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1953-10-31 第17回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月三十一日(土曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    本多 市郎君       飛鳥田一雄君    木原津與志君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         参  考  人         (警視庁防犯部         長)      養老 絢雄君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 九月二十八日  委員荒舩清十郎辞任につき、その補欠として  川村善八郎君が議長指名委員に選任された。 十月二十六日  委員川村善八郎辞任につき、その補欠として  野田卯一君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  中村梅吉君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員鈴木茂三郎君及び細迫兼光辞任につき、  その補欠として、飛鳥田一雄君及び木原津與志  君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員山崎岩男君及び渡邊良夫辞任につき、そ  の補欠として青木正君及び田嶋好文君が議長の  指名委員に選任された。 同日  田嶋好文君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 十月二十九日  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約  第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部  を改正する法律案内閣提出第五号)  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(吉  田安君外三名提出、第十六回国会衆法第八二  号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  連合審査会開会申入れに関する件  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約  第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部  を改正する法律案内閣提出第五号)  法務行政に関連する保全経済会等利殖機関の調  査に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入ります前に理事補欠選任についてお諮りいたします。  田嶋好文君が去る九月二十五日委員辞任せられ、本日再び議長指名で本委員に選任せられました。田嶋好文君は理事でありましたから、理事補欠選任を行わねばならぬのでありますが、理事補欠選任は、先例に従いまして選挙の手続を省略し、委員長において指名するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、田嶋好文君を理事に御指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 小林錡

    小林委員長 それでは日程に入ります。まず国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。すなわち衆議院規則第九十四条によりますと、常任委員会は、会期中に限り議長承認を得て、その所管に属する事項につき国政に関する調査をすることができることになつております。本委員会といたしましては、一、裁判所の司法行政に関する事項、二、法務び検察行政に関する事項、三、国内治安及び人権擁護に関する事項、四、法廷秩序維持に関する事項、五、交通輸送犯罪に関する事項、六、戦犯服役者に関する事項、七、法務行政に関連する保全経済会等特殊利殖機関調査に関する事項につきまして、議長に対し国政調査承認を要求したいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお国政調査承認要求書の作成並びに提出手続等につきましては、委員長に御一任を願います。     ―――――――――――――
  6. 小林錡

    小林委員長 次に日本アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。犬養国務大臣
  7. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案につき、提案理由を御説明申し上げます。日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法は、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて、日本国及びその付近に配備された合衆国軍隊に関して、行政協定趣旨にのつとり刑事上の実体法及び手続法についての特別規定を定めたものとして、御承知のごとく、昨年五月七日公布施行をみたものでありますが、今般発効をみるに至りました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第十七条を改正する議定書によりまして、同軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する事項が改正され、これに伴い刑事特別法中の手続規定につきましてその一部を改正する必要を生じましたので、この法律案提出することといたしたものでございます。改正の主要点を申し上げますと、まず第一に、合衆国軍隊の使用する施設または区域内における逮捕等につきまして、現行法のもとにおきましては、合衆国軍隊権限ある者の同意を得るか、またはこれに嘱託して行わなければならないのでありますが、これを改めましてかかる同意または嘱託を要する場合を合衆国軍隊がその権限に基いて警備している施設または区域内に限りますとともに、重大な犯罪にかかる現行犯人を逮捕する場合におきましてはかかる施設または区域内におきましても、右の同意を得ることを要しないこととした点であります。  第二は逮捕された合衆国軍隊構成員または軍属の身柄の引渡しにつきまして、現行法のもとにおきましては検察官または司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊構成員軍属または家族であることを確認いたしましたときは、ただちにその者を合衆国軍隊に引渡さなければならないこととされておりますが、これを改めまして、引渡すべき場合は、同軍隊構成員または軍属の犯した犯罪が、公務執行中に行われた場合等、合衆国が第一次裁判権を行使する罪に当る場合に限ることといたした点であます。  第三は施設主たは区域内における捜索、差押え等につきまして現行法のもとにおきましては、合衆国軍隊の使用する施設または区域内において、または合衆国軍隊財産について、これを行うには、合衆国軍隊権限ある者の同意を得るかまたはこれに嘱託しなければならないこととされており、また、合衆国軍隊構成員軍属または家族の身体または財産に対して行う場合においても、ほぼ同様の制約がなされているのでありますが、これを改めまして、かかる同意または嘱託を要する場合を合衆国軍隊がその権限に基いて警備している施設まは区域内で行う場合と合衆国軍隊財産について行う場合とに限ることとした点であります。  以上この法律案につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  8. 小林錡

    小林委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。  本案に対する質疑次会に譲ることにいたします。     ―――――――――――――
  9. 小林錡

    小林委員長 次に保全経済会等特殊利殖機関調査に関する件について調査を進めます。  お諮りいたします。本件につきまして、参考人として警視庁防犯部長養老絢雄君より意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  発言の通告がありますから、順次これを許します。押谷富三君。
  11. 押谷富三

    押谷委員 保全経済会の問題につきまして、法務大臣あるいは国警長官警視庁当局検察庁当局お尋ねをいたしたいと思います。  最近非常に大きな問題となつて波紋を描いております保全経済会の問題でありますが、これは伊藤斗福理事長が、わずかな期間に十四、五万人と言われる大衆から零細な資金を集めまして、その総額四十五、六億にも及んでいると聞きますが、そして特殊な利殖行為をやつておりまして、そこに十億余りの大きな穴をあけ、遂に行き詰まりを来して閉店休業を宣言するに至り、大きな社会問題となつて今各方面に波紋を描いているわけであります。こういう重大な問題が社会問題として現われ、あるいは法律問題とし、あるいは見方によりましては刑事事件等も含まれているのではないかと考えられるのでありますが、当局におかれましては、この保全経済会組織実態営業のありさま、あるいは今日いかなる損失を大衆に与えているかというような事柄について御調査をなされていると思いますから、まずこの実態につきまして、御調査の内容の御説明を承りたいと思います。
  12. 岡原昌男

    岡原政府委員 この問題につきましては、いわゆる類似金融業全般についての取締りの問題といたしまして、従前からわれわれ検察庁面においても注目していたところでございます。しかるにその実態たるや、いわゆる類似金融業の形態がきわめて複雑多岐をきわめまして、株主相互金融方式をとるもの、あるいは匿名組合方式をとるもの、その他いろんな形をとつてつておるのでございます。そこでそれらの点につきまして、検察庁といたしましては、古くは昭和二十六年六月の経済係検事会同におきまして、当時の大橋法務総裁から、これらの新しい金融事犯の情勢はきわめて憂慮すべきものがあるからして、この実態をきわめて、適切な検察を行うようにというふうな訓示をいたしましたのを初めといたしまして、その後数回にわたりましてこの問題を討議、指示いたしております。最近におきましては、本年十月十九、二十日の全国次席検事会同の際におきましても、刑事局長指示をもちまして、かようないわゆる金融業者がいろいろな手を用いて全国の零細な資金を集め、そうして結局最後においてはかなり破綻を来しておるような状況にあるということを申しまして、その大衆に及ぼす害悪を考慮し、現地の財務当局その他関係官庁との連絡を緊密にして、そうして事犯取締りに一層の努力をされるようにというふうな指示を出したばかりでございます。従来この線にのつとりまして、全国的に各地方経済検事におきまして、それぞれこの種の、いわゆる金融機関取締りについて努力して参つたのでございますか、現在までの受理が三十七件ほどございまして、うち十八件ほど公判請求をいたしているような次第でございます。このうちにすでに第一審で有罪判決のあつたものもございますが、さような利殖機関の行き方につきまして、われわれといたしましては絶えず監視の目を放つてつたのでございますけれども、今回問題になりましたいわゆる保全経済会につきましては、いわゆるとつかかりがないと申しますか、ひつかかりがないと申しますか、まだ事件捜査をいたすという段階には至つていなかつたわけでございます。それで先週の土曜、この問題が表面化いたしました際に、私どもといたしましてはさらに全国にその趣旨を流しまして、これは全国的な組織網において行動している一種の利殖機関であるからして、いずれ各地に似たような、あるいは共通したような事犯も発生しておるやに考えられるので、ひとつさような状況について十分報告するようにということを申してやつたばかりでございます。その後この具体的な保全経済会につきましての材料は、まだ私どもの方の手元には集まつておりませんので、むしろこの問題はほかの庁からお答えする方がいいのではないか、かように存ずる次第であります。
  13. 押谷富三

    押谷委員 この保全経済会並びにその類似特殊利益金融機関に対する御方針は一応わかつたのでありますが、今問題になつておりますのは、十五、六万と、いわれる多数の投資者、その中にはあるいは戦争未亡人とか、退職金を全部入れ上げているような老齢恩給生活者とかいつたような人たちが大勢迷惑をこうむつておるのでありまして、今日現実社会問題としてこれらの人が損害を受けようといたして、しかもそれは理事長である伊藤斗福氏その人の特殊な利殖金融という仕事投資をし、かかつてその人の責任にあるのでありますが、こういうような大きな社会問題が起つているこの事態にかんがみまして、何らかの調査処置をとらるべきであると考えるのでありますが、これは国警長官にでもお尋ねする方が正しいかもわかりませんが、この問題についてまだ調査には全然手を触れておられないと承つていいのですか、調査あるいは捜査等に着手をせられておるか、それを伺いたいと思います。
  14. 斎藤昇

    斎藤説明員 ただいま法務省刑事局長から御答弁をいたしましたように、この種の金融機関、ことにただいま問題になつております保全経済会はおそらく将来破綻をするものではないか、ああいう高利をつけて融資をするということは通常経済状態のもとでは不可能ではないか、これがもし破綻を来すというようなことになると、ただいま仰せになりましたように社会上相当な問題を起し、また治安面にも影響が多いであろう、それで昨年あたりからもちろん国会においてもすでにお取上げになられまして、あるいは質問形式等でもあつたように私は承知をいたしておるのでありますが、われわれといたしましても法務省、最高検あるいは大蔵省関係当局、たびたび集まりまして、そうしてこの業態があるいは銀行法貸金業法その他の法令違反している点はないかどうかということを、まず法令上の研究をいたしたのであります。もちろん実態調査といたしましてはいわゆる株式の募集と申しますか、組合員に入つて来る募集のときの書類あるいは組合の定款というようなものを取寄せまして、そういつた見地から法律上はたして何らさしつかえのない行為かどうかということを研究いたしたのであります。ところが関係省研究の結果は、現在の法律といたしましては表面これを取締規定はないという結論に達しまして、しからばわれわれといたしましては銀行業法貸金業法違反をしていないとしても、通常の良識をもつては成り立たないような事柄を成り立つようにして勧誘をするというのは詐欺行為じやないかというので、この点も相当研究をいたしたのであります。今日までの結論といたしましては、どうも刑法詐欺をもつてこれを取締るあるいは検挙をするということには、詐欺としては若干立件しがたい、と申しますのは、はたしてわれわれの経済常識では成り立たないと思つてつても、経営者個人の特別な何らかの力をもつてそういう配当ができるというつもりでやつておる、またそういうことを信じて加盟しているというのであれば、どうも詐欺というのには当らないのじやないかという一応結論に達して参つたのであります。またあるいは本人個人横領とかあるいは背任とかいうものがあるならば、やはりこれはやらなければならないという意味からもいろいろ警視庁、あるいは全国に支店を持つておることでありますから、全国の各警察とも連絡をとりまして、今申しましたような趣旨で、もし業態貸金業法違反をするというようなことがあるならばそれによつて取締りをしなければならないし、詐欺横領ということが明確であるならばやらなければならないというので捜査の目をみな光らしておつたわけでありますが、そういつた具体的な刑法とかあるいは特別法令に該当するものはないという状況において今日まで参つてつたのであります。そこで、取締りをする法令がないあるいは監督をする法令もない、われわれといたしましては犯罪の容疑がありませんければ、これは何ら実際的の調査に進むわけには参りません。また大蔵省その他の役所が業務の監督として経済状態を調べるというわけにも参らない。従つて健全なる経営が行われているかいなかということすらも確かめる手だてがないわけであります。そこでわれわれといたしましても大蔵当局等とも、何か適当な立法措置を講じて、少くとも法律政府機関と申しますか、そういうものの監督下に置くというような措置でもとる必要があるのじやなかろうかということを昨年来たびたび話合いをいたしまして、大蔵当局におきましても当時は研究してみようということになつて今日に至つてつた次第でございます。
  15. 押谷富三

    押谷委員 ただいまの御答弁を伺えば、これらの機構は巧みに法律盲点をついた組織であり、また法律盲点をついてやつている仕事であるということになると思うのであります。この法律盲点をついている特殊な利殖あるいは金融機構として保全経済会匿名組合組織によつているとか、あるいはこれとよく似たものに株主相互金融という方法を講じておる、こういうようなものが集めた投資総額は一千億以上だと今いわれているのですが、一千億以上の零細な金を大衆から集め、そうして法の盲点をついているから今取締りをすることができない、こういう形でもし間違いが生じますならば、日本経済にも一つの混乱が生じ、あるいは生活その他の社会問題も生れ、そこにまた治安上も相当憂慮すべき結果が出ると思うのでありますが、さような結果を考えますならば、当然今のやみ金融あるいは保全経済会のような匿名組合による特殊な利殖機構、こういうようなものが日本国内において幾つくらいあつて、大体投資総額はどれくらいであるかということも、実態として知りたいと思うのでありますが、もし御調査ができておりますならば、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  16. 斎藤昇

    斎藤説明員 われわれの手元では現在そういつた投資総額がどれくらいあるかということは全然わかりません。あるいは大蔵当局の方はわかつておるかと思います。
  17. 押谷富三

    押谷委員 それはまた次の機会に大蔵省当局から承ることにいたしまして、ここでお伺いいたしたいのは、こういう保全経済会というもの、あるいはこれに類似するような、株主相互金融匿名組合というような法律盲点をついて現在行われている特殊な金融機構、あるいは利殖機関があるのでありますか、これにつきましては、今御答弁にありましたように、要は取締りが困難な法の盲点をつかれておるということになると思うのでありまして、これはいずれにしても放任することのできない問題だと思いますから、当局におかれては、これに対する適当な対策、将来いかなる方法をもつてこの経済混乱を生ずるおそれがあり、社会問題もそこに生れあるいは治安の問題にも関係をするであろうこれらについての取締り、あるいは立法処置その他の対策についてのお考えがありましたならばお伺いをいたしたいと思います。
  18. 村上朝一

    村上説明員 保全経済会及びその類似組織によるいわゆる類似金融機関に対する取締り対策という点についてのお尋ねでございましたが、まずその前提といたしまして、いわゆる匿名組合と称せられております出資者営業者との間の法律関係、これをどう見ておるかということについて一応申し上げます。これは一般に匿名組合だといわれておりますけれども、今まで私どもの知つております事実関係から考えますと、匿名組合であるかどうかはなはだ疑問であると思つておるのであります。かりにこれが匿名組合組織であるといたしましても、この匿名組合制度悪用防止のためにどういう立法をすべきかという点につきましては、これは商法匿名組合規定が不備である、それを改正すべきではないかという意見も一部にあるようであります。しかしながら私どもといたしましては、これをかりに匿名組合といたしましても、世間に伝えられておりますところによりますと、期間を三箇月といたしまして、毎月一定の利率によつて利益を配当するという約束になつております。こういう約束をしておりますならば、元利金を支払う法律上の義務がある。でありますから、消費寄託あるいは消費貸借という他の形式を用いた場合に比較して、匿名組合であるがゆえに特に出資者に不利であるということはないのであります。もし匿名組合形式によります大衆資金の吸収が社会害毒を流すというようなことがありといたしましたならば、それは匿名組合形式を選んだからではなく、経済的基礎の確実でない、公の監督に服しないものが、きわめて有利な条件を掲げて、巧みに宣伝をして、大衆から資金を吸収するということによるのであります。匿名組合名義ばかりでなく、あるいは貸金預金信託、あるいは社債類似証券有価証券の売買、その他どんな名義を用いましても、正規の金融機関でないものが大衆資金受入れるということがありますと、法外な条件大衆をつる、巧みに宣伝をするということがあれば、同様の害毒を流す可能性があるのであります。現行法制上、この種の行為取締規定といたしましては、預金受入れ、すなわち消費寄託名義を用いる場合について銀行法規定があり、信託名義を用いる場合につきましては信託業法規定があるのでありまして、その他の名義を用いた場合には、何ら取締り法規がないわけであります。これが法律盲点であると言えば言えるのでありますが、そこで名義のいかんを問わず、この種の行為を禁圧する取締り法規が必要であると思うのであります。商法中に規定すべきかどうかということでありますが、民法及び商法は、申すまでもなく各種の法律行為につきまして、要件効果をおさめております実体私法であります。この法律行為形式を用いて、社会害毒を流すような行為が行われた場合、そういう行為取締りを目的とする法規というものには、いわゆる行政法規の領域に属するのであります。預金受入れあるいは信託名義を用いる場合について、その取締りのための規定民法信託法等実体法に置かないで、行政法規である銀行法信託業法に置いておるのもこの理由であろうと思うのであります。従いまして匿名組合制度悪用を防止し、これを取締るための規定商法の中に置くことは法体系の調和を破るものであり、はなはだしく不適当ではないかと考えております。そこでかようないわゆる法の盲点を補うために新たに立法措置を講ずるといたしましたならば、法令によつて免許を受けた成規金融機関その他法令によつて社債その他の証券を発行することのできるもの等を除いたその他のものが、何らの名義をもつてするを問わず、不特定多数人から資金受入れることを業として行うということを禁止する趣旨単行法が必要ではないか。しかも銀行法信託業法罰則は五千円以下の罰金ということになつておりますが、やや軽きに失するような感じがいたします。相当な罰則をつけ、そういう趣旨単行法をつくることが必要ではないかと考えるのであります。
  19. 押谷富三

    押谷委員 今立法関係において御意見を拝聴いたしたのでありますが、問題は非常に大きな問題となつて実際に現われているのでありまして、この機構からたくさんの人が迷惑をこうむつているのが実情でありますから、この現実に即しまして最も適当な処置対策を講ぜられんことを希望いたしまして、一応私の質疑を打切ります。
  20. 小林錡

  21. 田嶋好文

    田嶋委員 押谷君の質問に対しましていろいろお答えがございましたが、私自体として本問題を考えますときに、当局の今のお言葉を聞いておつて、これはわれわれ国会もうかつであつたと同時に、一体当局がこうした金融行為利殖行為に対して真剣に取組んで今日まで調査をし、対策を講じておつたかどうかということを疑わざるを得ないのでございます。御答弁を聞いておりますと、そこらあたりに起きた茶飯事のごとき観念をもつてこの事件に対処しようとし、今日まで対処して来たのじやないかと実は考えられるのでございます。きようの読売新聞を見ますと、保全経済会の問題は世界全国に行き渡つていると池田前大蔵大臣も報じております。アメリカでは、この問題がいかに処理されるかによつて日本経済界に対する信用がいかになるかの大問題であります。それに対して、法律盲点があるから今までは取締ることができなかつた日本経済が将来どうなるかというような大問題に対して、そんな簡単な気持で取締り当局が、また行政当局が当つてつたということは遺憾しごくであります。何と言つて私は今後皆さんに対して質問を続けようか、それすら胸がどきどきして、何だか気持が悪いような気がするのであります。これはもちろん国民全体の責任でもございましようか、今までそういうお考えがなかつたとしますれば、これはもう過ぎ去つたことでございますからしかたがございません。きようからこの問題は重大問題として考え直し、ひとつ何とかしつかりと対策を講じていただきませんとたいへんな国家の将来を招くと私は思いますので、どうかこの点、きようからでもよろしゆうございますから心の立て直し方をお願い申し上げておきます。そこで問題でございます。これは大蔵当局に聞いた方がいいのでしようが、大蔵当局に聞くよりも、私は取締り当局も当然これは知つておくべきだ、それすら知らなかつたらたいへんなことだと思いますからお聞きします。保全経済会というのはいつごろ、いかなる内閣の時代にできたのでございましようか、この点をまずお示し願いたいと思います。
  22. 小林錡

  23. 養老絢雄

    養老参考人 警視庁としまして、保全経済会に関連しまして従来とりました処置を申し上げたいと思います。  内容は国警長官から先ほどお話になりましたが、警視庁として大体同様な態度をとつてつたのであります。保全経済会昭和二十四年の十月八日ごろに、第一期にこれが設立せられたものと承知いたしておるのであります。この会が設立せられました後ようやくに一般の出資を得まして、だんだんと大きな力を持つてつたのであります。そこで警視庁におきましても、その本店が管轄内にある関係もございますし、もちろん組織全般は全国にわたる範囲ではございますが、その業務内容等を許される範囲におきまして調査いたしました結果、相当破綻を生ずることを予想せしむる可能性があるのではないか、そうした際に大衆の多くの出資者等に大きな損害を与えるような弊害を生ずるのではないかというふうなことを考えまして、二十七年の七月ごろだと思うのでありますが、関係機関とまず打合せをいたしたのであります。その際に警視庁としましても係官を出しまして、こうした業態は非常に不健全なように思う、このまま放置いたしまして万一経済事情の変更その他の事情によりまして破綻を来すような場合に問題が起るのではないかということを申しまして、警察としてこれに対していかなる措置をとるべきか、こうした事態に対する取締り上の必要から、法規の解釈等につきまして意見を徴したこともあるのであります。それから今年の二月ごろと記憶するのでありますが、大体同様な関係機関の打合会におきまして、さらにますますこれが大きくなつて行くほか、同様の大衆金融機関と申しますか、そうしたものが非常にふえて参りまして、そうした警察として憂えるような事態がますます大きくなつたということを申しまして、さらに一層この点について意見を求めておるのでございますが、どうしましてもこうした特殊法令上の解釈からいたしまして、こうした業態取締りに該当するというふうな解釈を得ずに今日に至つたのであります。かたがた詐欺とかあるいは業務上横領等の刑事犯のような事態がないかということにつきましても、もちろん十分な関心を持ちまして許される範囲におきまして調査等はいたしたのでございますか、今日まで遂に確信を持つて犯罪ありと思料するだけの実を認めなかつたのであります。結果としまして、御承知のような事態が起りまして私ども非常に遺憾に存じておるのでございますが、決してわれわれがこの事実に対しまして、消極的な態度で終始したという気持はないのでございまして、この点私から一言申し上げさせていただいたわけであります。
  24. 田嶋好文

    田嶋委員 実はこの内容は各雑誌等にも現われておるのでございますが、私たちの知り得たところを見ましても、保全経済会の出発は匿名組合ということで出発している。しかもこの保全経済会組織の中に入つておる人は退職警察官、かつての軍人の有力者等でありまして、相当に権力につながる人たちがこの行為に参画していることは、だれも認めているところであります。それから政治献金がずいぶんまかれたといううわさが、もはや数年前から盛んに言われておつたことは皆さん御承知の通りであろうと思います。なおこの金融の特徴として、吉田内閣の大金融政策攻撃を一つのスローガンに掲げて、これが、社会的に活動しておつた。要するに吉田内閣は大企業擁護であつて、中小企業に対する対策を立てない、中小企業者を救済する一つの方法として保全経済会ができておるのだ、これはひとつ大いにひとり発展すべきだというので、ある政党のごときはこれを看板にして演説までしてまわつたことは皆さん御承知の通り、こういうようなことから見ますと、私は相当根深いものもがあると思うのですが、警視庁等に対して、保全経済会が問題になつたというときに、だれかもみ消し運動に来た人があるのではないですか。この点ひとつお答え願いたい。
  25. 養老絢雄

    養老参考人 保全経済会が休業のやむなきに至りましたときにおきまして、警察としてこれに対してもちろん関心を持つたのでございますが、その警察の態度を押えるというふうな動きをわれわれ側警察が受けた事実はございません。
  26. 田嶋好文

    田嶋委員 それはあとでよく私も具体的に調査してまた聞くことにいたしますが、私は実は法務委員長時代に、これは実にけしからん金融機関だ、こうしたものを一日でも生き長らえさせておくことは国に対して大損害を及ぼすという信念を持ちましてこれの調査にかかりました。ところが当時は警視庁で、わしの方で背任を持つてつておるのだからもうしばらく待つてくれというお話でございました。その結果が今の昭和二十七年七月ごろの御報告だろうと思うのですが、一体このときの会合でどうしてやめたのか、もう少しこれを詳しく教えていただきたい。
  27. 養老絢雄

    養老参考人 ただいま御質問のございました点、当時私は警視庁に在職しておりませんので、自分自身の直接経験したこととして申し上げることはできないのでございます。当時その打合会に出席いたしました係官の、これも記録を持つておりませんから記憶によりまして私が聴取いたしましたことを申し上げたいと思います。先ほど申しましたような事情によりまして、一十七年の七月十八日の午後、法務府の会議室におきまして、大蔵省法務府、最高検、高検、それから東京の地検、国警本部、警視庁、これだけの関係の係官が出席した会合があつたのであります。その際に、問題はもちろんこの保全経済会の問題ではありませんで、一般金融取締り方針等について討議されたのでございますが、会議の終了まぎわにあたりまして、匿名組合形式による金融、例としまして保全経済会が話題となつたようであります。その際に警視庁の係官より、このような金融機関はきわめて不健全なものと考えられる、将来被害者を生ずるおそれがある業態と思われるのであつて、もし最悪の事態等を生ずるということになれば、もうそのときにはおそいということになるのではないか、おそらくそうした場合には相当な社会問題等を起すことが予想されるので、こうしたことについて行政的な措置、監視規定等によつて何らか未然によく規制を加えることがないだろうかどうかということを申し述べたと申しておるのであります。その際こうした金融機関は法の規制外にあるのであつて、これを法律をもつて規制する、法文化するということになれば、かえつてこうした業態を是認するという形になる、従つてこれを法文化することもできない、監視規定を設けるということも困難であるというようなことをもちまして、むしろ警視庁におきましてはそうした消極的な意向を聞きましたために、そうした特別法令の点からは警察としても取締り得ないものとして終つたのが事実であります。
  28. 田嶋好文

    田嶋委員 警視庁の立場はある程度了承できるのですが、検察庁関係法務関係その他にお尋ねしたい。先ほどの御説明商法匿名組合、これは五百三十五条の規定から行つても私は疑わざるを得ないのじやないかと思うのですが、どうしてこれは合法だということが認定されたのですか。これをひとつ民事局長に確かめておきたい。  それからもう一つは、今日世の中では、われわれが口やかましく言う通り、ちよつとした事件なんかでもえらい真剣に取上げて、ときどき人権蹂躙を起しておる。日本経済を左右するような大問題に対して疑わしい点が多多あるにかかわらず、これに対して何ら対策を講じないでおるというのは、検察当局の行き方も根本趣旨がどこにあるかわかりませんから追究することはやめますが、どうもおかしい。とにかくどろぼう一人とらまえることにえらい熱心で、八千万国民を全部つぶしてしまうことに不熱心であるということは、これは検察当局の行き方ではない。これはたいへんなことですが、よほど真剣に考えてもらわないと今後こうした問題が起ることをわれわれは警戒しなければならぬのであつて、ますますもつて覚悟をきめてもらわなければならぬと思うのですが、保全経済会というものは、結局三箇月で元金を返して利子はたしか八分から二分をやるというのですから、これはどうしても成り立たない理論をもとにしてつくつておると思うのですが、こうしたことに対して調査を進め、御検討を進めたことがありましようか。この点を検察当局お尋ねしたい。
  29. 村上朝一

    村上説明員 先ほどちよつと申し上げたように、保全経済会及びその種の業者といわゆる出資者との関係匿名組合であるということにつきましては、私非常に疑問に思つております。ただいま御指摘の商法の条文等に対しましても、匿名組合という名前は使つておりますけれども、実質はむしろ出資者利殖方法として一定の出資額すなわち元本を通常三箇月の期間で業者に利用させ、その対価として確定の利率によつて利息の支払いを受けるというのがこの契約の実質であろうと思います。ですから匿名組合であるというふうに私どもは見ておるわけではないのであります。
  30. 田嶋好文

    田嶋委員 今検察当局のお答えをいただく前に、今の村上さんの答弁を引用いたしまして追加質問をしておきます。今村上民事局長が答えた意味からしても、当然私はこれは詐欺になるのではないかと思う、匿名組合でないものが匿名組合という名前を利用してカムフラージユして利殖をはかつて、しかも自分の個人的な営業方面にもどんどん金をつぎ込んでおる。こういうことは事実わかつておるのですが、匿名組合でないものが匿名組合の名前を使つて金を集めるという行き方からして、メスを入れようとしたらこの点からメスを入れられたのではないか。この点でも詐欺になるのじやないか。こういうことも対象にして研究したことがあるか、全然合法的なものとして見送つてしまつたかどうか。
  31. 岡原昌男

    岡原政府委員 先週以来保全経済会のことが問題になつて参りましたので、特にいわゆる匿名組合方式利殖機関ということに対する検察当局の態度が問題になつて来ておるわけでありますが、私どもといたしましては、この種のいわゆる匿名組合方式にのつとると称するものが幾ら全国にあるか、実は見当のつかぬほど多いわけでございます。株主相互金融関係の方は、これは株式会社の組織をとつてつて、一つ一つある程度調べてみますと約千近くの名簿が私の方にわかつております。それにつきましても、それぞれの各管内別に資料を検察庁の方へ渡しまて、それぞれ検討を願つてつたわけでございます。たまたまただいま持つて参りましたが、本年二月に財政特報というものを出しまして、この中にいわゆる金融事犯関係のいわばとらの巻みたいなものをつくつて、どういう形で違反が行われておるか。従つてどういう方法で査察をなすべきかという詳細な文書がございます。内容は、ちよつと逆手に用いられますと、いわば穴を教えるようなことになりますので、発表いたしかねますけれども、要するにそういうふうな点につきまして、私どもは本年の二月、すでに経済係検事会同の際に金融事情についてのこれだけの資料を集めて配つたような次第でございまして、ただそのときにこれこれという特定の業者というものを指定して、これをやれというふうには指示をいたしませんでした。ただ全般的にこういう形の事犯が考えられる、また行われておるように聞いておる。従つてその点について個々の業者に当るようにというようなことを申したのでございますが、いずれ各地の経済係が現地の警察等と協力いたしまして、あげて参つたのが先ほど申したような数字になつて来るのであろうと思います。保全経済会もその当時確かに非常に大きな業態でございましたので、話題になつたことは事実でございます。ただこれに対しまして具体的にこれがどの程度にいわゆる業者が利殖をやつてつたのか。従つてこれが八分から二分に下つた経過がどういうふうなことにあるのか、従つてその間に詐欺があるかどうかという点について、こまかく一々は実は私の方から指示はいたしませんでした。ただ問題の所在、刑法犯の成立する余地はこういう点にあるということを諸点をあげて、それぞれ検事の方がそれを具体的に現地の事情に応じて研究したはずと思つております。その後いろいろあがりました事件は――これは前からもありましたけれども、その後あがつて来たものはそういうことに基いてあがつて来たのだろうと思つております。幸か不幸か保全経済会に手が入らぬうちにこういう事態になつたのであります。この点は非常に遺憾に思つております。
  32. 田嶋好文

    田嶋委員 私もある程度保全経済会に似た組織をもつて金融をやつてつた組織があげられておることは知つておりますが、いかにしましても東京であげられたもの、各地区であげられたものは、まことに零細でお気の毒なのがみな対象になつておる。大きく世の中に害毒を流しておるものは一つもあがつておりません。これは資料を出してもらいたいのですが、一つもあがつておりません。これらはやはり検察当局のやり方が今後相当批判の対象になるのではないか。小さいあげやすいものがあげられておるが、大きく世の中に害毒を流しておるものは一つもあげられていない。これに対していかなる対策を立てられておるか、もう一度お聞きいたしたい。  もう一つ、今警視庁から報告がありましたが、警視庁は相当積極的であつたことが私たちにはうかがわれるのであります。この警視庁の積極的な意思に対して何らかこの意思を消極的にしたものが検察庁における検事総長以下の大会合だというふうに私は考えておるのでありますが、どうもこれらの点がまだ納得が行かぬのですが、もう一度岡原さんから納得の行くようにお答えを願いたい。
  33. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいま警視庁の方も検察庁がさような態度をとつたとは言わなかつたと申しておりますので、弁明が立つわけでございますが、まず当時の事情を申し上げますと、実は昨年末以来、この種のいわゆる金融業が非常に全国的にはびこりまして、その前からございましたけれども、だんだん害悪を流しそうな傾向になつて来た。これは一体どこに原因があるのだろうか、そしてこれをどういう形で、検挙すべきかといつたようなことが当然問題になつて来たわけであります。そこでまず法律問題と事実問題といろいろわけて、現在もう二、三回にとどまらず、私が出席しただけでも三回ほど記憶しておりますが、そのほか私が国会等に出ました留守中などにもしばしば開きまして、そして大蔵省の銀行局当局並びに財務局、国税庁関係ども随時加わりまして会議を開いたことがございました。その際に取締りの実際の面からというので、検察庁のほかに国警及び警視庁の方からもお集まり願いまして会議が持たれたわけでございます。その際に問題となりましたのは、まずこの大部分は、いわゆる株主相互金融の形における一種の金融業――簡単に実態だけ申し上げますが、金融業者が一体全国にどれくらいあつて、その組織はどういうふうになつておるのだろうかというようなことが話題に上りました。その点につきましては、いろいろ各地からの材料もあり、それらを順次訂正増補いたしまして、先ほど申し上げましたような資料ができたわけであります。なおその中に一体合法的なものがあるだろうか、逆にそういうような面で行つたわけでございます。私はその当時の詳しい議論を一々覚えておりませんが、それを法律的に詳しくずつと突きとめて参りますと、合法的にやれないことはない。しかし多くの場合は、どうも違法の形をとつておるやに思われるというふうな大体の結論つたのでございます。そこで私どもといたしましては、合法と申しましても中には匿名組合の本来の方式からはずれたもの、株主相互金融商法違反とか、そういう形から来るいわゆる刑事責任でなくて、民事の方のほんとうの形からはずれたものという意味のもの、あるいは金融行政法規違反の形をとるもの、いろいろな思わしからざる形をとるもの、こういうことを考えまして、その全体を通じて大蔵省当局に対しましては、これは全体をすなおに見ますとどうも金融行政全般に通ずる問題のように思われる。なるほど今の法律で真正面から貸付信託法とか、相互銀行法あるいは銀行法とかいろいろな金利の取締り法規であるとか、そういうところから行こうとすると非常に困難な画が出るのはわかつたけれども、これを事前に、あまり大きくならぬうちに防ぐような行政措置といいますか、立法措置は考えられないだろうかということを申したことがございます。この点につきましては、いわゆる取締りと申しますか、検察警察当局意見が一致しておつたように私ども考えております。それらの話がありました際に、ざつくばらんに申しまして、事はかなり困難である、そして当時国会におきましても、これらのいわゆる金融業者を何とか合法の線に乗つけた方がいいのじやないかという議論、そうでなくこれはつぶすべきであるという議論と二つ大蔵委員会に出て参りまして、そのいずれに従うべきかについて各委員から私ども質問を受けたことがございました。大蔵委員会においての御質疑等を通じまして、しかしいずれにせよこれは何とか解決すべき問題ではないかというので、その後も大蔵省とは随時連絡をとつてつたわけでございます。ざつくばらんに申しまして、何とか手を打たなければいかぬのじやないか、ただわれわれの面として詐欺だ、横領だと言つて騒ぐのは、ただいま御指摘の通り、まつたく末梢的な非常に小さな業者、あるいはボロを出しやすいような、まだ組織の完全に行かないような、いわば固まらない組織のうちに手をつけますと、犯罪がよくわかるのでございます。ところが一旦大きく、合法の線を仮装する面が非常に深く出て参りますると、その詐欺とか横領とか背任とかいうものがつかまえにくくなるという面があるわけでございます。そこで私どもといたしましては、とにかく悪いものは悪い、検挙すべきものはすべきであるというので、全国的に、先ほど申したように三十数件もあがつたわけでございますけれども、中には警視庁等であげましたように、かなり名の知れたものも若干入つておりますが、全国的に、匿名組合方式では一番大きいといわれる保全経済会が、今までのがれたという点につきましては、私どもの考えるところでは、やはりその組織が大きくなればなるほど、その実態を究明するのが困難である。これは合法を仮装する面が非常に行き届いて来るということではなかつたろうかということを、今反省しておる次第であります。私どもといたしましても、決してかような事犯に対しまして、なまぬるい態度でよろしい、放任してよろしいというふうな態度をとつてつたわけではないのでございます。御了承願います。
  34. 田嶋好文

    田嶋委員 過ぎ去つたことでしかたがないが、これらの問題は大いに研究すべきことだと思いますけれども、いろいろな雑誌に保全経済会が使つた金の状況が書かれております。どこへ政治献金をして、どの方面へどういう投資をした。これらの点で、捜査の秘密になることは聞こうとしない。それだけお含み願つて、これらの点についてお取調べをしたことがあるのか、今後しようと準備をしていることがあるのか、とにかくしておれば、ひとつこの点捜査の秘密にならない点でお聞かせを願いたい。しかしこれは捜査の秘密になるということならば、お聞きいたしません。  それから重ねて、先ほどこれはお答えがなかつたのですから申し上げますが、村上局長が言われたように、匿名組合でないのに匿名組合として宣伝したおそれが多分にあります。私たちもこれは合法的にいつて匿名組合でないと思います。五百三十五条を見たらすぐわかる。これらの点から見ても当然詐欺だということが認定されるのではないか。この解釈はいかようになつておりますか。
  35. 岡原昌男

    岡原政府委員 いわゆる政治献金のうわさは、私も耳にいたしましたし、かなりありそうなことだというふうな感じを持つておりますけれども、まだその実態はつかんでおりません。従いまして、ただいま御報告申し上げるような程度には至つておりません。それから、先ほど答え忘れましたが、詐欺の点でございます。匿名組合の実体を備えているかどうかにつきまして、若干の争いがあつたようでございます。私どもといたしましては、純法律的にこれを見ますと、かなり匿名組合的な色彩が薄いというふうな感じを持つております。連中の、農村等で配ります営業案内といつたようなものには、何か商法規定による匿名組合というふうな文字を使つておりますが、ただ金を出す方からいたしまして、それがいわば金を出すほんとうの動機、原因になつたであろうかどうか、匿名組合だから、それを信用してまかせる気になつて金を出したのであろうか、あるいはそれとは別に、とにかく何かもうかるらしいから出したのであるというのか、その辺で、いわゆるそれを知つてつたならば金を出さなかつたであろうというような、因果関係になりますと、むしろこれは農村の人たちなどは問題にしていない点であろう。かような事実問題もあるかと思いますが、ただ純法律的な問題といたしましては、御指摘のように、詐欺の罪を追究する余地があるだろう、こういうことであります。
  36. 田嶋好文

    田嶋委員 そうなると、もつと具体的につつ込んで聞かなくちやいけないのですが、この匿名組合営業をしなければならぬのですが、保全経済会はどんな営業をしておつたか、お取調べになつたことがありますか。
  37. 岡原昌男

    岡原政府委員 保全経済会に定款と称するものがございまして、それの第十条に、本会は左の事業を行う。一、証券への投資、二、理事会において定める諸事業、こういう非常に簡単なものでございまして、それ以上は何もありません。
  38. 田嶋好文

    田嶋委員 それでは、今後保全経済会がいかなる事業をやつてつたかということを、お取調べになる御意思がありますかどうか。
  39. 岡原昌男

    岡原政府委員 もちろん調べるつもりはございますが、ただ、冒頭にもちよつと申し上げたかと思いますが、何かのきつかけと申しますか、私どもといたしましては、現在内偵の段階でございまして、やはり、罪を疑うに足る相当の理由と申しますか、刑事訴訟法のあの程度の心証は必要だろうと思いますが、それからだんだんやつて行きたいと思います。
  40. 田嶋好文

    田嶋委員 去年の十一月二十三日号の週刊朝日が兜町のうわさ話というので、具体的に名前を書いて、具体的に金額を書いて、この雑誌に載せておりますが、これは捜査の対象になりますかなりませんか。
  41. 岡原昌男

    岡原政府委員 すべてのさような資料は、総合いたしまして、あらゆる角度から検討いたしたい、かように存じております。
  42. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今の保全経済会の問題なんですが、今の法務省の解釈では、保全経済会匿名組合だということをうたつているが、匿名組合ではないという御見解でしようか。それとも匿名組合類似のものだというのでしようか。その点はどういう解釈でしようか。私どもからいいますと、こういう法律解釈が出ると思います。利益の有無にかかわらず、一定の利益を配当するということが契約の一つの目的になつております。そして匿名組合でありますと、利益がない場合には、これに対して利益の請求をすることができないという規定がある。これははつきりした禁止規定なんです。そうすると、匿名組合でないという結論になると思うのですが、私どもから行きますと、保全経済会実態から申しまして、大体最初から匿名組合ではない。むしろ匿名組合にあらずして、さような匿名組合ということを前にうたつて、そして相当な利益を確実に支払う、こういうことをうたつて、その目的は、一定の営業に対して出資をさせるという目的にあらずして、預金を集めるということがこの経済会の実態だ、こう見ることが一番正しいと思うのです。そうしますと、現在の社会経済通念からいつても、かような組織においては、絶対に利益の配当はできない。最後の結論に参りますならば、必ず破綻する、そういうことの未必的な認識を経営者が持つておる、こう見るのが一番正しいのではないかと思う。ですから、未必的故意があつたという解釈をいたしますれば、田嶋委員のただいまの御質問にございましたように、詐欺が完全に成立すると、かように私どもは考えております。法務省には日本一の偉いお歴歴がおられ、長い間研究していることでありますから、その点に対しての明確な御答弁を願いたい。のみならず、もうこの保全経済会の問題は、きのうきように始まつた問題にあらずして、昨年ごろにもう破綻をする。伊藤斗福はアメリカに何億かの金を持つてつて隠してしまうのだ、こういうことは公知の事実で社会人で知らぬものはない。さような状況における場合のこの事実に対して、田嶋委員から御質問のように警視庁並びに検察庁がお集まりになつて、これをいかに処置するかという検挙の場合を相当御研究あそばしたというならば、そして私が申し上げたような結論だということならば、とつくに捜査してこれは検挙すべき筋合いだと思う。疑いあるというようななまぬるい問題ではなくして、勤労した一生の蓄積をすでに全部これに入れて首をつらなければならない、あるいは今後の生活があしたからできないという非常に社会的な大きな問題と悲惨な結果が現益実現しております。でありますからさようなことを考えて、御賢明な検察当局で他の思想犯などに対するような御捜査が願えたならば、とつくにお手入れが行われて実現できるのに、またこの点からいつて法律上の盲点はここだつたということが明確にならなければならない。ところが今までお手入れをしておらない、どこに盲点があるか明確になつていない。私どもの見解が違つておるのかこの点を明確に御答弁願いたい。決してこれは営業に対して出資させることではない、預金を目的とする、預金が目的であるとするならば匿名組合ではない、特に経済通念から申しまして、利益の有無にかかわらず月に八分あるいは三分あるいは二分という、相当な経営をもつて人件費を払つております営業は、かような莫大な高率な配当は不能であるということに、御賢明な皆さんにははつきりと結論が出ておるはずであります。さようなところはどうですか。検察当局並びに国警が相当御熱心にやられたけれども一度も手入れをしなかつた。、どこに一体手をつけたら困るところがあるのか、手をつけたならば手をつけないより問題が多いという御懸念があつたのかどうか御説明願いたいと思います。
  43. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点につきまして実は私どももこの保全経済会の問題としてではなくて、全般的にこの種業者の業態について一体月に三分、五分、八分といつたような利益を配当し得るものであろうかということについて大いに疑念を持ち、大蔵当局にもただしたことがございます。そのときのお話といたしまして、当時御承知の株式ブームという現象がございまして、かなり変動が多いのに乗じて、株式の操作による利益が相当あつたということは事実のようでございました。そのほかに不動産の値上りによる――これも近年の値上りは実に驚くべきものがあるというので、これの月何割ずつ上つて行くというあの当時の景気からいたしまして、計算上は必ずしも不可能ではないというふうに私ども考えたわけでございます。ただ私どもはただいまお話のように未必的な故意があるのではないかという点に至りますと、これはこの種の業態として当然あり得ることであつて、さればこそ私ども大蔵省に対しましても何とか金融行政上打つ手があるのではないか、今すぐ犯罪という形をとらないで、あとで一般的な損害という形で出て来るということは、一般大衆金融面の上で保護するゆえんではないということを申したことがございます。そういうふうな関係でございますので、必ずしもすぐ今の状態から見てその当時の、たとえば昨年の暮れから本年の二月当時の状態において詐欺だと断定するわけには行かないと思つたわけでございます。
  44. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 どうも私納得が行かないのでありますが、昨年の後半期には五億円以上保全経済会は損失を覚悟しているということは常識で知つている、新聞にも出ている。もう一つは今より相当前から保全経済会は立ち行かない、必ず取付を食つてだめになる、こういうような状況に大体私ども聞き及んでいる。しかるにかかわらずこの営業を休止するということを発表する前日、その日まで勧誘して金を契約しているわけです。そうしますとそのとき経営者という人の頭の中にはすでに破綻になつている、払えないのだ、はつきりと認識されているはずなのですが、そういう場合の最近における出資契約に基くものは詐欺であると私どもは考えるが、それに対してどういう御見解を持つておりますかその点を承りたい。
  45. 岡原昌男

    岡原政府委員 問題をこの点だけに限つて論じますとそれは詐欺であるという嫌疑がかなり濃厚でございます。ただ全般的にこの種の業態について何と申しますか大きくこれを見ますと、いわば取付詐欺、普通の業態の取付詐欺、あの場合と似たような関係でございまして、何とかなるだろうと言つて商売人がやつているうちに、最後にどたつと来るというような場合ともまつたく同じであります。そのような場合においても詐欺が成立いたしまして、事実今までも非常に問題になつて詐欺として起訴した事案もあるのであります。この件につきまして一体伊藤斗福がいつころから業態が非常に悪い、建直しの可能性がないというようなことを考えたかということがおそらく問題の要点になつて来るじやないか、と同時に本店において、理事長においてそのようなことを考えましても末端までそれが届いておつたかどうか、末端の支店、出張所でございますか、さようなところにおいて本店のさような内情を知らずにやつたのか、あるいはそれを知つてつたのかというような点がおそらく問題になつて来るだろうと思います。そういうふうな点にただいま実は内偵を進めているわけでございます。
  46. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 実は先刻田嶋委員から御質問があつたように、すでに前の国会のときに、警視庁では捜査を進めておるからしばらく待てというようなお話が、連絡があつたような事実を私ども聞き及んでおるのであります。さような当時から綿密な御調査が出ておれば本日はすでに結論が出なければならぬと思う。捜査が継続され、保全経済会営業状況に対する、綿密な御調査なり御視察がなつておりますれば今日は結論は出ているのじやないかということを私は考えるのでありますが、さようなことをしないということになると、どうも私ども検察当局の怠慢を責めざるを得ないような気持になるのでありまして、その継続しておつた事実があつたのか、それとも打切つそも万やむを得ないのだ、法律盲点だということで逃げておつたのかどうか、その点もお聞かせ願いたい。
  47. 養老絢雄

    養老参考人 私は警視庁としましてずいぶん前にこの捜査をしているということを申しましたかどうかその点の事実を承知しておらないのでございますが、警視庁としまして小さいもののみを問題にして大きなものを問題にしないということはないのでありまして、これは最近の例によりましてもこうした金融類似金融機関に対しまして相当高額の資金を持ちましたものを検挙した事例を持つているのであります。  それから保全経済会につきましては、先ほど申し上げましたようにようやく社会的に注目を集めるようになりました当時より、警視庁といたしましてはこの組織なり営業業態等につきまして可能な限りにおきましてこれを調査いたして参つております。十分ただいまお述べになりましたような点につきましてもあわせて関心を持ちまして、調査をして参つているのであります。この調査を打切るというようなことはいたしておりませんので、なお現在これに対して深い関心を持つていろいろ事態を見つめておる、調査しておるというのが事実であります。
  48. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 本件は結局この処置が誤られまするならば、治安上に相当大きな影響を及ぼすようなことがあると思うのです。一つの金融会社がつぶれましたために、横浜あたりでは相当大きな暴力行為が行われておる事実がある。従いまして検察当局に対しまする私どもの要望は、この際保全経済会の休業に対する万全の策をお講じになつておるようでございますけれども、もつと積極的にはつきりと策を講じていただかなければ、治安上非常におもしろからざる結果を及ぼすおそれがあることを私ども日常目撃しております。さらに預金者と申しましようか、出資者の意向はまことにすさんでおります。ことにただいま申しましたような一生の自分の努力を水泡に帰されてしまつたというような状況がたくさん出ておりまして、ことにその預金利益の配当によつて生活を保障されておるような方が多いので、相当治安上おもしろからざる結果を引起すんじやないかということを考慮されますので、特に法務大臣もいらつしやるので、その点万全を期されるよう要望いたしまして私の質問を終ります。
  49. 田嶋好文

    田嶋委員 ちよつと関連して……今古屋さんから非常にいいことを言つていただきまして、私もまた追加して御質問しなければならぬことになつたんですが、事はもうここまで来たのですから、問題は私はやはり古屋さんが今いつたように、いかにしてこの跡始末をしてやるかということにあるんじやないかと思います。ところが新聞紙上、聞くところによりますと、伊藤という理事長が、わずかな期間たてば必ず皆さんに御迷惑をかけないで済むだろう、しんぼうしてくれ、国家から必ずこれに対しては援助が出るだろうというようなことを豪語しておる。こんな不健全なものに国家が――今まで自分たちがありつたけやりほうだいなことをしておつて、つぶれそうになつたときだけ国家にたよつて来て、国家に救済してくれ、国家に援助してくれるといつても、そんなものをおそらく国家は救済できないだろうと思います。私たちはいかなる場合でも援助をすることに反対する。そうなつて来ると、これは当然に今の伊藤理事長の気持ではだめだと思うのです。財産の確保をある程度してやらなければいけない。要するに保全的な手を打つてやらないと、この財産がそれからそれへと散布されて放漫にされ、きよう救えば救つてやれるものを、ああいう言葉を吐いておつて一、二箇月たてば全然救えなくなるということが想像されるのであります。この点につきましてぜひとも保全的な措置が必要になつて来ると思いますが、これに関して御意見を承りたい。
  50. 村上朝一

    村上説明員 支払い不能の状態に陥つたといたしまするならば、現行法制財産の散逸なり隠匿を防止して、残つた財産出資者に公平に分配する措置といたしましては破産法があるだけでありまして、債権者から破産の申立てをする以外には現在の法制上は保全の方法はないのであります。
  51. 田嶋好文

    田嶋委員 民法的な関係においてはそうなるのでありましようが、私は今国家的な立場において何かひとつ御研究を願いたい、こういうことを法務大臣にお尋ねいたします。
  52. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま説明員から法律的な、事務的な答弁をいたしたのでありますが、これでは不十分でありますから、実は昨夕もその問題を協議しておりまして、万全を期したいと思つております。これまで不十分な点が当局としても多々あります。それは十分反省して、おれの方は悪くないのだというような態度はわれわれはとりたくないと思いますから、どうぞ御了承願います。
  53. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほどから出ましたが、政治家がこれに関係しておる。政治家に金がばらまかれておるといううわさは事実かどうか私は知りませんが、こういう事実はよくわかる。政治家が顧問であるとか、またその会の役員などに名前を連ねておる。ところが実際においては本人は何も知らない。要するに名前を悪用してやつておる事案は、これは私はよく知つておりますが、そういうことをやつて金を集めたとすれば、詐欺の対象になるか、それともほかに何か取締り方法はないもので、しようか、この点ひとつ御意見を伺つておきたいと思います。
  54. 岡原昌男

    岡原政府委員 実際に関係のない人が何々会顧問とかあるいは会長とか、その他の相談役というようなことで名前を列しておることは、これはあり得ることであります。さような場合に一般の大衆が、あの人が関係しておる、顧問になつておる会だから間違いあるまいということを考えて金を出す場合も相当あるわけであります。一方において、さような関係のない人の名前を出すことによつて一般大衆をだまそうという意思があり、片方がそれにだまされて金を出したということがあれば、そういう要素に関する限り犯罪は成立する、かようなことになろうかと思います。
  55. 木原津與志

    ○木原委員 私がお尋ねしたいと思うことは、大体これまでに同僚の方の質問で尽きておるようですが、二、三点お尋ねしたいと思います。まず第一番にお尋ねしたいことは、保全経済会理事長をしておられる伊藤斗福という人は日本人じやないということを聞いておりますが、事実ですか。韓国の国籍を持つた韓国人だということが新聞なんかにも載つておりますが、間違いありませんか。
  56. 岡原昌男

    岡原政府委員 私どもが調べたところによりますと、釜山生れの韓国人でございまして、日本人と養子縁組で伊藤姓をとつております。従つて現在は日本人であろうと思います。
  57. 木原津與志

    ○木原委員 本人は自分は、韓国に国籍がある韓国人だと言つておるというが、どうですか。
  58. 岡原昌男

    岡原政府委員 一応私どもの今まで調べましたところでは、さようになつておりますが……。
  59. 木原津與志

    ○木原委員 そうすると理事長が韓国生れの韓国人だといたしますと、ほかの理事の方はどういうふうな国籍を持つた人ですか。
  60. 岡原昌男

    岡原政府委員 私どもの調べたところでは、外国人が入つておるような形跡はございません。
  61. 木原津與志

    ○木原委員 保全経済会というのは、先ほど政府委員からの御答弁によれば、商法匿名組合ではないというような御見解のようでございましたが、そうすれば実質上は大衆から預金を集めて、そうしてそれを投資して利益を受ける、預金者に対しては高利の利子を配当するということになるので、これは明らかに貸金業法の適用を受けるかあるいは銀行業法の適用を受けるものじやないかと思いますが、その点はどういうふうな御見解でございますか。
  62. 村上朝一

    村上説明員 先ほど申し上げましたように、匿名組合に名をかりておりますけれども、実質は匿名組合であるとは認めがたいという見解なのでありますが、それでは一体出資者保全経済会との契約関係は、法律上、どういうものであるかということになる。消費寄託、いわゆる預金であるか、あるいは消費貸借貸金であるかという問題もあるわけでありますが、消費寄託と、見る余地が十分あるのでありまして、消費寄託と見ましたならば、それを業としてやつたということになりますと、銀行法違反となる、かように考えます。
  63. 木原津與志

    ○木原委員 のみならず、これが銀行法違反、あるいは貸金業法違反ということになりますれば、これが韓国人ならば、そういつた常葉はできないということになりますね。その点はどうでしよう。
  64. 村上朝一

    村上説明員 銀行法によりますと、銀行以外のものが業として預金受入れをすることは禁止されておる。日本人でありましようと、外国人でありましようと、銀行以外のものが、その行為をすることは禁止されております。
  65. 木原津與志

    ○木原委員 よくわかりました。それで、これは先ほど田嶋委員さんや、あるいは古屋さんから御質問があつたのでありますが、どうも今度の保全経済会の問題については、裏にスキヤンダルがこもつておるように見えてならない。というのは、朝日新聞の十月二十九日の記事によりますと、この伊藤斗福理事長自身が、兜町の記者クラブでこういうようなことを言つておる。「何か起つてモミ消す場合に、はじめてカネを使うんでは相当高いモノにつく。そこで私は有力方面には平常からばらまいておくんだ」こういうふうにみずから称しておつた。また前回の総選挙の際には与野党にわたる有名代議士十数名に、一億円くらいの政治献金をしたという、本人の記者に対する談話の記事が掲載されておりますし、さらに、今度の休業声明をする二週間ほど前に、この伊藤理事長が、自由党の某幹部を通じて、三億円の救済融資を依頼した、こういつたような記事も載つておる。これが三文新聞ならば、私ども大して意に介さないのでございますが、天下の朝日新聞、火のないところに煙は立たぬと思うのでございます。捜査当局には、この点について、まだ何ら的確な捜査をしておられないというような御答弁でございましたが、事は非常に重大である。全国の零細な大衆から預金のような形で集めた一億円になんなくとする金が、選挙その他のたびごとに、政治家にばらまかれておるというようなことになりますれば、事は非常にゆゆしい重大問題である。大きな政治問題であり、社会問題であると思うのでございます。私どもが聞くところによりますると、昭和二十六年、一昨昨年、時の検事総長から、警察当局に対して、保全経済会から衆議院の大蔵委員会に贈賄をした事実があるから、その事実を摘発しろというような命令もあつたのが、途中でうやむやにされてしまつたということもいわれておる。これは衆議院内での常識的なことになつておる。しかもこの保全経済会のいろいろな後援者あるいは顧問というような名前にあげられておる人には、政界、財界の、名前ははばかりますが、自由党や改進党、あるいは右派社会党の有力な幹部の方がずらりと名前をあけておられる、こういつたような点から見ましても、私どもはこの問題がすつきりしなければ捜査当局が公平無視な厳粛なメスを入れたかどうかということについて、捜査当局そのものを疑いたくなる。どうかひとつ今後捜査に当られますには、こういつた点を十分御含みの上に、厳重な剔抉のメスを振われ、もしかような事実が真実ありとするならば、仮借ない摘発をなさつて、そして天下国家にこの真相を明らかにしていただきたい、これを捜査当局に切望するのでございます。
  66. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。私もその新聞記事を読みまして、まことに不敵な言い方だと感じたのでございます。さつそくここにおります国警長官刑事局長、たまたま面会する機会を得ました警視総監にも、かかる忌まわしい問題の有無を尋ねて、調査方を命じあるいは依頼しております。その点は十分私どもも世間から疑惑の目で見られないだけの当局でありたいと覚悟いたしております。
  67. 木下郁

    ○木下委員 こまかい点については後日伺いたいと思いますが、ただきよう検察当局のお話を聞いていると、あまりに法文の末節にこだわつて、全体の政治的観点をなおざりにしたという感を深くいたします。捜査されたいろいろの点、お話がありましたが、税金の点、これは常識的にすぐわかる。月二割、高いのは八割という配当をしている。これは国税庁の査察部あたりでお調べになつていると思いますが、伊藤に対して、二十四年の創立以来今日まで彼の称する匿名組合というものの収益に対して、どれだけの調査をし、どういう税金をとつて来たか、おわかりになつたら、きよう伺いたいし、わかつておりませんければ十分お調べ願いたいと思います。
  68. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点は直接の所管でございませんので、全然わかつておりません。
  69. 木下郁

    ○木下委員 それではお調べ願うことを希望しておきまするが、もう一点希望を申し上げておきたい。今までわずかな暴利で罰せられた事例がたくさんあります。その一番軽い暴利として罰せられたのがどういう程度のものかということがおわかりでしたら伺いたいし、また今すぐお答えができなければ、過去の暴利によつて取締つて来た事例の判例もお調べおき願いたいと思います。
  70. 岡原昌男

    岡原政府委員 それは高金利取締り関係でありましようか、それとも暴利取締令の関係でありましようか。
  71. 木下郁

    ○木下委員 両方です。
  72. 岡原昌男

    岡原政府委員 いずれ資料をまとめまして、後日申し上げます。
  73. 木下郁

    ○木下委員 なおこれは委員長に希望を申し上げたいと思います。いずれ遠からず伊藤がある時期に調べられると思いますが、この委員会においても特に政治的なことがいろいろ伝えられておる。悪くそんたくする人は――先ほど田嶋君からもお話が出ましたが、世界に対する日本の信用にも関係するというふうにアメリカに行つておる池田氏が言つたとか言わぬとか言つております。その問題についても池田氏自身がやはりうわさの渦中の一人になつておる。それでこの被害者である十五万の零細な預金をした人たちの事情は大いにくまなければならぬが、しかしまたそういう人たちもいながらにして月二分、高いのは八分というような利息をとつて、それで自分の生活の足しにしようというところについての多少の不心得をわれわれは責任をとつてもらわなければならぬと思います。今まで国家が日本の事業とみずから称して、国家的事業が社会的に大影響がありますからというようなことで、うやむやに国民の出した税金が不都合な、ほんとうに神様の目から見たら一番不当な連中の救済のために浪費された事例が多いのであります。こういう機会にこそほんとうに徹底してやつてもらわなければならぬと思います。犬養法務大臣は先ほど十分やるというお話ですが捜査の点についてはまた十分やつてもらわなければなりませんが、世間が今心配しておるのは、伊藤が大きな口をたたいたような線が少しでも出やしないかということを非常に憂えておりますから、その点十分今後の御処置をゆうゆうとおやりにならぬで、どんどん進めていただきたいことを希望申し上げておきます。
  74. 小林錡

    小林委員長 ちよつと私岡原刑事局長に伺いますが、先ほど木原委員の御質疑に対して、村上民事局長は、これは明らかに匿名組合じやない、本質は匿名組合じやないから、銀行業法か何かの法律違反するような御答弁があつたのです。私もまだ詳しく調べておりませんが、銀行業法信託業法とか、こういう許可なくして類似する行為をしたという者に対して罰則があると思います。ちよつと今はつきりしませんが、何か一年以下の懲役、禁錮、罰金もあるようでありますが、もしそういうことであれば、その点に対して訴追し、捜査もできると思いますが、ただいまどういうお考えでおいでになりますか。村上民事局長とも御相談なさつて、御答弁願います。御即答願えなければあとでもけつこうです。民事局長が今匿名組合契約じやないということを言われたようでありますが、それだけでも捜査の端緒がつけられると思いますから、ひとつ御研究願います。
  75. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほどお話の銀行業の取締りにつきまして、主務大臣の免許を受けずしてやつたという点でございますと、銀行法三十三条の五千円以下の罰金、これに当るわけでございます。その他これに関連する諸般の金融取締り法規がございますが、それはいずれ書き出しまして……。
  76. 小林錡

    小林委員長 今それだけでも触れておるというなら、どういうわけでお調べにならなかつたか、長い間御研究のようでありますが、どうも少し手ぬるいように思う。
  77. 犬養健

    犬養国務大臣 私率直に申し上げます。これは法務省政府の一員でありますから共同責任であります。私も責任を感じておるのであります。ところが法務省の点見といたしましては、どうも保全経済会は先ほど申し上げました諸理由によりまして匿名組合と言いにくいという見解を持つております。従つて銀行法違反である、五千円の罰金にしろ、違反違反である、それに対しましてもう一つの意見政府の中にありまして、これは昨日地方行政委員会においてその方面の意見の発表がありましたからお隠しする必要もないわけでありますが、これは明らかに匿名組合である、従つてこれを防止するには商法の改正を要する、商法の改正ということになると、法務省の範囲だ、こういう御意見が一方にあるわけであります。まずこの考え方を両者統一する必要があるのであります。統一できない半分の責任はもちろん私どもにありまして、私は責任を回避する者ではございません。しかし私どもとしましては、銀行法をいじるよりも先ほど民事局長が申しましたように、特殊金融取締法というようなものを出したいものである、これは大蔵省の御所管になるわけでありまして、大蔵省意見の融合一致をまず前提の条件といたすわけであります。そういうようなことで、とかくなまぬるいような解釈の多少の相違によりまして、これまで各省間の打合せがいつも明確な結論が出なかつた、その半分の責任はもちろん法法務省にございまして、今日まことに皆さんに相済まぬと思つております。とにかく済んだことはあとまわしにしまして、早速この意見の統一をしまして、そして政府として確立した措置をいたしたいと思つております。どうもこれは他省の批評になりますので御遠慮いたしておりましたが、だんだんこの問題に二、三御質問が触れましたので、決して他省の批評をするという意味でなく、私どもも共同責任を謙虚な気持で感じているという意味におきまして申上げる次第であります。
  78. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 運輸委員会に出席いたしておりましたので、大体その間に質疑応答は本問題についてはくまなく行き渡つたと思いますから、なるべく重複しない角度から二、三お尋ねしておきたいと思います。  ただいま、犬養法務大臣からも他省との関係について率直な御説明がありまして、私どもこれに対しては敬意を表するものでありますが、かつてこの問題に対して、法務省の内部ではこれは一種の脱法行為であるという解釈をとられた。しかるに大蔵省当局者は、これは脱法行為でないということから、この種の問題に対する取締り対策上、政府が統一ある態度をもつて臨めなかつた。これが今日かような事態を惹起する一つの原因であつたのではないかというふうに推測される節があるのでありますが、この点について法務省はどういう態度をおとりになつてつたか、この点もひとつ率直に御説明を願いたいのであります。
  79. 村上朝一

    村上説明員 私の関係いたしました点だけについてお答え申し上げます。保全経済会のことが問題になりましてしばらくたつてからのことでございます。本年の初めごろであつたかと思いますが、大蔵省の事務官が来て、これを匿名組合と見るべきかどうかについて相談を受けたのであります。そのときずいぶん研究いたしました結果、二、三日後にこれは匿名組合と見るべき実質を持つていない、かような回答をいたしたのであります。その後先ほど刑事局長が申しましたごとく、刑事局、検察局、大蔵省等の関係官の打合せがあつたのであります。私の方からも係の者が出まして、同様の意見を主張しておつたようなわけでございます。その他の両省間の関係につきましては私伺つておりません。その程度であります。
  80. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほどから申し上げました通り、この実体につきましてこれを商法的にどう見るかという点につきましては、実は私ども若干疑念をもちまして、匿名組合の実体を備えているか、どうか疑わしい、むしろそうでない方の色が濃いというふうな判断を下しましたけれども、それ以上の判断は実はできなかつた。と申しますのはその実体がどういうふうにまかなわれておるかという点についての確証がなかつたからでございます。私どもとしては、ただ法律的にこうこうであれば匿名組合でない、また出資関係がこういうふうであれば匿名組合であるというふうな程度で事を律して来たようなわけでございます。従いまして具体的に押収捜索でもやつて帳簿全体を見ましていろいろ検討すればその点はもちろん明らかになるはずでございますけれども、最終的にどうもどちらと断定するほどはつきりした材料がまだ得られなかつたわけでございます。
  81. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 保全経済会そのものに対する実態調査がただいままでの段階ではわれわれの断定を下す程度になつていないということは遺憾であります。と同時に従つてわれわれは早計な断定を下すことは差控えるのでありますが、いわゆる株主相互金融、これについても同様な経緯と申しましようか取締り上において意見の食違いが法務当局大蔵省の間にあつたというふうに聞いておるのですが、この点はいかがですか。
  82. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点はもつぱら事実関係をどのように見るかという点にかかつてつたように存じておるのでございますが、要するに株式を仮装して金融業を営んだというふうに見るか、あるいは株式の形で資金を集めてそれを操作することによつてその利益配当がもどつたというふうに見るか、この二つの見方によつてつて来たわけでございます。そこで私どもといたしましては、その実態が、先ほども申した通りに、小さな業者等はいわば仮装の状態が非常に現われたようなものでございますからボロを出しておる。つまり株主相互金融といいながら株券も発行しない、実態はまつた金融業と同じだというふうなものをつかまえて、これを問題にして来たようなわけでございます。ただそれが事実株式をやりとりして、そうして株主であることによつてその配当金を受けるというような形のものがございます。これを逆から申しますと、純然たる株式組織では貸金業はできないか、突きつめて申しますとそういつたような問題までさかのぼつて参るのでございます。それをいろいろ事実関係等も取合せてこの一つ一つの事件をどう見るかということについては意見がわかれますけれども、本質的な点については、この方はあまり問題はなかつたように考えております。
  83. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 大体こういう新しい制度、特に法の盲点をつくといわれるような事業に対して、既成の法律を基礎にして律するということは非常に技術的に困難であります。しかし法そのものは純粋であり、また悪が許されるわけではないのでありまして、そこに立法以前の法の解釈運用が高い立場から考えられなければならぬのであります。そこで私は、脱法行為論に対しても相当傾聴すべきものがあるのではないか、ことに契約理論に立つて匿名組合であるかどうか、あるいは株主相互金融が純粋な出資契約であるかどうかというような問題についても、いわゆる信義誠実の原則とかあるい公序良俗の原則とか、そういう立場からその契約がはたして有効であるか無効であるか、従つて脱法行為であるかどうかということを判定することがこの際必要ではなかろうかと考えるのであります。従つてあるいは信託業法二十条また銀行法三十三条に違反するものではないかというような結論も、その基礎理論に立つて初めてこれは理解できる問題になるのであります。政治論もいろいろ社会問題として起きて来ておるようでありますけれども、今後の取締りの上に立つて、冷静にその点からこの問題に対する基本的態度を堅持していただきたいということをお願いいたします。  最後に、これは犬養法務大臣にお伺いしておきたいのであります。先ほどこの収拾について善処されるような御決意のほどもつたのでありますが、もちろんこのしりぬぐいをするということは、国民の血税において許さるべきものではありません。しかしながらなおこの莫大な投資資産が散逸しないように、従つて被害者に対して、公平なる配分等によつて被害を救済するためには、むろし立法措置も考えていいのではないかと私は思います。おそらく今後第二、第三の保全経済会が出るのではなかろうかということが予想される今日であります。かつて台湾銀行問題についても、特別立法がされた記憶をわれわれは持つておるわけでありますが、こうういう点についても、政府の御構想なり御決意なりをこの際承つておきたいと考えております。
  84. 犬養健

    犬養国務大臣 まつたく同感でございます。ごく内輪の事情を申し上げますと、きのうきようの閣議は予算で一ぱいでありまして、この問題に触れる機会は遂にございませんでした。もちろんおつしやるように、第二、第三の保全経済会のようなものは予想した方が慎重な態度だと思いますが、仰せのような問題は十分に早急に処置をいたしたいと思つております。聞くところによりますと、保全経済会は株では損をしたが、不動産では相当持つておるというようなことでありますから、分散とか隠匿をされては、まことに政治の貧困ということになりますので、十分に手を打ちたいと考えております。それから私のしろうと考えで就任以来このことを聞いておりました感じでは、一般論として保全経済会的なやり方はどうも共同出資というのではないように思います。四十億に対して一万円とか二万円とか、それから伊藤斗福の顔を見たことのないおかみさんまで出しているということで、共同出資で利益配当をするという点が匿名組合であるという解釈をしておるのでありますが、なかなかさる者でありまして、匿名組合でないと断定できないような点もこしらえておる。たとえば保全経済会には定款と称するものがありまして、利益配当の条項に、「組合員規定に従つて営業より生ずる利益の分配を受く。但し商法第五百三十八条は、これによつて妨げられない。」こう書いてあるのでありますが、これは事務所にしまつておいて見せていないのであります。たとえば営業案内、出資申込書、出資証券等、出資者の目に触れる書類には書いてない。しかしそういうものを書いた書類は本部に確かにあるというので、先ほど刑事局長が言いましたように犯罪を犯したと疑うに足る明瞭な事実のないところにガサをやるということは、ちよつと躊躇するよう要素をいろいろなところにつくつておる。これがきようなまぬるいといつておしかりを受ける当局の方の若干の理由のあることでございます。  もう一つは、匿名組合であるかないか、従つて商法の改正の対象であるか、銀行法の改正の対象であるかというようなことで、ごくあからさまに申し上げまして、政府の見解を融合統一しておりません。その責任は、もちろん法務大臣にもございますが、こうなりました以上はあやまちを繰返さないように十分気をつけたいと思つております。
  85. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 もう一点だけ……。これは刑事局長にお伺いしてみたいのですが、現在各種の行政取締り法規は別といたしまして、刑法の一般的な対象として考えると詐欺罪であり、ことに一般詐欺罪でなくして刑法二百四十八条の準詐欺罪という規定があります。これは、こういう場合を対象にしての本来の規定なんです。ところが言葉が、二十才未満の知恵浅薄な者とか、精神耗弱者というふうに限定されておる。これは先ほど御指摘があつたように被害者もそれが何割か入つておる。経済常識で許されないことを考えて、いわば亡者になつておる。いわゆる心神耗弱者と思われる者も中にはある。こういう者を予想して、刑法は二百四十八条を規定しておるのです。ところがこの存在があまり一般に認識されておらない。たしかイギリス法は、これの規定は、詐欺罪の中にもつと広い範囲の規定があります。ですから刑法は、罪刑法定主義で、なるべく厳格に限定して解釈しなければならぬという鉄則があるために、これを活用することが困難であるということがあろうと思うわけであります。運用の上において、将来の改正の上においてこの点は大いに留意すべき点であると思うのでありますが、今の問題に対しては二百四十八条を検討されたかどうか、その点を一応伺いたい。
  86. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいまのような点ももとより検討いたしましたけれども、お話のように被害者もいろいろピンからキリまでございますので、そういうような関係から、これをただちにたやすく動かし得るかどうかという点を申し上げたわけでございます。しかしもとよりそれは大切なことでございますから、十分御趣旨を体してやりたいと思います。
  87. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 匿名組合でなければただちに非合法であるかのごとき感じをいたします御答弁を承つたのでありますが、もし匿名組合でなかつたときに無名契約としてどうお考えになつておるか。民法商法に銘を打つた、名前のついた契約でなければ全部これを否定するお気持だろうか。つまり無名契約というものを肯定なさるお考えは持つておるかおらないか。先ほど民事局長の御答弁では、消費寄託になると思われる違反、従つてこの面から言えば銀行法その他の違反であるというふうに御答弁もなさつたのでありますが、消費寄託にあらざる無名契約、つまり匿名契約に類似します無名契約という解釈が成り立つといたしましたならば、その法律関係はどうなるか、これに対し当局はどのようなお考えを持つておられたのか、その御検討の結果を承りたいと思います。
  88. 村上朝一

    村上説明員 匿名組名でなければただちに消費寄託であるという意味で申し上げたわけではないのでありまして、その契約の実態によりましては消費寄託でもない。匿名組合でもない、いわゆる無名契約というものもあるわけであります。もしそういう無名契約といたしますならば、銀行法預金受入れというものには該当しないことになります。
  89. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それでは、その点について本件がそれに該当するかどうかということについていま少しく御検討を願つておきたいと思います。  いま一つこの際承つておきたいのは、最初は八分の利子がだんだん三分、二分これではとても成り立たないという声が最初からあるではないかということが先ほどより論ぜられておりました。今回の休業はかくのごとき事態の集積がさように現われたものであるとごらんになつておるか、それともさような理由でなしに、最近における経済界あるいは政府金融に関する諸方針ないしは保全経済会に対する、たとえば不動産には金融をとないとかいう何らかの力が加わつたとか、そうした別個の関係よりかくのごとき結果に至つたものと見ているか、当局は、八分、三分、二分といつたような、これはとても最初からやりきれるものではないと思つていたが、はたせるかなこうなつたとごらんになつておるか、もしそうだとすれば先ほどの御答弁によれば、二十四年に成立いたしております。そういう危険があるのに、五年間どうしてやつて来たか。そして最初からその通りだつたら二十五年、二十六年時分にはもうその情勢が現われて倒れておらなければならないが、皆様のお話を聞いていても、昨年の暮れよりいろいろこういううわさがあつたとかなんとかいうふうにごく最近のコンデイシヨンがかわつてこういう事態に陥つたのではないかと見られるような節もあります。私はよくわかりませんが、そういう金利高ではとてもやれないという最初の懸念が二十五年以来集積して、遂にここに至つたものとごらんになつておるか。それとも最近の情勢ないしは理事長の方針が非常にまずかつたとか、あるいは悪意に、会社の財産を不当に自己のために処分したとかいつたような事態のためにそうした結果になつたものと見ているか。今回の破綻の直接の原因がどこにあるとごらんになつておるか。政府並びに検察当局あたりにおいてもどういうふうにごらんになつたか。これを承つておきたいのであります。
  90. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは先ほどから申し上げました通りに、十分な資料を今持つておりません。と申しますのは、おそらく全部の帳簿をあげて検討しなければほんとうのところはわからぬと思うのでありますが、いろいろな面が考えられるわけでございます。さような業者のやつておるやり方と申しますのは、昔からたびたびございましたが、中には問題にならずに済んだ場合もあつたわけでございます。いわゆるふくらまして行くやり方でございます。そのふくらまして行くやり方が途中でぱたつととまれば、ちようど進行している自転車が倒れるように、何らの手も下さずに倒れるという状態の場合と、それからそれが若干確実な事業に投資しておつたりするために、必ずしもすぐ倒れずに、細々ながらやつてつて清算にこぎつけるというふうな場合の形もございます。本件についてそのいずれであるかということについては実は今確言いたしかねますけれども、私ども今まで、これはほんとうの想像でございまして想像で申し上げるのはいかがかと思いますけれども、いろいろの資料から考えられるところでは、従来はまあどうやらこうやらやつて来たのではないだろうか、そして今年の春から夏にかけてかなり経済状態か悪くなつて、それで急にがらつと来たのではないだろうという、これは感じでございますが、いたします。しかし全体といたしましては、先ほど申し上げました通り、もし正常な事業に投資しているとすれば、月八分というのはかなり苦しい金融でございまして、八分の金融をやつていたころは市中の金利がおそらく月一割五分のころじやなかつたかと思います。それに対して全部、その当時においてさような高利を続けて出すということは、よほどその月一割五分といつたようなところを損失もなしにやつておれば初めて考え得るという程度で、これはほんとうの理想型だけでございまして、実際の実情としてはほんとうに困難であつたのではないだろうかという、これもまた想像でございます。しかし現在の二分程度というのがどの程度のものであるか。実は同種のほかの事業において現在二分というのはむしろ低いようでございます。さような関係からこの二分でつぶれる金融をしなければいかぬというふうな状況に立ち至つたについては、やはり何かそういうふうな事情が最近加わつたのではないだろうか。これはほんとうの想像でございますが、さような気持がいたす次第でございます。
  91. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 どうも想像を承るのでは何もなりませんが、もう少しその辺のことをつかんでいただきたい。ただいまいろいろな御意見を聞いておりますと、検挙の問題を中心としてまことに傾聴に値いする強硬な御議論が出ておりまして、私どもといたしましても不正があれば、これは徹底的にやるべきでであると考えます。ただ先ほどの議論の中にも出ておりました通り、こういうような問題を最初からどうにかやつているうちに、たとえば司法官憲が先に手をつけたために倒れた、それがために債権者にたいへん損害を及ぼすようになつた。そうでなくして置いておけば、どうにか行つていたであろうが、司法官憲が手をつけたためにこういうような結果になつたのだといつたような場合が往々にあり得るので、これを避けるべく今まで非常に遠慮せられたのではないかと見られる節がかなりにある。もしそうだといたしますならば、当時においてまだどうにか行つているうちに、保全の処分を立てらるべきであつた。たとえばこの会社があるいは株の上に投資をしておつて、その株が非常に有力な株でそうして収支償う程度のものであるとすれば、たとえば銀行法なら銀行法に触れるから、いわゆる貯金を預託することについてはやつてはいけない、しかしたとえば信託業なら信託業に切りかえなさい、あるいは、不動産なら不動産を専門とする株式会社に切りかえなさいといつたようなことで、そういつたようなときに単独法でも出して、まだやつて行けるうちにこれを何とかいたしましたならば、そういう事態を現出することなしに防ぎ得たではないかと考えられる節があるのであります。先ほど大臣のお答えの中にも、相当不動産があるようであるということをおつしやつた。報道機関のいろいろの報道等の中にも、三十五億ばかりある。四十何億のここに何といいますか債務がある。三十三億ないし三十五億のここに不動産があるとすると、大体八割くらいはただちに今整理すれば整理がつく。先ほどのこの委員会におけるところの議論を聞いてみると、まるつきり未亡人やその他に対しまして全部預けたものをとことんまで損害をこうむらしめたごとき観点に立つて議論されているかのごとき感じがいたしましたが、今大臣のおつしやるがごとく相当にここに財産があるといたしますならば、ひとつこれに対する相当な合法的対策を立てることによつてそんなに損害を与えないで、債権者も十分満足せしめ、あまり心配かけないで、また社会に及ぼす影響などもそんなに対外的関係に波及することのないようにいたしまして、始末をつける方法もあるのじやないか。してみれば、そういつたような面について先ほど最善の努力を尽すと大臣はおつしやつておられますが、これについては私は大体相当の見当というものもつけて行かなければなるまい。大臣といたしましてもどういうふうにやればどうなるだろうという、何と申しますか、あなたの、ただいま胸のうちに往来するお気持でも多少でも具体化したものを承ることができれば私ども仕合せであると思います。
  92. 犬養健

    犬養国務大臣 はなはだ相済まない次第でありますが、内容をまだはつきり私つかんでおりません。至急つかんで善処いたしたいと思います。さよう御承知願います。
  93. 小林錡

    小林委員長 ほかに御発言はありませんか。他に御発言がなければ本件についての本日の調査はこの程度にとどめておきます。後ほど懇談したいと思います。  この際お諮りいたします。ただいま地方行政委員会に付託されております奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案は、本委員会とも関連するところが少からざるものがあるように存じますので、本案に関して地方行政委員会に連合審査会を開会いたしたいと申し入れておきたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 小林錡

    小林委員長 御異議がなければさようとりはからいます。なお連合審査会の開会日時等は地方行政委員長と協議いたしまして決定いたしますが、御質疑をなさる方々はあらかじめ申出を願います。 それでは本日の調査はこの程度にとどめまして、次回は明日午前十時半から委員会を開きます。なお十時から理事会を開きますから、理事諸君の御出席を願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時一分散会