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1953-11-02 第17回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月二日(月曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 本間 俊一君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 中村 梅吉君       相川 勝六君    植木庚子郎君       小林 絹治君    迫水 久常君       富田 健治君    中村  清君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       山崎  巖君    稻葉  修君       河野 金昇君    河本 敏夫君       青野 武一君    井手 以誠君       辻原 弘市君    福田 昌子君       稲富 稜人君    加藤 鐐造君       三宅 正一君    吉川 兼光君       森 幸太郎君    黒田 寿男君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       灘尾 弘吉君    羽田武嗣郎君       船越  弘君    八木 一郎君       吉川 久衛君    小山倉之助君       櫻内 義雄君    古井 喜實君       伊藤 好道君    上林與市郎君       横路 節雄君    和田 博雄君       小平  忠君    河野  密君       石橋 湛山君    木村 武雄君       福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 大野 伴睦君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         国税庁長官   平田敬一郎君         海上保安庁長官 山口  傳君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十一月二日  委員辻原弘市君辞任につき、その補欠として伊  藤好道君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算補正  (第1号)及び昭和二十八年度特別会計予算補正特(第1号)を一括議題といたします。  質疑を継続いたします。中村梅吉君。
  3. 中村梅吉

    中村(梅)委員 まず第一に私が伺いたいことは、本会議の席上におきましてのわが党の石橋湛山氏が、国会が開かれたのにかかわらず、なぜ一体総理大臣施政方針演説をやらないのか、こういう趣旨質問をされましたが、総理は忘れられたのか、あるいは落されたのか知りませんが、それに対するわれわれの了解できるような答弁に何ら触れておりませんでした。私はこの機会に、この臨時国会において総理大臣施政方針演説を行わない理由を承つておきたいと思います。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは参議院において、本会議であつた委員会であつたか忘れましたが、とにかく参議院において、このたびの国会災害復旧に対する国会であるから、一般施政方針演説はいたさないということを弁明いたしております。
  5. 中村梅吉

    中村(梅)委員 災害に対するいわゆる救農国会であるということは、実を言えばわれわれの関知したところではないので、かねて野党四派が政府に対して臨時国会の召集を正式の手続をふんで要求しておつたのでありますが、なかなか政府臨時国会を開こうとしない。そこで野党の第一党である改進党がイニシアチーヴをとられまして、改進党が、とにかく災害冷害の問題は切迫した問題であるから、せめてきわめて短期のそれだけの国会でもいいから、早く開くようにということを政府に要望されまして、それで政府はこの臨時国会を開くようになつたとわれわれ聞いておるのであります。しかしながらわれわれ一般国会議員は、そういうことには何ら関知しておらないのであります。のみならず去る第十六国会の当時行われた施政方針演説、この当時から見ますならば、かなり政治上のいろいろ重大な変化を来しております。のみならず、また災害冷害につきましても、いやしくも国政最高責任者たる総理大臣がいかなる腹構えをもつて、この罹災農民罹災地の窮状にある国民を救うか、こういうことについてはその腹構えを、最高責任者としてこの機会に進んで吐露すべきであろうと私は思うのであります。ことに朝鮮海峡李承晩ラインの問題はだんだん悪化をいたしております。また吉田重光会談あるいは池田ロバートソン会談等が逐次行われまして、国民の最も深い関心を持つておる防衛の問題、あるいはMSAに関連した問題などについては、十六国会のときよりは非常に状況変化が確かにある、これは何人からも見受けられるのであります。従いまして政府は、短期といえどもいやしくもこの国会が開かれた以上は、それらの重大国政について、総理大臣としての政治上の所見を明らかにすべきものである、私はかように考えるのでございますが、この点について総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見は御意見として承つておきますが、政府の見るところは、先ほど申した通りであります。また国会を開かなかつたと言われますが、このたびの災害は、相当近年まれな災害であるということ、この実態をつかまえることについても相当時間を要し、また財源等ははなはだきゆうくつでありますから、財源の研究についても相当時間を要するので、そう急激に急遽開くというわけには行かなかつたが、政府手続が済みましたから開くことになつたのであります。
  7. 中村梅吉

    中村(梅)委員 あとで私は総理大臣通産大臣関係のある質問をいたしたいと思いますので、通産大臣出席を要求しておきます。次に私が尋ねたいと思いますのは、本委員会の席上におきましても、総理は、池田勇人君がアメリカ行つてアメリカ当局者といろいろ会談をされておる。この池田君の資格は、総理というよりは吉田個人特使である、こう説明されておるのであります。しかしながらいかに個人特使といいましても、いやしくも国政上最も重大な問題をかの地において議しておる以上は、これは純然たる個人特使ではないと認めざるを得ないのであります。社交上の使いに行くとか、社交上の儀礼のために使いをされたのならば、これは純然たる個人特使でありましようが、いやしくも国政に関する重大な問題を、また国家の将来に重大な影響を及ぼす問題を議しておる以上は、これは吉田個人特使ではなくして、総理大臣吉田茂氏の特使である、私はかように了解せざるを得ないと思うのでありますが、この点についての御所見を承りたいと思います。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 これもしばしば繰返して申しておりますが、池田氏は私の個人代表として派遣いたしたのであります。またその話すところは、互いにアメリカ側事情も聞き、日本側の財政その他の事情も述べて、あのコミユニケにあります通り説明できるというのがその会談内容であります。ゆえにこれを何と御解釈になるか別でありますが、政府としてはこれまで申した通り解釈をもつて池田氏は派遣いたしたのであります。
  9. 中村梅吉

    中村(梅)委員 個人特使個人特使でもけつこうですが、その個人たるや、内閣総理大臣という資格のある個人特使であると私どもは認めざるを得ない。池田君がやつておられるのはどう見ても、一種MSAに関連した予備交渉、あるいは予備交渉に近いもの、こうわれわれはすべての諸般の状況から判断せざるを得ないのであります。従つて個人特使であつても、その個人たる内閣総理大臣としての個人特使である、こういうふうにわれわれは見解を下さざるを得ないのでありますが、もう一度この点について確かめておきます。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 内閣総理大臣としての個人特使ということは、そのこと自身が論理に矛盾がありはしないかと考えます。とにかく私の個人代表として派遣して、日本国情アメリカ国情彼我の間に了解を進めるために出したのであります。
  11. 中村梅吉

    中村(梅)委員 その点をいくら繰返しても同じことを答弁されると思いますが、しかしながらもし何ら総理大臣としての資格のない、一純然たる吉田個人の使節、特使であるとするならば、池田君がアメリカに行かれて、ああいう国家の前途に重大な影響をもたらす問題について会談をしておるということは、池田君はまことに僣越しごくであり、総理大臣吉田茂氏も、また総理大臣でない立場においてそういうことを論議するならば、まことに潜越しごくである、私は国民の一人としてさように言わざるを得ないと思います。同時にこの委員会において今までの答弁を伺いますと、池田君からは何らの報告が来ていない。またその内容は説明できない、こういう否定的の言葉を拝聴いたしたのでございますが、私はさようなことはあり得ないと思う。いやしくもただいま申し上げたように、個人にせよ特使として行かれておる以上は、委託された人にあの共同コミュニケ発表する前に、事前に私は総理のところに池田君から報告がなければならぬと思う。もし報告をしないならば、池田という使いをした人間はまことに怠慢しごくである、こう論せざるを得ないのでありまして、私は何らかの報告が来ておると思う。われわれはアメリカからのこの共同コミユニケ発表によつて、事の次第をはるかに承知しておるにすぎない。これでは真に国民が一丸となつて国民の輿論を喚起して国家の重大問題を進展せしめることは不可能であると思いますので、この機会総理から率直に池田特使が行われておる会談経過、並びにその結論について私ははつきりと承つておきたいと思うのであります。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 交渉経過及び内容等については、この間共同コミユニケにおいて発表いたしております。
  13. 中村梅吉

    中村(梅)委員 そうすると共同コミニユニケによつて発表され、日本に報道されておるものと相違がない、こう了承してよろしいのでございますか。よく政府常套語として、新聞や何かの報道したものは、それは自分らの責任のないことである。これは木村保安庁長官九州談話ではそう言い切られておる。ですから新聞や何かで報道されたことをわれわれは信じていいのか悪いのかわかりません。ですからあの新聞に報道された共同コミユニケ内容は同一のものである、かように言明されるのでございますか。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 新聞発表されたものが、いわゆる日米共同宣言そのものをそのまま報道いたしておるかどうか存じませんが、とにかく政府として発表した共同コミユニケの内客は、すなわちこれまで話し会つた会談の内客であり、また経過であるのであります。
  15. 中村梅吉

    中村(梅)委員 そこで池田君から一体報告総理の手元に来ておるかどうかということがはつきりお答えをいただけなかつたから、報告が来ておつて、ただいま共同コミユニケと同様のものである、こういう趣旨に了解してよろしゆうございますか。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、池田君から何らの報告が来たことはないと私は申したことはありません。当然来るのはあたりまえであります。その報告のせんじ詰めたものが共同コミユニケであり、また米国側としてもこれだけのことは発表するにおいて異存がない、彼我とも異存のないところを発表したものがすなわち共同コミュニケであります。
  17. 中村梅吉

    中村(梅)委員 次に伺いたいと思いますのは、吉田重光会談における共同発表でありますが、その中にございます保安隊自衛隊に改める、この改めた場合の自衛隊というのは戦力であると改進党の方では言つておられる。どうも今まで自由党の方では、それは戦力ではない、従来の保安隊と性格はかわりないのだ、こういうように言われておるようにわれわれは新聞紙で承つておりますが、これまた新聞紙上の報道は政府常套語をもつてすれば、信用できないということになるようでございますから、私はこの機会自衛隊に改めた場合の自衛隊というのは戦力と解してよいかどうかを承りたい。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは政府が始終申しておる通り戦力に至れば憲法を改正せざるを得ない。また保安隊として今後漸増いたす、漸増いたして、そうしてその保安隊という名前が自衛隊といたすことが便利であり、国民がよくその性質を了解するならば、自衛隊としても政府異存はないのであります。その趣意でもつて話し合つたのでありまして、ただちに憲法にいわゆる戦力まで持つて行くということについては、何ら話し合つておりません。
  19. 中村梅吉

    中村(梅)委員 しかしながらこの内容を見ますと、駐留軍の漸減に即応した長期の防衛計画立てる、あるいは直接侵略にも対抗できるために、保安隊自衛隊と改めて直接侵略に対抗するということは戦力である、こういう改進党側見解がわれわれ第三者から見ても妥当であると思うのであります。憲法第九条の二項には「陸海空軍その他の戦力」と書いてある。陸海空軍だけが戦力でなくて、それ以外に一種潜在軍隊というか、潜在戦力というものがやはり憲法の上には予想されておるのじやないかと思うのであります。そこで私どもはこの点を大いに重視いたしますのは、かつて第一次欧州大戦のときに、ドイツは敗れて、勝つた連合国ドイツ軍隊を十万と規制した。規制を受けたドイツはこの規制からのがれようとして、日本の今持つておる保安隊のようなものをつくつて、青少年の訓練を猛烈に行つた。いざあけてみたら、もうすでに実質は何十万の堂々たる軍隊ができ上つてしまつてつた。こういう現実が世界歴史上にございます。わが国の保安隊あるいは自衛隊というものも、国民が知らない間にふたをあけてみたら、何十万の軍隊ができておつたということになつては、これは一大事であつて、やるならやるで国民全体と十分納得ずくで進めらるべきものである。私はかような見地に立ちまして、この点についてくどいようですが、もう一度——これは吉田重光会談発表された内容から見て、戦力と認めざるを得ないという見解を私は持つのでありますが、もう一度総理からこの点を念を押して承りたいと思います。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 重ねてはつきりお答えをいたしますが、憲法に違反するような、お話のような潜在戦力のごときを話し合つたことはないのであります。
  21. 中村梅吉

    中村(梅)委員 どうも総理がんこですから、言い出したら一つことしか答えないようですから私は進行いたします。せんだつて木村保安庁長官は、李承晩ライン朝鮮海域に漁民が出漁する場合には、海上保安隊をもつて保護する方針であるということを答えられました。保護した場合に、もし韓国の艦船がこれを襲つて来た場合にはどういたしますか。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私からお答えいたします。李承晩ラインについて私の申し上げたのは、海上のいわゆる普通いう警備隊であります。これがその場合に出動するかしないかということであります。私は事は重大である。今慎重に考慮しておる。こういうことを申し上げたのであります。もとよりいわゆる警備隊の使命は、いつも申し上げます通り海上における人命、財産の擁護、それからもう一つは治安の確保のためにやむを得ざる場合においては、これに必要な措置をとらせることになつております。そこで漁船が出動ついたしまして、そのために韓国から不法な攻撃を受けた場合には、これに対し相当措置をとり得ることになつております。その相当措置をいかにしてとるかということはきわめて重大であります。今から慎重に考慮いたしまして、万違算のないようにやつて行きたい、こう申し上げたのであります。その考えは今もかわりはたいのであります。
  23. 中村梅吉

    中村(梅)委員 どうも長官の言い方があいまいになつて来ましたが、昨日長官は、海上警備隊の任務は、保安庁法の規定によつて海上における日本人の生命財産保護が目的である。従つて出漁する場合には、海上警備隊によつて保護をいたします。こう言われたのですが、保護をする以上は、生命財産を侵すものが出て来たときに、何もしないなら保護にならない、何をするのか、こういうことを私は聞いておるのであります。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私が申し上げたのは、それは保護することが建前になつておる。しかしその場合にいかなる処置をとるかとらぬかということは重大である。国際的に非常に重大であるから慎重に考慮いたす、それからもとよりわれわれは万違算のないように十分に慎重を期して、どういう処置をとるかということについては考慮しておる、こう申し上げたのであります。
  25. 中村梅吉

    中村(梅)委員 これは完全に保護しようとすれば、結局襲いかかるものがあれば防ぐ、自衛をするということだと思う。従つてこの意味からいつても、木村長官言葉をあいまいにしておりますが、だれが考えても、趣旨からいえば自衛戦力である、こう私は言わざるを得ないと思う。  次に岡野通産大臣も見えたようですが、十六国会においてわが党の河野一郎君から対米債権の問題について質疑をいたしたのでございますが、当時政府はこの対米債権については目下折衝中である、こういう答弁で幕をおろしたのであります。この問題は国民全体として最も深い関心を持つておる重大事件一つであります。この機会に私は総理大臣並びに通産大臣から、この対米債権の対米折衝はどういうふうに進展しつつあるか、その点をはつきり伺つておきたいと思います。
  26. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。対米債権は、御承知の通りこの前の国会におきまして論議された通りに、日本債権として確保しております。同時に通産省といたしましては、この債権に必要なところの証拠書類は完全に、散逸しはいようにこれを保護し、また整理してこれを確保しております。あと外交交渉として外務省を通じて交渉しつつあろわけであります。
  27. 中村梅吉

    中村(梅)委員 外務省を通じて交渉しつつあるはずでありますと言うから、外務大臣にお伺いいたしますが、交渉しておるはずだけでは、われわれは了解できない。その交渉は具体的にどういうふうに行い、どういうふうに進展しておるか、どういうような結論を得つつあるか、また得ておるか、この点をそれでは外務大臣から伺います。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 交渉はその後も行つております。しかしながら先方にもガリオアその他の問題がありまして、まだ結論には至つておりません。
  29. 中村梅吉

    中村(梅)委員 ガリオアの問題はアメリカ池田君も触れておるようですが、一体ガリオア問題とこの問題とは全然性質が違うということは、河野君も十分指摘してあるはずだ。この対米債権二百億というのは、純然たるビジネスの日本立てかえ金である。日本立てかえ金と、援助物資として敗戦国日本に送られたガリオアの問題と、これをごつちやにして考えるという頭の置きどころが私はどうかしていると思う。しかしながら今のようなあいまいな答弁では、交渉しておるとは認められない。交渉しておるならば、だれとだれが、どういうふうにどこで交渉したか、私はこの機会にどうしても具体的に承つておかなければならないと思います。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省経済局が主となりまして、局長交渉をする場合もあり、課長話合いをすることもある。先方経済担当官が主となつてつて、それも一人ではありません、数人おりますが、いろいろ話合いはいたしております。
  31. 中村梅吉

    中村(梅)委員 経済局長なり課長がやるのもけつこうです。やつて悪いとは言いませんが、いやしくも担当責任大臣は、その報告を聞いておるはずです。その報告内容を私は承りたい。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その報告は、ただいま申しました通り、これは、時間的に申しますと、今おつしやる対米債権と称するものと、ガリオアその他の援助資金との関係は錯綜いたしております。先方でもガリオア等話合いをし、債務であるか、債務でないかもはつきり確定をいたしたいという希望がありまして、それらの問題はいずれ関連して——その性質上関連しておりませんでも、話合いとしては当然起つて来ておる。それをただいまいろいろ交渉いたしております。
  33. 中村梅吉

    中村(梅)委員 それは性質上関連しないはずでありますが、何か関連の意味合いを持つて交渉されておるならば、その関連しておる話合い経過がもう少しありそうなものです。今のようでは、どうもごまかしの一時しのぎのように断ぜざるを得ないから、もう少し具体的に、これはどうしても承りたい。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ガリオアの問題は前にもここで申し上げた通り占領中から先方で、これを話し合つて、いかなるものが債務に当るべきものであるか、いかなるものがしからざるものであるか、せめてそれだけでも話合いをいたしたいということを言つておりましたが、当方としては、まだこちらで自信のあるような資料が整つておりません。当時はまだ終戦直後であつて、とにかく品物が来ればそれを国民に配付して、そして食糧その他の因雑なところを切り抜けるのに一ぱいであつて資料が整備していないつ点が多々あろわけであります。またその中には、当時は沖縄日本とが大体同じような趣旨でもつて取扱われておりましたから、沖縄の方にまわつたような物資もあるはずであります。これらについての資料はつきりいたしておりません。先方には資料があろようでありますけれども先方資料だけで話し合うことは、ちよつと政府としては困難でありますので、こちらの資料をずつとそろえておる。そのために時間がとつて話合いは進んでおりませんけれども占領中から、ガリオアの問題は話合いをいたしたいというのが先方の再三申し入れたところであります。そこで今回——今回といつて条約成立後であらますが、あの成立直前からの話合いに基いて、この対米債権と称するものについても話合い行つております。同時に先方としては、それと性質は別問題としても、とにかく前から言つておるのだから、ガリオアの話もいたしたい。こういうことで来ておりまして、とにかく日本債権であるということは、先方も認めております。おりますけれども、それをどういうふうに支払うとか、どういうことで金額等はつきり確定するかというような点は、ガリオアとともに、未解決であります。
  35. 中村梅吉

    中村(梅)委員 一体政府ガリオア債務と認めるのか、債務でないと認めるのか、その点が一種の基本にもなると思うのでありますが、その点に関することと、もしガリオア債務と認めるのならば、なぜ一体この二十億ドルの物資邦貨に換算して七千億からの金を特別会計に入れて、国会にも報告せず、そうしてこの金を、今日見れば約半分くらいはめちやめちやになつてどこに行つたかよくわらぬ、こういう事態にしておくのか、もし政府がこれを債務という観念で進めて行くならば、その跡始末に対して、政府は一体どういう責任を負うのか、これを外務大臣に伺いたいと思います。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府といたしましては、ガリオアがどういうことで、どういうように使われているかということは、しばらくおきまして、とにかくアメリカからの援助を受けておつたことは間違いがない、その点に関しては政府はこれを債務と心得ているわけであります。しかしこれが債務と確定します。には、その内容はつきりいたしまして、そうして真に日本の国のために援助されたものであるということが立証される必要がある、また今度実際的の問題になりますと、賠償においてもそうかもしれませんが、日本の支払い能力とも関連して来るわけであります。従つて債務として確定するのには、これらの点をはつきり話し合わなければならないわけであります。今のところは、はなはだ漠然たる形ですが、どれだけの総額があるか、またそれだけの総額がかりにあつたとして、どれだけ日本に払い得る能力があるか等を勘案してから、これを債務と決定いたしますわけであります。その前にはもちろん国会の承認を得なければならぬと考えております。しかしそういうわけでありますから債務と心得ておりますが、まだ債務としての決定はもちろんできておりません。
  37. 中村梅吉

    中村(梅)委員 それなれば所管大臣——にこれは大蔵大臣になりますか、通産大臣になりますか、伺いたいのですが、貿易特別会計に入れておいたこの七千億からの金額というものが、その後外為特別会計に移つたのは、ドルにして八億五千万ドルである。あとの金は一体どこへ処分されたのか、それをこの機会に承つておきたいと思います。どこでどうなつて二十億ドルが八億五千万ドルになつてしまつたのか。
  38. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの御質問趣旨は私こう考えます。二十億ドルのものが八億何千万ドルになつているのはどういうわけでそうなつているか、こういうことであります。それはこの前の国会で申し上げました通り、あれは初め入つておりました場合には、実際は向うの会計ばかりで処理されておりまして、そしてわれわれがその跡始末を円でする場合に、特別会計でやつた。しかしながら二十四年の四月一日になりまして、初めて見返り資金という制度をとりまして、向うの張簿と日本の帳簿とを突き合せまして、そうしてこれだけのものが合つた。それを日本円に換算して積み立てて見返り資金にした。それが今日八億四千七百万ドル。この数字はただいまのところはつきりいたしておりませんが、八億四千七百万ドルに値するだけのものは見返り資金とした、日本でも向うでも突き合せて承知の上の資金でありますから、これははつきりしております。しかしそれ以前の十二億何千万ドルというものは、先ほど外務大臣が申し上げました通りすつかりはわからないのでありまして、向うにも十分な資料を提供してもらつて、そうしてこちらとも打合せてもらわなければ、債務と申しますか、どのくらいこちらへ来たかというとはわからない。ですから八億四千七百万ドルということはどういうことかと申しますれば、二十四年四月一日以降、両方が合意の上で見返り資金として積もうじやないかということで、積んではつきりした残高がそういうことになつたのであります。
  39. 中村梅吉

    中村(梅)委員 そこにガリオアの性格の問題が端を発すると思うのです。日本側も事務にはタツチしておつたと思うのですが、占領軍の司令部がガリオアの資金というものを管理しておつたとするならば、借金ではないではないか、債務ではないではないか。日本責任を負う債務ならば、なぜ日本政府がこれを管理しないのか。アメリカ援助して持つて来て連合国の司令部が管理しておつて、それで一体外務大臣ガリオア債務なりと心得るというものの考え方は、まるきり筋が通つていない。この点に対して私は今お答えなつ通産大臣並びに外務大臣から承つておきたい。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ガリオアのうちの一部の、今通産大臣の述べられました見返り資金の中に積み立てておるものは、はつきりいたしております、私はガリオアの二十億が全部債務だとは申しておらないので、これらは十分検討しなければならぬ。真に日本人のために使われたものであつても、その中にはたとえばカン詰類で悪くなつてつた品物もありましようし、途中で破損したものもありましよう。こういうものも十分考えなければならない。しかしながら少くとも日本国民が終戦以来援助物資として受取つたことは事実であります。だれが管理しようとも、国民が受取つて、そのために食糧難その他の困難を切り抜けて来たことは事実であります。従いましてガリオアとしては債務と心得ることは私は一向さしつかえない。但しその債務額が幾らであるかということは、これは慎重に研究し、双方の納得する額であるべきである、こう思うわけであります。
  41. 中村梅吉

    中村(梅)委員 それを聞いて私どもも若干安心をしたのですが、そういうものを全部債務と心得られてはたいへんなことです。ですから、この取扱いについては、今後政府としては十分責任を持つて慎重を期してもらいたいということを、この機会に要望しておきます。  時間がありませんから最後に私一言尋ねたいと思いますのは、万事について世間から非難されておるように、吉田内閣のやることは秘密外交である。しかしながらこの点について簡単に申しますならば、かつて日本のように強力な軍隊を持つていたときには、これをバツクといたしますから、国民の輿論に支持されない外交でも成り立つたかもしれない。しかし外交の基本というものは、輿論の支持がなければ成功するはずがないと私は思う。私は外交には関係がございませんし、まるきりのしろうとですが、団体と団体同士が交渉したつて、団体内部の輿論の支持がなければ仕事にならないはずです。しかるに今日は日本の強力な軍隊というものはまるきり壊滅して無力であろ。何ら外交上のバツクというものがないのです。ただ一つ外交上のバツクとなるものは国民の輿論なのです。従つてMSAの問題にせよ、あるいは日本防衛の問題にせよ、輿論の支持がなくて外交をやつて成功するはずがないと私は思う。従つてほんとうに政府が、防衛の問題についてもMSAの問題についても深い関心を持つて国家の前途のために利益になるように進展させようとするならば、これらの問題を逐一国民に明細に説明して、八千万国民の了解のもとに国民全体の中に大いに輿論を喚起して、外交の手を打つ前に事前に輿論の喚起に努め、そこで国内の沸騰した輿論を背景として外交をするにあらざれば、外交は成り立たないと私は理論上考えます。この点吉田総理は、外交には輿論の支持が絶対必要なものであるとお考えになるかどうかこの点を伺つておきたいと思います。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は、かつて外交は輿論の支持なくしてやれるなどということを申したことはありません。当然な話であります。いわんや民主政治であり、政党政治である以上は、内外の諸問題について国民の輿論を無視したことはない。(「輿論無視じやないか」と呼ぶ者あり)輿論を無視したことはない。
  43. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。     〔発言する者あり〕
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 国民の輿論並びに理解を求めることは当然なことであることを繰返して申しておきます。
  45. 中村梅吉

    中村(梅)委員 総理は大分力んで、輿論を無視したことはないとおつしやつたが、陸上の分はいろいろ議論があるから触れませんが、どの点から見ても戦力である海上保安隊は、保護する以上は襲いかかられたら一戦交えなければならない性質のものである。これは明らかに自衛戦力である、また吉田重光会談から見ても、あれは戦力であると解する改進党の解釈が妥当であると思う。にもかかわらずねこがつめを隠すようにそれをひた隠しにし、あくまでも欺瞞をもつて終始して行こう、国民の目をおおうて行こうという行き方をしておつて、輿論の支持を得なければ外交は成り立たないなんて言えた義理じやないと思う。この点についてもう少し——もう少しじやなくて、徹底的に反省をしてもらわなければ国民は安心ができないと思う。輿論の支持が必要であるならば、防衛の問題についても、MSA経過についても、あるいは池田特使アメリカ行つてあれだけの努力をされておる問題についても、なぜもう少し親切に国民に説明する気分はございませんかということを最後に私は吉田総理にお尋ねいたします。
  46. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えしますが、政府がいたしておることについて満足せられるかせられないかは別として、政府としてはそれだけのことをいたしております。
  47. 中村梅吉

    中村(梅)委員 不満足ですが、時間が参りましたから、私の質問はこれで終了いたします。
  48. 倉石忠雄

    倉石委員長 黒田寿男君。
  49. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、きようは主として吉田総理大臣に対し質問をいたします。  吉田内閣の政策は防衛問題において最近質的変化ともいうべき大きな変化を生じたとわれわれは見ております。従来の総理のいわゆる間接侵略に対する自衛力の漸増という方式に変化が生じ、直接侵略に対する自衛力をもあわせて保持するという政策に発展しつつある、われわれはこう考えるのであります。元来この変化は、理論的には政府MSA軍事援助を受けようとする限り、必然的に生じなければならぬものでありますし、また最近の吉田総理御自身及び総理の側近者の外国における行動を通じて、この変化を示す材料が提供せられておるとも私どもは考えます。たとえば去る九月二十七日、総理の方から自身でお出かけになつて重光改進党総裁に会見せられました直後に、重光総裁から発表されました吉田・重光了解事項のごときものが、この変化を証明する一つの材料であると思います。また一昨日発表されました首相の個人特使といわれております池田勇人氏と米国国務省極東関係担当国務次官補のロバートソン氏との共同声明も、一つの証明材料であると私は考えます。しかしながら問題となりますのは、このような材料は、政府の政策のこの変化をわれわれに間接的に知らせる材料であるにすぎないということであります。このような変化は、憲法改正と関係がありますし、また憲法以外の他の法律の改正とも関係がありますし、すなわち国会の審議と深い関係がありますにもかかわらず、政府国会に対しては、直接にこの変化につきましては何ら明らかにすることなくまたこの臨時国会におきましても、それは去る十月二十九日から開かれておりますにもかかわらず、政府は、このことに関しましては何一つ国会に対して、直接には示していないのであります。この重大な政策上の変化が他の方法によつて、間接的にわれわれに示されておりますのに、国会に対し、直接には今日まで積極的に示されていない。これは、私は問題であると思う。国会の外において既成事実をつくり上げたあとで、国会には、ただ事後承諾を求めさえすればよいというようなやり方が、とられておるのではないかという疑いが、多くの人によつて持たれつつあるのであります。このようなやり方は、それ自身がフアツシヨ的であるばかりでなく、このようなやり方を重ねることによつて国会の外に国会軽視の風潮を醸成し、国会に反逆するフアシズムをつくり上げることに、最も大きな役割を果すものであると私は考えます。これは民主主義を危機に陥れるやり方だとわれわれは考える。われわれはあらゆる機会に、国会の中で率直に語り合い、論じ合うという民主主義の方法の確立を期したいと思います。そこできようはまず防衛問題という重大な問題について質問しますが、この問題の成行きは、わが国の政治、経済、財政に多大の影響を与え、またわが国の独立と、わが国を含めた世界全体の平和に多大の関係を持つもので ありますし、かつまたこの問題は、最も議論の多い問題でありますから、きようは国会に対し直接に、できるだけ率直に、首相の御見解を明らかにしていただきたいと思います。  私は政府の、直接侵略に対する自衛力を持たなければならぬという方向への防衛方針変化を証明する材料の一つといたしまして、先ほど吉田重光会談における了解事項というものを指摘したのであります。これは重光総裁談として発表せられているのでありまして、吉田総理の口からはまだ聞かされていないのであります。そこで私は念のために総理御自身からも承りたいと思うのであります。重光総裁が吉田総理会談されて、意見の一致を見たとして新聞発表せられたところによります。と、それはこういうことになつておるのであります。「現在の国際情勢及び国内に起りつつある民族の独立精神にかんがみ、この際自衛力を増強する方針を明確にし、駐留軍の漸減に即応し、かつ国力に応じた長期の防衛計画を樹立する。これとともにさしあたり保安庁法を改正し、保安隊自衛隊に改め、直接侵略に対する防衛をその任務につけ加えるものとする。」こういうように発表されているのであります。これは改進党総裁の発表せられたものであり、ことに一国の総理大臣を相手としての話だという意味において、重光総裁の責任上から申しまして、も、この発表に間違いはあるまいと思いますから、こういうことをいまさらお尋ねするのはどうかと思いますけれども、先ほど申したように、これは重光総裁の談でありまして、吉田・重光共同声明というようなものではございませんので、ここであらためて重光総裁と吉田総理との会談の結果、了解に達したというものは、このようなものであつたかどうかということにつきまして、一応承つておきたいと思います。
  50. 吉田茂

    吉田国務大臣 防衛問題はお話の通り国家として重大な問題であります。従つて重光総裁と話し合つて、将来防衛計画をいかに立てるかということについて研究しようと申したのであります。しかして今ただちに政府の政策においてどう現われるか、その政府の政策の現われ方が結局予算において現われ、また外国との間に交渉ができれば、たとえばMSAの問題にいたしましても、外国との間に問題が——協定あるいは条約が締結されたという場合には、国会の承認を得なければならないのでありまして、お話のように秘密の間に、あるいは国民の知らざる間に、ある既成の事実が生ずるというようなことは、民主政治のもとにおいて断じてないと思うのであります。
  51. 黒田寿男

    ○黒田委員 私のお尋ねしたのは重光総裁の発表せられました吉田・重光了解事項というのは、先ほど申した通りであつたかどうかという質問であつたのであります。簡単にそうであつたかなかつたかということをお答え願えればけつこうであります。
  52. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は重光総裁が新聞にどういう発表をせられたか実は存じ映せん。しかしながら真相は今申した通り防衛問題は重大であるから、今後においていかに計画を立てるか研究をしようまた防衛計画についてはこれを樹立することに互いに努めようという話をいたしたのであります。
  53. 黒田寿男

    ○黒田委員 総理は重光・吉田了解事項について否定もされませんので、大体重光総裁が責任を持つて発表せられたような話合いがあつたと、常識上から判断して議論を進めてみたいと思います。  それからいま一つ、最近私どもに与えられた防衛問題に関する政府の政策の変化を物語る材料は、先ほど申し上げた池田・ロバートソン共同声明であります。この共同声明を見ますと、わが国にMSA軍事援助を与えるその対象は何か、わが国の保安隊に対してではないそれでは何であるか侵略に対する自衛力であり、それは米軍撤退のときに、それにかわる自衛力、こういう自衛力に対してである。これはいわゆる直接侵略に対する自衛力であるということになると思います。これは私は共同声明における文意からその通り解釈しなければならぬと考えるのであります。保安隊は直接侵略に対するものではなくて、間接侵略に対する自衛力であることは、政府がしばしば繰返して主張せられたところであります。保安隊では軍事援助を受ける資格はない、すなわち軍事援助を受けるためには、どうしても直接侵略に対する防衛力を持たなければならぬ、こういう意味のことが結局この共同声明の中に現われておるのであります。これはMSA第五百十一条の(a)の(四)の被援助国が自衛力を持たなければならぬという義務に相応するものであると私どもは考えるのでありますが、この点から見ましても、吉田内閣は防衛力に関する従来の考え方を改めたと見なければならぬと思います。すなわち直接侵略に対する防衛力を日本が持つという方針にかわつたのだ、こう見なければならぬと思いますが、これに対しまして総理大臣の御見解を伺いたいと思います。
  54. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ……。
  55. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は池田声明について質問をしていますから、木村長官にはまた別の機会にお尋ねいたします。総理からお聞かせ願います。
  56. 木村篤太郎

    木村国務大臣 関連しておりますから、便宜私からお答えいたしたいと思います。  ここで池田声明と申しましようか、これにおきまして言われております防衛力でありますがこれは決して今の保安隊とかわつたものをつくろうという意味ではないのであります。どこまでも保安隊をだんだん増強して行くという趣旨であろうと思います。と申しますのは、われわれといたしましてもいずれ御審議をある機会に願いたいと思います保安庁法の改正であります。これは黒田君も御承知の通り、ただいまの保安隊はわが国の平和と秩序を維持するために設けられておるいわば国内の治安維持のために設けられておるのであります。しかしこれでは今後日本の立場といたしまして、外国からの侵略に対しては役に立たぬものでありまして、少くとも日本が外国からの侵略に適応するような処置を講じなければならぬという建前から、保安庁法を改正いたしまして、外国からの侵略に対しても対処し得るように、これを改正いたしたいと考えて、今着々その準備にとりかかりつつあるのであります。これがそういうことに改正ができ上りますと、申すまでもなく、外国の侵略に対しても対処し得るのであります。これを漸増いたします。と、いわゆる日本防衛力というものが徐々に成り立つて行くわけであります。池田君の申されたのも、要するに日本の現在の保安庁法を改正して、保安隊の性格を外国の侵略にも対処し得るようにする、これを増強して行くという建前のもとに言われたものと考えております。
  57. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの木村長官お答えは、最初の方は私の質問に対し否定的なお答えであるかのごとく聞え、あとの方になりますと、今度は肯定的のように理解できたのであります。私もただいま保安長官あとで申されましたように、この共同声明では、日本は間接侵略に対する自衛力の保持ということだけでは足りない、どうしも直接侵略に対する自衛力を日本は持たねばならぬ。この直接侵略に対する自衛力が、アメリカ軍隊が将来撤退する場合にこれにかわる資格を持つものであり、こういう性格のものにMSA軍事援助を与えるという了解が、池田・ロバートソン会談においてなされた。それが去る三十日に共同声明として発表されたものの内容であろう、私はこう解釈したのであります。だからこれまた吉田内閣が、従来のようね、単なる間接的侵略に対する自衛力の漸増政策から、直接侵略に対する自衛力をも保持するという政策に政策をかえて来たという事実を示す材料ではないか、こういう質問をしたのであります。そういうふうに解釈してよろしいのでございましようか。私はそれよりほかに解釈の仕方はないと思うのですが……。
  58. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今申し上げました通り保安庁法を改正いたします。と、日本保安隊はいわゆる外国からの侵略に対しても対処し得るようになるのであります。さような意味をもちまして、保安隊の性格もかわるということは当然であろうと私は考えております。
  59. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの木村長官のお話は、何かただ一般的に議論をするときに行われるような論旨の進め方で、保安庁法を改正すれば、直接侵略に対する自衛力を持てることになる、このようにおつしやつたのでありますけれども、私はこれは一般論であつて、それを今政府に聞いておるのではない。保安庁法を改正して、直接侵略に対する自衛力を持つように、積極的に政策を変更しようと政府はしておると思うがどうか、という点について承りたい。吉田総理と重光総裁の了解事項と称して、重光総裁が発表されました談話には「さしあたり保安庁法を改正し、保安隊自衛隊に改め、直接侵略に対する防衛をその任務につけ加えろ」ということがうたわれております。「さしあたり」というのでありますから、これは遠い将来ではないと私は思うのであります。さしあたり保安庁法を改正して、直接侵略に対する自衛力を持つというように、総理大臣と重光総裁との間に了解が成立した、こう言われますが、これは総理にも聞きたいと思いますが、そうしますと、保安庁法の改正をさしあたりというのでありますから、近い将来に、すなわち少くとも次の国会にでもこの改正案を出そうというお考えがありますかどうか。これは池田・ロバートソン会談の結果の共同声明の発表からいたしまして、日本アメリカから軍事援助を受けるという問題とも関連しておるのでありまして、やるならば、おそらく政府はあまりおそくならない期間の間にこれをやられると思うのであります。次の国会保安庁法の改正案を提出するような方針であるかどうか。吉田重光会談からいえば、そういうふうに解釈をしなければならないのでありますが、この点を承りたいと思います。これは総理大臣から……。
  60. 木村篤太郎

    木村国務大臣 関連しておりますので、私からお答えいたします。これは池田・ロバートソン会談の有無にかかわらず、われわれとしましては保安庁法をぜひ改正いたしたいと思つております。そのもくろみをもちまして、せつかく今検討中でありまして、なるべく早い機会にこれを作成いたしまして、国会にかけて御審議をお願いいたしたい、こう考えておる次第であります。時期についてはまだわかりません。
  61. 黒田寿男

    ○黒田委員 なるべく早くと申しましても、次の国会は十二月上旬に始まりまして、来年の五月まで続くのですから、それが過ぎれば、それはなるべく早いという時期の範囲に入らないと思います。そうすると、次の国会には保安庁法の改正案を出すというように大体了解してよろしゆうございますか。
  62. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そう御了解くださつてよろしゆうございます。次の国会にできるだけ早く出したいと思つております。
  63. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、私の質問いたしたいと思いました点は、大体政府お答えくださつたと思います。要するに、直接侵略に対する防衛力を持つために、法制上の改正を行う意思が政府にある、こういうことになります。そこでこの問題は非常にはつきりしたと思います。もとより、ただいま木村保安庁長官の御答弁のありました点は、総理大臣もその通り方針を持たれていることと思いますが、この点を念のために総理大臣にちよつとお聞きしておきたいと思います。
  64. 吉田茂

    吉田国務大臣 木村大臣の今話された通りに私も考えております。
  65. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、大分はつきりしました。そこで総理にちよつとついでにお尋ねいたしますが、吉田総理はいわゆる自衛力の漸増方策はかえないしというようなお言葉であつた。それを本国会における他の議員の質問に対する総理の御答弁の中からもうかがわれたような気が私にはいたしますが、しかしただいまのようになつて参りますと、総理のいわゆる自衛力漸増方策は変化して来なければならぬのではないかと私どもは思う。今まで通り自衛力漸増方策ではなくなるのではないか、こう私どもは考える。この点をちよつと総理にお聞きしておきたいと思います。総理のいわゆる自衛力漸増方策と申しますものは、日米安全保障条約に由来するものであると私は考えます。そこで、その内容は何か、特徴は何かと申しますと、第一は日米安全保障条約にうたわれております直接侵略に対する自衛力漸増と、間接侵略に対する自衛力漸増のうち、後者のみを実現する政策であつたということ、これが一つの特徴であります。第二は間接侵略に対する自衛力の増加の方法が、急激にでなく、漸次的に、あるいは漸進的に増強する、こういう方法によるということ、この二つの内容を持つたのが、いわゆる吉田総理自衛力漸増方式の内容であつたと私は思います。ところがこの従来の総理の方策のうち、部隊を数量的に増加するという方法につきましては、はたしてこれが急激に行われるものか漸進的に行われるものか、それはまだ私どもにははつきりいたしません。あるいは漸増で行くのかもしれぬけれども、漸増と申しましても、従来よりも私は少し速度が急ピツチになるのではなかろうかと思いますがその点は第二といたしまして、少くともいわゆろ自衛力漸増方策の内容の他の一つをなしております。自衛力の性格という点が、従来のような間接侵略に対する自衛力という性格から、直接侵略に対する自衛力という性格にかわるのでありますから、従つて今後は吉田総理も、従来と同じように吉田内閣の防衛政策は自衛力の漸増政策だというようには、説明することができなくなるということになるのではなかろうかと思います。すなわち自衛力漸増方策に変化が生じて来る、こういうように私は考えるのでありますが、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。自衛力漸増方策を依然として続けるということが、単に部隊の数量的増加の方法が今までとかわらないということを意味し、だから自衛力漸増方策もかわらないのであるというふうに解釈されますと、非常に誤解が生じますので、重大な問題でありますから、この点をお尋ねしておくのであります。
  66. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。私が従来の自衛力漸増方針がかわつたということをお答えすれば御満足が行くのでありましようが、私の考えはかわつておりません。何となれば、安全保障条約にも直接及び間接の侵略に対処するため自衛力の漸増を期待する、と書いてあるのであります。この方針をもつて政府は一貫して進んでおるのであります。
  67. 黒田寿男

    ○黒田委員 それはしかし今どこからそういう解釈をお引出しになつて御説明になつたのかわかりませんけれども、日米安全保障条約には確かに私が申すように書いてあるのであります。今までの政府の説明では、直接並びに間接の侵略に対する自衛力、すなわちこの二つの性質の全然違つた自衛力、この二つの自衛力のうちの一つだけを実現させておるのだ、だから日本は再軍備をやつておるのではないというのが、私は、従来の吉田内閣の御主張であつたと思う。先般の特別国会のときにも私ははつきり聞いております。日本防衛体制は、直接侵略に対するものは米国の日本における駐留軍にこれを依存する、日本保安隊は国内における間接侵略に対する防衛力だ、こういう構成を持つて日本の内外の防衛体制が構成せられておるのだ、内外の防衛に対するこういう分担があるのだということを従来は聞かされていた。私はつい先般閉会になりました第十六国会におきましても、総理が明瞭にこうお答えなつたと思います。今総理お答えになつたのが従来からの方針であつたといたしますならば、第十六国会においてただいま私が申しましたように総理お答えなつたこととはそれは矛盾するのであります。私は十六国会における総理お答えの方が、いわゆる自衛力漸増方式というものの内容であつたと思いますから、先ほども木村長官お答えなつたような、そうして総理がこれに対し肯定をされましたような方向に防衛政策がかわつて来るとすれば、これは自衛力漸増方針がかわつたと言わなければならぬと思います。これに対して、もう一度念のために総理の御意見を承つてみたいと思います。
  68. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申すことがかわつたとお認めになるのはごかつてでありますが、しかしながら、全体直接侵略とか間接侵略とか画然として性質がかわるはずのものではないと思います。これは直接侵略であるこれは間接侵略であるということは画然と区別できるはずはないと思います。     〔「前と違うじやないか」と呼びその他発言する者多し〕
  69. 倉石忠雄

    倉石委員長 静しゆくに願います。
  70. 吉田茂

    吉田国務大臣 ……見ようによつて間接侵略ということになるのでありまして、あとのお話のようにこれははつきり区別することはできないはずであります。私はそう考えます。
  71. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの総理大臣の御答弁は私どものとうてい承服することができないところであります。日米安全保障条約の中には、はつきりと二つにわけている。今まで間接侵略と直接侵略とわけたような例が条約の上に現われたものはありません。今までは侵略という言葉だけが用いられておつたのを、特に日米安全保障条約において直接侵略、間接侵略というふうにわけた。条約上初めて間接侵略という言葉が用いられまして、あの条約の中の表現として用いられておるのであります。私は、はつきりと二つの自衛力というものがあつて、その二つの自衛力がそれぞれ日本と米国との力として分担されておつた、そう解釈しなければ正しい解釈にならぬと思いますから、今の総理の御解釈は私はとうてい納得することができません。しかしこれは議論いたしましても水かけ論かもしれませんから、私はもう少し話を進める方法によりまして、その問題をも発展させて行きたいと思います。  そこで、総理がそう仰せられますからちよつとお尋ねいたしますが、直接侵略に対する防衛という言葉は、日米安全保障条約において用いられておる言葉であります。間接侵略という言葉も同様であります。そこで、重光・吉田会談における直接侵略に対する防衛力という言葉内容と、日米安全保障条約における直接侵略に対する防衛力という言葉内容池田・ロバートソン声明における侵略に対する防衛力という言葉、これらの言葉の意味は、いずれも同じ内容を持つておるものと存じますが、いかがでございましようか。
  72. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと質問の御趣意がわかりませんが、重光総裁との話は、先ほど申した通り日本防衛という言葉は、これは重大な問題であるから、日本防衛方針と申しますか、防衛力を増強することを考えようということを申したのであります。お話のように直接間接と問題が全然違うような考え方をすること自身が私は間違つておると思うのであります。
  73. 黒田寿男

    ○黒田委員 もう少し話を進めながら質問してみたいと思います。総理と重光総裁との間に了解された事項の中で、特に直接侵略に対する自衛力を持つように日本の制度をかえるのだ、こう言われておるその直接侵略に対する防衛力という言葉は、日米安全保障条約において直接、侵略に対する防衛力と言われておるその言葉の意味と同じではないかという質問をしたのでありますが、私はこの質問はあいまいではないと思いますがどうでしようか。その点を、そうかそうでないかお答え願いたい。特別に今初めて使い出した言葉ではございません。総理もたびたびお使いになつておる。日米安全保障条約は、総理自身が調印しておいでになつたのだから、総理がその内容を熟知しておられる条約であります。そして重光・吉田会談は、総理自身が発意された会談であります。その総理が調印された条約の中における言葉と、重光吉田会談の中に出て来る言葉と、同じ言葉がありますから、その同じ言葉は、言うまでもないことでありますけれども、念のためにお尋ねしておるのでありますが、内容は同じであるかどうか。これをお答え願えればけつこうであります。そうむずかしい、内容のややこしい質問ではないと私は思いますが、どうでありますか。
  74. 吉田茂

    吉田国務大臣 御質問の趣意は、重光総裁との話にある直接侵略と、安保条約における直接侵略と、同じであるか、同じでないかとおつしやるわけでありますか。——はつきり申します。正直に申すが、重光総裁との会談のときの話では、何も安保条約にある文字をしいて使つたのではありません。つまり、常識で考えて、あるいは普通の考えから、間接とか直接ということは、ただいま申す通り、区別がしにくいのである。しかるにもかかわらずよく直接とか間接というような話があるから、それでは直接侵略にも備えることができるように考えるべきである、こう私は考えて、重光総裁のときにも、その考えでもつて同意いたしたのであります。
  75. 黒田寿男

    ○黒田委員 総理がそうおつしやいますならば、お聞きいたします。総理は重光総裁との談話の中で、直接侵略という言葉を使つたとおつしやる。そこで私はお尋ねいたしますが、その重光総裁との談話において、総理のお使いになりました直接侵略という言葉、これはあなた自身が調印してお帰りになりました日米安全保障条約における直接侵略という言葉と、同じ内容のものではないが、この質問をしておるのでありますから、そうかどうかということだけお答え願えればよい、何でもないことと思います。もう一度お尋ねいたします。
  76. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申したことは、ただいま説明いたした通り、安全保障条約の中にある文字と、重光総裁と話し合つたときと、同じ文字を使つたかとおつしやれば、今申した通り、観念的に直接侵略とか間接侵略というようなことを言われて、保安隊はあたかも直接侵略には対応できないようなふうな誤解をせられるから、いやしくも日本侵略された場合には、保安隊といえどもこれに対応ができるということをはつきりさせた方がいい。一体申せば、外国から侵略された場合に、保安隊が直接侵略だから手をつかねて傍観していいというはずはないのであります。いやしくも日本侵略せられた場合に、これはしばしば木村長官も言つておられるのでありますが、いやしくも日本に対して侵略があつた場合に、日本人が黙つて見ておれるか。これは見ておれないのが義務であり、また保安隊といえども、現に直接に侵略された場合には、自分の義務でないといつて逃げて行けるはずはないのであります。これは常識の話であります。であるから、あたかも直接侵略には保安隊関係がないように誤解せられるようなことがあつてはいけないから保安庁法を直すということにしたらよかろう、こういうわけであります。
  77. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの総理大臣のお言葉は、非常に重大な内容を持つておると私は思う。現在の保安隊が、単に間接侵略に対する防衛という任務だけでなくて、直接侵略に対する防衛という任務をも持つておる。ただ、現在のままの保安庁法では、その点があいまいであつて、元来は二つの種類の侵略に対する自衛力という内容を、実質上持つておるのだけれども保安庁法ではそうなつていないから、実質にそういうように保安庁法をかえて行こう、実質に適応したような法律にかえて行こう、もしこういう御説明であつたとしますれば、これは重大な問題であると思います。私どもが今まで保安隊戦力ではないかとか、軍隊ではないかというような質問を、繰返しいたして参りましたのは、保安隊は直接侵略に対する自衛力たることを任務とするような制度に、法制の上ではとにかくとして、実質上ではなりつつあるのではないか、すでになつておるのではないか、こういうふうに見るから、私どもは、保安隊戦力だとか、あるいは軍隊だとかいう議論をして来たのです。今総理大臣の御答弁を聞きますと、何だか私どもが疑つておりましたことが、その通りであつたかのようなお答えであります。これは私は総理大臣としては非常に重大なお言葉だと思いますが、御訂正になる御意思はございませんでしようか。御訂正にならないで、今御説明になつたようなもので保安隊があるということになつて参りますと、私は相当に大きな問題になりはしないかと思います。これは念のために総理に申し述べておきたいと思います。
  78. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私から関係しておるから申し上げます。保安庁法解釈につきましては……。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 静しゆくに願います。木村国務大臣が関連事項について御説明申し上げるそうであります。
  80. 黒田寿男

    ○黒田委員 総理大臣あとから必ずお答え願えますか。     〔「先に答えさせろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  81. 倉石忠雄

    倉石委員長 さつきもそういうことがありました。
  82. 木村篤太郎

    木村国務大臣 保安庁法解釈の問題だから、私がちよつと申し上げたい。保安庁法第四条において、黒田君も御承知の通り、わが国の平和と秩序を維持し、人命財産を擁護するため、やむを得ざる場合においては保安隊が出動することになつておるのであります。そこでわれわれは従来の解釈によりますと、これは国内における重大なる反乱その他暴動が起つた場合に出動するけれども、直接侵略に対しては出動しないのだという解釈をとつておるのであります。ところがこの点の解釈に対して裏から解釈して、わが国の平和ということは、直接侵略されてもわが国の平和は乱されるから、この文字から言つても直接侵略があつたら対処し得るのではないかという解釈がある。しかし政府としてはその解釈をとつておりません。ところが総理が言われたのは、私も前々から言つておる通り、かりに外国から侵略された場合には、保安隊においては間接侵略に対処し得るごとく、直接侵略が起つた場合にも黙つて見ておることはできぬ。これは事実上の問題であります。法律上の問題を抜きにして、おそらくわが国の国民大多数は敢然これに対して立ち向うでありましよう。木村個人としても立ち向つて行く。保安隊も黙つていない。これは事実であつて、今総理の言われたのはそれなんです。保安庁法は間接侵略に対して対処し得ることになつておりますがこれを直接侵略に対しても明らかに対処し得るように改正いたしたいというのが、政府の意向である、こう言うのであります。
  83. 黒田寿男

    ○黒田委員 あなたは弁護士界の長老で、私はあなたの後輩なのです。しかし今のあなたの御解釈は、いわばでたらめである。私どもは制度としての保安隊のことを問題としておるのである万一外国から不正な侵略を受けたときには、とりあえず国民は、たとえばゲリラをもつて対抗する、こういうことはあり得ることでしよう。そのときには警察も出動しましよう、消防隊も出動しましよう。われわれも出るかもしれない。しかしそのことは、制度できめてあることではない。私が保安隊の性格を問題としておるのは、制度としてである。本来直接侵略に対して対抗すべきものとして、そういう使命、目的、任務を持つものとして、組織された勢力、こういうものが直接侵略に対する自衛力という制度である。しかしながら本来保安隊というものは、制度上は、そういうものではないのです。その区別ははつきりしておるのではありませんか。それを混乱させて、それをはつきりさせようとする私の解釈に対して、侵略のときには断固立つという一般論を持つて来て、これを保安庁に当てはめて、だから制度としてもあたかも直接侵略に対する自衛力であるかのごとく解釈せられるのは、これは弁護士の一年生でもそんな幼稚な解釈はいたしません。だから今の木村保安長官の御説明は、私には納得できません。だから木村保安長官の御答弁はもうよろしい。総理大臣に、先ほど総理大臣お答えなつたことと同じであるかどうか、そのままの御解釈でよろしいかどうか、ということをお尋ねします。
  84. 倉石忠雄

    倉石委員長 黒田君は木村長官の足をおとどめになつたのですから、木村国務大臣お答えも……。
  85. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それだからただいまのところ保安隊というものは、いわゆる間接侵略と申しましようか、国内の擾乱あるいは暴動とかに対処することになつておるが、これでは外国からの侵略に対しては法律上——事実上は別として法律上対処することはできないから、これを法律的に見て対処し得るようにしたい、これからかえて行こうという意味において、保安庁法の改正の問題が出て来るのです。保安庁法を改正したい、こういうことです。
  86. 黒田寿男

    ○黒田委員 私もただいまの木村長官のお話のようなのが政府の考える筋だと思う。ところが総理大臣はそうじやない。総理をして混淆せしめたのは、木村長官が先ほどのようなでたらめな、あのような解釈もあるというふうに言つておられたからそれで総理もああいうことを言われたのではないかと思う。しかしいやしくも一国の総理大臣としてのお言葉としては、私はこれは取消していただくのがいいのではないか。制度上としても、現在の保安隊が直接侵略並びに間接侵略に対抗する制度であるかのごとく言われたが、それは違う。だからお取消しになつてはどうでしようか。もし総理の言われるごときものであるならば、——どもは事実上はそうなつておるからという理由で保安隊を非難しておるのです。それをそのまま総理が肯定されるということになるから、総理としてはお取消しになつたらどうか、こう申し上げておるのです。これに対する総理お答えを聞かしていただきたい。
  87. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は取消す考えはありません。事実上たとえば申した通り保安隊が直接侵略に当面した場合に、逃げるということはこれはできないことであります。これをお話のように法制化する、事実をただ法律の文字に直すというだけの話であつて、観念としても、また実際の場合といえども、特に改めなければならぬこととは私は考えないのであります。またその保安隊がそこで戦争をすれば、それは戦力じやないかということは、これはおかしな話で、たとい戦力でなくても、あるいは十分の戦力を持たなくても、かりに外国軍が侵入した場合に保安隊としては逃げるわけには行かない。力及ばずとしても戦うのが日本国民の考えであると思います。
  88. 黒田寿男

    ○黒田委員 総理のようなことを言われるのならば、警察でもそうだと言える。だから私は総理のお話は、これはもう理論になつてはいないと思います。理論になつていないというだけでは済まない、いやしくもこの制度の責任者たる総理大臣が、法制上では間接侵略に対する自衛力となつておるけれども、実際上は直接侵略対策というようにも考えているのだ、総理保安隊に対しこういう御解釈であるとすればこれは非常な問題である。そうではなくて、万が一にも直接侵略が起つたときに、警察も立ち上るし、消防隊も立ち上るし、われわれも立ち上るという意味において立ち上る。それは当然のことである。けれどもそれは本来そういうことを目的として、そういうことのために対処するように訓練されておるというのではない、これが直接侵略対策たる制度にあらざるものの特質である。もし総理大臣のおつしやるようなことになれば、保安隊は、表面上の任務は保安庁法にあるようにしておきながら、実際は直接侵略に対する対抗力としての訓練をやつておるのだ。こうした一面を持つておるのだということになれば、それは軍隊だ、こういうふうに解釈できる、それでよろしいのですか。もう一度念のために言つておきますが、取消されないというならば取消さないでよろしいが、やはり取消された方がよろしいのではないのですか。もう一度総理大臣に伺います。もし取消されないならば、総理大臣木村長官との間に保安隊に対する解釈が根本的に違う、そういうふうに私どもは考えなければならない。     〔発言する者多し〕
  89. 倉石忠雄

    倉石委員長 静しゆくに願います。     〔発言する者多し〕
  90. 倉石忠雄

    倉石委員長 静しゆくに願います。私語を禁じます。黒田君、続行してください。
  91. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは、総理大臣と保安庁長官との間に、保安隊内容に関し、保安隊の任務、使命に関し、非常に大きな解釈上の相違があつたということを私は確認したいと思います。私はあらためて申しますが、総理大臣の御解釈では、たまたま外国から侵略があつたときに、他のいろいろな勢力も自己防衛のために立ち上るというような意味で、すなわち本来直接侵略に対する自衛を目的としておる制度ではないけれども、たまたま立ち上るというような意味において、いわゆる直接の侵略に対抗する勢力の一つになる、そういうふうに考えられるものとしてではなくて、平素から直接侵略に対する対抗目的を持つた部隊として訓練されておる、そういうもので保安隊はある。そういう性格を、法制上保安庁法に書いてある性格とあわせて備えておる制度である、こういうように私は吉田総理が申されたと解釈します。そして実質上はそうであるのに、法律上そうなつていない。だから法律上も実質に沿うように近い将来に改めようとしておるのだ、こういうふうにお考えになつておる。これが総理の御解釈である。木村長官のお考えはそうではないと思います。自由党の諸君が総理と同じようなことを考えておいでになるなら非常に間違つた考えを持つておいでになると私は思います。  そこで私はさらにお尋ねしたいと思う。しかしこうなつて参りますと、今総理のおつしやつたところから判断いたしましても、こういう意味での直接侵略に対する勢力として、平素から訓練されたものであるということになつて来れば、これはもう軍隊ということになるのではありませんでしようか。それは軍隊ではないのでありましようか。どこが軍隊と違うか、これをちよつとお聞きしてみたい。
  92. 木村篤太郎

    木村国務大臣 黒田君も御承知の通り、一体軍隊とは何ぞや……。(笑声)確定した定義はないと私は思う。いかなる辞書を引いてもはつきりしない。軍隊とは何ぞやという定義は出て来ない。これは人々の解釈にまかせなければならぬのです。卑近な言葉でいえば、鉄砲かついだ兵隊さん——鉄砲さえ持つておれば兵隊さん、これは軍隊と見る人もある、これです。そうすれば今の保安隊軍隊と言われてもいたし方ないのです。これは言葉のあやです。それは黒田君のおつしやる通り、これはおそらく直接侵略に対して対処するというような実力部隊であれば、軍隊じやないかというお尋ねであろうかと解釈しますが、そうでありますか。——そこで直接侵略に対して対処し得るような部隊を軍隊なりということであれば、これは保安庁法を改正して直接侵略に対して対処するようになれば、これは軍隊と言えましよう。これは言えるだろうと思います。しかしながら軍隊というものの性格はもう少し進んだものに解釈されておる。いわゆるこれは保安庁法を改正して直接侵略に対処し得る部隊になつても、日本憲法ではまだ交戦権を認めておりません。交戦権を認めない以上には、そこに機能の制約というものを受けるのであります。もちろんわれわれ常識的にまた高度に解釈するところによると、軍隊というのは、いわゆる交戦権を持つた、あるいは軍法会議を持ち、その他いろいろの機能を持つたもので初めて軍隊というのじやなかろうかと思う。その意味であれば、たとい保安庁法を改正して直接侵略に対処するようになつても、これは軍隊であるとあるいは言えないであろう。そこで軍隊という定義いかんによつて、これはいろいろかわつて来るであろうと思います。それでこの軍隊の定義をはつきりしないうちは、どれを軍隊といい、かれを軍隊ということは私は申し上げることはできない。それは言われることはごかつてであると思います。
  93. 倉石忠雄

    倉石委員長 黒田君、お申合せの時刻が過ぎておりますから、どうそ……。
  94. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、政府はあまりにもおざなりな詭弁、ごまかしを言つておられると思います。たとえば日米安全保障条約でも、直接侵略に対する自衛力と間接侵略に対する自衛力というふうにわけてあつて、直接侵略に対する自衛力といえば、大体軍隊であるというふうに常識上考えてさしつかえない。そこで今きわめてあいまい模糊たるお答え木村長官はなさいましたが、私も少し考えてみたのであります。一体侵略に対する自衛力というものはどんなものか。名前はどうでもよろしい。日本がこれから直接侵略に対して持とうとするものは、一体どんなものかということを考えてみるためには、たとえば日米安全保障条約のような条約において用いられておる侵略というものは、どういう内容を持つておるかということをまず考えてみましよう。侵略というものの一般的な規定というものはございません。国際連合憲章も侵略という言葉につきましては、一定の解釈を与えてはおりません。私どもが過去において締結せられた条約の中で、侵略に関する定義を与えたものを引出してみると、たとえば一九三三年のロンドン条約というものが侵略に対する定義を与えておるようであります。私は国際関係上、侵略という言葉が用いられます場合には、次のような場合に該当するものと考えたらいい、解釈していいのではないかと考えます。それはたとえば外国から開戦の宣言を受けた場合、あるいは兵力によつて日本の領土へ侵入された場合、あるいは陸軍海軍空軍による日本の領域への、あるいは船舶航空機への攻撃とか、日本に対する海上の封鎖——日本と申しましたが、これはどこの国でもよろしい。こういうような場合が大体直接侵略である。だからこれに対する対抗力というものは何と申しましても、相当な組織力を持つたものでなければならない。日本保安隊は、政府の非常に小さく見積つた防衛計画でも、十数万という数になろうとしておる。その十数万の部隊を持ち、それがアメリカの近代的兵器によつて武装せられ、アメリカの軍事顧問団によつてアメリカの戦車や飛行機や高射砲やその他の武器による訓練を与えらる。保安隊の中堅幹部はアメリカの士官学校へ留学して、軍隊的訓練を受けて帰つて来て、そういうものが保安隊の中におる。私どもはこれは戦争目的の部隊ではないかという見方を持つてつたのであるが、いよいよそれが直接侵略に対する、すなわち今のロンドン条約において定義せられておりますような、外国の侵略に対する対抗力だとして現われて来る場合に、これが軍隊ではないという説明は私にはできない。名前は何でもよろしい。そういうものを保持することを、日本憲法は禁止しているのではございませんか。私は、日本保安隊が、名前は自衛隊とかにかわりましても、直接侵略に対する対抗力というものになりますならば、実質的には軍隊になるのではないか、こう聞いておるのであります。私どもはこういうものを軍隊と言つておる。私は平和的憲法論者がどうこう言つておるというようなことを申しましては、あるいは政府に対しては適当でないかとも思いますので、元の海軍大学の教授で、日本軍隊を持つために憲法を改正する必要があるという議論をしておいでになる国際法の一学者が、日米安全保障条約における直接侵略に対する自衛力とは、どういうものであるかということを解釈しておるのを紹介しましよう。これは多数の人が読んでおる本の中にあるのであります。私はきようは時間がありませんから、内容をここで詳細に全部を紹介はいたしませんが、結論から申しますと、米国が日米安全保障条約において日本に期待しているところの直接侵略に対する自衛力、それは何か、米国が日本に期待するものは、軍隊またはこれと同種のものを日本がみずから保持することにあり、こうわれわれは解釈すべきである、こう言つておる。わが国の保安隊が直接侵略に対する自衛力ということになつて来るとこうなるのである。しかし、それは非常に問題である。現在の憲法下においてそういうことができるか、保安隊は実質的にそういうものになるかどうか、このことを私は保安庁長官にお尋ねしたい。名前なんかどうでもよろしいと思います。
  95. 木村篤太郎

    木村国務大臣 直接侵略のことを申されましたが、宣戦布告して日本に侵入し乗るもの直接侵略でございます。また宣戦布告せずに、ただちに日本に対して集団的に侵略して来るものも直接侵略であります。そこの区別ははつきり申すことはできません。少くとも日本の国土を侵そうというものに対しては、対処し得るようにしなくてはならぬと考えておるのであります。そこで戦力の問題に移つて来るのでありますが、これは黒田君も御承知の通り日本憲法第九条はどういう趣旨で設けられたかということをわれわれは反省してみなくてはならぬ。要するにこれは侵略戦争を再び繰返すようなことがあつては相ならぬ、この根本精神がここに現われているわけであります。この意味からいつても、日本自衛力というものは否定されていないのであります。外国から侵略されておめおめと手をあげて待つているということでは、日本の国は成り立たない。いかなる場合にあつても、外国から侵略された場合には、日本はこれを防衛しなくてはならぬ。ただ防衛するがために持つべき力をどの程度に持つていいかということが問題になる。これが第九条第二項の問題であります。いわゆる戦力の問題であるのであります。この意味は、要するに侵略戦争は再び繰返さないということをきめたものであります。侵略戦争を起させるような大きな装備訓練を受けた一つの総合力と申しましようか、実力部隊を言うのですから、仮定論といたしまして、かりに日本で五十万、百万の陸兵を持つたところで、これをほかへ運ぶだけの船舶を持つていなければ、外国と戦うこともできなければ、侵略することもできないのです。またジェット戦闘機を持つたところで、ほかへ向つて爆撃することのできないようなものを持つたところで、侵略戦争に役に立たない。ただそういうものを持つたところで何も役に立たぬものと私は考えております。ただわれわれの考え方は、日本の国を防衛するだけの準備をしておきたい。外国に対して侵略戦争を繰返すような、そんな大きなものは持たない。要するに、日本防衛をいかにしてするか、防衛力をいかに組織するかということでわれわれは考えおる。日本防衛計画もまたそこにあるのであつて、決して憲法第九条第二項の戦力に至るようなことではないとわれわれは考えております。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 実は私はもう少しお尋ねしたいと思うことがあつたのでございますけれども、途中で話が手間取りましたので、そして委員長の方からももう時間がないという御注意でありますので、残念でありますけれどもこれ以上議論を進めません。  ただ一言だけ申し上げておきたいと思います。ここでいよいよMSA軍事援助を受けて、日本が直接侵略に対する自衛力を持たなければならぬということになつて来る。しかし私はこういう軍事援助日本が受けて、直接侵略に対する自衛力を持つということは、私は憲法のもとにおいては合法的には不可能である、すなわち、こういうことをやることは憲法違反になると考えます。従つてこういうことを内容として新たに締結される日米間の相互防衛援助協定も、憲法に違反した条約になると思いますので、私どもはこういう交渉の成立及び協定の成立に対しまして、徹底的に反対いたしたいと思います。  きようは残念でございますが、時間がありませんのでこれで打切ります。
  97. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  98. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  質疑を継続いたします。小山倉之助君。
  99. 小山倉之助

    ○小山委員 私は大蔵大臣に御質問いたしまして、やがて最後に総理大臣の御意見を伺いたいと思つたのでありますが、時間の都合上繰上げて総理大臣質問を申し上げたいと思います。  実は私は日本の今置かれておる立場は非常に重大であると考えております。そこでこれは大蔵大臣にもお尋ねすることでありますけれども、大体日本の財界の現状、国家予算の現状を頭に置かれての御判断を伺いたいと思うものでございます。本年度における予算の総額は九千六百五十六億円になつておりますが、その間にはほとんど固定的な支出を含んでおるのであります。たとえば千二十億の公共事業費、千二百五十億の平衡交付金、千四百億の財政投資であります。そのうち千四百億という巨額の財政投資というものは、必ずしも有効に使われていないのでありましてそのうち大部分といつてよいほど焦げついておる。ほとんど経済効果を現わさないで焦げついておるのが、この財政投資千四百億という巨額に上つておるのであります。残り三千四百六十億ばかりの問題の中で、この災害予算が大きいとか小さいとか、あるいはそれを増すことがインフレになるとかならぬとかいうことが論議されておるのでありますが、かような尨大な三千六百七十億というものがほとんど焦げつきになつて動かすことができない。こういう財政のもとにおいてはよほどの覚悟をもつてしなければ、やがてわれわれの負担すべき防衛費でありますとか、賠償費というようなものを解決することは困難でありまして、どうしても革命的の大改革を行うという気分で進まなくてはならぬと考えておるのであります。こういう意味から総理大臣はこの時局を担当するにはどうしても強硬なる政策をとつて行かなければならぬ。その強硬なる政策をとるには政権を維持して行かなければならぬ。その政権を維持して行こうというところから、総理大臣のやつておられることには非常な無理がある。たとえば一つ、二つの例を申し上げましても、選挙においてはどうしても勝たなければならぬというので、与党の諸君の選挙場裡において使わるるは尨大なものになつておる。これが選挙界を腐敗させました。また一方において財界においては非常に放漫な政策が行われている、というのは、千四百億というような財政投資を受け、あるいはその間に政府と財界の者との結託があつたかどうか。そういう問題から濫費されておる。従つて料理屋とか茶屋とかそういうようなものは非常にいん賑になりました。それで一方においては道徳が高まらない、腐敗しておる。それにつけ加えて料理屋、パチンコ屋、競馬場、競輪とかいうものが盛んになつて参りまして、まことに憂うべき道義の頽廃であることは、この財政投資、そのほか政府の施策というものもあずかつて力があると思うのでありますが、総理大臣はこの点についてはどういうふうにお考えになりますか、御所見を伺いたいのであります。
  100. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。来年度において財政がはなはだきゆうくつであるということは御指摘の通りであります。従つてまた政府としては相当ドラステイツク、というのも何でありますが、できるだけの改善なり、改革なり、節約なりをいたしたいと考えております。しかしそれはすべて政権維持のみのためではありません。もしも政権を維持するために、そういう財政の面に、御指摘のような道徳の低下といいますか、腐敗というようなものがもしあるならば、これはわれわれとしても決心いたしますが、しかし政府としては政権維持ではなくして財政のつじつまを合せて、そうして日本独立後の政治をよくして参りたいという念願からいたすのである。単に政権担当あるいは政権維持のためにすべての施策をしておるのではないと御承知を願いたいと思います。
  101. 小山倉之助

    ○小山委員 総理大臣は政権の維持のためじやないと仰せられたのでありますが、もちろんそうでありましよう。しかしながら、この時局を切り抜けるには自分でなければならぬという非常な自負心を持たれておるのじやないかと私は想像するのでありまして、非常な自負心を持つてこの政局に当ることはよろしい。乃公出ずんばいかぬというような考えを持たれることはよろしい。しかし政権の維持にきゆうきゆうたるがために、その大目的を達するがために、政権にかじりつかなければならぬというところに非常に無理があるように思いますが、しかしこの点はあえてこれ以上追究いたしません。これはまた後ほど申し述べたいと思います。  第一、総理大臣はしばしば掲げられました行政整理を早く断行していただきたいと思うのであります。それは私もいろいろ研究してみまして、これから大蔵大臣に御質問申し上げるのでありますが、政府は既定経費の節約といいましても、現在の政府の機構のまま、あま事行つてはなかなか節約は困難であります。そこに無理がある。無理があるから従つてその節約の程度も非常に少い、限定されておるのでありますから、やはり現機構を改廃統合して人員を整理するということでなければ大きな費用は生れて参りません。そこでこの行政改革を早くやつていただかなければならぬと思うのでありまして、政府はおそらく二十九年度においてこれを断行しようと考えておるようでありますが、その準備を急いで、来るべきわれわれれの予想する自衛軍に対する経費並びに賠償金の用意をなさらなければならぬと思うのでありますが、この点はいかがでございましよう。
  102. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府はあくまでも行政整理、行政簡素化の精神をもつて事に当る考えで、現に行政整理の委員会を設けて、どういうふうな方針で整理するか、その根本政策について研究したしております。お話の通り、今日最も急を要することは行政の整理でありますが、しかしながら、行政整理は、単に人員を減らすということばかりを目的にいたしても、従来の経験に顧みてその目的を達することができませんから、行政機構の改革、あるいは改正、あるいは簡素化といいますか、行政面の整理から始めて行つて、そして人員整理というふうに持つて行きたい。今しきりにその方策について行政整理の委員会で研究いたしておりま、いずれも成案を得ましたら議会の審議を仰ぐつもりであります。
  103. 小山倉之助

    ○小山委員 総理大臣は、この前の議会におきましても、その前の前の議会におきましても、しばしば行政整理の必要を説かれておりましたけれども、過半数を持つた政府の力をもつてしても実現することができなかつたのであります。お話の通り、やはり機構をかえて行かなければ人員の整理はできません。人員の整理をすることだけでその効果はあがらないのでありますから、それを断行しなけりやならぬのでありますが特別なる御決心を願いたいと思うのであります。この行政整理並びにこれに伴う経費の節減は、国民のほとんど全部が要望しておるところでありますから大決意を持つて非常の決断をお願いいたしたいと思うのであります。  私はこの問題は大蔵大臣に伺うことであります。けれども総理大臣にひとつ御意見を伺いたいのであります。わが国の復興の基調は、どんなにりつぱな機構をつくりましても、どんな計画を立てましても、どうしても国民精神というものがもとでありまして、この国民精神の作興がなければ、道義の精神が普遍するにあらざれば、これは実行ができないことであります。ドイツのエルハルトの計画なんかを見ましても、その立てた計画に国民は全部共鳴して、全部協力している。全部協力するから実があがるのでありまして、経済上の問題については後ほど大蔵大臣に伺いますが、その機構は自由党の言うような放漫な自由経済じやなくして、そこに一つのフレームをつくる。これは何と申しますか、ソーシヤルフリー・エンタープライズエコノミーと言つておるようでありますが、社会的自由企業経済、この放漫な自由経済を社会的というもので押えておるのでありまして、この点につきましては、たとえば企業は自然に勃興するように政府はただフレームをつくる。そのフレームの中で国民は自由に企業に従事して活発な働きをする。それがためには、物価の統制もやらなければ、物価をつり上げるようなカルテルも許さない。そうしてその中で働いて行くのであります。今の日本の機構のごとくやつておれば、先ほど申し上げましたような濫費が行われる能率が上らないということになりますから、やはりその能率の上るような、各人はおのおのその職にあつて自由に働けるような経済組織をつくらなければならぬと思うのでありまして、これがためには、どうしてもいろいろな施策を施さなきやならぬが、国民を指導するには、やはり政府の政策に共鳴するような態度を政府はとらなきやならぬ。私は先ほど選挙のことだけ申し上げましたが、たとえばMSAの問題におきましても、私はここにロバートソンと池田君のコミユニケを持つておりますが、このコミユニケ発表した通りでありますかどうか。その点をひとつ伺いたい。ここに発表したのは正文と見てよろしいのであるかどうか、その点をちよつとお伺いしたい。
  104. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。あなたのお持ちになつておるものが正文であるかどうか知りませんが、政府発表いたしましたアメリカのロバートソンとの合同のコミユニケをもつて会談内容を尽したものと御承知を願います。
  105. 小山倉之助

    ○小山委員 近ごろは、アメリカの外交のやり方と申しますか、まず個人的の交渉を始めて、それが実際に現われて来るというのが実情のようでありますが、その中には、現在の状況においては、憲法の見地からと、経済の見地からと、予算の見地、そのほかのいろいろな制限から軍備ということは言えないが、実質においては軍備をつくつて行くというように書いてあるのです。それがために日本は十分なる努力をすると言つておるのですから、そういう態度をおとりになれば、今まで起るような論議が起らないのじやないか。軍備はやるのだ、しかし憲法のさしつかえがある、経済のさしつかえがある、そういうことからいけないのだが、軍備はともかくやるのだと言つてちつともさしつかえないのじやないか。そういうように御声明になれば、国民もみな満足するであろうし、うそをついているのじやない、ほんとうのことを言つているのだというような気分を持つのでありまして、そのやつていることと言わるることと違うというところに、国民は非常な不安を覚えるし、また現内閣は国民をあざむきながら軍備をやつて、その既成事実をもつて国民に押しつけようとするという誤解が起る。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 従つてこの議会においても絶えず法律論ばかりであるのですが、それを超越して、国としてはこうやらなければならぬのだということを率直に申し述べたならば、私はこの前の議会でも要求しました通り、そういう論議が一掃されるのじやないかと思います。これはやはり国を指導する上において最も困難なときに国の采配を振う総理大臣に対して、大いなる疑いを一掃するゆえんであると考えますが総理大臣の御意見はいかがでございましようか。
  106. 吉田茂

    吉田国務大臣 池田特使アメリカにおいて日本の経済、財政その他の状態を説明いたしたのであります。その状態からいつて防衛軍も、防衛計画もあまり多くの費用を投ずることはできないのである、ごく最小限度の、必要に応ずる程度の防衛しかできないということを、るる説明いたしたはずであります。しこうして今お話の、政府国民の知らざる間に防衛を完成するとか、あるいはまた防備をなすとかいうようなことをよく言われますが、これは民主政治においてできないことであります。予算が伴い、もしくは各種の法律をつくらなければならぬとするならば、これはことごとく議会の協賛を得なければならないので、議会が知られることなくして、すなわち国民が知られることなくして防衛隊が結成せられるはずはないのであります。この点は、繰返して申すようでありますが、再び繰り返して申します。
  107. 小山倉之助

    ○小山委員 総理大臣の議会における御答弁は、いつもやつてつてやらぬとおつしやるから、誤解が起る。こういう事情憲法上やれないのだ、経済上やれないのだ、予算上やれないから今ただちにはできない、しかし結局やるのだ、これはいつになるかわからぬけれどもやるのだ——ところがこのコミニユケでもわかります通りアメリカの方では非常に急いでいる。ただちにやれないとしても、ただちにやるような形でもつて最大の努力を払え、こういうような意味合いでありまして、私はこの予算が計上され、今までの保安隊軍隊と名乗り出る時期が意外に早いのじやないかという感じがいたします。しかし予算でもつて制限されます。るし、経済の面から制限されますから、その時期のずれはあるといたしましても、感じはやはり早く軍をつくるというように思われるのでありますが、私は賢明なる総理大臣に対して、その言い表わし方をおさしずするなんという大胆なことはいたしませんけれども、もつと言い方がおありになるのじやないか。ここで興奮されて、もうただちにその問題になるとごく短かい言葉でもつてお答えになるような態度よりは、むしろみんなを包容するような気分で、こういう事情になつているので、こういう気持でおるが、今こういうことでできないのだと率直にお認めになつた方が、この予算委員会における論議も緩和するし、国民も納得するであろうと思わるるのでありますがこの点はいかがでございましようか、重ねてお伺いいたします。
  108. 吉田茂

    吉田国務大臣 何べん繰返してみても同じようなことを申すことになりますが、言いろいろな防衛計画立ててみても、日本の国力がこれを許さないのであります。また無謀な計画を立てるということは、結局国の害になりますから、お話のような、ただちにするとかあるいはすべての問題を——経済上あるいは財政上の懸念等を払わずして防衛計画立てるというようなことは、断じていたしませんのみならず、国民が知らない間、また国会が知らない間に防衛計画立てらるるはずもないことは、今まで申した通りであります。私の申していることが事実と違うということであれば、事実と違う点を事実の上においてお話願わないと、政府はいいかげんなことをやつているということだけでは、われわれは承服ができないのであります。
  109. 小山倉之助

    ○小山委員 最後に一点。総理大臣は軍備の問題あるいは経済の問題、海外との交渉の幾多の重大なる問題をお持ちになつておるのでありますから、ぼくでなくちややれないというような気分から、これからも自分が政権をどうしても握つていなければならぬということから、いろいろ無理が現われているような気分がいたしますが、総理大臣の後継者をつくるつもりで、もつと大きな度量を持つて、民主的にりつぱな人間を物色するという御用意をなさらぬと、あんまり無理を重ねるとその無理が通らなくなりますから、特に総理大臣に御忠告を申し上げたいと思います。十分考慮を願いたいと思います。  これより私は大蔵大臣にお伺いいたします。本会議における小笠原蔵相の今期補正予算の御説明を承りますと、何となく自由党積年の放漫財政経済の失策をざんげしているといつたような感を深くいたしたのであります。識者は、緊縮政策をとるにあらざれば、日本の財政経済は救われないと思つている。このときにあたつて政府は通貨価値の安定、均衡予算を強力に打出したことは、おそらくは識者の共鳴するところであろうと思います。しかしその主張するところはまことにけつこうでありますが、ほんとうにこれは実現できないのではないか。おつしやることはまことによろしい。しかしこれは実現されるかどうかということは、過去の吉田内閣の実績から見ますと、国民は大いなる危惧を持つて、この点について非常に憂えるものであります。政府は均衡予算として、今次におきまして五百十億を打出しておる。野党はこれに対して、政府の算定され認められた災害損害額千五百六十五億の三〇%を主張した。政府はこれを二〇%に限定しようとこうおつしやる。その差額は百六十九億になつておる。この政府の五百億との差額の百六十九億というものを金融措置でもつて支出する、こういうことになつておる。この金融措置で支出することがけしからぬ、これはインフレの要因だ、こういうことが今日議論になつておるのであります。私は先ほど総理大臣にも御質問したのでありますが、この問題は、私は大蔵大臣の御注意を喚起するためにこの数字を再び申し上げますが、本年度予算は九千六百五十四億そのうち公共事業は千二十億であります。地方交付金は千二百五十億、千四百億は財政投資であります。この財政投資もほとんどこげつきなんです。この問題があるのに、百六十九億の問題をこの際金融支出でやつたからといつて、それがインフレの原因だというような新聞の論調がありますが、私はそれには承服しないのであります。公共事業費、食糧増産費、財政投資、こういうものに私は大いなる財源があると見ておるのでありまして、これはまた後ほど申し上げますが、私どもの主張は、五百十億というものは政府がつくつておるので、われわれはもつと増せと主張しておる。政府のつくつた数字に沿わなければこれがかえつてインフレになるという議論は私は立たないと思うのでありまして、この際なぜそんな要求をするかといいますと、食糧の確保は同時に農民生活の確保であります。農民の職域を守るゆえんであります。さらに国民生活の安定の基礎条件であります。未曽有の災害をこうむつて国民の食糧が足りないというようなことになれば、それこそたいへんな問題が起る。そこでこの荒廃した土地を回復し、堤防の決壊したところで土砂に埋もれたところは修復して行く、あるいは決壊した堤防は修繕して行くということは、やがて麦の植付なり米の植付なりに必要だからこれを要求するのでありまして、必ずしも財政措置を一時的にとつたからといつてインフレになるという議論は立たないと私は考えておりますが、大蔵大臣はどういうふうに考えておられますか。
  110. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 小山君にお答えいたしますが、この点については一昨日かにお答え申し上げました通り財源の許す範囲でこれをやるならば、またその仕事の進行ぐあいに無理がなく行われるならば、これはインフレにならぬということは当然であると私どもは考えておるのであります。ところが財源の方は、一方五百十億に足らないような状況であり、それ以上の財源をいろいろな点で見つけることは、たとえば前年度剰余金の使用等のお話がございましたが、そういうことは、私どもはインフレのもとになると考えております。それからまた今のお話のごとくに、食糧増産の方に向うものは結局において生産になるということも私どもは承知しておりますが、ただ御承知のごとく、口で五百億とか三百億とか言いますが、この金が何に向うかということをお考えくださると、これはみんな人夫賃とかあるいはそれに対する材料とかいうものに使われるのでありまして、これが一時に殺到することが時期的にインフレを起して来るもとになるのであります。従いまして私どもは、千五百六十五億の国の負担を出すことには何ら躊躇するものではないということは申し上げておきます。もつともこの千五百六十五億という数字は、今後の調査によつて若干見通しが移動して来るということは繰返してお答えを申し上げた通りであります。私どもはそう考えておりますが、今年は時期的な問題等もありまするし、また本年五百億が——これはいわゆる農業保険も含まれておりますが、この五百億の金が向うことは、これは普通のときの災害と違つて相当大きな数字なのであります。これは人夫賃とかあるいはその他に出まして、大体半分ぐらいが人夫賃になるのでありますが、かりにそのうちに農業保険の方は見ないで考えましても、直接出る分が三百四十六億ということになつております。前の三百億の分と、それから災害対策費ですでに使つておるものの残りまだ十六億ほどございまするので、三百十六億ほどということになつているのであります。かりに二百億ほどが人夫賃に使われるということにいたしましても、五千万ほどの人夫を今後使わなければならぬ。これは延人員でありますが、そういうふうに相当大きな問題が起つて来る。そういう点等を勘案いたしまして過去の実例を考えますと、昨年は非常に幸いなことに災害が少かつた災害が少かつたから二割三分何厘も進捗しておりますが、例年の例を見ますと二割以上進捗いたしておりません。そういうこと等もありまするので、財源等関係で私どもは三百億といたした次第でございますけれども、過日来私が申し上げました通り、個々の事業の進行状況をよく調査してみまして、それを今やることは非常によい、またやることがどうしても必要だというものについては、特に融資その他をお考えしましようということは、これは最初この修正案を提案した前から、私はそのことを申し上げている次第でございます。従いまして、小山君御承知のごとく要するに財政問題といい経済問題といい、程度問題でございますから、それではどの程度吸収し得るかということになるとこれは判断がわかれて参りますが、まあ今度の修正の程度ならば、金融措置等いろいろのことをあわせ考えて行けば、基本の線をくずすことはあるまい、こういうふうに私どもは考えて修正をいたした次第であります。
  111. 小山倉之助

    ○小山委員 政府は、外米を今までは九十万トン入れたのが、今年度におきましてはすでに百四十万になつた。それから小麦は百五十七万トンであつたものが百九十七万トンになつた。大麦は六十二万トンのものが八十二万トンになつた。こういうふうな巨額な食糧を外国から入れて来て、この金は結局外貨を支払うのであるし、また日本の外国の食糧に対する依存度を強めて来るわけになりますが、これだけのもので足りるとお思いになりますか、どうでありますか。またこれをこの程度に維持するために、あるいはこれをさらに少くするために、このたびの五百十億の予算の中から、あるいは過去における施策、あるいは新たに起す施策というものでこれを切り詰められるかどうかということについて大蔵大臣並びに農林大臣のお考えを伺いたい。これ以上ふやすことはないか、これで大体間に合うか。今年予想をしたものは、米百四十万トン、小麦百九十七万トン、大麦八十二万トン、こういう計画を農林省で発表しておりますが、これで行けるかどうかということを、これは両面からお答えを願いたい。
  112. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 食糧の問題は、これは民生安定の第一歩でありますので、ちようど外貨もありますし、私どもは、日本に必要なる食糧については十分これを確保いたしたいと考えております。幸いに今年は米の方も各国とも割合に豊作でありますし、また麦の方は非常に世界的に豊作で、十分に買い得る状況でありまするので、必要なだけは、必要な範囲は——もちろん外貨を払うのですからその数量を少くしたいと思いますが、民生安定に必要なだけは入れたいという考え方で、外貨の割当等につきましても、優先的にこれを考えるということで農林省とお打合せをいたしておる次第であります。しかし大体申しますると、小山さん承知しておられるように、年間日本で食糧としては五億五千万ドルくらい入れております。もちろん砂糖、塩等も含んでおりますが、そういうわけで、この数字等も、本年は値段等の問題があつて数字がふえているがそう大きな差はないと見込んでおります。それは、食糧会計については赤字になる分はそうふえることはあるまい、こういうふうに一応見通しております。なお農林大臣からもお答えがあるかと存じます。
  113. 小山倉之助

    ○小山委員 私は、金融措置でもつて使い込む百六十九億というものは、大藏大臣しばしば言われる通り財源の捻出は、公共事業費と食糧増産対策費については、新規の事業は認めない、これは抑制する、既定計画に重点化するというようなことをドラステイツクに強行して行けば、生み出せる問題ではないか、かように考えますが、いかがでございましようか。
  114. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 数字についてのお話、ちよつとはつきりいたしませんが、今お話の御趣意でありますと、さらに公共事業費とか食糧増産対策費——小山さんの意味は、会計検査院等が指摘しておるように、公共事業費あるいは食糧増産対策費を、その名前の示す通り使われることは非常にけつこうだけれども相当むだが多いから、これをもつとドラステイツクに切つたらどうかというお話じやないかというようにも伺つたのであります。但し本年は、あなたのお言葉通り相当ドラステイツクになるのではないかと私は考えます。今度も五十九億ばかりこの方面からも減額いたしまして、少し今年は予算措置上無理じやないかと思つております。しかし来年におきましては、根本的な問題といろいろ対照いたしまして、この問題については十分考えたい。但し日本で食糧の増産がいることは、どうしても一般海外の支払いを減ずるわけではなくて、国内の自給度を高めるという意味で、食糧増産には真剣にとりかかる必要がある。但し、予算措置をどの程度とるべきか、またどういうふうに効率的にこれを使うべきかは、今後に残された問題であると存じております。
  115. 小山倉之助

    ○小山委員 大蔵大臣は、この間閣僚を戒めるというか、閣僚に強力に反省を求めるというのでありますか、公共事業費及び食糧対策費の濫費についての調査を発表されたようでありますが、これは同時に、千四百億と先ほど申し上げました数字の中にも多くの焦げつきがある。非常に間違つた使い方もある。濫費されたものもあるのですから、同様にそういう方面の御調査をお願いして、それを発表していただきたいと思う。私の見るところによりますと、継続事業でも完成されないで、直轄河川でも、あるいは補助河川でも、国営事業でも、短かくて四年、長いのは二十六年、あるいは大蔵大臣の言われる通り、百五十五年なんという、夢の国ででも見るような仕事がありますし、ある場所においては、ただ事務所ができた、役所の人員はちやんと整備された、しかし着手することはできない、こういう箇所もたくさんあるのでありまして、これを整理すれば、どこかに冗費が省けて来るのではないか。そこで種類と緊急度に応じてこれを勘案するということを大蔵大臣は仰せられましたが、あまりに総花式に浅くやるものですから、どの事業も完成していないという状況であります。これはおそらくは選挙民の要望、国民の要望にこたえたために、こういう政策が行われたと思われますが、もう今日私はそんなことを遠慮しておる時代ではないと思います。やはり切るものは切る、進めるものは進める。そうしてここに画然たる区別をつけて、これに対して中止をする、いわゆるモラトリアムを布く、このくらいの決断をなさることが必要ではないか、そうしてできる緊急なものから完成して、ほかのものに移る。いつ完成するかわからぬものを残しておつては、その間にやはり金がむだに使われる。むだに使われては何にもなりません。何らの希望なくして金が浪費されるという結果になつておる実情を、私は見るのであります。大蔵大臣はこのことを区別して——私は中止したものを中止しつぱなしという意味ではありません。急ぐものは急いで完成し、その中止したものを今度は早く繰上げてこれを完成する、そういう態度をとられた方がいいのではないか。そのモラトリアムを布告する決心ありやいなや、大蔵大臣の御決意を伺いたいのであります。
  116. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 事業上にモラトリアムをすべきかどうかということは、ちよつと答弁に苦しむのでありますが、御意見のあるところはよくわかつております。私どもも重点的に、かつ効率的にこれをやる。特に来年二十九年度の予算は過日も申し上げました通り、いろいろな点から、現在約二兆円にも上つておるというような予算が、各省から提出されておりまして、十分これらの点についても、日本の財政にふさわしいように調整する必要がある。そういう点からも、お話の点はとくと考慮して、実行に移すべきであると考えております。
  117. 小山倉之助

    ○小山委員 冷害対策について、先ほどのことは農林大臣はおのみ込みにならぬようでありますから、ちよつと申し上げます。災害の方については、ほかの委員から詳しく述べるであろうと思います。私は海岸地帯のことだけ御了解願いたいと思う。御承知の通り、今年は陸上の冷害と同様に、海岸の冷害が非常に多い。一時さんまはとれましたが、あとは不漁であります。かつおなんかもとれない。そういうかつおをとるとか、さんまをとるというのは、大体地方では資本家階級の人です。ところが零細漁民は何をしておるかと申しますと、近来は田を耕すと同時に、いかだをすえつけたり何かして、かきの養殖をするとか、わかめの養殖をするとか、のりをとるとか、そういうことをしております。ところが昨年の高波でいかだが侵されて大損害をこうむつたのみならず、また今年は冷害で未曽有の不漁となり魚貝もとれなくなつたために漁民はまことに悲惨な生活をしております。農村には保有米がありますが、漁村には保有米というものはありません。農村においては牛馬を売つたり、あるいは娘を売るといいますが、海岸地帯には牛馬も少い。御承知の通り、海岸地帯の零細漁民は、海に出てあるいは他国に出かせぎをしておるので、女は留守を守り、農耕に、また薪炭採取についておる。さらに消防隊にまで加わつている。そういう状態でありますから、どうしてもこれはある程度失業救済のような事業もひとつお考えを願いたい。あるいは未完成の鉄道がある地点にあつたとすれば、そういうものを繰上げて工事に着手して、まず漁民に労銀を与えるというようなことを十分お考え願いたいと思います。簡単ながらこの点について御注意をわずらわしたいと思います。
  118. 保利茂

    ○保利国務大臣 山地といわず、海岸地帯といわず、海流異変から、そういう事態が生じておりますことは、先日もどなたかの御意見もございました。その通りでございます。特に零細漁民のことを御心配だと存じます。むろんこれは救農土木というわけには参りませんが、たとえば今度計上いたしておりまする予算によりましても、漁港修築等を繰上げるとか、あるいは新たに築港するという計画も立てております。さらにまた労働大臣とも御相談申し上げておりますが、失業対策についても相当の予算が計上されておりますが、何もかも農林省の予算ではむろんできるわけではございませんし、すべての冷害対策予算の中に総合的に適地適応の施策を請じて、そういう御意見に沿うようにいたさなければならぬと思います。  また先ほど来特に公共事業費、あるいは食糧増産の対策費節約等にからんでいろいろ御意見が出ております。食糧増産対策費等が総花式に流れておる、しかもそれが党略的なにおいが多分にするというような御意見があるようでございますが、食糧増産の中心である土地改良等は御承知のように、終戦後規模のものは取り上げられないで、すべて三百町歩であるとか五百町歩であるとかいうような、大規模な事業に中心が置かれておるわけでございますから、従いましてこれが完成をいたしますれば——完成していないところの実情は一見してまことにむだだと見える。しかし完成いたしておりますところは、その効果が十二分に上つておると由思います。そういうところを十分ごらんいただきたい。もちろん御意見については、私ども十分尊重いたして参るつもりでおりますけれども、事業の性質上そういうふうになつておるということも御了解を願いたいと思います。
  119. 小山倉之助

    ○小山委員 私は大分時間がたちましたから大蔵大臣にお伺いいたします。大蔵大臣は通貨の安定を期しておられるようでありますが、一体どういう対策を持たれるか。私はドイツの例を申し上げるのでありますが、米国の援助を受けてから、ドイツが一番先に着手したのは産業の振興と国民生活の水準を高めるということであつた。通貨の改革をいたしましてから、今日はスイス・フランと自由に交換ができる。ヨーロツパにおいては最も堅実な通貨となつておるということは御承知の通りであります。一九四八年にはもうインフレは解消した、こういう状態であります。しかるにわが国におきましてはこれと全然反対の状態である。この二十億というような巨額の金が入つたにかかわらず、その間に産業合理化もしなければ、朝鮮ブームのあつた場合にも産業合理化もしないで、いまさら輸出が不振になつてあわて出して、それ通貨の価値の安定だ、そら均衡予算だと騒ぎ立てる。そんなことをしたからといつて決してまだ産業が復興しておるわけではない。まるでこの復興したドイツのやり方とはうらはらのやり方をやつて来ておるのでありまして、この点について、私は長い間政局に当られた総理大臣責任は重大なるものと考えておるのであります。  今の状態はどうであるか。みんな言つておる。消費インフレだ、それ散超インフレだ、あるいは公共インフレだ。こういうことは総理大臣、大蔵大臣もよく御承知のことであります。今日は内地の物価が高いので、輸出に向けるべき外貨でもつて獲得したこの原料を、みな内地の物価高に乗じて内地の消費の方が盛んになつておる。今日はすべてのほとんど大部分輸出に関するものはみな二重価格なんであります。二重価格オンパレードといつてさしつかえない。これはみな過去における失策より来ておるのであつて——失策ではないとしても過去において賢明な政策がとられなかつた、堅実な政策をとらなかつたということに起因するのでありますが、かような状態で一体どうするか、どういう計画を持つておるか、大体のことはお伺いしておりますけれども、ここにあらためて大蔵大臣の御意見を伺いたい。
  120. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これまでの諸政策ときからあの非常に旺盛であつたインフレ傾向を阻止して大体今日安定状態を来たし、又鉱工業生産もいろいろ増加いたしておるというようなことと、私はそのときどきの情勢によつて財政経済の諸政策も若干ずつかわらなければならぬということを考えておるのでありますが、しからば今日の段階においてどういうことをやるかということが小山さんのお考えの点ではないかと思います。そこ一できわめて簡単に申しますと、通貨価値安定の具体策といたしましては、まず第一にいわゆる均衡財政をやりまして、財政面から来る通貨の不安定を防ぎ、そうして通貨価値の安定をはかりたい。第二は金融面に対しましてはできるだけ資本の蓄積をはかることであります。前回皆様の御改訂によつて利子税が源泉所得の一割になつたことはたいへんよいことでつす。それで相当と思つておりますが、この資本の蓄積をはかりほかに資金の重点的並びに効率的使用によりまして、金融面から来る通貨の安定増強をはかりたい、かように考えておるのであつて、たとえば日本銀行が今日とつておる政策もその一つであります。  さらに輸出貿易の伸張並びに国内自給度の向上をはかるにとであります。この点は今ドイツの例で小山さんおつしやいましたが、その点はごく必要である。すなわち日本が朝鮮事変のときにうたつてつた各種の基幹産業を初めとして、産業の合理化近代化をやる。昨年は五千万ドルも近代化をする機械を輸入しておりますが、もつと一層これをやることによつて、国際水準に達するために日本の生産コストの引下げをはかつて行くことが必要である、そうして日本商品の国際競争力をつけることが必要であると思います。同時に食糧を初めとしてできるだけ国内資源の開発をやる。また輸入品にかわり得るようなもの、たとえば化学繊維もそうでありますが、そういうもので国内の増産によつて国内自給度の向上をはかつてつて、国際貸借の改善に資する。また一方では船舶その他といつたようなものをどんどん一つの計画のもとにふやして参りまして、国際収入の増加をはかつて行く。あるいはまたこれは私よく申すいわゆる耐乏生活でありますが、これはイギリスに学ぶべきところがたくさんある。たとえば生糸が国内で高いために出て行かないということにつきましては、国内消費の節約で生糸その他の輸出増強をはかるということも必要でありましよう。また他面高級自動車とかあるいは各種の外国商品が入つておりますが、これは私どもできるだけ阻止いたしたいというので、本年の外貨割当等から十分この点については注意いたしておりますけれども、これはやはり国民おのおのが、国の国際収支を改善するのだという心持で、耐乏生活に耐えてもらわなければならぬ。こういうことは十のうち一つでも欠けてはならぬと思います。すべてをば総合実施して参るということによつて通貨価値を安定させる。私は金の値打を維持するということは、すなわちこれが日本の民生安定の一つのシンボルだと考えます。産業を興すことも通貨安定の線でやる、国際貸借の改善も通貨安定という線で現われるというふうに考えますので、打出す線としては通貨価値の安定ということを出しておるのでありますが、すべての政策は財政経済金融一体となつての総合施策が行われなければならぬと考えておる次第でございます。
  121. 小山倉之助

    ○小山委員 もう大分時間が過ぎておりますから、私は簡単に御質問申し上げます。この公共事業費と食糧増産の問題をめぐつて、本予算とこの災害の予算を見ますと大体三千億と思います。ところがこれを使うのに二割はほとんど補助を受けるための陳情とか旅費とか飲食費にまわる。そういたしますとほとんど六百億が空費される。これがために、先ほど総理大臣にもお尋ねいたしましたが、補給金そのほかのことについてドラステイツクな政策を立ててもらいたい。池田・ロバートソンのこの計画にも、日本のインフレーシヨンを防ぐ、これに最大の努力をする、これがアメリカと協力するゆえんである。これが自由国家群と協力するゆえんである。日本に外国資本が投下されるゆえんであるとあるのでありますが、これは大蔵大臣もアメリカヘおいでになつて日本を離れて、日本の経済状態がいかに海外に醜く響いておるかということは痛感されたろうと思います。妥協的な円満な大蔵大臣は、非常な御決意を持つて通貨価値安定の問題をひつさげ、さらにまた非常な勇敢な態度をとつておられるのは、おそらくは海外から日本の姿の醜さを見られたことに大いなる刺激を受けたからであろうと思います。異常の御決意を持つてひとつこれに当つていただきたい。しかるに金融の金利を下げると言いましても、最近は保全経済とかなんとかいいまして、非常な高利で貸すところが氾濫しておる。五百億の預金を集めた。そうして今度はこれを援助するのじやないか。そのためにある方面では運動がある。政府はあるいはこれを援助するのじやないか。彼らは政府に対して援助を求める確信がありとさえ言つておるのでありまして、かようないまわしい救援とか何かというものは政府はなさらぬであろうと思いますが、この点に対する御決心を伺いたい。また同時に相互金融なんか類似の金融機関に対し、政府はいかなる処置をなさるつもりか。低金利政策の上に影響することであると存じますから、これを正常な機関にもどして、しこうして国民全般が安い金利のものを使う政策をもおとりを願いたいと思いますが、この点について御答弁を願いたいと思います。
  122. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 金利を低下し、かつ正常なる金融機関によつて金融することについては、まつたく私ども御同感でございまして、それがために今後とも十分なる努力を払う所存でございます。保全経済会は過日申し上げましたように、保全経済会自体はいわゆる匿名組合で、人に出資をさせて、それを株式あるいは不動産に思惑をする投資であつて、金融業ではないのでありますが、こういつたものの存在は、私どもは法の盲点を突いたものでおもしろくないと考えております。それでまたその後も率直にこういう類似のものについて見ますと、今までたとえば終戦直後におきますようなインフレ時代には、たとえば二分とか三分とかという金利を払つても物を買う、あるいは株を買う等の投機で成り立つたのでございましようが、今日世界経済がほぼ安定し、かつ横ばい状況になつておる際においては、かようなものは私どもより見て存立し得ないものであります。またこういう法の盲点を突いて、いろいろな人の利害に大きな影響を及ぼすというようなことをやるようなものについては、国として何ら保護を加える必要はないのであります。(拍手)従いまして私どもはかようなものについてはいかなる場合においても、お互いの血税である国費をもつてどうこうする、援助する、保護するというようなことの考えは毛頭持つていないということをはつきりと申し上げておきます。いかなる申出があるともかようなことに耳をかすべきではありません。しからば一般のそういう類似の弊害のないものについてはどうか。こういうことについては、弊害は今はないかもしれない。あるいは現れて来るものもございましよう。あるいは相当な過渡期を置く必要があるかもしれませんが、やはり起るかもしれぬというような事柄をおもんぱかつて何らかの立法措置を要するのではないか、こういうふうにも考えておりまして、それに対して目下事務当局の方でせつかく立案中でございます。
  123. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 井手以誠君。
  124. 井手以誠

    ○井手委員 私は冷、災害を中心として質問いたしたいと存じます。  第一に承りたいことは、大蔵大臣は、災害復旧費として百四十四億円を必要に応じて融資すると述べられておりますが、国会におきます大臣の公約でありながら、その議案が提出されていないのであります。この融資はおそらく補助金などを対象としてのことであろうと存ずるのでありますが、補助金などを見返りとして、復旧費を融通するということになりますと、後年度に支出の義務を負わせることになる。すなわち国は債務を負担することになるのでありまして、国庫債務負担行為となるでありましよう。従いまして財政法第十五条第二項によりまして、国会の予算総則改正の議決が私は当然必要になつて来ると考えるのであります。大臣は年度割三、五、二を基準とする保守三党協定に基いて修正したと言明された立場からも、三割に達せしむるために百四十四億円を融資されるのでありますから、この金額を完全執行する義務のあることは申すまでもないのであります。従つて百四十四億円の債務負担行為を、何ゆえに国会に提出されなかつたか。また同じく三党協定に基く修正でありますれば、融資の年度末までにおきます利子補給の立法措置を、なぜ提案されなかつたか。昨日の答弁ではその線で行きたいとは申されましたけれども、行きたいという希望でな済まないのであります。さらに融資が次年度にわたります場合は、起債を必要とするのでありますが、その措置はいかにお考えになつておるか。またその後の利子補給はどのようにされるおつもりであるか、その点をまずお尋ねいたしたいと存じます。  なおこの機会にただしておきたいことは、昨日横路委員質問に対して、融資は百五十七億であると答弁されたのであります。千五百六十五億の三割ということになりますれば、当然そこに百五十七億ということになりまして、百四十四億が百五十七億ということになるのでございますが、いずれが正しいか、あわせてお尋ねをいたしたい。
  125. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 数字の点について申し上げますと、その後の調べによると百五十七億というのが正しいと存じます。  それから今の融資額についてでありますが、これは預金部資金などで、しかも工事の個々の進捗状況に応じて必要なものにこれを出すということに相なつておりますので、これは全部が全部必要でないことは井手さんよくおわかりのことと思うのであります。従いましてどのくらいの金額になるかということは、私ははつきりいたさないのであります。なお預金部資金のことは、昨日ちようど横路委員お答えをしたときに、現在預金部資金が全額ということは、さようなことはございません。従つてそういう計画は立つておりません。預金部資金などとなつておるのであります。それから起債その他の問題でありますが、預金部資金あるいは起債の事柄については、これは何ら国会——ことに預金部資金運用審議会にかける必要のある場合もありますが、そういうことはない。お話のような利子補給とかその他の問題が起りますと、これは国会の承認を得なければなりませんし、またそれを提案する必要がございますが、それについて、あるいは来年二月までのうちというようなことが、ちよつと書いてあつたように記憶いたしておりまして、その線では考えておりまするが、今ここへお出しするとは考えておりません。
  126. 井手以誠

    ○井手委員 今の御答弁によりますと百五十七億円は実行しない公算が強い、そういうように私は受取つたのでございますが、それではあなたが三党協定に基いて提案したという趣旨にもとるのじやないか、その点を私は本会議で説明されたあのことに関連いたしまして、重ねてお尋ねを申し上げますとともに、融資だから国会の議決は必要でないという御答弁でありますけれども、それでは何百億融資をいたしまして事業をやらせてもいいだということになるのであります。これでは国会はいらなくて、どんどん行政府が執行機関がやつて行けるということになるのであります。国の最高議決機関が必要でないことのようにも考えられるのであります。この点について私は財政法の立場から当然国会の議決が必要である、予算総則の改正が必要であると考えるのであります。あらためてその辺の法的解釈並びに融資の関係についてお尋ねをいたす次第であります。
  127. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 融資については昨日も申しましたが、これは最高限でありまして、それをどれだけやる、さらば実行しないのか、こういう今の言葉でありましたが、それは誠意を持つてやる、ただ誠意を持つてやるのはどういうことかと言いますれば、申すまでもなく工事の進行状況が、これを必要とする、しかもこれなくしてはやれないということになるのでありまして、それを調査した上でなければ、はつきりいたさないことは申すまでもございません。なお財政法上の問題は、私は専門家でないからわかりませんが、井手さん、大体程度の問題だ、そこで何百億いるか何千億いるか、但し預金部の金は百五十七億すらないのでありまして、そういう問題について、仮定的な議論にはお答えすることはでませんが、私は財政法上は従来の例によりましても何らさしつかえない、またあなたのお考えでもそういう極端な、何百億でもいいのかといえば、一億でも国会の承認がいるかということにもなるのでありまして、これは私は法的問題ではないと存ずるのであります。
  128. 井手以誠

    ○井手委員 どうも法的根拠を示されないのは非常に困るのであります。時間の関係もありますから先に進みたいと存じますが、後刻あらためてお伺いいたします。  申すまでもなく財政処理権は、国の最高機関の議決によつて初めて内閣に付与される、そこに支払いの義務も負担も生じて参るのであります。従つて国会の議決もなく、もし大臣の今の説明のように、実情に即して融資して行こう、事業をやらせようということになりますれば、旧憲法下におきまするような、国家財政は内閣が独断専行できるということになるのでありまして、私は憲法に抵触することになりはしないかと考えるのであります、しかもただいま御説明のように、百五十七億は実情に即してやるということでありまするし、また預金部資金が非常にきうくつである、ただいまの御答弁によりましても、その余地はほとんど期待できないようであります。それでは超党派の線をくずしてまで取引された保守三党の努力は、水泡に期するのではないかと私は思うのであります。おそらく三党は公党の面目にかけて承服されないでありましよう。従つて委員質問に対しても明確にされなかつた百五十七億円、この点を私はこの際はつきりと確約を願いたいと思います。ほかの保守三党からも、さらに追究もされるでございましようが、私もこの際百五十七億出すという御言明を願いたいと存ずる次でございます。私はそれが本会議におけるあの提案説明の趣旨に沿うのだと考えるのであります。
  129. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 最高限百五十七億であり、その間において個々の事情について審査した上で、実情出すべきものと認めれば出すことは、ちやんと協定の申合せでありまして、これについては私どもが誠意を持つてやる。何も百五十七億きちつといつも出して行かなければならぬということはないのでありまして、ちやんとこれがきまつておるのでありまして、さようなことをここで確約するようなことはできません。  なお資金運用部資金の運用について、憲法に抵触云々でありますが、これは御承知のごとく井手さん運用なんですよ、歳入でも歳出でもないんですよ。従つてそういうものに対して、審議会の議を経ることは必要でございましようけれども国会の承認がいらないことは、これはあなたの方がよく御承知であろうと思います。
  130. 井手以誠

    ○井手委員 百五十七億の点は、保守三党のことでございます。私どもは独自の考え方を持つておりますので、これ以上申し上げません。  続いてお尋ねいたしたいと思いますことは、予算の追加補正は、本予算編成後生じた事由に基いて必要避くべからざる経費を補正するのでありますから、すでに被害が判明し、その対策のために予算補正を行う、こういう補正予算におきまして、冷害対策費三十億円を予備費に追加修正する。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕 こういうことは、私は財政法上疑義があるのではないかと思うのであります。すでに発生した災害の調査も大体済んでおる、そのためにこの臨時国会が、召集されておるのに、その対策費を予備費に計上されておる、これははなはだ不可解なことだと思うのであります。私は予備費に計上するような漠然たる対策費はあり得ないと考えるのであります。何だか保守三党で取引されたように、きようの新聞には出ておりますが、私は確信を持つて提出された予算において、予備費に計上されたその理由と、その内容を承りたいのであります。
  131. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 会期の関係もありまして、予備費として出すことが一番——普通にやりますと、あなたも御承知のように、印刷その他になかなか時間がかかるわけで、それでこうやつたのでありまして、内容についてははつきりいたしておるのであります。これについてはなお政府委員より答弁をいたさせます。
  132. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 補正予算五百十億を必要とするような当初予期せざる事態が生じまして五百十億円を計上したわけでございます。その場合に予備費にその中から災害関係で十五億、冷害関係で三十億を計上いたしておりますのは、その支出を必要とするような事態は、すでに起つておるのでございますが、こまかく予算の内容として提出する程度には被害調査その他が進んでいないのでありまして、そういう事態が確定するに従つて、将来支出をして行く弾力性を持たせる意味で、予備費に計上したのでございまして、その予備費を含んだ五百十億全体について、その支出を必要とするような事態が起つておるわけでございます。
  133. 井手以誠

    ○井手委員 今なお調査中であるという言葉は、非常に不可解ではございますが、さらに進んでお尋ねいたしたいと存じます。  西日本大水害が発生しましてから、すでに四箇月以上になつたのでありまして、ようやくその災害対策費を予算化されたのでありますが、特別措置法を適用する地域を指定する政令が出されておりません。罹災地ははたして工事に補助があるのか、またどの程度の補助を見込まれるのか、復旧計画が立つていないのであります。しかし荒廃した農地を寸断された堤防、道路を、そのまま放置するわけには参らないのでありまして、最小限度の工事を今急いでおります。そのための百八億のつなぎ融資もあつたのでございますが、これは焼石に水の程度でございます。ただでさえ赤字に悩んでおる都道府県、市町村は非常に困つております。これは当初関東大震災にも比すべき大災害と称しながら、ほとんど特別対策を講ぜず、荏苒今日に至らしめました政府責任であります。政府は特別委員会できめた基準による政令を、約束通り公布されるとは存じます。けれども、この機会に緒方副総理に対しまして、念のためにお伺いをいたしたいのであります。また提案されました予算の編成基礎は、適用地域をきめた上でなくてはいけないと思うのでありまして、いつその政令をお出しになるのか。さらにまた公共土木施設、農地施設等に関する指定道府県はどこどこであるか。また政府の対策遅延によつて行われましたつなぎ資金の利子について、当然国が見るべきであると私は考えるのでありますが、政府はどのようにお考えになつておるか。以上副総理と大蔵大臣にお伺いしたいのであります。
  134. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 災害復旧の立法に関する政令につきましては、災害というものの性質上、また議員立法に基いて出します政令であります関係上、変則ではありますが、議員の方も御承知のように、災害対策委員会の立法に関する御意思をできるだけ取入れまして、ほとんど委員会の意思通り政令を起草中であります。大半はすでにできておると思いますから、ここ数日で政令ができ上がることと考えております。
  135. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 政令につきましては、ただいま副総理よりお答え通りに、抽象的な基準をきめることについては、衆参両特別委員会の御意向を尊重いたしまして、やることなつております。ただ井手委員も御承知のように、公共事業費の災害復旧費が、二十八年度の標準収入を越える地方公共団体の地域、こういうような問題等もありますので、二十八年度の標準税収入というようなことが、一つの考え方にもなつております。また公共事業復旧費の査定も、地域指定に影響して来るので、それによつてきめることになるので、政令の方は抽象的なやつはすぐできますが、現実の適用をどうするかという問題については、まだ少し日にちを要するかと考えております。
  136. 井手以誠

    ○井手委員 インフレのことについては、予算委員会でしばしば議論されましたので、一般的には申し上げませんが、ただ災害復旧とインフレの関係について、大蔵大臣に特にお尋ねいたしたいのであります。大臣は災害復旧費を多く出せば、インフレになるようなことを、繰返し強調されておるのであります。あるいは復旧費削減を正当化する口実かとも考えられますけれども、言うまでもなく災害復旧費は、特に道路、堤防農地のごとく、ほとんど人夫賃である。その安い賃金によつて失業者や罹災農民が辛うじて最低生活を維持している。この状態、またこの災害復旧は食糧増産のためであり、生産復興のためであることは、言うまでもないのであります。大臣は災害復旧のどこがインフレの要因になるとお考えになつておるのか。三百億の予算に対しましても、関係一道二府二十数県に割りますると、一県当り大体十億円程度であります。先刻も資材云々の答弁がありましたが、橋梁に若干の資材を要するといたしましても、インフレになるからといつて橋をかけないわけには行かないのであります。事はきわめて緊急を要するのでありまして、またその資材の需要も、生産復興の道にも通ずるのであります。外航船舶の建造には尨大な融資を行う。そして百六十七億円の利子補給を勇敢にやられたのでありますが、これはインフレの要因にはならないのか。インフレを押えようとして復旧費を三百億円に押えながら、さらに百五十七億円ふやしてもインフレにならないと、先刻もおつしやつたのでありますが、この災害復旧とインフレの関係は非常に重要でございますので、確固たる信念を承つておきたいと思うのであります。大蔵省の顧問や財界方面からは、盛んに災害復旧費の圧縮を申し入れられたと聞いておるのでありますが、惨状目をおおう災害復興よりも資本家のこの申出が大事なのであるか、特に御答弁を願いたいと思う次第であります。
  137. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 即インフレだと、私は申しておりません。ただ私が申しておりますのは、財源のないのに災害復旧に金を投ずるということになり、またその金の出し方が、その資金の使われる効率等を問わずして一時に殺到するときには、インフレの元となるということを申したのでありまして、この点はよく井手委員もおわかりになることと思います。
  138. 井手以誠

    ○井手委員 災害復旧が、インフレの要因になるような印象を与える言葉については、十分注意してやつてもらいたいと希望する次第であります。  政府は補正予算編成にあたつて災害復旧費を千五百六十五億円に押えております。それはいかなる根拠によるものか、一応御答弁を承りましたが具体的に承知いたしたいのであります。農地及び農業用施設におきましては、田植えを控え、食糧増産の熱意に燃えて、すでに自分の力で復興した者は、査定の対象から除外された。農林大臣の地元にも多数その事例があるのであります。このような冷酷な農林省の査定をもつていたしましても、農林省関係の国庫負担額は八百八十一億円、一方建設省の国庫負担額は、見込みを合せて、公共土木事業だけでも九百四十九億円、これに住宅地すべり、排土事業などを加えますれば、直轄工事を除きましても、千百五十億円に上つております。この両者だけでも、はるかに二千億円を突破している。大臣は十月五日の特別委員会におきまして、建設、農林関係で千七百九十八億円と発表されたのであります。この千八百億円説が、第十三号台風襲来直後のことでありまして、被害はその後さらに拡大されております。一方適用地域は、大蔵省の考えておられた以上に広げられているのでありまして、国庫負担額がさらに増大することは常識となつているのであります。昨日の本会議におきましても、大臣はその間の事情を若干述べられましたが、私はその詳細を示されなくては、額面通り受取ることはできないのであります。罹災地もまた、国庫負担を圧縮するための過酷な査定ではないかと、批判するであろうと考えるのであります。従つて大蔵省は、どのような科学的な根拠をもつて千五百六十五億円にされたのか。相次ぐ異常災害、この異常災害には、従来のような実績をもつて律することはできないのであります。納得できる具体的資料を示していただきたいと思う次第であります。  なお建設、農林両大臣は、厳格な査定を行つて、大蔵省に確信を持つて予算を要求されたと思うのでございますが、この大蔵省の査定に対しまして、いかにお考えになつておるか、それで満足されておるのかあわせてお尋ね申し上げます。
  139. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 さきに被害報告額が二千六百二十億であり、国庫からの所要額が大体千七百九十九億、千八百億円であるということを一応申し上げましたが、その後十月五日現在、過去三箇年間の実際等に基く査定と、また業種別に査定を行いました結果、それが損害額は何らかわらないのであります。報告も何らかわらないのでありますが、査定見込み額が減少いたしまして、千五百六十四億数千万、千五百六十五億と相なつておるのでありまして、このことはすでにこの席でも二回にわたつて申し述べておりまするので、またもし御必要があれば、こういう紙がございますから、あとで差上げてもよろしゆうございます。そういうぐあいで何ら圧縮をしたり何かしたものでない。あなたの言葉をかりて言えば、過去の実数とまた業種別によつて検討した科学的検討の結果とでも申すべきものと申してよかろうかと思います。なおまた今後数字については、これは十月五日現在でございますから、若干の移動があることは御了承願いたいと存じます。
  140. 井手以誠

    ○井手委員 なお続けるつもりでございますが、あとの人の答弁者の関係がございますので……。
  141. 倉石忠雄

    倉石委員長 今澄勇君。
  142. 今澄勇

    今澄委員 総理特にお急ぎの大事な御用があるそうでございますから、私は総理大臣だけに二十分ほど質問をいたします。  まず第一番に、今度経済審議庁の廃止をされるような計画が出ておるが、大体吉田総理の経済及び一般財政に関する知識というものに一貫性が少いように思われます。総理はときどき電話をかけて、国土の開発をやつたらどうだとか、いや干拓事業をやるがいいとか、乗つておる自動車が非常にゆれると、道路の改修をやれとか、貿易振興をやれとか、人造米を元気を入れてやれなど、いろいろその場の思いつきで政策を内閣の官房長官その他にお伝えなさつておられますが、私はこの際あえて総理に申し上げておきたいのは、かつて原敬氏は、まことに偉大な政治家ではあつたけれども、惜しむらくは経済政策にうとかつたために、その努力にもかかわらず、国民が非常に塗炭の苦しみにあえぎ、日本の経済が非常な苦難に当面をいたしたのであります。そこで私は総理大臣に、総理はいろいろそういう御指示をなさつておるが、今度の災害については、災害について大いにやるべしというような御指示はなかつたのだが、その総理がいろいろ御指示されたそれらの事項だけについて、内閣では総理の満足するような実績があがつておるのかどうか、まずこの点を総理にお伺いをいたします。
  143. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。ただいま行政整理案についてはせつかく研究いたしておるので、いまだ成案を得ておりません。従つて経済審議庁の廃止というようなことは、まだ私どもは問題にいたしておりません。  それからまた今度の災害は近年まれなる大災害であつて、そのために関係地方は苦しんでおるという状態も承知いたしております。従つてこれに対する適正な措置を講ずるようにということは、絶えず閣議においてわれわれも強調いたしておるところであります。
  144. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は総理にもう一度伺いたいが、今度の災害について総理が出された指令でわれわれがまず承知をしておるのは、人造米を大いにやるがよろしい、こういうことでありましたが、総理はこの人造米にどれだけの期待を持つておられるのか、御答弁を願いたいと思います。
  145. 吉田茂

    吉田国務大臣 私どもが閣議においてこうしたらよかろう、ああしたらよかろうと言うことが新聞に出ても、それに対してどれだけの根拠があるか、一々新聞を検討いたしておりませんから、一々これに対してお答えはできませんが、人造米も一つの案ではないかということは言つております。どれだけの期待を持つておるか、これは農林大臣からお答えいたします。
  146. 今澄勇

    今澄委員 私は農林大臣にはあとで聞きますが、少くとも食糧増産費をへずつて、そうしてこれらの人造米等の、国民生活の実情から見れば、大して大きく食生活を改善するに当らないものに、わざわざ総理がそういうようなお言葉を与えられたということは、これらの特許権者の特許料が一体幾らであるか、それはあとでお尋ねしますが、二千万か三千万というような特許料を、この国民の食生活の困難な中から政府が出してまで人造米にやるようなやり方は、いささか本末転倒であると思うけれども、これについてもう一度総理の御答弁を願いたいと思います。
  147. 吉田茂

    吉田国務大臣 人造米のごときも食糧問題の解決の一つの方法ではないかということは話合つた。これをどう実行するかは農林大臣から説明いたします。
  148. 今澄勇

    今澄委員 今度は私は総理大臣李承晩ラインの問題でお聞きをいたしたいのであります。  まず第一番に、私は二十一日午後の記者会見で、日韓会談決裂の後に、吉田総理から福永官房長官に、李ライン問題の解決は死力を尽して努力するよう連絡があつたということが発表されております。おそらく総理からこの李承晩ラインについての早急解決の御指示があつたものと思うが、総理のこの死力を尽してということは、具体的にはどういうふうにしなさいというお考えで御指示があつたものか、吉田総理にお伺いをいたしたいと思います。
  149. 吉田茂

    吉田国務大臣 李承晩ラインは公海の自由に反することでありますから、政府はこれを承認いたすことはできない。そして今お話の、死力を尽してという話をいたしたかどうかは、これははつきり今記憶はございません。
  150. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、この重大なる李承晩ラインの問題は、日韓会談決裂後、外務省は二十二日に外務省のスポークスマン談を発表して、その中で特に水産庁の公船、すなわち日本の公船が韓国に拿捕せられたということは、昔ならば開戦の、原因ともなり得る重大な問題である旨を、外務省のスポークスマンが責任をもつて発表いたしておるわけであります。この日本の公船拿捕に忙して、内閣総理大臣としての吉田さんの御見解を私は承りたいと思います。
  151. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはあくまでも政府としては、拿捕された漁船の還付を請求いたします。
  152. 今澄勇

    今澄委員 この問題は実は重天な問題で、私はぜひ吉田総理から、日韓会談についての内閣が考えている一つ方針というものを伺わなければならぬのであります。本問題に対する関係閣僚懇談会というものが設置せられまして、二十三日の午後五時から第一回の会合が開かれて、その会合においては緒方、岡崎木村の三相が一時間にわたつて協議の結果、まず第一番に、どうしてもこの問題が片づかない際は、保安庁警備船の護衛によるところの強行出漁、第二番には、韓国駐日代表部の閉鎖についても議論が行われ、第三番としては、金公使以下関係部員の強制退去について議論が出、さらに在日韓国人の生活困窮者に対する保護法適用の打切りも、九億円ばかりあるが、これもやつたらどうか、第五番目に不良在日韓国人の積極的な本国送還の道もあるではないか、韓国船舶の日本における修理拒否という経済的な報復手段もある。さらに水産物を買うのをやめて、セメントを売るのをやめたらどうか、いろいろ閣僚懇談会で議論せられました結果を——私は先般社会党の要請書を緒方副総理に手渡して、これらに対する個人的な考え方でもいいが、緒方さん、政府としてはどのようにおやりになりますか、この前私と緒方さんとの打合せに非常に大きな食い違いを生じたこともあるから、ひとつぜひお語りを願いたいということで、私は三名のオブザーヴアーを連れて、参議院において個人的な緒方さんの見解ではありますけれどもつたのであります。そのときに緒方さんから、これは個人的な話だけれども、経済報復と代表部の閉鎖というようなことは、やろうと思えばやれないこともないだろう、生活困窮者に対する保護の打切りなどということは、今の日本の経済並びに国内情勢の下では困難であろう、出漁に関しては、やはり李承晩ラインは認めないのであるから、これは護衛をして何とか出漁を守つてやらなければなるまい、アメリカには依頼はしておらぬけれどもアメリカは非常に努力してくれておる模様であるというような見解がございました。そこで私は、私が党の要請書をあなたに手渡して、そうして伺いましたその個人的な見解は、その後いろいろ経過を経てかわつておるでありまうよしが、かようま具体的の一つ一つの問題について、一体政府としてはどういうふうにお考えになつておるのか、緒方副総理からこの際いま一度、この委員会の席上においてお伺いしておきたいと思います。
  153. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今のお話の中にはずいぶん間違いがあります。私は関係閣僚会議の一員でありません。従つてその会議内容を申し上げることもありません。それから参議院の廊下で今澄君呼びとめられて、いろいろ質問を受けけたことはあります。そのときにどういう報復手段が考えられるかという質問がありましたから、それはこういうことも考えられるだろうという程度のことを申したので、私は個人でも政府の一大臣としてでもやるということを申し上げたことはない。今澄君は気が早いので話がときどき間違うのですが、これは非常に迷惑でありますから、取消しかたがた申し上げておきます。
  154. 今澄勇

    今澄委員 私は緒方副総理に申し上げておきますが、私どもが緒方副総理に手渡した文書は、ごらんになつたと思いますがわが社会党の申入れであります。しかもそのときに緒方副総理には、社会党の国会対策委員長加藤勘十氏の名をもつて、私は代表であるから面会をいたしたいということを申し入れたのであります。ただ、私はそれが緒方さんの個人見解であるからあえて追究はいたしませんが、それらの問題について緒方さんは、間違いであつたと言われるけれども個人的にはこういう方向もあるということを言われたのであるから、今日の内閣としてはそういうことは一体やらぬことにきめたのか、あるいはやることにきめたのか、ここでひとつ緒方さんからもう一ぺん御答弁を願つておかなければなりません。あえて申しておきますが、私も国会議員であります。わたしは国会議員として党を代表してあなたに申し入れたのであつて、あなたの立場がいかに苦しいとはいいながら、そういうような御答弁というものは、いやしくも国の副総理としてはあるまじきものではないか。私どもは、質問に際しては私一人だけでなしに、そばに三人の実は傍聴者を置いておつたのであるから、私はあえてこの問題で何も事を荒立てようというのではありませんが、そういうようなお答えもあつたのであるから、それらの問題に対して、政府は一体はどういうふうに考えておられるかということについて、緒方さんからここでもう一度伺いたいと思います。
  155. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 これからそういう重大なことは、廊下の立話はお断りいたします。この間もその前のときも私は廊下で呼びとめられて、お尋ねになりましたから、お話したことはそれがすぐ社会党の代議士会か何かに報告されて新聞発表になつておる。それでは非常に私は迷惑いたします。今後はお断りいたします。
  156. 今澄勇

    今澄委員 私は緒方さんに聞きますが、あなたが時間がない、時間がないけれども、どうしてもわれわれは申し入れなければならぬから、そこで緑風会のあなたの談話のあとをとらえて私は申し入れたのであつて、私どもとしては、正式に秘書を通じてあなたの方に頼んだが、今緑風会の方に行つておるということであるから申し入れたわけであります。そこで、今聞いたそれらの問題について、その後政府はこれをおやりになるのか、それとも一体そういうことはやらないのか、この点についての緒方さんの答弁がありませんが、ひとつこの際ぜひこの問題について、あなたの御答弁を願いたいと思います。
  157. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それは政府でまだきまつておりませんから、この席で申し上げることはできません。
  158. 今澄勇

    今澄委員 今の質疑応答は総理大臣もお聞きになつておると思いますが、私も、なるほどこれらの日韓会談に関するわが政府のとるべき方策は、重大な影響があるから、十分検討をせられる必要があると思います。だがしかし、私が聞きたいのは、水産業者の皆さんの陳情がある際は非常に強硬な、こうにもする、ああにもするというような政府の態度が、個人的ではあるが述べられ、こういう公式の委員会になりますと、何らの意見もない。そこで私は、この問題の解決というか、平和的な外交交渉によつて新たな道を開くためには、あるいはアメリカに頼むとか、いろいろの方法をとらねばならぬ、さらに強行出漁によつて海上におけるいわゆる武装警戒もやるということであるならば、それらの対策もとらなければならぬ、外交交渉を有利にするため経済的ないろいろの問題もやるということであるならば、それらの問題も検討しなければならぬと思うが、十一月の盛漁期を迎えて、この事件が起つてから、もうすでに日にちも相当つておるのに、政府としてはいまだ何らの対策もきまつておらないのでありますかということを、総理大臣にお伺いをいたします。
  159. 吉田茂

    吉田国務大臣 この問題については、重大と考えますから、種々の方法について閣議で研究をいたしております。しこうして、いかなる手段をとるか、いかなる方法に出るか、これは交渉内容に属しますから、今日ここでもつてお話いたすことはできません。
  160. 今澄勇

    今澄委員 総理にもう一度聞きます。それは、この問題については、外交的な手段、実力による護衛、経済的な韓国に対する報復という三つの手段があるが、一体政府はそのうちのどの方法をとろうとしておるか、それもまだきまつておりませんか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  161. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府においては相当の覚悟、手段は考えておりますが、これも公開の席上と申しますか、この場において申し上げることはできません。
  162. 今澄勇

    今澄委員 総理にもう一度聞きますが、その相当の覚悟というのは、もう少し具体的に申されるねらばどういう覚悟であるか、当委員会であるから抽象的な言葉でなしにひとつ具体的に、いま少しくわかりやすい言葉で、御答弁を願いたいと思います。
  163. 吉田茂

    吉田国務大臣 抽象的の言葉以上に申し上げることはできませんが、しかし方針としては日本の漁船の保護あるいは日本の漁業権の保護、これはあくまでも主張いたす考えでおります。
  164. 今澄勇

    今澄委員 総理はこれでけつこうであります。  私はなおこの問題について木村保安庁長官にお伺いを申し上げなければならぬのですが、木村保安庁長官は、先般の水産委員会において、日本におけるフリゲートの出動も考えなければなるまいというようなお話があつて、その際保安庁法第六十五条の解釈によつて海上におけるこれらのいろいろな事件については保安庁はやはりその責任を負うべきものであるから、この六十五条の解釈を適用してフリゲートの出動もわれわれは考えておる、こういうあなたのお言葉でありました。しかるに保安庁としては、海上において演習をやつておられますが、北海道方面に今ずつと演習をしております保安庁の海上勢力の今後の演習計画はどうなつておるか、そうして李承晩ラインの近海に、これまで保安庁の海上警備艇が出て演習をしたことはないのだが、近く朝鮮海域にも演習に出られるような計画があるやに聞いておるが、事実かどうか、保安庁長官からお伺いいたしたいと田います。
  165. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。警備隊の船が陸奥湾すなわち青森湾において、去日演習をやつたことは事実であります。ただいまは舞鶴近海において遊式中であります。日々訓練はやつております。今月の十四日には、佐世保に今度総監部ができましたので、開庁式をやりますから、そこへ約十隻のフリゲートが集結することは事実であります。しこうして、その際演習をやるかどうかということについては、目下研究中であります。私はできることならばやりたいと考えております。
  166. 今澄勇

    今澄委員 木村保安庁長官にもう一つ聞きますが、その日本の九隻のフリゲート艦の実力装備で護衛をする。そうして向うの朝鮮海軍は、三隻のフリゲートであるということでありますが、向うの兵力、並びに日本のいわゆる保安庁の装備をもつてして、もし海上において紛争を生じたときは、保安庁としてはこれらの紛争をとりしずめ、日本の漁業を守つて行くだけの自信と見通しがあるかどうかということを御答弁願いたいと思います。
  167. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この際率直に申し上げます。韓国の実勢については、私は十分に承知しておりません。しかし、大体において、われわれの察知するところによりますと、駆逐艦を数隻持つておる。フリゲートも数隻人持つておる。軽爆撃機、いわゆるロケット砲弾を備えております飛行機も相当数持つておるようであります。さような状態でありますが、われわれも十分これに対処し得るよう、常に準備しなければならぬ。かるがゆえに、早く日本防衛力の強化をやつて行かなければならぬと考えるわけであります。
  168. 倉石忠雄

    倉石委員長 井手以誠君。
  169. 井手以誠

    ○井手委員 大蔵大臣はあの大災害に対して、従来の実績に徴して千五百六十五億に査定したということに対しましては、私はどうしても納得が行かないのであります。しかし、この点については、別の機会であらためて追究をいたしたいと存じます。国庫負担額を千五百六十五億円に押えて三百億円、それは一割九分二厘に当ると答弁されておりますが、かりにこの査定額を採用するといたしましても、復旧工事の割合は、直轄工事を除きますと、一割七分五厘にしか相当しないのであります。さらに、農林省、建設省の査定によりますと、建設省関係では一割三分、農林省でわずかに一割に過ぎないのであります。もつとも融資によりまして、若干ふえるではありましようけれども、多くは期待できないのであります。そこでお尋ねしたいことは、この厳格な上にもさらに厳格な査定を、大蔵省から受けられた建設、農林両大臣が、この査定に対してどのようにお考えであろうか、満足しておられるのか。来年春の雨季を控えて、はたしてこの二割足らずで雨季に耐え得るという確信がおありであるかどうか、具体的な対策と信念を承りたいと存ずるのであります。  さらに大蔵大臣に一言伺いたい。一昨日のこの委員会で、二割あれば災害は防げる、それから本会議においても、二割で大丈大だと、こういう御答弁があつたのでありますが、二割でよろしいという根拠を、私はこの際承つておきたいと思うのであります。
  170. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣  あの公共事業費のほかに、冷害等の分もありますので、それを合わせますると、約二割に当るのであります。実は、個々の工事の進行状況等も、いろいろ違いまするから、これをもつて足りるというように申すことは実情が許さないと思います。ただ私がよく申しますのは、従来の例によりますと、昨年が非常に災害の少い年であつたので、二割三分何厘というふうに進行いたしておりますが、過去の実例によりますと、例年は二割に及んでおりません。従いまして、本年は、九月に起つて、そのあと災害等もありますので、平均をいたしますと、大体二割でいいんじやないか。但し、これを重点的に行つて行く。特に今お話になつたような、来年の出水期等に、重ねて災害が起るようなものについては、これはそういうことのないように十分措置をとらなければなりませんが、総じてこれを言えば、そういうことでいいんではなかろうか。もちろん多いに越したことはありまん。私はよく申しておるように、これをもつて足れりとは何も考えておりませんが、今日の財源がこれを許さないから、この程度で忍んでもらつてよいのではないかと申しておるのでありまして、この点誤解のないようにお願いいたします。
  171. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。大蔵省でいう千五百六十五億と、私どもの方のいう数字と大分食い違いがあるように思われるのでございますが、これは私の方で報告いたしておりますのは、十月二十八日までのことで報告いたしておりますので、その点ですでに百数十億の差ができております。なお査定を一応見込みました数字についても、大蔵省の実績による査定とやや違つた見込みのところもありますので、数字の上では大分食い違つている点があるのではないかかように考えております。私は元来この災害復旧は少しでも早くやるということが、最もいいことだと思つております立場からいたしましても、今度の補正予算の額がこれでいいということは断じて考えておりません。しかしながらたびたび説明がありましたように、財政上やむを得ずということで、この限度にとどめられておるのでありますので、この範囲においてできるだけの努力をいたしたい、かように考えます。しかしながらことに本年は大災害でありまして、従前の例のようにばかりも参りますまい、従つてどうしても来年の出水期までに早く処置しなければならぬ分も多いのではないかというような心配もありますので、先般も申し上げましたように、重要な部分についてはぜひとも一考をいたし、来年の出水期に備えたい、かように考えておるのであります。それがために足りないところは、融資その他の方法をもつてもやりたいというふうに考えでおるのでございます。大体以上であります。
  172. 保利茂

    ○保利国務大臣 井手委員も御承知のように、査定が農林省に非常に冷酷にやつてつたのではないか、たとえば農民自身が昼夜兼行の非常な努力を払つて回復したようなことは全然顧みていない、六月の水害はちようど植付の半ばから終末期でありましたから、従つて農家としてはたとい一筋でも植えつけなければならぬという農民の旺盛な意欲が働いて、非常に困難な地方回復をやつていただいておつたことは、私どももあちこちで散見をいたしたわけであります。しかし、だからと申して査定が済まないから、ほつておくというようなところがなかつたかといえば、それはなきにしもあらずであります。そういうところと査定があろうとなかろうと、とにかく農家の血と汗で回復したようなところを、査定官が見落すようなことがないように、査定上十分の注意を加えてもらいたいということはそのとき現地の当局に対しても指示しておるわけです。そういうことで査定上にはできるだけ実情に即した査定をいたしておるはずですが、今回の予算の基礎になつておる——これは大蔵大臣も言つておられますように千五百六十五億というものは多少の移動は生ずるかもしれないが、その一応の被害総額——農林省所管としましては農地あるいは農業用施設で八百五十五億、林野関係で八十二億、水産関係で三十億、こういう査定が基礎になつておるわけでありまして、その基礎でまず農地につきましては、これはあたの方が詳しいわけで、補助金が来ようと来まいと、とにかく農家としては来年の植付期には、どうしても植付けねばならぬ。むろん和歌山等局地々々のどうにもならないという例外はあるわけでございますけれども、そうでないところはどんな無理をしても、来年の植付には間に合せなければならぬというのが農民の気持であり、また政府の気持でもあるわけですから、そういうところはどうしても植付に間に合うようにしなければならぬ。これはまた今回の予算におきましてもできるのじやないか、私はそういうように考えております。
  173. 井手以誠

    ○井手委員 重ねて建設大臣にお伺いをいたします。土木施設工事につきまして都道府県は十万円以上、市町村は五万円以上を、いわゆる小災害の補助の対象にする、こういうことで特別措置法を当初つくつたのでございますが、そのときに建設大臣はその小災害については平衡交付金その他で必ず実行する、こういう固い約束がありましたので、その原案を削除いたしまして特別措置法は成立いたしたのであります。これは大臣よく御承知のことと思うのであります。従つて災害復旧と不可分の関係があるわけですが、なぜこの小災害について、この臨時国会にその予算措置をされなかつたか。平衡交付金なら平衡交付金の増額をされなかつたか。私は公約を無視されたような気がいたしますので、この機会はつきりした大臣の御言明を願いたい。その金額は大蔵省の査定によりましても大体四十三億円だと考えられるのであります。特に御答弁を願います。
  174. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。府県並びに市町村の小災害のことにつきましては、当時私確かにお話のように、これはぜひめんどうを見なければならぬものだということを申し上げました。しかしその後、実は従来の法律に基く関係だけでも、建設省の所管においてはすでに十万何件というふうになつておるようなわけでありまして、むろん当時はそれだけの数字ではありませんが、数が多くて建設省で直接これを査定するというようなことは、とうてい困難であるというので、これを府県にまかせるということにいたしまして、従つて平衡交付金あるいは起債の方法によるということで、自治庁にお願いをいたしまして、自治庁長官並びに大蔵大臣とも十分な連絡をとつて、その方で措置をしていただくようになつておるのでありますが、おそらくただいまお話の点については措置が講じてあることと私は信じております。
  175. 井手以誠

    ○井手委員 講じてあると言われますけれども、講じてないのであります。この点について大蔵大臣はいかにお考えになつておるか、大蔵省でもこの辺の事情については、特別委員会答弁をなさつたこともありますので、十分御承知のことと思うのであります。大蔵大臣からも御答弁をいただきたい。
  176. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 政府委員をして答弁いたさせます。
  177. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 けさの委員会におきまして、自治庁長官からもお話がありましたが、今回の災害に関連いたしまして地方団体の歳入の減、ないしはただいまお話の小災害を含めました災害関係の支出の増加に充てますために、資金運用部資金から八十三億円を起債額の追加として認めることになつております。その中でただいまお話の小災害の分が、大局的には考慮せられるわけでございます。  なお残りました問題といたしましては、水害対策委員会でもしばしば問題になつたのでございますが、その起債の元利償還金の補給をどうするか。これには二つの方法があると思います。一つは普通の起債の元利償還金と同じように、地方財政計画の中に織り込む、そうして地方財政需要を計算いたしまして、それに見合うだけの歳入を確保する、この方法によりましてもその元利補給金は見られるわけでございます。もう一つは別途起債の特例法が出ておりまして、その特例法によりますと、元利補給金につきまして別わくで政府が元利補給をすることができることになつております。その点をどうするかということを先般来検討中でもございましたが、大体認める方向におきまして、目下自治庁とせつかく検討中でございます。この分は来年度の財政需要として出て来るわけでありまして、本年度の財政需要の問題ではございません。
  178. 井手以誠

    ○井手委員 重ねてその点を確認しておきたいと思いますが、国の負担で小災害をやるということには間違いはございませんか、念を押しておきたいと思います。
  179. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいま申し上げましたように、元利補給金を別わくで政府が補給するということになれば、もちろんでございます。しからざる場合、すなわち地方財政計画の中に織り込む場合におきましても、結局においてはその財政需要に対する財源措置を、政府が考えるというわけでございますから、国が負担するということに結論としてはなるわけでございます。そこで検討の余地があるということを、先般来申し上げておりましたのは、小災害でない大災害の場合の補助金分につきましては、これは地方財政計画の中に織り込まれるだけでございます。それとのバランスがりまして、いろいろ問題があつたわけでありますけれども、目下先ほども申し上げましたようなことで検討をしておる、そういう事能でございます。
  180. 井手以誠

    ○井手委員 大臣は昨日横路委員質問に答えて、災害による地方負担の増加百八十六億円のうちに、預金部引受けの起債は八十三億、これはつなぎ融資——すでに地方公共団体に交付されておるつなぎ融資百八億円のうちにすべて含まれておると申されたのであります。間違いはないとは存じまするけれども、念のためにもう一回お尋ねいたしたいと思います。
  181. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 つなぎ融資に含まれると申したのではなくて、本年度の預金部の資金に運用すべきうちに、八十三億今度の災害に対する地方債分が含まれておる、こういうことを申したのであります。
  182. 井手以誠

    ○井手委員 それは言い違いでありますか、百八億円のつなぎ融資の中にすべて含まれておるということを、はつきりここで申された、だから私は非常にこの点は重大なことだと存じましたので、お尋ねをするわけであります。あとでそれでは速記録で……。
  183. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 百八億の追加融資と言つた記憶はありますが、つなぎ融資と言つた記憶は全然ございません。なおつなぎ融資というものは、性質が全然違うことを自分の頭で承知しておりますから、さようなことを言つた記憶はございませんが、もし速記録にありましたら、さようなことはないということを申し上げておきます。
  184. 井手以誠

    ○井手委員 この点はあとで速記録に基いてお尋ねしたいと存じます。  政府災害復旧について、金融機関に対する政府指定預金を一枚看板のように強調されておりましたが、最近この預金をどんどんと引揚げておる。西日本関係においては、すでに四割近くに達しておると思うのでございます。そのために災害地の金融を非常に梗塞しており、中小企業の年末金融が、非常に憂慮されておるのでございますが、災害地がまだ立ち直つておらず、災害予算も成立していない今日に急激に引揚げられる理由とその状況を承りたいと存じます。
  185. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 大体指定預金は三箇月というのでありまして、期限に基いて引揚げておりますが、災害地及び年末等については、特別に措置をすることになつておりまして、引揚げてよい分以外は引揚げておりません。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  186. 井手以誠

    ○井手委員 引揚げたことは事実でございます。  次に農林大臣にお尋ねをいたします。低米価を強行し、土地改良費を出し渋つておいて、食糧増産のできないことは言うまでもございません。食糧増産費を削つたり、復旧工事費がわずか一割そこそこで、食糧増産の実を上げようといたしましても、これは木によつて魚を求めるようなものでございます。本年の稲作は調査ごとに減収が判明いたしておるのに、政府は食糧の不安はないと楽観されておるようでございます。しかし未曽有の凶作でありますことは、国民すべてが知つておるところでございまして、政府のこの楽観方策にもかかわらず、国民は食糧の将来に非常に不安を持つておりますし、また事実内地米の配給が職場において次々に減らされて行く。これは政府発表必ずしも国民が信頼していないところでありまして、大臣はこの際国民の納得する需給計画特に内地米の配給計画、それと供米の見通しとについて発表される必要があると思うのであります。この機会に内地米の配給計画その他の事情を承りたいと存ずるのであります。  さらにもう一点水害及び冷害の農家には、飯米確保のために米麦を売り渡すようになつておるのでございますが、おそらく来年秋までのことであろうと考えるのでありますが、その期間や対象になる人員、あるいはその数量をあわせて承りたいと存じます。
  187. 保利茂

    ○保利国務大臣 十一月から始まつております本米穀年度の需給を、政府は楽観しておるのじやないかというお話でございますけれども、私は絶対に楽観いたしておりません。いろいろ御意見もございますが、楽観をいたしておりませんから、外米の輸入計画を立てて、着々その実施に移つているわけでございます。さらにまた麦の輸入につきましても計画を立てておるわけでございます。さらにただいままきつけが始まつております麦の増産に対して、農業団体方面に特別の熱意を持つて増産運動をやつていただくように方途を講じておるわけでございます。ただしかし内地米を去年のように確保することはむろんできないので、現在から外米の確保をいたしておるわけであります。しかし凶作状況にもかかわりませず——決して昨年同様とは申しません。むろんそういうことのあろうはずはございませんけれども、ともかくも現在までの供出の状況は、本年は一週間から十日以上作が遅れておると言われておりますし、また事実そうでありますが、そういう作の遅れておる状況からいたしますれば、供出状況は昨年と比較いたしまして決して悪くない、すなわち農家の非常な協力等をいただいておる。それからさらに御協力を願う一つの手段として、特に単作地帯方面、麦のない地方に精麦を特別価格で払い下げる等の処置も講じておるわけであります。それじやただいま内地米について、幾ら需給計画上の基礎となる確保数量が得られるかという見通しにつきましては、ただいま申し上げましてもこれは架空的になるわけでありますから、できるだけひとつ農家の御協力をいただいて、最大限の確保をするように努力いたしておる次第であります。
  188. 井手以誠

    ○井手委員 今回冷害を受けましたところは、多く寒冷低生産地帯であります。従つてこの地方の農業振興につきましては、試験期間を含めた総合的な計画的な対策を持たねばならぬのであります。またこのたびの冷害対策も、その一環として実施するところに真の対策と効果があろうかと考えるのであります。ところが冷害対策に対する農林省原案のその後の修正提案に至りますいきさつを見ますときに、何らそこに一貫性を発見することができないのであります。ちぐはぐの場当りの感を非常に深くするものでございます。一道二十一府県にわたつておるこの対策に、わずか三十億円を追加するのに予備費に計上する、こういうことはその無定見を私は暴露するものだと考えるものであります。もし計画があるとするならば、本日の新聞に出ておりましたような保守三党がその配分をするようなことは私は起るまいと思います。あえて冷害対策についての根本方策について警告を申し上げる次第でございます。  最後に、犬養法務大臣にお伺いをいたします、大臣は去る十月二十九日の公安関係検事合同の訓辞におきまして、国内的には敗戦の重荷いまだ経済の自立を許さず、加うるに今次風水害に続く凶作による経済的社会的不安の増大など、前途真に容易ならざるものがあるというように言われておりまして、凶作、風水害による不安の増大を率直に認められておるのであります。ところが総理、副総理あたりは、防衛のためには冷水害対策費を削ることもやむを得ないというような態度をとつておられるのでありますが、それでは政府のおそれられております治安の確保を期することはできないのじやないかと考えるのであります。防衛費を削つても凶作、災害対策に万全を期することが一番の治安確保の道だと考えるのであります。この点について凶作による社会不安があると訓辞された法務大臣の所信を最後に承りたいと存ずるのであります。
  189. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申します。凶作による社会不安の状態は、過般全国次席会同で訓示をいたしました通りでございます。ただ風水害あるいは冷害のために防衛費を削くか削かないかということは、内閣全体の問題でございまして、法務大臣がここでその議論をすることの当否については少し留保さしていただきたいと思います。  ただせつかくのお尋ねでございますから、凶作関係によるある破壊分子の運動と申しますか、過日申し上げたので御了解のことと思いますが、結局これは凶作運動、風水害運動をもつて政治闘争へ向けようということでありまして、建軍闘争、軍事行動を建てる闘争というふうに持つて行つております。いろいろ災害を受けた土地におきまして不平不満を聞いて、それは政治が悪いんだという方向へ持つて行く、さらにこれを軍事組織再建の手段としておるように思われますので、その点は警戒しております。  もう一つは、凶作関係で農村の人が娘を売り飛ばすという事件が大分目立つて参りまして、今朝も会議を開きまして、これらの問題は、結局売春問題の一番根元でございますから、これは手きびしく取締る方針であります。しかし冒頭に申し上げました通りに、それだからといつて防衛費を削るかどうかという問題は内閣全体の問題といたしまして、私からのお答えは遠慮いたしたいと思います。
  190. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は先ほどの質問の残りをこれからお伺いいたしますが、まず第一番に、先般水産委員会に出て外務大臣は、アメリカを通じて韓国に抑留せられておるわが漁民の実情並びに海上においてその命を失つたか、あるいは無事に着いておるか等の調査をして、国連軍からその成果を聞くであろう。日数は五、六日あれば十分であるというので、それからすでに一週間を経過しておりますが、政府アメリカ並びに国連軍関係者に日本韓国におけるさような人々の実情を調査したかどうか、その結果返事があつたかどうかということをひとつ御答弁を願いたいと思います。
  191. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あの調査はいたしておりましたが、その後関係国からの助力のある前に大体判明しております。そこでそれらの船がどこにおり、それらの漁夫がどこにおるか、これは捕えられておつたのであります。これは念のために今確認しつつあります。あるいはきようもう少しするとはつきりわかるのではないかということを聞いておりますが、当時の質問者にはもうすでに大分前に答えております。
  192. 今澄勇

    今澄委員 そこで岡崎さんに私は先般国民政府の在日大使董顕光氏が二十八日京城に赴いてこの日韓漁業問題の仲介をしておるという情報が入つておりますが、日本外務省としては、これに対してあつせんをお頼みになつたかどうか。あるいは個人的に岡崎さんは一度ぐらい折衝せられたことがあるか。なお情報その他国民政府の董大使からもたらされておるならば、お答えを願いたいと思います。
  193. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はまだ董大使ないし国民政府にあつせん等を依頼したことはありません。ありませんが、これは国際輿論にも関連することでありまするから、従来ともに関係すべき政府には、この状況はよく説明しております。董大使にも説明はいたしております。
  194. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は木村保安庁長官にお伺いをいたしますが、私のおしては、いたずらに強硬な決意を披瀝して何でもやるような態度を示す。そうして私ども質問に対しては、言を左右してさつぱりその実情が明らかでないが、保安庁としては……。
  195. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 今澄さん、長官が席をはずしておりますので……。
  196. 今澄勇

    今澄委員 それでは、見えるまで私は大蔵大臣並びに農林大臣にちよつとお聞きをいたします。この韓国の問題は一つはかような外交折衝が問題だが、一つは国内におけるこれらの漁民の救済並びに水産業に対する政府の融資等の問題が大事な問題であります。そこで今回の補正予算の中には、これらの李承晩ラインに対する経費は全然盛つてありませんが、この際われわれとしては少くとも五十億程度の融資をこれらの水産業者にいたし、しかもその家族に対しては月額一万五千円程度の——生活のできないこれら家族を守つてやろことが必要である。いわば漁業会社に生業を覚ましめるか、それができなければこれら漁業会社が盛漁期を迎えているのであるから、これに対する国家補償をなし、その損害はあと韓国に損害賠償をさせることが理の当然であると思いまして、私どもは今度の予算案にこれら五十億の融資をやつて、少くとも四億くらいの予算を計上して利子の補給を国がしてやる。そしてその水産業者の家族に対しては、一億程度の補償をすることが妥当であるというので今予算の組みかえを練つているのでありますが、農林大臣からまず伺いますが、そういう具体的な予備金を使用するなり、あるいはいかなる方法をとるとも私どもけつこうであると思いますが、急速にこれらの救済に対する金額並びにその対策ができているかどうか、農林大臣から御答弁を願い、なお引続いて大蔵大臣にお伺いいたします。
  197. 保利茂

    ○保利国務大臣 先日の本会議石橋議員の御質問お答えいたしておりますように、抑留家族の保護につきましては、ただいま具体的に大蔵省当局と相談いたしておりますが、できるだけすみやかに適切な措置を講ずるつもりでおります。
  198. 今澄勇

    今澄委員 先般清井水産庁長官に私が尋ねたところでは、具体的に幾ら金額を大蔵省に要求しているかということについては、まだその金額をはじき出しておらぬということであつたが、農林大臣はもうこういうふうな事態になつて、いつまでも抽象的な目下相談中というような答弁では、私はまことに怠慢であると思います。たとえば予備金から三千万円程度出すのであるとか、あるいはどうするというような具体的な措置がまだきまらなければ、その見通し並びに概括の金額、その計算の基礎等をここにあわせて御答弁願いたい。
  199. 保利茂

    ○保利国務大臣 具体的に予備金から支出する方針をもちまして漁船乗組員給与保険法によりまして取扱つて参りたいということで相談をいたしているところでございます。
  200. 今澄勇

    今澄委員 そこで大蔵大臣にお伺いをいたしますが、何といつても財政の苦しいときではあるが、かような日本の重大な外交上の結果損害を得ておりまするこれらの漁業者に対しては、今農林大臣の言われた保険法に準じて大蔵省の方では予備金の中からお出しになる御意思がありますかどうですか。大蔵大臣の御答弁を願います。なおその金額の目安がつけば概略のところ御報告願いたいと思います。
  201. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 漁民の問題につきましては相当立場に同情しておるのであります。私ども農林省あたりと目下相談しておりますので、金額はいろいろ見方がありますので、他にいろいろな関係もありますので、目下検討中であります。しかしそう遅れずに予備費等から出すように措置いたしたいと考えております。なおそのほかに、実は漁船のかわりのものをつくることに対しては、相当融資の方法を講ずることによつて、代替船をつくらして、その生業にいそしめるようにいたしたいと考えております。
  202. 今澄勇

    今澄委員 そこで李承晩ラインの問題は善処を願うということにして、大蔵大臣が先般内閣の基本方針としてしきりと再三にわたつてわが国の通貨安定に関する声明を出しておられますが、政府はどうしてさような声明を行わなければならなかつたのか。政府がそういう声明を行わなければならぬと考えたわが国内並びに国際的な客観情勢について、大蔵大臣に私はお伺いをいたします。
  203. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 御承知のように、ちようど九月中旬から十月の上旬にかけまして、どうも日本があるいは通貨政策について一部変更を見るのではないかというようなことを言いふらす者がありまして、ドル買いの思惑等が相当ある。為替予約等が平素の十倍にも上つたのであります。そういう情勢と、それからもう一つは本日の財政が補正予算等を伴つて、散布超過の度が一層ふえるのではないか。言いかえれば、財政インフレを来すのではないかというような懸念がそこらに強まつて来ておつたことと、ちようどイギリス側でいろいろな会談が開かれておりますが、その際に日本の現状では、結局為替レートを切り下げるようなことが起るのではないかといつたような話が出たと見えて外国電報でも日本新聞にも掲載される等、国の信用をつなぐ上にもまた現在の日本の経済段階から見ましても、はつきりと通貨価値の安定——通貨価値の安定といいまするにとは、私はさつきも申しましたからくどく申しませんが、財政、金融あるいは生産面、貿易関係その他、また民生安定の強い線が、いわゆる金融通貨という面に打出されてそれで安定するのでありますから、そこで通貨価値の維持、安定ということでこれを集約して表現したのであります。従いましてこれに伴う各般の措置をとるべきことは申すまでもありません。
  204. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、今大蔵大臣の答弁いたしました生産並びに貿易、あるいは金融その他全般のわが国の情勢が、少くとも政府が通貨価値の安定を声明しなければ世界的な評価並びに国内経済界が動揺をしておるということはここに吉田内閣の政策の基本が、非常に経済政策において一貫した統制力を欠き、しかも自由放任の経済であるために政府の意図するところになかなか向かない。言いかえれば非常にインフレの懸念が濃化しておるということを、私は大蔵大臣みずから知つておられるであろうと思います。これはいわば吉田内閣の経済政策の一つの失敗を一つの声明をもつて補うということになつたものであると御反省を願わなければならぬと思いますが、こういうふうな状態のもとにおいて、現実には日本の電力料金に関しまして——これは通産大臣にお伺いしますが、料金に関しても、その他日本の貿易に関しても、あるいは国内における補給金制度の問題、船舶の利子補給等についても、あるいは金利の問題等々に関して、政府が出した声明を裏づけするような、インフレを抑制するごとき政策がとられておらないが、電力料金の値上げに対してはどうするか、あるいま国鉄軍資の値上げ等に対してはどうするか、通産大臣、運輸大臣等から、この政府声明に基く通産行政なり運輸行政についてひとつ簡単でけつこうですから御答弁を願つておきたいと思います。
  205. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。政府は一体でございますので、大蔵大臣が先般声明いたしましたような趣旨は、むろんわれわれも体しまして、電力料金の値上げのことも、よりより電力会社等でいろいろ審議しておるようでございますが、私どもといたしましては年度内は絶対に上げてはならない、こういうような考えをもつて臨んでおります。その他国鉄の点につきましては運輸大臣から申し上げます。
  206. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 運輸大臣はおりません。
  207. 今澄勇

    今澄委員 それでは通産大臣にもう一言お聞きしますが、電力料金が年度内と言つたつてあと二箇月の問題で、電力料金の問題については少くとも年が明ければすぐやられるか、あるいは電力会社は三割程度の値上げを今要望しているのでありますが、この電力料金の値上げについて来年の前半期くらいまでの見通しをひとつお聞きしたいと思います。
  208. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えいたします。年度内と申しましたが、来年の二月三十一日までということに考えております。その以後のことについては二十九年度の予算とも関連しますので、十分考慮しなければならぬと思います。しかしこの会計年度内は上げぬという決心を持つております。
  209. 今澄勇

    今澄委員 そこで今の日本政府が通貨価値の安定を叫ばなければならなかつたその基本的な原因の一つに、私は少くとも資産再評価の問題があると思うのであります。日米通商航海条約による株式取得の問題等ともにらみ合せて、今日本の企業の実態をながめてみると、その資本構成の中における他人資本の占める比率の飛躍的な増大が特徴となつておりますが、これはきわめて不健全な日本の企業の現状であります。わが国の経済における諸矛盾のすべて、通貨価値その他に関する一切の問題が、この一点に私は起因をするとまで考えておるのであります。これらの企業経営の健全化をはかり、日本経済の正常化をやるためには、どうしても資産の再評価を強制的にもやつて日本の企業経営というものの正常的な運営に持つて行かなければならぬと思うが、これに対する大蔵大臣のお考えと、この目的達成のためには、資産再評価税については一考を要するところも私はあると思いますが、大蔵大臣の御見解がありましたならば承つておきたいと思います。
  210. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 御意見の点も相当傾聴すべきところがありますが、資産再評価につきましては前回の例もあり、今回は税額を非常に払いやすいように五箇年分割する等の措置をとつて、再評価をなすようにいたしておるのであります。ただ強制的にやるかどうかということになりますと、これは相当意見のわかれるところでありまして、私ども資産再評価は、それぞれの経営企業体にとつて必要なことであるから、みずからが自発的にやるということは必ずしも言つておりません。また強要的に、これを強制しようという考えは持つておりません。
  211. 今澄勇

    今澄委員 資産再評価に続いて、私は通貨の安定の基礎となるいろいろの問題があるが、伝えられるオーバーローンの解消策として、池田構想というものが出ております。はたして大蔵大臣はこの池田構想なるものに対してどのようなお考えを持つておられるか。すなわち銀行の、バランスシートの整理をするだけの一時的な糊塗的政策で、日本のインフレが安定をするかどうか。私はこのオーバーローンの解消策としての池田構想というものは、日本の最後の切札になるようなおそれがあると思うが、この池田構想でオーバーローンを切り上げてそしてなおかつインフレが続いて行くというような場合においては、これに対する策がなくなる。開発銀行の発言力が必要以上に増大するし、一般市中銀行が圧迫を受け、ひいてはこれから中小企業金融というものが大きな悩みに当面をして来るということになりますが、この池田構想について大蔵大臣はどのようなお考えで今おられるかということについてお伺いをいたします。
  212. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 池田構想といわれておる、いわゆる日銀におけるオーバーローンを、外貨を得ることによつて得た資金等で、開発銀行あるいは輸出入銀行等に一時肩がわりするといつたような意味の構想につきましては、そのほかこれに関するいろいろな施策もありまして、相当考慮すべき点がたくさんあると思いますが、しかし同時に根本的な問題の解決にならない点——あるいはその点を今澄君は特に言いたいと思つたのではないかと思いますが——等もありますので、どういうのがいいかまだ検討中であります。しかしながらよくかつこうを直すということだけでもいいということも一つありますので、根本的な問題は第二として、そういうふうにもののかつこうを調整して行くということも一つの方法ではないかとも考えておりますが、しかし今申し上げました通り、オーバー・ローンの根本的解決には、あれではちよつとその間には合つておりませんので、かれこれ検討中であります。
  213. 今澄勇

    今澄委員 もう一ぺん聞きますが、大蔵大臣は、この池田構想なるものはいろいろ失陥があるから取上げないのか、それともこれを取上げて現在の政府の政策としておやりになるのかという、その決断がまだきまつておらなければ、その見通しについてでもけつこうでありますから、やるのだとか、これはだめだからやらないとかいう点を御答弁を願いたいと思います。
  214. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 その点につきましては、今のような欠陥ということよりはまだ根本的な解決にならぬというところがおもな点でありまして、しからばこれをどういうふうにやつたらもう少しよく行くかという点を検討中なんであります。従いまして、あのままやるかどうかと言われたならば、あのままを即時実行するということでなくて、まだこれは相当是正し得る部分があるのじやないか。それらの点について検討しておるわけでございますから、ここでちよつと即答は差控えたいと思います。
  215. 今澄勇

    今澄委員 そこで話は、この通貨価値安定から、そういういろいろな根本的な問題を経て、中小企業の金融に血つて来るのでありますが、いろいろ政府が中小企業金融について声明なり答弁をしておられるけれども、端的に申し上げれば、予算における散布超過が大略千三百億、その前の暫定予算で残つてつた幾ばくかの—大体一千億程度の政府の引上げ超過、かような政府の引上げ超過がどんどん出て来ると、予算における支払い超過が、安本の出しております大体八、九百億の預金の引締めでこれが修正せられるという、こういう操作というものは、結局大企業はいいが、中小企業というものに非常な打撃を与えると私は思うのであります。そこで具体的に大蔵大臣に聞きますが、今四百億の預託金を年末まで三百億引上げるという大蔵省の方針は、その四百億のうち二百億は中小企業金融機関に預けられておるのであるから、それがみんな残つたところで、百億しか残らぬということに相なります。通産大臣は先般これらの指定預託金の中止並びに新規預託をやるということを、参議院において言うておられるが、具体的に大蔵省としては、この預託金というものを数字的に御説明を願うならば、通産大臣の要望にこたえて、一体大蔵省はどういうふうに操作されるのであるか。大蔵大臣にお伺いいたします。
  216. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいまお話の点は、指定預託の期限が到来する分をそのまま引揚げればこうなる、こういうお話でございます。しかしながら、年末金融等に対する特別な配慮もいりますし、また災害地、冷害地等に対する配慮もいりますので、その期限が来るから全部引揚げるといつたようなドラスティックな考えは持つておりません。従いましてこれは実情に浴うようにやります。ただ、今澄さん一番心配しているのは、何かの金融措置が中小企業にしわ寄せしては困るという点にあろうかと思います。中小企業の問題につきましては、御承知のごとくに、今度長期にわたるものについては、九月の十日でしたかに発足しました中小企業金融公庫が、長期資金を弁じて行くことに相なりまして、これは年末相当な働きをするであろうと思われます。また先般この国会で御協賛を経てかえました信用保証協会法でしたか、あの法律によりまして、各所の保証協会の活動が期待されます。そうしますと、これは今澄議員もよく御承知のごとく、何といつても中小企業に対する貸出しの一番多いのは地方銀行及び市中銀行であります。これが金額としては圧倒的に多いのであります。従いまして、この方がそういつた保証協会等の働きで相当緩和して行くのじやないかというふうにも考えておりますが、なおもし年末その他の場合、中小企業金融に支障を来すような場合がありましたら、それは適当な措置をとつて、さようなおそれのないようにいたしたいと思います。
  217. 今澄勇

    今澄委員 年末に新規に預託を政府がやるかどうかということを私は大蔵大臣から伺いたい。  もう一つは、今お話の中に出た信用保証協会の保証手形を、日銀の再割引適格手形として取扱うことに大蔵省はきめたのかどうか。  さらにもう一つ、大蔵委員会で議論が出ておるが、国民金融公庫に対して年末二十五億、今度の新しい中小企業金融公庫に対して年末五十億を大蔵省はやるということで、大体了解を得ておると私どもは聞いておるのであります。この二十五億と五十億は大蔵省が融資するのかどうか。抽象論ではだめでありますので、具体的数字を並べましたが、これらに対してひとつ大蔵大臣の御答弁を願いたいと思います。
  218. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 日本銀行の適格手形というのは、そういつたあまり融通的なものを適格手形といたしておりませんので、従つてこれはその産業の必要なものに対する手形を言つておるので、これをいわゆる中小企業者の融通的な保証というようなものについての適格手形と見ようというのは、少し無理だと存じます。また現在さような処置はいたしておりません。ただその保証によつて、市中銀行特に地方銀行が金融を円滑にするであろうと考えております。さらに今お話になりました数字は、私は年末金融についてこれがどうだということは聞いておりません。従いましてあとで調査いたしますが、ここではちよつと即答いたしかねます。  それから今の年末新規預託をするかどうかという問題でありますが、これは資金運用部の手元がゆたかになつて参りますれば、もちろんそういう操作をいたす考えでございます。また普通の、すでに預託しておる部門の方でその預託が必要ない事情等が発生しますれば、手元原資の増加を加えるわけでございますので、さような処置をいたしたいと思つております。
  219. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は通商産業大臣に聞きますが、通産大臣は中小企業金融のために非常に努力をしておられますけれども、今大蔵大臣の答弁のごとくでは、あなたが言われておるところの新規預託もはつきりしない、信用保証協会の保証手形の日銀再割引適格手形も、あなたは答弁の中に言うておられますけれども、この方法も大蔵大臣は受入れない、国民金融公庫、中小企業金融公庫への融資もまだきまらないということでは、通産大臣の言と大分これは大きく食い違つておりますが、通産省としてはそういう了承でよろしゆうございますか。
  220. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。保証手形のことは多分大蔵大臣のお耳に入つていないと思いますが、しかし事務当局として、通産省並びに大蔵省の間で研究しておりますことを申し上げた次第であります。あれは担保手形として今まで小中あたりはそういうことをやつておるところもございますが、自分の持つておるところの手形を一応日本銀行に信用の基礎づけとして出して、そうして融資を受けるというような方法もあります。そういうことを研究中でございます。  それからもう一つ何か……。
  221. 今澄勇

    今澄委員 国民金融公庫その他への政府の年末預託。
  222. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは先般も申し上げましたように、中小企業というものは日本の産業に一番重要な職務を持つておるものでございますから、これが年末にあたり、しかも非常に弱体のものが、ただ金融の面だけでばたばた倒産するとかいうようなことがあつてはなりませんから、先般も申し上げましたように、預託金をとにかく引揚げるということは一般的の法則でございますけれども、中小企業が金融のために非常に困るというような事態が発生しますれば、預託金の引揚げも猶予していただくか、あるいは非常な事態でも起りますれば、必要があれば、新規の預託金をしていただくということを考えておる次第であります。
  223. 今澄勇

    今澄委員 今の御答弁で明らかになつたように、政府は中小企業金融については、通産大臣と大蔵大臣の考え方が違うのである。少くともかような現実をもつてして、ともかくも中小業者が来たときは非常にうまいことを言つておるけれども、かんじんかなめの大蔵省が今言つたようなそういう手形の問題にしても、あるいは預託にしても、何ら大蔵大臣の耳にも入つておらぬというようなことで、私は中小企業金融が円滑に行くとは断じて思われません。どうかひとつ大蔵、通産両省は、今日年末を前にして苦難にあえいでいる中小業者のために、いま少しく熱心に意見を統一しておやり願うことを切に要望申し上げて、もう一つ中小企業金融に関連して保全経済会について具体的な提案をしておきたいと思います。  まず第一番にこれは大蔵大臣に聞きますが、この保全経済会の問題で、無記名契約禁止の単独立法を来る通常国会へ出すのかどうか。  第二点は、来ておられまする法務大臣に、この匿名組合の会員というものは全然制限がしてないのだが、私はこの前の予算委員会でも詳しく、この保全経済会が近く倒れるであろうということを警告をして質問をいたしております。これについて大蔵大臣も法務大臣も、調べて善処するという答弁であつたが、そのままになつておるが、そのとき私が述べたように、匿名組合の会員を百名なりあるいは五十名なりに制限をするということは、この商法、商行為の運営において何ら支障を来さぬのであるから、こういう法的処置を法務省はとられてはどうか、これに対する法務大臣の見解。  なおもう一つ、私はこの保全経済会の満期出資者が、その満期の金がもらえないというので、詐欺罪で近く責任者を訴えるそうですが、これが詐欺罪で訴えられれば、それは一つの詐欺罪を構成するものであるから、預金者保護のために政府はこの保全経済会の財産を管理して、そうしてこれがとんでもないところに使われないようにして預金者を保護するという法務大臣としての処置はとられないものかどうか、この点について私は法務大臣にひとつ御答弁を願いたい。  それから大蔵大臣にもう一つあわせて、先般東京国税局が保全経済会の脱税を調べるべく調査中に、この保全経済会問題が起つておる。そこで大蔵大臣は、国税庁のこの脱税の調査の結果どういうふうな資料が出たのか、もしここで御答弁に間に合わなければ、あとでその脱税の調査に関する国税局の調査の結果というものを、私はこの際国民に明らかにする必要があると思うので、大蔵大臣に以上の三点。それから法務大臣に二点をひとつお聞きをいたしておきます。
  224. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいま今澄さんが言われた不特定多数の者から集めた資金の運用、その他について投資をしてやると非常に弊害が大きいのでありますから、これはそういう立法措置をとつてはどうかということから今検討しております。おそらくこの次の国会に提出できるのじやないかと私は考えております。  それから今の国税庁の問題でありますが、ちようど私はまだ何も聞いておりません。ここに国税庁長官がたまたま来ておりますから、もしおさしつかえがなければ、説明を聞きたいと思います。それでは特に政府委員ではございませんが、国税庁長官が来ておりますから……。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕
  225. 平田敬一郎

    ○平田説明員 保全経済会の課税の問題につきましてお答え申し上げます。  ただいま脱税事件として調査しておるじやないかというお話がございましたが、特に脱税問題として査察で調査しておるわけではありません。調査官をして課税の関係につきまして精密な調査をせしめておるわけでございます。今までの課税実績を簡単にこの際申し上げておきます。保全経済会は法人ではございませんので、実は課税関係がやや複雑になつておるのでございまして、その性格が匿名組合でございまして、いろいろ問題もあるようでございますが、問題は大体二つにわかれまして、一つ代表者でありまする伊藤それがしの所得に対する課税の問題、それから出資者に対する配当金の課税の問題、この二つにわかれるわけでございます。伊藤個人代表者に対する課税につきましては、今までのところ昭和二十六年分と二十七年分につきまして税金を納めておりまするが、二十六年分が所得金額で百三十九万四千余円、税額で五十七万円、これはすでに納めております。一応給与の形で支払つておりますので、それに対する課税をいたしておるわけであります。それから昭和二十七年分といたしましては所得金額で二百三十七万円、税額で七十一万円、これもそれぞれ課税をいたしております。ただ問題は、この匿名組合かあるいは類似するものであるという解釈が大体は正しいのではなかろうか、これも断定することにつきましては問題がありまして、いろいろ調査いたしておるわけでございますが、そういう点からいたしますと、現在の保全経済会の事業の利益を調べまして、出資者に支払いました残りのものが伊藤個人に対する利得になるわけでございまして、その関係は調査がなかなか簡単ではないのでございまして、その調査をいたしておるわけでございます。今までのところでは、まだはつきり結論が出ておりませんが、最近どうも成績が振わないで、純粋の伊藤個人代表個人の所得と見るべきものは少いのではないかというふうに見ておりますが、この方面は今後さらに的確に調査いたしまして、今まで押えた分の税額をさらに正確なものにいたしたい、こういう倉に考えております。  それから匿名組合の出資者に対しまする配当金でございますが、これを率直に申し上げますと、昨年来預金の利子と見るべきであるか、出資の配当と見るべきであるか、実ははつきりいたさなかつたわけでございます。その問題につきましていろいろ関係官庁の方面におきまして検討中でありましたので、国税庁といたしましても、一応銀行局、法務省などの意見がきまりました上で、やはりきめた方が妥当であるという考え方のもとに、課税の問題も未解決でありました。ところがよく調べてみますと、どうもやはり消費寄託すなわち預金の利子と見ることは無理だろうということになりまして、これは一種の匿名組合か、あるいはそれに準ずべき一種の契約に基く出資の配当だと見るべきじやなかろうか、そういうことを今年の初めに決定いたしまして、そういうことにいたしたわけでございます。ところが今の税法によりますと、出資の配当でありますので、源泉課税ができない。預金の利子でございますと、源泉課税ができる。そこでこの出資者はよく調べてみますと、今御指摘の通り数も非常に多いし、名前が明らかになりましても、住所が明らかでない。両方明らかなものを調べてみましても、実際はなかなかよくわからないということで、これはどうしてもやはり源泉課税でなければ徴税がうまく行かないという趣旨で、大蔵省といたしましては、実は先般の去る一月の国会に二割の源泉課税をするという法案を提案いたしたわけでございます。ところがその法案が国会の解散のために遅れまして、去る八月に、この前の国会におきましてようやく成立を見るに至つたわけでございます。従いまして八月から二割の源泉課税をすることになつたわけでございます。その課税関係を申し上げますと、八月分といたしまして九百五十五万円源泉で課税すべきものが出ております。それから九月分といたしまして千七百八十五万円課税すべき予定額が出ております。ただこのごろは大分保全経済会が金繰りに苦しかつたと見えまして、八月の九百五十万円のうち二百万円だけは納めておりまするが、残余の分は未納になつております。従つて少くとも国税局といたしましては、この分はあらゆる手段を講じまして税金を今後も的確に徴収して行きたい、かように考えておる次第でございます。現在までのところの概況は以上の通りでございます。
  226. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。この前の国会において今澄さんから御注意がありまして、私たちも御同感でございました。爾来全国次席検事会同あるいは経済係検事会同で御注意の点もありましたあの御趣旨通りしばしば警告をいたしておりました。それから本年初めには財政特報というので類似金融をやつておる者の名簿を全部この中に印刷しまして、それから抜け穴のやり方に対する虎の巻みたいなものをこしらえまして、経済係検事に配つております。その結果受理いたしました違法行為が三十七件起訴十六件、第一審で有罪判決を受けておるものも二、三あるのでございますが、こういうことになりまして、当局としてもまことに責任を感じております。  そこでお尋ねの点が二点ございますが、匿名組合の加入人員を制限したらどうか、この問題も私はさように思います。厳密に申しますと、法務省の法律家の解釈から参りますと、保全経済会が匿名組合の名をあげておるが、厳密に匿名組合かどうかということを疑わしく解釈している理由の一つが、今今澄さん御指摘になつた加入人員があまりに多い、つまり気心の知れた者同士が共同経営をやつているという観念に当てはまらない、こういう意味で厳密な匿名組合とちよつと違うという解釈を私どもはしているくらいであります、従つて匿名組合の取締りという人口から入りますならば、仰せの通り最上の手段はまさに加入人員を制限して、文字通り本来の匿名組合の出発点の精神のように、気心の知れた者が一緒にもうけ仕事をするというところに立ちもどらねばならぬと思います。ただ私ども意見を申し上げますと、匿名組合を取締るだけではそれに類似したまた抜け穴の妙なものができ上るおそれがありますので、法務省としましては不正規の受信業務全体を取締るだけの取締り法をつくつてはどうかというので、実は試案のドラフトも書いておるようなわけでございまして、これは事柄が事柄でございますので、大蔵省の意見もよく聞いて法務省としての方針をきめたいと思います。けだし今申し上げましたような精神で、不特定の多数人からの受信、つまりお金や有価証券を受入れてあとで金銭を払つた、また有価証券の債務を負担する行為で、預金や貯金、掛金、出資信託その他何らの名儀をもつてするを問わず、信用授受の経済的性質を有するもの、継続的に業務をやつているものを一般に取締つて、そして許容される場合を制限列挙するということが必要ではいか、こういうふうに考えておりまて、実は連日このことについて寄り合い会議をやつておる次第でございます。ですから匿名組合というものについて特に取締るか、あるいは今申し上げたように広く不正規な受信業務について取締るか、あとの方がいいんではないかというのが法務省の意見でございます。  それから第二の、保全経済会の財産が隠匿または散逸してしまわないような手を打つたらどうか、これも私しごく御同感でございまして、まつたく同じことを私の省の係官に私も申しているのであります。今のところは民事訴訟の形で債権者が破産の申立てをするより道は今の法規上ではないのであります。しかしそのほかのいい知恵はないか、実はこれも連日協議をしておるような次第でございます。この点については打明け話を申し上げますと、法務委員会委員長が何か意思表示をされるというので、法務大臣としてはしごく賛成なんであります。それは保全経済会の会長といいますか、伊藤斗福が、おれの方には政治的なバツクがあるから大丈夫なんだと、まことに不敵で、不快きわまることを言つておりまして、あるいは農村の零細な出資者のうちには、そうかもしれないと思つて債権者としての破産申請を見送つている向きがあるとすればたいへんな見当違いであります。法務委員長がもしそういうことについて世間に御注意があるということに対しては法務省は異論はございません。従つて今の点では債権者の破産申請以外にきめ手がかいのでありますが、どうもそれだけではどうかという研究を今やつております。
  227. 今澄勇

    今澄委員 私はどうかこれら保全経済会等の問題については、ひとつ法務大臣が徹底的な大衆擁護のために努力奮闘せられんことを特に要望し、木村保安庁長官にも質問がありますけれども、所定の時間になりましたから、これをもつて私の質問を終ります。
  228. 倉石忠雄

    倉石委員長 福田昌子君。
  229. 福田昌子

    福田(昌)委員 今回の長期にわたりましたたび重なる風水害に際しまして、私どものところにも罹災者の方々の非常に涙なしには聞けない陳情がたくさん参ります。そうしてすでに離農した人あるいはまたその困窮のために発狂に近いような状態に陥つた人、あるいはすでに発狂したというようなお気の毒な人もすでに二、三見せつけられているのであります。あるいはまた児童がすでに長期欠動いたしまして学校にも行けない、あるいは高等学校に行つている児童がもう高等学校を引かなければいけないというような気の毒な例を多々伺つてつているのでございますが、今度の災害予算におきまして、たとえば生活保護法に七億増額されまして、こういう人たちの救済に当り、あるいはまた罹災住宅の復旧のために十一億の予算を追加したこと、また育英資金のために四百万円とられたというようなことでございますが、これで先ほど申し上げましたような離農する人とか生活困窮のために発狂するような人、あるいはまた長期欠勤児童、こういうような人たちが十分救われるであろうと政府はお考えでございましようか。それぞれ厚生大臣、大蔵大臣、緒方副総理からお伺いいたします。
  230. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答えを申し上げます。今回の風水害あるいは冷害等によつて被害をこうむられた、さような仰せのような人に対しては、まず御指摘の生活保護法でありますが、生活保護法につきましては冷害地は七億を一応予算上予定いたして、政府案に提出をいたしております。なお災害につきましてはこれは大体六、七月の九州の災害の際におきまする罹災地の均衡と、それから困窮家庭の比率をとりまして、さらにその後の十三号台風までのものを一応類推いたしましたのが三億数千万円であります。これは大体従来の既定予算の中で一応処理をいたして、これは御承知の通り事務費でございますから、冷害の問題もあわせて、もしもそれでもつて年度内に措置いたし得ません際は、さらに適当の予備金その他の支出をいたし、なおその他母子福祉の資金につきましては、これまた大体実績に基いて各府県から申請をいたしましたものを集計いたしますると、大体八千数百万円に相なりまするか、八千数百万円のうち今回補正予算で提出いたしておりますのが五千数百方円、そのうち従来の既定予算の流用寺によつて大体八千数百万円は措置がじきました。なお国民健康保険等の減光に対する措置に対しては一億二千八百万円余補正予算に計上いたしておりまするが、これも御承知の通り従来再建整備貸付金あるいは先般国庫負担等の措置によつて、大体これで従来の各州県からの申請に基きまするものに対しましては措置ができると思つているのであります。その他の点におきましても大体ただいまのところの調査に基きましては措置ができると思つております。
  231. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 厚生省所管のものの予算措置等につきましては厚生省とも打合せ、まことに不十分ではありまするが、一応ただいま御答弁された通り措置をいたした次第でございます。
  232. 福田昌子

    福田(昌)委員 実は文部大臣、建設大臣にお伺いしたいと思いましたが、大臣がおいでにならないので、これではさつぱり質問ができませんから、来られてからに保留いたします。  絶えず考えさせられますことは、今度の水害対策に対しまするこの臨時国会は、救農災害国会と銘打つてお開きになつ国会ではありますが、御承知のようにすでに分自党あるいは改進党、保守三党が裏で工作ができ上つておりまして、この委員会におきまする質問というものも、その効果を考えました場合においてはまつたく一言半句の修正も可能とは考えられないような、まことに委員会の審議の権利というものを無視した形で進められておるのであります。こういう民主議会にあるまじき非民主的な予算委員会の運営に対して、私どもきわめて遺憾に思うのでありますが、またこの点は国民各位におきましても、また罹災地の大衆はこの姿を知りましたならば、実に非民主的なやり方に義憤を感ずるであろうということを私どもおそれるのであります。こういうような議会のやり方で、しかも財政上縛られたというそのお言葉によつて、こういう熱意のない災害対策に対しまする予算の措置でございましたならば、結局今後とも相かわらず発狂する人や、離農者や犯罪者が続きましようし、青年はその日の快楽のためにパチンコやばくちに走るようになるであろうということをおそれます。そういう事態が起らないように、政府は今からでもおそくはありませんから、大きな英断をもつて災害対策をお考えいただきたいということを警告いたしまして私はほかの質問に移ります。火力発電の借款に対しまして、まずおいでになります大蔵大臣にお伺いいたしたいのでございますが、火力発電の借款に対しまして日本政府が負担しなければならない条件があつたように新聞で伺つたのでございますが、その詳しい条件を聞かしていただきたいと存じます。
  233. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 こまかいことは実は通産大臣の所管でございますので、通産大臣から説明があろうかと思いますが、実は私がよく申します通り、向うでも世界銀行の総裁、副総裁等と会つたのでありますが、大体におきまして電力に関する借款と申しますか、借入れの申込みは非常に多くて、約百億ドルにも達せんとする状況でございましたので、従つてすこぶる厳重に選ぶということになつておる。それからまた各国等の例もありまして、日本からも湯本君が理事をしておるというぐあいで、どこの国に薄く、どこの国に厚くというこでもなく、またどこの国に寛に、どこの国に酷にという条件ではございませんが、まず一応どこの国でも考え得る最大の厳格な条件を与えたというのが実情であると思います。しかしながらこれをよく読んでみますと、大体忠実に債務を履行すれば何ら問題は起らないのでありまして、これは福田さんは御婦人のことで、銀行で金をお借りになつたことはないかと思いますが、日本の銀行でも金をお借りになりますと、なかなか厳格な証文をとりまして、あの証文ではすぐ破産をしなければならないように思いますが、忠実に債務を履行しますれば何ら懸念がないのであります。ちよつと負担としての一例をあげますと、たとえば日本の方で長期信用銀行等が自分のところで今の電力会社から担保をとるということになつておるときに、片一方の方では同時でなければならないということをかたく主張いたします。そうすると片一方が今までの契約に対して若干放棄するということになりますので、それならその一札を入れろということになるのであります。ちようど私がおりましたときにも、政府はそれを保証しろという話が私に対してありましたから、政府は電力会社と長期信用銀行との間の私契約に対して保証することはできません、さようなことは日本憲法で許されていない、こういうことを言いましたところが、それじや長期信用、そういうものを入れさせるということで遅れておる。一例をあげればそういうようなこまかい法律的なことを、弁護士がたくさんついておつて、弁護士がああでもないこうでもないとやかましくあらゆる条件を盛り込んだものがあの条件であると思います。けれども債務を忠実に履行いたしますれば何ら懸念のない条件であると私は考えております。
  234. 福田昌子

    福田(昌)委員 いろいろ御注意をいただきましたけれども、私がお伺い申し上げたいのは、調印なさいました場合に条件となりました、日本政府側の負担になつておる箇条を伺わせていただきたいのであります。
  235. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 債務不履行の場合に、国が保証人になつておりますから、債務履行の責任があるのはもちろんであります。それからちようど私がおりましたときに電力料金の引上げの問題がありまして、即時電力料金を引上げるというような条項がございました。それにつきましては合理的にすみやかにというふうに直してもらいましたので、そういう負担は免れております。ただ電力会社の今の計画について、かりに資金等不足を生じたときには、それは政府の方でめんどうを見るべしというような条項がございます。これはしかし現在一定の計画に基いてやつておるのでございまして、また年々皆様の御協賛を得て電力への貸出しを開発銀行等がやつておるのでございますから、これは義務といえば義務でありますけれども、現実の問題ではそういうことは起つて参らないと考えております。
  236. 福田昌子

    福田(昌)委員 新聞には国有財産を担保に入れるというようなことが出ておりましたが、そういうことはなかつたのでございましようか。
  237. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 よそへ差入れるような場合には同意を得るということがあります。よそへ差入れることは、今後たとへば日本が非常に大きな外債でも募集するといつたような場合には今のことが起つて参ると思いますが、それも同意が入り用ということになつております。こういうこまかい点は実は通産大臣の所管でありまして、ただ私がちようどおりまして、また外資関係が私の方にありますので、一応目を通しておるわけでございまして、こまかいことは、本日は契約書を持つておるわけではございませんから、私の記憶のままを申し上げる次第でございます。
  238. 福田昌子

    福田(昌)委員 ではその点通産大臣がおいでになりましてから伺つてみたいと思います。
  239. 倉石忠雄

    倉石委員長 福田さん、通産大臣への御質疑はお取消しになつたのじやないですか。
  240. 福田昌子

    福田(昌)委員 いえ、そうじやないんですけれど……。
  241. 倉石忠雄

    倉石委員長 わかりました。
  242. 福田昌子

    福田(昌)委員 では引続きお伺いさせていただきます。電力料金の値上げの点でございますが、それは合理的にすみやかにという文句を入れていただいたというお話でございますが、その料金は、もし日本側の火力発電の会社側が履行しない場合においてはどういうことになるのですか。
  243. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 合理的にすみやかにということは、たとえば債務返済に料金でさしつかえるというようなこと等がある場合の話でありまして現在のごとくに、たとえば水力状況がよい場合には何らそういう心配はないのであります。従いまして向うの債権者から見ますると、自分の債権保護するためでありますので、電力料金を引上げなければ自己の貸しておる債権の償還にさしつかえるといつたような場合に起つて来る問題でございます。なおまた日本の方でそういうことが起つて来ても、認可事項になつておりますから、たとえば半年にもわたつたりあるいは半年以上にもわたつて認可しないというような問題で遅れれば、そういう問題が起つて来るのであります。
  244. 福田昌子

    福田(昌)委員 電力料金の値上げに対する要請ですが、それは開発銀行からどういうような形で来るのでございましようか。具体的に金額の明示とか、あるいは可及的すみやかにというような点におきましても、日時を切つてそういう要請が来るのでございましようか、もう少し具体的な点についてお聞かせ願いたいと思います。
  245. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 実は私はここに契約書を持つておりませんから知りませんが、ただ私が交渉したときにはプロムプトリーという字が使つてある。即時にといつうことらしいのですが、プロムプトリーでは困るということで、リーズナブルでなければならないということを入れてもらつたのであります。リーズナブルようのはいろいろ考え方があると思いますので、この点は解釈のいかんということにわたつて来るのではないかと思います。
  246. 福田昌子

    福田(昌)委員 大蔵大臣にお尋ねいたしたいのであります。この間アメリカに行かれて非常に御苦労さまだつたと思いますが、せつかくアメリカへ行かれまして、いろいろな日本事情を御説明いただいたと思うのでありますが、その際にこの風水害に対する予算措置というものは大臣においても非常に御心配だつたと思うのですが、アメリカ日本経済に対する理解の度合いを深める上においても、また日本の国防計画の上においても、この点をアメリカ側に説明をする必要があると思うのですが、大蔵大臣が向うに行かれまして、災害に関しまする点についてアメリカ側に話されたかどうか、この点伺いたいと思います。
  247. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 災害の問題について何らアメリカ側に話す義務はございません。しかしながら日本経済の実情をわかつてもらう、日本の財政の経費の配分方をわかつてもらうために、私は日本に相次いで災害が起つてつて、それがために、年々巨額の費用がいる、災害のもとを絶たんとすれば、治山、治水というような方面に根本的な対策が必要である、従つてアメリカ等では思いもよらぬような費用を計上しなければならぬ実情にあるということを話をしたのであります。このことはちようど私が日本で食糧増産対策に相当巨額の国費をさかなければならぬということ、及び各種の公共事業等にもさかなければならぬことの説明の一つとして、今のようなことを申したのでありまして、特に災害のことについて話をしたわけではございません。
  248. 福田昌子

    福田(昌)委員 もちろん災害について説明する必要はないわけでありますが、その点に対して日本経済の説明の上において話されたかどうかという点で伺つたのでございます。次にお自尊ねいたしたいのでございますが、これは何回もお尋ねはいたしましたが、日本の現在持つております手持ちのドル外貨はどれくらいあるのでございましようか。そしてそれはどのように今日処置しておられるか、伺つてみたいと思います。
  249. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと正確な数字を持ち合せておりませんが、アメリカに約六億数千万ドル、七億ドル近くございます。そのほかポンドの分の換算と、それからいわゆるオープン・アカウント地域の分を合計いたしまして現在約十億ドル強ございます。そのアメリカにありまする分は二十数銀行に定期預金その他で預けておるのであります。さらにまたごく短期の証券等を持つておる分もございます。しかしいずれにしましても即時金にかえ得るものでありまして、主としては短期の定期預金に相なつております。
  250. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは年間の利子は大体どれくらいつくものでございますか。
  251. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 大体定期預金の相子は三箇月のもので一分五厘見当であります。
  252. 福田昌子

    福田(昌)委員 わずか一分五厘見当の利子をもつてお預けになつていらしやるということで、私が銀行に関係がないとかいう大蔵大臣の先ほどの御説明でありましたが、その点を抜きにいたしましても、わずか一分五厘の利子でお預けになるという点には、私もいささか驚いたのでありますが、なぜこういうような低利でアメリカの銀行にお預けになつておられるのでありますか。
  253. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 もちろん日本の銀行へも預けておりまするが、資金は運用資金として初めて預かるのでありまして、従つてその分はアメリカの銀行へ預けて、またこれはいつでも使うのであります。なお念のためにここで私は申し上げさしていただきますことは、いかにも七億ドルというと多そうな気がいたしまするが、しかし日本は今年間二十億ドル以上の輸入をしておりまするので、これは決済の上から申しますると、半年分もございません。従いまして正常貿易運行上にもそれは必要なんでありましてただ有利だけでまわすのでしたら、アメリカでは八分以上にまわりますが、そうは参りませんことをそれで御了承願いたいと思います。
  254. 倉石忠雄

    倉石委員長 櫻内義雄君より関連質疑の申出があります。ごく簡単にお願いすることといたしまして、これを許します。櫻内義雄君。
  255. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、ただいまの外貨のアメリカ短期でお預けになつておる分は、利息のないものが相当あるということを聞いておるのでございます。それで実はこの間御努力で火力借款をされましたが、四千万ドル程度のものを借款するよりも、そういう無利息で預けておるような状況に保有外貨があるならば、それを活用しろという声が高いのでございますが、事実無利息でお預けになつておる分があるのかどうか、私の聞いておるところでは三億五千万ドルないし五億ドルということを聞いておるのであります。この点をこの際明らかにしていただきたいと存じます。
  256. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 的確な数字を、私はここに持ち合せませんが、会お話のごとくに、金額ははつきりいたしませんが、相当のものが無利息で預けられておることは事実であります。しかしながらこれは当座預金でありまして、いろいろな決済に充てられるからさように相なるのであります。御承知のごとくに火力借款は、二十箇年にわたるものであります。この点で非常に違うのでありまして、安心して事業の経営ができて、長期にわたつて、二十箇年に返済ができるというものであります。もし幸いに日本の金がそういう長く置き得る資金でありますれば非常にけつこうでありますが、日本の現状は欄内さんも御承知のように、七億ドルそこそこでございますから、貿易の決済から申しますと半年分にしか当らないということになります。また本年だけでも、大体の見込み八千万ドルあるいは一億ドルの赤字は見込まれておるというような状況でもございますので、資金の性質が違うのであります。そういつた御議論が出て来るのに対しましては、資金の性質が違うということを申し上げるほかはないと思います。
  257. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 委員長資料をお願いしておきます。今の無利息で預けておるものが幾らあるか、正確に資料としていただきたいと思います。
  258. 福田昌子

    福田(昌)委員 私も無利息で若干アメリカの銀行にお預けになつておるということを伺つておりましたから、それを伺いたいと思いましたが、今櫻内さんから御質問がありましたから省きますが、私も資料をいただきたいと思います。ただいまのお話によりますと、性質が違うのである。しかも二十箇年に払えばいいお金であるから、借りたつていいではないかという御議論のように伺いました。大蔵大臣ともあろうものが、七億ドルというのは、これは貿易収支の決済の上からみれば半年分に過ぎないからささいなお金だと言われますが、国家財政の貧乏な日本におきましては、それでも重大な、多額な金額であります。それをアメリカにわざわざ無利子で預けておつて、その利子を活用されないということは、私どもとしてはどうしても解せない点であるの下ございます。なぜその利子を活用しようとなさらないか。ぜひアメリカの銅行に預けなければならないような、何かそれに対するアメリカ側の示唆でもあるのかどうか、伺いたいと思います。
  259. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 何もさような理由はございません。ただ資金の性質上そうなつておるのでありまして、日本でも御承知のごとく、銀行預金というものは、当座預金はすべて無利息であります。
  260. 福田昌子

    福田(昌)委員 それを日本の為替銀行にでもお預けになるというような御意思はないのでしようか。
  261. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 為替銀行にも、東京銀行を初めとしていずれも預けております。但し資金量の関係からそれだけの資金の運用ができるかどうかという問題があるのでありまして、こういう点については、私どもできるだけ最善は尽している所存であります。
  262. 福田昌子

    福田(昌)委員 その点私ども非常に遺憾でありますが、もう少し御研究をいただきたいと思うのであります。次に火力借款の問題に関連してお尋ねさせていただきたいと思うのであります。火力借款の問題が提起されますと、前後いたしましてマイクロ・ウェーヴの設置に関しまする外資導入の問題が出て参りましたが、このマイクロ・ウェーヴの設置に関しての外資導入に対しましては、政府はどのような御見解をお持ちになつておられるか、この点伺いたいと思います。
  263. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 何ら具体的に聞いておりませんし、考えたこともございません。
  264. 福田昌子

    福田(昌)委員 もしこれが積極的に進んで参りました場合においては、大蔵大臣といたしましては、火力借款の問題と同様に、これに対して援助なさる御意思があるかどうか、その点伺いたいと思います。
  265. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 具体的な問題と内容を検討してから述べたいと思います。
  266. 福田昌子

    福田(昌)委員 これから検討を要するという御答弁でございますが、ただいまの大蔵大臣の常識におかれまして、この点は援助すべきものであろうとお考えでありましようかどうでございましようか。
  267. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この点については私は何も聞いておりません。これは卒直に申し上げまして何も聞いておらぬので、聞いておらぬことについてはどういう内容かはわかりませんから、福田さんのせつかくのお尋ねでございますが、何とも御返事申し上げかねます。
  268. 福田昌子

    福田(昌)委員 それはこれから御検討をいただくことにいたしまして、その点に関しまして緒方副総理の御見解を伺わせていただきたいと思います。
  269. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ちよつとお尋ねいたしますが、それはどういうことですか。マイクロ・ウェーヴの話を政府で何かやつておるかというのでありますか。
  270. 福田昌子

    福田(昌)委員 私も新聞記事で読ませていただいたわけでございまして、政府でこれに関与しておられることは出ておりませんでしたが、正力氏が中心になつて、マイクロ・ウェーヴの設置に関し外資導入の点について積極的に働いておる、こういう記事を読んだのです。これが具体的になりますと、火力借款の問題とも照らし合せまして、政府に御関係のある事項になろうかと思いまして、お尋ねいたしておるわけであります。
  271. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それは全然政府は何ら関係ありません。
  272. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと数字がわかりましたから、櫻内さんと両万に関連してお答えしておきます。当座預金で無利息の分が一億四千二百万ドルでございます。
  273. 福田昌子

    福田(昌)委員 もしこれが具体的に進んで参りました場合、緒方副総理といたしましては、これに関する外資導入に対しまして、どういう御見解をおとりでございましようか。
  274. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 外資導入の計画の内容は知りませんけれども、それで外資導入ができればけつこうなことだと思つております。
  275. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもも外資導入そのものに対してあえて反対するものではありませんし、その条件いかん、あるいはその目的としている事業というようなことに関連する意見を述べておるわけでありますが、このマイクロ・ウェーヴに関しましては、私どもといたしまして、こういう事業に外国の資本が入つて参るということになりますと、いわば日本の神経系統が押えられて来る。外国の資本によつてある程度左右されて参るということが、必然的に起つて来るであろうということが想像されるのであります。こういう重大な、日本の神経系統が押えられるような事業に、外資の導入を求めるということは、私どもとしては許しがたい事件だと考えるのであります。政府におかれましても、こういう日本の神経系統が押えられるような外資の導入に対しましては、厳にお慎しみと申しますか、大いに警戒、反省をお願いしたいと思うのであります。この点要望いたしておきます。次にお伺いさしていただきたいのでありますが、こういう外資導入の方法でございますが、民間会社が日本政府に何ら関連のない形で、かつてに外資を導入することができるのでございましようか。
  276. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今外務省との関係がありまして政府との関係なしにはできません。但し今の政府が主として関係する分と、それから政府に一応承認を求めるのとございます。
  277. 福田昌子

    福田(昌)委員 それでは次に外務大臣と厚生大臣にお伺いしたいと思いますが、すぐ来られますか。
  278. 倉石忠雄

    倉石委員長 今呼びに行つております。——厚生大臣がお見えになりましたので、福田さんお続け願います。
  279. 福田昌子

    福田(昌)委員 外務大臣にお尋ねしたい点もございますが、厚生大臣にほんの十分ほどお伺いさしていただきたいのです。毎度同じようなことをお尋ねして恐縮でありますが、日本の人口過剰のこの現状に対しましては、もう心ある識者が異口同音に申すことでございまして、日本に入りますとまつたく何と人口が多いことかと思つてだれしも唖然とするわけでございます。この人口過剰に対しまして厚生当局はどういうような対策を今後もとろうとしておられるか、その点お伺いしたいと思います。
  280. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答え申し上げます。この問題はたびたび当委員会の他においても御答弁を申し上げております通りで、重ねて申し上げますこともいかがと考えますから省略いたしますが、大体現在人口問題研究所をもつてつておりますが、かねて申し上げておりまする四つ五つの基準に基いて、さらに総合的にこれらの問題を取上げて研究をいたし、それらの基準に従つてまた人口問題研究所等に具体的に研究させて、政府もそれによつて取上げて行きたい。現に取上げておりますたとえば優生保護法の問題であるとかあるいはその他の問題につきましては、累次申し上げておりますので、御質問従つて答弁を申し上げますが、一応基本的な考えを申し上げます。
  281. 福田昌子

    福田(昌)委員 非常に抽象的な御答弁をいただいたのですが、おつしやることはよくわかります。そこで私のお尋ねいたしたいと思いますことは、たとえばその人口対策としての政策的な面の一つといたしまして、移民問題もありましようが、厚生当局の御所管である優生保護法に関連いたしますバース・コンドロールの問題でございます。このバース・コントロールの啓蒙指導費あるいはまた貧困者に対する薬品の無料配付というような予算を今年約三億ほどとつておられるようであります。こういう予算は毎年とられるようでありますが、大蔵当局から完全に削られております。これに対して厚生当局は、今度こそ大蔵省と折衝してこの予算を確保する御決意があるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  282. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 本年度は御承知の通り優生保護関係、ことに受胎調節関係に関しまして三千九百万円ほど計上いたしておりますが、今後ともこの問題につきましては、人口問題の重要性にかんがみて大蔵当局とも相談をいたして、できるだけこれらの期待に沿うような施策を講じたいと考えております。
  283. 福田昌子

    福田(昌)委員 大蔵大臣に重ねてお伺いいたしておきたいのでありますが、この人口問題は日本の過剰人口に対しては非常に重大なる、焦眉の急を要する問題であります。この問題の一つとしてバースコントロールが取上げられておるわけですが、これに対しまする予算的な措置として来年度は厚生省が概略三億円のものを要求しておられますが、これを大蔵大臣はお認めになる意思があるかどうか、この点はつきりさしていただきたいと思います。
  284. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 人口問題はまことに重要な問題でありましてこれは目下全体としての人口問題解決を取上げることになつて、この委員会ができることになつております。そのうちバース・コントロールだけの問題を最初に取上げたらどうかということは、ちよつとただいまのところ内閣として閣議で決定しておるわけでもございませんので、これは方針が定まりまして、そういうことに決定しますれば、必要な予算措置はとりたいと存じております。
  285. 福田昌子

    福田(昌)委員 たいへん気が長い話でございまして、毎年同じことを私ども聞いて参つたわけでございます。この点どうか大蔵大臣も御勘案の上で、今度はそういう英断をもつて、わずかばかりの予算でございますから、この点だけでも御決定願いたいと思うのであります。  次に重ねて一点だけ厚生大臣にお尋ねさしていただきたい点は、今日の医療制度の問題でありますが、医療制度が厚生省内におきましても、保険局一局に牛耳られているような形でありまして、本来の医務局の所管からずれておるような形でありますが、この点私どもとして非常に遺憾に思うのであります。従いまして今日の医療機関の設置、配備におきましても、自由経済、資本主義経済を標擁する自由党内閣でありながら、公的医療機関がやたらに無計画に建てられまして、私的医療機関が圧迫されておる、こういうような現状に対しまして、厚生大臣はこの私的医療機関に対する政策、あるいはまたこれらの助成策というものをお考えになつておられるかどうか。あるいはまた私的医療機関はいらないのだ、そういうものはもう撲滅するという御意思でやつておられるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  286. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 国民の保健の問題は重要であります。これはすべての政策の基幹となるものと私は思うのでありますが、さような意味から医療機関の整備につきましては、かねて厚生省としては一定の計画のもとに進んでおります。ただいま仰せの公的医療機関と私的医療機関との関係、ややもすれば公的医療機関を重視し、内的医療機関を軽視するにあらずやというお話でありますが、さようなことはないはずであります。公的医療機関と私的医療機関は、その任務もおのずから異なつておるのであつて、なおまた先般の国会において通りました医療金融の制度につきましても、現在五億のわくをとつておりまするが、現実には中小企業金融公庫と申しますか、あるいは国民金融公庫等においては、大部分中小の開業医等に現実にまわつておる事実もあります。それらの面から、これらに対する助成策も講じておる次第であります。  なお先ほどお話の医療機関の整備について、医務局よりもむしろ保険局が牛耳つておる云々のお話もありましたが、それはそうではなくて、現在の国民医療という点から見ますると、主として社会保障制度の面から国民医療の問題を解決すべき事態に当面いたしておるので、従つてそういう面から従来はただ町医者がそういうふうな社会保険の範囲の外で、いろいろな診療をいたしておりましたが、現在はほとんど国民健康保険あるいは健康保険等の社会保険の面からの医療が大部分でありますから、自然そういうことになつておるので、保険局がどうこうということは毛頭ございません。
  287. 福田昌子

    福田(昌)委員  大臣のただいまの御答弁をお返しするようでたいへん恐縮ですが、私的医療機関が無視されておるようなことはないと思うというような、きわめて確信のない御答弁でございましたが、まことにその通り、御確信がないはずでございまして、現実は非常に私的医療機関が圧迫されて無視されておるということの現実を、よく御研究いただきたいと思うのであります。その点を御研究いただいた上で、さらにもう一つ御指摘申し上げたいのは、医療機関に関する所管というものは、保険局が握つておるのが社会保障の建前からあたりまえだというようなお考えでありますが、これもまた大臣のお考えとしては、はなはだ間違つておると存ずるのであります。医療の制度運営ということに対しましては、当然医務局が握るべきでありまして、保険局というものは社会保障の保険経済を扱う一つの現業機関とみなされてもしかるべきだと思うのであります。その主体はあくまでも医務局でなければならないのでありまして、そういつた大臣の主客転倒されたお考えは、改めていただきたいと思います。  次にお尋ねいたしたい点でありますが、今大臣の御答弁にもありましたように、今日の開業医はすでにもう大部分が社会保険の治療をやつて、非常に協力をしておるというお言葉がございましたが、まさにその通りであります。ところがその協力いたしております社会保険が、では政府の非常なる考慮によつて円滑に行つておるかどうかということを考えてみますと、これはまた驚くべきほどに無視、放置されておる問題であります。自由党の政府のもとであり、自由経済を標榜する自由党の政府のもとでありながら、医療社会保険だけはいたずらに厳重な統制の中に入つておりまして、たとえて申しますと、社会保険で治療いたします場合には、初診料わずかに五十円足らず、入院いたしましても、完全給食、完全看護ということが言われておりますが、三度の食事を出して、治療いたしまして、十分疾病の療養を与えながら、入院費というものが一日、保険診療で参りますと、約四百円足らず、三百七十五円程度になるのでございます。木賃宿にも劣るようなこういう入院料をいつまでもすえ置きにいたしまして、これで社会保険の前進であるとか、社会保障的制度をとつておるとは、よもや厚生大臣もお考えではあるまいと思うのです。こういう木賃宿にも劣るような入院料金、こういう点を大蔵大臣は適当と思つておられるかどうか、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  288. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 保険単価の問題は、現在のところやむを得ぬと考えております。なお検討してみます。
  289. 福田昌子

    福田(昌)委員 黙つておればやむを得ぬとして済まされるような政治であつてはならないと思うのであります。こういう理不尽な、元々非科学的にきめられましたこの社会保険の単価というものは、ことに現在の単価というものは、御承知のように三千七百円ベース当時にきめられた単価でありますが、こういうものを今日まだ固執して相かわらずこれを改正しようという意思がない、その政府の態度に対しまして、私どもつたく不満を禁じ得ないのであります。早急に御改正の措置をとつていただきたいことを要望いたしておきます。  外務大臣がおいでになりましたから、外務大臣にお尋ねをさしていただきたいと思うのでありますが、先ほどの方の質問にもあつたと思うのですが、MSAの五百五十条の改正によりまして、日本でも今度約五千万ドル程度の小麦の買付がなされるというようになつておりますが、この支払いのお金は、もちろん日本側で特別見返り資金として積立てられるのであろうと思いますが、この使途は日本政府の自由になるものでございましようか、どうでございましようか。
  290. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは五百五十条を御研究くださいました方がはつきりするかもしれませんが、小麦をアメリカから買いつけるときに、日本政府はドルを払わない、そのかわりに円で払う、従いまして国内に積立てるのであつて、国内で円を払うのであつて、それは当然アメリカ政府の金になるわけであります。
  291. 福田昌子

    福田(昌)委員 私も当然そうだろうと思つてつたのでありますが、昨日の、これはどの委員質問に対しての御答弁であつたか忘れましたが、保利農林大臣の御答弁によりますと、その積立てた円というものは日本でかつてに使用できるのだから、非常に有利ではないかという御答弁があつたのでありますが、これは保利農林大臣の御答弁が間違つておるわけでございますか。
  292. 保利茂

    ○保利国務大臣 私はそういうお答えはいたしておりません。
  293. 福田昌子

    福田(昌)委員 では速記録を見てしなければいけませんが、私はそういうふうに伺つたのであります。保利農林大臣の御答弁はそうでなかつたかもしれませんが、新聞で読ませていただきました農林当局の官僚の御答弁は、すべてそういうふうになつております。日本でかつてに円は使えるから非常に有利じやないかというようになつておりましたし、新聞にもそういう記事が載つておりましたが、保利農林大臣が間違いとお認めなら、農林当局の官僚の言葉を御訂正いただきたいと思います。
  294. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは事務当局に聞かないでも、事務当局の方でもそういうものでないということをよく心得ております。
  295. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間がございませんから一点だけ御質問さしていただきたいと思います。奄美大島の返還の問題が起つて参りまして非常に喜ばしいことですが、その事務的な交渉はどのようになされておつて、これはいつ完了して、いつからはつきり日本の主権下に入るのか、その大体の目安を御説明願いたいと思います。
  296. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは十二月一日を目途として返還の完了をいたしたいと思いまして、ずつと交渉をいたして参りましたが、いろいろ引継ぎ事項についてはむずかしい問題がたくさんありまして、今やつておる状況では、あるいは少し遅れるんじやないかと思いますが、ただいまのところは、遅れても年内には必ずできるという予想でやつております。
  297. 福田昌子

    福田(昌)委員 それでは予算として今とつておられる十億ドルは、当分どこで所管されることになりましようか。
  298. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 大蔵省所管で十億円とつております。
  299. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点だけで、時間もございませんからあとお尋ねいたしません。もう一点だけお尋ねさしていただきたいと思うのですが、日本に在日米軍調達本部というのがありますが、この在日米軍の調達本部は今度のMSAによりまする援助の場合の見返り資金の使途に対しまして、どの程度の権限があるのでございましようか。
  300. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAの見返り資金というのはちよつと私にはわかりませんが、普通のMSA援助は無償であると思つております。その場合に、日本政府がしいても金を払うと言えば向うは受取りまして、そのときは援助を見返りに積み立てることはあるが、そういうことは普通ないと思います。そこで今御指摘の五百五十条に関するものでありましたならば、これは見返り資金ではなくして、アメリカ政府の金であります。ドルを払うかわりに円で払う、従いましてそれに対してはアメリカ政府が持つておるのでありまして、この使途等はアメリカ政府がきめるのであります。ただその中に、どうせ日本の円ですから、日本の国内で一番いいように使うような話はいたしておりますけれども、元来の性質アメリカ政府の金であつて、見返り資金ではないのであります。
  301. 福田昌子

    福田(昌)委員 それではもう一点で終りますが、そのMSAによるドルの援助の場合は、これは読売新聞の記事ですが、その記事によりますと、「ドル援助は在日米軍調達本部が使う、銘記せよ、日本政府の自由にならぬ」という記事が出ております。この新聞記事から読みますと、もし日本MSA援助をもらつても、そのもらつたドルは日本政府の手で使われるのではなく、現行JPAの機関で使われるようなことになつておることを知らなければならぬことが書いてあります。この点政府の御答弁と食い違つておりますが、その点はいかがでございますか。
  302. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのところはいわゆる軍事的の援助でありまして先方でつくつた完成品をよこすか、日本の国内で注文してそれを引渡すか、大体どちらかと思います。将来は、防衛支持援助等が起ることがあろうと思います。そのときにはドルが入つて来る場合もあろうと思います。その場合には、先ほどお話の見返り資金を積み立てることになるのであります。この見返り資金につきましては従来の見返り資金と同様、日本政府でいろいろ計画をいたしまして、アメリカ政府の同意を得たときに使える。これは前の見返り資金と同様であろうと考えておりますが、その点はまだ具体的にはなつておりませんから、的確にはお答えできません。
  303. 倉石忠雄

    倉石委員長 吉川久衛君。
  304. 吉川久衛

    吉川(久)委員 私は緒方副総理、大蔵大臣、農林大臣、厚生大臣、労働大臣、地方自治庁長官、それに外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕  第一番に緒方副総理にお尋ねいたします。臨時国会開会の遅れた理由と、今日までの風水害地あるいは冷害地に対する措置を、どういうふうにとつて来られたかというこでとございます。災害地に対しては急速なる対策の樹立、実行によつて、罹災民に安堵を与え、希望を持たせる必要のあることは、同僚委員から繰返し尋ねられたことでありますが、その御答弁は明確を欠いておりますので、農林委員会や各党、ことに改進党から強い要請があつて、初めて会期もきわめて短期間に限定し、しかもその確約が得られなければいまだ開く意思さえきまらなかつたというに至つては、国民政府災害に対する熱意を疑わざるを得ないのであります。緒方国務大臣は副総理としても、また政府災害対策本部長としても、重大なる責任があると思うのでありますが、いま一応御所見を率直にお聞かせ願いたいのであります。
  305. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 実は政府でも災害の実態を十分に把握し得れば、なるべく早く臨時国会を開きたいと思つてつたのであります。九月の中ごろから、在野各派からも二回にわたつて臨時国会早期開会の御要請があつたのでありますが、災害の実態を把握することがなかなか困難でありましたことと、それから六月、七月の災害に次いで七月末から八月にかけてまた新たな災害が起り、さらにまた十三号台風等がありまして、一口に申しますれば災害の実態がなかなかつかめない。その間に国会の方で二十四にわたる災害復旧に関する法案がつくられまして、その法案に基きましてさらに地域指定の政令、その政令の基準も国会の方で決議がありまして、政府といたしましては今回の災害が、今まであまり例のない異常なものでありましただけに、これは国会でも超党派的に扱われておりましたが、政府としましても国会と同じような立場に立つて、できるだけ急速に、かつ又できるだけの措置をいたしたいということから、政令の基準につきましても、国会の意思を尊重いたしまして、それによつて政令をつくり、また指定地域をきめたのであります。その間多少財源関係につきまして、政府では重点的に考えたい、委員会の方におきましては、重点的よりもむしろ普遍的に考える方が、災害地の意思にもかなりということで、その間の懇談に日を尽したのであります。いつまでも放擲しておくわけにも参りませんので、十月の初めに改進党から早期国会の要請がありましたときに、会期を一週間に制限しても、早く災害冷害措置をすべきではないかという話がありました。政府としましても、大体そのころに災害の様相もつかみましたので、今回の補正予算を編成いたしまして、臨時国会を召集するに至つたわけであります。
  306. 吉川久衛

    吉川(久)委員 実数がつかめなかつたということ、財源の見通しが立たなかつたということで、非常に開会が遅れたということでございますが、こういう重大な問題の起きたときに、もつと政府が熱意を傾けて御処理なさつたならば、もう少し早く私は国会が開かれたのではないかと思うのでございますが、今後もこういう問題が必ずしもないとは限りませんから、十分こういう点について御留意を願いたいと思います。次に救農国会として開かれました本国会が、その名にふさわしくないのはどういうわけかということを伺いたいと思います。今国会救農国会であることは、開会式における陛下のお言葉にもうかがわれましたし、堤議長の式辞にも明らかなところであります。しかるに上程されました補正予算案のどこに、一体救農国会らしきものがあるでありましようか。たとえば農林省所管の食糧増産費を二十六億九千七百万以上も削減して、補正予算によればわずか三十億の救農土木事業費を計上するということでございまして、これは片方で奪つて、片方で与えるというようなやり方をいたしております。あるいは風水害地方に対する復旧費本年度所要額四百六十九億五千万というのに、その五分の三に相当する三百億にとどめんとするなどは、罹災民のまつたく納得できないところでありまして、こういうことは一体どういうお考えなのでございましようか、この点をいま一応伺つておきたいと思います。もう一つついでに、今回の補正予算で、政府は五百十億の歳出とこれに準ずる三百余億の金融措置で手一ぱいという状況であるのでございます。一体この程度の補正をするのに財源に窮するとか、金融の計画が立たないとかいうような、非常な窮迫をしたところのお言葉ばかり伺うのでございますが、今国民は、政府がこんな状態であつては、二十九年度の予算の編成が、一体できるであろうかと、非常な心配をいたしておりますが、この点についても、最も国民の安心のできますようなお答えを願いたいと思います。
  307. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 御意見でございましたが、政府としましても、今度第一次補正予算案に盛られました災害対策費あるいは冷害対策費等につきまして、必ずしも十分とは思つておりませんが、先ほども申し上げましたように、政府が今日の通貨安定政策をとつております限り、これには客観的にいろいろな御意見があるかもしれませんが、政府としてはその政策を堅持いたしたいつもりでおるのでありますが、その政策を中核といたしております限り、予算をなるべく一兆何がしというものにとどめたいということから、財源が非常にきゆうくつになつておりまして、そういう点今度第一次補正予算に出しましたものが必ずしも十分と思つておりませんけれども、その点からあの五百十億というわくに圧縮せざるを得なかつたのであります。但し災害だけの場合を申し上げますならば、今回の補正は大体災害に対しまする国庫補則額の二〇%、それに昨日国会に出しました修正によりまして、あの融資措置ができまするならば、三割まではできようかと思います。年度もすでに半ば過ぎておりますので、大体それで手持ちなしに行けるのじやないかと思いますが、手持ちができないように今の融資も考えられたのでありますが、全体の国庫負担といたしましては千五百六十五億というものを大体決定いたしております。この数字も多少の動きがあるかもしれませんが、大体決定したのでありまして、この二十八年度にむろん不十分なところが出て来るかもしれませんが、その場合には二十九年度の予算において、引続きできるだけ十分な復旧をやりたい、そういう考えで政府といたしましては、この災害の当初から決して熱意を失つているのではなく、十分できるだけのことはやつておるつもりでございます。
  308. 吉川久衛

    吉川(久)委員 緒方副総理は足らないとこは融資をもつてやる、その融資によつて大体三割まではできると思うということでございましたが、その融資の内容についてははなはだ疑問な点がございますので、私はあとで大蔵大臣にこの点は確めてみたいと思います。次に大蔵大臣は、何かインフレ病にかかられたような感じが私はするのでございます。大蔵大臣は口を開けばインフレインフレと申されて、何かおこりにとりつかれた病人のように、私には見受けられるのでございます。小笠原先生はアメリカでドツジさんに、インフレ病の病菌を飲まされて帰つて来たのではないかというような声がちまたにございます。財界の代表に呼ばれては国民の声とでも錯覚したのか、インフレインフレと大きな声でおののいておいでになる。インフレ病など今日ではそんなに私は恐れなくともいいのじやないかと思つております。大臣もしばしば申されるように、今や世界の経済はデフレの方向にあります。日本経済といえども一国の孤立経済の時代ではなくて、世界経済の一環としての日本経済であることを思いますれば、むしろデフレ対策こそ考えなければならない段階であると思う。インフレインフレの声を大にして緊縮政策をとることは、石橋議員の説ではございませんが、国民は萎縮してしまうでしよう。それより積極的に急速な災害復旧によつて国民生産を増加する方途を講じなければ、かえつて真に恐るべき恐慌となることを考えなければならないと思います。通貨価値の安定とか、物価騰貴の防止という一連の財政的、あるいは金融的操作のみによるこの薬物療法というものは、副作用が出て、余病のために日本経済は倒れることさえも考えられます。あくまでも抵抗力を養う健全な明るい療法をとるべきであると思うのでございますが、大蔵大臣はこの点についてどういうふうにお考えでございますか。
  309. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私はインフレ病にかかつておるわけでも何でもございません。ただ日本の現実を見つめて、これに対する対策を立てておる次第であります。従いまして、このことについては過日本会議石橋議員にも述べ、また先刻約二時間ばかり前に小山委員質問に対しまして相当詳しく申し述べましたので、ここにこれを繰返しはいたしませんが、つまり財源の程度を越して、財政散布が今日千二百億にも上ろうとしている。財政資金の散布超過というものは恐るべきものであつて、その結果はインフレになる。インフレは財政の一面からのみ来るものではない。このことは御指摘の通りでありまして、私もすでに繰返して申しておりますから申し上げませんが、少くとも財政面から来るインフレというものは阻止しなければならぬので、この点には私はかたい決意を持つておるのであります。今吉川さんのお話のうちの、日本人は非常に萎縮し過ぎておるのではないか、もう少し希望を持てということは、私もぜひとも希望を持ちたいと思うのでありまして、これに対して努力をいたすものでございますが、しかし今の日本の財政状況では、それが許されないのであります。従いまして、私どもは財政の許す最大限においてやつておるのであります。また吉川さんも御承知のように、日本経済というものは、よくいわれております底の浅いものでありまして、朝鮮事変後は一時少し好況で潤つたけれども、その後すぐこういう状態になつておるわけでございまして、日本の経済のかじのとり方が今日ほどむずかしいときはないと私は思つております。私はドツジ氏に会つたが、ドツジ氏以外にも多数の人々に会いました。しかし私はそう他人の意見にかぶれてかれこれ申すのではなくて日本の現実を見つめた上でなければならぬという点から申し上げておる次第でございます。従いまして、二十九年度の予算等についても、実は今非常に苦慮をいたしておるのであります。どうして財政面から持つて出るか。金融面については、二十八年度予算はある程度金融の操作で、いわゆる財政金融の一体化でやれるのでございますけれども、しかし来年になりますと、金融の操作の余地が乏しくなつて参ります。それこれ非常に心配しておる次第でございますが、その点は、さつきあなたの方の小山委員お答えしたときに相当詳しく申し上げましたから、ひとつ御了承願つておきたいと存じます。
  310. 吉川久衛

    吉川(久)委員 次に、私は自由主義経済は行き詰まつたと思うのですが、今日わが国のみ高物価にある原因は、まつた政治の貧困から来たものであると思うのです。こういう点に関して、私は吉田内閣に非常なる御反省を願いたいと思います。産業経済の合理化はまつたく行われておりません。消費偏向の予算の実行は、今日大ビルディングの建造となり、一事が万事非生産的な方向をたどつて来たのでございます。イージー・ゴーイングそのものであります。いかに自由主義政策と申しましても、あまりに自由放任ではないか。その場その場的な、行き当りばつたり政策を改めて、もつと経済に長期にわたる計画性を持たせて資本家も、経営者も、労働者も、三位一体となつて、相互に信頼のできるような共同主義経済でなければ、西ドイツのような復興は期待できないと思うのでございますが、大蔵大臣はこの点についてどういうようにお考えでございますか。
  311. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 吉川さんの御指摘のように、日本は朝鮮事変後の安易さになれて、企業の合理化、近代化等を怠り、それが今日非常に経済のいわば底を浅くし、またちよつとしたことでも経済界が混乱を起すということに相なつておるのでありまして、こういう点から見ますと、長い間自由と申しましていろいろ制約がありまて、昔のような野放図な自由でないことは、吉川さんも御承知の通りであります。しかし卒直に申し上げますれば、やはりもう少し計画性を立てるべき時期に入つて来ておるのじやないかというような感じを私は持つものであります。もちろん長期のいろいろな計画を立てるべきことは、これは御指摘の通りでございまして、これは計画的にやらなければならないが、ひとり長期計画のみならず、ある種のものについては、少し具体内に考えなければならない時期に来ておるのではないか、大体こういうような感を持つております。御意見は傾聴いたしておきます。
  312. 吉川久衛

    吉川(久)委員 次に災害地に対して、特別委員会や各党各派、また多くの議員並びに地方自治団体を初め各種団体から要請があるにもかかわらず、財政金融事情を理由に、できるだけ早期に回復のできるような処置をとろうとしていないような態度が見受けられるのでありまして、一日も早くこの災害による傷口を治癒せしめてやらなければならないというような熱意が疑われておるような気がするのでございます。たとえて申しますと、災害対策費三百億円の事業の不足額は、すなわち百六十九億余円を融資に譲らないで本予算に計上すべきであるのに、これをしないで金融措置に譲つたのでありますが、私が先ほど副総理にお尋ねしたのもこの問題でありまして、わが党の櫻内君の質問に答えておるところによりますと、利子補給金を予算に計上せず、復旧工事の進行状況を検討して必要額ずつ融資するというのであります。国民はまただまされるのかと心配して、被害住民は手控えをいたしております。そのため復旧工事ははかばかしく進まないということになるのでありまして、国民を安心させ、早く工事が進捗して、再生産のできるような措置をするあたたかい配慮がどうしてできないのか。ヒューマニズムの一片も見受けられないような政府のしうちのようにいわれておりますが、大蔵大臣はこの点についてどういうふうにお考えでございますか。すなわちこの問題は、融資額を予算に計上しないで、それで足りないところはただ融資をすると申しただけでは、とても罹災住民は納得できないのです。まただまされるのではないかというような心配を持つておりますので、この点をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕
  313. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 吉川さんの仰せのように、信を国民につなぐということは政治の要諦であると思います。しかし私どもは、この三百億を計上するにも財源関係から最善を尽したわけであります。またこの災害に対しては、三百億のほかに百億のいわゆる災害予備費が見てありまして、その中からすでにこれに向けられておるものが三十億円に達し、またそれに見込むべきものが十六億あるので、三百四十六億というものが災害対策費に向けられておるという実情にあります。さらに、しからば金融措置についてどうこうというお話でございましたが、私どもは工事の個々の進捗状況を見て、どうしても災害を防ぐために必要なものについては、これはどうしてもやらなければならない、こういう考え方から、昨日も率直に申しました通り、現在資金運用部には、百五十七億という金額は持つておりませんし、またそれでは計画が立ちませんので、これについて何とかしなければいけないという心持から、それぞれ必要なものに応じて個々に査定をいたしまして、資金運用部でもし足りないものがありましたならば、ほかの方で、たとえば公募起債等の方法もありますので、そういうことの措置をとりたい。これをさらに非常に率直な言葉で言わせていただくならば、一応否五十七億というものを資金運用部とは言わないけれども、多少ほかの措置までとるということを私は考えておるのでありまして従つてどもは、ここに誠意をもつてやると申しておるのでありますから、これはひとつ今後の実情に徴していただきたい。ただ申し上げておきますが、昨年初めて二割三分何厘できましたが、従来の例によりますと、二割以上進行いたしておりません。従いまして、私どもことしのような大きな災害、さきにも申しました、吉川さん御記憶でしようが、二百億というものは人夫賃だけで何と五千万人の延人員に及ぶのです。そういうわけでなかなか容易ならぬ問題がございますので、実行量においてはなかなかそうはかどらない、こういうふうに私は見込んでおる。これは口では何だ五千万人とこう言われますけれども、延人員五千万人の人夫というものは相当なものであります。またこれに伴う各種の資材等もございますので、金というものを容易に有効適切に使うには相当な骨折りがいるというように私は思つておるわけであります。
  314. 吉川久衛

    吉川(久)委員 大蔵大臣は三百億の金を使うことはなかなか容易でないというようにもおつしやるし、今の同僚議員にお答えなつた中にも、大体二十八年度の予算がおそく本ぎまりしたので、そのために時期的にもというようなお言葉がございましたけれども、しかし会計年度は四月一日に始まつておりますが、実際の仕事というものは早くて六、七月ごろから実施されるものであります。そのために会計法には、三月三十一日までの仕事でも国においては一箇月あるいは県においては二箇月とかいう猶予期間さえ見ているのでありまして、今回の九州の災害のごときは、これは新しい会計年度においてもう早く着工できる事業でございますれば、ちようどそのときに間に合うような時期に襲来をしたところの災害でございますから、これは会計年度的に見れば、あるいは事業年度的に見れば、本予算がきまるときまらないとにかかわらず、時期的に見る期間が短いから、おそらく二〇%くらいしかできないであろうというような御観察は、必ずしも当つていないのではないかと私は思うのです。そこでこの融資の問題についても厳重なる御検討をなさることはけつこうでございますが、金を出したくないために故意に厳重なる検討として、融資をはばむような措置が往々にして官僚によつてとられることがございますので、大蔵大臣は特にこの点に御留意になつて下僚を督励して、この災害をすみやかに復旧できるように御配意をいただきたいと思います。外務大臣が御都合で退席しなければならないということでございますから、福田委員の御質問に関連をして私ひとつお尋ねをしておきます。小麦の輸入の問題でございますが、MSA援助で来るところの小麦はただの援助であつて、こちらが払うと言えば受取らぬでもないというようなお言葉のように、私は聞きましたが、さようでございますか。それからMSAの麦の援助でなくて、むしろ国際小麦協定に参加をしておりますので、その割当額を増加をして、そうしてその割当を受けるというような措置がとられないものか、その方がわが国の食糧需給の関係から見るならば、こちらの自主的に操作ができるだけでも効果があるのではないかと考えておりますが、この点外務大臣から一言お答えを願います。
  315. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど福田さんにお答えしましたのは、一般MSA援助はただいまのところいわゆる軍事的の援助でありまして、完成兵器等を援助されるものであるが、これは原則として無償である。しかし払おうと言えば向うは受取らぬでもない、現に払おうといつて受取つたものもあるのであります。しかし小麦につきましては、これは五百五十条にはつきり書いてありまして、無償ではないのであります。ただドル、つまり外貨を払うかわりにその国の通貨で支払つてよろしいということになる。従つて今お話の小麦協定の小麦は値段が安いから今後も割当をふやそうという努力はいたしますけれども、しかしいずれにしても小麦協定の方はドルを払わなければならない。MSAの五百五十条の方は円で済むものでありますから、従つてただいまの外貨状況から見て、なるべく外貨を節約するという意味から言えば、円で払つて済むものならこの方がいいと思いますが、これにも五百五十条にありますように向う側の条件がいろいろ書いてあります。この条件については日本側としてもいろいろ考えなければなりませんので、一般の安い小麦をフリー・マーケットから買うか、あるいはドル節約のためにある条件を認めて五百五十条で円で買うか、これはまだ決定いたしておりませんが、この間の池田君の発表通り池田君とロバートソンとの間は、五十万トンくらい買うことが適当であろうという意見が致して、おのおのの政府にそういうことを申し入れておるわけであります。政府としまして、これを検討しまして、どうするかということを今後決定するわけであります。
  316. 吉川久衛

    吉川(久)委員 私は、外務大臣には、なるべく国際小麦協定の割当によつてつて来るような御努力を要望いたします。  次に食糧増産関係の公共事業費を節約いたしました。二十六億九千七百余万円といわれております。救農国会というのに二十六億九千七百余万円の節約をしてしまつて、一体これはどういうことになるかということを私は非常に疑うのでございます。今回の補正予算の当初の割当の数字を見ますと、救農土木事業に三十億でございます。公庫に千億、一般に十億、合計五十億。救農土木事業費として三十億を見ておきながら、片方では節約に二十六億九千七百万というのでございます。これは差引いたら一体どういうことになるのでしよう。ということになりますと、この国会救農国会ではないということになりそうでございます。この点を私は非常に疑うのでございますが、ここで私はあまり無理な追究はいたしませんけれども、ただお尋ねしておきたいことは、この二十六億九千七百余万円のうち、すでに認証を与えたものがどのくらいあるのか。それから二十八年度の事業はこれから相当できるのでございますが、これとこれとは具体的にどうしても年度内にできないというので二十六億九千七百万円が削減されたというならば、これは話はわかると思いますが、この点がどうも納得ができないので、どうしてそういう節約を大蔵大臣はさせたのか、農林大臣はそれをどうして了承しなければならなかつたのか、その辺をひとつ両大臣からお伺いいたします。
  317. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 公共事業費及び食糧増産対策費等より減じて——数字はちよつと違うようでありますが、災害対策に充当したことは、その趣意は御指摘の通りであります。実は本年の予算は七月三十一日に初めて成立いたしたのでありまして、従つてその実行の時期がたいへん遅れて参つておるのであります。このようなこと等から、一応現在のところ、年度内に使われないと見込み得るものが概括的に相当ありましたので、ちようどあの住宅金融公庫への出資などにつきましても、年度内に使われないものを減じたと同じような意味合いで、年度内に使われないものを一応これに振り向ける、こういうことで最初この予算計画を立てたわけでございます。別に食糧増産を軽んじたとか、あるいは公共事業を軽んじたとかこういう意味では毛頭ございません。
  318. 保利茂

    ○保利国務大臣 大蔵大臣からも申し上げた通りでございますが、私としては食糧増産には、経費の節約と申しても、できるだけ御容赦願いたいといつてごかんべん願つたぎりぎりがこういうことになつておるわけであります。
  319. 吉川久衛

    吉川(久)委員 大分農林大臣は御不満のようでございますが、ごもつともでございます。胸中をお察しいたします。  次に補正予算の政府修正に関連をいたしまして、農林漁業金融公庫出資の二十五億中の三億は、伐採調整資金に充てることになつておりますが、二十二億の方はどのように振りつけることになつておりますか。その点をまず伺いたい。
  320. 保利茂

    ○保利国務大臣 吉川さん御承知のように、土地改良その他小団地の臨時的な工事も、この補助事業として取上げるということになりまして、自己負担分はございます。御承知の団体営における自己負担分の八割は、この公庫の融資によつて地元に直接の負担をかけないようにという建前でやつております。これは従来もやつておるわけでございますが、必ずしもそれが満足に充足されてないわけでございますのはお説の通りであります。今回は冷害地に対する緊急性にかんがみまして、どうしても各村々において、事業が直接至急に計画され、行われるようにするためにはこの処置をとらなければならぬ、こういうことであります。これとても十分ではなかろうと思いますが、ある程度これでまかなえると思います。
  321. 吉川久衛

    吉川(久)委員 冷害対策として小規模の土地改良、温水施設、開拓事業、臨時救農施設等は特別立法の措置を講ずると思いますが、その点についてはどういうことになつておりますか。それからまたこの小規模土地改良、温水施設、開拓事業、臨時救農施設の中で小規模の土地改良と臨時救農施設等についての内容を少し明らかにしていただきたいと思います。それから一般の土地改良等の基準が従来から非常に問題になつておりまして、農林省では、二十町歩以上の団地でなければいけないと大蔵省がいつも主張しておるが、実際の食糧増産のためには五町歩以上くらいのものに改めることが適当だと思うのだが、こういうことでございましたので、私どもは過日大蔵省の主計局においでを願いましてこの点を伺いましたところ、あまり小団地は目が行き届かないということでございます。それで二十町歩以上くらいでなければならないとおつしやる。そのうちに青森県の某所に大きな団地の不正事件が起りましたので、これはどういう理由だとお尋ねをいたしましたら、それはあまりにも面積が広過ぎて目が行き届かなかつたというお答えでございました。たいへんこれは矛盾をいたしておるのでございますが、そういうことを私は追究するのではございません。今回の冷害は特に山間の非常に手狭な所が被害が激甚でございますので、そういう所に特にこの際特別の配慮を煩わすべきだと思つておるのでございますが、冷害対策としてのいろいろの問題が掲げられておりますけれども、この際私は五町歩以上の小団地でもできるというような措置にとりかえることはできないのか、この点をひとつ大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。前の問題については農林大臣からお答えを願います。
  322. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 経費を重点的に有効に使おうという意味で二十町歩とされているように私は承知しておつたのでありますが、御意見の次第もありますので、さらに検討をしてみることにいたします。
  323. 保利茂

    ○保利国務大臣 救農土木事業費の増額あるいは小団地を取上げるというようなことについて、あるいは補助率を引上げることにつきましては、特別立法を要しないでやつて参りたいというふうに考えております。
  324. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと私の説明が足らぬようでございます。今度の分につきましては五町歩以上のものを認めるということになつておる。普通の土地改良とちよつと違うところでございますから、この点ちよつと言い漏らしましたのではつきり申し上げます。
  325. 吉川久衛

    吉川(久)委員 大蔵省では、この一般の土地改良については五町歩以上については今後検討をするとか、今回の場合等は特別なものであるとか、その点がはつきりしないのでございますが、私はこの問題に関係をいたしましてからすでに久しいのであります。久しきにわたつて大蔵省は検討してみる、検討してみるでここまで来てしまつたのです。そういうことをしておつたからこういう災害も起きたということで、共産党の諸君などよりこれは天災ではなくて人災害だなどという問題を利用されるのでございますから、もう少し誠意をもつて大蔵省は考えてもらいたいと思います。農林大臣のただいまのお答えによりますと、特別立法を要しないでできるということでございますが、それならなぜ一般の土地改良の問題も二十町歩未満のものもこのような取扱いができないか。その点は一体どういうふうになつておりましようか。
  326. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、公共事業の方はしばらくおきまして、食糧増産対策費等がややもすると総花的になつておるという御批判をいただく面がありますけれども、むろん誤解はないと思います。終戦後今日までの食糧増産のやり方が三百町歩とか五百町歩とかいうような大きい規模のものを取上げてそこに重点を置いておるようになつております関係上、今日まで未完成の継続中のものがたくさんある。それが見る人によるといかにも国費をむだに使つておるように見える。しかしながらそういう大規模な土地改良は年月を要せずしてできるものではないということはわかり切つておる。そういうことは、むろんそういう批判をされる方は承知の上で批判をされておると思いますが、私は食糧増産計画をいたしまするには、こういうものは相当長い目をもつて見なければならぬことは、ものの性質からいつて当然ではないかというような考えを持つておるものであります。そういう人たちにこたえるには、それではただちに経済効果を上げるようないわゆる小団地の速戦即決でやれるようなものをなぜやらぬかということになつて来るだろうと思います。また実際のことからいたしましても、大きいところは取上げ、小さいところは取上げない、手近に村々であそこの五町歩、七町歩というようなところにちよつと手を加えるならば相当の生産力が増強されるということは、その村々においてはだれしも感じておられるところであると思います。その点は私は特に痛感しておりますから、もし総花的な食糧増産のやり方が違うというならば、そういう面においても取上げるならば私は十分効果が上るのではないかと思います。この問題は法律上の問題でございませんで、予算上の問題でございますから、来年度の予算編成の当時におきましてさらに検討を十分加えるようにいたしたいと思います。
  327. 吉川久衛

    吉川(久)委員 そういたしますと農林大臣に伺いますが、小規模の土地改良とかあるいは臨時救農施設等については三十町歩未満のものであつて、それがどんなに小さいものでもいいと解してさしつかえないかどうか。
  328. 保利茂

    ○保利国務大臣 今回の計画では、五町歩以上を臨時救農施設として臨時的に取上げて参る計画をいたしております。
  329. 吉川久衛

    吉川(久)委員 次に保温折衷苗しろに対して本年から助成を打切つております。これは大蔵省がもう普及をしたのでこれ以上やる必要はないのだというような御意見のように伺つておりますが、日本の農民は、このわずかな油紙程度のものでも助成のあるとなしとでは非常に大きな結果が出て参りますので、これは私はどうしても継続をしなければならないと思います。ことに今年の凶作に当りましてこの保温折衷苗しろ、北海道においては温冷床苗しろというような施設がとにかくこれだけに凶作を食いとめたという実績にかんがみましたときに、どうしてもこれをやらなければならないということを痛感をいたしているわけでございますが、この点大蔵大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  330. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この点は今度そういうふうに考えましたので、五億円それに予算を計上することにいたしたいと考えております。
  331. 吉川久衛

    吉川(久)委員 次に、保有農家で供出もできないような農家出ございます。裕福な農家はある程度出ができるでございましよう。供出のできる農家はそれを見返りに農手等も利用できるのでございますが、非供出の農家は農手の利用さえもできない。そうかといつて、そういうものは農業生産が非常に衰えますことによつて食糧の確保に重大な影響がございますので、こういうものが、災害、病災いろいろの不幸に出つくわした場合には、何らかこれに対して特別なめんどうを見てやる措置が講じられなければならないと思うのであります。ところが農民以外の人々はその持てるところのほとんどすべての財産を質草にあるいは担保に入れることができるのでございますけれども日本の農民は唯一の財産のかけがえのないその土地が全然担保に入れられないというような情ない状態に置かれております。それなるがゆえに、日本の農民はいつまでたつても原始時代の生活を続けている状況でございますので、この際私どもはせめて政府にでも土地を担保に入られるような制度を確立すべきであるというので、わが党は農地金庫を提唱いたしているのでございますが、この国会には間に合いませんから、そこでただいまありますところの自作農創設維持資金のわくを広げまして、これによつてその恵まれない農民のめんどうを見てやるという措置がとられなければならないと考えております。かねがね私は農林大臣にこの問題についてもお尋ねをしたことがございます。まく研究をしてみましようということでございますが、その後何か具体的な結論が出ましたかどうか。この凶作に際して特に部下を督励して、何か具体的なものをお考えになつておいでになると思いますが、その辺の状況をお聞かせ願いたいのであります。
  332. 保利茂

    ○保利国務大臣 その点は吉川さんの最も御熱心な御主張でございますが、問題はそういう差迫つた農家に何らかの融資の道ができないか。かりに営農資金等の措置を講じても、零細な農家にはなかなかそれがまわらぬ。まわらぬから、手取り早くその持つている農地を担保に金融の道がつけられるようにすることが、実際の事情に適合するのじやないかという御意見はごもつともだと思いますが、それにこたえます今回の措置としましては営農資金、特に激甚地帯につきましては三分五厘の長期低利の資金を、しかも四割の損失補償という制度を加えていたしているわけでございますから、この急場におきまして、私はある程度農家の窮迫に応ずることができるというように思つているわけでございます。なおただいまの農地担保の金融制度の問題につきまては、根本的になかなかむずかしい問題がいろいろあるようでございます。私どもも十分検討を加えまして、なるべく早い時期に、各党でも御調査であろうと存じますが、私の方も研究の成案を早く急ぎたい、こういうように考えております。
  333. 吉川久衛

    吉川(久)委員 各大臣に私は簡単に伺つているのでありますが、非常に御丁重な御答弁でございますので、あてがわれた時間がなくなりました。はなはだ遺憾でございますが、少しかけ足でお尋ねをいたしますから御了承願います。まず補正予算の政府修正によりまして、農業共済保険金が削減されたのでございますが、その減らされました四十五億、あるいはそれ以上必要額が出て来るかもしれませんが、それについて次の国会に補正をするのかどうか。それから立法措置はどうなつているか、適当な用意があると思いますが、この点をお聞かせ願いたいと思います。それから同じく政府修正の内容につきまして、予備費の三十億のうち二十億を救農土木事業に充てるのでありますが、冷害対策費中小規模土地改良一億九千七百万円に七億を追加すること、温水施設二千八百万円に一億円を追加すること、開拓事業六億円に四億円を追加すること、臨時救農施設四億五千万円に八億円を追加すること、残りの十億のうち五億を保温折衷苗しろの補助に充てること、なお残りの五億は、これは自作農維持資金として一億円農薬及び防除器具費として一億五千万円、麦の緊急増産費として五千万円の増加、農業技術研究所冷害実験施設、農業試験場冷害実験施設等の経費五千万円増加、それから冷害対策用種子の確保施設に二億三千五百十九万円に一億五千万円を増額する。これらの内容通り政府は予算に掲げ、これを実施することでなくてはこの冷害対策の確立を期することはできないと思いますが、これについて政府はどういうふうにお考えになつておりますか、お考えのほどを確かめておきたいと思います。  それから厚生省の生活保護費が七億ございます。その内容とそれからどういう基準によつてこれを実施せんとするのか。労働省の失業対策事業費に対して三億ございますが、これは冷害に伴うところの失業者を救済するための費用であると思いますけれども、その点はどうか。厚生、労働、ことに建設省に十億ございますけれども、これらのものを冷害地に全部向けるのかどうか、向ける場合には何を基準に冷害地というものを認めるのであるか、おそらく農林省の作報、すなわち統計調査事務所の報告を基準とされるでございましようけれども、今まではいざ知らず、本年は特にこの統計調査事務所の数字というものには非常な疑念が持たれております。そういう基礎の上に立つて一体どこまでこれを採用いたしているのか、その辺も明らかにしていただきたいと思います。私は農林省のこの基礎に対して、厚生、労働、建設、これらの省の思い思いの措置をとるのではなくて連絡をして、そうして総合的に緊密なる連繋のもとに御措置を願いたいと思いますが、それについてはどういうようになつておりますか、その点を具体的にお答えをお願いいたします。以上をもつて私の質問を終ります。
  334. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今お話のうち農業共済保険四十五億の不足分はどうか。これは預金部資金の融資その他によつて考えること以外にないのであります。保険金の支払いは万遺憾なきを期するつもりであります。予備費の三十億のうち、十億の追加分は、さつき農林大臣から申しましたように、五億円を保温折衷苗しろ、温冷床苗しろの補助に充てる等であります。それから二十億の救農土木事業への追加分は、大体小規模土地改良事業一億九千七百万円に七億円を追加して、八億九千七百万円、開拓事業六億円に四億円を追加して十億円、臨時救農施設四億五千万円に八億円を加えて十二億五千万円、温水溜池二千八百万円に一億円を追加して一億二千八百万円にいたしたいと存じております。ただ予備費のこういう使途についていろいろこまかい話がございましたが、これにつきましては十分検討を遂げておりませんので、慎重に検討の上、大体御趣意に沿つてやりたいと考えております。
  335. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいま冷害対策費の七億の算定の基準並びにその使用方法等についてお尋ねがありましたが、実は冷害地の災害従つてそれが冷害地のいわゆる貧困者との関係、これは実はまだほんとうに、はたしてどの程度冷害地に生活困窮者が出るかということは、的確に算定する基準は十分でありません。しかしこの生活保護は御承知のように義務費でありますから、これは今後いかようなことがありましても国家予算として出さなくてはなりません。しかし一応補正予算にきめなくちやいけませんので、大体こういう基準は農林省等の統計を基礎にしてつくつておるのであります。それは大体冷害地における一応作柄の指数でありますが、これが四〇%以下。しかもそれが、いわゆる農家といいましても他に兼業等もございますから専業であつて、あるいは専業に準ずる第一兼業のもの、あるいはまたこれは東北にいたしましても北海道にいたしましても、あるいはその他の府県にいたしましても、最低の生活を維持するに足る反別というものは、おのおの地域によつてつておりますから、一応これを算定いたしまして、この三者を総合的に算定いたしまして、一応四万六千九百三十数世帯という数字が出ます。これを大体五万戸といたしまして、これに従来の生活保護の基準の数字をかけまして、一応七億と算定いたしたのであります。しかもこれは足りませんときは予備費等をもつて支弁いたします。なお今後どういう方法によつてこれを出すかということでありますが、これはただいま申し上げましたように、現実に出たものによつて生活保護をいたすのでありますから、一応予算をとつて、現実に即して生活保護法の適用をいたすわけであります。
  336. 倉石忠雄

    倉石委員長 厚生大臣は、ついでにこの間保留されました御答弁をお願いいたします。
  337. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 それでは先般庄司委員から、冷害地における、ことに山間僻地における結核患者に対する国庫負担による治療費の支弁、この問題について御質問がございましたから御答弁を申し上げますが、この結核患者に対する、ことに生活の困窮者等に対する治療費につきましては、社会保険確保、ことに結核予防法等による公費負担制度によつて支弁をいたしております。ことにただいまお尋ねの冷災害地におきましては、今後相互生活困窮者も出て参ることであります。結局それらに対して社会保険あるいはその他結核予防法等によつて負担あるいは支弁あるいは措置できるものもありますけれども、問題は生活保護による医療扶助等において冷害地あるいは災害地等の実情に即して、いろいろな公費負担、国庫負担等の点をできるだけ網を広くかけまして、それらの問題に対して善処したいと実は考えておる次第でございます。この点補足して御答弁申し上げておきます。
  338. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。われわれの方といたしましてただいまお話のように三億円の冷害等に伴う失業対策費を組んでおりますけれども、これは元来救農土木事業費あるいは公共事業費等によつて冷害対策が講ぜられ、それによつてもなお及ばざるものについての措置でございますから、一応算定の基礎もございまするけれども、ただいま厚生大臣の言われましたと同様な趣旨におきましてわれわれの方は措置をいたして参りたい。やはり農林当局とも十分連絡をとつてつて参りたい、こう考えております。
  339. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。建設省所管の救農土木事業が十億円、これは五億円を土木、五億円を災害復旧に充てるつもりであります。地域については農林省と十分連絡をとり、かつこの事業の性質にかんがみまして、不熟練の労務者もなるべくたくさん使えるような方法でやりたいと考えております。
  340. 保利茂

    ○保利国務大臣 各関係省とは十分連絡をとるように、農林省内に冷害対策班というものを官房に特設しまして、特に各省との連絡を緊密にしてこの予算ができるだけ効果的に、効率を上げるように注意をいたして参る考えでございます。
  341. 倉石忠雄

  342. 稲富稜人

    ○稲富委員 まず政府にお尋ねするにあたりまして、私は、このたびの水害並びに冷害に対しまする政府の認識が非常に足らないではないか、まずかように考える次第であります。なぜならば政府は、もちろんこのたび災害のためと言いながら臨時国会は開かれたのでございますけれども、それほど災害が重大なるものであるということを考えられるならば、総理大臣は、みずから国会劈頭に、しかも全国の最も苦しみの中にぼう然自失の状態にあります罹災者に対して、その不安から救い、ほんとうに罹災者に希望を与えるようなことをするとなぜ明言しなかつたか。これを総理大臣が明言しなかつたということは、現在、口には災害対策をやるとは言いましても、その災害の認識が足らないことであり、ほんとうに国民が困つているという実情を知られない結果ではないかと思うのであります。かような結果が、あるいはこのたびの予算の編成においてもおのずからまた現われて来ておると思うのであります。さらにまた今日、西日本風水害に対しまする特別立法の処置が行われました後三箇月を経過いたします。この三箇月後の今日まで、政府が当然決定すべきところの政令の地域をまだ決定しない、公布しないということは、すなわち災害に対する政府の熱意が非常に足らざる証拠であると考える次第であります。かような見地から、このたびの予算編成の内容が、災害の実情に即せざる予算編成をやられておる、かような点でまず大蔵大臣にお尋ねをしたいと存ずる次第でございます。  まず大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思いますことは、このたびの災害に対しまする国庫負担の額を、これは先般しばしば質問応答があつたのでありますが、一千五百六十五億円ということによつて仕切られたかという点であるのであります。もちろんこれに対しましては、しばしば大蔵大臣から答弁を受けたのでございますが、私はその答弁をまだ今日承服できないのであります。なぜならばすでに十月五日に水害地緊急対策特別委員会におきましても政府からは、この災害に対しましては二千六百五十九億の災害がある。これをさらに査定するといたしましても、千七百三十一億という見込みはあるということを言われております。さらにこれに文教施設、厚生施設等を加えますと千九百八億円はあるだろうということを声明されておるのであります。私がかようなことを大蔵大臣にお聞きしまするゆえんのものは、この予算編成にあたりまして、大蔵大臣は一兆円以内において予算補正をやりたいということをすでに前に声明されておつた。それに非常に拘泥された結果が、かような基礎数字が出て来たのではなかろうかという疑いさえも私は持つのであります。なぜならば大蔵大臣が渡米をされまする九月の上旬でございましたか、その当時はまだ十三号台風も起つていない、このたびの冷害もまだ表面化していないときであります。その九月上旬の現在の状態と非常に違つた状態において、大蔵大臣は今年度の補正予算に対しましては、一兆以内で予算編成をしたいということを言われて渡米されたのであります。そ  の渡米後にすなわち十三号台風が起き、冷害が起つたのであります。しかるにもかかわらず、大蔵大臣は依然として災害前の一兆円というその数字を堅持しようという考え方が——わざわざこのたびの災害に対しまして査定見込みが減少したとおつしやいますけれども、査定見込みが減少したという口実を設けて、千五百六十五億円という基礎数字から出られたものである、かように私は考える次第でありまして、私は、大蔵大臣を疑いたくはないけれども、あまりにも予算技術にとらわれた結果がかようなことになつたのではないかと考える次第であります。これに対しまして大蔵大臣のほんとうのお気持を率直に申していただきたいと思う次第であります。
  343. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 稲富委員と同じく私も災害地の一人でありまして、終始災害のために御奮闘になつたことに対して、この機会に感謝の意を表しておきまする  ただこの機会に私がはつきり申し上げておきたいことは、私は一兆円というわくに何らとらわれているのではありません。このことははつきりと申し上げておきます。そういう数字にとらわれて、こういうことをやるのではございません。ただ日本財源の点からそれ以上措置し得ないということについてしばしば申し上げましたから、この財源の点についての問題はよく御了解になつたことと思うのであります。ただ、今お話のごとくにあのときは約千八百億円国庫の負担分があるといつていたのが、なぜ今日そうなつたか。その数字は私はしばしば申し上げましたので、稲富委員も御承知のごとくに、私ども報告を受けておりますのが二千六百十九億円、ラウンド・ナンバーで二千六百二十億円である。このことは今もお話になつ通りであります。その後いろいろ私どもの方で査定をする、その査定は過去三箇年の実際によつたものを一つの標準とし、また業種別にいろいろ査定をいたしました、工種別と言つた方がいいかもしれませんが、工種別に査定いたしました結果が千五百六十五億円となつております。この千五百六十五億以外になお百五十億別にあるのであります。これを加えますと、さきに査定しましたときは千五百六十五億に相当する分が千六百四十九億になつている。それでここで百億違うのでありますが、それがつまり百五十億の文教、厚生費等の分を含んで千七百九十九億すなわち千八百億と申し上げたのであります。ところがその後文教、厚生等の分を調べましたところ、文教、厚生関係の分九十五億につきまして大蔵省立会いの上調査いたしましたら、九十五億が四十億円であるという査定の結果、結論に達したのであります。私はあえてこれは水増しがあつたとは申しません。またそれに便乗したとは申しませんが、これは両方立ち会つて調べた結果四十億で済んだのでありまして、その四十億円は別途予算に入つております。そういう関係で公共事業に対するものが千五百六十五億円になるのでありまして、百五十億今申し上げた通り削りましたから違つておりますが、予算措置としては別途とられているのでありますから、その点は御了承願いたいと思うのであります。何らこれには作為を加え、人為的な処置をとつたことは毛頭ございません。このことは、はつきり申し上げておきます。  次に申し上げたいのは、政令の問題でありまして、政令は抽象的なものは近くできるでございましようが、稲富委員も御承知のごとくに、二十八年度の税収の査定に基いたものでございますから、抽象的な今の政令は数日中にできると思いますが、それらの実際問題となりますと、二十八年度の標準税収額等を決定する等の問題もあつて、これはなお少しひまどるのではないかと思つております。もつと長くひまどるようなことは許しませんが、そういうようになるかと思つております。  それから地域の問題でありますが、これも最初は稲富委員も御承知のように私どもの話としては、この災害を受けた全地域に及ぶものとして一応査定をしたと申し上げたのでありますが、ところがいろいろな標準を災害対策委員会等でおきめを願つた結果、大体その府県の地域内の八割五分にあの適用を受けることになつておりますが、一割五分ほどが適用から漏れることになつたのでございます。漏れると言つては語弊がありますが、適用以外になつたのであります、古い率が適用される。こういうことになつたので、公共事業については今申した通り千五百六十五億ということに相なつておる次第でありまして、この間繰返し申しますが、何らの作為も用いてはおりません。
  344. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま大蔵大臣はもちろん一兆億にとらわれない。しかしながら財源の都合上やむを得ない、こういうような言葉のように私は承つたのでございますが、私申し上げたいと思いますのは、最初に一兆億という財源関係を考えて、これによつて災害予算を編成されるということに、私は災害予算に対する非常な矛盾があると思うのであります。災害予算でありますならば、災害を復旧し、復興するということにまず予算編成の基礎を置いてなされなければならぬと思う。災害予算としては不適当だ、かように私が申し上げるゆえんのものはそこでありまして、大蔵大臣は一兆億にはこだわらない、かようにおつしやいますけれども、やはり国家財政の一兆億という限度を置いてそこに予算編成をされた。これが災害予算として適当でないゆえんでありまして、私と大蔵大臣と予算編成の根本観念において違いがあるのであります。この点大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  345. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 その点については先ほども申しましたごとく、今度の補正予算を考える場合には、災害対策と奄美大島関係だけでありましたので、災害対策費五百億円をいかにして出すかということを考えたのでありますが、御承知のごとくにまた全体の二十八年度補正予算として考えまするときには、たとえば米の超過供出による分、これははつきりいたしません、どういうふうになりますか、四百円をかりに千八百万石と見れば七十二億円ほどいるということになります。また〇・五の期末のものを出すということになりますれば、これもたとえば地方で半額負担するといたしましても八十八億円を要するというような問題もございます。また地方のすでに受取つておる税収中、ああいうぐあいに災害が起りまして、もとしてやらなければならぬものがございます。これもやはり三十億円くらい見込まなければならぬかと思います。そのほかにも郵政その他の各般の措置でまた十億ぐらいのものはいるのではないかと思われますので、私はこういう点もあわせ考えて財源の問題を考えたのであります。この数字等を加えてくだされば何も一兆円にこだわつておるものではないことはよくおわかりであろうと思います。そういう点から考えまして、これはどうしても財源のある点、その財源としてもいろいろやりました結果が、昨日どこかで非常に御不満を受けたような、住宅に対する出資金を現在使われておらぬから、また年度内に使われる見込みがないから、来年度に計画に支障のないようにはするが、これもひとつ割愛して行こうということ等でやつておるくらいで、実は財源の点が主たることであり、その点から最大限を尽して災害予算に振向けたというのが、これは私の偽らざる実情であります。
  346. 稲富稜人

    ○稲富委員 何ゆえに一兆億以内で予算を組まなければいけないか、大蔵大臣はそれにとらわれていない、こうおつしやいますけれども、どうも大蔵大臣がその一兆億にとらわれていらつしやる、というのはただいま申しましたような一つの理由と、さらに大蔵大臣もすでに御承知あることと思うのでありますが、これは外部の非常な圧力が大蔵大臣に加わつたのではないかということを私は考える。なぜならばこれは十月二十日の新聞であつたと思いますが、経済同友会が大蔵大臣に対して公共事業費の使途については非常にむだが多い。国民の血税をむだに使わないよう支出改善を行えば、一兆予算のわく内で十分に災害復旧は可能である。こういうことを経済同友会が大蔵大臣に申し出た、大蔵大臣に指示した。こういうような新聞記事があるのでありまして、これは大蔵大臣は一兆億以上越さなければできない、かような考えがあつても、こういうような圧力によつて、大臣は一兆億内に区切られたのではなかろうかということをわれわれは憂慮する。もしこういうことであるならば、これは非常に誤りであると思う。少くともこの同友会であるとか、あるいはその他の経済団体が災害の実情を知らずして、ただインフレに名をかつてこれを政治的に抑圧しようというような考え方は、非常に間違つた考え方だと私は思う。品を開けばこの経済同友会その他の経済団体は、労働組合が政治に介入することを攻撃するのであります。しかるに彼らは労働組合が政治に介入することを自分が攻撃しながらも、自分みずからはこういう団体が政治に介入して大蔵大臣の予算編成にまでくちばしを入れるがごときは、私は代議政治の本質に反する行為であると思う。おそらく政府は経済同友会その他のかような経済団体の抑圧を受けたものではないだろうと思いますけれども、その経済同友会その他の経済団体が主張しておるような結果になつたということにおいて、私は大蔵大臣の今の説明に対して疑わざるを得ない結果が生じたものであるということを申し上げたいと思う。どうかこれに対する大蔵大臣の本心を述べていただきたいと思います。
  347. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は予算編成にあたつて決して財界の方面とか、あるいは今お話の経済同友会等の考え方に動かされたものではありません。ただ、たまたま私が考えておることについて向うがそういう意見を述べたにとどまるのであります。またこれらが何ら予算編成についてくちばしを入れるべき立場にもおらぬ。またさようなくちばしを許すべきものでもございません。予算編成は政府の権限でもつて政府が自己の責任でもつてやるべきことは当然でありまして、従つてこの予算編成権についてかれこれ外部の、しかも財界の人の意見に動かされたことはございません。ただ私どもがそれも一つの輿論の現われであろうと見る私の判断に加えることはやり得ますけれども、それによつて動かされたことは全然ございません。このことをはつきり申し上げておきます。
  348. 稲富稜人

    ○稲富委員 日経連その他経済同友会のかような主張が輿論の一端であるということで、かようなものが参考になつたということを大蔵大臣は言われるのでございますが、しからば一面一兆億ぐらいなわく内における予算編成の状態では、ほんとうに復旧に困つておるというこの罹災者、国民の輿論にもまた耳を傾けるという熱意が政府になければならないと思うのであります。先刻申し上げましたように、大蔵大臣は第十三号台風の起る前、冷害の起る前に一兆億を堅持するということを言明されてアメリカに行かれた。そうしてアメリカ行つてつて来られてから、この災害が起つてからでもそれを堅持されるということは、災害の実情に即した考え方ではないのではないかと思う。この点を私が大蔵大臣に聞くときに、ほんとうにこの災害の実情に即せずして、ほんとうの被害者、国民の輿論を聞く前に、こういうような経済団体の輿論、圧力というものを非常に尊重された結果が、一兆億というものに縛られたのではないか。私はかようにどうしても考えざるを得ないと思う。おそらくこれは私ばかりではないだろうと思う。もしもこういうことを全国の罹災者が知りますならば、私は罹災者の思想に及ぼす影響も非常に大きいであろうと思うのであります。この経済団体がかような主張をするということは、私は非常に間違いであると思う。間違いであるということを政府が考えられるならば、私はほんとうに現状に即した予算編成に当られることが必要であると思うのでありまして、これが思想に及ぼす影響等も大きいがゆえに、なおさら私はこの問題を大きく考えざるを得ないと思うのであります。どうかかような意味から、このたびの予算編成の根拠に対しましても、もう一応お考えを願いたい。しかも今日において千五百六十五億ということを基礎数字としてやられるとするならば、おそらくこの十三号台風その他の災害の状態であるならば、当然水増しが行われて来ると思うのでありますが、こういうことがあればいさぎよくさらに予算を組まれるという熱意があるか、誠意があるかということを、あらためてひとつ大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのであります。
  349. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 国費でもつて支弁すべき査定額がいかにあるべきかということについては、一切の情実を超越して厳正に見て下すべきであると考えております。従つてただいまの数字は私が一応申し上げます通り、十月五日現在においてさような査定をしておるのでありますが、今後査定の進行に伴いまして多少の増も減もある、数字に移動を生ずることがあるということは繰返し申し上げておる通りでございます。何も千五百六十五億と固着した決定的な数字ではございません。一応それに基いてやつておる、しかし査定はあくまで厳正に、あくまで一切の情実にとらわれず出すべきものであると確信し、これに基いてやるのであります。なお各種の経済団体等の意向に動かされてはならぬ、その通りでございます。またさようなことがないことは、稻富さんはよく知つておる間柄でございますから、私は誓つて申し上げます。さような小笠原三九郎ではございません。そういうことははつきりと申し上げておきます。私は災害地に行つて親しく潮水まで浴びて視察して参つておるので、災害地の悲惨な状況には、私も涙をのんだのであります。しかしながらやはり国としては一歩を誤つてこれをインフレに持つて行くときには、災害予算をかりにもらつても、その災害予算執行ができなくなるということが起つて来る。かりに諸物価等が二割上れば二割増額したものをもらつても、五割上れば五割増加したものをもらつても行えなくなる、やはりこのときは涙をのんで冷静にものを判断しなければならぬというので、私は自分が冷静に判断し、日本の財政の許す限度において、予算措置をとつた次第であります。
  350. 稲富稜人

    ○稲富委員 経済団体の抑圧に対しては、大蔵大臣大いにみえを切られましたので、今後大蔵大臣もそういうことがないということでありますので、将来の大蔵大臣を見守りたいと思つておりますが、さらにただいまお話がありましたごとく、災害復旧費を支出するということがインフレを助長する、こういうことをしばしばおつしやつておるのであります。私たちは今日のこの災害を十分に復旧をすることができなかつたならば、将来来るところの人災というものをどう考えるか、これは国家として非常に重大な問題として考えなければならないと思うのでございます。私たちはあの呆然自失の間における罹災者に対しまして、一日も早くこれを救い、一日も早くこれを復旧いたしまして、次の生産に挺身せしめることが最も必要であると思うのでありまして、かりに金を支出することがインフレだという理由のもとにこれを押しつけまして、この復興を遅らすということは、これまた非常に国家的な損失であるということを私たちは忘れてはいけないと思うのであります。しかも今日すでに農村におきましては、来年の植付を控えておるのでありまして、ほんとうに罹災者というものは路頭に迷つておるのであります。たとえば先刻申し上げましたように、あるいは政令もきまらない、ほんとに政府からこれに対する補助が来るだろうか、実際自分たちの自力ではなせないというような、かような状態の中に一日も早く政府が希望を持たせる、希望を持たせるということは臨時国会でも開いて、そうして早く処置をとるべきだつたと思いますが、これも遅れておるのでありまして、かような見地から、ただインフレ抑圧で、インフレのために費用を出せないんだ、出せないんだというふうなことのみを政府が主張されることは、ますます羅災者をして失望のどん底にけ落すゆえんだ、かように考えますので、インフレはわれわれは防止しなければならないが、災害に対しては十分なる政府としての抜本的なる予算を組んでやるのだという熱意を示されることが、私は最も必要であると思うのであります。かような意味からどうかインフレに名をかりて引締めないように、かような考え方をもつて災害対策に当つていただくことを、大蔵大臣にひとつ十分なる決意を承りたいと思うのであります。
  351. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私はインフレに名をかりるがごとき考えは毛頭持つておりません。但し日本が今インフレの危機にあるということは、過日来私は申したからよく御了解が願えると思うのであります。従いまして財源のない処置をとるということは、インフレになるからやれない、また資金をできるだけ効率的に使い、有効に使う、また現在、さつき申した通り百億の災害予備費のうち四十数億が直接それに向うのであります、そういうことが私は現在の日本状況で、また災害復旧の過去の進捗状況等から見て、一番穏当なことではあるまいか、こう考えておるのであります。しかしなお実際上そういうことを早くやらなければ、再び災害が起つて来るのではないかというような所については、また工事の進捗状況等につきましては、これは特に実情を調査しまして、これに対する適当な処置をとろう、これについて予算化することは、今の財源関係でできませんでしたが、また預金部資金が現在そうございませんので、確約はできませんが、できるだけ誠意をもつて処理するということで今の百五十七億ですか、いわゆる三という標準に対する分について、その資金の捻出方を考えておるような次第でございます。ただ預金全部資金は、昨日も詳しく申し上げて御了承を願つたと思うのでありますが、昨今きわめてきゆくつでありまして、今年の災害等で百八億円を直接向けておりますが、地方財政等がいろいろ苦労しておりますので、預金部で行かぬようなものについては、またほかの金融上の措置または各銀行等からの起債等についてのあつせん、便宜等についても骨を折ろうと考えておる次第でございまして、私ども災害対策には——特に私の生れた所は今なお朝夕潮が満ちております。そういうぐあいでございまして、従つてこれは可としても早くやらなければならぬという熱意には燃えております。これは燃えておりまするけれども、しかしそれが一歩誤つてインフレに持つて行くことになつては相ならぬので、この点は涙をのんで冷静に処理する考えでおるのであります。
  352. 稲富稜人

    ○稲富委員 私大蔵大臣に特に申し上げたいと思いますのは、あなたは口を開けばいつも財源がないとおつしやるのでございますが、これはどうも国民として納得し得ないのであります。全国の多くの罹災者、この困つた人たちは、財源はなくても保安庁費があるではないか、こういうことをすぐ言うのでありまして、当然また考えることだと私は思うのであります。今日この国家の大きな災難に対しまして、内部的でもそういうような転換ができると思うのでありまして、こういうものを、目の前にごちそうをぶら下げておいて、そうしてごちそうがないのだと言いましても、これは納得できないのでありまして、ほんとうにあなた方が保安庁費でもお削りになつて、これでも財源がないのだと言うのならば、これは手をこまねいてがまんするかもしれないと思いますが、そういうものをそこに置いておいて、ただ財源がないのだから、方法がないのだの一点張りでは、国民は納得できないと思うのであります。かような見地から財源がないとおつしやることには、どうも納得し得ないというゆえんのものも、すなわちここにあるわけでありまして、またそういうような財源がないからといつてお断りになるということは、今日あるいは先刻からもいろいろ問題になつておりますが、将来の保安庁費の増額等も云々されるときに、一方の災害費は、財源がないからということは、これは政府のためにも将来おもしろくない結果になるということを、十分お考え願つて、予算の編成には当られなければならないと思うのであります。どうか財源は工面して、なければ保安庁からでも持つて来る。そのくらいの熱意がないいことには、私は今日の罹災者は納得しないし、国民は承服はできないと思うのであります。私は大蔵大臣の財源がないという言葉には納得しかねるのでありまして、何とかその辺の工面をなす御意思はないのか、この点ひとつ特に承りたいと思うのであります。
  353. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これはどうも稲富さんのお言葉でありますが、私どもは保安庁費はむだなものと考えておるのではありません。これは日本の国内の治安その他の点から見ても、ぜひ必要なものだと考えておるのでございまして、つまりこちらの手をもいで、そちらへやればよいじやないかという考え方には私は御賛成ができません。従いまして保安庁費はむだなものではないかというのは、これはお立場上は、そうおつしやるのもしかたがないかもしれませんが、私どもはさように考えておりませんで、その財源を保安庁費その他に求めることは、これは御回意いたしかねます。
  354. 稲富稜人

    ○稲富委員 私申し上げておりますのは、もちろん立場も考え方も違いますが、たといあなた方の立場から保安庁費は削らぬとおつしやいましても、国民はそれでは納得しないので、しからば別に財源を求めてでも救おう、これだけの熱意がなければ、私はあなた方としてのほんとうの政治は行えない、かような意味をお考え願いたい、かように考えるわけであります。どうかそういう点におきましても、予算の財源の支出に対しては、さらに一歩進んで十分考えられる必要があるのだということを、特に私は申し上げたいと存ずる次第であります。さらにまた水害地対策特別委員会が過般、これは衆参両院によつて決定をいたしまして、それは大体の予算編成に対しまする基礎を千八百億円に見てもらいたいという、これは従来の政府の声明等から、そういうことを私たちは当然だとして認めたのであります。さらにまたその三割だということに対しまして、最近保守三党の間に協議ができたということを聞きまして、その結果が今度は予算の修正になつたのだと思うのでありますが、この内容につきましても、私たちはどうも納得のいかぬ点があるのであります。先刻から改進党の吉川委員の御質問を聞いておりましても、三百億の残りが百六十九億だとおつしやいます。大蔵大臣は百五十七億だ、そういうことをおつしやつているのでありますが、すでにその点にも数字の食い違いがあるのでありまして、一体どういうような話が改進党と分自党と自由党の間にできたのか、われわれはわかりませんが、ここにお尋ねいたしたいと思いますことは、一旦そういうような話ができて、少くともその基礎数字は千五百六十五億といたしましても、三割方できたといたしますならば、なぜそれを予算編成の中にお組みにならなかつたか。依然として三百億という数字を予算面には現わしております。そうしてほかは何だか、これはちよつと耳ざわりの悪い言葉でありますけれども、これが予算面に現われないで、一つのやみのような金で出て行くという感じさえわれわれはするのでありまして、何がために三百億の予算に現わさなかつたか。こういう点を私は特に大蔵大臣に承りたいと思います。
  355. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私どもは、三党協定がああいう線でできたので、従つてこれに対する措置をとることが——その後研究の結果とにかく災害対策費等は、冷害対策費も同様でありますが、一日も早く国会を通して、これらの人々の手に渡るようにという考え方より、これに政府は同意をした次第でありまして、従つてそれによつて予算措置をとる。またそういう別個のことは考えられなかつたのであります。また予算措置をとり得ないことについては、これはさつき申した通り、私どもが今の財源関係上困難であるということは、さつき申しましたから、御了承願つていることと存ずるのであります。
  356. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうすると予算措置はできないが、百五十七億は支出するという、これは先日からの御答弁でございます。そうしますとこれに対しまして、預金部資金の金が足らないが貯蓄奨励をもつて当然入るだろう、こういう見込みもあるように先日承つたのでありますが、これは非常に漠然たるものであつて、ほんとうに私たちはこれを安心して期待することはできないのじやないか。さらにまた一つには、将来の事業の進捗によつてこれを支出する。これもまた非常に不安があると思うのであります。進捗に対する見方というものは、それはそれだけ出す必要がないのだということになつて来る。結局そういうことになつて来るのでありまして、ことに予算面がない、こういうような考え方から、将来の進捗面を、しかもこれが官僚の手によつてなされるとするならば、これまた実に危険千万な話でありまして、私はこういうようなあいまいな金の支出に対して、実にこれが三党の皆さん方の御納得のもとにできたということに対し、意外に思うくらいでありまして、私たち頭の悪いせいかもわかりませんが、その点私たちにはわからないのであります。いかにもこれはまゆつばものであつて、そういうことをして一時をしのいでおつたつて、結局出さぬでもいいのじやないかというような、かような考え方があるのじやなかろうか。あまりひねくれた考え方かもわかりませんが、しばしば査定等によつてひどい目にあつている罹災者は、そういうような考え方をすると思うのであります。これに対して大蔵大臣はどうお考えになりますか。ほんとうに私の考えておりますのが危惧であるのか。それとも大蔵大臣のおつしやつているように、十分罹災者が期待の置けますような、国民の期待し得るような結果を生み出すことができるか。この点を大蔵大臣の責任ある御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  357. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先ほども申しました通り百五十七億円は、これは最高限度であります。また百五十七億円を預金部資金、資金運用部資金で弁じろと申されましても、現在の資金運用部資金にはそういうものはございません。従つてそういう計画は立ちませんので、そこで私どもは、今貯蓄増強等をいろいろやつて、たとえば懸賞つきで少しやろうかということも考えておりますが、そうやつて資金運用部の資金の充実に努める。大体ことしの上半期の方は、貯蓄の成績が非常に悪かつたのでありますが、これを下期でとり返すために極力先月からやつているのであります。そういうこと等でふえて行けば、この資金がふえるということで申した訳合いなんであります。従つてどもが個々の実情を調査いたしまして、その調査の結果、ぜひともこれは必要だというものについては、もちろん工事の進捗等に妨げがあつてはいけませんので、これを出すことにはなりますが、私たちは一応全部が三割工事が竣工するということはあるまいと考えております。従いましてさつき申した通り、昨年でも非常に成績がよかつたのですが、二割三分何厘しか竣工してないという状況から見ましても、私はさようなことはない。なお官僚の手にまかせればどうなるかわからぬというような稻富さんのお話がありましたが、官僚諸君も国民の一員として、誠意をもつてやることは当然でございまして、私は官僚諸君を信用いたします。
  358. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は何がゆえにこういう心配をするかと申しますと、これと前後いたしまして、これは与党であります自由党の総務会の決定だと新聞は報じているのでありますが、査定にあたつてはこれを再査定しよう、しかも再査定に際しては、ある程度緊縮するような、かような新聞報道もありますので、おそらく私は、天下の公党である自由党の総務会がそういうことを御決定にはならないであろうと思いますけれども新聞が報道いたしておりますので、これは重ねて私は不安に思うわけです。またこういう抑圧にあつて、次の査定でまた非常に縮められるのじやないか。結局百五十七億というものは葬られるのじやなかろうか。こういうようなわれわれは考え方をするのでございますので、こういうことを私は特にお尋ねしたようなわけであります。どうかこれに対して、そういうことのないように十分ひとつ督励をしていただきたいと思うのであります。なお時間も来ておりますので、次の問題は要約いたしますが、さらに今度の予算の修正が、三党の申合せを非常に尊重して予算の修正がなつたというただいまの大蔵大臣のお言葉でございますが、その三党の申合せを尊重して予算の修正をやられたということであるならば、次のことに対してはどういうお考えを持つていらつしやるかお尋ねしたい。すなわち水害地の緊急対策特別委員会で申合せいたしました事項は、御承知の通り本年度においては三割である、来年度二十九年度の予算においては五割を支出する、こういうことを決定いたされているのであります。おそらくこのだび三割を大蔵大臣がのまれたということは、こういうような申合せも一括して御承認になつていると思うのでありますが、この二十九年度に五割をみるというこの二十九年度予算に対する考えはいかがであるかということを承りたいと思います。
  359. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 国庫で支弁する国庫負担額といいましようか、国庫支弁額の割合を三、五、二でやるということは基準でございます。来年度の予算措置につきましては、当局はもちろん極力これに対して努力すべきでありますが、いろいろなほかの財政上の問題もありますので、これを今日からお約束することはできませんけれども、この基準を尊重して、また皆様の御意向のあるところを尊重して予算を編成することは、これは予算編成当局の当然の責任であります。けれども財政上の他の問題もございますので、ここではつきりとそれでは五かけたものを、幾ら幾らのものを来年度予算に計上するやというお尋ねに対しまして、しかりとお答えすることはお許しを願いたいと思います。
  360. 稲富稜人

    ○稲富委員 さらに、今日すでに支出となつておりますつなぎ資金の問題、このつなぎ資金を本年度の支出額からとられるということは、非常に事業進捗上支障を来しますので、これも来年度から支払いをするということになつているのでありますが、どれに対しては、大蔵大臣はいかなる考えをお持ちでありましようか。
  361. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 つなぎ資金の問題は、実は今出ておるのが大体百十何億かと考えますが、その分につきましては、これは補助金が行きまするときに差引くということで、言いかえますると、これがいわゆるつなぎで、補助金までのつなぎでありまするから、それをやるということで、資金運用部の資金計画が立つておるのであります。しかしながらその実情に応じて、あるいは別途の考えをしなければならぬことが起るかもわかりませんが、建前はあくまでつなぎ資金の性質上そうならなければならず、まだ資金運用部の資金計画は全部つなぎ資金は回収するということで立ててあります。
  362. 稲富稜人

    ○稲富委員 つなぎ資金の問題は、あとで別途に考える方法もあるというので、これは追究しません。さらにつなぎ資金の利子の問題をお尋ねしたいと思うのでありますが、元来つなぎ資金が今日までたくさん出されたということは、これは政府が早く臨時国会を開かなくして、今日まで予算編成ができなかつたというところがつなぎ資金が大きくなつたことであり、また今日まで返さなかつたというような実情にあると思うのでありまして、この責任はひとえに政府にあると言つても過言ではないと私は思うのであります。かような見地から、私はつなぎ資金に対する利子というものは、当然国家が補給すべきものである。このためには政府はつなぎ資金の利子補給をやるところの特別立法、かような考えも当然なさなければいけないと思うのでありまするが、これに対する政府のお考え方を承りたい。
  363. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは三党で申合せた協定にも、二月までに措置するということになつておりまして、今度の予算には予算等のことを計上いたしてありませんが、それまでにはよく検討いたしまして、大体その線に沿つてやりたい、かように考えております。
  364. 稲富稜人

    ○稲富委員 次に農林大臣にお尋ねいたします。農林大臣は、このたびの災害によりまする農地の災害復旧に対して、いかなる方針を持つていらつしやるか。すでに植付は次々にまわつて来るのでありまして、これを等閑に付しておるということは次の生産に影響すると思うのであります。この復旧に対していかなる御方針を持つていらつしやるか、まず農林大臣のこれに対する考え方を承りたいと思います。
  365. 保利茂

    ○保利国務大臣 農地の復旧は、それが来年度の植付には何とか間に合うように応急的にでもやらなければならぬ、そういうような方針でひとつやりたいと思つております。
  366. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと私の言葉の中に誤解の点があるようでありますから……。実は三党協定というのは、今度の百五十七億の融資の分に対して二月云々ということであつたそうであります。従いましてつなぎ融資の分についての問題ではなかつたのでありまして、つなぎ融資は資金運用部資金の関係でありますから、利子補給その他の問題ではないので、国が一方で補給するという建前はとれません。従つてこの利息は申し受ける、こういうことでございます。
  367. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの百八億出ておりまするつなぎ融資の問題に対しましては、三党協定の中にも融資の問題が出ておつたということをわれわれは聞くのでありますが、今の大蔵大臣の話を聞きますると、ないような話であります。ないとするならば、これは私の聞き違いでありましようから、また検討しなければいけませんが、要するにただいま申し上げましたように、このつなぎ資金が今日まで遅れたということは、先刻申し上げたように政府責任であるのであります。どうかこれに対しては政府が特別な処置をとつて、これに対し補給するということは当然じやないか、かような見地から、たとい三派の協定になかつたとしましても、別個にお考えになる意思はないかということを重ねて承りたいと思う。
  368. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これはどうもつなぎ融資の性質上そう見られないように存じます。
  369. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから農林大臣のただいまの御答弁によりますと、できるだけこの次の植付に間に合わせるようにする。こういうようなお考えのようであります。これに対して国家が当然補助すべきこの金の予算措置に対してはいかなる考えを持つていらつしやるか。農地復旧に対する国庫補助の予算措置に対しては、来年度の植付に間に合うような予算処置をどう考えておられるかということについて承りたい。
  370. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは稲富さん御承知のように、ほつておけといつても農家はほつとくものではございませんで、ただ計画としては、たとえば三、五、二なら三、五、二の復旧計画を立てましても、大部分の農地はこれは零細な農家で、たとえ一坪の農地といえども復旧されるだけのものは復旧されることは、私がもう申し上げるまでもないことであります。しかしとにかく、大きな岩石が埋め尽しておるというようなところは、なかなかこれは困難だろうと思いますけれども、そうでないところは、応急的にでも、また農業施設等の基本的なものが復旧されなくても、植えつけることはとにかく応急的に値付ができるような方針で行かなければならぬ。これは予算はここに出ておる通りでございますから、これ以上の予算をどうこういうことはむろんできません。
  371. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま農林大臣のおつしやいますように、農民は生産意欲に燃えておりまして、もちろんできるだけ植えつけるのであります。ところがその結果はこういうことが現われておるのであります。査定にあたりまして、これは農林省と大蔵省の両方の査定でありますが、従来荒地を農民が少くとも生産意欲に燃えまして植付をしておりますと、査定官は、植えつけてある所はもうすでにこれは荒地でないんだ、査定に通らないのだ、こういうような事実がたくさんあるのであります。それでかえつて植付をした農民は、これは植付をしなければよかつたんだ、こういうようなことさえも言つておるのであります。それで私たちがこの査定に対しましてはよほどお考えにならないといけないと思うのは、先刻からもお話がありましたように、査定は実情に即して十分やるということを大蔵大臣はよく言われております。ところがその実情に即するのがどういう実情かというと、十分植付のできない所を農民がみずからの手によつて復旧した、そして実らないような所でも植えてみようと植えておる。そうするとこれを査定に来た査定官は、もう植付ができておる所はこれは荒廃地じやないじやないか、こういうことで査定外に置いてしまう。こういうようなことでありまして、実情に即するということにそういうことが実情に即したのであるか。われわれの考えておる実情に即するというのと、政府の言われる実情に即するというのは非常に意味が違うのであります。そういう点から私はただいま申し上げますようなお尋ねをするのでございまして、ほんとうに農民が生産意欲に燃えてやつておる植付等に対しましては、その農民の生産意欲をかえつて生かしてやるようなすなわち査定であり、あるいは将来の補助に対しましても生かしてやるような、こういう対策をとるということが必要である、かように考えるわけでございます。これに対してひとつ農林大臣のお考えを承りたいと思うのであります。
  372. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほど井手さんにもお答えいたしましたけれども、まだ査定がないからほつておくというようなところと、あるいはそうでなしに、ちようど九州の水害のときはたまたま植付の最盛期であり、ずいぶん無理をして、善導寺町でありますか、あの地帯はだれが見てもこれはとてもものになるとは考えられなくても、やはり農家はほんとうにそれこそ応急の地ならしをして植付をする、それは復旧しなければならぬ。そういうふうにほんとうに血と汗を流して多少の応急復旧をして、そして植付をした。それだからもうこれは復旧の査定からはずすというようなことをしないように、要するに正直者がばかを見たという形にならないような、実情に即した査定をやつてもらいたいということを現地の当局にも指示して参つたようなわけでございます。あるいは極端な事例がございますれば、査定のやり直しを、やるというようなことも必要かと考えております。
  373. 稲富稜人

    ○稲富委員 次に、食糧の自給態勢を立てるということは、農業対策上最も必要なことであることは言をまたないところでございますが、このたびの災害対策をやるために、食糧増産費を削除なさつている。これは先刻吉川君の御質問にもあつたのでありまするが、農林大臣は非常に苦しかつたけれどもやむを得ないとおつしやつておるのであります。しかしこういうことは、農林大臣としてがまんのできることとできないこととあると思うのです。災害対策のために食糧増産費を削るというがごときは、おそらく農林大臣として忍べないことだと思うのですが、これをただやむを得ないというようなことで、はたして農林大臣としてのお役目が勤まるかどうか。私はこれは単なるあきらめごとではないと思うのであります。どうかこういうことに対する農林大臣の決意をお伺いしたいと思うのです。
  374. 保利茂

    ○保利国務大臣 食糧増産の必要なることは、国家的より見ましても、これは何人も異論のないところでございまして、この重要性に関して、内閣全体としても、決してこれを見落しておるわけじやございません。ただそれにいたしましても、今回の広汎、深刻な冷災害のために生産の失われましたこれの回復は、より緊急ではないか。そしてまた冷災害民の救済というものは、より緊急じやないかということからいたしまして、先ほど来大蔵大臣が言われまするように、財源捻出のやむを得ざる手段として、これは忍んでおるわけでございます。それは先ほど来申し上げる通りでございます。
  375. 稲富稜人

    ○稲富委員 昨日中村議員の質問に対しまして、大蔵大臣は、会計検査院の報告によると、食糧増産費が濫費されておるというようなことをおつしやつておるのであります。こういうような報告を受けておるという御答弁があつたように記憶しております。こういうことが事実であるといたしますと、これは重大な問題であると思う。こういうことが、あるいは食糧増産費の削減ということになつたのではないか。もしもこういうことであつたとするならば、これは農林大臣といたしましても、監督上の重大なる責任であると思うのでございますが、これに対して農林大臣はいかにお考えになつているか承りたい。
  376. 保利茂

    ○保利国務大臣 予算の執行におきまして、もしさようなことがあれば、これはまことに私は重大な責任だと思います。ただ御理解を願いたいと思いまするのは、いわゆる公共事業、食糧増産対策、この事業には、これは絶無とは申しませんけれども、かなり綿密な調査と、その上に立つての計画をやつておりますから、いろいろな審査過程を経てやつて来ておりますから、この方は割合に間違いは少いわけです。ただ問題は、会計検査院でよく言われますのは災害です。災害の面については、これはずいぶん会計検査院の批難を受けて来ておるわけでございます。その災害は、今度の災害じやございませんが、従来の災害費というものによつて、ともすると公共事業費や食糧増産対策費が、そういうふうに使われているのじやないかというような誤解を抱かせられておるということは、私ども非常に残念に存じておりますから、災害対策費の執行につきましても、十分これを厳重に行つて行きたいというように考えております。
  377. 稲富稜人

    ○稲富委員 私はいや味を言うわけじやありませんが、少くとも本委員会の席上において、大蔵大臣から、食糧増産費が濫費されているという会計検査院の報告を聞いたのだ、こういうことを大蔵大臣が発表されて、これを諾々として農林大臣が聞いておられるその心境が、私にはわからないのございます。こういうようなことを大蔵大臣が発表され、農林大臣みずからはその責任の重大なことを考えるならば、どこにその事実があつたか、私は十分確かめる必要があるのじやないかと思う。私はこういうことが、この重大な食糧増産費の削減という問題になつて来たのだ、こういうことを言われてもしかたがないと思う。これは、ひいては農林大臣の責任の重大なる問題だと思うのであります。この点に対して、残念である、相済まぬことであると言つて、農林大臣がお勤まりになるか。私が農林大臣の決意を伺いたいというのはこの点であります。どうかこれに対する農林大臣の考え方を伺いたいと思います。
  378. 保利茂

    ○保利国務大臣 大蔵大臣がどういう御答弁をせられましたか、私はそのときいなかつたのか、あるいは聞き漏らしたのか存じませんが、大蔵大臣からあらためて伺います。なお私どもの食糧増産対策費において、一つも瑕瑾がないとは、先ほど申し上げているように、私は申し上げておらぬわけであります。従つて、今後におきましては十分励行もいたしますし、特にそういう誤解を生じやすいのは、災害対策費の用い方にあるようでございますから、この点につきましては、さらに厳重に執行をいたすことにいたしたいと思います。
  379. 稲富稜人

    ○稲富委員 おそらく大蔵大臣も、そういう報告を受けないのに発表せられたのじやないと思いますので、あとからお聞きにならぬでも、そこでお聞きになつてもいいと思います。具体的なことを大蔵大臣にお聞きになつて、そしてあなたのこれに対する処置をとる必要があるのじやないか、私はかように考えます。さらにまた農林大臣にお聞きしたいことは、こういうような食糧増産費を削減する、あるいは冷害対策の万全を期するために、農業共済保険の特別会計繰入れを減額されているが、こういうような災害にこそ、農業共済金というものは必要であると思うのであります。一体この災害というものをどれほど御認識になつておるか。私は何といつて災害対策をやるとするならば、この食糧増産の費用のごときは増し、この共済金のごときは増すべきであると思う。しかるにこの災害対策のために、食糧増産費を削除し、あるいは農業共済金の繰入れを減額して、これをもつて冷害対策の万全を期するということを言われて、よく農林大臣はがまんできると私は思う。私は農林大臣も、もつとこの災害に対する熱意を持ち、ほんとうにこの災害と取組んで、農業行政をやつて行くという決意がなくちやいけないと思うのであります。私はあえていやみを言うわけじやございませんが、どうも農林大臣は押され過ぎているのじやないか。あまりだらしがなさ過ぎると思うのであります。これに対して農林大臣はどう考えるか、もう一度承りたい。
  380. 保利茂

    ○保利国務大臣 農業共済金繰入れの中から、四十五億を冷害対策費の方に繰込んだということは、これは稲富さん、むろん誤解されているわけじやございますまいけれども、農業共済の支払いをそのために遅らかすとか、あるいは支払わないとかいうようなことは先般来の大蔵大臣の御説明でもおわかりのように、絶対にございません。必ず農業共済の支払いはいたしますから、その点はどうぞ誤解のないように願います。
  381. 稲富稜人

    ○稲富委員 農林大臣は大みえを切つておりますが、その問題は責任を持つと農林大臣が言いますので、十分農林大臣に責任を持たせることにいたします。さらに、このたびの災害地は、二化螟虫の発生というものによつて相当凶作であります。これの供出対策に対しては、どういう考えを持つておられるか、この点承りたい。
  382. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはいろいろの冷害、あるいは虫害、あるいは病害等あつて、ことしは作況が非常に不幸な事態になつて来ていますが、私、供出はどこまでも実際の実情に即して割当てて行くということで、食糧庁に、その実情に即して公正を期していただくということでやつているわけであります。むろんその点は尊重して行かなければならぬことは申すまでもありせまん。
  383. 稲富稜人

    ○稲富委員 供出に対しては実情に即するとおつしやるので、その点をさらに希望いたしておきます。次に、建設大臣にお尋ねいたします。従来の河川計画というものは、このたびのような雨量によりますと、当然河川計画というものをかえなくちやいけないと思うのであります。河川計画を変更されますと、これがための民有地及び民有建物等の除去というような問題が起つて来ると思うのでありますが、これに対します補償というものは政府としていかにお考えになつておるか、この点ひとつ承りたいと思うのであります。
  384. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。河川計画の変更等も、もちろん考えなければならぬとと思います。従つて補償の問題等も起きると思いますが、建設省としては、補償基準要綱を立てておりまして、それに従つて公正妥当にそういうことを処理して参りたい、かように考えております。
  385. 稲富稜人

    ○稲富委員 次に、建設大臣にいま一つお尋ねいたしたいと思いますことは、これは筑後川の問題でございますが、このたび災害に大きな影響を与えました夜明ダムの問題につきまして、その災害との関係をいかに見ていらつしやるのか、これに対して政府見解を承りたいと思います。
  386. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。夜明ダムにつきましては、工事の中途にありましたので、多少の食い違いといいますか、影響を与えたことはあると存じております。しかしいろいろ地元等でいわれるように、非常に大きな影響があつたとは考えておりません。もつともこの問題につきましては、ただいま大分、福岡両県で実際の状況の審議の委員会を設けて、科学的、技術的に研究をいたしております。不日そういう点についてもはつきりした判断が現われるだろう、それによつてなお適当な措置を講じて参りだい、かように考えております。
  387. 稲富稜人

    ○稲富委員 夜明ダムのこの被害については、委員会をつくつて御検討なさつておるそうでありますが、この委員会等には、あまり実際には夜明ダムが被害を与えていないのだというような意見もあるようであります。しかしながら夜明ダムが事実上大きなる被害の原因になつたということは、たくさんの事例があるのでございますが、結論が出ていないということでありますので、この事例をここにいろいろ申し上げようと思いません。しかもあの近傍におる者は、夜明ダムの影響が、このたびの被害に非常なる大きな影響を及ぼしたものであるということは、十分承知をいたしておることでありますので、さらにそういう意味から、被害状況に対しては、政府も考えていただきたいと思うのであります。さらにまた、この夜明ダムの問題について建設大臣にお尋ねしたいと思いますことは、河川法の第四十九条に「主務大臣ハ河川ニ関スル行政ヲ監督ス」という言葉がありますが、はたして筑後川の河川に対して十分なる監督をなされておつたのであるか、これに対する建設大臣のお考えを承りたいと思います。
  388. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 河川管理につきましては、もちろん申し上げるまでもありませんが、府県が第一次の責任を持つてつておるのであります。従つて、だからといつて政府責任がないとは申し上げませんが、政府責任は第二次になるべきものだと考えておるわけであります。政府といたしましては、筑後川等の大きな問題については、十分本省としても常に注意を怠らなかつたつもりであります。
  389. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうもただいま建設大臣の話を聞きますと、政府は第二次だ、こうおつしやるのでございますが、しかしながら河川法には「主務大臣ハ河川ニ関スル行政ヲ監督ス」ということになつておりますので、監督はやはりあなたの方がするのじやありませんか。それとも地方庁が監督するのでございますか。
  390. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。直接に管理は府県がやることになつておるのである、こういうふうに申し上げたのであります。従つて私の申し上げた第二次というのは、そういう意味で申し上げたわけでありまして、管理そのものについても、ことに直轄河川であり、政府としても常に注意いたさなければなりませんが、お話のように、監督上の責任という意味においては、もちろん政府にあると考えております。
  391. 稲富稜人

    ○稲富委員 監督上の責任政府にあるとするならば、監督は十分なさつてつたと思うのです。次にお聞きしたいことは、夜明ダムの建設の許可は五月十八日に受けて、県が会社に対して許可したのは六月一日ということになつておるのであります。ところが、あの夜明ダムの工事は、昨年の八月から行われておるのでございまして、こういうようなことで、監督が十分行届いておつたとお考えになつておるのであるか、この点を承りたい。
  392. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。夜明ダムの工事が認可を待たずしてやつてつたということは、お話の通りでありますが、第一次の水利権の認可がありましたのは二十七年でありまして、工事の設計の認可を一度いたしたのでありますが、その後設計の変更がありまして、その調査等のために遅れておりました。しかし電源開発ということから考えて参りまして、少しでも早くということを考えたのと、一つには、認可するには地元の補償問題等の話が全部つかなければできないという建前になつておりまするので、一人二人の少数の不同意がある、あるいは話合いがつかないというために荏苒延びておるということは、はなはだ事業の性質から考えてもおもしろくないのでございまして、もちろんそのこと自体、認可の遅れたことは悪いのではありまするけれども、これは大局から見て必要と存じまして、県並びに地元の村当局の了解を得まして、それで工事をさせたようなわけであります。
  393. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまのお話を聞きますると、工事をされたということは、あなたの方でお許しになつたのでありますか。認可前に工事を始めるということは、あなたの方でお許しになつたわけでございますね。
  394. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 手続として遺憾な点はありまするけれども、今申し上げたような事情で、これはどうしても一人二人の人が補償を言うために、いつまでもできないということでは、これはほかの例もたくさんありまするけれども、工事ができないようになりまするので、そこで今申し上げたように、県並びに地元の了解を得て工事をさしたのであります。
  395. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は許可前に工事にとりかからなければ仕事ができないというような解釈がわからないのです。何も川はなくなるものではございません。当然これは認可があつてから工事に移つてしかるべきだと思うのであります。電源開発が非常に急を要するからといつて、許可なくしてやつていいという法律はないのじやなかろうかと思うのでございまして、そういうような法律が何条にあるのか、ひとつお教えを願いたいと思うのであります。
  396. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申します。でありまするから、ただいま申し上げたように、認可前に工事にかかつたことはいいことではないけれども、やむを得ないやり方であつた、かように申し上げておるのであります。
  397. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで十分なる監督ができておつたのか、そこを私は聞くのです。やむを得ないんだといつて大目に見たことは、監督にならないわけでございます。監督の範囲外である。それを黙つて黙認しておつたということは、十分監督ができていなかつたということになるんじやないか、かように思つて私はお尋ねするわけであります。
  398. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。そういう意味で監督が不十分とお考えになることは、一応わかりますけれども、工事ができないということは、国の利益のためにならない、はなはだ遺憾であるという見地から、特に地元の県、並びに村の了解を得て、ただいま申し上げたようにかからせた、こういうわけであります。それが監督の任にある私として不行届きであるかもしれませんが、その点はこういつた仕事の事情、ことに近年種々わずかの反対のために、こういうことが実現できないということが実情でありまして、これでは容易にすべての仕事が進まないという意味から行つたのでございますから、その点を御了承いただきたいと思います。
  399. 稲富稜人

    ○稲富委員 許可なくしてやらなければ仕事が進捗しない、その理由が私にはわからないのでございます。許可があつて仕事にとりかかつても、当然仕事は進捗するのであります。ところが今の建設大臣のお話を承つておりますと、許可のある前に仕事にとりかからなければ仕事が進捗しないから黙認しておつたかのような御答弁のように承るのでございますが、その点私にははつきりしないので、いまひとつはつきり御答弁願いたいと思います。
  400. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 私が申し上げましたのは、一人、二人の反対があるために、大部分の了解を得ても工事ができない、それには認可の方法とか規則が悪いという点が考えられるかもしれませんが、そういうことで、大事な工事がどうしてもできないというのでは困るので、そこでやむを得ずかような処置をとつた、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  401. 稲富稜人

    ○稲富委員 いや、その認可があつて後、一人や二人の反対があつて仕事にとりかかれないから、やむを得なかつたとおつしやるのならわかります。ところが認可のある数箇月前にすでに仕事にとりかかつてつた。それは認可もしないのに、仕事をしなければ工事が進捗しないから、これを黙認しておつたとおつしやる意味がわからない、こういうことなのであります。
  402. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの制度が、一人でも反対がある間は認可ができないということになつておる。それが無理な規則であるかもしれませんが、そういうことで、大体は認可していいのに、わずかの故障のために工事ができないということが困る。これは実情から申して困るので、そこで県並びに地元の了解のもとに工事を始めさせた、かように申し上げたのでありまして、これは規則が悪いといいますか、あるいは全部の承諾を得ることに努力が足りないという意味におとりになるかもしれませんが、現在の制度ではなかなかその点がうまく参らないので、やむを得ずさような処置をとつた、こういうふうに申し上げておるのであります。
  403. 稲富稜人

    ○稲富委員 制度が悪かつたからと認めて、それなら制度を直すように御努力になつたらどうですか。制度が悪いからといつて、やむなく法を犯すようなことをやつて、監督が十分であつたとは、私は言えないと思う。この点がどうも、あなたのおつしやることははつきりしないのです。私は少くとも、認可があつて工事にとりかかるのが本筋ではなかろうかと思うのであります。私の考えが間違つておるのなら別であります。間違つておるなら直していただきたいのでありますが、認可というものはそのためにあるものだと思う。もしも認可前に仕事にとりかかつていいのなら、認可は必要ない。その点、河川の監督権を持つている建設大臣が違法なことをやむを得ないとして認容されることは、建設大臣の御答弁としてはいけないと思う。この点・建設大臣は私の考えと違うと思う。しかもそれが認可の前に仕事をやつてつたとするならば、これに対する罰則があるはずである。どういうような処分がされたか、何もやられていない。この点をひとつ承りたい。
  404. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 私はただいま実情について申し上げたのでありまして、制度については今研究をいたしておりまして、こういうことがないようにいたさなければならぬと思つておりますけれども、現在の実情はさようであつたということを申し上げております。これで私がもし責任があるということになりますれば、潔く私は責任をとります。
  405. 稲富稜人

    ○稲富委員 建設大臣は責任をとるとおつしやつておるのでございますが、この夜明ダムの工事にとりかかつて、ずいぶんこれに対しては地元の反対等もありまして、会社に押しかけて行つたところが、会社はいわく、政府が何と言おうとも自分はやれるのだ、政府は何もおれたちの会社には言い切れないのだということを会社が言つておるのであります。会社の会長は、御承知の通り、皆さんの御同僚でございますが、そういうようなために言つたのではないでございましようけれども、そういうような口吻を会社が漏らして、政府が何と言おうとも、自分の方は力があるからやれるのだと言つて、地元の反対を押し切つてこの工事を進めた。しかも認可前にやつている。これは明らかに政府としての監督不十分であつたということは、私は否定することはできないと思うのです。しからばそういうようなことであなたが責任を負うとおつしやつても、これがために被害をこうむつておる多くの罹災者というものはがまんできないわけです。そうしてこれに対しましては、河川法第二十条において「左ノ場合ニ於テ地方行政庁ハ許可ヲ取消シ若ハ其ノ効カヲ停止」することができるとなつておりますので、これによつて認可の取消しをやるというお考えが政府にあるかどうかを承りたい。
  406. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。認可の取消の問題は、ただいま考えておりません。また会社がどういう会社であるから認可前に工事をさせた、さようなことはございません。
  407. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、ただいまのところ工事に対しては認可の取消しは考えていない、こういうことでございますが、法律、命令に違反したときは認可の取消しをしていいという河川法第二十条の規定があることは、建設大臣御存じであろうと思いますので、この条項によつて当然これは取消しをひとつしていただきたいと思うのでありますが、今日お考えはないようでございますが、今後どういうような考えをしていただくのであるか、最後に建設大臣の御決意を承りまして、私は時間もありませんので、またいずれかの機会に譲ることといたしまして、きようはこれをもつて質問を打切りますが、最後に建設大臣のこれに対する決意を伺いたいと思います。
  408. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 私の考えは、ただいま申し上げた通りでありますが、先ほども申し上げましたように、この事態が九州で開かれておりまする委員会において、どういうふうな判断が下されますか、それをも参酌いたしたいと存じます。
  409. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明三日午後二時より開会し、質疑を継続いたします。本日はこれにて散会いたします。午後八時十八分散会