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1953-07-29 第16回国会 参議院 労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十九日(水曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————   委員氏名 本日委員吉田法晴君及び吉野信次君辞 任につき、その補欠として阿具根登君 及び加藤武徳君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            伊能 芳雄君            加藤 武徳君            田中 啓一君            宮澤 喜一君            吉野 信次君            梶原 茂嘉君            藤田  進君            阿具根 登君            上條 愛一君            寺本 広作君            堀  眞琴君            市川 房枝君   委員外議員            吉田 法晴君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君    通商産業大臣  岡野 清豪君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   政府委員    通商産業政務次    官       古池 信三君    通商産業省石炭    局長      佐久  洋君    通商産業省鉱山    保安局長    吉岡千代三君    通商産業省公益    事業局長    中島 征帆君    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  實君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    法務省刑事局公    安課長     桃澤 全司君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○電気事業及び石炭鉱業における争議  行為方法規制に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  本日の案件は、電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案公共企業体労働関係法の一部を改正する法律案予備審査)、地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案予備審査)でございます。  先ず電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案を議題に供します。本案に御質疑のおありのかたは順次御発言を願います。  それから申し落しましたが、本日の出席要求大臣状況をあらかじめ御報告申上げます。吉田総理大臣交渉中でありまするが、只今のところまだ出席の見通しは付いておりません。理由はよくわかりません。ただ緒方総理出席をしてもよいとのことであります。それから岡野通商産業大臣は間もなく出席をせられます。ただ御本人の希望によりまして、希望ではございません、要請によりまして予算委員会出席する都合があるので、先ず三十分程度にとどめてもらいたいということでございます。それから犬養法務大臣只今待機しておられます。それから小坂労働大臣は御出席中であります。以上でございます。
  3. 田畑金光

    田畑金光君 総理大臣出席するかしないかまだ不明のようであるようですが、理由も明確に説明になつておりませんが、どういう事情ですか。
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いずれそれでは調べまして御報告申上げます。
  5. 田畑金光

    田畑金光君 通商産業大臣は昨日も質疑の半ばにして退席されて、我々としても質問しようと思う事項質問できなかつたわけです。本日の十時から出席する、こういうわけで一応昨日の退席は我々としても認めざるを得なくて質問も留保して参つたわけですが、本日は午前中三十分ということでは、とても我々の質問に答えることはできないと思います。引続き午後に出席できるかどうか、これを明確に確かめて頂きたいと思います。  更に本日は、昨日の委員長理事打合会並びに本委員会において委員長報告通りに承認されました原則則つて要求大臣出席がなければ質問ができない事項が多々ありまするので、我々といたしましては、吉田内閣総理大臣以下要求大臣出席しない場合は質問を留保いたしまして、要求大臣出席の下に質問をいたしまするから、さよう一つ御了承願つておきたいと考えます。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。
  7. 田村文吉

    田村文吉君 議事進行につきまして、只今田畑委員の御発言がございましたが、昨日の理事委員長打合会議においては、昨日、今日の両日において各会派の一応の質問を終る、第一巡を終る、こういう打合せが根本をなしておつたのでありまして、従つてそれに対しては各大臣、要求した大臣に対しては出席をしてもらう、こういうことも併せて相談になつた次第であります。昨日の議事進行を見ておりますというと、大臣退席をしたからすぐに質疑はやめる、こういうような形で終われたことは私は甚だ遺憾に思うのでありますが、大臣予算委員会に行つたり他の委員会出席しなければならんような場合もあるのでありますから、さような場合には政府委員答弁をしてもらう、或いは政務次官がおられるのでありまするから、政務次官から答弁をしてやつてもらう、こういうようなことで大臣に代るべき人が出て答弁をする、こういうようなことで進行しなかつたことには、今日すでに日もないということは十分御承知で、この会期中には結論を出すという大原則がきまつておるのでありますから、どうかそういう方面において各委員発言も、大臣がいないから発言を留保するというようなことでなくて、大臣がおられなかつたら、差支えでどうしても出られない場合には次官に出てもらう、或いは政府委員説明を求めるとかいうようなことによつて議事進行を図つて頂くことをお願いいたします。
  8. 田畑金光

    田畑金光君 只今田村委員からのお話でありまするが、昨日の委員長理事打合会の取きめ事項というものは、本委員会においても委員長報告通り満場一致異議なく承認されているわけであります。我々といたしましては、今田村委員お話のように最後の段階というか、会期も切迫いたしておりまするので、それだけに今までは主として大臣以下の説明員、或いは政府委員発言等で間に合つた事項等はそれで我々も質疑をし、明らかにして来たわけであります。併し問題が会期も切迫しておりまして、今田村委員がおつしやつた通りであります。従つてそれなれば故にこそ我々はこの際この法案について結論を出すためには、内閣総理大臣初め所管大臣の明確なる意思を聞かなければ、この立法の趣旨というものを、或いは又この立法を通じ将来の政府の抱いておる労働方針というものを明らかにすることができんわけであります。こういう意味合におきまして、我々は会期が末期に近付いておるからこそ所管大臣出席要求大臣出席を求めておるわけであります。従つて先ほど申上げましたように、他の委員会等においてどうしても出席されない、そういうことになつて参りますならば、我々はそういう大臣答弁或いは大臣に対する質問については留保いたしまして、出席されておる大臣のみに一応質問をやつて議事進行を図ることをあえて否定するわけではありません。併しながら大臣出席なくして次官以下のお話ということでは、問題の重要性に鑑みて到底本日以降は適当でないと考えておりまするから、昨日の委員会において承認せられた原則は飽くまでも我々は守つて行かなければならない。こういうことでありまするので、決して田村委員の御心配なさるようなこともないと思いますので、そういうような点でお互い議事進行に協力して行きたいと思つております。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 田村委員の心配するようなことはないというお話でございますが、私は御信頼申上げたいのでございますが、大臣がいなくなつたからということですぐ質問はやめる、こういうような昨日のような例は、私は大臣に代るべき政務次官がちやんと出ておられるのでありますから、そういうかたにお問い質しになつて、又大臣が来られたときになお時間を利用して問題を確かめる。こういう態度でお勧めになるのはいいけれども、あの大臣は来ないから政務次官では絶対にいけない、こういうように頑固に狭く問題を持つて行くということは私は本質でなかろうと考えますので、さようにそういう私の意思をお汲み取りの上での御発言のようでございますから、そういう意味議事進行を願うことをお願いいたします。
  10. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 田畑君並びに田村君の議事進行についての御要望は委員長において善処して参ります。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは質問に移ります。  要求大臣のかたがお見えになつておりませんが、労働大臣質問いたします。それから通産大臣質問いたします。今日の毎日新聞で、労働大臣スト規制法輿論次第で拡大される、こういうようなことを言われたようでありますが、予算委員会でそういう発言があつたかどうか。それから本委員会でしばしば言明されておりますので、或いは重複いたすかも知れませんが、非常にはつきりしない点がありますので重ねて御質問申上げます。  労働大臣は本法案提案理由説明において、「公共的性質を有する産業は、ひとり電気産業及び石炭鉱業に限るものでないことは申すまでもないところでありまするが、いろいろ検討の結果、今回は、いわゆる基礎産業中最も基幹的な重要産業であり、而も昨年現実に問題となつ電気産業及び石炭鉱業につきまして必要な限度の規定を設けるごとにしたのであります。」云云、こういうことを言われております。この問題につきましては、今まで本委員会でもしばく問題にされまして、質問も交わされたのでありますが、労働大臣答弁によれば、今回は、ということは、次の産業、次にはほかの産業という意味ではない、この際は、と読替えてもらいたい、ただこの法律を以て、という意味であるというようなことを説明されておりますが、これでは完全な答弁にならない、こういうように考えます。今回はという字句だけにこだわるわけではありませんが、文章の前後の文句から考えて見ましても、言われた文句考えてみましても、いろいろとほかのこと考えてみたが、このたびはという問題になつている。それでいわゆる基礎産業中最も基幹的も電産、炭労という事実をはつきり申しておられる。今回はということは、これは字句から申上げますならば、取りあえず、先ずこのたびは、試みに、という意味にとれると私は思うのです。併し労働大臣が述べられたように、更に小坂個人としてではなく、吉田内閣国務大臣として将来他産業に及ぼすことはないということを断言しておられます。この言葉予算委員会で昨日述べられたという言葉と非常に違いがあるようでありますが、この点を先ずお聞きいたしたいと思います。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。  昨日の予算委員会で私が言つたということで出ておりましたのは一部でございまして、言つた通り申上げますと、この法案は他産業に及ぼす意思はないということなんであります。但し政治というものは一体輿論で以てなすべきものだと思うのでありますので、輿論が非常にそういうふうになつて来たときには、又その輿論というものは政治家考え方というものを指導するというか、拘束するというか、そういう場合もあり得ると思いますけれども、要するに他産業に及ぼす意思はないと、こういうことを言つたのです。  それから第二点の今回は、この際、という問題であると思う。それについて今こちらでも話して、速記があるかということを聞いたのです。この問題について実はこの委員会ではそう言わなかつたので、この際ということを申しておるのであります。今回は、というのはそういうふうに事務当局の書いて来てくれたものにあつたものですから、衆議院ではそういうふうに読みました。やはり同じような質問が出ましたので、今回はというのは取消して、この法案はと、こういうことを申上げたのです。初めそれが頭にあつたものですから、こちらで説明するときはこの際はということを申上げましたが、なお普通この際というのは議会用語で、ここにとか、この法案はという意味でございますが、ということを先般申上げたのであります。今回はということは特に懸念されないようにしてもらいたいと存じます。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、私鉄やガス日通等公共事業のいずれかがストライキに入つた場合、交渉がまとまらず非常に長期化した、国民一般に非常な迷惑をかけた、こういうような場合には労働大臣がいつも言われるように、労働大臣に限らず、およそ今の政府の主要なかたが言われる言葉は、社会通念ということを言われるが、又社会通念というものは成熟するだろう、こう思うのです。例えば本公聴会で賛成された小笠原氏や飯田氏が、電気のとまることは非常に困る、併しガスがとまることは困らないとは誰も言つておらないが、ガスがとまつたら非常に困るということを言つておられるわけです。そうすると、労働大臣は又社会通念が成熟したからこういうスト規制法を出すのだ、こういうお考えですか。そうした場合に……。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 将来の問題については断定的に申し上げることは如何かと思いますけれども、私が労働大臣をしておる以上は全力を尽してそういうようなことのないように心掛けるし、又各関係組合の良識を期待しておりますので、そうした拡大するというような事態が起らんと、こう考えておるわけであります。
  15. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働大臣に申上げますが、今日は発言が輻輳して整理に困ることがあるかも知れませんが、御発言のときには発言委員長に求めて頂きたいと思います。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうも失礼いたしました。
  17. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働大臣言葉は将来の問題はとか、仮定の問題はということでいつも答弁をされておるわけであります。これは根本の問題です。実際それでは仮定の問題というならば、今の問題ももう仮定の問題です。この次又炭労も電産もやるかも知れないという問題です。ところが現実ガス問題等はすでにコスト切下等をしわ寄せされて、そうして賃金切下等を持つて来られておる、これは現実の問題です。そこで私が問わんとするのは、この前緑風会梶原委員から言われたあの問題を私は言つておるわけです。あのときは将来こういう問題が起つたときでも労働大臣はこれに対して再び適用しない、こういう規制法案を出さないということは危険ではないか、こういうことまで心配されておるわけなんです。それでほかに意見もあるようですから結論から申し上げますと、将来こういう長期のストライキが起つた場合にも一切こういう法規の制定をすることは考えていない、適用しない、こういうことでありますか、これをはつきりお尋ねしたいと思います。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 仮定の問題は仮定の問題といたしまして、私は拡大意思を持ちません。
  19. 加藤武徳

    加藤武徳君 議事進行について、通産大臣は四十度の熱を押して、聞きますと注射で抑えて出席になつておられるということを伺つておるのでありまするが、健康上も三十分以上は困難だ、なお若干の時間を予算委員会にも割かなくちやならんことのようでありますので、この際通産大臣質問を許           ’される時間の範囲で集中されて進められるように、委員長はお取計らい願いたい。
  20. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私も通産大臣に対する質問をいつでしたか、先日質問を留保しておるのであります。できますれば、この際やらしてもらいたいと思います。
  21. 田畑金光

    田畑金光君 昨日吉田君から通産大臣質問をして、本日通産大臣出席されたら答弁されることになつておると思います。その答弁を求めてから通産大臣質問を継続して参りたいと考えております。
  22. 藤田進

    藤田進君 私も通産大臣に対する質問を持つておりますので、お取計らいを願いたい、そのことをやはり考慮に入れて頂きたいと思います。
  23. 堀眞琴

    堀眞琴君 私も通産大臣に対しまして一、二点質問を申したいと思います。やはりその中に入れて頂きたいと思います。
  24. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと……、通商大臣は今日のこの委員会に三十分だけしかおいでにならんとか、一応三十分だけおいでになつて予算委員会に出て、又そのあと出られるか、その点をまだ確かめていないのです。
  25. 堀眞琴

    堀眞琴君 ああそうですか。それでは委員長のほうからその点を確めて頂いて、若し今日出られないということでしたら……。
  26. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 昨日この委員会であなたに御質問が集中しまして、その結果の答弁が不満だというので研究を煩わすことになつておる事項がありますので、それから一つ発言を願  いたいと思います。
  27. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 昨日御質問が出ましたにつきまして、私十分なる御答弁ができませんで、甚だ遺憾に存じておりますが、昨日の御質問に対する御答弁といたしまして、これから申上げまするから、お聞取りを願いたいと思います。  資源保護職場復帰理由として、保安要員の引揚を禁止して、労働者争議権を制限しようとする半面、経営者都合による炭鉱廃休止を放任しておるのは片手落ではないか、こういうふうな御質問の要旨であつたかと存じます。そこで私といたしまして御答弁申上げますのは、第一番として、石炭生産能率につきましては設備の近代化採炭方式の向上、並びに労働者諸君の努力によつて逐年向上しつつある次第でございまして、これをまあ例に挙げますというと、二十一年におきましては一人が一カ月五トン四分くらいの出炭率でございましたが、二十六年に至りますというと、十一トンに増加しておる、即ち生産能率が上つておるというわけでございます。昭和二十七年度は少し減りまして、これはいろいろの情勢もございましたが、十トンくらいになつております。  それから第二番目に、最近の石炭業界不況は炭価が割高である。そのために又ここに重油転換等影響等もありまして、この重油転換石炭が非常に不足いたしまして、そうして重油動力源に代えるというようなことが考えられましたので、そういうために重油転換が行われたわけでございますが、重油転換影響なども考えられます。根本的には石炭増産に対して需要の増加がこれに追付かない点にあると考えられますが、従つてこれが根本的な対策通商産業の振興によつて経済規模拡大を図る以外にはないのでございまして、石炭業経営形態の如何には関係のない問題だと、こう私は考えます。  三番目に、右の根本策につきましては、もとより政府全力を挙げて努力をしておるものでございまして、当面の問題といたしましては、自然条件に恵まれないところのコスト高と、低品位の炭鉱、或いはその炭量が余りないというような炭鉱が、これはまあ自由競争の世の中でございますので、優勝劣敗の原則によつて一部休廃止を余儀なくされることは、これは本当に望ましいことではないのでございますが、併し只今経済の建前から申しますと、止むを得ない現象ではなかろうか、こう考えます。丁度石炭需給逼迫の際に活況を呈しました亜炭鉱山が、現在殆んど姿を消してしまつたというのと同じような情勢の推移になるわけでございます。  四番目に、そうでございますから、右の現象炭鉱規模の大小には直接関係のない問題であると思いますが、小炭鉱であるからといつて特に不利の立場に立つことはこれは極力防止しなければならん必要があるのでございまして、これは通産省に中小企業庁というものがありまして、今回できますところの中小企業金融公庫というようなものもやはりそういうような小炭鉱、中炭鉱というようなものを対象にして実はやつておるわけでございます。殊に石炭につきましては、これは特に優遇いたしまして、中小企業には普通の場合でございますというと、従業員三百人以下ということになつておりますけれども、炭鉱につきましては千人以下、こういうようにスケールを考えておるようなわけでございます。そういうふうにして中小のほうを優遇しておる、こういうことでございます。  第五番目は、なお石炭コストの低下を促進することはこの点からも特に必要でございますので、まあいろいろ助成策を講じておるわけでございます。いつも申上げますように、炭鉱老朽化というものを防ぐために竪坑の開発というような制度をしまして、相当な金をかけまして、そうしてできるだけコストが安く出るようにし、又中小炭鉱につきましては、機械化とか何とかいうことで、たしかこれは三十億くらい出しましてやつておるはずでございます。そういうふうにして非常に努力しておるわけでございます。それから終戦後金山とかその他の金属鉱山不況に際しまして、相当数労働者炭鉱に移動して来ておつたような状況もございます。現在就業してそういう人がおりますけれども、現在の状況では炭鉱労働量を差当り有効に吸収し得る産業といたしましては、昨日漸く決定いたしました七千億円くらいかかつて開発しなければならない只見川の開発とか、その他公共事業とかいうものによりまして、相当産業規模拡大いたしまして、その方面に調和のある発展をさせ、相当労働力を吸収したい、こういうふうに考えております。  只今大体におきまして、私は当面の炭鉱不況対策につきましては、こういう考えでございますが、よろしく一つ御了承を願いたいと存じます。
  28. 藤田進

    藤田進君 昨日お尋ねをいたしまして、本日御回答を求めていたことは、只今石炭鉱業に対する通産行政、これが対策についてのみではなくして、要するに本スト規制法第三条によつて労働者側のなすところの罷業権、この権利は相当大幅に抑制されるにかかわらず、一方炭鉱所有者である事業主資本家の側において炭鉱休廃止がなされつつあるし、この数は日増しに増大しておるが、結論的に言えば、憲法二十九条の財産権を保護するために憲法二十八条の労働権を抑制するという結果にはならないか、こういう点について通産大臣のお答えを願い、更にこのスト規制法第三条によつて労働権規制するとするならば、政府はそのことをここにもくろんでおるわけであるが、そうすると一方炭鉱休廃止をなしつつあるところのこれら事業主資本家に対して、休廃止をしてはならないという法律を用意するのであるかどうか、こういう点が質問されていたのでありまして、この点が御答弁漏れになつておるのでありますので、この点も御答弁願いたいのであります。
  29. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。私の立場といたしましては、先ず問題が二つだと思います。と申しますことは、この法律によりましてスト禁止をしておりますことは、これは正当な争議権範囲を逸脱したものだという意味で、そうしてこういうふうに今までの法文上の不明確と申しますか、議論のきまつていなかつたのを明確にするという意味におきまして、このスト禁止法を出したわけでございまして、労働者がその点におきまして非常な争議権を剥奪されたということには私は考えておりません。  それからもう一つ今お説のこと、これに関連して仰せになりましたところの、炭鉱が私企業の性買上採算が合わなくなつたり、又若しくは山の何が少くなつたり何かして、もうこれでやめて行ごうということ、自然に経営上やめて行くということには私はかかわりがないことでございまして、同時に我我といたしましては、今石炭増産を非常に希望しておりますときでありますから、助け得る力があり、又助けられるものならば、我々はそういう経営は続けて行つてもらいたいという考えであります。その意味におきまして、中小企業庁におきましていろいろ中小企業を援助して参りました。この援助の方法につきましても、ほかの中小企業よりはもつと優遇する途をとつて、その経営が続けて行けるというようなことにして行きたいと、こういう考えておりますけれども、併しそういうことをいたしましても、御自分でやめるということに対しては、政府はこれに対して休止を反対するとか何とかいうようなことは只今立場ではできませんし、将来国家がすべての仕事を自分でやつてつて、そうして私企業には物を任せないという事態が参りますならば、或いは考えられるかも知れませんけれども、只今経済運行の政策上から参りますというと、そういうことは考えておりません。
  30. 井上清一

    ○井上清一君 諸事進行について。犬養大臣御病気中に無理に御出席つた関係もありますし、岡野大臣も今健康を害されておるので、一つ労働大臣に集中的に質問をなして頂きまして、できるだけ議事進行を図られるようにお願い申上げたいと思います。
  31. 田畑金光

    田畑金光君 大いに議事進行しております。岡野通商産業大臣にお尋ねいたしますが、通商産業大臣はこの法律電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案ですが、お読みになりましたか。
  32. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 読んでおります。
  33. 田畑金光

    田畑金光君 お読みになつておるといたしますならば、第三条を拝見いたしますと、この第三条の立法の趣旨というものはどういう小さな山でも該当するものかどうか、お伺いいたします。
  34. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 御質問の趣旨は、第三条がすべての山に適用されるかどうか、こういう御質問でございますか。
  35. 田畑金光

    田畑金光君 そうであります。
  36. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) すべての山に適用されることであります。
  37. 田畑金光

    田畑金光君 それでは更にお尋ねいたしますが、十名の坑夫の入つておる山でも一万名の坑夫の入つておる山でも、又坑内の条件というものは山の状況によつて千差万別、こういういわゆる保安という概念にも当てはまらんような山もあるわけですが、そういう例えば十名入つておる山、月産百トン足らずの山、こういう山も該当するのかどうか、お尋ねいたします。
  38. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。私はこの法律のできましたのは、人命に非常な危険があるというようなことができては困るということが立法の趣旨になつておりますから、私は八千四百万人おるから一人くらい死んでもいいということは少しも考えておりませんので、大きい山でも小さい山でも、たとえ十名でもそれを救うべき方法を事前に考えておくべきだと考えまして、その法益につきましては何らの、数が多いからとか少いからとかいうことは差別をつけておりません。
  39. 田畑金光

    田畑金光君 岡野通産大臣よろしいですか、今の御答弁は私の聞こうとする趣旨には答弁になつていないのです。実は十五名を生かそうと考えておるのが私たちで、そこを十名はおろか、労働者の生きようとする権利を奪おうとしているのがこの立法であるということを実はあとからだんだん説明して行きますので、御理解願えると思います。そこで私お尋ねしたいことは、どういうわけでそういうような小さな山でも大きな山でも保安要員を引揚げてはならん、これは当然のことですが、この立法の目的は保安の活動を通じて何を目的としておられるのか、保安を確保するとどういうことがその炭鉱を通じて国家或いは国民に影響があるとして立法を企てられたのか、なされたのか、これについてお尋ねいたします。
  40. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。私はそういうような立法の精神とか何とかいうことは労働大臣から今までに多分お答えになつていらつしやることだろうと思いますが、私が考えます点におきましては、労働大臣が今まで申上げました立法の趣旨で十分と、御説明申上げました通りと私は考えております。
  41. 田畑金光

    田畑金光君 私は労働大臣にお尋ねしているのじやありません。通商産業大臣としての岡野さんにお尋ねしておるわけです。而もその第三条というものにいたしましても、第二条にいたしましても、労働関係問題として見れば労働大臣の所管であるかも知れんが、電気にしろ石炭にしろ、産業政策の面から行くと岡野通商産業大臣の所管だと思います。従つて私は通商産業政策の面からいつた場合に、第三条、第二条が何を狙いにしておるかということをお尋ねしておるわけであります。御答弁を願います
  42. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 時間の関係上簡単に申上げますが、これは只今までに労働大臣が縷々申上げておりますことを私の御答弁といたします。
  43. 田畑金光

    田畑金光君 それが岡野通産大臣の御答弁になりましようか。私はあなたの所管されておる通産行政の面から第二条、第三条を解釈される場合に、当然この法律を通じて国民の経済とか、或いは産業政策上からこういう問題が出て来るからして、この立法が必要である、この立法を通さねばならん、当然に産業政策の面から見て通産大臣は所信があることと思います。この立法というものは労働省の立法ではない、内閣の連帯責任において出した立法だと、こう考えております。而も法案の内容においては労働行政に携わる関係の問題と、通商産業政策に関連する問題があるわけです。この内閣の連帯責任において出した立法、而も所管の通商産業大臣が私の問いに答えないとするならば、通商産業大臣産業政策について、産業政策の面からどういう観点においてこの立法を出されておるか。この立法を出されるといたしますならば、当然にこの立法を通ずる法律効果も出て来るはずです。どういう観点からこの立法を出されておるか、それ、についてお伺いいたします。
  44. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 各省が分立しておりますから、各省が独立して物事をやつておるとおぼし召すかも知れませんけれども、併し我々は国務大臣であり同時に通産大臣でございますので、国務大臣の面におきましてとにかくこれに参加し、そうして労働省がこういうような法律を出すということにつきまして、十分なるお説を拝聴し、同時に意見を述べております。そうして内閣でこれをきめました以上は、これを表立つて外へ発表すると同時に、これに対する説明に当り、又責任を負うということは、これは労働大臣の所管でございますが、併し労働大臣が出しましても、これは内閣一体としまして責任を負うわけでございます。同時にそれならばこの労働法規に対する内容とか、若しくはこれに対する方針とかいうものは、これは労働大臣が申上げましたことは私の申上げることと同じことでございますから、御了承願いたいと存じます。
  45. 田畑金光

    田畑金光君 岡野通商産業大臣只今答弁答弁になつていないのです。私は最初にあなたにこの法律案をお読みになつたかとお尋ねしまして、あなたはお読みになつたとおつしやるのです。お読みになつたとするならば、私が今質問申上げる事項等はこの法案の中に明確に言葉としても表現されておるわけです。一体この立法を通して国民経済とかいろいろおつしやつておりまするが、どういう狙いを以てこの法案をお出しになつたかということをお尋ねしておるわけです。条文をお読みになれば、私の今質問する簡単な事項は直ちに答弁できるわけです。大臣答弁を求めます。
  46. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 幾度申上げても同じことでございまして、これは所管大臣が法の精神並びに目的を申上げておるはずでございます。又申上げたことを速記録でも読んでおります。そうしてそれは私の責任を負つておる内閣一体のことであります。
  47. 堀眞琴

    堀眞琴君 先ほど藤田君の質問に対しまして、通産大臣からの答弁があつた質問の内容は労働権財産権に関する問題であります。その財産権に関しまして、通産大臣は自由企業であるからして、中小炭鉱に対しては国家としてもいろいろ施策を講じておるが、併しながら潰れるものについては止むを得ないのだ、こういうお話であります。財産権に関する二十九条の条文ですね、これをよく御覧願いたいと思うのです。所有権の絶対神聖というやつは十八世紀の概念です。二十世紀の所有権というものはこの憲法の第二項、第三項に規定しておりまする通りに、今絶対的にこれを神聖とするということは考えられない。而も第二項には、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」こういう工合に規定してある。財産権はこれは絶対的なものだ、而も中小企業等が倒れることはこれは自由競争の結果で如何ともしがたい。こういうことなのでありますが、ところが財産権のほうは第二項でこのような規定が行われておるとするならば、労働権のほうを御覧なさい。二十八条を御覧なさい。二十八条にはただ労働者にはこれこれの権利があるということを規定しておるだけです。財産権労働権関係についてもう一つ明確に御答弁を願いたいと思うのです。
  48. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 憲法問題になりまして恐縮でございますが、この二十八条のも「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」これは無論その通りに解釈して然るべきものだ。そこで私はこういうような二十八条があるにかかわらず、その権利を縮小するから悪いのじやないかというような堀さんの御質問かと思いますが……。
  49. 堀眞琴

    堀眞琴君 二十九条です。
  50. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 二十九条の「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」これを若し法律で定められましたら、その財産権の内容というものは恐らく絶対権ではなくて、そうして相当な制限を受けるもの、こう考えます。
  51. 堀眞琴

    堀眞琴君 只今お話ですと、結局二十八条との関連において、労働者の権利を規制するということは、財産権との関連においては極めて適正を欠くものではないか、こういうふうに考えるのでありますが、この両者の、二十八条、二十九条の関連について御答弁を願いたい。
  52. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 私はこれは関連さしてと仰せになりますが、具体的にこういうことがあつて、それが関連がついていないかということをお示し願えれば、それについて御解釈申上げる。ただこれは抽象的に書いてございますから、ちよつとこれをそのまま比較検討するということはできんと、こう考えます。
  53. 堀眞琴

    堀眞琴君 私は関連さすというのは、先ほど藤田君から一方労働者の権利を規制しておる、殊にこの法案の第三条において。ところが中小炭鉱休廃止をしつつある、それが日増しに多くなつておる。国家の資源を擁護するという建前から言うならば、中小炭鉱業者が休廃止をすることはより以上に重大な意味を持つのではないか、この点をどうするか、どう考えるか、これが藤田君の質問の要旨だと思う。従つて私は二十八条と二十九条の問題を関連させてその具体的な問題についてもう一度明確な御答弁を願いたい。
  54. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。これは昨日からいろいろ問題になつておるところでございますけれども、私にはその関連というものがどうしてもわからないのでございます。と申しますことは、このスト禁止ということが一体正当な争議権であるかないかということが大体明確になつておるのでございますから、争議の手段としてここに法律に掲げてあるような手段は、これはとらないことがいいのだ、これは社会通念上もそうあるべきものだということを明確にしたものでございますから、労働者のいわゆる権利とか何とかいうものを剥奪するものでもなければ、規制する……、規制はしましようが、剥奪するものではない。こう考えております。
  55. 加藤武徳

    加藤武徳君 堀君の質問は主として憲法上の解釈に関することであるようにも考えられまするし、法務大臣もお見えになつておられるようであります。なお通商産業大臣は先ほども申しましたように、健康上の無理な点を押して出席をなすつていられる。他の常任委員会にも若干出なくちやいかんということもあるようでありますので、この辺で一つ通産大臣に対します質問は打切られて、法務大臣等に対しまする質疑を行われるように取計いを願いたい。
  56. 田畑金光

    田畑金光君 それでは岡野通商産業大臣は私の質問に答えることができなかつたけれども、これはどういうことを意味するかと申しますならば、法案をお読みになつたかと、読んでいる、読んでいて私の答弁ができないはずでないです。私はこのように重大な立法がしかく簡単に内閣において処理されて来ておるということは、誠に国民のために悲しむわけであります。わからなければ私の質問のその点は保留しておきますが、もう一つそれに関連してお尋ねいたしまするが、先ほど来質問の中にありますように、多くの中小炭鉱が企業整備、これに伴う人員整理をやつております。中小炭鉱だけではありません。大手筋の炭鉱においても同様な現象が起きております。そうして多くの貯炭があるわけであります。この貯炭のために自然発火が出ておるわけであります。そこでお尋ねいたしますが、一体貯現在貯炭はどれだけあるのかということ、更に、その貯炭によつて当然発火、或いは石炭の減耗等が出ておるわけであります。明らかに第三条に該当するような「鉱物資源の滅失」、これが出て来ておるわけであります。一体この立法というものは、どういう小さな炭鉱においても、労働者ストライキをやつて石炭を出さないとか、或いはそのため自然発火が出るということは、国家公共の名においてこれは禁止する。政府の施策の貧困によつて経営者の運営のよろしきを得ざるところによつて出て来たところの自然発火、鉱物資源の滅失については、私企業の名において、自由放任経営の名においてこれを放任しておる一体この関係はどう通商産業大臣として御説明なさろうとしているかということです。労働看のストライキによつて炭一塊でも欠けるならば、この立法によつて労働省の権利を制限し、(「演説会じやないぞ」と呼ぶ者あり)先ほど申された二十八条に基く基本的権利を制限しておる。ところが政府の無策、経営者の無能によつて出て来たところの鉱物資源の滅失については何らの責任も規定していないというのがこの立法じやないかと、私は先ほど来尋ねておる。(「そうなんだよ」と呼ぶ者あり)これについて通商産業大臣は如何ようにお考えになり、又如何ような対策を以て政府は臨まんとされるか、これについて明確に承わつておきたいと思います。
  57. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。昨年はいろいろな事情で出炭が阻まれておりましたけれども、あの炭労ストが済みまして以来の労働者経営者諸君の努力によりまして、本年に入りましてからだんだんと殖えて参りました。いつもそれはピークな時期でございますが、本年の三月には四百七十万トンという大量の生産ができておるわけであります。その頃から貯炭が殖えるだろうということで非常に世間で心配されたわけであります。一カ月半くらい前の統計でございまして、私はつきり覚えておりませんが、山元並びに工場すべての貯炭が七百五、六十万トンになつておるということを世間に伝えられておつても、この増産によつて行きますならば、本年は五千万トンを超えるだろうと、こういうような予想がつきまして、いろいろ心配をされたものでございますが、北九州の水害によりまして、一時非常に困つた炭鉱が出まして、生産がとまつております。とまつた所がございます。その点におきまして、貯炭があつたために幸福でございますが、併し七百万トンくらいの貯炭というものは、過表二十五年の十二月にも七百万トンの実は貯炭があつたのでございます。我々といたしましては、一千万トン、並びに千二、三百万トン以上に貯炭がなりまして、そうして先行き需要がないというような見通しがつきましたときには、我々は何とか考えなければならないと思つておりますけれども、併しその当時七百万トンぐらいの貯炭がありましたので、まだ様子を見ておるべき時期ではないかと、こう考えておりました矢先、誠に不幸なことではございますが、北九州における水害等がございましたので、増産が一時阻まれたということでございまして、石炭の供給増加というような心配は只今のところ持つておりません。(「簡単ですから、通商産業大臣に確認したいことがあるんですよ、三分もかかりませんからね」「約束じやないか」と呼ぶ者あり)
  58. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと大臣は午後は来られないそうです。    〔「委員長どうした」「我々の質問が終るまで通産大臣は出て来る責任がある」「議事進行」「約束を守れ、大臣」と呼ぶ者あり〕〔加藤武徳君「約束の倍の時間出席しております。」と述ぶ〕
  59. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 二十分から発言が始まりまして、私は時計を見ながら発言を許しておりました。倍ではございません。お取消しを願います。(「議事進行」と呼ぶ者あり)加藤君、取消しを願います。倍ではございません。二十分から発言を許しております。
  60. 加藤武徳

    加藤武徳君 私が二倍の時間をすでに二の席におられたという発言をいたしましたが、この点は訂正をいたします。
  61. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今私が皆さんがたに相談を申上げておるのは、通産大臣は予算へ出る都合があるので、先ほどからひつきりなしにここへ、来られたいという要請がありましたから、早く退席を願いたいと私は思つておりましたが、午後やはりまだ各委員通産大臣に対する質問がありまするので、おいでを願わなければならんと言いましたところ、もう来られない、こういう工合に言い残して帰られましたので、この点は御報告申上げておきます。
  62. 田畑金光

    田畑金光君 午後から出席されないとするならば、明日御出席を要望するように(「明日ではない」と呼ぶ者あり)出席してもらうように委員長から申入れて頂きたい。(「進行々々」と呼ぶ者あり)
  63. 阿具根登

    ○阿具根登君 法務大臣にお尋ねいたします。  電気産業、発電所等において職場を離れる場合には組合員外の、或いは退職者その他技術者を入れて作業をさせることはスト破りになるかならないか、この点をお尋ねいたします。
  64. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 阿具根さんにお答えいたします。あなたのおりしやる場合というのはあれですか、会社側と話がつかないままにそうなつた……
  65. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうです。
  66. 犬養健

    国務大臣犬養健君) その場合は違法になる場合があると考えております。
  67. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは、私たち北海道に視察に参りましたが、北海道の経営者の意見を聞いてみましても、殆んど経営者側の技術者で間に合わないところは組合員外の技術者を雇つて停電を避けておられる。而も昨日の通産省のここの説明では、通産省側としては、あらゆる手段を講ぜよということを言われた。こういうことを言つておりますが、これは法的に見てどういうようにお考えになりますか。
  68. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 細かい問題になりますと、政府委員に専門家がおりますから、それから答えさせたいと思います。私の考え範囲では、それじやいよいよストでどく、会社側とそこで話合いがついて、じや俺のほうは代りを埋めるという話合いがそこでついた場合は違法にならないと思います。話がつかないうちに勝手にしろというふうにどいて、そうして会社側が埋めたという場合には、どく行為そのものがなる場合が多いだろうと思います。
  69. 阿具根登

    ○阿具根登君 然らば通産省はそういうスト破りをやる、いわゆる違法な行為をやれということを指令した、示達した、こういうことになりますが、よろしゆうございますか。例えば組合はストのために職場を離れることを通知するわけですね。その期間内に会社側は組合と話合いすることなく組合外の技術者を雇つておる。どういう点によつてつておるかと申しますと、只今申上げましたように通産省のほうからあらゆる手段を通じて対処しろというようなことが言われておる。このためにやつておると思うのです。これに対して非常に意見が違うようですが、はつきりとお願いをいたします。
  70. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 意見はこれは違わないのでありまして、そういう場合は私ども即ち法務省の立場から言うと、できるだけ話をつけて頂きたい。両方勝手にしろと言つて職場放棄をされた場合はどうも違法行為と認める場合が多いと思います。
  71. 阿具根登

    ○阿具根登君 じや何回も言うようですが、昨日の通産相の答弁では話合いが組合と会社とついておるわけはない。それにそういう行為を奨励される示達をされた、こういうことは今法務大臣お話はつきり違法だということをここで認めてよろしゆうございますね。
  72. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 昨日御承知のようにその場におりませんから、通産大臣のお言葉意味、或いはニユアンスというものを知りませんので、通産大臣のお言葉を引合いに私がかれこれ言うのはちよつと迷惑でありますけれども、何ならば、御必要ならばあとでどういうことを言つたか私から聞いて、又御答弁したほうがいいと思います。私としましては、話合いがつかずに片方がどく、そうしてどうでも勝手にしろということになるわけですが、その場合にできるだけ両方で話合いをして、そうして引継ぎ要員を繕えておいて頂きたい。その場合は違法にならない。こう考えます。
  73. 藤田進

    藤田進君 法務大臣にお尋ねいたしますが、今度のいわゆるスト規制法三条をそれぞれ見ますると、更に事後の政府答弁を総合いたしますると、要するに公共の福祉に対して罷業権の調和を求めるのだというふうになつておるのでございます。ところで一方労働権、いわゆる罷業権ですね、こういつたようなことと、それから経営権、財産権、こういつたようなことの兼ね合いにおきまして、いろいろ具体的に掘下げてみますると、問題が所々に提起されて来るのでございます。私がお尋ねしようと思う点は只今の問題に関連してでございますけれども、労使の関係において現行法はすべて対等の権利を保障しているし、更にその下における労働力の提供に対する取引を交渉する関係にある。労使が対等の原則の上に契約の関係、契約を結んで行くのだという理念に労働法は立つておると思うのでございます。その通りでございましようか。
  74. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。その通りであります。ただ、今藤田さんのお尋ねもそうであろうと思いますが、労使間においてその争議行為から第三者、即ち公衆が著しく迷惑するという場合は、どうも通り言葉でいろいろ御不満もあろうと思いますが、公共の福祉ということを私は考えざるを得ない、こういうふうに言うのでございます。
  75. 藤田進

    藤田進君 わかりました。そこで問題になりますのは、時間がありませんので、はしよつて質問いたしますから、真意を掴んで頂きたいと思うのでありますが、電気産業或いは石炭産業その他の業体と、それに従事する労働者いろいろありますけれども、取りあえず最初は電気産業につきましてお尋ねしたいと思います。そこで電気産業労働者といえども一般の労働者と何ら異なることなく、労使関係の今の原則については同様であると考えられるのでございますが、この点如何でございますか。
  76. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。電気産業に従事せられる労働者といえども、労働者の権利という立場、その角度から見ますれば何ら変りはございません。併上お互いの社会的地位もそうでございますが、電気産業労働者の諸君は殊にその労働争議行為如何では、資本家だけが迷惑するというならよろしいのでありますが、第三者の善良なる市民の迷惑を受ける部分があります。そこで特に御自重願う部分が多くなつて来る。これは認めざるを得ないと思います。
  77. 藤田進

    藤田進君 電気産業が公益事業であるので、他の産業と若干公益性について制約があるとおつしやつたと思います。その点は確かにあると思うのであります。そこでその制約について現行法は労調法の三十六条、或いは三十七条の抜打ち争議の禁止、更に遡りまして、三十五条二の緊急調整の指定、これは総理大臣が決定するようになつていると思いますが、こういつたいわゆる一般産業とは公益事業労働者は違つた制約を現行法で受けておることは御存じだと思いまするが、この点はやはり今のお話通り一般の産業労働者と違つた公益性を有するが故にこそ、そういう制限が今日つけられていると解されるのでございますが、その点如何でございますか。
  78. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 藤田さんおつしやる限りにおいてはその通りでございます。
  79. 藤田進

    藤田進君 そこでこのいわゆる現行法を見ますると、我々が曾つてこの法案を検討いたしまして、遂に立法化され、改正し、改正というか、改悪を続けられて来たわけで、そのよしあしは別として、現行法に新らしく以上申上げましたような制約がついていて、そして殊に労調法三十五条の二の緊急調整などにつきましては、結局公共の福祉というこの目的から、手段として一条を設けていると思うのでございます。その通りでございますか。大臣のお考えを……
  80. 犬養健

    国務大臣犬養健君) おつしやる限りにおいては、その通りでございます。
  81. 藤田進

    藤田進君 そういたしますると、結局電気産業について公共の福祉を論ずる場合に、その争議行為の結果、非常なる広汎な、深刻な影響、例えば日本の交通機関、或いは通信等々、欠くべからざるこういつた産業、事業が広汎、同時的に停廃してしまうというような事態、これにはいろいろ限界があろうと思いますけれども、こういう事態については成るほど緊急調整で以てこれをとめることができる、現行法はこのようになつているわけでございます。そこでお尋ねしたいのは、電気産業といえども僅かな影響ですね、例えば私鉄が或いは国鉄と共に、国鉄は特殊な法の下に作られているけれども、要するに全交通機関がとまるとか、或いは全治安関係の機能が麻痺するとか、こういつたようなことでなしに、数箇の路線が或る限定された時間交通機関がとまるという争議とか、或いは電気で申上げれば、さしてこの交通機関その他に重大なる影響を及ぼすほどではないが、確かに迷惑ではあつた。今日一時間電気が何か消えたらしい、いろいろ事情があると思うのですが、要するにそういう程度の、或る限界からしてやはりこれは公共の福祉に照らせばこれほどな争議は許されない、この程度は公共の福祉と称して云々すべきではないという、おのずからそこに軽重があろうと考えられるのでございます。過去においてはこの方針を以て治安当局も当時組合に対しても臨んでおられたし、今日もその通りだと私は考えているのでございますが、その点如何な御見解でございましようか。
  82. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは私最近刑事訴訟法でも経験したのでありますが、重大だとか、軽微だというのを一概に当該大臣として、範囲とか時間の長さですぐ申しかねる点があるのでございます。範囲が狭い、時間が少くてもこれが重大なる影響もありますし、これは結局具体的な問題になると私は思います。範囲が狭いからどう、時間が短いからどうだということで、法律のほうをやつております法務大臣が御返事をするのも少し軽卒だと思います。その点どうか御了承願いたいと思います。
  83. 藤田進

    藤田進君 いや、具体的にはあとで申上げたいと思いますが、私今お尋ねいたしておりますのは法律論として、その基本論について法務大臣が如何に考えて法務行政をやつておいでになるかという、その根本の理論をお尋ねいたしております。これがやや具体的だということで、電気産業についてという一つのカテゴリーを示して、御回答が出やすいように私は提供いたしているのであります。そこでより具体的に申上げて見ますると、電気について申しますと、発電所が仮に一つとまつてしまつた、こういうことは日常正常なる運営の過程におきましてもやはり故障で以てとまるとか、併しそういう発電所にも大小、火力水力ございますが、併しここではわかりやすくお尋ねする意味で比較的小さい、これは実に小さいものから大きな発電所がありますのですが、小さい発電所などが平常故障などを起しましても、これはサイクルの低下とか、電圧の低下とかいつたようなことで技術的なことで、何も停電まで行かないで、日常運営をいたしているのでございます。そこで結局争議行為に関するケースを考えますときに、今度のこのスト規制法第二条によりますと、解釈のしようでこれはいずれにも解釈ができるような実に巾を持つておりまして、これが運営に当つてはかなりトラブルを起す可能性なしとしないと考えているのでございまして、この点についても政府としてここに提案されているもののうち特に法律的な立場から、治安的な立場から御担当になつている法務大臣にお尋ねいたしておりますが、どうかそういう面で労働行政ということよりも……
  84. 犬養健

    国務大臣犬養健君) わかりました。
  85. 藤田進

    藤田進君 そこでそういうような電気事業の職場におきまして、発電所などにおきまして停廃がありましても、これが直ちに公共の福祉として電車もとまる。電気もとまるというほどのものでないことはこれは常識上もおわかりだと思うのであります。そういう場合でもなお且つ公共の福祉だとして言い張られていけないのだと、先ほど言われたように労働者労働力を提供しないという、これはやはり争議の手段として一般産業として許されており、且つ電気事業として何ら特殊性がない、ありとすれば一部の制約はある、公共事業でございますから。こういうところまで、今肯定されて来ているわけでございますが、そういつた場合に考えますと、端的に申上げますと、僅かな部分で発電所における技術労働者がその独自な問題でどうしても平和的な解決ができないということで、不幸にいたしまして、では労働力を提供しないという事態が起つても、さして公共の福祉その他に重大な影響を及ぼすとは考えられない。こういう場合においてですね、従来法務庁におかれましては、そういう労務提供拒否というものは決して違法と考えていない、それは今度の幾多に及ぶ起訴状を読んでくれとおつしやつていたので、この際お伺いしたいのでございます。
  86. 犬養健

    国務大臣犬養健君) だんだんおつしやることがよくわかりましたから、でるきだけ懇切にお答えをしたいと思います。  先ほど田畑さんでしたか、人数の少い鉱山の保安要員お話がありました。大体同じだと思いますが、これはこの法律の建前を読んでみますと、そういう結果の大小でなく、そういう行為そのものがいけないというふうに出ております。法務当局としてもその建前をとつております。ただ藤田さんの御指摘になつた点はこういうことであります。違法ではあるが、検察権の発動において刑事政策上それを考慮する、検察権の発動についてのそこに違いはあります。併し違法という建前は結果の大小如何にかかわらずこれは違法である、こういうふうなこの法律の建前になつております。藤田さんのおつしやるのは、それは検察庁が従来そういうところをどうこうしたという問題は事実あります。併しそれは刑事政策上検察権の発動において勘酌していいと言いますか、大小の場合の違いを酌んでやつている。こう二つの問題を別にお考え願いたいと存ずるのであります。
  87. 藤田進

    藤田進君 急に法務大臣の又御説明が本日変つて来たように思うのでございますが、昨日公安課長の説明もありまして、更に私は四日前でしたか、最高検にも参りまして、いろいろ従来の方針について変りがないかということについても確かめているのでございます。そこで従来の考えと、そしてこのことは昭和二十五年、名前を挙げて申上げれば、大橋法務総裁並びに竹原当時最高検の検事、今日もおいでになるわけですが、更に法務庁には或いは労働課長でございましたが、遠山さん、今最高検においでなつた、当時大橋さんもわざわざこのデイスカツスする際においでなつたようにも聞いておりますし、そのことは又部内で確かめて頂いても結構ですが、それらの中から今日まで法務庁が言われていたのは、スイツチを切つたりするということについては、これはどうも不作為の、つまり労務を提供しないというのが本来のストライキであるにかかわらず、労務を提供して切るのだからこれは違法だ、それを生産管理に結びつけたりいろいろおやりになつたようですが、これはなかなか生産管理にも行かないという紆余曲折はあつたわけですけれども、要するに発電所その他で労働力労働者が持つている、一方は資本設備を持つている、この労働力、技術を提供しない、これが本来の争議行為である。これが合法的な、誰が、何人がこれを指摘しようとも押すことのできない立派な手段である。こういうお褒めの言葉があつて、結局当時昭和二十六年四月以来、電産におかれましてはそういう手段がとられて、まあいわば公認の手段のようになつて来て、無論又そのことは治安当局におかれてもまさにその方針は変えられないで、最近におきまする起訴の実情を見ても、会社が発電機やスイツチをとめてくれ、なぜならば皆さんが出て行くならばあと困るからとめてくれというときには、これは当然とめなければならないし、とめることは違法ではない。それからとめてくれては困る、とめないでおれに譲つてくれ、非組合員もおるし、所長もおれ一人だつて五時間や十時間の心配はないからとめないでくれと言う、会社はとめてくれるなと言うにかかわらず、とめた、だから違法なんだ。だから職場放棄そのことは決して違法とは考えていない。こういうことで、何ならば御覧になつていいでしようが、幾多の起訴状もありましようと思いますし、今日係属いたしております公判廷におきましても、そのことで争つているのであります。従いまして、若し今のように変つて来たとするならば、一体その当初出発に当つて関係当事者といろいろ議論ありましよう、取締治安当局としては決してトラブルを起すのが目的ではないから、十分連絡をし、そしてトラブルの起きないようにしようじやないか、やつてもらいたいという要請があつて、民主的な電産とされましてはそういう方法をとつて今日まで来た。それを何らの交渉もされないで、何らの又意思表示を直接にも間接にもされないで、突然変異と言うか、今日法務当局の意見がそのようにお動きになる。そのものも違反なんだ。こういう解釈をいつからおとりになつているのか、この点が非常に疑問を持つわけでございます。
  88. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは藤田さんの御質問が少し飛躍したのであつて、さつきは争議行為影響が小さいのはいいのじやないか、その問題のお尋ねであつた。今のは労務提供の問題はどうだということならば、私は昨日暑つさで参りまして寝て参りましたけれども、ここにおります公安課長に今日はどうだということを報告を受けております。私の知つております範囲、又今朝も話してみました範囲では少しも変つていないのでありまして、電源における労務提供拒否、これは時と場合によつて違うということは本会議でもたしかあなたに申上げたと思います。その問題ならば今も昔も変つておりません。(「委員長」と呼ぶ者あり)まだちよつと私は述べたい。例えば電気の正常の供給に関係のない部分は、そういう部分が具体的にどうだということは、保安課長から言うてありますので、そういう部分における労務提供拒否ならば、これは争議の正当な行為の中に入ります。事いやしくも電気の正常の供給に関係のあるそれの労務提供拒否は違法である、こういうふうにこの前の本会議でももう大分前になりますが、申上げたと思います。
  89. 藤田進

    藤田進君 それについていつからそのような解釈になつたのか。本会議における大臣答弁を見ますと、私が以上申上げた事柄について、たしか耳にしておるのだが、うろ覚えであるから委員会において答弁いたします……
  90. 犬養健

    国務大臣犬養健君) そんなことは言いません。うろ覚えなんて卑法なことは言つたことはない。
  91. 藤田進

    藤田進君 速記録に載つていますから読みましよう、「お答いたします」、その最後に「私の就任前の経緯でございますが、これは、一応聞いておりますが、うろ覚えで間違うといけませんから、委員会でお答いたします。」こうなつておる(笑声)
  92. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは私の黒星です。そういうことを言つておれば、そこでいつから変つたか、こういう問題になるのですが、もう一度、今の点どういうことですか、いつから変つたかということで御質問になりましたのは……。
  93. 藤田進

    藤田進君 答弁のポイントを……。私はこの法案に関連がありますのでお尋ねしておりますので、一つ親切に願います。つまりですね、労働者が、これは電気労働者ですよ、労働者が曾つて今日まで、今聞くのが初めてでありますが、労働力を以て、その労働力を幾らで売るかどうかのバーゲンをやるかどうか、これが経営者において受入れられないという場合、そういう場合にはこれは幸、不幸は別として罷業ということになり、この争議行為手段として持つておる労働力を提供しない。これが本来の争議行為であつて、これは発電所においても然りだ、こう言われて来ておるのです、そのことは四日前に確かめましたが、言つたという、遠山さんにも聞いて下さい、わかります。そこで今公判廷でも労務提供拒否ということは合法であるのだ。これが会社の意思に反して、会社がとめてくれと言えばとめていいのだけれども、とめてくれるなという場合においてとめたのだ、こうなると違法だというので起訴事由がここに次々と述べられているのであります。にもかかわらず今の御答弁によりますと、労務提供拒否は、発電部門における労務提供拒否そのものが違法なんだと言つておられるので、それとまるきり違いますので、そういうことは現行法に照らしてもそれは違法でもないし、治安当局においても違法とは言われていない。むしろそれは合法であるからその通りやるよりほかお前たちは仕方がないのだ、こう電産に対しても言われている。この食違いがあるので、いつからそんなことになつたのか。
  94. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 思い出しましたが、藤田さん都合のいいところだけ読んでおられるのじやないのですか。私は本会議言つたように、労務提供拒否ということは原則論としては労働者争議の正当なる行為に入る。併し公共の福祉に反する場合はそうではない。私はその一番著しい例として給電所における労務提供拒否のことを挙げましたが、藤田さんは一番都合のいい部分だけお読み上げになつたと思いますが、こういうのがどこかのページにありますから、読んで下さい。
  95. 藤田進

    藤田進君 私の質問したのは、十五国会において労働大臣と法務大臣ではどうも食違つている。これは戸塚労働大臣と当時の労政局長ですか、これも違うのです。これは十五国会のことで余り言いませんが、そういう治安当局が、法務当局が法務大臣の下に一貫してやつておいでなつたことと、今回答弁になつていることとが食違つている、これを先ず指摘しているんです。従来の方針は発電所における労務提供拒否、このことは決して違法では、ウオーキング・アウトは違法ではないのだ、むしろそのことによつて電気がとまるということも、これは労調法第七条においても正常な業務の運営を阻害するとあるから、ただその正常な業務の運営を阻害されて、日本全体の公共に混乱を捲き起すということになると、これは権利の濫用、公共の福祉という憲法十二条もあるので、それはその規模の限界の問題である。電気がとまつた。ウォーキング・アウト、そんなことは決して違法ではない、それは規模の限界の問題である、こういうふうに言われて、ウォーキング・アウトというものは発電所においても違法ではない、こう言われているんですね。今でもはつきりその精神が一貫して流れているんでしよう。それがこの席上では労務提供拒否があると、ウオーキング・アウトそのものも違法だ、こう言われている。一体いつからそのように心境の変化を来したのかと言つているんです。
  96. 犬養健

    国務大臣犬養健君) だんだん思い出しました。それはこういうことであります。私も就任当時この問題を一番大事だと思いまして、藤田さんよろしうございますか。
  97. 藤田進

    藤田進君 聞いております。
  98. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 一番急所ですから、私も就任した責任上、刑事局長、ここにいる公安課長と長時開議論をいたしました。相当話発に議論をいたしました。結局三十五年の今までのは私知りませんから、公安課長に一応述べさせて見ますと、私の考えでは区域主義で、発電所そのものにおける労務提供拒否は全部違法だ、これは私の個人的な感情から言つてもおかしい、そういうことじやないのだろうね、刑事局長に反問したことがございます。区域主義として発電所の区域の中における如何なる労務提供拒否も違法であるというのは行き過ぎであります。例えば今は自動的になつているか知れないが、水門とかそういうものが若しあれば、これは違法でありますし、事苟くも電気の正常な供給に関係のある問題は違法である。そこであなたのおつしやるそれじや検察庁の扱いがそういう点は非常になんというか、まあ……。
  99. 藤田進

    藤田進君 検察行政じやない、理論としては……。
  100. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 理論としてはこれである。但し検察行政としてはその点は十分斟酌している。その標準は今も昔も寸毫も変化もない。こういう二つに分けて一つ御理解願いたいと思います。
  101. 藤田進

    藤田進君 然らば一歩を譲つたとして、それは大きな誤解で、あと事務当局から答弁願いたいと思います。四日前にこれは確かめておりますから……。然らば法務大臣のその理論を採用するとすれば、争議手段として行われるところの労務提供拒否というウオーキング・アウト、これが現行法のどの条文に照らして違法と説明されるや、その点を一つ条文を引用して説明願いたいと思います。
  102. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 政府委員から条文のことは答弁させて又あとで……。
  103. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) 現在は労働組合法第一条二項の正当なる行為である争議行為であるかどうか、こういう点で判断して参つてつたと思います。条文を御覧下さい。
  104. 藤田進

    藤田進君 第一条第二項と称するのは、これは刑法三十五条の適用はこうなんだといういわゆる正当性ですね、これを指摘しているのであつて、いわゆる違法性の阻却ということであつて、例えばウオーキング・アウトというものがやはり根拠がなければならんのです。例えば刑法二百三十四条とか、或いは又公共事業令、今では電気ガス臨時措置法の八十五条とか、或いは又いろいろ只今の三十五条の二だとかなんだかんだ、三十七条とか何かなければならない、顕著なやはり具体的に事実を挙げて不当なりとしなければならないと思います。正当でない、これをはつきりしてもらいたいのです。
  105. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) 只今藤田委員の御質問の趣旨を誤解いたしまして、見当違いの御答弁を申上げたことをお詫びをいたします。労働組合法の第一条第三項の免責を受けない結果、昨年の十二月二十七日こ又復活いたしました、電気関係において復活いたしました公共事業令でも、第八十五条の公益事業に従事する者は電気の供給を正当な事由がないのに取扱わず又は不当な取扱をしたとき、これに該当することになつております。争議手段としてこの法令に違反するときにはその責任は問われる、こういうわけでございます。
  106. 藤田進

    藤田進君 然らば、公共事業令第八十五条は争議手段として用いられる争議行為は当然正当なうちに入らないのか。八十五条というものは争議行為であつてもこれは生きている、こう解釈していいわけですか。
  107. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) お説の通りでございます。
  108. 藤田進

    藤田進君 これは大変なことで、電気ガス臨時措置法がこの間吉田内閣の下に、これは犬養さんのときですよ、上程されて、これに対する審議が続けられて、そのときの速記録を調べて下さい。又なんなら調べてお目にかけても結構ですが、公共事業令八十五条はこれは労組法の言うところの行為争議行為としてそういう場合に適用するのではない。これはやはり言わばノーマルな状態における、争議行為ではなしに、てんでに俺は今日電気一つ送らないように電線を引つかけて見てやろうとか、こうしつたところを論じているのであつて、決して争議手段として用いられる場合には、公共事業令は労組法に優先するなどいとうことはないという、ちやんと政府答弁があつておるわけです。政府答弁はどうあろうとも、検察当局なり治安当局が、俺は俺の見解で行くのだということであるから、裁判所で皆覆えされているわけです。地方裁、高裁では無罪で検事側の敗訴になつておる。従つてこの際政府答弁はそのときどきのことであつて、あとの運営は全然政府答弁とは違つたことをやるのか、どうか、これは非常に疑問に思うのです。この点明らかにして頂きたい。
  109. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) 将来の検察方針をどうするかという問題に対しては、私からちよつと不適当かと存じますが、我々現場で働く者の感じとしましては、決して広くならないように、今回のスト規制法案の第一条の趣旨に則つて厳格にこれまでの方針を改めて行きたいというふうに思つております。その他は大臣から……。
  110. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは藤田さんも大体御了解になつておると思うのでありますが、スト規制法が通過した前とあとと、スト行為に対する検察権の発動、これを強めるなんて気は全然ありません。その点は……。(「関連関連」と呼ぶ者あり)
  111. 藤田進

    藤田進君 いや、検察行政の匙加減、手加減をお聞きしているのではないのです。
  112. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 大臣にそれからは答弁してもらうと言うから、それで言つたのです。
  113. 藤田進

    藤田進君 いや、それはそういう匙加減ではなしに、公共事業令八十五条というものは、争議手段、無論争議行為として行うにしても、直ちに何か武器を以て発電施設をダイナマイトで爆破するとかですね。これはちやんと労組法に書いてあるのですから、そんなことを言つているのではないのです。争議手段として正常な事務の運営を阻害する。電気がとまるとか、ウオーキング・アウトするとか、こういうような争議、これは八十五条は適用しないのです。これは争議行為は適用にはならないのだということが、ちやんとこの間の十五国会の電気ガス臨時措置法のときに答弁があつておるわけですし、このことはちやんと電気事業法三十三条、公共事業令の八十五条、電気ガス臨時措置法、一貫してそのことは政府も守られ、検察当局では若干踏みにじつておるが……、そういうことになると。法理論としてもこれは労働法とこの電気ガス臨時措置法と、この角度の違いというものはちやんとはつきり政府自身もされているのです。それにもかかわらず今の答弁では、争議といえども八十五条は生きているのだと、このようなことをおつしやるから、政府はつきりした御答弁を願いたいというのです。
  114. 犬養健

    国務大臣犬養健君) どうもはつきり覚えていないというと、又お叱りを受けるかも知れませんが、私の覚えている範囲では、正当な争議行為が八十五条にひつかからないという意味答弁をしたのではないかと思います。よく調べます。
  115. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 藤田君ちよつと申上げます。只今速記録をここへ取寄せますから、さよう御了承願います。
  116. 藤田進

    藤田進君 更に、この検察行政について検察当局、法務当局の行政解釈ですね、法律についての解釈なり意思表示をするという場合には、いろいろあると思いますが、検事総長の言明について、これは法務大臣としては何ら関係のないものかどうか、私も素人でよくわかりませんので、一応お教え願いたいと思います。
  117. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 法務大臣は検事総長に一般的指示ができます。併し個々のケースについて特に担当検事に直接指揮することはできません。検事総長を通じております。
  118. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、検事総長の言明の内容と、法務大臣の言明なりの内容が、当然対外的に第三者に対して食違つても、それはよしとされるものでしようか。慣習上もですね。
  119. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 二つに分けてお答えします。実際上はそういう馬鹿げたことをしないように打合せております。個々の事件についての指揮は法務大臣は直接できません。個々の事件については個々の検察庁の意見と検事総長との関係のほうが何といいますか、本物といいますか、平たく言えば……そうお思いになつて下さい。
  120. 藤田進

    藤田進君 成るほど我々が常識的に考えても、そう食違うような馬鹿なことはされないように緊密な連絡があると思うのですが、電産争議の場合、発電所におけるウオーキング・アウトの方法、これは合法である、争議全体はそれは合法である。けれども長野県の飯田における、或いは広島県の太田川水域におけるその事実については、全体のウオーキング・アウト、労務提供拒否、発電所の……、こういう問題は合法と考えているけれども、その中の個々について正当ならざるものがあつたのだ、こういう言明を検事総長から得ておりますし、そのことは他の同僚議員も知つておりますし、当時何かの新聞にも出ていたと思うのです。このことは取りあえずウオーキング・アウトそのものはこれは違法ではない、匙加減を言つているのではないのですよ、検察当局の。違法ではない。ただその中において千のうちに、万のうちに一つぐらいは検察庁から見られて違法だと、こういうふうなものがあつたのだと、こういうことがあつたわけであります。このことは、要するに発電所におけるウオーギング・アウトそのものは合法なりという一貫した解釈のやはり結論であると解されるのでございます。この点について如何お考えになるか。
  121. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これはこの間本会議で申上げたことと、今日私が申上げたことと、只今藤田さんが御指摘下さつたことと、変りないと思います。原則において労務提供拒否は違法ではない、併しこれこれ、つまり公共の福祉に鑑みてといいますか、電気の場合は電気の正常な供給を阻害するようなそういう労務提供拒否は違法である、こういうふうに区別して検事総長は言つていると言います。
  122. 藤田進

    藤田進君 先ほど、公共事業令八十五条については改めてお答えするということでありましたので、これは速記録など調べた上で明確に御答弁願いたいと思いますが、そこで今の正常な業務の運営を阻害するものだと言われますが、如何でしようか、労調法第七条に、電気に関する争議行為とは、労働関係の当事者が、その主張を貫徹するために行う行為であつて、業務の正常なる運営を阻害するものを言う、こういう定義があるのでございます。従つてそれには無論公益事業として勢頭申上げたような幾多の制約がありますけれども、いやしくもウオーキング・アウト等、正常なる業務の運営を阻害しない、何ら支障なしに生産が行われているということ、これは決して争議行為としての威力もなく、又労調法に定義いたしております争議行為とは言えない、正常なる業務の運営が何ら阻害されていないというものは争議行為とは言えない。併し法務大臣の解釈の労調法第七条、これが一体正常なる業務運営を阻害するならば違法だということになりますと、これは大変なことになるので、この点は明らかにして頂きたいと思うのであります。
  123. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 今あなたのお話を伺つておる限りにおいては、こういうふうに私は解釈いたします。私の答弁に不備なところがありましたら専門家に埋合せてもらいます。正常なる運営を妨げる行為を言う、こうおつしやるが、そこで私の考えでは、まあ余り一々言うのも変ですけれども、集金ストみたいなもの、これは会社としての正常な業務を妨げるけれども、これは経営者対勤労者の問題であつて、第三者に面接影響がない。或いは会社の重役の所へ届くいろいろなリポートを途中で押えてしまう。単純な形のそういうものは、労務提供拒否であつても違法にならない。そういう意味に当てはまると思うのでありますが……。
  124. 藤田進

    藤田進君 どうしても問題点がずれておられるので、これ以上申上げようとは思いませんが、関連して私やつておりますので……本会議以来お尋ねして、どうもその点明確になりませんが、結局要約いたしますと、法務当局、法務庁時代から法務省になりまして、ずつと発電所等における要するに労務提供拒否、ウオーク・アウトということ自体は違法でないということは言われて来たと思います。この点は事務当局に対しても、今更そんなことがないとおつしやるならば、将来大変なことですから、はつきり神山さんなり、或いは竹原さんなり、当時に遡れば木内次長なり、全部に伺わなければなりませんが、併し現在のあなたの統制化に若干の人がまだ残つてお出でになりますから、この違法ではない、それが合法なりとされて来ていたものが、今日そういうものが違法なりとされていることについて、いつからそうなつたのか、どういうところでそれが明白にされ、第三者にもはつきりされたのか、この点が何ら触れられておりません。この点はどうか。今お答えできなければ、後刻お調べの上で御回答願いたいと思います。  それから最後にもつ一点だけ、この第二条は、成るほどこれが通過いたしました場合、解釈に大きな幅があつて問題は残されていると思いますが、併し一応言い得ることは、この二条が制定、実施された暁においては、この発電所等におけるウオーキング・アウト、いやしくも直接供給を阻害する行為、これはいけない、こうなつております。そこでこの第二条が制定、実施されない今日におきましては、一体これは今までの答弁では違法だと言われているけれども、併し労働大臣の御答弁によりますと、いろいろお尋ねいたしましたが、労働大臣にともどもお願いたしたい点はこの点なんでございますが、労働大臣のお答えは確かに法務大臣と同じように今日はなつております、労務提供拒否は違法なりと。ところがそこのところにどうもあいまいなものがあるのです。そのあいまいなというのは、然らばこの第二条が実施されない今日においては、ウオーキング・アウトに対する違法性は罰せられるかどうか、これに直接罰条はございませんが、公共事業令とかなんとかありますからね……。併しその間に対して、これが実施されない前は無論罰せられない。併しこれが実施されたならば罰せられるのだ。これは関連法規に照してですね、こう言われている。法務大臣もその点は同意見かどうか。
  125. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは本法案は罰則は削つたわけでございますが、その他の関係で法務省に相談に来たときの話に遡るのでありますが、本法案の設定のゆえんはたびたび申上げて、どうもその点が御不満のようでございますが、そういう点が従来一部で解釈がまちまちな点がありました。解釈の再明確化ということを図つた解釈規定的なものであると、法務省側の立場からは解釈しておるのであります。従つて零のものを数に入れるのでなく、人によつてまちまちな、或る意味では自分都合のいいような解釈をしていた向きもありますので、元来の意味を明確にする、こういう意味でありますから、従つて第二条もその精神で貫いていると解釈いたしております。
  126. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 その点が私にも実ははつきりしないのであります。而も非常に重大な点であるので、これまでこの委員会におきまする質疑応答の結果、私の今理解しているところは、第二条の中の不作為による場合、ウオーキング・アウトの場合、その点は今大臣お話のように、従来必ずしも解釈といいますか、見解が一致していなかつた。むしろ受けた感じは、今、藤田委員の言われたように、正当な行為ではなかろうかというような見解のかたがむしろ多くなかつたかと思う。併し政府の御説明では、この前の争議の結果、あの争議を通じてそういうものを基礎とする社会通念が成熟した。従つて、何といいますか、違法性という色彩が非常に濃厚になつた。それをこの法案で取上げて、これをはつきりと違法にした、そういうふうに私は説明を聞いて参つたのであります。恐らくそうであろうと思う。ところで八十五条との関係であります。八十五条との関係についての先般来の御説明は、この二条に違反する場合、言い換えれば、如何なる不作為による争議行為も、この法に違反して争議としての正当性はなくなる。従つて当然に八十五条の適用があつて、八十五条の罰則が科せられるのである。その不作為の場合においての結果が電気の正常な動きに支障を与えなくても、ウオーク・アウトそれ自体がすでに違法であるから罰せられるのだ。言い換えますると、勿論何といいますか、不能犯的の場合も罰するということになる。又未遂的の事柄もこの場合においてはあり得るわけですね。ともかく第二条の関係においては、電源ストその他においてウオーク・アウトが行われる場合においてはこれに触れるのだ、その結果現実電気の供給に支障があろうがなかろうが、八十五条の適用があるのだという実は御説明であつたのであります。私はそれは刑法の通念から言つても、又労働法制に対する罰則の常識から言つても、非常に行き過ぎではないかということを先般言つたことがあるのであります。一つ重大な問題と思いますので、政府としては明白にされんことを希望いたします。
  127. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 不作為の場合は重大な問題だと思いますので、当局の見解を申上げたいと思います。多分引揚げても会社のほうで埋めるだろうというようなことで引揚げることは、やはり直接結果に現われなくても違法であると解釈をいたしております。又多分そうだろうということで、この重な職務の場所にいなくなられては困るのであります。これはやはり公共の福征に関することになります。たびたび申上げますように具体的なケースにおいて、本当に入れ代つて人が来ると思い込んだ場合は、法律の適用がちよつと違いますが、無罪になつた場合もあります。今後といえども、そういう場合には検察権の発動において斟酌する、こういう二段構えの構えを実は持つているのであります。併し多分入れ代わるだろうといつて代わることそのものは違法でない、正当な労働争議だういうことでは、これ又私は行き過ぎだと思つております。併し個々の場合において十分斟酌ができる場合がありますから、それは個々場合において検察権の発動について斟酌する、私はそういう考えを持つております。
  128. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今言つたそれに関連がありますが、仮にこの法案が通過をしなかつたという場合に、ウオーク・アウト、不作為によるウオーク・アウトのような場合は、これは行政解釈としては違法なんだということを政府説明されたのでありますが、法務当局とされまして、これはまあ最終的には裁判所の判決に待つわけでありまするけれども、常識的に考えれば、その行政上非とする、違法とするという考え方と恐らく裁判所側の考え方は私は相当の開きがあり得るのじやないか、これも極めて常識的の見方であります。むしろ個々の場合にそれが現実相当の支障を及ぼして、迷惑をかけるとか、損害を与えたとするでしよう、それは成るほど八十五条に関連して来るということがありましようけれども、この法案で言つておるように一律に電産における不作為のウオーク・アウト式のものはこれは違法なのだという観念を私は裁判所がとろうとはちよつと考えられない。その点についての法務大臣として御見解を承わりたい。
  129. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 仮にこの法案が御可決を願わなかつた場合でございますが、当局としては行政解釈上違法だということでこれは変化ないと思います。ただ人を罰するほうの係と申しますか、そのほうの仕事の法務省としては行政上の解釈というものを最小限度にして、勤労者の権利というものをできるだけ尊重するという気分で終始やつております。私もそれは厳重に一つ一つつたケースについては申しておるつもりでございます。
  130. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 丁度一時になりましたので、昼食のため暫時休憩いたします。    午後一時休憩    —————・—————    午後二時五十一分開会
  131. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き会議を開きます。  昨日の、労働委員でありました吉田法晴君の質問に関連いたしまして、若干極く短時間にもう一点だけ質しておきたい点があるというので、委員発言を求められておりますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 委員外議員吉田法晴君) 昨日御質問を続けておりましたか、なおこれに関連いたしまして、若干時間を頂いて質疑を許して頂きたいと思います。  早速質問に移りますが、この法律と鉱山保安法、それから公共事業令、この三つの法律がどういう関係に立つのか。それから法律の運営に当りまして、或いは違反等の場合、労働者、通産省、法務省、各省の関係がどうなるかという問題がございますが、これらの点についてどのように考えておられますか、承わりたいと思います。
  132. 中西實

    政府委員(中西實君) この法案只今申されておりまするように、労働争議行為の違法性、正当か、不当かの範囲を明定するものでございます。而してこの法案で所定の事項につきましては、争議行為としては違法性を阻却しない、即ち争議行為としてもいわゆる労組法第一条二項の正当な争議行為にならない。こういうことになりまして、従つて二条、三条それぞれの行為と違反についての法律、即ち電気につきましては旧公共事業令、石炭鉱業につきましては鉱山保安法、それぞれ所定の違反になる、こういう関係になります。
  133. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) ほかの省からも承わりたいと思うのでありますが、それではあとで手続関係のところでお伺いをいたすことにいたします。  これは労働大臣なり、或いは政務次官なり、政府を代表して御答弁を頂きたいと思うのでありますが、法務大臣はおられませんけれども、この法律によりまして、労働組合法上の第一条二項による違法性の阻却原因が除かれますと、鉱山保安法、或いは旧公共事業令違反として行政罰が課せられることになります。それから刑法所定の構成要件に該当すれば、刑法の処罰を受けることになります。或いは民法上の損害賠償の請求をも受ける。こういうことになると思うのです。二重、三重の責任を受けるというのは私は酷だと思うのであります。而も問題になつておりますような極めて軽微な問題に対しても、これらの責任を追及することは酷ではないかと考えられるのでありますが、この関係が実際にどうなりまするか、法的な関係一つ承わりたいと思います。
  134. 安井謙

    政府委員(安井謙君) お答え申上げます。只今お話の一条二項で違法性が阻却されるという範囲が規定されまして、その阻却されない場合には、これはそれぞれの鉱山保安法、或いは公共事業令に設けておりまする罰則の箇条になります。それから又民法或いは刑法上の刑罰を受けるのも、この法律の性格上止むを得ないかと存じます。
  135. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) 非常に軽微な問題について三つとも責任をとるということは、これは社会通念といいますか、人道上からも問題ではないかと私ども考えておるのでありますが、その点については重ねて御答弁頂きたいと思います。
  136. 安井謙

    政府委員(安井謙君) これはやはりその個々のクースによりまして、それぞれその法に従つて判断されるものであると思うわけです。
  137. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) これは法務大臣から御答弁を頂くのが適当かと思いますが、おられませんので、代つてお答え頂きたいのでありますが、それではこの法律に伴いまして破防法の適用せられる場合もあり得るのか、その点をお伺いいたします。
  138. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 結論を申しますと、ないと思います。
  139. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) この法律には手続法はないのでありますが、実際にどういう運用をされるのか、その手続について伺いたい。
  140. 中西實

    政府委員(中西實君) 手続と申しますのは、恐らく、実際の運用をどうするかというお話かと存じますが、それならば一応所管は労働省になつておりますけれども、二条、三条それぞれ事業関係を監督いたしております、所管いたしております通産省、更に刑事関係、或いは民事関係、その他は法務省、それぞれと十分に打合せを遂げてやつて参りたい。現在も十分打合せを遂げておりますけれども、更に具体的な問題が起りました場合には、十分な打合せを遂げてやつて参りたい、かよに存じております。
  141. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) 手続法はなくてもこの法律は運営できるかという意味について答弁を願つたのでありますが、その点の答弁は今ございませんでしたが、時間がありませんから、その次に移つて参ります。  二条と公共事業令との関係でございますが、三条と鉱山保安法との関連を考えますというと、この三条は鉱山保安法以上に及ぶものだということはこれは明らかであります。例えば労調法三十六条以上を規定しておりますから、そこでこれはどういう法的な根拠によるのか、それから具体的に或いは採炭であるとか、掘鑿であるとか、或いは運搬であるとか、こういうものがその法の適用を問題にして実際にどうなるかということについお尋ねしたいと思います。
  142. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 只今お話は、三条が恐らく鉱山保安法よりはもつと広い解釈ができるというお話だと思いますが、この法律の精神は逆でございまして、鉱山保安法の場合に、特にこの三条で謳つておりまする範囲のものだけを規定することになつております。
  143. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) その点は大体あれですか、重ねて伺いますが、鉱山保安法以外には出ないと、こういう答弁であつたと思いますが、その点確認して行つてよろしいのでございますか。
  144. 安井謙

    政府委員(安井謙君) その通りでございます。
  145. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) 次は資源の滅失又は重大な損壊、重要施設の荒廃とは具体的にどういうことを言うのか。或いは重大な損壊、或いは重要施設の荒廃というその重要度、或いは荒廃というものは具体的にどういうことを考えておるのか。これはこういう漠然とした規定はこれは民主主義の原則に反すると思うのでありますけれども、具体的に一つ答弁を頂きたい。或いはそれは今後も鉱山保安法の中に限るというお話でございましたが、鉱山保安法で運営になるのなら結構でありますが、その具体的な、法的な解釈をどういう方法で規定するのか、この点を伺いたい。
  146. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 具体的な事例でありますから、中西労政局長のほうから……。
  147. 中西實

    政府委員(中西實君) ここにございますように、鉱山における人に対する危害、鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、鉱山の重要な施設の荒廃、又は荒廃を及ぼす行為、四通り出ておる。人に対する危害のものにつきましては、これはもとより各山、各坑によつて非常に事情が違うのでありますけれども、共通なものを申上げますれば、例えば人に対する危害に関するものとしましては、扇風機といいますか、通気の施設の保持、排水ポンプの運転業務、更に信号、見張り、警報電話等の警戒、連絡の業務、その他坑道作業物の検査、維持、或いは又ガス、通気、温度等の測定、こういつた業務はすべて停廃することによつて人に対する危害に影響を及ぼすものと考えるのであります。なお又鉱物資源の滅失若しくは損壊に関するもの、これも大体人に対する危害に関するものと大体同じ程度の施設の維持、或いは業務の遂行がこの場合にも当はまるのではないかと思います。更に重要施設の荒廃に関するものにつきましても、先ほど申した通風、或いは排水ポンプの維持管理の施設、これがございます。そのほかにいろいろと動力施設の維持管理、こういつたものも重要施設で、結局はその石炭山としての経営を遂行して行く経済的価値をなくするような結果を及ぼすようなもの、これが結局鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、或いは重要施設の荒廃、こういうことになろうかと存じます。  更に鉱害に関しましては、鉱廃水の処理の施設管理の業務、或いはいわゆるボ夕山の管理の業務等がこれに当るのですが、大体共通な主なものを挙げますれば、そういうものが言えるのじやないかと思います。
  148. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) 鉱廃水の問題は別でありますが、資源の滅失又は重要な損壊、或いは重要施設の荒廃につきましては、私は今手許に持つておりませんが、今読上げられましたのは、鉱山保安法による保安規則の四十七条であつたかと思いますが、それをお読みになつたと思うのでありますが、鉱山保安法によると、労働者の責任は保安規則の五条で謳われております。それを読上げて、この具体的な内容はあの保安規則に謳われておる内容だと、それが主たるものであるとこういうふうな御解釈だと受取つてよろしいのでございましようか。
  149. 中西實

    政府委員(中西實君) 今お挙げになりました石炭鉱山保安規則四十七条の三項、これが主たるものであることはおつしやる通りでございますが、そのほかに例えば扇風機或いは機器の運転につきましては、三十九条の二、四十七条、八十六条から九十二条、そのほかもろもろの関係の条文がございます。これは一般従業員並びに保安の係員もやはり組合員になつております。そういう人たちの義務はそれぞれ他の個所にも規定しておるのでございます。ただ一般的にはおつしやいましたように、四十七条三項のものが主たるものであるということは言えると思います。
  150. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) それで一応明らかになりましたので、その点の質疑は繰返さずに、明らかになつた点は保安規則が中心で、而も保安規則の四十七条が中心であるという解釈を確立するということによつて私は進めたいと思います。  それからこの点につきましては、実際の従来言われております保安要員というものが、或いは昨日中西労政局長から答弁がありましたのは、通常作業をやつております場合と変らないような説明のような印象を受けたが、これは誤解だつた、それから鉱山保安局長からは、それは大分狭まるという御説明もありまして、食違いがあつて今日に至つたのでありますが、今の中西労政局長答弁は鉱山保安局長なり、通産省も肯定せられるであろうと思いますが、そうでありますかどうか。  それからもう一つ従来の特に昨年の炭労ストの場合には保安要員の出動状況から鑑みまして、本法に言う保安要員範囲と違うのじやないかというように、まあ考えられますが、法律に言います保安要員というのは実際に協定等に基いて出ておる保安要員よりももつと厳格なものである、かようにあれされますのでございますか。それらの点について具体的に伺いたいと思つております。
  151. 吉岡千代三

    政府委員吉岡千代三君) 昨日、中西労政局長の御答弁がやや明確を欠き、或いは誤解を生ずるのじやないかということで私が補足したのでございますが、今朝よく打合せましたところ、中西労政局長の言われましたのは、具体的の人員等は平常時の場合と争議中と保安関係者は勿論異なるけれども、保安管理者の正常な指揮命令系統に基いて保安業務をやるという関係においては同じである、こういう意思において答えたのだというお話でございますので、それならば私の申上げたのと食違いはないと思います。なお保安要員という観念は実はこれは通常の場合にはないのでございまして、平常の場合に先ず保安関係労働者と申しますと、保安法によります一定の国家試験乃至はこれに準ずる選考を受けました特定の保安業務をやつておる保安技術職員、これが全労働者の約十二%でございます。それから一般の労働者でありますが、やはり仕事の性質上例えて申しますと、この扇風機の運転でありますとか、或いは捲揚機の運転、火薬類の運般というような高度の危険作業をやる労働者につきましては、一定の資格、能力を監督部長が承認いたしまして、その人間でなければ、その業務に就かしてはならないということになつております。これが全体の労働者のうち約一七%を占めておる。更に、これに次ぎます危険度を持つ有資格者と言つておりますが、例えて申しますと、鉱山の救護隊の業務でありますとか、或いは一定の圧力以上の汽罐の操作、電気工作物の操作というようなものにつきましては、これは鉱山において特定の教育をした者でなければ使つてはいけない。この技術職員と、それから監督部長の承認を受けました有資格者、指定鉱山労働者、この三種類の制度がございまして、これを全部通計いたしますと、約全従業員の四割に相当いたします。併し、その他の労働者につきましても、やはり保安法によりまして、保安教育を施さなければならない。或いは保安上のいろいろな注意、例えば火気を携帯してはいけないとか、保安に関する機器の運転をとめてはいかんというような規定がございますので、結局炭鉱の特殊性から申しまして、殆んど全部の人が保安についての或る程度の責任を負つている、こういう関係になるわけでございます。結局それに対しまして、争議の場合の保安要員はどうかと申しますと、昨年の炭労ストの場合の実例で申上げますと、地区によつて、或いは各山によつて若干異なるのでありますが、平均いたしまして、各地区とも同時に、大体在籍労働者に対しまして、約二割のかたが保安要員として就業されております。従つて、平常時の稼働率を通常我我は八二%と見ておるのでありますが、それから申しますと、二割六分くらいの人員が実際の活動をしておつたと、そこでこの現実保安要員と、本法による法律上義務ずけられておる保安要員との関係でありますが、現地を視察されまして、よくおわかりになり、又先日御要求によりまして、現行の各社のこれに関する労働協約の関係条項等も差上げておつたと思うのでありますが、この保安法による狭義の保安要員以外に、例えて申しますと、配給所でありますとか、或いは浴場、それから病院でありますとか、まあ鉱山の従業員がその正常な日常生活、主として消費生活を送りますための人員等は、労使間の協定によつて相当数出ておるのであります。そこで、これらのかたは鉱山保安法による保安要員であるかどうかという点については、異議があると思いますけれども、併しながら、鉱山のまあ特殊の生活形態、一種のああいうふうな共同生活におきまして、争議中の場合におきましても、労使の話合いによつてそういう人員を出されるということは、私は良識のある措置である、こう考えております。
  152. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) 今お尋ねをいたしました最後の点がちよつとはつきりいたしませんが、この法律にいうまあ保安要員と申しますか、第三条に規定しましたものは、実際に昨年保安要員として協約によつて出ましたものよりも狭いのではないか、協約によつて任意に出るものは相当含まつておるのじやないか、そういうことを申上げておる。その点についての御回答を願いたい。
  153. 吉岡千代三

    政府委員吉岡千代三君) 御意見の通り考えております。
  154. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) この法律は、私どもは賛成をするのではございません。こういう法律は必要はないと思いますが、その運用に当つては、法務大臣からは最小限に解釈したい、こういうことでございましたが、私はこれは当然の態度と思うのでありますが、特に労働省においては、労働者を守るために、或いは憲法に保障された労働権を守るために、その点はもつと強い労働省の態度でなければならん。そうでなくて、徒らに労働権を制限しようというのであるならば、或いは労働者を抑圧しようというのであるならば、労働省の私は存在価値というものは全然ないと思うのでありますが、その点について大臣、労政局長等の説明を伺つて参りましたが、更に決意を承わりたいと思うのでありますが、それに関連をいたしまして、保安要員はどうしてきめるか、この法上の保安要員をどうしてきめるかという問題について伺いたい。前国会の最初に、二月の十三日でありますが、当時の労政局長齋藤君から、「各山元において具体的にきまつて行くと思います。即ち労使間の団体協約等によつてきまることもありましようし、」途中飛ばしますが、「私は山元できまつて行く問題だと、かように考えております。」ということでありますが、このきめ方、労使双方の協約によつてきめるという点について、前の労働省の御発言を確認なさるかどうか、改めて承わりたい。
  155. 中西實

    政府委員(中西實君) 最初のお話でございまするが、労働省の使命から考えまして、我々のいろいろの施行上の気持の上におきまして、おつしやる通りに我々も考えております。  それから、今の保安要員範囲でございまするが、これは前に我々のほうから申上げておる通り、各山元でおのずから話合いできまつておる。過表においても実績がありまするし、この間の実地御視察の際にも、曾つて一度としてトラブルなしに、一度もトラブルなしにきまつておる。こういうことも聞いております。その点は大した危惧を持つていないのであります。
  156. 吉田法晴

    委員外議員吉田法晴君) その最後に述べられました労政局長答弁については、重ねて言うようでありますが、通産大臣はおられませんけれども、通産大臣の代りのかたから一つ御確言を願いたいと思います。重ねて伺いますが、各省大臣、代表の御答弁を伺つておきたいと思います。
  157. 吉岡千代三

    政府委員吉岡千代三君) 只今労政局長からお述べになつ通り考えております。
  158. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労政局長言つた通り考えます。
  159. 藤田進

    藤田進君 私は午前中速記録を調査いたしました後に、それぞれ確かめたいと申上げておりましたが、只今速記録が手許に入りましたので、犬養法務大臣並に小坂労働大臣に対しまして、確認的な質問をいたしたいと思います。  先ず第一に指摘いたしたいのは、昨年のあの長期深刻になつ争議の過程におきまして、しばしば争議行為として電源職場の労務提供拒否その他の方法がとられておるが、殊に電源職場の労務提供拒否については治安当局としてはこれは違法ではないという主張を持たれ、その方針で事に処して来られたと思うのに、午前中の法務大臣の御答弁では、つとに違法であるという考え方でいたんだ、こういうふうに窺えたのでございます。これに対する人的な、いわゆる人証はここに特に挙げません。場合によれば又改めてやりますが、少くとも昭和二十七年十一月の八日、昨年の電産争議終盤に当る時期でございます。第十五国会参議院の本会議におきまして、岩木哲夫君の質問に対しまして、当時の池田通産大臣が答えていることがございます。その質問の要旨は、「池田通産大臣に追加いたしてお尋ねいたしたいことは、」ということで、「今回の争議政府の失態、怠慢によつて、いつ解決するかわからないのであるが、」といろいろ事情を述べられて、そういう場合に損害がストライキの結果あるが、そういうものに対して政府が責任を持つのか、会社なのか、労働組合なのかという点が質問の中心であつたように思われます。長いからこれは省略いたします。これに対しまして池田通産大臣は、「次にストによりまするその被害は誰が負担するかという、こういう問題でございますが、正当な争議行為によりまする被害は、労働組合法の八条によりまして、使用者にも或いは組合側にもその責任はないということになつておるのであります。而してストをした組合側が第三者に対する責任如何ということになりますると、組合側と第三者とは関係はございませんから、そこに損害賠償その他の権利義務関係は起らぬと思います。なお又、ストによりまして電気事業者と使用者との関係におきましては、これは不可抗力による場合におきましては、電気事業者はその被害の責を負わないということが電気供給規程に規定してあるのでありまして、電気供給規程による不可抗力というものが、正当な労働争議を不可抗力と見るか見ないかという問題につきましては、厄介な問題でございまするが、この点につきましては、以前に慣例として不可抗力と見るという解釈をしておるのであります。つまりこの質問は、今申上げた通産大臣答弁にありまするように、昨年のあの丁度質問の当時争議行為が行われていた。あの争議が一体どうなのかという、正当、不当、或いは違法、合法の問題から発しているように窺われるのであります。全体を流れている精神が、これに対して損害賠償の責はないんだというのが当時の通産大臣答弁でございます。更に国務大臣犬養氏は「岩木君にお答えいたします。」ということで、短かい答弁でありますが、次のように答えております。なおこの質問の要点は、「最後に犬養法相にお尋ねいたしたいことは、今後のスト行為の成り行き次第によつて全面的に更に悪化」する、非常に広汎になつて来る、これは一体法務大臣としてどうなのか、当然刑法上の適用があると考えるがどうか、こういう質問なんです。これに対しまして国務大臣犬養氏は、「岩木君にお答えいたします。経営者側が業務の引継ぎを要求いたしまして、業務の入れ替りを経ませました後に、争議団が電源スイツチを切りました場合は、多くの場合、御承知のように刑法に規定せられました威力業務妨害に当てはまるのであります。多くの場合と申しまして、全部と申しませんことについて、或いは御不審があるかも知れませんが、当局といたしましては、一つ一つのさような場合に、その状況を勘案いたしまして、労働組合法の第一条第二項に当てはまるかどうか、一つ一つ現に慎重に、起りつつある場合を検討しておるのであります。併し多くの場合、威力業務妨害に当てはまると解釈いたしております。」……よろしゆうございますか。これは要するに電源職場などにおけるウーキング・アウトそのものは問うてはいない、それは違法ではない、けれども会社が業務を引継いでいるにかかわらず、その後闖入したりしてスイツチを切つたらこれが威力業務妨害なんだ、この威力業務妨害に当てはまるという、多くの場合こういう立場をとつておいでになります。更にこれを裏付けるかのごとく、第十五国会、十一月二十七日、いよいよ争議解決の直前に近い時ですが、衆議院の通産委員会におきまして次のようなことが政府から答弁されております。高木委員質問に対しまして……、高木委員は、争議行為に対して公共事業令の八十五条というものを適用することができないのかどうかという点が重点でございます。これに対しまして当時の公益事業局長、石原(武)政府委員が答えております。「まず第一にお尋ねの第八十五条がかりに有効であるとして、今回の電産ストの関係でありますが、八十五条は今お話がありましたように、正当の理由なく云々というように書いてありますが、正当の労働行為であれば当然これの適用外に当るのであります。不当な労働行為が行われた場合に、初めて八十五条が問題になるということでございますが、今回の争議の中に不当労働行為があるかないかによつて、この規定の適用があるかないかということになるわけであります。そこでお尋ねの停電ストは、違法な労働行為であるかどうかという点がいろいろ問題になるわけでありますが、従来昭和二十五年の当時におきましては、政府としては停電ストは違法の行為で」……停電ですよ、電源ストじやないんだ。「停電ストは違法の行為であるという解釈をいたしておりまして、それに基いてさような事件が起きた場合に告発をいたしております。」これからです。「しかしながらそれらの事件につきましては、刑事事件になりましたものについては、ほとんど無羅の判決がございましたので、現在におきましても停電行為が違法な労働行為と認むべきやいなやについては、実は政府部内でも現在のところはつきりいたしておりません。」と言つておるのです。「従いまして今のお尋ねについてはつきりしたお答えを申し上げかねるのではなはだ恐縮でありますが、不当労働行為であるということになりますれば八十五条違反になりますので、この規定が有効でありますれば当然これは違反行為を形成し得ることになります。」こういうようなことを言つております。更に、これは通産政務次官ですが、山手委員質問に対しまして答えております。今のこの電産争議を一体どうするかというようなことに対しまして、小平政府委員は「お話のような事態が起らないことをわれわれは希望しておるわけであります。万一にもそのような事態が起りました際におきましては、労調法のいわゆる緊急調整という遣も開けておるわけでありまして、一般国民生活をはなはだしく危うくする、あるいは産業をはなはだしく危うくするという事態にまで行きますならば、」まだ行つていないですね、この時。「行きますならば、緊急調整の措置に出るということも当然予想されるわけだと思います。」更に、まあ長いので読み上げませんが、公共事業令八十五条は争議を目的には作つていないということが明確になつております。  要約いたしますると、以上申上げたように法務大臣並びに労働大臣が本当にスト規制法に対しては、すではもう前々からそういう行為には違法であると考えていた。違法であつた。これを今回労働者に対して親切な意味で、間違つては困るので、違法であるということを明確にするだけなんだ、決して新らしく制限するものでも何でもないのだ、こういうことが言われているのでありますが、たつた、この間の国会では以上のような答弁がなされているので、全く突然変異というか、変つている。而も法務関係につきましては、只今法務大臣が言われて初めて労働大臣のほうに何らか近付いたような御答弁になつて、これ又誠に変貌を来しておるようでございまするので、以上の御答弁は全く何かの都合であれが間違いであつたのかどうか、はつきり一つして頂きたいと思いまして出したのでございます。
  160. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お互いに人聞ですから、多少都合のいいほうばかり引用するようになるわけですが、私がこの答弁を見ますと、電気及びガスの臨時措置法についての質疑応答でございますが、電気及びガスの臨時措置法の成立までは公共事業令は御承知のように失効していたのでありまして、停電ストの取締りに問題にならなかつたわけであります。それでこの当時の当局といたしましては、業務妨害のような刑法犯のみを取締る問題を答弁しておつたわけであります。それから八十五条の関係でございますが、私が責任もありますので調べさしたのですが、十二月十三日は小笠原通産大臣、これは通産省の責任者でございますが、こういうことを言つておられる。只今の御質問の第八十五条の条文につきまして、私どもの承知しておるところでは、これは一般的な規定であり、ストを目的としたものではないが、併しストについてはいわゆるケース・バイケースであつて、それに当てはまるものも出て来る場合がある、こういうふうに言つておられるのであります。それから石原政府委員は成るほどとおつしやるようなことを言つております。
  161. 藤田進

    藤田進君 それはそうでしよう、読んだのだから否定できないですよ。
  162. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 十一月二十七日に……、併しこれに関しましては、私のほうはこの石原政府委員答弁については、法務省におきましては、通常の場合停電ストが八十五条が生きている限り八十五条に違反するものというふうに従来とも解釈して参つたのであります。さように一つ御承知願います。
  163. 藤田進

    藤田進君 今法務大臣が言われておりますが、この論争は時間がないから省略いたしますが、要するに公共事業令が失効している、これは政府の怠慢じやないか、これが生きていたならばこれによつて取締れるにかかわらず、お前たちが怠慢であるから、政府がね……。だからこういうふうになつておる、こういう質問なのですが、これに対して政府は、「いや、失効は全然関連ございません。なぜならば八十五条というものは、これはたとえ生きていても争議関係のないことでございます。」これで読みますと書いてある通りです。これを私が突いておるのですから、今のおつしやつたことはよほど遠くの御答弁をなさつておると考えるのです。
  164. 犬養健

    国務大臣犬養健君) それは通産省の大臣はどういうふうにおつしやつたかは知りませんが、法務省としてはこれはごまかしてもしようがないことでございまして、前からそういう解釈をとつておるのでございます。
  165. 藤田進

    藤田進君 いや、通産省は通産省で、国会に対しての御答弁はおれのところはこうだ、通産省は知らない、こういうことになると、いよいよ総理大臣吉田茂氏に来て頂いて統一ある御答弁を願う以外になくなるのです。明らかに食い違つておるのですから……。この点はやはり政府の一連托生とどなたか私語であつたか、或いは公式であつたか言われておるのですから、そのような御答弁ではこれは通産大臣、石原君が言つたことは私は了解できません。
  166. 犬養健

    国務大臣犬養健君) それについては小笠原通産大臣が代表者でございますから、小笠原通産大臣答弁を調べてみれば、それは今申上げたように、これはケース・バイ・ケースということになつてつて、この答弁に関する限り食い違つていないように承知いたしますから、さよう御承知を願います。
  167. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 十月の二十四日から十二月二十七日まで公共事業令が失効していた、そのことを挙げて法務大臣が言われましたのは、そうした場合には刑は軽きに従うとということで、できるだけ軽いふうに情状酌量して行ごうという考えで言われた例であるに過ぎない、こう思うのであります。なお石原政府委員答弁等も問題になつておりますが、これはその停電行為そのものにつきまして通産省としましては、いわゆる停電が、いわゆる電源放棄の結果によつて生ずる停電もありましようし、その間における事務ストも含まれておるわけなんで、総括して通産省的な立場から言つたに過ぎないのであります。私どもそういうふうに解釈しておる。そういう立場があればこそこの法案が必要であるということで、私どもはその解釈を明瞭にすることでこの法案を御審議願つておるのでありますから、さよう御了承願います。
  168. 藤田進

    藤田進君 解釈を明瞭にするということを言われておるが、私どもは決して過去の解釈はさようなものではなかつたということを皆様の御発言を引例いたしましてここに出したわけでございます。あつさりそうだと言つたのだ。当時は電源ストなるものは決して違法だと考えていない、実体法のどれを引用いたしましても、八十五条だけをずつと出して読んで見ると、争議目的でない、勿論そのケースの中に、これは違法なりと、ぶちこわして見ればいろいろのことがある、それは我々も認めます。何をやつても合法だと言つておるのじやない。およそ今まで行われたところの事実の累積から電源スト、電源職場のウオーク・アウト、こういつたことについても問題であるけれども、一歩進めば停電ストについては政府部内でもすでに違法なりということについては未だ結論に達していないという発言がなされておる状態です。而もこれは石原公益事業局長の言を借りるまでもなく、法務庁の中においてもそうであつたはずです。(「証人を呼べ」と呼ぶ者あり)これは証人を呼ばざるを得なしわけですが、この点は何故重要であるかと言えば、そうですか、解釈法ですかと言うて、私どもは、私は少くとも了解が付かない。解釈法であるかないかというこのことについては、将来の運営についても、又これが他の憲法に関する論争につきましても重大な影響を持つと思う。それは飽くまでも烏を鷺と言いくるめようというふうにしか聞きとれない。私はそういうことをめつたに聞かないが、今回このことこそ烏を鷺と言うのかと思われるので聞いておるのです。以上のような状態を今まで積重ねて来ておるのですから、これについて一部の意見では労働省の中においても、これば速記録がありますから出しますが、この法案について労務提供拒否の域を越えるものはいけないという解明をなされておる。何故ならば、十五国会の提案理由説明と本十六国会の説明は何ら違いませんということを言われておる。然らば今国会の政府当局の提案理由説明と十五国会の説明は同一のものと考えなければなりません。十五国会における速記録を調べて見ても労務提供拒否の域を越えるものはいけないのだ、こういう点についてもすでに食違いが現実にあるわけです。これをやはり明確にする必要がある。論理的に又証拠を挙げて言つてもらいたいと思います。
  169. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は私今お聞きしておると、同じ吉田内閣のことですから、よろしいとは思いますが、小坂労働大臣が通産省のことを御答弁なつた。ところが今伺つておりますと、法務大臣として法務省はこうである、ほかのことはよくわからないという話でありまして、どうもそこのところが合いません。これは藤田君は、石原公益事業局長はこう述べたと、その精神について質しておられるけれども、通鷹省当局は来ておりませんから、今呼びましたから、通産省の一応答弁を求めましよう。
  170. 中島征帆

    政府委員(中島征帆君) 当時の石原局長答弁は、先ほどお読み上げになりました通り、その当初は違法だと考えておつたのであります。ところがその後告発されたものが無罪になつたので、現在ではそう考えにくくなつている、こういうような事態であります。気持としては、政府としてはこれは違法だと考えたいけれども、裁判所でそういう判決があつたので、そう考えられないということであります。
  171. 藤田進

    藤田進君 今中島公益事業局長から再確認されたように、通産省としては、今のような判例もあり、確かに地裁、高裁で検事側は敗訴、特に東京高裁については確定判決になつているのですね。判決がどうであろうとも、裁判がどうであろうとも、俺は俺の道を行くのだということで、縦も横もなしに押切るなら別ですよ。併しそうでないならば、これ又通産省の意見は今の通りです。違法だとは思えなくなつておる。俺のほうは違法だと労働大臣のほうは言う。犬養さんのほうでは若干又消極的な、労働省が今までそう言つて来ているのならば、何はともあれ同調せざるを得ないので、今日突如として同調したようなことで、まるつきり下のほうは準備が何もないのだ、これではこれは解釈法規なのか、創設的なものか、どういうものかについて、はつきりと筋が通らんのじやないですか。是非これは通してもらいたいと思います。
  172. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今中島政府委員が申上げましたように、政府は従来とも違法であると考えておるのです。併し告発したけれども無罪になつた、下級審でありますが、無罪の判決になつた。そこで判例が確定したようなことを言われましたが、最高裁はまだそういう判例は下しておりません。そこで政府としては、丁度時あたかも公共事業令の失効中でもあるし、効力を失つている際でもありますし、その点について石原政府委員としては、こういうふうな答えをする以外にやりようがない、そういうような事情で、政府の解釈というものは従来とも変つていないのであります。その点明確に申上げます。
  173. 藤田進

    藤田進君 そうなると、この速記録を読まなければならなくなりますが、公共事業令は何ら関係ない、公共事業令が失効したからこんなことになつたのだと先ほど言つたが、これに対して政府は、明確に公共事業令は失効した、そんなことは関係ない、政府の怠慢ではない、こう言つております。今になつたら失効していたのだから、有効であつたならば八十五条でやれたんだがというようなことを言つたんでは困るんですよ。それは成るほど大臣が違うからと言われるかも知れないが、れつきとした吉田内閣の下にやられて来ておるのです、十五国会も。その国会ごとにそんなことが言い得るのですか、法律の解釈について。
  174. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 公共事業令によつてそういう罰則がきまるというようなことは私申しておりません。公共事業令の場合に、八十五条の正当な業務の運営ということの中に、このストライキという問題が前提として考えられているかどうかということにつきましては、必ずしも明確ではないのです。しばしば申上げたように、その場合にここに規定しておるような法律の趣旨であれば、一応向うの正当性が阻却されることがないということを明瞭にする、そうすれば八十五条の適用があるこういうことなんです。併し役所としまして考えまする場合、これがある、ないとでは、そこに一つの感覚の相違がある、何となく感じが違う、こういうことであります。直接の影響を申しておるのではありません。
  175. 藤田進

    藤田進君 速記録について尋ねたいと思いますから、これは同日、先ほど申上げました二十七年十一月二十七日、山手委員質問に対しまして、これが先ほど申上げた公共事業令が穴があいて来た、効力を失つたことに対して、小平政府委員です。通産省政務次官じやないですか、小平政府委員は。このように答えております。「現在行われております電産スト、こういつた事態は当然予想されたのではないか、それにもかかわらず新しい法案の提案が遅れて」つまり公共事業令ですね。「無法律状態にあつたことは遺憾だというお話だと思いますが、電産のストにつきましては、御承知のようにこの法律が有効であつたら起きないとか、なかつたら起きておるという関係ではないと思うのであります。」これからです。「また公共事業令と電産ストの関係につきましても、特に問題になりますのは、先ほどもお話のありました第八十五条でありますが、その関係だと思うのでありますが、これにいたしましても、直接スト自体を目当にしてつくられたものではないと存じます。かようなわけでございますので、本法令が無効になつてつたということと、電産のストとは直接の関係はないのではないかというふうに考えておるわけでございます。」こういうことを言つておる。
  176. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お読みになつ通りで、私も直接の関係があるとは申しておりません。ただ政府の石原政府委員答弁を聞きます背景としまして、そういうものが失効しているということが影響があつたということは否めない、こう思うのであります。更に十二月十三日の小笠原通産大臣答弁、これは先ほどもお読み上げになりましたが、これの後段を読んでみますと、「これは一般的な規定」即ちこれは八十五条ですね、「一般的な規定でありまして、ストを目的としたものではございませんが、しかしストにいたしましても、いわゆるケース・バイ・ケースで、それに当てはまるものも出て来る場合があろうかと考えておる」こう言つておるわけであります。これで明瞭になつたと思います。
  177. 藤田進

    藤田進君 この点は同じことが答えられて、何ら明確になつておりません。これが一貫した通産省、労働省、法務省が、単なる口先だけでなしに、こういう事実に照して、そして成るほど一貫しているという解釈がどこからも求めることができないのであります。決して私はこじつけで申上げてはおりません。直接四日前に最高検にも参りまして、木内次長は今おいでになりませんので、当時おいでであつたというかたが竹原公安係検事、それから当時の法務省の社会労働課長ですが、神山さんにもお会いいたしております。こういう関連から、ここで今御答弁なつたような状態と違うのでございます。従つてこの点は何らかの方法で、一つ政府自体で統一し、且つ不明確な点は不明確なままで率直に答えて頂いて、この法案に対する性格はこのようなものだと、誤つていたところは率直に誤つていたと、このように出して頂きたいということを強く要望いたしたいと思いますので、私は関連質問でありますので、これで終ります。
  178. 田畑金光

    田畑金光君 只今までの法務大臣労働大臣に対する質疑応答の法解釈を聞いておりますと、非常に食い違つておるわけであります。食い違つておると考えられなければ、非常に不明確であります。通産大臣の解釈等も同様だと、こう思つております。従いまして本法によつてこれが制定され、仮にこれが実施されるということになつて参りますと、そういうような法解釈によつて労働者規制されて行くということは、先ほどの法務大臣のお言葉にもありましたが、努めて人権を尊重するというこの精神からいたしまして、誠にこれは許すべからざるものだと思つております。恐らく、本日通産大臣が見えておりませんが、通産大臣に聞けば、又同じような不明確な、三者三様の答弁がなされると思います。これはやはり法解釈というものは、政府において一貫したものを一つ出して頂かなければ、我々はそういうあいまいなる立法を審議し、これを進めて行くことは危険だと思つております。この際政府のこの立法に対する解釈の統一をして頂いて、適当なる機会にこの委員会において明らかにして頂きたいと思います。  更に、私は昨日来総理大臣出席を要求いたしておりまするが、私だけでございません。総理大臣の口を通じて政府の解釈を明確にされるのが適当であります。いずれにいたしましても先ほど申上げましたように、総理大臣出席を要求いたしておりますから、適当な機会に総理大臣の御出席を願つて、そういう問題も含めて政府の御方針を明らかにして頂きたい、かように考えます。どうかこの法律論争については、政府の見解を統一するまで、この辺にとどめておいてもらつて、適当な機会に政府の見解を発表して、他の質問に移つて頂きたいと思います。
  179. 堀眞琴

    堀眞琴君 只今小坂労働大臣から、政府は依然として前から違法だという解釈をとつておる。通産省の政府委員は、各下級裁判所において違法ではないという判決が下つたので、従つて通産省としてはこれは違法でないという解釈をとつておる。これは小坂労働大臣は更にそのあとを受けまして、まだ最高裁判所において判決が出たわけでないから、政府の解釈としては飽くまでも違法だという態度をとつておる、こういう御答弁があつたわけであります。それで私は問題にしてお尋ねしたいのは、裁判所の解釈と政府の解釈であります。言うまでもなく法律の解釈権は裁判所にあるわけであります。最終の解釈権は、その最終の解釈権を決定するものは最高裁判所であることは、私も承知しております。併し下級裁判所において一応確定したものを、なお政府は無視して、そうして行政時の解釈においてこれを遂行して行こうということは、これは民主主義の原則に反するものではないかと思うのでありますが、その点について改めて今の小坂労働大臣の御答弁に関連して御回答を願いたいと思います。
  180. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 行政解釈としてはこれは違法であると考えております。併し只今お話のございましたように、下級審におきましては無罪の判決が下つた例もございます。併し私どもは最高裁において如何なる判決が下されるか、そういう点につきましては、何らこれに関与する考えは持つておりません。最高裁において判決が下れば、それを絶対のものとするという考えを持つております。
  181. 堀眞琴

    堀眞琴君 最高裁判所の最終確定が法律解釈の最終の解釈であるということは、私も否定しておるわけじやないのです。私は下級審とは言いながら、下級審が出したその法律に関する解釈については、行政府もこれを尊重すべき義務があるのではないか、最高裁判所が最終的な解釈を下すならば、これは当然行政府を拘束いたします。最終的な拘束ではなくとも、少くとも下級審がそういう判決を下しておるならば、行政府としてはこれを尊重する義務があるのではないか、このことをお尋ねしておる、これは法務大臣にお尋ねいたします。
  182. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 堀さんのお気持も一応わかるのでございますが、これは検察側の態度にもよりけりだと存じまするけれども、日本のようにまだ判例の少い、そして労働運動対政府というような関係の年数のまだ足りない、伝統のまだ足りない国では特にそうだと思うのでありますが、最高裁の判例を得て、それが一つ社会通念となつて行くということは、やり方としては決して悪いことでないのみならず、当然だと思うのであります。下級審のあんな馬鹿なことがあるものか、俺は俺の独自の道を行くと、そういうように藤田さんおつしやいましたが、そういう態度をとつてはいけないのです。併し被告人と同様、検察側も自分の不審とするところは上級裁判所に訴えて、そうして最終の判断をしてもらうということは当然の権利であります。権利々々と余り私は言いたくないのでありまして、私どもの一番目途とするところは、最高裁において判決を下し、それが一つ一つ薄紙を重ねるようにして、一つのケースについての国の最高裁判所の意思発表、それが重なつたときに労働問題に対する一つの国の意見というものの伝統ができる。かように考えておるのでありまして、検察庁の態度によりけりでありまして、私は最高裁の意見を、下級審の判決に満足しないで意見を聞くということは、決して傲慢無礼というように単に思つていないのであります。この点御了承願います。
  183. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委員長はこう考えます。只今田畑君からも御発言がございましたが、とにかく通商産業省が述べられた見解と、法務省が述べられた見解、更に労働省が述べられた見解は不一致の点が多々あると思います。而もこの点は、このスト規制法案の根本をなす問題であると私は考えます。従つて少くとも公益事業局長に私は重ねてもう一点だけ伺つておきたいと思います。議事進行を私は図つておるわけであります。公益事業局長がもう一度只今の点について、小坂労働大臣は通産省の述べられたことについてそれぞれ解釈を下して説明されておりまするから、従つて公益事業局長としてもう一度説明を願いたい。
  184. 中島征帆

    政府委員(中島征帆君) 先ほど申し上げましたところは、別に答弁を変える必要もないと思います。もう一度繰返しますと、当初は違法と考えて告訴したけれども、裁判の結果多くのものが無罪となつておるので、現在としては先ほど申上げましたような態度をとつております。
  185. 藤田進

    藤田進君 私が政府に対して要求して、政府もこれに対して暗黙の了解を与えておる。それを先ほど委員長が集約していたので、適当な方法によつて速かに各省のそういつたまちまちな点について、間違つていたならば間違つていた、間違つておるのだから、この点をはつきりしてもらいたい、こう要求をしておるのだだから、この点は明快に速かにお答えを願いたい、こういうふうに言つておるのです。そのことを委員長は諮ればいい。
  186. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先どの答弁を総合してお聞き頂きますれば、政府部内に食い違いはないと存じます。明決にお答えを申し上げておきます。
  187. 田畑金光

    田畑金光君 労働大臣只今の御答弁では、これは御答弁にならんことは、答弁された労働大臣自身よくおわかりと思うのであります。政府筋のこの立法の底に流れる解釈を統一して頂かなければ、この立法の審議というものを我々は進めることができないのです。それが先決なんです。この立法を作つて罰せられる対象もあるでしよう。その適用についてあなたがたの解釈が不明確であり、それぞれ違つていたということであつては、一体この立法は誰が出したかということを私は尋ねたいのです。政府の提案でしよう。少くとも解釈においても、或いはこの立法の目指す目的等についても、私は今朝ほど通産大臣質問したのだが、通産大臣は答えることができない。こういうようなことでこういうような法案が出されたということは我々としては審議を進めることができない。先ほど申し上げたように、速かに政府の意見を統一いたしまして、我々の質問に対しては政府側は、一貫して答えてもらいたい。(「一貫しておるよ」と呼ぶ者あり)そうして議事進行を図ることが政府立場であると私はかように考えますので、この点はさように一つ御処理願つておきたいと思います。
  188. 藤田進

    藤田進君 議事進行について……。只今の点につきましては、労働大臣が強く統一なしと言われておるけれども、それは独断でありますので、(「統一」だと呼ぶ者あり)統一と言つたのか、(笑声)それは以てのほかだ、統一があると言つたならば、なお更のことだ、この点は留保しておきますが、併し議事進行上その結論が出ますまで次の質問へ進んで頂きたい。
  189. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) この際緒方国務大臣から発言を求められておりますからこれを許します。(「何も求めていないじやないか」「傍聴人は発言すべからず」「委員つてめちやくちや言つているじやないか」「その通り、誰が一番育つているのだ」と呼ぶ者あり)
  190. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 昨日官房長官が本日の委員会の席上に総理大臣出席できるように交渉をするということを申し上げておつたそうでありますが、総理は昨日閣議に出まして、あとに外交関係の事務が忙がしいために少し暑気当りになりまして、(笑声)昨日遅く大磯に帰つて、今日は東京から医者を呼んでいるような状態で、残念でありますが出席できませんので、そのことを皆さんに御了解を得まして、同時に私が若し許されますならば、出席をいたしまして総理に対する質問にお答えいたしたいと考えております。(「了承」と呼ぶものあり)
  191. 田畑金光

    田畑金光君 私は一昨日来総理大臣の御出席を要請いたしております。私だけでなくて他の委員の諸君も総理大臣の御出席を要請いたしております。と申しますのは、今回のスト規制法案につきまして過日来審議を進めて参つておりますが、この際総理大臣の所信を承わらなければ吉田内閣の労働政策を、(「本会議で聞いておるじやないか」と呼ぶ者あり)基本政策を承わらなければ法案の審議に非常な支障を来しているわけであります。労働大臣がいろいろ答弁に立たれておりますけれども、労働大臣答弁ではなかなか把握しがたく、立法の本質的な問題につきましては、我々といたしましても理解することができないのであります。従いまして、この際吉田内閣の基本的な労働政策を伺うことがこの法案の審議を促進し、与党の諸君の気持にも沿うゆえんである。と考えておりますので、総理大臣の御出席を求めておるわけであります。この際一つつておきたいことは、明日は参議院の委員会吉田総理出席されるようなことを聞いておるのでありますが、出席なさるならば、当然に労働委員会出席つて、この委員会の席上において我々の問わんとするところを明確に御答弁なさることが政府のとらるべき(「必要なし」と呼ぶ者あり」)筋だと考えるのでありますが、この際緒方総理にお尋ねしておきます。(「質問を言え」「端的に言え」と呼ぶ者あり)
  192. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 只今お話のように、明日重要な予算委員会がありますので、私どもといたしましては、総理が是非とも回復してそれに出席されることを希望しておりますけれども、疲労がちよつとでどうございますので、明日果してそれに出席できるかどうか、まだ今から何とも申上げかねます。(「必要ない」「本論」と呼ぶ者あり)
  193. 田畑金光

    田畑金光君 只今緒方総理の御答弁がありましたが、明日吉田総理は参議院の予算委員会出席されるかも知れんが、現在の病状の関係でまだ明確にならない、こういうふうなお話であります。特に会期も明後日に切迫しておりますし、(「その通り」と呼ぶ者あり)予算もどうしても政府筋としては期限通り上げなければ、又国会としても予算の問題というものは大いに検討しなければならん時期にも到達しておると思つております。従いまして、私は吉田総理も国を思い、今日の情勢考えれば、明日は病いを押しても御出席なさるのじやないか。その際一つ労働委員会にも御出席つて、(「そうだそうだと呼ぶ者あり)我々に吉田首相の労働方針を御説明願いたい。(「本会議で済んで」と呼ぶ者あり)殊に私は遺憾に考えますることは、少くともこういう重大な法律案を出し、これが輿論の注視を集めている。こういう重大な法案労働委員会にかけられておる。これは独占禁止法一部改正案と同様に、或いは又予算案と同様に、この法律案というものが今後の日本の進路を示す一つの指針であると私は考えております。従つてこの重要な法案に対し、吉田総理出席されて政府立場を明らかにすることが私は国民に対して忠なるゆえんであると考えております。而も今日まで一度たりとも労働委員会において吉田総理出席を見たことはないのであります。私はこの際、明日予算委員会出席のついでには、ついでにと言つては語弊がありますが、(「先だよ」と呼ぶ者あり、笑声)その際には当委員会出席つて、この委員会において明確に吉田総理の所信を承わりたいと思つておりますので、その点緒方総理の御努力をお願いいたしたいと考えております。我々といたしましては、この法案の審議に当りましては、吉田総理出席なくしては最終的な問題の本質を掴むことができんということだけは強く申上げておきたい思います。
  194. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 努力はいたします。努力はいたしますが、政府のこの問題に対する基本的な方針は、この法案を参議院に提案いたしましたときに総理大臣から本会議出席いたしまして、十分に所信を披瀝してあると思います。(「十分にやつてあるじやないか」「議事進行」と呼ぶ者あり)
  195. 藤田進

    藤田進君 緒方総理に折角おいで頂きましたので、二、三お尋ねいたしまして、その上で吉田総理が必要があるかないかも考えてみたいと私は思つております。本スト規制法、これについてとかくの報道がなされておりますが、今日極めて証拠あるものといたしましては、吉用総理が大幅、小幅であるとか、或いはステツプ・バイ・ステツプであるとか、いろいろの日本語、外国語を使われてなかなか将来を思いやられるお考えがあるやにも聞いておりますので、これらについては、いや総理はそんなことを言つたとか言わないとかいうことは、総理としてもなかなかむずかしいと思うのであります。そこで私は労調法につきまして、第三十五条の二によりますると、これは昨年多くの反対を押し切つてこれ又通つたものですが、一応通つてみますると、やはりこの運営についていろいろ昨年来問題も残つているのであります。そこで緒方総理にお尋ねいたしたいのです。いや、労働大臣じやないのだ。緒方総理だ。労調法の第三十五条の二でございます。これによりますと、内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるために、或いは又規模が非常に大きいため云々ということで、ストライキに対しまして、争議行為に対しましてちよつと待つた、ちよつとでもありませんが、六十日ほど待て、こういう定め、命令を出すことになつておるのでございます。ところでこの法案が通過いたしまする当時をいろいろ考えてみますると、紆余曲折がありましたが、その緊急調整なるものを発動するについては貴重なる、重大なる罷業権の一部抑圧である関係もあつて、これは所管の労働大臣ではなくして、やはり内閣の総理大臣にこの決定権を与えよう、こういうことになりまして、ここに冒頭「内閣総理大臣は、」ということで出発した三十五条なんでございます。そこで諸外国の例、例えばよく政府が引用されますところのアメリカの例などを見ますると、労働大臣、或いは大統領という固有名詞が挙つておりますると、必ず下僚がやるのではなくして、みずから法文に示されている大統領や、或いは労働大臣がその決裁をいたすのであります。日本の場合も当然ここに書いてありまする内閣総理大臣とある以上は、内閣総理大臣は全然知らないで、副総理やら或いは労働大臣その他のかたがたでおきめになつて、そして緊急調整が発動されるということはよもやないと思うのでございます。このケースにつきましては昨年炭労についてすでに発動をされております。この点について、内閣総理大臣とは書いてあるが、実際には昨年の炭労の場合も総理はあとから、そうかいというようなことであつたので、これはもう事後了解くらいであつて、俺のところで措置したのだというようなことなのかどうか。やはり総理大臣のこの胸三寸できめられるのだと思うのですが、その点がどうであるか、副総理からお尋ねしたいと思います。お答えをお願いいたします。
  196. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) その通りでありまして、総理大臣が決裁をいたしたのであります。
  197. 藤田進

    藤田進君 そういたしますると、私も誰が何と言おうとも、小坂労働大臣のワンマンの解明を聞きますと、一人しかない人だからワンマンと言うのだ、こういうことなんですが、これは正式に答弁なつたわけなんです。(笑声)(「国務大臣としての答弁だよ」と呼ぶ者あり)そこで今の副総理の御答弁がありましたように、これは何と言つても緊急調整という一つのものがあつて、これに対して又ここに第三条法案、このスト規制法が出て来ることは屋上屋ではないか。これは先ほど議事録も読みましたが、政府部内でもすでに緊急調整で行こうというので、昨年のストの過程に十一月二十七日ですか、こういう御答弁さえ十五国会でなさつておるのです。併し肝腎の総理大臣がこれをきめるのですから、副総理といえどもこれは総理大臣の気持はわからないと思います。従いまして是非ともこの際副総理におかれましては、以上の御答弁であります限り、三十五条について私は明確なる御答弁総理大臣から受けたいと存じまするので、是非とも速かなる機会に当委員会に出て頂くように副総理も御努力を願いたいと思います。
  198. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 先ほどお答えした通りであります。
  199. 田畑金光

    田畑金光君 緒方総理にもう一度確かめたいと思うのですが、先ほど答弁された通りではちよつと我々呑み込みにくいのです。明日総理大臣予算委員会出席されましたならば、同時に本委員会にも御出席をなされて、吉田総理に対して我々の尋ねたいという事項、これは総理大臣にお尋ねすることでありますから、常識的に見ましても、基本的な問題にほかならないのであります。こういう問題について、この際吉田総理大臣の御所信を承わりたいので、その機会を作つて頂きたいと思いますので、又それは当然の責務でもあると考えますので、明日の委員会出席の際に、当委員会に御出席されることを一つ緒方総理としては明確にお約束を願いたい、かように考えるわけであります。(「議事進行」「努力するのか、どうか」と呼ぶ者あり)
  200. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 先ほど申上げました通り、相手のあることでありまするので、又努力するということを申上げる以外に申上げることはないのでありますが、ただ基本方針につきましては、先ほど申上げたことを繰返すことになつて甚だ恐縮でありますけれども、本会議におきまして、十分に総理から披瀝をいたしておると考えます。
  201. 上條愛一

    ○上條愛一君 この法案は三カ条でありまするけれども、その内容を見ますると、極めて複雑で不明確な点が多々あるのであります。であるから先ほどから法務大臣労働大臣等の御答弁がありましたけれども、これにも非常な疑点がなお存在いたしておるのでありす。従つてこの問題の内容の検討の場合におきましては、やはり総理大臣みずからが吉田内閣の見解として明瞭なる御答弁を願つた上で、我々がこの法案の内容を更に検討を加える必要があると考えておるのであります。私はこの内容については数点の疑問と不備の点を考えておるのでありまするので、この点を明確に御質問を申上げまして、参議院といたしまして、かかる重要な法案に対しましては、我々は責任を以てその内容に検討を加えて、明らかなる内容の上に立つて賛否を決して参りたいと考えるのであります。  それで第一に私のお尋ねいたしたい点は、先ほど来藤田委員その他からも御質問を申上げておる点でありまするが、これは極めて重要な点でありまするので、私も更に他の方面からお尋ねをいたしたいと考えます。それは本法案労働大臣の提案の理由を見ますると、本法案争議権の否定ではない。争議権に基いて争議行為の一部方法規制するものである、こう説明をされております。これから見ますると、この法案が決定されましても、電産の従業員はすべて憲法第二十八条に明記されてありまする団体行動に対する権利、言い換えまするならば争議権でありまするが、言い換えればストライキ権でありますが、このストライキするところの権利というものはすべての電産の従業員に存在しておるかどうかという点であります。存在はいたしておるけれども、併しそのうちの電源、或いは給電の仕事に携わつておる人々は、これは公共の福祉に反するからして、これは規制するのだ、こういうお考えであるかどうかという点を先ずお伺いいたしたいのであります。
  202. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その特定の人を規制するのではないので、二十八条の労働権というものは申すまでもなくこれを十分に尊重する考えでありまするけれども、ただ昨年の炭労、電産の非常に大きなストの社会的に及ぼしました影響を見まして、最小限に争議行為の一部の、而もそれは従来社会通念的にこれは妥当でないと考えられておつたものをただ単に明確にするだけでありまして、別に争議権を侵害するという意思政府は全然ございません。
  203. 上條愛一

    ○上條愛一君 この点については私が明確にいたしたいゆえんは、労働大臣の御答弁でもスイツチ・オフという作意的のものについては、従来の法律において違法であると考えておる、こういう話でありまするが、スイツチ・オフというような問題でなしに、単に憲法に規定されてありまする団体的の行動でありまするストライキというものは、これは電源においても或いは給電の職場においても違法であるかどうか。この法律が決定されましても、単に職場放棄というこの権利は違法であるかないか、この点を労働大臣に明確に、この立法の当事者でありまするので、明確にして頂きたいと考えるのであります。
  204. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 電源或いは給電指令所のような場所におきまするウオーク・アウトというものは、従来とも社会通念上は非であると考えられておつたのでありまするが、昨年の争議の経験に鑑みまして、そこにこれは不当であるということが社会通念上認められた、従つてここにこれを明記した、こういうことであります。
  205. 上條愛一

    ○上條愛一君 そういたしますと、電源或いは給電に従事しておりまするところの従業員にはストライキをする権利がない、権利を否定しようというのが本立法でありますか。
  206. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 第二条にございまするように、「電気事業事業主又は電気事業に従事する者は、争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接障害を生ぜしめる行為をしてはならない。」ということでございまして、直接ということは半面解釈すれば間接のものはよろしい、こういうことであります。
  207. 上條愛一

    ○上條愛一君 そういたしますと、私のお尋ねしたい第二の点は、一体電気事業というような産業電気を起してこれを供給するということが主たる仕事であると考えるのであります。その主たる仕事であるところの電源並びに給電というような主体的の仕事に従事しておる人々の大部分がストライキをやる権利がないといたしまするならば、ただ検針であるとか集金であるとか、或いは事務ストというようなことのできる人々というものは、これは補助的仕事に従事しているものであると我々は考えておるわけなのです。そこで政府、特に労働大臣が本法案説明の中に争議権を否定するものではないということを強く言われるゆえんのものは、これは憲法第二十八条の問題に関連するがために、この点を争議権の否定ではないということを強く言われておると考えるのであります。併し労働大臣の言わるるような社会通念から申しまするならば、電気産業において電源及び給電に従事している人々は第二条によつてこれは違法である、こういうことになりまするならば、これは電産の争議権、電産の従業員争議権を否定するものである、こう考えて差支えないと思いまするが、その点お考えを承わりたい。
  208. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 電産と申しますか、要するに電気事業におきまして直接電気の発送電の実務を、技術をやつておりまするかたは、全体の中の二割程度と承知しております。それらのかたがたにつきましては、申上げましたように、直接電気の正常な供給を阻害する行為はしてはならんということになつております。従いまして、この場合御懸念のようなことは一応は考えられまするが、御承知のようにこういうことは他の法律にもございまして、例えば労調法三十六条におきまして、は生命の危険というようなものは、これの虞れのある場合はなしてはならぬとか、或いは労働組合法の一条二項の場合、暴力行為をなしてはならぬとか、一般的なそうした規定はあるわけでありまして、たまたまこの電気の発送電に従事せられるかたがたの場合、その電気を送るという、或いは電気を発生させるというその業務につきましては、直接争議行為としてはこれをなすことは御遠慮願いたい、こういうことになるわけであります。ただその間に間接的に争議方法というものは又そこに考えられるかと思いますが、更にそうした争議万能ということを変えまして、一般的に平時そういうかたがたが非常に怠業気分といいますか、こういうことではやつてはつまらん、仕事をやつてもつまらんという気分になりますれば、そこにやはり電気事業として必要な電力量の発生ということも低下してしまうような実状を生むと思いますし、そうなりますことは、結局事業者に対して、善良な管理者としての注意を怠つたということについてこれ又打撃を与えることになる、そういうような考え方が連なつて考えられると思います。
  209. 上條愛一

    ○上條愛一君 私のお尋ねいたします主要点は、労働組合運動という立場から明確にして頂いておかなければならないと思いますが、例えば国鉄のごとき産業におきまして、汽車を運転することができない、こういうことになりました際に、切符を売つたり、その他の仕事がありますけれども、若し国鉄のような産業において汽車を運転することを禁じられた場合において、果して国鉄の労働組合といたしまして、憲法二十八条に保障されたる団体行動をする権利というものがあると、こう社会通念は認めるかどうかという問題であります。
  210. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) やはり争議権というものも私はできる限り尊重すべきは当然であるけれども、やはりそこに争議権万能ということにならぬかと思うのであります。例えば三十六条を先にも引きましたが、そうしたような或る程度の制限というものは場所によつては伴う、こう思つております。
  211. 上條愛一

    ○上條愛一君 私の質問いたしたい問題は、労働組合として憲法二十八条に団結権と団体交渉、団体行動をするの権利というものが認められておる。その労働組合においてその二〇%でありましても、その産業においてその労働団体といたしましては、主要的のその仕事に従事するものが、これが第二条によつてストライキ、団体行動をするの権利が禁止されたということになれば、これはその組合にとつては、明かに憲法に保障されておる団体行動をするの権利というものが停止されることになるのではないか。もう一歩これを労働組合の組織論から申しますれば、今日の電産のごときは産業別の組合になつておりまするけれども、これは併し組合の発達の径路から申します。れば、職種別の組合もこれは存在いたして参つておるのであります。従つて電源労組であるとか、或いは給電労組であるとかいうような職業別の労働組合が組織されるということも可能であるし、又当然である。そういう組合ができて、そして電産全体が連合体を作るということもあり得る。そういう場合に電源に働いておる人々が電源の労働組合を作つたといたします。その際に電源に従事しておるものが、第二条に規定されるような行為を禁じられるということになれば、これは電源の従業員というものは殆んど憲法第二十八条にある団体行動に関する権利を失われてしまうということになる。そうすれば当然電源労組は争議権を奪われるということになるのではないか、こう考えるが如何ですか。
  212. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 交渉単位によりまして、そういうことはやはり可能であると思います。ただその場合、いわゆる団体行動権というものが即ちスト権であるかといいますと、これは私から申上げるのは或いは失礼かと思いますが、釈迦に説法でございますが、如何にもデモをする権利、或いは政治運動というようなものも含まれるのであつて、スト権というものはその一部であるというふうに思います。そこでそういうものがない場合に非常に気の毒ではないかというようなお尋ねかと思いますが、私はやはり新しい労働運動というものはスト権万能、スト権のあるものが一番その場所において強い勢力を占むるということには必ずしもならんのではないかというふうに思います。やはり着実にものを考え、そして誠実に議論を展開して行き得る入がやはりその組合において指導的な地位を得られるのではないかと思つておるのでございます。で、スト権制限といいますか、そういうものにつきまして、先ほど労調法第三十六条を引きましたが、その場合でも、或いは炭鉱保安要員の場合につきましても、保安要員であれば全くその組合において無力かというと、そういうことでもないのでございます。これはこういう法律のできる前の三十六条の場合でもそうでございますから、そういうことは必ずしも当らないのではないかというふうに考えております。なお病院などでもストのできる範囲というものは極めて限定されておるわけです。これは人命に関係いたしますので、そういうことになるわけでございますが、それでも病院のスト権というものはやはりある、こういうふうに考えられているわけであります。
  213. 上條愛一

    ○上條愛一君 私のお尋ねいたす点は、無論争議権のうちにはストライキ権だけではないということは承知いたしております。併し争議権のうちでストライキ権というものは重要な中心であるということだけは事実であると考えるのであります。そこでスト権を用いるか用いないかということは別問題として、後に御質問いたしたいと思いますが、労働組合が経営者等に対して対等の地位に立つためには、その背後にやはり憲法第二十八条に確保されてありまする団体交渉、或いは団体行動の争議権があつて初めて対等の地位で労働条件の交渉ができる、こういうふうに考えておる。そこで電源労組のような場合において、スト権を用いるか用いないかということは別問題であるけれども、その労組がその中心であるストライキ権というものを否定されました、これが違反であるといたされましたときに、どうして労働組合が経営者と対等の地位に立つて交渉を進め得るかという問題が重要な点であると考えるのであります。
  214. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今の御質問のお気持はよくわかりますが、私はこのストライキ権というものは非常に重要なものでございまするが、二十八条というものは御承知のごとく十二条というものをそのままにやつて参りますると、いわゆる経済上の弱者、最高裁の判例の言葉を使いますれば、経済上の弱者であるところの労働者が優位にあるところの経営者に対して対等の立場に立ち得ない。そこでこの二十八条というものを入れるということになつておると承知しておりまするが、但しその場合無制限ではない、その権利というものはやはり公共の福祉というものの立場において調和を保たれなければならん、こういうことであると理解しておるのでございます。やはり電産のような場合は、その公益性とか電気の特殊性というものから、直接長期の停電をしないでも、又間接的な手段によつて、先ほどもちよつと触れましたが、電源においての士気が非常に沈滞するということになれば、電気事業そのものの不振を招く直接の動因になるでございまするから、この点はスト権というものに対してそれほどまでに頼らないでも、やはり新しいこれからの社会においての経営者立場というものは、これを十分にみなければやつて行かれないというふうに思つておる次第でございます。
  215. 上條愛一

    ○上條愛一君 なお私はのちに触れたいと思いますが、今労働大臣憲法の二十八条は、従来言われておるように憲法十二条の公共の福祉というものを害さない範囲において制限せらるべきものであると、こういうふうに申されたのでありますが、私の次にお尋ねいたしたい問題は、それならば憲法の二十八条、二十九条に大体労使の権限を明記してあるのでありまするが、第二十八条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と、こう明記してあるだけであります。何らのここには制限を加えておらないのであります。然るに第二十九条には「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」それから次に「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」こう書いてありまして、財産権と私有権に対しましては明らかなる制限を設けてあります。そこで憲法第十二条でありますが、十二条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と書いてあります。そこで憲法第二十八条のこの制限というものは、憲法第十二条を見ますれば、労働組合に対するこの二十八条は濫用してはならないということが中心であると私は考えております。結局労働組合に与えられたるこの権利というものは濫用してはならない。無論公共の福祉に反するようなことは、これは戒むべきことは当然でありまするが、この公共の福祉ということは、財産権並びに私有権に対して主として明記してある条件ではないかというふうに私は考えるのでありますが、そこでお尋ねいたしたい問題は、憲法第十二条の制限というものも要するにこれは濫用してはならない。労働組合に与えられましたるところのこれらの権利というものは濫用するといけないということで、言い換えれば公共の福祉に対して非常な障害を与えるような濫用は、これは注意しなければならないという点であると考えるのでありまして、何らこれからして、この十二条からして労働者の二十八条の権利でありまする争議権を否定するようなことが当然であるという考えは生まれて来ないのではないかと考えるのでありまするが、この点に対する労働大臣の御意見を承わりたい。
  216. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 憲法第二十九条は、「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」ところ書いてございます。その他ございますが、こういうような趣旨でございます。そこでこの正当の争議行為をやつた場合には、財産権は侵されることはいたし方がないので、ただ二十八条を読みますると、只今の二十九条の場合のように、公共の福祉に適合するように云々ということが書いてないのでございまして、でございまするから只今のような御質問が、というか御意見が出ることと存じます。そこで私どもが理解いたしておりまするのは、これは丁度この前の国会で佐藤法制局長官が衆議院委員会で答えておりますので、これを援用されて頂きますれば、「大体憲法の第十四条と二十八条との関係については、十四条の原則が平等の原則で貫いておるわけでありまするが、二十八条のほうはむしろ平等の原則を貫くというと、使用者の側の経済的な力と労働者側の経済な力とは客観的にバランスがとれておらないから、むしろ労働者側の力に足し前をつけてやろうというのが二十八条である」云々とこう言つておるのでございます。従つてそういう趣旨で二十七条が書かれましたので、これは当然に十二条と十三条というものと一列に読んで行くべきものである。従つて十二条の「国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」という、更に十三条の「自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、」云々、こういうことと一緒に読み下すべきものである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  217. 上條愛一

    ○上條愛一君 公共の福祉ということでありまするが、一体労働争議が起りまする際に、公共の福祉に全然関連のないという争議はあり得ないと考えるのでございます。ただ電産や或いはガス、水道というような、この公共事業、公共の福祉により多い関連を有するということであつて、これは紡績産業にいたしましても、或いは肥料の生産にいたしましても、ストライキをやるということになりますれば、これは公共の福祉を害することは当然であると考える。そこで憲法の精神は十二条の精神というものは、公共の福祉というものに非常に重大なる影響を及ぼすということは、これは慎まなければならないと考えるのでありまするが、併し労働大臣は昨日の説明でも申しておつがのでありまするが、公共の福祉を侵したような争議はこれは禁じられなければならない、こう申されておりますが、私はこの憲法第十二条の精神というものは、公共の福祉というものは労働争議にこれはつきものである。併しつきものであるけれども、それが長期に亘り或いは大規模となつて、これが国民の生活を脅威するというようなことになるならば、これは考慮すべきである。併し公共の福祉を害するからと言つて、これを労働者の二十八条の権利というものを禁止してもよろしいという精神ではないのではないという点を労働大臣にお尋ねしておるわけであります。
  218. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お説のように、労働争議は常に業務妨害を伴いますし、一般の生活に関係があると思います。併しそうだからといつて一々これを禁止しておりましては争議を行い得る余地はなくなるわけでございます。そこで正当なる争議行為であれば、その違法性が阻却せられるということになつておるのでありますが、只今御指摘のように、非常にその争議規模が大きく、期間が長いというようなことのために国民経済の運行を著しく阻害し、又国民の日常生活を著しく危くする虞れがあるというときには緊急調整という制度を考えておるわけでございます。ただここに御審議を頂いております炭鉱の場合の保安要員の引揚という争議行為、これは労調法の三十六条を待つまでもなく違法であるということを政府が申しておりますし、又実際炭鉱において仕事に従事しておられるところの真面目な勤労者のかたがたにおかれましても、こういうことは争議行為としてすべきではない、こう考えられておられるかたが多いと思います。そこでそれをここに明確にしようというのがこの趣旨でございます。併し電気の場合もこれは非常に仕事の種類が特殊性を持つておりまして、又繰返して申上げますことは避けますが、非常に特殊なものでございますし、争議の当事者よりもむしろ第三者に非常に広汎な影響を与える。そこで昨年の経験もあり、又現実の虞れも今日なしとしないので、ここに特にこれは解釈を明確にしておこうと、こういう趣旨なんでございます。従つて先般も申上げておりますように、他産業拡大するということは考えていない、こういうわけなんでございます。
  219. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は電産のストにいたしましても、全然ストを禁止しなければならないということが妥当であるかどうかという問題であります。言い換えれば、一時間の停電ストをやつたという場合に、これは公共の福祉に禁止しなければならないほどの重大な影響を及ぼしておるか、渇水停電というようなも場合もあります。併しそういう意味で若し電気産業ストライキというものが国民生活に重大な影響を及ぼすというような、権利を濫用するようなことは、公益事業であるからこれは労働組合自体が自粛すべきであるということは私ども考えておるが、そうかと言つてこうういストライキを禁止してしまうということは、これは憲法第二十八条の立場考え憲法第十二条を考えても、これは明らかに争議権の剥奪であると言うても差支えないじやないか。  労働大臣のいわれるように若しこの濫用が甚しくなつて国民生活に重大な脅威を与え、日本の国家経済に重大なる危殆を与えるというような場合ができまするならば、これは労働大臣みずからが作られました緊急調整というもので明らかに公益事業においても善処し得る機関を持つておる。それにもかかわらず。なお屋上屋を架してこのような法律を提出しなければならないということが、我々の承認し得ざるところであると考えるのでありまして、この点をお伺いいたしたいと考えるのであります。
  220. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 電気は非常に一部の行動が広汎に亘るものでございまして、而も、まあこれからは違いますでございましようが、今まではこの川に流れに沿つて電気を発生さしておるのであります。従つてさもなくばこの重要なるエネルギー源として日本の産業の基幹となり、国民生活を潤おし非常な原動力となつておるもの、これをとめなければ争議が解決せんというふうな非常な問題として考えずに、ストライキを他の方法において行なつて頂くということによつて日本の産業に寄与し、国民生活の安定に貢献するという方法が他にお考え願えるのじやないか、そういう気持であるのでございます。労調法の三十五条の二は、これは従来ともそういうことは争議行為として当然だと言われる産業におきましても、余りにその影響が大きいという場合には、五十日間その争議をストツプしてもらう、ストツプして、あとにおいては又続ける場合も可能である、こういう考え方で、こちらはこのことだけは一つ御遠慮願いたいということを明確にしようという趣旨であるわけでございます。
  221. 上條愛一

    ○上條愛一君 これは先ほど藤田委員からも申上げたように、単に職場を放棄しただけで電気産業に従事するものが違法だということは、裁判所においても認められておらないという点は、やはり憲法に規定されておりまする労働者の権利というものはこれは十分に尊重しなければならん、この権利が公共の福祉に害を与えない程度において行われるものに対してまでもこれを禁止するということは、これは憲法を尊重するという意味から妥当でないと、こういう恐らく見地に立つて、単なるこの小規模の停電ストのごときは違法でないという認定を下しておるのであろうと私は考えるのであります。そこで現在裁判の判決においてもそういう実情にある今日において、若し労働大臣の心配されるような公共の福祉に重大な影響を及ぼすようなものは、緊急調整その他の方法において善処し得る途があるのにかかわらず、本法のごとき法律を出して、そうして出して、そうして労働者の基本的権利に制限を加えるというような必要がどうしてもあるかどうかという問題をお尋ねしておるわけであります。
  222. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 電気の場合、そのストの範囲においてここまでのストはいいが、ここまではという、同じ性質の電源ストをやる場合においてその範囲によつて区別するということは実際問題として困難じやなかろうかと存じます。そこでやはりそのものの性質によつて区別をするという以外に方法はないのではないかと考えております。なお緊急調整のお話でございまするが、緊急調整は御承知ように、この結果が国民経済乃至国民生活に重大なる影響を与えるという結果が出たときに考えらるべきものなのでございまして、そうした結果が出ますまでには相当に非常に大きな損害があるのであります。そこで私どもとしましては、併しそうした争議政府が介入をいたしますにはよほど慎重にしなければいかん、そこで現実にそういうもうこれ以上は我慢できんというくらい国民が湧き立つて、そのときに初めて緊急調整を出すべものと心得ております。そこでそういうふうにいたしますれば、電力の場合には、現在のような状況におきまして、非常に財源の足りないときに貴重な電力が水となつて流れ去つて、而も漸くこれは五十日とめてくれ、こういうようなことになるわけなんであります。併しそうしたことよりも、今申上げましたように電気の特殊性から申しまして、これはこの争議行為方法としてもご遠慮願うというほうが妥当ではないか、こう考えておる次第でございます。
  223. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は公益事業においては公共の福祉に関係があるから、この労働争議というものは経営者も責任を持たなければならないと、こう考えるのであります。そこで私の次にお尋ねしたい問題は、労働者ストライキをやる、それが公益産業においては強く公共の福祉に影響を及ぼすという、そういう影響を及ぼすようなごの産業においては、経営者も十分に労働者の権利を尊重し、労働条件を考慮して、無理のないようにやはり労働者に対する責任はとらなければならんということになるのではないか。そこで公益産業というものは、公共の福祉に重大な関係があるという問題がやはり労使関係を公正に規制するということになるのではないか。電気産業の諸君がストライキをやつた、そうしてこれが公共の福祉に害を与えたという点が、これは労働者だけの責任である、こういうふうに世間も考えておるのでありますが、これはそうではない。公益の産業に従事しているものがストライキをやつた、それは公共の福祉に重大な関係があるからこそ経営者も十分にこれはその責任を考えて善処しなければならない、こういうことになるのでありまして、これは労働者だけの責任でなしに、経営者も十分に責任があると我々は考えるのであつて、これがやはり労使関係を公正に規制する途であると考えるのでありまするが、この点は労働大臣はどう考えておられるか。
  224. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府といたしまして責任論をいろいろ言うことは避けたいと思うのでありまするが、御趣旨の通り公益事業に従事する経営者と申しますか、そうした人々は非常に事業自体の公益性というものをよく認識いたしまして、自分自身特に社会に必要な仕事に携わつているという認識に徹しまして、そこに働く従業員の各位の協力を得るように常々心を砕かなければならんものであるという考えは持つております。
  225. 上條愛一

    ○上條愛一君 私のお尋ねいたしたい点は、若し公益事業に従業する労働者に対してストライキ権を制限するというようなことになれば、これは公益事業とはいいながら、電気産業のごときはこれは営利主義の資本主義によつて経営されておるものである。そういう営利主義に則つておる電気産業経営者というものは、労働組合が補助的のものはストライキをする権利を認めておられるが、その主体性のものはストライスをやる権利を奪われておるということになりますれば、これは公正なる労使の調整ができ得るかどうかという問題が重大な問題だと考える。ここにやはり労働階級がこの法案に反対するところの理由が存在していると考える。そこで労働大臣は単に公共の福祉ということのみを考えまするなら、これはおつしやるようであろうと思いますが、労働大臣としては労使の公正なる調整というものが重要な意味をなすと考える。そういう場合において、電気産業のような事業において、労働者に対してストライキの制階を大巾に加えておくことになりますれば、果して労働条件の決定の場合に、対等の地位でこれはし得られないじやないかという点が重要なポイントである。これを労働大臣はどういうふうにして公正な、労働大臣希望されるようなふうに理想的な調整、経営者が調整をやれば別問題だが、やらない場合にどうするか。労働大臣としてどういう方策を以て労使の公正なる調整を図つて行くかということをお尋ねしたい。
  226. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この電気事業の場合に、ストの方法として電気を切るぞということを言われても、実は経営者のほうは余りぴんと来ないのが実情のようでございまして、ということは電気事業経営者自身としましては、停電による損失というのは余り受けないのでございますね。これは通産行政のほうの問題でございますけれども、これを奇貨といたしまして、と言うと語弊があるかも知れませんが、それほどに感じない。むしろ非常に損失を受けるのは第三者たる国民それ自身である。そこでこの電源ストができないからと言つて資本家と言いますか、経営者側が非常に有利な態勢になるとは私どもは考えていないのでございます。この法律によつて労資のバランスが破れるということは考えていないわけでございます。言うまでなく電気事業というものは非常に公益性の強いものでございますので、公共事業令の監督がございます。併し最近におきましては九分割をせられまして、非常に株式会社としての運営というか、自主的な立場というものを強く主張する様子でございます。私どもといたしましては余り経営者が独占的な、地域的な独占事業でございまするし、それについて勝手なことを言うようでございましたら、やはり私は公共事業令というのがございますし、政府において十分勧告を与えたり、場合によりましてはそれに対して適当な措置まで考えるべきものではないか、こう考えておる次第でございます。
  227. 上條愛一

    ○上條愛一君 今労働大臣答弁で非常な重要なポイントがあると思います。それは経営者に対して電気のストは経済的の損失を与えないから痛苦がないじやないかというお話であります。これは重要な点でありまして、電気のストというものは国民生活に重大な影響を及ぼすということは、これは十分に経営者考えなければならない。それが公益事業を経営している経営者根本的態度でなければならん、自分に何らの経済的の損害を加えられないからストはやつても構わない、こういう態度であるから、労働者がこれは公共の福祉に影響するようなストを継続しなければならないという根本原因がそこにあると我々は考えておる。そこで政府はこの電気産業のストが経営者に苦痛を与えずして、一般国民に苦痛を与えるのであるからして、ストなどはやつても何にもならんのではないかというお考えは非常な間違つた考えであつて経営者は当然ストライキによつて国民に重大な公共の福祉を阻害するようなことをするならば、これは十分に自分みずからも自分経済の損失以上にこれは責任を痛感して善処をするというのが当然ではないかと考えるのでありますが、この見解をお尋ねしたい。
  228. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私が仮にそういう経営者でございましたら、おつしやる通り考えます。併し私は現実をむしろ重んずるのでございまして、どうもそういうような傾きがあるので、この電源ストというものは実際迷惑するのは国民各位で、お互いで、当事者は従業員のほうもスト中の賃金は適当にあつちこつちから割振つてちつとも減らない、超勤などで以てうまくやる、経営者のほうも不心得の者は今のような考えでいる。そういうことでありますれば、いわゆる要求貫徹の手段としてそれほどの威力がない、むしろ私は検針ストなどのほうが大きいのじやないか、経営者に対する威力は……。こんなことを言うと如何かと思いますけれども、威力としては大きいかとすら思つておるのでございます。私は全般の考え方といたしまして、どうかこのストライキ至上主義というふうなことだけは一つ考え直しを願いたいと思つている。これは政府自身の政策が悪いのだからストが横行するのだというような御意見が一方にあろうと思いますが、併し政府としてはできるだけのことはいたすつもりでありますが、諸外国に比して経済的な条件の脆弱な我が国におきまして特にストが多いようでございますので、とにかくスト権を金科玉条と考えないで、やはり話合いなり、社会的な良識に訴えて、経営者も良識に訴え、そうして交渉せられることによつて生活権の確保というものはできると、私はこう思うのでございます。
  229. 上條愛一

    ○上條愛一君 労働大臣お話を承わつているというと、ストをやるということは労働者に主たる責任があるようなふうに言われるのでありますが、これはそうでないのは御承知の通りである。従つて経営者も従来の態度を改めなければ、これは労働者が好むと好まざるとにかかわらず、自分に与えられたる正当の権利を行使して経営者に対抗しなければならないということはこれは当然である。従つて我々労働階級といたしまして、別にストを好んでこれをやるというのではないのであります。これは経営者の態度、経営者の自覚の程度に応じてやはり我々の与えられたる権利を行使しなければならないというのが、これは労働大臣のおつしやる現実ではないかというふうに我々は考えておる。  そこでもう一つ次にお尋ねいたしたいのは、一体労働大臣電気産業のごときは公共の福祉に重大なる関連があるから制限を加える、こう言うのでありますが、昨日来のお話では併し他産業には範囲拡大しないということをおつしやつておりますが、これは一昨日も私が労働大臣に御質問いたしたのでありますが、妥当なる御返事がなかつたけれども、私は関連質問でありましたのでやめましたけれども、若し労働大臣のおつしやるような、政府のおつしやるような、この法案は公共の福祉に重大なる関連があるから、この制限を加えるということであれば、他の公益事業というものも同様なる状態に置かれておる。ただ昨年の秋のストライキのようなストライキが他の産業にはなかつたからこそ、これは制限を加えないということであつて、若し同様なる事態が起れば、これは政府立法の精神から申しますれば、当然これは制限が加えられる、こう労働階級が一様にこれは痛感して考えておるということは無理のない点であると考えます。そこで労働大臣は他の産業に及ぼさないと言うのならば、どういう理由で及ぼさないかということを明確にして、労働階級が納得のでき得るようなことでなければ、これが今日直接この法案に関連のある健実なる労働組合も挙つて法律案に反対するというゆえんのものは、このようなこの立法の精神で出されたところのこの法律というものは、これにてとどまらないのだ、これは一つの現れであつて吉田内閣の労働政策のごときはこれは経営者に対する制限ということは考えずして、労働組合のみの犠牲において日本の今日の経済状態を押し切つて行こうとする考え方の現れである、こういふうなこれは正直に申上げてこの法案に対する全国の労働組合の考え方であると私は考えておる。そこで労働大臣自分拡大しない、こう言うけれども、そういうような事態になれば、これは当然この立法の精神から言えば拡大して来るのではないか、こう考えられておるのであるが、この点に対して今少しく親切に、こういう考えであるから、こういう理由で必要がないのだ、こういうふうに若し明確な御答弁が願えるならば願いたいと思うのであります。
  230. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほどの私の答弁が、労働者諸君がストの原因であるような印象を与えましたならば、これは私の言葉が足りませんので訂正させて頂きます。勿論経済的な要求をめぐつて争議でありまするから、相互においての主張の不一致ということからそうなつて参るのでありますが、その際の方法といたしまして、できるだけそういうような方法を避けることが望ましい、こういう趣旨でございます。現に我が国におきまして年間一千件を超える争議調整が中労委において行なわれておるような状態でございます。なお後段の御質問の他産業にも及ぼさない点でありますが、私はこの席では労働大臣でございますが、私といたしましては他産業に及ぼす意思は持つておりません。なおその理論的根拠とおつしやいましたのでありますが、例えば私鉄におきましても争議が行われるわけでありますが、その際に国民の生活に直接影響するような生鮮魚介の輸送というようなものに対しては、これは除外してやつて頂きたいと思うのであります。そうした良識を以てやつて頂いておりますから、そういうものに対しましては、何ら私はそれに対してとかくのことを考える必要はないと、こういうふうに思つておるのであります。拡大しないという方針でございます。
  231. 上條愛一

    ○上條愛一君 今の労働大臣答弁では、労働階級は了解はしないと私は思います。と申しますのは、私鉄においても、或いは水道、ガスにおいても、これは今後の経営状態、或いは経営者の態度によりましては、これは長期のストライキが起り得ないとは誰も保証できないのでありまして、これはいずれ仮定の問題だと労働大臣はおつしやると思いますが、これは仮定にいたしましても、現実性のある仮定でありますから、依然として労働階級は労働大臣が如何に声明をいたしましても、これは声明通りに労働階級は受取り得ないと私は考えます。  次に私のお伺いしたいのは、労使が対等の地位で交渉しろということは、労働組合法第一条にあり、労調法の第二条に規定されておる通りであります。御承知の通り対等の地位ということになれば、これはストライキ権というものが、使うと使わざるとにかかわらず、労働組合にあつて初めて対等の地位に立つことができると考えるものでありまして、これは労働大臣も御承知の通り電気産業におきましては、このうちの大部分の有効なる争議戦術というものが第二条の規定によつて失われてしまうわけであります。従つてその第二条によつて禁止せられるところのこの労働組合の不利なる立場に対しましては、当然救済規定というごときものをお考えになって、労働大臣ともあろうものはこの立法を立案すべきであつたと私は考えるのであります。この点に対するお考えを承わりたいと思います。
  232. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもは労働省全体といたしまして、この法案を出すごとによりまして、労働者側が非常に不利になるというふうには考えません。労使の均衡は破れないと、こういう考えでおるのでありますが、只今の御質問の趣旨は、恐らく強制仲裁というような制度でも設けたらどうかという、こういうようなお含みではないかと存じますが、私どもは成るべく労使間の交渉というものは相互の納得と理解がなければ、これは妥結しないというふうに考えております。一方的に上から一刀両断に仲裁ということに行きまする場合に、一体どういう結果を生ずるか、やはり電気産業等の場合におきましては、これは自分が納得せざる電力料金を押しつけられて、更に値上げをしなければどうかこうとかということもありますが、労働組合側におきましても、もう一回争議をやらなければならないということになれば、やはり争議の最終的な解決というものはそこから出て来ない。やはりできるだけお互いが納得するような話合いを最後にするという考え方が一番よろしいのではないか。その場合中労委という機関もございます、その場合中労委においても今まで努力願つておりましたが、更に中労委というものを強化して、納得を得るというようなことを一層深からしめるように留意いたしたいと考えております。
  233. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は決して労働争議が起きた場合における労働大臣のお考えを聞いておるのではないのです。このような労使対等の立場から言えば、労働者側が労働大臣は不利でないとおつつしやるけれども、このような法律案が実施されることになりますれば、これは当然労働者側が不利になることは明瞭であると思うのです。そこで私のお尋ねしたいのは、労働争議のときばかりでなく、平素において一体今日の電産経営者は営利主義の立場に立つて経営が行われておるのであります。今度の争議に当りましても、若し経営者側が経営内容を労働者側に十分に納得し得るような説明がいたされますならば、これは或いは争議が長引かなかつたと我々は信ずるのであります。然るに電産の諸君が長期のストをやつて対抗したというゆえんのものは、今日の電産の経営者に対して十分なる信頼がないということが一つの原困るであと我々は考えておるのであります。従つてこのような経営が継続せられて、而も本法の第二条によつて処罰規定が強化されることになりますれば、これは電産産業における労使の公正なる調整が行えないのじやないか。そこで我々が労働大臣にお伺いしたいことは、労働争議の起つた場合のとこのみならず、平素において労働者側がこの経営に対して十分なる、別の言葉で申しますれば、経営参加のような途を開くようなお考えをいたして、このような法律を出すべきではないか。ドイツにおける経営統制法のような理想的なものでないにいたしましても、この公益事業でありますようなこの電産その他の産業においては、平素から労働者がやはり経営に十分自分たちの意見も反映することができ、又経営状態というものを十分に労働階級が知つて、信頼を持つてこの産業に従事するという途を開くということが根本的の途ではないか、そういうことを何ら労働大臣として考えずして、何か弊害が起るというと、その弊害を取除くためにいろいろな立法を作る、或いは禁止条項を殖やす、こういうような態度で行くということでは、いつまでたつても今日の労使関係というものは公正を期し得られないのではないか。従つて労働大臣が、若し今日の労働階級が労使対等の地位に立つて労働条件の交渉をしろというこの労働立法の精神を尊重するならば、この際にこのような法律を出すと同時に、そういう対策を立てて一方に行くべきではないかと、こう考えるのでありますが、この点に対する労働大臣の見解を伺いたい。
  234. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そのようなものを要求するのではないとおつしやいましたのでありますがドイツにおきまする、西ドイツの場合の共同決定法というようなものも非常に長い歴史を辿つてあそこまで行つておるようでございますし、共同決定法それ自身、鉄鋼の場合ややその緒についた程度であつて、その運営は今後の状況を見ないと如何とも判断し得ないような状況のようでございます。私どもといたしましても只今お話のような、やはり労働者諸君の納得を得るような、そうした考え方を経営者自身が持たなければいかんということについては全く同感なんでございます。そこで経営者につきましては、そういうことをやつておる人もありますし、そういうことが非常にうまく行つておる場所もあるようでございます。ただ電気事業につきまして、私どもそれを頭から強制するというふうな立場にございませんですが、そういうような考え方というものは、私は今後においてできるだけ滲透させて行きたいという気持を持つてあります。今後において争議というようなものをできるだけ少く持つて行きたいということは、私も希望いたしておりまする以上は、そういう行動に訴えないでも、労使双方の間に和解と信頼の気持が流れるというような態勢を作るように努力すべき責任がある、私はそう思つております。
  235. 藤田進

    藤田進君 只今の点に関連いたしまして二、三質したいと思います。  労働省労政局長は、昭和二十八年六月十九日、同じく七月二十七日、それぞれ労働大臣の命を受けて、日本電気産業労働組合中央執行委員長神山清喜殿、これに対しましての今度労働協約でストライキをやるという予告が来たがこれは公共の福祉との調和を図ることの緊要性に鑑み鑑み社会通念上到底許されざるものである云々ということで忠告、忠告というよりも警告を与えておる。更に七月の二十七日の日本電気産業労働組合の九州地方本部執行委員長松村五郎殿という文書を以ちまして、同趣旨の注意を喚起するという、違法であるので許されない、社会通念上……。こういう文書を否定されれば私は別ですが、肯定されるかどうか、若し肯定されるとするならば、今の御趣旨と多くかけ離れているのではないか。一方労働者側その団体に対しては、九州地方本部の場合は生活危機突破資金、越盆資金というこの問題を引提げて交渉しているが、なかなか頑強なる会社の不誠意な態度によつて進展しない。こういう矢先、お前たちのやつているものは社会通念上罷りならんという、一国の労働大臣、労政局長として中立公平の立場にあるべきにもかかわらず、一方の側のみにこのような文書を出して、更に新聞発表をこういうプリントでやつておる。これに対して今の論議が本当に心からなされているならば、当然この文書と同時に経営者側に対しても何らかの通牒なり、注意が喚起されていて然るべきだと思う。この点についてどういう心境でおいでになるか、今の御答弁と大きく食違つておりまするので、この点を指摘して御答弁を求めたいと思います。
  236. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は今の心境については飽くまでもこれを実現するように努力するという気持であります。今お示しの通牒につきましては、私も賛成いたしまして、労政局長名で出したものでございます。それは停電スト、電源ストというようなものは、ここに議題にもなつておりますけれども、これは遠慮してもらいたいのだ、その他のストについては何も言つておりません。そういう趣旨であります。
  237. 藤田進

    藤田進君 然らばお尋ねいたしますが、この文書を出し、新聞発表をされております。この事実は事実として肯定されるか、どうか。  それからもう一つは、これと同時に会社に対しては如何なる手を打つておいでになるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  238. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 新聞発表はその通りであります。先般来二回ほど出したことがあるのでありますが、当時新聞発表をいたしませんでしたが、そういう問題は新聞発表しなければ困るというお申入もございましたので、かようにいたしたわけでございます。  なお会社に対してというお話でありますが、私もいかんものはいかんと言つただけでありまして、他にどうしろというようなことを積極的にこちらからとりますることは権能外と思いますので、他の方法で以て今申上げたような趣旨を了解せしめるようにしたい、こう思つておるのであります。
  239. 藤田進

    藤田進君 いかんというものをいかんと言つたといつて、今各省の意見さえ食違つている状態です。独断も甚しいので、一方の会社に対しては何らの手も打つていないで、ただいかんというものをいかんというので出したのだということは明らかに団体交渉に対して一方の側には力を与え、一方の側はカを殺ぐという結果以外の何ものでもない。こういう迂濶なものを白昼公然と出して、今の御答弁とは全く違つたことがなされているということは誠に遺憾であると思います。同時にこのことは目下国会においても審議され、更に過般来触れておりまするように、地方裁判所、高等裁判所においてはそれぞれ無罪になつているという、こういうケースに対してこのような軽卒な処理をなされることに対しましては、どうしても了解がつきませんので、経営者側に対するこの問題の合理的な解決ということについてもつと思いをいたすつもりが今後あるのかないのか、この点も確かめておきたいと思います。
  240. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 両者の要求を妥当なところでまとめるようにということについては思いをいたしております。ただそれを具体的にどうするこうするということについては申上げる筋でないと思います。
  241. 上條愛一

    ○上條愛一君 労働大臣は労使の関係について公正な態度を以て臨みたい、こういう只今御意見を承わつたのでありますが、私は今度は政府の態度に対して一、二お伺いしたいと思います。それは政府は日本の労使関係の公正なる調整の基本的の対策一つとして、労働統計調査についてどのようなお考  えを持つているか。
  242. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非常に私がその点は重大視しておるのでございまして、やはり統計調査というものが非常に精密に行われて、物事の判断の基礎を客観的に妥当なる点を見出す資料というものは十分に整えられることが必要だと存じまして、私は就任以来このことを事務当局に要請しており、事務当局のほうにおきましても非常にその点力を入れて、最近活動が活発化して参りました。
  243. 上條愛一

    ○上條愛一君 この問題につきましては、先般の行政機構の改革の際においても、吉田内閣は労働統計調査局を課に直そうという意見でありまして、我々はこれに反対をいたしました。そのときに私どもの要望したことは、吉田内閣は労働統計というようなものを軽視しておる、このような問題が完全に準備されなければ、労使の関係の公正を期するといいましても、十分に具体的の資料を以てこの調整に当るのでなければ無意味であるというので、我々はこれを部にとどめておくということに努力をいたしました。今日の労働省の労働統計調査部というものは労働大臣考えて十分に充実したものであるかどうか、充実したものでないとするならば、これを充実するところの方策を持つておられるかどうかということをお尋ねいたします。
  244. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非常に有難い御示唆を頂いて感謝いたします。私もあれは現段階においてはまだまだ不満であると思います。是非充実さしたいと思います。やはり仲労委裁定というような場合にも基礎的な数字というものは、仲労委は労働省の直接機関じやございませんけれども、やはり労働省の持つ機構によりまして集めた資料というものを正確に持つているということが非常に必要だと考えますので、まだまだ私は足りんと心得ておる。ただこれを部を局にするというお考えは非常に私としてはそう願いしたいのでありまするが、何か自分の繩張りばかり希望するようで恐縮でございますから、国会においてそういうふうにして頂ければ非常に賛成するところであります。
  245. 上條愛一

    ○上條愛一君 こういう重要な問題については遠慮なさる必要はないと思うのでありまして、日本の労働対策をやる上から必要だとあれば、労働大臣は十分この方面に努力すべきであると思います。これがなぜそういうことを私が申上げるかと申しますれば、今回の炭労のストに当りましても、仲労委はこの調停に当つておりまするが、仲労委の調停というものは今日までスタツフが充実しておらん関係だと思いまするが、労働争議の調停に当る態度を見まするに、委員のかたは連日連夜非常な苦心をされてその調停に当つておるのは私ども敬意を払うのでありまするが、今日十分なる機構を持つておらない結果、労働争議の調停は労働組合側の主張と経営者側の主張とを二つに割つて、その中間を以てその調停案とするというのが労働大臣の御承知の通り、今日の現実であると我々は考えておる。従つて経営者側の経理の内容を調査して、そして経理の内容から割出して、この賃金問題はどう処理すべきかという確信を以て調停に当るということが不可能だと考えておる。このような状態に労働大臣が重要な唯一の労働委員会というものを放置しておいて、そしてこのような法案ばかり出すことに全力を注いでおるというようなことでは、日本の堅実な労働政策は実施できないと我々は考えておる。従つて中央労働委員会もそうでありますが、地方労働委員会においても今少しく機構を充実して、労働争議のような場合には、権威を持つて労使双方に対して事実を以て、数字を以てこれが政府の調停案は妥当なる調停案であるということを十分に納得し得るような材料と統計を持つてやらない限りにおいては、今日のような労使の関係の調整は不可能である、公正なる調整は不可能であると考えまするが、中央労働委員会等に対する労働大臣のお考えを承わりたいと考えます。
  246. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は最近これは人から聞いた話でございまするが、イギリスの繊維業者が四%だつたと思いますが、値上げの要求を出した。ところが賃金委員会において、これは到底現状からして望ましくないのだということを言いましたところが、その要求を引つ込めたという話を聞きました。これは四%であつたか、六%であつたかは私もはつきりいたしませんが、とにかくそうした非常に権威のある賃金委員会というものがあるということが、やはり私は非常にイギリスの偉いところだというように思つたのであります。私はその中央労働委員会の機構なり、地方労働委員会の機構なり、機構それ自体について私はこれを充実するというようなこともさることながら、やはりその基礎となるべき統計数字の明確なる把握ということのほうが大事であると考えております。その意味でこの全般の労働経済に関する統計資料については精密に集めさして、それを各労働委員会の事務局において十分整理して、これを駆使し得るような状態を作りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  247. 上條愛一

    ○上條愛一君 もう一点だけ。労働大臣は先般国へ帰る汽車中の談といたしまして、自分は将来労働問題懇談会というようなものを作つて、労使関係の調整のために努力いたしたいという新聞発表をされておつたようでありまするが、これに対して具体的の案がおありになるか、又将来どうしようというふうにお考えになりますか、承わりたい。
  248. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労働問題協議会というものは、私只今御指摘のような場所で提案をいたしました。大体政府が作る委員会というものは二、三回寄つては何かごちやごちやしますが、そのうちにあるかなきかになつてしまうのが多い。これじやいけないのじやないかと考えております。ということはなぜかというと、やはり政府が余り深入りしてそういう問題をやるのがいけないので、むしろこの民間から盛上るような問題としてこれを捉えなければいかん。こう思いましたので、先般有識者と一般に認識されるかたがた八名ばかりに寄つて頂いてこの話をいたしました。いずれも非常に御賛成を得ましたのでございますが、大体三十名程度で労使双方並びに一般有識者からお出かけを願つて、役所というものはむしろ一歩退いて資料をここに提供して自由に論議して頂く、こういうふうにしたら如何かとこう思つておるのでございます。ただこの今問題のこの法案がございまするので、組合側の幹部のかたにも非公式にお話をいたしましたところが、非常に趣旨はいいのだけれども、今この法案を審議しておる最中に出入りすることも如何と思うというようなお話でございました。この法案がいずれにしましてもけりがつきましたらば、その後におきまして、労働問題協議会というものの発足を考えたい、こう思つておる次第でございます。
  249. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 七時まで暫時休憩いたします。    午後五時三十六分休憩    —————・—————    午後十一時五十八分開会
  250. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十一時五十九分散会