○田畑金光君 ちよつと関連して
お尋ねしておきたいと思うのでありまするが、
先ほど齋藤次官の
答弁に関連いたしまして、この
スト規制法案というものは当初から
労働省の
事務当局において立案された案であ
つて、
事務当局としては参議院の
労働委員会の専門
委員等から出された
資料等は全然関知をしていない、こういうような
趣旨の
答弁がなされたわけであります。火のないところに煙は立たないのであ
つて、当時の新聞紙の伝えるところ等が何ら無根であるということは、我々今日の新聞に関する常識からしても妥当でないと
考えているわけであります。時の官僚というものは常に残念ながら権力者の走狗に過ぎないのであ
つて、みずから
意図するところが如何にかかわらず、常に権力の支配と指導に服するのが、これは如何なる国の官僚においても共通な現象であります。従いまして私は
先ほどの
齋藤次官の
答弁というものは官僚の性格を如実に物語
つたものとしか見受けられないのであります。この
資料にもありまするが、二月の五日には
労働省の福田、寺本両次官、自由党の政調会並びに与党の労働
委員、参議院の緑風会、民主グラブ各代表が折衝して、この
法案についての検討を万えているわけであります。試みに二月六日の朝日新聞でありまするが、この「記者席」の
記事を拾
つて見ますとこういうことが書いてあるのであります。「
公共事業に対する
スト制限立法で、五日
労働省寺本次官らが自由党と話合
つた。何分、首相が
施政方針演説で公言した以上、大幅
スト制限をやれ、というのが与党の意向。
労働省側は小幅制限論で対立。
事務当局は、昨年の「労闘
スト」で手を焼いて消極的にな
つている節もあるが、寺本次官が「ステップ・バイ・ステップ」とい
つているところをみると、次の
国会あたりでもう一段の制限を加えたいようでもある。」、こういうようなことが載
つておるわけであります。試みに然らば首相の
演説というものはどういう
内容であ
つたかと拾
つてみますると、本年の一月三十日
吉田首相は第十六
国会明けの開会に当り、
施政方針演説をや
つておりまするが、その
内容の中にこういうことが書かれておるのであります。「昨冬行われた電産、
炭労の両
ストは、我が国において空前のものであ
つたばかりでなく、外国においても多くその例を見ない長期大規模のものであり、幸いにして潰滅前一歩にこれを収拾し得たのでありますが、而も、その一般
国民生活に与えた脅威と損害とは実に甚大なものがあります。
政府は、今回、この種
ストの
影響を少くするために、
公共的性質を有する産業の
争議に対し適当の制扼を加えることを
考え、今
国会中に提案する所存であります。」恐らくこの首相の
演説が与党諸君を拘束して、更に
労働省の官僚に指令をしてこの
法案を立案にな
つたと、かように
考えるわけであります。専制君主国家においては、君主の意思というものが絶対であるということは、これは歴史的に明らかにされておるわけであります。
吉田首相を専制君主などとは申したくもありませんし、さようなことは申しませんが、少くとも
吉田ワンマンであり、首相の一言によ
つて、
サービス省であるべき
労働省もその本質を失
つておるというのが今日の実態であります。こういうことを
考えて参りましたときに、
吉田首相のこの
演説のこの文句が立法の根源にな
つておると、私はかように
考えざるを得ないのであります。一体
労働省というものは
サービス省であると申しておりまするが、私はこういう
言葉を今日の
労働省が使うということはちよつと不似合であり、おこがましいと
考えております。
先ほど来
吉田君から、
吉田首相じやありません。(笑声)
吉田君が、一体今回のこの
ストを契機として
スト規制法案というものが提案されたのであるが、これは
労働者側のみの
責任を追及しておりやせんかと、こういうようなことが中心とな
つて今まで論議が交わされたわけであります。これに対しまして
労働大臣は、
昭和二十二年の最高裁判所における判例を引用いたしまして
説明をなされておりまするが、その
言葉そのままを
労働大臣はよく噛みしめてや
つて頂きたい、こういうことを申上げざるを得ないのであります。と申しますのは、今回の
スト規制法案というのは、御承知のごとく
労働者の
争議権を或る意味においては禁止、大幅に制限しておるということであります。
労働者の団体行動権の基本的な権利としての
争議権、これが十分に保障されて初めて
労使対等の原則が確立され、
労働者の
立場も
地位も保障されておるわけであります。然るに
労働者の権利のみを一方的に制限しておる。憲法によ
つて保障された
労働者の権利というものが大幅に制限されておる、禁じられようとしておる。それでなお且つ一方的でないとあなたは
考えておるのか。御承知のように
争議というものは
労使関係の主張の不一致、これから来ておることは明らかであります。而も昨年末の
争議の経過を振り返
つてみた場合に、
経営者側の、
使用者側の
責任というものは、
使用者側の
態度というものは全然この
法案の中には
考慮されていない。出し得ないのであ
つたか、出す余裕がなかたのか、こう申しますならば、明らかにこれは
電気事業においても
石炭事業においても十分に余裕はあ
つたし、高率配当もや
つておる、儲けておるけれ
ども、それは出したくない。若しこういうような私企業において
労働者の
争議権というものを制限するならば、結果においては
政府みずからがこの
法律を通じ
使用者側の利潤を、儲けを更に保障してやるに過ぎない結果にな
つておる。こういう理窟が賢明と言われておる小坂
労働大臣にわからんはずはない。一体小坂
労働大臣は、
先ほど来の
答弁を聞いておりまするが、あなたは自分の良心に恥じないかと、私はこう尋ねたいのであります。それでもなお且つ
使用者側の
責任をあなたは
考えていないのか、これで
労使の均衡というものが図られるのか、これを私はあなたにもう一遍聞きたいのであります。
吉田首相の意思のみが大事なのであるか、或いはその背後にある
日経連或いは
石炭産業或いは電気
経営者の利益を図るのが
労働省の
サービス省としての役割であるか、それとも本当に労働法に保障されておる
労使対等の原則を立法の上においても行政の上においても保障することによ
つて労働者の
地位を向上させることが
サービス省としての
労働省の役割であるか、小坂
労働大臣の御
意見を、もう一度御
答弁を要求すると共に、
齋藤事務次官は果して、
先ほどの
答弁をまあ繰返すでありましようが、(笑声)
立場上止むを得ないと思いますけれ
ども、もう少しあなた方も強く
一つ主張するところは主張し、権力に媚びず、時代の風潮に押されずや
つて行くことが必要であるということだけを申上げておきたいと思います。