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1953-10-27 第16回国会 参議院 労働委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月二十七日(火曜日)    午後一時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君    委員            田中 啓一君            阿具根 登君            吉田 法晴君            上條 愛一君            寺本 広作君            堀  眞琴君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    労働政務次官  安井  謙君    労働大臣官房総    務課長     堀  秀夫君    労働大臣官房会    計課長     澁谷 直藏君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定    局長      江下  孝君    労働省職業安定    局失業対策課長 村上 茂利君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (水害救済資金長期貸付に関する  件)  (国際労働条約批准促進及び米海  軍佐世保基地における労働問題に関  する件)  (労働省関係予算に関する件)  (珪肺労災病院視察報告の件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  ちよつとお諮り申上げますが、過日台風十三号によつて六十年振りの大難害を受けました富山愛知三重等の管内に対しまして、只今愛知県の労働金庫理事長小寺辰郎君、富山勤労者信用組合専務理事川崎武徳君がおいでになりまして、是非労働金庫への融資について考えておるところを一つ述べて御協力を願いたい、こういうお話がございました。実はこの件につきましては、六月の九州を襲いました災害のときにも、福岡労働金庫責任者おいでになりまして、この委員会で所信を承わつたこともございますので、是非皆様の御了解を得て伺うようにしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それではさようにいたします。  それでは只今承認を得ましたので、先ず最初愛知労働金庫理事長小寺辰郎君の御意見を伺うことにいたします。速記をとめて。    〔速記中止
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。只今陳情があつたわけでありますが、これについて労働省のほうの一つ考えを承わつておきたいと思います。前に福岡の例もありますから、ての辺を一つ併せて述べて下さい。
  5. 安井謙

    説明員安井謙君) 只今伺いました愛知県、富山県の台風被害実情について十分拝承したわけであります。先ほどお話もございましたように、六月末の九州地方における水害に対しましては、金融公庫融資或いは失対費の特別措置といつたような具体的な手を打つているわけであります。更に愛知県、富山県につきましては、只今実情調査いたしまして、これに準じた扱いのできるように最善の努力をいたしたい、こう考えております。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今申出のあつたところによりますと、愛知県、三重県、和歌山県の三県で二億二千五百万円、それから富山県で三千二百万円ですが、合計二億五千七百万円、それだけ融資を願いたいという御要請になつておりますがね、具体的にどの程度実現し得るのか、まだ見通しなどは立つておりませんか。
  7. 安井謙

    説明員安井謙君) 只今具体的な数字の御要求がありましたようでございますが、まだ具体的にどうするという決定まで至つておりません。お申出の通りにできますかどうか疑問だと存じますが、大体九州実情に準じたもので扱いをきめたいと思つて考慮中でございます。御了承を願います。
  8. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  9. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。ではどうも有難うございました。  次に、昨日の調査を途中で打切つておりますので、順次処理して参りたいと存じます。先ず最初に、国際労働条約批准について説明を受けたわけであ力ますが、日本はまだ条約批准状況は余り芳しくないように見受られます。そこで労働省としましては、この国際条約に今後、大体只今状況で具体的に批准をしようとするものがどれとどれであるのか、又その時期はいつ頃を予定せられているのか、そういう点がわかりましたら一つ説明を願つておきたいと思います。
  10. 安井謙

    説明員安井謙君) 只今国際労働条約批准の問題でございまするが、お手許に差上げておりまする資料にもございます通り、全体では百三条約が今日採択されております。そのうち日本では最近までに十四条約を採択いたじております。先の国会におきまして更に御追加を頂きまして、三つ条約を追加したわけであります。その三つは、八十一の工商業労働監督、それから八十八の職業安定組織、それから九十八の団結権団体交渉権、この三つは先般の国会で御同意を頂きまして、批准手続をこの十月二十日にILO事務局にとつておる次第でございます。従つてこれが日本に対して発効いたしますのが一年後の来年の十月二十日、こういうことに相成つておる次第でございます。  更に委員長から、この後の日本が新らしく批准しようとして手続をしておるものは何か、こういうお尋ねでありますが、この全体の表で御存じ通り、大体各国批准条約平均数只今十八になつております。そうしますと、日本の、只今の三条約を入れますと十七になりまして、大体レベルには達しておるのでございますが、この条約の精神を以ちまして、でき得る限り少しでもより多く早急に批准手続をとるように鋭意努力をしておる次第でございます。只今四つばかりの問題を検討中でございますが、これも御存じでございましようが、この条約は全面的に適用されますので、日本の場合にもあらゆる角度から検討いたしまして、どこの一点にも支障がないという場合でないと批准を行う手続をとるというわけにも参りませんのでございますから、非常に慎重な検討をやつておる次第でございます。
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その四つ研究されておるというのはどれとどれですか。
  12. 安井謙

    説明員安井謙君) その四つにつきましては、これは我々のほうで可能性が非常に強いのじやなかろうかという意味で今鋭意研究中のものを御参考までに申上げますと、四十五の第十九回の女子坑内労働、それから第二十九回の八十号、最終条項改正、この最終条項改正というのは、例の国際連盟から国際連合に移りますときのいろいろな手続をきめている条項でございます。従つて直接の労働問題ではないのであります。その次の第三十二回の九十五号賃金保護の問題、それからいま一つは第三十五回にございます百三号の社会保障最低基準条約、こういつたものを只今研究中でございまして、結論が出ますれば、通常国会にでも早急に提出して御承認を頂きたいとこう考えておる次第でございます。
  13. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今各国の総平均が十八とおつしやつたのですが、日本は今四等国だというのですけれども、それはそれとしまして、人口からいつてもいいと思いますが、日本と同じくらいの雇用数を持つているもの、それから上をずつと平均しますとどれくらいになりますか、労働事情からいつて日本より上を……。
  14. 安井謙

    説明員安井謙君) 只今委員長の御質問にございました日本レベルと同じものを標準にどうかというお話ですが、これの計算ちよつとやつておりませんが、終戦後新たに加入いたしました国を、これは再加入いたしました国を拾い上げてみますと、リビアこれが最初に入つたのでございますが、再加入ですが、これはまだ批准をいたしておりません。その次が日本ということになるのです。これが最近三つをやつたわけでございます。それから三番目がドイツ共和国連邦、これが全部で十七、戦後ではなく、全部で十七で、戦後はまだ入つておりません。五番目がインドネシアでございますが、これが全体で四つ、それから六番目がセイロン、これが十四できております。これも戦後新らしく批准いたしておりません。大体そういつたような実情にございます。
  15. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私の質問ちよつと誤解されたと思うのですけれども、僕は国の大きさを云々するわけじやないけれども労働者の数ですね、これがやはりこういう条約批准するしないで以て労働者のいろいろな面に影響するわけですから、一つ基準になると思うのです。そこで例えば国の人口が五千万ならば五千万以上の国が大体幾つくらい平均してあるかというようなことがおわかりにならないのかということを申上げたのです。
  16. 安井謙

    説明員安井謙君) 総務課長からちよつと内容的に御説明いたします。
  17. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) 只今労働者人口数等に基く調査平均は、今ちよつと算出いたしておりませんが、只今の御質問趣旨は、大体日本と同じような主要産業、こういうところの批准状況がどうであるか、こういう御質問だと思いますが、それについて申上げてみたいと思います。  只今一応の標準となりますのはILOの現在常任理事国、これが八大主要産業国を網羅して指名されておるのでありますが、これについて申上げますと、ブラジルが十四件、カナダが十八件、中華民国が十四件、それから大分下りましてフランス、これが非常に多うございまして六十三件、それからイタリア五十四件、イギリス五十一件、イギリス大分下でございます。それからアメリカ六件、こういう状況になつております。なお只今説明のありましたように、従来抜けておりまして、今後或いは常任理事国に指名されるかも知れないと思われますドイツ共和国、これが十七件、大体こういう状況になつております。
  18. 堀眞琴

    堀眞琴君 これは人口数とか或いは又常任理事国だということで比較しても、僕はちよつと見当外れになるのじやないかと思うのです。極端な結論から言えば、この国際条約をたくさん批准している国というのは、つまり労働者の或いは労働組合の力が強いところだということが結論としては言えるのじやないか。例えばフランスイタリアですね、それから又イギリスどもそうだろうと思うのですが、五十件も六十件もとにかく国際条約批准しているというのは、それだけその国の労働組合の力が強いというのか、労働組合が発達しているというか、そういう関係にあるところだと思うのです。で、結局はそういう結論だとするなら、日本のこの十何件しか批准していないというようなことも、大体そういう見当で以て日本労働組合情勢というものを推し測ることができるのじやないかというような気がするのです。従つて問題は、そういう人口数や何かよりも、むしろ組合に対する政府側の態度なり或いは組合自身考え方なんというようなものがこの場合に一番大きな要素になつて行くのじやないか。日本終戦後の建前から言えば、当然組合に対しては政府側でも従来と違つた方針をとつているのだし、組合自身もそういう点については相当の自覚を持つて進んでおりますから、これはできるだけ政府組合側国際条約批准努力をすべきじやないか。同じような国、例えばどこの国が十何件だとか、どこの国は五十件とかいうことをただ機械的に考えるのじやなくて、国際条約として、一応ILO会議なりその他において決定された条項は、労働者保護趣旨の上に立つているものでありますから、我々としてはできるだけ組合側も、それから又政府側も、その条約批准するような方向に努力して頂きたい、このように思うのです。
  19. 安井謙

    説明員安井謙君) 承知いたしました。
  20. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) アメリカがえらい少いのはどういうわけですか。
  21. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) アメリカが少いのは、一つ連邦組織になつておりまして、各州によつていろいろ労働基準の違つておる面があるわけでございます。それで高いところもありますが、また非常に国際基準から比べまして低ところもある。先ほど政務次官から御説明になりましたように、この国際労働条約批准につきましては、一部留保の批准というものは全然許されない。従いましてちよつとでも欠けておりますと批准ができない。そういうような観点からいたしまして、やはりこのアメリカ批准数は非常に少い。要するに国情、それから法律の体系的な状況、そういうものによりまして、現在のILO条約に非常に線の同じような立て方になつておりますような国は比較的批准数が多い。それから立て方ちよつと違つているような国は、レベル相当高いものがあつて批准数が少い。こういうような、その国の法制の状況からしても相当つて来るわけであります。
  22. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御質問ございませんか。……御質問ないようでございますから、それでは次に移ります。   —————————————
  23. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは昨日保留しておきました佐世保米国艦隊活動部日本労働基準法解釈に関する行き違いの問題を案件にいたします。
  24. 安井謙

    説明員安井謙君) 昨日御説明申上げましたように、実際問題としては大体片付いていると思いますが、更に英文が正規なものであつたかどうか、その他の点につきまして、労働基準局長からお答え申上げます。
  25. 亀井光

    説明員亀井光君) 昨日問題になりましたリセスという言葉内容につきまして有識者にいろいろ御質問いたしまして、その解釈について意見を聞いたのであります。又世界で一番権威のあります英語の辞典でございますウエブスターを引きましても、リセスという言葉は、いわゆる普通使う言葉休憩レストとは意味が違うのでありまして、一定継続の途中において休みますることを言う場合におきましてはリセスという言葉を使うということになつております。そうして一定の時間が過ぎて解放された休憩が、これはレストという言葉を使つております。その点もウエブスターでははつきわと明確に書いてございますので、英文で訳しました労働基準法内容もそれで十分日本文内容がマツチすると考えます。
  26. 阿具根登

    ○阿具根登君 責任者渉外課長もおられますので、恐らくその解釈が正しいと私今聞いてわかるのですが、それではそういう解釈が当初からされておつたとするならば、今まで長い期間、八時間も一遍の休憩も与えずに使つて来たものに対してどういう措置をされて来たか。この問題が起きて我々は初めて知つたのであります。恐らく局長のところでは当然ずつと前から私はわかつてつたと思う。いつ頃そういうことを御存じなつたか、お聞きしたい。
  27. 亀井光

    説明員亀井光君) 我々もこの佐世保海軍基地労働者につきまして実態を把握いたしましたのは、実は今度問題になりまして初めてでございます。それまで地元監督署或いは基準局からは報告を受けていなかつたわけであります。従つて日本文で表現されておりまする通り労働継続の途中における休憩というものが与えられておるものと考えていたわけです。でこの地元からの報告を受けましで、初めて極東海軍佐世保海軍地区労働者に対しましては基準法違反があるものというふうに考えたのでございます。又局からの報告によりまして監督署監督官監督に参りましてその点を発見をいたしました。従つてその後からこの問題の処理について地元司令部との折衝も始まつたようでありまして、それ以前のことにつきましては報告を受けていないのであります。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 現地に行つて見ましても、これは皆さんの解釈では、労働の途中に与えなければいけないということを解釈されておりますが、現地米軍そのものですら、労働終つたあとで与えてもいいのだということを言われておる。而も現地基準局では、これは英訳が不完全である、そのために非常に困つておる、こういうことをはつきり言つておられるのであります。而もそのところには基準局局長さんもおられるし、調達庁関係渉外課長もおられるわけであります。その日本出先の人が殆んど翻訳ができないような、そういう誤りやすい字句を使われておるということは非常にこういう問題を起す原因になる。福岡へ行きましても福岡でもこの問題は問題になつておる。とするならば、英訳が誤訳でないとするならば、解釈はかくあるべきという註釈を全国の出先機関に出すべきであろうと、私はこう思うのですが、どういうお考えですか。
  29. 亀井光

    説明員亀井光君) お話通りでございまして、このリセスという言葉解釈につきましてそういう誤解があつたといたしますれば、我々としましてもこれを是正いたしますることについてやぶさかではございません。直ちにそれぞれ管下の労働基準局通牒をいたしたいと思います。
  30. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それはウエブスターにはつきりそうなつておるということは、まあ私も聞きましたが、そうするとダルトンとかいう少佐英語がよくわからんということになるのですね。
  31. 亀井光

    説明員亀井光君) いわゆるその法律用語といいますか、法律語といいますか、そういう言葉内容ですね、よく知らなかつたのじやないか……。
  32. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そういうことですね。併しそういうような意味のことをダルトン少佐も認めておられるようです。やはり四角張らんで、早く今あなたのおつしやつた意味で処置して頂きたいと思います。  それでよろしうございますか。
  33. 吉田法晴

    吉田法晴君 通牒を出して頂いて問題は片付くと思うのですが、これはリセス解釈ということもあろうと思いますが、私ども駐留軍労務について接触をいたしまして、駐留軍労務関係について正当な或いは十分な知識を持つておられん労務担当官がある。それはいわば日本労働法を守らせるべき、役割を果すべき地方労働基準監督署労働基準局労管といいますか、こういうものの中に、何と申しますか、十分な使命を達しない事例をまま見受ける。例えば極端な例を申しますと、三十日前に予告しておくならば争うはずはなくてやめさせることができるのだと、こういう助言をやつておる基準監督署等を私ども見受けて参りました。この問題についても基準監督署なり或いは局が、もう少し早目基準法の施行について十分な使命を果されたならば、今日まで、阿具根君が行つて来るまで放置されることは私はなかつたと思うのです。八時間の後で休ませるということで以て合理的である或いは合法的であると考えて来た末端の局、署の、何と申しますか、怠慢と申しますか、やつぱり不十分さはこれは否定することはできない。そういうのをまま見受けます。特に基準監督行政は日を経るに従いまして末端においては非常に弱くなつて監督の機能を発揮してない面も、これは駐留軍関係だけでなしに、内地の工場等についてもしばしば見受けて参りました。具体的に例を挙げませんが、それだけに私は局長として末端監督について、或いは法の権威を守らしめるについて十分の一つ監督を願いたいと思います。これは要望として申上げておきます。
  34. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) よろしうございすね。  次に昨日労働省予算につきまして私から調査をお願いしておきましたが、それについて一応補足説明を願いたいと思います。
  35. 澁谷直藏

    説明員澁谷直藏君) 昨日委員長のほうから二十五年度の基準ベースに対しまして、その後の業務量上昇率を織り込んで計算した場合にその予算額がどの程度になるか、これを調査するようにという御要求がございましたので、それを御説明いたします。  計算方法でございますが、先ずこの業務量の測定の基礎となる事項でございますが、職業官署労働保護官署、それぞれ二つずつあるわけでございます。職業官署の場合の日雇の総回数につきましては、二十七年度におきまして臨時労働者集計方法を変更いたしましたために、これを計算基礎として入れることは若干妥当性を欠きますので、これを削除した次第でございます。それでこの二つの項目を同じ比重を持つというふうに考えることは若干無理があるわけでございます。然らばそれぞれどの程度比重を置くかということにつきましては、一応必ずしも合理的な結論は出て参らないわけでございます。従いまして行政運営上同じ比重を持つという仮定の上に立ちまして計算をいたしたのでございます。  即ち二十五年度の保護官署について申しますと、二十五年度の二つ件数合計いたしまして、それに二十六年度、七年度のそれぞれの二つ件数合計いたしました。その合計数をそれぞれ対比いたしましてその上昇率を出しまして、その上昇率を経費のほうの業務量増減に伴うものについて乗じてその結果を出したのでございます。  それを最初保護官署について申上げますると、二十五年度に対しまして、二十七年度の旅費増減に伴うものの数字は八千二百八十一万九千円、これはあとで印刷してお配りいたします。八千二百八十一万九千円、計におきまして一億五百九十八万五千円、そのパーセント、この原案は九六%となつておりますが、七三%になります。それからその下の庁費でございますが、同様の方法計算いたしますると、上の増減に伴うものの数字が四千五百七十六万二千円、計におきまして八千三百四十六万四千円、パーセント一〇二%に対して九二%、二十八年度でございますが、これは未だ業務量の実績が出ておりません。従いまして計算方法がございませんので、一応二十七年度の只今計算方法によつて出ました数字をそのまま持つて参りまして、パーセント成立予算に対して比較したわけでございますが、そういたしまするとパーセントにおきまして、旅費におきまして七一%に対して五四%、庁費八一%に対して七三%、こういうことになつております。  次に職業官署について申上げますると、二十七年度、旅費増減に伴うものが六千九百六十一万四千円、計におきまして九千六百二万四千円、八四%に対しまして七七%、庁費一億三千四百九十四万四千円、計におきまして二億一千五百九十万九千円、パーセント八〇%に対しまして七二%、二十八年度につきましては、保護官署の場合と同様に二十七年度の只今数字をそのまま持つて参りまして成立予算額と比較いたしますると五七%、こういうふうに一応計算上出た次第でございます。
  36. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) これはあとでプリントで願えますね、理由も若干入れて……。
  37. 澁谷直藏

    説明員澁谷直藏君) はあ。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 次官がおられるから……。  数字を言われてもよくつかめんのですが、この資料を見ただけでも、例えば庁費その他の問題でも、二十五年度を一〇〇%と見て、今度七〇%と八〇%とか、甚だしいのは六三%とか、こういうことで労働行政が完全にやつて行けるかどうか、御自信があるのかどうか、この点を一つお聞きしたいと思う。  それから失対課長もお見えのようですから、これもお尋ねいたしますが、本年度は御承知のように特需の切替えとか或いは石炭の問題とかありまして、相当失業者が殖えると思つておりますが、どのくらいの見通しを持つておられるか、それに対する対策はこれだけで十分であるかどうか、この二点を一つお尋ねいたします。
  39. 安井謙

    説明員安井謙君) 只今予算に対する大変御親切な御忠告と御質問でございますが、私どももこの数字で十分と申し切れません。いろいろと大蔵省とも折衝いたしておりまするが、併し事務費或いは旅費というやつは、この業務量にそのまま附帯して増大するものでもないのでございまして、まあ今日の政府財政状態もございますので、極力効率的な使用を考えております。大臣からもたびたびこの内部の行政費の使い方についての効率を上げろというような示達も出ておりまして、これによつて辛うじて凌いでおるという実情にございます。  それからなおこれは余分でございますが、どうしてもぎりぎり足らない場合に若干予備費を流用するというような場合もこれはございますので、その点もお含み願いたいと思います。
  40. 阿具根登

    ○阿具根登君 今のはここに対比を出してあつたから、これを例にとつたのであつて庁費が少いのみだけを対象に言つたわけじやなくて、全予算に対する問題を私は言つたわけであつて、その二つの例として失対補助を出したわけなんですが、そういう点についてもまあ労働委員会としてはこれはやほり十分検討の上に、やはり委員会としての一つの決定の線を出して、大蔵省なりその他の関係省に対しても働きかけるべきが至当ではないかと、こういうような考えを持つておるからお聞きしておるわけなんです。
  41. 安井謙

    説明員安井謙君) 只今後段の失対費につきましては、表でも御存じのように二十八年度に相当これは政治的な折衝をいたしまして増大しておる点であります。更に不足の分につきましては若干の補正組替をやつておる次第でございます。これは只今のところこれで十分だ……非常なデリケートの関係でございますから、十分ではございませんが、どうにか使命は達し得るというふうに相成つております。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじや関連してちよつと聞きますが、先般来の行政費の一割ですか、総額百億の節減等で、ところによつては或いは電話をかけることもできない、或いは基準監督署等にしても出て行くことができない、こういう事象もあるやに聞いておるのです。今の示された数字意味、或いは具体的な表現についてお聞きしたいと思うのです。そういう実態についてもう少し伺いたいと思います。
  43. 澁谷直藏

    説明員澁谷直藏君) 只今政務次官からも御答弁がありましたように、私どもも今回のこの経費を以て決して十分だというふうには考えておらないわけでございます。従いまして本当に業務運営上必要な経費につきましては、大蔵省に対しまして補正なり或いは流用の要求もし、折衝もいたしております。  それで今後の問題でございますが、現在はとにかく四・四半期までの予算が成立いたしておりますので、現在のところはとにかく一応行政運営を必要の最小限度においてやる点につきましては経費はあるわけでございます。ただそれが年度末になりましてどの程度の穴があいて来るかという問題が残るわけでございますが、これは第四・四半期におきましてそういつたぎりぎりの点において穴が出ました分につきましては、予算の流用によつて充填して補充をしてやる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 二つに分けてお尋ねをしなければならんかと思いますが、二十七年度につきましては今までの百億の節減で、ところによつては一律の削減のために、電話をかければ電話料が足が出るということでやれんというところがあるという話を聞いた。或いは出張して監督しなければならんが出張費がもうすでになくなつて監督する或いは出張ができないといつた話を聞くが、そういう実態について伺いたい、こういうことを申上げます。  それから特に二十八年度分については、二十七年度分についてもこれらの補正予算の財源として百億ですか、削除のお話があつたのですが、それがそういうことで労働省として仕事ができるかできんか、或いは削られたとするとどういうことになるかという実態についてお見通しを承わりたい、こういうようなことが一つ、それから二十八年分につきましては又あとで……。
  45. 澁谷直藏

    説明員澁谷直藏君) 庁費が十六国会で約二割程度の節約を受けておりますために、従来三回出張できたのがそれが二回しか行けないという点は、これはもう当然あることだろうと承知しております。それで我々といたしましては、従来三回で行つておりました出張を二回でその使命を達成できるように、出張で現地に行かなくても間に合う分につきましては電話でその目的を達成するというふうに、予算の運用面につきましていろいろと工夫を凝らしましてやつておる次第でございます。  それから第二番目の、今度の新らしい百億節約というお話でございますが、この点につきましては、大蔵省と種々折衝いたしました結果、労働省といたしましては四百八十一万二千円程度の節約で大蔵省の了解を得た次第でございまして、これは全各省を通じて最低の節約額或いはその節約の率であります。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじや今までの三遍の出張を二遍にすることによつて効率的に運用をしておる、まあ差支えない。それから今度の節約案によつても、最低だから暗に今差支えなかろうという御答弁であつたかのようですが、これは全部がそうであるとは言えませんけれども、特に基準監督署なり従来十分の予算を持たなかつたところについては、役所はあるけれども全く動きが取れん、出張もできなければ電話もかけられん、こういう役所が現に出ておるように思うのですが、そういうことはなくて、十分な使命が達成せられると言われるのか。これはまあ課長よりも、実際に仕事をしておられる基準局長なんかもおられるから、その実態が一つ支障がないのかどうか、実態を承わりたい。
  47. 亀井光

    説明員亀井光君) 予算の節約によりまして当初計画しましたいろいろな仕事が多少変更が加えられるということはこれは止むを得ないのでございますが、ただ予算の執行の面におきまして合理的に使うということと、それから又監督方法とを工夫をいたしますれば、決してまあ十分という域には達しないと思いますが、一応基準法の目的としておりまする線の維持はできるのじやないだろうかというふうに考えております。ただ問題は、先ほど会計課長からも話もございましたように、毎年年度末におきまする予算不足のしわ寄せがあるわけでございます。今年も恐らくそういう意味でしわ寄せが来るのではないかということが予想されます。これにつきましては、予算の流用措置によりまして何とか本年度したいということで、その折衝も会計課長を通じまして大蔵省といたしております。人件費の残が多少出る予定でございますので、この面の旅費或いは庁費に対しまする流用につきまして今折衝をいたしておる次第でございます。
  48. 吉田法晴

    吉田法晴君 大臣が折角来ておりますので、大臣一つ承わりたいと思いますが、成るほどこれは内閣の一員として、吉田内閣の行政整理とか或いは経費節減とか、そういうことには御協力にならなければならんだろうという苦衷はわかりますが、この筋が通らなければ、或いは無理な削り方をしたんでは、人間はおる、庁舎は店開きをしておるけれども仕事はできないという実態になるだろうと思います。労働省の仕事の大半と申しますか或いは大部分は、伝統も薄いし、十分の仕事をするだけの信用と予算とを持たずに今日来ておることは、大臣自身も御存じであると思います。それから或いは例えば監督行政のごときは、地方に移譲せずに国が持つておくことが、監督行政の任務を保障するゆえんだとして国で今までやつて来たわけですが、予算の足りないところは、例えば基準監督署の庁舎を建てることを例にとつてみますと、予算が足りなければ民間会社、工場の一部分を割いて庁舎を建てる、こういう窮状をはつきり露呈しておる。そういうことが私ども監督行政の上に支障にならなければいいと考えて、実は又心配して参つておるものですが、それを更に一律ではないかも知れないけれども、一次、二次と本年度においても節減して行こうと、或いは来年度においてはできるだけ統合して、基準監督署のごときも地方に移譲しようと、こういう行政改革案が内閣によつて進められておるかのごとくであります。経費とそれから機構という面を通じて労働行政に大きな、これは何と申しますか、自由党の圧力でありますか知りませんけれども、動可がある点について労働大臣はどういう工合に考えておられるのか、この際承わりたいと思います。
  49. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 労働行政全般について、又労働省の立場にもいろいろ深く御理解のあるお言葉を感謝いたします。  御承知のようにこの予算の節約ということは、これは国民の負担力が限界に達しておるところをできるだけいたさねばならんということは、これは申すまでもないことでございます。ただ先般この国会で御修正を受けましたときには、これはもう頭割りに各省一律に節約を命じられまして、御承知のごとくに省の創立以来若い省である労働省においては、特にこの影響を著しくこうむつたように感じております。そこで今回災害を中心とした緊急不可欠の支出を賄いまするために、やはり行政費についてもこの財源を生み出すために節減をすることになつたのでありますが、只今会計課長からも申上げました通り、非常に労働省の立場というものについては、できる限り私ども微力でございますが、力を尽しまして、理解を深めてもらいまして、この点は一律というようなことはなかつたのでございます。第一回の節減のときに、私も実は大蔵大臣との間には、今後これについて何らかの機会に、例えば補正予算を出すというようなときに、労働省の分はこれは見るという言質まで得て、非常に苦しいことは承知で、国会の御修正でございますので私も承わつておるのでございますけれども、非常に実情が苦しくなつておることは、これは御推察下されておるので、これは私としましては、併しかくなる上は徒らにとかく言つておりましてもどうにもならんことでございますので。できる限り予算を効率的に使用いたしますように、省内においても又出先機関にもいろいろその効率的使用ということについて要望いたしておる次第でございます。  なお、この地方移譲の問題が出ましたが、労働基準局或いは公共職業安定所の地方移譲の問題でございますが、政府の今考えておりまする出先機関の取扱いにつきましては、現在行政機構改革本部におきまして総合的にこれを検討を加えておる段階でございまして、未だに結論が出ておりません。結論の出ぬ際にとかくの論評をいたしますることは如何かと存じまするが、私といたしましては、労働行政は今後いよいよ強化されねばならんものだと考えておるのでございます。従いましてこの行政改革の案が出て参りました際に、こうした私ども基本的な考え方の上に立つて折衝いたし、私の所信も表明いたし、いやしくも労働行政の円滑適正な運営をして阻害されるようなことについてはこれがないように努力するような考えでございます。
  50. 吉田法晴

    吉田法晴君 最後の点重ねて承わりたいのでありますが、労働大臣として監督行政、基準法に関連いたします監督行政、それから職業安定法に関連いたします行政については、中央において国においてなされることが望ましいと考えられておられるのか、或いは地方に移譲いたします際には弊害を生ずると考えておられるか、その点一つ承わつておきたいと思います。
  51. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 国がやればどうなるとか、地方に行くと弊害があるとかいうことについては、私とかく申上げることは差控えたいと存じますが、ただ今日のL賭〇の条約におきましては、職業安定に関する項或いは基準関係の項というものは、国の責任においてなさねばならんということになつておりますので、そうした線を外れないということについては、如何なる機構改革をする場合にも必要であろうと考えております。
  52. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) これは労働省は、黙つてつても常識的に大蔵省に向つて予算獲得の努力はせられるであろうと思いますから、従つて労働省に向つて予算が少いのは駄目じやないかといつて責めてみてもどうもしようがないことだと思うのです。ただ労働大臣は閣内で非常に重きをなしておられるから、恐らく言われることはそうなると私は思うのですけれどもね。問題はそういうことじやなくて、現実にこの予算労働行政の全きを得られるかどうかということを私ども研究して、それから若し得られないということならば、労働委員会としてはどうするか、こういうふうに結論を持つて行かなければいかんのじやないか。  そこでちよつと労働大臣に伺いますが、今政府委員から伺つておりますと、どうにかこうにかやつて行けそうだというお話ですけれども、僕は、例えば通産行政と労働行政と比較してみた場合に、本質的に異るものがあると思うのです。特に只今問題になつているのは、二十五年度を基準において二十七年度、二十八年度の絶対値を仕事量と調整をとりながら論議しているわけです。二十七年度額のだけを言つているわけじやないのです。そこで例えば通産行政の場合は、統制的な経済からだんだんと自由経済へ移行して、統制業務というのは外れて来ているわけですね。従つてその間にいろいろ経費の節減を自動的にし得る面が出て来ている。それから労働省のほうはどうかといいますと、基準法の実施にしても、或いは失業関係を中心にした職安の問題にしても、経済情勢が悪くなつているのだから、当然行政の仕事量は殖えて来ているわけなんですけれども、そこに私は本質的な問題が一つあると思う。そこでもう一つつた面は、労働省のほうの仕事というのは、仕事しなければしないで済む仕事が大分ありますね。基準監督署の仕事でも、予算がなければ役所へ行つてつてればそれで済むし、極端なことを言えばそういうことになる。それだからやつて行けるといつても私は限度があると思うのです。良心的に労働行政を少くともするという意味において、そういう意味考えるならば、削減も一応の限界があるだろうと思う。そこでこの説明を承わつて私は非常に奇異に感ずるのは、例えば労働保護官署の場合でも、労働保護官署の一番の仕事は私はやはり旅費がなければできないと思う。その旅費が二十五年度に比較して五四%に減る。先ず半分、これだけ減つてもなおかつ基準法を根拠にした労働行政に支障がないという意味はどうも理解できない。特に現地のほうで基準法の実際の監督状況を聞いてみると、この間も出張の同数或いは出張旅費の絶対額なんかも聞いたのですが、てんで出張できないようなことを聞いたわけですね。そうすると労働行政をやつているという限界からはみ出てしまつて、役所でじつとしているというようなところまで入つているような気がするのです。そこのところをもう少し明確に、大臣がおられますけれども、実際のその行政の責任者である局長たちから率直に意見を私は表明されたいと思います。そうしないと、新らしい官署であつて、而もこの労働行政の動き方によつては多くの労働者諸君が仕合せになれるかなれないか、その鍵を握つている省が、頭割り削減で以て、なお且つ仕事が何とかやつて行かれるというような抽象的な表現で済まされたのでは非常に困ろと思います。
  53. 亀井光

    説明員亀井光君) 先ほど申上げましたように、非常に窮屈でありますることは現実の問題でございまして、その通りでございます。ただ先ほど御説明をいたしませんでしたのですが、我我の行政の中には労災保険の特別会計の事務費が入つておりまして、この特別会計は御承知のように一般の税金によつて賄われているのじやなくて、労災保険の被保険者から集ります保険料で賄つているのでございます。この面の予算は比較的一般会計に比べますると楽に予算が編成されているのでございます。一般会計は非常にこの数学のように窮屈でございますが、この特別会計がございますために、辛うじてこの特別会計と彼此相融合いたしまして予算の経理をいたしている次第でございまして、そういう面から私が先ほど申上げましたような結果になるのでございます。  それから又監督方法にいたしましても、労災保険の関係監督官が参りまする際に併せて一般監督の問題も処理するとか、或いは一般監督をいたします際に労災の面の仕事を併せて同じ事業所についてやつて行くというように、方法の問題もいろいろ合理的に検討を加えまして現地ではやつているのでございます。従つて窮屈であることは確かでございますが、それによつて行政能率の著しい低下を来しているというふうには我々は考えていない、ただ現在は今申しましたように、いろいろ予算経理上の操作によりまして毎日の仕事をやつている、そのしわ寄せが年度末になりますと出て来る。この処置につきましては流用その他の措置によりまして年度を越すように努力をいたしたいというので、目下その折衝を進めているような次第でございます。
  54. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私労働大臣ちよつとお伺いしておきたいのですがね。吉田内閣としては只今労働基性法ですね、これの法律に定めている通りに完全実施を全産業に向つて今もなおすべきである、こういう工合にお考えになつているのか、或いは今の労働基準法では少し行き過ぎがあるので、これを是正をしたいと考えおいでになるのか、この点を先ず伺いたいと思います。
  55. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) その前に予算のことについて少し申上げますけれども、御承知のようにこの予算節減を受けましたのは、これは国会のまあ御命令というか、国会の修正があつたので一律に天引したわけであります。その結果まあ非常に苦しくなつておることはもう当然のことなんであります。今回も救農国会という旗印の下に、特に災害に対して緊急措置をして行くということでございまするが、その財源が実はないのでございます。でまあ彼此研究いたしました結果、どうしても財源は行政費から出すものも加えなければならんということになりまして、誠に我々としては難きを忍ばせられておるわけなんでございます。そこで政府の役人でございます局長等から、政府の官吏として、現在それじや仕事はできんということをこの場で申上げることは、これはできんことだと思います。従いまして今申上げておるようなことでございますが、これでいいとか十分だとかいうふうなことを言つておるそのままではないのじやないかと思います。非常に苦しい行政費だということは御了承願えると思います。  なお、労働基準法に関連してお尋ねがございましたが、只今基準局長の答弁からそういうお話があつたかと思うのでございますが、労働基準法をどうするかという問題は、今政府としては別にまとまつた考えを持つておりません。法律がある以上法律を遵奉するということは当然のことでございまして、それを一般がどう考えているかということについては、まあ私どものところへもいろいろな意見が参ります。併しこれは国際的な関連もございますことですし、これについては慎重に諸般の意見を聞きつつ考えたいと、こういう態度以外には行つておらないのでございます。
  56. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私が唐突に質問を申上げたからちよつと本当の意味がおわかり願えなかつたと思いますが、法律があつて基準法の完全なる実施というようなものはこれは予算措置が伴わなければおよそ意味のないことなんですね。とにかくその行政官が現地へ行つて基準法の完全なる実施について指導監督をしなければちつとも成果は挙がらないわけなんです。その指導監督のできないような予算措置であれば、これは実際法はあつても実施しないということと同じになるわけなんです。そこで私は、これは又社会通念になるんだけれども、今中小企業、日経連等でも言われておりますが、基準法というものは少し日本の産業からいうと行過ぎである、これを何とか是正されたいというような空気があり、恐らく自由党の中にもそういうことを考えておられる方があろうかと思うのですがね。そういうような思想が根柢にあるとすればですよ、なかなかこの基準法の完全実施に関する予算を取ろうと思つても、これは無理だと思う。そのものの考え方ですね、それは内閣としてどうですかというふうにお伺いしている。
  57. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 基準法を完全実施しようということは考えておるわけであります。ただ全体として行政費を、特にこの行政費だけ殖やせという主張をいたしますには、余りにどうも今度の災害が深刻であつて、そうしてやはり各省割にそれぞれの協力をせにやならんという立場に追い込められておりまするために、まあ節約はするが、できるだけ負けてくれということで交渉して、割合にほかの省に比べては同情ある計らいを得たことだと考えております。  基準法改正そのものについては、どうもこれは非常にむずかしい問題でして、日経連のお話も出ましたが、中小企業の中からもそういう意見はあります。そこで私どもとしては、これはまあ急に結論を下すべきものじやないので、十分検討しようと思つておりますが、この予算の節減とか或いは予算増額と関連して、この問題に余り熱心でないために予算が減つて行くんだというふうな関連をつけられますとちよつと少し行過ぎになるのでございます。
  58. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 併し実際はそうですがね。
  59. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) いや、そんなことありません。(笑声)
  60. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 閣議を開いていろいろ審議をして、どこを削るかという場合ですよ、労働省で、例えば基準法完全実施のためにこれは削つちやいかんという思想と、あれはちよつと出過ぎておるから予算を削つて少しへこましておいたほうがいいという思想と、これはやはり政治的な解釈の問題になると思うですね。
  61. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) それは全然ないのですね。とにかく事業費について幾ら節約してもらいたい、こういうことで各省も軒並にやられた、労働省の分はそれより低いのでございます。
  62. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますと問題は大体はつきりしました。労働大臣がそういうお考えであり、吉田内閣もやはりそういうお考えで行かれるということならば、まあはつきりしました。そうすると労働保護官署のほうが五四%、庁費のほうはこれは私は節約できる面もあろうかと思いますがね、五四%それから職業官署のほうが六三%、これは業務量の増加を入れた換算数字ですがね。これでは私はとにかく二十五年度並の仕事ができないことだけははつきりすると思うのです。二十五年度と比較しておるのですが。
  63. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) それは御尤なお話ですが、これは各省そうなんです。修正案が出ましたときにその趣旨で出ましたのです。我々のほうは新らしい省なんで、いわゆる古川に水絶えずといつて、古いところじやどこかからか予算が出て来るものだけれども、創立後間もない新設の省にしては非常に困る、而も非常に規模が小さい。従つて仮に百ページの本のうち一ページを節約しても九十九ページ残るじやないか、十ベージのうち一ページ取つて九ページになつた場合には非常に限界効用からいつても我々のほうは打撃が大きいのだから、何とかやつてくれと言つたところが、大蔵省の事務当局ではよくわかるのです。併し何にしても頭割、党と党の間で話がびしやつとさまつてあれされたもので、止むなくこうしておるので、その場合労働省たけ殖やせということは、あの当時の国会の決定で、その内容まできまつて来たわけだから、我々としては如何ともしがたかつたのであります。これについては何とか復活してくれということを大蔵大臣に私強く要望して現在も要望し続けておるのでございますが、その当時の話では、さつきも申上げましたが、今後又補正をする場合には一つ労働省の分は何とかしましようという話であつたのですが、この期に及んでは全く各省どこも出ない。ほかの省がびいびい言つ薫るところを労働省だけ殖やすということもちよつとできませんので、せいぜい節約額を多少減少して行きたいという程度しかできなかつた。これは私の微力のいたすところかも知れませんが、情勢上、御承知のように各省実は来ておりますし、殊に人件費については今度手を著けなかつた。ですからほかの省は施設費、事業費等について節約したわけです。こつちも事業費について一割のところを五%に負けてもらつておるわけなんですが、どうも人件費のほうだけおれのほうは殖やしてくれということをちよつとあの場合としてはやりにくい。今後機会があれば何とかしてもらうように大蔵大臣に強く要望はいたしております。
  64. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私は非常に不思議に思うのは、国警がよく争議のときに大勢来ますね。あれは大分費用が要るんだろうが、ああいうやつをこちらへ廻すようにしたほうがいいと思うのですがね。特に二十五年頃には、国警なんかああも大勢一緒に争議なんかに出て来なかつた。それが今同じように天引された予算で出て来られるというのは、一体どういうわけですかね。それは二、三の例を挙げましたけれども、全国的にいつて、国警の最近の訓練なり経費の使い方というものは相当殖えておると思うのだ、二十五年度よりは。殖えておると思うのです。これは若し数字的に怪しければ、調べれば数字が証明するからすぐわかりますけれども……。
  65. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) まあ私のこれは想像でございますがね、やつばり古川に水絶えずで、古い省はどこからか出て来るところが多少あるのじやないですか。我々のほうは根つ切りない。この前のときも、さつき申上げましたように、我々も交渉しまして今度は殖やすという話でしたが、とにかく幾らかでも我々の省は見てくれというので監督旅費は、ほかの省は二〇%、二割の節約でありますが、私のほうは五%、削限の率を減らしてもらつているのであります。それから求人開拓の費用が二〇%のところ一〇%、一割、多少同情を持つて実情については解理してもらつているのでありますが、これで私たち満足は無論していない状況であります。
  66. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働保護官署という中には婦人少年局も入つておるわけですか。
  67. 亀井光

    説明員亀井光君) 入つております。
  68. 阿具根登

    ○阿具根登君 先ほどの私の質問についてちよつと……。
  69. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 先ほどの御質問は失業の見通し対策、簡単に申しますとそういう御質問であつた考えます。  実は失業の見通しにつきましては、私どももこの点検討しておるのでございますが、差当つて問題になりますのは本年度の下半期の見通しでございます。大体上半期を経過いたしまして下半期に入つておるところでありますが、その見通しがどうであるかという点につきましては、この問題は輸出貿易の伸び工合、それから政府の財政投融資関係、産業資金、それから国民消費といつたようないろいろなデータを基礎にいたしまして、雇用量の増大を一応検討しなければならないということでございまして、私どもとしましては経済審議庁に連絡をいたしまして、その検討は進めておりますが、遺憾ながらまだはつきりした数字を申上げるような段階に至つておりません。  ただ私どもの観測といたしましては、農林、水産、それから鉱業、そういつた産業部門におきましては就業者数の減少が見込まれるであろうけれども、建設業とか或いはサービス部門、或いは金融、運輸、そういつた関係におきまして若干の増加が見込まれるのじやないか。大体といたしましては、上半期と大体保合の状態になるのじやないかというような観測をしておるわけであります。実は今日の石炭の企業整備等の問題もありまして当初の見通しにつきましては相当の修正をしなくちやいかんということで寄り寄り研究はいたしておりますが、まだ明確な数字を得る段階に至つておりません。来年度の見通しにつきましては、これは来年度の予算編成とも関連いたしますし、特に財政投融資関係その他いろいろございまして、今ここで申上げることはむずかしうございまして、何とも申上げかねるのでありますが、下半期の見通しといたしましては、大体上半期と保合じやないかと思います。現にいろいろな統計数字に現われておりますところを見ましても、完全失業者の数は若干減つてつておりますし、或いは失業保険の受給者も八月に入りて減少しているというような数字も現われております。今にわかに失業情勢が悪化するというような予測は一応いろいろなデータ基礎にいたしまして考えた上では出て来ないというような考えを持つております。従いまして従来私どもがやつて参りました失業対策事業の運営でございますが、これにつきましては、そういう見通しに立ちますならば格段の措置は一応必要ないという考え方も出るわけでありますが、御承知のような水害、冷害の関係がございまして、あの関係から職を失つた農業関係労働者が大分出て来るのじやないか、こういうことも予想いたしまして、補正予算におきましては若干、これは内定数字でありますが、三億でございますが、三億の補正を一応予定している次第であります。
  70. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ非常に楽観的な今御返答を頂いて、私はそれでいいだろうかと心配するわけでありますが、先ほど申上げましたように、水害、冷害の農業の失業に対しては同じ意見ですが、例えば特需の問題、その他化学等の部面では殆んど失業者がどこでも出ている。こういうときにこれを吸収するのが或いは金融界である、その他であるというようなことを言つておられますが、私は上半期と下半期でとんとんで行くような、そういう現状ではないという考えを持つております。それを当の責任者課長は、上半期と下半期は同じくらいだというような楽観的なやり方で失業対策考えておられる、非常に私は心外に考えるわけなんですがね。実際そういう数字が出ているのでしようか、一つお伺いしたいと思います。
  71. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 今後の見通しにつきましては、これは非常にむずかしい問題でありますけれども、先ほど申上げましたように建設業関係、これは前に大臣も本委員会において御説明なすつたことがありますが、本年度予算の成立時期が遅れた関係上、公共事業の実施、それから財政投融資の対象となります事業活動が本年度下半期において活撥になるだろうというようなことも考えられまして、全体として見ましたならば大体保合じやないか、こういうような観測をしているわけであります。  なお参考までに申上げますと、完全失業者の数とか或いは失業保険受給者の数でございますが、御参考までに申上けますと、完全失業者の数は本年三月がピークでございまして六十一万人という数字が出ておりましたが、四月は五十三万、五月は五十万、六月は四十万、七月四十三万、八月は保合で四十三万、こういう数字になつております。  これを業務の面から、一応裏表の関係になります数字としまして、失業保険の受給者の数を申上げますと、やはり三月が失業保険の受給者が一番多うございまして三十五万六千、四月に入りまして三十五万、五月三十四万三千、六月三十四万九千、七月三十四万九千、八月になりまして三十三万五千というので、八月になりますとぐつと減つております。これは完全失業者が減つているのと同じような傾向を示しているわけであります。  又安定所の窓口に現われております求職者の数を見ましても、三月、四月は百万を突破しておりましたが、五月一は九十八万一千、六月は九十五万一千、七月は九十六万八千、八月に至りまして九十四万四千、こう減少しております。これらの数字を見ました場合に、著しく悪化するというような数字は一応出ておらんのであります。将来の予測につきましては非常に困難でありますが、先ほど申上げましたような見通しを一応立てております。
  72. 寺本廣作

    ○寺本広作君 関連して。今のお話ですが、失業保険の初回の受給者はどうですか。
  73. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) これは今手許に資料がございませんので、あとで申上げます。
  74. 堀眞琴

    堀眞琴君 阿具根君の質問に関連して。今の失対課長の御答弁は、ちよつと楽観し過ぎるという気がするのです。今の挙げられた数字は八月までの数字なんです。上半期と下半期は大体保合いの状態だということを、八月までの、つまり七月、八月のニカ月間の数字を以て予想されておるわけなんですね。ところが実際の産業界の状況を見ますると、御承知のように整理の段階、合理化の段階に入つて来ているわけなんです。その合理化というのは、結局においてやはり首切りということが一つの大きな現象として現われて来ると思うのです。決して合理化の段階というのは、機械の整備等による、従つて失業者を出さないようなものだというような解釈をすることはできないわけです。そういうような段階に今入りつつあるわけです。そうするというと、その面から本来的に失業者が出て来る。それから各産業部門において、それは勿論均等には進まないでしよう。或る産業ではそれが非常に急速に進む場合もあり、或る産業では進まん、いろいろ不均等ではありましようけれども、とにかくそういうような段階に来ているということは、これは否定することができないと思うのです。失対課長はよしんば失業者が出ても、例えば公共事業であるとか或いは輸出方面であるとか或いは金融、交通業等において相当の雇用量が増大することが予想されるという只今お話なんです。問題は輸出産業が果して伸びるか、或いは又交通方面において雇用量が増大する見通しがあるか、金融の方面だつて同様だと思うのです。そういうものを非常に楽観的に、雇用量がその方面で増大することが予想されるから、従つて失業者というものもそう出て来やせん、八月現在で四十何方である。こういうようなお話では、これは非常に楽観的であつて、少くとも労働行政を担当する労働省失業者に対する予想としては、私は非常に杜撰なものではないかというように考えるわけです。もう少し九月、十月、十一月とつまり下半期の進むに従つて出て来る、今後の産業構造上から来るところの失業者の予想ですね、それらをもう少し具体的に、予想ですから具体的といつても限界はありましようけれども、上半期と下半期は保合状態にあるのだということを予想されたその根拠、それをもう少しお話願いたい。
  75. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 私どもとしましては、失業情勢はこれは決して楽観いたしておりません。勿論将来の見通しでございましていつ如何なる場合でも非常に窮迫した状態が起るかも知れんということは、最悪の場合を考えておかなくちやならんことは確かで、もとよりその点は考えておるわけでございますけれども、ただ数字といたしまして将来の見通しはどうか、こう申しました場合は、大体において保合であるというような見通しを実は持つておるわけでありますが、その具体的な数字、これは細かく各産業別の就業者の増加数の見込ですね、これを申上げればいいのでありますが、まだ実は固まつてないのであります。これは各産業別に、例えば財政投融資はどういうふうになされるか、それから産業資金はどのくらい獲得されるのであるか、それから有効需要を促すところのその他の諸種の原因が一体どういうふうに現われておるかという点をずつとつかんで参りませんと、各産業別の就業者の推定というのは非常に困難でございます。  結論としまして、農林業、水産業、鉱業、こういつた方面では就業者の数は減るかも知れん。併し建設業、サービス業、金融業というような関係では伸びるのではないか。どのくらい殖えるかという点につきましては、今検討しておるところでありまして、今ここで申上げる段階に達していないのでございまして、この点は甚だ遺憾でございますが、御了承頂きたい。
  76. 堀眞琴

    堀眞琴君 勿論予想のことですからどういう事態が起こらんとも限らんし、おつしやる通りだた思います。それからもう一つお尋ねしたいのは、今の日本の経済段階からいつて中小企業が没落する現象が起りつつある、その面からの失業者といいますか、そういう者も相当計算に入れなければならんのではないかと思いますが、その点ばどうですか。
  77. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) その点でございますが、私ども具体的な数字は、今つかみたいとは努力しておるのでございますが、この前の委員会で安定局長から失業情勢を御説明したことがありますが、あの中で就業者の数が殖えておる。非農林業就業者でございますが、全体の就業者の中で非農林業就業者の数が殖えておる。その増加の中身は、零細企業における就業者が殖えておるというような説明をなすつてつたはずであります。実は中小企業におけるそういつた就業者の数は、これは必ずしも減つてないような数字も現われておりまして、実は一般的には企業整備が進行する、或いは特に中小企業の部門においてそれが強く現われるということが言われるのでございますけれども、それを全国的に把握する数字として具体的なものを持ち合せないので、実は如何ともしがたいというようなことでございます。
  78. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと失対課長に私も関連して質問したいのですが、上期と下期の今までの状況は確かに仰せの通りだと思うのですよ。併しこれから来年の春にかけての経済の動きというものは或る程度政策的なものが出来てると思うのですの政府のですね。その一つの例は、この間も日銀の政策委員会ではすでに資金の撒布超過になつているやつを相当吸収しなくちやいかん。そこでその場合に中小企業にしわ寄せが出て若干中小企業が倒れても止むを得ないというような表現を用いておられたのが、日本経済にたしか私は何回か出たと思うのです。こういう考え方は、やはり一つの失対を扱うときの見通しの材料に私はならなきやいかんと思うのです。だから余り楽観はできない。それから第二は、これは天然現象だけれども、長期天気予報によると、来年の春までは降雨量が非常に少い。従つて電力事情は極めて悪化するであろりということが大体見通しになつておるのです。もうすでに十月ですけれども電力の制限段階に入つております。十一月、十二月、一月、二月、相当強皮な電力制限をやらざるを得ない状況にあることは、通産省のほうでも大体認めてその対策を立てておるわけです。そうするとまあ今年はストライキはありませんけれども、とにかく電力厄機のほうで以て相当制限をやる、そうするとそれがやはり弱点として衝かれるのは中小企業ですね。そういうことになると、今までの経済の動きだけをカーブにとつて見て、それをちよつと延ばして、これで大体行けそうだという見通しは私は非常に甘いと思うのです。ですから具体的に悪い材料が指摘できるわけですから、そういうものを把握してもらつて、そうしてその上で的確な見通しをつけてもらわないと、経済審議庁がやつておるああいう非常に高度な経済分析ではいけないと思うのですが、その点はどうですかね。
  79. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 私どもとしては、全般的な傾向を把握するために、一応経済審議庁あたりの産業活動の見通しというようなものを参考にいたしまして検討しておるのでございまして具体的な今御指摘のようなケースをどうしてつかむかという点につきましては、これはいろいろ苦慮しておるのでございますが、現在可能な方法としましては、安定所を通じまして雇用主方面や、そうして企業整備の状態、これからの予測というものを実はできるだけ把握しようということにしておるわけでありまして、業務の面からはそういつた方法をとつて見通しを立てたいと思つている次第であります。  その企業整備の状況把握でございますが、実は先々のことは、これはまだ確実に把握しておりませんが、八月までの状況を見ますると、五、六、七に比べまして、八月に入りますと企業整備の件数等も少くなつて来ておりまして、将来この傾向が続くかどうかという点については確信はございませんけれども、こういつた傾向も現われておりますので、いろいろ悪条件はありましようけれども、いい条件も、又こういつた業務統計もありますので、どうも結論といたしましては、一応保合の状態にあるのではないかと、こういうように判断するほかない、かように存じておる次第であります。
  80. 田中啓一

    ○田中啓一君 ちよつと方面が違うかも知れませんが、関連をいたしますので……。今度の冷害対策で失業対策費というものを何か組んでいらつしやるようでありますが、これはどういう構想でおやりになるのでありますか。一遍こういう機会に、やはり失業対策の一環としてお伺いをしておきたいと思います。
  81. 江下孝

    説明員(江下孝君) 冷害対策といたしまして失業対策事業を如何に運営して行くかという御質問のように承わりますが、私どもといたしましては、事、農村の問題でございますので、第一義的には農林省関係の諸般の援助対策というものが優先すべきものだと考えます。併し、なかなかこれ有毒吸収も十分でないとこう思いますので、労働面から協力をして行くという点から、幾らかでも援助できる点を推進して行く、こういうつもりでおります。
  82. 田中啓一

    ○田中啓一君 それでどういう事業をやるかということはわかりましたのですが、やり方でございますが、今までは各職業安定所なんかを通じまして申込んで来た者しかその事業には就労できないというようなことでありますが、農村のことですからどうも職業安定所はございませんし、そこいらはどういう実際やり方をなさるおつもりでありますか。
  83. 江下孝

    説明員(江下孝君) お話通り各農村まで安定所はできてはございません。併しながら現実に失業対策事業は、法律の建前も、職業安定所が紹介する失業者を収容するということになつておりますので、そこで私どもとしましては、できるだけ定安所の出先を農村地帯に臨時的に作るということが一つですね。もう一つは、これはまあ法律的にも研究して行かなきやなりませんが、村役場ですね、これをまあうんと活用するということも併せて考えて行きたいと思います。
  84. 田中啓一

    ○田中啓一君 大変実際的で、私もそういうふうになればいいがなと実は思つてつたのでありますが、実はその職業安定所から山の中へ出て行かれることになるとこれは旅費から何から相当なことになると思うのですよ。でありますから監督程度にされて、今おつしやつたような町村役場、殊に村です、村の村長に代行でも或る程度委託させられれば、監督者に当るならば、そうむちやなことはないだろうと実は思うのでありまして、まあどうぞこの職業安定所のほうも余り経費がかからんように、又実際失業対策事業に従事をして労賃をもらう者も不便にならないように、適切におやり願うことを希望しまして、よくわかりましてございますからこれで……。
  85. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 江下局長が見えましたから、ちよつと私から要請しておきますが、実は今その失業対策課長お話を聞きまして、失業関係見通しは楽観に少し過ぎるのじやないかという私は気持を持つのですね。それは役所として私は止むを得ないと思うのです。今までの傾向から余り飛び離れた見通しを立てるということは、私は非常に至難だろうと思いますけれども、併しこの臨時国会或いは次の通常国会で決定されて行くところの財政経済の方針は、これは政策的なものが入つて来るわけでしよう。而もその政策的なものの一番中心になるのは、金融の引締めは、これはインフレーシヨンを抑えるために相当強い程度でやるということを言われているわけです。その皺寄せは必ずこれは中小企業へ私は来ると思うのですね。私の独断じやなくて、まあそうでしよう。先ほども申し述べましたけれども、日経なんかも続いて書いているのです。従つてそういうようなことになれば、雇用量のこれは減退はもう必至ですね。従つて少なくとも労働省が失業対策を扱う場合には、ほかの省から楽観的な意見が出て、労働省のほうの少し悲観的な意見が調整されるのは私結構だと思うのですがね。労働省のほうがそういう将来の新らしい問題が起きて来るであろうということを算入されないで予想を立てられることはどうかと思うのです。  それから第二の問題は、これはもう人為的に如何ともなしがたいのですが、来年の豊水期までの電力事情は極めて悪化するであろうという目通しの下に今通産省においては電力制限の具体的な対策を立てているわけですね。これは別に根拠があるわけじやないけれども、長期の天気予報がそういうことを言つている。従つてそういうことが来た場合に困るというので対策を立てている。現にまあ十月は従来稀であるという制限段階に入つているわけですね。これは大臣もおられますけれども、この間スト規制法をやるときは、あれだけでも中小企業が随分つぶれて困つたということを言われて審議されておつた。このストはまあ今度はありませんけれどもね。併し電力の制限のために若し電気がとまるということによつて、中小企業に影響を及ぼすということになれば、今年は相当のものが来るのじやないかと思うのです。そういう点を併せ考え、或いは保全経済会がああいう小さな金融パニツクのようなことをやりましたからね。あれが更に膨らんで来ないとも言えない。そのいろいろな情勢を勘案してみると、楽観の材料は余りだくさんない。こう考えられれば、失業対策労働省として立てられる分は若干悲観的な要素を入れて立てられるのが私は或る程度妥当じやないかと思うのです。今日はそこまで行きませんから、いずれ臨時国会が開かれれば、この問題は、いろいろその材料も出て、論議もできると思いますから、そういう意味一つ研究を緊急に願いたい。こう思うのですがね。  ここで速記をとめて下さい。    午後三時四十九分速記中止    —————・—————    午後四時一分速記開始
  86. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  予算につきましては一応労働省側から説明を聞きまして、その大綱は理解することができましたが、要するに予算獲得の問題は、労働行政の円満なる運営ができるかできないかという点を中心にして考えなければなりませんので、更に次の委員会等で研究を続行いたしまして、そして二十九年度の本予算においては更に改善されるような努力を当委員会としてはいたしたいと、こう考えますが、よろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) さようにいたします。   —————————————
  88. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それから大変時間が遅くなつて恐縮ですが、最後にこの前の委員会で、栃木県の珪肺労災病院を視察いたしましたので、その視察の結果を御報告願います。
  89. 阿具根登

    ○阿具根登君 私僭越ですが、視察の御報告を申上げたいと思います。  去る十月三日、四日の両日、栗山委員長、上條委員、寺本委員、市川委員吉田委員、それから私及び専門員、法制局珪肺法案担当者等の一行で、栃木県下日本鉱業木戸ケ沢鉱山及び労働省珪肺労災病院を視察、珪肺発生の原因である鉱内の粉塵作業の状況及び珪肺患者の治療、保護の実情を詳しく見る機会を得て、只今審査中の珪肺法案の審査に資するところが多かつたと思うのであります。  日本鉱業木戸ケ沢鉱山は、その規模においては、採掘鉱石は黄銅鉱を主として月産約四百トン、従業員数約三百名で、日本鉱業株式会社中中位に属する鉱山であります。当鉱山ではその岩石中に含有する珪酸分の含有量は少いために、従来とも比較的珪肺の発生は少く、更に現在においては粉塵防止のため、ストッパーを除いては鑿岩機はすべて湿式を使用し、作業環境を著しく改善されつつありますが、従業員三百各中十三名の珪肺入院患者を出していることは見逃すことのできぬところであります。又坑内も丁度衛生週間に当つているためかよく整頓され、坑道の補修も行届いているように見受けられました。又坑外撰鉱場も金属鉱山としては建築物が珍しく平地利用可能なため水平式製煉法を採用し、作業場も極めて清潔で、粉塵防止のための努力が著しいものであつたと思いました。併しながらストツパーの湿式化を採用すれば粉塵防止に更に一段と有効であろうと思うのであります。  次いで鬼怒川珪肺労災病院を視察いたしました。当病院は東武線新高徳駅から徒歩約五分の地点にあり、鬼怒川の清流に臨み、附近に鬼怒川温泉があり、その環境は風光明媚な健康地帯であります。病院の設立は昭和二十四年六月仮施設のまま財団法人労災協会の委託経営で発足、一年後の昭和二十五年五月一千二百万円の工費で本館、第一病棟、第二病棟、附属建築物等の本建築を完成し、当時日本唯一の労働省珪肺労災病院として珪肺患者を収容して、治療と保護を加えると共に、珪肺研究の諸施設を設け、珪肺の研究に専念して来たのであります。更に昨年一月より一千万円の工費を以て一病棟を増築し、病床の増加と研究施設の完備とを図つて来たのであります。病院の患者収容定員は現在百十名でありますが、開設以来の延収容人員は二百三十八名で、十月三日現在七十三名の入院患者があり、うち四十八名は金属鉱山、十名は石炭鉱業、残りの十五名は窯業、鋳物業等一般産業部門において罹災した患者であり、珪肺が現実に金属鉱山のみに発生しているのでなく、一般産業においても石炭鉱業、窯業、鋳物業等広汎囲に亘つて発生していることを物語つているものと思われました。又病院の収容定員が百十名であるにかかわらず、現在七十三名の入院患者で、未だ三十七名の余裕が残され、病院の利用率が完全でない理由は、元来珪肺そのものは完全に治癒する病気でなく、病状を安定させるにとどまるのであるから、患者が遠隔の地から入院のための長期に亘る二重生活の不便に忍びず、希望しないためであると思われます。折角の病院がその利用率において完全でないことは検討の必要があろうと思うのであります。当病院は職業病、特に珪肺の権威者である院長大西博士以下五名の医師及び看護婦その他の職員の熱心な治療、看護及び珪肺の研究に顕著な功績を挙げつつ今日に至つているのでありますが、すでに退院せる患者中労災保険の治療期間満了したため、未だ治療の必要が認められながらも、止むなく退院せしめた者も相当数に達し、彼らは退院、帰省直後病状悪化して死亡している例も多いのであります。  大西博士からは、患者によつては珪肺症状を安定せしめる期間は三カ年間では困難である旨の強い意見が述べられました。現行法三カ年の治療期間は珪肺に限り検討すべき点があることは明瞭でありましよう。又博士は、現在の医学では珪肺の発見は可能であるから、早期に発見し、その病状の程度に応じ病状を安定せしめ、患者の労働力を維持せしめることが重要な旨説明がなされました。なお博士は、現在の病院施設について、患者の家族の宿泊所及び厚生福祉施設の増設も長期に亘るこの種患者の療養生活に必要な旨の意見も述べられました。  次いで博士の案内により、病棟におる入院患者の実情を視察すると共に、珪肺及び珪肺結核に対する診断及び特殊な治療方法説明を受けました。次いで入院患者の一部と懇談し、その希望意見を求めたところ、先ず現行労災保険法については、打切りまでの治療期間が三年間では短か過ぎること及び打切り補償の金額が少な過ぎる、少くとも子供が満十八歳になつて労働能力ができるまでの間の生活保障に十分な金額にすること等の要望がありました。又労働基準法については、現行の健康管理では結核と珪肺の区別が地方医では困難であるため珪肺の発見が遅れ、治療の時期を失する虞れがあること、特に珪肺結核についてはその治療方法が普通の結核と異り、特殊な療法が必要であるから、併発せる結核を急速に悪化せしめる場合もある。それで健康診断等を更に十分にする法的措置を講ずることなどの要望がありました。病院の施設等に対しては、院内に職業補導施設を設け、患者が病状が安定して退院した場合、粉塵作業場以外で直ちに能力に応じて就労できるよう職業補導を入院中に受けること、その他家族宿泊所、娯楽室の拡張或いは院内食事の改善等の要望もありました。  又、石炭鉱業その他一般産業部門の患者から、金属鉱山労働者は大部分事業主との間に珪肺協定が締結されており、現行労災保険法による補償に更に補償が追加されて保護が厚いが、金属鉱山以外の産業では珪肺協定の締結されている場合は殆んどなく、特に一部石炭鉱業方面においては、現在国会に珪肺法案が上程されているから、法案の制定も近いであろうという理由の下に、協定の締結が妨げられている場合もあるので、一般産業部門においても事業主の理解により補償の増額と珪肺法制定のための善処を早急に要望する旨の意見もありました。  当珪肺病院は先にも申上げたことく風光明媚な健康地の設置されていますが、将来軽度の患者に職業補導を兼ねて、且つは病院の自給のため、酪農経営等を新設することも必要な措置であろうと思いますが、病院の立地条件等を考えると適当でないので、将来この種の珪肺病院を新設する場合は、立地条件も慎重に考える必要もあろうと思うのであります。  以上珪肺労災病院において患者の実態及び珪肺に対する特殊な治療方法実情を詳しく視察する機会を得、又権威ある大西博士から、先ほども申上げましたように、現行法では患者の治療上にも完全でない旨の意見があり、患者からも現行法の補償では十分でないから、その善処方を要望しておるのでありまして、その意見は皆おおむね妥当なるものと考えられますから、只今上程されている珪肺法の早急なる制定が必要であろうと考えた次第であります。一以上御報告申上げます。
  90. 寺本廣作

    ○寺本広作君 ちよつと附加えて。大臣局長、会計課長もおられますから、今のには食費が入つておりますか。
  91. 阿具根登

    ○阿具根登君 入つております。
  92. 寺本廣作

    ○寺本広作君 患者から一日百十円で、非常に食費が足らんという話でしたが、普通の結核療養者と違つて、ここはいい食事をさせなければなおらんということが非常に多いと思います。その際陳情がありましたときの話では、巣鴨の戦犯はたしか百二十円になつていると思います。せめて戦犯並みに食費を取らなければ災害補償にならんじやないかということを申上げておきました。  今度私九州に帰りまして、附近の結核療養所を視察いたしますと、食費百二十円というのが相当ございます。而も生活保護法の患者が四二%も入つているというようなことで、百二十円の食費を払つているということがありますから、是非一つ予算単価を引上げるようにお願いいたします。
  93. 亀井光

    説明員亀井光君) 只今お話は、先般大臣と私も現地の労災病院に参りましているく実地を見たのでありますが、食費の問題はお話通り、最近の主食なり或いは副食費の値上りから見ると妥当でないと思つております。その増額につきましては検討いたしております。できるだけ早く御期待に副うように実行いたしたいと考えております。
  94. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会