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1953-11-06 第17回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月六日(金曜日)     午後一時二十七分開議  出席委員    委員長 山下 春江君    理事 青柳 一郎君 理事 庄司 一郎君    理事 高橋  等君 理事 臼井 莊一君    理事 柳田 秀一君 理事 受田 新吉君       逢澤  寛君    佐藤洋之助君       中川源一郎君    福田 喜東君       村瀬 宣親君    有田 八郎君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         外務政務次官  小滝  彬君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局次長) 八巻淳之輔君         総理府事務官         (恩給局審議課         長)      畠山 一郎君         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      上田 克郎君         大蔵事務官         (管財局閉鎖機         関課長)    岩動 道行君         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田邊 繁雄君     ――――――――――――― 十一月六日  委員森清君辞任につき、その補欠として安藤覺  君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  遺家族援護に関する件  在外資産に関する件  委員派遣に関する件     ―――――――――――――
  2. 山下春江

    山下委員長 これより会議を開きます。  本日は、遺家族援護に関する件及び在外資産に関する件について議事を進めます。初めに、小笠原大蔵大臣が出席されましたので、特に大臣に対する質疑についてのみ許可いたします。村瀬宣親君。
  3. 村瀬宣親

    村瀬委員 第十六国会におきまして、七月十日の予算委員会で、私は小笠原大蔵大臣在外資産補償の御方針についてお尋ねをいたしたのでありましたが、そのときに緒方副総理小笠原大蔵大臣とは、在外資産調査機関、たとえば審議会あるいは調査会を早急に新たに発足してこれが調査に当らせるという言明をなさつたのでありますが、その後これら審議機関はどのようになつておるのでありましようか。
  4. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この審議会を設置いたしまするためには、御承知のごとく法律を必要としまするので、なるべくすみやかに本問題の審議を始める必要があると存じまするので、とりあえず法律に基かないで在外財産問題調査会内閣に設けまして、十名内外の学識経験者内閣総理大臣から委員として委嘱し、総理大臣諮問機関としてすみやかに発足いたしたいと考えております。ただいまのところ十一月の中旬までには閣議決定等所要手続を完了いたし得る見込みであります。なお、この調査会は、在外財産問題全般についての、今仰せになりました基本的な考え方、これに関連する憲法問題、法律問題、財政能力問題等各般にわたりまして御検討をお願いする考えでございます。
  5. 村瀬宣親

    村瀬委員 十一月中旬に発足なさるように手続をなさつておるようでありますが、われわれは、法律に基いた強力な審議会を必要とすると存ずるのでありまするが、国会の承認を経てそういう機関がおつくりになる意思はないでありましようか。もしあるといたしまするならば、それは急を要すると思うのでありまするが、第二次臨時国会または通常国会の劈頭にお出しになる用意があるでありましようか。お伺いいたします。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は、今度は災害対策ばかりでございまして、それに要する法案以外は差控えましたが、ただ、事柄が急ぐので、やはり今申し上げた通り、実際においてこれを実行して参りたいと思うのでございまして、通常国会にはこれを法律として提案する考えでおります。
  7. 村瀬宣親

    村瀬委員 次に、これまた七月十日の質問に対するお答えであつたのでありまするが、送金小切手預貯金、旧通貨等支払いは早急に処置をしたいという御答弁があつたのでありまするが、これまた法律措置を必要とすると存ずるのでありまするが、これに対する経過はどのようになつておるでありましようか。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 やはりこれも、村瀬さん御承知のごとく、法律措置がいるのでございまして、法律関係通常国会にこの法律を提出いたします。そういたしまして、即時そういうふうにとりはからいたいと考えております。
  9. 村瀬宣親

    村瀬委員 証券類返還の問題も当時問題になつたのでありまするが、これはその後着々と準備をお進めになつておるようであります。そこで、これら証券類返還も行われ、また送金小切手預貯金、旧通貨等支払い法律的措置通常国会にお出しになるということになりますると、自然閉鎖機関の問題がまた並行して処理せられなければならないと思うのであります。台湾銀行朝鮮銀行等閉鎖機関令によつておるもの、並びにその他の台湾におきまする商工銀行彰化銀行貯蓄銀行等在外会社令によつておるもの、これは朝鮮にも三銀行あるわけでありまするが、これらに対する整理の結果として、預金者支払いをするという問題、またさらに、支払つて残りがあればそれらの株主にも第二会社を許すという問題が起ると思うのでありまするが、これらに対して今日までの経過をお聞きしたいのであります。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在在外会社令による六会社がありますが、その朝鮮台湾にあつた金融機関の六社について見ますると、本邦内にありまする剰余財産、これは村瀬さん御承知のごとく大体十億円ございまして、現在大蔵大臣がこれを管理いたしております。それで、今後この在外会社に対して第二会社設立を認めるかどうかということでございまするが、実は、元来は工業設備等活用を目的としてこの第二会社を認めることになつておるのが主体でございますので、金融機関は多少特殊な面があるので、まだ少上検討を要する点等がございまして、ただいますぐに第二会社を認めるということはちよつと御返事いたしかねるのでございますが、ただいまこのことは研究いたしております。  なお、念のために申し上げておきますが、清算人等は、その元の、たとえば台湾銀行であれば台湾銀行の元の関係者清算人をかえたいというようなことはいたしております。但し、今申し上げた第二会社の問題は、多少金融機関に関して少し違うところがございますので、その点を検討いたしております。
  11. 村瀬宣親

    村瀬委員 第二会社工業設備活用のためにその設立を認めるという御方針はよく了解ができるのであります。そこで、私は、根本にさかのぼりまして、この在外会社令によつてこれら銀行処置したというところに無理があると思うのであります。いわゆる工業設備を持つておるような会社のみに在外会社令を適用したのなら無理はないのでありまするが、銀行というものは預金者を大勢控えておつて、むしろ設備の利用ということはなかつたのであります。その預金者主体にしておる銀行を、台湾銀行朝鮮銀行以外のものは、在外会社令によつていろいろな制約を加えるというところに私は無理があると思うのでありまして、工業設備活用を認めるために第二会社を置くのであるから、これら銀行はそれに該当せぬという、それのみの言葉はごもつともでございまするけれども、しかし、別に預金者というものがあり、そうしてこの十億円の金があります以上は、これは政府の金でも何でもないのでありまして、政府予算措置を必要ともしないのでありますから、これは当然、まず預金者保護意味におきまして、第二会社をつくるというよりも、預金者に支払わしめる一つ代行機関として第二会社をお置きになるか、それが困難ならば、第二会社を置かないでもよいから、いわゆる預金者に支払う措置を早急におとりになる必要があると思うのでありますが、そういう御意思はないでありましようか。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 在外会社に関する件は、当時の条約に基いて銀行等が入つておるのでありますが、お話のごとく、十分妥当であつたと見にくい点が少しあると思いますが、ああいうふうに条約に基いてやつたものですから、それでこういうふうにしておるのでございます。しかし、それならば、今預金者にこれをわかつかどうかという問題でありまするが、これは、預金者といいましても、一体内地預金者のみにそれをわかつのか、各種の問題等があり、これらの問題で、あるいは預金者、あるいは株主の一部等にも、別の意味の第二会社をつくつたらどうかというような意見も出ております。別の意味と申しますのは、たとえば金融その他のものはいけないが、信託会社等をつくつてそれに金を預けたらどうかというようなことを言つている者もあります。いろいろありますので、いろいろ各般の点を今考慮検討しておる次第でございます。
  13. 村瀬宣親

    村瀬委員 これは、関係者はもうほとんど払いもとしてもらえるというくらいに思つているのであります。と申しまするのは、たとえば台湾の方だけ――朝鮮関係を除外いたしまして、台湾の三つの銀行について見ますると、四億の整理の金があるのでありますが、実際今預金者のわかつているのは一億二千万円あります。バランス・シートに載つているもの全部をあげましても三億円に足らないのであります。四億円あれば、すべての預金者内地外地を問わずことごとく支払つても、まだ一億余るのであります。でありますから、払つてつても心配ないのでありますし、政府も全然予算措置がいらないというのであります。もう独立して二年にもなろうというのでありまして、今言つた一億というような送金手形等法律的措置をおとりになるとおつしやるのでありまするから、この法的措置がいるならば法的措置をとるなり、あるいは政令によるならば政令によつてでも、ただちに支払う措置をとつていただかなければならぬと思うのでありますが、どうぞ、そういう措置をするという答弁を私は待つものであります。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 村瀬さん仰せの点、まことにごもつともでございますが、少し検討さしていただきたいと思います。それで、実は、送金小切手等に関するとりはからい等を最初にやらなければならぬ部分がございますので、そういう処置をとりまたし上でこの問題を検討する、つまり、ただいま申しましたように、通常国会法律案出しまして、その御協賛を得てその処置をとりました上でその問題について考えたいと実は思つてつた次第でございます。御意見の点はよくわかりましたから、さらに検討することにいたしたいと思います。
  15. 山下春江

    山下委員長 そのくらいでよろしゆうございますか。外債課長がおりますし、非常に時間をとりましたので、大臣にはそのくらいで……。
  16. 村瀬宣親

    村瀬委員 お急ぎのようでありますから、もう一問だけでやめます。  今の預金者に対する支払いの問題でありますが、それは、大臣承知かと思いますが、台湾に例をとつて申し上げますれば、産業金庫というものが一つあります。これは、政府が二百万円出して、民間団体が六十万円出してやつてつた。計二百六十万円でやつてつたのでありましたが、整理をしますと五千二百万円出たのであります。まだそのほかに数千万円の未整理があるそうでありますが、この方は、政府の二百万円に対して四千万円というものをちやんと分配しておられる。政府の預けた二百万の二十倍になりまするか、それをおとりになつておりまするが、個人が預けた預金に対してはじつといつまでもほうつておく、こういうのでは、あまりにも片手落ちであつて預金者はとうてい承服いたしますまい。また、これは預金者の金でありますから、裁判所へ行つて差押えでもするならば、いやでも応でも大蔵大臣が吐き出さねばならぬ金であります。そういう非常手段をとられて、そんなにまでして吐き出すよりも、これは国に帰属すべき金でもないし、おそかれ早かれ当然支払つてやらねばならない問題でありますから、ぜひ支払うような手続を、ほかの法制と同様に同時にとつていただきたい。  それから、今在外会社令だけのことでお話になりましたが、別に閉鎖機関令によつておりますものも、閉鎖機関令の一部を改正しましたけれども、それに対する処置も何もなさらないようであります。いわゆる台湾銀行朝鮮銀行の方は関係者が多いのでありますが、この方に対しても同様に預金者には支払う措置をとるということをきようここでお答え願いたいと思うのですが、いかがでしようか。
  17. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どうも、もう少し検討いたしませんと、はつきり答弁ができません。御趣意はよくわかつておりますから、さらに通常国会でははつきりしたことを申し上げることができるようにいたします。
  18. 村瀬宣親

    村瀬委員 次に、在外資産につきまして外務省当局お尋ねをいたしたいのであります。  本月の三日の毎日新聞によりますと、元ブラジル陸軍長官日本へ来られまして、旧日本財産返還のことを話しておられるのであります。正金銀行現金を初め建物など、ざつと二百億円くらいはあるだろうということを発表なさつておるのでありますが、外務省においてお調べになつたものはどのくらいになつておりますか。ブラジル関係であります。
  19. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ブラジルの方の資産状態については、向うの方で押えられている資産につきまして正確なはつきりした数字は、まだ多少漏れているかもしれませんから申し上げにくいのでありますが、向う特別清算人というのがございまして、その調査によります凍結資産は次の通りであります。米ドル勘定正金銀行東京支店勘定が五十五万六百五十八ドル、それからリオデジヤネイロの支店勘定が四十万三千三十九ドル、計九十五万三千六百九十八ドルということになつております。またリオ支店クルゼイロ勘定が――向う現地の金の勘定にありますものが、ブラジル銀行に対する預金として三千百八十五万四千クルゼイロ、それに手持ちの公債が百八万六千九百クルゼイロということになつておりますし、それから賠償基金勘定、これは向うが取立ててとりまとめたものでありますが、これが一九四一年の下半期から一九四四年の下半期純益金として、百十三万四千四百六十八クルゼイロというものが残つております。それから輸入手形で千三万三千八百クルゼイロ、このクルゼイロを合計いたしますと三千四百十万八千クルゼイロになつておる。これをドルに換算いたしますと百八十四万三千七百ドルということになりますので、これら全部を総計いたしますと、大体二百七十九万七千ドルというような数字になつております。これは円でありますと十億七百六万五千円というようなことになつております。大体おもなものは正金銀行関係のように私ども了解いたしております。
  20. 村瀬宣親

    村瀬委員 ブラジルサンフランシスコ条約前にすでにこの金は返すということを言つてつたと思うのでありますが、その後どうしてこれを活用なさるようなお取運びになさらぬのでありますか。今日までの経過を伺いたいのであります。
  21. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 御承知のように、現地に住んでおる者に対してはもう返しております。これまでの経過を述べますと、一九四二年の法律ブラジルにある日本人資産を凍結いたしましたが、三年ほど前の一九五〇年十一月四日付の法律ブラジル居住邦人財産を全面的に解除するということになつて、事実は返還いたしておるのであります。しかし、ブラジル国外に住んでおるところの日本人財産については、特別経済防衛局の監督のもとにその運営を元の所有者にゆだねましたが、その最終的な処分は対日平和条約または日本ブラジルとの間の特別の条約によつて日本政府と合意の上で決定するということになつておるのであります。ブラジルにおきましては、今度の戦争では日本は直接ブラジルに損害を与えていないではないかというような考え方もあるようでありましたので、日本としては、なるべく無条件に返してもらうように、その以後リオにあります大使館を通じて交渉をしたのでありますけれども、いまだブラジル以外におる日本人財産返還ということは解決していないような次第でございますので、これについてはさらに折衝を重ねなければならないと考えております。ブラジル外務省では、ドイツ財産解除問題もあるので、なるべくならドイツの方と一緒に解決して行きたいというような動きもあるようでありまして、これも事実上の解除が長引いた原因の一つのように聞き及んでおる次第なのでございます。この交渉ブラジル政府と進めておりますが、しかし、この交渉と並行して、現地からの意見もいろいろございましたので、大蔵省に連絡して、本年の七月の初めに正金銀行特殊清算人である石橋良吉氏にブラジルに行つてもらいまして、凍結財産解除申請書を提出してもらつたような経緯もございます。その後引続き交渉を行つておりますが、向うの方では、平和条約の第十四条の規定によりまして自由処分権を持つておる、しかしこれを解除するのには議会にも付議しなければならぬというようなことも言つておるのでありまして、そうした関係で今日まで最終的な解決を見ておらないのは遺憾であります。しかし、イタリアの方は、すでに御承知のように、この資産によつて移民会社をつくつたというような経緯もございますので、ドイツ日本のも原則的にはもう返すことにきまつておりますから、遠からず解決するだろうと思いますし、私どもも一日も早く解決するように努力したいと思つております。
  22. 村瀬宣親

    村瀬委員 十億七百六万円という数字先ほど出しになつたのでありますが、これは、今の御答弁によりますと、このうちブラジルに住んでいる日本人には払つたのでありますか。あるいはすべて払う分は払つて残りが十億金円あつたというのでありますか。いずれでありますか。  それから、もう一つ、この十億余円というのは、主として正金銀行勘定あるいは賠償金勘定手形等もおあげにはなりましたが、しかし、向う不動産その他が相当あるはずであります。そういうものも含めて十億円とおつしやつたのであるか。いわゆる非公式に来たという元ブラジル陸軍長官は、二百億円ぐらいあるだろうということを言つておる。そうすると、二百億円と十億円ではあまりに差があるのでありますが、この十億円というのはすべて日本人財産全部がこうなるという御調査でありますか。
  23. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 この十億円というのは、払つたものを除外しておるのであります。それから、仰せのように、あるいは日本帰つてつて不動産を残しておるという者も多少あるでありましようが、それは非常は少いのではなかろうかと考えます。大体向う残つておりましたし、残つてつた者には、これまでは現地居住者に返され、カサトウザンのごとき大きなところはみんな返してもらつておりますから、不動産向う残つておるのは全体として少くて、結局正金勘定であるとか、あるいは手形というようなものが大部分と了解いたしております。私、昨年正月参りましたときにも、現地で多少話を聞いたので、いろいろ調べてみましたが、当時は八億と言われておりました。それは銀行関係だけであります。十億といえば、もちろん漏れたものもございましようけれども、大体そうしたものを包含しての数字というように了解しております。
  24. 村瀬宣親

    村瀬委員 不動産は少いだろうというお答えでありますけれども、あるいは大阪商船とか、銀行建物とか、かなり不動産ブラジルにはあつたと私は思うのであります。それを含めて十億円というのは、いささか少な過ぎるという感じがいたすのでありまして、ことに、しからば元ブラジル陸軍長官が二百億円と言うのは何を基準に言われたが、新聞発表では、正金銀行現金を初め建物などざつと二百億円ぐらいあるだろうおつしやつておるのであります。ひとつ外務省では、元ブラジル陸軍長官がお見えになつておるのでありますから、たとい非公式においでになつたにしても、この方にお会いになつて、事情を御調査願いたいと思うのであります。  それから、これがまだ日本に取つて帰れない理由としては、ドイツ財産一緒にやりたいとか、あるいは議会のりましたけれども、私は、ブラジル国日本国との間ほど順調に行つておる国はないのであるから、それが独立して二年もたち、戦争終つてから八年もたつて解決できぬという何らのフアクターはないと思うのであります。どこにその隘路があるのでございましようか。向うでも日本には相当好意を寄せておるようでありますから、あのゆたかなブラジルが二百万ドルや三百万ドルのよその金をじつと押えておる必要も何もないと思うのでありますけれども、一体どこにその隘路があつて、どの問題が解決すればこれは内地へ取つてもどれるとお考ええになりますか。あるいは内地へは為替管理等ちよつとむずかしいが、先ほどお話なつ移民資金に使うとか、向う会社設立するとか、私は、前に予算委員会外務大臣に対して、隣の国のアルゼンチンヘこのお金を移してもらつて、そして、あそこは漁業の幼稚なところで、捕鯨船などせつかくつくつてみても、使い方も知らないでじつと海に浮かばしたまま虫に食わしておるというような状態にも聞きますので、漁業の上手な日本としては、漁業移民でもやつて、そしてアルゼンチンでこの資金を使う方法はないものかということを質問したのでありますが、そういうふりな方法がとれるものかどうか、その炭御調査なつたか、これらの点を伺いたいのであります。
  25. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 今見えておりますアナピオゴメス氏は私もよく存じておりますが、ぜひそうした方面に努力したいと考えております。なぜ延びたかというようなお話でございますが、先ほども申しましたように、原則的には何も異論があるわけでなしに、日本の金を五億、十億向うが使いたいという意味でなしに、事務的な関係で長引いておるようにも了解いたします。先ほど申しましたように、イタリアなどは移民会社というようなものに利用しておるようでありますが、為替管理が非常に厳重でありますので、なるほど日本側から言えばアルゼンチンへ持つて行くということも一つ方法でありますけれども、ブラジル政府の立場から言うと、そうなれば結局外貨にかえなければならないので、そういう点に困難があるのと、もう一つは、私が申し上げるまでもなく、南米の方との交渉というものは凍結資産の問題のみならず非常に悠長な点もありますので、そうしたいろいろな理由から長引いておるように考えます。今仰せ通りアナピオゴメスという人が見えておるのはい機会でありますので、大使館はもちろん、その方面からも促進していただくように努力したいと思います。
  26. 村瀬宣親

    村瀬委員 次に、私はスイスにおる日本在外資産について伺いたいのであります。聞くところによりますと、スイスは、平和条約条項のいかんにかかわらず、人の財産本人承諾なしに処分することはスイス国憲法によつてできない、こういう意思を表明したと聞いておるのであります。まことにもつともな人道主義的な考えであると私は思うのでありまして、中立国にある日本国並び日本国民資産はこれを赤十字国際委員会に引渡さねばならないことに第十六条でなつておるのでありますが、スイスがそういう態度をとつたことは公正な態度だと思うのであります。条約にたとい判をついても、後世の歴史家が判断するときに、スイスの見解は実に正しいと思うのでありますが、その正しい意見によつてスイスにおける日本財産本人承諾がなければ処分しないというときには、日本はどういう処置をなされるのでありますか。すなわち、この第十六条の条項を守るために、日本の国が予算をとつてスイスにおける日本在外資産分だけ赤十字国際委員会に引渡す義務が生ずると思うのでありますが、そういう点、外務省はどういうようにお考えになつておりますか。
  27. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 第十六条で、日本中立国にある財産赤十字国際委員会に引渡す義務を負担したのでありますから、日本としては、この条約上の義務を遂行するために、スイスにある日本人個人財産も含んでこれを赤十字国際委員会に引渡さなければならない次第であります。従いまして、日本としては、スイス政府を通じまして戦後連合国側に引渡された――これはスイスだけではございません。いろいろな国における財産が一応連合国側の管理に入つておるのであります。この措置日本が占領下にあつたうちにとられておつてスイス政府を通じて連合国側に引渡されて、今連合国の共同管理下にある次第であります。その額を参考のために申しますると、公金は現在百三十万スイス・フラン及び米ドルで二万六百九十二ドルというものが管理下に置かれております。また会社関係資産といたしましては、旧横浜正金銀行資産その他のものが合計で四千万スイス・フラン、ほかに二十一万六千フランというものが出ております。なお、個人名義の預金は大体二百三十万スイス・フラン及び若干の米ドルがあるという状態であります。この資産は一応日本側が受取つて赤十字国際委員会へ引渡すのが建前であるというので、私どもはそういう建前をとつておりますが、この共同管理下にあるものがまだ日本側に引渡されておらないため、国際委員会への引継ぎが行われていないというのが現状であります。
  28. 村瀬宣親

    村瀬委員 お話のようなことは全中立国にあるべきことだと思いますが、スイスだけ特に他の中立国とかわつた事情はありませんか。
  29. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 どこの国でも、スエーデンでありますとか、ポルトガル、スペイン、イタリア等、大体皆同じような措置をとつております。
  30. 村瀬宣親

    村瀬委員 スイスは、どこの国のものであろうと、所有者承諾なしに、たとい平和条約にどうあろうと、それをスイス処置することはできないという見解を発表したやに聞いておりますが、外務省ではそういう情報をお受取りになつたことはありませんか。
  31. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 先ほど申しましたように、スイスの方は連合国側に引渡しておるのであります。今係官が来ておりませんので、その辺詳細を存じませんが、とにかく連合国側へ引渡したという事実があります。本件に関する限りはさようなとりはからいになつておる次第であります。
  32. 村瀬宣親

    村瀬委員 原則的な措置をもう一度念を押しておきますが、そうすると、平和条約第十六条に定められたところによつて、いわゆる中立国、九つがありましたが、この中立国にある日本国及び日本国民資産は、一応日本政府にこれを全部引継いでもらつて、それから日本の国の政府から国際委員会へこれをまた引継ぐ、こういうことになりますか。
  33. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 私どもは、そういうふうに考えまして、一応精算書も見せてもらつて日本の方がこういう義務を負つており、国際委員会に対しては日本が引渡すというようになつているのだから、そういう義務を遂行したいと考えているわけであります。その例として申し上げますと、タイの方も、これは連合国と戦つた国でありますから、中立国ではないけれども、そこにある日本資産は第十六条によつて処分せられるべきものでありますが、このタイにある財産については、実は連合国では、この規定にもかかわらず、ちよつと異なつ措置をとつているのであります。すなわち、ことしの七月三十日に、タイと米国とイギリスの三国の間に、タイにある日本財産の処理に関しまして協定を締結しました。その結果を十月の七日に日本側へ通知して来たのであります。これによつて、この財産はタイ側へ引継がせるものだというようなことを言つて参りましたので、日本としては、これはどうも平和条約第十六条の規定に違反するようだから、そういう措置日本としては承服できない、これはいかなる理由によるものか、これに対しては再考してもらわなければならぬという照会を出しておりますけれども、まだ回答に接しておりません。こういうような状況であります。
  34. 村瀬宣親

    村瀬委員 ちよつと質問の方向をかえまして外務省意見を伺いますが、あの厖大な平和条約、あの中には、あつてもなくてもよい、いわゆるこの条文あるいはこの文句、この文章はなくてもよいのだという箇所を外務省はお認めになりますか。そういう箇所があるとお考えになるか、ないとお考えになるか。
  35. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ちよつと、どういう意味なのでしようか。
  36. 村瀬宣親

    村瀬委員 あの平和条約の中には、書いてある以上は全部それは何らかの必要があつて書いてあるというようにお考えになるか、いや、こんなことは書いてあつてもなくてもいいのだけれども、向うが書けと言つたから無理に意地を張らぬでもよいと思つてそのままにしておるのだが、実はこの箇所、この文章はなくてもいいのだという個所があるとお考えになりますか、どうでありますか。
  37. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 日本側としては必ずしも満足でないと思うところもありますけれども、この条約に規定しておるものは、その必要を認めてこうした長い条約をつくつたわけでありまして、私どもは、今のところ、必要のない規定があるというようには解しておりません。
  38. 村瀬宣親

    村瀬委員 私たちもむろん満足ではありません。私のお尋ねはそういう意味じやないのです。満足とか不満足とかいうことを除外して、いわゆる文章として、たとえばその一行は実際はあつてもなくてもこの条約全体の効果にはかわらないのだけれども、向うで入れておけと言つたから入れておくのだというようなところは、私はないと思うが、念のために外務省もないとお考えになるか、いやそういうところもぼつぼつあるのだ、こうお考えになるか、一般論をまずお伺いいたします。
  39. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 私が先ほど申し上げたのも、その趣旨で申し上げたつもりでございます。
  40. 村瀬宣親

    村瀬委員 それでは、そういう箇所はないということを外務省もお認めになるのですね。私と同意見であります。  そこで伺いますが、第十六条を読んでみますと、中途のところにこういうことがあります。「日本国は、戦争中中立であつた国にある又は連合国のいずれかと戦争していた国にある日本国及びその国民の資産又は、日本国が選択するときは、これらの資産と等価のものを赤十字国際委員会に引き渡すものとし、」云々とあるのであります。そこで私がお聞きするのは、ここにある「日本国及びその国民の資産」まではいいのです。「又は」からです。「又は、日本国が選択するときは、これらの資産と等価のものを赤十字国際委員会に引渡す」というのでありますが、日本国が選択するときは、これらの資産と同価値のものを赤十字国際委員会に引渡すというのはどういうことなのでありますか。どういう必要があつてこの箇条が入つたのでありますか。
  41. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 この資産そのものはもうすでに換価されておるというようなときには、日本としては、この義務を遂行するのには、これと等価のものを渡すしか方法がないのでありますから、そういう場合に日本としてそういう換価されたものを選択して日本が支払うというように解します。
  42. 村瀬宣親

    村瀬委員 たとえばスイスは、あなたは知らぬとおつしやるが、スイスが、その本人承諾なければ、そういう外国人であろうがスイス国民であろうが、私有財産を認める以上は財産処分ができない、こういうふうなことがあつたときに、日本は、国家が予算を組んで、われわれの税金その他国の予算で、それと同価値のものを赤十字国際委員会に引渡さなければならぬ、かように私たちは解釈するのでありますが、外務省はどうお考えになりますか。
  43. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 あるいは厳格に解釈するとそうなり得るかもしれませんけれども、ちようどこれに対しては、引渡さなければならないということに期間も定めてない。なるべくでき得る限りは早くという意味だろうと思いますが、しかし、日本国及びその国民の資産、これが原則であつて、またはこれと等価のものを引渡すというのでありますから、その資産日本の方で換価できないという場合には、換価し得る資産が出て来るまで待つほかやむを得ないというふうに考えます。
  44. 村瀬宣親

    村瀬委員 ちよつと、この文章を私はよく見ていただきたいと思うのであります。必要なるときはとか、あなたのおつしやる通り、もうすでに処分済みのときはとか何とかは書いてないのであります。「日本国が選択するときは」とある。どつちをとつてもよろしい、こういうのであります。その「選択するときは」という意味はどういうもののようにお考えになりますか。
  45. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ただいま申しましたように、私どもの実際のとりはからいといたしましては、資産を渡すのが原則であるが、しかしやむを得ず渡せない場合はそのものと等価のものを引渡すという選択権もあり得るというふうに解釈いたしておるのでございまして、それがために、現在向うで押えられておるものについは、まだ赤十字国際委員会の方への引渡しを了してないというのが現状でございます。
  46. 村瀬宣親

    村瀬委員 もう一度だけお尋ねをいたしますが、「日本国が選択するときは」という意味です。連合国といえども私有財産尊重の思想にかわりはない。もしその思想が微動だにいたしますならば、それは共産圏に対して民主国は挑戦をする力はなくなる。この一角から崩壊をしてしまいます。従つて、私有財産尊重というこの原則だけは、これは共産圏に立ち向う何より丈夫な武器といいますか、基礎であります。ところが、この平和条約では、この重要な、民主主義国と称しておる国にとつての金科玉条であるべき私有財産尊重の思想を非常に破壊しておる。これはアメリカその他も寝ざめは悪いはずであります。そこで、せめて中立国にある財産くらいは、日本国が選択するときは、それは日本国民に返してやつて、そうして政府がかわつてそれに相当する価値のものを捕虜虐待その他の代償に充てるために赤十字国際委員会に引渡してもよい、こういう基本的な思想から、「日本国が選択するときは」と書かれたものであると私は思うが、外務省はそうはお考えになりませんか。
  47. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 もちろん、この資産が返つて来るというようなことになりましたならば、その場合国内的措置がとれるかもしれませんが、ただ、根本において、この私有財産尊重の原則というものについては、実はこの条約でもつて、連合国側は日本政府の責任というようなものにする意思によつてこういうように書いたもののように私どもは了解いたしております。イタリアとの条約におきましては、こういうような私有財産をとつた場合は政府イタリア国民に対して賠償しなければならぬというようなものがありますけれども、日本との条約にはありません。私有財産尊重の原則というものは日本政府におつかぶせてこの条約をつくつたというのが、向う考えであろうと考えます。イタリアとの条約から考えましても、そういう考え方であるように私ども了解いたしております。なお、この点は、実は大蔵省の外債課長が見えておりまして、そちらの方が専門家でありますから、こうした在外資産の点については外債課長から説明していただくのがより適当かと考えます。
  48. 村瀬宣親

    村瀬委員 外債課長にもあとからゆつくりお尋ねすることが山積しておりますが、この問題は非常に重大でありますので、次官にもう一つお尋ねしておきます。私は、次官の答弁が非常に私の考えに接近されておりますることを喜ぶものでありますが、もう一度はつきりしておきたい。これは、何人も良心的に考えるならばあなたのような御答弁になるのが当然でありますが、私有財産は尊重せねばならない、そして尊重する責任は日本国政府にある、これが一貫して、文句にはなつておらないが平和条約の思想である、こういう御答弁であつたと思うのでありますが、さように了承してよろしゆうございますか。
  49. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 今度の第二次大戦における平和条約のこれまでの歴史と申しますか、経緯にかんがみまして、ただいま仰せのように私個人としては考えております。ことに憲法の第二十九条の末項を考えてみましても、かりに条約で強制されなくても、憲法の立場からもそうなるものではなかろうかと考えます。この辺も、実は大蔵省の見解というものが重要でありましようから、その方ももちろん考慮されなければならない問題でありますが、私自身としてはそう考えております。
  50. 村瀬宣親

    村瀬委員 御答弁に満足いたします。  在外資産に関する台湾との関係でありますが、これは何も台湾戦争したのではないのでありまして、どの条項にもこれが当てはまるものではないわけなのであります。いろいろ経過は、すでに二月前までは御答弁になつておりますが、最近の経過はどのようになつておりますか。ことに在外会社令による三つの銀行資産が今押えられておるわけであります。これは両国間のとりきめによるということになつておるのでありまして、そのとりきめの見当が立たないならば――いつまでも見込みのないものを、これら預金者に支払わないという法はないのでありまして、政府もここらで決意をせなければならぬ時期が来たと思いますので、台湾との在外資産関係のとりきめについての経過を承つておきたい。
  51. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 私から申し上げるまでもなく、御存じと思いますが、例の日華条約の第三条による「特別取極の主題とする。」という点については、日本側からは相当督促しておりますけれども、中華民国政府としては、結局バランスをとつてみて向うの方の支払いが多いという関係があるためかどうか存じませんが、なかなかこの話に乗つてくれませんために、いまだにこの話が開始の段階に至つておらないのであります。これははなはだ遺憾でありますが、それが現状でございます。
  52. 村瀬宣親

    村瀬委員 日華会談が新聞でいろいろにぎにぎしく問題になつたのは何人もよく知つてつたのでありますが、これもまた在外資産関係に対する声明が導火線になつたようにも聞いております。今後どういう方向にこれを――これは全体としての問題でもありましようが、特に在外資産関係はどういう処理で進む御方針でありまするか。と申しまするのは、あそこまで行つたのであるから、なかなか日韓関係が一朝一夕にすぐに氷解してしまうということは困難かもわかりません。しかし、先ほど大蔵大臣は、いわゆる在外資産の処理についても、もうここらで調査会をつくらねばならぬとおつしやつておる。そういたしますと、いろいろ支払い方法が法制化されて参るわけであります。そうすると、閉鎖機関令によつている朝鮮銀行のあの厖大な、八十五億とも言われ百億とも言われておりますが、それについても、いつまでも預金者を縛つておくというわけには行かないのであります。でありますから、これらの関係は全体として早く解決しなければならぬのでありますが、せめて在外資産関係だけについてでも何らかの見通しの立たない限りは、ここだけが非常に不公平に取残されるということになりますので、これに対する見通しを伺いたい。
  53. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 この問題は、非常に解決が長引きましたので、関係者に非常に御迷惑をかけておるようでありまして、今大蔵大臣から話があつたということでございますが、事務当局といたしましても、こうした調査会を閣議の決定でも経てつくつてもらいたい、そうして大蔵、外務、厚生三者で具体的な話合いを進めようという機運になつております。そこで、方針としてはどういうふうにやるかということでありますが、これは一律には行かないであろうと考えます。インド、パキスタンのように返してくれるところもありますし、ブラジルのようなところもありますし、また同時に、この平和条約そのものによれば一応向うがとることになつていても、また今後返すことを申し出るところがあるかもしれない。そういうような関係がありますので、たとえば中国との日華条約によれば、この平和条約にもかかわらず賠償は放棄して、そうして請求権については特別とりきめの主題にするというふうに申し出ておるところもありますので、あるいはそういう国が出て来るかもしれない。こういうように考えますと、全部を同時に一括して一つ方針でやるということはできないと考えられますので、個々の国についてしかるべく国内措置をとらなければならないだろうと考えます。ただ、あまりにその措置が早いと――もちろん見舞金とかいうようなものは別でありまするが、最約的の措置をとるということになれば、場合によつては外交交渉の方に必ずしもよくない影響を及ぼすという関係もありましようから、個々の国について個別的に審査してその措置考えなければならないだろうというふうに私は考えておる次第でございます。     ―――――――――――――
  54. 山下春江

    山下委員長 次に、遺家族援護に関する件についての質疑を許します。高橋委員
  55. 高橋等

    ○高橋(等)委員 私は、恩給の裁定、ことに遺家族関係の裁定等、援護法によります年金の裁定の問題につきまして、内閣恩給局及び厚生省に対しまして、それぞれ御質問を申し上げてみたいと思うのでありますが、本日は実は副総理の御出席を願い、でき得れば厚生大臣も出ていただきましてと思つてつたのでありまするが、それぞれ他の議事の関係でおさしつかえのような模様であることは、まことに残念でありますが、本日御質問を申し上げまして、その結果によりまして、今国会中に副総理その他の御出席が間に合わないようでありますれば、その間いろいろ措置も講じたいと思いますが、あらためて次の国会におきましても引続いて質問をいたしてみたいと考えております。それで、いつもいろいろはつきりとした御答弁はいただいておりますが、本日は特に、言葉をぼやかすようなことをなさらないで、的確な意思表示をお願い申し上げたい。そして、的確な御答弁をいただくまでは、非常にしつこいようではありますが、繰返して御質問を申し上げるということにつきましても、あらかじめ御了承を得ておきたいと思う。  問題の第一点は、いわゆる戦地の病死につきまして、公務死と非公務死といいますか、そうした区別をなさつておるようであります。この公務死の範囲と申しますか、そうしたことから恩給局長お尋ねをいたしてみたいと思うのでございます。  戦地におきまする病気が原因で死亡した者につきまして、これが自分の不身持であるとか、あるいは自己の過失に原因をするというようなものは、これはもちろん国家として恩給の対象にいたすことはできないし、これは恩給法でもはつきりと規定をいたしておるところであります。その他は、戦地へ参りましてそこで病気にかかつたというような者につきましては、国民の感情から申しますと、これは全部恩給の対象にしてもらいたい、こういう感じを持つております。また一般の常識から行きましても、そうしたものは戦病死として扱うことが適当である、公務死と考えることが適当であると私は考えております。すなわち、罹病または死亡いたしまして、その場所が何月何日から戦地であつた、こう指定をされまして、その以後におきまして、その土地が平和であつたとか、あるいは戦争の渦中であつたとかいうようなこを考慮に入れたり、あるいは病気の種類によりまして、裁定をやる場合にこれが公務死ではないというような差別をつけられるということは、国民としては納得が行かないのであります。少くとも戦地におきまして――戦地と申しますのは、もちろん何月何日以後戦地とするという指定の時日以後の戦地をさしておるのでありまして、その戦地において病気が原因で死亡した者につきまして、ただいま申し上げました特殊の自己の過失その他に基因するものでない者について恩給裁定をどういうようになさるつもりであるか、その点をまず第一点として伺いたいと思います。
  56. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 ただいまの御質問はまことにごもつともな御質問であります。おそらく遺族の方々もそういうような心持でおられるだろうと思つております。実は、公務疾病といいますか、この公務疾病の取扱いにつきましては、やかましく考えますと、実にむずかしい問題があると思つております。そこで、私の実際の心持といたしましては――おそらく局員も、そういうふうに私が話しておりますから、そういう心持でいると思つておりますが、私は、非常識な取扱いをしないように、常識的に考えて行かなければならぬのじやないとかと思つています。非常にばかばかしいような取扱い、これはできません。しかし、常識的な取扱いはして行きたい、こういうような態度を持つているということをまず申し上げておきます。次に、今のいろいろのお話でございますが、戦地となつておりますところで、今のお言葉から推測しますと、同じ戦地においても、ときにおいては非常に穏やかなときもあつたであろう、またときによつては勤務のはげしいときもあつたであろう、その場合々々によつて、同じ戦地であつてもその間にいろいろと恩給の取扱いをかえる。こういう方針であるかどうか、こういう御質問のように受取れたのでありますが、もしもそういう御質問でございますと、そういうことをするととはあまりにもこまごましくなつて来て困りはしないだろうか、こういうような気持が私はいたしておるのであります。戦地と内地ということを考える場合におきましては、もちろん終戦のときは別といたしまして、あるいは支那事変の初めというようなときを考えますると、確かに、服務の条件におきましても、また軍隊勤務における勤務のはげしさの程度におきましても、戦地と内地におきましてはかなり差があつたということは認められます。しかし、同じ戦地であつた場合におきましては、その地区によつてあまりこまごましい差をつけるということもいかがなものかと私は考えております。  それから、第二の病気の点でございますが、戦地において病気になつた場合におきまして、先ほどから例にございました、自分の不身持であるとかその他の理由によつて、明らかにまつたく自分の過失といいますか、自分の責に帰するような理由から疾病になつたという場合を除いてはすべて公務の取扱いをしたらどうか、こういうお話でございます。一応一般的なお考えとしてはうなずけるところでございますけれども、しかし、少し専門的になるようなきらいがあるかと思いますが、考えてみますと、必ずしもそういうように行かない場合があると思います。大まかな考え方といたしましては、私はおそらくそういうようになるのじやないかと思います。大きな裁定の流れといたしましてはそうなると思いますが、こまごましいことになつて参りますと、そうもなつて来ないことが出て来るのじやないかと思います。これは非常な例外的なことを申し上げるようですが、大まかには高橋委員の申されたようなことになるべきものであると思つております。と申しますのは、最近私がいろいろ聞いたことでございますが、先天的な遺伝的な疾患によつて思いがけなく発病する場合等があるのであります。専門医の意見もいろいろ聞いてみますと、そういうことがあり得るということであります。そうしますと、非常にやかましく厳格に考えてみますると、いろいろ善意をもちまして好意ある解釈をできるだけするといたしましても、場合によつては若干の例外はどうしても出て来はしないかと思います。しかし、大まかに申し上げまして、今高橋委員仰せられるような結果に大体なつて行くものと了承していいのではないかと思います。
  57. 高橋等

    ○高橋(等)委員 今の局長の発言を一度整理してお確かめいたしますが、戦地の時期によつて裁定の差異はしない、こう承つてよろしゆうございますか。
  58. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 さようであります。
  59. 高橋等

    ○高橋(等)委員 次に、遺伝的な発病というのはどんなものでありますか。
  60. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 たとえば色素性脳膜炎というのがあるのであります。これは失明するのであります。これは近親結婚の結果生ずるのだそうで、私も実際そういうものを見ましたので、医学の本を見ますと、まつたくそう書いてあるのです。現実に失明された方があるのです。事実普通の軍務に服しておつて目が見えなくなるのであります。これは今までのところ全然治療の方法がないのだそうです。そういう場合、これは公務によるものであるか公務によるものでないかということになると、結局公務によるものとも言えない。それを公務によるものに入れるということになりますと、先ほど高橋委員仰せられた中にあつたかと思いますが、恩給法において、いわゆる法定された疾病として取扱い、戦地においてこれこれの病気にかかつた場合には原因のいかんを問わず公務によるものとする、こういうことをして、公務によるものとして押えなくてはならない、こういうことになつて来るのではないかと思います。
  61. 高橋等

    ○高橋(等)委員 法的にそういうものを羅列して新たに押えなければいかぬというりくつが私にはわからない。それで、遺伝的な病気の発病といいますか、これは非常にこまい議論になつて、私は医者ではないから、ちよつと困るのですが、気候、風土が異なり、生活環境が異なる所へ行つたためにそうした遺伝的疾患の発病を促進さすというようなことが医学的にあるかないか、御研究になつたことがありますか。
  62. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 それを聞いてみたのでありますが、それは当然起るべきことが起るのであつて、そういうことは問題でないということです。世界各国どこでもあるということであります。
  63. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そうすると、その点はひとつおいておきまして、こまい例をあげて恐縮なんですが、ものをはつきりさせなければいかぬから、私はこんなこまかい議論をすることはきらいなんですけれども申し上げておくのですが、たとえば戦地で胃がんになつたとします。これはどうお考えになりますか。
  64. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 そういうお尋ねに対してここで具体的にイエス・ノーについて青いますことはむずかしく、自然答えは非常に抽象的になるのであります。といいますのは、その胃がんが大体どういう程度であつたかということがまず問題になつて来ると思います。今まで私が専門的な鑑定を見ました場合、全然見込みがないというようながんもありますし、そうでないがんもあります。いろいろあると私は思うのです。ですから、がんにかかつてつて相当長く命を保てる人もあるし、そうでない人もあると思います。一般に言われておりますところは、胃がんというのは体質によるものであつて、公務そのものによつてつて来るものではないということです。しかしながら、その胃がんも、場合によりましては、治療をすればこれは何とかなるのではないか、すなわち寿命が延びるとか、相当な期間長く保てるのではないか、こういうことが考えられたる場合が出て来るのではないかと思います。しかし、軍隊勤務そのものによつて胃がんが起るということは考えられない。一般にはこういう意見なのであります。もしもそれを公務によるものとするなら、どうしても軍隊内におけるところの胃がんというものは公務によると法定するよりほかないというように私は思つております。
  65. 高橋等

    ○高橋(等)委員 今の御説明につきましては、私はふに落ちない。というのは、戦地でがんにかかつた。そのがんが治療でなおるものだつたか、なおらぬものだつたかということが、もう八年も前のことで、一体これが恩給局でわかりますか。これが一点。これは一つの法理論としてはあなたの議論はあるいは言えるかもしれない。それと、もう一つは、戦地の時期というものは考えないということをはつきりと御答弁いただいている。そうすると、戦地で治療したがなおらなかつた、ところがもし内地でやればなおつたかもしれないということは、私は言えるのではないかと思う。そういうことを考えますると、内臓疾患、たとえば盲腸炎、胃がんというような種類のものは、特にそうでないことがはつきりわかつておれば別ですが、もう調べてみるとかなんとかこまかいことをやるよりも、むしろ目をつぶつてみな出してしまうということでひとつつてみませんか。ことに、法律で特例をつくらなければやれない問題じやない。もしあなた方がやりにくければ、必要なら国会で決議してもいい。どうですか。
  66. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 お答えいたします。今の問題につきましては二つの点からお考え願わなければならぬと思います。一つは、公務傷病によつて云んということがはつきり書かれて、公務のための傷痍疾病によつて死亡した場合に扶助料を出せということが書いてあるのです。そうすると、われわれの任務としては当然公務と傷病との関係というものを考えなければならぬと思います。その関係がデリケートな場合が起つて来ますが、その場合、そういう関係についての論議も捨てて公務の取扱いをするという場合には、先ほど申したように例をあげ、法定して、これこれの病気にかかつた場合にはその原因のいかんを問わずすべて公務の取扱いをするということになつております。要望されることもよくわかりますが、体質そのものに基因すると言われておるものが昔からずつと公務外という取扱いをされておるものに多いとすれば、これをこのたび事由のいかんを問わずすべて公務による取扱いをするということになれば、これはどうしても法定の取扱いをすることが一番妥当ではないか。もちろん研究してみなければいけませんが、そういう気持でおります。
  67. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 関連質問。ただいままで高橋委員が言われたことにつきましては、私は全面的に賛成でありますが、これに関連して重要な提案を一つしたいと思う。それは、今局長が言われた公務による戦病死の認定でございますが、これは、現在の法律のままでいいか、あるいは法律を改めて行くかということは、御当局にも研究を煩わしたい問題でございますし、もし改正する必要があるならば、委員長にもお願い申し上げて、ぜひ御考慮をいただきたいのでございます。考えまするに、兵役ということは過去の憲法におきましては日本国民の三大義務一つであります。恩給法というものが復活いたしまして、実際これをやつてみますると非常な矛盾が出て来る。同じ国民の三大義務一つであつた税金の場合をとつて考えますると、法律の改正が行われる前の状態におきましては、税に関する訴訟において国民は常に負けておつた。なぜかと申しますと、挙証責任の問題にひつかかつて、なかなか証拠の提出ができなくて、国家を相手とする訴訟の場合においては国民は常に不利の立場に立つて破れておる。この恩給法の場合におきましてもまつたく同じであります。申請をする、証拠を提出する。証拠を提出する段になりますと、われわれここに考えなければならぬことは、日本がもし勝つてつたらばこんなことはなかつたでしようが、当時の軍医も部隊長もどこに行つたかわからぬ。資料も全部散逸して、ないのであります。これがたとい勝つてつた普通の場合においても、この申請をする、あるいは異議の申立てをする場合におきましては、なかなか証明ができない。ことに敗戦によりまして、戦災を受け、爆撃を受け、火災によつて一切の証明資料というものは散逸しておるのでございます。それだけではない。軍というものは全然解体しておるのです。かりにこういう事実がないといたしましても、戦災もなく爆撃もないという状態でありましても、申請をする側に第一金がない、時間がないのでございます。残つたわずかの資料を官庁側が持つておるときに、この挙証責任といいますか、証拠資料を提出するには、民間にまかしておく、申請者にまかしておく。これはまつたく現行法のもとにおける矛盾だと思います。この建前というものを全部改めてしまつて、兵隊に行つて傷病者となり、戦傷病で死んだところの事実があり、請求をしたならば、これを否定する場合は、一切役所の側においてその証拠資料を提出して申請者の主張に対して攻撃するのが、私は当然であろう思う。われわれは、義務として国家のために応召し、そして倒れておる。そしてこれに対して当然の主張に基くところの申請をする場合に、証拠を出せ――こんな理不尽な話が世の中にありますか。私はこの点を第一に法律において改めてもらいたい。現在の法制のもとにおいてもこれはできると思うのでありますが、この点について私は御再考を、煩わしたいのです。証拠を出せと言つても、実際できないのでございます。当時死亡に立会つた軍医はどこにおるのか、これを探すのにも、第一方法がない。時間がない。金がないのです。私は、この現在の恩給法の建前のもとにおきましても、これは民法における相続の場合とまつたく同じだろうと思うのです。これは死亡という事実によつて、あるいはその他の相続原因の発生によつて、当然相続の権利というものは発生しておる。あとは手続だけの問題だ。恩給法の場合においても同じことでございます。客観的にその事実があがつた、応召によつて、そして戦地なりその他の衛戌地において死んだという事実があつて、当然権利は発生しておるのであるから、しからずという事実は国家が資料を提出して申請者に対して反駁を加えるべきが当然であろうと思うのですが、この点に対するお考えはどうですか。
  68. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 現実の事態として、申請書にいろいろの資料を要求する場合は事実あります。しかしながら、それは審査の必要上、持つている資料があるなら出していただきたいということをお願いしておるのです。ないものを出せということは言つてないのでございます。あるいは、資料がない場合には全部だめだというふうにおとりになつているかもしれませんが、われわれとしては、お話の点もございまするし、これはできるだけ出していただきたい、――実はそう申しましたのは、最初申請のときには資料をつけておいでにならずに、あとで、却下になつて異議申立てをされる場合に、実はこういうものがあつたのだといつて出される場合があるわけであります。たとえば、一番簡単な例を申しますと、すでに公務扶助料の裁定の証書を御自身が持つておられるのに、それをお出しにならない。そのためにわれわれの方で審査が非常に遅れる、あるいは却下になつた場合もあるのであります。どうしても資料かないという場合におきましては、そのままお出しいただいて、それによつて何らかの裁定をせざるを得ない、こう考えております。
  69. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 今田邊さんの御返事で、よくわからぬでもありませんが、田邊次長みたいなまじめないい人はまことにそのおつもりでやつておりましようが、現実に仕事をしておるのはそうでないのでございます。この事実を第一に認識していただきたい。資料を出せというのが、末端においては比々みなしかりでございまして、こういう事実があります。先般も私申し上げましたが、応召中に対馬に演習にひつぱつて行かれた。そこで演習中に事故が起つて腹を打つたのであります。打つて盲腸炎と腹膜炎を併発して死んでしまつた。死んだのは下関の陸軍病院でございますが、打つたときはその死亡の四日前で、対馬においては軍医もいない。看護卒はもちろんおらぬ。処置がなかつたのでございます。しかも、その未亡人のうちには、発病したという電報が来ておる、死亡という電報がある、それだけでございます。その書類があるので、これを出したとことが、単に病名によつて、盲腸炎の認定でペケになつてしまつた。これは、私なんかがすらつと考えると、どうしてこれが公務による傷病死に該当しないか判断に苦しむのでございますが、これは却下になつてしまつた。ただこれ一個の事例だけではございません。全国でかかる例が幾万とあるのでございます。この事実を一片の答弁によつて私は承服するわけには行かないのであります。こういう事実がある。私、どなたが考えても公務による傷病死とお考えだろうと思うのでございますが、はねつけられてしまつた。本件の場合において、発病の電報もある。死亡の電報も来ておる。未亡人が馳けつけたときは死んでおつたのでありますが、この間の経過日数はたつた四日間。これがどうしてはねらけられたか、私はよくわからぬのであります。
  70. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 現在、十月十七日現在で裁定になつて可決になつたものの総数は百八十二万八千九百五十三人でございます。それから、否決になつている中で、死亡の原因によつて否決になつておるものが一万三千七百六十五件でございます。そのうちで、戦地における罹病という関係が二千四百七十八件と相なつております。実はかような数字から申し上げますと、相当大幅に可決という方向に向かつてわれわれが裁定しているという方針は御了解いただけると思うのでありますが、何分にも、短期間に多数のものを裁定しなければならぬ、しかも一方において十分な資料を集めることができない、その場合に、いつまでも持つておりますと遺族の方々にも御迷惑をかけるということ、しかも多数の部課にわかれまして裁定をいたしておる関係上、裁定がある程度画一的にならざるを得ないという点もやむを得なかつたのではないかと思つております。従つて一つ一つの例をとつてみますと、これは公務に裁定してもいいじやないかというものはわれわれも十分わかるのであります。現に、異議の申立てが出まして、それを審査委員会で審査して、これは当然公務としてしかるべきじやないかという事例はだんだんございます。今後もそれが出て来るだろうと思うのでございます。一つ一つを取上げる機会はもう一度あるわけでございますので、若干時間は遅れるかと思いますが、できるだけ審査会の方で勉強いたしまして申立てを処理して行きたいと思います。そうしますと、それと類似の事例で却下になつたものもあるわけでございますから、審査会において当初否決したものが可決になつた場合におきましては、それと類似の事例はもう一ぺん拾いまして裁定をし直すという場合もあろうかと考えております。
  71. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 田邊さんにお伺いいたしまするが、公務による傷病死の場合は、この挙証責任の転換ということは現行法のもとでおやりになれないのでございますか、なれるのでございますか。なぜならば、現在におきましては、何といつても国家機関が手足を持つている。時間もあるし、予算もある。この点についてひとつ意見を伺いたいと思います。
  72. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 援護法におきましては、申請書にこういう書類をつけていただきたいとい中に、いろいろとさつき申し上げたような資料を要求しているわけであります。しかし、そういうものがなかつた場合は受付けないとか、あるいは裁定をしないということはまだ考えていないわけであります。できるだけ現在の段階においては資料を集めていただく、どうしても資料がないという場合にはしようがないことでございますが、その際にはそういうものを集めまして何らかの処置を講じなければならぬ、こう感じております。
  73. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 高橋委員の質問をあまりじやましちやいけませんが、今申し上げましたように、挙証責任の転換と言つたら、はなはだ訴訟技術みたいなことになりますが、国家が手足を持つておるのだから、客観的事実に合致するように国家の方でお骨折りいただいて、資料を集めるのも国家の方でしていただくことを希望いたしまして、私の質問を終ることにいたします。
  74. 高橋等

    ○高橋(等)委員 先ほどに引続いて恩給局長に御質問をいたしますが、病因が不明な案件が非常にたくさんあります。病気で死んだことは死んだ、戦病死という通知は来ておる、しかし一体何病で死んだかということがさつぱりわからぬという例は、今度の大東亜戦の例では特に多いのであります。こういうものについてはどういうようにお扱いになりますか。
  75. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 そういうようなことを想像いたしまして、いろいろと顧問医とも相談し、また私も考え、また同僚にも相談しているところなんですが、ぴつたりした具体的な案件にもまだぶつかつておりませんので、私が今ここで申し上げるのはいささか抽象的になりますけれども、病名のわからないのはあの終戦の混乱の際においてはやむを得ないことではないかと思います。そういうことがたくさんあるということもこれは察知せられることだと思います。しかしながら、何か病気になつてつたということだけはわかるだろう、そうすると、その前後の勤務ということによつて、それが公務によつたものであるかどうかということは常識をもつて判定がつくだろう、こういうのが私たちの考え方になつておるわけです。それならば、不明なものであるから全部悪い方に持つて行くか、いい方に持つて行くか、こういうことが問題になるのでありますが、私たちとしては、理由なく特別に悪い方に解すべき取扱いをするようなことは避けたいと思つております。
  76. 高橋等

    ○高橋(等)委員 どうも、この点はむずかしいので、はつきりしないのがあたりまえだと思う。神様でない限り、人の重大な権利義務をきめる場合、病因不明のものを、前後の状況によつて公務であつたかどうかということを判断すること自体が僣越だと思う。前後の模様とおつしやいますが、どういう前後の模様なのですか。具体的な例をひとつあげてください。
  77. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 具体的な例と仰せられますが、今申し上げましたように、具体的な案件にぶつかりまして、そうして裁定の実態を集めて来ますれば、はつきりしたところは申し上げ得ると思いますが、しかし、御承知通り、扶助料の問題も、これからぶつかる問題でありますので、従つて私の申し上げることは抽象的にならざるを得ないのです。私が今申し上げることはあり得るものと、こう考えております。
  78. 高橋等

    ○高橋(等)委員 私はこれを後ほど申し上げようと思うのですが、非常にあなた方がふだん努力されておることがわかつておるにかかわらず、気を悪くするような発言をするかもしれませんが、これはひとつお許しを願いたい。私は、恩給局の怠慢であると思う。というのは、厚生省においてすでに百八十五万件以上の裁定をやつておるのであります。その場合に、病因不明の死亡というものが相当出ておるはずです。これは後ほど厚生省にただそうと思つたのですが、そうすると、個々の実例はこれから恩給局に出てから考えるというのではなしに、恩給局で早く審査をしようという場合には、こんなものは同じ政府部内であるから、もつとうまく連絡をやつてもらわなければ困るというような気がする。これは厚生省が連絡をすべきか、恩給局がすべきか、どつちがどうなつておるか私は知りませんよ。しかしそういう気がします。たいてい人間は死ぬなら心臓がとまつて死ぬ。そこで、あの当時、診断書では心臓麻痺と書いてしまう。盲腸炎と書いてあつても、実は盲腸でなくて肝臓が悪かつた人がある。胃がんと書いてあつても肝臓が悪かつた人がある。こういう実例もあるのであります。実際弔辞には肝臓で死んだと言うのに、診断書の方は胃がんと書いてある。いろいろな例が実は起つて来るのです。恩給局長、怒らずにお聞きなさい。それで、私はこう思うのです。前の議論にもどるのだが、そういうような病因不明の者にでも出すということをお考えくださらなければならないと私は思うのです。戦争の状況はそうなんだから、胃がんにしても、その胃がんの状況によつてどうとかいうような、あまりこまかくやられないで、――先ほどの遺伝的発病は私もよくわからないのですが、そういうようなものを除いたら、少くとも戦地へ行つて軍服を着ておつて病気になつて死んだという大きな網をかけてやる。親たちも周囲の人も戦死だと思つておる。そして今まで数年間にわたつて国あるいは団体が慰霊の行事も行つて来ておる。中には靖国神社にまつられておる人もおそらくあるだろうと思う。そういういろいろな人たちのことを考えると、今度の恩給裁定は、ひとつ今言いましたように、最初にもどるのですが、自己の過失その他によつてなくなつた者以外は、とにかく恩給を出すんだという方針でおやりになることを私は強く要望せざるを得ない。そういうようになさつたらどうでしよう。あなたの気持は私はそこへ来ておると思うのです。出したいのは、お互い日本人ですから、できるだけ出したいのだ。出したいなら思い切つてとつおやりになつたらいかがですか。これから先、恩給の裁定とか何とかいう、こういう事態は、おそらく戦死というようなことは今後当分予想されない事態でもあろうし、大きな戦争の跡始末で、しかも恩給としましても不十分なものを出すのでありますから、せめて不平を持つ国民が一人でもないようにひとつ処理してやる、こういうおつもりに恩給局の方であげてなつていただきたい。私は今までの御答弁は満足しておるのですよ。非常に満足しておるのですが、なおしつこく言うのは、ときどきうまくちよろまかされて帰る人があるので、またこうした問題をもう一ぺんも二へんもここで審議をしなければならぬようなことがないように、そしてこれからわれわれ法律までつくるような手間をかけぬように、とにかくやつていただきたい。裁定をやられる前だから申し上げるのですが、やつてからまたこれをやり直せとわれわれが言うても、たいへんな御迷惑だと思う。その点、ひとつがけから飛びおりる気持をお持ちになつて、あなたのお持ちになつておる国民愛の至情に訴えたいと思いますが、どうでしようか。
  79. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 第一点の、私の方がたいへん怠慢であるというお叱りを受けたのですが、私は、でき得るならば今お話のようにすべきであつた思つております。これは、私の口からこういうことを申し上げるのはたいへん申しにくいことでありますが、両二年来というものは、私たち非常な繁忙をきわめておりまして、職員も酷使して来ております。今の状態でもそうでございます。私はほんとうに今も職員を酷使し過ぎるくらいに使つておるのでありまして、そう人に言われるくらいに働いてもらつておるので、こういうことを申し上げてたいへん恐縮ですが、手がまわりかねておつたような実情であるということを、ひとつ御了承願いたいと思います。  第二点の、恩給を出す場合の態度でございますが、それにつきましては、高橋委員仰せられましたように、出す恩給は給するという態度をもつて進むべきじやないかという御趣旨だつたと思いますが、その点につきましては、まつたく同感でありまして、ことさらに恩給を出し渋るような態度で進むべきではない、こういうことにつきましてはまつたく同感で、さような態度で進んでおります。ただ、先ほどから私いろいろ申し上げましたが、何と申しましても、私たち臆病でございまして、真正面から恩給を出せないような書類が出て参りますと、すなわち、法律の規定上出せないような書類が出て参りました場合には、真正面切つて出しにくくなるものです。従つて、今お話のように、一番簡単な方法としては、戦地において何年から何年までの間において病名のいかんを問わず死亡した者あるいはけがをした者についてはすべて恩給を給するというふうに法定する、こういうようなことが一番いいと思つております。しかし、私は、そういうようなことをし得るかどうかということにつきましては、まだ自信を持つておりません。研究すべきものがあるのじやなかろうかと思いながら、実は結論を得ておりません。これは、この前の国会の最後におきましても、場合によつてはそういうことをお願いしなければならぬことになるのじやないかという心持でおりますが、まだそういうことについて自信を持つておりますということは明言いたしかねておりますことを申し上げたと思います。今高橋委員仰せられましたような根本的な態度でもつて進むということは、これをはつきり明言いたしておきます。
  80. 高橋等

    ○高橋(等)委員 それで、もう一ぺんだめを押すようでありますが、遺伝的発病であるとか、あるいは特殊の認定に基く――これはきわめて例外ケースですが、そういうもの以外には全部出す、これはもう間違いない。それで、特殊の例外につきましても、ひとつ出すような御研究をもう一ぺんしてみてください。これは実際に手間がかかつてやりにくいでしようけれども、現在厚生省がおやりになつた百八十五万の裁定の中で、病気の死因によつて出せないとしたものが一万三千件、その中で内地死亡というようなものが非常に多いのであります。これは当然法律上出せないものが多い。その他のものはわずかに二、三千件であります。こんなものをより出す手間をかけるよりも、みな出してください。その方が国民は非常に喜ぶ。それで、そういうようなことを一応ここで申し上げておいて、厚生省の方に進みます。
  81. 青柳一郎

    ○青柳委員 関連して局長さんにお伺いいたします。局長さんは今まで公務の認定についても実際に当られて来たので、公務と疾病との関係ですが、これは、法定されておるものはどんどん認定して行ける。法定されていない病気について、これが公務によるものであるかどうかということはどういうところを基準としてやられるか。先ほど高橋さんのお話の中に病名についてはあつたのですが、しかし、規定されていない病気について公務であるかどうかということをきめる基準についてははつきりお話がなかつたのですが、その点を聞かせていただきたい。
  82. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 これは、基準のはつきりしたものを設けられれば非常に楽なんです。事務的によくさばけるのです。それで、実は、御承知のように、恩給局では顧問医にいろいろな方をお願いいたしまして、青柳委員も御承知のように、西野忠次郎博士と塩田広重博士を最高の顧問にお願いいたしまして、そのほかに慶応関係とか東大関係の先生方に来ていただきまして、今でも毎週一回は例会を開きまして鑑定をお願いいたしておるわけであります。現実の問題として、私たちだけではわかりませんことがあります。私たちの常識でもつて、どう思う、こう思うというようなことで片づけられる問題の範囲を越えるものが非常に多いものでありますから、そういうような取扱いをいたしております。
  83. 青柳一郎

    ○青柳委員 その学術的な病気の場合のことは、ただいまおつしやつたような西野先生以下おやりになつておるのですが、もつと常識的に、たとえば脚気となると、脚気は公務でないが、一概にはそうも言えない。たとえば、大部隊が行進して脚気衝心でもつて死ぬ人が十名も出たということになれば、公務になるだろうと思うのです。医学的以外の判断も相当局長さんとしては持つておられると思いますが、そういう点の判断について伺いたい。
  84. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今私の承知しておるところの範囲におきましては、今青柳委員の言われたような、軍隊の非常なはげしい行動によつて脚気衝心でもつて倒れたという場合、具体的に、本人が脚気であつて非常に悪い状態であつたにもかかわらず軍隊のはげしい勤務のため自分のからだのことを顧みるいとまがなくて倒れたというようなことがはつきり書かれた書類が出て来れば、顧問医にはねつけられるようなことはなかつた思つております。おそらく、もしかりにそういうようなことをただ脚気と書かれたためにはねつけられたというようなことがあるとするならば、その間におきまして意思の疎通を欠いておる点があると思います。すなわち、そういうことがないように、恩給の請求をされる場合におきましては、発病と発病のよつて来たところの公務との関係をこまごましく明らかにわかるように書いてもらいたいと思い、そういうことを求めておるわけであります。それを顧問医の方に見ていただいて、顧問医の鑑定を仰いでおる次第でありまして、ただ単にこの病名はいけないというふうに形式的にはねつけるというようなことはしていないのであります。
  85. 青柳一郎

    ○青柳委員 たとえば、私が今例をあげた脚気の場合でも、これあたりは別に医学的な関係はないはずであります。常識でも判断できると思うのです。そういつたときには、恩給局だけの判断で、ああいうお医者さんの先生方の考えを入れずに判断できるのではないかと思います。
  86. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 実は、鑑定を受けるものは非常に多いものですから、自然その間において一つの鑑定のひな型というものが、前例によればできて来るのであります。そういうものができれば、先生方のお許しを得まして、そうしてそれでさばき得るものはさばいて行きますが、しかし、先生方の御意見を聞かないでおいて、事務的に、今お話のように常識的にできるじやないかということでさばいて行くということは、ともすれば間違いを起しますので、避けております。今脚気の例がありましたが、具体的な脚気なら脚気について一応鑑定を受けて、そうしてそれと同じ類型のものは、類型として許される場合におきましては前例によつてさばく、こういうようにいたしております。
  87. 青柳一郎

    ○青柳委員 それでは、観点をかえてちよつと話します。先ほど、局長さんの最初の御答弁の中で、公務か公務でないかという基準をきめる際に、前のものと異なつた裁定になることもあるというようなお話もあつた。その話に関連するのですが、今度の戦争では、前の戦争と違つて、第二乙種、ひどいときになると丙種までとつておるのです。これは今までの戦争ではなかつた例なんです。からだの弱い、それこそあるいは遺伝的、先天的な病気の人もあるかもしれない。そういうようなものは学術的にどうなるかわかりませんけれども、それは別として、今度の戦争では第二乙種、あるいは丙種の人までもとつておる。そういうところは今までの戦争に見ない例であつたと私は思うのです。からだの弱い人、それはちよつとしたはげしい勤務になれば当然病気になるのはわかつているのです。そういう点が今までの例と違つておるわけです。高橋さんの今のような話が強く出て来る理由はそこにある。もちろん、そういう考えを推し進めて行けば、戦地でもつて病気になつた人ばかりでなく、内地で病気になつた人についても考えなければならぬ。しかし、それは、戦地と内地とはまた別に考えもあろうと思いますけれども、そういうふうに、今度の戦争では第二乙種、丙種もとり上げた。しかも、国家としては、厳密な身体検査をやつて、それで軍務に適するという焼印を押して軍務にひつぱり込んだ。それは楽な勤務に従事したかもしれませんけれども、しかしながら、自由を奪われた勤務というものは相当身体的にも精神的にも影響を持つて来るのです。ことに弱い人となつたらなおさらです。そういうことは今までの戦争にない例であつたというような点から、さつき局長さんが常識的な取扱いをいたしますと言われた、その常識的な取扱いというのは、高橋さんのねらつておる質問とちようど合うのじやないかと思います。第二乙種、丙種をとり上げた国家の責任というものを、今度の戦争は今までの戦争とは違うのだというところでお考えになつていただける御意図があろうかどうか。
  88. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 私がさつきからいろいろ御答弁申し上げましたことに関連してまたいろいろお話がございましたが、第一乙、第二乙というようなことも特に私が先ほど考えお答えしたわけではなくして、とにかく、今度の戦争におきましては、一般に最後には総動員態勢をとられてしまつて、国内の情勢というものは支那事変の起つたときは大分違つて来ているというようなことは考えなければいかぬ。そこで、先ほど戦地と言つておりましたけれども、内地でも終戦近くになりまして大分違つて参りましたので、こういうことを念を押したことでございまして、要するに、たいへん抽象的なことを申し上げて恐縮ですけれども、ばかばかしいような取扱いといいますか、ばかばかしいような恩給の出し方もできませんが、それかといつて、非常識な、昔の支那事変の前、満州事変のときと同じような考え方をもつて律して行くということはとうてい不可能なことだと、こういうふうに私は考えております。
  89. 青柳一郎

    ○青柳委員 そういたしますと、今のお考え、よくわかつたのです。私の申し上げた例は、前の戦争時分は大体甲種ばかりとつてつた、今度は第二乙、丙種までとつてつた、こういう情況の相違の点ですが、そうしますと、前例に固執せず相当考えてみる、そういうふうに今の御発言を受取つてよろしいかどうか。
  90. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 先ほど私が高橋委員の御質問の際に前例云々と申しましたのは、はつきりした先天的疾患であるとか、体質に基くものということで裁定が認められなかつた、こういうような案件のことを申したはずでございます。先ほどからお話もございましたように、公務と疾病との間において相当の因果関係がなければ公務疾病とは認められない、こういうことでございますが、その公務疾病と認められるに至ります場合は、勤務条件ということは当然考えられるべきものであると思つております。その勤務条件といいますと、結局ずつと前とあとでは条件は場合、所によつてかわつて来ていることもやはり考えて行かなければならぬと思います。勤務条件は戦地と内地とでも差があるとして取扱われて来ているということも、これを要するに、勤務の条件が違つている、あるいはまた勤務の程度が違つている場合がある、こういうようなことを考えられてのことだと思つております。従つて、私は、今青柳委員のおつしやられるがごとくに、かりに病気だけを考えてみました場合におきましては、ずつと前に平和の時代に軍隊に勤務された場合においては公務にならなかつたものも、あるいは公務の取扱いをしなければいけない、因果関係を認めなくちやいけないようなものも起つて来るということは当然考えられるべきことだ、こう思つております。
  91. 青柳一郎

    ○青柳委員 私はもう言うまいと思つたのですが、私が言つたように、今回は第二乙、丙種までもとつたのだということは、勤務の条件の中に入らぬように私は思うのです。そこらへんをお考えいただけるかどうかということであります。
  92. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 勤務の条件といいますと、結局一般的になりますが、第一乙、第二乙をとつたかとらないかということについては、私はそれを主として申し上げておるわけではございません。ただ、普通のあのときの日本人のからだとして考えて行くべきものだと思つております。あのときは、第一乙、第二乙ばかりではなくて、ほかの者もとられたのじやないかと思うのですが、ちよつと私、軍隊のことははつきり承知いたしておりませんが、第一乙だけを標準にしていいものであるか、第二乙なら第二乙だけを標準にしていいものであるか、そこまでは考えておりませんが、とにかく、一般にあのときの条件において常識ある取扱いをするように考えております。
  93. 青柳一郎

    ○青柳委員 そうすると、勤務条件でなく、一般的な条件というふうに解釈すれば、私の言つたのは、結局からだの悪い人も今度の戦争でとつたのだ、だから病気が多いのだということを一般的に認めてもらいたいというのが私の気持です。勤務条件となるとそれは入らないと思つたので、一般的の条件というふうに解釈していいかどうか。
  94. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 それは一般的条件の結局具体的な問題になるわけだと思います。今のお話によりますと、一般に具体的解釈の問題だと考えられます。からだの悪い者をとつた、そのからだの悪い者を標準として考えろ、こういうようなお話にも考えられますが、からだの悪い者という前提だけでは考えにくいのではないかと考えております。一般のそのときの状態から常識ある考え方、こう言わざるを得ないのではないかと思つております。からだの弱々しい者を標準としてものを考えて行くということはできないと思います。またからだの丈夫な人を標準として考えて行くこともできない。常識のおのずから帰するところで判断するよりほかないのではないかと思つております。
  95. 青柳一郎

    ○青柳委員 からだの弱い者を標準として全部を考えろと言つているのではない。一般的にからだの弱い者をとり上げたという国の責任というものをよく考えておいてもらいたい、そういう程度だつたらよろしゆございますか。
  96. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 それは当然だと思います。
  97. 高橋等

    ○高橋(等)委員 今青柳委員からちよつと発言されたことと同じことだと思うのですが、恩給審査会をおつくりになつていますが、あれは官吏及び医師というような方で組織なさつているように思いますけれども、いわゆる国民常識にかなつた判断をいたすために、その他の一般の方々もこれに追加をするということをぜひお考えおきを願いたい。これはあなたの御答弁を私は求めません。いずれ副総理にも十分にお話をいたしたいと考えておりますが、あなたからも、こうした要望があるということをお伝えおき願いたいと思います。  次に、年金、弔慰金、主として年金の裁定について厚生当局の方へお伺いをいたしたいと思う。申し上げることはまたお気にさわることがいろいろきようはあるかもしれぬと思いますが、しかし、何しろ早々の間に百八十五万件からのむずかしい裁定をなさり、ことに書類が非常に不備であるにかかわらず、不眠不休で努力をされたことには私は敬意を表しますが、非常に遅れたということについて、これは国として、またわれわれとしても責任があるのではないかというような感じがいたして、これは芸が少しこまか過ぎたのではないかということもおそれるのであります。それで、この年金裁定にあたつて、援護局長は、百八十五万のうちで結局死因による否決は一万三千件くらいのものだと言われたが、なお今後死因によつて却下されるものも出て参るでありましようが、実は遺族の間で全国的に怨嗟の声が巷に満ちておるということを十分に御承知おきを願いたいと思う。これは極端な言い方のようでありますが、私が今度の国会へ出て来て各代議士の方、参議院議員の方々に会うと、異口同音に、病死による却下についての国民の非常な不満を実は聞かされているのであります。これは見のがすことができぬ問題だと思う。そこで厚生省の方へお伺いをいたすのでありますが、もちろん内地で非公務で死んだという者については別途措置をいたさなければならぬとわれわれは考えているし、厚生省も、先般厚生大臣あたりのいろいろなお話を厚生委員会あるいはこの委員会でお聞きいたしましても、そうした意図のもとに御努力を願つておることでありますから、もちろんこの問題の解決は何とかできると思うのでありますが、私は、本日は戦地における戦病死について、今恩給局長お尋ねをしたと同じことを厚生当局へお尋ねせねばならないのであります。それは、厚生省の扱いの中で、戦地と指定をされた同じ場所で同じ病気で死んでおるのに、しかもある者には年金が出て、ある者には出ない、こういう事例が実は多々ある。もちろん、ただいまお話のように、異議の申立てがあれば、その申立てによつて、証拠をそろえれば幾らでも裁定を改めておると言われるのですが、これはもうよくわかる。ところが、意識的にそれをおやりになつていることがあるのではないか。というのは、先ほど恩給局長お尋ねした時期の問題ですが、同じく戦地として指定をされておつて、たとえばフイリツピンかどつかで盲腸炎にかかつた、ところが、それが非常に平静な時期に盲腸炎にかかつてなくなつた人と、戦争がはげしくなつて盲腸炎にかかつてなくなつた人との間には、はげしくなつて盲腸炎にかかつた者は、これは手術ができなかつたから厚生省の方では年金を認めてやる、ところが、はげしくないときになくなつた者は、これは認めない、こういうような措置をなさつておられることがあるのではないか。もちろん、厚生省の方でも、できるだけ出したいという気持のもとに、何とかりくつをつけて、戦争がはげしかつたからこれは出そうというようなお考えをお持ちになつておやりになつたのじやないかと思える。私らの近所のある町の人で、病名不明でなくなつた方がいろいろあるのですが、ところが、同じ戦地でなくなつたのに、ある人には裁定が参つておりますが、ある人には来ていない。これは実を言えば非常に不平不満の種なんですが、それらについてどういうようなお扱いをなさつておられるか。ただいまの恩給局長お話では、時期についての考慮はしないというお話もあつたのだが、厚生省は時期についての考慮をなさつたのじやないかということを考える。これは、もし都合が悪ければ速記をとめてもよろしゆうございますが、ほんとうにきようは正直なところをお互いに話し合つて、よりよいものを生み出したいと思うのでありますから、どうぞお答えを願いたいと思います。
  98. 山下春江

    山下委員長 それでは、ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  99. 山下春江

    山下委員長 速記を始めてください。
  100. 高橋等

    ○高橋(等)委員 先般厚生大臣に御質問をしたときもそうでしたが、今援護局次長に御質問したときも同じようなことでありました。どうも厚生省は大事をとり過ぎているんじやないかと私は思う。というのは、恩給局の方がどうもむずかしい、非常にしぼる、そこで、とにかく厳格にやつておかぬと、年金を出してあとで恩給のときにけられたら困る、こういうような観念が頭にこびりついて、出したい出したいと思いながら、その親切がかえつて芸をこまかくして、それが今のように裁定も遅らすし、また断られた連中はわけがわからぬ。同じフイリピンならフイリピンで、戦争がはげしかつたか、はげしくなかつたかというようなことは、遺族の方ではだれも知らぬ。同じ状況で死んだ、ところが、ある者はもらつて、ある者はもらわぬ、だれも好んでフィリピンにやつてくれと言つたんじやない、連れて行かれたのだ、こうなつて来ると、りくつはいろいろあるでしようけれども、国民常識というか、法律は国民がつくり、国民のための法律なんだから、そこらから考えてみると、頭の切りかえをやらなければいかぬというように私は考える。今私が、戦地の行動というものは自己の過失によらぬもはみな公務だと踏み切つてしまえと議論をしておるのも、そういう観点からしておるのです。それで、今お話を承れば、あそこはあのときはちよつと平和だつたからこうする、あのときは戦争がはげしかつたからこうする、――ところが、戦争がはげしいといつても、それが毎日々々続くのではない。へりくつを言えば、一月の間に四日や五日平穏無事なときもあるでしよう。ですから、そんなことはやめて、戦地と指定されたら、それ以後はもう戦地だ、ここでかかつた者はみな同じだ、こういうことにひとつつてしまわないと、国民は納得しませんよ。どうでしようか。あなたの方でおやりになつたことを、私はもうこれ以上つつ込むことはしません。もう裁定になつておることだし、それから、今まで払われた御努力というものについては、私、敬意を表するのです。非常に御苦労なさつた方にこういうことを言うのはおかしいが、今までのは御破算にしてもいいから、ひとつもう思い切つてつてしまつたらどうですか。おそらく恩給局の方も、あなたの方で年金を出されたものを、もうあれは出さないということも言わぬと思う。そうすると、いい子になるのは厚生省だ。ところが、あなたの方でぎゆつとしぼつて、今度は恩給局の方でどんどん認める、これは同じ政府としておかしな話だと思うのです。先ほど恩給局長の御発言というものは、厚生省の扱いと大分違うと思うし、むしろあなた方が大事をとられ過ぎたんじやないかという気がいたします。その点について、頭の切りかえと言うてはおかしいが、頭なんていう問題ではなしに、事態の新しい判断に基かれまして、ひとつどんどん年金を出してやつてくれませんか。どうですか。
  101. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 恩給局長さんからのお答えも、私、先ほどから十分伺つておりますので、今後十分に連結をいたしまして、善処いたします。
  102. 高橋等

    ○高橋(等)委員 ここで一つお願いを申し上げておきたい。与党からこういうことを言つたら、野党の方は非常に愉快だろうと思うのですが、これは与野党超越した問題だから申し上げておきたい。あなたの方で今末裁定は六万何千件と言われていますが、まだまだあとから来るのが十万件や十五万件はおそらくあると思うのです。それで、ひとつ至急に、恩給局長と援護局長だけでいい、ほかの人を大勢入れて会議をするといかぬから、二人だけで一週間に二へんぐらい会合していただいて、そうして腹を割つて、こういうふうにしよう、ああいうふうにしようということで、われわれの希望を――もちろん共同戦線を張られてわれわれの希望するところと違うことをやられては困るのだが、お互いに日本人として、こういう問題については、よりよくしようという考えはだれしも持つているのですから、ひとつ一緒によく話し合つて緊密な連絡をとつてつていただきたいということを、ぜひともこの際お願いしておきたい。  それと同時に、もう一点お願い申し上げておきたいのは、今度の弔慰金、年金のように、一年半もたつてまだ裁定をしてもらえぬ人間がたくさんあるということでは、これは非常にマイナスであります。国民はもう待ちこがれてあるのです。少くとも厚生省でこれだけ慎重に年金裁定の手続を苦労しておやりになり、われわれも国民の実情に即した立場からいろいろと皆さん方に意見を申し上げておる。そこで、一応遺族恩給については、同じ政府なんですから、厚生省で年金の裁定をしたものはそのまま恩給証書を書いてもらいたいのです。内縁関係その他の身分関係は別ですが、そうでないものだつたら、ひとつそのまま恩給証書を書いてください。そして、厚生省が断つておるものに対して、それ以上にプラスしていただく、こういうやり方をなさつたら楽ですよ。その方が、何万件のうちで三件や五件ひねり出して断るよりも、大きな国家的見地から言えばはるかに得策なんです。ですから、もう年金証書をそのまま恩給証書に書きかえるということをひとつやつちまいましよう。これには国会の決議がいるということなら決議もし、閣議でも申合せをしてやればいいのだが、そんなことまでして手間をかけぬでも、やつちまう気に恩給局長がなられればこれは勲一等だ。(笑声)どうぞ、ひとつぜひそういうふうにお願いしたい。これは強く要望しておきます。いつも真剣だけれども、きようはほんとうに真剣に言うておるのだから、これは頼みますよ。
  103. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今の高橋委員お話の中の第一点の、厚生省との連絡を密にしてやれ、こういう御意見でございますが、これにつきましては、先般来田邊次長に私連絡をいたしまして、今毎週一回両方で打合せ会議をやつておりますが、最近始めたばかりでございますので、まだ皆さんの御期待されるような十分な成果があがらないようなうらみがあります。しかし、今後皆さんの期待されるような成果をあげるべく努力して行きたいと思います。  それから、その次の第二点でございますが、厚生省で遺族年金の裁定をされたものを恩給局でそのまま認めるかのごとくにやつてしまう、こういうお話でございます。先ほどから田邊局長より御説明のございましたように、厚生省におきましては、遺族年金の裁定につきましてはすこぶる厳正に、法規に照して、しかも十分に資料をそろえて、またいろいろと調査をしてされておるということでございますので、おそらく厚生省におきまして裁定されたものはそのまま問題なく扶助料を給付されることになるだろうと思います。そういうことにならないと考えることは一片の杞憂にすぎないことになるのではないだろうか、また私はそうなることを期待しております。そういうふうなことでございますので、今の田邊次長の説明されたところの具体的なことは私は聞いておりませんけれども、しかし、田邊次長の説明の通りにがつちりとされておるものと信じまして、また私どもは、手間をかけるようなことのないことを期待し、望んでおるのでございます。
  104. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 恩給局と密接な連絡をとりまして、公務認定の取扱いに遺憾のないように処置いたしたいと思います。
  105. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そういうことは杞憂になるだろうと恩給局長は言われるのですが、もうほんとうの手続として、恩給局の責任とか厚生省の責任でなしに、政府一体の責任として年金はそのまま書いてしまいなさい。――そうせいとここであなたに言つても、そうしますということはあなたの立場として言えないかもしれませんけれども、ほんとうにそれだけの大きな観点でやつて、できれば書類が出たらことしの暮れにでも恩給が受取れるようにしなければいけない。厚生省の方は、今の恩給局長と密接な連絡をするという発言を内容とされて今後の裁定をし、過去の裁定についてやり直してもらいたい、広くやつてもらいたいと思うが、その点どうですか。
  106. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 今ここで全部やり直すということは申せませんが、過去のものにつきましても、将来のものにつきましても、十分連絡をとつてやりたいと思います。
  107. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま高橋委員から大分こまかくいろいろお話がございまして、私も非常に同感であります。ただ、本席には厚生大臣もお見えにならないし、また副総理も見えないが、その点、政治的にやるという上におきまして考慮すべき点が非常にあるので、ひとつきようの速記録を、副総理あたりはお忙しいようですが、よくお読みいただいて、政治的に十分お考えをいただくことが必要だろうと思うのです。事務の御当局の方は、法に示されたことを忠実におやりになるでしようけれども、実際一般の遺家族の方で非常に不満を持たれている方がたくさんあることは事実である。ことに、田邊次長さんからもお話がございましたように、援護法は軍人恩給法が復活する以前の一つの暫定措置として遺家族の援護をやられたようでありますが、それがためにむしろ慎重に過ぎたというふうに、今の御答算によるとわれわれ解釈せられて、ちよつと残念に思うのでありますが、私の聞き違いであれば、これは間違いといたしますけれども、いずれにしても、恩給法が復活するまでの暫定措置のために、その規定等も非常に厳重で、こまかく病名等も区別されておる。そして、そのいずれに該当するかということについてはいろいろ今お話がございましたのですが、この援護法に漏れた方に対しては、旧軍人恩給法が復活した今後においては、何とかこれを救済する方法考え、結局援護法の解釈の拡大というよりは、むしろ法を一部改正して、そうして、病死したために何にももらえないというような方もあるようでありますので、この方々に対して国家として何とか恩典の方法考えるべきではないかと私は考えるのであります。これは、私ばかりでなく、同感の方がたくさんあるのでありまして、先ほど速記をとめられた際にいろいろ田邊次長からお話のあつたようなことは、むしろ広く一般に徹底させるようにした方が納得が行くのじやないかと思うのです。ただ単に、同じ病名で片方はもらえた、片方はもらえなかつたというようなことを考えると、そこに非常に不平が起ると思うのであります。実際、今お話のように、いろいろこまかい情勢を判断して裁定されておるいうことまではよく知らぬ向きもありますので、そこに不平や不満が起るのじやないかと思うのです。そこで、私のお伺いしたいのは、この援護法を改正して、そういうような恩典を広く、漏れた方に対しても、病死された方に対しても、何とか与えるというようなことを政府においてお考えになつておられるのかどうか、その点をちよつとお伺いしたいと思います。
  108. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 先ほどちよつと申し上げましたが、公務傷病の範囲をどう解釈しましても、公務傷病である限り一定の限界があることはやむを得ないことであると思います。従つて、特に内地勤務中に罹病して死亡したような場合に公務からはずれるものが相当に多かろうと考えておりますが、かような方々に対しましては、過去の制度等も考えます際には、国として何らかの扶助料を給するようにするのが望ましいし、また適当だと考えますので、目下慎重に検討いたしております。何分にも予算措置を伴う問題でありますので、今後大蔵省当局と折衝いたしました結果でないと何とも申し上げられませんが、われわれの方としては、できるだけこれが実現するように努力したい、こう思つております。
  109. 臼井莊一

    ○臼井委員 その点は十分お考えのようでありますが、たとえば、私の親戚で知つている者で、応召されて赤羽の工兵隊に入つた、ところが毎日起きぬけに自分のからだの入るだけの穴を掘らせる、あれじや今に参つてしまうだろうと言つておるうちに、はたせるかな肋膜になつて、とうとう死んでしまつたという例があるのです。しかし、一応やはり検査をして、軍務にさしつかえないということで入隊させたのだろうと思います。まあ家におればそんなこともなかつたろうということは当然考えられるわけであります。そういうふうに、もともと弱いからだとはいいながら、検査に通つて入隊させられて肺病になつた、こういうような例は幾らもあるのでありまして、そういう場合にも、在外資産措置さえ現在論ぜられておる際でありますから、何かの措置をお願いいたします。  なお、この機会に一つお伺いしておきたいことは、本委員会でお聞きすることはあるいは筋違いかもしれませんが、関連がありますのでお伺いします。いまだに白衣の戦傷旧軍人が街頭あるいは特に省線電車の中でものごいをしております。私、千葉から通いますが、ほとんど毎日と言つていいくらいに必ず乗つて参ります。また路上にも見受けるのでありますが、こういう状態を今日なお継続するということは非常におもしろくないことだと思うのです。これに対して適当な保護はやつておるのでありましようけれども、これが不十分のためか、あるいはまた中にはにせものもあるというふうな話であります。この間実はハワイから日本の社会福祉のことについて研究に来た二世の親子があるのでありますが、東京へ来てみると大分こじきがいる、――なるほど帝国ホテルの前にやはり一人のこじきがすわり込んでおつたのであります。アメリカとは比較になりませんけれども、ああいうものをああやつてほうつておくのであろうか、われわれ観光ということで来た者でないにしても、あれは非常に不愉快だということを聞いたのでありすす。白衣の戦傷旧軍人はまことにお気の毒でありますから、これらに対してどういうような方法を講ぜられておりますか、ちよつとお伺いしたいのであります。
  110. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 いわゆる傷痍軍人でありますが、それに対する処遇は、援護法ができましてから、従来とは比較にならぬ範囲に及んで参りました。軍人恩給が復活いたしますると、六項症以上の方に対しては普通恩給と増加恩給と両方出るのでございます。昨年より一層処遇が厚くなるわけでございます。また戦傷病者戦没者遺族等援護法規定によつていろいろ処遇の道も講ぜられておるわけでございます。しかし、傷痍軍人については考えなければならぬいろいろな問題がございます。たとえば、職業補導の問題、就職の問題、住宅の問題等もございます。これは社会局の方で所管いたしており、労働省の所管もございまするが、できるだけの連絡をとつてつておるわけでございます。ああいつた募金の問題は、やはり国の処遇というものと関連する問題でございます。やはりある程度国が援護なり処遇の道を講じてやりませんと、やめてもらいたいということが言えないわけでございます。また一方、傷痍軍人自身の全体の気風と申しますか、それも大事だと思うのでありまして、自粛してそういうことをやめようという空気が出て参りませんと、なかなか禁止することに困難でございます。法令の力をもつて禁止するということはいかがかと思います。要するに、国としてとすべきことはできるだけする、同時に、傷痍軍人の方々の団体もございますので、そういつた方面を通じまして、そういうことを自粛していただきまして、漸次そういう風潮をやめていただくというふうに持つて行くのが妥当ではないかと思いますが、なお、現在どういう方針で社会局が指導しておりますか、ちよつと私、詳細に存じませんが、後ほど別の機会に社会局の方からお答えすることにいたさせます。
  111. 臼井莊一

    ○臼井委員 今お話を伺いますと、法律的に禁じてもいないようでありますが、これは、端的に普通の街頭のこじきと同じように法律的に禁ずるということは、もちろんいろいろな問題がありましようけれども、何とかこれを急速になくすように、場合によれば、いろいろ団体あるようでありますから、そちらの方面へ折衝して、そうして一日もすみやかにひとつ適当な援護の方法を徹底させて、そうしてなくなすような方向に御尽力を期待しまして、私の質問を終りといたします。
  112. 中川源一郎

    ○中川(源)委員 昨日の新聞に、川崎市の日本鋼管にスクラップとしてアメリカの運送船で運んで参りました鉄くずの中に戦車のこわれたものがあつて、その中に操縦士と機関士であろうと思われる遺骨がそのまま入つておるということでありました。私は、さつそく手紙を出して、丁重に保存しておいてもらいたい、引取り手がなければこちらで引受けさしてもらいたいという書面を出しておいたのでございますけれども、ああいうものに対しましては、これは日本の戦車であり、戦死者の遺骨であるということは明白な事実であるということでございますから、どういうふうなお取扱いになられるものか、そのままにしておかれるものか、あるいはまた先方から交渉がありましたときに政府として適当なお取扱いをなさるものであるかということを、ちよつと参考のために聞いておきたいと思います。  それから、先ほど高橋委員から、私どもの営に考えておることを詳しくお尋ねくださいましたが、あのお言葉は全議員の方たが常に感じておられることばかりでございまして、ここに私も痛切に感じている問題でございます。それに対しまして、恩給局長さんからも援護庁次長さんからも丁重なる御答弁がありました。ことに、今後の取扱いにつきましては、援護法で裁定されたものを恩給局の方で活用して裁定しようというようなお考えのようであつて、まことに事務の簡捷、能率増進の上から見ましても適当な処置であると思うのであります。それにつきましては、法律をつくつておくとか、あるいは規則を設けておくという必要はないものであろうかどうかということを、私は先般大臣にもお尋ねしたのでございますけれども、御答弁がなかつた。そういう必要がないということならばそれでけつこう。あるいはまた、あとになつて、これは法律をつくつておくべきであつたというようなことでありますと、また延びますので、そういうことのないように、このまま活用ができるということならばたいへんけつこうであります。このまま活用できぬということでございましたならば、また今回一般の遺族に、申請書類とともに戸籍謄本を出させるとか、あるいはいろいろなむずかしい手続をたくさんとらせなければならぬ。そうして、一字間違つても何回もやり直さなければならぬことがたびたび起りますし、相当費用がかかりますし、また時日も要します。ことに、病歴書とか戦歴書とかいうものを書かなければならぬいうことは、遺族はそういうことは詳細にわからないわけでございますので、そういうものを省略して、援護法の適用を受けて年金を受ける者は、そのまま手続を要せず恩給法に当てはまる者というようなことになるものであるかどうかということをお伺いしておきます。
  113. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今の御質問はごもつともでございまして、私もその点はいろいろと検討したのでございますけれども、できることならば今のお話のようなことにすることは私は当然だと思います。ところで、御承知通りに、遺族に年金を給されますいわゆる援護法でございますが、その援護法の規定と、それから恩給法の規定とを振り返つて見ますると、その間に必ずしも同じでない点が多たあるのでございます。御承知かと思いまするが、遺族年金は、遺族年金を受けられる方がどういうような刑に処せられた方であつたといたしましても、刑に処せられたいかんを問わず、その刑期のいかを問わず、遺族年金を給せられるようになつていたのじやなかつたかと思うのでありますが、恩給法におきましては、いわゆる恩給権を喪失するような刑に処せられた方には扶助料は給さない、こういうふうになつておるのでございます。その点を考えますると、必ずしも遺族年金を給される方そのままが扶助料を給せられる方として一律に取扱うということもできかねる。そこで、その点はまず第一に明らかにしなければいけないということになるわけでございます。それからまた、遺族年金の取扱いにつきましては、遺族年金を給される遺族の方に対しましては、年金を受ける順位というものが全部同じような順位でもらえるようになつております。すなわち、未亡人がおられますと未亡人、そのお子さん――小さいお子さんがおられると、お子さんにも同じような順位で給せられるということになつております。ところで、恩給法の扶助料におきましても遺族の範囲がきまつておりますが、その範囲の中における遺族で扶助料を受けるについては、その順位がきまつておるわけでございます。すなわち、未亡人たる妻が第一順位者でございます。それで、小さいお子さんがおられても、お子さんには、お母さんがおられる間はもちろん扶助料は出ません。ただ遺族扶助料に割増しの金額が給される。すなわち、これを加給と申しておりますが、お子さんは加給を受ける原因にはなるというふうになつておるわけであります。こういう点がまた違つて来ております。また、祖父とか祖母とか、つまり戦死者のお父さんお母さんがおられて、その方が未亡人と生活を共にされているという場合でございますと、その方につきましては、援護法におきましては遺族年金が給せられるわけでございます。ところが、扶助料の方におきましては、扶助料を受ける資格があるという場合がありましても、扶助料そのものはないわけです。すなわち、未亡人がおられる以上、未亡人に扶助料受給権があるのです。そして、その資格のある方々につきましては、未亡人と一緒に生活をされておりまするならば、未亡人に給せられる扶助料の金額に割増しの加給の金額が給されるということになつております。そこで、その戦死された方のお父さんやお母さんが、従来通りの遺族年金を受けたい、こういうような御意思であられるならば、その意思を尊重いたしまして、その意思に従う。しかしながら、将来扶助料をもらわれる順番が来たときには、その権利は放棄してもらう、こういうような取扱になつておる等、いろいろ複雑な事情がございます。従いまして、今中川委員仰せられることは一応ごもつともでございまするけれども、すぐそのまま、遺族年金を給せられている人イコール扶助料を給する人ということはなかなか行きかねる点がございますので、その点、ひとつ御了承置きを願いたいと思います。  それから、その次に、今度は請求書の問題でございますが、請求書につきましては、これにはいろいろと添付書類がございますが、その添付される書類につきましては、これは、遺族年金を請求された際に出された書類で、恩給請求をされる際に利用し得るものは、もちろん利用していただくことはけつこうなのでございます。私、実際事務当局としてたいへんこれは言いにくいことでございますが、いろいろと関係者に聞きましたところでは、結局、厚生省の職員のところで、この書類は利用し得る、この書類は利用し得ないといつて、書類について一つ一つ判断をして、利用し得るものをかつての請求書の中から引抜かなければいけないことになるわけです。そういうことから判断いたしますと、実際の問題といたしまては、われわれ中川委員仰せられることもごもつともと思うのでございまするけれども、実際は、私の方へ出して来られる場合におきましては利用するといいことはなかなか困難である、こういうふうに考えておるところでございます。御趣旨はよくわかるのでございますけれども、実際の事務に当つているところにおきましてはなかなか困難なことであるようであります。もしもそれをやりますると、たいへん手間どりまして、かえつて受給者の方々に御迷惑をかけることになるのじやないかということも懸念される次第でございます。そういうことも聞いておる次第でございます。
  114. 中川源一郎

    ○中川(源)委員 今度の支給の方法は、恩給法と援護法と二本建ということで、どちらかを選定することができるというわけでございますので、そういう書類はもとより出さなければならぬわけでございますが、その順位なりの選び方につきましては、戸籍謄本をもう一度とらなければならぬということはなかろうと私は思うのです。これは、かわつておる分はとる必要がございますけれども、しかし、かわつていないものは、もう一度とるということは、役所としてはとる方がいいかもしれませんが、一般の遺族といたしましては、百九十万の人が戸籍謄本をとるにも莫大な金がそれに伴うわけでございますので、戸籍謄本は省略して、その書類を引継ぐということにでもしていただくとか、前の書類を生かして使うということにぜひしていただきたいと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
  115. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 戸籍謄本の点につきましては、実はこういうふうに考えたのでございます。今お話の点はごもつともではございますが、扶助料は、権利があるかどうかということを請求時で押えなければならない、こういうことはまず御了承願えると思うのです。従つて、扶助料を請求されるときに、その一時において権利者であるかどうかということをまず見なければはらない。そうしますると、戸籍謄本につきましても、援護法による遺族年金を請求されるために出されましたときから時期が相当経過している点につきまして考えますれば、必ずしも戸籍謄本そのものはとらなくてもよいといたしましても、時が経過したその間におきまする身分の変動の有無を明らかにするため、これを公証する措置が必要ではなかろうか、こういうふうに思つておるわけでございます。そこで、その公証される措置が、戸籍謄本を書類の中から引抜いてできるかどうかという問題が実は起つて来るわけであります。その点につきまして考えますと、結局、先ほど申し上げましたごとくに、遺族年金を給せられている方がすなわち扶助料を給せられる方に全部なればいいのでございますけれども、そうでないものがございますから、多くの書類の中から一丸引抜かなければならない。それを選りわけて引抜いて、その中でいろいろと、今申しますような身分関係を明らかにする書類をつけるということになりますと、その手数が相当かかります。こういうこともいろいろ考えられ検討された結果では、私どもはどちらでもいいのでございますけれども、今中川委員のいわゆる意に満たないような結果になつて来ているのではないかと私は思つているわけでございます。
  116. 中川源一郎

    ○中川(源)委員 書類を引抜くとおつしやいましたが、私は、百九十万の人の書類は全部必要な書類じやないかと思うのです。それで、戸籍謄本ということになりますと御承知のように一枚幾らという金がかかるわけですが、たとえば、戸籍は前の通りに相違ありませんというような町村長の証明でございましたら、これは金はいらぬわけでございます。役所も金をとらぬ。あるいは、かわつておる部分だけ戸籍謄本を出し直しをするというようなこともできるわけでございます。それはごくわずかであろうと思います。刑罰とかあるいはその他の事柄については戸籍謄本では明らかにならないわけでございますし、昨年からわずか一年足らずに全部が戸箱謄本がかわつておるとは私どもは思いません。かわつておる分だけは、それは修正をいたしまして、戸箱謄本をもう一度取直しをするというふうにしていただきますならば、そこに遺族といたしましては莫大な金が違つて参ります。全部をもう一度やり直すということは必ず不平が出る。前と何らかわりのないのに、またかという考えが出る。中にはもういらぬと言う人がある。恩給もいらぬし、援護法の援護もいらないと言う人もあります。その手続もしておらぬ人もあります。また、これはもらわぬ方が得だと言う人もある。保護法の適用を受けておる人は、その方が打切られたら困るから、もういらぬ、こう言う者もあります。いろいろございますが、大体は恩給がほしいと言う人でございますので、手続を省略するように、事務の簡捷の上からも、また費用の点からも、ぜひこれはひとつ考えをいただきたい。きよう結論が出ませんでしたならば、後日でもけつこでございますから、またもう一度取直したらいいという考え方でなしに、ぜひひとつ前のを生かしていただきたいと、私はこれを重ねてお願いするわけでございます。  それから、ただいま都道府県に対して恩給の申請手続方法について通達が出ておるわけでございますが、この手続の事務をするのに予算が伴つておるかどうかということをちよつとお尋ねしたいと思います。
  117. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 予算が伴つておるかということでございますが、手続上必要な事務費は昨年の例に準じまして相当額都道府県に配賦しております。
  118. 中川源一郎

    ○中川(源)委員 昨日世話課長が申しましたのには、今度は法律出していただくか、あるいはまた省令を出してもらわなければ、予算が伴つていないから、これじや調査もできません、たとえば京都市とか、市の方は、人件費もないし、費用がないから手続の事務はやりません、こう申しておるので、遺族がたいへん困るということを世話課長が申しておるのですが、どうですか。
  119. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 援護法なり恩給法の第一線の窓口ということになつております市町村の本来の仕事は相談業務なのであります。遺族の方がお書きになるものをかわつて書いてやるという業務につきましては、実は経費ははなはだ補助しにくいものでございまして、遺族自身にかわつて市町村が書くということは、市町村のサービスと申しますか、本来の国の業務ということにはならないわけでありますが、若干でも援助をしたいということで、昨年も若干の経費を都道府県から市町村の方におわけしてございます。ことしもまたそれに準じまして御援助申し上げたい。筋としては公共団体が公共団体としてサービスしていただくという性質のものではなかろうかと思つております。私どもとしても、できるだけ事情の許す限り都道府県に配賦しました予算の中から市町村にも御援助できるようにということを都道府県にもお勧めしております。指示もいたしております。しかし、大きな市あたりでは相当額自腹を切つて昨年も援助していただいたわけでございますので、ことしも相当御援助願いたいと思つて、それを希望しております。
  120. 中川源一郎

    ○中川(源)委員 昨年参りました金額がきわめて少額で、市町村としては、人件費の何ぼの足しにもならぬというようなことを申しておるのです。また今年もそれをあえてやらなければならぬということになりますと困る、法律を設けて、あるいは省令で、予算を伴うて命令してもらいたいと言つている。そうでないとやらないそうです。手をつけない。そういうことにはりますと、困るのは遺族である。遺族は現にもうどんどん死んで行くのでございます。せめて恩給の通知を受けて死にたいという希望が非常に多いのです。諮日のように手紙がたくさん来ます。早く手続をしてもらわなければならぬという意味から、やはり予算措置考えてもらはなければならぬ。今まで通りでやれるならばけつこうでございますが、私はこれはできないと思います。もう一度やれとおつしやつても、むずかしいと思います。これは、先ほど京都と言いましたが、京都だけじやありません。他の都市もみな同じだということを私は聞いて参つております。今のままでやれということでは、私はたいへん遅れて来るのではないかと思います。それとも、遺族会にこういうお手伝いをせよというのならば、会長は喜んでお手伝いはされます。しかし、役所の方にさしたいということなら、どうも役所の方は人件費が高くつくようであります。これじややれないと思うのですが、いかがですか。重ねてお尋ねします。
  121. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 遺族がお書きになる申請書を遺族会がかわつてお書きになるのは非常にけつこうであります。そうしますれば、市町村における事務費も非常に倹約できるだろうと思います。ぜひそういうように御援助いただきたいと思います。
  122. 中川源一郎

    ○中川(源)委員 それならば、市町村に責任を持たせずに――持たしてもよろしいが、遺族会と協力してこの範囲でやつて行けというふうにしないと、これだけの予算でやつて行けと県には言つておるけれども、市町村には予算が行かないということになると、私はむずかしいのじやないかと思います。
  123. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 遺族会の方が遺族のごめんどうを見てくださいまして、申請書の様式の書き方を教えていただき、場合によつてはかわつて書いていただく、それを市町村に差出しますれば、市町村からそのまま県庁に参りますので、市町村の手数が非常に省け、金もかからないだろうと思うわけであります。遺族会の方でやつていただくことにつきましては、法令も何もいらないわけでございまして、そういうふうに自発的に御援助いただければ非常にけつこうだと思います。またそれが望ましいと考えております。  なお、先ほどお話がありました遺骨の点につきましては、あの新聞を見まして、さつそく神奈川県を通じまして詳細調査いたしております。
  124. 山下春江

    山下委員長 受田新吉君。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 今度ソ連その他から戦犯と確認された人が帰つて来られるわけですが、その際に、国内の戦犯として服務された方々が恩給法上あるいは援護法上の恩典を受けているのと同じようなものが、新たに戦犯と確認された人たが釈放されて帰られた場合には適用されるようになりますか、どうですか。それは一般の復員者として取扱うか、戦犯として確認をされたけれども国内のとは違うという取扱いをされるか。これは恩給法の場合は恩給局長さん、援護法の場合は田邊さんにお答えいただきたいのであります。それから、今までしばしば申し上げたのですが、今度の恩給法で改正の要点の一つであつた未復員の公務員の場合における普通恩給の算定基礎額、これを政令でお出しになるようなお話があつたわけですが、これは非常に低い線に押えられておるので、これをできるだけ是正するというお約束をしていただいておるわけですが、その後政府内部において普通恩給の算定基礎額・仮定俸給等の改訂をどのように試みられようとしておるか、この点を伺いたい。  なお、援護法の関係からは、普通恩給に達せざる公務員の未復員者の方々が今までは一般職の職員の給与法の特例によつて非常に低い線で押えられておるのを、これも是正するということに御努力していただくようになつてつたのですが、これも、普通恩給の仮定俸給をうんと引上げると同時に措置をとらなければならぬ問題だつたのですけれども、これに対する援護庁としての態度はどうであるか。これはもう具体的な段階に入つていると思いますので、お答えをいただきたいと思います。
  126. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 第一点のソ連の戦犯者の問題につきましては私前にもお答えいたしたことがございます。実は、恩給法上の取扱いにおきまして、従来いわゆる戦犯者の恩給につきましては恩給を給しない取扱いをしておつたのであります。その戦犯と申しますのは、連合軍最高司令官から戦犯者として日本政府に対して通達されたものだけを言つてつたわけなのであります。マッカーサー司令官の命令で、日本政府に通知がありまして、それによつて恩給をとめていたのであります。マッカーサー司令官の命令でもつて政府に通知されて来たものだけにとどめられていたのです。ソ連のいわゆる戦犯になつて帰つて来た人につきましては、私たちは、その中に入らない、こういうふうな考え方で今まで来ておりますし、今後ともそういう考え方で行くことにいたしております。  それから、第二の問題につきましては、この前の委員会においてもお話がありましたが、現在こちらにおる職員に比べまして不利な取扱いにならないような措置をすることをねらいといたしまして取扱いをすることに内定いたしております。それを具体的に申し上げますれば、結局その方が今までこちらにおいでになつたならば給せられるであらうところの俸給を基礎として考えて行こう、こういうように考えておるわけであります。
  127. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 ソ連の抑留者は未復員者としての取扱いをいたしております。従つて、恩給法では一般の未復員者と同じように取扱うことになると思います。援護法では、生きて帰つて来るという方でございますので、戦没者遺族というふうにはならない。そういう点では関係がございません。戦傷病者援護法の関係では、一年間な適用を受ける方があるかと考えます。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 留守家族援護法による未復員公務員の場合、これは、普通恩給に達せざる人は援護法の適用を受けますね。特に、未復員者給与法の恩典を受けた人はそのままその適用を受けるわけですが、この人々の俸給額は、今恩給局長さんのおつしやつたような意味で、現在勤務していたとしたならば受けるであろう額に準じたような扱いをすることに内定していると言われたわけですが、普通恩給に達せざる一般公務員、これは一般職の給与法に関連を持つわけですが、当然未復員公務員としての立場からも考えてあげなければならぬ問題ですから、その普通恩給に達せざる場合は、今まで三・七ベースですか、非常に低い線に押えられたのを、当然恩給法の適用者と同じように引直されなければならない。この点、普通恩給に達せざる未復員公務員の俸給額の是正ということは最近どういうふうに考えられておるでしようか。
  129. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 私の方の立場は、未帰還者の留守家族を援護するという立場でございますので、その方が未帰還公務員であろうが、そのほかの方であろうが、金額は差別していない。来年からは二千三百円になるはずでありますが、今日まで、あの法律ができるまでの間において未帰還公務員としての一定の処遇を受けておられますので、その処遇の額が留守家族援護法の額より高い場合には、実績保障の意味において従来の金額を保障することになつております。その支給も、未帰還公務員の所属官庁の方から支払つていただくことになつております。先般の援護法が制定されますときに、未帰還公務員の給与をべース・アップいたしましたかどうか、詳細存じませんが、多少手直しをして、若干増額したようになつております。従つて、実績保障されるその実績と申しますのは、手直しになつた額が保障されることになろうと思います。
  130. 受田新吉

    ○受田委員 恩給局長さんの担当の、普通恩給を受けるようになつた未復員公務員、これが、四十五才に達せざる人はその全額を停止されるわけです。また、四十五才を過ぎて五十才までは二分の一を停止されるわけです。この全額停止された人に対する措置はどういうような救済方法をおとりになるのですか。四十五才までの普通恩給停止期間における俸給はどういう形で支給する考えでございましようか。
  131. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 停止期間についての俸給の支給ということは全然考えておりません。恩給法上の取扱いに対しては、そういうことは全然考えておりません。
  132. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 未帰還公務員の方で、すでに恩給の年限に到達し、またその恩給金額が留守家族援護法による留守家族手当よりも高い場合においては、留守家族手当を支給しないで、恩給の方を支給する。その恩給は、本人にかわつて家族が受取る。こういう趣旨でございます。従つて、恩給年限に到達しない方は、普通恩給を受ける資格がございませんので、従つて留守家族援護法による手当を受けることになる。ただ、その場合に、その方が従来一定の俸給額を留守宅で受けている場合におきましては、その金額の方が高い場合もございますので、それを保障するということになろうかと思います。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 問題は、恩給法上の普通恩給を支給する額は現在の公務員に準じて是正することになつておりますが、一般の恩給年限に違せざる公務員は俸給が非常に低いんです。いつも申し上げているんですが、大体三千七百円ベース当時の俸給よりほとんど上つていない。そうすると、もう少しで恩給に達するというような公務員は非常に低い線に押えられている。この留守家族援護法の方でもらうお金よりは実績が高いからというので、そのままずつと長く押えられて来たのでは、いつまでたつてもその人々は救われないわけです。そこで、その三・七べースの給与を漸次現在の公務員のべース・アップに準じたように上げて来るようにしなければならぬ。これはしばしば申し上げておるのでありますが、それをなかなか是正しない。これは、今まで昭和二十三年のときの昇給以後是正していないと思う。三・七ベース以後は、ベース・アップすることに、当然、現在公務員ですから、ベース・アップされていなければならない。それがべース・アップされずに全部押えられている。それを是正されないと不公平になるということです。この点から特にお尋ねしているわけです。
  134. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 その問題は、未帰還公務員の俸給は現在ございません。留守家族援護法制定後は留守家族援護法に統合されているので、今日ございませんので、過去の問題でございます。これについては人事院の方で未帰還公務員に関する規則をつくつております。それによつて取扱つているのであります。御承知通り、留守家族のある方は俸給が高い、留守家族のない方は過去の低いべース・アップにくぎづけになつております。留守宅のある方の俸給は、ベース・アップの都度それにある程度即応しながら若干ずつでもベース・アップしているようになつていると思うのです。先般もそういう例にならつて若干ベース・アップをしたように承知いたしております。内地の公務員とまつたく同じように上げるかどうかという問題でございますが、この点は、内地の公務員よりはベース・アップの率は低くなつていると思います。しかし、これは人事院の問題でございまして、今日は、その点は、留守家族援護法という法律に統合されまして、ただ実績を保障するという見地から従来の金額が支給される、こういう建前になつております。     ―――――――――――――
  135. 山下春江

    山下委員長 先ほどの質疑に引続いて、在外資産問題に関する質疑を行います。村瀬委員
  136. 村瀬宣親

    村瀬委員 時間が非常に長くなりましたから、私は簡単に一言でお尋ねをいたしますから、要点だけお答えを願います。  前回の質疑に対して、研究をしておくといつた点が多々あつたのでありますが、閉鎖機関令によつて処理されております朝鮮銀行台湾銀行の清算した結果の金額は現存幾らになつておりますか。
  137. 岩動道行

    岩動説明員 台湾銀行の九月三十日現在におきます国内清算資金じりの勘定残高は二十八億円になつております。また朝鮮銀行の清算資金じりは、やはり九月三十日現在におきまして七一七億になつております。
  138. 村瀬宣親

    村瀬委員 その二十八億と七十七億とは、いわゆる元本と利子とにわけますと、どうなりますか。
  139. 岩動道行

    岩動説明員 これは元本と利子というような中身ではございませんので、国債その他の公債あるいは現金預金あるいは食糧証券といつたような資産の内容としてそういうことになつております。
  140. 村瀬宣親

    村瀬委員 しかし、そういうことでは第二会社をお許しになるときに支障を来すでありましよう。やはり整理金額というか、元本というか、何らかの預金者に振り当てるべきものと、また一時は無利子で保管をさせられておつたようでありますが、昭和二十二年から食糧証券か何か三分の利子のものを買つたようであります。そういうものが積り積つてこういうものになつたというのでありますが、いわゆる元本と利子というふうにおわけになつても、どうおわけになつてもけつこうでありますが、つまり第二会社を許す場合に、どうしても残しておかなければならぬ金額と、これだけは第二会社資産として渡してもよいであろうという金額とは、どういうようになるのでありますか。
  141. 岩動道行

    岩動説明員 先般の国会におきまして閉鎖機関令の改正が行われたわけでありますが、その改正法律におきまして、新しく会社をつくる方法といたしましては、まず在外資産並びに在外負債を持つておるような会社におきましては、在外資産と在外債務とを比較いたしまして、債務が資産を超過いたしております場合には、少くともその債務超過額に、さらに政令でなお危険率等を見てプラス・アルフアをするというようなことになつております。それだけの引当て財産を留保した後であれば新会社をつくり得る。従いまして、そのような引当て財産を留保したあとに、なお国内に資産残つております場合には、それは新会社の方に移転し得る。しかしながら、在外債務につきましてはまだ今後相当処理する問題もございますので、そのような問題と関連いたしまして、引当て財産を幾らにするかということも今後の研究問題でございますので、ただいまのお話にありますように、新会社に引継ぐべきものは幾らにするかということをあらかじめ予定して、その残りを債権者に渡すというような仕組みにはなつていないわけでございます。
  142. 村瀬宣親

    村瀬委員 そういう御方針ならば、在外債務の引当てにもつといると思うならば百年もじつとしておらなければならぬのであります。そういうふうな考えでは私は間違いだと思う。利子を生むのでありますが、これはまだ五十億足らぬ、それではひとつ七十年ほどじつとしておいてみようか、そういうことになるだろう。そういう処理ではほんとうの処理ではありません。もつと現実に即してやらなければならぬ、これには預金者というものが大体あるのでありまして、預金者の金なんであります。そこらをどういうふうなお考え調査を進めておりますか。
  143. 岩動道行

    岩動説明員 在外債務の処理につきましては、これは全般的の問題でありまして、朝鮮銀行あるいは台湾銀行に限らず、その他の広い分野にわたる問題でございますが、この委員会におきましても、先ほどその点に関しまして大蔵大臣からもお話があつたかと思いますが、送金小切手でまだ未払い等のものもありますので、そういつたものは従来在外債務として扱つておりましたが、これを支払うかどうするかというような処理上の問題もございます。また外地預金者預金についても、これをどう処理するかというような問題もございます。閉鎖機関の立場におきましては、できるだけそういつた国内にある債権者に対しては何らかの処置をとつた上で、新会社にどの程度の財産が行くかというような点を検討いたしたいというように考えております。
  144. 村瀬宣親

    村瀬委員 その点は、たとえば朝鮮台湾、これは日本の領土であつたのでありますけれども、広く中国と日本というような在外債務ということになりますと、なかなか容易なことでないと思うのであります。しかし、台湾銀行限りの在外債務というのはすぐわかるはずのものなのであります。銀行の営業の範囲内でありますから、もう八年からたつているからそれはお調べになつているはずで、それがないというのは怠慢もはなはだしい。そこで、私は一般論を言つているのではないのでありまして台湾銀行限り、朝鮮銀行限りの在外債務というものは、――この在外債務という言葉がいかにも鬼面人をおどす形でありますが、そういう言葉を使わぬでも、預金者に対する銀行側の債務なのであります。預金者の債権であります。それは大体わかつているはずでありまして、それらをいつまでも押えて置くということは、私は正しい政治でないと思う。もしきよう差押え処分の請求でもあつて、判決があつたらどうなさいますか。何も国のものでも何でもない。預金者のものであります。残り株主のものであります。もつとここで処理ができるはずのものと思うのでありますが、どうしてそういうようにむずかしく考えるのでありますか。すぐに御処理をなさる御方針はありませんか。
  145. 岩動道行

    岩動説明員 純粋に現在の法令の建前から申しますと、閉鎖機関令におきましては、閉鎖機関の在外債務の支払いは一切停止をするということに建前上なつております。しかしながら、今お話になりましたように、これをいつまでもその状態に放置するということは、状態として許されないようになつて来ていると思います。従いまして、先ほども申し上げましたように、まず未払いの送金小切手等については早急に処理をやつて行きたいというので、ただいま検討をいたしております。また在外預金につきましても、それに引続いてさらに処理をやらなければいけないということで、これについてもいろいろと研究をいたしております。早急にそういう問題が解決することを私どもも期待いたしているわけであります。
  146. 村瀬宣親

    村瀬委員 一体、あなたらが管理をなされ出して、利子は幾らで行きましたか。
  147. 岩動道行

    岩動説明員 ただいまのお話は、閉鎖機関に指定された以降今日までに、どれくらいの利益が上つて来たか。つまり閉鎖後の利益がどれくらいあるかという御質問だと思いますが、これは、資産の換価処分益、あるいは預金とか国債等の利子収入というようなものが内容になるわけでありますが、そういつたものを含めまして、台湾銀行におきましては約八億、朝鮮銀行におきましては約十八億が、閉鎖日当日の資産に比べますと今日ふえておるということになつております。
  148. 村瀬宣親

    村瀬委員 これは、預金者並びに株主等にとりましては善良なる管理をしてもらはなくてはならないのであります。どのような管理をなさつて八億とか十八億になりましたか。やり方によれば、これは三十億になつたかもしれない。どういう方法によつてこの百億に余る金をお使いになつたのですか。
  149. 岩動道行

    岩動説明員 これらの機関資産につきましては、できるだけ善良な管理者の注意をもつて、少くとも元本をなくさないように、元本をまず確保するという建前が第一原則であろうと思います。従いまして、このような資産を特定の企業に投資するといつたようなことは非常な危険を伴う場合も考えられますので、国債につきましては登録国債になつておりますし、しかもこの償還等は期限によつて出て参ります。従いまして、国債については登録したままでその利子を受取り、また償還がありました場合にはその償還の金を受取る。その他の資産につきましては、できるだけこれを有利に換価処分をいたしまして、現金になりましたものは、これをすべて、銀行預金として確実な銀行に預け入れる、あるいは食糧証券その他割引興業債券等の、有利でしかも安全確実な有価証券にこれをかえて、資産の保全をはかるという方法をとつておるわけであります。
  150. 村瀬宣親

    村瀬委員 預金先と、億を単位でようございますから証券の金額、そのほかの内容をもう少し明らかにしていただきたい。
  151. 岩動道行

    岩動説明員 預金先等につきましては、私どもの方にただいま資料がございません。これは全部閉鎖機関特殊清算人の方においてそういつた資産の運用の規定に従つて運用いたしておりますので、ただいま私のところに金融機関別等の預金は資料がございませんので、ちよつと申し上げかねますが、国債につきましては、台湾銀行が十三億、朝鮮銀行が五十六億持つておるわけでございます。
  152. 村瀬宣親

    村瀬委員 先ほどお話のありました通り閉鎖機関令の一部改正があつたわけであります。ところが、これを改正通り一向やろうとなさらない。これはどういうわけでありますか。
  153. 岩動道行

    岩動説明員 閉鎖機関令の改正後、私どもといたしましては、できるだけ在外資産、負債の正確な資料を収集いたしまして、そうして引当て財産がどのくらいになるのかという点の検討をまずいたす必要があるわけでありますが、終戦前後の資料がなかなか手に入らないのが現状でございます。しかしながら、それで放置するわけにも参りませんので、できるだけそういう方向に向つて努力をいたしておるわけでありますが、まず、法律の改正によりまして新会社等をつくるというようなその前の段階といたしまして、特に先般の国会におきましても個別の特殊清算人を任命したらどうかというような決議もございましたので、その線に沿いまして、ただいま大蔵省といたしましては、朝鮮銀行台湾銀行の個別の特殊清算人を最近のうちに選任をするということで準備を進めておる状態でございます。
  154. 村瀬宣親

    村瀬委員 最近のうちということでありますが、これは閉鎖機関令の一部の改正は九月一の官報にも出ておるわけでありまして、この一部改正をしようとしたときには、すでにその方針がきまつたからしたのであつて、それでなければ何も一部改正をする必要はなかつたのですから、早急にこの改正によつて個別の特殊清算人をお置きになるように要望をいたしておくのであります。しかし、特殊清算人を置くのが目的でも何でもないのでありまして、要は、特殊清算人を置くということを一段階として、預金者に払いもどしをするという点にあるのでありますから、その点、ひとつ法律を至急につくつていただきたい。これは政府の金でも何でもありません。たびたび言うのでありますが、これは会社預金者のものであるのでありますから、それをあなた方が何も縛る権限はないわけであります。それは、占領時代にはいろいろな制約があつたけれども、独立してしまつたときに、何でこれだけを縛るか。結局これは在外同胞に対する二重の制裁になることになるのでありますから、さようなことは、特殊清算人を置けばそれで能事終れりとするものでなくて、特殊清算人を個別に置くと同時に、一方法的措置をただちにとつていただきたいと思いますが、その素案ができておりますか。
  155. 岩動道行

    岩動説明員 お話のように、こういつた機関の清算をできるだけすみやかに解決して行くという建前のもとに特殊清算人を個別に任命することも考えておるわけでありまして、先ほども申しましたように、終戦前後の資料というものはなかなかわかつておりません。ことに、預金者等につきましても、在外貯金等はなかなか調べがつかないような状況でございます。そんなわけで、できるだけ前の関係者清算人になつてやればまた新しくいろいろな資料の収集も可能になつて来るし、またいろいろと当時の状況についても記憶によつてある程度の問題の解決ができるかもしれないというような見通しのもとに、清算人を任命することにいたしておるわけであります。従いまして、特殊清算人を新しく任命いたしますれば、ただいまお話になりましたような送金小切手の問題あるいは外地預金等の問題につきましても、さらに確実なる資料も出て参りますので、大蔵省といたしましては、いろいろな立案をなす基礎的な数字についてのさらに確信を得て処理に当るというふうに考えておるわけでありまして、できるだけ早く基礎的な資料に基いた具体案をつくりたい。ただいまは、抽象的に、たびたび大蔵省の中におきましては検討を続けて参つておるわけであります。
  156. 村瀬宣親

    村瀬委員 御答弁の方向が私の予期と非常に反するのでありまして、特殊清算人を置くというのは、預金者支払いをする一段階だ、こうわれわれは了解しておる。ところが、今の御答弁によりますと、銀行々々でその関係者清算人にすると当時の記憶もよみがえるし数字が明らかになるだろうといので特殊清算人を選んだと言われる。それなら、こんな八年もほつておくのが悪いのであつて、すぐに始めれば、記憶はますます新しいし、非常によかつた。記憶の新しきを得るのならば、八年も放任しておくのが一番悪い。何も今ごろ特殊清算人に前の銀行の人をひつぱり出す必要はない。特殊清算人を置くということは、そういう意味もごく一部はあるでありましようが、それが大した目的ではないのであつて、早く支払わねばならないが、それにはやはりその銀行々々の担当者を特殊清算人として、そして支払いのできるような道に一段階進もうというところに、閉鎖機関令の一部改正の趣旨があつたと思うのです。そこで、私のお尋ねしておりますのは、もうそろそろ法律の素案ができておらねばならぬと思うのでありまするが、一方送金小切手やそのほかのいろいろな支払いの方は、大蔵大臣通常国会にすぐ出すとおつしやつておる。そうすれば、そういう送金小切手等が支払われるのならば、朝鮮銀行に預けた貯金がなぜ支払えないか。金があるではないか。ないならば、これは支払えないのもしかたがないが、金は七十七億円もある。それをなぜ払つてくれないのか、こう言えば、あなたの方でも返事はできぬと思うのでありまするから、そこで、もう送金小切手等支払い法律は出すとおつしやる、そうすれば、それと時期を同じくして、この七十七億も支払えるような法律を出すべきであると思うのでありまするが、その素案ができておるかどうかということをお尋ねしておるわけであります。
  157. 岩動道行

    岩動説明員 先ほどから申し上げておりますように、それぞれ事務局におきましてはいろいろと具体的に検討いたして用意もいたしておりますが、まだこれを全般的な法律の素案というところまでは至つておりません。十分検討を続けておる状態であります。
  158. 村瀬宣親

    村瀬委員 これは当然送金小切手等一緒に処理すべきであります。日を異にしてはいけません。従つて、私は強く要望をいたしておくのでありまするが、一方送金小切手だけを払つてもらつて預金は払えない、金は七十七億もそこにあるというのでは、朝鮮におつた人々の得心が行きません。従つて、同時にそういうものも支払いのできるように、ただちに法的措置をおとりになる義務があなたにあると私は断言をしておきます。そういうふうに御努力願いたいと思います。  それから、先ほど大蔵大臣が、閉鎖機関令によらない、いわゆる在外会社令によつて凍結されておりまする朝鮮台湾等にあつた六つの銀行整理をした金が約十億円あると言つておられたのでありますが、その六つの銀行の十億円の内訳を御発表願いたい。
  159. 上田克郎

    ○上田説明員 私の方からお答えさしていただきます。朝鮮関係につきましてですが、朝鮮関係の三つの内訳は、朝鮮貯蓄が一億七千二百万円、朝鮮商業が二億三千八百万円、朝興銀行が二億二千三百万円。それから、台湾関係が三つございまして、台湾商工が一億八千八百万円、台湾貯蓄九千六百万円、彰化銀行一億六百万円、合計十億二千三百万円というふうになつております。
  160. 村瀬宣親

    村瀬委員 これも先ほど朝鮮銀行台湾銀行について申し上げたと同様なのでありまするが、これらについては、もはやクレームの来る心配もないでありましようし、クレームが来ても、むろん日本政府の債務ではありません。会社の債務であります。しかもこれだけあれば、バランス・シートでは剰余金が大してないことになつておりまするけれども、この十億円の金額で十分預金は支払えることになつておるのでありまするし、さらに台湾等におきましては、たとえば貯蓄銀行の社宅等もバランス・シートでは一戸五万円くらいの評価にしておつたのでありまするが、時価はおそらく五百万円以上するでありましよう。それを向うはかつてに使つておる。そういう状態なのでありまするから、もういつまでも当該国のとりきめとか何とかいうことにこだわる必要はないと思うのであります。一刻も早くこれら海外引揚者のために――自分たちの金がここに集積されてあるのであります。目の前にあるのでありまするから、これを早く支払つてやるということが政府の当然の義務であると思うのでありまするが、これまた大蔵大臣通常国会にすぐ出すとおつしやつた支払い手形送金手形等一緒法律をお出しになる御用意があるかどうか、もう一度お尋ねいたしておきたいと思います。
  161. 上田克郎

    ○上田説明員 これは、大臣お答えになりましたように今までのところはまず送金小切手からという形で研究を進めておりましたが、御趣旨の次第もありますので、さらに検討いたしまして、御趣旨を体するように、できるだけ努力いたしたいと思います。
  162. 村瀬宣親

    村瀬委員 前回お尋ねいたしましたように、満州、蒙疆、並びに南方圏もあつたと思うのでありますが、軍事郵便の貯金は約四十億円と申し上げたのでありまするが、それを強制的に満州あるいは蒙疆側の郵政貯金に振りかえさせたのであります。命令をもつてさせた。ところが、ああいう終戦になつたのでありまするが、満州国はこれの見返りとして一億五千万円ばかりを日本の貯金局の方にちやんと預託をしたことになつておりまするが、その金はどうなつておりましようか。
  163. 上田克郎

    ○上田説明員 私の方で調べられます限り、御質問がありまして以後、関係の郵政省などに当りまして調べましたところによりまして、お答えいたしますが、あるいは計数等についていくらか相違があるかと思いますが、お許し願いたいと思います。満州の郵政局の方に預託がえになりました金額は、郵政省の調べによりますと、約十億円と聞いております。蒙疆の金額につきましては、私がこちらに参りますまでにははつきりとした計数がわかりませんでございました。それから、終戦の際に一億五千万円が日本にあつた云々の問題につきましては、私たちの聞き及んでおりますところでは、御承知のように、満州国の郵政とわが国の郵政との話合いで、向うからの為替等が参りますと、一応それに支払いをやつて、郵便貯金の払い出しもやつていたように聞いておりますが、その払い出し関係が、終戦前後に約一億五千万円くらいこちらの払出し超過になつておる、いわゆる向うに対して貸しになつておるというような結果が出たように聞いております。終戦になりまして、この貸しがありましたために、一時支払いを停止したそうであります。ところが、支払いを停止するということはいろいろな関係で因るというわけで、当時の満州国の在日大使館と満州中央銀行との話合いで、資金を約二億調達されまして、それをそういつた支払い資金に充てるというようなとりきめができたということであります。ところが、これによつて支払いをやつております間に、司令部がこれをさしとめまして、その残りの金、約一億五千万円か一億六千万円であつたかと思いますが、その金は未使用のまま、現在は閉鎖機関である満州中央銀行勘定にまたもどした。従つて、その勘定は、本来の満州国郵政の金というよりも、実質上そういう金の支払いのための資金を満州国大使館が満州中央銀行から借りておつた。従つて、形式的には満州中央銀行の金であるという形になつておる。そういうところまで私たちの方では聞き及んでおるのであります。なお、詳細につきましては、関係の郵政省等に御説明願えると、たいへんありがたいと考えております。
  164. 村瀬宣親

    村瀬委員 そうしますと、結論として、今の問題は、結局満州国から何ぼ金がこつちへ来ておるのですか。そうして、そのうち何ぼ払つて、何ぼ残つておるのですか。あるいは、向うへ一億五千万円ぼどこつちが貸した形になつてつたのだというようなお話がありましたが、差引きしてどういうふうになつておりますか。
  165. 上田克郎

    ○上田説明員 その詳細のことは、私、よく御答弁できないのを残念に思いますので、郵政省から御答弁願えればたいへんありがたいと思うのでありますが、私の聞き及んでおりますところでは、一応形としては、終戦ごろこちらが一億五千万円の貸しになつております。ところが、二億の金をその貸しにすぐに充当して、その二億で一億五千万円を消してしまいますと、あと五千万円しかないわけでございますが、そういう形をとらないで、一応その後向うから呈示があつた送金小切手なり預貯金に対して、その支払いをその二億の資金でやつておるということを言われておるのであります。それが五千万円くらい払つたところで、司令部がそれはいかぬというようなことを言つたために、それでストップして、従いまして、帳簿がどうなつておりますか、私は担当でありませんけれども、終戦前後の一億五千万円の貸しはそのままの形で、そうして、別個に、二億のうちから五千万円は為替その他に払つて残りの一億五千万円がいわゆる現在閉鎖機関たる満州中央銀行の金としてまた返された、そういうような形になつておるように聞いております。
  166. 村瀬宣親

    村瀬委員 閉鎖機関課長お尋ねいたしますが、今台湾銀行朝鮮銀行の金は約百億余りあなたの方で保管なさつておるということがはつきりいたしました。ところが、今の外債課長の御答弁によりますると、これも担当でないからわからないということを言うのでありますが、もし満州郵政省からの金が少し残りがあるとすれば、やはりあなるの方で保管なさつておることになつておる。そういたしますると、そういう金、その他いわゆる政府の金でない、閉鎖機関の金としてお扱いになつておる金額は、朝鮮銀行台湾銀行その他を含めて幾らあるのでありますか。
  167. 岩動道行

    岩動説明員 ただいまお話の満州中央銀行関係につきましては、ただいま外債課長からも申し上げましたように、郵政関係の方でさらに詳しく説明をしていただいた方がよろしいかと思います。閉鎖機関全体としてのことについてのお尋ねがございましたが、はなはだ申訳ありませんが、私、ただいま手元に資料を持つておりませんので、これは別にあらためて申し上げたいと存じます。
  168. 村瀬宣親

    村瀬委員 これは、どうも予算面にもいつまでも現われて来るものでもなし、またいわゆる国民、人民というものは、せつかく朝鮮銀行関係ならば七十七億もそこにあつても、何らこれは手の届かぬところに置いてあるということになりますと、こういう金こそ、ひとつ大いにその行く先並びに保管状況を明らかにして、そうして国家の資金その他に貢献させねばならないと思うのでありますが、結局、閉鎖機関で預かつておられるそれらの資金は何百億かの金でありましようが、資金運用部資金とは全然違うでありましようし、国民経済の資金計画には、どこへどういうふうになつて現われて参つておりますか。
  169. 岩動道行

    岩動説明員 閉鎖機関の持つております資産のうち、国債につきましては、先ほど申し上げましたように、そのまま登録国債の杉で日本銀行に保管されているわけでございますが、これは別問題といたしまして、その他に、大ざつばに申しまして、そういう国債を除きまして約百億余りの現金あるいは預金――現金はきわめてわずかでございます。これは支払の必要に応じた程度のものしか現金になつておりませんで、大部分銀行預金になつております。そのほか、食糧証券あるいは割引興業債券というようなもの、あるいは長期信用銀行の債券というようなものになつております。従いまして、これらの厖大な資産は結局銀行預金を通じて日本の一般の産業経済に役立つというかつこうになつております。また直接割引興業債券あるいは長期信用銀行の債券を持つというかつこうで、間接的に日本の産業経済に役立つているというかつこうになつております。
  170. 村瀬宣親

    村瀬委員 非常に時間がたちまするので、なお私は他日に問題の根本的な解決を保留いたしまして、技術的な点を二、三お尋ねしておきますが、引揚者にとりまして今特に痛感させられますることは、公債・社債・株式等の再発行の手続を簡略化して、経費を安くしてほしいという要望であります。これが手続が非常にうるさいと申しまするか、煩雑でありまして、たとえば五十円の株券を無効の宣告をしていろいろ手続をいたしまするにも数千円かかるというような現状でありますから、特に引揚者の特殊事情をお考え願いたい。すなわち、これは内地でかつてに自己の不注意で紛失したものではありません。これは、あの強制引揚げというような、ちようど四国全体の住民を数箇月で出て行けといつたような措置がとられたのであります。その際に、強制的に紛失させられたというか、海外へ置いて帰らされた関係等もありまして、今度これらが税関に保管されている分は返つて参るでありましようが、なお相当のこれらの有価証券が、再発行しなければ権利がなくなるというような状態に放置されておるのであります。従つて、これら引揚者の特に政治的な保護を今まで受けなかつた実情をお考えになりまして、少くとも五十円の株券ならば五十円以下でこれらの手続ができるというようにしてほしい。これは、立法措置がいりますか、政令で行けまするか、そこらは当局でお考えになつて、そういう御処置をなさるのがあたたかい政治だと思うのでありますが、それらに対するお考えを承りたいのであります。
  171. 上田克郎

    ○上田説明員 株式の再発行の問題につきましては、商法上あるいはその他の手続上、私の知つておりますところでは法務省が扱つておられるのではないかと考えております。御趣旨のことを法務省の関係の方にも御連絡いたしまして、意のあるところをお伝えしたいと思つております。
  172. 村瀬宣親

    村瀬委員 最後にお尋ねいたしたい問題は、引揚げのときにおける在外財産報告のために各引揚者が負担をした経費の問題であります。これはまず二段にわけてお願いいたしますが、終戦後連合軍司令部から金、銀、白金及び在外財産に関する関係書類の分離保管並びに報告に関する指令がありました。この必要に基き、昭和二十年十一月八日をもつて在外財産等の報告に関する大蔵省令第九十五号が公布されたのであります。この省令が二十五年の六月二十日に廃止されたのでありますが、この間におきまして、私たち引揚者は必ず用紙を買い求めさせられまして、非常にうるさい、なかなか煩雑な報告を大分送らされたのであります。そこで、第一段のお尋ねは、こういう報告を日本銀行整理したものでありますが、ああいう煩雑な、またわれわれが上陸港で千円もらつて、リユックサックを背負つて引揚げて参りますと、こういう報告を出さねばならぬ、どこへ報告書を出せというので、千円の中から用紙をまつ先にわれわれは買わされて、書留郵便で送らされたのでありますが、こういうふうに厳重な指令によつてお集めになつた報告の総額は幾らになつておりますか。
  173. 上田克郎

    ○上田説明員 今ここに詳しい統計を持つて来ておりませんが、私の記憶では四十八万通いただいております。それによる個人財産の集計につきましては、いろいろ問題があるわけでございまして、問題があると申しますか、評価の方法だとか、儲備券建、連銀券建、その他のものがありまして、どう評価するかということはたいへんむずかしい問題であります。それによる統計というものは出ておりますが、現在までのところその統計は実は発表していないのであります。私、今手元へ持つて来ておりませんで、不動産がどれだけとか、動産がどれだけとかいう金額を今持ち合せておりません。この計数につきましては、御承知のように、四十八万通という通数は、引揚者の方、たとえば軍人軍属まで入れまして六百五十万、あるいは一般人だけで三百二十万といわれております人数に比べますと少いわけでございます。世帯主がなさつたといたしましても、それでもちよつと少な過ぎるんじやなかろうかと思われます。このトータルが、先ほどの評価の方法は別といたしましても、どれほどの効果を持つか、ちよつと疑問の計数じやなかろうか、そう考えております。
  174. 村瀬宣親

    村瀬委員 金額はあとでまた御調査をいただくことにいたしまして、少くとも四十八万通のものを、みんなが手間をかけ金をかけて出したのであります。ところが、引揚者にはいまだこれに対する何の施策もとられておらない。そこで、この四十八万通に要した労力と金銭、これは引揚げ直後のことでありまして並々ならぬことでありますが、これに対しましては、昭和二十四年の十一月に参議院の北條議員が質問いたしましたときに、長沼次官は、このことについては将来何らかの方法で引揚者のための共同福祉を増進する記念事業に、これらの金を換算して政府は支出したいと思つているという御答弁をなさつておるのであります。政府においては、今回ようやく、おそまきながら、これら引揚者に対する処置をなさろう、これに対する法律出して行こうということを御決心なさつたわけでありますが、そういたしますと、在外財産報告のためとして省令によつて引揚者に課したこれらの費用については、別途政府予算を計上して、――たとえば、引揚げるまでの過程においていろいろな悲惨な状況のもとに死んで行つた邦人も多いのであります。最近昔の招魂祭に相当するいろいろな慰霊の式典が行われておりますが、これら引揚者に対してはまだそこまで手が伸びておりません。それらに対する国民感情を取入れた一つの記念の式典もまた必要であるかと思うのでありますが、そういう資金にこの金を今からお考えになつているかどうか、それらに対する方針を承りたいのであります。
  175. 上田克郎

    ○上田説明員 今村瀬先生がおつしやいましたような形で、この九十五号省令に従つて皆様から御提出願いました報告書の経費に報いるというようなことを考えているかというお話につきましては、なお今引用なさいました当時の長沼次官のお話などもよく承りまして措置したいと考えておりますが、この際申し上げたいことは、いろいろな意味で引者の方に対してはいろいろな方面から考えなければならない。そういうものの一環として、今日大臣も申されました調査会なり――将来審議会になる見込みでありますが、その審議会でそういつたことも全部含めていろいろ議論されることになろうかと思います。従いまして、その経費に相当するもので何かをやるとかいうようなことを今ここでお約束するわけにはちよつと行けないかと考えております。
  176. 村瀬宣親

    村瀬委員 私、本日は緒方副総理がお見えになると聞いておりましたので、在外資産補償問題の基本でありますところの憲法第二十九条との関係について、この際政府の明確な所信を伺つておきたいと思つたのでありますが、本日は遂にお見えになりませんので、私は他日この問題を緒方副総理その他政府の当面の責任者から方針を伺いたいと思つているのであります。いずれにいたしましても、かりに在外資産に関する調査会が発足いたしましても、憲法第二十九条との関係を明らかにしない以上は、ただ堂ためぐりをするばかりでありまして、在外財産補償問題の根本は解決できません。特に私が申しておきたいことは、七百万引揚げ同胞は、海外にあつて、いわゆる世界の大勢、日本の財政その他国力を十分知悉している国民でありまして決してただ何が何でも全部の財産を返せというようなむちやくちやなことは申さないのであります。しかし、いやしくも私有財産を認めている憲法のもとにある国として、筋道だけは明らかにしたい。そうして、そこに、補償は補償、債時に、あるいは課税の面、あるいは寄付の面でもよろしい、国力に応じたもので引揚者は必ず了解するでありましよう。しかし、その基本問題として当然国家が支払うべきものを、たとえば賠償として当然国家が連合国に出さねばならなかつたものを一部の引揚者にのみ負担させて、それをただ打切つてしまう、あるいは社会保障的な見舞金で済ますというような思想のもとにこの在外資産の補償問題を処理するというようになりますならば、七百万引揚者は一致結束して立ち上るに違いありません。そうなりますると、せつかく再建にその歩を進めつつある日本の社会、さらに経済界、あるいはその他全般にわたつて物情騒然たる風雲を巻き起すおそれもありまするので、この点に対しては、調査会または審議会発足後、根本問題として内閣方針を明らかにする必要があると思うのでありまするが、それは私は後日の機会に譲ります。ただ、本日御出席の両課長に申し上げておきますることは、預貯金送金小切手のみの支払いの法案をお出しになることは、これまた引揚者としてはとうてい承服ができません。せつかく自分たちの金が百億以上そこに積まれてある、目の前にあるのに、その預金を払いもとしてもらえないということになるならば、これはかえつて預貯金送金小切手を支払うことがよけい引揚者を刺激することにもなるのでありますから、当然これら預貯金送金小切手を支払う法案をすぐお出しになると同時に、各銀行預貯金に対しましては、これまた同時に支払い得る法案を一緒に出すように特に要望をいたしまして、本日の質問を終ることにいたします。     ―――――――――――――
  177. 山下春江

    山下委員長 この際お諮りいたします。前回の委員会において閉会中審査申出の件について御決定を願いましたが、ソ連地区残留同胞引揚げについては、双方の赤十字社の交渉が相当進展しており、年内に送還が行われる状況にあると思いますので、もし閉会中の審査の際にその実地調査を必要とする場合におきましては、委員を派遣いたすことにいたしたいと思いますが、その際の派遣委員の人選、派遣地等の決定並びに手続等に関しましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 山下春江

    山下委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十四分散会