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木村禧八郎君
大蔵大臣は企業者の努力が足りないと言いますが、今後物価を下げて行くために、企業者の努力を要請するというほかにお
考えはないのですか。それと、今の通産
大臣の御
答弁の、今後
日本の物価をどう下げて行くかという具体的政策は、ここから出て来ない。金利が高いといいますが、金利については私は利子率が高いのか、或いは全体の借金の金利の負担が高いのか、ここが問題なんです。利子率が高いのではない、実情としては。これは経済白書にも書いてあります。ちやんと、経済白書の利子率が高いということよりも、むしろ銀行からの借入金が非常に多くな
つて、そうして経済情勢は変らないので、借金のボリュームが大きい、自己資本でない。その金利負担が大きいのですね。ですから対策を講ずるときには、利子率を下げるということよりも、むしろ販売量よりも、販売量に対して借金が多いのです。それが根本の
原因は、流動資産の回転速度が低いということなんです。金利のことをやかましく言えば、MVイコールQPというやつで、MVのMが通貨量、Vが流通速度、QPのQは物資の供給量、Pが物価、これが均衡しなければならん。物の回転速度が低いために金利負担が大きいのです。金利問題はこういう形で解決しなければ、例えば八幡製鉄所について具体的に検討されて御覧なさい。利子率が高いのじやないのです。実際においては、いわゆる銀行に払う金利が高いのです。お金がない。それはなぜかと言いますと、
アメリカのU・Sスチールでは年間二十九億ドルの売上高に対して、流動資産というものは七億ドルです。これに対して八幡は六百億ぐらいの売上高に対して、大体匹敵するくらいの流動資産、これでは金利負担が多いのは当り前である。利子率が高いのではないのです。金利問題もこういう点から捉えなければ、私は本当の正しい金利負担の軽減によるコストの引下げはできないと思う。更に私は、今の
日本の物価高は、結論から言えば通産
大臣と
大蔵大臣に責任があると思うのです。なぜならば、私は今の物価高は、いろいろ
原因はありますよ、こういうものを、そのウエイトから言えば、第一は輸入抑制によるところの、それを
原因として独占価格の引上げなんです。最近の独占の実情を
考えて御覧なさい。これは顕著なものです。而も独禁法を改正して、又価格が上るのです。これがどうして輸出振興になりますか。そういう点。それから
政府は合理化合理化と言いますが、合理化によ
つてコストを下げるのか、或いは価格を、物価を上げるのか、最近の実情は、合理化によ
つてコストは下
つても物価は下
つておりません。それだけ企業利潤がただ殖えるだけであります。而も八幡、富士とが今度協定をやれば、独占価格はますます上るばかり。これは通産
大臣に重大な責任があるのです。外貨割当を挺子として、そうしてこの独占価格を引上げる。
従つてこの物価高に対する対処策物価を下げる方法は、輸入には九億ドルの外貨を利用して、そのうち約五億ドルで輸入をどんどんすることなんです。輸入を充実することによ
つて物価は下る。これは私は今の物価高の重大なる
原因がいわゆる輸入抑制にあると思う。だから輸入をどんどん自由にすれば、カルテルを行な
つて独占価格を引上げようとしても引上げられない。戦前においてはそうであ
つたのです。戦前において独禁法というものはなかつた。なかつたけれ
ども、なぜ弊害がなかつたかと言えば、輸入は自由である。この点は着目すべきことであります。今後の物価政策としては、だからコストを下げるのか、物価を下げるのか、合理化についてその点をはつきりさしてもらいたい。
もう
一つは、
大蔵大臣の責任、各銀行の信用インフレ、これはイタリーにおいても重大な問題にな
つたのです。朝鮮戦線の結果、海外物価が高くなる。海外物価が高く
なつた時に、そのまま
国内物価に反映さしていいかどうか。これに対する財政金融政策を如何にするかということは、イタリーの苦心したところなんです。どうも
政府の財政金融政策は、いわゆるケインズ理論に毒されている。経済審議庁もそうだ。いわゆるケインズの均衡理論に基いて、物価が上れば必要な通貨量を供給しなければならん。こういうケインズ理論に毒されている。最近大蔵省から非常にいい調査を私は配付されました。調査月報に、あのイタリヤのインフレ経済学者の有名なブレスチヤニチユロニ氏が、この朝鮮動乱以後のイタリーの財政通貨均衡政策というものを論じている。ここでイタリー
政府は弱
つたのです。朝鮮動乱の物価高をどうしてこれを
国内に反映させないか。これをケインズ理論で行けば、物価が上つた。その必要通貨量を殖やすという理論をや
つて来た。今度は、ところが
政府はこの信用インフレから財政インフレに切り替えようというのが二十八年の
予算です。信用インフレから財政インフレに切り替える。ですから過去の蓄積をたくさん使
つて、千何百億の支払超過にする。そうして信用インフレを財政インフレに切り替える、財政インフレに切り替えたらこのインフレが恒常化してしまう。信用インフレと財政インフレの違いは、信用は銀行で金を貸せば貸す、財政インフレは
政府が出せば出す、初めは返すと
言つてもなかなか返らん。そこでインフレが恒常化してしまうのです。そこでイタリー
政府はどうしたか、ケインズ理論を否定しておる。ケインズ理論に基いたらそうなるのであ
つて、やはりこれは金融政策、引締政策をとらなければならんということを
言つております。それをや
つてイタリーは成功しているのです。併し最近又戦時財政に入りかかるので、これはこの政策は又再検討されて、財政金融政策の引締政策でいいかどうか。今度はいわゆる再軍備財政になれば、再軍備経済になれば、直接統制をやらなければならんのかどうかということが問題にな
つているのです。今の
日本の財政金融政策は、先ほど
大蔵大臣が無
原則のような財政
原則と言われましたが、金融政策についても無
原則、ケインズの安易な、いわゆる必要通貨量はこれは出すというような、そういうようないわゆる均衡理論、これは根本的に
政府の
考え方としてこれから再検討して行かなければならん。失礼ですが官僚諸君は大体ケインズ理論の信奉者だ、それを行政面に反映しておる。ケインズ理論は間違いです。イタリーにおいてはつきりわかる。ケインズ理論によりインフレを行
なつたならば、イタリーは、朝鮮戦争による非常な経済的影響を受けて、
日本が当面しているような物価高に苦しんだと思うが……。