運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-09-10 第16回国会 参議院 労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十日(木曜日)    午前十一時十九分開会   ————————————— 八月七日委員藤田進辞任につき、そ の補欠として阿具根登君を議長おい て指名した。 八月十日委員具根登君及び田中啓一辞任につき、その補欠として竹中勝 男君及び大谷瑩潤君議長おいて指 名した。 八月十一日委員梶原茂嘉辞任につ き、その補欠として河井彌八君を議長おいて指名した。 八月十二日委員大谷瑩潤君及び伊能芳 雄君辞任につき、その補欠として大屋 晋三君及び重宗雄三君を議長おいて 指名した。 九月九日委員大山郁夫君、竹中勝男 君、上條愛一君及び田畑金光辞任に つき、その補欠として堀眞琴君、阿具 根登君、東隆君及び永井純一郎君を議 長において指名した。 本日委員大屋晋三君及び重宗雄三君辞 任につき、その補欠として伊能芳雄君 及び田中啓一君を議長おいて指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君    委員            田中 啓一君            吉野 信次君            河井 彌八君            阿具根 登君            東   隆君            寺本 広作君            堀  眞琴君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    調達庁長官   福島愼太郎君    外務省国際協力    局次長     関 守三郎君    労働省労政局長 中西  実君   参考人    全駐留軍労働組    合中央執行委員    長       市川  誠君    全日本駐留軍労    働組合執行委    員長      川端 政男君    日本経済団体連    盟協力部長   師  勝夫君    関東特需労働組    合協議会議長  坂本  登君   —————————————   本日の会議に付した事件参考人の出頭に関する件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (米軍施設内における労働三法の適  用状況に関する件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  本日会議に付する事件労働情勢一般に関する調査でございます。継続調査でございます。公報でお知らせいたしましたように電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の施行状況についての調査が第一点であります。第二点は、米軍施設内における労働三法適用状況に関する調査が第二点であります。石炭鉱業における労働問題に関する調査が第二点であります。日産自動車株式会社における労働争議事件に関する調査が第四点であります。その他当面の労働行政についての調査等もあろうかと思いますが、それは時間の許す範囲内におい処理をいたしたいと考えます。  それから只今申上げました公報で御案内を申上げました調査をいたしまする上におきまして、それぞれ事件当事者から意見を聴取いたしたいと存じますので、参考人の招致について当委員会の御決定を願いたいと存じます。先ず米軍施設内における労働三法適用状況に関する調査におきましては、参考人といたしまして日本経営者団体連則並びに全駐留軍労働組合関東特需労働組合協議会全日本駐留軍労働組合のそれぞれ責任者の方にお願いをいたしたいと思います。それから日産自動車株式会社における労働争議調査につきましては、日産自動車株式会社並びに全日本自動車産業労働組合日産分会労働組合、それから日産自動車労働組合、これは第二組合であります。その責任者参考人として意見を求めたいと存じます。それから石炭鉱業における労働問題の調査につきましては、日本石炭鉱業連盟日本石炭協会三井鉱山株式会社日本炭鉱労働組合三井鉱山労働組合連合会責任者方々参考人としておいで願いたいと存じます。只今申上げました参考人を招致いたして意見を求める件は御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 異議ないものと認めましてさように決定をいたします。  ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  4. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) では速記を始めて下さい。  先ず最初米軍施設内における労働三法適用状況につきまして調査をいたしたいと存じます。本件につきましては、その調査の主なる要点は次のような点かと考えます。第一は、駐留軍労務者労務基本契約仮調印までの経過、第二には、新労務基本契約内容、第三には、争議中の不法行為及び不当労働行為の有無、若しあるといたしますならばその救済状況等でございます。で、第四には特需工場における人事条項、これは参議院の本会議決議以降の経過等調査であります。第五には、この争議中に発生いたしましたならばその発生したことのある不法行為不当労働行為について政府対策、或いは特需工場における人事条項修正契約を行おうといたしました場合の政府対策、こういうものについて調査をいたしたいと考えるわけであります。  只今委員会で御承認を得ました参考人としまして日経連師勝夫君、全駐労の市川誠君、日駐労の川端政男君、特需労連坂本登君の御著席をお願いいたします。  先ず労働大臣から只今諸点につきまして御所信を承わりたいと存じます。
  5. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今お話のありました日米労務基本契約につきましては、御承知のごとく昨年の六月更改せらるることになりまして、その後日米と申しますか、米軍日本政府並びに駐留軍労働に従事いたします全駐労或いは全日駐との関係におきまして話合いをいたしておつたのでございますが、種々経緯を経まして、本年の三月以降交渉が跡絶えてしまつておりました。組合側におきましてもこのことを甚だ不満とされておりまして、是非一つこの交渉を再開するように強く申入れがありましたのであります。政府といたしましてもその間種々努力をしたと思われるのでありまするが、なかなか進んでおりません。  私も労働大臣を拝命いたしまして以来、このことについてできる限り努力をいたしてこの解決を図りたいと考えておりましたのですが、やはりどうも両国間の言語が違うというようなことが非常に障害となりまして、その間に了解を得ることが困難に思われる点がございましたので、調達庁長官にここにおられます福島愼太郎君を迎えまして、そして更に強力に交渉してもらうようにしておりましたのであります。  全駐労におきまして、たしか六月十二日だつたと思いますが、スト権確立決定いたしましてその際に八月の十二日に第一波のストライキを行う、これは四十八時間ということに決定をされたかと聞いております。福島君を長官に迎えることになりましたのは六月二十四日でございました。それ以来三者会談を開くとか、或いはその間にその話のまとまりますように調達庁並びに米軍との間で会談を開く等、種々骨を折つて参りましたのであります。組合側の出されました八項目の要求というのを主点といたしまして交渉いたしましたが、その間にアメリカ軍のほうにおきましては、全面的に拒否することは一つもなかつたのでありまするが、さればとて全面的に承諾するというものもなく、何ら決定的なものを得ないままに打ち過ぎてしまつておりました。  従来の交渉は事務的に行われた弊がありまするので、この福島長官の発意で向う参謀次長級担当宮交渉に当つてもらうことにいたしまして、ハンロン少将がその当事者になつたのであります。そうこうしておりまするうちに八月十二日になりまして、その前後にいろいろ私どもとしまして駐留軍労務者の行いますストライキというものは両国間におきますいろいろな慣習の相異、言語の相異等もあつて、或いは不測の事態を生ぜぬとも限らんし、又政府としてもできるだけ組合側要求の線に沿つて努力をしておるのだから、これはでき得る限りにおいても避けてもらいたいということを申したのでありまするけれども、すでに決定をされておることでありまするし、これは行われることになつたのであります。併しこの間におきまして組合は非常によく統制的に行動されまして、多少のいざこざはございましたようでありまするが、概して平穏に四十八時間のストライキを終了いたしたのであり事。その間に起きましたいろいろな問題につきましては、私どもといたしまして、アメリカ軍おいて善処さるるようによく要望いたしております。  で、その後におきまして交渉は依然続けられましたのでありまするが、大体先ほど申上げましたように、拒否する点は一つもなかつたので、だんだんにこの問題は進んで参り、具体的に結論を見て参りましたので、組合側おいても非常に納得をせられて、その間更に参謀次長の上のハリソン参謀長或いはクラーク大将に直接話をいたしまして、大局的見地に立つてこの問題の善処方政府として要望いたしたのでございまするが、組合側におかれましても第二波のストライキというもの、即ち八月の二十八日に予定されておつたストライキはこれを回避さるることになりました。その結果も非常によろしくて、先方了解の度を深めまして、只今委員長お話のように、日米労務基本契約主文に関しまする仮調印をするに至つたのでありますが、九月一日にその話をまとめたのであります。  なお、これは本文附属書とございまして、アネツクスとございまして、このアネツクスのほうには組合員給与に関する点或いは組合活動に関する点等が含まれておりまして、非常に技術的なものであり、厖大なものでありまするので、その調整は今月一ばいかかつて、十月一日から発足するようにしたい、こういうことで先方との間に了解をつけ、現在話を進行さしております。  主としまして駐留軍に働きまする場合に日本労働三法適用、これは勿論のことでありますが、行政協宗第十二条に基くものであつて当然のことであります。これを強く書いておる。但し行政協定の趣旨を曲げるものではないということではあります。なお日米間におい共同管理をする、即ちいわゆる保安解雇をいたします場合にも、基準を厳格なものを置きまして、勝手に恣意的に保安に名をかりての解雇の行われざるよういたしまするし、或いはこの全体の員数をきめる場合、或いはペイ・ロールをきめるというふうなことの最終決定アメリカおいてその権限を持つのでありまするけれども、それに至るまでにおい共同管理原則に基いて日本側の意向を十分聴取するというふうなことが主文決定の主なる点であります。  なお、アネックスのほうでありますが、現給は保障するということ、更に組合活動におきましても、司令官許可を得てやる場合にはこれを認めるということにおい原則をきめて、細部の表現の仕方、或いは先ほど申しました一々の事務的な問題等の取極をするということは今後においてきめられるべき問題でございます。いずれにいたしましても非常に長い間の懸案でございました日米労務基本契約組合側同意を得まして、三者会談によりまして円満に一つ運び得ましたことは、非常に組合側の自重された良識ある態度に私は敬意を表するのであります。  なお、そうした労務関係基本がきまりましたということは、他の特需工場等におきまする或いは人事条項の問題についても解決基準がついた、こういうことにおいて非常に意味があると、こう考えておる次第であります。  なお具体的な点で私或いは申し落しておる点があるかも知れませんが、福島長官より補足してもらうことが適当かと思われます。
  6. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今の発言の中で、特需工場人事条項について解決一つ足がかりができたというお話なんですけれども労働省としてはおよそ足がかりをどういう工合に行政的に処理されようとしておるか、その点を少し伺いたいと思います。
  7. 中西実

    説明員中西実君) ここに資料をお配りいたしておきましたですが、特需工場におきましてすでに新しく契約を締結し直したところ、これからするところ、いろいろございます。そこで前々から向うとの話合い基本契約保安解雇の点について決定がありますれば、それに準じた取扱をしようというような話合いもありました。そこで一応基本契約条項決定いたしまして、これをどういうふうに準用するか、私のほうで一応案を作りまして、それをもとに経営者側代表としましては日経連を対象にし、それから労働側としましては関東地方特需労働組合協議会というのがございますが、それと話合いまして、日本側態度をきめて米側に折衝したい、かように存じておりまして、今その案を練りつつあるという状態であります。
  8. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それじや福島長官御発言ありますか。
  9. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 大臣から経過につきましては御報告がございましたので、もはや追加いたすところもないのでございますが、九月一日に仮調印いたしましたという事情について若干の御説明を申上げておいたほうがいいかと思います。  九月一日の午前中までかかりまして大体主文については内容の確定を見たわけでありますので、これを三者会談の議題に供しまして、三者の間でその文書について同意をしたということでございます。  なお附属書については非常に広汎なものでございますし、場合によつて数カ月若しくは一年かかつても当り前ではないかという考えの人もあるくらいの分量のものでございますが、これをできるだけ早く、一カ月という目標を定めて仕上げるということにいたしたのでありますが、九月一日主文承認に先立ちまして、その附属書の中で了解に達しなければならん点があるということで、二点その会議おい原則承認した。先ほど大臣からお話のありましたように、附属書おいて新職階制度職務給制度を採用するのでありますが、新らしいスケールの採用に当つて給与上の損失は生ぜしめないという原則労働政策指令という名前で附属されます中にあります、組合活動に関する問題の処理であるわけでありますが、そのうち組合専従職員の基地内立入りというような問題について、原則的にこれを許可制度として立入りを承認するという軍側譲歩を得ましたので、これを附属書については確認し、これを土台として九月一ばいにこれを整理する。そういう条件に基きまして本文の二十二ヵ条になりますものを三者の間で承認した。こういうことになるわけでございまして、本文そのもの仮調印をしたのではないのであります。そういう了解事項を要綱の形で作成いたしまして、それについて意見が合致して、これに基いて日本政府米軍との間に本文の調印をして差支えないということを三者の間で確認したということを新聞報道その他で特に仮調印と申しておるわけでございますので、その点御了解を得ておきたいと思います。  その内容等につきましては大臣からこれ又お話のありました通りで、特に附加えるところもないかと思いますが、内容はかなり長いものでありますが、これの最後の段階におきまして問題となりましたのは五点が残つたわけであります。ご承知のようにいろいろの経緯を経ましてアメリカ案というものが本年の六月頃に出て参り、それに対して日本政府の案、組合の案その他を調整いたしまして、八月十八日頃に日本政府アメリカ軍の間にいわゆる管理者案なるものができ上りましたのですが、その管理者案に対して組合反対意見、そういう諸点最後まで問題となつて、煎じ詰めまして残りましたものが五つあつたわけでありまして、そのうち三つ本文に所属すべき点、二つが附属書に所属すべき点、こういうことになりますので、附属書に属しまする点は先ほど申しました現給保障の点と、組合活動と申しますか、専従者の基地内立入り問題、本文に所属いたしまする三点というのが最後の三者会談で問題になつたわけでございますが、これは人員整理に関する条項保安解雇に関する条項並びに団体交渉に関する条項、この三つ最後まで組合との間に残りました。最終日に漸く組合案が大体におい米軍側承認を得るに至つた。こういう事情本文内容が確定いたしたわけであります。附属書につきましてはこれから細かい点は確定するわけでありますが、その原則只今申上げましたように、組合の了承を得た線と申しまするか、現給が新給与職階制の格付によつて変更される場合には保障条項によつて現在の給与を保障する、こういうこと。但し細かい点につきましては、現在の給与と申しますことが総給与総額であるが、或いは基本給のことであるか、若しくは給与総額と申しましても、どれからどれまでを入れるものであるかどうか、いろいろ細い点において若干意見の食い違いを見ておる点はあるのでございますが、今月一ぱいにその点の調整をしなければならない、そういうふうに考えております。  基地内の組合活動の点につきましては、日米間におきます組合活動の慣行の相違その他の点で非常に難航をいたしたのでありますが、一番困難でありました組合専従職員の基地内立入りも許可制度ということで米軍譲歩を得ましたので、これを基礎にして今後労働政策指令に盛られておりまする細部決定して参ろう、そういたしまして九月三十日までに最後附属書決定を終りまして、十月一日から新契約の効力を発生せしめる、こういう順序になつております。  簡単に仮調印に関連する事情を御説明申上げました。
  10. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして参、考人方々陳述を願いたいと思いますが、先ず最初に全駐留軍労働組合中央執行委員長市川誠君、それから全日本駐留軍労働組合委員長川端政男君から本件に対する御所信の表明を願いまして、それからあとに特需工場人事条項にこれがすぐ関連を持つわけでありますから、特需工場における人事条項の関頭を主といたしまして、日経連師勝夫君、それから関東特需労働組合協議会議長坂本登君の御所信を承わりたいと思います。それが終りまして、それぞれ委員各位から御質問もあろうかと思いますので、お答えを願いたい、こう考えます。  それでは市川誠君の御陳述を願います。
  11. 市川誠

    参考人市川誠君) 全駐留軍労働組合執行委員長市川誠であります。駐留軍の労働問題につきまして、参考人といたしまして、特に労務基本契約改訂の問題、又この改訂闘争に関連して行われたストライキ決行に伴つて発生した事件等につきまして陳述をいたしまして、国会におきまして十分な御配慮をお願いしたいと考えるのであります。  基本契約改訂闘争経緯につきましては、只今小坂労働大臣福島調達庁長官からも概要述べられましたので、重複する点を省きたいと存じます。この契約改訂の問題は、我々組合の立場といたしましては、昨年講和条約が発効いたしまして、独立した際から要求をしておつた問題であります。御承知のように日米労務基本契約、現在行われておりまするのは一九五一年の七月一日から実施されたものであります。現行契約占領時代に作られたものでありまして、独立後の日本状態を考えて見ますると極めて不適当な事項がありますので、我々はその改訂を強く要望したのであります。昨年の八月に軍案が出されまして、それ以後政府軍側との交渉が行われたのでありますが、特に十二月に至りまして、なかなか政府代表間における交渉が円滑に行かないというような点から、労働組合代表を加えて交渉を持つというように取扱われまして、十二月の三日から本年の三月十日までいわゆる三者会議が開催されて参つたのであります。この三月の十日までの会議の間におきまして、労務管理の主軸をなす問題につきましては、日米両国政府が共同してこれを管理するという原則がそれぞれ三者によつて確認をされたのであります。組合側といたしましては、労務基本契約改訂につきましては、独立後においては日本政府が一切一元的に労務を管理して行く、軍側としては作業上の指揮監督だけを行えばよいではないか、こういう主張をとつてつたのでありますが、数カ月に及ぶ交渉の中から一応譲歩いたしまして、共同管理原則同意したのであります。ところが三月以後三者会議が閉鎖されてしまつたのであります。たまたま六月に至りまして最終的な軍案というものが提示されたのでありますが、この軍案を見たときには、私ども不満ながら同意であるところ共同管理原則をかなわ軍側が一方的にこれを歪めておる、特権を要するにそこに主張しておる、こういうような事実が見られましたので、私どもはこの点につきましては容易ならない問題であるというように考えまして、組合態勢等をも整備いたしまして、この改訂闘争をすることに決定をしたのであります。七月の二十二日には全国大会ストライキ権確立をいたしまして、そうして二十五日に日本政府側に対しまして、八月の六日の午後一時までに組合修正意見に対するところ政府並びに軍の最終的な回答をもらいたいという要求をいたしました。非常に期限付き回答でありまして、期間が短いようでありますが、すでに昨年の十二月以来の交渉でありまして、組合修正意見は三者会議の席上において十分に主張しました問題でありますので、新らしい意見を提出いたしておりませんので、これだけの時間がありますれば十分に政府並びに軍側おいても検討した上で回答は可能であろうと考えたのであります。このような期限付き要求をいたしましてから、いろいろ政府側でも努力をされまして、八月の五日に三者会議が持たれたのであります。この会議におきましては、組合側修正意見の中から八つほどの大きな柱を取出しまして、それについて軍並びに政府態度を承わつたのでありますが、一番この会議で遺憾でありましたのは、政府軍側代表が正式に文書によつて協定いたしましたところ共同管理原則について、これを確認するという回答を得られなかつたことであります。このような事態を考えてみますと、他の事項につきまして考慮するとかいう言葉が仮にあつたといたしましても、文書両国政府代表が調印したものを確認することができないような状態おいてはその他のことについて信頼をおくことも困難であろうというような情勢判断をいたしたのであります。八月の六日に政府から文書回答をもらいましたが、それらの情勢を十分に検討いたしました結果、組合側といたしましては、もはやこのような状態おい政府並びに軍の誠意というものが期待することができないというように判断をいたしまして、労働協約に基きますところストライキ事前通告を行いまして、八月の十二日、十三日に四十八時間のストライキ行なつたわけであります。  その後におきましても政府も非常に努力をされまして、政府と軍との折衝も急がれたのでありますが、組合側といたしましても第一波ストライキ行なつた後に平和的な交渉の機会を求めまして、二十一日には再び三者会議を持つというような状態になつたのであります。この結果に基きまして、一応組合側といたしましては再び第二波のストライキ決行事前通告をいたしたのでありますが、なお最後まで組合としては平和的な交渉による努力を行うということも相添えて申入れたのであります。その後の情勢によりまして、一応組合側といたしましては政府並びに軍の誠意というものを期待いたしまして、組合修正意見に対するところの検討の時間を与えるというようなことも考慮いたしまして、第二波のストライキ中止をいたしたのであります。  それ以後二十九日或いは三十一日に政府並びに軍の首脳部組合代表との間における交渉等を持ち、九月の一日に三者会議が開かれるというような状況なつたわけです。この九月一日の三者会議状況につきましては先ほど大臣から或いは福島長官からも申されておりますが、主文関係におきまして、組合が特に主張しておりましたところ人員整理の取扱いの問題なり保安基準の明確化の問題なり、或いは保安解雇の人事措置に関する取扱いの問題、乃至は団体交渉等の主文関係の条文につきまして我々も同意をできるという段階に至つたわけであります。なおその他給与の問題とか組合活動の問題につきましても、原則的な事項につきまして一応我々が同意をし、そして三者間においてそれぞれの条文乃至は原則事項について合意されるというような段階に至つたわけであります。  九月五日に組合調達庁の間でこの九月一日の議事録についてそれぞれ署名をいたしたのであります。勿論ここまで至りましたという点につきましては、軍側の配慮なり及び譲歩、又政府といたしまして担当の人事を一新してまで努力されたというような努力というものが大きな力をなしておつたことも組合側としては十分に了解できるのであります。併し契約主文について大よそ一致し、又アネツクス或いは労働政策について原則的に了解されただけであります。勿論これらの九月一日に確認された事項につきましては、なお残る問題といたしましては、契約主文の中に経費の償還関係の問題が両国政府の間でまだ一致いたしておりませんので、それらの点が残つております。仮にそれがまとまつたといたしましても、なお且つ軍側といたしましては司令官承認なり、政府側としては閣議承認というような手続が残つておりますので、正式な調印という段階までにはまだ若干の時間を要するというような状況であります。  これらの主文或いは附属書を含んで大体九月三十日までに完成をいたしまして、十月一日から主文附属書、すべてを含んで発効せしむるという目標をそれぞれ三者が同意をいたしまして、現在附属書或いは労働政策等につきまして政府組合の間で交渉がなされておる状況であります。  組合といたしましては勿論残つておるこの附属書の中に、新らしい契約案によりますところの職階職務給を採用した場合の給与の切換えの問題について大きな危惧があります。それは先ほども触れました、給与問題について今までもらつておる給与を下げないという、いわゆるセービング・クロースの問題が原則的に確認されたのでありますが、このセービング・クロースの理解の仕方が軍側組合側との間でなおかなりの開きがあります。これらをめぐつて、更に又各職種を職階のグレードに入れて行くというような問題についても非常に大きな問題点が残つておりますので、附属書交渉おいてはその給与の問題が一番大きな難関として予想されております。  組合側といたしましては依然スト態勢を堅持いたしまして、なお平和的な交渉で極力解決する方針で臨んでおるのであります。九月一日に確認された事柄によりまして、一応基地で働く労働者に対しましても日本労働三法が尊重されるという筋が通つた形になつておりますが、この点につきましてはなお突き詰めて参りますれば、行政協定の十二条と、同じ行政協定の三条との関係につきましてはなかなかすつきり割切れておりませんのであります。  我々といたしましては、一応現実的な労働問題の解決という点から九月一日の条文について同意をいたしたのでありますが、なお根本的な解決の問題としては、これらの点が十分研究に値いする問題であろうというように考えております。特に我々がこの新らしい契約がすべて合意をされて実施をされるという場合の事柄を予想して見た場合には一つ大きな危惧があるのであります。それは駐留軍労務の管理が日米双方の共同管理によつて行われる。で、共同管理原則というものは、飽くまでも両者が対等であつて管理が行われるということでなければならんと思うのであります。占領以来八年間の経験の中から我々が判断いたします場合には、新しい契約が実施されました際に、よほど政府がしつかりした肚がまえを以ちまして自主的に労務管理を行うという決意を実行してくれない限り、新しい契約が労働者に果してよりよい条件なり或いは労働環境をもたらすかどうかという点については、未だに完全に保障し得る段階には至つておらないと思うのであります。  特に駐留軍労務管理の問題につきましては、軍側は三軍それぞれ軍系統によつて系統立つて行われておりますが、政府側の機構を見ました場合には、中央においては労働大臣が主管大臣といたしまして、調達庁がありまして行われておりますが、これが地方に行つた場合に都道府県知事に対するところの委任業務になつております関係上、なかなか徹底したところの指導といいますか、監督ということを期待することがやや困難な面もあるのであります。これらの点についても十分政府側といたしましても今後についてもいろいろ検討をされ、又或る決意を持つて当られるようにも我々は了解をしておるのでありますが、新しい契約が十分活きて運用されるというような点について、契約改訂問題の将来の問題として、我々としましては大きな関心を持つておる次第であります。  なお、労働組合といたしましては、政府との間に労働協約を持つておりますが、現行の労働協約はこの新らしい基本契約と関連いたしまして、実質的にはこの契約改訂の三者交渉で議論されましたこと或いは合意されたことが労働協約内容になつて参りますので、労働協約につきましては早急に調達庁との間に改訂交渉を持つような状況になつております。  以上今回の契約改訂闘争は一応主文について大きな山を越したという点が言われるのでありますが、我々の考えといたしましては、やはり独立国の労働者といたしまして、人間の自由といいますか、権利というものをやはり守る闘いである。そして又占領以来我々が汗の中から積み上げて来たところの既得権の確保というものが、今回の契約改訂闘争の大きな主軸をなしておつたということを申上げておきたいのであります。  新しく合意された契約主文内容でありますが、これは人員整理の問題につきましては、排除すべき労務者の数とか或いはペイ・ロール職種を軍が決定をするということを組合側も一応同意をいたしたのであります。併しなお且つ具体的なこのような決定を軍が行う場合には、政府に対しましてその理由を通告し、又雇用の安定をできるだけ確保するために適当な事前の調整を行うものとする。勿論人員整理の実施手続は附属書の中できめる、こういうように主文できめられたわけです。この場合に従来人員整理でいろいろ大きな問題を起しておりましたが、この条項によりまして政府が事前調整の場合に十分労働者保護という見地から軍側と折衝し努力された場合には、従前いろいろ紛争を起しておりました問題が或る程度改善されるのではないかというようにも考えられます。  保安の問題につきましては、今回の主文の中におい保安基準というものを一応明らかにされました。占領時代に締結されて現在なお且つ有効な基本契約の中においては、これらの基準というものは一切明示をされておらないのであります。現行契約主文の七条には、単にアメリカ政府の利益に反する者は直ちに雇用が終止をされるというような規定があるだけでありますが、九月一日の合意の主文の中には保安基準といたしまして三項きめられております。その(1)項は「作業妨害行一為、牒報、軍機保護のための規則違反、又はそのための企図若しくは準備をなすこと。」、(2)といたしましては、「在日米軍保安に直接且つ現実に有害であると認められる政策を継続的に且つ反覆的に採用し若しくは支持する破壊的団体若しくは会の構成員たること。」、(3)「前記(1)項記載の活動に従事する者若しくは前記(2)項記載の団体若しくは会の構成員と合衆国軍隊の保安上の利益に反して行動をなすとの結論を正当ならしめる程まで常習的に或は密接に連繋すること。」、これが保安基準として定められたわけです。このような基準に該当すると信ぜられるような者は新しく雇用されない。更に現在勤めております労務者に対する取扱いでありますが、契約主文の中では只今申上げました三項の保安基準に該当すると軍側が思考下る場合には、政府側軍側の通知に基き最終的な人事措置の決定あるまで、当該労務者が施設区域に出入することを差しとめるものとする。いわゆる立入禁止の措置をする。立入禁止の権限は軍側にあるということを組合側同意をいたしたのであります。勿論このような立入禁止の措置をとれられた場合は、その労務者に対しては六割の就労手当が支給されるということも確認をされています。以上のように立入禁止の措置をとつた後といたしましては、軍側といたしましては、労務者が保安基準に該当するや否やに関する決定をなすに当り保安の許す限り該当理由をあらかじめ政府側に通告するものとするというようにきめられております。この通告がありました場合には、政府側軍側がその決定をなすに資する情報資料を軍側に提供し、及び政府側意見及び見解を軍側に述べることができるものとするというようにきめられております。勿論今回のこの保安基準に該当するか否かというものの決定権の問題でありますが、これは契約主文には載つておりませんですが、附属書のほうに定められる予定になつておりますが、現地部隊の司令官保安基準に該当するという決定権がない。三軍の、陸海空軍の司令官だけが保安基準に該当するというこの決定を下す権利を持つというように予定をされております。以上のような手続が軍側おいてとられるわけでありますが、軍側がそのような手続をとつた後に、やはり該当労務者が保安基準に照して軍側保安に危険であり、又は脅威となると決定した場合には、日本政府側といたしましては、軍側の要請に応じて軍側と協議の上第六条b項により当該労務者に対し必要な人事措置をとるものとする。ここに共同管理原則というものを立てたわけであります。更に又但書が付けられておりまして、日本政府側といたしましては、「第六条b項に規定する手続を四週間以上に亙つては利用する権利を有しないものとする。」、こういうふうに主文に一応その時期的な制限が付せられたのであります。  以上のように取扱われますと該当労務者の救済という点についてはなお不十分な点がありますが、更に保安条項に一項付加えられたのであります。その条項は「本条に規定する権限を行使するに当り、軍側労務者の法律上の権利尊重を保障する措置を採るものとすることに相互に同意する。」、こういう条項が加えられたのであります。この条項によりまして労働者が保安解雇という決定をなされて不満がある場合には、労働委員会に対するところの仲裁の申立なり裁判所に対するところの提訴というものの権利を持つておる。更に又労働委員会から原職復帰等の仲裁命令或いは裁判所の原職復帰の判決等があつた場合には、その命令、判決に従つて十分な保護がなされるというふうに規定をされたのであります。以上が大体保安に関するところの条文のあらましであります。  団体交渉の問題につきましては、組合側といたしましては、強く軍側が現実にとつております実情と、今度契約主文の中に打出されたところの問題といたしまして、労働組合以外の労務代表を交謳つの相手とするということを明らかに認つておりますので、この点につきまして重大な関心を持つて反対をしておつたのでありますが、九月一日の会議では、労働組合は他の団体と異るという組合の主張を考慮して修正条文というものが作成をされたのであります。なお軍側政府側もいわゆる御用団体を育成するような意図は全然ないことを確認するというような了解の上に条文が具体的に修正をされたのであります。  以上が契約主文の中におきます人員整理保安条項或いは団体交渉に関する内容であります。勿論その他の点についても言及をいたしたいと思いますが、時間も余りないようでありますから一応省略させて頂きます。  このような契約主文に基いて附属書の一として給与表、附属書の二として職務分類表、附属書の三として管理手続、附属書の四として船員関係の取扱い等がきめられるわけです。  なお更に労働政策指令といたしまして五つほど軍案が出されておりますが、その一つは組織された従業員団体との関係、第二といたしまして訴願及び苦情、第三番目が人員整理、第四番目が制裁の規定、第五番目が解任とい『ような五つの労働政策指令がやはり交渉、協議の対象になつておるというような状況であります。これらの附属書或いは労働政策指令については、現存政府との間で組合交渉が持たれておるという状況でございます。来週あたりいろいろ軍を交えての交渉の段階になるのではないかというように予想されております。  以上が九月一日に合意された労務契約主文内容、又は引続いて交渉されます附属書乃至は労働政策指令についての概要であります。  次に申上げたいことは、契約改訂闘争の中において、第一波のストライ干を行つた際にいろいろの事件が起つております。これらの事件については、組合側といたしましては、その発生直後口頭を以てそれぞれ調達庁労働省、外務省等に申入れをいたし、又その後文書によつて申入れをいたしたのでありますが、未だに具体的に解決をされておらないのであります。特にそれらの事件について見ました場合には、第一波のストライキは、一応大局的に見ますと、余り大きな紛争というものはなかつたというように我々も考えております。併し次に申上げるようないろいろな事件が起つておるのであります。その幾つかを申上げて見たいと思つております。  我々の組織は二十一の都道府県に亙つておりますので、かなりの件数がありますので、その中で若干のものだけを取上げて陳述をいたしたいと考えております。ストライキ決行当日にアメリカの軍人軍属の行なつた暴行傷害事件でありますが、その一つは、八月十二日に東京地区のQ・Mの支部におきまして大型の軍用トラツク、これはアメリカの兵隊が運転したのでありますが、このトラックが高速度でピケツト・ラインを通過した際に、支部の組合員の中台良平君は足首骨折の重傷を負わされております。これは全治約二カ月で、今なお入院しておるという状況であります。  第二といたしましては、同じ八月の十二日、東京地区の横田支部におきまして、支部の総蹶起大会に引続きましてデモを、行なつた際に、同基地内より猟銃様の狙撃発砲によりまして泰楽好一君、鈴木照夫君川口利一君、宮下芳助君の四名がそれぞれ負傷を受けておる事件があります。これらの事件につきましては、成るべく我々としては現地的な解決を図りたいと考えまして、それぞれ折衝をいたしたのですが、未だに解決がついておりません。軍側責任者の措置の問題についてもはつきりいたしておりませんし、なお又被害者に対する補償措置も何ら決定を見ておらないというような状況であります。次に争議行為に対する報復的な行為、不利益な取扱いの例について若干申上げたいと思います。これは兵庫地区に起つた問題でありますが、キヤンプ神戸、甲子園フイルド・メンテナンス所属ドライバー丹山昭三君に対しまして、八月十四日に同シヨップのサージヤンプ・ブーンより争議中に赤旗を振つて活躍していた。この赤旗というのは組合旗でありますが、そういう理由ドライバーよりレバーに職種変更を申渡されてそれ以来兵隊の監視付きで炎天下に苛酷な或いはその他非常に重い作業等も監視付きで行われまして、八月二十四日遂に作業中卒倒いたしました。病院の診断を受けたのでありますが、これは県立の尼ヶ崎病院の診断を受けて、診断書に四日間の休養を要すと書かれたのでありますが、軍側としては休暇は一日しか認めないというように言わわれておる事件が起つております。又同じ甲子園でありますが、八月二十七日に、これは検査工の緒方勝君と棚橋友之君は、本人の責任ではない、検査上のミスを理由に解雇予告を受けております。本人は勿論解雇される理由がないのでサインを拒否しております。八月二十八日、やはり甲子園でシヨツプ自動車修理工高井茂一君、竹内芳三君は仕事を怠けておるという理由で解雇予告を受けておる。これも解雇される理由がないのでサインを拒否しております。広島地区におきましては八月十四日に、これは呉市広弾薬庫荷扱夫の中村弘君、先村久信君、島村和一君、水切勝君の四名でありますが、作業を終つて帰るというときに残業をせよというように言われたのですが、ストライキが終つたあとでかなり作業がたまつておりまして、非常に無理でありまして、非常に皆疲れておりますので、今日は残業はできないと言つたところが、他の者を煽動した、思想が悪いという理由で解雇されております。  福岡の例を次に申上げますと、八月二十一日にキヤンプ博多では水道の配管工の小崎忠君、これは分会役員でありますが、部隊の利益のためという理由で解雇されております。更に又キャンプ博多の施設内においては従来日本人の宿舎があつて、そこに各個室に居住されておつたのでありますが、大野俊一君外十名は突然大部屋の合宿居住に変更を強要せられたのであります。同じキヤンプ小倉におきまして八月十七日にモータープール・ドライバー益永恒雄君、これは分会の委員長でありますが、司令官の命令に従わず車輌の手入れをしていなかつたという理由で即日解雇された。更に又八月二十二日には組合に対しまして軍側が労管を通じまして基地の外でビラを配つても困るというような申入れをして来ております。これについては現在現地交渉が行われておりますが、非常に我々としては遺憾な事柄だというように考えております。更にキヤンプ小倉におきましては、全国ストと別に、八月三日、四日にストライキを行なつたのでありますが、八月五日には軍側がいわゆるロック・アウトをいたして参つたのであります。これについて我々としてはストライキの実施時間は、明瞭に突入の時間と終了の時間を通告いたしておつたのですが、終了時間前、二時間前ぐらいの夜中にロツク・アウトをいたして参つたわけです。これらのロツク・アウトのために多数の労働者が就労できなかつたのでありますが、この場合の休業補償の問題が未解決になつておるというような事件がございます。  更に長崎の例でありますが、やはりこれは佐世保の海軍基地サブライト・ドライバー大久保金之助君が解雇されておる。パブリック・ワーク通訳の田島喜三郎君が解雇予告を受けておる。更に佐世保の海軍オーデナンス関係では八月十五日附で一方的な厳重な制裁規定を発して、全従業員に適用するということを主張して来ておる。又佐世保ではこれはストライキに入る前に八月の十一日に海軍の警備隊長が全員に対してストライキに入ることを威嚇するような不当な訓示を行なつております。これらについても撤回の要求をいたしておりますが、未解決であります。  千葉の木更津の例を次に申上げますと、ここでは軍側がピケツト・ラインの写真をとつて、特にその中におる労務者渡辺義一君に丸印を付けて施設の中に数日間も掲示したので、渡辺君が下士官に写真の撤去を要望したが、聞き入れられなかつたので、組合に報告するため一時その写真を借用して組合役員に報告した後、元の位置に戻したのであるが、この事実を指して軍側は八月十八日、「許可なくして米軍の物資を持出した」という理由で解雇をしておる、こういう事件が起つております。八月十四日にはこの木更津基地のメンテナンス中隊では、全員に対して罰則的に過重労働を行わせたというようなことも起つております。  次に神奈川の事例を申上げますと、横須賀の海軍基地でありますが、ここでは一般兵食堂の関係で、八月十八日、二十日の二回に亙つてストライキの賛否の記名投票をさせたのでありますが、二十四日には、山下弘次君外十名のフォア・マンを「新鮮な空気を作るため」というような理由で格下げをいたしまして、代りにストライキに反対をした者を昇格充当しておるというような事例が起つております。  次に埼玉の事例を申上げますと、キャンプ東京の朝霞地区におきましては、倉庫関係のフオア・マン末武泰君をストライキ参加の意思表示をしたという理由で以てやはり降格させて、その代りにストライキに参加しないということを表明した者をフオア・マンに昇格させている。同じ朝霞関係では、八月十四日に第八〇一三モータープール、ドライバー関口利平君は、スト当日ピケ隊長をしていたという理由でフオア・マンより降格させられ、更に又同じ日にR&Rフオア・マン高橋軍治君、これは朝霞支部副委員長ですが、語学力が不十分という理由で以て職場変更を申渡されております。特にこの高橋君につきましては、職場変更をした後に、午後の五時から午前二時までという時間に就業させております。七十数名おります職場におきまして、午後五時からの勤務者は高橋君一人でありまして、而も交替制でさせてくれるのかということに対しては交替はない、永久にその勤務時間であるというようなことで変更をいたしておるのであります。八月二十二日、朝霞第八一七〇オーデナンス、サプライポイント事務員の佐伯利男君が原因不明の解雇を申渡されております。  次に大阪の事例でございますが、これは九月一日日赤支部の支部長の山本一郎君が病気休暇をとつている間に組合活動をしたとの理由で解雇をされた、勿論こういう事実がないので、これについても拒否をいたしておる、こういう状況であります。  以上がストライキに派生いたしまして起つた事件について事例を中土げたのでありますが、このよう事件は他の地区におきましても数多くあるのであります。現在極力現地解決の方針を以て交渉を進めておりまして、若干の事項について解決を見つつありますが、今申上げたような事例についてはなお解決できてないという状況であります。  こういう段階におきましては、新らしい契約下において円満な労使関係を期待しようという我々の立場から申しまするならば、政府が軍首脳と折衝されまして、ストライキによつて軍側がとつた一切の報復的な措置或いは不当な措置を全部撤回をするというような措置をとつて、新らしい契約下において十分に我々が期待し、お互い労使関係当事者が信義誠実の原則に立つて相手を信頼して働いて行けるような状態の事実例をこの事件解決によつて打立ててもらいたい。又我々も打立てて行きたいというように考えております。  なお第二波のストライキが予想される事態におきまして軍側がいろいろと文書を発行いたしまして労働者に呼びかけております。これらの点については時間も長くなつておりますので多くを申上げませんが、若干の事例を引き出して申上げておきたいと思います。  極東空軍の兵站司令部で出した文書内容の中から一つつてみますと、「全駐労は八月二十八日午前六時より四十八時間ストライキに入る事を日本政府調達庁に通告した。ストライキ期間中当司令部の方針として日本の法律、諸規定、諸規則に許されているストライキ行為には全く干渉しない。  しかし当司令部は非組合員組合員の如何を問わず自分の意志によつて皆様が勤務する事を望むならばこれを歓迎する。ストライキ期間中勤務する者には当然給与、手当の全額が支給され、組合ストライキのために出勤できない者に対してはその期間の給与、手当は支給されない。ストライキに参加する組合は次のことを為すことを禁止されている。  一、ストライキ期間中暴力や脅迫によりて出勤を阻止すること。二、人垣を作り公路をふさぎ、交通を遮断すること。三、駐留軍軍人や軍属の車を止めたり点検したりすること。当司令部はストライキ期間中勤務を希望する皆様が法的権利を与えられるようできるだけの努力をすることを決定した。当司令部は基地に勤務する権利のある従業員の入門を阻止する行為を取締るよう日本警察に要求し、特に駅からゲートまでの道を開けるよう要請した。ストライキ期間中、フインカム及び立川基地に勤務する全日本人従業員はフインカム、メインゲート第三、四、六及び立川基地第一、二、三の各ゲートを利用することが出来る。ストライキ開始と同時に基地内でバス運転をし、乗降客のためすべてのゲート(フインカムと立川基地)に停止する。日本人全従業員はストライキ期間中このバスを利用できる。  このような文書を二十八年の八月二十五日に出しておるのであります。この中で謳われております警察に対するところ要求に対して、立川の市警から次のような回答がなされておるわけであります。  これは八月二十四日に市警の警察署長から第六四〇〇兵站司令部シイ・エル・モンロー殿になされておりますが、次のように書かれております。「八月二十四日附貴翰拝見しました。  八月二十八日午前六時より行われる全駐労のストについては、前回のストに鑑み警察の全責任において最善の警戒取締を実施するとともに、交通並に業務妨害その他ストに随伴して発生する犯罪については断固たる取締りを行います。  尚貴地に出入する駐留軍関係者の生命、身体、財産の安全を確保する。こういうような回答がなされておるのであります。  第一波のときには比較的警察官が中立的な態度をとられたということについて我々も十分に認識しておるものでありますが、第二波が予想されるときにおきましては、各地方の情勢を総合してみたときには、集団的なピケツト・ライン破りを警察官憲がこれを援助して行うというようなかなり確実性のある情報が瀕々として参つてつたのです。それらの原因というものは、やはりこのような軍側日本の警察官憲に対するところ要求等から出ておつたのではないかというように推察をいたしておる次第であります。文書の点につきましては他にもございますが、一応省略したいと存じます。  これらの事項につきましても、我々としましては調達庁労働省、外務省等に申入れたのでありますが、この点につきましては労働省から次のような見解が外務省に出されております。  「次のごとき事項は極めて望ましくないか、又は労働組合の正当な活動に対する支配介入、若しくは不利益取扱いとなる虞れがある。1、事前に労務者に対して個別的にストに同調するや否やを調査ずること。2、軍人等に「ストに参加する者は解雇する」等の威嚇的言動を行わしめること。3、争議に参加する者を軍の宿舎から排除すること。4、告示その他文書により争議に参加する者を不利益取扱する等の旨を示唆すること。」  こういうような見解が外務省に出されておるのでありますが、これについてまだ的確な、あとの具体的な軍側の措置というものについては、遺憾ながら我々としてはこれを見ていないという状況であります。  特に以上申上げた中で我々が遺憾に感じました点は、施設内の宿舎に住まつております日本労務者の立退きの問題でありますが、この点につきましては、事件が山形県の神町、宮城県の矢本、それから広島県の江田島に一番烈しく起りました。山形県の神町と宮城県の矢本では、宿舎から立退を命ぜられまして、荷物を背負つてピケツト・ラインについたというような事態があつたのであります。この両地区はその後再びもとに戻つております。広島県の江田島の例を一つ申上げておきますと、ストライキの第一波の十二日の晩に軍側が兵力と軍用トラツクを応援いたしまして、強制立退を強行するというような事態になつたのであります。江田島の宿舎には大体七百五十九名ほどの労務者と家族が住まつておるのでありますが、深夜にあの狭い地域でそれだけの人たちが宿舎から追い出されて、どこへ行つて寝ることができるかというような点を考えたときに、余りにも非人道的な措置というふうに、非常に強い憤りを我々感じたのであります。この点につきましては、江田島支部としては、軍側が実力を以て立退をするならば、組合側といたしましても実力を以てこれに対して居住権の防衛をするという態度をきめたのであります。当時の情勢といたしましては、そのままに放置する場合においては明らかに流血の惨事を避くることはできないというような事態が予想されましたので、我々は極めて遺憾でありましたが、この江田島支部に対しまして、宿舎に入つております組合員百名に対して就労する指令を出しまして、この宿舎立退問題に関連するところの軍と現地労働組合等の対立紛争を一応回避する措置をとつたのであります。併しその後の問題としては未だにくすぶつておる状況であります。施設内の日本人の宿舎に関する問題につきましても、我々といたしましては、政府が十分軍側と折衝されまして、この点についてはつきりした居住権の保障されるような措置をとつてもらわなければならないというように考えております。  以上非常に長い貴重な時間を頂きましてストライキに伴つて発生した事件について申上げたのでありますが、最後に申上げます点は、契約改訂の問題について折角軍、政府努力組合側譲歩等によりましても、新らしい契約について一応の希望というものが持てるようになつたのでありますが、たまたま今陳述いたしましたような事件がそのまま未解決のまま放置されるような状態におきましては、すでに或る支部におきましてはこの問題だけを以て地域的なストライキ行なつ解決を図るというような空気が強く出ておりますので、早急な解決を望みたいと考えております。特に駐留軍関係におきましては、現在全国的な時間制の短縮の問題と、首切りの問題が発生いたしておりますので、これらがからみ合つて地域的にかなりな紛争が予想されるような状態にありますので、我々といたしましては早急にこれらの問題が解決をされまして、基地の中で働いておる労働者がやはり日本の労働法で保障されておる権利というものをはつきり保障されるような制度というものを確立をいたして行きたい。参議院の先般行われました決議等によつて日本の労働法は軍との契約における人事条項に優先するというような決議が折角なされておりまして、私どもも深い感銘を覚えておるのでありますが、それらの決議の趣旨というものが基本契約改訂の中に現実的に活かされ、又日々働いておる労働者の上にそのまま活かされて行くというような事態がはつきり打ち立てられなければいけないというふうに考えております。それらの点につきましても十分な御配慮をお願いしたい。  以上申上げまして私の陳述を終りたいと思います。
  12. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして全日本駐留軍労働組合執行委員長川端政男君の陳述をお願いいたします。
  13. 川端政男

    参考人川端政男君) 全日本駐留軍労働組合執行委員長川端政男であります。全日本駐留軍労働組合代表いたしまして、私から労務基本契約及び基地内における労働三法適用等につきまして陳述いたしたいと思います。  労務基本契約の問題につきましては、先ほどから日本政府部内及び全駐労の市川委員長から詳しく陳述がありましたので、私からは共同闘争をやつておりました関係上省略いたしたいと、このように考えております。  そこで私といたしましては、今回のストライキに対しましての米軍の不当行為及び労働三法が現在基地内においてどのようになつておるかという点と、今回の労務基本契約ができましても非常に不備な点がたくさんあるわけであります。その点を陳述いたしたいと思います。  先ずお手許に配付いたしたのでありますけれども、今回のストライキにつきましての不法行為で一番大きな問題は、而もこれは米軍不法行為といたしまして集約されたというふうに考えておるのでありますが、神奈川県の日吉町にありますところの、部隊各は極東軍副官部管理総局という工合になつておるわけであります。ここは五百名程度の従業員であります。仕事は印刷関係をやつておるわけであります。ここにおきまして部隊長が従来非常に温情主義をとりまして、福利厚生施設とか、そういつた問題につきましてはなかなかよくやつてくれたのであります。ところが今回のストライキによりましてかんかんに怒つて、従来そういう工合に温情主義をとつてつたのが、ストライキをやつたというので十二、十三日のストライキ以降におきましては、すでに十五項目に亙るところ不法行為が出て来ておるわけであります。  第一番目の事例といたしましては、十二、十三のストライキ直後、八月十四日に職場に対しましてタイム・カードの捺し忘れを一回やつた者は口頭譴責、二回の場合には本人を呼出して注意してそれを書類で示す、三回目は懲戒解雇にするということを公示したわけであります。第二番目は、就業時間中、八月二十日に職場に次のごとく掲示したわけであります。勤務時間等を軍人監督者の直接の承諾なくして変更違反した場合、一回目は注意書である、二回目につきましては警告書である、三回目には解雇する、こういうことを出しております。そのほかにいろいろとたくさんあるのでありますが、一番我々が考えております大きな問題は、人員整理の問題或いは解雇の問題、次に職種変更の問題、次に役付手当を、ストライキをやつた者は全部殆んどでありますけれども、取消すというところ問題等が起つております。  それから次に感情的な問題としましては、印刷工場におきましては従来機械が背が高い関係上椅子に坐つてつたわけです。ところがその椅子をストライキが終つた直後に全部取上げまして、これを薪に焚いてしまつたという事例が発生しております。そこでそれ以降につきましては全部中腰で以てやつておるという状況にあります。その次のやはり感情的な問題では、従来は医務室で部隊外に医療品を取りに行つたわけです。ところがその医療品を取りに行く場合には自動車を借してくれたのでありますが、そういつたものも全然廃止したというような問題。次に司令官のドライバーがストライキに入つたという理由で以て司令官が非常に感情的になりまして、お前の顔を見るのもいやだ、車に触れるなということで仕事を与えないわけであります。現在でこのドライバ一はぶらぶらしておるというような事例も起つておりまして、以上が極東印刷において起りました事例であります。  そこでこういつた問題の中から組合側としましては、先ず初めに労働基準法の関係から行きまして、現行の契約下におきましては先ほど申上げましたように、部隊側が一方的に就業規則を作るわけであります。即ち一方的に自分の感情とか或いはそういつたもので以て就業規則を作る。と申しますのは基準法で以てはつきり就業規則を作らなければいけないということを書いてありながら、労働基準局及び雇用主たる労管が全然知らない間に一方的にこういつたところの就業規則を作つて公示するということであります。そこでこの問題につきましても労管に対して交渉行なつておるのでありますけれども、全然解決の遂に至らない、基準局におきましても解決の遂に至らないというような状態にあります。  次に、労働基準法の問題としましては、時間外及び休日の労働に対しましての取極が全然なされていないわけであります。と申しますのは基準法によりますと、明らかに労働組合又は労働者代表との間で以て書面の協定をしなければいけないという工合に書いてあるのでありますけれども、これが全然なされていないということであります。そこで今回のストライキに対しましては、殆んどの部隊におきまして、必要な人員に対して半強制的に泊り込みを行わせております。この事例は、先ほど申上げました極東印刷及び八〇六四及び横須賀等におきましても、事前に三百名乃至六百名を中に泊り込ませまして仕事をやらせておるという状態であります。この中には女子の作業員も入つておるわけであります。で、これが基準法から行きましての時間外及び休日の労働に対しましての違反行為でありますけれども、この問題に対しましても、今現在交渉をやつておりますけれども解決の緒についていないという状態にあります。  それから次の問題としましては、現在基地内におきましては、基準法で定められましたところの安全及び衛生関係施設が非常に悪いのであります。この一例を申上げますと、Y・E・Dの相模のモーター・プールにおきましては、千五百名の従業員がおるにもかかわらず、便所が二カ所しかないということであります。そこで便所に行きましても数分間も待つていなければいけない。その間に兵隊が来まして何をやつていたかというようなことになります。この事例は、キヤンプ等におきまして、やはり千名程度の中で便所が一カ所しかない、その一カ所に行くのに三十分とか四十分かかりますという事例があります。この問題につきましても非常に組合側としましても、日本政府及び米軍に対しましていろいろやつておるのでありますけれども解決がなかなかつかないという状況にあります。で、こういつた事例は、各部隊におきまして安全管理者とか衛生管理者というものを設けてありますけれども、まあ名目だけでありまして実質的な権限というものを持つていない。更に、基準監督署等におきまして警告を発し、或いは仲に入るというような場合におきましても、部隊側がなかなか言うことを聞かない。日本政府側におきましても、そういつたことを言いましてはなかなか言うこと聞かない状態にあるわけです。  次に、やはりこの安全及び衛生に関係のあるところの問題及びこれは医師法にも関係があると思うのでありますけれども、Y・E・Dの相模におきましての事例でありますが、部隊の出入に対しましてサーチするわけです。要するに何か金属等を持ち出すのを防ぐためにいろいろ調べるわけです。そのためにY・E・Dの相模におきましてはX線をそれに使つておるわけです。X線を使つておる場合に、無免許の警備員がそれを使つているという状況にあります。これを医者に聞きましたところが、着物を通してX線を使う関係上非常に強いのだそうであります。而もそれが木造で、遮蔽物が全然なくて、そういつたところで使つておるという関係上、X線がその部屋から外に漏れるらしいのです。そこで多い者はすでに二月から十二回もやられておる。十回程度の者はざらであるという状態にあります。そこで女子も同じであります関係上、専門医に聞いたところによりますと、月のうちに三回X線を当てられた場合には子供ができないというような状況にあるらしいのです。そこでこの問題につきましても基準局及び労管等におきましていろいろやつたのでありますけれども、未だに解決を見ていないという状況にあります。これは明らかに基準法の生命の危害という点に該当するのではないかという工合に考えるわけです。  次に、やはり基準関係でありますが、健康診断の問題であります。これにつきましては横浜の保土ケ谷におきまして八一八六部隊というのがあるわけです。ここでは三年間くらい健康診断が一回もなされていないという状況にあります。労管のほうに健康診断をやつてくれという工合に申入れしたのでありますけれども、未だに一回も健康診断がないわけです。それからもう一つの部隊で、QM冷凍部隊というものがあるのでありますが、やはり同じように健康診断が全然なかつたわけであります。そこで健康診断を部隊側からやつたところが百五十名の中で約二十名が罹病していたということで、解雇でなくて休めということで、現在休んでおる状況にあります。そこで百五十名の中で二十名が罹病者という状況であります関係上、健康診断を定期的に行われていないという状況にあるわけであります。  以上代表的な例を申上げまして、労働基準関係について陳述いたしたわけでありますが、次に労働組合関係について申上げます。  労働組合関係につきましては、全日駐が五月の上旬に調達庁に対しまして団体交渉を申入れたわけです。それは労務基本契約改訂とか、そういつた問題もありましたけれども、申入れしたわけです。ところがその場合に軍が参加しておるということを組合側は了承しておつたわけです。そこで団体交渉の申入れに対しまして調達庁は、軍が参加しないからというわけで以て一カ月有余に亙つて団体交渉を持てなかつたわけです。その理由は、軍のほうが多忙のために開かれないという理由であつたわけです。そこでこの問題に対しましても調達庁長官及び調達庁の当局に対しましていろいろ申入れたわけでありますけれども、軍が参加しない場合には団体交渉を開かないという調達庁の言明で以て一カ月有余に亙つて開かれなかつたという事例があるわけです。これは労働組合法第七条、不当労働行為に該当するかしないかというのはわかりませんけれども、該当するのではないかという工合に考えておるわけです。今回の労務基本契約に対しましてもやはり同じような事例が起るじやないかという工合に考えております。  次に、今回の第一次のストライキに対しましての不当労働行為代表的な例があるわけでありますけれども、申上げますと、神奈川の横浜にありますところの八〇六四、これは六千名ぐらいの従業員がおるのでありますが、ここで以て八月の十二日、十三日のゼネスト以降に二回に亙つて二世の村木というところのシビリアンが、全従業員を集めまして、自分のところのシヨツプの従業員三百名くらいを集めまして労働組合を脱退すべしちうことを講話をやつております。次に8月の十二日、十三日のゼネスト終了後にスト中にピケ・ラインを破つて中で以て就労した者、これに対しまして絶讃を与えたわけです。称讃しまして、合法的ストに参加した者をなじつて、差別待遇をいたしております。次に、労働組合の脱退の申込については、これは労管が申受けするのだということで以てそれを職場の掲示板に書きまして、組合脱退を奨励しております。これで以て約五十名がすでに脱退届が所属労管に対しまして現在届いております。その中にもはつきりとこの村木氏がそういう工合に言つたから脱退したという工合に言うております。労管としましては、所長が非常に困りまして、組合側にそれを通告したのでありますけれども、そういう事例が現在起つております。次に、労管に届出する場合に、本人が直接行つちやいけない、郵送でやれという指示までやつております。  次に組合は無用だという工合に宣伝いたしまして、あなた方は幹部の闘士に煽動されておるのだ、全く踊らされておるという工合に従業員を煽動しております。  次に今回のストライキに対しまして、この二租は労働組合か入と非か入を区別いたしまして名簿の提出を求めております。そしてストに参加した者と不参加という者を調査報告させております。  それから次に昭和二十七年の十二月に、昨年ストライキをやつたんですけれども、そのスト以後従業員より今後ストを行なつてはいけないというので、私はストに参加しないという旨の誓約書をこのシビリアンに出させております。以上この二世は非常に横暴でありますけれども、こういう工合に全従業員の前で以て労働組合の脱退ということを、或いは差別待遇ということをはつきりと打出しておるわけであります。これは労働組合関係の、而も不当労働行為代表的なものであります。これに対しまして労管に対して現在団体交渉行なつているのでありますけれども、全然解決を見ていないという状況にあります。  以上申上げました語例が現在の未解決の問題でありますけれども、これが現在までの占領当時の労務基本契約におきましての事例でありまして解決するということになりましても非常に困難を極めているわけです。而も労働基準局或いはその他の関係官庁に我々が行きましても、まあ問題点の解決が困難であるということであります。  そこでこれを総合いたしますと、労働三法の完全実施には現在の労務基本契約からいいますとほど遠くて、現実的な解決ということはできないという判定を現行の労務基本契約では考えられるという工合に考えます。その原因としましては、やはり日本政府米軍との間にどういう工合にこういつた問題を解決するのだという取極がないということと、行政協定の第三条が絶対でありまして、労管の所長が中に入りましても、これは基地内のことは基地内でやるのだという工合に言われた場合に、それに対するところの所長の反駁ができないという点であります。で、第十二条につきましては、我々としましては、現行では全く空文にひとしいものじやないかという工合に考えるわけです。  それから次に現行の労務基本契約では、日本政府機関が雇用主としての責任を果してないということ、米軍のほうで解雇すると言つた場合に、労管の所長は米軍のほうで使わないのだからこれはしようがないのだというところで以て一方的に解雇が行われておるのであります。それから次に米軍が占領当時と全く同じ考え方を持つていること、その優位性ということは、講和条約の発効後におきましても全然脱却されてないわけです。そこでこの問題につきましては上級幹部におきましてはよくわかつているのでありますけれども、下級幹部におきましては全然わからないということ。それから次にそういつた下級幹部が現実にいろんな仕事をするのでありますが、そういつた人々が労働三法の何たるか全然わからないわけです。労働基準法といいましても全然知らない。だから一方的に感情でやるということであります。それから次に裁判所とか地労委の裁定に対しましての、取扱いが明確になつていないという点であります。これは特に保安解雇の場合では、現在私の知つている範囲でも五件に亙るところ保安解雇が出まして、地労委にそれを提訴したわけです。不当労働行為としまして、幹部でありました関係上…、ところがその問題につきましては全然解決の目途がついておりません。と申しますのは、県庁から送つて参りましたところの書類によりますと、軍の機密であるから内容については言えないというところ解雇の理由なんです。そこで地労委としましても、これを裁定するところの目途がつかないという状況にあるわけです。で一件の畑中君の問題につきましては、中労委にすでに上つて来ておりまして、十二日に中労委の裁定があるという工合になつておりますけれども、これにつきましても原因が軍の機密であるから不明であるという解雇理由であります関係上、どういう裁定が下されるかにつきましても全然わからない次第であります。  そこで新らしい労務基本契約が発効した場合には、私といたしまして、基準関係につきましては労働省、厚生省の検閲、要するに基地内におきましての検閲、これが基地内に入ることは許可となつておりまする関係上、従来よりかいいのじやないか。要するに便所とか食堂とか脱衣所、こういつた問題につきましては労働省及び厚生省の検閲が自由になりまして、今後はまあ人間らしいところの労働ができるのじやないかという工合に考えるわけでありますけれども、併しこれに一項が付いておりまして、保安に支障のない限りという工合に付いておるわけです。そこで保安に支障がないというところの限界がどの程度であるかということが今後の大きな問題じやないか。米軍のほうで、先ほど申上げました極東印刷の例によりますと、これは極東軍の全部の秘密の地図なんかを作るわけです。そこで工場内におきましてはまあ立入りということは厳禁されておるわけです。そういつたところに実際に労働省、厚生省の人なんかが入つて行けるかどうかということが今後の問題点であるという工合に考えるわけです。  それから次に保安解雇につきましても、先ほど申上げましたように、理由が軍の機密だから言えないということで以てやられるということが考えられるわけです。その場合に裁判にかけましても、或いは地労委に行きましても、裁判所がどういう裁定をするかということであります。解雇につきましては、理由があるはずでありますけれども、軍の機密で言えないといつた場合には、被告が勝つか原告が勝つかということが問題じやないかという工合に考えるわけです。この場合に理由がなくて解雇されたときには、まあこちらの、つまり原告のほうが勝つということになりますと問題がないのでありますけれども、併しながら理由がない場合には裁判所はどういう工合に取扱うかということが研究課題じやないかという工合に考えるわけであります。  以上が基準関係でありますけれども、就業規則につきましては今回労務基本契約で定めるということになつております関係上、今後はうまく行くのじやないかという工合に考えております。  次に労働組合関係につきましては、軍と日本政府が共同して労働組合に当るということが今回の労務基本契約の趣旨でありますけれども、その場合に軍が入るところ団体交渉が事実問題としてうまく行くかどうかという問題であります。すでに軍が入つて団体交渉をやつておりますけれども、極東軍司令部には団体交渉に参加する人が二人か三人しかいないわけです。その人が非常に忙しくてやれない場合には、事実問題としては先ほど申上げましたように一カ月半ぐらいも団体交渉を延ばされるということがあり得るんじやないかという工合に考えておるわけであります。で、労働組合としましては、これをはつきりと規定しようと、要するに拒否しないということを規定せよということを要求したのでありますけれども、これは規定がなされておりませんので、この点が問題じやないかという工合に考えるわけです。  次に基地内の労働組合活動でありますけれども、これは非常に困難であるという工合に考えるわけであります。で、一般産業等におきましては、特に特需の組合等につきましてもLSOの組合よりかずつと組合活動がやりいいわけです。ところが基地内におきましての組合活動は現行におきましても困難でありますし、将来においてもこの点が困難じやないかという工合に考えるわけです。  一例を申上げますと、先ほど申上げました八〇六四の部隊におきまして、佐藤という顧問でありますが、この人が中に入りまして、親友の中川という人にビラをやつたわけです。ところがこれがいけないというわけでもう解雇になつておるわけです。これはストライキ中に許可を受けて中に入つてビラを一枚渡したというだけで解雇するというようなことが現実に起つておるわけです。ですからこの基地内における組合活動というものは現行の労務基本契約の取極で行きましても非常にむずかしいという工合に考えるわけです。この点が労働組合法の関係としましては問題であるという工合に考えるわけです。  それから先ほど申上げました不当労働行為の問題でありますけれども、この問題につきましても、米軍が占領当時の考え方で以て或いは日本の風俗習慣等についてよく知つておらなければ急には是正ができないのじやないかという工合に考えるわけです。この問題につきましてもはつきりしたところの規定というものがないわけです。そこでこの問題も残るという工合に考えております。  で総合的に申上げますと、確かに現行契約よりも新しい契約は労働者の保護というものがうまく行くということは考えられます。併しながらただ問題は労働三法の完全実施という点が、労働三法を完全に実施するのだということの規定がないわけです。そこでこれが非常にあいまいになつておりまして、日本国憲法及び労働諸法規に対しましての保護についてはこれを侵害しないのだと、権利については侵害しないのだというだけしか書いてないわけです。更にそのほかに附加えの規定がありまして、行政協定の第三条はこれも侵害しないのだという工合になつておるわけです。要するに行政協定の第十二条と行政協定の第三条が同じように労務基本契約の中には書いてあると、労働三法を完全に適用するということについては明文化してないという点に大きな相違点があるという工合に考えるわけです。そこで先ほど申上げましたように軍の機密に属する事項というような点で以てはこの労働三法適用ということは守られて行かないのじやないかという工合に考えるわけです。最終的にはすべての問題がやはり裁判所とか地労委の問題になるのでありますけれども、この裁判所と地労委の問題に対しまして、軍の機密に属する事項は全然何も述べないということが行政協定第三条、要するに基地内におきましての軍事活動或いは基地内におけるところのすべての権限は米軍にあるというところに端を発しております関係上、問題の解決はまだ遠いのだという工合に考えるわけです。そこでこの根本的な原因の排除につきましては、やはり行政協定改訂或いはこの改訂につきましての諸取極がなされなければいけないのじやないかという工合に考えるわけです。  本席を借りまして、この労働三法の完全適用の問題につきましての根本的な解決に対しまして、国会の協力と善処をお願いしたいと思うわけです。  私の陳述を終ります。
  14. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつとお諮りいたしますが、丁度一時になりましたので、ここで一応中断をいたしまして、それからあとで特需関係人事条項に対するこれとの関連における御所信を承わつてから、一応質疑を続行したいと思います。よろしうございますか……。それでは二時まで休憩をいたします。    午後一時四分休憩    —————・—————    午後二時二十二分開会
  15. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き会議を開きます。  午前中労務基本契約の問題についてはそれぞれ関係者から御所信を承わつたわけでありますが、これに関しまして御質疑のある方は御発言を願います。
  16. 阿具根登

    ○阿具根登君 初めに組合のほうにお尋ねいたします。三者会談で調印まで行つたその問題につきましては別に申すといたしまして、先ほどの具体例の中から一、二御質問いたしたいと思いますが、トラツク暴走とか、その他で負傷者が出ておりますが、その処理はどうなつておるか。例えば三週間の足首を折つた、こういうような人もおるようですし、或いはその他負傷した、一週間、十日というような人も五、六人おるようですが、そういう人たちの処理はどうしておられるか、それをお尋ねいたしたいと思います。  それから全駐労の田端副委員長ですか、盗難防止のためにX光線を使用しているということをお聞きしたのですが、その中で月に十数回も同一人がX光線を当てられておるとか言われておるのですが、これは全員に対して当てられておるのか、何か特定の人に当てられておるのか、これに対する交渉をやつておられるようですが、どういうような交渉をやつておられるのか。以上に対して長官一つお答え願います。どういうふうな処理をとつておられるかですね。  それから調達庁に団交を申入れられた場合に、軍のほうの出席がないから団交できなかつたということを言われておりますが、今までの二人の方の陳述を聞いて見ましても、こういう協定ができても、一方的に軍のほうに主力が行つていて、日本政府の主体性がないということになればどうにもならないというような心配があるようですが、この団交にいたしましても、共同管理であるならば、恐らく軍が出なかつたならば団交に応じられないというようなことを調達庁でも考えられておるのじやないかと思う。そうした場合に軍に対してどういうような考えを以てやられるのか。軍が多忙なために今日はできない、明日もできない、明後日もできないというような場合には、幾ら組合から団交を申込んでもこれは不可能になりはしないか、こういう点で調達庁はどういうふうに考えておられるのか、これを一つお尋ねいたします。  それから川端委員長にもう一度お尋ねいたしたいのは、横浜において三百名くらい集めて、通訳の人が、二世の人か何か脱退を勧告した。そういう場合に僅か勧告ぐらいで五十名の人が脱退したということはちよつと考えられない。何かそれに対して脅迫的なことがあつたかなかつたかということをお聞きしたい。ただこれだけ強い組合が、一外人か二世か知らんけれども、脱退したらどうかというくらいで脱退する組合はないと思う。何かそこに脅迫があつたかどうか、これに対して組合はどういう処置をとつておられるのか、又そういう場合でも組合がビラを撒いたり或いはその人たちに対してこれに反擬するというようなことを言えば何か圧迫があるのかどうか、そういう点ももう少し御説明願いたい、こう思います。
  17. 市川誠

    参考人市川誠君) 第一点についてお答え申上げます。東京Q・Mのピケ隊員の負傷の問題についてその後現地の支部労管等とも交渉をいたしましたが、なかなか解決いたしませんので更に都庁の段階に交渉を移して極東陸軍の代表も入れての交渉を持ちましたが、その席上では非常に遺憾でありますが、極東陸軍部隊司令部代表のドワテイー氏が、全駐労の行なつたストライキそのものは非合法なものとして認めないというようなことさえも言うようになりまして、組合側としては非常に憤激をいたしましてそれらの点についても相対立して議論したのでありますが、当面負傷者の処置につきましては、業務上或いは業務外の負傷であるかというような点についてもまだ解決がついておりませんので、取りあえず健康保険法適用労働者でありますので、健康保険法によるところの治療を実施しておりますので、組合といたしましてはなお行政協定十八条に基くところ軍側の公務執行中の被害といたしましての補償の要求の手続を正式に都庁のほうに提出をいたして、今それらの交渉を進めております。なお高輪警察署の事故発生証明書を見ましても加害者に重過失、被害者に軽過失というようなことも書いてありますので、それらの点、或いは医師の診断等を基礎といたしまして、今申上げましたように取りあえず健康保険法によるところの治療措置をとつております。補償の問題については正式に手続をとつて、なお具体的な労働問題としての解決のためには労働組合地区本部と都庁等との交渉を進めておる、こういう状況でございます。
  18. 川端政男

    参考人川端政男君) それでは私から第二点について申上げます。  先ずY・E・D相模の検診問題でありますけれども、これについては部隊に入る場合に全員ぞろぞろ入るわけです。その場合にこれと思つた人についてやつておるわけです。ですからその場合に警備員がこの人という工合にやりまして、その人が特定の人という工合に大体わかつているわけです。ですからそういつた人をつかまえてやるということでありますので、結局同じ人が二回も三回もやられる場合があり得るということが第一点。それからなお或る日に検診を受けまして、それから次の日に検診を受けるということにつきましては、前の日に受けた検診の状態、その記録を全然とどめておかないらしいのです。ですから一月に何回やつたかということについて具体的にわからないわけです。併しながら本人からしますと、昨日も受け今日も受けたということになるらしいのです。ですから同じ者についても十数回やられるということなんですが、そういう状況にあります。それからなお先ほど申上げましたように道のすぐそばにこれがあります関係上、而も遮蔽物が何もない。だから通る人にもその放射能がかかるわけです。だからその問題が一つあるわけです。この問題につきましても、解決法につきましては、まあ組合側としては労管に対しまして交渉をやりまして、何か処置をとつてくれということをやつたわけです。それから現地の労働基準局等につきましてもやつていますし、又専門医に対しまして、それが有害であるか無害であるかというようなこともやつておるわけです。それからなお専門医につきましては、有害であるということをまあ証人として出てもかまわないというようなことを言つておりますが、又労管についてもまだ全然解決のめどはついていない、部隊側にも申入れしてありますけれどもそれから神奈川県庁の問題にもなつておるわけであります。  それから第三点の問題でありますところの村木シビリアンの問題でありますが、これにつきましては、この人は組合弾圧につきましては相当熟練した人なんです。それで昨年の十二月の十二日にストライキを一回やつたわけです。そのときにやはり労務基本契約の問題と退職金の問題がかかつたのでございますけれども、そのときやりましたときにもやはり同じような労働組合の弾圧をやつたわけです。それでこの問題を神奈川県庁及び調達庁並びに極東陸軍司令部のほうに出しまして、極東陸軍司令部の担当官のアンダーソン氏及び部隊の司令官から訓戒をしたというところの書面が組合に来たわけです。それで一応昨年の十二月の十二日以降の不当行為につきましては組合側としても了承したわけです。ところが今回に至りまして又同じようなことをしたということなんです。で、これにつきましては内部事情として相当不明朗な事件が中に介在しているらしいのです。と申しますのはこの三百名の中の日本人のフォア・マンですけれども、フォアマン等を自分の親戚の者等を入れている、二名ばかりですけれども、何か縁故関係者を入れておる。而も自分の知つている人等については縁故関係者を十八歳未満の者もこれを採用する。十九歳という工合にしてそして中に入れたり何かしてやつておるのです。これでフオア・マンと結託してやるというようなことと、それから更に欠勤した者を出勤扱いとしてやつておるというような点、そういつた問題とか、或いは官給の建築資材、工作隊ですから、これは工作隊の官給の建築資材をいろいろ扱つておるらしい、これは嫌疑ですけれども、そういつたことがありまして、従業員間におきまして非常に暗闘があるわけです。まあこういう工合に出しますと、こういう工合に不満を集めてそういつたことを言いますと、やはりフオア・マンが組合に入つておる者を圧迫するというようなことがありまして結局フオア・マンとしましてもそれらのものが公けに出ますと自分の進退問題になりますので、必死になつてこれを防止するというような点がありまして、このシビリアンが結局は日本人間の紛争という問題に発展さして、そこで以て組合脱退ということを図つて行くという工合な方法をとつておるんじやないかというように考えられるわけであります。
  19. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 御質問のございました諸点でございますが、初めのQ・Mの傷害事件と申しますか、これは市川さんからもお話のありました通り、目下東京都と組合との間で折衝中である、こういう状況になつておりますが、それに関連いたしまして補償の問題があると思います。これは目下検討中ではありますが、公務による傷害とならない傾きが多分にありますので、その場合には行政協定十八条に基きます補償という問題を考慮しなければならないものと思うので考慮中であります。  なお横浜の不当な干渉の問題につきましては、神奈川県が事実を調査中でありまして、軍とも交渉中であるというように聞いております。お断り申上げておきたいと思いますが、この種の不当行為事件につきましても、私どももつと手早く交渉もし、結果も挙げなければならないということはよく承知しておるのであります。調達庁……現在の労務関係の職員並びに私といたしましては、相当分量のございます附属協定で頭が一ぱいになつておるということでありますので、こちらのほうに若干手が廻りかねておるという点も確かにあると思います。但し又一方軍のほうではこういう個々の案件についてはいきなり私どものほうから中央の上層部に持つて来るということは、軍の性質上どうも困るのだ、労管において折衝し、若しできない場合には上級の司令官ところに上げて来る。若しできなければ中央に上げて来る。そういう手配をどうしてもやつてもらわなければ中央で処理できない。軍の組織上無理もない点もあるかと思いますので、できるだけ日本側の末端機関には、話がつかない場合にはできるだけ早く見切りをつけて上級のほうに送り込んでしまえという指図をしておりまして、成るべく早く我々はこちらの問題を手がけるようにしたいという措置はとつておる次第でございますので、御了承を得たいと思います。  この個々の不当行為事件は、今最初に申上げました当面ほかの問題に忙殺されておるとは申しましたけれども、新らしい基本契約ができまして、これは旧来の契約に比べて相当の進歩であるということは組合の諸君も御承認になつておるところでありますが、問題はこれが末端においてどう実行されるかというところにある。その点の補償が一番大事な点であると我々も考えております。従つてその点についての軍の注意を喚起するためにも、こういう個々のケースは慎重に且つ強硬に軍との問に話が行われなければならないということは重々承知しておる次第でありますけれども、たまたま現段階は附属書の最もむずかしい時期ということに遭遇しておりますので、或いは十分な御返事も申上げかねるものでございまして、恐縮でございますが、御了承を得たいと思います。  なお第三点でございましたか、団体交渉におきまして米軍の参加問題という点でございますが、これは米軍案に日本政府の修正点を附加えさせまして、つまりアメリカ側がその団体交渉に参加、不参加というようなことでまごまごすることによつて、法律上の雇用主たる日本側労働組合法第七条第二号でございますか、第二号の規定に違反させるような行為をしないという但書を附けさせましたので、これによつてアメリ山側の出席ということは確保できると考えております。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう一つお聞きしておきたいのですが、盗難防止のためにX光線を使うということは、どこでも使つておるのですか、それとも限られておるのですか。これが有害であるか無害かということを当局ではどういうふうにお考えになつておられるのですか。
  21. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) その点甚だ申訳ないのですが、承知いたしておりませんので、至急取調べましてお答えするほかないと思います。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは一カ所だけですか。
  23. 川端政男

    参考人川端政男君) 只今ところは一カ所だけでございます。
  24. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと私調達庁労働省の方に伺いますが、今度の全駐労、全日労の争議に関連して発生した、まあ私はあえて不当とか不法とか言いませんが、いわゆる事故ですね、事故については組合側からは相当細かい個々の事例が資料として出されておるのですけれども、役所のほうからはそういうものが出ていないのですがね。大体組合で発表された事故というものは役所のほうでも御承知になつておるのですか、具体的に。
  25. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 只今委員長から御質問のありました点でございますが、私どものほうでも大体調べ上げまして、表としてその調査交渉その他の段階を一応調べております。こちらの委員会に資料として差し上げておりませんでしたことは甚だあれでございますが、大体組合の諸君の持つておられる問題は、調達庁といたしましては調べ上つておるつもりでございます。
  26. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大体わかりましたが、そうするとこれの処置のやり方なんですが、二種に私は分けられると思うのです。いわゆる労働三法適用関係するものは新らしい労務基本契約の精神に則つて実行されて行けば将来は解消するかも知れん、これは今あなたのおつしやつた通りだと思いますが、その問題が一つ。それからもう一つは、この事故によつて現に日本人が有形無形の損害を受けておる。そういうものについてはこれはやはり何らかの補償をしなければならんわけですね。そういうことについてあなたのほうの努力努力ですが、米軍側のほうは一体どういう考えを持つておりますか、それをちよつと伺つておきたいと思います。
  27. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 問題が二通りありますことは確かに今お説の通りでございまして、解決につきましてはその段階々々におい努力をさせておるつもりでございます。逐次それが上級の部署のほうに上つて来ることによりまして、私どものほうも更に我々自身の手で解決を促進することもできるであろうと思つております。  なお補償の問題についてのお尋ねでございましたが、具体的に米軍との間の補償がどのように解決したかというようなことを私も具体的な事例について承知しておらないので、御返事としては如何かと思いますけれどもアメリカ側は大体先方に理由があると考えました場合に補償するという方針は持つておるのだろうと思います。ただ先方で公務傷害と考えられないというようなことで補償しかねる、賠償しかねるという場合に、我々のほうとしてどうしてもこれは放つておくわけに行かないという質の問題が出て来る。そういう場合に止むを得ませんので、行政協定十八条による日本政府の補償というふうなことも考えなければならないのでは互いかと考えております。
  28. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうですが、そうしますとどうせこれは解決までには随分長くかかるだろうと思いますが、調達庁のほうで一応今度のストライキで発生した事故の、この組合が調べたものに対応するような一覧表、そういつたようなものと、そのうちで今調達庁としてその事故についてとにかく当事者に有形、無形の何らかの補償をしなければならんという工合に考えられておる案件、そういうものを一つ何かまとめられてこの委員会に御提出を願いたいと思うのです。
  29. 堀眞琴

    堀眞琴君 先ほど労務基本契約についての調達庁長官からの御説明がありました。いろいろ御苦心されたことは私どもも認めざるを得ないと思います。而もその基本契約については三者とも一応了承したということも承わりまして、前の人事条項に比べて一段と私は進歩したものだとは思います。併しこの条項を拝見いたしまして、何かまだ腑に落ちない点がたくさんある。根本的には勿論行政協定との関連が一番大きな問題になると思いますけれども、そういう問題は一応ここでは問題外といたしましても、果して三者の会談で以てきめられ、十月一日から実施されようとするこの基本契約というものべ完全に実施されるだろうかどうかということについて非常な疑念を持つのです。殊に例えば人員の整理等についても書かれてありますが、修正条項として書かれている文面の中で、「米側アメリカ側は前項に掲げる決定を行うに当つて日本政府側に対してその理由を通告すると共に雇用の安定をできるだけ確保するために適当なる事前の調整を行う」、こういうような文章、出ているのです。文章を読んだだけでは大して問題がないように思われるのでありますが、併し実際これを適用するという場合に、果して十分にアメリカ側で日本政府側に対してその理由を通告するだろうかということが問題になるし、それからその通告に当つても、結局は軍の機密事項とか何とかいうことで以てそれが全く隠蔽されてしまうというような問題が起つて来るのではないだろうか、それに対して調達庁としてはどういう態度をとられるかというようなことが問題になるのではないかと思う。それから又保安基準について三カ条の条項が設けられておるわけですが、この条項について見ましても、文章だけからは成るほどと思うのですが、併し現実にこういうような基準の中に当てはまるような事実が出て来なければ、単にそれをそうだと認めるというだけではこれは十分ではないと思うのでありますが、そういうようなことについて果して十分に日本政府側としては、そういう現実の事実があるということを向う側をして認めさせることができるかどうかといつたような幾つかの疑問が出て来ると思うのです。これは単に今ちよつと拝見したばかりで起つて来るところの疑問ですが、それに対して政府、特に調達庁長官としてはどういうお考えを持つておられるか、それをお尋ねいたしたいと思います。
  30. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) お答えいたします。人事条項人員整理条項でございますか、アメリカ側の「協議」とか或いは「適当に」とか、そういう表現が非常に多いわけであります。これはもう仰せの通りでありますが、結局表現といたしましてはまあこの辺に落着かざるを得なかつたというわけでありますが日本側の管理権というものを共同管理の線におい承認しておるということは言えると思いまするしあとは結局調達庁努力次第であろう、結局この契約が文字通り実行されるかされないかということは、日米両者の、極端に申せば力の関係によるということも言えないことはないかも知れません。併しながら今日この契約案が、六月に示されましたアメリカの第一案からここまで下つて参りまして、組合の要望も大体において容れられたという状況になつて参りましたということなども考えてみますと、調達庁努力次第ではこの辺の心配は解消できるのではないか。ただ先ほども不当事件ですか、不法事件ですか、そういう問題に関連して申上げましたけれども、心配されるのは末端における実施がどうなるかという問題なんです。これにつきましては私どもも十分なる体制を整えたいと思つております。思つておりますのですが、御承知通り労務管理に関する事項調達庁本庁、各支局を通じまして二百数十名の職員を擁するに過ぎないので、あとは全部府県に委託されておるという関係がありまして、十分なる監督若しくは指導の手配が行届かないという傾向は争えないかとも思いますが、あらゆる方面で努力もし、又努力すれば結果の出る体制を整えたいと思つております。  続いて御質問のございました基準の問題でございますが、これは仰せの通り読んだままではわかりにくいということ、これ又誠に事実であります。併しながらこれにつきましては組合側から相当多数の項目に亙ります質問書が出ております。これに対して管理者側が字句の解釈若しくは事例等を以て正式の回答書を出すことになつておりまして、これを正式の議事録にとどめるということによつて、この字句の解釈をできるだけ細かく且つ一定させようというふうに考えておりますので、又その回答なるものの不十分な点について補充することもできるでございましようし、そういう方式によつて基準というものの精神はできるだけはつきりしたものを確定させる、濫りな解釈を許さないという趣旨で作つたものでありますから、その目的に副うような処置をとりたいと思つております。
  31. 堀眞琴

    堀眞琴君 長官の御努力大変私たちとしても感謝に堪えないのですが、今のお話ですといろいろ手が廻りかねる、職員も二百数十名に過ぎない、幾ら努力してみても結局なかなかそうまでは行かんということでは、これは末端のほうで以てこういう基本契約ができても、それが十分尊重されないという事実が起るだろうということが予想されているのじやないか、これでは非常に残念だと思うのです。  それから組合等は認めることになつているようですが、ところが最近の様子を見ますというと、結局組合どころか何人か集つて話をすることも禁止されているというような状況だということも神奈川の新聞等で拝見しているのですが、そういうような工合に末端のほうではどんどんこういう基本契約が結ばれつつあるときにそれに違反するような事項が出て来ておるわけです。あなたのお話ですとどうも二百数十名じやなかなか手が廻りかねるというようなお話で、初めから半分はもう投出しておられるような印象を受けるようなお話なんですが、もつとその辺政府としてはやはり毅然として、独立国家の政府なんですから、労働者の保護のために万全の措置をとるということをして頂かないというと、労働者としても安心をして労務を提供することができない、こういうことになるのじやないかと思うのですが、その点についてももう一度御所信を伺いたい。
  32. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 申上げましたその人数が非常に少いという点は、それは調達庁の機関のことを申しておるわけでありまして、府県の人員というのがかれこれ四千人くらいいることはいるのであります。併しアメリカの末端機関、日本側の末端機関が能率が挙るように、又問題を速かに解決できるようにということについては勿論できるだけの手配をいたすつもりでございますし、現に起つております問題を片付けることがそういう点の趣旨の徹底にもなるということで、万全の努力をしておるつもりでございます。労務者の方の保護のためになさなければならないこと、調達庁としてやらなければならないこと、あらゆる努力を傾けてやるということにつきましてははつきりした方針を立てて考えておるつもりでございまして、まあ今日までの基本契約の問題の片付くに至りました最近の事務上の速度とか、現在附属書の問題を処理しております事務上の速度というようなことは、従来の成績から見ますと多分に向上の跡も見えますので、この調子でやつてつてこれを末端にも及ぼしたいという決心をしております。
  33. 堀眞琴

    堀眞琴君 もう一点だけお尋ねしたいのですが、これは大体調達庁を通じての間接雇用の労務者との労務契約だと思いますが、直接雇い入れておる労務者との関係の問題、それからこういうP・D工場以外の一般の工場、そういう方面についての労務関係についてはどのようになつておりますか、その点お伺いしたい。
  34. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 直接雇用をいたしております労務者とか一般軍需工場の関係につきましては、調達庁は必ずしも直接その面の仕事をいたしておらない傾きもございますが、アメリカ軍が今後直接雇用を殖やすとか殖やさないとかいう問題につきましては、私どもとしても多大の関心を持つておる問題でございまして、将来アメリカ軍は直接雇用を殖やさない、できるだけ減らして行くという交渉をいたしまして、或る程度の言質も取り、書面としてもこれを取付けることになつておるつもりでございまして、現在若干の直接雇用があるということは事実でありますけれども、これは将来多量に殖やすような事態にはさせないという交渉はすでにいたしておりますし、又或る程度の言質も取付けておると考えております。現在直接雇用になつておりますものといわゆる駐留軍労務者との雇用の性質その他に関しましては、或いは私どもの役所の所管ではないのではないかというふうに考えておりますけれども、或いは私が知らないのかも知れませんのですが、取りあえず一応それだけのお答えを申上げておきます。
  35. 堀眞琴

    堀眞琴君 今の問題は労働省関係になつておりますか……。
  36. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それは人事条項に入つたときに願えませんか。一応御質疑がなければこの辺で特需工場人事条項の問題がこれにすぐ表裏の問題ですから、予定の通りに進めて参りたいと思いますが、よろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 市川誠

    参考人市川誠君) 今の直接雇用の問題についてちよつと申上げたいのですが、只今御質問のありました軍の直接雇用の労働者の問題でありますが、今度の改訂を予定されておる契約の中にも、第二条の一部の範囲の中にC項として次のように規定されております。「この契約は、A側が、合衆国軍隊の使用のため、日本人又は通常日本国に居住する他国人を直接に雇傭することを妨げない」。この条項によつて軍はみずからが直接雇用の権利をこの契約の中においても留保し確保しておる、こういうふうに我々解しております。  現在の直接雇用の状態でございますが、これは一番集団的に行われておりますのは、軍の要するに従属機関でありますPX関係であります。これは大船にジヤパン・セントラルミクスチエンジのヘツド・クオーターがあります。全国を通じまして一万一千ほどの労務者が一元的に管理されております。ここの労務者の取扱は、大体現在政府が間接雇用をしております労働者の労働条件とほぼ似通つておりますが、それ以外に各施設の中のクラブ或いは食堂等に、やはりこれは公用資金でありません関係上、それぞれ委員会等を設置いたしまして、将校或いは下士官、兵等から集金いたしましたフアンドで雇用しておる労務者もございます。確定した数を把握することは困難でありますが、全国的に大体予想いたしまして、一万五、六千はこの範疇に属するものがおるのではないかと思います。更に又他の直接雇用はハウス関係に勤務しておるところのハウス・ボーイ或いはハウス・メイドでありますが、これが大部分でありますが、全国で約二万程度おるのではないかというふうに予想いたしております。これらを比べてみますと、やはりクラブ、食堂、それからハウス関係に勤務するいわゆるダイレクト・ハイヤー、この人たちが非常に条件が悪いのであります。この点につきましても組合といたしまして軍にも強く要請いたしまして本年の一月の十六日にいわゆるクラーク指令が出されまして、これらの直接雇用者の賃金その他の労働条件につきましても各部隊司令官調査をしてそうしてLSO関係の労働者と大体同等の労働条件に改善するように指令が出されたわけであります。併しこの指令につきましては予算的な裏付けがございません。そのために各実際施設で労働条件を改善しますのは、そこで個々に取扱われているという状況でありまして、全般的な私ども組合員状況を見ますと、逐次賃金等も引上げられて改善はされておりますが、なお且つ非常に低い条件の下に置かれている。  一例を申上げまするならば、LSOの労働者に夏季手当が支給されたというような場合でありましても、このダイレクト・ハイヤーには一銭も要するに支給されていないというような事例もありまして、各地方ごとに交渉行なつておりますが、大体これらの労働者の交渉対象というものが明らかでないわけであります。クラブの委員長交渉を申入れましても、自分の取扱い範囲外であるというようなことで逃げますし、指令官のところへ持つて行きましても埒が明かないといつたような状態で、今一番困難を感じておる問題であります。家族関係の問題は、特に宿舎の個々の主人が雇用しておりますので、この点につきましては全く手の打ちようがないという状況でございます。  以上が私ども承知しておる軍が直接雇用しております労働者の条件でありまして、これらの人たちには各種の社会保険等も適用されていないというような状況で、非常に遺憾に存じておる次第であります。
  38. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは全駐労と全日労の方もう少しお残り願えませんでしようか、よろしうございますね。  それでは特需工場人事条項の件は、これは政府側から一応資料について説明を先ず願いたいと思います。現状について……。
  39. 川端政男

    参考人川端政男君) 本日、今からすぐ調達庁長官との間で交渉が持たれることになつておりますので、失礼したいと思います。
  40. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) どうぞ。
  41. 中西実

    説明員中西実君) お手許にお配りいたしました「労務条項適用状況とその内容について」、大体御覧頂ければおわかり願えると思いますが、特需関係労働組合は企業別組合数百十七、組合員総数十六万四千人に上つております。ところが一般特需工場の中に特に役務提供的な特需会社、この会社との間にいわゆる労務条項のある契約が結ばれておるのであります。そこで今申しました特需工場の中でいわゆる労務条項適用を受けておるものは十四組合、二万四千九百三十八人、これは四月末現在でございますが、というふうな計算になつておるのでございます。その特需工場が大体東京、神奈川という近郷に集中しておりまして、この表にありますような組合がこの関係特需工場組合でありまして、これが関東地方特需労働組合協議会を形成しておるのでございます。  で、今の労務提供を主としておる、施設その他が大体において軍のほうから借りて与えられてやつておるという工場の間に、いわゆるここにありますこれらの工場の間に労務条項の入つた契約が結ばれております。そうして七月一日に締結したものが七社、八月に締結されたもの一社、十月予定のものが小松製作所でございます。そこで更に労務条項を見ましても全部に共通、全部が全部共通というのじやございませんで、若干のニユアンスがございます。保安関係で全く米軍の一方的に従業員を排除することができるというものが三社、富士自動車、三菱日本重工東京製作所、同川崎製作所等のものは一方的に排除できることになつております。ところ米軍が特需会社と協議の上排除を決定したものが二社、日野ヂーゼル、ビクター・オート、次に実例が書いてあるのでございまして、富士自動車の分は全く一方的に従業員を排除することになつておる内容のものであります。あとのほうに日本ヂーゼル、ビクターオートの例が出ておりますが、これは請負業者と調査及び協議をなした上行う。或いは又契約担当官が最終的な決定をする前に、契約担当官に決定の影響する各種の事情につき請負業者と討議するというような項目が出ておりまして全く一方的にやる、先の富士自動車における契約とは若干趣きを異にしております。例を挙げたわけであります。
  42. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは丁度外務省からも説明員に来て頂きましたから、ここで労務基本契約只今改訂を正式にされようとしておりますが、これについて特需工場のほうの人事条項の問題も、関協力局次長のこの前のお話によりますと、労務基本契約が或る結論を出せば七月一日の契約がどういう工合になりましようとも追つて修正契約をすることができる、又そういう努力をしようという約束になつておるわけでありまして、従つて日経連並びに特需労働組合協議会のほうでは、これについてどういうような考えを持ち、どういう工合に処理せられようとしておられるのか、それについての先ず御所信を承わりたいと思います。日本経営者団体連盟協力部長師勝夫君
  43. 師勝夫

    参考人師勝夫君) 御質問に答えまして卒直に申上げたいと思います。  まだLSO関係基本契約がどういうふうに結ばれましたか、新聞報道以外は十分に承知しておりませんので、特需会社といたしましても、その態度決定しておらないのであります。来週の十五日に経営側としまして、基本契約の条文と睨み合せましての態度最終的に決定いたしたい、こういうふうに手続を進めておるのでありますが、今私の個人的な考え方を参考までに申上げなければならんと思つております。日経連といたしましては、昨年人事権の自主性の確立ということと並びに主として保安解雇の明確なる基準手続というものを示す、この二点に集約しましての意見関係方面に提出をしておるのでございます。従いましてこの二つの基本的な方向に沿いまして今度の契約改訂に対する態度決定することになると思います。  この契約改訂につきましては、労働省中西労政局長さんほか日本側の合同委員会労務委員会の各メンバーも非常に誠意を以て一生懸命御努力になつていますので、いずれはこの我々の要望の趣旨に副つたものができ上るものと期待しておるのであります。何せ特需工場というのは、御承知のように非常に不安定な立場にございまして、いつなんどきその発注が停止されるかもわからないというような、いわゆる苦難に満ちました経営の実情にございます。その場合に簡単に他の業種に転換し得るように、そう簡単には企業経営というものはできませんので、とにかく非常に現在でも苦しい弱い立場にあるということを先ず皆様に申上げなければならないと思つております。従いましてそういう立場にございますので、労使関係といたしましては、できるだけ労働組合と経営者が相提携いたしまして、円滑に労使関係が運営されるように、その基盤になりますところ契約改訂もそうなるようにして行きたいというのが我々の基本的な態度でございます。なおL・S・〇関係と違いまして、一般特需会社は、その特需会社の個別資本の枠内におきましてその責任において行われておりますし、L・S・〇関係は、米軍の予算の範囲内で行なつておるというような関係のほかに、やはりアメリカ日本の労働問題に対する考え方なり人事管理の慣習というものが非常に実際的には違つて参りますので、いろいろの日常細かな問題が従来ありましたが、この前参議院の労働委員会によりましてこの問題が正式にお取上げになりまして以来、お蔭様を以ちまして、この一般特需会社の労使関係、そういう問題も非常に好転をしておるようでございます。  以上非常に簡単な抽象的なことでございますが、只今どもの考えております大体の考え方はその程度でございます。簡単でございますが……。
  44. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは特需労働組合協議会の坂本君にお願いします。
  45. 坂本登

    参考人坂本登君) 協議会議長の坂本であります。お尋ねの向きについてお答えいたします。  先ず前回本委員会でこの問題についてお取上げを願つたその後の二、三の特徴のある動きを申上げまして、只今お尋ねの今回の全駐労方面の基本契約決定された、こういう場合において、特需関係としては人事条項についてどういうふうに考えておるか、こういう点についてお話したいと思います。  先ず今、日経連の方から、前回当院におきまして特需関係人事条項の明朗化、こういう問題が問題にされて以来非常に円滑に行つておるかのようなお話でありましたが、実は当時なかつたような事態が最近頻発しております。先ずその一つは、富士自動車における問題でありますが、去る八月の一日の日に、軍令解雇を以ちまして直用の労務者が六名解雇をされまして同日付を以て会社のほうに司令官からメモランダムを以て約三十名の人を排除するように、こういうメモランダムが来ております。これに対しまして会社のほうとしましては、従来のいきさつから、占領中のようにこれを丸呑みにするということは到底許されないだろう、こういうふうに考えたものと想像されますが、これに対していろいろ当局と同司令官と折衝をして、埒があきませんので、その後は外務省、労働省、更にこれに軍を入れまして会社もこれに加わる、こういうようなメンバーでこの撤回方を会社が中心になつて抵抗しておる。まだ組合のほうに正式の通告がありませんので、首切りという事態は発生しませんが、その三者の会談がまとまらなければ、具体的に言えば、日本政府側米側の中央の交渉がまとまらなければ、この三十名が契約通り排除されなくちやならない、こういう事態が起きて今日当の責任者が参つてつたのでありますが、その問題で軍と折衝に行くんだということで、只今中座したような始末でございます。  又契約条項の一部に、従来はなかつたのでありますが、こういうことが最近出ております。労働者の給与、賃金、それから昇給、こういうすべての賃金関係事項について会社が組合要求に応ずる場合にはあらかじめ米側了解を得なければ実施してはいけない、こういう条項が入りましたことによりまして、一つの例といたしまして、新日本飛行機の子安の工場におきまして、去る八月の十八日に賃金値上げの要求をいたしました。その回答日を八月1の二十四日を期限といたしたのでありますが、当日になりますと会社では、この改正条項を盾にとりまして、米側との話合いがつかなかつたの回答はできない、こういうことで現在もまだ、九月の本日に至りましても回答が出ない。その理由は、米側からそういう折衝に応じてよろしいという許可がないからだ、このことは、結果といたしまして、従来の労働慣行を蹂躙するのみならず、実際におい団体交渉をも不可能にする、こういうような実際問題が起きております。現在の段階におきまして我々の考えておりますことは、人事条項の問題につきましては特に全駐労関係基本契約が定まつたから、それに準じて何かのものを決定しよう、こういうような考えは持つておりません。なぜならば、今度の基本契約に盛られた条項につきましては、それに抵触するようなものは従来とも我々の側にはなかつたわけであります。あつたのは、米側が好ましくないというものは経営者はこれを排除すると、こういう義務と、それから労働組合の動き、こういうものに対して経営者がスパイをして報告をしなくちやならないという義務、その結果が解雇に発展をする、この一点にかかつておるのでありまして、今度の基本契約とは直接の関連がないわけであります。ただ我々の希望いたしますのは、そつちの方面が、一応の基準というものが明らかになつたという段階におきまして、特需関係は、先ほど政府側からお話のありましたように、自家施設、即ち自分の工場をアメリカに提供して仕事をすることによつて。ペイをもらうという工場とアメリカのほうから施設を貸与されてそうして仕事をやつておる。こういうような、大きく分けて二つの企業がありますが、いずれにいたしましても若干のニユアンスの相違がありますけれども、この人事条項の点は大体共通のものであります。従つて我々としては、今後のあり方としては、労働組合運動に関する限りアメリカとしての干渉はやめてもらいたい。特に解雇云々の問題についてはこの際やめるようにこういうことをこれを契機にして実現したいということが我々の念願であります。  第二には、先ほど挙げましたようなベースアツプ或いは賃金要求に対する抑制の処置、それから現実に出ておりますところの軍令による首切り、こういう問題を政府の御協力によりまして速かに解決をして頂きたいということがお願いであります。  以上であります。
  46. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 今聞いておられた通りなんですが、要するに人事条項の問題は今まで懸案になつておるように、米軍による組合干渉をやめてもらいたいということが第一点ですね。それから今聞きますと、賃金干渉が入つておると、更にはこの一方的な何といいますか、人の排除ということでありますね。この三つが一番問題になつておる。更にもう一つは、これはどちらかというと経営者側のほうに関係のあることだけれども、工場内におけるスパイ行為の通報の問題がありますね。この四点だろうと私は思うのですがね。これについてその後どういうような経過になつておるか、先ず一つお話願いたいと思います。
  47. 中西実

    説明員中西実君) それについて一点聞いておきたいのですが、いいですか。
  48. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) はい、どうぞ。
  49. 中西実

    説明員中西実君) ちよつとお聞きしたいのですが、今の団体交渉給与関係でやる場合に許可を得るということ、これは私今初めて聞いたのですけれども、子安の工場で前から契約に入つているのですか。
  50. 坂本登

    参考人坂本登君) その点だけお答えいたします。これは実際には特需の工場におきまして契約書の内容がつまびらかにされていますのは……、富士工場の習慣として明らかにされておるのでありますが、私ども三菱ですが、その他の工場にあつては厳秘に附せられておりまして、内容はわかりませんのですが、只今の例を以て初めてそういう契約内容のあることを発見したわけなんです。そういう発見した範囲は、日本飛行機の杉田の工場と子安の工場で、現実にこれが障害になつたのは子安が只今申上げたような事情で障害になつた、こういう次第であります。
  51. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) お答え申上げます。この特需工場のほうの問題は、この前も御説明申上げました通り、先ずその基本契約を片付けてからやろうということになつているわけでございますが、只今お話になりましたことのうち、例の富士自動車の問題、これはまあ特別に取り上げて、これはなかなかいろいろなことを言いまして埒が明きませんので、昨日からしようがなしに自分でやろうと思つてつておるわけなのであります。その他の問題につきましては基本契約の問題が話がつきましただけで、まだ具体的に特需工場の問題を取上げて話を進めるところに行つておりません。はつきり申上げますそういう段階であります。基本契約の問題が済み次第この特需工場の問顯も、今のような点をもう一度よく承れりまして、はつきり納得した上で一つつて行きたい、こういうふうにまあ考えておる次第であります。
  52. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) これ日経連のほうはどういう工合にお考えになりましようか。只今の賃金干渉の問題ですね。これについては、実は先国会中私どもが某特需工場を視察に行きましたときにやはり経営者側から聞いたことなんですが、非常に勉強して能率を挙げて、いわゆる生産単価を下げると、それだけ請負単価を下げるような要求向うから出て来る。それで非常に困るのだという話をしばしば伺つたのですが、そういうやはり現われがこういうところに出ておるのじやないかと思います。経営者が非常な経営の能率を挙げて自主的に賃金の引上げをやろうと、こう思いますと、アメリカのほうではその能率を挙げただけは請負単価の切下げのほうに持つて行きたい、こういう意思が動いておることを現に耳にしているのです。これでは日本人は何のために大いに勉強して働いておるのか意味がなくなつてしまうのだと思うのですがね。従つてこれは今日新らしく表面に出された問題であるわけですが、この点は外務省としてお気付きでしようか、或いは労働省としても……、それが第一点。  それから第二点は、労務基本契約のほうはとにかく国と国との間の話合いですから、これはものを進めるのに非常に簡単なわけですね、簡単であつても、筋道があれだけ簡単であつても、なかな複雑なんです、進めることは……。ところがこの前から人事条項の問題をやつておりまして、一体誰が責任を持つて解決するのかという責任の所在が非常に不明確だつたのですね。労働組合のほうへ聞きますと、極めて意思は強固ですけれども、さてそれじや誰がその衝に当つてくれるかということになると、直接交渉はできない。それから特需工場の経営者のほうに伺いましても、仕事との関係がありますからそうも強く突つ張れないと言う。じや日経連のほうはそこまでいろいろなものを集めて日経連が責任の主体になつてやられるかというと、どうもそうでもなさそうだ。労働省に聞きますと、隔靴掻痒の感があつてどうも靴下の下の水虫に手が届かんというような……、外務省のほうは外務省のほうで、誰か言つて来ればとにかく骨折つてやろうと言う。どこが一体何なのかさつぱりわからないのですが、従つてどもが今日労働委員会で、労務基本契約が一応軌道に乗つたときに、約束通りにこの問題を有利に処理するためには、一体その後どういうような形で進めるように考えておられるか、これを本当は聞きたいわけなんですがね。
  53. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) これはまあ私その法律上のことは余り知りませんですけれどもアメリカの軍人が悪いことをやつておればこれは改めさせることば誰でもやつて悪いことはないことですから、私は少し筋違いでもこれ仕  労働省で、ただ具体的なことは私どもどうも……。その労働法というのは大変ややつこしいものでございまして、私ども頭の悪い者にはちよつとわからんことがたくさんありますので、その辺のところはやはりよく労働省に教えて頂いてこつちが得心をして、これは成るほど悪い、お前のほうは悪いからこれを改めろという自信を先ず作つて行かんと、これは頭が悪いので手間がかかりますが、その上でやはりこれは何といつてもやらなければならん、そういうふうに考えております。それははつきり申上げます。ただはつきり申上げましても、少し忙しかつたりするので、とかく馬力が足りないので大変遷延いたしまして、この点は大変申訳ないと思つております。決して責任を回避して、その米軍の悪いことをそのまま見逃しておるというようなことはありません。できるだけ速かな機会に話をつけたいと、そういうふうに思つております。
  54. 中西実

    説明員中西実君) 筋道はこういうことになるように考えております。行政協定の十八条の末項で「合衆国軍隊による又はそのための物資、需品、備品、役務及び労務の調達に関する契約から生ずる紛争でその契約当事者によつて解決されないものは、合同委員会に調停のために付託することができる。」ということが規定してございます。従つて特需の契約は、これは軍とその会社との私契約でございますが、その私契約中に普遍的に一般的に人事条項の、或る一定のものを入れることが、それが労務政策或いは日米間にとつて好ましくないというようなことになれば、やはり問題は合同委員会によつて処理する。それから一旦きまりました契約によつて、会社がその契約によつて自主的に実行して参るわけですけれども、その場合に軍のこれに対する態度に遺憾な点があれば、やはりこれ又結局当事者間でなかなか解決しませんでしようから、合同委員会に持出してお世話するということになるのじやないかと思います。  そこで問題はそういつた一般的な労務条項に関するような問題、それから個々の具体的な問題、いずれもやはり合同委員会にかけ得る問題じやなかろうか。現に富士自動車の問題は、経営者側から何と言つて軍側が聞いてくれないのだというようなことで、私のところへも来、外務省にも御協力を頂きまして、合同委員会労働委員会、サブ・コミツテイーにかけてやつておるというような事情でございます。結局そういつた解決の方法になるのじやなかろうかと思います。
  55. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこで先ほど賃金干渉の問題は中西労政局長は初耳だというようなことをおつしやつたのですけれども、その特需工場労働組合のほうではそういう問題については労働省のほうと余り交渉をされていないわけですか。
  56. 坂本登

    参考人坂本登君) この問題につきましてはまだやつておりませんのですが、実は極く最近、八月の二十四日にこういう事実に接しまして、本当にそういうことが契約の中にあるのかどうか、それからそういう契約がそういう効力を持つというように軍も果して解釈しておるのかどうか、こういうことをむしろ当事者のほうに尋ねておつて、漸く今日確かにそういうことに違いない、そういうところに原因があるのだという、こういうところに確信を持つた。こういう段階でございますので、まだ労働省のほうに直接解決方、折衝したという経過はございません。
  57. 寺本廣作

    ○寺本広作君 今のに関連して。これはまあ日経連と外務省にお伺いしたいのですけれども、今の給与について組合側譲歩するときには米軍側に事前に了解をとるようにという契約が行われておると、こういうお話ですが、それを偶然の機会にあなたのほうで、坂本さんのほうで発見されたということですが、米軍側日本の特需会社の間で契約を誰も知らずに、偶然に関係者の一人が発見するというようでは誠に困つたものだと思うのですがね。それで米側がどういう契約を押付けておるかどうかということは、これは外務省のほうで何か探つてもらうわけに行きませんか。又押付けられた会社は、これは非常に不良会社で、銀行から首根つこを押えられて、一々銀行の承諾が要るというなら隠さにやならんと思いますが、アメリカから特需を取るという問題ならそんなに日経連も内輪まで隠さんでもよかりそうに思う。発表されるのは、日経連から外に出すのには会社の名前を出さんような何か方法があると思うが、総合的に何か契約を押付けられておるかどうかということを調べる方法がないものかどうか。
  58. 師勝夫

    参考人師勝夫君) 寺本さんの御質問でございますが、一応調査いたしました。お粗末な調査でございますが、現在各社が請負契約を結んでおります。その請負契約を大別しまして二つになるのでございます。一つはどう訳すかわかりませんが、タイム・アンド・マテリアルという契約の方式と、もう一つはユニツト・プライスの方式と、二つでございます。タイム・アンド・マテリアルのほうは、材料費がそれに投入されました実費、労務費、それから更に協定されましたものと、とにかく一時間当りの賃金に総労働時間を乗じました額と経費と利潤、そういうものがドル払いされておるのがタイム・アンドマテリアルと簡単に考えております。ユニット・プライスのほうは普通の商業ベースで入札とか何かできめられる形式でありまして、先ほど関特労の坂本さんから出されました新日飛の子宏工場の問題は、恐らくは私の想像によりますとタイム・アンドマテリアルの請負契約をとつているのじやないかと思いますけれども、よくわかりませんが、それならばやはり労務費が当然請負契約の中に入つておりますので、結局米軍との関係おいてきめなければならないというようになると思いますが、その点がわかりませんが……。
  59. 坂本登

    参考人坂本登君) おつしやるようにタイム・アンド・マテリアルなんですが、形式の如何によつてそういう関係が起きるのではなくて、どちらをとつてもそういうことは、そういう方針をとれば適用し得るのであります。なぜならばユニツト・プライス、いわゆる出来高払いのほうも、一々の品物の単価をきめる場合には、労務費が幾らで利潤が幾らで、経費が幾ら、こういうものの積を予定される生産の量で割つたものが単価になる。これは時間当りの場合にも共通に言える、こういうことが言えるのであります。  その理由は、先ほど委員長がおつしやつたと同じように我々は解釈しておりますが、いわゆる単価が新らしく毎年大概七月の一日、乃至は若干会社によつて契約の期が違いますが、契約の単価の基礎になります数字は、それ以前における期間の支払の実績、こういうことになりますから、当然労務費が重要なウエートを占める。そういう点で労務費が高くなると次の単価を高くしなければならないという因果関係があります。ですからあらかじめそれを安くしておけば次の期においアメリカとして有利な契約条項となる。今までは放置しておいたために、毎年賃金が上るために五%か十%上ることを余儀なくされる。今のところで賃金を抑えておけば、毎年物価が上つても、一般労働者の賃金が上つても、特需においては上げなくても済む、こういう考えがその根本であろうというふうに、殆んど推定以上に、それに相違ない、こういうふうに確信を持つて考えております。
  60. 寺本廣作

    ○寺本広作君 今の関係で、むしろ外務省に聞いたほうがいいかも知れません。日経連のほうで受入方式の問題をいろいろお話になり、そして個々の会社との個々の契約人事条項がどうなつておるか、組合関係をスパイさせるという条項がどうなつておるか、乃至は組合に賃金を譲歩するときといつたような具体的問題については日経連でも御調査になつておらん。今中西労政局長からお話なつた中においても、需品についての紛争があれば最終的には合同委員会に持込める。米軍が需品の関係でどういう条件を日本側に持出しておるか、そういうものを事前に知らさず、最後の締括りだけ合同委員会に持込むというのでは、何か事が起つてからあと始末だけ規定されておつて、そういう条件を日本の特需会社に押付ければ当然問題になるぞということを外務省で御承知つたら、アメリカ側にも厚意的な忠告ができて、事前に防げるのじやないかという気もいたしますが、何か個々の会社に持出す契約を外務省で調べられるような方法はないものでしようか。
  61. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) お答え申上げます。どうも大変実際問題として特需工場はこれは始終変るだろうと思うのですが、それに外務省がそういうように国内のことを一々、特需工場契約ができるたびに知らして来い、そうしてそれが来たらどういう契約を結んだかということで届けさすというようなこともちよつとどうかと思うのでございますが、又問題が起つて来れば何ですが、需品の、例えば物の納入なんかでございましたらこれは幾つもあるのでございまして、それを一々我々のほうに届けさして調べておけということは、これは何も労働問題だけでなくて、物の納入に関しても問題は起ります。それはやはりちよつと今の具体的な人間の数からいつて無理じやないか、こういうふうに考えます。ただ問題が起りましたときにできるだけ速かに知らして頂き、これを処理して行く、それから特需工場の方も、こういうことを押付けられそうで困るのだが、併しおれのほうではどうも工合が悪いからお前のほうで一つ掛合つてくれ、こういうふうにお話を頂ければ、これは何もこつちも酢のこんにやくのと言つて逃げるような考えはございません。事前にちよつと工合が悪いから話をしてくれというふうにお話を頂ければ、これは外務省で話合いをする、こういうふうにしたほうが実際的であり、空手形を発行せずに済むのじやないか、こういうふうに考えます。
  62. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) いや、その問題が起きたときにやるとおつしやるのですけれども米軍との関係だから、一つ問題が起ればそれと同じような問題が大抵ほかの契約工場にもあると貝て間違いないですね。例えば先ほどの杉田工場だとおつしやるのですが、私の見て来たのはほかのところなんですが、やつぱりタイム・アンド・マテイアリアルの工場なんですが、同じことの経営者は苦しみを述べておるのです。たからやはり一つそういうトラブルがあれば、これはやはり外務省だというわけではありませんけれども政府として取上げて、そうしてそんなに苦しみが出ない前にやはり解決するということが、これが私は行政の責任だと思うのだが、そこで実は今日は私はその点が一番中心になると思つて先ほどから考えているのですが、この前岡崎外務大臣に、あなたも御承知だけれども、来てもらつて、一体この人事条項をどうするのだという話をしたところが、下のほうからだんだん膨れて来て合同委員会まで来れば、合同委員会で何とか始末しましよう、こういうことなんです。併しそれでもちつとも解決しないから、我々はこのむずかしい労働問題調査案件の中で、国会としては少し出過ぎているかも知れないけれども、これを一生懸命やつているわけです。だから出過ぎないようにするためには、やはり行政府のほうでもう少しこれを何とか一つつてもらわなくてはいかん、私の申上げることが無理ならば駁論してもらいたい。
  63. 関守三郎

    説明員(関守三郎君) 私は無理だとも申上げません。私の申上げておるのは、つまり無理に契約を押付けられて困ると思つたら、契約を結ぶ前に早くこつちへ教えてもらいたい、そうすればこつもで話をし上う、それをただ届出制にして、契約をする前に一々こつちへ持つて来いということを申上げるのは、事実上それを我々は調べている能力もございませんし、ですからそれよりも特需会社で受けて工合の悪いものができそうだというものは遅滞なく御連絡を頂きまして、こういうことを押付けられそうで困つているからお前のほうで掛合えと言えば、それによつて我々のほうで掛合うということを申上げたのでありまして、届出というようなことは結構でございましようけれども、人間もおりませんし、それを一々読んでいるだけでも大変でございますから、それは事実問題として御勘弁頂きたいと、こういうわけであります。
  64. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこで問題の内容的な質問に入る前に、重要なことですから方針だけ一応きめられるものならばきめてお約束を願いたいと思うのは、これは恐らく特需関係の工場は通商産業省にも関係があると思います。恐らく殆んど全部だと思います。車両関係は運輸省ですが、そのほかは通産省だと思います。運輸省或いは農林省等に関係があればそれも含めて頂いて、緊急に一応外務省、労働省、通産省或いは特需を持つている行政監督庁があれば、運輸省でも農林省でもかまいませんが、そういうところでこの問題を一体どうするか、緊急に一つつて進め方について結論を出してもらうわけに行きませんか。
  65. 中西実

    説明員中西実君) 生産の関係で通産省その他いろいろ関係がございますけれども、この労務関係、殊に人事条項といいますか、労務条項関係、これは先ほども申しましたように、大体関係労使から十分実情を聞きまして、そうして工合の悪いところはどこだということを一応私のほうで案を作りまして、そうして日本側態度をきめて、外務省の御協力を頂いて合同委員会あたりで処理するというのでいいんじやなかろうかというふうに考えられるのであります。  それから今の業者のほうでも、自分のところ労務管理の問題なんかで都合の悪いような条項のある契約を押付られれば、すぐに御連絡されて然るべきじやなかろうか。この点は今まで非常に私どものほうからも積極的に申すのは抜けておりましたので、日経連にもお願いしますと同時に、そういつた業者の方々に今後ともこのことをお願いしたい、かように存じております。
  66. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働省で案を作れば大体それで行けるだろうというお話でありますけれども、例えば今聞いておれば、この賃金関係の問題について今初耳だと言つておられるでしよう。そういうような状態ところでは案を作つてもらつてもとても完璧にはならんと私は思います。この前の人事条項のときでも、だんだんやつている間に却つてこの委員会労働省に向つて私は問題点を相当指摘したと思います。これは大体認められているんだから事実だと思います。そういう点でやはり行政庁はたくさんあるんだから、一遍寄つて懇談されることは私は悪くないと思います。特にタイム・アンド・マテイアリアルのシステムの場合は、これは賃金であると同時に経営者側のこれは生産額になる。機械設備を借りてやつているんですから、収入を挙げる根拠はタイム・アンド・マテイアリアルである、まさにそうである。従つて通産省でも私はこういう問題については関心を持つておられるだろうと思いますし、又持つべきだと私は思います。そういう意味でやはり関係省が一度寄つて、この問題をどういう工合に好転させるかということについては協議されるべき段階であると思いますが、如何ですか。
  67. 中西実

    説明員中西実君) とにかく労働省は結局労働問題として中心的な役割をする必要があると思いますので、実情のわかりますために必要な人たちの御参集を頂く、これはもう十分考えて行きたいと思います。殊にやはり一番事情のわかるのは当該会社、組合、更にそのほかおつしやるように事情入手のために必要な部面に寄つて頂きまして、十分実態を確めまして、その上に立つて対案を作つて行きたいと思います。
  68. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますと只今の労政局長の言を疑うわけでも何でもありませんけれども、明日労働大臣にここへ出席してもらうことになつております。従つて明日大臣が出席されるまでに、一面労働省としてお考えになつて、省としての意見一つまとめて頂いて、そうして具体的に今あなたがお述べになつたことを進められる構想を一つここでお約束願つておきたいと思いますが、よろしうございますか……  大体そういたしますと只今の問題になつておる点の大ずかみの進め方はそれじやそういうようなことにするとしまして、日経連もそれから特需工場労働組合のほうも、これは成るべく全力を挙げていろいろな問題点を早くピツク・アップして頂いて、労働省なり外務省なりのほうへ、これは別にどこの特需工場の誰が言つたというようなことを言いますと、これは或いは問題があるかも知れないけれども、その辺はあなたのほうが専門家なんだから適当に一つつて頂いて、解決できるような努力をして頂きたいと私は思うのですがね。
  69. 坂本登

    参考人坂本登君) 今の、現状は大体先ほどお話したような事項がすでにあるわけですが、どういうふうに解決するかという解決の方法と内容についてですが、方法について経営者が工合が悪いという場合には、外務省なり或いはその他の政府機関に申出るべきだ、こういうようなお説が再三言われておるのですが、実際には我々はそういう方向は期待できないわけであります。一番近い私どもの会社なのですが、現在の人事条項を会社は歓迎しております。これを削除されるということを非常に恐れておるわけです。それはもう理由は私が申述べるまでもないことなんですが、そういう状況でありますから、更にその理由も又我々として必ずしも不当だと言えない事情があるわけです。というのは、御承知のように特需もそろそろ生産品の現象という傾向にありますので、業者の取合いは激化しておるわけです。ここでキヤンセルされたり或いはここでアメリカさんのお冠をこうむつたならばこういうような危惧を当然いたしますから、非常に身上を大事にしてちやほやしておるわけです。そこでけしかるとかけしからんというようなことは、要するに一定の期間労働者にはどんな不利な問題があつても、生産を確保するということさえできればあとはどうでもよろしいということで、外部に漏れては非常に工合が悪い、労働者側に紛争が起るということも工合が悪いということから内密にいたしまして、いわんや議会において私が言うようなことを経営者が言うことはいささかもないのであります。それでもなおこういう矛盾があつてこれを解決する、こういうことになりますと、当局が中央において大体特需の契約基準というようなものを示されて、その基準を資本家が背負つてつて、これ以外のことをやると、日本人として政府に対しても労働者に対しても顔向けできん、こういうことで、外の力で経営者が止むを得ずそうなのだ、こういう立場を作つてやらんと、実際問題として解決できないのであります。政府当局にそういう観点から考えて頂きませんと永久にこれは解決できないのじやないか。  それから内容につきましては人事条項がやはり中心ではありますが、その他。ペイ・ロールの問題、それから今社によりましては大分細かにいろいろあるのでありますが、そういう点も必ずしも共通しておりませんので、個々に指摘して、非常に不当のものもあるのであります。或るところでは全く解決しておる。組合活動の面においても制限されておると一概に申しますが、その様相はばらばらでありまして、殆んど普通の工場と変らない池貝自動車というような例もあります。私どもところのように専従をいたしますと、専従が解かれるまで工場に二度と入れない、こういう工場もあります。さまざまでありますので、そういう点も組合活動の行動の基準というようなものも今度全駐労できめられたような線で、特需の場合にはもつと緩かなものであつて然るべきだというふうに当然考えられております。そういう点をこういう場合に一緒にこういうやり方で解決をすべきであるというふうに考えております。  それからもう一点、先ほど中西さんがおつしやいました需品特需関係おいては人事条項契約がまだないというお話のように承わりましたが、実は日本火薬におきましてはこれは純然たる需品特需の関係でありますが、人事条項を挿入した契約が現在すでにできております。こういう例のありますことをこの機会を借りまして申上げておきます。
  70. 中西実

    説明員中西実君) 今の問題は私今初めて聞いたのでありますが、全体としましておつしやるように個々の経営者からはなかなか報告も出にくいという話もあると思いますけれども、併し現に日経連その他も、全体の経営者の意向は人事条項は困る、できるだけこれはやはり適当に修正或いはできれば削除してもらいたいという御意向でありますので、その点は余り言われるのもちよつと過ぎるかと思います。そこで労働省としましても実は基本的な考え方に二つありまして、一つはこの問題は経営者の私契約の問題なのだ、労務管理おいては会社に全責任を持たしておる。従つて会社が実行できないような契約はしませんければいいのだ、して悪いということもないので、而もあの契約内容は法律的に見て違法かというと違法ではない。従つてこれは経営者の自主的判断に委ねべきだという考えもあるのでありまして、現に昨年、一昨年あたりまで労働省としましても余りこの問題には深入りしないという気持も中にございました。もう一つの考え方は、それはそうであるけれども、やはり全体の労働政策の上から、又大きくは日米間の問題の円滑化を期するという意味から、やはりこれは適当に日本の労働慣行にできるだけ近寄らせて摩擦のないようにすべきだ、こういう考えが二つありまして、私どもは今あとの気持でできるだけ一つこの問題について、法律問題としては問題はないかも知れませんが、やはり労働慣行として十分に考えて行きたい、こういう観点に立つておるわけであります。その点の考え方を一つ了解頂きまして、そうして十分に実情を知つておる方々の御意見なりを参酌いたしまして対処して行きたい、かように思つております。
  71. 師勝夫

    参考人師勝夫君) 経営者側といたしまして、先ほど関特労の坂本さんから非常に痛い発言がありましたので、弁解をしておきたいと思います。  日経連は先ほども申上げましたように特需工場の労使関係の円滑なる運営ということが目標であります。従つて強い二つの要請をいたしておりますように、ただ単にゼスチユアといたしまして経営者側がレツド・パージをするためにあの条項を置いておいたほうがよろしいというようなそういう狭い、軽い考え方でこの問題を扱つておるものとは我々は毛頭考えておらないのであります。少くとも日本の経営者が、特需契約によりまして労務管理をして行く場合には、自主的な立場で、そうして日本の労働慣行によつて断固としてこれは行かなければならんということは、これは私は、私の知つておる範囲、数十社の特需会社いずれもその方向にあると思います。若しも仮にそういう方向に向つてないとすれば、この際一歩前進して自主性の確立というところ向うべきであろうと思います。来週この問題について基本契約改訂の後に、やはり新しい事態に対しての特需会社の経営者の態度をきめる会合があります。恐らくそういう方向にきまるものと我我は十分期待することができるわけであります。一言弁解をしておきます。
  72. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それからもう一つ労政局長に伺いますのは、先ほど需品工場に対して人事条項がやはり強要されておるということが言われたのですが、その中にスパイ情報の強要、今度の新しいあれにやはり入つておるらしいのです。そうするとこれは普通の特需工場と違つて、その工場の中の或る部分において需品の生産をやつておる。その場合全体の工場がそういうことになるというと問題が相当あると思うのですね。あなたは今御承知なつたようですから、緊急にこの点を、やはり通産省ならばよくおわかりと思うから調べて頂いて、そういう工場の中の契約の問題なんかもできれば取上げて頂きたい、これは希望を申上げておきます。  そういたしますと、この問題は人事条項内容論は相当この前やつておりますから、この委員会はそうそんなに附加えることはないと思います。ただその解決の方法だけだと思いますから、そこで今、日経連のほうから師さんがお話がございましたように日経連では今月十五日頃を期してとにかくこの問題に対する日経連態度をきめる、こういうことでございましたから、その態度をおきめになる場合の内容は今ここで言われたような点、その点を一つ特に加えて、四点ございましたが、そしてこの前伺つたところによりますと、いずれも賛成しがたい、こういうことだつたと思いますから、その点で一つきめて頂きたいと思います。
  73. 師勝夫

    参考人師勝夫君) 富士自動車の問題が出ましたので、先ほど私は一般的に特需会社が好転をしているという御説明を申上げましたが、勿論私どもはそれを承知しております。その事件解決に対しましては関係官庁方面とも連絡をいたしまして解決の促進を図つているわけであります。で問題はやはり保安解雇基準なり理由というものを明確に日本経営者側に示してもらいたいということなんでございますから、その点基本契約の線と多少合うところがあります。そういう点は日経連といたしましてもこれは強く従来からも要請しております線でありますので、丁度富士自動車の問題が出ましたので、この点を特に明らかに申上げまして、労働委員会の十分なる御協力なりを期待いたしております。
  74. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今のような工合にして日経連はお進めになると共に、労働省では先ほどお約束申上げたようなことで、是非明日までに具体化して頂きたいと思います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  75. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始め  て。  それでは閉会いたします。    午後四時七分散会