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1953-11-07 第17回国会 衆議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月七日(土曜日)     午後一時本会議     ————————————— ●本日の会議に付した事件  沖繩及び小笠原諸島に関する決議案佐藤榮作君外六十七名提出)  岡崎外務大臣新木駐米大使の対米通告についての発言及びこれに対する質疑中小企業の年末金融に関する緊急質問春日一幸提出)  行政機構改革に関する緊急質問下川儀太郎提出)  李ライン等国際漁場問題解決促進に関する請願外五十五請願懲罰委員会を除く各常任委員会、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会公職選挙法改正に関する調査特別委員会及び水害地緊急対策特別委員会に付託した事件につき閉会中審査の件(議長発議)  昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出参議院回付)  領土に関する決議案佐藤榮作君外八十三名提出)  決算委員長の同委員会における審査中間報告を求むるの動議加藤常太郎提出)  決算委員長の同委員会における審査中間報告及びこれに対する質疑     午後五時十九分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。     —————————————
  3. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 議案上程緊急動議提出いたします。すなわち、佐藤榮作君外六十七名提出沖繩及び小笠原諸島に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  4. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。  沖縄及び小笠原諸島に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。上塚司君。     〔上塚司登壇
  6. 上塚司

    上塚司君 ただいま議題となりました沖繩及び小笠原諸島に関する決議案につき、各党派を代表いたしまして、提案の趣旨を説明いたします。まず決議案の全文を朗読いたします。    沖繩及び小笠原諸島に関する決議案  奄美大島沖繩小笠原諸島わが国返還については、国会が屡次決議を重ねてきたところであり、今回、奄美大島復帰が実現するについては米国の好意に深く感謝するところであるが、同じく旧日本領土内にあり、講和条約においても同一条件下にある沖縄小笠原諸島が依然としてわが国主権外におかれていることは、極めて遺憾である。   本院は、政府国民の総意を体して両諸島わが国復帰促進につき至急善処せんことを要望する。   右決議する。   〔拍手〕  サンフランシスコ平和条約第三条は、沖縄奄美大島及び小笠原諸島国際連合のもとにおける米国信託統治区域に予定し、かつ信託統治が実現されるまで米国施政権を有することを定めたのであります。しかるに、これら諸島に対する米国信託統治を実現するためには国際連合安全保障理事会承認を必要としており、これが承認を得ることは現下の国際情勢においてはすこぶる困難なる事情にありまして、平和条約発効後すでに一年有半に至りまするが、いまだ信託統治は実現せず、いまなお米国施政権が行われておる次第であります。  領土に関する問題は日本国民の最も関心を有することは、いまさら申すまでもないところであります。ことに、沖縄及び小笠原諸島は、奄美大島とともに、同じ血をわかつたわれらの兄弟の住む所であり、その位置も日本本土に近接し、長年にわたり日本本土行政区域として、地理的に、経済的に、はたまた文化的に密接不可分関係にあり、国民は一日もすみやかに日本内地施政に統一されんことを熱望し、島民はこぞつて国会に対する請願、陳情その他あらゆる手段を尽してこれら諸島日本への完全復帰を懇願いたしております。本院は、院議をもつて、しばしば政府に対し適切なる措置を講ずべきことを要望し、第十六回国会においても、領土に関する決議案全会一致をもつて可決した次第であります。  沖繩諸島につきましては、昨年四月立法、司法及び行政の各機関を備える琉球政府が設立せられ、民意の暢達に資し、かつ教育、関税その他の点においても日本内地との一体化に留意していることはまことに喜ばしいことでありまするが、いまだ日本への完全復帰に至らないことは実に遺憾であります。  小笠原諸島につきましては、全住民七千七百余名は、昭和十九年旧日本軍強制分散疎開命令を受けまして、内地に移住を余儀なくされ、今日に至るまで、これら住民は島に帰ることを許されず、なつかしき故郷を失い、またその生業としておつた農業及び漁業を営む道を奪われ、最も悲惨なる状態に追い込められておる次第でありまして、その心情を思うとき、実に気の毒にたえないのであります。右につきましては、第十六回国会において、「小笠原諸島より引揚げさせられた元住民の帰郷に関する決議案」が本院において全会一致可決されております。  なお、奄美大島は従来琉球政府施政区域に属しておつたのでありまするが、去る八月、ダレス米国国務長官は、日本訪問に際しまして声明を発し、米国政府平和条約第三条に基く権利を放棄し、日本管轄権を復活し、奄美大島日本に統合し、その住民日本本土に結びつける旨の意向を表明いたしました。この米国政府措置については、二十余万の奄美大島住民はもちろん、日本国民のひとしく喜びとして、その好意ある態度に対し衷心感謝いたしておる次第であります。  しかるに、沖繩及び小笠原諸島は、前に述べました通り平和条約第三条に基き、奄美大島とまつたく同一条件のもとにあり、その日本への復帰は、島民の心からなる悲願であるとともに、わが国民のこぞつて熱望しておるところであります。よつて、衆議院の各派は一致して、政府に対し、この希望達成のために、すみやかに適切なる措置を講ぜられんことを要望いたすものであります。  何とぞ各位の御賛同を得まして、全会一致可決せられんことをお願いいたします。(拍手
  7. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  8. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立総員。よつて本案全会一致可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  9. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 外務大臣から新木駐米大使の対米通告について発言を求められております。これを許します。外務大臣岡崎勝男君。     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 池田勇人君は、吉田総理大臣個人的代表として渡米し、米国政府関係者との間に、日米間に共通の関心事たる諸問題につき、非公式に日本の実情をよく説明し、かつ米国意向を聴取し、隔意なき意見の交換を行つたのでありますが、その要旨は、十月三十日、ワシントンで、双方会談当事者共同声明の形で発表されたのであります。この共同声明は、右に述べたような経緯から、池田特使米国政府関係者の間で交換した意見についての各条項に関し説明を加えておりますが、声明中にも述べてある通り会談双方意向打診を目的としたもので、何らとりきめ等を結んだものではありません。また、総理個人代表の発表した声明は、そのまま日本政府を拘束するものでないことも言うまでもありません。池田ロバートソン会談については、この共同声明域外何ら秘密の書類または了解等のないことは、池田特使からも特に報告して来ております。政府は、共同声明内容を研究し、そのうちにあげられている諸問題については、今後東京交渉を行うことが適当なりと考え、東京会談に異存なき旨を、駐米大使より米国政府に申し入れしめました。従つて共同声明にあげられた諸問題は、いずれも今後東京交渉行つた後具体化する性質のものであります。この東京会談同意する旨の公表がワシントンでなされました際、あるいは何らか誤解を生ずるような表現が用いられたかもしれませんが、以上が本問題に関する政府の真意であり、またそのとりました措置であります。      ————◇—————
  11. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 岡崎外務大臣発言に対し質疑通告があります。順次これを許します。並木芳雄君。     〔「副総理が答弁するのに外務大臣とは何だ」「総理が来るまで休憩休憩」と呼び、その他発言する者多し〕
  12. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 並木芳雄君、副総理が御出席になりましたから登壇を願います。     〔並木芳雄登壇
  13. 並木芳雄

    並木芳雄君 私は、ただいま外務大臣から報告を受けたのでありますが、一向に要領を得ない報告でありますので、改進党を代表して、吉田首相に対し質問を行いたいと思うものであります。  今回の池田ロバートソン会談については、はなはだ明瞭を欠くものがあります。MSA交渉は、八月以来正式の会談に入つております。その間、もしアメリカ側と内談の必要があるならば、何も吉田個人特使というごとき形をとる必要がないのみならず、かえつて相手方に不可解な印象を与えるものであります。MSA交渉は国家の公事であつて吉田総理の私事ではございません。だからこそ、池田ロバートソン会談に備えて、米国政府は、国務省、国防省の係官数名を選んで、会議の形式で話合いを始めたのであります。しかし、ワシントンにある日本大使館は、まつたくつんぼさじきに置かれておつたのであります。私はワシントンからの情報に基いて話しております。米国池田氏に対して日本側の対案を得るものと期待しておつたのでありますが、何ら期待に沿うごとき案を出し得なかつたので、十月七、八日ごろには、遂にアメリカ側から日本防衛力に関する案を出して来たのであります。吉田政府は、おそらくぎよつとしたに違いございません。そこで、十月十二日から外務省の武内公使池田氏の一行に加わつて談合を進めて参つたのであります。これらのいきさつにかんがみて、池田氏が吉田総理個人的代表だなどという申訳が立たないのはまことに明瞭であります。(拍手)  首相は、国会で、初め、池田氏は私の個人的特使であるから、会談について報告しないと答弁しておりました。その後、わが党の櫻内議員初め他の諸氏からの質問にあつて報告をすると変更して参りました。また、会談の結果には政府は何ら拘束されないと言明しておつたのでありますが、間もなく、道義的責任は負うと訂正をしたのであります。その息をつくひまもなく、今回はたちまち拘束されてしまつてアメリカに対し同意を与える通告を発する段取りになつてしまつたのであります。国会報告をしないうちに、この同意通告を何ゆえに発したのであるか、その事情は私どもはなはだ不可解に存ずる次第であります。  大体、首相個人的特使ということそのことが混迷の原因であつて、まさかアメリカに買物に行つたわけではありますまい。池田特使は、MSA前提条件たる防衛問題について、アメリカにお伺いを立てに行つたのであります。従つて共同声明内容同意をするもしないもございません。当然その内容に拘束されるのは、初めからわかつていたことであります。それを政府は隠しておつた。そうして、東京会談を開くことに同意しただけであつて、何らその内容同意を与えたものでないというような言いのがれの報告は、われわれはこれを受取ることができないのであります。明らかにこれは新木大使言明と違つておるのであつて、もし違つておるならば、政府新木大使訂正をする訓令を発すべきでありますが、その訓令を発したかどうかお伺いしたいのであります。いずれにせよ、吉田総理のこの豹変ぶり重大食言であり、二枚舌を通り越して三枚舌を使つたものと言わざるを得ません。総理国会でわれわれの前に陳謝すべきであると思います。  そもそも対米外交交渉のごとき重要問題は、岡崎外相または新木大使政府代表として直接当るべきものであります。それを、自由党の政調会長を個人的の特使として当らしめたのは、そもそもいかなる理由に基くものであるか。総理外務大臣大使を信用しないのであるか。今度一番お気の毒であつたのは、おそらく新木大使でありましよう。単につんぼさじきに置かれたのみならず、メツセンジヤー・ボーイのような役を押しつけられている。聞くところによると、新木大使はすでに辞表を出しておられるとのことでありますが、はたして事実であるかどうか。岡崎外務大臣がたいへん交渉に不適当であるというならば、外務大臣としての資格はございませんから、これをしりぞけて、池田氏を外務大臣にしてアメリカに派遣すべきであつたと思います。岡崎外相内地を離れられないというならば別でありますが、外務大臣池田氏の渡米と相前後して東南アジアに飛んで行つております。九月末までには調印できると言明していたMSA交渉をほつたらかして、内地を離れて行つてしまつたのであります。無責任きわまりありません。外務大臣東南アジア訪問MSAといかなる関係があつたのであるか。外相は、MSA防衛計画とは関係がない、すなわち、防衛計画MSA受諾条件ではないと言つてつた。その誤りであることをわれわれは強く指摘しておいたのでありますが、とうとうその結果が現われて参つたのであります。のつぴきならないはめに陥つた外務大臣は、東南アジアに体をかわしたのではなかと私どもは思うのであります。東南アジアに行くのならば、なぜもつと緊急な問題のある朝鮮——大韓民国へ行かなかつたのであるか、あえて問いたいものであります。  MSAには防衛計画が必要でないというのは、そもそも政府認識不足であります。それならば、なぜMSA調印を九月末から今日まで一箇月以上も遅らせているのであるか。現に、池田ロバートソン会談でも防衛問題が中心になつているではありませんか。特に、日本防衛についての米国側の負担を軽減するため日本自衛力を強化する必要があることについて意見一致を見たと声明書の中に書かれてあります。そうして、これに対し、アメリカが、日本の陸、海、空の装備に要する主要品目を提供し、その編制援助すべきことを申し出たとあるのであります。すなわち、MSA防衛計画とは密接不可分のものであります。それをアメリカには示しておいて、日本国民には知らせない。そんな政府が一体どこにあるであろうか。(拍手政府はここに防衛計画を明らかにすべきであると思います。  すでに保安庁法案アメリカ提出され、これに対しアメリカから何分の意思表示があつたはずであります。地上部隊には、アメリカは三十五万と言い、日本政府は十八万と言い、両者の主張に相違がございますけれども、これは一体どうなつておりますか、政府の原案を示されたいのであります。来年度に全部増強するのか、三年計画か、あるいは五年計画か。同じく海上部隊増強についていかなる装備を予定しているのか、全部アメリカから受けるのか、日本で製造するのか、またこれからは当然軍艦としての取扱いをいたすべきであると思いますが、その点はどうなつておるのか。航空部隊について、保安庁長官態度を明らかにしておりません。しかし、共同声明の中に、陸海のみならず、航空部隊に対する装備援助があげられております。政府は、陸上、海上とともに航空部隊編制すべきであるが、その計画と構想を伺いたいのであります。これら三部隊統合機関としていかなるものを設置する所存であるか。聞くところによると、米国側保安庁がゆめにも考えなかつたほどの空軍編制案を持つているというのでありますけれども政府は初めて目がさめたことであろうと思います。  かくのごとき現実にもかかわらず、共同声明の中には、憲法上の問題などの制約があるために、日本防衛に十分な自衛力増強をはかることは許されぬことが認められた、日本側においては、これらの制約を十分考慮しつつ、今後とも自衛力増強を促進するための努力を続けるであろうとあります。これを読むときに、日本アメリカから防衛力増強をしいられ、これに対し哀訴哀願をしているとしか私どもには思えないのであります。(拍手政府は、あらゆる制約を克服して、みずからの手でみずからを守るの気魂を欠いておるのであります。なぜ総理憲法を改正してでも自衛軍を持つという意思をはつきり表明しないのであるか。かかる基本方針がきまつていないから、アメリカのための再軍備、押しつけられた再軍備ひもつきMSAなどとの非難攻撃を受けるのであります。  ことに、声明の中に、日本部隊自己防衛の能力を増進するに従つて在日米軍が撤退すべきことについても意見一致を見たとある通り日本陸海空軍部隊在日米軍に交代することになつておるのであります。しからば、これは明らかに戦力となるものでありますから、政府の論法をもつてすれば、当然憲法改正が先行さるべきはずであります。政府はここにきつぱりと憲法改正の決意を表明すべきであると思いますが、どうであるか。それに反して、戦力になつた憲法を改正する。戦力になつた憲法を改正するというのは、まつたくものの本末を転倒しておる論理であります。しかし、万一にも戦力のない軍備をつくるというのであれば、われわれが防衛のために金を使うことは全然無用の企てであるという結論を下さざるを得ないのであります。  私は最後に申し上げます。以上のほかに、共同声明には、なおMSA五百五十条に基く五千万ドルの過剰物資供給中共貿易の制限、ガリオア援助早期解決外資導入などについての了解事項があげられておりますが、時間がありませんので、詳しいことは他の機会に譲りますが、これらはいずれも事新しいことではありません。農産物の供給にしても、アメリカはあり余つてつて、その処分に困つておるのであります。また火力借款綿花借款にしても、今度始まつた話ではなく、前から話が進んでおつたものであります。今度の会談中心は、あくまでMSA前提たる防衛問題であります。その防衛交渉がうまく行かなかつたために、この失敗をカムフラージユするために声明書の中につけ加えたにすぎないのであります。(拍手)しかも、この防衛計画たるや、政府は、国内問題であつて日本政府が独自できめるものであると断言して来ております。それを国民に示さず、アメリカに相談するとは何事であるか。なぜ政府責任防衛計画を樹立し、これを国会を通じて国民に示し、その了解を求めようとしないのであるか。占領中の総司令部に足を運ぶがごとき情景を見せつけられるのは、私どもはまつぴらごめんであります。翻訳外交コピー行政はもうやめてもらいたいのであります。四等国と言われるだけも義憤を感ずるわれわれにとつて、もし四等総理とでも言われたら、われわれ国民としては耐えられないことであります。首相は、かかる自主性失つた態度、卑屈な態度を改めることを、ここに国会を通じ真剣に国民に約束すべきであると思うが、その決意ありやいなや、これを質問して私は降壇するものであります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  14. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 並木君にお答えをいたします。  池田君がアメリカに参りましたことは総理の個人的の特使であるということは、たびたび予算委員会等でも申し上げた通りでありまして、ただいまの御質問を伺いましても、政府の解釈をかえなければならぬ点は少しもございません。今度のワシントンにおいて発表されました新木大使記者会見内容において、政府が何らか池田ロバートソン会談同意をして、それによつて政府が拘束を受けておるかのごときお話がありましたが、あの池田ロバートソン共同声明のうちに現われておりまする考え方は、従来の政府考え方と少しもかわつておりません。同時に、あのコミユニケに現われておりますところは、並木君も御承知の通りに、何ら結論を得ていないのであります。この会談東京において続けてやつてほしいという意味のことでありますので、政府としては、その点に同意をして、新木大使訓令を発したのでございます。  それから、新木大使が今回のことに関連して辞表提出したかのごとき御質問でありましたが、そういう事実はございません。  あとは多く御議論のように承りましたが、憲法改正の時期につきましては、総理大臣予算委員会等においてしばしば申しておりまするように、日本自衛力増強また増強して憲法改正の必要を生じた場合にはこれを改正いたしまするが、今のところ憲法改正にすぐ着手するつもりはございません。  あと外務大臣から答弁申し上げます。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  15. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 新木大使言明間違つていたら訂正するかというお話でありますが、これは今電報でいかなることを言つたか確かめております。  なお、私が外務大臣のくせに、なぜ特使でやつておるかということでありますが、これは従来から例のあることでありまして、たとえば有名なアメリカのハリー・ホプキンス、あるいはまた第一次上海事変当時も、松岡代議士が当時の首相個人的代表として上海行つて当時の重光公使を助けたということは、重光総裁外交回顧録にもちやんと出ております。  なお、並木君は何でもMSAにつけて議論をなさつておるようでありますが、私の東南アジア行きは、もちろんMSAを逃げることでも何でもありません。急いで帰つて参りましたような事情でありますから、御承知願いたいと思います。アメリカ行きも大切でありましようし、朝鮮問題も大切でありましようけれども東南アジアの問題も非常に大切でありまして、私のからだは一つでありまするから、そのどれかを選ばなければならなかつたわけであります。  なお、防衛計画を明らかにせよということでありますが、これも、先ほど副総理からもいろいろお話がありましたが、まだその案ができておりませんので、アメリカに先に示すというようなことはもちろんないのであります。いろいろ地上部隊三十何万とか十八万とかおつしやいましたが、このようなことは新聞報道では私も見ましたけれども日本政府計画としては今保安庁でいろいろ練つておりまして、それができないと、どうにもならないのであります。  なお、この池田ロバートソン会談中心は、これもMSA前提だというお話でありましたが、元来政府の一番重要な政策は、ただいまのところ経済自立であります。で、ほかの問題ももちろん池田特使は話をいたしておりましたが、経済自立に関連する問題が今度の会談中心であつたのでありまして、たとえば一緒に話に列席いたしておりましたような人の顔ぶれを見ても、これはおわかりになると思うのであります。  また、アメリカにお百度を踏むような政策はもうやめろというお話でありまするが、日米間の関係は非常に緊密でありまして、アメリカとの間に十分なる連絡をつけることは必要であります。また現に、日本のみならず、イギリス、フランス、イタリアその他各国でも、盛んに人をアメリカに出して会談をいたしておるようなわけでありますので、われわれとしても、できるだけのことはいたす考えであります。(拍手
  16. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 横路節雄君。     〔横路節雄登壇
  17. 横路節雄

    横路節雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、去る十月三十日ワシントンにおいて発表された池田ロバートソン共同声明に関して、吉田内閣の所信をたださんとするものであります。  この共同声明内容はきわめて多くの重大問題を含んでおり、国民ひとしくその成行きを注視している憲法改正問題、すなわち再軍備については、明確に本声明中に、現在の保安隊警備隊の性格、任務を改変し、陸軍、海軍、空軍三軍統一をはかり、もつて在日米軍撤退の兵力と見合う防衛力増強を認めていることは、対国内的に現実憲法改正を強行し、再軍備することをアメリカ側に確約したことにほかならないのであります。(拍手)さらにまた、わが国平和経済を建設せんとするとき、対中共貿易が必要であることは、先般本院より各党代表として派遣された日中貿易に関しての議員諸氏の視察後における報告を見ても明白であるにかかわらず、再軍備のための何がしの完成兵器提供条件として、対中共貿易に高度の制限を加えることについてのアメリカ側の要求にこたえたることは、日本経済に及ぼす影響きわめて甚大なるものがあるのであります。(拍手吉田総理みずからの言にもあるごとく、長期にわたる経済自立計画の上に自衛力を漸増したいという信念を何ゆえに一擲してこれを急激に改変せられたのでありましようか。また、かかるわが国の運命を決する重大なる日米交渉にあたつて、その会談責任者として何ゆえに池田勇人氏を選んでその衝に当らせたのでありましようか。吉田総理がみずから行われなければ、当然岡崎外務大臣が当るべきはずなのに、岡崎外務大臣はその器にあらず、その任にたえないというのでありましようか。それとも、池田勇人氏は、前の大蔵大臣であり、前の通産大臣でもあるので、防衛生産について日経連や経団連の諸君とも十分話合いがついて、アメリカ側防衛計画について的確なる判断ができると考えられたためでありましようか。今回吉田首相のとつた態度は、国会軽視もはなはだしいと言わなければなりません。かかる重大問題を——あたかも自分一個人の私的な使者として池田氏を渡米させたと言いながら、今になつて日本政府はその共同声明責任をとると言うことは、暴論まさにはなはだしいものと言うべきであると思うのであります。  今回の日米共同声明が発表されるまでに、池田ロバートソン会談は、数次にわたり、日本防衛力強化に関連し、MSA援助受入れの下相談を行つて来たのでありますが、われわれまたこれを重視していたのであります。なぜならば、去る七月九日、アメリカの上院歳出委員会において、ダレス国務長官は、日本に対するMSA援助保安隊十箇師団三十五万にすることであると答えて、日本に対するアメリカの方針を露骨に表明し、さらに、MSA援助に関する外交交渉における防衛力増強に関して、アメリカ政府日本政府との間に開きが大になるや、九月三日、ダレス国務長官は、ワシントンにおける記者団との会見において、日本政府がその保安隊に対してこれまでとつて来たものよりも、もつと力強い措置をとることをアメリカ政府は希望するものである、そして八千五百万の人口を持つ日本は、日本自身の安全保障のために多くの貢献をすべきものであると考えている、日本の直面する困難、やつかいな経済問題はわかるが、日本はそのような情勢にあるにかかわらず、きびしい耐乏計画をとり入れていないと言つているのであります。このことは、日本保安隊増強し、さらにダレス長官の言うように、わが国が、国内できびしい耐乏計画を採用する一方、わが国防衛に対してさらに強力な措置をとる用意のあることを証明するまでは、アメリカがいろいろな形で吉田内閣にかなりの圧力を加えることを意味するものであります。この九月三日のダレス国務長官の記者団会見の談話は、ひつきようするところ、日本防衛力増強の根源は、日本の人口が多いこと、そうしてアメリカは、日本人の人口の多い点から、日本保安隊員数をできるだけ多く集め、これに対して米国製の武器弾薬を供給することによつてアメリカ自国の安全保障に役立たせんとしておることは明々白々であります。(拍手)きびしい耐乏計画日本に望み、労働者、農漁民、中小企業者の犠牲の上に立つて防衛力強化の主張をすること、また明らかであります。このアメリカの強い要請に対して、漸増方針の吉田総理は、なぜ吉田・重光会談を機縁にしてこの既定方針を変更せられたのでありましようか。少くとも、吉田総理は、今日まで、ダレス長官の再軍備要請に対しては、消極的ではあるけれども抵抗して来たと思われる節もあつたのに、これを全面的に承認し、ダレス国務長官の言う要請に屈服いたしましたことは、私たち、今回の吉田総理の処置はまことに平和国家建設のために憂慮にたえない次第でございます。(拍手)この際、吉田総理は、ぜひ、その原因となつた八月初旬における吉田・ダレス会談内容はいかなるものであつたかを明確にされるよう答弁を望むものであります。  今回の共同声明に至るまで、吉田総理は、池田ロバートソン会談は、池田勇人氏の資格が吉田個人の使節であるから、日本政府として何ら発表すべき義務を持つているものでもなければ、吉田内閣としては何らの拘束を受けるものではないと、しきりに各党の代表質問に答えておりましたが、三十日この共同声明が発表になるや、十一月一日の予算委員会において、吉田総理はこういうように答弁をしているのであります。この話し合つたこと、すなわち共同声明については責任をとる、あるいは実行に移すという努力はいたさなければならないのであります、とにかく池田特使が言われたことは日本  政府としては尊重する、と言つておられるが、まさにこの共同声明は、日本政府責任をとり、また実行に移すことの努力をしなければならないように政府自体を拘束していることは、この一事をもつても明らかでございます。従つて新木駐米大使は、五日ロバートソン国務次官補を訪問し、日米共同声明内容日本政府同意する旨の日本政府意向を正式に伝達したことは、さきの総理の予算委員会の答弁によつても当然でございます。しかるに、ただいま岡崎外務大臣は、新木駐米大使の回答は、ただ東京会談を開くことに同意しただけであるという詭弁を弄しておりますが、しかし、この共同声明中には、明白に「日本防衛力及び米国の軍事援助に関する諸問題については、具体的な了解に達する目的をもつて近く東京において両国政府の代表が更に協議を行うこととなつた。」とあるのであつて、この東京会談とは、この共同声明における一般的了解事項確認の上に行うのであつて従つて東京会談を行うことに同意した以上は、政府機関を通してやつた以上は、今日まで池田使節が個人であろうがなかろうが、池田ロバートソン共同声明日本が新たに認めたことになるのであつて、認めた以上は、当然国会にその全貌を明らかにすべきであると考えるのであります。(拍手)  さらに、私は、この共同声明中における一般的な了解事項確認の上に立つて東京会談を開くことに同意した以上は、去る十月十九日日本側よりアメリカ側に渡された覚書の内容、十月二十二日アメリカ側より日本側に渡され干た覚書の内容は、ともにこの際公表していただきたいのであります。なぜならば、十月二十二日の覚書は、これはアメリカ政府より正式に池田特使に渡されたのであります。十月十九日のものは、池田特使であつても、本日の岡崎外務大臣の発表のように、この東京会談同意したという以上は、この一般的な了解事項を認めた以上は、十月十九日池田特使よりアメリカ側に渡した覚書につきましても、同時に認めたことにほかならないのであります。従つて、この両方の覚書の内容における重要なる食い違い点である兵力量の問題、あるいは経済援助に関する問題、MSAによる軍事援助額及び援助期間の件、域外買付の件、あるいはその他につきましては明確にされるように私は希望いたすものでございます。  さらに私が吉田総理にお尋ねしたい点は、この共同声明中には、明確に「日本の陸海空の部隊装備に要する主要品目を提供しその編成を援助すべきことを申し出、近く具体的の了解に達する目的をもつて東京会談を行う」とあり、この一般的了解事項についてお尋ねいたしたいのであります。吉田総理は、今日の保安隊警備隊の組織を根本的に改革強化して、陸海空の三軍を編制せんとすることは明らかでございます。これは、ただに保安庁法を改正して保安隊を直接侵略に対抗せしめるばかりでなく、明らかに再軍備と断定せざるを得ないのであります。木村保安庁長官吉田総理がさきの予算委員会言明したことく、保安庁法を改正し、これが時期は次の通常国会であると言つているが、これは、ただ単に保安庁法の改正にあらずして、現実的には憲法改正と同じ結果になると考えられるのであります。もしも、保安庁法の改正が陸海空の三軍の編制までできるというならば、明らかに憲法違反であると思うが、これに対する総理の所存をお尋ねいたしたいのであります。  次にお尋ねいたしたい点は、吉田総理は、やはり近代戦争を遂行し得る戦力、すなわち他の国も場合によつては侵略し得るような大きな規模を持つに至らねば憲法を改正しないと言つておられるが、今でもなおそう考えられるのか、明確に答弁をいただきたいのでございます。もしも、吉田総理が、近代戦争を遂行し得る戦力を保持する軍隊となつた場合に初めて憲法改正をすると言うならば、日本の現下の経済情勢から言つて、その大体の時期はいつごろであるか、お尋ねをいたしたいのであります。  次に、私は岡崎外務大臣にお尋ねしたいが、外務大臣は、今回のMSA援助に伴う池田ロバートソン会談については、つんぼさじきに置かれたのではないかと私は思うのであります。三十一日の本会議における戸叶議員の質問に答えて、防衛計画MSAの必須の要件ではないと言つておきながら、一昨日かの参議院外務委員会における答弁は、MSA援助受入れの前提となる警備計画防衛計画は、おそくとも十二月上旬までにはきまる、MSA協定は年末年始ごろ調印の運びとなろうと言つておるが、これは、今回の日米共同声明中にある防衛計画東京会談でまとまり次第MSA調印の運びとなるということであつて、まさにMSA援助を受入れるためには、日本防衛計画が必須の条件であるということを私は物語つていると思うのであります。(拍手)  次に、岡崎外務大臣は、MSA援助は軍事援助にあらずして経済援助であると六月二十六日言われましたけれども、一体、今日の段階において経済援助と思われるものは、相互安全保障法五百五十条に基く小麦の買付に対する日本の経済援助をさしておられるかどうかという点でございます。アメリカから五千万ドル、約五千万トンの小麦の供給を強制的に約束させられ、しかもカナダ小麦よりもトン当り十ドルも高く、アメリカの最高価格で買わされ、国家経済では輸入食糧補給金を増加せねばならないし、しかも積立ての円は日本の自由かつてにならないことで、何で経済援助でありましようか。岡崎外務大臣の明確なる答弁を求めるものでございます。(拍手)  どう考えても、岡崎外務大臣が六月二十六日の国会において、MSA援助受入れに伴うところの外交往復文書をもとにいたしまして発表したその内容は、まさに今日国会を欺瞞する多くのものがあるのでございます。従つて岡崎外務大臣は、今日までのMSA外交交渉中間報告をぜひこの機会に本会議において明瞭にされたいのでございます。最後に、私は、木村保安庁長官にお尋ねいたしますが、MSA援助受入れの前提条件となる防衛計画をぜひこの際明らかにされ、保安庁法の改正に伴う陸海空の三軍編制内容についてもぜひ発表されたいのでございます。  以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)   [国務大臣緒方竹虎登壇
  18. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  最初に、対中共貿易について池田ロバートソン会談が高度の統制を要求しておるという御指摘でありましたが、これは朝鮮問題が政治的に解決するまでということでありまして、朝鮮の問題が政治的に解決いたしますれば、国連の決議も撤回されることもあるいはあろうかと考えますので、それまでの間、国連協力を約しておりまする日本としては、このこともやむを得ないかと考えます。日本といたしましては、中共との貿易関係もできるだけ推進して参りたいのでありまするけれども、同時に、国連協力の立場はやはり尊重すべきであると考えております。  それから、総理個人的代表であるにせよ、個人的特使であるにせよ、どういうわけで池田君を選んでアメリカにやつたかという御質問でありましたが、日本は、日米安全保障条約によりまして、防衛力の漸増を、約束ではありませんが、アメリカに期待させる程度のあるとりきめをしておりますので、それにつきまして、その後いろいろ情勢の変化とともに、日本に対して日本防衛力を急速に増強することを案ずるかのごときいろいろな情報がありまするので、日本の国情、特に経済財政の実情をよく知つておりまする池田君を、総理の個人的な代表として、その説明のためにやりましたことは、私何らふしぎなことではないと考えております。  それから、八月初旬のダレス談話について御質問がありましたが、これは吉田総理とダレス国務長官との間の個人的の対談でありまして、何人もその間に介在しておりませんので、私は断片的に総理から伺つた程度のことでありまするが、これは何ら日本防衛力増強を強制するがごとき口吻のものではなかつたのであります。(「したよ」と呼ぶ者あり)そうではございません。  それから、吉田・重光会談の結果、政府防衛力漸増の方針を急激にか、えたじやないかという御質問でありましたが、私どもの解釈といたしましては、この覚書は何ら政府の従来の方針をかえたものとは承知しておりません。  それから、陸海空軍装備アメリカ援助するということ。これは、日本自衛力増強を促進して参りまして、ある時代に陸海空軍を備えるような場合に至りましても、アメリカがその援助の手をゆるめない、しかもそれはアメリカ国会の許す範囲においてゆるめないということのように私どもは解釈いたしております。  それから、総理は、戦力というものは近代戦争を有効適切に遂行し得る力であるということを言うが、それは、言葉をかえれば、侵略戦争にたえる能力である、従つて日本は侵略戦争を考えておるのではないかというごとき御質問でありましたが、これは、わが平和憲法が存在いたしまする間、憲法の前文にもありますような趣旨から言いまして、かりに近代戦争にたえる戦力を持つことがありましても、侵略戦争に出ることは絶対にあり得ないと考えております。  それから、その憲法改正の時期はおよそいつごろかという御質問でありましたが、これはまだ申し上げるところではございません。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  19. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ほど御説明したことを繰返すようでありますが、共同声明なるものは、その内容から見ましても、双方意見の打診でありまするし、また何ら協定に到達したという種類のものでありませんから、共同声明は追認するとかしないとかいう問題は出て来ないのでありまして、その中で出て来ますのは、今後東京会談をするかどうかという問題であります。そこで、政府は、東京会談することはさしつかえないと考えましたので、これに異議はないということを申したのであります。従いまして、共同声明がそのまま政府を拘束しないということは、先ほど申した通りであります。また、東京会談同意したというだけの意味でありまして、声明以外に秘密の了解等がないことは、これまた前に申した通りであります。  なお、MSAの問題につきまして私が申したことは、当時私とアリソン大使との間の手紙の中にはつきり書いてあります通り日本としては経済的安定が防衛強化の先決条件である、こう申したのであつて、言葉がごたごたしますが、経済援助が先決条件だと申したのではないのであります。つまり、日本の経済状態を無視した防衛力増強ということはできないのだ、これは私の手紙の中にはつきり書いてありまするから、もう一ぺん読んでいただきたいと思います。(拍手)従いまして、五百五十条にある小麦の問題は、これは経済的援助であるかどうかは御判断にまかせますが、要するに、普通ならばドルで小麦を買う場合に、今回の五百五十条によりますれば、ドルを使わないで日本円で買うということになるのであります。従つて、外貨においてははなはだ都合のいいことになりますが、アメリカの小麦は、ほかの小麦に比して高いのであります。従つて、ドルを出しても安い小麦を買おうか、それとも円であるから高い小麦でも買うか、これは今後交渉してみた上で、ほかの方のマーケツトの状況も見てきめる問題でありまして、五百五十条の話をすることは何らさしつかえないと思います。むしろ、しなければならない。できるだけ日本に都合のいいような状況で小麦等を入手することが必要でありますから、あらゆる方法を考えるのは、これは当然であります。  なお、MSAの問題につきましては、当時私とアリソン大使との間で交換しました文書の範囲は全然出ておりませんから、さよう御承知を願いたいのであります。(拍手
  20. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 木村保安庁長官の答弁は、出席せられておりません、ただいま参議院に出席中でありますから、適当な機会に願うことにいたします。  松平忠久君。     〔松平忠久君登壇
  21. 松平忠久

    ○松平忠久君 私は、ただいま外務大臣から説明がありました池田ロバートソン会談内容並びにこれに関連する防衛関係の諸問題について、日本社会党を代表いたしまして、数項目にわたつて質問をいたし、政府の所見をたださんとするものであります。(拍手)  吉田総理は、去る第十六回特別国会において、六月十九日、有田八郎議員の質問に対して日本防衛については自分は百夜心痛しておるが、保安隊の数的な増強を考えていない、保安隊は現在の人数でいいと思つておるから、それ以上人数をふやす考えはなく、ただその質的の向上をはかりたい所存であると、率直に答弁をされております。いつもの総理大臣と似ずに、このときの総理の答弁は、内容も比較的懇切丁寧であり、態度もいんぎんでありました。おそらく、吉田、有田、この御両人の間柄から言つて、私はそのときの総理の答弁はほんとうに正直な心情を吐露したのではなかつたかと思うのであります。ところが、わずか二箇月ほど過ぎて、ダレス国務長官、ノーランド共和党上院議員が相前後してわが国を来訪し、総理に会つてから、総理の心境に重大なる変化を生じたのでありまして、緒方副総理の北海道における談話、吉田・重光会談池田特使の派遣等が、その変化を物語つておるのであります。一体、いかなる理由に基いて総理はその心境に変化を来し、国会において、国民の代表を前にして率直に吐露した心情を、国会外において、いかにしてかえるに至つたのであるか。わずか二箇月の間に、世界の情勢にいかなる変化があつたか。いな、むしろ戦争の危機は一時よりも緩和されつつあることは、チヤーチルを初め世界の政治家が認めており、吉田総理もまた、去る四日の参議院において、戦争の危機は緩和の傾向にあるということを率直に認めております。従つて、何ゆえに総理が、国会では保安隊の人数をふやさないと言いながら、数箇月後において保安隊をふやすという心境になつたか。おそらく、これは、大多数の国民が納得し得ざるところであると信ずるのであります。(拍手総理は、この国民の疑惑を解くために、この際、この議場を通じて、全国民に対して、わずか数箇月にして、保安隊の人数を増強し、保安隊の名称を自衛隊と改め、保安庁法を改正しなければならぬというふうに至つたその理由を、過般の有田議員に対する答弁のこどくに、懇切丁寧に、率直に釈明することこそ、国民的要望であるのであります。(拍手)私は、ここに国民にかわつて、その釈明を強く要求するものであります。  総理は、かくして節を屈して保安隊増強を決意し、池田特使ワシントンに派遣して、防衛力増強の裏づけとして経済援助の懇請をいたしました。しかし、十月二十二日、池田特使は、新聞記者の会見において、私は米国政府が今のところ日本が必要とする経済援助を与える準備のないことを知つて失望しておると語つて、さすが放言居士の池田勇人君も、このときは泣き言を述べておるのであります。事志と違つたことを暴露しているのであります。十月三十日に発表された池田、ロバートソンの共同声明は、日本自衛力増強のための努力、米国のこれに対する装備の提供と部隊編制援助、五千万ドルの農産物の供与、中共貿易緩和の協議、ガリオア援助資金の早期返済等の約束、外資受入れのための日本関係法規の緩和等をあげておることは当然でありますが、さらに、どういうわけであるか、四千万ドルの火力発電の借款、六千万ドルの綿花クレジツトに言及をしております。これをいかなる理由で麗々しくここにつけ加えているのであるか。何ゆえに、木に竹を継いだように、こんなことまで言わなければならなかつたのか。見ようによつては、池田渡米の主目的たる経済援助の懇請に失敗し、この失敗したことを国民にあからさまに知らせたくないというので、わざわざこのMSAとはあまり関係のないことまで持ち出して共同声明の中につけ加えることを米国側に懇請して、国民の目をごまかそうとしたのか。(拍手)あるいは、池田の点数かせぎの心理がここにも働いているのか。いずれにしても拙劣なる小刀細工であつて総理は明らかにこの特使の人選を誤つたのであつて、まことに哀れと言うもおろかなる結果となつたのであります。(拍手)  それはともかくとして、ここに奇怪しごくなことは、吉田政府は、池田特使をもつて首相個人の使いである。何ら公の使命を帯びたものではないとして、この国会に数次にわたつてこれを言明し、個人の使いであるから、折衝の内容とそのいきさつを国会に説明する必要はないと言つて、議員の質問に対して肩すかしを今日まで食らわしております。一体、子供の走り使いではない。いやしくも大蔵政務次官を随員として連れて行つております。しかも、会談には武内公使も列席している。相手の国務次官補ロバートソンは、明々白々たるアメリカ政府の代表であります。彼はアイゼンハウアー個人の使いでは断じてないはずである。されば、米国でも、この数日来の日本政府国会における言明をふかしぎに思つて、開き直つて日本政府の釈明を求めて来たのではないかとも思われるのであります。そうでなければ、一体、何ゆえに政府は、去る四日新木大使をしてロバートソンを訪問させて、池田使節団の折衝に関するアメリカ側の好意を感謝し、共同声明については日本政府は全面的に同意した旨を伝えしめたのであるか。また、個人の特使であるならば、ただいま、この議場において、何がゆえに総理大臣みずから出席してその釈明をしないのであるか。(拍手)何がゆえに外務大臣にその弁明をまかしているのであるか。まことに頭隠してしり隠さず、あてとふんどしは前からはずれる。政府は、今まで国会議員をだますことはできても、米国政府をだますことはできなかつたのであるか。いかに秘密独善外交とはいえ、国会議員が、与党の諸君も含めて、かほどに軽視侮辱されたことは前代未聞であります。(拍手国民の代表の前で、ぬけぬけとうそをついて、それがすぐ外国からばれて来ても、しやあしやあとしている。それで一体国の政治ができるかどうか。国民を率いて行くことができるかどうか。一体、かくまでして、国会ですぐばれるようなうそを言つて国民の代表をつんぼさじきに閉じ込めておかなければ日本の外交はできないと思い込んでいる吉田総理の存在は、今日日本国民にとつては一大不幸であります。(拍手)  吉田総理は、今日まで、忠君愛国の至誠をもつて国政を担当して参り、自分ほどの愛国者はないと、ひそかに自認されておるように聞いております。われわれも決して吉田総理が私利私欲のためにいつまでも総理大臣のいすに恋々としているのだとは思わない。しかし、おれが一番愛国者なんだ、おれが一番愛国心を持つた政治家なんだと思つたら大間違いであります。今日、国を愛さない政治家がありましようか。ただ、古い形の愛国者と新しい形の愛国者との相違はあります。しかし、民主主義のもとにおいて、政治家としては、国民とともに憂え、国民とともに楽しむの精神を、またその態度をもつてしなければならないことは言うまでもありません。(拍手政府は何ゆえに国家の大事を国会において説明することをしないのか。何がゆえに池田特使交渉内容の真相を伝えないのか。そもそもまた何ゆえに、池田勇人が単なる個人の走り使いであるということを主張して、そうしてその交渉のいきさつ、内容を説明しないのか。私は、この国会において、政府責任ある説明を求めるものであります。  次に承知したい点は、今度の交渉から共同声明発表に至るまでにおいて、防衛力増強について日米間にかなりの意見の相違があつたと伝えられることであります。自衛軍の人数にしても、米国側は、たとえば三十二万五千あるいは三十五万と言い、これに対して日本は、十八万とか二十万とか提示しております。一体、日米政府あるいは池田、ロバートソンの防衛力に関する見解の相違というものはどういうものであるか。日本の再軍備は今日アメリカから押しつけられているという印象を大多数の日本人が持つております。この意見の相違は、従つてきわめて重大であります。私は、これは秘密事項であるというふうに政府がおつしやるならば、秘密会において、われわれ国会議員だけにでも、率直にこの意見の相違のいきさつを御報告願いたく、特にこれをあわせて要望するものであります。  次にまた、これに関連して米国から要望されておるガリオア資金について早期返済の件がありますが、これについてお尋ねいたしたいと思います。これは、当時、国会国民ももらつたものと思つてつたのではないか。それが証拠には、国会で数回にわたつて感謝決議までいたしております。国会議員も、その当時の方々は人がよかつたのか、よくできた人たちであつたのでしよう。一点の疑いもなく、もらつたと思つて、幹部から言われるままに、全員起立して感謝決議をしたでありましよう。ところが、あれは実は貸したのだというわけで、国民はびつくりしてしまつた。何も知らない間に国民は莫大な借金をしてしまつたのだから、驚くのも無理はありません。そもそも政府は、このガリオア資金の援助を受ける初めにおいて、あるいはその途中において、これは当然返還すべきものと心得て受けられたかどうか。当時のことを思い出して御答弁を願いたいと存じます。  また、もしこれを返済するのであるというならば、初めから期限だとか利息だとか、そういう話も必ずあつたでありましよう。一体どんな条件であつたか。また、総額は一体幾らであるか。聞くところによると、日本側の計算では二十一億ドルと言い、アメリカは十四億ドルと言つておる。貸した方の言い分が借りた方の言い分より少いというのもへんな話でありますが、いやしくも国家国民の経済に重大なる影響を持つ債務である以上は、借りた総額や利息のことははつきりしているはずであります。そもそも国の債務は、憲法第八十五条の規定によつて国会の議決を経なければならぬのであるが、一体その決議があつたかどうか、あわせてこれも伺いたいのであります。  また、共同声明にある通り防衛計画を立てるようにというアメリカからの申しつけであります。この数日来の国会における問答を聞いておると、政府は、憲法の範囲内において、戦力に至らざる軍隊をもつて防衛計画を立てるということを言つておる。戦力に至らざる軍隊で、一体どういう防衛計画を立てるつもりであるか。防衛とは外敵のための防衛と思うが、戦力に至らざるところの部隊防衛というのは一体どういうものであるか、主管大臣のその計画を承りたいのであります。防衛精神のないときに、その者によろいを着せて、それで防衛力ができると思うかどうか。防衛精神というものは、一体どうやつて涵養するつもりか。木村長官は、外敵の侵略があれば自分も立ち向つて行くという、たいへん勇ましいことをおつしやつております。今日、多くの日本人は、戦争にはこりごりしております。靖国神社にまつるとか、あるいは君の御ためだといつても、愛国心がないわけではないでしようが、身を殺して国家国民のために尽すという心境にはなつておりません。幸か不幸か、これが偽らざる実情であります。この人たちを、生命を犠牲にして、国のために尽すという、そういう心境にさせることは、並たいていのことでできるものではない。大東亜戦争の悲劇をまざまざと見ておるその記憶を忘れんとしても忘れられるものではありません。一身を犠牲にして国のために死んだあとの家族は、一体だれがめんどうを見るのか。今日の青年は、自分の両親を養うことすらなかなか困難であります。いわんや、自分がないあとに家族をどうして行くか。これらの青年の勇気を振い起す原動力というものは、その家庭の生活の安定をはかつて、まず青年が命を犠牲としても、個人々々の家庭がまずまず最低生活ができるというところまで、一般の経済状態の改善をはかり、他方、社会保障制度を充実さして、生活の保障を確保することが先決問題であります。(拍手)かくてこそ、生命を犠牲とするような愛国心もできるでありましよう。政府は一体どうして日本人の防衛精神を涵養するつもりであるか。防衛精神の涵養に関する政府のお考えがあるならば、その方途を説明していただきたいのであります。  なお、最後に私は一言したいと思います。十月二十九日、開会式における天皇陛下のお言葉であります。陛下は「わが国運の前途に予想される幾多の困難を乗りこえて、永遠の平和を念願する日本憲法の精神を堅持し、国運を隆盛に導いて、いくためには、さらに多くの努力を要します。わたくしは、ここに、全国民諸君がいつそうの決意をもつて、文化的、民主的国家の建設に努力し、また国際間の平和と、民主主義の発展とに寄与することを望むものであります。」と仰せられております。なおまた、「全国民憲法の諸原則をよく守り、互に協力して各自の最善を尽すことを切に望みます。」と仰せられておる。この言葉は、吉田総理初め閣僚の諸公は何と一体考えられておるか。あの日本始まつて以来の未曽有の大悲劇、大東亜戦争の終結に際して、一身を犠牲にして万世のために太平を開かれた陛下のこの言葉であります。いかなる政治家といえども国民のためにあしかれと思つて政治に当る者はないでありましよう。ただ、当初における観測を誤り、気がついても意地を張つて反省を加えないから、そこに悪い結果が出て来るのであります。独善、独裁、無反省のために国家、国民を誤るのであります。今や、政府は、この平和憲法を擁護する方向に向うのであるか、または平和憲法を改正せんとする方向に向うのであるか。おそらくこの平和憲法を改正せんとする方向に一歩向わんとしておる。この重大なる岐路に現在立つておるのであります。一歩誤れば百歩を誤ります。われわれは、この永遠の平和を念願する日本憲法の精神を堅持して、そうしてこの憲法の各諸原則をよく守り、われわれの最善の努力を尽す、こういうことがわれわれの希望であります。  私は、この陛下の言葉を引用して、政府に対して深甚なる反省を促してこの質問を終るものであります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  22. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えいたします。  去る十六国会におきまして吉田総理大臣が有田八郎君の質問に対して答弁いたしました言葉を私はここに記憶しておりませんが、しかし、察しまするところ、それは人数の増強よりも質の向上を考えたいという意味だつたろうと考えます。と申しますのは、防衛力の漸増ということは、日米安全保障条約の中に、すでに一種の約束をしておるところでありまして、そうでなくとも、本来独立国であります以上、みずから守るのが当然でありまして、外国の軍隊によつて防衛に当つてもらうということは、何と申しても変則であります。特に、最近に至りまして、アメリカ軍も、いろいろな事情から、できるだけ漸減したいという希望がありますので、それに即応いたしまして、わが方におきましても、漸増と申しますか、増強することは一つの義務であると考えるのであります。そういう意味から、総理大臣が全然防衛力の漸増ということを無視した言葉を発していようとは考えられません。  それから、池田君を個人特使としたことについて、人選を誤つた云々というお言葉がありましたが、私はそう考えません。これにつきましては、先ほど申し上げましたので繰返しませんが、池田君からの報告日米共同声明が全部であります。おそらく、池田・ロバートソンの間の会談は幾日かにわたりましたので、いろいろな問題を話されたろうと思いますけれども、これを要しまするに、双方の国情をよく説明したのでありまして、結局そのせんじ詰めたものがあの日米共同声明であるのでございます。それ以上にここで説明申し上げるほどのことは、政府といたしても何も承知いたしておりません。  以上お答え申し上げます。     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  23. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えいたします。  四千万ドルの火力借款、六千万ドルの綿花借款等をあそこに入れたのはどういうわけか。これは池田君が帰つてみないとわかりませんが、おそらく経済自立に関する話合いをいたしておるのでありますから、こういう借款の問題もその間に非常に重要な関係があります。従つて、これが入つたものだと想像いたします。  なお、何ゆえこの新木大使をして池田君との話に丁寧な話をしてくれたことを感謝させたかというお話でありましたが、これは個人の代表でありますので、これに対し国務次官補は多大の時間を費して話してくれたのでありますから、これに対して好意を謝したのであります。  なお、池田君が個人の代表でありまするからこそ、政府としては、その話合いの中の東京で今度会談をするということについて同意をするということを国務省に申し入れたのでありまして、もしこれが公式の代表の話合いならば、その必要はなかつたはずであります。そこで、松平君がしきりに、そういうことを言うのは、何か国民を侮辱するとか欺瞞するとかおつしやいますが、政府としては、これ以上のことがないのは、今緒方副総理から言われた通りでありまして、どうぞ政府の申すことを信用してもらいたいと思います。  なお、この防衛力について、何かアメリカ側からしきりに強要されておるようなことをおつしやいますが、防衛力増強の時期と態様とは日本政府の決定するところであるということは、アメリカ政府もはつきり書面で申しておるところでありますから、これを信用されたいのであります。  なお、ガリオアについて感謝決議をしたが、どうだという話でありますが、あの当時のことを松平君こそ思い出していただきたいのであります。当時、世界の他のどの国であつても、かりに貸してくれても、食糧その他をもつて日本援助する国がありましたろうか。おそらく、私は、かりに借りたものであろうと何であろうとも、あの急場をしのぐだけの援助をしてもらつたことについては、感謝をするのが当然のことだと思うのであります。(拍手)なお、これにつきましては、たびたび申しますように、政府としては債務と心得ておりますが、まだこれが債務だと言つたことはないのでありまして、要するに、この総額であるとか、その返済の条件であるとか、期日であるとかいうことは、今後東京で話してみてきまるのであります。きまりました上は、これを国会提出いたしまして、国会承認を求めたときに初めて債務と確定するのであります。(拍手
  24. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 木村武雄君。     〔木村武雄君登壇
  25. 木村武雄

    ○木村武雄君 私は、自由党を代表して、以下数点に関し吉田総理大臣質疑を試みたいと思います。  池田特使吉田首相個人の特使であつて政府の代表ではない、池田ロバートソン共同声明池田、ロバートソン個人の声明であつて何ら政治的拘束力なしと答弁して、衆議院の質問を苦しくも切り抜けた現政府は、三日間の会期延長でもろくもその馬脚を現わしましたことは、吉田内閣にとつては醜態でありますが、国民にとつては、むしろ望外の喜びであると存ずるものであります。(拍手)  吉田首相の議会軽視は今に始まつたことではありませんが、昨今特に病的となつて、その危険はまさに国民化せんといたしております。岡崎外務大臣は、昨日、政府訓令東京会談のみと参議院において答弁されておりますが、もしもそれが真なりといたしますれば、それだけの結論に四週間を費した池田勇人氏は、けだし低能の点においては代表的な人物であると私は思います。いな、それだけにあらずして、特にこの人を選んだ吉田首相の能力もまた疑わざるを得ないことになります。(拍手)こうした答弁をぬけぬけとやり得られる岡崎外務大臣は、けだし幸福な人であります。池田勇人氏は、昨年の議会で、国民の代表機関でありまするこの衆議院において不信任され、野に下つた一議員であります。それが、民主政治の本家とも言うべき米国に、いな、欧米各国に、軍国主義より民主政治に更生した日本の、しかも内閣総理大臣特使として派遣されたこと自体が、議会軽視の証拠であると私は思います。  さらに、衆参両院において各議員より池田勇人氏の資格が詮議されたにもかかわらず、吉田首相個人の特使なりと強弁して、なおかつこれに日本の運命にも関する重要問題を協議せしめて、しかも答弁後数日もたたない今日、これをそのまま政府責任に切りかえたことが、議会軽視の第二の証拠であると私は思います。  議会終了日は五日と予定しておりましたが、その翌日の六日にこの切りかえを断行して新木大使訓令したことがその第三であります。  海外派遣の各議員に対しては特別国会開会のために急ぎ帰るよう指令を下しながら、その指令を吉田総理大臣みずからが無視して、米国との会談を終了してなおかつ彼を欧州にまわし、臨時国会への出席を回避せしめたことが第四であります。  吉田首相国会で選ばれた総理大臣でありまするが、首相個人の特使とはいえ、国民が重大関心を抱いております日米会談内容は、いち早くこれを国会報告すべき信義があるにもかかわらず、それをきらつて、開会中の国会にその内容報告しなかつたことがその五であります。  かく議会を無視してやつた行動に成功しようはずはありません。吉田首相は、池田特使をことさらに政府の代表とせず、吉田首相個人の特使とされまする理由は、しかも会談内容報告する必要なしと主張されまする理由は、さらに、会談を終つて日本に呼び返さずに、彼を欧州にまわした理由は、政府の宣伝に反して、ことごとく失敗した結果なりとの疑惑を国民に深めつつありまするが、これに対する政府の所見を承ります。  さらに、吉田首相は、身いやしくも総理大臣でありまする以上、国民の好みをおのれの好みとなし、国民の趣味をおのれの趣味となしてこそ、初めて民主政治の代表者たり得る資格を持つものであります。たで食う虫も好き好きと称して、議会で不信任されだ者をおのれの特使として外国に派遣いたしましたが、たで食う虫はいやな虫であります。それが吉田首相の好みとすれば、その好みは悪い好みであります。趣味とすれば悪趣味であります。その結果が、池田ロバートソン共同声明のうち、政府の認めるものは東京会談のみと言わざるを得なくなつたと思いますが、会談の結果は、政府の説明のいかんにかかわらず、完全に失敗したと判断しなければなりません。しかも、吉田首相個人の特使なりという池田特使の取扱つた内容は、その一つずつを取上げてみましても、日本の運命に関する重要問題であります。それを個人たる特使が取扱つて、失敗して、なおかつ共同声明を発するに至つては、僭越もまたはなはだしく、その罪は国民に対してはまさに万死に値すべく、官吏であれば懲戒免職に値するものでありますが、これに対する政府態度を承ります。  岡崎外相の答弁は機械に似て一見みごとでありますが、その足跡は答弁を裏切つた事実の連続であります。ゆえに、岡崎外務大臣の答弁のいかんにかかわらず、池田・ロバートソンの共同声明は、政府訓令に置きかえられて国民に政治的拘束力を持つものと判断しなければなりません。何といつても、共同声明の最重要事項は日本防衛の問題であります。日本防衛は、単なる吉田内閣の課題ではありません。国民全部の課題であります。ゆえに、この課題は、国民とともに解決すべきものであつて政府のみが独断専行すべきものでは断じてありません。しかるに、吉田内閣は、国民とともにこの重要課題を解決せんとせず、独断専行して、なおかつこれを国民に強要せんといたしております。ゆえに、これをこのまま放置すれば、政府国民から遊離して、結果は、百万の大軍を持つも防衛の目的は達成し得ず、国を誤る公算きわめて大であります。(拍手)自衛は吉田内閣の自衛ではありません。国民の自衛であります。ゆえに、国民の協力なくして自衛の目的を達成し得ざることは理の当然であります。そのためには、国民の代表機関である国会で自衛の問題を十二分に協議検討して、しかる後、外国に援助を求める必要があれば、これを求めるの順序を踏むべきでありますが、この段階を踏まずして、なおかつ外国に援助を求めたるは、まさに独立を売るにひとしく、軽率と言うべく、暴挙と称すべく、けだし国会軽視の最たるものであります。それでなおかつ自衛の大目的を達成し得られると政府は確信されますかどうか。確信されまするならば、その根拠を承りたいのであります。  政府は、池田ロバートソン会談の成果は米国の経済援助にあると、ことさらに宣伝、主張されておりまするが、その内容は、各議員の主張されましたるごとくに、相互安全保障法第五百五十条の規定に基き、単に農産物を日本に輸入して、その国内における売上げ代金たる円貨を日本防衛生産及び工業力に使用するものにすぎないのであります。しかも、その金額は五千万ドルを目途としておるのでありますが、これは純然たる経済援助ではありません。いやしくも経済援助である以上は、経済援助の項目から援助を獲得してこそ初めて成功と称し得るも、これだけでは、ある意味においては米国の軍事的経済支配を予約するにひとしく、恥ずべき行動であつて、断じて誇るべき何ものもないと思いますが、これ以外の経済援助がありましたならば承りたいのであります。  さらに大きな失敗は、松平議員も申し述べられました通りガリオア援助早期解決を強調されたことであります。ガリオア援助につきましては、その財政措置において国民の負うべき義務ではありません。それをなおかつ義務なりとして認めただけでなく、早期解決を強調されただけでも、すばらしい失敗であつたと思いますが、これに対する政府の所見を承ります。  防衛問題に失敗し、経済援助に失敗し、なおかつガリオアの早期解決を強調されたがために、政府訓令は、岡崎外務大臣の答弁のごとく、単に東京会談のみと局限されたと思いますが、しからずとすれば、その理由を承りたいのであります。  今回の政府態度に見るまでもなく、ことごとくの態度を総計すれば、そこにはみじんも政治の聡明さを発見するわけには参りません。特に、自衛を強調して保安隊米国的強化を急ぎ、外交の失敗を武力を持たぬものの当然の結果なりとするがごとき態度、口吻は、聞いて聞き苦しく、見て見苦しく、醜態の限りであります。(拍手)新しき日本は、たとい力ありとも、その力にたよらず、武力ありとも、その武力を発動せずに、よく政治の聡明さによつて民族の権益を保障し、国家の進路を開拓すべきものであると確信いたしますが、これに対する政府の所員を承りたいのであります。(拍手)  特に吉田総理大臣に申し上げたいことがあります。吉田総理大臣は、政局安定を求めて、なおかつこれを発見されずに苦しんでおいでになりますが、道をもつてすれば、求めて得られないものではないのであります。斉の宣王が孟子に問うて曰く、隣国に交わるに道ありやと、孟子こたえて曰く、あり、ただ仁者のみよく大をもつて小につかえることをなす、ただ智者のみよく小をもつて大につかえることをなす、大をもつて小につかえる者は天を楽しむ者なり、小をもつて大につかえる者は天をおそれる者なり、天を楽しむ者は天下を保ち、天をおそれる者はその国を保つ、とありますが、国家の権力を双肩にになつておりまする吉田総理大臣態度は、かくのごとくきわめて謙虚でなければなりません。しからざれば、国の統制を乱す者は吉田総理大臣個人なりと言つても、決して言に過ぎたるものではないと確信するものであります。  以上の忠告をつけ加えて、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  26. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 木村君にお答えいたします。  池田特使の渡米は、ある特段の協定を結ぶために参つたのでないのでありますので、成功という言葉が当るかどうか知りませんが、いずれにいたしましても、非常に有益であつたと考えております。それは、戦後の日本の経済的、社会的の復興の現状がどうであるかということを十分に説明する機会を得た、そうしまして日本アメリカとの間に一層の理解を深めたことは、確かに有益であつたと考えるのでございます。それのみならず、日本アメリカの間には、御承知のようにいろいろ重要な問題がありますが、その諸問題について双方一致した考え方をしておるということを確かめ得たことも有益であつたと考えております。  最後に、政局の安定につきまして、孔子でありますか、孟子でありますか、言葉の御引用がありましたが、大をもつて小に仕えるものはよく天下を保つというのは、今日政府がもつぱら政局を乗り切るために妥協しておるのがすなわちそれでございます。     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  27. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 木村君の説には十分傾聴いたしました。防衛問題につきまして、これは国民の問題であるから、十分国民にも知らせるべく、国会にも十分報告すべきである、こういうことは、私もまつたくその通りと考えております。前国会におきましても、本国会におきましても、防衛問題についてはずいぶん長い間の討議が費されたことは御承知の通りでありますが、今後といえども政府はこの問題を何ら避ける意思は持つておりません。しかしながら、共同声明に現われましたことは、防衛問題といい、その他の問題といい、結局東京会談してみないと具体的には何一つきまらないような性質のものでございます。  また、経済援助はどうかというお話でありまするが、このMSAの五百五十条による小麦の買入れは、経済的の援助にはなりましようが、普通にいう防衛支持援助のごとき経済援助とは私は考えておりません。MSA交渉にあたりましては、でき得る限りいわゆる防衛支持援助、経済援助の方も得たいと努力はいたしましたが、これは今年度はどうも困難であるように考えますのは、すでに御報告した通りであります。できますれば、来年度においても、こういう種類の援助も得たいと考えております。五百五十条の小麦の買入れにつきましては先ほど申した通りでありまして、これがはたして非常に日本の利益になるかどうか、これは今後交渉いたしまして、その確信ができますれば協定を結びまするが、それがどうもあまり確信がなければ結ばないだけのことでありまして、未定のことであります。  ガリオアにつきましては、これはもう返すべきでないというお話でありまするが、ドイツにおきましても、同種類の援助につきまして、全額ではありませんし、また長い年賦の計画ではありまするが、返還の協定を結んでおります。政府としても、借りたものは返すという建前をとつておりますので、これは、われわれはやはり債務と心得ております。しかし、いかなる程度に、またいかなる時期にこれを返還すべきであるかということは、今後十分協議をいたしまして、適当の点に両方の合意が到達いたしますれば、それをさらに国会提出する予定にいたしております。(拍手
  28. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  29. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 緊急質問に関する動議提出いたします。すなわち、春日一幸提出、中小企業の年末金融に関する緊急質問をこの際許可されんことを望みます。
  30. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。  中小企業の年末金融に関する緊急質問を許可いたします。春日一幸君。     〔春日一幸登壇
  32. 春日一幸

    春日一幸君 私は、日本社会党を代表いたしまして、中小企業に対する年末金融について、以下数項目にわたつて政府の方針をたださんとするものであります。  さて国民凝視の中に開かれた今期国会は、わが党の強力なる長期審議の要求にもかかわらず、保守三党はこれをしりぞけて顧みず、緊急かつ重要なる幾多の事案を山積いたしましたまま、会期わずかに旬日を出でずして、本日ここに終了せんといたしておるのであります。ここにわが党の深憂にたえないことは、やがて迫り来る歳末を控え、当面ひとしく緊急を要する労働政策と中小企業政策からまるで逃げるがごとくに会期を閉ずるこの国会のあり方は、必ずや事態をことさらに内訌悪化せしめ、今日すでに国民の各階層をおおう生活難と経営難を、さらに政治不安、社会不安へとかり立てること必至でありましようが、これらの一切の責任は当然政府並びに保守三党の側にあるということを、この機会にまず明確にいたしておきたいと思うのであります。(拍手)  さて、今次補正予算は、保守三党の多数の暴力的強行によつて国会を通過いたしました。しかしながら、この五百十億の歳出補正のうちにも、また数々の立法措置のうちにも、今日苦境にあえぐ中小企業者のためのものは、実に厘毛の財源の支出なく、また一言隻句の施策も考慮されてはおりません。これはまさしく政府の中小全業に対する冷酷無関心なる本性を露呈するものでありますが、一体通産、大蔵の両大臣は、中小企業が当面する経営の難渋をどのように認識されておるのでありましようか。たとえば、東京手形交換所の統計によれば、この八月来、この不渡り件数は従来の最悪のレコードを突破し、さらに十月に入つてその件数は一〇%を累増いたしまして、今や一日平均一千枚を越えて、一路不渡り激化へと驀地転落しつつあるのでありますが、この事態を両大臣ははたして御承知であられましようか。  申し上げるまでもなく、中小企業といえども、信用は経営の生命線であります。不渡りは金融の杜絶を来す企業の自殺行為であります。ここに買用代金の支払いを押え、労働賃金を欠配しても、なおかつ資金が弁じ得られない窮極のものが、実にこの不渡りの手形となつて現われて参るのであります。今日いずれもぎりぎりの経営にある中小企業は、一方この不渡りを受けて、次ぎ次ぎと将棋倒しのごとく、みずからも決済にたえずして倒れて行く。歳末節季を控え、いよいよその前途は戦慄すべきものがあるのでありまして、かくのごときは、あたかも冷害、病虫害によつて受ける農民の広汎なる被害に酷似して、それは個人の力をもつてしては抗しがたく、かつ絶望的なものであるのでありますが、政府はこれに対しいかなる施策をお考えであるか、この機会にそれを御明示願いたいと思うのであります。  次は、インフレ抑制のためと称せられる国庫指定預金引揚げのことについて大蔵大臣の方針を伺いたい。すなわち、政府は、本年度予算が一千三百億の散布超過を招来し、これが第三・四半期を中心としてインフレーシヨンの素因となることを警戒し、ここに国庫指定預金の引揚げと高率適用強化による日銀政策を通じて金融引締めを行うとの趣であります。私がここに特に指摘いたしたいことは、この二つの施策によつて直接衝撃を受けるものは、それは今破綻に瀕しておる、これら中小企業者そのものであるということであります。(拍手)たとえば、昨年度歳末は、中小全業向け金融のため年末残高四百五十億円の政府預託が行われたのであ旧ります。しかるに、本年は、インフレ抑制とあつて、中小企業向け政府預託を大幅に減じ、一説によれば、これが年末残高を百四十七億に押えるため、すなわち十月中旬現在予託額四百七十億から逐次年末までに一気に三百二十億を引揚げる方針であるとの趣でありますが、かくのごときは危篤の病人にこん棒を振う惨虐行為であると思うが、政府の方針ははたしてこのようなものであるかどうか。この点について、大蔵大臣より、具体的数字をあげてその御方針を明示願いたいと思うのであります。  さらに、この際強く要望いたしたいことは、ここに激化しつつある中小企業の金融梗塞を打開するためには、当然昨年末における国庫指定預金四百五十億にさらに百五十億程度を増加して預託する必要があると思うが、政府はこれに対しいかなる見解をお持ちであるか、その御方針等についても、あわせてお伺いをいたしたいと思うのであります。  第三は、商工中金、国民金融公庫、中小企業金融公庫等、これら中小企業専門金融機関に対する政府の投融資の増額について、政府の所信を伺わなければ相なりません。すなわち、この三つの中小企業金融機関は、西日本並びに紀和の水害と第十三号台風禍に対する災害融資に動員されて、その資金は、はからずも大幅に蚕食されておるのであります。申し上げるまでもなく、この三つの金融機関の帯びる使命とその性格は、めいめいの法律に明示されておりまする通り、平常の中小企業を対象とするものでありまして、別して災害救済等不測の任務を帯びるものではなく、またそのような資金は何ら準備されてはいないのであります。もとより、天災の突発に対処しては、これら機関の有する金融機動力を活用し、応急の災害融資に当ることは、私どもも何ら異論をはさむものではないのでありますが、しかりといえども、それは転用されたこの資金が当然早急に補填充足されることを条件とした、あくまでも臨機の措置であることは、これまた論をまたざるところであります。ここに災害融資のために中小企業の資金より転用された災害融資は、すなわち国民金融公庫において十六億一千万円、中小企業金融公庫関係において十八億五千万円、商工組合中央金庫において二十一億であるのでありますから、政府は、中小企業金融梗塞の窮状にかんがみ、少くともこの災害融資に転用されたるこの資金は、今次国会において当然補正措置を講ずべきであつたと思うのでありますが、これをあえてなさなかつた理由は一体何でありましよう。迫り来る年の瀬とともに、これら金融機関に業者はひたすら救援を求めて殺到するでありましようが、たださえ資金寡少をかこつこれら金融機関の機能を確保するためには、少くとも災害融資に転用したこの資金を充足することは当然にして欠くべからざることと思うが、政府は、いつ、いかなる方法によつてこれを補填するのであるか。大蔵大臣、通産大臣より、その方針を具体的にお伺いをいたしたいと思うのであります。  第四の質問は、すでに久しきにわたり、大企業はおおむねその下請企業に対しはなはだしくその支払いを遷延し、これが下請関係にある中小企業の存立を脅かすに至つておるのでありますが、これに対し政府はいかなる対策をお持ちであるか、この点について重ねてお伺いをいたしたい。往々にして、大企業の中には、支払い資金力を有しながら、ときには打算的に、折にはまたその優位性を濫用して、その下請企業に対し不当に代金の決済を遅延しておる向きがあるが、かくのごときは明らかに独禁法の言う不公正取引方法の一般指定に該当する不法行為であると思うが、これに対し通産大臣は、公正取引委員会とともに何ら取締りの挙に出ないのは、一体いかなる理由によるのであるか。さらにはまた、一般下請企業の受ける長期受取手形に対しては、この際これが割引に充当する別わく資金を準備して下請企業の窮状を救済する必要があると思うが、これに対し通産大臣はいかなる措置を考えているか、この機会にお示し願いたいと思うのであります。(拍手)  終りに、日銀政策委員会委員の構成についてお伺いいたしたい。およそ日銀は国家経済の総力を発揮するための中央金融機関でありまして、この日銀の基本方策を決するものは日銀政策委員会でありますが、現在この委員会には中小企業の代表の参加を許していないのであります。かくのごときは、日銀政策委員会の任務である国民経済の要請に適合する金融政策を樹立する建前において、その機能に重大なる欠陥をもたらすものであると思うが、大蔵大臣はこれに対していかなる見解をお持ちでありましようか。近来金融の民主化が叫ばれておりますが、この要望は特に中央銀行たる日銀に向つて強調せられているのであります。すなわち、わが国産業経済の中に占むる中小企業の地位ば、従業員数一千万人を数え、総事業所数の九九が%これに該当し、かつ工業総生産の四八・五%はこの中小企業の貢献によるものでありますが、この中小企業の代表を除外した会議によつて、日銀法にいう国民経済の要求するところの日銀政策がはたして正確に樹立できるでありましようか。今日、大企業に偏重する日銀政策への非難にいよいよ高潮しつつあります。中小企業の犠牲による大企業への過剰投融資、二重投資は、今や全国民怨嗟の声となつて、ちまたにあふれております。政府は、この際、わが国産業に占める中小企業の地位にかんがみ、この日銀政策委員会に中小企業の代表を加えるため日銀法を改正するの意思ありやなしや。このことは中小企業金融の諸問題解決に要する基本的措置として、これが実施は緊急焦眉を要するものと考えますが、これに対する大蔵大臣の所信を承りたい。  およそ中小企業をおおう今日の恐慌は、吉田内閣五箇年の治績に由来するものであつて、その病根は深く遠く、決してそれは偶発的なものではないのであります。かくて、池田元蔵相は、中小企業者に対し語るもいやな放言をしたが、本日この臨時国会が中小企業の危局を黙殺しつつここに閉会せんとするこのことこそは、まさに池田前蔵相のイデオロギーが今日なお如実に踏襲されておる証拠であつて、まことに慨嘆にたえないところであります。(拍手)もとより中小企業問題は、貿易政策、税制の改革等、広く経済諸施策を尽してその解決を急がねばならぬが、本日私が質問した五項目の金融対策は断じて遷延を許さぬ緊急かつ不可欠のものであつて政府にしてその微衷だにあらば、これはいずれも実施可能な事柄ばかりであるのであります。今や、中小企業は、広域にわたつて企業を閉鎖するか、もしくは高利貸しに身売りするかのせとぎわにあります。政府はすべからくこれに従事する一千万従業員の生活をもあわせ考え、以上五項目に対し十分誠意ある措置を講ぜられんことを強く期待いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇
  33. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 春日議員にお答えいたします。  中小企業の金融につきましては、政府においても種々配意しておることは御承知の通りでありますが、指定預金の引揚げは国庫の支払い超過が巨額に達することを相殺するためにやむを得ないことであります。もつとも、その間、災害地方等に関するものについては特に配意を加えております。中小企業に対する金融、特に年末における指定預金の延期及び増額につきましては、その情勢に対応して適当に善処いたしたいと考えております。  次に、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金等に対しましては、御承知のごとく財政資金がきゆうくつとなつており、そのきゆうくつな財政資金を災害関係に重点的に使用しなければならない一般情勢のもとにおきまして、その他の面が多少圧縮されますことはやむを得ないところと考えられます。従つて、補正予算で資金措置をとれなかつたのでございまするが、中小企業金融の実情を十分考慮いたしまして、慎重善処するようにいたしたいと考えております。  日銀政策委員会になぜ中小の代表者を入れないかということでございまするが、これは都市銀行及び地方銀行をそれぞれ代表する金融業者を委員といたしておりまするほかに、商工業及び農業をそれぞれまた代表する委員をもつて構成せられているのでありまして、これらの委員は、ひとり大きな産業のみならず、中小企業につきましても十分の識見と経験を有する代表者であるわけ合いでありますから、特に中小企業を代表する委員を加えなくても、その方面に対する配慮は十分に行われているものと存じます。なお、この点に関して、日銀法等を改正する意向は、ただいまのところ持つておりません。     〔国務大臣岡野清豪君登壇
  34. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申し上げます。  インフレ防止のために財政とか金融の諸政策がとられております上に、前古未曽有の災害が各地方に起つておりますので、そうでなくても困難の多い中小企業の金融に圧力がかかつて来るのではないかと懸念をいたしておる次第でございます。お説の不渡り手形の多いのも、あるいはその結果ではないか、こう考えております。従つて、われわれといたしましては、中小企業の年末金融対策といたしましては、まず大体次のようないろいろの措置を講じて、極力中小企業金融の疏通をはかる考えでございます。  まず、先ほども大蔵大臣から申し上げましたが、政府の指定預金でございます。これは適当にという概括的な抽象論でございましたが、なお私の考えを申し上げますれば、なるほど計画としては指定預金を年末になつたら引揚げることにしてございますけれども、中小企業の特異性にかんがみまして、必要があれば延期もいたしましようし、またなお必要があれば新規に預託もしていただきたいと、大蔵大臣と交渉しておる次第でございます。  それから、大企業の下請をしている中小企業の金融のことでございますが、これは、仰せまでもなく、公正取引委員会と相連絡しまして、また中小企業庁も鞭撻いたしまして、大企業の下請に対する支払いが遅延しておりはせぬか、また不当に圧迫しておりはせぬかという実情を調べまして、これがわれわれの考えに違いますならば、公正取引委員会から勧告をさしてこれを促進したい、こう考えています。同時に、日銀とか市中銀行の援助を得まして、金融の円滑をはかりたいと存じます。ことに政府が相手となつておりますところの大企業に対する注文の契約、その場合には、もうすでに昨年の十二月二十二日に次官会議決議をいたしまして、各省各庁とも、大企業に注文いたしておりますものは下請業者に早く金を払い、もしこれができるならば、下請業者に受領の委任状を渡して、そうして直接政府がその方面に金を払うという制度をとつておる次第でございます。  また、中小企業金融公庫の第三・四半期、すなわち年末に対しましては、特にそのわくを増大いたしまして、なるべく中小企業金融を円滑にすることを考えるのみならず、また、今までは設備資金だけであつたものの、運転資金の長期のものに対してもこれを適用するというような制度をとつております。国民金融公庫の資金も風水害のために今枯渇しておりますが、これは、大蔵大臣と相談しまして、必要な資金をまわすことを考えておる次第でございます。      ————◇—————
  35. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 緊急質問に関する動議提出いたします。すなわち、下川儀太郎提出行政機構改革に関する緊急質問をこの際許可されんことを望みます。
  36. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。  行政機構改革に関する緊急質問を許可いたします。下川儀太郎君。     〔下川儀太郎登壇
  38. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、今日政府の意図しつつあるは行政機構改革について、いささか所管大臣に質問をいたすものでございます。  さきに、吉田総理は、新聞紙上において、断固行政整理をやると公言しておられるようでありまするが、いやしくも一国の総理大臣が、人間の犠牲と不幸の上に行われようとする行政整理を、断固の言葉において強行しようとすることは、明らかに、かつて彼みずからが不逞のやからとののしつた勤労者への威嚇と挑戦を意味するものであり、その意図するものが、さきの国会において通過せしめられた悪法、すなわち独占禁止法の緩和によつて旧財閥の再現に協力し、軍人恩給法の復活によつて軍備への計画を高め、電産、炭労のスト規制法によつて労働者の基本的人権を蹂躪した、それらの悪法と関連する、すなわち恐るべき独裁政治、大衆の犠牲の上にあぐらをかいて、片手にMSA援助による軍隊を掌握し、片手に警察権力を中央集権化して握ろうとし、うしろに財閥とアメリカ帝国主義を背負つて、再び封建の昔に帰ろうとするその前提をなすものが、今日吉田政府の意図する行政機構改革の実体ではなかろうかと私は思うものでございます。(拍手)そもそも政治家の任務と誇りは、大衆の恐れを勇敢に除くことにございます。今日の大衆の恐れは、戦争の危機と生活の不安定にございます。その恐れを、みずからMSA援助によつて拍車をかけ、行政改革によつて、働く大衆を不安定におののかしめ、あえて恥じざるの態度は、まさに二十世紀のドン・キホーテと言わざるを得ないのでございます。(拍手)敗戦の虚脱からようやくあすの希望を抱き始めた国民大衆にとつて、それをつちかうものは愛情と真実の政治でなければなりません。たとい貧しくとも、一草一木の端々にまで政治のあたたかさがしみ渡らなければならない。しかるに、今日の政治のあり方は欺瞞と冷酷の連鎖であり、いわんや失業と飢餓の伴う資本主義的行政機構の改革はその尤たるものであると同時に、世間でいう失われ行く日本のヒユーマニズムは、その責任の大半はパンパンとヒロポンの巣窟たらしめた吉田反動内閣にあると私は考えます。(拍手)  かかる観点に立つて、すなわち名だけは行政簡素化とか能率化とか言つておりますが、その実は首切りと勤労者への弾圧を内蔵する政府行政改革の意図について、その基本的な点だけ質問いたします。  質問の第一点は、なぜ社会政策的な面にのみ行政整理の主眼を置いたかということでございます。すなわち、先般内閣委員会におきまして塚田長官の説明を拝聴いたしますと、大体行政審議会の答申の線に沿つて政府案を作成するようでありますが、それがもし事実といたしますと、この答申ほど感覚的にずれのあるものはございません。すなわち、第一項の「行政事務の縮小是正」の中で、占領管理下に始められた施策であつて、独立後のわが国情または国力にふさわしくないものと認められたるものとして、産業、労働、厚生、文化行政等が縮小の対象とされております。まことに驚くべき無見識、無定見の説ありまして、われわれをもつて言わしめれば、むしろ、今日の日本の情勢下においては、それらの部門を拡大してこそ、民生の不安定はいささかでも救われると考えております。もちろん、資本主義の機構の中にあつては単にぼろを縫う役目でしかありませんが、それでも、安価なヒユーマニズムの立場から一応うなずけるでしよう。しかるに、これらの部門を縮小の対象にするなどとは、あまりにも現下の国情と日本の生涯を無視した独裁政治の片鱗を見のがさないではおられません。なかんずく産業行政のごときは、四つの島にとじ込められた八千六百万の民族の行方と日本経済の自立をになう部門として、今後十分拡大されなければならないのでございます。国土の開発と、平和産業の指導推進、科学技術の裏づけ等、それに伴うアジア貿易への躍進、今日それが日本経済の重大な課題となつておるときに、それらの産業行政を縮小するとは何事でしようか。同時に、それらの産業行政の裏づけをなすものが、労働、厚生、文化の行政であることは、世界のきわめて平凡な常識でございます。日本経済の再建は、単なる大臣や財閥や高級官僚だけではできません。額に汗する労働者や勤労大衆の黙々たる犠牲の上に築かれて行くことを忘れてはなりません。それらに対する社会政策的な行政面を縮小して、どこに日本経済の自立が生れるでございましようか。現在でも、微々たる存在がこれ以上縮小された場合、必然的に労働者や勤労大衆の人権は無視され、簡素化の名において民主化ははばまれ、勢い、彼らをして、生産意識の縮小と、それにかわる虚無と暴力への道をたどらしめるのは、火を見るよりも明らかでございます。もし、かかる事態が今後生じたとしても、すべて政府責任と言わなければなりません。アメリカ一辺倒の外交政策で、みずからアジアの市場を失いながら、その反省もなく、産業行政と社会政策行政行政整理の重点的な対象にあげるなどは、みずから墓穴を掘るがごとく、亡国の徒の策することでございます。この点に関し、塚田長官はどう考えておらるるか。また産業、厚生、労働、文部各所管大臣はどのような見解を持たれているか。明確なる答弁を要望するものであります。  質問の第二点は、人員整理による社会不安をどう解決するか、この点について伺いたいと思います。すなわち、吉田政府行政改革は、常に裏づけなき人員整理が伴います。わずかばかりの退職金で首を切る。そして不安定な社会へほうり出して責任を負わない。行政審議会の答申の中には、退職者には転職あつせんの特別の努力を払うとしるされているが、こんなものは、ひま人のたわごとであり、昨日も内閣委員会におきまして、栗山委員が、参衆国会議員七百余名はそれぞれ選挙区から無数の就職あつせんを頼まれていようが、それすら容易に解決されるべきものではないと言われておりましたが、その通りであつて、いわんや行政審議会の答申の言葉は、責任のない文字の遊戯にすぎない、よく反動政治家の使う手でございます。  審議庁の調査によると、現在の一般失業人員は一千七百五十三万名と称しておりますが、事実ははるかにそれを上まわるでしよう。来年はまた、大学、高校、中学の青少年が新たに就職戦線へほうり出されて来るでしよう。そして、大資本に押されて転落して行く中小企業者とその傘下の労働者、また未曽有の冷災害によつて失業した零細農民、そこへ行政整理による失業者がどうして入り込む余地がございましようか。まさに死ねと言うにひとしい冷酷無情なる政治と言わざるを得ません。古今東西の暴力革命の歴史をひもといてみても、すべては失業と飢餓が暴力と犯罪の原動力となつております。保安隊増強することが自衛力ではございません。真の自衛は失業と飢餓から国民を守ることでございます。(拍手)一つは戦争回避の平和外交政策であり、一つは完全雇用の計画経済の樹立でございます。しかるに、吉田内閣は、アメリカ帝国主義の片棒をかつぐとともに、野放し自由経済によつて資本家に奉仕し、植民地的な不安と混迷の中にあえて失業者を生み出そうとしておる。かかる暴政を断固行うと公言する吉田総理は、やがてはみずからつくつたその行政整理の手によつて首の座にすわることを銘記すべきでございましよう。(拍手)一体、政府は、かかる情勢下において、失業から生ずる暴力と犯罪の社会不安をどのように解決するか、その具体案をお示し願いたい。この点は特に緒方副総理にお願いいたします。  質問の第三点は、行政改革は保安隊増強のしわ寄せではないかという点でございます。すなわち、MSA援助に伴う保安隊増強は、国民の目をおおつて会談した池田ロバートソン会談のその共同声明吉田政府同意したことで、もはや時間の問題となつたが、それと関連して、今日の社会不安の情勢下にあつて、社会政策面の行政の中に行政整理の主眼点を置いたことは、人員整理に伴い、勤労大衆へのサービスを薄らげ、やがては労働者弾圧法を制定し、その抵抗を奪い、奴隷的な立場に縛りつけ、増強された保安隊は、国内治安に名をかりて、やがては権力者の威嚇の道具にされるでしよう。そしてそれこそは無抵抗にされた労働者を再軍備に動員する陰謀であり、われわれは、今回の行政整理こそは保安隊即再軍備につながるアメリカ吉田内閣の合作による謀略であると考えるのでありますが、所管大臣はどのようにお考えになつておるか。同時に、保安隊の強増に伴う財源の一部を、大衆の犠牲において行う人員の整理から吸い上げようとする。いや、現実にはそうなると思うが、この点はどう考えるか。あわせて明確な答弁をそれぞれ所管大臣から伺いたいと思います。  時間の関係上、以上三点について、政府の基本的な行政改革に対するお考えを懇切丁寧にお答え願いたいと思います。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  39. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 下川君にお答え申し上げます。行政事務の整理、機構の簡素合理化等につきまして、目下政府行政企画本部をつくりまして慎重に検討中でありますが、これに伴つて人員の縮小がどれほどになるかということは、今からまだ申し上げかねます。でありますが、政府といたしましては、もちろん、これが実施にあたりましては、社会不安というようなことを起さないように、十分慎重な処置をとるつもりでおります。右御了承願います。(拍手)     〔国務大臣塚田十一郎君登壇
  40. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) お答え申し上げます。  今度の行政機構改革が審議会の答申の線に沿うて大体考えられておることは御指摘の通りであります。しかし、今度の機構の改革は、要するに国の機構を国力と国情にふさわしいものにする、こういうことがねらいであり、そのようにすることを国民も熱心に希望しておられるということは、一般輿論でも十分察知できるわけであります。そこで、そういう観点から、人員整理を考え、機構の簡素化を考え、さらに事務処理の能率化を考えて、その面から余剰の人があればこれを整理して行く、こういうふうに考えておるわけであります。審議会の答申の中に、産業、労働、厚生という面について検討すべきものがあるとすればということの御指摘はありますが、しかし、これはどこまでも一つの例としてあげられておると了解しておるのでありまして、特にこの面に整理の重点が置かれておるということは毛頭ございません。  なお、保安隊増強との関係でありますが、先ほど申し上げましたように、行政整理は全然別個の目的から意図されておるものであり、保安隊増強は別個の国策から考えられておるのでありますから、その間に直接の関連は何らないわけでございます。(拍手)     〔国務大臣山縣勝見君登壇
  41. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申し上げます。行政改革の問題は、先ほど来御答弁がございました通り、ただいま行革本部等において検討中でございますが、いずれ成案ができますれば閣内においても検討されることと相なると思いますが、お説の通り、民生の安定は国政の基幹をなすものでありますから、社会福祉の増進その他厚生行政の運営にいささかも支障のないように十分善処いたしたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣小坂善太郎君登壇
  42. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 行政機構の改革に関しましては副総理からお答えいたしましたが、いまだ正式の結論を得たように聞いておりません。なお、正式に結論を得ましたあとに、この問題が閣内においても取上げられると思いますが、政府におきましても、労働問題の重要性につきましては十分認識しているところでありまして、私といたしましても、今後労働行政の円滑にして適正な運営が阻害せらるることのないように十分配意いたしたいと考えております。
  43. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 下川君に伺いますが、答弁はこれでよろしゆうございますか。      ————◇—————
  44. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 請願上程の緊急動議提出いたします。すなわち、李ライン等国際漁場問題解決促進に関する請願外五十五請願を一括して議題となし、その審議を進められんことを望みます。     —————————————
  45. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。  李ライン等国際漁場問題解決促進に関する請願外五十五請願を一括して議題といたします。     —————————————
  47. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 各請願は委員長の報告を省略して採択するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて請願はいずれも採決するに決しました。      ————◇—————
  49. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。懲罰委員会を除く各常任委員会、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会公職選挙法改正に関する調査特別委員会及び水害地緊急対策特別委員会に付託した事件について閉会中審査いたしたいとの申出がありますから、その申出事項を参事をして朗読いたさせます。     〔参事朗読〕  内閣委員会において   一、行政機構並びにその運営に関する件   二、保安隊及び警備隊に関する件   三、恩給に関する件  人事委員会において   一、公務員の給与に関する件  地方行政委員会において   一、地方自治法の一部を改正する法律案(門司亮君外七名提出、第十六回国会衆法第七七号)   二、地方財政再建整備法案(床次懐二君外三名提出、第十六回国会衆法第八七号)   三、昭和二十八年における冷害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律案(吉川久衛君外二十三名提出、衆法第八号)   四、地方自治及び地方財政に関する件   五、警察及び消防に関する件  法務委員会において「接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(吉田安君外三名、提出、第十六回国会衆法第八二号)   二、裁判所の司法行政に関する件   三、法務及び検察行政に関する件   四、国内治安及び人権擁護に関する件   五、法廷秩序維持に関する件   六、交通輸送犯罪に関する件   七、戦犯服務者に関する件   八、法務行政に関連する保全経済会等特殊利殖機関の調査に関する件  外務委員会において   一、外交に関する件   二、行政協定の実施に関する件  大蔵委員会において   一、資金運用部資金法の一部を改正する法律案(福田赳夫君提出、第十六回国会衆法第五一号)   二、米穀の売渡代金に対する所得税の特例に関する法律案(森幸太郎君外二十二名提出、第十六回国会衆法第五七号)   三、昭和二十八年における冷害等による被害農業者及び被害農業協同組合等に対する所得税及び法人税の臨時特例に関する法律案(千葉三郎君外十四名提出、衆法第四号)  四、昭和二十八年における冷害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第九号)   五、税制に関する件   六、金融制度に関する件   七、専売事業に関する件   八、国有財産の管理状況に関する件   九、印刷事業に関する件   一〇、造幣事業に関する件  文部委員会において   一、学校教育、社会教育及び教育委員会制度に関する件   二、へき地の教育及び学校給食に関する件   三、教育施設に関する件   四、文化財保護に関する件  厚生委員会において   一、昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害の被害地域において行う母子福祉資金の貸付に関する特別措置法の一部を改正する法律案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第五号)   二、昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法の一部を改正する法律案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第七号)   三、公衆衛生、医療制度、社会保障、婦人・児童保護に関する件農林委員会において   一、臨時硫安需給安定法案(内閣提出、第十六回国会閣法第一六七号)   二、食糧問題に関する件   三、畜産及び蚕糸に関する件   四、土地改良及び治山治水に関する件   五、農業災害対策に関する件  水産委員会において   一、加工水産物の輸出振興に関する法律案(佐竹新市君外四十五名提出、第十六回国会衆法第二七号)   二、公海漁業に関する件   三、水産金融に関する件   四、漁業制度に関する件  通商産業委員会において   一、硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案(内閣提出、第十六回国会閣法第一六八号)   二、中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案(山手滿男君外十一名提出、第十六回国会衆法第一七号)   三、電気事業及びガス事業に関する事項   四、貿易に関する事項   五、中小企業に関する事項   六、鉱業、採石業、鉄鋼業、繊維工業、化学工業、機械工業その他一般工業に関する事項  運輸委員会において   一、日本国有鉄道法の一部を改正する法律案(参議院提出、第十六回国会参法第七号)   二、陸運特に国鉄の経営合理化に関する件   三、船舶港湾に関する件   四、観光に関する件   五、空運事業に関する件  郵政委員会において   一、郵政従業員の待遇問題等に関する件  電気通信委員会において   一、電気通信事業の経営に関する件   二、有線電気通信の規律に関する件   三、電波及び放送の規律に関する件   四、電気通信行政機構に関する件労働委員会において   一、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出、第十六回国会衆法第二号)   二、地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出、第十六回国会衆法第三号)   三、昭和二十八年六月及び七月の大水害並びに同年八月及び九月の風水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法の一部を改正する法律案(吉川久衛君外十三名提出、衆法第六号)   四、公共企業体等労働関係法第十大条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(印刷事業に関する件)(内閣提出、議決第一号)   五、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(専売公社に関する件)(内閣提出、議決第二号)   六、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(造幣事業に関する件(内閣提出、議決第三号)   七、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(国有林野事業に関する件)(内閣提出、議決第四号)   八、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(アルコール専売事業に関する件)(内閣提出、議決第五号)   九、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件)国有鉄道に関する件)(内閣提出、議決第六号)   一〇、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(郵政事業に関する件)(内閣提出、議決第七号)   一一、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(電信電話公社に関する件(内閣提出、議決第八号)   一二、失業対策労使関係及び労働基準に関する件建設委員会において   一、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(岡良一君外二十六名提出、第十六回国会衆法第一九号)   二、建築基準法の一部を改正する法律案(瀬戸山三男君外十四名提出、第十六回国会衆法第三七号)   三、国土計画、地方計画、都市計画に関する件   四、住宅建築に関する件   五、道路に関する件   六、河川に関する件   七、調達庁の業務に関する件  経済安定委員会において   一、日本経済の自立計画策定に関する件   二、国土綜合開発に関する件   三、電源開発に関する件  予算委員会において   一、予算の実施状況に関する件  決算委員会において   一、昭和二十六年度一般会計歳入歳出決算   二、昭和二十六年度特別会計歳入歳出決算   三、昭和二十六年度政府関係機関決算報告書  議院運営委員会において   一、国会関係法規の改正に関する事項   二、議長よりの諮問事項  図書館運営委員会において   一、国立国会図書館運営に関する件  海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会において   一、海外同胞引揚に関する件   二、遺家族援護に関する件  公職選挙法改正に関する調査特別委員会において   一、公職選挙法改正に関する調査の件  水害地緊急対策特別委員会において   一、北九州の豪雨による被害並びに西日本一帯の水害、和歌山及び奈良両県を中心とする南近畿地方における豪雨による被害、長野県下における豪雨による被害、北海道における豪雨による被害、鹿児島県下における豪雨による被害、東近畿地方における豪雨による被害及び台風第十三号による被害を調査しその対策を樹立するの件
  50. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) ただいま朗読いたしました案件について各委員会において閉会中審査するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたしました。  この際暫時休憩いたします。     午後八時三分休憩      ————◇—————     午後九時二十四分開議
  52. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 休憩前に引続き会議を開きます。      ————◇—————
  53. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) この際お諮りいたします。参議院から、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律等の一部を改正する法律案が回付せられました。右回付案を議題となすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。  右回付案を議題といたします。     —————————————
  55. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて参議院の修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  57. 荒舩清十郎

    ○荒舩清十郎君 議案上程緊急動議提出いたします。すなわち、佐藤榮作君外八十三名提出領土に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  58. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。  領土に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。上塚司君。     —————————————     〔上塚司登壇
  60. 上塚司

    上塚司君 ただいま議題となりました領土に関する決議案につき、各党派を代表して提案理由を説明いたします。  まず決議案の全文を朗読いたします。    領土に関する決議案   平和条約の発効以来、歯舞及び色丹島等の復帰を図ることは、わが国民あげての宿願であり、久しく待望しつつあつたところである。本院においても、院議をもつてしばしばこれを要請し来つたのであるが、いまなお、その実現を見るに至らないことは、国民ひとしく遺憾に堪えないところである。   本院は、よつて政府が、速やかにこれら諸島が完全にわが国に帰属するよう最善の措置を講ずべきことを要望する。   右決議する。    〔拍手〕  歯舞、色丹島の領土復帰に関しましては、第十六国会において領土に関する決議案として採択を見たのであります。この歯舞、色丹島につきましては、平和条約においてわが国は千島列島に対する権利を放棄するのやむなきに至りましたが、これら諸島が連合国のいずれに帰属するかは平和条約において確定しておりません。昭和二十年二月米英及びソ連三国間に結ばれましたヤルタ協定は、千島列島はソ連に引渡すと規定しておりまするけれども、元来この協定は、これら三国がひそかに締結いたしました協定でありまして、直接にわが国を拘束するものではありません。かつ千島列島の範囲、限界につきましては、すこぶる明瞭でなく、関係各国の意見も必ずしも一致いたしていないようであります。わが国の立場から申しますれば、従来日露間の交渉案件でありました安政元年の日露和親条約、明治八年の樺太千島交換条約に掲げられました千島は、いわゆる北千島、中千島でありまして、択捉、国後等のいわゆる南千島を含むものではありません。従つて、条約等に現われた千島は、いわゆる北千島及び中千島だけをさしたものと解釈することが歴史家の通説であります。さらにそのはるか南方に位します歯舞及び色丹島に至りましては、地理上、地質上もまつたく千島列島ではありません。その事実は、連合軍総司令部の占領中に出しました公式文書にも明らかに認めており、またサンフランシスコ平和条約の際のダレス米国代表の演説においてもこれを明らかにいたしております。ただ、戦時中わが国の千島守備隊司令官のもとに守備せられておりましたため、降服の際千島諸島とともに同時にソ連軍に占領せられ、今日なおそのままに占領が継続されておるにすぎないのであります。  ソ連とわが国とは、いまだ平和の回復を見ていないのでありますが、政府は、あらゆる可能なる方法をもつて、これら諸島復帰について努力されんことを要望するものであります。  何とぞ各位の御賛同を得まして、全会一致可決あらんことを希望いたします。(拍手
  61. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  62. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立総員。よつて本案全会一致可決いたしました。      ————◇—————
  63. 加藤常太郎

    加藤常太郎君 この際決算委員長の同委員会における審査中間報告を求むるの動議提出いたします。
  64. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 討論の通告があります。これを許します。山中貞則君。     〔山中貞則君登壇
  65. 山中貞則

    ○山中貞則君 ただいま加藤君より提出されました、決算委員長の決算委員会における審査中間報告を求むるの動議に対し、自由党を代表して反対の意見を開陳するものであります。(拍手)  すなわち、国会法第五十六条の三に「中間報告を求めることができる。」と規定してありまするのは、諸君御承知のごとく、議院において議決の対象となるべき事件について適用されるべきものであり、各委員会における国政調査事件に適用されるべきものでないことは明瞭であります。従つて、国政調査については、衆議院規則第九十四条において「常任委員会は、会期中に限り議長承認を得てその所管に属する事項につき、国政に関する調査をすることができる。」しかして「常任委員会議長承認を求めるには、その調査をしようとする事項、目的、方法及び期間等を記載した書面を議長提出しなければならない。」とあり、明らかに、議院の承認ではなく、議長限りの承認なのであります。従つて、決算委員会も今国会において十月三十日に書面を提出しているのでありまして、しかもその記載事項には、政府機関の収支に関する事項の中の一つとして、株式会社鉄道会館に対する鉄道用地貸付に関する件として取扱つているのであります。ところが、規則のいずれにも、国政調査については報告を求め、もしくは報告することについての規定は発見できないのであります。このことは、すなわち、国政調査事項は、その委員会における付託された案件の審査の便宜に供せられるのがその本質であることを意味するものであります。しかし、もとより重大なるものについては、たとえば行政監察委員会のごとく、国政調査事件として特に院議をもつて付託することのあるのは当然でありますし、(拍手従つて、このような特別に院議をもつて付託したものについては報告を求むることができることまたもちろんのことであります。しかしながら、この鉄道会館の問題のごときは、特に国政調査事件として院議をもつて付託したものではないのでありますから、何もここで取上げなくとも、付託された決算の審査終了時において当然なさるべき委員長の経過報告の際において関連して報告されるならされるべきが当然の姿であります。(拍手従つて、本院におきましては、国政調査の報告を求めた前例はただの一回もないのであります。(拍手)もちろん、動議は鉄道会館に関する国政調査の報告を求めるとはいたしてありませんで、決算審査中間報告を求めるとありますので、形式的には非難できませんが、実質的にはまつたく規則に反するものと思われますので、ここにその反対の理由を、国会法運用の面から見て明らかにいたしておく次第であります。(拍手
  66. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。  加藤常太郎提出動議を採決いたします。加藤君提出動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  67. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 起立多数。よつて加藤君の動議は可決されました。      ————◇—————
  68. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 決算委員長の同委員会における審査中間報告を求めます。決算委員長田中彰治君。     〔田中彰治君登壇
  69. 田中彰治

    ○田中彰治君 ただいま動議提出されました、決算委員会の審議の経過とその結果について申し上げます。  この結果を申し上げます前に、ただいまの討論に対して一言お答えいたします。この株式会社鉄道会館問題は、わが国の全国民が注目の的としてこれを監視しているところの重大な問題であります。(拍手)しかも、われわれの同胞八千五百万の国民の血税がここにむだと不正に使われているのでありますから、この血税の代表者たる決算委員会において、かかる重大な問題を取上げて皆様に報告するということが、私は当然なことであると信じております。(拍手)しかるに、この重大な問題に自由党から反対されましたが、自由党という政党は、いかに統制のない、いかに乱れた政党であるかということが、ここに何よりも証拠立てられているのであります。(拍手)本日この重要なるところの報告をしなければならないというので、決算委員会では理事会を開いております。この理事会に自由党を代表された理事の方が出席されて、これに賛成をされております。(拍手)その上にまた、本委員長といたしまして、重要な問題だから、特に理事会で決定したものを委員会にかけたのであります。この委員会にも自由党の諸君が来て、満場一致でこれを可決されております。かかる問題、しかもこの重要問題を可決された自由党を代表するところの理事とか委員というものは、これは愚弄さるべき人であつて、自由党から信任されておらない人であると言わざるを得ません。(拍手)いかに自由党の統制が乱れているか、自由党の中に組織的なものを持つておらないかということを、ここに何よりもよく暴露しているのであります。(拍手)  お答えはこのぐらいにいたしまして、決算委員会が第十六回特別国会以来審議を重ねて参りました株式会社鉄道会館に対する鉄道用地貸付等の問題に関する件につきまして、去る十一月二日、一応の結論を得るに至りましたのでありますが、ただ、この結論につきまして、各党の立場もあり、一致した結論に達することができず、採決するのやむなきに至りましたが、しかし少数意見といえども貴重な意見であることは申すまでもありません。ここに、本問題の概要と、委員会における審議の経過並びに結果について、簡単に御報告いたしたいと存じます。  本問題は、去る六月二十五日、第十六回国会において運輸委員会の審議の対象となつたものでありますが、あたかも昭和二十五年度日本国有鉄道決算審議中の決算委員会におきまして、その重大性と、一般決算に影響するところがはなはだ大きいという見解から、本年七月二十一日の決算委員会におきまして、社会党の吉田賢一君からの国鉄当局に対する質疑によつて審議調査するに至つたのであります。爾来、本委員会は、その全能力を本問題の審議に集中し、閉会中も継続審議をいたしました。その間、証人の喚問、参考人の招致、現地調査等々、実に十数回に及ぶ委員会を開いて来たのであります。本問題に関する委員会審議の詳細はこれを会議録に譲るといたしまして、本問題の概要をまず御説明申し上げたいと思います。  すなわち、昭和二十七年五月ごろ、国鉄当局は、東京駅八重洲口本屋を首都玄関としてふさわしい総合駅舎として建設する計画を立てたのでありますが、国鉄財政の現状からいたしまして、民間資本を集めて会社を設立し、これに駅舎の建設を実施せしめる、いわゆる民衆駅を計画いたしたのであります。そこで、昭和二十七年六月三十日、国鉄総裁長崎惣之助君は、その事業の経営に前国鉄総裁加賀山之雄君を最適任者として、これに協力方を要請したのであります。加賀山君は、同七月三十日に株式会社鉄道会館発起人代表としてこれに応じ、事業もくろみ書等を作成提示し、長崎総裁に認可条件等の明示を要請し、九月一日株式会社鉄道会館を設立して事業に着手したのであります。すなわち、設立された株式会社鉄道会館は、二十七年十月、総工費約二十七億円をもつて、地下二階、地上十二階の総合駅舎及び高架下並びに連絡上屋等、延べ一万六千余坪の建設に着手、本年七月には第一期工事である高架下及び連絡上屋は竣工し、すでに七月からその一部に名店街と称して各種売店が開かれ、営業いたしておる現状であります。また、建築さるべき鉄道会館ビルについては、二階以上が会社の所有となり、一階及び地階は国鉄の所有となるのでありますが、国鉄所有の部分についても一部会社が専用する部分がありますので、従つて国鉄の実際使用する部分はきわめて僅少なものにすぎません。しかして、会社は、その所有とする部分を商店、デパート、事務所、映画館等に使用せしめる目的で、これを他に賃貸することをもつて主たる業務といたすのであります。この会社の資本金は三億四千万円で、株式は国鉄現職員、退職者が四九%、国鉄共済組合が二九%、その他となつており、役員として、社長加賀山元国鉄総裁、専務取締役、元国鉄施設局長立花次郎君と、九名中四名までが元国鉄幹部となつておるのであります。  次に、委員会において議論中心となつた問題について申し上げますと、まず国鉄と鉄道会館との間に締結されました契約の性質についてであります。国鉄側は、この契約を公法上の契約であるかのごとき説明をしておるのでありますが、会計検査院並びに特に本委員会において招請いたしました参考人、早稲田大学総長島田孝一氏の意見に徴しましても、これを公法上の契約であると解することは無理であつて、むしろ私法上の契約がその内容となつておるものと解すべきが妥当であろうと述べております。従いまして、この契約の実施については細心緻密な用意をもつて臨むべきであつて、国鉄当局のごとき一方的に都合のよい解釈をして安易な取扱いに安んじておることは、将来のために憂慮にたえないところであります。さらに、この契約を結ぶにあたりましては、他に伍堂卓雄君を発起人代表とする東京ステーシヨン・ビル株式会社創立事務所外一名からの競願者もあつたのでありまして、日本国有鉄道法第四十九条の規定の精神から見て、広く一般競争入札の方法により最適格者を公正に選定すべきではなかつたかという点で、各委員から鋭く追究されたのでありますが、当局は、日本国有鉄道法施行令第三十三条第一項第六号の「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するものとして、随意契約を合法的であると主張しておるのでありますが、この点について、会計検査院及び早稲田大学島田総長等の意見は、必ずしも違法とは認められないが、随意契約によるとしても、本契約の特殊性にかんがみ、契約の公正を保つために、当初から特定人のみを相手とせず、広く適格者を選考して契約する手続をすることが望ましい方法であつたと思うと述べております。  かように、鉄道会館ビル建設に関する協力者の選定から、用地の貸付、請願工事の実施、工事費の分担等にからみ、幾多明朗を欠く問題の発生を見たのは、いわゆる鉄道大家族主義の余弊のいたすところとも言うべきでありまして、国鉄当局に対し、この際抜本的に事業運営の明朗適正を期するため、あくまで責任の所在を追究し、人事の刷新をはかる必要を認めるに至つたのであります。  また、外郭団体及び関係団体とみなされるものは、株式会社鉄道会館のほかに、日本交通公社、日本通運株式会社、財団法人弘済会等々、枚挙にいとまがないのでありますが、その幹部はおおむね旧国鉄職員をもつて占められ、ややもすれば国鉄より特別便宜を供与されるおそれもあるのであつて、これらの縁故団体に対しては、国鉄は特に厳正公平な態度をもつて臨まなければならないのであります。  次に、会計経理、固定資産の管理運用に関しましては、従来、日本国有鉄道法以下、それぞれの法規は一応整備されておるのでありますが、たとえば、部内の監査の強化、収入金の取扱い方、工事の施行関係、構内営業規則等、状況の変化に応じて、時宜に適するよう改正を要する点も少くないのであつて、それによつて収入の確保と管理運用の公正を期することが目下の急務であると論ぜられたのであります。  それから、近来、国鉄の資金の不十分なところから、駅舎の施設の全部または一部に民間の資本を導入いたしまして、その施設を完成せしめ、これを国鉄が借り受け使用するという、いわゆる民衆駅なるものが各地にできるようになり、現在すでに完成しているものでも、池袋西口、高円寺、秋葉原の一部、札幌、福井、富山等々、今後完成するものとして東京鉄道会館、金沢、宇都宮、水戸、渋谷等々が予定されております。これらは国鉄会計の窮余の一策として考案されたものでありましようが、相互の権利義務、利害関係が錯綜いたしまして、これが運営上とかくの問題を起しやすいばかりでなく、ややもすれば、出資者である民間側に有利に利用され、国鉄に不利な立場を招来するおそれなしとしないので、本委員会において、この点につき質疑が行われたのであります。その際、長崎総裁は、民衆駅の運営についての委員会、あるいは土地の評価等についての委員会というものをつくり、その道の専門家、学識経験者を集めて、どうしたらよいかということを研究し、再検討を加えて参りたいという趣旨言明があつたのであります。  次に、八重洲口広場の問題でありますが、鉄道会館ビルは地下二階、地上十二階建のもくろみであるが、現在建築許可となつておりますのは七階まででありまして、これを十二階建とすると、前面広場を拡張しなければならないのではないかという質問に対して、国鉄及び東京都側の説明は、八重洲口駅前の幅員は四十メートル、これに広場を加えると六十六メートルになるから、十二階建、四十七メートルの高さの建物は建築基準法の制限内であり、従つて広場をこれ以上拡張することにはならないと弁明いたしておるのであります。しかしながら、現在のように、まだ広場計画がどういうふうにきまるか未確定のうちに十二階建の基礎工事を進めて行くということは適当でないとして、委員会においては、しばしば今後の措置に遺憾なきよう注意を喚起いたした次第であります。  次に、鉄道大家族主義の現われとして、国鉄外郭団体の幹部の大部分がその退職者をもつて組織されておる数が非常に多く、それがために、事業の性質上、国鉄との間における取引上種々の疑惑を生み、明朗を欠くおそれもあるので、一般公務員に準じて、国家公務員法または日本専売公社法の規定にならい、国鉄離職後の就職について一定の制限を日本国有鉄道法にも設けるべきであるとの意見が述べられ、かようにして国鉄に対する社会の疑惑ないし不正を未然に防止すべきではないかと論じられたのであります。  以上のほか、請負工事にかかる予納金の収納の件、交通公社乗車券代売金延納の件、運輸調査局の件、その他各駅現金取扱いの件等々、株式会社鉄道会館問題に関連して、各委員から熱心な質疑検討が行われたのであります。特に鉄道会館問題に関連して、これら日本国有鉄道全体の経営経理を俎上にするや、言論機関を通じて国民の注意が本問題に集中され、国鉄当局の網紀の粛正を要望する声が沛然として沸き上つたことは、すでに御承知の通りであります。  決算委員会は、終始国民の代表として公正な立場を持続し、関係当局の反省と善処を促したのでありますが、その結果、社会党の吉田賢一君から、鉄道会館の計画及び一切の事業を国鉄直営とすること、関係責任者はおのおのその責任をとること、民衆駅を原則として廃止すること、各種外郭団体及び関係団体を廃合整理すること等を基調とする決議案提出されましたが、少数にて否決となり、続いて改進党藤田義光君の原案に鳩山自由党の山本勝市君が修正を加え、次のような決議案提出されました。  すなわち   日本国有鉄道と株式会社鉄道会館との問題等について決算委員会は第十六回国会以来閉会中もこれを継続調査して、その真相は漸次判明するに至つたのであるが、本問題を通じて国鉄資産の管理、会計経理その他の運営を見るに遺憾の点が少くない。   政府はさらに慎重な調査と検討を進め、真に国民の国鉄として公共の福祉を増進するに遺憾のないよう措置すべきであるが、左記各項については特に急速なる措置を講ずべきである。     記   一、日本国有鉄道当局についてはこの際国民の期待にそむかざるよう各々その責任の所在を明らかにし、人事の刷新を行うこと。   外廓団体及び関係団体に対しては監督を強化し、綱紀の確立につとめ業務の刷新を図ること。   二、会計経理、固定資産の管理運用に関しては関係法制の整備その他必要なる改善を行い、収入の確保と管理運用の公正を期すること。   三、いわゆる民衆駅の建設運営に関しては国鉄本来の使命を達成するに支障なきよう基本方針を確立すること。   四、国鉄と鉄道会館との契約については会計検査院の検査意見を尊重し、その内容を再検討して、その適正を期すること。   五、八重州口広場の整備に関しては関係官庁の緊密なる連絡の下に円満なる解決につとめること。   六、国鉄退職者の就職制限については、国家公務員法及び日本専売公社法に準じ、適切なる措置を講ずること。 以上の決議案が多数をもつて可決された次第であります。  これに対しまして、運輸大臣及び国鉄総裁から、決議趣旨を尊重し善処すべき旨の発言があつたのでありまして、当委員会の長期にわたる審査の結果は、今後関係当局の努力と相まつて必ずや大なる効果をあげ得るものと期待し、かつ確信いたしまして、私の報告を終る次第であります。(拍手)   〔「反対」「採決々々」「散会」と呼び、その他発言する者多し〕
  70. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) ただいま議場内で各派の交渉をいたしておりますから、その結論を待つております。     〔発言する者多く、議場騒然〕      ————◇—————
  71. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) ただいまの報告に対し質疑通告があります。順次これを許します。柴田義男君。     〔柴田義男君登壇
  72. 柴田義男

    ○柴田義男君 委員長の報告に対しまして、日本社会党を代表いたしまして質疑を行わんとするものであります。この質疑を行いまするために皆様を非常にお騒がせいたしましたことをおわび申し上げます。しかし、少くもこの重大な問題を質疑いたさんとしました場合に、これまで大きな反響を呼び起しましたことは、いかに国鉄問題が国民大衆の注視の的であるかということを如実に物語るものであります。(拍手)  日本国有鉄道並びに鉄道会館の問題を中心といたしまして、決算委員会は第十六特別国会以来閉会中も継続審議いたしましたことは、先ほど田中委員長の御報告でも明らかでございまするが、鉄道会館の問題を契機といたしまして、われわれは国鉄の内情をつぶさに検討いたしました結果、ひとり株式会社鉄道会館の問題だけではございません。あれはただ、東京のまん中であり、しかも三十億になんなんとする厖大な金額でございますので大きな反響を持つたのでありますが、これと同様に大阪にも、神戸にも、あるいはまた三ノ宮のガード下にも、秋葉原にも、あるいは池袋にも、同じようなケースの問題がたくさん伏在してあつたのであります。(拍手)こういう状態、しかも経理の内容を究明いたしましても、あるいは国鉄の運営それ自体を見ましても、言語に絶する紊乱をきわめたものであります。しかも、この労働者諸君に対しましては、生活の不安を与え、あるいは待遇はさらに考えない。(発言する者多し)私は、こういう問題を見ました場合に、国鉄の使命と申しますのは、旅客と貨物の輸送を迅速にする、あるいはまた正確に完全に遂行することでなければならないと存ずるのであります。(発言する者多し)その列車の状況を見ましても、電車の状況を見ましても、皆さん御承知の通り、すし詰めの状態であることは、はつきりいたしておるのであります。かかる状況を顧みないで、経営それ自体に対しましては、まつたく言語に絶した経営状態をそのままに放置いたレましたならば、どうなるでございましようか。労働者諸君に対しましては、昨年の十一月きめました……。
  73. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 柴田君に申し上げます。——柴田君に申し上げます。
  74. 柴田義男

    ○柴田義男君(続) そのままにこじつけて進めております。労働組合は、やむにやまれない要求を掲げて闘つたのでありますが、仲裁裁定を……。
  75. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 発言を……(発言する者多く、議場騒然、聽取不能)委員長報告に対する質疑でありますから、範囲を逸脱しないように願います。
  76. 柴田義男

    ○柴田義男君(続) われわれは、こういう国鉄自体の状況を見ました場合に、先ほどの委員長の御報告のようになまぬるい態度であつては、断じて承服ができないのであります。だから、われわれの日本社会党中心といたしまして、両派において決定いたしました、このいわゆる目標に向つて国鉄を改善しなければ、断じて日本の財産、国民大衆の財産を守ることはできないと信じます。私どもは、こういう観点から、国鉄に対しましては、あの大きな三十億にならんとするような建物をそ  のままにしておかせないで、少くも国有鉄道が直接にこれを経営しなければならない、こういうことを中心にいたしまして、今後国鉄に対する対策を、  こんななまぬるいことではいけないから、はつきりとこれを直して、今後の経営に対しまして……。(「質疑をやれ」と呼ぶ者あり)これからやる。——単にあの決議を突きつけただけではいけないから、もつと強力にやらなければならないと思いまするが、委員長は今後いかなる態度をもつて臨むものであるか、お伺いしたいと思うのであります。(拍手)     〔田中彰治君登壇
  77. 田中彰治

    ○田中彰治君 柴田君の質問にお答えいたします。  私は、前の決算委員長のときにも、政党政派を超越して決算委員会の使命のために努力したものであります。このたび決算委員長に就任いたしましてから、いろいろな問題ととつ組んで参りましたが、しかし鉄道会館問題に対しては、私は、決算委員会として、全知全能をしぼり、努力して来たつもりであります。この決議に対しては、委員長といたしまして、調査中にはいろいろな争いもあり、意見の相違もございましたが、一応決議を出す場合は、でき得ることならば決議を一本にまとめて出したいと努力をしたのでありまするが、社会党の出されたところの決議案と、改進党及び自由党から出されたところの決議案は、あまりにも大きな食い違いがありまして、この調停に三、四日努力いたしましたが、調停ができなかつたのであります。しかし、かかる場合に、私は公平に考えまして、社会党の左派右派から出された決議案が、これは決して重要な案でないとは申しません、りつぱな案であつたのでありまするが、惜しいかな、多数によつてこれは否決されてしまつた。この多数によつて否決された場合に、委員長としてこれをどうすることもできない。そのままやはり委員長はこれを採択する以外しかたがないのであります。  いま一つつけ加えておきまするが、この決算委員会の空気を、委員長の力で、もしまとめたとするならば、国民が注視の的としておるところのこの決算委員会の空気を誤つて国民に知らせなければなりません。決算委員長として、そういう方法をとることは、国民に対して申訳のないことでありますから、決算委員会に現われたままの空気をそのまま決したのでありますから、この点を柴田君にお答えしておきます。
  78. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 杉村沖治郎君。     〔杉村沖治郎君登壇
  79. 杉村沖治郎

    ○杉村沖治郎君 ただいま決算委員長から報告されました株式会社鉄道会館に対する国有鉄道用地の貸付問題に関する決議事項につきまして、日本社会党を代表いたしまして質問をいたすものであります。  本問題は、十六国会以来継続審議として、国民の注目環視のうちに調査検討を重ねた結果、法律、規則に反する幾多の事実並びに不当不正のあることはまことに明らかであります。しかるに、本調査に対するところの決議はきわめて抽象的であつて、直接責任者である長崎総裁、天坊副総裁、国鉄経営委員会委員、運輸大臣等に対する問責の点がはなはだ不徹底であり、ことにトンネル会社と称しても過言でない株式会社鉄道会館をしてそのまま事業の経営をせしめようとする点、また駅構内を混雑危険ならしめ、輸送力の増強を阻害する、いわゆる民衆駅を一層育成しようとする決議をなしたことは、はなはだ遺憾でありまして、この決議は改進党と自由党とのやみ取引によつてできたものであります。最初は、わが党の提出いたしましたところの決議案に対しまして、自由党を除くところの三派がいずれも同調をされまして、四派協定の決議案提出することにきまつたのであります。しかるにもかかわらず、その後改進党におきまして、あれは出先の者の意見であつて党の意見ではないからこれを取消すと言つて、この四派協定を抹殺いたしたのであります。(拍手)私は、これにつきまして、その原因がどこにあるかということを調査いたしましたところが、私に対して、ある代議士から手紙を見せられたのでございます。この手紙を見まするというと、熱海におけるところの長崎総裁と改進党の委員との会談が行われたということが書いてあるのであります。(拍手)この点につきましては委員長も確かに御存じであろうと思いまするから、この点を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  さらに、さらにです。この決算委員会の改進党の委員中には、鉄道弘済会の有給顧問をしておる人が出ておるのであります。(拍手)諸君、しかもこのとき——この人は平素は出ておりません。そうして、何か決議ということになるというと、この人が出て来てやるのでありますが、諸君、いやしくも鉄道会館、国有鉄道に関する問題に対するところの審議検討につきまして、これに利害関係を持つておるところの有給顧問が委員として出て来るというようなことは、はなはだ私は適当でないと思うのであります。(拍手)この点につきましても、私は委員長に対して警告を発したのでありますから、委員長はこのことを承知しておるだろうと思いまするから、この点をあらためて委員長に伺いたいのであります。(拍手)  諸君、わが社会党両派は——わが社会党両派は、かくのごときやみ取引的な決議案に対しては反対でありまするから、独自の決議案われわれは出したのであります。このわれわれの決議案が、いかにこの事実に照して適切妥当であるかということにつきまして、皆様の御判断を願うために、以下その重要なる事実を摘示してここに開陳いたしたいと思うのであります。(拍手)  本問題は、昭和二十七年の九月二十六日、わが国の国有鉄道の八十周年に当るのを奇貨といたしまして、長崎総裁と加賀山前総裁との間におきまして、記念事業に名をかりまして、そうして東京駅の構内に名店街をつくること、さらに国鉄所有地の同駅八重洲口の広場に日本一の高層ビルをつくりまして、これをデパートあるいは映画館、事務室等に貸し付けて金もうけをしようという計画がなされたということは、調査いたしましたところの全貌から判断いたしまして、まことに明らかであるのであります。(拍手)     〔発言する者多し〕
  80. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 杉村君に申し上げます。杉村君、ちよつとお待ちください。質問でありますから、意見はおやめ願いたいと思います。
  81. 杉村沖治郎

    ○杉村沖治郎君(続) 諸君、その実行方法といたしまして、(発言する者あり)その実行方法といたしまして、加賀山前総裁と長崎総裁との間におきまして、しからばどういうふうにしてこれを実行しようかという相談が起つた。それでは会社をつくろうと言う。その会社というのは、資本金が一億一千万円の会社で、これをこしらえようというので会社をつくつたのであります。(「質問じやない」と呼び、その他発言する者多し)諸君、私が今から申し上げることは、これはすなわち、この私どもの決算委員会におけるところの実情を見てのことであり、これを委員長に質問する。われわれと委員長の意見とが相違しておるのである。(拍手)かるがゆえに、われわれはこの事実をここに開陳して委員長に質問するのである。最後まで聞かなければわからない。  そこで、一億一千万円の会社をつくりました。その会社の大部分の株主は長崎総裁であります。諸君、そうしてこの総裁が、会社が設立されるや、加賀山前総裁を社長にした。そうして国鉄局長であるところの立花次郎君を専務取締役にした。そうして、諸君、この総工費三十二億円という莫大なる工事費のかかる仕事を、当初たつた一億一千万円の会社に対して、長崎総裁がこの工事を請負つたのであります。(拍子)この契約に基いて、長崎総裁は請負業者に対しまして工事を頼んで、そうして進行したのであります。ところが、この株式会社鉄道会館から工事金を少しも入れて来ない、昭和二十八年七月二十九日までに六億円の工事金を提供するように、国鉄から株式会社に対して要求をいたしましたけれども、株式会社では、金がありませんから入れることができないのだ。二十数回にわたつてわずかに一億六千万を入れただけであります。入れられないのはあたりまえだ。その後わずかに四億四千万円——先ほど委員長は三億四千万円の会社と言いましたが、これは違います。四億四千万という会社でありますから、この点は委員長からまたあらためてお答えが願いたいのである。(拍手)かようなわけでありますから、金はないのであります。そこで、第一銀行、三和銀行からこの支払い保証を得たのであります。     〔「質問でない」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  82. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 杉村沖治郎君、発言をおやめください。杉村君、意見を述べることはおやめを願いたいと思います。
  83. 杉村沖治郎

    ○杉村沖治郎君(続) かようなわけでありまして、六億一千三百七十四万六千百七十三円の工事費の提供方を催促いたしました。満足にこれを提供することができません。諸君、そこで予納金一億九千万円に対するその不足金につきまして鉄材を担保に入れたと称しているのでありますけれども、会計検査院の最近の検査によりますと、昭和二十八年の六月十八日までに二億五千五百六十六万八千五百円という巨額の金を国鉄に予納しないで、そうして長崎総裁が工事契約をやつていることが明らかとなつたのであります。(拍手)それにもかかわらず、長崎総裁は、決算委員会に証人として出て来まして、すべて契約をするのには予納をさせて契約をしておりますという偽証をいたしているのであります。(拍手)これは明らかに偽証罪が成立しているのであります。(拍手)諸君、これだけでも、たいがいのことはわかるでありましよう。代議士でなくても、寄せ算と引き算のできる者であれば、どんな契約のもとに、どんな目的のもとにこの事業が行われたかということがわかるであろうと思います。これに対して委員長はどういうお考えであられるかということをお伺いしたいのである。(拍手)  さらに、諸君、昭和二十七年から本年七月まで、株式会社鉄道会館は国鉄に対して一銭も入れておりません。東京駅構内の家賃も一銭も入れておらないのである。それでありながら、東京駅の構内にでき上つたところの売店は会社が片つぱしから商人に貸し付けて、三億円という家賃を取上げておるのであります。(拍手)さらに、まだ八重洲口へでき上りもしないところのビルの一部を大阪の大丸商店に貸す契約をいたしまして、一年に二億五千万円という家賃をとり、七億円の権利金をとるという約束をいたしまして、すでに敷金として一億円をとつておるのであります。(拍手)諸君、そうして株式に対しては五分の利益配当をしておる。加賀山社長は月給十二万円、立花次郎専務取締役は月給十万円をとつておるのであります。(拍手)何とふしぎなことではありませんか。諸君、そんなうまい金もうけが日本中どこにありましよう。  さらに、諸君、かのビルデイングの基礎工事の費用負担割合につきましては、——国鉄はわずか一階を使うだけでありまして、あとは会社の所有になるのであります。
  84. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 杉村沖治郎君に申し上げます。(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)遺憾ながら発言を禁止いたします。     〔「やれやれ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕     〔杉村沖治郎君発言を継続〕
  85. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 杉村君、降壇を命じます。——杉村君、降壇を命じます。     〔杉村沖治郎君なお発言を継続〕
  86. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 執行。     〔田中彰治君登壇
  87. 田中彰治

    ○田中彰治君 杉村君の御質問にお答えいたします。  この決算委員会及び理事会において、杉村君から、こういう投書が来ているというお話を聞きましたが、その杉村君のお話の中に名前も提示されておりませんし、ただこういう投書であるということだけのことで、委員長がこれをどう処理するわけには参りません。こういう重要な問題は特に調査を要するものでありますから、委員長としては、かかる杉村さんのお話だけで、これを証拠としてどうするわけに参りませんから、そのままにしております。  次に、弘済会の有給社員についてでありますが、これは委員会においてたびたび問題になつたことでありますが、これにつきましても、重要な問題でありますので、よく調査した上でないと、これに対するお答えをするわけには参りませんので、目下この問題についても調査中でありまして、杉村さんの御質問に対して、はつきりだれであるというお答えをするわけには参りません。  いま一つ、杉村さんが先ほど株式会社鉄道会館の資本金は一億一千万円であつて、私が先ほど報告した三億四千万円は間違いであるとおつしやいましたが、それは何か杉村委員のお考え違いでありまして、一億一千万円は払込金額であつて、三億四千万円は公称資本でありますから、株式会社鉄道会館は公称資本三億四千万円ということになつているのでありますから、間違いはありません。  また、この決議案に対して、委員長の決議案が非常に弱いという話でありますが、御承知のごとく、委員長は決議を出すものでなく、各委員から決議案が出されまして、そうしてこれが多数によつて決せられたところの決議案に委員長は同調する以外に、委員長の職責としてはないのであります。こういう結果、この決議案は弱くなつたのでありますが、委員長がもしこの決議案を出したり、これを否決したりするだけのほんとうの力があるとしたら、あるいは杉村さんのおつしやつたような決議案になつたかどうかということは、これはわかりませんが、しかし、委員長として、この決議案は決算委員会においてこれを多数決によつて決したものでありますから、これ以上に申し上げることはできません。  お答えはこれだけであります。(拍手
  88. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 杉村沖治郎君から再質問があるそうでありますから、なるべく簡単に願います。杉村沖治郎君。     〔杉村沖治郎君登壇
  89. 杉村沖治郎

    ○杉村沖治郎君 ただいま委員長が会社の資本が三億四千万であるということを申されましたけれども、これは誤りである。最初は一億一千万円でありまして、次に増資をして四億四千万円になつたのだ。払込金額は三億五千万円でありますから、これは委員長の方が間違いであろうと思う。  さらに、長崎総裁が偽証いたしておることについては、委員長も偽証であることを認めておると思うが、この問題について、将来これを取上げて追究する意思があるかないか、これを伺いたい。(拍手
  90. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 田中彰治君、答弁がありますか、——ありませんか。     〔田中彰治君登壇
  91. 田中彰治

    ○田中彰治君 杉村君の質問にお答えいたします。  先ほど申しました通り、鉄道会館は一億一千万円が払込みでありまして公称資本が三億四千万円であることは、今の委員長の記憶として間違いないと思つております。  次に、長崎総裁に対する偽証罪——偽証があつたらこれを告発するかという質問でありますが、よく記録を調べて、そうしてこれが偽証があつたとするならば、宣誓した通り、杉村さんから告発せよと言われなくても、委員長として告発しなくちやなりません。(拍手)これは申し上げておく。      ————◇—————
  92. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 諸君、第十七回国会は本日をもつて終了いたしました。  御承知のごとく、本国会は近年まれに見る風水害と冷害等による被害地に対して緊急の国策を樹立と実施するための重大な意義と使命を持つものでありました。従つて、会期は延長を含めわずかに十日間でありましたので、議員諸君は連日連夜精励して慎重審議を尽し、よくその職責を果されたのであります。この短期間に、補正予算を初め喫緊の重要議案を全部議了いたしましたことは、まことに御同慶にたえません。ここに諸君の御労苦に対して深く感謝の意を表する次第であります。(拍手)  これにて散会いたします。     午後十時四十九分散会