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1953-11-04 第17回国会 衆議院 農林委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月四日(水曜日)     午後三時三十九分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 川俣 清音君    理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐藤善一郎君       佐藤洋之助君    福田 喜東君       松岡 俊三君    松野 頼三君       松山 義雄君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    伊藤 好道君       芳賀  貢君    中澤 茂一君       中村 英男君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         食糧庁長官   前谷 重夫君         林野庁長官   柴田  栄君  委員外出席者         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十一月四日  委員佐々木盛雄君及び山本幸一君辞任につき、  その補欠として林讓治君及び伊藤好道君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年における冷害等による被害農家に  対する米麦売渡特例に関する法律案内閣  提出第一号)  昭和二十八年における冷害による被害農家に対  る資金融通に関する特別措置法案内閣提出  第二号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第三号)  連合審査会開会申入れに関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年における冷害等による被害農家に対する米麦売渡特例に関する法律案昭和二十八年における冷害による被害農家に対する資金融通に関する特別措置法案及び農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案一括議題といたし、審査を進めます。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 昨日これに関連して人造米に関する質疑が行われたわけでございますが、私は昨日この件に関する限り一応保留をしておきましたので、本日人造米の問題についていささか長官質問をしたいと思います。  昨日主として中澤委員川俣委員長官との間に質疑が行われましたが、あの質疑の中で承知し得ることは、まず第一には、この松浦何がしという特許権者から特許権借上げを行う。これは一箇年の借上げ料を二千五百万円にふんでおるという点が一点。さらに実施権者に対してその半額の一千二百五十万円程度を支払うということで、都合三千七百五十万円を、国が人造米製造のために財政面から支出することになるというように承知したわけであります。その次には政府は保管しておる澱粉等人造米原料となるものを払下げを行うということと、さらに製品に対しては買上げを行うというようなことも長官は発言されておるわけであります。それから融資に対しては、既存の実績を持つておる信頼できる者に対して開銀を通じて融資を行う、こういうような点が食糧庁長官答弁の要旨であつたように考えますが、この点に相違はありませんか。
  4. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。ただいまの点の中で、政府がこれに対しまして買上げを行うということは、私きのうは買上げを行わないというふうに申し上げたと記憶しております。これは人造米工業発展過程でございますので、技術等の点もまだ今後の発達が予定されますので、政府はこれを買い上げるという考え方は持つておらないわけであります。  もう一点は融資の問題でございますが、融資につきましては、開発銀行を予定いたしておりますが、開発銀行におきましては、一定資格と申しますか、資格標準があるわけでございまして、この標準に合致した者に対する融資のあつせんをいたすわけでありまして、ただいま芳賀委員お話既存のものという意味に限定しておらないわけであります。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 次に特許権の問題でありますが、これは長官も言われたと思いますが、この人造米をつくる機械特許権がついておるのではなくて、人造米製法特許権があるというふうに承知しておるわけでありますが、これはその通りでしようか。
  6. 前谷重夫

    前谷政府委員 お話のように、機械には特許はございませんで、製法特許でございます。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、松浦式製法というものは、澱粉くず米、あるいは小麦粉原料とすることは当然でありますが、大豆の粘稠液によつてこれを固形化さして人造米をつくるというような工程に対して、特に大豆の粘稠液を必要とする製法であるということに対しての特許権であるというように考えてよろしゆうございますか。
  8. 前谷重夫

    前谷政府委員 特許の公報の公示にはさようになつておりますが、われわれいろいろ各方面の意見を伺いましたところによりますと、その点が一番問題になろうかと思うのであります。食糧研究所におきましていろいろ検討いたしました考え方は、大豆のグルーテン、蛋白でもつて固めるのじやなくして、小麦粉蛋白質によつてこれを固める、こういう点にあるわけでございます。ところがその大豆蛋白をもつて固めるということは、大豆自身を固定的にさしておるのか、植物蛋白を総称した意味なのかというところが、非常に微妙な関係があるようでございまして、これの最後の決定特許審判によらなければならないというふうに承知いたしておるわけであります。そういう関係がございますので、現在われわれが食糧研究所から出しておりまする特許も、そういう点とからんで検討されておるように伺つております。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、現在つくられておるところの人造米というものは、おそらく大豆の粘稠液を使わなくつても、けつこう人造米ができるという段階まで発展して行つておるわけです。そういう場合においては、何もこの製法に依存する必要は全然なくなつたということになると思うわけです。しかもこういうものを使わない場合における澱粉であるとかくず米であるとか小麦粉というようなものは、これは原料自体も別に特許権がついておるわけでもないし、これは公知公用に類するものであつて、こういう場合においては、政府松浦式製法に対して特許権を借り上げなければやれぬのだというような理由をつけて二千五百万円も一年に支出するというようなことは、何かそれ以外に理由が伏在しておるのでないかというような疑惑を持たれるのですが、どうですか。
  10. 前谷重夫

    前谷政府委員 その点についてお答えいたします。実は特許権現状をわれわれ見ますると、昨日も申し上げましたように、特許権者として七万五千円、それから実施権者としてそれと同額あるいはそれ以下の額ということで、十五万円ないし十万円程度のものが、特許料として支払われておるわけであります。特許権者といたしましては、大体現在の状態におきますると、一年千台ないし千五百台の機械注文があり、供給できる能力があるために、大体一年間に一億七千五百万円から一億円程度収入があるから、政府がこれに介入することに対しては、特許権者としては非常に反対をしておつたわけでございます。特許権の使用の状態から申しますと、相当高額の特許権契約が行われて、それが徴収されておるという一点から、またその施行地域実施権者一定の特権として与えられまして、その場合におきましては、実施権者がその特許を利用しまして、販売委託等の事実もあるわけでございまして、ここに今後の人造米を育成して参りまする場合におきまして、特許を利用しての一つ待権が生じつつあるわけでございます。しかも特許料相当高い。こういう形が現われておりましたので、われわれといたしましては、そういうことを是正するために特許政府が処置する必要があるじやなかろうか、こういうことで考えたわけでございます。われわれといたしましては、食糧研究所特許というものは早急にこの特許が確認いたされますればこういう必要はないわけでございますが、ただいま申し上げましたように、松浦式特許食糧研究所特許が、その点につきまして相当微妙な関係にありまして、特許審判をまたなければ、その点が解決し得ないということが一点と、それからさらに特許につきましては、御承知のように一応審査によりまして——特許法によりますと二箇月間の猶予がございまして、その二箇月間の間に異議申立てがなし得るわけです。その二箇月間のうちに異議申立てがありますると、その異議申立てにつきまして審判が行われるのであります。その審判の不服に対しては、さらに高等裁判所に提訴できる、こういう形になつております。従いまして、おそらくそういう現在の状態におきましては異議申立てということも考えられなければならないので、食糧研究所で出しておりまする特許が早急に確定する、こういうことも予想されないわけでございます。従いましてそういうふうな意味からいたしますると、やはり現在の特許権を何とか処置しなければいかぬ。また一方におきまして、製造する面におきましても、すでに現在ある程度そういう計画があるわけでございまするが、特許権との関係で、もし特許権を取得しないでやれば、特許侵害の問題が起るということで、生産を躊躇する面もございまするし、やるとすればその特許権契約によつて取得しなければならない。そうすると、その特許権に付随したいろいろな問題、たとえば販売委託の問題とか、そういう問題が起つて来つつあるわけでございます。そういうことになりますると、人造米の正常な発達ということが非常に困難になるということで、われわれといたしましては何とかこれを処置しなければならぬ。ただ特許権者といたしましては、先ほど申しましたように一年間に一億七千五百万円ないし一億円の収入が当然見込まれるということで、相当強い態度を持つておるわけでございまして、これを、いろいろ公益上の理由から事情を話し、妥当なところへ持つて参りたいということで交渉をいたしておる次第でございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの長官言葉の中には、ずいぶん大きな矛盾があると思うのです。一つは、人造米普及を促進させるためには、今の、特許権のついておる松浦式のこの製法というものは、今その通りに行われておらないわけです。そういう製法によらなくても、人造米は、この製法よりもさらに高度のものができる段階になつておる場合に、何を苦しんでこの松浦式の今採用されない製法に対して、時間的にすみやかに人造米生産を上げるために、かかる措置を講じなければならぬかという点であります。もう一つは、研究所がやつておられる今のやり方は、おそらくこういうような原料の小麦とか、くず米とか、澱粉以外のものをことさらに混入しなくてもできる製法であるというふうに考えるわけです。だからこの三つ原料だけでいわゆる人造米ができる場合においては、別に特許とか何とか、そういう問題は出て来ないのです。公知公用であるから。個人の家庭において、くず米小麦粉澱粉をまぜて一つの固形化したものをつくつてそれを食べても、それが特許権侵害になるなんということは全然あり得ないと思うわけです。だから、かかる観点に立つた場合においては、こういうような災害によつて政府人造米を三十万トンつくるというような打出しをしておるので、もうすでにこの松浦式特許権とか実施権者間多額のいろいろな意味における金が流れておるその事実に対して、ただ政府はそれらをまつたく無価値なものにするのは忍びないというような考え方でかかる措置に出ておるのであつて、純粋な意味において、今後人造米生産するための手段であるというようにはまつたく考えられないわけであります。この点は、長官といえどもまつたく同意見であろうと思いますが、いかがでしようか。
  12. 前谷重夫

    前谷政府委員 松浦式特許につきましては、芳賀委員お話のように、大豆蛋白で固形化する、この点が現われておるわけでございます。先ほども私申し上げましたように、その大豆蛋白というものが特許の中心であるのか、あるいは大豆蛋白という植物蛋白を総称しての意味かということが非常に問題の点だそうでございます。そこで現在食糧研究所におきまして研究し、普及いたそうと思いまするわれわれの考え方は、小麦粉蛋白をもつて固形化するという形でやつてつたのです。これはもちろん食糧研究所研究も、松浦式土台のもとに研究したことは事実であります。すでにそういう製法があり、それをさらに発展さしたものであるという形になつておるわけであります。それでお話のように人造米の需要がこういう形において相当増加した。御承知のような食糧事情によつでそれが行われたということは、お説の通りかと存じますが、すでにそういうことが行われる前から、この問題につきましては相当研究もされ、またそれの普及についても行われておつたわけでございまして、政府は先般三十万トン程度生産目当に試作をすることを閣議決定できめたわけでございますが、すでにその前におきまして相当数量注文があるわけでございまして、そういう点を考慮いたしまして、特に特許権現状は、われわれとしても、契約による特許やり方、つまり一年間に一億円もの収入のあるようなやり方につきましては、われわれとしては是正しなければならぬということを考えておつたわけであります。また現実にある部分におきまして、特許侵害等の問題でもつていろいろなトラブルを起しておることも事実であります。そのために工場計画なり生産計画をする部面も躊躇しておるという点もある程度ありますので、この点を解決するためにそういう方法をとつたのであります。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 私は決して特許権者とかそれらに関連する業者等動きに対して触れようとは思わないのであります。ただ問題は、今長官の言われた言葉の裏に、食糧庁としての一つ動きがあるのではないかというふうに考えるわけです。たとえば食糧研究所で出した「合成米に就て。」という資料があるのです。それによると特許庁見解では、原則的な工程が同じ場合には特許は逃げられないとされておる。そういうふうな見解を披瀝されておるわけです。だからとにかく人造米というものは、それほど複雑怪奇な工程は必要ではないわけです。こういうような原則的に工程が似たような場合においては特許は逃げられない、こういう抽象的な表現ではあるけれども、何か一つの制約を加え得るような裏づけをしておるわけであります。ところがこれに対して特許庁の方は、そういうことは別にはつきり言つておるわけではない。たとえば「合成米澱粉小麦粉、砕米を原料として之を混合し幾多の工程を経て製造されるのであつて此の場合原料の一部を変更したり又は新に原料を加えても特許を逃れることが出来ない」というのが、研究所見解なんです。これに対して「人造米に関して  は多数の特許があるがその中の常法で行う工程特許されておるのではなく該製法中に特殊の工程常法と結合して特許されておるのであるから従来の特許方法中特殊の工程を除いた常法に関しては何人が之を実施しても特許に抵触しない。」という。これは特許庁の方の見解であります。だから松浦式特許の第一の粘稠液を混和ということは、新しい工程として認められて、これによつて特許権が出ておるわけであります。澱粉とか、小麦粉とか、くず米を混入してやるという常法、いわゆる公知公用の範囲に対して特許せられたものではないというのが、一つ特許庁の原則的な見解である。本質的に解釈が間違つておると思います。特許を取扱つておる特許庁見解は、こういうような純理論的な立場に立つておる。ところが食糧庁の方は、大体人造米をつくるというようなことは、既存特許権に抵触するから、そういうことはやれぬだろうというような大きな伏線を先に引いておる。こういうところに何か非常に明瞭性を欠いた点があるというふうに考えられるわけであります。  さらに実施権者の問題に対しては、全国を大体三分して、一つ地域には葛原工業というものが実施権を持つておるわけであります。それから倉地製粉、日清製粉というこの三つの会社が、大体全国地域をわけて実施権者ということこなつておるわけであります。だから製造費用というものは、さつき長官が言われたような形で、これらの実施権者に対して七万五千円、さらに特許権者に対して七万五千円、つまり機械一台に対して十五万円の支払いをしなければ事業がやれないというような形になつているわけでありますけれども、かかる実情というものは、十分長官は御承知と思いますが、この点いかがですか。
  14. 前谷重夫

    前谷政府委員 第一段の特許権解釈の問題は、私の方の係が、あるいは言葉が足りなくては、どういうことを言つたか知りませんが、私はこれは特許庁解釈に従うべきものだ、かように考えておるわけであります。食糧庁特許権の問題について公的な解釈をすべき問題じやないと思います。もしそういう誤り伝えられるようなことがありましたとすれば、これは厳重に注意しなければならぬと思います。現に特許庁におきましても、この問題について逆に確認審判なり、あるいはその他の無効審判の訴えがまた別個に出ております。従いましてわれわれといたしましては、そういうことも十分に考慮しなければならないと考えております。従いまして、その特許実施権を借りる場合におきましても、こういうことが確定いたしました場合には、いつでも解除できるような措置をとつておるわけであります。現に特許庁におきましては、その審判なり、審査が進んでおると思います。そういう状態は、われわれも十分頭に入れて、単に一年間借りるとかいうことじやなくて、そういう場合には、いつでも解除できるような措置をとつて参りたい、かように考えておるわけであります。  それからもう一点、現にそういう実施権者があつて、その実施権者が不当に実施料をとつておるということも承知しております。むしろわれわれといたしまては、現在の実施権で行きますと、相当高いものになる。これを政府が中に入つてあつせんして借り上げることによつて、安い——おそらく半額以下の特許料済むのじやなかろうか、かように考えておる次第であります。
  15. 川俣清音

    川俣委員 長官は、きのう私が警告したにかかわらず、依然として前の自説をまげられないで答弁をされておるようであります。今、芳賀委員からも質問がありましたように、この特許権行政措置と結んでおるところに特許権価値が生じておるのである。このことを指摘しておいたはずであります。依然として長官は、この特許権が一億七千万円くらいの価値があるということを主張しておるということを、暗にお認めになつておるようであります。それからもう少し下げなければならぬということを主張されておりますけれども、やはり基礎を、一億七千五百万を主張されておるものを、ある程度認めようというような心持で御答弁になつているようであります。私は、これは食糧庁長官言葉としては、行過ぎというよりも、自分が持つておりまする行政から生まれて来る価値を、相手でありまするところの一業者、一企業者でありますものに対して、行政の分を加えた価値まで認めて表現をしておられるということは、ここにいわゆる利権的なものが存在するということになるのだと思います。また一億五、六千万ももうかるということは、どこから出て来るか、あなたからの払い下げがなければ、そんな金は出て来ませんよ。一億七千五百万円もの権利が生まれるとすれば、どれだけくず米がそこへ行きますか、計算されておりますか。どれくらいのくず米を配給されておりますか。くず米の配給があるという前提に立てば、確かに一億七千五百万円くらいの金は生まれて来るでしよう。あるいは三十万トンの年産計画を立てて、それに融資をするとかいう行政的な裏づけをすれば、この特許権価値がついて参りまして、そうした取引が行われるようなことになると思います。しかしながら、その土台を与えたものは、特許権を持つておる者がそれだけの価値を獲得したのではなくして、行政庁くず米を配給する、あるいは人造米を奨励するという行政措置に伴つて生じて来るところの価値じやないかということを、再三指摘しておるわけであります。それを依然として行政と切り離したごとく、自然に価値が生まれて来るんだという表現のようですが、その誤りを訂正なさいませんか、訂正されなければ、私は大きな問題だと思います。
  16. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。私が申し上げたのは、現在の特許権者と、特許権実施体というものとの間の契約と申しますか、そういう契約関係から、特許権者がそういう主張をしておるということを申し上げたのでございまして、それが妥当であるということを私が言つておるわけではございません。現に特許権者としては、そういう契約を持つておる、こういうふうなことを特許権者は言つておる。そこで先般の新聞にも出ましたように、食糧庁が安い価格で買うのはけしからぬ、こういうことを言つておる状態であるということを申し上げたわけであります。われわれといたしましては、人造米をこういう際に、澱粉の消化もございまするし、正常な形において生産をさして行きたい。そうしてこれが国の食糧に何がしかのプラスになれば非常に幸いだ、かように考えてやつておるわけでございまして、そういう点につきましては、川俣委員の御指摘のような問題の起らないように、もちろん十分に注意いたしたいと思います。
  17. 川俣清音

    川俣委員 これは注意するだけではいかぬのです。一体、一億七千万円もとる価値のあるものだと主張されるならば、一体どこからこの材料を持つて来るのかということを確かめなければならぬ。やみ飲食店がこれだけもうかるんだ、米を取締らなければこれだけもうかるんだ。食糧庁は、これは黙認するんだと言えば、権利は確かについて来ます。そういう横流しを認めておいて、権利が出た。それを高く買わなくてはならないということは、あり得ないはずではないかということを私は指摘いたしたい。一億七千五百万円も上るというのは、一体どこから材料を持つて来るのかということを、あなたは指摘しなければならない。あなたは食糧全体を管理されておる立場から、どこから持つて来るのだということを指摘されれば、これはほとんど価値がなくなる。そうじやありませんか。今日の食糧管理の上からいつて、一億七千五百万円も上るようなことが可能であるということは、考えられないじやないですか。これはしろうとならば別ですよ。あるいは食料管理関係のない人が判断するならば別です。あなたは食糧を全部管理しておられる。しかも米穀を管理しておる人が、そういう計算に対して、何の批判も与えないで、それをうのみにはされないにいたしましても、幾らか削減しようというような態度であつたのでは、みずから食糧行政に対して一つ批判を加えられて、あるいは無価値に見られておつて、今日の食糧管理を無価値に見られておればこそ、そういう表現が出て来る。あなたの管理を無価値に見られて、初めて価値が生れて来るものです。その価値をまた買つてやるということは、あり得るはずがないじやないですか。
  18. 前谷重夫

    前谷政府委員 川俣さんも御承知のように、特許権者と、工場を実施して、原料を配給する。これは別な形になるのです。われわれといたしましても、そういう人造米工場が、食糧管理のらちをはずれて、くず米等を買い上げるということを黙認する気持は毛頭ございません。これはもちろん食糧管理の建前上、政府において、当然必要があれば配給する。こういう形に考えておるわけでございます。これを黙認するがために、そういうふうな人造米が出て来るということじやございませんで、われわれといたしましては、これは正常なルートにおいてやつて参りたい、かように考えております。ただ川俣さんの御指摘の点でございますが、この際人造米をある程度増産したい、こういうことになりますと、そこにできた工場に対しては、もちろん十分その内容等を審査しなければなりませんが、できた工場に対しましては、人造米の需要があり、相当消費者が需要を希望しておるという場合においては、そのつくる工場に対して、現在の統制下におきましては、やはり政府のみしかくず米の所有をいたしておらないことでありますから、その需要を認めて、ある程度の配給はしなければいかぬということは御了解願えるかと思います。川俣さんのお話のように、こういう人造米政府が取上げたために、相当価値が出たじやないか。これはお説の通りでございます。ただ、それじや政府が認めたから、無から有を生じたのか、これはもう従来の特許権研究の問題もございましようし、それはある程度価値があつたものを政府が取上げることによつて相当大きなものが附加されたという形になるのじやなかろうかというふうに御了解願えないかと思うのであります。
  19. 川俣清音

    川俣委員 私、関連質問ですから、人の時間をとつて恐縮なんですが、問題は、さつきからるる述べているように、政府が年産十万トン計画をする、さらに二十万トン計画をする、さらに三十万トン計画をするということによつてだんだん特許権価値がついて来る。特許というものは発明であつて、それ自体に価値があるのではない。利用されるところに価値が生じて来る。その利用の程度が、純民間的に利用されて来るならば、当然そこに特許権価値が生じて参りましても、これは何人も異議を言えないと思います。政府の政策、行政措置が、十万トン計画をし、二十万トン計画をし、三十万トン計画するというと、だんだん価値が高まつて来る。もつと別な言葉で言えば、ある大臣が十万トン計画をする、今度はおれは三十万トン計画をする、そうすると価値が生じて来る。これは献金してもいい問題だということになつて、どうしても利権にからむのです。前谷長官は一万トン計画をする、次に来た長官が十万トン計画だ、ということになると、九万トン上げることによつて、かなり価値が倍加されて来る。そうして長官行政措置と、特許権との権利が結びついて来ると利権になつて来る。私は、それを指摘しているのです。特許権そのものを指摘しているのじやない。行政と結びつくところに利権というものが発生して来る。われわれは今日、利権を厳重に監視して参らなければならぬ。もしも利権の発生するような場所がありますならば、これを中断させなければならぬ。そういう意味で私は問うておるのでありまするから、もしもあなた方がどうしてもやられるとするならば、特許権人造米とは一度切り離して、計画を立てられなければならぬ。こういう利権と結ばれるようなことについて、食糧行政が濫用されることについては、将来の食糧管理の上に大きな障害となる。農民は、そういう人造米をつくるようなところに、政府特許料を払い、莫大な権利金を払う、ということになりますれば、農民は供出しなくなります。これは恐るべきことです。私はその意味においてお尋ねしているのですから、もう一度十分御考慮になりまして、同じような御答弁をなさらぬように御注意願いたいと思います。
  20. 芳賀貢

    芳賀委員 今、川俣委員の発言された点もありますが、私は、この問題は、すでに松浦式製法が必要がなくなつているという事実なんです。そういう製法によらなくても、現在の人造米はできておるという事実の上に立つた場合には、何もこれを中心に置く必要はない。それと違うことでやれるという事実の上に立つて、しかも、今の原料というものは、繰返して言うように、澱粉と、くず米と、小麦粉さえあればできるということで、これは公知公用という解釈でやれる。長官自身もその見解は持つておる。すでに研究所でりつぱな人造米ができて、われわれは前国会で試食して、澱粉が半分くらい入つてつても、普通の米に三割くらい混入しても、けつこう判断がつかぬ程度に食べられるという認識を、われわれはすでに持つておる。そのような段階まで来ておる場合において、何を苦しんで三千五百七十万という金をむだに使わなければならぬかという事実なんです。そういうことをやるから、今川俣委員が言われたように、それに利権がつきまとつたりする。人造米をつくつてでも、国内における食糧事情を緩和しなければならぬというこの窮状を打開するために、これが全部コストに入つて来るわけです。だから人造米の値段も高過ぎるじやないかというような問題等も出て来るので、この問題を抜本的に解決するためにも、やはり食糧庁見解というものを、もう少し明確にして、自信を持つて、これを生産に移す場合においては、移すような手段方法はいくらでもあるということを、私はこの点だけは、どうしても長官の同意を求めたいと思うのであります。これに対する御所見はいかがですか。
  21. 前谷重夫

    前谷政府委員 先ほども申し上げましたように、食糧研究所研究というものは、現在特許出願中でございます。その食糧研究所方法というものは、いろいろな指導によつて相当周知いたしておるわけでございます。そのほかに方法はあるわけでございます。われわれは、そのほかにでき得る方法を排除しようという気持は全然ないわけでございます。その点は、他に適当な、そしてりつぱなものができるという方法を排除するという考え方は、毛頭ないわけでございます。ただ、現在の食糧研究所研究し、そしてわれわれが普及いたそうというその方法が、やはり特許権侵害になるおそれが多分にある。現にそのために特許権侵害の訴えが起きたり、あるいはまた仮執行の問題が起きたり、いろいろトラブルが起つておるわけであります。だからこの特許権侵害にならないような方法において、またその裁判の結果いかんによつては、せつかく工場をつくりましても、つくれなくなる。これはこれから生産を進めて参りまする場合において、非常に害になるわけでございます。現に現実の問題といたしまして、そういう特許権侵害の訴えを起されるおそれがあるために、特許権政府が解決してくれるまで、生産を待つというふうな傾向が非常に見えておるわけでございます。そこでこれを是正するために、また特許権の現在の行使方法も、われわれとしては妥当でないと考えておりまするので、それを是正する方法を考えたわけでございます。御承知のようにわれわれといたしましても、現に特許庁に対しまして、こういう方法は、特許侵害にならないという確認の訴えも出ておりますし、また現在の特許は、もう公知の事実として無効だ、これの訴えも出ております。でございますから、そういうことが確定いたしますれば、われわれとしては躊躇なく、この特許権の行使、使用というものをやめてさしつかえない。ただ現在、食糧研究所研究いたし、また普及いたさんとするものが、特許侵害になるおそれがあるという形になつておりますので、これを円満に進めて行くために、これの処理の方法を考えたわけでございます。でございますから、これでなければいかぬというふうなことをわれわれは考えておるわけではございません。その点は御了解願いたいと思います。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、長官の今のお話によると、これはかかる特許権侵害というふうなおそれが若干ある。そのおそれが除去された場合においては、これは公知の事実としてやつてみる、その判断に立つておるわけですが、そういたしますと、これは必ずしも一年に三千七百五十万ですか、これをしかもきのうの御発言では一度にやるのではない。大体月別にこれをやるということになるので、これが三箇月の将来においては、それまでに向うへ支払つた残余というものは別にやる必要はないというふうに考えられますが、その点はいかがですか。
  23. 前谷重夫

    前谷政府委員 契約におきましては月ぎめでありまして、そうして政府が必要と認めなくなつた場合には解除できるということにいたしたい、かように考えております。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 なおこの人造米の製造にあたつては、これは製造の機械そのものに全然特許権はついておらぬのでございまして、この点に対しては何ら御懸念がないので、問題は製法だけだから、必ず松浦式というような機械でなければならぬというような、それに食糧庁がレツテルを貼るような態度をとらないということも、また非常に大事ではないかというように考えるわけであります。さらに昨日の長官お話では、この人造米の品質を統一して良心的な規格のものをつくるために何か委員会のようなものを設置したいというお話があつたわけでありますが、これはわれわれの承知するところでは、財団法人の形で、日本人造米協会というものをつくつて、これにやらすというような構想で昨日のようなことを言われたと思う。この人造米協会の会長は元農林次官をやつておられた小濱八彌氏、それから副会長はこの実施権者であるところの倉地友次郎という人がなつておるようにも聞いておりますけれども、食糧庁の考えは、今言つたような、日本人造米協会にああいう仕事をやらせるような構想であるかどうかをお伺いしたいのです。
  25. 前谷重夫

    前谷政府委員 機械の点につきましては、私芳賀委員とまつたく同意見でございます。この特許権の問題も、繰返して申し上げますが、一つ機械によ  つてその製造がやられるということは、結局その製造の進歩をとめる。機械というものだんだんと改良されるべきものである。ところが特許権関係でその機械を買わなければならない。こういうことになつては結局進歩がない。こういう意味で眠らせるという言葉を使つたわけであります。これは機械というものがそれなりに安いいい機械ができればどんどんそのいい機械を採用すべきではないか、かように考えております。  それからもう一点の人造米協会の問題でございますが、御承知のように、こういうものは特に初期のものにおきましては、非常に技術的にも粗漏の点がございます。また粗悪品が入りやすい関係上、ぜひ検査というものをやりたい。しかし検査は農林規格法によりまして、任意検査の形になるのであります。一応規格をきめまして、それによつて検査を実施したい。これは農林規格法の他のものについても同様でございますが、やはり検査団体をつくりまして、そうして検査をやるという意味におきまして、人造米の財団法人をして検査をやらせて行きたい、かように現在の構想としては考えております。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうところからだんだん問題が発展して来ると思うのです。昨日も中澤委員指摘したように、どの機械でやらなければとか、あるいはどの製法でやらなければ規格品として認めぬというような価値判断をこの協会に与えるということになりますと、そこに大きな弊害が出て来ると思うのです。しかも今年は食糧が足りない、その足りない食糧を何とか充足するという一つ考え方のもとに、今まつたく放置されているような澱粉を主たる原料とする場合においては、何らこの人造米をつくるということには異議が出て来ないわけです。しかもこの原料は全部政府の手持ちであるといつてもさしつかえないわけであります。澱粉も、くず米も、小麦も持つているということになりますと、長官政府が払下げを行うということを言つておられましたが、払下げをする場合においてはどういうような形で行われるのか、おそらく特定の業者等に対して払げ下をするか、あるいは協会等を通じて払下げを行うということになると思います。そういうような形で政府の所有しているところの食糧の払下げが行われて、一方においては特許権問題をめぐるところの複雑怪奇な面が何ら整理されておらない。しかも人造米協会に対して検査の権限を与えるというような、かかる形態の中においては、まつたくこの食糧問題に関する限り明朗な、しかも社会性を持つた施策というものはこの中から生れて来ないわけでありますけれども、どういうような形で払下げをなされるか、また払下げの価格等に対しては、食管会計の中から赤字が生じないような形で払下げをするのか、あるいは相当の赤字を見て、結局市場に出すコストを引下げる場合においては、払下げの価格を安くして食管会計の中で赤字を出すというお考えでやるのか、払下げの対象はどのような機関に行うか、この三点の御説明を願います。
  27. 前谷重夫

    前谷政府委員 規格は政府の農産物規格法によつて先ほど申し上げましたように、一升重は幾ら、水分は幾ら、あるいは硬度は幾らということを農林省できめるわけでございます。従いまして検査員を養成いたしまして、その検査員が与えられました農林省規格に合致するかどうかということを検査するわけでありまして、これはほんとうに技術的な問題でありますので、そういう勢力関係によつて検査を動かされることはないと思います。  それから原料払下げ問題でございますが、目下どういう形で払下げをするかということは研究中でございます。これは工場に対して払下げをすることになろうと思いますが、この価格等については、一律に一つの価格をきめまして払下げをすることになるわけでございますが、この払下げ方法等につきましては、検討をいたしている次第であります。ただ原則的に申し上げますと、主要原料であります小麦粉澱粉は、現在の段階におきましては自由商品でございますし、特に澱粉においては、さしあたりの問題といたしましては、ばれいしよ澱粉しか使えません。かんしよ澱粉は砂抜きなり、脱色をするような技術的な問題がございます。これをいかにするかということを解決しなければなりません。そういたしますと、大部分のものは市中に依存せざるを得なくなるだろうと思います。小麦粉は御承知のように現在大部分が市中に出ておりまして、一割程度混入する砕米だけを政府が持つているということになります。
  28. 芳賀貢

    芳賀委員 具体的に御説明が足らぬように思いますが、葛原工業とか、倉地製粉、あるいは日清製粉、こういうものを現在政府は対象にして考えておられるようにわれわれは承知しておるわけであります。しかもこれらの特定の会社に対して、一社一千万円程度の損失補償的なものをも与えるというような黙契が成り立つておるということも聞いておるわけでありますが、こういう点に対して長官はまつたく関知しないということもないと思いますが、その点をまずお聞かせ願いたいと思います。
  29. 前谷重夫

    前谷政府委員 原料の払下げにつきましては、われわれといたしましては既存工場と、今後できる工場というものとを何ら区別する考え方は持つておりません。ただ一定の規模と申しますか、一つ標準——こういうものを今後つくられる場合においては、こういう規模においてつくつてほしいという、こういう希望はあるのであります。またそういうふうに今後できる工場に対しては、一定の規模で、検査の対象となり得るように指導して行くということはもちろんでございますが、現在の既存工場を優先的にするとか、既存工場に限るとかいう考え方は毛頭持つていないことを申し上げておきたいと思います。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 この人造米の問題が今後どのように発展するかということは予測できませんけれども、とにかく今まで申し上げた通り一つ特許権の問題もはつきり解決しなければならぬという点と、政府が払い下げを行うような場合に国民の疑惑を招かないような方針、それからこれを市場に提供する場合において、いかに合理的な価格でこれが提供せられるかというような社会性を扶与するという問題等があると思います。しかもこの問題は、一つは企業の独占的な傾向に移行して行くかもしれませんけれども、このような食糧の危機の中において、国民が非常に苦しみをなめておる場合において、これに便乗するがごとき企業が、しかも独占の形態を整えて、そうしてそこに大きな収奪が行われるということは、断じて許すことができないと思います。し、長官においても、この問題がかかる方向に発展することに対しては、全面的にこれを阻止することに努力されることを期待しておるわけでありますが、ただ巷間伝うるところによると、人造米の協会にしても、葛原、あるいは倉地、日清等の大きな会社、そのバツクをなす勢力というものに、たまたま与党の大物と言われるような人たちが関連しておるというようなことも、真偽のほどはわからないけれども、かかるうわさも流れておる事実もあるわけです。だから現在の政府の権力と一つの資本とが結んだような、こういうような変形が横行しないように、われわれは今後とも十分監視を怠らぬつもりでおりますが、これらの問題に対する長官の最後的な一つの御信念を聞いて、この質疑を終りたいと思います。
  31. 前谷重夫

    前谷政府委員 ただいまの芳賀委員のお考えに対しましては、われわれといたしましてもそういう点は非常に注意をいたしておるわけでございます。私といたしましては、特にこれが独占的になり、また既存の企業の擁護になるということはぜひ阻止したい。特許権の問題にいたしましても、もともとのスタートがそういう特権化されつつあるというところから、これを打破するためには、少し金を出しても打破した方がいいのじやないか、こういうことから出たわけであります。われわれといたしましては、ただいま御注意のありました点につきましては十分注意し、特に利権云々の問題でございますが、これはわれわれは行政当局として公正に、まじめにやつて参りたい、こういうように考えております。
  32. 井出一太郎

    ○井出委員長 足鹿覺君。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 私は食糧庁長官畜産局長にお尋ねをいたしたいのでありますが、最初にこの法案自体につきまして食糧庁長官からごく簡単な二、三の点についてお伺いしたいと思います。  この法律は全部で四条からなるきわめて簡単なものでありますが、米麦の安売りの法律です。第二条でありますが、被害農家とは何かということについて、きわめて抽象的でありまして、最終的には都道府県知事が認定をする、いわゆる都道府県知事の認定を受けたものが被害農家として安売りの米麦その他を譲り受ける資格があるとなつておるのでありますが、これは何によつて都道府県知事が認定を行うのでありますか、その認定の条件等をまずお伺いいたしたい。ややもすればこういう法律は、どさくさの間に通りますので、いろいろな点で大事なことをわれわれが聞きのがしており、また農家にせつかくの期待を与えておきながら、ふたをあけてみたら意外な結果が出がちでありますので、間違いのないように詳しく、その点はこの機会に御発表を願いたい。
  34. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。第二条にございますように、「著しい減収のため」ということがこの法案運用の中心点になろうかということは御指摘通りであります。われわれといたしましては、この減収の度合いを画一的にきめるのがよろしいか、あるいはまた実態に応じて都道府県知事の認定に譲るかということを検討いたしたわけでございますが、御承知のように、従来におきましても、普通の場合におきましてある程度災害等がございました場合におきまして、転落する場合も平年においてもままあるわけでございます。しかし平年の場合におきまする以上に減収がはなはだしい場合を考えておるわけであります。抽象的に申しますれば、収穫皆無の場合またはこれに準ずるような場合ということが抽象的に表現されますが、実態的な問題といたしましては、われわれから都道府県知事に売るわけであります。都道府県知事がこれを市町村に売り、そうして市町村が農家に売るという段階になろうかと思います。そこで政府といたしまして、たとえば収穫何割以上、こういうふうな限定をするよりも、買受者である都道府県知事の認定にまつことが妥当ではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、われわれといたしましは、平年生ずべき損害以上の収穫皆無またはこれに準ずるような著しい災害の場合にこれが適用されるものということを期待しておりますが、具体的なこれが適用につきまして、買受人であります都道府県知事の認定にまちたい、こういう趣旨によりましてこの第二条をかように規定したわけでございます。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 それはわかるのです。わかるのですが、私の言うのは、都道府県知事におまかせになつたとしますと、財政力のある県と、あるいは財政力の貧弱な県との間に、おのおの相違も出て来ましよう。また地方長官のほんとうの農民に対する親切な考え方で進めるところと、官僚的な行き方でやるところとではおのずからまた差が出て来ます。そういつた点で、ただ単に都道府県知事の完全なる自主性におまかせになるわけですか、あるいは食糧庁なり政府においては、何かそこに著しい収穫皆無に近い被害農家ということでは、どうも私はあまりに抽象的過ぎて、その適用の上にいろいろと不均衡な事態が起きはしないか、こう心配をいたすのであります。それで収穫皆無ないしはそれに近いというようなお言葉が今ございましたが、収穫皆無ないしはそれに近いものとしましても、たとえば農家の経営形態によつては、米自体は甚大な打撃を受けた、しかし他のものによつて相当カバーもできた。米自体から見ると、飯米がまつたくない、しかし他の営農形態によつて、あるいは青森で言えば、りんごならりんごをつくつてつた、北海道では酪農をやつてつたというような点で、ある程度カバーができるというような場合に、米自体は全滅しておつても、他のものは生きておる。こういう点で、実際上となつて来ると、これはなかなか問題が発生しはしないかと思う。農民にほんとうに幻想を抱かせないように、収穫皆無に近いというようなことではなしに、そういつた営農形態の相違から来る点の均衡を保つ方法であるとか、いろいろ実際に適用して行く上に矛盾のない対策というものが、私は必要ではないかと思うのです。そういうことを聞いておるのです。完全に知事の認定におまかせになるのか。今私が言つたような事例等も勘案されて、均等に行くようにお考えになるのか。あるいは収穫皆無、あるいはそれに近いものといつたものを、もつと程度を下げて行かないと、総合経営をやつておる場合には異なつて参るのでありますから、その点を御研究になつておれば、もう少し伺いたいし、御研究になつていないならば、よく御研究になる必要があるのではないか、こういうわけです。
  36. 前谷重夫

    前谷政府委員 お話の点はわれわれもいろいろと研究いたしたいたいと思います。しかし現実の問題といたしましては、具体的な標準を設けるということは、県別に非常に事情が違いますので、標準を設ける場合には、どうしても抽象的な標準になりはしないかということを考えまして、県に具体的な認定をまかせたいと思つておりますが、ただいまの足鹿さんの御意見もございますように、これはやはりある程度均等に、実態に応じて適用されるということも考えなければならないと思います。さらに現在におきましては、具体的にこういう標準でやるということは、ただいま私が申し上げたような抽象的な程度にしか考えておりませんが、さらにその点は、もう少し具体化してやり得るかどうかについては、もちろん研究いたしたいと思います。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 私はこの点で要望しておきますが、今度の冷害等について、東  京にたくさんの旅費を使つて、入りかわりたちかわりおのおのの団体、おのおのの立場から御陳情になつておる。その人々が今度国に帰つて、各県ごとに冷害対策本部あるいは委員会というようないろいろな組織を持つておられると思う。そういう人たちの力を結集したものに、よく都道府県知事が意見を聴し、あるいはそれに諮り、実際に適合したような措置をおとりになることが必要ではないかと思う。私どもはこまかいことはわかりませんが、少くともそういつた点で、府県知事の独断に陥らないように、そうして農家に対しても不均衡にならないように、救済の手が延びて行くような有効適切な措置を特に熱心に検討して、最終的な成果をあげていただきたい。これは私の第二条についての要望であります。  それから第三条でありますが、第三条の点につきましては、市町村が被害農家の減収の程度等を参酌して、農林大臣から米を都道府県知事を経て売つてもらうということになつておるのでありますが、その数量のきめ方は、「農林省令の定める手続に従い売り渡す」というのは、米麦を売ること自体の取扱いを意味しますか。この冷害等には何か特別に農林省令をつくつて、そしてこれについての数量の問題をおきめになるというのでありましようか。
  38. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。あとの「農林省令の定める手続」と申しますのは、府県に対しまする売却の手続、府県からの申請の様式の手続、それから支払います場合の手続規定をきめたものであります。それから数量の点でありまするが、農林大臣の定める数量というところでもつて、一人当りの数量を考えて参りたい。ただ御承知のような食糧特に米穀の事情でございまするので、この場合におきましては、従来供出農家であつて完全に保有しておりまする農家と、従来どもに転落農家でありまして、ある部分は配給を受けておる農家とは、取扱いをかえなければならないのではないか、かように考えておるわけであります。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 どういうふうにかえますか。
  40. 前谷重夫

    前谷政府委員 大体米につきましては、転落農家につきましては府県の消費者に対する配給率ということになるわけであります。それから保有農家につきましては、それにある程度の数字を加算すべきではないか。なお四合につきましてはそのほかに麦をもつてつて米麦合せて保有農家に対しては四合を補給いたしたい。ただ米につきましては、本年度の事情がございますから、保有農家については米食率にさらにある程度の加配を考える。たとえば従来農繁期加配等のことがございましたが、加配を保有農家について考えるべきではないか、こういう考え方をいたしております。ただ転落農家につきましては、その県の米食率の消費者配給と大体同様にいたしたいと考えております。
  41. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは転落農家には消費者並のいわゆる配給基準量はまず米でやる、その他のものもやはり四合に達するまでは麦でやる、こう解釈していいですね。
  42. 前谷重夫

    前谷政府委員 転落農家、つまり非供出農家につきましては、その県の年齢構成によりまして米の保有量がございますから、その米の量からその県の保有基準量を差引いたものを麦でもつてつて行きたい、かように考えております。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員 転落農家については、当委員会で農繁期加配を考えるべきであるということを十月二十日に決議しておりますが、あなたの方に徹底しておりますか。その点どういうふうに取扱いますか。
  44. 前谷重夫

    前谷政府委員 加配の問題は、全体といたしましてもう少し需給の状況を考えて、この問題とは別個に取扱つて行きたい。これはその県の需給の状況もございますし、国全体の需給の状況もございますから、その点は現在われわれとしては、こうするという段階には至つておりません。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に第四条に麦製品は製造または加工に要する費用を加算するとなつておりますが、その加算の基準というものはお持ちでありますか。結局押麦一升、あるいは小麦粉については、これらの加算額を加えて最終的には幾らになるか、それからこの中央から末端の農家まで行くに要する運賃であるとか、あるいは諸費用というものは、都道府県の負担になるのか、あるいは受配者の負担になるのか、これはこまかいようなことでありますが、実際問題になりますと、凶作農家はわずかな金にも困つておると思います。従つて問題があとに残らぬように、その点も明らかにしていただきたいというのが一つと、それから代金延納について当農林委員会も決議を採択しておりますが、この法律にはそのような点が全然うたつてありません。おそらくこれを貸しましても、来年の麦なら、米なら米の出来秋に借りたものが返せるかどうか、それは悪意ではなくして、善良な意思であつても実際上困難ではないかと私は思いますが、その点について全然触れておられないのでありますが、その措置等については何か御構想がありますかどうか。
  46. 前谷重夫

    前谷政府委員 価格につきましては、われわれといたしましてできる限りもよりの駅まで——これは地域によつて違い、政府の所有場所がいろいろ各地方に偏在しておりますが、消費者のもよりの駅近くまでは政府運送によつてつて行きたい、そういうことによりまして、できるだけ配給者の負担を軽減したい。ただそのもより駅から庭先までの運賃等は、これは県なら県の協同組合で共同で行きますから大したものにならないので、この点は消費者の負担に願つたらどうだろうか、かように考えております。最末端の小運送は政府としてできませんが、大運送につきましては、できるだけ政府みずから運びたい、こういうことにいたしたいと思つております。それから麦製品の価格につきましては、これも現在報奨用といたしまして大体二十キロ八百円で政府が払い下げることにいたしております。これは供出促進用のためのものでありますが、これと同様な形で、政府の加工賃をも加えて末端まで持つて行きたい、かように考えております。なお延納につきましては、この法律にはございませんが、別個の財政法の法律がございますので、われわれといたしましては、これを適用しまして、無利子延納を認めたい、かように考えております。ただ延納の期間につきましては、われわれといたしましては、収穫期までを延納期間にいたしたいということで、今財政当局と交渉いたしております。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 何か資料をいただいたように思いますが、大体概算で玄米についてどの程度の数量になるお見込みですか、また小麦粉あるいは精麦等については同様どの程度の数量に達する見込みでありますか。これで私の質問は終ります。
  48. 前谷重夫

    前谷政府委員 先般の水害等の法律の場合におきましては、保有量を流された場合でございまして、これは結果としてごく少い数量に相なつておりますが、この法律は今年度の収穫がなかつた場合の問題でございます。これは実はわれわれも目下各県とも農家の配給量の問題と関連して検討いたしておるのでありまして、これは相当の数量になるだろうと思います。この具体的な数量は、もう少し各県との打合せをいたしまして、全体の農家配給量をきめまして、その農家配給量の中でこの事例に該当するものが幾らかということを具体的にきめて参らなければいかぬ、かように考えております。今は、数量は相当数量になるだろうということとは予想いたしておりますけれども、具体的な数量はまだ確定しておりません。
  49. 井出一太郎

    ○井出委員長 川俣清音君。
  50. 川俣清音

    川俣委員 時間がありませんので、二、三点だけごく重要な点をお伺いいたしたいと思います。  この法律によりますと、六月から九月までの間に起きました風水害等による被害農家にもこの法律が適用されるようにできているわけであります。ところが予算書の方を見ますと、一応西日本水害、第十三号台風による農家の保有米麦の損害についてはまた一本別に立てておられる。それでさらに別に項を起しまして、冷害対策の臨時処置を盛つておられますが、その説明によりますと、冷害による被害農家に対して云々という説明になつております。あたかも冷害地だけにこの予算が出るように一応説明は加えられておりますけれども、法律は六月災害から冷害にまで及ぶというのであります。その予算書の説明と法律とはちよつと違つておりますが、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  51. 前谷重夫

    前谷政府委員 予算書におきましては、前の臨時国会で成立いたしました水害等の特例の場合におきまして保有米麦を流した場合、それが十三号台風と二項になつております。それから法律におきましては冷害というふうに表現いたしておりますが、その項はこの法律の適用を受けるもの全部を考えているわけであります。
  52. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、予算書の方の説明は、冷害による被害農家というふうに表現しているけれども、この項は法律の第一条に基く地域をさすのだ、こういうふうに解釈してよろしいかと思うのです。  そこで問題は、あたかも冷害地に一億六千万円も出して、災害地の方にあまり米麦が渡らないというような印象が非常にありますので私はこの点を質問いたしたのでありますが、続いて、これは一般会計から食糧庁の特別会計への赤字補填のための、いわゆる財源補填のための一般会計からの繰入れであります。もちろんこうした食管会計がこういう一般の事業を行つた場合に生じました損失に対して補填をすることは、当然だと私は思います。と同時に、もう一つ考慮してもらわなければならぬことは、この冷害凶作にもかかわらず供出にいそしんでいる者、これは相当食糧を犠牲にいたしましていわゆる飯米を犠牲にして供出をしている農家もあると思うのですが、そういたしますと、単に冷害地という地域内における被害農家ではもちろんありませんけれども、たとえば被害程度が少いといいましても、品質あるいはその査定において相当の減収量になつている農家も少くはないと思う。こういういわゆる飯米をさいて出すような農家に対しましては、それに対する麦の補給が必要であろうということを大臣がるる述べられているようであります。特に冷害地に行きましたときには、供出を出してくれるならばその見返りに安い麦を大いに出すのだ、こういうようなことを、これは軽率かどうかは別にいたしまして、とにかく農林大臣は言つておられるようでありまして、新聞にもこれを載せているようであります。これはあえて取消しされているようにはまだ見受けません。そういたしますと、法律は、政令で定める地域内において生じた被害農家、しかもこの被害農家というのは、おそらく相当被害農家ということをさしておられるのだと思う。そうでなければこの予算では足らないのでありますからして、この被害農家というものは、非常に限定された七割減収とか、あるいは五割減収とかいうようなことをさしていなければ、これだけの予算ではまかないきれないと思うのです。大臣の説明並びに供出あんぎやに用いられた言葉と、この予算では大分開きがあるように思うのですが、この点に対して食糧庁長官はどうお考えになるか、大臣の答弁、宣伝は間違いであつたかどうか。
  53. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。われわれ供出の御協議をいろいろいたします場合におきまして、各県からも超過供出をする場合におきまして、相当の麦を政府において手当することによつて超過供出が期待できる、こういう御要望もあるわけでございます。従いまして大臣がその点をお話なつたと思うのでありますが、現に大体東北の各県に対しましては、一定の精麦を政府において県の御希望に応じて払い下げておるわけであります。これは超過供出をしていただくために、ある場合には飯米を節約しなければならない。そのためにはその裏打ちといたしましての農家の食糧が必要じやないか。それで麦製品を配給してもらいたいというような御要望がありまして、それにつきましては、すでに具体的に各県と御相談いたしまして、東北につきましてはもう品物をお渡ししておるという状態でございます。
  54. 川俣清音

    川俣委員 私のお尋ねしておるのは、大体この予算だけではまかない切れないのではないかということでお尋ねしておるのです。従つて一般会計から繰入れるのはこの金額であるけれども、食管の会計の中においてこの不足分は補うんだ、こういう意味で大臣の答弁なりあるいは食糧庁長官答弁をお聞きしてよろしいのですか。一般の繰入れだけはこれだけれども、さらに食管会計の中において、今説明されたようなこと、あるいは大臣が大いに宣伝されて供米を督励されたようなことはやるんだ、こういうように理解してよろしいですか。
  55. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。先ほども足鹿委員にお答えいたしましたように、この場合におきまする消費量というものは、非常に具体的にはつかみにくいものでございます。さらにこれは各県と需給の関係等を打合せ、さらに具体的にどれだけいるかということを打合せなければ、最後の具体的数字がきまらないかと思います。ただいま川俣委員お話の点もございますので、これも一応の数字を各県にお話いたしましたが、さらに今後各県から御要求があるかもしれません。一つはそういう点におきまして、一応予算で予定いたしました以上に出ます場合も予想されるわけであります。その場合の措置は食管特別会計で負担するか、あるいはまた食管特別会計の全体の関係におきまする繰入れの問題として取扱いますか、これは今後数量が具体的になりましてから財政当局と御相談するという考え方で、私どもは現在おるわけであります。
  56. 川俣清音

    川俣委員 やや明らかになつたようでありますけれども、この法律は長官御存じの通り政令で定める地域内において生じた風水害及び冷害、こうなつております。従いましてこの地域以外はこの予算の対象になつていない、こういうことになりましよう。そこでさつきあなたが私に答弁されたところでは、政令で定める地域外も含めておられます。いわゆる供出農家でありますから、これらに一割とか二割とか三割とかいう農家も含め地域が含まれる。大臣は東北をあんぎやした場合においても、やはりこういう区別はしておられません。おもに供出農家に対して督励して歩いたのでありますから、いわゆるこの「政令で定める地域」ということを考えてはおられない。むしろ供出のできるような地域に対して大いに督励して歩いたのであります。この地域外とも見られる。そうすると、大臣が宣伝されたり、あるいは長官がるる述べられたことは、地域以外だということになる。そこで私はこの法律の建前からいつて地域以外ではあるけれども、予算以外ではあるけれども出す用意があるのかどうか、こういうことをお聞きしておるのですが、その点を明確に御答弁願いたい。
  57. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。地域指定の問題と関連して申し上げますと、水害の場合におきまする例もございますが、水害の場合におきましては、ある府県を指定いたしまして、さらにその府県内の町村の指定ということになるわけでございますが、先般の水害の場合におきまするこれと同様の法律におきましても、その指定は府県の指定でございまして、われわれのこの法律は府県を対象にして売却いたしますから、府県内の町村を指定するということにはならないのであります。でございますから、府県を指定いたしまするが、ただいま川俣委員お話のように対象が違う場合がある。従いまして数量の違いが起るということは、これはあり得ると思います。その場合における問題は、食管特別会計におきましては、この問題のほかに農産物の関係等もいろいろあるわけでございまして、食管特別会計全体の収支の問題としてどう処置するかという問題に考えていただきたい、かように考えております。
  58. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、今度の冷害に対しまして食糧庁から出る政令地域と、それから本省から出る政令地域というものが異なることがありますか、私どもは異なるというふうには考えないで御質問いたしておる。大体農林省の考え方は三割以上、あるいはこのあとで出て参ります融資の方からいくと、面積一割以上というようなことが指定区域になるように思うのです。しかもこれはあなたの今の御答弁であると県単位だというふうに御説明のようですが、そうすると政令を別に一本立てなければならぬと思いますが、そういう御用意があるのですか。
  59. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。水害の場合におきましても川俣委員承知のように、この米麦売渡しの場合におきましては、県に対して売却いたしますので、県を指定いたしまして、県内の市町村は指定いたしておりません。先ほど足鹿委員の御指摘のように、その該当農家をいかにするかということの認定を府県知事の認定にゆだねております。政令の形といたしましては府県を指定いたしておる。これは水害の場合と同様でございます。
  60. 川俣清音

    川俣委員 これは小さいことですが、普通そういう場合だと「政令で定める地域内」という表現は使わないじやないかと思うのです。これは小さい問題ですから議論する考えはありません。この法文からは、あたかも今まで取扱つたような市町村を指定するかのように受取れるわけですが、修正する御意思はございませんか。ただいまのような御答弁でありますと、「政令で定める地域内において生じた」というようなことよりも、むしろ「政令で定める府県内において生じた」というような表現の方がもつと妥当だと思うのですけれども、これは議論するつもりはございません。非常に誤解を受けると思いますので、どういう意味地域内ということを表現されておるか、この点をちよつとお尋ねいたします。
  61. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。その点は川俣委員お話もごもつともでございますが、水害の場合におきましてやはりこれと同種の法律が「政令で定める地域内」というふうになつておりますから、特にこの法律におきましてこれを府県内にかえるということは、また前の場合と取扱いをかえる、こういうことになつてもいかがかと存ぜられましたので、すでに水害の場合におきましてその地域を府県で指定いたしておりますから、むしろそのままにした方が誤解を招かないじやないか、かように考えたわけであります。
  62. 川俣清音

    川俣委員 私は時間がないのでここで論争しようとは思いませんけれども、あとの三条の方では「都道府県」というようなことを表現しておるわけです。また四条におきましても「都道府県に米麦を売り渡す場合」というようなことを表現しておる。この法律の体裁からいうと、どうも一条とこの三条、四条とがちぐはぐのような印象を受けるのでお尋ねしたわけですが、これはしいて争うつもりはありません。むしろ私が重大に思つておりますのは、先ほど申し上げましたように、この表現と、もう一つは、いわゆる供出のために使われます代償としての麦というものがあることを確認すれば、大体私の質問の主要点は終るわけですけれども、特に相当な犠牲を払つて町村長初め農業委員会または府県が供出にいそしんでおる、大臣の言を信じ、あるいは食糧庁長官の言明を信じてやつておるのでありますから、予算が不足だからということでこれを裏切ることのないように御注意を申し上げておきたいと思います。もう一度これに対する御言明を願いたいのであります。
  63. 前谷重夫

    前谷政府委員 われわれといたしましても、従来供出につきまして大臣が申し上げたごとく、ただいま川俣委員が申されましたと同様に考えておるわけでございます。
  64. 川俣清音

    川俣委員 次にお尋ねしておきたいのでありますが、食糧の供出に伴いまして、今年度は等外米をも対象にして集荷されるのでありますが、この集荷が今日人造米と関連いたしまして、非常に疑惑を抱いておるのです。初めはこの冷害に伴つて政府の処置がいわゆる等外米にも及ぶ、あるいは砕米にも厚い手が及ぶんだということで非常に感謝いたしておつたのでありますが、一方に人造米が盛んに宣伝されて参りますと、われわれから安く買つて、あの高い人造米へ持つて行くのではないかというような疑惑が相当生じて来ております。そうなつて参りますと、この供出に伴いまして、地方におきます白玉の原料であるところの米粉を相当取締つて行かなければならぬ、一方において供出を促進し、あるいは超過供出を促進するために米粉を取締つておりながら、他方においては人造米を奨励するというような、単純な農民にとりましては非常に誤解を招きやすいような政策をとられておるわけであります。ここの点について食糧の全体を管理する長官といたしまして、あまり人造米の宣伝に力を入れますと、将来供出の上に非常な影響が来るというふうにお考えになりませんかどうか、この点をお尋ねいたします。
  65. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げますが、等外米の問題につきましては、先般来も申し上げましたように、上と下と取扱いを区別いたしております。下につきましては大体政府を通じまして県内の加工関係に払い下げる考え方で従来やつております。県外に対する搬出ということは考えておりません。その点でわれわれといたしましてははつきり区別いたしたい、かように考えております。
  66. 川俣清音

    川俣委員 これは米の安売りという関係がある、なければ質問してないのです。むしろ安売りだというような——確かにこれは安売りでしようけれども、一方供出を考えてみますと、必ずしも安売りかどうかという疑問が出て来る。そこで供出米をどうしても取上げなければならぬわけです。先ほどから、確かにこれは安売りということで、大分犠牲を払つておるわけでありますが、農民から見ますと供出の方は価格も政府がきめ——もちろんこれは米価審議会の意見を徴されますけれども——他方の人造米の方は一つ特許権があるんだ、こういうことで権利をつけてやる、あるいは、それを高く評価してやる、一方農民の方からいえば、同じ所有権に属するものを一片の法律で農民の方は取上げて、なぜ特許権を持つておるものは取上げにくいんだという疑問もかなり出ておるわけであります。これはあなた方のような専門家から見れば説明がつくでありましようが、一般の農民から見ますれば、自分のつくり上げたものは値段はきめられ、しかも強権的に取上げられて行く、一方は、同じ主食で米がないというときに権利をとつて高く人造米を売る、これに対して政府が盛んに応援をする、こういう矛盾についてはするどく批判をしております。こういう点から見まして、これを解決しなければ、いわゆるくず米の処理にいたしましても疑惑がある。これでは政府の期待しておる方へ行かないでやみ売買になるおそれがあります。今ではくず米の方が等外米よりもむしろ値上りぎみです。差がなくなつて来ております。こういう危険な状態も出て来ておりますので、十分御注意あるべきだと思いますけれども、この点について長官の御答弁を願いたい。
  67. 前谷重夫

    前谷政府委員 これは今川俣委員お話のように、もしそういう誤解がありますれば、われわれとしてもぜひ誤解を解きたいし、また御注意のように十分注意をいたして参りたい、かように考えます。
  68. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ちよつと関連して……。 ただいま問題になつておりました人造米、これは何人がつくつてつてもよろしいことになるのでありますか。そして人造米とはかくかくの成分を持つたものというような一定の規格を指定されるのでありますか。
  69. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。規格は農林物資規格法によりまして指定いたします。ただ製造につきましては御承知のように企業許可令もございませんから、この製造を法律的に許可をするという考え方はございません。
  70. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 製造は何人がこれを製造してもよろしい、規格は一定の規格ができる、こういうことでありますと、その人造米を製造することによつて良米が相当量その方面にやみつぶしされることはございませんか。その点の危険はどうでありますか。
  71. 前谷重夫

    前谷政府委員 現在の状態におきますると、御承知のように主成分は小麦  と澱粉であります、砕米はわずかであります、良米がこれに入るということになりますと、もちろんわれわれとしてはそういう横流しは厳重に取締りたいと思います。しかし現在だんだんに生産が進んで参りますと、そういうも  のをやみで買つて加えて行くということでは競争は成り立たない、かように考えております。
  72. 井出一太郎

    ○井出委員長 昭和二十八年における冷害等による被害農家に対する米麦売渡特例に関する法律案について他に御質疑はありませんか。——他に御質疑もないようでありますので、これにて本案に対する質疑を終局し、討論を省略してただちに採決いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めます。それではこれより昭和二十八年における冷害等による被害農家に対する米麦売渡特例に関する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  74. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。本案に関する衆議院規則第八十六条の規定による報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、さようとりはからうことにいたします。     —————————————
  76. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際お諮りいたします。目下労働委員会において審査中の公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件八件中、国有林野事業に関する件は公労法の適用を受ける林野庁職員の昭和二十八年一月一日以降の賃金改訂及び増額に関する紛争について仲裁委員会が下した裁定に関するもので、本農林委員会としても重大な関心を有するところであります。この際労働委員会に対し、連合審査会の開会を申し入れることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めます。なお連合審査会の開会の日時は、関係委員長と協議の上決定いたしたい  と思いますので、御了承を願います。     —————————————
  78. 井出一太郎

    ○井出委員長 引続き資金融通に関する特別措置法案、及び農林漁業金融  公庫法の一部改正案についての質疑を継続いたします。足鹿覺君。
  79. 足鹿覺

    足鹿委員 私は先ほど食糧庁長官に、ただいま可決になりました法案に関連して質問を申し上げたいと思つておりましたが、法案のすみやかなる成立を期待しまして中途で切つておりますので、この際食糧庁長官にお尋ねを申し上げたい。まず第一は米価並びに供出確保の問題についてであります。その中で当農林委員会が、十月二十日、二十四日の決議を採択いたしました際に、本年の不作の現状にかんがみて、供出状況とにらみ合せて等外の上は義務供出の割当のわく内に含ませてもらいたいという決議をいたしております。一昨日の私の質問に答えて長官は、現在の供出状況を御説明になりました。昨年十月三十一日同期に比して約百六、七十万石の供出減であるように言われました。これは早場米の供出期限等との関係、あるいは秋の天候に恵まれた関係等によりまして、農家が急いで供出をしたのでありまして、現在の状況がそうであるからといつて、必ずしも今後楽観は許されないと存ずるのであります。     〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕 そこで私は、等外米の上を義務供出のわくに入れるということは、食糧庁自体も、本年度の食糧事情から考えて、基本的には反対でないと思う。ただ問題は、それを一応義務供出のわくに入れると、まずそれを出して、いい米が他へ逃げはしないかという御心配を持つておいでになるので渋つておられるのではないかと思う。どうも長官はただいま見受けるところ、そういうふうにお考えのようでありますが、そこで私は、等外米の上を全部義務供出に入れなさいということは無理だと思います。そこで農林委員会は、供出の状況とにらみ合せてこれを義務供出のわく内に入れてもらいたいという決議を満場一致で採択しているのであります。すなわち、もうあと二俵なり三俵なり出せば義務供出に達するという農家が必ず出て来る。また市町村でももう一息というところで義務供出に達しないところが出て来る。県も同様だろうと思う。そういう一つの特殊の事情に基いて、今年の作況から見てどうしても義務供出の量が果せない供出状況にある状態と認定のされる時期なり、また個々の農家なり市町村の実情というものを見わけることは容易ならぬことではありますが、そこをいわゆる本年の供米確保対策の上から見て適当なる方法によつて供出状況とにらみ合せて等外の上を義務供出の中に入れてもらいたいと思う。現に超過供出報奨金の対象にしておられるのであるから、これをまず超過供出の対象にするということは、義務供出あつての超過供出なんでありますから、超過の対象として義務のわくに入れないということは、理論上からいつてもどうもやや統一がないように思います。これは実際問題として必ずしもそれを必要としない地区もあるでしよう。でありますか ら、そういう点は画一的にならないようにして、供出の状況によりよく御判断になつて、その措置をとつていただきたいと思いますが、その点について長官の御所見を承つておきたいのであります。
  80. 前谷重夫

    前谷政府委員 ただいま足鹿委員から、供出につきましての御理解のある御意見がありましたが、実はわれわれもその点につきまして同感に考えているわけであります。ただいまの点につきましては、府県とのお話合いの場合におきまして、義務供出につきましては五等以上でお願いするということになつているわけであります。しかしながら、われわれといたしましても今後の状況等を考えまして、当農林委員会におきまする御決議の趣旨につきましては十分考慮して参りたい、かように考えております。ただ現在供出の進行中でございますし、また各府県におきまする供出の協議もまだ約半数程度でございます。ただいま申し上げたことでもつて御了解いただきたい、かように考えます。
  81. 足鹿覺

    足鹿委員 十分にその趣旨をくんで今後考えるということでありますから、これ以上申し上げません。  時間もありますまいし、長官も帰りを急いでおられるようでありますから、あまり多く追究しませんが、これは大事なことですよ。全然これを放任されるということになりますならば、私どもは承知できません。今後にかかつて来る問題でありますから、この点は十分お考えの上実施してもらいたい。  それから産米規格の緩和について当委員会は決議をいたしております。そのとき長官は、本年の産米の規格緩和については十分実情に沿うべく行いたい、特にその産米規格の査定会には農民の代表を加えて、実情に即したように、農民との間に摩擦のないようにはからいたいということをしばしば申しておられますが、現在農民の代表を加えた査定会等においては、どういうふうに運用されておりますか。各地において農民代表が参加し、摩擦なくこの査定会が進行しておりますかどうか、そういう点について現在御指導になつている状態、また結果等について承つておきたいと思います。
  82. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。私は従来からも規格の問題、つまり政府が公示いたします規格につきましては、これは検査の一つの恒久的制度でございますので、これは従前通りにやつておりますが、規格を具体的に適用いたします標準米の選定につきましては、実情に即してやりたい、そうしてまたその際におきまして、生産者代表等の査定会に対する御参加を求める、こういうことを申し上げております。これにつきましては、査定会を開きます場合に、いつ査定会をどこで開くから御参加願いたい、こういうことを御通知申し上げておるわけでございます。従来は一方的に査定会をきめて、それをいつするということで、それを知つた方が参加される場合にはこれを拒むわけではありませんが、本年度におきましては積極的に御通知を申し上げております。それで現在におきましては査定が大体順調に進んで参つていると思いますが、具体的にどことどこの地域においてどういう方が参加したか、こういうことは私の手元にはございませんが、各食糧事務所、同時に本省からも査定会に参りますので、その者に対しましては十分にその趣旨は含めてございまして、御通知を申し上げて、生産者団体も入つての査定会になつておると考えております。
  83. 足鹿覺

    足鹿委員 それについては私はまだいろいろと意見がありますが、意見にわたりますから、この際遠慮をいたしておきます。  これからが大事なんですが、本日の朝刊によりますと、今一番国民の注視の的になつております本年の食糧需給の見通しと、同時に食管特別会計の赤字問題が非常に大きく取上げられておる。これは私どもが予算書の上で見まする、食管特別会計、また食糧需給については、前に御発表になつ食糧需給計画以後何ら資料をいただいておりません。問題は、これに関連して消費者米価の問題が今後大きく出て来ると思います。そこで食糧需給計画の大体の見通しと、食管特別会計の現状及び今後の見通しに関する資料を、明日までに御提示を願いたい。なおその際にこの問題についてはいろいろとお尋ねをしでみたいと思いますので、委員長においてその点お含みを願いたいと思います。ただこの際お伺いしておきたいことは、消費者米価の問題についでは、政府はどういうふうな態度で、また方針で対処して行こうとしておるのか、この点を伺いたいのであります。
  84. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。食糧需給の問題につきましては、ただいま資料の御要求があつたのでございますが、われわれといたしましても、できるだけ早くこの問題につきましては御報告をいたしたいと考えておるわけでございますが、御承知のように、現在二十一県の供出割当が済みまして、さらにその県につきましても、需要量の問題、特に農家配給等の問題につきましてもいろいろ検討をいたしておるわけでございます。もちろんこの前に御説明申し上げましたときは、需給の事情、特に内地米の生産がかわつておりまするので、変更せねばならぬわけでございますが、十月末の現在高及び昨年度におきまする正確なる府県別の需要高、その内容につきましては、農家配給の面とそれから配給辞退の面、こういう問題につきまして、今各県別に食糧事務所を呼んでいろいろ検討をいたしておるわけでございます。大体十日ぐらいには固まるだろう、こういうことでおりまするので、資料の点につきましては、目下の状態におきましては固まつておりませんので、御了承を願いたいと思います。  食管赤字の問題でございますが、これは第二段の消費者価格とも非常に関連いたすわけでございますが、未確定な要素が多々あるわけでございます。現在確定いたしておりまするのは、御承知のように、昨年度におきまする超過供出の百五億を除きまして、三百四十億の繰越益があることになつておるわけでございます。そのほかに減収加算額の五百円、これの問題が第一点としてあるわけであります。これの総額につきましては、供出量いかんによるわけでございます。そのほかに完遂奨励金の半額の四百円の負担の問題がございます。これらの赤字、要素のほかに、現実には赤字となつておりませんけれども、切りぼし、澱粉等の農産物価格安定法によりまして買い上げるものが、市価の値下りによつてどう損失を生するか、こういう問題がありまするし、甜菜糖につきましても同様の問題があるわけでございます。これは大きな問題といたしましては、供出の数字によりまする減収加算額及び供出完遂奨励金の問題でございますが、そのほかに今申し上げたような点がございまするのでこの点につきましても、数字が固まり次第検討いたしたい。これはどうせ補正予算なり来年度予算としては明らかにいたさなければならないので、今いろいろ数字をはじいてはおりますが、概略は以上のような関係になつております。消費者価格につきましては、私どもといたしましては、従来の考え方によつておるわけでございますが、本年度の食糧事情の全体と関連いたしまして、この点はいかにいたすかということは慎重に、上局の意見も伺つて考えて行きたい。特別に現在の具体的な処理方針につきましては決定いたしておらないわけでございます。
  85. 足鹿覺

    足鹿委員 今承りますと、食管特別会計の繰越益は大体三百四十億、しかしこれは今後まだ幾多処理を要することになろうというお話でありますが、今まで政府がとつた対策というものは、すべて二重米価主義をことさらに内地米について避けようという点から、すべてのものを食管会計にしわを寄せて来たが、いよいよ食い詰めてしまつて、もう大体において出場がなくなつて来ておる、こういうふうに一応は考えられると思います。長官みずからも大きな政策の転換期といいますか、岐路に立つたということを今みずから告白しておられますが、私はそういう点において、今度の冷害地帯ある  いは災害地帯に対するところの種もみの問題であるとか、あるいは飯米の安売りであるとか、そういうようなものも政府が一般会計でまかなわないときには、当然食管会計で処理して行かなければならないような先刻の御答弁である。今後食管会計へのしわ寄せはますます増加して行く一方でありまして、従つてそういうことになれば、消費者価格をきめて行く場合にも、現在特別会計において組まれておるところの、一般会計で当然処理せらるべきものであるとわれわれが従来主張しておる食糧庁の人件費のごときものは、この際当然一般会計に振り向けて、そうして今までの行きがかりや名目にこだわることなしに、当然二重米価を採用すべきであると私は思う。     〔安藤委員長代理退席、委員長着席〕 少くとも本年のようなこういう異常な凶作にぶつかり、外米を今後五、六十万トンも増額輸入いたすならば、百億以上もさらに外米に関して一般会計からこれを補填して行かなければならないことは、火を見るよりも明らかでありまして、そういう点から、この際こそ正々堂々と政策の転換を行う段階が来ておるのではないかと思う。いたずらに消費者米価をコスト主義で行くということは、もう限界に来ております。食管特別会計にある程度余裕のあるときであるならば、ある程度その点でカバーできたかもしれませんけれども、もういよいよぎりぎりのところまで来たと思う、少くとも政府の米価政策といいますか、大きくいえば食糧政策というものが、実際上において転換期に来たと私どもは考えております。その点については、与党の諸君も、政府も、誤つた自分たちの公約というようなものにこだわることなしに、二重米価について検討し、いたずらなるコスト主義を清算して、健全なる食管特別会計を今後維持して行かれることが私は必要であると思う。私は意見にわたりましたが、少くとも少々の弥縫策をもつてしては乗り切れない段階が来たのではないか、これは需給計画の上において、その裏づけとする食管特別会計の上において、私は言えることだと思います。その点について十分検討をせられたい。これは、あえてこれ以上は申し上げませんが、ここで特に私がお尋ね申し上げておきたいと思うことは、食管特別会計の問題であります。現在春の風水害あるいは凍霜害、あるいはまた今度の水害、冷害というようなものから、種もみ対策あるいは水害対策、あるいはそれに関連するところの集荷対策等々から、食糧庁が非常に大きな負担を受けておるということをわれわれはよく知つております。今回の補正予算の上に凶作系数を把握し、予想収穫高の基礎をなすためにいろいろな調査が行われた統計調査部は、今次予算において二千教百万円の補正予算を盛つておるではありませんか。国民の主食を担当し、しかも下積みになつて働いておる食糧庁の人々については、何らの補正の措置も講ぜられておらない。聞けば業務旅費は一日わずかに九十円と聞いております。これは末端の出先の検査員の話であります。しかも二十七年の超過勤務手当は、大体八時間程度つたものが、ことしは二時間程度に切り下げられておると聞いておる。こういうことで、はたして今後まだまだ累増するであろう食糧集荷に全きを期し得られるかどうか、私は案ぜざるを得ません。少くとも農民が食うに困つておるときであるから、遠慮をして孜々としてやつておるでありましよう。水害から米を守り、倉庫を守り、またさらに困難な供米に対して督励を加え、検査等についても、現実に農民と接触して苦しんでおる第一線の職員、この人々をわずか月二時間の超過勤務手当でほつたらかしておいていいものであるかどうか。私はこのベース・アツプの問題等について今論じようとしておるのではありません。直接の集荷対策を一身に背負つて努力しておる人々に対して、少くとも統計調査部は、第一線の諸君の労をねぎらうには足りないかもしれないが、相当額の予算が計上されておるにもかかわらず、食糧庁の第一線の諸君に対しては何らの措置が講ぜられておらないということは、お考えになつておるかは知りませんが、補正予算を見てわれわれは遺憾に思います。この点について、長官は当面の責任者として、どのように今後処理をされ、集荷の第一線に立つこの人々を督励し、勇気づけて、今後の集荷政策上遺憾なきを期して行かれようとしておられるのか、長官の御所見のほどを承つておきたい。
  86. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。ただいま足鹿委員から、われわれの末端職員につきまして非常に御理解のあるお言葉をいただき、われわれとしても非常にありがたく感じておる次第であります。お話のございまするように、われわれといたしましては、末端の職員をかかえ、またこういう冷害災害に悩む農家と直接接触をいたしておりまする末端の検査員の努力に対しましては、私としては常々感謝をいたしておる次第でございます。これの待遇改善の問題につきましては、われわれとしても平生努力いたしておるわけでございます。もちろん財政上の都合もございまするので、満足には参らないかと存ぜられますが、その努力は怠らないつもりでございます。ただいま統計調査部との比較におきまして御質疑がございましたが、統計調査部の場合におきましては、御承知のように十月十日の臨時の災害調査もありまして、一般会計からの予算となつておるというふうな関係もございまして、本補正予算に載つたわけでございますが、御承知のように、今お話になりました諸経費は、特別会計内の経費になるわけでございまして、これにつきましては、まだ今後に問題が残つておるわけでございまして、われわれとしましては十分努力をいたしたい。ただこれは、先ほども御指摘がございましたように、食糧集荷の一つのコストという形にもなつておりまするので、十分に末端の実態をも考え、またコストの上昇を来さないように、その点を考え合せまして、目下財政当局ともいろいろ交渉中でございます。
  87. 足鹿覺

    足鹿委員 いろいろと御心配になつておることはわかりましたが、大体第二次補正あたりではめどがつきますか。今私が引合いに出した統計調査部の方は、臨時調査をやつたからだというような長官の御答弁がございましたが、もちろんやつたのです。しかしこの食糧検査職員等の第一線の諸君はもちろんでありますが、食糧行政に当つておる職員の人々というのは、こういう異常なときになれば、ふだんのときはそうでもありますまいが、労して結果がなかなか現れない。しかも最近、これは新潟の話でありますが、早場米の供出の期限の日には、延々長蛇をなしてしまつて、雨が降つて来ても、今さら持ち帰ることもできぬ。これらを収容することもできぬ。一応受付けておいて、夜通しこれを検査をしなければならぬ。これは一つの統一ある臨時調査ではないけれども、事実上においてそれに匹敵すべき事態が発生しておると私は考える。これは申し上げるまでもなく、長官はよくお気づきのことであろうと思いますが、私が先刻も申しましたように、食糧庁のうち、特に検査員の人件費等を、コスト主義によつて消費者米価に加算をするということ自体が私は大きな間違いだと思う。この際こうした問題については、とくとお考えにならなければならぬ。二重米価そのものは、自由党なり政府の政策に背馳するという一点張りでは過せません。部分的に少くとも合理性があつて、当然国の費用で負担すべきものを、現在は消費者におつかぶせておる。それもわずかな六十億や七十億の金で事足りるものを、そういうふうな処理をされておるのである。でありますから私どもは、二重米価二重米価と申しましても、必ずしも全部を国で負えということは申しません。流通経費等につきましては、これは保管料や運賃や目減り、そういうふうなものは、二重米価であろうとコスト主義であろうと、当然消費者がかぶるべきものであると私は思う。ただ問題は、消費者にかぶすべからざる、国が食糧行政を行つて行き集荷対策を行つて行く場合に、当然国家が食糧管理して行くに必要な経費までこれをコスト主義によつて消費者に転嫁しておられるやり方が、検査員のことしの窮状にも私はうかがえると思うのです。そういう点は申し上げるまでもなく、専門の長官は御存じでありましようが、よく御検討になりまして、この業務の第一線に働いておる人々が安んじてことしの困難な食糧集荷に当ることができるような措置を、少くとも第二次補正には必ず実現していただきたい、私はそう思うのです。この点について長官にその御決意があるかどうか、この点を伺いたいのであります。
  88. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。私といたしましても現在の食糧事情、またその食糧事情のもとにおきまして、末端の検査員の方々が御苦労されておるという実情はよく承知いたしております。先般の行政費の節約の場合におきましても、いろいろその点についての事情も開陳いたしたわけでございますが、さらに今年度の状況にかんがみまして、目下予算につきましていろいろ財政当局とも交渉いたしておるわけでございます。私といたしましては、その点につきましては十分努力いたしたい、かように考えております。
  89. 足鹿覺

    足鹿委員 第二次補正に必ずやるという言明をもらいたいと思つて力説しておるわけですが、なかなか責任上申されぬのではないかと思います。少くとも第二次補正といえば第二次臨時国会か、そうでなければ通常国会の劈頭になるでしよう。従つてこの問題については、そのときにやつても年の瀬が来るのです。急がれなければ結局同じ金を使つても死金になるわけです。でありますから、その点は如才のない食糧庁長官でありますから、誠意をもつて、少くとも年末に間に合うという方針のもとにあらゆる善処を私はぜひお願いしておきたいと思います。  それから資料をもう一つ要求しまして、きようは私の質問は終つておきますが、供米促進確保対策としてふすま、小麦の放出をされるように聞いておりましたが、これは今わかつておれば口頭でもけつこうですし、その大体の単価であるとか、あるいは全体の数量、あるいは放出の時期、そういつたようなものの詳細な資料をお知らせ願いたい。また供米に対する歩合は一体どういうふうになるのか、供米報償のとられる措置等については、この小麦、ふすまに限らず、他に何かお考えになつておることがありますか。資料として明日御提示を願いたい。以上で私の質疑を終ります。
  90. 井出一太郎

    ○井出委員長 足鹿君の畜産局長への質問はあとにしまして、川俣清音君。
  91. 川俣清音

    川俣委員 今足鹿委員からるる食糧事務所の前線におる者の旅費その他の事務費に関する質問があつたわけであります。私どもも長官に特に御配慮願わなければならぬと思うのは、食糧行政の上から早場米というようなものを規定し、さらに義務供出を終つてからも超過供出を熱望する計画を立つておられるわけでありますが、こうなつて参りますと、一日もすみやかな供出を希望されますならば、やはり前線におります者の督励が一番効果を現わすことは、私説明するまでもないと思います。前線におる者と生産者である農民との関係が円満でなければ、なかなか期待量が集まり得ないこともまだ私の説明するまでもないことであります。そこにもしもただわずかな旅費、事務費を惜しんだりして、前線におる者の旅費あるいは事務費をわずか節減することによつて、大きく供出上に影響が出て参りますことは、日本の食糧行政の上からまことに遺憾にたえないことになると思うのであります。単に食糧庁長官は、これは自分の末端の者の旅費である、あるいは事務費であるから、なかなか言いにくいかもしれないが、そういうことは考えないで、むしろ人造米に当つたくらいの勇敢さで、自分の前線におる者に、激励とまで行かなくとも、もう少し不自由のないように働きいいように御考慮をなさる必要があるのではないか。秋田、山形等の事情から見まして、これは前線におられる者の督励のいかん、熱情のいかんが供出に影響するところは大きい。おそらくこれだけの成績をあげたということは、末端の前線の者がいかに活躍したか、その功績に負う点も多多あると思います。もちろん農民の協力があつたわけではありますが、協力心を起させる原動力に確かになり得たものと思つております。もちろん市町村もそうでありましよう、県当局もそうであろうと思うけれども、あなたの前線部隊が安らかに十分仕事に対応できる情勢をつくられる必要があると思うのであります。従つて私はこれから議論はいたしませんが、足鹿委員から申し出ましたように、二次補正としてすみやかに計画を立てられて、実施せられるという御意見があれば、これは前線の者は大いに期待いたしまして、勇躍活躍するだろうと思いますから、何か期待されるようなことをもつてとつ農民のためにも、あなたの前線の者のためにも御発言願いたいと思います。
  92. 前谷重夫

    前谷政府委員 いろいろ御理解あるお言葉をいただきまして感謝いたしております。早場米の問題につきましては私どもとして、そういう実情がございますので、さしあたりの問題といたしましては既定経費の重点的配置をいたしまして処置いたしておるわけであります。もちろん既定経費内におきまする重点措置でございますので、当然その重点的措置地域的にずれるわけでございます。その点につきましては目下財政当局と交渉いたしております。その点につきましては、私としても努力をいたしますつもりで現在交渉いたしておるわけであります。  なお足鹿さんからも御質問でございましたから、この際申し上げておきますが、ただいまの放出についての精麦の売却につきましては、大体現在までのところ各県からの要求を総合いたしますと、五万二千トンの要求が参つておりますので、これを逐次各府県に対して売却をいたしておる次第でございます。この価格は大体政府が最終もより駅におきまして二十キロ裸で八百円程度になるように政府運送をいたしたい、かように考えておるわけであります。なお、ふすまにつきましては同様三十キロ、裸で五百円程度にいたしたいということで、大体各府県の要求が現在のところ九千トンになつております。これにつきましては、一時立てかえをいたしまして送付いたしておりますが、さらにマニトバ五号等の輸入をはかつておりまして、これによつて安いふすまをつくりまして、単作地帯の供出農家につきまして送付をする、こういうかつこうをとつております。実はこの数量につきましては現在のところ、ただいま申し上げましたようにふすまにつきましては各府県の要求が九千トンになつております。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 関連質問長官にちよつと伺いますが、毎年早場米の時期になりますと、必ず末端の職員諸君の超勤の費用が足らないという問題が出ますが、これは供出制度が持続される限り、時期別の早場米等の供出等についてまわるわけでありますが、どうして当初予算の中にそういう予見される経費というものを計上されておらないか。昨年の場合においても、多分今ごろの時期だつたと思いますけれども、早場米の期間中における超勤の要求等があつて食糧庁に各地から代表が詰めかけておつたような事態もわれわれは知つておるわけであります。昨年は月に八時間程度であつたと思いますが、それをことし四分の一に減らしてあるということは当初からこういう大凶作があつて、おそらく供出などは四分の一くらいに減るから、従つてこれに付随するところの超勤手当なんかはいらぬというような御見解に立つておるのかどうか。あるいは食糧庁としては、当然これらのものは所要経費として認むべきであるという態度に立つたにもかかわらず、いろいろな面で削減されてこういうような情ない結果になつておるのか、そういう点をお伺いしたいと思うわけであります。それからもう一つは、今度の補正予算の中に、この食管特別会計の関係の中の補正が出ておらぬという点は、長官がこれは失念されたのではなくて、おそらく食管会計等の補正が出て来た場合においては、この臨時的な超勤等のごとき補正だけではとどまらず、問題はさらにことしの米価問題であるとかあるいは完遂奨励金に対する財源の問題であるとか、あるいはまた昨年の食管会計に生じたところの百五億円の赤字の補填の問題とか、これらの大きな問題に波及することをおそれて、ことさらにこの問題を提起することを控えられたというふうに私は判断しておるわけでありますが、それらの経緯についてはどのような実態に立つておるか、お伺いしたいわけであります。
  94. 前谷重夫

    前谷政府委員 お答え申し上げます。超勤の問題につきましては、われわれといたしましても従来の実態に応じて予算の折衝をいたしておるわけでございますが、特に本年度におきましては昨年度とは作柄の実態が大分違つておりますが、早場の出方というものが全体的な数量の上において非常にいい。特に時期的に集中するというようなこともございまするので、この点におきましては当初の配分につきまして十分考慮いたしたわけでございますが、まだ末端の検査員の方から見れば不十分だ、これは御説のように、時期的に非常に繁閑の差がございますので、その調整の方法等につきましても考えなければならないわけでございますが、ただいまも申し上げましたように、この点につきましてはわれわれもいろいろ努力をいたしておるわけでございます。第二の食糧特別会計の問題でございますが、これは御承知のように、特に本臨時国会との関連におきまして、特別会計におきましては、まだいろいろの具体的な固まらない部分が相当あるわけでございまするし、そういう点。また他の特別会計等も本臨時国会におきましては、直接一般会計の支出と関連しない範囲においては出ておらないわけでございます。そういう関係からいたしまして次の機会に譲つたわけでございます。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 この機会にもう一点お伺いしておきますが、食糧庁は今後の規模等について、何か新たなる構想があるように聞いておるわけでございますが、その一つは、今までの検査を大体食糧庁は、国が買い上げる管理法に基くその範囲、さらに農産物価格安定法に基くところの買上げの範囲、これらの品目に限定した検査だけに圧縮する。結局買入れの農産物に対して受入れ検査というような形にこれを圧縮して、爾余の分はこれを地方にまかせるというような一つの構想を持つておるということも聞いておるわけです。それからもう一つは、食糧事務所の持つておるところの調査関係の仕事、これらを統計調査部の方へまかして、調査事項等は、あまり取扱わないというような構想があるように聞いておるわけでありますが、この食糧行政を行う上におけるところの必要なる調査等は、これは絶対におろそかにすることができないというふうにも考えておりますし、また農産物に対する検査を行うような場合においても、先ほど足鹿委員指摘されたごとく、これらはコストの中に算入して行うというような考え方ではなく、これらの検査の措置というようなものは、まつたく国が負担するというような行き方に発展して行かなければならぬと考えるわけでありますが、今のような構想で行くと、まつたく逆コースであるということも考えられるわけでありますが、これに対しては長官はどういうようなお考えを持つておりますか。
  96. 前谷重夫

    前谷政府委員 現在の検査の問題につきましては、ただいま芳賀委員からお話がありましたが、われわれはそういうことは考えておりません。なお調査の点につきましては、従来ともに統計調査部の調査とは、われわれといたしましては重複いたしておらないと考えております。作況調査その他の関係はもちろん統計調査部で調査いたしております。しかしわれわれがいたしております調査は、たとえば農家の保有量の計算のための調査、あるいは供出の割当に伴いまする経営規模別の調査、直接食糧管理に必要な範囲におきまする調査をいたしておりますので、この調査と一般の統計調査部における調査とは何ら重複いたしておらないというふうに考えております。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 検査の範囲は……。
  98. 前谷重夫

    前谷政府委員 検査の範囲につきましては、先ほど申し上げましたように、われわれは今芳賀委員の仰せられたようなことは何ら考えておらないのであります。
  99. 井出一太郎

    ○井出委員長 足鹿覺君、畜産局長に対する御質疑を願います。
  100. 足鹿覺

    足鹿委員 畜産局長にたいへんお待ちを願つて恐縮でございますが、簡単にお尋ねを申し上げたい。明日でもけつこうなんですが、ついででありますからお尋ねをいたします。  今度の冷害等の対策につきまして、十月二十日の本委員会の決議第三項は「被害農家に対し有畜農家創設維持資金融通する措置を講ずること。」等、いわゆる家畜を持つた農家が凶作のために、生活資金やあるいは営農資金の一部に充てるために家畜を売り、あるいは田地を手放し、進んではかわいい子供までも売らなければならないような事態の起きることを、おそれて家畜の維持資金を当然今度の営農資金融通わくの中に含ませないで、別わくとして相当額のわくをつくるべきであるということを協議し、決定をしたのでありますが、今度の冷害対策の中で畜産問題について論議をいたしますのはきようが初めてのようであります。畜産局長は今まで一回も姿をお現わしになりませんし、どういうような農林委員会の決議を具体的に措置しようとなさつたのでありますか、その処理なさつた経過、そしてなぜ今度の今本委員会で審議中の資金融通立法に別わくとして、入らなかつたか、その事情をお聞かせ願いたいと思います。
  101. 大坪藤市

    ○大坪説明員 有畜農家を創設いたしまして農家が家畜を飼育いたしますことは、わが国の農業の発展の上からもきわめて大切なことだと思うのであります。今回の冷害はまれに見る大きな冷害でありますので、その冷害地帯に有畜農家を創設いたました家畜が、冷害のために維持できなくなるのをおそれまして、私たちは別わくといたしまして約三万円見当のものを、被害額として認定されました額にプラスをして融資してほしいということを強く要望いたしたのでありますが、被害額を越えて融資をするということに相なりまするので、その点は入れられるところとならなかつたというような事情に相なつております。
  102. 足鹿覺

    足鹿委員 それは大蔵当局から入れられなかつたのでありますか、農林省の省議の中にはこれは含まれておつたのでありますか。
  103. 大坪藤市

    ○大坪説明員 農林省の省議で一応それを含ませることにいたしまして、大蔵省に持ち出したのでありますが、両省の協議の際にそれが認められなかつた、かようなかつこうであります。
  104. 足鹿覺

    足鹿委員 農林省の省議できまつた金額は幾らです。
  105. 大坪藤市

    ○大坪説明員 三万円であります。
  106. 足鹿覺

    足鹿委員 牛馬とも……。
  107. 大坪藤市

    ○大坪説明員 頭数ではなくて、一戸三万円であります。牛も馬も同じであります。
  108. 足鹿覺

    足鹿委員 それらのものが削られたことは非常に遺憾に思いますが、この点については別途われわれは考えて行きたいと思つております。少くとも冷害対策の総合性の上からいつて、このような重大な問題が大蔵省の折衝の過程において影を没するというがごときことは、私ども非常に遺憾にたえません。今後いかように畜産振興だ、酪農だと声を大にいたしましても、現実に具体的に起きておるこういう事態にすら対処できないような政府は、少くとも畜産振興を口にすることは私は今後やめていただきたいと思う。そんなばかな話はないと思う。現実において今飼つておる牛や馬を手放さなければならないという事態が起きておる。それに対しての具体的な措置を講ぜられない政府が、酪農振興などということはどこの話でありますか。そういうことは農民に対して一つのゼスチユアに終るのではないか。少くとも畜産局長は職を賭しても、こういう問題は今後ひとつうんとがんばつていただきたい。われわれも、こういう点については、十分理解と認識とを持つて協力を惜しまぬものであります。一層の御奮起を要望したいと私は思うわけでありますが、これは余談にわたりまして恐縮であります。次に続いて今問題になつており、全国から陳情の波が毎日わんさと訪れております集団酪農の問題でありますが、この経過は一体どういうことになつておりますか、伝え聞くところによると、とても、数が多い。全国の要請に対して応じ切れないままに経過するのではないか。少くともこの問題についての地方からの熱望は、相当大なるものがあるように思います。しかもりつばな計画を持ち、地元にもその決意をもつて、少くとも農林省が本年の予算の上に明らかにしたものを目当てに争奪戦が行われております。これではとても応じ切れないと思う。もう少し酪農振興の基本的な立法とか、あるいはこれに対する方針を確立をして、そうしてその上に立つてこれらの燃え上る酪農問題について漸次実施して行き、本年できないまでもが、数年先には自分たちの要望が受入れられるという希望を与えなければ、水をかけるような結果になりはしないかと思いますが、その点について構想はどうでありましようか。  ついでに、時間がありませんから次の点も一緒に申し上げますが、最近池田特使がロバートソンといろいろ話合いをいたしたその中に、農産物を大体五千万ドル程度日本に入れるという話合いがついておるように報道されておりますが、この農産物の範囲は一体何でありましようか。世間伝えるところによれば、日本の食糧難解決のために小麦小麦と伝えられておりますが、少くとも小麦のみでは私はないと思う。その他の酪農製品あるいはその他のものが相当これらに含まれておるのではないか。向うの事情を聞けば、小麦も大洪水、酪農製品も大洪水であるやに聞いております。日本がこれらのアメリカの安い品物の捨場にされることは、私どもはまつぴらであります。国民全体の上から安いものが入ればいいのでありましよう。しかし、今漸く端緒につきかけた日本のいろいろな農産物、特に酪農問題等については、ひとたまりもなくつぶれてしまうでしよう。そういつた点について畜産局長は御検討になつておりまするならば、その事情をお聞かせ願いたいのであります。
  109. 大坪藤市

    ○大坪説明員 第一点の集約酪農の問題でありますが、これはただいま足鹿委員がお述べになりました通り、これが地元からの要望は相当熾烈であるのであります。政府といたしましても、その要望の実情を考えまして、しかもまた外国から家畜を持つて来得る技術的な限界というものとにらみ合せまして、目下大蔵当局に千五百頭ほどの導入を二十九年度要求いたしておるのであります。それを越しますると、なかなか実際問題として輸入が技術的に困難な事情がありますので、最大限一応千五百頭くらい考えまして、二十九年度は輸入してもらいたいと存じておるのであります。なお酪農振興については、できるだけ早く酪農振興法を制定いたしまして、集約酪農地帯を地域別に設定をいたしまして、そこに酪農の振興に必要な各般の施設を集中的に講じて参りたいと存じておるのであります。  第二点のMSAの問題でありますが、これにつきましては、私どもまだ寡聞にしてその内容を存じておらないのでありますが、私どもといたしまして、少くとも酪農製品が大量に内地に入つて参りますことは、日本の酪農振興からは好ましくないと存じております。もし酪農に関するものが入つて来るということになりますれば、製品ではなしに乳牛として入つて参りますと、その乳牛を飼育することによりまして、日本の酪農がさらに進展することに相なりますのでできるだけ製品ではなしに、その生産のもとでありまする乳牛自体の輸入をやつてもらつたらいいのではないか、かように一応考えております。しかしながらMSA自体の内容がわかりませんので、これ以上の答弁は差控えさせていただきたいと思います。
  110. 井出一太郎

    ○井出委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後六時十九分散会