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1953-07-25 第16回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十五日(土曜日)    午前十時五十七分開会   —————————————   委員の異動 七月二十四日委員松原一彦君辞任につ き、その補欠として、最上英子君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之助君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            上原 正吉君            大谷 贇雄君            小野 義夫君            鹿島守之助君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            吉田 萬次君            井野 碩哉君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            岡田 宗司君            亀田 得治君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            加藤シヅエ君            戸叶  武君            最上 英子君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原九郎君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  岡野 清豪君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    調達庁次長   堀井 啓治君    調達庁労務部長 中村 文彦君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁装備局長 中村  卓君    経済審議庁次長 平井富三郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    通商産業政務次    官       古池 信三君    運輸省鉄道監督    局長      植田 純一君    労働政務次官  安井  謙君    労働省婦人少年    局長      藤田 たき君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 昨日、供米完遂奨励金の問題について政府の立場を明確にしたのちに私は質疑に入りたい、こういうことを申上げておいたのでございますが、これは後刻政府提出を要求した資料もございますし、それらが揃つたのちに更に明白にすることにいたしまして予定通り各般質問をいたしたいと考えます。  本日は順序としては調達庁、次に保安庁長官、その次に関連して外務大臣並びに通産大臣経審長官、こういうふうな考え方で私特に調達庁には一番初めにいたしたいからということで連絡を電話でしておいた。にもかかわらずすでに私は一時間近くここで待たされた。第二番目に予定しておりまする木村長官、これは勿論二番目ということは申上げてございません。最初調達庁関係労務基本契約に関する問題が相当ございますから、その間にお越し願えると思いましたので別に申上げておらないのでございますが、特に一番初めということを示してあるような場合には、これは一つ委員長のほうで政府側の今後こういう怠慢なことのないように十分一つ御注意をのちほど願つておきたいと思います。  そこで質問に入ります前に大蔵大臣一つちよつとお聞きいたしたいのですが、昨日の最終の頃に補正予算の問題につきまして私お聞きいたしましたが、あれは大蔵大臣の申す通りでありまして、小林君から事情を聞きましたら私の誤解でありましたから、これは了承いたしました。ただそれに関連してお聞きいたしたいのは、人事院勧告がすでに出ておるにもかかわらず大蔵大臣はこれを尊重しない気持でおるのかどうかこれを一つ聞いておきたい。
  4. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 人事院勧告公務員の給与に関する極めて重要な勧告でございまするので、勿論これを尊重する考えでおりますが、併し財政上その他諸般の問題も考慮しなければなりませんので、この点についても目下検討いたしておる次第でございます。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 これは尊重されるといつも言われるわけでございますが、どのように具体的に尊重しようとしておるか、これを一つもう少し見通しなりをお聞かせ願いたい。
  6. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この点につきましては私ども人事院勧告通りにベースを上げますると、一般公務員初め関係地方公務員も併せて約八百三、四十億の大きな財源を必要とすることに相成ります。そういう財源を今日どこから出し得るかというようなこともまだ十分な検討を要しまするし、又御承知のごとくにCPIとかCPSというようなものを見ましても横すべりになつておるものが大部分であり、上つても僅かなものであります。従つてそこらの点も併せて考えなければならんと思つております。従いまして私ども各般の点をいろいろ考慮いたしまして、この人事院勧告に対処いたしたいと考えておる次第でございまして、勧告そのものは十分尊重いたしまするけれども勧告そのものを直ちに実行し得るかどうかはこれは検討の後を待たなければ申上げにくいのでございます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 その点はその程度にしておきます。それからこれも大蔵大臣に本当の一つ腹の中を聞きたいのですが、御承知のように参議院に予算案が廻りまして予算審議に入つて以後、随分重要な問題が出て来ております。そのために随分審議時間がかかつております。一般質問も漸く入つたばかり、こういう状況でございますが、これは常識から考えるならば当然大蔵大臣としては万一の場合を考えまして、補正予算なり暫定予算なりそういうことをお考えだろうかと思いますが、そのようなことはこの状態においてもなお考えておりませんか。
  8. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 亀田さんの御承知のように、もう四、五、六、七の四カ月を暫定予算でやつてつておりまして、国民各位は一日も早くこの予算の通過を希望されておる次第であります。この国民各位の要望にお応え下さることと存じておりまするので、私どもは必ず本予算案期日内に御審議、御可決を得るものと確信をいたしておるものでございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 国民が困つておることは私どもがより以上に心配しておるつもりです。こういう暫定予算を続けなくても済む方法も過去においてあつたはずです。そういうことは今議論はいたしませんが、併しだからといつてそのことにものを言わして、この慎重な審議をすべき国会においてただそのことのために審議を疎漏にしておる、こういうことになつてはより大きな国民の悲劇の始まりだと私考える。そういう意味でこれは申上げておるのでございまして、それではお聞きしますが、七月末までに予算案が成立しないでどうしてもあと二、三日はかかる、こういうことが私今の状況なら誰が見たつて無理をしないならば考えられる、二、三日の程度であれば補正予算を組まなくとも大蔵当局としては差支えないと、こういうふうにお考えですか。
  10. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私は期日内に予算審議を終り、御決定下さるものと信じております。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 これ又昨日のお答えと同じように、大蔵大臣は同じことを二度言い出すと三回も四回も同じことを言うくせがある。(笑声)だからこれはお伺いいたしませんが、併し大蔵大臣がそういうふうに確信しておる、その確信がここで実現されなかつた場合には、何かこれは一つ責任をとる覚悟はございますか。こういう大事な重大な場面に来ておるわけですから、いろいろお考えでしようが、その間の決意をつ承わりましよう。
  12. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私は期日内に審議を終了通過するものと確信いたしておりまするので、仮定の問題に対してはお答えはできません。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 だんだん総理大臣に似て参りました。(笑声木村長官が見えましたから順序従つて木村さんに先にお聞きいたします。調達庁が来られたらちよつとお知らせ下さい。  最初に聞きたいのは、日本におけるアメリカ軍はだんだん少くして行く方針でアメリカ自身もおる、こういうことを私ども何回も聞かされておる。そういたしますると、今おるアメリカ軍というのは、日本を守るために最小限度のものかどうか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。アメリカ駐留軍の手によつて直接侵略をとどめよう、この直接侵略を防止し得るに幾らの兵力が必要かということは、これはアメリカ軍自体によつて決定すべきものであろうと思います。お説の通りアメリカ駐留軍がだんだん引揚げたいという希望を持つておるということは、我々も率直に認めざるを得ないと思います。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 だから私がお聞きしたように、これは必要最小限度であつて余計なものは置いてない、こういうふうに承わつてよろしいですか。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 余計なものは置いてないだろうと、私はそう考えております。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 それから次にお聞きしますが、今の日本におるアメリカ軍、これを保安隊に直しますと、保安隊としては何人ぐらいのものを置かないとそれに匹敵しませんか。大体の見当でよろしいです。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういう計数のことは只今正確には私は申しかねるのであります。いよいよアメリカ駐留軍引揚げるにしても一時に私は引揚げるものじやないと思つております。徐々に引揚げるものだろうと考えております。併しその数、時期ということは今わかつておりません。これは我々が推測をするに過ぎないのであります。従つてこれをカバーするにどれだけのものが必要かということは今考えておりません。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 これは少し受取れないですね。いろいろな計画保安庁長官としては立てておられるようであります。そうしてアメリカ軍にとつて代るんだ、こう絶えずおつしやつておる。とつて代るという以上は一体どれくらいのものがそれに相当するのか、これは千人や二千人違つてもよろしいのですが、大体の目途は立てておられると思いますから私聞くのですが、どうでしよう。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。まだその辺の目途は立つておりません。又これは数をアメリカ駐留軍が減らしてそれをカバーするのに直ちに数でこれを補つて行くか、或いは質で補つて行くかということも又問題があるのであります。今どれだけアメリカ軍引揚げたから日本がどれだけふやすということは、目下のところ考えておりません。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連質問。このアメリカ駐留軍引揚と申しますか、この問題について外務大臣ちよつと関連質問をさして頂きます。アメリカ側でこのアメリカ軍引揚げるということの意思表明をしたのは誰によつてどういうような形でなされたかということを先ず伺いたいのであります。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 意思を表明したのじやなくして、希望を表明したのであります。その希望安全保障条約締結当時からのずつと一貫した希望であります。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 最近相互防衛協定というようなものが、このMSA交渉の後にできるというふうに私ども考えておるのですが、そういうようなこととの関連。或いはダレス国務長官アメリカ国会の証言で言つております日本保安隊ですが、或いは日本軍事力ですか、これを増加する問題との関連。こういうような点から見ますと、最近このことが特に取上げられ七発言されたように思うのでありますが、例の日米安全保障条約ができる時分から言つておるのだというのが、殊に最近取上げられたについては何か理由があるかという点をお尋ねし、又どういう形で最近その希望が表明されたか、もう度お伺いしたい。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この希望はずつと一貫したものであることは先ほどから申した通りであります。この間の十五日の第一回のMSAの会合におきまして、アメリカ大使から同様の希望が述べられたわけであります。従つて新聞等が更にそれを大きく書いたり或いは国会等質問がありましたので、何か特に事新らしいように考えられますけれども、実は実質的には前からの一貫した話であります。
  25. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問はその程度にとどめておいて下さい。(「関連じやないよ。」と呼ぶ者あり)
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連だよ。只今のお話でありますと、MSA交渉の第一回のときにアリソン大使から述べられた。これはMSA交渉と明らかに関連があると思います。而もMSA交渉においていろいろとMSAの法律に規定されておるようなことを日本が受諾いたしまして日本防衛計画が定められる。こういうことになつて参りますと、それとの関連においてこのアメリカ駐留軍を減らすという問題も出て来るはずであります。わざわざアメリカMSA交渉の劈頭においてこれを発言したということは、私は重要な意味があると思いますが、そういたしますと、先ほど木村長官の言われましたように、ただ漫然とそれが何も日本の今度の防衛計画関連がないというようなことは言えないと思う。この点について改めて、木村長官が先に九州で発表されましたところの警備計画と言いますか、一部をちよつと口にされたあの警備計画なるものとの関連もあるのじやないか。若し木村保安庁長官希望されるように、アメリカ軍は漸次撤退してもらいたいというならば、恐らくその案を持つて交渉されるだけの腹がまえがなければ、ただそういうことを漫然と木村長官アメリカ軍撤退希望したいということを今の時期において言われるはずはないと思う。この点から見ましても、木村保安庁長官が何らかの警備計画なるものをお持ちになつておることは私は推測できると思うのでありますが、木村保安庁長官アメリカ軍漸次的撤退ということを望まれるのは、やはり日本側警備計画があつて日本側保安隊を増強するということを関連さしてお考えになつておるかどうかということをもう一度お伺いしたいのであります。
  27. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。アメリカ駐留軍引揚希望するのはアメリカ自体であります。我々といたしましては無論アメリカ軍の長く駐留することは御同様欲してはおりません。併しながら日本経済力から見しまして、アメリカ駐留軍引揚げてそのあとをカバーして行くだけの軍事力を持つのにはなかなか金がかかるのは御承知通りであります。そこで我々が先ず第一に考えることは、民生の安定とこの防衛とをどうマッチさせて行くかということであります。その点にむずかしい問題が起つておるのであります。繰返して申します。駐留軍引揚を一番希望しておりますのは私はアメリカであろうと、こう考えております。そこで私は九州において記者と話したときに言つたことは、別に私は警備計画がどうであるとか、防衛計画がどうであるとか言つたのではありません。従つてその内容、数字については何ら触れていないのであります。併しながら私といたしましては、この国内の治安情勢の変化によつて、万一日本がその警備力を増加することを必要とする場合においては、どうしていいだろうということの気持だけは私としては持たなくてはならんのであります。それについで私は一つの案を立てたというに過ぎないのでありまして、アメリカ駐留軍引揚に対してそれに即応すべき防衛問題とかそういうこととは別個の問題であるのであります。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 いずれにしろ保安庁長官のお考え方の中には、保安隊を漸次強化して行く、こういうことが明瞭に盛られておる。どの委員会でも余りはつきり言われないようですが、漸増の時期、それに要する資金、人数、そういつたようなことはどの程度考えておりますか。
  29. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それらの点につきましては事国策大本に関するものでありまして、保安庁だけでは到底そういうことは計画は立てることはできないのであります。一応の計画を立てるのであります。私はいつも申上げまする通り、それは今亀田君が仰せになりましたように、財政資金の面は大蔵省関係、技術の面は通産省、それに対する一つの大きな生産計画を立てるのは審議庁あたり、或いは運輸省関係、そういうふうに各省にからまつて一つ大本を立てなければならんのであります。これはなかなか容易ならん事業であろうと私は考えております。そこで将来どうすべきかということは私は日本としても立でておくべきであろうと考えております。併しながら現段階におきましてはさような詳しい点までまだ協議に入つていないのであります。まだ従つてその案を立てる段階に至つておりません。
  30. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君に申上げます。特別調達庁政府委員が参りました。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 今保安庁長官に対するものをやつておりますから、これを終えた後に調達庁関係をいたしたいと思います。  木村長官は二十三日の内閣委員会におきまして、国際戦争を巻き起したり、外国侵略戦争を遂行し得るような組織力、即ち戦力、こういうふうに先だつて内閣委員会でおつしやつておる。成瀬幡治君の質問に対しておつしやつておる。これは間違いありませんね。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。これは言葉の言い廻し方がいろいろあるのであります。政府といたしましても戦力については一定見解をしばしば表明しておるのであります。去年からこの問題はたびたび蒸しかえされておる。それで第九条第二項の戦力とは何ぞやということになりますると、結局近代戦争を遂行し得るような装備編成を持つた大きな力であると、こう解釈する。そこで外国へ向つて侵略戦争を行い得るような力は往々にしてこの戦力に該当するような大きな力であると、我々はこう考えておる。従いまして、必ずしも侵略戦争に用いる力が即戦力とは申されませんが、外国に対して侵略戦争をするような力は往々にして戦力に該当するものであろうと、こう考えております。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 最近MSA交渉関連して、外務大臣なり保安庁長官のこれらに関する表現の仕方が変つて来ていることは、これはもう同民のすべてが見ておることなんです。そこで内閣委員会における長官のこの言葉使い方が新らしい使い方として私非常に重視いたしておるのでございますが、つまりこの長官言葉の裏を考えますと、国際戦争を巻き起す、こう書いてあるのですね。巻さ起すというのは自分が主体になつてかき廻すんだと、こういう印象を受ける。そういう組織力は即ち戦力だ、こういう意味にとれる。逆に考えますと、巻き起すというような程度じやなしに、まあアメリカか何か知りませんが巻き起す大きいやつがいて、それにこつちは巻き起されてついて行く、こういうやつは戦力にならんのだ、こういう一般の人には誤解を与えるようなこれは私言葉使い方だと思うのですが、あなたはどう思います。
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。今申上げましたように、政府といたしてはもう一定見解は表明しておるのであります。従いまして或いはそういうような言葉使い方国民に誤られるという節があれば、これは誠に遺憾であります。私はそう誤られるとは思つておりません。今申上げましたように外国に対して侵略戦争をし得るような大きな力はややもすれば戦力に該当する、併し戦力と必ずしも一致するものではない、戦力はどこまでも客観的にこれを見るべきものであろう。さような次第でありまして、私の言葉使い廻しはどうであろうと、見解といたしましてはいわゆる近代戦争を遂行し得るような編成装備を持つた大きな力と考えております。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 おかしいですよ。これは内閣委員会においてこういう言葉をあなたがお使いになつておるから、その言葉についてお答えを願いたい。近代戦争を遂行し得る能力、この問題を私今聞いておるのじやない。あなたが新しくこういう説明をされたからこれについて私が聞いておるのですよ。で、そこでもう一つ聞きますが、外国侵略戦争を遂行するような組織力、こう言いますが、外国に対して侵略戦争ではない戦争がたくさんありますね。そういう戦争を遂行し得るのはあなたは戦力でないと、こういう解釈ですか。そうなるでしよう。この言葉について言つて下さい。
  36. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。この戦力は客観的に解釈すべきである。それは今亀田君の仰せになられた防衛の力はどうかということに結局なるのであります。防衛力でなりましてもそれが大きな力を持つて外国へ侵入し得るような能力を用いるようなことがあればこれは戦力です。そこで戦力というものの一定の概念は生ほども申上げた通りであります。ややもすると外国へ向つて戦い得るような大きな軍事力というものはまあ戦力に至ることが普通の建前である。こういうことを私は言つておる。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、外国に対して侵略戦争を遂行し得ないような力は普通は戦力ではない、こう言つていいのですね。普通は戦力ではない。
  38. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういう場合には、私はいわゆる戦力ということとからみ合せて、これが果して第九条第二項の戦力に該当するかどうかということからこの結論を引出すべきものであろうと、こう考えておる。併し普通は外国と戦い得ないようなものは戦力とは私は考えておりません。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 これは一応そのように二十三日の言葉解釈を聞いておきましよう。  それから予備審査の際に保安庁のほうから、現在お使いになつておる武器についていろいろ資料を出してもらいました。で、長官考えでは、例えば七十五ミリ榴弾砲とか、もつと大きいのもあります、或いは重機関銃、いろいろなものがたくさん並んでおりますが、これはどういう場合に使われるのです。
  40. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたしまするが、勿論百五十五ミリの大砲は持つておるのであります。極めて併しその数は少いということを御了承を願いたいと思います。かようなものをもつて普通訓練をさせておくことが、或いは集団暴徒外国から侵入して来たような将来を予想して必要であろうと、こう考えております。併しそれをもつて直ちにどう使うということは考えておりません。極めて数も少いのであるということをどうぞ御了承をお願いいたしたい。(「木村長官観兵式用か」と呼ぶ者あり)
  41. 亀田得治

    亀田得治君 これらはそうしたら外国からの侵入……。この小銃とか軽機関銃なんか相当ありますが、これはどういうのです。
  42. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは内地において大きな暴動が起つた場合或いは擾乱が起つた場合も使い得るでありましようし、今申上げまする不幸にして外国からの集団暴徒が来たような場合においては使い得るのであろうと、こう考えております。(「集団暴徒というのはどういうものだ」と呼ぶ者あり)
  43. 亀田得治

    亀田得治君 飛行機はどうですか。
  44. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 飛行機通信連絡、観測に使うのであります。極めて発動機能力の小さい、現に九州水害あたりにおきまして連絡用に何回も使つております。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 九州の水害を随分いろいろ出されますがこれは別に保安隊がなくても、もつとそういうものがなければいい民主的な警察制度ができて、或いはそのほかのやり方で十分間に合う。余り水害の際に保安隊の宣伝をされることは将来御迷惑になろうと思いますし、少し要らざる又誤解を生む、こう思いますから、これは一つお慎しみになるように御希望申上げておきます。  そこで近い将来に爆撃機を持つような方針はございませんか。
  46. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。今のところはまだ考えておりません。(「今のところはか」と呼ぶ者あり)
  47. 亀田得治

    亀田得治君 いつ頃考えますか。(笑声
  48. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは将来の情勢如何によることでありまするが、現在の段階ではまだ考えておりません。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 将来の情勢如何によつては爆撃機も持つと、こう解釈してよろしいですな。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういうことは大変将来のことと考えております。今はそういうことは考えておりません。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 戦闘機は最近お持ちになるでしようね。
  52. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 二十八年度予算において要求いたしたものにはそんなものはありません。
  53. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して……。保安庁長官は非常に保安隊の水害に対する活動を強調されますが、保安隊の訓練でシャベルを持つて水害の訓練をやるとか、土嚢を造る訓練をなさつたことがあるのですか。
  54. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。施設部隊では始終やつております。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 先ほど長官は大砲などについて外国からの侵入ということを言われましたが、具体的にどういうものを予想されておりますか。これは恐らくこれだけの国費を使つて、そうして構えを作つておるわけですから、これは誰でも対象ということを考えるわけです。具体的にそこをもう少し説明を願いたい。
  56. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 具体的にどういうことが今発生する危険があるかということは申すことはできません。御承知通りどこの国でも、日本では保安隊でありますが、外国では軍隊を持たない国はありません。大よその国が軍隊を持つておる。軍隊を持つのに具体的にどこの国を相手としてという計画を作つておるのではありません。世界の情勢とにらみ合せて、そういうことについていろいろ研究した結果、そういう準備をするのであります。あそこが敵国であるとか、或いはどこから侵入することが危険であるからといつて、どこの国でも具体的にはやつておるのじやないと考えております。従いまして保安隊におきましても、どういう集団暴徒が押寄せて来る危険があるからといつてつておるわけではありません。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 それも受取れない答弁です。憲法に違反するかどうか極めてきわどい作業をやられておる。そうして国民の生活状態というものは非常に困つておる。そういう中でやられるのですから、私は恐らく具体的な何ものかを考えてやつておる、だから必要だ、こういうふうにおつしやつておるのだと思つた。ところがどうも今の答弁によりますと、余りはつきりしない。あつてもなくてもいいような感じを受けるのですが、そのようにとつてよろしいでしようか。
  58. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういうようにおとりになることはいたし方ありません。併し我々当局者といたしましては、万一の場合を予想してこれを皆やつておるのであります。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 万一の場合というように、あるかないかわからんようなことな莫大な費用を使われる。これは私少し腑に落ちぬと思う。長官ちよつとお聞きしますが、水害のことをあなた随分おつしやいますが、外敵の侵入と日本に新らしい災害が発生するのと、どちらが早いとあなた思いますか、
  60. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。災害もいつ起ることかわかりません。不幸にして今度は大きな災害が北九州に起つたのでありまするが、北九州にこの災害がいつ起るかということは我々は予想できない。これは知るものは天のみであります。どういうことが起るかということも甚だ残念ながら人力では予想することはできません。併し大よその見当をつけて我我は世界の情勢と国内情勢とをにらみ合せてやるのであります。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 私はそういうことを聞いているのじやない。これは副総理にお伺いします。これは国全体の予算の組み方として大事な問題だと思う。保安庁長官に対象は何かとお聞きするとどうもはつきりしない。そういう外敵の侵入と日本における新らしい災害の発生、これはどちらが早いとお考えに、なるか。これは日本の災害の発生というものは外敵の侵入のようにそんな漠然としたものじやない。過去におけるちやんとした統計がある。保安庁長官ははつきりせんようですから副総理に、一体どつちが早いか言つて下さい。(笑声
  62. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをしますが、私にはどつちが早いかわかりません。わかりませんということは、併し外敵の侵入が早いという意味ではございませんが、どつちが早いということはここで断言はできません。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 それじや私から聞きますが、どうも外国のことになると、総理大臣でも外国のことには余りものを言いたくない、こういうことをじき言われる。そんなものじやないのです。今どこの総理大臣でも各大臣でも、世界の情勢を皆批判し、いろいろ考えてやつておる。それでこちらからそれじや具体的に聞きますが、この外敵というのは南のほうですか。(笑声
  64. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 南も北も外敵を想像しておりません。(「それはおかしいよ」と呼ぶ者あり、笑声
  65. 亀田得治

    亀田得治君 外敵を想像しないようなことに、どうしてこういうたくさんの費用を使う必要があるのです。全然想像しておりませんか。この間、総理大臣は中ソ条約に関連して何か少し考え方言つておりましたが、全然予想しないような外敵に対してどうしてこういう備えをやるのですか。だから私順順に聞いて行かなければならんかと思いまして、先ず南のほうから聞いたのですが、どうも南はなさそうですから次に聞きますが、東のほうはどうですか。(「下らんことを聞くな」「重要な点だ」と呼ぶ者あり)
  66. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 東のほうからの侵入、これは侵入と言われるから侵入と言うておるのですが、東のほうからの侵入は近いうちにあろうとは考えておりません。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 まあ世界のことになるとどうも品が重くなりますが、それじや端的に聞きましよう。国内におけるいろいろな事件と、そういう意味のことを言われましたか具体的にどういうことですか。
  68. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先ほどから申上げましたように、具体的にどこからどこに今危険があるから、それに対して手当するというようなものじやないのであります。これは全般の情勢というものをよく判断して、これは亀田君もおわかりであろうと思います。これは国民一般的知識もそこまでは行つていないようでありますが、大体我々は想像し得るのでありますが、さらばどこで今どういう危険があるか、どうしなければならんかというのではありません。総合判断して我々は万一の場合に万違算のないようにやるのが、我々の政治であろうと考えております。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 それは具体的に言われませんと、あなたたちのお考えが正しいかどうか、私ども反論ができない。例えば国内においてはこういうことを考えていると言わなければ、何にもならんでしよう。私ども何も警察制度の費用まで削減しようとは言つておりません。それは人間がおればどうしたつていろいろな犯罪が起る。これはもう計数の上から明らかですからね。ちやんと確実に予想されるからそんなことは問題にならない。ところがこういう武器を備えていろいろされると、私ども不必要と見なせば、どうしてもそれは国民の税金ですからのけてもらわなければならん。それで聞くのです。ただ漠然と言つている。そういうことをおつしやるから、それじや災害とどつちが早いか。災害のほうが早いということになれば、これは笑いごとじやないのです。本当にそれに対する手当をもつとしてくれ、災害は決して自然的なものじやない、そういう声が盛んに起つているでしよう。だからあなたがこれだけの莫大な費用を使われる以上、もつと明確にしなければいかんです。外国のことはさておいて、国内のことだけでも明白に言つて下さい。こういう事件が予想される、こういうことだ、これに対してこれだけの小銃が要ると……。
  70. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 警察の問題にしてもそうであります。警察でもいろいろ新らしい施設を作つております。併しそれがどこそこにこういう危険があるから、或いはこちらに危険があるからというようなわけではありません。これは全般的に考えて見て、ふだんから用意するのであります。今私は具体的にこういう危険があるから、これに対してどうするということは申上げ兼ねるのであります。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 それじや大した具体的な対象を持つておらない。こういうふうに解釈をしましよう。そこで次に長官に聞きます。この保安庁関係の経費ですね。昨年度の繰越の額が非常に大きいんです。どれくらいか、あなた覚えておられますか。一億や、二億違つてもよろしいから、こういうことは、あなた即答できなきや困りますよ。莫大な金だから……。
  72. 青木一男

    委員長青木一男君) 官房長上村君。    〔「大臣々々」と呼ぶ者あり、亀田得治君「もつと細かいことは…。これは大臣にやらして下さい。細かい問題は……」と述ぶ〕
  73. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 繰越額は二百八十九億でございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 これは全体の保安庁の経費の三分の一近くに該当する経費です。長官は一体これだけの使用残りが出たことをどういうふうに考えておられますか。
  75. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。保安庁といたしましては、国民からの血税になるかような金は、慎重に使いたいと考えております。これを無暗やたらに使えば、こんなものは使えるのであります。さようではありません。(「こんなものとはなんだ」と呼ぶ者あり)それで殊に保安庁で使う金というのは、大体において、施設であります。装備であります。そこで装備は新らしいものを、これを作ることが必要であります。そこででき上りの品を買うという按配には行きません。例えば一つの新らしい自動車を買うにいたしましても、それはよくこの計画を立てて、先ず試作を作る。或いは試作を作つたものに対して、これを検討して更に新らしく又試作を作るというようなことにおいて、非常に手間取るのであります。これはそこらにできておる品物を買うのでありますれば、これは何でもありません。大体において保安庁のこの装備というものは新らしき計画の下にやるのでありますから、その間に非常に手間取つたということは一つあります。もう一つは土地の買入、それらに対しまして交渉に非常な手数がかかり、技術を要したということでありまするので、この二つの点からお考えを願いたい。もう一つは御承知通り保安庁は警察予備隊から切り換つたものであります。普通の役所のごとく、伝統というものはまだ浅いのであります。従いまして、これに当りまする人たちも、他の省ほど余り熟練をしていなかつたということも、当初はありました。只今のところではそれは余ほど改善されました。さような点から申しまして、使い残りの数が多くなつたということであります。これは誠に遺憾だと考えております。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 これはちよつと受取れぬ説明です。予算を組むときに、土地の買入れということはどういうものか。地上におる耕作者なり、そういうものを簡単に追払えるというふうに政府の人が考えておつたら大変なことです。そういう手間もかかることは始めからわかつておる。或いはどういう設備、或いは器具なんかを注文するにしても、試作をして、間違いのないもの、これは当り前のことなんです。そこで私はお聞きするのですが、そういうことはあなたのほうは、これはいつもわかつていると思うのです。わからんというはずはないのですよね。そういうことをしてやれば、手間もかかるということは……。そういうことをまあ確かめておきましようか。それは併し予算をあなたが要求するときは、そういうことはわからなかつたのですか。
  77. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 二十七年度の予算は、私が組んだのじやありませんが、併し大体において手間取るということは、これはわかつてつても、実際上は行かんのであります。この普通、日本で用いておる通信機一つにいたしましよう。これなんかでも非常に改善を要するのであります。そこで作つてみても、又それが悪ければ新らしく何させて、それの設計に基いてやり直させるというようなことがしばしば起るのであります。普通に使われるような器具、機材であれば、これは迅速に行くでありましようが、さような次第で時日を要したということも、私は免るべからざる一つのことではあろう、こう考えております。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 わかつておれば、先ず試作なり、準備のための費用を要求すべきなんだ。そうしてそれが明確になつて、こうこうこういうものなんだ、どうか一つ大蔵大臣お金を出して下さい、こういうふうに持つて行くのが、これが当り前ですよ。まあ大体目途をつけて、一つ大まかなところで出してくれ、こういうお金の請求の仕方ですよ、これは……。二十八年度もそういう考えでやられたのでしようね。どうですか。
  79. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。二十八年度は二十八年度で大体消化し得る目標を以てやつております。併し船のごときは、御承知通りこれは設計に非常に手間がかかります。そういうふうなことは私はあり得るかと思います。(「今度は予算外契約だ」と呼ぶ者あり)
  80. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 只今木村長官が、繰越の見込みですか、二百八十億と申されましたが、私たちが先般頂きました資料には、不要見込額が三百二十七億ぐらい出る、こういうふうになつておつたのですが、まあそれが二百八十億ぐらいになつて、数十億も繰越額が少くなつているのですが、伝え聞くところによると、こんなにたくさん繰越額を持つては、来年度予算をとるのに困るからというので、非常な無理な発注がされた。例えば衛生用のガーゼや、脱脂綿等を数十年分を買つたというような巷間の浮説もありますし、更に保安隊の最高幕僚である増原氏は、その奥さんの里が保安隊のいろいろな備品の取引先になつて、巨万の富をなしたというような、(「調べろ調べろ」と呼ぶ者あり)その浮説さえあるわけであります。この繰越額が、非常に多くなつては来年度予算をとるのに困るからというので、めちやくちやな発注がなされた。そうして、どういうものが警察予備隊に入るかということをよく知つている増原君の奥さんの里が、これに関係する商売を営んでおられても、巨万の富をなしたということは、四国ではもう周知の事実なんです。一体保安庁の、こういうものの発注先、そういうようなことについて、一つ資料をお求めいたしておきますし、あと質問いたしますから……。そういうような四国なんかに選挙に参つて、そういうことをうんとこさ聞いて来たのですが、一つ責任大臣から、こういうことについてはつきりして頂きたい。
  81. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。今中田委員から風説についてお話がありました。私はさようなことは絶対に聞いておりません。而して、今ガーゼを何百か知りませんが、これを機会に一時に買入れたなんて、そういうことは私はないということを信じております。で、増原君のお話がありましたが、私は長官として申上げます。増原君については断じてそういうようなことはないということを、断じて私は申上げたい。これは如何なる風説によつて、さようなことを仰せになるか、私は申上げたい。これは如何なる風説によつてさようなことを仰せになるか、私は増原君の名誉のためにここに申上げたい。私は保安庁長官就任以来、この保安庁に関する限りにおいては厳正でなければならんということが終始建前になつております。増原君も私の最高幕僚といたしまして、私の精神を汲んでやつておる人であります。その増原君にして今のようなことは私は絶対にあり得ないということを信じております。若しもさようなことが事実でなかつたならば、これは容易ならんことと考えておりますから、そういうことは私はこの席で……。
  82. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それならばお伺いしますが、そう言われても、曾て保安庁の前身である警察予備隊は、その物資の納入について、聞くに堪えないようなスキャンダルが起きて、法の裁きを受けておる前身を持つておると思います。あとから事態ははつきりいたしますが、それでは増原君の奥さんの里は警察予備隊の備品その他の納入に全然関係ないかどうか、親戚にそういう人はないかどうかということをはつきりここでお伺いしておきたいと思います。これはあとで事態をはつきりしたいと思います。
  83. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は増原君の親戚がどういう仕事をやつておるか関知いたしません。併しながら増原君に対しては私は絶大の信頼を持つております。警察予備隊の時代において不正事件があつたということも私は聞いております。併しながら保安庁に切換えて以来においては、私はさような事実はないということを確信しておるのであります。万一そういうことがありますれば、私は断乎として法によつてこれを処置いたしたいと考えております。
  84. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問はその程度にして……、
  85. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 とにかくそういうことは別にして、人格は高潔だろうと思います。林敬三さんにしても同様だとは思いますが、とにかく増原氏の奥さんの里、或いは親戚がこれに関係しておられるということは四国から来る議員に尋ねるとよく知つておる。そういうことは必要以上の誤解を生む元でありますし、このことだけは一つはつきりして頂くことが、増原君のためにも適切ではないかと思いますので、私はこれで発言を打切りますが、申上げておきます。はつきりしてもらいたい。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと中断したのですが、この莫大な繰越額が、これは四月以降現在までに、大体どれくらいすでにお使いになりましたか。
  87. 中村卓

    政府委員中村卓君) お答え申上げます。  只今までのところ十億ぐらい契約が済んでおると思います。と申しますのは契約の繰越手続が大蔵大臣の承認を得なければなりませんので、その関係で手続的に遅れております。その関係で契約ができましたのが大体十億前後の額だと存じております。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、随分莫大な費用が残つておることは極めて明らかだ。この繰越額だけでも一体今年中に使い切れるのかどうか、これは一つ事務当局のほうから忌憚のないところを……。
  89. 中村卓

    政府委員中村卓君) 只今申上げましたのは、実は物品関係だけでございまして、そのほかに施設関係が相当雇つていたのでございますが、これはかなり契約が進んでおると考えておりますが、それは経理局長に来て頂かないと、私主管責任じやございませんので、ちよつと正確なお答えは申上げられません。只今呼んでおりますから直ぐ参ります。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 大体大まかなところ残つた額の三分の一とか五分の一ぐらい使つたとか、こういうことは長官自身がお知りだろうと思うのですが、どうでしようか。
  91. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは経理局長から説明させるほうがよかろうと考えております。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 それは経理局長にお聞きすることは又たくさんあるのです。あなたは保安庁長官として毎月月末一回ぐらいは、莫大な金を預つておるのですから、帳尻は一体どんな程度か。程度で結構です、そんな細かいことまでとても長官たるものが眼がとどかんのは当り前、そういうことは何らお聞きになつておらんのですね。
  93. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) やつていないことはありませんが、御承知通りに、この経理関係というのはなかなか複雑であります。従いましてさようなことは経理局長を以て説明させることが適当であろうと私は考えます。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 いや、これはね、何も数字を少々間違つたつていいのです。やつておらないことはないと、今あなたがおつしやつたところを見ると、大体のことはつかんでおられるはずでしよう。大体のところでいい。すでに年の三分の一も経過しておるのですかりね、どうです。経理局長にはもつと細かいことを聞きます。
  95. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の数字は私は卒直に言うてはつきりしておりません。私は頭にありません。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 それは甚だ無責任だと思うのです。それでは一つ経理局長来ておりますね、来ていないですか。それじやこれは一つ資料を要求して置きましよう。繰越額の四月以降の使い方、これを抽象的じやなしに具体的に出してもらいたい。その上でこの点は更に質問をすることにして留保いたして置きます。  そこで大蔵大臣一つお聞きしたいのです。只今保安庁長官のお考えをお聞きになつていたと思うのですが、あのようなことであなたが苦労して絞り出すお金をお使いになつて、それで大蔵大臣としてはどう思いますか。
  97. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私が事務当局に質したところによると、今正確な数字は持つていないかおるか存じませんが、私は大体十月頃までに全部使い果せるように聞いておるのです。それでなく恐らく私の記憶に誤りがなければ、今の物品は十億かそこらであるけれども、施設その他は百数十億に上つておると、私は承知いたしております。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 私はそういうことを聞いたのじやなしに、保安庁長官が四月以降の使い方がどういうことになつておるかわからん、そういうような態度を大蔵大臣としてどう思いますと、これを聞いたのですが、それはお互いに一緒に坐つておる立場として聞くほうが無理かも知れませんから、これ以上は聞きませんが、補正予算保安庁の経費が六十四億削られました。これは保安庁長官として、あなたが先ほどから目的をあまりはつきりせんようですが、あなたの仕事にお差支えありますか。
  99. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は原案をどこまでも適切妥当なりと思つておるのでありまするが、併しながら国会においてこれを修正せられれば、これは国会意思に従うようにいたします。その執行の責任は我々が負うのであります。その範囲において万全を尽したいと考えております。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 原案でないと困る、こういう御趣旨のようです。それで長官にお聞きしますが、勿論吉田内閣はいつまで続くかわかりませんが、あなたが仮に来年までやつておられるとして、再びこういう繰越が莫大なものが出て来た、こういうことになつた場合に、あなたは責任を今度は持ちますか。
  101. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この使い方については適正にやつて、さような将来使い残しのないように万全を尽したいと考えております。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 これはもう常識ですね、全体の経費の三分の一も残れば、随分無駄な使い方がされるだろう、誰でもこれは考えております。そういう無駄使いをされて、そうして一文も残らんようにした、これでは駄目なんですよ。保安庁関係のお金の使い方はみんなが眼を見はつておりますから、これは十分一つ心を入れてやつてもらいませんと、えらいことになりますから御注意申上げて置きます。  それで外務大臣にこのMSAの第三回の交渉、これが昨日あつたようでございます。伝え聞くところによりますと、一致した点もあるが、一致しない点も日米間にある。一致しない主な点は日本防衛義務の問題、こういうことにどうもなつておるようでございますが、この間の事情を少しできるだけ詳細に御説明願いたいと思います。
  103. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今の交渉は、これは交渉の方法がいろいろありますが、我々がとつておりまする現在り交渉は、例えばこちらから正式の協定案を提出して、或いは向うから正式の協定案を提出して、それについて議論を戦わすということでなくして、こつらも大体の気持を伝えるような、正確なものでないけれども、大体の気持の伝わるような一つの案を示して、先方も同様なことをして、お互いによくての間に話合をして、そうしてだんだん正式の協定に向おうとしております。従つてこれはいろいろの点から先方は日本側の意向を質し、こちら側は先方の意向を質して、いわば検討を続けておる段階でありまして、新聞等に案分とか起草ととかいうことを言われておりまするが、この案文なるものもまだ政府の決定した案文ではないのでありまして、その点はちよつと誤解され易いと思いますが、要するにこのやり方は今申した通りいろいろありますが、只今のところは先ず余りこちらの態度をコミットしない、先方も先方の態度をコミットしない程度で、お互いに話合を続けておる、この話合の材料を何とかしなきやいかんから、お互いに自分の気持の現われるような試案、試案と言つちやいけませんが、試みの案ですが、試案を出して話合をいたしておるということでありまするから、意見の一致したところ、意見の一致しないところというのは、まだ只今の段階では、一応出ておりますが、それ以上にまだいろいろの点を検討しなければならんわけでありまして、今のところはつきりしたことは申上げられないのであります。で、今お話のように問題になつておりますのは、一体五百十一条の(a)項の六項目をそのまま案文、協定案文の中に入れるかどうかという点は双方で研究中であります。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 この軍事義務のことは、後ほど聞きますが、機密保持に関する点とか弘報活動に関する点、こういう点は大体意見が一致しているようでございますが、さようでございますか。
  105. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは各国の協定にも出ておるところでありまして、弘報活動というのは、この機密保持に関係のない程度に、できるだけ国民にその内容等を知らせるという点であります。それを機密保持というのは、例えば武器等には特許権もありますし、その他特許権にはなりませんところの、公でないのでなりませんが、新しい考え方を入れたものもありまして、こういうものについては、お互いに機密を保持するという約束になつておりますが、この点は大体双方とも意見は変つておりません。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 この機密保持に関する点ですが、例えば現在の刑事特別法、こういつたようなものよりも、もつと強いものをお考えになつておりますか。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは主としてこの兵器等に関する特殊の何と申しますか、特許権その他のような種類のものを、如何にして外に出ないようにするかということでありますが、これを国内的にどう取扱うかというところは、まだそこまでの考えをいたしておりません。今ではお互いにどの程度のところを機密取扱とするか、そういうものがどの程度あるか、こういうような点を先ず確かめて、それによつて一体国内的に新しい措置が必要であるかどうかという結論に、だんだん進んで来るわけであります。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 この弘報活動というのは日米が共同でおやりになるわけです
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これもまだそこまで話合いは行つておりません。ただ国民にできるだけ秘密でない部分、この秘密でないのが原則でありまするから、できるだけこれを国民に知らせようという気持において一致しているところであつて、これを日米合同でやるか、或いはおのおの別々にやるかというようなことは、まだ話をいたしておりませんが、私の考えでは、これは日本側で十分やり得るし、又合同でなくてもいいのじやないかと思つておりますが、各国の例等も今調べております。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 国民に実情を知らす、こんなことは当り前ですよ、だから日本政府だけが単独にやるということでしたならば、これも当り前です。それだけのことでしたなら、何もMSA協定の一つの対象議題と成り得ないと私は思う。これは私どもが、誰でも考えておることは、真相を知らすのだということに便乗いたしまして、そしてアメリカの外交政策というものが、それによつて一方的に宣伝される、こういうことを予想して、誰でもこれは受取つております。それでお聞きするわけなんですが、その主体が誰か、知らされるほうはこれははつきりしておる、主体によつてこれはきまつて来ますけれどもアメリカのこの弘報活動の中に一役買うか、買わないのか、全然干渉しないか、そういうことをお聞きしておるのです。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 非常に御推測して御心配のようですか、そんなことは我々は考えておらないのです、つまり例えば或る兵器において、その中に一つの機密事項がある。その場合にこの兵器があるということを国民に知らせる場合に、この機密事項を軽いものならば同時に知らせてもいいじやないかとか、或いはこれだけはどうしても外に出すわけには行かないとか、こういう場合にアメリカ側と話をして、その内容をきめようというのが趣旨でありまして、要するに、種々の機密事項がある場合のことを考えておるのでありまして、MSAのこういう弘報事務というので、アメリカの外交政策をここで以てやるとか、そんなことを考えておることは全然ありません。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 全然ないということが出て来るのですね。例えばこうこうこういう器物がある、これだけのことでしたならば、官報にでも発表しておいたほうがいい、問題にならない。ところが必ず弘報活動としてこれが出て来る場合には、この器物は何のために必要かというようなことが、知らず知らず考えさせるような註釈が付いて来なければ活動にはなりません。活動には、動的なものにならんでしよう。必ずそういう註釈が付いて来る、註釈が必ずある、これは宣伝です。勿論アメリカの立場がどうこうという意味ではなしに、日本のうちで外国のそういうものが入つて来ることは極めて警戒しなければならない。そういう意味で、若し今外務大臣がおつしやるようなことであれば、あなたが交渉の責任に当つておられるのですから、こんなことは一つ交渉の事項から抜いてしまわれたらどうですか。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSAの援助につきましては、できるだけ国民に知らせるということであつて、いわゆる秘密にして何も国民にわからせないで援助を受けるという趣旨にはアメリカ側の法律も反対しておる、又各国も皆、いずれの協定を見ましても、全部国民に知らせるという建前をとつております。この主義は非常に必要だと私は考えております。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 これは私どもも大賛成です。それを要求しておるのです、いつも。むしろ政府が第一回の委員会を開かれる前に、政府としてはこういう具体案を持つてアメリカ側に臨むつもりだ。これを国会に発表すれば、必ずそれに対して国民の中からいろいろな意見が出て来る。これがつまりアメリカに対する国民外交の役割を果してくれるんですね。政府はそれを一つもやつておらない、そういうことをおつしやるなら、本当にどういう具体案をアメリカ側にお示しになつたのか、それを出してもらいたい。秘密にすることは何もないでしよう。私ども日本政府からその説明を聞かないで、少しずつ、一部分ずつ外国のいろいろなニュースなんかを我々が伝え聞くだけだ。それも忙しかつたり語学の知識が不十分ですから、完全には消化できない部分もたくさんある。そういう不便なことを国会でさせないで、あなたがそうおつしやるなら堂々とこういうふうに軍事義務の問題は望んでおる。具体的にですね、抽象的にでなしに出すのが当り前です。アメリカ国会ではすでにそれをやつておるでしよう。アメリカ国民はそれに対していいとか悪いとか言う。政府は新聞を見て、考えて、おのずから日本の対する態度というものが、政府のほうはきまつて来る。アメリカ側はそういうふうにやつている。こつちだけじやないですか。一体、お聞きしますがね。あなたはこのMSA協定がアメリカ側と案がまとまつてから、実はこうこうこういうものになりましたと、こういうことをおつしやるつもりか。或いはまとまる前に大体の枠ができた。アメリカに約束をする前に、国会にこの程度進行したからどうか。こういうふうにお聞きになるつもりか。そのことをはつきりして下さいよ。
  115. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 亀田君は、アメリカのやりかたを誤解しておるようでありますが、私の承知するところでは、アメリカでも協定の前においてこの内容等を国民に発表したことは一回もありません。まあこれは常識であります。つまりいずれの国といえども、誠意を以てお互いに友好的に話合いをしようというときに、自分の都合のいいような案を国民に示して、国民の輿論の圧力を以て他国を圧迫しようというようなやり力は慎しむべきである。従つて我々としては必要な限度においては、できるだけ国民に知らせる。即ち先般日本側の態度を明らかにし、これに対してアメリカの立場を明らかにした文書等は、直ちに国会にも提出いたしました。又国民にも発表いたしております。併しながら、いやしくも国民の輿論を背景として、相手国をたじろがせようというようなやり方は、慎しまなければなりません。この間の舵はなかなかむずかしいのでありますが、外交交渉に当る者としては、この点は十分考えなければなりません。アメリカ側といえどもこういうことをやつておることはありません。そうして一体国会の承認を求めようとおつしやるのか、或いは国会で報告を聞きたいとおつしやるのか、これによつて勿論差はあります。政府としてはできるだけ国会にも報告はいたしたいと、こう言つておりますが、国会の承認を求めるときには、この案はまだきまつておらない。右になるか左になるかわからないが、一括承認してくれと、こういう承認の求め方はしないのでありまして、こういう方針で行くのだから、これで承認をしてもらいたい。つまり日米間の合意ができ上つたときでなければ、国会といえども承認できない。右になるか左になるかわからないが、これを承認してくれ、こういう承認の求め方はしないのであります。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 それはアメリカのやり方としても、全部をさらけ出しておるとは私は申上げるのではない。アメリカの外交のやり方だつて、随分おかしいことがあります。併しそれよりももつとこつちのほうがおかしいのではないか。そう育つておる。そこまで誤解せんようにしてもらいたい。  それから承認の求め方の問題ですが、これはあなたの言うのは形式論ですよ。それは政府が執行の責任に任ずるのだから、きまつてから国会に対してイエスかノーかを求めたらいいでしよう。例しそれでは済まないような大きな問題なんでしよう、この影響するところは国民なんですよ。政府の皆さんよりも国民のほうが影響力が大きいのですよ。そういう問題であるから、事前に適当なところに行つたときに、国会に報告、報告ということは当然意見を聞くことを含んでおります。場合によつては、承認できないことも含む場合もあるでしよう、それが実際必要なことじやないかということを私は考えている。だからそこで、こういうふうに話がなりましたから更に聞きますが、あなたは、じやアメリカと確定的に約束するまでは国会に対して報告しませんか。或いは適当な時期に……あと国会といつたつて一週間ほどしかないのですよ。だから抽象的の議論をしているときじやない、一週間の間に発表いたされますか。
  117. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 亀田君は、前にこの予算委員会にお出になつておつたかどうか知りませんが、総理も私もでき得る限り国会にはその都度報告することに方針をしている、こういうことを言つております。承認を求めるということは、これは別問題、法律上の行為でありますから、いい加減なものでこれを承認して下さいということは、政府も言えないし、国会もそんなものは承認しない、承認と報告とは別問題であります。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 そうじやないですよ。もつとこつちの気持を汲んであなたは答弁しなさい。政府アメリカと約束をして、そうして国会に持つて来た場合には、私のほうにしたつて、折角政府がやつて来たものを……こういう気持に半分はなるわけでしよう、実際問題として……。幾ら吉田内閣がやつたから、こういつてもそんなことは知らん。これはほかの場合と少しは違う、ね、人情上そうなりますよ、だから事前にやはりこれは出して行くべきものだ。こういう臆測をしている方面がありますが、どうですかね。こういうふうに聞いたほうが一層はつきりすると思いますが、大体の考え方は、政府はもうきめている。そしてこの軍事義務の問題についても、アメリカ側と了解をつけている。いましばしそれをはつきりすれば国会の開会中だから、これは一つその後にしよう。こういうふうな考え方が両方に動いてるのじやないですか。
  119. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ず第一の点を申上げますが、それじや政府国会にまだこの点は全然きまつていませんが承認を求めますと言つたらあなたは承認できますか……、それはできない。だから承認というのは法律行為なんですから、これは別問題だと申している。それから只今交渉の内容については、極く概略申した通り、まだ双方で肚の探り合いと言つちやおかしいですが。いろいろまだこちらでも聞き質さなければならんことがあり、先方も恐らくあるでしよう。そこで試みの案といいますか、そういうものを持ち寄つてお互いに今いろんな角度からそれを検討中でありまして、それ以外のことはやつておらない、いわゆる事務的にいろいろやつているのであります。で、もう少し固つてから、もう少しはつきりした政府の態度もきまりましようけれども、今のところはまだその段階です。交渉は……。併し交渉の前において、先月の二十四日と二十六日の文書の交換によりまして、我々としては、大体MSAは受け入るべきものであるという考えに固つております。従つて交渉を始めたんです。この大体のラインは、国民においても十分承知していることと考えておりますので、このラインであとの細目についていろいろの点を只今打ち合せ中である。従つて国会に出すのがいやだから延ばしているとか、そういうような妙な考えは毫もありません。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 本来ならば、国会側と、暫くしかないのだから、実際はまだ結論に到達しておらんけれども、そうしてA案とB案とある、国会が終われたら大変ですから、事前にA案とB案について承認という意味ではないが、大よその考え方は聞きたいものだ、これが民主的な行き方ですよ。あなたのように、そういう曲解をされて、きまつておらないものを承認を求めるのはおかしいじやないかと、そういうことを繰返される必要はないですよ。  それから一つ、時間も大分過ぎておりますので聞いておきますが、五百十条の(a)項の六項目ですね、アメリカは全部これをつ協定の中に入れたい、こういうふうに主張していると聞いておりますが、それは事実ですか。
  121. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側というと誤解があります。アメリカ側の係官と日本側の係官で、その点について如何に取扱うべきかを話しております。その際にアメリカ側の係官は、これを協定の中に入れたほうがはつきりしてよろしかろう、こういう意見を述べております。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 日本側はそれに対してどういうことなんですか。
  123. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは各国の協定を見ますると、いずれも第一条の中に、安全保障法のタームス・アンド・コンディシヨンと書いてありますが、条項及び条件といいますか、これの全部に従つてこの援助を受けるということに書いてありますから、普通の第一条のようにしても、やはり第五百十一条の六項目はサブジェクト・ツウという言葉になるわけであります。そこで一体この協定の中に、こういうものをはつきりしたほうがいいかということについては検討しておりますが、内容については、いずれの国もそういう趣旨で援助を受けているのでありますから、あとは表現の問題になるだろう、こう考えております。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 大分はつきりはして来ましたが、どうもはつきりしませんが、(笑声)午前中の締め括りとして一つ保安庁長官と、関連して外務大臣にお聞きしますが、このMSA交渉が始まつてから以後、外務大臣の言明或いは保安庁長官戦力に対する言葉使い方、或いは保安庁法の改正の問題、いろいろな言明を通じて、まあ国民ははつきりとこれは一歩前進している、こういうふうに解釈しております。で、そういう細かい点の最後的な一つの対決は更に追つていたしたいと思います。一つお聞きしたいことは、日本の憲法が制定されます場合に、昭和二十年の六月二十六日でございますが、その当時の国務大臣吉田さんはこういうふうに言つております。「第九条第二項ニ於テ自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、」、「自衛権ノ発動トシテノ戦争」ですよ、こつちから出て行くのじやないのですよ、「又交戦権モ放棄シタモノデアリマス。従来近年ノ戦争ハ多ク自衛権ノ名ニ於テ戦ハレタノデアリマス。故ニ我国ニ於テハ戦争ノ抛棄ニ依ツテ全世界ノ平和ノ確立ノ基礎ヲ成ス決意ヲ此ノ憲法ニ於テ表明シタイト思フノデアリマス。」これは皆さんも御存じの通りですが、改めて読み上げますとこういうことが言われております。憲法第九条の二項の説明として……。でこの際には明らかに、いろんな国際間の紛争、外からの侵入、これに対しては日本は平和機構を確立して、それによつてつて行くのだ、それによつて世界平和の先端を一つ行くのだ、こういう考え方であつたことは、これはもう間違いない。今の考え方は別にして、その当時の考え方はそうであつたと思いますが、当の吉田さんはおりませんが、代つて副総理はどういうふうにこの総理大臣のその当時の言明を、その当時の状態ではどのようなものであつたかというふうに解釈になつてますか。わからんければもう一度言います。「第九条第二項ニ於テ自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、」……いいですね、侵略戦争は勿論、「自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ放棄シタモノデアリマス。」更に註釈して、「従来近年ノ戦争ハ多ク自衛権ノ名ニ於テ戦ハレタノデアリマス。故ニ我国ニ於テハ戦争ノ抛棄ニ依ツテ全世界ノ平和ノ確立ノ基礎ヲ成ス決意ヲコノ憲法ニ於テ表明シタイト思フノデアリマス。」これを率直に読んであなたはどうお考えになりますか。
  125. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 憲法制定当時のことを私実はよく存じませんが、今日の我々の常識で考えまして、自衛権の発動をも認めないということは、少し無理があろうと考えますけれども、併し憲法制定に際しまして、あの前文の意味、更に第九条第一項、第二項、特に第二項を書きましたなにから言えば、そういう解釈が当時とれたのであろうと考えます。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、これは重要なことになる。最近の保安庁長官外務大臣考え方、外敵侵入に対してもいいのだとか、或いは侵略戦争を起すものでなければいいのだとか、そういうような言葉使い方というものは、使つておられるかたは如何は主観的にこうだと言いましても、その解釈を私は今否定するのじやない。少くとも憲法制定当時に吉田さんが国会で言われたことと相当考え方の開きがあることだけは、私事実であろうと思う。解釈によつて進歩したのだ、こう外務大臣は、或いは保安庁長官はお考えになつておりますが、開きのあることはお認めですか、先ず長官からお聞きします。
  127. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) どこに開きがあるかというこは、私は申上げることはできませんが、我々の解釈といたしましては、一体憲法の戦争放棄の規定はどういう趣旨からできているか、この根本を掘下げて考えなければならんと考えております。要するに九条第一項において「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」いわゆるこの意味から申しますると、再び侵略戦争の愚を繰返すようなことをさせないということが根本であります。この規定の裏から見て、自衛権を否定したものでもなし、又自衛権の裏付である自衛力を否定したものでないと考えております。併しながら自衛権の行使の下に往々にして侵略戦争のような愚を繰返す危険があるからして、第二項においてさようなことに行使される大きな力、即ち戦力を持たせないということでここで抑えて言つているのであります。その裏から返せば、自衛権が否定されてるものでもなし、その裏付である自衛力も否定されておらない。どうも国家である以上は、自衛権を持ち自衛力を持つのは、これは当然であろうと思つております。これは平和条約においても或いは国連憲章によつても皆自衛権のあることは認めているのであります。ただただ、戦力は持つてはならんということであります。戦力に至らざる自衛力というものは、これは一国である以上はあつてもよいのである、ただ自衛力の名の下において、大きな侵略戦争のような愚を再び繰返すような危険を抑えるために、戦力の保持を禁じてあるものと我々はこう考えております。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 そうじやないのですよ。それはあなたの考えだ。その考えと先ほど申上げた考え方は違うじやないですかと言つている。吉田さんのこの文章を静かに考えてみれば、自衛の名において侵略戦争が行われた、だからそれを否定するのだ、こう規定しておる。そうして紛争の解決の方法は平和的な機構でやるのだ、こういう註釈で否定しておるのです。違うことだけはあなたは認めませんか。あなたの解釈を聞くのじやない。
  129. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。吉田総理も、そこからは、自衛権を私は否定していないと思います。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 自衛権は否定しておるか、しておらんか、これは別なんだ。自衛という名における戦争ですね。まあもう少し具体的に言えば、外国から侵入があつたとします。それに対してこちらが自衛の名において戦争する、それは一体認めるかどうか。
  131. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は終始申上げております。外国が不当に日本侵略して来た場合にはこれは日本国民は、私は大多数は起つだろう。私はそれを信じております。これは何人といえども、おめおめと手を挙げて外国の侵入を迎えるというようなことは、私は想像できないのであります。それは無論国際紛争が起れば、これは平和的に解決するのは当然でありますが、不法に侵入して来た場合には国民の大多数は起つ、こう考えております。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 あなたは法律論と事実論を殊更に混同して言われておる。賢明な長官ですからそんなことは御存じで言われておる。侵入があれば対抗するは当り前です。自衛軍があつたつてなくたつて当り前です。そんな自然発生的な現象を私お尋ねしているのじやない。そういう侵入が仮にあるとして、ありました場合には、必ず国際間のいろいろな状態が険悪になつて来る、それに対して日本はそういう紛争を平和的に世界の協力を得て解決する、こういう趣旨でこの憲法を作つたのじやないですかと、こう聞いておる。実際に侵入があれば、それはあなたは対抗するとかなんとか、あなたはここにえらい力を入れて言われますが、そんなことは当然のことですよ。だからそういうことじやなしに、憲法を作つたときの趣旨は、前文から言つてもそうじやないですか。その当時と今とは情勢が違うから、今は併しその通り解釈では行かないのだという解釈であれば、それは私又そういう立場のものの考え方もあろうかとも思う。私はそれには必ずしも賛成はしませんが、憲法というものはそんな頼らないものじやないのです。そのときの総理大臣保安庁長官解釈一つによつて吹つ飛んでしまうようなものじやないのですから、そういう解釈態度には賛成しませんが、ともかく物事の経過なり、成り行きというものは明確じやなきやいかんでしよう。その意味で私は吉田さんが昭和二十一年の国会で先ほど言われたあの言葉は、私が今申上げているようなふうに、これは誰でも解釈します。普通、朝日新聞でもみんなそう解釈していると思います。緒方さんは大体そのようなさつき答弁された。だからあなたも重大な関係があるのですから、今は別として又あなたの考えは別として、その当時の吉田さんの考えはそういう飽くまでも平和的な手段で、これはやつて行くのだ、できるできんは別ですよ。できるできんは別。それは又別な政策的な立場で解決したらよろしい。作るときはそうじやなかつたかと、あなたはそれを認められるでしよう。はつきりした文章なんだ。
  133. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 無論私も先ほど申した趣旨からして明らかでありまする通り、平和憲法を制定した当時も今でも変りはない。今も国際紛争は平和的に解決すべきである、又しなきやならんと考えております。これは当然のことであります。これは世界のみんな国民気持なんであります。そこで国連なんかもでき上つたのも、私はそれであろうと思います。物事を平和的に解決しようという、戦争なんか再び繰返したくない、これは世界の輿論である。無論日本の憲法もその趣旨でできておることは当然であります。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 少しはつきりせん点があります。あなたは非常にいいことを今言われた。平和的に解決するのは当然だ、私はその通りだと思う。そこで大蔵大臣、副総理にお尋ねしますが、そういう立場から見ると、今日のこの日本予算の組み方、これは私非常に適切ではないのじやないかと思うのです。もつと平和的に解決する方面に金を注ぎ込まなければならない。例え貿易計画一つ見たつて、今度はプラントの関係の費用も出ておるし、何か調査費のようなものも幾らか載つておる、これは誠に結構なことだと思う。ところが大陸の方面の調査というものは考えられておらない。こういうことが予備審査における考え方のようでありました。予算の中に現われて来るそういう考え方に私は非常に矛盾があると思うのです。私どもはそういう戦力を持つことには反対ですが、併し止むを得ず持つとしても、併し第一には平和なんだ、こう今長官自身がおつしやる以上は、予算の組み方というものはもつと世界情勢を見て、どことでもうまく行けるような、そういう組み方が、たとえ僅かな貿易政策でも、いろいろなところにでも出て来なければならないと、私は確信するのですが、先ず副総理のお考え方はどうですか。
  135. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたしますが、只今の現憲法の前文に現われておりまする思想は人類の理想であります。又あの憲法を制定したときの気持は、世界の地上から戦争を除きたい気持を以て制定されたに違いないのでありますが、併しながら現実は必ずしもそこまで行つていない。そこに自衛権というのは、国を建てると同時に自衛権というものがあるということ、世界の現実がそこまで行つていないということ、それと憲法の制約、その間にいろいろ解決しにくい問題があるために、今日今ここで繰返されておるような論議も起るのであります。そういう現実に対しまして只今の予算の組み方をすることも又止むを得ない、かように考えております。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 大蔵大臣一つ……。
  137. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 予算の編成につきましては、各省の要求につきまして十分な査定を行うと共に、よくその実情に即して、国の財政全般から見ての資金の配分をいたす次第でございまして、これは閣議の決定を以て編成を終るのであります。従いまして今の予算、本年度出しました予算は、実を申上げますと、現在の資金の配分については最善の予算なりと考えておる次第でございます。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 大蔵大臣一つお伺いしますが、世間ではこういうことを言つておる。保安庁の経費は随分たくさん残つた。従つて今度六十四億くらい削られても、大したことは実際はないのだ、あそこだけは何とかやつて行く、こう言つております。あなたはこういうことに対して、削られたために随分困つておる官庁もあるのです。小林君から先だつて質問がありましたように、本当に十人そこそこでやつておるような所では身動きがとれない、そういうところの調整をなさるあなたはお考えはありませんか、何らかの方法で……。
  139. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 保安庁予算につきましては、亀田さんも御承知のごとくに、先に相当大きな実は査定をいたしておるのでありまして、この間どなたかおつしやつたが、いつも出したものの半分しか認めん、それでもいいのかとおつしやつたくらいで、相当に厳密な査定をいたしております。のみならず庁費等で今度のいわゆる本予算では相当に削減をいたしておる。そこで私どもは恐らく実情においては相当向うにおいても厳しい査定のために、運用上過大の困難な点があるのじやないかと思うくらいなのでありますが、御承知のように、あそこのもののうちには、いわゆる契約をしておけば、その年度内に債務の負担行為は必要でありますが、年度内に完成しないものもありますので、これは併し国としての債務負担をしてやらんと注文もできません。そんなわけで、いわゆる予算外国庫の負担契約をいたしておる次第であります。  なおさつきちよつと私が申上げたうちに、私どもの調べによりますると、昨年度のいわゆる残つておる三百八十九億でしたか、七十九億でしたか、そのうちに六月末で契約未済のものが百二十数億にとどまります。あとは皆それぞれ契約されております。このことを申添えておきます。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 もう時間ですから最後にいたします。大蔵大臣希望いたしておきます。まあこれだけ修正するにしても、これはてんやわんやをやつて来ておるのです、更に又それをよそへやると大変だろうと思う。来年度の予算の編成期ももう間近いのですし、これは十分考慮に入れて来年度は御考慮願いたい。まあそれまで大蔵大臣、吉田内閣の寿命が続けばですよ。お願いしておきます。
  141. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩    —————・—————    午後一時五十七分開会
  142. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続いて会議を開きます。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 私のあとの加藤さんからも労働大臣の出席を要求されておるようですから、私は直接にはむしろ政府委員のかたのほうがよくわかるだろう、こう思つておるのですが、或いは途中でお聞きしたほうがいいという事項が出るかも知れませんので、その旨通じておいて下さい。  駐留軍労務者に関する日米労務基本契約、このことについて、一つこれは少し細かい点に入るのですが、いろいろお聞きしたいと思います。それは丁度去る二十二日に駐留軍の労働組合におきまして特にこのことのために大会を持ち、極めて重大な段階に来ております。悪く発展いたしますると、政府の立場といたしましても、随分日米間として困つた問題が派生するのではないか、こういうふうな事態にあると私ども考えておる。そういう立場から、普通の労働関係と少し変態の関係にありますので、この際お聞きしておきたいと思います。具体的な問題に入ります前に、これは昨年以来相当長く経過しておる問題でありますが、大体の経過についての要点的な御説明を一つ先に承わりたいと思います。
  144. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 御説明いたします。只今行われておりまする労務基本契約は、一昨年の七月一日から実施いたされましたものでありまして、昨年の六月末を以ちまして一応契約期間が切れておるのでございます。従いましてその如何ような取運びになるかにつきまして、軍とも数度打合せまして、その間一カ月毎に契約の延長をいたしまして今日に至つております。およそ一年ほどになるのでございますが、その間には軍の案がおよそ四回に亘りまして変つてつております。で、軍といたしましては、勿論継続しましてこの契約を締結し、必要なる労務の提供を受けようという意向が十分に見えまするので、我々といたしましても、従来の例に鑑みまして軍と交渉を進めたわけでございます。昨年の八月末から十一月末までは、横浜のいわゆる契約官、契約担当官でございますが、それと私たちが話合いをいたしまして、十二月に入りますと軍の方針が変りまして、極東軍司令部が中心になつてやるという態度がありまして、政府といたしましては外務省が中心になり、調達庁或いは労働省なども参加いたし、それに更に加えまするに関係の労働組合の参加も見まして、いわゆる我々は三者会議と称しておりますが、それが昨年の十二月初めから今年三月初めまでおよそ十六回に亘りまして開かれております。勿論その間に分科会が四回設けられまして、それがいずれも数回に亘りまして開いております。合計いたしますと、分科会はおよそ四十回ほど開催いたされております。従いまして、軍の意向なり或いは我がほうの意向なりというものは、或る程度了解がついたものだと考えておつたのでありますが、今年の六月初めになりまして最後案的な意見が出されたのでございます。その意見によりますと、我々の了解しますところによりますれば、およそ相互間におきまして意見の調整ができたものにつきましてはおおむね採用されておるのではなかろうかという感をいたすのでございますが、ただそれらにつきまして二、三点大きな問題についてどうも意見の調整ができないという見通しがつきます。従いましてこれらにつきましては、今後とも更に交渉を重ねなければならんのじやないかという考え方を持つております。簡単でございますが以上であります。
  145. 亀田得治

    亀田得治君 今年の六月に最後案が出されましたのは、日本側の意向を或る程度取入れて、併し或る程度重要な点については取入れられないで、そうしてアメリカ側から日本政府に示された、そういうわけですね。
  146. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) さようでございます。
  147. 亀田得治

    亀田得治君 で、その二、三の重要な点、それはどういう点ですか。
  148. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) お答えいたします。先ず一点は軍の施設、基地内におきます保安庁の人事措置の問題でございます。これは御承知通り基地内の管理権は行政協定に基きまして軍が持つておりまするので、その管理権に基きました必要な措置を軍一存で運びたいという意向が見受けられます。それからもう一つは同じく基地内に使用しますところのいわゆる保安警備員でございますが、それらと消防夫のストライキ回避策を考慮したい、こういう考え方が基本でございます。で、この点は軍の言い分は尤もなのでございますが、ただその回避策として示されました方策が、採用に当りましてあらかじめストをしないという誓約をとろうという考え方のようであります。この点は国内法からいいますとおかしな考えでありまして、現在の労働関係法規からいいますれば、これは何といいますか、常識的に考えられないことでありまするし、仮に誓約をいたしましても、この契約は意味のないものではなかろうかという考え方をいたしまするので、これらにつきましても十分に話合いをしなければならんだろうという考え方を持つております。以上大体それくらいの点でございます。
  149. 亀田得治

    亀田得治君 政府の立場はこの労働組合側の意向をよく先方に伝えておりますか。
  150. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 先ほども申上げました通りこの三月十日前後までにおきましては、関係労働組合の参加しました会議を十六回ほど持たれております。その席上におきましては関係労働組合からも自由な発言、討議がなされておりまするので、その間におきまする組合の意向というものは軍に反映しておると考えております。その後におきましても、分科会等におきまして、やはりこれは関係労働組合も参加し軍も参加いたす分科会でありますので、その後におきましても或る程度の意見は通つておると考えます。ただ最近におきましては、軍と我がほうで実は話合いをする機会が持たれませんような実情でありますので、極く最近の実情につきましては、組合の意向等は、我々として知り得たものはその都度重要な事項については、軍のほうにも提供をして考慮方を煩わしておるわけであります。
  151. 亀田得治

    亀田得治君 先ほどあなたがおつしやつた二つの問題は、これは政府としても御考慮を願いたいということは、軍のほうにはつきり伝えてございますか。
  152. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 六月初めに提案されました契約案文についての件等は目下関係各省と折衝いたしておる次第でございます。従いましてまだその最後案に対する我がほうの最終的な意見というものがまとまつておりません。で、一応の機会がありますときには、勿論さようなことについては、我がほうはこういうふうに考えておりますということは伝えておりますが、最終的な政府側の態度として表明いたした、最後案として向うに伝えたものはまだ出ておらんと考えております。
  153. 亀田得治

    亀田得治君 機会のあるときに幾らか意向を伝えておるというふうにとれるようでございますが、それはどのようにお伝えになつておるのですか。これは労働組合のほうからも反対しておるし、是非このようなことは入れないようにしてもらいたいと、はつきりお話になつておるわけでしようか。
  154. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) お答えいたします。先ほど申しました通り、向うの最終案に対しまする最終的な我がほうの意見というものがまだ提示いたしておりませんので、軍といたしましては、全般的な意見というものはまだ納得しておらんと考えます。ただこれらについては一、二別の会合で話合いをする機会もありましたので、政府としてはかような考え方はそう簡単には取上げられないという意見は出してあります。なおこれらにつきまして、私のこの際考え方を述べさして頂きたいと思いますが、先ほども御指摘がありました通り、この問題につきましては関係労働組合も相当重大な考慮を払つておると私も考えております。従いまして、これらの問題につきましては、関係各省の協力を得て、できるだけ今日の法律に適応しました線の案を作らなければならんことは勿論でございますが、三月当初におきまして打切られております三者会議、即ち軍、日本政府側、それから関係労働組合の参加します三者会議がこの際緊急に開かれまして、その上で十分に我々の考えておりますところを軍にも伝え、軍の意向も十分に我々の汲取る機会を持ちたいと我々も考えておる次第でございます。
  155. 亀田得治

    亀田得治君 八月一日から軍が六月に提示した最後案、これを強行するというふうな情報も入つておりますが、これに対して先だつて本会議において労働大臣から、さようなことのないようにしたいという意味の御希望がありまして、私も誠にこれは適切な御答弁だと感謝いたしておりますが、すでにその御意向は先方にお伝えになりましたでしようか。
  156. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げます。労務基本契約の問題点につきましては、中村労務部長からお話申上げました通りであります。こうした国内法上の問題もあり、又労働政策上も如何かと思われる問題につきましては、先方に抗議してもらうように、又交渉でございますから、その間に種々の経緯も迫るかと思いますが、組合側にもその都度話をいたしまして、納得を得た上で円満なものを作りたい、こういう考え方でおるわけであります。従いまして只今御指摘の八月一日からの新らしい協約という問題に対しましては、期間的に不十分であるという考えで、二十四日の閣議におきまして、了解事項といたしまして、この新契約締結の八月一日を延ばしてもらうという方針にいたしたのでございます。この点につきましては、至急先方に申入れるようにいたしておるのでございますが、調達庁長官も昨日変つたような次第でございますので、新長官におきまして適宜な処置をとるものと考えております。
  157. 亀田得治

    亀田得治君 八月一日と言いますと僅かしかありませんが、前日くらいになつて申込をされても、されたほうにしても都合があるでしようし、今明日くらいにそういう意思表示をされるというふうに解釈しておいてよろしいでしようか。
  158. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 結構だと存じます。私どもの了解いたしますところでは、新長官において、すでに何か今日中においてでも話をしてくれておるのではないかというくらいに考えておる次第でございまして、この問題については私もできるだけ努力を払いますことをお約束申上げます。
  159. 亀田得治

    亀田得治君 そこで部長に関連してこの際聞いておきますが、六月に示された軍側の案、これは問題点を先ほど二つに要約されてあなたからお話がありましたが、御検討になる場合にはもつといろいろ問題があるように私感ずるのです。その点で少しついでですからお伺いしておきますが、これは雇主は日本政府ですね。法律上の雇主はそうなつておりますね。
  160. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 只今の御指摘の通りでございます
  161. 亀田得治

    亀田得治君 ところが使う場合には軍が使うのだからということで複雑な関係が出て来ることは私も承知しますが、この二月でしたか、飽くまでも人事の問題は共同管理でやつて行こうといつたようなことが三者間で申合されたように聞くのですが、そのような申合せはあつたんでしようか。
  162. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) このことにつきましては、御承知通り非常にデリケートな問題がからんでおります。というのは、只今お話の出ましたような国内の民間の普通の労働関係におきましては、雇主がいわゆる使用主に相成りまして、労働者といろいろな関係が進められておるわけでございますが、駐留軍労務関係日本政府が雇主になつておりますが、現実に基地内におきます使用関係は軍が相当大幅な権限を持つております。従いまして国内法の適用の問題につきましても非常にデリケートな問題がいろいろとあるわけでございます。この関係につきましては、数次の会合の席上におきまして検討されました結果、三者間で了解できましたのが、調達庁は法律上の雇用主の立場をとる、その後、そのほかに使用上の諸問題も起りましようし、或いは雇用上の諸問題も起るだろうが、これは共同で解決するように努めて行こう、ただそれぞれの権限に基いて措置された問題については、それぞれの立場において解決するはかなかろう、こういう考え方が一応とられたわけでございます。
  163. 亀田得治

    亀田得治君 この六月に示されました軍からの最後案を見ますると、初めのほうには日本政府と軍とが協力して人事管理をやつて行く、このような原則がずつと出ておる。ところが例外の場合がC項に書いてありまして、その中に四つばかりいろいろ分けて書いてございます。そのうちの一部分につきましては、先ほど部長からお話がありましたが、そのほかにも、例えば今日雇われておる者としては最も重大な関心を持つておる人員整理の問題、これなんかも全く例外事項として日本政府の権限の及ばない事柄、こういう例外事項にはめられておるのです。これなんか私例外事項の中でも、最も組合側から言いますと問題になる点であろうと考えておりますが、あなたは先ほどこれには言及されませんでしたが、日本政府のほうはこのようなものには同意されておるのですか、これもちよつと問題だというお考えでしようか。
  164. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) お答えいたします。この人員整理につきましては、三者会議の進行途中においていろいろ問題を提案されまして、臨時的に人員措置の方式が一応了解されております。これは労働組合を交えた席上での了解でございまして、恐らくは将来ともかような問題につきましては、いろいろ方式と言いますか、一応の形式が整えられるものと考えております。従つてその形式の線に沿うた整理ということで行くのではないか、ただやたらに軍の権限として人員整理が勝手に行われるというようなことはないのではないかというふうに考えております。
  165. 亀田得治

    亀田得治君 併しこの案そのままの条文によりますと、例外事項としてこれはもう一方的にやつて行くという条項の中に入つております。実際上の運用はそのようなことはなかろう、そういうふうにおつしやるかも知れませんが、ないのであれば、例外事項にこういうものを持つて来ないで、やはりこれは両者協力をしてやつて行くという共同管理の初めのほうに持つてつておくのが本当じやないかと考えるのです。
  166. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 先ほども申しました通り、これらの件につきましては関係各省との意見の調整もまだ十分に進んでおりませんし、又軍とも直接これらの問題について具体的に折衝をしてもおりませんので、これらの点につきましては軍と十分に意見を闘わすと申しますか、意見を調整した上で適当なる案を生みたい、こういうふうに考えておる次第でございまして、この案がそのままもうすでに了解済だというふうなことではないのでございます。なお申上げますが、これらの注文の実施方法につきましては、附属書類においてそれぞれこまごましく記載されることと相成ると考えておりますし、我々もさよように運びたいと考えておる次第でございます。
  167. 亀田得治

    亀田得治君 これは確定してしまつてから、このようなことを如何に国会で論議をいたしましても、時すでに遅しと、それでは問題が非常に遷延化する、そういう意味でこれはいろいろお聞きするわけです。あなたの先ほどのお話の中では、二つだけ問題点があるというふうに言われましたので、そのほかでも私ども重要な点がいろいろ指摘されておりますので、その点については、取りようによつて政府が同意を与えておるようにもとれますので、それでまあ御注意の意味も含めて実はお尋ねしておるのです。そういう立場からお聞き願いたいのですが、もう一つこれは細かく言いますと非常にきりがありませんし、又むしろ専門の委員会のほうがいいかも知れないと思うのですが、十一条ですね、就業関係のことが書かれております。この規定通りに行きますと、日本の労働基準法というものが全く無視されかねないことに駐留軍労務者にとつてはなるのですが、その点はどのようにお考えでしようか。
  168. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) この点につきましては、軍も労働基準法のあることを十分知つておりまして、なお就業規則その他の定め方につきましては、基準法の定めるところに従つて労務者の意見を聞く建前をとつております。従いまして労働組合とも話合をした上できめて行くということに我々は考えております。
  169. 亀田得治

    亀田得治君 そうすれば、こういう労務基本契約を結ばれるときに、日本にあるこの労働基準法、そういうものに副つて一つつて行く、こういうふうに書いてもらえば何らの疑義が起らないのですね、別な文句で書いておいて、実際にはそれをいろいろ考えてやつて行くのだ、こういうふうになりますと、とかく雇われておる人のほうはそれしかないのですから、非常な誤解が起きて来る、だからそういうふうに改められたほうが簡便でいいのじやないかと思うのですが、あなたはどうお思いになりますか。
  170. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 勿論御承知通り、この労務提供につきましては国内法の適用を完全に受けるものだと我々は考えておりますので、それを外れたことは予想されておらないとは考えます。ただ軍といたしましては、何分にもものの考え方日本政府と我々とは多少違つております関係もありまして、事細かに表現したいというふうな気持も出て来るようであります。十分勿論この点につきましては、先ほど御指摘のような点もよく含めまして、我々としては対処したいと考えております。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 それからその次にあります十二条の「紛争」というところですね。この紛争というのはどういう紛争でしようか。日本政府と労働者との間の紛争をも含むのでしようか。或いは日本政府と軍との間の何か意見の食い違いとか、そういうような意味でございましようか。
  172. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) お答えいたします。これはこの契約の上から起りましたいろいろな意見の不一致などを予想いたしておるのでございまして、この契約の中には労働組合と直接の関係を持つような予想は、実は何と言いますか、ないと考えるのです。ただ軍と提供する立場にあります日本政府との関係考えたという考えでございます。
  173. 亀田得治

    亀田得治君 この点はやはり最終的な案を作られるときに明確にしておいてもらいませんと、妙な解釈をされますと、これによつてスト禁法が成立したようなことになろうかと思うのです。そういう点間違いなかろうと思いますが、希望いたしておきます。  それからもう二つ重要な点がありますが、その一つは十三条の団体交渉の問題ですね。で、私どもの理解するところでは、まあ私法関係は、軍が使うことでありましても、飽くまでも雇う、雇われるという基本的な契約関係政府と労働者の間で交わされる、こう解釈しておるのです。それに対しまして、軍が何か参考までに適当な意見を法律の枠内において何か言われる、まあそういうことはあると思いますが、こういうふうに麗々しく軍が直接その交渉にこれは参加して来る結果に私はなろうかと思います。殊にひどいのは十三条の中のa項の中の終りのほうなんか見ますると、軍のほうがちよつと待つた、こう言つた場合には、政府と組合との間に交渉がもう事実上ストップしてしまうというのですね。それからa項の次のb項の関係なんかを思い合せて見ますと、結局日本政府というものは何かボイコットされてしまつて、そうして軍の意向というものが事実上そこで幅をきかす、こういうふうなことになりかねないように私感じますが、どのようにその点は解釈になつておられますか。
  174. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) お答えいたします。この点は我々は飽くまでも先ほど申しました通り法律上の雇主でありまして、法律に保障されておりますいろいろな権利なり義務なりはその関係において調整されるものだと考えております。従つて軍の参加と言いますのは、単にその交渉の席に連なるという意味合のものでございまして、どこまでもこの団体交渉の最終の責任者は調達庁長官にあるというふうに我々は考えております。従いまして国内法上から言いますれば、勿論調達庁長官がそれらの全責任を関わるべきものだということでありますし、又先ほど御指摘のa項の末尾におきますところの、どうも軍の意向によつては団体交渉が止められるというような虞れがあるのじやなかろうかという御懸念につきましても、我々もその点は多少さような疑念を持ちますので、これらにつきましては、今後の交渉において十分了解させまして、できれば表現におきましても、そのような誤解されるような表現を避けたいというふうに考えております。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 これはやわらかい言葉でおつしやつておりますが、明らかにこのままで行けば大変な条文に私なろうかと思います。若しこういうものが成立すれば、明らかに憲法の二十八条なり、或いは労働組合法に違友するような条項を政府が認めることになるのじやないか、こう私確信いたしますので、これだけは一つ御訂正願わなければならないだろうと考えるのです。  それからもう一つ、これは誠に怪しからんものが入つておるのは、その次の十四条ですね、これを見ますと、労働組合と日本政府との間で紛争が起きた、争訟上の紛争ですね、そういう場合には、この軍が政府の争訟を準備したり、促進したり、そういうことに参加して来る、こういう意味のことが出ておりますが、これは我が国にはちやんと刑事訴訟法なり、民事訴訟法という法律もございますし、裁判所のことは一つのルールがきまつておるのですが、実際上の必要ということと、そういうそのルールを勝手に必要に応じて曲げるということとは、これは極めて区別して考えなければならん、必要なことは何も政府が訴訟をやる場合に、軍だけじやなくて、その他の参考者でもいろいろ関係されるでしよう。それは裏の問題なんでして、表面に堂々とこのようなことを書くことはいけないと思う。悪く解釈すれば、やはり日本の裁判権に対する何か圧力のような感じをここで受けるのですね。どうお考えでしようか。
  176. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 只今の御指摘の問題につきまして申上げますと、この問題につきましては、軍も日本の裁判所の権限その他を侵すような意図は十分ないと考えております。ただここに表現されましたのに非常に誤解があるのじやなかろうかと思いますことは、御承知の先ほど御指摘のありました通り労務者の使用関係は、軍が大半負いまするので、その間の問題について起りますと、法律上の雇用主であります我々の立場からは、なかなかいろいろな資料その他の関係が確実に把握できません。従いまして軍の協力を得てそれらの提出を求めなければならんことになると考えております。そういう意味合いでこれはとられたものだと我々は考えでおります。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 それは特に書かなくとも、資料政府のほうが軍に要求されれば、これは軍自身が利益になることだから当然出して来られると私は考える。そういう当然なことをここに書かれることは、やはり外国日本の立場ということから見て甚だこれは問題が残ろうかと思います。特にこの中でも問題になるのは十四条のbのほうですね、これを見ますと、例えば組合と政府との間で一つの判決があつた、政府はまあ判決があつたのなら、日本の裁判所が下したんだからそれに従おうじやないか、こういつた場合に、軍のほうがそれを承知せん、こういつた場合には、日本政府は止むを得ず上訴をする、上訴をしなければならないというのか、することができるというのか、極めてそこが不明確に、上訴すると書いてありますが、恐らく軍はこれは上訴すべしという意味の規定だということで、強制して来る。そういうことになつて来ますると、これは、大変な強制的な条文になりますし、今日の裁判関係のいろいろな体系に狂いが来るのではないか、こう考えますが、特にこの上訴の問題についてはあなたどうお考えですか。
  178. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) この件につきましては、軍といたしましても必ずしも我々のほうに強制するものではないと考えております。従いまして若しその必要がありますれば、十分に両者間において話合いをいたしまして、問題の円満なる解決を図るべきだというふうに考えております。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 それは強制することはないと考えると言つたつて、やはり場合によつては強制することもあろうと思うから、アメリカ側が確かにこれを書いておるのです。で、そういうふうには成るべく事態を悪くしたくない、このお気持はわかりますが、絶対にそういうことがないというならば、初めから書かんでもいいじやないですか、どう思いますか。
  180. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) この問題につきましては、先ほど申しました通り、いろいろな風俗習慣そ他ものの考え方にしましてもいろいろの差異がありまして、ものの判断につきましてもいろいろ議論が出ております。従来の例に鑑みましても、只今のお話のような御心配は多少あると考えます。我々といたしましては、これらの点につきましては、十分に軍と話合いをして納得させるべく努力しなければならん。従つて若しこれがすべしというふうに解釈されるような案文でありますれば、我々としてはその点は今後の交渉において調整して見なければいかんだろうというふうに考えております。
  181. 亀田得治

    亀田得治君 これは一つ十分慎重にお考えを願いたいと思います。又日米間の問題はいろいろたくさんございますが、一年以上もかかつてなお結論を得ない、これはもう極めてむずかしい問題です。このきまりようによつはやはり随分いろいろな問題が残ろうかと思う。私が御質問申上げたのは、これは全体を通じての、これはと思われる点だけを特に申上げただけで、ほかにもまあたくさんございますが、十分一つこれは政府のほうでも御研究を願いたいと考えます。  そこでこの行政協定ですね。調達関係のことを規定してあるのは十二条ですが、十二条の五項、これによりますと「別に相互に合意される場合を除く外、賃金及び諸手当に関する条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない」こういうふうに極めて明確にこれは書かれております。こうなりますと、この観点から見ますると、こういう基本契約は書き直す必要があるのじやないか。初めからこういう契約をどれだけいじくつてつても、どうも行政協定のここに謳われているようなこれでは、明らかに労働関係の法令によつて処理する、こうなつておるのですよ。明らかにこれを侵して行くことになると思いますね。どうお考えでしようか。
  182. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) お答えします。我々といたしましては、行政協定十二条第五項の精神はどこまでも遵奉しなければならんと考えております。軍におきましてもこの点は十分了解しておるものだと我々考えまして、若し国内法に違反するような事案がありますれば、勿論我々といたしましては、先方と了解をつけるわけにはいかんという考え方を持つておりますので、御指摘のような点につきましては、極力ないように努めるつもりでございます。
  183. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういう御答弁ではちよつと解しかねるのですが、若し軍がそういうふうな立派なお考えを持つておるのであれば、このような原案は私は出て来ないだろうと思いますね。余りにも日本のこの労働体系と違うですね。細かくずつと研究して行けば行くほどだんだん先が離れて行く。これはもうとても戻しようがないのです。御破算ですよ。どうですか、あなた、技術的に知つているでしよう。
  184. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) それらにつきましては、勿論我々といたしましても先ほど申しました通り、国内法からずれた点は確認されるとも考えませず、我々も又国内法からずれた線で了解は到底いたしかねますので、十分に先方にこの間の意向を伝えまして、遺憾のないようにしたいという考えを持つております。
  185. 亀田得治

    亀田得治君 この行政協定の改訂が今日問題になつておりますが、こういうふうに協定の中に明文がありましても、なお且つこのような原案が出て来るような状況ですが、この行政協定の改訂に関して、ここをもつと明確に一つ労働者の権利を守つてやるような、言葉を換えて言うならば、日本の法令を守るような、そういうふうな工合にこれを訂正するような御意向は事務当局としては持つておられませんでしようか。
  186. 中村文彦

    政府委員中村文彦君) 行政協定の所管につきましては外務省にございまして、外務省からそれぞれの御答弁があると考えますが、私の立場を申しますれば、この表現を以ちまして十分に軍には了解がつけられるものと考えております。
  187. 亀田得治

    亀田得治君 これは、実際こういうふうに細かい具体的な問題を私どもが一々取つて見ますると、先だつて中田君が総理に従属国かどうかというようなことで問答をやりました。私は、はつきり従属国だと思う。若し、こういうような基本契約が生かされるようなことがあれば、私はこの点極めて重大だと思いますので、本当に独立国なら独立国らしい契約、これを私はやつてもらわなければならない。まあ時間が非常に超過しておるという再三の催促でありまするので、私は、これに関連して更に本当は政治的ないろんな大まかな立場からの諸問題、これは、外務大臣なり、労働大臣の所見も実は聞くべき問題が相当多数あるのでございますが、時間がありませんので、一応この程度で本日は質問を打切りますが、これは、あなたとしても、十分今指摘したような点は考えてもらいませんと、非常に困ると考えます。一応これで私の質問は終ります。   —————————————
  188. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は一番最初大蔵大臣にお伺い申上げたいのでございますが、今度行政費を大変に御節約なさいましたことを伺いまして、まあ私ども税金を納めます者の立場から、お役所が少しでも無駄を省いて、行政費の節約をお考え下さいますことは大変結構だと存じまして、その御趣旨には大変に賛成いたしておるのでございます。ところが、お役所の中でいろんなお立場の役所があると思うのでございますが、先だつても、ちよつと私このことを問題にいたしたのでございますが、例えば、机の上でいろいろ事務をとるのではなくして、始終旅費を使つて、あちらこちらに動かなければならないような立場のかたになりますと、この旅費というものが始んどその役所の生命になるわけでございます。そして、その役所が、たまたま大勢のかたがおいでになりますと、一人当り幾らというような節約をなさいましても、例えば十五人の人が一人々々或る程度の旅費をもらつていて、旅費が少いから、十五人全部が旅費を使つて動かないでも、そのうちの十人のかたが動かないで、五人のかたにその旅費を使つて動いてもらうというようなやり方もできるわけでございます。ところが或る役所になりますと、全く一人の人が一つ一つのポストについておるというような役所がございまして、而もそのお役所では始終動くことが生命であつて、動かなければ何のためにそこに坐つているか全く意味をなさないというようなことがあることを大臣は御承知だろうと思います。私は、特に婦人少年局がその一つのよい例だと考えまして、婦人少年局が、婦人室長というものを地方に持つておりまして、この室長というのは、全く一人が一つの室長でございます。ここで旅費がなくて、そこの室長は釘付けになつておるということを考えますと、これは婦人少年局の仕事の精神を運ぶことができないので、私どもはこれは大変心配しておりますので、大蔵大臣は、こういうような立場のときには、これはどういうふうにして善処したらいいかというお考えをきつとお持ちだろうと思いますので、その辺を聞かして頂きたいと思います。
  189. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お話の点は誠に御尤もにお伺いする点が多いのであります。実は先にこの本予算を出しますときに、旅費、庁費で節約しますときには、これは非常に実情に即しまして、所によつては減額額も少くし、所によつては率を多くするということによつて、一様にやつたわけではないのであります。従いまして、これでは相当のお困りのことがあることは察しておりますが、まあ長い間役所で査定いたしまする実情等に鑑みてやりましたので、さまざまではなかつたかと存じます。今度の予算の修正は、御承知のごとく衆議院でおやりになりましたので、私どももこのおやりになつた内容について一々よく承知しておるわけではございませんが、お話のごとくに、例えば、今のような、御指摘のありました例もそうでございますし、或いは私どもちよつと思いついたところでは、会計検査院のような所とか、或いは又税務署などの実務の方面においても相当の窮屈の部分が出て来るじやないか、こういう点を心配しておるのでございますが、まあああいうふうに御修正に相成りましたものですから、今後私どもこれを実情に照し合せまして、どうしてもこれではやつて行けない、事務に支障を来たすというような場合には、これは何らかの、まあ先般ちよつと申上げましたように、今度米の問題にからみまして、十月頃にでも補正予算を組むということは止むを得んかと思いまするが、さような場合に、どうしてもやつて行けない、これによつて殖やす考えは毛頭持つておりませんが、どうしても事務の上に差支えるものについては、特別な考慮をしなければならんであろうということは、実は考えておる次第でございます。
  190. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 次は、厚生大臣にお伺い申上げたいのでございますが、先だつても私が総理大臣に御質問いたしましたときに、現下の日本の情勢におきまして、人口問題に対する対策が如何に重要性があるかということを申上げましたところが、総理大臣も非常に御理解下さいまして、決してなおざりにしておるわけではないという御答弁があつたのでございます。そこで、厚生大臣に極く簡単に伺つて参りたいと研究所という所がございますが、これはどういう使命を持つておる研究所でございましようか。
  191. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 人口問題研究所は、人口の基本的の問題について、自然科学的に、或いはその他いろいろな観点から、人口の状態、或いは又その人口の収容力、或いは人口の調整、いろいろな面について、自然科学的その他の見地から研究いたしておるのであります。
  192. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今大臣の御説明によりますと、人口問題研究所は、自然科学的な立場から、人口の動きについていろいろ研究する所であるという御説明でございまして、これは誠に御尤もなことだと存じます。ところが、このいろいろな自然科学的な御研究というのは、やはり人口問題は生きものでございまして、いろいろ形が変つて出て来たり、動いておる状態、こういうものを研究して人口対策を立てる資料を、しつかりと広く深く築いて頂かなければならないのでございますが、この人口問題研究所の予算というのが、二十八年度は千六百七十九万五千円、こういう金額でございまして、前年度よりは、まあ諸物価の上りなどで多少の殖え方をいたしておるのでございますが、この千六百七十九万五千円という予算の中から、小さな役所でございますが、人件費その他に大部分のお金を取られてしまいまして、只今は、厚生大臣が仰せられますところの、その大事な大事な調査をなさる費用に、この全体の費用の中から、一般調査費としてたつた六・三%、実地調査費として一一・五%、これだけのものがこの千六百七十九万円という予算の中から使われる。そういたしますと、実際にこの調査として使われて行く金額というのは余りにも少いのでございますけれども、私は、実際にこの調査研究所が、仕事をしていらつしやるのを見ておりますと、本当に出血というのでございますか、自分の懐ろからお金を出して、この仕事のためにやつていらつしやるというような実情さえも見ておりますけれども、こういうような大事な資料を提供する役所としては、このような金額で、これで厚生大臣は十分だとお思いになつていらつしやるのでありますでしようか。
  193. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) この点私も全く同感に考えておりまして、人口問題は先般内閣に人口問題審議会がございまして、それが廃止されて、今回人口問題の重要性に対して審議会を新たに設けたのであります。従つて政府といたしましても、この人口問題の重要性を新たに取上げたのでございまするから、今仰せ通り人口問題研究所は本当の、いわゆる我々が目的といたしておりまする研究をするには、事務費等も仰せ通り僅少でありまするから、これらの研究に遺憾なきを期しまするような予算の計上をいたすように努力をいたしたいと思つております。
  194. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 只今御答弁の中に人口問題審議会のことがちよつと出て参りまして、これはたしか今までは内閣の中に審議会が一度持たれまして、私の知つておりまする範囲でもこの審議会では内閣総理大臣に対して大変によく整つた答申書をお出しになつていらつしやつたと思います。ところが実際どういうことになつているかということを見ておりますと、その後の経過は答申書というものは全く棚にお上げになつてしまつたようで、その答申書の結果が活きて来たというようなことを私は余り拝見しておらないのでございます。それで又今度八十万円かそこらの予算で又審議会を今度は厚生省の中にお作りになる、こういうような審議会というものを置くということは、ただ審議会を置いてやつておりますと、議員なんかがいろいろ追及した場合にはやつておりますという、ちよつとそこに逃げ場をお求めになるというふうに解釈ができるのでありますが、この審議会というものに大臣は多くの御期待を持つていらつしやいましようか、八十万円ばかりの審議会に……。
  195. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 曾つて内閣審議会がございました際に、その結論を二回に亘つて内閣に答申をいたしております。その答申に対して何ら政府は政策の面で取上げていないのじやないかというお話でございましたが、前回の審議会の答申は、主として人口の吸収力及び調整に関する問題であります。人口の吸収力に関する問題と申しましても、なかなかこれはむずかしい問題で、殊に前回の審議会が終戦直後にできた。あの終戦直後の経済的にも社会的にもいろんな変動の多い際におけるデータを基礎にいたしておりまするので、一応昭和二十四年でございますか、十一月に答申をいたして、それに基いて御承知通りその後優生保護法、或いはその改正をいたして、これ又まだ勿論不十分でありまするけれども受胎調節その他の面から逐次その実現を期しているのであります。併しこれはまだまだ、不完全であります。その者についたというばかりでございますから、今後これに対する十分な努力をいたしたいと考えております。なお又人口問題審議会の今回の八十万円ということについても全く私も同感でございまして、ただ一応この審議会を再び発足せしめて、先ず以て人口問題に対する政府、或いは輿論、これらの認識を更に深めて、そして単に政府ばかりではありません、国としてこの問題を大きく取上げて、そして逐次予算の編成に対しましても、政府は努力してやつて行きたい、かような心組みで一応再び人口問題審議会を復活したという意図で本年度は甚だ僅少でありますが取上げたという次第であります。
  196. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今厚生省でいろいろと御計画なさいましで、公衆衛生員なんかも御協力なさいまして、家族計画思想の普及というような仕事もぽつぽつお始めになつていらつしやるように拝見いたしているのでございますが、今家族計画運動の普及、思想の普及、その実施状況というようなものはどういうふうになつていらつしやいましようか。
  197. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) この家族計画といいますのもやはり人口問題の一環としての人口の調整という面における而もその中では受胎調節等を中心といたしました問題として取上げております。従つてこの家族計画の問題は、本来はもつと広範囲な、もつと奥行の深い、又幅の広いもんだと思つておりますが、一応厚生省といたしましては、この家族計画はいわゆる人口の調整という見地、或いは又逆淘汰の起りませんような資質の向上というような面からこの問題を取上げておりまして、御承知通り優生保護法が昭和二十三年でありますかできました。そして御承知の人工妊娠中絶という幅も拡げましたが、これにはいろいろ衛生上、医学上の欠陥もございまするから受胎調節を中心に人口の調節を図つて行きたい、さような意味で先般人口問題審議会の、前回の人口問題審議会の答申書に基き、いわゆる政府といたしましては受胎調節の普及の実施要綱を作つてその推進を図つて、なお昭和二十七年の優生保護法の改正に基き相談所を設け、指導員を設けて行くということにいたしておりますが、本年度の予算におきましては四百二十数カ所のいわゆる保健所の優生保護相談所を附置する予算提出いたし、なお又指導員に対する指導費、施設費は二分の一でありまするが、指導員の指導費は三分の一の国庫負担で予算に計上いたしております。なおお話の、普及徹底につきましては、これ又予算は少額でありますが、或いはパンフレットを頒布いたしまするとか、或いは巡回の指導をいたしますとかいろいろなことをいたしておりまするが、殊に昨年の七月から本年の四月までに大体二万三千五百人の教育を終えております。これらの人々が全国に指導いたしまして、そうして今後仰せのように家族計画を中心にいたしまして、それらの問題の解決に当りたい。ただこれにはいろいろ問題が残つておりまするから、今後努力して行きたいと思つております。
  198. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いろいろ御努力をなさつていらつしやいます途上にあるということは私も了解いたしたのでございますが、どうもなかなか只今大臣も逆淘汰というようなお言葉をお使いになりまして、まあ私もその言葉がどうういうことでございますか、まだ本当によく理解いたさないのでございますが、いわゆる逆淘汰というようなことが起らないためにはどうしてもこういう家族計画思想というようなものを余り理解できないような婦人たち、或いは家を空けて相談所に出掛けるというようなことのできない婦人たち、こういう婦人たちにもつともつと深く徹底するような仕事がなされなければ本当の意味がないと思うのでございますが、このために今大臣が普及員、指導員、講習を受けた指導員のお仕事のことでいろいろおつしやつたのでございますが、いろいろお骨折りになりまして又二万三千五百人という数では誠に心細い、それでこういうような仕事が、予算の面は別にいたしまして、いろいろ隘路があるためにもつと活溌に活動ができないというようなことを聞いております。その隘路というものはどういうところにあるというふうにお考えでありましようか。
  199. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 実はこの家族計画と言われまするのも、主としてこの人口の調節、受胎調節の問題に関連してのお話と考えますが、指導員等がいわゆる効果を挙げまするに只今隘路はいろいろありますが、そのうちでやはり一番に指摘されますのは、その指導いたします際に指導員が、これは何もそう金持がいたすわけじやなくして、やはりそういうことに相当熱心なかたがたがお当り下さるが、指導料を取れない。なお又指導いたすような向きはむしろ貧困者の家庭等が多い、有産階級等においては適当にみずからの処置によつてやられることもありましよう、でありまするから、指導員に対して指導料も出せない、或いは薬品等の販売等についてもいろいろ法律等の関係もございまして、なかなかそう簡単に行かないというような点もございますので、この点は法律の運用或いはその他の点について今後気の付いておりますことは、十分改正すべき点は改正しで行きたい。なお又いろいろお気付きの点がございましたらお教えを乞うて万全を期したいと考えております。
  200. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 生活に窮迫している家庭などがいろいろ必要とするものを、器具、薬品等を買いますことや、或いは指導料というものを払うためのお金がないとかいう問題も、これは確かに大きな隘路の一つでございますが、もう一つの隘路は地方自治体の都道府県知事から指導員としての指定を受けた婦人というのは、主に現在は保健婦と助産婦であるというふうに私は理解いたしておりますが、特に助産婦さんはこの仕事について丁度ジレンマに陥つておるというような状態に今日あるのではないか。時勢がこういうふうになつて参りますと、どこの家庭でも心あるものはこの際計画妊娠をしなければいけないというような考え方を持つておりますので、その要求に応えれば、指導員であるところの助産婦さんも喜ばれるわけでございますが、そうやつて皆さんに喜んでもらつておると、今度は自分のほうの肝心の助産婦としての収入がぐんぐんと減つて行くと、こういうような苦しい立場に今日多くの助産婦さんが置かれているというような状態でございますので、こういうような助産婦さんに対して何か生活を保障するというような意味でお考えはないでございましようか。
  201. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 助産婦のかたが近頃むしろ今仰せのようなふうな面に積極的に協力をされ、又積極的にさような面において今後もそういうようなかたがたの職業的な方法を見出さんと努力されておることも事実であります。我々といたしましても今後やはりこの家族計画にいたしましても、人口問題にいたしましても、これらの専門的な職業におられるかたがたの協力を得て、なお又従来ともこの母体の保護の見地から、或いは受胎調節の問題にいたしましても、人工妊娠中絶にいたしても、医師の人はもとよりでありまするが、殊に助産婦の人には非常な協力を求めて参つておりますので、仰せのようなふうに生活保障といいまするか、そういうふうな面についてはこれはむしろ他の面から、いわゆる国家が保障いたすというようなことじやなくして、例えば今後助産婦のかたは受胎調節に対して相当協力をしたいという非常なる決意を持つておられます、それに対して、例えば薬品を指導いたすにしましても、又そういうふうな受胎調節の措置をされるにいたしても、みずから薬品を扱うことができない。これは薬事法の規定によつてできませんのでありますが、そういうふうな隘路は何とかこれを法の運用によつてつて、そしてかたがた一方においてはそういうふうな、助産婦のかたに新たなる一つの職業の分野を見付け出して頂くというようなこともよかろうというので、いろいろこれも問題になりましたが、例えばそういう際には助産婦のかたに一つの企業体を作つて頂いて、そうしてそこから皆さんが薬品等を入手されて、事実上薬品をみずから扱うことができるようなふうにしたらどうだろうか。そういうふうな点についてもいろいろ考究いたしまして、是非実現をいたしたい。又さように実現し得るめどもついておりますので、その他直ちに生活を国家保障いたすということについては今申上げたのでありますが、いろいろな面から両々相待つて、相協力して、この問題の解決をしたいと思つております。
  202. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いろいろ厚生当局におきましても御研究して頂いておりますことを伺いまして大変心強く思つておるのでございますけれども、実情といたしましてはもう要求のほうが余りスピードが早くて、これに対する答えのほうがどうも遅いというような結果が、厚生省で御発表なさつておりますところの妊娠中絶の件数が非常な勢いで殖えておる。昨年度はたしか八十万にも達したというような統計を拝見いたしておりますが、これに闇の中絶を加えますと、百万件以上に上つておるのではないかということも言われておりますので、これは文化国として合法的に或いは非合法的に、こんなにたくさんの件数の妊娠中絶が行われておるというようなことは、これはもう文化国の体面としても由々しき問題であると私は考えております。それでこういうような妊娠中絶の件数どんどん殖えて行くということに対して、こういう堕胎をするということが、道徳上も非常に面白くないばかりでなくて、実際に母体を害するというようなことに対して、もつと資料をどんどん母親たちに示して頂くということが非常に適切なことであると思いますけれども、どういうような害があるというようなことに対して、欧米の医者たちの資料はございますけれども日本はどういうような生きた資料を御用意になつておりますでしようか。
  203. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 仰せ通り昭和二十三年に優生保護法の規定によつて人工妊娠中絶というものを、人口調整とかいう問題に関連いたしまして、緩めました結果、昭和二十七年度は七十九万幾ら、仰せの八十万近く、知れておりますものでもあります。その他お話のような闇を入れますと、百万を超過するという次第であります。これには母体の保護の見地から見ましても、その他のいろいろな見地から見ましても、憂慮すべき点もございまするので、これに対しましては、仰せのようなふうにいろいろな方法で、例えば先ほど申しましたパンフレット或いは実地指導の際において、殊に実地指導を指導員がいたします際には、必ずこの点にも触れましていたさせておる次第であります。殊にどういう資料でというお話でありますが、たしか昭和二十四年と六年でございましたか、産婦人科の医学大会のこの件に関する研究報告が出ております。なお又長野県の事案についての報告もありますから、それらを中心にいたしまして、できるだけ周知徹底せしめるように、実地指導の際に一般のリーフレットその他の方法によつて努めてやつておりまするが、今後とも仰せ通りでありますから、十分努力いたしたいと考えております。
  204. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いろいろな方面から厚生当局が非常に積極的に努力して頂いております。又更にして下さるという御答弁を得まして、非常に心強く存じておりますが、現状におきましては、たびたび私が指摘いたしますように、只今厚生省における受胎調節普及に必要な経費三千九百二十一万六千円、人口問題研究所千六百七十五万九千、審議会が八十万円、それから優生支出費が千五百八十七万九千、それから受胎調節普及事業の補助金が四十一万五千というふうに数え立てて参りまして、全部を合計いたしましてもたつた七千二百三十万円にしかならないのでございます。これに対しまして外務省のほうで、今度ブラジルに四百家族の移民の渡航費というものを計上していらつしやいますが、その四百家族の移民を渡航させるために三億円という費用が計上されております。そうしてこれは多分一家族七十五万円ぐらいで、三億円という数字になつておるのだろうと思いますけれども、この三億円という厖大なお金を使つて、たつた四百家族を移民させるということと、この七千二百三十万円しかお金を使わないでこんな幅の広い大事な仕事ができるということ、ここに大変大きな考え方の問題があると思うのでございます。私ももとより移民ということは大変結構なことでございまして、単に人口の重圧を少しでも避けるために人間を国外に送るという意味だけでなく、いろいろ移民にはいい意味あると思いますから、移民は結構だと思いますけれども、ややもすればこういうような受胎調節の普及というようなことは消極的であつて、移民の奨励は積極的であるということをおつしやるかたがよくございますので、こういうような金額の面から言つても移民が如何に費用ばかり多いかということをこの際特に厚生大臣にも御記憶にとどめておいて頂きたいと思います。  次にもう一つ伺いたいことは、日本でもこの問題は厚生当局にお願いするだけではなくて、民間のほうで各方面からいろいろな立場からこの問題を日本の将来のために考えて、この思想を普及する運動を高めて行くというようなことが考えられておりまして、これが国際的な問題になりまして、国際家族計画会議というようなものが今日毎年どこかの国で交互に持たれるというようなことになつておりまして、昨年はインドでこれが持たれたのでございます。このインドで世界中の権威者がここに出席をいしたまして、殊にインド政府当局といたしましては、副大統領がここに御出席なさつて、将来の歴史に残るような立派な演説をなさつて抱負をお述べになつているのでございますが、この国際家族計画会議が来年は日本で持たれるというようなことになつて話が順調に進んでおりますので、そういうようなときには厚生大臣は大蔵大臣にも大いに御認識を高めて頂いて、こういうような国際会議はこれは民間だけではなかなか費用万端十分にできないと思いますので、直接間接に何かこれを援助して頂きたいというような要望が高いのでございますが、これについてどういう御所見をお持ちでいらつしやいましようか。
  205. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 昨年インドで世界の家族計画に関する会議がありましたことは聞いておりましたが、来年日本においてそれを開催することについては実は私はまだ聞いておりません、或いはさような計画がおありになるかと思いますが、まだ詳細どういうような方法ということも実は承知いたしません。又その計画が明確になりました上でいろいろ考慮をいたして、できることはいたしたいと考えております。
  206. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 次に労働大臣に伺いたいのでございますが……。
  207. 青木一男

    委員長青木一男君) 労働大臣は労働委員会から呼びに参りまして、政府委員が代つて参りましたから……。
  208. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは私は労働大臣に対する質問は保留いたしておきたいと思います。
  209. 青木一男

    委員長青木一男君) 労働大臣は、労働委員会が長くかかりそうでございますので、若し政務次官で間に合いましたら……。(「大臣は皆そんなことを言つていたら駄目だ」「法務総裁は」と呼ぶ者あり)
  210. 青木一男

    委員長青木一男君) 法務総裁は衆議院の法務委員会でまだちよつと抜けられないようでございますが……。
  211. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは法務総裁が御出席になるまで私の質問は保留したいと思います。
  212. 青木一男

    委員長青木一男君) 法務政務次官は見えております。
  213. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 総裁に伺いたいのであります。
  214. 青木一男

    委員長青木一男君) ちよつと速記をとめて下さい。    午後三時十三分速記中止    —————・—————    午後三時四十七分速記開始
  215. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記を始めて。
  216. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は労働大臣と法務大臣にお伺いいたしたいのでございますが、両大臣が只今御都合が悪くお見えにならないそうでございまして、大変残念でございますが、明日ということに、はつきり委員長の御責任を以て、明日の最初にということでお願いできますでしようか。
  217. 青木一男

    委員長青木一男君) 承知しました。
  218. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それではそういうことにして、私は次の質問者にお譲りいたします。
  219. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 議事進行について。加藤さんが只今のような御発言でありますならば、我々としては了承いたします。併し今日のような状態でありますと、それぞれ現在各委員会において重要な法律案がかかつておるのでありますから、この委員会の都合で予算委員会に出席できないということになりますならば、我々といたしましても、予算審議に対しましては重大な決意をしなければならないと思うのであります。従いまして、今後委員長におきましては、全部というわけには行きませんが、できるだけ努力して頂いて顔を揃えて、審議に支障のないようにして頂きたいと思います。
  220. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長は先ほど松澤委員と同趣旨の申入れを政府に対していたしておきました。
  221. 亀田得治

    亀田得治君 私は先ほども申上げましたが、はつきり一つ記録にとどめておいて欲しい。今後のこともあるのです。私今朝も随分憤慨しておるのです。それはなぜかと言いますと、前日に私直接、秘書に任せないで直接調達庁に私が電話をしておるのです。そうして秘書ではなしに多分秘書以上の人だつたと思うのですが、それとよく話をしたのです。突然に聞いてもわかりにくい問題だと思うから、そうして一番最初にやるから、そういう念まで押しておるのです。それが時間があれだけ遅れておる。あの時間にはほかに何も委員会はないはずです。政府として実に私はこれは遺憾だと思う。私どもやはり論ずべきところは思切り論じます。併し進行することはどんどん進行したいと思つて順序を変更して私ほかの質問を今朝も始めておるのです。そういうことが今朝から度重なつておるのです。経審長官の問題にしても三時半以後でないと駄目だ、こういうふうに言われましたから、これはもう仕方がないと思いまして、その点は私放棄しております。こういう問題になつたから改めて申上げたわけですが、加藤さんの場合でも二人とも駄目なんです。今日私と加藤さんと二人について全部そういう支障が起きております。これは前例にするとかせんとか言つたつて、前例というものは、いつも前例にしないということがそれが前例になつてしまうのです。これは絶対に前例じやない、こういうことで一つ堀木さんのほうにお願いしたいと思います。
  222. 青木一男

    委員長青木一男君) 承知しました。
  223. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 外務大臣がお見えになつておりますから、外務大臣だけ、関連のない話ですからこれから質問したいと思います。  外務大臣に先ずお答えを願いますことは、先月の六月三十日に私が本会議でMSA関連しまして御質問をいたしたのであります。そのときに外務大臣はこう答えられておる。「直接侵略に対する防衛の責任を、今後MSAの協定を結べば、保安隊がとるのじやないか、こういう御質問でありますが、これは日米安全保障条約におきまして直接侵害に対する防衛アメリカ側がすることになつておりますから、この条約の面から申しましても、保安隊は依然として国内の防衛、これに専念することが至当であろうと考えております。」なお同じ趣旨のことを木村国務大臣も答えられておるのでありますが、最近衆議院の外務委員会におきまして、直接侵害に対しても保安隊はその責任をとるだろう、とることになるだろう、従つて保安庁法第四条の規定、その他について所要の改正をする必要があるかも知れない、こういうふうなことを言つておられるようでありますが、その点につきまして、改めて外務大臣から御答弁願いたいと思います。
  224. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 現状においては保安庁法は御承知通りでありますから、只今の現状を申しますと、これは日米安全保障条約アメリカ側が直接侵略に当る、こういうことになるのであります。併しながら日米安全保障条約におきましても、自衛力の漸増ということが書いてありまして、これは期待ではありますけれども日本側から言えば、できればやりたいという考えであります。又我々のほうの解釈によりますれば、憲法の禁じておるところは戦力の保持であつて戦力に至らざるものにおいては、名前とか目的とかは問わず憲法上差支えない、こう考えております。そこで保安庁長官の言われましたことは、今後そういう問題を日本政府として考える場合もあろうし、又当然これはだんだんにはそういうふうに行くべきものと考えておりますので、保安庁におきまして研究をいたしておる、こういうことと私は了解しております。
  225. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 外務大臣保安庁長官の御説明は別でいいのでありまして、外務大臣として今読みましたことは、実は外務大臣としてあなたがお答え願つたことで、MSAの協定を結べばどうなるのかということに対して、大体直接侵略に対する防衛保安隊の任務でないのだ、現在はともかくといたしまして、MSAを結ぶに当つては、保安隊に直接侵略に対する使命を与えて行くのか、その点をはつきりお聞きしたいと思うのであります。
  226. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSA交渉に当りましては、今月の十五日に第一回を開きました際に、アメリカ大使もその態度を明らかにしております。それは日本の国を守る力は、窮極においては今のものでは足りないであろう、併しながらこの防衛力を漸増するときの時期とか態様とかいうものは、日本政府がきめるものであつてアメリカ側は関与すべきではない、従つてMSA交渉に当りましても、この点において、例えばどの程度をいつ増強してくれとかいうような要請は私はないものと考えております。ただ若しやるとすれば、これは日本政府が独自の考え方で必要な措置を講ずることでありまして、MSAと直接に関連してはこういうことは起らないと私は考えております。
  227. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 お話の次第はわかるのでありますが、そうすると、私の質問が前提を抜きにしておつたために混乱を来たしておるようなんでありますが、結局MSAを結ぶときに、我々としては、日本の国としては、直接侵略に対する防衛の責任はどこかでとらなくてはならないものだ、これは外務大臣もよく御承知のように、総理はしばしば、駐留軍が永久に存在することも考えられないし、一日も早くこれを少しでも減らして行きたいという考え方であります。又今朝ほどの他の同僚に対する御答弁でも、その趣旨が繰返されておるわけであります。そういたしますと、日本の国にどこかの機関で直接侵略に対する防衛の責任をとる機関がなくてはならない、それは保安隊であるのか、或いは保安隊でない別個のものを考えるのかということが考えられます。併し恐らく今の政府の御態度では、結局保安隊を整備強化して参る、そうして直接侵略に対する責任に当らしむるという御方針だろうと思いまして、その直接侵略に対して保安隊は責任をとるようになるのかどうか、そういう方針で行かれるのであるかどうかということをお聞きいたしましたので、そうなりますと、それからは木村保安庁長官の御仕事かも知れませんけれども、結局保安庁法の第四条は変えて行かなければならん、その問題は外務大臣としては、それは一番最後の問題はお答えにならなくてもいいのでありますが、ともかくもそういう方針でお考えになつておるのかどうか、これだけをお聞きしたいと思います。
  228. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 大体の考え方は、MSAを受けるということは、何もなしで受けるのじやありません。これは日本の自衛力といいますか、防衛力とか、いずれにしましても、これを増強したいという考えで受けるのであります。そこでそのあと保安庁の判断になりますが、だんだん話が進みまして、これこれのものを援助を受ける、こういうふうにだんだん具体的になりましたときに、これならば直接侵略に対抗できるようになり得るとか、或いは全部がなれないにしても、一部はなり得るとか、或いはまだ駄目だとか、こういう判断ができると思います。そのときに応じまして、必要があれば保安庁法の改正をいたすべき段取りになると思いますが、只今私の承知しておるところでは、保安庁においてそういう点は周密に検討いたしておるものと了解しております。
  229. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 なかなか御用心が深いのですが、併し外務大臣としては、国内問題はともかくとしまして、向うと国を代表して交渉に当られる上には、その点について具体的な内閣としての態度がきまつて交渉になるはずなんで、保安庁長官がそれ以後について自分の所管について実施いたしますことは別といたしまして、今その点についてあなたの御交渉なさつておられる態度、閣議でおきめになつて臨んでおられる態度は、結局窮極するところ、保安庁自身整備強化して直接侵略に当らしめる、無論あなたのおつしやる通り、私自身も質問の際に、単純にアメリカの国防省予算を国務省予算に変えたという問題だけではないのであります。新らしい援助態勢になる。新らしいMSAによつて援助を受ければ、五百十一条の各項の問題は当然起つて来る。そうすれば当然にあなた自身としてもどこを当らしむるかということは方針としてきまつた上で交渉に臨んでおられるはずなんで、それでなければ実は木村保安庁長官もおいでを願おうかと思いましたが、いやしくも国の代表として外務大臣が御相談なすつておるのだから、外務大臣だけで十分なお答えを願えると、細かいことは別ですが、方針だけははつきり外務大臣だけで御交渉できるのだ、こういう観点であなただけおいで願つたのです。そういう点について基本的態度自体をもう一度御答弁願いたい。
  230. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私の交渉に当つての態度は非常に、逃げるようでありますが、自衛力の強化に役立つように必要なものを欲しい、こういうのが大体の考え方であります。そこでアメリカ側も、実はこれはダレス長官の言つたこととして伝えられておりますが、日本政府が自衛力の増強ということについては決定するのであつて、その決定が如何ようであるとも、これに応じてアメリカ側は援助を考える、つまり極くわかりやすく簡単に、ちよつと間違えるかも知れませんが、簡単に申上げますと、仮に保安隊を殖やさないという状況であれば、それに応じた援助をすべきである、これを殖やすといえば、又それに応じた援助をするということで、日本側の態度の決定によつてということになつております。そこで日本側ではどういうふうに考えるか、今度はこつちは一体どれだけ、一億ドルとか一億五千万ドルとか、いろいろ言つておりますが、これはどういう種類のものがどれだけ来るのか、まだ交渉してみなければわかりません。それでこういうものが具体的にきまりますと、それによつて、それなら直接侵略にも対抗できるかできないかという判断も下し得るのだろうと思います。そこでそういう両方の点から考えておるのでありますが、それを極くジエネラル・ラインといいますか、それで申しますれば、勿論直接侵略にも当り得るようなふうに自衛力は増強して行くべきものであると考えておりますが、それが今年になるか、来年になるか、これは話合いの結果にもよりまするし、又国内の事情にもよりましようから、ただそういう目的を以てだんだん強化して行くのだというつもりで今受ける話をいたしております。
  231. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 大変外務大臣慎重でいられるのですが、新聞で拝見すると、自由党の総会では非常に勇敢にお話になつてつて、詳しく出ておるので、それも私は一応読んでの質問でありますと同時に、特別に揚げ足取りをしようとは思わない。併しとにかく今お話のうちにもありまするように、日本で一億ドルだと、一億五千万ドルとか言つているが、それ自体が日本防衛力をどうするか、日本自身が決定することによつて算定されるものであることは確かなんです。だからどうしたつて日本防衛については、日本自身がどうきめて行のだということが、これが先決要件なんです。それでなければ金もきまりようがない、そういうふうに思うのであります。そうすると、いやしくも日本を代表して外務大臣交渉しておられるのだから、それは保安庁がどう考えておるかというふうなお話になつて行くだろうと思う。無論MSAの協定そのものは諸外国の例がありますから、それ自身は私は技術的に見た面は非常に簡単だと思いますが、併し少くともそれに続いた具体的なものがなくちや実は金額がきまり得ないことは、外務大臣おつしやる通りだと思うのです。従いまして交渉に臨むに当られましては、そういうものがある、つまり日本防衛について日本が自主的に考える、そうしてその点については間接侵略のみならず、直接侵略に対して自分の国を守るという意思と、そうして組織、行動を持つたものがなくちやならん、それでなくちや軍事使節団の派遣も意義ないわけです。そういうものがどこであつて、誰が、どこが担当し、そうしてどの程度に担当するか、無論それは結果的に現われるものが、あなたのおつしやるように今年にあるか、来年になるかは、別にしまして、あの交渉に入られる以上は、そういう直接侵略に当るものについての方針が決定していなければならない。そうしてその範囲と、何と申しますか、スクールというものがきまつて来なければならん、こう私は思いますので、憲法問題は一応別にいたしまして、そういう点の方針をお聞きしたい。特に今までの、直接侵略に対しては安全保障条約によつて駐留軍に任しているのだという態度は許されないことは確かだと思うのです。そういう点の基本方針をお聞きしたいために、直接侵略に当るものは誰であるかという方針で進まれるか、そうしてそのスケールはどういうものだということは御答弁なさつていいのじやなかろうか。こう思うのでありますが、如何ですか。
  232. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実はそれは卵が先か鶏が先かというような議論で恐縮でありますが、実は我々のほうとしても話合いのうちにおきましては、こちらの考えがきまらなければ、相手方としても援助のしようがないという議論もありましようけれども、併し向うにも一定予算もあることでありますから、向うで一体そういうものをどういう程度に寄越すつもりでおるのか、これをはつきりしますと、我々のほうの考え方も又これによつてはつきりし得るのであつて、こちらだけがこういう方針でこうであるから、これだけ寄越せといつても、それだけ来るかどうかわからないわけです。従いましてこれは両方兼合いの問題だと思いまして、交渉に当りましては先方の援助ということもできるだけ正確につかみまして、その上ではつきりしたことも考えて行きたい。これは理論的にはおかしな話でありますが、実際は両方兼合いということにいたすのが常識的だとこう思つております。その意味で今後ずつと話合いを進めて行ごうと思つておりますが、併しお話のように防衛力は漸増しないのだという態度は決してとつておりません。できるだけ漸増したい。ただ国民負担とかいろいろな問題がありますから、考慮をする点が多々ある、それにはできるだけ向うの方針もはつきり知りたい、こういうことであります。
  233. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それでは今お話のうちで、一点だけお答え願いたい。実はいろいろお聞きしたいのですが、割当てられた時間がないものですから、端的に直接侵略に対して誰が当るのかというふうなところからスタートしたのですが、今防衛力を漸増する態度で臨んでおられる。併し少くとも今までのように間接侵略防衛力のうちの間接侵略に対応するものだけを考え交渉しておられるわけではないと思うのです。直接侵略に対しても防衛力を漸増的に増強する、こういう態度で臨んでおられるのだと思いますが、その点だけはつきりして頂きたい。
  234. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これも、どうも言葉を濁すようでありますが、大きな目で見ればその通りであります。ただ只今のところ、それを目的として援助を受けるのだというはつきりした方針でやつておるのではありませんで、向うの援助の模様によりましても、これは日本側としてきめ得べき点が出て来ますから、必ず直接侵略を受ける目的で以て交渉しておる、こういいますよりも、防衛力を漸増する方針で交渉しておりまして、その結果直接侵略にも当り得るということになりますれば、そこで保安庁法改正というようなことが必要になつて来る、こういうふうに我々は考えるのであります。
  235. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも非常に用心深いのですが、なぜそこ用心深く言われるのかよくわからないと思うのです。とにかく安保条約自体でも、直接侵略、間接侵略は両方出ているわけです。今度新たなる援助を受けるに当つて、直接侵略は含むか含まないかという態度はおありにならない。殊にアメリカ防衛にも成るほど役立つでありましようが、しばしば言われる通りに、日本の国は日本人が防衛するということが先ず起らなければ考えられないはずであります。その点だけの基本はおきまりにならなくちや、外交交渉に私はならないと思う。その点を又議会でそうお隠しになる必要ないと私は思いますが、むしろこうなつて参りますと、衆議院で御答弁なすつたということと変つて来る理由まで聞かなくちやならん。こういう気もいたしますが、そういうことは別にいたしまして、ここで率直にその点についての政府の態度というものを御表明願いたいと思います。
  236. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうも私の答弁が気にいらないようですが、衆議院で言つておりますのは、理論的に戦力を持たなければ、直接侵略にも当つてちつとも差支えないのだ、こういうことを申しておるのであります。ところが具体的に今度は直接侵略に当るようにするには、これは保安庁でいろいろ考えなければなりますまいが、単に装備だけでいいのか、少し人が余計要るのか、これはいろいろな問題があろうと思います。そこで援助内容にもよりまして、又国内の経済情勢その他にもよりましてこれは決定さるべき問題である。我々としては防衛力を漸増するためにでき得る限りの話合いをいたして、日本の力が少しでも漸増するようにいたしたい、こういうつもりで交渉いたしておるのであります。直接侵略に対抗をしないとか、或いはできないだとかいうことを申しておるのではないのでありますが、ただ具体的にはそこまで行くかどうか、これは私の担当でもありませんが、まだ交渉はそこまで行つておらないのであります。
  237. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 答弁が気にいるとか気にいらないじやございませんで、それじや端的にお聞きいたしますが、そうすると防衛力のうちには直接、間接侵略両方含めてやるんだ、こういう態度でお臨みになつておりますか。
  238. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 防衛力には勿論直接、間接両方の防衛の力が含まれておりますそこで具体的にはそこをどこまで行くか、只今のところは国内におけるものしか役に立たない程度にしか人もいないし、装備も十分でないのじやないかと思つております。これは私の専門のことじやありませんからわかりませんが、従つて保安庁法も現状のようになつております。併し防衛力と言えば勿論両方を含みますから、その漸増でありまするから、そちらのほうに向つて進むことはこれは当然だと思います。
  239. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 押問答いたしておりましても、どうも解決しそうもないのでありますので持ち時間を残して、別に木村保安庁長官外務大臣と又おいでを願うようなことになるかと思いますが、実は非常に何と申しますか、MSAを受けるに当つてその点の方針だけはこれは保安庁長官の役目でも何でもくなて、日本国を代表する外務大臣の私は御職掌だと思う。その上に立つて技術的に実際的にどうするかということは、国内問題としてあり得る。併しおよそあのMSAの五百十一条を頭に想起しつつ交渉にお入りになる以上は、日本政府としてまあその点についての決心はまだ兼ね合いだ、何だかよその国の防衛についての取引のような御答弁を願うので私は非常に不満なんであります。むしろ日本の国の外務大臣として日本の国がどうするのだということは、主体性を持つておきめにならないと、それたから実は国民が何と申しますか、却つてそういう態度をおとりになるものだから、どうもアメリカに引きずられておるのじやないかとか、余計な……、主体性を持つて、独立国として当然主体性を持つてつておるとおつしやりながら、その点をはつきりなさらないために却つて国民から大きな誤解を招く。又国民自身がみずからの国をみずから防衛するという何と申しますか、愛国精神も湧いて来ない。国を愛する精神も湧いて来ないというふうに私は考える。むしろ大きな目的が平和と秩序を維持するのだ、自由世界を守るのだという考え方から来れば、そうそういう点をおつかなびつくりに御答弁なさる必要はないのじやないかと思うものだから、駄目押しをするわけであります。まあその点についてなおはつきりしたお答えが次の問題と一緒に伺えれば非常に仕合せだと思います。  もう一つの問題は、最近に衆議院でやはり起つた問題でありますが、いわゆる河野氏の四千万ドルの問題であります。占領軍が占領政策を施行しております間に御承知通りの朝鮮との貿易関係から債権債務の関係が残つておる、そういう点について実は通産大臣は、私は衆議院でお聞きしておつたのでありますが、通産大臣は帳簿を締括つて見て、大体債権を確定したのだ、そうしてそれを外交交渉にも移したのだ、こういうふうなお話があるわけでありまして、ただその点で私一つ疑問に思つておることがありますので、氷解さして頂きたい。こういうことで質問いたすわけでありますが、どうも平和条約の十九条によりますと、この平和条約が発生前に占領軍がやりました行為から生じたところのクレームは、すべて日本国がこれを放棄するというふうな規定があるわけであります。この規定とあの衆議院で大問題になりました河野氏の声明との関係、それに対して通産大臣お答えになつておる日本の債権というものの性質というものは、どういう関係になつておると外務大臣はお考えになるのでありましようか。
  240. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 平和条約の第十九条の規定は連合国の対日請求権放棄というものを第十四条で定めておりますが、この十四条と十九条は表裏一体の関係にあるとは私考えております。戦争関連した普通の免責規定でありまして、戦争から生じた我が国の対連合国のクレームの放棄を定めたものと考えております。直接戦争関係のない、例えば占領中であつても商取引によつて生じた債権債務の取扱いをきめたものではないと、そういうふうに私は解釈しております。併しこの点については、これは日本側解釈でありまして、アメリカ側と話をしてきめた正式の解釈というわけではないのでありまして、多少この点について疑問の点もなきにしもあらずでありますが、こういう問題も交渉一つの題目にはなるのであります。併し大体において原則的の解釈は別としまして、この問題になつておりまする四千何百万万ドルの問題については、この十九条の放棄の範囲には入れないということに、この事件についてはアメリカ側了承するものだろうと私は考えております。そこでこれは、従つて我々としては別個の債権債務の関係として取扱うつもりでおります。但しマーカツト経済局長が当時ガリオア等と一括して処理するということを言つておりますので、この点についてはガリオア等とは違うものであるということも交渉の一題目として説明をいたしておるのであります。そこでガリオア等の、いわゆる対日援助の内容につきましては、一部はこれは貿易関係であるとして額がきまつておるものもあります。きまつておらないものについても、見返資金等を設定して以来の額はかなり正確になつております。併し全体としてはまだわからないわけでありまして、殊に戦争直後においてはなかなかわかりません。そこでこういうものを若し数額だけでもはつきりしようとするならば、これは双方の数字をつき合せてやる必要がありますが、日本側の数字は余りまだ正確になつておらないようでありますので、未だつき合せ等を行うところまで来ておりません。先方は数字は整つておるという話であります。併しいずれにしましても、この債務というものは額がきまりまして、それをどういうふうに払うかというようなことも案が出ました上で、国会の承認を得てきまるものでありますから、きまつてしまえば、この支払方法として、向うの貸とこつちの貸が相殺されるということなどもあるでありましようけれども、只今は片方はきまつておりませんから、別個に取扱うべきものである、こういう趣旨で話合いをいたしております。
  241. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 前段のお答えは、私が紳士的にお答えになつてもいいし、お答えにならなくてもいいことに述べて参りましたが、お答えがないようですから、もう一ぺん注意を喚起いたしておきます。ただこの十九条は普通の商行為から生じた、平和条約調印前に生じたものといえども、商行為から生じたものについては責任がないんだと、法規がないんだと、こういうふうに解釈することについては、先方は同意いたしておりましようかどうか。どうもその点に交渉が残つておるのだとおつしやいますと、よほど問題は何と申しますか、衆議院で取扱われたような、或いは御答弁なすつたような状態とよほど違うような気がいたすのであります。殊にこの条文を見ますと、「この条約の効力発生の前に日本国領域におけるいずれかの連合国の軍隊又は当局の存在。」まで書いてある作戦又は行動という字もある。「行動から生じたすべての請求権を放棄する。」、こう書いてあるところから見ると、やはり私は率直に言つて、衆議院で論議されたように債権が確定という……ああいうマーケット声明というものがついておりますが、債権の存在そのものを前提にすくするということがどうも疑問に思われますので、特に御説明を願つたわけですが、そういう点についてもう一度はつきり御答弁を願いたい。
  242. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この十九条の解釈等も細かいことになりますと、一々具体的に話合いをしないと確定しない部分があると思いますので、私は今申したような解釈はつまり直接戦争関係のない商行為等の債権債務というものは十九条では別問題だと、こう我々は思つて解釈しておりますが、全部細かいところまでそうであるというふうには例を以て一々実際の具体例で話しておりませんからして、ここでこれはこの解釈がその通りだというところまではまだ私は申上げられないのでありますが、少くともこの四千数百万ドルという具体例がある、この問題につきましてはこの十九条の適用の範囲外だとはアメリカ側了承しておる、こう了解いたします。
  243. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 外務大臣に御要求するのは、今申上げた二点だけでございます。前段の質問に対しましては、後日にこの問題を譲りたいと思います。  次いで大蔵大臣でございますが、大蔵大臣に、予備審査の間にこの本年度予算で一番問題になつておるのは撒超をどうするか、撒超によるインフレ的傾向、殊に暫定予算が続いて参りまして、本予算ができ上つたときに、下期にそれが集中する、これが一番今経済界で心配しておる点である。而もこれは私どもも一部の責任があると思いますが、修正案によつて千百億程度が更に二百億程度に撒超が殖えたという点から、非常に問題になる点でありますが、と同時に最近の日銀の貸出は、予備審査の間においても又大蔵大臣が承認されるように、約千億以上、少くとも千億くらいは貸出が殖えておる。不渡が至るところに出ておるにかかわらず、なおこういうふうに日銀の貸出は殖えておる。こういうふうな情勢で、まああなたとしては金融と財政とを一体にして操作することによつてその懸念を解消し得る。この前の御答弁のときにはまあオーバー・ローンの解消とか、指定預金の引揚げということが具体的にその構想として出されたわけでありますが、その際にだんだんの私との論議の間から、大蔵大臣は適当な機会に更にこの金融との関係についてどう方針を持つているか、具体的方策を表明するとおつしやいましたが、本日本会議の際には当然その御用意があると思いますので、先ずその具体的方策についてお聞きしたい。
  244. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 実は堀木さんにお約束してから、いついつまでときちつと具体的にこう申上げるほどのことはまとめておりませんが、大体私の考えを取まとめたものだけを申上げます。  まだいわば未定稿とでも言うべきもので、推敲を要し、又考え直さなければならん点がたくさんあると考えております。ただ私がこの前申上げました通りに、私は丁度この金融については今度、今お話にもありましたような、大体千三百億くらいの撒超になるのじやないか、尤も行政費の節減等もありますから、その通りとは見られませんが、そう見られるのじやないか、いずれにしてもこれが今お話のごとく主として第三、四半期以後に出て来る問題だから、これは私も堀木さんと全く憂いを同じゆうして、これが対策には脳漿を絞つておる次第であります。それでまあ私はいわゆる金融と財政との総合的調整を通じて通貨価値の維持を図る、それがために国民生活の安定とか、産業の振興とか、国際収支の改善を目標として持して参りたいというのが根本の考え方であります。それじやどういうふうに具体的に調整して行くか、まあこういうことなんでございますが、まあ私は一つ日本銀行のいわゆる貸出の調整をすべきである、その中には今お話になりましたような、いわゆるオーバー・ローンに対する調整もその一つであります。例えばいわゆるこれは堀木さんもよく御存じですが、第一次高率とか第二次高率とか、あの高率の限度ですね、この限度を一つ弾力性を持たせまして、或る場合には限度を引上げ、或る場合には限度を収縮するということ等をやることも一つであると思います。それから又これもよく御承知通りの担保と申しますか、見返りと申しますか、いわゆる適格手形の範囲についてもやはり或る程度の選択を加える、つまり時によつてはこれを厳にし、時によつては多少緩やかにするというようなことでやつて行くのも一つの方法ではないかと考えます。特にこのオーバー・ローンの中に、いわゆる貸付金と称する性質を持つておるものが五百億以上に上つておると思いまするが、これの回収方について努力することも一つの方法だと考えております。なお又日本銀行が現在所有しておる公債が短期国債で百十三億、これは七月の二十二日、御参考までにちよつと申上げておきますが、二十二日現在で、短期国債が百十三億四千万円、長期国債が千二百三十億四千五百万円ございます。このうち借換期限の来る部分も多々ありますし、短期国債等の分もあるので、一頃やつたようないわゆるオープン・マーケツト・オペレーシヨンと言いますか、公開市場の操作でこういうようなものについて売り出すとかというようなことを今すぐとは申上げられません、資金がだぶついたときには殖えるだろうというふうに考えます。と申しまするのは、過日もちよつと申上げましたように、今後公債を九月に借換えますが、あの公債の借換利息は大体今の考えでは五分五分として発行価格九十六円、利廻り六分二厘一毛ぐらいと考えます。そういたしますと、公債の操作もそれらの条件等も併せ考えてやれば、いわゆるオープン・マーケット・オペレーシヨンでだんだん行けるのじやないか、このことにも努めて見たい。なお又短期証券とか公社債等についてもそういう一つの操縦方法について考えてみたい。それから又、さつき御指摘になつた、これも今の七百二十億に上つておる指定預金の弾力的操作も一つする、こういうことが日本銀行を通じての一つのやり方ではないか、併しそれだけではなお足らんと思いまするので、私どもはいわゆる金利政策とでも申しまするか、これによつて、預金がいわゆる源泉一割に今度の修正案でなりまするから、そういうことでいわゆる資本の蓄積に大いに努力をしたい。或いは又、今後必要に応じては、あのうちではまだ不徹底な点もあります。例えば割増定期について基本になつている、ベースになつているものを取るということになつています。今まで取つていないのでありますが、これも一つの妨げになつているのじやないかという考え方をしておりますので、こういうことについても、いわば預金利子課税についてももう少し考えて、これについても資本の蓄積方を図つて行く。それから又よく御指摘になつて、この前もお叱りを受けておるのだが、金の効率的使用が欠けているからこういう点について銀行に効率使用をやらせる。それから中央の、何といいますか、大都市の銀行と地方の銀行との間の調整というものが今まで余り十分行われておりません。それで中央と地方との銀行、中央銀行の方は勿論でありますが、そうでなくていわゆる大都市銀行、いわば大銀行、地方銀行もこの頃非常に大きくなつて参りましたので、これの資金の調整方も図る、そういうこと等を併せ兼ねてやる、なかなか一つには参りませんで、すべて併せ兼ねてやることによつて、或いは時としては、これはいつか仰せになつた、私ども日本の金利というものはこれはどうしても下げるべき傾向に貸出し金利は持つて行くべきであつて、上ぐべきではありません。これはどうしても上げるようなことではございませんが、併し金利を上げるということはないが、貸出しについての引締めといいますか、いわゆる弾力性と申すのか、時によつて引締めを行い、時によつては多少緩やかにする、こういうこと等をやつて、今申上げた通り財政金融の一体化を図つて参りたい、かように考えておる次第であります。もう少し、この頃の貿易関係のこと等もありまするし、貿易手形等の関係もありますからそういうものについての考えも織り込んで、実は私は具体的に案を作りたいと思つておりますが、さつきも率直に申上げた通り、まだそこまで、具体案を作るまでに至りませんが、一応私の考えておる根本を申上げまして、御批評を乞う次第であります。
  245. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 この問題がやかましくなつて参りますのも、一つは国際貿易、国際収支の関係が必ずしも楽観を許さないと同時に、一方におきましては特需に依存した日本の経済を、少くとも、遅くとも特需のある間には自立経済の基盤を達成しなくちやならない、こういう二つの面から非常に私はやかましくなつてつておると考えまするので、今未定稿と申しますか、の大蔵大臣のお考えを聞きましたですが、なおこの点について特段の御留意を願いたいと思うのであります。  そこで、私はちよつと経審長官とそうして通産大臣をお兼ねになつておる岡野さんが珍らしくお見えになりましたので、両方に関連いたしますから……、結局問題は、岡野さんにお聞きいたしますのは、本年度の予算を編成するに当りましてこの点が一つの大き問題になる。即ち本年度予算を施行してインフレを起さないかどうかという問題と、国際収支のバランスが一体どうなつて参るかという問題が一番問題になつて参ると思うのでありますが、通産省のほうから御配付願つた資料によりますと、大体商品貿易におきましては、輸出が十一億八千万ドル程度を初め予想しておりました。併し予備審査の間に明らかになりましたことは、スターリング地域におきまして従来より、予定より上げて、やや見込を立つたような形で、十三億ドルくらいに上げられる程度にしたい、という希望を我々としては聞いたわけであります。然るに最近の新聞紙の報ずるところによりますと、通産大臣は、最初の予定の十一億八千万ドルに対してもなお且つ今の貿易状況から見ますれば一億ドルくらいは更に下廻るだろうというふうなお見込だと承わつておるのであります。私どもは、実は本年度の貿易が、昨年の下期からの模様によりますと、通産大臣の常識のほうが実は当つておるように思う。そういうふうに考えられるのでありますが先ずその事実について、お見込についての考え方を伺いたいと思います。
  246. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。我々といたしまして、今年度の輸出を十一億八千万ドルと見通しましていろいろの計画を立ておるのでございますが、一月—五月の実績からこれを換算しまして行きますというと十億八千万ドル、即ち約一億ドルぐらい減つております。減つた勘定に出るわけです。併しその後の情勢を見ておりますると、だんだんと伸びておりますから、最初の見込のように行くように私は考えておりますが、併しなお望みを託することは、一月—五月と申しますることは、御承知通りにポンド地域の輸入制限が非常に盛んになつて、今年の二月、日英会談をしまして、その輸入制限の緩和、約二割方緩和して頂きたい、こういうように交渉しまして、そういうことになつております、その実績が現われていないうちの結果でありまして、最近に至りましてはだんだんとそれが伸びて来つつありますから、最初の予定通り来るものと私は考えております。
  247. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実は大体今の御答弁は事務当局がやや述べておる説明なんであります。併し最近の実績と言われるのは極く最近の一、二カ月だけの問題なんです。むしろ期待は、いわゆる日英支払協定の面から来る効果が実際に現われるかどうかという問題だと思うのでありますが、この点はまだわからない。むしろやつぱり或る程度の最近の傾向線をとれば、最近にちよつと上りました。一、二カ月の傾向で私は一年を推定するわけには行かない。やはりこの点については約半期間に出て参つたという傾向線というものを考えて、少くとも通産大臣としては、そういうふうな実績が出るだろう、併しそれをどうしても予定の通りにして行くためにはこれだけのことは手を打たんければならないということが少くともおありにならなければならない、又その用心の上に立つて初めてでき上ることではなかろうか、こう思いまするので、そういう点について通産大臣としての具体的な御方策はどういうふうにお考えになつておりますか。その点をお伺いしたい。
  248. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。この一二カ月に伸びて来ておると申しますることは、いわゆるポンド地域に対する輸入制限の日英会談における効果が幾分出始まつておるということで一応これが進んで来るものという予想を私はしておるものであります。なおこれは輸出貿易につきましてはたとえ十一億八千万ドルを見込みましても、併し我々の目標といたしましてはもつともつと余計に輸出貿易を進展させなければならんということにつきまして、輸出第一主義と……我々はいろいろの手を打つておりますが、これは只今やつておりますように、通産省におきましても各種の業界の人を集めまして、そうして東南アジア方面に対する輸出貿易を進展させるためにいろいろな諸方策を考えておるのであります。同時に又いろいろ予算でも通りましたならば、日本の商品を、又技術を東南アジア方面に十分宣伝頒布するような方策も考えておりますし、たくさんの輸出貿易振興策をいよいよ実行に移して行くということでこれ以上の輸出を進展させて行くと、こういうことにいたしております。要するに一月—五月の結果を見ますというと、如何にも一億ドルくらい輸出が減るというような推算になりますが、併しそれは一月 五月におけるところの実勢でありまして、その実勢のうちには殖えるべくして殖えなかつたというものが残されておる。同時にその殖えるべくして殖えないものがまさに殖えつつあるということでございますから、その点におきましてなお外交交渉あたりを十分取入れまして進展に努力して、目標通りにはやつて行きたいと、こう考えております。
  249. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうもお聞きしておりますと、総理大臣も、日本の輸出の振興しないのはどうも外交交渉……他国が輸入制限なり関税を高くしておつて、そのために行かないということを表現するに急にして、国内における自分らの、内在している諸原因を直して行こうというような意欲が私は非常に少いように思うのです。今お聞きしていてもそういうようないろいろな事柄を言われますが、いずれも予算的に見て本当にそうなつているかどうかという問題になりますと、二十八年度の我我の前に提出された予算だけでは非常に考えなければならん、疑問に思う点が多々ある。先ず第一に何と言つて日本の輸出が振わないのは、問題は物価が高いということは端的な事実であります。二割乃至二割五分、この点は大蔵大臣には一応物価低落方策について御質疑をしましたから、主として通産大臣からお答えを願いたいと思うのだが、この物価高に対しての諸方策がない。どうしても、大蔵大臣の御説明もも私は満足しなかつたのです。先ず二、三分くらいは何でしたが、七割は不満足、そういうふうな点でありますが、その物価高を直すということを私は一つの課せられた任務だと思う。ところがすべての、今のインフレ撒超について心配いたしました点は、これは金融の面から考えられる点であります。通産大臣として又経審長官としてこの点についてどういうふうな方策をおとりになるか、企業合理化と一品におつしやらないで、実際に具体的方策はどうだ、なお大蔵大臣がこの点につきまして、以前よりも附加えてみようというお考えがありましたらその点も併せて伺いたい。
  250. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。大蔵大臣の領域は大蔵大臣に御答弁願いたいと思います。これは主として税法上又金利の問題でございましようが、私どもといたしまして、コスト高で今輸出が非常に伸び悩んでおる、これはもう事実でありまして、明明白々の事実であります。これはまあ長い目で見ますと、コストの引下げとそれから即効薬と両方でございます。先ず経審長官として考えておりますことは、何と申しましても基幹産業、即ち原材料というものに対して非常に物が高い、それが行く行く製品、半額品、完製品を経て皆物価高ということになるのであります。その点を取返しますために、計画といたしまして具体的に申上げますれば、先ず石炭の値段が高い、この石炭の値段を如何にして安くするか、こう申しますれば、もうすでに御承知通りでございますが、五カ年計画を立てまして、七十九本の竪坑を掘つて、そうしてこれによつて約二割乃至三割方のコスト引下げに資そうと、こういうことをいたしております。又中小企業の機械の合理化のためには約三十億ぐらいの資金を出しまして、そうしてこれに対してまあ企業の合理化を、合理化と申しますか、近代設備に切換えて行く、こういうふうにしてコストを安くして行く、こういうふうに考えております。又二十六年度から始めたところの鉄鋼の合理化につきましても、約千百億ぐらいの資金が出されまして、それによつてまあ一、二割、大抵二割くらいとこう踏んでおりますが、そういうようなコストの引下げをする、又いろいろほかの方面にもそういうことをやつております。と同時に貿易収支のほうにつきましても、できるだけ外貨の節約をするために食糧増産も農林大臣のほうでおやりになつていらつしやいますし、それから又合成繊維、殊に今の合成繊維は八百万ポンドぐらいしかできておりませんが、これをまあ一億五千万ポンドぐらいにやるという計画を立てまして、そういたしますと、これは綿花の輸入が幾らでございましたか、三十万俵ぐらい節約ができるというような計画になりまして、外国から入つて来るものが少くなり、同時に日本におけるところの材料によつてできるものでございますから、これも外貨の節約になりまして、原料を買う外貨の節約になりまして、貿易収支には非常な好影響を与えると同時に、内需につきまして相当な分量のものができて来るということで、これも物価の引下げになる。まあいろいろ長い目で見ましてやつておりますが、併し目先の点におきましては、二十八年度予算におきまして十分コストの引下げをするのに必要な資金は御説の通りつてございますが、併しこれは大蔵大臣のほうとよく御相談申上げまして、金利、税法のいろいろな関係を考慮いたしまして、できるだけコストの引下げをやつて行きたい。又輸出を進展させますにつきましては、輸出入法を改正いたしまして、いろいろ商社の輸出がしいいというようなことにいたしましてやつているわけでございまして、大体長い目で見ましたコストの引下げ、又目先のコスト引下げということ伝いろいろ苦心をしておる次第でございます。
  251. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実は結局問題は計画と申しますか、一応の考え方はあるわけです。併しこれは大蔵大臣ともお話したのですが、それで一体スピードが合つているのかどうか、現在の置かれた情勢から合つているのかどうか。第一石炭について五カ年計画の竪坑の問題でも、問題になりますことは、まああなた方が特需についていつまでお頼りになつているかは別にいたしまして、これは特需自身は臨時収入的に考えるべきであることは確かだ。又MSAによる軍事援助に伴うところの域外買付がどの程度になるか、こういう問題も無論あります。でそういうふうなことのスピードと、一体今貿易が伸びないということ……、だから差当り伸ばさなければならないということの、私はその点について非常に問題がある。例えば東南アジアの貿易或いはポンド地域についてのいろいろな問題がありますが、これは御覧になつたつてわかるのですが、物価高と、殊に輸入制限をこうむつているのが消費財であります。消費財以外の物は案外輸入制限がない。だから消費財を出すことにウエートを置いておりませんから、輸入制限の影響は割合にこうむつてない。併し国内において消費購買力が旺盛ならば、強いて輸出競争しなくても国内で売つて行ける、そうすれば輸入制限は大して怖くはないが、国内においては生産面に廻る物が消費財のほうに廻つて行くというふうな過程が二十七年度の顕著な経済状態ではありませんか。こういう点を、大きな原因であるこういうもの一つ一つ、現在起つておる過去一年の実績から見ましても、これに対して特段の処置が講ぜられなければならないことは明らかであります。又経審長官としても経済分析をなすつて、その点は強調されておる。だからその点についての的確な具体的方策がなければ、これは経審長官通産大臣として、私はどうもただ一応作文を書くことだけでは困るわけであります。行政の責任を持つておられる者としては困るのですが、その点について重ねて具体的方策がありましたら御答弁を願います。
  252. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。経済白書をお読み下さつたと存じまして、誠に有難うございます。あれは御承知通り経済分析でございまして、それに対する適切な具体策が載つておらんことも事実であります。ただ先ほど申上げましたように、将来五カ年くらいの間にいろいろコストを引下げる方策は十分講じておりますけれども、お説の通り目先如何にしてコストをぽんと切下げて、そうして早く輸出を伸展させると、こういうことに十分なる具体策ができていないということは、これは事実でございます。併しながらこれは今までが特需に依存されて、そしてつい安易な情勢で国民全体がおられたんだろうと思います。と申しますことは輸入業者、即ち輸入をして、その物が再生産されて外国へ出るということはなかなかコスト高で出ない。併しながら国内において非常に消費力が旺盛である。そのために内需のほうに向つてつて、それが結局いつまでたつても物価が下らないというような結果になつておる次第でありますから、今後私ども考えなければならないことは、何とかして内需の方面において相当の消費というものを倹約してもらつて、そうして同時に外国へ物を出すという便利な方法を考える。そうしてやるということよりほかに只今目先の考えはない次第でございます。  そこで我々といたしましては、外国へ物を出しまするにつきましては、これは今お叱りをこうむりましたけれども、只今の国際貿易というものは相手方がありまして、その相手方というものが輸入制限とか何とかいう高い障壁を設けまして入り得ない、又ドアを半開きにしておるとかいうことで入れないものでございますから、先ず第一に必要なことは、外国で明いていない戸は明けてもらう。又半分明いておるものならこれを全部拡げてもらつて、入りやすいようにしてもらうということが先ず第一の問題、その次にこれを入れますにつきましては、できるだけコストを引下げて行かねばならん。コストを引下げる手段といたしましては、只今の予算の限度におきましては十分なることはできませんが、併しこれは大蔵大臣なんかにお願いしまして、金利とか税法とかいうような方面、又輸出商社が仕事がしいいようにいろいろの方策を講じまして、そうして輸出を奨励して行く、こういう方向に持つて行こうと思つておる次第でございます。
  253. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 大蔵大臣に、若しも金利なり税金の問題でありましたなら、第三者的にお聞きにならないで、適当なとき御答弁をなさつて頂いて結構なんです。ところで実は経審長官としての岡野さんに申上げるのでありますが、率直に言つて、今度の予算においても電話料金の値上げが出ております。実は電話料金の値上げということは、現在の電話の状態及びその他から考えて理由を付けて来られるけれども、やはりこれは政府の企業で値上げをするということは非常に一つの大きな問題だと思うのです。この点については大蔵大臣はまあまあという、止むを得んと思つているという程度であります。農林大臣はここにおいでになりますが、農林大臣は消費者米価を上げるかも知れないというようなことを他の委員会、衆議院で言つておられるということを聞いたことがあります。果して消費者米価をお上げになればこの問題も、この前も申上げましたように、最近の生計費からまあこの程度は救済するだろうというふうなことに相成る。電話料金の問題もそうであります。又今度人事院勧告によりまして給与の改善による部分も、これは一面において確かに購買力を増して参る、こういうふうな点も明らかです。経済原則から見ればいろいろ問題が起つて参りますが、従来のやり方は、これだけ私が御質問してもややそういう傾向に向きやすい、そういう点について特段の御処置、内閣としての統一した方向がはつきりしませんと、そのときそのときの解決によつてまあまあが、決して私ども考えておる物価が抑制されて参る方向には参らない、こう私は考える。そういう点について予算的に政府考えられることだけ挙げましてもまだほかにたくさん挙げられる、こういうふうに私は考える。同時に国内においては基礎産業をやはりこの間に培養しようということは明らかになつた。そうするとよほど重点的にお選びにならなければならないはずであります。私はそういう点で今回鉄道の建設なんというものを果してすべきかどうか頗る疑問に思う。鉄道の建設と申しますよりは、鉄道の人は、何か事故が起つたときには、必ず戦争で設備が老廃しております……、ブリッジから人間が転げ落ちて多くの死傷者を出してもそう言われる、衝突を起してもそう言われる、そのときに果してこういう鉄道建設が今妥当か、而も最近の交通状態が変つて参りましたときに、新たなる観点からの考慮もされずにやつて参るということなんかは、特に取り立てて研究されなければならん問題が総合的にされていないじやないかという気がいたします。  又最近伝うるところによると、先ほどもおつしやいましたように、合成繊維の問題にしても、国内資源の問題と睨み合せて考えるべき問題だと思うのであります。日本の森林資源というものは果してどこまで工業化しておるかという点は改めて見面さなければならないのであります。併しただ現状から見れば、アラスカに新らしくパルプ資源を求めようとしておる。そういう点は、一体国際収支の改善なりインフレ抑制なり、或いは重点的な施策、少い資金で以てやつて行く点から見まして、重点的に統一して行かなければならない点から果して妥当を得ておるかどうか、どこが一体一貫して責任を負うか。答弁そのものは何とでも私は言い得ると思いますが、どうも今御指摘申上げました点は、各省ともちつとも総合されていない。経審長官は経済白書で以て満足されておるわけはない。あれから経審長官の行政方針がスタートするはずだ、こう思うのでありますが、そういう点について御答弁を願いたい。
  254. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。政府一体としまして総合的の政策はないのじやないか、こういうような御指摘でございますが、私どもといたしましては各省々々で最も最善を尽した政治をやつて行くという意味におきまして各省大臣があるのでございますから、そういう方面に一応は重点をおきます。併し総合いたしまして、日本が物価の低落を希望し、インフレを阻止し、そうして輸出も旺盛に向つて行くという方向に向つて行きたいということは、これは閣議で一致した意見でございます。そこで先ほど料金の値上げとかいうようなお話がございましたが、まあ私は所管外でございますので、米価の問題には触れません。又触れる筋合いでもございませんが、大体公認料金として出ておりますものは、たばこの専売品、又酒とか、又サービス料のごときに考えておりますが、一例を申しましても電話料の今度の引上げなんかは〇・〇四くらいが家計に影響するというような経審長官としては数字を出しておる次第でございます。その程度のことはなぜ許されるかと申しますというと、普通の物価は三百五十倍くらいになつておりますけれども、そういう公認料金につきましては二百倍くらいにしかなつておらん、でございますから必要止むを得ざるときにはこの点は少しくらい上げるということはいたさなければならん状態に追い込まれることはあるわけでございます。併しそれはやはり減税とか或いはいろいろの方法でこれを吸収して行くというような方策を政府としてはとつておるわけでございまして、只今のところ物価の点におきまして政府がインフレを助長しておるとか、或いは非常に物価が上るような方向に物事がばらばらになつておるということでは私はないと、こう考えております。
  255. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実はそういう消極的な態度では、到底内閣総理大臣なりそして大蔵大臣なり、又経審長官として意図している物価を下落傾向に持つてつて、国際価格と鞘寄せするという方策は私は実現しないと思います。で、ここでお聞きいたしますが、そういう点について何か御答弁がありましたら、大蔵、通産両大臣から御答弁願いたいと思いますが、時間が迫つて参りましたので農林大臣にお聞きいたします。これも併せてお答えを願いたい。消費者米価を果して幾分上げる意向があるかどうかという点であります。私はないと確信いたしますが、併し農林大臣の言として、場合によつて考えるようなことを言つておられるようであります。それからもう一つは森林資源の問題について、一体海外のパルプに依存して参るのかどうか、最近の、殊にアラスカの問題等から考えますと、一体国内の森林資源を工業化する、森業行政を別な角度から見直す必要がないだろうかという点について、私これについてはやや材料を持つておりますが、一応そういう点についてお聞きしたいと思います。  それから石井運輸大臣は何故に鉄道の建設をなさるのか、むしろ現在の既成線の整備改良だつて資金が足りないはずである。現に八十五億の公社債を今度発行されるのです。そういうふうな点から見ましても、九十億に及ぶところの建設線計画、而も完成年度は相当長期に亘るし、而も最近の交通事情については変つて来ておる、こういう点についての御見識を伺いたい、こう私は思うのです。質問は極く簡単にとどめますが、答弁は時間に入りませんから、ゆつくり御答弁願います。(笑声
  256. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今お話の点は、大蔵省といたしましては常に日本の物価が国際競争力を持つようにということを狙いといたしまして、その点で大蔵省はなし得ることはと言いますると、合理化、近代化、コストの引下げに要する資金の供給、金利の低下及び課税の引下げ、こう三つに大体なるのでありまして、それは例えば合理化の機械を輸入する関税も減免する、又それらの物を取扱う商社の支店とか、これは一々申上げませんが、そういうことについての減免の措置もとつて、必要な資金を供給している。場合によつては今度の火力発電のように政府補償の措置もとつておる、各種の課税についての減免をすることは御承知通りであります。ただ私は自分の言をこれも一つ堀木さんに卒直に聞いて頂きたいのですが、日本の産業の中で何が一番合理化されているかと言えば、政府保護を受けないで独力、自力でやつて来た紡績業者であります。この紡績業者は今まで過去長い間政府から殆んど何らの援護を受けておりません。而もこれを原料からして外国から買入れる、この紡績業者が日本で最も合理化され、近代化されて、そうしてそのコストは世界で最も安いものである。これを私は各産業は見習うべきである、私はかように考えております。従つてどもとしてどういう場合でも、今申上げる金融、金利或いは課税等において政府がやるべきことはやりまするけれども、いわゆる補給金その他のやすきについて、今まで補給金等をやつた事業で栄えている例はございません。こういうことではいけませんから、それで私どもはなすべき点は、そういつた安易なものにつくべきじやない、やはりみんなが紡績業者の心持になつて、尽すべきことを尽せば、私は必ずこの今の紡績等が世界で最も安いコストで、どこへ持つてつても国際競争力を持つているようにやつて行けるものである。このことについて少し日本は自立心が足りないんじやないか、会社の経営者がみずから立つという心に欠けているんじやないか、ややもすればものを政府に頼つている、こういう点が多いんじやないか、こういう点を痛感いたすのでありまして、これらの点について特に皆様方の御協力をお願いする次第でございます。
  257. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 消費者米価の問題は、この出来秋の生産者米価をどうきめるかということに先ず第一番に関連して参ると思います。従いまして今日では上げるとも上げないとも申上げません。で、消費者米価を決定する際におきましてもろもろの要素を勘案しておきめいたしたい、こう申上げるよりほかはないのであります。  それから今の山林行政の状態につきまして御心配頂いておる、御同様でございます。御承知のように戦争中の濫伐、戦後に無用の濫伐が行われ、大体国有林の造林計画としては予定の足取りで進んでおります。今日は、まあ大体昨年度あたり私の伺つておりますのでは、立木で二億二、三千万石くらい、用材として一億二千万石くらいな伐木をしております。これは成長量から見まして、もうすでに少し切り過ぎになつております。パルプ用材等からいたしましても、今日の日本のパルプ工業の能力からいたしまして、もう少しぎりぎり一ぱいを越し過ぎている。で、アラスカの山林資源の開発等に成るべく関与して、内地のこの需給の緩和を図りたいという趣意もそこから出ておるわけでございます。これ以上の伐木はこれは到底そうできないと思います。そういうわけでございますから、この二億万石なり切つて参りまするその材木の用途を、或いは薪炭林という相当大きい部分がありますから、これらを他からの転用によりまして、そうして濶葉樹の工業用の利用というようなことで計画を立てて行かなければならんと、事務当局でそういう案を作つておるようでございますから……。大体はこれは相当力を入れなければ日本の森林行政の前途というものは相当心配されるという状態にあることはもう申上げざるを得ないのでございます。
  258. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 新線建設のことをお尋ねでございましたが、御承知のように今度の予算には新線建設費用としてお話のように九十億を計上いたしておるのであります。又同時に改良費といたしまして四百六十五億を計上いたておるわけでございますが、私ども昨年の鉄道建設審議会の答申によりまして、三十線ほどのものを建設して然るべきだという答申を受けておつたわけでございます。その中から昨年十一線取りかかり、それから又昨年秋の補正で十数線取りかかりました。その答申のうち残つておるもの、未着手のものが六線でございます。これを今度の予算には出発するつもりにいたして組んでおるわけでございますが、これだけ戦後暫らく建設のほうが途絶えておりまして、一昨年少しばかりでありますが、昨年から今のような割合に大きく顔を出して来たわけでありますが、これが総経費四百億以上に上るのでございます。このまま遂行して経済速度で参りますと、来年は百二十億ほど新線といいますか今の三十線の進行のために要るわけでありまするが、来年を終りますと十六、七線ぐらいが完成をしてしまうというようなことになつておるわけであります。長くかかりまするのは、本年からかかります大、七線などが少し時間がかかるかと存じております。そしてこういう際は新線を建設するような時代じやなく、今の線路をもう少し立派にして、安全でそうして輸送力を増すという状態にしたらよろしいじやないかというお言葉は識に御尤もなお言葉でございまして、戦後の国鉄の状態が、非常に戦禍を受けました後の回復がなかなか思うに任せない状態でございますから、極力その線は努力いたしまして、まだまだ地方線などではお気の毒な線もあるのでありまするが、生命に別状があるとか、或いは極度に輸送に障害を来たすというような状態にはまあないと言うていい、それに近い状態だと思うております。又今度の予算に上げております金額等も新線よりは遥かに多くそのほうに流しまして、できるだけ修繕、改良の両方面に働いて行きたいということを考えております。どちらか一つにしたらうんと力が入るということは考えられることでありまするが、総体の見通といたしまして、今まであるものをよくし、改良を加えて行くというものが主であつて、そしてそこに新線に必要なもの、経済ベースにやがて乗るというものの建設も併せてやつて行きたい、こういうふうに思うておりますが、果して来年は一つも新線を加えなくても、経済的に工事を進行するのに、今申しましたように百二十億要るのでありますから、多少の年限を延ばすというようなこと等もやつて行かなければうまく行かんのではないか、而も新線をやるために旧線の改良というようなことを怠るようなことは絶対にしないつもりでやつて行きたいと思つております。
  259. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は実は鉄道出であるから余り鉄道のことは言いたくない。議員生活に入つてから鉄道のことはたびたび言つたことは一ぺんもない。又その関係をしたことはない。併し私どもが言わないでおくと、三十線建設線ができる、一体私は率直に申して私が建設線に反対するのはどう見たつて議員が反対するのはいいことがない。併し国家の財政政策から見ると、今の日本の国情から見ればこんなものをやるどころじやありません。一線々々については私のほうがあなたのほうより実際のことはよく知つておる。而も完成年度は三十三年度なんというあなたは一番日本計画の中では長い計画をやつておる。而もこれは予定の完成年度に完成したことがない、実はそうおつしやいますが。建設の技師がいるから建設をして行くのだというのがやや実情に近い。それともう一つは皆建設線を運動するから。それは私はそういう実情にむしろ考える。こういうことは、これは鉄道だけでないと思う。さつき農林大臣が森林資源についてもおつしやることについては、私はもつと細かく調査したものがあるが、実はそういう農林省の考え方、特に林野庁の考え方自身に考えを改革しなくちやならん点があることから話をしておるので、農林大臣が林野庁の考えていることを鸚鵡返しにおつしやるなら、私は要らないと思う。もつとこういうパルプ資源についても、先ほど化学繊維の話がありましたが、我が国で原綿なりその他なりを節約しようとすれば、森林を保存しておくだけでなく、国有林でももつと未開発のところが幾らもある、又国有林の本当の開発をやるだけのことをやつておるか。工業化についてはもつと合理化したところの近代的なもので、そして森林資源の保全と併せて日本産業に貢献する途は発見すればあると私は思う。それらについて議論をしておりますと、幾らでも掘下げて参らなければならないと思いますが、ここら辺で大蔵大臣なり経審長官としてはよほど考え直してもらわなければ、他官庁のことでございますのでとおつしやるのでは、総合官庁としてのお役目をなすつていらつしやるとは思えない。  もう時間もないようでありますから、最後に一点だけ大蔵大臣にこれはお聞きいたします。今度始めて減税国債なるものができるわけです。確かにインフレの抑制と而も矛盾した日本の基礎産業の培養の二つの命題のときに、増税するか、国債政策によるかという問題は非常に重要だと私は思う。今度増税の代りみたいに一つインフレを抑制しないでという考え方から減税国債が編み出されたことは私わかります。併し一体こういうことでいいだろうか、恐らく国債なり或いは増税によるにしても、基礎産業の培養ということについての財源を何らかの形で考えなければならん。併し基礎産業についてしつかりした考え方がなければ、国債政案とる場合にはこれはずるずる入つてつてしまうにきまつておる。今度の予算ではその減税国債の問題とそして手許の国債を売却される、それが四百億近くある。公社債の関係で約百六十億あるというふうな問題があるのですが、こういう国債政策と産業政策との関係、そして減税国債を今後もこの種の形でお続けになるのかどうか、或いは公債政策の発行条件について一体どう見合せて行かれるか、民間の産業資金との関係をどう調整されて行くか、こういう点についての方針を承わりたい。
  260. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 減税国債につきましては過日も堀木さんにお答えを申上げておりますから、ここでお答えをいたしませんが、この減税国債は私は本年限りといたしたい、決して続けるべきものでないと考えております。この点を申上げておきます。  国債政策はどうか、こういうことでございまするが、この国債につきましては、私どもは今の財政投資、基幹産業等と相待ちましていろいろ考えなければならんのであります。現在御承知のごとくに、民間の蓄積資本だけでは十分でない際でございまするので、財政投融資が日本の基幹産業を進めて行く上に相当大きな役割を持つことは申上げるまでもございません。従いましてそれとの関連におきまして、今度の減税国債も御承知のように投資特別会計と見合つておりますが、これは私どもはこういうことの関連においてよほど国債、公債政策というものは考えなければならんと思つております。併し如何なる場合でも私は今の赤字国債というようなものは、これは絶対に出すべきものでない。然らばどういうふうにしてそれは公債を出すようにするか、こういうことなのであります。これについては私ども実は相当考えを持つておるのでありますが、或いはそういうことをまだ言うのは少し早い九と思いますので、これを未定稿という意味でお聞きを願うことがいいと思います。そういうことを具体化したわけでございませんから、ただ一つ考え方を申しておるわけであります。それはやはり今日銀行等に対して、金融機関等にやはりアメリカ等にありまするような、いわば預金支払準備金という制度のごときものを作らせて、そして一方銀行の基礎を固めると共に、この預金支払準備金については例えば大蔵大臣の許可を受けなければ処理ができないようにする、そうすると、見渡して準備金はおよそどのくらいであるからこれは公債の消化力、これは申すまでもなく公債の消化力は今日のところ一般民間でもなかなか消化いたしません。従いまして主として金融機関でありますので、そういうところを睨合せますと、いわゆる赤字公債にならずに消化のできる公債の限度というものがはつきりして参ると思うのであります。そういうようなこともいろいろ考えて、そこに公債政策というものを確立して参りたい。ただどんな場合でも私は日本をいわゆるインフレに追いやつて、そうして赤字公債によつて物価騰貴を来たし、国民生活の悪化を来たすようなことは、又国際信用を傷つけるようなことは絶対にしてはならない、こういう強い信念を持つております。併し或る程度の公債政策をとるとすれば、とる時期はどうかと言いますると、今のような構想が実現せらるるときにやはりやるべきものではあるまいか。現在の段階では公債発行をしようというようなことは考えておりません。ただ減税国債はさつき申しました通り出しますが、これは本年限りといたしたい所存でございます。  あと産業資金その他の関連につきましては、さつきも大体いわゆる未定稿と申上げたうちにも一部申上げたように思いまするが、なおこれは私どもも次の予算を編成するに当りましても是非必要であり、又私自身としても心構えは持つておりますが、やはり皆様の御理解を得て御協力を得て、そういうことの政策を進める必要があると思いますので、いわゆる未定稿を速かに定稿して、成るべく早く御協力を得るようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  261. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今大蔵大臣のお話を考えておりますと、結局今度大蔵大臣の手で予算を編成されるとすれば、公債は発行しない。そうして何と申しますか、基礎産業を培養して、そうしてやつて行かれようということだと、相当問題が……、私は随分困難な編成方針になるだろうと思う。二十八年度の予算補正を関係並びに二十九年度の予算については相当御苦労をなさらなければならぬ。準備金制度という未定稿のものが早くおできになると、調節する余地ができるかも知れませんけれども、どうもそれでお間に合わせになる予定であるかどうか、そこに非常に問題か起つて参ると思います。そういう既定方針で今後の財政政策を行なつて行かれるという点の一つの大枠だけを伺つておきます。  もう一つここで大蔵大臣にお聞きしたいことは、保有外貨をどういうふうにお使いになるか、これは使い方によりますと、日本のインフレを消しつつ基礎産業を培養し、物価の騰貴を防ぐやり方もある、そういう点についての御所見を伺いたい。
  262. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 外貨は丁度今もドルにしまして恐らく九億六、七千万ドルかございましよう。九億六、七千万ドルあるこの外貨の利用につきましては、私も相当考えております。が併しこの外貨を今非常に含みのある言葉でおつしやつたので、或いはその含みのあるお言葉のうちには私と一致するような点があるのかも知れませんと思いますが、私は如何なる場合でも外貨を売つてそれを日本のほうへ持つて来て使う、いわゆる赤字公債と同様な措置はこれは絶対に避けたい。但し他に非常によい利用方法があるということであれば、これについては私どもも実はこれは前年からも御承知でありましようが、余り従来外貨が利用されなかつたのですが、例えば定期預金にしたり外貨証券にいたしましたりして相当この頃は利用しておるわけであります。けれども外貨の量が私はよく申上げますが、昨年の特需から言いますと、特需の一年分ちよつとしかございません。昨年は八億特需があつた。九億七千万ドル、特需のほんのちよつとしかございません。又貿易量から見ますれば、これは半年分ぐらいしか、輸入に対する国際決済の面から見ると、半年分くらいしかございません。余り大きなものとは申せません。ただ余り慣れない日本人が十億ドル近く持つておりますと、非常に金を持つておるように感じますが、これくらいは本当を言えば持つておるのが正常な状態と思いますが、持つておるからと言つて、この利用を忘れてはならない、これはおつしやる通りだと思います。従いましてこれには十分私どもも今後検討しまして、今仰せになつたような何かこれを利用することによつて何ら害なくして而も益のみあるという方法がありますれば、これは是非実行いたしたいと考えておりす。
  263. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は実は意見がある。併しあなたと議論してやりとりしていると、何時間を制限されたところではそれだけで何時間か費さなければならん。従つて主として御意見を聞くことに費しておるのですが、今おつしやつた考え方の中に私は一つの誤まりがあると思う。つまり金を持つていれば国際信用があるように思われているのではなかろうか、幾ら金を持つていたつて、経済の基盤自身が、今おつしやつたように一応貿易が逆調を来したら、信用がなくなつてしまうというふうな産業だつたら、十億ドル持つていても意味がないのです。併し産業の基盤が確立していれば、十億も貧乏人が温めている必要は私はないと思う。事実その点が一つの見識だと思うのであります。よく日本で今四億ドルか五億ドルの外貨を持つていればいいという話がありますが、それは産業の基盤が経済全体として外国から信用ができるようだつたら、外貨を借りるところはあります。入つて参ります。産業の基盤を脆弱にして外貨だけ温めておつて、外資導入がどうして入つて参りますか、私どもは吉田総理が外資導入、外資導入と馬鹿の一つ覚えのように言われてから三年有半経つても大したことがないことをよく知つている。ちよつと火力発電所へ入つて来たのを大きなように言われるが、やはり根本は経済の基盤だと私は思う。現に外国銀行から短期のものだつたら本当に信用があれば二億ドルそこらは貸すということは現実の問題です。そうすれば四億ドルだつたら二億ドルあればいいという議論も一応立ち得る、いろいろなことが考えられるのですが、一つの既定的な、従前のやり方の考え方から一つ脱却しなければ、日本経済の建直しができないという考え方から、この問題についても申上げているのです。どうか今までの既成概念、既成答弁だけでなさらないで、一ぺんお考え直しを願いたい。特にこの点については御注文を申上げておきます。
  264. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今仰せのことはよくわかります。これは如何にも日本経済の基盤を固めることが先決問題です、この点はよくわかりますが、然らばこれと外資の結び付きになると少し意見が違つて来るところがあるのですが、意見は特に私は申上げませんが、ただ私どもといたしましては、よく申しまする通り、又私がこれは自分で調べたところもそうでありますが、少くとも例えば特需にいたしましても、昭和二十八年度は二十七年度より多いと私は思つております。数量においてはよく減つておると言われておりますが、私は多いと思つております。又二十九年度もそう減らないと、これは自分の調べではそういうふうに思つております。従いまして、今の大体十億近いものはこれは維持ができると思つております。併しその間にいわゆる基盤を作ることに今最大の努力を傾けておるのでございますが、併しそのうちの金を若干持つて来て、こういうことをやればこれが基盤の何になる、こういうことでございましたら、これは又考え直さなければならん点もございますので、もうその点については御意思のあるところはわかりますから、よく一つ考えてみます。
  265. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 これで私は最後にいたしたいと思うのですが、無論私は大蔵大臣のおつしやることもよくわかります。先ほど繊維産業について例を引かれた点についてもよくわかります。私は経済界自身がみずからの力で立つ意思と努力が積み重ならなければ、政府が政策を立てても何らの効果もなさない、イージー・ゴーイングになる、同時に今おつしやつたように、私も特需は減らないという見通しに立つております。そういう見通しに立つことによつて、朝鮮事変のブーム以来固めて来た日本の将来の経済的な正常な状態及び日本の通貨の価値というものは失われたことも事実であります。そうおつしやつておると、再度多くの人々がイージー・ゴーイングの方向をとるたろうということも事実であろうと私は思う。併しもう一つそういう点の通論的のものを出しますれば、繊維産業というものは御承知通りの産業です。経済基盤が脆弱な時に一番工業化の最初に取上げられておるのが繊維産業、而も日本が重化学工業化として立つて行く以上は、而も敗戦によつて多くのものを失つた現在として、国家の政策が相当大きなウエイトを示しめておることは明かです。又あなた自身もそれだから産業投資特別会計をお設けになつておる。だからそういうものが両々相待たなければ日本の国際市場における地位も確立しない。又国内的なものも正常な状態に向かない。そういう点から考え合せますと、外貨の問題にしても一つの観点が出て来ると思うのです。全体としての私は今置かれておる日本の現状から、方向は要するにまじめに考えれば一つある。現在取るべき措置はある。将来の主義に基く政策は別である。併しその場合に要するに勇気を持つて一つ一つの問題について実際に適切にその方向に行つておるか、或いは幾分のデイジエネレイトした線を認めるかという場合が非常に大きな差を来たしておる。そういう点を自由主義経済だ自由主義経済だと安易な傾向をおとりになること自体が私はそういう傾向を助長して参るということになると思う。その点から特にいろいろな基本的な予調算の基礎になる基本的な問題について御質問いたしましたので、できましたら御施策の十分な参考にして頂きたい。いずれ又改めまして方向が違つておる点は指摘して行きたいと思います。  私の質問はこれで終ります。
  266. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これで恐らく今日は散会じやないかと思いますが、明日の審議を円滑にするために、実は私の質問に入るときに、かねがね資料を要求しておりました。外航船舶の融資に対する利子の補給についての必要な資料を二十一日に通産省のほうに要求してありました。今日の出たわけです。併しながらこれは要求した趣旨に副うておりません。まあ失礼ですが極めて杜撰でありまして、こういう資料を基にしては到底私の質問はできませんので、委員長におかれましては、要求書は私は箇条書にして二十一日に出してございます。従つて改めて明日の審議に差支えないように、その資料を出すよう委員長からもよく督促して頂きたいと思います。これで最後のお願いをしておきます。
  267. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会