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1953-10-01 第16回国会 参議院 労働委員打合会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月一日(木曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    委員            阿具根 登君            吉田 法晴君            上條 愛一君            田畑 金光君            寺本 広作君            堀  眞琴君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    国家地方警察本    部警備部警備第    一課長     三輪 良雄君    労働省労政局長 中西  実君    労働省基準局長 亀井  光君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   —————————————   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (失業対策等に関する件)  (岩屋炭鉱における労働争議事件に  関する件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から開会いたします。  本日の調査案件労働情勢一般に関する調査でございます。お手許調査をいたしたい内容について一応摘記してお届けをいたしました。  第一は失業対策に関する件でございます。この問題につきましては、前回委員会において問題点を細かく指摘をしまして、労働省側調査並びに対策について本日先ずお伺いをすることにしてある問題であります。  第二は、前回からのずつと関連のありまする問題について労働大臣から経過説明を求めることになつております。  第三点は、大蔵省印刷局及びアルコール専売事業職員賃金に関する仲裁裁定の問題であります。  それからここに記載漏れをいたしたのでありますが、丁度補正予算並びに二十九年度本予算編成期に当つておりまするので、労働省として責任を以て履行しなければならん労働三法の完全実施のために、只今労働省が持つておりまする予算の額の当否ということについて計数を挙げて御説明を頂きたいという考えであります。  先ず労働大臣のほうから懸案になつておりまする問題の経過説明最初に伺いまして、それから二番目に失業対策、更に順次問題を移して参りたい、こう考えます。
  3. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それでは御指摘に従いまして問題を提出せられておりますものの経過を御説明申上げます。  かねていろいろ御心配頂いておりまする労務基本契約でございまするが、その後におきまして十月一日を目標といたしまして、調達庁労働省もこれに援助をいたしまして、米軍当局との間に主としてアネツクス、附属書についての交渉をいたしております。これは非常に順調に進んでおりますのでありまするが、何分にも非常に浩瀚なものでございまするので、ややこれが遅れつつございます。併しこの間の情勢については常に組合側と十分に話をいたしておる次第であります。なお基本契約の本文についてでございまするが、これは御承知ように今月の初めに米軍FECとの間には完全な了解を得たのでありますが、これはその予算関係等におきましてはやはり陸海空三軍関係もございますし、なおワシントンにおきまする関係もありまするので、そのほうの関係から昨日或る種の交渉がありましたのであります。これにつきまして、私本日三時からなお話合いをしてみたいと考えておりまして、昨日も提示されましたものにつきまして組合日本政府との問で種々懇談をいたしまして、本日三時からの会談にも組合代表者には入つてもらう考えでおるのであります。どういうふうになりますか、大体基本線は動いておりません。ただ法律的に字句の修正もございまするが、又或いは文章の体裁を整えたと見られる点もございまするが、それがとりようによつては若干我々の主張すべき点が曲げられる虞れもあるところもありますので、そういう点については十分先方に話して、我々の意向のようにしてもらう考えでおるのであります。  なお次に特需工場におきまする人事条項でございまするが、これにつきまして、去る二十二日に会社側を呼びましていろいろ意見を聞きました。翌日が休みでありましたので、二十四日に組合側に来てもらいまして、又これも意見を聞きました。全体といたしまして問題になりますのはやはり人事条項中心でございまするので、これについては労務基本契約の線のように持つて行きたいと考えておるのであります。併し何分にも今申上げましたように、労務基本契約そのものについて未だに交渉すべき点もあるよう状態でございますので、まあ先方として米軍側として受ける場所は一つでありますので、余り一度に持込みましても、どうせ話も進みませんので、これは少し時をかして頂いてまとめたいと、かよう考えております。ただ特需工場の場合、この一般駐留軍労務と違いまする点は、やはりこの特需工場においては一層強く米軍側予算にしばられること、即ち注文を受けまするということが非常に会社自体の大きな仕事である。従つて会社注文を受け活撥仕事をするということが全体の労務関係を豊かにするということでもありまするので、非常にまあデリケートな点もあるようであります。そこで私どもとしましては、殊に人事条項について重点を置いて話をしたい、あれもこれもと余りだくさん持込みましても、却つて特需工場自体においてそのために非常に注文が逃げてしまう、従つて工場事業量が減るということも懸念されるということも双方において言つておられるようでありましたので、そういう点も考慮しながらやつてもらいたいと考えておるのであります。なお富士自動車の問題でございまするが、これは一応話をいたしまして、九月二十一日まで延ばすということにいたしておりました。内容は申上げるまでもないと思いまするが、三十名の解雇を言つて参りました。結局共産党員であるということの十分な証拠がないじやないか、そこで十分な証拠を出せるという挙証が問題であろうと思われるのでありまするが、それにつきましてはそう簡単に言えるものではないということで、いろいろと労働省側としても話をしておりました。結局その三十名というのは大量のものではなくなるということは見通しがついております。なお九月二十一日にも折衝をいたしまして、結局結論を得ませんでございましたので、これは更に延ばす、その延ばすのはいつまでというふうに、今度は期限はつけないというふうになつておるのであります。  以上を以ちましてお答えといたします。
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御質問があろうかと思いますが、それの前に北海道労災病院設置について一言委員長から御報告を申上げたいと思います。  前の委員会でこの問題について労働大臣からも経過の御説明があり、各委員から御質疑もあつたのでありまして、そのときに問題となりましたのは、十六国会においてこの問題の請願を扱いまする場合に、本件は北海道知事決定を最も尊重して行きたいという労働省側意見表明があつたのでありまして、これについてやはり労働省としては方針は変えられていなかつたように見受けられるのでありまするが、果して北海道知事が、前委員会小坂労働大臣が述べられた通り意見で今日もおられるかどうかという点に若干の疑義がありましたので、委員長といたしまして北海道知事と面接をいたしまして、その間に事情を質したわけであります。その件について御報告を申上げます。  実は八月の一日に、労働省労働基準局長から北海道知事宛親展文書を以て、内容はよくわかりませんが、一応労災保険審議会において労災病院設置促進についての決議が行われたので、北海道における労災病院設置場所を早急に決定するように要望があつた、大蔵省からも建設促進の御指示があつたから至急に候補地決定して頂きたい、できれば八月の十五日までに回答を願いたいという意味手紙であつたようであります。この手紙に対しまして、田中北海道知事は八月十五日付を以て次のよう文書による回答がなされております。それは労働省労働基準局長宛であります。それを読み上げます。   昭和二十八年八月十五日      北海道知事 田中 敏文  謹啓   酷暑の折にも拘わりませず御清栄の趣きに拝し慶賀に堪えません   陳れば労災病院本道設置につきましては貴職の並々ならぬ御高配を忝うしておりますことは小職の常に衷心より感謝するところでございます   貴職の八月一日付御書簡に対しまして慎重検討の結果次のよう結論に到達致した次第であります  すなわち  一、北海道労災病院美唄市に設置することとし本年より着工せられたいこと。  二、同時に特殊専門労災病院たる国立の珪肺病院岩見沢市に設置し本年より着工せられたいこと。  三、前項珪肺病院建設については道として協力の意味において所要経費の一部を道議会の議決を経て負担すること。   しかるに岩見沢市はただ今のところ労災病院設置の主張を譲つておりませんが小職右案に同調するよう同市説得のため努力中でございます。   以上取りあえず御通報いたします。今後とも何分の御配意を戴きたくお願い申し上げます                敬具  労働省労働基準局長殿  こういうのでございます。これに対しまして、労働省のほうからやはり文書回答として知事に出されております。その文書を読み上げます。   昭和二十八年八月二十一日            労働事務次官  北海道知事殿    北海道労災病院設置する件   前略 八月十五日付貴官の意見書について左の通り回答致します。  一、知事より八月十五日付意見書の提出があつたが基本的にこれを採用する。  二、名称は双方とも「労災病院」とする。  三、右病院は唯単に予算を分割するものではなく労災珪肺夫々の特殊性を活かし漸次拡充増強する方針である。   然るべく協力されたい。  こういうのであります。従いまして、この労働省事務次官回答について田中知事同意を与えたという意思の表明がございました。その同意を与えた点につきましては、この労働事務次官回答書というものが、八月十五日に北海道知事が出しました基本的な態度についてその実施をするのに支障はない、こういう工合に認めたからであるということでございました。  その一番重要な点は、美唄市に労災病院岩見沢市に名前は労災病院でありますが、実質的にはけい肺病院としての設備拡充を行なつて行くというこの二つ方針が基本的に採用せられておるということ、第二には、予算措置におきましても、労災病院関係予算双方に分割するのではないという意味のことがはつきり確認せられておるので同意をした、こういう意味の御者見がございました。そこで労働省側のお考えは、前回委員会でもはつきわしておりますから、従つて田中知事が、労働省においてさよう決定されるまでの経過としては、只今申上げましたよう考え方の下に労働省との間に折衝をし、そうして労働省態度をさように確認しておられる、こういう工合伺つたのであります。  田中知事懇談をいたしました件については以上の通りでございますから、御報告を申上げておきます。
  5. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今の委員長の御報告でありますが、私はこの前から言つております。速記録にもとどめておりますので、一切間違いないので、さよう御了承願います。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) どういたします。只今大臣経過説明を求めたわけでありますが、あと失業対策その他について一応全部労働省側の所信を述ベて頂いてから質疑いたしますか。
  7. 田畑金光

    田畑金光君 全部終えてから……、そのほうがよろしいです。
  8. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは第二点の失業対策関係を述べて頂きます。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) では私から最初に最近の雇用情勢政府失業対策について大掴みのところを申上げまして、続いて局長から詳細に申上げるようにしたいと思います。  最近の我が国の経済は、朝鮮動乱の休戦を迎えまして、従来の特需依存を脱却いたしまして、正常な貿易伸長による経済自立体制の確立を迫られておるのでありまするが、コストが高いために、又種々政治的な制約もあるやに思われまするが、輸出が伸び悩みの状態でありまして、やはり国際的な競争場裡に立ちまして、この輸出の不振を打開いたしまするためには、コストを引下げねばならんということがどうしても強く要請せられておるのであります。このコスト引下げということが、やはり一部の産業におきまして人員整理ということにも現われておると観測されるのであります。  労働力調査によりますると、非農林部門就業者が前年に比較いたしまして相当増加いたしておりますが、反面完全失業者の数もやや増加いたしております。併しながら、今後下半期に入りまして、公共投資が拡大されますると共に、輸出貿易産業活動も上半期に比しまして伸長を示すものと予想されるのであります。これは御承知よう予算決定が遅れましたので、従つてその執行も遅れ、財政投資下半期に集中されているという傾向によるものでございます。従つて、その関連産業におきまする雇用量増大も又期待されると考えております。従いまして、今後におきまする雇用失業情勢は一部悪化する部門もございまするが、全体的に見ますると、大体現状と保合い状態で推移するのではなかろうかと考えております。  右の情勢に対処いたします失業対策根本方針は、しばしば申しております通り輸出振興中心といたしまする一般産業発展によつて雇用量増大を図ることでありまして、政府はこれら産業育成発展に努めておる次第でございまするが、当面の情勢下におきましては、労働省といたしまして、全国職業安定機関活動を促進いたしまして、雇用の調整に努めますると共に、公共事業電源開発等公共投資の増額による雇用量増大を図り、他面失業保険制度職業補導事業の運営と相待ちまして、失業対策事業強化拡充を行い、遺憾なきを期したいと考えておるのであります。詳細は又局長のほうから補足いたします。
  10. 江下孝

    説明員江下孝君) 最初に議題に書いてあります順序によりまして、九州地区水害対策につきまして申上げます。  九州地区水害対策、六月の水害でございまするが、これにつきましては、これに対する応急的な措置といたしまして、失業保険関係保険料の徴収、それから保険給付等につきまして、法令の認める範囲で緩和措置を講じたことはこの前御説明した通りでございます。続きまして、失業者の発生に対しましては、現在の失業対策法の運用によりまして、できるだけこれを救済して参る、こういう方針所要措置を講じたわけでございます。ここにございます失業保険法失業対策法特例施行でございますが、失業保険法特例施行は、これは失業の認定を早くやる必要があります関係上、施行を急ぎましたので、すでに九月一日から政令も含めまして施行いたしております。現在までのところどうもこれによつていわゆる休業中に失業保険金をもらえるという大体の数は一万三千人程度となつております。この数字は多少動くかと思いますが、一応我々の推定でこういうことになつております。指定しました地域は、九州では福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県全地域でございます。  次に失業対策法特例でございます。これは緊急失業対策法によりまする失業対策事業補助率の引上げを行うということがございますが、これにつきましては、如何なる地域を指定するかということは相当技術的に困難な問題もありまするので、今精密に実は調査実施いたしております。この調査の完了を待ちまして、可及的速かに政令を公布いたしまして、実施に移りたいというふうに考えております。  水害対策につきましては、一応その程度にいたしまして、次に一般失業情勢につきまして申上げます。これにつきましては、大臣からもお話がございました通り結論におきましては、今後当分保合いの大体姿ではないかと思いますが、御参考までに最近におきまする雇用及び失業傾向のあらましを簡単に数字を上げて申上げたいと思います。  先ほどお話もございましたように、輸出振興ということを図りますためには、どうしても国内の産業合理化ということが必要であるという関係からいたしまして、雇用の面は現在伸び悩みという状態にあるということが申されると思います。二十五年六年頃に比較いたしまして、生産指数相当つておりますが、雇用指数は若干増加はいたしておりますが、生産指数比ベますと、必ずしも上昇していない。これは言い換えれば、生産性が向上したということになるかと思いますが、今後の関係を見ましても、やはりこういう状態がなお続くのではないかというふうに考えております。労働力調査によりまする全産業従業者の動きを見てみますと、昭和二十七年の一月から七月までの平均の全従業者が三千六百五十四万、二十八年には三千八百八十二万、従業者の数からしまして二百二十八万の増加になつております。この従業者がどの面で殖えたかということでございますが、農業関係におきまして殖えましたのがこのうち六十四万人、非農林業で殖えましたのが百六十五万人、一応この数字から見ますと、非農林業のほうに相当多く雇用が吸収されておるということで、健全な姿を示しております。ただここで注意すベきは、この非農林業の殖え方の内容を見ますと、家族従業者増加割合相当多い。それから自営業種相当多いということで、大規模の産業に対する吸収面が比較的少いということでございます。同じく労働力調査によりまする完全失業者の数でございます。これは御承知通り全国で一定の数の世帯を抽出いたしまして、それを調査いたしまして、これを全般的に推計するわけでございます。昨年の一月から七月までと、本年の一月から七月までを比ベますと、平均二万人程度失業者増加になつております。  次に公共職業安定所の窓口に現われました求人求職傾向を申上げますと、先ず失業保険受給者数でございます。これはこの一月から七月までを昨年と今年で比べますと、平均いたしまして四万人の増加になつております。併し、最近は大体頭打ちの傾向でそう大きく殖えてない。大体去年の六、七月頃からずつと殖えたのがそのまま続いておるというのが実情でございます。  それから一般労働者求人求職状況でございますが、これは求人数余り増加しておりません。若干増加いたしております。ただ求職者数はそれより若干上廻つて増加しておるという現象が見られますが、これは大体従来とそう大きな開きはないということが申上げられるかと思います。  最後に日雇労働者状況でございますが、お手許に差上げてあります資料にもございますように、三十四、五万台の登録数を維持しております。数においては殖えておりませんが、ただ質的にはなかなかうるさくなつておるということが申上げられるかと思います。この三十四、五万の人が大体月二十一日から二日働きまして、そのうち七割が失業対策事業によつて就労しておる、こういう状況でございます。  次に補正予算の問題でございますが、これは先般賃上げをいたしました。更に水害関係乃至は企業整備という関係もございまして、現在大蔵省折衝中でございます。  失業保険実情でございますが、先ず一般失業保険でございますが、これは二十七年三月末におきまして特別会計積立金が百九十一億円に達しましたので、同年四月以降保険料を二割引下げて千分の十六にいたしました。併し、その後におきましても依然として保険料収入が順調でございまして、毎月平均十三億乃至十五億ということでございまして、これに政府負担を合せますと二十億を突破いたします。で、支出のほうは大体最近の傾向平均毎月十九億円程度でございますので、安定した収支状況を示しております。  次に日雇失業保険でございますが、これは始めましたのが昭和二十四年の十一月でございます。当時から二十七年度末までの収支の差は結局差引き一億六千万円の剰余を生じております。併し、注意すべきことは、二十七年度だけを見ますと、六千六百万円の赤字を生じております。最近の収支状況は、毎月の保険金給付額が七千五百万から一億円という間を上下いたしております。これに対しまして保険料収入は五千万円前後でありますので、国庫負担を合せましてもまあ辛うじて収支相償つているという実情でございます。  以上で説明を終ります。
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、大蔵省印刷局及びアルコール専売事業職員賃金に関する件を御説明を願います。
  12. 中西実

    説明員中西実君) 公共企業体並びに官業の調停が済みましたあと、八つの企業体すべてが仲裁にかかりまして、昨日印刷アルコール専売二つ企業について仲裁裁定が出されました。この内容は申すまでもなく、独立性を持つております仲裁委員会がやりましたので、私ども勿論関与すべきではないので、内容のよしあし、或いはこの詳細な内容の御説明は私のほうにはちよつとできかねるのでありますが、一応聞いております数字について申上げますと、出ました二つ裁定いずれも主体は賃金の値上げの問題でございますが、いずれも調定案に示されました金額と同金額でございます。印刷のほうは調定案によりますと、二十八年度つまり四月以降平均月額一万三千五百円ベースという調定案が出たのでありますが、仲裁裁定におきましては、基本給八月以降月額平均一万三千五百円、実施の月が調定案では四月でございましたが、仲裁案では八月ということになつております。なお現行といいますか、昨年の十一月、丁度国家公務員ベースアツプがございました。その十一月をとりますと一万一千八百二十四円でございました。それが今回の仲裁では一万三千五百円、なお昨年の十一月には一万一千八百二十四円でございましたが、今年四月にはその後の昇給その他がございまして、一万二千二百十四円になつております。従つて今回のベース・アツプは一〇%五、昨年の十一月に比べますると、一四%ということになつております。  なおこれによりまして、印刷におきましてこれだけの財源が要るかということにつきましては、二十八年度の総予算が四十九億一千八百五十五万八千円、そのうち給与の額が十七億二千九百十五万五千円ございます。で今度の裁定の一万三千五百円を八月以降実施いたすといたしますと、八千万円不足すると言われております。  それからアルコール専売でございますが、これも先ほど申しましたように、調停案金額金額は同じ一万四千二百円にするということでございますが、実施期がやはり八月以降というふうに仲裁では四カ月遅れて改訂するよう裁定されております。なおアルコール専売現行一万二千三百三十三円でございましたのが一万四千二百円、パーセンテージにしまして一五%余りのアツプになつております。なお財源でございますが、二十八年度総予算が三十二億二千七百十七万八千円、そのうち給与の総額が三億二百三十八万七千円、そこで一万四千二百円ベースを八月以降実施いたしますると、不足は二千二百万円、総予算に対しまして〇・七%というふうに相成つております。今のところこの二つ裁定が出ましてあと続いて私のほうで出るはずになつております。
  13. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私先ほど労働省関係の全体の補正予算並びに二十九年度の本予算について詳しく説明を願いたいと申上げておいたのでありますが、今日突然申上げましたので御準備の点もあるかと思いますから、明日の委員会の劈頭に少しとりまとめて来て頂きまして、そしてお聞きをしたいと思います。で念のために申上げておきますが、只今経費節減その他が言われておりますけれども、労働省関係で若し極端な節減をやりますと、ほかの省とは違つて基準局、或いは職安局関係、いずれもこの労働保護立法実施ということが不能に陥るのじやないかという点を私ども心配しておりますので、そういう点を中心にして一つ考えて頂きたいということを申上げておきます。  只今まで経過説明並びに報告を受けたのでありますが、御質疑がございましたら……。
  14. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 質疑と申しましても、ちよつと質疑が簡単な質疑じやないのですが、失業対策に関する件として、九州地区水害対策、先ほど失業保険法失業対策法特例実施状況等について御説明を頂いたのですが、先般の九州水害関連をいたしまして、岩屋炭鉱において事業継続不可能ということで、これは事実上でありますか、或いは形式上でありますか、鉱員の解雇が行われ、そうして失業保険をもらえるようになつているかと思いますが、これに関連をいたしまして、紛争議が起つております。そこで今の説明を伺いますと、九月一日以降ということでございますので、或いは失業保険法特例が適用になつておらんかと思いますが、水害関連いたしまする労働問題であることには間違いございません。その後或いは警察の介入、或いは参考人として呼ばれました者の中に自殺者等も出ております。この際労働省において恐らく事情を御調査のことと思いますが、御報告を願いまして、なおあとで一つ質疑をいたしたいと思います。
  15. 亀井光

    説明員(亀井光君) 岩屋炭鉱の解雇の問題につきまして、経過を御説明申上げます。  岩屋炭鉱水害によりまして操業不能になりましたのですが、基準法の第二十条の規定の但書によりまして、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた」ということの認定を、地元の監督署に認定の申請が参つたわけでございます。監督署としましても、現地の調査をいたしまして、ただ問題はその事業が継続不可能になるまでの被害を受けたかどうかという技術的な面がございましたために、監督署だけの判断では非常にむずかしい問題が起つておつたわけであります。従いまして唐津の監督署といたしましては、福岡の通産局の石炭部長に対しまして、岩屋炭鉱水害によつて今後事業が継続され得るか否か、或いはその継続が不能になるとすれば、その継続不可能の期間、その理由等につきまして、公文書を以ちまして回答を求めたのでございます。で、通産局の石炭部長からの回答によりますと、岩屋炭鉱水害が非常に被害が甚大でございまして、これの復旧につきましては資金その他の操作が円滑に参りましても、少くとも六カ月以上はかかるという回答を得たのでございまして、当時この問題は労使双方の団体交渉でいろいろ話合いが進められていた時期でございます。監督署の処置としましては、法律的な判断をすぐすることのできる立場にはございまするが、できるだけ事柄を円満に運ぶために、この労使双方の団体交渉経過を見てお互いに話合いができたところで、できればその認定の手続をとりたいという気持を持つておりました。その交渉経過を見守つていたのでございますが、七月の二十二日になりまして、両者双方の話合いがついたという通知を受けましたので、法律上の責任といたしましての監督署の認可手続を決定をいたして通告をしたわけであります。従いましてその法律的な効果といたしまして、第二十条の解雇予告或いは解雇手当の支払いの責任が使用者から解除されまして、団体交渉によつてきめられました人数の労働者というものが解雇されたというのが経過であります。  その団体交渉の結果におきましては、保安要員としまして一定の数のものを確保いたしまするが、そのほかの者につきましては解雇する、併し将来事業を再開する場合におきましては、それらの者を優先的に雇用するという取きめがなされていたようでございます。  以上であります。
  16. 江下孝

    説明員江下孝君) 岩屋炭鉱の解雇されました約千二百名の労務者に対しましては、現在失業保険金を支給中でございます。ただ水害から解雇までの期間、これは目下労働争議中で、まだ安定所のほうに申出がないということで私どもも処理いたしております。
  17. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ちよつと今の点はつきりいたしませんが、正規に連絡がないので失業保険金はまだ給付していないと、こういうわけですか。
  18. 江下孝

    説明員江下孝君) 失業保険金は正式解雇でございますから、水害特例は、あれは休業中に特別に失業保険金を出すという特例でございます。一応岩屋のほうは正式に解雇になつておりますから、解雇として正規の失業保険金を支給している、こういう実情でございます。
  19. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 労政局長の御説明といいますか、御答弁を願いたいと思いますが、若し何なら私から質問申上げて、或いは労政局長が妥当であるか大臣が妥当であるかわかりませんが、概略今基準局長から御説明がございましたが、水害によつて継続不可能として労働基準法上の特免を受けた、そうして二百数十名を除いて千何百名というものを解雇した、石炭部長の当時の見込によると、資金の円滑な供給があつても六カ月はかかるだろう、こういう回答であつたというのですが、実際に私ども聞いておるところでは、一つの切羽を除いて殆んど復旧をして炭鉱が操業し得る見込が立つておるということであります。これらの点は或いはもつと正規に通産省等の意見も伺わなければならんかも知れませんが、そうして事業再開の融資等も手配せられつつあ、るやに聞いているのですが、労働者に対して操業不可能として千何百名を解雇し、そうして復旧のために二百何十名という者を残しておる。そうして六カ月経たないうちに大体操業し得るに至つておるわけでありますが、千余名の解雇者が事業が復旧されれば優先的に採用される。これは協約によると優先的採用ということですが、恐らく当時の了解からするならば、両者話合いの上で退職手続をとり、それから失業保険金をもらい、そうして復旧を急いで復旧操業ができるようなつたら又復帰する、こういう了解の下に、言い換えますと、失業保険法特例が狙つておりますものを、現地においてその特例法の施行以前に行なつたものだと考えられるのでありますが、そうやつております間に、千余名と二百八十名の保安要員との間に感情の疎隔を来たして、或いは第二組合員と申しますか、二百八十名に対して切崩しを行なつております組合員に対して、労務主任がそんなことをしたつてようがない、この山は閉鎖なんだ、こういうことで問題が起つて参つたと聞いておるのでありますが、或いは水害、それから水害に対する復旧の見込み、或いは経過、その中から起つて参りました争議として特異なものだとまあ考えるのでありますが、これについて労働省としてどう考えておられるのか、経過と併せて御所見を一つ承わりたいと思います。
  20. 中西実

    説明員中西実君) どういうふうに考えておるかとおつしやる内容でございますが………
  21. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 では今基準局長のほうから御説明がございましたが、労政局長としては報告を得ておらんと、こういうことですか。
  22. 中西実

    説明員中西実君) 第二組合の結成されたこと、その間に両者トラブルがあり、検挙者も出たということは承知いたしております。ただどういう点についてどう考えるかということをもう少し具体的にお話頂きたいと思います。
  23. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは大体の事情は御存じだと思うのですが、私ども詳報ではございませんが、概略聞いておるところでは、十九日ですか、第二組合の切崩しを計画しておる組合員に対して、労務主任からそんなことをしてもしようがない、この山はどうせ閉鎖するんだからそんな馬鹿なことをしたつてようがないじやないか、こういつた意味の言葉が吐かれたために、感情的になりました組合員がその労務主任を囲んで云々ということがまあ起つたということで、その当時の問題を追及して二十三日ですか、未明を期して組合の事務所或いは組合の幹部等が捜索、検挙されたりいたしておりますが、第一、十九日問題が起りました原因をどういう工合考えておられるのか、それから二十三日のそれらの点についての検察の行動についても私ども多少の行過ぎがあるんじやないかと考えております。それからその後自殺なりいろいろな問題が起つておりますが、それらの基本的な原因についてはどういう工合に理解しておられるのか、それらの点について伺いたいと思います。
  24. 中西実

    説明員中西実君) 一応現地の県からの報告承知しておる程度でございまして、詳細検察当局に行過ぎがあつたかどうか、そこいらの点は更にその後の調査に待つ必要があろうかと存じます。いずれにいたしましても、解雇になるかも知れないというような話を労務の主任がいたしましたことに非常に刺戟を受けたということは確かのようでございます。まあこれは具体的な問題でございますので、いま少しく十分に事情を調査しまして、是非を申上げるなら申上げたいと、かように存じます。
  25. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 事態が労働省においても正しくおわかりになつておらんようですから、問題を提起するにとどめて他日に譲りたいと思いますが、基本的に十九日の問題が、どうせ閉山になるんだからそんなことをやつても仕方がないじやないか、こういう言葉に感情的になりました点から言つて、団体交渉の結果によつては一応継続不可能だから解雇をする、こういうことになつておるけれども、併しそれは本当に閉、山、それから解雇、こういうことではないじやないか、健先採用と書いてあるが、依願退職の願書は退職金協議の際には関係しないという文句が、私ども双方の記録の中から読み取れるのでありますが、そうすると何カ月かかるかわからんけれども、一応ここで継続不可能ということにしておいて、そして当事者問においては解雇の手続をとるけれども、再開し得るに至れば千何百名についても採用をして事業を継続する、これがこの問題の基礎になりまする了解ではないか。これは通産局関係がどういうことになつておるかわかりませんが、或いは重役会においても、或いは正規の会社の機関においても閉山という話合いは全然なかつたということです。そういうこと、それから労使双方の了解の点から言つても、問題は失業保険法特例が狙つておりますところを別な形でやろうとした、それに意に反して、そのときの了解に反してどうぜ閉山になるのだ、そんなことを言つて来ても仕方がないじやないかというところに感情的になつた問題があるのではないか、こういうよう考えるのですが、その点についてはどういう工合考えておりますか。
  26. 中西実

    説明員中西実君) 現地から聞いております現在の報告は非常に簡単でございまして、先ほどの労務主任が廃鉱になるかも知れないのでつまらんじやないかというふうに言つたのに刺戟されたという話も、本人は言つていないとこう否定しておるようなふうな報告も受けております。そこいらのいきさつは更にもう少しく調査いたしたいと思つております。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 中座しておりましたから、吉田さんの質問と重複しておつたらお答え願わないでもいいですが、今の問題でも、まあ労働省に入つておるのはそういうことを言つた覚えがないということが入つておるという話ですが、私たちが今日、昨日聞きましたところでは、御本人がそういうことを言つたことを謝つておられる。こういう実情があることは言つておることなのです。言つたからこれは悪かつたということを謝つてそれはおさまつておるわけなのですね。そういう逆な情報が労働省のほうに入つておるということは非常に私ども残念と思うのですが、それに関連して一つお聞きしたいのは、その明け方の三時か四時頃に六十人もの武装した警官が組合に来て、組合の内部を捜査してそして組合の書類を持ち去つて行つた、こういうことを労働省としてはどう考えておるか。これが傷害であつたか家宅侵入であつたか、或いは暴行であつたかという問題は別問題としまして、組合を暁に襲つて責任者もいない組合の内部を官憲が捜査して、そして組合の書類を持ち去つた、こういうことを労働省側はどういうふうにお考えになるか、お聞きしておきたいと思います。
  28. 中西実

    説明員中西実君) 問題は検察当局の態度でございますが、すでに検察当局としても労働組合或いは労働運動に対して終戦後の新らしい日本におきましての感覚を十分持つておるはずと思うのであります。それが必要を感じてやつたということになりますれば、或いはその必要があつたのではなかろうかという気もいたします。その点実は詳細私のほうとしては前後の事情がわかりません。従つて若しその点について御要求がございますれば、十分に調べたいと思います。
  29. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今の問題は私も聞いたんだが、警察の介入というものが現地の事情で必要があつたとすれば止むを得なかつたのではないかという意味局長お話ですけれども、私は労働省としてはそういう態度ではよくないと思うのです。というのは、この問題は佐賀の県会の問題にもなつて、警察が少し行き過ぎじやなかつたかということが公けに取上げられておる。従つてその労働法を保護立法として大いに守つて行かなければならんという立場にある行政指導の責任者として、そういう第三者的な見解では私は少し足りないんじやないかと思う。若し県会でも問題になつているということであれば、もう少し積極的に労働省として乗り出して、そうして事態を究明すると共に善後策を私は講じてもらわなければならん、こういう工合考えるのですが、その点を中西局長にもう少し明確に述べてもらいたいということが第一点。  それから第二点は、この山が一体再開されるのか、本当に廃山されるのかということです。廃山になるということになれば、これは又問題は別になります。僕らの見るところではどうも再開する意思があるようです。再開ということになれば、この水害という特別の事態によつてこういう工合になつて来て、特別立法までしても救済策を講じておる。その救済策は何も炭鉱の鉱業主だけを救済するのではありません。労働者も全部救済するところの広い意味でやつておるのでありますから、こういうトラブルは早く収まるような私は体制をとらなければならんと思う。本当に労働者側が悪いのか、鉱業主側が悪いのか、この点を私は究明すべきだと思います。ただできた事態の議論だけをやつておつたのではおよそ意味がないと思います。その点をどういうふうにお考えになりますか。
  30. 中西実

    説明員中西実君) 問題は非常に具体的な山の問題でございまして、出先の佐賀県には労働関係の主務部、更に労政課がございまして、結局こういつた現地の実情の認定の上に立つ問題は、やはり一応現地でそれぞれの立場で十分なる調査の上で処置をとるべきだと存じております。そこで私のほうとしましては、出先からの報告によりまして、一応出先機関が我々の常に申しております根本の行政の方針によりまして然るべく善処しておるというふうに確信しておるのであります。なお更に詳細な報告を取りまして、現地のやつておりますところに遺憾がありますれば、十分是正をいたしたいと思います。いずれにいたしましても、これは事実を十分究明しませんと結論が出ませんので、その点御了承頂きたいと思います。
  31. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) どうもこういう紛争が起きて非常に両者間がいきり立つておる問題について労働行政のスピーデイということについて非常に私最近疑義を持つているのですがね。人と人との関係だからですよ。通産省がやつておるよう産業行政と違つて、もつと機敏にやつてもらわないと工合が悪いように思うのですがね。まあ過日来の基本契約人事条項の問題、その他いろいろな問題、ずつと私が労働委員長になつてから眺めておりますとね、こう申上げると甚だ失礼だけれども、非常にスピードが落ちているのじやないですかね、というか、もう少し積極的に労働省が乗り出してもらいたいと僕らは考えるのだが、その積極性に欠けているということですね。従つて中西労政局長が言われた、労働省根本方針によつて善処していると言われたのですがね、その根本方針というものを一遍聞かしてもらいたい。
  32. 中西実

    説明員中西実君) 論議する気持はございませんけれども、大体労使の争いに我々が介入することは極力差し控えたい。最近はどうも私のほうから言わしますると、いろいろな事件になぜこう入らないのか、そう言われておるような感じもするくらいなのでございます。我々としましては成るべく個々の問題には介入しないで、そして勿論行過ぎがございますれば、これは一般論といたしまして施策を講じ、或いは注意をする。それから個々の問題の解決につきましては、司法事件でありますれば、これは勿論検察当局でありますが、争議の解決でありますれば、労働委員会という別の機関がございます、これが担当する。できるだけやはり行政官庁というものは個々の問題には余りタツチしないほうがいいじやないか。個々の問題のいろいろな事項を参考にいたしまして労働行政のその後の行き方にいろいろ考えられるところがありますれば、これはそれを参考にして施策を考えて行く。こういう立場を一応とつておるわけであります。その点が大体前から労使から言われておる態度ではなかろうかというふうに考えております。
  33. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いやその労使の問題に成るべくタツチしないで行くという根本方針は私も理解しますし、そうあつて欲しいと思いますが、それは問題ありませんけれども、ここで私が問題にするのは、九州の今度の特殊な大水害によつて炭鉱が非常な被害を受けた。国の方針というものは国会で十分反映されたように、これを如何にして早く旧態に復旧するかという方針、その復旧する方針はこれはもう確定しておるわけです。そのためにあらゆる労働関係、通産関係、その他各省の特別な立法措置を講じてまでも救済に乗り出しておるわけです。それを一企業者を救うという意味、或いは一労働者を救うという意味でなくて、これは大きな九州が受けた被害の総合的な復旧を念願にしているわけです。従つてそういう状態の中で、そのどさくさの中で、一企業主が特別な考えを持つて何らかのことをやろうとするような動きが若しあるとすれば、これは許せないと思うのです。そういう意味については労働省労働省としての実情調査の結果判断をして、そうして通産省の指導が悪ければこれに対してのいろいろな意見交換もされることも結構でしようし、何かもう少しやられることが必要だと私は思うのです。ただ今言われたように、労使の問題に介入しないという一つの原則だけで放置されるにしては、余りにもこの問題は一岩屋鉱山の問題だけれども、重要な問題だろうと、そういうふうに私は考えるのですが……。
  34. 寺本廣作

    ○寺本広作君 議事進行について。委員長の先ほどからのお話で、労働行政のスピードが足らん、そうして労働省が非常に積極的でないのではないか、この事件を取上げられた罪員長の御感想は個々の事件から一般論に亙る問題じやないかと思うのです。私も大体委員長と同じ感じを持つております。併しこの問題は、丁度この事件を契機として現在の労働行政組織そのものをやはり検討して見る委員会としては必要があるのじやなかろうかと思います。と申しますのは、現在の労働行政は地方自治の問題として扱われておる。予算も労働行政のための必要な予算という特別のものが行くわけでなく、平衡交付金の中に入つておるはずだということで、労働課を置いておる県もあれば、置いてない県もある。指図も何もない。ただ一般方針を中央から流されるだけであつて、通産行政その他のように、打てば響くような仕組になつていないという行政組織の欠陥も非常にあろうと思います。幸い委員長の要求で明日ですか、労働省予算についての一般的な報告を求めるということもありますので、その際併せてそういう点を御検討頂き、委員会として検計するということになれば、私どもも感じておるそういう不満の本質がつけるのじやないかと思います。その点今の丁度問題が個々の問題から一般論に入りかかつたように思いますので、私としては問題が一般論に入る限りは一般論として取扱うようにお願いいたします。
  35. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その点は私わざわざ予算のことを申上げたのはその考えだつたので、明日もう少し突いて、当委員会として大蔵当局にやはり要請すべき点があれば遠慮なしに要請したいと私は考えております。その点はその点としまして、吉田君が質問から提起された本件の問題は、私実は一昨日でしたか、国警へも行つたのです。それから国警のほうの調査も若干の資料は来ておるようですけれども、佐賀で県議会を中心にして起きておるようなああいう深刻な空気というものはまだそんなに届いていないように思うのです。従つて恐らく吉田君も一緒に行きましたので、今問題にされたのだろうと思うのですが、労働省は緊急に一つ現地のほうのもつと実情を把握できるようにして頂きたい。労使間の問題というだけでなく、水害の復旧ということを観点にして一体どこにウエイトがあるのかということを中心にして調べて頂きたい。
  36. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあ普通の労使間の問題として労働省は理解されておるようですけれども、普通の労使間ならばこういう問題は起らないと思うのです。いわば九州の山奥、佐賀の山奥ですが、山奥で前時代的な経営或いは管理がやられておるところにこういう問題が起つておる。そこで簡単にいうと、例えば失業保険特例法を適用すればそれで問題はなかつた。ところがそれを知らないでか、或いは実施以前だつたということもありましようけれども、別の脱法的な行為をやろうとしたところに問題が起つた原因があると思うのです。而もそれに組合内部の問題、或いは組合と会社との問題に警察が百何十名ですか、暁に共産党の七幹部の捕物じやないですが、大規模な捕物陣を敷いて十一名引張つて行つた。そうしてその取調が当であつたか、不当であつたか知りませんが、自殺者も出た。こういう問題も起つたので、そこで私はこの日本に残つております中小企業というか、中でなくて、炭鉱にしては中以上ですが、大の下か知りませんが、そういう所で起つたこういう労使関係というものについては、それは労使の解決に任せると、こういうことでなくして、正規の法関係に乗せるという努力が労働省としてもなさるべきだと思うのですし、それから私どもとしてもそれに多少の協力というものをすべきじやないかと思うので、問題を実は取上げたわけなんです。実態はよくわかつておりませんし、それから経過の中から考えましても、或いは明日続けて質疑をするというわけに参らないかと思いますので、後刻と申しますが、日程によりますと、三、四と鬼怒川けい肺病院の視察等もあるようですから、その翌日五日に委員会をお開き頂いて、関係者を最小限に呼んで一つ審議をすると申しますか、事態を明らかにし、そうして若し合法的な解決に資し得るならば資して頂く、こういうことに願つたらどうかと思いますが、委員長にお諮りを頂きたいと思います。
  37. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今の吉田君の御発言は、現地から参考人を呼んで聞きたいということですか。
  38. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 最小限呼んで……。
  39. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  40. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をつけて下さい。  一時半まで休憩いたします。    午後零時四十分休憩    —————・—————    午後二時三十二分開会
  41. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から再開します。  午前中の決定に従いまして、これから九州岩屋炭鉱水害復旧に関連する問題について通商産業省、並びに若干紛争が起きて問題になつておりまするので、その点については国家地方警察本部から説明を聴取したいと存じます。お見えになりましたのは、通商産業省の説明員として石炭局生産課長の種田徹郎君、国家地方警察本部の警備部警備第一課長三輪良雄君でございます。先ず三輪第一課長から岩屋炭鉱において紛争が起きましたことについて、警察官が現地において出動し、若干の従業員を逮捕、訊問せられておりますので、その状況について一通り説明を承わりたいと存じます。更に本件は佐賀県の議会においても問題になつておるようであります。その他警察が持つておられる現地の各般の情報等も併せて御報告を願いたいと、こう思います。
  42. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 岩屋炭鉱の争議に伴いまして、発生をいたしました不法行為に関することを主として御説明をいたしたいと思います。  岩屋炭鉱は佐賀県にございますが、六月の二十六日の水害によりまして操業不能に陥りました。その後七月六日より組合会社側との間で、この水害対策について団交を重ねておりましたようでありますが、七月二十二日に一応了解点に達したということで、会社側から保安要員を除きました全員に退職願を出させております。その際百名ほどが退職願を出しませんで、これに対しましては二十七日に解雇通知を行うと共に、保安要員として残ります者の氏名二百八十名を発表いたしております。当時組合といたしましては、残留者の労働条件その他につきまして会社側交渉をいたそうということでありましたが、会社側が異議があるということでこれは蹴つております。このことにつきましては、組合側から不当労働行為ということで九月二十四日に地労委の現地斡旋を行われておるようでございます。その後残留いたしました者が、会社側態度がそういうことでありますので、残りました者が第二組合というような形で組合を結成をいたしまして、これが会社側交渉を始めたようであります。ところが残留者を除きました、いわば第二組合に対しまして第一組合と申しますか、その第一組合におきましては、第二組合会社側が結託してそういうことをやるのだということで非常に激昂いたしまして会社側並びに第二組合の幹部に圧力をかけて、闘争がだんだん激化して参つたようでございます。そういう際に九月十九日でございますか、数日前より第二組合幹部或いは会社幹部の家等にピケを張りまして監視をいたしておりました第一組合の人たちに向つて、中野という労務主任が、この山は廃山になるかも知れないと言つたということから組合員が非常に激昂いたしまして、労務課に約七百名ほどが押しかけたというのであります。九月十九日午後三時頃に組合側ではスピーカーですぐに労務課前に集合してくれという放送をいたしまして、三十分後に約四百名が集りましてその廃山になるかも知れないと言つたという中野労務主任に対して、廃山になると言つたその理由を大衆に説明しろという要求をいたしております。併し労務課長がその必要がないということで、みずから大衆に向つて解散をしてくれということを言つたのでありますが、周囲から組合員がいきなり課長の右手を掴みまして前に引いたというために、課長がよろめくところを押倒しまして、周囲の大衆が総立ちになつて、その周囲のものが課長の両足を抱きかかえ頭を下にいたしまして、丁度逆さまに吊し上げるという恰好になつて、笛太鼓を鳴らし、大声を挙げながら、大勢の者が胸、頭、足、首等を毆打し或いは突くというような暴行を加え、約三メートルぐらい引ずりまして、瓦礫を績んであるところに寝かせて暴行を加えたのでありまするが、課長は隙を見て脱出をしたということが第一の事件でございます。その日の午後九時頃に、第二組合員の平松昭夫という者が、その労務課内の状態を外から窓越しに見ておりました。ところが第一組合の一部の者に発見をされまして、犬がいるというようなことを言つて怒鳴られて、二十名ほどの群衆がその本人を連行しようということがありましたので、本人が急いで逃げ出しておる。これを追いかけて捉まえて、棒その他で治療約十五日間の傷害を与えております。これが第二の事件でございます。更に九時四十分頃、第二組合の森下という人が他出先から帰つて参りましたが、ピケ隊がおりますので家に入れ左い。同じく第二組合員の岡という人の家に行つて話合つておりましたところが、第一組合員約二百名ぐらいが押しかけまして、表戸、裏戸を蹴り、叩き、最後にこれを開けまして、七、八人の者が屋内に入つて、逃げる二人を腕、腰等を捉えて、約三百メートル離れた労務課の前に連行いたしまして、吊し上げの状態において、打つ、蹴る等の暴行を加え、治療約二週間の傷害を、与えたと思われる事件が発生したわけであります。  事件の大要は、そういう三つの事件が起つたわけでございますが、警察といたしましては、もともとこの争議が水害に基きまして殆んど全員を解雇するというような特殊な態様から起りましたことで、非常に深刻な問題を蔵しておりますることから、もとより平素から労働争議そのものには介入をしないという立場を堅持いたしておりました。そうして事態が非常に悪化することを恐れて見守つておつたわけでございます。そこで八月の二十三、四日に、第二組合の幹部の宅を取巻いて大勢の第一組合員が気勢を上げました。そのあとで地元の署長から事が起るといけないということで警告を発しまして、その際はそれで収まつております。九月の十六日になりまして、デモが行われ、事務所、工作室のガラス戸であるとか、或いは第二組合の山崎という人のガラス数枚を破壊をいたしまして、翌十七日、第二組合長の山下という人の家の板塀の扉その他の破損をいたしております。これらに対しましては、いずれも組合幹部に対しまして厳重に警告をいたしたわけでございますが、なお越えて十八日にも、労務事務所及び三坑の石丸、中野、五坑の井上、花井というような人たちのガラス、雨戸、板塀等を破壊をいたしております。又連日のようにデモを行い、或いは小集団を作りまして第二組合員の宅を訪問をし、そうして第二組合を脱退をし、すべての権能を第一組合に渡すという意味の脱退届に捺印を求めておつたのでございます。又小学校或いは浴場等でも、子供に、犬の子であるとか、裏切者であるとかいうような罵声が盛んに浴びせられておつたそうでございまして、県の警備部長を隊長としては地元の署まで派遣をいたしまして、井手組合長そのほか組合幹部等に警告をいたしまして、事態がこれ以上悪化するということになると、遺憾ながら警察としては出動せざるを得ない、どうか組合幹部においてしつかり統制をして頂きたいということをお願いをいたしております。又炭労の九州本部から副執行委員長その他のかたがお見えになつておりますので、このかたがたにも同様に警察からは御協力をお願いをいたしておるわけでございます。そこで当時といたしましては、組合幹部のかたも炭労の九本代表のかたも御了承を頂いて、十分に注意するということでお話がございましたが、越えて十九日、先ほど来申しました三つの事件の起りますような険悪な事態が起りましたので、第二組合の幹部の家族は非常に身辺に不安を感じまして、警察に対して保護を願い出た者がありまして、それらの者に対してはそれぞれ警察署等で保護をいたしておつたような事態もございます。事件のありました当日午後九時頃に井手代議士も駆けつけて頂きまして、極力説得をして頂いたようでございますが、集まりました第一組合のかたがたは解散をいたしません。十一時三十分頃に招電によりまして九州本部から代表が駆けつけて、不法行為に亙ることがないように注意をして頂いておりますが、これ又そこで解散をするということになりませんで、二十日の午前零時頃、つまりその晩の午前零時三十分頃に至りまして、それまで第二組合幹部の岡、森下という二人を取巻いて、第二組合の結成の経緯を聞くということで吊し上げを行なつておりましたが、漸くその時刻にこれを打切つてデモに移りました。警察はその二名のかたを早く解放するように警告をいたしておりましたが、そこで二名のかたを保護をいたしまして事情を調べましたところが、不法監禁、暴行の容疑がありますので、重ねて組合長を招致をして、その事実を告げております。そこで大衆は解散をして頂くように警告をいたしておりましたが、この際は警備の実際に実力行動に移る直前に解散を見ることになつたわけであります。その後九月三十日まで連日デモの届出もありますし、地元の空気はそういうふうに険悪の一途を辿つておりまするので、先ほど申上げましたような三つの事件につきましても、警察としては、この容疑のある事実を放置しておきますことが却つてその後更に事態を悪化させる虞れがありますということを痛感をいたしまして、それから組合幹部なり、他の御心配頂くかたの統制の限界をすでに越えんとしておるというようなことから考えまして、又実際に逮捕に向いました際に、その附近数分を出でずして組合のかたがたがすぐに集まれるような事態でもありましたし、又会社、第二組合の幹部、或いは警察署等に対しましても、厳重な昼夜を分たずピケ隊が監視をしておるというよう状態から考えましても、これらの容疑者の検挙をいたします際には、集団による公務執行妨害その他再び不幸な事態の発生が予想されますので、警察といたしましては、二百八十名ほどの動員をいたしまして、而も検挙はいつも私服で行くわけでありますけれども、誤解を避けます意味でそれぞれ制服員をつけ、その際四ケ所の押収をやつておりますが、その場所にも制服一個小隊を外に待たせるというようなことで、検挙、捜索、押収をいたしております。丁度豪雨の際であつて、ピケ隊も家に入つておつたというような事態も結果から言えばあつたようでございまして七、八十名の人たちが出て来た以外には、それ以上の抵抗等を受けることなく検挙した次第であります。その際に何故組合事務所の検索をやつたかということについても、その後御注意を受けておりますが、先ほどちよつと触れましたように、第二組合の各人に対しまして、第二組合を脱退するという委任状を相当におどかして取るというような事態を起しておりましたので、そういうことに肯んじない者たちがそういう暴行を受けたというようなことが考えられますので、そういつた証拠になりますようなものを捜索いたしますために、その組合を検索いたしましたような次第であります。合計そこで検挙いたしました人員は十一名でございますけれども、一人婦人がおりまして、これはすぐに釈放いたしました。警察で調べまして、検察庁に招致いたします際に三名、その後更に一名身柄が釈放になつておるというわけでございます。  その後委員長の御指摘のございましたように、佐賀県会におきましても、この問題について深い関心を示されまして、現地警察隊長に対しまして、いろいろ御質問、御注意等がございましたようでございます。その点はまあ第一組合と第二組合との合法性の問題でありますとか、或いは任意出頭で調べる方法があつたのに、なぜ穏やかな方法をとらなかつたのかとか、或いは吊し上げというのはどういう程度を合法的に、或いは非合法の限界と考えておるか。或いは容疑者の関係のない場所なり、書類なりを検索をしておるのはどういうわけかというような点でありますとか、傷害事件におよそ関係のないものまで押収しておるとか、或いは取調べが苛酷であつたのではないかというような御注意もございます。  なおこれに関連をいたしまして、甚だ遺憾なことでございますが、容疑者の一名でございます白尾という人のお父さんでございますが、このかたを、二十七日に検察庁の御連絡がございましたので、任意に警察署にこのお父さん夫婦においでを願つて、任意に調べをいたしたわけでございますが、その日の夕刻、丁度ついでがございまして、警察の車で七時半頃お宅に送り届け、別に変つた様子もなかつたのでございますが、翌朝裏で自殺をしておられるのが発見をされたような始末でございます。これに関しまして、取調が苛酷であつたかどうかという点については、現地警察の隊長も非常に心配をして調査をいたしましたが、そのような事態はなかつたというふうに私どもは考えておるわけでございます。併しその自殺をした際に、自宅のガラス戸に残念というふうな文字を残したというふうなことでございますので、なおこの点については更に詳細に調査をしなければいけないというふうに考える次第でございます。  主として争議に関します不法行為並びにそれから起りました不幸な事件につきまして、御報告をいたしたような次第でございます。
  43. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) この国警としては、起きました事件について、警察側としての大体理由、経過等は伺つたのですが、この問題が起きて来た岩屋鉱山の水害復旧についての企業家のほうの考え方とか、或いはそれに関連してのこの人員整理のやり方だとか、そういつたようなものの調査は進んでおりませんか。
  44. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) この点につきましては、結局まあ私どもで調査をいたしました、と申しましても関係労働省、或いは通産省の出先のかたがたからの御意見が非常に強いわけでございまして、その会社側のこの水害あとにおける措置そのものが、遺憾な点があつたかどうかということにつきましては、警察側として独自な調査をいたしておることはないようでございます。私ども又職責上、水害がどの程度の被害を与えたものであるか、これが廃鉱、休鉱に至るべきものであるかどうかということについては、その判断の能力も権限もございませんので、関係当局の御判断その他に待つよりほかにないというふうに考えておる次第でございます。
  45. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今通産省の石炭局長は今月は休んでおるわけです。それから生産課長は今本省にいないので、外出中らしいのですね。盛んに行先を今調べてくれているそうですから、まだ間に合いません。ちよつと速記をやめて。    午後二時五十八分速記中止    —————・—————    午後三時三十六分速記開始
  46. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。
  47. 阿具根登

    ○阿具根登君 国警のほうにお尋ねいたしますが、今言われたことと課長の説明が大分違うようですが、そのほかいろいろあつた思うのですが、一番私がお聞きしたいのは、この問題について二十二日の明け方組合の事務所を武装警官が六十名で急襲された。いわゆるそこに責任者を呼ぶことなく組合の中を捜査された。これは教唆とか扇動とかの破防法で使われておつたあの理由で組合の内部を捜査されたかどうか。今まで労使間の争いのあつた場合に、組合の事務所を捜査されたということは私は聞いたことはないのですが、どういう理由で捜査されたか。先ほどちよつとお触れになりました第二組合云々ということは、これはお聞きしたのですが、その程度のもので組合事務所を夜明けに六十人もの武装警官が行つて、而も責任者を呼ぶことなく、自由に組合事務所を踏みにじつて、そうして組合の書類を持去られた。これに対してはどういうお考えであるか、これを第一聞いておきたいと思うのであります。
  48. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 只今のお尋ねでございますが、組合事務所に責任者が立合わなかつたということでございましたが、その第一点は組合長が立会つておるという報告を私どもは受けております。それから第二点でございますが、明け方、夜明けに大勢で行つたということでございますけれども、これは容疑者を検挙いたします上に本人の必ず在宅をされる時間、並びに先ほどもちよつと触れましたが、これは大勢で行つたということにも関連するわけですが、その当時非常に険悪な空気が包んでおつたということでございますし、住宅がいずれも接近をいたしておりまするので、そういうことがありますれば、もう数分を出ずして大勢の者が集まり得る状態であつたということで、特にそういう時間を選んでやつたものと思います。又大勢で参りましたというのは、そのように現地におきまして公務執行の妨害を受けるということを排除する意味でございます。又武装警官ということでございましたが、そういうことでお言葉を返すのは変ですけれども、特にそういう際に拳銃を使うというようなことはあり得べからざることでもありますし、万が一の不測の事故を予想いたしまして拳銃は持つてつておりません。それから通常そういう者は私服で行くわけですけれども、何か誤解を受ける心配がございますので、そこで一個小隊の約三十人ほどの制服警察官を外へ置いた、そういうことで恐らく中を捜索いたしましたのは私服員がやつたと思います。  それから何のためにそういうところで検索をしたかということでございますが、現地の報告によりますと、捜索令状は第一組合に全組合の権能を委任した委任状と申しますか、そういう強要をしたということでありまするならば、そういう証拠があるであろうということで、組合事務所にそういう書類の捜索を差押え物件として令状を受けて行つたようであります。なお組合員の何について組合の事務所を捜索したというような事例がないということでございますが、正確に私も事例を記憶いたしておりませんけれども、事が単に個人への犯罪行為が疑われますような場合には勿論そういうよう組合事務所は関係ないということでございますけれども、組合活動として不法行為が行われたということになりますと、誰がそういうことをきめたか、いわばこれは言葉で言えば教唆ということになりましようけれども、そういう方針をきめた責任者が一体他にあるのかどうか、実際にやつたというものがどの範囲でやつたのかというようなことが、それ以後裁判上も問題になりますので、そういうことで組合として不法行為がありました際に容疑者を検挙いたしますと共に、そういう場所を捜索した事例は他にも数々あるというふうに考えております。
  49. 阿具根登

    ○阿具根登君 私もあの事務所の現場は知つておりますから、三輪課長が言つたように社宅の真中にあつて、そういう懸念はこれはあると思うのです。併し第二組合ができたから、或いはそういう教唆の疑いがあるからいつて組合を捜索されたということは聞いておりませんし、組合長が来たのは捜索されたあとに見えておる。或いは捜索されておるときに見えておる。こういうことをはつきり私は聞いております。それからそれならば第二組合の事務所というか、或いは第二組合組合長の宅というか、それは捜索されたかどうか、いわゆる第一組合から言えば、いろいろそういうよう組合の規約に照して、やめた者は首を切るぞというような脅迫を受けておるというようなことを片一方では言つておる。片一方では第一組合からそういう脅迫を受けているということを言つておる。それを第二組合のことだけ取上げておられるが、第二組合の事務所も捜索されたのか、それをお聞きしたいのと、それから最初労務課長を三メートルか五メートル引ずり廻して逆さに吊し上げたというようなことをお聞きしたのですが、私は先ほどまでこの院内に居合せた井手代議士と一緒におつたのですが、井手代議士は朝の三時半まで労務課長と話しておつたということを言つております。そういう暴行を受けておつたならば、井手代議士にもそれは相当話されるはずです。ところが井手代議士は全然そういうことはなくて、仲に入つて、労務主任が廃鉱すると言つたことは、これは間違つておつた、まあそういうことを言われて了解がついて帰られた。こういうことを井手代議士から聞いたのですが、非常に飛躍されたような感じがするですが、その二点をもう一つお聞きしたいと思います。
  50. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 捜索いたしましたのは、第一組合の事務所ほか三カ所でございますが、第二組合の事務所若しくは第二組合長の自宅というものは捜索をいたしておりません。と申しますのは、今回の犯罪の容疑というものがいわゆる第一組合の側に起きました暴行傷害というよう事件、そのなぜ起きたかという原因に関連して捜索をいたしましたので、おのずとそれに直接関係のある場所だけの令状が得られたのだろうと思います。ただ第二組合と第一組合との間で先ほども副組合長さんがおつしやつたように、委任状の取り合いになつておるというような事情は、私の聞いております中では承知をいたしておりませんので、そういう点につきましては、なお現地についてよく調査をいたしてみたいと思います。  それから先ほどちよつと触れましたが、佐賀県の県会におきまして、その問題についてもたしか御質問があつたかと思いますが、第二組合のほうから第一組合に対する暴力行為があつたが、それは僅かに三時間で釈放しておる、片手落ちであるというよう意味の御質問がありましたが、それに対しまして、この際隊長としては、第二組合といえども不法行為があれば断固として取締るに躊躇しないということでございますし、その具体的な第二組合側の暴力行為については、なお未だ犯罪の容疑が警察として令状を頂くまでになつていないというふうに考えられるわけであります。  それから吊し上げの問題ですが、現地におられたかたがたの話であれば、これは確実なわけでありましようけれども、私どもに入りました報告によりますと、先ほど概要を申上げたような次第でございます。これらはすでに検察庁の手に渡つて調べてございますので、先ほど申しましたのは、これは警察側としてそこで目撃をいたしたものとか、或いはまあ警察官等が見ておつたのでございますか、その他いろいろ物的人的な証拠から大体こういうことだという容疑を以てやつたということを御報告いたしましたわけでございまして、具体的にそういうことが本当にあつたかどうかということについては、なお検察庁、更に裁判所の方向で御判断を願うほかないと思うわけであります。
  51. 阿具根登

    ○阿具根登君 三輪課長に申上げたいと思いますことは、どこの組合を見ましても、こういう騒擾でも起るような場合に組合幹部が一番心配するのは暴行事件であります。どこの組合でもこういう暴行事件が起ることを一番組合の幹部は心配して、そうしてこれをとめておるのが実情でありまして、この間のことを私たちが聞いた範囲内におきましては、その夜中の三時半に至るまでも、四時半に至るまでも組合の幹部は暴行傷害等のないように身を以て庇つておつたということを聞いております。そうして、集まつた人に絶対手出しをしてはいけない、こういうことを盛んにやつておつたということは、これは殆んどのかたが認めておられると思う。それを警察のほうは何か組合が示唆、扇動、教唆というのですか、そういうようなことをやつてこういう騒擾を起したのだというような見解を以て組合を捜索された、こういうふうに私はお聞きしたのです。そういうように解釈しておいてよろしうございますか。
  52. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 先ほどお答えいたしましたのは、実は二つの部分に分れておるのでございまして、今回の事務所を捜索いたしました内容は、多分令状にもそういうことになつておつたと思うのでございますが、委任状を強要して取つた、そうしてそれに応じなかつた者が暴行を受けたというような一連の関係が予想せられるといたしますと、そういう関係の容疑の資料があるかということで捜索をしたように思うわけであります。暴行そのものを教唆したかどうかという問題につきましては、先ほどお尋ねのうちに、組合員を検挙した場合に組合事務所を捜索することは聞いたことがないというお尋ねでございましたので、一般論を申上げたわけでございまして、この事件に関しましては、先ほど具体的に申上げましたような事例で令状を頂いておるわけでございます。
  53. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう時間が余りないので私質問できないのですが、第二組合と言われるものも現在また三四十名の人が残つておると私は思つております。ところがこの事件になつておるのは僅か一名か二名ですね。でその人々がたまたま第二組合員であつたために、そういうように警察は見られて、そうして組合の事務所を捜査されたことが、それがそういうような教唆であり扇動であり、或いはそういうよう考え方でやられるとするならば、今後の組合はこういう問題が起るたびに、組合というものは組合の中を警官に捜査されるのだと、こういうことを考えるならば、これは非常に大きな問題だと私は思うのです。  それからもう一つは、自殺された白尾泰蔵という人は五十数歳の人で、全然それに関係しておらなかつた。而も自分の家におつて食事をしておつた。ところがそういうことがあつたので、その怪我をした人を自分の家へ連れて行つて介抱してやつた。ところがその人が呼出されて十時間にも亙り何か取調べを受けた。それがどういう取調べであつたか私たちわかりませんけれども、事実はその人は残念という字を残して死んでしまつた。これに対して行過ぎがあつたとは思われないということだが、何ら考えられるところはないのか、通常の普通の人が儀か一日足らずの間に自殺をするというようなことになつて来れば、相当言うに言われないようなことがあつたのではないかと、こういうよう考えるわけなんです。而もその人が暴行を加えておるかないかいざ知らず、その人は五十数歳になつて非常におとなしい人である。にもかかわらず自分の家で食事をしておつた、こういうことがはつきりしておるわけですが、それに対してどういう容疑で十時間も留め置かれたか、或いはどういう調査をされたのか、この点をお聞きしたいと思います。
  54. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 白尾泰蔵さんはお話通り、この不法行為事犯については直接の御関係はありません。ただ先ほどもちよつと申上げたかと思いますが、泰蔵さんの息子さんが容疑事実ありということで検挙を受けたわけでございますが、その中で先ほど副委員長さんのおつしやつたように、その傷害事件が起きたときに家で親と食事をしておつたという話があつたわけであります。ところがその他の警察で当時知る限りの材料では、そういうことが出て来ないということで、参考人として白尾泰蔵さんにおいでを願つて、本当にその当時一緒に食事をしたかどうか、これは親子の間でございますから、恐らくその当時家にいたというのが通常だろうと思いますが、警察的に見ますというと、これはかばつておるものかどうかということは白尾さんのお父さんのおつしやることと、息子さんのおつしやることと別々に聞いて、それが全然かけ違つたことを言つたというのであれば、これは単にかばうために言つたに過ぎないという心証を受けるわけであります。そういつた趣旨のことを聞いてみたいというので、これはいずれにしても同じですけれども、検察庁から警察のほうへ前日にそういう電話の命令がございまして二十六日朝の九時四、五十分頃に白尾泰蔵さんの御夫婦が受付においでになつたわけでございます。午前中は検察庁から警察で下調べしてくれというお話があつたようでして、お父さんのほうは幹部の宿直室、お母さんのほうは会計室なんかに分れて両方で調べをいたしましたわけでありますが、十時頃から調べまして零時三十分ですから、約二時間ほど調べて零時半から二人で署外の飲食店で食事されたようであります。一時四、五十分頃に又出頭されて今回は検察庁のほうの小宮という副検事がお父さんのほうは調べた。約三時間で終りまして、五時頃済んでおるのですが、奥さんのほうがまだ調べが若干残つておりまして七時頃までかかつて済んだので、白尾さんのほうはこれを待合せまして、丁度捜査課のバスがそこにおつたそうでありますが、これに乗つてもらいまして、七時二十分頃に家へ帰つてもらつておるわけであります。成るほど到着をされた時刻から帰られた時刻までの間は約十時間でございますが、その間特に参考人のことでもありまするし、大声を上げるとか、頭を殴るとかいうようなことが行われたというふうには現地隊長の調べでも考えられておりません。併しいずれにいたしましても通常のことではないわけでありますので、いろいろ現在調査をいたしております。これはそういうことがあつたからだろうという責を他に転ずる趣旨ではございません。そういう事実があつたということをただ申上げるわけでありますけれども、泰蔵さんの娘婿に当られるかたは第二組合員だということもあるようでございます。白尾さん並びに今度検挙になりましたその息子さんのほうは第一組合員として解雇せられている。これに反して娘さんの御亭主は第二組合員であるというような事情、或いは白尾さんが帰宅をされたあと、第一組合の幹部のかたが十一時過ぎですか、大分遅くまで話しておつて帰られた。恐らく警察でどういうことを調べられたかということであつたと思いますが、そういう事実があつたということ以外私の知る材料はございません。警察といたしましても非常な、いずれにしても遺憾なことでございますので、なおこの点につきましては現地の警察としてできるだけ事情を調べるようにいたしたい、かよう考えているわけであります。
  55. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 三輪課長にちよつと私一つお尋ねいたしますが、実は佐賀の国警でやはり組合関係で問題のある捜査のやり方をせられているのがもう一件あるのです。それは多分あなたも御承知かと思いますが、当時電産で参議院議員に立候補した八木という人を逮捕されたことがある。このときも実際の事故があつてから二月ぐらいたつてからだと思いますが、傷害というものが全然ない。ただ被害者が二月ぐらいたつてから政策的に告発か何かしたことについて、寝込みを襲つて逮捕したという事件がありまして、当時私からも検察庁に伺つたことを覚えておるのですがね。佐賀の国警の動きそのものが若干行過ぎのきらいがあるのじやないですかね。
  56. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) どうもそういうお尋ねだと甚だどうもお答えがしにくいわけでございますが、私どもも特別に佐賀がそういうことで調べ方が悪いのじやないかということは考えておらないのであります。只今の御指摘の事実は詳しく検討いたしておりませんので、どういうことでありましたか、事実をつまびらかにいたしませんけれども、いずれにいたしましても今回の事件が起りましたことは、これはもう佐賀のみならず、私ども全体といたしまして、これはもう警察が無関係だというようなことを申すわけではございませんので、事情をできるだけ調べますと共に、今後警察がいやしくも不当な調べをしたということによつてこういうふうな事故が起るようなことは、これは今回がそうだということを申上げるわけじやございませんが、絶対にそういうことがないように十分注意して参りたいというふうに考えます。
  57. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) まあ私自身いろいろこういうことについて若干の知識はあるのですが、逮捕せられたときに本人が、まああれだけのことをやつたのだから止むを得ないというので大体了解する場合と、非常に腹を立てて怒る場合と、この二色あるのです。やはりそれは良心から出ておると思うので、やはりこういうことが社会的な問題に発展して来るような場合はそれは大体私は後者の場合だと思うのです。特に東京とか大阪とか、こういう労働問題でも相当はつきりした労使の対立が出ておるというような所はもつと問題の扱い方がありますが、とにかく佐賀とか或いはその他労使間の問題については割合に未成熟といいますか、そういうような地帯でこういう問題が起きるということは、これはやはり労働省のほうも私は考えてもらわなければいかんと思うが、国警のほうにおいてももう少し慎重に私はやつて頂く必要があると思うのですが、これは東京なんかでこういう事件が起きれば、或いは大阪で起きれば、それぞれ資本家は資本家の団体、労働組合は労働組合の団体でこれはすぐに問題になつて、決して問題をうやむやに葬ることはないと思うのです、筋の通ることについては。こういう僻陬の地であつた場合には、これは若し不当であつたとしてもやられ損、やり得というような形になりがちなんですね、そういう点はよほど私はこの事件は未だ徹底的に調べているわけじやございませんから、これを断定して申上げるわけじやありませんが、少くともそういう精神で進んでもらわないと問題を徒らに紛糾させることになるのじやないか、こう考えるのです。
  58. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 御注意としては十分身に滲みますので、そのように帰りまして長官にも申上げ、機会あるごとに全般に伝えたいと思います。ただこの問題は先ほども触れましたが、炭労の九州本部からもいろいろ御心配して出て頂いておりまするし、先ほどお名前が出ました代議士の方もいらつしやいますので、事がうやむやに済むとは考えておりませんので、この具体的な事実につきましても私どものほうも十分責任を持つて調べてみたいというふうに考えます。
  59. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 お話を聞いて見ますと、傷害或いは不法行為、暴行というお言葉が言われておりますけれども、衆議院の井手君がそばにおつたということで、或いは暴行傷害と課長が言われることはどういうものであつたということは大体明らかであると思います。その点は検事さんの報告によるほかはあなたとしてはないと思いますが、併し全体のいきさつは先ほど来のあなたの報告、それからその他組合組合長としての発言でも大体おわかり頂いたと思いますが、そこで警察の発動が第二組合員の要請或いは会社側からの要請、こういうものによつたという点はこれはお認めになると思いますんですが、そこで労働争議の中に警察権が介入した動機が、第二組合員なり或いは会社側の要請によつたという点をお認めになりますか。
  60. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) その問題につきましては、佐賀県議会における御質疑の中にもございましたから、それで御承知を願いたいと思いますが、告訴状が出されたので検挙したのではないかというようなことがございますが、これらはそうではなく、警察が独自の捜査で違反事実を認めたからだということを言つております。先ほど来御説明いたしましたように、すでに何回か不法行為の発生の虞れがあるということで組合の幹部のかたにも警告をいたしておりますような始末で、当時現地近くにも警察官もおつたと思いますので、その事態が起りましたあと会社側若しくは第二組合側からの持ちかけによつて検挙をしたというようなことは、これはないというふうに考えるわけでございます。
  61. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 先ほど三輪課長自身が、第二組合員が庇護を求めたから云々というようなことがあつたんですが……。
  62. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) これは第二組合からは身の危険を感じて保護をしてくれという御要求がありまして、そのうちの何人かは警察に保護をしたということを申上げたわけでございますが、この犯罪事実そのものを第二組合の告訴告発によつて検挙したのではないということを申上げた次第であります。
  63. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 事実その辺はあなたよりも私のほうがまあ佐賀まで参りましただけに知つておるかと思いますが、その前後第二組合の諸君が警察に出入りをしたり、或いは労務主任がその前後警察に行つたり、或いは検察庁等に出入りをした事実等は窺い知ることができます。従つて二十三日の発動にしましても、恐らくその辺の要請というものが原因ではないかと自分でも感じて参つております。そこで暴行或いは傷害、不法行為と言われておりますが、その不法行為の程度問題については、先ほどそばに代議士がおつたということでわかつたのでありますが、問題は労働問題でありますが、その労働問題の中に会社側なり或いは第二組合からの要請によつて警察が介入し、或いは実力行使をする、こういうことは警察の中立性を私は傷けて参るということになると思います。而もその程度程度を越して或いは動員、実力行使等の点についてもそうですが、或いは白尾泰蔵氏の死亡についても責任ないというわけに行かんと思います。客観的に言いまして私は警察に対する労働者の不信を誘因するようなことになると、これは大きな問題だと思うのであります。そういう点について私どもは僅かな知識ではございますけれども、遺憾の意を感ずるのでありますが、そういう点について全く警察として手落、或いはいずれかに客観的に片寄るということはなかつたと飽くまで言われるのか、或いは多少なりとも手落があり、或いはその労使関係の中に介入するというような疑いを起させるようなことをしてはいかん、こういう工合に言われるのか、その辺一つ承わりたいと思います。
  64. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 具体的事実につきましては、御指摘ように私よりお詳しいようでございますけれども、警察は常に労使の問題について介入をするということにつきましてはもとより避けておりまするし、再々又国会においても御注意を頂いておりますので、決して会社側に、若しくは第一組合、第二組合とできた場合に、第二組合に加担をするというような立場で出動をいたすことはございませんし、又今回のこの事件処理につきまして、会社側なり第二組合側なりに与するという立場において処理をしたとは考えません。ただ後に御指摘の、警察で調べたその日に自殺をした方があつたことにつきましては、只今までの調査では私どもはそういう警察として手落ちと言いますか、それがあつたことは認めないわけでございますが、いずれにしましても、この問題は甚だ遺憾でございまして、この問題を契機として今後再びこういう疑いを受けるようなことがないようにしたいと思つております。一般的に御指摘ような御注意は重々わかつておりまして、今後も機会あるごとにさような御注意は伝えて参りたいと思います。
  65. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 先ほどの御説明の中で、二十三日の出動には拳銃を持たせなかつた、こういうお話ですけれども、これは佐賀県の隊長からも伺いました。一個小隊であるかどうかはわかりませんけれども、周辺の警察から動員をされて、先ほど言われましたような二百何十人という、その大部分が武装警官であつたように私は聞いておるのですが、拳銃を持たせておけば万一のことがないとも限らんし、又そういう拳銃を使用するようなことがなかろうからということで持たせなかつたということを特に強調しておられた。従つて大部分が武装警官であつたと私は了承しておるのですが、三十名は少くも残されておつた、周辺にたむろして絶えず刺戟をして、むしろ警察のほうから事件を起しそうだから、やめてもらいたいということで、二十四日であつたと思いますが、四時に解散をさせたということでありました。従つて武装警官は一個小隊でそれは伏せておいた、あとは全部私服であつたということは、私どもの受けております印象からはやや違うように思うのですが、組合事務所或いは組合長の自宅等も同時にこれは捜査しておられることです。従つて先ほどの質問にもありましたけれども、組合長が組合事務所の捜査に立会つたという事実はこれはあとからのことです。その点等も事実とそれから課長のさつきの説明との間に食い違いがあると思います。  それからなぜ組合を捜査したのかという質問に対しては、隊長は、実は組合から暴行傷害というか、そういう不法行為を強要するというか、或いは指令するというようなことは考えられない、考えたくないことである、第二組合員の強要云々という点で実は考えたというように今説明された。然るに捜査をいたしました、先ほどもお話がありましたが、鉢巻或いはメガホン等に至るまで押収をした。それは先ほどの招集をかけた場合、マイクで招集をかけた場合にという説明ですが、不法行為或いは暴行傷害等を組合がやつたのではないかという疑いを持つて捜査されたのじやないかということが言えるわけです。そうしないと或いはメガホンだとか鉢巻だとかそんなものをとにかく押収するはずがない。それから従つて捜査、押収された物件と、それから組合活動として不法行為が行われたかどうか。行われるはずはないと思いながらやつたというのですけれども、押収した、或いは捜査したもの等と違つておるように私は了解する。尤もそれは鉢巻とか何とかはすぐに返したとこういうわけですが、少くとも押収、捜査は一応そういうものがなされた。  それから委任状云々という点で、あとであなたから説明がありましたけれども、組合員に強要云々という点は恐らく家の中に、社宅の中に入つてそういうものを強要した云々という疑いであろうと思うが、その点があとでどこかで争われたようですが、社宅の中に労務係は随時入ります。それを家宅侵入罪だということは炭鉱地帯の常識に反する。なお家の中に入つて強要、強迫等がなされたかどうかということは、これは先ほども組合長が申されましたけれども、事実問題がまさしくそういう認定に基いてやられたとは思えない。そうすると一応の説明、令状はともかくとして、私は令状は見ておらんのですけれども、説明等からしますと、組合事務所の捜査、或いは十一名の検束、強制収容等につきましては婦人も入つている。それが不自然な暴行強迫をやつた、或いは強要をやつたかどうかということは、これは常識で考えればわかります。或いは第一組合、第二組合という問題になれば、第一組合の幹部の婦人が強要云々をやつたということはない、或いは捜査或いは検束の場合に、その当日の十八日の暴行傷害によるというならあれですが、併しそれは二十三日の組合事務所の捜査、或いは組合長或いは十一名の捜査等、それらのものを通じて考えると、疑いを持つて組合事務所、或いは組合長、或いは組合幹部に圧力を加えたといいますか、どうも見てみると、佐賀ではめつたにそういうことがないのでそういう演習がなされたという疑いさえ持たれる。めつたにないことですから、好機として警察の大動員をやつたとしか考えられない。組合弾圧に乗り出したという印象を私ども受けるのです。そういうあれは絶対にないとは言われない。  それから佐賀県会でも問題になつたというが、任意出頭を求める。この争議の最中だから組合の幹部に疑いがあつたとすれば任意出頭を求めて調べて、そうしてそれから証拠というものを捜査する、或いは押収するという方法はこれはあり得たし、他の場合においてはそういう方法がとられた。これは私どもの知つておる範囲においても、たとえ九州の田舎であろうと筑紫の果であろうと、そういう方法がとられて来ておる。従つて私は隊長に少くとも全国的の平均からして見る場合に行過ぎがある。或いは組合運動に関与するというようなケースでなされたということはこれは何としても否定はできない。こう申上げましたら、それはそうでしようか。他の事例を教えてもらわなければならんけれども、全国的の水準から見ますと行過ぎだろうか。こういうお話だつたのです。今でも私どもそういう気がいたしております。行過ぎについてはそのときにも私ども多少論議いたしましたり、或いは質疑いたしましたが、その際の私どもが思つておつた行過ぎということが、やはり白尾泰蔵氏の自殺問題になつたのではないかという印象を受けます。行過ぎが全くなく、極めてモデレートな、或いは民主的な捜査の方法或いは参考人を取調べるような方法で行われたならば、白尾泰蔵氏が自殺するというようなことは私はないと思う。参考人或いは被疑者にしてもそうですが、本人の地位と又取調べに当つて自己の防衛の権限を認めるだけの配慮が十分なされ、或いは参考人に十分な待遇がなされておれば、自殺という結果には私はならんと思う。そこに明らかに疑いがあつたということが結果的ではありますが、言えることができると思う。それでもなお間違いはなかつた、正当であつたと言われるのか、或いはそれらの点に関して多少の行過ぎがあつたのではなかろうかと言われるのか、一つ重ねて事例を挙げて説明して下さい。
  66. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) たくさんの点につきまして御指摘がありましたので順序は狂いますが、例えば女の人を検挙したではないかという御指摘でありますが、多分副委員長組合長もそこにおられたでしようし、労務課長が説明に出られた時に、その事態が相当険悪であつたために十分皆の前に出なかつたという事態もあるのです。いきなり腕を抱え、引張つたという人は女の人であつたというわけで、その女の人を検挙したようでありますが……。
  67. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 何の罪名……。
  68. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 暴行罪ですね。これは二十四日に釈放いたしまして、書類は送検をいたしております。  それから武装警官の点でございますが、先ほど申しましたのは、組合の事務所に六十名の武装警官がいたという御指摘でございましたのですが、向うから参りましたのは、誤解を避けるために一個小隊つけたということでございますが、それは組合事務所について武装警官をつけたのでございますので、他の三カ所についても同様つけたと思います。なお逮捕に向いました所にも二名ずつということは先刻御説明いたしました。それからなお全体の何といいますか、予備隊というような恰好で一個中隊はそれから少し離れた所に配置させたと言つておりますから、その出動合計が二百八十名ということになるわけでございます。  それから組合長が組合事務所の捜索のときに立会つていなかつたという点につきましては、時期が若干遅れたのかも知れませんが、私ども受けました報告では、組合長が立会つたということになつておりますので、御指摘ように留守宅のほうも検索を受けておりますので、恐らく着手のときにはおらなかつたというのが事実かも知れません。その点は的確な材料を持つておりません。  それから警察官が長く制服でそこにおつたという御指摘でございますけれども、その点も事情は私どものほうに参つておりません。一般的に申しますならば、制服警察官を労働争議の問題が起りましたところに長く置くというようなことは、御指摘ように適当な措置ではございませんが、どういう理由でその時間まで置いたかということにつきましては、報告を受けておりません。  それから演習をしたのではないかという御指摘でございますが、そういうことは絶対にございません。先ほど御説明いたしましたように、事ここに至りますまでには何回も警告をいたし、殊に組合長或いは炭労の九州本部の副執行委員長さんにもよくお願いをいたしましたような点からお汲取り頂きますれば、警察としては演習どころではない、十分こういう出動につきましては行過ぎのないように慎重な態度をとつたというふうにお考え頂けるんじやなかろうかと思うわけでございます。  それからまあ委任状を強要したというのは、家に入つたというような、家に入つて強迫したことであるかというような御指摘でありますが、その細かい点については私も承知をいたしておりません。  それから鉢巻その他のものを押収したのではないかという御指摘でございましたが、これは御指摘ように、令状から申せば、令状と申しますか、当初の目的から申せば、委任状の強要という容疑であつたといたしますと、直接に関係がないと言えますけれども、事がそういう暴行傷害罪から起りましたこの検挙、捜索でございますから、直接にそれに使われたのではないかと思われるようなものを捜索して参つたのだと思いますが、その後これを返したかどうかは承知いたしておりません。  白尾さんの亡くなられましたことについては、繰返し申上げますように、調査が十分でございませんけれども、甚だ残念に思つておるところでございまして、全体として行過ぎであつたという結論を私はここに申上げるだけ十分な材料がございませんが、結果から申せばそういう自殺者を出しましたということは甚だ遺憾なことでございまして、それがどういう点に基いておるのか、十分調査をいたして参りたいと思うわけでございます。  出動の時期、規模等につきましては、現地の判断が繰返し申上げますような事情からその程度を必要といたしますものにつきまして、更に私どもこれが行過ぎであつたというような判断をいたしますことは、差控えたいというふうに考える次第でございます。
  69. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 押し問答を繰返すことは私はやめたいと思うのですが、飽くまで報告に基いて自殺者を出した点以外は正当である、或いは行過ぎはないと考えると、こういうまあ御説明だとなお続けなければならんのですが、先ほど伺つて参りますと、手を引つ張ることも暴行という御見解のようですが、女の人が手を引つ張つた、それでそれは暴行という御説明ようでありますが、先ほどお尋ねをしたのですが、労働争議の最中にまあ暴行はあつた。これは警察としては暴行があつたことを認めたから暴行罪として引張つたのだ、或いは調べたのた、こういうお話かも知れませんが、争議の最中でもありますし、私どもの常識では二百八十名も争議の最中に、或いは第一組合、第二組合と分れております最中に動員をすることは私は非常識だと思います。他の嘉穂鉱業社の例等もございますが、一応ひそかに呼んで調べて、そうして動かぬ証拠、或いは取調べが済んで引張つて行くと、こういうのが実情だと思うのです。それを中何日か置いて、置いてはおりますが、争議の最中に未明二百八十名も大動員をして、そうして鉢巻やすぐ釈放するような人まで引張つて行くということは、それは行過ぎだと思うのが私は常識だと思うのです。なおそれでも行過ぎでないと言われるのか、私は行過ぎがあると思うのです。詳しくは調べて見なければわからないかも知れませんけれども、世俗的に普通に考えてみまして、二十三日の佐賀のこの事件については私どもの聞き及んでおる範囲では行過ぎがあるというように私は考えるのです。なおこれから先は押し問答になるから、お調べを願つて一つ判断を願いたい、特に白尾泰蔵氏の自殺のことについては、全体のやはり調子が影響をしたのだとどうしても考えられる。これは警察を待つまでもなくその他適当な機関もございますから、是非適当に調査して頂きたいと思つております。
  70. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 只今の御注意は承わりまして、御指摘ように十分調査いたしたいと思います。
  71. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今日通産省のほうは政府委員或いは説明員が丁度突然のことでありました関係だろうと思いますが、御出席願えなかつたのでありまして、明日は若し委員会があれば出て説明をしてもよろしいということでございますから、いずれこの問題は明日又通産省のほうの意見を聞くことにいたしたいと思います。  本日はこれにて閉会をいたします。    午後四時二十九分散会