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1953-11-03 第17回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月三日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君    理事 穗積 七郎君       高橋圓三郎君    中山 マサ君       増田甲子七君    岡田 勢一君       須磨吉郎君    勝間田清一君       神近 市子君    加藤 勘十君       木村 武雄君    北 れい吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         検     事         (刑事局総務課         長)      津田  實君         検     事 古川健次郎君         外務事務官         (条約局第三課         長)      重光  晶君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十一月三日  委員林讓治君辞任につき、その補欠として高橋  圓三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁  判権行使に関する議定書締結について承認  を求めるの件(条約第一号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書締結について承認を求めるの件、これを議題といたします。  本件はすでに質疑を終了いたしておりますので、これよりただちに討論に入ります。討論の通告がありますので、順次これを許します。福田篤泰君。
  3. 福田篤泰

    福田(篤)委員 私は自由党を代表いたしまして、本議定書締結につきまして賛成の意を表明せんとするものでございます。  NATO協定が本年の八月二十三日に発効いたし、それに伴いまして、日米間の行政協定刑事裁判権条項NATO方式改訂されたことは御承知の通りでございます。この改訂は十月二十九日から実施されますので、今般国連軍との間におきまして、他の懸案と切り離して、特に刑事裁判権に関する議定書をこの際結ぶことになり、交渉の結果、十月二十六日に署名が米国政府並びに英国カナダ濠州及びニユージランドとの間に行われたわけでございます。率直に申しまして、一九五二年二月二十八日にでき上りましたかつて日米行政協定内容につきましては、日本国民といたしまして、その不平等な内容という点から、きわめて不愉快な考えを持たれておつたことは、いなみがたい事実であります。これがようやくこの属地主義建前にもどりまして、今般のNATO協法の成立に伴つて独立国らしい裁判権を持つことになつたことは、私は御同慶にたえないと思うのでございます。しかも今般になりまして、国連軍も、米駐留軍との間の不均衡を避けるために、このような調印をいたし、一般論から申しましても、独立国として私は喜ぶべき成果であると考えておる次第でございます。この意味で、私どもはこの議定書調印に対しまして賛成の意を表明いたしたいと思うのでありますが、ただ政府当局希望並びに御注意を申し上げたいことは、従来の日本裁判というものは、きわめて時間がかかる、迅速性に欠けておるということは、世界にも有名でありますし、当事国と相なる相手国につきましても、これは非常に懸念しておりますので、これを機会日本裁判を迅速にし、さらに各般の実施上のこまかい点につきまして十分御注意を願いまして、わが方の準備の不足、あるいは手続のふなれのために、いたずらに国際紛争を起すことのないように、十分御注意を願いたい。また本委員会を通じまして、各委員から述べられました貴重な参考意見も、よく御参考にせられまして実施上におきまして万遺憾なきことをお願いいたしたいと思うのであります。
  4. 上塚司

  5. 穗積七郎

    穗積委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本協定反対意思を表明いたしたいと思います。  その理由を簡潔に申し上げたいと思いますが、まず第一点は、この協定国会承認を求められました手続についてでございます。言うまでもなく、憲法建前におきましては、国内法に優位いたします国際条約を結びます場合には、効力を発生します事前国会承認を求めるのが、原則的な建前になつておるのであります。ところがこのたびの協定におきましては、国会を召集すべきであり、かつまた召集することのできる状態にあつたにかかわらず、効力が発生いたしました後に、事後承認を求めるということは、これは明らかに憲法建前を蹂躙とともに、国会を軽視するものであるということで、われわれはそういう承認手続賛成するわけには行かぬのであります。同時に、この問題に関連してわれわれが見落してはならないことは、この協定は、国連軍日本国との間におきます刑事裁判権行使に関する問題だけには終らないのでありまして、この協定から当然予想せられますことは、たとえば日米間におきます安保条約、または行政協定に相当いたしますような国連軍地位並びに権利義務を規定いたします一般的協定が、当然想定されておるのであります。しかも本協定の十一項によりますと、すでに自動的に、日米行政協定関連をいたしまして、国連軍にも日米行政協定並の取扱いをする結果になつておるのであります。従いまして、この協定審議国会に求めます手続上の第二点といたしましては、当然本協定は、親の条約、並びに基準になりましたこのたびの日米行政協定改訂内容を一括いたしまして、審議を求むべきが当然であると思うのであります。われわれはこの派生いたしました子供協定の是非を決定いたしますためには、どうしても親協定内容を明らかにいたしまして、それとの関連において審査しなければ、われわれ議員としての責任は果せないと信ずるわけでございます。これが手続上におきましてわれわれが賛成するわけに行かない第二点でございます。  次には、より根本的な問題でありますが、日本におきます今日の国連軍駐屯そのものについて、われわれは今の政府態度のように、むやみにありがたがつて、これをうのみにするわけには行かないのであります。言うまでもなく、御説明によりますと、今の国連軍わが国駐屯いたしておりますのは、吉田アチソン書簡により、それによりまして、一九五〇年以後、朝鮮戦争に参加いたしました国連関係各国軍隊駐留、並びにその駐留を許すだけでなしに、それに協力する義務を負つておるわけでありますが、実はこの国連軍わが国駐屯いたしますにつきましては、アメリカが国連を一方的に利用しようとし、あるいはまたマツカーサー元帥の愚劣きわまるアジアにおける作戦によつて、要請されて出兵したものでありまして、これはわれわれだけでなしに、出兵いたしております国連関係各国の間におきましても、この作戦の愚劣さを指摘いたしまして、その出兵を迷惑がつて来ておつたのであります。ましてアジアにおきまして近隣の国でありますわが国といたしましては、この国連軍駐屯というものは、いわば招かざる客でございまして、危険と迷惑を伴つた軍隊駐屯であるとわれわれは考える。ところで現在もうすでに朝鮮戦争停止状態でございます。おそらくはこのアジアにおける平和への努力というものは、われわれの観測によりますならば、これは結実する可能性が十分あると思うのであります。そういう建前に立ちますならば、今日国連関係軍隊は一日も早く日本から撤退してもらいたい、そういうふうにわれわれは考えておるのであります。そこへ持つて参りまして、この協定から派生いたしまして、親の協定になりますような、国連軍地位並びに権利義務を規定いたしますような一般的な条約を結ぶような結果になりますならば、その条約自身がこの国連軍わが国における駐屯を長期化し、しかも法律的にオーソライズし、そうしてまたある場合におきましては、次の機会におきまして、必要があるならば日本にまた駐屯を要求するようなことを招くおそれのある協定を結ぶことについて、われわれはその必要を何ら発見することができないのであります。こういう建前に立ちまして、われわれは当然子供協定であります本協定に対して、賛成するわけには行かぬのであります。  第三点として、現実の問題について少しく意見を申し述べておきたいと思います。現に日本駐屯いたしております五千ないし六千の国連軍が、月に平均いたしまして三十件余の犯罪を犯しておるということでありますが、この犯罪を処理する現実の問題でございます。われわれはこの現実立場に立ちましても、日本がもし独立国でありまして、文字通り独立精神立場をとつておるといたしますならば、無協定各国に対しましては、当然日本裁判権属地主義によりまして、たとえば神戸におきます英国水兵事件のごとき、当然日本裁判権をもつてこれをさばくことが、一般国際法上の原則でございます。従いまして、NATO方式によります裁判権の問題、あるいはそれになぞらえましたこのたびの改訂された日米間における刑事裁判権の問題、そういうものにあえてなぞらえて本協定を結ばなくとも、真に独立精神立場を持つておりますならば、当然この裁判自主性を確保することができるとわれわれは信ずるのでございます。そういう点から見ましても、われわれはこの協定賛成するわけには行かないのでありまして、どうぞこの協定を提案されました政府、並びに与党、その他の保守党の方々におかれましても、もう一度御再考いただきまして、今日日本国連に加入できない、国連に対する権利を何ら主張することができないのに、一方的にみずから好んで義務だけを負うというような卑屈な精神は、この際同時に一擲されんことを希望いたしまして、私の反対の趣旨といたしたいと思います。
  6. 上塚司

  7. 須磨彌吉郎

    須磨委員 私は改進党を代表いたしまして、今回の議定書締結賛成の意を表するものでございます。この協定は、わが国における国連軍刑事裁判権に関するものでありまして、まさにわが国に不利ならざるものと認めまして、賛成をいたすのでありますが、次の二つの点について希望を申し述べるものであります。  一つは、これはまだ今後交渉されるのでありましよが、財政並びに経済の点につきまして、協定することが取残されておるわけであります。先般来私は本会議においても外務大臣質疑をいたし、お答えを得たのでありますか、その場合におきましてのお答えによりますと、国連軍日本におります米国駐留軍との間に、何らかの差別を設けなければならぬというような御考慮から交渉の行き悩みを来して、これはあとまわしにしたということでございますが、わが日本が常に国連に参加する意思を表明し、百方その手を尽している次第でもあり、また広く外交上の見地から見ますならば、米国駐留軍国連軍との間に、差別を設くべき何らの理由も認めない次第でありますから、かような点について、今後とも十分な御考慮をを払われますことを、第一に希望いたしたいのであります。第二の点といたしましては、これは十月二十九日から発効をいたしておつて事後承諾になるわけでございますが、これは米国との行政協定改訂と同時に効力を発生させる必要上から、やむを得ない点もあるとは思いますが、かくのごとき重要なる案件につきましては、今後なるべくさような事後承諾というような手続をおとりにならぬで、事前国会に対してお示しになるという手続のできるような、時日と余裕とをおとりくださることを希望いたして、この二点を希望として、われわれは賛成の意を表するものであります。
  8. 上塚司

  9. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私は日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書に、条件付き賛成の意を表するものであります。まずこの議定書は、日本国国連軍との間に締結されてその後に国会承認を求めるために委員会に提案されたものでございますが、いわゆる事後承諾を受けるために提出されたのであつて政府の釈明を聞きますと、これは憲法七十三条三号に該当するので少しも間違いはない、憲法七十三条三号の、時宜によつて事後に、国会承認を求めるという条項に当然当てはまるものである、こういう説明でありますけれども憲法精神から行けば、外国と条約なり、協定なり、議定書なりを締結する場合においては、当然事前承認か批准を経て、効力を発生すべきものがあたりまえでありまして、それを今度のこの議定書承認を求められる点は、すでに今須磨委員からも言れましたように、十月二十九日に効力を発生しておる、効力を発生した後に承諾を求めとるというこでありますが、この点はまつた日本憲法精神からいつても異例に属することでありまして、ほんとうにこれが当然の権利であるというように解釈されて、今後このような状態条約が結ばれ、そして効力が発生して後に「時宜によつては」というこの条項を濫用して行われるようなことがあつては、まつた憲法精神というものが空文化してしまう危険があると思われますので、この点については厳重に今後このようなことが前例とさるべきでないということを、かたく条件として私どもは主張するものであります。従つてどもは、こういう問題に対して、政府が今後このような態度を再び繰返さないということを、はつきり言明されることを要求するものでありまして、こういう警告を発しておきたい。それからもう一つは、先ほど須磨委員から言われましたように、国連軍全般との協定関係でありますが、この点については先ほど穗積委員からも指摘されましたように、何もなされていない、親のものがないのにかかわらず、子供協定だけを論議するということは、筋が通らぬから反対であるという御意見でありましたが、われわれは親の協定が何もないから子供の問題だけを扱うことができぬという意見に対しては、若干の異議がありまして、現実国連軍日本駐屯しておるという現実を否定することはできないのであります。本来いうならば、われわれは国連軍日本駐屯には反対であります。ただ、しかしながら朝鮮事変が起りましたとき、最初北鮮軍が三十八度線を越えて南鮮に侵入したときに、当時の社会党――まだ分裂する前でありましたが、分裂する前の社会党においてはこういう北鮮軍行為侵略行為である、従つてこれに対する国際警察軍としての国連行動に対しては精神的な支持を与える、こういう決定をしておるのであります。そういう点から行きまして、たとい親協定がないにしても、このわれわれが承認した最初精神からいつて国連軍便宜を供与するという建前から――これは平和条約でもそうなつております関係から、ある程度日本駐屯するということについては、やむを得ないと思います。しかしながら本質から行くならば、便宜供与ということと、日本軍隊駐屯せしめるということとは、おのずから違うわけでありますから、ことに先ほど穗積委員が言われましたまうに、朝鮮休戦会談が行われ、順次極東の平和が回復しようという方向にあるのでありますから、一日も早く国連軍日本からの引揚げを要望するものであります。そういう点から行くならば、かりにこういう刑事裁判に関する議定書がなされても、現実にこれが行われないうちに国連軍引揚げることを最も強く希望するものでありますけれども現実軍隊がおつてしかも相当の犯罪が行われておる、その犯罪が行われておるのに対して、従来日本裁判権がこれに及ばなかつたということは、何としてもわれわれ日本国民の忍びがたい屈辱感を抱いておりました点でありますが、こういう点は、日米行政協定の方がNATO協定の線にまで、ことに裁判権の問題が改められるという点について、それと同一の効力を発生せしむるという意味から、国連軍に対してもこの議定書が結ばれることになつたのでありまして、従つてわれわれとしましては、現実日本国連軍駐留する以上は、彼らをしてかつて行為をなさしめないために、少くとも刑事裁判権に関しては日本の法律が及ぶようにすべきであるという点から、これについては国連軍日本におるという現実の面においてだけ承認をしたい、こういうように考えるものであります。従つてどもは重ねて言いますが、国連軍が一日も早く引揚げるということを強く希望して、この議定書はここにたとい協定として成立するに至りましても、これが実際に行われないうちに、早く国連軍引揚げるように、外交的な努力がなさるべきである、またその意味において極東平和が一日も早く確立する方向へ、日本としてはむしろこういう協定を結ぶよりも、その方に努力をすべきである、こういう考え方をもつてやむを得ざる悪として、これを承認したい、こういうように考えるものであります。
  10. 上塚司

  11. 北昤吉

    北委員 私は自由党を代表して本議定書賛成の意を表します。加藤勘十君も言われた通りに、北鮮侵略行為に対して、国際連合警察行動をとつて南鮮出兵をしたということは、私ども考えから言うと、日本国のためにも大きな利益のあつたことであるから、われわれは精神的、ある程度の物質的の協力を惜しまない。ところが今日朝鮮事変平和的解決の見込みがついたようでありますが、私の考えでは、政治会議の前途なお暗澹たるものがあるから、当分日本国連軍駐屯するのはやむを得ないと思うのであります。ところが駐屯軍刑事事件について日本裁判権が移つたことは、私どもとしては日本独立精神を確立する点において、非常にめでたいことであると思う。こういうことは普通の条約とは違つて憲法七十三条の三号によつて事後承諾を求めてもよろしいという考えを私は持つております。おそらくは相手国の濠州その他あたりも事前に議会で承認を受けないだろうと思う。やはり日本と同じごとく、普通の行政協定でありますから、私は事後承諾になるであろうと考えますから、その意味において私はこれに賛成いたしますが、ただ裁判権行使について申し上げれば、憲法上の規定で日本裁判は迅速にして公平なる裁判ということを要求しておるところが国内裁判についても迅速ではない。日本裁判所は公平の点は非常にあるように思うが、たとえてみれば吉田内閣の解散について不当であるという第一審の判決のごときは、かなり公平でありますが、どうも迅速という点においては、芦田、西尾両被告についても五年もかかつておる。日本裁判がスローモーシヨンであることは、世界でも最も標本的のものであるから、この国連軍の犯人を判決するにあたつても、日本裁判にもこれを適用するように、ひとつ迅速を期してもらいたい。これは憲法違反になりますから、迅速にして公平なる裁判、これを私は希望条件として賛成の意を表します。
  12. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論は終局いたしました。、  これより採決いたします。日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書締結について承認を求めるの件、これに対し承認すべきものと議決するに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 上塚司

    上塚委員長 起立多数。よつて本件承認すべきものと決定いたしました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたりします。  本日はこれにて散会いたします。     午前十一時二十四分散会