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1953-07-23 第16回国会 参議院 労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十八年七月二十三日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            伊能 芳雄君            田中 啓一君            宮澤 喜一君            吉野 信次君            梶原 茂嘉君            阿具根 登君            吉田 法晴君            上條 愛一君            堀  眞琴君            市川 房枝君   委員外議員    藤田  進君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  實君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   公述人    電気事業連合会    事務局長    平井寛一郎君    電気産業労働組    合中央執行委員    長       神山 清喜君    旭化工株式会社    社長      三段崎俊吾君    全日通労働組合    中央執行委員    長       白土 松壽君    石炭鉱業連盟専    務理事     早川  勝君    日本炭鉱労働組    合中央執行委員    長       阿部 竹松君    東京電力株式会    社常務取締役  堀越 禎三君    東京電力労働組    合本部執行委    員長      前川 一男君    日産自動車株式    会社顧問    箕浦 多一君    日本鉱山労働組    合書記長    重枝 琢己君    私鉄経営者協会    理事      別所安次郎君    日本私鉄労働組    合総連合会本部    副執行委員長  参谷 新一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○電気事業及び石炭鉱業における争議  行為方法規制に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労勧委員会を開会いたします。  本日の委員会は、電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案につきまして、公聴会を催すことといたします。公述人皆様方一言御挨拶を申上げます。本法律案の審査に当りまして、公述人として当委員会において御意見を頂くようにお願いを申上げましたところ、多忙のところを曲げて御来会頂きましたことにつきまして、厚く御礼を申上げる次第であります。公述人かたがたの御発言は全く自由でございます。一人発言の時間は大体二十分を目標にしてお進めを頂きたいと存じます。あらかじめ問題点等につきましては御案内を申上げておりまするが、それは決して御発言内容を拘束するものではないのでございまして、飽くまでも公述人かたがた自主性の下に、自由に御発言を頂きたいと存じます。  それでは最初に、電気事業連合会事務局長平井寛一郎君の御意見を伺います。平井寛一郎君。
  3. 平井寛一郎

    公述人平井寛一郎君) 私は電気事業経営に携つておりまする立場から申上げますると、この法律案は現段階におきましては、まさに適切妥当なものであると考えておる次第でございます。以下電気事業の面に関しまして、私どもが適切妥当と考えます理由について申述べたいと思います。  電産の争議につきましては、終戦後七年間に亘りまして、その都度社会一般に多大の御迷惑をかげながら、あたかも年中行事のように実は繰返されて参つているのでありまするが、とにかく日時たちまするということは、人の記憶を鈍らすものなんでありますけれども、併し特に電源スト停電ストによつて第三者でありまするところの社会一般日常生活を非常に乱され、或いは又生産関係に甚大な支障を及ぼしておるということは、なお深刻に私は御記憶のことと存ずるのであります。本来争議行為のありまする場合には、その当事者であるものが、先ずお互いに争議行為によるいろいろな重大な打撃を受け、又損害をこうむるというのが普通一般の姿なのでありまするが、電産争議の中で、特にいろいろそういう手段はあるのでありますが、電源スト停電ストというような、こういう争議行為は、少数箇所、少数人員争議行為だけでもつて、直ちに電気の正常な供給を停止させ、その他電気の正常な供給に直接障害を与えるようなことがありまして、そのため交通関係の運行を停止したより、或いは工場生産に少からぬ障害を加えたり、或いは一般公衆日常生活に対しまして非常な苦痛を与えるということの結果になるのであります。そうした結果、争議当事者でありまする会社組合のこうむる損害に比べまして、遥かに甚大な迷惑損害をば社会一般に及ぼすというふうな、そういう結果、形になつておるのであります。電気事業におきまする争議行為の態様は、この事業の持つ特殊性からいたしまして、多種多様にあるのでありまして、組合におきましても直接この経営者に対する幾多有効な争議行為が或いはほかにもいろいろ行われておるのでありますけれども、特に今申上げました電源スト停電ストというような争議行為は極めてしばしば容易に用いられて参つておるのであります。これがため第三者でありまするところの国民一般はいや応なしに電産争議に捲き込まれてしまつて、防ぎようもない御迷惑をおかけ申上げておるという状態なのであります。こういうふうな実情に基きまして、特に昨年の秋の争議以来、広く需用家皆さん、或いは国民の各階層のかたから、電源スト停電ストというふうなものは社会福祉を阻害するものとして禁止すべきものであるという輿論が澎湃として起つて参りまして、この法案を通過するようにという陳情書が山のように積まれておるように承わつておるのもそうした点を反映しておると思うのであります。この世論の示しますように、社会公共福祉に著しく反するような電源スト停電ストというふうな争議行為を禁止いたしますることは、これはやはり現段階においては適切妥当のものではないかと考えるのであります。これが賛成をいたしまする第一の理由であります。  次に、電気事業経営者は、その経営に当りまして常にいろいろと国家の厳しい監督を受け、更に電気の絶対量の不足しております今日におきましては、特に設備改良補修電源開発というものを促進して、そうして一日も早く電気を円滑に供給する重大な責務を課せられておるのでありまして、その責務公益事業担当者として、電気事業経営者社会一般に対して負つておる重大な責任でありまして、これを完遂するために懸命に努力しておるのに対しまして、相手方の組合のほうには事実上この電気の円滑な供給を阻害する多種多様の実力行使が殆んど無制限に行われて今日に至つておるのであります。殊に電源スト停電ストのような、こういうふうな実力行使方法は、まさしく経営者社会的責務の遂行を正面から阻害するものでありまして、これに対しまして一般産業経営者の場合にあたりましては、それは工場閉鎖というふうな争議対抗手段考えられるのでありますけれども、電気事業の場合におきましては、公益事業としての供給責任を全うしなければならない立場上、こういうふうな種類の対抗手段を事実上取り得ないのであります。これがため現実には組合側のほうだけに一方的にこの無制限な停電というようなストが行使されておる。会社側はこれに対して対抗が事実上できないというような面をこの面において持つておるのであります。で、労使対等という面から見ましても、この法案による規制によりまして、両者の均衡がむしろ期待し得るものと考えるのでありまして、この意味からも法案定法措置が非常に結構であると賛成する次第であります。これが第二の理由であります。  その次は、争議に際しましては、もとより会社早期円満に解決するように努力いたすものでありますると共に、又社会一般に対しましても、争議による御迷惑を成るべくおかけしないように、できるだけの手段を尽して努力をするのでありますけれども、併しながら一般国民皆様に、争議による御迷惑を成るべくかけないようにしようとする会社のいろいろな防衛措置には、おのずから限度があるのでありまして、そのことはすでに実際したびたび止むを得ず御迷惑をおかけして参つておりますこの事実が示す通りであす。その理由は主としまして、電気事業特殊性事業場の実態によるのでありまして、即ち電気生産、配給、消費というものは、殆んど瞬間的に行われ、且つ一貫しておるものでありますからして、その過程は高度な技術的、機械操作を必要とする多数の重要施設が長距離、広範囲に亘つて点在をいたしておりますので、その結果、そのうちの少数箇所或いは少数人員争議行為だけでも、電気供給に対して大きな影響を及ぼし得る傾向があるのであります。従いまして会社がこれに対処しようといたしますると、組合員に代つて漏れなく多数有能な技術者を、点在しておる多くの職場に動員して、各施設ごとに配置しなければならないという考えになるのでありますが、現在労働組合法に定められておりますところの非組合員の数は、全従業員の僅か二・二%程度なんであります。即ち現在一人の非組合員も認められておられておらない。事業場が、例えば水力発電所の場合には千二百六十カ所ばかりあるのでありますが、その七七%は非組合員がいないのであります。火力発電所におきましても、四一%には非組合員はいないのであります。変電所至つては殆んど大部分は非組合員がいないという状態であります。更に神経中枢とも言うべき給電指令所の分では、中央の大きなものだけにしかないというような状態なんであります。こういうふうに大多数の事業場には、現在全く一人の非組合員も認められておらない、こういう有様でありまして、従いまして、たとえ外のほうに向つて社外技術者等町を極力動員するといたしましても、組合電源スト停電スト等に対処して、電気の正常な供給を確保するというのは、どうしても事実上おのずから限界が出て来るのであります。昨年の秋から年末にかけて実施されました電産争議におきまして、電気減電量が一五%乃至二五%に及んだのでありますが、この電源ストでさえも社会一般にあのような御迷惑をかけさしたのでありまして、更に減電量が戦術的に強化されるというような場合には、その被害混乱は全く想像に余るものがあるのであります。去る七月十一日に実施されました労働協約の改訂並びに本法案立法反対の問題をめぐるこのストライキの際でも、停電ストがやはり実施されておるのであります。電産及びその加盟する総評の活動方針から考えまして、今後組合電源スト停電ストによるような争議行為を行わないという期待を我々は持ち得ない現実状態がありまして、こういうふうな争議行為規制されるということは、現段階においては誠に止むを得ない次第と考える次第であります。勿論経営者にいたしましても、こういうふうな立法を必要とするこの現実事態というものは、決して望ましいものとは思つていないのでありまして、公共福祉ために将来労働運動の良識ある健全なる慣行が更に樹立されるということを衷心より念願しておる次第であります。これが第三の理由であります。  以上大体この電源スト停電スト等争議行為が、電気事業における特殊な大きな実力行使方法であつて、この影響争議の両当事者に比べて第三者であるところの国民社会全般に遥かに広範に且つ深刻な迷惑損害を及ぼすものであるという点を申述べましたし、又この第三者であるところの社会一般に御迷惑を及ぼさないように経営者が対処するということについては、事実上おのずから技術的な限界があるということを申添えまして、この社会公共福祉立場から、こういう争議行為は、この種の争議手段だけは禁止されるということが適切妥当であるということを申上げた次第であります。  なお、本法案が制定施行されました場合には、電気事業の全労働者がこれによつて争議方法規制されるものではないかと御懸念になる向きもあるかと思うのでありますが、このような争議方法に関連する職種にありまする者は、全体から見ますれば極めて狭い範囲にとどまつておるのでありまして、大多数の者はその他の各種の争議行為方法を何ら失わないものであるのであります。これまで申上げましたことは、電産争議の直接の当事者として当面して参りました体験の上から直截に考えを申上げた次第であります。よろしく御賢察のほどをお願いする次第であります。   —————————————
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に電気産業労働組合中央執行委員長神山清喜君の御意見をお願いいたします。
  5. 神山清喜

    公述人神山清喜君) 神山でございます。全国の電気労働者とその後におります家族を代表いたしまして、只今から本法案に対する反対理由を申上げたいと思います。  労働委員各位におかれましては、発展途上にあります日本民主化ために日夜努力を重ねておられることと確信いたしますが、特に労資関係につきましには片手落はならないように十分留意せられまして、以下述べます反対理由につきましても、十分なる御賢察をお願いいたしたいと、こういう考えでございます。  さて本案に反対いたしまする最大の理由といたしましては、昨年の電産ストにおきまして、政府並びに経営者責任が全然明らかにされないで、むしろ国民スト嫌悪の感情に訴えまして、一切の責任労働者に転嫁していることであります。このことは政府提案理由の説明と、更にその後の答弁におきまして、ますます鮮明となつて参りました。現在におきましては、労働者は申すまでもなく、第三者さえもが政府のこのような不明確な態度に対しましては、大きな疑惑を感じておるような次第であります。いやしくも民主主義国家におきますところの労使関係は、常に対等の立場にあることが原則でありまして、従つてその国の政府はこの原則の上に立つて労働行政全般亘つて責任と義務を有するものであると考えております。併しながら我が国の政府は、責任がある立場にありながら、なぜ昨年の電産争議の経緯と責任の所在を明らかにしないのでありましようか。又なぜ政府は電産ストにおきますところの経営者責任について一言も触れようとしないのでございましようか。理由は極めて明白でございます。電産ストの本質を明らかにすれば、今回のスト規制法委の根拠が足下から崩れ去つて法委の通過が困難となるからでございます。以下私は具体的な事例を以て電産ストにおきますところの政府責任を先ず説明いたしたい。  御承知のように、電気事業におきまするところの政府発言力というものは極めて大きいものでございます。即ち電気料金の決定、電力需給の調整、渇水準備金法律化、或いは電源開発における許認可制度、一切の権限は政府に委ねられておる事業でございます。従つて電気料金の中に人件費が含まれていることも又当然でございます。これなるが故に、電産ストの場合におきましては、賃金関係につきましては、如何なる経営者といえども、政府事前了解なくしては解決し得なかつたことは、過去一年間の記録に徴しましても私たちは立証できるという確信がございます。言い換えますならば、電産スト早期解決するか、或いは故意に長期化させるかということは、全く政府匙加減一つでありまして、これを断言しても憚からないのでございます。では、昨年の電産ストにおきまして、政府はどのような役割を果したかということについて一言御説明いたします。  当時の吉武労働大臣は、組合分裂一つ手段としてとつておりました経営者企業別賃金を鵜呑みにいたしまして、中労委に対してもしばしば事務官を派遣して、調停案の中に企業別賃金を入れることを暗に勧告していた事実がございます。又組合がこの事実を察知いたしまして、労働大臣に会見を申入れましたときに、あたかも経営者代表者のごとき振舞を以て組合分裂すらも暗示するような不誠意態度を示していたのでございます。当時組合は、政府経営者と合作してスト長期化を意識的に強行していることが具体的に明らかになつていることについては、腹の底からの憤りを禁じ得なかつたのであります。そのいきさつは、残念ながら一部の人々だけが知つている程度でありまして、一般には殆んど知らされずに終つたようなわけであります。  更に電産ストにおきますところの政府役割は、今申上げたような点から極めて大きいのでございますが、特に昨年の場合は、政府労使均衡原則を破つて経営者に荷担いたしましたために、スト長期化から組合分裂を意図しておりますところの経営者に勇気を与えまして、そうしてあのような結果を招来したわけであります。このことを似ていたしましても、政府スト責任組合に転嫁することなく、みずからの責任を先ず自己批判しなければならないと確信いたします。  更に経営者役割について一言説明いたします。組合といたしましては、賃金要求案を作成するに当りましては、約二カ月間の長い日時を費して、全組合員の意向を十分とりまとめまして、経営者要求いたしましたのが四月の中旬でございます。然るに、会社側賃金値上げどころか、労働時間の延長、時間外労働の強制、休日、休暇の短縮等理由は誠に抽象的でありまして、社会水準に合せるということを主張いたしまして、遂に一カ月間の団体交渉も一歩も進展しなかつたのでございます。従いまして、労使双方了解の上に、五月の中旬、中央労働委員会調停を申請したような次第であります。特に組合として主張したい点は、昨年値上げされました電気料金の中では、日本火力設備を全部フルに運転いたしましても使い切れない石炭が百万トン以上計算されております。この点につきましては、なぜ消化し切れない石炭料金の中に織込まれておるかということについて追及いたしましたところ、経営者としては、一応政府に対してお答えしたのであるけれども、政府のほうでどうしても入れて欲しいというので、これを入れております。こういうようなことも明らかになつております。更に昨年は豊水期でありますので、明らかに組合賃金値上げ要求は、会社経理内容からも妥当であると確信を持つていたわけでございます。このことは三倍近い増資と、一割五分の配当の維持と、更に本年度期末の純益金皆さんでお調べになつたら十分御理解できるのじやないかと思います。  中労委におきましては、約四カ月間の長期亘つて調停委員会が持たれたのであります。九月の上旬調停案双方に提示されましたけれども、いずれもこれを不満といたしまして、労使双方が拒否したような経過になつております。組合といたしましては、賃金要求いたしましてから、すでに五カ月間の時日が経過しておるし、双方調停案を拒否いたしましたので、更に労使自主的解決を希望して、口頭及び文書を以て再々経営者側団体交渉の再開を申入れたのでありますが、経営者側といたしましては、従来の慣行でありました統一交渉、このことは当時の調停案にもはつきりとその精神が貫かれておつたわけでございまするので、経営者側は、従来の慣行調停案の趣旨すらも踏みにじつて統一交渉を拒否いたしまして、遂に一片の誠意すらも見せていなかつたのでございます。組合は止むを得ず、九月下旬以降実力行使指令いたしまして、経営者の反省を促したのであります。スト長期化を憂慮された中労委中山会長は遂に十一月の初めに至りまして、労使双方斡旋に応じてくれるかどうかという要請がなされたわけであります。組合といたしましても、ストためストライキを打つておるのでございませんので、むしろスト早期解決を希望いたしまして、直ちにこの要請に応じたのでございますが、経営者は種々の口実を設けて、それから約二十五日間回答を延ばし、中山会長をてこずらせて、斡旋に応じなかつたのであります。ところが、いよいよ斡旋になりますと、経営者側からは、それまでに一言も触れていないような、例えば厚生費の削減であるとか、或いは保険料組合員負担の増額とか、いろいろな難題を山ほど持ち出しまして、斡旋を更に困難ならしめたのでございます。以上の点でも明らかなように、経営者組合賃金要求に対しまして逆に現行賃金の切下げを強要して参りますし、あまつさえ従来の慣行であつたところの統一交渉を拒否いたしまして、そうして解決の機会を与えず、意識的にストの長朝化を強行したと考えられるわけでございます。労使間におけるところのスト因果関係を当時の政府が正しく把握しておりますならば、又電気事業におけるところの政府立場をそのまま評価しておるといたしましたならば、政府といたしましてもみずからの責任を回避したり、或いは経営者責任には一つも触れずして、昨年のストライキのすべてを労働者の一方的な強行であるがごとく責めて来ることはできないはずでございます。  ここで更にこの具体的な政府並びに経営者スト長期化の意図を具体的事実を以て立証したいと思います。私たちは十二月に入りまして相当組合員も疲れて参りました。勿論職場放棄をいたしますと、会社側は一銭も給料をくれないのでありまして、相当多額のスト賃金が差引かれました。中央本部といたしましても、できるだけ早い時期に解決のチャンスをつかみたい、こういうふうに念願しておつたわけでございますが、十二月十八日の午前三時に至りまして、組合中労委中山会長斡旋案全面的受諾回答いたしました、勿論そうなりますと、会社側は一応受諾の意思を表明いたしておりましたので、直ちに調印ができるわけでございますが、六時の約束が八時となり、十一時となりましても会社側は姿を見せず、遂に中労委から電気連合事務局引揚げ行つて中山会長もこの段階になつて経営者のこのような態度に対しては非常に遺憾の意を表しておりましたが、相当数日間の疲れがございましたので、いずれは会社も折れて来るであろうという言葉を残して外に出て参り、私たち組合斡旋案受諾した上は直ちに調印しなければならないにもかかわらず、会社が依然として調印を拒んでおる。若しこうなるとするならば、今後私たち下部指令いたしましようとも、下部組合員中央指令に従わないかもわからない。こういう事態すらも危険視されるような状態でございましたので、私初め中央幹部は国会に参りまして、緒方副総理、更に賀來労政局長に面接いたしましたところ、次のような事実が明らかになつたわけでございます。会社側が依然として拒否しておる、組合回答した、もうこうなればこれ以上引延ばすことも困難である。そこで遂に通産省から人を派遣いたしまして、会社側受諾せよという勧告をしたということを賀來氏が証言しております。そうして遂に、会社側も粘りましたが、同日の午後五時に至りまして中労委受諾回答をしたと、このような事実から判断いたしますと、明らかに会社政府組合ストに対しまして、電産のストに対して長期化を狙い、そうして組織の分裂を意図しておつたという事実を明かにこのような点からも立証されまして、政府が言うように、昨年の電産ストはあれは電産の責任であるというようなことは決してこのような事実から言えないのでありまして、むしろ以上申しましたような点から、長期化したその責任の大半は政府並びに経営者にあるということも断言して憚からないのであります。勿論組合といたしましては、スト解決いたしましてから中央執行委員会を開催いたしまして、このように長期化したところのストの要因も十分分析し、勿論誤まれる点は大胆率直に自己批判しておりますが、政府並びに経営者は未だ自己批判をしたことを聞いておらないのであります。で、私は重ねて主張いたしますけれども、昨年の電産ストの当時に、石炭費の軽減等、豊水によるところの莫大な利益がすでに予想されていたにもかかわらず、実質賃金の引下げを強要する経営者と、そうして政府の意図がどこにあつたかということは、その後の具体的事実の中から明かになつて参りました。若しあの場合に政府といたしましては、正常な労使関係の維持に熱意を示しまして、たびたび申上げますように、電気事業に占めるところの政府責任ある立場を正当に評価いたしますならば、電産スト早期解決していたはずでございます。  以上の点に鑑みて、若し行動を規制するとするならば、むしろ組合側にあらずして、政府並びに経営者の行動を規制する法律が直ちに必要ではないかというふうに考えております。今年の二月上旬スト規制法案が閣議で決定いたします前に、私ほか二名の中央幹部労働省に招致されまして面接いたしましたのは、当時の労働次官現参議院議員の寺本さんでありました。要談の内容といたしましては、要約いたしますと大体次の通りでございます。  政府筋から電産のスト制限法の作成を監促されて労働省は弱つておる。争議解決したし、輿論も漸次平静化して来ているとき、自分はこのような法案作成にはどうしても積極的になれない。そこでこの機会に、電産は、今後一カ年一切のストライキをやらないと声明したらどうか、若し組合がそれをやつてくれたならば、自分は一身を犠牲にしてでも法案作成を阻止する覚悟であるということを言われたのであります。更に法案作成を明示されるまでのいきさつにつきましては、昨年の電産ストが各方面の反響を呼んでいたために、特に側近からの注文で、首相の施政演説の中に政府考え方として入れることになつたということを自分は聞いている。従つて労働省には事前には連絡はなかつた。併しいやしくも首相が施政演説に言われたからには放つて置けないという意見が強くなつて労働省に法案作成を命じたということである。大体以上のことから判断いたしましても、政府立法に対する基本的な考え方は極めて一部少数の意見によつて左右されており、特に本法案のごときはまさにその典型的なものであると言わざるを得ないのであります。民主国家の法律は、輿論の上に立脚せねばならないことは当然でありますが、本法案は全くこれと逆行しております。若し政府が飽くまでも本法案を輿論の如何によつて処理する考えがある至するならば、速かに撤回することがと当と考えます。なぜかと申しますと、我が国の輿論を代表するのは学者や知識人でありまして、それらの人々はこれまでの幾たびかの公聴会におきまして全員残らず本法案反対しているからであります。  次に、本法案の中でどうしても私たち理解に苦しむ点は、電源停電ストはこれまでも違法であつたと言いながら、三カ年の時限法とした点であります。若しこのような考え方が正当であると判断する人がありましたならば、私はその人の常識を疑うのであります。法律で違法ときめられるストライキが三年の時限とされたことは、三年たつた社会党内閣ができるというようなことでも考えているのか。併しながら政権を維待したいばかりに予算案を改進党にしてやられた政府が、まさか三年後に社会党内閣の出現を夢見ているとは思えないのであります。この際特に強調しておきたい点は、電源停電ストは絶対に違法ではないということであります。一応過去の記録から申上げましても、数年前の電産の変電所のスイッチ・オフによつて検束された事件が数カ所に起りました。その後のストライキの場合はやはり検察陣の介入によつて職場組合員は恐れている。戦術転換をしなければならない、そこで日本を権威ある法学者を動員いたしまして作り出したのが御承知のような発電所の労務提供の拒否であります。このいきさつは労働省は十分知悉しているはずであります。勿論会社側は電産がこのようなストライキをやる場合には当然対抗して参りまして、先刻平井さんのお話では対抗策はないというふうなことに言つておられたようにも聞えましたけれども、例えば中部地方において四十カ所の職場放棄を三十五カ所まで会社側によつて運転しておる、東北においてはやはり半数以上が運転されておる。このようにして会社側にはスト破りするところの余地は十分残つておるし、又過去においてもそのようなことをやつて来たわけであります。更に組合といたしましても、そのストライキを通じまして相当長期に亘つたために莫大なスト賃を差引かれておつてストライキをやつてそうしてあたかも組合員だけが楽をしておるように言われますけれども、組合員も相当な犠牲を払わなければストライキはやり得ないということをここにはつきり申上げておきたいと思います。神奈川事件にいたしましてもすでに皆様御承知の通り、東京高裁で無罪の判決が下つて最高裁への検事控訴も放棄されております。更に福岡や札幌におきましては、それのそれの地方高裁で無罪の判決が出て、只今最高裁で争つているという事実、又私たちはこれも又無罪であるということを確信しているわけでありまして、政府の言うところの電源スト停電ストは飽くまでも違法でないというふうに確信いたしております。勿論政府がもつとこういう問題を慎重に扱つてストライキが違法であるかどうかということの最終結論は法廷できめられるという、この点を全部尊重いたしますならば、あのような発言はできないわけであります。  次に本法案が実施された場合、労使対等の原則は破られまして、労働者立場は全く惨めなものになります。現に経営者スト規制法が一応成立し得るというふうに見越しまして、昨年締結いたしましたところの労働協約を、期限満了を待たずして一方的に破棄の通告をしておりまして、更に給料の支払日の変更等も一方的に会社でやつているようなところもございます。而も電気の正常な供給の停止とか、重大な損壊とか、或いは不当な行為をしてはならないというようにこの法律に載つておりますので、如何ようにも拡張解釈ができるわけでありまして、無制限の干渉弾圧を許す理由にもなろうかと思います。電産の場合におきましては労使の紛争を早期解決する手段といたしましては、万一この法案が実施されました場合には残念ながら残つておりません。併しながら私たちは一方的な経営者の圧力に対していつまでも黙つているわけには参りませんので、若しその解決をやろうとするならば、組合長期の忍耐を必要といたしますし、いわゆる全面的機能の痲痺戦術を考えるわけであります。併しこのような結果が全く憂うべきところの惨状を覚悟しなければならないということも当然でございます。一切の権利を剥奪された労働者の不満が限界に達したとき、これを爆発させる条件が揃えば恐るべき力となることは、過去の歴史が教えておるところではないかと思います。  労働者の権利を国の法律で制限することは、少くとも民主国家のとるべき態度ではございません。未成熟な組合運動も、これを培うものがあつてこそ生成発展して行くものであるということを確信いたします。電産が過去にとつて来たところのスト戦術は、職場放棄の場合といいましても、電源職場の二割五分程度にしか過ぎなかつたのであります。又過去七カ年、幾たびかのストライキにおいて設備の破壊は一回もなかつたのであります。従いまして私たちは電産のストによるところの影響を取上げる前に、年間を通じて一般に行なつて参りましたところの経営者の緊急停電の量と比較いたしますと、誠に物の数ではなかつたというふうに思つております。政府はなぜこのような経営者の、この経営の未熟によつて起るところの緊急停電を放つておくのか。このことを先ず私たちは指摘したいと思います。公共福祉というならば、経営者の都合で勝手に電気供給をとめながら、使いもしない電気料金を取立てているところの経営者の詐欺行為をなぜ政府はとどめようとしないのでありますか。国民大衆も政府のこのような態度を許さぬときが必ず来ると思います。又必ず来ることを確信しております。公共福祉が守られる社会というものは、働く者の権利が法律で守られるところの社会でありまして、働く者の権利が法律で縛られて行くような社会では絶対にないのでございます。況んや労働者だけが権利を奪われて、相手の資本家が全然何らの拘束を受けぬというな社会では断じてございません。政府にして真に日本民主化を希うならば、本スト規制法を撤回して、改めて国民の輿論に訴えても遅くはないと思います。勿論電気労働者はそのときこそ公平なる輿論の前に頭を垂れて、そうしてその決定に服することもあり得ると考えます。  最後に量ねて強調いたします点は、電産スト長期熾烈化によつて提議されましたところの本法案、今申上げました点から、この責任の大半はむしろ政府並びに会社側にあつて、これを労働者側に一方的に転嫁するということは卑怯であります。このことは勿論中労委中山会長もこの前後のいきさつは記憶しておりますので、決して私は架空なことを皆様に申上げているわけではございません。政府ストをあたかも罪悪視するような態度を改めて、速かにこのスト規制法案を撤回して頂きたい。これこそが民主国家政府のとるべき態度ではないかと考えるわけでございます。  以上を以ちまして私の公述を終りたいと思います。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 有難うございました。   —————————————
  7. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして旭化工株式会社社長三段崎俊吾君に御意見を伺います。
  8. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 私は過去五期に亘りまして東京都の使用者側の労働委員をいたしております。使用者側の労働委員としての立場からこの問題に対する見解を述べてみたいと思います。それから私は現在の改正労働関係法、その労働法令審議委員会の使用者側の委員をいたしておりまして、現在の改正労働法に或る種の関連を待つております。その立場からものを述べてみたいと思います。もう一つは、私は小さな中小企業を経営して来ておりましたし、現在も経営いたしております。その中小企業経営者立場からこの問題に対しての自分の見解を述べてみたいと思います。以下その三方面の立場から非常に粗雑ではございますが、自分の見解を述べさして頂きます。  私はこの間「明日の労働問題」という末弘博士を中山博士の対談の本がございますが、それを読んでおりました。その中に末弘博士がこういうことを言つておられる。これは末弘さんが亡くなられるちよつと前にお書きになつた、戸山さんとの対談をなすつた本だというふうに承知いたしておりますが、末弘さんは、自分は今日電車の中で共産党員の人で有名な組合の幹部だつた人とこういう話をしたということが書いてございます。末弘さんはかくのごとく言う、今、日本労働組合ではチエツク・オフ・これは組合費の天引制度とでも申しましようか、チエツク・オフは当り前のこととして会社もこれをみんな容認しているが、この制度はアメリカでは長い間の労働運動の結果ようやくかち得たもので、而も最近のことなのである。だから組合がすつかりでき上つてからこういうものをかち得たものだし、又それならば余り弊害はないのだけれども、日本のように何もわからないうちにこんな制度を得ているということでは困る。これは末弘さんの御意見でございますから、悪しからずお聞き取りを願います。組合の幹部も、みんなが嫌がるのを取つて集めた金なんだから大事に使わなければならないというような精神は日本労働組合にはない。又その金を集めるためにに組合の幹部と組合員の間の血の争いが出るとか、日本労働組合にはそういう苦労は全然ないので、一時組合費の集りが悪くなるかも知れないが、チエツク・オフなんていうものは一時やめてしまつたほうがよいのじやないか、こういう話をした。もう一つ日本にユニオン・シヨップというのがあるが、ユニオン・シヨップというものは、あれは共産党の連中が少数幹部独裁のために作つたものですよ。一方雇主のほうから言うと、今度は逆に又あれに御用組合的要素が入つているのだ。一体ユニオン・シヨツプというものは、アメリカでもあんなにはやつて来たのは新しいことなんだが、日本で一応ユニオン・シヨップというものをやめて、本当に組合員を自力でつなぎとめる、自力で分裂しないようにする、そういう苦労をしなければ日本労働組合は発達しない。これが末弘さんの御意見でございます。こういうことを各方面の組合にこの間から行つて盛んに言うと、組合の人は、先生の理窟はいいけれども、なかなかやれません、やる勇気がないのだ、こういうことを言つておるというような感想を電車の中で共産党の有名な組合幹部だつた人に話した。そこで末弘先生はこういうふうに結論をつけておられます。実は言うべくして行われないかも知れないが、日本労働組合は、今の組合を一度全部なくして、自力で万事やるところから出直す、そうすると本当に強くなるという感じがする。これは現在やるやらないにかかわらず、日本組合の人はみんな知つていていいことだ、こういうようなことが書いてございました。誠に日本労働組合の現状を穿ち得て余りあるものがあるのではないでございましようか。  この末弘博士の説話は、日本労働組合はなかなか苦労が足りない、もつと苦労を積み重ねなければ本物にならないということを説いておられるのだと私は考えております。誠に戦後労働組合の保護助成政策が強力に推し進められて、労働組合運動はあたかも大きな堤防が崩れたような勢で一気に全国をなめ尽しました、占領政策によつて与えられた労働組合であつて、苦労の集積の結果みずから得たところの労働組合ではなかつたということは何人も否むことのできない事実でございます。かくして終戦後突如として絶大な権限を与えられた労働組合が次々とその未熟さのためにその運用を誤り、過誤を犯して行つたということを又争えない事実であろうと考えます。すべての権利がそうであるように、労働者ストライキの権利というものが決してオール・マイナスなものではなく、公共福祉との調和において存在することは、憲法第十二条及び第十三条を待たずして蓋し当然のことでございましよう。かくして三・一スト以来、労働組合労働組合みずからの手によつてその広範に与えられた権限を次々と狭めて行つたということができると思います。  今次の電産、炭労のストの結果として起つたスト規制法案発生の理由も又同様であると考えます。我々は元来それが法規化されると否とにかかわらず、すべての権利と同様にいわゆる労働権、こういう労働権というような権利が法律上正確に存在するか否かは別といたしまして、労働権も又公共福祉との調和において段階的に規制さるべきであるという主張を持つておりました。即ち官公吏、現業官公吏、公共企業体、公益事業、私企業等、その公共福祉との関連性によつて段階的に規制さるべきものであるということを主張していたのでございます。又例えば公益事業、基礎産業などにおける全国的に重大な影響を及ぼす争議のごとく、国民経済の正常なる運行若しくは国民日常生活を著しく阻害する虞れのあるもの並びに政治的ストのごとく、経済争議の範囲を著しく逸脱するがごとき争議についてはインジヤンクシヨンの制度を採用すべしという、そういう主張をなし来たつたのでございます。  ここで、私は昨年の労働関係法改正の前駆をなしたところの労働法令審議委員会の論議の経過を振り返つてみたいと存じます。我々が以上の主張をなしたのに対し、つまりスト権、ストライキの権利というものは公共福祉との調和において、公共福祉との関連性の段階に応じて段階的に規制されるべき筋合のものであるということと、公益事業、それから基礎産業のような全国的に重大な影響を及ぼす争議、そういうものに対してはインジヤンクシヨンの制度を設けなければならない、こういう主張に対しまして、労働者側の委員諸君は一斉に、現在の労働者は脱皮している、良識を持つているのだから、公共福祉を著しく阻害するような一揆的争議行為は行わないであろう、これをあえて行うときは輿論の憤激を買つて労働組合自身の組織を弱めるであろう、労働組合は断じて輿論の裁断に従うものであるということを繰返し繰返し主張されたのでございます。お名前をここで引合いに出すことは誠に恐縮でございますが、当時労働者側の委員として非常に強力に御発言になりました当応の藤田電産委員長もここにおられるようでございます。そういうことを労働者諸君は非常に強調されたのでございます。それに対しまして学者諸君も大部分それに賛成をいたしまして、現在の労働者はすでに良識を持つておる、輿論に反するような一揆の労働争議行為をするというようなそういう心配は御無用である、こういうふうに学者諸君も繰返し繰返し述べられたのでございます。そういうふうにいたしまして労働関係法が改正された直後に、昨年の電産争議とか又炭労争議は全く前言を覆えしたものであり、全く輿論を無視して顧みない争議行為であつたことはここで述べる必要はないことと存ずるのでございます。かくのごとくにしてごうごうたる輿論は遂にこの法律案を国会に提出せしめるに至つたのでございます。人の噂も七十五日といわれております。人間というものは案外健忘症なのかも知れない。今でこそいろいろな反対の議論が行われているというものの、我々は当時の状態を振り返つて見ると誠に肌に粟を生ずる感を深くするのでございます。春秋の筆法を以てするならば、電産、炭労遂にスト規制法案を国会に提出せしむと言つて過言でないでありましよう。  私はここで昨年行われた電産の争議について、特に中小企業の立場から若干のことを言つてみたいと思います。電産の賃金一般労働者、特に中小企業の労働者に比して非常に割高でございます。大体五百人以上の大企業の労働者、百人以下の小企業の労働者との賃金の比較をいたしますと、大企業の労働者は小企業の労働者の一・六倍になつておるといわれております。他の臨時収入は実に小企業の労働者の三倍の給与を得ておるのでございます。それに電産労働者の一時間当りの賃金は九十六円七十銭、一般産業は六十五円七十銭だといわれておりまして、大企業のうちでもいい部類に属する。いわんや小企業の労働溝に比較すれば非常に割高な賃金を得ているということはこれで明らかでございましよう。而も争議手段に携わる労働者は、先ほど平井さんから公述になりましたように、電気事業労働者の中の極く小部分に過ぎない。特に停ストのごときは参加人員が僅かに一・九%に過ぎない。全組合員が一人当り僅かに三十七円を負担すれば足りるといわれており、その犠牲はピース一個にも満たない、こういう実情だと承わつております。而も国民経済と国民生活に与えた影響は測り知るべからざるものがございます。特に経済的に底の浅い中小企業、中小企業と申しましても、事業者数におきましては、製造工業にありましては実に全国の九九%七四を占める中小企業でございます。その中小企業を塗炭の苦しみに陥れたのでございます。私は中小企業の経営者でございますから、この実情をよく存じております。我々の周囲には不渡手形を出して倒産した者数知れず、中には首までくくつた者さえあるというような実情でございます。賃金は高い上にも高いことは望ましいことでございましよう。併し他に方法があろうものを、国家経済の基盤をなす中小企業にかくまでの打撃を与えることは十分考慮されて然るべきことではないかと思うのでございます。而もその中小企業に連なる労働者は、全国の労働者中の七三・四%を占めております。その労働者をも又塗炭の苦しみに陥れましたことは、これは労働者同士としても許すべからざることではないでしようか。彼らは失業して巷に彷徨しておる、こういう実情なのでございます。各政党は、吉自党、鳩自党、改進党、右社、左社、いずれも挙つて中小企業振興の政策を掲げておられます。誠に我々にとつて有難いことでございます。併しながら中小企業の振興は、単に金銭的補助を与えることによつてのみなるものでない、銭さえくれればいいのだということではない、安んじてその業に精励し得るよう施策することこそその要締であると言えましよう。この事実を国民の選良諸君におかれましては十分お考え願いたいのでございます。これは学者諸君の紙の上の議論ではございません。あたかも只今公述人の方が、我が国の輿論を代表する学者は皆反対じやないかということをおつしやいました。私は青白きインテリの紙の上の議論をさほどに尊重いたしません。私みずから体験していることをここに切々として語つておるのでございます。又炭労のストライキにつきましても、その行為自体が破壊的行為であるということ、中労委斡旋が気に食わんからといつて日本の炭鉱を再び回復することのできぬところまで叩きつぶそうとしたこと、これ又輿論のひとしく排撃したところでございます。これらの一揆的な争議行為について労組陣営内に批判と反省が行われているという事実を私は知つております。併し誠に残念でございますが、これらの人々は極く一小部分に過ぎません。大部分の人たちは、この争議行為を当然のこととして何ら反省の色も見せておらないというのが事実でございます。現にスト規制反対という政治的ストライキを実行しつつあることによつても窺い知ることができるではありませんか。私は民主主義の夢諦は、自己の行なつ行為責任を持つということにあると信じております。官公庁の諸君がそうでありましたように、公共企業体の諸君がそうでありましたように、電産、炭労の諸君も又責任を負つて頂きたい、こういうふうに考えるものでございます。  或る有名な労働法学者は私に、成るほど昨年の電産、炭労の争議は不当であつた、それは認める、輿論の支持を受けなかつた、それも認める。併しながらスト規制する、そこまで追い討ちする必要はないではないかということを言われました。私は追い討ちをしようなどとは夢にも考えておりません。併し私が先ほど冒頭に引用した末弘博士の言葉をもう一度味わつて頂さたいのでございます。組合が茨の道を行く期間を重ねることによつて、初めて真に強力な、そして健全なものに発展して行くのだということ、以上のような見解に基き、私は今国会に提出されたスト規制法案に賛意を表するものでございます。  それからこの御設問につきましていろいろ公述人から公述されると思うのでございますが、先ほど申上げました労働委員という立場から、第四の緊急調整制度というものについての自分の考えをここで述べさして頂きたいと思います。緊急調整は、おおむね争議行為が発生して、公共福祉に対して弊害が積み重つて、もはやこれ以上放置しがたい段階至つて発せられる、而も争議行為を禁止するのは五十日間だけだ、こういう微温的な実際に公共福祉の擁護にならないような内容であると思います。停電スト電源スト或いは炭鉱の保安要員引揚げは、争議の深度にかかわりなく最初から公共福祉に反し、又は不当な争議手段であるから本法の制定を必要とする、こういうように考えております。又緊急調整制度は、労働争議を原因としないいわゆる政治ストというようなもの、例えばスト規制反対ため停電ストというものが公共福祉を脅かしたと仮定しても、緊急調整制度では何らの措置も施すことができないというようなものであろうと思います。公共福祉を擁護する立場から争議権を規制する場合を考えてみますと、第一に争議の目的を規制する、こういう方法がございましよう。政治ストとか同情スト、そういうものに対する規制を行うというやり方が一つございます。それから争議手段規制するという方法がございましよう。第三に、争議影響度によつてスト規制する。こういうふうな三つの場合が考えられると思うのでございますが、緊急調整制度のような争議調整の問題は、先ほど列べました第三の範疇に属するものでございまして、本法案とこれとは質的に違つて来る。本法案規制するのはむしろ第二の範疇に属するものである。従つてここに御設問になりました緊急調整制度とは違つた観念においてこのスト規制法は考えらるべきものであろう、こういうふうに考えるのでございます。  大変言い足りない点もございますが、馴れないものですから非常に言葉も足りなかつたと思いますが、御清聴を感謝いたします。   —————————————
  9. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に、全日通労働組合中央執行委員長白土松壽君の御意見を伺います。
  10. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) 私全日通労組の白土でございます。  只今から電産、炭労に対する争議行為規制に関する法律案に対しての公述をするのでありますが、先ず結論的に本法案に対しては反対態度を表明いたします。  以下反対理由につきましては、本委員会が先に提示いたしておりまする各条項に従つて、直接の当事者という立場を離れて、労働者という立場から本問題に対する反対理由をできるだけ簡単に公述いたしたいと考えます。  先ず第一点の、争議行為長期且つ深刻化したことについての政府事業者、労組のうち、いずれにその主たる役割があつたかということについてであります。私はこのことに対してのその主たる役割政府並びに資本家にあつたと率直に申上げたいのであります。なぜならば政府の資本主義体制下における経済政策が、全く労働者の一方的な犠牲においてのみ資本の蓄積をしようとしておるからであります。これと全く揆を一にするところの日本経営者連盟が、日経連の民間企業としての代弁者であるところの電産、炭労の経営者をして、あらゆる犠牲を乗り越えても、この機会に、この掲げた低賃金政策を固持せんとしたことは、経営者の側からいうなら、当然のことであつたかも知れないのでありますが、その意図からしても、その主たる役割政府並びに経営者に、即ち事業者にあつたと言えると考えるからであります。  第二の、電産、炭労の争議解決についての政府中労委会社、労組のとつた処置についてでありますが、特に、本問題について重要と思われることは、第一点としては、交渉単位として、中央統一交渉による解決か、又各地方企業別単位による解決かということであつた考えます。電産、炭労とも全国統一組織を待つている以上、経営者は当然に従来もそうでありますが、中央統一交渉に応じなければならないし、又その義務があつた考えるのであります。これあえて拒否する使用者の態度は明らかに団体交渉権の拒否であります。不当労働行為であるとも言えるからであります。  第一点としては、当局がこのような事態に際して、全く知らん顔をしてこの問題を取上げなかつたということであります。このことは、経営者組合組織否認を援助し、或いはこれに協力するという態度にしか見えないからであります。  第三の点につきましては、この場合、中労委は種々斡旋の労をとつたようでありますが、かかる経営者の不当な態度に対して、もつと積極的な職権の活用といいますか、そうした努力によつて問題解決の機会を促進すべき任務があつたのではないか、このように考えます。  第三の政府の説明によれば、昨年の電産、炭労のスト公共福祉に反したから本法案を作るのだ、このように言つておるのでありますが、第一点として、政府事業体における公共福祉は、労働者の権利と争議権を一方的に制限、抑圧することによつて行使できると考えておるようであります。企業の公共に対する福祉経営者に対しても同様のことが言えるのではないか。そうするなら、その責任経営者にもあるということが明らかに言えると思います。然るに、政府事業者に対しては何らの措置考えずして、一方的に弱い労働者に対して労働者の基本権を抑圧しようとする、このような態度であります。  第二点としては、国民の九五%と言いますか、九〇%以上を占めるところの労働者階層の利益を無視した極く少数の資本家のみの擁護を考える前に、先ず以て労働者の最低賃金、或いは社会保障制度等を先きに考えるべきではないか。これが第二点であります。  第三点といたしましては、労使間における争議行為は、国民推論の正しい審判の中から、労使がそれぞれ自主的に国家の一員としての自覚に立つて解決すべきものであつて、何らその間に制限規定を設けべきではない。これが第三の反対理由であります。  次に、第四に明示してあります、本法を制定せずとも、調整制度、特に緊急調整制度によつて公共福祉を擁護できるのではないかという考え方、このことについては、特に緊急調整制度はその運用如何によつてスト禁止法の変型ともなるので、基本的にこれが適用には反対をいたします。公共福祉擁護云々は前項において述べたのでありますが、政府は、本問題を解決しようとするためには、先ず以て国民生活を安定するための他の保障施策を積極的に進める以外にはない。このことが先決である。簡単にこの点は以上申上げます。  第五の、仲裁制度の強化により法制定に代えようとする考え方についてであります。仲裁制度を如何に強化しても、今の政府のような労働者の団体行動権を抑圧しようとする基本的な考え方、理念を捨てない限り、全くこのことは無意味であると考えます。従つて、この考え方については、学識経験者等によつて日本の国情に適合した方法はどのようなものであるか、十分今後研究する必要があろうと考えます。  第六の、憲法第二十八条に保障されておる労働者の団体行動権についてでありますが、先ず第一点として、政府が口実とされるところの公共福祉に反しない限りということを頭から否定するものではありません。併しながら、公共福祉限界とはどのようなものか、極めて不明確なものであります。ストライキ国民生活との調和は、スト権によつて労働者の受ける不利益は、一方ストによつて国民日常生活がどのようになるかの比較検討に待つ以外にはないのであります。この場合、スト労働者の生活を維持し得る唯一の方法であることに思いをいたすならば、国民日常生活の不便を守るということからスト権を奪うという口実にはならないと考えるのであります。  第二点といたしましては、憲法において労働組合の存在と、これに対してスト権を認めておるのであります。現実にはストライキによつて経済に一時な損失はあることは事実であります。併しながら、労働者の生活保障、延いては労働生産性を高めることによつて国民経済に寄与することになるのであります。このように、大きな眼で見るなら公共福祉を守るということにもなるのであります。従つて、以上二点によつても憲法第二十八条の団体行動権に対する何らの制限を設くべきでない。  第七の、電産労働者にとつて他に効果的な争議手段があるかの問題であります。昨年末における二カ月余に亘つての電産ストの結果、電産労働者の得たものは何であつたかということを考えてみたいのであります。こうした状態に鑑みても、現在のストを制限された場合、これに代るところの効果的な争議手段が他にあるとは全く考えられないのであります。若しも本法委が通過した場合、電産労働者経営者の思うがままの労働条件に、最悪の労働条件に押しやられることは明らかであるからであります。  第八の、鉱山資源と施設を保護することと、労働者の生活権の優劣の問題を言つておるのでありますが、鉱山資源といい、又はその施設といい、国家から見ればいずれもこれを失うことのできない重要なものでありますが、如何にその資源と施設が重要であり、又豊富であつても、これに従事するところの労働力が完全なものでなければ国家生産は全く零に等しい結果になると思うのであります。労働者の生活権を度外視したところの、権力に頼ることのみによつて行うところの近代国家における経営者経営方策は、近代国家においては許せない。いわゆる資本民主国家における近代経営者としての感覚からほど遠いものがあると言わざるを得ないのであります。  第九の、国の基礎産業並びに公益事業としても同様の処置が必要であるか否かの問題であります。国の基礎産業、又公益事業体といえ日本の組織労働者のうちである。これらの事業体に同様の処置がとられた場合、どのようになるかということであります。現在の官公従業員、或いは公共企業体の従業員、地方公務員等における現状を考えて見るならば、残る産業部門の組織労働者は殆んどが中小企業労働者のみとなるのであります。而もその実体はどうかというと、未だに一人歩きができないという現状にあるということを率直に言わなければならないと考えます。結果は資本独裁の経済機構の中で、日本労働者は全く戦前の奴隷的な労働条件の中に投げやられる、このことを憂えるのであります。従つて本法については絶対反対であると言わざるを得ないのであります。  第十、問題の三年の時限立法の問題であります。全く理論の正当性を見出せないのであります。三年の時限を付したことは、政府が最近の国民の輿論の前に、窮余の一策として国民の目をごまかそうとした卑劣な考えによるものではないか、これによつて違法性の強いところの本法案を無理に議会を通過せしめんとしておることになるのではないか、敗戦の痛手より漸くにして立上り、民主国家としての基礎を築くことに重要な任務を果しつつあるところの日本労働組合の行く手に対して暗影を投げかけるものであると言わざるを得ないのであります。  十一の、本法に対する外国立法についてでありますが、本項については学識経験者の御意見に譲りたいと考えます。  以上提示されました内容について極く簡単に申上げたのでありますが、以上の理由によつて、本法案の成立に対して絶対に反対態度を表明して、公述を終ります。   —————————————
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) これで午前中の公述人の御意見は終了したわけでございますが、この際議員諸君の御質疑が終りましたならば、午前の分について終了をいたしたいと存じます。更に念のために申上げておきますが、旭化工の三段崎俊吾君は御用件がありまして、成るべく早く退席をしたいというお申出がございましたから、これもお含みおきを願いたいと思います。  更に、その前に、通商産業委員会委員である藤田進君が委員発言をしたいというお申出がありましたが、発言を許すことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 田中啓一

    ○田中啓一君 異議あり。私はどういうことが聞きたいとおつしやるのか、その辺を明らかにされて、特別に御相談の上なら別でありますけれども、ただ漫然と聞かれるということについては……。
  13. 田村文吉

    ○田村文吉君 どうでしようか委員皆さんの質疑が終りまして、時間がごさいましたらお願いすることにいたしまして、先ず委員の質疑をやるということがいいのじやないか。
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はそれでもいいのですが、やはり藤田君の場合は、藤田君云々と指名されてあるから、大体私は符に発言があるのじやないかと思つているから、特に認めてやるべきだと思うのです。そういうふうに考えます。  それでは質問に入ります。旭化工の三段崎さんが忙しいようですから御質問申上げますが、只今の公述の中で、末弘博士の話を引用して頂きまして、非常に参考になつたわけなんですが、末弘博士は御承知のように日本の民主花のために非常に努力された学者でご己いますので、只今の引用はこういうふうにとつてよろしうございますか。例えば今の日本民主化を非常に憂えられて、日本労働組合は与えられた労働組合をやつてつて、非常に幼稚である。これがもう少し強くなるために、今引用されたようなことが必要でめる。いわゆる今のような組合では駄目だ、もう少し強くならなければ日本民主化はあり得ない、こういうふうにおつしやつたと解してよろしうございますか。
  15. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 大体そうだと私も解釈いたしております。
  16. 阿具根登

    ○阿具根登君 ああそうですか。そうすると……。
  17. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) やつぱり苦労を積み重ねて行かなければ本物にはなるまいというふうにお考えになつておるのだと、私は私なりに解釈をいたしております。
  18. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、三段崎さんの御意見の大部分をお聞きいたしますと、電産も炭労も、あとの組合もですが、ひつくるめて中小企業その他の御迷惑になるようなことはやつてはならない。いわゆる極端に解釈すれば、迷惑のかからないストライキというものはあり得ないと思うのですね。殆んどそれはやつちやいけない、こういうように聞えたのですが、そういう意味なんですか。
  19. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) その点言葉が足りなかつたかと思いますが、やつぱり限度があろう……。それからこういう一句を挿入したことをお聞き洩らしでございましようか。「他に方法もあろうものを」とございます。電気事業者に最も痛切な打撃を与える方法は、例えば集金のストライキのごときものもあろう、まあ当事者が余りに被害を受けなくて、そうして国民大衆に余りにも多くの被害を与える、そういうような態勢でストライキをなさるとやはり国民の大きな批判を受けるであろう。その国民の批判ということはやはり成長過程にある組合としては率直に受入れて自己の健全な労働組合の発達に資するようにして頂きたい。こういつたような気持でございます。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 私もそれには賛成ですが、例えば電気を送つて事業を起しておる電気会社が、これは定額制もそうでありますが、送らなくても金をとつておるのですね。これが非常に皆さんの一番不満のもとだと思つておりますけれども、とつていいようにできている。いわゆるそういう法律に対する不満が第一におありになると思うのですね。それからもう一つ今のほかの方法はないかとおつしやることは、ストライキに対してだけほかの方法じやなくて、根本的な問題に対するほかの方法はないかというものにもとつていいのですか。例えば炭鉱の問題にしますならば、炭鉱の労働者の生活はどうであるか、電気産業の労働者の生活はどうであるか、外国の例を見ますならば、こういうストライキはやつておらない。これに対して又反論があると思います。併しこういうように法律で、例えばさつきの末弘先生の引用ではないけれども、逆にとれば法律でうんと叩き散らせば労働者は今度は違うところにふくれて来てもつと強くなるのだ。こういうようなお考えでないとするならば、そういうような法律で抑え付けるのでなくて、ストライキをやらないでいいような方法はないかどうか。こういう点はお述べになつた中にちよつと聞き洩したのですが、今のほかの方法はないかという問題に、こういう点も考えていいのですか。
  21. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) いえ、その点は違いまして、それは労働法令審議会の論議の経過の一駒として申上げましたが、労働者諸君は公共福祉に反するようなストライキはしやしないのだ、組合自身の壊滅になるじやないか、世論に従わないというようなことが組合自体の大きなマイナスになるのだから、それほど良識がないわけじやないよ。こういうことを繰返し繰返し述べられて、私はそれは非常に喜ばしいことと思いました。で法三章と申しますか、法律がなくてすむものならばこれに越したことはない。例えば今ちよつとお話が出ましたアメリカについて申しますと、電気産業に対するストライキの禁止法というものは私はなかつた記憶しております。英国にはあつたかも知らんが。だけれども全世界を通じて三十年間というものは電気産業のストライキ電源ストですか、停電ストというものはためしがない。僅かに三十年以前アメリカで五分間の停電をした。併し世論によつて叩きつぶされてしまつたというようなことを、そうでございますね、前々回の東洋経済新報に載つておりましたのを私は拝見しております。そういう事実があつたかないか、私は学者じやない、先ほどから申しましたように町工場のおやじでございますから学問はありません。従つてこの間石井照久さんにそういうことは本当かと聞いたら、それは本当だというようなことを言つておられました。そういうふうに労働者諸君は、お述べになつたように国民公共福祉に反するようなことをして、世論に反するような争議行為を行うならば組合自身のマイナスになるのだ、それは我々も良識があるから慎んで行くということならば、私は非常に大賛成でございます。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると国民のほうを、まあ三段崎さんのおつしやるように世論としてもよろしうございますが、世論のために基礎産業の労働者である電産、炭労の者の生活はどうあつても忍ばねばならない、こういうふうに考えてよろしうございますか。世論は恐らくそういうことのないように、やはり待遇と言いますか、賃金その他もお考えになつておると思うが、今外国のことをおつしやいましたから御承知と思いますが、炭労、電産の従業員は外国では他の一般勤労者よりもどういう生活をさせられておるか、待遇せられておるかということを、御承知でしたらお聞きしたいと思うのですが。
  23. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) それは私の基本的考えといたしまして、国民経済の実態に即しまして、日本という国は貧乏です。とにかく無謀な戦争をしたために全部を失つて、個人でいえば家が焼けてしまつたと同じでございますからお互いに耐乏生活をしなければいがんだろう。国民経済の実態に即した給与制度でありたい、こういうふうに考えております。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 私も御意見と全く同意見です。お互いに国民生活の耐乏にたえて、自分で数千万円の家を造つたり或いは長者番付で一番から十番までにもなつておるのに、そこに使われておる人たちがもう少し幸福になつておるかどうかということについてはいろいろ問題になつております。  そういう問題は別として、もう一度お聞きしたいと思いますのは、そのために首をくくつて死んだ人がある。こういうことを私お聞きいたしまして非常に私もこれに打たれたわけです。そうすると、私は寡聞にしてそれはまた新聞では拝見しませんのですけれども、私が見る新聞では毎日のごとく中小企業者の人が或いは倒産し、自殺し、或いは失業者が自殺し、その日食えない人が親子心中をしておる。これは誰の責任でしよう。こういうもつと大きな問題もおありと思います。それに対して、政府に対してどういうふうにお考えになつておりますか。
  25. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) そういう問題もあろうと思いますが、ただ今日はこれに対する批判であつたものですから、直接的な事例を挙げたに過ぎません。
  26. 阿具根登

    ○阿具根登君 私がこういうことを言つたのはやはりこれに関連しておると思うのです。それでその中の一つを引例されるならば、そのもつと大きなものを私はお尋ねしたわけでありますが、あなたのほうも忙しいようですし、忙しいのにわざわざおいで下さいまして公述願いまして、これ以上私は討論めいたことはもう差とめます。
  27. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 私、中小企業者としまして仕事をいたしますのに、やはり家屋敷あらゆる物を投出して素裸で企業を始めております。たくさんの友人知己からも株を募集いたしております。それがしくじれば一朝にして私は世の中に顔向けのできない人間になつてしまいます。こういうような非常な苦心をしておるのが中小企業の現情でございます。而も非常に日本の経済は底が浅い、そこに大きな打撃を与えられる、電気は来ない、納期は切迫する、できない、罰金はとられるというようなことで倒産する者数知れずという実情でございます。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 私やめたいと思つたのですが、倒産する者数知れずというのですが、あの六十日のストの間にそういうことがあつたといえるかも知れません。併し終戦から七年間に倒産した者と比較したらどれだけ数知れずでしよう。あなたは、非常にストさえなかつたらよかつたといわれるかも知れませんが、或いはもつともつとやはりそういう苦しみが一つの現われとなつて来ておるのではないか。それでそういうことがないように法律で罰するということじやなくて、何か方法はないかといわれるのが第三者意見のようによそでも聞いておつたものですから、蛇足にお聞きしたのです。もう忙しいところ、ほかの人もありますから私はこれでやめます。
  29. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 白土さんにお聞きします。さつきの公共福祉のほうのこの調整の問題のときに、九〇%の労働者の利益をこの法案が成立すれば侵すというような、そういうような言葉がありましたが、私の聞き間違いですか、それを伺つてから……。
  30. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) 国民の九〇%以上を占める労働者がおるという事実、このことを無視したところの、この環境を度外視したところの公共福祉という政府考え方はおかしいのではなかろうか、こういうことであります。
  31. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 そうすると、国民の九〇%が労働者であるというお考えですか、国民の九〇%が労働者であるというところから今の意見が出ておるのか。
  32. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) 国民の九〇%以上を占める労働者がおるという考え方で申上げたのであります。
  33. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 それはどういう統計でお出しになつたか、その出所を私はお聞きしたい。
  34. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) それは私、労働組合におりますので、労働組合で調べておるところのもの、或いはいろいろな国民統計の上からも勤労者或いは労働者と目される、我々が労働者と称するところの者は、国民大衆の中の九〇%以上を占めておる。このように我々は認識しておるのであります。
  35. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 私はどうも国民の九〇%が労働者であるという考え方は、それは働くということが労働者であることに定義すれば、これはあるかも知れませんよ。いわゆる労働者という言葉で表す場合に、どういう範囲のものを労働者と言うか。大体常識で判断して、そういう場合の定義の下に労働者というものが九〇%以上おるということはちよつと……。
  36. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) その統計上のことが若し間違いであれば私も訂正することにやぶさかでありませんが、私今まで労働組合の諸問題を扱う中で、そうした多数の労働者日本国民の大多数を占めるという基礎概念には変りはないのであります。従つてこうしたパーセントのことを、私がここで以上と言つたことが若し統計上間違いであるというなら正しい統計によつて修正することにやぶさかでありません。ただ私の概念というものは、労働者として我々が考えた場合の基礎概念に出発しておるということであります。それが他の概念からいやこのようなものは労働者と目すべきでないというなら、これは基礎概念の相違であります。
  37. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 問題は九〇%の労働者、これが数字が少しどうも……、動いてもいいのですかね、それがこの法案の成立に反対しているというなら、その労働者というものは、あなたの言う労働者、非常にあなたの都合のいい勝手な数字だと思う。というのは、農村の南をお聞きですか、農民の本当の声をお聞きですか、或いは中小企業の声をお聞きですか。あなたの考えでは恐らく労働者という中に入れていいのではないか、九〇%というのは。
  38. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) その通りです。農民或いは中小企業という方々がこれは使用者という概念にはならない。そのような考え方で、そういう人たちが然らば労働者でないという概念が出てくるか、むしろお聞きしたいのです。
  39. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 議事進行について。概念の相違の点で御議論だと思うのですが、先ほど三段崎さんからも中小企業の労働者が七四%云々というお話がございましたが、これはまあ輿論もありますけれども、そういう意見の食い違いをここで討議しても時間がたつのがもつたいない、質疑に入つて頂くようにお願いしたい。
  40. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 この問題はそれだけに切上げます。  もう一つお伺いしたいのですが、さつきの仲裁制度の御意見が、結論がはつきりしなかつたようですが、結局あなたはこれには賛否を留保することになりますか、結論は。仲裁制度に対して。
  41. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) 先ほども申述べたのですが、仲裁制度ということの強化ということについては、強化してこれを運用する場合のいわゆる運用の方法は、逆にストを禁止するためのいわゆる変形的な形においてこれが運用されては非常に問題がある。従つてこの仲裁方法の問題については、日本の国情というものに照してどのような仲裁のあり方が最も日本の国情に適合したものであるかということについては、私自身十分その結論を持つておるわけじやありません。従つてこうしたことについては、その仲裁制度の最もいい方法があるなら、学識経験者によつて十分研究の余地があるだろうし、そういうことまでも今直ちにここで今から反対だと否定すべき考えは持つておりません。
  42. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 もう一つ伺いたいのですが、憲法等二十八条の団体行動権のことですが、これが第十二条或いは第十三条の公共福祉というものによつて制限されるということは認めるということまではわかつたのですが、その先どういうお考えつたのですか、ちよつと承わりたい。若し私が聞きそこなつているようにも思うので伺いたい。憲法第二十八条に対する団体行動権について御意見、さつきおつしやつた意見をお聞きしたいのです。
  43. 白土松壽

    公述人(白土松壽君) ちよつとその点はお待ち下さい。若し私が言つた通りのことを、その通り言う必要があろうと思いますが、原稿を先ほど向うへ持つて行つておりますが、簡単に申上げてもいいです。この問題については、第一段と第二段に分けて話したわけですが、政府公共福祉ということを掲げて公共福祉に違反するからいけないのだ、公共福祉に違反するものまでも憲法の二十八条において認めているわけではない。私はこのことはあえて否定していない。併しながらそれじや公共福祉ということは、その限界がどこにあるのだ、その限界ということは、その状態の中で判断されなければいけないことなんです。いわば争議行為労働組合が制約された場合、労働者がどのようなそれによつて不利益を受けるか、又争議行為が、一方発生した場合には、一般の大衆がどのような不利益をこうむるかというその状態においてこれは判断すべきものだ。従つて政府公共福祉に反することまでも許してはいけないのだから、直ちにこのような法案を作ることは違法ではないかということは、問題はいわゆる公共福祉というその概念に問題があるのじやないか。若しここにこうだという限界を規定できるならば、これは又考えようがある。併しながらこの限界はその状況において判断すべきものであつて、不可能だということであります。これが第一点。  それから第二点の主張としては、労働組合が憲法によつて労働組合の存在、存立と労働組合としてのスト権を認められている以上、そのことによつて成るほど争議行為が発生するなら、一時的には国家経済に対して何らかの損失を与えるかも知れない、これは事実であります。併しながらその争議行為を通じて労働者のいわゆる生活保障が成り立つならば、ひいてはこのことによつて国家のいわゆる生産性が強化されるという見解も成り立つではないか。国家生産性が向上するならば、国家経済に対して寄与するところが非常に大きい。このことはいわば国家福祉を増進するということにもなるのであつて、広い意味からいうなら、ストライキそのものは決して国家福祉を阻害することにはならないんだ、これが第二の論点であります。
  44. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今日の午前中の公述は電気関係が主で、あとは関係者として労使といいますか。或いは賛否の御意見を承わつたと思うのですが、そこで平井さんの御陳述を承わつておりますと、私ども北海道で承わりました北海道電力の代表者の御陳述と大変よく似ておつたのでありますが、そこで北海道で私どもが見ました実績から考えますと、平井さんのお言葉にもありましたように、一五%から二五%の電源ストがあつた。ところがその影響はどこできまつたか、これは電力供給責任を持つておられ、或いは供給のスイッチを握つておられた経営者にあつたのではないかとまあ考えるのであります。その細かい点等については私よりも事情をよく知つております藤田君に御発言を願うことにして、その点等も合せてあとで平井さんに御答弁を頂きたいと思います。
  45. 田村文吉

    ○田村文吉君 質問がある、ないならないで委員発言を先に……。
  46. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御質問ありませんか。  それでは藤田君の発言を許します。
  47. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 藤田でございます。通産行政との関連の非常に深い今次石炭鉱業並びに電気産業に対する立法スト規制の問題に関しまして公述人に若干質問をいたしたいと思います。  先ず最初に三段崎さんにお伺いしたいのでございますが、御公述の中に昨年の労働法令審議会の過程において、我々はインジャンクシヨンの制度を主張して来たが、ここにこの法案が出たことによつてその主張が貫かれているかのごとき御意見の下に御賛成であつたように承わつたのでありますが、そうでありましたかどうか。
  48. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) それは違います。我々はこう主張したんだけれども、論議の経過で緊急調整制度というのが用いられるようになつたという趣旨でございまました。
  49. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) そういたしますと三段崎さんの御公述によるインジャンクシヨンというこの御主張は、すでに緊急調整という形で具現されて来たという御説明になりますか。
  50. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) そうではございません。
  51. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) そうではない……。
  52. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 我々の主張が容れられなかつたという趣旨で述べたつもりでございます。
  53. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) インジャンクシヨンを主張して来たが、それは緊急調整でもインジャンクシヨンと違つてつていないし、今度のスト規制法についてもインジャンクシヨンのこの考え方、手段は入つていない。いずれにも入つていないからやはり主張をして来たインジャンクシヨンというそういう制度は、やはり必要だとお考えなんでしようか。
  54. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 必要だと考えております。藤田さん、その当時のことをもう一遍ひもどいて見られるとわかるのですが、私は単にインジャンクシヨンという簡単な言葉で申しましたが一いろいろの条件がつい薫りまして、単に争議廃止命令ということではなかつたのであります。
  55. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) そういたしますと、御公述の中にあつたインジャンクシヨンということについて明らかに把握をしたいと思つたのでありますが、インジャンクシヨンについては、緊急調整はインジャンクシヨンに相当するものでないし、このスト規制法もそうでないといたしますと、我が日本における労働法制といたしまして、インジャンクシヨンという制度はまだ明らかに残つておると考えてよろしいのでしようか。現行法、このスト規制法も含めてこの三つのことが一応コントロールとしては考えられるのであります、インジャンクシヨンとして。だから別個の形として日本ではまだ残されておると考えますか。
  56. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) インジャンクシヨンを採用すべしという主張というものは私は年来の主張でございました。ただ先ほども申述べましたように、スト規制法では三つの部面がある。目的を規制するということと、それから社会影響から規制するということと、それから争議行為方法規制するという三つの部面にわかたれるであろう。こういうことを申しましたが、このスト規制法は争議行為の一部を規制する、そういう趣旨だから、そつちのほうとは全然多少離れた関係になるというつもりでございます。
  57. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) いろいろ議論はあるのでしようが、御公述の全体を見ますと、今言われたように、緊急調整はインジャンクシヨンにも相当するようなものだということで公述があつたように私は印象を受けたわけです。即ち小規模のものからだんだん大規模になつて、そうして国民生活に現実に回復しがたい影響を与えるという場合に、差止命令、これは無論本来のインジャンクシヨンというものよりは違つた、少し条件の整つていない極めて不完全なインジヤクシヨンということは事実であるが、併し差止命令に関する限りは、このインジャンクシヨンの一部をとつておる、そういうふうに思われるわけです。ところがもう一つのこのスト規制法で参りますと、その規模如何にかかわらず初めから駄目なんだ、こういうところに目的が二つあるのだ、違つておるのだ、こうおつしやるのですか。
  58. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) そういうことでございます。
  59. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) よろしうございますね。そういたしますと、私は疑問が起りますのは、問題は目的が二つあると言われておるのですが、そもそも政府がここ提案いたしておりますこの法案は、これは争議行為手段規制するのであるが、それはなぜかといえば、結局公共福祉を、やはり法益の権衡の面から侵害をする。こういう点から、憲法十二条、憲法二十八条の兼ね合いでもつて法案を出しておるのだとおつしやるわけです。それから一方翻つて緊急調整、現行法を見ますとこれも公共のの福祉ということが現実に存在する場合非常に厳格であるように見えるが、要するに公共福祉という面、これがやはり唯一無二の理由になつておるわけです。従つて共公の福祉という面からいたしますと、これ以外の理由はないわけです、今度のこの法案も。そういたりしますとやはり目的は一つであるように思うのです。併し他に目的としてここに掲げられるものが二つあるとおつしやるならば、もう少しはつきりと、もう一つの目的は何かということをお聞きしたい。
  60. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 漸く藤田さんの御質問の趣旨がわかつて参りましたが、公共福祉というものは全体を貫くところの一つの根柢になる。それを擁護するために三つの方法があるのではないか、そういう趣旨でございます。
  61. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 三つの方法があるといたしますと、今言われたインジャンクシヨンというものを別に用いられておると思うのです。もう一つは、併し緊急調整のうちにむしろ入つているとみなさなければならない。当時の緊急調整の政府提案並びに質疑応答の中から吉武労働大臣でしたか、明らかにされたのは、インジャンクシヨン、アメリカでは六十日だが日本では五十日と言われましたが、そういう答弁がありましたが、一応二つ残されておる、その手段には公共福祉を守る手段としてはやはり立法上二つの手段になると思います。併しながら三つあるといたしましても、その一つは実定法として現在出ておりますね、実施されておる緊急調整、労調法の三十七条ですね。こういうものが現実にあるならば、そうするとやつぱり二つあるもののうち一つ出しておるのだから、屋上屋にはならないかという議論が今たくさん出ておるわけですね。その点について如何でございましようか、
  62. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 私は先ほどから申述べておりますように、スト権は公共福祉というものの調和で権利は認められなければならんということが、根抵をなすところのものです。それが、ですからあらゆる場合に、公共福祉というものが根抵として貫いておる。その規制する方法としては、争議の目的を規制するというやり方もあろう、争議手段規制するというやり方もあろう、争議影響を主眼点に置いて規制する方法もあるだろう。まあ電産の場合においては、つまり争議影響度が非常に強くなつてからでは、経済の底の浅い日本ではもう間に合わなくなるから、争議手段規制としてこれを用うべきである。それで公共福祉ということは、根抵を貫く観念ではあるが、争議影響度という面からではなくして、争議手段という面から規制するのがこの法案であろうというふうに、私は私なりの考え方を申述べたわけであります。
  63. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) その点はわかりました。そこでよく公共福祉ということについて、直接中小企業の立場から御発言もあつたと思いますが、皆さん職場工場におきましては、結局電気がとまることですね。予定していた正常な状態であるならば、若しストライキがなかつたならば電気が来たであろうに、ストライキがあつたために一時間なり二時間なり電気が来なかつたとか、こういう現象について問題があるのであつて、それ以外にはさして中小企業の皆さんも問題はない、電気さえ来れば何ら公共福祉には関係はないのだというふうに考えられるわけですか、その点は如何ですか。
  64. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) もう一遍……。
  65. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 簡単に申上げますと、公共福祉であるということは、結局電気産業におきまして電気がとまる、つまり中小企業の三段崎さんの工場ではモーターがとまる、なぜかと言えばストライキであるからという。つまりその趣旨如何にかかわらず電気がとまるということが公共福祉の問題に直接なると、こう思われるのですか。電気がとまろうがとまらなくてもストライキでは駄目だという議論もあることはあるのですが、その点中小企業の立場からどうお考えか、電気さえ来れば問題はないのか。
  66. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) それはお説の通りであります。
  67. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) そういたしますと、結局このスト規制法は御承知のように、初めからもう一部技術者、発電所等における変電所給電指令所、こういうところの労働者は初めからストライキをやつてはならんという説明があるわけです。そこはよく隘水罪などが引用されるわけですが、これとても無条件ではないのです。小川に、田圃に水を入れるために小さい五十センチか或いは六十センチの堰があつて、水を落そうかと言つて水をちよつと落した、これが溢水罪として刑法に触れるかと言えばそうではない。その電気事業におきましては、小さい発電所、大きい発電所、火力、水力があるだろうと思いますが、小さい発電所などはこういう問題でストライキなつた、全体の分野から言えば大して影響はない、一つや二つの発電所がとまつても殆んど影響はない。変な例ですが、海で小便をすれば、理論的には水位が上つておるには違いないが、それはなかなか人間のスケールには測り知れないもので、これは極端な場合ですが、電気でもそういうことがあろうと思う。或いはサイクルやら電圧の操作によつて、制限しなくても済むということもあろうと思う。併しそういう場合でも駄目だという説明が、この規制法に与えられておるわけですが、併し実際に影響がないならば、それは問題はないということが言われたので、その点はよくわかりました。  そこで次にお伺いしたいのは、先ほど有名な労働法学者でやはり追い討をしてはいかん、すべきでないというお言葉があつたと思いますが、若しお差支えなければ、有名な労働法学者はどなたか、お伺いしたいと思います。
  68. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) それはまあ民労連でスト規制に対する批判会があつた、そのときに石井君の発言であります。
  69. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) それから、お急ぎのようでありますから、私もう一点だけにとどめたいと思いますが、昨年の電産のストライキは確かに長くなりましたし、予想外に深刻になつたと私も感じております。そこで労使間の紛争議、こういつたものは先ほどの御公述にもありましたが、あれでは困るとおつしやつておる。それはお困りになつておる事情もわかりますが、紛争議、更に争議手段、いわゆるストライキ、こういうものについて一般論は別といたしましても、昨年の電産、炭労の場合、仮に電産の場合を例えてみましても、労働組合がほしいままにストライキをやつたのであつて、そのような迷惑をかけたというふうにお考えになつておるかどうかの点が、この法律を必要とするかどうかの点にも関連すると思うのであります、そこでおよそ概略で結構ですが、昨年の争議の場合、確かに労使の同じような対等の力関係なり、そういつた立場において問題が、そこにおのずから紛争議となる問題があつたかと思うのでありますが、その問題について必ずしも労働組合だけが、会社が許すというのに、まだまだと言つて頑張つたようにも思われないわけです。非常に八カ月に亘る争議状態でありましたが、その間前後を通じてみて、会社側に対してもやはりあれではという点が指摘される場合があると思います。本日の公述人の中にも、神山電産の委員長の御発言を聞きますと、やはりその点が強く出ておると思います。中小企業の皆さん立場から、昨年からいろいろな会合を持たれ、検討されておるように聞くのでありますが、果して昨年の争議の実態というものについて、二、三重要な点を特にこの際お聞かせ願いたいと思います。
  70. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 私はそういう点は平井公述人が経緯は知つておられるので、私は全然の部外者でございますから、それほど十分承知しておるというわけではございませんが、全般的に昭和二十六年の十二月の四日に賃金ベースをおきめになつた、それが一万二千八百円。僅カ四カ月後にもう賃上げの要求をしておられる。それが二十六年の十二月以来はおおむね物価は横這いであつたように記憶しておりますが、四カ月たつてから出された要求内容は少し高きに過ぎて、我々の常識としては考えられないものである。まあ先ほどもちよつと申上げましたように、一時間あたりの賃金は電産が九十六円七十銭、一般の産業はその当時六十五円七十銭であつたというようなこと、それから十一月の末でございましたが、中労委から第二次の斡旋案が出ましたが、それに対して経営者受諾したが、電産は拒否された、そういうような全般的な空気から見て、電産争議として一貫して流れている思想が、総評の賃金闘争というものであり、再軍備反対闘争によつて貫かれていた政治闘争であつた。ここにマーケット、バスケット方式に基く厖大な要求が作成されて、あなたがたよくおつしやつていたように、総資本との対決というようなあの争議が指導されたというふうに考えております。そのとばつちりを中小企業が一々食つていたのではたまつたものではない、こういう感じを持つわけであります。
  71. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 先ほど細かく数字を言われておりますので、かなり御研究になつておるように伺うのですが、一時間当り六十六円七十銭とか、それかう一般が六十五円何がし、こういうことなんですが、電産の場合に九十六円何がしといいましても、いわゆる電産賃金や国鉄賃金という、あの平均賃金ですね、全労働者の一カ月あたりの平均賃金、これは幾らになつて、勤務時間がどれくらいになりますか○九六・七円にいう算出ですが、これはこうなつて来ないように思うのです。
  72. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) それは私はその結果だけ知つているわけでございませて、いろいろの基礎もございますけれども、私はここに持つて来ておりませんから御説明いたしかねるのでございます。
  73. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) これは若し基礎が違つているならば、御指摘願いたいと思うのですが、九十六円七十銭とかおつしやつておりますけれども、勤務時間四十二時間で、平均賃金が一万五千四百円、これはすでに公務員などに対する人事院勧告にも一万五千四百八十円でしたか、何かこれは人員構成その他からいえば、恐らく電産の場合は一万八千円以上にならなければならんのじやないかと思われますが、これは朝日新聞にも指摘されておりましたが、こういうふうになつて九十六円七十銭の時間賃率というのは、私の研究ではやはり人員が足りないために、殆んど時間外勤務をしなければならない。これは無論経営者側ですが、本店の部長さんとか課長さんとかいう人たちも含めた賃金で、そういう人たちの時間外を見ますと、或るところでは、東北電力などでは一人一カ月四万円の時間外を出しておるというものも統計に出ているのです。そういうものもごつしやにして、給仕さんやら事務員、技術者など一般の人々の平均賃金ということになつており、且つ時間外賃金というものが、非常に人員が不足のため、大体昭和二十年頃から見て恐らく一万以上の人員が減つていて、職場は逆に殖えておる、このように感じておりますが、若し間違いましたら御指摘願うとして、私の三段崎さんに対する質問を終りたいと思います。
  74. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それではどうも有難うございました。
  75. 三段崎俊吾

    公述人(三段崎俊吾君) 私ちよつと最後に自分の発言を訂正しておきたいと思いますからお許し願います。先ほど私は青白きインテリの説は、私としては問題にしないと、こういうことを申上げましたが、実際は私はそう考えておりません。言葉の都合でそういうのが飛び出して来たかと思いますが、これは私の尊敬する友人たちために取消しておきたいと思います。それでこの趣旨は、これは学者諸君の紙の上の議論ではありません。私のみずから現実に体験していることを語るのであります。こういう趣旨に御訂正置きを願いたい、こういうことであります。
  76. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) それでは簡単に平井さんに是非お願いしたいと思います。
  77. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それじや極く簡単に一つ御質問願います。
  78. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 先ず平井さんにお伺いしたいのでありますが、公述されております中に、極く一部の人に対する争議手段の制限であるので、さしてその罷業権の剥奪なり、抑圧についての議論は問題ではないという御意見がたしかあつたやに思うのであります。そうでございますか。
  79. 平井寛一郎

    公述人平井寛一郎君) 大体そういう意味で申上げたのでございますが……。
  80. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) そういたしますと、結局一つのこういう固定したところの観念があるのじやないかというふうに私は一つの疑義を持つわけです。この疑義をはつきりして頂きたいと思うのですが、今日電産或いは炭労についても、その差こそあれ、言えることは、いつまでも電産労働組合というものが同じように移動のない電気事業労働者を以て組織されるとは限らない。これもやはり或る意味では生きものでありますので、会社と仮にユニオン・シヨップ、クローズド・シヨツプを結んでみても、やはり流動していると思います。仮に発電所だけの労働者、発電所だけの労働組合、殊に関東地方におきましては、比較的電源の発電所の労働者が多いようにも承わつているわけでありますが、そういう発電所の技術者が何らストライキ手段がないということに、この第二条はなつているように政府から伺つております。そこで問題となりますのは、今の公述と食い違うように私感じておりますのは、そういう発電所の技術者についていろいろに日常一或いは賃金の問題もあろうと思うのであります。ところが会社と交渉いたします際に、平和的に解決をしたいけれども、いよいようまく行かないというときには何ら手段がない。労働委員会に対しても、調停を申請する、会社は呑めないという場合も予想されるので、現実において仲裁は無論両者が一致しなければ、会社も仲裁がよろしいといわなければ、仲裁にかけられないという制度が現在そのままになつているのでありますから、そういう発電所の人たちというものは、全然組織の違つた本店や或いは営業所や支店の労働者が事務ストか何かやつてくれないだろうか、その圧力で自分たち発電所の問題を解決したいというような希望を待つだけであつて、お前たちの問題は発電所の労働者解決しろというようなことが今後においてもあり勝ちだと思います。そうなりますと、全然何らの手段もないというふうに考えられる点が一つ。それはほかに発電所の技術者労働者についてはこういうものが残つているというものがあるか。全部ではない一部の制限だといわれる公述の中から、どういうものが発電所の技術者に残されているかという点が一つであります。  それからもう一つの、第二の点は、極く一部の労働者、数におきまして量において極く一部の労働者だといわれておりますが、昭和二十七年の統計、その後におきましても、発電所、変電所が殖えている一方でありますが、その昭和二十七年の末におきましても、水力、火力の発電所の数だけで千三百五十からの箇所があるように思うのであります。この法案には無論一次、二次変電所を加えまして、更に給電指令所、こういうふうになつておるようでございますので、こうなりますと、この発電所、変電所の数だけでも実に厖大な数字に上るし、その発電所にも今日の設備から見て、ワンマン・コントロールは殆んどない状態でありますので、相当な勤務員がこれに掛合わされて、千三百、恐らく二千余りの職場に対して五人、十人或いは火力では三百人、相当な人員であるかのように想像されるのでありますがこれは極く一部の人員だとおつしやる以上、やはり明確に、数字が何人までと言はないといたしましても、大まかな電気労働者が何人いる中に、発電所が何人、変電所が何人、給電指令所が何人、この対象にしたものは何人あるから、従つて大した数ではない、こうなければならんと思われるのですが、この点数字的に一つお伺いしたいと思うのです。明らかにして頂きたいと思うのです。  第三の点は、この規制法についてはしばしば言われますように一翼の福祉というものが大前提となつているのでありますが、併し一面、政府の説明を聞きますと、今までの通り、罷業権を電産についても或いは炭労についてもですが、電産についての部分だけお伺いしますが、今まで通り許していたならば、これは経営者が非常に困ると、何でもかでも組合の言うことは聞かなければならんようになるので、労使の力関係がアンバランスになるのではなくして、丁度よくなるのだという御答弁が、実は昨日政府からあつたのであります。果して今までよりは、このスト規制法が出たほうが会社としてはやり易くなるものか、交渉上におきまして、電源ストをやるということは恐らくなくなるわけですから、会社としては楽になるようにも、政府のおつしやるようにも聞くわけでありますが、この点、従来よりも却つて交渉が組合に譲らなければならんという逆現象を起すのか、或いはそうでなしに、会社としてはやり易くなるとお考えになりますか、この法案の作用、影響が、会社にとつて……。これが第三の質問でございます。  他にございますけれども、他の委員もお待ちのようでございますから、以上三点をお伺いいたしまして、場合によれば、三点に関連して若干明確にしたいと思います。
  81. 平井寛一郎

    公述人平井寛一郎君) 成るべく簡単にお答えいたします。  第一の点につきまして、組合がいろいろと職場ごとに分れた、別々に組合を作ることがあるという前提でのいろいろ御質問でございましたが、そういうことがあれば、或いはそういう職場の種類によつて、或いは組合の持つておる職場の範囲によつて、許された争議手段の割合というのは、個々には変ると思います。これは職場の性格の相違によつて止むを得ないことだと思いますが、丁度これは広い意味で申しますと一般ストライキ権を持つておりますけれども、組合としては一部の今が争議権を規制されておる。それが例えば公務員という職種についてみれば、これは全面的にストライキ規制せられておるというような特殊のケースがあるのと同じようなケースになるのではないかと思うのです。これを皆同じようにやるということは扱いにくいと思いますけれども、併し電気事業としてこの問題に対処いたします場合には一やはり組合がいろいろ別になつておりましても、それらとの間の労働条件というか、待週の問題について不当な差等扱いは、これは成るべく避けるという線で、会社としても善処するのが当然の途でありますので、その点についての御不安は十分我々としては善処して行きたいと思います。  それから第二の点は、発電所の場合にという御質問でありましたが、これはやはりまだほかにも争議手段は若干ないことはないと思いますが、発電所の場合といたしますと非常に少い。何と言いますか、争議手段の範囲は狭いと思いますので、他の職場に行つたら、職場によつては非常に広いところもありまして、私の申上げましたのは、電気事業全体の数字、全体から見れば割合少いのではないか、こういうふうに申上げたのでありますから、その意味に御了解願いたいと思います。それから然らばこの法案通りました場合にどの程度の人員が争議権を規制される対象になるかという御質問でありまするが、今私手許に数字資料等を持つておりませんけれども、この点につきましては、法律が通れば当然に電気の正常な供給を阻害するようなことができないような形になる範囲の者が大体二割くらいあると思います。そのほかに実際的に争議が短期間のものであるか長いものか、いろいろその争議の様態によつて一概には言えませんし、又そのときのいろいろな気象現象その他もありまするから、不測の事態もあるのでありまするが、そうした争議のさ中にあつて、いろいろな大きな故障が起るとか、或いはそういうふうな故障の応急復旧乃至は非常な暴風の警報が出る場合に、それらに対する事前の防止というふうな場合には、そうしたときにはやはり会社としては供給の大きな遮断のないようにという意味においての準備をしなければなりませんから、こういう場合には只今申上げました数字のほかに、若干の人数は当然殖えるものと考えております。  第三の点は、私先ほどの公述においても申上げたのでありまするが、この法委が通過いたしました暁におきましては一体どうなるか、たしかに労使間の問題でありますから、我々としてはできるだけ自主的に当事者間の話合いにおいて円満に解決して行きたい、その線で当然善処するのでありまするが、今まではそうした話合いが、お互いの見解の相違とか主張等もありまして、早期に行かない、結果的には行きにくいような場合も起るのでありますけれども、それが直ちに従来は停電という形で国民の皆さまに非常に大きな御迷惑をかける、その圧力の下で戦後何年かやつて参りまして、その苦い経験から申しますると、とにかくこれ以上皆さまに御迷惑をかけてはたまらないからというので、不満足ながら事態をとにかく収拾するという形をとつた、それがだんだんインフレ等の傾向の過程にはあつたのでありますけれども、電産の賃金がいつも労働争議のトップを切つておるやのような非難を我々に強く浴びせられましたような苦い辛い過去からうまするというと、そういう点について自主的に公正なる解決への道がむしろ開かれるのじやないか、こういうふうに考えております。それから均衡という言葉がございましたが、これは先ほど公述申上げましたように、私どもはむしろこの法委が通ることによつて電気産業については昔より均衡がある労使関係が成立すると考えております。内容は先ほど申上げた通りであります。
  82. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 一つだけ不明確でありますから……、発電所の技術者などについてはなお幅は狭められるが、若干の争議手段が残つておるといわれておりますが、若干残つておるのは具体的な争議として河が残つているか、残つているといわれる以上、残つたものが明らかにあるはずなんですから、その点と、それからそういうふうに若干のものが残つておる、それがあつたとしても、それで労使均衡が保てるというのであるか、全然罷業権はなくなつてしまうが、一方では経営権というものがあるのだということで、均衡論を少し伺いたいと思います。
  83. 平井寛一郎

    公述人平井寛一郎君) そういう発電所だけの問題について均衡論を申上げておるのではないのであります。一応全体として申上げておるのでありますが、発電所だけを摘出してお話になりますれば、確かに大部分のものは運転に従事しておるものが多いのでありますから、その運転に従事しておるものについては、どうしても運転を継続しなければ困るのでありますから、それ以外の発電所の大きなところにおきましては、事務系の仕事をしておるものもありましようし、或いは又小便というようなものもございましようから、そういう形としては従事しておるもの以外のものもございますので、全然ないとは申上げませんが、確かに水力発電所火力発電所においては運転関係の人員が大部分を占めておるということにおいて、それは極めて少いということは申上げざるを得ないと思います。
  84. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 参考人の皆様一言お礼を申上げます。お忙がしいところを長時間御意見を頂きまして有難うございました。二時まで休憩をいたします。    午後一時二十一分休憩    —————・—————    午後二時二十七分開会
  85. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き会議を開きます。  午後おいでになりました参考人の各位に一言御挨拶申上げます。大変御多用中のところを当委員会法律案審査のために御公述を願いたいということでお招きいたしましたところ、快く御来会頂きましたことにつきまして、厚くお礼を申上げます。只今から順次御意見を伺うことにいたしたいと存じます。先ず石炭鉱業連盟専務理事早川勝君の御意見をお願いいたします。
  86. 早川勝

    公述人(早川勝君) 私は日本石炭鉱業連盟の早川でございます。それでは私の考えを申上げます。時間の点でございましたら一つ御注意をお願いしとうございます。  私、戦後からずつと石炭経営者の団体の執行機関に当つておるわけでございますが、その間常に日本の最大、最強の炭鉱の労働組合団体交渉争議行為等に直面して参つたものでございます。それで私自身の経験の中から考え、又社会通念としてもこうであろうと思つておりますのは、このストライキというものに関するところの考え方なんでございます。法律の条文そのものにもございますけれども、労使意見が一致いたしませんで、そうしてそこで不幸にも話がどうしても合わないときは、やむなくストライキという行為に入る、これはまあ非常に不幸なことでございますけれども、そういうことになる。その実力行使段階におきましては、双方が互いに受けます経済上の損失というものを我慢をして、そして自分の主張を通す、こういう態勢に相成つていることと思うのでございます。その実力と実力の押し合、そのことは余り褒めたことでございませんけれども、ほかに手のないときはそういうふうに相成りまして、その中から或いは妥協点を求める、或いはどつかその損害なり苦痛に堪えかねてへこたれるというほうが負けると、こういうような過程なり道行きにおきまして、ストライキというものがまあ行われているのだと思つておるわけであります。私の昨年経験いたしましたストライキは勿論のこと、その前も、前も、年々ストライキがございまして、誠に当事者として不手際で申訳なく思つておりますが、少くともストライキのルールというものは、そういうふうに双方が経済上の損失を我慢しつこするというところに、実力行使というものの本体といいますか、実力行使関係によるところの労使の押し合いというもののルールがあると考えております。  昨年、本法案には直接の関係のないことでございますけれども、大きな経済上の事情によりまして、又相手方の組合としても一つ考えを以て要求主張をされます、その点が合わないで長く相成りましたことは、実に残念に思つておるわけでありますが、ありように昨年のほぼ最終段階におきますところの、而もこの法案関係のございまする点のみを申上げますと、長いストライキの終盤戦頃になりまして、中央労働委員会が乗り出されて斡旋案を提出し、会社側としてはいろいろの事由があつて呑めませんでしたけれども、当時の社会情勢、社会に与えておる影響というものを考えまして受諾いたしました。ところが炭労とされては、その際に、これを拒否されたのでございます。十二月七日に提示された斡旋案に対しまして炭労側は拒否され、経営者側はこれを受諾いたしました。ところで、そのままの状態でずつとストライキが継続されまして、而も十日の日に至りまして、この問題となつております保安要員の引揚げという通告を私どもは受けたわけであります。いわば斡旋案そのものについて気に入らんから、なお更に自分たちの主張を通すというばかりの主張に基いたものと考えざるを得ないのございます。この保安要員を引揚げましたならば、どういう事態になるかということにつきましては、もはや各委員皆様がたもそれぞれ現地を御覧頂いておるようでございますので、ここで申上げることは省略いたします。で、私ども長年の経験及び労使慣行に基きまして、先ほど申上げましたようなルールに基いて、不幸ストライキに突入されたときにもも、そういう立場でやつておりました。又その間やはり保安の問題だけは労使ともこれを重要視いたしまして、常に現場においては協約を結び、中央においても別途協議するという話合いになつておりました。ところが昨年その点につきまして思わざる状態が起つたことでございます。これは私ども長年の慣行によりますところのルールに違つていると考えるのでございます。このルールに違つている点は、やはり労使関係を是正して行くためにも必要で、こういう点を是正して行くことがまあ必要であり、又労使関係というものの是正ということによつてのみ初めて、たとえ不幸にして労働争議ストライキになりましても、一旦解決しますならば双方釈然として職場に復帰し乃至は社会に御迷惑かけておる点は申訳ありませんけれども、或る程度社会も容認して頂けるのではないかと思うわけであります。そこで、私どもは従前のルール通りにやるのが正しいのである、そのルールを逸脱している部分につきましては、これは是正されるのが当然だろうと考えております。一部に何だか組合側のやることばかりを制限しているというような意見を述べられる者があるかに伺いますけれども、私はこのルールに違反している点を正常な状態に引戻すということなのでありますから、別段に一方にだけ何か痛いことをさしているということではないと考えるのでございます。若しルール違反を強制するに応じて、他の側にも何かばつ点を食わすということであれば、それは却つて不公平で、むしろフェアプレーでないと考えるわけであります。なおこの保安要員のストライキ、保安要員を引揚げるという争議戦術自体が、経営者側にとつて濫用されるのではないかという意見をなすかたがあるやにも聞きますけれども、従前ともこういう保安要員に関するところのまあ問題を起さないで、そしてルールに基いた実力行使によつて片付けた実例は毎年のごとく多々にあるのでございまして、それによつて経営者自体は決して多寡をくくつて行くとかいう考えは毛頭ございません。相当は損害を受けるわけでございます。従つて事態はそう決して甘く考えることは一度もございません。常にストライキそのものは成るべくこれを防止し、成るべくこれを収拾するということに努力いたしておるわけでございます。まあこれは個人的な考えでございますが、ストライキ自体も、このルールの中における問題といたしましては、労使双方に、或いはどちらかに何か事情がありまして、その事情が、原因があればこそストライキにもなるのではないかとさえ思つております。従つて、私はストライキそのものが起れば、やはりみずからも反省いたします。そして相互がそういうふうに反省し、或いは他の欠点を補う立場から突いて、そうして労使関係を却つていいものにして行くというのが一つ日本の新らしい進歩形式ではなかろうかとさえ思つておるのでございます。私は従つてこのストライキ、保安要員の引揚げという、こういう特殊の手段などは組合側はとられなくても、堂々と今までのごとく主張を展開し、場合によつては、このストライキの圧力によつて、私どもの間違つておる点があれば、それを是正される可能性は十分にあると考えております。又現場におきましても、先ほど申上げましたように、従前から保安要員の出べき基準というものは、大体において一定いたしております。これは組合会社側において現実に協定をしておる実例があります。ただ事態の推移に鑑みまして、或いは固定した因習とは言えないかも知れませんけれども、それは労使の間において話がつく問題でございます。決してこれを濫用して不当に労働者を圧迫するという考えは持つておりません。同時に又私は労働者だからといつて甘やかしてはいかんと考えております。正しいものは正しくやはりされて行くような努力が必要でないかと考えます。  なお緊急調整等の法律があるから、これはそれによつて片付けられる問題でないかという意見を述べられるかたもあるようでございますけれども、緊急調整とこの法案とは事柄が違うように思うのでございます。およそストライキというものが問題になります場合に、そのストライキの目的は何かということが一つの問題点だろう。例えば労使間の経済事情に基かざるストライキが起るという場合に、今後問題が起り得ると思います。又そのストライキためによつて起る影響一般社会その他に対する、第三者に対する影響ということが問題になる場合があると思います。又ストライキ手段そのものが問題になる場合があると存じます。この緊急調整は第二のストライキ影響に関する問題であろうと考えます。この法案ストライキ手段に関するものであろうと思います。その例といたしまして、まあ昨年緊急調整が発動になりましたが、これは国民生活なり国民経済に与えます影響が非常に甚大であるためにとられた措置考えます。併しこの保安要員の総引揚げは、たとえ一地方乃至は一炭鉱においても、こういうことが起つてはいけないことと思うのであります。従つて法域も違うように考えるわけであります。以上申上げました点が私の考えでございます。  以上を以て私の意見を終りたいと思います。
  87. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 引続きまして、日本炭鉱労働組合中央執行委員長阿部竹松君の御意見を伺います。
  88. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) 私日本炭鉱労働組合の中央執行委員長阿部でございます。  この席でどうかと思われまするけれども、西日本の今回の災害につきまして、我々炭鉱労働者は全く瀕死の窮極に追い込まれたのでございます。この問題につきましては常任委員長以下各委員におかせられましては、早速取上げられて復興の万全を期せられているということをお伺いしておるのでありますけれども、この問題をよく取上げて一日も早く旧応に復するようにお願いしたいのであります。従つて場所が違いまするけれども、右お願い申上げまして本論に入りたいと思います。  そこで本法案内容につきましては、前回の国会或いは衆議院等におきまして、炭労の代表も出て参りまして、いろいろと我々の考え方も申上げたののありまするし、又憲法から生じて来る問題、或いは労働法に関するところの問題、こういう点につきましてはそれぞれの立場のかたが種々公述されておりますので、私は炭鉱労働者、坑内夫として十六カ年閥生活して参りましたこの純然たる炭鉱労働者のこの法案に対してどういう気持を持つて迎えておるか、こういうことについて意見を申上げてみたいと思います。従つて労働常任委員長から九つの点はついて諮問されておるのでございまして、この点について一つ一つ解明して行きたいと思います。  第一番に、昨年の炭労、電電の争議に対しまして、我々労働組合或いは、経営者のとつた態度についてでございまするが、この問題につきましては、なぜ長期化したかということが問題になつているようでございます。ここで我々が主張申上げたいことは、この六十数日間に亘つた争議の原因であります。昨年の九月三十日に我々の賃金協定が切れまして、十月の一日からの賃金要求をしたのであります。ところが我々の交渉相手である石炭鉱業連盟は我々の賃金要求値上げ反対は、現行賃金を五%切下げなければならんというようような意思表示があつたのであります。従つて現行賃金より五%切下げなければならんという我々の交渉相手の考え方と、現在の坑外夫七千円ぐらいのベースで生活して行けないという我々の考え方、これが真向から対立いたしまして、この対立があのような結果になつたということがはつきりしておるのであります。  なぜ然らば六十三日間も長期に亘つたかという理由でありまするけれども、この問題に起因いたしまして政府の、又或いは日経連の当然後楯があつたというように我々ははつきり考えておるのでありますけれども、この間に只今私の前に公述されましたところの早川専務理事の保安放棄という問題も出て参りました。併し我々は六十三日間に亘りましてストライキを敢行中に、保安の問題は万全を期さなければならんという観点から、却つて我々の機関におきまして各山々に保安の万全を期せという指令を出す、と同時にもう一つ保安調査団というものを派遣いたしまして、御承知のごとく法律第七十号によりまする鉱山保安法に定められておるあの枝葉坑道、その他の切羽の果てまでも維持しなければならんというような考え方から、保安調査団を派遣して万全を期するように努力をしたのでありまするけれども、或る場所の経営者至つてはその我々の派遣した保安調査団を拒否したというような態度に出たところすらあるようなわけであります。このような観点によりまして、遂に六十三日という結果になつたのでありまするけれども、只今申上げました通り保安要員引揚げという実際の行動に移したことは毛頭ないのであります。政府の発表或いはこの法案の提案の説明に当りまして、昨年炭鉱労働組合が保安放棄をしたから、従つてこの法律をこしらえなければならんということを言明しております。併しそれは事実無根でありまして、我々炭鉱労働組合は昨年のあの闘争においても、保安放棄をやつたという事実はないということをはつきり公述しておきたいと思います。  なお、この法案を提案するに当りまして、先月の十四日だと記憶しておりまするが、その数日前に私は労働大臣にも面接いたしました。そこに列席しておりまする安井次官にもお会いしたのであります。その時にこの十五国会において廃案になつたこの法案を再び出すのかどうかという質問をしたのでありますけれども、出すとも言明しませんし、出さんとも言明しません。現在考慮中であるということがはつきり言われたのであります。何故このような重要な法案を少くとも我々に相談という意味でなくても、こういう気持であるということくらい言明できなかつたかということを私どもは言いたいのであります。  このような経過を辿りまして、なお、昨年の問題が当然中労委にもかかりましたけれども、この問題については、炭鉱労働組合中労委案を拒否したということがさいぜん言明されておりますけれども、中労委が出した裁定委を拒否したのは必ずしも炭鉱労働組合でなくして、最終案に至つては鉱業連盟が却つて、拒否したということについては、当時中労委の局長でありました中西氏もよく御承知のことであろうと、このように考えるわけであります。従つてこの裁定をめぐりまして七%の引上げ五千円の一時金、これを経営者が出したとしても、炭鉱の石炭ストは上らないのであるというように中山会長ははつきり言明しておるのであります。それにもかかわらずこのベースアップ或いは五千円の一時金を支給するということは、直ちに石炭スト影響する、或いは又支払能力がないという一点張りが、こういう結果になつたということをはつきり証明しておきたいのであります。  次に、昨年の政府のとつた態度でありますけれども、政府はこの問題を如何にして解決するかという点については、ただ労使双方自主的解決に委せるのだというような一点張りでございます。非常に美しい言葉であり立派なことであろうと思います。併しその反面を翻すならば、何ら無為無策であつて、殆んど手を施すことができないというようなことが証明できるのでございまして、ただこの問題につきましては、緊急調整を出さなければならんというようなことも、或る一時においては政府は動いたようでございます。併し緊急調整を出すということになれば、これは直ちに中央労働委員会が取上げまして、中央労働委員会においては、その会社経理内容まで入るというような観点から、却つて経営者のほうが反対したというような事実もあるのでございます。従つて政府はこの問題解決を云々するよりも、ただ外国炭の輸入によつてのみこの争議解決の糊塗策として用いる以外何物もなかつたということははつきり言明できるのであります。  以上三点について申上げましたが、なお炭鉱労働組合ストをやつたため一般小市民が困る、或いは電気産業労働組合が停電ストをやつたから一般小市民が困るというようにも私ども聞きました。確かに我々がストをやつたことによつて非常に御迷惑をかけたということは感じております。ただそこで一つ了解して頂きたいのは、当時我々大手十六社或いは大手に加入しないところの中小企業もございまして、大手は六十数日のストをやつたのでございますけれども、中小のほうはそうストをやらなかつたのであります。ところで中小の毎月の出炭でありまするが、昨年の例をとつて見ますと、七月、八月、九月の各月は百万トンから百十万トン出ております。十月、十一月、十二月等においては百二十万トンから百三十万トンの出炭をしております。この中小炭鉱から出炭するところの石炭を若し一般小市民諸君に配給するのであれば何ら差支えはなかつたのであります。ただこの中小から出炭される百数十万トンの炭が軍需工場なり或いは大口消費者に廻つたために、全く炭労のストによつて一般消費炭が全部ストップされたというがごとき印象を与えたということは非常に残念に思つております。  第三点の御質問の公共福祉の点でございますが、公共福祉という観点からこの法案がきめられたかに承わつております。そこで公共福祉という問題につきましては、私どもは国民の多数の幸福を意味することが公共福祉であるというように考えております。そこで憲法にこの団体行動というのがはつきり保障されておるということも明白になつておりますので、この団体行動が直ちに公共福祉の実現に副うものであるということであつて会社の私有財産が若干損害したからといつて公共福祉影響するということには私どもは考えておりません。従つて労働省が公共福祉ということを、会社の私有財産ということに切換えられるのであればいざ知らず、こういう観点には全く公共福祉という点について私どもと見解を異にするのでありまして、私は単なる公共福祉という一言によつて会社の一私有財産が守られてはならないと、こういうように考える者であります。  次に、本法を制定せずとも現行労働法による調整制度というものを擁護できるかどうかという点でございますけれども、我々はもともと緊急調整というものに対しても反対して参りました。従つて現在の制度のごとき法律が久から次へと出て来るということになれば、労使対等或いは民主化というようなことが如何に立派に言われても、もう労使対等の立場では団体交渉ができない。従つてこういう法律によつて労働運動がだんだん行動を次から次ヘと一片の法文によつて抑えられるということになれば、我々は政府が全く考えられておるのと逆の方向へ労働運動、団体行動が流れて行つて、そのほうに活路を見出ださなければならないというような結果になるという観点から、この問題につきましては政府の見解と全く逆なほうへ我々の行動が行くであらうということをはりきり明言しておきたいのであります。  その次に仲裁制度の強化によつて本法制定云々という問題でありますけれども、私どもはその説にも反対する者であります。争議自主的解決というものは、飽くまで堅持さるべきでありまして、現在すでに緊急調整制度ができておるのであります。従つてこの上に更に仲裁制度という法律を設けて、これを実施するというような御意見に対しては全く反対する者であります。  その次の成立した場合の電気産業労働者に対するところの御質問でありますけれども、この点については午前中電産の代表から公述されましたので省略いたします。  そこで最後の御質問の三年の時限立法とすることの違法性はどうかということでございますけれども、三年経てばすでにこれが違法でなくなるという見解については、今でも違法でないのであるというような考え方であります。現在違法であつて、なぜ三年経てば違法でなくなるかということを若し私に質問を許されるのであれば、政府代表に聞きたいのでありますけれども、私どもは現在も違法でない、従つて三年後は勿論違法でないのであります。そのような観点から現在が違法であつて将来が違法でないというようなことは、政府がみずからはつきり違法でないというようなことを実質的に表明しておるというように考えられるのであります。  かかる観点から、私どもといたしましては、この法案を飽くまで撤回して頂きたいと、このように考えまして、本常任委員会に公述する次号であります。終ります。   —————————————
  89. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、東京電力株式会社常務取締役堀越禎三君の御意見をお願いいたします。
  90. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 東京電力の常務堀越でございます。委員長から御質問が参つておりましたが、電気事業連合会の平井事務局長が今朝公述いたしましたので、それと重複いたします点を成るべく避けまして、東京電力といたしまして昨年秋経験いたしました大争議の実態を中心として申述べたいと存じます。  先ず第一に申上げたいのは、組合電源停電ストに対する態度であります。過去の電気争議を顧りみますると、組合会社が到底呑めないということがわかり切つておりまする要求を提出しまして、その後自主的交渉においては殆んど積極的な態度を示さず、従つて交渉を煮つめるということはしないままにに、停電電源ストを含む争議行為を正当化するために直ちに中央労働委員会調停に移すものであります。従つて従来とつて来ました手数は、公正な第三者の裁定でありまする中労委調停案も簡単にこれを拒否しまして、更にその調停案を足がかりとして、組合要求の実現を図ろうというためにこの停電スト電源ストを行うのであります。例を昨年のあの大争議にとりましても、政府は昨年四月会社の経理を全く無視した賃金を、十二月に妥結した賃金を僅かに四カ月経つたのちにおいて、直ちにこれの賃上要求を出して参りまして、僅か五回の自主交渉を行なつたのみで、中央労働委員会調停を申請いたしました。旧労調法第三十七条所定の争議権の獲得を図り、九月に至つて提示された調停案に対しましては企業の実態に即応いたしまして、調停案の趣旨を会社といたしましては尊重したのでありまするが、にもかかわらず簡単に右勧告を拒否いたしますと共に、同月末より電源ストを強行したのであります。即ち組合は自主的交渉は単なるセレモニーであり、調停申請は争議権獲得のための一手段としてのみ認識しておるのであります。一度争議権を獲得するや電源停電ストを軽々に反覆し、一般社会公共福祉に重大なる脅威を与え、恐らく我々の推測しますところでは、社会公共福祉を脅す程度がひどければひどいほど、その世論の硬化によつて会社を圧迫し、そうして安易な妥協に会社を持込ませようという、こういう窮地に追い込むということが、組合団体交渉そのものを軽視しながらそういう態度に出たということが基本的態度であつたように考えるのであります。こういう事実に徴しましても、電源スト停電ストに対する大方の御批判を頂けるものと存ずる次第であります。  第二に申上げたいことは、電産ストライキの態様についてであります。すでに御案内のごとく、電産のストライキ戦術は事務ストをはじめ、電源停電スト等極めて多種多様であります。この多様に亘る戦術を併行或いは転換いたしますので、会社供給責任を全うするため、あらゆる手段を尽しても、なお電源停電ストによる需要家に対する被害を防止することは全く不可能な状態にあります。即ち会社といたしましては非組合員は勿論臨時雇その他技術者、人夫等を配置してストライキが実施されると同時に、会社が法律上課せられております供給責任、これを全うしたいために、できるだけ平常通りの運転を継続すべく努力を尽すのでありますが、これに対して組合ストライキ実施の直前まで対象箇所を会社に通告せず、あまつさえ対象箇所において会社側が運転継続すると見るや、直ちに該当箇所を転々と変更いたしまして、いわゆるたらい廻し、或いは時間の繰上げ、繰下げ、次いで戦術転換と称して、電源ストライキを実施する予定を変電所における停電ストライキ、或いは給電所のロボット化に切替え、これらを同時併行的に行いますと共に、会社努力をして全く水泡に帰せしめ、当社におきまして、全従業員数二万九千五百名、そのうち水力発電所は二百二十六箇所、従業員数は三千九百名であります。更に、火力発電所は九箇所、従業員数は千百名、変電所は三百五十六箇所、従業員二千八百名、給電所三十三箇所、従業員三百五十名でありますが、このうち非組合員の数は、水力におきましては僅かに六十四名、火力は二十一名、変電所は八名、給電所は四名であります。かくのごとき僅かな非組合員で、而も重要施設が地域的に点在いたしておりますそのおのおののものが有機的関連を保ちつつ高度の技術によつて総合的に運営されておるのでありまするので、会社といたしましては、かくのごときストライキを打たれますると、全くこれを平常の通り供給をするということは不可能であります。会社のなし得る対策は、最大限需給の混乱によつて不測の障害が生じないような事態を防止するという程度にとどまるのであります。  然らば、これらの争議行為を制限した場合、他に残された効果的な手段がないかと申しますると、電産がとり来りました争議方法は極めて多種多様でありまするから、本法規制の対象以外の争議手段で、公共に与える影響は少く、而も会社に対しては、電源停電ストライキ等以上の打撃を与えることができるストライキを持つているのであります。昨年末の大争議に際しまして、当社における実績から見ますると、各種争議行為の全参加人員は延九万六千名に達しておるのでありまするが、このうち、本法規制の対象となるストライキを実施した人員は大体その七%見当の六千八百名となつております。又観点を変えて申しますると、当初全従業員二万九千五百名のうち、本法対象になりまする争議行為を行い得る人員は大体六千名見当であります。更に、例を昨年の十月二十九日にとつてみましても、電源ストライキに参加しました組合員数は、僅かに二百三十九名でありまして、而も僅かに二百三十九名で以て三十九万三千キロワットの停電、電力を停止した。一日、只今豊水のときで百万キロワット、普通でありますと、九十万キロワットを会社の能力として水力で出しております。その中の三十九万三千キロワットを僅か二百三十九名で以て停電するのであります。これらの事実を見ましても、会社に対し打撃を与え、而も公共福祉を阻害しない有効な争議手段を僅かな人だけでやつております。又多分にたくさんな人間がまだほかにおるのでありまするから、そういう多くの人間でストをやる、そうして会社に圧力を加えるということは十分できるわけであります。  又ここで、第三点として、特に皆さまに御留意願いたいのは、申すまでもなく、電気ストックのできないものであります。従いまして電気は消費と直ちに直結をいたしております。従いましてストが行なわれますると、直ちに消費者の電気抑制ということになります。従いまして緊急調整は、今日の事態でございますと、緊急調整が出るまでには、相当な公共福祉の阻害を見なければできないという規定になつておるようであります。緊急調整が仮に出ましたところで、それはもうすでに公共福祉が阻害されたあとになるのでありまして、かくのごとき観点から申しましても、この行為は違法であるということをはつきり法律で制定して頂きたいのであります。従いまして電源停電ストライキが実施された場合には、生産力の激減が直ちに起るのでありまするので、この点から申しましても、この法律を是非通して頂きたいと思います。  なお、一言申添えますと、結局は、停電は、渇水停電ストライキ責任を負わせておるというようなことを申しまするが、かくのごときストライキの場合におきましては、減電量の正確な把握さえ会社としてはむずかしいのであります。この渇水の責を組合に負わせるというような余裕は、かくのごとき僅かな非組合員で以てしては到底不可能であります。  最後に、電産の電源ストライキは、この実害が当事者たる会社を越えて、必然的に社会公共福祉を脅やかす性質を帯びるものであります。然るに、昨年末の大争議において、組合が、電源停電ストライキに加えるに給電ストライキを強行せんとしたのであります。この給電ということは、皆さまによく御理解願いたいのでありまするが、会社のこれは大脳の中枢神経でございます。つまり最初に、電気の施設は、長距離、広般の地域に点在しております。その動きを有機的関連の下に総合的に運営して、そこに初めてその完全なる需要供給のバランスがとれるわけであります。全く人間の大脳の中枢神経でございます、従つてこの給電ストライキをやられましたならば、全く電気供給は痲痺いたしまして、非常に恐るべき現象が起るのでございます。例えて申しますると、議会とか宮城といつたような所は、昨年のストライキの最中でも、電気は消えなかつたはずでございます。そういう点は、給電所がストライキをやられますると、そういう態勢は全然できなくなつてしまうわけであります。幸い、昨年の給電ストライキは事前に防止し得まして、単にロボット化という程度で終りました。ロボットと申しますのは、一人の給電所の所長の命令を皆が聞いて、ただ動くというだけであります。みずから判断して動こうとしないわけであります。従つて十数人の人間の脳髄を一人の所長がすべて引受けて働かなければならないのでありますために、非常な疲労をいたしまして、遂に病床に臥したのであります。  そこで、電気事業といたしまして、電産のストライキの戦術、態様、供給責任を負う会社対抗策をいろいろ今申上げたのでありまするが、電気の特性上、ストライキの被害が、心ならずも、直ちに需要家の皆様に及ばざるを得ない点、並びに組合の現状を率直に申述べたのでありますが、右のごとき事実より、本法案が上程されたことに対し、全面的に賛意を表する者でありまして、これが違法であるということをはつきり認識さすためには、かかる法律は必要であります。この提案趣旨のごとく、三年の後、更にこれが違法であるという認識が徹底いたさない場合におきましては、勿論延長して頂くわけのものだと思つております。
  91. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、東京電力労働組合本部執行委員長、前川一男君の御意見を願います。
  92. 前川一男

    公述人(前川一男君) 東京電力労働組合の前川でございます。私の意見を申上げます。  先ず第一に、昨年の電産争議が非常に長延いて、且つ深刻化した要因、これについて若干申上げたいと思います。勿論昨年の電産の賃金闘争は、内部的には九電力の統一賃金を獲得することによつて、組織の維持強化をはかるという大きな狙いがあつたと思います。同時に、併せて労働協約で問題として残されていたところの労働条件の引下げを撤回せしめるためであつたというように考えております。  これに対して、電気事業経営者のとつた態度は、先ず第一番に、賃金値上げ要求に対して、最初は一銭も出せないという回答をしており、而も暫く経つてから、職階級賃金に是正することによつて九百五十円の値上げをしてもよろしいという回答があつて、妥結したときにはどうなつたかというと、結果としては三千円程度のべースアップという事態になつておるわけであります。こういつたような、非常に一貫性のない、不誠意という態度については、我々自身としても相当に批判を持つております。二番目に、社会水準を目途とするといつたような、合理化、この提案がなされております。即ち従来の既得労働条件に対して労働時間の延長、休日、休暇の切下げ、こういつたようなものを含む非常に大巾な労働条件の切下げ、これを会社は提案して来ております。而も一気に従来の慣行的な労働条件を大巾に引下げようとするところに相当に経営者としては無理な態度があつた。而もこれに対しては譲歩の色を全然見せなかつたといつたような点が指摘できると思います。次に、電源ストによる輿論の悪化、これは非常に昨年は電源ストについていろいろ批判があつたわけであります。そうして電産の内部事情、こういつたようなものを利用して、むしろ経営者としては争議解決ための方針をとらないで、更に強硬なる方針を似て労組に対決して行つたというように考えるわけであります。従つてこのことは労組としてむしろ解決の方途を見出す判断に大きく困難な状態を生ぜしめたというように考えております。  又当時政府といたしましては、スト規制を法律によつて強制しなければいけないほどのあの昨年の電産争議であると考えるならば、どうして当時現行法による緊急調整等の活用を全然しなかつたか。こういつたようなことはやはり当時の政局不安定の実情から、責任ある方針というものを政府自体が確信を待てなかつたといつたようなことは甚だ怠慢であるというように考えます。又日経連をバツクとする経営者の団結に大きく期待して、労使の対決については相当の関心を待つて見守つていたというように考えるわけであります。又輿論の悪化を利用してスト規制を打出す情勢の転換を期待したということも言えるわけであります。従つて我々があの長い争議の経過につきまして、当時の深刻化した原因というものにつきまして検討するならば、やはり経営者に対して非常に大きく批判の余地があるというように考えます。同時に政府自体としても十分なる対策或いは確信に欠けている点がこの争議長期化し或いは深刻化したというように考えるものであります。  二番目に、公共福祉スト規制の問題であります。政府公共福祉に反したことが本法案を提出する直接原因であると言つております。憲法第十二条の公共福祉そのものが、単に国民一般に迷惑になるというだけの解釈なのか、或いは昨年の争議を利用してスト規制をやらざるを得ないような意図がほかにあるのか、こういうことは非常に疑問とされるところであります。具体的にはストライキそのものは大小の差或いは直接間接の差こそあれ、現象としては国民一般の迷惑になることは事実であります。特に公益事業においては明白であると言い切れるのであります。そのことは電源スト停電ストのみではなく、政府もも前の国会においていろいろ解明しているように、例えば集金をしないストライキ、或いは事務ストにおいても、形は違うけれども、迷惑の実態については共通な点が非常に多いというように我我は考えております。今回の法案電気労働者争議権を否定するものでないと政府は言つているわけですが、争議方法規制の趣旨を我々が考慮するならば、その迷惑の限度というものは一体どこに求めらたらいいかという程度、即ち公共福祉に反するかどうかの基準というものは、迷惑の限度というものがやはり基準にならなければならないというように考えます。そういつたようなことであれば、現行法における緊急調整の制度を活用することによつて公共福祉を擁護することは当然可能であるというように考えております。そのためにも昨年において労調法を改正し、而も緊急調整制度を設けたことは当時いろいろ政府からも解明のあつた点でございます。以上のような公共福祉といつたようなことに名を借りて国民を欺瞞するような考え方は非常に我々を侮辱している。即ち電気労働者或いは炭鉱労働者責任の一切を転嫁しようとするものというように我々は判断をいたさざるを得ないのであります。  次に三番目としてストの行過ぎとスト規制の問題でございます。およそ労働組合ストライキを行う場合には、目的を有利に進めるための情勢の判断と、実施する時期については慎重なる考慮が払われることは当然であります。従つて問題の解決されるまでの経過に対する批判は、当然にしてスト戦術が有効適切であつたか、或いは結果的に行過ぎであつたかという結論に達するのであります。従つて行過ぎという結論も一つの見方に違いないと思います。併しながら争議の行過ぎについてはそれぞれその原因があるので、当事者である労使はこれらの良識を以て是正することに吝かではないはずであります。それを理由にして労働者スト権のみを犠牲にするということは民主主義への逆行であり、その精神こそが公共福祉を阻害する礎であり、民主的な労働組合の発展の障害になるというように考えるものであります。  現在の情勢は電気事業における労働組合のあり方について大きく一大転機の時期に来ております。即ち昨年の電産闘争の批判は各所に脱退という現実の姿で現われております。電気労働者十三万のうち、七万近くは電産と組織を訣つて、全国電力労働組合連合会結成の努力が現在なされております。この現実はいいとか悪いとかいう問題は別にいたしまして、電産ストに対する労組組合員一つの良識的な判断の現実であろうというように考えるものであります。  次に今回の法案については我々が真剣に考えた場合に、このスト規制現実質的に電気事業における争議権を否定するものであるというように考えるのであります。政府は今回のスト規制争議権を否定するものではないと言つており、而もその理由として電気供給に直接の障害を生ぜしめる職場に携わつている人員は、電気労働者の中の少数であつて、又需要者のこうむる損害に対し、労使の損失が少いといつたようなことを特殊性というように考えておるようであります。併しながら我々は政府に要望したいことは、電気事業争議の実態をもう少しよく知つてもらいたいと考えております。同時に以上のごとき職場に携わる人員が争議の実態から見た場合に、組合にとつては致命的なものであると考えております。又電気事業に関するスト特殊性についても理解を得たいと思うのであります。先ず第一点の人員につきましては先ほど堀越さんからもありましたけれども、私たちとほぼ違つておりませんが、発電所勤務者三千三百九十八人、変電所勤務者二千四百二十人、給電所の勤務者三百十七人、合計六千百三十五名、而もそのほかに散宿所千二十八カ所、派出所九百十カ所、出張所百八十四カ所、これらの合計人員はほぼ一万人であります。我々はそのほかにもこれら組合の良識において電気の故障を修理する仕事、或いは止むを得ない電力調整等の業務等は需要家の迷惑になるということを十分考えまして、従来におきましてもスト戦術の範囲からは除外することにしております。それらも若し合計して我々が従来とつて来た良識的な判断においてのスト限界というものを考えるならば、現実の東京電力の中の二万九千名の労働者のうち、ほぼ半数程度ストライキに参加することはできないという実情であります。このことは果して人数が少いと言い得るだろうか、私たちは非常に大きい問題と考えております。  次に二番目に争議手段の問題であります。一般的に我々が従来やつた経験から、争議手段について分類すれば、事務関係ストライキと現場関係ストライキと三つに分けることができると思います。勿論事務関係ストは他産業と特別に異なるところはないのでありますが、労働者の犠牲は非常に大きい割合に、短期間においては会社側に与える打撃は非常に少いのであります。若し効果を挙げようとすることになると、相当の長期間に亘らなければ効果を挙げるということが殆んど不可能であり、困難であると考えるのであります。而も事務ストにおいても電気事業特殊性から長期に亘るということが一つの前提であつて、我々がストライキに入ついて長期間やるとうことになれば、恐らく需用家であるお客さんに対する迷惑というものも非常に大きいというふうに判断するものであります。  次に、現場関係ストライキでありますが、いわゆる電源スト停電スト、野放し送電等を含むストライキであります。この方法は正当なる要求と、ストを実施せざるを得ない実情を一般に徹底しつつ、輿論の支持或いは協力の中から間接的に経営者責任を追及するところに大きい意義を持つておると考えるのであります。このことは電気事業における特殊な形の現われであり、従つて電力供給責任を持つ労使の良識ある判断が特に必要とされるものであります。電気事業争議手段は、一般的な生産工場とは全く異なつた特極の存在にあります。従つて権利の行使が公共福祉に反しない限度をみずからの良識において判断しなければならない点があります。従つてその限度を考慮するならば、事務ストなり、或いは現場関係ストなり、相互に大きい関連性を持つものでありまして、特に早期解決が望ましい公共事業争議といたしましては、諸情勢と時期の的確なる判断の上に両者が併用さるべき態勢というものが組合としては最も必要なんであります。従つていずれの一方が争議手段から失われてしまつても、組合としては非常に致命的な打撃を受けるものでありまして、我々としては争議権の否認に近いような現象となつて現われるものと考えるのであります。争議段階における団体交渉においても、争議権の否認されたような労働者側の意見は一方的な敗北に終らざるを得ないのであります。たとえ我々の良識によつて電源スト停電スト、野放し送電等を現実に実施しなかつたにしても、その武器を労働者が持つておるということが非常に重要なのであります。然らざれば労使の交渉力の均衡は確保できないというように考えております。従つて今回の法案は、労働者のみがかくのごとく基本的な権利を侵害されるということには絶対に反対せざるを得ないのであります。又本法案を実施すれば争議が発生した際に、勢い特殊な戦術を考慮せざるを得なくなることを考えなければなりませんし、闘争の長期化が必至となり、而も需用家に迷惑を伴うストなつたり、或いは非合法的色彩を待つ争議行為に走りやすい危険も又伴うのでありまして、このことは労使間にとつて極めて不幸であり、而も健全なる労働組合の発展が阻害され、徒らに社会不安を招く原因ともなりかねないのであります。  次に、この法案が成立した場合に、他に残された効果的な手段があるかどうかという問題であります。前の国会におきましても、政府委員からスト方法については数項目の例示がなされたように見受けております。併しながらストライキというものは趣味や道楽でやるものではないのであります。従つて単なる事務スト内容というものを細分割して、こういつたものがあると言つて見たところで、これは問題にならないのであります。即ち経営者に残された範囲で以て大きい打撃を与えることができるかどうかということが重要であります。若し他産業との比較上、極手になるようなスト手段が若し残されたものがあるならば、或々は具体的に指導して頂きたいというふうに考えております。電気事業においては、先ほど申上げましたように両者併用の態勢を最も必要とするものであります。  次に、三年間の時限立法の問題であります。過日行われました放送討論会において、三年間は違法であるが、三年後に違法でなくなり得るのはどういうわけかという質問がありました。これに対して自由党の倉石さんは、三年経てば全繊維、日教労のように組合民主化されると判断されるので、その必要がなくなるというような答弁がされております。スト規制法には全国の労働組合が挙つて反対をいたしております。三年経つたらいわば労働組合電源スト停電スト、野放し送電等はやりませんと天下に公表することは絶対にないのであります。従つて三年間の意味するものは情勢の判断にかかつておるのか、或いはスト規制反対意見を緩和するための便宜的な手段であるのかをむしろ明白にしなければならないというふうに考えるものであります。先ず第一の情勢の判断というものについて、現在電気事業における労組の歩み方はどう展開されおるかについて、東電の実態を若干申上げたいと思います。このことは電産を批判いたしまして、昭和二十四年に我々は脱退して企業別労働組合として発足した東電労組が昨年の闘争において歩んだ道であり、特に申上げたいことは、昨年の電産争議を批判して新たに脱退、結成された中部電力の労働組合、九州、関西、四国、東北、北海道の労働組合を含む電気労働者十三万数千の過半数を超える七万近くの労働者が今電産とは別個の組織、即ち全国電力労働組合連合会へと再編成が着々進められつつ、而も組織人員が殖えつつある情勢というものは見逃してはならないと考えるのであります。我々は電気事業に従事する従業員で組織する組合として、闘争戦術の基本的な考え方は、先ず第一に、需用家に対する迷惑は極力避ける努力をすると共に、みずからは有利な情勢を作るため努力しなければならない。又二番目に、スト戦術は経営者に対して実害を与えることを主として取上げ、輿論を悪化させる手段は可能な限り避けたい。三番目として、闘争の解決第三者を立てることなく、労使間の自主的な団体交渉により早期解決を図ることに努力する、大体三つの点に重点をおいております。昨年の闘争におきましても、我々は交通機関を含む停電ストの準備等は具体的に完了していたわけであります。併しながら実施する段階に至らず、又十二月の上旬に予定しました野放し送電においても、電産の電源ストとの重複による混乱を避けるため応中止指令を流し、戦術転換を行う等、みずからの闘争に対する限界というものを公益事業としての立場から考慮を払つておるのであります。従つて我々は闘争の手段についてどこからも非難されるような余地のないものであることを確信するわけであります。母上の組合の実態を十分に認識し、併せて電気事業における労働組合の動向が民主的な再編成に進みつつある情勢を把握するならば、スト規制法というものは全く必要性は更にないと言わざるを得ないのであります。このことが三年経つたらどう変化すればいいと政府考えておるのか、三年のうちに全国の労働組合を御用組合にしたいという意図があるならば別でありますが、併しながら何ら具体的な根拠は政府自身がないと考えるのであります。  以上の検討の上に立つて、我々東電労組といたしましては本法案について絶対に反対をするものであります。  以上で終ります。
  93. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、日産自動車株式会社顧問箕浦多一君の御意見を願います。
  94. 箕浦多一

    公述人(箕浦多一君) 日産自動車の箕浦でございます。  私は経営者立場から、同時に又石炭電気の需要者の一人として、この法案が一日も早く決定をされて実施を見ることを期待する一人であります。本法は昨年の電産及び炭労のあの二大ストが、我が国の産業界に、又国民日常生活に多大の悪影響を及ぼした、そうしてそれが輿論となつて結集してこの立法なつたと考えるのであります。電源並びに停電スト争議当事者であるところの電気会社並びにその労働組合は、むしろ影響するところは少ないのでありまして、一番迷惑するのは社会の全般である。殊に又各産業におきましては深刻なる打撃をこうむるのであります。又そういう場合に他の商品でありまするならば、他に商品を、求めて補うことができますけれども、電気事業が独占事業の形をとつておる限りにおいては、私どもが他から電力を求めてそれを補うということができないのでありまするから、全く手を挙げざるを得ないのであります。又一方炭鉱における保安要員の引揚というようなことは、炭鉱の破壊を意味するものだと考えるのであります。労働争議労働者が自分の生活を守るために闘うものだと思うのでありまするが、労働者の生活はその属する産業の中に根ざしているものであつて、若し労働者の生活向上を確保せんとするならば、その属する産業の繁栄を期する以外に途はないと我々は考えているのであります。然るに保安要員引揚のような破壊的の争議をやりまするというと、坑内に水が出たり、或いはガスが充満して再びその炭鉱が使えなくなるというような事態が起るのでありまして、こういうような、炭鉱の再開も覚束ないというようなことを招来するような争議手段というものは、自分の生活を守る上から言うてもやるべきでない、かように考えるのであります。かくのごとく公共福祉や或いは又国民日常生活を著しく侵害したり、或いは又産業を破壊に導くような不法な労働行為は、これを禁止するのはこれは当然であると私どもは考える。もとより労働組合の団結権或いは団体行動というものは、これは憲法の認めるところでありますが、ただその団結権或いは行動権というものが、如何なる場合においても無制限に、野放図に許されておるというものではないと我々は考えるのであります。自由も権利もその濫用は避けねばならん、飽くまでも公共福祉に反しない限りにおいてのみ尊重するものであろうと我々は信ずるのであります。殊に電気事業は、その本質上組合の一方的な実力行使が無制限になされて、経営者側はこれに対抗する何らの方法がない、例えば他の産業でありまするならば、組合ストをした場合にロック・アウトという手段があるけれども、電気事業におきましては、組合スト行為に対してロック・アウトをする手段がない、こういうふうなことは電気事業一つの特徴であります。そこでそういう意味から申しますというと、ストに関する限りにおいては現在は労使対等ということができないのであります。そこで私どもは今度の電気事業スト規制というものは、この範囲においてならば決して労働組合の権利を不当に圧迫するものであるということは考えないのであります。又炭労なり、電産が昨年の争議の世論に鑑みてみずから戒め、みずから反省して争議手段を抑制するならば、あえてこういう立法をやらんでもいいではないかという議論も出ているのでありまするけれども、又今お話のありましたように、電産の一部ではすでに電産の過去の行動を清算して新らしい出発をなされたという事実もありますけれども、現在の段階では到底全面的に昨年のあの争議の行過ぎであつたということを反省して、これを改めるだけの段階でないと私どもは見ておるのであります。でありまするからどうしてもこれらのものを規制するためには、新らしく法律を設けてこれを取締らなければならん、かように信ずるものであります。  もう一つ緊急調整が活用されるというと、あえてこの種の立法は必要はないではないかという御議論であります。これは私どもは緊急調整というものは争議行為が発生し、もはやこれ以上は捨てておいてはいけない、そういう段階至つて初めて発せられるものでありまして、而も争議行為を中止するにいたしましても、五十日という限られた日数だけであります。又停電電源スト或いは炭麦保安放棄は、争議の進展にかかわりなく、最初から、公共福祉になするものでありまするから、不法な争議手段である、公共福祉に反するところの不法な争議行為でありまするから、本法はやはり私は必要であろうと思うのであります。又緊急調整の制度というものは、労働争議が単に政治ストであつた場合には、これを抑制することはできないのであります。例えば今回のこの規制法に対する反対の場合におきましても、すでに電産の一部では停電ストを以てこれに対抗するという指令も出しておるということでありまして、こういう場合にはこの緊急調整では取締ることができないのであります。でありまするから、やはりこれは新らしい立法を必要とする、こういう立場をとりたいのであります。  それからもう一つ、仲裁制度を以てこの規制法に代えたらどうか、こういう議論であります。これは私どもはたとえ強制仲裁制度ができましても、それはこの今度の規制法に代用すべきものではない、その代りをなすべきものではない、これは別個なものだと考えておるのであります。殊に我が国の労働組合のように、戦後に発達したものでありまして、これは労働組合のみならず、経営者のほうもまだ労使関係の調整というものに未熟練であります。で、こういう未熟練の間は、私どもは非常に労使関係が円満に行きにくいと考えておる。どうしてもこれは将来気長に労使が常に交渉を続けて実績の積上げの上において一つの正しい慣行を形作るということが必要である、かように考えておるのでありまして、若しもこの仲裁制度というものができますというと、この望ましい慣行が行われなくて、むしろすべて仲裁制度に依存いたしまして、何でもかんでもこれに流れ込んでしまう、従つて争いをしなくても済むようなことまで争いを以て労使の間の紛争が却つて増加する、こういうふうに私どもは懸念をいたすものであります。こういう意味におきまして、私どもはこの強制仲裁制度を以てこれに代えるということは絶対に反対をしたいと考えておるのであります。  以上を以て私の陳述を終ります。
  95. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) どうも有難うございました。
  96. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に日本鉱山労働組合書記長重枝琢己君の御意見をお願いいたします。
  97. 重枝琢己

    公述人(重枝琢己君) 私日本鉱山労働組合書記長の重枝でございます。私は炭鉱労働者の代表といたしまして、この法案に対して反対立場をとつておりますので、その立場からの意見を述べ、且つ委員皆様にお願いをいたしたいと思つておるのでございます。  この法案は条文三カ条でありまして極めて簡単でございます。そこですでに論議が尽されておるかのような印象も受けるのでございますけれども、私従来のいろいろな論議をよく考て見ますと、どうもその論議はその立場が余りにも政治的な立場或いは昨年の争議から来たところの何か感情的な立場で論議がされておる、こういうふうにどうしても見られるわけでございます。従いまして、そういう従来の論議は尽されておるようにも見えますけれども、よく見ますと非常に大きな盲点があるのではないかというふうに考えます。従いまして参議院におきましては、各方面の専門的な知識を持寄つて非常に冷静な御判断をされるところでございますので、私はそういう点を述べまして御検討を煩わしたいわけでございます。特に当委員会におきましては、先般各地に実情の調査に行つて来ておられます。従いまして、いろいろ私は現地の実態についても疑問を持つておられる点があると思いますので、そういう点も加味して行きたいと思うわけでございます。  第一に申述べたいことは、労使関係の諸問題の解決という点を考えますならば、これは本来労使が対等の立場をとるということが大原則にならなければならないことだと思うのであります。従いまして、この労使対等の大前提というものを確立しなければ、労使間の問題の根本的な解決はあり得ないと思うのでございます。そこでこういうような大前提を破つて、或いは産業の特殊性、或いは国民経済及び国民日常生活に対するこの重要性、或いは公共福祉の擁護というようないろいろな美くしい言葉を並べまして、労勧者の権利だけを制限するというような考え方は、これはどう考えましても民主主義の逆行でありまして、我々の憲法の許すところではないというふうに考えます。そこで争議権と公益の調和というようなことを政府は申しておりますけれども、私はそういうことを言つて、この労使対等の原則を破るということについては反対をするものでございます。  第二の問題は、若し争議権に制限を加えるほどの公共性のある事業でありますならば、私は当然にそういう事業に対しましては、社会化が行われるのが先ず順序ではなかろうかと思うのであります。そういう事業経営自体が社会化されまして、本当に公益に奉仕するというような態勢に立てるということが、先ず私はとるべき方法ではないかと思うわけでございます。それがなされないということは、どうしても第一に打つことが忘れられておる、こういうふうに考えるわけでございます。特に私ども炭鉱に働く者として、振り返つて見まするならば、終戦後石炭を求める声が極めて大でございまして、増産々々という掛け声で非常な施策がなされて来たわけでございます。その際の増産のための臨時石炭国家管理ということが行われたのでありますけれども、そういうものには資本家や或いはこれを代表する政党が猛烈な反対をして参つております。そういう人たちが、今度は公益ということを理由にして組合の権利だけを抑圧する、こういうようなことはどうしても我々の納得の行かないところでございます。特に最近は炭界の不況ということがございまして。企業整備或いは休山、閉山、こういうようなものが殆んど懇意的に行われております。而もこれは政策としてはむしろ放任をされておる、こういうような状態でございますが、そういう状態を一方に見ながら、小さな炭鉱も個々の一つ一つの炭鉱においてさえも、こういうストライキ方法について制限を加える、こういうようなことは全くの片手落ちであろうと思うわけでございます。  第三に、私は初めに申しましたこの法案の論議の盲点とでも申すべき点を申上げたいと思いますが、これは法案内容について具体的な検討がどうも加えられてはいないように思うわけでございます。特に炭鉱の立場から申しますならば、御承知のように炭鉱は極めて自然条件に左右されるところでございまして、各炭鉱におきましても、その坑内状況は千差万別でございまして、恐らく一つとして同じような炭鉱というものはないと申して差支えないと思います。この点は私は電気産業におけるスイッチ・オフというような場合とこの保安の問題とが極めて異なる性格のものであるということを特に申上げたいと思うのでございます。  その中で先ず第一点として申上げたいことは、この本法案には保安業務の正常な運営を停廃する行為という言葉がございます。そこで先ず問題になりますのは、私は保安という問題であろうと思います。これは今申上げましたように、各炭鉱によつてことごとく保安ということは異なつて参ります。一つの炭鉱におきましても、或る地点から次の地点に移りまするならば、その保安ということの内容、保安状況というものはそれぞれ異なつて来るわけでございます。そこで保安業務の正常な運営という言葉がございますけれども、正常な運営とは一体何かということを考えますならば、その正常な運営の判定をし得るものはないと私は考えるわけでございます。これは勿論中央においてそういうものが判別できるはずもございません。地方において保安監督官が参りましてもなかなかその保安状況というものはわからないという状況でございます。例えて申しますならば、丁度人体に故障がある場合に、主侍医として長くその人の身体を平素見ておる人ならば、その病気の急所というものはわかるわけでございますけれども、初めて若し診察して医者にかかつたという場合にはなかなかその病気の根源はつかみにくい、どういう処方を下したらいいかということは恐らくわからないようになると思うのでございますが、炭鉱はは或る意味で例えて申しますならば、そういうような状態にある次第でございます。従つて保安の確保ということが直接に問題になつて参りますところの保安要員の数を どの程度入坑させたらよろしいかという問題になつて参りましても、これは絶対的な基準がないわけであります。これは炭鉱へ御視察に行かれた委員のかたは十分おわかりのことだと思うのでございます。  それから本案には、そういう保安業務の停廃ということでいろいろ人に対する危害或いは鉱物資源の滅失、重大な損壊或いは鉱山の重要施設の荒廃或いは鉱害というようなものに直接因果関係があるかのごとく、それが而も非常に見やすいような言葉で書いてありますけれども、私はこの因果関係というものはなかなかつかみ得ない問題ではなかろうかと思います。特に争議の場合の保安の問題と鉱害の問題とを因果関係を付けるということは、恐らく私は技術的に考究いたしましても不可能なことではなかろうかと思うのでございます。そういうようなことを考えて見ますると、私は非常にこの法の実際運用というような点については余り考えずに、炭鉱をよくわからないままに制定されつつあるというような気持が非常にするわけであります。そういたしますと、先ほど申しましたように、具体的な保安要員の数を決定するものは誰がするのかという点については、立法者はどういうふうに考えておられるのか私は非常に判断に苦しむのであります。若しこれを例えば行政官庁或いは保安監督官というようなものに委ねるというような、或るところで御答弁があつたようでありますけれども、若しそういうことがありますならば、無論その保安の監督官の個人的な見解によつて、その争議の重大な段階において争議自体を左右するような決定がなされる、特に行政官庁によつて労使関係のこの対等の原則に立つて闘われておるこの争議に対して大きな制約を与えるということになつて参るわけでございまして、これは又許すべからざることであろうと思うのであります。又鉱山保安法によりますと、保安業務の最後の責任者は鉱業権者になつておりますが、御承知のように鉱業権者はこれは炭鉱の経営者でございます。で、若しこの鉱業権者の決定するところの保安要員というもの、保安の確保というものをそのまま鵜呑みにする、そのまま実施させるということになりますならば、これは又極めて重大な問題になつて来ると思うのであります。そういう鉱業権者の就業命令というものが、この法律によつて法的な権力的な命令になつて来るということになりますならば、私は労働組合に対して非常に制約を与えるということになると思います。御承知のように、争議の場合には組合員というものは組合の統制下にあつて行動をしておるわけでございますが、それに対して相手方の経営者のきめるものを一方的になさなければならんということになつた場合の争議が、或いは労使間の団体交渉というものが果して対等な立場でなされておるというふうに言うことができるかどうかということは、私はよくお考え願いたいと思うのであります。これは一歩誤まりますならば、私は強制労働というような点にまで発展しかねない重大な問題がこの中には含まつて来るのではないか、こういうふうに考えるのであります。  それから保安の問題に絡みまして、保安炭という問題がございます。これは保安を確保するためには切羽の維持をいたしますが、採炭をするために切羽の維持をするということも不可能ではございません。けれども坑内の状況或いは採炭技術等の関係からして保安を確保するということは、即ち出炭をするということを以て行うという場合もあり得るわけでございますが、そういう場合に出て参ります炭を、昨年の争議の頃から保安炭というような言葉で呼ばれておると思いますが、こういうものが出て参つて来ております。これは勿論いろいろな保安上の問題が出て参りましても、切羽の密閉、そういうようなことで炭を全然出さなくても私はできる場合もあると思いますけれども、出すという場合もあり得る、その場合に出て参りました炭は保安炭という名前を冠してありましようとも、一般の商品炭と同じものでございます。勿論この炭はそう大した炭にはなりません。併し労働争議の非常な緊迫をしておるときにそういう炭が出て参りまして、それが簡単に商品化するということになりますれば、そのときの影響というものは私は無視できないものであろうと思います。こういうような保安炭の問題についての管理の方法或いはその他について、一体この立法者は考えておられるかどうかという点が非常に疑問でございます。これは先般私たちは民労連の主催で懇談会を持つたのでございますが、その席上安井政務次官がお見えになつておりまして、私その点をいろいろ質問いたしましたが、その点については御答弁ができずに保留をされておるという事実がございます。恐らくこれはそういう点についてまでは全然御検討が進んでいないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。この保安炭の問題も、先ほど申しました保安要員の数を、一方的に鉱業経営者の指示するものを若し入れるというようなことと並んで考えますならば、なかなか重要な問題になつて来るのではなかろうかと私は思います。こういう点をいろいろ考えて見ますると、どうも十分なる検討がなされてこの法案ができたというふうには何としても考えられません。私たち実際炭鉱の組合におりまして、いろいろな交渉、争議というものをいろいろやつてつておりますが、従来そういう経過を考えて参りますと、この法案というものは炭鉱に関する限り私は全く無用の長物であるということを言い得ると思うのでございます。保安の問題は組合会社において十分話合を進めて事実上は何らの支障もなく進んで参りました。又組合に対して帰るべき職場を失うようなことは困るであろうから、これを避けるというような説明もございますけれども、そのようなことは、組合に対して政府のほうからお考え願わなくても、組合自体が十分に考えておるのでございまして、炭鉱を破壊させるような保安放棄というようなものについては、少くとも私たちの経験する限りでは、組合の良識によつて従来解決をして参りましたし、又私は今後もそういう方法によつて最も自然に、最もスムースに私は解決できる問題ではないか、こういうふうに考えます。  又この法案の無用の長物である第二の理由といたしましては、昨年の炭労ストライキは非常な長期に亘つたのでございますけれども、その争議解決をいたしております。而もその解決スト規制法のないときに十分なる解決を見ておるわけでございます。私はそういう点を考えますならば、十分御検討の上で、本法案が無用のものであるということをこれは皆さんの御結論として出るのではないかというふうに考えおります。私はいろいろ専門的な点に亘るようなことを申したように思いますけれども、併し実はそれは専門的なことでなくて、少くとも炭鉱の保安の問題を法律で云々しようとするならば、当然解明されなければならなところの私はいろいろな問題であろうと思います。昨年の電産、炭労の争議はいろいろな教訓を残しておると思います。私はこれについては、労勧組合側も、使用者側も、政府も共に三者それぞれ十分なる反省をなすべきであろうと率直に思います。そういう反省というものを政府或いは資本家の一部のかたがたがされずに、何か素朴な国民的な感情に便乗をして組合の権利を剥奪するというような立法を軽々に私はおとりになることに対して、全くの反対の意を表するものでございます。法律はいろいろ作るときには悪用をしないとか、或いはその他いろいろな美しい言葉でできると思いますけれども、できましたあとは、法律は法律として自動的に動いて行くということを私たちは従来経験をいたしております。そういう意味で、私はこの法律の制定ということは故なく労使対等の立場というものを破るものであり、特に炭鉱の立場におきましては実体を知らない、実体においては適用のできない、又非常に若しやろうと思うならば悪用のできる弊害を生むところの法案であろうと思いますので、そういう点を十分、従来検討をされていない点を、参議院においては是非御検討を願いまして、この法案の不要であるという点を明らかにして頂きたいことをお願いをいたしまして公述を終ります。   —————————————委員長栗山良夫君) 続きまして、私有鉄道経営者協会理事別所安次郎君の御意見をお願いいたします。
  98. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) 私は私鉄経営者協会理事の別所でございます。今回のスト規刷法案と言いますか、これについての意見はすでに十分論議或いは述べ尽されましたので、私は極く簡単に所見を申述べたいと思います。  大体労働法規というような法規は、これを制定しますのについては、そのときの経済情勢なり、或いはそのときの労使関係或いは労働運動の実情というふうなものが、その立法に非常に大きく左右するということは今更申上げるまでもないのでありますが、特にこの独立後の労働組合運動として、或いは労使関係として非常に重要な点は、一つは、経済の自立をどうして達成れるか、或いは経済の復興をどうして行くかという問題と、そしてこの独立後の労使関係をどういうふうに規律して行くか、どういうルールを新しく作つて行くかという点にあると思うのであります。  そこで最近の労働組合運動の動きを見ますと、これは私なりの見解でありますので、いろいろ御批判はあると思いますが、私は、最近の一つの大きい動きはやはり総評を中心とする政治闘争的な動き方、政治的な動き方というものが非常に大きい重点である。それからもう一つは、我が国の労働運動だけではないかも知れませんが、併し、殊に我が国の労働運動の顕著な傾向としまして、私はやはり階級闘争を中心とする観念論的な労働運動の指導理論というものが労働運動を強く左右している。而もその闘争方式は、現在においても昔の共産党が指導していた時分の闘争方式と余り変らないような闘争がしばしば行われるという点であります。それからもう一つは、例えば争議にしましても、常に非常に抽象的な問題から出発する。例えば電産の争議を例にとりますと、二万六百円というふうな要求から出発する、この要求は当時の賃金に比しまして、たしか六〇%か八〇%ですかの値上げ要求でありますが、その主張というものは、その企業にとつて、或いはそのときの経済の実態にとつて、まるでその具体性のない主張であります。この主張からいつも争議というものは出発して、そうしてこれを固執し、これの解決組合としていつまでも主張すると、ここに非常に争議か深刻に、或いは長期化する一つの原因があると思うのです。それからもう一つ特異な点は、日本組合の全部ではありませんが、公益事業或いはこれは全官公なんかについてもそうでありますが、このパブリック・サービスをすべき事業に、或いはそういう仕事に従事している労働者の集りである組合ほど公益或いは公共福祉というものを顧みないという傾向が強いというふうに感ずるのであります。そういう組合運動の特殊性といいますか、特殊な傾向を基礎にして今の規制法案というものを考えますと、やはり何らかのスト規制というもの、或いはそういう争議戦術の禁止というものをやはりしなくてはいけないんじやないかと思われるのであります。ここに出されました問題については、すでにいろいろ意見が出ましたから、その全部について申上げる必要もないと思いますが、例えば昨年の電産、炭労の争議長期且つ深刻化したというふうな原因は、そこに非常に過大な要求を提出する、そうしてその要求の実施或いは貫徹を最後まで固守した、ここのところに非常に重大な問題があると思うのです。で、そういう点について組合組合の力の限界を強化して、或いはその当時の電気事業の中における消費者側といいますか、電気事業そのものの独立採算というふうな事情の変更を組合も深く洞察する、或いは電産自身の中の労使関係の変化というものについて十分反省をしてそうしてやつて、もう少しこの争議戦術或いは争議の運営というものを組合考えるならば、必ずしも長期且つ深刻化するということにはならなかつたと思います。それから又そういう結果になりましたことのやはり一つの大きい原因は、例えば今の停電ストというふうな、そういう争議戦術によつてむしろ労使当事者よりも第三者に非常に重大な損害を与える。これは国民経済、国民社会生活全般から見て非常に深刻な影響を与えたということになると思うのであります。  そこでスト規制についてでありますが、私はやはり停電ストのようなむしろ第三者に直接に重大な利害関係のある、或いは重大な損害を及ぼすようなそういう争議手段を野放しに放つておくということそれ自体が適切でないと申上げたいのであります。大体労使関係というものは、さつきからもいろいろ意見がありましたように、争議をやつておるのは労使でありますので、労使の間で如何に問題を解決して行くかということであるべきであつて第三者に勿論不測の損害を与えることもあるんではありますが、併しその原則はやはり労使の間の問題であるべきだと思うのであります。停電ストのようにこれが第三者にむしろ重大な損害を与える、学者の一部には停電ストの禁止に対して殆んどが反対意見であるというふうにも聞いたのでありますが、まあ一応停電ストがあればろうそくをともして辛抱できる生活の間はまだ国民も辛抱して行くでありましようが、これが中小企業の存立にも関するというふうな事情になりますと、この停電ストそのもの、それ自体が非常に私はアン・フェアな手段であるというふうに申上げてもいいのじやないかと思うのです。  それから緊急調整との関係でありますが、緊急調整について、先ほどからいろいろ労働者側の意見を聞いておりますと、緊急調整制度には労働者側は全面的に御賛成であるように伺うのでありますが、昨年労調法を改正して緊急調整制度を採用するという時には、組合側は全面的に反対であつたのであります。それがこの法案が出るに至つて突如として賛成だという意見を聞くのは誠に奇異に感ずるのでありますが、緊急調整間度とこのスト禁止、争議手段の禁止の問題とは多少その目的を異にして濁るのでありまして、緊急調整制度というのはやはり調整それ自体が重大な制度を作つた観点でありまして、個々に今スト規制をし争議手段の一部を禁止しようという考え方は、それ自体が公共福祉に反するという点から禁止しようというのでありますので、その目的を異にしていると思うのであります。  それから仲裁制度との関係でありますが、仲裁制度は現在の組合争議戦術といいますか、その実態から申上げますと、例えば全官公の例を見ましても、調停案が出れば必ずこれを拒否して必ず仲裁まで行く。恐らく仲裁制度ができるならば調停或いは斡旋を蹴つて仲裁まで行かなければ問題は解決しないということになるだろうと思うのであります。それは却つて争議を長引かせ、又労使の間の関係を悪化させる以外に仲裁制度によつて救済されるということはないんじやないかと思います。  それから例えば私鉄とかガスとか水道、肥料、鉄鋼その他いわゆる基礎産業或いは公益事業について、争議手段の禁止或いは争議権の制限が同様の方法でなされる必要があるかどうかということでありますが、この点につきましては例えば私のほうの私鉄関係におきましても或いは鉄鋼その他におきましても、やはりこの争議権の制限という問題がしよつちゆう出ているのでありますけれども、私は現在の情勢においてはその必要がないんではないかと思います。個々に石炭停電ストについての制限をしようという趣旨は、その事業特殊性或いはそれの国民経済に占めるウエイトに非常に重点を置き、又その実績といいますか、或いは個々の事例に遡つてその必要を痛感してこれを制定しようというのでありますから、今私鉄その他についての産業の争議制限をする必要はないんではないかと思います。但し私はこれは非常に遺憾なことだと思うのでありますが、争議制限或いは争議権の禁止というふうな結果を生ずるものは常に労働組合組合運動そのものであります。組合が私はむしろ争議制限法を作つているんだと今までしばしば言つておるのでありますが、全官公の場合然り或いは一般公益事業の前の労働法の時にありました争議制限然り、すべてそうであります。従つて私鉄、ガス、水道、鉄鋼等についても、或いは組合争議制限法を作るかも知れないと思うのであります。  それからこの三年間の時限を切るという問題でありますが、この点は私は反対であります。これを禁止するとすれば期限を付すべきではないと思うのであります。  簡単でありますが……。
  99. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 有難うございました。   —————————————
  100. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 最後に日本私鉄労働組合総連合会本部委員長、參谷新一君の御意見をお願いします。
  101. 参谷新一

    公述人参谷新一君) 私鉄総連の副委員長を勤めております參谷でございます。先ほど来組合のそれぞれの立場からすでに二、三の公述人からことごとく意見が申述べられておりまするので、特に私どもが終戦後約八年間労働組合運動をやつて参りましたその中で我々が感じ取つた実感をここで二、三申上げてみたいと思います。  先ず一番問題になりまするのは、憲法の二十八条の我々労働者の基本的権利であるところのこの基本人権に対してどのように考えておるかということでございます。この団結権の由来は、少くともいろいろな歴史的な過程から生まれて参つたと思います。その中で最も大きかつたのは、資本主義社会におけるところの独占の支配というものが、殊に財産権の横暴によつて幾多の人々が苦しんで参りました。そういつた財産権の濫用を阻止しそうして民主主義を確立する、こういう立場から今回新憲法によつて我々の団結権或いは団体交渉権が与えられたのでございます。こういう限りにおきましては、公共福祉という立場におきましても我々が財産権の濫用を、我々に与えられたところの団結権によつて阻止することにおいて、そして一般市民大衆の基本的ないろいろな権利、特にデモクラシーを樹立するという過程を我々が先頭に立つて確立して行きたい、こういう役割を果しているのでございます。そういうた立場からすれば、公共福祉というのはやはり国民社会におけるやはり全体的な立場を形式的に表現しておりますので、そういつた意味から我々の団結権というものを制限して行くということは絶対許されないし、今後ともデモクラシーを基本においたところの我が国の憲法下におきましては絶対規制することは許されないと、かように基本的に考えるのでございます。  只今までいろいろ論述された中から二、三拾つて見ますと、団結権を無制限に許すか許さんかという問題が出ておりました。この点は非常に重要だと思います。特にこの参議院の労働委員会から配られましたプリントの中にも二のほうで、両ストが行過ぎであつた場合には云々とありまして、私どもぴんと来たのであります。この行過ぎということは、我々が故意に争議を起しおるのでなくて、少くともこれは労使間のこの関係の中から生れて参つております。この関係が一番問題になるわけでございますが、この関係を電産、炭労或いはその後におけるところの日経連の態度を見ておりますと非常に重要な点が浮び上つて参ります。最近に至りまして日経連は労働対策といたしまして七原則を打出しました。この七原則の骨子は飽くまでも労働者の団結権というものを破壊させる方向に明らかに基本的な線が打出されておりますし、又それに引続きまして労働協約の基準案というものが出ておりますが、この中にも具体的に出て参つております。それはどういつたことが挙げられるかといいますと、先ず態度といたしまして、日経連は現在大きな勢力をすでに持つておる。この勢力というものが一番問題になります。この勢力を持つておる形がどのように現れるかと申しますと、先ほどの公述の中にも仲裁制度、特に官憲の支配、官僚或いは国家機関、要するに第三者の支配介入というものを非常に嫌つておる。この傾向がやはり問題が一つあるわけでございます。この点はやはり我々の態度如何にかかわらず、仲裁制度をとるというところにもうすでに日経連という一つの母体が、労働組合の現在の力を似てしても相当程度の弾圧をし得るという背景をすでに得ておる。この背景を得さしめる画期的な段階というものは、これは電産、炭労が争議を始めました、或いは始める以前だつたと思いますが、その折に出ましたスト制限法案、要するに緊急調整という名を以て打出されておりますが、この法案ができた。そういたしますると争議さえ深刻な過程に追込めば、彼らはじつとしておつて国家がこれを無制限に放置をしない、こういうバツクが法律の制定によつて得られたわけでございます。そういう画期的な一つの緊急調整制度ができて、その後においてこのような態度で七原則或いは労働協約の基準案等が出ましたのは、やはりそういつた、もう確立された態勢ができ上のておる。殊にこのスト規制によりましてなお一層よりその基盤が固くなるわけでございます。その点が大体石炭或いは電気経営者をして相当長期化せしめた大きな原因であろうかとも考えられるのでございます。これは経営者である限り一つの資本主義的な考えから行くので、或る程度の利益が伴わなければ、その利益の度合によつて争議というものは一種の調整が行われるのでございますが、あの争議の過程を見ますと、そういう調整が殆んど出て来ない。そういつた点からも容易に指摘し得ることだと思います。それから労働組合争議制限を作つておるではないか。これは総評を中心とするところのいろいろな各単産の尖鋭的な分子によつて指導が行われておるので、左翼的な政治的な方向へと移行して、その結果この法案が生れた、決して我々にはそうは考えられない。政府の政策が何とか労働表の一つの、終戦後マッカーサーによつて与えられたところの、後にはマッカーサーがみずから崩して行つて首になつたのでございますが、そういつた一つの民主的な基盤というものを揺がしておるわけでございますが、この労働組合争議というものを小くとも現在の独占資本が故意に追込んでおるのではないか、かように考えられます。実は私どもは総評を中心としているくな活動を進めて参つておりまするが、闘争方式におきましても又政治ストという方向へは決して向つておりません。形の中では政治ストということも言えるかとも思います。それはこの解釈の仕方でございまして、一つの経済主義的なものを根本において行うところの政治ストは、現在の規制法におきましても明らかに政治ストというものを打つておりますが、これは吉田内閣打倒というような抽象的な全く政治的なものに立脚したところのストは、決して我々労働者は、総評傘下にある限りにおきましては、そういうストは打たないのであります。そういう限りにおきましては組合争議制限法を作つておるのではなくして、現在の資本家のとつておりますところの政策の中には具体的には数多くの弾圧が繰返されておる。すでに不当労働行為は一番大きな要因をなしておるのでございますが目に見えないところの不当労働行為さえ続出いたしております。これは職制の支配ということで、これは職場へ行きますれば誰でも気がつきまするし、又それぞれの経営を担当しておる者のみずから意識しておるところであると思います。こういつたものが我々を自然的に戦闘的な方向へ、戦闘的な闘いをせねばならん状態に追い込んでおるのでございます。  もう一、二点申上げたいと思います。先ほど緊急調整制度は労働組合は当初反対しておつて、今回賛成しておるではないか。これは誤解でございまして、私どもは現在もなお明らかに緊急調整制度というものは反対いたしております。緊急調整制度がなくても済むような社会態勢ができ得るということを私どもは労使関係におきまして確信を持つております。そういう限りにおきましては、緊急調整制度は廃止したほうが現在の態勢の中では、或いは経済情勢或いは労使間の状態、それぞれを考えてみましても、こういつた緊急調整制度がないほうが最も平和的に労使間の関係維持ができ得ると考えております。特に緊急調整制度とスト規制法は制度を異にしておるのだから、スト規制法を作つておかなければならん、こういう主張がございましたが、これも又誠に奇異な感を与えます。それはこの法案に現われておる趣旨から言いますれば、これは当然なことだと思います。というのは、緊急調整制度では全産業に跨がる場合、相当大規模な公共福祉を侵害をしておるのではないかという虞れがある場合にのみこれはかけられるのでございまして、個別企業、要するに炭鉱の、非常に小さな炭鉱の、我が国の経済的な構造の中ではそう大して問題にならないような企業は救うことは決してできません。そういう限りにおきましてはスト規制法と緊急調整制度は異なつております。こういう点が特にスト規制法を別に作れという意図だと考えるものでございます。  なお私鉄と或いは私鉄に類似したガスとか、それぞれの組合との関係でございますが、これは私はこの法案を読んでみますると、又この法案に流れる一つの線から申上げますると、それは当然この法案ができる限りにおきましては、将来とも私鉄或いはガス等の公益企業というものはこの法委の適用を受けると同じような条件の下に置かれて参ります。それは当然私鉄のこの実態から見ましても、或は炭鉱と電気と対比いたしまして、これは当然そういう内容を持たざるを得ない公益性を実は持つておるわけなんであります。それはまあ実態がどうあろうとも、どのような労使関係にありましようとも、この企業の実態は変りないわけでございます。そういう限りにおきましては特に私鉄がそういつた条件の下に追込まれるという可能性があります。特にこの法案の趣旨弁明におきまして、去る二月の十四日だつたと思いますが、当時公述に参りました折にやはり申しておりましたが、当面この電産と炭労だけのスト規制して行くのだということが言われておりましたが、これは飽くまで当面でございまして、今後ともそういうことがあり得るということを匂わしておるにほかならないと考えます。なお先ほど経営者のかたから申されましたが、現情ではいいということは、将来こうあれば、このような条件の下に至れば当然抑えるべきだということ、それと同じように、この法案もそういつた匂いを十分に持つておるわけでございます。それは法案を隅々まで読めば、あの公益性或いは特殊な条件、いろいろな理窟が並べられておりますが、あれは飽くまで抽象的でございまして、この解釈は自由になるのでございます。そういつた限りにおきましては、若し今後私鉄があのような状態にまで追い込まれました場合には、必ずやこの法案が例となりまして、これが慣行上の規範となりまして、恐らくこの法案が通過する限りにおきましては、当然これと同じような条件下に追い込まれる、電産、炭労と同じような条件下に追い込まれる、かように考えます。非常に散漫に申上げましたが、ただ具体的な項に至りまして一、二問題がありますので申上げておきたいと思います。  先ほど電産、特に電気事業はロック・アウトができないから当然これに何らかの形の均衡を保つために労働組合の抑制をせなければならないということが申述べられておりましたが、これはそうではなくて、我々の団結権というものは財産権に対比してできたものであります。決してロック・アウトに対比してできたものではない、そういつた限りにおきましてはロック・アウトができるとかできないとかは、団結権の抑制とは何ら関係のないことであろうかと思います。特にこれと関連いたしましてスイッチを切る行為、このことが非常に問題になりましたが、この法案にも出ております通り、基本的にあのスイッチを切つたことが違法であつた、これは労働大臣も二十日のラジオで言つておりましたが、切つたこと、そういつた行為はすべていけなかつたのだ。炭労の保安要員の引揚はいけなかつたのだということが言われておりまするが、我々は現在の法をどういじくつてみましても、これは飽くまで合法的なものであつたと確認をいたしております。特に我々はストを行う、又争議をする、そういつた限りにおきましては、スイッチを切つたという行為は当然行われるべきであつたと思います。我々が私鉄で電車に乗つておりましても、それを停止してそうして出て行くというのは当り前でございまして、電車の運行中に飛び下りるという行為は当然なされるべきではない、かように考えております。で、又保安要員につきましても同じような根拠があるかと思います。ただ保安要員を引揚げたのは労働組合引揚げるのでございまして、引揚げたから炭鉱が破壊をした、そういうことで炭鉱を破壊するものは労働者である、こういう想定に基いた一つの見方をいたしておるのでございますが、これは経営者が保安要員を引揚げない方法をとる余地がないかというと、あるわけでございます。そのある余地を何ら使つていない。これは保安要員……我々の要求通り出して、そうしてあの中で作業できる状態に置いておくのが当然であるわけであります。そういう方法が残されておる。又スイッチを切らない方法も当然残されておる。そういつたことを殆んどとろうとしない。そうして飽くまでもスト行為そのものから来るところの一般の概念、一般国民がそうと思い込みやすいような概念を利用いたしまして、そういう情勢を作つて、そうしてこの法案に対するところの正当性を付けようとしておるのが政府でございます。そういつた限りにおきましては、政府と現在の資本家の方々とは相一致した点がこの中に脈々として現われておるわけでございます。  なお最後に一つだけ申上げておきたいのは、この法案に罰則規定がないことでございますが、これは非常に重要だと思います。この罰則は、これは刑罰法規でもないし、又取締法規でもない。何でもないのだということを言つております。やはり二十日の放送でも同じように言つて宣伝しておる。ところがこれはないかも知れませんが、これはやはり我々が基本的に認められたところの、労組法のあの基本的な我みの権利を奪い去つておるのでございます。というのは、机一つ叩いてもこの法規の取締りようによつては軽犯罪法とか或いは刑法の該当に追い込むことができる。而もなおこれを助長して行くならば、これを悪用すれば、破防法の適用も可能にするような内容を持つておることでございます。こういつた限りにおきましては私どもはこれを絶対的に反対いたしまして、今後ともこの法案が如何ようになりましようとも、あらゆる機会、あらゆるチャンスを捉えまして、平和的に私たちの建設的な一つの闘いを進めて参りたいと思うのでございます。賢明なる議員諸公でございますので、どうかこの点も十分おくみ取り頂きまして、少くとも日本の歴史の中にこういう汚点を残さなくて進んで参りたい。かように考える次第でございます。  甚だ訥弁でございまして、考えもまとまらないまま、思い付いたままを申上げましたが、どうか難解な点もおくみ取り願いまして、良識ある判断と審議を進めて頂きたい、かように最後にお願いいたす次第でございます。   —————————————
  102. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 以上を以ちまして本日の公述人の御意見の陳述を終りました。御質疑のある委員各位は、求められる相手の公述人の氏名を明らかにされて御質疑を願いたいと思います。
  103. 井上清一

    ○井上清一君 前川さんに一つお尋ねをいたしたいと思います。スト規制法の対象になつておりますストライキ以外のストライキに事務的ストライキ、事務ストとか或いは事務ストの中には集金ストとか、決算ストとかいろいろなストのやり方があるだろうと思うのですが、これは労働者の犠牲が非常に多い、そうして又これは相当長期間に亘らなければ効果がないというような御意見があつたのでございますが、これを一つ詳しく承わりたいと思います。
  104. 前川一男

    公述人(前川一男君) 私が先ほど事務関係ストライキのみについて、それのみについて若し大きな効果、即ち経営者に打撃を与えるといつた戦術として事務関係ストライキのみを使つた場合にはやはり労働者の犠牲が余りにも大きく、而も相当長期間に亘らないとその効果を挙げることが困難であるということを申上げました。これは私たちが終戦後昨年までいろいろ争議現実があつたわけです。この事実から或いは事態を実際にやつてみて判断をしておりました。勿論事務関係ストの中にもいろいろ種類はあります。特に政府委員も挙げておりますように、集金しないストライキ、或いは一般的に机上勤務者の職場放棄、或いは特別な、今質問者が言われました株主総会の問題とか、或いは決算業務とかいろいろ確かにあります。併しながら問題は、まあ争議の起る時期といつたような、どういう争議行為を使用するかという点については、その時期によつて相当違つて来ると思います。従つて一つの時期においてどういつた事務ストを選ぶかという限界というものが、おのずから出て来ざるを得ないわけです。例えば株主総会の事務をやめるにしても、やはり時期的な問題というものが伴つて来ます。従つて我々が一般的に考える場合には、そういう特に一つの時期的なものの伴うもの以外の問題をやはり基本に考えます。その場合に現実に我々がやつて来て、例えば電気事業における職場放棄という問題は相当大きいと思います。ただ問題になる点は、職場放棄をするけれども、その職場放棄をする対象がどこかということになります。そうしてお客さんの受付を、したり或いは変電所でスイッチが故障のために切れた、そのために配電線がとまつておるといつたときに、営業所の保守、保線関係の人たちが修理に出かけなければならん、こういつたように非常に重要な、直接まあお客さんに迷惑が非常に大きくかかつてしまうといつたような点については、我々自体としての考え方は、できるだけやはり争議行為から除外したいという方針を曾つてつて来ておるわけであります。ところが一番事務スト関係で、本来ならば会社側に対して痛いところは、やはり現在の電気事業が需要家と会社、我々の職場というものが本当に直結しておるということから、その関係を全く断ち切つてしまつたような事務ストにならざるを得ないわけです。そういつたようなことになるとどうなるかというと、現実には保守、保線関係電気を直すところは全部やめる。送電線の散宿所等についてもやめる。田舎のほうの派出所についてはやはりお客さんが電気の球を取換えに来たり、或いはいろいろと電気を直してくれということで来るわけです。そういうことをやめるということになると、一番電気事業として痛いところの業務関係ストライキというものがどうしても現実に我々の良識ではでき得ないということになる。勿論これをやることが当然当り前なんだということが、本当に根本的に当然やらなくちやいかんということになれば別ですが、そうでない限りにおいては一番痛いところで、極く少数部分である。これは確かに何分の一か知らんけれども、一番痛いようなところではスト現実には職場放棄をやつてもできないという事情にあります。従つてそれ以外の状態において我々が業務ストをやつて行くとすれば、やはりそういう一週間労働や十日では効果が上がりません。昨年私たちがやはり事務関係ストをやりました。例えば出張拒否或いは一切の連絡の遮断、その他いろいろとやつたわけですが、確かに効果は全然ないわけではありません。我々がストライキをやるのですから効果のないものはやらないはずです。併しながら実際にやつた経験から申しまして、一カ月程度かからんと効果は会社側になかなか響かんということは事実であります。そういつた点から私は一般的な問題として先ほどから申上げました。それからもう一つ二年ほど前から取上げました集金をしないストライキの問題では、これは過日、先国会の衆議院の労働委員会において山花さん等からもいろいろ質問がなされておるようでありました。その意見としては、まあ集金を一応して、その金を労働組合が握つてしまて会社に渡さんといつたことならば、効果は相当強いだろうけれども、そうじやないと効果が薄いじやないかといつたようなことも言われておりました。確かにその点の効果の差というものは非常に大きいと思います。ただ我々自体が現実に集金しないストライキにしても、二年間連続に、去年も一回やりましたし、その前もやつたんですが、いろいろな事情から考えて、相当なむずかしさというものは、やはり直接お客さんを持つておるというむずかしさがあるということから、事実上限界が出来る。従つて従来の経験からやつて参りましたけれども、そういつた、もうさつき申上げた保守保線とか非常に会社が痛いといつたようなところはやはり需用家皆さんにも非常に迷惑がかかるというところから、或る程度従来通り除外するということになると、やはり事務関係ストライキの効果というものは、相当長期にならないとその効果の実績が上りかねるんじやないかという判断を経験の中から持つておるわけであります。以上です。
  105. 井上清一

    ○井上清一君 先ほど私は労働者の犠牲が非常に多いという意味は、先ほど或る公述人が、停電ストの場合は全従業員の一九%ぐらいでできるんだと、それでこれを例えば賃金の上で考えると、組合員全員が三十七円ぐらい負担すれば大体カバーできるんだというようなお話があつたわけなんですが、そういう意味もやはり含んでおるわけですか。
  106. 前川一男

    公述人(前川一男君) 先ほどたしか堀越さんからもそういつた安い高いの問題が出ました。それでこれについては、問題は労働組合即ち電気事業における労働組合電源ストなら電源ストだけで徹底的にやつて行くのだということになれば、それで算盤勘定は私は確かに弾けると思う。併し少くとも私たちが今ここで公述する以上は、やはり組合の代表として出て来ておりますから、みずから良識ある判断においてやつております。従つてストライキというものは電源スト或いは停電スト以外にないのだ、而もそれをやる必要がなくて電源ストをやつておれば必ずこうなるのだという考えで以て、労働組合が今発言するならばそういつた点があると思いますが、私はそういつたふうには考えておりません。
  107. 井上清一

    ○井上清一君 それからもう一つ伺いたいと思いますが、先ほど停電ストなり電源ストなりをおやりになることは輿論に訴え、輿論の支援を得るためにおやりになるのだというような御意見があつたと思いますが、これについて私は逆だと思いますが、そういう御意見があつたのを一つ伺いたいと思います。
  108. 前川一男

    公述人(前川一男君) 確かに例えば電源スト或いは停電ストをやつて需用家皆さんが非常に結構だと言つて喜ぶことは、これは非常に困難であることはよくわかつております。併しながら争議権を否定しないで、我々が今電源スト或いは停電スト争議権についても或る程度認められるという範囲ならば、やはり我々自体がとるべき良識ある態度としては少くとも一般の支持或いは協力的な態度に対する判断というものは特に重要であるし、そういうことを十分に考えた上で我々やるべきであろうということを申上げたわけです。それからもう一つは輿論の支持を得るために、停電ストをやるということは私は申しておりません。
  109. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私鉄の別所さんにお尋ねしたいのでありますが、公述の中に、緊急調整について労組側は立法当時は声を揃えて反対しておつたが、先ほどからの公述を聞いておると、皆賛成のように聞く、こういう御発言のようであります。あとで私鉄労連の参谷君から反対がございましたが、私どもが聞いておつた範囲では、前の各労組の公述ともに賛成であるとは聞かなかつたのですが、なお又賛成と聞いたとおつしやるのですが、その点について。  それからもう一つ、仲裁制度に関連いたしまして、官公労等の協定を拒否して仲裁にまで持つて行つて争議を長引かせておる、或いは争議を悪化させておる、こういうふうな公述でございましたが、これも私どもが知つている限りでは、最近電通或いは郵政等調停で片付いたものもございます。それから仲裁が出ました場合に仲裁に服しようとしたのは私はむしろ組合側で、それを財政上資金上という理由で拒否し参りましたのは政府であつたのではないかと考えておるのですが、むしろ最終段階である仲裁が出たならば、それで争議が片付くべきであるけれども、仲裁が出てから問題の紛糾が始まつておると最近言われておる点から考えますと、御所論と事実が違うように私どもは了解するのでありますが、依然として官公労等は調停を拒否して争議を長引かせておると考えておられるのかどうか。  それからもう一つは、学者がこの法律案に殆んど反対をしておるようだが、それは蝋燭で辛抱ができるから反対をしておるので、蝋燭で辛抱のできない中小企業者は賛成するのだというような公述でございましたが、学者が反対をしておりますのは、蝋燭で停電ストが辛抱ができるという理窟から反対をしておると考えられておりまするのか、その三点についてお伺いたします。
  110. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) お答えします。緊急調整について組合側が賛成しておられるように聞くということは、緊急調整の立法ができます時分には組合は全面的に反対でありました。ところが今日このスト規制法案が出ますと、緊急調整というものがあればスト規制法案は要らんじやないか、こういう論議であるように私は理解したのであります。そうしますと、緊急調整には反対ではないのじやないかというのが私の感じであります。  それから全官公の調整の問題でありますが、調停から仲裁に持ち込んで揉んだという例は幾つもあると思います。  それから仲裁の結論を聞かないのは政府じやないかというのは誠に仰せの通りであります。この問題につきましては、私はこの全官公の問題については、政府が仲裁の裁定には服するというむしろ法の改正をすべきであるというのが私の意見であります。  それから学者のお話でありますが、これは私が申上げたのは、停電ストというものは、それが非常に第三者に重大な影響を与えておる、その重大な影響を与えておるということは、我々家庭におる消費者も同じでありますが、我々は蝋燭を立ててとにかく過していることもありますが、併し一般の産業に従事している者或いは特に中小企業のごときはその生存まで脅かされるような事態に昨年のストは至つたということを申上げたのであります。
  111. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 堀越さんにお伺いをいたしたいのでありますが、午前中平井電気事業連合会事務局長からもお話がございましたが、このスト長期化については、組合側責任があつて経営者のほうには責任がないような御陳述でございました。これは私どもが百歩譲りましても双方責任があつたんだと思うのでありますが、なお依然として争議長期化責任組合側にあつて会社側には責任がないと考えられておりますのかどうか。  それからこれは私どもが現地調査に北海道に参りましても、個々の発電所についても、或いは全体としても、発電、或いは送電の総量については大した影響がなかつたんじやないか。最大限二五%というお話等もございましたが、それで問題は、第三者影響等もございますが、それは送電の責任を持つておられる会社側が大口にどれだけ送電するか、或いは小口、或いは電灯にどれだけ送るか、こういうことによつて第三者意見というものが私は出て参つたように思うのでありますが、その点特に東京の場合、大口優先をして、電灯その他についての配電は経営者側において責任を持つて配電をされたように聞いておるのでありますが、その点が実際にどうなつてつたのか、若し数字等がございますれば数字等を挙げて御答弁をお願いしたいと思います。
  112. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) お答えいたします。最初のスト長期化責任の問題につきまして、私は経営者責任がないとは申述べません。ただ昨年の事実を申上げて御判断の資料としたわけであります。それは調停案が出ましたときが九月だと思いますが、その後十一月の二十五日に第一回斡旋案が出ました。その十一月二十五日の斡旋案につきましては、会社側は直ちにこれを受諾いたしました。然るに電産のほうは直ちにこれを拒否いたしまして、その後十二月の十八日、十九日にあの甚だしい電源ストがあつたわけであります。  その次の御質問でございますが、数字を挙げてとおつしやいますが、あいにくと今日はその数字を持合せておりません。ただ電気事業者の、供給者の責任といたしまして、すべての需用者に対しては公平に供給をすべき責任を持つております。特に電灯につきましては点灯時はこれに対して供給すべき責任を十分持つておりますので、この前、昨年の最もストが激しくなりましたのは確か十二月十二日と十三日だつたと思いますが、あのときに東京の火力発電所を全部とめられたんであります。火力発電所は約百三十万キロ今日出す能力を持つております。これをとめられますると、点灯時は非常に負荷は殖えます。各家庭が点灯いたしますと勿論そのときには工場の送電は、工場のほうは一時我慢をして頂くような事態が常にああいう渇水時には生じております。毎日そういうことになつております。それで火力を焚きまして、点灯時には特に電気を送る、そして工場のほうは十時以後に操業して頂くということで、渇水時には常にそういう規制をいたしておりますので、その上にああいう火力発電をとめるというストをやられますると、これはもう全然御家庭に対して電気を送るということが不可能になるのでございます。私どもが特にどこをどう、ここをこうということに、供給責任上我々としてはそういう恣意な供給はできないわけであります。
  113. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 第二点についてちよつとまだ理解をいたしかねるのでありますが。北海道に参りました場合にも、ピーク時は避けたし、それから私ども見ました江別の発電所については発電の総量についてはほとんど実績の上に現われておらん。結局配電せられます責任者の、会社側がどういう工合に大口、或いは小口電灯とに分けるかということは会社側がおやりになつておる。その結果がいろいろな反響になつてつたというように感ぜられるのです。従つて私どもが感じております範囲内では、最大限これは一つの発電所にしてもそうでございましようし、それから総量の場合にはもつと少いかも知れんと思うのですが、最大限みまして二五%、それをどう分けるかということは、会社側がおやりになつたんじやないか。そうするとそのうちで大口に優先して、或いは点灯があと廻しになると、普通の一般市民からのいろんな批判も出るでしようが、東京の場合に特に大口工場、小口工場等もあつたかも知れませんが、なお駐留軍関係等もあつたかも知れませんが、その大口優先の結果、電灯が犠牲になるという事実は会社側のやられておる配電の結果ではないかと、こういう点をお尋ねしたいのであります。  それからもう一つ附加えてお尋ねしたいと思うのですが、中央給電指令所についてはいろいろあつたけれども実際にはとまらなかつたと伺つておりますが、この点はまあ所長の命令で動くようにロボット化されたので責任者は云々というふうなお話がありましたけれども、実際に給電指令所ストの対象にならなかつたということは、これは私どもも北海道でもよく見て参りましたが、東京の場合においても事実としてはストは行われなかつたというように伺つたのであります。その点も併せて御答弁を願いたい。
  114. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 最初のお話、ちよつと要点がよく呑み込めませんですが、会社側責任で以て大口へ電気を送つて電灯をとめたというふうに私は……。
  115. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 大勢としてそういうことがあつたのではないかというお尋ねをしたのです。
  116. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) それは全然そういう事実はなかつた、今数字がございませんのではつきり申上げかねますが、それは一日の間には一方が負荷が軽ければ一方に送る、一方が負荷が重くなれば一方をとめて頂く、特に大口のほうは夜やつて頂くとか、或いは日曜を振替えてほかの日にやつて頂くということはいろいろできるわけでありますから、平素から大口のほうはそういう点で調整をして頂くわけです。従つて特にそのときに大口に送つて家庭の電気をとめたとかというようなことは、これは事実は我々ども供給責任上できませんです。殆んどこの各大口、小口電灯需用家、これらに対しましては常に最も需用の多いときを、電灯は最も大切な点灯時を常に重点に置いておりますし、大口のほうは深夜にできる工場は深夜にやつて頂くというようないろいろな配慮をいたしておりまするから、その点におきまして、これは数字は追つてはつきり御覧に入れることができれば数字を御覧に入れたいと思います。本日持つてつておりません。それから給電指令所は、これはストはなかつたと言えるかどうか。私はストというものの範囲が、これは考え方かと思うのですが、ロボット化も或る意味においてのストじやないかと思うのであります。ロボット化いたしますと、結局一人が殆んど、その給電指令所というのは非常に高度な技術を要するものでありますので、余人を以てしては替えがたいなかなかむずかしい仕事であります。みんなが、十数人が一組になつて方々から来る電話を取り継ぎ、その電話によつて指令を出す、そうしてそれを常にみんながやつておるわけであります。それを一人の頭脳でこれをやるということになれば、これはもう殆んど人間の能力を超えるものだと思います。ロボット化といえども我々はストのうちに入るのじやないかと思います。
  117. 田中啓一

    ○田中啓一君 重枝さんにお伺いいたしたいのですが、あなたの御議論を伺つておりますると、むしろ反対というよりもこういう法律は不要じやないか、こういうように伺つておりました。その意味は自分らの傘下の労働組合においてはそういうことをやるつもりはないのだし、又我々がやらんつもりであり、同時に組合員は十分その言うことを聞いて、炭鉱の保安労務を放棄するようなことは決してやらないと思う。であるから、こういう法律は不要だと思うがどうだ、こういうように伺いましたが、そうでございますか。
  118. 重枝琢己

    公述人(重枝琢己君) 第一点は確かにそういうことをはつきり申上げていいと思います。それから関連いたしますけれども、保安放棄ということをすぐ、保安要員を引揚げると即炭鉱が破壊というふうに、電気の場合のようにスイッチオフ、すぐ暗くなるというような直線的なものでなくて、極端な場合には誰も保安要員が入らなくても破壊されない、或いは非常にたくさん入らなければならん場合もある、そういうふうに非常に巾のあるむずかしい問題だからこういう法律自体が無意味だという点を申上げております。
  119. 田中啓一

    ○田中啓一君 御尤もでありまして、恐らくそういうようなことはそれぞれの山において、そのときに応じて必ず経営者と労務者とで協定してやつて行ける、一律に法律できめるよりはそのほうがいいのじやないか、こういうお考えだと拝聴いたしたのであります。  次にこれは早川さんと阿部さんと堀越さん、前川さんと一緒にお伺いするわけでありますが、この規制に関する法律が制定されますと、第二条第三条のところでそれぞれ電気の正常な供給に直接障害を生ぜしむる行為と、或いは場所と、或いは又炭鉱の保安業務の正常な運営を停滞する業務とか、或いは場所とかいうようなものが出て参りまして、それに対して経営者側のほうは、この法律では事業主と書いてありますが、ロック・アウトはできないのだし、又労働者側のほうは労務の提供の拒否はできないのだ、かように私は解しておるのでありますが、皆さんの御解釈は如何でありますか。どなたからでも、どちら側からでも……。
  120. 早川勝

    公述人(早川勝君) ロック・アウトというものは経験ございませんのでございますけれども、これは保安要員の問題だけに限つておる問題と存じます。いわば私ども保安要員は、ちよつと例はおかしうございますけれども、赤十字みたいなものだと思うのであります。ストライキ双方が闘争しておりますにもかかわらず、やはり双方の利益のためにこれだけは必要だというので出ておるものだと思うのであります。ですから、その保安要員をロック・アウトすることはできないことと思います。
  121. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) 第三条の問題ですが、最前重枝公述人も若干触れておつたようでありますが、法律七十号ですか、昭和二十四年改正のあの法律によつて第二十五条が一番引つかかつて来ると思います。そこで二十五条は相当広範囲なものであつて、どこからどこまでがということになると、鉱山全部がこの保安要員という従業員が適用される場合があります。一部に限定される場合も生じて来ます。そこで問題になるのは、その場合においては一切とにかく四千名従業員を置くところは、全部従業員だと断定される場合があります。全然ないという場合もあります。従つてこういうあいまい模糊なものは全然駄目だということであります。
  122. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 電気の場合でございますと、これは電気供給することを怠つてはならないという独占事業としての規制がございます。ロック・アウトは全然できません。
  123. 前川一男

    公述人(前川一男君) 組合考えたことと、それから今までの実際はどういうことをやつたかということから申上げますと、特に不均衡がないと思つています。例えば今までやつた中で電源職場の放棄の問題と、それから昨年の変電所職場放棄があります。私たちがやつと具体的な例として電源職場放棄があると思う。併しながらこれについてもおのずから、例えば東京に百カ所の変電所がありますが、この百カ所の変電所がみんなストライキをやつてしまうということはこれはない。これは会社側の非組合員の人数とかいろいろ調査した結果、代り番でやる、而も通告しておいて、会社側が来たならば十分に引継ぎを完了した上で、向うへ責任を渡して、それからやつて行くわけなんです。従つて均衡はないものというふうに考えております。
  124. 田中啓一

    ○田中啓一君 阿部さんにお伺いしたいのですが、御公述の中に炭労のほうでは保安業務放棄という事実はない、こういう先ほどお話があつたように伺いましたが、事実とおつしやるのは実際放棄はしなかつた。だが、何か当時私も新聞を見て非常にシヨツクを感じたのですが、炭労の中央部のほうでは保安業務の引揚げの準備をせよ、或いは引揚げるとかいうような指令を出されたやに承知しておりますが、そうでありますか。
  125. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) 最前も若干触れましたが、数十日に亘る闘争の連続でございまして、従業員が二十八万人おりまするけれども、その闘争の過程を通じて経営者或いは日経連等においては、君たち争議日本共産党の指導であるというような宣伝もありました。併し私どもは決して日本共産党の指導でなく、本当に我々は現在賃金で食えないのに五%も下げられるという、その点から闘つたのでございまして、当然闘争は相当苦しかつたということは事実であります。従つて何日経つて団体交渉にも応じない。四十日目で漸く交渉が始まつたというような段階においては、当然最後の手段もこれは辞せないというような決意を固めたのであります。当然それに従つて指令も出しました。併し実際問題としてはその事態にならないで、とにかく保安放棄ということはやらなかつたのであります。
  126. 田中啓一

    ○田中啓一君 そうしますと、そういうような事態におきましては、保安要員の引揚げを合法であるとお考えになつていらつしやるのでしようか。
  127. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) 当然我々としては保安要員の引揚げも、そういう最悪の事態に追込められて、もう我々が生か死かというような状態になればあらゆる手段を講じなければならんと、このように考えでおります。
  128. 田中啓一

    ○田中啓一君 従つてそうなりますと、今後もそういうような事態においては止むを得ないからそういう戦術もとることあるべし、こういうことになりますか。
  129. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) 今後ということになると、労働大臣の答弁じやないが、仮定の事実には答えられませんが、(笑声)というようなわけで、ただそこではつきり申上げられることは、我々はともかく一日どころか一分間もストライキをやりたくないわけです。従つて保安放棄とかストライキ、これは今申上げたように一時もやりたくない。併しそういうような段階に追込まないように一つつて頂きたいということをはつきり申上げておきたいわけであります。
  130. 田中啓一

    ○田中啓一君 そこで私案は今度、誠にこういう争議問題は暗うございまして何ですが、今度初めて炭鉱に参りましてわかつたのでありますが、労働組合のほかに職員組合があつて、そうしてその人たちは相当悲壮な決意で、一つ生命の危険を目してでも中へ入つて炭鉱を守ろう。少くとも保安的なことだけでもやろう、こういうような準備をしたように聞いたのですが、これも仮定で如何かと思いますけれども、余り無理に追及いたしませんのですが、そういう場合に労働組合のほうではピケラインを張つてつてはならん、こうおやりになるものでしようか。どんなものでしようか。
  131. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) 昨年の場合においては、職員組合は生命を賭しても労働組合が保安放棄をやつた場合に、自分たちは中に入つて確保するというような点については、私どもの組織にはございませんでした。なお今後も我々炭労傘下の職員組合においては、そのようなことは絶対にないと信じます。
  132. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は早川さんと堀越さんにお伺いするのですか、昨年のスト長期化したがために、第三者に対して非常な損害を与えた。従つて、こういうスト規制というものは必要なんだ、というお話だと思うのですが、第三者に対して非常な損害を与えたということになりますと、一つお尋ねしたいのは、石炭にしても電気にしても、需要者との間に契約が行われておるわけです。石炭何万トン、電力は何百ワットとかいうような具合に契約が行われていると思うのです。石炭電気ストによつて、その契約が不履行になるという場合には、当然相手方から損害の賠償の要求を出されるのは普通だと思うのです。第三者に対して損害を与えたというからには、石炭のほうにも或いは電気のほうにも損害賠償のような要求はあつたのですか。それをちよつとお尋ねいたしたいと思います。
  133. 早川勝

    公述人(早川勝君) ちよつとお尋ねでございますけれども、石炭第三者に御迷惑をかけたことは事実でございます。併しこの法律につきましては、御迷惑をかけたという点ではなくして、坑内の破壊を起したという問題が取上げられまして、その点が、この法案の問題になつておるのでございまして、ちよつと石炭は事情が違うと思つております。
  134. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ちよつと重ねてお尋ねしますが、あなたのほうでは、そうすると第三者に、つまりあなたのほうと契約をされておる需用者との間に、何かそういう損害賠償とか何とかという問題は起らなかつたわけですね。つまり損害を与えなかつた。需要者に対してはそれほど損害を与えなかつた。ただ問題は鉱山資源の維持のために保安要員の引揚げに対しては反対だ。こういうお話なんですね。
  135. 早川勝

    公述人(早川勝君) 資源維持だけではございませんけれども、とにかく非常な脅威を受けたものでございますから……。
  136. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 脅威を受けたけれども損害は受けなかつた第三者のほうでは……。
  137. 早川勝

    公述人(早川勝君) 損害は受けております。
  138. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 損害を受けたら損害賠償の当然要求があつて然るべきだと思いますが、そういうような事実があつたのですか。
  139. 早川勝

    公述人(早川勝君) 具体的には聞いておりません。
  140. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それはお聞きになつておりませんか。そうですが。それじや、堀越さんどうぞ。
  141. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 電気の場合には非常な第三者損害を与えたわけでございます。相当損害賠償をせよという声も出たわけでございます。併し問題は、我々経営者は独占事業といたしまして不当に供給を怠つた場合には罰せられる。不当ということの問題でございます。不当に供給を怠つたのではないのです。正当にと申しますか。正当ということは甚だ申しにくいけれども、如何なる場合が正当かと言えば、不測の水害のために発電所が運転不能になつた、或いは最近の問題ですが、渇水でございますとか、渇水の場合を予想して、これは別に通産省において調整規則がある。常に通産省の命令の下に調整いたしております。この不当に供給を阻害した場合にこれが入るかどうか。つまり組合ストというものは不可抗力であるというふうな解釈で損害の賠償問題は起らなかつた
  142. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 只今のお話ですと、ストは不可抗力で天災と同じだとこういう御解釈なんですが、併し私はストライキというのはそういう不可抗力なものじやないと思うのです。労使の自主的な解決によつて解決されるのですが、本筋は。而も会社自身としては電力供給の契約をやつておると思うのです。そうすると当然第三者としては損害を受けた以上、会社に対して損害の賠償を要求するのが当然だと思うのであります。但しストライキ中だつたので、その組合側に対して会社のほうでは言い分があると思います。併しそれは会社の外部の問題じやなしに内部の問題ではないかと思います。その点についてもう一度回答を願いたいと思います。
  143. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) それは電気の特性なんでございますが、結局生産即消費でございます。生産をしてすぐそれを消費に廻すわけです。一日として電気は蓄え得ないものでありまして、一時間として電気は蓄え得ないものでございます。若しこれが契約を履行するために、会社に怠慢があつたということになりますのは、電気を蓄えてないということで供給ができなかつた、契約の履行ができなかつたということになるかも知れませんが、会社で防ぎ得るものだと、組合ストを御解釈になれば、この法案自体はおかしいのでありまして、実際のところ我々はそういう電気事業というものは生産が消費に直結しておる、而もストをやられた場合においては、経営者としてはどうしても直ちに第三者に対する供給の抑制ということになつて来るわけなので、不当に供給を……やはり不可抗力という感じで行かなくちやいかんので、その点におきましてこのスト規制というものはどうしても必要になると私は考えております。
  144. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一点堀越さんにお伺いしたいのですが、昨年のスト中、組合側ストライキ行為によつて停電なりその他の電気を送ることがとめられたという場合と、それからそうではなくて、渇水等の事情によつてこれこそ止むを得ざる事情によつて電気がとめられた場合と、その場合のストライキ中におけるところの割合と、それはどんなものでございましよう。九州で私ども現地調査をして参つたのですが、ストライキ中に相当電気が渇水その他の理由によつて会社側によつてとめられておるわけです。それを東電の場合についてちよつと大雑把でよろしゆうございますからお伺いいたしたいと思います。
  145. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 数字はなんでございますが、現実に申上げますと一番よくおわかりになるかと思うのでありますが、あのスト中私たちは家庭の電気は昼間とめて頂きましたわけでございます。併し夜は殆んどとめなかつたのでありますが、最後の火力発電所ストの場合夜の電気まで二日間とまつたと思います。三日目に火力発電所の稼動をしてくれましたのでこれは灯がついたのであります。でございますから渇水の時は夜は殆んど停電したことがございません。家庭はすべて昼間停電でそうして夜は必ず電気をつけております。まあ渇水の場合ではそれは火力をフルに運転いたします。この間の時は火力のストために家庭の電気を消した。この相違があるわけでございます。
  146. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 別所さんにお伺いいたしたいのですが、先ほど吉田法晴君から大体お尋ねになりましたので、その点には触れずに、最初私がお尋ねしたいのは、最近の組合の傾向として先にお話になつた点なんです。例えば総評は政治中心の、或いは政治的な零囲気が最近非常に顕著になつている。或いは又階級闘争を中心とした観念的闘争が多い。ストにしても抽象的な要求を掲げてこれらを達成する、こういうようなお話がありましたが、総評中心の政治的な動き、或いは階級闘争を中心とする観念的な動きというのを、それを具体的に御説明願いたいと思います。
  147. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) 一、二の例で申上げます。例えば賃金の闘争で申しますと、平均賃金二万五千円、例えば最低八千円というような要求は、その総評の狙いとするところは国民の生活水準を上げるというところが狙いであると思いますが、併し日本の経済の実情においては二万五千円、最低八千円の要求を満しておる産業は私はないと思います。そういう点を私は指して総評の指導の仕方というものはすべて、例えばマーケット・バスケットというようなふうなものを含んで、それによつて生活水準というものを予定するというふうな行き方が観念的だと申上げているのであります。それから例えば政治的な行き方というのは、総評の上にいろいろな連合体或いはいろいろな単産の集りとしての、それ自体に根を持たない組合、何々協議会、何々評議会というようなものになりますと、その動きというものは勢い政治的にならざるを得ない。具体的に賃金要求する、或いは具体的に争議をやつて行く組合自体は、これはいい。最初はそういつたふうな抽象的な要求からして出発しても、最後の結論は何とか具体的になくちやならんわけですが、総評においてはそれを政治的に転向できるというところに私は総評の政治性があり、或いは政治的な偏向というふうな、そういう方向に行き易いのだということを申上げたのであります。
  148. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今の問題ですね。重ねてお尋ねして大変恐縮ですが、総評傘下の組合はたくさんある。そういうところで二万何千円というマーケット・バスケットについても観念的であるのみならず、そういうところでそういうふうな決定をするのは、当然政治的になる。まあ観念的ということは除くとしても、政治的というのをもう少し具体的にお話になると、例えば吉田内閣打倒というスローガンを出したから政治的だ、こういう意味ですか。
  149. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) 例えばそういう賃金要求をすることは再軍備反対一つの闘争手段であるということが政治的な手段であるということを申上げておきます。
  150. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それは例えば吉田内閣打倒とか、再軍備反対ということは、これは何も労働組合組合員だからというだけでなく、国民の少くとも良心のある人は政治的の事象にそれは賛成する人もありましようが、反対する人があります。それが良心に従つてそういう政治的意見を発表するのであるから、それを発表したから、それが政治的なということにはならんと思いますが、如何なものでしよう。
  151. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) それはあなたと私の見解の相違かも知れませんが、私はそういう政治的な目的を賃金闘争に結びつけるところに総評の特徴があるということを申上げたのであります。
  152. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一点お伺いいたしますが、例えば再軍備反対という場合、あなたはそれを賃金の闘争に結びつけてはいかんとこういうお話です。併し、例えば低賃金政策をとつておる、なぜ低賃金政策をとるかということを少しでも研究して行けば非生産的な再軍備の費用がたくさんそつちに廻つておるという結論になるのは、これは労働組合員ばかりでなく、少しでも政治的な関心を持つ者はそう感ずるのではないか、それを労働組合員はそう感じてはいかんのかということをお伺いしたい。
  153. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) それはあなたの御意見でありまして、私の答える限りではないと思いますが、労働者はそういうことを感じてはいかんということを申上げておるのではなくて、そういうことを賃金闘争に結びつけるところに総評の特徴があるということを申上げておるのです。
  154. 田畑金光

    ○田畑金光君 ちよつと別所さんにお尋ねしたいのですが、これは先ほど吉田君から質問になりました第一点ですね。問題は緊急調整の問題について、先ほど来、組合の人だから緊急調整を発動することによつても賄えるのじやないか、こういうことをまあお尋ねがあつたと思います。それに対して別所さんは、曾つて反対し、今ではそれで賄えるということは賛成しておるのだというような御説明があつたと思いますが、併しこの緊急調整で賄えるということと、この法そのものに賛成するというとことは別個ではないかと私は考えております。と申しますのは、一旦法律として議会において通りました以上は、この法律をたとえ現在においてこれを撤回したい、或いは機会があればこの法案を廃棄したいという、こういう気持はありましても、一旦制定された以上はその法律を認める。賛成するわけではないけれども認める。そこに法治国家国民としての立場があるとこう考えるのです。それをなお且つ立法そのものを認めないということになつて来ると、これは議会を否認したものであると思います。こういう意味合いから申しますならば、この先ほどの組合側の主張というものは、法律そのものに賛成であるというのではなくして、いやしくも制定された以上はその法律を認める。こういう主張であつたと私は聞き受けたのですが、その点についての別所さんの御意見一つ。  もう一つは、第二の問題はこういうことだつたと思うのです。いやしくも国民の、いや、むしろ労働者を中心として多くの良識あるかたがたが、労働法の中に緊急調整制度を挿入するということは、ストライキについて大きな制限、或いは場合によつては禁止的な致命的打撃を与える、こういうことで反対をしたわけであります。ところが昨年の炭労の争議において、政府はこれを発動しようとした。併しながら組合側の良識ある善処によつて実質上緊急調整制度というものは活用されずに終つてしまつた。こういうことを我々は経験と事実の上において承知をしておるわけです。ただこういうことを脅えましたときにですね、今直ちに緊急調整制度というものが、あれほど労働組合等の反対にもかかわらず強引にこれを制定した。ところが一度もこれが実際に運用されていない、それに今直ちに又こういう争議行為方法規制という名において新らしい立法が試みられておる。この考え方は自由党の労働政策が、朝に一城を抜きタベに又一塁を抜いて行くという、いわゆる労働者の基本的な権利というものを根こそぎに剥奪して行く態勢を取りつつある。こういうことを一般に言われておるわけです。こういうことを言われましたとき、いやしくも立法が実際に制定されて、法律が制定されて一度もまだ発動されない。併し緊急調整制度を活用するならば十分に賄えるじやないか、こういうことが先ほどの組合側の人からの御意見であつたように私は拝聴したのです。こうるう意味におきまして緊急調整制度によつて当面の政府の、或いは政府考え方に同調しておるかたの争議に対する対策というものが攻めて来るのではないか、こうまあ考えるわけでありまするが、この第二点につて別所さんの御意見を承わつておきたいと思います。
  155. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) 第一点の緊急調整に賛成しているじやないかという点でありますが、この点につきましては、勿論お説のように法治国家におきまして、法律ができればそれに従つて行くということは当然であると思います。併し緊急調整に反対された当時はこれが争議権の弾圧であるということで反対をされた、そうして今これが制定になつて、そうして更にここに別の観点からスト規制法案というものが出て来たら、そこで緊急調整があるからそれで賄われるのじやないかという考え方は、やはり緊急調整には賛成されているのだ、私はこうとつているわけです。  それからもう一つ緊急調整があればスト規制法というものは要らんじやないかという御意見でありますが、緊急調整は一度も発動されなかつたじやないかというようなことについては、これは私は発動されなかつたというのでなくして、実施されなかつた、或るはそれは実際行われなかつたじやないかというふうにおつしやつたのかも知れませんが、緊急調整というものはやはり発動はされたと思います。ただそれが有効に実施される直前に斡旋によつて問題が処理されたというだけでありまして、緊急調整というものは発動されなかつたということではなかつたと思うのであります。  それから緊急調整があればスト規制というものは要らんじやないかという御意見でありますが、私は先にちよつと申上げましたように、例えば簡単に言いまして停電ストと言いますか、ここに規制されています停電スト或いは電源ストといつたふうな争議手段、或いは保安要員の鉱山保安の停止というふうな問題の争議手段は、これはそれ自体が国民経済に、或いは国民生活に重大な影響を与えるから、その手段自体を私は禁止するということは当然であるということを申上げているのであります。それは私は先ちよつと申上げましたように、争議というものは労使間の問題であつて労使間の問題の解決としてやはりそのときの国民経済なり、或いはそのときの社会生活を十分考慮して組合争議手段を選択すべきだと思うのです。現在のような非常に底の浅い国民経済と言われますが、こういつたふうな経済状態において、私は経済、国民生活に重大な影響を与えるような、或いは第三者にのみ重大な影響を与えるようなそういつたふうな争議手段を認めておくべきではない。こういう意味で禁止に賛成しているのでありまして、緊急調整は、その争議によつてそれが国民経済に与える影響は非常に重大であつて、例えば社会生活を危殆に瀕せしめるというそういう状態なつたときに初めて発動されるのでありまして、そこに非常に事情が違う。緊急調整は争議を禁止しますけれども、同時にその重要な目的は調整にあるというところに私はその性格が違うということを申上げたのであります。
  156. 田畑金光

    ○田畑金光君 別所さんの第一の私の質問に対するお答え、これはちよつと納得が行かないのです。と申しますことは、反対であつたものが議会においていやしくも法律として制定された、それに服すること、これは先ほど来申上げましたように法治国民の、法治社会における国民の義務だと我々は考えているのです。併しそのことはやはりこれは国家生活を営む上においては、立法された以上はこれに従わなければならんという国民的な義務感から来ているのであつて、それは賛成だという意味じやないと思う。若しあなたの議論で貫くならば、立法というものは固定化して、如何なる社会的な条件、経済的な条件が変つて立法が固定化してしまつて変革せられるものではないということになつて来ようと思う。そういうようなことはまあ別所さんの御意見は私は当を得ないように思うのです。  それから第二の点は、私のお尋ねしたいことは緊急調整によつて賄い得るのではないか、こういうことを御質問したわけで、争議行為方法がどうだとかこうだとかいうような、そういう争議行為方法について論議しているのではなくて、そのような行為規制しなければならん立法を含めて、今日の労働法の体系を十分に利用するならば、緊急調整制度の発動によつて、今政府の心配しているようなことも処理され得るのではなかろうか、こういうことを私は御質問としているわけなんです。第一の点は御答弁を聞こうとは思いませんが、第二の点について、賄い得ないかということを私はお尋ねしているのであつて、その点だけお答えを願いたいと思うのであります。
  157. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) 私はその点につてお答えしたつもりでおつたのですが、賄い得るか、賄い得ないかという御質問ですが、私は緊急調整の適用という問題として私は申上げているので、スト規制の問題との観点から、その考え得るという言葉についての違いがあると思うのですが、私は緊急調整は緊急調整として、それは公共福祉を著しく阻害して重大な危害を経済或いは社会に及ぼすという、そういう事態を予想して緊急調整をきめているのでありまして、ここでスト規制をきめよう、しようとするその目的は違うから、当然賄い得るとか賄ない得ないという問題ではないということを申上げたのであります。
  158. 田畑金光

    ○田畑金光君 それで非常に明確になりましたが、別所さんの御意見によりますと、緊急調整は特殊な何と申しますか、性質の事業に関するためとか、或いは公益事業とか、或いは争議行為の規模が大きいとか、こういうことで公共福祉が著しく阻害される危険性がある。従つて公共福祉を守るために緊急調整制度というものが布かれたということを今の御説明でなさつたわけですね。
  159. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) そうです。
  160. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで問題は争議行為方法規制立法ですか、これは単に方法手段を先ほどの早川さんのお話のように、手段を単に規制しているものであるかどうかという問題ですね。単なる手段規制する、併し手段規制するにしても、その立法の目的があるはずです。なぜ争議行為手段規制しなければならないかという手段方法の中には当然その立法の本来の目的がある。然らばその手段方法規制することによつて何を目的としているのだ、こういうことになつて来ようと思うのです。そうでしよう。そうしますと、この第一条には明確に「石炭鉱業特殊性並びに国民経済及び国民日常生活に対する重要性にかんがみ、公共福祉を擁護するため、」こういうことに明確に調われているのです。従つてこれは立法の形式は争議行為方法規制するという形になつておるのですけれども、その規制を通じて何をその立法は狙つておるかというと、「公共福祉を擁護するため」と、明確に第一条に謳われているのです。この点を先ほど早川さんのお話で、緊急調整は影響力を重視したものである。この規制法については手段を重視したものである。こういうようなお話でありましたが、その影響力は何に影響するのだ、公共福祉に甚大な影響を及ぼすこの争議行為方法立法は何を狙いとするのかと申しますと、これがやはり明確に公共福祉を守るためにと、明確に謳われているのです。要約いたしますと、今のお話の別所さんの公共福祉という点から見まするならば、この立法は緊急調整制度とこの争議行為方法に関する規制立法とは究極の目的は一致しておるわけなんです。こういうことを御認識なさつて、先ほどのお話はなさつておるのかどうか。私はこの点については早川さんにも実はお尋ねしたいと思つたわけですが、この点について一つ意見を承わつておきたいと思うのです。
  161. 別所安次郎

    公述人別所安次郎君) 公共福祉について影響があるということは勿論前提に置いての話であります。今の緊急調整というのは、その緊急調整が発動されるまでにすでに公共福祉が阻害されると、そういう国民経済に著しい影響を与えるような事情が生じなければ緊急調整というものは発動されない。で私はここでは電源ストとか或いは保安要員の引揚げという、その手段そのものはですね、争議手段としてとるべきではないということを申上げたのでありまして、とるべきではないということは、争議手段というものはどんな手段でもいいということではないと思うのです。やはりそれが公共福祉に与える影響を考慮して争議手段というものは選択されるべきだと思うのです。そこで例えば電源ストの場合のごとく、それが労使双方に与える影響よりも第三者に与える影響のほうが大きいと、こういう争議手段は私はとるべきでない。これはむしろ争議手段として禁止されることが必要だということを申上げた。鉱山保安につきましては、やはりそれが国民経済に与える影響を考慮してそういう争議手段を禁止すべきだと、こういうことを申上げたのであつて、緊急調整とは何ら抵触しないと思うのです。
  162. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 石炭鉱業連盟の早川公述人は伺か御所要があつてお急ぎのようでございますから、若し早川さんに対する御質疑がございましたら、先にお願いしたいと思います。
  163. 阿具根登

    ○阿具根登君 何かお急ぎのようですから、私簡単に御質問申上げますが、先ずこの法案が出ましたのは、去年のストが原因になつておりますから、そのときのことを簡単にお尋ねしたいのですが、例えば炭鉱の坑外は三百四十円で、月給にして七千八百円か、八千円かですね、坑内が約一万二千円、これも早川さんが責任者としてでなく、一般産業人から見てこれは妥当な賃金であるか、楽な生活であるかということはどういうふうにお考えになりますか。それとも坑内にまで下つて、一万二千円やそこらでは非常にこれは可哀そうだと、こういうふうににお考えになつているかどうか。その点を一つお聞きしたいと思います。
  164. 早川勝

    公述人(早川勝君) その賃金は安くとばかり考えているわけでありまん。やはり相応の妥当と考える線できめたいということを常に考えております。ただ炭鉱の賃金の昨年交渉の始まるときの実態は、この法案とは直接関係がないことですから、間接にはございますが、一般産業における水準と比べまして、さして遜色がないという実態を押えましたので、私どもはまあ現在も非常に深刻な不況に入つておりますけれども、このことはすでに予想されておりました。昨年下期に入り刻々重圧が加わつておりましたので、賃上げをするのは無理だと、こう思いましたから、その点を組合が納得してもらうようによく話したわけであります。そのこと自体がこの法案を生んだとは私考えておりません。
  165. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあそれでいいのですが、阿部さんに今のお答えを一つお願いしたいのですが、一般他産業から比べて当時の炭鉱労働者の坑内、坑外の賃金は妥当な線であつたか、それとも苦しいものであつたかということを一つお伺いしたい。これは平行線になると思うのですが。
  166. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) 他産業との比ですが、官公労組の場合、一般議員も御承知だと思います。従つて具根議員から質問があつた点は炭鉱労働者は坑外一日三百四十円でございます。従つて二十五コース働きましのも当然八千円には満たない数字であります。それで大体解明できると思いまするが、他産業に比較して、炭鉱と同じような重労働の同じ業務をやつておる所で当時八千円に満たないという数字は殆んど見当らないわけであります。従つてああいうような問題が起きたのでございまして、大体炭鉱の賃金ペースは昭和二十三年程度までは、一般官公労組、一般他産業と同じでございましたけれども、二十四年、二十五年というように炭鉱国管案が廃止になりまして、経営の自主独立という、経営の切替え当時からだんだん下りまして、現在では約一八%同じような労働に従事しておる他産業より低いわけであります。
  167. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ両方の意見が食違つておるようですがこれはお聞きになるかたで御判断を願いたいと思います。私の考えから早川さんにもう一つお尋ねしたいと思いますのは、去年のストライキで六十三日炭鉱ストライキをやつたと思いますが、そのあと原状に復帰するまでどのくらいかかつたでしようか、そういうことを一つ
  168. 早川勝

    公述人(早川勝君) 原状と申します。と……。
  169. 阿具根登

    ○阿具根登君 ストライキ前の出炭量になるまでにどのくらいの期間を要しましたか。
  170. 早川勝

    公述人(早川勝君) 石炭の出方でございますか。
  171. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうです。
  172. 早川勝

    公述人(早川勝君) 三月末頃にはほぼ当時の欠減を補い得たかと思います。
  173. 阿具根登

    ○阿具根登君 欠減じやなくて、まあ六十三日もストライキをやつたから相当山は荒廃しておると思う。いわゆる石炭も出ない所がたくさんあるのだということを輿論として言われたわけなんです。早川さんが言われたわけではない。新聞等で言われたわけです。ところが私の考えでは、近々数日中に復興したことを聞いておる、見ておるわけですね。それで全般的な責任者として、この復興はどのくらい、何日くらいであつたかということをお聞きするわけですが、補足的に申上げますと、時間がないのですから、早川さん先ほどルールということを言われましたですが、ルールに違反しておるということをお聞きしたと思います。私失礼でございますが、ちよつと遅く来ましたのですけれども、そのルールのことになつて来れば、いつも同じコースで進んでおらなければできないのか、或いは只今お聞きしましたように、六十三日もストライキをやつて、煙か何日間のうちでこれが復興しておると、出炭量は原状に返つたということになれば、その場の保安要員は相当会社とも話合つてやられたと思うのですけれども、十二号指令であつたかと思いますが、その指令に対しては早川さんは服しないと、こういうことで拒否されたと思つておるわけなんです。確かに、私の思い違いだつたら取り消します。併し炭労のほうはまあ坑内に入つて、そうして保安要員に何したけれども、それによつて決して被害を与えたというようなことはなかつたように聞いておるわけなんですね。それは早川さんのおつしやるルールに対してはどういうようになつておるか、どういうようにお考えになるか、保安は会社責任だから組合は一切干渉すべからず、こういうようなお考えかどうか、お聞きしたかつたんです。
  174. 早川勝

    公述人(早川勝君) わかりました。お答え申します。現実の問題としては、山の情勢がいろいろ違いますので争議長期化し、かなり保安要員を労使の間で協定をしおつてもだんだんと悪くなつて行く山もございまして、それから又一部においては指令が出ましたせいか、保安要員の数をしぼられた関係がありまして、機械的な面もあつたと思いますけれども、そのために山が相当荒廃したところもございます。それは相当数はあると思います。それはそれとしまして、お尋ねの六十何日目かに終りましたあと、どのくらいの速さで回復したかということでございますけれども、これは山によつて違うと思うのですが、一週間とか二十日くらいの間には尋常の状態に帰つておるのじやないかと見ております。その理由は、やつぱり山で労働者自身が会社側と共に山を護るという空気があつて、荒廃に導かないように努力してくれたことじやないかと思つております。  なおこの私が申上げましたルール違反という点でございますが、仲労委の斡旋案が出まして、それに対して炭労側は拒否されまして、それからいよいろ保安委員引揚げという通告を持つて来られた。それが十日でございました。我々はその案を呑んでおつたわけでございます。春秋の筆法を以てすれば何と言いますか裸で相撲をとつております際に、片一方が刃物を出したような感じを受けたわけであります。殊に十四日の日になりまして、いよいよ十七日からやるぞ、そうして人を引揚げる、そこで人の生命の安全については保証できんという一札をもらいました。そのことが今度のやはり法律の問題の起る種になつておる、こう考えます。その点の問題なんでございます。
  175. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつと私にわからんところがあるのですが土俵の上で相撲をとつて、片一方が刃物を出したということをおつしやつたようですが、私の感覚がずれておるかわかりませんけれども、私は自分のほうの褌が緩んで取れたので、相手の褌も取ろうとしたのじやないかというふうに解釈するわけですが、そういうわけじやないか。例えば六十三日もストライキをおやりになつて、全然生活もできない、こういうことになつておる場合に、自分の褌を取りに来たというように……、ちよつと例が変なようになりましたけれども、それはまあ解釈の違いとしていいです。変なことになりましたからやめますけれども、早川さんは、私らの解釈するのに、こういう法律まで出さんでもいいのだということをお考えになつておると思うのですが、なぜかというなら、私常磐の大きな炭鉱と小さい炭鉱とを見て廻つたわけなんです。皆さん見て廻つたわけなんですけれども、私たち考えて、これも保安要員ですかというような人が六十三日間出ておるわけです。聞いてみると全部自分の山は一番可愛いのです。これは電産の人にも言いたい。電産の人に聞いてみれば、スイッチを放して自分の家へ帰つたり行方不明になつた者はおりやしない。スイッチを放したならそれがどうなるかということを心配して、自分がその責任を一番感じ、愛しているからその附近に屯しておる。而も山は今おつしやつたように、それではこの法律できめられるようなことがあるとするならばすでに荒廃しておらねばできない、それが今おつしやつたように殆んど荒廃もしておらない。こういう現状から見る場合に、こういう法律で労働者を叩けば、早川さんのおつしやつたように、お前たちは刃物を持つておるというようなお考えでやられるのか、こつちが褌を外したらそつちも褌を外せというような、こういうような行き方を私は考える場合に、逆に私たちから考えれば刃物を持つて労働者を威すような法律になりはしないか、こういうような考えを持つておるわけですが、早川さんも、私はこういう法律はなくてもいいのだというお考えがあるのじやないかと思うのですが、そうじやないですか。
  176. 早川勝

    公述人(早川勝君) 山の従業員がそういう気持であるということを是認されたようでございまして、私もそれは嬉しいと思います。併しその精神なり気分なりがやつぱり組織に反映してしつかりとした、当面の労働組織は私は責任を持つ労働組織と思いますが、この組織自体がはつきりとした態度の保証のない限りは、やはり私どもは昨年の脅威を思い起しまして、それは当然のことでないかと考えるわけでございます。褌論で恐縮でございますが、土俵の上でそれこそ蹴倒そうとしてあらゆる戦術もございましようから、それを闘つて大いにやることは、私どもとしてもあえて好むところではございませんが、又辞せんところでございます。併し保安要員引揚げというのは、これは無茶でございます。破壊的行動と思うのでございますが、この点申上げておきます。
  177. 阿具根登

    ○阿具根登君 それではつきりしたわけで、私は相当買被つてつたわけですが、それは別として、四十何日間も……これは恐らく私が第三者的に考えても、四十余日間も賃金を下げるというようなことがあつたのはストを挑発されたというように考えるのが無理でしようか。例えば今炭労の委員長が言つておるように、三百四十円で生活せいというのは一般産業から比べてもずつと下だ、無茶だということを今でも言つておるのだから、その当時はもつと言つていたはずなんです。それを引下げるということを四十何日もやられて、そうして四十何日以後には今度は前のベースに戻つて今まで通り払う。それから何日間かたつてから七%上げる案に賛成された。その次には五千円案には、第二次案には反対された。そうして最後にはこれに賛成されたということになれば、悪く考えれば、これは皆さんがそういうようにして輿論を悪化させられた、こういうように考えられはしませんか。これはここで討論になりますから困りますけれども、余りはつきりしたことを言われたので、私もはつきりしたことを言いたいのですが……。
  178. 早川勝

    公述人(早川勝君) お答えいたしますが、私どもが持つております資料、それは私は客観的なものと思いますけれども、最前お話がありました七千幾ら、八千円かの月額でやつているというお話でございますけれども、実質は一万二千円くらい、で、当時の一般製造工業と比較いたしまして、あえてノミナルな金額において申しているのではない。而も他の産業、只今例に挙げることはできませんが、実物給与式のもの或いは福利施設式のものもございます。これが炭鉱における特殊性でございますが、これによつて考えてみましても、他の産業よりも更に実質的に千五百円高い、乃至は二千円高いという状態なんでございます。私個人としても、又自分の地位における立場から考えましても、私は或る程度の信念を以てやつたのでありまして、挑発するという考えでやつたわけではございません。その点一つよく御了解願いたいと思います。
  179. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 遅くなりましたから、一点早川さんに伺いたいのですが、前の国会の場合には、保安要員の範囲は労使双方で協議してきめる、こういうお話だつた。それから保安要員の範囲というものはおのずからきまつておると、こういう工合に早川さんもおつしやつたのですが、ところが今度北海道に行つてみますと、先ほどもお話がございましたが、保安要員に対する考え方が連盟と労働組合と非常に開きがあるということを発見し、驚いたわけであります、例えばカッペ採炭をやつている場合に、切羽の人員が保安要員である、これは北海道の連盟の理事長ですか、のお話がございました。恐らく切羽の人員が保安要員であるということについては炭労のほうとしては異議があると思う、先ほどメーカーからお話がありましたが、坑内に入つておりますと、馬を管理するのに、坑内に入つている馬ですが、これを管理するのも保安要員ということで私どもも多少笑つたのですが、それは成るほど馬には餌をやらんければならんかも知れん。併しそれが鉱業法規の権利の対象になるべき保安要員であるかどうかについては非常に問題があると思う。そこで保安要員というものについてどの程度考えておられるのか。時間がありませんから、具体的にここで検討が困難ですが、坑道の維持まで含まれる、或いは馬を飼う人間等も含められる、恐らくここで出る結論は、労使双方意見は大きな食い違いがあるということだと思うのですが、その点を労使のほうから具体的に法案の解釈として意見を伺つておきたいと思います。
  180. 早川勝

    公述人(早川勝君) お答えいたします。大体三つの大きな観点からこの問題は考えていいのであろうと、こう思つております自然発火を防止するという問題、それから水で坑内が一パイになる、水没を限止する、それからガス爆発を防止する、大体その三点が一番重要な危険事項でございます。それに関連して、例えば吉田さんの御指摘になりましたカッペ、切羽の問題でございますが、カッペ、切羽そのものを大体推進するという者は保安要員とは言いがたいと思います。従つてそのカツペ、それがつぶれますならば、それは通風を妨げて自然発火の元となると、こう判断される場合に、それを推進する、こういう仕事が要ると考えております。カッペ自体も一つの財産でございますから、別の考え方も立とうと思いますけれども、それらにつきましては純技術的な点もございます。これは全般的に一概に言いにくいと思います。又事態の推移によりまして、今日はこれでいいということが、明日どんどんその危険状態が進みますと、翌日は更に進めた措置を技術的にとらなければならん場合もございますから、固定的は申上げかねると思います。馬の話は私ちよつと存じませんので……。
  181. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) あれですか、保安委員の定義ですか。
  182. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 恐らく食い違つておるだろうと私は聞いて参つたのですが、或いは政府の言うように双方で食い違つたときは話合いができるかどうかという点。
  183. 阿部竹松

    公述人(阿部竹松君) どこまで保安要員が従事しなければならんかという定義についてははつきりきまつておりません。御承知の通り鉱山保安法によりまして一級、二級という差がついております。従つて一級坑はこうしなければならん、二級坑の保安についてはこうだというように、はつきり限定をしております。ただ労働組合が保安要員というものについて当然責任を負わなければならんという通念的な考え方につきましては、主要坑道と主要ポンプとがあります。主要坑道にはどういう措置をして、どれだけの人間がおらなければならん、主要ポンプについてはどうしなければならんということがはつきり定義されております。従つてそういう点が明確になつておりますものを、ただ切羽つまりカッペ採炭現場ですが、そこを通気といつて、坑内に一分間に三百立方、各坑内によつて違いますけれども、四百立方メートルという風を通わせておるわけであります。その風を、切羽を通した場合、そこがつぶれてしまうと風がとまるじやないか、従つて一つの切羽を維持するために、やはりこれも保安の問題だというようなことでたまたま採炭現場或いは掘進現場の通気或いは排気、採炭現場は排気というものは全然ございませんけれども、そういう事業場に附着しておるために、これが保安の問題である、保安要員だといつて悪用される危険性は非常にあるわけであります。併し純然たる保安要員であるということになると、一級或いは二級、指定されたことろの地方監督局の定めに従いまして、当然主要ポンプと主要坑道、これに限定されると、このように考えております。
  184. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 早川さんに御質問ございますか。
  185. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 一点だけちよつとお尋ねしますが、先ほど三百四十円というお話がありました。昨年実は労働委員会で、ストライキが始まりまして、労使相方の方においでを願つてお話を伺つたことがありまして、そのとぎたしか早川さんもおいでになつたと思いますが、五%の値下げというお話があつたのですが、当時の早川さんのお話では、炭鉱石炭事業において使用されている資本の総額というものは、自己資本は僅か二%である、あとは銀行或いは国家資本等の部分が九八%を占める、こういうお話を伺つたのであります。私はそれで、これは資本の構成の上からいつて炭鉱業者というものは国家から非常に優遇を受けているのじやないか、それにもかかわらず労働者に対して非常に少い賃金を支払つている、こういう私は印象を受けたのであります。その点についてもう一度お尋ねしたいのでございますが、炭鉱業者として、勿論最近はお話のように石炭業は相当の苦境に陥つております。負担も相当ありましようし、そういう点勿論苦境には陥つておりましよう。それでも国家から非常な優遇を受けるわけであります。そういう点相当労働者に対して、労働者要求する全部とは申しませんが、或る程度要求が入れられるだけの余地があるだろう、全体の上からいつてそういうことが考えられるのじやないかと思いますが、その点についてちよつとお話を願いたいと思います。
  186. 早川勝

    公述人(早川勝君) 堀さんのお話の中の二%とは申したことないと思います。二〇%程度だと思います。
  187. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 二%と聞いたのです。
  188. 早川勝

    公述人(早川勝君) それは間違いでございます。そういうことはございません。二〇%程度、だんだん実は変りつつございますけれども……。それから確かに国家的に重要性があるから、そういうふうな意味でも他の資本も入つて来て今まで経営して来たのであります。それだけに炭鉱労働者労働条件については、自分の品から申すのほ変でございますけれども、まじめに検討して来ているつもりでございます。私ども故意に低くして、悪くしてという考えでは本当のいい仕事ができると思いません。内部の事務的な問題もございます。国家から金を借りられなければ、足りなければ自分の金で以てやらなければなりません。それも全部勘案した結果結論に到達して、組合側の協力を得ようとしたわけであります。その点御了解願いたいと思います。
  189. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) お急ぎのようでありますので、簡単に集約いたしまして質問いたしたいと思います。  目下通産委員会におきましては石炭並びに電気事業に対する諸般の調査を進めておりますが、石炭に関する問題について見ますと、本法案と現象においてはやはり関連のある問題といたしまして、多くの貯炭、すでに一千万トンの貯炭ができるかどうかというような議論さへあり、且つ北海道から九州に亘りますおのおのの炭鉱につきまして休廃坑が出ていて、大変に問題になつていて、結局石炭鉱業の行政についてどうするかというところまで問題ほ行かなければ解決がつかないのではないだろうかというように言われておるのであります。そこでお尋ねしたい点は、このような現実と本法案との関連ですが、本法案によりますると、公共福祉を擁護するためというのが入つておるわけであります。ところで第三条を見ますと、第三条には石炭鉱業に関する規制が明示されておりまして、この内容とするものは、鉱山保安法の内容、つまり鉱山におきまして、正常な運営の停廃、殊に保安の業務について、延いては鉱山における人に対する危害、それから鉱物資源の滅失或いは損害、鉱山の重要なる施設の荒廃、或いは鉱害こういうことが挙げられておりまして、先ほどの公述によりますと、公共福祉というよりも、貴重な国家資源の保護、或いはその生産ため設備こういう点が重点になつておるような御公述があつたように思うのであります。従いましてこの点はやはり今度のこの第三条……、目的とするこれらの法案が、早川さんのお考えでは鉱山資源国家資源の愛護、保護、或いはこれが生産の施設の保護、これが重点になつておるように言われたが、果してそう思われておるのかという点が一つであります。  それから第二の点は、先ほど吉田委員のほうからお尋ねがありましたが、私は簡単に申上げますと、結局この法案が万が一過つて通過いたしまして立法化されたといたしますならば、やはりこの問題は保安要員の範囲というものが現実の問題といたしまして、結局現場、それぞれの事業所におきましては、単なる法文では解決できないので、具体的に誰兵衛々々々が保安要員であるということをきめなければ……、事後において紛争を起すべきでないのでありますから、事前に一応は、本規制法による第三条の該当人員である、該当者であるということをきめなければならん段階が来るやに予想するのであります。或いはポンプその他のその持場を規定いたしまして、こういう人はという規定もあるでしよう。いずれにいたしましてもそういうことを具体的にきめます場合に、早川さんの考えでは、石炭鉱業連盟とされましても、会社がそれをおきめになるのか、或いは労使協議の上でそれをきめようとなさるものか、或いは監督官庁がこれを指定してしまうものか、そこらのお考えをお伺いしたいのでありますこれが第二であります。  第三の最後の点は、この第三条を見ますと、石炭鉱業事業者は、この石炭鉱業事業主は、これは鉱山保安法の規定いたします鉱山に対する人の危害や鉱物資源の滅失や、その他書いてありますようなことをしてはならん、争議行為として石炭鉱業事業主はそういうことをやつてはならん、こういうことに規制されるわけであります。そこで先ほどの公述を聞きますと、曾てこの規制法がない今までにおきましても、さようなことは経営者にとつて自分の炭鉱の人を殺したり、危害ですね、それから自分の炭坑を壊わしたり……争議行為としてそんなことはあるべきはずがないように思います。又公述人もそういうことはない、そういうことはしないということを言うておるのであります。然らばこの第三条はあたかも労働者と使用者、資本家と両方が対等の立場、同じようにこの法律は規制するのであつて、五分々々の規制をするのであるから、決して労働者だけを抑えるのではないというふうに見えるのであるけれども、実際は空文である。事業者に対してはそういうふうに考えるわけですが、若しそうでないとすれば、成るほど両者に対して規制するとなつておるとすれば、石炭業者が、石炭事業事業主が争議行為としてここに書いてあるような「鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、鉱山の重要な施設の荒廃」こういうようなことをする、若しこれがないならば争議行為として事業主がやることがあるのだという実証がなければならんと思うのであります。これにつきまして果たてどうであるかという点をお伺いしたいと思います。
  190. 早川勝

    公述人(早川勝君) 第一点でございますが、炭鉱の保安要員問題でございますが、これは保安要員を引揚げる、そのことが直接的に広く一般社会の乃至は日常生活国民日常生活に直接的に影響があるものとはちよつと思いません。ただ坑内に入つております人が生命の危険にさらされましたり、国家の鉱物資源が滅失いたしましたり、それからその仕事をいたしますについてのことでありますけれども、非常に大切な機械が懐われましたり、或いは坑外におけるところの一般の田畑や何か住民のほうに迷惑をかけるような鉱害問題を惹き起したり、これはまあ直接公共でございますけれども、前の三つは直接公共とは言えませんけれども、間接的には確かに公共関係あると思います。ただ行為の問題はそういう一般的に広いものに対する影響というものは、何といいますか、表の地上の工場で申しますれば、工場の建物や何かを壊わすというような行為に類似しておるのではないかと思うのであります。そういうことはいけないことだということがまあ謳つてある。そのことについては第三点に関係ございますけれども、労働者側がやることもいけない、使用者側がやることもいけないので、こういうことを率直に明らかにされたものだと思います。  それから第二点に戻りまして、誰がどういうふうにしてきめるのかということでございますね。これは本来公法上、即ち鉱山保安法上、保安管理者というものがそういう公法上の責任義務を負つておるわけです。保安の施設を維持運営して行く責任があるわけであります。でありますから法律的に申上げますれば、保安管理者がこれは会社側の人になつておると思いますけれども、併し従来公法的な立場におきまして、而も純保安維持的な立場に立ちましてこれをどういうところにどれだけの人間が要るということを判断するのが建前と思います。
  191. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 使用者がですか。
  192. 早川勝

    公述人(早川勝君) 使用者じやありません、保安管理者がその公法上の責任に基いてですね……。そう思います。ところがそれにつきまして組合がちようどストライキ中であるとすれば、組合の人間をどこそこへどれだけ入れるのだということでありますから、そこで就業命令をきちつと出してしまうより、従来の慣行に従いまして労使を通じて保安要員に協議をして、協定を作つて従前通りやるのが至当だと思つております。若し仮に少な過ぎるような出し方を組合側がやりますと又必要以上にたくさんに、若しも保安管理者がそういうことを命じましたならば、そこに紛争か起るわけであります。その紡争そのものはやはり監督管理者たる役所が、それを改訂することもあると思います。又組合側においてそれについての上部組織の問題を取上げられることもあると思います。或いはもつと窮極的に申せば、裁判の沙汰になることもあるかも知れませんけれども、私はその点については現実的に考えますれば、まあ従前もそうでありましたし、保安要員も通常のストライキ自体においては私は今までいわゆるルールの通りにその保安につきましても、ルールの通りにでき上つて行くのではないかとこう考えております。
  193. 藤田進

    委員外議員(藤田進君) 第三点のお答えなんですが、政府の答弁など総合いたしますと、労働組合については保安要員の引揚など現実にそういう事態もあつたという説明しあるわけですね。規制しなければならん、ところが経営者のほうについてどうかと言えば、ここに書いてあるから、経営者もやる可能性があればこそ規制するわけですからね。石炭鉱業事業主もこういうことをやつてはいかんということになつておる以上、法律の建前としては、やる可能性があるし、又そういう現実に過去においてもあつたとかいう問題にならなければならんと思う。お答えは経営者つてそういうことをやる場合があるだろう、あるかも知れないということなんです。併し先ほどの公述を聞きまして、又私が常識的に考えましても、こんな法律の規制石炭鉱業事業主にあつてもなくても、実はストライキで俺の設備をぶち壊わすぞ、現実に壊わすわけですね。石炭業者が自分の炭鉱のですね。それから又俺はストライキとして人に対して危害を与える、つまり保安要員の問題ですから、こういうようなことを法律に書いてあるけれども、私はこれは飾りであつて、実際には経営者事業主がそういうことは過去においてもないし、将来においてもあろうはずがないと思うのです。併し実際には書いてある以上、あろうはずがあるのだから、本当にあるのだろうかということをお尋ねしております。
  194. 早川勝

    公述人(早川勝君) 私はあり得んと思いますけれども、併し場合によつては非常に経営的に苦しくなりまして、そういうところにいろいろの手当をするだけの経済上の力もなくなつてみたり、そういうようなことになりましたら一ついそういう程度はいろいろあると思いますけれども、そういうふうな気になつてはいかんと思うのです。ですからやはりこれはちやんとしておかれる必要があるのだと思うのですが、経営者側につきましても経営者側になければ勝手なことをやるかというお尋ねでございますけれども、私ども経営者側はそういうことをいたさんと、こういうふうに見ております。
  195. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 極く簡単なことを一言だけ伺わして頂きます。それは堀越君が先ほど日経連は今日仲裁の制度に対して反対しておるということを言われましたが、その場合にあなたの、或いはあなたの所属する団体の御意見はどういうことであつたか。伺い漏らしたのでちよつと伺つておきます。
  196. 参谷新一

    公述人参谷新一君) 私のほうでほやはり現在までの、特に公務員法、或いは公共企業体労働法などによつて一応制限を受けておる官公庁、公共企業体の労働者の実感又その間におけるところのいろいろな労働紛争関係を見て見ますというと、この仲裁制度というものは効果のないものである、かように考えております。又同時に私どもこういう制約を受けない労働者にとりましても、やはり仲裁制度によつて労使間の紛争解決を付けるということについては反対態度をとつております。なぜかと言いますると、仲裁制度によりますと、やはり現在の中労委調停過程を見ましても、とかくすると労働者の不利な場面が出て参つております。これはときの政府とか或いはときの勢力関係がやはりどことなくあの中に反映されておる、かように見られるわけであります。こういつた点からも、やはり仲裁制度、なお仲裁制度に反対すると同時に、労働委員会制度についてももつとよりよい発展をすべき段階にある。こういつたいわゆる調整制度とか、或いは仲裁制度によりどころを求めて行くということ自体が正常な健全な労使間の発展を阻害して行くものだと考えております。殊にこの調停委員会より以上に仲裁制度そのものはやはりそういつた労使間の正常なる、健全なる発展を阻害するものである、かような観点から反対いたしたのであります。
  197. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 一口に言えば労使の間に自主的に解決するから、そういうふうな強制的な仲裁制度は反対だと、こういうふうに理解してよろしいですか。
  198. 参谷新一

    公述人参谷新一君) その通りでございます。
  199. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 そうすると、さつき日経連のほうでは、日経連のほうの反対は実力があるから、そんなものは要らんということで反対だという御意見つたんですね。そうだとすると日経連のほうは自分の実力でやるからいいのだという解釈をし、自分のほうの考え方は自主的に解決するのだから、そういう余計なものは要らないというので、少し何だか第三者に公平に誓えて見ていると、非常に自分のほうだけ美名を使つて日経連を、何というか悪口を言つているような感じがしますが、どうですか。
  200. 参谷新一

    公述人参谷新一君) その点はやはり本来的なあり方についてなでんです。なぜかと言いますと、このスト規制法が出ようという一つのバツクがあることと、又過般できた緊急調整制度というものが、やはり資本家を非常にバツク・アップしているという体制、こういつた体制がやはりあるということと同時に、今後とも官僚の、要するに一つ国家機構に基くところの一つ第三者の介入というものを排除しても今後やり得るのだという観点から、この仲裁制度を嫌つておる。その仲裁制度を嫌つておるということは私どもと同じでございますけれども、やはり根抵に流れる一つ態度というものはおのずから全く反対立場からそういつたものを見ておる。その点は別所さんのほうでは一応総評の一つの現在の傾向からいろいろな指摘がなされましたが、私は日経連の傾向として、今日七原則とか、或いは労働基準法こういつた一つの現象からとりまして、そういつたことに基いて仲裁制度を恐らく嫌つておるのだろう、こういうことを申上げただけであります。
  201. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私から最後に堀越さんと前川さんにちよつと一、二点お伺いいたしたいと思います。  先ず最初に電気事業従業員諸君の経済的条件と申しますか、いわゆる賃金でございますが、これはあなたがたのお考えでは公務員を標準にしまして、公務員より高いのが適当と考えられますか。或いは公務員と同程度と脅えられるか。或いは公務員より低くていいとお考えになるか。この点をちよつと伺つておきます。
  202. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 非常にむつかしい御質問でございます。電気事業は全国に亘つておりますから、ところによつて賃金に差があつていいのじやないかと思つております。それで山の上であると、相当それはまわりから見れば高い賃金である。都会に出ればそれはまわりから見てそれほど高くない。公務員との比較は私は公務員の賃金給与自体が今日一般産業から見て低いのでありますから、その一般産業よりも低い賃金、現在なら現在における低い賃金と同じであつていいとは考えておりません。将来公務員がうんと高くなれば、これは又別の問題です。
  203. 前川一男

    公述人(前川一男君) 公務員より高いほうがいいのか、低いほうがいいのか、私たちは自分たち賃金考える場合、当然他の比較ということをこれは一つの参考にはなると思いますが、賃金のきめ方、或いは考え方については、公務員より高い。或いは安いという考え方を特に特別に大きく取上げておりません。我々はやはり私個人の話ですが、組合としても大会におきましてそれぞれ賃金に対する考え方をきめて、妥当な線を出すことが一番正しいものと考えますので、単に公務員より高い安いという論議、それについては特別申上げることはありません。
  204. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。  第二点としまして実は公務員から罷業権を取ります時に、当時私は労働委員会のやはり委員をいたしておつたのでありますが、GHQの労働課等をしばしば訪れて罷業権を取ることについての不当を追究したことがございますが、そのときのGHQの考え方は成ほど罷業権を取るということは好ましくないけれども、公務員という性格からして、公僕としてこれは一応規制をしたい。その代り公務員の給与につきましては人事院を新設をして公正なる賃金水準というものを維持して行く。国はこれに対して責任をとつて行くような体制をとるので、決して片手落ではない。了承せられたいということを縷々述べられたのであります。今日若し電気事業という公共事業に対してスト規制法を以て、経済的地位の向上に対する組合の運動について非常な節約を与えたいという場合に、電気事業者としては電気事業の従事員諸君の給与改善について具体的な救済の方法をどういう工合にお考えになつておるのでありましようか。
  205. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) お答えいたします。この法律は電気事業の従業者の罷業権の一部を制限しておるもので、公務員の罷業権を全部奪つているものではない。問題は全然別だと思います。
  206. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) じや重ねて伺いますが、私が今までずつと調べたところによりますと、電気事業労使間の問題は終戦以来毎年そうでございましたが、会社側が自主的に労組側の要求を卒先して呑むとか、或いは会社側から先駆して待遇改善をやられたという事例は余りないと思う。常に相当激しい争議を通じて会社がしぶしぶお呑みになつたと思うのですが、その事実はお認めになりますか。
  207. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) それはいつからのことでございますか。
  208. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 終戦後でございます。
  209. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) それは会社が上げようとする前に争議が始まる。(笑声)
  210. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私も真剣にお尋ねしておるのでありますから真剣にお答え願いたいと思う。併しもう終戦後八ケ年に及ぶわけでありますが、一回も先におやりになつたことはない。常に相当大きな争議になつて争議の中で解決されておる。従つてそういう事実、現実の事実をお認めになりますかどうかということを申上げておるのであります。
  211. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 現実に過去はそうなつていたようであります。
  212. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。そこで今後ああいう相当に経営者側に対して、苦しい状態に入らなければならないような争議というものがなくなつてしまう。争議行為が残されるとおつしやられましたけれども、恐らく今後の争議行為経営者側としては石の上に相当安らかな気持でいても団体交渉に応じられる程度争議行為より残らないと思う。そういう争議行為で、あなたがたはいわゆる従業員諸君の経済的諸要求を十分に充たして行ける御自信があるでしようか。
  213. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 電気事業は経理面において大きな制約を受けております。この制約の中において可能な限りのものは、我々は今後やつて行けると思う。併し只今おつしやいましたことにもう一つ申上げておきたいのは、殆んど経営者が苦しまないですむくらいの罷業しかできないではないかという言葉でありますが、我々として最も恐れておりますのは集金ストであります。そういうところに追い込まないように我々は解決して行きたい。又そこには中労委の問題もある。中労委の諸君もおずから活動されるでありましよう。
  214. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは重ねて伺いますが、先ほど中労委が出て、いろいろ斡旋をするので、会社としては払えないところを今まで無理に払わされて来たということを公述人がされたと思います。従つて中労委が将来どういう調停案を出すか知りませんが、出したときにそれをいつでもお呑みになるのは、争議を通じて会社側がお呑みになつたと思うのですが、そういうことがなくなつた場合は将来の労使間の紛争というものは非常に慢性的に内攻したような恰好をとるのではないかと思いますが、その点の御用意はいいでしようか。
  215. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) その点は私から経営者としても良識があると思うのです。従来の慣行現実として私は認めますけれども、私自身としても会社が給料を上げようと考えておつたかも知れないが、その考えの先にもう要求が出る。そして争議に入るというような実体である。昨年のごときは十二月にきまつた賃金を翌年の四月にもう賃上げの要求をしておる。その現実はそういう結果になつためだと思うのです。今後とも社会水準というものがおのずからあります。いろいろな経理面において制約を受けておつても、支払い得る範囲においては支払つて行くべきが本当だろうと思う。
  216. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 余り繰返して早く賃金値上げをやつたと申されましたので、私は先ほど公務員のことを引合に出したのですが、公務員の今度の人事院の勧告はすでに一万五千円を越しておるわけです。扶養家族の率は公務員のほうが低いわけです。従つて先ほどのあなたのお話等から行きますと、やはり或る均衡を保つためには修正をして行かなければならない。こういうことになるのでありますが、過日電気事業者が料金改訂の運動を少しせられ始めたようでありましたけれども、日経連等がすぐに反対をせられて立消えになつたように聞いております。而もその料金の中には、待遇改善に関する経費等は含まれていない。特にもう前一回くらいの料金改訂によつて合理化が強く要求せられて人員の強い削減がある。又冗費の節約等が入つておりまして、これ以上人件費等の合理化ということはちよつとむずかしかろうと思うのですが、そういうときに料金改定のいろいろな中でも、人件費というものについては全然入つていない。国の予算を見ますと公務員の給与については、人事院勧告に従つて予算を組むわけであります、一割上げようとすれば一割組むわけであります。ところが会社のほうは電気事業者はそれをしないでおいて、社会の良識において支払うようにしたいと言われますけれども、良識だけでは給与は出ないように私は思うのですけれども、その点は具体的にどういう方針でおやりになろうとしておられるのですか。
  217. 堀越禎三

    公述人(堀越禎三君) 先ほど公務員の人事院勧告が一万五千円とおつしやいましたけれども、東京電力につきましては只今一万六千四百円でございます。それからこれは社会的良識もあると思いますが、我々としては経営者としてはできるだけの冗費節約もやる。いろいろな点で料金の値上をなくしても、やつて行く途をできるだけ見つける。たまたま我々として考え料金値上というものがちよつと新聞に出たようでありますので或いは多少誤解があつたようであります。併し新らしい電気というものはどうしてもこれから高くなるということは現実の問題でございます。これは委員長もよく御存じだと思います。そういう面で今後の料金制度というものは漸次考え直されて行かなければならんと思います。
  218. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 前川さんに伺いますが、私は今の罷業権に枠をはめたときのいわゆる経済的条件の将来の改善について、非常に私は制度として欠けるところがあるように思うのですが、それについて労働組合のかたとしてはどういうお考えをお持ちでしようか。
  219. 前川一男

    公述人(前川一男君) 罷業権を制限されるというのに対する政府の一方的な均衡を破つた問題に対することですが、たしか私としても先ほど申上げましたように争議権が否定されたような現象となつて現われるというように申上げたわけです。問題は私としてはむしろ政府にそういつた点を明確にして頂きたいことと、もう一つは今回の第三条までの内容では、どういつたストライキ即ちストライキ手段ですね。例えば電源ストとか停電スト、それは一体どういう内容のものかといつたことを、更に私としてはもつと明確にして頂きたいと思うわけです。それがないと、非常に今後やはり混乱等を起しやすいと思います。そういう上に立つてその内容等をやはり比較、検討した場合にいろいろな問題が起きて来ると思うのですが、それらの考え方をやはり政府自体がその提案をする以上、みずから政府のほうから我々に対してこういう内容であるということを発表した上での検討を我々としては加えたいというように考えております。
  220. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今のところでは私どもが若干調べているところによりますと、政府のほうは何ら用意がないようです、今度の問題につきましては……。この前国家公務員から罷業権を取りまするときには、同時に人事院という制度が置かれたわけです。ところが今度はそういう救済機関はないようであります。そういう状態において労働組合として今の電気事業が持つておる性格ですね、あれは行政監督を非常に受けておる。こういうような形からして、労働組合として従前と同じような安心感を持つて経営者に対処し得るかどうか、そういう点についての御意見を伺つているわけです。
  221. 前川一男

    公述人(前川一男君) 問題が安心感を持つてやれるかどうかということですが、当然私どもに残されたストライキの範囲というものは当然あるわけです。これらについてやはり一つ争議手段としては、我々自体が更に徹底的な検討を加えなければならんということになると思います。問題は従来におきましては、先ほど申上げました一般的な事務スト、或いは現場関係停電ストを含めたところの双方の併用という問題がありますから、確かに問題としては我々自体が総合的に圧力を加えることができた。ところが片方が失つた場合には、相当我々としては困難な事情ができるわけです。そうなつて来れば我々自体がやはり従来良識ある判断において、例えば保守、保全関係、その他についても相当需要家の迷惑を考えて我々が遠慮したストライキがございます。こういつたものにもやはり突入せざるを得ないような事態というものも一つこれは考えなければならんというように考えます。そのことが果して現実にあり得るのか、或いはいいのか悪いのかという判断も当然あるわけですが、我々自体が相当にストライキ内容については困窮する結果としてそういつた現象もあり得るのではないか、というようにストライキ手段そのものとして考えるわけです。もう一つの救済という問題は、これはやはり問題は、この法案が通過するときの考え方が現実政府自体としては、本当の一部の規制であるから大部分はいいのだという考えで、我々とも全くこれは反対立場にあるわけです。我々自身から見た場合にはこれは勧告的な制度を設けるとか、或いは一つ考えとしては学者等において言われておる仲裁制度、そういつた問題も頭に浮びますけれども、併し現実の問題としては非常にここに大きな問題があるじやないかという考えは、我々自体としてはやはり現在の段階考えた場合には、そういつたことではなしに、むしろ自主的に我々が争議解決できるような方向に現在としては努力している。従つていろいろ方法については考えられますが、結論として申上げますと、一つ争議行為の問題としては、非合法的な色彩も帯びるようなやはり戦術というものが今後起り得る危険性が一つはあるということ、もう一つはそれに代る例えば救済方法としては、私は現実にはなかなかむずかしいのではないかというように考えております。
  222. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御質問ございませんか……。  では本日はこの程度において閉会いたします。    午後六時四十三分散会