおとり願いたい。労働大臣も、先ほどいろいろ言つてはおられましたけれども、やはり今のよう考え方も多少食い違つて来るというようなこともありますから、その間十分連絡をおとりいただいて、政府のあらゆる関係機関が総動員でこれをみごとにやつてのけるというふうな構えにしていただきたいと思います。  なお先ほど市川委員長の報告にもありました船員の不当な現地首切りの問題ですが、これらも現地に派遣されておつた船員諸君は、相当ひどい条件で働いておつたと聞いておりますし、かなりそうした人たちにとつては、特殊な労働下にあつたように私どもは聞き及んでおります。そうした人々がこの際、しかもたまたま予算削減ということにかこつけて、しかも仕事がなくなるのでなくて、聞くところによると、他の外国人をもつてこれに入れかえるというようなこともあるかに承つております。もしそうだとすれば、なおさらのこと、ちよつとやり方が、いわばえげつなさ過ぎる、ひど過ぎる、こういうように思うのであります。危険なところに使つておいて、そうしていまさら向うの気に沿わないから、これを急遽馘首する、そうして他の外人に振りかえて行くための犠牲だとすれば、なおさらのこと、これはやはり相当政府としては強い発言をしていただかなければならぬ。行政協定は、労務を提供する約束はしておいでになるが、しかし労務を提供する約束をしておるということは、どのような条件でもいいということではないはずであります。日本の国内法が少くとも最小限度、いやそれ以上に待遇される、あるいはそれより以上に使用者側の米軍の方としても、これに答えを出すというだけの誠意を求められなければならぬと思いますし、そういう意味もかれこれ勘案いたしまして、朝鮮の現地戦線における馘首の人たちに対する問題、これは特殊の問題でありますから、応それに対する見解をこの際承りたい、こういうように思います。
  185. 福島愼太郎

    ○福島説明員 御指摘のございました十月十日前後に朝鮮から帰つて出ることになつております四百七十八名の船員の関係は、実を申しますと陸軍関係四千三百でありますか、その関係の中で、私としては一番頭の痛い問題になつております。これは先ほどちよつと申し上げたかと思いますが、四千三百が全部予算削減による整理ではない。検閲により過剰人員を指摘されたほかの理由もございましたが、朝鮮の船員の場合、船員と申しましても、これは海軍の関係でなく陸軍関係になるのでありますが、朝鮮に二年ほど行つておつた連中が、朝鮮におる間上陸できないで船の中にカン詰めになつておるという非常に同情すべき労働状態にありながら、帰つて来ると首になる、そういうことでございます。どうもはなはだぐあいが悪いのですが、先ほども申し上げております三十日の予告というものが、船員の関係ではない、二十四時間のノーテイスで首が切れるということになつておるということが、まず第にいかぬ。上陸すれば首を切る。しかも仕事がなくなつておるのではなく、外国人をもつてとりかえるのはけしからぬじやないかということも、もちろんございますし、私どもも、そのために座間の参謀長まで会いに行つたのでありますが、先方の説明では、南鮮の政府が日本人をつれて来るのは困るという強硬な反対をしたがために、残念ながらとりかえなければならぬのだという、こういう説明なんです。文句があつたら朝鮮の方へ言つてくれ三言わんばかりなので、閉口しているのです。従つて、船員が外国人とかわるということは、朝鮮政府との交渉ということができればともかくでございますが、それができないとこれはいたし方ない。しかしながら、上陸して二十四時間で首を切るという法はないじやないかということで、やむを得ずただいま押しているところであります。たとえば箇月くらい予備役とかなんとかということで、陸上で給与を払う方法がないか、そういう点で押しておりまして、どだい外国ととりかえること自体がけしからぬということにつきましては十分な交渉のできかねるということで、はなはだ良心にとがめている次第なのであります。なお、即時解雇といつたようなことにならないように、もう少し交渉してみたいと思つております。今日のところ、これにつきまして確たる御答弁ができません。最も悪いケースであるということを申し上げざるを得ないことを、はなはだ恐縮でございますが、一応御了承願います。
  186. 中原健次

    ○中原委員 そういたしますと、船員の人たちの場合は、基本契約の各条項には該当しないのですか
  187. 福島愼太郎

    ○福島説明員 私も今ここで聞いてよるような始末ですが、基本契約の適用はあるのですが、船員法に三十日の予告という制度がない、こういうことだそうでございます。
  188. 中原健次

    ○中原委員 この場合、やはり船員の扱いをする、こういうことですか。――しかし日本の船員の人たちの場合には、また独自の協約があると思います。やはりそういうことであれば、これも向うに適用して、そういうことにすることが可能だと思います。いずれにしても、長官も言われたように、非常に気の毒な労働事情のもとに仕事をさせられた人たちでありますし、何とか筋の立つたことに、ぜひともしていただきたいということを希望申し上げます。  最後に、参議院労働委員会が決議いたしまして政府に対して申入れいたしておりますが、この九項目にわたる申入れについて、何か御相談でもできましたでしようか。あるいはそれに対する何か御見解でもおありでありますれば、伺いたいと思います。
  189. 福島愼太郎

    ○福島説明員 参議院の御決議が八日の晩にございまして、私どももおりましたのでございますが、大体この参議院の御決議の内容につきましては、組合からかねて私どももらつております要求と申しますか、要望事項の中に入るわけでございますので、われわれとしてはこの大部分について、参議院の御決議以前から対処もし、努力もしておるつもりでございます。ただ、最後にございますいよいよいかぬ場合に日本の政府予算でもとつたらどうかという点があるのでございますが、この点は、実のところまだ協議は開始しておらないのでございます。これは大蔵省へ私どもが仕事をおつつけて涼しい顔をしておればいいという、扱い方によつては簡単なことでございますけれども、この節一般会計から金をとるというのは、さよう容易なことではないわけであります。それよりも、それ以前に何とかしてアメリカの金をとりたい、何とか方法はないかということで、全力をあげておる次第でもございますし、かたがたこれは八日でございますが、昨日、本日司令部の方に入り込んでおるというような始末でありまして、この点の研究は、まだ各省とのに協議を開殆したというところまで参  つておりません。
  190. 中原健次

    ○中原委員 そういうこととも関連するのでありますが、財源の問題であります。実は全駐労組合の方から、行政協定の防衛分担金へ割込むということが可能じやないか、こういう指摘が出て来ておるのであります。これも一つのおもしろい見方だと思うのですが、こういうことで何かお考えなつたことがございましようか。
  191. 福島愼太郎

    ○福島説明員 防衛分担金というお話も実は伺つているのですが、現在のところ、これがものになるかならぬかということは、何とも申し上げかねますので、お許しを願いたいと思います。
  192. 市川誠

    ○市川参考人 先ほどの船員の問題ですが、ちよつと誤解があるといけませんので、お断り申し上げておきたいと思いますが、駐留軍関係の船員も、やはり船員法の適用を受けている船員でございます。従つて船員法が完全に適用される場合においては、下船せしめる場合には予備員制度がきめられております。民間制度の場合におきましては、予備員制度というものがございまして、船からおりる場合には予備員として待遇する。これが完全に行われておりますので、解雇というような場合にも、使用主側でやむを得ない場合には二十四時間前の予告をもつて解雇することができるようになつております。駐留軍関係の船員の場合には、この船員法は適用されておりますが、予備員制度が適用されておらないというところに、一番大きな欠陥がありますので、私どもは数年来予備員制度を施行せよということを要求しておりますが、これがないところに、船員法適用という問題において、悪い面の二十四時間前の予告ということが、予備員制度抜きで適用されるというところに非常に問題があると思います。その点御理解を得ておきたいと思います。
  193. 中原健次

    ○中原委員 これはまことに適切な御指摘だつたと思います。予備員制度の問題、なるほどこれはまさにそうあるべきかと思います。都合のいいことだけ船員法によるというのじや困るので、ぜひとも御配慮願いたい。  なお、今後おそらく逐次人員整理その他の措置があるかとも考えられる節が想像されるのでありますが、従つて、これは当然今この経験を通して、今こそこういう場合に対処する対策を相当本腰を入れて講ぜられなければならぬ、こういうふうに思います。従つて、そういうことは二つあるわけで、アメリカ側に対する措置に対しても、相当大きな配慮を求めるということと、もう一つはわが国としても、こういつた形から出て来るであろう失業者の人たちに対して、今後この失業者の人たちをどのように職場に配置導入して行くかということだと思います。申し上げるまでもないことでありますが、先ほどもお話がありましたように、まだしかるべき対策が立てられておらないよう事情でありますので、これは早急にあらゆる関係官庁が総知を集められて対策を講じていただきたい。それについては、いずれ労働委員会も継続審査になつております関係から、今月これからしばしば持たれるわけでありまするし、また明日もあるわけでありますが、労働委員会の同僚の各位もいろいろ御見解もあるようでありまするし、われわれもこれは非常に大きな問題でありますだけに、これに対して全魂を傾けて解決に持つて行きたいと思います。  なお明日は日鋼赤羽の事件を聞くことになつておりますが、そういう関係で、いろいろな部面にあらゆる好ましくない事情が出ております場合でありますから、特にそういう場合についての十分な御配慮が願いたいと思います。  時間も遅いようでありますから一応これをもちまして、本日のお尋ねを終ることにいたします。
  194. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今の船員法の適用を受ける船員の場合の解雇手当ですが、船員法四十六条の関係はどうなりますか。二十四時間で首を切ることもできるけれども、解雇手当はやらなければならない、こういう規定があるのですが、その方はどうなりますか。
  195. 福島愼太郎

    ○福島説明員 二十四時間で首を切るということは、もちろんでございますが、解雇手当は出すのでございます。  それから今の予備員の制度につきましても、現在交渉されております附属書四つのうちの第四附属書、船員関係の附属書には、予備員制度をわれわれは提案しておるわけであります。御了承を願います。
  196. 山花秀雄

    ○山花委員長 本日御出席の参考人各位におかれましては、御足労ながら明日の委員会にも御出席願いたいと存じますから、御了承願います。  本日はこの程度でやめまして、次会は明十一日午前十時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十六分散会