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松原一彦君 わかりました。次に
首相に伺いますが一体
首相は、非常に
共産主義に対しての強い
反感をお持ちのようでありまするし、これを防がるることについては大体異議ありませんけれども、
政治家のこれに対するところの
日本の
自衛力というものの焦点について若干私は重きを置かるる点に違いがあるのではないかと思います。例えば、今、
国内を見渡すというと、今、
日本の急務は
軍備を増すなんという問題ではないのであります。と言いますことは、現に昨年一カ年間の
日本の刑事犯罪は百三十九万五千件に及んでおる。なお昨年一カ年間の自殺者が、国警の統計によると、一万六千六百五十五人である。一畳五百円の家賃の四畳半の部屋の中に、二カ年毎におられるところのあの権利金数万円を払
つて、六人の家族が泣いておる。その人々は共産党でもなければ、
共産主義者でもないが、中国に失業者がないということを伝え聞いて、俄然としてアカハタを読み始めて夢中にな
つておる事実もたくさんある。かようなときに、一体
日本の
国内がかくのごとくな
つているときに、
MSAでも
つて、あんな、辻さんに言わせるというとスクラツプにしかならない、せいぜい
アメリカが
朝鮮で叩かれたといつたようなああいう戦車を持
つて来たところで、どうにもならない。私はジャカルタに行つたときに、ジャワでありますが、王国があ
つて兵隊を持
つている。鉄砲じやない。槍を担いで、はだしで教練いたしておりましたが、併しその周囲には城壁があ
つて大砲がある。その大砲が内を向けてあるのであります。外に向いておらんのであります。今日原子力兵器の威力を持
つておるときにああいうことで、一体、
自衛力の強化ということが言われるのですか。内が腐
つておる。又、
首相御承知の
通り、今日稀有の大洪水で非常な災害が起
つておるのでありますが、これは新しい言葉ができて、天災、震災の上に政災という言葉ができておる。
政治の災害だ。それはどうもおかしいと思いますけれども、
内閣委員会で調べたところによりますと、国庫補助の対象にな
つておりまする災害復旧事業は、六割五分の国庫の負担になる。あの災害復旧事業が、会計検査院が調べたところによりますというと、農林省の管轄が最も不正が多く、二十二府県の調査で、そのうち不正と見るものが、九割のものが二件、一割のものが二件、平均しては六割が不正の事実を指摘せられておるという報告を得ておるのであります。
政治は楼閣の上にあるのではなく、治山治水、
国民生活そのものの第一線の上にある。それがかくのごとき大きな大きな穴を空けておるところに、今回の災害は稀有の雨量ではあつたけれどもが、洗い出されて来られた工事の惨害を見れば極めて不正な事実が歴々として指摘せられるということを、現地視察の議員の同僚から私は承
つておる。こういうところに大きな欠陥があるのじやないか。
首相、あなたは
昭和二十三年十月十五日に第二次
吉田内閣をお作りにな
つて、第一次農林大臣は
吉田首相あなたでありました。爾来農林大臣を取りかえられることすでに十人であります。十人の農林大臣の中には一カ月、私の知
つておる農林大臣は、新聞に今朝退官ということが出ました、そのあとで新任の挨拶状が廻
つております。私は驚くべき事実だろうと思う。
吉田内閣は長く続きまするけれども、農林行政の担当大臣は四年九カ月の間に十人変
つておる。半年を出ないのであります。平均が……。私はこういうところに
日本の禍ソがありはせぬか。
自衛力とは
国民みずからが守る力であり、みずからが守る力を持つことである。
国民生活を安定すること以外にはないと思う。その力一杯のところで全
国民が歯を噛みしめて祖国を守らねば、沖繩琉球のごときも唐手で守れる、こういつた擬態もあれば或いは
保護色もありましよう。角を借りて来てくつ付けたところで猫は牛にはなりません。私どもはもつと
日本民族が本気にな
つて内を治めて、そうしてみずからを守るという方面に
政治の焦点を転換して頂きたいということを熱望するものでありますが、この点につきましての
首相の御所感を承りたいと思います。