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1953-11-02 第17回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月二日(月曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 吉田  安君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君 理事 花村 四郎君       押谷 富三君    林  信雄君       飛鳥田一雄君    木原津與志君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (刑事局総務課         長)      津田  實君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約  第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部  を改正する法律案内閣提出第五号)  日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁  判権行使に関する議定書実施に伴う刑事特  別法案内閣提出第一一号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案、及び日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書実施に伴う刑事特別法案、以上二案を一括議題となし、質疑を続行いたします。質疑通告がありますから、順次これを許します。鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 昨日林委員並びに私から聞いておいた議定書第3の(a)の(ⅱ)ですが、昨日の御答弁では今までの国際慣例上、当然公務執行に伴う必然的のものだけに限るんたというお答えのようでしたが、われわれはこの公務執行中という言葉をもとにいたしまするとさように解釈できないのであります。そこでそういうことについていろいろ、議論が出るということになると、これは重大なる結果を生むおそれのあるものなんですが、この点に対して政府当局はどのような御自信を持つておいでになりますか、承りたいと存じます。
  4. 津田實

    津田政府委員 公務執行中という表現が、協定日本文に載せておるのですが、それが協定英文におきまする「イン・ザ・パーフオーマンス・オブ・オフイシヤル・デユーテイ」ということと相互に関連を持つて来るわけであります。この協定は、協定の最後にございます通り日本文英文もひとしく正文になつております。そこでこの公務執行中という協定解釈につきましては、いずれにいたしましても日本文英文とを双方考えて解釈せざるを得ないものと思います。ことに国際法におきましては、文字表現いかんにかかわらず、当事国が合意したところをもつて解釈とするというのが国際法の通説になつておりまして、従いまして英文におきまして「イン・ザ・パーフオーマンス・オブ・オフイシヤル・デユーテイ」とあり、日本文公務執行中とあります場合、この解釈は両者の合致したところによつて、おのずから昨日申し上げましたような趣旨解釈されるというふうになつて参ると思うのであります。で、表現をかえるかどうかということは、条約日本文を作成いたします場合におきまして日本側でも議論され、日本文に対してアメリカ側意見もあつたわけでございますが、アメリカ側は、従来の国際法表現通りを希望しておつたような状況もありますので、そのような表現に相なつたわけでございます。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その点明白であればよろしいが、きのうも申しました通り執行中ということは、時間的の表現ですから、執行しておる時間内にと解釈せられてもしようがない。そこで私はそれならば、何としても執行上の作為または不作為、こういうことがほんとうだろうと思うのですが、そういうことに直して、はなはだ困ることがございますか。
  6. 津田實

    津田政府委員 日本文並びに英文は、ひとしく正文でございまして、この協定におきまして、九月二十九日に署名されたところでございますので、この表現をかえますることは、さらに双方の合意と申しまするか、この協定変更という手続を経なければならぬと思います。目下のところはさようなことをするまでもなく、両方解釈は一致しておるというふうに考えておる次第であります。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも今の答弁を聞いておると、ますます疑問が出て来るのだが、そういうふうに両方でやつておるからここで変更できぬと言うならば、実際この委員会では、変更すべからざる、このままのまなければならぬものが出ているのですかどうですか。どうもそのように聞えますが……。
  8. 岡原昌男

    岡原政府委員 御疑念の点はごもつともだと思います。日米間の折衝の際にも、いろいろ問題となつた点でございますので、それは今後も問題が起り得るという点については、私ども懸念がございました。さりながら一応津田政府委員から御説明がありました通りに、公務執行中という国際法上の概念は、学説または国際法慣例と申しますか、各国間のしきたり等によりまして確定している概念でございまして、従つて公務執行の時間中という意味ではなくて、ただいま鍛冶さんからお話のありました公務執行に伴うという観念に近いものであるということは、日米間の話合いの際にも、その点については意見の一致があつたわけでございます。問題はむしろそういうふうな点が一致いたしましても、実際問題として、今度は事件が起きた場合、これが一方では公務執行中といい、片方ではそうじやないという、そこでごたごたが起りはしないかという点は私ども懸念はいたしておりました。この点についての公式議事録の第3項の(a)(ⅱ)に関する公務執行中という概念そのものについては確定しておりますので、どういうふうに認定するかといつたような問題についての証拠とか、あるいは心証形成とかいつたようなものについての問題がむしろ議論の中心であつたようでございます。  たとえばある兵隊が何かの犯罪を犯す。米軍司令官の方ではこれは公務執行中と認める、こちらの方ではそうは認めぬというふうなことが言い争いなつた場合に、一体どういうふうにしたらいいのかという問題が実際に起り得る問題なのでございます。その際にこれをどう片づけるか、大体この点はNATO協定が、アメリカの上院において批准される際にもひとしく問題になつた点でございます。結局はこの事件を処理する側において一応いろいろな資料を集めて認定しなければならないわけでございます。事件を処理する側において認定しなければならない。また認定するにつきましては、やはり本人公務執行中にやつたかどうかということを最もよく知つているのは司令官指揮官であります。ほかの人には、たとえばわれわれ外から見て公務執行中であろうとか、あるいはそうでないだろうとか言いましても、それはなかなか簡単にはわかり得ないことなのでございますので、一応向う側の言い分を、指揮官言い分を聞いてみよう、それが証明書を出せば、それは一応信憑力はあるものであろう、しかしながら非常に悪い場合を考えまして、向うの方で何とか助けてやろうと思つて公務執行中にあらざる者まで公務執行中だといつたような証明書を出したらどうするか、さようなことを出す懸念はおそらくないと思いますけれども、さような場合には合同委員会において協議するほか、現地の事を処理する機関において 一応いろいろな傍証を固めまして、たとえば勤務時間中であるけれどもバーにおいて乱暴したというのは、それはまさかバーにおいて何かさようなことをする公務上の権限、あるいは公務というものはあり得ないわけであります。さようなことはなんぼ向うの方で、かりに証明書を出したとしても、そういうものは信用できない。こちらの主張が通るであろうというふうに、われわれは考えております。そういうふうな関係で今度は起訴した場合に、公判でどうするかという問題に移るわけでありますが、その場合についても同様、指揮官の発行した証明書というものが、一応証拠になります。これはあらゆる書類と同様に証拠になりますけれども、諸般の証拠を調べた結果、どうも本人公務執行中にやつたものではない、むしろ公務執行外、時間中はなるほど勤務時間中であるけれども公務に随伴して起つた犯罪ではないというような傍証で固めることが、これは可能であろうと思いますので、その点について三百十八条の規定適用を害するものと解釈してはならない。裁判官の自由心証を害するものでないということを、はつきりいたしたわけであります。従つて証明書が出ておりましても、ほかの傍証でこれをくずすことはいくらでもできる、かような趣旨でございます。英国の法律においてビジツテイング・フオーセズ・アクトという一九五二年の法律がありますが、これにはこれと似たような場合の規定といたしまして、アンレス・コントラリー・イズ・プルーヴド、反証のない限り、司令官証明書は一応の十分なる証拠と見なされるというふうな規定がございまして、そのあとに三百十八条のような裏打ちがないのでございます。そこで私どもといたしましては、一応反証の許されるということはあつても、念のためやはり三百十八条の自由心証を害されないということまで、はつきり書いておいた方がよかろうというので、そこまで公式議事録の中に入れてもらつたような次第でございます。公務執行中の概念そのものについては争いがございません。ですからただ認定の問題として争いは起り得るということについて私どもも十分懸念いたしまして、そういうふうないろいろな文字を入れて、この点の解決といいますか、なるべくわれわれの方に問題が残らぬように処理したつもりでございます。なお、これはきような経過をたどりまして、この公式議事録と、それから議定書ができましたような関係で、一応これは御承知の安全保障条約に基く行政協定という形をとつておりますので、これによつて条約と同一の効力を持つというふうなことになつて参りますが、これはさらに特段の協約をしなければ、内容的には変更はできないというふうなことになるわけであります。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今のように、向う協定ができているのだから、そこで直すわけにいかぬと言われると、われわれはただ承るより以外はないと思いますが、その点はいかがですか。
  10. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは、安全保障条約第三条に基いて行政協定が締結せられました際に、やはり同じような問題が提起されたのであります。安全保障条約第三条において、日本国の警備に当るアメリカ軍隊の、国内における関係等を規律するための協定は、全部行政協定にゆだねられたわけでございますので、この点につきましては、一応行政協定ができますれば、条約と同じような効力を持つ、かようなことになるわけであります。
  11. 小林錡

    小林委員長 速記をとめて……。     〔速記中止
  12. 小林錡

    小林委員長 速記を始めて……。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その次には、今の3の(C)ですが、その後段の方において、「第一次の権利を有する国の当局は、他方の国がその権利放棄を特に重要であると認めた場合において、その他方の国の当局から要請があつたときは、その要請好意的考慮を払わなければならない。」とある。どうもこれを読んでみますと、疑問が非常に起つて来る。先方で重要であるといわれるが、こちらで重要にあらずと考えられることが多多ある。そういうときにはどういうことで解決せられるのでしようか。
  14. 津田實

    津田政府委員 その点でございますが、これは相手国におきまして、その第一次の権利放棄してもらう。つまり、第一次の裁判権を持つている国に対しまして、その権利放棄してもらうことを、特に重要であると認めて要請するわけであります。その重要であると認めることは、相手国にとつてということになるわけでありますが、相手国自身は重要であると認めて放棄要請して参る。しかしながら第一次の権利を有している側におきまして、相手国判断いたしました場合には、そのことは重要でないというふうに判断されますならば、放棄要請に対してこれに応ずる必要がない、かように考えるわけであります。この好意的考慮を払うと申しますのは、相手国権利放棄要請して来る場合におきましては、その理由を示し、かつその資料を添付して参ることは当然でありますが、その理由並びに資料を好意的に判断してみても、なおかつ第一次の権利を有する国の側において、放棄に応じ得られない場合には、当然放棄に応じなくてもよろしい、こういう程度事柄をここに定められているわけでございます。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもわかつたようでわからないのですが、これは実際からいうと、アメリカに第一次の権利がある。そこで向うでは、そういうものを裁判行使しないと決定した。そこでこちらの方で、それはこつちにとつては重要であるから、ぜひこちらの方で処罰させてもらいたいというときに起る問題だと思います。そうすると、特に重要であると言つて出ても、好意的の考慮は払われるけれども、それは渡すわけにいかぬと言われればいかんとも方法はないのです。もしそうだとすればここに書いてある「好意的考慮」ということはモデフアイできないような感じがするのですが、その点はいかがです。
  16. 津田實

    津田政府委員 これはアメリカ側が第一次の裁判権を有しておる事件につきまして、日本側から権利放棄を重要であると認めて要請する場合と、逆に日本側が第一次の権利を持つておりますものに対しまして、アメリカ側からその権利放棄を特に重要と認めて要請して来る場合と、相互両方あるわけでありますから、それぞれその国の判断するところに従うことになるわけでありますが、好意的考慮を払うということになりますのは、相手国理由並びに資料を好意的に判断してみて、応じ得るものは応ずる、しかしながら応じ得ないものは応じない、こういう程度事柄をここにいわれているわけでありまして、終局的にはもとより第一次の権利を有しておる国の判断になるわけであります。しかしながら第一次の権利を有しておる国の判断は合理的である必要があることは、これは条理に照して当然のことでございまして、ほしいままに権利放棄することをがえんじないということは国際信義から申してもできないことだと思います。従いまして合理的に判断されます以上、双方主張に大きな差異を生ずるということはあり得ないんじやないかというふうに考えておる次第であります。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それではもつと突き詰めて伺いましよう。こちらが特に重要だと言つたが、向うは好意的の考慮を払われたにもかかわらず、そういうものは重要でないと思つてはねられた、はねられたとすればやむを得ませんと言つて泣き寝入りをする以外に方法はないのですか、それともこれに対して何らかの方法があるのか、この点をお伺いしたい。
  18. 津田實

    津田政府委員 その点でありますが、この権利放棄に関しまして双方意見が違います場合は、当然合同委員会で論議されることに相なる次第であります。合同委員会で論議いたしますれば当然何らかの結論を得られるというふうに私どもは確信いたしておりますが、万一さような結論が得られませなければ、成規外交交渉として交渉される問題であるというふうに考えられる次第であります。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それから第二の問題ですが、ことに(C)の(ⅰ)、(ⅱ)です。いわゆる国の安全に関する罪ということなんです。これはよほど重要にあげられておつたが、第一に承りたいのは、(ⅰ)の「当該国に対する反逆」この意味がよくわからないのです。国に対する反逆、ところがよくいうように、いわゆるわれわれの法律的の概念からいうと、いやしくもその国の法益を害する場合はすべてその国に害を及ぼすものなんだ、それが反逆というところに重きを置かれておるのか、もしそうだとすればどういうものを反逆というか、それから国という意味はどの程度までを国というのか、広義に解釈すればあらゆるものが国に該当するように思われるのですが、その点はどうでしようか。
  20. 津田實

    津田政府委員 この(C)の規定は、表現上といたしまして本条2及び3の適用上、「国の安全に関する罪は、次のものを含む。」というふうに出ておるわけでございます。これが実際上規定上の実益を生じますのは、3の(a)の(ⅰ)にありますところの、「もつぱら当該国の財産若しくは安全のみに対する罪」このもつぱら当該国の安全のみに対する罪というところにつきまして、規定上の実益を生ずるわけでありまして、2の(C)のところは説明規定ということに相なるわけであります。そこでもつぱら国の安全のみに対する罪と申しますのはいかようなものかと申しますと、合衆国の場合におきましてはやはりそれぞれ反乱罪規定がございます。具体的の条文につきましては合同委員会を通じましてアメリカ側から通告して参ることになつておりますが、これはまだ通告を受けておりません。逆にそれでは日本の国に対する反逆とはどういうものが考えられるかと申しますと、これは現在日本法令規定されておりますところの内乱に関する罪、すなわち刑法七十七条、七十八条、七十九条の規定、それから外患に関する罪、つまり八十一条、八十二条あるいは八十七条、八十八条、かような罪を称するものと解釈いたしております。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その次に(ⅱ)の「妨害行為サボタージユ)、」これはどういうことなのですか。われわれが俗に言うサボタージユもみんな国の安全に関する罪に包含せられておる、こう見ておるか、サボタージユというと特別の意味を持つておるか、その点いかがですか。
  22. 津田實

    津田政府委員 ここに妨害行為、括弧してサボタージユとございます。これは日本条約正文表現といたしましては非常に苦心されておると申しますか、非常にむずかしい表現になるわけでございまして、サボタージユと俗に日本国内で称しておりますところの表現はこれに当らないのでございまして、積極的な行為を含むいわゆる妨害行為で、しかも妨害行為とのみ表現いたしました場合は何を妨害する行為かよくわからないという意味から、妨害行為表現して、括弧してサボタージユということによつてこの内容を明確にしようというふうに働いておるわけでございます。そしてサボタージユというのは日本法令におきましてはいかなるものをさすかと申しますと、大体におきまして積極性を含むところの行為、単なる不作為だけではないという考え方でありまして、刑法の二百六十条の建造物損壊あるいは二百六十一条の器物損壊器物毀棄、これらのものに当る行為がこのサボタージユ妨害行為に当るというふうになるわけでありますが、それ自体が国の何らかの安全に関係があるものでなければならぬことは当然でありまして、私人間の器物損壊等がこれに入らないことは明らかであります。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それがわからない。ここにはただ広く単に妨害行為、しかも括弧してサボタージユとなつておる。これはわれわれが知識が足らぬのか知らぬが、われわれの概念にありますサボタージユは今あなたが説明されたようなサボタージユではない。私が知識が足らぬと言われるならしかたがない。私は日本人の常識がわれわれの考えておるようなものだと思う。そのことをここへ表現しておりながら、そうじやない、積極のものだけなんだと言われても、どうもそれでは解釈にならぬ。それともう一つは、どういう場合のそういうサボタージユ妨害行為なのか、対象が何であるか、これも出ておりません。一般のものに該当するように思われるが、それらの点を明確に、だれが聞いてもこの場合はこういうときだ、こういうふうに表わす何らかがございますか。
  24. 津田實

    津田政府委員 アメリカ側立法につきましては当然通告がございますが、先ほど申し上げました反逆の場合と同様にいまだ通告がございませんので、いかなる内容がこれへ含まれるか、つまびらかではありませんが、日本側におきましては今申し上げました通り建造物損壊あるいは器物毀棄というものを申すわけでありますが、この2のCには「国の安全に関する罪は、次のものを含む。」ということになつておりますので、国の安全に関するということのわくをはずれた器物損壊であるとか、そういうものは当然これに入らないというふうに解釈ざれる次第でありますので、今申し上げますところの妨害行為内容は、国の安全に関係のある、さような刑法に当る罪、日本ではこのサボタージユ自身が特別の構成要件にはなつておりませんから、日本では国の安全に関する、しかも刑法の二百六十条あるいは二百六十一条の罪をさす、こういうふうに解釈せざるを得ないのであります。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは何かで明白にしておかぬとたいへん困ると思います。内乱罪とか外患罪だけだと今言われるが、これだけではそういうふうに見えません。それから私有物等は入らぬというが、そうすれば公営物だけなのですか。この点も明瞭になつていない。かりに私有物にしましても、たとえば港湾の入口にある倉庫のごときものが私有物であるということになると、これはいかに私有物であつても重大なる関係がある。どこかそこらの町中にある私有の土蔵くらいなら何ともかまわぬが、港湾であるとか、鉄道の近くにある倉庫、これらは重大である。そういうことの区別もあとでわかるのですか。現在わかるようなことはないのですか。
  26. 津田實

    津田政府委員 先ほど申し上げましたように、この国の安全に関する罪と申しますのは、2の(b)に現われておりますところの「日本国の安全に関する罪を含む。」ということになつております。そこでこれは日本国法令違反で、合衆国法令違反でないものは2の(b)に全部含まれることになりますので、特に日本国の安全に関する罪というものを取立てて別の取扱いをするということはないわけでありますので、日本国に関する限りにおきましては実際上の問題はないということになります。従いまして3の(a)の(ⅰ)にあります合衆国の安全に対する罪のみが、実質的には問題になつて来るわけです。それにつきましては、アメリカ側から日本側通告して参ることに相なつておりますことは先ほど申し上げました通りでありますが、およそ日本側で今まで取調べましたところによつて考えられます立法といたしましては、アメリカ刑事法におけるところの二千百五十一条以下の規定すなわち要塞港湾防禦海域、それから軍用資材破壊、これらのものが、大体アメリカ側として日本側に国の安全に関する罪のうちの妨害行為に当るものとして通告して参るだろうというふうに考えておる次第でありまして、それらの要塞港湾防禦海域軍用資材等に対する破壊行為、これがそれに当るものとして通告されるというふうにただいまのところは予想しておる次第であります。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると今のところはまだわからないわけですね。それから向うから通告されて来ればそれは何を言われてもやむを得ないものなんですか。それからもう一つは、そういうものを通告されたら国民に広く知らしめる方法はいかなる方法によつてやられますか。
  28. 津田實

    津田政府委員 通告がありました場合にいかなるものもこれに含むというふうにはもちろんならない次第であります。と申しますのは、国の安全に関する罪に該当しないものは、幾ら通告して参つてもそれは効果がないことは当然でございますし、またその通告内容につきまして日本側において疑問、異議があれば当然合同委員会において論議されるというふうに考える次第であります。  また、通告して参りましたものをいかに周知するかという問題でありますが、これは法律解釈として一般に公示するか、あるいは合同委員会の何らかの発表として公示するかいたしまして、周知をはかる次第でありますが、この点につきましては一般国民は必ずしもその内容を知ることに直接の利害はないわけで、日本捜査機関がその内容を知ればよいわけでありまして、捜査機関に対しましては当然それぞれの当局から通牒等によつて周知せしめる予定でおります。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それではわれわれは知らぬでもよろしいのですか。どうもはなはだ穏当ならざる言葉のように聞えますが……。
  30. 岡原昌男

    岡原政府委員 向うから向うの安全に関する罪として通報の参りましたものは日本人がひつかからぬことになりますから心配がない。ただ、その手続をどちらでやるか、第一次裁判権はどちらでやるかという問題につきまして捜査機関に周知せしめる、かような考えでおります。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あと公式議事録について質問したいと思いますが、大臣が見えてから一緒に質問することにいたします。
  32. 林信雄

    ○林(信)委員 ちよつと牽連質問をしたいと思います。
  33. 小林錡

    小林委員長 牽連質問はなるべく短くしてください。たくさんありますから……。
  34. 林信雄

    ○林(信)委員 先刻の裁判権の競合の場合の第一次裁判権を持つ国、この場合は、わが方から考えまして彼の方に第一次裁判権のある場合に、こちらからその相手国権利放棄を特に重要であると認めた場合、この点なんですが、それは重要であるということは結局捜査機関がそう考えることであろうと思うのですが、その捜査機関がそう考える場合のために何か措置がなされるというようなことは国内的に考えられておるのでありましようか。ただ漠然と捜査機関が考えるであろう、あげて捜査機関の考え方にまかせられておるだけのものなんでしようか。それともそれはそのときで、さように考えました者が捜査機関にヒントを与えるというような何か一般的な指示がなされるものか、その点をお伺いいたします。
  35. 津田實

    津田政府委員 アメリカ側に第一次裁判権があるにかかわらず、日本側において裁判権行使する必要のあるもの、かような事件につきましてはだれがまず判断するかという問題でございますが、事件が起りましたところの捜査機関、ことに検察庁におきましては事件内容を当然了知するわけでありますが、その事件内容その他一般国民感情、一般への反響等から見て、この事件は第一次裁判権アメリカにあるが、日本側裁判しなければならないというふうに考えましたならば、ただちにこれを中央の法務省に報告して参るような通牒はすでに出してございます。でありますがそれとは別に、やはり地方におきましても新聞その他の情報によりまして、かくかくの事件については当然日本側裁判権行使すべきものということが判断される場合も多かろうと存じますので、そういう場合に両者あわせまして日本側において裁判権放棄要請することが相当であるということになりますれば、これをアメリカ側要請することに相なるわけでありますが、その判断は法務大臣においてする、かように相なるわけであります。
  36. 林信雄

    ○林(信)委員 今のお話で捜査機関は一応その事件のあることは知つておるように言われるのですが、知らない場合は想定されないのですか。アメリカ軍にいたしましても国連軍にいたしましても、軍人軍属が公務執行中だから彼らはよく知つておるのだけれども、わが方において知らざる間に捜査が行われて、知らないということは全然考えられないのじやないかと思いますが、そういう場合はあるのですか。
  37. 津田實

    津田政府委員 大体日本側から放棄要請をする場合としておよそ考えられますことは、被害者が日本人あるいは日本に居住する通常の外国人であるというような場合であります。従いまして日本人あるいは日本に通常居住する外国人が被害者である場合は、当然犯罪事実の内容と申しまするか、被害事実はわかるわけでありますので、それから判断し得ると思います。しかし全然発覚しないような事件と申しますると、大体被害者がない場合、一般的に被害者がないと言われる犯罪に当るかと思いますが、さような犯罪につきましては発覚しない以上はどうも知るよしがないのでありますが、何らかの形におきまして発覚しました場合は、当然判断の対象になるというふうに考える次第であります。
  38. 林信雄

    ○林(信)委員 ただいまの問題は、それは多くは知り得る状態にあることはこれはわかるのですけれども、山の中だとか人里離れたところで殺人行為がなされたというような場合には、やはり全然わからない場合があると思うのです。ですから何らかの形で捜査し、あるいは彼において裁判をなすというような事犯がわが方に通告されるということは、これは望ましいことじやないかと思うのですけれども、これは関連質問のことですから、その辺はちよつとはしよりまして、いま一点重要な面と思いますことは、わが方において彼の裁判権利放棄を特に重要と認めるというのは、概念的にはわかるのでありますけれども、こういうことを必要とする場合は実際的にはどういうことなんでしようか。具体的なものが想定されるだろうと思うのですが、そういう点をひとつ……。
  39. 津田實

    津田政府委員 これは具体的事件になりませんといかようにも申し上げにくいのでありますが、大体におきまして抽象的に申しますと日本国民感情上、あるいは日本国としてどうしても日本側において裁判をしなければ承知ができないと申しまするか、治まらないというような事件をまず第一に考えるべきであるというふうに思うのであります。でありますから、被害の状況とか、あるいは被害者を取巻くところの諸般の状況であるとか、あるいは被害そのものが、日本の国であるというような場合も考え得るわけでありますが、そういうような場合をおよそ考えるのであります。昨日も御説明申し上げましたように、公務執行中だという概念は非常に狭いのでありますので、比較的大部分の事件は、日本側に第一次裁判権を持つことになりますから、このような権利放棄要請しなければならぬ場合というのは少いのじやないかと思います。
  40. 林信雄

    ○林(信)委員 何か一、二の例をお考えになつていないのですか。
  41. 津田實

    津田政府委員 考えておりますのは、あまりないのでございますが、実際はたとえばアメリカの歩哨が公務として射撃をした場合に、日本人として非常に崇敬しておるところの場所にそれが当つてそれを損壊したとか、あるいは具体的に申しますならば、皇居の中などで一、二それによつて大きな被害が起つたというような場合が、公務上あり得るとすればあり得るのでありますが、そういうことはおよそ実例としては考え得られないのではないかと思います。そういうものが大きなものでありますが、そのほか被害の状況、公務執行中の犯罪ではありまするが、日本に多数の被害が起つたというような場合、たとえば火薬の公務上の取扱いが間違つたために大きな爆発事故を起して、日本人あるいは日本の財産に多大の損害を与えたというような場合はこれに含むというふうに考える次第であります。
  42. 小林錡

  43. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この法律について国連軍が日本に存在をしておる根拠とか、行政協定の取扱い方とか、こういう問題はあとで古屋さんの方から御質問申し上げることにいたしまして、私は実務的なこの法律解釈の問題について二、三お伺いいたします。  この法律によりますと、合衆国軍隊がその権限に基いて警備をしている施設及び区域、こういうところに現行犯人を追跡して行きます場合には同意がいらぬ、こういうことになつておりますが、実質的にはこれは空文に近いものじやないか、入つて行けば、どうせそういう追跡をして、逃げて行く犯人は駐留軍の軍人あるいは軍属である場合が多いと思います。こういうのに対して、そう簡単に同意を与えるはずがない、しかも追跡をしておるのですから時間的にも切迫をしておる。そういう場合に同意なしに入つて行けるということはどういう具体的なことをお考えになつておるでしようか。
  44. 津田實

    津田政府委員 これは「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪」につきまして現行犯人を施設、区域内において突きとめまして、それを日本捜査機関が追跡いたします。その場合には施設、区域内に入つて逮捕ができる。これは従来ともこの法律が出ます前、すなわち昨年の行政協定発効と同時にすでにアメリカ側会議いたしまして、かようなことができるということにいたしておるわけであります。そこで具体的事実といたしましては、日本人あるいは日本一般居住する外国人が犯人である場合もありますし、今回はさらに合衆国軍隊の構成員、軍属等が犯人である場合もあり得ます。しかしながらこれは当然議定書の実行に関しまする公式議事録においても認められているところなのでありまして、アメリカ側がこれを拒むとか、あとから問題にするということは当然あり得ないというふうに考えておる次第であります。
  45. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと、もし同意が与えられないで現実に拒まれたが、それを排除して入つた場合には、排除して入つたことに関する問題は出て参りませんか。
  46. 津田實

    津田政府委員 たとえば現地に警備しております者にこの公式議事録趣旨が徹底いたしておらないために、拒むとかあるいはそれを妨害するということは起り得る可能性はある――ないとは断言できかねる次第でありますが、しかしながらそれはいずれにいたしましてもアメリカ側協定の誤解より出ているわけでありますので、日本側におきまして、実力をもつて入るか、あるいは次第によつてはその場はとりやめて、事後交渉の抗議の問題にするか、それはそのときの時宜によらざるを得ないというふうに考える次第であります。いずれにいたしましても、アメリカ側の警備員にいたしましても、日本側捜査機関にいたしましても、ある程度の武装をいたしておりますので、現地でかような点においてトラブルの起ることは双方ともできるだけ避けなければならぬという点におきましては、双方意見が一致いたしておりますので、かようなトラブルが起るということはないと確信いたしております。
  47. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 現実に私たちが見ております範囲では相当トラブルが起るのじやないかという危険を非常に感ずるのです。たとえば、私横浜ですが、横浜でこういう事態がしばしば起つております。そういうような場合に抵抗を排除して入つた場合に、その行為が駐留軍の警備している地区に不法に侵入した罪になるか、あるいは相手方が通常の刑法における公務執行妨害罪を構成するか、こういう問題はやはりお考えおきをいただかないと、将来問題になるおそれがあると思うのです。もしこちらが駐留軍の施設に抵抗を排除して入つた場合に不法侵入の問題が起るとする、あるいは相手方を公務執行妨害でやれないとする――どうせ公務執行中の犯罪でしようから、そういうことになりますと何かこの条文があつたといたしましても空文に近いものじやないか。ことに現行犯人の追跡ですから、あとから外交交渉に移す、合同委員会に移すなどということは、もうおそきに失するのじやないかという感じがするわけであります。そういう意味でこの条文は単につけたりというと言い過ぎのようですが、実効性のない条文が、いかにも相互均等の立場に立つて法律がつくられているということを飾つている文章にすぎないような気がするのですが、この点についてのお考えどうでしようか。
  48. 津田實

    津田政府委員 この点につきましては公式議定書の実行に関する公式議事録に約束をいたしております。しかしながら今まで外国におきましてかような点までを合意したという事実は私ども聞いていないのであります。と申しますのは大体最近の国際法の通説といたしましては、合法的に駐留する軍隊が占拠している場所には入れないという国際法の原則が通説になつて参つております。従いましてアメリカ合衆国軍隊日本に合法的に駐留いたしておるわけですから、本来いえば施設区域には当該被駐留国の官憲は入れないとするのが国際法の通説なのであります。しかるに今回の議事録によりまして、現行犯の追跡の場合は入れる、あるいは同意のある場合は入れる、こういうようにいたしたのでありましてこれは従来の国際法概念よりさらに一歩を日本側に有利に進めたものというふうに考えている次第であります。アメリカ側におきましても、この点につきましては実際の必要性を十分痛感してこの議事録にかような点を挿入することを認めておるわけでありますから、これは当然実効を伴い得るというふうに考えている次第であります。
  49. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 理論的にはお説のような考え方も成り立つと思うのですが、私たち現実に接しておりますと、向うの警備員その他の拒絶によつて、この条文がありながらも手が出せないという形がきつと出て来ると思うのです。今まで私たちもしばしば経験しておりますが、そういうことによつて結局法律の条文に対する不信の念が逆に起つて来やしないかということを私たちは考えております。
  50. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私もそれを聞こうと思つたのですが、今言われていて特に疑問に思うのは「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪」とあるが、この判断はだれがするのですか、追跡して行つた者はこの罪に当ると思つてつてつたのに、向うではそんなものに当らないと、こういうことになつたら実際やれないことになりはしないか、この点で、だれかその場で判断しなければならない、その判断はだれがやるか、判断がどうしても意見が合わなかつたらどうなるのですか。
  51. 津田實

    津田政府委員 その点でございますが、これは現行犯人を認めて追跡するわけであります。従いまして施設区域に入つた場合の施設区域の警備員は、これがいかなる現行犯人と認めて追跡されておるかということは当然わからないので、その入口で説明するいとまはないはずであります。従いましてこれは当然日本の追跡している捜査機関判断によるということに相なるわけでありますが、もしもかような罪に当らない軽微な罪を追跡して施設区域に入つたということがあとに判明いたしました場合におきまして、アメリカ側から抗議の対象になるということは当然考えられます。従いましてその日本捜査機関判断にして誤りない限りはあとより抗議を受けることはないことはもちろんでありますが、その門前等において阻止せられることはないと考えております。
  52. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは何か両方でそんな話でもできておるのですか。できておらなければここに書いてあるような重罪とは認めぬ、よせと言われたら一応下らざるを得ない。何かそういうことができておればけつこうですが……。
  53. 津田實

    津田政府委員 その点でありますが、現行犯人をどこで見つけて追跡するかはわからないのであります。従つて門前においてそれを説明するというようなことは当然予想しないで合意をいたしておる次第でありますから、当然アメリカ側はその内容は承知しておるはずであります。
  54. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大臣に承りたいのは、この行政協定の特に公式議事録についてですが、このたび、われわれがずいぶん行政協定に対して疑問を持つておりましたもののうちの最も大きな刑事裁判権を属地主義に改められまして、米人に対する犯罪をわが日本裁判することになつたことは、まことに慶賀にたえないことであるし、また当局の御努力に対して深く感謝の意を表するものであります。もちろんいろいろ定めなければならぬことはありますが、この公式議事録を見ておりますと、刑事訴訟法に対する特別のとりきめが多く入つておるのであります。われわれもこれを見まして、なるほどこれくらいのことは必要であろうと考えられるものもございますが、原則といたしましてわが国で裁判するとするならば、わが国の刑事訴訟法をそのまま適用するということではなかつたならば意味をなさぬと思う。しかるにこの点に対して重要なる刑事訴訟法の制限が加えられておるように思いますが、かようなことはどうあつてもやらなければならぬ特別な理由があつたがどうかを承りたいと思います。これは法務大臣以外に外務省の方がおられたら、外務省の考え方も承つておきたいと思います。
  55. 犬養健

    犬養国務大臣 個々の折衝にはいろいろいきさつがございましたが、この刑事裁判権の改訂のとりきめに関する私の心構えを申し上げたいと思います。いろいろ折衝が長くかかりまたが、私は国と国とが友好関係を永遠に結ぶ意味においては、刑事裁判権というものが国の力を復興する側の国においては国民感情として根本的な問題であるから、プリンシプルは譲られない。ただ運用において円満を期するけれども、その運用にあたつて国内法が著しくゆがめられて、そこなわれるということは友好関係をそのことによつてそこなうという意味において反対である、こういう建前を終始とつて来たわけでございます。従つて原則的に申し上げまして、刑事訴訟法が著しくそこなわれておるということは極力避けて来たつもりでございます。御指示の点があれば今後の参考にいたしたいと思います。
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは議定書ですが、この9ですね。これを私読んでみますと、日本の刑事訴訟法で十分できるようなことをわざわざここに指摘してあることが多い。「遅滞なく迅速な裁判を受ける権利」これはどうもアメリカ人なるがゆえに特別早くやる、日本人なるがゆえにおそくやつているという事例はないと思うが、特にかような文章をここに掲げなければならなかつた理由が私にはわかりません。  それから「公判前に自己に対する具体的な訴因の通知を受ける権利」、これだつてわが訴訟法には十分あるはずである。「自己に不利な証人と対決する権利」、これも訴訟法上きまつておると思うが、何か日本人と特別の違いがあるのかどうか。「証人が日本国の管轄内にあるときは、自己のために強制的手続により証人を求める権利」、これだつてどうも――これはどこのものを相手にしているつもりか知らぬが、もし日本国民が証人であるとするならば、当然この義務は背負つておる。特別にここに掲げなければならぬことはないと思われる。  その次の弁護人を選択する権利、これも当然あると思われることが出ておる。  その次に、まことに不可怪なのは(g)であります。合衆国政府の代表者と連絡する権利及び自己の裁判にその代表者を立ち会わせる権利、これは大臣から一応の説明を聞いて、あとは事務当局から承りまするが、裁判に代表者を立ち会わせるということはまことに重大なことに考えられるのでありまするが、その点どうなんですか。
  57. 犬養健

    犬養国務大臣 こまかい問題は実際の談判に立ち会つた津田総務課長から申し上げます。私が中間報告を受けている場合の感じでは、これは当然あることを当然書いてあるというふうな解釈でここに書いてある。これはいきさつから申し上げますと、アメリカ刑事裁判権の改訂に際しまして、日本の刑事訴訟法の内容あるいは裁判の実際の運行というものを、どの程度に発達しているかというようなことをかなり長時間かつ周密に調べまして、日本は思つたよりもなかなかよくやつているという感じを抱いて、それから双方の話が大分なめらかになつたのであります。そこでこれはおそらく私はアメリカ国内に対する一つ当局としての説明資料になるものと、その当時のいきさつから考えたわけであります。従つてアメリカ人だから特別こういうことをしてくれというのじやなくて外国人といえども日本国内法で保障された範囲のことははつきりやつてもらえるでしようね。こういうような意味合いにとつたわけでございます。これは笑い話でありますが、アフリカのどこかでは、ある罪を犯すと片腕切つちまうというような罰があるそうで、そういうものを国内法でせられちやたまらないというようなことで、国際関係刑事裁判権についてはなかなか神経質であつたそうであります。今申し上げたように、日本国内法及び裁判の実際の運用を調べまして、日本に対して相当尊重の度を高め、それから議論がなめらかに進んだのでありますが、要するに今たびたび申し上げましたように、日本でやつていることはこつちにもやつてくれるでしようね。やつてくれるならば自分たちは国内法を守る責任を持ちますという味わいを含んでいるものと私は思つております。詳しくは政府委員から御答弁を申し上げます。
  58. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも私はそうは感ぜられませんが、もう少し事務的に説明を伺いましよう。遅滞なく裁判を受ける権利、いかにも日本裁判をことさら延ばしておるように感ぜられる。アメリカ人が立会いしなかつたらどんなことをやるかわからぬ、日本の刑事訴訟法は不信にたえないというような感じから出て来たものではないかと思います。ところが刑事訴訟法はわれわれはずいぶん苦心したのですが、今の刑事訴訟法は向うの方からいろいろ原稿が出て参つたので、アメリカあたりはわれわれよりよく知つておられるはずである。しかるにこういうものを入れなければならなかつたということは、私はもつと深い意味があるのじやないかと思いますが、まずそれは事務当局から私が指摘したような点に対する御説明を願います。
  59. 津田實

    津田政府委員 この点でございますが、御承知の通りこの十七条の改訂につきましては、改訂される前の十七条の第一項におきまして、北大西洋条約当事国間の協定、すなわちNATO協定アメリカについて効力を生じた場合は、日本と同様の刑事裁判権協定を締結する、かように申しておるわけであります。それに従いまして日本側から改訂の申入れをいたしまして改訂されたのであります。そこで同様であるという点につきまして第九項のような規定が設けられたわけでありますが、要するに北大西洋条約当事国十四箇国の程度の文明国におきましてすら相互にかような保障をいたしておるわけでありますので、日本のみが刑事訴訟法の規定が遅れておるとか、手続が遅れておるとかいう意味におきましてかような規定を設けたのではないのであります。まつたく北大西洋条約と同様の見地からかような規定を設けたわけであります。  それから合衆国代表者と連絡する権利、あるいは立ち会う権利、これも北大西洋条約と同様でありまするが、この連絡する権利につきましては、すでに十月三十日に発効いたしましたところの日米友好通商航海条約におきましても、領事と拘禁されましたところの被疑者あるいは被告人と連絡する権利がございます。これは日本においてアメリカの領事が日本で拘禁されておるアメリカの被疑者に会えるばかりでなく、アメリカにおきまして日本人が被疑者となつた場合に、日本の領事が会うこともできるわけであります。でありまするから、かような連絡する権利という点につきましては、およその通商航海条約においては大体認められておることでありますので、それとほとんど相違はないわけであります。  それから立会権につきましても、もとより北大西洋条約当事国間の協定に認められておるところでありますが、この立ち会うと申しますのは、いわゆる検察官あるいは弁護人として立ち会うという意味のいわゆる立会いとはまつたく異なるものでありまして、単にオブザーヴアーとして出席しておるというにすぎないわけでございます。これは先般も御承知かと思いまするが、英濠兵が東京において強盗の未遂でありますかやりましたときに、恵比寿キヤンプにおいて英濠側の裁判が行われましたが、その際も日本の法務省の職員並びに東京地検の検事が立ち会つております。その意味におきます立会いとまつたく同様でありまして、これは大体ただいま国際的に認められておるというふうに考えておるわけでありますし、もとよりNATO協定にも認められておりますので、このような定めがなされた次第でございます。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも聞いておると、それでは傍聴と同じようなことである。傍聴ならば特別にそんなことを言わぬでもいいわけですが、立会いが傍聴と違うところはどういうことが違いますか。
  61. 津田實

    津田政府委員 傍聴は一般傍聴人としての地位として傍聴するわけであります。この立会いにつきましては傍聴と実質的には相違はないのでありますが、やはりその性質は傍聴と若干違いまして、政府代表としてそれに出席しておる、こういうことに相なるわけでありまして傍聴禁止の場合におきましても、出席し得るというところをもつてその相違といたすわけであります。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 特別傍聴人と承つてよろしゆうございますか、それともまだ、まさか裁判に口出しはできまいけれども、そのあとにおいてもあのやり方は悪いからどうだとか、あの調べ方はどうだとかいうような、そういう質問でもできるわけでありますか。「立ち会わせる権利」と、こう言つておるのですから、何か違いがなかつたら――そんなことはないと思いますが、もしあるとすればこれは重大なことだから、明瞭にしておいてもらいたい。
  63. 津田實

    津田政府委員 裁判に対して口を出す権利は一切ございません。のみならず、あとでその裁判におきまして被告人の権利が確保されたかどうかということについて、本国に対してその意見を述べることはあり得ると思いますが、それは本国に対して意見を述べるのでありまして、直接裁判所あるいは検察官等に意見を述べることはあり得ないのでございます。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それからもう一つ重大なことは、あなたはNATO協定にあるそのままをやつたと言われるが、ちよつと違うようですよ。NATO協定では、「派遣国の政府の代表者と連絡する権利及び裁判所規則が許すときは自己の裁判にその代表者を立ち会わせる」ことができると、こちらの裁判所がよろしいというルールをつくらない限りできないことになつておる。ところが日本のこれは全部ができることになつておりまして、この点はNATO協定と違うとわれわれは承つておるのですが、その点はいかがですか。
  65. 津田實

    津田政府委員 NATO協定と実質的に相違がないというふうに御説明申し上げた次第でございますが、ただいま御指摘の点は御指摘の通りでございます。で、これにつきましては交渉の経過を御説明いたさなければならぬと思うのでありますが、御承知の通りアメリカの上院におきまして、NATO協定を批准するかどうかについては、非常な論議をなされまして、相当の長期間を要した次第であります。そのときに最も上院におきまして留保と申しまするか、として意思表示をいたしたものは、いかなる場合におきましてもアメリカ政府の代表者が裁判に立ち会い得るということを保障する必要がある、かように言つておるのでございます。で、その点が問題になりましたわけでありまして、日本に対するNATOが発効いたしまして後の交渉におきまして、いかなる場合においても日本裁判には立ち会うという権利を持たなければ、アメリカ政府としては上院の批准の次第もあつて、とうていこの協定に応ずることができない、こういう申入れであつた。このアメリカの上院の留保につきましては、いろいろ議論があるわけでありまするが、いずれにいたしましてもアメリカ側はNATO当事国に対しまして早急にこの点を改訂する、つまりいかなる場合でも立ち会い得るということを協定すべく行動を開始いたしておるのであります。あるいは話合いのついたというような話も聞いておりますが、すでにNATOの発効いたしておる四箇国に対しては、この点を改訂すべく交渉中なのであります。で、条約面は改訂いたさないまでも、実質においていかなる場合でも立ち合い得るというふうにとりきめをするように向つておる次第であります。その意味合いから申しましても、日本側におきまして、いかなる場合にでも立ち合うことでなければ、この協定は上院の留保決議の手前応ずることはできないという態勢で参つた。そこで日本側におきましても、日本の憲法におきましては、およそ裁判は公開を大原則といたしまして、ことに政治犯等におきましては当然公開をしなければならぬということになつております。風俗を害する罪等におきまして傍聴禁止をするというのは、風俗上の問題でございますので、これは合衆国の代表者というような特殊の地位を持つ者に対して傍聴を認めて、被告人の権利がいかように保障されておるかを知らしめるということは、むしろお互いの国の信義の上からいつて当然なし得るところと思いますが、問題は政治犯の場合の国家機密等に関しますれば、問題が起るということは、当然予想されるわけであります。しかしながら憲法の傍聴の規定によりますると、政治犯につきましては傍聴を禁止することはできません。従いまして国家機密を害した犯罪は、大部分は政治的目的から出ておるわけでございますので、傍聴を禁止することはないというふうに実際問題としては相なる。従いましてこの裁判所規則が認めるとか認めないとかいうことを日本側として考えるかどうかということは、この点から申しましても、日本裁判は公開を原則といたしておりますから、いかなる場合に立ち会われても日本側として痛いところは毫もないということになるわけでございます。しかしながらさらにその上にだめを押しまして万一日本で傍聴禁止をし得る事件で、しかも日本の国家機密に該当するような場合はいかにするかということまでも考えました結果、この公式議事録にございますように、公式議事録の9項に関するところでありますが、この印刷物によりますと十二ページの終りの3というところでございます。ここに「合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で日本国裁判権に基いて起訴されたものの裁判合衆国政府の代表者が立ち会うことに関する9(g)のいかなる規定も、裁判の公開に関する日本国憲法の規定を害するものと解釈してはならない。」こういう合意をいたした次第でございます。ですから実質的には実際問題としてはあり得ないのでございますが、万が一にも日本の国家機密の重要な問題に関する場合は、この合意によりまして代表者の立会いを拒むということもあり得るということが、最終的に留保いたしておるわけであります。しかしながら今申しましたような径路におきましてこの規定ができましたので、日本の憲法の裁判の公開の原則から見まして、かような場合が生ずることは実際問題としてはほとんどないというふうに考えておる次第でございます。
  66. 小林錡

  67. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 刑事裁判権に関する条項について合意された公式議事録というのを拝見しますと、「国際連合軍隊の軍当局は、施設の近傍において」とこう書いてありますが、この近傍ということについての解釈に何か具体的な合意ができておるのでしようか。
  68. 津田實

    津田政府委員 「施設の近傍」と申しまするのは、施設に直接影響を及ぼし得る範囲というように考えております。でありますから、たとえば施設のかきねの外から中に向つて爆弾を投じるとか、そういうふうな影響を及ぼし得る地位と考えるわけでありますから、その範囲でいかなる間が影響を及ぼし得るかが個々の例によつて違いますが、あるいは小銃で射撃するという場合は、数百メートルということもあり得るかと思いますが、いずれにいたしましても非常に狭い周囲をさしておるわけであります。
  69. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それは物理的な影響という意味ですか。私はこの点について近傍ということの解釈いかんによつては、相当広い範囲に駐留軍、国際連合軍隊が警察権を行使するという場合が起り得るんじやないかという感じがするのですが、物理的な影響力ということがはつきりいたしておりますか。
  70. 津田實

    津田政府委員 その点でございますが、まつたくお説の通り物理的に犯罪が及び得る範囲というふうに考えております。フイジカリーというふうに英語では言つております。
  71. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、ビラを張るとか、あるいは演説をするとか、デモがそのそばを通るとかいうことについては無関係ですね。
  72. 津田實

    津田政府委員 さようでございます。関係ありません。
  73. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 続いて二行目を見ますと「法の正当な手続に従つて」と書いてありますが、これは国際連合軍の軍隊の法規という意味ですか。
  74. 津田實

    津田政府委員 さようでございます。この法の正当な手続は、こまかい点につきましてはもちろん日本の法制と違う場合があり得るのでありますが、全体の精神からデユー・プロセス・オブ・ローと言えば大体国際的にあまり開きがございませんので、国際連合当局日本法律に従つてやるということは、これは実際的にもむずかしい問題でありまして、当該国のデユー・プロセス・オブ・ローというふうに考えております。
  75. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、日本人が場合によると日本法律に従わずして逮捕せられることがある、こういうことになるわけですか。
  76. 津田實

    津田政府委員 その点は施設区域内あるいはその近傍におきましてはあり得るわけであります。
  77. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それから今までもしばしば問題になりました公務執行中の犯罪ということになつておりますが、この公務執行中の犯罪についての証明書、これは刑事訴訟法の三百二十三条一号に該当するものでしようか。
  78. 津田實

    津田政府委員 大体そのように考えております。
  79. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそうだとすれば、わざわざこういうような規定を置く必要がないと思いままが、特に刑事訴訟法の三百二十三条では足りないで、こういう規定を設けられた理由を御説明いただきたいと思います。
  80. 津田實

    津田政府委員 その点でございますが、これは国際的に申しましても、先ほど政府委員から申しましたように、イギリスのビジツテイング・フオーセズ・アクト、一九五二年でございますが、これによりましてもかような証明書が出されて、それの反対が証明されない限り、事実に関する十分な証拠であるというふうにイギリスの国内法が定めております。大体こういう傾向は国際的な傾向でございまして、先ほども政府委員から申しましたように、公務執行ということの真の事実は、一応指揮官が証明するにあらざれば証明しにくいということであります、従いましてこのような規定を設けた次第でありますが、これに対しましても昨日御説明申し上げたかと思いますが、この証明書自体に対して日本側で承服しかねる場合は、当然合同委員会で論議をするということになつております。論議をするだけであつて合同委員会が決定するわけではございません。これは第一次の裁判権を有するとする、当局判断をして、この証明書の価値を判断いたしまして起訴、不起訴をきめる。裁判所に参りました場合には、第3項にございます判事の自由心証を害さないということになつております。ここでアメリカ側も起訴し、日本側も起訴するという場合も予想されないではないのでありますが、そういう場合は合同委員会で当然論議して解決をはからなければならぬというふうに考えております。
  81. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もし刑事訴訟法の三百二十三条の一号に該当する書面だとすれば、これは特定の被疑者が職務の執行中であつたということだけの証明のように思えるのですが、それを職務の執行中であつたということと、現にその執行中に起つた犯罪との因果関係というのですか、連鎖というのですか、そこまでの証明はできないように思うのですが、きのうのお話を伺つておりますと、そこまで証明をするように伺えたんですが、その部分について御説明いただきます。
  82. 津田實

    津田政府委員 その点でございますが、公式議事録にもございますように、起訴された罪がもし被告人により犯されたとするならば、その罪が公務執行中のものということになるわけであります。そこで問題といたしましては、公務執行中の証明書と申しますか、いずれにいたしましてもその内容を書くわけでありますが、その内容がいかなる公務を命じてその執行中であつたかを示しておるということになると思うのであります。従いましていかなる公務を命じて執行中であつたか、むしろその執行中ということは、執行がいかなる方法執行されていたかということは、第三者たる当該犯罪の証人が知るべき事項だということになります。でありますから、結局は仰せの通り公務執行時間中であつて、その公務内容はかくかくという証明書になるという結論でございます。
  83. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今お説のイギリスの外国駐留軍法を見ますと、作為ないしは不作為という言葉が出ておりません。こちらの議定書を拝見しますと、作為または不作為という言葉が明確に出ております、そこに何か違いがあるのでしようか。
  84. 津田實

    津田政府委員 その点、犯罪行為でございまして、行為作為と不作為にわかれるというような考え方からして相違はないと考えております。
  85. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それから先ほど鍛冶さんもお話になりました好意的な考慮ということですが、この問題について先ほど来のお話を承つておりますと、いかにもごもつとものように伺えるのですが、しかしアメリカの上院においてかなり強い決議が行われているという点から考えて参りますと、この好意的考慮ということはそう単純には考えられないんじやないか。政治的に外交的径路を通じて前記の要請を強く行うように、国務省に対して要請しなければならないというふうに書かれておりますし、いろいろな問題がそれをめぐつて現われて来ると思います。むしろ形式的な法律解釈の問題ではなくして国民の心配といたしましては、この好意的考慮というチヤネルを通つて、次第にこちらの裁判権が侵されて行くんじやないかというような危険を感ぜざるを得ないと思います。こういう点についてもつと好意的考慮を施すべき事案、その他具体的な標準を確定してあらかじめお示しをいただきたいと思うのです。
  86. 津田實

    津田政府委員 ただいまのお説のアメリカの上院におきます論議でございますが、好意的考慮を払うべきことを要求しろというのは、その裁判におきまして合衆国において与えられるべき憲法上の権利が保障されておらず、それが否認されておるために、被告人が保護されない危険があると判断した場合というふうになつておるようであります。従いまして日本の憲法におきまして保障しておることは、もちろん大体において合衆国憲法において保障されておるところでありますので、日本裁判にして正当に行われる限りにおいては、これを発動するような、つまりアメリカの上院の留保に当るような場合は、生じないというふうに考えるわけであります。  次に好意的考慮の点でございますが、これは先ほど申し上げましたようなわけでありまして、特別の理由がなければならない。従つてその理由と、その資料が納得し得るものでなければならないということは当然でございます。そこでこの特別の理由というものがいかなるものであるかということは、これはあらかじめきめることはできません。またあらかじめ論議をいたしましても、いろいろな事情から、日本側がそれにあらかじめそういう言質を与える。あるいはアメリカ側でも日本側に対してこういう場合は好意的考慮をいたしますという言質を与えることは、適当でありませんので、好意の内容はその辺の内容まで入つておりません。
  87. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと、かりに好意的な考慮日本が払つて行くということになりますと、これは起訴前でありますならば当然起訴便宜主義に従つて不起訴にして行くのだろう、私そう思うのですが、そういう検察官の当然独自に行うべき起訴便宜主義、判断、そういうものに対し、外交的径路を通じて、前記の要請を強く行われるという形になりますと、検察官が持つているそういう判断に対して、外交的な影響が強く入つて来るのじやないかという感じがするのですが、この点についてどうでしよう。同じようなことを伺う結果になりますけれども……。
  88. 津田實

    津田政府委員 その点につきましては、この放棄要請は、お説の通り、検察官が直接なされるわけではなく、外交的径路を通じて来るわけでございます。従いまして、それは法務省に参るということに結局相なりまして、現地の検察官に対しまして、好意的考慮要請があつたからどうとかという問題は、全然無関係でございます。これは事実そのものは法務省で了知する必要があるのでありますが、その事実に対して、あるいは諸般の事情を判断して、権利放棄をするかどうかをきめる次第でありますので、具体的の検察権には何ら影響がないというふうに考えております。
  89. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それから規定を拝見して行きますと、日本人が外国の駐留軍なり、アメリカ軍に対する裁判の証人としての義務を、非常に強く押しつけられているという形になつております。逆に、向う軍隊の要員、家族、軍属、こういう者に対して、同様過料をつけたような形の強制の規定ができておりますか。
  90. 津田實

    津田政府委員 その点でございますが、日本におりまするところの軍人、軍属、家族に対しまして、日本裁判所が喚問いたすという問題であります。これにつきましては、当然刑事訴訟法に載つている召喚状を出す、あるいは場合によつては勾引をするということは当然なし得るので、その点の刑事訴訟法の規定は、何ら制限されておりません。但し、実際問題といたしましては、日本裁判所の召喚状を、いきなり家族なり軍属に送達したのでは、向う判断に迷うでありましようから、事実は、召喚状につけて、裁判所の方から、裁判所のもよりの憲兵司令官に対して、出頭せしめるようにという文書を出します。それによりましてアメリカ側は必ず当該証人を召喚期日に裁判所に出頭せしめる、かように確約をいたしております。
  91. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういう点で、規定それ自身を見て行きますと、何かNATO方式による均等原則が破れているような気がいたしますが、それはともかくとして、続いて駐留軍なり連合国軍隊が逮捕いたしました者を日本で受付ける、こういう場合にその時間的な計算をはずして、身柄を引受けたときから計算をするというようなことについては、逮捕せられたのがたまたま外国軍隊であつたために、不当にその被疑者の勾留時間が長くなる、こういう感じがするのですが、この点についての向うとの折衝その他について何かありましたら、お知らせいただきたいと思います。
  92. 津田實

    津田政府委員 その点は従来の法律にもございました問題であります。これは従来からアメリカ側におきましては、施設区域内におきまして、日本人あるいは合衆国の要員以外の者を逮捕いたしました場合には、ただちに日本側に引渡すということを、合同委員会を通じて確約いたしております。現にそれらの者を拘禁しておくと申しますか、継続的に抑留しておく設備は全然持つておりません。今までの実例から申しましても、即刻引渡しの電話なり何なりを日本側に寄越しておりますので、かような点の御懸念はないと存じます。今までの運用も、さような点は証明されておりますので、この際はあらためてその点について考慮はいたしませんでしたけれども、今まで通りの運用がなされることは当然でございます。
  93. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしお説のようであれば、刑事訴訟法の規定をはずしておく必要はないと思いますが、この際その軍隊が逮捕したときから計算するように法規をお改めになる意思はないのでしようか、そうすることによつて日本国民権利がよりよく守られるということだけは間違いないと思いますけれども……。
  94. 津田實

    津田政府委員 その点につきましては、従来からかような立法に相なつておりますし、実際問題として弊害の現われた事件は一件もございませんので、今ただちにそういうものに改めるという点は問題でありますので、そのままにいたしておる次第であります。
  95. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今までにないからといつて、今後もないということは、私はあり得ないと思う。事いやしくも国民の身体の自由という基本的な権利に関するものでありますから、今までなかつたからこれでいいだろうという安易な考え方は、私は許されないと思う。むしろその必要がないということを今局長自身がお認めになつているのですから、将来そういうことの起る余地なからしめるような形で、この際思い切つてこの条文をお改めをいただきたい。こういう感じがするのです。しかし現実になかつた、こういう話ですが、はたしてなかつたかどうかについては、私たちとしては、相当疑問なきを得ない。これはこういう刑事特別法ができない占領中の事態でもありますから、あらためて例としては申し上げかねますが、何十日も拘禁せられておつたというような事実が横浜にすら相当あります。今後もきつと出て来ると思いますが、ひとつその点についての――これは質問というよりも御意見を伺う形になりますが、事国民の重大なる権利に関しますので、ひとつこの点についての御意見を伺いたい。
  96. 津田實

    津田政府委員 その点でございますが、私ども日本人に、あるいは日本に通常居住する外国人に関しましてさようなケースが起つたことは全然了知いたしておりません。のみならず現在の第十二条におきましては「合衆国軍隊から日本国法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知」これは日本人の場合もあるでありましようし、軍人、軍属で日本側が第一次裁判権を持つ者、あるいはアメリカ側裁判権放棄した者等を全部含んだ広い表現に相なつておる次第でございます。
  97. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のお答えはその必要がないことをお認めになつていらつしやるために、改める必要がないというお話のように聞えて、私たちとしては受取れないのです。続いてアメリカ人は自己の弁護人を選任する権利があるというように載つておりますが、これはちよつと読みますと、弁護人の範囲に制限がないように見えますが、これは当然日本の資格を持つた弁護人と解釈してよろしいのではないか、それともアメリカの資格の弁護人を連れて来てもよいというのですか。
  98. 津田實

    津田政府委員 その点は日本の法廷におきまして資格を有する弁護人でなければならぬことは、当然と考えます。
  99. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 時間もありませんから、私はこの程度で終りまして、またあとで時間がありましたら伺わしていただきます。
  100. 小林錡

    小林委員長 木下郁君。
  101. 木下郁

    ○木下委員 法務大臣に伺います。アメリカの駐留軍との間のものと、国連軍との間のものと、同じようなものが両建になつております。国連軍の方は、あれがおるということはどういう根拠か。条約か何か、私はつきり突きとめたいのですが、アメリカとの間には安保条約、それに基く行政協定というものがあるのです。それに基く軍隊と国連軍の一部をなしているアメリカ軍隊と、アメリカの駐留軍には二通りありはしないかということを私は想像するのです。その関係について伺いたい。
  102. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの御質疑の点は、雑音があり、私耳を少し悪くしておるのでよくわかりませんでしたが、私の解釈が違つたらまた御質問を願います。  このたび国連軍との刑事裁判権の署名を外務大臣と私がしましたが、国連軍関係の代表国と署名した中にアメリカ大使も入つておるのであります。これは国連軍としてでなく、ちよつとややこしいのでありますが、統一司令部としてのアメリカということで署名しておりまして、国連軍の構成国としての署名ではない、こういうような関係になつておるのであります。
  103. 木下郁

    ○木下委員 そうしますと、その約束は、日本と国連軍に所属しておる――これはたくさんな国があると思うのです。そのアメリカを含めた諸国との間において別々にやつたというかつこうになりますか。
  104. 犬養健

    犬養国務大臣 さようでございます。これはむずかしい法律論は別といたしまして、御承知のように吉田書簡というものが出まして、これには日本に駐留する米軍の家族には日本裁判権は及ばないようなとりきめに当時の事情としてなつておりました。今度NATO協定が米国で批准されました結果、かねてのとりきめのように、NATO協定通り刑事裁判権日本で持ちたいということを日本で申し込んで、いろいろのいきさつの結果、それを結んだわけであります。そこで事実問題といたしましては、そういたしますと国連軍の方はケース・バイ・ケースでありますので、吉田書簡に準じてこれまでやつてつた、国連軍の家族はつかまらない、米軍の家族はつかまるという妙なことが起りますので、至急これを改めたいというので折衝をやつたというのが政治的な原因でございます。
  105. 木下郁

    ○木下委員 これはまあおのおのの意見があろうと思いますが、日本アメリカとの間の関係については、アメリカ日本が比重的に強く思い過ぎておるという感じが国民の中にある。またいろいろ政治的な立場でアメリカの植民地になつたとかなんとかいうような極端な意見も聞いておるのです。さような意味で、こういうふうにまつたく同じような法律をつくる、あるいは協定をする場合には、アメリカというものは安保条約行政協定があるから、実際的に比重が重いということもありましようが、取扱いの面を、こういう機会にこそ国連軍は集団的な安全を保障するという観点も考えて一本にして、その一部分にアメリカを加えるというやり方の方が、政治的な考えとしてはいいのじやないかというふうに私は考える。そういう点については、これを折衝されるときには御考慮を払われませんでしたか。
  106. 犬養健

    犬養国務大臣 これは非常に大切な御質問だと思います。これは法務大臣としての個人の意見になる場合もございますが、何でも率直に申し上げることが、大切と思いますのでお答えいたします。精神としては私は木下さんと全然御同感であります。ただいきさつといたしまして、NATO協定アメリカ上院で批准されて、かねての通り米国と日本とにおいて――NATO協定に貴国において批准された場合はその通り刑事裁判権をしてもらいたいといつてありますので、さつそくアメリカとやつたわけであります。そこで国連軍と一緒にやるまで待つてよいかどうかという問題でありますが、たまたま非常によい事情になりまして――刑事裁判権の問題だけを国連軍側で切り離して暫定的な同意を得てくれたらよいようなものでありますが、国連側とは御承知のようにまだ国連軍が駐留しておる場所の地代の問題とか、免税の問題とか、いろいろな大蔵省関係のめんどうなことがあるのであります。私当初おそれましたのは、そういう問題が解決しないうちは刑事裁判権の問題も署名しないというようなめんどうなことになつてはいけないと思いまして、私がたまたま外務大臣代理をしておりますときに、この点非常に苦慮いたしたのであります。ところが事情が意外に好転いたしまして、またアメリカ側の努力もありまして、国連側が刑事裁判権だけを切り離してとりあえず大急ぎで署名しましよう、あとのことはあとにしようというので、日本としては非常に都合のよいことになつたのであります。ですから最良の理想形態を申しますれば木下さんのような御意見が成り立つと思うのでありますが、時間的な経過から言いますと、アメリカとまず刑事裁判権日本側権利を回復し、次いで国連にその前例を及ぼすという手段をとつたわけでございます。しかしこれは、政治的な根本問題といたしましては、ただいままさしくおつしやつた通り日本は集団安全保障形態というものに入つて行くというのが考え方の根本でございますから、米軍と国連軍とを著しく差別して行く考え方には私個人は反対であります。この点は総理大臣にも私は当時意見を具申してある次第であります。精神はまつたく木下さんと同様ということを申し上げたいと思います。
  107. 木下郁

    ○木下委員 根本的な方針としては、アメリカだけを別格扱いにするということはしない方がよいということは私も考えております。  これは大臣に対してではありませんが、ごく巨細な点について一点だけ伺つておきたいと思います。この公式議事録を見ますと、3のところに「その指揮官又は指揮官に代るべき者が発行したものは、反証がない限り、刑事手続のいかなる段階においてもその事実の充分な証拠資料となる。」とあつて次の項に「日本国の刑事訴訟法第三百十八条を害するものと解釈してはならない。」ということになつておりますが、この「刑事手続のいかなる段階」というのは、これを向うでやるかやらないかという裁判の審理のところまでも行くのかどうか。あるいはまた極端にいえば、もう判決を言い渡してそれが確定するかしないかというときまでも、そのときに今度向うからこういう証明書を持つて来ればこうしなければならぬというような意味ですか。この「刑事手続のいかなる段階」という意味を明らかにしていただきたい。
  108. 津田實

    津田政府委員 公式議事録の「3(a)の(ⅱ)に関し、」というところの「刑事手続のいかなる段階においても」と申しまするのは、その前にもあります通り起訴された事件について申すわけであります。起訴された事件については一審、二審とございますが、その間においてという意味でございまして、ただいま仰せの通りであります。
  109. 木下郁

    ○木下委員 なお一点。その次の8のところであります。これは一次、二次の裁判権に関して「同一の犯罪について重ねてその者を裁判してはならない。」という一事不再理の原則がきめてあります。そして3の(C)には「第一次の権利を有する国の当局は、他方の国がその権利放棄を特に重要であると認めた場合において、その他方の国の当局から要請があつたときは、その要請好意的考慮を払わなければならない。」とありますが、これは早くいえば不起訴の場合と裁判したけれども罰しなかつた。それからこちら側から見ればはなはだしく軽い、あるいははなはだしく重いということもあり得るでしようが、そういう三通りの場合を含んでおりますか、その意味を伺つておきたい。
  110. 津田實

    津田政府委員 第8のただいま御指摘の点でありますが、本来ならば裁判権は第一次、第二次というふうにわかれるわけであります。従つて第一次の方が裁判権行使いたしましても、当然第二次の裁判権が出て来るわけではないのでありますから、従つて双方意見がはなはだしく食い違うかどうかの場合以外に、同一事項について二度別の方で行使されるということはあり得ないわけであります。しかしながらもしも万一そういうことが行われることがあれば、被告人にとつて非常に迷惑な話でございますので、特に第8項の規定を設けたわけであります。従いまして一方が第一次裁判権を持つておりまして裁判をいたしました場合、その裁判によつて無罪の判決を受ける、あるいは有罪の判決を受けて服役を始めますと、もはや他の方で裁判を受けることはない。こういうことに相なるわけであります。他の方の裁判権はすでに第二次裁判権なのでありまして行使の余地が本来ないわけでありますが、無理に行使することがあつては困るというので、念のために書いたものであります。
  111. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ちよつと関連して大臣に伺いますが、大臣はさつき他の方は無条約関係に置かれておるにかかわらず、刑事裁判権の問題だけを特に切り離してきめられたのは、非常に幸いなような気持だということをおつしやつておりますが、どういうことが幸いなのですか。むしろ私から申しまするならば無条約関係に置かれるならば、当然属地主義で日本の刑事訴訟法に服すべきものであるのに、それを特別扱いをするようなことを急いで、おきめになることをお喜びになるお気持、そのお気持の理由を伺いたい。
  112. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。これは考えようでございますが、私どもといたしましては相当日本の国権を回復した米国と日本との刑事裁判権のとりきめだと思つております。従つて他の国連軍との刑事裁判権関係もその線に早く正式に承認をさせたい。しかるに私の方の役所のことだけ申し上げてはいかがかと思いますが、他の国連軍の駐留しておる土地の地代であるとか、免税とか刑事裁判権から比べますと、国家にとつては幾らか重要性の少い問題に引きずられて、正式に日本刑事裁判権が国連軍に対して認められないという一種の空白時代が長く続くということはおもしろくないと考えていた次第であります。さよう御承知を願います。
  113. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私どもから考えますと、国連軍が日本に駐留すること自体が何のためであるかわからない。私どもは朝鮮事変が休戦になりましたので、駐留軍そのものは日本からとうに引上ぐべきものであつたと思う。それをかようなことにいたしますと、当然既成事実として認めるようなことになるので、われわれ国民は承服しかねる。こういう気持なんです。国連軍の日本に駐留する根拠、これは外務大臣にも伺いたいと思いますが、その点について法務省ではどういうお考えを持つておられますか。とうに帰つてもらわなければならぬものだと考えておりますが、駐留しておる既成事実をお認めになるところの解釈、なぜそういうふうに御解釈になるのですか。
  114. 犬養健

    犬養国務大臣 これは私からお答えするのはちよつと範囲外であるかと思いますが、法務大臣としては、そこにおるものの裁判権日本の国威を傷つける裁判権であつてはならない。これが法務大臣のぎりぎりの範囲でありまして、いることがよいか悪いかということを国務大臣として述べよとおつしやられると多少意見もありますが、そこまではみ出てよいかどうかちよつとわかりかねます。
  115. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私どもはむしろ属地主義の原則をそのまま適用されればいいのではないかと思う。これが日本国民の希望であり、輿論であり感情であると思います。特に外国の人たち、アメリカの方たちに対して特権を与えるような規定をつくること自体が、言いかえますならばかような刑事訴訟法の特例をきめること自体がみずから日本の国を侮辱し、みずから卑下するような気持になりますから、私どもはかようなものをつくらない方がよかろうと思う。そういたしますとやはり大臣がおつしやつたような気持は、前提に置いて否定してかからなければならぬ、かように考えております。
  116. 犬養健

    犬養国務大臣 これは非常に国として根本の大事な問題だと思う。その点が古屋さんの属しておられるお立場と多少違うのではないか。今おそらくアメリカとソ連を除いては、どこの国でも自分だけで完全な武器を持つてゆるぎもしないという国はないので、結局さつき木下さんが多少触れられたように、集団安全保障ということで平和を保つて行くという考え方をわれわれは持つておるのであります。従つて自分の国だけでできない危険なところはみんなで助け合うという考えから出発しておるのでありまして、この間も参議院で亀田君がやはりこれ自体はよくできておるけれども、これは乗つかつておるもとの思想がいかぬということを言われたのであります。これは速記録以前に言われたのであります。それはお立場の違いであると思いますが、要はやはり一つの国だけに隷属するようなとりきめをするということが国民に対してはいけない。これだけは私は守つて行きたいと思つております。いかなる場合でも、日本にどこの国の集団安全保障の精神に基いた軍隊も二度と来てはいかぬという考え方については、若干あなたのお考え方と私の考え方とそこに違いがある。しかしそのいさせるいさせ方に問題がある。私はこういうふうに考えております。
  117. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 この点はいかに聞きましても考え方の違いでありますから議論もできないのでありますが、ただ国連軍が日本におりますということと、刑事裁判権の問題は、また別個に考えてもいいのじやないか、日本の属地主義の刑事訴訟法によつて完全にこれを履行して行くことが独立国家の建前じやないか、こう私どもは考えております。この点は大臣と意見が異なつておりますからそのくらいにしておきますが、そのことだけを申し上げておきます。
  118. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今古屋先生の言われたことと同じことですが、かりに大臣のお立場として国連に協力するという立場をおとりになるとしても、そのことと刑事裁判権の問題とがすぐ関連をして来るとは私どもには思えないのですが、かりに国連に協力をするという立場をこちらがとりましても、向うもまたこちらに協力すべき義務があると思うのです。もしそうだとするならば、世界の刑事訴訟法の原則からいつても、属地主義というのは一般に認められた第一原則だと思います。そうだといたしますならば、むしろ向うの方から属地主義を認めてかかつて来ることが相互に立場を認め合うという形をとる形になると思うのですけれども、そういう点でむしろ国連協力という立場からこの刑事裁判権の問題が出て来るのじやないか。そこにはすぐ関連性はないと思うのですが、もしそうだとするならば、当然日本の刑事訴訟法に従つて向うの連合国軍人を処罰しても、決してそれは国際法的に友誼に欠けるという関係はないと思いますが、いかがでしよう。
  119. 犬養健

    犬養国務大臣 これは私の承知しておる限り、イギリスでもヨーロツパ大陸でも今問題になつておりますが、国際法とおのおのの国内法の刑事訴訟法との調和をどうするかという問題が、ことに第二次世界大戦後各地に起つておる法律関係の大きい問題だと思います。おつしやる通り、国連協力とこの刑事裁判権の問題は切り離して考えて行くべき問題だと思います。完全なる相互平等的な属地主義、完全な平等的なお互いの駐留軍に対する刑事裁判権の問題ということになりますと、イギリス対アメリカ、その他の国対アメリカというのと日本とちよつと違うのは、日本軍隊を持つておりません。従つて他の国に駐留さしておる軍隊がないということで、イギリス対アメリカと多少趣を異にしておるわけであります。私はお言葉のように、国連協力のこれからのやり方と、現在日本に乗つかつて、土地の上に住んだり立つたりしている外国人の軍隊刑事裁判権をどうするかという問題とは切り離して、第一階段的な問題として、日本あとう限り国内法の権威を保ちたいということでこのとりきめをしたのでございます。さよう御承知を願います。
  120. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめて、明日午前十時より委員会を開くことにして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十七分散会