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津田政府委員 NATO協定と実質的に相違がないというふうに御
説明申し上げた次第でございますが、ただいま御指摘の点は御指摘の
通りでございます。で、これにつきましては交渉の経過を御
説明いたさなければならぬと思うのでありますが、御承知の
通りアメリカの上院におきまして、
NATO協定を批准するかどうかについては、非常な論議をなされまして、相当の長期間を要した次第であります。そのときに最も上院におきまして留保と申しまするか、として意思表示をいたしたものは、いかなる場合におきましても
アメリカ政府の代表者が
裁判に立ち会い得るということを保障する必要がある、かように言
つておるのでございます。で、その点が問題になりましたわけでありまして、
日本に対するNATOが発効いたしまして後の交渉におきまして、いかなる場合においても
日本の
裁判には立ち会うという
権利を持たなければ、
アメリカ政府としては上院の批准の次第もあ
つて、とうていこの
協定に応ずることができない、こういう申入れであ
つた。この
アメリカの上院の留保につきましては、いろいろ
議論があるわけでありまするが、いずれにいたしましても
アメリカ側はNATO
当事国に対しまして早急にこの点を改訂する、つまりいかなる場合でも立ち会い得るということを
協定すべく行動を開始いたしておるのであります。あるいは話合いのついたというような話も聞いておりますが、すでにNATOの発効いたしておる四箇国に対しては、この点を改訂すべく交渉中なのであります。で、
条約面は改訂いたさないまでも、実質においていかなる場合でも立ち合い得るというふうにとりきめをするように向
つておる次第であります。その
意味合いから申しましても、
日本側におきまして、いかなる場合にでも立ち合うことでなければ、この
協定は上院の留保決議の手前応ずることはできないという態勢で参
つた。そこで
日本側におきましても、
日本の憲法におきましては、およそ
裁判は公開を大原則といたしまして、ことに政治犯等におきましては当然公開をしなければならぬということにな
つております。風俗を害する罪等におきまして傍聴禁止をするというのは、風俗上の問題でございますので、これは
合衆国の代表者というような特殊の地位を持つ者に対して傍聴を認めて、被告人の
権利がいかように保障されておるかを知らしめるということは、むしろお互いの国の信義の上からい
つて当然なし得るところと思いますが、問題は政治犯の場合の国家機密等に関しますれば、問題が起るということは、当然予想されるわけであります。しかしながら憲法の傍聴の
規定によりますると、政治犯につきましては傍聴を禁止することはできません。従いまして国家機密を害した
犯罪は、大部分は政治的目的から出ておるわけでございますので、傍聴を禁止することはないというふうに実際問題としては相なる。従いましてこの
裁判所規則が認めるとか認めないとかいうことを
日本側として考えるかどうかということは、この点から申しましても、
日本の
裁判は公開を原則といたしておりますから、いかなる場合に立ち会われても
日本側として痛いところは毫もないということになるわけでございます。しかしながらさらにその上にだめを押しまして万一
日本で傍聴禁止をし得る
事件で、しかも
日本の国家機密に該当するような場合はいかにするかということまでも考えました結果、この
公式議事録にございますように、
公式議事録の9項に関するところでありますが、この印刷物によりますと十二ページの終りの3というところでございます。ここに「
合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で
日本国の
裁判権に基いて起訴されたものの
裁判に
合衆国政府の代表者が立ち会うことに関する9(g)のいかなる
規定も、
裁判の公開に関する
日本国憲法の
規定を害するものと
解釈してはならない。」こういう合意をいたした次第でございます。ですから実質的には実際問題としてはあり得ないのでございますが、万が一にも
日本の国家機密の重要な問題に関する場合は、この合意によりまして代表者の立会いを拒むということもあり得るということが、最終的に留保いたしておるわけであります。しかしながら今申しましたような径路におきましてこの
規定ができましたので、
日本の憲法の
裁判の公開の原則から見まして、かような場合が生ずることは実際問題としてはほとんどないというふうに考えておる次第でございます。