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1953-07-10 第16回国会 参議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十日(金曜日)    午前十一時十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員宗雄三君辞任につき、その 補欠として田中啓一君を議長において 指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田畑 金光君    委員            伊能 芳雄君            田中 啓一君            吉野 信次君            阿具根 登君            吉田 法晴君            市川 房枝君   政府委員    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    調達庁労務部長 中村 文彦君    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定   局失業対策課長  澁谷 直藏君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    外務省国際協力    局次長     関 守三郎君    労働省労政局労政    課長      有馬 元治君   参考人    早稲田大学教授 野村 平爾君    東京都立大学教    授       沼田稻次郎君    愛知大学教授  戒能 通孝君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (日雇労務者夏季手当に関する  件)  (米軍施設内における労働三法の適  用状況に関する件)   ―――――――――――――
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会開会いたします。  本日会議に付しまする事件労働情勢一般に関する調査でございます。それで午前中は日雇労務者夏季手当に関する件等議題といたし、午後米軍施設内における労働三法適用状況に関する件について調査をたしたいと存じます。  失業対策事業に就労する日雇労務者待遇改善に関する問題につきましては、去る八日の委員会におきまして労働省及び厚生省の関係官から説明並びに意見を聴取いたしましたが、本問題は緊急失業対策法等基本的立場にも関連するところがありまするので、労働大臣出席を求めて所信を質す必要があり、且つ先般の委員会日雇労務者待遇改善に関する件につきましては、それぞれ関係部署に対しまして善処方申入を行うべきであるということに意見の一致を見ておるのでございます。従いまして本日は関係機関申入をいたしまするその申入内容につきまして、事務局が作成いたしました草案について御検討をお願いするわけでございます。一応只今できております草案を読上げることにいたします。    失業対策事業における日雇労働者待遇改善に必要な措置に関する申入  参議院労働委員会は、昭和二十八年七月八日の委員会において、失業対策事業労務に従事する日雇労働者待遇を改善する必要を認めて、別紙通り要望することに決定したから申入れをする。     要 望 書  緊急失業対策法は、占領下経済原則の強力な実施により発生を予想された大量失業に対処し、民間事業等に就職するまでの暫定期間失業者を救済する目的を以て制定されたものであるが、最近の失業対策事業は、その内容が質的に向上して労務管理は厳重になり、労務形態民間一般産業と異るところなく、経済効果は著しく上り、単なる臨時失業救済対策として取扱う時期は過ぎ去つたと思われる。従つて委員会は、緊急失業対策法を初め、日雇失業保険制度実情に即するよう改正するため、根本的に再検討する必要があるものと考える。   日雇労働者生活を改善するため、(一)全国平均賃金日額を三五〇円に引上げること(ニ)所謂夏期手当」を十五日分支給すること(三)稼働日数を拡充し、二十五日にすること(四)日雇失業保険待期期間六日を撤廃すること等の要望各地でなされているが、本委員会は、前記の基本的な考えに基き、その要望趣旨を妥当と考えるので、これが早急実現のため所要措置を講ぜられたい。  以上でございます。  ちよつと速記をとめて。    午前十一時三十一分速記中止    ―――――・―――――    午後零時二十七分速記開始
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。御懇談を頂きました結果、七月の八日の委員会において決定せられました日雇労働者待遇を改善するための措置につきましては、以下申上げまする案文を以ちまして大蔵大臣小笠原三九郎君、労働大臣小坂善太郎君、参議院予算委員長青木一夫君に、参議院労働委員長の名前を以て申込れをすることにいたしたいと存じます。以下案文を読上げます。    失業対策事業における日雇労働者待遇改善に必要な措置に関する申入   参議院労働委員会は、昭和二十八年七月八日の委員会において、失業対策事業労務に従事する日雇労働者待遇を改善する必要を認めて、別紙通り要望することに決定したから申入れをする。   要 望 書  緊急失業対策法は、占領下経済原則の強力な実施により発生を予想された大量失業に対処し、民間事業等に就職するまでの暫定期間失業者を救済する目的を以て制定されたものであるが、最近の失業対策事業は、その内容が質的に向上して労務規律は確立され、労務形態民間一般産業と異なるところなく、経済効果は著しくあがり、単なる臨時失業救済対策として取扱う時期は過ぎ去つたと思われる。従つて委員会は、緊急失業対策法をはじめ、日雇失業保険制度実情に即するよう改正するため、再検討する必要があるものと考える。日雇労働者生活を改善するため、(一)全国平均賃金日額を三五〇円に引上げること(ニ)所謂夏期手当」を十五日分支給すること(三)稼動日数を拡充し、二十五日にすること、(四)日雇失業保険待機期間六日を撤廃すること等の要望各地でなされているが、日雇労務者生活実情に鑑み、これが趣旨実現のため早急に所要措置を講ずる必要がある。  以上でございます。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  只今読上げました案文につきまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御異議ないものと認めて決定いたします。  これの申入取扱いにつきましては、委員長に御一任を頂きたいと存じますが、よろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委員長手許におきまして早急に手配をいたします。今日はこの申入につきまして、実は小坂労働大臣をこの委員会へおいでを願いまして、趣旨の存するところをよくお伝えをして、御所信を伺うことになつておりましたところが、本日衆議院における労働委員会質疑最終日でございまして、小坂労働大臣にここへおいで願うことが困難になりました。従いまして安井政務次官から発言を求められておりますから、これを許すことにいたします。
  7. 安井謙

    政府委員安井謙君) 前回の委員会に引続きまして、今回の日雇労務者のことで当委員会要望事項申入があることを伺いました。国会の決議の前提としての委員会申入でございますから、政府といたしましては御趣旨のほどを十分に勘案して、でき得るものについては極力副いますように努力をいたすつもりであります。ただ、従来政府が考えておりまする考え方から申しまするならば、日雇失業者の問題と申しますものは、飽くまでこれは正常な雇用契約とはやはり質的に違つておるものだという見解は従来と変りなくとつておりますることは事実なのでございます。併し御趣旨の点につきましては、十分関係方面とも連絡いたしまして善処して行きたいと思います。
  8. 井上清一

    井上清一君 衆議院におきまして、電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法の規制に関する法律案が今日多分議決になるだろうということを言われております。近く本日本院に送付されて来るだろうと私は思うのであります。それで月曜日に労働大臣から本法案についての説明を聴取することにいたしたら如何かと思います。
  9. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  10. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  暫時休憩をいたします。    午後零時五十七分休憩    ―――――・―――――    午後二時十二分開会
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き会議を開きます。  去る七日の日に富士自動車株式会社追浜工場視察いたしまして、軍施設工場における労働法適用状況視察して参りましたので、視察の経過の概要を取りまとめて簡単に御報告を申上げます。高戸専門調査員をして代読せしめます。
  12. 高戸義太郎

    専門員高戸義太郎君) 私から申上げます。  富士工場視察後、労働委員米軍側監督官外工場長労働組合懇談を持ち、その際意見交換の行われた主なる点を申上げます。但しこの会合の際正式の通訳を通じたものではないし、速記とつたものではないから、絶対正確というのではありません。  当日の会合者参議院側労働委員長栗山良夫労働委員井上清一吉田法晴市川房枝伊能芳雄委員労働専門員室専門員高戸義太郎、同調査員大輪宣方外務省国際協力局第三課事務官大井浩米軍側富士工場監督官ミークス大佐極東米軍司令部労働関係顧問ドウテイ氏、日米合同委員会幹事プライス中佐冨士工場側富士自動車追浜工場長大野竹二労働者側委員長三富博外LSO関係組合役員。  次に委員米国側との問答についてお伝えいたします。   栗山委員長 当工場視察して見て従来考えていたより組織的且つ能率的で、作業もうまく行われているように見受けられた。   監督官ミークス大佐 日本人は器用で能率的である、作業のうまく行われているのは労働者及び大野工場長が協力してくれるからだ。   栗山委員長 当富士工場ではLSO工場側労働者賃金の差は最近なくなつたそうだが、例えば赤羽日本製鋼では、五月の争議前はその差が一カ月について四千円であつた。契約は単価が同一と考えられるのに、この相違のある理由如何。   ドウテイ氏 作業はいろいろあつて一言で言い尽せない。この契約を担当しているのは横浜の調達部であるから詳しくはわからない。どうしてその差ができるのか調べてみよう。   栗山委員長 米軍特需業者との間にある私契約人事条項がある、軍には保安上こんなことも必要であることはわかるが、そのため理由のはつきりしない解雇が起る、又構内での組合活動もいろいろ制限を受けている。   ドウテイ氏 本日の会合は公式のものではないから、私個人として個人的意見を申上げる。軍としては或る程度の秘密が必要である。これは米国であるとか日本であるとかいうわけのものではない。過激分子がいて怠業して作業に影響しないよう監督する必要がある。かかる過激分子の排除は使用者側にも利益になることである。構内における労働者組合活動は純経済的賃金闘争である限り差支えない。労働基準法第三十四条では休憩時間中は何をしてもいいことになつている。例えば監督官の室に入つて机を壊してもいいことになる、併し構内での自由はおのずから限界があるはずだ。日本労働省当局でも無制限の自由とは言つていない、就業規則等でおのずから限界がある。これは大陸法でも英米法でも殆んど区別はない。私がこんなことを言うのは財産権ということを言いたいからだ。つまり使用者財産権に対してかくかくしてはいけないと言い得るのだ。   吉田委員 保安組合活動の自由との関係の調整については如何。   ドウテイ氏 一九四九年九月二十三日の指令で、構内の一切の政治活動は禁止してある。   三富委員長 人事条項があると組合活動をおのずから制限することになる。過激分子という意味が不明確のため不安である。具体的な内容について明示したほうがよい。   ドウテイ氏 三富君とはよく会つていろいろ話を今までしている。作業を阻害するものでないと解雇しない。組合活動による解雇の心配はない。組合活動組合法第七条で保障されている。   栗山委員長 日本が降服以来、最も労働者米国に感謝していることは、一方的に解雇されることがなくなつたことである。従来、政府及び事業主は思うままに解雇ができた。そして納得し、真実をつかむということができなかつた。労働者解雇する場合は納得が必要である。勿論軍事的に秘密が必要なことはわかるが、解雇は明確な理由を与えるべきである。そのため人事条項は廃止されたほうがよい。少くとも解雇の事例が与えらるべきだ。そうすれば、単に好ましくないという理由解雇されないで済む。又解雇される場合は、被解雇者に弁明の機会を与えるようにして欲しい。   ドウテイ氏 現在LSO契約については協議中である。その草案外務省関協力局次長に渡してある。それは労働政策訓令項目からなつている。そのうち二項目保安解雇についてである。それは解雇苦情処理である。解雇の場合は例を挙げて示すことになつている。苦情処理のほうは特別の機関を設けることになつている。特需契約の場合の解雇もこれに準じて行きたいと思う、以上を以て委員長に対するお答えといたしたい。  以上でございます。   ―――――――――――――
  13. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、米軍施設内における労働三法適用状況に関する件を議題といたします。  本日は参考人といたしまして、早稲田大学教授野村平爾君、東京都立大学教授沼田稻次郎君、愛知大学教授戒能通孝君の三君から御陳述を願うことになつております。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 大変恐れ入りますが、参考人陳述をお願いいたします前に、今の御報告に関連して一点労働省側にお尋ねをいたしたいのですが。
  15. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ああそうですか。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 報告の中にありました特需工場の中における組合活動、或いは人事条項に関連いたしますこの点について、追浜工場において失業いたしたのでありますが、それは、ミスター・ドウテイ個人意見を述べるということで話がなされたのは報告通りであります。その中に労働者もオフィシャルな見解として、休憩時間中の組合員活動は必ずしも自由でない、極端に言うならば、報告の中にありましたようにハンマーを持つてデスクをこわすというようなことが許されておるわけではない云々、こういう報告が今なされております。私どもはそこで論議をしておりましたのは、労働関係法に保障されております組合活動特需工場の中で認められるかどうか。労働法、特にこの場合は労働組合法ですが、どういう工合に生きておるかということについて質疑或いは意見交換をしたわけですが、その中で労働省の公式の見解として、休憩時間中の使用と申しますか、利用は必ずしも自由ではない、こういう言葉がございましたので、その点は従来労働省米軍側に対して公式にどういうように説明をして来られたでしようか。私どもはそのときに受けましたように、休憩時間中といえども組合活動の自由はないというように説明されて来たのか、その点を一応承わつておきたいと思います。
  17. 有馬元治

    説明員有馬元治君) 労働省公式見解を述べたことについては、私今記憶がございませんので後刻調査しました上で御回答申上げたいと思います。
  18. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 参考人から御陳述を願いまする、御意見を求めまする問題点につきましては、お手許にお配りをいたしました印刷物で御覧を頂きたいと思いまするが、一応私から読上げておきます。   一、行政協定第二条及び第三条の解釈   1 米軍施設内において行使される米国権利権能というものは如何なる性質のものであるか。米国主権の交使をも含むのか、又は含まぬのか。米国法適用されるのか、日本法適用されるのか。   2 従つて日本主権はこれ(米軍施設内)に及ぶのか、及ばないのか。協定建前として及ぶのであるが、第三条の効果として日本主権効力を排除されるものが多いとすれば、どのようなものが主権効果として残存しているか。   二、米軍施設内の工場、機械を日本会社に貸付け、これと契約を結んでいる。この契約は私契約である。が、これは日本法によるものか、米国法によるものか、法律上の性格。   1 右契約につき紛議の生じた際、日本裁判所裁判権があるか、裁判権ありとするも執行は可能か。   2 右契約の一部として「人事条項」があり、これに基いて米軍会社の間に権利義務発生する。会社がこの私法上の義務を履行することによつて日本労働法令に違反し又はこれによつて行われておる社会慣習にもとる結果となつた場合   A 国家は法の定むるところに従つて会社原状回復を命じたり損害賠償その他を命じ又は処罰できるか。   B 会社違法行為行政協定第三条から出る米軍権能に基くものであるからとして会社は責任を免れ得るか。   三、それはともかく、行政協定第十二条第五項の「日本国法令で定めるところによらなければならない」という規定如何に解すべきか。   1 日本労働三法がそのまま米軍施設内に施行され、適用されるものか。   2 ジーズ・リレイテイング・ウエイジス……シャール・ビー・ゾーズ・レイド・ダウン・バイ・ザ・レジスレーションズ・オブ・ジヤパンいう字句は、法そのもの適用ではなくして、日本法内容同一取扱いをなすべきことを規定したに過ぎないものか。   A 前者であるとすれば、人事条項の設定及び今日までの軍令馘首その他の米軍管理本条違反ではないか。   B これに対する矯正措置如何になさるべきものであるか。   C 又、後者であるとしたならば、五項の規定に則した労務管理米軍に要求すべきであろうが、如何。   3 いずれにせよ行政協定第三条と第十二条五項との間に矛盾がある。これは当然第十二条によつて第三条が制限されるものと解すべきであろうと考えられるか、どうか。   4 この解釈を外交的に決定することがすべての問題の根抵をなすものであろうと考えられるか。   四、叙上のごとく米軍施設内工場内のみならず、いわゆる管理工場においては私契約中の「人事条項」により、又駐留軍労務者と呼ばれる、特別調達庁にて雇用され、米軍使用される間接雇用労務者占領下において政府米軍間に締結された労務基本契約中の「人事条項」により現在も引続き理由を示さぬ解雇が行われている。   1日本国労働法建前として、今日の条約下、明らかに違法又は不当の扱いと考えられるかどうか。   2 更に、労働者側としては、「休けい時間に於ける組合活動の自由」、「同じくビラ撒きの自由」、「基準法によつて保障された安全、衛生その他福祉条件整備」等を要求しているが、現在のところ無視されている。これらは違法と解すべきか否か。違法でないとしても一般社会慎習に反すると考えられる場合対策如何。   3 使用者としては、人事権に対する不当なる干渉として、「人事条項」の緩和乃至撤廃を要求している。「人事条項」はどのように処理さるべきであろうか。   五、更に本年七月より別紙のごとき「人事条項」の改訂が米軍側より要求されている。右によれば、現在よりも更に強化され、新たに、「スパイ行為等情報提供」を要求されている。これは一段と労働者自由権侵害の虞れありと考えられるが如何。  以上でございます。
  19. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  20. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  それでは参考人から順次御意見を承わりたいと存じます。早稲田大学教授野村平爾君。
  21. 野村平爾

    参考人野村平爾君) 配付を受けました質問の問題点、その第四のころから少し私意見を述べたいと思います。  四の問題によりますと、米軍施設内工場、それから間接雇用の場合も同様でありますが、内面では労務基本契約中の人事条項によつて、それから表面では理由を示さない解雇が行われている。そのことについて、日本国労働法建前としてどうであるかという問であります。その点につきまして、日本の場合には解雇に対する考え方が大体二つに分れているかと思います。それは、解雇建前としては自由である。併しながら次のような場合には解雇が不当になる、或いは場合によつて解雇そのものが無効と考えられる。それは法律規定制限のあるような場合に、その制限規定に反するというような場合、特にその中には、例えば労働組合法による不当労働行為に該当するものとして考えられる場合が含まれるわけですが、そういうふうな場合、それからもう一つは、協約によつて解雇制限がある場合、それからもう一つの場合には、当事者間の労働契約の中に契約上の制限を持つている場合、こういう場合につきましては、解雇はそれに従わなくてはならないが、或いはそれに従わない場合に無効になる合場もありましようし、債務不履行になる合場もありましようが、ともかくもそういつた効果を生ずるという考え方一つ、それからもう一つ考え方は、更にそのほかに不当労働行為なんかの場合も含んででありますが、解雇をするにはやはり解雇をするだけの相当な理由がなければいけない、解雇には正当な事由を必要とするという考え方、この二つ考え方はそれぞれ裁判所によつても表明されておりますから、いずれ共にやはり公式の意見として通用をする考え方で、私個人意見ではありません。そういうような考え方があるわけであります。ところがアメリカのほうの一般理論に従いますと、大体解雇は自由だという考え方がかなり強いと思います。ところで日本労働法適用になるという建前をとつて考えますと、今言つたような考え方は、協約規定を調べるとか、不当労働行為の有無であるかというようなことを少くとも調査検討をした上で、その解雇そのもの効力が考えられるということに、幾ら最小限解雇が自由であるという建前をとる場合でも、それだけのことは必要になるのではなかろうかというように考えるわけであります。  ところで第二番目の問題でありますが、更に労働者側として、休憩時間における組合活動の自由、同じくビラ撒きの自由、基準法によつて保障された安全、御生その他福祉条件整備等を要求しているが、現在のところ無視されている、これを違法と解すべきかどうかという点でありますが、休憩時間において組合活動の自由があるかどうかという点について、先ほど来御報告のあつたところを伺つてみますと、ハンマーを以て机をこわす自由はないというようなお話があつたわけですが、またそんなことは誰も組合活動の自由として問題にしているわけでありませんので、恐らく組合でもそんなことを問題にしているわけはないと思います。組合活動の自由を制限し得るということは、その会社施設内においての場合ならば、会社財産管理する限度においては当然出て来ると思います。例えば建物をこわすとか何とかいうことについては、これは幾ら組合活動の自由であるからといつてできないということが出て来ると思う。それから又会社施設内において他の会社業務が行われている場合に、その行われている業務を妨害するような形で行われる行動というものがあれば、それは通常の場合問題になり得ると思います。それ以外のことについては組合活動の自由というものは、原則として休憩時間という、労働者自分自分の時間として処分し得る時間については制限をされないのが妥当だというふうに考えるのが私たちの考え方であります。だから仕事の運行を妨げるとか、財産施設に対する損傷を及ぼすような、つまり財産管理ということに直接ぶつかるような方法による組合活動でない限りは、大体組合活動の自由というものを制限してはならないというのが適切な考え方だと思います。従つて施設内において例えばビラを撒くというような問題につきましても、それが個人々々に手渡されるというような形であれば、これは制限する正当な理由が出て来ない。例えばビラという形で以て一面に施設全体を汚してしまうような形のものが起るということになつて初めて問題になり得る程度のものではないかうというふうに考えるわけであります。基準法によつて保障された安全、衛生その他福祉条件整備のことを組合が要求しているというのは、これは日本法律適用されるという前提に立つ限りは至極当然の要求でありまして、この点はむしろそういう合法的な要求を抑えるということのほうが適切でないというふうに考えることができると思うのでありますが、そういう考え方が一般に違法性を持つか持たないかということは、一概にそのこと自体として考えることができないので、例えばそれが刑事上の責任を生ずる問題であるのか、或いは民事上の責任を生ずる問題であるのかということについて個別的にこれを区分して、やはりもう少し丁寧に考えてみる必要が起つて来るのではないかと思うのです。政府見解としても、日本労働法施設内においても適用されるという見解をとつているわけですが、こういう考え方をとるというと、基準法適用も当然あるわけでありますから、基準法に基く罰則適用というようなことが考えられて来ることになると思うのですが、こういう一つの刑罰を科するというときには法律規定というものが存在し、その法律規定を厳密に解釈して、科罰の要件があるかどうかを検討しなければならないと考えるわけですが、そういうような場合に、その行為の性格が反社会的であるかどうかという判断をする、そういう場合になりますと、確かにひとしくこれは反社会的だというような考え方が出て来るのじやないか、こういうふうに思うわけです。それを一般に違法というふうに……、つまりそういうような基準法等の規定適用になるという前提に立つ場合には、そういう行為は適切でない、従つてそういうことによつて基準法に保障された安全、衛生その他福祉条件整備等を要求すること、このこと自体を反撃するような形において行われた場合には、そのことについてやはり行為の違法性があると、こう判断してよろしいのではないかというふうに思うわけであります。併し基準法適用がないということになりますと、そういう行為が仮にそれ自体として違法の性格を持つているからといつて、それじや刑罰が科せられるかというと、これは刑罰は科せられない、こういうふうに考えなければいけないのじやなかろうかと思います。ともかくもそういうような行為が一般社会慣習に反するということは、これは事実だと私は考えますが、そのことに対してどういう対策があるかという問題がここで一つ出されております。  こういうことに対する対策といたしましてはいろいろ具体的な問題としては考えられると思いますが、組合として見れば、この今言つたようなことを禁ずるような規定が、例えば基本契約という形で人事条項の中などに含まれていたとしても、この人事条項というものは表面的に私は出ているものだとは考えられません。表面に出るという場合には、少くとも労働者とそれから契約当事者であるところの、間接雇用の場合の政府、或いは会社の場合には、特殊関係においては会社という……会社労働者間の労働契約の中にその条件として現われて来ていなければ、そのことは労働契約解釈する場合の直接の資料にはならないというふうに考えます。  そこでその陰にあるところの人事条項として仮にこういうことがあつたという場合に、組合たありがこういうことを防ごうとするならば、つまり組合協約を以て、もつと組合活動の自由を保障するというような形に行かなくてはいけない。ところが組合が、自分たちが実力行使というような形によつて団体交渉権を強化しつつ協約を締結して行くという場合に、例えばいわゆる争議の自由というようなことが十分に守られなければ、なかなか今言つたような目的は達することができないわけでありますが、この争議の自由、争議権の行使というようなことが守られるかどうかということについては、やはり日本の行政権力というものが、それをどういうふうに取扱つて行くかということが非常に大きな影響があるのだと思いますが、そういう点は一般の日本法における争議に対する行政権の行使というのと同じように考えて行く、そうして、憲法などの建前通り争議権というものの行使が十分に守られるならば、協約を以てそういう保障に到達することができるというふうに考えて行くことができるわけであります。併し人事条項というものが一体じやどういうものかということがそれに関係して来ると思うのでありますが、人事条項というものについて、実は私初めてここでこれを見たわけでありますけれども、これは労務基本契約の中に定められるわけであります。で、そうすると労務基本契約というものは一体どんなものかという二のところの問題に関係をして来るのではないか。つまりこういう契約がまあここでは私契約であると考えられるか、日本法によるか、米国法によるかという問題が出ているわけであります。で、まあ私は深くこういう点について研究したわけではありませんけれども、大体日本内におけるこういう私契約についての法令による取扱いは、大体特別な協定がない限りは大体日本法律によるという考え方が普通だというふうに考えるわけですが、そうすると日本法によつて考えて行つた場合に、こういう人事条項をどう評価するかという問題が、一番最後の人事条項如何に処理さるべきかというそこのところへ関連して来るのだというふうに考えます。  で、人事条項をどんなふうにするかということにつきましては、これが日本法律で考えられるとするならば、日本の憲法で保障しているような基本的な権利というものの行使には差障りのない形において人事条項が定められた場合に、そういう人事条項は有効なものであるし、それに抵触するような形で定められた場合には、これは有効なものではないというふうに考えられなければならないのではないかというふうに思います。ところで人事条項の中にただ含まるべきものとして考えることのできるのは、つまりこれは日米安全保障条約というものが有効であるという前提から出て参りますと、この刑事訴訟特別法ですか、これによつてスパイ活動というものが問題になるわけですが、これは軍の秘密というものはそういう点に関連して来ると思う。だから先ほど来軍の秘密のために或る程度秘密にしなければならない事項があるという、その秘密にさるべき事項というのは、そういう軍の行動に関係のある点でありまして、人を雇う場合にどうするかというようなことは、実はそういうような、この契約が軍の特別の目的のために締結されている契約であるということから出て来る当然の効果としては、その限度にしか考えられないのではないかというふうに思うのであります。  そこでまだ一つ私として残しておる問題があると思うのですが、前提として今の考え方を述べます場合に、私は日本法律適用されるというふうに考えた場合に、日本労働法上の考え方としてそのように申上げたわけですが、今度は行政協定の場合に日本労働法が当然適用になるだろうかどうかということについて、ここでも三に問題が出されているわけでありますが、この行政協定第十二条の五項と、それから行政協定の第三条との関係というものにつきまして、まだ私それほど詳しく調べておりませんが、率直にこれを受取つた私の従来の考え方としては、この設問の三の二のところにありますような原文の意味から考えても、少くとも日本法律がそのまま適用になるか、或いはこの件に関しては特に日本法律を定めて、その法律によつて適用するか、いずれかの場合であつて、この2にありますように、日本法内容同一取扱いをなすべきことを規定したものに過ぎないものかというふうには考えられないというふうに思つております。ですから日本法がそのまま適用になるか、或いは丁度それに適用するに適当な法律がないような場合に、日本で以て法律を作つて、その場合、この問題を解決するように定めるか、いずれかに行くべきものだというふうに考えます。ところで、ただこういう労働契約や何かの効力を考えるという場合には、日本法適用がある、そのままに適用するのじやなくて、別に新らしい法律を作らなければならないものだという考え方とつたとします、そういう考え方とつたとしても、そこで現在まだそういう特別な法律ができていないときには一体どうするかというと、そういう解釈の基準となるべきところのものは、従来の日本法の精神だというふうに考えて、これは差支ないのじやないか。従つて日本法適用になると考えて、適用にならなくて、別にそのまま適用になるのじやない、新らしい法律を作つて、それによつてやるべきだという立場をとるにしても、とつた場合に、まだその新らしい法律がない場合を前提としましても、ひとしく結果としては、そういう労働契約などの解釈には私は差異がないものだというふうに考えたいのであります。ただ刑罰規定等が問題になる場合には、若干そういう法律が直接に適用にならないということになりますと、つまり科罰をすべき規定というものが存在しないという意味で以て、私はその場合だけは相異が起るのだ、こんなふうに考えているわけでありまして、私の意見はこれで終ります。
  22. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、東京都立大学教授沼田稻次郎君にお願いを申上げます。
  23. 沼田稻次郎

    参考人沼田稻次郎君) 都立大学の沼田であります。私この三の3という問題、つまり行政協定第三条と第十二条五項との間に矛盾があるかどうかというようなことから所見を述べてみたいと思います。  その先に、私自身この行政協定効力そのものが果してあるのかどうかということについてはかなり疑いを持つておりますが、その点は一応留保したままで、これが法として行われているものということを前提として考える。  それからもう一つは、法というものが、最後に裁判所によつて強制され得ないとすれば、つまり国家権力によつて強制され得ないものは果して法であるかどうか、そういう法についての根本的な問題についてもまだ私はいろいろな意味で疑問を持つのであります。その点についても一応保留します。法律の理論、従つて法律理論はいささか存在する事実というものと多少違つて来る。従つて私の議論というのは、法の精神から出た議論ということにならざるを得まいかと存じます。  そこで第三番目の今申しました行政協定の三条と十二条第五項という関係を考えるとき、一番大切な問題は、大体労働関係というものは治安関係じやない。労働関係という問題はスパイの問題が起つたり、そういう問題が起る事項とは初めから縁がないということ、こういう建前で少くも今日の世界的な労働良識はこの問題を考えているわけであります。そういう世界的な今日の常識を背景に置いてこの条文の関係を考えなければなるまいかと、こう思つております。そういたしませんと、これは文章だけ如何に読みましても、これは水掛論に終る可能性がある。この三条の第一項と申しますのは、これは文章だけ見れば非常に広いもの、権限を含むように読取れますし、それからわけてもこの日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の協議のための合同会議公式議事録などを見ますと、この点ラスク氏が非常に細かく述べられて、いろんなことがやれるように述べられて、それでどうだとおつしやる。そうすると岡崎さんが、私はこの了解は日本政府にとつて同意できるものであることを確信するというふうな形で話合いができておる。それでおつて、この十二条の五項のことに関してはこの議事録には出ておらない。ますますむずかしいと思うのであります、考えてみると。そこで、私はやはり合衆国を、世界の労働良識といいますか、上に立つて考えておるわけでありますので、これは本来ここで、「施設及び区域内において、それらの設定、使用、運営、防衛又は管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。」という、この規定自体がすでに一つの一般条項とも申しましようか、そういう世界的な良識というふうなものを背景として、そこでこういう規定がなされておるのだから、これがむちやくちやに行われる性質のものではないということをこの規定自身が含んでおる。その精神の現われが十二条五項である。つまり労働問題というふうなことについては、これは本国法、日本法律によつてもないということがここで規定せられておるというふうに私は三条と十二条五項との関係を考えておるわけであります。そこで、そういう考え方から行きますと、先ほど野村さんのおつしやいましたこの四の問題というふうなものも、全く今野村さんのおつしやつたことと大差ない結論になつて行くのであります。この点は実に詳細にお述べになりましたので、私ここで繰返す必要殆んどないと考えておるわけであります。  ただ、対策如何ということで、これは四の2の「違法でないとしても一般社会慣習に反すると考えられる場合対策如何。」と言われることで飽くまでこれは協約によつて確立しておけとおつしやつておることは全く同感なんであります。併せてここでやはりアメリカの法意識といいますか、それと我が国の法意識との共通性をもつと強調していいのじやないか。大体我が国の労働法を形成して行く上にアメリカが随分大きな役割を果して来ておつたわけであります。それを尊重する義務はアメリカ自身が大いにあるのである。この点はもつと強調してよかろうかと思います。これはあらゆる場合についてそうした態度が必要だろうかと思つております。  それから面倒な人事条項の問題について触れておきますと、人事条項の中にスパイ行為等情報提供というような問題を締結されておる。併しこの締結されておるのは、これは労働者としては別にあずかり知らないことなのだ。だから労働者はやはり飽くまでも日本労働法によつて保護されておるのであつて、それをこの条項を理由として日本労働法を破るということは、これはもう全く法の精神に反する。これは我が国の、日本の場合を考えたつて、銀行が、おい、お前のところ若し首を切らなければ金を貸さないと言つて首切り条項を呑ませるかも知れないし、それから組合の幹部で過激なやつは切つてしまえという要求を出すかも知れない。そうしてそれを呑んでそのために金を借りて来るかも知れない。その条項があつて、それによつて労働者が遠慮なく首を切られて行つた日にはこれは法律が何のためにあるのかわからない。つまりこの基本契約というものは、本来そのものとしては労働者を拘束しがたいという性格を持つておるのじやないか。そこでこれが併しそれにもかかわらず、現実に法を破つて来るという場合に矯正しようがない、アメリカを相手にして矯正しようがないという問題が出て来るわけなんです。そうしてそれがもう一つの圧力となつて、今度は使用者がそれを違反して、使用者に対する矯正があるかどうかという問題の場合でも、使用者はその基本契約理由として、わしや知らんと、こういう逃げ方をしようとする、併しながらこれはやはり我々として法の理論から行けばいけないのであつて、やはり使用者に対しても当然不当労働行為を命じ得るし、だから救済命令も発し得る。それから所要のいろいろな法律上の効果を期し得る、それで使用者に対しては矯正し得る、これは国内の問題で矯正し得る。ただアメリカが直接そこに介入して来るときに、現実に行詰つてしまうということが起るわけであります。そこでそれは今の点は二に当るわけですが、つまり「国家は法の定むる所に従つて会社原状回復を命じたり損害賠償その他を命じ又は処罰できるか」ということ、だからできると言わざるを得ないと思います。  そこでこの基本契約は、これは私契約であるが、果してこれは日本法によるか、米国法によるかという問題でありますが、今、先ほど野村さんのおつしやつたように、やはり国際私法によるべきではないか、そうすると法例第八条による行為地法の原則適用されて来るのじやないか、併しこの問題はなお十分研究を要することであろうと思つております。  それからこの第一番目の行政協定の二条、三条の解釈という問題ですが、これは我々どうも専門外のところなのでありますが、ただ我々の理解しておるのでは、治外法権的ではあるかも知らんが、それは属人主義的な治外法権なので、或る地域を租借地のごとくにぴしやつと抑えてしまうはずのものではないというふうに私どもは理解しておつたのです。そしてそういうふうに規定が書かれておると私は思うのでありますが、ただ事実においてはどうも属人主義的であるよりも、その一定地域が属地的な形で行われておる。そして何となく政府もそれが当り前であるというふうな頭で考えられておるのじやないか知らんとも考えておるのであります。そうでなければ政府はもつといろんなことを要求する点があるはずである。その点で我々は飽くまでも法の正しい立場で行けば、その地区においてやはり日本主権も当然及ぶ、併しアメリカの主権も及ぶ、それはこの安全保障条約の第一条に書かれた目的に限定した範囲において及ぶ、そしてその範囲外のことには原則として日本主権が及ぶべきものじやなかろうか。ただ、実質的にはアメリカの主権の及んでおる領域のほうが大きいというだけである。どうもそのように考えるのが建前じやなかろうかと思います。何分急なことでもあつて、而も非常に事は根本的な問題に触れておりますので、なお細かいことなどはあとでお答えすることにしまして、私の口述はこれで終ります。
  24. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 有難うございました。  続きまして愛知大学教授、戒能通孝君にお願いをいたします。
  25. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 戒能であります。根本の問題は要するに基地、つまり施設及び区域というものがアメリカの租界であるかどうかということにかかつて来るのじやないかと思つております。ところが今までの説明によりますというと、そして又今まで取交された文書によりますと、施設及び区域というものはアメリカの租界ではないという立場をとつていると思うのであります。飽くまでもこれは日本の領地であるという立場をとつているわけだと信ずるのです。そうしますというと、日本の強行法規であるところの労働法規というものがやはりこの区域及び施設の中においても適用されるべきが当然であると信じております。併しながら今までの事例によりますというと、お示しのような各種の事件が起つておるのは、これは主として外務省が労働問題に対しまして非常に不親切であるといいますか、それとも同情がないと用いいますか、或いは又十分に努力をして呑み込んでもらえないといいますか、その辺のところに問題があるんじやないかと思えるわけであります。日本の国家は飽くまでも国民を護る義務がございます。国民の権利を擁護する義務があると思われるのであります。従つて国民の権利というものをアメリカ政府に対しても十分に護つてもらわなくてはならないという立場になつていると思うのであります。而も日本の国民の権利の一部がこの労働法という形になつて現われている以上は、その労働法をアメリカ政府によつて遵守してもらうという努力が絶対的に必要なんだと思うのであります。而もこれに関しましては、行政協定第十二条の第五項におきましてすでにアメリカ側も遵守することを承諾しておるわけでありますので、これを具体化してしまえば結局お尋ねのような問題なしに済むのではないかと思うのであります。  そこで一つ第一項から私の意見の結論だけを申上げますと、先ず第一に行政協定第二条、第三条によるところの米軍施設内において行使される米国権利権能というものは、これは米国主権の行使を含まないのが原則であると信じております。但しこれにつきましては行政協定によつて定められた各種の権限というものはこれはアリメカ側にあるだろう。言い換えれば施設の設置、維持、管理というものに関する限り権限はアメリカ側にあるだろう。又アメリカ側にあるが故に日本政府はそれに協力する義務があるわけでありまして、その結果として刑事特別法というものができておるのだと思うのであります。併し刑事特別法ができておることは、これは単にアメリカ側にのみあるのでなく、日本側にも管理権を持つておるのだ。言い換えれば日本側はそれに協力しておるのだ、それに協力して日本みずからの立場においてそれに援助しておるのだということを意味しておると思います。従つてここに適用せられるのは原則としては日本法であると信じております。アメリカ法はアメリカ人に関して適用されるのでありまして、この点につきましてはこの行政協定の第十七条におきましてもその点は明示されておるわけであろうと思います。従つてこの第一の第二番目の問題であるところの日本主権米軍施設内にも及ぶと解釈するのが正しいと思うのであります。殊にこの労働法の問題につきましては、これははつきり及ぶと見なければこの行政協定の第十二条というようなものの意味は理解できなくなつて来るだろうと思うのであります。  それから第二点でございますが、米軍施設内の工場、機械を日本会社に貸付け、これと契約を結んでおる場合におきましては、日本会社日本労働者使用する限りにおきましては日本法律によらなければならないということになつておると思います。というのは雇用契約自身は飽くまでも日本会社日本労務者との間に締結されるべきものでありますから、従つてそれに対しましては当然強行法として労働三法というものが適用されると見なければならないと思うのであります。  「右契約につき紛議の生じた際、日本裁判所裁判権があるか。」という問題でありますが、この裁判権があるかという問題につきましては二つの問題があろうと思うのであります。一つはアメリカ軍側とそれから日本工場経営者側との関係だと思うのであります。この点につきましては行政協定の第十八条の第三項におきまして、契約による請求というものは、これた裁判権日本裁判所にあることを前提としておると思うであります。又第十八条の七項によりますと、「合衆国軍隊による、又はそのための物資、需品、備品、役務及び労務の調達に関する契約から生ずる紛争でその契約の当事者によつて解決されないものは、合同委員会に調停のために付託することができる。但し、7の規定は、契約の当時者が有することのある民事の訴を提起する権利を害するものではない。」というふうにございます。で、従つて訴訟を起す権利はありますが、併し訴訟によつては解決の見込が乏しいという場合、若しくは訴訟によつて解決することが困難の場合におきましては、合同委員会においてそれを処理するということになるべきであると信じておるのであります。併し行政協定第十八条第七項におきましても暗示されているように、訴権そのものを否認しているわけではないということは当然であると思うのであります。  第二の問題になることは、事業主と個々の労務者との関係でございますが、これは飽くまでも日本法の問題でありまして、従つてこれにつきましては裁判権及び強制執行権があることは当然であると思うのであります。なお、先ほど申残しましたが、米軍当局者とそれから事業主との契約につきましても強制執行権は理論的にはあり得ると思うのであります。併し具体的に日本の執行吏が現地に行きまして執行をするということが不可能である、或いは日本の警察がそれについて行きましても、実力の相違から申しまして執行ができないという事実に当面するだろうと思うのであります。従つてその執行の問題につきましては、主として第七項によつて解決さるべきであるというふうに解釈していいのではないかと思うのであります。  第二問の人事条項に関する問題でありますが、この人事条項に関する事項というのは、これは債権的には成るほど米軍当局者とそれから事業主との間に何らかの効果があるかも知れないと思うのであります。従つてその人事条項を遵守しないと米軍側では注文を出さないというふうな問題も起るかも知れないと思うのであります。それは丁度日本で、先ほど沼田さんがおつしやつたように銀行からお金を借りる場合、これこれのことをしなければ金を貸せない、若しくは弁済期限を早くするというのと同じことになるのではないかと思うのであります。併しこれは飽くまでも債権的効力でありまして、物権的効力でない。従つて労働法の問題は飽くまでも労働法の問題として処理されなければならないと見るのが正しいと思うのであります。言い換えれば労働者日本法律によつて保護されるところの各種の労働権というものは、人事条項があるからといつて失うものではないということになろうかと思うのであります。従つて国はそういう人事条項があることを理由にいたしまして、会社の免責を認めることができないということであると思うのであります。若しこれを理由にいたしまして会社の免責を認めるということになりますと、会社は銀行から借金をしたということ、又取引をしたということ、その他を理由にいたしましてどんどん人事条項を任意に挿入することができるのであります。外部との関係から、第三者と取引をする都合上君を解雇するのだというような、そういうことによりまして人事条項をどんどん入れることがありますから、このようなことはやはり認めらるべきではない、やはり労働基準法その他の規定はこの場合においてもこれで適用さるべきではないかと思うのであります。  第二点の第二間のBの問題におきましても同じことであります。如何行政協定第三条が基地、つまり施設及び区域の管理権を持つているからといいましても、それは労働法の問題に対しては関係しないという立場をとるべきであります。会社行政協定第三条を理由自分の責任を免がれることができないと見なければならないと思うのであります。  次に第三点の問題でありますが、第三点は結局行政協定第十二条第五項の問題でございますけれども、これはやはり行政協定第三条をそのまま反映しておるのだと思うのであります。この規定行政協定第三条との間には矛盾がないと見なければならないと思うのであります。というのは行政協定第三条は、現在施設をアメリカ側の租借地にしておるものはありませんので、従つてアメリカ側としては日本の法規を尊重するということは当然である、又日本の法規によるというのが当然であると見なければならないと思うのであります。行政協定第十二条第五項の英文「ジーズ・リレイテイング・ウェイジス……シャール・ビー・ゾーズ・レイド・ダウン・バイ・ザ・レジスレーシヨンズ・オブ・ジヤパン」という文句がございますが、これは要するに日本法によるということを意味しておると思うのであります。現に日本文の翻訳におきましても「日本国法令で定めるところによらなければならない」ということを意味しておるのでありまして、これは新規に法律を作るという意味ではなく、いわば現にある、或いは将来あるべき日本の立法によるべきであるということを意味しておるのだと解釈するのが当然ではないかと思うのであります。従つて日本の現行法の下におきましては、いわゆる人事条項のようなものはこれは認められるようになつておるのが多いと思いますので、むしろ軍令馘首といもうのは、殊に理由のそぐわない馘首というものは、十二条五項に違反する行為である、だから違反である以上は、それは飽くまでも合同委員会において処理しなければならない、合同委員会においてそれを処理せしめなければならないということになるのだと思うのであります。つまりこれに対する矯正措置は飽くまでも合同委員会義務である、こういうことになると思うのであります。勿論労働者側としましては、労働協約を締結する際、その他協約の中に矯正措置をとることにできるだけ努力することは当然であろうと思うのであります。  その次の第四点でありますが、これは先ほど野村教授から詳細な御説明がありましたし、私もそれに同意いたしますので、この点につきまして引続いて申上げることも一応省略さして頂こてかと思います。  それから第五点でありますけれども、第五点の事項は、これは非常に使用者としても困る虞れが出て来ると思うのであります。というのは使用者自身がスパイ行為等情報提供義務を負わされましても、それを探索するところの警察的施設はございません。又警察的権限もございません。而もなお且つ探索しようということになりますと、個人秘密若しくは個人的名誉ということをひどく侵害しなければならないという結論になるだろうと思うのであります。こうなりますと使用者自身が労務者から名誉毀損その他の告訴をされる。そうして処罰されなければならないという形になる虞れが十分あると思うのであります。従つて使用者自身の立場から申しましても、みずからなし得ないような警察的情報提供義務というものを求められることは、これは飽くまでも排除しなければならないと思うのであります。又排除しないでスパイ行為の情報提供義務を承諾いたしますと、この不履行を理由といたしまして何時解除されるかわからないということになるわけであります。何時いかなる契約を解除されるかもわからないということは、会社の地位が恐ろしく不安定になつてしまう、契約上の地位が不安定になつてしまうということが当然の結論だと思うのであります。更に労務者に対しましては名誉毀損等によるところの告訴権、損害賠償権の取得ということになると思うのでありますから、このような条項というものはどんなふうにしても承諾することを拒否して頂かなければ、恐らく使用者の方が非常にお困りになると思うのであります。勿論労働者の立場から申しますというと、これは自分の身柄の監視を始終されることになるのでありますから、従つて自分の自由権の放棄ということになつて参ります。憲法上の自由の権利の放棄ということになつてしまいますので、これもやはり労務者としては恐らく受入れがたい条項になると思うのであります。併しながらこういう条項というものが現に要望されておるとするならば、これは飽くまでも合同委員会においてこの条項というものは撤去してもらうように努力すべきだと感ずるのであります。若し撤去してもらうことができないといたしますると、日本契約者の地位が恐ろしく不安定になつてしまう。君のほうはスパイ活動調査が不完全だつたから契約を解除するというような、そういう簡単な理由によりまして、而も立証されない理由によりまして、仕掛品を全部無駄にしてしまわなければならないという結論にならないとも限らないと思うのでありまして、この点は使用者の利益を保護するという意味から申しましても飽くまでも合同委員会においてこのような条項を入れないようにして頂きたいと、こう思うのであります。
  26. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 一応参考人から問題点につきまして御意見を聴取したわけでありますが、只今政府委員といたしましては法制局の第一部長高辻正己君、調達庁労務部長中村文彦君、労働省労政局長中西實君、労働省労働基準局長亀井光君、外務省国際協力局次長関守三郎君がおいでになつております。従いまして各委員諸君の御質疑をお願いいたします。  ちよつと皆さんに御了解を頂きたいのですが、関協力局次長に私から代表してちよつとその後の経過を伺つておきたいと思います。  人事条項の問題について外務省は努力を当委員会に約束いたしておりますので、これについての努力の経過を伺つておきたいと思います。  参考人ちよつと申上げておきますが、これからいろいろ意見交換する過程におきまして、補足的な御意見の開陳がある場合には、委員長に発言を求めて頂きたいと思います。  関次長に委員長からちよつとお尋ねしておきます。実は過日来問題になつております米軍との私契約に関する人事条項の強化反対、或いは現行人事条項の改善等について外務省の積極的な努力をお願いして確約をしておるわけでありますが、その後の経過は一体どういう工合に進んでおるかということ、これが第一点。  それから第二点は、実は過日当委員会は富士自動車の追浜工場の労働情勢を調査に行つたんでありますが、そのときたまたま極東軍司令部の労働部長であるドウテイ氏が来られて、我々と懇談をしましたとき、個人的な見解として、人事条項は我々の意見として好ましくない、これは廃止されたほうがよいという意見を述べ、更にどうしてもこれを必要であるとするならば、解雇の場合にはやはり具体的な事例というものを契約に示して、その該当事項を明示しながら発動すべきであると、而も本人に対しては反訴の機会を与えるべきである、こういうことを述べたことにつきまして、ドウテイ氏は次のようなことを言つております。即ちそういう考え方は全く自分も同感である。実は只今労務基本契約の改訂について日本国と交渉中であつて、その案は、草案は外務省の関次長に渡してある。一口で申すと、労働政策訓令は五項目からなつてつて、そのうちの二項目保安解雇についてである。そして今私が意見として述べたようなことについて、大体具体的な事例を付するようなことに案はできておる。又解雇者について異議があつた場合には苦情処理の特別の機関を設けるようにもしたい。又、直用でなくて特需契約施設工場についても労務基本契約が成り立てばこれを準用したい、こういう意味のことが述べられておるのでありますが、我々は寡聞にして外務省からまだそういう話合いがあつたことを承知しておりません。従つてこれら二点についてお話を願いたいと思います。
  27. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) 第一の問題に関しましては、早速文書を以て、これはちよつと例外でございますが、合同委員会で向う側に申入れてあります。その後も話をしましたが、これやはり基本契約の問題とひつからまつているから一緒に話をしようじやないか、こういうことでありました。  それからして基本契約の問題につきましてドウテイが何を言つたか、これは私は知りませんけれども、現在におきましては交渉の途中にあるから、これは成るべく話をしないようにしようじやないか、外部には話をしないようにしようじやないか、こういうとになつております。然るにもかかわらず、ドウテイが話したということでありますから、私も今日は記録をとめて頂きまして、そして話をしたい、こういうふうに思つております。
  28. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今のドウテイ氏の発言は、将来誤解が起るといけませんから、私は念のために申上げておきますがドウテイ氏は、公けの会合ではないので公けの発言ではない、個人として情報を提供するという意味で申上げると、こういう工合に述べておりますから、誤解のないようにお願いいたします。  速記をとめて下さい。    〔速記中止
  29. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。
  30. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) このときにはすでに関係工場で全部調印された、調印済みであるという回答でございまして、よろしい、調印済みなら問題は、併しサプリメンタリーと申しますか、あとの補充協約のようなもので直そうじやないか、直せるものなら直そうじやないか、こういう話合いをやつているわけであります。
  31. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは只今の参考人の御陳述並びに関次長の経適報告等を中心にして御発言を願います。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどお三方に参考陳述をお願いしたのでありますが、文書による質問が主として特需工場人事条項が中心になつておりましたので、労務基本契約に触れられても、それは極めて関連をするという範囲内でしかなかつたと思うのであります。只今関次長はむしろこの基本契約を主にしてお話あつたように思います。特需工場人事条項につきましては、お三人の陳述施設及び基地についてアメリカの軍人、軍属等等、アメリカ人についてはアメリカの主権が及ぶが、基地の中、特に施設及び基地などすが、人間については日本法律適用されるし、又施設についてもアメリカ軍人、軍属を除くのほかについては日本法律が当然適用されるはずだ、で行政協定第三条と十二条等の関係はこの点を明らかにしておるのであります。そこで人事条項は債権債務関係を生ずることはあつても、それによつて日本労働法規、強行法規としての日本労働法規の適用するものではない、こういう御陳述であつたと思うのであります。その点は人事条項を含みます特需関係契約を私契約として見て参りました意見と全く同じであつたと思うのであります。そこで一つお尋ねをいたしたい点ですが、今までの、七月一日以前の人事条項の中にも含まれておりますが、特に七月一日以降改訂されるべき事項、或いは大部分でありますか、一部分でありますか、調印を終つたという条項の中には、資料の中に出ておりますようなスパイ行為或いは怠業若しくは破壊活動の行われている或いは虞れがある場合の情報を完全に提供しなければならん、或いは第九条には指紋をも取り得るというようなことでございますが、そういう私契約効力の問題、米軍とそれから特需工場契約者との間の債権的な効力とは別問題でありますが、それが労働法上或いは日本法律に照らして無効だと考えられるような、今挙げましたような事例の効力についてどういう工合にお考えになりまするか。私は日本の法関係としてはこれは無効だと解釈し得るのではないかと考えるのでありますが、その点を先ずお伺いをいたしたいと思います。これはどなたからでもかまいませんけれども、戒能先生から一つ
  33. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 戒能であります。指紋、写真、個人の識別という問題になりますると、そのような指紋を提供すること、写真を提供すること、個人の識別に必要な他のこの書類、例えば履歴書を提供するということ、これは日本におきましても普通やつていることなのでありますので、指紋は別でありますけれども、写真、それから履歴書につきましては普通やつておることでございますので、この点はすぐに無効であるというふうに申すわけには行かないという感じがいたすのであります。但し、指紋の問題につきましてはなお問題があろうかと思うのであります。併しこの写真、それから履歴書というものにつきましては、これは一般に有効と見て、雇用契約上の建前としてはそういうものを徴するということはあり得べきことだと思うのでございます。従つてこの点につきましては、私としてはその写真、それから履歴書のたぐいはこれは取つてもいいのだ、取る契約をしてもいいのだという感じを持つておるわけであります。  それからもう一つはこの情報提供でございますけれども情報提供というものが個人の警察権行使のような形に亘るような場合におきましては、個人に公権力を行使せしめることは何人にもできない、殊に個人をして他人の私的秘密を探らせるようなことは何人もなし得ないということになると思います。この点におきまして、こんな情報入手の義務というものを課するような特約は憲法上或いはこの日本の一般の法慣例上無効であるというふうに解釈をするわけでございます。で、個人の私的内密まで調査するという義務をこの私人に持たせるということは、これは日本の法規というものを根本的に破壊してしまいまして、自力救済を通常許すようなことになるのであります。この自力救済の規定を認めるというこのことを前提とする限り、やはり私はこの点を認めてはいけないというふうに存じております。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 私も第九条を、改訂された或いはされようとする労務条項の中の第九条関係については、指紋の点を特に取上げてお尋ねをいたしたわけでございます。それは国民登録法を審議いたします際に指紋というものが入つておつたのでありますが、これは民主主義の建前上、指紋を取るということはこれはやめるべきである、或いは法制上はそういうものが出て参りませんでしたから、結果としては日本の法文上明記されておる云々という点はとにかくでありますが、日本の憲法上の考え方からは基本的人権に関連いたしますので、それを除いて、それは逆に言いますと、指紋を取ることを強制するような条項を含みます労務条項の効力法律という点でお尋ねをするわけであります。  それからその点は御答弁を頂いたわけでありますが、もう一つ情報提供について警察行動、或いは個人の公権力云々という陳述を頂いたのでありますが、その中に問題になつております条文の中に、スパイ行為或いは破壊活動行為と列べて怠業という文字が入つております。或いは破壊活動が現に現われておる、或いはスパイ活動、スパイ行為が現に現われておる、或いは虞れがある云々ということで、その点について個人の公権力じやなくて警察等が入る云々ということならば刑事特別法或いは破壊活動防止法の、当否はとにかくといたしまして、一応十分の法的な根拠もあるということになるかも知れんと思うのでありますが、怠業或いは怠業の虞れがある場合に云々という点は、情報提供義務もそうでございますが、例えば仮にそれを警察力等を以てしても情報を提供する、或いは調査するということ自身も日本法律の場合には禁ぜられておるのではないか、こういう感じ、考えがいたしますので、怠業の点について特にお尋ねをしたわけであります。
  35. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 先ほどちよつと補充しなければなりませんけれども、指紋につきましては、日本の従来の慣例によりますると、概して犯罪人が取られたのだという一般的観念がございます。つまり指紋を取るということは、これは通常の人に対する行動ではなくて、犯罪の容疑あるものと見なされた場合の行動であるように思うのであります。で、従つて指紋を取るということは、個人的な名誉の毀損ということを内容として意味しておる場合も随分多いと思います。従つて個人として成る人を雇い入れるという場合におきまして、その人の指紋を取ることによりまして、その人があたかも犯罪人であるような感じを持たせるということは、これは個人の尊厳を侮辱することになるのではないかと思うのであります。で、従つて個人の尊厳を飽くまで尊重するという建前を……日本の憲法の下において保障されておる日本人の権利というものの中には、指紋を取られないということも意味しておるのではないかと思うのであります。  それから第二の怠業という点でございますが、これは怠業という言葉も、訳が正直に言うと悪いと思います。怠業は恐らくサボタージュが原語じやないかと思います。このサボタージュというのはただストライキ行為の一部として、争議行為の一部として怠業するというような怠業ではないのでありまして、これはむしろ機械を破壊して、そうしてなお施設を破壊いたしまして、そうしてあの何か、設備の運営を阻害すること、これを怠業と呼んでいるように思うのであります。この怠業は、この言葉は意味を変えて頂くほうが正しいのではないかと思います。併しスパイ行為或いは施設破壊行為、つまりサブバーシブ、復讐行為といいますか、それらはいずれも刑事特別法によりまして日本の警察が監視すべき義務を負担しているのでありまして、雇主個人が十分監視の義務を持たされること、それから又持たないことによりまして契約を解除されるというふうなこと、これは日本の現憲法の下におきましてはちよつと許されないことと思うのであります。若しそうでないということになりますと、すべて雇主というのは自分使用する者の行動につきましても監視の義務を課せしめられる、そうしてみずから私警察を持たなければならないということになるわけであります。私警察という制度は日本では否認しているわけでありますから、これはやはり私警察制度というものを認めないという立場をとつて頂きたいと思うのでございます。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 今までの御説明、或いはお考えに従いますと、この条項それ自身の日本法律上の有効無効という点もありますが、これをすでに強要せるところもありますが、違反をしたということで、解雇される云々という場合に、日本の法規上の救済或いは裁判上の救済もあり得ると思うのでありますが、これは或いは先ほどの御陳述からいたしますれば、一般的な制度上の救済は合同委員会の問題かも知れませんけれども、個々の問題については、これは日本法律で以て、或いは労働法上の不当労働行為その他の救済、或いは民事上の身分の確保の仮処分等の対象となり得るというように考えるのでありますが、そういうこの具体的な適用と申しますか、その結果による日本法律上の違反の場合の救済方法についてどういうふうにお考えになりますか、御説明を承わりたい。
  37. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 東京地方裁判所の判決でございましたが、極めてあいまいな理由によりまして仮処分を拒絶した事情がございます。つまりアメリカ側から言つて来たのだから仕方がないというような理由で仮処分、身分保全の仮処分を拒否した事件があつたと記憶しております。併しこの仮処分拒否そのものの理由というのは非常におかしいのでありまして、若し注文者から或ることを言つて来たら、その注文者の言い分に応じないと契約を切られるかも知れない、だから君を解雇するのだということが一般的に認められるようになつて参りますると、日本では結局労働者の地位保全というものが全然なくなつてしまうと思うのであります。従つて労働者の地位というものを或る程度まで保持しようということにすれば、どうしても必然的に仮にアメリカ側が解雇を要求したとしても、その解雇というものは日本法上は認められないという態度をとらなければならないと思うのでございます。  まあこれはちよつと余談になりますけれども、曾つては外国著作物の翻訳の問題に関しまして、日本の出版業者が非常に高いそして非常に不利益な契約をした事件がございました。その結果として多くの出版業者は却つて著物作を翻訳して出版した結果、破産状態に陥つたという事例がございます。具体的に申上げるのも何でございますが、ともかく非常に大きな出版社でありまして、ある著作物を出版した結果といたしまして、アメリカ側の官憲から非常に高い翻訳許可料を請求されまして、その結果殆んど破産状態に陥つたことがあつたわけでございます。こういうようなことを考えてみますと、アメリカ側の特需要求である、アメリカ側の契約条項であるからといつて如何なる条件をも呑むということになつて参りますと、企業そのものの安全というものは或る場合におきましては保持しがたいということになつて来ると思うのでございます。従つて日本側の受注者としては、でき得る限り日本の法規に従つて、そして又合理的な範囲で契約をしてもらいたいということを、私個人として希望するわけでございます。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 今戒能先生御指摘になつた曾つての事例というようなのは、三菱の下丸子工場の事例じやないかと思うのですが、私はあの事件を見まして、あれは占領中の事件であるという点に今日と根本的に違う事例があるのじやないかと、そういう点で野村先生から先ほど、現在の契約は私契約であつて、むしろ国際私法上の適用を受けるべきものじやないかと、こういう御意見があつたと思うのでありますが、大体そうだと思うのでありますが、なお外務省の場合に、或いは米側でもそうですが、労務基本契約とこの特需工場の私契約のうちの人事条項と全く同じに考えられておるように思うのであります。で、それぞれの向うから出されました改訂案を見ても符合をしております。そから改訂の要望に応える場合にも、労務基本契約の改訂、そして、それの内容として人事条項の改訂という態度に出て、そこで労務基本契約とそれから今までの特需工場……今後何という名前が適当か知れませんが、この契約の中の人事条項とは法律的に違うのじやないかという疑問を私どもつております。そこで一応この私契約と、法律、それから人事条項等については先ほど引用せられたのでありますが、労務基本契約、このアメリカ軍とそれから特調を日本使用者といたします労務者との間の間接雇用の条項を規定いたしました労務基本契約の間には、法律上本質的な違いがあるのじやないかという気がするのですが、その点についての先生の御所見を承わりたいと思うのです。
  39. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) お説の通りだと思います。で東京地裁の判決があつたのは、同じく占領中の事件でございますので、占領軍というものに対する遠慮から特殊の判決をしたのじやないかと思つておるわけでございます。占領関係というものが解けてしまえば、これは結局アメリカ軍の意思と、アメリカ最高司令官の意思というものが、これは一つの法的な意思であることは間違いないと思いますけれども、併し日米合同委員会において処理せられるべき事項でございまして、日米合同委員会においてでき得る限り日本側としては将来の摩擦が起るような事態の発生を防ぐように努力して頂きたいと思うのでございます。おつしやる通りに現在若し同じ種類の事件が起つた場合におきましては、裁判所がアメリカ側に対して遠慮した、つまり占領中であるという事態によつて遠慮したという条件はのく可能性があり得ると思うのでございます。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねて恐入りますが、その法令云々という関係もございましたけれども、戒能先生からで結構ですが、アメリカ軍とそれから工場との契約、それからアメリカ軍と日本政府との間の労務基本契約、これの間にはこれは相当本質的に違いがあるのじやないかという気がするのですが、その点を一つ重ねて承わりたいと思います。
  41. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) アメリカ軍と、それから日本政府との間で取りまとめられた、つまり合同委員会によつて決定された合意というものは、これは日本政府を拘束するものだと思うわけでございます。従つて日本政府としては、日本政府を拘束すると申しましても、これは飽くまでも行政的拘束に過ぎないのでございまして、私法的拘束を含んでいるとは思えないのでございます。成るほど日本の憲法の下におきましては、条約の違憲審査権は書いてございませんけれども、併し行政協定は条約ではない、で、条約の範囲というのは結局この安全保障条約に限定せらるべきものでございまして、これは飽くまでも行政行為と見るべきだろうと思うのでございます。従つてこの行政行為が仮に違憲であるというふうな場合、それから又日本法令に違反しているという場合におきましては、これは日本法令の下においてその行政処分が効力を持つべきであると信じますので、従つて仮に何らかの取りきめができると仮定いたしましても、その取りきめは飽くまでも法律の下においてだけ効力を持つべきであるというふうに感じておるわけでございます。それから更にアメリカ軍とそれから私的企業者との関係になりますと、これは飽くまでも私契約であるということになりますので、この契約内容はやはり日本の法規によつて拘束されなければならない。日本の強行法規というものがある以上は、その私契約内容を強行法規違反の形においてはいけない、若しおいたとするとしても、それはこの当事者を拘束することはできない。言い換えれば損害賠償義務や処罰義務というものを免かれることはできないというふうに感じているわけであります。ですから行政処分にせよ私契約にせよ、それはやはり法規の下においてだけ効力を持つ、だから強制法規によつて消されたような場合におきましては、その部分は無効であると見なければならないと思うのでございます。この点についてはなお野村、沼田両教授の御意見もお尋ね頂きたいと思うのでございます。
  42. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 沼田、野村参考人の御意見を併せてお願いいたします。
  43. 沼田稻次郎

    参考人沼田稻次郎君) 今の戒能教授のお考えで私もよかろうと思つておるわけであります。ただ労務基本契約の中には多分にこの私契約的な性格を持つておる、国内におけるいろいろな形での行政行為と同じカテゴリーで考えて多少ひつかかるところがあるのでありますけれども、併しその関係を基礎にして生ずる労使関係というものを考える場合においては、別に両者を区別する必要はなかろうというふうに考えております。
  44. 野村平爾

    参考人野村平爾君) この労務基本契約も、それから日本の私工場米軍との間に締結された私契約も、私は対労働者関係においては同一の性格を持つているというように考えています。つまり当事者の間を拘束するものとしては、それぞれ私契約工場とその当該会社と、それから米軍との間の事項をきめるだけでありますし、それから労務基本契約はやはり日本政府とそれから米軍との間の関係をきめるだけでありまして、対労働者関係については私は何も直接に効力を及ぼすべき点はない、その意味においては私契約としての普通の契約と何ら変るものはないのだというふうに私は考えております。  ただこの際関連しましたからちよつと申上げておきたいと思いますが、政府が関接雇用をするというのは、対労働者関係においては、丁度あたかも私契約工場が結んだ場合に、その工場労働者に対する労働契約を結ぶ場合と全く同じように、米軍の側に立つて、そして日本労働者に対して責任を負うというような意味の地位をここでとつているんだというふうに解釈しなければならないわけなんです。ですから労務基本契約を結んでいるから政府はそれに拘束されて、そして労働契約も当然その拘束から来るところの影響を免れないというような理論は私は成り立たないのではないかというふうに実は考えているわけであります。
  45. 吉田法晴

    吉田法晴君 折角関次長も来ておられることだし、法制局も来られるということでありますから、この際一つ政府側の所見を述べて頂きたいと思います。御異存もなさそうに見えるのでありますが。
  46. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は私も今いろいろお聞しておつて、一番この前から問題になつており、今日も明らかにしておかなければならんと思う点が一点あるわけです。それはどういうことかと申しますると、これは労働省のほうの基準局長意見も伺わなければなりませんが、どういうことかと申しますと、この人事条項行政協定の三条と十二条の関係が非常にむずかしいのでありまするが、要するにこういう施設工場の中においても日本労働の三法というものは守られなければならない、若し守つていないということが明らかになり、違法であるということであれば、これは合法のように直さなければならん。併し今行われていることは必ずしも違法であるとは考えない、今の人事条項が具体的な行為として示されたときに、不当行為となつて違法が出て来るかも知れません。併し人事条項の文書だけでは違法ではない、こういうような見解政府は一応とつておるようであります。そこで私どもとしましては、只今お聞きしたところでも、好ましくないという簡単な抽象的な理由によつて解雇義務を負うような契約をするということは、これは違法である、こういう意味のことを参考人から先ほど述べられたと思います。従つてこの点を明確にしておく必要があると思います。  それから第二点は、情報提供の問題についてでありますが、これもやはり私人に警察権を許容するような結果になるのでこれは違憲である、こういうことが言われておるのでありますが、この点についてもやはり意見の調整のしておかなければならん。只今の政府側の意見は、少くとも社会慣習日本の国内の慣習と違つたようなことが行われても、明確に法律的に違法であると断定できない問題については一応頬かむりで行こうというような態勢があるようでありまするから、それでは一歩譲るとしても、明確に法律的に違法である、こういう工合に考えられる点については、これは明らかに指摘をしておかなければならん、こう考えるわけであります。この点について一つ更に御意見を附加えて頂きたいと思います。
  47. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 第一点は、理由のない解雇の問題だと思いますが、労働基準法上から、申しますと、御承知のように解雇をいたしまする場合には三十日前に予告をいたしまするか、或いは予告手当を出しまして解雇する、若しそういう条件を具備しない即時解雇は無効であるという我々は行政解釈をとつておるわけであります。従いまして人事条項に基いて何ら理由のない即時解雇を仮に特需会社使用者がいたしたといたしまする場合におきまして、その事由につきまして、その理由が明確でなければ我々はその即時解雇につきまして無効であるという解釈をとりたいと思うのであります。それから第二点の情報提供の問題でございますが、これは労働三法の問題というよりも、或いは法制局あたりの見解のほうが正しいかと思いますが、私のこの前申上げましたのは、調査その他において権力行為を伴うという前提の下にお話をしたわけではございませんので、ただそこに本人、使用者自体が持つておる情報につきましてのお話をいたした、そういう前提で申上げたわけで、又それに基く名誉毀損その他の問題は別の問題としまして、ただそういうことを申上げたのでありまして、勿論私人に警察権というふうな強権を与えることが適当でないことは、これは言うまでもないことであります。
  48. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 今の法制局の方のお話でございますが、第一に理由のない解雇理由を付けない解雇という問題が一番困難な問題を生ずるのである。恐らくその解雇不当労働行為であるかどうかという問題、労働組合法上の不当労働行為であるかどうかということの判定がつきがたいということにあるのではないかと思うのでございます。言い換えれば理由を示さない解雇ということになりますと、当該行為が、不当労働行為について労働組合法上無効であるかないかということだと思うのであります。その無効の立証乃至無効の主張ということが殆んど不可能にされてしまう、その意味におきまして、理由のない解雇というものは当該不当労働行為というものを多分に惹き起す可能性がございますので、従つて理由のない解雇基準法規定だけによつて有効、無効というふうに判定しないで、組合法の点からも御判定願いたいと思うのが第一点でございます。  第二点は、成るほど新らしい人事条項というものによりますと、今度予定されている人事条項というものによりますと、権力行使までやらなくてもいいような形にも読めないことはございませんけれども、併しどうしても契約を続けて行こうということになりますというと権力行使を実際に行うようになつてしまうという事実が出て参ります。例えば工場の中における工員の若干に対しましてスパイを奨励するとか、或いは又スパイ活動、つまり同僚に対するスパイ活動を奨励するとか、或いは同僚と話をしたことを通報せしめるとか、そのほか特殊の私的警察に類するものを事実上創設するという虞れは十分出て来ると思うのでございます。で、事実上そうした私的警察に類するようなものができるようになつて参りますと、これは個人が他人の私的内密を探るようになりまして、思想の自由というふうな問題に対しましても大きな影響を持つというふうに私どもとしては感じておるわけでございます。
  49. 高辻正己

    政府委員(高辻正己君) 只今戒能さんからのお話のうちに、只今のお話で法制局とおつしやつておりますが。間違いでございまして、私が法制局の第一部長の高辻でございます。私常に労働委員会に出ているわけでもございませんし、ただ今日の資料は実は只今ここに来て拝見したわけでございますので、的確なるお答えになつているかどうかわかりませんが、一応今までに出ました問題について、私は法制局の者でございますから、法理的にこれを考えたら一体どうなるかという点に重きをおいて、一応私どもの考えを申上げてみたいと思います。  それは大体参考人の方がおつしやつたことと実は法理的には大体において私どもさして大きな変化のある考えを持つているわけではないのでございます。勿論この労務条項は合衆国政府関係機関と請負業者との間の契約であることは明らかでございますので、当事者外の第三者である労働者がそのことによつて、この契約によつて拘束を受けるものでないということは、これは実は法律問題のいろはの問題であろうと思います。従つて労務条項の効力を論ずるまでもなく、労働者労働法上の地位を有するということは、これは全く疑いを容れる余地はないと思います。労働者のこのような地位は労務条項の存否と実は何らの関係なしに保有するものであつて使用者がこれを犯すことが国法に違反するということは、これは言うまでもないことだろうと思います。で、勿論今申上げたように、労務条項の効力は、直接にはその当事者である請負業者と向うの米国政府関係機関との間において締結する問題に過ぎないのでありますが、法律的見地から言えば、皆さんがおつしやるように、これは単なる私契約でありますから、普通の私契約がこれによつて国法上の強行規定を排除することがで、きないことは、これ又当然でありますように、この労務条項によつて労働法規の適用を妨げることができないことは、これも当然のことだろうと思うのでございます。いわゆる労務条項は、請負業者が合衆国政府に対する関係において労働法規に違反しないかどうかということが起るのであつて労働者の地位には影響はなかろうという問題だろうと思うのであります。  それからもう一つ、先頃からお話がございます行政協定の問題でございますが、これは第三条に管理権があるということは、これは皆さんおつしやつておる通りでございますし、それから又このいろいろな労働関係につきまして、日本法令の定めるところによらなければならないということを行政協定の第十二条第五項ですか、それできめているのでありますから、軍管理工場といえども日本法令適用を受けることは、これは理論の問題とだけ申上げるわけでありますが、その限りにおいても少くともそれは正当な見解ではなかろうかと、私どももそう思つております。ただ合衆国は行政協定第三条によつて管理権を持つておるということは、これはもう皆さんのおつしやつておる通りでありますので、従つて管理工場においてこのような管理権の適法な行使があつた場合にやや複雑な問題が起つて来る、それはこれ又当然に出て来る問題であろうと思うのでありますが、それも実は極く単純卒直に考えて見ますれば、第三者が管理権を有しておるところでの場所において雇用人が使用者に対して労務を提供する場合に、管理権との関係は一体どうなるか、極めて卑近な例をとれば、この国会議事堂において食堂を経営しておる者がある、その食堂を経営している中において一つ労働契約があるわけで、それには勿論日本労働法規が適用されることは、これは何らの疑いを容れる余地はないのでありますが、その場合においてこの議事堂を管理する建前からいつて、何か非常に風紀を害する所為があるからそれは入つてもらつては困るというような場合にどうなるかという問題と、私は大差のない問題じやないか、同一かどうか、まだ多少問題になるかも知れませんが、そういう問題ではなかろうか、こう思うわけであります。一応私の法制局の考えを申上げて何かの御参考に供したいと思います。
  50. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 今のお話を伺つておりますと、借家人が女中さんを使つていると類似しているというようにお話になつておるようであります。それではその女中さんが、例えばその家の掃除を十分よくしないという場合に、大家がその女中を解雇しろということを命ずることができるかどうかというような問題に類似して来るように思うのでございます。ところがその大家が女中を解雇しようという場合、大家と借家人との関係はどうなるかということは別でございます。併し女中さんに関する関係におきましては、解雇した借家人が全責任負わなくちやならんということになるだろうと思います。従つて女中さんを雇う場合には、必ずよく掃除をさせますというふうなくだらないというか、くだらないと申しますとおかしいんですけれども、そういう条項を借家をする場合には入れないように努力するということが非常に大事だと思うのでございます。
  51. 高辻正己

    政府委員(高辻正己君) 只今例を挙げてのお話でございますが、私が申上けた例はそういう例ではございません。実は今たまたま例を議事堂にとつたわけでありますので、それに例をとつて申上げますれば、議事堂内部において食堂を経営しておる者は議事堂の管理者ではないわけです。管理者でなくてその食堂、まあ食堂というとごつちやになりますが、料理業者がございます。その料理業者が使用人がございます。それに雇用されておる者がおる、その間の関係には労働法適用があることは当然であろう、併し管理権者は、別にこれは恐らく議長さんが管理権者であろうかと思いますが、その人が議事堂管理建前から或る種の管理権を発動させるという場合と大差なかろうじやないかと、こういうわけです。
  52. 沼田稻次郎

    参考人沼田稻次郎君) 先ほどからのことでちよつと申上げておきたいのは、解雇権のことでありますが、労働、基準法に命じております予告手当を出すとか予告をするとかいうことを守らなければもとよりこれは無効でございますが、私たちはアメリカなんかと違つて、憲法に労働権というようなものが明記されておるのでありますから、そういう観点から見ると、必ずしも基準法の命ずる通りにやつたからすべて解雇が有効だとも言えないかと思います。それから不当労働行為にかかわらなかつたからといつてやはり無茶な解雇は無茶ではなかろうか。例えばどこの事件であつたか、自動車の速度を少し速くしたというのでぱつと首切られたというような事件があるのですが、これを見ますと、このようなことはもう不当労働行為とはちよつと感ぜられない事件なんでございます。それでこれを我が国の法理から見て肯定できるかということを考えますと、やはり無理だ、そういうものはなぜ無理かというと、成るほど資本主義社会は解雇の自由を持つのは原則だけれども、今日の時代においては又その解雇が何らかこの社会規範に即して行わなければならないということも一つ原則なんで、法の社会化ということが今日疑うべからざるものであるとすればそうであろうと思うのです。その上更に我が国では労働権というものを保障しておるということを考えますと、たとえ基準法に違反していない、或いは不当労働行為にならないという場合でもやはり片端から切るべきではないということは、少しアメリカには説明を要することだけれども説明をしておいて頂かねばならないのじやなかろうかということが一点でございます。それからスパイ行為等情報提供ということに関しまして、私併せて考えて頂きたいことは、アメリカは成るほど情報提供ということは、何といつても今仮想敵国を持ちまして、はつきり軍拡体制を進めておるわけです。そこで我が国も安全保障条約などによつてその一環にどうやら巻き込まれておるわけです。併し巻き込まれておりますけれども、今の保安隊が軍備でないということが主張されておるごとく、我が国の法の建前ではやはりそれは拒否するという原則を出さなければいけない。つまり平和原則をどうしても出さなければいけないということになりますと、平和憲法の下における国民としては、これはたとえ私警察というようなものにならなくても、そういう軍事協力みたような意味を持つた条項を入れるということ自体が、やはりこれは裁判所の前に出て来たときには無効ということにしなくてはいけないのではないか。これは事実上いろいろな意味で使用者には一つの事実的な圧力として出ておりますので、使用者としてはこれを盾にして止むを得ないのだということを言われると思うけれども、それは国内の場合だつて、銀行屋さんあたりから押付けられれば止むを得ない、そうしなければ企業がつぶれるというようなことと同じことなんで、ただ一方に先ほど戒能教授がおつしやつたように、どこまでもそういうものは入れないようにしてもらいたいと共に、裁判所としては一つそういうものの入つて来るのを片端から無効ということになりますと、もうそろそろそういうことはできない、そうすると業者の競争そのものが意味なくなる、業者の競争が成立つということは、まだ裁判に出て来た場合有効だという前提の上で出て来ておるのです。何か問題が起きれば片端から無効だということになつて来れば、これはそうもなるまいと思いますので、やはりこの点は合同委員会で大いに談判して頂くと共に、業者も、先ほど戒能先生が大いに主張されておつた、成るべくそういうものを入れないということ、それから裁判所もそういうことを一つ法に照らして強行して頂くのが本当じやなかろうかと私は思います。  それから合同委員会のことに関して私かねがね思つておることでございますが、合同委員会は一体実果を挙げられたことがあつたかどうかということを非常に私心配しておる、あの合同委員会が実果が挙がらないいとうことが若し出て来ますと、いろんな法の理論を立ててみましても非常に困難じやなかろうか。それについて私思うのは、やはりアメリカ自身が世界の、少くも資本主義国家間における労働法について非常に指導的な立場をとつておるのです。例えばアメリカの不当労働行為制度というようなものは、これは大体国際連合の中のILOなどでも総会決議に取入れて来ておるのです。そういう工合にアメリカの労働法考え方というものは、かなり指導的になつておる。我が国でも不当労働行為制度は、これはもう明らかにアメリカから受取つた制度でございます。そうようなこと自体をも併せ考えて、もう少し共通の地盤といいますか、共通の法の地盤、文明国として立つべき共通の法というものが考えられなければならないのじやないか。大体こうした事実的な不平等の関係が背後にある場合においては、これは単に実体法上におけるそういう解釈よりも、或る意味では一つの自然法的なものが強調されて行かなければならないのじなかろうかと思つております。ちよつと補足までに申上げます。
  53. 高辻正己

    政府委員(高辻正己君) 只今の何と申しますか、契約につきましてよりよいようにということについてのいろんなお話がございました。その点は何といいますか、法律問題ではございませんので、ほかの方から仰せになるかも知れません。ただその中にございましたが、法の社会化というような観点からいろいろ御質問があつたた、その法律の部分について申上げますと、勿論私契約につきましては、言うまでもなく合衆国政府機関使用者との間には一定の債権債務の関係があるわけでございますから、使用者が一定の事項を行使できなかつたということを言えば、これは向うとの関係におきまして一つの訴訟問題になり得るかも知れません。その場合には裁判所はどういう態度をとるか、裁判所は恐らくこれは日本法律に照らして、日本裁判所が裁判をするであろうということは、これは当然我々は考えるところでございますし、又そういうふうにありたいものだと思うわけでありますが、それはまあそれだけのことじやなかろうこと、その限りにおいてはそう考える次第でございます。
  54. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど議事堂の中の食堂の例が出ましたが、これは国の主権にも関連することですから、日本の中の議事堂とそれからその食堂とは例にならんと思います。問題を少しそらされたので大変残念でありますが、それも私どもが先ほど参考人陳述を頂いて、法制局なり政府側に答弁を求めておりましたのは、労働基本契約にしても、本質的には特需工場など人事条項と全く同じ性質の、これは政府政府との関係でありますけれども、私法上の契約であるということを認められるかどうか、それからこの人事条項の問題になつておりますが、こういう私法上の契約関係の中の債権債務という問題……それからこの人事条項日本労働法規上持つ行為、この点は私契約上の効力は別問題といたしまして、労働法規上は無効であるという今までの御意見については、法制局としても同意見であるということでありましたが、その点について一つ重ねて御説明願いたいと思います。
  55. 高辻正己

    政府委員(高辻正己君) 先ず第一に、最後におつしやいました私契約日本の国法上無効であるということを言つただろうとおつしやつたわけですが、これは先ほど申上げた点は、実は労働者に関しては、これは契約外の第三者であるから、その者に対する関係において契約効力の問題は生じ得ないであろうと先ず申上げたわけです。  それからその契約の問題が直ちに問題になりますのは、これは使用者と合衆国政府機関との関係において問題になり得るだろう、その場合には、例えば使用者が債務契約に違反して債務不履行をやつたとしますれば、それによつて裁判所に問題が移るであろう、そのときには日本国法令従つて無効とせられるものは無効とされるであろう。実は私人事条項の入りました契約なるものを承知しておらんのです。極めて抽象的に申上げるわけでありますが、そういうことになるであろうというわけです。  それからもう一つ、いわゆる労務基本契約のほうはどうかとおつしやるわけですが、このほうは実は多少正直に申上げて疑いがある。これは沼田さんがさつきちよつとそれを多少気にしておられるようなふうに私には聞えたのでございますが、その点は多少研究の余地があるのじやなかろうかと思うわけです。少くもいわゆる労務条項が入つておる合衆国政府と請負業者との関係契約につきましては、先ほど申上げたことがはつきり申上げられると思います。
  56. 吉田法晴

    吉田法晴君 労務基本契約の性質については研究を要するということですが、その研究せられた結果をお尋ねしたいと思います。ここで読んでまだ考えがまとまつておらんというならば、又別の機会にお願いしてもいいのでありますが、それから前のアメリカ軍と工場との私契約、この点は、勿論私契約であるということについてはみんな異議がないわけでありますが、その中に含まれておる労務関係についての条項は、これは日本労働者を縛るものではない、それは労働法規が適用をされる。こういう説明参考人からも頂いたし、私どもも考えておる。ですからその私契約の結果が労働者に及ばないといことで、若しその契約上の債務を使用者労働者適用しようとなすならば、それは日本労働法規から考えて無効ではないか、その点をお認めになりますかということをお尋ねしているわけです。
  57. 高辻正己

    政府委員(高辻正己君) 少くとも日本の国法に違反する処理が使用者によつてなされたとすれば、それが違法であることは、これは当然でございますが、その内容によつて無効になることであろうと考えております。もう少し詳しく申上げれば、先ほど参考人の方方からお話がございましたように、特に野村さんからお話がございましたように、一体解雇権の行使というものは如何なる場合にできるであろうかという問題に帰着するだろうと思うのであります。これが労働法規に明瞭に、狭い意味でなしに、広い意味の解雇権の制限に関する規定がいろいろございますが、その規定に違反した処置は無効、勿論これは裁判所によつて判断される問題でございますが、そういうふうに解されるのが普通であると思うわけです。ただむずかしい問題は、そういう条項に該当しない場合はどうかという問題がありまして、これは先ほど沼田さんもおつしやつたわけでありますが、現在は沼田さんのおつしやつたような考えから、解雇権の内容とか、或いは正当な理由がなければ解雇してはならないのだということがいろいろ言われております。併しこれは実はまだ定説ということが言えるかどうか、これは私疑いを持つております。裁判所でもそれについては態度がまちまちのようでございますので、それを正直に申上げるわけでございます。
  58. 戒能通孝

    参考人(戒能通孝君) 今のお話でございましたけれども、それは請負業者とアメリカ軍当局との間で契約が締結されまして、その契約内容日本の民法の九十条にある「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」に反する場合にはやはり無効だと解する以外にないだろうと思うのでございます。ところが日本の判例の中におきましてて、スパイ行為は必ず報告するという条項を取扱つた事例を私まだ存じておりません。併しこの種の事件というのは、丁度ブラック・リストを作るという約束と非常に類似しているのじやないかと思うのです。でブラック・リストを作るという約束は、たしか英法でもこれはパブリック・ポリシーに反する、公けの政策に反するという理由で無効になつていたように思うのでございます。ヴオイド、無効であつたか、取消を受けておつたか、ちよつと私忘れましたが、どちらかになつていたような気がしておるわけでございます。たしかヴオイドであつたと思うわけであります。そうなりますと今度改訂を予定されている人事条項の第八条のAの(1)というような場合になると、これはブラック・リストを作るという関係と非常に類似しておりますから、日本法律におきましてもやはりこれは無効なんじやないか、アメリカ軍当局との関係においてもやはり無効の主張ができるじやないだろうかと思うわけでございます。若しそうだとすれば、やはり日本法律で特に争いが起るような条項というものは削除して頂くようにするのが望ましいとちよつと申上げておきます。
  59. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一つ、これは判決を云々するわけじやありませんけれども、三菱下丸子工場において占領中にいわゆる軍令解雇といいますか、軍の命令による解雇が行われた、それについて争われているという事件がありま正す。当時は占領中でありますから、占領軍の命令が国内法に優先するという理屈が立つたと思います。それが判決の主流をなしておるように思うのでありますが、占領が終りまして講和条約が発効し、日本主権日本の内部に及んでおるのが、隷属的な現状の下において、例えば今問題のような軍需工場において私契約が結ばれ、その中には人事条項、これは今までの改訂せられない前の人事条項がある、好ましくない人間云々ということで解雇されたということがある。その場合に占領米軍による国内法に優先する法規範が存在するという事実もないのであります。好ましくないという理由が、日本法律に照らして見て理由がない場合には、こういう解雇というのもは、事業主が負つております米軍に対する債権債務的な関係は別問題にして、労働法上は別に考えらるべきである、或いは今の労働法規上から有効無効が争われ、なければならんという点は、これはお認めになることだと思うのです。具体的な例を挙げて説明して頂きたいと思います。
  60. 高辻正己

    政府委員(高辻正己君) 要するに労働者の地位は、合衆国政府機関と請負業者との間に締結せられた契約とは別に、日本国法の適用をそのままに受けるということは、これは私先ほど繰返し申上げたことであつて従つて労働法に違反するところの解雇というものが行われれば、それは違法行為として裁判所において判断せられるのは当然であろうと考えております。  それから占領中の行為についての場合と、現在の場合との対比の下において御質問があつたわけでございますが、勿論占領中の国法秩序というものと、現在の国法秩序というものが違うことは、これは極めて明瞭なことでございますので、今私が申上げた点は、現在の国法の下についての私の見解を申上げたわけであります。
  61. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大体いろいろと意見も出尽したかと思いますが、この委員会としてこの問題をどういう工合に最後に取扱うかということは一応お考え置きを願わなければならんと思う。と思しますことは、今日の参考人の御陳述或いは政府側の答弁等を集約いたしまするというと、如何なる契約が日米の間に締結せられても、労働者労働法上の地位というものは何ら拘束を受けるものでないということがはつきりしたわけでありますけれども、これは飽くまでも法律論としてそういうことが述べられたのでありまするが、実際にどうかと申しますと、すでに問題が起きておりまするように、国内でも資本家が銀行の干渉の下に不当労働行為もあえて行わなければならんような情勢に若干見受けるのでありますが、そういう具体的な事例も若干なきにしもあらずでありまするけれども、ましてや国際的には、曾つて日鋼の経営者側の人がこの国会における参考陳述で述べましたように、家風という表現を使つて米軍労働組合との間にある苦しい立場を述べておりましたが、そういう問題を解決することは、裁判の確定、司法上の拘束を確認するまで待つておられない問題であろうと思うので、従つてそれの唯一の解決点は、参考人の先生方が述べられたように、一にかかつて日米合同委員会における日本委員の善処を要望するより途はない、国際的政治的解決を要望するよりほかにないということに結局来るようであります。従つてそういう工合に問題がはつきりして来た以上は、国会として当労働委員会としてもやはり議員各位の更に御研究を願つて、どう進めるべきかを一つこの結論の上に立つて御研究を願い、態度を決定して頂かなければいけないと思います。  大体今日はこの程度で問題の所存点が明確になりましたので、一応調査を本件については終りたいと存じます。将来の取扱についてはあとに残しておきまして、本日の調査はこれで一応終りたい、こういうことにいたしたいと思います。  それから外務省にお願いしておきますが、本件に対する米国側との改善に対する当局の交渉の経過は、その後逐次一つ委員会で機会を見てご報告を願いたい、こういう具合に要望を申上げておきます。
  62. 吉田法晴

    吉田法晴君 それから先ほど初めから関次長聞いておられませんでしたので、落ちております点を委員長からお話を願つておきたいと思うのであります。特に関次長の報告によりますと、調印も終つた云々ということでありますので、強化されました、或いはスパイ行為、怠業、若しくは破壊活動が現に行われている場合の情報を一切完全に秘密にしなければならんといつた条項の問題、それから十条の債務の問題これについては一部であつたと思うのですが、日米合同委員会がもつと努力しなければならんという点は一部伺わせて頂いた程度と思います。それからこの問題は、この労務条項だけでなしに労務基本契約にこれに対応するような規定がございますので、その点が労務基本契約の中に関連して改訂に努力を願わなければならんと思います。その点を一つあとからお願いいたしたいと思います。
  63. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 関次長に最後にもう一遍念のためにお伺いしておきますが、私は、七月一日の更改期に迫つております数日前に、当委員会で事の重大性を考えまして、外務省においては七月一日の契約更改期には是非ともそういうことのないような緊急な交渉を願いたいということを申入れておいたのでありますけれども、今日の御報告ですと、強化されたレーバー・クローズドで調印が締結済であるという報告米軍側から受けたというふうにおつしやつたのでありまして、そうすると私どもは何か若干割切れないものを持つのであります。ということは七月一日の更改期は是非ともさような強化の条項は避けて行きたいという意思を決定をし、そうしてそれに対する善処を要望したのに対して、米軍側のほうへ聞いてみたところが、もうすでに調印が済んでおつた、あとで修正をする余地が残つておるので、それに対する努力をしたいという御回答でありましたが、その点は私どもとしては若干理解に苦しむ点があるのでございますが、その経過をもう少し述べておいて頂きたいと思います。
  64. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) 私どもが早速取れるように交渉すると言つたのは、はつきり覚えておりませんが、二十九日ではなかつたと思います。私の同僚が電話をいたしましたのはたしか翌日午前中であつたと思います。そのときにすでにそういう返答がありましたので、私も実は業者の方々も一体何をやつておるのかさつぱりわからんと言つて驚いたのでありますが、ただ併し向うの言うのもよろしい、話が早いから、それでは一応話がそうなつておるからサプリメンタル・アグリーメント、契約をどんどん変えて行くわけであります。これは契約を変えて行くのであります。それで話をしましようというので、その中で交渉するというわけであります。
  65. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をとめて。    〔速記中止
  66. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  本日はこれにて散会をいたします。    午後四時五十八分散会