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1953-09-11 第16回国会 参議院 労働委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十一日(金曜日)    午前十一時七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君    委員            伊能 芳雄君            吉野 信次君            阿具根 登君            東   隆君            寺本 広作君            堀  眞琴君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    通商産業政務次    官       古池 信三君    通商産業省石炭    局長      佐久  洋君    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      亀井  光君   参考人    全自動車産業労    働組合日産自動    車分会組合長  益田 哲夫君    日産自動車労働    組合組合長   笠原 剛三君    横浜警察本部    長       小林 正基君    日本石炭鉱業連    盟専務理事   早川  勝君    三井鉱山株式会    社労務部長   山本 浅吾君    日本炭鉱労働組    合本部執行委員    長       阿部 竹松君    日本石油協会専    務理事     天日 光一君    三井鉱山労働組    合連合会事務局    長       灰原 茂雄君   —————————————  本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (日産自動車株式会社における労働  争議問題に関する件)  (石炭鉱業における労働問題に関す  る件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  本日の案件は、日産自動車争議に関する調査と、石炭鉱業における労働問題の調査についてであります。先ず最初日産自動車争議について調査をいたします。本日委員会調査をいたしたいと考えておりまする主なる項目は、争議経過政府労働委員会とつた処置、組合ピケライン会社ロツク・アウトの方法、組合会社側不当行為有無、官憲の介入の有無並びにその状態不当労働行為有無等についてであります。  本日は参考人としまして、日産労組組合長益田哲夫君、日産労組第二組合長笠原剛三君、横浜市警本部長小林君の出席を求め、更に政府側説明員として国警長官斎藤昇君並びに中央労働委員会委員出席を求めております。併し昨日来の交渉によりまして、中央労働委員会委員及び日産自動車株式会社会社側代表者出席を求めておりましたが、伺うところによりますと、只今この争議解決のためにいろいろと善処をされておるようでありまして、事態が微妙な段階にあるために出席はいたしがたいので了承願いたいという申出がございました。この点はさような申出がありましたので御報告を申上げておきます。  先ず最初に、中央労働委員会の動きを含めまして、日産自動車争議について労働省はどういう工合に考え、どういう工合に今日まで処置して来られたかを伺いまして、それから参考人の陳述を求めたいと存じます。
  3. 中西実

    説明員中西実君) これは一般論といたしまして、争議につきましては、できるだけ自主的な解決に委ねる、政府が介入することは成るべく差控えるというのが労使双方常々希望でもありますし、これが公益に非常な影響の及ぶようなことになりますれば、もとよりこれについて種々法規上或いは実際上の措置をとる必要もあるかと思いまするが、幸い日産争議におきましては、自主的な話合いののち、中出労委におきましてこれを取扱い、大体今日相当順調な方向にあるということで、常々我々のほうとしましては、業者並びに組合から、更に又中労委から直接に情報は得ておりますれけども、これに対して争議解決のための種々の方途をするということはしないで、一応中労委斡旋に委ねておるという状況でございます。
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大体方針はわかりましたが、今日までこの争議について、それでは労働省が得られておる争議経過、その他に関する先ほど私が申上げました六つの問題点について、それぞれ情報を得ておられるであろうと思いますが、そういうものを一通り労働省としての見解を述ベて頂きたいと思います。
  5. 中西実

    説明員中西実君) 争議経過につきましては、後ほど又当事者のほうからもお話があるかと思いますが、お手許にお配りしてあります資料によりまして申上げるほうがおわかりいいと思います。  先ず原因はここにございますように、組合のほうから賃上げ要求が出ました。段階別にそれぞれ経験年数に応じ、最低賃金を六月以降実施するようにということ、それと併せまして、夏季一時金ニカ月分手取り三万八千円、その他職場から上つたいろいろの要求事項項目がございます。会社側といたしましては、賃上げについてはこれを拒否し、一時金につきましても話合いが付きません。その間、会社側としましては、課長以上を非組合員とする、及び時間中の組合活動に関する覚書の締結を組合申入れております。それをずつとやりますですか……。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 一応、概括的に要点だけを述べて下さい。
  7. 中西実

    説明員中西実君) この覚書申入れに対しまして、それでは要点だけをかいつまんで申上げますと、先ほどのような組合からの要求が出まして、これに対して組合側に先ほど申しましたような賃上げに対しては拒否回答があり、更に覚書について申入れを行なつたのであります。その後団体交渉を持たれたのでありますが、労使意見対立したまま進展せず、六月二十五日以降組合残業拒否を実施するに至つたのであります。六月二十五日に賃金支給日に当るのでありますが、会社側就業時間中の組合活動を行なつた時間に対して賃金差引きを実施いたしました。組合会社側の一方的な賃金差引きに強く反対いたしまして、各職場ごと部課長交渉を行い、抗議を行なつたのでございます。この交渉に当りまして、双方に相当激しい対立が見られました。この当日の交渉に関しては、のちに労働組合員検挙が行われたのでございます。七月の九日に会社側夏季手当については基本給の一カ月分プラス二千円、即ち計一万六千円を支給する、こう言つて来たのであります。賃上げはこの際はできないという回答をいたしました。組合側はこれを不満として、更に闘争を強化するに至りまして、七月十四日から十六日まで連日団体交渉が行われましたが、一時金問題、賃金差引き問題等、賃上問題については組合側は保留することを申入れておるのでありますが、今の一時金の問題、賃金差引きの問題に関する労使意見は全く対立のまま遂に団交決裂状態になつたのでございます。七月十七日以降組合横浜吉原工場整備課等の無期限部分ストに入りました。これに対して会社側は七月二十一日横浜工場整備課職場閉鎖を、一部分ロツク・アウト職場閉鎖を行いました。七月十六日以降現在まで、昨日あたり一昨日あたりまで団体交渉が行われず、労使意見交換はすべて文書によつて行われて来ておるのであります。このためにのちに組合側から団体交渉再開申入れがなされまして会社側意見対立し、これが一応争議一つの主要問題となりまして中労委に提訴の運びになつたのでございます。七月二十五日の給料日給料支給日におきまして再び会社側賃金差引きを行い、これが問題となりまして、組合はこれに強く反対して、横浜工場整備課閉鎖を破つて職場内に入りました。更に二十五日からは総務部株式課部分ストが行われました。七月二十七日に会社閉鎖中の横浜工場整備課組合員立入禁止仮処分申請を行い、七月三十日会社申請を認める決定が行われました。  こういう状況下におきまして、組合団体交渉再会要求したのでありますが、会社は、七月三十一日、団体交渉再会条件といたしまして、先ほど申しました組合活動に関する覚書会社案を承認すること、六月二十五日以降の賃金右覚書によつて処理すること、この二つの条件を提示して団体交渉に応じようというのに対しまして組合側は無条件団体交渉を主張して対立したのでございます。このようにいたしまして、組合闘争を更に強化する必要の事態に立至りまして、八月四日、横浜並び吉原工場部品受渡し部門の無期限部分ストを実施するに至りました。これに対して、会社は、八月の九日、横浜吉原工場を全面的にロツク・アウトいたしまして、組合はこのロツク・アウトと対抗して工場内に入りまして、工場閉鎖の反対並びに団体交渉再開申入れましたが、会社はこれに応じませんでした。その後、八月七日組合長ら六名の暴力行為等処罰に関する法律違反、こういう容疑で検挙がありました。又八月十四日、吉原工場で四名の検挙がありました。会社は、更に八月二十一日になりまして、組合長ら六名の懲戒解雇を行う旨通告をいたしました。このような検挙問題とか、或いは解雇問題が発生いたしまして、事態は更に複雑になつて来た観を呈したのでございます。組合は、八月二十四日に、中労委団体交渉再開斡旋申請いたしました。中労委は事情を聴取いたしましたのち、九月二日正式に斡旋を行うことになり、中島公益委員がこの斡旋に当つたのでありますが、結局不調に終りました。その後、今週の水曜日、中労委公益委員会議におきまして協議の結果、中山中労委会長会社側を呼んで団体交渉再開を要望することにきまりまして、このことが行われました。九月十日、昨日組合側組合長会社代表が会見いたしております。更に、本日団体交渉再開のための予備交渉が行われるというふうに聞いております。大体以上が経過でございます。  なお、この間に第二組合結成が行われ、これと会社との交渉がございます。これはお手許資料の九頁以下にございますが、八月三十日に鶴見本社関係組合員六百五名が第二組合結成いたしまして、三十一日に会社団交権の確認、団体交渉の開始を申入れました。一日に第一回の団交を開いております。二日に更に団交が行われ、四日に、会社側としまして、一時金、それは基準賃金の〇・九カ月分プラスアルフア、大体一万七千百六十二円プラス一人平均二千円、それと、立上り資金を別途に考慮するという回答をいたしました。組合側はこれを不満といたしまして再考を要求いたしました。なお、この四日の日に吉原支部で二百七名の第二組合結成が行われております。翌五日に、例の会社から提案の、時間中の組合活動に関する覚書について妥結、仮調印が行われました。六日に、組合臨時総会を開き、この覚書を満場一致で承認いたしております。なお、東京製鋼所支部におきまして第二組合結成が六日に行われました。七日に、会社は、一時金一カ月分プラスアルフア、これは二千円、計二万一千円、手取りでございます。立上り資金として別途交渉する。組合側は、一時金について会社案を承認して仮調印をいたしました。なお、七日現在の第二組合員の数は、組合発表を見ますと、千四百三十一名ということになつております。八日の日に、吉原工場で第二組合員工場に入つて就業をいたしました。若干第一組合と衝突があつたようでありますが、翌日話合いが或る程度ついたようでございます。なお、第二組合会社は昨日正式の調印をいたしまして争議状態がなくなつたのでございます。
  8. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、日産労組組合長益田哲夫君の公述を求めます。
  9. 益田哲夫

    参考人益田哲夫君) 益田です。争議経過については簡単に申上げます。  五月二十五日要求提出以来今まで解決ついていないということでございます。要求内容は、賃上げ、一時金、退職金、その他九項目ございます。この争議は、今もお話があつた通り労使双方で自主的に解決を図るのが我々の最上の希望でございましたが、これから申上げますようにいろいろな事件が起りまして、この労働委員会でも問題になるようなことになつたことは非常に残念でございます。  第一の問題点は、会社団体交渉をやらないということでございます。憲法で認められ、或いは労働組合法で擁護された労働組合団体交渉をやらないということに対しては、我々は非常に遺憾に考えております。七月の十六日第十六回団交がございまして、それ以来現在まで団体交渉が持たれていないのですが、これに対して、労働組合団体交渉をやりましようと申し込んだその数は二十七回でございます。そうしてつい今日に至つて中労委その他を煩わしまして、九月九日と十日、そうして今日これも組合から、とにかくいろいろな問題はあるだろうけれども代表者が集まつて、なぜ団体交渉ができないか、団体交渉が持たれないために世間にどういう迷惑をかけているかということについて意見交換をしようじやないかという申入れをして、それでやつと会社が腰を上げて話合つている状況でございます。それで今労働省のほうから順調な経過を辿つておるというふうなお話があつたのでありますが、私は楽観しておりません。会社は十一項目も問題になる点がございますが、その中で会社の有利な点だけを仮調印して食い逃げをやる虞れが十分あるので、これは組合員と共に私が最も警戒しておる点でございますし、今日の三時からの会社代表との会見でも一番心配している点でございます。団体交渉会社がなぜ拒否するかという要点は、団体交渉内容に属する点を挙げて、それを組合が呑めば団体交渉に応ずる、呑まなければ駄目だという行き方なんで、こんなのは我々はないと思います。それが一つ理由でございます。  それからもう一つは、組合ストライキをやつている、或いはいろんな闘争手段とつている、我々は原則として法律その他によつて制限されない限り、労働組合闘争手段というのは自由でなければならんというふうに解釈しておりますが、これに対して会社が八月五日以降横浜及び吉原工場と申しまして、日産では殆んど大部分を占める工場でございますが、人数で約四千五百、七千名中四千五百、こういうところに工場閉鎖をやつて無期限にやる。当分の間として無期限に、而も賃金は一銭も支給しないで工場閉鎖をやり、それを而も八月五日の午前五時からやる工場閉鎖に対して、午前五時十五分に組合通告する。労働協約は今ございませんが、昭和二十四年の首切りのときに会社が首を切るために一方的に破棄いたしましてございませんが、とにかく労働慣行が残つておりますし、効力もあるはずなんです。それに対して経営協議会さえも持たれておるはずなんでありまして、それに対して無通告で、而も一銭も賃金を支給しないで、そして期限なくして工場閉鎖をやる。こういう会社闘争手段というのが認められるならば、労働者ストライキは規制されるのでなくして禁止されているに等しいと思います。これは全然むちやでございます。会社が仮に社会的に見ましても、非常に潰れそうなら、多量の首切りをしなければならん。人員整理をしなければならん。そのために一時工場を閉めてその整理に当らなければならんという事態が社会的に何か考えられる点があるかも知れませんが、とにかく今物凄く車が売れる。水害地からはどんどん要求が来ておる。そうしてプレミアム付き会社の車が売れておる。そういう状況の中で如何に会社自衛手段だとか何とかうまいことを言うても、こういう意味の工場閉鎖法律で擁護されていると会社は言つておりますが、私どもはそう考えない。その点が一つ問題点です。  その次には、その会社の問題についてもう一つは、八月の二十一日に組合長ほか六名の組合幹部職場組合員懲戒解雇がございましたが、これは我々はどうしても不当解雇だと思う。就業規則に照して懲戒解雇をやるという通告でございますが、これについて理由説明はあるんだすけれども、これについての交渉は行わない。これが会社態度でございます。これについて我々は身分保全仮処分をしましたときに、八月三十一日に第一回の横浜地裁審尋がございましたが、そのときに会社代表及び弁護士の言うのには、理由疏明書類が出せない。八月二十一日に会社通告しておきながら、八月三十一日になつてなぜ首を切つたか、不当解雇をしたかという疏明書類がどうしても出ませんので、審理することを次に延ばしまして、九月の七日になりましてもまだできません。全然不完全なものであります。全然説明がつかない。今度九月十六日に審尋が延ばされておる状況でございまして、裁判所に対してすらできないので、いわんや我々に対しては一言の理由の解明もなく、闘争組合責任者及び執行委員或いは組合員に対して就業規則に照して懲戒解雇するというのは不当なやり方だとまあこう思つております。会社がやつた手段というのは、一面経過の中ではとにかく組合活動の圧迫と申しておりますが、会社組合昭和二十六年七月以降協議してきめようとしておつた労働協約に属する部分を今度の闘争の初つぱなである六月十日以降協議なくして一元的に執行した。それから課長組合員にあることは中労委その他を煩わして資格問題として一応パスしておりますが、その組合員である課長会社が示唆して脱退さしたということ。それから賃金の一方的な差引き工場閉鎖首切り仮処分、告訴、告発、こういうあらゆる手段とつておる。一方において団体歩渉を引延ばしながら、一方においてそういう手段とつておる。これを我々は会社に対して不当である。これは日産だけの問題でなくして一般会社のかたがたがこういう手段をとられることは、我々は労働組合の立場から全体の問題になり得ることと判断いたしております。  次に警察関係でございますが、これは例えば八月に組合長以下を含めて六名が逮捕に会つたときに、我々の計算では二百名前後の警察員を動員してやるという物々しさはどうしても納得できない。例を挙げますと、そういうことでございます。これは明かに不当干渉でございまして、又我々はそういう告訴問題があるというときに事前に情勢が判断できましたので、横浜地検に対して闘争中でありますので、検挙してぶち込むというようなことをしないで、自宅で調べるようにしてもらいたい。そして又連絡をとつてくれればいつでも出頭して調べに応ずるから、できるだけ組合闘争に支障のないように一つお願いしたいということを地検にも連絡しておいたのですが、まあ残念ながら逮捕令状が出たということだつたのです。それにしてもあの物々しさというものはどうしても組合員全体からして納得できないものがあり、又その逮捕が行われた時間が六時四十五分頃でありまして、組合員が殆んど出払つたあとでございます。それから私が逮捕された所なんかは、工場からバスで二停留所ほどの所にある誰もいない所でありまして、そこでなぜあれだけの物々しさで検挙に当らなければならんかという理由は、私どもには全然わからんわけであります。  それから、警察不当干渉だと我々が判断するもう一つの例を挙げますと、現在吉原工場仮処分執行されております。その仮処分の中には、執行の処分には吉原工場会社組合双方の管理から移して執行官のほうで管理する、但し、会社の許可を要す、それから組合員の立入りは禁止する。それだけの文章でございます。ところが、その組合員たる第二組合の人が二百名前後中に立入つて会社業務命令によつて仕事をしているということは、どうしてもその執行関係から我々が納得できないことであります。静岡裁判所戸塚判事にこの問題を抗議するのですが、なかなか急には取上げない。普通の仮処分執行でございますと、これは私が申上げるまでもなく組合員の立入りを禁止する。但し会社が許可した者はこの限に非ず。という但書があるのが普通でございますが、これがない。ないのに組合員の第二組合員と称する人たち業務命令を出して仕事をやらせるということ自体が問題でありますが、これを出るときには我々はいろいろな関係からして余り強力にピケを張らないのですが、入ることについては断固ピケ張つて我々の闘争を破る行動について抗議する。そのときに、吉原市警が十五名も来て、そうしてこつちの門から入らないでこつちの門から入れとか、そうして誘導する。こういうことは誠に組合内部の問題に警察が堂々と立入るということは、これは是非一つ調査願いたい。でこれを突破するのに吉原工場兼松工場長なんかは鉢巻をして、そして職制を動員して先頭に立つて挑発的なことをやる、そうして組合員ピケ張つておりますと、組合員ネクタイを引張つて仮処分に入つておるピケラインの中に引入れて写真を撮つて、仮処分執行違反の証拠にとろうとネクタイを引張る、実にこういうところで発表するにも恥し旧いような行動が行われる、これは是非吉原工場兼松工場長、或いは吉原署長、或いはそのネクタイを引張られた人の証人も一つお調べ願いたいと思います。警察干渉でございます。  それから仮処分ということについては、今静岡吉原工場の場合にあの仮処分がいいかどうか、これは裁判所決定なんで、我々は申上げませんがただそのときに問題になつたのは、この工場閉鎖が、裁判長戸塚判事さんですが、賃金を全額保障されて、そして工場閉鎖がされておると自分は思つた、のだ、仮処分をして、あとで聞いてみると賃金は一銭も払つていないのだ、それは大変だというようなことを組合代表に明白に言つた。だから異議の申請を至急やつたらどうだろうかというようなことを裁判所が言つておるくらいでございます。横浜鶴見工場工場閉鎖仮処分が八月の初めから一カ月延びておるのですが、これは延びるのが当然でございまして、こういう仮処分ということが、会社の宣伝によりますと、工場閉鎖仮処分決定すると、それは工場閉鎖というものの正当性が証明される、従つて賃金の不払いというものが、賃金は一銭も払わんということが正当付けられるのだということを文書或いはスピーカーの放送によつて盛んにしておりますが、我々はこれに絶対に疑問を持ちます。工場閉鎖をやつておる場合に、その組合員に対して生活保障の問題を考えることが仮処分ということによつて決定されるかどうかということは問題外なんで、仮処分立入禁止仮処分でございまして、それが賃金を払わないということに会社に利用されるということは非常に残念なことでございます。  それから横浜工場では今二百五十万円消費したと会社が言つておるバリケードを物凄く築きまして、その中に会社部長、次長、課長その他重役一名くらいが立籠つたり、出たり入つたりして、向うではそれをお城と称しているのですが、その中に使われておるいわゆる人夫といいますか、これは明らかに職安違反の疑いが十分でございます。これに対しても我々は告発しようとしているのですが、これも一つ申上げておきたいと思います。  それから労働委員会との関係経過報告だけになりますが、会社が、さつき労働省のほうから報告つたように、どうも労働委員会行つては、中島公益委員が正式の斡旋委員なつ団交斡旋したときもそうですが、やるようなことを言う。ところが我々に対してはそれがもう全然ひつくり返つておる。あと中労委のほうに聞きますと、実はやろうと思うのだけれども、うちに帰つて協議しての話は、ここでの話と違うようにひつくり返るかも知れんから、その点は了解しておいてくれというような言い方をするので、この会社労働委員会に対する態度も誠に不まじめなものだと我々は考えております。  それから第二組合といつて、ここに第二組合代表も来ておるようですが、これは第二組合ができたできないは我々の組合内部の問題で、いずれ自主的に処理して一つ方向をとりたいと思いますが、ただその第二組合を作るということについて、会社課長、係長を使つて、今の組合から脱退をしないと首になるぞ、会社は今六名の首切りを出しておるけれども、これから何名も首切りを用意している、ためにならんぞということを或る所では夜中じゆう、或る所では午前二時までも車を使つて説得に廻つている。これは明らかに会社不当行為でありまして第二組合を作る原因があるとしましても、組合員組合を脱退して第二組合へ走つたということは、会社課長及び係長、係長は組合員なんですが、そういう職制を使つての脅迫、完全な不当労働行為に類するものがあると我々は判断しておるのです。証人も数十名に亙つて準備しておるというのが実情でございます。  以上簡単に問題になる点を御報告いたします。
  10. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に日産労組第二組合笠原剛三君の陳述を願います。
  11. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 日産労働組合組合長笠原でございます。  我々は全自労の日産分会の一員として五月以降今度の争議に捲き込まれておつたのですが、八月三十日に同志五百六十名と共に蹶起いたしまして、新らしい労働組合結成いたしたわけであります。それで争議経過については若干関係のあるところだけあとで申上げようと思いますが、一応八月三十日以降の経過について申上げます。  この我々が新らしい組合結成した理由でありますが、これは一言にして申しますと、これ以上旧組合執行部の言いなりについて行つたのでは、我々はもう生活の破滅、又企業の破滅ということを来たす、これ以上遷延を許さないということで立上つたわけであります。ここまでに至る段階におきまして、我々としては五月の大会、それから争議が始まつてからの経過において、逐次場所と機会を捉えては執行部を批判しておつたのでありますが、それは全然少数意見として顧みられず、又逆宣伝されるばかりで、結局執行部の独裁的なやり方に屈服されておつたわけであります。それでもうこれ以上続けるならば、我々が生活の基盤とし、又そこに働くことを誇りとしておりました日産という企業そのものも危殆に瀕するということで、遂に八月三十日蹶起した次第であります。結成の趣意書並びに基本綱領については、のちほど参考書類として提出したいと思います。  なお簡単に、どういう点について旧執行部を批判していたかと申しますと、大体において旧執行部のとつておつた闘争方針は、政治的性質を持つておつて、而も闘争が長びくに従つてますます組合員全般の利益を故意に踏みにじつて、徒らに泥沼闘争に持込むという方針であります。  二番目には、その闘争経過においてとつ手段が非常に不合理なものであり、又非合法的なものであつて、そのために官憲の介入を、会社をして官憲の介入を求めさせる口実を与えまして、労働者が自分の手で労働者の首を締めるということを引き起したわけであります。それで結局労働者全般の利益に反するということが明白でありますので、我々はこの点を猛烈に批判したわけであります。  三番目には、旧組合においては非常に組合の民主性というものが失われておりまして、全然言論の自由というものが束縛され、又一部少数者の非常に建設的な意見というものは全然いわゆる反動とか紐付きとかいう名目の下に葬り去られておつたのであります。こういうことは民主的な組合、自由な独立した組合というものはこれ以上存続することは許されないということで、我々としては健全な民主的組合結成するという意思で立上つたわけであります。  以上簡単に組合結成までの経過を申上げましたが、結成後、我々としては直ちに我々の組合会社の間には紛争状態がない。従つて又我々は就労の意思があるということを申込みまして、これは九月一日以降の団交におきまして、会社から確認されました。それで我々の就労の決意というものも認められまして、直ちに我々に対しては就業を許可するという回答があつたわけであります。現実の問題としては、すでに本館関係、本館と申しますと、経理とか購買とかそういう所でありますが、そういうもの、或いは吉原工場、それから東京製鋼所等においてはすでに就業しております。それ以外の場所においては会社側就業の受入態勢が完備しておりません関係上、止むなく臨時休業という形をとつております。それから我々としては旧組合員時代の長期に亙る争議におきまして非常に生活が荒廃しておりますので、新らしい立場から生活の保障という点で一時金を要求したのでありますが、これは一日、二日、三日、四日、それから七日の五回に亙る交渉におきまして、一時金として二十五日掛ける一・五プラス成績加給という、大体総額におきまして先ほど中西さんからお話のあつたように、大体二万一千円の線、これを承認いたしまして、仮調印いたしまして、九月八日に全職場に流しまして九月の八日の夜それを集計いたしまして、一昨九日本調印いたしました。なお、その間におきまして組合活動に関する協定書に関しましては、大体我々の立場というものはノーワーク・ノーペイという、これは現代人として極く常識的なことでありますが、そういうものに関する覚書は、これは我々の組合結成の趣旨からしても当然認めるべきものでありまして、これについては職場討議の結果、臨時総会において全員確認いたしましたので、九月の七日に本調印いたしました。それから現在は、なお、我々としては一時金だけでは生活の穴埋めができませんので、立上り資金要求は続けております。昨日もそれについての第一回の団交を持つております。我々は先ほど益田氏から何か不当労働行為的なものがあるというようなデマが流されたのでありますが、我々は全然純粋な立場から自主的に立上つたものでありまして、そういう事実はありません。それでその証明としては、我々はこの結成の趣意並びに基本綱領というものについて懇々として旧組合員に呼びかけておりますが、その同調者は日を追うて増加しておりまして、九月十日現在、昨日でございますが、組合員は千九百二十三名に増加いたしました。八月三十日に結成以来約十日にして大体四倍の数を獲得しております。今後ますます旧組合執行部が、常識では考えられないような手段とつてやつておりますので、我々の同調者は日に増して増加して、旬日ならずして過半数を制するに至ると考えております。これが以上大体争議経過でございますが、我々としては争議というものは全然関係しておりませんので、まあ組合結成以来の経過ということでお話申上げたわけであります。  それから議題の第二番目の件については我々は全然関知しておりません。  それから三番目のピケラインとか、会社ロツク・アウトについても、これは我々の組合との関係では全然そういうことはありませんので申上げませんが、若干先ほどの益田氏の話に疑義がありますので申上げますと、例えばお城に立て籠つておるというお話がありましたが、これは現実の問題であります。但し、そういう状態に至つたまでの経過におきましては、部課長に身の危険を感ぜしめるというような行動があつたことはこれは事実であります。それから、なお、三項目会社ロツク・アウトについては我々としては全然関係しておりませんが、根本的な立場としては、会社工場閉鎖という手段とつたことについては相当大きな疑義を持つておりまして、これについては立場としては絶対に反対しております。併し新組合としては全然そういう事実はございませんので、この問題についてはただ組合員が考えておるということだけであります。  四番目の不法労働行為の有無でありますが、これも我々新組合会社側との間には全然そういう不法行為は存在いたしません。ただ旧組合員の場合に、先ほど益田組合長のほうからお話があつたと思いますが、六月二十五日、七月二十五日の賃金差引について、いわゆる課長職場において交渉をしたというのでありますが、これは恐らくこの列席の皆さんには常識では全然考えられないような状態が存在しておるのであります。これは我々としては、少くも健全なる常識を持つておる人間としては明らかな不当労働行為と考えておりまして、それが我々が蹶起した一つの大きな要因になつているわけであります。  五番目の官憲の介入、それから六番目の不当労働行為有無、こういうことに関しましては、新組合としては全然関知しておりませんので申上げることはございません。  以上でございます。
  12. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に、官憲の本争議に対する介入の問題が述べられましたので、これにつきましては、その実情を横浜市警本部長小林正基君からお述べを願いたいと思います。
  13. 小林正基

    参考人小林正基君) 今回の日産争議に関しまして、検挙が行われたことに関連いたしまして、これは官憲の不当なる介入であるというようなふうに組合側のほうから申されておりました。先般の衆議院の労働委員会においてもそういう御質問があつたのであります。先ず私どもは今回の労働争議にどういうような態度で臨んだかということを一応申上げてみたいと思います。  これは私から申上げるまでもなく、労働争議労使双方において自主的に且つ平和的にお互いの力をあるだけ出し合つて解決を図るべき性質のものでありまして、不法に、且つ争議中においても検挙しなければならんというような重要さを持つた場合に警察が介入するということでありまして、できるだけ、否、とにかく争議というものを平穏にお互いの交渉において解決を図るように見守ることが必要であるし、又そうなければならんと確信いたしておりましたし、今回の争議におきましても、所轄署におきましもも又組合のほうからもよく様子を聞き、会社側からも様子を聞き、又行過ぎたような状態を聞く場合においてはこれに警告をするというようなふうにいたしまして事態がなく大体推移いたしておつたのであります。ところが私ども誠に不十分にして存知しなかつたのでありますが、六月の二十五日に集団の威力による暴行事件があつたという故を以ちまして、会社側から七月の一日に横浜地検に告訴が出されておるのであります。大体は私どものほうへも同時に告訴があるわけですが、この事件は私どものほうで知りませんで、後日検挙に協力というふうな申出があつてから私ども承知いたしたのであります。従いまして七月一日告訴がありましてから地検においては関係者、いわゆる被害者のほうの大体実情を調査いたしておつたようであります。そこで大体調査が終られまして、事態の推移いうものを御覧になつておつたのだろうと思うのであります。これは直接私やつたのではありませんので、それは大体そう推定いたしておるのでありますが、ところがその後今第二組合のほうからもお話がありましたが、七月二十五日に至つて暴行行為がありまして、この事件関係者は八月二十八日に二名検挙なつております。その他にも検挙にまでは至らないといたしましても、相当な吊し上げが行われておつたようなことをたまたま私ども聞いておるわけでありまして、総括いたしまして、恐らく地検のほうでは争議解決というものも相当長引くし、これは事態として検挙することが至当であると御認定になつたのだと思います。八月七日に私どものほうで検挙するようになりましてこれに協力しろという、いわゆる刑事訴訟法に基いて検事の逮捕執行について協力を市警において行えという話がございまして、私のほうではその逮捕を確実ならしめるために警察官を出動せしめて、これの逮捕をお手伝いをいたしたわけであります。その場合に警察官が二百名も動員して誠に物々しく行過ぎであつて、あたかも動員したのは介入し、干渉しようというような意図の下に行われたように言われるのでありますが、私どもは先ほど来申上げ、たように、実際は争議関係でこういう事態が起きまして、私ども検挙しなければならんとかどうとかということが起ることは誠に迷惑千万なことでありまして、できる限り我々はそういう点については干渉しない、干渉と思われるような事態を起さないというように消極的にさえ考えておるような状態でありますが、検察庁が断固として実施されるという決意を持たれた以上、私どもはその逮捕を完全ならしめるために計画をいたしまして、警察官の出動をいたしましたので、益田委員長はバスから降りる途中を実は逮捕いたしたのでございまして、これは事務所におられるだろうという予定の下に出掛けましたところが、バスから降りるというのを察知いたしまして、途中で逮捕ということになりました。従つてそこに武装警官が行つてつたということを言われましたが、これは事務所に行く途中の警察官がトラツクに乗つておりましたのでありまして、益田さん一人を逮捕するためにその人間を多数持つて行つたというような実態ではなかつたわけでございます。大体先ほどおつしやるように六時三十分か四十分頃でございまして、それから組合事務所とそれから子安の日産寮、鶴見工場のほうの事務所と三方面に分けて、一カ所三十名内外の警察官が私服と制服とに分れて参つたのでありまして合計いたしましても百十名程度の警察官でございます。勿論向うときに、神奈川警察を出た当初はそれだけのものがトラツクに乗つて、私服も又別の四分の三もおつしやる通り乗つておりますから、相当な威容に見えますが、三カ所に分散いたしまして、三十数名内外のものが分散いたしました。それだけの警察官をどうして動員したかと申しますと、結局逃げ隠れもしないし、呼び出してもらえばいいと言われますが、ほかの労働組合逮捕等によりましても、任意で呼び出しましても、全然その他の者も逃走いたしまして、一週間も二週間も苦労したという事例もございますし、逮捕いたします以上は、正確に迅速にこれをいたさなければなりません。従つて私ども逮捕する以上は、漏れなくその時期にこれを逮捕するという考え方をとつたわけであります。当日は単に逮捕だけではなく、押収、捜索の令状ももらつておりましたので、事務所、日産寮並びに鶴見工場等も押収、捜索をいたしました。従つてこれには書類の持出しとか、或いは逃走防止のために周囲を固めるということも必要なわけでございます。そういう点からも相当の警察官を必要とした。外部からの不測の抵抗があつて、市警のほうでも混乱して何もやれなかつたというようなことがあつてはいけませんので、外部の抵抗が若しあつてもこれを排除するという実力を持つことが必要である。又青年行動隊というようなものも編成されておるとかされておら、ないとかで、やはり三、四十名泊つてるというような話もありますので、若しもそれらの抵抗等がありました場合も予想せられますので、私どもはそれに対する計画を立てて参つた。又夜間になりますので、却つて昼間よりも、昼間の人のいないときよりも相当多数の人間を必要とするということは、これは当然なことでございまして又実際に暴力行為を集団的に行なつたという犯罪者に向つて検挙をいたすのでございますから、これは余り甘く見てかかるということは我々としては失態を起して、検察庁の折角の要請に応えることができなくなるというようなことが起つてはならんということで、私どもは慎重に構えたのでございます。  従いまして、私どもは総体を通じて、決して争議干渉した、検挙については警察官を動員いたしましたが、それ以外についてこういうふうに干渉した、ああいうふうに干渉したと著しく挙げられるような点について私どもも連絡をし、情勢を見て慎重に構えておつたつもりでありますが、この点についても或いは致が多かつたのじやないか、結果において何もなかつたのに、たくさんの警察官を持つて行つたじやないかと言われますけれども、私どもは綿密な計画を以ちましてこれを逮捕する、又押収、捜索を遂行するという趣旨でございまして、組合活動に多数の警察官を以て威圧して、今後又やるぞというような意識的な何か行動でもしたように思われることは非常に私どもとして遺憾でありますし、心外に堪えないところであります。従いまして第二回目の佐々木並びに川口両名を検挙する場合等は、十分前の状態等も勘案して、私服隊が十三名参りまして検挙を実施しました。私ども情勢を見つつ間違いのないようにやりたい。こういうような労議争議の場合等でなくても、ほかの事件検挙いたします場合でも、完璧を期するためには十分の余裕を持つというふうに周密に考えて計画をいたしました。ところが実際当りますと、何ら抵抗がなくて使わなくてもよかつたということは、これは間々ございますが、それは使われなくてよかつたのであり、又使つたからそういう事態が起らなかつたという判断もできるわけでございまして、決して私ども干渉するとか、不当な介入をするというような趣旨で警察官というものを使つたものではなく、又今回の検挙の指導権というものが検察当局の御判断に基いて協力したものであるという点を一つ御了解願いたいと思います。
  14. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 参考人の陳述はこれで終ります。  先ほども申上げましたように、政府側からは労働者政府委員並びに説明員及び国警長官の斎藤昇君がお見えになつております。中央労働委員会のほうの情勢は、只今委員のほうの御出席を得られなかつたのでありますが、その状況労働者のほうにおいて十分御承知かと存じますので、その点も御了承の上、御質疑をお願いいたします。
  15. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 第二組合組合長笠原さんにお伺いしたいのですが、お話によりますと、八月三十日に第二組合結成された、その理由というものは三つある。第一は闘争方針が非常に政治的に偏向を来したということに対する批判が先ず組合員の間に起つた、これが一つ理由。第二の理由としては、闘争手段というものが非常に非合法的な、むしろ官憲の干渉を導き入れるような、そういうような状態であつたということが第二の点。第三の点は、組合の自主性というか、民主性、そういものが非常に欠けておる、何か建設的な意見を述べてもすぐにそれが組合の大会等においては圧殺される、こういう三つの理由があつたので第二組合結成した。こういうお話でありますが、私どもは全自動車の組合というのは、特に日産組合については非常に統一された立派な組合だと思つておつたし、従つて又組合自身としては相当民主的に運営されておつたと思いますし、闘争方針等においても、私は政治的な偏向はあつたとは全然知らなかつたのですが、その具体的な、政治的な偏向があつたというのはどういうことを意味するのか、それから又非合法的な闘争手段を用いた、こういうお話でありますが、そういう点は具体的にどういう点なのか、或いは組合の民主性が失われる、その具体的な点をお聞きしたい。というのは、私どもは今申しましたように、組合が一本でないとやはり組合としての十全の活動ができないと思うのです。第二組合ができますと、或いはともするというと、その第二組合が御用組合化するというきらいが今までにある。あなたがたが御用組合だとは申上げませんがね。ともするというと、会社の息のかかつた組合がほかの場合においてはできて来る場合が多いのです。若しそういうようなことになるというと、皆さんがたは同じ労働者でありながら、ほかの組合員を犠牲にして会社側のほうに立つということの疑いも起つて来るのじやないだろうか。そこで私は第二組合結成された理由について具体的にお話を願いたいと思います。
  16. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して……、今第二組合組合長に御質問がございましたので、又市警のほうにも御質問がありますけれども、関連してお尋ねいたしますが、私ども組合内部干渉ということは全然考えておりません。併しやはり今堀さんが述べたように、組合が二つになるということ非常な相手にとつてはいいことであるし、組合とつては不幸なことである、こういうように感じます。この中で特に私たちが関心を持ちますのは、組合に民主性がなかつた闘争についても非合法の手段とつた、こういうことが言われておりますので、日産の決議機関の状態等を併せて御説明願いたい。どこの組合でも決議機関で満場一致というようなことは殆んどあり得ないと思いますし、そういうときに民主主義の原則に則りまして少数意見の尊重と、多数の意見に従うというのがこれは原則でございます。そういう意味におきまして、決議機関がどういうふうに運営されておつたか、そういう点を併せて御説明願いたい。それから非合法問題はどういう点が非合法であつたか、これはあと警察のほうにもお尋ねいたしますので、笠原組合長のほうから御説明願いたい、かように考えます。
  17. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) お答えいたします。こちらのかたからお尋ねがありましたように、組合が一本でなければ十全な活動はできない、非常に力が弱い、これは厳然たる事実であります。それで我々としては極力組合を二つに分ける、つまり旧組合から分れるということにつきましては極力回避して参つたのであります。その経過について例えば申上げますと、七月の十三、十四日両日に亙つて、先ず会社として臨時休業の対抗手段をとつたのでありますが、その場合に私研究所の設計部に所属しているのでありますが、設計部として先ず会社組合両方に対して反省を求める要望書を出したのであります。それで具体的にそれをいろいろ説明して組合並びに会社の反省を求めたのであります。それに続きまして、木館関係その他からも続々とそういう批判の声が、要望書或いは声明書の形で出たのであります。それにもかかわらずそれは全然抹殺されておる。而も八月初旬におきまして非常に妥結の好機があつたのであります。これは争議経過の中で話されませんでしたけれども、結局大きなひつかかりの問題というのは、いわゆる組合活動に関する覚書、つまり不就業、不支給ということなのでありますが、これは現在ちよつと常識のある労働者ならば誰でも当然わかることなんであります。つまり時間中に組合活動をすれば、それは当然会社としては賃金を支給しない。これを支給することは当然不当労働行為でありますから、これはもう極めて常識的なことであります。そういうものをなんだかんだ言いがかりをつけて、非常に組会員大衆をあふりまして、それを以て組合を圧殺するものだというような言い方をしまして、組合員闘争に引きずつておつたのであります。それで八月五日以降工場閉鎖という悲しむべき事態を生みました。我々の生活も一日々々と窮迫する、そういう事態におきまして、今度は先ほどいろいろ批判いたしましたように、職場からそういういろいろな具体的な解決条件を提案いたしまして、極力早期妥結を図つて企業の再建を図る、こういう要望書が続々と出たのであります。研究所におきましても、八月二十二日に鶴見工場、これは全員で六百名近くおりますが、そのうちの二百五十三名の連署を以ちまして執行部に対して大体覚書の線、これは当然のことでありますが、それでそもそも闘争の発端以来本当の大衆運動というのは、一時金をもらうというのが主眼だつたわけであります。いわゆる大会できまりまして、要求に掲げました賃上げというのは、総評の唱えておりますいわゆるマーケツト・バスケツト方式の厖大なる賃上げ要求でありまして、それは現在の日本の情勢から考えましても、無謀極まるものであります。そういうものを現実に強行すれば、当然企業としては破滅するほかはないのでありますから、そういうものを第一項に掲げまして、一時金の要求はこれは第二番目の要求として出したわけであります。そういうやり方をして今日まで来たわけでありますが、結局八月の二十二日に我々の組合としましても一時金に要求をしぼれ、ともかく覚書会社の提案には修正すべきところは若干あるかもしれないが、その点については会社としても修正意見を出せと言つているのだから、そういう点で妥結したらいいのじやないか、そういうことで具体的な提案までいたしまして、早期解決を要望したわけであります。それにもかかわらず、それすら一蹴されてしまつた。これ以上時日を遷延することは結局組合員大衆の破滅、同時に日産という心業の破滅を来たしますので、本当に万止むを得ず立上つたわけであります。それでその行動の正しさは、先ほど申します通り立上つた時は八月三十日でありますが、我々は五百六名、全体からいいますと七分の一に過ぎない数だつたのでありますが、十日を出でずしてすでに二千名になんなんとしております。これは、旬日を出でずして組合員大衆が本当に今まで圧殺されていた意見というものを圧殺から抜け出して、続々と我々のほうに同調してくれておると考えております。同時に今まで目隠しされておつた大衆が現実にだんだん旧組合執行部のデマ宣伝、或いは誇張された情報等に対しましても、その嘘を発見いたしまして目覚めつつあるという事実であります。従つて我々の組合としては、一刻も早く全組合員を吸収して新しい旗印の下に、基本綱領の下に全組合員が結集して一本の組合員となる、こういうことが現在我々が最も努力しているところでありまさす。  それから次に、先ほど申上げました三つの批判点についていろいろ具体的な例を聞きたいということでありますが、例えば先ず闘争方針が非常に政治伊的な偏向を持つているということは、いわゆる先ほど申上げました今度の貸上げの問題につきましても、そういう厖大な要求を掲げまして、結局企業という枠は全然無視した要求を出して、結局階級闘争に引ずりこんで行く、こういうことにほかならないと我々としては判断しております。それでその一つの証左としましては、そういうものが認められないで非常に闘争が苦しくなつて来た場合に、これは執行委員会の独断であつさりとこれを保留してしまつた事実がございます。それでそのあとで一応代議員会に諮つて事後承認を求めたのでありますが、一応執行部で独断でこれを保留してしまつた、そういう事実がございます。  それから結局現在までの我々の情勢というのは、丁度新聞等で発表されておりますように、いわゆる総評と日経連を中心とした二つの陣営の対立の焦点である。結局我々としては丁度悲惨な朝鮮民族のような状態に置かれているという事実がございます。それで本当に労働者大衆の生活を擁護し、又企業の健全な発展を願うという常識のある健全な組合でありまするならば、こういう組合員大衆を朝鮮民族のような状態に陥れるということは当然考えられないことでありますが、それをあえてするということは、結局旧組合執行部がそういう政治的な闘争に終始して、我々の本当の生活というものを考えていないということの大きな現れであると考えております。  次に、闘争手段の非合理性とか非合法性について若干具体的な例を申上げます。日産分会というものはここ数年来非常に卑劣と申しますか、まあ要領がいいと申しますか、大きな要求を出して、それが会社拒否されますと、すぐいわゆる放縦なサボ戦術に入るのであります。我々労働者としては当然与えられているストライキ権、これを堂々と行使することは、我々労働者として当然なすべきことでありますが、ストライキをやれば当然賃金が支給されない。それでは困る。それでいわゆるサボ戦術というものを頻繁に使つて来たわけであります。これは組合員としては確かに会社に打撃を与えて、而も自分の生活が苦しくなく、非常にうまいことでありますから、やはり利につられる労働者として、自覚がない労働者としてはそれにだんだん引ずられて今日のような状態に至つたわけであります。それでそういう事実に対しまして、昨年の四月七日のいわゆる組合活動に関する覚書というものが会社から提案されたのでありますが、これは双方とも何だかんだと言い逃れて妥結に至らなかつたわけであります。こういういわゆる時間中に組合大会とか或いは職場討議、研究会、そういうものに名をかりて職場を放棄する、而もそれはストライキでないから賃金を保障しろと、こういうやり方は当然労働者としては非合理的なものと考えます。それからいわゆる職場闘争というものが漸次特に日産分会においては非常に充実したものであると世上では伝えられておりますが、職場闘争というものは、これは非常に名目はいいのでありますが、事実においては職制陣、これは一つの課にせいぜい課長というものは一人でありますが、それに対して多数の威力を以て吊し上げる、いわゆる吊し上げということが行われるわけであります。それで職制の線を麻痺させて、結局組合を一方的な有利なほうに導くという手段がとられておるわけです。これは我々としては、同じ労働者として、健全な労働者としては当然とるべき手段ではないと思います。団体交渉というのは、双方代表者双方意見代表して、正々堂々と要求をぶつつけて闘い合う、これは最も合法的な手段でありますが、その合法的な手段である団体交渉が不利になると見るや、それを職場において多数の圧力を以て職制陣を吊し上げる、下から突き上げて団体交渉を有利に導くというとがとられておつたわけであります。これは我々としてはとらないところであります。  次にいわゆる組合の非民主性ということについて若干具体的な例を申上げますと、例えば先ほど申上げましたような研究所その他から出されました要望書なり或いは批判書なりが、建設的な早期解決を図る意見であるにもかかわらず、いわゆる少数意見として全然取上げない、取上げないだけならいいのですが、先ほどそちらのかたも言われましたように、少数意見の尊重ということがいわゆる民主的な運営の一つの大きな根本要素だと考えます。同時に多数決の原則に従つて行動する、これも一つの民主的な運営にとつて欠くべからざる要素であります。然るにその少数意見の尊重ということが全然行なわれていないわけであります。つまりそういう要望書なり批判書なりが出ても、全然それを組合員大衆に周知させることをやらないわけであります。而も逆にああいうやつらは反動であるとか、紐付き屋であるとか、分裂屋であるとか、そういう逆宣伝をして、一方的に組合員大衆の目をごま化しまして、それで執行部の方針を強行するために有利な情勢に導く、こういう方法をとつておつたわけであり美す。これ、は明らかに民主的なものではないと考えております。  それから無記名投票でありますが、例えば八月の初旬におきまして、そういう妥結の好期があつたにもかかわらず、そういう場合に無記名投票をやれば当然早期解決という方向に向うと我我としては判断しておつたのでありますが、そういう時期には全然そういう無記名投票という手段はとらないのであります。又或る場合には無記名投票をするにしても、職場委員長の目の前で投票させる、或いはナンバー・リングを打つて投票させる、こういう事実があるのであります。又従来において多数決の原則に従つて行動する、これが民主的なやり方なんでありますが、その多数の意見を或る執行部の有利な方向に持つて行くために非常に片寄つた教育宣伝を行なつておるという事実がございます。例えば労働学校において新入社員を教育する場合に、非常に片寄つた、例えばいわゆる左派或いは共産党系の講師だけを呼んで、それに対抗すべき保守系は、これは或いは必要ないかも知れませんが、右派とかそういう方面の講師を招請をしない。大会においで演説させる人間は殆んどいわゆる左がかつた人間ばかり演説させる。そういうことによつて多年に亙りまして組合員大衆の目隠しをしまして、一方的、馬車馬的に教育して来たわけであります。そういうものの上に立つていわゆる多数決の原則を強行するということは、それは少数意見場の尊重を全然しないということと相待ちまして、我々としては非民主的であると考えざるを得ないのであります。  それから、ちよつと戻りますが、例えば政治的偏向の一つの例として申上げますが、実は今年の三月にいわゆる衆議院議員の選挙があつたわけでありますが、その場合に労働者として選挙資金をカンパしようじやないかという議が執行部から出されたわけであります。その場合に組合契約に明白に政党支持の自由ということは謳つてあつたにもかかわらず、その選挙資金の行く先を或る特定の政党に限定しまして、而もいわゆる多数決で以てきめてしまつて、全員から強制的に資金カンパをとる、そういう方針を流したのであります。これは我々としましても絶対に反対いたしまして、遂に我々の正当性の前にはさすがに益田氏も屈服しまして、これを取り下げて、結局現実に表われた結果としては資金カンパは自由である、而もその資金カンパをした人間が無記名投票によつてその支持する政党を出して、その政党に按分比例によつて資金をカンパする、こういうことになりまして、その結果としては、初め指定しておつた政党以外の政党に相当多額の資金カンパがなされたという事実がございます。これも我々が決然立つて猛烈に反省を求めた結果やつと勝ち得た事実でありますが、これが若しも我々が従来の態度を続けておつたならば、当然一方的に押切られたようなことになつたと考えます。  それからいわゆる民主的な運営がなされていないということの一つの証左としてこういう事実もございます。今年の八月に闘争が非常に悪化しましたときに、常任委員を追加して選挙するということがあつたわけであります。それで我々のような考え方を持つ武石という人間が立候補したわけでありますが、これが各職場に入つていろいろ政見を発表する、政見というと大きいのですが、要するにその考え方を述べる場合に、それに対して一方的にいろいろな悪質な宣伝を行なつてこれを妨害した事実がございます。例えば武石は会社の紐付であるとか、或いは反動であるとか、そういうことを流したり、或いは婦人部を使つて、婦人部のほうにもあれはそういう人間であるから支持するなというようなことを示唆したり、そういう明らかに不当な干渉を行なつているわけであります。そういうこともいわゆる民主的な組合としては当然なすべきことではないと我々としては考えております。  以上大体御質問の具体的な事実を若干述べた次第であります。
  18. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 笠原さんから大分丁寧に具体的な事実をお述べになつたのでありますが、例えば闘争方針が非常に政治的に偏向化しておる、こういうことの具体的な例を伺つておりますと、結局その企業そのものの存立を無視して、厖大な要求というものを党の執行部がとつておるのである、そうして結局は闘争を階級闘争に巻込んで行こうとするきらいがある、そうなると日本人は軌鮮民族のような立場に追込まれる、そういう傾向が見られるのは政治的な偏向だ、こういう工合に伺つたのですが、そうですね。
  19. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 大体そういうことであります。
  20. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうしますと、どういうことなんでしよう、私できるだけあなたのお話を間違いなく理解しようと思うのですが、厖大な要求を依然としてとつておるということが、一つのいわば政治的偏向への糸口となつて、そうしてそれを更に闘争に織込んで行く、階級闘争に持込む、皆さんがたは労働者であるわけですね、決して資本家じやないのですね、そうすると階級的な意味がそこに含まれて来ることもこれも避けられないだろうと思うのです。あなたは階級闘争というものを全然否定してしまつて、自分たちは労働者ではあるのだが労働者階級ではない、こういうような立場に立つてこの問題を見ておられる。そうすると政治的偏向というものは、結局はそういう面から私は来るのじやないかと思うのです。もう少しその点についてやはり考えられる必要があるのではないかと思います。  それから第二の点ですが、例えばストを行わんでサボをやつている、サボ戦術に大体この闘争というものを持つて行つている。併しサボ戦術というのは、私は一つ労働者としての戦術ではないかと思いますが、そういう点はどうも私には、サボ戦術だから非合理であるという工合には考えられないのです。スト、イキと同じようにサボ戦術も一つの戦術としてやはり労働者として行い得る戦術じやないかと思いますが、それが非合理だということになると、労働組合としての立場からいつてどうかと思うのです。  それから第三の組合の民主性の問題ですが、今政治資金のお話がありました。大変私は政治資金の問題についてあなたがたがやられたことはいいと思います。委員長もあなたがたの意見が正しかつたがためにそれを聞かれたのだろうと思うのです。従つていわゆる急進的な政党だけでなく、広く勤労階級の基盤の上に立つ政党に対して選挙資金のカンパをやられたのだと思いますが、そのようなことをやることがむしろ組合の民主性を維持することになるのじやないか、あなたがたが出られたらどうなるのですか、あなたがたが出られることによつて、前の組合のほうがますます政治的偏向を犯し、並びに非民主的になるという意味なのか、あなたがただけがそういうことをやつておられるので、自分たちだけが民主性を確立しているのだ、こういうことになるのか、その辺の関係も極めて不明確なんです。あなたは先ほど組合は一本であることが一番望ましいというお話なんですが、ともすると第二組合というものが、私が申したようにどうも疑いの目を以て見られるという傾向がある。私はその意味において第二組合結成された事情は或る程度理解することができるとしまして、実はできないのですけれども、併しそれにしても現在の闘争の過程の中において非常にまずいのではないか。  それからこれは私の意見ですが、もう一つお尋ねしたいことは、資本家団体と組合との決戦だとこういう工合に現在の執行部は言つている。で日経連等が相当今度の日産ストライキに対して強力ないわば資本家側の支持をやつているということは、これはもう殆んど常識化していると申上げても差支えない。恐らく今度の闘争の一番のやまは、この日産の自動車がどうなるかということによつてきまつて来るだろうと思う。従つて日経連のこれに対する力瘤の入れ方も又非常に大きいものだと思うのです。そういう点についてあなたがたはどのように考えておられるか、その一点だけもう一度お答えを願いたいと思います。
  21. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 大体只今述べられました御意見は、確かに労農党として当然なお考え方と思いますが……。
  22. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 いや、私は労農党として言つているのじやないです。(笑声)労働委員として質問しておる。決して労農党の党員としてここで話しているのじやないのです。
  23. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 只今の御意見は我々と大分見解の相違がございますので、御意見として承わつておきます。
  24. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それじや横浜市警の小林さんにお伺いいたしたいのですが、あなたのお話を伺つていると、誠に警察官として用意周到な態度で以て臨まれたという工合に一応理解できると思いますが、確かに不測の災難等も顧慮し、事故等も顧慮して、そうして十分用意をされた、そうして例えば抵抗等のあつた場合においてはこれを排除しなければならん、これは尤もだと思います。当時の状況においてあなたがたの御判断で益田委員長その他何者か逮捕されたわけですが、その逮捕に当つて抵抗があるたろうということが予想されたのですか、その点を先ず第一にお伺いいたしたいと思います。  それから押収、捜索ですか、押収、捜索というのは、中へ入つて書類等も持つて行くことですね。
  25. 小林正基

    参考人小林正基君) そうです。
  26. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうすると、益田委員長その他何者か逮捕された人たちに関して何らか書類上の証拠も必要だ、こういう意味で押収、捜索等のこともおやりになつたのか、この点を第二点としてお伺いしたい。その二点を先ずお尋ねいたしたいと思います。
  27. 小林正基

    参考人小林正基君) 大体なかなか団結の固い組合でもございますし、相当吊し上げも合法、非合法すれすれのところをうまくやつたり、そうしてその上に行過ぎがあつて、非常に暴力行為に該当するような事犯もございました。それから先ほどちよつと申上げましたように、青行隊というようなものを編成しておるというようなこともございましたので、大体事務所の中に三、四十名は普通におつたようでございます。従つてこれを検挙する場合に大体抵抗がないというふうには私ども判断できません。先ほど申上げたように暴力行為等による事犯を検挙いたすのでありますから、向うでより強い暴力をやつて来られて、あとでどうも十分検挙できなかつたというようなことがあつては、検察庁が折角御決意になつてこれを執行しようという場合に、市警が計画が不十分であつたから検挙が満足に行かなかつたというようなことを言われても工合が悪いので、私のほうではより以上慎重にかまえてやつた、そういう点でございます。  それから押収、捜索のほうも、これは検察庁のほうで令状をおとりになつて、そうしてやれという御命令でございました。先ほども申上げましたが、今回の検挙は私どものほうは中身にはタツチしておりません。それから御承知の益田氏についても私のほうの警察官が一人として取調をしておるのではありません。告訴に当りまして、その内容を被害者について調査いたしましたのも極秘裡に、私どもが知らないうちに課長連中等が捜査をされて、そうして証拠を集められたと思います。それから益田氏以下六名、後日佐々木、川口という者も検挙いたしましたが、私どもは身柄をとりまして検察庁へお届けするというだけの役目でございまして、果して告訴状にありましたような内容の事犯がどう陳述があつて、どう調べに当つて出て来たかということも一向私どもは聞きもいたしません。ですから私どもはただそれの執行に当つたという点を特に御了解願いたいと思います。
  28. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一点。小林さんが逮捕された場合に抵抗がありましたですか、それをお尋ねしたいのです。
  29. 小林正基

    参考人小林正基君) それは抵抗ございませんでした。
  30. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 青行隊は……。
  31. 小林正基

    参考人小林正基君) 格別ございません。但し事務所ではそんなに入つちや困るとか、どうとかいうことで十五分くらいいざこざはございましたが、結局は入りまして、各部屋等の書類を見せてもらつたという実情でございました。
  32. 阿具根登

    ○阿具根登君 警察官として考えられることはそうかも知れないが、非常な先入観があるように私には聞えるのです。例えば逮捕令状が出ておる人たちが強盗や殺人の犯人と同じような兇暴性を持つているかのごとくに考えられておるという点、なぜかと申しますなら、現役の組合の指導者が逃げたり隠れたりしたことはまだ聞いたことがありませんが、恐らくないと思います。ストライキをやつておつて、その指導しておる幹部が逃げるとか隠れるとかいうことは余り私は聞いたことがないのに対してそういうことをやつておら、れる。  それからもう一つは青行隊ができたから非常な暴力の抵抗があるようなことを言われておるけれども、どこの組合にも殆んど青行隊のできておらない組合はないと思います。この青行隊が何か暴力団であるように、警官に対しての対抗物であるように考えられておる、そういう先入観が警察官にあるというように今の御答弁によつて考えられる。それでその前に組合は民主的な組合である。恐らく逃げたり隠れたり暴力を振つたりはしないのだというような感覚があつたとするなら、そういう多人数の人を物々しく武装さして行く前に打つ手が民主的な警察官としてあつたのじやないかと私は考える。  それからいま一つ、非常に日産組合はうまくなつて、非合法と合法のすれすれの線でやつているということを言われましたが、どういうところが非合法と合法のすれすれの線であつたかということをお尋ねしたい、こういうふうに考えます。
  33. 小林正基

    参考人小林正基君) 第一の点でございますが、勿論青行隊というものはこれはどこにも編成されておるようです。併しながら大体警察が参りました場合に、抵抗があつて検挙できないというようなことを予想されるような編成の仕方はとるべきではないと考えます。実際執行する場合において、不当なことをやるわけでありませんので、完璧を期するという計画をすることが、五名のものが十名であつたからそれが不当だということには私はならない。不当な干渉をしようという意図を以て示威運動的にやつたものであるならば、これは不当干渉である、行き過ぎであるというお話があるかと思いますが、三カ所に分れて、日産の寮にいたしましても、常時夜三、四十名は泊つておるわけであります。部屋も正確にはわかりませんが、八つか七つかございます。従つてそこには若い連中がおります。中を捜索するという場合に五名や六名行きまして、それをそとへ出ないように要所を固めて、そうして中のもの、それから益田氏ほか一名、二名は顔を知つておる警察官もおりますが、あとは大体知らないわけでございますから、全部大体中におる人を押えてあなたは誰ですか、ということをやらなければこれが逮捕できないというような事情にもあるわけでございます。決して私どもは弾圧なんということは、その他の争議の場合等も御覧になつて頂けばわかるのでありますが、却つて一方的には弱いじやないかというくらいに言われて、又一方からはやり過ぎるじやないかと言われて、実際はどの辺に警察がおればいいのかというふうに非常に苦慮しておるような状態でございます。従つて私どもはそういう意思は毛頭ない。ただ併しまあ警察として確つかりやりたい。殊に市警自身のじやなくて、検察庁のほうで任意じやない令状を以てこれを執行しろ、それで逃走されては困るというふうに御心配な点もございましたので、私どもは念入りにやつたということだけで、決して介入とかそういうような意思はございませんので、その点御了承願いたいと思います。  それから、逃げた例とかどうとかでございますが、これは余り大した所じやないのでございますが、私のほうでもございます。現にもう今度のストでございまして、それでやはり一週間も二週間もと時間を要したというのもございますから、必ずしも……、それで大体言えば出て来るじやないかということを申しまして、又民主的であるということを申しましても、民主的なのであるならば、先ほど第二組合長の言われるように、そう吊し上げだ何だかだといつて暴力に亙るようなことも行われないだろうと思うので、やややはり暴力化したのかなあというような考えも我々としては考えざるを得ない点もございますので、そういうような綿密な態度とつたわけでございます。終つてしまつたらあんなに要らなかつたじやないかということは、これは先ほど申上げたように結果論でございまして、若しもそのとき青行隊なんかおつてやつた場合に、三十名持つて行けば完全であつたのに、五名しか行かなかつたためにとうとう警察官がやられてしまつたというときに、実に結果的にけしからんじやないかという問題が、又ここでのちに問題として起つて来るだろう、私どもがそんなに介入の意思のなかつたことを十分御理解頂きたい。  その次に、日産関係でそんなに荒れたことがないと考えればこそ、八月二十八日のときには私服警官だけで行つて二名を逮捕した、こういうような実情でございます。  それからすれすれと申上げたのは、結局吊し上げをやりましても、三時間、四時間やりますが、相当相手かたも疲れる、併しながら暴力にまでは至らないという相当すれすれの線、それを私は申上げたのであります。ところがそれが少し過ぎまして、海岸へ連れて行つて頭を冷やしてやろうとかどうとかというようなことで、六時間も七時間もやつたというようなことが告訴状に出ておるようでありますが、そういうようなことになりますと、すれすれを少し過ぎたので、暴力化したというふうにも検察庁のほうでお取上げになつたのじやないか、そのすれすれというのは言葉が悪かつたかも知れませんが、そういう点を申上げたわけでございます。
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の点なんですが、すれすれと、そういう解釈もできるかと思うのですけれども、例えば警察官が五名行つたならば、青行隊に袋叩きにされて逃げて帰るようなぶざまなことになつたら困る、こういう解釈をされるということは、青行隊というものはすでに暴力化しておる、民主的なものでない、こういうように判断されて三十名の武装警官と、こういうことになると思うのですね、例えば押収の場合に妨害が入らないようにたくさん連れて行つて、中に五名入つて、あとは十五名なら十五名の人が外で番をしてておつたということはわかります。併し五名連れて行つて、暴力的にやられた場合に市警としての面目の丸潰れではないか、こういうような解釈が成立つとするなら、当初からこれは暴力的な意味を考えて行かれた、こういうふうに解釈せざるを得んのですが、その点はそういうふうに最初からこれは力で向うは抵抗して来るからというので、向うに勝つだけの力を持つて行かれたと、こういうふうに解釈していいですか。
  35. 小林正基

    参考人小林正基君) いやそういう意味ではございません。若しか不測のことがあつた場合においても、完全に逮捕を実施できるという周到な計画を持つて行つたことであります。青行隊がおるから青行隊がやつて来る、常時そういうことをやつておつたとかどうとか、そういう意味を私どもは含んでおるのではなく、青行隊等もおる、或いは不当の弾圧であるというようなことで誰かがアジりますれば、或いはその団体として抵抗するとか、阻止するというようなことがあるということは、これは大体ないということは言えないわけでございます。如何に日頃はおとなしい団体といいましても、その事態を或いは誤解するとか、煽動の仕方によつてどうだとかいうこともございますから、私どもはただとにかく念入りに考えてやつたのでございまして、別段暴力で来るだろうから、やりまくつてやれというようなことで、あらかじめ用意しておつたというのではなくして、若しか予想しないような事態が起つても、完全に遂行できる程度のものを持つて行きたいということで派遣したのであります。ですから何も日産の青行隊というのは、そういう暴力排除運動をしておつたとか、訓練をしておつたということもございませんし、ただやはり会社等の対抗上泊つておられるというようなお話もありましたから、若しか捜査に当つて拒否するとかどうとかいうようなことがあつても工合が悪いので、必要な人数だけを持つて行こうということで参つたわけであります。全然そういうことを前提としてそいつをやりまくつてやろうというような意向で参つたわけではございません。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はなぜこんなことを執拗に言うかと申しますと、あなたは横浜の市警ですから、日産のそういう性格は十分御存じだと思うのですよ。これが全然知らない人があの日産組合は非常にまあ暴力化しておるというような考えで来られたならいざ知らず、同じ横浜市内におつて、恐らく小林部長組合の性格なり或いはこれまでになつたストの性格なり、或いはその性状なりを十分に御承知のはずだと私は思うのです。私が地方を見て来て、こういうストライキのある所で、電話で呼び出したり、会社も得々としてそれによつて行つて組合長も或いはたつた一人で来られて、そういう話をされた所も私は知つておる。それはなぜかならば、その組合を十分に知つておる、それが暴力化しておるかしておらないかは百も知つておられるから、そういう措置をとつ組合を荒立てないように、無用な感情を刺激しないようにやられておるものと私は思つておりますが、横浜におられる小林部長が、この担当の部長さんが実際蓋を開けてみたら全然抵抗もなかつたような、これはそういう実情を知つておられなかつたのかどうか、或いは武装警官を持つて行つたからそういう何もなくて取つたのだという御解釈なのか、或いは当初から横浜のこの全自動車の組合は非常に乱暴なものだ、これは五名や十名では青行隊にかき廻わされる、そういう考え方であつたのか、それは恐らく小林さんは地の人であつたらおわかりだろうと思いますから、そういう質問をしておるのでありますが、そういうことは全然御存じないのですか。
  37. 小林正基

    参考人小林正基君) まあ先ほど申上げております通り日産は穏やかに大体やつておるというふうに私どもは考えておつたわけですが、なかなか検挙逮捕状の出た内容によると、やはり集団威力を用いて暴行しておる、その事犯によつて検挙するということになつたわけでございますから、今までの認識だけではこれはちよつと軽くは行かないという点で、そこでまあ自重して考えたわけであります。ですから勿論そういう平穏な事態でございますれば、こういう検挙もございませんでしたでしようし、まあ迂闊にも六月二十五日にそういうことが、検挙されるような事犯があつたということは市警のほうでは知らなかつたわけであります。そこでそういう事犯があり、その後もそれの程度には至らないかどうか知れませんが、事犯があつたというようなことを重ねてたびたび聞きますと、やはり必ずしもいわゆる平穏のうちに過ぎるかどうかということを懸命される点が出たわけでございますから、そこでまあ……。それから任意にやるか、令状で強制捜査をやるかということは、これは検察庁の判断によつてやりましたものですから、市警が責任上やつたらどうかこれはまだその事態で自分が受けてみないとわからないのであります。
  38. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一点小林さんにお尋ねいたしたいのですが、先ほど益田君の陳述の中に、第二組合ができてから第二組合就業し、而もピゲ・ライン張つておる。そこで市警がその第二組合の入門を誘導してやつた、こういうような発言があつたのです。市警が誘導してそうしてその中へ入れるよう中してやつた。ともすると警察というものは資本家側に付いておるのじやな、かという色眼鏡で見られがちなんです。私は別にあなたのほうを資本家のほうの味方をしておるとは思わない、あなたがたはきつと中立な立場においてやつておられるだろうと思いますけれども益田君の発言の中で、市警が第二組合の入門についてこれを誘導した、こういうことがあつたのですが、そういうことがあつたのですか。
  39. 小林正基

    参考人小林正基君) それは吉原というふうに御発言があつたようです。私のほうではございません。静岡のほうでそれがあつたということであります。
  40. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと私から笠原君でも益田君でもどちらでも結構ですが、伺いますが、日産自動車は従業員が要するに月俸者及び日給者ということですか。普通社会通念で行きますと、職員と鉱員という恰好になつておるのですが、そういう工合なつておりますかどうか。
  41. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 日産の従業員は、現在そういう社、鉱員の身分というものはございません。
  42. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 一本でございますか。
  43. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 一本でございます。
  44. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。そうしますと、今の従業員全部で実際に第一線の労務に従事しておる人と、設計或いはその他の事務と申しますか、デスク・ワークに従事しておる人とはどういう人数の割合になつておりますか。
  45. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 大体の見当といたしまして技術員が約五百名でございます。それから事務系統が約千名でございます。それから特殊関係、つまり診療所とか、そういう関係の業務がそれは約二百名前後だと思います。それ以外は大体現業員であります。
  46. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 鉱員ですか。
  47. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 現業員であります。鉱員という身分はございません。
  48. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。そうしますと、今作られておる第二組合のほうの人数割は今おつしやつたうち、どういう割合になりますか。今聞いた技術、事務、或いはその他の二百名の中で何者ぐらい、第一線のほうで何名ぐらい。
  49. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 本日ちよつと正確な資料を持つて参りませんでしたが、大体現業員関係が約千九百名のうちで約五百名くらいだと記憶しております。
  50. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 現業員が五百名、デスクが千四百名、大体そういうふうに了解してよろしうございますね。
  51. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 大体最初に立ち上つた人間がそういう方面が多かつたのでありますから、現在現業員がどんどん入つて来ている現状であります。
  52. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこで、私は先ほどの御両君の陳述について御両君に質問申上げたいと思いますので、それぞれお答えを願いたいと思います。  今、日産争議がすでに四カ月を越しておりまして、非常に社会的にも注目をせられておるわけであります。当労働委員会においても、争議の深刻の度合を憂慮してその実情の調査に乗り出したわけであります。そこで、恐らくこれは組合会社も、又日経連も、その他の諸団体等も挙げて早期に争議解決することを望んでおると思います。その早期に解決するということは、要するに日産の自動車の企業の再開ということで僕はあろうと思います。再開を早くせられたいということであろうと思います。その場合にはいろいろの問題を解決しなければなりませんが、一番大事なことは、企業の再開のためには争議解決をしなければならん、具体的な解決をしなければならんということであります。その場合に、争議解決をする場合に一番問題になりますことは、完全就労を要求するとすると、今起きておる第一組合も第二組合もこれは完全に解決しないと、日産の自動車としては完全な操業再開にはならないと私は思う。その場合に、必然的に企業の完全な再開ということは、両組合が完全に争議解決する、こういうことになろうかと思いますが、そのときに、一番我々が懸念を今しておりますことは、第二組合の先ほどの陳述ですと、間もなく過半数を制する、こういうところまでの発言はありましたけれども日産組合が全部一本になるというところまでの陳述はございませんでした。それから第一組合益田君のほうの御陳述はこの点に触れておられないのでありますが、従つて、私はこの日産自動車組合の今分れておるのがどういう恰好になり、そうしてそれによつて会社と第一組合関係会社と第二組合関係がどうなるのか、その点が非常に私は問題だと思うのです。その点の見通しをどういうふうにつけておられるか、これを一つそれぞれ伺いたいと思います。
  53. 益田哲夫

    参考人益田哲夫君) 私どもは、どうも同じ労働者仲間で、よその悪口をこういう労働委員会で余り言いたくないので、控え目に申上げておりますが、実際問題として、第二組合として組合の脱退届けを出しておりますが、まだそれは正式に機関に諮つて決定しませんので、これは分裂派だと思つております。そうして又生産再開の実力を持つているのは申すまでもなく、千三百三十名大体今脱退届けを受付けておりますが、それ以外は宣伝のための数字だと私は解釈しますが、残りの七千名から千三百三十名を引いた六千名だと思います。こういうこの組合が、今日会社と予備折衝を団体交渉に基いてやつて、会社解決すれば、もうあとは何でもないと思います。第二組合と称する人たちは、何でも会社の言うことを聞くんですから、だからそれは問題ないわけです。問題は、その統一とか或いはどういう関係になるかという問題でなくて、今の組合会社との間で今日以降の予備折衝で、私がさつき申上げた会社が食い逃げみたいなことをしないで、誠意を以て団体交渉をやつて早急に解決方向に向うということであれば、全部がきまると私は判断しております。
  54. 笠原剛三

    参考人笠原剛三君) 我々としては現在極力どんどん我々の意見に同調して入つて来る人間が多いのでありますが、現実の問題として、旧組合のほうは妥結するとしましても、恐らく今まで旧執行部が引きずつて来たようないろいろな大きな要求というものは実現不可能だと判断しております。そういう点で、今まで目隠しされて引きずられて来た大衆が我々の意見に耳をかして、たとえ並列して妥結した状態においても、どんどん新らしい組合に加入して、近い将来に必ず一本になるという確信を持つております。
  55. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その場合に、時間的なズレが今の状態だと起きておるわけですね。第一組合のほうはまだ完全に争議状態にある。第二組合のほうは争議解決というか、平和状態にある。その場合に、企業再開のやはり一番のポイントは第一組合が握つておると私は見ていいと思いますね。従つて第一組合がこの争議会社との間において解決する見通しですね、これが只今今日の話では、中央労働委員会斡旋によつて予備交渉に入るということでありますがね。これが果して順調に進んで解決段階に入るのか、或いは入らないのか、その見通しが非常に私は問題だと思うのですがね。先ほど益田君のお話では、十幾つかの項目があつて、恐らく会社交渉に入つても、会社のほうの望む二、三の問題について妥結点を見出して、あとは食い逃げされるだろう、こういう見通しを立てておられるようです。そういうふうになつたときに、第一組合としてこれに対する態度というものは又問題になる虞があると思う。そういう点で、先の操業再開ということについて合いろいろな御意見を伺うと、私はそう楽観できないというような気持を持つておるわけです。その点の見通しは如何ですか。
  56. 益田哲夫

    参考人益田哲夫君) 一番いい方法は、その十一項目について、私どもは今日行く予備交渉から団体交渉に入れという条件は昨日会社申入れておりますが、そういう団体交渉がやられて、二、三日うちに大体のめどを立てまして、懸案としてどうしてもむつかしく残る問題は生産を再開した上で平常情勢に返して、団体交渉をやるという方法があり得るということを予備交渉の中で会社に伝えております。それを会社が賛成しまして、先ず今日以降の団体交渉でそういう方式を打立てまして、そうして直ちに生産再開に入る、こうすれば組合に脱退届を出されたかたがたにもそれには異論はないと思う。そういう恰好で成立することを望んでおるわけです。だから今日の予備交渉で生産再開ということを組合会社意見が一致して、それは急にできないだろうから、その手配にすぐかかるということに意見が一致することを望んでおります。そうすれば、余り従業員の生活、或いは会社の将来について危機を招かず、或いは外部にも迷惑をかけないで、労使双方の平静な団体交渉によつて解決を図るということができるというように思つております。ただ横浜鶴見については、大体横浜地方裁判所関係で、恐らく今日頃が仮処分執行するか、却下するか、或いは一部仮処分をやるかの決定をする時期だと思つております。我々は会社について余り甘く判断しないで、その仮処分執行までを見たところで、組合の崩れ方を大体睨んで最後の団交をやろうというふうに考えておるだろう。従つて、私は先に申上げたような不安をまだまだ持つている。併し今日三時から会つてみなければわからん、こういう状況でございます。
  57. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今日は会社側中央労働委員会が御出席願えなかつたために、そちらのほうの状況を聴取することができないのが非常に残念だと私は思うのですけれども、大体昨日今日の状況から、我々も成るべく早く争議解決せられて、生産の軌道に乗られるようにまあ希望するのがやはり今日の委員会一つの任務でもあると思います。従つて、そういう意味で更に努力せられんことを希望したいと思います。  もう時間が大分たちましたので、午前中の委員会は一応終りまして、二時から再開いたします。    午後一時十二分休憩    —————・—————    午後二時三十三分開会
  58. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き会議を開きます。  石炭鉱業における労働問題に関して調査をいたします。本問題の調査要点は、政府石炭鉱業に対する総合的な計画性、第二が企業整備、人員の整理の企業別の状況、三が企業別争議状況、四がスト規制法と人員整理関係有無、五が人員整理に対する政府の対策等でございます。  本日は参考人といたしまして、石炭連盟の専務理事早川勝君、石炭協会専務理事天日光一君、三井鉱山の労務部長山本浅吾君、労組側としまして炭労の執行委員長阿部竹松君、三井労組連合会事務局長灰原茂雄君の御出席を得ております。  参考人の御公述を願いまする前に、労働省側から石炭鉱業におきまする労働問題の経過の概要について説明を求め、続いて通商産業省から政府石炭鉱業に対する総合的な考え方について同じく説明を求めましてそれから更に参考人の公述を得て調査をいたしたいとこう考えます。先ず労働省説明を求めます。
  59. 中西実

    説明員中西実君) 皆さんのほうには、お手許に「炭鉱企業整備をめぐる争議の概要」というのがございます。この中の内容をかいつまんで申上げます。  石炭鉱業界におきましては、本年の初めから中小炭鉱におきまして企業整備が行われて来たのでございまして、大手各社におきましては、七月二十一日三菱鉱業が約三千六百名の人員整理を発表いたしましたのを皮切りに各社相次いで人員整理の発表を行いまして、当該労組側と交渉に入つたのであります。即ち三井におきましては八月七日五千七百三十八名、のちに五千二百八十九名に修正になつております。更に北炭におきましては八月二十四日三千四百九十八名、雄別は八月十一日に千二百二十九名、明治は八月五日及び二十一日に千百五十一名、古河は七月三十一日に三百名、麻生は七月三十一日に五百六十名、日鉄は八月一日に七百七十名、太平洋は九月一日二百二十二名、住友は九月一日七百四十五名、日窒鉱業は八月三十一日百八十名、杵島は八月七日に七百二十五名、大日本勿来では八月六日三百五十二名というふうに、相次いで希望退職を募集することを発表いたしました。大体大手各社の整理発表人員は合計いたしまして約一万九千人に達しております。以上の会社側の提案に対しましてて、炭労を中心とするところの労働組合側は労働者の犠牲において資本を擁護するものとして強く反対いたしまして、会社側希望退職募集に対しましてはこれを拒否する態度をとる組合が多く、交渉は種々困難にぶつかつておる状況でございます。以下主なる会社における交渉及び争議状況の概略を申上げて見ます。  先ず三井におきましては、最も激しく労使とも強硬に対立を示しておるのでありますが、八月七日会社は五千七百三十八人の人員整理組合に提示しました。十三日、十四日と団体交渉が行われましたが、決裂をいたしまして、八月十七日に組合は非常事態宣言を発すると共に、いわゆる遵法闘争や坐り込みを実施するに至つたのであります。八月二十五日に至り、会社は鉱員の整理人員を四千五百六十三名に減らしまして、整理日程を変更するという通告をいたしました。一方組合は当日以降解雇業務拒否、或いは時限ストの実施を指令いたしまして、そして予定通りに二十七日二時間スト、三十一日二十四時間ストを実施いたしました。更に九月四日会社側整理予定者に対しまして解雇の通告を発しました。組合は四日の日に二時間の時限ストを行なつております。更に会社側は九月四日より被解雇者の入坑を拒否するに至つたのでありますが、これに対して組合側はその会社拒否を排除して入坑を図り、北海道地区におきましては被解雇者も入坑を強行いたしました。又九月四日九州の三池におきましては、組合側が約二万人動員いたしまして解雇辞令返上デモを行なつております。更に九月九日には炭労の傘下の組合が一齊に二十四時間ストを実施しております。なお三井の職員組合労働組合と共同闘争を行い、人員整理に強く反対をいたしておるのであります。  次に三菱でございますが、九州地区においては七月二十一日会社提案以来団体交渉が行なわれて来ましたが、八月十一日団体交渉の席上、会社側は退職条件を一部引上げた第二次案を示されました。これに対しまして組合側は更に団体交渉を続けておつたのでありますが、八月二十九日にこの組合側に示されました会社側の提案に基く交渉の結果、妥結調印をしたのでございます。それに対して北海道地区におきましては、七月二十四日会社提案以来交渉を続けていたのでありますが、組合が強く反対いたしまして交渉が進展しませんで、九月九日茶志内労組、職組共二十四時間ストを実施いたしたのであります。  次に北炭でございますが、八月二十四日会社提案がなされまして以来、数回団体交渉が行なわれましたが、決裂いたしまして九月二日以降坐り込みを実施し、更に昨十日二十四時間ストを実施いたしまして、現在交渉が頓挫いたしております。  次は明治でありますが、北海道地区は八月五日会社提案がなされまして以来、組合交渉を続けて来たのでありますが、先月末会社組合との交渉決裂状態になりました。併し会社側としましては予定通り希望退職募集を行い、八月三十一日に希望退職者が予定数を突破いたしました。九州地区では八月十二日会社提案されまして以来交渉が行なわれて来たのでありますが、八月二十七日交渉が決裂し、翌二十九日二時間ストを行なつております。併しながら九月七日から九日までの団体交渉の結果、退職条件等につき会社側の提案に一部修正が行なわれ、労使了解点に達しました。明治におきましては一応落着をみたのでございます。  次は古河でありますが、七月三十一日会社提案以来交渉が難航をいたしまして、組合は八月十日七十二時間スト、八月十三日以降更に団体交渉再開され、八月二十九日組合会社側の二百七十三名の指名解雇を認めまして妥結をいたしました。この古河は専ら職員の指名解雇であります。  それから太平洋は九月一日会社提案がなされまして以来、団体交渉を行なつておりますが、進展を見ておりません。  最後に住友でございますが、九月一日に会社団体交渉の席上芳之浦鉱閉山に伴う七百四十三名の人員整理案を発表いたしました。その後はこれについて交渉がまだ行われていないという、ふうに聞いております。  大体以上主な会社整理状況並びに争議状態について申上げた次第であります。
  60. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、通産省の政策を聞きたいと思いますが、その前に要点を申上げておきますと、次の通りであります。  実はこの前スト規制法を審議いたしますときにも、通産省のとつておられた石炭行政に対しては相当強い批判が出ておりまして当時岡野通商産業大臣は病気でありましたために、十分に論議を尽すことができないままになつております。その内容は例えば石炭の生産計画、更に外国炭或いは油等を入れましてのエネルギー源の需給計画、それから価格の調整、石炭鉱業に対して従来又は今日、将来とられるであろうところの政府の各種の助成と申しますか、援助と申しますか、そういつた考え方、企業の合理化に対する考え方、更に貯炭の状況等について中心的に一つ具体性のある説明を伺いたい、こういうことでございます。
  61. 佐久洋

    説明員(佐久洋君) 只今の問題につきまして、概略の御説明を申上げたいと思います。  第一に生産計画でございますが、これはこの前の委員会でも私御説明申上げたことがございますが、今日までの年度別生産計画というのは、経済安定本部で作成いたしました計画に基いて昨年まで、或いは本年までと申していいのかも知れませんが、やつて来たわけであります。それによると、昨年度の生産計画が四千九百万トン、本年度の生産計画が五千百万トンだつたと思います。ところが本年の四月頃から需要が非常に滅退いたしまして逆に石炭の生産が過剰になつておるという関係で、本年度の生産計画については全然見通しが立たないままに今日に至つておるのであります。特に生産計画を立てなかつたと申しますのは、従来は専ら増産に主力を置いて需要を充たすための増産督励という趣旨を強く含めたものが生産計画の性格であつたのでありますが、本年はその必要がございませんので、生産計画というものを特に立ててはおりません。ただ事務を進める過程におきまして例えば電力計画をどうするか、石炭に対する電力の枠をどうきめるか、或いは資金計画を全産業の資金枠の中でどういうふうにみるか、或いは又国鉄の年間輸送計画を立てる場合にどの程度の石炭を見込むかということで、一応の石炭の生産見込みというものは事務的に使つたことがございます。それは最初五千万トンというような数字を使い、後に四千八百万トンというような数字に変更されておりますが、これはおのおののそういう目的対象が確定するに従いまして、生産計画というような、或いは生量見通しというような名前は全然消えて、現在は何もないという状況でございます。従いまして、この需給計画というものについてもはつきりした計画というものはございません。ただ今後の貯炭の処理と申しますか、そういう方面の検討をするために需要が一体どの程度であるかというようなことで、一つの見通しを求めるために各需要の局のほうから数字を総合したものはございます。それによりますと、大体本年度の国内炭需要は四千四百万トンから五百万トンは十分あるのではなかろうか、こういうことになつております。  それから次の価格の調整の問題でございますが、これは特に行政的に調整措置というものは何もやつておりませう。専ら需要供給の関係で石炭の価格がきまるという完全な自由主義の方針そのままでやつておるわけであります。従いまして昨年秋頃から比べますと、石炭の需要が非常に減り、供給が過剰になつたという関係で、本年の四月頃からは販売価格が五、六百円乃至八百円値下りをいたしておる次第でございます。  それから次が石炭鉱業に対する政府の援助でございますが、これは特に予算的措置を講じておると申しますのは、具体的に個々の鉱業者に対して援助するという性質のものではございませんが、日本全体の埋蔵量の調査を五年計画で昭和二十五年から着手いたしております。それを実際にやる場合には、誰かの鉱区になつておるものを基にして調べるのでありますから、その鉱業権者が将来仕事をする場合には有利であるということは言えるかも知れません。併しその埋蔵量調査それ自体の目的は援助的な性質を持つておるものではございません。そのほかに特に援助という性質を持つておりますのは、採炭の新らしい機械、従来日本でなかつた機械を外国から輸入する場合に、特に関税を免除しておるものがございます。それから新らしく仕事を始め、坑口を開いた場合には最初の三年間免税をしておるというこれは法的な措置が講じてあるわけであります。そのほかには一時坑内の機械化と申しますか、能率化のためにカツペを使う場合に、それに対する成功、不成功のリスクを或る程度緩和するという意味で助成金を出したことがございます。それからここで石炭鉱業に対する政府の援助ということをお書きになつた趣旨は、その国の財政投資のことを目的にされておるのじやないかと思いますが、これは一般国民からの貯蓄を基にした市中銀行の金融だけでは資金源が不足でありますので、軍要産業に対して特に国が投資をいたします。これは勿論コマーシヤル・ベースに近い利子をとり、或る一定期間を以て返還させる性質のものでありますが、ただ金融を受けるという点からいいますと、一つの援助ということは言えると思います。これは昨年石炭関係につきましては三十五億という一応の予算額がございまして、実際の貸出しはもう少し三十七億ぐらいになつておると思います。というのは前年度からの繰越しが実際ございますので、少し枠よりは超過しております。本年度は先般きまりました予算におきましては、石炭鉱業に対して一応の枠として四十億の財政投資というものが見込まれております。これはいずれも開銀を道して融資されるものでございます。なお本年度から更に中小企業に対して中小企業金融公庫を通す財政投資制度を新しく作りました。これはまだ石炭について幾らという枠はきまつていないように思うのであります。  次は企業の合理化でございますが、これは主として輸出振興、重要産業の製品の価格引下げということにからむ問題でありますが、国際価格に比較しまして日本の石炭が非常に割高になつておる。国際輸出競争に勝つためにはどうしても根源の石炭の価格から下げなければいかんということが前々から叫ばれておりまして、それに即応した一つの施策として主として大手筋になりますが、竪坑の開鑿によつて企業の能率化を図ろうという考え方を持つて只今進んでおるところでございます。もう少し具体的に申しますと、五年間で今一応計画に上つておりますのは七十九本の竪坑でございますが、これはもつと早くやればやるほどいいかも知れませんが、工事能力の点もございますし、資金の見合いの関係もございますので、できるだけ早くやりたいとは思うけれども、なかなか十分の進捗を見ていないというのが現状でございます。それから只今の竪坑の問題は主として大手でございまして、中小に対しては何もしないでおけば、逆に竪坑政策というようなことが中小の圧迫という結果になりますので、竪坑政策と並行いたしまして、中小炭鉱に対しては機械化を図ろうということで、機械の貸与制度ということを目下考えておるわけでございます。来年度の予算に是非これは入れたいというふうに考えております。昨年度も実はそういう考えを出したのでありますが、予算の関係上どうしても認められないで一年延び延びになつたということでございます。  それから貯炭の状況でございますが、今年の三月頃から貯炭が大分殖え出しまして、三月に二百二十五万トンほどの貯炭がございます。それが四月、五月、六月おのおの大体月に五、六十万トンの割合で貯炭が増加いたしました。これに即応いたしまして、各企業家としては、どうしても生産を或る程度抑制しなければならないという観点から、銘々の自主判断において生産の抑制措置を講ずるようになつたのでありますが、その効果が七月、八月頃に漸く現れたのでありましよう、六月に四百二十五万トンという貯炭があり、七月には大体それが横這いの四百二十七万トン、八月には四十万トンほど減りまして三百八十万トンというふうに貯炭が減つて参つております。ただこれに対して荷渡が相当大巾に増して来ればよろしいのでありますが、今の見通しでは荷渡のほうは若干今後の需要期に入りまして増すことは予想されますが、従来の貯炭が平常貯炭になるというところまで果して増し得るかという点については疑念をしております。以上重要点だけ御説明申上げます。
  62. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) もう少し説明を付加えて頂きたい点がありますが、これはあとにいたしましよう。  それでは大体要点をお示しいたしましたので、この点に従いまして参考人の御陳述をお願いいたします。石炭連盟専務理事早川勝君。
  63. 早川勝

    参考人(早川勝君) 今回の炭鉱の合理化の問題が本日の中心の問題となつております。このことにつきましてお話申上げる前提といたしまして、炭鉱界の実態について極く簡単に申上げたいと思います。  それはすでに只今お役所のほうから述べられました点に尽きておるわけでございまするが、炭鉱業界が直面している事実が実は三つあるわけであります。それは第一には、今のお話のように有効需要が減少してこれがなかなか回復しそうにないということであります。表面的には貯炭の数量に現われております。又そうなつ一つの大きな事情として、重油並びに輸入炭の圧迫が上げられると思いますが、要するに有効需要の減少しておるということは事実でございます。それから第二番目には、国際的に見まして価格が割高であるということ、残念ながらこれ又事実でございます。太平洋を渡つて参ります外国の炭、それの船賃やら保険料込みの日本における港渡しの値段よりも、まだ日本の石炭のほうが高いということでは、誠に残念なことでございますが、それは動かすことのできない事実でございます。それから第三番目には、これは炭鉱の生産性が実は低過ぎると申しますか、十分じやないということでございます。この問題について少しく申上げますと、昭和十年といいますか、昭和九年から十一年の頃を基準にいたしました数字でございまするが、日本の製造工業におきまするその頃の実態をつかみまして、昭和二十七年のそれと比較した数字が統計に出ておるわけでございます。即ち主産数量の指数は、昭和九—十一年を一〇〇としいたますると、一三七になつております。三割七分増しになつております。ところが労働の雇用量、働いておりますところの人間の数、それの指数を見ますると、そのときを基準にいたしまして一二六となつております。この雇用量の指数で以て生産量の指数を割りますと、プロダクテイヴイテイの率が出るわけでございます。即ちこれは一〇九くらいになるかと思います。言い換えますならば、二割六分増しの人間で以て三割七分の生産を上げているという一つの力、その産業の力の現わし方になると思います。それを係数といいますか、指数で申しますと、一〇九であるということに相成ります。これもこの次に炭鉱のことを申上げますが、これ又残念なことでございますが、丁度その時期を一〇〇といたしますると、生産のほうの数量が一一二でございます。一割二分増しでございます。それから炭鉱のほうの雇用量は二〇二でございます。この二〇二、約二倍の人間で以て一割二分増しの生産を担つているというのが実態なんでございます。原因とか事情についてはいろいろございまするが、そういう実態は事実でございます。この雇用量の指数で以て生産量の指数を割りますると、プロダクテイヴイテイのレートは五五となつております。これが日本の石炭事業の力を表現している実態でございます。このことは今申上げました有効需要の減りましたこと、それから国際的に見まして割高である、生産性がそのように数字にも現われている、又外国の能率と比べましても、アメリカの十五分の一である、英独のほぼ三分の一であるという状態も、これも恥かしいことでございまするが、事実でございます。それの三つの事実に加えまして起る状態といたしまして、先ほどもお話がありました、今春来から急激にそういう有効要要が減り、貯炭が殖え、従つて炭価が急落しているということで、会社によりましては実に大きな打撃、圧迫を受けまして出炭をしても出炭をするその炭が売行きが悪いので貯炭をする、するとそのために新らしい貯炭場を作る費用、貯炭を管理する費用等が又圧迫を加えて参る、そういう状態なつておりまするし、又売れない炭を掘つても無意味であるのみならず、損失を重ねるという会社も出て参つておるというのが、現実の新らしい動いておる事実でございます。  そこでこういうふうな事態はかなり前からも検討の対象になつておつたわけでございまするが、それでは各企業はどういうことをしたかということでございます。先ず対内的には機械設備その他を充実するということによりまして、能率、従つて生産性を上げるという努力をやつております。なお最近に至りましてコストそのものを十分に締める関係上、従前からもそうでございましたが、経費の縮減ということに特に力を入れておりまするのみならず、去る三月危機におきまするところの大手会社の配当もいずれも軒並みに減配いたしました。大手の中でも無配の会社も出ております。又役員賞与や従業員のボーナスにいたしましても、不本意な点もございましたけれども、従業員の賞与についても大体二割九分か三割引くらい、重役の賞与も大体三割見当、厳しい所は五五%以上を前期に対して縮減して行くということもいたして内部的にはできるだけの努力をいたしましたのみならず、対外的には先ほど来ございます政府その他の機関にお願いをしまして金融方面の措置、或いは利子に関する措置、そういう財政金融の問題、或いは税法における不合理を改正する問題、それから需給即ち重油とか外炭のこれ以上の圧迫を抑制してもらいたいというような面、或いは長期開発計画に伴うところの政府の企画そのものにも我々が喜んで応じて行く、こういう態度とつて来ておるわけでございますが、先ほど申上げましたように実は非常にむずかしい状態が起りましたのは、数量を殖やし、即ち増産をしてそのためにコストを下げて行くというのは、これは正攻法でございます。併し今は減産をしてコストを下げるという大きなジレンマに立たされているわけでございます。この問題に行詰りましたために、今度の合理化の問題が現われて来ておると申すことができると思います。いわば炭鉱事業は慢性病にかかつておりまして、コストが高かつたり、或いは生産性が低かつたりという慢性病にかかつております。それを治すべくいろいろの努力を続けておりますが、現在、いやこの春以来急に急性病が襲いかかつて来た、この急性病に対する手当をいたしませんと、共倒れになるという危険性がありますので、この際行われた問題と考えます。でそれが前提となつておる次第でございまするが、それではこの合理化をどうしてもなさなければならなくなつたという事情につきまして申上げます。  一体炭鉱企業は景気の変動に対応しにくい産業だということをよく言われて来たわけでございます。事実さようでございます。即ちさあ増産をするんだというときに相成りましても、なかなか思うような増産ができません。それは大体において人間を主力としてやつておる今までの状態におきましては、人力による関係上人を殖やす、この人を訓練して、且つそれを組織して現場で勤労意欲を上げて行くというためにはなかなか時間がかかる、なかなか増産の必要のときに増産がしにくかつた。さて、又不景気が来て減産という場合におきましては、普通の一般機械産業からいたしますれば、いわば機械を封印いたしまして、関連する仕事について若干の措置をいたしますれば、案外に縮減、収縮がしやすいかと思いますがう炭鉱では人間に封印するわけには参りません。やはりこれを雇用しておる以上給与をして行かなければなりません。従つてそこに炭鉱業の伸縮性のないというつらい点があるのでございます。ところが丁度四年ばかり前、昭和二十四年の秋に石炭に対する統制が撤廃になりました際、我々は当時政府からは何の措置も受けませんでした。たくさんの貯炭を抱えたまま、配炭公団が廃止になつただけで我々は突つ放されたのでございます。併しその後炭鉱企業は自分の力を建て直すために努力をいたしまして、その努力は何だつたかと申しますと、お話のございました機械化であります。カツペを中心とする機械化でございます。丁度一年たちました昭和二十五年の九月から今年の三月までの二カ年半に、カツペの本数が約六百倍に相成りまして、そのカツペによつて作業をいたしますところの切羽の延長が百六十四倍と相成りまして、これは全切羽の約三分の一に当るわけでございます。その他採炭機械、運搬機械、積込施設等につきましても機械化の努力を重ねまして、まだ完全とは申せませんけれども、相当機械によつて生産を担い得る、プロダクテイビテイを上げて行く方向に進んで入つておるのであります。  まあそういうふうに現在の炭鉱企業は、昭和二十四年からこちらには内容的に変化をいたしておりまして、いわば近代化と申しまするか、モダニゼイシヨンの中身を苦しまぎれながら積上げつつあるのであります。そこへ持つて来て今回の問題が起つて来たわけでございますが、これは生産力といたしまして、炭鉱企業の側から申しますれば、機械設備と兼ねて従前と殆んど同じ、最近三年間、四年間の間殆んど同じ人間を抱えておるということでございます。ここに企業の側からいたしますれば、折角それだけの近代化をするための設備をしたのでございますから、人間のほうの力、人力を機械力に置きかえるという必然的な過程に立つておるわけであります。そこへ今度の大きな問題としての動いた事実が現われましたので、我々としては現在における急性の病気も治さなくては慢性病に対する対策も崩れてしまうということで行われたるところの人員整理の問題でございます。これによりまして、私は炭鉱企業の内容がますます近代化して進みますところの踏切台に立つたというふうに考えております。  なお今回各会社が総じてやつておりまするところの人間に関るす合理化の方式といたしましては、希望退職という方法を用いております。希望退職、即ち退職を希望する者を募集するという方式を用いております。即ち先ずこれは労働組合側と協議交渉をいたしまするが、できれば組合の了解も得て、そうして自分でやめようという考えのある従業員、それを募りまして、それが所定の数量に達するようにして、そうしてその雇用関係を解消する、こういうやり方をとつておるわけでありまして、飽くまで従業員の考え、退職せんとする本人自身の意思を尊重してやつておるわけでございます。これが往年行われましたいわゆる首切りなんかと非常に違う持色でなかろうかと思います。  なお、ついでながら先ほどの労働者側の御報告にもございましたが、大月初め頃に北海道方面で住友石炭鉱業がやはり或る山を閉鎖いたしまして、おりますところの人間四百六十名ばかりを整理する場合に、北海道に所在する各炭鉱から希望退職者を募つたわけでございますが、その際約千三百名の応募者がございました。又宇部興産会社におきましてはやはりこの六月でございましたか、会社の企業整備について種々内部において人員の配置転換の方法についてやはり話がついておるわけでございます。そこでこの自分の自由意思によつて事業から離れて行くという人は、これは私どもは自然のことであつて、それについて反対されるということについては大いに解しかねる点でございます。それで今回、先ほど来もお話がございましたが、各会社、各企業ごとに組合側と話をしておりますが、そうしてすでに話のついております、即ち協約のできておるところが現にあるのであります。それは例えて申しますれば、三菱における場合、住友石炭における北海道の場合、それから杵島炭鉱における場合、これも今月協定ができました。宇部興産会社における場合、それからこれは日鉱系に属しまするが、日鉄の北松における場合、麻生鉱業における場合というふうに、労組がこの希望退職につきましては完全に了解いたしまして、ちやんと調印をした上で募集しておる。こういうことでその募集に応ずる人間も遥かに予定数よりもたくさん出ておるという実例も挙げることができるわけであります。例えば今朝のラジオでも組合側の発表と申しておりましたが、三菱が九州において希望退職者を約三千五百人ばかり募集いたしましたところ、昨日が十日間たちました締切日であつて、およそ四千名の応募者が出ておる。それで会社側はそれは出過ぎると言つておるのに対して組合側希望者は全部退職を認めろということで昨日から交渉が始まつておるということであります。これは今朝の日本経済新聞にも出ておりました。そういう状態もあるようでございます。又第二の種類といたしましては、反対である、組合としては反対であるという立場をとつておりまするけれども、併し現実に募集するということは会社のほうがやります。それに対して応じた人間がやはり所定の、予定の数より多く出ておるという所もあります。又全くこれは反対である、実力を以て撤回させ、一人も応募者、希望退職者を認めない、若し希望退職が出たならば、その希望退職者は組合から除名する、そうして退職する者に対しては普通の退職手当の給与額は止むを得んかも知れんが、それ以上に優遇することは相成らん、若し優遇すれば会社不当労働行為であるという態度とつておる組合もございまして、私ども組合がこう三通りなつておるものでございますから、即ち協約をして話をつけて行くという組合、それから反対だ反対だという組合もございますが、実際にはそう騒ぎはございませんものと、大変騒ぎが起つたという組合と三通りありまして、実はこの問題は円満に片付けるほうがよろしうございますし、片付けたいと思うのでございますけれども、戸惑いしておるのが現状であります。  なお、ついでながら申添えますが、それでは希望退職者としてやめて行きます者は一体どういうふうな今後の生活状態になるかということでございます。これは六月北海道で住友側が募集いたしました一千三百名につきまして、本人々々の申告によりまして、調査したものが八月の十五日に出来上りました。それによつて見ますると、一千三百名のうち七割七分に当りますところの約一千名弱は就職の見込みありということになつております。本人の申告であります。その他の二二%弱が就職の見込みなしでございます。併し就職の見込みなしという三百人ほどの中で、百人のかたは全く就職の見込みなし、そのほかの二百人のかたは或いは家事の手伝い、或いは結婚する等々となつております。でこの希望退職をされる人は一応胸算用をして自分の行く先なり就職先を考えてやられるということでございますので、一応は急激な失業問題、社会問題というものは起らないのではないかと存じておるのでありますが、一社だけの例で全般を推すことは危険でございますから、現在各社ともそういう調査をいたしておりますので、これは追つてお届け申上げます。出来上れば見て頂きたいと思います。併しながら我々といたしまして考えますのは、戦争中もそうでございました、戦争後も増産一途のために労働者諸君と同じ釜の飯を食つて来ております企業家の立場といたしましては、この増産時代が一応終つたからといつて、やめて行く人の行く先は余り知らん顔をするわけに行かんじやないか、若し本当に困るような人があつたならば、そういう人については何か本当に仕事のことの世話をして上げたいと考えており、又各社によつて努力しておるところもございますし、私もいささか考えましていろいろと努力しておるつもりでございます。そういうことが私から申上げるあらかたのことでございます。これで終ります。
  64. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、石炭協会専務理事の天日光一君に公述願います。
  65. 天日光一

    参考人(天日光一君) 私天日でございます。  私は実はこの前も本委員会の呼出しにあずかりまして、約一月前の石炭鉱業の現状というような形で、数字等につきましてはお聞きとりを願つたのでありますけれども、その後日をけみすること傍か一カ月でありまして、数字等につきましては多くの変化を見ておりませんのでございますが、なお私から申上げるべきことと考えます事項につきましては、先ほど来石炭局長なり又早川参考人からそれぞれお話がございましたので、重複することは如何がかと思いますので、御両所のお話に関連しまして、私の考えておりまする考えによりまして、いま少しく私の口から或いは言葉で出したら如何がかと思う点だけを申上げて、あとお尋ねに譲りたいと思うのであります。  先刻来お話が出ました通り石炭鉱業としましては、終戦直後と申します、か、終戦後国全体、又国民全体の要請によりまして、いわゆる緊急増産、とにかくも石炭の生産を緊急に上げるという要請に対しまして御承知のごとく非常に機械力等によつているいとまがなかつたものでありますからして炭鉱の労務者諸君、従業員諸君を非常に増大いたしまして、この緊急増産という要請に応えたのであります。この点は石炭鉱業の企業者と又全従業員が国民の要望に応えたということは申し得ると思うのであります。併しながらすでにその緊急増産を主眼とする時期が、段階が過ぎたのでありまして。その後暫らくたちましてから、御承知のごとく石炭の増産は図りつつも一方において機械化、合理化、又生産性の向上、又コストの切下げということを主たる眼目、目標にやるべき段階であるということを、国民、全産業からの要請を受けたわけでありましてすでにかような段階に入りました以上は、この合理化なり、機械化なり、又生産性の向上なりということに対する施策、これが進展いたしましたならば、一時非常に多くなりまして、緊急増産という要請を満した炭鉱職員、又鉱員のこの数に調整を要する時期が到来すべきことは当然の事物の推移の帰趨であると考えるのであります。若しも従来考えられておりましたように、国内石炭に対する需要が或いは四千九百万トン、これは二十七年度でありますが、四千九百万トンと言い、又その次は五千二百万トンと言い、又その次は五千三百五十万トンというふうに、かように毎年々々国内炭に対する需要が階段的に殖えて参りまして、過日発表されましたように、三十三年度において国内炭需要が五千六百万トンという段階に達するという当初の想定に基いて、石炭界はこの想定によつて生産力の増強に努めて参つたのでありまして、御承知のごとく昨年は不幸にして空前と言われる大きなストライキに逢着いたしましたが、若し昨二十七年度においてあの大きなストによる減産がなかつたといたしましたならば、優に二十七年度の生産目標である四千九百万トンは突破いたしまして、五千万トンになんなんとする生産量が上げ得られたのであります。と言いますることは、生産力が非常に培養されまして、四千九百万トンの次の段階であります五千二百万トンも必ずしも難事ではないという程度に力が付いて参つておるのであります。然るに今申上げた逐年国内炭に対する需要が増大するという想定の下に進展して参つたのでありますにかかわらず、不幸にして本年に入りましてからは、この想定が非常なる変化を見たのであります。二十八年度は先刻お話もありましたごとく、或いは五千二百万トンと言い、五千百七十万トン、八十万トンというふうに生産目標が指向されておつたのでありますが、いずくんぞ知らん、本年に入りましてから、二十八年度の国内炭の需要は四千五百万トン程度ではないかというふうに各方面からも見られ、業界もさような見解を遺憾ながら取らざるを得なくなつております。と申しますることは、段階的にだんだん需要が増大するという想定に立つておりましたのが、大きな断層に逢着して、大きな断層の底に陥落したような状況が本年の予想せなかつた特異な現象であると、かように思うのであります。この国内炭に対する需要がかようのごとく大きな変改を、異変を見るに至りましたことは、もとより、大きな国際情勢なり、又予定されておりました国内産業の進展の度合に対する変化なりもありまするが、又現実の問題としましては、先刻お話が出ましたごとく、昨年のスト以後特にその勢いを増したと、顕著になつたと申しましようか、重油の転換なり、即ち石炭を従来使つておりましたのが重油の使用に転換したり、或いは又外国炭の輸入が特に増大いたしたということが加わりまして、本年春以来国内炭の需要が著しく大幅に減少いたしまして、従いまして先刻お話が出ましたごとく、石炭業者が保有いたしておりまするいわゆる業者手持貯炭としては、空前の記録をとどめる大量に達しております。又一般工場、大口工場といい、又中小工場といい、工場方面の手持貯炭というものを寄せますると、恐らくは八百万トンを越えて九百万トンになんなんとするでありましよう。かような状況に立ち至つたのでありまするが、如何せん重油なり或いは輸入炭なりに、言葉は不適当でございまするが、取つて代られた国内炭の分野というものを、言葉を拝借いたしますれば、いわゆる失地回復ということを石炭界として申すのでありまするが、失地回復ということはにわかに期待しがたい情勢なのであります。又当面重油なり輸入炭に蚕食されました国内炭の需要分野がにわかに回復いたしがたいのみならず、更に大きな点は、先刻来申上げました通り、三十一年、三十二年、三十三年あたりに跨がりまして、千六百万トンにも想定されておつたこの国内炭の需要というもののさような大幅での年々の増大は、到底期待し得ないという見通しに立たざるを得ない現実の情勢であるということが大きな問題であろうかと思うのであります。  私思いまするのに、又別途の面からちよつと申し添えまするならば、石炭鉱業の炭価の生産原価の引下げということ、又事変中、戦時中を通じまして、又その後にも亙りましたが、いわゆる炭鉱の若返りと申しましようか、年々地下において深くなり広くなつて参つて、生産条件が悪化する、劣悪化するということを防止するためのいわゆる若返り工事と申しましようか、かような点が閑却されておつたのでありまするので、昨年あたりから特に根本の大きな対策として、竪坑開鑿ということが朝野各方面の要請であり、期待となり、又政府におかれてもこれを大きく取上げておられるわけでありますが、併しながら翻つて考えまするというと、率直に申上げますならば、この合理化の最も大きな枢軸でありまする竪坑開鑿ということが進展いたしましたならば、曾つて関係政府筋で想定されました表にも明記されておりまする通り、三十三年度に七十九本の竪坑が完成いたしましたならば、労務者の数は如何になるのでありましようかという点であります。これは官庁方面の想定でありまするが、二十七年度において約三十六万と一応掲記されておりまするが、三十六万人の労務者が、三十三年七十九本の竪坑が竣工いたしましたる場合には二十九万一千と記憶いたします、かようの数字が明記されておるのであります。従いまして、この間に極めて明白でありまするが、数万人の人員の変動を来たすわけであります。これは能率の増進、即ち生産性の向上から来る当然の推移、帰結であるというふうに考えるのであります。併しながら、若しも、当初に想定されておりました通り、年々の国内炭の需要量が増大して参るといたしましたならば、一方における能率の増進による増産等も又これに相伴いまして参り得ますので、この人員の過剰と言いますか、余剰人員となるべき数も、或いは御承知のように自然減耗不補充というような方法等によりまして、余り急激ならざる方法によつて対処し得たのではあるまいかと考えるのであります。然るに先刻も申上げた通り、突如として大きな断層にぶつかり、需要が見直さなくちやならんという段階に突入いたしたことは甚だ遺憾であるわけであります。この点私といたしましては特に強く感ずるのであります。  なお、先刻石炭局長から、石炭の現状につきましていろいろお話もあつたのでありますが、石炭経営といたしましては、これも世上の批評、論議等も往々にして聞くようでありまするけれども、いわゆる十年に一度と申しますか、多少利潤がよいと伝えられた時期がございますことは事実でございます。或いは開発銀行、興業銀行等の調査におきましても、トン当り四百五十円前後の利益があると発表されておることがあります。石炭局あたりの想定によりましても、四百五六十円の利益を想定して、先刻申上げた竪坑開鑿計画を推進するというまあ前提、想定に立つておつたのであります。併しながら、このトン当り四百何がしと申しましても、これは御承知の通りこの半分は税金で控除されることは深く申上げるまでもないと思いますが、なお、今年に入りましてから、一般石炭の需給関係等から参りましてすでに先刻石炭局長お話もありましたごとく、五六百円乃至八百円と申されましたが、山によりましては、それ以上の炭価の低落を来しておりまするからして、今やすでに曾つて計上されましたところの四百円台ぐらいの利潤というものはすでに消滅し去つたことは極めて明白であります。又一方におきまして、石炭鉱業といたしましては、御承知のごとく大きな負債を未だに背負つております。私のほうで調べて見まするというと、全炭鉱は調べかねますけれども、私のほうの関係いたしておりまする十九社ほどのいわゆる大手筋の炭鉱におきまして、極く最近の調べによりまするというと、いわゆる昔の復興金庫を引継ぎました開発銀行からの借入金、又一般市中からの借入金等を合計いたしますと、大手会社だけで五百十数億になつております。最近貯炭等が殖えましたから、恐らくはこの今申上げました五百十数億というのは更に数十億を附加増大いたしておると思うのであります。  かような経理状態でありますし、一方関係方面で石炭の合理化推進等のために資金の供与いろいろお考えは下さつておりまするけれども、現実の姿をちよつと申添えまするというと、昨二十七年、又本二十八年について申上げますると、開発銀行から借用いたしまする金よりも、曾つて借りました、即ち終戦後借りました金を返済いたす年額のほうが遥かに多いのであります。その間借りまする金と返す金との差はおおむね二十億から二十五億円くらいの開きであります。即ち最近のはやりの言葉で申しますると、いわゆる引揚超過ということであります。いま申上げましたごとく、合理化の推進には相当の資金が要ることは申すまでもないのでありましてその資金の供与についていろいろ関係方面でも御配慮を願つておるのでありまするが、現実の姿は今申上げました通り、借りる金よりも返す金のほうが多くなつておる。これで以て合理化を推進して行くと、而も冒頭に申上げましたように減産と言いましようか、従来考えられておつたような生産増大と合理化推進とを併せて進める、並進することではなくて、生産の方面において多くの調整を要し、制約を要し、抑制を要するという新らしい段階に立ちまして、更に炭価の切下げという要請にも応え、企業自体も立つようにして参りまして、全産業の基盤と言われる石炭鉱業の維持育成を図つて行くということは、非常に大きな困難に当面しているというふうに考えるのであります。  数字等は一切省略いたしましたので、甚だ焦点がぼやけた点もあろうかと思いますけれども、先刻来お話が出ましたのに関連いたしまして、いささか思いまするところを申添えたのであります。
  66. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に、三井鉱山の労務部長の公述を願います。特に三井鉱山関係只今労働問題の中心になつておるやに聞いておりますので、その辺に重点を置いて公述を願います。
  67. 山本浅吾

    参考人(山本浅吾君) 三井鉱山の労務部長の山本でございますが、先ほど来全般的のお話はすでにもう終りましたようでありまして、私からは附加える問題はないのであります。従いまして、今委員長のお示しのように、三井鉱山関係の問題に局限して今から申上げたいと思うのであります。  当社におきましては、終戦直後国の要請に基きまして、量的には是非とも増産をしてその要請にむくいたいという決心を以て大いに努力して来たのでありますが、幸いに労働組合側の協力も得まして、数量的には我が社といたしまして相当の成績を上げ得たと思つております。その後依然としてまあコストが高い、国際価格から考えましても日本の石炭が非常に高い、而もこれは基幹産業であるので、この石炭の価格を下げなければならないという使命もこの基幹産業としての石炭鉱業としては持つている。そういうことを大いに考えまして、コストをできるだけ下げようと、そのためにはどうすればいいかということを日夜検討いたしまして、いわゆる企業の合理化を着々進めて来たのであります。又優秀な機械も入れますし、又新らしい技術も導入する、又優秀な技術屋、事務屋を海外にも派遣いたしまして、学ぶべき点を大いに学び取つて、我が事業に意を用いたのであります。当社におきましては九州に三つの炭鉱があります。北海道に三つの炭鉱がございますが、必要な、そしてでき得る合理化は着々進めまして、すでに九州におきましては、三池におきましても海底に竪坑をすでに開鑿して、今暫らくしたらこれも掘鑿完了という状態に相成つております。それから山野炭鉱におきましても竪坑をすでに完成しておりますが、これを今盛んに使つております。田川炭鉱におきましても、竪坑があと一年くらいで完成するところまで進んでおります。一方北海道におきましても、砂川炭鉱におきましては竪坑がすでに完成しておりまして、活用を見ております。さような状況でありまして、着々と合理化を進めて来たのであります。ところが企業努力によるコストの低減というもののほかに、或いは鉄道運賃が上つてみたり、電力が上つてみたり、坑木が上つてみたり、諸般の物価が上がつてなかなかコストが下がらない。併し炭はだんだん下つておる、これは企業努力の現われだと思つております。又組合の各位も非常に努力をして一応の軌道に乗つたと思つておつたのであります。ところが先ほども話がありましたように、昨年の長期ストのおみやげといたしまして重油転換、或いは外国炭の輸入というものが相当大きな事業の圧迫になりました。これを払い除けて、コストをうんと縮減して経営を完全にやつて行くということは到底困難な状態なつて参つたわけであります。三月から四月にかけまして非常に激変が事業上にあつたのであります。四月には御承知のように国鉄の売買契約というか、炭価の折衝が始まりまして、我々の予想しておりましたようなことでなくして、トン当り四百円という値引きになりました。これは止むを得ずそういうことにきまつたのであります。その後ガス、製鉄につきましても六百円の値引きになりました。一般の値段は大体千円の低下を見ました。而も一方先ほど申上げたように坑木の値上り、その他昨年の賃金の値上げ等によりまして、約三百五十円ぐらいのそのほかのプラスを受けたということでありまして、経営に非常な圧迫を加えたのであります。ところが一番大きな問題は数量の問題であります。これは我々の会社におきましても年間七百二、三十万トン或いは七百五十万トンという計画を持つておりましたけれども、今年の四月以降の需要の激減ということから考えますならば、到底そういう数字は計画されないのでありまして、先を見てできるだけ計画は少く立てようということにいたしまして、他社では相当増産の気構えもおありになつたようでありますけれども、当社におきましては、できるだけこれを抑えて来たのであります。ところが四月以降の需要はさつき申上げたような非常な激減を来しまして、而も貯炭はますます殖えて行く、そういうようなことでありまして、要するに売れる石炭を掘出さなきやあいかん。銘柄につきましてもいろいろな注文がありました。その需要家の注文に応じて、而も数量は売れるだけの数量を出す。これは必要な貯炭も二十万トンぐらいの貯炭は当然要るのでありますが、そういうことに限定されてしまつたのであります。で、漫然と従来のような生産を続けるということはできない。それから又従来のような銘柄のもののみ出してもいけないということで銘柄を制限をしまして、数量も制限せざるを得ない羽目になつてしまつたのであります。そこでそれではどうするかということになるのでありますが、あらゆる節約をし、原単位をできるだけ減して、いわゆる経営の合理化と共にコストの引下げに十分な努力を払うということにしたのでありますが、併しながら根本の数量の問題でありますが、数量をどうきめるかということで、これは専門は販売のほうになるのでありますが、需要を何度も何度も調査をいたしまして、そして最後にこれだけの数量を出そうと、これだけは売れるようだ、又売り方のほうもこれだけは売りますというぎりぎりの線が年間六百五十七万トンという数字を押えたのであります。そういたしますと、予定しておりました、割合に低目の生産計画から見ましても約一割減であります。その一割減を、これをどう生産減をやるかという問題が当面の問題となりまして、これについて非常な検討を加えたのでありますが、一番炭質が悪くて売れなくて引合わないもの、こういうところから切つて行かなければならんということを順位としてきめることになつたわけであります。従いまして山々によりましては非常な大きな削減を受けた所もある、それから又炭種を変えることによつて出炭の量はさして変えないで済む所もある、或いは坑口の統合によりまして、そんなに出炭を下げなくても、いわゆる坑口の統合による合理化した操業方法に変えるということによつてそれだけの数量を出して行くということになつた所もございます。さようにいたしまして、各山々に今の点を十分勘案いたしまして出炭の数量を割当てたわけであります。例えば三池におきましては半期に大体百三十万トン見当、さようにいたしまして、その三つの炭鉱に六百五十七万トンを適当に割当てたのであります。然らばそれだけの石炭を出すのに従来のごときたくさんの人を抱えて行くことができるか、こういうことになるのであります。それでまあ合理化が進展すれば、先ほどの御説明がありましたように人が機械に変る、設備に変るということは当然のことでありまして、今の合理化、特に思う存分需要にミートするだけの出炭をここできめるということになりました場合には、これはやはり人の問題は当然起らざるを得んのであります。我々は先ほど申上げたように長い間苦楽を一緒にして来て頂いた、殊に私は労務部長としまして一緒に仕事をやつて来てもらつたという立場から見て、そう簡単に人の整理ということは考えられないのであります。従いまして、私は団体交渉を幾たびかやりまして、できるだけこういう人々を救済するように努力をして来たのであります。一つの方法といたしましては、四月になるや否や、私は今まで坑内の採炭のかた、或いは掘准のかたがどんどんおやめになりまして、それは先ほど早川専務理事からお話がありましたように、年間に多いところは五%乃至は七%もやめるかたがあります。例えば私のほうで五万人の人がおりますと、五%と言えば二千五百人の人がやめて行くのであります。そのかたがたは非常に優秀な練達なかたでありまして、惜しいかたでありますが、止むを得なくてやめて行くのであります。そういう人々を補充するということが必要になつて来るのでありますが、私はそういう人を補充しておつたのでは、これはあとでえらいことになろうということも考えましたので、採用はすつかりとめて来たのであります。そうして坑内が減つて行く、それを坑外の人で以て配置転換によつてカヴアーして行くということを着々やつて来たのであります。そうして私は理想的なことを申上げるならば、合理化の進度と自然減耗の進度がミートするときに初めてそういつたような人の整理ということが行われず、而も合理化が円滑に行われる、こういうことである、これで行つたら、うまく行くのじやないかということも私は念願しておつたのでありますが、併しながら先ほど申上げましたように、急激な需要の減退、それからこれに対処するための坑の廃止或いは統合というものを思い切りやらなければならんということになつたために、その進度ががたがたに狂つてしまつたのであります。従いまして、それでは人の問題をどうするかということになつたわけでありますが、それは今のようなことで行きまするならば、何人余剰の人員出るかということになるのであります。その余剰の人員は先ほど労政局長さんからお話がありましたように、従業員関係におきましては五千七百三十八名、職員関係におきましては一千一名、これだけが余剰の人である。理想のことを言いますと、両方併せまして一万一百人の人に勇退してもらわなければならんという結論になるのであります。併しながら私どもはその犠牲の余り大なることを考えまして、できるだけ縮減したいと、こう考えました結果、今申上げるような数字にしたのであります。併しこのかたがたを如何にしてそれじや勇退してもらうかということになるのでありますが、それには基準をきめる、どういう基準でやめて頂こう、そうして日程もどういう日程でやめて頂こうというようなことをいろいろ考えたのであります。そこで通常の場合に御自分でおや、めになるというときには、その場合退職手当がきまつております。又会社がやめてもらうという場合もきまつてお託ります。併し今回の場合は突然こういう大きな問題になつて、本当に会社としてもやめて頂かなくてもいいようなかたにもやめてもらわなければならないということになれば、お気の毒であるから、更にプラスアルフアーも考えようと考えたのであります。かようにいたしまして、余剰人員のかたを如何なる基準で、更に又退職手当も如何なる額をプラスすることにより、又日程を如何にして勇退してもらうかということをいろいろ計画を立てたのであります。併しその計画を立てることには、私はこれは会社でやつたのですから、自分のことを言う必要はないのでありますが、会社全体といたしまして非常な検討に検討を加えて、幾たびか所長会議或いは理事会議課長会議、役員会も開きまして、幾たびか変更に変更を重ねたのであります。なかなか最後の結論というものは出ないのであります。結局私は七月一杯にこれができれば非常に結構だと思つております。併しながらだんだん延びまして、もうすでに九月一杯でも、配置転換等を考えるならばなかなか困難な状況になりまして、先申上げましたように、これは一日も早ければ早いだけ私は企業の立直りは早く行く、而も残される人はそれだけ仕合せだ、かように考えまして非常に急いだのでありますが、だんだん遅れまして、そうして結局先ほど労政局長さんから団体交渉お話を細かに御説明ございましたのですが、八月七日に私どもは鉱員の連合会のかたがたにこの会社の事業計画を説明を申上げた。そしてこの事業計画に基くとこれだけの人が余剰の人員であります、この余剰の人員はかくかくにして勇退をしてもらおうと思つているという御説明を相当細かく申しました。それから更に翌日も関係の各部長、例えば炭鉱部長とか経理部長とか業務部長とかからも、その担当の専門的なことについていろいろ御説明申上げました。資料もお配り申上げたのであります。又私からもいろいろ御相談を申上げたのであります。ところが組合側の立場もおありになつて、どうもこのままで、我々団体交渉をやるというわけにも行かんから、団体交渉申入れをしてくれというよないろいろお話もございました。それで結局、如何にして団体交渉を持つかということに十日、十一日、十二日と三日間を費やしたのであります。やつと団体交渉ができるという恰好になりまして、十三、十四と団体交渉をやつたのでありますが、不幸にして中身に入ることなくして決裂ということになつたのであります。  その後このままではいけないので、折角会社としても十分お話し申上げて、そうして納得して頂いて協力して頂きたいと、かように考えたので、いろいろ口述或いは文書を以て交渉再開のことをお願い申上げたのでありますが、遂にそれもできなかつた。従いましてそれではどうするかという問題になります。組合のほうに册子を差上げまして、日程等もちやんと入れて差上げたのでありますが、その日程は、八月二十日から三日間は純然たる募集対策を行う、それからあと二十二日から二十八日までを第二次募集、それから二十三日から二十八日まで、これだけを勧告を申上げる、その勧告の終るときを以て解雇の通告を申上げる、こういうことを日程として申上げておつたのでありますが、併し更に最後の望みを嘱しまして十九日の日に日程を変更いたしまして、いつでもお会いいたしますから、どうか交渉再開を我々期待いたしますからという文書を差上げたのであります。待つこと五日にして、その御返答としては会わないぞという、こういう御返答であります。これにはいろいろ問題もあろうかと思うのでありますが、そこで会社といたしましても、それではもう一度申上げるというので、二十四日の日に、二十五日の正午までに確たる御返事を願いたい、それによつて会社としても決意をしなければなりませんと、こういうことを申上げたのであります。それにも応じて頂けなかつたのでありまして、二十五日の日に、それでは我々としては次の日程によりまして整理と言いますか、希望退職を募り、或いは勧告をいたし、それから整理のための解雇の通告をいたしますということを申上げたわけであります。それで二十七日から八、九と三日間に純然たる退職募集を行い、それから三十日から四日まで勧告を行い、四日の午後四時に締切つて、そうして五日は解雇の通告をいたしました、こういうようなわけであります。  私どもとしてはこういう事態なつたことは非常に遺憾であります。併しながらもうそういう方法をとらざるを得んような状態なつてしまつたのであります。それでその問いろいろ組合側といたしましてはいろいろな戦術を用いて、或いはストライキをやり、或いは坐り込みをやり、或いはデモをやられ、或いは現在は生産管理をやつておられる所もあるのであります。非常に私どもは遺憾と思つておるのでありますが、そういう事情であります。そうしてその二十五日に最後の通告を申上げたときに、人員を最初の五千七百三十八名を四千五百数人にいたし、それからプラスアルフアーも変更いたしまして、相当の増額をいたしまして発表をいたしたのであります。そういうような事態でありまして、現在どういうことになつておりますかと申上げますと、今申上げるように、従業員のかたがたの予定数字は五千七百三十八名を四千五百六十三名にいたし、今日まで希望に応じられたかたは二千三百九名になつております。職員のほうは一千一名というのを、職員のほうも入念に交渉が行われておつたのでありますが、この三鉱連の共闘の関係かとも私は思うのでありますが、急に交渉を打切られて、遂に決裂という恰好になつてしまつて、もうお話ができなくなつたのであります。そうしてこれも止むを得ず員数とプラスアルフアーを一部修正をいたしまして発表したのであります。職員関係は明日の午前零時を以て解雇をいたしますという通告をしてあるわけであります。現に勧告をいたしております数字は七百三十一名に対しまして、百四十一名の数字が今現在出ております。このかたがたには所定の退職手当、或いはプラスアルフアー、それから予告手当等、きまりのものは全部お払い申上げておるわけであります。こういうような状態であります。  それでこれから先はどうなるかという問題になると思いますが、私は質問がございましたらそれに対して申上げたいと思うのであります。ただここで申上げたいのは、このお示しの項目の中にも、三井鉱山会社はスト規制法の通過して施行される日の八月七日にこれを持ち出したという、これはお叱りのような文句になつておるのでありますが、さつき申上げるように、如何にしたら我々がこの事業の建直しができるのか、これからあとやつて行けるのかどうか、こういうことについて懸命に会議会議を重ねておりましたが、そういうことのみを我々は念頭に置いておりましたので、スト規制法が通過したらどうなるか、こういうようなことについては、率直に申上げまして全然関心を持つておりませんでした。これは国民として誠に相済まんかと思いますけれども、本当に今回の場合は全然関心を持つておりませんでした。又労働組合のかたがたも、会社はけしからん、スト規制法が通過するや否ややつた、こういうようなお考えは私はないのだろうと思つております。さように私どもは虚心坦懐に申上げまして何ら意図は我々はなかつたのでありまして、労働大臣は非常に迷惑をされたということをこの間も発表されたようでありますが、その点は私は恐縮でありますが、迷惑をされたということを我々は又聞くことがいろいろ問題になるように思うのであります。ただ偶然そういう日であつたということを申上げて、終りにいたします。
  68. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は労働大臣に対して昨日から当委員会への出席をしばしば要求しておつたのですが、丁度ILOの大会等がありまして、いわゆる国際的ないろいろな折衝に忙殺されおつてなかなか労働委員会に落着いているわけにいかん、今日も四時半になるとどうしても退席しなければならんという要望がありますので、明日も勿論出席はできないそうです。従つて非常に重要な点で二、三大臣の所信を質しておかなければならん点がありますので、話が中断して誠に申訳ありませんけれども労働大臣に対する二、三の点を挾んでやりたいと思いますので、御了承を願いたいと思います。  それから只今の石炭関係の経営者側のかたがたの御説明を伺つておりますと、要するに石炭の非常な需要の減退ということがこういう問題を起したんだという工合に殆んど一致して述べられております。従つてこの点は大臣の出席を求めておつて、大臣は差支えがあつて来られんから政務次官を出席せしめるということであつたのでありますが、それで通産省のほうとしてこれは非常に重要なことなんで、特に今途中で少し挟みますから、その間に必要があれば大臣とよく御連絡をとつて答弁を願いたいと思います。  需要の著しい減退ということは、私は恐らく石炭は基礎産業でありますから、これは今言われるほどに減退しておるということであれば、これは日本の景気の非常な後退であり、経済力の私は或る意味で減退になると思います。そうすると政府のほうは、片方においては経済力がだんだん殖えておる、それに応じて保安隊の増強をやるんだというようなことを吉田さんは言つておられる。全く言われることが正反対になるので、どこが本当なのか、これははつきりしなければならんと思うのですから、通商産業省として経済力のバロメーターになつておるようなこの石炭の問題について、先ほど石炭局長が言われた程度ではこの前の発言の域を大体出ていないので、政策的な問題をもう少しはつきり述べてもらわないと工合が悪いと思います。通商産業大臣の出席を私はしばしば強く要求しておるのはその点にあるわけであります。石炭のほうがだんだん減つて行く、減つて行くためにこういう措置をとらなければならんといつて石炭業者が非常に強く要求せられておるにもかかわらず、片方は、政府のほうでは経済力はだんだん殖えておるのだというのです。これは私どもとしてちよつと理解できないのでありますが、その点が理解のできるような一つ説明をして頂きたい、こういう工合に考えます。それでは炭鉱の労組のかた、ちよつと御迷惑ですけれども……。  労働大臣にお尋ねする第一点は、まあお尋ねでなくて昨日の約束に則つて所信を表明して頂くことになつております。第一点は、特需工場労働問題の関係でございます。過日来労働大臣のクラーク・小坂会見で非常な御努力を願つたというので、駐留軍労務者の関係の基本契約の点については近く正式に解決をするように聞いております。我々は非常に喜んでおりますと同時に、更にその運用において当時問題にせられた点が百パーセント完全に実行されるような将来に向つての努力を私は要請しておきたいと思うのです。それと同時に、これはかねがね外務省のほうにおいても約束をされておるのですが、労務基本契約が一応成立すれば、特需工場等に対しても七月一日から強化されておる人事条項を更に検討を加えて修正契約をするということが言われております。ところが昨日の委員会でこの問題をやつておりますと、その後の状況はにわかに予断を許さないような状況にあることははつきりして参りました。例えば労働組合運動に対する干渉であるとか、或いは賃金問題に対する干渉であるとか、或いは人間の、まあパージに対する干渉であるとか、或いは情報提供の義務を強要せられておる、ちつとも緩んでいないようであります。それで昨日外務省、労働省等の意見を総合してみますと、要するに結局誰も中心になつてこの問題を解決することに努力をする主体的な勢力がないということがはつきりして来ました。そこで中西労政局長にその対策を伺いましたところ、中西労政局長としては当然労働省がやるべきことである、労働省として何らかの案を作つて、通産省或いは運輸省、その他外務省等の意見を十分聞きながら案を作つて当れば大体満足する結果が得られるようになるだろう、こういう回答でございました。そこで私ども聞きましたところによりますと、最近は人事条項の問題は完全に需品特需契約の工場だけに限らないで、更に需品工場等にも及んでおる。今度MSAの話が正式に決定しますれば、恐らく更に需品工場の数が殖えて行くということになると、このまま放置しておきますのは労働三法の権威にもかかわることでありますから、そこで労働省としてこの際中心勢力になつて、駐留軍労使の問題を解決された以上の熱意を以て善処せられたい、こういうことなのです。特に昨日の委員会でも参考人の中から意見が出ましたことは、個々の企業者に任しておくとか、或いは労働組合に任しておくということはできないので、できれば私契約ではあるけれども労働省が中心になつて或る一つの人事条項の基準を作られて、これを米軍側と折衝して、そうして全特需工場、需品工場に一律に適用できるような工合にせられたいという要望もありました。私至極御尤もだと思います。そういう点を織込んで、小坂労働大臣から今申上げたような工合に善処をする具体的な熱意を表明せられたいと思います。
  69. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申上げます。  只今委員長の御意見でございますが、先ず最初に、日米労務基本契約につきましては、昨日も経過等を申上げましたので、これが施行について万全を期せということでございます。私も及ぶ限りの努力をいたしまして、基本契約に盛られた精神を打ち出すことと、或いはこれに背馳することなきよう十分に努力をいたしたいと思います。  次に、いわゆる特需工場との間にございまする労務契約中に、いわゆる労務に関しまする条項につきましては、労働政策上から見まして十分でないという点もあろうかと思いますが、これは元来講和条約発効以来政府とつて参りました態度は、これは一種の私契約であつて、労務上の請負契約並びに需品の請負に関する問題である。であるから政府としてはこれに介入せんという立場をとつて来たようであります。併し実際問題といたしまして、この点については委員長お話通りの点があろうと思いますから、私も十分この点について解決に骨を折つてみたいと、こう考えております。ただこの特需工場と言いましても非常に種類が多いので、只今需品工場の話も出ましたが、非常にその範囲、又その関係の深さについて逕庭がありますので、こういう問題について全般的にどうまとめたらいいかということについては、十分一つ業者の意見も聞き、関係労働組合意見も聞き、又関係官庁の意見を聞きまして、私どもののとるべき態度方向をきめて、一つ解決に骨を折つてみたいと、こう思つておる次第であります。
  70. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこで、更にちよつと注文があるわけですが、第一は現に私はこれは企業場の名前は挙げませんけれども労働省も御承知だと思います。或る特需工場においては部課長を含めて理由のない人員排除の強い要請がありまして、合同委員会の議に上つておるのもございます。それから更に或る工場においては賃金交渉をするのに米軍側のいわゆる了解を得なければ進められないというので、団体交渉すらも全然ストツプしておる状況もございます。従つてそういう具体的の問題についても緊急に解決するような努力を願いたいということが第一点。  それから第二点のほうは、今小坂労働大臣が表明せられた所信を具体化せられるために、この次の労働委員会は大体九月下旬頃に開く心組を持つておりますが、その頃までに更に具体化された内容をこの委員会で表明できられるように一つ急いで頂きたい、こういう要望を申上げておきます。
  71. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 富士自動車の問題だと思いますが、これは労務委員会の上に合同委員会には調達委員会というのがあるのです。従来労務委員会で多少問題になりかけておつて、調達委員会のほうでどこへ行つたかわからなくなつてしまつたというような実情があるのでありまして、そこで私も先頃から実は感じておつたことなので、話をして見ますのですが、今実は九月下旬という話がございましたので、できるだけ骨を折りますが、これは向うの窓口は一つなのです。それで向うの話合いとの間に実は労務基本契約のアネクスを今月中にやるという問題がございました。一人の人に話す承のですから、重点がぼけるという点が実はちよつと気になりますのですが、時期の点はこちらの誠意に一つ御信頼下さいまして、九月下旬までは多少無理かも知らんという点がございますが、国内的のほうの取まとめ等については十分その頃までに努力をいたします。九月下旬と時期を切られても少しむずかしいかも知れません。
  72. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今の私の申上げたのは、名前が出ましたから申上げますが、富士自動車の分は、これは七月の三十一日に向うから申出があつて八月の十五日まで更に延期をされて、更に六週間又延期をされて、その期限が九月二十一日に来るわけです。従つてこれはその前までにやはりやつてもらわなければならないということなんです。それは期限ははつきりしておる。  それから今の特需工場、需品工場の問題は、米軍側との折衝の結果を承わりたいというのでなくて、中西労政局長が昨日言われたように、労働省で或る案を作り得る、そうしてそれによつて向うと折衝すれば事態は好転し得る見通しがあると、こういうことを述べられたので、国内問題として外務省、通産省或いはそその他の関係省とよく連絡をとられ、又業者、労働組合とも意見の交換をせられてどういう工合にこの問題を処理して行かれるか、そういう見通しの具体化を月末までに図つてもらいたい、それはよろしうございますか。
  73. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) ええいいです。
  74. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 日経連の昨日の話によりますと、九月十五日頃までにやはり業者としての態度をきめたい、こういうお話もあつたくらいですから、そうそう長い間温めなくても大体できるだろう、こう思います。よろしうございますか。
  75. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 向うの交渉という意味にとつたのですが、そうでなければ結構です。
  76. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それから第二点は、スト規制法の施行通牒の問題の説明を願つておきたい。今石炭のほうからはこんなものは大して興味はないとおつしやつておるのですが、労働省のほうは非常に熱心で、すでに施行通牒までもお出しになつたようですから、これについて一つ説明を願いたい。
  77. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 具体的な施行通牒と言つても、別になんですが、昨日中西労政局長からお話申上げた通りでありますが、私のほうとしては先般この委員会で非常に慎重に御審議を頂きまして、その際にもしばしば申上げたように、スト規制法の石炭に関しまする部分が今問題になりましたが、それについて申上げますると、保安要員の引揚げというようなことは、これは争議行為としては不当であるのだ、ああいうことは労調法三十六条を待つまでもなく、又労組法第一条二項によるところの違法性を阻却される行為ではないのだ、こういうことをきめたわけであります。ところが今山本労務部長さんからの御意見がございましたのですが、世間ではたまたま日が一緒になると、何かその間に一方にスト禁止法などと言つている人もあるのですから、恐らく禁止する法律が出てこういうことになつたのだ、こういうように非常に誤解される向きもあるので、誤解があるとするならば私は迷惑だ、こういうことを言つたのです。その程度で一つ……。
  78. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣が御用があつて早く帰られるそうですから、簡単に御質問いたします。今度の炭鉱の企業整備についてちよつと御質問いたします。早川専務理事からおつしやつたように、第一の今度の原因は重油輸入等の圧迫があつたのだ。又三項目のうち第一番に言つておられますが、労働大臣としてこういう通産関係の問題についてどういう権限があるのか、閣議で恐らくかかつたと思うのですが、そういう経済面について何ら発言がないのかどうか、或いはそのときがあつたとしたならば、こういうしわ寄せが必ず労働省に来て、そうして失業対策その他をどんどんやつて行かねばできないような労働省仕事なつて来ると、どういう対策を持つておられるか、この経済面についてどういう大臣の権限があるのか、一口も言えないのかどうか、或いは今度そのしわ寄せが失業者になつて現れて来る場合に、全山では六万名からの失業者が出るというふうに言われておりますが、これに対する対策はどういうように考えておられるかどうか。我々の考えとしましては、雪の降る北海道では半年後にはどういう生活をするという問題を見て来ました場合に、恐らく希望を持つておる者はおらないように見ております。或いは九州の一市のごときは一万人からの失業者を抱えておる。それに二千数百人の失業者が出て来る。市としてもその対策に苦慮している、こういう点が出ておるのであつて、恐らく確固たる対策がないのじやないかと思うのですが、この二点について大臣の御所見を承わりたい。
  79. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) お答えいたします。労働大臣といたしまして労働行政一般をお預りいたしておるわけでありますが、閣議におきまして、勿論国務大臣といたしまして十分発言権を持つております。只今の企業の整備について、殊に石炭の場合の退職の問題について何も言えないのかということでございますが、それは国務大臣としての意見を申します。ただ政府といたしまして、個人の企業がどういうふうな歩み方をするかというその個人の企業の内部の問題に立入つて指図をするということは、現在私どもの建前としてやつておりません。個人の企業は十分その企業の責任において、又そのイニシアテイブにおいて、又経営内部の問題は経営者各位と労働組合の各位との間に十分話があることであるという建前で、私どもとしてはこの整備がいいとか、何名が多いとか少いとか、そういうようなことに容喙するということは、私ども政府としてはいたさないことにしております。  それから次に解雇者のうち非常に失業されるかたもあるだろうというお話でございますが、私ども承知しておりますのは、ともかく大体希望退職の線でやつて行こう、御希望があるならばそれで整理をして行こう、こういう線が先ず前面に出ておるようであります。併しその後において失業者というお気の毒なかたがたの救済につきましては、先ずその実態を、これは全般的な問題でありますが、実態を把握すると共にいろいろと準備をして、私どものとるべき立場、或いは態度というものについては考えておる次第でございます。取りあえずこの失業保険金の給付を受けるかたが非常に多くなるだろうと思われますので、失業保険金の給付事務を円滑に実施できるように、或いは資金操作、給付事務体制の整備に遺憾なきを期するようにということをいたしております。御承知のように本年度は予算が非常に遅れて成立いたしました関係で、公共事業、或いは財政投融資の対象となる事業の活動が非常に下半期において活撥化されるということに予想されますので、この面におきます雇用量というものは増大するであろう、こう思つております。労働省といたしましては関係諸官庁、今お話のございました通産省等々には十分連絡をいたして、石炭鉱業におきます被解雇者をできるだけ就労させるような努力をする考えでおります。又止むを得ない失業者に対しましては、失業対策事業によつて救済できまするよう、関係府県に対して、就労人員の増加の措置も別途検討いたしておる次第でございます。
  80. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつと私の質問がまづかつたかも知れませんけれども、私企業に対して云々ということは、これは通産省に対して私まだ質問が残つておりますが、そうでなくて、仮に重油を本年度四百万トンなら四百万トン入れた、来年は八百万トンなら八百万トンを仮に入れると仮定するならば、そのしわ寄せが労働者に来る、或いは私企業に来る、或いは労働省に来るということはわかつていると思う。それで仮に四百万トンなら四百万トンの重油を輸入したときに、そのときにどういう対策を持つておられるかということをお聞きするわけです。
  81. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 四百万トンの重油が輸入される場合、或いは八百万トンになる場合、こういう場合はいろいろな仮定でございまするが、そうした状況の下においてどうなるかということについては、いろいろ関係するものといたしまして今申上げたような線で受入態勢等について考えておる次第でございますが、やはり私どもとしましては、できるだけ外貨を使うことを少くしたい、そうしてなお日本の産業自立ということの根幹をはつきりどこにするかということを考えまして、或いは食糧の自給度を高める問題であるとか、或いは日本国内の諸産業の活撥化、或いはそのプロダクテイヴイテイの問題、そういうような問題を全般的に考慮して、できるだけ有効適切な政策をとりたいと、こう考えておる次第でございます。
  82. 阿具根登

    ○阿具根登君 私の質問を済ましてしまいますが、まだ今の問題でも相当質問が残つておりますが、ほかの人もおりますし、時間がありませんので、別の問題を質問いたします。  今度北海道に労災病院をまあ来年度から建てるようになつたそうですが、美唄にきまつたということを聞いておりますが、それは事実ですか。
  83. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 労災病院の問題につきましては、北海道知事との間にいろいろと話合いをいたしまして、知事の意見も聞きまして、八月の二十一日に知事宛の労働次官通牒を出しました。念のために読上げてみますと、三項目からなつておりまして「知事より八月十五日付意見書の提出があつたが、基本的にこれを採用する。」二項目は、即ち知事の意見書というものは労災病院を美唄、珪肺病院を岩見沢、こういう意見であります。基本的にはその考え方を採用しますが、第二項として、「名称は双方とも『労災病院』とする。」、第三項目は「右病院は唯単に予算を分割するものではなく、労災、珪肺夫々の特殊性を活かし漸次拡充増強する方針である。」、これが三であります。この意味は結局両方とも労災病院であつて併し美唄は労災病院であつて、岩見沢は珪肺病院とするのであつて、美唄は美唄の特色を活かす。併しながら、これは御承知のようにいろいろないきさつのある問題でありまして、単に片方が珪肺で、片方は労災ということは言えません。岩見沢にも外科を置き、又美唄にも内科を置くということにいたします。併し両方ともその特徴を活かして行きたい。御承知のように余り距離がございません、三十分間でございます。三十分の所に同じものを二つ作るということも妙な話でございますが、その特色を活かしまして、その特色に従つて政府としては十分予算措置を講じて行きたい。これにつきましては非常に北海道知事も満足されまして、私から言うのもおかしいのですが、感謝されて御挨拶に見えた次第でございます。
  84. 阿具根登

    ○阿具根登君 私も美唄の市長なり、北海道の知事なりに会つて来たわけですが、非常に大臣の言葉にも含みがあると思うのです。この際はつきりしておきたいと思いますのは、はつきり名前が出ましたから申上げますが、美唄には労災病院を作つて、岩見沢には珪肺病院を作るということですね。
  85. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 両方とも労災病院でございますが、併しそれでも病院はそれぞれ珪肺、労災の特色を活かすと、こういうことでございます。
  86. 阿具根登

    ○阿具根登君 それが私にはわからないのです。珪肺病院と労災病院というようにいつからお考えになりましたか。何かこれは政治的な名前で労災病院ということをつけておられるということを聞いておりますが、その実態は労災病院を美唄に作るのであつて、珪肺病院を岩見沢に作るのだと、こういうことなら話はわかります。労災病院という名を両方に冠しておつて、二つに分割したようなことをやられるならば、これは結局来年には俺の所も労災病院を、労災病院をといつてこの紛争が起きて来ると思う。恐らくそういうことは話合いがあつておると私は思うのです。そういうことじやないと思うのです。労災病院といい、或いは珪肺病院といいましても、全くその性質が違うのです。それを混同しておるのではないかと思う。これをはつきりしておかないと、又この次にこうした問題が起きて来る、そこではつきりしたことをお聞きしたいと思います。
  87. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) この問題は御承知のようにいろいろな経緯を辿つて来ておるのでありますので、こういう程度にするのが唯一無二な方策ではないかと思つておる次第でございます。
  88. 阿具根登

    ○阿具根登君 労災病院は、私は国の金は出ておらないと思う。労使の金が出ておるのじやないかと私は思うのです。それを何か政治的に引き廻されておるような形は非常に私はおかしいと思う。何人かの政治的な人が大きな発言をすれば、珪肺病院が労災病院という名前に変つて来た。そういうことになつて来れば、今国立の珪肺病院は一つしかない。九州には数百人の珪肺患者がいる。北海道には三百何人かの珪肺患者がいる。それにそういう政治的な名前を冠せられておる。今お話をお聞きいたしましても、恐らく労災病院を分割するような意味にとれるのです。労災病院を分割するのではないのだということははつきりしておるはずなんです、これを話合うときは。それを大臣の口からお聞をしたい。労働大臣にお聞きしたい。それは相当財政問題が違うのです。金の出所が全く違うのです。それを片一方の名前を両方ともつけてしまつたのでは性格がぼやけてしまう。政治的ないろいろな取引はわかつておりますけれども、その点だけははつきりしておいてもらいたい、こういうことなんです。
  89. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) お答えいたしますが、第三項目に、この病院は単に予算を分割するものでなくて、それぞれ特殊性を活かして漸次拡充増強する方針である、こういうことでございますから、まあそれぞれ特色のあるものができるかと期待しておるのであります。名前はどうも……労災病院は美唄だけではわからない、珪肺病院は岩見沢だけではわからない、従来の行きがかり上、実は私が大臣を拝命いたします前からいろいろないきさつがあるようでございますので、このようにいたした次第でございます。
  90. 阿具根登

    ○阿具根登君 余りそう言つても、お答えがはつきり出ないようですからやめたいと思うのですが、第三項でも、この後段のほうは大臣がおつしやる通り、前段のほうは「右病院は唯単に予算を分割するのでなく、」というこれだけ見れば予算の分割を前提にした言葉です。ただ単に予算を分割するのでなくてということは、予算分割をするけれども、それだけではないのだというふうに私は日本語では解釈すべきじやないかと思うのであります。そのあとはそれぞれの特色を活かしというようなことを書いてカバーしたようにしてありますが、やはりこの問題は恐らく来年なり再来年には次官通牒というものが非常に問題になつて来ると思うのです。その点をはつきりここでしてもらいたい、こういう考え方なんです。その点例えば労災病院はこの三項の後段をとつて、労災病院の予算は全然分割しないのだ、労災病院は労災病院ではつきりしておる、珪肺病院は珪肺病院ではつきりしておる、こういうことがはつきり言われれば私はいいと思うのです。
  91. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) まあこの第三項の通り一つお読みになつて頂きたいと存じますが、来年度は恐らく予算は二本になつて出ることと考えております。まあ私もいつまでやつておるかわかりませんけれども、こういう通牒をいたした以上、まず趣旨を十分活かそう、こう考えておる次第でございます。
  92. 阿具根登

    ○阿具根登君 来年度は、珪肺病院は本年度は予算はありませんから、来年度出すとおつしやる、珪肺病院は珪肺病院としての予算をおきめになる、労災病院は労災病院としての予算をおきめになる、こういうふうに解釈いたしますが、その場合に、珪肺病院は非常に道のほうでも力を入れて道からも相当な金が出ておるようですが、それで恐らく珪肺病院というものができて来れば、これは全鉱関係、或いは九州関係には相当珪肺患者がおつて困つておる、そういう所から北海道に準じた陳情なり請願なりの措置をとられた場合には、当然それを考えておられると思いますが、そういうふうに解釈をしてよろしゆうございますか。
  93. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私はできるだけ労災病院というものは各所に設けたいと考えております。なお珪肺も同様でございます。従つて現在の予算の許す範囲内でできるだけのことをしておりますが、予算折衝等もこれからございますので、できるだけこの面の予算を獲得して、できるだけ厚生福祉の面に力を入れたいものだと考えておる次第であります。
  94. 阿具根登

    ○阿具根登君 最後に、意見になりますが、私の質問で大臣お答え下さいましたので了解いたしましたが、だめ念のようになりますが、美唄のほうは労災病院を作つて頂いて労災病院の名前はあるけれども岩見沢に珪肺病院を作つて頂く、而も北海道ばかりでなく、そういう要望がある所にも考えておる、こういうふうに了解いたしまして質問を打ち切りたいと思います。
  95. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私ちよつとまだわからんのですが、大臣のお話は、岩見沢のほうは今全国各地に行われておるような珪肺病院オンリーで行かれるということですか。
  96. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) そういうつもりはございません。そうではなく、名前は労災病院でありまして岩見沢は労災病院というものができるわけです。なおあそこは非常に交通の要衝に当るということで、あの近所にありまする炭鉱もさることながら、かなり遠方から来るかたもある。そこで、やはり全然外科がないということでは困る。そこで労災病院という、看板に偽りのないように外科も設備をするという考えでございます。
  97. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうすると、先ほど労働大臣は、労災病院は成るべくたくさん置くようにしたいとおつしやつたのですが、僕も賛成です。賛成ですが、美唄と岩見沢は三十分しかからないというのですが、そういう近い所にもたくさん置く方針ですか。
  98. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君)  差当りはそういうことは考えられないと思います。なお県によつて一つも労災病院のない県もあるのですから、そういう所に置くことになると思います。
  99. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そういうふうに考えないと……三十分というような近い所に二つ置くということは考えられないと言いながら、ここだけそういうふうになるのはどういうわけですか。
  100. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) これは御承知のように従来のいきさつが非常にございまして、こういうことにせんと解決の方法がない、これは両方から喜ばれる、(笑声)こういうまあ名案ではなかろうかと考えております。
  101. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこでだんだんはつきりして来ましたが、そうすると、これはこの前請願を受理したときにも問題になつたのですが、現地の意向を非常に尊重するということになつておる。で私どもの聞いておりましたのは、田中知事のいわゆる内申というものは尊重するというお話でした。  田中知事は飽くまでも労災病院は美唄に置いて、それから珪肺病院は岩見沢に置く、こういう方針だつたと思うのです。これは崩れていないと思うのです。田中知事は両方に労災病院を置けということではなかつたと私は思う。特に費用の点を考えれば、これは国費に関係のないことで、そういうふうで現地の労使が大体意見が一致しておるものを、いきさつの問題としてこういう工合なつたとおつしやるのですが、そのいきさつというのは、中央のいきさつですか、或いは北海道のいきさつですか。
  102. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私この委員会でも申上げたと思いますが、現地の意向を十分尊重したい、こういうふうに考えまして現地の要望として岩見沢説もあり美唄説もあり、いずれも兄たりがたく弟たりがたしという状況なのであります。そこで田中知事にも再度御足労願いまして、いろいろお話をしました結果、知事も十分了承されて帰つたのであります。
  103. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 僕はそういう工合に聞いていないのですが、田中知事はそう今あなたがおつしやつたようには了承してないわけなんです。そこが私は問題だと思う。
  104. 阿具根登

    ○阿具根登君 今委員長が言われたように、私も道の田中知事に会つて来ましたけれども、これは私の意見が容れられておるのだということをはつきり言つておるわけです。はつきり私の意見が容れられておる、それだから文章はまずかつたかも知れない、併し精神はそうだ、こういうことをはつきり言つておられるわけです。併し私はこの文章が余りにも政治的なニユアンスがあるから大臣にお聞きしたわけなんです。そうして大臣ははつきり言えないけれども私の言うことを肯定されたと思つて、私は今質問を打ち切つたわけなんです。ところが委員長の質問では、そうじやないように言つておられる。いわゆる現地の意見を尊重するということは言つておられる、次官も基準局長もはつきり私に言われた。その現地の意見というのは、田中知事がはつきり八月の十五日に言つておるはずなんです。それが兄たりがたし弟たりがたしというのは、私もどうも聞取れない。而も現地では労使双方とも美唄を主張しておる。それを岩見沢の一有力者が動いたからといつて、兄たりがたく弟たりがたしというのはどうも私にはわかりにくい。そういうふうに答えられたなら、私は質問を全面的にやり直します。
  105. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私も実はこの問題については、田中知事ともよく話をいたしまして、この文書も田中知事が上京された折に見せて承諾の上に差上げたのであります。今申上げたように、美唄になるとちよつと奥へ入るのです。岩見沢のほうが幹線である。そんなような関係で、どうも知事もこれはどつちかにきめるということは自分としても非常に自信がないということを言つておられました。やはりこういう方法以外にないのじやないか。何も有力者云々じやなくてやはり三井、三菱の場合は美唄でございます。その他の炭鉱はやはり岩見沢の周辺にたくさんあるのです。で冬になりまして雪が深かつたりしますので、三十分ということを私申上げて、委員長にもちよつと疑義をお持たせして非常に相済まなかつたのでありますが、冬になりますと、この三十分は大変なことになる。(笑声)でやはりそういう関係も考慮してこうきめる上り方法がないのじやないか。而も第三項の後段などは非常に含みのあることでありまして、やはりこの問題をこれ以上やつていると結局きまらんということになるようにも思いまして、そういう断を下さざるを得ない、こういうふうに考えたわけであります。
  106. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこがおかしいのですよ。
  107. 阿具根登

    ○阿具根登君 三十分という言葉が出ておりますが、実際一番いい汽車に乗られれば、岩見沢から美唄まで十八分で行きます。そうしてほかの炭鉱がと言つておられますけれども、この決定をしておるのは北海道の道炭労並びに北海道の総評、こうなれば全労働者が先ず労災病院は美唄に建てるべきであるという決定をしておるわけなんです。それでほかの炭鉱の人が、労働者がどう言つたこう言つたと言われるけれども、私たちはそういうことは聞いておらない、而もこれは恐らく労災審議会でも審議されたと思うております。労災審議会がどういうふうな結論を出されたか、私は知りませんけれども、労災病院については労使双方からの金が大多数入つておるのであるから、その意見を容れられるのが一番いいと思いますが、どうして政治的にそういうふうになつたか、田中知事が迷われたというのはあなたがたの前ではそう言われたか知らないけれども、私らの前では迷つたと言つていない、はつきりしておる。八月十五日付の意見書があつたら読んでもらいましよう。ここに持つておられますでしよう。八月十五日付の知事の上申書、これにははつきり美唄と書いてあるはずです。
  108. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) これは御承知のように労働省決定するのでありまして知事のほうには意見書を求めたわけです。そこで知事の御意見をここに認つてありますように、基本的にはこれは採用するのである、併しいろいろな具体的な問題を考慮するとこういうふうになるが、どうかと言つたところが、まあそうなりましようということになつたわけです。
  109. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、こういうことなんです。僕は病院のような問題はやはり現地の声が尊重せらるべきだし、又常識で考えても、三十分もかからない所に同じ看板を立てるものが二つ同時にできるということは常識的におかしいし、それでなぜそういうことになつたかというと、これは純技術的に、医学技術的に決定せらるべき問題に政治工作が入つてこういう工合なつたと私は思うのです。ですから労働大臣がそこまでおつしやるなら、これは労働委員会としては、やはり現地の関係者或いは自由党の某幹部が動かれたということを私は聞いておりますが、そういう人においで願つて、これは事態をはつきりさせないと、今後こういうような公共施設的な病院を設ける場合に、非常に私障害になると思うのです。で実はこの前陳情、請願がありまして問題になりましたので、美唄にするか岩見沢にするかという問題になつたときにも、これは吉田法晴君或いは寺本君からも熱心な御発言があつて、そうしてああいう場合に請願書を受理したことも御承知だと思う。そのときに私は委員長としてどうしようかということを考えたときに、労働省側から、これは委員会の席上で正式に申上げることは如何かと思いますが、耳打ちがあつて、御心配はなさらなくてもいいという意味のこともあつたのですよ。私は安心をしておつた。ところが国会が閉会になつてからにわかに話は急転してこういう状態なつたということは、委員長としても私はちよつと了承いたしかねるのです。
  110. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 耳打ち云々の話をこういう所でお出しになるのなら、もつと詳しく申上げなければなりませんが、私は何も美唄に置かないという御心配は要らない、私は美唄も考えておるのだとこういうことを申上げただけなんでありまして、なおどうですか、これをどうしてもということになれば、結局今年の問題にはならんということになろうかと思います。諸般の情勢を勘案すると、やはり私はこういうことも非常に私は十全であると思つておりませんが、諸般の情勢から見てとるべき最善ではないかと、こう思つておるのであります。
  111. 阿具根登

    ○阿具根登君 私たちが再々労働大臣の出席をお願いするけれども労働大臣の都合の悪いときには労働大臣の代りには次官がおるではないか、次官が言つていることは労働大臣が責任を持つということをいつも私たちは聞いておりますが、ところが今の労働大臣の言葉ではそれが全く違う。労働大臣のおらなかつたときに亀井局長もおられた、次官がおられたとき私は言つたのです。なぜ中央できめないか、地方できめ切らないじやないかということを言いましたときに、北海道で一カ所だけ作る、二カ所はできない、それを知事がきめ切らんでどうするか、そんな知事が何になるか、知事がきめたところに決定するということをはつきり言つておられる。そうして知事は追い込まれて、そうして皆の意見を聞いて八月十五日の決定があつて、お願いに来ておるわけです。ところが大臣はそれをただ聞くだけであつて、きめるのは飽くまで我々がきめるのである、そういうようにおつしやると、そのときの次官や局長意見と大分違つて来るように私には思われるのです。そうすると、これからすべての問題は大臣に出てもらわなければ私たちは話ができないことになると思うのですが、それはその当時の証人も何人もおります。私が一人言つているのではありません。議員でも二人もおります。地元から二人も陳情に来ております。そうしてそういうように決定されたのであるから、少くとも知事も非常に苦しみながらこれが最善の道であるということを決定されて陳情されたと思つておる。それを今度は何か大臣としてはいろいろ立場があつて、こういう文章にならざるを得なかつたかも知れませんけれども、この文章の意味は私が言つておるように、田中知事は道の決定を尊重されてそして私の言つた通りです。こういうことを言つておられるわけです。それを私が文章の面から、又この次にこういう問題が起つて、必ずこれは北海道においておれの所にも労災病院ということで予算の取合いつこになつたりなんかして、迷惑するのは労働者である。こういうことで私は今大臣にこういう問題をお聞きしたわけなんです。ところがますますその疑いを深くせざるを得ないようになつて来て、而もそれを今から突つ込めば、本年中には労災病院はできないぞ、こういうふうなことをお聞きするということは私は心外です。当然これは北海道に一カ所作るということは決定されておるはずです。而もこの金は純然たる国費ではない、労使双方がここに建ててくれと言つておる。而も岩見沢とは十八分の近距離である。立地条件も、水の問題から、労働者の数から見ても、最もここは適しておるということは万人が認めておる。一、二の人が反対したと言つて政治的にそれを文章に現わしたのは別として、大臣がどちらにも労災病院を作るのだというお考えを持つておられるならば、はつきりしてもらわなければ、私たちが考えておるところの立派な労災病院ではなくて、二つの労災病院ができて来る、これは一つの予算から二つの労災病院が生れるのであつて完全な病院とは言えない、こういうように私たち考えるわけです。
  112. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 一つのものを二つにするということは如何にも困るじやないかというので、この予算を珪肺という費目において取るように運動いたしております。大体恐らくそうなると思います。でございまするから、労働者のためにならんというお言葉は少し私どもとしては困るのでありまして、両方できる。珪肺もできるし、而も珪肺だけでなく外科もあつて役に立つということになるのでありますから、私は大いに北海道の労働者諸君には喜んで頂けるのじやないか。他の同じ条件でも全然できない所もあるのですから、二つもできるのですから、この程度の政治的な含みのあるところをお認め願いたい。
  113. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、珪肺病院のほうは別に予算を珪肺病院として取るということですね。
  114. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) そうです。
  115. 阿具根登

    ○阿具根登君 労災病院は労災病院で、珪肺病院は珪肺病院として別個にやるだとおつしやるのですか。
  116. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 取るのですが、その間の多少の融通をして、できるだけ二つながらにして完備したものにしたい。
  117. 阿具根登

    ○阿具根登君 それならばお尋ねいたしますが、なぜに十八分しかない所に、そういうように予算を分割せねばできないようになつたか、それを一つお聞きいたします。なぜ一カ所に、ちやんと立地条件から考えても、労働者から経営者まで全部ここに病院を建ててくれと言うのに、なぜ二つにしなければできないようになつたか、これを一つお聞きいたします。どういうルートで誰がそういうことを言つて、誰の意向を汲んで、そういう発言をされておるのか、お聞きいたします。
  118. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 労働者から経営者まで全部とおつしやいますが、どうも必ずしもそうでもないのであります。それでその意向を汲んでやつたわけであります。
  119. 阿具根登

    ○阿具根登君 いつの場合でも満場一致できまることは殆んどない。国会でも同じことです。私たちが反対したつてあなたがたが通しなさる、どつちがたくさんの人が希望しておるかという問題です。それで両者の意見を尊重して、珪肺病院を作つてやるとおつしやるなら、有難うございますと北海道の人たちも私たちも申上げます。ところが労災病院を二つに分割されるということは私たちは解せないと言うのです。
  120. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 意見が分れることはいろいろな場合必ずついて廻ることですが、労災病院というようなものは多数決で二人多かつたから、三人多かつたからといつて場所をきめるべきものではなくて、できれば地元でまとめて一本にして持つて来てもらうのが最善の策だと思います。そういう方針で他の県ではいたしておりまして、他の県ではまとまつて知事が一本にして持つて来てくれるのであります。ところがどうも北海道の場合そうも行きませんので、止むなくその場合の最善の措置ということでしたわけでございます
  121. 阿具根登

    ○阿具根登君 それが田中知事がはつきりここに書いてあるように、八月十五日の意見書のように美唄に作つて下さいと言つておるわけです。何も田中知事は労災病院を二つに分けてくれなんと言つておらないわけです。
  122. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 田中知事には八月二十一日にお目にかけまして、タイプに打つ前の原案をお目にかけて、これで結構だと言つて御了承になつたのです。
  123. 阿具根登

    ○阿具根登君 私も田中知事とこれを置いて話をして来ておる。それと甚だ違うわけです。
  124. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) それは私も責任は持てませんけれども、田中知事と御相談して、こういうのを打ちますよ、結構ですということでこういうことにしたわけであります。
  125. 阿具根登

    ○阿具根登君 それで大臣のようなそういう解釈ができるから質問したのです。ところが知事はそういう解釈をしておらない、私の言う解釈をしておるわけです。
  126. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) その後において道会のほうの承認を求めなければならんと言つて帰つて、又上京されまして、その後にそういう今阿具根さんに申上げておるようなお話をしたのであります。田中知事はそれを御了承になつたのでありますから、私もそうしたのであります。
  127. 阿具根登

    ○阿具根登君 水掛論になりますけれども、一昨々日の朝七時二十分に会つたのです。飛行機で帰つて来たのをとつつかまえて会つたのです。私のほうが一番最近に会つておるわけです。水掛論になりますけれども、これはどうも知事の考え方と大臣の考え方と非常に違うようですから、私はしつこく聞いておるわけですが。
  128. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 若し何でしたら田中知事をよこして下されば、私は話します。
  129. 阿具根登

    ○阿具根登君 知事を私が呼びつける権限はないのですから、一つ大臣のほうで呼んで頂ければ結構です。
  130. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) そのうち見えたらお話しておきましよう。
  131. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) この問題はそういうやりとりの問題ではないと思う。基本的には一つの公の病院を作るのに、まあ言葉は悪いんですけれども、知事がその県の代表者として代表的な意見を述べたものについて、それを尊重してきめるという言明が政府にあつたにかかわらず、それが歪められたというのです、これは一番最初から言つて。そういうことについて我々は問題にしなければならんわけなんです。先ほど小坂労働大臣は、そういうことで物言いがつけば本年度はきまらんとおつしやつたのですけれども、これは私は少し労働大臣の言い過ぎだと思うのです。僕ら物言いをつけて今年これを流そうなどという考えで言つてるわけじやない。そういうことがあるからこそ、労働省決定したことは少々無理があつても承知しろというのではこれはロジツクが合わない。特にこういう場合混迷した問題であつたことはわかつておるので、各方面の意見を十分に尊重して、そうしてきめられるであろうということで意見を述べて来ているわけです。ところがそういうものがいきさつのあつた問題として非常にあいまいな政治的な妥協の上に決定されたということが、私は理解できないということを申上げたのです。だからこの問題は又いずれ問題になると思いますが、労働大臣に私はつきりお尋ねしておきたいことは、田中知事の内申がそのまま労働省で取上げられてはいないということはお認めになりますか。
  132. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 田中知事の内申に基きまして、田中知事と御相談いたしまして、この労災病院の設置に関する件の次官通牒を出しました。更にその後において話合いをして御了承を得た、こういうふうに考えておるわけであります。
  133. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今労働大臣がそういうようにおつしやるならば、田中知事をやはりこの委員会に来てもらつて聞くよりほかにないと思います。ではそういうことにしましよう。  それからもう一つ大臣に申上げておくことがあります。先ほどのスト規制法に対する次官通牒については、私内容的にこの前の審議の過程におけるいろいろな問題と睨み合せて、相当疑義のある点がありますから、今日は時間がありませんから、次回に保留しておきます。今日の御説明をそのまま私は了承したのではないということを御了承願つておきます。  それでは問題はここで打切りまして、労働大臣は退席されるそうですから、その上で更に問題を進めて参ります。引続きまして炭労の執行委員長阿部竹松君の御発言を求めます。
  134. 阿部竹松

    参考人(阿部竹松君) 私炭労の委員長の阿部であります。  今回の石炭産業における大量首切りの問題に際しまして、休会中であるにもかかわらず、委員長以下常任委員各位が熱心に取上げ下さいましたことに対しまして、厚く御礼申上げます。非常に時間も経過しておりますので、五点に亙つての意見を求められてございますが、要点のみ申上げたいと思います。  先ず第一項の問題でありまするけれども、私今より四十日ほど前にスト制限法の問題が国会で論議されておりますときに、一度この席を汚したことがございます。そのときにスト制限法というものは、炭鉱労働者諸君がストライキをやるというこの制限は、公共の福祉の妨害になるから、その点について制限をやらなければならんという意向でございました。従つてこの今回のような問題については一切経営者は何ら責任を感じないかという点であります。午前中も私傍聴いたしましたし、又今回の午後の問題で政府代表の発言によりますと、政府は何をやつたかという経過説明がなくて、単に新聞記者諸君の報告、或いは新聞記事の切抜き程度の報告であります。従つて今回の問題は経営者は当然責任を負わなければならないけれども、その責任の半分は政府当局にあると断言しても差支えなかろうと思います。なぜかなれば、最前から三公述人の意見を拝聴しておりましても、石炭が余つたから労働者を首切らなければならん、こういうのが要旨の大部分であります。こういうことになりますと、石炭産業ばかりでなく、あらゆる産業に従事しておる労働者、こういうものを含めまして、一切責任のしわ寄せが労働者に来まして、生産過剰だから労働者を首切らなければならん、それによつて経営の維持を図らなければならん、こういうことになるわけであります。こういう理論が正しいということになりますと、我々としては将来如何なる方法で生活をし、安心してどうして働けるかという点について非常な危惧を持つものであります。生産過剰であるから労働者を首切る、政府が金を貸してやるのだというようなことであれば、立派な経営者も必要でないし、又政府の指導も全然必要ないわけであります。最前早川鉱業連盟理事お話によりますと、非常に安心して首を切る、将来が約束されるような御意見であります。併しながら本当に早川氏の言うように実情がなつておるのであれば、何も我々は好んで争議を起し、好んでストライキをやるわけのものではありません。現在我々炭労内部の組織に二十七万人ございます。その二十七万人の中の一万六千五百名というものが今度の該当者であります。この該当者の内容を見ますると、ただ生産過剰であるから、或いは又需給計画に副わない厖大な、四百万トンもある貯炭が影響しておつて首を切らなければならん、こういうことであります。従つて、ただ石炭が過剰だからと言わずに、何のために石炭が過剰になつたかという点まで追求して欲しいわけであります。政府は単に朝鮮事変二カ年有余に亙る間ただそれにのみ頼つて唯々諾々として今日まで来て、昨年の六十三日ストライキをやつたときも、ただ政府は中間的存在であるからと言つて何ら手を打たないで、外国炭を注文する、ストライキが終つたら資本家に金を貸す、こういうことで一切を糊塗しておる。その結果はストライキが終つて、炭が出てから外国炭が数百万トン入つて来るという現状である。こういうことについて一切責任を感じない。七十五億の金を貸す、二百七十億又金を出す、併しこれは経営者が自主的にやるのだからという一片の方便を以て解決しているという点については、我々は絶対に納得が行かないわけであります。従つて、こういう点から考慮してみますときに、そういう今回の問題には当然半分以上の責任は政府当局にあると断言して差支えなかろうと思うのであります。  その次に二項、三項でありますけれども、この点については簡単に申上げますと、一番いい例が三井の例と、それからこれを了承したという三菱内部の九州の問題であります。三井の問題につきましては、三井連合会事務局長が参つておりますから省きますが、三菱の問題については九州において三菱の鉱業所が九つあります。筑豊を中心といたしまして、長崎を含めて九つございますが、この九つの山が営業が成立たんからと言つて、閉山しなければならんというように大々的に宣伝したのであります。当然我々労働者は単純でありますから、会社が如何に儲けようが、或いは損しようが、牛か馬のように使われておるという実情であります。私ども会社が昨年の下半期において三井が十数億、北炭十数億、三菱が八億か九億、こういう利潤を上げても、我々としては関知せざるところでありますけれども、一旦赤字になつて来ると首を切られなければならん。こういうことで、我々労働者はひしひしと締めつけられるのでございまして、この労働者の弱点をつかんで、九州三菱九鉱業所のうち三つ閉山しなければならんというように、只今申上げました大々的宣伝の結果、我々労働者仲間は、これを認めなければ困るのではなかろうかという悲しい諦めをしたのであります。その結果は、どうせ鉱業所が潰れてしまうのであれば、今会社希望退職を募つておるのだから、三万でも五万でも金を握つてやめてしまつたほうがいいという結論になつて、只今九州三菱は会社申入れを了承した。ところが、早川専務理事お話によりますと、その後刻々と申入れがあるやに報告なされておりますが、私どもに入つた情報によりますれば、三千五百名やめた。従つて各職場において、一カ所五十人全部やめてしまつた所もあり、一カ所三十人全部残つた所もある。そういうような過程から、採炭を全然できないような男も、或いは掘進もできないような男も、どんどんと坑内へ転業させなければならん。或いは坑内の職場配置転換を行わなければならんというような実情が起きて参りまして、現在三菱においては、この問題をめぐつて盛んに衝突しておりまする三井以上の段階が来ようとしておる現状であります。又明治におきましても、坑外三十名おつた電工夫がたつた一名に減つてしまつた。二十九名電工夫においてやめてしまつた。ところが一方の職場において一人も退職しない。こういうような実情であるが故に、当然強力な配置転換を行わなければならん。併しながら電工夫というものは、簡単に員数だけ揃えても間に合わないのであります。そのような観点から未熟練工を持つて来て当てるというようなことになりますと、相当危険が伴うというような内部事情もあります。併しながら一方的にでこぼこの過程において人員整理されました今日においては、その配置転換をめぐりまして、本当に希望退職を云々するよりも、今後労使間の問題が大きくクローズ・アツプされて紛争の種になるということを非常に残念に思うものであります。  その次の四項のスト規制法と人員整理の問題でありまするが、この問題につきましては、最前山本公述人から、労働者諸君はそういうことを考えておらないだろうというお話がございました。どなたがそういう労働組合の立場から申されたかわかりませんけれども、御承知の通りスト制限法は第十五国会に出されました。そのとき、衆議院においては二日間で国会を通過して参議院に廻つたのであります。御承知のような観点で国会が解散し、再び第十六国会にかかつたのでありまするけれども、その過程を通じて恐らく人員整理というものは、希望退職というものは、五月、六月頃出されるであろうというように計画されました。こういう計画については経営者諸君といえども了解するであろうと思います。なぜ五月、六月、これを狙つたかということになりますると、当然第十五国会でこの問題が通過して以後ということを考えたというように推察してやぶさかでないのであります。従つて、十五国会においてこれが流案になつたために、再び十六国会においてこの問題が論議されて通過した以後出したということは、如何に弁解をいたしましても弁解する余地がないものであろうと考えるわけであります。御承知の通り、三井より二十日ほど前に三菱が出しました。併し、三菱はテンポが非常に遅かつたわけであります。三井より二十日前に出したのでありまするけれども会社対労組間の交渉というものは非常にテンポが遅かつた。何のためにテンポが遅かつたかということになりますると、当然こういう問題も関連いたしておるということは明確な事実であります。  その次に、第五番の人員整理に関する政府の対策でありまするけれども只今申上げました通り政府当局におきましては、一切こういう問題については何ら自信なきものと我々は考えております。最前のように、炭鉱から一万六千名の人間がこの産業予備軍とし出された場合には、或いは又一万五千名に亙る人間が直ちに明日から職を求めるということは不可能でございましよう。若しそれが可能なりとするならば、職業安定所も必要がございません。我々も全く心配しないのであります。ただ三万円か六万円の一時金をもらうが故に、借金を払つて、一カ月や二カ月やそれは日雇い労務者をやつても生活できるかわかりませんけれども、その後に来たるものということを考えるときに、誠に暗澹たるものがあるわけであります。従つて我々といたしましては、この退職されて行く人もさることながら、又あとに残つた我々労働者がどうなるかということも考えなければならんと思うのであります。勿論各経営者はやめて行かれたあとの残つた諸君に対しては、現在以上やめて行つた人の分まで働いてもらう必要がないと言つております。併しながらそういうことに相成りますると、何のために企業整備をやらなければならないかということに相成つて参ります。当然最前申上げました通り、強力な配置転換が行われ、そのあとに来る残つた労働者が如何なるコースを迫るかということは自明の理でございます。そのような観点から、我々といたしましては、企業が潰れる、或いは貯炭が余る、生産過剰だということが直ちに労働者首切りに通ずるということについては、我々炭鉱労働者ばかりでなく、日本の労働者の運命というものをしみじみと考えておるわけであります。こういうことが正しいということで許され、こういうことが若し正当化されるのであれば、曾つて数年前厚生省から分割して、労働者のサービス・センターであると言つて発足しました労働省が、何のために日本にあるのかということを言いたいわけであります。我々労働者のサービス・センターでなくして、一切が我々の弾圧機関であり、労調法を作り、或いは又スト制限法を作り、今度の問題を一切我々のために何ら措置を講じ得なかつた。却つて我々の行動を抑えるがごとき法案を作るために、労働大臣が深夜各議員それぞれの私宅まで廻つて三拝九拝したということも今日このためでなかつたかというふうに、非常に悪意に解釈するようでありますけれども、そのように考えざるを得ないわけであります。従つて、我々といたしましては、本問題に関する限り、炭鉱労働者の将来を考え、或いは又日本の労働者の将来を考えてみまするときに、一切労働者の責任において解決しなければならんというこの段階状態から来るところの切抜け案については、真向から反対するものであります。以上であります。
  135. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして、三井労組連合会事務局長灰原茂雄君のお説明を願います。
  136. 灰原茂雄

    参考人灰原茂雄君) 全国三井炭鉱労働組合連合会の事務局長をさしてもらつております灰原でございます。本日は炭労の委員長だけではなくて、私どももお呼び頂きまして、実情を聞いて下さるという機会を与えて下さいましたことを、四万八千人の我々の組合員に代りまして感謝申上げたいと思います。  炭労の今の首切り闘争の中で、最も激烈な闘いをやつておるというようなことをしばしば言われておりますし、私たちも苦しい闘いを続けておりますが、連盟の早川さんその他の三名の資本家代表ともいうべき御意見もございましたので、私どものほうとしては、企業の中の三井鉱山の中でどのように行われたかということを申上げてみたいと存じます。  先ず第一番に交渉経過でございますが、それは先ほど山本さんから言われたようでありますけれども、少しこれを掘り下げてみたいと思います。けんかをしておる上に又ここでけんかをするというようなことで、非常に心苦しい点がないことはございませんけれども、こういう過程を通じてお互いにもつと正しい労使関係ができる、そういうことを期待いたしまして、あえて申上げたいと思います。それで大体八月七日に全国一斉に発表されたわけでございますが、先ず第一番に私たちが刺激を受けたことはこういうことです。つまりいわゆる只今まで資本家側のかたが言われたように、非常にきつい起死回生の策である、止むを得ない措置である、愛する従業員を首を切るに忍びないのであるけれども、こういうことであればあるほど、私たちは労働組合結成しております三鉱連、私たちは三鉱連と言いますが、三鉱連に対して十分な話合いの後に、例えば合理化をするなら合理化ということについて十分な交渉の後に、止むを得ざる場合には退職を募集するということもあり得ると思います。併しながら今回の場合には、最初申上げましたように八月七日の発表というものが非常に大がかりでございまして、ということは二カ所、三カ所に分れ、或いは大牟田の三池炭鉱のごときも、北海道もそうです、一斉に発表された。発表された内容は御承知かと思いますけれども、合理化の要綱としては小部分でありまして、専ら大部分をいわゆる首切りの日程、それから首切りの規準を発表しております。只今申上げたことをもう少し申上げますと、合理化のことを論議して、そうして止むを得ず合理化をお互いに承認した場合には、初めてその合理化の対象になるべき余剰人員があるならば、その余剰人員によりまして基準を作り、日程を作り、円満に運ぶべきであると思います。然るに今回の場合には基準を一方的に三、四十カ条の基準をざつと並べておるだけなんです。こういう点で我々は大いに刺激されたということを先ず申上げなければならんと思います。これは三井鉱山の我々といたしましても、昭和二十五年の十一月二十五日付で希望退職の募集をいたしまして、これは労使双方で協定いたしまして一万一千数百名の希望退職者を出しております。これは他の鉱山においてはなされていないものでありますが、私たちは当時そういうことをやつて或る意味では企業に貢献もし、我々自体もみずから励まし合つて生産に協力して来たわけであります。そういう意味におきまして、我々の過去を踏みにじるような、我々の組合というものの存在すらも認めないような感じを受けざるを得ない、我々は強力な刺激を受けざるを得なかつた。この点が第一点であります。  それからその次には労働協約の問題になるわけでありますが、三井鉱山と三鉱連の間に労働協約が結ばれ、有効中であります。この中に第十五条といたしまして、大量の解雇を行う場合の取きめがございます。それは大量の解雇を行う場合には、例えば事業所の停廃止その他の理由によつて大量の解雇の勧告を行うときには、その一般的な基準によつて会社組合との協議の上これを行う、こういうようになつておるわけであります。今度の八月七日の企業整備につきましては、大量も大量、これほど大量はございませんし、四万八千人の組合員のうち五千七、八百名という大量解雇でありますから、私どもはこういうことにつきましてはいわゆる団体交渉をしなければならない、こういうように考えておつたのでありますが、会社のほうから最初出されたのは、いわゆる大量解雇の労働協約第十五条に基く協議でなければならない、出されたのはこうなつております。ところが十五条の協議というのは実際上はなかなか実力行使を以て我々は反対をするというふうな道は開かれておらないように考えられます。そこで私たちはその大きな問題であればあるほど誠心誠意をこめた団体交渉を先ず行うべきである、こういう意見を申上げまして、十日、十一日、十二日、皆八月でありますが、八月十日、十一日、十二日の三日間を費やしまして、一応覚書というのをとつたわけであります。その覚書の中では、組合員の生活に重大な影響を与える事柄、つまり企業合理化の事業計画の中におけるそういう点について、つまり大量解雇を含む企業合理化の整備その他の件について団体交渉を行う、その団体交渉はいわゆる実力の背景のある、お互いに素つ裸になつ団体交渉である、こういうような取きめをしたわけであります。ところが十二日にそういう覚書や調印を取交わしまして、十三、十四日の団体交渉があつたのでありますが、十三日の団体交渉会社のほうからいきなり出されましたのは、山元のほうでこういう基準が一斉に発表されると同時に組合員が動揺不安を起しまして、デモをやつて、どうしてこういうことをやつたのだ、そういう訴えをやつておりますが、山元のこういうトラブルを起しましたそのトラブルについて、とめるべきである、こういう提議がなされましたけれども、私ども最初申上げましたような、シヨツクを受けたのであるから、これは会社側の責任とも言うべきことであつて、我々としてはとめる意思はない、こういうことでございます。  次に合理化の問題に入ろうとしたわけですが、私ども最初申上げたような理由に基きまして、これは団体交渉を以て先ず企業合理化の是非その他を先決いたしまして、その後にこの基準、一般日程、解雇の手続、或いは処分の手続を行うべきであるということによりまして、覚書もそういうふうになつております。で、この覚書を作るときに、山本労務部長がおられたのですが、この覚書によつて団体交渉が終つたあとに改めて第十五条の大量解雇の一般基準の協議に入るべきである、それはいいかという駄目を押されまして、私どもはその通りであると言つたわけであります。従つて覚書に基いた団体交渉でございますので、一つどうか一般的な解雇の基準、天下に発表された基準を取り下げてほしいということを誠意を持つて申上げたわけでございます。これは覚書を盾にとつて、単に手続上私たちがこの団体交渉の性格は覚書に基いた団体交渉であるから、先ず覚書に基いた企業合理化の是非について論議し、これが済んだあと一般基準の審議を行うという意味で、一般解雇の基準その他を撤回せさるというわけではないのであります。それはこういう意味です。私ども会社が新聞機関を通じて全国に報道した一般基準について今更これを取消せとか、或いは新聞に改めて取下げろということは毛頭考えておらない。なぜかならば、会社がそういうことを行う場合、従業員の出血をうんとすればするほど労働組合との協議によつて団体交渉によつて解決されるのが建前である。そういう意味で世間に発表したのは別として、労働組合を相手に実際に協議を行う。順序としては一応只今申上げたようなことで、一般解雇の基準の手続規程を一応撤回して、そうして団体交渉によつてこれを論議すべきである、こういうことを言つたわけです。天下に発表されました基準を、あとで申上げますけれども、その基準を見た素朴な組合員は、やはり会社が強力的な、強圧的な態度で全国に発表した基準であるから、非常に強力に押付けて来るのであろう。おれはあの基準にも該当し、この基準にも該当するから、もうやめたほうがいい、こういうふうに組合は闘うと言うけれども、これはやめたほうがいい、いわゆる希望退職が純粋な自己意思によつて行われるのではなくて、そういう一種の強制によつて行われたという事実がありましたので、私たちはそういうことを言つたわけです。この点をあえて申上げますと、白刃をかざして客に歓談を迫る、こういう表現をした人がありますけれども、事実はその通りであつて、円満な労使関係において、会社が倒れるかどうかという境において真剣な協議を行い、その後に退職を願い、勇退を願うということであれば、私たちは十五条の精神に則り労働協約により協議したいと思つている。そうでなくて一方的にそういうことを出したところに問題があり、私たちが撤回を要求したゆえんであります。ところが十三日、十四日の二日の団体交渉におきまして、会社のほうとしては幾ら私たちが誠意を以て申上げ、先ほど申上げたように新聞発表を取消せと言つていない、つまり団体交渉の中では一応撤回して始めるべきであるということを申上げたのですが、やはりいろいろな都合がありましたのでしようか、とにかく撤回できない、撤回しろ、撤回できないということで、会社のほうから、それでは団体交渉は継続できないじやないか、従つて止むを得ず我々は一方的に断行する、こういう御発言がありまして、いわゆる不幸にして決裂の状態なつたわけであります。これが大体のあれなんですが、基準というのをやはり申上げなければわからないので、わからないと言つては失礼ですが申上げたほうがいいと思います。これは先ず第一番に、三四十カ条あるのでありますが、公傷常習者というような基準もありますが、公傷というのは、肺病は公傷にもなりますけれども、大体私病であります。会社の業務上の怪我をしたものを公傷と言いますが、その公傷の常習者という言葉が発明されております。これは去年の七月一日から一年間三回以上事故があつたものを事故常習者と言い、その中に公傷常習者を含むと言つておる。御承知のように炭鉱の災害はよその工場、事業場と違います。例を申上げますならば、基準法で以て相当保護されておるにもかかわらず、それたけでは足りず、鉱山保安規則のごときものが制定されておるのでもわかりますし、実績を見ましても、千人のうち二十人ぐらいは怪我をする、こういう非常に高率な災害を伴う危険な作業場でありますが、この炭鉱の中におきまして、公傷の常習者という言葉を使うということは如何に私たちの気分を暗くし、私たちの努力に対して非常に冷淡な会社の待遇であるというふうに思わざるを得ないのであります。それからもう一つは素質或いは素行の不良者、こう言いますが、素質という言葉は、どういうことをするであろうかということばかりでなくて、個人が赤い花が好きか、黒い花が好きかということまでもへたをすると入ります。そういう意味で、そういう素質ということまでも論議をされるということにつきましては、非常に問題がある。それから家庭的に負担の軽いもの、こういうこともあります。なお更ひどいのは、五十五歳で停年ということには一応なされておりますけれども、五十三歳以上のものについては解雇をする。こういうことが基準の第一項に入つております。もつと人道的な問題になりますと、御承知のように健康保険組合その他におきまして、二カ年間は結核になつ人たちも自分たちの金を出しておる健康保険組合から傷病手当を六〇%はもらえます。ところが今度の基準におしきましては、一年半、いわゆる健康保険法の保護に基く一年半以上の該当者、いわゆる肺病で一年半以上寝ておる人たちはこの基準に該当する。こういうふうになつており、自分たちが金を出し合う健康保健組合におきまして、二年間では殆んど不十分で、御承知のように国会におきましてもこれを三年に延長するということが行われておりますが、とにかく一年半以上の者の首を切られる。従つて各地の肺結核で療養しておる私たちの同志が医師の制止を振り捨てて、続々と退院しております。そういう悲惨な人道上の問題が起きておる。そういうことがあればこそ私たちは一応一般的な基準、そういうものを撤回して、そうして合理化の是非を先決して、それからやつたらどうかということを、さつきも申上げたように縷々言つたつもりだつたのでありますが、併しそれが容れられなかつたという状態であります。  それから希望退職の件でも、先ほど阿部委員長が言われておりますけれども、早川専務理事もおつしやつたように、今度の合理化の特徴は首切りを伴わないというような、首切りと非常に違う特色を持つておる、一般的な首切りと違うというようなことの御発言がありましたけれども、そういう意味でつまり申上げますと、二十日から二十二日まではこういう一般的な希望退職者を募集する。併しその身辺には白刃をかざしておる。一般的基準を大々的に宣伝しておる。それで以て二十日から二十二日までに希望退職者を募集し、そのあと二十八日までに足りない場合には、勧告者が五千七百名、希望退職者二千二百名の場合には広く勧告をする。勧告の基準は只今申上げましたような基準に従つて勧告をする。それでも足りない場合には、二十八日を期して解雇を一方的に通告する。こういう状態であつたのであります。希望退職の問題につきましても、只今申上げたように、いわゆる純粋な自己意思を束縛するかのごとき基準を出しておられる。こういう点について問題があるわけでございます。  それからもう一つは、山元でいろいろ問題が出ておりますけれども、今度の問題で、只今まで申上げたことでおわかりと思いますが、組合そのものを無視するような傾向にある。又該当者のあれを見ましても、三池の組合状態を見ましても、只今通告拒否しておるものが六百三名くらいあるのですが、そのうち四十四名は非常にまじめな、真剣に組合活動に従事して来ましたいわゆる決議機関の代表委員というものもございます。私はここでこの事実を申上げて、四十四名も組合活動をやつた委員があるということを申上げて、そういう意味で現在行われておる私たちの抵抗というものは根強い点がある、その点だけを御指摘申上げておきたいと思います。  いろいろ申上げたいことがございますが、只今山元で一番問題になつておるのは、大衆討議にかけ、デモを行い、一種の強がりを行なつておる騒擾事件が起きておるような印象を新聞で与えておりますが、そうでなくて、我々は自分が解雇を通告された場合、どういう理由で自分が、どの基準に従つておれは解雇されたのかということを、それを尋ねに行くという状態があるのですが、山元で幾ら皆で聞きに行つても知らん存ぜぬの一点張りであります。これは本店から人数を知らして来た、それに従つてやつたのだ、そう言うだけで、九州、本州合せましても、実はあなたはこういう基準でやつたということを明示しておりません。ここで不思議なのは非常に丁寧な基準、三、四十ある基準を出しておきながら、それを組合が白刃に等しいから撤回してくれ、そのあと団体交渉しようと言つても撤回しなかつた。それを解雇の通告に当つて適用しない、そこに私はやはり三池鉱山の会社側として考えて頂きたい点があると思う。そんなに確信があり、そんなに後生大事に持つておる一般基準であるならば、解雇基準であるならば、堂々と実はこの基準でやつた、君はこの基準だと言つてもらいたい。それを言わない。言つてもらえないからこそ、私たちはいつまでも不安に堪えないし、忿懣に堪えない。中にはこういうことがあります。表彰状を三枚も四枚ももらつておる、一生懸命働いて来た、それほど優秀な鉱員であると言われて表彰状を三枚も四枚ももらつておる人が、該当基準を明示されないままに解雇通告を出されておる。こういうことが許されていいかどうかということは本当に腹が立つて腹が立つてしようがないと思う。そういう意味で、又会社のために足を潰された人が義足を投げ出して自分の足を元通りにしてくれ、自分は自分の不注意で足を切られたのじやない、カツペの鉄柱を引上げるワイヤーがはねておれの足がこうなつたのはあなた知つているじやないか、我々が幾ら聞きに行つても遂に基準は出さん。こういう状態が今三井鉱山における争議の相当な根源になつている。これを称して容共的な組合活動家がいるからこうなつたのだ、或いは共産党のなだれ込み戦術によつてこういう状態が起されておるということが言われておりますけれども、私は只今申上げた通り一般基準を示し、一方的に解雇を強行され、苦しいということはわからんことはない。それならばなお更私たちの苦しさを思つて団体交渉で正常にやつてもらいたい。ただ事ここに至りましては止むを得ませんけれども、そういう状態がこの騒擾と言いますか、新聞上伝えられておるような三井鉱山の争議の原因となつている。職員組合もありますけれども、明日から一方的に通告される段階にありますが、この職員組合も非常に言つてみれば穏健な組合というけれども、十六日からは一切の営業関係の全員ストライキを決意している。こんなことは初めてのことでございます。これは先ほど山本労務部長が三鉱連、いわゆる労働組合と従業員との共闘の関係団体交渉がわざと決裂したかのごとくおつしやいましたけれども、そうじやない。職員組合も今度の首切りに対しては絶対に抵抗する、こういうことでそのような強い抵抗をさしております。余り申上げますと、我田引水で組合のことばかり言つておるようで恐縮ですからやめますけれども、こういう実情であります。  それからもう一つ申上げますと、早川専務理事も三つの問題を出されて、需要が減少している、これは事実だとおつしやる。二番目、国際価格が割高である、例えば為替の問題とかいろいろあると思いますけれども、これも事実だとおつしやいます。三番目に生産性が低い、こういうことも事実だとおつしやいましたけれども、私は同じ石炭鉱業の中の住友の某課長さんが、こういう世界経済という雑誌に書いておるのを見ましても、実に逆のことを書いております。全鉱夫の一人あたりの一日の採炭量十六・二トン、これが昭和五年—九年の平均である。今日の諸条件によつて修正すれば八・二五トンに当る。昭和二十六年度の実績は十・九トンであるから、すでに能率は戦前を超えておるということを堂々と巷間の雑誌に伝えております。細かいことは省きますけれども、生産性の低いということは労働者の努力が足りないとか、非協力的だということでなくて炭鉱の特殊性でないかと思います。生産度が高くなればなるほど、湧水も多いし、ガスもあるし、地熱も高くなる。そういう状況でありますから、当然こういう生産性の低下というものをカバーするのに会社のほうでいろいろな施策もやつておりましようけれども、事実といたしまして、今申上げたように生産性の低下というものは、戦後日本の労働者が、特に日本の炭鉱労働者がやつと一人前の実働八時間制という基準法のおかげで割合楽な生活をしておるということが一番大きな低下の原因ですが、これを労働生産性の低下という言葉で表わしていいものかどうかということはお考え願いたいと思う。戦前の地下労働者が何らの法的な保護もなく、実にひどい二交代制その他をやつたときよりも能率が高いということを、これを一つお考え願いたいと思います。いろいろ申上げたい点がありますが、私たちも世間に対していろいろ社会問題を投げかけ、中には余り無茶な解雇だと言つて、自殺を通告して来た者もあります。又自殺未遂者も出しております。これは組合指導者としては組合員諸君にも申訳ないし、又世間一般のかたにも御迷惑をかけておる点は申訳ないのですが、今度の首切りの中にはどうも解せない点がある。スト規制法と無関係だと言つておりますが、どうも考えられない。而も三鉱連は非常に紳士的と言つてはおかしいですが、非常に協調して来たつもりであります。それは御用組合になるという意味ではなくて、できるだけの協調をして来たつもりですが、にもかかわらず、三井鉱山が遂に首切りを一方的に行うということをぶつつけた。人員整理に乗り出しておるというこういう状態を非常に残念だと思います。いろいろ今後皆様方の、特に委員長初め委員のかたのいろいろな御調査、そういうことによりまして、どうか一つ実態を正しく把握して頂きまして、今後こういうことの起らないように処置して頂きたいと思うわけであります。簡単でありますが。
  137. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 一応全部御所信を頂きましたので、これから質疑に移つて頂くのでありますが、その移る前に通商産業省のほうへ重ねて発言を求めたいと思います。その点は、先ほど石炭局長を通じて古池政務次官にもお願いしてありましたから徹底しているはずだと思いますが、一番要点はこういうことでございます。日にもははつきり私は記憶いたしませんが、この労働委員会で、石炭の生産並びに需給計画の点を政策的にいろいろ尋ねました場合に、通産省側から、大臣であつたと思いますが、こういう答弁がございました。今日石炭の市況は崩れて悪いけれども、石炭産業そのものを基礎産業としてこれは守らなければならんことは当然である、従つて自由経済下にある私企業であるので、行政権の限界というものはあるけれども、貯炭が一千万トンを超えるようなことがあれば通産省としては手を打つということを言われたことがあります。これは私の言葉が、そういう工合に断定して誤りがあれば速記録を訂正いたしますけれども、とにかくそういう意味のことをはつきりおつしやつたのであります。ところが、今日の経営者側の御発言をお三方から聞いておりますと、少くとも需要の減退、需要が減退しながら、なお且つコストの引下げをしなければならんところに悩みがあると、それで人件費切捨てのために止むを得ない措置であるということを述べておられます。ところが、恐らく私はこの今度の人員整理を断行されたあとでも、若し今言われたような理由人員整理が行われるということであれば、外国炭と国内炭との価格はそんなに簡単に私は歩調を揃えられないと思います。従つて、更に第二、第三の人員整理というものをやつてそして国内の生産をだんだんと減少して行かなければならないようなことに私はなるのじやないかと思います。そこまで行くということになれば、これはもう通産省の石炭行政の問題、個々の企業ではどうにもしようのない問題に私はなると思います。そこで、今日も政府側の石炭鉱業に対する総合的な計画性についていろいろ伺つたのありますが、これは、私は大変失礼な言い分かも知れませんけれども、我々が傾聴に値いするような御発言ではなかつたと思います。今までしばしば聞いておる範囲をちつともこえていないと私は思う。従つて、こういうことでは恐らく基幹産業である石炭産業の行政指導は私はできないと思います。特に終戦後石炭産業には相当巨大な国家的な物心両面の援助が行われております。而も多くの国民の犠牲の上に行われた。それが外国炭の輸入、重油等の無計画的な輸入によつて、非常に労使が努力してここまで築き上げて来た石炭産業が非常に圧迫を受けるということは、私は日本の経済力のために非常に惜しいことである。  それから第二に、経済力のバロメーターは、先ほども申上げましたが、これは石炭と電力等の基礎産業がやはり示しておるわけであります。経済力が殖えるに従つて例えば防衛力の増強をやるんだ、一人百万円ずつかかるのでも止むを得ないからやるんだ、防衛力は経済力が進んでおるのだというようなことを言つておられますが、少くとも今日ここで出た雰囲気では、日本の経済力は低下の一途を迫るという私は断定をするより途はないと考える。特に石炭とか重油等を外貨を使つてどんどん輸入して、国内産業を圧迫して行くというようなことになればなおさらだと私は思う。従つて今日は通産大臣に出席要求したのでありますが、理由を明白にされないで出席されなかつたことは甚だ遺憾である。私はスト規制法のときにしばしば大臣にも出席要求したのでありますが、当時は病気であるという理由で、而も現実に私は病気であることを認めて了解をし、本会議における質問がありました場合でも、私はその点は了として答弁をしておるわけであります。そういう事態にあるにかかわらず、本日出席がないということは甚だ遺憾であると私は思つています。これは大臣にお伝えを願いたいと思いますが、それと同時に、政務次官から一つ今申上げましたような基本的な石炭産業の行政的な政策について私は明らかにして頂きたい、こう考えます。
  138. 古池信三

    説明員(古池信三君) 只今委員長から縷々お話がありましたが、大臣に対しまする御要望につきましては、よくお伝えをいたすことにいたします。  石炭に対しましては、今お話がありましたように、戦後非常に石炭不足のために日本の産業の振興なり、或いは国民生活の安定ということが期し得られないであろうという観点から、当時いわゆる傾斜生産というような名前を使われたように思つておりますが、歴代の内閣が相当石炭事業のためにはいろいろと育成強化のために努力を払つて来ておつたのであります。そうして幸いにして逐年増産の過程を辿つて参つておるのでありますが、今回のような事態なつたということは、理由は別としましても、非常に遺憾に存じます。そこで、現在計画等がなお満足すべきものではないのではないかというお話でありますが、これは例えば戦時下のごとく、ああいう強度な統制経済をとつておらん今日におきましては、政府の考えておりまする計画も、あの時代のような非常に強度な計画性は恐らくこれはないと言うことはできるかと思います。併し何としても石炭が基幹産業であるということはもう明らかなことであり、日本としても石炭事業を放つておくということは、これは誰しも考えられないことだと存じます。そこで、今日本の経済政策という観点から見ますると、やはりどうしても輸出を増進して、又一面においては輸入は能う限りこれを抑制して、早く正常な国際収支の均衡を保持する。そのためには国内の自給度というものもできるだけ高めて行かなければならんというふうに考えておるのであります。  そこで重油の輸入、或いは重油転換という問題でありますが、現在遺憾ながら経済的に見ますと、先ほどもお話があつたように、国際的の価格からいつて非常に高い、又重油を使用した場合には経費も安く、操作その他においても相当経済的に使えるというようなところから、大分中小企業方面にも重油に転換されたところがあるようであります。そこで重油の輸入ということを絶対的にこれをやめるということも今の情勢では困難ではないかと考えるのでありまするが、併し政府としては、今後できる限り先ほど申したような輸入の抑制、又国内の自給度の向上という観点から、もう少ししつかりした計画も立てて、特に石炭、油、電力、その他のエネルギーを総合的に最も有効に利用するにはどうしたらいいかというような根本的な計画もこれは立てる必要があるのではないか。それによつてその一つの大きな柱として石炭の生産計画なり、自給計画も立てて行くべきではないかと、こんなふうに考えております。併しそこまで行けばこれは通産省だけではどうしてもできない問題でありまして、やはり内閣全体が、それぞれ関係の省が集り、或いは経済審議庁あたりも参加してもらつて作らなければならんかと考えております。大体今お尋ねになりました点について、そんなふうにお答えいたしておきます。
  139. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私の伺つたのは、そういうことは大体了承しているのですが、そういうことではなくて、もう少し根本的な対策を、早く自給度を高めるといいましても、これはすぐ間に合わないので、何かもう少し積極的な行政指導の方法を考えられないかということなんです。例えば今の自由党の政策が根源になるでしようけれども、自由主義経済下においては計画経済というものもやはり限度があるということをおつしやつたのですけれども、少くとも今自由党の政権下にあつて、最近おやりになつておることをお考えになればわかります。例えば電力の問題はどうでしよう。九分割されて、あれでうまく行かないというので電源開発会社を作られて相当多額の国家資金を投入してやつておられる。これは完全な計画経済と言つていいと思う。当時僕らは糺弾した。自由党がそういうことをおやりになることは間違いだと、ところが自由党は間違いでないと周東長官なんかは力説された。又最近の問題でもどうでしよう。硫安の問題については硫安会社がどうも工合よく行かないというので、この間の国会には硫安販売公社のような構想を述べて法案まで出されたじやないか。又造船については利子補給まで考えられて措置せられた。こういうまだそのほか挙げれば切りがありませんけれども、完全な計画経済的なことをやつておられるじやないですか。だからこそ通産省としては、これこそ大きな国内問題になつておる石炭問題については、もつと計画的なことを勇断を持つてやられるべきじやないか、そういう段階に来ておるのじやないかと僕らは言つておる。通産省の内部においても私の知つている限りにおいては、若手の職員の諸君はこんな産業政策をやつていては駄目だ、もつと根本的な政策に切り変えなければいけないという声が強い。強いけれども上のほうで抑えているということを私は事実知つている。そういうことでは混迷している産業界の自立というものは私はできないと思うのです。そういうことについて私は通産省の責任者のはつきりした意図を聞きたいということを申上げているのです。いつおいでを願つて聞いても大体同じような答弁で終始しているので、私は今日は特にお聞きをしたいと思つて申上げたのです。
  140. 古池信三

    説明員(古池信三君) 大体今の委員長お話もよく私は了解できるのです。自由党の政府であるからといつて、何も無制限に自由にやるということは、これは現在の国際経済、或いは国内経済から言いましてもできることでもない。又それを首肯しておるわけでもないと私は考えます。従つて、必要に応じてそこに計画性を入れて行くべきであるということはよく私も了解できるのでありますが、只今申しましたように、これは石炭ばかりでなく、やはりもう少し総合的な計画を立てるべきである、私自身はそう考えております。結局電力で石炭の穴埋めをするか、或いは又石炭がこういうような事業に一つ需要を開拓して行くかというような点は、総合的に国家全体として考えなければならん問題であつて、そういう計画になりますと、これは非常に大事な問題で、むしろこれは内閣が全部関係各省一つなつてこれは研究しても十分その価値のある大問題であると考えます。従つて今のところ通産省だけで石炭に対してのみこういう計画ということは申上げませんけれども、併し、あらゆる今後は国家的な助成策というか、計画に基いた具体的な政策を明らかにして、もう少し積極的にやつて行くべきであるという御意見は十分私も傾聴いたしまして、努力をしたいと考えておりまするが、今日の段階においてそういうような総合的計画を皆様の前にはまだ発表するというなところに至つていないと思つております。
  141. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それで実は私はその点を大臣に御出席を願つて、そうしてはつきりとお約束を願いたいと私は思つておつたのです。それは総合エネルギー対策も結構です。何でもいいですが、そういう計画性のあるものを進めてもらいたい、進めようというお約束を願いたいと私は思つたわけです。ところが政務次官は大体御賛成を得たようですけれども、これはいずれ又労働委員会を月末くらいに開く予定でおりますことですから、通産省としてよく一つ御研究を願つて、この次にはもう少しまとまつた、一歩前進した考え方を述べてもらいたいと思うのです。私はいつやつても同じレコードで、何回やつてもちつとも歌が変らないのじやちよつと困るので、たまには変つた歌を聞かしてもらいたい、こう思うのです。
  142. 古池信三

    説明員(古池信三君) 只今私が申上げたのは、別に省の会議に諮つたとか何とかという問題ではないのでありまするが、大体そういう気持で大臣にもお話をし、又できるだけ努力をして行くということを申上げたので、この次のこの委員会にそれをどれだけ具体化してお話を申上げるように進捗をするかどうかということは、これはここでお約束はできませんけれども、努力はしてみたいと思います。
  143. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは明日まだ労働委員会を一回開きますので、午前中通産大臣に一つ出席願えませんか。
  144. 古池信三

    説明員(古池信三君) よく帰つて連絡いたします。
  145. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 明日私から特にお願いしますから、若し今日そういう態度をお約束願えないということならば、それじや一つお願いします。  どうぞ御質疑願います。
  146. 阿具根登

    ○阿具根登君 只今委員長の質問に或いは重複するかも知れませんが、先ず通産省にお尋ねしたいと思います。石炭局長が見えておるようですが、一応先ほどの代表者のかたの御意見を聞いておりますと、今までの通産省の考えでは昭和三十三年度には五千六百万トンの石炭が必要であるというようなことまで考えられていたようでありますが、現在非常に需要量が減少して来た。これに対して年間の需要量は今後どのくらいの見通しを持つておられるか、その数量をお聞きしたいということと、先ほど炭労の阿部委員長から政府に対して痛烈な批判があつたようでありますが、これにも関連いたしますが、通産省としては高単価問題に絡んで今年度までに七十五億の金を融資をされておる。ただこれは融資されつ放しであるか、或いはこういう大きな問題が起つておる場合に、これは衆議院で言われておつたのをちよつと私お聞きしたのですが、私企業だから何ら我々が関知するところではないと、こういうような御回答があつたようでありますが、そういう考え方であるかどうか。国民の税金の中から七十五億も、又今後数百億の金を出して企業の機械化をやつて行きたいという考えを持つておられるならば、それに附帯する考え方があるはずだと思う。これに対してどういう考え方を日本の炭鉱界に対して持つておられるか、どういう処置をとつておられるか、この点をお尋ね申上げます。
  147. 佐久洋

    説明員(佐久洋君) 先ほど申しました五千六百万トンと申しますのは、昭和二十七年のたしか初めであつたと思いますが、経済安定本部で作りました数字でございます。その数字自体については先ほど私申上げましたが、かなり現在から見ますると、需要を大きく見過ぎておるという欠点がございますので、これの再検討を経済審議庁のほうに今お願いをしてやつておるはずです。それで私自身の見通しから申しますと、本年度の国内炭の需要は先ほど申しましたように、まあ四千五百万トンくらいじやないかと思います。それから来年度におきましても、今後の朝鮮の復興特需とか、或いはMSAの援助がどういう形で来るか私よく知りませんが、そういうものに大きな変動がなければ、やはり四千六、七百万トン程度止まりじやないかというふうに思われます。再来年度についてはまだ何ものも考えておりません。  それから財政投資の七十五億、相当国民の血税がこれに注ぎ込まれておる、何か手を打つておるかというお話でありますが、これは炭鉱にただ国が金融をする、あとでこれは返還されるものであります。従つて特別にこれについて、この金を出しておるから、炭鉱経理の監督をやるとか、或いは利益配当の制限をやるとかいうところまで入る性質じやないとこう考えております。従つて現在は経理の監査も何も特別の法律を作つてやつておるというようなことはございません。一般の既往の法律に従つて経理状況報告を取るというようなことをしておるだけです。
  148. 阿具根登

    ○阿具根登君 政務次官からも一つ
  149. 古池信三

    説明員(古池信三君) 只今石炭局長が申上げたようなことです。ただ今後のやり方等についてはまだきまつたものはありませんから、それは申上げることもできませんが、仮にそういう金融でなく、別の強力なる助成策でもとるということになれば、又おのずからそれに対応して国家の指導監督ということもそれは講ぜられると思います。今具体的に申上げるような何物もまだできておりません。
  150. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはまあ仮に三十三年度までに七十九本の竪坑を掘る。それに附随して出て来る約七万人からの人員の余剰についても何ら考えなくて、ただ企業面だけ考えて数百億の国民の血税を融資される、こういうことなんですね。それに対して何らそれによつて起つて来る経済的な問題、或いは労働者の苦しい問題等は何も考えておらない、企業にだけ投資するのだ、こういう考え方ですね。
  151. 佐久洋

    説明員(佐久洋君) 七十九本の竪坑の開鑿によりまして、勿論そのほかに中小炭鉱については合理化工事というものは進めるわけでございますが、これが完成した暁には、いろいろの資料を検討してみますると、大体先ほど天日参考人からお話がありましたように、二十九万何千かの人間で足るという計算になるわけであります。その間における労務者については、これは自然減耗ということを従来の資料に基いて一応予想しておつたわけでございます。それから能率が勿論上りますし、従つて人間が減るわけでございます。それから生産コストの値下りというようなものも、ほかのフアクターが現状を維持するという前提で考えまして、全部が完成したときに二割ぐらい下る、こういう計算をやつております。ただ私どもとしては、この特に法律に基くとか何とかいうことでなしに、現実にこの工事の進捗状況に応じて工事効果というものを計算しておりますので、それは報告を取つて、工事効果が果してその通り行つておるかどうかという点については行政措置として指導して行きたい、こういうことは考えております。
  152. 阿具根登

    ○阿具根登君 それから早川専務理事に御質問いたします。専務理事の先ほどの陳述では、先ず第一に貯炭増が挙げられておつて、その中でも輸入炭並びに電油の圧迫等があるということを言われておる。第二には国際価格の割高のためであると、こういうことが言われております。第三には先ほど灰原事務局長が言つた、いわゆる戦前と戦後の労働能力の問題を言つておられる。かように思います。然らば重油、その他の強粘結炭等の輸入等に対してはどういうような考えを持つてどういう処置をとられたか、政府に対してはどういうとをやられたか、これを一つお伺いしますのと、第二番目の国際価格割高のためという問題についてお尋ねしたいと思いますのは、今外国炭から見れば日本の石炭が非常に高いということが言われております。事実高い。そうするなら今後どういうことで太刀打ちして行くつもりか。いわゆる今のあの輸送費等のかかるものを、或いは日本の商船で輸送するような場合にはもつと相手の石炭の値段が下つて来る。或いは手近な中国等から入つて来る場合にはもつと安い石炭が入つて来るかも知れない。そういうときにそれにどうして対抗して行く考えを持つておられるのか、今のようなお考えで行くならば、先ほど委員長が言つたように第二、第三、第四の首切りをやつて行く、それができなかつた場合には恐ら、ぐ第三番目に申しておられますように戦前のことをお考えになつて、労働者労働時間延長等の労働強化になつて来やしないかと、こういうような考えを持つわけであります。極端に申上げるならば、今の企業体の中で外国と太刀打ちするだけの炭価を維持することは不可能だということになりはせんか、こういう点を三つからめまして私御質問申上げたいと思います。
  153. 早川勝

    参考人(早川勝君) 第一のお尋ねでありますが、重油等の日本に輸入されることについて経営者側は如何なる努力をしたかというお尋ねでございました。それについては基本的には外国から入つて来ますところの重油のカロリーの価値において値段がやはり向うのほうが安いのでございます。それから外国炭についてもそうなつておりますので、値段がこちらのほうが対抗できないでいて、余り本当はえらそうなことは言えないのです。併しながら本当にそんなふうにどんどん無制限に入つてしまつては日本の基礎産業であるところの石炭産業は根も葉も枯れてしまつて、再び日本で又石炭がたくさん要るぞというときが仮に来たときにはどうしようもないという状態に追い込んでは困るという立場から、いわばそういう世界的な立場を考えながら、政府当局には輸入炭を或いは重油の輸入を成るべく抑制してもらいたいということは絶えずお願いをしておるわけです。それが今の私どもの重油並びに外国炭に対する対策のやり方であります。  それからもう一つは国際価格が割高である。それについての対策という点だつたと思いますが、それについて一体どういう方法で行くのだということでございます。実は現在この春から需給関係もございまして値段が急テンポに下りました。それは実にイレギユラーな、不規則な下り方になつております。併しながら私どもといたしましては或一定の長期計画の下にやはり合理的な足並みで以てコスト、従つて価格を下げて行くと、こういう方向に行きたいと思つておるわけであります。その具体的な方向としてはプロダクテイビテイ、生産性の向上ということだろうと思います。その方法として御心配の筋もございましたけれども、今のところの私どもとしてむちやくちやな労働強化を労働者諸君に強いる考えはございません。私どもとしては最前これも申しましたが、炭鉱の経営の内容が機械化に転移いたしまして、だんだんその方向が充実するに連れてそのテンポを合わせながら、労働者諸君の機械力のほうへの転換を考えて行く、その意味におきましては労働者諸君のプロダクテイビテイは上つて行きますけれども、個々人当りの労働量というものはさほどきつくなるのじやなくて、むしろ仕事がしやすくなるのだという方向で行きたいと思つております。ところでそれをもつと具体的に申上げますと、最前からの竪坑の開鑿も一つの方法でありましよう。又非常にコストの高い山を整理して、コストの低い良質の炭を集中的に出すということもその方法でありましよう。そういう一つの整備の仕方もありましよう。それから又機械設備等についても、採炭の機械、運搬の機械、積込みの機械、その他を更に充実して行く方法もございましよう。私どもはこの行き方を企業整備と実は呼びたくないくらいに思つておるのです。実は炭鉱の近代化だというふうに考えておるのです。実はこれは世界の趨勢だと考えております。それで私ども遅れ馳せながらその世界の趨勢によつて日本の炭鉱のプロダクテイビテイを上げて行く方向に進みたいということなのです。  それからそれが果して本当に外国の炭と対抗できるようになれるかというお尋ねだつたと思いますけれども、これについては日本の炭鉱企業の持つておる一つの宿命があるのでございます。それは何かと申しますと、一つだけではございませんが、端的に申上げますと、日本の炭鉱はこれを開発いたしまして、本当に営業するようになつて炭が出るまでに四、五年は開発期間がかかると思います。その間にやることは、生産の施設は勿論でありますけれども、そのほかに社会的施設、即ち道路を作り住宅を作り病院を作り、学校を作る、そういう一つの住宅を初めとする社会的施設を企業が負担しているわけです。これはアメリカに行つてみたら一つもございません。これはただ単にアメリカでは自動車置場があるだけです。住宅とか水道とか、病院とか、そういつたものは炭鉱会社は経営いたしておりません。日本は国とか或いは地方の公共団体が貧乏なものだからそれができなくて、自然企業が負担しておるのでないかと思うのですが、このために要する費用は開坑までに、いよいよ炭を出すときに、ざつとした言い方ですが、準備する費用がトン当り一万円かかるということですが、そのうち五千円は生産施設費であつて、あとの五千円というのは社会的施設費であるというふうに大体言われております。この分をその後の出炭にかけて償却して行くのですから、それだけ高い炭を社会に供給せざるを得んという運命を持つておるわけであります。もう一つ工合の悪いことは、値段が高いということは外国に比べてのことでありますが、外国の石炭は山から出しますと汽車積みにして結局炉前に持つて行くわけです。製鉄所なら製鉄所のフアーネスの前に持つて行くことになつておりますが、日本では残念なことに炭鉱の中心地が九州と北海道とに分れております。それは山から海岸まで炭を運びまして、船に積み換えて、海を渡つて東京とか名古屋、大阪へ持つて来て、又そこで積み換えをいたしまして工場に持つて行くという、この手数がかかるのであるが、外国ではかからない。この点についてもちよつと殆んど外国と変つている点ではないかと思うのです。その限りにおいて実に我々としては生産費を下げ、従つて値段も下げるという方向は持つのですが、限界があるのじやないかという気がいたします。それが今の私の率直な意見でございます。
  154. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の早川専務から都合の悪いところだけお聞きしたような気品がするのですが、確かにおつしやるように住宅等はありました。併し戦後のあの住宅の困難なるときに政府の融資によつてあれだけのことができておるのです。而も利子を免除されておる。こういう国としての措置をとられておると思うのです。而もそういうことはもう殆んど終つておるのじやないか。又今から新らしく炭鉱を作る場合のことを言つておられますけれども、それはそれとしての考え方として、例えばこの前のスト規制法のときにも非常に話題になりましたが、日本の長者番付を眺めて見るならば、殆んど炭鉱の経営者じやないか。それでなくても、例えば今度の首切りについては各社数十億の金ができておるのじやないか、去年だけでも十数億とか、それ以上の利潤を生んでおるのじやないか、こういうことを考える場合に、そういう利潤を生むために労働者はさんざ使われて、そして少し赤字になつて来たということになるならば、即ち需要炭が減つて来た、貯炭が殖えて来たということになれば、今度は首切りだということになれば、すべての皺寄せは労働者だけが持つておる。政府も、今お聞きしたようにその労働者の出した税金で融資をしておりながら、労働者の対策は何も考えておらない。会社も又利潤を生む間は生ましておいて、少し利潤が悪くなつたということになれば、今度は労働者の首を切つて行く、こういうことをされるならば、最も惨めな姿になつて行くのは労働者じやないか、これに対してはどのように考えておられるかをお伺いしたい。
  155. 早川勝

    参考人(早川勝君) 長者番付のお話が出ましたのですが、高額所得の人名表が出まして、又同様に法人のベスト・テンというのが御存じと思いますがやはり発表されておるのです。丁度一昨年の成績を去年発表しました。それによりますと法人の高額所得のベスト・テンの中に実は炭鉱会社が二社ございます。三井鉱山と三菱鉱業でございます。それは余り上位ではありませんでしたが、ともかく二社でございました。ところが昨年の成績を今年の六月十何日かに発表しました。これではもはや炭鉱会社は影をひそめております。それからまあ個人の分についてのお話がございましたが、これにつきましては二種ございまして、一つのほうは、実は経営の形態が匿名組合組織になつております。匿名組合でやつておりますので、その事業の収益というものが各組合員に配当されるのですけれども、それが組合長の収入になつて計算するものですから、それが膨れて計上されているというのが一つと、もう一つは、全く個人経営でございますが、これは非常に炭質やら炭層やらの状態のよい所を持つておられる中小の企業の人が、コストも安く、売値もいいというのを、丁度いい加減の分量、まだ本当の大きな近代経営にもしないでやつて行けるという程度の、本当に好条件のものの極く少数そういう企業家がおります。そういう企業家が長者番付に載つたのであつて、炭鉱業者全部がそんな長者ばかりではないのでございますから、その点はちよつとこの機会に弁明をさせておいて頂きます。  それからお尋ねの結局労働者側にだけ鐵寄せになるのじやないかという点についてでございます。これは私どもも本当にそうなるということは望みません。ただ先ほど私が当初申上げましたように炭鉱企業というものは実は大きな二つの慢性病に罹つておる。それはコスト高ということと生産性が低いという慢性病に罹つておるのでございまして、これは所詮やはり直さなければいけません。長い増産というマラソン競走のためにそういう慢性病に罹つてしまつたのだと思うのです。これは炭鉱の事業がそうなつております。経営者も労働者も実はその中で苦しみ抜いて来ておるのであります。併し私どもはそれをそのまま捨てておいていいということでございませんで、それを何によつてこの病気を直すかということは、私ども縷々申上げておりますように近代化という方式でございます。実は最前申上げることを落しましたが、最前のようにカツペを中心とする機械化、その他労力等も充実してやつております関係上、あの二十四年の下期と現在とのコストの比較をいたしてみますと、およそ二十四年の下期には平均のコストが三千円程度でございました。ところが物価と賃金その他がその後の三年間に上りました。賃金も三年に三回上りました。物価もとつかけひつかけ上りまして、そのほかのいろいろな諸経費も上りましたが、結局それらが二千五百円くらい上つておるのです。ところが二十七年の下期のコストはそれだけ上つていないということは、即ち三千円プラス二千五百円の五千五百円にはなつていないのです。四千五百円程度でございます。ということは一千円ほど吸収しておるということであります。この三年間に我々は機械を投入してやることによつて、実はそれだけの企業努力の効果が現われておるのではないかと思います。値段につきましてもこの三年間の足取りを見ますと、そういうふうないろいろな生産要素が値上りいたしたものでございますから、実は残念ながら価格も三年間で三割七分上つております。併し一般生産資材のほうは七割くらい上つております。ほかのものなら七割上つたかも知れませんが、それを三割七分にとどめたということは、私どもの企業努力の効果だろうと思つております。労働者も協力してくれたと思います。三年間における一日の実労働時間の増加というものは十八分でございます。労働者も働いてくれたと思います。私どもはそういうふうに考えまして、労働者も大いにやつてもらいたいと思つております。労使関係も立派なものにしたいと思つておりますが、とにかく炭鉱企業が近代化されて行く過程といいますか、その目標は私は必然的なことだろうと思いますし、又そうなければならないと思います。それでなければ日本は生きていけないとさえ思いますので、私はこの近代化という方向は推進さるべき社会的運命にあると思つております。  ただその場合に労働者の雇用量というものが結局現実問題として過剰になるわけであります。過剰雇用量をどうするかという問題になつて参ります。私は残つておる労働者労働強化になるかならんかという問題について具体的に当つてみなければわかりませんが、機械のほうに転換して行くのですから、仕事がしやすくなるという意味で労働強化にはならんと思います。併し余剰雇用量というものを抱えて日本の生産品のコストというものは下げられないのです。この点は企業家としてもできるだけの配慮もし、やりたいと思つておりますけれども、企業家の努力にも限界がありますが、私は日本の産業の生きる途で問題は雇用問題でないかとさえ思つておりますけれども、その意味においてこの余剰雇用量をどんなふうに取扱うかということについては、実は私自身考えるところもございますけれども、自分たちの力をやはり越えておるところだと思います。それをただ単に突き放すような冷たい措置はいたしたくありません。  ただ私ども昭和五、六年頃にやはり大きな不景気に逢着しまして、余剰雇用量を街頭に放り出したという時期に際会いたしました。そういう経験をお互いに持つておりましよう。併しそのときと今と比べますと、こんなことを言うて悪いかも知れませんけれども、そのときと今と比べまして、今はまだいいのでないでしようか。と言いますのは、あのときは経済界全体が非常に不景気のどん底でございました。それから企業といたしましても、本当にもうつぶれるかどうかというところに追い込まれて、全くお先真暗な中でああいう人員の整理が行われたのです。それからそのときの社会的施設としても失業手当なんかありませんでした。今度は社会保険としての失業手当制もあります。又企業としても可能な限りの退職手当、これは組合との間で妥結している退職手当のほかにプラスアルフアーを支給する。今だから私はやれるんじやないかとさえ思つておりますが、そういうことをして、目先できるだけのこともしながら、もう本当に最前のように、希望退職ではあるけれども、行先がなくて困る人のためにはできるだけのことをしてやりたいという熱意は持つております。併し長期的に言いまして、将来この過剰雇用量をどんなふうに組織的に、計画的に収拾して行くかということについては実は私どもの力を越え過ぎておるんじやないかと思つております。これは政治家の方々もお考え願いたいと、こう思つておるわけであります。
  156. 阿具根登

    ○阿具根登君 日本の置かれておる炭鉱の立場、宿命的な問題を今おつしやいましたが、これは炭鉱だけじやなくて、日本人全部がこの小さい島に八千五百万近くの人が生活しておるとするならば、全部が背負わされておる宿命だと思います。それならば企業のためにただ労働者だけに皺寄せされるというのは当らないと私は思います。日本と同じような敗戦のあとでそうして起ち上つておるドイツはもう皆さん御承知の通りなんです。労働者にしましても、日本と似通つたドイツの労働者のことを申しますと、炭鉱の労働者は全産業の中で優遇されて一番高い給料をもらつております。而も非常にコストが高い。一回もストライキをやつたことはない。こういうところに非常に私は学ぶべきところがあるんじやないかと思うわけです。何のために私はこういうことを言つておるか、これはすでに早川専務理事は御承知と思います。それと日本の今の立場を考える場合に、非常に私は相違があるというように考えるわけなんです。民族的に考えても非常に相違がある。あなた方の考えとドイツの経営者の考え方は随分違う。或いはあなたが言われるならば、労働者の考え方も違うんじやないかと言われるかも知れませんけれども、事実私は本で見或いは人に聞き、或いは向うへ行つて目で見て来たのですが、非常に違うと思います。それが日本では一つも取入れられておらない。いわゆる今まで経営者の方が言われる場合には、外国は機械化しているけれども、あの機械をすぐ日本に持つて来るということは立地条件として駄目だ。機械化はできない。幾分の機械化はできるかも知れないけれども、外国のまねをすることはできない。最初から手を挙げておられた。この頃になつて機械化はしなければいけない。このために人間が余るということになつて来ると、失業者に対してどういう対策をとつて行くのか。必要なときには非常に使つて来られて、そうして今言われたように昭和四、五年頃の苦痛は私も炭鉱労働者として味わつております。そういう会社が、今までにない苦痛を労働者にさせる、今失業保険は半年ありますが、これも冷却期間みたいになつております。併しそのあとを考える場合には、それではほかの産業は非常に好況であつて、手を拡げて待つているかというと、それは全くないのであつて、私はこの問題につきましては、一方的に労働者が宿命を負わされておる、宿命という名を付けるならば、経営者もその宿命を背負わなければいけないと思いますが、それは間違いでしようか。
  157. 早川勝

    参考人(早川勝君) 間違いと思いません。それは本当に全国民の宿命だと思います。ドイツでは御案内の通りマーシヤル・プラン等による外国の援助は生産手段に向けました。国民生活は非常に落ちたままで蹈張つたのがドイツの行き方だつたのです。日本では外国の援助資金は賃金と米の補給金に殆んど使いました。生産手段に入らないで、消費生活のほうのカバーになつて来たところの食い違いもあるのでしよう。精神的なものやら、外部を取り巻く国際的政治的なものもございましようけれども、ドイツのほうは実は国内がまとまつて、将来に希望を持つてやつていることは認めざるを得ません。それは経営者だけがぼんやりしているのか、或いは国民全体がぼんやりしているのか、これはもつと公平な方の判断に任していいと思いますけれども、結局過剰雇用量の問題につきまして余り……、ただ僕らも人間でございますから、人情を以てできるだけ温かいことをしたいと思いますけれども、ただ単に何といいますか、言葉が悪いので叱られるかも知れませんが、そういう感情的なことだけでなく、日本の全体の問題として考えてやつて頂きたいと思います。そうして阿具根さんの情というものは私はよくわかりますが、そういう考え方でやつて頂きたいと思いますけれども、私はこの過剰雇用量というものをそのまま抱えておつては、大産業或いは企業については共倒れになつてしまうような時期が来るのではないかとさえ恐れるのであります。ですから全体のために、やはり高い立場からこの問題を一つお考えを願いたい。こういうことを特にお願いします。
  158. 阿具根登

    ○阿具根登君 今早川専務がそういうふうにおつしやいますが、先ほど山本部長さんおつしやいましたように、全鉱山の六%から七%の自然退職があつておる。今度出されたのは一割二、三分から、或いは多いところは三割五、六分まで出ておるわけです。それは今の企業の中でそのくらいのものを抱えて行き切れないかと思うのであります。私は行けると思うのであります。  本当に考えて頂くならば、なぜそういう出血をしなければならないか、停年退職制が殆んど布かれておる。或いは自己の都合でどうしてもやめなければいけない人がおる。そういう人が年々歳々六分か七分か出ておるとすれば、一割何分かの人、二割何分かの人を今切らなくても、僅かの期間でも、そういうことはできると思います。なぜそういう出血をしなければできないか。又それだけに要する金があつたなら、ほかの方面にも十分企業家として利用できるんじやないかという考えを持つわけであります。早川さんのほうでは議論してもしようがないから、あと三井の山本部長さんにお尋ねしたいと思いますが、私も最近まで皆さんと同じところにおつた者ですから非常に工合が悪いのですけれども、一昨年一万二千近くの人が希望退職でやめて行つた。これは各炭鉱のほかにはありません。三菱も住友も、北炭も今やつておられる姿を二年前にやつておられる。而もそのときは非常に会社組合と話合つた上に円満に解決をした。ところがそのあとに今山本部長お話では採用も中止して来た。こういうようにおつしやつておりますけれども、私たちが聞いておる、又もらつておる資料によりますと、五千数百人の人を雇用しておられる。而も丁度雇用したくらいの人が馘首の該当になつておる。而もほかの炭鉱と違つて、只今灰原事務局長が言つたように、最初から太刀を振り上げてこれだけの人間はやめてもらう、希望者がおらなかつたらこれこれだけ何日から何日までに切る、こういう実はやり方はどうかと思います。而も北海道や九州を廻つてみますと、本当に首を切られて行く人はどこへ行つたらいいのか、それは本当に真剣なんです。そういう点を考えます場合、こういう大量の首切りがなぜ行われなければならないか、或いはいやしくも経営を担当しておられる皆さんは一年先、二年先の見通しは持つておられる、その計画は立てておられると思います。併し人間が立てた計画ですから、それが絶対とは申上げませんけれども、併し一昨年に一万二千名の人が整理されたということになれば、今時分に又整理されるということは経営者の無能を発揮するのであつて、而もその間に五千数百名の人が採用されておる。こういうことを考える場合に、何のためにそれは一昨年やられたのか、どういう計画を持つておられたのか、全くその時々に労働者の首が対象になつて来るとするならば、皆安心して私は仕事ができないのではないか、こういうふうに考えるわけですが、山本部長さんのお考えはどうですか。
  159. 山本浅吾

    参考人(山本浅吾君) 非常に多岐に亙つての質問ですが、要約すると、今お話の一昨年というのは昭和二十五年の十一月から末にかけて希望退職のみを募つた。その際は阿具根さんも三池の組合長として大いに協力して頂寺ました。そのときの計画は大体八千人くらいの方になつて、勇退をしてもらえばいいあのときは非常に貯炭の山で困つたが、それでやつて行けるだろうということであつた組合側とも協定ができて大いに協力してもらつた関係上、予想以上の退職者が出て困つた。一万二千名だから、それでどうしようかということで、結局それでは一万二千名の人に勇退してもらうことに決心をした。当座は配置転換の問題も起り、非常にどさくさしておりましたが、暫らくするうちに安定して、すくすくと企業の経営ができた。その際に、今お話の数字はちよつと違いますが、私どもとしては坑外は一人も採用しない原則を立てております。これはもう御承知の通りであります。但し鉱山が自分のところでやつている鉱業学校の生徒諸君はこれは特別に採用しようというようなことになつております。それから又特殊の看護婦さんとか交換手さんとかいうような人は採用することにしておりますが、原則としては採用しない。そうして坑内で減つて行く方を坑外から補充して行こう、転換して行こうという原則を立てたのであります。ところがさつき申上げるように、予定の人より四千人以上の多くの人がやめて行かれたし、坑内の人がたくさんやめて行かれた。そのとき大きな穴があいたので、坑内の、ただ配置転換のみではカバーできない。又配置転換をするにしても限度があります。従つてどうしても坑内の足らなくなつた人数は即坑外で補充しなければならんという数字も相当にある。それでその数字だけは補充して来たのであります。それから採用止めをしたのは本年の四月のことであります。四月からは坑内は採用しない、坑外は勿論のことであります。全然採用しないで来たのであります。ところが今のお話のように一万二千名の人がやめて、そうしてそのあとで相当補充をして、今日になつて四千五百名の人を整理しなければならんということは何事かと、こうおつしやるのでありますが、さつき冒頭に私は申上げたようにだんだん自然減耗で減つて行くほうと、機械化の進度が丁度ミートするならばそれでやつて行けるのであります。又私は日本の石炭需要が唐突としてそんな激しい打撃を受けないで済むならば、採用止めもしなくて、漸次合理化の進展と共に人の問題は解決し得たと思つております。併しながら我々の考える以上の大きな事態に逢着した。従つてここで何とか処理しなければやつて行かれんということになつて来たのですが。あなたはとにかくここで一割や二割の人は遊ばせていいのではないかと、こうおつしやるのです。併しながら真剣に企業をやつて行くという以上は、社会政策ではないのであつて、大勢の人を遊ばせておいてただ賃金を差上げるというわけにはいかないのです。工場内におきましても一人や二人でやつて行けるものを三人も四人もでやつて行くということはあり得ない。企業家の良心として人情論はあろうが、そうは行ないのです、従つて私が先ほど申上げた六山について大きな整理をした、坑の廃止なり統合なりをやつたというようなことから言えば、余る人は余る、それだけの人は勇退をしてもらわなければすつきりした形でできない。こういうことになるのであつて、やめて行く人は気の毒です。これは我々としてもわかつておりますけれども、そういう企業の実態であり、又日本の炭鉱の実状でもある。こういうことであるので組合には大いに協力を求めたのでありますが、協力を得られなかつた。一応あなたにはそれだけの御返事を申上げておきたいと思うのであります。
  160. 阿具根登

    ○阿具根登君 会社は慈善事業ではない、或いは遊ばせておく余裕はない、こういうことをおつしやるとは大体予想しておつた。人間が余つておるのを会社が抱えおく必要がないのじやないか、こういうことを言われるということは大体わかつておりますけれども、それでは人情面からだけでなくて、例えば今組合のほうが保安闘争ということをやつておる。これは全部が全部悪いのじやないと私は思う。例えば炭鉱の保安法を本当に守つたなら今の石炭が今の人員でもつて行くことができるか。こういう場合に本当に法治国家の我々が法というものを考えて行く場合に、その中にいろいろ御意見あると思います。併し今までのような状態ではないと私は思うのです。そうしたならば余剰人員がおるとは私は思いません。コストは高くなるとは思います。併し余剰人員とは私は思いません。  それから三井鉱山の場合、先ほど灰原事務局長からも言つておつたようでありますが、相当の大きな数字を出して、そして基準をきめてあるようでございますが、先ず私は考えたいと思いますのは、最初組合に対して五千七百三十八名首切りを出しておられる。而もその基準をずらつと列べて、何ぼでも切れるような基準を出してやつておられる。先ほど山本部長の御意見でも一万名以上切りたかつたのだ、こういうことを言つて、あとはお情で、入れておるのだというようなこともあつたのですが、その後交渉も何もないのに千二百名ばかり滅つておるわけです。職制のほうもそうなのです。千名が七百何名になつておる。こういう点から考えます場合に無益な刺激をされておるのじやないか。最初からそれだけ切る必要がないのに持つて来て、話に応じたならば一応は減してやろうというような数字があるのじやないか、こういうふうに考えるのです。交渉も何もしないでおるのに千何百名減つておる。最初は是が非でも五千七百三十八名は首切るのだ、やめてくれなかつたならばこれはこれこれの基準でこれこれの期間内で首を切るというようなことを言つておられる。ところが最近になつて千何百名減つておる。これはどういう意味でしようか。まあ余り可哀そうだからそれだけ減らしてやつたのだ、こういうことでしようか。或いは数字の読み違いだつたとおつしやるでしようか、或いはその何人、何百人というとこころまではわからないので、こういうような目安だというようなお考えだつたか。私はそれのよつて来るとこるは非常にそういうような刺激を与えておるというふうに感じるのですが、どうですか。
  161. 山本浅吾

    参考人(山本浅吾君) それは何にしても刺激はあるでしよう。それから又私が団体交渉の席上で申上げたことは、一万一百人の勇退を芳し願えるならば、会社としては償却も普通にやれて、それから二割の配当もできると、こういうのである。併しそのためには六億の金が要ります。これは組合に数字を以て提示したのでございます。併しながら会社が直ちに健全経営になつて、二割の通常配当ができるというところまで今この段階で推進めるということは適当でない。従つて次善の策で行こう、こういうことで鉱員については五千七百三十八名、それから職員については一千一名という数字を出したのです。それだつてこの危機を乗り越えて行けるかどうかということについては僅かに現状において収支がとんとんくらいになるという程度であります。一億二千万円くらいのプラスに多少はなつたと思うのです。極く僅かです。少し売値が下がればすぐ赤になります。或いはコストがちよつと上がれば、或いは坑木が一割か二割上がればすぐ赤になる、そういうものでありますが、あえてそういう中でやろうというのできめたのです。  併し私は団体交渉の席上で、さつき灰原君がお話になつたのだけれども、基準の問題と員数の問題と、日程の問題とプラスアルフアの問題も団体交渉の対象でよろしい、団体交渉で十分論議して下さつて結構です、併しその結果は、会社のほうで責任を持つて事業計画をきめたけれども、その事業計画に跳返りが来てもよろしい、こういうお話を申上げておる。そして私どもは経営者として事業計画をお話し申上げる場合に、余剰人員はこれこれである、これを如何なる方法で勇退してもらうかというところまで総合的にお話し申上げるのが経営者としての責任であろうと思う。そこで私どもは全般的にお話し申上げた。基準も申上げる、基準の内容について論議があるならば十分お聞きしましよう、いつでもお聞きしましよう、又員数についても十分お聞きしましようという話は十分した。併しながら全部撤回して、我々は零で闘争するのだから全部撤回しろと言う。こういうことでは経営者の責任において経営の合理化をやろう、人間の問題について話をしようということは話ができない、そこまで私は考えてお話し申上げたのです。繰返して十回も何とかして話しましよう、お会いしましようと言つたのだが、遂にお会いする機会がなくて残念でした。いよいよ二十四日に、明日の正午までにどうしてもお会い下さらんのか、もう一遍会つたらどうですかという最後のチヤンスを示したのでございます。併しながらどうしても我々としては会わないと言う。それでは一方的にやらざるを得ん、併しその段階において自然減耗等も考え、そしてとにかく歯を食いしばつて無理に相当先に追いやるようなことになるけれども、ここまでは我々においても辛抱しようじやないかということで、又団体交渉もしないで、会社が一方的に話もしないでそれで済んでしまうということは、私は、組合代表として四万八千人とおつしやつたけれども、その人たちに対して相済まんと、むしろ組合の立場として考えなければならんと、私は労務部長としてそういうふうに考える。そこで経営者としても団体交渉ができなくても、団体交渉は増そうじやないか、プラスアルフアーを増そうじやないか、数を減らそうじやないか、歯を食いしばつてやろう、自然減耗に待たう、こういうこ、にきめたのです。併しながら、その場合も坑内に優秀な人は相当温存しております。あなたのおつしやるような御心配は要らない。掘進の人或いはその他の人も坑内に温存しております。採炭の人がやめて行つたならばそこから相当出してやつてもらおうということで相当温存しております。人的には相当余裕がある。あなたは、なぜ会社は何人かの人を飼つておかんのか、なぜ養つておかないのかとおつしやるけれども、相当温存しておる。温存の上に更に温存になつておるので、あなた方がお考えになるところまでの数字はとにかく私は確保したつもりです。併しながら何しろ数字が多い、全体の数字からいうと〇・九七%くらいになつております。だから二割とか一割八分という問題でありません、全体的にはそういう数字になつております。今あなたからの御質問に対してはそういう御返事を申上げる次第なのです。
  162. 阿具根登

    ○阿具根登君 団体交渉の経緯を聞きましたが、私はそれにタツチするわけにいかないのですけれどもそれについては組合も言いたいことがあると思いますけれども、一、二私の質問を続けて行きますと、例えば先ほども出ておりました結核患者の人で一年半以上の人は首を切る、こういうことを言つておられます。二年以下の人は健康保険で生活しております。勿論健康保険の中には会社の金も入つておりますけれども、直接会社がそんなに困るような金が入つておるとは私は思えない。それから二年以上たつた人は医療保護で生活をしておるわけです。結核の罹つてそして二年以上たつたならば健康保険の手当も何も切れてしまいます。医療保護を月に七千円なり何がしかを受けて、そして細々と治療を続けておるわけです。そういう者も今度の対象として切られた。これは会社の経理上から見たら私はそんなに問題にならないと思うのでありますが、どうしてそういう者が対象になつたか。或いは今度は五十三歳以上、これは協約で五十五歳までと停年がきまつておると思うのです。そういう者も全然考慮しなくて切られた。或いは公傷三回以上、これは会社から言えば同じ坑内に下つて三回も怪我をするという奴はほやつとしておるのだと、こう言われるかも知れないけれども、何か世の中というものは、皆さんが今までお考えになつたことがあると思うのですが、悪いことがあれば二度三度と続くのです。誰一人坑内で自分の身体を自分で傷つけようと思う者はおらんと思います。或いは最も働く人が最も怪我をするかも知れない。或いは逆かも知れない。そういう人を対象にされておるということは、非常に社会的に見ても人道的に見ても非道と思うのです。それに対して山本部長はどういうふうなお考えでしようか。
  163. 山本浅吾

    参考人(山本浅吾君) 今の公傷の問題ですが、あなたは非常に長い間おられて、怪我をしないことは私は優秀な人たと思つております。今の一年間に三回も続けて公傷をされるということはこれは運が悪いとおつしやるけれども、通常人ではない。十分な注意を以て仕事に従事されるならば私は公傷を三回もされるということは先ずないと思います。併しながらここでどうも皆さんが読み落しておられるのだけれども、こういうことなんです。これは心身の故障、智能の低劣、その他により正常な業務が期待できない方なんです。そのうちでの一つの分類なんです。こういう人、こういう人でとにかく正常な業務のできない人、三回怪我をしても正常な業務のできている優秀な人もあるかも知れない。そういう人は除外です。三回もやつて正常な業務のできないような人はこれは産業戦線から離脱してもらうという、そういう順位になるべきであろう。例えば四千五百人の人に勇退をしてもらうとすれば、どこでどういう基準を設けるかということになるのですが、これは基準全体の構想をここで簡単に申上げますと、とにかく停年は五十五歳ですが、五十三歳以上の人は一応年齢の基準として勇退してもらおう。それから坑内に採用されて三年未満の人、坑外て六年未満の人、これは上の人と下の人を先ずやめてもらおう。併しながらそれでも会社でなくてはならん優秀な人ならおつてもらつていいではないか。併し一応の基準は、年輩の方と若い方とやめてもらつて、その中の部分から、ここで言います今の心身の故障、智能の低劣で、とにかく仕事の十分できない人、それから病弱によつて仕事がどうしてもできない人、これはもう産業戦線でどう選ぶかという場合、私は当然脱落をせざるを得ん順位になると思います。それからその次は能率の非常に悪い人、低能率、それから会社の事業に非協力な人、絶対に協力しない人、或いは協力性が非常に乏しい人、そういう人々に出て頂こう、優秀な人でいい人は残つて頂こう、今のような智能の低劣な人でも、これはちよつと矛盾するかも知れないけれども、智能の低劣といつてパラフレードの中にあつても優秀な人は残つてもらう。この中に書いてありますが、これは色神とか強度の近眼とか遠眼とか、乱視、或いは難聴、義手、義足、癲癇、こういうようなことが書いてあります。  これは一つの例であります。癲癇の人でも非常に優秀な人があります。天才の人にはそういう人があります。そういう人は残そうということを考えております。だから除外例はあります。併しながら一応産業戦線でどうしても例えば五千の人にやめてもらう、四千の人にやめてもらうという場合に、どこから切るかというときの順位はこういうところからやめてもらわなければしようがない、こういう順位です。今の結核をやられた人、或いは六カ月以上休んでおられる人、結核になつて一年半以上引続いて休んでおられる人、これは非常に気の毒です。併しそういう人、結核の人にも頭の優秀な人がたくさんいらつしやる。そういう優秀な人には残つてもらつていい。併しながら引続き一カ年半以上結核のために治療されておつて休んでおられる、そうして正常な業務の期待のできないような人ならどいてもらわなくちやしようがないじやないか。優秀な人にどいてもらう前にやつぱりこういう人たちにやめてもらわなくちやしようがないんじやないか。併しながら今度は健康保険で三年の療養給付が延長になりましたが、三年は健康保険でみて差上げていいんじやないか。そういう病人の人には別に親しくお見舞をして、これは僅かなものでありますが、二万円程度の見舞品も差上げていいんじないか、こういう特別措置も考えております。それはどうもあなたの人情論から言えば、どれもこれもみんな大事な人ばかりだ、みんな共に苦労した。みんなおいてやつてよいのじやないか、私もこれはわかる。併しながらそれはどうしてもできないという事情なら、順位をきめてかからなければならん。併しながらその順位をきめる団体交渉ができなかつたというために、どうなるかということがここではつきりしなかつたということは残念です。併しながら一応この基準を盾にして、さつき灰原君は、全然この基準を無視してやつたとおつしやるが、そうじやなくて、個々人の選定につきましては基準を盾にとつてやつております。それを一々細かく申上げるということだけは話を聞いてもらえばわかると思います。
  164. 寺本廣作

    ○寺本広作君 折角阿具根さんが熱心に質問をしておられるのに別に水を差すつもりは毛頭ない。委員の数も小人数になつておりますし、時刻も相当たつておりますので、できれば御熱心の余りではありますが、主張とか議論に亙らずに質問をやられて、適当な時刻に一つ委員会を閉ざして頂いたらいいかと思いますが、委員長のほうで然るべくお取計いを願いたいと思います。
  165. 阿具根登

    ○阿具根登君 私もそういう考えで進めたいと思います。どうも失礼いたしました。  会社側にばかり質問したから、今の点について組合も非常に言いたいことがあると思います。組合からちよつとお聞きして……。私たちは組合干渉するとか会社干渉するとか、そういうことでなく、こういう大きな問題が起つておるのはどうすべきかという問題を私たちも責任を持たなければならないと思います。今山本部長さんの御説明にも私はまだお尋ねしたいことがたくさんありますけれども只今寺本さんが言われたように時間も過ぎておりますし、委員も少いので、今の問題について当面の責任者というか、灰原事務局長もおられますので、ちよつと御意見をお聞きして終りにしたいと思います。
  166. 灰原茂雄

    参考人灰原茂雄君) 山本労務部長からいろいろお話があつたのですが、団体交渉のことなんですが、一方的に組合が非常な非協力振りを発揮したのでかくかくの状態なつたというふうに受取られると非常に困りますので、先ほど私はその点は十分申上げたつもりですが、再度重ねて申上げたいと思います。  第一番に人情論とか人情論でないとかいう前に、労働者を一人の人間として扱つてもらいたいと思うのは、これは労働組合だから言うのではなくて、近代的な人間関係の、特に労使関係の基準じやないかと思いますが、只今も山本労務部長がおつしやいましたように、個々の基準は一々面倒くさいから言わなかつたというふうに言われておる。それから言葉の中でも余剰人員を飼つておくとか養つておくというようなお話があつたのですが、実に残念なことだと思います。というのは、人間がやめて行くという場合に、お前はこの基準でやめるということが、せめてもの親心で会社は伝達すべきじやないかと思います。それは我々が盛んに撤回を主張いたしました基準を後生大事に守つておつたのですが、この基準を活用して、実は君はこういう基準に該当するので勇退を願いたい、この親心があつて然るべきだと思うし、私たちから言わせると、それは親心ではなくて、いわゆる当然な義務じやないかと思いますが、その点を面倒くさいので一々は一人々々は言わない。一人々々の労働者が生きるか死ぬかという大きな問題になつておるし、只今山元で盛んに言われておるのは、どうしてもおれはあの基準に該当しないという人は、やられてから聞きに行つておる。若し会社に自信があつてかくかくの基準でやつたと、不当労働行為になろうが、裁判に負けようが、この基準が正しくてこの基準で首を切つたのだという自信があるならば、何故に一人々々の労働者と簡単に片付けずに、一入の立派な人間として、君は済まんけれどもこういう基準でやつた、文句があるならば組合として法廷闘争なり解雇不当の訴えをやれるだろうというふうに言つてもらいたい。それを言つて頂かないということは、そもそも今度の団体交渉の基準じやないか、団体交渉が困難を極め、決裂を早めたという基準じやないかと思つております。  それから会社の基準の中には、一つ言い忘れておられるようですが、業務上に必要な特定人は除くということはちやんと入つておりましてたとえ個人の自由意思でこの際やめようと思つておつても、会社の都合によるものは会社から許可されない、こういうような制約もあるわけなんで、いわゆる希望退職というものは個々の自由な意思に基いてやるということとはちよつと違うわけなんであります。それから私ども団体交渉で一生懸命に主張したことは、基準を論議しないということではないのであります。基準を論議するし、それは労働協約でちやんと約束しておる。大量解雇がきまつた場合にはその一般的基準についてはやるということは十条、十五条にありますし、あなた方は何度も労働協約を死文と言うが、私たちは死文とは思わないので、ちやんとそれはある。但し覚書で取り交わしましたように、たとえ経営者の専権事項といわれ、経営権に属するといわれ、或いは労働組合が介入すべきでないといわれている事業計画、即ち企業の合理化要項につきましても、十分な話合いをするという約束はなされたのだから、その意味でその約束を果して十分論議をして、そのあとでやるのが正しいじやないか。あなた方は組合を相手にそういう重大な出血を合理化し、三井鉱山を若し起ち上らせようと思う意味でやるならば、私たちの言う通り組合会社との間におけるルールを守つて、七千名とか五千何百名とかいう振りかざした白刃を、而も非常に無理なきつい基準を列べ立てておかずに、それを引込めて、撤回して、誠意のある団体交渉を持つて欲しい。これはどこの労働組合でも言うはすでありますし、先ほどの早川さんのお話じやございませんけれども昭和五、六年の不況時代に比べるとまだ余裕はある。現にそういうことを言つておられる。退職金だつてプラスアルフアーが付くということも、そういうことになりましようが、もう少し慎重に労働組合と話合うことをやつて頂ければこういうことはありませんでしたし、私たちは何も事をかまえて一般基準その他を撤回しなければ団体交渉をしないという横着な言分をしたつもりは毛頭ありませんし、事実そうではないわけです。ただ八月二十五日まで会社が待つて、二十五日の正午までに団体交渉再開し、話合いをしないのであれば一方的にやるという通告は確かに参りましたけれども、私のほうは最初申上げましたように、会社組合労働協約或いは覚書に基く主張を続けておりますので、そういうふうな覚書労働協約を無視するような会社側態度が改められない限り決して満足な誠意のある平等な団体交渉はできない。そういう観点に立ちまして、どうしても撤回を主張せざるを得なかつたわけであります。  いろいろありますけれども団体交渉内部についても多分に申上げたい点がありますけれども、これは内部の問題で余り申上げたくないのですが、組合として皆さん方に訴えたいことは私は大体言つたつもりなので、これでやめたいと思います。
  167. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大変時間が遅くなりましたし、一応質問も出尽したようでありまするから、この辺で閉会をいたしたいと思いますが、その前に参考人として御多忙中御出席を煩わしましたことについて委員会として厚く御礼を申上げます。いずれ起きたことでありますから解決をされなければならん問題であろうと思いますので、どうか一つ将来の石炭産業に禍根を残さないように、労使双方御努力願つて解決せられんことを願つておきます。と同時に、私は最も高度の科学技術を駆使して行きまする石炭産業の経営について、宿命論がその説明に使われたということは、日本の産業にとつて悲劇であると考えるのであります。これはいずれ先ほど問題になりました、通産省におけるいろんな産業政策の私は一つの課題でもあろうと考えますので、当委員会労働委員会ではありますが、労働問題の重要な問題といたしまして、更にできるだけの努力をいたしたいと考えるわけでありまして、どうか一つ委員会に御協力を願いました態勢を今後も御継続を頂きたいことをお願い申上げておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時八分散会