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1953-07-26 第16回国会 参議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十六日(日曜日)    午前十時八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之助君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            上原 正吉君            鹿島守之助君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            関根 久藏君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            吉田 萬次君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            中山 福藏君            岡田 宗司君            亀田 得治君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇者            加藤シヅエ君            最上 英子君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    文 部 大 臣 大達 茂雄君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  岡野 清豪君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君   国 務 大 臣 大野木秀次郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    経済審議政務次    官       深水 六郎君    経済審議庁次長 平井富三郎君    大蔵政務次官  愛知 揆一君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    食糧庁長官   前谷 重夫君    通商産業大臣官    房長      石原 武夫君    運輸省海運局長 岡田 修一君    労働省婦人少年    局長      藤田 たき君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。加藤シヅエ君。
  3. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 労働大臣にお伺いいたします。昨日ちよつと大蔵大臣にも御意向を伺つておきましたのでございますが、婦人少年局のことは、私ども女性が非常に心をここにこめております唯一の婦人役所でございまして、今までこの婦人少年局存在がもともと社会党内閣の時に誕生したというようなわけで、とかく自由党内閣の時には、この存在にご理解がなかなか得られませんで、ややもすれば整理のときには婦人少年局が一番整理対象のさきがけになるというような心細い思いをいたして参つたのでありますが、最近になりまして、この婦人少年局が非常に婦人労働者家庭婦人年少労働者の保護のために、又地位の向上のために大きな役割を担つているということが認めて頂けるようになりまして、今後は整理対象になるというようなことはなくなつたことは喜ばしいことだと考をております。ところがまだまだこの婦人少年局役所仕事重大性ということから考えますと、このお役所予算というものは甚だ不十分であると考えておりますが、まあこの問題も今一般行政費の縮小ということを考えられております時に、特に自分のところだけたくさんとりたいという主張を婦人側からしようとは思わないのでございますけれども、それでもこの役所がその本来の仕事をするための最小限の予算だけはどうしても取つておいて頂かなければならないと考えるのでございます。そこで大臣も御承知のように、この婦人少年局室長というのが各府県にございまして、これも人員整理のためにもう少したくさんこの室に働く婦人が欲しいと思うのでございますが、今非常に少くなつて、殆んど一室一人というような所が非常に多くなつている。而も婦人のことでございますから、いろんな家庭の事情なんかで辞めなければならないようなことがございますと、あとちつともここに補充して頂けないというような状態になつている。これは私ども非常に心細く思つているのでございますけれども、こういうような補充というようなことは、他の一般人員整理というような基準にここも公式的に割りはめられてしまつて補充ができないというような状態になつているのでございましようか、如何でございましようか。
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げます。労働省におきまして婦人少年局活動というのは非常に活発にしてもらつておりまして、私も加藤さんの、この婦人少年局活動を通して婦人並びに年少労働者の働きやすいような環境を作るということに対しての深い御理解に対して、敬意を表する次第でございます。この予算でございますが、二十六年度には四千四十一万円でございまして非常に僅かでございますが、二十七年には若干殖えまして四千七百八十七万円となつております。本年度には六千七百二十万九千円の予算国会提出したのでございまするけれども、御承知修正の際に節約をする、これも頭割りに節約ということになりまして、六千三百九十八万六千円という数字になつております。予算としては二十六年度に比べますれば殖えてはおりまするけれども、まだまだこういう程度では私は到底足りるものではない、こう考えまして、大蔵大臣にもこの予算国会修正を受けまする際に、何とかこれを考慮してくれということを申したのであります。その結果としましてでございますか、昨日は非常に理解のある答弁があつたようでございますけれども機会あるごとにこれは殖やしてもらうようにしたい、こう思います。予算が殖えますれば只今指摘婦人少年室長の問題も解決することができると考えております。何にいたしましても非常にこの婦人少年関係の問題は細かい問題が多いのでありますが、これに対して極めて僅かの人員であるということで、現状では非常にその活動範囲の広く且つ必要であることに対して、人数が少きに過ぎるのではないか、こう考えております。
  5. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、人員補充というようなことはどういうことになりますのでございますか。その点をもう一度。
  6. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 一般的に補充をするというお約束も現在の予算ではいたしかねる点もございますけれども、その場合々々を勘案いたしまして、どうしても足りぬというものにつきましては、現行予算においてとりあえずいたしておいて、それでやり切れなければ補正等機会もございますれば、昨日の大蔵大臣お話のように補充して、金額的にも補充して頂くという方法も考えられるかと思います。
  7. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 労働大臣から大変御理解ある御答弁を頂きまして、将来婦人少年局に働いていらつしやるかたがたも非常にこういう御答弁によつて更に一層懸命に働いて頂けることだと思いますけれども、まあ私どもは日頃お役人というものは成るべく余り能率を上げ過ぎないように働くというような傾向があるというようなことは、これは世間一般に言われていることでございますけれども婦人少年局のお役人さんというのは、これは又驚くべきお役人さんで、もう頼まれた以上のことを、きめられた以上の時間を積極的に費して働いて下さいますし、又予算が少いものですから、私ども婦人議員なんかが会議に呼ばれました時にも、その会合で以て私たちお客さんだけがお茶を出して頂いて、そうして金田から来られた室長のかたは、自分の飲むお茶もないから、自分たちお茶を飲まないで、お客さんだけお茶を飲んでくれと、まあそういうような状態でございまして、どこまで切り詰められているかということを、私どもまた如実に見せて頂いた。而もいろいろ働いていらつしやいます実情を私ども拝見しておりますし、地方に出たときもいろいろ報告を拝見しておりますと、まあ出血サービスと申しますか、しなければならない問題が起つて来ると、旅費でも何でも、まあ自分の小遣いをそこに注ぎ足して働いていらつしやるという状態を拝見しておりますので、どうかまあそんなことのないような、良心的な、本当に私ども模範的な官吏だというふうに考えておりますので、こういう方たちをどうかまあ安心して働けるようにして頂きたくお願いして置きます。  次に労働大臣にお伺い申上げたいのは、日本一般工場における災害によりまして、死んだかたの数が非常に多い。而も死んだかたが一年間に五千人もあるとか或いは怪我をするかたがその十倍ぐらいあるというようなことが報告されておりまして、殊にいろんな花火の工場とか硫安の工場とか水素ボンベの爆発だとか、そういうようなことで大変な大きな事故が一年間に相当たくさんの数が出ているというようなことが報道されてますけれども、こういうようなことは、このいわゆる文化国というような体面を保つて行く上には、この災害による死傷者の数というものは非常に多いと思うのでございますけれども、これはどういうところに原因があるのでございましようか。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 工場におきまする災害が未だに跡を断たないことは非常に残念なことでございますが、私どもの所管いたしておりまする労働省におきましては、基準局を中心にしまして、全国安全運動というのを展開いたしております。この年間を通りまして非常にこの安全関係の成績のよろしいものにつきましては特に表彰をいたしたり、又特別にこちらから関係係官が出張して、その非常災害等の少かつた原因についてお話を聞かせてもらつたりいたすようなことをいたしておるのでございます。やはりこうした災害が跡を断たない原因につきましては、一般的な機械設備の不十分であることとか、そうしたような原因も勿論ございますと思いますが、何といたしましても安全、工場の安全ということが非常に重要なことだという一般の認識の欠如ということが、相当な大きな部分を占めるのではないかと思うのでございまして、そうした面におきまして、できるだけ安全運動というものの重要性を認識してもらいますように、そうして工場経営者におきましては安全施設というものについて十分な金を投じてもらうように、又工場全般の気分としても和気あいあいとしてそこに協力的な雰囲気が流れておりますれば、死傷傷害等こういつたものも非常に少いわけでございますから、そうしたような工場管理の面を十分注意いたすように、当局として監督指導いたしておるつもりでございます。
  9. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今大臣の御答弁の中に、工場経営者の側に、安全施設のために十分な金を投じてもらうようにまあ奨励しているというお言葉があつたのでございますが、先達ての新聞の報道でございますが、英国内閣におきましては、経営者安全施設その他施設の改善のためにお金を使つた場合には、それに対する税の処置において減税をするというようなことが考えられているというようなことをちよつと聞いたのでございますが、私はこういうようなことは非常によいことだと思うのでございますが、労働大臣は今後そういうような御抱負、或いは具体的な御計画というようなものをお持ちになつていらつしやるかどうか伺いたいと思います。
  10. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げます。この安全施設について経営者自身考えるべきだということは、人道上も工場経営上もそうでありまするが、それと同時に何と申しますか、企業の運営上もむしろ僅かな投資をすることによつて非常に利益を得るのだ、こういうことを言うことが、案外経営者の中には一般的な社会的な一つ機関を経営しているのではなくて、儲け専門だというようなことを考えている経営者もおりますから、そういう人たちにはむしろそういうことを言つてやるほうが熱が入るのではないかと思いまして、その面からも安全施設重要性言つておるわけであります。ただ、今お示しの税金その他の関連をどうするかということでございますが、只今のところはそうしたようなことで、むしろこの安全施設に対する投下資本というものは非常に有効に廻るぞというようなことまで言つてこの必要性を強調しておる程度でございまして将来の問題は御意見もございますから、十分検討してみたいと考えております。
  11. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 只今大臣経営者は算盤がとれるということになると非常に興味を持つというような、そういう御意見があつたのでございますが、これは誠に尤もなことでございますが、問題は少し移りまして、能率を上げて而もこういうような災害を少くするためには多くの原因があるのでございましようけれども、その中でも労働者家庭でもつて夫婦げんかなんかしたときにはどうしても事故が多いというようなことが統計にも出ているそうでございます。この夫婦げんかというようなことがどんなところから起るか私も存じませんけれども、或る工場では家庭でいろいろなトラブルが起きるということは、子供が多過ぎる、いわゆる貧乏人の子だくさんというような状態で、生活難のために子供が多くて非常に家庭の中が混乱状態になつている、そういうような家庭から来た労働者委外事故が多いというような事実について川崎の或る工場統計を作つているのでございますが、こういうようなことを考えましても、もう少し労働省あたりでも労働者家庭に積極的に家族計画思想というものを普及させるということが災害を防止するためにも非常にいいことだと私は考えているのでございますが、労働大臣は如何でございましようか。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 家族計画が或る最も妥当な点において調整されておつて、そうしてその収入の面も非常に合理的に使われている家庭というものはやはり非常に円満であるということは私も想像いたしております。そうでなくてはならんし、そうであろうと思つておる次第でございます。只今の御意見につきましては私どもといたしましても大いに共鳴する点が多いのでございまして、やはりこれは労働問題の全体は人口問題と深い関連を持つものでございますし、そういう点につきましてやはり労働行政一つの重要な面といたしまして、労働者の人口問題に対する理解を深めるという方向も取上げねばならん、こう考えております。
  13. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 次に紡績工場の問題でございますが、私は一昨年英国に参りましたときに、紡績工場関係でいろいろな方面の方にお目にかかりましたときに、日本紡績工場の問題、殊に女工さんの問題が非常に高い関心を以て皆から見られておるということを知つたのでございますが、この紡績日本における重要な輸出産業であるということを考えて参りますると、この紡績で働いている女工さんのかたがた労働条件というようなものが、飽くまでも日本労働基準法によつてきめられた線を崩さないということは非常に重要なことだと思うのでございます。これが若し崩されておらないというようなときには、将来いろいろな市場獲得の争いが起つたときにも、日本女工さんはこういうふうに立派な基準によつて働いているというようなことが言われれば、ダンピングをしているというような汚名を着せられる理由はないと思いますけれども、ややもすれば最近になりまして、世間一般の逆コースに便乗して、或る経営者なんかは基準法を守らないというような傾向もできているというようなことをたくさん聞いているのでございますが、将来の海外輸出産業という面から特にこの重要性ということについて、労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。我が国におきまする基準法を如何にすべきかということについていろいろな批判もあるようございますが、私どもといたしましては、現行基準法が正確に守られるということを期待いたしまして、基準監督署におきまして、全国それぞれの場所においての基準監督署管内工場が如何に基準法を遵法しているかどうかということにつきまして非常に熱心に監督をさしております。お話のようにやはり日本の工業を支える賃金というものが労働基準法の枠内において正確になされておるものである、従つてソーシャル・ダンピングというようなことは将来問題とならないということを実証するためにも、このことは必要であると考えております。
  15. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 次に、これも今日の時代の一つの影響を現わしている問題だと思いますが、駐留軍関係の職場及び特需工場におきまして、労働法規が無規されているというようなことが頻繁にこの節起つている問題でございますが、こういうようなところで労働法規が無規されているというようなことは、ややもすればもつと今のいわゆる逆コース的な風潮を助長させるというようなことにもなりますので、こういう点は特に労働省において御注意なさつていらつしやる点だと思いますが、なお労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げます。駐留軍関係労務者或いは特需工場に働く労務者につきまして、只今指摘のようなことを言う方もあるのでありまするけれども、御承知のように行政協定十二条によりまして、国内労働三法はこれらの場合厳格に適用さるべきことに約束がされておるのでございますから、私どもといたしましては、この三法が守られていない場合につきましては、十分責任を以てこれを守るように、守られていない場合はそれに対する戒告を与える、又将来の問題に対しましては十分その点を注意して参る、こう考えております。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 関連して。労働大臣に昨日も一部これはお聞きしたのでございまして、なおもう少し基本的に聞きたいと思つてつた点なんですが、例えば駐留軍労務者労働三法が守られない、こういう基本的な問題ですね、これをどういうふうにお考えになつているか。つまり私の聞きたいところは、行政協定の十二条では労働関係法規を尊重する、こういうことが明確に書かれておる。従つて私は一番日本政府として反省しなきやならないのは、日本政府自身労働者基本権というものを本当に尊重しておるかどうか。アメリカ政府はこれを見ておるのじやないかと思うのです。日本政府が大いにそれを尊重しておるのなら、それを尊重する。ところが日本政府自身がどうも近頃公共福祉だとかいろいろなことを言つて余り労働者基本権を尊重しないような傾向がある。だからこんな程度はやつてもいいだろうということで堂々と昨日お尋ねしたような労務基本契約、明らかにこれは日本労働関係法規を無視しておる、こういうものが私は出て来るのだと思うのでして、これは非常に大事な点だと思う。お前のところは確つかり法律を守つておらんで、軍のほうへだけ言つて来たつて駄目ではないか、こう逆襲された場合に、一体労働大臣どういう立場で臨むことができますか。私は問題はどうもそういうところにあると思いますがね、どうでしよう。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。行政協定の第十二条の五項に、合意による場合を除くほか日本国内法に従うこと、こういうふうに書いてあると思いますが、合意によるということで只今示し労務基本契約の問題が問題になつておるのであります。併し私の考え方は昨日も申上げたように、あのアメリカ軍から示されました問題につきましては十分考え直してもらおう、こういう立場でございまして、改めて八月一日という問題も将来に延期して、その間に十分折衝をさせたい、こういう考え調達庁にそのことを強く要請しておる次第でございます。私どもとしましては、国内労働法の適用というものは当然に駐留軍労務者に対しても適用さるべきものであるのだから、それに背馳するような問題については妥協し得ないという考え方を持つている次第でございます。
  19. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問は簡単に願います。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 これはちよつと重大なことを今労働大臣は言われました。この行政協定十二条に合意による例外というものを認めておる、労務基本契約をその例外の場合として考えておられるようにちよつと今受取れたのですが、果してそういうことでしようか。
  21. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういう意味ではないのでありまして、合意による場合はこういう、合意によらざる場合はこうと書いてあるから、合意によるということで、こういうふうにしてくれんかということで先方からの申入があつたものである、こう考えておるところが合意はできん、こう言うのであります。
  22. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君、簡単に願います。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 これは併し簡単にと言いますけれども、丁度そういう予定しない問題が出て来ておる、私は合意によるというようなことは例外現象ですからね。若し合意による労務基本契約というようなものがたとえアメリカ側であるにしろ取上げられ、そうして労働大臣のほうも幾らかそれに応じておられる。
  24. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや全然。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 全然応じておりませんか。併し今ちよつとあなたそれを言われたでしよう。そういう考えがあつたら大変だと思う。そんな例外的な合意で、この原則例外を無視するような大きな合意の取極がなされたら大変ですから、これは一つ十分御注意願いたいと思います。  それであなたについでに、非常に急がしいからお聞きする機会がないと思うのでもう一つだけお伺いしておきますが、例えば駐留軍労務者の場合には恐らく軍のほうは軍の管理権、こういうようなことを前面に絶えず出しておると私は私える。これはあなたが絶えず公共福祉ということを労働基本権に対する問題に対立させるのとよくこれは似通つている。そこで、私どもこの務労基本契約の問題をとり上げる場合においても、日本労働大臣が一体公共福祉ということをどのように考えておるのか、これは絶えず本会においても私はあなたの説明を聞いておりますが、全くこれは抽象的であつて、何ら私どもは具体的なものを与えられておると思つておらない。この機会にあなたのそれに対する考え方ちよつと説明してもらいたい。
  26. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 前段の労務基本契約に対しての問題は、私ども労働省といたしましては、この問題について知らされたのは最近なんであります。併し知らされた以上は、これは合意とは到底考えられない、合意などはできんということを強く申しまして、これはそういう御懸念のないような新協約を作るように努力をせいということを調達庁に強く要請しております。この問題は一つ亀田さんにおいても御協力を願いたいと、こう思つております。  それからなお公共福祉の問題でございます。これは非常に一般的、抽象的に使われる言葉でありますので、非常に一言にして言えと言われますとむずかしいのでございますが、例えば民法に言いまするような条理とか、或いは信義、誠実の原則とか、そういうような問題と似通つていると思いますけれども、要するに一部分に対する全般利益、そうしたものの均衡を考えて、国民全般のために、全般の幸福を招来するために必要とせられると認識されるものと、こう考えております。
  27. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君この程度にとどめて下さい、関連質問ですから。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと要求しておきます。今労働大臣が言われたのは、その言葉の解釈のしようによつては、これは実に危険性を含んでおる。これは扱い方によつてはナチスの哲学と同じことになるかも知れない。或いは日本の旧憲法時代の考え方と同じようになるかも知れない。私はそういうふうな抽象的な規定があらうかと思いまして、ずつと前から一ぺん労働大臣に聞いて見たいと思つて具体的な実は質問を持つておる。こういう場合にはどうお考えになるか、そうしておくと実ははつきりすると思つてつておるのですが、委員長からの御注意もありますので、この程度にいたしますが、これは法務大臣が今刑事訴訟法の改正で、やはり同じようなことをしよつちう言われておるのです。それでこの際にやはり公共福祉というような憲法上の問題、これを明確にする必要があろうかと私絶えず考えているのです。完全に明確にならなくても或る程度の限界、枠ということ、これが非常に大切だと思うのです。各大臣なりそのときどきの政府考え方で異動があつてはならない。そういう意味で一つ労働大臣がお考えになつている公共福祉をもう少し何といいますか、丁寧に文章にしたものを私どもにお示し願いたいと思うのですが、それは差支ないでしよう。そのときの言葉のやりとりでは、あなた自身も何か抽象的で誤解を与えてもいけない。簡単でよろしい。明日でも明後日でもよろしい。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それでは法務大臣のほうから法律上の解釈として文章にしたものを差上げます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 私考えているのは労働大臣が、絶えずこの言葉を今度の国会になつてからずつとお使いになつているのですから、それで労働大臣にお願いしたいのです。法務大臣のやつは刑事訴訟法に関連して私は明日、明後日あたり更に私はよく聞く予定をいたしております。
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) よろしうございます。
  32. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今の亀田君の、質問に関連して、労働大臣に簡単に……。
  33. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問は極く簡略に願いたいのです。殊に持ち時間をきめている場合の関連質問は極度に短縮して頂きたいのです。
  34. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 労働大臣にお伺いしますが、只今基本労務契約の問題につきまして、これを延期するというお話がありました。MSAの問題やいろいろの関係から急速に基本的な労務契約を今締結することがいいか悪いかということは重大な問題でありますので、慎重にこれを延期して考慮せられるということは賛成でございます。そこで一言お伺いいたしたいことは、大体において今日政府と駐留軍の労務者の間に、或いは軍との間に労務契約というものができている。ところが場合によりますと、軍の一方的な見解で、この従来承認せられておりました労務契約というものを変更せられるということがあるようであります。現状におきまして軍の意向によつて、そういうふうに従来承認せられておつたという、そういう労務契約が変更せられるということがあり得るものでございましようか。
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 労務基本契約がございまして、その場合々々で軍の意向によつてその基本契約に副わないものができるかという御質問でございますが、それはやはり基本契約の線に副わなければできない、こう考えております。
  36. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 軍の意向に何して、従来承認せられておりました労務契約が変更せられて、或いは賃金の低下なり或いは労働時間の関係なりで重大な変更がないものと了解して差支えございませんか。
  37. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはむずかしい問題でございますけれども、やはり駐留軍当局といたしまして、日本と、日米間の友好関係というものが非常に重要なものであるということを認識しておると考えられまするから、やはり非常にこちらが不満であるということについて一方的にその意思を押し付けるということは、結局目的にも副わないというふうに考えるのでございまするから、私は一方的にそうしたものを押し付けられることはあるまいと、非常に向うが希望はしても、事実問題としてそれはできないのではないか、こういうように考えております。
  38. 青木一男

    委員長青木一男君) 松澤君、簡単に願います。
  39. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 例えば、先般神戸で起きました労務契約の変更というような問題は、これは法律的に申しまして根拠のないものでございましようか。将来もそういう事態が発生することを恐れて承わりたいと思うのでありますが、一方的に労務時間の変更を申入れまして、それによる実収が三千円から四千円くらい減少するという通告を一方的に出しまして、それで非常に紛議を起したのでございますが、これは幸いに外務省の関係によつて妥結を見たのであります。併し今後そういう事態が発生するということを心配するので、労働大臣としてはつきりしたお考えを承わりたいと考えているのであります。
  40. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。契約でございますから、やはり双方の合意がなければそうしたことはできないと考えております。で、今お示しのような事態は私どもとして将来起きないように、そうした関係方面とも十分連絡はとりたいと思つております。
  41. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 委員長一つだけ。若し将来軍が従来承認せられておりましたような労務務約を一方的に変更することを通告するというような場合におきましては、これは如何なる方法によつて事態を解決するかの方法について承わりたい。
  42. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 従来あります契約を一方的に破棄して、自分の思うことをさせたいためには、恐らく直接に雇用するということ以外はないだろうと思います。併しそうしたことが如何に双方にとつて不利であるかということについては、十分に先方に理解頂くと考えております。こうした場合は或いは外交折衝により、或いは私どもも直接当りまして、そういうようなことはないようにいたす考えであります。
  43. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は今度は法務大臣に伺いたいと思いますが、先だつてたしか中田委員長が総理大臣に対しまして、日本においてどうか総理大臣が、この国の道義の頽廃、政治の貧困というようなことがそこに暴露されて、国民が政府というものに対して全く信頼を失つてしまう、こういうようなことから蒋介石政権が憐れな末路を見た、吉田総理はそういう轍を蹈まないようにして頂きたいというようなお言葉がございましたときに、総理大臣は、自分は断じて蒋介石のああいう跡を蹈まないという強い決意をお述べになつたのでございます。それで私どもは特に今日日本の社会を非常に腐敗させているものは、このいわゆる売春業というような、こういう業ならざる業が公けに認められているということが如何に社会を腐敗させておるか、ここに政治の貧困ということが暴露されているかということを痛感いたすのでございますが、私ども婦人といたしまして、たくさんの婦人団体が熱烈にこの売春婦の問題の解決に当りたいということを要望いたしております。そうしてこの解決はどうか売春というものはこれは悪である、こういうようなことは日本の国家としてこれは認められないという厳然たる意思を表明して頂きたい、こういうことを申しておるのでございます。これに対しまして参議院の法務委員会でも、法務大臣はいろいろと御意見をお述べになつていらつしやると思うのですが、まだどうもはつきりいたしませんで、どうしても、これは売春というものは認めないという国家群の仲間に日本も入らなければならない時期が来たのだと思うのですが、この点についての大臣の御所見を承わりたいと思うのです。
  44. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。加藤委員お話は、根本の問題は私も同感でございます。御承知のように今売春問題の取締法規としましては、政会がありましたり、児童福祉法がありましたり、職業安定法がありましたりしますが、主に各地方々々で取締条例でやつておるのでありまして、これは統一的な売春対策がないという意味からいうと、応急修繕みたいなものでお茶を濁しておると申しても過言ではないのじやないか。ところが修繕というのは、せめて弊害が最小限度に殖えないことが、修繕なんでありますが、この頃はますます多いのじやないか。年頃の娘さんがいい洋服を着たいためにそういう方面へ行くというようなことも、どうも相当著しくなつて来ているのじやないかと思います。昭和二十一年に各省の次官会議で、売春問題を取扱いまして以来、卒直に申上げまして、それ以来の空気というものは、必要な悪だ、できるだけ弊害を刈り取つて行くが、大体根本の思想からいうと黙認主義に近いというのが、正直な申上げ方じやないかと思います。ところが御承知のように基地問題なんかと絡みまして、黙認主義に限界が来たのじやないか、こう思います。現在取締の手段に現われております黙認思想というものを再検討したい、こう考えております。私のほうはこれに対する法律を受持つておる仕事でございますが、これは罰するだけでは、あとやめた人がどうなるかという問題がありまして、厚生省、労働省の、殊に婦人少年局との関係もございますので、ところが今までは罰するだけでは埒があかないからということがとかくこの問題を延ばす一つの理由にされていたような傾向も……、個々の関係はそうでないでしようが、結果はそうなりやすい。私は総合計画を立てまして、取締法規を作る法務省としてはこういうふうにやつて行くけれども、売春婦というような仕事をやめた人はどうやつて引取つてもらえるかというふうに、並行して関係各省ともお話を進めて見たいと思つております。今日ここにおいでになつておられます労働省の藤田局長にも、私は最近においてこの問題で一遍、一遍じやありません、しばしばお話をし合いたいということを言つてあるのでありまして、大変長い間放擲されてある問題でございますが、手を著けると各省に跨る仕事だということで、まあとかく少しなおざりにしていたきらいがあるのではないかとみずから卒直に認めるわけでございます。  大変くどいように申上げましたが、私は最近の機会において、黙任主義の再検討ということを始めたいと思つております。併し遅いというお叱りがあればこれは甘受いたします。
  45. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 犬養法務大臣は非常に教養のお高い大臣でいらつしやいまして、殊にこういうような問題には非常に御理解がおありになるということを私どもも多く御期待を申上げておるのでございます。それで只今いろいろ御答弁を頂いたのでございますが、どうもこの今までの取締当局は、この売春というものが社会にとつて必要な悪であるというその建前から、今までこれをお取扱になつていらつしやつたところに非常に不徹底な点があつたということをお認めになつていらつしやるのでございますから、今後これは必要な悪というそういう考え方ではなくて、これは国家として絶対に売春というものを認めないという、その国家としての意思表示というものをなさる御覚悟がおありになるかどうか、その点を承わりたいと思います。
  46. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。この問題は少しも……、そういう問題を改めて課題として取上げるつもりでおります。法務省としましては、卒直に申上げまして、法律を作つて行われないのは困るのでありまして、作る以上は行われるという建前でやるのが法律家の、法務省の方針なのでありまして、併し従来はそういうことでとかくこの解決が延びていたのでありますから、私は売春というものを悪だと国家が真正面から言つた場合、職業転換のこと、職業補導のこと、或いは家庭の事情その他で、売春行為をしようかな、どうかなと思うときに、職業なんかで親切に補導してくれる婦人少女ホームというものがあれば、そこへとにかく行つて相談してみようというような入口がある……、いろいろ附随した問題があると思います。私は売春を真向から悪だとして作る法律は、極く卒直に申上げますが、他の法律よりはなかなかきまるまでが起伏が多いと思うのであります。私の予感でありますが……。その間に国の方針としては、その問題を解決したときにすぐ職業補導とかいう問題が起つたときに、そつちができていないという理由で、仮りそういう方針を国家がきめてもうやむやにされないように、先ず周囲にも必要な連絡の施設を別に並行して同時に進めたい、こういう考えでおるのでございます。
  47. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連質問……。只今つておりますと、法務大臣は売春を認めておいでになるような感じを与える。私非常に遺憾なんです。売春を禁じたとき仕事がないと困るから、仕事ができてから売春を取締る、これは私納得できません。食えないから泥棒する、併しそのときに仕事がないから泥棒を認めておるということにも言えるのではないでございましようか。私は世界各国がこの売春を禁止しているにもかかわらず、日本がこういう実情であるからこそ、日本は淫売の国だ、こういうことを世界各国に吹聴されておるのではございませんか。私は方法がないから困るというけれども、厚生省のほうにはやはり特殊婦人の指導に関する施設はあるはずです。又法律的にもいろいろこれを保護しようとすればあるはずです。これを適用しないからこういうような問題が起きているのだと私は思う。従いまして私は法務大臣は売春をお認めになつておるのかどうか。この莫大なる売春を、職業の面が与えられなければ私は、これを放置しておられるつもりかどうかということについて所信をお伺いいたしたいと思います。
  48. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。多分私の言い方が悪いのじやないだろうかと思います。山崎さんに、私が申上げているニュアンスが、少し距離が遠いので届かないと思いますが、そういう気持はありません。私はしばしば婦人団体にもお目にかかつておるのであります。このほうで調べて下さればよろしいのでありますが、そういうのではないのであります。  大体昭和二十一年に各省次官会議がありまして以来今日までは、どつちかというと必要な悪だから、問題をすぐに解決しようというといろいろ面倒だから、まあ忙しい当座の仕事が済んでからという気分がなきにしもあらずであつたのでございます。ところが併し最近の感想としましては、どうもだんだん戦争前はそういう職業に入らないで済んだのじやないかと思われるような風体の娘までがそういうようになつて、外国人と一緒に歩いているのを考えまして、今申上げましたようにここが肝腎なのでありますが、黙認主義の限界が来たのじやないか、この言葉で私の気持がおわかりになるのじやないかと思います。  この限界の結論を明日つけられるかというと、それには相当の所要時間が要する。現にここにおられます藤田局長にお尋ね下さつても結構であります。まだまだ附随した施設は足らないのであります。そのことで藤田さんと私は最近お打合せをしたいと思つておるのであります。ですから総合的な計画を立てて、僕のほうでは法律を作る法律担当の役所であるから、こういうふうにやつて行きたいが、仮にこうなつた場合はこういう施設が要るが、あなたのほうはその前に予算を大蔵省に要求して取つて、先ず店開きしてもらいたい、そういう総合計画を立てよう、こういうわけです。どうかその点は御了承願いたいと思います。
  49. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問ですから簡単に……。
  50. 藤原道子

    ○藤原道子君 簡単に……。どうも黙認主義の限界というのが私にはわからないのです。売春は私どもは認めてはいないはずです。終戦後すべてそういうものは禁止されているわけです。ところがいつの間にやら黙認、こういうことを言われるのですが、私は黙認されているという理由がわからないのです。従いまして藤田さんとも相談してと言われますけれども政府全体が売春に対する考え方に、政府全体の考え方の上にあると思う。社会の必要悪であるかどうか。今更必要悪だなんていうことを伺いますことは、私は非常に残念ですが、いま一度私は改めて質問するのでございますが、関連質問でございますから非常に残念でございますが、犬養さんのそれに対するはつきりした御見解をお伺いしたい。施設はあるけれども施設が足らないとおつしやるが、政府予算を出したらいいじやないですか、これに対して大蔵大臣はお出しになる意思がさるかどうかということを併せてお伺いいたします。
  51. 犬養健

    国務大臣犬養健君) どうもお話が食い違つて甚だ残念でございます。私は今までの黙認主義、必要悪だと言つて済まされて来たことに対する批判を加藤さんに述べて来ておるのであります。どうもいたし方ありませんから是認しておりますと、こういう答弁とは雲泥の差があると思います。
  52. 藤原道子

    ○藤原道子君 施設ができてからとおつしやるのです。大蔵大臣から……。
  53. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) よく具体案ができてから財政上のことで考えたいと思います。
  54. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その問題につきましては、今法務大臣がおつしやいますように労働省関係、厚生省関係に跨つておりますので、一つの例えば売春等処罰法案というのがこの前問題になつておりましたが、こういう法案を作りますにも、三つの省に跨つているというようなことでとかくだんだんと時期的に遅れるという傾向があることは誠に残念なことだと思いますけれども、もういつまでもこれをそうそう引延ばしておるということは、日本の国家の体面としてもこれは許されないことでございますので、今度はどうしても早い時期にこれはまとめ上げて頂かなければならないと思います。  そこで今法務大臣もおつしやいましたが、この受入態勢ということはどうしても必要でございます。その受入態勢も今までのようなただこういうような道を踏んだ女性に対して精神的な訓戒を施して、一時ちよつと何とかホームというような所へ入れておくというような、そういう生やさしいことでこの問題が解決できるようなことでないことはもうよくお互いに承知いたしておりますことなので、これは道義的にも根本的な、今までのことが悪いというよりは新しい一つの道義というものをこういう女性たちに確つかりと把握させるような積極面がここに出て来なければならないと思います。それはただお説教するというようなことよりも、もつと正しい職業で以て喜んで働きながら而も相当程度の生活ができるというようなところまでこれは導いて行かなければならないので、それには今までのようないわゆるホームというような施設ではなくて、もつと更生面で大きな施設が必要となつて来ると思います。今まで問題になつておりますのは希望の町というようなものの構想が一つ出ておりますが、この構想なんかも大変にいい構想だと思いますし、又婦人団体のほうからは純潔金庫というようなものを作つて貸出しをしてもらいたいというような御希望もございますので、これはそれぞれの御専門のかたがたに大いに更に案を練つて頂きたい。是非これを早いところ成立さして頂きたいのでございますが、特に大蔵大臣もここにおいでになりますので、これはもう日本の国家として重大なことでございまして、今までどれだけ日本がこの問題のために名誉を失墜しているかわからないことでございます。この問題が外国で問題になりましたときに、アメリカ当局がどういう答弁をしていらつしやるかというと、日本当局は売春というようなことに対して何ら取締らない国なんだから仕方がないというようなことを向うで言つていらつしやる。こういうようなことは実にあるまじきことだと思いますので、この更生施設の問題、希望の町の構想か或いは純潔金庫の構想か、どういう構想が出るか知れませんけれど、これは相当多額のお金というものの裏付がなければできない仕事だと思いますので、その点を大蔵大臣におきましても、とくに肚に入れてこの次の予算のときくらいには是非こういうようなものを組んで頂きたいと思いますが、もう一度どうぞ御決意のほどをここで伺いたいと思います。
  55. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お話の次第はよくわかります。私どもも具体案を見た上で、国の財政の許す範囲で考えてみたいと存じております。
  56. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 売春の問題は先ほど法務大臣からいろいろお話がございましたが、問題は売笑婦そのものにも問題があるのでしようけれども、むしろ現在の問題の核点は中間搾取者と申しますか、媒介者と申しますか、そういうものに相当法務関係において手ぬるいということが相当の原因をしているのじやないかと思いますが、その点の取締の関係をお聞かせ願いたい。
  57. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これもお話の通りでありまして、そういう種類の婦人を利用するボスといいますか、ブローカーというものが社会の害毒の中心になつていると思うのであります。問題はそういうボスを取締つて、なくしてしまつた場合女の人が散つて行く。それをしばしば加藤さんが言われるように、すぐ受取つて受入態勢ができている施設で以て職業を紹介する、そういう問題も必要だと思うのであります。山崎さんは私の考えに全然御理解がないのでありまして、この際加藤さんに付加えて申上げたいと思うのでありますが、欧米各国でも何といいますか、極く控え目な黙認主義をとつているところはあります。併しそれはキリスト教の抑制とか、社会全体の売春というものに対する認識の標準の高いところでありまして、日本の現状では必要悪であるとかいうような言葉がはやりますと、この辺まではいいという範囲が非常に拡がるのでありまして、その意味で私は黙認主義というものを今改めて振返り直す時期が来たのではないか、こういうことを言つておるのであります。黙認主義は仕方がないとか、社会悪だから仕方がないということは一言半句も私は申しておらないのであります。どうぞその点御了承願いたいと思います。
  58. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この問題については法務総裁は確かに新しい段階に一歩前進なされる御決意をお示し下さいましたものと私は了解いたしまして、私の受持時間も超過いたしましたので、質問を終ります。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は質問に入る前に委員長に質しておかなければならないことが三つある。その一つ委員長は理事打合せ会におきまして、この三派の修正案について供出奨励金以外の修正の内容について三派において申合せみたいなようなものがあつたならば、これを出してもらいたいということを委員長を通じて通告してもらうということになつておりました。未だに委員長から私が質問する前にその御報告がざごいません。これはそういう折衝をされたかどうかということが一つ。もう一つは去る二十一日に私は資料を要求いたしたのでありますが、造船の建造融資利子補給につきまして、昨日も申上げましたが、我々が要求した資料と殆んど問題にならんような資料を出して来ております。従つて私は非常にくどいようですが、委員長に昨日も私が二十一日に運輸省にちやんと項目を示して、これだけの資料がないと、私がこの前運輸大臣についていろいろな政党献金その他いろいろスキャンダルがあると思われますが、それを具体的に計数的に検討する資料として私は要求しておつた。その出されたその資料は主要海運会社の資本金の変遷、それから海運業資本構成比率、設備資金借入返済額、而も代表九社だけであります。借入れているのは二十五社だと言われている。而も我々に出して来ている資料は海運運行会社のオペレーターについての資料オペレーター以外のいわゆる船を動かしていない単に地主的存在のような船主業者に対して貸すということについていろいろ疑惑が起つているのであります。そういうものの資料がない。ここが重要なんだ。又主要船会社年度別新造船建造資金借入状況についても九社分しか出して来ていない。更に主要船会社年度別収支状況も九社だけしか出しておらない。これだけしか資料を出しておりません。私が要求いたしましたのは各社について、即ち造船融資の対象となる各社についてその融資状況、これが昭和二十五年以後どういうふうに会社が融資を受けて来たか、第二はその返還の状況、会社別利子返還の状況、その三は収支状況、配当をも含めてのいわゆる収支状況、更には又一番問題になりましたところの開発銀行及び市中銀行からの利子引下げによつてどの程度船会社というものは負担が軽減されているのか、少くとも海運政策上、それだけによつて果して海運政策にプラスになるのかならないのか、そういうことを検討する資料としても、又最初七分五厘を五分程度に引下げる案がなぜ三分五厘と一挙に下げたか、こういうことについて計数を出してもらわなければ、これはただスキャンダルがあるとかないとか水掛論に終りますので、私は計数的に質問するつもりで今日ここに用意して参つたのであります。更に又予定表というのがあります。船会社が融資を受けるときに予定表を出す、その予定表がその後予定通りになつておらない。従つて予定表と実情がどうであるかという検討をしなければ質問ができない。十三億を百六十七億と十倍余にも利子補給を一挙に殖やしたこの根拠を国会としては十分にこれを明確にしなければ国民に対して相済まない。然るにかかわらずこの資料が出ておらない。これで一体質問ができるでしようか。昨日要求しましたが未だに出して来ておりません。二十一日に私は要求したのです。昨日は無理でありましよう。約一週間、なぜ我々にこの資料の提出を拒むのか。これでは我々のまじめなる審議を妨害すると言われてもいたしかたない。こんな不備な資料では私どもは質問することができないではありませんか。  更に又第三に伺いたいことは、昨日私はラジオで聞いたが会期延長の議があるやに聞いております。でこの予算審議の時日が非常に少い。一週間くらい会期延長ときまれば、政府は一週間くらいの日割の暫定予算を組む用意があるかどうか。このことは委員長、理事打合会においても委員長に私は申入れた。一カ月はこれは大変であろう、早く予算は成立させなければいかんけれども予算審議を十分にするために、二日とか三日或いは四日くらいの日割予算を組んで審議を十分するということは、これは国民の負託に応えることであつて日曜も我々はやる、そうしてなお不十分であるから三日か四日の日割予算を組むということは、これは何ら私は重大な影響がないから、政府のほうに、そういう場合には日割予算を組む用意があるかどうかということを、委員長から私は政府に質してもらいたい。万一これが通過しなければ大変だから、その用意ぐらいは政府は持つべきであるということを委員長に申出ましたが、委員長はまあまあそういうことは成るべくしないようにということでしたが、新たな事態が起つて会期延長の議が起つておるようでありますが、この三つの点について委員長から明確に答弁して頂きたい。それがはつきりしませんと……。この第三の問題については、別途又扱つて頂いて結構です。私はこれからすぐ質問に入ろうと思うのですが、入れないのです、その資料がございませんので。委員長はどういうふうにこれを取扱つて下さるか、この点をきめてからでなければ、私は質問に入れないと思うのです。委員長に質問いたします。
  60. 青木一男

    委員長青木一男君) お答えいたします。  第一の協定書というお話でありましたが、先日私が伺いましたら、そういうものはないと私は伺いました。これをお伝えいたしておきます。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が申上げたのは、申合せ書みたいなもの、協定というきちんとした判こを押したものでなく、とにかく我々は審議する場合に参考になり得るような、米の奨励金でも審議をやつて漸く事態がはつきりして来たのです。ところがこのほかにまだいろいろ事態のはつきりしないことがあるのではないか。我々は表面はこういうふうに受取つておるが、実は裏面においてこういう協定になつておるというのでは困るから、審議の過程において又出て来ると思う。そこであらかじめ私は全体に亘つて何か了解事項というものがなければならないはずだと思う。そういうものがあつたら別にいい悪いというよりはつきり出して頂いて、こういう了解の下に修正案を作つたのだ。修正案の意味がわからない、こんなばかな話はないと思います。そうしてこういう了解の下にできた修正案で、政府はこれについて同意しておるのだ、そうして執行の責任に当るということがわかれば、極めて国民に対して明朗ではないか。ですから私はそういう手続をとつてくれということを委員長に申上げたのです。そうしたら、今何か協定というようなはつきりしたもので何か調印でもきちんとしたというのでなく、一応そういう了解事項或いは申合せ事項、そういうものがなければ予算審議をする場合に答弁されるほうも困るでしよう。そういうものは私はおありになるはずだと思う。新聞にも一部出ておつたのですから、私はただないでは済まされない、もう一度念を押して頂きたい。
  62. 青木一男

    委員長青木一男君) 或いはそういう協定書という聞き方をいたしましたから、多少範囲が不明確であつたかも知れませんからもう一度今の御趣旨によつて尋ねます。  第二の海運会社の経理に関する資料でありますが、先ほど事情を申しておきましたから、海運局長からこの席で簡単にどうしてそれが出なかつたかということを釈明させようと思いますが、如何ですか。よろしうございますか。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長から釈明を求められて結構であります。併し私があれほど申上げてあるのに。ですからこの前よくわからんと思いまして、箇条書にしてちやんと書いて上げた。そうしたらそれとおよそ違う資本構成の、資本金の変遷とか、こういうものを求めておるのじやない。愚弄するものじやないかと思います。わざわざ間違えるといけないから書いて上げた。こういうものですよと念を押した、各社別ですよと。そうしないと、予算審議が延びて困るからそこを念を押しておいた。今釈明と言つてもどういう釈明をされるか、一応釈明をお聞きいたします。
  64. 青木一男

    委員長青木一男君) 海運局長からその資料が出なかつた事情を御説明して下さい。
  65. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) 御要求の資料につきまして私どもの事情を釈明いたします。  木村先生から御要求の資料の項目を私ども受取りました。私どもは大体船会社の融資状況の概況をお知りになりたい、かように考えまして、主要会社の分をとつたのであります。御要求の二十五年度以降の各社の融資額、各社の収支状況、元利の償還状況、更に各社別による今度の金利措置の負担軽減、こういうものにつきまして主要会社についての調査をいたしまして一部お届けいたしたのでありますが、先ほど御説明のありましたのは、それに附帯する参考資料として、それ以外のものを附加えたわけであります。ところが昨日先生からの御要求で融資を受けておる各社全部、こういう御要望でございました。ところが融資を受けております会社は五十数社に上るのであります。これを速急に作るということは相当の時日を要します。殊に先生の御要求の中に各新造の場合に申込む融資申込書というのですか、これを各社ごとに出せ、こういうことでございますが、これは今まで大体百七十七隻くらい新造いたしました。その場合の融資申込書、その中に採算書がございますが、これを一々まとめておりますと非常に日数を要するわけであります。  それから私ども立場といたしまして、現在船会社に対する経理監督権というものはないのであります。ただ随時そのときに必要な報告を、法的権限以外で求めておりますという状況でございまして、今申しました五十数社の会社の経理状況を正確に把握できるような資料を出しまするには、相当の日数を要することで、実は昨日先生のお叱りを受けまして、果して五十数社をどういうように調べて行くかということを、私ども今よりより協議中のような次第であります。只今どもの手許で用意しておりまするのは、主要なる数社を見て頂きますれば、大体の傾向を察知して預けるのじやないか、かように私ども了解いたす次第であります。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の御説明で明らかなように、私は政府が最初十三億の利子補給で、政府はしばしば政府原案が一番正しかつたと言うでしよう。それが一倍、二倍くらいならいいのです。十何倍にもなつておる。これは会計検査院長にもあとで伺いたいのですが、質問のときに。十三億が百六十七億になつておるのです。一挙に修正において。ですからここに疑惑が起らざるを得ないではありませんか。そこでこれは何かスキャンダルがあつたのではないか。私はそう思うけれどもそれはそんな単なる浮説ではいけないから、計数的に明らかにしておかなければならないと思う。若し計数的に明らかにしておかなかつたならば私は謝罪しなければなりません。そういう不名誉なことを私が言つたことについては責任があります。謝罪をしなければなりません。併し私は計数的に尽す場合には、これは国家予算としても重要であります。十三億が百六十七億になぜなつたかというその根拠が明確にされないで、国会がこの予算を通すことはできません。従つてそれは何社であろうと、今五十何社のうち代表九社と言われましたが、一番問題になるのはここではないのです。いわゆる運航業者、オペレーターであつて、そこにも多少私は疑惑があります。いろいろ解釈のしようはあるのですけれども、むしろ船を運航していない、たくさん融資の割当を受けて、それによつて稼いでいる、景気のいいときにはうんと儲けておる、四割も配当した会社もあるのです。失礼ながら厚生大臣の山縣さんの関係しておられる会社は四割配当であつた。そうして不景気になつて利子補給をしている。これが厚生大臣、(笑声)こういうようなことでは如何に道義の高揚を説いても私はいけないと思う。従つてこれを明らかにするためには少くとも私が要求しましたことは決して無理ではない。どうして運輸省はいつも割当の融資状況というものが簡単にわからないのかと思う。調査部というものはないのでありますか。何を運輸省はやつておるのか。それで融資を受けるときには予定表というのが来て、いわゆる原価計算に基いてこれならば国家に損失を与えないだろうと思つて、そこで融資を与えるのであります。それが正しかつたか正しくなかつたかは、これは政府の責任になるのであります。そういう予定表を出して頂けば予定表と現実とがどうして違つたか。又海運政策がよかつたか悪かつたかがここに又具体的な見当が出て来るのであります。こういう仕事をしなければ、抽象論では少くとも意味がないのではないか。又こういうことによつて、具体的な日本の海運政策のあり方、いわゆる盲点はどこにあるのか、ネックはどこにあるのか。そうして私は正しい海運政策もここから出て来ると思う。ただ徒らに十三億を百六十七億にふやして、これで本当に日本の海運政策がやつて行けるかどうか、私は疑問に思う。これは海運政策としては石井運輸大臣にお尋ねしたいのですが、私はそういう大所高所から論じたい。それには基礎から固めて行かなくちやならないのです。私は人の弱点やスキャンダル、こういうことをあばくのは嫌いです。元来が嫌いでございます。但しそういうことを正しくやつて行かなければ本当のことはわからないのです。今の海運局長の御説明では私は了承できません。国費を使つて運輸省は一体何をやつているのです。今まで私が要求しました資料は決して無理じやありません。常時これだけの調査をやつていなければならないのです。それを今になつて各社に問合せてこういうものを出させる、そんな不見識なことはありません。委員長注意して下さい。私はこれが出て来なければますます疑惑が深まるばかりでありますこういうものをはつきり出してくれることによつて、木村が質問しているスキャンダル、その質問はそうじやない、木村の邪推である、計数的にそうでない。これが明らかになつたということになる、そういう責任上からも私は出すべきだと思う。従つて私が要求しました資料が、常識上誰がいつてもどうしても困難なことを無理に私が求めるような点があるならば、私はその部分については撤回してもよろしうございます。併し私は無理を求めるのじやなくて、この予算の審議に誰が見ても常識上どうしても必要であるというものについては資料を出して頂きませんと、私はこの質疑を始めることはできないのであります。委員長重ねてこの点について取扱を一つ示し願いたいと思います。
  67. 青木一男

    委員長青木一男君) 今木村委員から無理を求めるものではないというお話でありましたから、ではどの程度が実際客観的に無理か、どの程度ができそうかということを海運局長お話の上でできる限りの資料を運輸省から出して頂くことを委員長も希望いたします。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはいいんですが、いつも問題はこういうことで事態が明らかになつて行かないのです。できる限りとかそういうことであいまいになつてしまうのです。ですから私はこれはどうしてもあいまいにできません。それで今客観的にいつて物理的に作業が困難だということは申訳にならないのです。これは申訳になりません。不断やつていなければならないのです。(「一週間以上たつておるぞ」と呼ぶ者あり)一週間以上もたつており、而もこういうものは常時調査していなければならないのじやないか。金融を扱うのです。全体で市中銀行の融資額を合せて大体六百億以上になるでしよう、もつとになるかも知れないと思う。政府が融資する財政投資だけでも三百億以上でしよう。こんなに三百億以上のものを割当て、これが常に調査がしてないなんで、そんな馬鹿な話は委員長、ございませんよ。(「運輸大臣の責任だ」と呼ぶ者あり)従いまして物理的に困難といいますけれども、私は少くともこの間私が要求しました資料まで無理であるという点は、例えば開発銀行に対して、開発銀行が個々の会社に融資したその個々の会社の名前を示せと、本当はこれも要求しなければなりません。併しこれは銀行であり、信用上いろいろあるかも知れませんから、そんなものまでは私は申上げません。本来ならばこれをそこまで我々は検討しなければならんと思います。まじめにやるならばですね。そんな無理までは言いませんが、少くともこの百六十七億の修正というものが、本当に正しいものであるかどうかを判定する基礎資料は頂かなければ無責任です。国家事務を扱う上からも無責任になると思います。これはどうしても私が要求しました程度のものは頂きませんと審議が私どもはできません。重ねて私は申上げます。
  69. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) もう一度釈明さして頂きます。先ほど新造の場合の審査状況、その場合に融資申込書をとつているかいないかとこういうお話。御承知の通りとつておりまして、各社から今非常に厖大な頁数にしますと五、六十頁から或いはそれ以上もの非常に詳細な資料でございまして、そうしてその都度その資料に基きまして更に関係の銀行の意見を徴して審査をする。そうして運輸省といたしましては、その船会社が船の運航並びにその船員の整備状況等について適格性があるかどうか、それからその船が果してその航路の関係から見て適当であるかどうか、こういう点を審査いたしまして見返資金当時は大蔵省に推薦するのです。大蔵省はこれを日銀をして更にその資産状況等を審査さした上で貸付ける、こういうことになつておりました。最近は開発銀行に引継がれましてまあ運輸省と開発銀行が協議してきめるということになつておりますが、資産状況等は主として開発銀行でお調べになつております。従いまして、先生のお考えでは運輸省が財政資金を貸付けているのじやないか、こういうお考えのように見受けられまするが、そうじやございません。私どもはそういう資料を出させまして、それに基いてその船主は適格性を持つておるということを推薦する。従いましてあとの経理状況を貸付者であるところの現在では開発銀行、勿論市中の分は市中銀行が見ております。そういうところで見ております。従いまして運輸省としては各年度の会社の経理がどもいうふうになつておるかということは何ら権限もありませんし、余り出しやばつた審査をするということは(「そんなことがわからんで再建計画が立てられるか」「そんなばかなことがあるか」「いい加減なことを言うな」と呼ぶ者あり)
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 割当の場合は。
  71. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) 割当の場合は只今申しましたように、申込書によりまして精細にそれが出ております。現在までの収支の状況がすべて出ておるわけです。そうして採算はその当時の市況によつた採算を出しております。その市況が、これは海運というものは御承知の通り十年に一遍の景気である、一度景気が出るとあとはずつと不景気になる。従いまして今まで作りましたときは、朝鮮動乱の非常に景気のいいときを対象にして採算をとつたその当時の景気がよかつたときに採算をとつているものですから、今こういうふうに市況が変りまして、これはまあ海運の常識からいうと一般的な市況かも知れませんが、そういう状況に落着いた場合に、現在見まするような非常な苦しい状況になつておる、そういうことであります。従いまして先生から御要求の新造ごとの申込の場合の各社から出しました資料、これは非常に厖大なものでざごいますから、これを先生のところに御提示いたしまして、先生に見て頂きますればよくわかります。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今海運局長からお話になりましたが、実は私海運のことは知らなかつたのです。併し私御質問する以上勉強しなければならんので私もかなり勉強したつもりです。私が海運というものを知らないと思つて答弁されると困るのです。一応私も勉強いたしました。今その当時の市況によつて採算を考えるという。融資するときは十カ年です。どんな銀行だつてやはり融資するときには、長期融資ならそれだけの経済界の変遷というものをちやんと見なければならん。そういうものを予想してこういう採算でいいかどうか、これでは採算が甘い、従つてこういう所に割当てるとか、又航路が適切かどうかといいましても、航路のない会社もたくさんあるのです。オペレーターはありますけれどもオペレーター以外のものもございますから、そういうような答弁では私は満足できないでのすから、私が要求しましたものを出して頂けばわかるのです。例えば造船だつて基準船価が、これはあとで質問しますが、百九十四ドルくらいだろうと言われているのを、外航船を作るときには百五十四ドル或いは百四十五ドルではないかと。この直接な比較はでませんが、非常に国内の船を作るとき高く、外国の発注のときは安い。なぜ国内建造費はこんなに高い、そういうものを基礎にしての融資になつて来るのです。そういうことまでも検討して行かなければならないのです。ですからこの資料を出して頂けばいろいろ疑惑が解けるのです。  聞くところによると、船主は今度解散があつたので絶好の機会であつた。若し解散がなかつたら十三億が到底百六十七億にならなかつたであろう。大体七割五分か五割程度に下るだろう。三割五分に下つたので開銀当局さえ驚いておるという問題があるのです。  ですから私はこの予算総則十条についてはそれがそうであるのかないのか、理論ではいけないので、計数を出して頂いて、計数から私は論じて行こう、こういう趣旨で私は資料を要求しておる。若しこの資料が出て来なければ私は質問ができないことになる。架空のことについてはできない。従つてこれをどうしても出して頂きたい。従つてこれに対する資料が出て来るまではこの部分に対する質問は委員長私はできません。この点をお取計らい願いたい。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の資料の要求の問題についてですが、よろしうございますか。
  74. 青木一男

    委員長青木一男君) どうぞ。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど木村君の言われました第一点。自由党、改進党、鳩山自由党の三党の間に秘密協定があるかどうかという問題は、一昨日の本予算委員会におきましてもいろいろ論議をされたのであります。その際に三派からは、と申しますか、改進党の竹山君並びに自由党の小澤君からはそういうものはないということを言われておつたのであります。然るにこういうものがある。昭和二十八年度一般会計、特別会計及び政府機関予算修正についての自由、改進、鳩山自由三党間の了解事項というものがございまして、昭和二十八年七月二十四日、以上の各項に亘る了解事項を確認するため、ここに署名捺印し、各一部ずつ保有するものというものがある。これがあつて三派の話合によつて政府の間にあの数字をどう取扱うか、執行するかということの話合ができた。これを予算委員会提出をしてもらいたいということを木村君から述べられた。  然るに委員長はまあどういうお話をされたか知りませんが、これについて今ないというようなお話であつた。併し私はこういうものがあるということを信じておるのであります。従いましてこれは是非とも予算審議上必要であります。特に修正案の執行に当ててそれがどういうふうに行われるかということの基準になりますものでありますから、是非ともこれを全委員に御配付願うようにお取計らい願いたいと思います。
  76. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して。同僚の岡田氏が発言されたように協定はあるのです。了解事項ができておるのです。而も青木委員長が懸命に努力をされて、予算審議の進行に御努力されておる。自由党各位も非常な御勉強をされておるわけであります。この予算委員というものは国会の各種の委員のトップに位するくらい重要な委員であります。その委員長委員会の理事会の要求を受けられまして御折衝になつたにもかかわらず、こういうようなことは当予算委員長を侮辱するも甚だしいものだと思うわけであります。どんなに努力されても正式にその了解事項が本委員会に出ません限りは、この予算委員会の進行に対して死命を制するほど決定的な影響を及ぼすわけであります。我が党はあらゆる触手を伸しまして了解事項はすでに入手して万般の準備を整えておるわけでありますから、それについては十分な配慮を以て対処されたい。これは我が党としては絶対公表しません。委員長たる職権において一つお諮り願いたいと思います。  そういうことができない限りは実際木村氏の質問された外航船の利子補給等についても重大な問題がある。而も外航船の利子の大巾な計上の際には、オペレーターのない船主がこの予算修正案にいろいろどれだけにするかという協定に参加しておる事実も我々は知つておるわけであります。そういうことともからんでこの了解事項が発表されるということは絶対に不可欠な条件でありますので、委員長において適当にお諮り願いたいと思います。(「休憩休憩」と呼ぶ者あり)
  77. 青木一男

    委員長青木一男君) 只今の御発言の三党覚書ですか、申合事項ですか、その点については改めて委員長から交渉いたします。  木村君の御要求の海運局に対する参考資料、これは極力木村委員の趣旨を体して政府当局から御提出あらんことを委員長からも改めて要求いたします。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 運輸大臣一つこのときにというはつきりしたことを頂きませんと、いつまでに出して頂くかをはつきりしませんと、予算審議の関係上非常に困ります。ですから私はこの資料が出て来なければ質問できないのですが、いつまでに資料が出せるかということをはつきりして預けば、そのときまで私はこの部分についての質問は保留しますから、そのいつまでにできるかをはつきりさして頂きたい。そうしなければ審議はできないのです。少くとも私は要求した程度は最低限であり、まだまだこれはたくさんあるのですけれども最低限、最低限でありますからこの範囲を譲ることはできません。(「運輸大臣答弁」と呼ぶ者あり)
  79. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 資料の提供で非常に御迷惑をかけて申訳ございません。早く木村さんから御要求してあつたことを私承知しておりますが、それを出すように御答弁申上げましたが、昨日持つて参りましたものが木村さんの御期待と大変違つておりましたので誠に恐縮です。昨日木村さんとここで会つてできるだけのものを急いで出させますと私があなたに申上げて、その通りに命じて昨晩も遅くまで……どうにもさつき海運局長が申しましたようになかなか整理できないのだというくらいのものでありましたので、よく事情を申上げてということを申しておりましたが、私どもも木村さんが資料を御要求になつたもの全部、どんな形でも見て頂いて、そうしてお話して頂ければ大変結構だと思います。書いて出せるものは書いて出します。資料そのままを持つて来てでも御覧に入れられるのは急いで取揃えて持つて来る、私どもの運輸省として出せる限りのものは急いで出したいと思つております。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 例えば五十何社全部の割当を与えるときの基準の計算書を全部ここへ持つて来てということは無理ですから、私はその中で要求するのは割当を与えるときの基準になるものですね、それをピックアップして頂けばいいのです。そのときの経済情況によつてと言いましたからそこが問題になるのであつて、例えば運賃をどのくらいに計算し、そうしてどのくらいの収支計算でこういうふうに相償うからその割当をやるということになると思うのです。その結論だけでいいのです。それはやはり各社について必要なわけです。そうしませんと割当の認可を与えてしまつて、あとからそれが違つたと言つてどこが責任を持つのです。一体そういう場合ですね、重大な私は責任だと思うのですよ。更に又いろいろありますけれども、私はここで余り申上げません、申上げますといろいろな問題が出て来ますから。そういう意味で少くともこの私の質問の趣旨はおわかりだと思うのですよ。その十倍以上にも利子補給をふやさなければならなかつたその根拠を具体的に私は知りたいのでありますから、それに副うように一つ提出願いたいと思うのです。ですから余り厖大ならその中の要点のピックアップで結構ですよ。
  81. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 その資料に対して海運局長にお願いしますが、誰とは言いませんが、この予算折衝に関係しておられますし、議席を持つておられるオペレーターなり船主なりのその関係は特に詳細にお願いしておきます。
  82. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村委員の資料の要求の点は先ほど申上げた通り極力政府に努力させますから、質問を進行して……(「できないじやないか」「休憩」と呼ぶ者あり)
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 質問を続けてよろしうございますが、今のあれは資料が出て来ましてから別途に、これは私の質問の時間と別になるわけですね。そうしないと困るわけです。そういうことを了解して……。
  84. 青木一男

    委員長青木一男君) よろしうございます。どうぞ。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは私質問いたします。私はこれまでいろいろ修正案、或いは又その他派生的な問題が出て来ましたので、本格的に二十八年度の衆議院から修正されて参つて来た予算案を質問する機会を得ませんでしたが、今日ようやくこの本格的にこの予算案について質問をいたしたいと思うのです。  その前にちよつと大蔵大臣に注意申上げておきますが、この前大蔵大臣修正案について我々に説明されたあれは誤りがあるのです、数字的に。これはちよつと御訂正願つておいたほうがいいと思うのですがね、大蔵大臣から我々に説明したときに違つておるから。この違いは三派の修正のほうの数字をそのまま政府が説明されたのです。ですから如何にまあ三派と政府が一体でなければいかんからといつて、我々に強調したものまで、その間違いまで大蔵大臣がやる必要はないのですよ。(笑声)ですから、これは簡単ですからちよつと御訂正願つたほうがいいと思います。
  86. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 正誤表を以て御訂正いたします。
  87. 河野一之

    政府委員(河野一之君) この前大臣が御説明になりました歳出の増加所要額、これはミスプリントでございまして、二頁の「以上一般外の歳出の所要額は百三十八億七千八百万円となる次第であります」というところの七千八百万円は七千二百四十一万円と御訂正を願いたいと思います。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 つまらんことのようですけれども、やはり大蔵省としては御訂正になつたほうがいいと思います。  それでは一番最初に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、この民主的予算の、或いは民主的財政というものの基本的原則というものを大蔵大臣がどうお考えになつておるか。私の考えによりますと、最近特にこの予算修正をめぐつて、民主的予算或いは民主的財政というものの一番大切な基本的な原則というものは蹂躙されて来ておると思うのです。そういう意味合において、改めてここで大蔵大臣に民主的予算或いは民主的財政というものの基本的な原則というものをここで一応はつきりさせておかなければならんと思いますので、大蔵大臣にこれに対する御所見を先ず伺つてからだんだんに質問に入つて行きたいと思います。
  89. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私どもはその予算案の出しておるものが民主的にできておると思うのでありまするが、仰せになつておる点の基本原則とか何とかいう意味がちよつと私にはわかりかねます。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣がこれはおわかりにならなかつたら困るのですよ。財政法を作るときにいろいろ論議されておる。大蔵大臣はこれを御承知にならなければなりません。いわゆる財政の民主化、これが重要だつたのです。そのための大体の基本原則があるわけです。そういう原則大蔵大臣が頭にちやんとたたんでおかないからいろいろな民主的なあれに反したものが出て来ても、それは民主的であるとか今大蔵大臣が言われましたが、私は具体的にあとで御質問しますが民主的にこの予算ができているとどうして言えますか。例えばこの間奨励金の問題、あの奨励金の解釈はあんなあいまいじやありませんか。あんなあいまいで、果してあれが民主的予算と言えますか、ですから民主的予算というものについては、民主的な財政というものについては、大体の大きな基本原則がある、フランス革命以来、この財政の民主化が論ぜられて以来、日本がいわゆる財政方針を作つて財政の民主化というものをやるについては、大きな基本原則があるんです。これを大蔵大臣がお知りにならんというのは、これは私はおかしいと思う。それをお示しになつて、それに照してこの予算が民主的予算に反するか反しないかを判断するんだ。大蔵大臣のお考えになつておる民主的予算原則が間違つていたら、これは正さなければならない。そこで大体の原則があるのです、たくさんあるわけじやありません。これを一つ財政担当当局としてお示し願わなければ、事務当局やなんかではないんです、事務的なものじやない、一つ示し願いたい。
  91. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私どもは、今出しておる予算というものは、すべて民主的の考え方を以て出しておる。その予算の編成というものは、若しあなたが民主的とはどういうことかと言われるならば、それは国民の心を心として組む予算こそ民主的予算の根本だと考えます。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう手続のことを聞いているのではない、今大蔵大臣の言われたことは手続です。
  93. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 根本ですよ。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 手続です。国民の心を心として編成するときに、どういう原則に基いて編成するか。これは歴史的にあるんですよ、ちやんと……。これはですね、一応明らかにしないで、ただ手続を言つておられるわけだ。手続が民主的だつて中身が民主的でないと何でもない、中身を伺いたい。
  95. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 中身は予算がお手許に差出してありますから、よく御覧になればわかります。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この中身の民主的なと大蔵大臣言われる……、中身が、果して民主的予算になつているかなつていないかを判定する基準です、原則……、それをお聞きしているんです。
  97. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) その原則は明らかになつております。それに基いて出しておる。議会は、国会はそれに対して修正をしておる、これほどはつきりしたことはありません。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣が今度は政府側でなく、我々議員になつた場合、この予算案が果して民主的な予算かどうか判定するときに、何を基準にして判定されますか。
  99. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私は予算案は予算書以外に何も判定する基準はないと存じます。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予算書の中身をどういう原則に基いて判定したらば、これが民主的であるかないかを判断することができるか。その原則を聞いているんです。
  101. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 原則は申上げておる通りであつて、それをどういうふうに御解釈になろうと、それはあなたの解釈です。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、私は失礼でありますが、これまで随分多くの大蔵大臣に質問して参りました。併し各大蔵大臣とも立場は違え、原則は持つております。前の池田大蔵大臣は、池田大蔵大臣なりのやはり予算原則というものをちやんと持つております。大蔵大臣がそういう原則を持たないでは無原則というのです。(笑声)無原則でやられたのではたまらん。大体これはもう常識でわかつているのですが、それが蹂躙されているのです。大蔵大臣がそういうことをおわかりにならんからこの予算が、あの供出奨励金なんかあんなあいまいなものが組まれてあるのに、民主的であるなんと言う。大体予算制度の民主化なり合理化については、原則は六つぐらいあると言われておる。全部これが入らなくともいいと思います。その第一は、公開性です、民衆がこの予算に接近して、わかりやすくて十分これが批判することができるような形のものでなければならん。第二は、明瞭性、予算の内容がわかりやすい。第三が完全性及び単一性、私は時間がありませんから、大蔵大臣にこういうことを講義するようなことになつてあれですから、はしよつて申上げますが、(「個人教育をしてやれ」と呼ぶ者あり、笑声)完全性及び単一性というのは、予算は実質上の予算をすべて包含して且つ単一である必要がある。(「わかつている」と呼ぶ者あり、笑声)これは財政予算民主化の重要な点なんです。お笑いになるけれども、こういうことが忘れられているのです、一番大事な点が忘れられておる。第四は、限定性と年次性、これも継続予算でよく問題になつたところです。第五は、事前審査性及び厳密性、これも侵されておる。ですから私が質問したのです。国会法の第五十八条で事前審査が必要であるけれども修正予算には事前審査がないがどうか。(「仕方がない」と呼ぶ者あり)仕方がないというけれども、やはり予算の民主化に反しておる。仕方がなくないように基本を正せばいい。基本が間違つておる、ああいう修正をするから……第六が節約性、大体まあこの六つがその民主的予算の基本原則と言われておる。で、このうち特に事前審査性とか厳密性、それから明瞭性、こういうものが侵されているのです。特にこの予算修正については、先ほど岡田委員或いは中田委員から秘密協定でもあるやに言われておるじやないですか、若しそうならば、予算の明瞭性、民主的予算原則に反する、こういう意味で大蔵大臣に民主的予算原則というものはどういうものであるかと質問しておる。我々がこういう原則に基いてこの予算をたえず批判しそうして判定しておるのです。これをたえず心に持つておるのです。大蔵大臣はそれがない、ですから無原則です。批判ができないのです。予算書に出て来たものは皆いいのだ、手続さえよければこれは民主的予算でございますと言つておる。それではいけないのであつて、この点大蔵大臣に、私はいわゆる民主的予算原則というものはそういうものだと思いますが、大蔵大臣はこれをどういうふうに思うか。
  103. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) そういう本なら私も読んだことがあります。そういうような学説なら、そういうことを申上げれば何でもありませんが、そういうことじやない、やはりこの議会へお出ししている予算についてのお話として私は伺つたので、この予算に出しておるものは、今仰せになつたような点においても全部を尽しておるか、それは存じませんけれども、すべて公開性も持つておるし、まあ仰せになつたような明朗性を持つておるし、この予算というものは何にも私は出す当初においてもこれは明らかに最善の予算を出した。その後国会で御修正なつたから、その御修正を了承しておるというだけであつて、それ以上何にもどうもお答えする必要はないと思つております。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はそういうものを読んだと言うけれども、読んでないのです。なぜならば予算原則には明朗性なんというものはない、明瞭性なんです。(笑声)クリアーです。それからもう一つ、私は原則論が出ましたから、今日は大蔵大臣を試験するみたいになつて相済みませんが、(笑声)この歳入面についてはどういう原則に基いて大蔵大臣は租税を徴収されるか、これが最近皆侵されておるのです。これが基本的なものはだんだん侵されて、いわゆる民主制度というものは財政面から危機になつて来ているのです。こういうときから非常に重大な危機になつて来ているのですよ。政治のフアツシヨとか反動化とかいろいろ言われておりますが、そういう基本的な民主的な原則があるにかかわらず、それがだんだん具体的に侵されて来ておるのです。ですから振返つて私はそういう点をお聞きしているのです。どういう租税原則に基いて大蔵大臣は税金をお取りになつておるのですか。二十八年度予算はどういう租税原理に基いてお取りになつておるか、その点について……。
  105. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) どうもそういう学者論はちよつと私はかれこれ存じませんが、本年度の予算につきましては、申すまでもなく、国民の納得の行く納税、税金を取ることを主としておる。若しそれ、今あなたがいわれる明瞭性か、明朗性か、(笑声)そういうものであるならば、非常にその点明瞭になつておるし、又税の取り方は明朗に持つて参りたいということは考えております。(「明快」だと呼ぶ者あり、笑声)
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、今日は少し暑いですから、まあ御懇談的にいたしましよう。余りこんがらがらないで……。私も勉強いたしたいですし、やはりこれは原則は必要ですが、こういうような馬鹿みたいなことを言うのが一人くらいあつていいと思うのですよ。国会議員の中で……。そこで国民が納得行くように税金を取られる、これは成るほどそうでなければならん。ところが、納得していないですよ。(笑声)税では納得していないかたが相当あるのです。それは、なぜ納得できないかというと、やはり租税原則というものに反した取り方をやつているから、そこで問題になるわけですね。ですからどういう租税原則に……、租税原則にもいろいろあります。これは又大蔵大臣、これこそ大蔵大臣もお読みになつているでしよう。一番最初がアダムスミスの原則、これは、大蔵大臣は私より詳しいと思うのです。その次はワグナー、いわゆるアドルフ・ワグナーの原則、そういう租税原則があるのですよ。そういうものを、我々はこの税金の取り方が正しいか正しくないかを判定する場合には、そういうところからやはりきめて行かなければならん。ですから、やはりアダム・スミスの租税原則に基いてやつておるのか、或いはワグナーの租税原則に基いてやつておるのか、それとも、吉田内閣に独特の租税原則があつて、それでやつておられるのか、そういう点について……。併しこれはあとで具体的に御質問しますが、非常に重要だと思うのですから、先ずその点からお伺いしておきます。
  107. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 吉田内閣としては、日本の実情に合うこれが租税なりとして取つておる次第であり、又あなたが今言われたけれども、これは国会のほうでこれを可なりとしてこの税法ができておるのである。併し不可なるものについては、それぞれ修正を加えておる。国民の納得するのは、国会以外にこれはありません。それは一部の人には納得のできんかたがありましよう。国民の大部分は、国会によつて納得するのでありまするから、私は今行なわれておる税制が、国会、いわゆる日本国民の納得の行つておる税制であり、又今度改正されつつある税制が、すでに議決を経たものがありますが、こういうものがやはり国民の納得の行く税制であると考えるのであります。一部にいろいろ意見もありましよう。一部の意見というものは、これはどうも私は国民の全部の納得じやない。やはり国民多数の意向こそあなたが言われる民主政治というものは、そこから来ておるのです。民主政治の納得というものは、そこから来ておるので、一部には不平があります。いや何の説だ、かんの説だ、こういうことを私は申上げるのではないのであります。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はどうもピントの外れた答弁になつておる。では私は具体的に申上げますが、大体これまでの租税原則は、平たく言つて、入るを量つて出ずるを制すというのが大体の、これは非常にわかりやすいことですから、大蔵大臣もおわかりと思う。入るを量つて出ずるを制す……、そうすると、大体この歳入のほうが、歳入のほうが重点になつておる。そうして、歳入如何によつて歳出を考える、こういう原則ですね。これは大体ワグナーあたりからそういう原則になつておる。アドルフ・ワグナー、ワグナーはビスマルクの時代です。国家財政を軍事財政に切換えて行くために、ワグナーはああいう租税理論を言い出したと思う。その前のアダム・スミスの租税原理はそうではない。アダム・スミスは租税原理は一番最初はやはり公平の原則というものを最初に出しておる。ところが、ワグナーになつて来てから、いわゆる国家財政というものを先ず確保するということが、これが第一、そこで問題になるのです。最近これは、税務官吏の中で、いろいろ最近の租税原理と税務行政というので、財務労働組合で懸賞論文を募つたことがある。私はそれを見せて頂いた。第一線におる税務官吏たちは、徴税の面から言つて、身にしみて、身にしみて、単なる理論ではなくて、今までの入るを量つて出ずるを制す、こういう租税原理では、どうも、どうも割り切れない。出ずるを量つて入るを制す、出ずるを量つて入るを制すという、そういう租税原理で税金を取るようにしなければならん。これは財政の全般として非常に矛盾を感ずるということを皆言つておる。単なる理論ではない。その体験から来ておる。私はこれを読みまして、実にこれは味うべきことだと思つておる。今まで、これまでの予算を見ますとですよ、とにかく歳出ばかりが、歳出ばかりが重点になつて来た。予算委員会あたりでもそうであります、大体……。そうして、当然切らなければならないものを切らないで、その上に積み上げて行く。どんどんどんどん積み上げて行く。財政規模が大きくなる。財政規模が大きくなると、今度はそつちのほうから租税収入を考える。これではいけないのであつて、やはり民主的な税制というものは、どうしても私は出ずるを量つてでなければ、先ず歳出のほうですね。歳出のほうからこれをよく検討して、そうして、歳入、税金のほうを考える、今までの租税原則を逆に持つて行く、こうしなければ私はいけないと思う。これはまあ随分平つたい表現でありますけれども、今までの観念と逆にするということについては、非常にこれは大きな問題なんです。大蔵大臣は、やはりそういうことをお考えなつたことはおありにならないかどうか。やはり収入の面、いわゆる入るを量つて出ずるを制す、こういうのは非常に無理を生ずる。これは大体戦時財政です。大体戦時財政の建前がそうです。平時財政はそれが逆に行くべきだ。むしろ、私は吉田自由党の自由主義政策としては、アダム・スミスの租税原理に還るのが本当だと思う。ワグナーの租税原理は、あれはファッシヨ財政原理です。あれは軍国主義財政原理を編み出した人です。むしろ、私は、アダム・スミスの租税原理に還るべきだ、こう思う。それは入るを量つて出ずるを制すでなく、出ずるを量つて入るを制す、こういう租税原理、これについて御所見を伺いたい。
  109. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 学者的の見解は暫く離れまして、今日本のやつておるのは、御承知のごとく出ずるをいわゆる量つて入るを制しておるのでありまして、これだけのどうしても歳出が今年要る、それではこれだけの減税ができるということで、減税案として今度出しておることも御承知の通りであります。即ちその意味から申せば、あなたが言われるのは誰の説か知らんけれども、最近転換したと言われるほうの説になつておる。私どもはその誰の説か知らないけれども、そういうことでなくて、日本の実情に合うのには、やはり何と言つても、税なら税の負担が重いけれども、併しこれこれだけのものは国家財政配分上是非ともなければならんというところから出しておるのであつて、それに基いて財政の措置をしておるのであるから、従つて減税その他の問題も、そういう点から割出しておるのであります。今度の行政費節約どもいろいろ仰せになつたような点から起つておると考えます。
  110. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君、この辺で休憩如何ですか。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結構です。暑いですから。大蔵大臣一服せられまして、それであとで又お伺いいたします。
  112. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたします。午後一時より再開いたします。    午後零時九分休憩    —————・—————    午後一時三十二分開会
  113. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。木村君。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 質問に入る前にちよつと議事進行で。午前中に造船の利子の問題について資料が出て来ておりませんので、先ほで委員長から資料が出て来た時に別に又質問をするから、その時の資料に基いて行う質問については別に時間を委員長は考慮されるというお話でありましたが、その点はもう一度私は委員長に確認しておきたいと思うのです。そうでありませんと自分の質問の進行との関係ありますので、先ほど委員長はその質疑については別途考慮されるというお話ありましたので、私は質問に入つたわけです。この点もう一度。
  115. 青木一男

    委員長青木一男君) お答えします。委員長が先ほど申上げた意味は、資料の請求に関する発言は時間外である、先ほどそういうふうに私は申上げた意味で、質疑そのものは通算する意味で私は申上げたのです。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますとくどいようですが、それは私の質問に非常な狂いが出て参ります。それで委員長は先ほど議事を進めなければならない関係上、私はそういうふうに非常に無理であつたと思うのです。そうであつたならば私最初から質問しないはずだつたところが、そういう御考慮があつたので、議事を進める上に私は妥協といいますか、そういう折合で始めたわけですから……。
  117. 青木一男

    委員長青木一男君) まあ委員長で適当に取計らいます。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで了承いたしました。  午前中大蔵大臣に大分原則論を伺いまして御迷惑をおかけしたと思います。租税原則について私実はちよつと陽気が余り暑いのでぼんやりして、国家財政においては出ずるを計つて入るを制す、こういう建前になつて、個人経済においては入るを計つて出ずるを制す、これを私は逆に言つたやに思われますので、大蔵大臣それを先ほどその通りであると言われたのですが、この点又御迷惑をおかけいたしましたので訂正しておきます。  今度具体的な問題についてお伺いいたしたいと思います。それは今度の予算の編成の仕方です。それは予算説明書に書いてもありますように、大蔵大臣の御説明にもありましたので、その重点は大体私は七つくらいあると思います。それでそれについてお伺いしたいのですが、第一は予算編成の前提となる経済情勢の判断ですね。第二は財政規模の問題、殊に又修正された予算との関連において。それから第三は税制改正、特に減税を中心とする問題。第四が財政投融資の問題。第五が総費の配分の問題。第六が金融政策。第七が補正予算及び二十九年度予算との関連。大体この七つについて質問いたしたいのであります。  そこで先ず第一にこの予算編成の前提となる経済情勢についてでありますが、大蔵大臣の説明も、予算説明書も、大体経済情勢には不成立予算を編成した当時と余り変化がないという建前で、不成立予算と大体同じ編成方針で組まれている、こういう説明であります。併しながら予算説明書を今度は見ますと、その説明のだんだん内容になつて来ますと、相当経済情勢の変化がやはり政府自身がお認めになりそうして織り込んでおる。例えば輸出入貿易も不成立予算編成当時の予算の基礎になつたものとやはり計数が違つて来ておる。それから例えば租税払戻金、不成立予算では三十億しか見積つていないのが今度は六十億見積つた。これはやはり景気が悪くなるだろうということの前提だろうと思う。その他外貨保有高についても不成立予算のときと今度の予算のときとは非常に違つております。相当減つて来るわけです。それから不渡手形の激増とか或いは失業者の増加、そういう点を考えますと、丁度不成立予算は朝鮮戦争が拡大するような情勢の下に作つております。そこで保安庁経費も二十七年度の五百四十億から一挙に八百三十億と急激にこう殖えておる。又投融資においてもそうである。従つて朝鮮戦争が、丁度アイゼンハワー元帥が当選されて強硬外交で、あの当時吉田総理も岡崎外務大臣も非常にその強硬外交を支持するような演説をされておる。そういう背景の下に二十八年度予算は作成された。ところが今度の朝鮮休戦以来平和の見通しが強くなつて来て、又その影響を受けて経済情勢も非常に変つて来ている。輸出貿易についても大部変つて来ている。造船の今私が問題にとつた利子についても、運輸大臣は最初十三億くらいでいいと思つた。ところが百六十七億も計上しなければならん。非常に海運界は不況になつて来たと、こういう御説明だ。ですから非常に著るしい経済情勢の変化は私はあり、又これからあると思う。この前提、経済情勢の判断に私は一つ問題があると思う、二十八年度予算については。この点大蔵大臣は大体不成立予算当時と経済情勢は変らないという判断でこの予算を組まれたというが、食い違いがあると思う。この点質問いたします。
  119. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) さつき午前中に木村さんのお話を誤解したようなお言葉でしたが、或いは誤解しているかも知れませんが、私の申した意味は、編成方針として最初から歳出に応じて減税等を図つているというその意味で申上げたので、その限りにおいては別にあなたに対して誤解しているようなことはないと思うのであります。  只今お尋ねの点につきまして申上げますと、私どもはこの本予算を編成するときに、それに書いてあります当面の急激な変化がない。こういうことを予想したのでありまして、併しいろいろなその後の経済情勢は織込めるだけ織込むということを申しておることは、その説明のうちで御了承願つたと思うのであります。つまり二十八年度の本予算を編成するときには、当面急激な変化はない。併しながら大体日本の経済界は横ばい、又これは世界も同様でありますが、或いは下向き横ばいの傾向にある。又貿易関係等につきましては、私はこの前申しましたように、特需関係その他は二十八年度では減ることはない。むしろ二十七年度と比べて増加こそすれ減ることはないと見ているのであります。もともと恒久的な状態ではないのであらかじめこれに備えて行くことも必要であろう。こういう考え方でこれらについての按配はいたしたのでありますが、すべてまあ歳入面等につきましては、大体法人所得その他について御覧下さつてもわかるように、相当不景気になるもので一割ぐらい中には減収を立てておる分があります。ただ全体の所得から見ますると、国民所得は賃金ベースアップが行われておる部分があつたり、又食糧などにおいて物の値上つている部分もありますので、そういつた全体の国民所得は減つておらんからという建前で税収は見ておりますが、ただ影響を受けると思われる法人税その他については、これはその点の考慮が加えてございます。それからそのほかにつきましても大体多少のことでございまするが、今お話なつたような工合に情勢の変化は織込んではあります。けれども二十八年度は急激な変化はないと考えております。今後のいわゆる財界の見通し等については、私どもももう少し下向きの傾向が強くなるものと見て今後の予算は組まなければならんと思いますが、基礎になる国民所得その他に大きな変化がない。  それから又歳出面につきましても、今お話があつた例えば保安庁の予算等についてはそうであります。併し昨年に比べますると、昨年たしか千八百何億であつたいわゆるそういつた関係の一切の予算が、今年は千三百数十億に減つておるというような工合でありまして、これらの点は朝鮮事変休戦のことについても特に又多少経費の節減等を加味してありますが、或いはこれは十分でないというような点もあるかも知れません。併しながら今の日本の置かれておる国際的地位から見ると、朝鮮の休戦と否とにかかわらずこの程度予算は必要であろうと考えておつたわけであります。けれども二十九年度の予算を作るとしますれば、これはもう少し大巾な改変をしなければならない。又もう少し厳重な見方をして行くほうが今の見通しとしては正しいであろう、こういうふうに考えております。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二十九年度予算との関連についてはあとで又質問いたそうと思いますが、只今の御説明ではやはり変化はある、変化はあるけれども急激ではない。成るほど急激ではありません、併し最近は又不渡手形等を見ますと、これはなかなか楽観できないと思いますが、問題は質的な変化、質が重要であると思います。例えば政府が出された説明書を見ますと、外貨が殖える方向よりも減る方向にあるという変化、これは将来非常に重要な変化であると思います。又輸出貿易も例えば鉄鋼輸出なんかが甘いと思います。昨年度は特にアメリカの鉄鋼ストなんかがありましたから特に殖えたのでありますけれども、やはり見積りは私は甘いのではあるまいかと思われますので、今度朝鮮休戦後における新らしい経済情勢が出て来ると思いますので、この質的な問題はどちらかと言えば、やはり朝鮮戦争が拡大するという形において施策され、そういう経済的な手当が今度は休戦をされるという前提でこの経済が動いて行きますと、いわゆる反動的な面がいろいろ出て来ると思うのです。そういう頭で考えなければならないと思うのです。ですからその前提については従つて、そういう朝鮮戦争は拡大するであろうという見通しの下に組んだ予算と、朝鮮休戦がもう大体成立を……岡崎外務大臣ちよつとその点を伺いたいのですが、最近の休戦の交渉の状態、これはどのような結末になる見通しで施策をされたか、併せて大蔵大臣のあとでお伺いしたいと思うのですが、従つて前提条件が非常に違つて来ておる。  それから予算の性格も変つて来なければならないと思います。ところが性格は変つておらないのです。この点は私は非常に重要であろうと考えますので質問したいと思います。もう一度。
  121. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) この私どもの出した本予算の説明にもそういうことを申上げたつもりでありますが、朝鮮休戦の実現は濃くなつておる。こういう見通しの下に私どもつておるのでありまして、ただ今言われるように二十八年度の予算で、その本質的な性格が変つて来てるというほど見るべきものがあるかどうか。これになりますと、私どもは今の国際情勢から多く見たならば、又本質的に言えば、あなたが言われるほどに産業構造等に影響を及ぼす問題とも思いません。それまでの変りを見るべきものではない。もう少しやはり時勢の推移を見て或いは考えなければなりませんが、現在の段階ではそこまで行くものではないと思います。  さつき鉄鋼等の見積りについて甘いというお話もございまして多少そういう点もないとも限りませんが、御承知の通りアルゼンチンとかそういう国との貿易は主として鉄鋼の輸出入が中心になつております。先般の表面八千万ドルの両方で協定しましたものも、或いはそのほかにつきましても、最近は鉄鋼等の注文を大分受けておるのでありまして、私は多少甘いぐらいのところはあるかも知れませんが、非常に甘いと言つてまあ非難するほどの甘い見方ではないと、こういうふうに考えております。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣ちよつと。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 朝鮮休戦の問題は、今大蔵大臣お話のように、まだ政治会議の帰趨がわかりませんからすぐに非常な変化が起るかどうかわかりませんが、併しちよつと申上げておきますが、アイゼンハワー大統領が就任された当時、総理の施政方針演説も私の演説もありましたが、いずれも国際間の緊張は緩和の方向に向いておるとか、或いは戦争は漸次遠のきつつあるような感がある、併し油断はできない、こういうことを言つております。たしか総理もこの予算委員会での御質問に対しましても、アイゼンハワー元帥は大統領選挙においても、朝鮮に休戦をもたらすようにするという公約をいたしておるので、何らかの方法が考えられるであろうということを言われておりまして、当時から休戦の方向には向くであろうということは政府としても考えておつたことは、当時の速記等を御覧になればわかると思います。ただそれでずつと一遍に平和まで全部回復するかといいますと、当時もそうは考えておりません。今も政治会議等の形勢を推測いたしますと、なかなかむずかしい問題がありますから、休戦はできましよう、併しその程度以上にどの程度進むかということは未だ言明できる段階ではないというふうに考えております。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間が何になりますから改めて御質問いたします。当時国会で非常に問題になつたのは、アイゼンハワーの対ソ強硬政策が発表されたときに、若しアメリカから日本が出兵を要求されたときに出兵するかしないかということまで国会で論議になつたのです。岡崎外務大臣も社会党の中立論を非常に非難される演説をされております。更に国連に一層協力しなければならん。一層協力という意味は何か。日本は出兵するとか……そこまであの当時の情勢は議論になつたと思うのです。それで、成るほどアイゼンハワーは朝鮮休戦の締結論を掲げて公約になつておりますが、あのときの事態は、それをもう一度、いわゆる勝利の休戦という形で向うを叩いて、そうして勝利の方向に行くという形の下に、あの頃は見えておりました。そこで朝鮮戦争は拡大するのじやないか、こういう懸念が非常にあつたことは、当時の新聞や国会の討論を見ればわかると思います。そういう感じで私は質問したのです。併しこれは時間が又経ちますので、改めて御答弁は要らないと思います。そこで、要するにこの予算は、一番予算の編成の基礎になる経済情勢の把握について、政府は今、私に対する御答弁は大体余り違わない判断です、変化して来る……。併しその質及び程度についてはやや違いますが、それは、それにこの予算は対応していないというのは……。これは意見になりますから次に移りたいと思います。  第二に、この予算の特徴は財政規模が小さくなつて来ている。だんだん小さくしている、こういうことであります。もう何回も成るべく財政規模は小さくして行くというのは政府の方針であります。ところがこの財政規模、予算説明書で説明しているのは、これは子供だましみたいな説明の仕方なんであります。即ち、本年度の当初予算と二十七年度の補正を含めたものと比較をしておる。こういう比較の仕方は本当の比較ではありません。本年度も又補正が出るのであります。比較するならば、二十七年度の当初予算と二十八年度の当初予算、そうして財政規模は更に地方財政をも加えて、これの財政規模を見なければなりません。そういうことも考えておりません。ただ一般会計の補正された後の二十七年度予算、それから二十八年度当初予算、それから投融資を加えて国民所得で割る。それは国民所得も、不成立予算のときの国民所得と又今度の国民所得とでは違つております。それは一応二十七年度の実績はわかつておりますけれども、とにかく我々から見れば、故意に財政規模を小さく見せるために水増しをしたのではないか。更に今度は補正予算考えれば、決して財政規模は私は小さくならんと思う。今度の修正でもいわゆる供出奨励金を食管会計でごまかしておる。特別会計のほうへ持つてつておる。それだから一般会計としては予算規模は大きくならないかに見える。更に本年度の予算は米価の値上げによる約三百億の国民負担、鉄道運賃の値上げによる百五十億円、この国民負担、こういうものが前提になつている。従つて二十七年度予算と比較するときには、そういう前提の違いまでも含めて財政規模というものを比較しなければ、本当の正しい意味の財政比較にはならないのです。実に何か国民に財政規模が小さくなるかのごとき数字的作業をやつているが、実際は殖えておる。従つてこういう私は作業の仕方をすべきでないと思う。実際的に私は二十八年度の財政規模は、これから又補正が幾らになるかわかりませんが、一千億になるか或いは八百億程度か、五百億円程度かわかりませんが、補正を加えて計算してごらんなさい。而も国民所得は非常に顕著に殖えるはずがありません。大蔵大臣お話もこれから景気が悪くなるであろうと言つている。従つて租税の払い戻しも不成立予算の三十億から六十億に倍加している。これもやはり景気が悪くなるという見通しに基いている。従つて、この財政規模については、こういう御説明の仕方自身は、国民に対するごまかしであつて、もつと実際的な説明をすべきである。今後は財政規模についての説明の仕方を、こういう子供だましのような説明をされないように、地方財政を含めての正確な、当初予算は当初予算同士、それから投融資は、やはり郵便貯金みたいなものを投融資に含むべきではありません。国債みたいならいいです。そういうものを入れて故意に財政規模を小さくするような作業は、これは私は官僚的作業はおやめになつたほうがよいと思う。我々は財政の実態というものを知らなければならない。実質的な国民所得に対して、本当に財政規模が適正であるか適正でないか、こういう判断をしなければならない。この点を大蔵大臣に財政規模について一つ答弁を願いたい。
  125. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 財政規模につきましては、昨年は木村さん御承知のごとく当初から補正予算が若干見込まれておつたのでありまして、而も補正予算が一千億を超す大きなものになつた。本年は補正予算というものを全然考えなかつたのであります。又補正予算を編成しないという方針の下にやりましたから、一般会計予算とその去年の補正を全部合せたものと比較して何ら差支えないと思うのだが、その後、国会のほうで御修正になつている。そうして米のほうについては約百億になりましようか、そのうち石当り四百円分だけは一般会計よりこれを支出する、こういうことに修正をされましたから、そうすると百億、まあ約百二、三億になるかも知れませんが、これは補正予算を組むよりほかない。又災害等も、災害対策費が百億ございますから、大体災害の予備費がありますから、できるかと思いますが、若し足らんような場合にはこれも幾らか組まなければなりません。それは併し全然わかりません。そういうような工合で、本年度のそういつたいわゆる補正予算というものは、いわば国会修正がもとになつてつているのであつて政府から見れば予期せざるところであつたので、当初出したこの説明は私は当然のことと思うのであります。更に実質から見ましても今のように大きなものでない。昨年の一千億を超すというようなものでなくて、恐らく非常に小さい。あなたは又五百億とか何とか言われたが、そんな数字に達する心配は全然持つておりません。従いまして、私は国民所得の点は、これはいろいろ細かい数字から出ておつて木村さんは学者だからすぐおわかりと思うが、みんな根拠があつて出ておるのでありますから、何も水増しをするという必要はないのであります。従つて、私どもは、国民所得の実情から見て、財政規模が決して殖えていない。こういうように判断するほうがむしろ正しい判断であると考えてあるのであります。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二十七年度は大体補正予算を見込んでおつたというお話ですが、併し予算を組むとき、最初からそういう組み方をやるべきでないと思うのですが、その点は議論になりますから、時間がありませんから、その点はいいですが、併し財政規模は大きくなつたと思います。規模は……。補正を加えれば……。それは衆議院に責任があるないは別にして……。それからもう一つ関連して伺いたいのですが、義務教育費国庫負担法、あの法律案が通らなかつたらどうするのですか。これは現実の問題です。法律案が通らなかつた場合、政府はどういう措置をするのか補正を組むのかどうかこの点、重大問題ですから伺つておきたい。
  127. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは御承知でもございましよう。皆すべて法律案が通ることを前提として予算を組んでいるのでありまして、法律案が通らなかつたらどうなるかということになりますと、これは予算の編成は非常に容易じやございません、従いまして、この今の問題につきましても、これは法律案が通るものなりという確信の下に立つております。
  128. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 確信があるというが、そういうことは実際問題としても、もうあれですよ、衆議院は殆んど審議しておりませんよ。ですから、そういうことの用意をしておかなければならんのです。そういう結果は重大でありますから、そういうときの用意はどうされるのか。財政措置はどうされるのか。これは法律論にこだわる必要はない。財政的措置として伺うのです。
  129. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 予算修正も行わずに法案だけは通らない、こういう問題が起つて参ります。そうすると、そういうことが万一にもありますれば、これは補正その他のことを考えるより以外には途はございますまい。併し私どもは、予算案を通しておきながらその法案を通さないといつたようなことはなかろうということを確信するものであります。
  130. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府がいつも確信されても、政府の確信通り行かないのが実情であります。これは御承知の通りなんです。ですから、非常に私は混乱が起ると思います。この点はこれでやめます。  次に税制の問題ですが、減税の問題ですが、よく大蔵大臣は減税々々と言つておりますけれども、今の税の実態を御存じですかどうか。実際的には減税になつておりませんし、又税金を納められない低所得の人は、この税制改革によつてむしろ生活が苦しくなつて行く。米価を引上げ、運賃を引上げ、その他いろいろなものがカヴアーされておらない。それが日本の人口の約半分なんです。これに対してどういうふうに処置されるか。それからその後のいろいろ物価高によつて、又今度電話料金が上るでしよう、又電灯料金が十月に上ると言います。こういうことで、実際減税になつておらない。それで、この間から減税によつて、これはカヴアーすると言い、電話料金の引上げも減税によつてカヴアーすると言いますけれども、これはその項目じやないんです。あれはあとから起つておる。従つてちつとも減税ではない。それから課税が非常に不公平になつておる。最近は殆んど勤労所得者に課税が集中しているんです。こんなばかな話はありません。それから今度の税制改正を見ましても、富裕税を廃止する、或いは又輸入の課税、取引上のいろんな譲渡所得の課税をやめるとか、とにかく高額所得者、富裕者に有利な税制改革であつて、この税収の…、私は時間がありませんから詳細に、数字は私は作成して参りましたが、実に不均衡な課税になつております。例えばこの課税が如何に不均衡かという一例としまして、例えば昭和二十七年度当初と比べますと、今度の税制改革によつて源泉所得は六百五十一億殖えるんです、二十七年度より。ところが申告のほうでは三百二十億減るんです。法人税が百七十八億減るんです。殖えるのは六百五十一億の源泉課税、実に源泉課税に集中してしまつておる。それから砂糖消費税が百七十億殖える。消費税は大衆課税です。それから勤労所得者の国民所得二兆五千七百五十億に対して、これに課税するいわゆる課税見込所得は一兆九千二百八十八億です。七四%。ところが、いわゆる個人所得、個人業種のほうは、国民所得が二兆四千三百四十億。勤労所得と余り変らない。ところが九千四百億しか、かからない。三八%です。七四%と三八%、非常に差がある。これは源泉課税と申告課税の不合理から来ておる。これは扶養控除が違うと言いましても、私は計算しましたが、違います。勤労のほうが扶養者が多い、全体としては。非常に不合理になつておる。時間がございませんから私はこの程度にこの税制の問題は止めておきますが、而も法人税については四割二分の課税になつておるけれども、二十七年度、二十八年度の法人に対する特別控除によつて、大体三割七分より更に低くなる。恐らく今度三割五分ぐらいになるでしよう、実際の法人税は。大法人税は三割五分ぐらい、中小法人税は四割二分と変つてしまう、そういう特別控除がないから。非常に私は不均衡になつておると思う。予算委員会においては、どういう建前か知りませんが、これまでは歳入面について検討が十分行われておらない。私は歳入面のこの税金の不公平、今度の税制改正の不公平、これは民主的な税制じやありません。これは根本的に検討しなければならん。こんなばかな話はございません。殆んど勤労所得にしわ寄せして来ておる。これは根本的に大蔵大臣一つ税制の問題についてはお考え願わないと、今は不均衡すぎます。この点について。……
  131. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 税制の問題は、根本的に調査するわけでありますが、ただ仰せになつた点はいろいろ誤解の点がたくさんあるんじやないかと思います。即ち私どもは、今の税制を続けて行けばこういうものを出さなければならん。これに対して税制を変えて、いわゆる率を減ずる、控除額を殖やす、その他の事柄等によつて一千二十数億減らしておるのでありまして、これはやつぱりいわゆる減税であることは申すまでもありません。  それから今お話なつたように非常に低い者にしわ寄せをしているというようなことを言われましたが、これは納税者の数から御覧下さると、よくわかります。これは私の記憶に間違いなければ、正確なる数字は、ここに主税局長もおりますから申してもよろしうございますが、昭和二十四年にはいわゆる所得納税者が一千九百万人であつた。それがだんだんと税法を変えるということによりまして、いわゆる減税措置をとることによつて、現在の税法では千三百万人になつております。それを又、今度のような減税案に変えることによつて一千万人になるのでありまして、言い換えれば、低い者は前の場合においては約六百万人、今度の場合においては約三百万人、いわゆる低額所得者の免税になつて行くわけであります。こういう事実をよくお調べの上、木村さんは学者だからよく調べられると思いますから、こういう事実の上に立つて一つ御議論を願いたい。だんだん下のほうが余計負担するのではなく、下のほうが減つているのであります。この事実からいたしましても、もう明白な事実であるということをはつきりとお調べ願いたい。ただ、今の税制になお私どもは若干改めなければならん点があると思いまするので先ほども申しました通り、中央地方を通ずる税制の根本的調査をいたして、是非実情に副うように持つて参りたいということを考えておりまするので、いろいろな皆さんの御意見はその際に織り込むことにいたしたいと考えております。
  132. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、一千万人だ、だんだん減つて来たと言われますけれども、昔は所得税というものはこんなに多勢の人が納めるものじやなかつた。今はことごとく大衆課税になつております。昔は大衆課税というものは消費税だつた。ところが今は所得税が大衆課税化してしまつている。これは敗戦後の日本の経済上のいろいろ困難な事情がありましたが、それにしても、ほかに財源がないかというと、大きく合法的脱税が行われているのです。無記名定期とか無記名信託投資なんかそうであります。捕捉できないところがたくさんあるのであります。そういうような税制になつているのであります。ですから、これは実に不合理である。又税金を納められない人は、減税と称して、その代りに消費者米価を騰げる、運賃を上げる。そうして減税でカバーすると言いましたけれども、税金を納められない人はどうするか。むしろ生活が非常に困つて来ている。その実態を調べればそういう実情は詳しくわかると思う。私は学者じやありません。私はジャーナリストであります。私はその実情を絶えず調べて、空理空論をしているわけではないのでありまして、この点、所得税というものは大衆課税化しているのであります。これは、やはり国の財政的の困難な面もありますが、課税が非常に不均衡であるということは、これは大蔵省の税制課長もよく知つている。最近非常な不均衡になり過ぎている。農村と中小企業者のほうは、所得査定において幾らか減税になつていることは、これは事実であります。それが勤労者は遅れている。それで勤労者のほうにずつと「しわ」が寄つている。これは実情が、勤労控除も二割五分であつたものをシヤウプさんの勧告で一割五分に減らしている。これなんかは勤労所得税と申告納税とは捕捉が違うのであります。この点、十分考えませんと課税が公平にならない。この点、十分御検討を願いたいと思います。  それから、時間がございませんので、大蔵大臣と通産大臣の両方に伺いたいのです。  朝鮮休戦後の日本の経済の新しい情勢に対応する政府の基本政策として、これは物価政策というものが重大であることは、もう各委員も述べております。それから政府のほうも重大だと言われている。問題は、この輸出を振興するために物価をどうして下げるかということが問題だ。この問題を解決するためには、日本の今の物価高の原因、いろいろ議論もありましよう。併し端的に一体どこに物価高の根本の原因があるか。これを主要なるものについては十分把握して、そこで適切の対策を施さなければいけない。そこで物価高の原因について大蔵大臣と通産大臣の御意見を伺いたい。
  133. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは物価というものは各種の要素から構成されておる。これは申すまでもない。従いまして例えば金利が高い、或いは労賃が生産量に比べて高いというような問題、割高というような問題もありましよう。併し大きいものは何と言つても私は日本の産業自体が持つておる、いわゆる朝鮮事変の安易に馴れて近代化、合理化を怠つた。もう少し真剣に経営しなければならなかつたものが、真剣味を欠いた。こういう点が一番大きな点ではなかろうかと思います。勿論そのほかにも需要供給、各種の関係もありましよう。個々のものについては言えませんが、一般的に言えばそういうことが言えるのではないかと、こう思うのであります。併しながら、これを解きほぐして行くにはなかなか一朝一夕に行くものではない。又一つこれを総合的にやらなければならんが、一つでも解きほぐすことが必要であるから、私どもは金融の面において、金利の面において、或いは課税の面においてこれを解きほぐすことをやつておる。又合理化、近代化を進めるためには、あらゆる資金の融通の面で便宜を図つておる。こういうようなことでやつておるのでありまして、併し一番まだやはり欠けておるのが、何と言つても企業者の真剣味である。この点についてもう少しやるべき点があるのではないか。昨日も申した自立精神の欠如が一番大きな原因と私は考えておる。
  134. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。日本の物価高の原因はどこにあるか、これは私はいろいろあると思いますが、大きな観点から見ますと、やはり敗戦経済の結果だと思います。と申しますのは、戦後、敗戦後若しアメリカが援助もせず、本当にドン底に落されておつたならば、恐らく私はもつと財界の立直りも現実にはやつたろうとこう思うのであります。併しまあ我々が餓えずに、或る大蔵大臣が一千万人餓死するだろうというようなことを憂えられておられましたにかかわらず、そういうことがなくて済んだということは、他の援助によつて済んだ。それから又いろいろ財政政策におきまして健全財政をやつて行こうとしておる時に、朝鮮特需が出て来て、そうして非常な物、金が外国から入つて来た。こういうことは経済のために、立直りに不便を感じてそうして来ておるのでありますが、若し大きな観点から言いますれば、先ほどの敗戦経済、同時にその後におけるところの日本の置かれた国際的、国内的の情勢にもよつて物価高が是正されてない。そこで対外競争力はない、こういうふうに考えております。
  135. 青木一男

    委員長青木一男君) 時間が来ておりますから簡単に願います。
  136. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は企業者の努力が足りないと言いますが、今後物価を下げて行くために、企業者の努力を要請するというほかにお考えはないのですか。それと、今の通産大臣の御答弁の、今後日本の物価をどう下げて行くかという具体的政策は、ここから出て来ない。金利が高いといいますが、金利については私は利子率が高いのか、或いは全体の借金の金利の負担が高いのか、ここが問題なんです。利子率が高いのではない、実情としては。これは経済白書にも書いてあります。ちやんと、経済白書の利子率が高いということよりも、むしろ銀行からの借入金が非常に多くなつて、そうして経済情勢は変らないので、借金のボリュームが大きい、自己資本でない。その金利負担が大きいのですね。ですから対策を講ずるときには、利子率を下げるということよりも、むしろ販売量よりも、販売量に対して借金が多いのです。それが根本の原因は、流動資産の回転速度が低いということなんです。金利のことをやかましく言えば、MVイコールQPというやつで、MVのMが通貨量、Vが流通速度、QPのQは物資の供給量、Pが物価、これが均衡しなければならん。物の回転速度が低いために金利負担が大きいのです。金利問題はこういう形で解決しなければ、例えば八幡製鉄所について具体的に検討されて御覧なさい。利子率が高いのじやないのです。実際においては、いわゆる銀行に払う金利が高いのです。お金がない。それはなぜかと言いますと、アメリカのU・Sスチールでは年間二十九億ドルの売上高に対して、流動資産というものは七億ドルです。これに対して八幡は六百億ぐらいの売上高に対して、大体匹敵するくらいの流動資産、これでは金利負担が多いのは当り前である。利子率が高いのではないのです。金利問題もこういう点から捉えなければ、私は本当の正しい金利負担の軽減によるコストの引下げはできないと思う。更に私は、今の日本の物価高は、結論から言えば通産大臣大蔵大臣に責任があると思うのです。なぜならば、私は今の物価高は、いろいろ原因はありますよ、こういうものを、そのウエイトから言えば、第一は輸入抑制によるところの、それを原因として独占価格の引上げなんです。最近の独占の実情を考えて御覧なさい。これは顕著なものです。而も独禁法を改正して、又価格が上るのです。これがどうして輸出振興になりますか。そういう点。それから政府は合理化合理化と言いますが、合理化によつてコストを下げるのか、或いは価格を、物価を上げるのか、最近の実情は、合理化によつてコストは下つても物価は下つておりません。それだけ企業利潤がただ殖えるだけであります。而も八幡、富士とが今度協定をやれば、独占価格はますます上るばかり。これは通産大臣に重大な責任があるのです。外貨割当を挺子として、そうしてこの独占価格を引上げる。従つてこの物価高に対する対処策物価を下げる方法は、輸入には九億ドルの外貨を利用して、そのうち約五億ドルで輸入をどんどんすることなんです。輸入を充実することによつて物価は下る。これは私は今の物価高の重大なる原因がいわゆる輸入抑制にあると思う。だから輸入をどんどん自由にすれば、カルテルを行なつて独占価格を引上げようとしても引上げられない。戦前においてはそうであつたのです。戦前において独禁法というものはなかつた。なかつたけれども、なぜ弊害がなかつたかと言えば、輸入は自由である。この点は着目すべきことであります。今後の物価政策としては、だからコストを下げるのか、物価を下げるのか、合理化についてその点をはつきりさしてもらいたい。  もう一つは、大蔵大臣の責任、各銀行の信用インフレ、これはイタリーにおいても重大な問題になつたのです。朝鮮戦線の結果、海外物価が高くなる。海外物価が高くなつた時に、そのまま国内物価に反映さしていいかどうか。これに対する財政金融政策を如何にするかということは、イタリーの苦心したところなんです。どうも政府の財政金融政策は、いわゆるケインズ理論に毒されている。経済審議庁もそうだ。いわゆるケインズの均衡理論に基いて、物価が上れば必要な通貨量を供給しなければならん。こういうケインズ理論に毒されている。最近大蔵省から非常にいい調査を私は配付されました。調査月報に、あのイタリヤのインフレ経済学者の有名なブレスチヤニチユロニ氏が、この朝鮮動乱以後のイタリーの財政通貨均衡政策というものを論じている。ここでイタリー政府は弱つたのです。朝鮮動乱の物価高をどうしてこれを国内に反映させないか。これをケインズ理論で行けば、物価が上つた。その必要通貨量を殖やすという理論をやつて来た。今度は、ところが政府はこの信用インフレから財政インフレに切り替えようというのが二十八年の予算です。信用インフレから財政インフレに切り替える。ですから過去の蓄積をたくさん使つて、千何百億の支払超過にする。そうして信用インフレを財政インフレに切り替える、財政インフレに切り替えたらこのインフレが恒常化してしまう。信用インフレと財政インフレの違いは、信用は銀行で金を貸せば貸す、財政インフレは政府が出せば出す、初めは返すと言つてもなかなか返らん。そこでインフレが恒常化してしまうのです。そこでイタリー政府はどうしたか、ケインズ理論を否定しておる。ケインズ理論に基いたらそうなるのであつて、やはりこれは金融政策、引締政策をとらなければならんということを言つております。それをやつてイタリーは成功しているのです。併し最近又戦時財政に入りかかるので、これはこの政策は又再検討されて、財政金融政策の引締政策でいいかどうか。今度はいわゆる再軍備財政になれば、再軍備経済になれば、直接統制をやらなければならんのかどうかということが問題になつているのです。今の日本の財政金融政策は、先ほど大蔵大臣が無原則のような財政原則と言われましたが、金融政策についても無原則、ケインズの安易な、いわゆる必要通貨量はこれは出すというような、そういうようないわゆる均衡理論、これは根本的に政府考え方としてこれから再検討して行かなければならん。失礼ですが官僚諸君は大体ケインズ理論の信奉者だ、それを行政面に反映しておる。ケインズ理論は間違いです。イタリーにおいてはつきりわかる。ケインズ理論によりインフレを行なつたならば、イタリーは、朝鮮戦争による非常な経済的影響を受けて、日本が当面しているような物価高に苦しんだと思うが……。
  137. 青木一男

    委員長青木一男君) 時間がありませんから簡単に……。
  138. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 理論的に批判し、そうしてこれに対する財政的措置を講じた。……私は時間がありませんから、大臣に質問するものだけを質問しているのです。あとはあれします。この点御答弁願いたい。  それからもう時間がございませんから、簡単に外務大臣に、折角私要求してお見え頂いたのですから。簡単に二つの点を○一つは、MSAを日本がなぜ受けなければならないか。MSAを受けることによつて日本がプラスになると言われていますが、どういうわけでプラスになるか、これはマイナス面もあると思う。ですからプラス面とマイナス面を具体的に伺いたいということ。もう一つは、最近アメリカにおいてタフトがこの対外援助打切りの声明を六月五日にやつております。これは御承知のことと思います。これによつて今後のアメリカの対外援助は期待できないと思う。今MSAを仮に受入れて、それで日本が軍備を拡充する、将来又MSAが、援助が来ると思つて期待してやると、このタフト六月五日のいわゆるバーミューダ会談において声明したこの対外援助打切りの声明を見ますと、これは世界的に大きなシヨツクを与えている。フランスにおいてもイタリーにおいても、イギリスにおいても大センセーシヨンを起しております。今世界的には対外援助打切りを大変心配しておる。日本においてはこういうことが考慮されておるのか。もうMSAの段階は終ろうとしている。終ろうとしている今、化け物が引つ込む場面になつて、今度は日本政府のほうが交渉を始めるのですから、私はこの点について、重要ですから、伺いたい。  それから保安庁長官に最後に一つ伺いたい。保安庁長官は、前から日本の保安隊はアメリカの傭兵ではない、又日本独自の保安隊で、防衛実力を持つておる言つておる。日本独自のというのはどういうものであるか。今の保安隊は戦時編成です。一管区三万台のこの人員というのは戦時編成です。普通平時というと八千から九千です。朝鮮戦争が終れば平和段階に入るから、これを平時編成に変えられないかどうか。それから今の部隊の編成はアメリカ的部隊編成です。D・D部隊、凍冷部隊とか、それから前線の補給部隊と前線部隊の比率は一対一であつて、これはアメリカ的編成なんです。訓練もそうであります。従つて日本独自の防衛実力にするということは具体的にはどういうことなんでありますか。いわゆる三軍方式、陸海空軍というものを持つか。アメリカは海空は持たせないで、地上軍中心で行くという考えのようでありますが、ここに一つの食い違いがあると思うのです。日本独自の防衛組織というのは、陸海空三軍バランス方式を言うのか、又部隊編成についても、前線と補給との比率をどういうふうにするか、日本式にするか。兵器の扱いについても、今は兵器の修理部隊があつてアメリカはどんどん無駄に鉄砲を使わしておるんです。弾丸も無駄に射たしておるんです。そのために兵器が早く損傷するので補給部隊があるんです。日本の昔の部隊は兵器を大切にしたものです。(「簡単々々」と呼ぶ者あり)その点で日本式軍隊ではないんです。今の仮に保安隊を是認するとしても……アメリカ式訓練によつて非常に贅沢な、この貧乏国をして支出すべからざる支出を無駄にして、いわゆる兵器なんかも平気で無駄に使つておる。弾丸も無駄に射つておる。そういう意味において日本式の防衛組織というものはどういう構想なんですか。  更に昨日か一昨日か、二十三日に松原氏の質問に対して総理は、今の日米安全保障条約の下で防衛計画を作りつつあるということを言われておる。総理が言われておる。
  139. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君、一つ簡単に。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで保安庁長官は、防衛計画を作りつつあるのか、総理が言われておるんですから、その点も併せ御答弁を頂きたい。
  141. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。木村君にはつきり申上げておきたいのは、日本の保安隊は只今軍隊ではありません。保安庁法第四条に明記されてありまするごとく、我が国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するために設けられたものであります。そこでその編成組織はアメリカ式ではないかというお問でありますが、必ずしもアメリカ式とは申すことはできません。只今四管区があることは御承知の通りであります。四管区において大体一万五千名、これが根幹をなすのであります。あとは施設衛生、管理その他の部隊であります。この訓練方式については、従来はアメリカの指導を頼つておつたということはこれは事実であります。併しながらいつまでもアメリカの指導を受けるべきではないという建前に……御承知の通りに顧問国も随時引揚げております。只今我々といたしましては、この治安防衛に備えるような建前を以て如何に編成し如何に訓練するかということに相当頭を悩ましておるものであります。追つて独自の日本式の部隊ができ上ることと考えております。  先日松原委員に対する総理の答えはどうであつたか、私は聞き漏らしたのでありますが、只今防衛計画を立てておるということを言われたとすれば、それは研究中であるという間違いではないかと思います。我々はやはり今後日本が独立国家として行く以上は、直接侵略に対する場合についても或いは考慮しなければならんかと考えておりまするから、日本の内地の治安情勢に基く防衛治安計画、もう一つは直接侵略に対する防衛計画ということについて只今研究中であります。併し具体的の計画の案というものはまだ立てておりません。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本独自という意味を伺つたのです。
  143. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本独自というのは、日本の地勢その他の国情に副うように、而もこれは日本人でありまするから、日本の精神に基いたやり方をやつて参りたい、こういうことであります。
  144. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 日本の物価問題についていろいろお話がありましたが、その点について昨日私は日本の物価問題の観点から、インフレに持つて行かないということについて財政と金融の一体化のことを述べ、更に堀木委員の御質問に対して相当具体的に詳しく私見を述べてあつて、今朝の日本経済等に載つておりますから、無軌道だとか何とか言われましたが、あれを一遍お読み下されば相当考えていることがわかると思うのであります。更にいろいろ又御意見があれば承わりまするが、それから今金融についての又お話がありましたが、会社等の資金関係はこれは私もよく承知しておることであつて、それあればこそああいう意見をいろいろ申しておるのであります。それから、いや五億ドルを十分この際大いに外貨を使つてどんどん輸入して行けば物価は直ぐ下る、こう言われましたが、それは恐らくその通りです。併しそういうことが日本の経済界をどうもつて行くかということは、これは今みずから仰せられたジャーナリストならこれくらいのことはおわかりにならんことはないと思う。日本は五億ドルの外貨を使つてどんどん輸入したときに、日本の経済界にどういう混乱が来るか、それを御存じない木村さんじやないと思いますから、これに対しては敢えて説明を加えません。
  145. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。成るほど外国の例でみますと、資本金の廻転率が非常に多い、これは事実でございます。これはやはり私が先ほども申上げましたように敗戦の結果なんです、と申しますことは、御承知の通り今は銀行預金が二兆二千億円でございます。又全金融機関の預金が三兆四千億になつておりますが、これを九—十一年に換算してみますと約四割くらいにしかなつておらない。そのくらいの資金しかない、同時に敗戦後にやらなきやならん国民生活に関係する仕事が非常に多い。地方財政を私やつておりましたが、今地方のいろいろな、普通の国土に直して行こうとするために起債額を要求しております額が、私がおりました当時二千五百億以上でありました。それをかけまして初めて普通の国土に、国土というか、道が直るとか、川が直るとか、橋が架かるとかいうことになつて、それに国土に対する資金がございませんので、毎年五百億くらいの資金しか政府は出しておらない、こういうことであります。それは結局敗戦によつて物を打ち毀され、同時に十年の空白の間にいろいろな近代設備が遅れておる。そうして生産をやつて、世界競争をやつて行くためには向うと匹敵のできるような設備にして行かなければならん。そういたしますと、いわゆる毀れたものを直し、同時に古くなつた機械を直し新らしくして行くということについては自然に固定せざるを得ない、廻転速度が遅くなるのは当り出であります。その廻転速度が遅くなるにかかわらず、それに与えるところの資金というものは先ほど申上げましたように非常に枯渇しておる。これが結局私は金利も高いと、又世の中がうまく行かん、こういう結果だろうと思います。併しおいおい我々としてもそういうことを直して行きたいために自立経済をいろいろ考えてやつております。そこで合理化、合理化といつておるけれども一向物価は下らんじやないか、こういう御批判でありますが、あの合理化ということを考えますと、先ず我々といたしまして敗戦後普通のものを復旧するということに対して先ず努力する、それから今日に至りましては外国と競争しなければならないから合理化して行かなければならない、合理化は遅れております。殊に朝鮮動乱が起きまして以来国民が安易に馴れたと申しますか、努力が鈍つたと申しますか、そういう点において合理化が鈍つたという点はありますが、その合理化に着手いたしましてからなお日まだ浅うございますので、その結果が今日まだ現われていないということも事実でございます。  それから物価の点でございますが、お説の通り今大蔵大臣からも御答弁申上げましたが、あの輸入をうんとすると、もつと物を増せば物価は下るだろうと、これはその通りでございます。ただ問題はそれがいつまで続くかの問題でございます。十億ドルの資金があるじやないか、それでどんどん輸入したらいい、併し我々といたしましてはこの十億ドルというものは伊達に持つておるのではなくて、朝鮮特需というものがあつたればこそ初めて貯つた金であります。若し正常貿易でありましたら貯りつこない、いわんや今後特需が減るということになれば、ますます以てこれは正常貿易をやつて行かなければならないということになる、やはり相当の肚構えで行かなければならないので、只今あれだけの金を使つて、そうして物価を下げるということに役立てるということは私はどうかと、併し木村さんのお説は理論的には正しいと思います。若し今日非常に何か必要品が足りなくて、そして物価が上つて、そしてそのために国民生活に非常に影響を及ぼすという場合には、或いはその外貨を少し食い潰して外国から輸入する、日本の物価を下げるよすがにする、これは非常に経済的な常道だと、こう考えます。併しそれは程度がございまして、程度によつてやるべきものだとこう考えます。  それから独禁法の問題ですが、あれは建前の観点が違います、と申しますことは、あの独禁法の今度の改正によりまして、如何にも独占資本家、若くは独占価格を維持させるということにおとりになつて下さることは我々の本旨に違うわけでございます。と申しますことは、御承知の通りに非常に今日経済の、底の浅い日本の経済でございますから、若し生産需給のバランスが失われた場合には、基礎が固うございますというと或る程度持ちこたえられますけれども、併し基礎の浅い経済におきまして需給は非常に不均衡になつたという場合には、その産業若しくは関連産業というものがばたばたと直ぐ倒れて来ると、こういうような危険がありますので、そういうようなときに災害の危険を救うためにとつて置きの宝刀でございます。そういう意味において不況カルテルを今度やつて行く、励行して行く、こういうことでございます。
  146. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) MSAの援助につきましては、これは日本の防衛力強化でありますから、ほかの情勢が許せば受けたいことは当然考えておりますが、ただ本来から言えば防衛力の増強というようなことは日本自分の力でやるのが当然でありまして、それをアメリカの援助を受けるということになりますと、今いろいろお話のありましたような一種のこの竹馬と言いますか、そういうものでありまして、いつかこの竹馬の脚を切らなければならないという時期も来るわけでございますので、それを不利益と私は申上げませんが、その点は十分考慮しなければならないと考えております。  なお、なぜ今頃になつて援助を受け出したかと言われますが、昨年までは受ける資格がなかつたのでありましで、受けるとすれば今年からであります。その今年からでもまだ数年は私は続くと思つております。で、数年にしても日本の力をとにかく今必要とするものを援助によつて増し得るならば、これは受けて一向差支えないと思つております。で、これについて、よくアメリカの属国になるとか、或いはアメリカの傭兵になるのだとかいうような説をなす人がありますけれども、これはイギリスやフランスの例その他をとつて御覧になればよくわかるのでありまして、これはとるに足らざる考え方であつて、こういう意味の不景気は全然ないと考えております。
  147. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後のあの見通しは全然ないのですか、タフトのあれですよ、打切声明。
  148. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) まだ数年続くと申しております。
  149. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 議事進行について。今回は日曜日で、大変協力しまして、安息日でしたが、予算の進行にも協力したのですし、一つこの辺で御勘弁願いたいと思うのですが。
  150. 青木一男

    委員長青木一男君) 適当な時間に。
  151. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 国会法によつてつて頂きたい。
  152. 青木一男

    委員長青木一男君) 中田君、今のは動議ですか中田君。
  153. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 関連しまして、先ほど木村委員からいろいろ資料の提出を要望しておりましたが、委員長はその後何か特に運輸省の方面にお話なさいましたか。木村君はそういう資料がなければ審議に入ることはできないということをはつきり言つておるのですが、その後の資料の提出の見通し等につきましてお伺いしたいと思います。
  154. 青木一男

    委員長青木一男君) 先ほどの木村委員の資料要求は私からも当局に重ねて早く出すように催促しておきました。そうして木村委員の発言についてはその問題に関する限り留保されていることを委員長は認めております。
  155. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 運輸省方面におきましてはどういう程度の資料を提出するのでございますか、特に木村君が要望している厖大な書類というものは書き写すことが不可能であるというような話でございますが、それならば、生の材料を持つて来るのかどうか、その辺のところはどういうお話でございますか。
  156. 青木一男

    委員長青木一男君) その方法の詳細は委員長承知しておりません。併しできる限り木村委員の満足されるような資料を提供するように私から申上げてあります。
  157. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 木村君がはつきり言つておりますように、その資料が提出されなければ審議にも入れない、こういうことでありますので、この点につきまして先ほど中田君も言われましたように、一応この程度で休憩なさつたらどうですか。(「反対々々」と呼ぶ者あり)
  158. 青木一男

    委員長青木一男君) 只今の中田委員、松澤委員の御発言は散会の動議と私は解します。(「委員長、寛大に一つ」と呼ぶ者あり)これで散会することに賛成のかたの挙手を願います。皆さんの御意思によつてやりますから。それではどうもこれでやめることに御賛成のかたは余りないようですから、中山委員の御質疑を継続……(「採決でやらないでおいてずるいぞ。」「もつと話をつけて下さい。国会法に則つてつて下さい。話がつかないうちに何だい。」と呼ぶ者あり)   —————————————
  159. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は本質問に入ります前に、簡単でありますから、農林省のかたに二点だけ質しておきたいと思います。  元来外米の輸入というものは大体二千万石と言われておりますが、先ず千四百億円くらいのものでありましよう。この外米を日本に輸入いたしましたときにこれに消毒の方法が施されておるのでありますが、現在私の承わるところによりますというと、その米がその消毒のために黄色に変つて、いわゆる黄変米と言われる特殊の米ですが、そういうものになつてお互いに飯米として食べることができないというような立場にあるということを承わつております。それを一段格を下げて、極く低価にこれを一般市場に放出するというような手が打たれておるということでありますが、相当海外輸入米の問題というものは長く論議せられておりまするから、この消毒の方法についても相当考慮せられておると思います。ところが今日までなお継続しておるということは、非常にその面に対する当局の怠慢ではないかと実は考えておるものですが、現在約五千石あるかと承わつておりますが、この黄変米の処置はどういうふうにしておられるのですか。これは非常に大事なことでありますから、ちよつと承わつておきます。如何なものでございましようか。
  160. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 最近非常にやかましくなりました黄変米の問題でございますが、主としてビルマ、タイ方面から輸入いたしました外地米が、細菌の作用によつて、変色をしておる。私の承知いたしております黄変米の経過は、昭和二十六年の十月から二十七年の一月までに輸入いたしました分について約九千トン、二十七年の十月以降に輸入した部分について一万三千トンという厖大な黄変米を出しておるわけであります。これはまあ申すまでもなく相当今日の貿易上の主要面を占めております外貨を以て買入れました米が食糧に供せられないというようなことに相成つておりますので、これは今後とも非常に重大に考えて行かなければならないわけでございますが、そこでそれじや黄変米というのは、一昨年頃から急にできて来たものか。終戦後ずつと外地米が入つてつたのに、一昨年の十月から急に黄変米が出て来たのか。どうもそうではないようでございまして、終戦後ずつと入つて来ておりました中にも無論とつたわけなんです。ただそれが問題になつていなかつたわけですけれども、この黄変米がどうも有毒菌がついている、これは有毒菌の作用であるというようなことがいろいろの研究所や試験所あたりで問題になつて、農林省の食糧研究所でも現在も研究を続けておりますが、この菌の種類によつて有毒である。その菌も現地で買い付けて輸出しますときにはちよつと白くて肉眼を以てしてはわからない。それが輸送途中においてむれて来る。それで変色して来るというようなことになつておるようですが、そこでこれをどういうふうにしてそういう危険性のある米を買わないようにするか。無論現地で検査もしますけれども、併しこれは五人や十人で大量の買い付けをしておりますから、一俵々々検査すると言つてみたところで、事実上これはできはしない。そこで大体雨季明けのあとのビルマやタイの米は買わないほうが一番安全だということで、雨季明けのビルマ米やタイ米を買いますときにはよくよく注意をしなければならない。併しこれはもう買わないにしくはないというようなことを考えておりますが、そこでその黄変米という食糧の用に供し得ないものになつた九千トン或いは一万三千トンというものをどういうふうに処分しておるか、これが問題であろうと思う。これは二十六年十月から入りました九千トンの分につきましては、すでにこれは処分をいたしております。アルコール用として四千トン、薄溜酒用、焼酎でございますが、これが同じ程度の四千トンを処分をいたしておりますが、この処分方法につきましては、いろいろ御意見のあるかたもおありのようでございますけれども、私といたしましては、とにかく国民の負担によつて多額の外貨を使つて入れておる米のことでございまするから、この処分も決して国民の納得の行かない方法を以てやるべきではない。過去は過去として今後私は引締めて参るつもりでございます。そこでこの黄変米の処分につきまして、今一万三千トンあるわけです。これをどういうふうに処分するか。厚生省の衛生試験所でこれは有毒だから食糧に供しちやいかん、まあこういうふうな意見を出されている。農林省の食糧研究所では今日持つております黄変米は必ずしも有毒じやないということを言つておるようでありますが、専門家の間にもこれは有毒だ、有毒でないというように見解が分れておるようですけれども、とにかくこれは国民保健に大事なことでございますから、農林省としては大事を踏んで、その分は食糧に回さないということで、その処分をどういうふうにするか、できますれば、まあ衛生試験所のその注意に従いたいと思うわけですが、衛生試験所の注意では約一%までのものは、これはまあお菓子の用とか、或いは味噌用とか、そういうものに使つたらいいだろう。それから一〇%くらいまでのものは蒸溜酒、焼酎、まあそういうものに使つたらいいだろう。それから一〇%を超える分はもう全く品に入るようなところに使わないように、工業用アルコールに使つたらよかろうという注意がございましたか、文言で以てそういう衛生試験所の回答が参つておりますので、それに基きまして、できるだけ合理的に処分をいたしたいと考えております。
  161. 中山福藏

    ○中山福藏君 私どもは高い税金を払つて石一万二千円という外米を輸入しているのでありますから、それが黄色く変質して、そうして食膳の上に乗せられないということはこれは国民の悲劇だと思う。そうして成るほどその有毒か無毒とかという議論が学者の間にあるとおつしやいますが、或る意味において私どもは命がけで飯を食わなければならんということになりますけれども、そこで一つお尋ねをしておきますが、このたくさんの外米は普通の準内地米としてこれは売出してあるはずだと思うのですが、その政府の売出された価格と、この黄変米処理という意味において処理された価格との値開きというものは大体どれくらいになつているわけなんですか、一石当りどれくらいですか。
  162. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) お答え申上げます。黄変米の混入いたしておりますのはビルマ等の南洋米でございますので、いわゆる準内地米として取扱つておりませんで、普通外米として取扱つているわけでございます。従いまして普通の配給価格におきましても、十キロ六百八十円に対しまして五百八十円という価格で配給いたしているわけでございます。昨年度の黄変米につきましては、現在、只今大臣から御説明がございましたように、まだ処分をいたしておりませんが、一昨年の場合におきましては、大体配給価格のトン当り五万二千円程度に対しまして、売却価格は三万円から三万二、三千円ということに相成つております。
  163. 中山福藏

    ○中山福藏君 時間がありませんから、いろいろお聞きしたいと思うが、この問題はこれで一応打ちとめましてもう一つお聞きしておきます。昨年麦の統制が外されて、相当トン数のいわゆるメリケン粉があつたわけなんです。これが巷間伝えるところによりますれば、前食糧庁長官をしておりました安孫子さんが代表されて、代理されてたくさんの願いが出されて、一般市場においてトン八百五十円という値段で売出されたということを聞いておりますが、そういう事実があるのでしようか。
  164. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 昨年御承知のように、麦の統制撤廃で、そのときに政府が抱えておりましたメリケン粉が七万二千トンあるのであります。それを自由になつたわけですから、当時政府手持のものを各食糧事務所で入札払下をいたしまして、それが九月までにおよそ五、六万トン、私正確なことはわかりませんが、五、六万トン払下げた。そうしますと、その間に今度はどんどん自由になつたものでございますから、その政府の手持の歩溜りが七八%という規格があつて、かなり黒い小麦粉であつたのです。製粉会社はその間にどんどんこの歩溜りを落してそうして精製小麦を作つて行く。九月までに処分未済の分が二万トンほどだつたらしい。その頃では一般市販には真白い小麦粉が出ている。政府の持つているものとは随分格が違つて来ているわけです。その分について随意契約で処分をしたようでございます。その中に、中央で処分しておりますから、全国製パン協同組合連合会、日本製パン協同組合連合会、日本ビスケット協会、栄養食協会、小型製粉協同組合連合会、日本小麦粉、澱粉加工協同組合連合会、この六つの団体に払下をしているようであります。食糧庁長官に今聞きましたけれども、価格がまだどういう値段で払下げたか、書類を持つていないようでありますからわかりません。お話の前食糧庁長官の安孫子君がこの中の全国製パン協同組合連合会の会長に昨年十二月就任されました。大体はその前のでき事だと思いますが、そういう事例はございます。ただ私どもといたしましては、食糧庁の自己米或いは自己麦の払下をめぐつて、食糧庁等の職員のために甚だ不名誉な流説が出ておりますから、これ又食糧行政をやつて行きます上から行きましても、ここにかかつております国民負担の関係から行きましても、ここの行政は一つ心の注意を以て引締めて参りたいという決意を以て私は臨むつもりであります。
  165. 中山福藏

    ○中山福藏君 黄変米の実態といい、このメリケン粉の払下といい、これは大体時価にいたしますと、値段がトン八百五十円いたしておつたのを六百五十円で特殊の人に指定して払下げて、開きがトン当り二百円であるということを私承わつた、時間がありませんから、いろいろ私材料を持つておりますが、これ以上申上げません。何とぞこういう点については保利農相において深甚の御注意を一つお払い下さいますように私は特にお願いして、これから本質的な質問に入りたいと思います。  私は前回、日本が財政的に非常に逼迫しているから、移動大使の設置の問題につきまして総理にお尋ねしたのでありますけれども、これもどうもイラクに公使館を設けたいというような御返答だけで打切られたのでありますから、特に今回は私はかねて最も必要な問題だと考えておりますこのエジプトに是非とも大使館を設置して頂きたいということを、本年は特にお願いしたいと思つて、今日更に外務大臣に御意見を承わりたいと思うのです。それは先般或る新聞の報道によりましても、エジプトにおきましては、インドやインドネシアあたりすらも大使館をおいているのに、何故日本は大使館をおかないか、こういう質問を政府の要人がやつているんです。殊にアラブ連盟の事務局のボタン一つ押せば、このボタン一つを以てアラビアの七カ国、この前申しましたようなアラブ連盟の七カ国は勿論、回教を信じております十三カ国にこのボタン一つで直ちに響くのであります。だから與謝野秀氏が全権公使として駐在しておられますけれども、この重要なボタン一つを如何にして押させるかということは、これは私は日本にとつて大きな問題だと考える。殊に北アフリカにありますところのモロッコのカサブランカから東いたしておりますアラビア人の二千万の勢力というものを、私どもは到底これは看過するわけに参らんのであります。たから私は特に今日は一つその点について是非とも大使館を設けるという御言明を得たいと思つて実は来たわけですが、どうですか、外務大臣如何ですか。
  166. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) エジプトにつきましては、お説のように重要性を認めております。只今準備を進めておりますが、来年度予算には恐らく計上ができることと信じております。
  167. 中山福藏

    ○中山福藏君 大変どうも有難い御答弁を頂きました。それからその次に先だつてトランスヨルダン、いわゆるヨルダン国に対して日本人の入国が禁止されたという報道を私は受けておるのですが、その事実はあるでしようか。それから又あるとすれば、その理由はどういう理由でございましようか。
  168. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) どうもその報道は間違いのように思いますのですが、更にエジプトその他トルコとかの方面に連絡をいたしまして、なお確かめておきます。今のところは間違いじやないかと考えております。
  169. 中山福藏

    ○中山福藏君 我が国は昨年石原外務政務次官をインドに派遣されまして、平和条約を日印の間に締結されて、その第四条には結局インドにある日本人の戦争前の財産というものは、日本に返すということが書かれてあるはずだと思うのです。今日これに対して一年を経過いたしておりまするけれども、行政措置或いは外交措置というものは、この点についてとられていないように私考えるのでありますが、私どもの一番気の毒に思つておりますことは、戦前海外にあつてたくさんの財産を築き上げた人々、営々として血を流して、或いは朝に星を頂いて、それこそ千辛万苦してこしらえた財産というものが、今日の日本人の手に返らんということにつきましては、非常な同情の念に堪えない気持でいるのでありますが、先ず以てこの条約の締結されたインドに対するこの問題についての外相の御所見を承わつておきたいと思います。
  170. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この日本の財産につきましては、日本側ではおのおのの関係者から書類を取寄せまして、一応のリスト等を作つておりますが、インド側からこの債権者の名前とか、書類とか、金額とか、こういうものの提示を求めまして、これを突き合せて決定するわけでありまして、この提示を求めることを大分前に申入れてありまして、向うでも進めているそうでありまして、近く回答があるのじやないかと思います。回答がありますると突き合せまするが、大体それで合いまするので、いよいよ今度は返還の実施の手続きを作るわけでありまして、もうそう遠いことじやないと考えております。
  171. 中山福藏

    ○中山福藏君 そこで一つ次の問題をお尋ねするのですが、私昨年法務委員会におきまして、津島壽一氏が賠償問題に関するフィリピン使節としてフィリピンに行かれたのでありまするが、その時、お帰りになつてども委員会に御報告になりました、その要点は、私が大体フィリピンが八十億ドル、インドネシアが百億ドル、ビルマが二十億ドル、合計二百億ドルの賠償の要求を日本にしておるように思うが、その損害の基準というものはどうしてでき上つたんだ、基準というものはどこに求めたのだという質問をしましたところが、それは計算をしていないと、こうおつしやるのですね。計算をするというと非常に時日が長くかかつて、却つて向うの感情を害するから、まあ向うさんの言う通りに、向うの要求額をどうして払うかということについて頭を傷めておる、こういうことをその当時の津島大使は私に法務委員会でおつしやつた。そうして今度インドネシアの要求額を近頃新聞で見てみまするというと、今まで百億ドルというものを要求しようと考えておつたのを、今度二百億ドルという嵩が又被せられて、日本に要求するのだと、近く使節団というものが日本に来るのじやないかということを書いておりますがね。これは何でございましようか、外務省としては、この津島大使の法務委員会においての御説明の通りに、向うさんの言う通りに、計算の資料というものは何もないわけなんでしようか。これは国民として大きな問題だと思いますから、特に外務大臣の御答弁一つ承わつておきたいと思います。
  172. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) インドネシア側とは正式には何も今までのところありません。併しフィリピンのほうは、向うなりに計算の基礎はあるのであります。それをこちらが見て納得するかどうか、これは別問題でありますが、そこで我々の考えておりまするのは、もう一つ一つの標準になるものがある、と思いますのは、それはフィリピンがアメリカ側提出しました戦争損害の額があるのであります。その中でアメリカはすでに五億数千万ドル払つておりまして、更にもう一億ドル払うという交渉が行われております。これは大体十億余りでありますが、アメリカ側は今度交渉ができれば、その中のすでに約六億何がしというものが払われるわけでありますが、これなども一応の基準として見るべきものじやないかと思つております。これはいろいろ勘定の仕方によつて随分違いまするけれども、併し問題はやはり日本の払い得べき能力、日本の経済の維持に差し障りのない程度ということにもなりまするから、計算の基礎だけですべて話がきまるというわけにも参りませんけれども、やはりいろいろな基準はあると思います。そこでインドネシアのほうは二百億ドルというようなことをおつしやいましたが、実はその話は聞いておりませんが、ずつと今までの印象では、インドネシアといえども日本の支払能力を無視したような非常な……、この計算はどうしますか知りませんが、実際の賠償の払い方としては、そういう非常な額を考えておるとは思われないふしが多分にあるのであります。
  173. 中山福藏

    ○中山福藏君 次にお尋ねいたしますが、今月の二十日の外電によりますというと、英国の外務省の発表したところによれば、英米仏の外務大臣が協議をして、ドイツの戦犯の再審の問題を取上げているように見えているのであります。合同委員会を設置して速かにこの戦犯釈放の挙に出よう、まあこういう態度をとつているということを承わるのでありますが、先般私は犬養法務大臣に対して、日本の戦犯に対する再審がなぜ遅々として今日に及んでいるかということを法務委員会で聞いた。その実例として約十日ほど前に、関西の婦人団体がアメリカ大使館に参りまして、何とか一つ再審を早くやつてくれようにお願い申上げますと、こう言いましたが、それは一つ日本政府に早く請求してくれ、我々は請求しているけれども日本政府さんが材料を出してくれんから再審ができないのだと、こういう答弁なんです、このアメリカで大使館か……。そこで私は犬養さんにこのことを申上げて、そうして一体どうしておるのだということを尋ねますというと、それはもうとうの昔に済んでいるはずだと、こうおつしやる。何が何やらさつぱりわからんですね、私どもとしては……。そこで犬養さんに頼みまして、その材料というものをアメリカ側に送付したかしないかという確たる返答を頂きたいということを私はお願いしているのであります。これは今日まで犬養さんは巧妙な答弁をおやりになつて、そのままになつておるのですが、これはどちらが事実でございましようか。当の衡に当られるところの外務大臣から一つ承わつておきたいと思います。
  174. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) アメリカ関係のみならず、各国のBC級の戦犯者に対する更生保護委員会の勧告は、私の了解するところでは多少の違いがあるかも知れませんが、殆んど全部勧告の案は済んだと思います。ただ法務省へはすでに行つておるのですが、これは相当一人々々が厖大な資料なんでありますが、その翻訳等に非常に手間取つておりまして、アアリカなり、ほかの国に提出する分は全部まだ済んでおらないと思います。大体只今翻訳中のものが相当数あると思います。併しながら現状におきましては、アメリカも随分もう釈放してくれました。イギリスも、フランスも、オランダも今度やつてくれましたが、それ以上に勧告書は出ておりまして、その勧告に基いて今各国がやつております。こちらのほうの勧告は、A級を除きますれば恐らく今月中ぐらいには全部英文に仕上つて先方に届くという段階に来ておると思います。
  175. 中山福藏

    ○中山福藏君 そこでアメリカに交渉をして頂きまして、日米合同委員会というものを再審につきまして設ける御所存はございませんでしようか。
  176. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは平和条約に基きましてBC級の戦犯者につきましては各国において日本の勧告に基いて裁定をするということになつておりまして、現に遅くはありまするがオランダを最後として関係国いずれも仮釈放、減刑等の処置をとりつつありますので、私はこの際はそういうことをやらないほうがいいのじやないかと思います。尤もA級の者につきましては関係国が相当数お互いに相談をいたしまして態度を決定するということにアメリカが斡旋をしてやつてくれているそうでありますが、これは公表されておりませんので、はつきりは申上げられません。
  177. 中山福藏

    ○中山福藏君 それからお尋ねいたしますが、来年ブラジルでは四百年祭が大変盛大に行われるということを承わつてあります。一カ年間続いてその盛典が行われ継続されるということも聞いておりますが、これは私ども移民先のお得意として、移民地として実に日本に対しては大きな何と申しますか、善意を持つた国だと私ども考えておるのでありますが、その四百年祭に対しまして今から何とか一つ心がまえをして、将来今日まで通りの善意を日本に対して寄せられるように一つの仕組をしておかなきやならんと思うのですが、外務省では何かこれについて御企画を今やつておられるでしようか、又そのままでございましようか、これからお考えになるのでしようか。
  178. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはサンパウロ市の四百年祭でございますが、御承知のようにサンパウロ市はブラジルでも最も重要な都市でありまするし、又これには移民送出国でありますイタリーを初め各国とも相当大きな金を出してやつておりますから、日本としても相当のことをしなければならんと思つております。そこで今度の只今御審議を願つている予算には、例えば見本市を開くとか、そのときに使節を出すとかいう多少の経費が計上してありまするが、ブラジル側の移民たち計画は三億数千万に上る大きなものでありまして、そのうちの約半分近いものを現地で調達し、残りを政府国内で集めたい、こういう計画であります。併し政府のほうでこれに醵出する金は今計上してないのでありまして、これは遺憾ながら査定をされてしまいまして駄目になつたのでありますが、更に大蔵大臣にもお願いいたしまして、何とかこれを色をつけて政府が多少でも出すと言わなければ、なかなか民間から金を集めることは困難でありますので、是非大蔵大臣にもお話したいと考えております。ただそれは間に合いませんから、折角今ブラジルからも代表が来ておりますので、来月の四日でありましたか、私の名で関係する各方面の人々を総理官邸にお招きしましてこの事情をお話して、一萬田日銀総裁と共に寄附金の募集にとりかかる、こういう予定にいたしております。
  179. 中山福藏

    ○中山福藏君 伊関協力局長はお見えになつておりますか、お見えになつておりませんか。
  180. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今日は来ておりません、私が代りに……。
  181. 中山福藏

    ○中山福藏君 それじやお尋ねしますがね。伊関さんは今年の一月の頃だと思うのですが、大阪の実業家に懇談のために下阪されまして、大阪クラブで軍需品に関する重工業家をお集めになつて演説をしておられる。そのうちには、アメリカが大体日本に要求しておる兵数というものは三十二万五千人だということをはつきりとおつしやつておるわけなんですね。従つてこの三十二万五千人の装備関係については全部アメリカが負担するんだということを演説して、その結論として、皆さん重工業関係の方々は十分その下心を以て今から準備をしておかれないといけませんということで結論は結ばれておるのです。そうすると、その時分からこのMSA援助の関係については一応下準備が行われておつたのじやないかという疑いをそのときから持つておるのでございますが、この伊関協力局長のおつしやつたことは、これは簡単に自分、単独の意見で言つたのでしようか、如何なものでしよう。政府として一応関西の実業家にこの旨を伝えておけというようなことでもあつたのでございましようか、どうでしようか。そこは如何でございましようか。
  182. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはその当時産業経済新報ですかに出ておりまして、私もすぐ確かめました。伊関局長が参りましたのは、いわゆる特需関係仕事の内容について説明をいたすために行つたのであります。確かめてみましたところが、特需関係の内容についてはつきりいろいろな話をしたけれども、その新聞に出ていたようなことは申さないということでありました。そういたしますると、暫らく、一両日しましてですか、そこのその話をいたしました団体の理事長でしたか、書記長という名前でしたかから、非常に間違つた報道が出て誠に相済まないという謝りの手紙のようなものが公式に参つておりまして、又同時に産業経済でありましたか、その新聞からは如何ように取消されても異存がない、こういう言明もあつたということでありまして、あの報道自体はあのままではないと私は信じております。
  183. 中山福藏

    ○中山福藏君 外務大臣に対する質問はもう一点で、私文部大臣にお尋ねしたいと思います。私はこの間の戦犯釈放のフィリピンにおけるところの状況から考えまして、政府が、或いは議会が相手方の政府並びに国民に対して感謝の決議を贈呈した、これは結構なことですが、併しこの陰には個人的な努力が非常にたくさん払われておると思うのです。例えば大統領のキリノのところについておりまする法律関係の、何と申しますか、まあ吏員と申しますか、ミス・アントニオというような女とか、それから刑務所長のプニンエンとか、それからオシアスとかベラノというような両上院議員なんか非常に陰で働いたように思うのですが、外務省としては一応礼儀上或は将来のために勲章でも贈呈するという手続をなさつて頂くほうが国民の気持を相手方に表示する上において非常にいいのじやないかと私は考えますが、これは是非やつて頂きたいと思いますが、どんなものでしようか。
  184. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お話のように、この陰には非常に多くの人が働いてくれておりまして、只今お話にありましたほかにもまだ恐らく十指に余るくらい有力な人が皆やつてくれました。又ローマ法王のごときも先般フィリピンの外務大臣がヴアチカンを訪れましたときに特に外務大臣に対してこのことについて申入れをしてくれたことがあります。我々も非常に感謝しておりまして、何とかしてお礼の意思を表わしたい、こう考えましたが、実はフイリピンの中には随分異論もあるのであります、この処置に対しては。かなりの勇断を以てやつてくれたと思われる節もありまして、日本側から余り公式にこれに対して何かやりますと、何か今度とかくフィリピンのためを思わず日本のために働いたというような非難をややもすれば受ける心配もなきにしもあらずでありまして、この点はよほど注意をしなきやならんと考えております。只今のところは加賀尾氏を通じまして外務省からいろいろ斡旋をしましてそれぞれに相当のお礼の品なり、まあいろいろお礼の微意を通ずるために相当のものを加賀尾氏を通じていたしております。まあ後に至つて更に勿論手紙その他で謝状は出しまするけれども、こういう点は主として加賀尾さんを通じてやれるものはやる、又事務所長を通じてやつておるものもありまするが、こういう程度で今のところはやつておりますが、更によく考えてみたいと思います。
  185. 中山福藏

    ○中山福藏君 私もう一つだけ落ちておりましたからお尋ねしておきます。相互安全保障法の第五百一条の第一項の後段にこういうことが書いてあるのですがね、外務大臣。「この法律に基く援助計画が、(A)国内国外を通じて効果的に統合され、且つ、(B)世界の自由諸国民の防衛力ができる限りすみやかに継続的且つ効果的な自助及び相互援助の基礎の上に樹立されることを確保するように運営されるため、……これから私はお聞きを願いたい……同援助計画の継続的監督及び一般的指揮をすること、」という相互保障局の長官が指揮系統というものを一手に握つているようにこれはちよつと見たら思えるのですが、そうしてこの規定は監督及びこれを指揮するということを一手に引受けられていると、集団安全保障というような場合には、これに入つておりまする日本というものもやはり一つの指揮系統に入つて来るのじやはいかと思うのですが、そこにいろいろな問題というものを惹起する虞れはございませんか。
  186. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今お話は、安全保障法の五百一条の問題だろうと思うのですが、これは先方にも念のためでありますが、よく確かめております。この長官の監督及び一般指揮の責任は、本計画を実施するために米国側の国内及び国外にある機関を指揮監督する責任でありまして、相手国に対するものではないのであります。
  187. 中山福藏

    ○中山福藏君 その相手国に対する問題じやないというのが、やはりいろいろな相談ずくで、この規定に相手方がくくられて、日本に対して圧力を加えるという虞れは、懸念は将来出て来ないものでしようかね、そこを一つお尋ねしておきたい。そこが一番要点です。
  188. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この規定の一番の目的は、御承知のように、MSAの法律はトルコ、ギリシャに対する軍事援助、マーシャル計画、それから中国に対する軍事経済援助、北大西洋条約に基く援助、或いはポイントフォアに基く援助、それが皆責任者が国防省であつたり国務省であつたり、相互安全保障局であつたりして違つておつたわけであります。区々別々でありまして、統一がとれず、権限争いが始終あつたものですから、そこで安全保障局長官に一手に指揮監督を与える、こういう趣旨に出ておりまして、これは明瞭に内外のアメリカ機関に対して一人の指揮監督を持つものである、こういうことでありまして、相手側の国に対して全然関係のないことであるということははつきりいたしております。
  189. 中山福藏

    ○中山福藏君 その点は、はつきりしていることは私もよく了解しているのですが、何か無言のうちに圧力を加えているのではないかという虞れを抱いたものですから、ちよつとお尋たしたのです。  そこで文部大臣に簡単にお尋ねするのですが、日教組の問題ですね、これは大きな問題だと思うのです。五十万の教員を抱擁しているこの団体ですね、本年の一月二十五日から二十八日まで行われました会合には、四つの大きな研究題材が出ている。その中に、「平和と生産のための教育」という文句を使つている。平和ということは、御承知の通り火炎びんを投げても平和だというので、この言葉を使う人がむやみやたらにある。平和の意義というものは、日本人が二様にこれを解している。つまり或る共産主義的な実社会を実現するために闘争することを平和だと考えている人が間々ある。平和を唱える右の手に火炎びんが投げられるということは、私どもは現実にこれは見ている。そこでこういう「平和と生産のための教育」なんというものは、これはやりようによつては恐るべき実態として結論というものがそこに現われて来るのじやないかと思うのですが。そこで日教組に対する態度をこのままうやむやにして、文部省なんというものは、なに我々五十万の大勢力で抑えつければぐうの音の出ない、というような感じを持たれている今日において、これは私は生命を賭して、断乎たる決意を以て、文部大臣はこれに対処しなければならないと思うのですが、これに対しての文相の御覚悟は如何なものでしようか。
  190. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 御指摘の通り、日教組は五十万以上の我が国の教職員の団体でありますから、その動向については、常に相当な注意を以て見ているのであります。これは我が国の教職員全体に対して相当な影響力を持つている点から、特に注意しているわけであります。併し日教組の団体自身の、何と申しますか動き、それが政治的な動きがありましても、当面私どもといたしましては、これをすぐどうこうという気持は持つておりません。ただ我が国の義務教育乃至高等学校の教育において、教育基本法にいうところの教育の中立性を維持するということは、これはもう絶対に必要なことであると確信しておりますので、この日教組のいろんな考え方、この影響が直接に教育の、延いては教育の中立性を脅かすというようなことは、これは断乎として排撃しなければならん、かように固く信じているのであります。これはつきましては、文部省といたしましても、現在の権限のある限りにおきましてそのような措置を講じているのでありまして、御指摘の通り、「平和と生産のための教育」、これを言つたからといつてどうということではありませんが、併し平和のための教育ということで教育自身の上に特定な政治的な考え方、偏つた影響が及ぼされるということであれば、これはどうしても我が国将来のために排撃しなければならん、かように考えております。
  191. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はなぜ文部大臣にこのことを申上げるかというと、教育というものは現在その効果が直ちに現われるという問題じやないのです。この教員が学校で教えて、例えば七歳の子供に平和の理論というものを先ず頭に叩き込みますと、その効果が二十年後に現われる。だから今日共産主義を頭の細胞に植付けておけば、細胞の実りというものは二十二、三のときに現われて来るということを忘れちやいかん。私は遠大な教育の問題というものは、一番大事な平和問題からと、ふだんから申上げてるのはここなんです。私どもは五年や六年先のことを言うのではない。今日の日教組の或る指導者の抱く原理は、二十年後にどういう結果に現われて来るか、これを一番重視しなければならんと思うのです。だから文部大臣は、只今煩いは生じていない。それで済まされる問題ではないと思うのでありますが、私は文部大臣がやはり日教組の大会には御出露なされて、一応向うの掲げているところの課題というものを御吟味なされて、そうして実際教室に立つて科目を教授しておられるところを現実に見られる必要があるのじやないかと思うのです。それで御覧の通り、例えばここにまあ無産党のかたもいろいろおられます。共産党のかたもおられます。ところで共産党或いは左派のうちの人、或いはその当選者のかたがたをじつと見てみますと、そうした有力なかたがたが日教組の関係から出ておられるのじやないかと思うのです。だからそれくらいのいわゆる指導標と申しますか、指導目標として一般の教員組合の団体から仰がれている人があるということから結論を出して見ますと、その人の行動、一挙一動というものは、決してこれはなおざりにすることができない大きな問題ではないかと考えております。だから私は、教育は、できるだけ中立を保たせなければならんとおつしやいます、それはその通りでありましよう。併し国は国としての理想を持つていなければならない。普遍的なる理想といものを掲げて行かなければいけないと思う。この普遍的なる理想というものにぴつたりと文部大臣の気持が合わなければ、これはまるで浮草のようなものだと私は考える。良かれ悪しかれ一つの目標を文部省というものが持つということは、現在において一番必要な問題ではないかと思つております。それについて先だつてからあなたにお尋ねした通り、法律、道徳、宗教の基準というものをどこに置くかということを質問したのはそこなんです。そこでこれについてお尋ねしますが、先だつて文相は、教育の基本目標というものを道徳教育に置くとおつしやつている。その道徳教育に基準を置いて、全部の人に一つしきたりを習わしてやろろうとおつしやつている。風俗、習慣生活様式というものを一般の学生の頭に叩き込んでやろうとおつしやるが、この道徳の内容というものはどういうところを狙つておられるのですか。それを一つ承わつておきたい。
  192. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 抽象的になりますけれども、一言にして申上げますれば、新憲法或いは教育基本法にあります通りに、我が国が新らしい国家として国際社会に再出発をするに当つてその目標としておるところは平和国家であり、文化国家であり又民主国家である。従つてさような国家が建設せられ健全な民主社会が実現するために要求せられるところの各般の徳目、これを網羅するところの道徳精神、これが今日の時代において要求せられる道徳であると思うのであります。勿論申上げるまでもないのでありますが、民族の道徳というようなことが、法律が変つたから、或いは憲法が変つたからその日から新らしく発足をして、昨日までの道徳はなくなしてしまつて新らしく又出て来る、こういうものでは私はないと思うのであります。民族にはそれぞれ祖先以来践み来たつた、実践し来たつた道徳の精神というものがあるのでありまして、この道徳の精神というものが基調になつて、そうしてそれがその時代々々に適応する徳目となり、適応する形になつて行く、そうして新らしい時代を作り上げる基礎になる、こういうものであると思うのであります。
  193. 中山福藏

    ○中山福藏君 そこが一番大事な琴線に触れたところだと私は思うのですが、これは文部大臣は、まあ私は文部大臣のほうが年が若いと思うのです。私のほうが年寄りなんです。そこでお尋ねしておくのですが、今おつしやつた道徳は民主的に文化的に持つて行きたいとおつしやるのは、これは言葉の綾が非常にいいわけで、私は非常によくわかる。併しそんな簡単なものではないと私は考えております。もう少し内容が深みのあるものでなくてはいかんと思うのです。そこで私がわかりいいように申上げますというと、教育勅語というのが出て今日までの日本人を精神的に作り上げている。明治五年に学制の制度ができて、そしてそれが十二年に廃止されておる。これを見てみますというと、明治五年の学制制度というものは、これは大体個人主義を基礎として成つておる。十二年からはいわゆる全体主義にこれは移つておるわけなんです。それで全体主義の立場に立つたのに持つて来て、教育勅語というものを当てはめて、国家のためには生命を賭して働けと、こうなつて来ておるのです。それに踊らされて無批判に絶対服従の全体主義でお互いに戦争をして負けた、こういうことになつていろいろな批判があるわけなんです。それで戦争に負けますと、憲法が変つて学制制度というものが根本的な改革を受けて、そして教育基本法或いは学校教育法というようなもが現われて来ておる。そういうものが現われて来て何が何やらさつぱりわからん。それで先の時代は旧憲法に肉付けをするために生活様式というものが作り上げられておる。憲法と教育勅語というのは一体なんです、旧憲法のときには。そこでこの前の岡野文部大臣なんかは何と言つておるかというと、教育勅語というものには真理を含んでおると言つておる。文部大臣がこれくらい不見識なことでは文部大臣は勤まりません。思想自体については何にも研究されておらない。だから私は大達文部大臣にお尋ねするのはそこなんです。私どもは不幸にして、幸か不幸か知れませんが、新憲法というものを持つて来られて、外国人のこれは生活様式から生れ出たところの憲法なんだ。だからこれを立派に理解させるためには、外国の生活様式というものを説明してやらなければ学校の生徒はわからんです、この憲法というものを読んだだけでは。これが一番大事なところなんです。そこで年寄りの連中、私が年寄りと言つたのはここなんです。年寄りの連中は、浪若節でも映画でも古い時代の、旧憲法時代の日本の生活様式でこの新憲法に当てはめて行こうとして苦労しておる。ここに非常な国民の矛盾が出て二進も三進も行かんのです。それで私は文部大臣にこれをお尋ねするのですが、新憲法というものを永久にこのままに存置しておくならば、日本の風俗、習慣、生活様式、全部これに合うように仕向けて教育をして来なければこの憲法は成立ちません。私はこの問題について、文部大臣一つ一大決意をされて、教育の問題の上から日本人の生活様式にぴつたり合うように憲法というものを改正する必要が出て来る時期があるのじやないかということを心配しておる。そうしなければ憲法は東のほうを向いておる。生活様式、国民の心は西のほうを向いておる。こういうふうにばらばらになつてしまつて、それで地理や歴史や公民道徳を教えると言つているけれども、そんな生やさしいことではこの問題は解決しない。それでこのまま新憲法というものをおいて国民全体を引摺つて行かれる決心でおられるのか。或いは旧憲法時代に立帰つて日本人の生活様式に即した新憲法を作り上げる、こういう面から新らしい日本を作つて行くという決心を持つているのか。教育者として教育の点をどう持つて行くかということをお伺いしておきたいと思います。
  194. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 憲法をこのままでいいのか悪いのかという点につきましては、これはいろいろな点から御議論があろうかと思うのでありますが、私は教育に関係する限りにおいて、今この憲法を変えなければならんということは実は考えておらんのであります。このままやつてつたのでは到底我が国の日本という風俗、そういうものとそぐわないものであるということは必ずしも考えられないのじやないか、こう思つております。  それから教育勅語でありますが、教育勅語に道徳的な真理と申しますか、そういうものが含まれておるということが、教育勅語をまあ御否定になつておるのでありますか、或いは肯定されておるのでありますか、その点がはつきりつかみにくかつたのでありますが、私はかように考えておるのであります。成るほど教育勅語というものは、当時のいわゆる立憲君主制といいますか、主権が君主にある、こういう国家体制というものを前提としてそれでできている。従つてその形式におきましては、今日の時代にそのまま当てはまらす点がある。又表現の仕方につきましても、いわゆる「朕惟フニ爾臣民」云々ということでありまして、その表現においても今日では通用しない、こう私は思うのであります、あろうと思うけれども、併しその内容になつている道徳の精神というものは、教育勅語にもすでに謳つてある通りに、私は我が国の長い間の民族の伝統的な道徳の精神を盛込んでいる。そこに現われておる徳目というものは、これはやはり明治の時代というものを背景とし、これを基調として言われているのでありますから、今日そのままに通用せぬ点があるかも知れんが、併しながら我が国の伝統的の道徳的精神は、底に流れている精神は今日においてもこれを捨て張るべきものではないのみならず、やはりこれは今日我が国の道義の中心の考え方がそこに盛り込まれておると私は思うのであります。ただ今日はいわゆる時世が違うというか、とにかく主権は民にあり、そういうふうに国家の体制が変つたのでありますから、それに適応するようにこの徳目というものがこれはおのずから取捨撰択されて変更せられるということはあろうと思うのでありますが、やはりこの教育勅語の底に流れているところの道徳的精神というものは、今日においても殊に今日のごとく、少くとも私は国民の道義が頽廃したとは必ずしも一概には申せませんけれども、今日のように国が多事多難なる場合で、国民の道義の高揚ということが最も大切であるという場合には、少くともやはりこの教育勅語の精神というものは大いに発揚せられなければならんと、かように考えておるのであります。
  195. 中山福藏

    ○中山福藏君 時間がありませんから、議論している余地はありませんが、ただ教育勅語の精神を活かすということになれば、旧憲法の体裁に変らなければ、これは全くとんちんかんに日本人の講座はなつてしまうのであります。併しいろいろ小さいことは、いずれ時期を改めまして、文相と膝つき合せて相談したいと思う、とてもこういうようなことを申上げておつては何時間やつてもきりがありませんから。  最後に、あと五分間しかありませんから、一点だけお伺いしておきますが、教育基本法或いは学校教育法、教育委員会法というのがございますが、これは単に助言だけということになつてつて、少しも指導的な面が現われていないのでございますが、これは早急にこういう法律は改正される必要があるのじやないですか、如何なものでしよう。助言だけじや何にもできませんよ。
  196. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 御承知の通り、今日の我が国の教育制度、つまり終戦後新たに発足した新教育制度というものは、いわゆる中央集権化を排して、地方分権、それから地方それぞれの事情に即した、いわゆる民意に即して、地方の実情に即して行われる民主化と申しますか、それを建前にいたしておるのであります。教育委員制度というものがやはりその現われとして教育に当る、こういうことでありまして、文部大臣といたしましては、只今仰せになりましたように、これを指揮監督するということにはなつていないので、指導、助言若しくは勧告をする、こういうことになつております。これで発足して参つておるのでありますから、今日直ちにこれを指揮監督をして、昔のように文部省の考え方で教育を引張つて行くということはまだ今日そういうところに持つて行く時期ではないと思つております。やはり新らしい制度を育て上げて行くということが本来でありまして、これは文部大臣がそういう強い権力を持つということは一面非常に良い点もありますけれども考えようによつては又非常な弊害が生ずることも考え得るのでありまして、今日は発足間もない新教育制度をとにかく育て上げて行く、但しその指導、助言、勧告ということはこれを活溌に行いたい、かように考えております。
  197. 中山福藏

    ○中山福藏君 どうも誠に失礼ですが、文部大臣の頭は昭和二十年の八月十五日以前の考え方です。これはよほど御注意をなすつて教育の任に当られませんと、ほかのものは景気の起伏によつてよくなつたり悪くなつたりしますが、教育問題だけはそういうわけには行かない。二十五年先き、二十年先きの日本がどうなるかということが問題でありますから、どうか一つその点を考慮されるように希望いたしまして、私の質問を終ります。
  198. 青木一男

    委員長青木一男君) 今日はこれにて散会いたします。明日は午前十時に開会いたします。    午後三時四十四分散会