○
公述人(
関口敬太郎君)
財政の専門家のかたがたから広い範囲に亘
つての御
公述がございました。私は門外漢でございますから、二、三気付いた点と、或いはこうして頂きたいという素人めいたことでございますけれども、希望等を申上げまして責をふさぎたいと
考えております。
先ず申上げたい点は、極めて技術的な点でございますが、
金融と
財政との
関係で私非常に大切な問題であると思いますので、その問題から
説明をさせて頂きます。よくチープ・ガバメントという言葉がございますが、即ち
財政の規模はできるだけ小さいことが理想だという
考え方もございますのですが、私先ず一般的に
考えまして、現実の
日本経済に即して見ますと、成るほど一面におきましては、
財政、その裏打にな
つておりまする行政を徹底的に合理化する必要があるということを感じます。半面におきまして、もつと有意義な行政と申しますか、
財政規模をもつと大きくして、
財政、行政表裏一体になりまして、もつと威力を持たせて、
日本の
経済の安定、延いては再建を促進するというようにして頂きたいというのが、私の一般的な希望でありますが、先ず技術的な面から申上げさせて頂きたいと思います。
先ず申上げたい点は、
財政と
金融との
関係でございますが、戦前におきましては、よく
政府資金が撤布
超過だとか、或いは吸収
超過だとかいうようなことは、これは
金融の専門家だけの言葉でございまして、例えばビル・ブローカーというような人が、この次は散超だ、この次は吸収
超過だというようなことを気にしてお
つたのであります。
昭和七年の
数字を御参考までに申上げますと、
一般会計だけの
数字でございますが、
歳入歳出金の月別受払高を申上げますと、
昭和七年の実行
予算は十七億円という規模のものでございましたが、一—三月では九千三百万円の揚超、四—六月が七千万円の揚超、七—九月が逆に五千八百万円の撒布
超過、十—十二月が一億一千万円の撒布
超過というように、現在の
政府資金の出し払いと同じようにきまりき
つた週期があ
つたわけでございます。ところがその当時の
状態を見ますと、
財政資金の出し払いの週期はございますけれども、通貨の流通高というものには、そういう
財政資金の動きが余り直截には反映しておらんのであります。なぜかと申しますと、その当時は
大蔵省証券のような
政府短期証券がございました。それを
金融機関と
日本銀行の間で巧みに
運用してお
つたのであります。又銀行も現在と違いまして相当資力がありまして、
日本銀行に対して預金を持
つておる。その頭金を出し入れいたしまして、
金融を巧みに調節してお
つたということがあ
つたのであります。従いましてその当時におきましては、
政府資金の揚超とか払超というのは、これは
金融専門家だけの問題でありまして、単にこの
財政資金が出て、そうしてこの一、二カ月はどんどん金が出る、そこで世の中がインフレになるだろう、或いは又半年くらい
引揚超過が続くとこれは不景気になる、つまり
政府資金が出るのか入るのかということだけで、
国民大衆が非常にその
経済生活に直截の影響を受ける、びくびくする、こういうことは曾
つてはなか
つたのであります。
でございまして私の感じといたしましては、現在の
経済情勢を見ますと、戦前のようなクツシヨンというものがないのです。でございますから、
日本銀行としてもいろいろ御苦心をしておられて、やはり指定、預金をするとか、或いは金をこつちからあつちへ移すというようなことをしておられますけれども、どうしてもこの結果といたしましては、今申上げましたような悪影響が現われておるのであります。でありますから
財政全体としての
資金の総額がどうだ、或いはこの
使い方はどうだということも非常に大切な問題でございますけれども、とにかく例えば税制
一つ一と
つて頂くにいたしましても徴税或いは納税方法、例えば三、九、十二月と納めるのか、或いはこの税金は下期に大体納めたらいいというような、もつとそういう技術的な点を御心配頂きまして、そうして同じ
財政計画でございましても、その運行をもつと円滑にするように、親切に
一つ国民の立場にな
つて御審議をして頂きたいというように
考える次第であります。
それから話はそれと関連いたしますが、今年の上半期は御承知の
通り政府資金は千六百億円の揚超でございましたし、又七—九の期間も五百億円近い揚超になるというふうに言われておるのであります。ところがこの十月からあとの三カ月で今度の
予算がそのまま実行に移されますと、年内の僅か三カ月で二千億円という撒布
超過が来るというようなことを
金融の専門家が言
つておられるのであります。勿論この
予算の空白時代というような特殊な事情もございましたけれども、上半期の先ほど申しましたような九月まで
計算いたしますと二千億以上の
引揚超過になる。そこで
日本銀行としては躍起になりまして、民間貸出を殖やして、そうしてバランスをと
つているわけです。すでに六月末には三千百四十億円という民間貸出にな
つておりますが、これはこの年初に比べて一千億円の
増加でございます。又この分では九月の終りには四千億円になんなんとするというように見られておるのであります。それでも一応
政府資金がこのように引続き巨額の
引揚超過ということになりますと、一方において
日本銀行その他が一生懸命にバランスをと
つて努力をなさいましても、全体としては金詰りというものが響いて来るわけであります。特にその金詰りは中小の弱体
企業にしわ寄せとな
つておりましてそれが不渡手形の激増というような副作用も招いておるのであります。でありまして中小
企業金融公庫というようなものを今度設置なされるようでございますが、いわば非常に失礼でございますが、そういう御苦心も水の泡だ、つまりそういうものをむずかしく
考えてお作りになるよりは、
政府の金の出入りの波をもつと
運用を滑らかにして頂きまして、御考慮して頂くということだけで或いはそれ以上の
効果が挙がるのではないかということも
考える次第でございます。
ところで話はくどくなりますが、それからあとの年末にかけての
財政資金の厖大な撒布
超過でございますが、これは如何に
金融面から遊資の吸収を図ろうといたしましても、このインフレ
効果というものは完全に抹殺することはできないということを
金融関係の専門家のかたは私に話されてお
つたのであります。例えて見ますとインキの出の悪い万年筆のインキを出す。これは振ればとにかく出る。出の悪い万年筆のインキは振れば出るのでありますが、ひつくり返したインキを吸取紙で吸うということは、これではなかなか完全には吸えない。そういうことを
考えてみますと、全体といたしまして
財政収支が均衡しておりましても、右のような一年間の期間の間の一定の期間をとると、一方は非常に出るが、一方は非常に悪い。こういうようなことがございますと、
金融につきましては
国民経済全体として非常に悪い影響が及んで来るということをお
考え頂きたいと思うのであります。
引揚超過の時期には
経済界は一般的には停滞いたしますし、その半面におきまして、
日本銀行の民間貸出なんかが殖えますから、潜在的な信田インフレが浸潤するわけであります。又撒布
超過の時期には、
財政インフレ的な
効果がどうしてもあとを引く。こういうことになりますから、こういうような同じことを繰返して参りますと、どうしても内外
物価の鞘を寄せまして、
日本経済再建の
一つの前提を作り出すというこの根本的な大前提が崩れる。つまり金を吸い上げるときはその
金融の信用インフレでな
つておるわけですが、金がどんどん出るときはどうしてもインフレ
効果が出て来るのですから、全体としては
物価は如何に国際水準に下げようといたしましても、どうしても下期はその傾向として上る、こういうことが私は起るのではないかと
考えております。非常に末梢的なことでくどく申上げましたが、その点をいろいろ御考慮を願いたいと思います。
第二の点は非常に生意気な言い方でございますが、
財政の合理化をや
つて頂きたいということであります。先ほども木村さんから
お話がありましたが。
予算案の純計を見ますと、一兆九千億円という
数字が出ておるのであります。
国民所得の五兆八千二百億円の大ざつぱに見ますと三分の一という規模でございます。戦前の
昭和八年の
予算の純計を見ますと五十億円、そうしてその当時の
国民所得は百十八億円でございますから、現在の
財政規模が必ずしも過大だということは言えないと思うのであります。併しながら甚だ失礼な申分ではございますけれども、戦後経営の苦しい
日本経済といたしましては、この現在の
租税などの七千百六十億円の負担というものはどの社会層をと
つて見ましても、堪えられるぎりぎりのところだというふうに思うのでありますが、ところがそれでは
財政で一体何をしておるのだということになりますと、どれもこれも中途半端というと非常に失礼でございますが、何もかもどうも中途半端じやないか。本当に腰を入れて
仕事をしておる
仕事は
一つもないじやないかというのが私たちの非常に失礼でございますが、実感としてひしひしと胸に迫
つて来ることなのであります。
更についでございますが、極端なことを言わして頂きますと、或る人の言うことに
日本経済の合理化々々々というけれども、この合理化ができない大きな
原因は二つある。
一つは
財政と
金融にあるのだということを言
つておるのであります。これはどういうことかと申しますと、今申上げましたように現在の
財政活動の裏打ちにな
つておる行政のいろいろな点について私たちも二、三感じたことでございますけれども、事業会社などでは到底見逃がせないような能率の悪い
仕事が雑然と積重ねられておるというふうに申上げなければならない部面が私は非常にたくさんある。その結果といたしまして
財政資金の効率というものは私は非常に低い。途中で、先ほども
お話がございましたが、消費的と申しますか、人件費として消えてしまうようなものが非常に多いのではないかというふうに思うのであります。行政整理が唱えられて、私たちがどうなることかと思
つて見ておりますと、思
つた通りに行政整理ができない。それはどういうわけかと思
つて考えてみますと、要するにこの
予算を取りまして、そうして
予算と
仕事というものがあれば、当然そこにこの定員同名というようなのが出て来る。でございますから、私は行政面で失業救済をやるというお
考えがあるならばともかく、
予算というものをもつと真剣に
考え、
財政の合理化ということを本当に
考えるということでございますれば、
一つそういう点を徹底的に
考えて頂く必要があると思うのであります。これは或る会社の実例でございますが、私はこういう話を聞いたのです。会社の経営を合理化しようということで、差当
つて仕事のない人を指定しして、お前たちは会社へ来る必要はない、家で休んでいろと、休んでいても今までと同じように残業手当も給料もあげるということで、出社をやめてもら
つているのです。なぜかというと。その人が会社に来れば、やはり給仕がお茶を出したり、又その人は暇でございますから私信を会社の封筒で手紙を書く、それだけやはり経費がかかる。だから本当に合理化をやろうと思えば、
仕事そのものを棚上げしてしまい、そうしてその人の給与は給与で別途
考える。これが本当の合理化ということだと私は聞いたのでありますが、行政面につきましても、若しこれがそうでなければ私は即座に取消しますけれども、若しそういうことがございますれば、行政面におきましても、そういう
意味において徹底的に
仕事の合理化を
一つや
つて頂く。これが私は本当の行政整理じやないかというふうに
考えております。
それからこの次は
金融の問題でございますが、私は特に今日今
金融のことを申上げるつもりじやないのでありますけれども、暫くまあお許しを頂きたいのでありますが、よくいろいろな人に聞きますと、
日本の
経済の合理化安定というものを妨げている
一つの
原因は
金融だ。
金融だというのは一体何だというと、
金利が高いということを誰でもおつしやるわけです。なぜ
金利が高いかというと、
金融機関のかたは、これは
資金コストが高いということをおつしやる。ところが金本位制度の時代でございますれば、これは別でありますが、現在のような紙幣本位の制度の時代でございますと、極端なことを申上げますが、紙幣の印刷代というものが、これが
資金のコストなんです。そうしてその紙幣が三年間流通するとしますと、印刷代の三分の一は
資金コストであ
つていいというふうに極端に
考えるのでありますが、それではなぜ
資金コストが高いかというと、これは余りに
金融機関の人件費とか事務所費、つまり
金融機関の生産費、この原価
計算から逆に
金利を出しているというところに私は
日本の
金利が高い
一つの大きな
原因があるというように
考えております。勿論この
金利水準というものは、
資金の需給
関係とか、そういうものと非常に密接な
関係がございまして、これは厳密に議論いたしますとむずかしい問題になりますが、ただ感じとしてそういうことを私申上げてみたいと思うのであります。そこで
金融面におきましても、まあその点は行政機関と同じように
仕事をもつと整理すれば、人件費を減らし、そうしてもつとコストの安い
資金が
供給できるという点においては、
財政と
金融とどこか私は共通したところがあるのじやないかというように
考えておるのであります。
そこでこの
減税国債の問題に関連するのでありますが、現在の社債の発行条件は、御承知の
通りまあ大体五年でそうして八分五厘、そこで大体発行利廻りが九分三、四厘というようなことにな
つております。それを基準にいたしまして今度の
減税国債の条件をどうするかということは、私は
考えられておるのじやないかと思うのでありますが、これでみますと、
法人が若し一ぱい一ぱい
減税国債を持つと、一割五厘、個人で一割二分というような利廻りになる。こういうコストの高い
減税公債を発行して得た
資金、それも僅かに二百億円、そういうような
資金で以て産業投資特別会計の
資金収入にするというようなことはどう見ても私は不見識だと思うのであります。二百億円ぐらいの金は、これは行政整理で優に出て来ると思いますし、又一割以上のコストの
資金収入で産業投資特別会計をや
つて行くということは私は根本的におかしいのじやないかというように
考えております。でございまして、
減税公債は私は裏のことはよくわかりませんが真正面にぶつか
つて考えますと、どうしても理解できないというように申上げたいと思うのであります。
それからその次は、先ほども
お話がございましたが、電電公社と国有鉄道の債券のことでございます。このたび鉄道債券が八十五億円それから電電債券が七十五億円の公募というものが計画されているのであります。ところが国有鉄道とか電電公社の全体の特別会計の規模から見ますと、いわばこういう
金額は九牛の一毛でございます。でそれが料金問題とどういう関連があるか、いろいろむずかしい問題もあると思いますが、強いてここでこういう公社の債券を公募なさるということの
意味を強いて
考えてみますと、これは非常な親心でございまして、将来における公社債市場というものを育成する、そういう大局的な狙いがあ
つてお出しになるということならば、私は非常に意義の深いことだと
考えておるのであります。ところがこの両債券に承わるところによりますと、償還期限がまあ二十年乃至七年ですね、そして利子は七分、発行
価格は九十八円ということでございますから、大体地方債をまあ基準にして、右へならえで
考えられた条件だと思うのであります。で、一部の噂によりますと、
日本銀行がこの両債券を社債とか地方債に比べて、どういう
日銀の担保掛品の条件で取扱おうかということを
考えておられるということを伺
つております。ところが私は
考えますのに鉄道とか電電の債券というものは、これは事業債と同じく背後に事業がついておるわけです。担保がある。而もその上に
政府保証、これは超一流の債券でございまして、まあ
イギリスでは、ゴールデンエツジド・セキユリテイース、つまり金で縁取られた証券という言葉を
使つておりますが、私はまさにそれに該当する証券だと思うのであります。ところが戦後の
日本の起債市場、公社債市場を見ますと、御承知の
通りマーケツトとは名のみでございましてただ限られた人々が起債条件というものを相談ずくで決めまして、そうして形は社債とか、地方債の形で発行をしております。けれどもそれが大体
金融機関に行くところはさま
つて、そしてそれの売買市場というものは全然ないのであります。そういう
状態でございまして、例えば社債などは月額四十億円とか、五十億円を発行している。そうして条件は先ほど申しましたように、年限が五年で利率が八分五厘、発行
価格が九十八円というのが大体の基準のものであります。こういう条件で
金融機関が持
つておられるのでありますが、それでは若し社債をマーケツトに出した場合に、九十八円の債段が持つかというと、これは非常に疑問です。そういうようなものを幾ら出しましても、
日本の長期
資金のマーケツトというものは確立しないのであります。そこで何らかの機会にですね、
一つこのマーケツトで堂々と値段が維持できるような債券を出す。これが出て初めて
日本の長期の
金利水準というものがきまるわけです。これがきまりませんと、最近もいろいろ問題がありましたが、借換
国債の条件、まあ大体妥協があ
つたと申しますけれども、それが本当に正しい条件かどうかということは、ただそうだろうということでありまして、マーケツトできちつと判定の下された条件じやないわけです。で私はここで発行された鉄道とか、電電の両債券というものは今後の
日本の長期の債券市場の基本的な証券だというように
考える次第でありまして、今後続々出ますと、発行総額としても相当強大なものになると思うのでありますが、この二つの銘柄を証券取引市場に上場する。そうして市場
価格を出して見る。九十八円のものが九十七円になろうが、九十五円となろうが、それは止むを得ない。そうして例えば九十五円で安定するということでありますれば、そのあとに出す鉄道とか電電の公社債の条件を、そのマーケツトを基準にして決定する。こういうことをしたらどうかというように
考えておるのであります。
ところがそういうマーケツトを作
つても、そういうマーケツトで誰が売買するかということがすぐに問題になると思うのであります。暫らく前でございましたが、
日銀総裁ができるだけ早く
一つ割引市場を復興したいということを言
つておられる。割引市場というのは何かということを聞いて見ますと、一流の商業手形の再割市場を
一つ復興したいということのようでありますが、それを一歩進めまして、もつと大きな構想で割引市場のみならず、コール市場を作り上げるということを私は
考えていいのじやないか。そこでこの際電電と鉄道債券、この二つのものを担保として
日本銀行が枠外の金をこの二つの銘柄が担保であれば、無制限に枠外に金を出すということになりますと、おのずから電電とか鉄道の債券の市場性というものがついてくる。そうして、一方において、コール市場が潤沢に動き出しますと、先ほど一番冒頭に申しましたが、
財政資金のこの影響が直接にお台所まで響く、そういう不手際な
金融操作はやらないで済むのじやないかというように私は
考えております。
現在鉄道とか電電債券の起債に携わ
つておるかたがたの意見を聞きますと、どうも消化の
見込については自信を持
つておられない。なぜ自信がないかというと私は今までのような卑屈な
考え方で、ただ今までの社債とか地方債のようにこそこそと条件をきめて、そしてきめた条件のものをきま
つたところに紐をつけてはめて行く。そういうことを
考えておられるから、私は消化について自信がないと言われると思います。この際証券取引市場で堂々上場して、そして二つのゴールデンエツジドセキユリテイースは、
日本銀行がぐずぐず言わないで枠外の金をどんどん出すと、こういうふうにいたしますと
金融機関で余裕のある人が電々とか鉄道の
公債をどんどん買う。そして金が入ればコール・マーケツトで
日本銀行に頭を下げないでどんどんそれぞれが金にな
つて来る、こういうふうな構想を
一つ持
つておられるということでございますれば、私はこの際電電とか鉄道の債券というものを折角お出しになるのでありますから、ただそれで僅かに百数十億の金を集めるというけちなことでなしに、堂々と意義をもつと大きく拡大して、有意義にこれを扱
つて頂けないものだろうかということを
考える。
時間が少し
超過いたしましたが次に
財政投
融資のことについてちよつと私見を申述べさせて頂きたいと思います。このたび産業投資特別会計が設置せられまして、ここに重要基礎産業等に
財政資金を流すという
方向が見られたことは、私は非常に意義深いものがあるというように
考える。ところが中を見ますと掛声は大きいのですが、結局は
開発銀行に三百十五億と電源開発会社に百十億円の
資金を貸すだけのことなんです。私は
財政の
日本経済の再建とか、復興のために果すべき任務ということは、私は極めて大きなものがあると
考えておるのでありまして、折角
開発銀行とか電源開発会社というものができたのでありますから、これは言葉を換えて見ますと
政府銀行とか
政府会社というものがでさたのでありますから、これを大いに活用いたしまして、そして
日本の産業の基礎を根本的に固めて頂くということができないものか、ということを
考えておるのであります。
そこで補給金の問題とかいろいろな問題に触れると時間がございませんので、私の
考えだけを申上げさして頂きますと、
日本の産業の再建なり基礎を固めるという、一体どこからやるか。これは根本は私は
海運と、それから電力、石炭、鉄、それに強いて申しますと、合成繊維、こういうような
仕事を安心してや
つて行けるようにしてやるということだと思うのです。これがまあ産業の基礎なんです。そこで最も典型的な電力と
海運というものを取上げて見ますと、若し
日本の電力が
日本の
海運賃、
日本の鉄の値段が、国際的
物価に比較して少くとも割高でないということがずつと引続き永久に保証せられるということでございますれば、
日本のいろんな産業は安心してせつせといろんな産業の復興なり再建をや
つて行くことができるのではないかというように思う。でございますから、私は根本の
考え方といたしましては、今までの戦後の
海運会社とか或いは戦後の電力会社が
設備或いは生産力或いは輸送力の拡充のために資本を投下し、そのために借金ができておる。こういう借金は私は全部
政府で肩替りしたらいいじやないかというように
考えるのでございます。それから又今後のそういう基礎産業の新投資、新らしい投資
資金は、全部
政府で出すというふうにしたらどうか。その金はどのくらいあるかと申しますと、二十七年までの累計で
海運関係では大体今まで溜
つておるのが千百億円
程度だと思います。又電力
関係では二十六年から開発を始めておりますから六、七年の両年で千五百億円
程度でございます。鉄とか炭鉱を入れますと大体五千億円もございますれば、旧債務は全部
政府で肩替りできるというように思います。それから今後の
資金でございますが、これは大ざつぱに見まして毎年千五百億円もあれば、これは十分に賄えるのじやないかというように
計算を立てております。
そこで一体どういう形でこれをやるかという問題でございますが、極めて素朴な形を申上げますと
日本銀行の
政府貸上金という項目を作りまして、そうしてその項目のお金で、例えば五千億円の金を
政府が借金する。そうして借りた金で今まで溜
つている基礎産業の債務を全部肩替りしてしまう。そうすればそういう会社はそれからあとは
金利も償却も払わなくてもいい。少くとも市中銀行にいじめられなくてもいいということになります。そこで
政府は一体どういうことをするかと申しますと、肩替りをしたそういう投資の身代りにな
つている債務、それについては償却に相当する
金額だけを
政府を通じて
日本銀行に積み立てさせる。そういたしますと適正償却を積み立てて行きますと、元本に達するわけです。元本に達したところで残余財産をその事業会社に払い下げまして、その払下げ金を
日本銀行にやりますと、後払いの
金利と同じ
計算にな
つて、それは債権債務がきれいに落ちるというように思います。そういうふうに肩替りされた市中銀行の五千億、近い金はどうなるかと申しますと、現在のところもう少しで
日本銀行に対して市中銀行が借りておる債務は四千億円になるのでありますから、その四千億円を落してしまえば、市中銀行の資力は潤沢になりまして、そうして今後の
金融政策が非常に
弾力性を以
つてやれる、こういうことになるんじやないかと
考えるのであります。
非常に乱暴なことを申上げましたが、私はむしろ先ほどの方々と或いは意見が違うかと思いますが、今後の
日本の
財政が、
日本の
経済再建なり復興に対して果すべき役割は非常に大きいんだ。だから産業投資特別会計というものも、ただ看板だけ大きくて、中に入
つてみると何もないということであ
つてはならない。又先ほどもおつしや
つたように、二千億近いものが
財政投
融資に向けられておりますけれども、それは名前は
財政投
融資でございますが、いろいろ中を見ますと住宅の
関係だとか
国民金融金庫だとかいろんな方面に行くのでありまして、本当の
意味の投
融資というものは、ばらばらと散見せられるだけでありまして、いろんな方面に対しての投
融資というものは、どの
程度にこれを整理するかということは別問題といたしまして、少くとも
日本の産業が安心して今後の再建をや
つて行けるだけの基礎、つまり運賃と鉄とそれから、電力、石炭、この値段が国際
価格以下で、而も潤沢に得られるような条件を作る。その前提の下に産業投資の特別会計を根本的に
一つ考え直して頂いて、大きくこれを動かして頂く、そういうことができないものかというように、まあ非常に乱暴でございますが、そういうことを
考える次第であります。
それから最後に税金のことでございますが、これは一言だけ申上げさして頂きたいのでありますが、私たちのような商人でございますと、まあいろんな商いをいたしますと、その
計算書だとか納品書、領収書だとかいうものは、全部私たちのほうで書いて、そうして受渡しに行く。お金をくれなければ又行く、そうして最後にな
つて手形をもら
つてす
つたもんだの挙句ようやくというわけで、全部民間のほうじや商売人がやる。ところが
財政のほうになりますと、
予算に計上されておる徴税費というものは、お役所だけの費用でございまして、皆さんも御経験があると思いますが、税務署へ呼出されますと、
仕事をしていても行く、電車賃を払
つて行く、そうして時間も相当かかる、又納税いたしますときには長いものに自分の住所氏名を四カ所書くわけです。最後には税務署から頂く領収書にまで自分の住所氏名を書いて差出すということをや
つておるのが実情でございまして、私は前に申したようなことをお役所でや
つてもらいたいとは申しませんけれども、とにかく民間の人たちは自分たちの経費で以て徴税費としての分を負担しておるのが非常に多いということを
考えて頂きたいというように思います。いろいろ調べてみたのでありますが
日本はチープ・ガバーメントでないということは、少くとも税務
関係の徴税費の非常に高い国家であるということについても、言えるんじやないかというように
考えるのであります。
私証券会社におる
関係で必ずしもそういうことを申上げるわけではありませんが、今度のこの税制の改正案をずつと見ますと、まあ大体において一千億円の
減税をするということが根本の御趣旨のように承わ
つておるのであります。ただこの第三次の再評価に伴
つての再評価税、これは特別とは思いますが、すべてが
減税時代でございますから新らしく作られる税金はないだろうと、思
つておりましたところが、有価証券取引税というものが新設せられておるのであります。
減税の際の新税でございますから、よくよく御研究にな
つて御自慢の税金だと私は思うのであります。ところがいろいろ
考えてますと、どうも有価証券取引税というものは、
日本の
租税体系全体の中で一体どういう位置を占めるのだというような
考え方から見ますと、とこにもどうもはつきりとはまりつこのない税金のように思うのであります。曾ては有価証券移転税というものがございますた。これは納税義務者は買方でございます。ところが今度の有価証券取引税は、納税義務者は売方にな
つておる。こういうところから
考えますと、これは必ずしもそうではないという御否定の言葉を伺うのでありますが、要するに有価証券の譲渡
所得が実際上取れなか
つた、取ろうと思
つてもどうしても取れなか
つた。そこで、これはまあ今度そういう取れない税金だから、有価証券の譲渡
所得は課税を廃止するということに
なつたのであります。どうも何か割切れない、虫が納まらないから身代りに有価証券取引税という名において売方から税金をうんと取
つてやろうと、こういうことじやないかと私は忖度するのでございます。ところがこの売方が納税義務者ということは結局はこの有価証券の処分に際して、売方が必ず譲渡利得があるということを前提としてのことだというように想像されるのであります。併しながら売方は必ず譲渡
所得を得ておるというようにお
考えになるのは、これはインフレ時代の観念の残滓でございまして、
経済が安定して参りますと、むしろ売る人は何か都合が悪いことが起る、不如意にな
つて売るのでございます。でございますから、安定
経済の時代になりますと、売方はむしろあわれむべき立場でございまして、買方こそ担税力があるということを私は言えるんじやないかというように思うのであります。まあとにかくインフレ時代で税金を集めなくちや
財政が持たぬ、何でもいいから
一つ税源を集めよう、こういう時代でございますればともかくでございますが、現在のようは
経済がだんだん安定し、
経済も
財政もいろんなものを合理化しようと、こういう時代に新税を創設なさるといたしますれば、少くとも後世の歴史家がなぜこういう税金を作
つたんだということで首をかしげられるようなものはお作りにならんほうがいいというように私は
考えているのであります。特にこの税金は平年度の税収
見込が二十二億六千万円とな
つておりますが、これは今年の一月から五月の、あの戦後の未曾有のブームの当時の取引高を基準にして
計算されているのでありまして、実際の平年度の税収は私は十数億円がせいぜいじやないかというふうに
考えております。ところが私たち証券業者がそのためにいろいろ税務署のかたがたに協力して、帳簿とかいろいろなものを整理しなければいけないのでありますが、これは大ざつぱに見ますと、全国に証券業者の店舗が千ございます。一カ所に一人ずつそういう係の人がいるといたしますと、年に一億二千万円の徴税費を私たちが負担しなければいけないということになります。そうすると
政府のほうの徴税費が幾らに見積られているかわかりませんが、数十似の金を取るのに、民間で一億二千万円の負担をさせて、そうして一体
政府で幾ら徴税費がかかるか、これは私は徴税費のかかる税金のうちの
一つの典型的なものになるのではないかと
考えているのであります。必ずしも私は有価証券取引税の
考え方というものに反対するわけではございませんが、現在の
租税体系の位置から
考えまして、又その徴税費の面から
考えまして、もう少しよく御検討を頂きたいというふうに
考えている次第でございます。
どうも長時間まとまらないことを、又大ぼらのようなことを、夢のようなことを申上げましたが、
一つ御勘弁願いたいと思います。これにて私の
公述を終ります。(拍手)