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1953-08-07 第16回国会 参議院 労働委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月七日(金曜日)    午前十一時十四分開会   —————————————   委員の異動 八月六日委員堀眞琴君辞任につき、そ の補欠として大山郁夫君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田畑 金光君    委員            伊能 芳雄君            田中 啓一君            宮澤 喜一君            梶原 茂嘉君            阿具根 登君            吉田 法晴君            上條 愛一君            寺本 広作君            市川 房枝君   政府委員    通商産業省石炭    局長      佐久  洋君    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    外務省国際協力    局次長     関 守三郎君   参考人    日本石炭協会専    務理事     天日 光一君    日本炭鉱労働組    合本部執行委    員長      原   茂君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○けい肺法案吉田法晴君外十二名発  議) ○労働基準法の一部を改正する法律案  (吉田法晴君外十二名発議) ○継続調査要求の件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (石炭鉱業における企業整備に伴う  労働問題に関する件)  (米軍施設内における労働三法の適  用状況に関する件)  (近江絹糸における労働問題に関す  る件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今より労働委員会を開会いたします。  本日の案件はけい肺法案労働基準法の一部を改正する法律案審査並びに労働情勢一般に関する調査近江絹糸における労働問題に関する件、米軍施設内における労働三法適用状況について職業安定法違反に関する件、石炭鉱業における企業整備に伴う労働問題に関する件でございます。  先ずけい肺法案並びに労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明を求めます。
  3. 吉田法晴

    吉田法晴君 発議者を代表いたしましてけい肺法案提案理由を申上げます。  只今議題となりましたけい肺法案提案理由を御説明いたします。  遊離珪酸を飛散する作業場を有します金属鉱業、窯業、石炭鉱業土石工業等の事業に使用される労働者に宿命的に負荷される疾病、一度かかれば現在の医学では治癒方法がないという疾病、そして最後には自己の用をも弁じ得ず、ただ病床に伏して生涯を終らなければならない疾病、それがけい肺という職業病であります。この職業病に対する特別措置は、すでに一九一一年に南アフリカ連邦けい肺法を囑矢といたしまして、イギリス、オーストリヤ、ドイツ、イタリー、スイス、スペイン、フランス等々の国におきましてけい肺に関する特別法の制定をみるに至り、今日、けい肺についての特別立法をもつ国は十カ国に及んでおります。一方我が国におきましては、昭和五年鉱夫就業扶助規則運用通牒によつて、初めて鉱山におけるけい肺業務災害補償対象として取り上げ、その後昭和十一年、工場労働者にも及ぼし、昭和二十二年の労働基準法によつて更にその対象が拡げられ、今日に至つているのであります。併し、これらの措置けい肺一般職業病とに差別を設けることなく、一率な予防補償とを行うことを内容としているのであります。ところが、けい肺は他の疾病には見られない特殊の性格を持つておりますので、これだけでは未だけい肺対策がなされたと言うことはできません。  先ずけい肺は、現在の科学によつてはこれを完全に予防する方法がなく、又、完全に治癒せしめる医学的方法もないのであります。而もけい肺発生せしめる作業は、一国の基幹産業の一部として放擲するを許さない作業なのであります。かかる宿命をもつけい肺の災厄をできるだけ少くするためには、一般職業病に対する以上に特別な配慮が必要であります。これが対策として本法案におきましては、けい肺発生の虞れある戦場の整備けい肺患者早期発見早期職場転換措置を講ずることといたしております。このうち職場転換賃金を減少を伴いますので、補償措置を併せ講ずることといたしました。  次に、けい肺は、他の疾病と異つた特殊な症状を呈しつつ、慢性的な、且つ、自動的な進行を続けて行きます。或る期間労働能力を失い、続く期間は或る程度労働能力を回復するというような状態を長期間に亙つて繰返しつつ、やがて全く労働能力を喪失して、遂に回復することを見ないのてあります。他の疾病がいつの日かには、治癒する希望をもつて回復への道へ進むのとは全く趣を異にするのであります。従つてその療養期間は極めて長期に亙り、而もその間において医学的治療を加える期間が断続いたしますので、その療養期間について特別の考慮を払わねばなりません。このため本法案においては療養補償期間一般の場合に比して二年延長し、且つ、その算定については現実に療養を受けた期間のみを通算することにいたしております。又、極めて緩慢な進行を続けるため現在の障害補償を受け得るような身体障害が現れる時期が遅く、且つ、症状の固定ということがないので、現在のように療養開始後三年の時点において認定をいたしますと、けい肺患者の殆んどが障害補償を受け得なくなりますので、厚生年金保険法における障害年金障害手当金についての認定時期を変更してこれが解決を図ることといたしております。  又、けい肺症状のうち治療を加え得るのは機能障害についてだけであり、肺に生じた器質障害については何らの医学的治療方法がありませんので、栄養補給による抵抗力増強を図り、療養補償に代るべき補償を講ずる制度をも設けたのであります。  なお、けい肺に基く業務災害補償は、すべて労働者災害保険から支払うこととし、又、けい肺特殊性によつて業務災害一般補償に附加された部分については、その三分の一を国が負担することといたしております。  悲惨なけい肺患者を根本的に救う道は、これが予防治癒方法科学進歩によつて発見することであります。今日、けい肺特殊性を顧慮しない法制のために、十分な補償さえ受け得ない状態の下に、不治の職業病と苦闘している労働者を、科学進歩を待つままで、なおこのまま放置することは忍び得ないところであります。以上申し述べました予防措置業務災害補償の特例とを規定する本法案によつて、現在の悲惨な状態を救済することが当面の急務であると信じます。  何とぞ御審議の上御採択あらんことを切にお願いいたす次第であります。  続いて労働基準法の一部を改正する法律案提案理由説明を申上げます。  近代の機械生産産業におきましては、災害発生は必然的なものであるということから、労働基準法は、労働者業務災害を受けた場合には、補償を行うべきことを使用者に義務付けることによつて労働者最低生活保障を規定いたしたのであります。  この災害補償を行います場合には、補償を行うべき事由の発生した日を平均賃金算定基礎といたしておりますので、けい肺を初めといたしまして疾病長期に亙る場合には、その間の経済事情の変動によりまして一般賃金及び物価水準が変動いたしますと、労働者最低生活保障するという目的に副わぬことになり、このことは労働基準法施行後の経験によりまして明らかなのでございます。従いまして、昭和二十七年の本法の一部改正におきましては、補償額スライド制を採用すべきであるという中央労働基準審議会決定を取入れまして、休業補償につきましてはスライドの規定を設けたのでありますが、単に休業補償のみに限られるべきでなく、災害補償すべてについてスライド制をとることが同法の企図する最低生活保障目的に副うものと存ずるのであります。そこで休業補償だけでなく、その他の障害補償遺族補償葬祭料打切補償につきましても、補償を行う場合において平均給与額が百分の二十を越え、又は百分の八十を下るに至つた場合には、その上昇し又は低下した比率に応じて平均賃金スライドすることとしたのであります。  以上がこの法律案の提出の理由であります。何とぞ御審議の上御採択せられますようお願いいたします。
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今提案理由を聴取いたしました両法案につきましては、参議院規則第五十三条に基き、継続審査をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御異議ないと認め、さように決定をいたします。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始め  て。  続きまして労働情勢一般に関する調査を行います。先ず石炭鉱業における企業整備に伴う労働問題に関する件を議題にいたします。  本日は参考人といたしまして、日本石炭協会専務理事天日光一君、日本炭鉱労働組合委員長原茂君がお見えになつております。先ず参考人の御意見を伺うことにいたします。天日君。
  7. 天日光一

    参考人天日光一君) 只今委員長から石炭鉱業企業整備に関連した労働問題についてお聞取りに相成る旨のお話があつたのでありますが、私実は労働問題につきましては、御承知のかたも多いかと思いますが、私のほうの日本石炭協会におきましては、直接にはこの労働問題を取扱つておらんのでありまして、折角のお呼出しではございましたが、果して御期待に副うお話を申上げ得るかどうか、みずから危ぶむ次第であります。併しながら折角お呼出し頂きました次第でありますから、最近の石炭鉱業界情勢のあらましだけを先ず申上げることをお許し願いたいと思います。くだくだしく数字を申上げることはお聞苦しい点もあろうかと思いまするので、成るべく数字につきましては簡略に申上げたいと思うのであります。  最近の石炭界情勢を極くかいつまみまして一言で申述ベまするならば、かようなことであります。即ち石炭生産力は著しく伸びて参つておるのでありまするが、これに反して需要が又著しく減退、停頓いたしております。従つて異常な貯炭増加情勢を現出しつつあるという次第であります。一口に申しまするというと、以上のような次第でありまして、それに尽きるわけでありまするが、ただこれだけでは甚だ不十分だと思いますので、少しく説明を附加さして頂きますならば、以下申上げるような次第であります。どうしても多少数字のことを申上げなくちやならんかと思うのでありますが、御承知でもございましようけれども、石炭の最近の生産力伸び方という点を極くかいつまんで申しまするというと、一例を基準年次昭和九年から十一年の間におきまする日本国内石炭生産高を見まするというと、三千八百四十九万トンほどでございます。然るに昭和二十一年におきましては御承知のごとく非常に生産力減退いたしまして、二十一年の出炭は二千三十八万トンほどと相成つておるのであります。かような情勢でありましたがために、国を挙つて石炭の増産ということが要請命題となつたのでありまするが、各方面の御支援御鞭撻、又業界自体の努力によりまして、幸いにいたしまして生産力はとみに回復いたしまして、昭和二十六年度におきましては四千三百三十一万トン、又昨二十七年度におきましては、四千三百七十四万トンという生産を見るに至つたのであります。今これを冒頭に申しました基準年次生産指数を一〇〇といたしますると、おおむね二十一年度は五二という指数を示すのであります。殆んど半減であります。然るに二十六年度は一一二・五というような指数となりまするし、又二十七年度は一一三という指数になるのであります。以上申しましたことは、最近各方面の御支援等によりまして、石炭生産力が非常に回復されて来たことを申述べたのでありまして、なお御承知のごとく昨二十七年度は非常に大きな、日本としましては恐らくその規模において最大であつたというふうに聞いておりまするが、大きな炭鉱ストがありましたために、おおむねストなかりせば生産されたであろうと想定される数字が約六百万トンというふうに考えられます。従いまして若しもストなかりせば生産されたであろうという数字を先刻申述べました四千三百七十四万トンに加えてみまするならば、二十七年度の生産は四千九百九十二万トンほどと相成るのでありますけれども、指数で申せば一三〇ぐらいに当るかと思うのであります。御承知のごとく昨年度は出炭目標が四千九百万トンということでありましたので、以上申上げた実際の生産と減産されたと思われた数字を加算いたしました四千九百九十万トンと対比いたしまするというと、生産目標の四千九百万トンを約百万トン近く上廻るという生産情勢であつたのであります。昨年度は今申上げた通り生産目標が四千九百万トンということでございましたが、なお一両年前、当時の経済安定本部等におきまして今後の国内炭需要想定されましたいろいろの発表があるのでありますが、その一つをとりまするというと、二十八年度は五、千二百万トン、二十九年度は五千三百五十万トン、三十年度あたりは更にこれからずつと殖えて参りまして、数年後には五千六百万トンほどの生産が必要であろうかというふうな想定が一部行われたのであります。かような想定基礎にいたしまして生産増強に努力して参つたのであります。然るに先刻申述べました通り、昨年と申しましようか、むしろ本年に入りましてからとみに需要のほうが停頓いたしましたのでありまして、一口に言いまするというと、毎月の生産量出炭高の中から一割六分或いは一割八分ぐらいが余つて参りつつあるのであります。毎月かように二割近い数量が余つて参りまする結果、累積された貯炭量が非常に多くなるということは申すまでもないのであります。くだくだしくは数字を引用いたしませんが、一例を申しまするというと、本年三月、二十七年度の最後の月でありまするが、本年三月を例にとりまするというと、生産は四百七十一万九千トン程度であります。これに対しまして需要量、これはいろいろの見方がありますが、一応荷渡し量というふうにラフに考えて見ますると、三百九十六万トンほどでございます。従いましてこの間七十五万トンほど過剰になつておるということでございます。なお三月末はいわゆる業者貯炭石炭業者が持つておりまする、抱えておりまする貯炭、これが二百二十五万トンほどであつたのであります。申すまでもなく石炭業者が抱えておりまする貯炭のほかに、大口工場なり又中小工場なりが頗る多量石炭工場貯炭として持つておられることは申すまでもないのであります。以上のような数字でありましたが、途中を省略いたしまするが、四月、五月いずれも四百万トン、或いは四百万トンずつと超す出炭量がありまして、これに対して三百万トン台の需要であります。従いまして或いは七十数万トン、或いは月によりまして六十数万トンという過剰になりましたのであります。従つて貯炭増加高を申上げますというと、三月は二百二十五万トンでありましたものが四月末には三百一万トンとなりまするし、五月末には三百六十六万トン、六月には四百三十二万トン、又七月末は一部推定が入りまするが、四百四十六万トンほどであろうかと思うのであります。仮に三月の貯炭量数字を一〇〇といたしまして、爾後の月の推移を指数でとりまするというと、四月が一三三、五月が一六四、六月が一八九、七月が二〇〇、即ち三月末現在の二百二十五万トンの貯炭に対しまして四、五、六、七と四カ月間、僅か四カ月間ほどの間に、貯炭量指数一〇〇が二〇〇を示す、即ち倍量になつたということであります。毎月の増加いたしまする貯炭は、即ちデツト・ストツクであります、動かない貯炭になつておるのであります。なお御承知でもございましようが、現在適性常備貯炭量は何ほどかということでございますが、先ず現在の状況におきましては、二百万トンくらいが先ず通常適性貯炭量であろうかというふうに考えられておるのであります。従いまして、今上申げましたような七月末に四百万トンを超える四百五十万トンに近い貯炭量ということは、常備適正貯炭量の二倍を超える貯炭となつているということでございます。  それからなお、然らば数字はさようであつても、一体業者としてはどれほどまで保有できるものであるかという一つ観察点が生れるわけでありまするが、この点につきましては、石炭業者自分の負担において、自分の経費において保有し得る貯炭量は三百六十万トンが先ずマキシマム、先ず最大限度であろうかと言われておるのであります。これは現在の生産力なり又過去の貯炭実績等から見て、かような見方が出るのであります。石炭業者石炭を保有いたしまするのにはおのずから限度があるのでありますが、その限度が何によつて生ずるかと申しますならば、一つには物理的とでも申しましようか、貯炭の置場、即も貯炭場の設備の大きさ、能力であります。又一つの面は経済的とでも申しまし上うか、資力の点からおの、ずから限度が生ずるのであります。只今申しました通り、三百六十万トンが山元、港、市場を通じまして業者の保有し得る最大限度であろうと言われておつたのであります。併しながら先ほど申し上げましたように、四百万トンを超す貯炭でありますからして、今申上げました先ず以てという限度は、すでに大幅に突破してしまつておるのであります。それだけに圧迫が大きいということは申すまでもないのであります。なお六月、先々月、先月はまだ確実なものがありませんが、六月の荷渡し量三百十六万トンという数字を示しておるのでありまするが、これを見まするというと、最近三カ年間におきまする夏場の荷渡し量としては最も低い数字であります。三年間において一番少い数字をこの六月が示しておる。つまり需要と申しますか、荷渡し量の面でかように低下しておるということであります。  以上は石炭業者が持つておる炭の量を一応申上げたのでありまするが、前にちよつと触れました通り、このほかに大口の各種の工場が相当多量の炭を保有しておられるのでありまするが、これが六月末ではおおむね三百五十八万トンぐらいかと推定されるのであります。なおこのほかに小口のいわゆる中小工場が相当多量の、これも恐らく八、九十万トン、或いはそれより多いかと思いまするが、統計が詳らかでありませんから的確にはつかめませんが、それくらいの中小工場貯炭もあるかと思うのであります。かようにいたしますというと、石炭業者の持つておる炭、工場の持つておる炭を寄せてみますると、或いは八百七十万乃至八百九十万トン程度に達するかと思うのであります。いずれにいたしましても、石炭業者が保有しておりまする石炭の量が四百四、五十万トンにもなつておるということは、未だ曾つてない異常な数字であります。然らばそんなくどくどしく申し上げたような状況が何によつて招来されたのであるかということを極くかいつまんで申上げてみたいと思うのでありまするが、これは要するに生産力伸び需要減退という鋏状から生ずる現象であろうと思うのであります。併しながらこれを少しく分析してみますというと、以下申上げるようなことが考えられるのであります。それは国内生産炭なり、或いは輸入炭なり、或いは最近やかましい重油、従来石炭使つてつた部面から重油使用変つてつたものが相当多いのでありますが、これらのもの、石炭使用から重油に変つたものを石炭に換算して、国内炭輸入炭重油、これを石炭単位に換算して観察いたしまするというと、かように見られるのであります。昭和二十六年度はこれら三つのものを寄せた総需要量と申しますか、仮に総需要量と申上げますが、それが五千三十七万トンという数字であります。二十七年度は五千二十四万三千トン、それから二十八年度は、これは見込みでございまするが五千三百三十一万五千トン、かように一応考えられるのであります。そこで総需要量は減つておらないということであります。といいますることは、別に申上げまするというと、鉱工業生産指数がこの間やはりずつと伸びて参つております。御承知でもございましようが、基準年次昭和九年から十一年を鉱工業生産指数一〇〇といたしますと、昭和二十六年度は一三〇・二、それから二十七年度は一三九・四、二十八年度は一五四という想定であります。これを換算しまして二十六年度の鉱工業生産指数を一〇〇としてわかりやすくしますというと、二十七年度は一〇七、二十八年度は一一八というふうになりますからして、鉱工業生産は上昇しつつあるということが言えると思うのであります。従つてその熱源或いは動力源としての石炭国内炭輸入炭及び重油石炭に換算してみたところの総量はやはり殖えて来ておるわけであります。然るにもかかわらず、国内炭が前申上げたような工合に異常な過剰状態になつたのは何によるか、一見ここに矛盾といいますか、何らかの原因を探究しなくちやならん部面があるのでありますが、これにつきましては、我々のほうとしてみておりまするところは、やはり輸入炭と、それから重油使用が増大して来たことが国内炭に対する需要減退せしめておる大きな原因であると、かようにみておるのであります。少しく一、二数字を申上げますというと、例えば今申上げた総需要量の中で国内炭は二十六年度は四千六百四十九万トン、二十七年度は四千二百八十八万トン、二十八年度は見込でありまするが、四千四百十万トン、百分率で見ますというと、二十六年度は総需要に対して九三%、二十七年度は八五%、二十八年度は八三%、だんだん国内炭の占める比重が下つて来ております。これに反しまして、輸入炭は二十六年度が二百六十二万トンで五%を占めておつたのでありますが、二十七年度は八%となつております。二十八年度は二十七年よりはちよつと下つて七%になつております。それから重油でありますが、これは初めから重油使つてつたものではなく、従来石炭を使われておつたものから重油使用変つてつたものを石炭に換算して出して見ましたのでありますが、二十六年度は石炭に換算して百二十五万トンに相当する重油が使われたのであります。おおむねこれは重油石炭との換算比は一対二であります。二十七年度は重油使用量石炭に換算して三百三十三万トンで、百分比は七に上つております。二十八年度は五百二十四万一千トンとなりまして一〇%に当るのであります。かように百分率で出してみますると、国内炭に対する需要はだんだん細くなり、輸入炭が太つて行き、重油が取分け大きく太つておるという姿であります。  なおここに一言申添えさせて頂きますならば、どこも二十七年度は大きなストがあつたために、多少通常状態よりは数字がひずんでおるのであります。二十七年度で輸入炭が四百二万トンにもなりますることは、ストの直後に外国炭の緊急な輸入というような面などが加わつたためにかような姿になつておるのであります。  以上は現在の石炭界情勢の概略でありまするが、今後の問題に少しく触れてみまするというと、貯炭がかように大きく殖えておりまするからして、この貯炭費用というものは非常に多くかかつて参ることは申すまでもないのであります。普通に置くべきところに置くのじやなくて従来置かなかつたところに置くわけでありますからして、新らしく貯炭場を用意しなくてはなりませんし、それに伴う費用、又それを積卸し、積出す費用、又そこに寝てしまう費用等を見まするというと、概算いたしましても百七十億ほどのものが余分に要るというような形に現われるのでありますが、計数のことは省略させて頂きたいと思います。ただかような状態でありまするために、我々のほうで一番懸念いたしておりますることは、御承知のごとく朝鮮動乱の始まりまする前に高炭価問題、石炭の値段を引下げなくては輸出等に支障が大きいということからいたしまして、炭価引下が朝野の問題となつていろいろ考究されたのでありますが、朝鮮動乱の勃発によりまして、その問題は少しく閑却されたと申しますか、解消したと申しますか、下火になつたのでありますが、最近又炭価問題が相当深刻でありまして、石炭業界としても関係官庁の示唆指導等も参酌いたしまして、お聞き及びではありましようが、いわゆる合理化に努力いたしておるのであります。最も合理化の、炭価引下の大きな効果を生むものとしましては、世上喧伝せられておりまするように、おおむね今後五カ年間にいわゆる竪坑方式に転換いたしまして、当初想定されましたところでは七十九本ほどの竪坑を掘るということであつたのであります。これによりまして総平均いたしまして、炭価の二割程度を引下げ得るという想定であつたのであります。併しながらこの竪坑掘繋又はその他の能率増進の工事を進めて参りまするためには、おおむね五カ年間に千百四十億ほどの想定された巨額の資金が必要なのであります。竪坑だけでも概計して五百億の資金の投入が必要であるという調査であつたのであります。併しながらその想定ができましたときと、その後最近の様子を比較いたしまするというと、すでに需給状態から来まして、いわゆる石炭の市況というものも極めて軟調になつておりまするからして、当初予定されたようなトン当り幾らというような利益はすでに基礎を失なつておると思うのでありまするし、その他労務費、物品費の値上りが次第に加重されて参りますからして、この折角計画されました今後の合理化、即ち能率を増進し、炭価を引下げるという大きな目標が、只今のような状態では停頓渋滞する懸念が多分にあるかと思うのであります。一部ではすでに相当炭価が安くなつておるからして、もうそれでよいではないか、特別の措置を必要としないのではないかというふうな極めて近視眼的な所説も巷では聞くのでありますが、以てのほかだと私は思うのであります。かような際にこそ本来の合理化計画を進めておかなければ、高炭価問題は再燃、再々燃いたすことは当然だと思うのであります。最近輸出の不調に絡みまして新聞等伝えるところによりますと、やはり鉄鋼方面でも石炭高ということを又いろいろ論議されておるようであります。かような次第でありまするからして、需給関係から炭価が軟調になつておりましても、根本的にそれは原価が安くなるということではないのでありまするからして、やはり大きな手としては、生産原価が安くなるような措置方法を推進すべきであると我々は考えておるのであります。  最後企業整備云々ということを委員長が冒頭にお示しになつたのでありますが、この点につきましてはかように考えるのであります。以上申上げましたように需給状態がアンバランスであり、貯炭が異常な増大を示しております。従いまして、石炭個々の企業としましては、自分の経営、企業を維持するためにはそれ相応の処置方策がなければならんと思うのでありまするが、この点につきましては、最近新聞等で我々承知いたすのでありまするが、数社の会社におきまして、それぞれ新らしい現在の状況に対応して企業の内部整理を企画し、実施せんとしつつあるというふうに我々は見ておるのであります。併しながらこれは今のところ全部必ずしも計画通り進んでおるとも見られないのであつて、計画中、或いは実施に移さんとしつつあるという端緒のような段階であるかとも考えられるのでありまして、企業整備により整理するとかいうようなことは我々のほうでも詳らかでございません。殊に新聞の切抜きを抜萃して漸くその様子を知るというような状態でありましてこれは各社営業の秘密でもありましようからして、我々の協会としてはこれを把握いたしかねているのであります。  以上極く概略でありまして要領を得ない点もあつたかと思いますが、御質問によりまして又御説明申上げたいと思います。
  8. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、原君の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  9. 原茂

    参考人(原茂君) 前者のかたから言われましたので、言うつもりはなかつたのですが、一応貯炭がある、貯炭があるという理由に三点ほど挙げられておりましたので、労働者の考えておる貯炭見方について、一応参考意見を述べたいと思います。  大体先ほど説明された数字はともかくとして厖大な貯炭があるという理由の中に、特に総需要というものはむしろ殖えておるので、減つておるのではない、従つてこれは輸入炭或いは重油への転換による石炭需要の縄張り侵入である、こういうことで生産がむしろ上昇しつつある今日において、結果的に国内炭がダブるのである、こういう言い方をしておられました。そこで我々はこういう起きたものの処理をどうするかというよりも、なぜこういうものができたかという理由について、少くともこの石炭産業が公共の福祉に該当する産業であり、基幹産業であるということを政府みずからも天下に公表し、そういう立場に立つて今日のスト規制法が出されておる。こういう点に立つならば、これの処理を政府がどういう計画を以て将来石炭産業に対する経済政策というものを行なおうとしておるのか、こういう考え方については、未だ新聞の報道以外に具体的な政策の発表が全然ないわけであります。そこで起るのは、無策の中で行われたこういう自由主義経済の中で、資本家同士が自分の資本を擁護するために他の資本を踏み倒しても自分の資本はよくなろうとする、或いはそういう利潤の上げ方や、経営の発展を図るために、他の資本と競争してもどうしても自分の立場を、資本を擁護するために労働者の首を切つたり、或いは政府に対して何らかの金を出させるという方法によつて物事を処理しようとする。こういうけんかが起る事態をただ政府は漫然と黙視して、これに対する具体的な対策が全然出されておらない。こういうところに民間産業における労働者と資本家という対立の激化や、そこから起るべき、労働者の生活が奪われ、結果的には政府の無策という方針によつて日本全体の公共の福祉であるべき産業基礎が崩れつつある。こういう点を私は特に国会の問題としてこれは取上げて頂いて、具体的に国民が消化できる方針をやさしく出して頂くことが先決ではなかろうか。こういうことがなくして、ただ単に貯炭が多いから首を切るとか、或いはあの会社の経営状態が悪いから潰れてもよろしい。こういうことで放置されることは甚だ日本経済のために問題を起すのではなかろうか、特に労働者はそういう観点に立つて、将来の日本の経済がお先真暗であるということを非常に心配しておる。而もそのことは結果的には明日から自分たちがどういう生活状態に追い込まれるであろうか、或いは明日からは職もなく路上に放り出されることになるのじやなかろうか、こういうふうに自分の生活がどうなるかという心配と結び付けて、今日起るであろう石炭産業における不況の問題を心配しておる実情であるにもかかわらず、国会ではその産業に対しては経済的な政策を出されるのでなくして、政治的なものばかりが出されておる。端的に申上げますと、首を切りやすい方法としてスト禁止法が出されたり、或いは企業合理化をするとか、労働者の条件を引下げて、そのことが結果的に石炭産業の発展に寄与するものである、そこが公共福祉である、こういうふうに出されておりますので、甚だ我々には納得行かない問題がたくさんある。従つて我々が要求すべきものは、労使ともども今日行われておる産業経済に対する、特に石炭産業に対する政府の将来の計画というものを明らかにしてもらいたい。或いはこれに対応する産業資本家や労働者というものはどうあるべきかということを、当然政府みずからの計画と責任において出されるべきである。そういうことによつて初めて我々は一国民として、或いは公共の福祉に従事する従業員や労働者としての働く途と生きる途が求められるべきではなかろうか、このように特にこの国会であるだけに、政府が今日まで行われました石炭産業に対する考え方について御指摘をしたいと思うのであります。  それから次に、そういう貯炭が過剰になるということは、これは労働者輸入炭を要求しておるのではない。或いは労働者が莫大なドルを使つた重油輸入を奨励しておるのではない。これは同じ日本の資本家が幾らかでも儲けるということが、或いは国際収支のドルの計算がどうあろうとも、結果的には自分産業だけが、資本だけが利潤を上げればいいということで輸入炭をばくばく運動をする。或いは重油輸入をドルの稼ぎで分配闘争をする。こういう形で、実際はスムースな産業全体に対する計画がないために、どうしても産業資本の中で炭鉱資本と或いは石炭を使われる側の資本とがけんかをしておる。こういうことで果して我々は国際収支の問題を論ずる価値があるかどうか、或いはそのことから来る日本産業全体の発展や経済自立を論ずる資格があるかどうか、この点も甚だ疑問である。政府はどう考えておるか知らんが、現実に行われておるそういう日本の資本同士は日本の経済全体のものではない。自分の資本が儲かるということによつて輸入であろうと、横流しであろうと、或いは日本の経済がどうあろうと、自分の得する物を、安い物をどこからでも引つぱり出そう、こういう形で行われておる矛盾が結果的に今日のような厖大な貯炭という言葉で現わされる理由があるのである。従いまして、この点が根本的に解決されない限り、一時的な手当をして見ても、その重態にある患者というものはカンフル注射して一時的に麻痺されても病気の全快ではない、こういうふうに判断しなければならない。そのカンフル注射の方法として非常に日本の資本家は、国民の税金によるいわゆる補給金というものや助成金というものを要望しようとしておる、或いはしつつある、行われつつある。この点は厳に我々は慎しまなければならない問題であろうと考える。国民の税金があるからと言つて、その税金は無駄に使わなければならんという理由はないのではないか、この税金の使い方に再検討をするような重大な時期に来ておるのではないか。従いましてその方法についても先に述べました、計画が立てられないから、その場限り力の強い資本に融資をする、或いは選挙運動に関連する基金カンパの多いところに助成金或いは補給金を受け出す、こういうことで常に歪められた政治状態や経済政策が打立られようとしておる。この点が解決されない限り、ただ単に貯炭の問題や或いは輸入重油の問題の羅列だけでは私は根本的に日本石炭産業ばかりでなくて全体の産業が本当に正しい意味で発展し、或いは育成され、助成されるとは考えておらない。この点を特に取上げて将来の問題として御検討願いたいと思うのであります。  それから今後企業を合理化する理由はともあれ、誰の責任であれ、政府の無策であれ、今日はすでに企業の合理化の時期である、こういうことを主張されましたが、我々は企業合理化、企業整備というものを分けております。企業合理化とは皆が納得してそのことが全体を正しく発展させ、健全経営をさすのである。従いまして今日行われておる、資本家が言う企業合理化とはこれは企業整備である。それは自分だけが犠牲になりたくない、とにかく他人の損害を通じて自分の利潤を守る、これを企業合理化と言うから、我々はそれは企業整備であつて、企業合理化ではない。企業合理化というのはいわゆる全部の責任において、而もそのことが正しく健全経営のためになるという方法でなければならない。こういう点は非常に言葉のあやで誤り伝えられておる。今日の日本の炭鉱の資本家がやろうとしていることは、私は企業整備という言葉が妥当であると思う。そこでその理由を申上げますと、先ほど言われました高炭価の問題であるとか、或いは貯炭処理の問題であるとか言われたが、この中で行おうとしておる具体的なことは全然発表されておらない。従つて個々の資本でやられておると推測される。そこで個々の資本が何をやろうとしておるかというと、もうすでに山というものが完全に潰されてしまつて閉山になつたところがすでに中小炭鉱においては同じ炭労という二十七万の枠内にある中小炭鉱の数の中でも相当見受けられる。もうすでに閉山されたものはもう十数鉱に達しておる。或いは人員の整理がされて、それが目立つて企業整備と名を打たれるものが全国もはや二十六、七鉱にならんとしておる。それから賃金協定が九月三十日まであるにかかわらず、賃金の引下げを出しておるのが全中小炭鉱にあるというぐらい猛烈に出て来ておる。こういうふうにしてすでにこの企業合理化とは労働者の首を切ることであり、或いは賃金を下げることであるということが具体的に現われておるにもかかわらず、我々はこれを放置して、そのまま企業合理化として承認することはできないのであります。これは今まで申上げましたのは、中小炭鉱でございまして、これが大手十六社はどのような状態になつておるか、一番炭鉱資本で大きいと言われる三井においても恐らく本日発表されておると思いますが、六千に近い従業員が馘首されることになるはずであります。或いは三菱はもうすでに大体二千八百という従業員を首切るということが明らかになつております。或いは明治においては千五百名、同じく住友においても大体従業員の二割から一割五分、これは全大手といえども最低が一割であり、最高は二割から二割五分の労働者の首を切るということが明らかになつておる。これを称して企業合理化と言われることは我々は甚だ納得が行かないのでありまして、飽くまでもこれは企業整備として、一方的に誰かの他人の犠牲において自分の経営の利潤を維持しようとする考え方に断乎私たちはどうしても賛成できない。こういう実情にあることを御承知を願いたいと思う次第であります。  そこでもう一つ掘り下げまして、高炭価の問題が論ぜられておりますが、私が仄聞するところによりますと、特に高炭価の問題は、輸出商品が外国商品との競争の激化によるこういう原料の問題から、貯炭石炭の高炭価が盛んに言われておる。ところが例を挙げますと、先ず鉄鋼という重要な輸出産業につきましても、鉄一トン当りのコストの中に石炭の占める割合は二〇%前後である。従いましてこの石炭がゼロになつて、ただになつても四割から三割五分国際商品と価格において合わない。日本の商品は石炭もただにしてもそれでも国際商品の価格と競争ができるかというと、できないのではないかと、そういう事実があるのにもかかわらず、我々を高炭価という理窟を以て首を切ろうとするのは、高炭価を理由として労働者の首を切ろうとする目的に使われておるのであつて、真の高炭価を解決するという意思のない証拠である。そこで高炭価を処理するという意思のないことを事実を以て証明しますと、大体石炭の値段を七千円するのでこれを五千円にするから、従つて労働条件をこうするとか、或いは政府に対してこういう措置をしろという要求をしたことがある。高炭価は反対であるけれども、みんな企業整備が先決である、こういうことを言われておる。前者のかたが説明されましたように、高炭価処理の問題の方式として何を具体的に考えておるか、これは言えない。あるものは労働者の首を切ることである。少数の雇員によつていわゆる厖大な能率を挙げることである。もう一つは、政府の力を借りて税金による企業整備の合理化をやろうとするのである。そのことが竪坑になろうと、機械が入ろうと、目的と行動とは国民の利益にならん方法を考えておるではないかと思う。こういう点を我々は国会で取上げて、その真相を明らかにして、その上に立つた問題の処理を考えて頂きたいと思う次第であります。  それから現在の高炭価に関連しまして、非常に労務費が高い、或いは労働者の数が多い、こういうことで高炭価り問題を処理しようとしておるが、昭和二十六年以降というものは殆んど炭鉱労働者賃金は上つておらない。大体石炭一トン当りのコストの中に占める比率は二千円から二千五百円を越しておらないのである。併し石炭価格というものは先ほどの説明にはなかつたが、終戦以来鰻上りに上昇し、朝鮮動乱のブームを契機として歴史的な高炭価になつておる事実であります。而も労務費のその占める部分というものはこれは他産業と比較して、他産業労働者と比較して非常に安い賃金をもらつておるという事実は、昨年の十月闘争の際に、参議院の同じ労働委員会説明いたしましたように、他産業が百の労働賃金をもらつておるのに対して炭鉱労働者は七五%しか賃金を支払われておらない。こういう事実の上に立つて労務費による高炭価は理由にならない。むしろそのことによつて厖大な利潤を石炭業者が挙げておるという証拠を暴露したものである。こういうふうに判断することが妥当ではないか。従つて私は現在の石炭が二割価格が下げられたから、そのことによつて石炭産業経営者が不利になつたり、経営不振になるということは特定の中小炭鉱以外はないと考える。中小炭鉱といえども、長者番付という多額納税者の一から十番を占めるのが全部石炭業者であるという事実も昨年も今年も変りはない。こういう点から行きましても、如何に石炭業者が不当利潤の追求を今日までやり、そのことの内容が国会の問題として取上げられておらず、或いはその真相が今日まで国民に明確に暴露されておらない。こういうことを目隠しにして私は高炭価を理由労働者の首を切つたり、或いは多少利益が上らんから、貯炭の置場がないという理由を以て閉山をしたり、或いは一時的に休山をするというやり方は誠に納得の行かない方法ではなかろうか。こういう事実の上に立つて石炭産業における労働問題の処理を本労働委員会が検討して頂くことを特に我々はお願いするわけであります。  それから最後に、こういう状態の中で、炭鉱労働者は何を求めようとしておるのか、これはどうしても国会で、一番先に申上げました石炭産業の計画経済の樹立というものが明らかにされ、少くともそのことはもうすでに日本の民間資本家はこの公共の福祉を担当する経営能力はない、若し経営能力があつたとするならば、その経営能力は不当な利潤と国民の税金を不当に使う悪どい経営者としか私は認められない。こういう経営者が石炭産業を経営する限りにおいては単に労働者が困る困らんという問題じやなくて、日本の経済自立のために重大な妨害になつておる、公共の福祉の障害になつておるというのが石炭産業経営者ではなかろうか。こういうことで今やこの問題は国会の問題として取上げられ、いわゆる国家管理の方向に持つてつて重要産業の問題の処理に当る経済政策というものが急務となつておる今日、こういう段階においてさえも不当な利潤を追求することを放棄せず、或いはその利潤を追求するために労働者の天引き首切りを断行しようとするこの経営者に対しては、やはり断固としたる責任が追及されなければならないし、或いはそれを解決するにはやはり経営の民主化の問題として取上げなければ、日本の国民は誠に多額納税はするし、助からんという事情がまずます露骨化するのではなかろうか、こういう点を特にお願いしたいわけであります。又そのことがすぐ明日からできないとするならば、今日取りも直さず明日からできることは、やはりこの不当な利潤を上げたり、或いは不当な首切りをしようとする個々の経営実態を調査すべきである。従いまして、この調査の中からやはり国会が本当に硝子張りの中で重要産業である石炭産業がどういう経営をしておるのかという事実を明確に把握して、その上に立つた労働問題の処理を図らなければ、私は根本的な労働問題の処理にはならないような状態になりつつある。而もこのことは処理に当つては民間労使の力関係に一切任されておる。私はあえて言わざるを得ない立場にあるわけでありますが、現在の石炭の経営者がやろうとするものは、真の経営の民主化ではない、或いは経済の健全経営ではなくて、今日まで不当に上げました利潤をそのまま維持するために労働者の首を切るという事実である。若し首を切らないでそのまま労働条件が改善され、他産業と同じ賃金が支払われると、丁度普通の健全経営に帰るというのが石炭産業の実情である。ところが、今日はその不当な利潤を維持する方法として企業整備というだんびらが振廻されておる今日におきましては、やはりそのことを明確に指摘して皆さんの御検討をお願いするわけであります。  大体以上企業整備の問題として我々が特に今日皆さんに御報告しなければならん要点だけを申上げまして、私の参考意見を終りたいと思います。
  10. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  それでは続きまして、只今石炭鉱業企業整備に関する問題として、石炭業界並びに炭労のほうから御意見を伺いましたが、これにつきまして政府側から御所見を伺いたいと思います。
  12. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 只今経営者側と炭労側の参考意見を伺いまして、現在の生産状況、消費の状況、それから貯炭状況などについては天日参考人からお話になりましたことにつきまして、更に付加えることはないと思います。炭労の参考人のかたの御意見、誠に私は傾聴に値いする問題が多々含まれておると思います。  第一に、この石炭産業を自由にしておるということが企業整備を生む原因になつておるのじやないかと、こういうお話でございます。で、自由主義経済をとるかとらんかということは内閣の大きな政策問題でありまして、私どもはその枠内で仕事をしている関係から自由主義経済自体をどうこう批判する自由を持ちません。ただお話につきまして、確かにこの企業を継続する、或いは企業の規模をどうするか、或いは新らしく企業を始めろというような問題は、すべて各企業家の自由であるということであるらなば、その価格問題などについても全く自由に放任する、需要が多いときには価格が上るし、需要が少いときには価格が下るというところまで徹底すれば、問題は簡単でありますが、一面において輸出産業その他の関係から、石炭の価格はどうしても下げなくちやならんというような要請があるために、そこにいろいろ解決困難な問題が出て来るわけであります。で輸入炭或いは重油の問題についてもお話がございましたが、輸入炭につきましては、私どもとしてはこれは単に経営者擁護という観点だけでなしに、できるだけ労働者諸君の雇用の場を失いたくないと、又もつと積極的に言えば、雇用の機会を増大したいという考え方から、極力輸入炭を削減しようという主張を常にいたしておるのであります。重油についてもやはり同様な考えに立つておりますが、これも輸出産業方面から申しますと、つまり消費者のほうから申しますと、輸入炭につきましても、或いは重油につきましても、その効率が非常にいいというような立場で、相当大量のものを輸入して欲しいという要求がありまして、常にそこの調整に苦慮をいたしておるわけでございます。それから鉄について、現在の炭価を非常に下げる、むしろただにしても鉄そのものは国際価格の水準には行かない、二、三割割高になるというお話でありますが、この点は私資料を持ちませんし、知識もございませんので正確なことは申上げかねますが、ただ私どもが通産省の内部の鉄関係から要求されておるところによりますと、石炭の価格を今よりも二割五分ほど下げ得れば、鉄の価格を国際水準に下げ得るのだという説明だけを聞いております。この点私は詳細な知識を持つておりません。  それからなお労働者の数が多いとか、或いは労務費の原価に占める割合とかいう問題については、これはいろいろ議論があろうと思います。ただ徒、らに労働者賃金を引下げるとか、或いは労働条件を悪くするということだけでは、本当の石炭鉱業の健全化にはならんという点は私も同感でございます。  そこで最後に考えなくつちやならん問題は、結局問題の根本というものは石炭の値が高いということ、これはもう争えない現実でございまするので、これを下げる方法というものをやはり一つの国策として強く推進しなくつちやならんじやないか。それからなお今日までの生産は、ただ増産々々ということで追いまくられて参つたのでありますが、今後も熱源として石炭が占める地位というものを明確にする必要があるたろう。それがためには今後の輸出の振興、いろいろの振興策によつてどの程度まで輸出というものが可能であるのか、或いは南方諸地域、更には中共貿易というような点について、どの程度転換というものが可能なのか、或いは最近非常に問題になつておりますMSAの援助というものがどういう形態で、どの程度までのものが来るのかというようなことがはつきりいたしませんと、明確な総合燃料計画というものは立たんと思いますが、一応そういうものを想定の下にエネルギー総合計画というものを立てまして、それに基いて石炭生産そのものも恒常的な形に移して行くということが根本問題だと思います。  以上私の気付きました点を申上げました。
  13. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは先ほどのお約束に従いまして、続きまして米軍施設内における労働三法適用状況について伺います。
  14. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) お答え申上げます。  施設内における労働三法の適用の問題でございますが、この問題はこの前も申上げました通り、現在若し米軍が三法に違反しておるという事実がはつきりしておる場合には、これは断固改めさせる。併しその事実の認定並びにそれが労働三法に違反しておるかどうかという点は権限ある官庁の御報告を待つてからというふうになつております。実際問題として、例えば先日もちよつと委員会の問題になつたと思うのでありますが、これは施設内外を問わないわけでございますが、極東海軍の不法解雇というものがありまして、これをずつと調べて見ますというと、これはどうも三法に違反しておる、そういう日本側の意見が労働省から提出されまして、それに従いましてこちら側といたしまして、大体において米軍も納得しておる、こういうふうになつており、すべてその他の事件に関しましても、事実が明瞭であり、且つそれが権限官庁によつて労働法規に違反しておるということがはつきりして来れば、外務省としてはそれに従いまして、米軍のやつておることを改めさせる、こういう次第でございます。
  15. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は今日おいで願つたのは、そのことも勿論含んでおるわけでございますけれども、更に労務基本契約の更改交渉がその後どういう工合に進められておるかということ、更にそれに直接或いは間接に関連する軍施設工場の私契約における人事条項の問題がその後どういう工合に交渉が進展しておるのか、この点について説明を聴取したいというのが今日の目的でございますから、その点も併せて言及を願いたいと思います。
  16. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) あとのほうの、例のいわゆる特需工場と申しますか、そこの人事条項の問題、その問題を先ずお話し申上げます。この問題につきましては、取りあえず労働分科委員会にかけてお話を願つたわけでございますが、余りに進展いたしませんので、私みずからこの話をしまして、米軍も方向として、まあこれはちよつと話がこみ入つて参るわけですが、ああいうふうに現在人事条項を強化することは好ましくないということははつきり言明いたしております。それからして個々の細目に亙りまして、例えば例の指紋をとるというようなことは、これはアメリカでは極めて普通のことでございまするが、日本ではちよつと違うんだというようなことを説明いたしましたので、そうか、これは再考するとはつきり申しております。それからして保安条項の範囲が広いじやないか、こういうことは困るということを申しましたところ、これは再考する、ただ再考する、その具体的な内容につきましては、只今交渉をやつておりまする労務基本契約の場合と非常に問題が類似しておるから、それと同時に話をして頂きたい、少し時間はかかるけれども、それでやつてくれということでそれを御承知通り現在始めておりますので、それと一緒にやりたい、こういうふうに考えております。  それからその次に労務基本契約のほうに参りますが、これは米軍のほうの内部の事情がありまして、四月から暫らくこれは、まあはつきり申しますと三軍の意見の調整ということに非常に時間がかりまして、これはいろいろな関係から非常に時間がかかつたのだろうと思いますが、それが六月の上旬になりまして向うの対案というものが出て来たわけであります。これが上旬でしたが、上旬から中旬にかけて私のほうで督促いたしまして、できるだけできたものからこつちへ出してくれということを要求いたしまして、こちらで受取つたのは上旬から中旬にかけてでございます。併しながらこれを検討いたしまするというと、なかなか問題が多いのでございまして、こちらのほうの対案というものも急には、殊に法律問題というものも非常にたくさん入つて来て非常に時間がかかつたわけでございます。その対案というものが又非常に長文なものでございまして、英訳するのに、殊に相当テクニカル・タームが入つておりまして非常に手間がとれたのでございます。それが今月の上旬に渡つた。同時に組合のほうの意見も、ちよつとこれは英訳が完全いたしておりませんがその頃に渡したわけでございます。そこでそのときに同時に労働組合のかたからはストライキというような話がございまして、それで御承知通り一昨日でございますか、いわゆる三者会談、米軍と組合とそれから政府の関係者と会つて話合いをやつたわけでございます。併しそこの席上で明らかになりましたことは、組合のほうから八つばかりの質問を提示された、これは時間の関係上そういうことをやつたのであります。それに対しまして政府並びに米軍の回答を要求されたわけでございます。これは米軍の回答はその中の若干のものについてははつきりしておりまするが、何しろこの米軍の内部の機構というものも、これも三軍の間に意見の調整を保つということは、大変調整をするのに時間がかかりまして、こういう短時間の間に自百分のほうの最後的の意見を言えと言われてもこれはできないことが多い。併しながら或るものについては即座によろしい、或るものについては考慮するけれども、どういう具体的な回答をやるかということはできない、或るものについては全然ここでは注釈ができないというこういう返答があつた。その際にただこれをその通り我々はそれだけで考えますと、非常に不満足でございますけれども、只今申しましたように、米軍自体としても時間がなかつたということはこれは間違いのない事実でございます。それからして、米軍は決してあの案が最終案だということは一度も言つておらないのでありまして、多くの点においてなお考慮しなければならん点がある。例えば保安条項の中の保安該当基準というものがあります。こういうものははつきり我々のほうも誤解を生みやすいし、濫用のもとになるからこれは改訂をするように考えようということを米軍の代表も申しております。それからもう一つ、いわゆる現在の思わしくない契約をいつまでも米軍が続けて行こうという気があるのではないかというような懸念も一部の組合のかたが抱かれておるのでありますが、この点に関しましても、米軍ははつきりこれは一日も速かにこの改訂をやりたいということを申して遷延する意図は全然ないということをはつきり言つておるのであります。  それから政府のほうは、これは立場上現在すべての問題についてはつきりしたことは、どういう考えを持つておるかということははつきりとこの際申上げないほうがよろしいと思うということで、大体話合いが終つたわけであります。それでそれに従いましてこの十日、月曜日からでございますが、更に政府と米軍の間に話合いを始めまして、そこで或る程度まとめて更に組合のかたとも話合いをする。又政府としては米軍と話合いをする際に組合の意見というものもよくわかつておりますから、できるだけこれに従つてつて行きたい。こういうのが現在の実情であります。
  17. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、近江絹糸における労働問題に関する件を案件にいたします。これは特に上條君から発言を求めております。
  18. 上條愛一

    ○上條愛一君 近江絹糸の会社における不当労働行為、組合法第二条違反、労基法違反の問題は、これは二年前から全繊同盟が取上げまして闘つて来ておる問題でありまして、労働省といたしましても十分御調査になつて対策も講ぜられることと思いますが、殊に私が今日労働省にお尋ねいたしたい問題は、労働組合法第二条違反の問題につきましては、近江絹糸の労働組合の組織が、会社の人事主任、これは課長級であります。会計主任、現場担当者というような非組合員に属すべき人々が労働組合の幹部の殆んどを占めておるという実情であります。それのみならず今年の労働組合の役員の改選が七月十六日に行われることが選挙対策委員長から発表せられまして、その準備が進められて参つたのであります。然るに七月の十五日に候補者の締切りが行われました。そうするとその候補者のうちには純筋肉労働者の諸君から執行委員、委員長等の立候補が十一名出て参、つたわけであります。そこで会社の社長が彦根工場に現われまして、七月の十六日に男子の工員を全部広場に集めまして、今度の役員選挙で工員が立候補しているが、どうせ会社に反対するだけであろう、この中で全繊同盟と関係している者がいたら叩き出せ、会社は飽くまで闘い、全繊が潰れるか、会社が潰れるかというところまで徹底的に闘う云々の訓示をいたしました。続いて翌日には、谷口工場長、夏川工場副次長、勝間田工務部次長、それから選挙対策管理委員長、こういうような人々がこれら立候補者の人々を集めて、立候補をやめるように強要いたしておつて、予定の十六日に選挙が行われておらないという現状であります。これについてはなお労働省からも事実をお調べを願いたいと考えるのであります。でこのような労働組合法の第二条違反というものは、これは看過す、べき性質のものではないのでありまして、今日近江絹糸というような一万二千人の従業員を有しておる大会社において、このような第二条違反が現実に行われておるという状態は、これは日本の労働組合法を厳格に実施する上から言うても由々しい問題であると考えるので、この点の見解を承わりたいということが一つと、それからすでに不当労働行為につきましては、二十六年の七月に全繊同盟の民主化委員会というものが組織されましたときに、従来の近江絹糸の労働組合の組合員のうちで、これと連絡をとつて内部の改革をいたそうといたしましたときに、長岡、植村というような人々が十数名解雇された、或いは退社を強要せられた事実がありまして、これは顕著なものだけが、津の工場では長岡君という人が三重の地方労働委員会に対して、不当労働行為の訴えをし、彦根工場の大津では植村君というのが大津地裁に訴えまして、すでに六月の二十五日に三重地方労働委員会においては長岡君の馘首は明らかにこれは不当労働行為であるという決定をみております。それから植村君のことにつきましては、大津地裁において今審理中でありまして、近いうちに判決が下るであろうと思うておりますが、このような二十六年の七月だけではありません。その後において組合活動をいたそうとする人々に対しましては、同様なる解雇或いは強制退社ということを二年以上繰返して連続いたして参つておるわけであります。  それから又寄宿舎の労働基準法の違反につきましては、これはたくさんありまして、これもすでに労働省としては基準局を通じてお取調べになつておると思いますが、例えば畳十五畳敷に十三人以上を寝起させておる。それから外出も、外出証明書を舎監からもらわなければ外出できないということをやつております。それから手紙の類も、外部の組合関係などから来たと明らかに思われるものは、会社において開封をいたしておる事実があります。それから労働基準法によりまして、寄宿舎制度というものはこれは家庭と同様に寮生の自活委員会が自主的に運営すべきものときめられておるにかかわらず、今日なお近江絹糸におきましてほ、舎監制度を設けておる。これは明りかに会社の監督の下に自治委員会というものが動かされておるという現状であります。それから女子労働者、年少労働者の深夜業、これは夜の十時半というように労基法において規定されておりますが、十二時若しくは二時頃まで延長されておるという事実があります。でこれらはすでに滋賀労働基準局等におきまして、たびたび摘発いたしまして、すでに判決が下つておる事実もありますが、なおこれらが継続されておるという実情になつておるのであります。  それからもう一つ私がここで申上げておきたい問題は、近江絹糸においては宗教というものも、信教の自由を強制いたしておるのであります。近江絹糸は仏教を遵奉いたしておりまして、これは社憲、社歌、社の憲法であります、社憲というものがありまして、これも明らかに仏教を社憲といたしております。それから社歌というのは、社の歌というものがありまして、これも仏教一色であります。それから手帳を渡しますが、その手帳のうち、我が誓願、誓いの願いと書いてありますが、我が誓願というのもこれは明らかに仏教一色であります。これを強制いたしておるわけであります。毎日その社歌を就業前に集まつて歌う、こういう私のところにたくさんの組合従業員から手紙が参つております。でこのような自分の信仰せざるその仏教を毎朝強制的に信仰せしめられておるというその苦痛を訴えて参つて来ております。  それからもう一つは学校の問題でありまして、近江絹糸はみずから自分の彦根高校夜間部を設置いたしておりまして、これは当時は非常な模範の教育施設として、世間から賞揚されたものであります。この作りました趣旨というものは、本当にそういう模範的なものを作ろうという意図ではなかつたようでありまして、その後の実際を見まするというと、これには教育とそれから実務教育と、こういうことであります。約教育時間の二分の一というものはこれはその工場に出て実際の労働に従事せしめられておるわけであります。そこで従業員の中にはこの会社の学校でなしに、他の高等学校、彦根高校のようなものに入学する者がありまするというと、これは首にするか、或いはその学校をやめさせるか、いずれかの措置をとつておるという現状でありまして、従業員が高校を選ぶ場合に他の高校には行けない、こういう強制的な措置を講じつつあるという実情であります。  それで全繊同盟は別に近江絹糸に対しまして、これを撹乱しようとかどうという考えを以てやつて来てはおらないようでありまして、実際においてこの近江絹糸のやり方というものがひど過ぎますので、二年間の間、これらの近江絹糸の悪辣な態度に対しましては、内部とも連絡をとつて、何とか労働組合を御用組合から自主的の組合にしよう、こういう運動も続けて参りました。それから労働基準法違反のひどい点に対しましては労働省にも要望し、労働基準局等とも連絡をとつて、これを革新したいと考えまして、二年の間努力を続けて参つておりますが、これはなかなか容易にその実が挙がつておらないという現状であります。それで今年も四月以来この運動を続けまして、演説会もし、社会にも訴え、いろいろいたして参りましたが、会社は却つて反省するよりもこの全繊同盟の運動に対して新聞にも大々的に金を使つて広告もし、或いは全繊同盟の幹部を名誉毀損その他によつて訴えるというような積極的の態度をとつてつておるのが現状であります。労働省はこういう点につきましては詳細に御調査にもなつておると思いますから、私はなお申上げたいことはたくさんありますが、ただ一、二の重要な点を申上げて、このような現在近江絹糸が長年に亙つて不当労働行為を続け、労働基準法違反を続け、そうして労働組合法第二条の違反を続けておるにかかわらず、政府としてはこれを根絶する対策がないかどうか、こういう点についてその後とつて参りました労働省の処置、それからこういうことを根絶せしめることができないかどうかというような点、又今後の対策等について承わつておきたいと思います。
  19. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 只今上條委員の御指摘になりました近江絹糸の問題は、従来とも当委員会でしばしば問題になつておる点であります。労働省にもご注意もあり、いろいろとそういつた行過ぎのないように今までも十分注意を払つておる問題であります。御指摘の通り労働基準法について女子の深夜業でありますとか、或いは労働安全衛生規則、寄宿舎の規則といつたような点で違反事項があつたことも事実でございます。又不当労働行為と目さるべきものもあつたことも事実でございます。これに対しましては、労働省としても十分な監督と勧告をやつておる次第でございます。  更に最近役員の選挙につきまして十一名の立候補者が辞退をしたという事実については承知いたしております。ただ事実が、その経緯の内容が御指摘のようなどういう理由によつて、どういう方法で行われたかにつきましては、只今的確な調査がまだできておりません。この点につきましては十分調査を進めまして、若し組合法の違反になるようなことがありますれば、これも十分に措置をとる考えでおる次第でございます。  なお宗教の問題その他につきましても、お話のような非常な行過きがあれば、これは十分今後も考えて行きたいと思つておるのでございますが、ただ一般的に申しまして、宗教心を培養するとか、或いは道義を昂揚する、そうして生産能率を高めるといつたような抽象的な意味ではこれに必ずしも反対すべき筋でない面もあろうかと思うのでございます。併しそれが個人の自由を不当に制限するというようなことになつておる事実があるといたしますれば、これも十分監督をいたしたいと、  こう考えておる次第でございまして、なお個々の問題につきまして、芳し更に具体的なお尋ねがございますれば、労政局長なり基準局長からも又申上げたいと思います。
  20. 上條愛一

    ○上條愛一君 もう一、二点だけ今安井政務次官のお話のうちで申上げたいのでありますが、信教の自由、教育の自由については、別に漠然と誰々を呼んでどういう話をしたとか、どういう教育をしたとかいうことであれば、私も決してここに問題にしようとはいたしません。而も近江絹糸の会社の仏教強要の問題は、社憲を御覧になればわかります。社歌もあります。我が誓願というものもあります。これを読めば如何に仏教を全従業員に強要して、そうしてそれによつて諦めさせ、不平を言わずに、仏教を利用して従業員を過重な労働に諦めさせておるかという事実は歴然たるものであります。お手許にも差上げてありますので、御覧下さればすぐわかります。そういうことではないのであります。これは制度として、施設として仏教を強要してやつておるということに関しては明白な事実であつて、ただ教育方針としてどうするとかこうするとかいうようか漠然たるものでは近江絹糸の仏教はないのであります。社憲として明瞭に仏教を信仰せよということをきめて、社歌というものは明らかに仏教だけのことを歌つたのを毎朝歌わせ、そうして我が誓願というものを見ますれば、これも十カ条に亙つて仏教を中心としたものとしてやつておるのでありまして、そうしてこれは漠然たるものではない。極めて具体的にこれは全組合員、従業員に強要いたしておるわけでありまして、この点は十分お調べの上でた考えを願いたいと、こういうことであります。  それから今の役員改選の問題については、一つ至急事実をお確かめ願いたい。私のところへも数通従業員からこの問題について手紙が参つております。手紙のごときも一組合員なり一従業員よりという名前で、決して名前は書いておらん。これは何を意味するかというと、若し名前等を書いて私どもと関係があるというようなことになれば、すぐ馘になる問題であります。そのような非常な弾圧を加えておるというのが現状だと思います。こういう点については至急この役員の問題等は、十一名の立候補した者に対して社長がそのような訓示をして、それから工場長を初め十一名を呼んで明らかに威圧を加えて、役員の立候補者をやめさした、こういう事実だが、私はこの点は至急お取調を願つて対策を願いたいと思います。
  21. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは一応職安法の問題を除いて意見を述べて頂いたわけですが、石炭協会並びに炭労のかたが今日午後重要な事件があつてお急ぎでありますから、その問題を解決しましてから、引続いて他の問題に移つて参りたいと考えます。そこで石炭工業の企業整備の問題で御質疑のあるかたは一つ簡明に了えて頂きたいと思います。
  22. 田畑金光

    ○田畑金光君 石炭局長ちよつとお尋ねしたいと思うのですけれども、先ほどのお二人のお話を承わりましても、輸入炭重油の無関税輸入というようなことは、相当現在の国内石炭市場を圧迫しておると思いますが、こういうような点について政府はどういう手を打つておられるのか、本日どの新聞でありましたか、重油輸入等については更に十月から十二月までの外貨割当等をやつて、全然制限する意思はない、政策面においても現われていない、こういうような点をどうお考えになつておるのか、これが一つであります。  それから第二の点といたしましては、いわゆる純粋の意味の石炭企業の合理化という点について、相当に政府資金を投下する問題も出て来ておると思います。こういうふうな問題についてどういう具体的な方策を持つておられるのか、今回のスト規制法案に関連しましてあの第三条の問題と関連して、いろいろと岡野通産大臣に石炭行政施策について問い合せましたけれども、これぞという回答も得ていないのです。ただ九州の今度の水没被害炭鉱についての政府の救済策については説明があつたわけですが、そういうような問題も当然に問題になりますけれども、更にそれを含めて全般的に現在の石炭危機と言われておるこの問題についてどういう具体的な策を考えておられるのか、これが一点。  第三の問題といたしましては、現実にいわゆるこれは企業整備というものが起きているわけなんです。政府や行政機関が勿論労使の関係に介入するということはあり得ないことでありますけれども、政府側の立場において、現在のいわゆる企業合理化に対してどういう対策を以て臨んでおられるか、この点。  それからこれは石炭協会の専務理事さんにお尋ねしたいのですけれども、先ほどのお話を承わつておりますると、現在の各炭鉱において行われておる企業合理化というものは、それぞれの会社においてやられておるので、石炭協会は、或いは石炭鉱業連盟等においては関知しないようなお話でありますけれども、どうも我々見ておりますると、中小炭鉱は勿論、大手筋炭鉱においても一割乃至二割の人員整理が出て来た、而も国会の会期末になつてだんだんこれが出て来た、恐らく国会が明けると本格的に出て来るのじやなかろうか、今度の国会で独占禁止法が通つた、これはまあ合理化カルテル、不況カルテルを認可によつて認める、こういうような法的な途も布かれた。更には直接的にはスト規正法案というものが通つた、いわゆる地ならしができた。こういうことを考えて参りましたときに、我々といたしましては、これから更に続発するであろうと予想される企業整備の問題というものはしかく簡単に個々の企業、個々の会社がそれぞれの責任と自主的な判断に基いてやつておるその面もありましようけれども、よりむしろ私はこれは鉱業連盟や石炭協会の石炭施策として出て来ている面が濃厚であると見ざるを得ない客観的な情勢がある。こう見られるわけでありまするが、併し質問してもこれは先ほどのような御答弁になつてしまうかも知れませんが、こういう石炭企業合理化に対しまして、協会として或いは石炭鉱業連盟として当然に労使関係、或いは企業合理化について一つの方針があろうと思うのです。どういうような考え方で協会加盟の大手筋の山寺が企業合理化をやるに当つて、協会自体としてはどういう態度を以て臨んで行かれようとするのであるか、この点について一つ御意見を承わつておきたいと思います。
  23. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 第一段の重油なり或いは輸入炭の問題について、政府は今後どういう考えを持つているか、こういうお尋ねですが、これは従来の、と申しますのは本年の上半期でございますが、それについてのこれらの問題、輸入の外貨割当のいきさつをちよつとお話申上げれば或いは御了解願えるのじやないかと思いますが、重油につきましては、先ほど参考人から話がありましたが、一昨年あたりから非常に急激な増加を来たしておるのであります。これは勿論先ほど申上げましたように、非常に効率がいいというようなことが大きな原因でありますのと、もう一つはまあ外国、これは主としてアメリカでありますが、重油がかなり余裕があるという点だろうと思います。そこで今輸入されております重油の大体半分が漁業用に使われておる。それで重油輸入を制限するということを私どもは常に主張するのでありますが、そうしますと、常に反対側、反対は漁業方面から出て参りまして、むしろ漁業関係としては今の輸入計画でさえ足りないので、もつと殖やさなければいかんということを主張しておるわけであります。そこで鉱工業関係の石炭に代るべき重油、これに抑制を図ろうといたしますと、どうしてもそういう設備の制限というところに踏み込みませんと問題の解決にならんわけであります。そこで従来転換をしたものにつきましては、これを更に再転換を強制するということは適当でありませんので、これはまあ一応別といたしまして、少くとも今後重油転換をするであろうと予想されるものについては、極力重油輸入は減らしてもらいたいという主張が実は石炭局長の主張でございます。ただ通産省の中は石炭生産だけではありませんので、むしろ逆に消費者関係の局が石炭局以外の局は全部であります。そういう関係でなかなか我々の主張のもの通りませんので、今のところは特に重油転換のための輸入を抑制するという措置にまでは至つていない、こういう状態であります。下期の外貨割当についてはまだ私十分承知しておりませんので、その点についてはお答えをするまでの材料を持ち合せておりません。  それから輸入炭につきましては、これは主として鉄及びガス会社用のものでありますが、鉄につきましては、本年度の出産計画を大体四千万トンといたしまして、それに要する石炭国内炭外国炭とを五割々々のパーセンテージで使うという計画にしておるのであります。これは必ずしも五割々々が一番いいというわけではありませんので、使う側のほうからの主張は外国炭は六割にして国内炭を四割にしてもらいたいという強い主張をいたしております。私どものほうではむしろ逆に国内炭を六割使つて外国炭を四割にして欲しいという主張をいたして、その結果通産省の内部としてはその中間をとりまして、五割々々ということになつたわけであります。勿論この使うほうの側から言えば、灰分も少い、カロリーも高い、而も値段も安いというようなことから、成るべく余計の外国炭を使いたいということは一応理窟はあるのでありますが、そのために国内の資源の活用を遅らせる、或いは国内産業を圧迫する、労働者職場を失わせるというようなことは望ましいことではないので、私は、石炭局長の立場としては極力輸入炭なり重油の抑制というものについては努めたい、かように考えております。  それから合理化計画と申しますか、この昨年秋に発表いたしました竪坑を中心にした炭価引下げの政策の問題でありますが、これは今年度から五年計画にいたしまして、七十九本の竪坑を開発すると、それによつて生産費を全体としては二割程度引下げるというかなり詳細な検討をいたしました計画がございます。ただ、その場合に一つの前提として、数年前に経済安定本部で作りました石炭生産五カ年計画というものを元にしたことと、昨年の上半期に得られました石炭企業の利潤というものを今後もそのまま引継げるのだ、引続いでそういう利潤があるのだ、そういうこの二つのことを前提にして立てた計画でございます。ところが現在の生産自体は、経済安定本部が立てた生産計画から見ればむしろ過剰になつておるということと、二十七年度の下期あたりの発表されました石炭鉱業会社の利益というものは、この竪坑計画を立てた当時に考えました利潤と比べて遥かに下廻つておる。この二つの観点からもう一度この竪坑政策、竪坑を中心にした政策というものは検討し直さなくちやならんのではないかというふうに私は考えております。まだそれを検討して、それに代るべき政策を立てる段階に至つておりません。すでに検討には着手いたしております。  それから現在行われておりまする企業整備について、政府が何か措置を考えておるか、こういうお尋ねでございますが、これは見方によりまして現在の企業の縮小、或いは廃止ということが政府の責任であるという見方も先ほどお話がありましたようにできるかと思います。ただ、現在の経済機構、経済政策というものが自由主義に立つておる観点から、生産が非常に過剰になつて売れない品物がだぶつくというときには、先ず企業家みずからが自分の判断においてこれの対策を実施して行くということが建前でございますので、政府としては特別にこれについてそれを勧奨することもいたしませんし、阻止する考えも勿論ございません。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつとお尋ねしますが、先ほど石炭協会の天日理事が挙げました数字は、これは石炭局長認められますか。
  25. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 数字と申しますのは、どの数字でございますか。
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 貯炭数字、それから重油転換石炭換算量、それから輸入炭、それぞれのパーセンテージ、それから貯炭等……。
  27. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 今その数字を詳細に注意して聞いていなかつたのでわかりませんが、大体間違つていないというふうに思いますが。
  28. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからもう一つ、炭労の原副委員長が述べました、詳細には述べなかつたのですが、閉山、休止、それから大手筋の三井、三菱、明治、住友その他についての整理の数字は把握しておられますか。これは労働省と両方に。
  29. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 最近新聞に発表いたされました三井、三菱、住友、古河、明治、麻生というようなところの問題については、現在まだ交渉の過程にあるように私承知しておりましたので、その点についての数字はございませんが、そのほかについては、通商産業局の報告に基きまして、一応休廃止或いは廃鉱した山、それの員数というものを調査はしております。
  30. 吉田法晴

    吉田法晴君 整理の総数、或いは閉山による労働者の失業総数、それから今後の見通しについては、手許に石炭局或いは労働省におありですか。
  31. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 先ほど申上げました趣旨に基いた報告によつて一応その数字はございます。
  32. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間が余り長くかかりますといけませんので、田畑君に申訳ないのですけれども、質問しますが、先ほど炭労の副委員長がそういつたという質問のお答えの中で、自由主義経済の現政治の下では、この枠の中であるからどうも仕方ないのだ、こうおつしやつて、如何にも炭価は二割五分は引下げなければいけない、炭価を引下げるのは至上命令であつて、どうしても引下げる、こういうことを言つておられますが、今まで政府のとられた措置は、いわゆる二十六年度ですか、三千六百万トン、その次に四千万トンが要るんだ、その次には四千五百万トンというような指示を出されておいて、そうして高炭価になつたからこれを下げろ、輸入炭その他の方法もとられておると思うが、そうしてそのあとは今度は労使お互いに闘いなさい、こういうやり方だと思うのですが、そうですが。
  33. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 以前に統制時代、或いは統制が解除いたされましたのちにおきましても、占領治下におきましては、そういう生産の指示なり、勧告なりというものがあつたと思います。昨年あたりからはその指示も何も政府としてはいたしておりません。ただ電力の割当とか或いは輸送計画とか、或いは財政投資の資金繰りの計算をするというような基礎のために四千九百万トンとか、或いは五千万トンとかいう事務上の数字を使つたことはございます。
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 それで、現在四千九百万トンから五千万トンというような見通しがついたから、そういう必要がないと思うのですけれども、いわゆる政府が考えておる炭価引下げという問題についてどういう点についてそれでは引下げたい、いわゆる採算の立たない中小企業は潰れる、或いはそれ以外のところは労働者を首を切つても仕方ない、こういうような考えであるか、炭価を下げるとするならば、それに対する何か対策を以て下げろという政策をとつておられるのか、それをお聞きしたい。
  35. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 先ほどちよつと触れましたが、昨年発表いたしました炭価引下げのため、大手筋については竪坑の開発の問題、中小炭鉱については機械化、技術指導というような予算を一応組みましてこれは勿論財政投資の予算てあります。そういう方面において炭価引下げの施策としたい、こう考えておつたのであります、ただ先ほども申しましたが、それがいろいろの事情の変化のために、若干修正をしなくちやならんという考えを持つております。  なお、私個人の考えを先ほど申上げたのでありますが、全然自由放任で行つた場合に、一体この炭価引下げというようなことが可能かどうかということについては、私非常に疑問を持つておりますので、そこで先ほども申上げましたように、或る程度の国策として強くこれを出さなくちやいかん。これは私の個人の考えでありますが、そういう考えを持つております。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 安井政務次官にちよつとお尋ねをいたしますがね。只今炭労の副委員長が言つたように、一般産業を一〇〇と見る場合に、石炭産業はまだ七五%の待遇しか受けておらない、こういうお話があつて而も只今石炭局長が言われたように、そういう五カ年計画なら五カ年計画を機械化することによつて立てられておる。そうなると、当然この一番下位にある炭鉱労働者の生存権の問題、或いは数の問題になつて来ると思う。これに対してはどういうふうな救済策を考えておられるか、これをちよつとお伺いしたい。
  37. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 阿具根委員にお答えいたしますが、先ほどの七五%と言いますのは、この数字の根拠がちよつとはつきりしかねておるのでございますが、これは出炭能率が上りました際のトン当りの支払賃金ということに相成りますると、特に石炭業では機械化その他によつて能率が上つて来る場合に、そういう事情もあろうかと思つておる次第であります。先ほどの企業合理化の問題が、これは申すまでもなく各方面からいわゆる能率化という面に基いてなされなければいけないのでありまして、これを単に労働者の規制にのみおつ被せるというふうな方策は、これは十分防がなきやいかんだろうと思つております。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 現に起りつつある炭鉱の企業整備、これによつて約一割から二割の人が整理される。これに対して何か具体策を考えておられるかどうか。自由経済主義だから仕方がないのだ、強いものが勝ち、弱いものは死んで行けというようなお考えですか。
  39. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 先ほど吉田委員からも同じようなお話があつたと思いますが、まだ実は政府としまして大手筋のいわゆる雇用解雇と申しますか、解雇の実情はまだ正確に伺つておらんのであります。三菱におきまして一部今何といいますか、任意退職といいますか、の形で以て今組合側と折衝中である、こういうことは今伺つておりますが、それ以外の問題につきましてまだ具体的な内容は全然わかつておりません。併し、一方的に単なる首切りで、あとはどうでもいいのだというふうに行かないようにできるだけ指導もしたい、こう考えておる次第であります。
  40. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつと今のには非常に異論があるのですけれども、ここでまあ討論をするわけにも行かんと思うのですが、首切りを是認されたような、首切りを是認して一方的な首切りだけでは云々というように言われたようですが、これに対しては非常に異論を持つておるのですが、私ばかり質問するわけにも行きませんので、石炭協会のほうから田畑君の御質問にお答えになると思いますから、そのあとで結構ですから、私が今政府に質問しましたことをお考え願つて、どういうふうに政府に対しては考えておられるか。例えば原副委員長は政府に対してどういう計画経済を立ててやるべきであるというような御意見が十分あつたと思うのです。これに対しておつしやつたように、需要と供給のバランスがとれなくなつた、それで皆さんから言われれば企業整理、企業整備ですか、やると、まあ首を切ることは仕方がないというようなことを言つておられるのですが、そういうただ自分たちだけで、労使間で考えるだけじやなくて、どうすればそういうことが防げるか、恐らく首を切るのを喜んでやるものは誰もおらないと思うのですが、政府に対する御意見はどういうふうに思つておられるのですか。田畑君の質問のあとにお答え願いたい。
  41. 天日光一

    参考人天日光一君) 只今いろいろお尋ねがあつたのでありますが、丁度お話に出ましたことく甚だ客観情勢は私今日ここへ参るのは拙い情勢つたと思うのでありますが、と申しますのは独禁法の一部改正なり、スト禁止法と言われておる法律が成立いたしたようでありますが、お言葉を拝借いたしますと、地ならしができたものだからして私が合理化と申上げたのは合理化じやない、それは企業整理だという御指摘もあつたのですが、言葉の用語の差異は暫くおくといたしまして、いろいろそれに関連してお尋ねがあつたのであります。私は実は今私のほうの所属は十九会社ほどあるわけでありますが、それらの会社が最近人員の整理、希望退職者などを募つて始めておるのでありますが、これが只今触れた二法律案の改正成立或いは新規成立等に関連して、その地ならしに乗つたとは私は思いません。たまたま客観的情勢がさような状態に符合したと申しますか、めぐり合せたのだと私は思つております。といいますのは、たとえ如何なる法律ができようが、事態がそれを要求しなければ、さようなことには相成らんはずでありまして、ただ現実の情勢が法律の成否如何にかかわらず、先刻申上げたような現実の情勢は過剰な情勢でありまして、売れないものを掘つてもいたし方ない、これは企業体としては当然の考え方であると私は思うのであります。そこで又竪坑の開さく等を枢軸としました能率増進なり合理化、技術の向上ということは、石炭局長からお話のあつたことく、今後数年に亙つて毎年国内炭需要が増大して行くという大前提に立つたものでございますから、若しもその前提のごとく国内需要炭の需要が年々殖えて行くといたしますならば、竪坑開さくによつて増産もし、能率も上げ、それが又はけて行くわけでありますからして、恐らく希望退職者を募るというようなことにはならずに、多々ますます弁ず、多産ますまず弁ず、多数労働者諸君がおられても多々ますます弁ずるということであつたろうと思うのです。現実の情勢はさようなことには反しておりますからして、そこで御指摘になつたような各社の整備問題が止むを得ず起きて来た、かように考えるのであります。  それからこれは古いことでありますが、私の記憶に誤りなくんば、昭和二一十四年あたりは四十六、七万人に近い炭鉱労務者諸君がおられたのでありますが、只今は三十五万台でありますからして、この間やはり石炭鉱業の能率増進等に関連しまして大きな変遷を現に見て来たのであります。  なお又、竪坑開さく等が計画のごとく推進されましたならば、当然能率の増進を伴うわけでありますからして、余計生産されたものがはけない限りは、非常に困難な分野がそこに加わつて来たのであります。それで石炭局長が言われたように、再検討を要するという面が出て来たのであります。なお、先ほどお尋ねの中に、各社のかような企場業整備ということが日本石炭協会の中で検討されておるか、又協会としてはどう考えるかというお尋ねなのでありますが、これは甚だどうも申訳ないのでありますが、私の協会の定款などを持つて参らなかつたのでありますが、生産、保安、輸送、需給等の調査を主眼としておるわけでありますけれども、従来から人員と言つちやおかしいのですが、人の問題について私どもは殆んど触れないのがずつと従来の扱い方でございまして、といいますのは、整備計画そのものは必ずしも石炭鉱業連盟のタツチすべきものではありませんけれども、その整備計画のあとに続く諸問題等がややもしますると、労使間のいろいろ話し合いの問題になるために、御承知のごとく石炭鉱業連盟という別の機関の所掌に移りやすい傾向を持つておるのでありますから、それこれの沿革的には、このところは甚だ申訳ないのでありますが、タツチしておらないのであります。実情を申上げますと、これは嘘じやないのでありまして、私どものほうの協会の中でこの問題に触れた話を聞いたこともないのであります。私実は昨日お呼出しを受けましたとき、恐らくさようなお尋ねもあろうかと思いまして、慌てまして今朝も私のところの人に、一体整備計画は何ぞや、最近どういう情勢なのか、新聞でも何でもいいから切り抜いてくれと頼んで持つて来たのが、七月二十二日の朝日新聞にはこう書いてある、七月二十七日の日経にはこう書いてある、これを読んで私自身も概略を知つて原君の指摘された数字を、そうかなと思つて書入れているような次第であります。これでお許しを願いたいと思います。かような実情であります。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 労働問題は連盟のほうで、素人だと言われるのですが、私どもも今日の委員会を開きますについて、どちらをお呼びするかということは考慮いたしましたが、整理に関連をして争議が起つておれば、これは労働問題として連盟をお呼びいたします。併し今言われましたように、生産需給ということは、或いは技術の面も含んで協会の所管事項だと思います。そこで先ほど来あなたの言われた、或いは関局長も言われたけれども、日本経済の中における石炭事情、特に需給に関連して、経営の中で人間を減すかどうか、こういう問題は、これは石炭協会の私は問題だと思うのです。それから紛争が起つて参りましたら、それは連盟の問題かと思うのです。そういう意味で実はおいでを願つたのです。話合いを或いは御存じであつたかどうかということは、これはまあ事実問題ですからあつたかなかつたかということを追及はいたしませんけれども、併し少くとも今までの合理化或いはその中の経営者で考えておられる整備、それから人員の整理、こういう問題は経営の問題としてこれは石炭協会の所管事項だと思うのです。そこでそういう点に実は関連をして質疑が行われておると思うのでありますが、それは所管事項ではあると私ども考えますが、協会の話合いとしてはしなかつた、各経営の中の、言わば随意な企画として進んでおる、こういう意味として先ほど御発言になつたのだと思うのですが、石炭需給からする合理化、或いはその中の方法として、経営者として考えられた点、人員整理の問題については、それは話合いがあつたなかつたにかかわらず、私は石炭協会の所管事項だと思うのです。民間団体としては、その点はどうですか。
  43. 天日光一

    参考人天日光一君) 只今重ねてお尋ねを受けたのでありますが、私のほうではお話のごとくんば、争議になりました場合は連盟のほうの扱いであるし、それ以前はお前のほうであろう、こういうふうに考えられるがどうかというお尋ねであつたと思うですが、私のほうとしましては、いわゆる合理化計画、殊に竪坑の掘さくを中心とした能率増進という点、総括的な研究はいたしております。従いまして人員の点に多少関連があることを申上げれば、現在三十六、七万人の炭鉱労務者がおられるのに対しまして竪坑が七十九本開さくされました暁には、その数が幾ばくに変化するやということなどは、これは石炭局のほうでも試案をお作りになつたのでありますが、相当大幅に減る形が現われております。それは現在の十一トン、或いは十二トンというような能率が十七トンともなり、十九トンともなるという想定でありますからして、それだけに人員の変更が織込まれておるわけであります。さようの点の総括的な考究は、一応単位能率が上れば相乗積として割出した人員の数が変つて来るわけであります。そういう点の考究は調査いたしたことはありますが、然らば仮に幾ばくの人員が余剰になつたということが出ましても、それが各社でどうやるかということは私どものほうでは関知いたしません。それは総括的の研究でありまして、あとは各社のそれぞれの方針、営業の問題であり、運営の問題であるというように考えておるのであります。ですからして、最近新聞に発表になりますというか、報道される各社それぞれ思い思いの数字なんというものは、私関知しておりません。そういう状態でございます。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 例えば過去の実例において、労働者の住宅の問題、それから主食の問題、こういうものは協会でお扱いになり、生産のほかの問題については関心を持つておるけれども、労働者の首を切られる問題については、おれの知つたことじやないという御発言で、私は甚だ心外に思うのです。それは責任をここで追及するということを申上げても実は仕方がないと思うのです。生産或いは経費、或いは経営問題に関連して、労働者の問題が起つて来たならば、その限りにおいて私は当然石炭協会としてはお扱いになるべきである。先ほど阿具根委員のほうから話がありましたが、経営の面のほかの点については考えておるけれども、労働者の問題については、特に首切りの問題については対策も何も考えておらんかという質問があつたかと思うのです。その点については、これは石炭局長に聞いて参りますけれども、これは当然どうするか、或いは政府の要望等も含めて、当然協会としてお考えになるべきことだということを指摘しておきたいと思いますが、関局長と、それから労働政務次官もおられるはずですが、まあ関さんは労働問題についても御造詣が深いのでありますから、先ほど言葉の中に合理化の負担を労働者のみに転嫁するのは妥当でない、そういう方策を取つて、或いは取らして行くということは考えられない、こういうお話でした。ところがあとのほうで自由主義をとつておりますから、石炭需要或いは利潤等について変動があつたら、変動に即応した異つた事情が起つて来たらしようがない。いわば首切りが行われてもしようがないという、御発言の中に矛盾が出ていると思うのです。そこで先ほど来スト規制法なり或いはその他の措置から関連いたしまして、政府の責任が問われておるのでございますが、まあスト規制法も客観的に見ればこういう強制なり、或いは切下げの地ならし工作として政府は作つたのではないか、こういう話さえ出ておるのでありますが、恐らくこの経済の形態と申しますか、或いは石炭需要の低減に対して、その負担を労働者にだけ転嫁して首切りをどんどんやつて行くということをいいとは、まさか政務次官も或いは関局長もおつしやらないと思うのでありますが、そうするとどうすればいいか、これは労働行政なり或いは石炭行政として、当面なすべきものである。或いは竪坑開発だけでなくて、もつと総合的に考えなければならん。或いは五カ年計画なり、その中で論ぜられた条件が違つたところを変えて考えて行かなければならん、こういう大きい経済計画の中での施策になつて参ると思うのですが、いずれにせよ労働者だけに負担を課するわけに行かんのであるから、お言葉にもございましたけれども、純然たる自由主義でいけないということは、これはもう明らかだと思うのです。或いは石炭の場合についても、或いは今まで復金或いは開銀等を通じて相当多額の金が炭鉱に注ぎ込まれ、或いはこういう問題を解決して行こうとすれば、純然たる自由主義で行かない、このことは明らかである。自由主義を、理窟はともかくとして、修正をしなければならんということが政府としても課せられておる問題だと思う。それについてもう少し具体案を述べてもらいたいと思う。自由主義だから、石炭需要が減つたから、或いは炭価を自由競争に訴えて引下げるためには、労働者だけに転嫁するということがいけないとするならば、もつと具体的な施策が出て来なければならないと思う。そういうことを知らなかつたということでは両方とも済まないと思う。具体策を伺いたい。
  45. 田畑金光

    ○田畑金光君 関連して。この際一つ石炭局長に御説明を願つておきたいと思うのですが、先ほど今年度の予算の中から、炭鉱に財政投資を考えておる、こういうお話がございましたので、いわゆる予算に計上された財政投資の運用について、どうお考えになつておられるのか、これは先ほどの合理化施策の一環になりますので、この際一つ石炭局の考えておられる本年度の具体的な石炭施策について、この際併せて御説明を願つておきたいと思います。
  46. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 吉田委員からのお話は、私の申上げたことを或いは誤解なさつておるのではないかというふうに思いますが、私は石炭に限らず、経営全体がそうでありますが、労働者に犠牲を負わせるということは私はもう反対であります。できるだけ、先ほどから何回も申しますように、石炭について申しますれば、有効需要を増す方法を別途に講じてもらつて、これは石炭の関係ではございません、需要者のほうの産業関係として有効需要を増してもらう、それによつて石炭生産も従来安本で作つた程度のものは出し得るようにやつてもらうということが先決でありますが、ただ昨年秋に作りました竪坑を中心にした基本政策というものが、それを作る前提が、今事情が変化したために、これに修正を加えなくちやならんということを申上げたのであつて事情が変つたからもう放つたらかしなんだという意味のことを私は申上げておりません。その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。  それからやはり吉田委員からの今の御発言で、完全な野放し自由主義は修正を必要とするという御意見でございます。これは先ほど最初に私が炭労の参考人お話なつたあとで意見を申上げるときに述べましたのですが、完全な野放し自由主義であるならば、需給次第で以て価格が決定されればそれでよろしい、高いとか安いとか言うことは一切政府が口にすべき性質のものではないというところまで徹底すれば、物事は非常に割切つたことになるのであります。ところが一面において国の要請として、炭価をもつと下げなければ日本産業自体が伸びない、輸出がうまく行かないというようなことが一面に要請されますので、その意味におきまして炭価引下げの政策を一つの大きな国策としてやはり推進する必要があるのじやないかということを私は考えておる、こういう御説明を申上げたのであります。  それから田畑委員からの今の財政投資の問題でございますが、本年度の開銀を通じます財政投資の中で、石炭に一応四十億というものが予定されております。これは予算書の参考書類に記載されておりますので御承知のことと思います。ただ私どもとしてはもう少しこれの増額を図りたいという考えを持つておりますが、まだ通産省としてはその具体的な数字をきめる段階に至つておりません。このほかにいわゆる中小企業金融公庫を通して中小炭鉱に出される財政投資がございます。この数字も全体で百二十億でありますが、そのうちから炭鉱に幾ら出されるかという数字は、まだついこの間予算が決定されたばかりでありまして、内訳はまだ決定をされておりません。  それから財政投資のほうの問題でありますが、これは今の開銀法によつて如何なる条件の下に貸出すかということは開銀自体がきめるという建前になつております。ただその工事の計画内容、或いはそこの会社の経理状況がどうかというようなことについては、石炭局で一応の検討をいたしまして通産省の各部局で調べたものと一緒にして通産省の意見として開銀に提出される、それを参考として開銀が決定する、こういう方法になつております。
  47. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちよつと今の御質問に関連いたしましてお伺いしたいのでありますが、最近の石炭の需給の関係にやや生産過剰と言いますか、貯炭の増といいますか、そういう状況のあつたことは事実でありますけれども、日本基幹産業への投下規模を拡大しなければならないということは、これは考え方として相当強く言われておるし、又そうであろうと私は思うのであります。先ほど安本の五ケ年計画を言われましたが、私も五ケ年計画の数字を今覚えておりませんけれども、日本のエネルギー源の問題として、将来やはり石炭というものの需給は、当然に一時の消長があつても、大局的には増加して行く、又増加せしめて行かなければなら、ないというふうに私は考えるのですけれども、石炭当局としてはこの点をどうお考えになつておられるかということが第一点。それから先ほど局長の言われました高炭価の問題に対して国として相当強い政策をこれに打出さなければなるまいということを言われたのでありますが、その方法としては機械化その他いろいろあると思いますけれども、その考えの中に大きな意味で日本石炭鉱業というものを整備して、言い換えれば弱小の鉱山を休廃止の方向に持つて行く、止むを得ずそういう考え方をとつて能率のいい効率的な大規模の鉱山に重点をおいて、それから来る一つのそういうことによつて高炭価を引下げて行つて適正な価格に持つて行く、石炭自体の不足は、先ほどお話があつた輸入炭或いは輸入重油によつてつて行く、そういうふうに日本の今後のエネルギー源を確保して、又一面において炭価を適正にして行くというふうな考え方を通産省としてはおとりになつておるのではないであろうかということを私は伺いたいのであります。  それからもう一つは初めに言いましたように、将来どうしても石炭自体としては、これはやはり生産を増して行く方向に持つて行かなくちやならんという観点をとれば、中小石炭鉱業についても、これは単に一時の需給の状況に任して、割が合わんから山を捨てることも止むを得ないんではないかという考え方ではなしに、何とかこれを保持して行くという政策が私は取られるべきじやなかろうかと思います。これまでそういう面においてやや自由放任と言いますか、そういう面があるために、ちよつとした当面の需給の異変から山が休廃止される、その次にちよつと需要が増し、炭価が上ればコスト採算を無視してどんどんやる、それが延いては高炭価の原因となるというようなことが繰返されたんじやなかろうかという感じがするのであります。なんとか将来日本として石炭をやはり増産と言いますか、生産を拡充して行かなくちやならないという見通しであれば、中小炭鉱についてもその当座当座の動きに任せることなしに、もう少し筋の入つた政策というものが、石炭政策と言いますか、燃料政策と言いますか、そういう面で強くとられて来ていいのじやないかと思うのであります。先ほどもお話のあつたように、成るほど現在は自由主義経済、従つて先般大臣も言われましたように、これは私企業であるから止むを得ないと言えば止むを得ませんけれども、御承知のごとく農地のごときはこれは完全なる自由経済の下においても御承知のように百姓が、農家が勝手に自分の持つている土地を処分するわけに行かない。農耕地は一反歩といえども勝手に処分をして宅地にするとかいうわけに行かないようになつている非常た制約があつて、これは大事な食糧生産基礎であるという観点で、国は相当強い統制と言いますか、管理と言いますが施策をしておるのであります。鉱山は普通の自由企業でありますけれども、やはりこれは国の資源として特別の鉱業権というものを与えておる、特別の鉱業権という一つの独占的の権利を与えて、それによつて運営されている私は特殊の企業だと思う。従つて、単純に自由企業という考え方では、そこに何と言いますか、検討さるべき問題があるのじやないかという感じが非常にするのであります。特に石炭鉱業の将来と中小炭鉱の問題ということについての、これは石炭局長としてのお考えで結構ですから、この際お洩らしを願いたいと思います。
  48. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) エネルギーの総合対策石炭局が考えておるかという第一点の御質問でございますが、これは従来とも石炭局ではエネルギーについての総合的な計画というものは立てておりませんので、現在経済審議庁で検討を着手したというふうに聞いております。世界的な大体の動向から申しますと、石炭という固形燃料を動力源として使うよりも、油とか天然ガスとかいう方面に依存する度合のほうが年々少しずつ殖えて参つております。ただ日本がその同じようなカーブを画き得るかどうかということについては、天然ガスについても油についても非常に資源が乏しいわけでございますから、お説の通りにやはり動力源としては石炭或いは電力というものに依存して行かなくちやならん。その点から申しますと、今後だんだん石炭の増産を図つて行くということは望ましいことだと思います。ただそれが実行されるためには需要のほうが、つまり各産業がそれに並行して伸びて行くということが前提でございますので、その方面の施策が我々の考える石炭政策と調整がとれて行くことを期待しておるわけであります。  それから弱小炭鉱についての御質問でございますが、これは必ずしも弱小炭鉱だから要らんのだという常識には私は反対でありまして、弱小炭鉱といえども相当の能率が挙り、相当の品質を出しておるところがあるのでありまして、そういうものについて従来とも国の財政投資を行うなり、或いは企業の診断をして技術指導を行うなりして育成に努めて参つて来ております。今後といえどもやはりその政策には変りがないのでありまして、弱小なるが故にこれを整理するという考えは石炭局長としては持つておりません。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど具体策を聞いたのですが、誤解があるという反撥をなされただけで具体策はお示しにならなかつたので、若しあるならお示しを願いたいと思います。
  50. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 具体策と申されますと、先ほど吉田委員お話の、例えば今度の石炭鉱業について解雇が若干あるという傾向は、先ほどできました法律が地ならしになつているのじやないかというお話がありましたが、政府といたしましてはそういう意図は全然持つておりません。私の聞き及んでおります石炭業について今のような傾向は見えて参りますが、電気ではそういつた情勢は全然ないと伺つております。純粋にこれは石炭の事業界の現象であろうと思つておる次第でございます。そこで合理化に伴いまして、これを労働者の一方的の犠牲に強いてはいかんという話は、これは重々御尤もでございまして、そういうことのないように十分心がけて行きたいと思つております。併し実はこの合理化又は経営上の観点から解雇という問題が起ることもあり得ると思つております。この際はでき得れば希望退職というような形で円満に事を進め、更に止むを得ない場合につきましては失業保険なり或いは他の職業に極力斡旋の機会を得るように努力をいたす、こういうふうに考えておる次第でございます。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 そういう考えだから先ほどから問題にしておるわけです。石炭局長石炭生産が主であるのかも知れませんが、併し新憲法の二十五条をまつまでもなく、この基幹産業における労働者の生活の保障というものの上に初めて現在の石炭政策というものはあり得る。従つて合理化の負担を労働者のみに転嫁することは反対だと言われるのは私はその点だと思う。協会にしても石炭局長にしてもそうですが、基幹産業労働者の生活を保障する、或いは有効需要ということを言われましたが、有効需要を拡大して行くという点については、これは総合計画が必要であろう、総合計画というのはこれは自由経済ではございません。そこで総合計画の点については基本的の方向ですが、いずれ現在は石炭需要が減つておるけれども、石炭が余るのではなくて足らんような日本の経済にならなければならん。これは勿論計画表或いは概数によつての御指摘でありま目しようが、そういう中において一時の不況があるから、朝鮮停戦後の平和経場済の転換の場合、不況があるからといつて基幹産業労務者を或いは中小炭鉱だけでなしに、大手筋においても一〇%から二〇%の整理が行われようとしておる。それが望ましいとは恐らく協会の天日氏も石炭局長も言われないと思います。そうするとそれを最小限に防止して、できれば労務者の生活の保障を維持しながら進めて行く方法をここでお示し頂きたい、こういうことを申上げておるのであります。或いは合理化の方策として二割を目標として竪坑を開さく云々という話がありました。基本的に言えば竪坑を開さくするだけで問題が解決するとは思えない。先ほど梶原さんから話がありましたけれども、もつと機械化或いは施設、技術の向上によつての合理化という点に重点を置かなければならんだろうと思います。佐久君の言われる労働者のみに転嫁しちやいかんというのもそういう方向だろうと思います。そういう基本的の方向もありますが、この事態に対してどうして行く、こういう方針を具体的にお示し願わんことには、成るべく私どもも打切りたいと思つておりますが、折角始めましたいい機会でありますから、具体案なり或いは結論が得られなければ委員会を散会するわけには行かんので、一つお示し願いたい。
  52. 田畑金光

    ○田畑金光君 今吉田君からの御質問がありましたが、私先ほど来安井政務次官の御答弁を聞いておりましても、石炭局長お話を承つておりましても、具体的な何物も掴むことができないのです。折角開発銀行を通じ四十億の融資、中小企業金融公庫の中からも中小炭鉱に融資を考えておる。私はこういうようなのが政府の現在石炭行政に対して考えておる程度だとすると、私は驚くべき怠慢じやないかと思う。現在火がついておる。そうして予算もすでに通つておるわけなんです。予算も通つていて、而も具体的にこの四十億をどういうふうに大手筋の炭鉱へ、中小炭鉱べ廻そうとするのか、而もそれが炭鉱の合理化にどういう面において具体的に使われるのか、或いは中小企業金融公庫を通じて融資をするならば、それはどういう中小炭鉱の設備資金なのか、或いは運転資金に使うのか、まあ中小企業金融公庫ですから長期の資金も予定していると思うのですが、それはどういうふうに配分をやつて行こうと考えているのか、現実に火がついておる、火がついておるのだから速かに処方を必要とするのだと思うのです。ところがそういうことは何ら答弁になつていない。これはやろうとする肚があるのか、単に計画を立てて予算が通れば、それで我々の仕事は終つたという考え方なのか、何らこれに対して具体的なものを引出すことができん。一体熱意があるのかどうかということを私は疑いたくなる。更に政務次官の御答弁は、努力をするとおつしやるけれども、努力をするのはお互いさまで、誰でも努力をしないものはない。問題はその努力をどう具体的に当面やつて行こうとするのかということを我々はお尋ねしておるのです。現にあなたも認めておられる通りに、大手筋においても人員整理が行われておる。失業者が出ておる。中小炭鉱でも現実に出ておる。その資料は労働省にあるわけでしよう。だからそのようなことに対して現実に政府は何をしているのかどうやつておるのか、具体的なものを我々は聞いておるのです。どうも努力をするということだけじや、これは何ら我々としては答弁になつていないと思うのですよ。政務次官はスト規制法を通すための努力だけで追われて来たのか、或いはそれと同時にこのような問題も総合して政務次官としてやつて来たのか、もう少し政務次官は政務次官ら上く、自由主義経済の上に立つているということは我々追及していない、自由党に対して幾ら頑張つたつてそれは出て来んと思いますが、自由主義経済でもよろしいから、自由主義経済の枠内において雇用の問題と失業の問題と、或いは熱資源の問題等についてどう考えておるのかということを我々はお尋ねしている。少しは一つ答弁らしい答弁も安井政務次官もやつてもらいたいです。以上関連してお尋ねしておきます。
  53. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 吉田委員長期対策についてもさることながら、現実に起つている問題についてどう処理するか、こういうお尋ねですが、私はやはり現在の高炭価問題というのがやはり一番大きな根本の問題でありまして、これが解決されることがどうしても必要だ、その対策として先ほど来申しますような政策を立て若干情勢の変化によつてこれの修正を行なつて行くということでございます。現在眼の前に起きている問題につきましては、今のところどうも私のほうとしては、名案がございません。  それから田畑委員からの開銀の金はどういうふうな計画になつておるかというお話でありますが、これは先ほど私抽象的に申上げまして、個々の具体的な炭鉱についてまでのお話を申上げなかつたので、或いは御理解を願えなかつたかも知れませんが、かなり詳細な各炭鉱別の資金計画というものを作りまして、開銀に出しております。開銀の四十億のうちいわゆる大手という部類に入らない中小の部類に入るものの枠がたしか十億ございます。それから中小企業金融公庫のほうは、これは運転資金と設備資金と両方ありまして金融公庫自体がまだ開店をいたしておりませんから、従つてどういう割振りになるかということは未決定でございます。
  54. 吉田法晴

    吉田法晴君 高炭価問題が問題だ、それから当面のあれについては、具体案がまだない、そうすると、気持の上では合理化の負担を労働者に転嫁するというのは反対だと言われるけれども、実際には首切りをやつて、そうして対策としては先日来言われるように、職業の転換を図る、いや失業対策について考える、こういう今まで通りの話になつて、炭鉱労働者について生活の安定と、それから雇用の保障という問題は出て来ないと思う。天日さんからは先ほど一応意見は承わりましたが私は労働者について協会においても責任があると思う。経営者に責任があると思う。協会といえども、住宅問題等には責任はあるけれども、首切りまでには責任はないとは私は言えんだろうと思う。その方向と具体案を至急立てる決意があるかどうか承わりたい。
  55. 天日光一

    参考人天日光一君) 只今非常に突込んだお話を承わつたのでありますが、私は甚だ遺憾でありますけれども、吉田さんの御意見に対して必ずしも承服しかねます。それは企業整備に伴つて職場を失う人が出ることに対して協会は責任があろうというお話でありますが、如何なる責任を……、私はちよつとその根拠を思い当りませんと申しますのは、これは先ほど皆さんのお話にも数回出ておりますが、国の経済といいますか、いわゆる主義の問題は我々ごとき業界の者はかれこれ言う筋合のものではありませんから、これには触れませんが、現在ともかく企業を営んでおる、ところが客観的情勢従つてその企業を維持して行くために必要な措置を講ずることは、これはいたし方ないと思うのであります。その措置一つの現われが甚だ残念でありますけれども、人員の整理或いは希望退職者を募るところに一つが現われて来たというところでありまして、これを石炭協会、生産業者の団体であるからこれに対して責任を持てとおつしやつても、ちよつと持ちかねる点があると思います。もとよりかく理窟ぽいことを申上げて恐縮でありますが、無関心でおるわけではあるまい、そういうお言葉があつたわけでありますが、もとより無関心でおるべき筋合のものじやありません。できる限りかようなことがないようなことを望むことは、もはやくどく申すまでもないのであります。併しながら、客観的な事態は石炭鉱業の中に過剰になつた人員を包蔵しておくには参らない情勢になつておるということでありますから、これは又石炭鉱業者はこれは申すまでもなく一私企業を営んでおるものでありますので、これは好ましいことではありませんけれども、希望退職者などを募らざるを得ない情勢なつた時に、できる限りの法規に基く、又法規以上の措置をできるだけ取るといたしましても、必ずしもそういうことがないようするというわけには参らんと思うのであります。これは又石炭鉱業と言わず一般産業界もそうでありましようが、こういう大きな労働対策産業機構の問題或いは人口政策の問題であろうと思いますからして、一私企業を営む者のごときがかような大きな問題を解決し得るわけには参らんと思うのであります。これこそは皆さんの委員会なり或いは全国会なりが政府その他を督励鞭撻されまして、大きな基本的な対策を御考究願うべきことを切に我々のほうも念願して止まないというふうに申上げたいと思います。
  56. 吉田法晴

    吉田法晴君 天日さんと議論しようとは思わないのですが、炭鉱の生産と、それから経営を維持しようというならば責任がおありになるわけですが、さつき有効需要の問題が起りましたが、これは五千万トンが四千万トンに減るのじやなくて、四千万トンが五千万トンに、五千万トンがもつと殖えるようにということが私は希望だろうと思うのです。これは自立経済の計画に関しますけれども、或いは有効需要を殖やすような施策をとつてもらいたいというような希望が恐らくあるだろうと思う。これはなければ先金な経営権の放棄です。だから恐らくおありになるであろう。その中で経営の大きな要素は労働者が占めておる。現に一割か二割の企業整備が行われ、人員整理が行われようとしておると言われますが、例えば希望退職を募つても、これでやめますのは基幹産業労務者がやめますよ。そして何カ月かののちに再び生産拡大をして行きたいというときに、これは前の熟練した、そうして山に愛着を持つてつた労働者が直ぐ帰つて来るか、得られるかといいますと、それは得られません。そうしますならば、次のとにかく段階を考えるならば、労働者の生活と労働の機会を維持するために経営者が責任を持つことは当然だろうと思う。恐らく経営者としてのお気持の一端を持つておられると私は思う。ですから労働者の雇用の問題について或いは整理という問題について、食の問題ついて或いは住宅の問題については俺の責任だけれども、併し労働者の首の問題については自分の責任でないとして、何らこれに対する対策を講じようとしない、こういう態度には我々は承服することはできない。それを一つ速やかに対策を立てられることを望むということを申上げておきます。
  57. 天日光一

    参考人天日光一君) 只今お叱りを受けて恐縮でありますが、何ら関心を持たないということは、もとよわ言葉のあやでございまして、およそ経蔵者としまして、同じ同胞の諸君に働いてもらつておるわけでりますから、これが企業整備などにぶつからずに済むことを万々望んでおることは申すますもありません。又責任と申しますか、これにつきましても、各種労働関係法規に規定されるところなり、又できればそれ以上のことを止むを得ずやる。万止むを得ず希望退職を募る事態になわけですからやるわけでございます。併し一方においてさような事態が起きないようにするために、生産の増大に伴つた有効需要を喚起しろということなどを当然希望するであろうというお話がありましたが、それはお尋ねの捕りであります。さればこそ国内炭需要の増大といいますか、或いはやや消極的になりますけれども、増大よりは当面国内炭需要が圧縮されないようにするために、実はここに佐久石炭局長も見えておられますが、再三再四に亙つて輸入炭抑制と申しましようか、調整と申しましようか、或いは重油転換の抑制というようなこともお願いして参つておるわけであります。併しながら佐久局長からもお話がありましたごとく、やはり一般産業としましては、それぞれの立場においてのコストが考えられるものでありますから、遺憾ながら現在国内炭重油なり或いは外国炭に比べてコストが高く付く部面がいまだ免れないものがあるものでもりますから、さような関係からしまして、一概に何もかも国内炭で、もとより日本で産出しないものを入れるということはこれは論外でありますけれども、そうでないとしましても石炭で熱効率を上げることができるといたしすしても、採算の面から需要増大を来たしておるというわけであります。それに対応して行くためにはやはりコストを下げなくてはならないということが一般に要請されておるわけでありますから、それで石炭の値段を下げなければならん。下げるためには能率も上げて生産ストを下げなければならん。今非常にむずかしい鋏の間にはさまつたような恰好になるのでありますが、ただ大きな意味での労働対策と申しますか、かような点は一企業、一産業のよくするところでは私はないと思います。これは国家の問題でありますから、国家としてお考えになるより一番完全ないい方法はないんじやないかというふうに私は考えております。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 協会のかたと議論をしている間がありませんから、もう少し経営者としてそれぞれの問題についてお考え頂きたいということを強く要望して、あと労働省に具体案を要望しておきたいと思います。  炭価の問題が問題だと、これは私も認めないわけではありません。併し竪坑だけで労働者に負担をかけないで実現するということが事実上困難だという現実が起つておることもこれは言えると思います。我々はそこに見通しと方法の誤りと申しますか、不十分さがあつたということだけはこれは事実だと思う。だからその点についても自由企業だから放つておくということでなくして、恐らく施策を立てられるでしよう。或いは別の技術的な方法を考えるとしても労働者に負担をかけない改善の方法或いは炭価を下げる方法を考えられる。更にその場合に財政投資という問題が起つておりますが、財政投資も行われて行くでありましよう。これは即ち自立経済じやない。その中で憲法がいう労働者の生活の保障、健康で文化的な生活の保障或いは炭鉱における雇用の保障という問題が入つて来ておる。安井政務次官は、炭鉱から出て来たら失業保険だとか何とかそういうことを言われるが、今問題にしておるのは炭鉱における労働者の生活の問題を言つておるのです。具体的にもう少し例を言うならば、この間の水害に伴なつて中小の鉱山において休廃止が行われる、或いは実際に休んで賃金ももらえない、失業保険ももらえないで生活に困つおる。それも一カ月近くになるので問題を起した。労働省に行つた、或いは通産省に行つた、ところが一応基準局長も、それじや賃金のことは問合せましよう、或いは衆議院で政務次官などは失業保険云々ということを言つたけれども、実際的に突つ込んで行くと方法がありません。そこで仕方がないから収容しておる労働者に対して失業保険を適用するという特例を設けて、要するに救済される、仮にこれから方策を立て、それが実際に実行され、或いは自立経済計画が立てられて、我々が考えられるような自立経済計画を立てられて、石炭生産というものが軌道に乗るということになれば、それはそのときには、そういう国の挺子入れということは要らんかも知れないけれども、仮に反対に、労働者の生活というものを国が保障するということになれば、それは完全に方策は立ちます。立ちますが、それを今そういう方法で直ぐにやれとは言わんけれども、具体的な方策をここに示してこの事態に対処するという決意が示されないならば、或いは或る程度の方向というものが示されないならば、我々この委員会を開いた意義がない。一つその決意と方向だけをお示し願いたいと思います。
  59. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 田畑委員の御質問に関連してお答えする次第でありますが、目標の需要が減つたから直ぐに行過ぎの整理を断行する、いわゆる角を矯めて牛を殺すという類にならないように、これは通産省の仕事とも非常に関連するわけでございますが、十分留意をいたして進めたい、こう考えておる次第でございます。先ほどの、併し日本産業にとりましてコストの切下げということは、これは今後の日本産業を本当に強くする意味からも、非常に必要なことでもあると思います。こういつた観点から、企業の合理化、或いは経営上の観点から、人員整理という現象もないという保障は、これはないと思うのでございます。併しその場合でもこれを希望退職の方法によるなり、或いは配置転換方法によるなりといつた、現実にでき得る限り犠牲を少くするという趣旨に副つて最大の努力をいたして行きたいこう考えておるものでございますので、御了承願いたいと思います。
  60. 田畑金光

    ○田畑金光君 安井政務次官は最大の努力、先ほどから何度も聞いてよくわかるのですが、最大の努力と言われても、それだけでは私は話は済まんと思うのです。そこでこれは労働省は労働省の立場で、まあ起きて来る失業問題に対しては、失業対策事業の枠を拡大するとか、或いは又他の面の職業安定行政を十分に活用して、雇用市場を拡大するというようなこともありましようけれども、それは出た後の始末を言つておるので、我々の言つているのは、現在火がついておつてそこで現実すでに企業整備が行われておる、或いは外国炭の圧迫等から市場の圧迫等からして、山を閉鎖しなければならんという中小企業が出ておる、現実に起きておる、火がついておるこれをどう防止して行くかということが、当面の最大の問題じやないかと思う。その問題について労働省は、我々の所管外だというような考え方でなくして、それは産業政策としては通産省の所管だと言われるかも知れんが、そういうような通産省だとか、労働省という考え方じやなくて、もう少し大きく政府の全体の責任における産業政策としてどう当面のこの石炭危機を乗切つて行くかということを検討するだけの熱意を持つてもらわなければいかんと思うのだ。それは労働省がイニシアチヴをとつて私は労働行政の所管にかかわらず、当然そこまで伸びて行かなければならん。そういう点にもう少し安井政務次官は熱意を持つてつてもらわなければ、先ほど石炭局長お話を聞きましたが、それだつても百三十億の中小企業金融公庫から中小炭鉱に一体どれだけの金を廻そうとするのか、現実に火がついているのだ、どのようにして政府は促進して行こうとするのか、そういう点をもう少し誠意ある答弁を聞きたいのです。大きな枠を示されただけでは、これはあなたがたの言うことであつて、これが県から更に末端の個々の企業に実際に金が流れて行くのは、幾らかかるかということを心配する。もう少しそういうような点について現実火がついておるなら火がついておるらしくやつてもらいたいのですが、そういうような点を先ほどからお伺いしているのです。もう一度安井政務次官と石炭局長の御答弁をお願いしたいのであります。
  61. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 炭労のかたが非常にお急ぎになつておりますが、お帰りになつてよろしうございますか。
  62. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は今回の問題で、石炭の値段が高いということが一つの問題であると思うのですが、天日さんにお伺いしたいのは、私どもの考えるところによれば、日本石炭産業界の経営くらいでたらめなところぱないのであります。こう考えるのです。一例を申上げますれば、本年度の高所得者の二十名のうち十六人ですか十七人ですか、これは炭鉱業者です。この炭鉱業者の高所得というものは、炭鉱以外の所得によつて高所得者になつているのか、炭鉱を中心として高所得者になつているかということは私は存じませんが、主として炭鉱の経営によつて高所得を得ていると私は考える。これなども一例だと思います。政治献金にいたしましても、それからこの前の石炭国家管理の問題の時なども、炭鉱業者のばら撒いた金というものは莫大なものだということは、これは小坂労働大臣に言わせれば日本の社会通念、(笑声)そこで私は、日本の炭鉱経営者ぐらい政治と結託してやつて来た経営者というものは少い。日本の経営者の中でも、経営はでたらめだと私は思う。そこでこれはどうしても根本的には石炭局長にも聞いて頂きたいのですが、炭鉱の経営というものを合理化しない以上は、政府がどのように助成金を出したり、補助金を出したり、困つた時に救つてつても、これは根本対策じやない。根本対策はやはり日本の炭鉱経営者が合理的に経営してそうして事があれば、すぐに労働者を首切つて労働者に犠牲を与える、日本の炭鉱労働者の中で、誰も経営が合理化されてそうして不況になつて我々が犠牲になるのだということを納得をする労働者は一人もあるまいと思う。皆炭鉱経営者の経営状態というものが合理的でない、でたらめだということを感じておるであろうと私は思うのです。それが承わりたい第一点です。  それからもう一つは、この問題は日本石炭が高い、従つて需要者が重油外国炭を利用する、こういうことが一つ原因をなしておる。これは国策の問題だと思うのです。そこで日本の炭鉱業をどうしても保持して行こうということになれば、この重油の問題と外国石炭の問題を国策としてどう制限をして行くかという問題があると思うのです。これは国家は国策としてその方針がきまつておるかどうか、又今後きめようとするのか、今のような自由に放任して、現在日本の掘出す石炭が高い、高ければ、需要者はどうしても重油を使い、外国炭を使うということになりますが、ただそういう自由放任で、今日中小企業の石炭鉱業が潰れて行くのを坐視していいかどうか、国策としてやはりこの根本の問題を、日本石炭をどうしても保持して行くという方針で行くのか、今までのような自由に任せておいて、或いは日本石炭が高ければ、重油や外国の石炭を買入れる、国策としてそういう方針で行こうとしておるのか、この二点をお尋ねしたい。
  63. 天日光一

    参考人天日光一君) 私に対するお尋ねは初めてございましたからお答え申上げます。  日本の炭鉱経営者の経営振りがすこぶる放慢であつて、お言葉を拝借すれば、だらしがないとおつしやいましたか、もう少しひどかつたですか、そういうふうにおつしやいましたが、これは私自身経営者出身でないものでありますから、体験せざるところで如何とも申上げかねるのですが、ただ私、協会におつて見ておりましても、まあお話のごとく全部が全部……、でたらめであるとおつしやつたのでありますが、でたらめであるとは私思いません。お説のごとく、昨年或いは一昨年あたり、国税庁の所得調べに、高位者の中に何人か石炭業者が入つてつたということで、世上の悪評といたしまして、随分これは我々にとつては迷惑いたしたのであります。と申しますのは、我々としてはいろいろ理論的根拠があると思つて、大蔵省方面などへ、かく直さるべきだ、一応税制の例をとりますが、理論的にはこうさるべきだということを申してお願いに参りましても、とにかく君、番付表を見たかということで、すぐ体をかわされるというとこが間々ありまして、甚だ迷惑いたしておりますが、これもお話のごとく、税務署でお調べになつた業種が、石炭鉱業となつておりますから、他の事業で或る程度の収益を上げられたにしても、主たるものは石炭鉱業であつたのであろうと思います。思いますが、これはどういう経営であつたか、主としていわゆる私のほうの会員会社十九会社外でありますが、どうもよくわかりませんが、幸いにして時運に乗じて、丁度二十六年が御承知通り自然流量が少くなりまして、電力用火力炭が急激に余計に要つた時期にぶつかりまして、二十六年から二十七年にかけましてそういう時運に再会した、又大きな設備投資なり大きな償却なりを必要としなかつた好運な企業者が、たまたま番付け表に上ることになつたのじやないかと、かように思うのであります。その他国管当時のこと等につきましてはつまびらかに私は存じておりません。その他の点についても必ずしもお答えするだけの資料を持ち合せておりませんから御容赦を願いたいと思います。
  64. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) お答え申上げます。  先ほど来各委員からの御質問もございますのて、逐次お答え申上げますが、吉田委員から竪坑政策その他の問題を考える場合に、労働問題をどういうふうに考えるか明らかにしろ、こういうお話でございますが、従来考えました場合におきましても、又今後この炭価引下政策の修正をするに当りましても、更にその他の基本政策を考える場合におきましても、勿論労働問題というのはその一環として重要に私は考えて行きたいと、こう考えております。それから田畑委員からの御質問で、中小企業金融公庫の金が予算が通つたのに未だに貸出しができない、怠慢じやないか、こういうお叱りでございますが、これは設立までにやはり事務的な時日を要しますので、中小企業庁のほうではできるだけ急いでこれの促進をやつていたのであります。
  65. 田畑金光

    ○田畑金光君 見通しは……。
  66. 佐久洋

    政府委員(佐久洋君) 見通しは九月の初めと私は聞いております。それで、その中で炭鉱に私のほうから要望しておる数字は三十億を是非欲しいという要望をしております。ただ中小企業庁のほうではそれに対してまだ回答をいたしておらんのであります。これは通産省全体としてよその中小企業との権衡も考えて、全体としてきめられたものであります。  それから上條委員からの輸入炭或いは重油輸入というものについての国策をどうするかという御質問でありますが、私は先ほどちよつと触れましたように、国内資源の保護、それから労働者職場の維持というような観点、更に又日本産業を端的に申しますと植民地化することから防ぐという観点で、こういうものの輸入は極力反対であるという立場を従来今日まで持つて来ておるのであります。従つて私の立場だけを申しますればそういうことでありますが、石炭局長としてはどうも通産省全体の輸入政策というものをどう考えるかということについては、ちよつとお答えをいたしかねるのでありますが、ただ私の考えたけを申上げればさようでございます。
  67. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) どうでございましようか、大分もう出ましたので、これ以上やはり進めるのには小坂労働大臣のやはり内閣の閣僚としての社会通念、或いは更には吉田首相の産業政策から見た石炭鉱業のあり方とか、そういうようなやはり国の政策を究明しなければ、これは平行線で解決しないと私は考えるのです。従つて石炭鉱業の企業合理化の問題は現実にはもう問題になつておるわけです。従つて、当委員会としてはこれは結論を出すわけでも何でもありませんが、進め方としてはこの企業合理化の進み工合に重大なる関心を持ちつつ今の政府の考え方というものを更に明らかにして行きたいというようなふうに進まないと、問題が前進しないと思いますが如何でございましようか。
  68. 吉田法晴

    吉田法晴君 私どもの申上げておるのは大体御了承になつておると思うのですが、具体案がないと、こういうことだと思うのです。或いはまあ初めて聞いた、安井政務次官のほうでは今初めて聞いたというような顔をしておられますが、或いはそうではないかも知れないが、とにかく基幹産業である石炭労働者の生活と、それから雇用の保障、こういうものについて関心が薄い、先ほどの答弁を聞いておると。それから石炭局長もこれは自分石炭行政をやつておられるけれども、まあ資源庁の一局部になつてしまつた、これは昔の資源庁長官を大臣にしようかといつたような時から比べると私は率直に見てそういう感じを持つのですが、そこで客観的な要請は非常に強いものがある。それで出ております問題も、単に今までの施策或いは労働省のような考え方で済むものではないという観点からここに提起をしておるのです。十分一つ石炭行政の推進として、労働者にのみ責任を転嫁する方法としてでない合理化政策、或いは石炭政策というものを考えてもらいたい、それを一割、二割基幹労務者を整理して、そうして縮小再生産への途を進ませるのでなくて、自立経済政策の中においてではありますけれども、石炭生産の向上のために、合理的な労働者の生活の安定と雇用の保障の上に立つ石炭政策を強力に進める具体案を一つ早急に立ててもらいたい。それが出て来ませんというと、私どももこれは単に質疑をするだけで、強く要望申上げて別の機会にもう少し改めて論議をする、こういうことで願いたいと思います。
  69. 田畑金光

    ○田畑金光君 これはどうなんですか、私こう思うのですが、まあ問題になることは、今の質疑応答の中から一応出て来たと思うのですけれども。例えば企業合理化の面からして政府が財政投資をする、これは先ほどから申上げましたように、具体的に、速かにこの資金が中小炭鉱や必要とする炭鉱に流れることが必要でありますし、又もう一つの面からは先ほど来論議されております外国炭重油国内石炭の市場圧迫というような問題、これも出て来ますと思うのです。更にもう一つの面から行くと事後策としての各炭田地帯等における失業対策についての考慮というような問題が出て来ますと思うのです。私はこういうような問題は委員会の本日の論議の中から当然出て来る結論であるので、私は委員会としてこの問題についてはできれば明確な結論を出して、委員会の名において政府に申入れる、こういうようなことはできるのじやないかとこう思うのですが、そういうようなことも同時に政府としても一応責任を以て更に強く推進できるのじやないか、我々は現在話して、やはり効果が現われるのは、或いは政府が具体的にやられるのは二カ月、三カ月かかると思うのですが、やはり私はできれば委員会において一応結論を出して政府に申入れ、幸いに十月あたりに臨時国会が若し仮に開かれるとすれば、我々は改めてこの問題について実際やつてくれたかどうか再検討してみたいとこういうような気持もいたしますので、できれば私はこういうような措置を願いたいと思うのです。
  70. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それですから今日御論議になつた点は重要な内容を持つておりますので、今日ここで改めて注文をしなくても、労働者或いは通産省は当労働委員会の意のあるところを十分に汲んで、やはり次回に当労働委員会がこの問題を扱う時に、前進した答弁のできるように研究を願います。当労働委員会としては、御意思のあるところをよく汲みまして、委員長の手許で適当に処理をいたしたい、こう考えます。さよう御了承願います。ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  71. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をつけて。  ではこれにて散会いたします。    午後二時五十九分散会