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1953-07-28 第16回国会 参議院 予算委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十八日(火曜日)    午前十一時三十六分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之助君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            大谷 贇雄君            小野 義夫君            鹿島守之助君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            関根 久藏君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            吉田 萬次君            井野 碩哉君            高木 正夫君            中山 福藏君            岡田 宗司君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            加藤シヅエ君            棚橋 小虎君            戸叶  武君            永井純一郎君            最上 英子君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原九郎君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君   国 務 大 臣 大野木秀次郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁経理局長 窪谷 直光君    保安庁装備局長 中村  卓君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省理財局次    長       酒井 俊彦君    労働省労働基準    局長      亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  松澤君に申上げます。大蔵大臣行政管理庁長官が来ておりますから、その分の御質問を。
  3. 松澤兼人

    松澤兼人君 塚田行政管理庁長官にお伺いいたしたいと思います。  最近行政機構改革と申しますか、或いは行政整理と申しますか、そういう問題が非常に大きな話題となつているようでありますが、行政管理庁長官として、或いは政府として、どういう構想行政機構改革なり又は行政整理などをなさろうとするお考えでありますか、承わりたいと思います。
  4. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) この問題は先般当委員会でもちよつと申上げたのでありますが、何にいたしましても、何べんもやりましたので非常に困難ということは皆さんも御承知通り、私も又よく痛感をいたしておるのであります。併し困難だからやらないということではこの問題の解決される時期は遂に来ませんし、そうして又現在のこの行政機構をこのままで放つておいていいということは、どの観点から行きましてもそういう考え方は出て来ないのでありまして、どんなに困難であつても私は是非やらなくちやいけない、そういうように考えまして、政政といたしましては、総理も非常に強い熱意を持つておられますし、私といたしましても絶対にこれはやらなくちやならない、こういうように考えていろいろ具体的な案をまあ考えておるわけであります。そうして今日まで私が大体到達いたしております結論では、過去に何回もやつておりますので、この問題については今日構想や案が不足しておるという段階ではないのであります。要するにこの必要性をどの程度に認識するかということが第一段階であり、従つてこの必要性の認識ができれば、それに対して努力熱意を向けて行くということと、その道程において世間及び国会の御了解を得られるようないろいろな手続を踏んで行くということがこの問題の成否を決定する唯一の鍵である、こういうふうに考えておるわけであります。
  5. 松澤兼人

    松澤兼人君 私は現在行政管理庁長官が、或いは政府が持つておられる行域改革に対する構想を承わりたい、こり申上げたのであります。それでそういうものがあるならばここでお示しを願いたいと思います。
  6. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 構想はまた今までの幾たびかの改革の機会に出された幾つかの案はありますけれども、私といたしまして、まとまつた案というものはまだできておらない。勿論鋭意案をまとめるのは努力をいたしておりますけれども、まだそこまで参つておりません。併し大体物の考え方構想を申上げますならば、事務整理して人間整理するという方向に持つて行きたい。そこで事務整理すると申しましても、今国がやつております仕事は、大体まあやればやつたほうがいいという程度仕事ばかりしか残つておらんことも申すまでもないのでありますが、併しそれをなお且つ整理をしようということになると、更に一段と強い基準で以て整理して行かなければならない。そこで今考えておりますのは、国としてどうしてもやらなければならない仕事だけを逐次拾つて行つて、そうしてその重要度に応じて、だんだんとこの国の仕事として残しておかなければならないものを、その配列をつけて行きますと、今やつております仕事にも、今日の段階では国がしないでもいいと思われるような幾つかの仕事が当然考えられるわけでありますから、そういうものを逐次減らして行くことによつて人員整理ができるようにと、こういうことを考えておるわけです。  それからもう一つ考えておりますのは、国と敵方事務配分ということでありますが、これは今私がこの点で痛感いたしておりますのは、かなり国出先機関が戦争中から戦後にかけて無制限に、むしろ無方針に拡張されたものがあつて、国の出先機関地方自治体というものが同じような仕事を重複してやつておるという面がかなりあると思います。その場合には、原則として国の出先機関をなくして地方仕事を移して行く、こういう方向に持つて行きたいというような構想をもう一つ立てておるわけです。そのほかいろいろ物考えます基準というものは或る程度きめておりますけれども、それに附随してその結果出て来る構想というものは、只今申上げる段階までは参つておらない、こういうふうに申上げたい。なおこの時期といたしましては、これは先般も申上げましたように、是非二十九年度の予算には整理の結果が織り込めるように、それを目標として努力をいたしております。
  7. 青木一男

    委員長青木一男君) 松澤君にちよつと申上げますが、労働大臣が出席されましたので、昨日留保になつております小林委員質問、それからあなたに引続き労働大臣に質疑をして頂いたらいいかと思いますが、如何でございますか。よろしうございますか。
  8. 松澤兼人

    松澤兼人君 結構でございますけれども、私に自治庁長官が来たから、自治庁長官質問しろと、こうおつしやつていて、今二言三言質問したら、今度は労働大臣が来たから労働大臣質問しろということでは、こちらとしても折角その質問しようという出鼻を挫かれるわけで、今後もそういうことであると、これはもう全くこちらの考え質問できないということになるので、只今のところは私はそれで結構だと思いますが、今後そういうことをたびたびやられちや困る。
  9. 青木一男

    委員長青木一男君) ただ私は、労働大臣は御承知通り労働委員会に出ておられますので、そう申上げたのでありますが、それは都合によつて……(「自治庁長官が済んでから」と呼ぶ者あり)それでも結構です。それじやどうぞ継続して下さい。
  10. 松澤兼人

    松澤兼人君 そうですが。それでは行政管理庁長官に続けてお伺いいたしますことは、大体まあこれは行政管理庁長官でなくとも、私ども大体常識的にはわかることはなんでありまして、構想と申しますと、やはり国の機関というものはどの程度の圧縮をするというようなことや、或いは国の事務はどの程度のものは地方に委譲する、或いは市町村行政機構が拡張して行つて、或いは府県の問題をどうするか、更にいわゆる道州制の問題を考える必要があるのかどうかというようなことを私たちはまあ知りたいと、こう考えているわけでございまして、中央官庁の問題にいたしましても、或いは経済審議庁をどうするかというような問題や、或いは又人事院の問題も大蔵大臣が何かおつしやるようでありますけれども、そういう意図があるかどうかというようなことを承わりたいと実は考えていたわけなんであります。更にそういう点で説明が願えれば結構だと思います。
  11. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 大体只今指摘になりましたような問題は、行政管理庁としても全部大半は問題として取上げておるわけであります。ただ結論が出ておりませんのと、それからして事柄がまあこういう問題でありますから、案が中途の段階でこの考え方が不用意に出されるということは、起さないでもいい混乱を起すという心配もありますので、成るべく自分としては最終的に考え方のきまつたところで皆さん方に是非申上げて、そして御批判を頂くようにするほうがいいのじやないかというふうに考えておりますので、考えておるということははつきり申上げられますのでありますが、まだ最終的に皆さん方に申上げるという段階まで参つておりませんので、その点御了解願いたいと思うのであります。
  12. 松澤兼人

    松澤兼人君 事務的にはすでにいろいろ諮問委員会なり、或いは又は勧告なりというものがありまして、それを採用するかしないかということは別として、一応の線は出ていると思います。従つて行政管理庁事務的な見解というものは、ほぼあるのじやないかとこう考えるのであります。これを公にすることがいいか悪いかということは別でありますけれども、我々といたしましては、一応の現在の段階における考えを述べて頂くことが予算審議に非常に必要である、こう考えているのであります。従つて只今手許に案がなければ、後ほど現在固まつている構想というものをお示し願つても結構だと思いますので、全然発表しないということでは、私どもとして非常に困ると思うのであります。で、この点現在お手許に持つていないから、後刻発表するということであれば、私は一応了承いたしたいと思いますが、後刻でもお示し願えるかどうか、承わりたいと思うのであります。
  13. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) その点は先ほども申上げましたように、皆様方に御披露申上げる段階まではまとまつたものは全然ないのでございます。今鋭意案を練つておるという段階でありまして、ただ個々にこの問題はどういう工合考えておるのだということのお尋ねであれば、勿論私ども考え段階においてそういう問題もいろいろ検討しておりますから、それは幾らでも申上げられますけれどもただ案としましては、事務当局としての案といたしましても、まだ御披露申上げる程度のものはまとまつておらない、こういうように御了解願いたいと思います。
  14. 松澤兼人

    松澤兼人君 政府行政改革と申しますと、打出しは大変いいのでありますが、結局一切の負担首切り人員整理というところに持つて行きまして、行政機構改革であるとか、或いは事務の再配分であるとか、或いは事務整理でありますとか、或いは合理化というようなことを全然考えられず、天引首切りというところに落着くのが、これまで自由党内閣のやつて参りましたいわゆる行政機構改革であると思うのであります。実際そういうふうになつていると思うのであります。そこで私が申上げるまでもなく、勿論第一には機構改革、それから事務の再配分、そうして若し余剰の人員があるならば、一応配置転換をやる、それでも更に剰余の人員があるならば、そのときに考慮をするという段取りをとらなければ、これは本当意味行政改革ではない、こう考えるのでありますが、大体そういう御方針でおやりになるお考えでありますか。或いは行き当りばつたりに、結果においては何者の首切りというようなことで、最後の結論をお出しになるというお考えでございましようか。
  15. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 勿論行政整理一つの狙いは、人間が若し多過ぎるならばこれを整理して、国民負担を減らしたいという考え方があるのでありますけれども、併し今度の整理の場合におきましては、そういう整理をやりましても、仕事が減らないと結局又いつの間にか人間が殖えて来る。定員を殖やさなければ定員外非常勤労務者という形で殖えて来る。従つて国民負担を減らすという声明は何ら実効が挙らないから、それではやつて意味がない。そこで今度は人間は成るほど減らさなければならないが、併しそれよりも人間が減らせるように事務整理することができるかということを先ず考えて行く。成るほどこの事務はこれは減らせばいい、この事務はこういう工合にあつちこつちで重複してしまつておるから、一方にまとめれば一方は人間が空くというように持つて行つて人間を減らして行く。こういうように重点は事務整理、そういう方向に置いて、その上から無理なくできる人員整理というものを考える、こういうように計画をいたしております。
  16. 松澤兼人

    松澤兼人君 これに歓迎いたしまして、過般人事院勧告が行われましたときに、大蔵大臣は新聞に何か談話を発表されまして、人事院というものを改革して給与局というものに変えたらどうかというようなお話をなすつたように読んだのでありますが、大蔵大臣はそういうお考えを持つていらつしやるのでありますか、どうですか。
  17. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えします。私はさようなことを申した記憶はございません。ただ私が申した意味は、今の大蔵省主計局の中に給与課というものがある。実はこれでは足らんので、或いは内閣給与局といつたものができることが望ましいという意味を話したように記憶いたしております。
  18. 松澤兼人

    松澤兼人君 元来大蔵省には給与局というものがあつたのでありますが、人事院ができましたときに給与局がなくなつた、給与課だけ現在置いてある。そういたしますと、現在人事院で以て給与の問題を取扱つている。大蔵省には給与課だけしかないからこれでは非常に困る、給与局を設けたいというお考えならば、この給与局にはどういうことをやらせようとお考えになつていらつしやるでしようか。
  19. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 実は非常に給与の問題というものは複雑でございまして、ほんの一課としての二十数人ではなかなか取扱いにくい問題が多いものですから、そこでまあ私どももまだ正式にきまつたわけでも何でもありませんけれども、ただそういうものができたらどうかと思うと、勿論人事院人事院で持つておる使命がございますから、人事院使命立入つてどうこうという考えは毛頭持つておりません。なお松澤さんも御承知と思いますが、実は対象になつているのは、たしか百五十万の官公吏のうち四十万人ぐらいの公務員人事院関係になつているんじやないかと思います。そういうことだからもう少し全体としての考え方も要るんじやないかということの考え方からそんなことを申したので、まだ実は固まつた案でも何でもございません。
  20. 松澤兼人

    松澤兼人君 大蔵省給与局を置くというその職制と申しますか、或いは職務権限と申しますか、人事院と何か対立するようなものをお拵えになるようにとれるのでありますが、人事院人事院としてそのまま置いておくということになれば、そういう厖大な給与局というものは要らないようにも思うのでありますが、給与課だけでは不十分であるから、人事院のほかにそういうものを拵えなければならないというその必要性については如何でしようか、どうしても置かなければならないというその必要性です。
  21. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これはまだ実は内閣としても検討してやらなければならんと思うのですが、さつきちよつと申した通り人事院対象になるというのが四十万人だけでございますが、そのほかに百何十万もおりますので、そういうものについても一つ考えなければいかんのだろう、こういう考え方をいたしておるのでありまして、よく検討した上で、これは大蔵省の中に、今さつき申しました通り給与課というものがあつてほんの事務的な扱いをしておるわけですが、内閣のほうにそういうものが実はあるほうがいいんじやないかという私は実は考えを持つておるので、今給与課大蔵省が二十人ばかりでやつてつても、実際事務的にも進行しかねる点が多くあるものですから、そういう考えの一端を申しただけで、現在のところ何ら具体化いたしたような考えを持つておりません。
  22. 松澤兼人

    松澤兼人君 だんだんと承わりますと、具体的に固まつている案ではないということはよくわかるのでありますが、只今大蔵大臣が言われました内閣の中にそういつたようなものが必要であるかも知れんというお話で、私も実は次の質問で申上げようと思つていたのでありますが、これは大蔵省の中に私は必ずしも給与局というものを置かなければならないという理由がはつきりしないのでありまして、若しそういうものがどうしても内閣側に必要であるとするならば、内閣に、或いは総理府の中にそういうものがあつて、或いは人事院と両々相待つて給与の問題について検討するということが適当であるかも知れません。併しそれにいたしましても、人事院権限というものと内閣給与に関する権限というものとがお互いに競合するということもあるのでありまして、この点は十分に考えて頂かなければならないと思います。若しも大蔵大臣のお考えの中に、特に大きな勧告のようなものを出されて誠に予算を組むのに困る、或いは実施をするのにも困る、いつそ人事院をなくしてしまつて内閣なり大蔵省の中に給与局というものを拵えて、これがもう給与に関する一切の仕事をやるようにしたいというお考えがありますならば、これは国家公務員関係から申しまして、公務員公務員であるというこのために基本的な労働権というものを制限せられております。これを元に回復しなければならないということも考えられるのでありまして、少くとも人事院があつて適時に適当な勧告を出すために、一応はストライキの権利を剥奪せられても公務員人たちはこの勧告に信頼と申しますか、期待をいたしまして、これを政府予算化し実施化してくれるならば、軽うじて生活ができるということに期待をいたしているのであります。でありまするから、ただ一方的に給与局というものを拵えて、給与に関する勧告や或いはは又給与に関する実施について、人事院権限給与局に移そうというのでありますと、国家公務員法の根本的な検討ということが必要になつて来るわけであります。これらの点は如何でございましようか。
  23. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 人事院が持つている使命につきましては、私ども誤まつた考えは持つていないつもりであります。従いまして、過日も松澤委員の御質問にお答えしてできるだけ尊重する、併し財政等の立場でできん点は止むを得んということをお答えしたような次第であります。今の申上げた点は、或いは私の言葉が足らなかつたかも知れませんが、大蔵省にある給与課というものが、どうも私は大蔵省給与課というものがあるということは本当の姿じやない。むしろこれは内閣にあるほうが本当じやないか。そうして今の四十万人の対象のほかの百何十万人程度の者についてのそれらの給与対象と言いますか、それは内閣と言いますか総理府と言いますか、そこでまとめたほうがいいのじやないか、こう思つている。こういう実は私見を持つているのであります。別にこの考え方のほかに人事院を廃止しようとか、そういう考えは毛頭持つているわけではありません。
  24. 松澤兼人

    松澤兼人君 只今の御答弁で非常に明らかになりました。併しこの問題につきましては、マッカーサー元帥の書簡によつて公務員法の改正が二十三年に行われたという経緯もあるのでございまして、行政管理庁といたしましても、或いは大蔵省といたしましても、慎重に考慮して頂きたいと存じます。  更に行政管理庁長官或いは自治庁長官としての塚田君にお伺いしたいと思うのでありますが、現在の地方行政、或いは地方制度というものはいろいろと問題があるように見ているのでありますが、道州制や或いは大都市制、或いは市町村制の将来についてどんな御見解を持つておいでになりますか、この際承わつておきたいと思います。
  25. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) これはこの地方制度あり方自体というものについては、御指摘のように非常に問題が私もあると思うのです。殊に今考えております国の行政改革というものを頭に置いて考えますと、これとの今専務の繋がりの面においてもうまく連絡のつくようにということを考えなければなりません。ただ地方制度を全般的に考えてみますときに、非常に心配をいたしており且つ問題と考えておりますのは、地方自治体の数が非常に多くあるということ、それからその多くあるものが非常に大きさの違つたものであるということ、この二つなのです。市町村は約一万に近いものがございます。そうして大きいものは人口何百万というものでありまして、小さいものは人口六十、七十という村もまああるわけであります。従つてこれを数を整理して、粒を揃えて行くいとうことになれば、これは物の考え方がよほど楽になります。例えば市町村に対しましても、税制その他財政の基本の考え方をきめます場合に、こういうように能力の違うものが雑多にありますと、とても私のほうでは全部律しられるようなものは考えられません。そこで市町村の数を減らしますために、今、参議院において先般御通過になりました、衆議院において審議中と思つております町村合併促進法案、これは私非常に私は期待をいたしておるわけであります。あの法案によりますと、大体本来の市町村の数が半分になる、減らされる。そうして大体粒も揃つて来るということになるからずつとやりよくなる。できますれば更に、町村合併促進法案、それは三年に期間を区切つておるわけでありますが、三年の期間でその通り整理ができるならば、更に第二段階として、これをもう一つ整理をする方法も考えたらいいじやないか。同じように又府県についてもまあ考えておるわけであります。現在の府県の教を減らしながら粒を揃えて行く。そういう考え方をずつと推し進めて行きますと、御指摘のような道州制という問題になつて行くわけでありますが、一気に道州制というところまで行けるかどうかはかなり問題があると思つております。なお、この道州制というところまで行く段階におきまして、現在のこの府県というものの自治団体としての性格に少し検討を要する面もあるのではないか。女御承知のように府県市町村も同じように完全自治体という法律上の一応建前になつています。併し先ほど申しましたように、行政事務相当数府県に委譲する場合におきましても、府県が完全に自治体の場合のほうがいいか、或いは自治体としての性格と国の出先機関という性格と併せ備えているというほうがいいか、かなり問題点がある。その辺どうでしようか、そういう点も今折角検討いたしているところであります。
  26. 小林孝平

    小林孝平君 労働大臣大変お忙しいところでございますから簡単に御質問いたします。  先ず最初に今回の予算で大幅な修正が行われたのでありまするけれども、そのうち米価に関係いたします完遂奨励金として石八百円今度は農民に渡されるという問題につきまして、労働大臣はどういうふうな関心をお持ちでありましようか、それをお伺いいたします。それは私は全然関知しないとこあである、こういうふうにお考えになるか、或いは多少の関心をお持ちになるか、その辺をお伺いしたい。
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申上げます。米価の供出完遂奨励金というものを石八百円見ているわけでありますが、これがどういうふうに扱われるかということついて私ども関心を持つております。何と申しますか、消費者といたしましての米価に成るべく跳ね返らないような方法でやつてもらいたいという私どもの立場からの関心を持つております。
  28. 小林孝平

    小林孝平君 只今お話では、ただ関心を持つていて、そうして成るべくそうならないようにということを考えておる程度でございまして、何ら積極的に労働大臣としては、そういうふうに具体的にならないようにというふうな希望なり或いは意見をお述べにならなかつたのでございますか。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように石八百円として約二百億の金は食管特別会計のほうにおいて食糧証券によつて処理をされるということになつております。ただ前年度の供出が非常によかつたために約百四億円というものがありまして、これが一般消費者価格として考えられるという話もございますが、その八百円というものをどう扱うかということにつきましては、関係各大臣間においてなおお考えのようでありますから、私としては先ほどのような答弁をした次第でございます。
  30. 小林孝平

    小林孝平君 これは労働大臣もおつしやる通りに非常に労働者の生活に直接関係して来る問題なんです。そこで只今こういうような重大な問題について関心を持つておるとおつしやいましたけれども、こういうような二百億円に及ぶこの金額についての解釈或いはその性格を十分御承知になつておらんのです。こういうことでは私は大変心外なのでありまして、例えば二百億円は全部食糧証券で賄われる、こういうようにお話でございますが、これは二百億円のうち百億円は食糧証券でやられるけれども、百億円は一般の財源から入ることになつておる。こういう重大なことすら労働大臣は御存じないということでは、私は余りこれに関心を持つておるとは受取りにくいのです。こういうことでは労働大臣ちよつと米価については関心を持つておられるようなお話をされておるけれども、実際は持つておられないのではないかと思う。この点如何でございましようか。
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 二百億は糧券で賄うという方針はきまつておりまして、御承知のようにこの予算の御審議を願つておる際にはそうなつておるのであります。ただこれは御承知のように糧券というものはそれ自体一つのインフレ要因になるということも考えられますまで、政府としてはそれをいつまでもそのままにしておくというわけには、参りままいかと思います。それでこの次の補正予算ということが仮に考えられるとすれば、その機会にこれをどうするか、或いはその次の年度の予算においてどうするかということになるわけであります。只今の百億円というのはこれは違うのでありまして、今度の八百円上げたということに伴つて当然されるのではなくて、先ほど申上げたように前年度の供出が非常によかつたために食糧証券というものが非常に殖えておるので、これを一般会計から一部を補う、そのために百億円を補うというので、直接今度の八百円との相関の関連はないのであります。
  32. 小林孝平

    小林孝平君 労働大臣大蔵大臣からちよつと耳打ちされてそういうことを言つたのでは駄目ですよ。(笑声)これは現在の内閣の運命にも関連する非常に重大な問題です。ちよつと聞いてそういうようなことを言つてもらつちや甚だ迷惑します。そこで今ちよつと聞いたつてわかりませんよ、労働大臣。(笑声)これから先質問をしますからよく聞いて下さい。そういうことでは駄目なのであつて、これは八百円が消費者米価に影響するかしないかということは重大な問題でありますから、そこでこれはさまつておらない政府見解も三党間の申合せもしばらくなんです。そこでこの問題を更に追及しますけれども、これが消費者価格に影響するということになれば非常に労働者にとつて重大なる影響を及ぼすのです。そこでこういう問題があるのに、労働大臣はこれは所管外である、労働大臣だと言われましてもこれは国務大臣である。当然こういう問題は総合的に、この問題が起きたときに労働大臣としてこれは困る、こういうことは消費者米価に影響すると悪いから、はつきりとするかしないかということを確められる必要があつたと思う。そこで確められたかどうかということをお伺いしたい。
  33. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大変どうも失礼いたしました。(笑声)私もどうも言い過ぎました点はお詑びいたしますが、この前の供出が云々というところは、私の言い過ぎでございますから訂正いたします。米価問題につきましては、供出完了奨励金として石当り八百円、全部糧券で計上するが、そのうち百二億は後日一般会計から繰入れる、こういうことになつているようであります。  そこで今のCPSでありますが、二万百八十円ぐらいであるのでありますが、これに対して御承知のように、まあ私の口から言うのもおかしいのでありますが、どうも闇といいますか、そうした闇米に依存する部分もこれは現実の問題としてあることを認めざるを得ないのでございますが、それを一般の米価が多少跳ね返つてつた場合に、公定価格において配給を受ける分と闇米自体に対してどういう影響を持つか、持つとすればそれがどういう程度であるかというようなことにつきまして、いろいろ調査機構を動員いたしまして調査いたしておる次第でございます。
  34. 小林孝平

    小林孝平君 そんなことは調査しなくとも、米の値段が上れば生活に困ることは当然なんです。労働大臣はどういう生活をおやりになつておるかわからんが、一般大衆はすぐぴんと来るのです。それで今、二重米価という問題が非常に重大なる問題になつて、改進党と自由党との間でこういうようないろいろとお打合せになつておることは、これはこの点です。調査などする必要はないのです。そこで労働大臣は、こういうはつきりわかつた問題を、これはこのとき消費者米価に影響するようになるのかならんのかという感じを持つて、何か申入れをされたかされないかということをお尋ねしているのです。只今のところでは、どうも申入れをされた形跡はないけれども、更にお尋ねいたします。
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大蔵大臣に対しては非常に緊密な連絡をとつて、何かそうした影響のないようにしてもらいたいということを言つております。
  36. 小林孝平

    小林孝平君 それは本当におつしやつたのですか。只今ちよつと大蔵大臣からお教えを受けられておるようでは、とてもそこまでは行つていないのじやないのですか、そういうことを言われては駄目ですよ。(笑声)そのお話をされまして、その結果大蔵大臣はどう言われましたか。大蔵大臣は、この問題は全然関知しないと言われたのですよ。おかしいじやないですか。
  37. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほどもちよつと申上げましたけれども、その影響というものがどういうふうに出て行くのか、実はこの八百円……。
  38. 小林孝平

    小林孝平君 いや、されたかされないかということを今お伺いしたのです。
  39. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大蔵大臣といたしまして、できるだけそうした影響については御考慮願つておるようでありますが、何せこれは御承知のごとく、国会で修正を受けました結果きめておるので、大蔵大臣としてもその間の扱い方を非常に苦慮されておるようでございます。私ども閣議に常におりまして、これは一回限りの話でもないのでありますから、緊密な連絡をとつて、そういうような影響を考慮しつつ最善の措置をとる、こういうふうにお互いに考えておるわけです。
  40. 小林孝平

    小林孝平君 私は労働大臣をここの委員会に引付けるという気持はないので、速かに労働委員会に戻つてもらおうと思つて簡単に質問しているのに、非常に何か訳のわからない、廻りくどいことを御答弁になつている。これではいつまでも労働委員会に戻れないです。(笑声)極く簡単に質問したことを答えて下さい。大蔵大臣お話しになつた結果、大蔵大臣は何とおつしやいましたか。
  41. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) よく考慮すると言われました。(笑声)
  42. 小林孝平

    小林孝平君 そういう笑い事ではないのでありまして、よく考慮すると言つても、それは大蔵大臣は全然この問題については関知しないと、こう言われているのです。それでそういう問題は、あなたがお尋ねになつたはずはないのですよ。そういう中途半端なことをおつしやると次々に又お尋ねいたしますが、そういうふうにただ考慮するだけではこの問題は片付かない。特にあなたは今、労働者の基本的な権利を制限するような重大なるスト禁止法案を出されているのじやないのですか。それに関係して、ただ考慮するというような返答だけで満足して引下がつて来るようでは、それは極めて労働大臣としては一方的だと思うのです。資本家に対しては何らの自粛を要望するわけでもなく、労働者のいろいろの実質的賃金の上るような手段を講ずるような勧告をしたわけでもないのに、一方では労働者のこういうような実質的賃金が引下がるような事態が起きているのにそれを放置して、こういうような重大なる法案を提案しているというのは非常に片手落ちだと思うのです。それであなたは、ただ考慮するぐらいで引下がるというのはおかしいと思うのです。きつと大蔵大臣は何か言われたのに違いないのだから、それを一つざつくばらんにお話を願いたい。
  43. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど申上げましたように一回切りの話合いじやないので、両方とも満足しているわけじやないのであります。今後においてもよく話合つて行こう、こういうことを言つております。この際私ども考え方ちよつと申上げますと、先ほど言い始めてお叱りをこうむつたのですが、簡単に申上げますからお聞き願いたいと思いますが、大体石八百円というものをどういうふうに扱うかということについて、まだ私どもも明快た御指示を得て、了解を得ていないのです。例えばこれを初めは、いわゆる供出完遂奨励金ということであるということに了解しておつたのですが、そのうちそうでもないのです。結局米価全体の問題であるというような話で……(笑声)そういう場合にどういうふうなお扱いを願うかということがまあはつきりしないので、非常につかみにくいのでありますが、全体としまして、やはり配給、非配給を入れて、八百円に値上げをすると、生産者価格は一割一分七厘程度になると見るのでございます。これが仮に四百円とすると半分でございますので、五分五厘というような数字が出るわけでございます。いずれにしても、成るたけ家計に影響を及ぼさんようにしてもらいたいということを話合い、大蔵大臣も今申したように考慮しよう、それでどういう考慮をしたのだと……、私どもはこれからやるわけでございます。そんなわけでございますからどうぞ御了承願います。
  44. 小林孝平

    小林孝平君 大変よくわかりましたけれども、私らは、この政府の御意見では、供出完遂奨励金というものは非常に特定なところに出すというお話つだたのを、もう労働大臣はその後変つたようにお述べになつたのですが、昨日変つたのですか、いつそういうふうに変つて来たのですか。
  45. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私もいろいろ心配をしました挙句、言わぬでもいいことをいろいろ申しているようでございます。(笑声)今大蔵大臣の話を聞きますと、今年は消費者米価へは入らないのだ、こういうようなお話でございます。なおその解釈等につきましては、私も労働省担当でございまして、やはり例えば農林省と大蔵省の話合いの中に始終入る立場におりません。外から心配して話すので、影響の少いように少いようにというので、いろいろ勝手にこちらで考えては、これじや因るじやないか、こういうようなことを申しておる次第でございます。(「了承了承」と呼ぶ者あり)
  46. 小林孝平

    小林孝平君 今、労働大臣は数字々お示しになつて、八百円が入れば幾ら幾ら、四百円が入れば幾ら幾らという具体的な数字をお挙げになつたのですが、そういうような虞れがあるのじやないか、そういうものをお調べになつてるところを見ると……。そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今労働大臣は八百円は消費者米価に入らん、こういうふうにはつきり言われました。昨日もたしか大蔵大臣もそう言明されたのです。そういうふうなことになれば、これは消費者米価は今年は昨年同様上らないという結論になるのです。大体それでよろしうございますか。
  47. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 消費芸米価は、小林さん御承知通り、パリテイ計算から出して来るのでありますから、この点については今後のことに待たなければなりません。併しながら今後の八百円は、これは消費者米価に何ら加算されない、このことをはつきり申上げておきます。
  48. 小林孝平

    小林孝平君 大体今パリテイがどうなつているかわかりませんけれども、パリティは横這いに近いと思うのです。そういうことになれば、ともかく消費者米価にこの八百円が入らないということになれば、大体上らないわけなんです。大体上らないと考えてよろしうございますか。これは聞くまでないと思うけれども、念のために……
  49. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 大体そうだろうと思いますが、御承知のパリテイ計算がよくわからないし、パリテイ計算の上に米価をきめますときにはプラス・アルファーというものがございます。これは小林さん御承知通りです。従つてそれがどうなるかということについては、これは審議会等の意見もありまするし、又農林当局できめることでもございまするのでこれは私はつきりいたしませんけれども、大体そうであろうと思います。
  50. 小林孝平

    小林孝平君 労働大臣にお尋ねいたしますけれども、今回のこの重大なる八百円の問題については、労働大臣として、私は特に今のスト禁止法案を提案されている労働大臣としては、非常に怠慢ではないか。これは労働大臣の基本的の又考え方じやないかと思うのです。こういう考え方法案を提案されても、これはなかなか審議に当つて困難だろうと思う。こういう片手落の考え方で法律を立案されても、これはなかなか我々は納得できないところと思う。そこでこの当面の問題はともかくといたしまして、私は労働大臣の御意見を承わりたいのは、ともかく日本は今相当の食糧が足りないで、多額の外貨を費して食糧を輸入しているのです。それで吉田内閣は、総理大臣以下全力を挙げて食糧増産をやろうと言われておるのであります。そこで今後食糧増産をやると言つても、だんだんそのコストが高くなつて、或いは具体的にはだんだん開墾などをやるからコストが高くなる。そのほか技術の面でもいろいろ手数がかかるからコストが高くなる。食糧は生産費は高くなるだけであつて、だんだんその価格が高くなろうとしておる。こういうような状態でありますので、こういう問題についてこうならば、労働者の賃金というものは、実質賃金というものはだんだん低下して来るのです。こういうような問題について労働大臣などういうような御見解を持つて、今までも、更に今後もこの問題についてはどういうような御見解を取られているか、お伺いいたします。
  51. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 我が国の産業を敗戦後から一歩々々繁栄に持つて参りますには、非常に客観的条件が制約せられておりますので、困難を伴いましたのでありまするが、御承知のように工業の一般的な生産水準というものも四割方上廻りましたし、実質賃金におきましても戦前に帰るというような状態でございます。非常に困難な歩みでございましたが、敗戦後の建て直しは着々進行しておると考えております。そのときに当りまして我々といたしましては、これは労働政策だけでありません。広く全般の経済政策に特に重点を置きまして、そうして産業の繁栄、そうして又それと並行いたしまして勤労者自身の生活内容を豊かすること、そうしたことに今後とも努力をいたして参りたい、こう思つております。
  52. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう十二時も大分越したようです。休憩して頂きたい。
  53. 青木一男

    委員長青木一男君) それでは暫時休憩いたします。    午後零時二十四分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十五分開会
  54. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続いて会議を開きます。
  55. 松澤兼人

    松澤兼人君 折角労働大臣に出席して頂きましたので、二、三御質問申上げたいと存じます。  第一に、いわゆる小坂労政の構想と申しますか、基本的な労働行政の原則というようなものを先ず以てお伺できいたら結構だと思います。
  56. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申上げます。  非常に困難な経済的な歩みを終戦以来続けて参りました。今後大いに独立国として名実共に、その実体も、国際的な地位も回復しなければならん現況でございまして、労働政策の占むる割合というものは非常に重大なものがあると思うのであります。私といたしましてはその間に処しまして、できる限り労使の間柄というものを和解と信頼によつて問題を解決するという方向をとりたいと考えておるのでありますで政府の立場というものは、労使間に徒らに介入するということを避けまして、その相互の良識と信頼とによつて物事を決するというよい慣習を作りたい、このように考えておるのであります。全体の労働問題のうちの賃金の問題の占むる割合というものは非常に大きいのでありますが、これもやはり今申上げたような、そうした考え方行つてもらいたいということは勿論でありますが、やはり日本の持つ経済的な基盤というものが客観的に一つの地位を持つておるのでありますから、どういう状態にあるかということを広く認識してもらう、労使双方においてよくその経済の客観的な実情というものを把握してもらうことが必要であるというふうに考えまして、そうした面からできるだけ資料というものを豊富に提供するようにしたい、そうしてその間の認識を深めて頂きたい、このように覆えております。職業安定の問題につきましても、先般来御審議を願つておりまするこの予算におきましても、安定関係の、例えば失対事業費であるとか或いは失業保険であるとか、そうしたようなものは相当大巾に増額して頂いておりますので、そういう面につきましても、安定所関係を十分に動員して雇用の斡旋をして参りたい。大きく申しますれば、日本の経済政策を活濃化いたしまして、その間に雇用機会の増大をし、公共事業というものを活濃化して、その間に雇用機会を作り、若しそれから落ちこぼれる者については、今申上げたようなことで補償して行く、そうしたような方向で参りたい、こう考えております。  なお、基準行政でございますが、これにつきましても、全国の基準監督署を動員いたしまして、この基準法を守つてもらい、そうしてその間に活発な産業の興隆を期したい、こういうように考えております。  なお、第一に申上げました点につきまして、やはり労使間の理解を深める一助といたしまして、労働問題協議会というものを考えております。これは国会でも終りたました頃には一つ発足する運びにいたしたいと考えております。労使それぞれ自由にものを言い得る、自由にものを考える、自由に発言し得る良識ある諸君に御参加を願いまして、労働問題を広く国民経済的な立場から検討してもらう、そういうようなことを考えたい、こんなふうに思つております。
  57. 松澤兼人

    松澤兼人君 大変結構なお話でございます。労働問題調査会と申しますか、懇談会は、労働大臣がお国入りをなさいましたときに発表になつたことだと思いますが、その職制でありますとか或いは権限、その内容等、或いは進行状態など承わりたいと存じます。何か非常に名前は労働問題懇談会であるけれども、一方的に、労働者の立場ではなくして、経営者側の立場から物事を考えるものであるという非難を受けているようでございますが、飽くまでも私はこういう問題は公正に取扱われなければならないと思うのでありまして、第三者的、中立的な結論が出て来ることが望ましいのでありまして、労働省がこれに深く介入することによつて結論が却つて一部経営者の利益を擁護するということにならないことを我々は望んでいるわけでありますが、今申しましたように内容でありますとか或いは権限、職制、或いは進行状態などについてお話し願いたいと存じます。
  58. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、諸種の協議会乃至調査会というものがありまするが、これが率直に申しまして、初めは非常に活発ではあるけれども、漸次あるかなきかに至つてしまうというようなこの実情は、政府が余りそういうものを音頭を取りまして、官制的なものを作るところにその欠陥があるのではないかと考えておるわけであります。私は労働問題協議会というものは、でき得る限り一般から盛り上る気分を受けて作つたものだということにいたしたいと、こう考えております。労働問題協議会につきましては、その組織等について閣議の了解を得て作る考えでおりますが、これを官制上の機構とすることは如何なものかというふうな考えを持つておるのであります。政府といたしましては、むしろ控え目な立場で、今申上げましたような資料を提供する、その資料を提供して、政府は常にそこに出席いたしまして、政府の意見も述べ出席者の各自の意見も聞く、こういう態度で、問題の所在がどこにあるかということを求め、又でき得るならば結論を得てもらうというふうに考えて参りたいと思います。そこで出ました結論を、政府としては相当謙虚な態度で政策に盛つて行くというふうに、政府が何かそこで官制のものを作つて意見をきめさせるというような考え方をできるだけ避けたい、こう考えておるのであります。第一回の会合というものは先般、日は忘れましたが、私の官邸でいたしましたのですが、そのときは準備会ということで、新聞社の協力を得たい、こう考えましたが、余りどれもどれもというわけに行きませんので、三紙の主筆にお願いし、それから東京都の安井知事、それから有沢教授、藤林教授、そのような方、或いは前田多門氏、金森国会図書館長、そういうような方においで願つて、私の構想お話と、そうして、非常によくはないか、非常に結構であるというようなお話を得たのでございます。その後国会等において非常に暇もできませんので、どうせ作るならいい加減なものでなく、本当に魂の入つたものを作りたいと思いまして、国会の終了後において一つ今おつしやつたような資本家的な代弁機関では勿論ない、非常に大きな立場から、労働問題というものをどう見て行くかというような、自由にものの言える場を作りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  59. 湯山勇

    ○湯山勇君 簡単にお伺いいたします。今審議会について労働大臣の御見解の御表明があつたわけですが、そういうお立場に立つて、現在の官制の人事院に対してどうお考えになつておるか。なお又関連して人事院勧告というものをどうお考えになられるか、その点お述べ願いたいと思います。
  60. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。人事院は御承知のような経緯を経て作られたものでありますが、これをどう考えるかということは、私個人の立場を申上げるよりも、国会において種々な御見解があるのであろうと思うのであります。私といたしましては、現在ある人事院を尊重し、その勧告を尊重して行く、そういう考えであります。
  61. 湯山勇

    ○湯山勇君 私が尋ねておりますのは、審議会においても官制のものはいけないというような御見解に立つての御表明があつたものですから、そういう観点からどうお考えになるかということをお聞きしておるわけです。
  62. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は一般的な何々問題調査会或いは何々審議会というようなものとの関連で申上げましたので、人事院というような政府機関の、政府一つ機構との関連で申上げたのではございません。その点御了承願いたいと思います。
  63. 松澤兼人

    松澤兼人君 その労働問題懇談会と申しますか、これに対する労働組合、特に総評などの十分なる協力を得られる見通しがありますか。若し労働組合側の協力が得られなければ、私が心配するような結果にならないとも限らないのでありまして、その点に対する見通しを承わりたいと存じます。
  64. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非公式にではございますが、総評の幹部諸君にもいろいろ意見を聞きました。或る幹部は非常に賛成である。で、すぐにでも出たいと、こう言つてくれて、早く作れということなのであります。成る幹部は、非常に賛成だ、とにかく今、日経連というものが片一方にあつて、片一方に総評があるというふうな格好になつてつて、お互いに話をしてみようにも何とも話のしようがない。仮にこつちで出て行けば、なんだあいつはと言われるし、向うから来いと言つても来つこないし、ちよつとその間の対立、屹立、状態がひどくなつている。それじや何ともいかんから、何とかそうしたような話合の場を作つてくれるというような考え方には非常に賛成だと言われました。ただ今、スト規制法が出ておるから、これが出ておる際に、卒直に申してどうもそういうことを言われてもなかなか簡単には、個人の立場としてよりも公的な立場があるのでむずかしい、併しこうした問題がいずれにしても一段落したならば非常に結構じやないが、こう言つてくれております。それは名を申上げることは控えますけれども、最高幹部の方であります。
  65. 松澤兼人

    松澤兼人君 次に、現在雇用量というものが二十六年度、二十七年度におきまして停滞状態にあるというふうにも見えるのでありますが、二十六年あたりまでは相当急激に雇用量が増大して来たようでありますけれども、二十七年度に至りましては、雇用量の増大はなく、停滞状態が見えているように考えられるのであります。これについてすでに我が国の産業は新たなる雇用を提供する途があるとお考えになりますか。或いは又どういう原因で雇用量の増加の停滞状態というものが招来されているか、この点について承わりたいと存じます。
  66. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お話のごとき状況は数の上において出ておるかと思います。九十万人の労働人口というものが大体殖えており、その吸収されて行く先は農村にも大体二割近くの者が入り、あとは一般に吸収されて行くのでありますが、その先が割合にサービス業が多いというような状態でございます。そこでこの一般的な原因といたしましては、やはり二十七年度に現われましたような傾向というものが、非常に二十四年以来ドツジが参りまして強行いたしましたところの安定方式の結果がそこに現われて来るのではないかというふうにも見ております。政府としまして二十八年度予算におきましては、御承知のように、諸産業に対する非常な助成的な、或いは金融面において或いは財政の面においての助成的な方策も行つておりますが、一方において公共事業費等においても約三割近いものを増加しておると思います。そうしたような方面で新たなる雇用機会を与うるようにこの予算は配慮してあると私ども考えておるのであります。併し一面におきましてはやはり失業という問題も或る程度慢性化しておりまして、それについてはできるだけの配慮をしなければならんということで、この予算では前年に比べて十七億円、九十七億円失業対策費を組んで頂いております。なお失業保険につきましても、二十三億円くらい前年度より殖やしまして、大体九十億円の御審議を願つておる次第でございます。
  67. 松澤兼人

    松澤兼人君 二十六年までは主としてサービス業或いは流通業、運輸業の方面に大幅な雇用量の増大があつたようでありますが、二十七年度になりましては、それすらも急激な停滞を示しておるのであります。従つて現在の状況から考えて見ると、日本における製造業というものはもはや新たなる雇用を増大するチャンスがないのではないかということを非常に心配されるのであります。この製造業における雇用量というものがすでに飽和状態に達しているのか、或いは又他の方法によるならば雇用量を増大することができるかという問題であります。これにつきまして、労働大臣の所見をお伺いしたいと思うのであります。
  68. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は非常に他の方法と申しますか、質的に相違した政策をとらなければ、こういう問題が解決し得ないとは考えておりません。ただ現在貿易をいたすにしましても、諸種の点に隘路があるようでございますから、そうしたものをできるだけ打開しまして貿易を振興する、又電源開発等もだんだんやつておりますけれども、急速に振興状態が緒について来たというふうには言えないと思うのでありまして、そういう点をできるだけ政府において隘路を打開してやることによつて雇用量というものがそこから増大して来ることができると、こう考えております。
  69. 松澤兼人

    松澤兼人君 最近における顕著なる一つの傾向は、三十人以上の常用雇用を持つている経営というものにおける雇用量というものが減少いたしまして、三十人以下の小規模経営又は家族的経営の方面におきまして多少雇用量が増加している、こういう傾向が事実であるといたしますと、現在我が国が直面している、いわるゆ生産及び労働問題について重大な問題が生じて来ると思うのであります。その一つの例はその三十人以下の常時雇用の小規模の経営におきましては、とかく問題となつております労働基準法などが相当重い比重をかけて行くのでありまして、こういう小規模企業におきましては、労働基準法などによらず、何とか経営の成立つて行く方法ということを考えて来るのが当然であります。更に臨時工の方面において雇用量が増大する、そうしていわゆる常用工の方面における雇用量が増大しないということは、これはまあ労働条件の低下でありますとか或いは賃金の切下げでありますとかという問題を生じて来るのであります。この分析に立ちますと、今後の労働行政というものは相当大きな問題を内蔵しているように考えるのであります。そういういわゆる大工場に対する労政という問題よりは、零細企業における労働問題ということが大きな比重を持つて来ると思うのでありまして、これに対する労働大臣見解を伺いたいと存じます。
  70. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほども触れましたような約九十万人の労働人口の増加中、農業或いはサービス業に入つて行くというものがやはり三十人以下の事業場に入つて行く傾向が非常に強いということは、御指摘の点を私どもも統計的に認めざるを得ないと思うのであります。この点につきまして先ほども申したように、電源開発なり貿易振興なりということによつて、又新たなる国土保全のための公共事業というようなものを考えるというようなことによつて、大きく労働力の吸収の貯水池を作ることを考えなければならんじやないか、こう思つておりますが、一方只今指摘のように三十人以下の事業場についての労働行政というものも非常に注意して参らねばならん、こういう段階であると考えております。
  71. 松澤兼人

    松澤兼人君 三十人以下の小規模の経営などにおける雇用量が増大したということは、これは注意すべき問題でありまして、今後注意されると存ずるのでありますが、一時まあ飛躍的な生産力の増強ということに関連しまして、大規模の工場における相当の雇用量の増加を見たのでありますが、これが若し二十七年、二十八年を通じて一つの動かない傾向であるということになりますと、ここでいわゆる日本的な労働条件というものが復活する虞れがあるように思うのであります。これがいわゆるソーシャル・ダンピングであるとか或いは又は女工哀史といつたような、これまでとかく問題になつておりましたいわゆる封建的、身分的或いは工場法以前の労働契約というようなことに逆戻りする危険が非常に多いと思うのであります。この点について労働基準法が忽ち問題となつて来、そうして労働基準法の制約の比重を堪え切れない小規模の零細経営におきましては、これらのものに対する反対運動が起つて来るということは当然予想されるわけであります。ここで我々が労働行政に一歩進展いたしまして、どこまでも労働基準の制度というものは確乎として保持して行き、戦前しばしば言われましたようなソーシヤル・ダンピングであるとか、或いは家族工場であるとかといつたような、そういうものに再び戻らないようにすることが労働行政の中心でなければならないと考えるのでありますが、そういう危険があるかないが、或いは又は労働基準法の改正に対する政府考え方を伺いたいと存じます。
  72. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私ども全国に基準監督署を持ちまして、監督署の職員によつて各工場について基準関係の視察をしてもらつているわけでありますが、只今指摘のように、だんだんに又不断に労働力人口が逐年百万近い者が増加して参る、それだけのものについての収容能力というものは、産業各部面において不断に提供されるわけでもありませんので、勢いそれが小さい工場に吸収されて行くという傾向もございます。それで只今のような小さい工場を経営するためのいろいろな必要からするところの法規難視というような問題もないではないのでございますが、それらを基準監督署においていろいろ注意をしておる次第でございます。ただこの労働基準法全体に対して、これをどうするかという問題は、非常に重要な問題であると考えております。私どもとしましては、諸種の意見が私ども手許に来ておりまするが、例えば労働問題協議会等もできましたら、そういう点に対しましても、この問題をどうするかというふうな一つ考え方を討議してもらうというふうなことも一方法かとも考えております。只今のところでは私どもはこの基準法について特別の考えを持つておりません。
  73. 松澤兼人

    松澤兼人君 特別の考えを持たないということは、これを改正したり変更したり、或いは又これを廃棄したりする考え方は全然ない。で、現在の労働基準法というものはどこまでも保持すると申しますか、或いはこれを堅持して行かなければならないというお考えでございましようか。
  74. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 目下のところ各種の御意見を伺つておりまするが、現在としまして、これを改正する考えを持つておりません。
  75. 松澤兼人

    松澤兼人君 何と申しましても労働行政の中心となりますことは、労働者に基本的な人権を尊重して、或いは組合に結成されている労働者の自主性というものを尊重して行かなければならない。これが労働行政の基本的な問題でなければならないと考えるのであります。先ほど労働大臣が労使相互の理解と信頼に基いて労働行政をやつて行きたいということは、取りも直さずそういう点であろうと考えるのであります。併し例えばスト規制法において現われておりますような公共福祉と労働基本権の調整の問題などは、最も今申しましたような労使の相互の理解と信頼ということが噛み合う一つの典型的な場であると考えるのであります。公共の福祉によつて労働の基本権が調整されなければならない、制限されなければならないということは、小坂労働大臣一つ考え方のように思うのでありますが、どういう点において公共の福祉と労働基本権というものを規制するか、或いは調整するかという点について伺いたいと存じます。
  76. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 憲法の二十八条に団結権、団体交渉権、並びに団体行動する権利というものが保障されておりまするが、それと同時に十二条、十三条におきまして、諸種のこの基本的な人権というものは、要するに公共の福祉のために用いられねばならないし、又公共の福祉を害してはならないということが書いてございますことは御承知通りでございます。私どもはそれを一緒に読み下しまして、やはり団体行動権のうちの一部でございまするが、スト権というものについても、これは無制限に存在するものではなくて、その背後にあるところの公共の福祉によつて支えられるものである。そこでその間の調和を図らなければならない、こういうふうに考えておるのであります。只今指摘のスト制限法というものは、繰返して申上げることは恐縮でございまするが、本来不当である。例えば炭鉱の保安要員が引揚げるというようなことは、労調法三十六条を待つまでもなく、又労組法一条二項によるところの違法性を阻却される争議行為ではない、まじめな労働者が争議が終つてつて行く職場がなくなつてしまうような争議行為は正当なものとは言えない、こういうことを明らかにしておるのでございまして、そうした本来不当なものを不当とする。或いは電気産業の場合におきましても、昨年の争議行為の苦い経験に鑑みまして、それを従来とも必要であると考えられておつたのであるけれども、これを不当とする社会通念が成熟したと認められるようなものについては、これを不当とすることを明らかにする、こういう趣旨でございまして、その間に争議行為と公共の福祉というものの調和を図らねばならん、こう考えておる次第でございます。
  77. 松澤兼人

    松澤兼人君 若しスト権ということ、或いはその他争議権というものが公共の福祉によつて制限されるということであれば、これは炭鉱及び電気事業に関する問題だけではないと思うのですが、特にこの二つの産業の特殊性ということはどういうことに基くのでございましようか。
  78. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 特殊性もございまするが、主として昨年の大争議の苦い経験に鑑みて、社会通念上これを不当であるということを明確にするほうがよろしいと、こう考えた、又この二つにつきましては、そうすることの現実の必要がある、こう考えたからであります。
  79. 松澤兼人

    松澤兼人君 法律の中にこの二つの産業の特殊性ということは書いてあるわけでありまして、勿論そのあとには国民経済及び国民の日常生活に対する重要性ということがあるわけであります。併しこれが若し重要産業であるということでありますならば、重要産業は他にもあるわけでありまして、電気及び石炭工業という二つの重要産業だけに限られるわけではないと考えるのであります。或いは海運でありますとか或いは又はその他の交通業でありますとかいうことは、公共性及び重要性ということから考えてみるならば同様であると考える。それがたまたま昨年のストライキに、この二つの産業において少しの行過ぎがあつたということで、この二つの産業に対してのみ適用されるところの特別法というものを作ろうというのが、このスト規制法の狙いではないかと考えるのであります。そうすると他の産業におきましてもやはりそういう行過ぎの争議が行われた場合においては、同様に他の産業にも適用されるスト規制法というものが考えられるということは論理上当然のことと考えるのでありますが、将来このスト規制を他の産業に拡大するというお考えは全然持つていないのか、或いは事情によつては将来他の産業にもこういうスト規制法というものが考えられるというお考えでありますか。
  80. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府といたしましては、これを他産業に拡大する意思は持つておりません。併し将来どうかということでありまするが、私ども今申上げたように、持つておらないのでありまするが、政治というものはやはり輿論というものの背景においてなされるものであると思うのであります。そういう場合がどうなるのか、それはそのときでないと何ともお答えいたしかねると思います。併し今申上げたように炭鉱の場合、石炭事業についてそうするのではなくて、炭鉱の保安要員の引揚げというものは、これは争議行為としてもよろしくないのだというとことを明らかにしようというのであります。これは炭鉱に従事される従業員の各位においても、保安要員の引揚げというこはやるべきでないのだという御意見が多いようであります。又電気につきましてはこれは非常は特殊性を強調いたしますれば特殊性になるものでありまして、他に代替物は一つもないのであります。又生産は即時に消費となるのであります。その及ぼすところの影響が深甚で非常に広範囲に及ぶのでありまして、そうしたような産業というものは、これは容易に考えられないというふうに思います。
  81. 松澤兼人

    松澤兼人君 最初に労働大臣が労使双方の理解と信頼という言葉を使われたのでありますが、勿論石炭でありますとか、或いは又は電気事業でありますとかというものは相当の公共性を持つております。その点は勿論よくわかるのであります。併し公共性ということを非常に強く枠を広げて行きますならば、当然こういう産業は利潤追求でないところの原則によつて運営されなければならないということになると考えるのであります。従つて自由党は国家管理でやつておりました石炭というものを枠を外し、或いは又は今日まで一元的に行われておりましたところの発送電というものを九分割するという方法をとつて、営利的な方向に企業を持つて行こうとしているのであります。従つてそこではどこまでも公共性ということが論じられるし、ただ生産能率と申しますか、或いは生産力を増大するという便利のために利潤追求的な経営の方式というものを採用して来たのであります。そこで全部の従業員ではございませんけれども、たとえ一部の従業員にいたしましても、その産業が公共性を持つているからということで、そういう或る一部の従業員に対してスト権を制限するということでありますならば、それと同様に公共性を持つているからという点で、経営者に対しまして或る程度の制限なり、或いは公共性の要求なりということを当然労働大臣としてお考えにならなければならないのであります。然るにそういう犠牲と申しますか、権利の制限というものは従業員だけにいたしまして、経営者に対する公共性の要求というものを全然なすつておらない、これを野放しに放任しておいて、そして単にその産業が公共性を持つているから、その従業員の一部のものに対してはストライキを制限するということは、労使の双方の理解と信頼というものを主張される労働大臣の言葉にも私は合わないのじやないかと、こう思うのでありますが、如何でございますか。
  82. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。石炭も電気も非常に公共性の強いものであるということは、おつしやる通りだと思います。そこでこういうことなんでございます。例えば鉱山保安法におきまして、五十六条で鉱山保安のための正当な運営というものをしなければならんことがきまつておるわけであります。それから旧公共事業会の八十五条におきまして、電気の正常なる供給というものをせねばならんことになつております。併し争議行為としてなしまする場合には、あらゆる点において違法性が阻却されるという考え方があるので、保安要員の引揚のごときは争議行為としてでも違法性が阻却されないということを明らかにしておく必要があるのじやないか。何故そういうことを言つたかというと、昨年の争議の際に保安要員の引揚の準備指令が出た。又なお今後もそういうことは絶対にせんとは言つておられない、そういう点からこれを明確にしておくほうがよろしいのではないか、こういうことなのであります。なお電気の場合にも、ああしたスイッチ・オフというものはこれは従来とも違法とされておつたのですが、昨年の場合のように大きく電源を放棄して、給電指令所の職場放棄の指令も出すということになりますと、これはやはり争騰行為としてでも、電気の正常な供給を阻害する行為というものは、公共事業会の言うところの罰則の適用を受けるのだ、こういうことを明らかにしておく必要があろう、こういうことで双方その罰則の適用を受けるということを明確にしたのがこの法律の趣旨なんでございます。従つて争議権というものを新たに奪うという考え方は私どもは持つておりませんので、従いまして片方から奪つたのだから、片方もそれだけのものを奪わなければならん、労使というものを対立させておいて両方からというような考え方を私どもはとらないのでございます。併し両方とも非常に公益性の強い業種でございますから、例えば電気の場合でございますれば、公共事業会というものによつて経営者は非常に強い国からの監督を受けておりますわけでございまして、石炭につきましても同様であろうと思いますが、要するに両方とも非常に社会的な規制を強く受ける、こういう点においては何も野放しになつてはいない、こういうふうに考えておるのでございます。要するに私は争議によつてストライキを非常に強激な方法によつて労使間の問題を解決するということよりも、それ以前に方法があるのじやないか。やはり納得と理解と信頼によつてものを解決する。両方とも労使というけれども、今日においてはそれぞれ社会的なインステイチユーシヨンであり、そういうものの立場において問題を良識によつて解決するという考え方になつてもらいたい、こういうのでございます。
  83. 松澤兼人

    松澤兼人君 スイッチを切つたり、或いは保安要員を引揚げるということば、これは或る前提のあつての結果でありまして、問題はやはり賃金ベースの改訂でありますとか、或いはその他労務契約の問題から来ているのであります。従つて最終段階と申しますか、末端において保安要員を引揚げるようなストを禁止したり、若しくは正常の電気の供給を阻害する行為を禁止したり、結局結果から考えて見ますならば、権利を奪われ、そうして規制され抑圧されているものは従業員だけであつて、そういう行為をやらなければならないその原因については、つまり資本家側の、言葉が過ぎるかも知れませんが、頑迷固陋というようなことについては何らこれに対する手が打てないということであれば、結局片手落ちとういことを言わざるを得ないのであります。こういう点もつと根本に遡つて、問題は平和のうちに解決されなければならない、こういう点を強調することによつて、こういう法律を作らないでも済むという情勢を作ることが労働行政の基本ではないかと考えるのであります。諺に言う角を矯めて牛を殺すというようなことが、こういうことが原因となつて正常なる民主的な労働組合の運動を阻害するという結果が生れますならば、これは重大な問題であります。こういう点につきまして、労働大臣としてどこまでもこれは特殊のケースである、或いは将来の労働運動については労使の相互の理解と信頼とによつて片を付けて行くということが適当であるというふうにお考えになつているか、この点を伺いたいと思います。
  84. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は労働問題の解決というものは、飽くまでも労使間の理解と信頼と納得によつて解決して行きたいという気持を強く持つております。私の力の及ぶ限りそうした環境を作るように努力して参りたいと考えております。ただ現在御審議を労働委員会において頂いておりまする法案につきましては、これは不幸にしてああいう事態が起きまして、炭鉱の保安要員の引揚の準備指令も出て、そういうことも今後絶対無とは言えんという状態がございますので、これだけは一つ遠慮してもらいたいということを明らかにしておくほうがよろしいのではないか、そういうことを政府が違法とし、御承知のように昨年は労調法三十六条の規定を待つまでもなく違法であるという政府声明が出ておつたのでありますが、なお且つそうしたことが行われようとした、そういうことになりますと、それを踏み越えてやつた場合には、これは法廷闘争ということになるのであります。まじめな勤労者を法廷に立たせて、そうして判例を積上げて行く、そういうような考え方はむしろ私のとらざるところである。それよりもはつきりと法律の限界を明示したほうがよくはないか、こういうふうに思つております。全般の考え方といたしまして、どうか一つストライキ至上主義という考え方をよして頂きたい。例えば昨日も言つて参りましたのですが、九州の電産では越盆手当、盆を起す手当を要求をしてストに入る、それについて電源スト、停電ストというようなことが書いてある、そういう問題については、電気を消して無事の大衆に非常に大きな迷惑をかけてまでやるということはどうかというような気分になつてもらいたい。これは決して組合が悪いとか、何とかいうことではないのでございまして、責任は相当他の方面にもあると思いますし、政府としても十全の努力を傾けて、そうした気持を起させないように今後しなければならないと思つておりますが、そんなようなことを考えておる次第でございます。
  85. 松澤兼人

    松澤兼人君 現在この法律ができなくとも、結局判定は裁判所において行わなければならない。併しこの法律に基きましても電気の正常な供給に直接障害を生じたかどうか、或いはそれが間接であるかどうかというような問題もやはり裁判所において判定してもらわなければならないことであろうと、こう考えるのでありますが、その点この法律ができれば一切そういう危険がないのかどうかということは如何でございますか。
  86. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お示しのように直接障害を与える行為はいけないというのでありまして、間接の場合は認めるわけであります。而して直接が間接かというすれすれの線で多少係争になることがあるかと思いますが、この法律を作ります以前よりも、作りましてからのほうがそういう場合が少くなる、非常に極めて稀な例になるであろうということを期待しております。
  87. 松澤兼人

    松澤兼人君 私は時間もございませんししますから、スト規制法に対する質問は一応この程度で打切りたいと存じますが、ただ権力と申しますか、或いは又は労働行政の強権によつて問題を解決するということは非常に慎しまなければならない、ということは、勿論新らしい憲法ができてからの問題ではなく、我々同志先輩は戦争以前からこういう態勢を作るために努力して参つたのであります。で、最近におけるいわゆる府政の逆コースを行くという計画のために、折角憲法で、或いは又は労働組合法その他の労働法において保障されました労働者の基本的な権利というものが、一つ一つのこういう極めて法文的に言えば些細の法律によつて重大なる権利の規制を受けるということを積重ねて行きますと、基本的なものがいつの間にかなくなつてしまうということを非常に心配するのであります。私どもはどこまでも労働行政に携わる人々としては、この純真なる基本的な人権を尊重して、今後の労働行政というものを十分に運営して行つて頂きたいということを切に希望いたしまして私の質問を終ります。   ―――――――――――――
  88. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 労働大臣がおられますので先ず労働大臣に対する質問からいたします。これまで皆さん労働大臣の間との質疑を聞いておりまして、いよいよわからなくなつたのですが、一体労働大臣は労働省の使命とか、労働大臣の任務とかいうようなものをどういうふうにお考えになつておりますか。
  89. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労働者は非常に日本国の生存発展のために大きな役割を持つものでありまして、私ども労働行政に携わる者は、この働く者の気分を湧き立たせ、働く者の生活を安定させ、その幸福を招来するということに一意専心すべきである、こう考えております。
  90. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大体歴代の労働大臣もそういうふうにお述べになりましたし、労働省設置法の第三条にも今お述べになつたようなこと、労働者の福祉と職業の確保を図り、以て経済の興隆と国民生活の安定とに寄与することを目的として労働省を設置するというふうに規定しておられるのですが、そうだとすると、今も大臣も同じようなことを御答弁になつたのですが、そういう考え方からすれば、労働省或いは労働大臣は、権力を行使することによつて労働者に対処するということよりも、むしろ労働者に対するサービスをする、そういうことをモットーにして労働行政を運営して行くというのが、これまでの運営の方針つたかと思うのですが、その点は従来の方針と変りない、依然としてそうだというふうにお考えになつておるかどうか。
  91. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も就任第一声に、労働省はサービス省であるということを申しました。
  92. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば先ほどから問題になつておる、例えば労働諸法規を改正して、これまで労働者に対するサービスの法規がだんだん権力弾圧の法規に変つておる。特に今問題になつておるストライキ禁止法というような法律においては、労働省が労働者弾圧の権力行使の権化のような法律を作り始めたというようなことにしか思えないのですが、それでもなお且つ労働省は労働者に対するサービス省であるというふうにお考えになつておるか、どうか。
  93. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) サービスということは非常に広汎な意義を持つておると思います。諸労務を提供する、或いはそれに奉仕するということと同時に、やはり諸種の補導もしなければならん場合もある、こういうふうに思つております。労働省は労働者に対するサービス省ということも勿論でありますが、やはり日本の役所というものは国民全体に対するところのサービスをするものでなければならない。全体の奉仕者としての考え方を持たなければならんと思うのであります。そこで労働争議の場合に、御承知のように労働争議であれば刑事、民事上の免責がなされる、或いは不当労働行為の保護を受け得るということは通例になておりますが、さりとて暴力を使つたりするようなことは、或いは人命に危険を与えるようなことは労働争議であつてもその保護を受けぬわけでございます。只今おつしやいましたストライキ禁止とおつしやいましたが、私どもはそういうことは実は考えておりませんので、先ほど申上げましたように、本来不当である、或いは昨年の大争議を通じて社会一般の通念上不当であるということを考えるに至つたものについては、これは一つ御遠慮願いたい、こういうことを申しておるので、こういうことによりまして、更に一般国民からするところの労働者諸君への信頼間というものも深まるし、これも又広義のサービスになるんじやないかと考えおります。
  94. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 国家が特定の階級になり特定の層にサービスをするということは国家機関全体としては成るほど今おつしやつたような問題になると思うのですが、併し少くとも労働者はその設置法の第三条にはつきり謳つてあるように、労働省としては労働者の福祉、職業の確保ということを図る。このことが経済の興隆を国民生活の安定をもたらすゆえんなんだ、そのことを主に考えていればいいのだというふうな趣旨で労働省はできたのだと思うのですが、今の大臣の御説明によりますと、そこから一歩最近は変つて来て、もつと広汎な国民全体の立場に立つんだというふうに任務なり、使命が最近において変つた、その情勢に応じているのだというふうにお考えになつて、今のような答弁をされたのかどうか。
  95. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労働省というものは特に労働者諸君に対するサービスに心掛ねばならん所である。併し、さりとてどうも全体利己主義と申しますか、一部の集団のみの利己主薬というものを発揮してはいけない。やはり国民全体の観点にも立たねばならん。こういう意味だと思います。
  96. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その国民全体の観点というのは、労働省は労働者のことを重点に置き、或いは農林省は農民のことを重点に置き、それを十分に支持し、それに十分にサービスをすることによつて、それらの要求が総合勘案されて初めて全国民的な調和のとれた福祉なり、安定という結果が得られるのであつて、国家としてはそういうことを考えなければならんと思うのですが、労働省としてはさつきから問題になつているように、もう少し労働者の福祉ということを中心に考えて、それを十分に主張されることが、取りも直さず結果においては、ほかの省とのバランス上国民全体の福祉を増すということになるのだという考え方でなければならないと思うのですが、そういう考え方で而も労働省はできた。従つて労働省設置法の第三条には、ああいうように謳われていたと思うのですが、これは設置法の第三条自体がどうも間違つておるので、或いは間違つているとまでは言わないが、最近の情勢に合わないので、これを変えて行かなければならないというようなお考えなのかどうか。
  97. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 譬話でお答えを申上げさせて頂きますが、私の息子が非常にできがよくて体も丈夫でかわいくて堪らん、併し体が丈夫にまかせて余り乱暴を働けば、その乱暴が少し過ぎる、こういうことも或いはいたし方ないと思います。
  98. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも譬話で問題をそらしておられてちつとも答えになつていないのですが、どうもそういう問題で時間を取つてつたんじや次の問題が時間が切れて参りますので、この問題はこの程度にして、次に雇用の問題をお尋ねしたいと思います。  雇用の問題については、先ほどもいろいろ御議論がありましたが、どうも雇用の問題その他について、大臣は大きく配慮されておられないのじやないか、今のようなスト禁とか等々の法律に血道をあげておられるために、労働省の最も重要な問題であるところの雇用の問題を軽視しておられるのじやないか、こういう感じが深いのですが、先ほどもちよつと触れられましたけれども、雇用の状態というのは二十七年に相当情勢が悪くなつて来た。而もその情勢が悪くなることは、例えば雇用増加の量が非常に減つて来る、或いは停頓的な状態に陥るだろうということは、すでに昨年の年度の当初我々が予算審議するときに予見されたことである。政府が報告書その他にもはつきりそれを予見しておる。そこで我々はこれが心配なつたから、雇用量の増加に対して特段の措置をとられるかどうかということをお聞きしたときに「十分に配慮をして特段の措置をとります。」という御答弁であつたのでありますが、政府は過去二十七年度において、雇用量の増加のために一体どういう具体的な施策をされたのか、先ずそれを詳しく御説明を願いたいと存じます。
  99. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私からお答えいたしますより、むしろ経済審議庁長官の領域かとも思いますが、御質問でございますから申上げます。雇用の増大につきまして、二十七年度から八年度にとりました公共事業につきまして見ますると、二十七年度には公共事業に従事し得る人というものは八十二万二千人でございまして、金額といたしますると千二百三十八億七千三百万円、本年度におきましては九十四万九千人でございまして、金額にいたしますると千五百五十五億七千六百万円、その間に人員にいたしまして十二万七千人、金額にいたしまして三百十七億円の増大を見ておる次第でございます。他の私企業につきましては、或いは鉄鋼業或いは造船業等について特に傾斜的に助成をいたしておるような面も見受けられまするが、全般の財政金融一体化という小笠原大蔵大臣の御方針によりまして、非常にその点の今後における配慮というものは見るべきものがあろうかと思います。日本のインフレーシヨンを収束せしめまするために、ドツジ氏によつて強行せられました安定方策というもののしわが、一応二十七年度あたりはこれは頂点に達したと見られるくらいの感があります。その面を展開すべく新たなる小笠原財政によつて大いに効果があろうかと期待をしておる次第でございます。併し先ほども申上げましたように、その間の失業問題につきましても特に配慮をいたし、又職業補導の面につきましても、それぞれ昨年度よりは増額いたしまして、何せ二十八年度の予算というものは、不成立予算の後を受けましたので、新たなる政策を盛り込むというとこは非常に困難ではございましたが、この問題につきましては、特に大蔵大臣の配慮を得た次第でございます。
  100. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ほどから大臣はドツジの安定化方式がだんだん効果を現わして来て、そのために雇用量が減少をし、それの頂点が二十七年であつたのだというようなお話でございますが、そうでなくて、政府のほうのお調べによると、むしろ二十四年に雇用量は絶対的に減少をしておる。即ち二十三年に千二百七十三万であつたのが三十四年に千二百四十二万になつて、三十一万ですか、絶対的に減少をしておる。更に二十五年になりますと千二百六十四万で、二十二万だけ殖えておる。この二十四年、二十五年がドツジの安定化方策が雇用の面に数学的に現われた年であると思いますが、二十六年にはむしろ政府のあなたのところの労働力調査が示しておりますように、百十万の雇用量の増加になつておる。そうして昨年になつて更に今度は増加が、五十万に減つた。そこで非常に大きな問題が出ておるのであつて、単に簡単に、ドツジ安定化の実現等という問題ではなくて、二十七年度に特異な現象が起きて来てこういう状況になつた。これは昨年の予算審議の当初において朝鮮休戦の問題がどうなるかということと関連をして、世界経済なり、日本経済の将来の見通しをどう見るかということで非常に議論をして、政府のほうではそれを楽観的に見ておられたのに、我我はもつと悪いだろう、従つて雇用も悪くなるだろうというようなことで議論をした結果であつたと思うのですが、その議論は別としても、とにかくそういうふうに二十七年度は特に悪かつた。それをどういうふうに認識なさるのかという問題と、もう一つは、だから二十七年度には、今申上げたように、総雇用量は五十万の増加に過ぎないし、特に製造業においては、前年度には一年間に五十万も殖えたのに、昨年はその増加が十万にも足りないというように、増加が非常に減退をしていて、ここに大きな問題がある。ところが、更に二十八年度になると、休戦会談その他の成立に関連をして、もつとその問題が激しい問題になつて来るし、合理化の問題も今後相当急速に進んで行くと思う。それらの合理化なり、企業整備等々の問題がどういうふうに三十八年度は進むというふうにお見通しになるか。従つてそれに関連をして、雇用量がどういうふうに変化をするとお考えになるのか、その辺をもう少し詳しく御説明を願いたい。
  101. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ドツジ安定方策ということを申しましたのは、成るほど私の言葉も若干足りなかつたと思いまするが、二十六年、七年、その、ドツジ安定方策の影響というものが極端に現われた年に朝鮮事変の勃発ということがありましたわけで、その影響をこうむつて、非常に外部的には、その影響を抜きにした価から見ますると、非常に殷賑を極めておるという面もあつたのでありまするが、併し、その根本においてのドツジ方式というものを貫こうとする考え方は、御承知のように、その後の予算においても見られておつたわけであります。昨年ややその傾向がゆるんだのでありまするけれども、そうした意味で、私はその影響が現われておるということを申上げたのであります。併しこの朝鮮事変の終局と同時に、今申上げましたような、新らしい観点に立つて財政金融一体化の方針ということによりまして、国内産業の振興を図るということを強く打出して参りまするので、その状況はよほど変つて来るのではないかということを申上げた次第でございます。なお、全般的な国土保全ということにつきましては、内閣にも審議会を作つて、これから大いに考え方を打出して行こうとしておる際でございまして、そうした大きなこの公共土木事業の採用ということが、やはり相当にこの雇用関係には大きく影響をして参るように期待しております次第でございます。全体に、数字的にこの雇用関係の見通しということは、そういうような要素が新たに出て参つておりまするので、私はこの際はちよつと申上げることを差控えさして頂きたいと思います。
  102. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 雇用増加の対策として、今、公共事業が相当殖えるんだというお話をなさいましたが、絶対数においては、若干あなたのところからお出しになつた数字自体とも建つておりますが、まあそれは小さな問題ですから別に問題にしませんが、大体十二万程度のものが本年度は公共事業によつて増加をする、それから電源開発によつて三、四万のものが増加をする、従つて十六万だけは雇用量が増加するだろう、こういう対策をとつておるのだというようなお話なんですが、この数字事態にもいろいろ問題がありますが、それが事実であるとしても、我々はそういう一、二の部面における雇用量の増大の政策もさることながら、もつと雇用全体として、どういう傾向なり、どういう方向をとらせようとしておられるのか、そういう点をもつとそれこそ全国民的に、包括的にお考えにならなければ政策にならないじやないか。例えば産業の部面においては、各産業別にいろいろ給合的に計画を立てて、予定を立ててそれを遂行しようとしておる。貿易についてはもつとそうである。然るに雇用の面だけ、そういうふうな雇用の総合的な計画が何らなされておらない。総合的な計画が必要であるかどうか。その点はいろいろ問題になりますが、併し、新らしい経済学を十分に身につけた新らしい経済政策をうんとやろうとしておることを信条にしておられる大臣ですから、それらの点は最もよく御検討になつておると思う。その面がない限り、将来の日本の経済の見通しなり、或いは計画なりというようなものが何ら立つていないと言われても、最も重要な面が抜けておると言われても止むを得ないじやないか。私が、先ほどからスト禁だとか何とかいうことに血道を上げられることが問題でなくて、もつとあなた御自身の特殊な任務をば、労働省が設置された特殊な任務をもつと重大にお考えになつて、どこの部面よりも、ここの部面の見通しなり計画をはつきりお立てになることが絶対に必要なんじやないか。そういう点から是非明確にお答えを願いたい、こう言つておるわけです。
  103. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 戦前の日本の産業構造を比較いたしまして、現在の産業構造が業種別、地域別、規模別にどうなつておるかとようようなことを今積算いたしております。そうして又、それが将来どういう形に安定すればいいのか、そうすると国民所得はどうなるのか、その中においての大体の賃金の比重というものはどういう見当になるであろうか、そういうようなものにつきまして、実は資料もだんだんにまとまつて参りましたので、近くお目にかけることができるかと考えております。併し、それは私は決して結論といたそうとは思つていないので、一つの調査資料として、例えば、皆様方にもお考えを願い、又労働問題協議会というようなものにも、作りましたならば、そういう問題を中心として論議をしてもらつて、私の考え方をまとめたい、こう考えております。ただ、今申上げたのは、実は現在までのこの公共事業費についてさつきは申上げましたが、先ほど佐多さんにお答えしたのは、そういう意味ではなくて、国土の保全ということについて、大きな一つ計画を立てようではないかという議が昨日からございまして、その議に基きまして、打議会も作ろうというさたかでございますから、そういうものに対して、どれくらいの国家資本の投入をみるのか、それによつてどのくらいの人口が吸収されるのだろうか、そういう点が、実はまだこれから新らしい問題ができたので、少しその点のお答えをと言つた次第でございます。お気持は十分わかつておりますので、私といたしても、是非一つ外国との構成も比較してみたい、日本の各年度別のそうした産業構造の変化というようなものも見てみてそうして将来は考えたい、こういうふうに思つております。
  104. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 産業構造の面と、それに関連する雇用の比率の問題、それを特に取上げて考えたいというお話ですが、それは非常に結構な着想で、是非そういう方向にお進め願いたいと思いますが、問題は、そういう調査なり価なりは非常に必要なことでありますが、調査はすでにかなりはつきりしたものができておるので、その調査を基礎にしてどう計画化するか、その計画をどう実施に移すかという問題じやないかと思う。例えば、今の産業構造と雇用の問題にしましても、すでに政府の報告でもはつきりしておりますように、例えば、農林業のごとき第一次産業、それが雇用の面から考えて占める比率は四六%ということになつておる。戦前にはこれが四七%だつたと言われておりますから、殆んど戦前と変りはなくて、いわゆる第一次産業、原始産業がまだ非常にたくさんのものが停滞をしておる。製造業を中心とする第二次産業は二三%、これが戦前には二四%ということになつていたから、これも殆んど動いておらない。そうして、流通、サービス等の第三次産業が大体三二%、これが戦前は三〇%程度だと思いますが、そういうふうに考えて来ると、最も肝心な第二次産業への雇用の吸収が殆んどなされないで、むしろ絶対的にすら減少をして、サービスのほうに若干殖えておるというようなことで、日本の経済が非常に不健全な、不安定な形になつて来ておる。さなきだに、そういう第二次産業が少いことが日本の経済の弱さであつたのに戦後それが殆んど変つていないのみならず、その弱さがむしろ更に大きくなつているというような実情であります。これは世界各国に比べれば、各国では戦後ですら第一次産業が更に減少をして、第二次産業が非常に殖えているというような状況である。然るに政府はいつも経済規模の拡充、経済基盤の拡大ということが中心的な問題であるとして非常に計画をしておられるように吹聴をされながら、雇用に関する限りは何らそれが具体的に現われてない。設備資金なり投資なりは、その面に非常に莫大なものを、而も国家資金の大部分の力を挙げてそつちに注ぎ込んでおられるにかかわらず、それが雇用の面においては何ら成果は現われてないと、ここに非常に大きな問題があるのじやないかと思うのですが、それらの方向を雇用の問題からどういうふうに推進しようとしておられるのか、もう一遍その点を御説明を願いたい。
  105. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 資料は二十六年のもので、余り最近のものは手許に持つておりませんが、一人から四人までの、業種別事業場でございます、一人から四人までを使う事業場は、全体の二七・七%、五人から二十九人までの事業場が三〇・四%、三十人以上の事業場というものは四一・八%ということで、これは総理府統計局の統計でございますが、全体で、日本的雇用関係といいますが、非常に大規模業種において雇用される人員の割合というものは少いのであります。更に又この農業に従事する人間が今御指摘のように非常に多いというような関係もありまして、非常に日本の雇用関係というものは特殊の状態であることはその通りでありまするが、最近人の話によりますると、やはり或る程度の農業雇用というものを持つている国が仕合せなんで、その人の言うことでございますが、イギリスなどでは非常に因つていると、それを日本はむしろそういう意味では非常に弾力性があるのじやないかと、こういうようなことを言つておりました。この勤労所得だけについてみましても、日本の所得は全体の所得の中で、勤労所縁は四四・一%でございますが、いわゆる雇用を受けている人たちは全体の三七・八でございます。アメリカではこれが六四・六でありまするが、これはそうした勤労者の全体の八一・七%を占めておるのであります。イギリスになりますると、全体が六四・四、併し全体の九〇・八房、九一%近い人がこの雇用関係に従事しておる、こういうことになつております。西ドイツではこれが六四・二、全体の占める割合六六・九、こういうことでありまして、これは非常に日本の場合はその割合から見ますると、勤労所得というものは全体の割合から見ますれば、決して少くないということが言えるのであります。併し、それは今申上げたような非常な日本の特殊の雇用関係というものが背景になつているので、にわかの比較は困難だと思いますが、そういう数字も出るわけであります。なおソヴイエトのものについていろいろ見ようと思いますが、これはなかなかわかりかねるので、苦労しておりまするが、大体やはり勤労所得の占むる割合というものは似たり寄つたりのようであります。  なお第二の御質問の資本投下がなされているならば、その面に対する雇用人員は増加すべきじやないかということでございますが、これは非常に問題があるので、或る程度機械化することによつてそれだけ余計人が減るという段階はすぐ来ないのであります。一時的には機械が人に置き換わるという状態であります。そしてその合理化によつて更にその企業が活発化することによつて雇用人員が殖えるという若干例外的な事例があるわけなんで、その点非常に研究すべき問題が多いのであります。併しなお今後においてこういう問題についてよく考えを進めて参りたいと思つております。
  106. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今のお話にかなりいろいろな問題を含んでおると思いますが、その問題は意見になりますから別な機会に譲りまして、一つだけ農林業、第一次産業が相当な地位を占めることがむしろいいんじやないかというお話でありますが、それは成るほどイリギスのように一割以下だとか、五%程度にしか過ぎないというような国においてはそういうことが言えると思うのですけれども、四六・七%を農業が占めておる、而もその農業が土地が非常に広くて機械化農業その他が行われていてなお且つそれだけの人を包容しているというなら問題はないですが、あなた自身もよく御承知通りに日本はむしろ農村における過剰人口で非常に悩んでおる、次三男対策が非常に真剣な問題として地方青年諸君の間に論議をされている昨今でございますから、そういう点から考えれば何がしとかの人が言つたという気休め的な、そういう議論を気休めにお考えになるのでなくて、もつと第一次産業を減らすことにどう真剣に取組むべきかということを、一つ是非お考え願いたい。  それから第二の三十人規模別吸収量の問題をお話になりましたが、この点を先ほど松津さんもお触れになつたのですが、昨年の雇用趨勢から最も特徴的なことは規模三十人以上の事業場の常用雇用が非常に減少をしておる。そして臨時工の不安定雇用が非常に殖えたのみならず、三十人以下の零細事業場の雇用はむしろ増加をしている。そういうことで若干全体的には増加をしているというような経過が出ているのですが、増加したといつてもそういうところに追いやられた増加であつて、少しも健全な増加でないのです。非常に不健全な不安定な増加に過ぎないと思います。やむなくそういうところに追いやられたという結果であつて、こういう点から見ても、政府は雇用政策に対して何らの施策をしておらないということが、こういうところにも非常にはつきりと現われておると思うのです。そこでこういう二十七年度に行われたようなこういう不健全な傾向を是正して雇用の安定化の問題にはどういう対策をとればよいか。二十八年度特にどういうふうにしようとしておられるか。政府は経済規模の拡大ということを非常に重要な問題に考えておられるのだから、それならば必ずやそういう施策がなければならない。それをもう少し御説明を願いたい。
  107. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私が第一次産業が多いということを申したのはこれは必ずしもいいという意味で申したのではないので、御承知のようにお互いに非常に問題にしておりますような人口の非常に多いという背景、それが又年々百万以上の勢を以て増加しておるというその背景に立ちまして、これは或る程度日本的な特有の産業構造が出るのも或いは止むを得ないということも一面にあるけれども、併し考え方によればイギリスのように全然第一次産業がなくなつてしまうよりはよくはないか。こういう趣旨で申上げたので、決して私はいいという意味で申しておるのではありませんから御了承願います。なお産業規模をどういうふうにして拡大して行くかということにつきまして、これは関係各大臣からいろいろ言われておると思いますけれども、やはりこれは電力の開発ということを非常に重点を置いておるわけであります。で、電力を開発し、そこから豊富な動力源を得て産業を合理的に伸ばして行こう、それには鉄鋼、石炭或いは造船といつたような基幹産業を軸としてその産業の構造規模の拡大を展開して行こう、こういうことであります。それと同時に私は一つ期待を持つておりますのは今後の、昨日から言い出されました国土保全のための大土木事業ということを考えよう、今度の水害の非常な不幸を却つて幸福にするように、禍いを転じて福とするように大きな土木事業というものを考えて行こう、こういう政府考え方を、一つ期待を持つて私も協力したいと考えておる次第でございます。  なおこの賃金水準でございますが、三十人以下の規模の雇用者というものが殖えているということ、必ずしもこの賃金水準から見まするとそれじや皆低賃金になつているかというとそうもなつておりませんようでございます。私の承知しておりますのは、賃金水準、これは毎月の勤労統計調査、産業総数全平均でありまするが、これは確実な足取りでなお増加を続けておるのであります。戦前の各月に対しまして一三%から一五%程度上昇を続けております。ただこの傾向は本年に入つてやや鈍化いたしておりますが、そうした傾向で進んでおりまして、この特徴と見られるものは、従来増加が遅れておりました比較的賃金の低い事業主で大きく増加し、逆に賃金の高い事業主の増加傾向が鈍つて来た、大体平準化作用が営まれているということが言えると存じます。
  108. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 雇用の問題から失業の問題を次にお伺いしたいと思うのですが、完全失業者は、今申上げたように失業を防止するいろいろな政策に殆んど何らの施策をやつておらないために、完全失業者は年々増加して来た。例えば二十三年には二十四万であつたものが、二十四年には三十八万になり、二十五年には四十四万に殖え、二十六年には三十九万で若干減少をいたしましたが、二十七年には再び四十七万という大きな数字に上つて来た。而もこの一月から三月までを例にとりましても逐次殖えて来ていて、三月のごときは六十一万という未曾有の数字を出しているという状況であります。四月は若干減つて、五十三万というふうに減つてはおりますが、四月は例年減つておりますので、そういう季節的な変化もあると思いますが、とにかく逐年失業者は非常に殖えて来ている。で、今年は更にそれが殖える傾向が、これは一月から三月の数字からは見られるのみならず、休戦会談が成立をし、而も国際競争が非常に激しくなつて合理化が推進をされると、どうしてもそういう面から相当多数の失業者が出るということが考えられるのであります。それに対する施策として今大臣は公共事業だとか電源開発とかいうようなものをお考えになつているようですが、これは成るほど雇用量を一時的には増加をする。併しそれでも例えば電源開発のように何百億の、千億近くの金を注ぎ込んでおりながら、たつた三万なり四万しか雇用量が殖えていないというような状況なんで、雇用量の増川にはこれらの基礎産業の開発はむしろ意味をなさない。むしろ基礎産業を拡充することは近代化を推し進めることであつて、これからは雇用量の問題の解決は出ない。といつてこれを阻止するわけには行かないから、そこから吐き出した雇用を更にどこに吸収するかということは、もつと恒久的な問題として、どこにそれ以外の産業規模の拡大を考えなければならんか、雇用量増大の問題としてどこに特に手当をしなければならんかということを考えなければならないと思いますが、今のような情勢を前にして今年度の失業というようなものをどういうふうに見通しておられるか。それに対してそれを防止する政策をどういうふうに施策しようとしておられるか。その点をもう少し詳しく御説明を願いたい。
  109. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 年年百二十万程度人口の増加があつて、労働人口として九十万程度のものが殖えて来る。これに如何に対処すべきかということは非常に困難な且つ重大な問題でありまして、政府としましても先ほどから申上げておりましたように、一方においては産業の振興を図り、一方においては公共事業を起し、そうしてその間の不幸にしてその機会を得なかつたかたがたに対しては失業対策事業或いは失業保険によつてこれを受入れて行きたい。こういうことでやつておりますので、大体安定所におきまする登録労働者の数というものはそれほど顕著に増加しておりません。むしろ三十数万程度で或る一定の線を辿つておりまして、最近に至りましてやや漸減の傾向をとつておるのであります。併しながら予算画におきましては、そうしたもの、失業者を吸収するためのいわゆる応急失業対策費といたしましては一日の就労日数を従来二十日でありましたものを月二十一日に増加し、一日の受入れも十五万五千人であるのを十六万八千人にするというふうに殖やしておるのでおります。只今指摘のように完全失業者、即ち就労の意思を持ちながら一週間安定活動をしてその機会を得なかつたというような人が三月に六十一万あつたことはその通りでありますが、幸いなことに最近四月に至りましては五十三万になり、まだその後にも特に殖えそうな状況にもございません。それでまあこれは一労働省のよく出し得るところではないので、全体の経済政策との関連に待たねばならない問題でありますけれども、飽くまでも私は今申上げました点に副いつつ非常に重要な問題であることを自覚しつつ御期待に副いたい、こう考えております。
  110. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 スト禁止法、スト規制法ですか、こういうようなものをお考えになるときには狭い労働省の範囲では考えないでもつと広く考えるのだということをおつしやる、そうかと思うと大事な失業雇用政策のときにはどうも労働省では狭い任務しか持つていないので施策がうまくできない、もつと総合的に全体的に施策をしなければいけないのだというような言訳をして実に困るのですが、こういうようなことのないようにもつとその点を積極的に施策をして頂きたい。それから特に今お話がありましたが、失業対策事業の吸収人員を昨年は十五万にしておられたのを今年は十六万八千という数字に殖やしておられるのですが、これはどういうふうな考え方からこれだけに殖やされたのか。というのは、お聞きしたいのは、労働省のお考えによつては殖やさなければならない人員或いは出るであろう失業の趨勢はもつと殖えるというふうに推算をされたのかどうか、そういうふうに推算は出るのだが予算関係上、経費の関係上ここまで圧縮をされたのか、それとも大体増加の趨勢がそのままここに正直に現われておるのか、その辺のことをちよつと御説明願いたい。
  111. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 安定所の登録人員を簡単に傾向的に申上げますと、二十七年一月には三十七万二千人、この三十七万人の傾向が三月まで続きましたが、四月には三十五万七千人となつております。その傾向が八月まで続きまして九月には三十三万四千人と減りまして、十二月に三十四万三千人、而うして昭和二十八年には一月に三十五万一千人、三月になりまして三十四万六千人、四月には三十三万四千人と、だんだんこれは減つて来ております。この費用を増額したのはどういう意味かということでございますけれども、私どもは日雇いという非常に不幸な環境におられるかたがたについてはできるだけその就労の機会を多くしたい、こういうことであります。十六万八千人一日に就労するという場合の八千人というものは予備を考えておるのであります。なお昨年は夏季手当と称するものは出しておりません。是非こうした関係のかたに夏季手当というのも理窟からいうとおかしいのでありまするが、昨年の暮に年末のための就労日数を三日間殖やしましたので、本年もその趣旨にならつてお盆でもございますしというので、三日間の就労機会を特別に増加したような次第でございます。
  112. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 特に私がお聞きしたいのは、その十五万の人員の二十八年四月以降十六万八千人に変えられた。その増加趨勢なるものはそのまま正直に出ているのか。増加趨勢としては労働省としてはもつと多く見通されるにかかわらず、予算その他の点からの隘路でここまででとまつているのか、その辺をどういうふうに見通しておられるか、一つお伺いしたい。
  113. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは御承知のように資材費も付いておるのでありますが、資材費も殖やしております、就労口数も殖やしております。而して将来の場合も考慮いたしまして予算上の数字というものはさように願つておるのであります。なお、最近日雇労務者によるところの失業対策工事というものがなかなかよくできるようになりまして、場所によりましては、これは大した工事だという、直接の工事にちつとも劣らないような立派な工事ができるようになりまして、これは一つ大いにこの面で働いて頂こうというような気持でこの予算額が殖えておるわけでございます。
  114. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 労働大臣に対する質問はこの程度にしまして次に移ります。あと留保しておきます。
  115. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連して……。
  116. 青木一男

    委員長青木一男君) 質問の順序が今度は永井さんになります。
  117. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連質問
  118. 青木一男

    委員長青木一男君) 労働大臣にですか。
  119. 藤原道子

    ○藤原道子君 労働大臣に。
  120. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単に……。
  121. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は大臣にこの際お伺いしたと思いますが、労働省は飽くまでもサービス省だと思つたおりましたが、そうだとおつしやりながら、先ほどは労働者はかわいくてしようがないけれども、ときに余り乱暴すれば叱らなければならない、こういうお言葉があつた。そこでそうならばおとなしくて而も弱い立場に置かれておる女子労働者に対してその保護はどうなつているか。最近婦人労働者が非常に職場から追われておる傾向にございますが、これに対してどういう理由からそういうふうになつておるかということをちよつとお伺いしたい。それとこれら追われました婦人労働者に対してどういう対策をお持ちになつておるか。
  122. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申上げます。私は婦人労働者各位については特に注意をいたしまして、只今指摘のようなことのないように平素注意をいたしておるのでございますが、若しそういうような具体的な例がありましたらお教えを願いまして善処したいと思います。
  123. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうぞ逃げないで親切な御答弁を頂きたいと思います。婦人労働者がどういう状態にあるかどということは、私はむしろ大臣のほうがよく知つていらつしやると思います。最近紡績工場の人たちが三割、四割の首切りが行われておる、そしてそれらの職場がない。こういう点から非常に転落して行つている事実は大臣はよく御承知だと思います。  関連質問ですから続けて箇条的にお伺いします。寄宿舎における制度、最近寄宿の監督は自治委員会でやるべきであるということがちやんと規定されているにかかわらず、又昔に逆行いたしまして非常に監督がきびしくなつている、或いは生理休暇等の要請をいたしましても、だんだんにきびしくなりまして、最近におきましては医者の診断書が必要である、或いは頭が痛くて動けないと言つても、医者へ行つて診断書をもらつて来てなければ生理休暇とは認められない。こういうことによりまして全国平均いたしましても一年間に一・九ぐらいしか生理休暇を取ることができないんです。こういうことに対して大臣は一体どう思うか、産前産後の休暇にいたしましても非常に厳しくなつております。従いまして生理休暇が妥当にとられている職場に比べまして、生理休暇をとることが非常に困難である職場におきましては、異常出産と申しますか、異常妊娠、異常出産、こういうものが非常に多いのです。これらを考えまするとき、私は弱い女子労働者に対する保護規定が殆んど無視されている、こう考えておりまするが、大臣のこれに対する御見解をお伺いいたしたい。
  124. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 女子と限らず男子の場合も、最近この希望退職を募りまして、希望をされました場合、その退職を認めるというふうに行なつているところが多いようでございます。希望されて退職されたかたが紡績工場においても相当ございます。いわゆる首切りというその形そのままのものは、余り私ども聞いておらないのでございます。なお生理休暇その他の問題でございますが、これは寄宿舎自治規則によつてつておられることと存じまして、基準法に違反するような行動については、私ども厳重に監督いたしておりますけれども、まあ自治によつてされるということについては基準監督署が所々にございます。特別の問題がございますればそちらへお申出を願えるなり、まあ私どもぢかにお聞かせ願えるなりして、非常に問題がございますれば、私どものほうでよく調査さして頂いて、御希望に副いたいと思います。
  125. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問はその程度にやめて下さい。
  126. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちよつと待つて下さい。大臣の御答弁は不満でございます。只今希望退職を募つていると申されましたけれども、それではお調べ願いたい。静岡県小山にございます富士紡の工場におきましては、成るほど希望退職の方法をとつておりますが、それは印刷しました退職願をこれを持ち廻りいたしまして、職場へ……そうして希望退職というところは隠しまして、ここに判を押せ、こういうことを強要いたしまして、あとになつたらそのままそれが希望退職だというような、ペテンにかけるようなことが随分行われております。これはそういう事実があるかないかということを十分御監督願いたい。  それから今一つ只今基準監督署があるから十分監督しているというお言葉でございましたが、どうもおかしい。お伺いいたしたいことは、全国の監督官の数はどのくらいおありになるか、そうして又この監督官が年何回ぐらいこれを監督してお歩きになる能力を持つているとお考えになるか、これをお伺いいたします。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 現在監督官の定数は二十二年の末には二千四百八十一人でございます。二十四年の四月には二千七百十五人になつておりまするが、現在は二千四百七十四人でございまして、一名が月十二日出張して監督をする、こういうことになつております。
  128. 青木一男

    委員長青木一男君) それ以上関連質問はやめて下さい。三回以上の関連は許した例はございませんから、あなたの番のときやつて下さい。
  129. 藤原道子

    ○藤原道子君 今の監督官の点で食い違いがあるのです。この点だけお願いいたします。
  130. 青木一男

    委員長青木一男君) あなたのとき質問して下さい……どうぞ。
  131. 藤原道子

    ○藤原道子君 それではお伺いいたしますが、大臣は十二日、月に歩いていると言われましたが、私推定いたしまして、この共準法適用の事業所は九十三万五千九百七十九事業、こういうふうに労働省の資料で承知いたしております。そういたしますと二千四百七十四人で毎日、毎月二十日間一日も休まず廻つたといたしましても、一年間に〇・六回より廻れない。一日二つの事業所を廻つたといたしましても一・二回しか廻れない、これで果して監督ができるとお考えになりましようか。現在の監督官で監督官の数は十分だとお考えになるか、それともこれは予算等の事由によりまして、要求されてもこれが充足をすることができないのか。そうして一年間〇・六回ぐらいの監督で十分である、こういう大臣のお考であるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  132. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 現在七十五万カ所、一千万人ということになつております。で、集団的に監督をしておる場所もあるのであります。又希望がございますれば、必ずこちらから出向いていろいろ監督をすると、こういうことになつておりまして、重点的にこの監督の質というものを特に考慮いたしまして、非常にどうでもいいようなことを監督しないで、特に監督すべき点を重点的に取上げて参りたいと、こういうことでやつておる次第でございます。
  133. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、大蔵省からお配り願つたこの予算説明書によりますと、財政規模は二十八年度には圧縮をされたという説明がついております。これは国民所得との対比における比率が去年の一七・四から一六・六に減つたという意味で規模が圧縮をされたというふうに言つておられると思いますが、経済審議庁の報告によると、実質額の換算の指数を日銀卸売り物価指数で換算をして、それで二十四年度を基準にした指数で財政規模を考えて行くと、逐年むしろ二十六年度には若干減りましたが、二十七年度では殖えて来ておる。二十八年度にどうなるかという問題でありますか、これは実質換算の指数、数字が出ておりますでしようか。
  134. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) まだ出ておりません。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大体大ざつぱに言つて、卸売物価指数は二%なり三%程度しか上つておらないかと思いますので、それで換算をすれば、実質額はむしろ今年度も更に殖えている、絶対的には殖えているというようなことになつていると思うのですが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  136. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この点は今佐多さんが申されたように、経済白書によりますと、一般会計予算規模の実質額換算指数が、昭和二十四年度を一〇〇といたしまして、二十五年度が七二・五、二十六年度が六六・〇、二十七年度が七八・五と、こうなつておりますが、この指数の算出基礎になつております物価指数は日銀の消費者卸売物価指数によつておるのでありますが、これは各年度の実績によつておりますために、現在のところ、さつき申しましたように、まだ二十八年度予算の規模の実質換算指数は算出はできないのであります。ただまあ仮に生産財財卸売物価指数はこれは大体算出できるのでありますが、これでやりますと、物価が二十八年度でも、二十七年度に一%くらい騰貴しておるように見受けられるのでありまして、この推定によりまして二十八年度には極く僅少のパーセント、二%とかいうようなものが上つておるのじやないかと、かように一応考えられます。
  137. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、絶対願はむしろ拡大したまま、拡大の方向を依然としてとつているという結論になると思いますが、殊に二十八年度は、今の予算九千六百八十三億、或いは今度の修正で若干修正されたでしようが、その程度の場合に今大蔵省が言つておられるような規模の圧縮の問題が一応説明されるのですが、更に補正予算関係等々のものが今後は必要不可欠になつて来る。そういうものを考えると、二十八年度を振り返つて見ると、むしろ財政規模が拡大の方向に向いていたということになりかねないと思うのですが、その辺は今後の財政編成の問題としてどういうお見込みで対処されるつもりであるか。
  138. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは過日も申上げましたように、私どもは当初この予算を編成するときには、補正予算等を全然考慮に入れなかつたのであります、又そういう考えなしに作つたのでありますが先般のいわゆる三党の修正案によりまして、米についていわゆる供米完遂奨励金中、一石八百円のうち四百円だけは後日一般会計より出すべしと、こういうことになつたので、それでそれだけ出しますと、数字は的確にわかりませんが、大体百億か百一、二億というものがこれに出て行くのではないか、これは後日出すべしとありますので、米価の問題が決定されるときには、これを予算化しなければならんと思います。けれどもそのほかには余り私どもは今のところ補正のものを考えておりません。これは昨日も申して、たしか佐多さんにもお聞き願つたかと思うのでありますが、昨年度の予算編成のときと大分違いまして、今度は補正を頭に入れずに、補正は組まないという建前でやりましたのと、多少時期的に四カ月間、暫定予算などが来る等のことで、補正予算を織り込むような事情が四カ月問全然考えられなかつた等の事情がございましておりますので、まあ只今のところは補正予算は極めて少額なものにとどまる。かように考えておるのでありまして、余り財政規模が拡大するというほどのことはない、かように実は考えておる次第であります。
  139. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は今度の追加予算或いは補正予算を編成されるときの心がまえと、更に来年度以降の心がまえとしてここで述べておられる財政規模の圧縮の問題は、少くとも国民所得との対比においては漸減をして行くというような方針をお考えになつておるかどうか、或いは更に一般会計の歳出の絶対額もほぼ現在のところリミットと考えて、これ以上は絶対殖やさないというようなことで、例えば一兆を越しちやいかんというようなことで対処すべきだ、対処し得るというように考えておるかどうか。
  140. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これはこの前の予算編成の方針を御説明申上げたときに申上げたかと存じますが、多少の弾力性を持つことは考えなければならんけれども、併し今の日本を、日本の物価を騰貴せしめような、いわゆるインフレ的な予算というものは絶対組むべきものでない、又財政においてもそうである、金融においてもそういう措置をとるべきでない。従いまして私どもは今日国民所得のほうに大きな収入増加の原因が来れば別ですが、只今ところはそういうことも予定せられませんので、そういたしますれば予算はこれはできるだけ圧縮すべき、現在の一兆円、現在も一兆円未満でございますが、恐らく越すべきものではない、かように考えておる次第でおります。
  141. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 予算に組まれた数字では、今おつしやつたようなことが貫かれておりますが、予算の翌年度への繰越、前年度からの繰越の問題等を勘案して、予算現額について考える限りは、すでに二十七年度で一兆を越え、一兆五十七億になつておりますが、更に二十七年度にすでにそういう数字になつておりますが、二十八年度へ送られた繰越額は大蔵省からお出しになつた数字によると、千百八十九億、従つてその千百八十九億を予算の九千六百八十二億に加えると一兆八百七十億以上になるというような状況で、繰越額を考える限りにおいて、規模は逐次非常に大きくなつて来るというふうに考えられるのですが、この繰越額なるものは、もつと分析的にさらに質疑をしたいと思いますが、非常に当初の予算の編成が杜撰であつた従つて去年二十七年度ですら七百三十一億を繰越されなければならなかつたし、今年のごときは千百八十九億も非常に尨大なものを繰越さなければならなかつたという結果になつたとしか思えないのですが、我々二十七年度予算審議するときに、そういう非常に不必要な金がたくさんあるのじやないかということをいろいろ審議いたしたにかかわらず、そういうものはないのだということを言つて答弁を逃れて来られたが、結果においてはここに現われているように非常に尨大な繰越額ができている。この結果から見て予算の編成が杜撰であつた。今後はこれらに対してもつと通り考え方で組まなければならないというふうなお考えをお持ちになつているかどうか、その辺のことを御説明願いたい。
  142. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お手許に差出してあります昭和二十七年度一般会計歳出重要経費翌年度への繰越見込額調、これによりまして、丁度前年度からの繰越を合せて一千五十七億に相成つていることは御指摘通りでありますが、併しこの中には御承知のような安全保障費五百六十億というような大きなもの等を含んでおりまして、これらの今お話の点についての細かいことは或いは主計局長から御説明申上げればよくわかるかと思いますが、私どもとしては今後は保安庁とか、こういうところには多少特別の性質のものがあるのでございます。例えて言えば、契約をいろいろするのに、契約は相手があることですから、例えば施設をするのにもいろいろ事情があつて延びているというようなことは御指摘までもなく事実だと思います。併しながら組まんでいい予算は一切組まない。これは私ども今度は厳格な方針で臨みたいと存じております。ただ今の中でも繰越見込額の内訳等を御覧下さると負担行為済額と未済額と分けている点がございますが、なお細かい数字的な点につきましては政府委員より御答弁いたさせます。
  143. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 二十七年度から二十八年度への繰越が非常に多いので、これは非常に杜撰な二十七年度の予算を組んだというお叱りでございますが、二十七年度という年は平和を回復し独立した最初の年度でありまして、この年度の予算にはいろいろ特殊なものがあるわけでございます。一番特殊なものは安全保障費でございますが、安全保障費で五百六十億のうち五百三十億を繰越したということが千百八十九億の繰越の中の一番大きなものを占めているわけです。これは殆んど九〇%近くまで繰越されたということで、前年よりも非常に四百五十億ばかり繰越が殖えているのでありますが、その他のものを除いてみますと、非常に大きな繰越というふうには思えないのであります。ただ連合国財産の補償費が百億組んだのが実際は支出が九十四億にとどまつたということが又一つの大きな原因でございますが、一番大きな原因は安全保障費であると思います。これは佐多さんよく御承知のように、安全保障費というものは駐留軍が都市より移転するについての代替施設或いは施設の間の道路或いは代替のための施設としての港湾といつたような施設に使われる。その使用するのがいろいろの計画の関係で遅れたということが非常に大きな原因であります。一時使用の施設というものが決定いたしましたのが昨年の七月の二十六日でございまして、そのときに継続使用のものと一時使用のもの、これは大体一年間ということで一応施設が決定いたしたのであります。その後におきましていろいろ計画を具体的な計画を立てておられたのであります。それが大体計画ができまして、一応の計画が一部分ではございますが、第一次の計画ができましたのが大体十一月頃でございまして、その契約というものが十一月から一月頃になつて出た。それから三月頃になつてそれの補完的な計画ができて来たというようなことで、そういうような関係で施設の移転計画その他が起れたのでございまして、当初から予期せられたことであるのが時期的にずれたという関係で、予算的に非常に杜撰だつたという或いはそういうお叱りがあるかも知れませんが、事情としてはそういうような関係になつているわけであります。
  144. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その問題はどうも今の御説明では納得行きませんが、保安庁費が例えば昨年は百五十一億であつたのが本年度の繰越は二百八十億更に倍近くなつている等の問題もあります。これらの点はその点一つ一つについて後ほど更にもつと詳しく御説明を聞きたいと思います。その問題に移ります前に政府資金の対民間収支の問題でありますが、この二十四年度以降の実績は経済審議庁の経済報告にある通りでありますが、この二十四年度が九百八十七億の揚超、それから二十五年度は撒超に変つて三百四十三億、それから二十六年度が三百四十九億、それから二十七年度が九億という揚超になつております、で、二十七年度の揚超はそこにもはつきりしているように指定預金約二百七十六億の操作で九億の揚超にとどまつたのであつて、それを別にすれば二百八十五億、三百億程度の揚超になつていると思います。こういうふうに予算の当初の組み方においてはむしろ収支を均衡をする、或いは場合によつては撒超を考えるというような予算で組まれているにもかかわらず、実施においては揚超になつてしまつているというようなことで予算と実績とが非常に狂つて来ているという実情があると思うのであります。これが金融界その他に対していろいろな厄介なる問題を提供をしていると思うのですが、二十八年度の予算ではこれらの問題がどういうようになるとお考えになつているか。予算の面から見て撒超をどういうふうにお考えになつているか。それから今の問題において繰越額予算現額等から見て予定として対民間の収支がどういうふうになるとお考えになつているか。更に繰越その他を全部使わないで又来年も繰越というような予算の操作は実施の仕方は別だというふうにお考えならば、そういう考えに基いて実績としてほぼどれぐらいになるというふうに見通しておられるか、それらの見通しを先ず御説明を瞬いたいと思います。
  145. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 二十七年度この国庫対民間収支の関係お話通りでございます。二十八年度につきましては御承知のように当初千九十八億政府の原案では撒布超過を見込んでおつたのでございますが、更に修正案で千三百二億というような撒布超過になることに相成つたのであります。併しこれにつきましてはこれはもうたびたび申上げましたような、私どものほうとしてはいわゆる財政と金融の調整を強化することによつて、これをインフレに持つて行かないようにするということは、繰返し申しましたからここに申上げませんが、ただ今お話のうちに繰越されておるものについての関係はどうなるかというお話でございます。これにつきましては私どもはこの予算実施について十分の注意を時期的にも払いますが、今度の予算は大体において本年内にこれを使用するということを目的としておるのでございまするが、併し只今のような、例えば今御説明申上げました安全保障諸費のごときものは多少期間的にまだ先へ行くものもございましようし、それから一部資金の中にはどうしても予算化はしておかなけばならんけれども、併し支出はそのままになるということにも考えられるものがございます。そういうことをいろいろ勘案しませんと、私どもまだ結論的にどれだけが結局その撒布超過になるかという数字にはちよつと到達しておりませんが、事務のほうでは一応実はこの間から検討を始めておりますので、一遍事務当局から今まだ検討しておるところをちよつと御説明さして頂きます。
  146. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 只今大蔵大臣から御説明がございましたように、本年度の予算につきまして、先般の衆議院で修正を受けました予算がそのまま実行されましたならば約手三百億の撒超に相成るかと存じます。ただこれは佐多さんも非常によく御存じの通りに、予算がそのまま実行されたらということでございまして、予算の制度といたしましては年度の三月を越えて五月まで支出が続きましてそこで終結をするというようなことにもなつておりますので、予算上の年度を越しますものと、時期的な三月という年度時期を越しますものとまあ観念的には二つとれるわけであります。本年度の収支が一体どうなるであろうかという研究でありますが、これは実は内々検討はいたしておりますがまだしつかりした案が、見通しがついておりません。御承知のように相当いろんな不確定要素を含んでおりますので、これは非常な達観を加えるよりいたし方ないのでありまして、私どもといたしましては差当り予算が当初のそのままの形で実行されれば、こうなるということしか、はつきり申上げられないという現状でございます。およそのところから申しますと、先ほど大蔵大臣から御克明がありましたように、繰越の関係におきまして、本年度は明年度への繰越が相当減るのじやないかということも考えられますが、一方貿易関係でありますとか、その他只今から年度全体を通じてはつきり結果的に合うようなそういう推定を立てることが若干困難な点もあります。その辺一つ御了承をお願いいたしたいと思うのであります。
  147. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 もう少し、事務当局つたらもう少し具体的に御検討になつているのじやないですかね。で予算が、繰越額その他を考えないで、予算がそのまま予算として実施されるとすれば、各四半期ごとに大体どういう撒超、揚超の関係になるのか、或いは繰越額、これは必ずしも全部はお使いにならんでしようから若干来年にも繰越すということと見合いをとりつつ、それを入れて考えればどうなるかというようなことを、各四半期別ぐらいはすでに見当をおつけにならなければ、今さつき大蔵大臣は金融で以て適当にチェックするのです、こういうお話でしたが、問題は非常に大きな問題で、方針はそれでもいいですが、具体的にはそれじや金融操作としてどうやるのだということがすぐ問題になりますので、その点をもう少し四半期別に分けて御説明を願いたい。
  148. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) これは佐多さんよく御承知のことと思いますが、国庫収支の実績は、いろいろ計画を立てましても一四半期、目前の一四半期をとりましてもしよつちゆう非常に大きく狂うものでございます。そういう意味におきまして私どもは非常に大胆な推計を加えることは或いはできるかも知れないのでありますが、そういう推計を加えてみましても、実際の姿は結果において非常に変つて行くのでありますので、ここでこのくらいであろうということを立てることはむしろ控えたほうがよろしいのじやなかろうかと考えております。
  149. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじやもう少し具体的にお尋ねしますが、四――六月の実績から伺います。
  150. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 佐多さんにちよつと申上げておきますが去年の繰越しが七百三十一億なのが今年は千百八十九億で大分多いじやないかということが強い問題になつております。このうちでよく御覧になりますると、さつき私が御説明申上げましたように、主なものは五百三十一億のいわゆる安全保障諸費なんで、そのほかには大した変りはないわけであります。そうしてこれがどう使われるかということなんですが、これはもう三十五億ほどは支出行為、負担行為が認められているので、この繰越は大体使われるものだと私ども見ているのであります。そうすると二十七年慶二十八年度と大きな変りはないように、まあ極く達観的に実は考えているのであります。
  151. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点はあとから一つ一つ費目について更にお尋ねいたします。
  152. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) この第一・四半期の国庫収支の御説明を申上げますが、詳しい内容は又混乱いたしますから主なものだけ申上げますと、第一・四半期におきましては、一般会計におきまして租税の収入が千六百五十一億円、その他を合計いたしまして二十二百七十八億の収入がございましてそれに対して支出のほうは二千四十五億、結局一般会計におきまして実質上二百三十三億の揚超になつております。それから特別会計におきましては合計で五十三億の揚超になつております。このうち大きな揚超は食管でございまして、これは丁度時期的にも秋の供米が終りましてどんどん米を売つて行く時期に当りますので、資金が還流して参ります。そういう関係で二百九十九億食管が引揚になつております。その他を合せまして五十三億の引揚、それから資金部通用資金におきまして三百七十一億の撒布超過に相成つております。それから外為会計が四百三十一億の揚超、それから指定預金をこの期間に四十二億だけ余計に放出いたしておりますので、一般会計の二百三十三億と特別会計の五十三億その他を合せまして、合計におきましては第一・四半期で三百四億の引揚超過に相成つております。
  153. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 指定預金を含めなければ幾らですか。
  154. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 指定預金が四十二億の撒超でございまするから、指定預金を含めませんと三百四十六億の揚超になつております。
  155. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 七――九月の第二・四半期はどういうことになつておりますか。
  156. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 七――九月の第二・四半期におきましての大体の見込みは、関係の各省のかたにお集まりを頂きまして、目下見通し作業を立てつつある状況でございますので、不日まとまるものと思いますが、只今まだはつきりした見通しは立てておりません。
  157. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうなれば見通しでなくて実績を御報告になるだけで……、併し金融政策その他をお立てになるためには、見通しでお立てになるんじやないかと思うのですが、そういうことはやられないで、ただ実績だけを追つて行つておられるのか、先ほど大臣がむしろ撒超が相当大きなことになりそうだ、それは適当に金融政策でチェックするのだということを言つておられるし、これは繰返し言つておられる。それならばそれとしての見通しなり政策、対策があるはずだ。それはどういうふうにお考えになつておりますか。殊に七――九の見通しはまだ問題ではないかも知れませんが、十月から十二月は三千億近い撒超があるんじやないかというようなことも言われておりますが、それらも、一体どれくらいと見通しをつけながら、金融政策でどうチェックをするというふうにお考えになつておるか、それをもう少し具体的にお話を願えなければ、どうも満足がいかないのですが、大臣はその辺をどういうふうにお考えになりますか。
  158. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この点につきましては、大体過日申上げましたように、今度の関係で千三百億ほどの撒布超過になる。尤も行政費節約等のことも絡んで来ますのと、補正予算として百億の問題も根本になりますが、一応千三百億に上るものとして、撒超として一つの案、考え方をしておるのであります。それは過日も丁度堀木さんに対して御説明申上げましたように、大体私どもは日本銀行の貸出調整というようなことを主としてやらそう、即ちあそこに二重高率などがありますが、ああいつた高率適用の範囲についての弾力的運営をやつたらどうか。それから又あそこがとつている手形につきましても適格担保手形というものがありますが、あれらについての選択についても、事情を基いて選択を緩やかにし、或いはきつくしたらどうであろうか、又貸付金が、オーバー・ローンのうち、五百億ちよつと以上あるかと思いますが、これらの回収方についても、少し日銀のほうで操作的にやつてみたらどうか。それから過日も申しましたように、指定貯金が確か七百四十億ほどあると思いますので、こういつた指定預金も弾力的操作をやつたらどうだろうか。更に又これはそのときも申上げましたが、すぐにとは行きませんけれども、今現在短期の公債が百三十何億持つておると思います。長期の分が千二百数十億持つておる思います。これはそのとき数字を持つておりませんでしたから、堀木さんには申上げましたが、記憶のことで、この辺数字は違うかも知れませんが、そういうふうになります。又近く借替えの来るものもたしか四十億見当あると思います。こういつた公債の一つの公開市場操作ですか、オープン・マーケット・オペレェーシヨンというようなものも考えてみたらどうであろうか、或いは又短期債とか、公社債についても、これは少しこれらの点についての政策を考えてみたらどうであろうか。そのほかに、何といつても大きくなるのは、いわゆる預金を吸収するという点が一番大きくなつて参ります。それで資本蓄積には今度源泉一本にして、預金課税を一律一〇%にしましたから、こういつた点も少し励みになるのではないか。若しそれだけで足らなければ、次の税法改正等の際においても考えてよいのではないかと考えております。そのほかにも全般的に申せば私はもう少し銀行その他で資金の効率的使用を考えて行く。その他過日来申したいろいろのことも考え、金融政策或いは財政政策等は、大体いわゆる財政と金融との調整方について、各方面からこれをやる、一本だけでやり得るという案は、正直に申上げまして、私は持合わしておりませんので、大小となくやれる案をやつて、この日本をインフレに持つて行かないようにする。それから又一番大きい問題としては、やはり出す財政の資金ですから、資金の時期を選んで持つて行く、出すのに時期を選んで行く、こういう点も大きい働きをするかと思うのであります。いずれにいたしましても繰返し申すようでありますが、日本をインフレに持つて行く、物価騰貴に持つて行くことは困りますので、さようにせざるように十分に配意をいたしたいと存じております。
  159. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いろいろな政策で対処しなければならんという御説明ですが、これはその通りだと思うのですが、問題は十月――十二月にどれくらいの貸付超過があるとお考えになつているのか、それによつて対策がいろいろ違つて来ると思います。殊に今千三百億程度の、年度に亘つて千三百億程度のものとおつしやつたのですが、それは予算だけを見て、千三百億になるので、繰越額なり何なりを考えれば、もつと厖大なものになるのじやないか。恐らく二千億を越えるのじやないかと思うのですが、そうなれば一――三月の散超は三千億を遥かに越えるというようなことになると思います。そういう状況にでもなれば、今言われたようないろいろなあつちこつちからの搦め手のただ政策を漠然とお考えになつているだけでは、何ら対策にならない。殊に揚超に対する政策はまだ何とかかんとか操作ができるでしようが、散超に対する操作はそう至極簡単でない、非常にむずかしいのじやないかと思うのです。例えば日銀の貸出しをチェックするとか、口では簡単におつしやいますが、その一つ一つが非常むずかしい問題である。それらのことをオーバー・ローンを回収するとか、或いは国庫預託を引揚げるとか、というようなことを十分に――散超は非常に大きいにもかかわらず、それをチェックするいろいろな方策は非常にむずかしくなるというようなことを十分にお考えになつて、それらの対策を具体的にしておられるのかどうか。どうも今までの御説明ではそれらをば十分に意識、或いは認識しておられない。それらの点をもう少し具体的に詳しく……。
  160. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 昨年の例によりますと、第三四半期で約千七百億散超になつております。従つて過日も申したのですが、第三四半期の散布超過に対する対策が必要になつて来るのであります。併しながらこれは今申上げた通り、例えば七百四十億指定預金があるから七百四十億引揚げ得るものでないことも仰せになるまでもございません。又五百億貸付があるからといつて、五百億の貸付を一挙に回収できるものではありません。そのほかの各種のオーバー・ローン等があつても、これをそういうふうにしてございませんが、併しこれはよくおわかりのことと思いますが、財界というものは、経済界というものは一つの指標が出たという目印しが出て来るというとそれによつて動くのです。例えばこれはほかのことで説明するようでありますが、米が日本で百万石足らんか、二百万石足らんかということで、昔の自由経済の時分だつたら非常な上騰、暴落するので、僅かのことで動く。金のことで、政府はこういう回収方針をとつているなというと、こういうことがあれば数字はミートしないでもすぐ効果を発揮します。これは一例を申しますると、石炭でありますが、例えば石炭のごときものが、あの時分そう下ると思わなかつたけれども、これは需給状況からのみ来ているのじやありません。やはり石炭を政府は下げる政策をとつているなという旗を出すと、下つて来るのです。それで佐多さんがたの議論から言うと、恐らくは千七百五十億なら千七百五十億、ここに金を揃えて持つて来なければ影響があると仰せられますが、私は経済人として生活しておりましたが、さように考えておりません。政府がきちんとした方針さえ確立しておけば、これに基いてどういう措置をとるかということがわかりますから、それで効果は出て来るので、私はそういう点からインフレ等になる虞れはない、こういうふうに信じております。又それがなければ、インフレを防止するという大きな役割を背負つているのでありますから、或る程度の効果があるように、いろいろな施策を励行して参る、かように考えております。
  161. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしたらもう少しお尋ねしますが、今散超或いは揚超の波を去年の実績その他から御説明になつたのですが、四半期ことの波を考えてみると、非常に起伏が甚だしい、特に今お話のように十月――十二月には集中して来る。それでこの波がひどくなるたびごとに、それらの時期的な調整をやらなければならんじやないかという意見なり希望がいつも述べられたいのですが、今度十月――十二月非常に大きくなるというような場合に、それを幾らと見通すかによつて、もつとそういう期別の調整をやらなければならないかどうか。それからやれるかどうか。そういう点がもう少し具体的に話が出て来ると思うのですが、それらの各期別の調整というような問題は、大蔵大臣としてはどういうふうにお考えになつているか。それは何ら対策をとることなしに、二千五、六百億或いは三千億の散超をそのままにして、出たところの結果を、ただ何とか収拾して行こうというようなお考えなのか、それらの点をはつきり聞きたいが故に、十月から十二月というのをばどういうふうに見通されるかということを、しつこく聞いておるわけです。
  162. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) いわゆる資金にはその需要期等もありまして、特に年末等は尨大なる資金を必要とすることは、これは御説明するまでもないと存じます。従いましてこの民間関係ちよつと散布超過になるからといつて、それだけがすぐにそれだけの分量において影響するものでもございません。例えば今丁度説明のありましたこの四、五、六の三カ月に三百数十億の、それじや揚超があつても、それじや非常にこれは金融拘束に、すぐ響いて来て非常な財界を困難の状況に陥れたか、これは御承知通りそういうことはございません。やはりものを見るときには、経済人というものは、俗に言えば、一年間を見通すばかりでなく、先のことを見通すのでありまして、三月だけを捉えて経済人は行動をいたしません。従いまして経済界のことというものを、三月だけでものを今わそうとすれば、これは合わない時期があるのは当然であります。けれど永そういうことは私は大局から見て必要ないことであり、私は財政金融の調整方針は一貫して参れば、やり得ることと確信いたしておるのであります。
  163. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、私は何も各期別ごとに数字を合せろということを言つているのじやないのです。併し大蔵大臣の言われるように、三百億とか五百億とか、期末でも千億とか千五百億とか、二千億程度ならば、まだ問題は片付くかも知れませんが、今年度は二千五百億を超え、二千八百億になり、或いは三千億になるのじやないか、繰越額その他を計算すれば、もつとになるのじやないかというようなことが懸念されるから、そういうふうな大幅な波になるのならば、期末の各別別の調整も少しお考えにならなければ、あまりに波がひど過ぎるのじやないか。その結果として一――三月には又非常に大きな揚超をやらなければならん。それに関連して企業整理なり何なり、金融面の操作そのよろしきを得ないために整理その他が行われないとも限らない。そういう政策であつてはならないのじやないか。それらの点を大蔵大臣としてはもう少しお考えになる必要があるのじやないか、ならないかどうか、そういうことをお存ねしている。
  164. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) でありまするから、私は繰返して財政金融の調整に基いてこれをやつて参ります。併しそれについて、私はこういう方針だと今も申上げた。それだけじや足らん、もつと具体案はと、こう仰せになるので、それはやはり現実の問題としていろいろやつて行かなきやならん、又今仰せになりましたように、昨年の春、それじや昨年の十二月に千七百億の非常な撒布超過になつておるが、それじやそれで非常に金融界に大きな金融のゆるみが来て、或いはそれがために物価が騰貴したか、そうでないことは御承知通りでありまして、これは財政処理者の心構え、どう持つて行くかという心構えが映つて参りますれば、これは財界の人心というものは鏡に映るようになつて参りまするから、これは私は、大蔵大臣がそう申す以上は御信頼下すつて結構だと存じております。
  165. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば御信頼申上げますが、年度末には先ほどの御説明その他によつても、今の予算で見れば千三百億の散超になり、或いは繰越額その他を考えれば、もつと殖えるかも知れないという計算が出ているのですが、これは結果においてはこの通りに千三百億程度のものは出していいというふうにお考えになつているのかどうか、予算としてはそういうふうに出るが、併し国庫の収支の関係からはその調整よろしきを得て、殆んどゼロ程度にするのだというようなお考えなのか、或いは五百億程度つてもいいが、千三百億にはしないのだ、こういようなお気持ちなのか、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  166. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この点については私は数字的に厳格には考えておりません。それで私がここで或いは申したかと思つておるのでありますが、大体この年度末には紙幣の額で四、五百億は殖えるのじやないか、昨年の同じ年度末に比べますれば、そのくらい殖えるのじやないかと思つておりますが、そのくらいならば日本経済として何も差支えない、併し仰せになつたような千三百億に殖えるということになつては、これは大変なんであります。そこで実は私も苦労をして、いろいろな考えをしているのであります。そこで財政と金融を一体化して、或いはでき得るだけのこれについて措置をとる、一方には例えば指定預金の引揚げというようなことを口で言いましても、その引揚げる側になつて見ると、容易ならん問題でありまするので、相当な決意を必要とすると思います。併し相当な決意をするが、日本の財界の前途に対して、幾らかでも不安を与えては相成らんから、あらゆる決意を以てそういうことにも臨まなければいかん、例えば貸出しの回収といいましても、これは口ですることは容易でありますが、現実にそうすることは相当な決意が必要であります。オーバー・ローンについても、これを償還するといいましても、現実の調整ということは相当の決意が必要であります。そのことは十分私共考えて臨むのでありますが、一応私共の見通しとしては、どうも四、五百億程度発行額が、来年度末あたりは殖えるのじやないか、こういうように思つておるのであります。その程度であれば、これは何にも経済界にはインフレという要素を含まさずにやつていける、ノーマルな状態で続けていける、こういうふうに考えております次第であります。
  167. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この四、五百億程度と言われるのは、日銀券の発行額が四、五百億ということですか。
  168. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) その通りでございます。
  169. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると撒超はどうなりますか、年度末の。
  170. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) それは今からちよつと具体的に、私共検討して見ませんと、撒超はどの程度か、又四期別の分もよくできておりませんので、それはよく調べました上で的確な数字を得たいと思つております。
  171. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 あとの質問は他の機会に留保いたします。
  172. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行。只今我々が審議しておりますこの予算案に、ここに一つの新らしい事態ができまして、新規に我々は新たなる観点からしなければならんことができたのであります。それは昨日参議院を通過いたしました公衆電気通信法関係の三法案が、本会議を通過いたしたのでありますけれども、これは御承知通り電話料金の値上げでごいます。ところがこの内容は平均二割五分を値上げするという政府の原案が、衆議院で二割値上げに修正されたのでありまして、参議院においてこのままでこれが通過いたしたのであります。その結果、この政府関係機関予算のうち、電々公社の関係予算に、変更が出て来たわけでありまして、この結果具体的には二十五億の収入減になるわけでありまして、それでこれを補填しなければならん、その補填の方法には電々公社の発行する債券の公募の限度を、発行の限度を引上げることと、政府からの借入資金を増額するという二つの途があるのでありまするけれども只今のところでは、この債券の発行限度を引上げる、こういうやり方をやりたいという大体の考え方のようであります。ところが、そういたしますと、この予算総則の中にあります発行限度の額七十五億円を大体百億円程度に変更しなければならんということと同時に、この予算書の内容を変更しなければ、予算の内容を変更しなければならんという、修正しなければならんという事態が起きておるわけであります。これは電通委員会においても審議されたところでありますけれども、これは直接この予算の修正ということは現実にしなければならんという事態が出て来ておりますから、この問題は今までの審議しております事柄とは別個の新たなる事態でございますから、この問題を速かにとり上げて頂きまして、郵政大臣からも御出席願いまして、十分説明を聞き、そうしてこれの善後措置を講じなければならんと思いますから、委員長において速かに理事会に諮られまして、その時間をきめて頂きたいと思います。
  173. 青木一男

    委員長青木一男君) 理事会で相談いたします。
  174. 小林孝平

    小林孝平君 至急理事会を……。
  175. 青木一男

    委員長青木一男君) 今日委員会散会後理事会を開きますから、その際御相談いたします。   ―――――――――――――
  176. 永井純一郎

    永井純一郎君 労働大臣は見えないのですか、要求しておいたのですが。労働大臣関係する質疑に入るので、あとの閣僚のかたはその補足の答弁を願うだけです。そういうふうに要求してあるのです。来なければ来るまで待つております。
  177. 青木一男

    委員長青木一男君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  178. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記を始めて下さい。
  179. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は労働大臣を中心にして質問をいたしますが、今度のスト規制法の中に公共の福祉という言葉がある、これについてかねがね答弁をしておられるようですが、私は先ずこの憲法に公共の福祉という言葉が出てあります。で、憲法の前文にもそのことが出て非常にこれが民主憲法だというゆえんを書いております。で、この公共の福祉というものの解釈、先ず憲法に謳つておる公共の福祉ということをどういうふうに解釈しておられるか、この点を先ずお伺いいたします。
  180. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 公共の福祉ということを一言に現わしますのは、非常にむずかしいのでありまするが、私はこの公共の福祉というのは、部分に対して全部の利益の関係をみまして、一部の関係が全般に対してどうか、即ち一部の人の権利、主張なり利益というものが全部の権利なり利益なりに甚だしく背反しないように考えなきやならん、そういう点を公共の福祉と言うのではないかというものであろう、こう考えております。民法にいいます条理とか信義誠実の原則というものがございまするが、それと似たような、非常に、二言にしてこれはこういうこととであるということは言い現わしにくい性格を持つておりますが、そういうふうな表現で大体つきるのではないかと、こう思つております。
  181. 永井純一郎

    永井純一郎君 よく今の御答弁ではわからないのですが、憲法でいう公共の福祉はこれは学者も殆んど一致して言つておりまする通り、又そのためにこの基本的人権の中の労働者の基本的人権が特に保障されておるわけですが、国民の大部分はこの働いておる人たちです。で、この国民の大部分である働いて、おる人たちの生活権の擁護、これが実現をすることが公共性の福祉だというふうに言つており、その通りなんです。それ以外にこの悪法の公共の福祉という言葉の解釈のしようはない、又あらゆる学者がそういうふうに言つておる。で、私はこの点を確かめたいのです労働大臣に。労働省は、又特にそういうふうに、私は当然この憲法の中にたくさん現われて来る公共の福祉という言葉を、今のように憲法の原理として学者が皆認めておりまするが、こういう解釈をするものと思いますが、先ほどの答弁はどうもはつきりしないのですが、この点はどうですか。
  182. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほどお答え申上げましたように一部の権利なり利益というものが全部の権利なり利益というものに対して背反しないという調和が必要であろうと思いますから、そうした調和を満たすようにいたしますのには、やはり国民全体の利益というもの、国民全部の利益というものを、公共の福祉というふうに考えまして、全部の利益に対しまして一部の利益がこれを甚だしく侵すようなことがあつてはならないと考えているのであります。即ち、争議権というものも、御存じのように、憲法二十八条におきまする三権の中の団体行動権の中の一部と考えられまするけれども、これはやはり十二条、十二条に申しまするところの公共の福祉のために用いられなければならないものであるし、公共の福祉を侵してはならない、こういうことで大体十二条、十三条、二十八条を読まなければならんものであろう、こう心得ております。
  183. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで私の言うのは、その公共の福祉と憲法が言つておりまするのは、結局働く人たちの生活権の擁護だということなんだということを私は言つているのです。それをあなたは認めるかどうかということなんです。
  184. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御存じのように十四条に平等の原則がございます。併しこの平等の原則というものを飽くまでその観念通りに参りますならば、最高裁の判例の言葉で申しますれば、経済上の弱者であこるところの労働者が経済上の強者の立場にあるとろの経営者に対して力が対等にならない。そこで団結してその権利を主張するということが必要であとというふうにまあ考えているので、その関連におきまして、二十八条というものが新らしい憲法の理念として入つて来たものである、こう思つております。
  185. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうすると、それを敷衍して行くと、生活権を侵害し得る場合もあるのですね、その考え方は。
  186. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 生活権を侵害と申しますか、やはり人間は社会的な生活を営むのでありまして、社会全体との調和と統合の上に立つて個人の生活というものもあるのではないか、こう思つております。
  187. 永井純一郎

    永井純一郎君 それは当然のことなんです。ですから、生活権を侵すことはあり得ないかどうかということを私は言つているのです。まして生活権を侵す虞れのある法律というものは、この民主憲法の下では一切立法できないはずなんです。生活権を如何なる場合も侵すことができないということが、私は公共の福祉だと思うのです。憲法が規定しているその点を、一体、政府は、はつきりと考えているのかどうか。一部のものとか全部のものとかというようなことで、いろいろな理窟をつけて生活権を侵す場合は、それは私は明らかに憲法に違反するものだと思います。ましてそういう性格を持つた法律というものは、憲法に背反するものである、こう思います。私があなたに聞きたいのは、生活権を侵す場合があるのかどうかということなんです。
  188. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御質問の点にお答えしますのに、こういう表現を以てしたら如何かと思いますが、労働者の団体行動権と公共の福祉との関係についても、争議行為が多少世間に迷惑を及ぼすことは避けがたいことでありまするが、それが一般社会の利益を不当に損うことなく、もろもろの一般的な、基本的な人権と労働者の権利の調和が守られ、発展することが、公共の福祉に合致するゆえんである、こう思います。即ち、生活権を奪う立法と言いますか、要するに、二十八条にございまする労働基本権と言いますか、団結権、団体交渉権及び団体行動をする権利というものは、これ即ち生活権ではないと思います。併し今申したように労働者の権利を暢達するためにそのうちの一部としてストライキ権がありまするけれども、このストライキ権というものも無制限に存在するものではない、やはり社会的な繁栄というものを基礎として労働者の生活の安定というものがあり得るのであるから、やはり全体の調和が保たれねばならない、こういうふうに私は考えております。
  189. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで私が言うのは、窮極は、社会祉福いうものの解釈の仕方、考え方が、窮極は、特に勤労者の――これは国民の大部分です、これが殆どです――その生活権を守ることであるのだというのです。それが公共の福祉だというのです。あなたが社会通念上とか一部分とかいうのは、そうじやない。一定の、今ある秩序の一部分を維持するために必要だから、その必要なことを指して公共の福祉だというふうに言つておるとしか考えられない。ですから、私が言う公共の福祉というものは、あなたの言うようなものであつてはならないのであつて、憲法が言うのは、結局、国民大衆の生活権の擁護ということ、生活が確立されるということが公共の福祉なんだ、そうではないのかというのです。一番前提の考え方としてですね。
  190. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 一般的大衆の利益を守るということが法の建前であろうと考えております。
  191. 永井純一郎

    永井純一郎君 それであれば、その大部分は勤労者の人たちです。例えば争議というものが、当然或る程度の迷惑がかかるということは当り前のことなんです、そんなことは。電気が消えて暗くなるから一般の人たちが不便をこうむるというようなこと、これは当り前のことなんです。そういうことによつて、それに携わる多くの労働者の人の権利を奪つてはいかんから、憲法が保障しておるのだと思う。私はそういうふうに思うのですが、迷惑がかかるから、直ちにそういうものを禁止するような法規を作つて行くということになると、保障された権利というものが保障されておらないことに結局なると思う。結局、公共の福祉というものが勤労大衆の生活権を保障しておることだと、この二十八条の条文や何かと一緒に総合的に考え併せて、公共の福祉というのは、特に勤労者の人たちの生活を擁護することである、これはすべての学者がそういうふうに言つておりまするが、その前提を私は認めなければならないと思う。そうでないと、それを認めぬということになると、それは憲法を改正するかどうかという問題なんです。改正してから先のことならこれは別のことだけれども、この憲法下においては、私は今度のスト禁止のようなことはできないと思う。ただ非常に抽象的に、社会通念上というようなことで、公共の福祉を非常にぼやかして、ただ何となく説明をされておるという手一段は、私はとれないと思うのですが、公共の福祉は、特に勤労者の生活権を擁護する、その実現が公共の福祉であつて、そうして従つて結局国民経済というものも、そういう意味の公共の福祉の線に沿つて運営されなければならないというのが、この憲法の解釈の原則である。これはもう皆がそう言つておる。その点を私は用いておる。
  192. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 具体的のお話がございましたので、その線に沿いましてお答えを申上げます。御承知のように、この労働争議というものが業務妨害を伴つて多少の迷惑を及ぼすことは申すまでもないのであります。併しそれを一々とり上げて不当であるとか何とか言つておりましたのでは、争議行為というものはできないのでありますから、御承知のように労組法一条二項で、争議行為であればそうしたものも津法性が阻却されるということが書いてある。但し暴力はいかんということが書いてあるわけです。今度私どもが御審議を願つておりまするいわゆるスト規制法案というものは、石炭鉱業の場合、保安要員の引揚をやつては困るということを言つておるのです。保安委員の引揚ということをいたしますると、仮に炭坑に人が入つておる場合に、温水とか落盤とか或いはガスの充満とかいつた人命の危険があります。これは労調法三十六条によつて違法とされておるところであります。併し人がいない場合でもそういうような事態が起きますれば、これは争議行為というものは雇用の継続を前提としておるものであります。争議行為が終りましてから真面目に入つて行く人たちの働く職場がなくなつてしまう、そういう職場を失わしめるべきものは争議行為としてでも違法であるということで、これを明確に確認しておこうというのであります。鉱山保安法には鉱山保安の責任を書いてございまして、罰則もございます。併しそういうものがありまするにもかかわらず、保安要員の引揚の指令までが出たのでありますから、これはいけないということするから、これはいけないということに明確化しておいたほうが却つて親切ではないか、こういうのでございまして、そうしたことをいたしますると鉱山保安法五十条にありまする罰則の適用がある、こういうのであります。  電気の場合は、スイッチ・オフというのは、これは本来、争議というものは労務の不提供である、併しスイッチ・オフというようなことで下提供の域を超えるというものは、これは違法であると従来も言われておる、ところが昨年の争議の経験に鑑みまして、従来も行われておつた停電スト、電源ストというものがあれほど長期に亘つてみると、これは従来でも違法ではないか、これは困つたことだと考えられておつたことが、社会通念が成熟して、それを不当とするに至つた。即ち一部を……電産十三万のうちそうした電源関係、発電所関係におります人は大体二割であります、で、おつしやつたような国民の全般ではない、そうした人たちの争議行為というものは、電気の持つ特殊性によりまして広汎に国民大衆の生活を脅威する、或いは中小企業或いは農村に非常な打撃を与えるということであれば、この方法というものは飽くまでも争議行為としてでも違法性の阻却がないということにきめておきたい。即ち公共事業令によりまして、八十五条に、正当な電気の供給を阻害する行為はいけないと書いてございますが、ストライキとしてでもこれをやつた場合に八十五条の罰則の適用がある、こういうことにしたのが趣旨でございまして、決して全部を勤労者のストライキ権を奪うなどということは毛頭考えておりません。只今例示いたしましたような点におきまして、特にこうした争議行為の方法というものは公共の福祉というものとの調和を図らねばならん、従つてこの点は御遠慮を願いたい、こういう趣旨でございます。
  193. 永井純一郎

    永井純一郎君 私どもが公共の福祉というものの解釈を、今のように勤労者の生活権の擁護だというふうに解釈すれば、これとの調和ということは幾らも考え得る途はたくさんある。その大前提が間違つておると調和にならないということを私は言いたい。だから、その大前提についてのはつきりした考え政府は持たなければならない。これによつて、どうにでも違つて来る。あなたはあなたの立場からただ調和がとれておると思つておるだけで、例えば電産のこの間の争議についても、十三万の諸君ではない。そのほかに何十万という人たちがあの争議をよろしいと考えてあれに応援した人がたくさんあるのです。反対した人とそれを支援した人との数がどちらかと言えば、私は支援した人のほうが多いと思う。そういう点は、これは具体的に言つても私は幾らも説明ができる。大体社会福祉というものを、公共の福祉という、憲法が規定しておるその規定の考え方が、根本が、一番の前提が間違つておるから、その調和のとり方という方策というものが間違つて来るということを私は言いたい。あなたのような立法をしようと思うなら、憲法を改正しなければいけないということになる。そういうことを保障するのがこの民主平和憲法なんです。従つて公共の福祉というもののこの一番の根本、憲法が言つておる公共の福祉について、これはスト禁のみならず、今度の刑訴の改正から、独禁から、すべてに関係して来るのです。その前提の考え方如何によつて崩れて来ると思う。  それで、もう一つ私は聞きますが、今あなたはいろいろなそういう場合における違法性を阻却するという点について、先ほどから何回も言われておりますが、この憲法がこういうふうにして規定してある以上は、私はそういう意味における公共の福祉との調和は当然とらなければならんということは勿論考えるのです。そんなことはどうでもよいという考えを持つのではないのです。それはとらなければいけない。そこで、これを立法的に見まするならば、そういう意味で、私が考えるのには、今度のストを規制する法律案というものは実際は作れないのであつて、若しそういうことがどうしても必要だ……。例えば保安要員を引揚げるということは、これはよほど考えなければならないことだということは我々だつてよくわかる。そういうことはなかなかなすべきことでないし、或いは一歩讓ればあれはしてはいけないことだと私ども考える。併しそのことを単独の法律で禁止するということは私はできないと思うのです、新憲法下においては……。ですから、そういうことは、私はこの民主憲法の下では他に方法が講ぜらるべきじやないか。それはどういうことかとう言と、労働組合の自主的な経営者側との約束、例えば労働協約等の中で保安要員は引揚げないという約束をする。そうしてそのことによつて引揚をしないということだけが、私はこの憲法下においては許されると思う。それを単独の法律で以てその争議権を禁止してしまう、剥奪してしまうということは、これはもう間違つておる、こう私は考える。この点について労働大臣はどうお考えになりますか。そういうふうに法律でするのではなくして、お互いにそこのところはよく自覚して、そうしてそういう保安要員の引揚などということは、これはもう、よくせきのことであるのですから、そういうことはお互いにやらないということを労働協約等の中に織り込んでおくということでやるよりほかに方法がないと思います。この点について労働大臣のお考えを伺いたいと思います。
  194. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 昨年の争議に対して、あれは困つたものだという社会通念はあると思います。中小企業のかたなどは、初めは我々も労働者なんだからやれやれというので大いに声援を送つたけれども、だんだん長期化して自分らの工場の電気もとまるようになつて来ると、この電気をとめるのだけは勘弁してもらいたい。折角作つたものがいわゆるおしやかになつて、それを相手に損害賠償するどころではない。契約したものはもうどんどん遠慮会釈なしに取られるし、材料の資金に追われるし、又工賃の支払もしなければならんということで非常に困つておるということを、公聴会でも述べておつたわけであります。  なお炭坑の保安要員の引揚というようなことは本来すべきでないという、御共鳴と言いますか、御同感のお言葉を頂きまして、誠に何と申しますか、私も共鳴いたしますが、それを昨年ああいう指令を出して、そうして現にそれをやらんと言えということを随分話してみたが、そんなことは言えるもんかというようなまあ大衆心理的なものがありまして、これを直ちに労働協約に入れるということは、実際問題として非常に困難ではないかと思います。それを入れるには、いわゆる組合幹部の面子というようなものもありまして、それは実際問題といたしまして困難ではないかと思うのであります。私どもはこういう法律を作ることは憲法違反でないと考えておりますが、この法律は御承知のように時限法として三年の期限を付しております。三年経つてなお継続しようという国会の御意思が、政府の提案がどうなりますか、そのときは、政府が三年経つても継続したいと申出て、国会の御賛成を頂ければそのようになりますが、私は実際問題としては、これは三年の間に、今おつしやつたような、労働協約で保安要員の引揚はしない、或いは電源のストというようなものはやらないのだ、その代り会社はかくかくのことについて注意するというような、そうした労働協約ができることを実は期待しておるのであります。
  195. 湯山勇

    ○湯山勇君 今スイッチ・オフがいけないということをおつしやいましたけれども、これは争議に入るときの常識であつて、動態にあるものは静止状態に置く、だから紡績工場なんかストライキに入る場合には、機械が動いておればとめるのは常識じやないかと思いますが、如何ですか。
  196. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は電気の場合について申しておりまして、電源の場合にスイッチ・オフするということは、これは、その影響が真に広汎に第三者に及ぶものでありますので、そういう解釈が従来ともなつておるわけであります。
  197. 湯山勇

    ○湯山勇君 管理者のない状態に置いておくほうがより一そう危険であると思うのです。それで、大臣の言うような言い方をおつしやるならば、電車関係がストライキに入つた場合には、電車をとめないで走らしておけばいいだろうが、とめた場合には乗客はみな困る。とめてもらつたら困る。こう言うのは当り前なんです。こういうことの判断が極めて狭いじやないかと思うのですが、如何でしよう。
  198. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その場合は一種の労務不提供になると思う。ちよつと電気の場合と事情が違うと考えております。
  199. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで、私はもう一つ憲法の建前からはつきりさせたいのですが、今度のように、電気、石炭等に対する民間労組に対しての争議行為に対して、直接的な禁止法規が、日本の労働関係法規の中に、その体系の中に入つて来るということは、これは私は許されないことだと思うのです。そういうことは、この民主憲法の下においてはですよ。民間労組に対する争議の禁止剥奪という規定を、この労働関係法の中に、直接的にその体系の中に繰入れて来るということは、これは到底私は日本の民主憲法下における法律の体系の中では許されないことだと思うのです。そういうことは、それはまるつきり憲法の精神と全く反する方向一つの体系を作り上げることであつて、将来そういつたことが、ガス事業だとか、水道事業にも行くという虞れがあるという議論のみならず、私が言うのは、そういう法律体系を作り上げるということが、一つのそういう体系を繰入れて行くということが、すでにいけない。そういうことを許さない憲法なんです。根本のことは、間違つた問題がそこに一つ民主憲法の中に出て来る。これは同じような過ちをたくさん政府は犯しております。例えば第九条についてもそうだ。又予算の修正権、提案権等についてもそうなんです。すべてについて政府は明らかに、憲法が、こうして民主平和憲法がきめておるいろいろな条規に対して、何はなしに、なしくずしにこの体系を壊して行く方向に行きつつあると私は思うのです。特にスト禁止法についてはそれが非常に明らかだと思うのです。日本の労働関係法規の中に、この憲法の下におるけ法規の中に、そういう体系が作り上げられることが、果して許されるかどうかということを、私は労働大臣に聞きたい。
  200. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本の民主憲法の建前から言いますれば、非常に一方において責任を伴うものでありまするから、私は本当に憲法の精神を理解するならば、公共の福祉を除外するような、特に除外するような争議行為は、組合の良識によつて行われないと思うのであります。併し不平にして昨年の事態がありましたので、あれを特に掲げまして、そうして、こういう争議行為は御遠慮を願いたいということを法律に書かざるを得ない。こういう状態だと思います。
  201. 永井純一郎

    永井純一郎君 ですから、私は公共の福祉というものと、それから民主憲法下における法律の一つの体系、このことにいつて私は今あなたに質問しているのです。その根本的な考え方を述べてもらわないと、これは、いつまでたつても先に進まないということなんです。そういう法律体系がこの憲法の下で許されるかというのです、私は……。
  202. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 許されます。
  203. 永井純一郎

    永井純一郎君 なぜ許されますか。どの法規によつてそういうことが許されますか。
  204. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 公共の福祉と争議権の調和を図るということは当然だと思います。即ち二十八条というものが十二条、十三条との関係において読まれて来る。二十八条というのは十二条、十三条を当然に予想して書かれたものだ、そう考えるからであります。
  205. 永井純一郎

    永井純一郎君 その公共の福祉というあなたの観念は、勤労者が保障されている生活権を侵害する場合があるということの意味ですか。それは結局そこに戻つて来るのです。
  206. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 根本の世界観の相違というような気がするのでありますが、私はストライキ至上主義ということは考えないのであります。そこまで行かなくても、近代民主主義社会においては、やはりお互いの話合い、立場の尊重ということによつて、納得と解決に至るものであると、こういうふうに考えておるのであります。余り極端なる思惟というものは社会全体が許さない。進歩的な社会においては、古い時代のように一部のものの専制というものは、しようと思つてもできん、こういう社会構成にあり、社会観念がある、こう考えておる次第であります。
  207. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうあなたが考えを持つのだつたら、私が言うように、なぜ労働協約の中でそういうことが推し進められて行くように努力をしないかというのです。そういう努力一つもしておらないじやないですか。労働省は……。これは一部の人の意見を聞いて、特に財界諸君の意見を聞いて独禁法でもスト規制法でも作つて行くというだけであつて、公共の福祉という言葉に該当するような人々の意見というものを聞いておらない、と思う。あなたがそういうように言うならば、なぜそれでは、この労働協約の中でそれがきめられて、お互いに民主的に紳士的に話合いで行くということにしないかということなんです。あなたが今言うことに対して結局そういうことになぜ努力をされなかつたかということを私は申上げたい。
  208. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほども申上げたようにあの昨年の争議行為の際に、保安要員の引揚げ準備指令も出たし、給電指令所の職場放棄の指令も出た、そういうことでございまして、今直ちに協約の中においてきめようと申しましても、そう、しかく簡単にいかんのではないか。労働省としては非常にその点は努めておりまするけれども、別に強制するわけにはいかない。やはり労使双方の間において行われるべき協約でありますから、これはそういかない。そこで、こうした社会通念上、誰が見ても妥当と考えられるものは、三年の時限法として掲げておいて、その間に、できる限り労使双方の間において労働協約にこのことは盛り込んで頂くということを期待しておるわけであります。そうしたことが完全にできますれば、私は三年後にはこの時限法というものの効果は十分に発揚されることになると考えております。
  209. 永井純一郎

    永井純一郎君 それであれば、それはなおおかしいですよ。そういうふうで、三年の間にということを規制法に掲げておいて、その間で、そういつた労働協約でお互いの話合いで民主的に行くようなことを指導して行こう、そういうことをするから、労働者の諸君がより以上に自分たちの争議権を強く確保しなければならんということになつて来る。そういう考えがあるならば、スト規制法というものを取除いておいて、そういつたような弾圧法はなくしておいて、そうして、紳士的に対等にこうしようじやないか、これが民主的な労働組合の行き方だと思うということを、熱心にあなた方が進めて行くのが当り前じやありませんか。やり方としては……。若しあなたが今答弁されるような考え方を持つならば、一方にだんびらを振り上げておいて、こういうことをやりなさいと言つたつて、そういうことは労働者は絶対に聞くものじやない。非常な間違いです。そういうやり方を若しやろうすとるならば、あなたが今答弁したような考え方であつたならば、規制法を撤回して、そうして民主的な話合いで行くということを、私は指導としてもやるべきだと思う。そうじやないですか。
  210. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点はむしろ逆に考えております。そうでないから必要なんです。私どもはこの法案を出すに際しましても、始終意見も交換いたしましたし、納得を得るように努力もしてみたのでありますが、法案の出る前から、やはり電源スト、停電ストはやるという予告も持つて来るような次第で、最近も越盆手当というもので、電源スト、停電ストをやるというような意見も来ているわけで、これに対して勿論私も昨日そういうことで電気を消されちやかなわんからということを言つておきましたけれども、そういうような状態でございまして、やはり今のあなたのおつしやるようなそういう環境にないのであります。ですから、一応これはスト規制法というもので国民の多数の意思を示して、そうして、さて、それはそれとして、相互の良識をいよいよ深め、理解と納得と協力を得るという方向に行くより仕方がないのではないか、こういうふうに考えております。
  211. 永井純一郎

    永井純一郎君 それはあなたの大きな間違いであつて、労働問題を知らないのも甚だしいと思うのですね。そういつた考え方でスト規制法を三年間振り廻しておつてですよ。そうして私が言うようなことを、民主的にお互いに話合いながら進めて行こうということは不可能なことです。そういうことはできないことなんです。間違つたやり方なんです、その……ことは。そういうことだから物事が本末顛倒して来ると私は考える。で、私は更にもう一つお伺いしたいのは、現在争議権を持つておらない組合というものが殆んど大部分なんです。官公労から始まつて自治労関係、国鉄、専売、全逓、それから公務員、公社関係、これらはすべて争議権を剥奪されておるわけなんです。今度それにまあ電産、炭労というものが入る。私がここでお伺いしたいのは、今の労働組合の中で、総人員の数の中で、全官公労を初め、争議権を持つておらない員数と、それから争議権があるところの員数と、一体どのくらいですか、員数は……。
  212. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 官公労は全体の三分の一ぐらいあると思います。なお電産、炭労が争議権を失うというふうなお話でございましたが、そうじやなくて、今申したような保安要員の引揚げと、それから電源並びに給電指令所の職場放棄、スイッチ・オフはいかんと、こういうのでありまして、これは大体二割見当であると、こう思つております。
  213. 松澤兼人

    松澤兼人君 この程度一つ明日に延期してもらいたいと思います。
  214. 青木一男

    委員長青木一男君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  215. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記を始めて下さい。  暫時休憩します。    午後五時十七分休憩    〔休憩後開会に至らなかつた。〕