○田中彰治君 ただいま
動議が
提出されました、決算
委員会の審議の経過とその結果について申し上げます。
この結果を申し上げます前に、ただいまの討論に対して一言お答えいたします。この株式会社鉄道会館問題は、
わが国の全
国民が注目の的としてこれを監視しているところの重大な問題であります。(
拍手)しかも、われわれの同胞八千五百万の
国民の血税がここにむだと不正に使われているのでありますから、この血税の代表者たる決算
委員会において、かかる重大な問題を取上げて皆様に
報告するということが、私は当然なことであると信じております。(
拍手)しかるに、この重大な問題に自由党から反対されましたが、自由党という政党は、いかに統制のない、いかに乱れた政党であるかということが、ここに何よりも証拠立てられているのであります。(
拍手)本日この重要なるところの
報告をしなければならないというので、決算
委員会では理事会を開いております。この理事会に自由党を代表された理事の方が出席されて、これに賛成をされております。(
拍手)その上にまた、本委員長といたしまして、重要な問題だから、特に理事会で決定したものを
委員会にかけたのであります。この
委員会にも自由党の諸君が来て、満場
一致でこれを可決されております。かかる問題、しかもこの重要問題を可決された自由党を代表するところの理事とか委員というものは、これは愚弄さるべき人であ
つて、自由党から信任されておらない人であると言わざるを得ません。(
拍手)いかに自由党の統制が乱れているか、自由党の中に組織的なものを持
つておらないかということを、ここに何よりもよく暴露しているのであります。(
拍手)
お答えはこのぐらいにいたしまして、決算
委員会が第十六回特別
国会以来審議を重ねて参りました株式会社鉄道会館に対する鉄道用地貸付等の問題に関する件につきまして、去る十一月二日、一応の
結論を得るに至りましたのでありますが、ただ、この
結論につきまして、各党の立場もあり、
一致した
結論に達することができず、採決するのやむなきに至りましたが、しかし少数
意見といえ
ども貴重な
意見であることは申すまでもありません。ここに、本問題の概要と、
委員会における審議の経過並びに結果について、簡単に御
報告いたしたいと存じます。
本問題は、去る六月二十五日、第十六回
国会において運輸
委員会の審議の対象とな
つたものでありますが、あたかも
昭和二十五年度
日本国有鉄道決算審議中の決算
委員会におきまして、その重大性と、一般決算に影響するところがはなはだ大きいという見解から、本年七月二十一日の決算
委員会におきまして、社会党の吉田賢一君からの国鉄当局に対する
質疑によ
つて審議調査するに至
つたのであります。爾来、本
委員会は、その全能力を本問題の審議に集中し、閉会中も継続審議をいたしました。その間、証人の喚問、参考人の招致、現地調査等々、実に十数回に及ぶ
委員会を開いて来たのであります。本問題に関する
委員会審議の詳細はこれを
会議録に譲るといたしまして、本問題の概要をまず御説明申し上げたいと思います。
すなわち、
昭和二十七年五月ごろ、国鉄当局は、
東京駅八重洲口本屋を首都玄関としてふさわしい総合駅舎として建設する
計画を立てたのでありますが、国鉄財政の現状からいたしまして、民間資本を集めて会社を設立し、これに駅舎の建設を実施せしめる、いわゆる民衆駅を
計画いたしたのであります。そこで、
昭和二十七年六月三十日、国鉄総裁長崎惣之助君は、その事業の経営に前国鉄総裁加賀山之雄君を最適任者として、これに協力方を要請したのであります。加賀山君は、同七月三十日に株式会社鉄道会館発起人代表としてこれに応じ、事業もくろみ書等を作成提示し、長崎総裁に認可
条件等の明示を要請し、九月一日株式会社鉄道会館を設立して事業に着手したのであります。すなわち、設立された株式会社鉄道会館は、二十七年十月、総工費約二十七億円をも
つて、地下二階、地上十二階の総合駅舎及び高架下並びに連絡上屋等、延べ一万六千余坪の建設に着手、本年七月には第一期工事である高架下及び連絡上屋は竣工し、すでに七月からその一部に名店街と称して各種売店が開かれ、営業いたしておる現状であります。また、建築さるべき鉄道会館ビルについては、二階以上が会社の所有となり、一階及び地階は国鉄の所有となるのでありますが、国鉄所有の部分についても一部会社が専用する部分がありますので、
従つて国鉄の実際使用する部分はきわめて僅少なものにすぎません。しかして、会社は、その所有とする部分を商店、デパート、事務所、映画館等に使用せしめる目的で、これを他に賃貸することをも
つて主たる業務といたすのであります。この会社の資本金は三億四千万円で、株式は国鉄現職員、退職者が四九%、国鉄共済組合が二九%、その他とな
つており、役員として、社長加賀山元国鉄総裁、専務取締役、元国鉄施設局長立花次郎君と、九名中四名までが元国鉄幹部とな
つておるのであります。
次に、
委員会において
議論の
中心とな
つた問題について申し上げますと、まず国鉄と鉄道会館との間に締結されました契約の性質についてであります。国鉄側は、この契約を公法上の契約であるかのごとき説明をしておるのでありますが、会計検査院並びに特に本
委員会において招請いたしました参考人、早稲田大学総長島田孝一氏の
意見に徴しましても、これを公法上の契約であると解することは無理であ
つて、むしろ私法上の契約がその
内容とな
つておるものと解すべきが妥当であろうと述べております。従いまして、この契約の実施については細心緻密な用意をも
つて臨むべきであ
つて、国鉄当局のごとき一方的に都合のよい解釈をして安易な取扱いに安んじておることは、将来のために憂慮にたえないところであります。さらに、この契約を結ぶにあたりましては、他に伍堂卓雄君を発起人代表とする
東京ステーシヨン・ビル株式会社創立事務所外一名からの競願者もあ
つたのでありまして、
日本国有鉄道法第四十九条の規定の精神から見て、広く一般競争入札の方法により最適格者を公正に選定すべきではなか
つたかという点で、各委員から鋭く追究されたのでありますが、当局は、
日本国有鉄道法施行令第三十三条第一項第六号の「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するものとして、随意契約を合法的であると主張しておるのでありますが、この点について、会計検査院及び早稲田大学島田総長等の
意見は、必ずしも違法とは認められないが、随意契約によるとしても、本契約の特殊性にかんがみ、契約の公正を保
つために、当初から特定人のみを相手とせず、広く適格者を選考して契約する手続をすることが望ましい方法であ
つたと思うと述べております。
かように、鉄道会館ビル建設に関する協力者の選定から、用地の貸付、
請願工事の実施、工事費の分担等にからみ、幾多明朗を欠く問題の発生を見たのは、いわゆる鉄道大家族主義の余弊のいたすところとも言うべきでありまして、国鉄当局に対し、この際抜本的に事業運営の明朗適正を期するため、あくまで
責任の所在を追究し、人事の刷新をはかる必要を認めるに至
つたのであります。
また、外郭団体及び
関係団体とみなされるものは、株式会社鉄道会館のほかに、
日本交通公社、
日本通運株式会社、財団法人弘済会等々、枚挙にいとまがないのでありますが、その幹部はおおむね旧国鉄職員をも
つて占められ、ややもすれば国鉄より特別便宜を供与されるおそれもあるのであ
つて、これらの縁故団体に対しては、国鉄は特に厳正公平な
態度をも
つて臨まなければならないのであります。
次に、会計経理、固定資産の管理運用に関しましては、従来、
日本国有鉄道法以下、それぞれの法規は一応整備されておるのでありますが、たとえば、部内の監査の強化、収入金の取扱い方、工事の施行
関係、構内営業規則等、状況の変化に応じて、時宜に適するよう改正を要する点も少くないのであ
つて、それによ
つて収入の確保と管理運用の公正を期することが目下の急務であると論ぜられたのであります。
それから、近来、国鉄の資金の不十分なところから、駅舎の施設の全部または一部に民間の資本を導入いたしまして、その施設を完成せしめ、これを国鉄が借り受け使用するという、いわゆる民衆駅なるものが各地にできるようになり、現在すでに完成しているものでも、池袋西口、高円寺、秋葉原の一部、札幌、福井、富山等々、今後完成するものとして
東京鉄道会館、金沢、宇都宮、水戸、渋谷等々が予定されております。これらは国鉄会計の窮余の一策として考案されたものでありましようが、相互の権利義務、利害
関係が錯綜いたしまして、これが運営上とかくの問題を起しやすいばかりでなく、ややもすれば、出資者である民間側に有利に利用され、国鉄に不利な立場を招来するおそれなしとしないので、本
委員会において、この点につき
質疑が行われたのであります。その際、長崎総裁は、民衆駅の運営についての
委員会、あるいは土地の評価等についての
委員会というものをつくり、その道の専門家、学識経験者を集めて、どうしたらよいかということを研究し、再検討を加えて参りたいという
趣旨の
言明があ
つたのであります。
次に、八重洲口広場の問題でありますが、鉄道会館ビルは地下二階、地上十二階建のもくろみであるが、現在建築許可とな
つておりますのは七階まででありまして、これを十二階建とすると、前面広場を拡張しなければならないのではないかという
質問に対して、国鉄及び
東京都側の説明は、八重洲口駅前の幅員は四十メートル、これに広場を加えると六十六メートルになるから、十二階建、四十七メートルの高さの建物は建築基準法の制限内であり、
従つて広場をこれ以上拡張することにはならないと弁明いたしておるのであります。しかしながら、現在のように、まだ広場
計画がどういうふうにきまるか未確定のうちに十二階建の基礎工事を進めて行くということは適当でないとして、
委員会においては、しばしば今後の
措置に遺憾なきよう注意を喚起いたした次第であります。
次に、鉄道大家族主義の現われとして、国鉄外郭団体の幹部の大部分がその退職者をも
つて組織されておる数が非常に多く、それがために、事業の性質上、国鉄との間における取引上種々の疑惑を生み、明朗を欠くおそれもあるので、一般公務員に準じて、国家公務員法または
日本専売公社法の規定にならい、国鉄離職後の就職について一定の制限を
日本国有鉄道法にも設けるべきであるとの
意見が述べられ、かようにして国鉄に対する社会の疑惑ないし不正を未然に防止すべきではないかと論じられたのであります。
以上のほか、請負工事にかかる予納金の収納の件、交通公社乗車券代売金延納の件、運輸調査局の件、その他各駅現金取扱いの件等々、株式会社鉄道会館問題に関連して、各委員から熱心な
質疑検討が行われたのであります。特に鉄道会館問題に関連して、これら
日本国有鉄道全体の経営経理を俎上にするや、言論
機関を通じて
国民の注意が本問題に集中され、国鉄当局の網紀の粛正を要望する声が沛然として沸き上
つたことは、すでに御承知の
通りであります。
決算
委員会は、終始
国民の代表として公正な立場を持続し、
関係当局の反省と善処を促したのでありますが、その結果、社会党の吉田賢一君から、鉄道会館の
計画及び一切の事業を国鉄直営とすること、
関係責任者はおのおのその
責任をとること、民衆駅を原則として廃止すること、各種外郭団体及び
関係団体を廃合整理すること等を基調とする
決議案を
提出されましたが、少数にて否決となり、続いて改進党藤田義光君の原案に鳩山自由党の山本勝市君が修正を加え、次のような
決議案が
提出されました。
すなわち
日本国有鉄道と株式会社鉄道会館との問題等について決算
委員会は第十六回
国会以来閉会中もこれを継続調査して、その真相は漸次判明するに至
つたのであるが、本問題を通じて国鉄資産の管理、会計経理その他の運営を見るに遺憾の点が少くない。
政府はさらに慎重な調査と検討を進め、真に
国民の国鉄として公共の福祉を増進するに遺憾のないよう
措置すべきであるが、左記各項については特に急速なる
措置を講ずべきである。
記
一、
日本国有鉄道当局についてはこの際
国民の期待にそむかざるよう各々その
責任の所在を明らかにし、人事の刷新を行うこと。
外廓団体及び
関係団体に対しては監督を強化し、綱紀の確立につとめ業務の刷新を図ること。
二、会計経理、固定資産の管理運用に関しては
関係法制の整備その他必要なる改善を行い、収入の確保と管理運用の公正を期すること。
三、いわゆる民衆駅の建設運営に関しては国鉄本来の使命を達成するに支障なきよう
基本方針を確立すること。
四、国鉄と鉄道会館との契約については会計検査院の検査
意見を尊重し、その
内容を再検討して、その適正を期すること。
五、八重州口広場の整備に関しては
関係官庁の緊密なる連絡の下に円満なる解決につとめること。
六、国鉄退職者の就職制限については、国家公務員法及び
日本専売公社法に準じ、適切なる
措置を講ずること。
以上の
決議案が多数をも
つて可決された次第であります。
これに対しまして、運輸大臣及び国鉄総裁から、
決議の
趣旨を尊重し善処すべき旨の
発言があ
つたのでありまして、当
委員会の長期にわたる
審査の結果は、今後
関係当局の努力と相ま
つて必ずや大なる効果をあげ得るものと期待し、かつ確信いたしまして、私の
報告を終る次第であります。(
拍手)
〔「反対」「採決々々」「散会」と呼び、その他
発言する者多し〕