○
参考人(
市川誠君) 全
駐留軍労働組合の
執行委員長の
市川誠であります。
駐留軍の労働問題につきまして、
参考人といたしまして、特に
労務基本契約の
改訂の問題、又この
改訂闘争に関連して行われた
ストライキの
決行に伴
つて発生した
事件等につきまして
陳述をいたしまして、国会におきまして十分な御配慮をお願いしたいと考えるのであります。
基本契約の
改訂闘争の
経緯につきましては、
只今小坂労働大臣、
福島調達庁長官からも概要述べられましたので、重複する点を省きたいと存じます。この
契約改訂の問題は、我々
組合の立場といたしましては、昨年
講和条約が発効いたしまして、
独立した際から
要求をしてお
つた問題であります。御
承知のように
日米労務基本契約、現在行われておりまするのは一九五一年の七月一日から実施されたものであります。
現行契約は
占領時代に作られたものでありまして、
独立後の
日本の
状態を考えて見ますると極めて不適当な
事項がありますので、我々はその
改訂を強く要望したのであります。昨年の八月に
軍案が出されまして、それ以後
政府と
軍側との
交渉が行われたのでありますが、特に十二月に至りまして、なかなか
政府代表間における
交渉が円滑に行かないというような点から、
労働組合の
代表を加えて
交渉を持つというように取扱われまして、十二月の三日から本年の三月十日までいわゆる三
者会議が開催されて参
つたのであります。この三月の十日までの
会議の間におきまして、
労務管理の主軸をなす問題につきましては、
日米両国政府が共同してこれを管理するという
原則がそれぞれ三者によ
つて確認をされたのであります。
組合側といたしましては、
労務基本契約の
改訂につきましては、
独立後に
おいては
日本政府が一切一元的に
労務を管理して行く、
軍側としては作業上の
指揮監督だけを行えばよいではないか、こういう主張をと
つてお
つたのでありますが、
数カ月に及ぶ
交渉の中から一応
譲歩いたしまして、
共同管理の
原則に
同意したのであります。
ところが三月以後三
者会議が閉鎖されて
しまつたのであります。たまたま六月に至りまして
最終的な
軍案というものが提示されたのでありますが、この
軍案を見たときには、私
どもが
不満ながら
同意である
ところの
共同管理の
原則をかなわ
軍側が一方的にこれを歪めておる、特権を要するにそこに主張しておる、こういうような事実が見られましたので、私
どもはこの点につきましては容易ならない問題であるというように考えまして、
組合の
態勢等をも整備いたしまして、この
改訂闘争をすることに
決定をしたのであります。七月の二十二日には
全国大会で
ストライキ権の
確立をいたしまして、そうして二十五日に
日本政府側に対しまして、八月の六日の午後一時までに
組合の
修正意見に対する
ところの
政府並びに軍の
最終的な
回答をもらいたいという
要求をいたしました。非常に
期限付きの
回答でありまして、期間が短いようでありますが、すでに昨年の十二月以来の
交渉でありまして、
組合の
修正意見は三
者会議の席上に
おいて十分に主張しました問題でありますので、新らしい
意見を提出いたしておりませんので、これだけの時間がありますれば十分に
政府並びに
軍側に
おいても検討した上で
回答は可能であろうと考えたのであります。このような
期限付きの
要求をいたしましてから、いろいろ
政府側でも
努力をされまして、八月の五日に三
者会議が持たれたのであります。この
会議におきましては、
組合側は
修正意見の中から八つほどの大きな柱を取出しまして、それについて軍並びに
政府の
態度を承わ
つたのでありますが、一番この
会議で遺憾でありましたのは、
政府と
軍側の
代表が正式に
文書によ
つて協定いたしました
ところの
共同管理の
原則について、これを確認するという
回答を得られなか
つたことであります。このような
事態を考えてみますと、他の
事項につきまして考慮するとかいう言葉が仮にあ
つたといたしましても、
文書で
両国政府代表が調印したものを確認することができないような
状態に
おいてはその他のことについて信頼をおくことも困難であろうというような
情勢判断をいたしたのであります。八月の六日に
政府から
文書で
回答をもらいましたが、それらの
情勢を十分に検討いたしました結果、
組合側といたしましては、もはやこのような
状態に
おいて
政府並びに軍の
誠意というものが期待することができないというように
判断をいたしまして、
労働協約に基きます
ところの
ストライキの
事前通告を行いまして、八月の十二日、十三日に四十八時間の
ストライキを
行なつたわけであります。
その後におきましても
政府も非常に
努力をされまして、
政府と軍との折衝も急がれたのでありますが、
組合側といたしましても第
一波ストライキを
行なつた後に平和的な
交渉の機会を求めまして、二十一日には再び三
者会議を持つというような
状態にな
つたのであります。この結果に基きまして、一応
組合側といたしましては再び第二波の
ストライキの
決行の
事前通告をいたしたのでありますが、なお
最後まで
組合としては平和的な
交渉による
努力を行うということも相添えて申入れたのであります。その後の
情勢によりまして、一応
組合側といたしましては
政府並びに軍の
誠意というものを期待いたしまして、
組合の
修正意見に対する
ところの検討の時間を与えるというようなことも考慮いたしまして、第二波の
ストライキを
中止をいたしたのであります。
それ以後二十九日或いは三十一日に
政府並びに軍の
首脳部と
組合代表との間における
交渉等を持ち、九月の一日に三
者会議が開かれるというような
状況に
なつたわけです。この九月一日の三
者会議の
状況につきましては先ほど
大臣から或いは
福島長官からも申されておりますが、
主文関係におきまして、
組合が特に主張しておりました
ところの
人員整理の取扱いの問題なり
保安基準の明確化の問題なり、或いは
保安解雇の人事措置に関する取扱いの問題、乃至は
団体交渉等の
主文関係の条文につきまして我々も
同意をできるという段階に至
つたわけであります。なおその他
給与の問題とか
組合活動の問題につきましても、
原則的な
事項につきまして一応我々が
同意をし、そして三者間に
おいてそれぞれの条文乃至は
原則事項について合意されるというような段階に至
つたわけであります。
九月五日に
組合と
調達庁の間でこの九月一日の議事録についてそれぞれ署名をいたしたのであります。勿論ここまで至りましたという点につきましては、
軍側の配慮なり及び
譲歩、又
政府といたしまして担当の人事を一新してまで
努力されたというような
努力というものが大きな力をなしてお
つたことも
組合側としては十分に
了解できるのであります。併し
契約主文について大よそ一致し、又
アネツクス或いは労働政策について
原則的に
了解されただけであります。勿論これらの九月一日に確認された
事項につきましては、なお残る問題といたしましては、
契約主文の中に経費の償還
関係の問題が
両国政府の間でまだ一致いたしておりませんので、それらの点が残
つております。仮にそれがまとま
つたといたしましても、なお且つ
軍側といたしましては
司令官の
承認なり、
政府側としては閣議
承認というような手続が残
つておりますので、正式な調印という段階までにはまだ若干の時間を要するというような
状況であります。
これらの
主文或いは
附属書を含んで大体九月三十日までに完成をいたしまして、十月一日から
主文、
附属書、すべてを含んで発効せしむるという目標をそれぞれ三者が
同意をいたしまして、現在
附属書或いは労働政策等につきまして
政府と
組合の間で
交渉がなされておる
状況であります。
組合といたしましては勿論残
つておるこの
附属書の中に、新らしい
契約案によります
ところの職階職務給を採用した場合の
給与の切換えの問題について大きな危惧があります。それは先ほ
ども触れました、
給与問題について今までもら
つておる
給与を下げないという、いわゆるセービング・クロースの問題が
原則的に確認されたのでありますが、このセービング・クロースの理解の仕方が
軍側と
組合側との間でなおかなりの開きがあります。これらをめぐ
つて、更に又各職種を職階のグレードに入れて行くというような問題についても非常に大きな問題点が残
つておりますので、
附属書の
交渉に
おいてはその
給与の問題が一番大きな難関として予想されております。
組合側といたしましては依然スト態勢を堅持いたしまして、なお平和的な
交渉で極力
解決する方針で臨んでおるのであります。九月一日に確認された事柄によりまして、一応基地で働く労働者に対しましても
日本の
労働三法が尊重されるという筋が通
つた形にな
つておりますが、この点につきましてはなお突き詰めて参りますれば、
行政協定の十二条と、同じ
行政協定の三条との
関係につきましてはなかなかすつきり割切れておりませんのであります。
我々といたしましては、一応現実的な労働問題の
解決という点から九月一日の条文について
同意をいたしたのでありますが、なお根本的な
解決の問題としては、これらの点が十分研究に値いする問題であろうというように考えております。特に我々がこの新らしい
契約がすべて合意をされて実施をされるという場合の事柄を予想して見た場合には
一つ大きな危惧があるのであります。それは
駐留軍の
労務の管理が
日米双方の
共同管理によ
つて行われる。で、
共同管理の
原則というものは、飽くまでも両者が対等であ
つて管理が行われるということでなければならんと思うのであります。占領以来八年間の経験の中から我々が
判断いたします場合には、新しい
契約が実施されました際に、よほど
政府がしつかりした肚がまえを以ちまして自主的に
労務管理を行うという決意を実行してくれない限り、新しい
契約が労働者に果してよりよい条件なり或いは労働環境をもたらすかどうかという点については、未だに完全に保障し得る段階には至
つておらないと思うのであります。
特に
駐留軍の
労務管理の問題につきましては、
軍側は三軍それぞれ軍系統によ
つて系統立
つて行われておりますが、
政府側の機構を見ました場合には、中央に
おいては
労働大臣が主管
大臣といたしまして、
調達庁がありまして行われておりますが、これが地方に行
つた場合に都道府県知事に対する
ところの委任業務にな
つております
関係上、なかなか徹底した
ところの指導といいますか、監督ということを期待することがやや困難な面もあるのであります。これらの点についても十分
政府側といたしましても今後についてもいろいろ検討をされ、又或る決意を持
つて当られるようにも我々は
了解をしておるのでありますが、新しい
契約が十分活きて運用されるというような点について、
契約改訂問題の将来の問題として、我々としましては大きな関心を持
つておる次第であります。
なお、
労働組合といたしましては、
政府との間に
労働協約を持
つておりますが、現行の
労働協約はこの新らしい
基本契約と関連いたしまして、実質的にはこの
契約改訂の三者
交渉で議論されましたこと或いは合意されたことが
労働協約の
内容にな
つて参りますので、
労働協約につきましては早急に
調達庁との間に
改訂の
交渉を持つような
状況にな
つております。
以上今回の
契約改訂闘争は一応
主文について大きな山を越したという点が言われるのでありますが、我々の考えといたしましては、やはり
独立国の労働者といたしまして、人間の自由といいますか、権利というものをやはり守る闘いである。そして又占領以来我々が汗の中から積み上げて来た
ところの既得権の確保というものが、今回の
契約改訂闘争の大きな主軸をなしてお
つたということを申上げておきたいのであります。
新しく合意された
契約主文の
内容でありますが、これは
人員整理の問題につきましては、排除すべき
労務者の数とか或いはペイ・ロール職種を軍が
決定をするということを
組合側も一応
同意をいたしたのであります。併しなお且つ具体的なこのような
決定を軍が行う場合には、
政府に対しましてその理由を通告し、又雇用の安定をできるだけ確保するために適当な事前の
調整を行うものとする。勿論
人員整理の実施手続は
附属書の中できめる、こういうように
主文できめられたわけです。この場合に従来
人員整理でいろいろ大きな問題を起しておりましたが、この
条項によりまして
政府が事前
調整の場合に十分労働者保護という見地から
軍側と折衝し
努力された場合には、従前いろいろ紛争を起しておりました問題が或る程度改善されるのではないかというようにも考えられます。
保安の問題につきましては、今回の
主文の中に
おいて
保安の
基準というものを一応明らかにされました。
占領時代に締結されて現在なお且つ有効な
基本契約の中に
おいては、これらの
基準というものは一切明示をされておらないのであります。
現行契約の
主文の七条には、単に
アメリカ政府の利益に反する者は直ちに雇用が終止をされるというような規定があるだけでありますが、九月一日の合意の
主文の中には
保安の
基準といたしまして三項きめられております。その(1)項は「作業妨害行一為、牒報、軍機保護のための規則違反、又はそのための企図若しくは準備をなすこと。」、(2)といたしましては、「在日
米軍の
保安に直接且つ現実に有害であると認められる政策を継続的に且つ反覆的に採用し若しくは支持する破壊的団体若しくは会の構成員たること。」、(3)「前記(1)項記載の活動に従事する者若しくは前記(2)項記載の団体若しくは会の構成員と合衆国軍隊の
保安上の利益に反して行動をなすとの結論を正当ならしめる程まで常習的に或は密接に連繋すること。」、これが
保安の
基準として定められたわけです。このような
基準に該当すると信ぜられるような者は新しく雇用されない。更に現在勤めております
労務者に対する取扱いでありますが、
契約主文の中では
只今申上げました三項の
保安基準に該当すると
軍側が思考下る場合には、
政府側は
軍側の通知に基き
最終的な人事措置の
決定あるまで、当該
労務者が
施設区域に出入することを差しとめるものとする。いわゆる立入禁止の措置をする。立入禁止の権限は
軍側にあるということを
組合側も
同意をいたしたのであります。勿論このような立入禁止の措置をとれられた場合は、その
労務者に対しては六割の就労手当が支給されるということも確認をされています。以上のように立入禁止の措置をと
つた後といたしましては、
軍側といたしましては、
労務者が
保安基準に該当するや否やに関する
決定をなすに当り
保安の許す限り該当理由をあらかじめ
政府側に通告するものとするというようにきめられております。この通告がありました場合には、
政府側は
軍側がその
決定をなすに資する情報資料を
軍側に提供し、及び
政府側の
意見及び見解を
軍側に述べることができるものとするというようにきめられております。勿論今回のこの
保安の
基準に該当するか否かというものの
決定権の問題でありますが、これは
契約主文には載
つておりませんですが、
附属書のほうに定められる予定にな
つておりますが、現地部隊の
司令官は
保安基準に該当するという
決定権がない。三軍の、陸海空軍の
司令官だけが
保安基準に該当するというこの
決定を下す権利を持つというように予定をされております。以上のような手続が
軍側に
おいてとられるわけでありますが、
軍側がそのような手続をと
つた後に、やはり該当
労務者が
保安基準に照して
軍側の
保安に危険であり、又は脅威となると
決定した場合には、
日本政府側といたしましては、
軍側の要請に応じて
軍側と協議の上第六条b項により当該
労務者に対し必要な人事措置をとるものとする。ここに
共同管理の
原則というものを立てたわけであります。更に又但書が付けられておりまして、
日本政府側といたしましては、「第六条b項に規定する手続を四週間以上に亙
つては利用する権利を有しないものとする。」、こういうふうに
主文に一応その時期的な制限が付せられたのであります。
以上のように取扱われますと該当
労務者の救済という点についてはなお不十分な点がありますが、更に
保安の
条項に一項付加えられたのであります。その
条項は「本条に規定する権限を行使するに当り、
軍側は
労務者の法律上の権利尊重を保障する措置を採るものとすることに相互に
同意する。」、こういう
条項が加えられたのであります。この
条項によりまして労働者が
保安解雇という
決定をなされて
不満がある場合には、
労働委員会に対する
ところの仲裁の申立なり裁判所に対する
ところの提訴というものの権利を持
つておる。更に又
労働委員会から原職復帰等の仲裁命令或いは裁判所の原職復帰の判決等があ
つた場合には、その命令、判決に従
つて十分な保護がなされるというふうに規定をされたのであります。以上が大体
保安に関する
ところの条文のあらましであります。
団体交渉の問題につきましては、
組合側といたしましては、強く
軍側が現実にと
つております実情と、今度
契約主文の中に打出された
ところの問題といたしまして、
労働組合以外の
労務者
代表を交謳つの相手とするということを明らかに認
つておりますので、この点につきまして重大な関心を持
つて反対をしてお
つたのでありますが、九月一日の
会議では、
労働組合は他の団体と異るという
組合の主張を考慮して修正条文というものが作成をされたのであります。なお
軍側も
政府側もいわゆる御用団体を育成するような意図は全然ないことを確認するというような
了解の上に条文が具体的に修正をされたのであります。
以上が
契約主文の中におきます
人員整理、
保安条項或いは
団体交渉に関する
内容であります。勿論その他の点についても言及をいたしたいと思いますが、時間も余りないようでありますから一応省略させて頂きます。
このような
契約主文に基いて
附属書の一として
給与表、
附属書の二として職務分類表、
附属書の三として管理手続、
附属書の四として船員
関係の取扱い等がきめられるわけです。
なお更に
労働政策指令といたしまして五つほど
軍案が出されておりますが、その
一つは組織された従業員団体との
関係、第二といたしまして訴願及び苦情、第三番目が
人員整理、第四番目が制裁の規定、第五番目が解任とい『ような五つの
労働政策指令がやはり
交渉、協議の対象にな
つておるというような
状況であります。これらの
附属書或いは
労働政策指令については、現存
政府との間で
組合と
交渉が持たれておるという
状況でございます。来週あたりいろいろ軍を交えての
交渉の段階になるのではないかというように予想されております。
以上が九月一日に合意された
労務契約主文の
内容、又は引続いて
交渉されます
附属書乃至は
労働政策指令についての概要であります。
次に申上げたいことは、
契約改訂闘争の中に
おいて、第一波のストライ干を行
つた際にいろいろの
事件が起
つております。これらの
事件については、
組合側といたしましては、その発生直後口頭を以てそれぞれ
調達庁、
労働省、外務省等に申入れをいたし、又その後
文書によ
つて申入れをいたしたのでありますが、未だに具体的に
解決をされておらないのであります。特にそれらの
事件について見ました場合には、第一波の
ストライキは、一応大局的に見ますと、余り大きな紛争というものはなか
つたというように我々も考えております。併し次に申上げるようないろいろな
事件が起
つておるのであります。その幾つかを申上げて見たいと思
つております。
我々の組織は二十一の都道府県に亙
つておりますので、かなりの件数がありますので、その中で若干のものだけを取上げて
陳述をいたしたいと考えております。
ストライキの
決行当日に
アメリカの軍人軍属の
行なつた暴行傷害
事件でありますが、その
一つは、八月十二日に東京地区のQ・Mの支部におきまして大型の軍用トラツク、これは
アメリカの兵隊が運転したのでありますが、このトラックが高速度でピケツト・ラインを通過した際に、支部の
組合員の中台良平君は足首骨折の重傷を負わされております。これは全治約二カ月で、今なお入院しておるという
状況であります。
第二といたしましては、同じ八月の十二日、東京地区の横田支部におきまして、支部の総蹶起大会に引続きましてデモを、
行なつた際に、同基地内より猟銃様の狙撃発砲によりまして泰楽好一君、鈴木照夫君川口利一君、宮下芳助君の四名がそれぞれ負傷を受けておる
事件があります。これらの
事件につきましては、成るべく我々としては現地的な
解決を図りたいと考えまして、それぞれ折衝をいたしたのですが、未だに
解決がついておりません。
軍側の
責任者の措置の問題についてもはつきりいたしておりませんし、なお又被害者に対する補償措置も何ら
決定を見ておらないというような
状況であります。次に
争議行為に対する報復的な行為、不利益な取扱いの例について若干申上げたいと思います。これは兵庫地区に起
つた問題でありますが、キヤンプ神戸、甲子園フイルド・メンテナンス所属ドライバー丹山昭三君に対しまして、八月十四日に同シヨップのサージヤンプ・ブーンより
争議中に赤旗を振
つて活躍していた。この赤旗というのは
組合旗でありますが、そういう理由ドライバーよりレバーに職種変更を申渡されてそれ以来兵隊の監視付きで炎天下に苛酷な或いはその他非常に重い作業等も監視付きで行われまして、八月二十四日遂に作業中卒倒いたしました。病院の診断を受けたのでありますが、これは県立の尼ヶ崎病院の診断を受けて、診断書に四日間の休養を要すと書かれたのでありますが、
軍側としては休暇は一日しか認めないというように言わわれておる
事件が起
つております。又同じ甲子園でありますが、八月二十七日に、これは検査工の緒方勝君と棚橋友之君は、本人の責任ではない、検査上のミスを理由に
解雇予告を受けております。本人は勿論
解雇される理由がないのでサインを拒否しております。八月二十八日、やはり甲子園でシヨツプ自動車修理工高井茂一君、竹内芳三君は仕事を怠けておるという理由で
解雇予告を受けておる。これも
解雇される理由がないのでサインを拒否しております。広島地区におきましては八月十四日に、これは呉市広弾薬庫荷扱夫の中村弘君、先村久信君、島村和一君、水切勝君の四名でありますが、作業を終
つて帰るというときに残業をせよというように言われたのですが、
ストライキが終
つたあとでかなり作業がたま
つておりまして、非常に無理でありまして、非常に皆疲れておりますので、今日は残業はできないと言
つたところが、他の者を煽動した、思想が悪いという理由で
解雇されております。
福岡の例を次に申上げますと、八月二十一日にキヤンプ博多では水道の配管工の小崎忠君、これは分会役員でありますが、部隊の利益のためという理由で
解雇されております。更に又キャンプ博多の
施設内に
おいては従来
日本人の宿舎があ
つて、そこに各個室に居住されてお
つたのでありますが、大野俊一君外十名は突然大部屋の合宿居住に変更を強要せられたのであります。同じキヤンプ小倉におきまして八月十七日にモータープール・ドライバー益永恒雄君、これは分会の
委員長でありますが、
司令官の命令に従わず車輌の手入れをしていなか
つたという理由で即日
解雇された。更に又八月二十二日には
組合に対しまして
軍側が労管を通じまして基地の外でビラを配
つても困るというような申入れをして来ております。これについては現在現地
交渉が行われておりますが、非常に我々としては遺憾な事柄だというように考えております。更にキヤンプ小倉におきましては、全国ストと別に、八月三日、四日に
ストライキを行な
つたのでありますが、八月五日には
軍側がいわゆるロック・アウトをいたして参
つたのであります。これについて我々としては
ストライキの実施時間は、明瞭に突入の時間と終了の時間を通告いたしてお
つたのですが、終了時間前、二時間前ぐらいの夜中にロツク・アウトをいたして参
つたわけです。これらのロツク・アウトのために多数の労働者が就労できなか
つたのでありますが、この場合の休業補償の問題が未
解決にな
つておるというような
事件がございます。
更に長崎の例でありますが、やはりこれは佐世保の海軍基地サブライト・ドライバー大久保金之助君が
解雇されておる。パブリック・ワーク通訳の田島喜三郎君が
解雇予告を受けておる。更に佐世保の海軍オーデナンス
関係では八月十五日附で一方的な厳重な制裁規定を発して、全従業員に
適用するということを主張して来ておる。又佐世保ではこれは
ストライキに入る前に八月の十一日に海軍の警備隊長が全員に対して
ストライキに入ることを威嚇するような不当な訓示を
行なつております。これらについても撤回の
要求をいたしておりますが、未
解決であります。
千葉の木更津の例を次に申上げますと、ここでは
軍側がピケツト・ラインの写真をと
つて、特にその中におる
労務者渡辺義一君に丸印を付けて
施設の中に数日間も掲示したので、渡辺君が下士官に写真の撤去を要望したが、聞き入れられなか
つたので、
組合に報告するため一時その写真を借用して
組合役員に報告した後、元の位置に戻したのであるが、この事実を指して
軍側は八月十八日、「
許可なくして
米軍の物資を持出した」という理由で
解雇をしておる、こういう
事件が起
つております。八月十四日にはこの木更津基地のメンテナンス中隊では、全員に対して罰則的に過重労働を行わせたというようなことも起
つております。
次に神奈川の事例を申上げますと、横須賀の海軍基地でありますが、ここでは一般兵食堂の
関係で、八月十八日、二十日の二回に亙
つてストライキの賛否の記名投票をさせたのでありますが、二十四日には、山下弘次君外十名のフォア・マンを「新鮮な空気を作るため」というような理由で格下げをいたしまして、代りに
ストライキに反対をした者を昇格充当しておるというような事例が起
つております。
次に埼玉の事例を申上げますと、キャンプ東京の朝霞地区におきましては、倉庫
関係のフオア・マン末武泰君を
ストライキ参加の意思表示をしたという理由で以てやはり降格させて、その代りに
ストライキに参加しないということを表明した者をフオア・マンに昇格させている。同じ朝霞
関係では、八月十四日に第八〇一三モータープール、ドライバー関口利平君は、スト当日ピケ隊長をしていたという理由でフオア・マンより降格させられ、更に又同じ日にR&Rフオア・マン高橋軍治君、これは朝霞支部副
委員長ですが、語学力が不十分という理由で以て職場変更を申渡されております。特にこの高橋君につきましては、職場変更をした後に、午後の五時から午前二時までという時間に就業させております。七十数名おります職場におきまして、午後五時からの勤務者は高橋君一人でありまして、而も交替制でさせてくれるのかということに対しては交替はない、永久にその勤務時間であるというようなことで変更をいたしておるのであります。八月二十二日、朝霞第八一七〇オーデナンス、サプライポイント事務員の佐伯利男君が原因不明の
解雇を申渡されております。
次に大阪の事例でございますが、これは九月一日日赤支部の支部長の山本一郎君が病気休暇をと
つている間に
組合活動をしたとの理由で
解雇をされた、勿論こういう事実がないので、これについても拒否をいたしておる、こういう
状況であります。
以上が
ストライキに派生いたしまして起
つた事件について事例を中土げたのでありますが、このよう
事件は他の地区におきましても数多くあるのであります。現在極力現地
解決の方針を以て
交渉を進めておりまして、若干の
事項について
解決を見つつありますが、今申上げたような事例についてはなお
解決できてないという
状況であります。
こういう段階におきましては、新らしい
契約下に
おいて円満な労使
関係を期待しようという我々の立場から申しまするならば、
政府が軍首脳と折衝されまして、
ストライキによ
つて軍側がと
つた一切の報復的な措置或いは不当な措置を全部撤回をするというような措置をと
つて、新らしい
契約下に
おいて十分に我々が期待し、お互い労使
関係当事者が信義誠実の
原則に立
つて相手を信頼して働いて行けるような
状態の事実例をこの
事件の
解決によ
つて打立ててもらいたい。又我々も打立てて行きたいというように考えております。
なお第二波の
ストライキが予想される
事態におきまして
軍側がいろいろと
文書を発行いたしまして労働者に呼びかけております。これらの点については時間も長くな
つておりますので多くを申上げませんが、若干の事例を引き出して申上げておきたいと思います。
極東空軍の兵站司令部で出した
文書の
内容の中から
一つと
つてみますと、「全駐労は八月二十八日午前六時より四十八時間
ストライキに入る事を
日本政府、
調達庁に通告した。
ストライキ期間中当司令部の方針として
日本の法律、諸規定、諸規則に許されている
ストライキ行為には全く干渉しない。
しかし当司令部は非
組合員、
組合員の如何を問わず自分の意志によ
つて皆様が勤務する事を望むならばこれを歓迎する。
ストライキ期間中勤務する者には当然
給与、手当の全額が支給され、
組合の
ストライキのために出勤できない者に対してはその期間の
給与、手当は支給されない。
ストライキに参加する
組合は次のことを為すことを禁止されている。
一、
ストライキ期間中暴力や脅迫によりて出勤を阻止すること。二、人垣を作り公路をふさぎ、交通を遮断すること。三、
駐留軍軍人や軍属の車を止めたり点検したりすること。当司令部は
ストライキ期間中勤務を希望する皆様が法的権利を与えられるようできるだけの
努力をすることを
決定した。当司令部は基地に勤務する権利のある従業員の入門を阻止する行為を取締るよう
日本警察に
要求し、特に駅からゲートまでの道を開けるよう要請した。
ストライキ期間中、フインカム及び立川基地に勤務する全
日本人従業員はフインカム、メインゲート第三、四、六及び立川基地第一、二、三の各ゲートを利用することが出来る。
ストライキ開始と同時に基地内でバス運転をし、乗降客のためすべてのゲート(フインカムと立川基地)に停止する。
日本人全従業員は
ストライキ期間中このバスを利用できる。
このような
文書を二十八年の八月二十五日に出しておるのであります。この中で謳われております警察に対する
ところの
要求に対して、立川の市警から次のような
回答がなされておるわけであります。
これは八月二十四日に市警の警察署長から第六四〇〇兵站司令部シイ・エル・モンロー殿になされておりますが、次のように書かれております。「八月二十四日附貴翰拝見しました。
八月二十八日午前六時より行われる全駐労のストについては、前回のストに鑑み警察の全責任に
おいて最善の警戒取締を実施するとともに、交通並に業務妨害その他ストに随伴して発生する犯罪については断固たる取締りを行います。
尚貴地に出入する
駐留軍関係者の生命、身体、財産の安全を確保する。こういうような
回答がなされておるのであります。
第一波のときには比較的警察官が中立的な
態度をとられたということについて我々も十分に認識しておるものでありますが、第二波が予想されるときにおきましては、各地方の
情勢を総合してみたときには、集団的なピケツト・ライン破りを警察官憲がこれを援助して行うというようなかなり確実性のある情報が瀕々として参
つてお
つたのです。それらの原因というものは、やはりこのような
軍側の
日本の警察官憲に対する
ところの
要求等から出てお
つたのではないかというように推察をいたしておる次第であります。
文書の点につきましては他にもございますが、一応省略したいと存じます。
これらの
事項につきましても、我々としましては
調達庁、
労働省、外務省等に申入れたのでありますが、この点につきましては
労働省から次のような見解が外務省に出されております。
「次のごとき
事項は極めて望ましくないか、又は
労働組合の正当な活動に対する支配介入、若しくは不利益取扱いとなる虞れがある。1、事前に
労務者に対して個別的にストに同調するや否やを
調査ずること。2、軍人等に「ストに参加する者は
解雇する」等の威嚇的言動を行わしめること。3、
争議に参加する者を軍の宿舎から排除すること。4、告示その他
文書により
争議に参加する者を不利益取扱する等の旨を示唆すること。」
こういうような見解が外務省に出されておるのでありますが、これについてまだ的確な、あとの具体的な
軍側の措置というものについては、遺憾ながら我々としてはこれを見ていないという
状況であります。
特に以上申上げた中で我々が遺憾に感じました点は、
施設内の宿舎に住ま
つております
日本人
労務者の立退きの問題でありますが、この点につきましては、
事件が山形県の神町、宮城県の矢本、それから広島県の江田島に一番烈しく起りました。山形県の神町と宮城県の矢本では、宿舎から立退を命ぜられまして、荷物を背負
つてピケツト・ラインについたというような
事態があ
つたのであります。この両地区はその後再びもとに戻
つております。広島県の江田島の例を
一つ申上げておきますと、
ストライキの第一波の十二日の晩に
軍側が兵力と軍用トラツクを応援いたしまして、強制立退を強行するというような
事態にな
つたのであります。江田島の宿舎には大体七百五十九名ほどの
労務者と家族が住ま
つておるのでありますが、深夜にあの狭い地域でそれだけの人たちが宿舎から追い出されて、どこへ行
つて寝ることができるかというような点を考えたときに、余りにも非人道的な措置というふうに、非常に強い憤りを我々感じたのであります。この点につきましては、江田島支部としては、
軍側が実力を以て立退をするならば、
組合側といたしましても実力を以てこれに対して居住権の防衛をするという
態度をきめたのであります。当時の
情勢といたしましては、そのままに放置する場合に
おいては明らかに流血の惨事を避くることはできないというような
事態が予想されましたので、我々は極めて遺憾でありましたが、この江田島支部に対しまして、宿舎に入
つております
組合員百名に対して就労する指令を出しまして、この宿舎立退問題に関連する
ところの軍と現地
労働組合等の対立紛争を一応回避する措置をと
つたのであります。併しその後の問題としては未だにくすぶ
つておる
状況であります。
施設内の
日本人の宿舎に関する問題につきましても、我々といたしましては、
政府が十分
軍側と折衝されまして、この点についてはつきりした居住権の保障されるような措置をと
つてもらわなければならないというように考えております。
以上非常に長い貴重な時間を頂きまして
ストライキに伴
つて発生した
事件について申上げたのでありますが、
最後に申上げます点は、
契約改訂の問題について折角軍、
政府の
努力、
組合側の
譲歩等によりましても、新らしい
契約について一応の希望というものが持てるようにな
つたのでありますが、たまたま今
陳述いたしましたような
事件がそのまま未
解決のまま放置されるような
状態におきましては、すでに或る支部におきましてはこの問題だけを以て地域的な
ストライキを
行なつて
解決を図るというような空気が強く出ておりますので、早急な
解決を望みたいと考えております。特に
駐留軍関係におきましては、現在全国的な時間制の短縮の問題と、首切りの問題が発生いたしておりますので、これらがからみ合
つて地域的にかなりな紛争が予想されるような
状態にありますので、我々といたしましては早急にこれらの問題が
解決をされまして、基地の中で働いておる労働者がやはり
日本の労働法で保障されておる権利というものをはつきり保障されるような制度というものを
確立をいたして行きたい。参議院の先般行われました決議等によ
つて日本の労働法は軍との
契約における
人事条項に優先するというような決議が折角なされておりまして、私
どもも深い感銘を覚えておるのでありますが、それらの決議の趣旨というものが
基本契約の
改訂の中に現実的に活かされ、又日々働いておる労働者の上にそのまま活かされて行くというような
事態がはつきり打ち立てられなけれ
ばいけないというふうに考えております。それらの点につきましても十分な御配慮をお願いしたい。
以上申上げまして私の
陳述を終りたいと思います。