○佐藤尚武君
只今議題となりました
日本国と
アメリカ合衆国との間の
友好通商航海条約の
批准について
承認を求めるの件につきまして、外務
委員会における
審議の
経過と結果を御
報告いたします。
先ず、本条約に関する
政府の説明を要約いたしますと、左の
通りであります。
先ず、日米両国間の通商航海関係は、明治四十四年に締結された旧日米通商航海条約が、
昭和十五年一月に失効して以来、十二年余の間、無条約の状態とな
つていたのでありますが、サンフランシスコ平和条約の発効後、両国の通商関係は、同条約第十二条の
規定によ
つて規律されているのであります。併しこの
規定は暫定的性質のものでありまして、この
規定によ
つて我が国は、連合国が特定の事項について内国民待遇又は最恵国待遇を我が国に与える
限度においてのみではありますが、当該連合国に、内国民待遇又は最恵国待遇を与える義務を負
つておるのでありまして、連合国側に対しましては、我がほうとして、何ら積極的な待遇保障を要求する権利がなく、又我が国民の入国、旅行、滞在、居住等につきましては、何らの保障も与えられておらないのが現状であります。そこで
政府は、先ず米国との間に平等互恵の立場に立ち、且つ包括的な待遇保障を含む新らしい通商航海条約をできる限り早い機会に締結せんといたしまして、一昨年末から、在京米国
政府代表との間に非公式な折衝を始めたのであります。我が国にとりましては、戦後始めて結ばんとする通商条約のことでありますので、その交渉には慎重の上にも槙重を期しまして、その結果、漸く本年二月下旬に至り、我が国の主張を十分に取入れ、且つ両国間に完全に
意見の一致した条約案の作成をみ、次いで四月二日に、外務
大臣とマーフイー駐日米国大使との間に署名調印を了した次第であります。
この条約の
内容を要約して申上げますと、本条約は、前文、本文二十五カ条、末文及び十五項目の議定書から成
つておりまして、前文には、条約締結の
目的が、両国間の平和、友好関係の強化、経済的、文化的関係の促進、通商関係の助長及び有益な投資の促進にあることを述べ、そのため無
条件最恵国待遇及び内国民待遇の原則を基礎とすることを明らかにしております。
次に、本文におきましては、
一、入国、居住及び滞在の
条件、
二、身体の
保護及び保障、
三、社会保障制度に関する内国民待遇、
四、出訴権に関する内国民待遇と最恵国待遇の保障並びに仲裁判断の執行、
五、資本、技能及び技術の交流の促進、
六、
財産の
保護に関する基本的待遇、
七、営利事業活動に関する待遇、
八、雇用、自由職業及び非営利活動に関する事項、
九、
財産権の取得処分に関する待遇、
十、
工業所有権に関する内国民待遇と最恵国待遇の保障、
十一、内国課税についての基本的待遇、
十二、為替
管理に関する事項、
十三、商業旅行者に対する最恵国待遇の保障、
十四、関税事項に関する最恵国待遇と、輸出入の禁止制限に関する事項、
十五、税関行政に関する事項、
十六、輸入産品等の国内における取扱、
十七、国家貿易乃至国家商業に関する事項、
十八、競争を制限する商慣行の排除に関する事項、
十九、船舶、海運及び航海に関する基本的待遇の保障、
二十、人及び物の相手国の領域通過の自由に関する保障、
二十一、本条約の
規定の適用を排除する一般的例外、なかんずく関税に関する最恵国待遇と、ガット税率との関係
等について
規定しておるのであります。
そして本条約は、
批准書交換の日の後一カ月で效力を生じ、十年間效力を有し、一年前の予告によ
つて、最初の十年の
期間満了の際又はその後いつでもこの条約を終了させることができる旨を定めておる云々、以上が
政府説明の要点であります。
委員会は、七月十六日以降、予備審査を行うこと六回、同月三十一日、
衆議院よりの送付を待
つて更に四回、都合十回に亘
つて慎重
審議を行いました。この条約は、
内容の重要性に鑑み、
委員会におきましては、羽生、佐多、杉原、高良、加藤、中田、亀田各委員より外務
大臣並びに
政府委員に対し活發なる
質疑が行われました。その詳細については
速記録により御
承知願いたいのでありますが、次にその主要なものをかい摘んで御
報告いたします。
先ず総括的
質疑におきまして、第一に、「この条約は、文面では平等互恵だと言うが、日米両国に経済力の差があることから、実際上は不平等なものにならんか」との質問に対し、「その点はあり得ると思うが、例えば第七条第二項において公益事業を行う企業若しくは造船、航空運送、水上運送、銀行業務若しくは土地その他の天然資源の開発を行う企業等を制限業種として除外することによ
つてかかることを防止する
措置をと
つている」との答弁があり、次に、「この条約が、旧日米通商航海条約復活の形をとらなかつた理由はどうか、米国側からの強い申出があつたためではないか」との質問に対しましては、「最近米国上院が
承認した日本以外の数カ国との通商条約は、日米条約と同様の
条件のものである。又本条約の
内容は、米・コロンビア国間の条約と大差はないが、これに比べるとむしろ日本のほうから多くの制限を附したくらいである、今回の条約が、旧日米条約復活の形をとらなかつたのは、時代の変遷と共に新らしい事態が生じたことを考慮したためであ
つて、その結果、例えば第四条の仲裁判断、第十二条の為替
管理に関する
規定、第十五条の税関行政、第十七条の国家貿易乃至国家商業に関する
規定、第十八条の競争制限的商慣行の排除に関するものなど、新らしい
規定が加えられた。新旧条約の重要な相違点を挙げると、最恵国待遇が無
条件均霑と
なつたこと、民間の外資導入に対する
保護の事項が大きく取上げられたこと、資本、技能及び技術の交流を促進するための
規定が設けられたことなどである」との説明があり、又「この日米通商条約は、日本が今後諸外国と締結する通商条約のモデルとなるというわけであるか」との質問に対し、「この条約は、慎重に
研究したもので、条約の形式としてはよく整
つていると思うので、大体この形で行くことが望ましい。ただ各国それぞれ異
なつた事情があるので、必ずしも同じ形のものを締結し得るとは限らぬ」との答弁がありました。
又第二に、第七条第二項の包括的内国民待遇を留保する制限業種の
規定に関連する
質疑におきましては、先ず、「第七条第二項に掲げる制限業種以外にも、重要産業があるが、この点を考慮したか」との質問に対し、「制限業種を広くすることを
研究したが、第七条第二項に列記したものを以てマキシマムと考えた。というのは、製鉄業、自動車工業等、これ以上制限を強めると、外資が入りにくくなるからである。なお、これらの業種を制限業種の中に加えなくとも、議定書第十五項において、外国人が円貨を以て日本企業の発行済の株式を取得することを条約の効力発生後三年間制限することを
規定しておる。」又第十二条第二項には、為替
管理を行い得るのは、通貨準備の合理的水準を維持するために必要な場合に限る旨を
規定しておるのでありますが、外資導入についてこの通貨準備の
保護のため必要な制限をなし得る旨を議定書第六項において定めておりますので、「これらの分野に対する外資の流入も十分規制し得る余地がある」との答弁があり、次いで「外資は欲しいし、外資の圧迫は困るというのは矛盾ではないか」との質問に対し、「外国人は本国への送金の保証を欲しているが、送金は、我が外資法で規制されておる。現在日本における株式投資の
総額は約五千億円であるが、このうち外国人の所有に属するものは百億円
程度で、その約十三%が発行済の株式であり、その大部分は送金の自由を要請しているものである。これによ
つても送金の保証のない場合には、外国人はそう多額の投資を行うとは考えられない。」なお、「日本の資本は弱体なので、外資が必要であり、今後は、技術導入に伴
つて外資が必要となる。この条約ができても、我が外資法は三年間変更する必要はなく、必要な所に外資を入れるのが、この
法律の
目的であ
つて、その運用によ
つて巧みにや
つて行けるわけである」との答弁でありました。
第三に、第七条第二項の但書において、制限業種に対する留保を適用しないと
規定しておる既得権に関する
質疑におき」まして「制限業種に対する制限実施の際、既得権として認められるものにはどんなものがあるか」との質問に対し、「米国側が、日本で持
つているもので、既得権として認められるものには、ナシヨナル・シティ・バンク、バンク・オブ・アメリカ及びチエース・ナシヨナル・バンクの三つの銀行があるが、その預金
総額は八十億円
程度に過ぎず、而もこれが既得権として最も大きなもので、且つ、殆んど唯一のものである。そしてこれらは、我が経済に貢献するところが少くなかつたし、殊にそのうちナシヨナル・シティ・バンクは、戦前から日本に存在しているもの であることから考えると、この
規定 は、占領治下において米国が得たもの を既得権としてリーガライズせんとす るものだとの説は、実際上必ずしも当
つておるとは考えられない。又この三銀行のほか、米国の持つ既得権としては、鉱業即ちマイニング、運輸業及び その他の企業において約二百三十五万株、
金額として二億八千五百万円
程度の株式があるだけである。」次に、「日本側が米国で持
つておるもので既得権として認められるものには、約五万人の邦人が彼の地で農業に従事する権利がある」との説明がありました。この第七条は、日米両国内に実質上平等の関係が貫かれているかどうかの観点から、最も熱心に
質疑が行われたものの一つでありました。
次に第四に、関税事項に関する
質疑におきまして、「ガット、即ち関税及び貿易に関する一般
協定加入の見通しは如何、第二十一条第三項によれば、日本がガットの利益を受けるという点は未確定ではないか」との質問に対し、「米国の方針として関税交渉は当分の間行わないことにな
つていますので日本のガット加入の問題の見通しは、はつきりしない。第二十一条第三項の「いずれの一方の締約国も、その意思によ
つてガット
協定の当事国とな
つていない国に対しては、同
協定に基いて取り極めた利益を与えなくてもよい。」との
規定は、厳密に
法律的な意味で、ガツト税率の適用を保証しているとは言えないが、日本の場合、加入の希望を持
つているにもかかわらず、まだ加入が許されないのであるから、ガット税率を適用してもよいことになるという解釈から、日本もガットの利益を受けることになると思う、」との答弁があり、又、「まぐろ関税の引上げ等はこの条約によ
つてどうなるか、」との質問に対し、「この条約では米国がまぐろ関税を引上げることができないという保証はない。ただ、日本がガットに入る場合は、関税交渉が行われて関税率がきまるので、米国が一方的に引上げることはできなくなる」旨の答弁がありました。第五に、「この条約が締結されると、日本人の米国への入国、居住、滞在が容易になるのか」との質問に対し、「現在米国に入国し滞在する者は、旅行者として三カ月間の滞在が許される。滞在
期間の延長は僅か一回、即ち三カ月間だけ認められるが、これでさえかなり困難な状態である。このために商社の派遣員は甚だしく困
つているのであるが、この条約が発効すれば、第一条の
規定により、入国、居住及び滞在が極めて容易になる」との答弁がありました。なお、右総括的
質疑の際、七月二十三日の
委員会において
政府の説明するところによりますと、米国では本条約はすでに八十六票対一票の多数を以て上院を通過し、あとは大統領の
批准を待つばかりにな
つておりますが、上院はこの条約の
承認に際して条約第八条第二項に掲げられた職業中、米国の各州において米国人に対してのみ就業を許しているものについては、これを引続き米国人のみに許すことを可能ならしめようとする
趣旨の
附帯決議を行いました。米国大統領が、この点を留保して
批准を行うことになるかどうか、目下のところまだ不明であるとのことでありました。
次いで、逐条
審議に入りましたが、同じく熱心な
質疑が行われました。
委員会は八月六日
質疑を了し、引続いて
討論に入りましたところ、先ず自由党を代表して徳川委員より、「この条約は、我が国経済の自立化を図り、各種重要産業の合理化に役立ち、資本及び技術の導入促進を図ることを
目的としているものである。一部において外資の活動に危惧の念を抱き、又既得権を認めた条項は不平等である等との説もあるが、
政府の説明によれば、その心配はないのである。本条約の発効により、我が国の対米関係は、戦後初めて平等互恵の原則の下に我が国に有利になるのであるから、これに
賛成でおる」、との
意見が述べられ、且つ、「本条約第八条二項に関する留保が、米国
政府より正式に申出た場合は、我が
政府もこれに対応して相互的の
措置をとる権利を我が国のため留保する手続をとることを希望する」旨を附言せられました。
次に、日本社会党を代表し中田委員は、「この条約には反対である。この条約には日米両国の国力の差が織込まれていない。講和条約、安保条約並びに
行政協定と揆を一にし、互恵平等と言うも、不平等の関係を招くものである。又この条約は、米国とコロンビア国間の条約を範としたと言うが、コロンビアは、曾
つてはスペインの植民地たりし小国である。その輸出入の八割は米国に依存し、米国の隷属下にある国である。これを以てしても本条約の全貌を窺い知るに足る。次に、非難すべき二、三の点を指摘すれば、第一は、米国側に占領中に得た既得権を認めた点である。一方的に取得したこの権利を援護するため、
政府は在米二世の土地所有をこれと引替えにしている。日本はこれによ
つて何らの利益をも得ないのである。第二は、蓄積円による米国人の旧株取得の権利を三年間に限定した点である。我が国産業のごとく、外部の資本に対する依存度の大なるものにあ
つては、僅かな外資を以てしても容易にその
経営が左右される危険があるのである。第三は、鉄鋼、金属、化学工業等に対し、制限業種を拡大するの
措置を講じていない点である。これを拡大することは、必要であると考える。然らざれば外資によるこの種産業に対する支配は免れないところである。更に、この条約の有効
期間を十年とした点に、問題を含むと言わざるを得ない。十年は長きに失する。これを要するに本条約は、外資の導入と、その擁護に急なるの余り、国内産業の保全に対する配慮が不十分である。本条約が日本にとり如何なる利益ありやと探して見るに、旅行者に対し居住者としての利益が与えられるのみにして、失うところ多く、得るところなし」との
意見を述べられ、次いで、杉原委員は、「この条約には、
政府側の主張するごとく、我がほうの当然要求すべきものが十分取入れられているとは思えない。
規定の
内容には不備不満の点があり、いま一段努力すれば避け得られたであろう不備の点も、若干残
つている。併し相当努力の跡のあることを認めるにはやぶさかではないし、又この条約の不成立の場合に起る広汎な
影響を考え、これに
賛成しようと思う。ただ今後の運営については十分留意すべきである。最後に強い要望を付したいのは、かかる条約は、国民に対し秘密にすべきでないことである。国民の輿論に聞いてや
つてもらいたかつた。交渉の過程においても、
国会には十分説明すべきである。更に一つの要望として言いたいことは、
政府は、先には資本導入を唱え、昨今は東南アジアの経済開発を提唱するなど、現実と余りに懸け離れた問題を掲げて国民に淡い幻想を抱かせておるが、かかることはよくないことである、もつと地道にや
つてもらいたい」と述べられ、最後に加藤委員より、「本条約の締結それ自身は結構であり、その苦心は多とする。併し互恵平等とは称しても、両国の経済力の差の大きいことから見て、導入される外資が果して我が国の国民生活と経済に寄与するのか、或いは又逆に我が国産業が、米国資本の隷属下に置かれるのかは大きな問題である。
政府は、この両者の妥協点を求め、外資による悪
影響を最小
限度にとどめるため、制限業種を設定する等の
措置を講じておると言うが、名に背かぬためには、一にかか
つて外交方針如何にあると考える。然るに吉田内閣には、米国に対し対等の外交を進めた実績がない。その軟弱外交を以てしては我が国に対する悪
影響が考えられる故本条約には反対である。」なお、「本条約がいわゆる選挙
管理内閣の下に締結され、国民に十分知らされなかつたことは不満である」との
意見を述べられました。
以上で
討論は終結し、次いで
採決に入りましたところ、多数を以て、
本件は
承認すべきものと決定いたした次第であります。
以上御
報告申上げます。
次に、
議題となりました五件の条約につきまして、外務
委員会における
審議の
経過と結果を御
報告いたします。
先ず、第二次
世界大戦の
影響を受けた
工業所有権の
保護に関する
日本国と
ドイツ連邦共和国との間の
協定の
批准について
承認を求めるの件及び第二次
世界大戦の
影響を受けた
工業所有権の
保護に関する
日本国と
スイス連邦との間の
協定の締結について
承認を求めるの件、以上二件について御
報告いたします。
政府の説明によりますると、日独間及び日本・スイス間におきましては、第二次
世界大戦と、これに次ぐ日独両国の占領のため、約十年間は、通信連絡が異常な状態に置かれましたので、
工業所有権関係の出願書類を相手国に郵送し、又は特許料、登録料等を相手国に納付することが極めて困難でありましたし、又連合国の占領政策による
影響もありまして、互いに相手国民の
工業所有権を
保護する
措置をとることができなかつたのであります。そこでドイツ
政府から昨年八月に、又スイス
政府からは一昨年十一月に、それぞれこれらの権利を救済するための
協定を締結したい旨の申入れがあり、次いで交渉が進められました結果、相互の間に完全に
意見の一致した
協定案の作成を見ましたので、本年五月八日にドイツとの間に、又六月二十五日にスイスとの間に、東京において、それぞれ
協定の署名が行われた次第であります。
この両
協定は、いずれも
工業所有権の特許、又は登録の出願のための優先
期間の延長、遡及効を伴う商標権の存続
期間の更新を
内容といたしております。ただスイスは、占領されたドイツと異なり、
工業所有権が一旦消滅したという関係にありますので、スイスとの間の
協定には、このほかに消滅した
工業所有権の回復
措置について
規定されております。そうしてドイツとの
協定は、
批准書交換後十五日目に効力を生じ、スイスとの
協定は、それぞれの国内法の
規定に従
つて行われた
承認を通知する公文の交換後十五日目に効力を発する旨を定めております。「これらの
協定は、我が国が独立回復後、両国との間に締結いたします最初の正式
協定であり、日本とドイツ並びにスイスとの間の伝統的な技術提携の再建に役立つものと考える」との説明でありました。なお、詳細はお手許の資料により、御
承知願いたいと存じます。
次に、
国際民間航空条約への加入について
承認を求めるの件と
国際航空業務通過協定の受諾について
承認を求めるの件について、御
報告いたします。
政府の説明によりますると、
国際民間航空条約は、第二次大戦中、航空技術が著しく発達いたしたのに鑑みまして民間航空運送の規律に対する国際的統一を確立し、且つこのため国際民間航空を指導する国際機関を設立する
目的を以て、一九四四年にシカゴで開催された国際民間航空会議において作成されたものでありまして、一九四七年四月四日に効力を生じ、その当事国は本年六月末現在、六十カ国に上
つております。我が国がこの条約に加入いたしますためには、条約への加入に先立
つて、加入
承認の申請を行い、その申請が、国際連合総会により
承認され、国際民間航空機関総会の五分の四の
賛成投票及び第二次大戦中に我が国によ
つて侵略され、又は攻撃されたすべての国の同意によ
つて承認されることが必要とされておるのであります。而して我が国は、平和条約の署名に際して発した宣言において、平和条約の最初の効力発生の後、六カ月以内にこの条約への加入
承認を申請する意思を明らかにいたしておりまして、昨年八月に加入
承認の申請を行いましたところ、国連総会及び国際民間航空機関総会によ
つてこれが
承認され、又すべての被侵略国の同意が得られ、ここに我が国の加入申請は
承認されるに至つた次第であります。本条約は、国際民間航空及び国際航空運送の一般的原則を定めるほか、国際民間航空機関を設立することをその
内容としておりましてこの条約への加入は、米国
政府に宛てた通告によ
つて行い、その通告が同国
政府により受領された後三十日で、我が国は正式に同条約の当事国となるわけであるとの説明でありました。
次に、
国際航空業務通過協定は、
政府の説明によりますと、只今の
国際民間航空条約と共に一九四四年シカゴで作成されたものでありまして、同条約の補足的
協定ともいうべきものであります。この
協定は、
国際民間航空条約と相待
つて民間航空の運営を円滑にするため、国際航空の原則の一つであるいわゆる空の自由、即ち他国の領域における無着陸横断権及び他国の領域での運輸以外の
目的での着陸権を相互に保陣することを
目的としたものでありまして一九四五年一月三十日に効力を生じ、その締約国は、本年六月末現在四十一カ国に達しております。我が国は平和条約署名の際の宣言において、
国際民間航空条約の当事国と
なつた後、成るべく速かにこの
協定を受諾する旨の意思を明らかにいたしたのでありますが、
協定の受諾は、米国
政府に宛てた受諾の通告によ
つて行い、その受諾は、同
政府がその通告を受領した目に効力を生ずる旨定められておるとの説明でありました。なお、右条約並びに
協定に関する詳細は、お手許の資料により御
承知願いたいと存じます。
最後に、
国際電気通信条約の
批准について
承認を求めるの件について御
報告いたします。
政府の説明によりますると、この条約は、
現行の
国際電気通信条約を改正するため、昨年十月からアルゼンチンのブエノスアイレスで開催された会議において作成されたものでありまして、我が国は、全権を派遣し、改正の
審議に参加せしめ、諸国の代表と共に昨年十二月二十二日に署名いたしたのであります。現在署名国は、八十カ国に上
つております。
本条約は、
現行の条約と同様、国際電気通信連合の機構と組織を定め、又電気通信に関する一般
規定及び無線通信に関する特別
規定等を掲げておりまして
現行条約実施の経験に鑑み、今日の事態に適応した改善が加えられておるのであります。この条約は、明年一月一日から実施されることにな
つておりますので、我が国といたしましても、この条約を
批准し、諸国との間の国際電気通信業務の円滑化を図り、併せて国際協力の実を挙げたいとのことでありました。その詳細はお手許の資料により、御
承知願いたいと存じます。
委員会は二回に亘
つて、以上五件の条約を
審議いたしましたところ、別段の
質疑なく、
討論を了し、八月六日の
委員会において
採決に入りましたところ、以上の五件は、いずれも
全会一致を以て
承認すべきものと、決定いたした次第でございます。
以上御
報告申上げます。(拍手)