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1953-05-29 第16回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十九日(金曜日)    午前十時三十六分開会   —————————————   委員の異動 五月二十七日委員小滝彬辞任につ き、その補欠として、大谷贇雄君を議 長において指名した。 本日委員高橋進太郎君及び田中啓一辞任につき、その補欠として、秋山俊 一郎君及び高野一夫君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之助君            井野 碩哉君            森 八三一君            中田 吉雄君            永井純一郎君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            秋山俊一郎君            伊能 芳雄君            石坂 豊一君            泉山 三六君            大谷 贇雄君            高橋  衛君            吉田 萬次君            岸  良一君            小林 武治君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            高木 正夫君            佐多 忠隆君            天田 勝正君            加藤シヅエ君            棚橋 小虎君            松澤 兼人君            武藤 常介君            杉原 荒太君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    経済審議庁次長 平井富三郎君    外務政務次官  小滝  彬君    外務大臣官房長 大江  晃君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    大蔵省主計局次    長       正示啓次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計暫定予算補  正(第1号)(内閣送付) ○昭和二十八年度特別会計暫定予算補  正(特第1号)(内閣送付) ○昭和二十八年度政府関係機関暫定予  算補正(機第1号)(内閣送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより会議を開きます。  委員長理事打合会の決定に基いて、本日及び明日委員会を開くことにいたします。打合せの順序によりまして順次質疑を許します。
  3. 森八三一

    ○森八三一君 私は只今審議に入つておりまする六月分の暫定予算関連いたしまして総理二つ三つの問題をお伺いをし、所信を承わりたいと思います。  その第一は、ここに提案をされておりまする暫定予算は六月一ヵ月分のものが提案をされておるのであります。ところがこの予算関連をいたしまして、別途に提案をされておりまする法律案を見ますると、七月一ぱいまでの暫定的な措置を講じようというように相成つておるのであります。例えて申しますると、所得税臨時措置に関する法律案とか、関税定率法に関する法律案とか、三月三十一日現在のものを五月一ぱいまでそのまま繰延べて参りました。それを更に七月一ぱいまでその姿のものを継続して行こうというような内容になつておるのであります。予算は六月一ぱいであつて、その予算関連をする法律措置は七月一ぱいまでということで、ここに一カ月の時間的な食違いが起きておるのであります。このことは一体何をお考えになつておるかということを先ず以てお伺いをいたしたいと考えます。と申上げますのは、暫定予算提案に対しまして御説明をされておりまする言葉に見ますれば、緊急欠くことのできない経費を計上したことと、季節的にやむを得ない部分をそれに勘案をして、この予算は極めて事務的に計上されておるものであつて政府の新らしい政策等については、一切これを包含をしておらないのだという御説明に相成つております。そういうような意図で進んで行かれる暫定予算が、そういうような構想の下に進んで行くということであるといたしますれば、目今の諸般の情勢から考えまして、本予算が六月一ぱい成立しようとは考えられませんので、この際法律案措置と同じように、七月一ぱいまでの措置を講じましても、そうむずかしい問題ではなくて、極めて事務的に措置のできることではないかと、こういうふうに考えられますのに、あえて法律案考え方と、提案をされておる予算実態とが一カ月の食い違いを生じておりまするこのことをお聞きをいたしたい。それは或いは新聞紙の報じておるところによりますると、昨日アリソン大使の来訪を受けられまして、いろいろと御懇談がなされたやに承わるのでありまするが、そういうような機会にMSA関係のことについてもアメリカ側構想が話されて来る。そういうことから七月分の予算には何らかそういうことでもお考えになつて予算を計上するという御意図がありまするのかどうかというようなことも、この一カ月のズレがあるということから想像されるのでありますが、そんな御構想があるかどうか、或いは又新年度の予算と申しまするか、二十八年度の本予算成立いたしますのは更に二、三カ月後のことになるわけでありますので、その間国政現状通りに足ぶみをいたしておりますることは国家国民にとりましても非常に不幸なことでありますので、暫定予算とは申しましても、七月分には何らか新らしい構想のものを織込んで行きたい。それには現在の政治情勢から考えまして、改進党などの協力ということもお考えになつておる模様でありまするが、そういうようなことにも関連いたしまして、七月分の暫定予算には何らか新らしいものを加えてお出しになるという御意図があるのかどうか、ありとすれば、その内容は一体どんなことをお考えになつておるのかという点を先ず以てお伺いをいたしたいと思います。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、第一、昨日アリソン大使の訪問を受けましたが、これは着任挨拶だけであります。又着任早々事務的な話をするというようなことは、これは慣例としてもないことでありますから、単に着任挨拶を受けただけであります。従つて予算等については何ら関係ありません。それから予算編成方針先ほどお話なつたような緊急やむを得ざるもの、事務的のもの、新らしい政策を織込まない方針編成をいたしたはずであります。又多少ズレがありとするならば、私の説明を受けたところでは、この前の国会に提出して、そしてそれが議決にならずに、又早く成立せしむることが必要であるために出したという説明でありますが、詳細のことは政府委員からお答えをします。
  5. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 遅く参りましたのでございますが、お尋ねは、法律案のほうが二カ月ということで出ております。暫定予算は一応六月分というような形であつて調子が合わないじやないかというような御趣旨のように伺つたのであります。私ども考えから申しますと、法律予算というものは一応切離して考え得るものと思つておるわけであります。例えば法律そのもの恒久法として今ある。併し予算関係では暫定的に一カ月分或いは二カ月分ということで区切るということが現に行われておるわけであります。従いまして、そこに必然的の関連というものはなくてもいいものという前提に立ちまして、今回御提案申上げました法律を二カ月延ばしたということにつきましては、これはむしろ今国会で劈頭におきめになりました会期のほうを念頭におきまして、一応会期中に、まあ会期二カ月ということに考えまして、七月末でございますか、七月末までということに法律のほうは合わせたというだけでございます。従いまして予算のほうとの必然的の関連はありませんけれども、それはそれで又一つの筋であろうというふうに考えておつた次第でございます。
  6. 森八三一

    ○森八三一君 只今法制局長官のお舌のこともよく理解はできるのでありまするが、総理お答えがございましたように、暫定予算性格と申しまするか、本旨から考えて、緊急集会を求められて四月と五月と二カ月分の暫定予算審議いたしたのでありまするが、そのときにおける提案理由の御説明も、又ここに六月分の暫定予算をお出しなつ政府意図されておる基本的な構想というものも、これは一貫をしておりまして同じであります。これはよく暫定予算性格から考えまして理解されるところであります。そういうことであるとするなれば、現在の情勢から考えまして、六月一ぱい昭和二十八年度の予算成立するというようなことはこれは常識的には考えられません。どうしても七月も暫定予算で進まざるを得ないということになるだろうと存じます。新聞の伝えておる官房長官お話等によりましても、昭和二十八年度の予算は六月の中旬でなければ提案運びにならんだろうというように申されておりまするし、実態はまさにそうであろうと私ども想像いたしております。といたしますると、残されておる半月の間に予算案成立運びに至るということは、これは常識的に想像ができません。どうしても七月もやはり暫定予算で進んで行かざるを得ない。非常に残念なことではありますが、そういう経過を迫るであろうと思います。その七月に、残念なことではありますが、暫定予算というようなことになるといたしますれば、今までの構想と同じような構想で七月分の暫定予算を進められるとするならば、ここに六月一カ月を切離さなくても極めて事務的なことでありまするので、七月分の予算も当然一緒に審議を求められてもよろしかつたのではないか。それを法律案予算案とは別個であつても、それは差支えないということで予算案法律案とを切離されたということは、七月分には国の経済その他の情勢から考えまして、新らしい何らかの意図を加えたものを暫定予算出したいというような御意図があつて、あえて六月分の予算案とこう一カ月のズレを来たしているということではないか、こう思うのでございますが、そういうような御構想がございますのか、ございませんのか、ありとすれば、そういう内容についてお考えを承わりたいと重ねてお伺いをいたします。
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほども申した通り、今お話のような考えは毛頭なくして、ただ事務的に緊急必要なるものだけを計上いたしたのであります。
  8. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、七月分につきましても、本予算成立見込みは現在のところございませんので、暫定予算で進まざるを得ないと思いますが、七月分につきましても、予算暫定予算という建前で、今までと同じ構想で進まれるというように理解してよいのかどうか、この点をお伺いをいたします。
  9. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 七月分につきましても、暫定予算で御措置を願わなければならんだろうと考えております。
  10. 森八三一

    ○森八三一君 その場合における考え方についてお伺いをいたしたのであります。七月分も暫定予算で進まざるを得ないだろうということは、これは私も申上げましたように、六月の中旬に予算が出まして直ぐ成立しようとは思われませんので、これはどうしてもやむを得ない。その場合における予算分構想というものは、今までの四、五月の暫定予算並びにここに審議中の六月分の暫定予算と同じような構想の下に進んで行かれるというお見込みであるのか。その構想というものを変えるという御意図であるのかということを明確にして頂きたいと、こう存ずるのであります。
  11. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答えいたします。六月分一月を出しましたことは、これは先ほど総理大臣からもお答え通りであります。純粋な事務的な措置であります。七月分をどういうふうな構想でいたしますかということにつきましては、内閣のほうにおかれまして只今いろいろと御研究中でございます。事務的な点から申しまして、予算案はやはり編成の技術的な点から申しましても、いろいろと印刷等に時間がかかり、又期間が長くなりますれば、事務当局間の打合せにも時間がかかることは御承知通りであります。極めて短時日の間に成立を期待いたしました今回の予算が一カ月になつたことは、事務的な立場から申しましても必要でございます。又前例に徴しましても、二十三年、二十四年と暫定予算前例もあるのでございます。これらの場合におきましても、極めて短かい期間を区切りまして暫定予算出しまして、そうしてあとで出しましたのが補正という形をとつております。今回も四、五月分の暫定予算に対しまして補正という形をとつております。補正という性質上、極めて短時日、而もその実情上やむを得ない最小限度経費ということになつております。法律上多少その点は事務的な立場から考え考え方が違つておるわけでございます。
  12. 森八三一

    ○森八三一君 私のお伺いいたしておるのは、今正示次長からお答えのあつたような内容ではございません。当然七月の予算暫定予算という形で進まざるを得ないということは、これは政府当局もお認めになつておることであり、我々もそう思考をいたしております。七月に国会承認を求められるであろう暫定予算というものは、今までの四、五、六のこの三カ月、国会承認を求められた暫定予算と同じような構想の下に進められる御意図であるのか、七月分については国情なり、国の経済の現況なり、国民生活実態などと合せて新政府もできまして数カ月を経過したことでもございますので、新らしいものを盛り込んでお考えになるのかどうかということをお伺いしておるのでございまして、事務的なことではございませんので、そのことをよく御理解の上でお答えを頂きたい。
  13. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 只今少し言葉が足りなかつたと存じますが、御承知のように、本予算につきましては新内閣の下で鋭意只今準備を進めておられるのであります。従いまして七月の暫定予算は、見通しといたしましては本予算編成基本方針則つて一応の年間予算というものが作られるのでありまして、そのうちの一部分ということになつて参るのであります。今までのところは御承知のように基本ができておらない、前国会におきまして不成立になりました予算がございますが、これは一応不成立でございます。新らしい年間予算というものを立てまして、そのうちの一部ということに相成ります。従いまして今までのような純粋の、いわば短期間予算ではなくて、一年度予算のうちの一部ということに相成つて参りますことは事務的な立場から申しましても当然かと存じております。従いまして、そこにおのずから暫定予算と申しましてもニュアンスが違つて参るというふうに考えております。
  14. 森八三一

    ○森八三一君 只今お答えで七月分に求められるであろう暫定予算考え方というものが大体おぼろげながら明確になつて参りました。そういたしますると、七月分は今までの経過いたしました三カ月の暫定予算とは多少内容的に変つたものになつて来る、こういうことに理解される。その場合に総理にお伺いいたしたいのは、時間的に切迫をいたしておりまするアメリカ援助関係が一体どういうことになつて来るであろうかという問題であります。これが予算には非常に大きな影響を持つて来ることであろうと思います。衆議院におきましては、まだアメリカ側のほうから正式なそのことについての通告が参つておらんので、今委員会において政府構想を申述べる段階には至つておらんという御答弁がありましたように新聞紙を通じて承知をいたしておるのでありますが、先刻総理お話では、昨日アリソン大使とお会いになりましたのも儀礼的な着任挨拶であつて、一切そういう問題には触れておらんということでありますので、或いは衆議院における御答弁を同じように繰返されるということにならざるを得ないようにも思うのでございますが、併しもうすでにこの問題は時間的に切迫いたしておる問題でありまして、只今示次長お話のように、来年度と申しまするか、昭和二十八年度の予算というものを考えて、そのうちから七月分というものを抜き出し暫定予算の形で審議を求めるということになりますれば、この援助関係を今考えずして、昭和二十八年度の全体の予算というものを勘案するというわけには参りかねる、すでにその時間は切迫をして来ておるわけでありますので、今ここで何らの構想がないということでは、昭和二十八年度の全体予算編成はできない、こういうようになるように私は考えまするのでありますが、それをどう取扱われますのか、首相の所見をお伺いいたしたいと思います。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) よくこの問題は、昨日の衆議院予算委員会でも受けた質問でありますが、政府としては、公式には何らの交渉を受けておりません。ただ承知しておることは新聞に伝わつておる内容でありますが、併しこれを以て直ちに政府が法案の基礎にすることはできないのであります。又米国政府としては、これは想像でありますが、外国政府に対してMSA内容を以て直ちにその当該政府に対して交渉をするというはずもないのであります。多少政府として、その立場において、或いはそのときの状況において交渉をするでありましようが、新聞に伝える、若しくは新聞に発表せられたMSA内容そのものを直ちに日本国民に押付けるということはないと思います。だだ一つ一言申し添えておきますが、今日まで米国政府日本に対する態度から申すと、日本経済自立に寄与すること、有効に寄与せしめたいという考えがあるのでありますから、日本政府或いは日本国が困るような、若しくは経済自立を働けることはあつて経済自立を阻害するような要求、若しくは話を持ち出すことは断じてないということを申しておきます。
  16. 森八三一

    ○森八三一君 この問題は私どもの狭い見解からいたしますれば、昭和二十八年度の全体予算編成して参りますのには極めて重要なポイントの問題であろうとも思いまするのであります。ただ総理からお話のように、そのことによつて日本国民経済に圧迫がもたらされるとか、或いは国の予算に重大な困難が生ずるようなことはないというように承知をしておるというお話でありまして、是非ともそういう結果になることを期待をいたしたいと思いますが、この問題は正式な通告に接しておらんということでありまして、これ以上論議をいたしましてもお互いに想像の議論になりますので差控えたいと思います。  最後にお伺いいたしたいのは、今度の暫定予算は先刻来しばしば申上げまするように、国政運行上緊急やむを得ない最小限度のものにとどめた、それから季節的にどうしても繰上げてやつて行かなければならんというものだけにとどめた、これはよく理解ができます。そこで先月の下旬に全国的に襲来をいたしました凍霜害関係でありますが、これは極めてその善後措置は緊急を要するものであることは万人の認めておるところでありまして、恐らく政府におきましても、暫定予算であつて新らしい政策を織込むことは厳に慎んでおるとおつしやつていながらも、この緊急やむを得ない凍霜害対策善後措置というものは、すでに十分お考えを願つておることと思います。そこでここに六月分の暫定予算提案をされるということになりましたが、この暫定予算にはこの凍霜害の跡始末、善後措置についてどうお考えなつたのかということをお伺いをいたしたい。どうもこの暫定予算を見ますると、ただ形式的に災害対策費というものが四、五月分で十億円計上せられており、更に今回の六月分に五億円事務的にただ計上せられたというだけで、地域によりましては、数十年来曾つて見ないというような大災害が起きたのであります。その災害に対処する構想というものが現われておらん、これでは非常に残念な情勢になるのではないかという心配を持ちますので、この点をお伺いいたしたいと思います。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。この救済問題はお話通り緊急を要するものであつて、現在大蔵省が主となつて関係省との打合せをいたしております。同時に各党意見もあるので、各党意見も徴して、そうして具体案只今作成いたしております。近く提出することができると思います。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私が総理お尋ねをしたい第一点は、最近のソ連、中共のいわゆる平和攻勢をめぐる世界情勢総理はどういうふうに判断しておられるか、どういうふうに見通しておられるかという点でございます。私から申上げるまでもなく、ソ連においてはスターリンが逝去をして、その後にマレンコフの新政権ができて、マレンコフ首相スターリンの送葬の際に述べた追悼の演説或いは引続いて最高会議で述べました首相新任演説等々において、いわゆる平和攻勢なるものが展開をされた。両陣営の対立を話合いによつて緩和して行く方向に持つて行こうじやないかという提案がなされ、引続いて周恩来或いは金日成によつて朝鮮休戦会談の提議がなされ、これらの提案に対して、アイゼンハワーは、四月の中旬に新聞編集人協会午餐会において初めて、若しソ連が平和的に問題を解決しようと思うならば、実践によつてそれを示すべきだという形においてアメリカ大統領も同じように平和への方向を指し示したと思うのであります。引続いて直ちにチャーチルはこれに呼応して、積極的にアイゼンハワーを支持することを言明をし、越えて五月の中旬には、有名なチャーチルの最近の世界情勢、イギリスの外交政策に関する詳細な演説がなされ、これに対して労働党の党首であるところのアトリーは、すぐ翌日これに呼応しながら、アメリカ外交政策をかなり批判する態度を含ませつチャーチルを支援して世界平和を確立しなければならん点を強調をした。更に引続いて五月の十五日にはネールも又同じように最近のインドの外交政策を詳細に展開をした。それらによつて大体世界情勢がどういうふうに展開をして行くかというような問題については、主要な外国総理或いは大統領によつて詳しく述べられたと思うのでありますが、これらの問題に対して総理はどういうふうに対処されようとしているか、どういうふうに今後の世界情勢を見通そうとしておられるか、その点を先ずお聞きしたいのであります。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。今日のところはいろいろ只今お話のような事実が生じましたが、各国共考えておるという事態を出でないと思います。というのは、従来の事蹟から申して、ソ連政府声明をしたこと、若しくはスターリンその他の首脳部演説、或いはステートメントと事実が伴わないこともあり、変更されたこともあるので、どこまでそのモスコー政府声明が事実であるか、そこでお話のように言葉よりも言動と言いますか、事実において示してもらいたい。多少疑いを持つて見ているのが事実であろうと思います。併し世界情勢と言いますか、或いは主要国希望としては、どうかして早く平和を回復したい、朝鮮事変も早く治めたい、こういう考えからソ連首脳部言つた声明或いは演説を成るべく自分らの希望に合うように解釈したい、解釈している向きもありますが、同時に一方には今申すように、どこまでこれが実際に現われるか、責任のある当局者としてはうつかり発言をし、或いは声明をなしてそれが事実と相違するというようなことがあれば容易ならんことになるから、相当用心して言つておりますが、言つているところを見るというと、最も平和を希望しているところが、ソ連政府声明を成るべく自分らの希望に近いように解釈しようとしている形跡がありありと見えますが、アメリカ政府としては現に朝鮮で戦争をいたし、若しくは仏印等における援助というようなこともあるわけでありますから、よほど用心深くこのモスコー政府の言い方について注意深く検討するという態度に出ておりますが、要するに平和を持ち来たしたい、朝鮮の戦争も成るべく休戦に持つて行きたい、或いはその他の方面においても平和を破壊しないように持つて行きたい、そのためには成るべくモスコー政府の神経を刺激しないように穏かな態度で行きたいというその点については一致していると思います。どうかして平和を持も来たしたいということについては一致していると共に、同時に米国政府、イギリス政府立場において多少考え方、言い方が違つておりますが、平和を希望している、平和を持ち来たすようにして行きたい、モスコー政府を刺激しないように、但し自分の国の国民に対する立場から言つて、又戦争に直接関係をしている米国政府としては、用心して声明等の言い現わし方に相当の注意を持つてしております。併し要は平和はどうかして回復したい。国際の情勢は無事に平和の道に進めたいという考えを持つてモスコー政府に対しているということは、これは明瞭であると思います。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理只今の御答弁にもありましたように、世界各国が共産主義陣営も自由主義陣営も、いずれの国もいずれの国民も如何なる犠牲を払つて世界平和を確保するということについては意見が一致をいたしていると思うのであります。そうして而もその平和をもたらす方法が力の制圧によるのではなくて、話合によつて両陣営の対立を緩和をしたいということを強調をいたしていると思うのでございますが、この点については従来の、或いは現在も非常に警戒を緩めないところのアメリカ外交政策は、私たちから判断すれば、むしろ力の制圧によつて方の陣営を潰して行こうというようなやり方であり、而も我が日本外交政策はその尻馬に乗つたような形になつているのじやないか、先国会におきます外務大臣の演説その他においては、それが明瞭に現われていたと思うのでありますが、イデオロギーの違いであるとか、政治的な体制のシステムの異ることを強調をして相手方を敵視しながら両陣営の決戦状態を作り出すというやり方であり、それのお先棒をかつぐというのが我が日本外交政策ではなかつたのか。仮にイデオロギーが違つても、或いは政治的な体制が異なつていても、そういうことにかかわらず、相手国との間に友好関係を作り上げて一つ一つの解決可能な問題の処理を進めて行く、そういうことによつて両陣営の対立を緩和して世界の平和を確立をするということがこの際絶対に必要なんじやないか。アメリカがやつているように、善玉か悪玉かというふうに簡単に割切つてしまつて、イデオロギー的に外交を処理して行く、そして相手を撃滅せずんばやまずという態度をとるのは外交政策として最も拙劣なものであり、日本アメリカに追随をしでそういう政策を今までとつて来ていたのじやないか。今こそ私たちも日本社会党が堅持し叫び続けて参りましたいわゆる中立の態度をばはつきり示して、それによつて世界の平和を確保し、以て日本を安泰におくということを勇敢に積極果敢にやらなければならない時期じやないのか。これはイギリスにおいてすら、チャーチル或いはアトリーの演説をみれば、イギリスにおいてすらそういう態度がはつきりととられつあると思うのでありますが、もつとそのことの必要なのが日本じやないか。而も現在の世界情勢から見れば、そのことが非常に可能になつた時期であると判断していいんじやないか。この点に対して総理はどういうふうな所見を持つておられるか、お尋ねをいたしたい。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 我々のとつておる外交はアメリカのお先棒をかつぐのであると、こういう論断でありますが、我々の本心としては必ずしもそう考えておりません。要は日本国の利害を中心として考え、又世界の平和が日本の力によつて増進できることであるならば、飽くまでもこれを支援するという態度以上に何でもかんでもアメリカのお先棒をかつぐなんということは我々の考えておるところではないのであります。翻つて中立的態度をとつたらよかろう、これは始終議論が出るのでありますが、この中立で以て国が守れるか守れないか。私は守れないと考えますから、あなたの議論には直もには賛成ができないのであります。中立をしてこれによつて有効に世界の平和が進み、日本の安全といいますか、日本の治安も維持せられるか。現に共産党の脅威を相当始終受けておる日本としては、中立だけで以て国を守るということば私はできないことであると思います。これが直ちにモスコー政府政策であるかどうか知りませんが、日本の治安は常に共産党によつて脅かされておるのであります。故に、何せずにただなすがま京にというわけには行かんし、いずれにしても日本において共産主義を認めてそのなすがままにしておくがいい、成るべく共産党の行動に対しては手を触れないがいいというようなことはできないのであります。国内の治安を維持する上からいつてみて、できない場合が随分過去においてもあつたのであります。故に、中立という意味はいろいろ解釈もあるでありましようけれども、戦争はしない。戦争はしないことは当然、併しながら中立を如何なる形において守るか。これはしばしば繰返すことでありますが、ベルギーのごときは、中立を守つて遂に国が第一次戦争も第二次戦争も侵害をせられた。(「南鮮はどうである」と呼ぶ者あり)又スイスのごときは、中立主義をとつておりますが、併しながらその国は一応国民皆兵の主義をとつておるのであります。中立ということは非常にいいようでありますが、事実できるかできないか。これはやりようにもよるでありましよう。あなたが内閣をお取りになつたときは中立の外交で以て十分国を保護して頂きたい。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 中立外交論議の問題についてば、これまで繰返されたことをただ繰返しておられるに過夢ないと思うのですが、私のお聞きしたのは、今までは、今年の初めくらいまでは或いは今総理が言われたような考え方でよかつたのかも知れないけれども、その後の世界情勢の非常に大きな変化を勘案すると、むしろ総理が或いは日本政府がこれまでとつて来たような、ただ自由主義陣営に、特にアメリカにすがりついて日本の安全を保障するというような考え方であつてはならないのであります。この点を世界情勢の大きな変化と照応してもつと変えて行かなければならないのじやないか、それが今は必要であるのみならず、可能になつたのじやないか、その点をどう判断されるかということを聞いておるわけでありまして、問題はもつと最近の時局に照応した具体的な解明を必要とすると思うのであります。残念ながらそういう点に触れられておりませんので非常に不満でありますが、もう少し先を急いでそれらの問題に関連しながらお答えを願いたいと思うのであります。と申しますのは、問題を具体的に進めて朝鮮休戦に関する問題でございます。現在の行き方からすれば、いろいろなジグザグなコースはとるでありましようけれども、軍事的に休戦が成立をするということは、殆んど疑う余地がないと判断をしていいのじやないかと思う。この点が第一点。更に若しそういうふうに休戦が成立をして軍事的な解決が一応なされたとすれば、引続いてなされなければならないことは、政治的な解決へ進むことであると思うのでありますが、この政治的な解決へ今後進むと見られるかどうか。進むとすればどういう方式でそういう解決への途を進んで行くだろうか、それを総理はどういうふうにお考えになるか。アメリカにおいてもそうでありますが、日本の国内においても、一部資本家たちは、朝鮮の特需が減少をする、或いはドル収入が縮小をする、そういうことを非常に憂えて、朝鮮動乱が長引いていることをむしろ希求しつつある分子があると思うのでありますが、私たちはそうであつてはならないので、どんな犠牲を払つてでも政治的な解決へ持つてつてもらつて日本の平和をば確保する方向に積極的に踏み出さなければならない。そこでそういう政治的な解決をしようと思えば、中共軍もアメリカ軍も朝鮮から撤退をして、朝鮮に非武装地帯を設定をして、そうしてあそこを平和的な状態に保持して行くということが望ましいと思うのであります。殊に憲法で非武装、平和的な民主国家を作ることを国是としている日本は、そのことを要求をし、それが実現するためにあらゆる手段、方策を積極的に講ずることがこの際非常に必要なんじやないか。而も独立国家となつ日本が、而も一衣帯水の所にあるところの我が日本こそはそういうことを積極的に提唱をし、提案をし、努力をしなければならないのじやないか、そういうふうに考えるのであります。然るに現在の日本の状態は、後にお尋ねをするMSA援助の問題等に関連をして、むしろ私が言つたとは反対な方向に進みつつあるのじやないかと私たちは懸念をいたしておるのでございますが、これらの問題を総理はどういうふうにお考えになり、どういう方向に持つて行こうとしておられるか、御説明を願います。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いろいろ朝鮮問題について抱負をお述べになりましたが、政府としては、或いは私としては、先ほど申した通り朝鮮が休戦或いは平和状態に入る、隣国が平和な、戦争のやんだ状態におるということは、結局日本の状態を平和に導くのであつて、一日も早く休戦が成立し、平和が回復せられるということは、これは隣国のためのみならず、日本のためにも希望すべきものであつて、戦争が長引くほうがいいというようなことは、私は恐らくいわゆる資本家といえども考えておらないものであろうと思います。特需はなくなつても、朝鮮の回復とか、或いは又朝鮮の復興とかいうためには、米国は努力をいたすでありましようから、違つた形において特需が自然生ずるであろうと思います。又その特需がないからといつて朝鮮の戦争が飽くまでも続くがいい、隣国において不幸が存続するがいいということは、隣国たる日本として考えるべきことじやないのであります。故に、戦争が長引くというようなことは、政府は勿論のこと、国民の多くも考えないところで、むしろ隣国において平和が回復せられ、秩序が回復せられ、そうしてその国が復興の途上にあるということが日本との経済関係等においても日本に有利なことになるでありましようから、今のようなお考えは、少し何と言いますか、度を越した臆測に過ぎないところではないかと私は思います。そこで将来のことになりますが、日本から申せば、隣国が栄える、繁昌する、そうして購買力ができる、これが日本の貿易の市場になるということは最も好ましいものでありますから、日本としては又朝鮮の独立或いは回復、復興には飽くまでも援助いたしたいと考えております。決して不幸を永続するようなことを希望をいたすということは毛頭ございません。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 朝鮮の問題の政治的な解決と関連をする問題だと思いますが、次にお尋ねしたいのは中国の承認の問題、或いは中国の国連加盟に同意するというような問題について、日本政府としてはどういうふうにお考えになつているか。私たちは先ほどからいろいろ述べて参りました世界情勢なり、或いは朝鮮問題の解決等々に関連をして、どうしてもこの問題を、中国を承認する、或いは中国の国連加盟を実現するということを積極的に推進するにあらざれば、我が国自身の国連加盟の問題も、従つて又我が国の安全を保障するという問題も実現し得ないと思うのですが、この点を総理はどういうふうにお考えになつているか。殊に最近は私から申上げるまでもなく、イギリスにおいても、或いはインドにおいてもこの問題が再び取上げられて来て、こういう方向で解決をする以外にないというような主張が非常に積極的に述べられて来て、まあ世界の大勢になりつつあるのじやないか。成るほどアメリカではチャイナ・ロビストとか、或いはペンタゴンの一部或いは大部分といつてもよいかも知れませんが、こういう諸君がこのことに対しては強硬に反対をいたすでありましようし、特に台湾問題に関連をして参るので、この問題は非常にむずかしい問題ではあると思いますけれども、だからといつて、我々はアメリカ考え方方針だけに追随をすることなく、ここで本当に独立国らしく毅然としてアメリカ追随の外交を捨てて、日本独自の途を進む、そのために勇敢に中国の承認、或いは中国の国連加盟の問題を提唱をする、それとの関連において日本の問題を解決をするということが、この際是非必要なのじやないか。アメリカとの経済関係の非常に重要なカナダにおいてすら、伝え聞くところによると、すでにそういう主張をしていると思うのでありますが、もつと中国の問題を第一に考えなければならない我が国としては、もう少し世界の、アメリカ以外の態勢を冷静に、十分に監視しながら、そういう主張、そういう態度をば毅然としてとるべき時期だと私たちは思うのでありますが、総理はこの点に対してどういうふうにお考えになりますか。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連なるものは、世界の平和を目的としてできておる連合でありますから、いずれの国、平和を愛する限りはどこの国であつても入れるのが建前であり、又歓迎するであろうと思います。現在日本としては、如何にも私が毅然として中国の国連加入を反対しているようなお話でありますが、これは毅然たると否とにかかわらず、反対もせなければ、反対の意思表示をいたしたこともないのであります。若し中国もその他の国も国連に入つて、そうして世界を挙げて平和のために協力するということになり、平和がそのために増進いたしたということであれば、それは国連の目的に合することでありますから、我々としても双手を挙げて賛成いたします。併し日本が今日まだ国連には入つておらない。日本が幾ら毅然としてやりたいと思つてもやる方法がないのであります。先ず日本が国連に入ることが第一であり、国連に入るならば、他の平和国もこれに加入するように努力いたしますが、今日はまだ国連外にあるのでありますからして、毅然たる態度はともかくとして、手段がないと私は思う。併し中国が国連に加入するということは、決して反対はいたしておりません。一国でも余計国連に加入国が殖えて、そうして世界の平和が増進するのが結構であると私は思います。
  26. 永井純一郎

    永井純一郎君 今までの質問者とダブるような意見がありまするので、成るべくそういう点を避けまして一、二お伺いをしたいと思います。総理佐多君の質問にお答えになりまして、米国の尻馬外交ではないのだというようなことを答えられます半面、特需依存主義のようなことをも又半面言われたりしておられまして、私ども聞いておつておかしいと思う点が二、三ある。で、私は結局吉田内閣予算というものは、来たるべき七月の、もう暫定予算であるかも知れませんが、八月以降の予算暫定予算に過ぎないだろうと考えられます。なお又吉田内閣が存続する限り、私はそれは日本の本当の行くべき外交、経済等の確固たる方針に基くものではなくして、結局高所から見るならば、暫定予算を組んで行くに過ぎないのであるというふうに私は一応考えるのでありまするが、更にこれを四月乃至六月のいわゆる法律的なと言いまするか、技術的な意味における暫定予算の中に防衛費のごときものが含まれておるということに対しての法律的な、或いは技術的な意味ではなしに、総理の常識的なお考えを先ず伺つてみたい、こう思うのです。六月の暫定予算には防衛費はございませんが、これは財政法に「一定期間に係る断定予算」と書いてありまするから、今度の補正を含めて結局防衛費というものが暫定予算の中にあると私はこう考えます。従つて、四—六の暫定予算の中にありまする一番重大な問題は、私は防衛費であると考えるのです。御承知のように、行政協定があらかじめ国会承認を経ておらないのであります。政府は当時の安保、平和両条約を国会に諮りましたときに、どうしてもこの行政協定の内容を明らかにしなかつたのは、総理みずからよく御承知のところです。頬被りをして国民にその内容を知らさずに、行政協定というものを国会に諮らずにやつてしまつた。そうして今日その行政協定に基くところの予算なり、或いは又これに基きまして国民の多数が、国民の利益や権利や生活、或いはその他の基本的な人権、生命や身体や労働権、こういつたものにつきまして重大な侵害を今日受けつつあるのが実情でございます。これは昨今も新聞紙上を賑わしておるのでありまして、総理は十分に御承知のところであると考えます。軍事基地に対する反対の運動というものは今日本の全国に澎湃として巻き起されておるのであります。こういつたような憲法に十分永久の権利として保障されておるところの基本的人権が行政協定によつてどもはやはり侵されておる。が併しこれは一面から言うならば、これに基く国内立法があるものもあります。それによつてそれらの権利に対する制限の緩和が行われておる分もございまするが、十分に行政協定に即応する国内立法というものは今日整備されておらないのであります。そこで私どもは四、五の暫定予算のときにも、暫定予算性格については、専門的なといいまするか、そういう性格についても十分に検討が終らないうちに採決に移されてしまいましたが、十分に行政協定に即応する円内立法が整備されておらない間は、私は一般予算にも本当は防衛費のごときものは組めない。まして事務的な経費を組むことを性格とするところのこの暫定予算のごときものにはなお更私は組めないと、こう思うのです。併しながら、ここで総理にその法律的な議論の意見をお伺いしようとは思いませんが、私がそこで総理にお伺いしたいと思うのは、事実日米の間の力の問題として、或いは政府がとつておる外交上の問題、或いは政治上の問題として、米国との協定に基くところの経費のごときものは、日本としては国内法の不備があつたり、或いは違憲の疑いがあるような懸念が少々くらいはあつても、優先的に既定的経費として組んで行こうというふうに考えておられるのではないかというふうに私どもは増える。この点をどういうふうに総理考えておられるのか、先ずお伺いをしたいと、こう思うのでございます。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、先ず第一に、根本の考え方において我々と意見が違うのは、行政協定は頬被りをして国民にも知らさずにということでありますが、行政協定の各条は、当時において公表もいたしておれば、ただこれは条約の当然の結果であるという政府の見解であります。それがいけないと言われるならば、これは又法律論になりますが、今日予算に組んでおる防衛費なるものは、行政協定及び日米安全保障条約の義務としてこれを計上いたしておるのであります。故に、それがいけないとおつしやればそれまででありますが、政府考えは不幸にして意見を同じういたしておりません。
  28. 永井純一郎

    永井純一郎君 今のお答えについて議論をしておりますとかなり法律論的になる憂えが出て来まするから、そういう部面は成るべく避けますが、安保条約が批准をされておりまするから、安保条約から包括的な委任を受けている行政協定に基く経費であるから当然だと、こういう大ざつぱな考えでありますが、私はそれであつても、その行政協定に基くところの、これに即応する国内立法の一連のものが十分に整備をされなければ当然これはいけない。それは十分に整備されておらないのです、まだ今日……。土地や水面等についてはあるようでありますが、労働権やその他の問題については必ずしも十分でないものがあるわけであります。そこで暫定予算にはそういつたような不備があるにもかかわらず、防衛費のごときものを組んでおられるということは、私は結局政府の外交方針になつて来るのだと思う。平和条約なり安保条約なりというようなものに基きまして政府がこれを優先的に、勿論法律的に国際法規は国内法に優先するというふうに総理考えておられるというのではないのです、私が言うのは……。が併し、政治的に米国との約束に基くものは優先的に私は予算に組んで行かれるだろうと考えます。又そういう意向を体して、事務当局がこの暫定予算を組んで来たのを見ますると十分にそういうことが窺えて、明瞭な答えを得られないものが多いわけであります。私はここで、更に一歩進んで、こういつたような予算を組んで行きますると、今全国に起つておりまする、内灘問題等を中心として起つておりまするところの問題は、これは殆んど各府県全部です。これらに対してそれでは総理はこれをどういうふうに、あの国民の反対しておる運動をどういうふうに処理をして行くべきであるということの総理のお考えを私は伺つてみたいと思います。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、これは条約上の義務として防衛費のごときは計上いたしたという政府の見解がいけないとおつしやればそれまででありますが、これは政府の見解は、何も他の費目に優先して計上いたしたのではないのであります。当然支出すべき支出として計上いたしたのであります。又、各地に防衛基地といいますか、或いは演習地というような問題が起つております。これはその問題の性質に考えてみて、そうして適当な処理をいたしたいと思うのであります。国民の反対しておる理由については、よく十分その反対の理由を検討いたして善処するつもりでおります。
  30. 永井純一郎

    永井純一郎君 善処するというような、そういう抽象的なお答えでは今日解決できない段階にあると思うのです。あなた自身がもう少しこの問題をよく詳細に検討をされまして、適切な対策を講ぜられないならば私は重大な問題になると思う。アメリカと条約や一片の約束事をしておつても、今の国民のこの運動が、考え方が全国的に更に強力になつて参ります場合には、安保条約の、ごときものは全く私は一片の反古に過ぎないと考えるのでございます。これらに対して的確なる答弁を持たれないということは、私は吉田内閣が無責任極まるものであるというふうに考えざるを得ないのであります。  これは一応これでとどめるといたしまして、私は更に最後にもう一つ総理のお考えを伺つておきたいのは、一番先に申上げましたように、結局吉田内閣が存在する限りと申しますか、或いは更に具体的に言つて八月以降の予算も私は結局暫定予算であるよりほかないと思うのです。これは法律的な意味における暫定予算ではないのです。というのは、朝鮮休戦がどう決定をするかということがはつきり見極めがつかざる以上、今までの政府の米国に対する条約や或いは政府のとつて来た外交から言うならば、尻馬外交でないと言いながら、結局具体的な経済政策或いは財政の政策予算面等においてそういうふうになつて来ておる。八月以降の予算も結局そういう意味で暫定予算を組むものである、そういうふうに、政府考えておるのではないか。朝鮮休戦がいずれかに決定をいたしまして、それを待つて又改めて長期的な経済政策なり、或いは日本の産業の構造なりというものを考えて財政の計画も予算も作られて行くというようなふうに政府考えておるのじやないか、こう思うのですが、八月以降の予算政府はどういうふうに、これは先ほど森さんからお尋ねがあつたのに、はつきりしたお答えがないのは誠に遺憾であります。私はこういう意味から是非とも正直に、いや、朝鮮休戦がどうなるかというまでは政府としてははつきりした政策が立たないなら立たない、或いは朝鮮休戦の如何にかかわらず日本はこういつたようなふうに行こうと思つておるというようなふうに具体的に私は総理から、大体でよろしうございまするから考え方承知いたしたいと思う。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本国といたしましては独立国でありますからして、その国の時の必要に応じた予算を独立的に毅然として作るべきと考えております。而して朝鮮休戦ができなければ予算が組めないと、こういうことでありますと、世界情勢が一定しない限りは日本予算ができないというようなふうに誇張して考えれば言われるのであります。朝鮮の休戦が如何にあろうとも、政府としては日本政府の独立した財政計画からして割出して、朝鮮休戦の如何にかかわらず予算は組む考えであります。然らばどういう予算を組むか。これは予算案が出ましたときに十分御検討願います。
  32. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は吉田総理に特に御質問いたしたいと思いますことは、最近の経済情勢からみて、どういうふうに御対処なさるかということを基本にして第一の問題を御質問申上げたいと思います。吉田総理も第五次吉田内閣成立の際に当つてその見解を表明されておるのでありますが、そのうちに自立経済の達成、これを言つておられるのであります。日本経済が脆弱であり、日本経済が、殊に最近において貿易面においては著しく減退を示しておるということは私から申すまでもない。又これが国内の経済に非常に深刻に影響して参つて来ておるということも御承知だと思うのであります。それで朝鮮事変の休戦というものが如何に経済界に大きい影響を与えたかということは、これは好むと好まざるとにかかわらず事実であります。殊にその際にアメリカ政府に対して何とか、朝鮮休戦をといえもど、日本経済に深刻な影響を及ぼさないようにというふうな要請が日本政府からなされておつたということも私は事実だと思うのであります。かのアメリカの二カ年特需保障というような意味合いの声明というものも吉田総理はともかくとしても、岡崎外相、白洲君等によつて頻りにその声明のあることを期待したということは事実でありまして、そういう点からみて、吉田総理も最近の日本経済については非常に御心配になつておることだと私は思うのであります。併しこの自立経済を一体どうして作り上げるか。達成するか。これは誰でもこの問題については関心を持つておるのでありますが、どうしてそれをやるかということが結局根本の問題である。その方策がなしに、ただ自立新済達成であり、或いは金利の引下げであるとか、船舶の増強であるとか一つ一つにおつしやつても実際的な解決の方策は出てこない。やはり或る程度の見通し、長期の見通しと企画が総合的に有機的になされなければ、到底私は日本経済の建て直しはできない。殊に予測し得べくんばあの声明によりましてもありますように、二カ年という期限は、経済の自立を達成するのには甚だ短かい期間である。この際日本が実際に経済を建て直すということは非常に困難な多くの問題を含んでおるのであります。そういう点から見ますと、従来の吉田総理が非常にお嫌いである長期の見通しに立つた企画性を持ち、総合的な経済政策というものを、この際、従来の自由主義的な経済から転換してここでお立てになるということの決断をお持ちになつておるかどうか、これを先ず第一点としてお聞きいたしたい。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 昨日も和田君からしてその点の質問を受けたのでありますが、これは嫌いとか好きだとかいう問題ではないので、ただ私の言うのは、政府が五カ年計画を立てた、そうしてその計画はこうこうかくかく、こういう発表をしたがために国民を過るという場合もあり得るし、それからして慎重に考うべきものである。やれこれは三カ年計画、これはやれ五カ年計画であるというように役人が或る仕事を報告するというような、出来栄えを報告するというような考えで以て計画を発表するのはよろしくない。併しながら計画なしにやれということは、幾ら自由経済であつても、何らの計画なしにやれというのが自由だとは私は考えられないのであります。長期計画を立てるということは、これは当然の話で、単にその年々の計画でなくして、政府として通商問題にしても、財政計画にしても、相当の見通しをつけべきであるが、併しこれは政府の見解或いは計画はこうこうかくかく、自然これによつて計画を立てるというような、例えば五カ年計画のごとく、何とか事業をどうとかする、そうすれば船会社は何年間の間はこれだけの利益が生めるというような若し計算をしたならばとんでもないことになるのでありますから、政府のいわゆる計画は国民を誤まる場合があるから慎むべきものであるというので、長期計画そのものがいかんと決して考えておるのではありません。又嫌いでもありません。若しいい計画が立つならば私は喜んでその計画の実現を希望いたします。
  34. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 大体吉田総理が長期の計画経済は書生論であり、そうして従来の御言説からみるとお嫌いだと推測される御言動があり、御行動があつたことは事実でありますが、今御説明によつてともかくもそういう見通しと企画性を持つた総合的、有機的なものを立てる必要性は認められておるようであります。ということならば、私はこの際が一番いいことでなかろうかと思う。御承知通りに財界におきましても、経済界におきましても、この指針なくしては日本経済は立たないというふうになつておるのでありますから、併し総理大臣であります以上、是非ともこの方向について今回の内閣はできるだけの御努力をして頂きたということを併せて希望いたします。  次に総理は貿易振興を説いておられます。問題は如何にして貿易を振興するか。やはり誰でも貿易振興を説かないものはない。確かに総理の言われるように、世界経済の後退期に際しまして、各国とも関税の障壁を高くするとか、或いは輸入の制限をするとかというふうな問題が日本の貿易の進捗に非常に支障になつたことは確かであります。又各国自身がすでにその点について反省期に入つた。結局とういうブロック経済では世界の幸福はもたらされないという反省期に私は入つておると思うのですが、この際にこれらについては通商外交によつて打開をされるということが特に大切だと思いますが、と同時に日本自身に内在しておる原因を除去しなければなりません。これらについて細かく言いますと与えられた時間が少いのでありまするから、極く簡単に、一つの点についてどうお考えになるかということを申上げておきます。日本の国には一方においては三百六十円の為替を堅持しよう、そうして通貨の健全性を維持しよう、これは嚴たる一つの方向であります。然るに吉田総理は過去の内閣におきまして物価はそのままになされたのであります。言葉は又尻尾をつかまえられるかも知れませんが、少し誇張して言えば、野放しの物価政策であつた。これは池田君の大蔵大臣の時分から私がたびたび申上げたことなんでありますが、御承知通りに英米においても朝鮮事変以来は物価はテン・パーセント内外より上つておりません。然るに日本は五〇%以上上つておる。又為替レートを設定しましたときからみれば、日本の物価は七〇%高になつておる。そうすると一方におきまして三百六十円の為替レートを設定されており、一方において物価を野放しにしていますと、これはどうしてもいわゆる為替レートを堅持すべきか、日本の物価を下げるか、或いは為替レートを変更するというふうな問題に入つて参るわけでありますが、これに対しまして総理大臣は貿易振興の中で日本の内在的の原因である物価高というものをどういうふうな方向へお持ちになろうにお思いになりますか、この点についての御所見を……。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現在我が党内閣と言いますか、自由党内閣が、如何にもお話によると、物価政策がなくて野放しにして上り放題上らしたというようなふうに、聞いておりますというと聞えるのでありますが、そう大胆な政策或いは経済政策をとつた覚えはないのであります。例えばインフレーシヨンが起らないようにこれを抑制するとか、為替レートを設定する場合においても、いろいろな議論を勘案して三百六十円にしたのでありますが、これは直ちに変えることがいいか悪いか、これはよほど慎重に考えなければ、一旦三百六十円の基準の上に或る秩序ができておる、それを動かすということは内外の事情等をいろいろ勘案しなければならんところであろうと思います。或いは三百六十円は安過ぎたと言い、高過ぎた善い、いろいろその当時においても議論があつたのでありますが、とにかく三百六十円がよかろうということでこういうふうに決定した。これを今日動かすべきであるかどうかということはよほど慎重に考えないというと影響するところが大であると思います。考えはいたしますが、直ちに変更するということは今日私ども考えてはおりません、研究はいたしますが。又日本の物価が国際水準よりも高い、これは事実でありますが、これをどうかして下げなければならん、そのためには、過日発表いたしましたが、政府において研究を進めております。その結果については暫らくお待ちを願いたいと思います。
  36. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実はMSA関係についてはさつき森君の質問にお答えなつたのであります。そうして今のお話ではどうしても御答弁になる気がないということも明らかでありますが、併し総理大臣としては私は御答弁なされなければならん責任があるという方面からもう一度御注意を喚起したいと思う。と申しますのは、日本は現実に保安隊において武器貸与を受けておるのであります。ところが従来は国と国との間に行われながらこちらの駐留軍の責任のない者から借りておるという、非常に何と申しますか、正常でない……まじめでないと言うと又挙足を取られるかも知れませんが、正常でない、少くとも各国において、独立国家では例を見ないような形で受けておる。併しアメリカ自身の方針はすでに五月の国会においてダレス、スタツセンも今後の、来年度からのアメリカ方針を明らかにしておるのであります。それで向うが方針を明らかにしておる以上は、こちらにそういう事実があります以上は、今後どういう措置をとられるか。すでにアメリカにおいては七月の予算からその問題が起つて来るはずであります。その貸与を受けておる武器だけで八千万ドルに及んでおると言われておるのでありますが、これらの問題は政府政府間に私は当然起つて参る問題である。又今後のアメリカ方針自身が明らかになつておるとすれば、時期も今申上げたような時期であり、又世界各国においても二十数カ国がすでにこれに準じて協定を結んでおる時なんであります。この際に総理大臣としては私は当然その御方針を明らかにさるべきだ。そうして最後に申上げておきたいことは、先ほどから質問いたしましたいわゆる日本経済の自立達成の方途及び貿易振興の対策、そうしてMSAに対する日本方針、こういうものは二十八年度予算編成に当つて、従来お出しなつた二十八年度予算とはそういう観点から変つた性質のものが出て参らなければどうも工合が悪い、第五次吉田内閣成立の趣旨が達成せられない、こう考えますので、総理大臣の御所見を伺います。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) MSAの問題については二、三日来頻りに尋ねられますが、私としては正式の交渉なり米国政府の意思なるものを明確にいたしておらない今日においてこれに対する言明はできないのであります。交渉がないから申すのであつて、決して内容承知いたしながら、或いはすでに交渉が開始されてあるにもかかわらず方針を立てないわけではないことはよく御承知を願いたいと思います。又議会において或る提案がなされた、そして政府方針はころであると言つても、それは直ちにその政府から、政府に対する公然の要求若しくは話、申出がない限りは、議会においてこういうことがあつたから、或いは新聞にこういうことが出たからといつて、それを土台として政府としては予算を立て若しくは計画を立てることはできないと思います。いずれ米国政府としては日本に対して申出があるかも知れぬ、ないかも知れぬ、それはそのときの都合によることであつて、政治である以上は、或る原則がきまつたら必ずそれが外国政府に対して適用せられるかどうか、これはそうはつきりものは考えられないのではないかと思います。そこで今のところは交渉がないから、従つて米国政府日本に対する気持が、或いは内意がどの程度まで要請をし、どの点に対してどういう申出があるか一向存じておりませんからお答えができないと率直に申しておるわけであります。それだけですか、お答えをすべきことは……。
  38. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 さつき言つた三つの問題に対して、予算編成に臨まれる吉田総理の御態度ですね。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは予算編成、数日の間に提出いたしますからそのときに御批判を願いたいと思います。大蔵大臣、新大蔵大臣において頻わに予算編成を急いでおります。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の各同僚諸君からの質問によつても明らかなように二十八年度の、前に流産になつ予算、あの予算編成した当時と現在とでは国際情勢においても国内の事情においても非常に変化を来た、しておることはもう総理も又御承知通りだと思います。従いまして今度の二十八年度の、政府がこれからお出しになる予算編成するに当つては当然この国際情勢の変化に伴う国内経済の非常な変化といろものを前提として組まなければならないと思うのですが、而も先ほど正宗次長から伺いますと、八月の暫定予算は一カ年間の年間予算の一部として組む、そうなるとすでにもうすぐ出て来るであろう八月の暫定予算は、二十八年度の編成方針というものが大体わからなければ組めないはずなんです。そこで私は総理に対して伺いたいことは、この前流産になつた二十八年度予算編成当時の国際情勢と現在とではどういうふうに違つて来ていると認識されているのですか。特に朝鮮休戦の見通し、いろいろほかの諸君からもお話がありましたが、結論として、政府はこれは成立するものと見通していろいろな政策考えておられるのか、この問題について先ずお伺いいたします。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) よく見通し見通しと言われますけれども、外交にしても、政治にしても占いではないのでありますから、見通しがこうであるからと言つていい加減に組むわけに行かないと思います。又過去の予算、この前の議会に提出し予算、これは政府が一応政策を盛り込んでこしらえ上げた予算でありますが、それから新大蔵大臣ができたので、新大蔵大臣としての考えもありますので、新大蔵大臣が実際予算編成その他について研究しておりますので、予算案が出ました上で御批評を願いたいと思います。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私いつも総理に見通しを伺うと、占いではない、こういうことをお言いになりますけれども、併し政策を立てるためには当然現状の分析と将来の見通しというものがなくて政策が立てられるわけはないのです。そういう意味で私は科学的ないろいろな分析調査、それに基いたところの見通しを何つているのであつて、見通しなくして政策はあり得ない。それこそお先真つ暗で、その都度外交とか、その都度経済とか、吉田内閣政策はそうであるということを言われましたが、見通しについて総理はそういうお考えを持つているから、それを単なる古いぐらいに思つているから、私は日本の自立経済なりそういうものに対しての具体的政策がとれないのだと思う。私のお伺いしておるのは朝鮮休戦交渉から世界情勢には非常な変化が生じ、特に世界経済については重大な変化が生じておる。又日本経済についても重大な変化が生じておることは明らかである。従つて政府は今後の経済政策、又予算編成するに当り、差当つては八月の暫定予算を組むについては朝鮮戦争の休戦が成立すると、こういう公算の下に施策を考えているかどうか、これは一般国民が非常に知らんとするところであり、又総理先ほどただこれを希望すると言つておりますが、全体の世界情勢から睨み合せてどういう方向でこれが大体成立するという見通しの下に政策を転換する、そうなると経済政策も又予算編成方針もこの前と全く変らなければならない。二十八年度予算のようにあの千三百億も支払超過になるようなインフレ的予算は組めないわけです。予算性格が変りて来るのです。そういう意味で私はこの見通しについて伺つている。もう一度朝鮮戦争を政府はどういうふうに考えられるかお伺いしたい。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 朝鮮の休戦の見通し如何などというような問題は、朝鮮或いは関係国に関連いたしますから私はこれに対してお答えはいたしません。又そういう情勢がわからなければ予算は組めないということになれば予算は始終組めないことになります。何となれば世界情勢も国内情勢も時々刻々変化いたしているのでありますから、その変化を見極めない限りは予算は組めないということになれば予算はできないことになります。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは議論であつて吉田内閣政策の貧困をそういう形において弁護しておるに過ぎない。私はこういうことで議論することは時間の不経済ですから、今日はもう十五分しかないのですからもう一つ伺いたい。これから又八月の暫定予算ということになる。国内情勢殊に国内経済、これは堀木君も今質問されましたが、これは今一番重大な問題と思いますが、現在の日本経済実態、それから今後の成行きに対して総理はどういうふうに日本経済の問題についてお考えになつておられますか、この点を第二にお伺いしたい。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お尋ねが誠に漠然といたしておりますから、もう少し具体的にお話願いたい。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは具体的に申上げます。第一に最近経済団体連合会、日本経営者団体連灘、関西経済連合会の名によつて基本経済政策に関する意見」というものが発表されております。これによりますとこう書いてあります。「独立回復後早くも一カ年を迎えたが、我が国経済の現状は、臨時的外貨収入に依存し、物価の割高と輸出不振に悩み、経済の基盤は、依然改善のあとを示していない。然るに、最近の国際経済情勢は、すでに物価の低落と各国の輸出競争の激化の方向にあり、情勢の進展如何によつては、この傾向は更に一段と激成されるものと覚悟しなければならない。このような事態の下に、若し、我が国が漫然として従来のごとき状態を続けるときは、国際競争に敗退して、重大な経済危機に直面することは必至である。」と、こういうふうに意見書には書かれております。恐らくこれは吉田政府に対してもこういう意見書は出されていると思います。総理は、この財界の日本経済実態に対する、又将来の見通しに対するこの見解をどういうふうにお考えですか。これは「特に重大な経済危機に直面することは必至である。」こういうふうに言つておるのですから、この点については総理に特に御見解を承わつておきたいと思うのです。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 始終危機に瀕している。三月危機とか六月危機とか、始終そういう言葉を聞きます。併しながら危機に瀕して、日本は潰れてはおらないのであります。故に危機が生ずるならば、これに対して対応策を講ずることは政府として当然いたすべきことである。又経済団体の意見書については、当局において研究をいたしております。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この意見書についてのお考えです。「重大な経済危機に直面することは必至である。」総理は、いわゆる講和発効後一年の一この日本経済をこれで一体いいとお考えですか。最初総理は、この講和後の経済を心配ないと言われて、すでに御承知のように、外資の導入と……、この頃は言われませんが、外資の導入と輸出の増進、この二つによつて日本経済を復興させるというように伺つたのですけれども、外資の導入も実現しない。輸出も二十七年度予算では、十六億一千百万ドルを見込んだけれども、実際には十一億五千万ドルに激減してしまつて日本経済も再建する前提条件が崩れてしまつた。そこで非常に悲観的な見通しになつておるのです。そういう意味で、これまで私は講和後の日本経済に対する総理の見方は幻想に過ぎない。幻想であると、私は前に言つたのです。すると総理はそれは幻想ではないと言いましたが、いわゆる幻想であることが現実にここに出て来たのです。現在の経済情勢の認識について、総理は、そんなに他人事のようにこれを考えては大変です。私は今後の吉田内閣政策の一番基本は、今直面している、又今後の見通しにおいて非常に暗いところの日本経済、自立経済を打立てて、この朝鮮休戦に伴ういわゆる恐慌をどうして打開するか、これが一番重大な課題である。従つてこれに対して総理の見解を伺わなければ、我々は政府政策を批判することもできないのです。そこでこの重大な経済危機に直面するという、これに対して政府は、特に総理はどうお考えになつておるかということを伺つております。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 重大な経済危機に直面すると書いてありますが、私は必ずしも重大なる危機に現在直面いたしておるとは考えません。何となれば、成るほど外資は我々の希望しておるように入りませんが、やがて入ることを私は確信いたします。又貿易の一進一退は、これは常にあることであつて、貿易の景気のいいこともあれば、不景気のときもある。不景気のときにすでに景気のよくなる事態が胚胎するのであつて、それ故に直ちに危機が来ると言つて、そうして日本国の滅亡近きにありというようなふうに慌てる必要は私はないと思います。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は真剣に質問しているのです。そう何か極端に、私がすぐ危機に瀕したから日本国が滅亡するということを言つたかのごときに、聞いていればそういうふうに受取れるような答弁をされることは、私はどうも余り賛成できないのですが、そこで第二に具体的問題として伺いたいのですが、貿易の将来はもう心配ないということを今総理は言われましたが、もう一つ具体的の例として、政府の機関である経済審議庁が、最近、昭和三十二年の経済の見通し作業をやつておるのです。これは新聞に出ております。前に世界銀行から金を借りるために、世界銀行のガーナー氏に提出した、あの三十二年度の日本経済の見通しよりも更に暗くなつているのです。貿易が三十二年度は大体輸出九億ドルから十一億ドル程度じやないか、そういう見通し作業をやつております。更に又産業合理化の推進の結果、失業者は四百万くらいになるのではないか、二、三百万、或いは四百万人くらいの失業者が出て来るのではないか、こういう見通しです。更に鉄鋼などは昭和二十七年度に約百三十五万トンの鋼材の輸出があつたのが、WB作業、世界銀行に提出した資料では、大体三十二年は七十万トンに減るだろうと言われておつたのが、今度の最近の経済情勢を勘案して見通した作業によれば、これが実に三十万トンに減るだろうというのですね。こういうような、非常な日本経済の将来に対して、非常になんですか、悲観的な見通しが行われておるのです。何も徒らに悲観する必要はありませんが、併しその実態が如何に好ましくなくとも、我々は現実をやはり直視しなければならないのであつて、そうでなければ正しい対策は立てられない。この経済審議庁の見通し作業です。これについて、これは政府の、総理の管轄のお役所であります。これは朝日新聞にこの間出ておるのです。詳細に出ております。これについて総理はどう……、総理の管轄するその機関において、丁度今の財界の意見書にあるように、「重大な経済危機に直面する」というようなことが、数学的に、計数的に出ておるのです。これについて総理はどうお考えになるか。
  51. 平井富三郎

    政府委員平井富三郎君) 只今経済審議庁で発表した数字について御言及になりましたので、この点について一言申上げてみたいと思います。現在経済審議庁といたしまして、現在の情勢から、今後の長期的な観点から見て、如何なる政策をとるべきかという点について研究をいたしております。その前提といたしまして、各種の経済事情の分析を行なつておるわけでありますが、只今お挙げになりました数字、これは現在の貿易事情をそのまま伸ばして行けばどうなるであろうかというような数字でございまして、それが三十二年度における貿易の動向である、或いは見通しであるというふうには考えておりませんで、朝日新聞に出ました記事は、恐らく各担当官において、いろいろ研究しているところの、前提の下に研究をしている数字を、そのまま審議庁の数字というふうにして発表されたものと思うのでありまして、現在経済審議庁において、三十二年度におきまする経済循環の姿というものを、まだ全体的に決定している段階ではないのでありまして、個々の問題について研究をしているという段階でございます。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは審議庁のあの数字でもまだ甘いと思つております。私は素人ではありますが、いろいろ検討してみれば甘いと思つておりますが、とにかくああいうふうな、正式な経済審議庁の発表ではなくても、まじめに日本経済情勢を分析して行けばそうなるのです。それが当り前なんですよ。あれは間違つておらないと思う。大体私はああいう方向にこのままやつて行けば、なる危険がある。そこで私は講和後一カ年たつた後の日本経済は、決してばら色の復興ではなかつた、今までの現状をここではつきりかなぐり捨てて、この非常に重大期に直面しておる日本経済実態に対して正しい対策を立てなければならん。それについてはもつと認識を深めなければならない。そういう意味で私は総理に質問してみたのですが、どうも総理は案外こういうことに対して関心がないようなんです。又余りに気になさつていないようであります。割合にまだ楽観しておるかのごときあれがありますので、私は非常に予想外であります。  最後にお伺いしたいのは、このMSAについて政府はこれを欲しておるのか、政府はこれを希望しておるのかどうか、その点をお伺いしたい。そうして実はもう財界方面ではMSAをもう前提としていろいろな兵器生産計画とか、そういうものを考えておる。経済団体連合会、あそこで作成したと新聞などに伝えられる日本再軍備実施六カ年計画というものがあるそうであります。経済団体連合会で、日本経済団体が憲法九条で戦力を否定しておるのに、経済団体が日本再軍備実施六カ年計画を作つて、その費用二兆八千九百億のうち一兆二千六百億は外国援助を仰ぐ、アメリカ援助を仰ぐ、結局これが私はMSAだと思うのであります。こういうものを前提として朝鮮戦争が終つたあとにいわゆる再軍備を中心とし、兵器生産を中心としてこの日本経済恐慌を乗切ろうと思つておるのであります。だから総理MSAをもらわないと言つたら大変なことになるのではないかと私は思つておりますが、政府としてはこれは希望しておるのかどうか、その点を最後に私は伺いたいと思います。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) アメリカ政府日本に対するこの法律によつての要求申入は何らないのでありますから、これに対して賛成とか、或いは不賛成とかいうことは、今日ここに表現はできないのであります。
  54. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私のほうの時間が少し余つておりますので総理大臣にちよつと簡単なことで御所見を承わりたいと存じます。只今東南アジア諸地域の貿易の問題につきまして各方面からいろいろと研究いたしておることと存じますが、私は実は昨年の秋にインドに旅行いたしまして、御承知のようにインドには丁度日本国会と同じくらいの上下両院に婦人議員が出ております。その婦人議員たちは非常に日本の産業につきまして興味を持つておりまして、又産業にかかわらずそのほかいろいろの制度について日本が短い間に躍進的な進歩を遂げたということに敬意を払い、且つ国情が少し似ておるところもあるというようなことから大変に関心を高めまして、いろいろと私どもに質問を発したのでございます。そこで私ども考えましたことは、こういうように日本に大変尊敬と興味を持つておりますところの婦人議員が、特に只今インドの直面しております五カ年計画について、日本からインドの言葉で言えばカツテジ・インダストリーとか申しておりますが、日本の中小企業のいろいろの企業発展の模様などについて学びたいというような声がたびたび発せられたのでございます。それで私は特にニューデリーにおきまして西山大使ともこのことを御懇談申上げまして若しできることならば、インドのこれらの代表的な婦人議員のかたがたを日本に御招待いたしまして、インドに今必要とするような中小企業の形を日本から何か参考になることがあつたら、学んで頂くような御視察をなさるように御招待したらどうか。若しこういうことができますと、日本からいろいろのものをインドに買つてもらえます上に、御承知のようにインドではいろいろと統制をいたしたり、外国から輸入を制限しているというような場合に、国会に議席を持つている婦人議員が、こういうものを日本から買つたほうがいいとか、日本に学んだほうがいいとかというような発言が婦人の口からたくさん出るというようなことになるのは、今までに試みられなかつたところの一つの計画ではないかと、こういうふうに西山大使といろいろ御懇談申上げましたら、大使も、これは非公式に、個人的に大いに御賛同下さいました。ところがそれからあと解散その他でこの計画が具体化しないで今日まで参つたのでございます。日本の政情も一応ここで一段落しましたので、だんだん気候も暑くなつて参りますのでインドの婦人を呼ぶのには大変いい機会だと思いますので、こういうような案を私はどうしても政府が御賛成して下さいませんければ、費用万端民間ではなかなかできないことでございますので、こんな計画が若し進むようなときには、吉田総理大臣がこれに対して御賛成下さるでしようか、御所見を承わりたいと存じます。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今インドの婦人議員を招待というお話は、私は聞いたような気もいたしますが、はつきりいたしません。その性質によつてはと申しますか、或いはそのためにインドと日本との間に関係がよくなるとか、或いは経済関係ができるとかいうようなことであるならば、これは喜んで考えます。なお外務省あたりに西山大使から何か申出があるかどうか、一応調べた上でお答え申上げます。
  56. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 大変に御理解ある御答弁を頂きまして、心強く存じておりますが、まだ何も外務省のほうには申上げていないはずでございまして、御賛意頂けるようでございましたら、西山大使のほうからいろいろなことが、お申出があるように御連絡を申上げることになつているわけでございます。  御参考のために申上げておきますが、昨年元の商工大臣をしておられましたかたがアメリカに行かれまして、五カ年計画について何か参考になることがあるかどうかということを数カ月に亙つてつぶさに視察をなすつた帰りがけに、たまたま飛行機が日本にとまるというので、日本においでになりましたところが、この、前商工大臣に私がお目にかかりましたとき申されましたのは、アメリカに数カ月旅行していろいろ視察をしたけれども、国情の甚だしい相違によつてアメリカからものを学ぶことは、今のインドとしては適当ではない。然るに日本に僅か一週間か二週間視察したところが、非常に学ぶところが多いということを、この商工大臣も申されましたので、私はこういうような計画が婦人議員を通じて更に進められるということは、日印国交の上から、又日本の東南アジア諸地域の貿易の発展のためにも非常に貢献ができると存じますので、具体化が是非できますればお骨折りを頂きたいということを併せてお願いいたします。
  57. 青木一男

    委員長青木一男君) これで休憩いたします。午後は一時半から開会いたします。    午後零時二十九分休憩    〔休憩後開会に至らなかつた